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2017年10月23日 第3回医師の働き方改革に関する検討会 議事録

○日時

平成29年10月23日
16:00~18:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)講堂(2階)


○議事

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「医師の働き方改革に関する検討会」を開催します。

 構成員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 初めに、本日の御出欠について御報告いたします。渋谷構成員から所用により御欠席との御連絡をいただいております。島田構成員、山本構成員が遅れて御参加されます。

 また、本日、第1回、第2回と御欠席でございました荒木構成員が御出席いただいておりますので、御紹介をさせていただきます。

 よろしくお願いします。

○荒木構成員 東京大学で労働法を担当しております荒木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 ありがとうございます。

 続きまして、資料の確認をいたします。

 次第、座席表、構成員名簿。

 資料1「勤務医に関する各学会等による実態調査」。

 資料2「医師の自己研鑽について」。

 資料3でございますが、1から4に分かれておりまして、今回、ヒアリングを行います各先生方からの資料が3-1から3-4までございます。

 資料4「前回いただいたご指摘に関して」。

 参考資料1「医師の働き方改革に関する検討会における主な論点案(第2回検討会における議論を踏まえた更新版)」で、前回提出をいたしました論点案についての更新版でございます。

 参考資料2「第1回検討会における主な意見」で、若干修正をさせていただいております。

 参考資料3「第2回検討会における主な意見」でございます。

 不足する資料、乱丁、落丁等ございましたら、事務局にお申しつけください。

 以降の議事運営につきましては座長にお願いをいたします。

それでは、岩村座長、よろしくお願いいたします。

○岩村座長 それでは、早速議事に入りたいと思います。

 お手元の議事次第をごらんいただければと思います。

本日の議題は「1.医師の勤務実態について(ヒアリング等)」と「2.その他」になっております。

 本日は、医師の皆様の勤務実態についての認識を深めていくために、ヒアリングを中心に進行したいと考えております。そこで参考人といたしまして、大和成和病院心臓血管外科部長の畝大先生にお越しいただいております。畝先生、お忙しいところを大変ありがとうございます。

 このほか、構成員の中から赤星構成員、猪俣構成員、片岡構成員にそれぞれプレゼンテーションをお願いすることとしておりまして御準備をいただいているところでございます。

 まずは、ヒアリングと参考となる資料を事務局の方で御用意いただいておりますので、その説明を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 それでは、資料1をごらんください。「勤務医に関する各学会等による実態調査」でございます。

 前回、鶴田構成員、福島構成員から、こういった学会等の調査についても参考にすべきではないかという御意見もございまして用意をさせていただいたものでございます。既存の公表されている調査といたしまして、外科医、産婦人科医、小児科医のものを今回用意させていただいております。それぞれの学会の調査につきましては、おおむね勤務時間が、いずれも長時間であるということがまとめられておりますけれども、最終ページにまとめておりますように、勤務時間についての定義が異なっていることについては御留意をいただければと思います。

 それでは、1枚おめくりいただきまして、まず、外科医についての調査でございます。

 こちらの調査は、平成24年に日本外科学会等が実施をしたというものでございます。

 4ページをごらんいただきますと「1週間あたりの労働時間について1(まるいち)」に示されておりますように、労働時間の平均時間については78.5時間と長くなっております。

 以降、労働時間についての分析が行われています。

 飛ばしますが13ページをごらんいただきますと、こうした長い労働時間について、どのように感じているかという認識を質問したものでございます。この質問によりますと、労働時間の短縮を望むものが62.3%で、労働時間を短縮したいと考えるものが多数を占めておるということでございます。

15ページをごらんください。そうした労働時間の短縮の方法について質問しておるものでございます。これによりますと「医療事務を充実する」が66.8%で最も多くなっております。また「メディカルスタッフを充実する」も次いで多くなっております。下に書いてありますように、外科医としての本来業務への集中が労働時間短縮につながるという見方がされております。

17ページをごらんください。当直明けに手術に参加したことがあるかという質問でございますが「いつもある」「しばしばある」「まれにある」をあわせますと、全体の4分の3近くになるというような結果になってございます。

 続きまして22ページ以降が「2.産婦人科医」でございます。

24ページをごらんください。「勤務時間・当直について」を表にしてお示しをさせていただいております。当直の回数について、1カ月5.7回で、多くなっているということでございます。

28ページをご覧いただければと思いますが、当直につきまして「当直医師の翌日勤務緩和体制について」ということで質問されております。体制があると答えた施設が26.5%ありますが、実際に100%実施されているという割合については12.7%ということで、体制はありますが、実際には完全に実施されている割合は小さくなっているということでございます。

 それから、産婦人科につきましては女性が多いということで、女性医師の働き方についての質問も行われております。

29ページの「妊娠中・育児中の勤務緩和について」でございますが、当直について聞いておりますのが下の表になります。‘緩和なく当直’が21.8%ある一方で‘緩和して当直’ ‘当直なし’という方をあわせまして71.4%という状況になっております。

31ページでございます。妊娠・育児中の女性医師以外の男女の医師に対する配慮ということで、勤務時間の軽減とか当直翌日の勤務緩和について調査をしたものでございますが、そうした配慮につきましては全体の24.8%で行われているということで、依然として低率であるとされてございます。

34ページ以降は「3.小児科医」でございます。

 小児科医もこの調査によりますと、勤務時間について長時間になっている状況で、前回も事務局の資料でお示ししましたが、大学病院のほうが長いということが37ページ以降、ずっと書かれております。

44ページの小児科医の調査につきましては、医師の子女に対する週当たりの託児時間ということで、院内の保育所についての状況調査をしております。こちらを見ますと、医師の子女に対する1週間当たりの託児時間につきましては、ゼロ時間、ゼロ時間というのは行っていないということだと調査票にはありましたが、そのような施設が全体として56.6%あるという状況でございます。それ以外のところは時間がそれぞれ異なりますが、医師の子女に対する週当たりの託児について各現場で対応が行われているという結果でございます。

 かいつまんでの説明になって恐縮ですけれども、以上でございます。

○堀岡医師養成等企画調整室長 続きまして、資料2の説明をさせていただければと思います。医師養成等企画調整室長の堀岡でございます。

 本日は、いろいろな立場の先生方からヒアリングを予定しておりますので、そのお時間を確保するので短目にやるのと、先生方のヒアリングの中で、恐らく自己研さんというものは非常に大きなファクターを占めてくると思いましたので、事務局の方で考えられるものをまとめてございます。

 「医師の自己研鑽について」でございますけれども、医師は提供する医療の質の向上やスキルアップのために、以下のような自己研さんを行っていると聞いております。

 文献の閲読や執筆。

 学会や研究会等の発表。

 勉強会・セミナー・講習会。

 また、大学へ行って博士号を取って、そのための医学研究を行うなど、非常にさまざまな自己研さんの種類がございます。

 一例といたしまして「診療ガイドライン」は、日々の診療を行うに当たって、標準的な治療を行う診療ガイドラインでございますけれども、例えば、さまざまな診療科でも対応を求められる代表的な生活習慣病、ここでは高血圧、脂質異常症、糖尿病のガイドラインの改訂の頻度などを一つの例として出しております。例えば2010年からほぼ毎年、さまざまなガイドラインが各学会によって改訂されておりまして、これらの内容は多くの医師が踏まえていて、ごらんいただければわかりますのですけれども、ガイドラインはかなりの分量でございますので、非常に日々、医学が進歩していることがわかります。

 次のページでございますけれども、もう一つ、少し特異的な疾患ではございますけれども、ここでは日本肝臓学会の出しているC型肝炎の治療ガイドラインの改訂履歴をまとめさせていただきました。これによれば、C型肝炎は、今、非常に医学の進歩が著しい分野でございますので、1年どころか数カ月単位で、例えば、一番最新では2017年3月には5.3版という形で内服薬の変更があって、1カ月後の4月には5.4版が出て、薬の違う適応が追加されたりといった形で、まさに日進月歩とは言いませんが月進月歩のような形で医学が進んでいるという例が見てとれます。

 次のページでございますけれども、これはPubMedで検索される論文の数を年次ごとにまとめておりますけれども、2001年から毎年毎年増加しておりまして、トータルでは2,800万件弱がヒットいたします。これはごらんのとおり、2017年度はまだ年度途中でございますので少し少ないですけれども、毎年、検索する論文、つまり世界中で発表される論文はずっとふえてきていて、これらも踏まえなければならないところがあるということでございます。

 次のページは「科学論文における医学論文のシェア」でございますけれども、左が世界、右が日本でございますけれども、特に下の2つですが、基礎生命科学及び臨床医学の論文のシェアというものは全ての論文の半分程度を占めておりまして、医学の進歩はこういったものでもかなり進んでいるというところが読み取れます。

 最後に、自己研さんの中で、大学院などで博士号を取得したりして、研究をしながら臨床を行う医師も多いというお話を最初に申し上げましたけれども、これは日本外科学会の年代別のアンケート調査でございますけれども、学位を持っている医師というのは、40代を超えますと7割以上、8割ぐらいの医師がまさに学位を取っておりまして、こういった研究を踏まえながら臨床をする医師も非常に多いということを一つの例として、事務局で提示させていただきました。

 以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、引き続きヒアリングに移りたいと思います。

 ただいま事務局から資料1~2について説明をいただいたところでありますけれども、それについての質疑も含めまして、4人の方々にお話を伺った後で、まとめて質疑の時間をとりたいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。

 それでは、最初に赤星構成員からお話を伺いたいと存じます。

 なお、会場の関係でマイクがどうも通りにくいということのようですので、御発言いただく際には、マイクに口を近づけてお話しいただくよう皆様、お願いいたします。

 では、どうぞよろしくお願いいたします。

○赤星構成員 ありがとうございます。

 東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センターで、3年目の医師をしております赤星と申します。

 私のほうからは救急医、後期研修医としての立場から、現在の勤務実態を簡単に御説明させていただいた後に、今後、より充実した働き方にするために、考えることを御提案できれば幸いです。

PP

 最初に、自分も含め4カ所の救命救急センターにおける救急科・後期研修医の1日を御紹介させてください。

 3ページ目なりますが、こちらは私と同じ後期研修医で医師3年目の方々の平均した1日をお示ししたものです。病院A・Bは都内の大学病院の三次救命救急センター、病院Cは東北地方の市中病院の3次救命救急センター、病院Dは神奈川県の大学病院の三次救命救急センターになります。

 勤務時間は、皆様1日1517時間程度ですが、ごらんいただくと施設や地域によって内容は大きく異なることがわかります。

PP

 ただ、共通して言えることは、救急科の特徴として、救急搬送されてくるタイミングや重症度は予想できないので、突然手をとられることが多いということと、急変や救急搬送、緊急手術の場合は、病棟業務が後回しになるので、結果的に長時間労働・長時間勤務を余儀なくされる。

