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2017年9月22日 第30回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第7回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録

健康局健康課

○日時

平成29年9月22日(金)16:00~18:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議事

○事務局 定刻になりましたので、ただいまより「第30回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び平成29年度第7回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」の合同会議を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。副反応検討部会の長谷川委員、安全対策調査会の佐藤委員から御欠席の連絡を受けております。現在、副反応検討部会委員8名のうち7名、安全対策調査会委員6名のうち5名の委員に御出席を頂いておりますので、厚生科学審議会及び薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 また、本日は参考人といたしまして、愛知医科大学学際的痛みセンター教授の牛田享宏参考人、新潟大学医歯学総合病院リハビリテーション科教授の木村慎二参考人に御出席いただいております。

 冒頭のカメラ撮りについてです。申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願いいたします。

 本日の審議の前に、傍聴に関して留意事項を申し上げます。開催案内の傍聴への留意事項を必ず守っていただきますようお願いいたします。留意事項に反した場合は、退場していただきます。また、今回、座長及び事務局職員の指示に従わなかった方や会議中に退場となった方については、次回以降の当会議の傍聴は認められませんので御留意願います。

 本日の座長につきましては、桃井副反応検討部会長にお願いしたいと思います。これからの進行をよろしくお願いいたします。

○桃井委員 それでは始めさせていただきます。まず事務局から、審議参加に関する遵守事項についての御報告をお願いいたします。

○事務局 審議参加について御報告いたします。本日御出席をされております委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金、契約金などの受取状況について、これまでと同様に申告を頂いております。本日の議題において調査審議される品目はDPTDT、ジフテリア、破傷風、不活化ポリオ、混合不活化ポリオ、13価肺炎球菌、HibBCG、日本脳炎、B型肝炎、ロタウイルス、5価ロタウイルスの各ワクチンであり、その製造販売業者は一般財団法人阪大微生物病研究会、北里第一三共ワクチン株式会社、武田薬品工業株式会社、一般財団法人化学及血清療法研究所、デンカ生研株式会社、サノフィ株式会社、ファイザー株式会社、日本ビーシージー製造株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社であり、事前に各委員に申告を頂いております。各委員からの申告内容については、机上に配布しておりますので御確認いただければと思います。

 本日の出席委員の寄附金等の受取状況から、柿崎委員が武田薬品株式会社及びMSD株式会社から、それぞれ50万円を超えて500万円以下の受取りがあるため、DPTDT、破傷風、B型肝炎、ロタウイルスワクチンについて意見を述べることはできますが、議決に参加いただけませんことを御報告いたします。

 また、牛田参考人については、ファイザー株式会社から50万円を超えて500万円以下の受取りがあることを御報告いたします。

 引き続き、各委員におかれましては講演料等の受取りについて、通帳や源泉徴収票などの書類を確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようお願いいたします。以上です。

○桃井委員 ありがとうございます。以上の遵守事項、御確認いただけましたでしょうか。よろしいでしょうか。次に、事務局から配布資料の御確認をお願いいたします。

○事務局 お手元の配布資料を御確認ください。配布資料として上から座席表、議事次第、委員名簿、配布資料一覧がそれぞれ1枚ずつございます。

 その下、ホチキスどめで資料が1から15まで、個別のワクチンの報告の関係になっております。その後、資料16HPVワクチン接種後の症状に対する認知行動療法的アプローチ、資料17HPVワクチン接種後に「多様な症状」を生じた患者に対する協力医療機関を中心とした医療体制の整備状況という1枚紙、資料18として新潟県での副反応報告システムの取り組み、最後に委員の寄附金等の受取等の申告状況となっております。

 このほか机上配布といたしまして、各社の出荷量と副作用の発現頻度という1枚紙、黄色いファイルの各ワクチンの添付文書のまとめ一式になります。配布資料一覧を御確認いただき、不足の資料等ございましたら事務局にお申し付けください。以上です。

○桃井委員 ありがとうございます。資料は不足ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、議題に入らせていただきます。議題1、各ワクチンの安全性について御審議いただきます。まず、資料1から6まで御説明をお願いいたします。

○事務局 初めに全体的な事項を説明いたします。本合同会議での副反応が疑われる症例の報告については、平成259月の合同会議において、定期的に検討を行うワクチンを選定し、比較的同時接種が行われるワクチンと、そうでない比較的単独接種が行われるワクチンにグループを分けて報告することとしております。本日は比較的同時接種が行われるワクチンについて、その副反応が疑われる症例の報告状況について御説明いたします。

 比較的同時接種が行われるワクチンについては、前回515日の合同会議において、昨年111日から本年2月末までの症例について報告しております。本日は、本年31日から6月末までの4か月間に報告された症例について御説明させていただきます。資料1から6について説明いたします。こちらは百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオ関連のワクチンとなります。

 資料1を御覧ください、DPTワクチンになります。具体的な製品名は1ページの上段にある商品名に記載をしております。1ページの中段に表がございますが、こちらには医療機関への納入数量を基に推定した接種可能延べ人数、製造販売業者及び医療機関からの副反応が疑われる症例の報告件数を記載しております。DPTワクチンは対象期間に出荷がなく、接種可能延べ人数は0人、対象期間中に企業及び医療機関のいずれからも報告はございませんでしたので、説明は省略させていただきます。

 資料2を御覧ください。DTワクチンになります。接種可能延べ人数が約74万人、報告数は製造販売業者から0件、医療機関から15件、うち重篤なものが5件でした。報告頻度については、医療機関からの報告頻度が0.002%となっております。1ページの下の表に重篤症例の転帰等の情報をまとめておりますが、後遺症症例及び死亡症例の報告はありませんでした。

2ページに移る前に、この資料を含め、各資料の1ページ目の見方について補足させていただきます。重篤症例の報告数については、製造販売業者と医療機関の双方から報告された場合には、重複を排除するため、医療機関の報告として計上しております。また中段の表、報告数になりますが、集計対象期間内に報告された症例を集計していますので、この件数には接種日や発生日が対象期間以前の症例も含まれており、接種日が今回の対象期間内であったものについて括弧書きでその件数を記載しております。また、企業ごとの出荷量や発現頻度については、委員限りの資料として1枚紙を机上にお配りしているところです。

2ページを御覧ください。報告された症例を症状別に集計したものになります。縦に見ていただきまして、表の左側が前回の合同会議までに報告された件数、右側が今回報告された件数となっております。

3ページが予防接種法の報告基準に定められた症状について集計した結果となります。こちらも左側が前回までの報告、右側が今回の集計対象期間に報告されたものとなっております。4ページから5ページを御覧ください。こちらは報告された症例の一覧表となります。詳細な説明は省略させていただきます。最後に6ページ、こちらはアナフィラキシーとして報告された重篤症例の件数をまとめております。今回はそのような報告はございませんでした。資料2は以上です。

 資料3を御覧ください。ジフテリアトキソイドです。こちらについては、対象期間中に企業及び医療機関のいずれからも報告がありませんでしたので、説明は省略させていただきます。

 資料4を御覧ください。破傷風トキソイドになります。接種可能延べ人数は約30万人、報告数は製造販売業者から1件、医療機関から非重篤なものが1件報告されています。報告頻度は製造販売業者、医療機関のいずれも0.0003%となっております。1ページ下の転帰ですが、今回の対象期間中に後遺症症例及び死亡症例の報告はございませんでした。資料4は以上です。

 資料5を御覧ください。不活化ポリオワクチンです。こちらも対象期間中に企業及び医療機関のいずれからも報告はありませんでしたので、説明は省略させていただきます。

 資料64種混合ワクチンになります。接種可能延べ人数は約136万人、報告数は製造販売業者から16件、医療機関から38件、うち重篤なものが10件となっています。報告頻度は製造販売業者が0.001%、医療機関が0.003%です。1ページの下の転帰ですが、今回の集計対象期間内では、1件の死亡症例が医療機関から報告されております。

2ページから4ページが症状別の集計結果、5ページが予防接種法の報告基準に定められた症状の集計結果です。6ページから10ページが個別症例の一覧となっております。

11ページを御覧ください。後遺症の症例を掲載しております。こちらについては、以前の合同会議で御報告済みの症例ですが、経過欄の下線の部分の情報が新たに得られたので再度評価を行った症例です。前回御報告した際には、後遺症の症状としてアテトーゼが残ったとされておりましたが、その後不随意運動が消失し右上下肢の痙性麻痺が残ったとの情報や、検査結果に関する情報等が追加されました。専門家の意見といたしましては、ワクチン接種後2日目の事象で脳炎・脳症の可能性は残る、また4つのワクチンを打っている症例ですが、いずれか、あるいは複数の関与は十分考えられるといった評価を頂いております。

12ページがアナフィラキシーのまとめになります。今回の集計対象期間中にアナフィラキシーとして7件報告されておりますが、専門家による評価の結果、ブライトン分類3以上と評価されたものはありませんでした。

15ページを御覧ください。死亡報告の一覧になります。まずNo.1の症例は、前回の515日の合同会議で既に評価を頂いた死亡症例ですが、下線部分の追加情報が得られたために再度評価を行った症例です。調査の結果といたしましては、剖検の結果、死因は不明であり、乳幼児突然死症候群の可能性が考えられ、ワクチン接種との因果関係は不明であるとされております。17ページ以降に委員限りの資料として、経過や専門家の意見の詳細等を添付しております。委員限りの資料については、その内容について御発言いただく際には患者個人の特定につながらないよう御配慮いただきますようお願いいたします。

15ページに戻りまして、2つ目の症例が今回の集計対象期間内に報告された症例になります。クアトロバック、アクトヒブ、プレベナーを同時接種した5か月の男児が接種翌日、仰向け、無呼吸の状態で発見され、搬送先にて死亡が確認された症例です。死因は急性肝不全疑いと報告されました。調査の結果、得られた情報からは感染症なども考えられ詳細は不明である。ワクチン接種との因果関係は不明であるとされています。

