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2017年6月8日 第2回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録

社会・援護局

○日時

平成29年6月8日(木)10:00~12:30


○場所

TKPガーデンシティ永田町2階会議室(ホール2A)


○出席者

宮本 (部会長) 駒村 (部会長代理)
朝比奈 (委員) 石橋 (委員)
浦野 (委員) 大西 (委員)
大野 (委員) 岡部 (委員)
奥田 (委員) 勝部 (委員)
菊池 (委員) 小杉 (委員)
生水 (委員) 新保 (委員)
竹田 (委員) 平川 (委員)
松本 (委員) 渡辺 (委員)
吉岡参考人 (岡崎委員代理) 伊藤参考人 (福田委員代理)
前河参考人 (松井委員代理) 浅川参考人 (NPO法人コンツェルティーノ理事長)
工藤参考人 (NPO法人育て上げネット)

○議題

(1)自立相談支援のあり方について
(2)就労支援のあり方について

○議事

○金井課長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第2回「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日の委員の出席状況でございますが、松本委員は若干おくれていらっしゃると聞いております。奥田委員も若干おくれておられます。

 また、岡崎委員の代理として高知市副市長の吉岡参考人、福田委員の代理として川崎市副市長の伊藤参考人、松井委員の代理として大阪府福祉部地域福祉推進室社会援護課長の前河参考人にお越しいただいております。

 さらに、後ほどお入りいただきますが、就労支援に関する議論の参考人として、NPO法人コンツェルティーノ理事長の浅川悦子様、NPO法人育て上げネットの工藤啓様にお越しいただくこととしております。

 吉岡参考人、伊藤参考人、前河参考人、浅川参考人、工藤参考人の御出席につき、部会の御承認をいただかなければと思いますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○金井課長 どうもありがとうございます。

 それでは、これ以降の進行を宮本部会長にお願いしたいと存じます。

 カメラの方は御退席ください。

 宮本部会長、よろしくお願いいたします。

○宮本部会長 皆さん、おはようございます。天気が余りすっきりしない中お集まりいただき、どうもありがとうございます。

 それでは、第2回の会議を始めさせていただきます。きょうは、自立相談支援、就労支援と大変大事なテーマを議論することになっております。さらに、先ほど金井課長からもお話がございましたように、お二人の参考人をお招きしてお話を伺うと。この会議もなるべくいろいろな方からリアルなお話を伺い、また現場にも足を運んで、ずれない議論を進めていきたいと思ってございますので、そのような手配をさせていただきましたけれども、大変盛りだくさんの議論になっております。お一人当たり大体3分程度を基準にしたコンパクトな発言をお願いしたいと思います。

 また、きょうどうしても議論し切れない部分が出てきた場合は、次回以降にきちっと議論する機会を設けていきたいと思いますので、その点を含めてよろしく御協力をお願いしたいと思います。

 それでは、早速議事に入らせていただきたいと思います。議題1の「自立相談支援のあり方について」。事務局のほうから資料説明をお願いしたいと思います。

 その後、参考人からのお話を伺うということになろうかと思います。大体のめどとしては1110分ごろから参考人の方の話を承るということになります。その後、就労支援のあり方をめぐる議論にも入っていきたいと思います。

 それでは、事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。

○本後室長 生活困窮室長の本後でございます。

 それでは、資料を説明させていただきます。資料1をごらんいただければと思います。時間の関係上、飛ばし飛ばしの説明になりますので、御容赦をいただければと思います。

 資料1の5ページ目でございます。自立相談支援につきましては、新たな評価指標を用いまして、支援当初から数カ月ごとにステップアップの状況を見てございます。それで見ますと、丸1、丸2、丸3それぞれの状況いずれかでステップアップをしている方の割合65.2%ということで、それぞれ成果が出ているというところでございます。

 続きまして、個々の論点に入ってまいります。関係機関との連携というところでございます。7ページ目、自立相談支援機関・関係機関の間の連携状況と新規相談件数のデータを数字であらわしてございます。実際につながった実績がある庁内関係機関数と新規相談受付件数は、ある程度相関関係があるということがわかってございます。

 8ページ目、関係機関の連携状況について詳細にデータをとりますと、グラフが3つありますけれども、一番右、関係機関から実際につながった実績のある自治体を見てみますと、それぞれの関係機関で見ても、オレンジ色の28年度の数字は、グレーの27年度の数字よりもある程度上回っているという状況が見てとれます。

 代表的なところを見ていきますと、9ページ目、税・国保、そういったところを見てみますと、昨年度より数がふえたというところが、税、国保、水道に関しては約3割のところ。増加が見られた自治体の状況で見ますと、個別のケースのやりとりを重ねることで連携が深まったということで、信頼感がお互い増してきているということがわかっております。

10ページ目、同じように学校の状況でございます。学校につきましては、税・国保と比べまして昨年度よりふえた学校があるという自治体の割合は少なくなっていますが、増加が見られた自治体の状況を見てみますと、やはり個別のケースのやりとりを重ねることで連携が深まったという割合が非常に高い。また、学校についてはスクール・ソーシャル・ワーカーがキーパーソンになっているということでございます。

11ページ目、つながる件数がふえていない自治体ということを聞いてみましたけれども、これでも個別ケースの対応を優先しているというお答えが多くなっております。個別ケースの積み重ねの中でつながる件数がふえていくということも推察されるところでございます。

12ページ目は、生活保護との関係でございます。生活保護に関しましては、つながってきた相談者の状況を見ていただきますと、申請しなかった方、要件を満たさずに却下となった方、相談段階の方、それから廃止となった方、その段階でつながってきている。これは日常的に見られるところでございます。

 2ページめくっていただきまして、今度は地域との関係というところでございます。15ページ目、枠囲いの2つ目の○、自立相談支援事業の側において、従来からの地域の取り組みを活用しつつ、相談につながりやすくするための身近な生活圏での取り組みが工夫されている。1の表のところで山形県酒田市さんの地区社協の例が載っております。それから右側、身近な圏域で何でも相談という体制をつくっているという取り組みもかなりの自治体で進んでおります。

 こういったことを踏まえまして、16ページ目、今般の国会で成立いたしました介護保険法等の改正の法律の中で社会福祉法を改正いたしまして、2つ目のポツ、市町村が包括的な支援体制をつくるということを努力義務として盛り込んでございます。住民に身近な圏域において、分野を超えて地域生活課題について総合的に相談に応じ、関係機関と連携調整を行う。そういう機能を市町村の努力義務として規定をしている。

171819ページは参考資料と条文ということですので、省略いたします。

 こういった取り組みを通じて、20ページ、潜在的なニーズ、ひきこもりの場合を挙げていますし、21ページ目、ひきこもりだけではなくて、8050、ごみ屋敷。地域の中で出てくるケースが結構あるということを例としてお示ししております。

 続きまして、大きなテーマの2番目、支援における情報共有の仕組みということでございます。23ページ目、自立相談支援事業においては、相談時に関係機関との情報共有について包括的な同意をとる。これが基本的なやり方になっております。※印、関係機関側から情報共有を受ける際にも同じように関係機関側で本人同意をとるということが一般的になっております。

24ページ目、情報共有に当たっては、個人情報保護条例のほか、地方公務員法第三十四条は、一般的な地方公務員の守秘義務。地方税法第二十二条は、税に関する特別に重たい守秘義務。この関係を整理する必要がございます。

 児童福祉法に基づく要保護児童対策地域協議会におきましては、本人の同意なく関係機関の中で情報を共有しても、個人情報保護条例、地方公務員法の守秘義務には抵触をしないという取り扱いになっております。これは構成員に守秘義務をかけるということでこういった形をとっているということでございます。

25ページ目、同じように情報共有という関係でいきますと、地域力強化の検討会の中間まとめの中でも、民生委員、児童委員、住民の協力も得ながら取り組んでいこうという場面で、住民との間で個人情報の共有をすることが難しいという課題が指摘されている。法制的な対応を含めて検討すべきという御指摘をいただいております。

 続きまして、「断らない」相談支援の実現というところでございます。

27ページ目、新規相談者の状況を見てみますと、性別、世代別、就労している・していない、非常にさまざまな状況だということでございます。

28ページ目、新規相談の方の抱える課題を見てみますと、生活困窮者ということでありますけれども、経済的困窮を理由として挙げている方は44.2%ということで、約5割という形になっております。