 見ていただくとわかりますが、書類作成や転院とかの調整にかける時間が非常に長いということと、慢性的に人手不足のため、非常に勤務時間が長くなっているということがわかるかと思います。

PP

 次に、簡単に私のこれまでの経歴を御紹介したいのですが、初期研修1年目は神奈川県内の市中病院でしました。研修医2年目は大学病院。後期研修3年目前半は、大学病院の分院で勤務させていただき、今は大学病院の方の救命救急センターで勤務をしています。

PP

 ここで初期研修と後期研修を比較させていただきたいのですが、市中病院と大学病院を比較すれば、市中病院のほうが大学病院よりも自由度が高くて、担当患者をある程度任せられる一方で、勤務時間も少し長くなる傾向にあるように感じます。

 一昔前は初期研修医の過重労働が取り沙汰されておりまして、最近は市中病院とか大学病院、地方や都会にかかわらず、非常に研修プログラム等、監視システムがしっかりとしてきておりまして、各科にとっても、勉強しに来ているという意識が初期研修医の方に関しては非常に強いため、勤務時間はある程度守られていることが多いように感じます。言い方を変えれば、仮に初期研修医が定時で帰宅をしたとしても、診療業務への実影響は科内でコントロールできる範囲にとどまるのだろうと思っています。

 一方で、後期研修医以降になると、実践力としてカウントされるために、病棟の重大な判断や専門性の高い処置、手術以外は、基本的に全て任せられることになります。そのため、初期研修の先生方よりも主体的に動いて責任を負うことで、逆に仕事量もふえて、必然的に勤務時間は長くなっているのではないかと思っております。

PP

 次に、後期研修医と一言で言っても、科によってその実態は大きく異なるのだろうと思いましたので、こちらはある病院で、同じ給与で働いている3年目の後期研修医の1週間のスケジュールを異なる科で比較してみました。私の同期とかにお願いをして協力していただいたものです。

 1個目、7ページが救急救命科になっていて、勤務時間が90100時間ぐらいで、宿直が月に4回で休日は月に2日程度。あと、不定期で他院での勤務があります。

PP

 皮膚科は、勤務時間が約49時間で、手術とか外来も含まれていて、当直は月に2回程度。土日は、月に2日は午前に処置当番があるようです。

PP

 9ページが麻酔科ですが、勤務時間が約56時間、当直はなくて、平日のオンコールは月に2回程度。時々手術時間の延長や、翌日の準備等で振れ幅はありますが、大体はこういう形になっているようです。

PP

 ごらんいただくとわかるのですが、科ごとの違いが明らかにわかります。同じ病院で同じ給与、同じ医師年数にもかかわらず、勤務時間は大きく異なるのです。だからといって勤務時間が長い科から不平不満が多く聞かれているというわけではありません。この実態の認識がないということも理由の一つかもしれませんが、日本では現在のところ、自由に自分が専門としたい科を選べるシステムになっていて、例えば救急科を選択する方は、ある程度の長時間勤務を覚悟して、救命という仕事、救命医という働き方に充足感や責任感、やりがいを感じているのだと思っています。つまりその科を選ぶ時点で、その科に進む集団の思考に有意的な差異が生まれているということです。

 こちらはお調べできる範囲でお示ししているもので網羅性はないのですが、現に今までの労災認定がされている医師の科を挙げてみましたが、お調べできる範囲なので、御指摘があればいただければと思いますが、必ずしも救急科とか外科とか、第2回までで話題になったような長時間の勤務になっている科に多いわけではないことがわかるかと思います。

PP

 次に少し話題を変えて、救急科における診療以外の事務作業の内容や負担について説明させてください。当然ですが、救急科に入院される患者の大半は緊急入院です。診断がついて入院になると、今後の治療方針を決定して治療を開始する以外に多くの業務が発生します。

 入院時に関しては、入院診療計画書の記入や各種同意書の取得、かかりつけ病院との連絡と診療情報の取得。

 状態が安定して転院が検討されれば、紹介状を作成して転院先の検索、転院先候補との電話調整、紹介状のファクスの送信。

PP

 転院が決まれば、紹介状や検査結果の印刷、画像検査を取り込んだログの出力依頼、介護タクシーの手配、家族への連絡など。

 そして、実際に退院した後には、退院サマリーや診断書、症状詳記の記載、患者様によっては保険への意見書などがあります。

 これら全ては、場合によってほかの職種にお願いできる内容と考えています。病院によっては既にフィジシャンアシスタントという形でタスクシフトを実現しているところもありますが、病院の経営上、厳しい現実もあって普及していないのが実情です。

 また、看護を含むほかの医療職を活用して、安定した患者の継続外来やERの軽症患者の診療、安定した麻酔、手技などのタスクシフトが考えられまして、今後、ナース・プラクティショナーなどの職種が普及すれば、医師の働き方の根本解決にはならないにせよ、勤務環境の改善という意味で有効と考えています。

PP

 最後に、診療時間が長くなる要因をどう考えるかということを、今までお話しさせていただいことを踏まえてお話しできればと思います。

 診療科としてカバーする範囲が救急科は広いため、根本的なスタッフ不足と患者数過多に陥っています。

PP

 また、予想外の救急搬送や緊急オペ、時間外の家族へのインフォームド・コンセントによって勤務時間が延長されること。

 連続勤務による作業効率の低下や、また、そうした時間帯に、結局、書類を後回しすることになるので、仕事を回して、結果的にさらに効率が低下するということや勤務時間が長いことを問題と考えない文化。そして、勤務時間が健康被害をもたらす実感がないことなどが挙げられるかと思っています。

PP

 「労働時間の上限規制はあったほうがいいか」ということですが、正直なところ「必要」だけれども「現実的に現状のままなら不可能」というのが私の実感です。

 まず、上限規制をこのまま無理やりやれば、有名無実になると考えています。科や年代によって同じ給与で長時間労働せざるを得ない状態の医師は既にいるわけで、それはどの病院も勤務時間制限をしっかりと守って、かつ医療の質を担保できるだけの資金や医師数が確保できないということと大きく関係しているのではないかと思っています。その状態で上限規制を設けても、むしろ各病院が存続のために抜け道を見つけて長時間勤務や無休勤務を強いる形を誘発しかねません。

 そして、上限規制が有名無実とならないとしたら、現状では医療の質を下げざるを得ないのではないかと思っています。

PP

 また、そのほかにも診療ごとの差、地域や施設間の差、年代による差もあり「一律」に時間制限を設けることが非常に難しいです。

 業界に根づく奉仕や過労を美談/苦労話とする文化や精神の影響が大きいため、年代的にも、いわゆる診療科の部長クラスの方に多くて、働き方の改善が尊重されないことが多いと思っています。

PP

 最後に、自己研さんが話題になっていたので、そちらについてどう考えるかということですが、常に必要で臨床医にとっては重要なことだと思います。

 ただ、仕事の一環と言いたいところですが、区別や勤務時間としての扱いは難しいのが現状で、例えば本やセミナーで勉強されるドクターの方も多いですが、それ以上に実際の診療行為で経験から研さんされることも大変多いかと思っております。

 例えば、私の場合は重症患者を担当して、泊まり込みで診療する際にも、絶え間なく患者の診療をしているというよりは、短時間での評価を繰り返すという形態なので、その間は勉強とか調べ物をしたり、仮眠をとったり読書をしたりしています。これを時間外労働とまとめていいのか、間のいわゆる仮眠とか勉強の時間は除くべきなのかというのは、やはりグレーゾーンで難しいところかなと思っています。

 以上、私からの発表とさせていただきます。

 ありがとうございました。

○岩村座長 赤星構成員、ありがとうございました。

 それでは、続いて猪俣構成員にお願いをしたいと存じます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○猪俣構成員 よろしくお願いいたします。順天堂医院からまいりました猪俣と申します。

 私のほうからは、私は卒業1011年目ぐらいになりますので、そのぐらいの大学病院勤務医師がどのような勤務をしているのか、また、だんだん管理側のほうにも入ってまいりましたので、中間管理職になりますけれども、そういった医師が大学病院でどのような勤務態勢を行っているかなどをお話しさせていただければと思います。

PP

 簡単な自己紹介ですけれども、医師としては12年目になります。

 私の1年上ぐらいから初期臨床研修医制度が始まりましたので、専門の眼科は10年間ぐらいで、その間に研修医の2年を挟んでいます。私の場合は少し経歴が変わっておりまして、間に大学院に進学していたり、海外留学を挟んでいます。

PP

 研修医1~2年目を振り返ってみますと、初めの1年目の研修医のころは、基本的に病棟管理中心で、当直も当直見習い。私たちのころはやはりかなり長時間の勤務を、特に大学病院の研修医1年目のころはしていたように感じます。

 逆に2年目になると、少し選択の時間もふえてきたり、また、私は大学病院と市中病院のたすきがけのプログラムに在籍していましたので、どちらかというと2年目のほうが緩やかに、また、自分で少しずつ診療が行えるようになってきたのが、この2年目の時期でした。

PP

 私は3年目から大学に戻りまして、そのまま大学院へ進学いたしました。医師の大学院に進学しまして、私がやっていたのはいわゆる基礎研究といって、ピペットを使ったり細胞を扱って研究をしている仕事をして、あとはもちろん外来も大学で少しお手伝いをしながら研究を進めていくようなスケジュールなります。

 大学院の期間は4年間で、もちろん大学院生の間はタイムスケジュールはある程度自己管理が可能なのですけれども、4年間に研究業績が出なければ卒業できなくなりますので、ある程度プレッシャーと闘いながら研究は自分で時間を決めてやっていくというところでした。

PP

 その後、留学を挟みましたので、きょうの話にはこちらのほうは参考にならないかもしれませんけれども、3年間ほど留学して、ハーバードの基礎研究と向こうの修士課程のビジネススクールに行かせていただきました。その間のスケジュールは、ダブルスクールをしていましたのでかなり過酷でしたけれども、研究の時間とか勉強の時間は、ある程度自分で自己管理しながらやっていたという状況です。

PP

 ここからが今回の本題にかかわってくるかと思いますけれども、私は1011年目ぐらいの医師で、今、大学病院に勤務しておりますので、仕事としては臨床と研究と、大学病院の経営にも携わらせてもらっています。もちろん大事なのは医学生といった方々に対す教育もやらせていただいております。

 具体的に話しますと、こういった臨床とか研究に関することであれば、半日を1こまとしまして、手術は週に3こまぐらい、外来は4こまぐらい。研究日は2.5こまぐらいいただいていて、大学院生を4名ほど指導させていただいています。あとは週に1こまだけ病院経営のほうをしております。あとは私の学年の眼科ですと、当直は月1回ぐらいです。

 大学病院ですので、いろいろな学生指導に関する委員会であったり、あとは病院の経営自体を改善するための委員会であったり、広報の委員会であったり、病院自体を再編するための委員会であったりとか、医療材料をどんな物品をそろえるかを決める委員会とか、こういうふうにだんだん年次が上がるごとに中間管理職というか、いろいろな業務がふえていくのが大学病院の特徴ではないかと思います。