16ページ、No.3の症例について御説明いたします。こちらは今回の集計対象期間後に報告された症例になります。死亡症例についてはその重大性に鑑み、集計対象期間後も可能な範囲で情報収集に努めており、対象期間後の症例も資料に含めております。症例はアクトヒブ、プレベナー、クアトロバック、ヘプタバックス、ロタリックスを同時接種した3か月の男児が、接種翌日に感冒様症状を認め、接種3日後に呼吸停止状態で発見、死亡が確認された症例になります。死因はウイルス関連の突然死疑いと報告されております。剖検の結果、呼吸器感染症の疑いの所見が得られ、ウイルス関連の可能性も考えられるが詳細は不明である。ワクチン接種との因果関係は不明であるとされております。

 資料1から6の御説明は以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○桃井委員 ありがとうございます。これについて御意見、御質問をよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

 細かい点なのですが、資料24ページ、2の症例で接種日も発生日も分かっていますので、接種から発生までの日数不明というのは直しておいていただければと思います。

○事務局 御指摘いただいたのは2つ目の症例でしょうか。

○桃井委員 そうです。

○事務局 ありがとうございます。

○桃井委員 単なる記載ミスだと思います。

○事務局 こちら、発生日のところに422日ごろと書いておりまして、不明とさせていただきました。

○桃井委員 そうですか、失礼しました。資料1から6まで御意見ありますでしょうか。特段ありませんでしょうか。

 それでは、まとめさせていただきます。これらのワクチンについて、副反応の報告頻度はこれまでに検討したワクチンに比べて特段高くはない。死亡症例は、今回の集計対象期間内では、混合不活化ポリオワクチンを含む同時接種症例で1例、5か月児の報告がありましたが、ワクチン接種との因果関係は不明であるという評価です。未回復例がDT1例ございました。末梢神経障害という例ですが、630日時点で未回復という報告が1例ございます。以上がまとめですが、よろしいでしょうか。

 それでは、このまとめに関してこのワクチンの取扱いについて変更を要するかどうか、御意見があれば頂きたいと思います。特段、変更について御意見はありませんでしょうか。以上のまとめから、御審議いただいたワクチンについては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは次に行かせていただきます。資料7から8までよろしくお願いいたします。

○事務局 資料7から8について御説明いたします。まず資料7を御覧ください。13価肺炎球菌ワクチンになります。接種可能延べ人数は約133万人、報告数は製造販売業者から46件、医療機関から25件、うち重篤なものが12件報告されております。報告頻度は製造販売業者が0.0035%、医療機関が0.002%となっております。また、肺炎球菌ワクチンに関しては薬効欠如等、ワクチンの副反応ではないと考えられるような症状が報告されていることについて、これまで審議会で御指摘を頂いており、内数として肺炎球菌感染、肺炎等を除くということで、それらを除いた値もお示ししています。今回の対象期間では、企業から肺炎や肺炎球菌性菌血症の症例が数例報告されております。これらを除きますと、企業の報告数が39件となります。1ページ下の転帰ですが、今回の集計対象期間内に1件の死亡症例が医療機関より報告されております。

2ページから5ページが症状別の集計結果になります。この表で★を付けている症状が、先ほどの1ページで内数として集計する際に除外したものとなります。

6ページが予防接種法の報告基準に定められた症状の集計結果、7ページから12ページが個別症例の一覧表になります。13ページに後遺症の症例を記載しておりますが、1つ前の4種混合ワクチンの資料で御説明した症例と同じ症例ですので、説明は省略いたします。

14ページがアナフィラキシーのまとめです。対象期間内に9件、アナフィラキシーとして報告されておりますが、専門家による評価の結果、ブライトン分類3以上と評価されたものはありませんでした。

18ページを御覧ください。死亡症例の一覧になります。18ページ、No.1No.2の症例につきましては、1つ前の4種混合ワクチンの資料で御説明いたしました症例と同じですので、詳細は省略いたします。

19ページ、No.3を御覧ください。こちらは基礎疾患として大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄のある2か月の男児がプレベナーとロタリックスを同時接種した翌日、口唇チアノーゼが認められ、心肺停止状態となり死亡が確認されたという症例です。詳細な情報につきましては現在調査中ですので、結果が得られ次第、改めて御報告させていただきます。資料7は以上です。

 続きまして資料8を御覧ください。Hibワクチンになります。接種可能延べ人数は約131万人、報告数は製造販売業者から37件、医療機関から21件、うち重篤なものが12件となっております。報告頻度は製造販売業者が0.003%、医療機関が0.002%となっております。1ページ下の転帰ですが、今回の集計対象期間内では死亡症例が1件、医療機関から報告されております。

2ページから5ページが症状別の集計結果、6ページが予防接種法の報告基準に定められた症状の集計結果になります。7ページから12ページが個別症例の一覧となっております。

13ページが後遺症症例です。こちらも先ほど4種混合ワクチンの資料で御説明した症例と同じですので詳細は省略いたします。

14ページがアナフィラキシーのまとめです。対象期間内に9件、アナフィラキシーとして報告されましたが、専門家による評価の結果、ブライトン分類3以上と評価されたものはありませんでした。

18ページからが死亡報告の一覧になります。18ページのNo.1No.24種混合ワクチンの資料で御説明した資料となりますので、詳細は省略いたします。

19ページのNo.3について説明させていただきます。こちらは基礎疾患として低酸素脳症のある1歳の男児がアクトヒブを単独接種した当日にけいれんが認められ、翌日に死亡が確認されたという症例です。こちらも現在詳細な情報は調査中ですので、結果が得られ次第、改めて御報告させていただきます。資料7から8の御説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○桃井委員 ありがとうございます。資料78につきまして御意見等、よろしくお願いいたします。

○多屋委員 実は先ほどの4種混合にも少し関わるのですが、この2つのワクチンでアナフィラキシーの報告が今回多く報告されています。ただし、ブライトン分類ではアナフィラキシーとは判断できないという結果でした。同時接種をされているのですが、アナフィラキシーを起こしたワクチンは、その後接種不適当者になってしまい、接種することが通常できなくなってしまうのですが、専門家の先生に御判断いただいた結果、アナフィラキシーとは判断できないという結果になっています。この患者さんに対してこういう情報が伝わらないと、その患者さんはそれ以降、2回目、3回目のワクチンが接種できなくなってしまっているのではないかと心配になりました。こういう情報が御本人というか、報告医療機関に伝わっているかどうかについて、分かりましたら教えていただければと思います。

○桃井委員 事務局、いかがでしょうか。確かに患者さんへのフィードバックは極めて重要だと思われます。

○事務局 行政としては、フィードバック自体はしていないのが現状です。

○桃井委員 多屋先生、御質問の御趣旨のとおり患者さんが知ることは極めて重要だと思います。それに関して、何か更に御意見があればお願いします。

○多屋委員 恐らく市区町村のほうには報告書の様式は届いていると思うのですが、折角3人の先生に御審議いただいているので、それができれば届いたほうがいいのではないかと思います。初回接種ですと、今後のワクチンが受けられなくなってしまっているのではないかという意味です。もし可能ならばよろしくお願いいたします。

○桃井委員 おっしゃるとおりだと思います。折角、このように専門家の先生が御判断されているのは、統計的、安全性の評価のためもありますが、できれば患者さんにフィードバックすることが望ましいと思います。それについて少し御検討いただければと思います。よろしいでしょうか。

○事務局 予防接種法の制度とも関係しますので、両課でどういうことができるのか、ちょっと検討させていただきたいと思います。一旦引き取らせていただきます。

○多屋委員 ありがとうございます。

○桃井委員 ほかに何か御意見はありますか。

○倉根委員 資料87ページ、10なのですが、この方は17週の男児でして、基礎疾患のところにあえて非たばこ使用者と書いてあります。これは何か、報告された先生が特に意図があって、あるいは何か特殊な事例なので非たばこという言葉を書いておられるのですか。そこまではなかなか、事務局としても難しいでしょうね。

○事務局 ちょっと確認いたしますので、しばらくお待ちください。

○桃井委員 ほかに何か御意見はおありでしょうか。よろしいでしょうか。

○事務局 御指摘いただいた症例なのですが、企業から報告された症例になります。企業から報告された時、基礎疾患等を記載する箇所に非たばこ使用者という記載がありましたので、そのままこの資料に記載しています。背景は分かりかねます。

○倉根委員 分かりました。

○桃井委員 よろしいでしょうか。ほかにおありでしょうか。それではまとめさせていただきます。これらのワクチン、2つのワクチンですが、副反応の報告頻度はこれまでに検討したワクチンに比べて特段高くはない。死亡症例はその前に御説明した資料6と同一症例です。1例報告をされています。しかしながら、前回、資料6で御説明したようにワクチン接種との因果関係は不明であるという評価です。プレベナー13、アクトヒブの6か月間における死亡症例の報告頻度は、いずれも急ぎ検討が必要とされる10万接種あたり0.5を下回っているという評価です。未回復例が1例ございますが、これは熱性けいれん、発熱という記載がありますので回復については問題なしと推定されます。このような評価でよろしいでしょうか。

 それでは、このような評価を踏まえて、現状の取扱いを変更する必要があるかどうかについて御意見を頂戴したいと思います。よろしいでしょうか。それでは、このような評価に基づきますと、御審議いただきました2つのワクチンについては、これまでの副反応報告によってその安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。したがって、現状取扱いは変更する必要はなしという結論でよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 引き続き、資料9から14までよろしくお願いいたします。

