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2017年3月3日 第28回ILO懇談会議事概要

厚生労働省大臣官房国際課

○日時

2017年3月3日(金) 1000~1200


○場所

厚生労働省共用第14会議室(12階)


○議題

1 ILO懇談会開催要綱の変更について
2 未批准条約について
(1)雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(第111号条約)
(2)パートタイム労働に関する条約(第175号条約)

○議事

○ ILO懇談会開催要綱の変更について

政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。 

(労働者側)

ILO 懇談会は、効果的な協議を行うためにこの懇談会を開催するものであり、かねてより、より効果的にするために、まず懇談会を公開して欲しいと主張している。今日のように未批准条約について労使等で率直に議論をするのであれば、そういった障害はないものと考えている。公開が難しい場合でも、議事要旨ではなく、議事録を公開して欲しい。公開できない部分は削って結構なので、議事録をホームページに公開して欲しい。

この懇談会の回数を年2回ではなくて、増やして欲しい。

(政府側)

我々としては、正にご指摘のように効果的な協議を行うために、事前に労使それぞれのご意見を伺いながらやっているところである。2点ご意見を伺った。1つは公開すべきではないかというご意見だが、そこは政労使で議論が必要だと考えている。未批准条約の論点には様々な細かいものもあるので、論点を公開して大丈夫なのかという点等について、労働者側の意見だけではなく、政府側、使用者側でも検討をする必要がある。

 次にILO懇談会の回数についてだが、労働者側にとっては何回か指摘されているものだと思うが、未批准のものと年次報告と年2回開催というのは、一定の合理性があるものだと思っている。回数を増やすとしたら何について議論するのか等、今後の検討が必要である。

(労働者側)

 公開については、政労使で検討するという答えがあったので、積極的に早めに私たちが望んでいることを実現する方向性で検討を続けてほしい。

○ 未批准条約について(1)第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))

政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。

(労働者側)

去年と今年の説明の違い、進展があるのか無いのか、その点をご教示いただければと思う。また174か国が批准しているということだが、全ての国がこの条約に課されていることを完全な形でクリアしているとは考えにくい。全体的な流れを教えて貰いたい。

(政府側)

昭和28年の閣議決定により、条約の批准に当たり立法措置が必要な場合は先に立法を行うということになっている。また、各国はこの条約を目標と捉えているのか、きちんと実施するということを求めているのかというご質問があったが、我が国の立場としては、きっちりと批准前に立法措置を行うという態度を取っている。

(労働者側)

女子差別撤廃条約の批准と男女雇用機会均等法の制定の前後関係はどうだったか。日本の場合も、国内の立法措置が整った後に批准をしているわけではないのではないかと思うが。

(政府側)

ご質問のあった箇所は、ILO条約に限らず、事前若しくは同時に国内法の整備が必要なのであれば整備するという日本の立場を記したもの。女子差別撤廃条約との関係は、手元にないので分からないが、その時の政府の立場からすると、きちんと立法措置をしていくということであったと考えている。

(労働者側)

先進国で批准していない国はほぼないという恥ずかしい状況になっている。政府として、今後何年間のうちに批准したいというような具体的なロードマップはあるのか、具体的な考え方を教えてもらいたい。

(政府側)

今のところ具体的なロードマップは持ち合わせていない。先進国では我が国とアメリカが未批准で、全体的に見ても十数カ国が未批准の状況である。他方、中核条約に入っている、第105号条約、第111号条約ともに批准をしたいという気持ちはあるが、これまでの個別審査において、韓国のように教育に関わる公務員について批判がされている現状を鑑みると、ロードマップなどが作成できない状況にある。引き続き労使のご意見を伺いながら、検討していきたい。

(労働者側)

今の回答に関してだが、2015年の12月に第4次男女共同参画基本計画が閣議決定されていて、その中の第12分野において、未締結の条約等に関する検討があり、具体的な検討に着手するとある。具体的な検討というのはどういうことをしているのか。今の政府の現状について、ご説明願いたい。

(政府側)

ILO 懇談会の場等を通じて、課題の整理等をしているところである。

(労働者側)

1996 年のジェネラルサーベイでは、日本政府が、民間使用者が社会的出身により労働者を差別する傾向があることを認識したうえで、適切な措置が採られつつあると報告したことが記載されている。部落差別のことを言っていると思うが、現在では、社会的出身による差別を禁止する法整備はなされているというようにお考えか。

(政府側)

採用の段階であれば、性別の差別のみが禁止されているが、それ以外の部分では、職業安定法第5条の4で、業務の目的の達成に必要な範囲外での情報の収集、使用はできないというようになっている。直接的に採用時の均等待遇を規定し、担保しているものではなく、完全にクリアしているものでは無いと考えている。

(労働者側)

第2条では、「宣言し、促進することを約束する(undertake)」とある。条約上の義務の書き方としては珍しい言い方で、普通は「しなければならない(shall)」だと思う。この違いについてはどのように考えているか。