 あとは、医師として必要なのは社会貢献も非常に大事な仕事だと考えておりますので、1つは医療人材の海外留学を支援するJGMSというNPOみたいなものの活動していたり、昨年からは医療におけるIoTで、イノベーションを支援するような学会の立ち上げをやって、代表理事を務めたりしています。

PP

 大学病院の勤務医師の職務といたしましては、大きく分けて臨床、研究、教育、経営の4つの柱で成り立っていると考えております。

 例えば、臨床であれば、入院の業務で手術とか病棟管理です。病棟管理の中であれば診察もありますし、書類もありますし、カルテ記載とかがあります。

 例えば、基礎研究であれば、実験もそうですし、研究費を取得するための助成金のペーパーを書く必要もありますし、そういった結果をまとめるための論文執筆とか、あとは学会発表などというのも研究の中の一つの業務だと思います。

 教育であれば、先ほど申し上げましたとおり、医学生に対する教育だけではなく、患者さんに対する医学教育であったり、あとは市民の方々に対する教育も、私たちの非常に重要な仕事ではないかと考えております。

 もちろん、医療においても経営というのは非常に重要になってきていますので、安全性を担保しながらどうやって効率性を上げていくかとか、病院にとっての収益性をどう考えていくか、もちろんそこでは、社会貢献をどのようにそれを通じてしていくかということを考えることも私たちの大事な仕事ではないかと考えています。

 ここにおいて、きょうのテーマの一つであると思います自己研さんと労働時間ということに関してですけれども、私たちはこういった4つの大きな業務の中でも線引きは難しいように考えています。一方で単純な労働作業というのは、私たちの働いている中でもありまして、例えば簡単な書類の記載といったものについては、タスクシェアリングをすることでできるのではないかと考えております。

PP

 「医師の勤務時間が長くなる要因をどのように考えるか?」ですけれども、私のほうでは、一つは医師の担当する業務の多様性にあると思うのです。それは先ほど申し上げたとおり、外来、病棟、手術、研究、教育、経営と非常に多岐にわたる。それから、私たちが相手にする仕事というのは病気というものですので、そちらについては非常に不確実なものである。いつどのような病気が来るかというのはわかりませんので、いろいろなものに対して対応できる体制を病院のほうで整えておいて業務に当たっている。そうすると、どうしても効率性が失われますので、ある程度長期間の労働になってしまったり、そこの効率性が落ちてしまうということは起き得ると考えています。

 勤務時間というものが、例えば、これは医師における勤務時間ですけれども、総仕事量割る医師の人数と、自己研さんの時間であるとすれば、勤務時間が長くなる要因は、やはり総仕事量がふえてきてしまっている。医師の人数といったものは簡単にはふやすことはできないと思いますので、長くなる要因はこういった医師の総仕事量が関係しているのではないかと考えています。

 さらに、単純労働が医師の中の仕事量ではあるとすれば、単純労働と医師しかできない仕事があるとすれば、減らすとすれば単純労働ということになりますので、こちらについて、どうにかして効率性を上げていく必要があると考えております。

PP

 「労働時間の上限規制について、どのように考えるか?」ですけれども、私の意見としましては、上限規制については慎重かつ柔軟に行っていただきたいと考えております。医師の仕事というのは先ほど申し上げましたとおり、単純労働というか、労働と言われる部分と自己研さんという部分が非常にモザイク状に存在していて、簡単には割り切れないような仕事だと考えおります。

 一方で、もちろんこういった単純労働も存在しますので、こういったところを是正するようにして、柔軟に決めていただきたいと考えております。

 また、自己研さんに当たる時間を規制することは、将来の医療の発展の停滞を招くと思います。例えばそれは、自己研さんの時間が規制されることによって研究時間が減少してしまったり、また医学生に対する教育の時間が減少することにつながってしまう可能性があると考えるからです。

 労働時間、特に自己研さんの時間を規制するのではなく、労働そのもの、健康に関することの労働時間に関しては適正化を行う、もしくはそういったものの対価を尊重していただきたいと考えております。

PP

 「医師の養成や技術取得のための自己研鑽の必要性をどのように考えるか?」ということに関してですけれども、例えば自己研さんというものが診療技術というものであれば、それは検査だったり手術の手技であったり、疾患や病態の理解だったりするわけです。

 例えば研究であれば、研究というのはイノベーションにつながりますので、こういった活動なしには日本の医療技術の発展もないと思いますし、もちろん世界においてもそうだと思いますから、ぜひ削らないでほしいと思います。

 また、教育についても、こういった教育活動があることで今の医療の質が保たれていて、次に続いて新しい医学生が医師になっていって、継続性が続いていく。そういったことが、全体がこういった診療技術、研究、教育などの自己研さんをすることによって、今の医療そのものが向上することにつながっていると考えております。

 一方で、こういった自己研さんというのは、私たち医師にとってもキャリア向上という意味で非常に重要となってきますので、単純に規制するのではなく、柔軟に考えていただきたいとぜひ思います。

 こういった自己研さんは、いわゆる病院の損益というものには直接可視化できる形で測定することは難しいと思いますけれども、先ほど述べましたとおり、自己研さんは、医師にとっても、患者にとっても、病院にとっても、医療の未来にとっても重要だと思いますので、そのあたりのことを慎重に御検討いただいた上で決めていただきたいと思います。

 以上になります。

○岩村座長 猪俣構成員、大変ありがとうございました。

 それでは、続いて片岡構成員にお願いをしたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○片岡構成員 よろしくお願いいたします。

 本日は貴重な機会をいただきましてありがとうございます。

PP

 私は「女性医師の働き方の視点より」ということで話をさせていただきたいと思います。

PP

 まず「自己紹介」ですけれども、年表に関してはざっとごらんいただきまして、キャリアについては、私は内科ですので、28歳で内科認定医を取得しております。

30歳で学位を取得。

3132歳で糖尿病、腎臓、総合内科専門医を取得しております。

 留学に関しては34歳でしております。

 ライフイベントとしては、32歳で結婚。

 昨年、第1子を出産しております。

PP

 4ページですけれども「これまでのキャリアパスと勤務実態」ということで述べたいと思います。

 私の場合は、薄いグリーンで書いた臨床業務中心の勤務体系の時期、緑の大学の臨床系教員であった時期、紫は、地域医療人材育成講座が2010年からで、教授として勤めておりますけれども、そちらは教育系の講座ということで、臨床に関しては臨床業務もしながら教育系の講座をしているという状況にございますが、特に2017年からは子育て中ということで、勤務体系の代表例を書かせていただきました。

 左下の臨床業務中心の勤務体系です。こちらのほうは、私は医師臨床研修制度以前の卒業生ですので、卒業と同時に臨床の現場で、1日15時間程度の臨床業務をしてきたという現状でございます。勉強1時間というのは、帰宅してからということでございまして、臨床業務15時間の中に、ある程度の自己研さんの時間は含まれているとお考えください。

 右上が大学の臨床系教員の勤務体系ということになります。こちらも働いている時間は1日15時間ぐらいになりまして、やはり大学教員としては臨床業務以外の研究・教育、管理・事務といった職務の時間というものがふえてきている状況がございます。ただ、働いている時間としては、1日15時間ぐらいの勤務時間ということになろうかと思います。いずれも当直が週1回程度になります。

 右下の子育て中の勤務体系は、現在子供が1歳という状況でございますが、現在が、臨床・教育が7時間程度、管理・事務が2時間程度ということで、それ以外の研究・残務整理というのは、家に帰ってからの残務整理ということになります。

 子育て中ではないときと比べると、結局何が変わったかというと、育児のための時間がふえているということと、物理的に病院にいる時間というのが制限せざるを得ないという状況になりまして、勤務時間としては、これまでが8090時間とすれば、週50時間程度ということで、かなり減少しておりますが、その分、残務整理を自宅でするという状況が生まれている現状があります。

PP

 女性医師の働き方の現状ということで、私は女性医師のキャリア支援の仕事をここ10年間してまいりましたので、それのデータについても解説をしたいと思います。

PP

 これはデータが古いのですが、平成21年度に岡山医療圏の女性医師アンケートを行いました。約1400人の卒業生、入局者を中心にアンケートを行いましたけれども、このときに離職、すなわち無休かつ復帰時期未定で職を離れると定義をして、産休、育休等を除いて仕事を離れたことがあるかということをお聞きしましたところ、離職をしたことがある方は4割を超えておりまして、これは日本医師会、それから、さまざまな学会等で調べられているデータと大体同じでございました。

 子供がいらっしゃる方は6割以上でしたけれども、育休がとれたという方は2割強程度でして、育休をとらなかった理由としては、必要ない方も3割ぐらいいらっしゃいましたが、取得できないという方が71%ということで、これは一般人口に比べると育休がとれない女性医師というのは非常に多いと考えていいと思います。

PP

 「離職を経験した時期と期間」について、こちらもアンケートをしております。こちらは出産時期が卒後10年間ぐらいの間に重なる方が多いので、それを反映したデータにはなっておりますけれども、離職を経験する時期は92%が卒後10年以内となっております。ただし、この一旦離れた方の50%が1年未満で復職しておりまして、実際に本当に現場を離れてしまう方というのは、我々のデータでは数名。ただ、3年以上臨床を離れるといった方も1割程度いらっしゃるという状況がございます。

PP

 復職をされた方、199名に聞いたデータですけれども、復職のときに不安があったかどうかということに関しましては、全年齢で見たら6割以上が何らかの不安を感じたということでありましたが、特に現状で子育てを行っている例えば3034歳の年代を見ますと、不安を感じた方がほぼ90%に近いということで、実際に復職がうまくいった方の中でも不安を抱えての復職ということがあったという状況かと思います。

 具体的にはどういった点が不安かということですけれども、子供の病気というのが一番多かったのですが、そもそも両立できるのかというあたりに大きな不安があったり、あるいは当直・オンコールといったところにも不安の要因があることがわかりました。

PP

 医師の働き方は、これまでの先生方の御発表にもあったとおり特性がありますので、女性医師が復職を考えた場合には、やはり多様な働き方が必要と我々は考えました。復帰しやすい職場とは何かということを考えたとき、そもそも現場自体がかなりの過重労働を行っているので、例えば5人のチームの中の5人目として復職をすると、結局、自分が十分な時間が働けないと、残りの4人に仕事のしわ寄せがかかってしまうということで、そういう状況で、復帰をしたいけれども周りに迷惑をかけられないということで復帰できないでいるということが多く見られましたので、我々は、5人目ではなく6人目として、増員として現場復帰できるポジションが必要ではないかと考えまして、岡山大学病院では平成20年に、そういった定員外の増員としての女性支援枠というものを設立しております。