○事務局 資料9から御説明いたします。乾燥BCGワクチンについてです。1ページ目です。接種可能延べ人数は約34万人です。製造販売業者から1件、医療機関から47件、うち重篤なものとして9件報告されております。報告頻度については、企業が0.0003%、医療機関が0.01%です。転帰については、今回の報告期間で後遺症症例、死亡症例はありませんでした。

2ページは症状別の集計です。3ページは、予防接種法に基づく報告基準に定められた症状を集計した結果です。4ページから8ページは個別の症例の一覧です。詳細な説明は省略いたします。

9ページは、アナフィラキシーのまとめです。一番下に今回のものの件数が書いてあります。今回は、アナフィラキシーとして報告された症例はありませんでした。資料9については以上です。

 資料10は、日本脳炎ワクチンについてです。1ページ、接種可能延べ人数は約179万人です。製造販売業者から0件、医療機関から29件、うち重篤なものとして10件報告がありました。報告頻度は医療機関で0.002%です。転帰については、今回の報告期間で死亡症例、後遺症症例の報告はありませんでした。

2ページ、3ページは症状別の集計です。4ページは、予防接種法に基づく報告基準に定められた症状別の集計です。5ページ、6ページは報告された個別の症例の一覧です。

7ページ、8ページはADEMの関係をまとめております。今回、医療機関から2件、ADEMとして否定できないとされた症例が報告されております。8ページに専門家の意見が記載してあります。詳細は省略いたしますが、縦に見ていただいて一番右側に事務局評価を書いてあります。いずれの症例についても、ADEMの可能性は否定できない、ワクチン接種の因果関係は否定できないという評価をしております。

9ページは、アナフィラキシーのまとめです。今回の期間に1件報告がありましたが、ブライトン分類が3以上と評価されたものはありませんでした。資料10は以上です。

 資料11は、B型肝炎ワクチンです。1ページ、接種可能延べ人数は約260万人で、製造販売業者から34件、医療機関から27件、うち重篤なものが13件報告されております。報告頻度は、企業が0.001%、医療機関も0.001%です。今回の対象期間で後遺症、死亡症例はありませんでした。

2ページから4ページは症状別の集計です。5ページは、予防接種法に基づく報告基準に定められた症状別の集計です。1件だけ補足します。今回、アナフィラキシーの報告が11件ありました。6ページから10ページは個別の症例の一覧です。説明は省略いたします。

11ページは、アナフィラキシーのまとめです。先ほど申しましたとおり、今回は11件のアナフィラキシーの報告がありました。ブライトン分類3以上と評価されたものはありません。12ページ以降にアナフィラキシーのまとめが15ページまで続いています。詳細な説明は省略しますけれども、全体を確認したところ、特定のロットへの偏り等は確認されておりません。16ページは、死亡症例の一覧です。こちらについては同時接種されており、先ほど出てきた事例ですので、説明は省略させていただきます。資料11は以上です。

 資料12は、ロタウイルスワクチン、ロタリックスです。1ページ、接種可能延べ人数は約29万人で、製造販売業者から39件、医療機関から8件、うち重篤なものは5件報告されています。報告頻度は企業で0.01%、医療機関で0.003%です。今回の対象期間内で、後遺症、死亡症例の報告はありません。

2ページから4ページまでが症状別の集計です。5ページから9ページは個別症例の一覧です。10ページはアナフィラキシーのまとめです。今回は4件報告されております。こちらについては、いずれもブライトン分類3以上とは評価されておりません。13ページは死亡症例です。こちらについても、先ほど出てきております同時接種の事例で、既に説明したものとなりますので省略いたします。資料12は以上です。

 資料135価ロタウイルスワクチン、ロタテックです。1ページ、接種可能延べ人数は約24万人、製造販売業者から19件、医療機関から3件、うち重篤なものが2件報告されております。報告頻度は企業が0.008%、医療機関で0.001%です。今回の対象期間内で後遺症、死亡症例はありませんでした。

2ページ、3ページは症状別の集計です。4ページから7ページは個別症例の一覧です。8ページはアナフィラキシーのまとめです。今回の対象報告期間内に1件報告されております。ブライトン分類3以上という評価はされておりません。資料13は以上です。

 資料14は、ロタワクチンによる腸重積の関係の資料です。ロタワクチンに関しては、腸重積の発生状況について、これまで同様GSK社、MSD社より資料14の資料の提供を受けております。こちらの資料は、全体として各社のロタワクチンについて、米国と国内における腸重積の報告データを比較したもので、前回からのアップデートとなります。

1ページの下は、GSK社のロタリックスについて、腸重積の報告症例数、ブライトン分類評価1に該当する症例数、そのうち初回接種時によるもの、更に初回接種後6日以内に発症した症例が、左側のVAERSデータとなっているのがアメリカですが、左右に比較されているものです。

2ページの上の表は、ブライトン分類評価が1に該当するもののうち、入院が必要となった症例数、外科手術、腸切除が必要になったものについて、更には死亡症例の数と頻度をまとめたものです。2ページの下は、腸重積発現までの日数をまとめたものです。3ページの上のグラフは、腸重積発現時の週齢を示したものです。以上がGSK社のロタリックスのまとめです。4ページからはMSD社のロタテックについてもまとめてあります。報告の構成や傾向は同様となっておりますので、説明は省略いたします。資料14までの説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○桃井委員 これらに関して御審議をお願いいたします。御意見、御質問等はありますか。

○多屋委員 幾つかあります。最初にBCG7ページにコッホ現象、あるいはコッホ現象の疑いという方が2人報告されています。コッホ現象は別の報告書があって、副反応疑い報告書ではない形での報告となっていると思いますので、コッホ現象については、副反応疑い報告からは対象外ということで、別の報告書を出していただいたほうがいいのではないかと思います。これが1つ目です。

○事務局 御指摘を頂きましてありがとうございます。知識不足なので先生にお聞きしたいのですけれども、コッホ現象というのが、ワクチンの副反応ではないので削除すべきということでしょうか。それとも別途感染症の関係で報告されているから削除すべきという御意見なのでしょうか。

○多屋委員 コッホ現象は、BCGワクチンを接種する前に、結核菌あるいは抗酸菌等に感染していたことがある疑いがあって、結核の検査をしましょうということに使われていると思うのです。副反応とはちょっと意味合いが違うと思います。コッホ現象は別の報告書があるように、副反応疑い報告の対象ではないという意味で申し上げております。

○事務局 肺炎球菌ワクチンで、肺炎に★をして、これはワクチンの副反応ではないので、本来は要らないのではないかという御意見を頂いておりますけれども、それと同列と扱ってよろしいという御意見なのでしょうか。もしそうでないのであれば、あくまでワクチンによる何かしらの有害事象ということであれば、報告をしてこの表に載せるべきかと考えています。

○桃井委員 どうでしょうか。

○多屋委員 コッホ現象報告書というのは、この部会では審議されていないので、どのぐらいの報告がなされているかが公表されていないと思うので分からないです。そちらの報告書があることを、もしかして御存じないのであれば、お伝えしたほうがよいと思います。副反応疑い報告の対象ではないという意味です。
(定期接種実施要領16-17頁: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000167866.pdf
コッホ現象報告書: https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/dl/yobou140716-7.pdf

○事務局 先生御指摘の部分ですけれども、BCGワクチンの添付文書を見ると、重要な基本的注意の所で、「接種後、接種局所の反応が10日以内に出現した場合(コッホ現象)は被接種者が結核に感染した可能性が高いので、コッホ現象を生じた場合にはその保護者に結核感染に関する必要な検査を行うために受診するように伝えること」と書かれていることを先生は指しておられるのだと思うのです。

○多屋委員 はい、そうです。

○事務局 接種後に局所の反応が出るという観点では、有害事象という見方もできる部分でもあります。もともと予防接種に関する副反応報告というのは、副反応疑い報告ということではありますので、一律にコッホ現象であったからといって、こちらへの報告を排除する必要もないのではないかと考えております。

○多屋委員 それでは、是非別枠で集計していただいたほうがいいと思うことと、是非コッホ現象報告書が別にあるので、そちらも出していただいているかについて確認をお願いできるとうれしいです。

○事務局 コッホ現象については、いつも御指摘を頂いている肺炎球菌ワクチンの肺炎とは、やはり件数的には相当違います。肺炎は全体の評価をする際に支障が出るぐらいの数が出てきているところがあって、別集計をさせていただいています。コッホ現象はそれほど数がたくさん報告されるものでもありませんので、ここは全体の集計の作業から見ても、込みで見ていただいてもいいのかなと思うのです。ただ添付文書に書かれているように、「適切に接種医療機関を受診するように」ということは徹底させていただきたいと思いますので、よろしいでしょうか。

○桃井委員 副反応というのをどこまでカバーするかということになります。多屋先生の御意見は、★等を付けて、いわゆるその他の副反応とは性格が違うという意味で、分かりやすくするために★などを付けたほうがよいという御意見でしょうか。

○多屋委員 もし可能であればです。今、表を拝見したのですが、コッホ現象というのは載っていないようですので、多分重篤と書かれていないから、表には載ってこないということですね。

○事務局 はい、そのとおりです。今回のものも非重篤という扱いということで、2ページにある症状の一覧にコッホ現象というのは出てきていない状況です。

○桃井委員 扱いについて、★を付けて、常識的に副反応と我々が考えるものとは性格を異にしているということを明らかにするか、あるいは別のそのまま従来どおりにするかは、事務局で少し御検討いただいてと思います。他にこれに関して委員の先生から御意見はありますか。医学的な性格を異にすることは確かですので、少し御検討いただきたいと思います。他に御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは副反応の報告頻度について、これらのワクチンについては、これまでに検討したワクチンに比べて、特段高くはないというまとめでよろしいでしょうか。