(政府側)

資料2-2であるが、条文は約束しますとなっていて、(a)で労使の皆さん協力を求めると、そして(b)は適当とされる法令を制定し教育計画を促進すると、さらに(c)が、両立しない法令については廃止あるいは修正するとある。3条の(a)(b)については、progressivelyに促進することができると、一方、(c)については、そのような整理がなされていない。

(使用者側)

2012 年の専門家委の委員長であった横田先生は、3条(c)については、きちんと立法措置を取った上で、批准するという立場をとっていらっしゃった。

(労働者側)

誤解して欲しくないが、批准しても適当にやって良いと言っている訳でない。条約の2条・3条の実施について2012年のジェネラルサーベイの734735パラで書かれているのも、政府に裁量が与えられているのであるから、まず条約を批准して、それから差別を無くすよう取り組んで行きましょうということ。これは横田先生のご見解と一致していると思う。

(使用者側)

今年の専門家委の委員会のレポートを読むと、一旦、個別審査案件として載ってしまうと、継続的に審査されることになるため、使用者側としては十分慎重にならざるを得ないということだけ、申し上げておく。

(労働者側)

吾郷先生は、雑誌の記事の中で、今完璧に国内法で担保していなくても、批准をすることは可能である、条約の内容の実施について努力をしているのであれば、条約の要請は満たしていると言うことができるとおっしゃっている。国内法の整備のことを言っていると半永久的に批准をすることはできない。このことについて、どのように考えるか。

(政府側)

現在法律が無い分野については、漸進的で良いが、現在ある法律が条約の内容に反している場合、直ちに直さなくてはいけない。これを全部修正できる状況にあるかどうかということが、批准できるかできないかということになる。これは労働側の意見だけで解決できる問題だけではない。

○ 未批准条約について(2)第175号条約(パートタイム労働)

政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。

(労働者側)

10条の部分の説明をしていただいたが、「適当な場合には」と枕言葉がついている等、法的に厳格な定めが必ずしも求められていないのではないか。日本の場合、パートタイムからフルタイムへ移行する制度はあるけれど、フルタイムからパートタイムへ移行する制度は無いという話があったが、日本では正社員がパートタイムになるというケースが現実的に中々無いという実態を踏まえれば、第10条は厳密な規定と読み込むことはできないのではないかと考えるが、どのようにお考えか。

(政府側)

「適当な場合には」の部分であるが、おっしゃるような解釈もあるかと思うが、現時点では、両方の転換の措置が用意されていることが必要であると考えている。

(労働者側)

正社員でも育児のために短時間勤務をしている人もいる。少し広い概念をとっても良いと思う。

(政府側)

専門家委で、テーマを決めてレポートにまとめている。今回は労働時間がテーマのため、パートタイムを含めてジェネラルサーベイが出るだろう。それらを参考にしながら、引き続き検討していきたい。

(使用者側)

情報提供であるが、グアテマラが3月1日にこの条約を批准したそうだ。グアテマラは、専門家委報告に多くの案件が載る国であることは覚えておいて欲しい。

(労働者側)

第1条の(c)の3に「同一の活動部門(same branch of activity)」で雇用されているとある。これを「同一の産業」ととらえると範囲が広がりすぎるのではないか。オランダ等批准国が、「活動部門」をどのように解釈して批准をしているのか、伺いたい。

(政府側)

把握していない。原文を訳すと部門、産業分野と言うことになる。

(労働者側)

特定最賃でカバーする範囲ということでは、できないのか。

(政府側)

そこまで特定最賃がカバーをしているかということが問題となる。また、同じ特定最賃が適用されているとしても、正社員とパートタイム労働者で賃金は実質的に異なる。

(労働者側)

2015 年の第4次男女共同参画計画にも批准に向けて検討するとされている。この間どのような検討がなされてきたのか。

(政府側)

同一労働同一賃金に向けた検討会、働き方実現会議等で議論されていると思う。

(労働者側)

働き方改革等の議論によって国内法が変わっていく時が批准のチャンスであると考える。

また、我々の関係組織も、どのILO条約が未批准なのか等について冊子を作って、組合員に配布している。私も実際、厚生労働省に要請に来ている。10年経っても批准の状況が変わっていないというのはいかがなものかと思う。1つでも前に進むような取組をお願いしたいと思う。

(政府側)

批准が難しいものと、技術的な問題をクリアすれば何とか批准ができそうなものもある。第111号条約よりも第175号条約の方が射程が狭く、批准の課題を明確にしやすいため、検討が進む可能性がある。これらのことも踏まえ検討を進めて参りたい。

(使用者側)

おそらく、今年4月以降、パートタイム労働法の議論が大きなものになると思う。その中でできることとできないものがあるだろう。労働政策審議会での議論になると思うが、私たちとしても真摯に議論に取り組みたいと考えている。


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