 その後、平成22年からは病院の規約としてキャリア支援枠という形で、柔軟に勤務できる勤務枠というものを設定しております。こちらは子供1人につき3年間まで、介護の方も3年間利用ができて、当直・オンコールを調整できるとか、1日の勤務時間、週当たりの任務日数が調整できるという勤務形態にしております。

 こういった勤務形態を導入しましたところ、現在で120名以上の方がこちらを利用しておられますが、離職せずに済むようになった、仕事が継続できる、一旦、仕事の調整をしても離れることがなく継続できるようになったというのが一番大きいかと思います。

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 こうした枠を利用した方、これは岡山大学病院の中でのデータですけれども、女性がいる科では、ほとんどの科で利用されているということで、どのような分野でもこうした柔軟な働き方というのは求められているのではないかと考えました。

 そもそもこの枠自体は常勤勤務ができない方のための枠ですので、こういった枠を利用している方は、どのぐらいの勤務時間の方が多いのかというのが左下になります。

 岡山大学の場合、32時間以上というのが常勤の条件になっているので、このようにさまざま、大変短い10時間未満の方から、31時間程度の方までバリエーションはあるのですが、我々の枠ですけれども、例えば1~2カ月前に申し出ていただいたら、1年間の中でも勤務時間を自由に変更できるということにしておりますので、本当の復職の最初は、短く、少なく始めて、2~3カ月ごとにステップアップするという使い方をする方が多く見られました。

 右上ですけれども、キャリア支援の枠を使った後、常勤復帰される方というのが54%程度ということ。そして、大学病院ではなく、地域の医療機関に復帰されるという方が56%ということで、この枠が3年間しか使えないということが、地域の医療機関に復帰する方が多い一つの原因かと思いますけれども、こうして本当に一時期柔軟に働くといことで十分に現場の戦力になり、また、地域医療にも貢献できるということがわかったデータではないかと思います。

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 一方でさまざまな課題もございます。

 「復職した女性医師の意識調査」のデータになります。左側のbeforeが復職する前にどのように考えていたか、そしてafterが復職した後にどう考えたかということを聞いております。職場の理解が得られるかどうかは、点数が低いほど理解が得らないと思う、点数が高いほうが理解が得られると思うという配点になっております。

 職場に関しては、復職前よりも思っていたよりもずっと職場の理解が得られるという、有意差を持ってより理解が得られるという印象に変わっております。家族の理解に関しては、同じという意見も多かったですけれども、これも有意差を持って変わっております。

 一方で患者さんの理解が得られたかどうかに関しては、理解がより得られたという意見もあるけれども、やはりそうではなかったという意見もあり、ほかの医師と比べて短時間の勤務であるとか、夜間に駆けつけるということができないといったところは、社会、あるいは患者さんの理解というものも必要と考えております。ただ、これは平成21年度に行ったデータで、直近のデータではございませんので、その点、現在では変わっている可能性はあるかと思います。

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 こちらは平成27年度の厚生労働省のモデル事業に採択されたこともありまして、岡山大学病院でワークシェアのコースをトライアルとして導入しております。

 トライアルをしてみて、実際に行った現場の先生の意見は、こちらをごらんになっていただけたら思うのですけれども、同じ臨床技能の医師が複数いれば、ワークシェアやシフト制は可能だと思います。

 しかし、一方で患者さん、社会の理解が必要だと思いますし、シフト制で安全に業務を引き継ぐため、情報共有の方法について医師側の教育、あるいはシステムの構築なども必須であると考えます。

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 ここで医師の働き方の特性と課題について述べたいと思います。

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 まず「なぜ勤務時間が長くなるのか」ということです。

 こちらは左側の青いマルが、一般の企業等をイメージしております。これはこのように仕事を指示するというのが、上司から部下へという形で仕事の指示がなされると思うのですけれども、我々医師の仕事は、仕事を規定するのが「患者さん」であって、しかもその場でのすぐの対応が求められたり、予測しない事態が起こるということで、患者さんが来られたということでチームとして対応するという新しい仕事がその場で発生する。また、外来等であれば個人で対応することもある。また、上司の患者さんの対応をチーム全体ですることもあるということで、仕事を規定するのが「患者さん」であるということが、仕事の不確実性を生んでいると思います。

 そして、また、高度に専門分化している、あるいは現場にいる人数が限られているため、代替できないという部分もあろうかと思います。左側が医師数が多い場合の病院のイメージですけれども、同じ分野で同じ臨床スキルの医師が複数いれば、その中では代替が可能だと思うのですけれども、一方で違う専門分野の、職能が非常に高度に専門化されている場合は、やはり余人をもってかえがたしという場合も往々にして存在すると思いますし、そもそも医師数が少なくて代替不可能というぎりぎりの状況で頑張っておられる病院、先生も多いのではないかと思います。

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 「労働時間の上限規制について」です。

 このグラフで、例えば90100時間超えといったような余りにも過剰な勤務については、ある程度の規制というのは必要かもしれないと考えます。しかし、現状で一律に上限規制を導入すると、現場で適切な医療の提供が困難となったり、場合によっては大きな影響を及ぼす可能性もあると考えます。

 また、自己研さんについても、現実的に制限をかけるというのもなかなか難しいのではないかと考えています。

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 「女性医師の就業継続のために」ということで少し述べたいと思います。

 子育て等、就業継続のための工夫が必要な時期があると思います。ただ、これはずっということではなくて、限られた時期にそういった工夫が必要だと思います。

 その限られた時期には柔軟な働き方を選択できることが必須条件になると思います。

 画一的なルールが適用されると就業そのものが困難になる場合もあろうかと思います。

 保育所や病児保育所など、育児支援は必要だと思いますが、右下のアンケートですけれども岡山医療圏女性医師に行ったアンケートの続きですが、復職した先生に聞いた「復帰のときに何が必要でしたか」というものなのですけれども「適正な仕事量」が3番目、「当直なし」が6番目に入っております。ただ、それ以外としましては「家族のサポート」「上司の理解」といったような理解やサポートというソフト面がかなり入ってきておりまして、やはりハードだけではないソフト面も重要ではないかと考えます。

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 また、自己研さんに関してですけれども、医師の自己研さんは医師のプロフェッショナリズムの柱の一つでございますので、非常に重要だと思っています。

 女性医師も自己研さんに対しては大変意識が高いのですけれども、そのための時間の捻出、特に夜間の勉強会の参加などは困難を伴う方が多いと思います。

 ですので、E-learningなどの方法は、時間を有効に活用するためには必須だと思います。

 専門医更新などにもそういった工夫がいただければと思います。

 また、女性医師のキャリアパスの可視化、意思決定できるポジションへの参画ということも今後必要になろうかと思います。

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 最後に、当直について少し追加です。

 当直を復帰時の障害と考える女性医師は多いということがあります。あとは予定が立たないオンコールのほうがむしろ障害になるという意見もございます。子育て中の一定期間を除いて、女性が参画しやすい夜間・休日勤務のあり方を模索する必要があると思います。

 シフト制の導入に関しては、過重労働を軽減することが期待できるけれども、全ての病院に一律のルールを導入することは難しいと思いますし、医師数あるいは病院の果たす役割などを鑑みる必要があると思います。

 また、産婦人科、救急等の分野では、夜間・休日特別勤務等、当直という定義がなかなか当たらないけれども、夜勤ということで全てが解決できないといった分野に関しては、新たな定義あるいはルールが必要になってくるのではないかと考えました。

 以上です。

 ありがとうございました。

○岩村座長 片岡構成員、どうもありがとうございました。

 それでは最後に、きょう参考人としてお忙しい中をお越しいただいております、畝先生からお話を伺いたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。きょうはありがとうございます。

○畝参考人 神奈川の大和成和病院からまいりました、心臓血管外科部長の畝といいます。よろしくお願いいたします。

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 私自身の自己紹介ですけれども、ただいま41歳で医師17年目、免許取得後16年半になります。

 心臓外科専門医で、年間100120例の心臓手術の執刀、私自身の手術であったり、後輩の指導に当たっています。年間で日本人の心臓外科専門医の平均の年間執刀数が25例ぐらいですから、比較的手術には恵まれた環境にいる立場の者です。

 ここまでの経歴を赤で囲んでいますけれども、一つずつ勤務実態を皆さんと一緒に見ることで、心臓外科医の勤務実態というのを見ていただければと思います。

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 医師1年目ですけれども、大学の附属病院の心臓血管外科研修医として勤務しておりました。

 朝から晩まで看護師にまじって病棟業務。当直自体はする能力もなかったもので、当直自体はなかったのですけれども、8時から22時ぐらいまでの勤務という形で、自己研さん自体は全くない状態で、子供の患者さんの採血をするときに手を押さえたりとか、泣いて暴れるので足を押さえたりするということであったり、教授や講師たちのスタッフの回診について回って、パソコンの指示入力をかわりにしたり、食事管理や薬を、よくわからないままに言われるままにパソコンに入力したり、輸血製剤を準備したりというような皆さんが考える医師の仕事からはほど遠いものをやっていたという印象があります。

 自己研さん自体はゼロで、手術室に入ることすらなくて、とても疲れるような毎日を送っていました。手術について学ぶ時間も、自分で勉強する時間も結局つくれなくて、看護師や事務員のかわりであり、処方内容もよくわからないままやっていて、どちらかというと事務仕事で、勤務時間も区切りのない、上の先生が帰らないと終われないというような実態です。

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 そして、それが3カ月ぐらい続いた後に、医師1~3年目の2年間、市立病院の外科の研修医として研修が始まりました。

 私自身は心臓外科医を目指していたのですけれども、その前に一般外科、いわゆる消化器外科で、大腸や胃を診たりといった一般外科に、糸結びであったりとか、手術の基本的な手技を習得することが目的で研修に出て、それを2年間行いました。

 当直は月8回程度で、6時から21/22時ごろに終わるのが一般的な1日で、何をしているかというと、自分1人に対して15人ぐらいの担当をしていたと思いますが、そういった担当患者さんの回診を6時からして、外科ですからガーゼ交換を含む傷の処置であったり、患者の状態把握を7時ぐらいまでにしておいて、指導医が来たときに全て報告して、その日の1日の指示の出すというようなことをやっていました。

 そして、7時からカンファレンスというのをやって、手術前の患者さんを全部、みんなで診たりといったことをやっていました。

 日中は、朝と午後に1例ずつ手術に入って、それが終わったころの8時とかに、もう一回、手術後の患者の回診をして状態を把握して、カルテを書いたり、診断書を書いたり、書類整理をしたり、カンファレンスの用意をしたりで、非常に忙しかったなという記憶がありますけれども、常に医者らしい仕事が主でやりがいもありました。担当患者への責任は重くて、調子が悪いと必ず主治医というのは呼び出されるのです。そして診察する必要がありました。病棟での処置や胸や腹部への管の入れ方に始まって、いろいろな手技を覚えて、家に帰っても手術のイメージトレーニングをしたり、糸結びの練習を延々とやったりして、自分自身としてはそんなに苦ではなくて楽しかったと覚えています。