 それでは、このまとめに基づいて、現状のワクチンの取扱いを変更する必要があるかについて御意見を頂戴いたしますが、いかがでしょうか。特段ないでしょうか。それでは、このまとめに基づいて御審議いただいたワクチンについては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。ありがとうございました。以上で議題1の資料が終了いたしました。

 これまでの御審議で事務局での検討をお願いした課題がありますので、よろしくお願いいたします。前回、多屋委員から御意見のありました蜂窩織炎について、今回事務局から特に報告はないのでしょうか。蜂窩織炎の扱いについて、重篤、非重篤についてです。

○事務局 御指摘を頂いていた内容は、予防接種法に基づく報告基準に含まれる症状について、現在の資料のまとめでは重篤症例だけ集計しているが、非重篤も記載すべきというものでした。これについては、まだ内部でも検討中ですので、事務局のほうで方針等が決まりましたら、またこの場を借りて御報告させていただきます。

○桃井委員 引き続き検討をよろしくお願いいたします。以上で議題1を終わります。

 次に議題2に入ります。報告事項です。議題2のために、本日は参考人としてお二人の先生においでいただいております。牛田享宏先生、そして木村慎二先生です。お忙しい中御参加いただきまして誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 資料16に基づいて、HPVワクチン接種後の症状に対する認知行動療法的アプローチという報告事項に入ります。前回828日の合同会議において、牛田享宏教授から、協力医療機関向けに実施した研修会の内容を御報告いただきました。主として、その患者さんの臨床像を我々が明確に理解するようにということで、症例を中心に御説明を頂きました。治療によって症状が軽快した方の治療や、経過等について具体的に御報告を頂きました。おかげさまで症例について、より一層理解を深めることができました。

 本日は、前回に引き続いて牛田教授にお越しいただいております。本日は研究班で把握している症例のうち、牛田参考人が診療している愛知医科大学学際的痛みセンターを受診された方の全体のプロファイル、あるいは臨床の症状の特性、全体の臨床像の特性、それから転帰、経過について具体的に、全体としての御説明を頂きます。それでは、牛田先生よろしくお願いいたします。

○牛田参考人 愛知医科大学の牛田です。今日は貴重な機会を頂きまして、ありがとうございました。

 資料16を御覧ください。委員長がおっしゃったように、前回、患者の経過などについていろいろとお話させていただいて、私ども研究班が承了しているデータについて御説明させていただけたらと思います。

 この研究班は「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究班」ということで、資料16のタイトルには「HPVワクチン接種後の症状に対する認知行動療法的アプローチ」と書いてありますが、集学的なチーム診療システムで、運動療法だとかリハビリ的な治療、それから考え方を教育などで変えていったりというような、多角的なアプローチをしていくという慢性痛診療システムを構築することを目的とした研究班です。

2ページが、前回お話させていただいた、これまでに我々の所属医療機関を受診した患者の転帰というものになっています。2ページ目の上、受診した者が344名で、フォローできたものが61%です。痛みが消失又は軽快が72%でした。その中で、ワクチン接種の関与の可能性が否定できない症例が244例あり、そのうちフォローできたものが63.9%、痛みが消失又は軽快が73%でした。治療の経過や患者の検査から明らかに無関係と考えられた症例は100例ありましたが、それについてフォローできたものが54%、痛みが消失又は軽快が68%という結果でした。

 桃井委員がお話くださいましたように、今日は主に私ども愛知医科大の学際的痛みセンターを受診した46名について、基本特性、症状がどのように変わっていたか、HPVワクチン接種後の持続痛に対するアプローチということで、幾つかスライドも用意しましたが、資料と一緒に見ていただけたらと思います。

4ページが、私どもの施設を受診した46名の年齢分布です。下の段の左側に「初診時年齢」と書いていますが、左側がHPVワクチン接種の関与の可能性が否定できない症例が23例、症状発症と無関係と考えられるのが右側の欄です。いずれも、もちろん25歳までの方が非常に多いわけですが、それ以上の年齢の方も一部おられるというのが初診時の年齢分布です。

5ページを御覧ください。接種のワクチンに関しては、サーバリックスが63%、ガーダシルが30%ということで、下の段に比較として、ワクチン接種との因果関係や要因が明らかかどうかについて、先ほどと同じように並べていますが、ほぼ同じような比率でした。

6ページを御覧ください。接種の回数です。下の段ですが、ワクチン接種の関与の可能性が否定できない症例について、3回打ったものが65%、2回が22%、1回が9%です。一方で、ほかの要因が明らかなケースに関しては、1回が13%、3回が87%という数字が上がってきています。

7ページは、接種から発症までの期間です。これは様々な議論がこれまでも行われてきたところだと思います。下の段です。ワクチン接種の関与の可能性が否定できない症例、当日から翌日にかけて連続的に出てきたものが17%、1週間が22%、1週間を超えて1か月が39%、3か月を超えたものが13%ということでした。更に右側で見ていくと、ワクチン接種の因果関係がないという症例に関しては、当日が4%、1週間以内は13%、1か月以内が9%、3か月以上が48%です。ここで少し差が出てきています。

8ページは、どのような所が痛かったのかです。これは、一番最初に私自身がこの会に参考人として出席したときにも「頭痛が多い」という話をさせていただきました。これは重複のものも含めてですが、ワクチンの可能性が否定できないという左側の欄でも頭痛が多くて、右側の欄でも頭痛が非常に多いです。それに続いて下肢痛が多いという特徴があります。全身痛も20%前後ありました。この特徴についてですが、これは一般の未成年の疫学調査などでも下肢痛が非常に多くて、特に中学生では膝の痛みの方が多いので、そのようなところが反映されている可能性が高いと考えています。ちなみに、これはワクチンとのことで受診しておられ、最初にワクチンの可能性があるのではないかということで紹介されてきた46名のデータですので、痛みのない患者もおられまして、左側の欄が4人、右側の欄が2人です。そのような方は、例えばめまいだけというようになっています。

9ページを御覧ください。このような症例について、いろいろな角度から私どもの研究班では分析を進めてきています。いわゆる健康尺度、痛みがあるから日常生活尺度が低下している、自己抗力感が低下しているか、睡眠がきちんと取れているか、いわゆる運動器の機能障害がどうであるかなどを調べています。この「Hospital Anxiety and Depression scale」は不安鬱尺度をある程度数値化していこうと、研究班全体で取り組んでいるスコアリングシステムの1つです。9ページの下の段を御覧ください。スコアは不安と抑鬱と別々に付けていきますが、7点以下は問題なしです。810点は臨床的に苦悩の可能性があります。11点以上は臨床的に苦悩があるのではないかと考えられるというスコアリング方法です。

 こういうスコアリングの課題は、患者の状態が、そのままスコアになるのならいいのですが、本当のことかどうかは本人しか分からないということがあります。ただ、おおむね正直に付けていただいていると考えていくと、このようなスコアで7点以下は問題なしとなります。ワクチン接種の可能性が否定できない患者で、10点以上が不安も鬱も3人から4人ぐらいで、ワクチン接種の因果関係が考えられず、ほかの要因が明らかなものについては4人から5人であったということで、おおむね多くの方が、不安や抑鬱のスコアは少ない傾向にあったことが分かってきたと思われます。

10ページを御覧ください。不安や鬱状態になってなかなか治らないということになると、自分の症状はどうなっていくのだろうかと、すなわち痛みに捕われたり、痛みが頭から離れない、どんどん悪くなってしまうのではないか、あるいは何もできないのではないかという思いが出てくると思いますが、それを評価するのが痛み破局化スケール(PCS)というものです。これについても、HPV接種後の患者で、ワクチン接種の関与の可能性が否定できないようなものが25点、ワクチンは無関係と考えられるのが31点ということで、これに関しては無関係のほうが少し高かったということです。ちなみに、この右側に愛知医科大学の学際的痛みセンターを受診した一般の患者、私たちの所は平均3から4施設を回ってきた患者が多いので、これは最高で52点のスコアですが、その中で平均を取ると32点でして、おおむねワクチンとの因果関係がないと考えられるものに関してはほとんど同じような数値で、むしろワクチンの可能性が否定できないほうが低いということですが、これはばらつきがあるので明確なところまでは言えないと思います。いずれにしても、通常の慢性痛患者と同等レベルかなとは言えると思います。

12ページの下に、私どもの施設を受診した患者のまとめを載せています。フォローできたものの割合が56%、47%というところです。遠方の方がどうしても再診できないという傾向がありますので、このような数字にも出てきたりしますし、納得できないような方が他の施設にいったりするようなことがあるわけですが、フォローできたものに関しては、ワクチン接種の関与の可能性が否定できない患者が76%、痛みが消失又は軽快、関係ないと考えられたのが63%という数字が出ています。ここまでが、私どもの施設の患者のデータをまとめたものです。

 引き続き、HPVワクチン接種後の持続痛に対する学際的アプローチです。この「学際的」というのは割と聞き慣れないと思いますが、14ページの下の段を御覧ください。なかなか治らないという患者がいた場合、多くのなかなか治らない痛みを持っている患者は、整形外科、内科、脳外科を受診するわけですが、そこで治らないというケースは非常に多いです。患者の約半数がドクターショッピングをして別の施設に行っているという解析があります。しかしながら別の所に行っても変わらないということで、それであれば、1つの施設あるいは1つのユニットの中で、いろいろな方向から分析してしまえるものを作らないといけないのではないかと考えられてきているのが、学際的あるいは集学的な痛みの治療システムというものです。したがって、我々のユニットの中には精神科、麻酔科の先生もおりますし、あるいは内科や歯科の先生が関わってくれたり、臨床心理士や理学療法士、看護師などもいまして、チームで多角的に患者を診ていこう、多角的に患者のいい方向を模索していこうということです。