29ページ目、生活困窮者に該当するかどうかは、一見してわかるという性質のものではない。相談、アセスメントを通じて見きわめることになる。自立相談支援事業のあり方としては、相談者を断らず、広く受けとめることが必要。逆にそうしなければ、支援を要する生活困窮の方に対して支援をすることは難しいということでございます。

 この点、法律上は「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」、これを生活困窮者ということで定義をしております。法律上はこの定義があるのみということになっておりますので、この法律上の規定とこうした基本的な支援の考え方をどう整理するのかということは、先般の論点整理の検討会の中でも議論になったところでございます。

 続きまして、4番目、自立相談支援事業の体制というところでございます。31ページ目、支援員の配置と新規相談件数の関係を見てみますと、支援員1人当たりの人口が小さい。すなわち、人口規模に対する配置、支援員数が多い自治体ほど新規相談数が多いという相関関係が見られます。

 同じように、32ページ目、支援実績の高い自治体の自立相談支援事業の支援員の配置実績。これは下の赤のグラフのほうでございます。これはおおむね全自治体と比較して支援員の配置が多くなっているということが確認をされております。

 こういった状況を踏まえまして特に御議論いただきたい点ということで、34ページ目から整理をしております。

 1番目が自立相談支援事業に生活困窮者をつなげる仕組みということで、自治体の各部署が生活困窮の端緒を把握した際、自立相談支援事業を案内する取り組みを推進する必要があるのではないか。税とか保険料、あるいはスクール・ソーシャル・ワーカー、生活保護、そういったところでございます。

 さらに、地域からということで、地域力強化の取り組みが進むことで、地域から課題を抱える世帯が浮かび上がってくる。そうした方をしっかりと受けとめていくべきではないかということ。

 2番目といたしまして支援における情報共有の仕組みということで、最初は本人同意があるという前提で、情報共有をするということで効果的な支援をしているケースはどういうケースか。

 次の四角、セルフネグレクトあるいは支援拒否、そういった場合に、本人同意がなくて情報共有ができない。そういうときに本人同意がとれなくても情報共有ができる枠組みの必要性についてどう考えるかということ。

35ページ目、「断らない」相談支援の実現というところで、「断らない」相談支援を担保する方策について、先ほどの法制的な整理ということも含めましてどう考えるのかということ。

 自立相談支援事業の体制というところで、新規相談件数との相関関係ということを踏まえまして体制をどう考えるか。検討の視点の一番下にございますが、自治体間で支援員の配置についてばらつきがある中、例えば支援員の配置基準の設定などをすれば、支援員の配置数の少ない自治体の底上げを図ることができるかどうか。こういったところを具体的な視点として挙げさせていただいております。

 説明については以上でございます。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、今、室長からあった説明に関して議論を始めていきたいと思います。特に議論いただきたい点として4点ございました。個人的には大変重要な論点だと思いますが、場合によっては、この制度をよりよくするためには議論の前提になっている事柄にもかかわった別の視覚からの議論でももちろん構いませんので、よろしく御議論をお願いしたいと思います。

 また、いつものようにお手元の赤札を立てていただければ、満遍なく御発言いただけるのではないかなと思っております。

 前回奥田委員と菊池委員が御欠席でございまして、もしよろしければ冒頭自己紹介も兼ねてお話をいただければと思います。自己紹介含みで5分くらいでお願いできると大変助かりますが。よろしくお願いいたします。

○奥田委員 前回は予定が合わなくて欠席いたしました。奥田知志と申します。

 私は、主に北九州とか福岡、下関等で活動しておりまして、もともとはホームレス状態の方々の支援ということでやってきました。ただ、ホームレス支援と言っても、まさにきょうの議論の中身にもかかわるかもしれませんが、私たちが始めた30年前は、家がない、仕事がない、食べ物がない、こういうのをホームレスと言う状態だと。しかし、実際に個別のケースに当たってみると、例えば知的等の障害のある方が4割を超えていたとか、その人の中に本当に複合的な課題がたくさんありまして、結局は、ホームレス支援と言っても、ホームレスという人は存在しなくて、その人を丸ごとどう受けとめるかという包括的な支援の体制が必要だということでずっとやってまいりました。

 ですので、だんだん活動が広がっていって、ホームレス者の中で例えば低学歴状態の方が非常に多い。中卒云々という方が当初5割を超えていたということもあって、やはり子供のころからの課題。特に生育環境の課題が大きいなということを思いましたし、ホームレスにならないためにどこでとめるかということで、今、子供の支援等もやっていますし、あるいは障害の問題も、知的障害の方が多いのですが、40歳、50歳になって療育手帳を手にすると。これはあり得ないことでありまして、大体そういうのは小学校、中学校あたりで手当てをしなければならないことですが、そこをすり抜けて大人になっていらっしゃる。

 ある方は、手帳をもらったときに少し感慨深く手帳を見られていたので、どうしたのですかと言ったら、若いころから自分は何度も就職したけれどもうまくいかない。周りからは努力が足らないとか、おまえ、ばかかと大分やっつけられた。そして最後ホームレスになったのだけれども、自分は障害者だったのかということを40歳、50歳で知る。これは社会そのものの構造に抜け落ちた部分があるという考えになりました。

 そのようなところでずっとやってきましたので、今回のこの法律ができたときに、きょうの論点で言うと、「断らない」。断らないということは、縦割りで分野を横断的にやっていく。そういう窓口ができた、そういう対応のベースができたということで、今回この制度ができたことで、すごく大きな期待、希望を持っています。

 一方で、的を絞らないということの難しさも、この2年、3年見てきて、相当大変だなというふうにも思いました。

 ですので、今回審議会の部会のメンバーにしていただきまして、そのあたりのことをしっかりと議論できればなと思っています。

 特に今回のところで言うと、断らないということの論点に関しては、第一条の規定のところにもかかわると思いますが、「現に経済的に困窮し」から始まるのですけれども、やはり社会的な孤立の問題を全面的に出さないと。経済的困窮が50%課題として挙がっているというのは踏まえた上なのですが、一方で、情報共有のところでもそうなのですけれども、セルフネグレクトで、助けてと言ってこない人が実は最も課題がある人で、助けてと言ってこられない状況にある人をどうキャッチするかというのが、この法律、制度の一番の大きな課題でありますので、そこで言うと、経済的な問題に余り集約しないで、社会的な孤立ということをどう。法的には難しいかもしれませんが、法律上もある程度ちゃんと明記すべきだと思いますし、そこのところが断らないということの大きな柱になるかなと考えております。

 私からは以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続いて、菊池委員のほうからお願いできますでしょうか。

 それから、ほかの委員の方も続いてぜひ御発言をお願いしたいと思いますので、赤札のほうをシグナルとしてお願いいたします。

 菊池委員、よろしくお願いします。

○菊池委員 早稲田大学の菊池と申します。

 私は、法律学、社会保障法学という分野を専門としております。前回、自立支援の検討会のほうに入れていただきまして、いろいろ議論させていただきました。その際に御一緒させていただいた奥田委員、渡辺委員、その他の委員の皆様の現場にお邪魔させていただいて、大変勉強になりまして、本当に入れていただいてよかったなと、感謝申し上げます。

 法学なものですから、私の発言は硬いので恐縮なのですけれども、2点申し上げたいと思います。

 1つは、先ほどの奥田委員の御発言を受けてなのですが、29ページの「断らない」相談支援の実現に関してです。相談者を断らず、広く受けとめるという方向性に私も大賛成であります。そのためには、奥田委員からもございました生活困窮者自立支援法第二条の定義規定を見直すかどうかが論点になるかと思います。実際には施行規則の第二条2項で、「一定の収入、資産基準を満たす65歳未満の者に準ずる者」として、都道府県等が必要と認める者を対象者に含めているのですが、あくまで「準ずる者」とされている以上、収入や資産を全く考慮しないという扱いは、法令の枠外の対応、いわば法外援護と位置づけざるを得ないと思います。

 ただ、仮にこれは自治事務であるから、自治体の裁量に委ねられる幅が大きいという理解をするとしても、やはり法律の枠外の扱いであるということになると、支援、援助を受け得る法的な地位という面では弱いものにとどまることは否定できないわけです。

 実は、支援・援助と給付の関係をどう考えるかという点に関しては、非常に大きな論点があるのですが、きょうはそこは触れないことにいたします。

 そうしますと、経済的困窮という枠組み自体を広げる余地がないかが問われることになるのではないかということです。このことは、自立支援法を生活保護法と連続的なものと位置づけるのか、あるいは今年の社会福祉法改正に見られるように、地域共生社会における中核的な位置づけを与えるのか、という本質的な問題とかかわっています。ただ、恐らくこの点はどちらか一方の側に位置づけるという発想ではなく、生活保護法との関係、地域共生社会との関係、両方の要請をどのレベルで調整するかということになるのではないかと考えます。