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 そして、医師3~5年目に、地方の病院で済生会に勤める機会がありまして、ようやく3年目で心臓外科医の研修医が始まります。このスライドで「当直は月に20回ぐらい」と書いていますけれども、実際のDutyとしては10回前後だったと思います。ただ、心臓外科といっても地方になると、自分の上司の執刀医、心臓の手術をする50前後の医師と研修医と2人だけの病院であったため、全てのことは研修医である自分がしないといけない状況になって、特に手術後の患者を診なければいけないというのが非常にしんどかったと記憶しております。

 特にICの集中治療室は自分自身がふなれで、患者さんの指示の出し方もよくわからないし、患者さんの見方もわからなかったため、刻一刻と変わる患者さんの指示を2時間に1回ぐらい、集中治療室に出さなければいけないわけです。そういったところで、自分自身も勉強のためと思って少し多めに泊まっていたこともあって、月20日ぐらい病院に泊まっていました。一番多いときは月29日で、連続で21日泊まっていたこともあります。そういった集中治療室が非常に診るのがしんどかったということが記憶にあります。

 手術や病棟業務など、絶え間ない仕事の中で、その間を縫って自己研さんもしていて、私自身は手術の勉強をしたりビデオを見たりということはやっていました。前任者の優秀な先生たちは、さらに留学に備えて英語の勉強をしたり、アメリカの医師免許試験の勉強をする人たちもいて、すごく頑張っておられた先生たちもいます。

 ここで私が問題として挙げたい点として、今後も心臓の手術後、誰かがかわりに診てくれるとは到底思えないのです。結局、心臓手術後の集中治療医と心臓外科医という異なる2つの仕事、皆さんが一般的に思われるのは、心臓外科医は手術ができたらいいのではないかということを思われると思うのですけれども、心臓の手術後の患者さんというのは非常に重症で、それを集中治療室で診ていく知識であったり、そういうトレーニングを受けなければいけないということで、私は異なる2つの仕事の両方のトレーニングを受ける必要があるのではないかと思っています。

 当然、仕事時間や自己研さんの時間は単純に2倍になるという、2つの違う職業をしているのではないかと思っています。

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 その後、6~9年目は私立の心臓専門病院に移りまして、こちらは心臓の専門の研修であって、専門病院であったため看護師さん非常になれていたので、手術後はそこまでつきっきりにならなくてもよかったのです。手術後、3時間ぐらい集中治療室で診て、状態が落ちついていたら家に帰ることができて、当然、状態が悪いとエンドレスということもあり得るのですけれども、当直自体は月6~8回程度、8時から19時程度で帰ることができる。午後にも手術があれば、手術後3時間まで診たら、10時ぐらいに帰ることはできていました。

 手術の勉強は各自で行っていて、教科書を買って読んだりとか、学会参加をするというようなこともあって、私自身は留学も見据えて英語の勉強もしていました。

 個人的なことですけれども、趣味と呼べるものもそんなになかったので、空き時間は手術の勉強や研究、研究といっても確率統計を用いて治療効果を判定していくというようなことを勉強していました。

 多くの心臓外科医にとって、恐らくこういう自己研さんの時間というのは嫌な時間ではないと私は感じています。

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 その後、医師1014年目になって、カナダに留学する機会がありまして、当時は30代前半だったのですけれども、そんなに手術をするポジションも技術も自分自身にもなかったので、海外留学をせざるを得ないという状況がありました。

 最初、カナダのトロントというところで研究と英語の勉強、研究留学に2年間出ました。最初は、研究ということで私は甘く見ていたのですけれども、実は研究留学というのもしんどくて、病院勤めであれば病院から家に帰れば休むことができるのですけれども、研究というのは本当にエンドレスで、自分の頑張り次第で、起きている時間は全て研究することができる、起きている時間は全て英語の勉強することもできるという考え方もあって、時間が全て労働時間という考え方もできると思います。実際、そういうふうに頑張っている先生たちもたくさんいます。

 ようやく、研究と英語を頑張ることによって、トロントで少し上司に認められることができて、オタワ大学のほうに臨床、病院勤めに出ることができました。オタワ大学自体では当直は月8回ぐらい、Dutyは9~19時ぐらいの安定した労働で、ここが私がそこまで勤めた日本の病院と違ったのは、ICUは麻酔科が診てくれるのです。ですから、手術が終わったら、後はICUの先生が診てくれるということで、割と比較的早く帰れるし、ICUから呼び出されることもほとんどないので非常に楽でした。

 手術トレーニングの傍ら、精神的な余裕もできて、膨大な時間を研究に使うことができて、学会発表や論文作成も同時に行って、そういったことをすることによって外国の中であっても外人の上司に評価されて手術トレーニングの機会がどんどん回ってくるようになりました。

 同時に、手術の前後では指導医の手順をメモして、頭の中で再現することを繰り返していました。これは心臓外科では非常に一般的によくあることなのですけれども、特に言葉が通じなくてごまかしがきかなかった状況でしたので、完全に指導医と全く同じ動き、同じ針の持ち方、動かし方、手順に至るまで全てコピーをしないとなかなかチャンスというのはふえないというのが現状です。実質、日本のトレーニングの中でも、そういったことを要求している指導医というのはたくさんいます。

 ただ、手術執刀と研究成果をどんどん効率よくすることが日本よりできたので、その時間をできるだけ費やすことによって、研究成果であったり手術執刀数を伸ばすことができました。そうすることによってようやく国内で100例以上、手術を任せていただける立場に今つくことができていると思います。

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 ここまで、経験上、労働時間には2通りのものがあるということで、きょうの発表の中にもたくさんあったと思うのですけれども、心臓外科医ですから将来、心臓の手術ができるようになるためのトレーニングにつながるものと、全くつながらない単純作業というものが2番に入ってくると思います。

 1番の中には手術に参加することであったり、患者の診察。術後ももちろんある程度診られないといけないので内服治療や点滴指示というものであったり、自己研さんが入ってきます。

 将来手術をすることにつながらないもの、手術技術につながらないものとしては、単純な指示の入力であったり、確実にできるガーゼ交換とかの簡単な手技の繰り返し。

 あとはカルテ記載、退院時サマリー、診断書などの膨大な書類業務。

 ある程度落ちついているICU術後患者のつきっきり治療。

 一番最後は、患者と家族に対する説明なのですけれども、これは手術の能力にはつながらないのですけれども、これはやってもいいのかなと。患者さんとの信頼関係のために削らなくてもいいのかなと思います。

 2つに分けたときに、労働時間を減らすとした場合には、1番は残すべきだと思うのです。やはり心臓外科医として、一番求められることは手術の技術という意味で、1番は残してほしいと思います。かわりに2番の将来につながらないもの、手術技術につながらないような労働は極限まで減らしてもらえれば喜ばれることは間違いないです。

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 最後になりましたが「医師の勤務時間が長くなる要因をどのように考えるか?」。

 当然、人の命がかかっているので、勤務時間が長くなるのはやむを得ない部分も多いのではないかと私個人は思っています。責任感を持って仕事をすべきであって、状態が悪い患者さんが出た場合にはつきっきりであったり、家に帰ってもどうしたらよくなるのかなと悩むことはごく自然なことだと思います。実際に状態が悪い患者さんがいたとして、5時きっかりに「じゃあ、さようなら」と言って家に帰って、その御家族というのは、恐らくもう信頼してくれないと思います。そういった仕事なんだということをふだんから考えてやっています。長時間病院に勤務している医師のほうが周囲から信頼される傾向があります。そして実力があることも多いです。

 自己研さんという面から考えると、自己研さんの時間は必要だと思いますので、これ自体は削れないと思っています。

 「労働時間の上限規制について、どのように考えるか?」ということですが、医師の数がたくさんいれば、交代でICUを診たりすることは可能で、常識範囲内に、院内の勤務時間を短くすることは可能だとも思います。一方で、たくさんの病院で心臓外科という科を見たときに、医師の数が2~4人程度という病院がほとんどなのです。そういうところでは、当直が週1回以上、これは私は控え目に書いたのですけれども、2回以上行っているところも多いと思います。オンコールに至っては2日に1回以上、下手をしたら毎日というところもたくさんあると思います。そういったことで上限規制というのは、現実的にはかけにくいのではないかと思います。自己研さん時間自体は上限規制はもちろんできないですし、上限規制をする必要もないと思っています。

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 最後のスライドで「医師の養成や技術取得のための自己研鑽の必要性をどのように考えるか?」ということですけれども、やはり未熟な技術は、一瞬で患者の命を奪うということをもう一度、再確認を一緒にしていただきたいと思います。ですから、可能な限り研さんに励み、技術向上を行うべきだと私は個人的には思っています。私自身も17年目ですけれども、いまだに学会参加や手術ビデオを通して、手術前に学ぶことも多いですし、研さん中の身です。そして、今後の後輩がこういった時間を通過せずに、こういった時間を送らずに、まともに手術ができるとは到底思えないです。

 最後ですけれども「どのような勤務環境改善策が必要か?」。

 自己研さんや将来、手術につながるような時間というのは改善の余地は少ないですし、改善する必要もないと思っています。もしも大幅に改善できる点があるとすると、ICU治療医と心臓外科医というのは、繰り返しですが別の職業と考えますので、ICU治療医の充実が必要だと思います。もしもICU治療を隔離することができれば、勤務環境は大幅に改善します。そのほかのポイントとして、NPの充実を行って、ガーゼ交換などの簡単な処方、単純作業は任せるべきだと考えます。

 ほかの点としては、患者さんを執刀医一人で全部診るというのは無理があるので、やはりチーム制、3人程度のチームで責任の分担が必要だと思います。ただ、小さな病院というのは、どうしてもそれを分散ができないために負担が大きくなりがちですから、勤務環境だけを考えると、そういった小さなチームを減らす、合併していくということは、恐らくかなり有効なのではないかと思います。

 以上です。

 ありがとうございました。

○岩村座長 畝先生、大変ありがとうございました。

 以上で、きょう予定しておりました皆様からのヒアリングは終了ということになります。

 そこで、これから御発表いただきました赤星構成員、猪俣構成員、片岡構成員、畝先生からのお話の内容と、先ほどの資料1と資料2についての事務局からの説明についての御質問や御意見がありましたら、お出しいただきたいと思います。

 今、ぱっと手が挙がりましたので、私の近いところからということで、最初に遠野構成員、それから戎構成員、今村構成員という順番でお願いをいたします。

 どうぞお願いします。

○遠野構成員 プレゼンをされた先生方の御意見で上限規制は難しいというお話もありました。私は外科医なので目に付いたが、(労働時間についての)資料1の4ページで、週60時間以上の労働となると、外科医で75%以上が60時間以上です。前回、第2回のときの(厚労省調査の資料とは)対象も異なり、恐らく質問内容も違ったと思うのですが、(前回の資料では)外科医で週60時間以上の労働をしている割合は47%でした。外科医といっても労働時間といっても、先ほどの自己研さんとか待機時間とかが絡んできて、労働時間を数字で規制するというのは難しいというのが考えです。今後、もし時間規制というものがあるとすれば、時間の数字を幾らにするか、自己研さん、待機時間の扱いにをどうするか本当に難しい議論が必要だと思いまず。今後、そのような話し合いを進めてもらえるように希望します。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは戎構成員、どうぞ。