13ページにお戻りください。私たちの施設を訪れている多くの患者は、なかなか治らない腰痛や、手足の痛みということになってくるわけですが、ワクチンに関する基本的なスタンスとしては、ワクチン接種と症状の因果関係は難しくて、原因を特定できない慢性痛はそもそも非常に多いので、痛みの原因を求めず、まずは慢性痛に対する対処を行っていくことで考えて治療しています。

 次のページです。上の段ですが、なかなか治らない痛みに関して様々な病院を受診し、痛みに苛まれて日常生活がうまくできていないところから、慢性痛があってもいろいろできるということを目標にしていこうというのが、ベーシックなスタンスになります。

15ページの上に、どうしてこのようなスタンスが必要かを載せています。歯の痛みでも頭痛でも、何でもそうですが、いろいろな要素が私たちを苦しめていくことになります。例えばずっと事務作業ばかりをやらされる環境にいると、非常に苦しいものになってきますし、それでも休んでは駄目だとなると、また非常に苦しくなってきます。それに加えて、社会的な問題があったりすると、我々は体に変調を来していくわけです。そういうものに対して、身体、精神的な問題、社会環境を多方向から考えていこうということで、国際的にも、BioPsychoSocial Model、生物心理的社会モデルでもって慢性痛を捉えていこうという取組が、近年は非常に広くされているところです。

 こういう取組を子供の場合に考えてみたものが、15ページの下の所です。もちろん必要であれば投薬ですが、子供ですので最小限にしたいです。これから体を鍛えないといけないような年齢ですので、運動習慣なども実施していこうとなると思いますし、生活については、特に最近はスマホなどを非常に使用している子供もいますので、スマホの制限をして睡眠をきちんと取らせていき、その中で学校にも戻していく。あるいは心理的カウンセリングもやっていこうと。かといって、子供に過度の負担を掛けず、無理をさせないという格好で治療していこうというところで取り組んでいるというのが、今の我々の研究班としての取組です。資料16についてはこのようなところです。

 追加的にスライドを作ってきましたので、そちらの話をさせていただきます。集学的アプローチ、学際的アプローチによる運動指導-認知行動的指導です。ここで皆さんと認識を共有しないといけないのは、いろいろな痛みについてそうですが、原因が分かれば治るのかということです。原因が分かるのだけれども治せないというのは、我々自身の体の場合もそうですし、非常に多いわけです。分かったら治るような場合もあるので、そういうものを探していく作業は非常に大事ですが、そこに関しては△だと思います。

 もう1つは痛みが消失したら何でもできるようになるのか。これに私は「×」と書きましたが、痛みが消失したら簡単に何でもできるようになるわけではないということです。あるいは動かない部分が動くようになったら、痛みが改善するのかについても「×」と書きましたが、どうして痛みが消失したら何でもできるようになるかが「×」かについて、皆様と認識を共有できたらと思います。例えば不活動によって寝たきりという状態が起こるとどうなるのか。これは若くても年輩の方でもそうですが、まず循環血液量が減少します。それに伴って、最大酸素摂取量が低下しますので、有酸素運動能力などが下がります。耐糖能異常が出ます。さらにそういうことがずっと続くと、筋力に関しては、1週間で1015%下がってきます。1日で1%ぐらいの筋萎縮が起こってきます。これは若くてもすぐに引き起こされる病態です。これは骨折してギプスなどをされたことのある方はよく御存じだと思いますが、使わない所ができると、筋肉はすごく痩せていってギプスは2週間ぐらいで容易に抜けたり、緩んだりするようになってしまうということです。最大酸素摂取量の変化については、私どもの所ではなくて別の施設で行われた研究ですが、大学生を1週間安静にさせていたら、最大酸素摂取量がどう変わるかの実験です。1週間で5%程度下がるということが起きます。

 最大酸素摂取量が下がると、どうして困るのか。これは皆さん自身も知っておかないと困ると思って、スライドを作りました。私たちはエネルギーがないと運動できないのですが、運動に関して一番最初に使われるのは、筋肉の中にあるクレアチンリン酸系というエネルギーが使われます。これは驚くべきことに10秒ぐらいで枯渇してしまうわけです。その後、解糖系でエネルギーを作って使うということになってきます。これも34分で枯渇します。有名なのは、400m走の話で、400m走が無酸素運動の限界ということが知られていると思います。400m以上走るためには、好気性の代謝をしなくてはいけない、すなわちエアロビックな能力がすごく試されることになってきます。ということになると、安静にしているだけで最大酸素摂取量が減ってくるとか、循環血液量が減ってくるということは、すなわち好気性代謝ができない状態になってしまうということです。したがって、この好気性代謝をどのようにしたら増やせるのかということはすごく大事なことになってくるわけです。

 次に、動かない所が動くようになると、痛みが改善するかは「×」と書いてあります。運動などをせずに、一度使わなくなった体は基本的に元通りになるわけではありません。それは関節も固くなって、コラーゲン線維が分厚くなってしまったりしますし、筋肉なども同様になります。これが完全に固まってしまうような例は、高齢者の方が寝たきりになったときに関節拘縮が起こって、どうリハビリしても戻らないということになってきますので非常に留意が必要なわけですが、この筋萎縮だけではなく骨萎縮、循環血液量という部分に関しても、若ければ改善する部分も多いのですが、それでも完全には治らないような状態になります。ただ、何かの運動などをしていくと、少なくとも現状よりはよくなるということは分かっていることだと思います。隣にリハビリの木村先生がおられますので、また御意見を頂けたらと思います。

 ただ、そのような中で患者自身はどういう状態に陥っているかを考えてみないといけません。いろいろなデータを見ても、体に痛みがある人は、休むと痛くなくて動くと痛いというのは、すごくたくさんのデータが出てきています。そのような中で、特に今回のHPVの患者ということになってきますと、お母さん、お父さん、患者さんとお互いに不安になっています。そのような中で病院に来るわけですが、私たちは責任感を感じながら対応していくわけですが、プレッシャーがかかってきて、なかなか自分たちの思ったように責任感から応えられないということになってくると、よその施設に行ってくれという格好になる可能性もあるわけです。それはそちらのほうに御紹介させていただいて、いい方向に御指導いただくということなのですが、こういうことが繰り返されると不信につながりかねないのではないかと思います。

 その中でどのようにしていったらいいのかを考えなければいけないと思うのです。親御さん、周りの方に適切な理解をしていただき、私たちもチームで連携、連帯し、アセスメントやゴールを設定して、1人で受けられなくても皆で考えればいい方向が見付けられるのではないかと考えていき、患者・家族とコミュニケーションしながら信頼関係を構築していきたい。このようなことではないのかと思うわけです。患者とコミュニケーションを作りながら、親御さんともコミュニケーションを作りながらということになってくると思いますが、その際にいろいろなスタッフがいると、スタッフたちとの個別の信頼関係が出てくるわけです。そうすると、先生と仲よくなったのだということになると、患者はすごく喜んで、打ち溶けていっていろいろな方向に動けるのではないかという格好になってくるわけです。

 私たち自身も親であり、子供のことは常に心配になってくるわけですが、見守っていくというのはすごく大事なことだと思います。「勉強しなさい」とか「もっと動きなさい」と、過剰な干渉をしてしまうこともありますが、見守っているというのが大事なのかなということで、見守られている感、安心感をチームで作って、患者に提供していくことが大事なのかなと思います。1人の先生でも、この人だけはずっと寄り添ってくれるのだというものが作れていくと、すごく安心感につながるのかなと思うところです。

 そのような中で、HPVワクチンを接種した後から痛みが出たり、動けなくなった方について、親御さんもそうですが患者自身が、怖い病気になった、原因を探して治さないととんでもないことになる、どうして自分だけがこのようなことにと、考えがいってしまうのではないかと思います。これは意識するしないにかかわらず、怖いことを言っているテレビの報道などを見ていると、そのような考え方が出てくるのではないかと思います。どうして自分だけがこうなったのだ、不安、つらさも出てくるでしょうし、そのような中で動いたら調子が悪いので、じっとしていようということになってきますし、そうなると先ほどお話をしたような、循環血液量の低下などから動けないような状態にもなってくるということです。

 それをどう解決していくかということだと考えていくと、原因が分からなくても、今できることを増やしていったら、少しできることが増えたのでよくなっているのかもしれないというようなところまで持っていけたらいいのかなと思うわけです。安心感というのは、すごく大事なところになってきます。少しよくなると、安心になってくるわけです。決めた範囲の運動を推進して、場合によっては薬が必要かもしれません。そのような中で生活リズムを改善させて、筋力、移動能の向上、そして回復に結び付けていかれたらいいと考えているところです。これをシステマチックにやっていくというのが認知行動療法という考え方です。

 先ほどからお話をしているように、考え方を変えたら、全てが変わるわけではないことをお話したいと思います。このような中で、一つ一つ自分たちの中でフィードバックしていこうというのが、いわゆるシステマチックな認知行動療法ということになりますが、そこまでできなくても、「認知行動療法的」と書いたのは、きちんと寄り添うドクター、理学療法士、看護師がいて、見守って、指導をして、一緒に歩いていけたら、いろいろとよくなるケースは多いという格好になると思います。システマチックというのは時間も掛かるので難しいですが、先ほどお話したようなところが大事かなと思います。

 想定症例に関しては、これは実際にいた患者ではありませんが、ワクチン接種後にものすごい痛みが出てきて、その後は症状が一旦落ち着いたが、2回目の接種から眠れなくなり、だんだん背中の痛みが出てきて、足もだるくて仕方がないので学校を休んだ。その後は体調不良になり、学校を休みがちになり、1日の多くは家で過ごしている。合唱部に入っていて、皆で歌うのは楽しみなのだが、胸が苦しくなってくるので最近は参加できていない。このようになってくると、悪循環に陥ってしまうわけです。