 いずれにせよ、こうした作業は生活保護法の性格を従来よりも開かれたものにする契機になる可能性を秘めているのではないかと考えます。仮に自立支援法を生活保護法との連続性を重視するという方向で考えるとしても、貧困状態に陥ることの予防という面に着目すれば、経済的困窮にこだわる必然性はないということができるかと思います。

 もう一点は、24ページですが、自立相談支援事業につなげるための関係機関、自治体各部署間のネットワークの構築をさらに推進するという方向性には賛成であります。そのために関係機関や各部署間での情報共有を進めていくということについても、より積極的に取り組むべきであろうと思います。

 そうした取り組みを後押しするためには、24ページにありますように、現在、実施要領という行政の内部基準にとどまる支援調整会議の法的位置づけを改め、法令、できれば法律に設置根拠を持つものとし、構成員や守秘義務についても定めを置く方向での検討が必要ではないかと思います。

 ただし、本人の同意がない中でどこまでの情報収集、情報提供を認めるかということについては、慎重に検討する部分があるように思います。とりわけ納税情報に係る行政事務は、いわゆる侵害行政、公権力の行使に係る典型的な権力的行政作用であります。これは自立相談支援事業という広い意味での給付行政の場面とは本質的に異なる面があるということにやはり留意せざるを得ないと思います。

 やや哲学的かもしれませんが、国家と国民あるいは市民との間にはある面で緊張関係があるということに思いを致す必要があるように思います。これはソーシャルワークや自立支援の本質論にかかわるかもしれませんが、クライアントのためにという支援者の思いが本人の人権や自由、個人の生き方、あるいは身の処し方への必要以上の介入となり得るという側面は、やはり忘れてはならないと思います。

 ということで、私は、結論的には地方税法二十二条のハードルを越えるのは相当難しいのではないかと現時点では考えております。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 もう第二条の困窮者の定義について、さらには情報共有の法的根拠について、大変本質的な御指摘をいただきました。

 続けて議論を承っていきたいと思います。では、生水委員、よろしくお願いいたします。

○生水委員 先ほど菊池委員のほうからでました24ページの件について、私のほうからもお話しさせていただきたいと思います。

 議論1について述べます。お手元の資料の一番最後のページに野洲市の平成28年度自立相談支援事業の実績から連携をキーワードにデータをまとめたものをお出ししました。昨年1年間の新規相談者が179人で、1ページ、丸1の相談者の内訳を見ると、本人自らの来所、電話相談が49件。本人以外が133件と、本人自らの相談は全体の27%と少なく、このことからもアウトリーチの必要性がわかります。

 2ページの上段丸2をごらんください。紹介があった関係機関111件の内訳です。ひとり親家庭を支援する子育て家庭支援課43件、生活保護相談の社会福祉課15件と多くありますが、これはもともと生活困窮者とかかわりのある課であることと、資料の6ページの図にありますように、国の事業であるアクションプランを活用して、市とハローワークが生活困窮者を対象とした就労支援を一体的に行う協定を締結しまして、市役所内にハローワークを設置する事業を各課が有効活用しているからなのです。

 自立相談支援機関である市民生活相談課が対象者を絞るのではなくて、ひとり親家庭も生活保護受給者も各課がやすワークという就労支援事業を活用できるようにしたことで庁内連携が強化されました。

 成果は5ページにあります。特に昨年10月からは特定求職者雇用開発助成金の生活保護受給者等雇用開発コースに対応するために、やすワークを活用する人に対しては、全員生活保護受給者等就労自立促進事業の支援をハローワークに要請するように整備しました。

 これに対して、2ページの丸2の納税推進課、住宅課、こども課、保険年金課の合計17件については、税金や使用料の滞納相談に来られた市民に対してアウトリーチして、相談につながったものです。ただ、これは同意がとれた人のみであって、潜在的には生活困窮者をもっと把握しているものの、同意がとれず、つなぎ切れていないのが実情です。

 3ページの(3)は、日々の支援において連携する機関です。納税推進課63件、税務課25件、保険年金課60件、住宅課30件、上下水道課16件と、滞納情報を持つ部署との連携の頻度が多いことがわかります。

 相談者の滞納情報につきましては、本人の同意を得て担当課から情報提供を受けていますが、しかしながら、本人同意を得ることができないケースでは相談のアプローチができず、本当に歯がゆい思いをしております。

 例えば納税推進課からの相談で、税金、水道料金、給食費を重複滞納している世帯で収入状況を見ると、収入がとても少ない上、借金返済もあるようで困窮していると思うが、連絡がとれず、同意が得られない。そこで相談につなぐことはできないし、子供もいるので心配だと。

 また、自治会役員からの相談では、自治会費を滞納しているが、ひとり暮らしで地域とのつながりもなく、生活が心配だが、訪問しても拒否される。現場ではこういった悩むケースがあります。

 このように本人同意を得ることが難しいケースの場合、見守るという名のもと放置されてしまうおそれがあります。

 そこで、先ほど菊池委員からもでました、24ページにあります要保護児童対策地域協議会における個人情報を共有できる仕組みを参考にして、支援調整会議において必要な情報の交換ができるようにすれば、税務担当課を構成員にすることで、本人の同意がなくても、滞納や収入状況等の情報を把握することが可能になるのであれば、効果的な支援、アプローチが検討できるのではないかと考えます。

 税だけではなくて、福祉情報や医療情報なども含めて、相談者の命や生活を守るために支援者間で必要な情報を共有し、支援を具体的に協議できるよう整備することが非常に重要だと考えますので、支援調整会議の仕組みを個人情報が共有できる仕組みとして見直すということが必要でないかと考えます。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、小杉委員、その後、大野委員、よろしくお願いいたします。

○小杉委員 ありがとうございます。

 本質的な話があったところで周辺的なことで申しわけないのですけれども、私も情報共有が肝だと思っています。私の場合には若者の話になりますが、つい先ごろOECDのニートレビューということで、OECDから日本のニート政策についての提言があったのですが、向こうの言っているニートというのは、日本よりもちょっと幅広くて、失業者の方も入れば、専業主婦の方もニートなのですけれども、若者の支援をどうすればいいかというところで、一つポイントになって挙げられたのが中途退学問題なのです。中途退学問題というのはいろんな形で後々まで響いてくる。これは日本のデータでもそうなのですが、そこのところで早くどうキャッチするか。

 というところで、もっと学校との連携を強めてという話があったのですが、そこで一つニュージーランドの事例をお話しいただきまして、そちらでは2週間に1回ぐらい情報交換をしていて、これは教育担当の省庁レベルと社会サービス担当の省庁レベルで、一定期間の不登校状態、学校からドロップアウトしそうになる人の個人情報をそこで共有してしまう。アウトリーチをすぐかける。アウトリーチをかけてさまざまな選択肢を示す。

 今の学校ではなくて、違う学校とか、あるいは就労とか、幾つかの例を示す。そういったリーチをやっている。そういう組織的な連携が必ず必要ではないかという提言なのですが、多分この場合も全く同じだと思います。

 組織的な形の連携がなければ、さまざまな情報をあちこちから集めることもできないし、断らない支援というのも、断らないだけに、窓口が1カ所で済む話ではないので、組織的なバックがなければ1人の人がバーンアウトしてしまうに決まっていますので、そこをどうつなぐか。そういう意味では、情報を共有して、ほかのところの支援、社会サービス全体をその人に対して仕向けるような、そういう組織をつくる以外にはないのではないかと思います。

 そこで個人情報という問題がかなり大きく出てくるのだと思いますが、ニュージーランドの場合は学校在学中の子供の話なので、そういう意味では保護して当然みたいなことで出るのでしょうけれども、大人を対象にしたときに、どこまで個人のところに踏み込めるか。

 先ほど生水さんからありましたように、命にかかわるところだったら完全に踏み込めると思うのですが、そうではないレベルでどこまでというのが非常に微妙なところで、私としてはその判断はつかないのですけれども、できる範囲はもちろん個人の、最初に包括的な形で意見をと。個人の命にかかわるとか、子供であるとか、そういう幾つかの条件があれば、個人の同意がなくても介入する。そういう幾つかの段階を踏む必要があるのではないかなと思いました。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、大野委員、お願いします。