○戎構成員 4名の構成員の方からお話を伺いまして、私のほうからですが、タスクシフトの点について、4名の皆様、恐らく同様に御意見されていたと思うのですけれども、事務的な仕事が非常に多いということで皆様の御発表の中からも非常に読み取れました。これに関しては事務職をふやすということで、そちらにシフトしていけるのではないかと思ったのですが、雇用側から考えますと、その分の人件費というものも発生するので、これについては国の予算とかいったものが、何かしらの補助であると実際によく進んでいくのではないかなと思いました。

 あと、医療的なものに関しましては、医療職がプラスアルファの知識とか技術を蓄えましてからシフトしていくという形がいいのではないかと思うのですけれども、これに関しては新しい職種が必要なのかというところで、もし新しい職種や教育が必要なのであれば、これについても予算が必要だと思います。ちなみにアメリカのNPが立ち上がるときには、予算として国が100億ドルを出されているようでした。実際にNPの研修生の方と現場をともにしたことがありますけれども、病状説明や日中に行う処置等の指示出しはNPの方がかわって行われていました。今の発言はアメリカの事情でございます。

 女性医師のことに関してなのですけれども、女性で子供を持つ場合には、通常の1番目、2番目に御発表されていたような、男性が医師としてのスキルを維持しアップしていくという過程に入るというのが物すごく難しいのだなということがわかりました。通常、育児・家事を12時間しているとすると、もしその配偶者が半分の6時間でも家事・育児を担っていただけるのならば、同じように女性医師も現場に入っていけるのではないかと思いました。配偶者の職業的な背景もあるとは思いますけれども、理解が必要というだけではなく、実際の育児・家事を自分で行うという参加が必要ではないかと思っております。

 最後に、心臓血管外科の現状についてお話しいただきましたけれども、アメリカの現状ですと集中治療医がICUにはおります。私が実習させていただいた病院のICUでも集中治療医が全て患者さんの管理をしておりまして、状態によっては心臓血管外科の先生にコンサルトしたりという形で患者を管理しておりましたので、心臓血管外科医に限らず、外科医の先生方は手術に集中しておられました。必要時、夕方の回診にも来られますし、朝のカンファレンスにも参加されるという現状でした。

 また、この集中治療医は、10年前に調べたことなのですけれども、アメリカでは内科、外科、麻酔科から、その科を経験した後に集中治療医という資格を取れる制度になっているようでした。

 私からは以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 では、今村構成員、お願いします。

○今村構成員 4人の先生方は年代も性別も経験もさまざまでありますけれども、日本の医師としての活動については、共通の考え方というものがあったかと思います。特に医師の行うべき業務、そうではない業務というのは、これからはもう少し明確にしていくべきだと思いますし、今、戎構成員からもお話があったように、これは看護師さんに新たにやっていただくにしても、あるいは事務作業を、もっとクラークのような方をふやすにしても、結局、財源が要るわけで、今の診療報酬の中でそれをやっていくのができるのであればいいのですけれども、なかなかこれも厳しい。これは厚労省にぜひお願いしたいのですけれども、もともと医療介護総合確保基金という消費税の財源を使って、人材養成に使えるということになっていますけれども、なかなかこれが十分に利用されていないということで、こういったところの手当にそういったものが財源として使えるようにぜひ御検討いただければと思います。

 海外の事例のお話がございましたけれども、日本の医師の特徴というのは、海外のように専門医とGPを早い時点から卒業時に明確に切り分けてキャリアアップするということではなくて、多くの医師が専門性を持った上で、その後にGPに変わっていくという独自の制度であります。したがって、臨床、教育、研究というものを多くの医師が、こういった複数の役割を担っているというのは、必ずしも大学病院に限らず一般病院であっても、あるいは開業医であっても機器の研究開発をしたり、臨床研修医の指導をしたりといろいろなことをやっていますので、その視点をぜひ忘れないでいただきたいということ。

 それと自己研さんの重要性というのは、欠くべからざるものだと思っていまして、最後の畝先生は、自己研さんを労働時間の中に入れておられましたけれども、恐らく趣旨としては、それで労働時間がふえてしまうということになるとよくないので、これはやはり自己研さんは自己研さんとして、なかなか区別は難しいと思いますけれども、別の考え方をしていただければ大変ありがたいと思います。

 最後に、先ほど片岡先生のお話の中にあって、私もこれはぜひ進めていただきたいと思うのは、常に医療提供者側の取り組みの話だけになっているのです。もちろん患者さんが本当にやむを得ぬ理由で救急車を利用されたり病院の医師に求めるものはいろいろあって、それに我々医師は応えていくというのは当然のことですけれども、やはり医療を利用していく国民であったり患者さん、社会が医療というものを理解していただかないと、この医療現場というのは多分変わらないと私は思っていて、厚生労働省に関しては、誰がやるという話ではないと思うのですけれども、もう少しこういうところを国民に理解していただかないと全てが1人の主治医で診ろと要求されても、それでは現場はなかなか変わっていかないと思いますので、ぜひその点につきましても厚労省にはお願いしたいと思っております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、お二方にお願いしようと思います。

 まずハイ構成員、それから市川構成員ということでお願いいたします。

○ハイ構成員 4人の先生方、ありがとうございました。

 4人の先生方のお話を聞いていますと、医師の労働の特徴と言ったら変ですけれども、3つの性質的なものがあるかなと思います。

 1つは労働の非連続性。先ほど先生方がおっしゃいましたように、いつ呼ばれるかわからない、また、すき間時間で何かをしなければいけない、そういった緊急呼び出しであったり、患者さんの容態によって自分の労働時間をコントロールできないという非連続性が一つの特徴と思います。

 2つ目は労働内容の多様性、つまり、臨床、教育、研究もしなければいけない、そして事務的な作業もしなければいけない。もしかしたら、そこに自己研さんというところも入らなければいけない。そういった非常にバラエティーに富んだ労働内容であるというのが一つ。

 そして3つ目が、労働人材の偏在性。これはこの検討会でディスカッションするべきかどうかわかりませんけれども、先ほどお話がありましたように年代、性別、診療科、そして当然ながら地域、そういった意味で労働人材も非常に偏在している。そういったものをトータルで見ないと、時間だけという議論は、それで全てが解決するという魔法のつえのようには思えないと思います。

 その3つの特徴、または特徴めいたものをこの検討会で全て議論するのか、それとも一つ一つ小分けにして他の検討会との整合性も見ながらやっていくのか、例えば労働人材の偏在に関してなら、医師需給分科会といったところでの議論をすべきなのか、そこら辺の切り分けを明確にしたほうが、より実効性のあるソリューションが出るのではないかと先生方の話を聞いて思いました。

 以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは市川構成員、どうぞ。

○市川構成員 片岡構成員のお話で、8ページとか9ページに関係しまして、5人目ではなく6人目という考え方は、6人目の人が何人もいるという考え方でよろしいでしょうか。

○岩村座長 片岡構成員、いかがでしょうか。

○片岡構成員 はい。そのとおりです。

○市川構成員 わかりました。

 それで、1番、2番のようなメリットがあるというお話だと思うのですけれども、これは、例えば3年という年限を区切るというのは、たまたま岡山の場合はということですね。

○片岡構成員 はい。

○市川構成員 実際に、中学校はさておき小学校までは、かなりお子さんにお手がかかるものですが、ここのところのシステムというものが、もう少しステージアップしたいような考え方は何かお持ちでしょうか。

○片岡構成員 ありがとうございます。

 もともとは子供が小学校卒業まで利用できるとしたのですが、そうすると1人の医師が場合によっては12年間、柔軟な働き方をするということも可能になってしまって、例えば子供が複数いると、もっと長く柔軟な働き方ということになってしまうので、そうすると逆にその医師にとってのキャリアアップにはマイナス面もあるのではないかと考えまして、あえて3年間に区切って、そこでしっかりとキャリアの支援をして、その3年間をステップとして次につなげていただくというような考えで3年間にしております。

○市川構成員 よく事情はわかります。実際、今、特に9ページにありますように、産科、小児科、皮膚科、眼科と、非常に女性が、山本先生のところなどもそうですが、多いと思います。そうなると区切ってしまうと。

 一つは、今、大体女性医師が4割、卒業生が4割ですね。多分半分近くが女性医師。キャリアアップも大事なのですけれども、現場から離さないために考えられていると思うのです。これはお願いなのですけれども、岡山はせっかく先覚的にやって見えるものですから、もう少し広げた感じを実験的にやっていただいて、ぜひ女性医師が職場から離れないようにしていただく方策をお願いしたいと思います。

 それから、これは今村構成員がおっしゃいましたのですけれども、要するに、タスクシフトすると同時に、非常に事務的なものが多いのです。多分、委員会が何十とある。そうすると記録を残して病院監査のときにそれを必ず出す。必要ではないことをやってはいないと思うのですけれども、毎月やるとか2カ月に一遍やるとか、いろいろな委員会があります。ここのところをもうちょっと整理していただくと、多分、管理者の先生の負担もとれるし、看護師とか事務局の負担もとれますから、もうちょっと整理していただくことが、やはり仕事量を減らす大きな要因になると思います。そこをぜひお願いしたいと思っております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、先ほどお手が挙がりましたので、まずはここのお二方にお願いしたいと思います。鶴田構成員、黒澤構成員という順番でお願いいたします。

○鶴田構成員 現在の過労死の判断基準となる時間に100時間というのがありますけれども、そのときの基準というのは、睡眠時間が5時間を切ると脳血管疾患が増加する、月の労働日が20日間、労働時間の時間外が5時間で、やっと睡眠時間が5時間とれるということで決められたと思います。今回資料の1週間の労働時間を見ると、前回、産婦人科の待機時間が多い話をしましたけれども、5日間で考えるのか7日間で考えるのかで大きく違って、例えば5ページの外科の労働時間が78時間というのは、5日間で考えれば1日8時間の時間外労働があるということになります。2倍ぐらい働いている。産婦人科の待機時間というのは、これを例えば月間22日と考えれば528時間分の300時間、30日という時間から考えれば720時間の300時間。したがって、普通の労働者の労働日数から考えれば56%病院にいることになります。また、30日間の労働時間で考えると41%は病院にいるという計算になります。

 質問は、27ページの1カ月の推定在院時間は4年前から変化はなくて「1日8時間勤務と1時間休憩、毎月22日間勤務、80時間の残業から計算した1カ月278時間の過労死基準を超えたまま」というのは、具体的には何時間を指しているのかがよくわからない。80時間を引いた、大体、時間外が200時間という認識でこの文章が書かれているのかというのが少しわからないので、まずそれが一つの質問です。