 私たちとして、どのように考えていかないといけないか。これは医療者サイドとして考えていかないといけないということでいくと、まずレッドフラッグがないことを確認しないといけません。レッドフラックというのは、例えば腫瘍がある、骨折がある、全身の疾患が何かある、そういったものを除外していく。心臓や肺の疾患があることに関しては除外しないといけません。場合によってはMRIを撮ることもありますし、呼吸機能を調べたり、胸のX線を撮ることもあります。そういうものをいろいろなチームで分析していきながら、アプローチを考えていくことになります。もちろん機能評価についても、実際に関節がきちんと動いているかどうか、筋力は保たれているかも調べていきますし、電気生理学的神経機能診断で、例えば運動野を刺激すると足まで電気は通じているのか、足を電気刺激すると頭まで通じているのかなどを調べていくことを、必要に応じて導入することにより、こういうものがきちんと伝わっていることが分かると、患者の安心にもつながるわけですので、こういうことをやっていく必要があると考えています。それをやる必要のない方に関しては、過剰な検査は必要ないと思いますが、場合によってはこういうことを導入していく必要があると考えています。

 そのような中での運動の必要性は、先ほどもお話しました。運動をすると、自分の中からモルヒネに似たオピオイドが頭の中から出てくることが分かっています。こういうものが痛みや脊髄の神経を鎮めていく、痛みの苦しみが減っていくということで、持久力、筋力をアップさせながら、姿勢もいい姿勢を取らせながら、思考力をアップさせたり、ストレスを解消させ、前向きな考え方ができるようにしたり、やる気を上げていったり、柔軟性も大事ですので、そういうものを学んでいこう、やれる体を作っていこうということで取り組んでいるところです。

 ウォーキングが一番基本的な運動だと思いますが、例えば寝たきり予防には1日に2,000歩の運動は必要ということが分かっています。そういうものをやっていきましょうということ。それから、いわゆるエアロビックの能力を付けていくためには、早歩きなどをして、汗が出るぐらいの運動はしないということですので、「5,000歩プラス早歩き」と書いてありますが、8,000歩プラス20分の小走りができるところまで持っていけたらと考えています。いろいろなストレッチングなども指導しながらということになっていきます。

 人の体というのは急には変わりませんが、評価をした上で医学的に可能な範囲での運動を増加させていく、その人によって異なるので、医師、理学療法士とともにテーラーメイドで治療を作っていく。栄養摂取をきちんとやっていく。安心感を持つための医学知識を持っていただく。筋力、持久力の改善を確認していこうと。確認作業というのはすごく大事で、認知行動的にも大事だと思います。場合によってそれが安心であれば、薬も投与していこうということです。

 愛知医大の取組としては、患者が来た場合は、大体30分ぐらい掛けて看護師が病歴を聴取します。これでお母さん、御家族、年輩の方であれば娘さんなどからいろいろな情報を聴取します。これは紹介状とともにやります。その後にドクターが診察し、理学療法士がチェックし、その後に週2回の多職種チームカンファレンスで、来られた方については全例について、皆で話し合って、どういう方向性でいくかを決めていきます。それで治療を行っていくわけですが、フォローアップを36か月後に行い、どうなっているのかをフィードバックして、問題があればまたカンファレンスに上げていくという格好でやっています。

 これは厚生労働研究班では、なかなか治らない痛みについて、チームで行ったときのデータを集積していますが、研究班に来られている施設は平均すると3.8施設を回って、改善しなかった人が多いわけです。それに関して、3か月、6か月の満足度を見ていますが、「変化なし」という方も非常に多いわけですが、これをやって悪くなるというケースは非常に少ないわけです。少しでも、こういう中からいいような方向にいきたい、非常によくなっている患者も多いので、そういうことをやっていっているというのが、今の集学的な治療のアプローチかなと思います。御紹介をいろいろさせていただきましたが、私の話は以上です。ありがとうございました。

○桃井委員 牛田先生、ありがとうございました。治療経験症例、臨床像のまとめ及び具体的な治療法について、大変詳しく御説明を頂きました。この御発表に関して、御質問や御意見等をいただきたいと思います。

○倉根委員 先生が運動、行動を強調されたと拝聴いたしました。先生の治療の中で行っている運動と、他の疾患でリハビリテーションということをやると思うのですが、そのときの運動とは同一なのでしょうか。何か違うような、特異なことはあるのでしょうか。

○牛田参考人 リハビリテーションは、基本的に疾患ごとにテーラーメイドでやっていかないといけないと思うのです。ですから、もちろん一般的に脳卒中の患者のリハビリテーションと足を折った患者のリハビリテーションは全く違うわけで、今は心リハ、呼吸器リハなどいろいろありますが、それを組み合わせていって、そのような中でなかなか治らない痛みの患者に関しては、まず体を少しずつ使えるようにしていかないといけないので、総合的なリハビリテーションということになってきますが、疾患とその患者の状態によって、体が脆弱になっている方に関しては急にやっても難しいので、少しずつテーラーメイドで考えてやっていくというところかと思います。

○倉根委員 あと、行動の部分は大分説明いただいたのですが、いわゆる認知行動療法の認知の作業というか、認知の言葉というのは、この場合はどういうことをされているのでしょうか。

○牛田参考人 行動と認知というものは、考え方をどのように持っていけるかということがあって、分かっていてもできないという格好になってきますので、分かっていてできなくても、実際にやってもらってみるということを出していきながら、そこを実際に体得していただくことを繰り返してもらうわけです。急にハイジャンプのような難しいことをするわけではなく、最初は簡単なものでも、できるようになったと。それをチームで理解して、患者や親御にも、そういうことをここまでできるようになった、第1段階はできた。そういうことを認識していただく。そういう方法で間違いないということを理解していただき、また目標を立てていくという形です。

○倉根委員 それから、多くの方では効果を上げているわけですが、1つは本来痛みがない方が何人かおられると思うのですが、こういう方にも効果があるのでしょうか。それから、効果がある方とない方の差というか、どういう方には非常に効果があるのかについて、何かございますでしょうか。

○牛田参考人 すごく難しい質問だと思います。そこは、すごく難しいところで、全体像的に言うと、これまでワクチンと関係のないところから考えていくと、例えば運動と痛みがすごく関係している人はよくなりやすいです。じっとしていてもずっと痛いという方は、有意差を持ってよくなるにしても、運動と痛みがすごく関係している人よりはよくなりにくいようなところがあろうかと思います。

 それから、どうしても社会背景的なものがすごくあると思うのです。自分が変わっていきにくいような背景があって、すごくプレッシャーが掛かっているような場合です。こういう場合であれば、プレッシャーが解消されないと変わりようがない状況は、私たち自身もいろいろ経験してきておりますが、そういうことはあります。そういう人たちは治りにくいと思います。

○桃井委員 ほかに御質問、御意見はおありでしょうか。

○柿崎委員 先生の所が一番進んでいるのだと思うのですが、こういった学際的、集学的な痛みの治療ができる施設は日本国内にはどのぐらいあるのでしょうか。

○牛田参考人 今、研究班で作っていこうということで進めているところです。今、21大学で作ろうということですが、どうしても兼任でやっている所が多いので、毎日外来を開設できている所はまだまだ少ないのが現状だと思います。毎日やっているのは数施設だと思います。

○柿崎委員 各地方に1施設ぐらいはあるのでしょうか。

○牛田参考人 そこは所轄の厚生労働省から、各県に1施設ぐらいは作ったほうがいいのではないかとは言われて、増やしていこうとしているのはありますが、ここのところは、いわゆる大学の縦割りの部分をどのように連携していくかということで、少しずつでないとできていないのが現状だと思います。ただ、前には進めやすくなってきていると思います。

○桃井委員 ほかにいかがでしょうか。

○多屋委員 先生の資料の14ページの学際的、集学的治療のチームの中に、小児科医が入っていないと思うのですが、何か理由があるのでしょうか。

○牛田参考人 それは理由があるわけではなくて、どのようなものでもそうなのですが、例えば緩和ケアユニットを作るとなったときに、そこに必要なのは精神科医と緩和できる身体科の医師になってくるわけです。全部を一挙に集めようとするとすごく難しいことになって、チームカンファレンスというのは縦割りを打ち破る戦いですので、人を出してくれと頼んでも、そう簡単に部局は出してくれません。そうすると、できる人を集めながらやっていく、できる範囲のことを考えていくことしかできません。もちろん小児科の先生が積極的に参加してくださったらいいわけですが、大多数の患者は40代以降の方が多いとは思います。

○桃井委員 ほかにいかがでしょうか。

○山縣委員 先生にお示しいただいた愛知医科大学痛みセンターを受診した46名が、2つのグループで、1つはHPVワクチン接種の関与の可能性が否定できない症例ということで、基本的に女性で、もう1つが他の要因が明らかでというのも、基本的には女性なのか。それとも、もう1グループ、要因も明らかでなくて、HPVワクチンも関与していないというグループがいたのかということに関して、教えていただけますか。

○牛田参考人 これはHPVワクチンを打った後にということで紹介されてきた患者の振分けですので、基本的に女性です。

○桃井委員 1つ教えていただきたいのですが、私は小児科医ですが、痛みがあっても痛みがメインの訴えではなくて、むしろ歩行障害や不随意運動など、運動障害の症状がメインの方で、痛みもあるという方を診ることが多いのですが、それらの患者においても、先生がおっしゃったようなアプローチと全く同様と考えて、よろしいでしょうか。ただし、リハビリテーションのプランはオーダーメイドで個々違いますが、考え方として、アプローチとしては、全く同様と考えてよろしいのでしょうか。