○大野委員 大野でございます。

 自立支援事業に生活困窮者をつなげる仕組みということで、まさに私たち民生委員の仕事の一番大切なところかと思います。まず、私たちは同じ地域に暮らしているわけですから、身近な生活圏域の中で生活に困窮している人を見つけて、そして寄り添い、必要な機関につないでいく。まさにつなぎ役に撤するのが民生委員だと思っております。

 また、この活動の中から生活困窮者支援を考えるときに課題になるのが、対象者と民生委員の信頼関係が一番大切ではないかと思っております。信頼関係ができていないうちに、どうもこの御家庭はちょっと心配だなと思ったときに、何か困っていることはありませんか、相談に乗りますよということを私たちのほうから言うということはなかなか難しい。そう言っても拒否されることが非常に多うございます。そのためにも民生委員として地域の中で長く活動を続けて、そして信頼関係をまずつくっていくのが一番大切だなと思っております。

 また、私たちの立場から考えますと、自立支援相談事業者などにつなげていくのは、まだまだハードルが近いのかなと思います。これは私のところなのですけれども、NPO法人が事業者になっております。そうしますと、民生委員とのつながりがないと、なかなか相談相手、つなぎ役とはなりにくいということが言えるのですね。現実としては困ったときの何でも相談と言っておりますが、地域包括支援センターにお願いして、また社会福祉協議会にお願いしてということになるわけです。

 まして、民生委員でも経験の浅い民生委員さんは、身近な圏域での相談相手として地域包括支援センターや社会福祉協議会の中につないでいく窓口が一つあると、つなぎ役にお願いしやすいのではないかと思っております。

 以上でございます。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続けて参りたいと思います。前河参考人、その後、勝部委員、さらに朝比奈委員、お願いします。

○前河参考人 前河でございます。

 大阪府という広域自治体の立場として御意見をお伝えさせていただきたいと思います。

 まず、断らない相談の支援に関連して相談体制のこと、情報共有のことについてお伝えさせていただければと思います。断らない相談支援の実現ということで、このためには相談体制の強化が欠かせないと思います。1つ目としましては支援員等の専門性の確保。2つ目としては必要な職員配置。3つ目としましては、対人援助業務に従事する上での理念、倫理形成が必要かと思います。4番目として相談員の育成、スーパービジョンの確保。5番目としては連携体制の確保。広域自治体の立場としては、広域自治体における管内実施機会の広域支援の位置づけの明確化とか、何らかの誘導策があれば、基礎自治体に対していろんな支援ができるのではないかと思います。

 その例としましては、法律上での位置づけやガイドラインの策定、広域自治体が広域支援をした際の補助率等の予算措置が有効でないかと考えます。

 自立相談支援体制のことですが、大阪府においても人員配置と相談件数の関係について調査しておりまして、自治体別に人口3万人当たりの相談支援の人数を見ますと、平均が1.08人、最も配置が少ない自治体では0.29人、最も配置が多い自治体は3人とかなり格差が見られており、新規相談件数、プラン作成件数におきましては、人員配置との弱い相関、就労支援対象者では相関関係が見られておりまして、職員配置の手厚さが支援内容の充実につながっており、対象者の方のお住まいの地域にかかわらず、必要な人に必要な支援を届けるためには配置基準の設定はぜひとも考えております。

 最後に情報共有のことですが、私は児童相談所で児童福祉司をしておりましたので、要保護児童対策地域協議会の構成員もしておりました。その中で菊池委員やほかの先生からの御意見も出ましたように、児童福祉法における法定協議会の設置や、あとは本人同意が得られない場合においても、先ほども御意見が出ましたが、生命の危険が予想される場合等、一定の条件を設定した上での情報共有とか守秘義務規定について、法的枠組みが考えられないかと考えております。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 勝部委員、お願いします。

○勝部委員 断らない福祉とか断らない相談ということで、昨日たまたまメディアのほうでも取り上げていただいて、我々のところのひきこもり支援などのお話が紹介されました。そのことに関連して全国から相談が我々のところに舞い込んできています。ひきこもりの相談ということになりますと、どこに相談していいかわからないという人たちが多くいて、これが自立相談支援機関のストライクゾーンの課題なのかどうなのかということ自体も、市民の方々やどこにも相談できないという人たちがわからないということがあります。「そういう相談もできるのです。」ということをお伝えしたり、それからそれぞれの自治体の相談支援機関の方々と連携をとってお話をさせていただく機会を持っています。現実は自治体の体制にかなり格差があって、相談に来てもらってもいいですけれども何もできませんと最初から言ってしまうような相談機関もありますし、アウトリーチは絶対できませんということを言われるところもありました。要は、この相談自体がまだまだ本当に知られていないということと、やっている内容についても自治体により相当格差があるということに課題を感じます。

 断らないということをやっていくということは、結局、出口を何とかつくっていくということを真剣に考えていかないと、相談には乗りますが聞くだけですという相談窓口がたくさんできても、御家族とか、本当に困っている人たちにとっては、聞いてもらったけれども何にもならないという話になりますので、そういうふうに考えると、丸ごとのところでしっかりとバックアップしていける自治体の体制が大切だと思っています。

 それから、先ほど来からお話がありましたが、相談員をどうやってサポートしていくのか、バーンアウトさせないための体制づくりもしっかりやらないと、断らないでしょと言われて、断っていないけれども何にもできませんという人たちが悶々として、みんなに責められる。今、まさにそういう状況になってしまっているのではないかなと思いますので、スーパーバイズ、フォローアップ、この方々をどんなふうにケアしていくのかという体制を、今回、断らない相談者の支援のところではしっかりと考えていただきたいと思っています。

 本当に困っている人というのは相談窓口に来られない。それからトリプルとかで働いていて、時間も平日の昼間の時間帯に役所の窓口まで来るなどということはできないという人たちがたくさんいる。ですから、土曜日、日曜日、場合によれば夜間、本人の時間に合わせて相談を聞かないと、休んでまで具体的に解決するかわからないような相談に乗ってもらいに来るという余裕はないということを感じます。

 そういう意味では、本当にアウトリーチをしっかりやっていける体制というのも考えていかないと、1人とか2人の体制の窓口で、その人が出てしまうともう誰もいませんという状況の中ではこれはなかなか成り立たないのだろうなということもすごく思います。

 もう一個が、先ほど個別事例で連携すると相談が上がってくるというお話があったのですが、要は、自立相談支援機関でどんなふうに支援につながっていって、その人たちがどう解決していったかということが見えてくると、あ、では、このケースも行けるのではないか、このケースも行けるのではないかということで、学校とかいろんなところからも相談がどんどん上がってくる。ですから、かかわりがある学校というのは、どんどん芋づる式にいろんな相談が上がってくるようになる。

 でも、その1本目にどうやって連携していいかがわからないということがよくあるのですけれども、これは個人情報を開示すればいいという単純な話ではなくて、どういう支援をしていくのかとか、私たちはどういうかかわりができるのかというのを、地域のつながりのある人たちのところにもうちょっとしっかりと伝えていく。支援をどうしているかということを共有していくような場面をつくっていかないと、ただ情報をどんどん集めては、こちらのほうで税を滞納している人がどうだこうだというのでもらって、何とかアプローチできるかという話ではないような気がしますので、自立相談支援機関の支援を周りの人たち、本人をサポートしているいろんな関係者の方々に我々がやっていることをもっともっと伝えていく。個別課題を調整するだけでなく、支援内容について共通していく仕組みがもうちょっとちゃんとできることが大事かなと思います。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 朝比奈委員、お願いします。

○朝比奈委員 朝比奈です。

 3つぐらい申し上げたいのですけれども、まず1点が個人情報の問題です。生活困窮者自立支援制度の実施主体は自治体であると思うのです。それはイコール自立相談支援事業機関であったり、主任の役割ではないだろうと。ですから、生活困窮の状態が心配される方々の個人情報を取り扱うのはあくまでも自治体であって、それがそのまま自立に渡されるわけではないということを前提に議論の整理を進めるべきではないかなと思います。

 私は、あくまでも委託を受けて主任として働いている立場ですけれども、基本的にはその人にかかわる情報で、ご本人の同意なくして得られた情報をご本人との関係で使うことは難しいと思っています。あくまでもご本人との援助関係の中で、例えばご家族から話を聞いていいかとか、過去に相談をした機関から話を聞いていいかという了解の中で、ご本人の想像を超えた情報が出てきたということはもちろんありますが、それはあくまでも了解の延長線で進められる話ですので、仮に自治体から自立相談支援機関に膨大な情報が渡されたとしても、ご本人との個別の関係でそれを使えるかどうかということは十分に押さえておく必要があるだろうと思っています。それが1点です。