 もう一つは、赤星構成員が出された資料でおもしろいと思うのですが、7ページに救命救急科は7日間勤務するのが当たり前で、休みをとらないという前提の勤務時間になっているのに対して、ほかの診療科は、普通の労働者と同じように土日は休むという勤務体制になっています。我々が医学部を卒業した最初の1年のころは、夜の1時ぐらいまで勤務して、朝、また6時に起きていくようなレジデント生活を送りましたので、我々の年代の指導者が意識改革をしない限りは、若い人たちの勤務はそういう勤務体制なのかなという感想を持ちました。

○岩村座長 ありがとうございます。

 御質問の点について、事務局はいかがでしょうか。

 もし、直ちにはちょっとということであれば、もとの統計資料のとり方といったことにもよりますが、もしよろしければ次回ということでもよろしいでしょうか。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 はい。整理をさせていただきます。

○岩村座長 お願いいたします。

 そうしましたら黒澤構成員、どうぞ。

○黒澤構成員 黒澤です。

 4人の先生のお話を聞いて、私も医師ですので非常によくわかる部分が多くありまして、うちの病院も事情が同じだなというような点も多々ございました。やはり、医師の働く時間の上限規制をやりますと、医療を供給する量と言いますか、それが絶対量が減るということは避けられないことでありまして、そういう規制をやるというよりも、先生方の話を聞きますと、やはりタスクシフト、今はNPのシステムですとかフィジシャンアシスタントも検討されているとお聞きしますけれども、そういうシステムの拡充と言いますか、よりそちらに進む方向へ考えるべきだなと思いますが、今村先生がおっしゃいましたように、今、責任とか安全ということが患者側から求められますし、マスコミも患者側に立つということがありますので、社会の理解を同時に得るということが大切かと思いました。

 また、女性の支援に関しましては、ちょうど今、産業衛生の世界ではがん患者さんの両立支援というのがありまして、がんの患者さんが離職してしまうために、産業医が両立支援と言いましていろいろ働き方を調整してあげるという仲立ちをすることがあるのですけれども、ちょうどその両立支援のような何か仕組みが必要なのだなと思いますし、そこに産業医が出るわけではありませんけれども、そういう両立支援の仕組みはやはり全国的に当然のものとして考えられたほうがいいのではないかと思いました。私の大学でも考えてみたいと思います。

 もう一点、最初の外科の先生の資料ですけれども、勤務時間が多いというようなことが普通にあるということがわかったと思うのですけれども、これは必要であってとか、生きがいを持ってやられているとか、いろいろ事情はヒアリングでわかるわけですけれども、過労死をしている方が出ているというのも事実で、疲弊して疲労こんぱいで亡くなる方も出ていることが事実で、実は病院の産業医というのが九十数%専任してあるのですけれども、今、厚労省の法令で決まっていますけれども、長時間労働のそれを実施しているのは、2,000近くの病院のアンケート結果で25%しかやっていない。つまり産業衛生の一般会社でやられているようなことが、75%の病院では少なくともやられていない。資料で見ますと36協定さえ結んでいない病院がある。これは明らかに法律違反だと思うのですけれども、労働衛生の基本的なところが病院ではやられていないという側面もあるのだということが示されているのではないかと思います。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 今村構成員が手を挙げていらっしゃるのですが、こちらが先なので。

 馬場構成員、福島構成員、村上構成員、森本構成員、山本構成員とお手が挙がっていますので、順番にお願いしたいと思います。

 多数の方がまだ発言されたいようですので、申しわけありませんがなるべく簡潔にお願いをいたします。

○馬場構成員 4人の先生方、どうもありがとうございました。

 現場の本当の生の声だと思いますけれども、出産・子育て世代の女性医師の支援とか、あるいは事務的な仕事を中心とするタスクシフティング、タスクシェアリングというのは本当に必要なのだろうと思います。ただ、医師しかできない仕事あるいは自己研さんの時間は、単純な労働時間の上限規制というものには、現実的にもあるいは医師の心情的にもなじまないのではないかと感じました。ある程度、納得してやっているという部分があるのではないかと思っております。

 私たちの病院でも、自分のところの病院の常勤医師60人に対してストレスチェックのデータを解析しましたら、やはりストレス反応というのは多い方、少ない方、いろいろあるのですけれども、単純に当直回数とか、あるいは総勤務時間であるとか超過勤務時間であるといったものとは全く相関がないというデータになっておりますので、単純に時間だけが問題ということだけではないような気がいたしております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは福島構成員、どうぞ。

○福島構成員 今のお話にも共通するのですけれども、労働時間だけではわからないという意味では、赤星構成員のヒアリング資料の10ページのところで、勤務時間が長ければ長いほど労災に遭う可能性が高いわけではないのかもしれないというお話がありました。これもやはり勤務の前後の取り扱いなども関係してくると思います。つまり休日の確保とか、術前の勤務低減であるとか、休憩とか仮眠の確保であるといった配慮も影響しているのではないかと考えます。

 また、やりがいとか自分の好きな仕事であればストレスにならないということも、長時間労働だけが関係してくるのではなく、つまり時間に比例してストレスになるとは言い切れるわけではなく、労働時間が長くても疲れないような気持ちのモチベーションとかいったことも関係してくるのではないかということも感じました。

 4人の先生方、ありがとうございました。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは村上構成員、どうぞ。

○村上構成員 4人の先生方、ありがとうございました。

 医療の世界にはど素人でございますが、どういう状況なのかということがかいま見えたかと思います。

 ただ、労働時間の問題は、私どもは医師以外の時間外労働の問題も扱っておりますが、共通しているのは、結局、仕事の絶対量をどうやって減らすかということか、あるいは仕事の仕方を変えるか人をふやすか、いずれかの組み合わせでやっていくしかないのかなということです。医師についてもそれらの中からどうやって現実的な選択肢を組み合わせていくのかという議論をすべきではないかという感想を持ちました。

 今村構成員が先ほどおっしゃっていましたが、社会に対する理解が重要であると思います。そういう例で言いますと、教員の長時間労働の問題とも共通しており、長時間労働をしている先生のほうが熱心に思われてしまうというところを、どのように社会に理解をしてもらうのかという取り組みが大変重要ではないかと思います。本日のような議論をもっと社会に広げていくことが必要ではないかと思いました。

 もう一点、これは次回以降の議論で結構ですが、医師に関して時間外労働の上限規制を行うと、医療の質を下げるとか医療の供給のほうがパンクするというようなお話がありますが、医療界に詳しくない人間からすると、にわかにそれは直結しない。想像はできますが、ではなぜそうなるのかということと、どこに予算配分なり資源配分をしていけばそうならないで済むのかということが、にわかにはわかりづらいところがあります。そういったところをもう少し丁寧に御説明いただけると次の施策につながっていくのではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは森本構成員、どうぞ。

○森本構成員 4人の先生方、ありがとうございました。

 時間もないので簡単にお話します。まずは片岡先生のヒアリング資料の5ページと6ページで、女性医師の離職率、離職の時期、期間がありますが、この中で少し気になった点が、離職をされている方は相当おられるのですが、そのうち育休に関しては「必要なかった」ではなく「取得できなかった」という方が71%おられる。一方で6ページの資料では、離職を経験する方のうち、5割が1年未満で復職をしているという状況をあらわしています。これだと結果としては育休がとれないから離職という形をとったのかなと見受けられる部分も、全てではありませんが若干あります。そうであれば、育休がとれない問題点はどこにあるのかなど、もしわかれば教えていただきたいというのが1点目です。

 これは全体に対しての意見ですが、きょうは大学病院の方に発表いただきましたが、それぞれの病院に勤務実態あるいは診療報酬なども熟知をして、その上で労務管理を専門的に行うような職員の方がおられるかどうかというのが2点目。

 3点目が自己研さんの時間について、労働時間に含まれている時間と含まれていない時間がありますが、その割合がもしわかれば、大ざっぱでも結構ですので教えていただきたいと思います。

 以上です。

○岩村座長 今の後半のご質問は皆様にということですか。

○森本構成員 皆様にです。

○岩村座長 わかりました。

 それでは、まず前半の御質問が片岡構成員でしたので、片岡構成員から前半と後半について、それぞれわかる範囲でお答えいただければと思います。

○片岡構成員 ありがとうございます。

 実際、育休がとれないから職を離れるといった理由はあると思います。育休がとれない理由としましては、育休をとった後、必ずその職に戻る見込みがあるというのが必要だと思うのですけれども、実際にそのポジション的に、いわゆる当直・オンコール全てを対応してフル勤務というポジションしかないと、そこに戻れる見込みを感じづらく、そうやって自分がフルで活躍できない状況で戻るぐらいだったら、ほかの人にそこの枠を埋めてもらったほうがいいということで諦めざるを得ないという状況が恐らくあろうかと思います。 岡山大学病院では、そういう柔軟な勤務ができるという枠をつくると、戻ってこられる可能性が非常に高くなるので、それであれば育休がとれるとつながってきていると思います。

○岩村座長 後半の点はいかがでしょうか。

○片岡構成員 労務管理の専門家がいらっしゃるかどうかですか。

○岩村座長 はい。そういう点です。

○片岡構成員 いらっしゃるのかもしれないですが、速答できず申しわけございません。

○岩村座長 では、恐縮ですが順番に、こちらからだと猪俣構成員になります。

 まず、質問に対するお答えをお願いします。

○猪俣構成員 労務管理に関してですけれども、基本的にコ・メディカルに関しては労務管理は非常に厳密にされていると思いますけれども、医師についてはないというか、寛容な状況になっているかと思います。

 3つ目の質問は何でしたか。

○岩村座長 自己研さんの時間が、労働時間に含まれている時間と含まれていない時間があるのかということです。

○猪俣構成員 おっしゃるとおりだと思いまして、自己研さんの時間を明確にはなかなか定義して分けづらい状況ではあると思います。

○岩村座長 それでは赤星構成員、いかがでしょうか。

○赤星構成員 ほとんど一緒だと思うのですが、労務管理に関しては初期研修医とコ・メディカルに関しては徹底されていて、後期研修医以降は、私の知る範囲ではいないという話です。

 自己研さんに関しては、私も明確には区切れていない状況です。

○岩村座長 最後に申しわけありません、畝参考人、いかがでしょうか。

○畝参考人 私も皆さんとほとんど一緒です。労務管理をしている人は恐らくいないのではないかと思います。実質的にはいないという認識です。

 自己研さんに関しては、非常に区別がしにくくて、例えば家族としゃべっている間にも、きょうの針の動かしはこれでよかったのかなとかを考えながらしゃべっていたりするのです。この区別は非常に難しいです。そういう意味ではエンドレスにやっている部分はあります。