○牛田参考人 そう思います。1つは、体作りができていないといろいろなことをやろうとしても不可能なはずなので、そこはベースにさせていただき、できることから取り組んでいくというのがベースになると思います。

○桃井委員 ほかにはよろしいでしょうか。牛田先生、大変貴重なご報告を頂きまして、ありがとうございました。

 次の報告事項に移ります。資料17です。今の御議論でも医療体制に関する御意見が出ました。厚生労働省において、HPVワクチンの接種後に多様な症状を生じた患者に対する協力医療機関を中心とした医療体制が整備されているところですが、その現状について事務局から資料17が提出されていますので、その御説明をよろしくお願いいたします。

○事務局 それでは、資料17について説明します。この資料は前回の会議等においても治療体制のことについて少し御意見がありましたので、これまでの取組を総括的に簡単にまとめたものです。協力医療機関を設置しており、これは平成26829日に、このHPVワクチンを接種後に多様な症状を生じた患者さんに対する支援の1つとして、身近な地域で診療を受けられるように、各都道府県に少なくとも1か所以上の協力医療機関を設置するという方針を出したということです。

 それに基づいて、929日には通知を発出して調整を依頼しました。平成261122日から厚生労働省のホームページで、協力医療機関の名前と窓口の診療科や問合せの連絡先を公表しており、その後、医療機関の追加や窓口の変更があれば、随時、最新の情報を更新しているというところです。

 先ほど、柿崎委員から牛田先生の研究班に御協力いただいている医療機関についての御質問がありましたが、厚生労働省のホームページを見ていただくと、その医療機関名についても公表しております。協力医療機関に関しては、平成298月末時点で全都道府県において85医療機関が設置されております。

 下のほうに、この協力医療機関における診療実績を集計したので、それを簡単に説明しております。平成261122日から平成29331日までに、協力医療機関を受診した方は715名いらしたということです。この数字は、ホームページ上に公表している窓口を経由して受診した方を計上したもので、複数施設を受診した場合には、重複して報告されている可能性があるということで、そこの部分の重複は排除できておりませんので、その点については御留意いただければと思っております。

 また、協力医療機関に関しては、医師等に対する情報提供、研修を実施しております。平成26929日からは、都道府県に対して地域の医師会と連携した協力医療機関の医師向け研修会を開催するように依頼しており、以降、全国の都道府県で研修を実施して、33都道府県において実施済みです。平成27819日には日本医師会/日本医学会が「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」を公表しており、一般医療機関に対して日本医師会等の協力を得て手引きの周知をしております。また、平成28722日、平成29719日に、厚生労働省主催で協力医療機関等の医師に対する研修会を実施しております。実30医療機関、延べ38施設から出席していただいております。

 裏のページには、参考として協力医療機関の整備と併せて、日常生活や学校生活に関する相談に対応するために、各都道府県等の衛生部門と教育部門に相談窓口を設置するという取組を、これと並行して行っておりましたので資料を付けてあります。設置状況ですが、平成298月末時点で47都道府県及び指定都市等に設置しております。相談実績を簡単に集計しており、衛生部門で923件、教育部門で160件の相談がありました。これに関しては下のほうに月ごとに推移を示しており、平成27年頃が一番多かったということです。以上、医療提供体制のことについて、改めて少し整理した資料を報告しました。よろしくお願いいたします。

○桃井委員 これについて、何か御質問ございますか。もちろん、これ以外の医療機関でも信頼関係が構築されて適切な医療が提供されていることは多々あるかと思いますが、協力医療機関における現状はこうであるということを説明いただきました。よろしいでしょうか。

 では、次の報告事項に移ります。地域で適切な診療につなげるという意味から、研究の一環として地域でのこれらの患者さんの、あるいは症例についての診療の連携体制をどのようにしたらいいのかということに関して、今日は新潟県での、あるいは新潟大学における例を御報告いただきます。資料18です。新潟大学医歯学総合病院リハビリテーション科の木村慎二先生、よろしくお願いいたします。

○木村参考人 本日は、このような機会を頂きありがとうございました。では、資料18を御覧ください。新潟県の副反応疑い症状の診療システムに関する取り組みです。先ほど、牛田先生からのプレゼンがありましたが、非常に多彩な症状を訴えるということで、1つの医療機関に行っても、どの科で診ればいいのかということで、本当に多くの診療科を回ってしまって患者さんは非常に不満足だったということ。もう1つは、最終的にどこが中心に診ていくのかということが混乱しているという医療施設が非常に多いということが、アンケート調査等で分かっております。

 スライド1の下のほうを見ていただくと、産婦人科の榎本教授がAMEDの研究でHPVワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学調査という研究の代表者をされており、私自身も牛田先生の班の班員、研究者だったということで、それが新潟県の医療システムの確立にうまくいったというようなことがバックグラウンドにあります。

 大きな2つの枠があり、地域の副反応疑い症状診療新システムの構築、新潟県は230万人ぐらいの県なのですが、新潟大学1つが全ての医療機関の出張をオーガナイズしているという特徴があります。下にも書いてありますが、医師会や産婦人科医会、内科医会、小児科医会等、協力体制が非常にしっかりしているということで、この医会を全部協力機関に入れて、とにかくHPV後の症状を統一して新潟で窓口を作って診療システムを作るということがベースです。2番目は、ワクチン新規接種者の副反応疑い症状調査ということで、今後、再開してから、また調査するということで、この2つの大枠の研究があります。

2ページです。実際の診療システムのフローです。地域連携室に症状の発生がある患者さんの家族等も含めて電話かFAXが入ります。そうすると、医事課でこのように対応、症例シートという簡単なシートで、下の1)に書いてある情報の連絡が産婦人科の担当医へ入り、その後、症例のレポートを作成します。そのときに、痛み受診とした患者さんの場合には私の所に来ていただき、痛み以外の患者さんは産婦人科、小児科、麻酔科で対応していただきます。私の痛みの患者さんには、先ほど牛田先生も述べられた心理社会的な要素が非常に多い患者さんが来られます。そのときに、各関連した診療科と私が窓口になってカンファレンスをするというシステムです。私が牛田班に入っていたということもあり、先ほど出た心理社会的な評価表を評価して、私の症例を牛田班や榎本班にも報告しているという状況です。

 下のほうに書いてあるのは、副反応疑い症状に関する調査です。これは、ワクチン接種が、今後広く行われるようになり次第スタートということで、とにかく打った接種者全員を調査して、特に即時性の反応が出た患者さんや4週間後に遅延性に出た副作用の患者さん等を全て調査して、新潟県で全てその統計等も含めて報告するというようなことが、次の再開後のステップと考えております。

3ページです。まとめです。私自身、牛田班に入ったのは1年後で、その前に患者さんが県外に流れた可能性があるのですが、私がこの班に入らせていただき、榎本班で新潟スタディーが始まってから5例の報告がありました。5例の副反応の疑い症例の報告のうち、2例はワクチン以外の要因が考えられました。

 後で少し報告したいと思っているのですけれど、一番上の症例ですが、全身痛ということで私が8か月のフォローアップをした患者さんです。この患者さんは動かないことによる筋力の低下等の廃用症候群の患者さんでした。あと、下の2症例目は、サーバリックスを打った後のタイミングだったのですが、結局、脳外科でアーノルドキアリ奇形が見つかった等、そのような原因等がはっきりしないような症例を含めて5例経験させていただきました。

 先ほど申し上げた症例1の患者さんを紹介します。症例は20歳の女性でHPV後の全身痛ということで、主訴は両肩、股関節、膝痛、もう1つは、今の痛みが続いていると看護師になれるのか不安だということで、実は看護学生のときに打たれたということです。ニードというのは、私たちはリハビリをして今後どのようになりたいですか、こういうことをしたいのですかということを必ず聞きます。半年後、1年後には立つことや座ること、更には階段昇降がスムーズに行えることができたらいいなというようなことを言われておりました。

 生育歴は御両親が離婚されているということ、あと、お母様は必ず外来に来られていたのですが、少し神経質な方という印象でした。高校2年生のときに1回打ち、その次、2回目を打った後に、県の医師会に夜間の足の痛みで受診されたということで、ここに後で出てくる12とずっと続いていくのですが、これは医療機関の受診の数です。最初は足だったのですが、膝や手も痛くなったという経緯です。

 その後、23456ということで、新潟大学のリハ科に来る前に計5つの病院を受診されており、お母様は、その間の受診の内容、検査結果等のコピーを全部お持ちで、私の受診のときにも数十枚あるそのコピーを見せていただきました。その内容を見ると、ここにも書いてありますが、X線検査や血液検査に関して全く異常なかったということ、初診時の所見を見ると、ブルーの丸で書いてある部分に痛みがあったのですけれど、関節痛というような訴えだったのですが、よく診察すると筋肉の付着部なのです。これは廃用症候群では、動かないことによる筋肉の痛みで非常に起こりやすい。膝に見えるのですが、これは膝より少し上の部分なのです。こういう部分が痛くて、私たちがよく診る廃用症候群の所見に非常に合致しているということでした。

 リウマチ、膠原病等の疑いでいろいろな診療科を受診していたのですが、関節の腫脹はありませんし、赤み等もありませんでした。圧痛、押すと痛いというのは、先ほど申し上げた膝の上部に痛みがあった。可動域も軽度の制限があり、握力もこの年齢だと少し低めである。筋力は5が正常なのですが、4程度の筋力であったということでした。

 この患者さんの初診時のまとめです。筋の痛み、関節から筋にかけての圧痛があったのと、動かすと痛い、軽度の筋力低下があり将来に対する不安がある。さらに、非常に痛みがあるので動かすとますます悪くなるのではないかということで、この方は看護学校へ通学のときに、駅まで歩くと2030分あったところ、お母様が毎日車で送迎していたということで、聞くと、後で経過が出るのですが、この20歳の女の子は2,000歩ぐらいしか歩いていないということで、非常に歩行距離が少なかったということがありました。