 もう一つ、つながっていくとか、つなげていただくときの一つのハードルが法律の名称なのではないかなと思っています。ご本人にとっても生活困窮というカテゴリーには非常に抵抗があるということが一つ。もう一つ、つなぐときに、この人が困窮をしているかどうかというところで無意識のスクリーニングがかけられて、結果として断らない相談をということを標榜したとしても、そこに一定のスクリーニングがかけられた結果、一定の人たちが排除されているという状況があるのではないかなと。

 そういう意味では、奥田さんや菊池先生がおっしゃっていた定義とか対象をどういうふうに捉えていくか。名称まで含めてもう一度捉え直し、置き直しをして、理解を広げていくということが必要なのではないかなと思います。

 3点目は、学校からつながってくるときに、もちろんスクール・ソーシャル・ワーカーさんは一つの有効な社会資源だと思いますが、スクール・ソーシャル・ワーカーさんの全国の配置状況ですとか働き方などを見ると、非常勤で雇い上げていくというのが全国的にはおおむねの姿ですので、あくまでそれは機能として捉えて、学校の中にスクール・ソーシャル・ワーカーさんがいれば、そこに情報が集まってくるし、外部との窓口にもなり得るということですけれども、基本的には学校なり教育委員会ということをベースに議論を進めていくべきではないかなと思っています。

 そういう意味では、こちらの資料を拝見して、10ページ、学校からどういう子たちがきっかけとしてつながってくるかというところです。例えば子供の不登校とか問題行動というのは、あくまでも子供のSOS。ここについては、先生方、一生懸命着目しようとしていると思うのですが、学校に納付する費用の支払いのおくれ、このあたりは例えば事務の方々ですとか、情報の収集のレベルが違うのだろうと思っていて、そういう意味でも、どういうルートで情報を伝えていただくかとか、集約していただくかというのは、人なのか、組織なのかということにもきちんと着目しながら議論をしていく必要があるのではないかとっております。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、大西委員、その後、竹田委員、お願いします。

○大西委員 大西です。

 生活保護法による保護施設を運営している法人の代表者としては、今回の生活困窮者自立支援制度や、生活保護の見直しについて、前回の皆さんの取り組みや問題意識を伺った際に、これまで救護施設は地域のセーフティネット施設としての事業展開をしていながら、必ずしも十分にその役割を発揮できていなかったのではないかと感じました。そういった意味で、この部会に出していただいたことは大変ありがたく、勉強させていただきたいと思います。

 本日は、断らない相談について1点だけ申し上げたいと思います。当法人では地区社協とジョイントで自立相談事業をやっておりますが、現場職員には、この断らないということが大変プレッシャーになっているということです。支援の出口が見えない中で話を聞き、何かを始めなくてはいけない。それが一層相談員にとってプレッシャーとなり、心の負担になっているのではないかと危惧しております。

 先ほど前河参考人のご発言にもありましたが、相談員さんの質とか待遇とか、配置基準など、いろんな面でもうちょっと現場をよく見て考えてみますと、もちろん「断らない福祉」は理想の姿として、現場の相談員が直面している現実への心配もちょっとありまして発言させていただきました。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、竹田委員、お願いいたします。

○竹田委員 地域包括支援センターのほうで実践をしている中で、高齢者というカテゴリーの中で生活困窮とか虐待、いろんな相談が日々多数来ますが、実際支援を求めてこない方も多々います。先ほど来論点に挙がっています情報共有というところで言うと、資料の中でもあるのですが、情報共有ができやすいのは、結局、人がいるからなのか、それとも組織としての仕組みができ上がっているからなのか、それによっても今後の議論の形が変わってくるのではないか。個別の事例というのは、結局、人と人が、この人が心配だという中で情報をつないでいくということが大いにあるのではないかなと考えています。

 個人の同意が得られない段階においても、何で同意が得られないのだろうという探りを入れる中で、いろんなところで情報を細かいところまでは共有しないまでも、この人が窓口に来たら、この人から電話が来たら、どういった形で介入していこうかといったポイントとタイミングを探るということも日々やっているわけで、その中で、もしきっかけがあって窓口に来たら、もしくは電話が来たら、もしくは地域住民から相談があれば出かけていく。タイミングを図り、個人情報の壁はありますけれども、その人の生活をどう支えていくかといった視点と、一方で、自己決定というのがとても大切ですので、その兼ね合いをどうとっていくかということがあるのかなと思っています。

 もう一点、断らない相談。私もその理念については非常に賛成するところではあるのですけれども、先ほど来出ておりますとおり、余り強調し過ぎますと、結局、支援する側が抱え込んでしまったり、問題が放置されたり、または燃え尽きて、事態をより深刻にさせてしまうという帰来もあります。ですので、人材の育成、確保、スーパービジョン、組織の理解、もろもろの条件を整えていくという観点がどうしても必要ではないかなと考えています。

 ここに挙がっていない論点として、町にいる立場として申し上げますと、結局、福祉事務所を設置していない町村についてどうするのかというところも考えていかなければいけないのかなと思っています。1,700を超える自治体の中で半分ぐらいは福祉事務所を設置しておりませんので、その中で自立相談支援ですとか個別支援を通した地域づくり、そういったものを、今、理念として進めている「我が事、丸ごと」の地域づくり、市町村が包括的な相談支援を担っていくとか、住民主体の地域づくりを担っていくといったことを全国どこの地域であっても、町であっても、村であっても進めていける。そういったところも今後検討していく必要があるのではないかなと考えているところです。

 私からは以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、伊藤参考人、それから平川委員、お願いします。

○伊藤参考人 川崎市でございます。

 この間、相談者をつなげる仕組みとか情報共有の仕組みについて議論になったと思いますけれども、別の視点から所感を申し述べさせていただきたいと思います。

 前回、川崎市では川崎らしい地域包括ケアシステムの構築ということで、本市では高齢者だけではなくて、地域の障害者あるいは子育て世帯、生活困窮者を含めて、支援を必要とする人全ての地域住民を対象にチャレンジングな取り組みをしているということを御紹介させていただいたと思うのですけれども、そうした中で、もちろん私どもも自立支援の相談機関側からのアプローチはあるのですが、そういった全体観からのお話をさせていただきたいと思います。

 川崎市には7区ございますが、各区役所に地域みまもり支援センターを設置いたしまして、その職員が担当する、主に中学校区レベルの範囲にみずから出向いて、まさに課題の発見、そして出ていった職員だけでは自己完結できませんので、必要な部署につなぐということを行政の職員だけではなくて、地域の民生委員さんですとか、町内会、自治会、あるいは地域包括支援センターとか、そういった方たちとのネットワークの構築をして、さまざまなチャンネルでさまざまな課題を発見する。

 これまで行政ですと、生活保護担当であればそちらという形で、どうしても縦割りになってしまいますが、例えば先ほどの資料28ページ、これは生活困窮の方たちの相談内容だと思いますけれども、当然生活的困窮が一番多いわけですが、病気ですとかメンタルヘルス、ホームレス、障害、ひとり親等々、さまざまな複合的な要因があって、行政ですのでそれぞれ担当セクションもございますし、それの根拠となる法律もあるわけでございます。それぞれのセクションがそれぞれで受けとめると、自分たちの所管でない複合的な要因を受けとめざるを得ないということで、それはそれでいいと思うのですが、自分の所管でないから関係ないということでなくて、まず一旦受けとめる。そして自分のセクションであれば当然対応しますし、違う専門セクションについては、そこにつなぐということを行政だけではなくて、地域ぐるみでやっていこうという取り組みをしております。

 それが最終的には要対協のようにチームで相談したほうがいいのかということになると、これは理想的だと思うのですが、法律も違うという中では、個別の一つ一つの課題に対して丁寧に対応していくということが実態ではないかと思います。

 こうした取り組みを地域包括ケアという全体観から見ますと、もっと進めると、究極は自殺対策基本法に基づいて本市でも条例をつくり、自殺予防の取り組みも行っているわけですけれども、生活困窮に伴うこうした要因というのは、ある意味では自殺の危険因子を内在していることにもつながっておりまして、自殺予防というのは究極の表現かもしれませんが、お一人お一人の抱える課題といったものは本当に複合的なものがあるので、それをいかに多くの専門セクションが情報共有しながらやっていくかということが重要ではないかなと。ただし、もとに戻りますけれども、その情報共有の仕方も、税の情報も含めて、なかなか壁があるということはあわせて申し添えたいと思います。