○岩村座長 ありがとうございました。

 森本構成員、よろしいでしょうか。

○森本構成員 はい。

○岩村座長 お待たせしました、山本構成員、どうぞ。

○山本構成員 今、御議論がありました労務管理につきましてですけれども、大学病院の事情をお話しすると、もちろん判こだけというところもまだ残っておりますが、出入りをIDカードでしっかりチェックするところもかなりふえてきております。それは労基署の御指導をいただいている大学病院もふえているということもありますが、その辺は大分大学病院としても意識が変わってきているということは事実だと思います。ただ、問題はどこで切り分けるか、先ほどの自己研さんの問題もありますが、どこからどこまで労働なのだというところが把握しにくいので、とりあえずやっているところも、始めと終わりはチェックするというところに来ていると思います。

 もう一個、先ほどの女性医師の育休がとりづらいという理由のもう一つは、やはり育休をとると、そのかわりの人間を、例えば大学から出さなければいけない。その人がいないということが一番大きな理由だと思います。そこは、今、片岡構成員の御説明に加えてもう一つの理由と考えていただいたほうがいいと思います。

 あと、私からは大学の病院の医師の働き方について、今、猪俣構成員からお話がございましたけれども、現状で教育の比率がとても少ないという数字をお示しになっていらっしゃいましたけども、実際は診療をやっているときは学生がそばについているし、初期研修医もそばについているし、実際のところは教えながらやっていて、先生が1人で診療しているというのは本当に夜中の当直帯とかに限られるのではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

○岩村座長 猪俣構成員、どうぞ。

○猪俣構成員 ありがとうございます。

 私が含めたのは、フルコミットで教育している時間しか入れていなかったのですので、日中のポリクリの学生に対する指導とかいったものは、今回は診療のほうに含ませていただきましたので、おっしゃるとおりということです。

○山本構成員 診療、教育、研究がモザイクと私も申し上げましたが、実際は表裏一体で、裏表でぴったり張りついている状態で、大学病院に関してそれを分けるのはほとんど困難、みんな教育、ないしは研究と裏打ちのついているところは、御認識いただく必要があるかなと思います。

 あと、畝参考人から高度な専門医療に関しての話がございましたけれども、やはり心臓血管外科に限らず、高度な医療をやるところが少数の人数、そもそも3~4人で心臓外科手術をやるということの危険性を社会がもうちょっと認識しなければいけないし、そもそもそういうところの手術をするのなら2桁の医者が必要ということであれば、やはり病院の集約化というのは避けられないのではないかというのが一つのポイント。ここで御議論することかどうかわかりませんけれども、特に今、外科系で医療が高度化している部分に関してはどこの病院でもやる必要はなくて、集約化をしないと最終的に患者さんが被害をこうむることになると思います。

 もう一つ、重要なところは、重症患者をICUに集約せずに外科の先生が診ている、それは私どものところでも重症な外科の手術の後、外科医が3人ぐらい当直して、寝ずに患者さんの世話している。これは明らかにおかしなことで、そこはICUを確立して、ICUであればアメリカの場合は最近、テレICUといって複数のICUを1人の医者で管理する。現場ではフィジシャンアシスタントを置いておいて、そこで実際の手を出させるということも可能になっていますから、そこは医療政策としても重点的に進めていただくと、外科医が手術場で実力を発揮するということに集約できるのではないかなと思います。

 これは2つの意見ですが、数が多過ぎるというのはあると思うのですけれども、この辺は畝先生はいかがですか。

○岩村座長 畝先生、いかがでしょうか。

○畝参考人 ありがとうございます。

 今、賛成していただいたとおりで、やはり数が多い、心臓外科をやっている病院が多いというのは、恐らく間違いなくて、ただ数が多いのが問題ではなくて、その構成している人が2人とかになってくると、延々と365日オンコールという状態になって、患者さんも危ないし、研修医もそれこそ過労死するのではないかと思います。これは避けてほしい勤務状況だと思います。ICUを隔離したら、もしかしたら2人という病院でもやっていけるかもしれないです。そういうような見方もできると思います。ありがとうございます。

○岩村座長 山本構成員、よろしいでしょうか。

○山本構成員 はい。

○岩村座長 ありがとうございます。

 時間が大分押していまして、先ほどお手を挙げていたのが工藤構成員、三島構成員、今村構成員で、申しわけありませんがそのお三方までということでお願いできればと思います。

 それでは、三島構成員からお願いをいたします。

○三島構成員 三島でございます。

 私は皆様方の大学のような大きな病院での勤務というよりも、在宅医として地域医療で研さんを積んでいるのですけれども、365日のオンコール体制というのは、今、地域の中で高齢化が進んでいて、さまざまな地域で患者さんを診ていくというニーズが高まる中で、地域で頑張っていらっしゃる開業医の先生方というのも非常にニーズが高まっているかなと思っています。

 例えば、私も患者様の中で主治医体制で診させていただいている方と、グループ診療体制の両方で経験しているのですけれども、やはり主治医体制ですと本当に電話をずっと持って、24時間いつ呼ばれるかわからないみたいな状態で頑張っていらっしゃる先生方もたくさんいらっしゃいます。その中で一律に時間で勤務の上限を決めるとなると、今の医療提供体制の持続というのは非常に難しいし、現場が混乱するのかなと思います。

 特に土日とか夜間の地域のそういった体制の充実というのは、その仕組みがないと、ただ上限をつくっても解決ができないかなと思っています。具体的には一つ一つのクリニックの先生方だけではなくて、地域全体での土日・夜間の救急のサポート体制であるとか、あとはそこに多様な働き方が実現できるような医師の参画の仕方みたいなものも相まった仕組みづくりというのが必要ではないかと思っております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは工藤構成員、どうぞ。

○工藤構成員 4人の先生方、きょうはありがとうございました。

 畝参考人にお聞きしたいのですが、資料の8ページで、オタワの大学で臨床に携わったというお話の最後に、非常に楽だったということを書かれています。カナダにおける医師の仕事の範囲、もしくは仕事の仕組みで、日本との違いや、医師の役割なりほかのスタッフの役割なり、違う点があれば教えていただきたいです。

○岩村座長 畝先生、いかがでしょうか。

○畝参考人 ありがとうございます。

 今、自分でも思い出しているのですけれども、日本と一つ違うのは、主治医制が徹底的に敷かれているわけではないのです。ですから、病棟医であったりオンコールであったりで、例えば手術後に調子の悪い患者さんが出た場合も、その日のオンコールのスタッフ外科医が対応します。実際に手術をした人は寝たままで、呼ばれないということが実際行われていることです。そういう意味で確実に仕事が分けられているので、休みは完全な休み、オフとして呼ばれることもないですし、それがいいことなのかどうかはわからないのですけれども、労働として見た場合には非常にいいと思います。

 少し論点がずれるかもしれませんけれども、心臓の手術後でも、患者さんが1週間以内に退院をしていくので、私自身が勤めていた病院が年間1,400例ぐらい心臓の手術をしている病院だったのですけれども、病棟の患者さんは30人いるかいないかぐらいでした。そういう意味では負担は少ないといえば少ないかもしれないです。入院患者さんがとても少ないということが言えます。

○岩村座長 よろしいでしょうか。

○工藤構成員 はい。

○岩村座長 それでは、最後に今村構成員、お願いします。

○今村構成員 時間のないところで2回目の発言をさせていただいて申しわけございません。2点申し上げたいと思います。

 1つは集中治療室のお話がありましたけれども、私はもともとずっと麻酔科で大学病院に勤務していましたので、恐らく病院によって相当差があって、私がいた大学病院も県立病院も、もう20数年前ですけれども管理は全部麻酔科医がやっていたのです。恐らく、心臓外科とか一般外科の先生たちと麻酔科の信頼関係で、全部、術後は麻酔科で診てくださいということで、私どもの体制ではやっていた。恐らく、病院ごとにそういう対応がまるで違っている。だから制度の中で、こういう誰がやれという話もあると思いますけれども、まずは病院の中の縦割りと言ったら、自分たちの権益みたいな話にならないように、お互いに働き方改革をしっかり考えていただくという土壌が必要かなと思っています。

 もう一点は、長時間の労働を苦にしない医師も結構いて、すごく自分のやりがいと思う人もたくさんいます。ただし、そこで考えなければいけないのは、自分の健康にそれでどういう影響が出ているかということと、きちんと適切な医療が本当に患者に提供できるような健康状態であるかどうかを、なかなか自分で判断できないという場合もあります。医師は、お医者さんだから健康管理は自分でできるでしょうと言って、他人に管理を任せるのではなくて、自己管理に任されていたという歴史があるのだと思います。先ほど黒澤先生がおっしゃったように、産業保健の仕組みの中、あるいは労務管理ということで、医師以外の方たちにはあるけれども、医師は余り今までそこが十分ではなかったということは改めていって、みんながそこは医師もきちんと健康であって、そして適切な医療が提供できるような体制にあるのだということを病院自体が確認できるような仕組みというのをこれからみんなでつくっていくということが大前提にあるのではないかと。その上で、いろいろなことを考えていくという、ベースはやはりそこにあるのかなと思っています。

○岩村座長 ありがとうございました。

 大変恐縮ですが、そろそろ時間がまいっておりますので、あと一点だけ資料の説明がございます。

 前回、構成員からお求めがありました資料のうち、準備ができたものを事務局で整理していただいています。説明をお願いいたします。

○増田監督課長 それでは、資料4について御説明を申し上げます。

 「前回いただいたご指摘に関して」ということでございまして、労働基準監督機関で行っております監督指導の状況を取りまとめたものでございます。

 簡単に御説明を申し上げます。

 3年分の監督の状況をまとめておりますけれども、一番新しい平成28年を見ていただきますと、労働基準監督機関は年間約135,000件の定期監督等を行っているわけでございますが、そのうち病院を含みます医療保健業に対しまして、約1,600件の監督を実施しております。

 対象となった医療保健業の事業所のうち、労働時間に係る違反のあった割合につきましては、下の表の下のほうにございますが36.3%、平均が21.0%ということでございますので、それよりは高いという結果でございます。

 以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 ただいまの資料と説明につきまして、何か御質問等はございますでしょうか。

 よろしゅうございますでしょうか。

 ありがとうございます。

 それでは、本日の議論はここまでということにさせていただきたいと思います。

 お忙しい中、本日のヒアリングに御協力いただきました畝先生、赤星構成員、猪俣構成員、片岡構成員に厚く御礼を申し上げたいと思います。皆様、拍手で感謝の意を表していただければと思います。

(拍手起こる)

○岩村座長 ありがとうございます。

 では、最後に次回の日程等につきまして、事務局からお願いいたします。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 次回の検討会につきましては、次第の下にも書いてありますように、関係団体からのヒアリングを中心にする予定でございます。

 日程につきましては調整の上、改めて御連絡をさせていただきます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、きょうの会議はここまでとさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

 


(了)

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