 治療の方針としては、やはり不安の解消です。特に、今まで全部の検査を見て、私の外来では骨のレントゲン等も撮影して、特に異常ないということで安静の必要性はないですよということをよく説明しました。初発の痛みは不明なのだけれど、その後に、先ほど申し上げた廃用症候群で筋力が非常に弱くなると痛み等が出るという話をよくしました。徐々に運動療法の負荷量をアップしていったという経過です。

 牛田班で資金等を援助いただき「いきいきリハビリノート」を、今日、実際の冊子を持っているのですが、このようなノート形式になっており、その中身に不安を解消するための認知行動療法の考え方や運動療法の効果、運動すると非常に痛みも取れて気持ちも晴れやかになるというような説明をしたり、教育的な意味も中に入っております。

 「いきいきリハビリノート」のいきいきという中に、認知行動療法を交えて生きがいの創出をしてリハビリによって運動すると、ノートの中身は小冊子を用いた教育、実はこの3つの内容が今の腰痛のガイドラインでのグレードAという、強く推薦する治療の中身がここの中に含まれているということです。このノートを用いて、まず、歩行のモニタリング等を始め、あとは不安の内容等も書き出していったという経緯です。

 これは、御本人の8か月の経過を少し時系列でお示ししました。最初のPDASは、日常生活の不具合の点数が健常者よりすごく悪い状態だったのですが、約8か月でこのような正常範囲に戻った。もう1つ、これはQOLの評価表ですが少しずつ上がっていきました。先ほど申し上げた初診時に非常に不安が強くて、3回ぐらいの外来は話をよく聞いて信頼を獲得するというところにいって、運動の必要性を十分に説明した上で、女性ですので女性のPTに入っていただいて、3回ほど指導していただきました。

 厚生労働省のホームページを見ると、20代の女性は7,0008,000歩が平均の歩行歩数なのですが、彼女の場合には2,000歩しか歩いていなかったので、少しずつ歩数を増やしていきましょうということで、この8か月で、最終的には8,000歩を歩くような生活になりました。この頃は、病院の実習も結構やっていたのですが、それまでは階段を降りられないという、いろいろな症状があったのですが、この頃には周りの同級生と同じような歩行や運動能力が獲得できたということです。

 この期間は本当に8か月掛かっていますので、先ほど牛田先生からお話がありましたように、非常に一度不安を抱えて動かなかった患者さん、数年単位で障害を抱えた患者さんが来られるときに、まず、信頼を得てくるのに非常に時間を掛けたということと、もう1つは、非常に根気強い外来を経て不安の解消とともに、運動能力を少しずつ上げて、今、一番大事な生活に戻してあげるということを医師が指導する。

 そのためにPTや周りのナース等と一緒に取り組むという、残念ながら新潟は、先ほどの学際的なシステムが少し不十分なので、今回は私とPTが中心となり患者さんをフォローして、先日電話をしたのですが、もう3年ぐらいたっているのですけれど、現在は看護学校を卒業して無事に看護師として元気に働いているという報告を受けました。以上です。ありがとうございました。

○桃井委員 木村先生、大変分かりやすく御説明いただき、ありがとうございました。ただいまの御発表に関して、御質問等ございますか。地域で患者さんが困らないように適切な診療を早めに受けられるような体制は大変重要なところです。御質問等ございませんか。

 牛田先生と木村先生に1つ教えていただきたいのですが、器質的疾患と違うので、病気に対する御理解をしていただくのはなかなか難しいと思います。治療しながら理解を促進するというところであろうと思います。患者さんがなかなか理解できない点はどのようなところがあるか、それに対してどのように工夫をしていらっしゃるのかについて、簡単には御説明できないところだと思いますが、少し御発言いただければ有り難いと思います。

○牛田参考人 やはり、例を出して言ってあげるのが一番いいのかと思います。うまくいった例や、先ほど申し上げたようなことを、今こういう状態になっているから、少なくともここのところだけは直していってみようというところから信頼関係を作っていくことを始めないと、どうしても原因を探そうとする方向に行ってしまいますので、まずは本当に1歩からが大事なのかと思います。

○木村参考人 この患者さんも含めて、慢性痛の患者さんの特徴なのですが、感情と考え方が非常にネガティブに働いている方が多いのです。特に、この患者さんの場合はとにかくワクチンを打ったせいでなったのだと、被害者意識が非常に強い患者さんがいろいろな病院を回られて大学病院に来るというパターンなのです。私は先ほど申し上げた理学療法を始めるまで34回、30分以上時間を掛けています。つまり、最初に前の病院の不満を非常に訴えられる。そのときに、「この人は、こちらで治療する適用がないな」と言って、いろいろな診療科、特に不眠等、いろいろな不定愁訴を訴えるものですから、窓口が決まっていない大学は俗に言う、いろいろな科をたらい回しと言うと言い方が悪いのですが、そのようなことをされて、そこで患者さんは不安が強くなってということが非常に多いのです。

 私は牛田班の班員であったのと榎本班にも一時期入れていただいて、こういう患者さんの特徴を私自身が非常に分かっていたということもあり、窓口の医師が根気強く、この病気は今こういう状況なのだという話をして、もう1つは原因を探すよりは今の生活をどうかいい方向に向ける方法はないでしょうかということを提案していき、少しずつ自分の生活に戻るためにはどうしましょうかという話をする。それは12回では難しいと思いますので、それを時間を掛けてやっていく、それによって患者さんの社会復帰、今やるべきことをやっていく、そういう方向に持っていってあげるということを医療機関や医師も、やはりコメディカルの人もこういうことを理解していかないと、この治療はなかなかうまくいかないと思っております。

○桃井委員 両先生から、大変貴重な御意見を頂きました。初診時に時間を掛けてじっくり患者さんの訴え、つらさ等を聞いていき、これまでの経過もじっくりと具体的に聞いていって時間を掛けるということが、機能性の身体症状の治療の基本であろうと思います。今の日本の医療状況で全ての医療機関の外来で、時間をかけた傾聴がなかなか困難なこともありますし、また、患者さんが検査に異常がないと言われただけで、ドクターショッピングをせざるを得ないという現状にも問題があるのかと思います。大変、貴重なプレゼンテーション並びに御意見をありがとうございました。

 これで、報告事項を終わります。皆様、報告事項を大変簡潔に分かりやすくプレゼンしていただきましたのでまとめる必要もないと思いますが、簡単にまとめます。

 まず、愛知医科大学学際的痛みセンターの牛田教授からが、接種後に多様な症状を生じた症例についての全体のプロファイル、HPVワクチン接種が否定できない例と明らかにほかに原因がある例に分けて御提示いただきました。ほとんど同じプロファイルを示していて、唯一、接種後の期間だけ少し違いがあるというプレゼンをしていただき、明らかにほかの原因がある群と、接種との関連性を否定できない群との内容を大変よく理解できました。

 また、これらの症状に関する認知行動療法的アプローチについても、大変、具体的に御説明をしていただきました。大変、時間を掛けてじっくりと患者さんと向き合って、患者さんのみならず患者さんの御家族とも向き合いながらじっくり診療することが改善の道であるということも御提示いただきました。

2番目には、現在の協力医療機関に受診されている状況、そして、研修会の現状等、これまでの実績等も厚労省の事務局から御報告を頂きました。85の医療機関において715名の方が受診されているという現状を御報告いただきました。

3番目には、地域における大学病院を中心とした医療体制、連携医療体制について、木村教授から御説明を頂きました。患者さんが地域においてどこに診療を求めたらいいのかということを適切に導ける地域における体制が極めて重要であり、これは、機能性身体症状全体の医療体制全体の問題でもありますが、この診療体制については、引き続き大きな課題であろうと思います。

 報告事項については、以上の3点がまとめです。また、これまで牛田先生、木村先生のプレセンテーションも含めて、また、前々回の非接種者における同様の症状の症例報告も含めて様々な御報告を頂きました。その中で、私どもの部会としては、接種後に生じた症状は機能性身体症状、神経症状、疼痛を中心とした機能性身体症状であるという医学的な整理をしているところですが、プレゼンテーションの中でも、医師によって様々な診断名が使われていたことはお気付きのとおりです。様々な診断名が使われている状況では、一般の方に適切に御理解していただくことが難しいと思います。

 次回以降、診断名の整理、すなわちここではどのような診断名を使うのかということについても御意見を頂戴して整理したいと思います。診断名の整理の点や安全性等の観点も含めてHPVワクチンに関する様々な医学的なデータ等、ファクトの整理を行って検討すべきかと思いますので、大変、膨大な資料になるかもしれませんが、事務局はこれまでのHPVワクチンに関するファクトの整理をしていただきたいと思います。少し時間が掛かるかもしれませんが、よろしくお願いします。以上がまとめです。

 委員の先生から、ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。それでは、事務局から何か追加することはありますか。

○事務局 本日は長時間にわたり活発に御議論いただき、誠にありがとうございました。次回の開催については、日程調整の上、日時について連絡申し上げます。また、傍聴者の皆様へのお願いです。会議終了後、まず、審議会委員が退室いたしますので、委員の退室が終わるまで、そのままその場でお待ちください。事務局からは以上です。

○桃井委員 皆様には長い間の審議、誠にありがとうございました。また、牛田享宏教授、木村慎二教授におかれましては、大変お忙しい中この部会のために御出席いただき誠にありがとうございました。大変、貴重なプレゼン、御意見を頂戴いたしましたことを御礼申し上げます。ありがとうございました。

 それでは、第30回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第7回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)を終了いたします。ありがとうございました。

 


(了)

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