 以上でございます。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 最後になりますが、平川委員。少し時間も押しておりますので、その点も御配慮ください。

○平川委員 自立相談支援事業に関して、体制の確保、人材確保の観点、財源をどうしていくのかという観点について発言させていただきます。連合が関わっている事業体に、労働福祉協議会というところがありますが、その中で自立相談支援事業を受託して事業をやっているところがあります。そういうところから話を聞きますと、やはり体制の確保や人材、ケースワーカーのスキルの向上ということもかなり重要だということが言われております。この辺が十分でないと出口の見つからない相談が累積をしていってしまっているという危機感が大変高まっていると認識しています。そのためにも質と量、支援員のスキル、十分な配置のための財政的な措置というのも引き続き検討していく必要があるのではないかなと思います。

 そういった中で、35ページの支援員の配置基準の設定というところがありますが、事務局のほうに質問です。もしもやるとすれば、配置基準の設定というのは、どういう位置づけの配置基準を想定しているのか。もしくはその財源措置をどう考えているのか。基準を設定すれば、多分財源もついてくるのではないかと思いますけれども、その辺をどう考えているのか。今、考えていることがありましたら教えていただきたいと思います。

 それから、自立支援で重要なのは本人起点の支援です。本人に着目してそれを改善するということが重要かと思っています。数値目標が、5ページに新たな評価指標ということで出されております。これは重要でありますが、中にはアセスメントに進まないで面談だけ、情報提供や相談対応だけで解決する方もいますが、一方で、他の制度、機関につなぐことも極めて重要だということもありますが、本人起点、本人本意の支援をどうやってつくっていくかということについて、目安も必要でありますけれども、そういう視点でも重要ではないかと思います。

 相談支援事業は、住居確保給付金以外は給付の仕組みがありません。ですから、貸付とか、場合によっては生活保護につなげるということも重要だと思いますが、食料費であるとか交通費、病院代、携帯電話費用などの支援があると支援に結びつきやすいということもありますので、他の制度とのつなぎ、連携というのが基本でありますけれども、支援につながる給付の仕組みについても場合によっては検討してもいいのではないかと思っているところであります。

 最後に、人員の関係で先ほど少し意見がありましたが、スクール・ソーシャル・ワーカーや支援員の処遇の関係でありますけれども、雇用形態が非常勤職員、有期という問題もありますので、質の確保、専門性の確保という観点からも正していくということも重要ではないかなと思います。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 この後、就労支援の議論に入る段取りでございますが、石橋委員が12時前後の御退席を予定されているということで、この段階で自立相談支援、就労支援、どちらでも構いませんが、御発言がございましたら承っておいたほうが確実かと思いますが。

○石橋委員 就労支援の説明がなくてもいいのですか。それが終わってからでいいです。

○宮本部会長 わかりました。

 では、就労支援の御説明をいただいて、その後、参考人の方からお話をいただく前の段階で一言お願いできればと思います。

 どうもありがとうございました。

 今、大変多くの大事な御発言をいただきまして、情報共有につきましては、生水委員から自治体の現場での有効性について。大野委員から民生委員のお立場で情報共有を通した信頼の形成の大事さ。ところが、それがまだ確実にでき上がっていない現状についてお話がありました。小杉委員のほうからは、教育という現場を含めて情報共有の場を広げていくということについてお話がございました。さらに、勝部委員のほうから、情報そのものではなくて、支援のあり方の共有ということの大事さについてもお話がございました。

 他方で、菊池委員から人権、市民権という観点からこの問題を考える上で、配慮するべき点について大変大事な御発言があり、竹田委員のほうからは働きかけ方の問題ではないかというお話もあって、このあたりが2つの問題を組み合わせていくポイントなのかもしれないと思いました。

 前河委員、福田委員いや伊藤参考人からは、広域都道府県の立場あるいは基礎自治体の立場からこの問題に対して示唆的なお話もいただいております。

 さらに、断らない支援ということに関連しては、勝部委員のほうから出口がまず求められるのではないか。それがないと、大西委員のほうからは、これがプレッシャーに転じてしまう可能性もある。あるいは朝比奈委員のほうから、見えないスクリーニングが働いている可能性がありはしないかというお話もございました。

 このあたり、いずれも本当に相互に深く連関した大事な御発言が相次ぎましたので、これを次回以降の議論に継承していく必要があるのではないかというふうにも思います。

 それでは、まず事務局から就労支援のほうの御説明をお願いできますでしょうか。

○本後室長 それでは、資料2「就労支援のあり方について」でございます。こちらも若干飛ばし飛ばしで参りますので、恐縮でございます。

 2ページ目の生活困窮者の就労支援、3ページ目の生活保護の就労支援はほぼ一対の形になってございます。

 4ページ目は、生活困窮者と生活保護の就労支援を一体的にやっているというところを見てみますと、右側のグラフですが、大体半分ぐらいが一体的にやっているという状況でございます。

 それでは、次から生活困窮者に対する就労支援という個別の課題に入ってまいります。

12ページ目は就労準備支援の状況でございます。効果について、先ほど自立のところでありましたステップアップの状況を見てみますと、「就労準備支援事業の利用あり」というところで見ますと、意欲・関係性・参加に関する状況は、開始7カ月で70%ステップアップが見られる。

 就労に関する状況は、「就労準備支援事業利用あり」で見ますと、60%のステップアップが見られるという状況でございます。

13ページ、14ページ、15ページは、実態面からこういう効果が見られるということを整理させていただいております。

16ページ目をお開きください。これは就労準備支援事業と自立相談支援事業。就労準備をやっていない事業所で自立相談支援事業をやっている支援内容を比較したものでございます。枠で囲ってございます、ボランティア、職場見学あるいは就労体験、そういったところについては、就労準備支援事業ではやっているけれども、就労準備をやっていない自立相談支援事業ではなかなか実施率が低いということで、就労体験先の開拓など、人手のかかる支援については就労準備支援事業だからこそ取り組めていると考えられます。

17ページ目、就労準備を実施していない理由ということで言いますと、赤の部分は、利用ニーズはあるものの人数が少ないために事業化しにくい。緑の部分は、利用ニーズはあるものの自立相談支援事業で対応可能である。そういったところを含めて大体半数ぐらいということになってございます。

19ページ目、就労準備支援事業に関しましては、対象者の要件が法律上定められております。一つは年齢の要件、これは65歳未満。それから資産・収入の要件がございます。この他、「自治体の長が必要と認める者」ということで、準ずる者という要件がございます。ただ、準ずる者という要件は、自治体でなかなか運用が難しいということもありまして、左側のグラフ、適用なしという自治体が大体6割を占めているということでございます。

20ページ目は、大阪市さんで、広域の就労支援をやっていただいているという例でございます。

21ページ目は、先ほどの年齢要件に関連いたしまして、高齢者の就労支援について、6064歳あるいは6574歳というくくりで見ましても、かなりの数の方が一般就労をプランの作成の中に入れております。

22ページ目、雇用保険について見ますと、これは昨年の法改正で、ことしの1月から施行されています。一番下の箱ですけれども、65歳以降に雇用された方についても雇用保険を適用するという取り扱いになっております。年齢要件はこういったことを踏まえてどう考えるかということが論点になろうかと思います。

 続きまして、認定就労訓練事業。中間的就労という部分でございます。

25ページ目、左の上に昨年12月現在の認定件数がございます。781件ということで、これは全国ですので、ならしてみますと、各自治体、多いとは言えない状況になってございます。

28ページ目をお開きいただきますと、認定就労訓練事業を利用すべき方がいるのに利用しなかったという自治体さんに理由を聞いてございます。一番多いのは、本人が通える範囲内に認定の事業所がないということで、件数の少なさということがここにあらわれているかと思います。

 認定取得を断られた場合の理由ということで、申請手続の面が面倒、就労支援担当者を置く人的余裕がない、助成金などの直接のメリットがない、こういったお答えが多くなっている。このあたりが課題というところでございます。

29ページ目、経済的支援に関しては、税制の優遇ですとか優先発注がありますが、利用はまだ多くないというところ。

30ページ目については、先ほど人的な配置の話がございましたけれども、事業者に対する技術的支援をどうしていくかということで、モデル事業を開始しているということでございます。

32ページ目、無料職業紹介というところでございます。これに関しましても、昨年の職業安定法の改正で地方版ハローワーク、手を挙げれば自治体は無料職業紹介ができるという形になってございます。支援の中で見ますと、就労体験の中から一般就労につなぐという一貫した支援でありますと、無料職業紹介を実施していない場合には事業者が自発的に求人を出していただく必要がある。無料職業紹介ができますと、ここはスムーズにつながってくる可能性があるということでございます。

 困窮者については以上です。

○田中推進官 引き続きまして、33ページ以降、生活保護の関係でございます。時間の関係上、簡潔に説明させていただきます。

34ページに平成25年の法律改正の概要がございまして、赤枠の中が就労関係の改正事項ということで、被保護者就労支援事業の創設ですとか、就労自立給付金を創設したということでございます。

35ページから事業の実施状況でございますが、今ほど申し上げました被保護者就労支援事業のほか、ハローワーク等でも事業を行っていますので、その実績でございます。数字についてはごらんになっていただければと思いますが、一番右が保護費の削減額ということで、133億円となっております。

 一番左の事業費ですが、生活保護関連を足し合わせますと大体100億超ということですから、一定程度の効果があるということと、また、133億円という数字は、単年度でございますので、継続的に毎年度ベースではこの額を上回るということも見込まれるということで、一層就労支援事業を進めていくということでございます。

38ページ、39ページが就労自立給付金についての資料でございます。39ページに実績がございますが、保護廃止世帯数の大体4割程度がこの給付金を支給しているということで、一定の効果はあると考えておるわけですが、国と地方の協議の中でも脱却までの期間が長い人のほうが給付金の額が大きくなるとか、そういうデメリットも指摘されておりまして、制度について少し改善が必要かなと考えております。

42ページは政府の改革工程表になっておりまして、KPIとしては、右から2番目の赤枠にございますような就労支援事業等の参加率を2018年度までに60%にするという目標が掲げられております。現在35.8%ですが、これを60%にする。

 具体的にはどうしていくかというと、まず43ページに事業の実施状況。これは都道府県ごとのデータでございますが、高い県と低い県との間に35%の差があるということで、取り組み状況がまちまちという現状がございます。

 したがいまして、44ページをごらんになっていただきまして、一番下の青枠の中に書いてございますが、今年度取り組みの好事例を収集しまして、就労支援の実施状況やその効果について調査・分析を行って、効果的な支援のあり方を類型化して、自治体周知を図っていくということを一つ考えております。

45ページ目、事業に参加していない方は21.8万人おります。就労中の方が12万人、ハローワーク等で求職活動中の方が6万人いらっしゃいます。ただ、こういった就労中の方でも就労支援事業への参加によって増収が図られたり、より効果的に求職活動を行うことができる方もいらっしゃるということも考えておりますので、下にございますような毎年やっている調査について調査項目を追加しまして、目標設定に反映させて、事業参加率の向上を図っていきたいと考えております。

○本後室長 続きまして、47ページ目、特に御議論いただきたい点ということでございます。就労準備支援事業につきましては、論点整理の検討会の中でもまとめていただきました、就労準備支援事業の必須化についてどう考えるか。視点といたしまして、必要とする人はどの自治体にもいるが、自立に向けて対応できているか。あるいは対象者が少なく事業化しづらいということに対して、どういう工夫があるか。自立相談支援事業との関係をどう考えるか。支えられる側の人が支える側に回るという観点の支援としてどういう位置づけを考えるか。そういった視点があろうかと思います。

48ページ目、同じく就労準備支援事業に関しまして、対象者(年齢、資産要件)についてどう考えるかという視点でございます。

 認定就労訓練につきましては、箇所数をどうふやしていくのか。一つは、認定申請の方法ですとか事務のあり方。一般市や町村が認定にかかわる仕組みが考えられないか。それから経済的支援、技術的支援のあり方をどう考えるか。

49ページ目、無料職業紹介事業。先ほど申し上げたようなメリットも踏まえまして、無料職業紹介事業の全国での実施促進をどのように考えるか。

 生活保護に関しましては、就労支援事業等について、事業参加者の増加、就労増収率をさらに向上させていくためにはどのような取り組みが必要か。こういった点について御議論をいただければと考えてございます。

 以上でございます。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 先ほど平川委員のほうから自立相談支援の配置基準について御質問がありました。この点、いかがでしょうか。

○本後室長 方向性等々を検討している段階ではございませんけれども、やり方といたしましては、例えば法律上に何らかの根拠を設けて、それに基づいて省令等々で基準を設けるというやり方もありますし、今であれば補助基準単価を予算の中で決めておりますので、予算の要綱等々の中で何らかの基準を定めていくという方法があろうかと思います。

 決め方につきましても、最低基準という形にするのか、あるいはガイドライン的なものにするのか、そういった基準の厚さ、厳しさみたいなところの軸もあろうかと思います。これはいずれにしてもこれからの御議論かなと思っております。

○宮本部会長 平川委員、よろしいですか。

○平川委員 はい。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、参考人からお話を伺う前にはなりますけれども、石橋委員、いかがでしょうか。

○石橋委員 御配慮いただきましてありがとうございます。

 全国の町村を代表して参加しているわけでありますが、この問題を考える場合に前提があって、きょう参加されている川崎市さんのように150万人都市と、全国の町村というのは、それこそ500人ぐらいの規模から数万人の規模なのです。ですから、その実態が異なるということが大前提になるのだろうと思います。

 私は島根県なのですが、島根県もこの問題について、町村長に意見を聞いたわけでありますが、なかなか取り組んでいないということです。ただ、就労準備支援事業そのものは必要性を感じているわけですが、取り組んでいないさまざまな原因なり隘路があるのだろうと思います。

 一つの問題は、そもそもこういった需要が少ないということで、事業として成り立ちにくいという問題があります。2つ目には、補助金交付の対象外にほとんどなっているということで、交付額の下限に満たないということでございます。30万円という問題。3番目には、小規模自治体の場合、何をやるにしてもマンパワーが不足しているということ。さらには受け入れる側の事業所そのものが少ないというところがある。

 そういった問題を含めてなかなか進んでいないわけでありますが、ただ、私の町、邑南町は、事業そのものはやっていませんけれども、必要性を感じているということで、例えばこの事業を委託している社会福祉協議会とか、あるいは福祉事務所も設けていますが、そういったところから相談があると、町に設けております無料職業紹介所につなげまして、ほとんどの方が何かの仕事についていただいているということでございます。

 いずれにしても、今、言ったような隘路というものを変えていかないと全国的に広がっていかないのではないかなと思っておりますので、今からやろうとされている任意事業についても何か支援ができるような仕組みづくりが前提として必要になるのではないかなと思っております。

 補助金交付の要件もできれば見直しをいただきたいなと思っております。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 今、石橋委員からお話があった小規模な自治体のケースと、先ほど私、伊藤参考人のことを福田参考人と呼び間違えてしまって大変失礼をいたしましたけれども、川崎市のような基礎自治体のケース等を丁寧に区別しながら、それぞれの事情を考えながら議論を進めていきたいと思います。

 私の不手際でお待たせをしてしまいましたが、冒頭来御案内があったように、この後はお二人の参考人の方から就労支援をめぐる豊富な経験についてお話を伺っていきたいと思います。

 それでは、浅川参考人からお願いできますでしょうか。

○浅川参考人 こんにちは。NPO法人コンチェルティーノの理事長をしています浅川です。きょうはよろしくお願いいたします。

○宮本部会長 お二人の経歴等につきましては、お手元に紹介したペーパーも用意してございますので、ごらんになってください。失礼しました。

○浅川参考人 私たちは、障害のある人とともに働く場をつくり出していくという団体です。2ページ目には設立趣意が載っていますので、ごらんになっていただきたいと思います。障害者の自立支援法ができて、地域の中で暮らしていくということになったときに、地域の中で元気に暮らしていくということは、働く場がないと。親はいつまでもいませんし、学校を卒業した後、働いていけなくては元気に暮らしていくということはできないだろうということで、身近な地域で障害のある人もない人も一緒に働いていける場所があったらいいなということで、まちづくりの活動の中でずっと考えていたのですけれども、実はこの法人がスタートしたのは、せっぱ詰まっている障害のお子さんを2人お持ちのお母様からの相談からでした。

 重度の知的障害でしたけれども、学校を卒業して、支援センターでは2年ぐらいしかいられなくて、その間に就職口を見つけないといけないということで、もうほとんど時間がないと。私は生活クラブ生協というところの理事をしていましたので、その中で働けないかという相談だったのですが、その時点ではその中で働く場所がなかったものですから、では、つくりましょうということになって、考え出したのがこれでした。その当時、日常清掃のことが話題になっていましたので、その施設の清掃をさせていただくところからグループが始まりました。

 3ページ目、2009年9月に任意団体としてスタートし、2013年にNPO法人化して、2013年8月にはワーカーズ・コレクティブに登録したというところです。

 私自身も素人ですし、何の資格も持っていませんので、この団体を立ち上げるときに、障害者のことを考えるというと、専門家でないとだめなのではないかと思う人と、普通の人にできるのということをすごく多く聞かれ、でも、障害を持っている人の親も兄弟もお友達、かかわっている人の多くは素人で専門知識はないのだろう。でも、その人にずっと寄り添って知ることで成り立っていくのだと思うから、一緒にやっていくと何とかなるのではないかということを思って、勇気を持っていきましょうという話で、しました。

 けれども、ある1人の人生を預かることにもなるので、働く場をつくっていくときに、そこをやり始めたけれども、つまずいてしまってできなくなってしまったから、やめましょうという訳にはいきません。それでいろいろな専門知識を持った方々にも協力を得て、道に迷わないようにしましょうということで、3ページ目の下に現在の理事メンバー、それぞれの専門知識を持った人たちにも声をかけて一緒にやっています。

 4ページ目がスタート当初に考えた構想図ですけれども、それがそのまま今の事業の組織になっています。事業所名はちょっと変わった名前なのですが、時間もない中、恐縮ですけれども、コンチェルトは協奏曲で、皆さんご存じと思うのですが、コンチェルティーノは、それより少し自由で楽しげな小さい楽曲、協奏曲です。1人の人を対象にしたとき、その人が人生の主人公で周りにいる人たちは共演者とか脇役だし、脇役だった人の人生を考えれば、そのほかの人が脇役だし、ピアノのための協奏曲とか、バイオリンのための協奏曲とかありますが、ある1人の人のために周りにいる人がみんなで力を合わせて、お互いに豊かな人生になるようにしていきたいなということでこの名前をつけました。法人が「コンチェルティーノ」と音楽の関係ですので、事業も「マーチ」とか「ぽるか」とか「ワルツ」というふうにつけて、この事業を進めています。

 ここを長く説明すると時間がなくなりますので、読んでください。

 相談caf éというものを月1回していて、カフェ事業はこれからです。今、部分的に業務委託を受けてやっていますが、3年ぐらいの中期計画で、コミュニティーcaf é設立に向けて動き出しているところです。

 今年度からは相談caf éのところにもう一つ、法律相談を入れようと思っています。無料法津相談。生活困窮者就労訓練事業所になったので、債務整理をしないといけない人とかいろいろ難しいことが出てきます。幸いにも顧問弁護士になってくださる方が見つかりまして、その方にもお力をかりて始めていきたいと考えています。

 ずっと飛ばしますけれども、私たちの掃除の特徴は合成洗剤を使わないというところです。環境に配慮した石けん類、重曹とかそういうのを使って全部やります。またもう一つの特徴としては、大きな機械を使わず、人手がなるべく要るようにしています。たくさんの人がかかわれるように手仕事でやっております。

20ページ、21ページは、てしごとワルツの事務所です。ワルツ工房と書いてあるのは、これはとても古い写真で、人も少ないのですが、サロンをしたり、封入作業をしたりしている様子が載っています。

 次のページに、今、私たちが行っている実習システムと賃金と就労状況が書いてあります。最初に面談をして清掃の実習に入っていただきます。大体3カ月1クールで、この実習の間は週1回、2時間程度なので、交通費程度を支給させていただいています。それが終わった後に本人と支援者とコンチェルティーノで面談を行って、次、どういうふうにしていくかというふうに決めます。対価とかも下に書いてございますので、ごらんください。

 障害があるなしにかかわらず全員同じワーカーズ、アルバイトとしての単価です。ワーカーズというのは協同組合的な働き方ですので、運営にも参加する。本人がお仕事もするし、運営にも参加するという人です。それにまだ踏み切れない人は一定期間アルバイトでいるということもあります。

 メンバー構成は、ごらんください。当初スタートしたときには、知的障害の男性と精神障害の女性と私たちと一緒に始めて、その後、関係機関とかいろいろなところから入られた方がこれだけいます。アルコール依存症の人とか発達障害の方もいますし、生活困窮の方もいます。

 外部に就労された方もいますが、ここでしばらく働きたいという人がふえています。私たちは、最初は支援機関になろうと思っていました。働き場を持ちながら、そこの実習を終えたら一般就労につなげていこう、一般企業につなげていこうというふうに最初は考えていたのです。でも、始めてすぐにこれはそういうふうにはいかないと思いました。その人が自立していくのにものすごく時間がかかります。ですから、長いスパンで考えないと、その人が本当に自立していくことは難しいのだなと思いましたので、自分のところをみずから働く場にしようというふうに考えました。お掃除に向かない人もいますので、自分が希望するような職種のところにもなるべく機会があれば紹介したり、そこへちゃんと行けるようにという支援はしています。支援機関ではないですが、支援もしながら一緒にやっています。

 働くことの効用ということでは、社会参加しているということで精神的に安定してきます。それから対価を得ることで生活が安定する。これは当たり前のことですが、精神障害、知的障害の方々も生活保護を受けている方がとても多かったです。生活保護と併用されている方がとても多いですが、その中でも3~4人は保護から脱却して頑張っているということです。

 仲間意識。ともに働くということで仲間意識が芽生えます。また、作業終了後には必ずミーティングしたり、サロンでいろんなことをしますので、最初は下を向いて何も話さなかった人が、何カ月後には自分の考えをしっかり発言するようになります。今のうちの清掃のチーフは7年ぐらいひきこもりだった人ですが、今では新しく入ってくる実習生の清掃指導員になっていてとても丁寧な指導をしてくれています。最初はぜーぜーはーはーしていたとか、下を向いて全然話さなかったという経験を新しく入ってきた実習生の人に話しながら、それでもこうやってなれるのだよという感じを見せながら、そういう役割を果たしてくれているのはとてもいいなと思っています。

 下に書いてありますが、必要に応じてその人を取り巻く支援者、医療機関も含め、ケース会議をします。その人が毎日働きたいと希望しても、体がついていけなかったり、精神面でついていけなかったりすることがありますので、みんなが意見を出し合って仕事量を決めたりする場合もあります。ただ、なるべく本人の希望をかなえてあげるように一歩踏み出すということはしてもらっています。一歩踏み出しても、それが大変だったら一歩下がってもいいのだよということを言いながら、増やしたり減らしたりしながら自分の仕事量を安定させていっているというところです。

 主な支援機関と書いてありますが、今、障害者就労支援機関と生活困窮者就労支援機関とつながっていて、そこから紹介される方が多いです。

 「うれしかったこと」で御紹介していますが、最初に入った精神障害の人は全く声が出ない状況でした。ずっとお仕事とか話も全部筆談でやっていましたけれども、2014年に声が出たので、これは本当にうれしいことでした。メンバーみんなで喜びました。この1人の人のことを考えてもこの仕事を始めてよかったなと思った瞬間ですので、これは載せてあります。

 これも声の出ない自分を受け入れて働かせてくれた、一緒に働けたということがとても自信になって、その中でいろんな人と出会うことで心から話したいと思ったことがきっかけですので、働く場があるということはとても大事なことだなと思っています。

 今後の目標というのは、私たちの目標ですので、見てほしいと思います。

 最後のほうに「生活困窮者就労訓練事業の取り組み」ということで、ちょっとまとめさせていただきました。この事業の取り組みのきっかけは、2014年4月に法律が施行されまして、世田谷区のほうから事業者にならないかということでお声をかけていただきました。

 事業内容を見させてもらったら、私たちが今やっていることと余り相違がなく、特別に何かしなければこの事業者になれないということでもなかったので、申請するということにちゅうちょは余りありませんでした。

 現在は受入人数が20名になっております。先ほどから断らない支援というのがありましたが、私たちも断らないので、いつの間にか20名になっておりました。これは困窮者の支援機関からの受入人数ですから、ほかに障害の関係からもいるので、最初の2人からとてもふえました。男性が少し多いです。年齢は20代から70代まで。障害とかいろいろ問題を抱えている症状もとても幅広いのですけれども、年齢もとても幅広いです。20代と70代の人が一緒のところで働いていると、本当にほほえましいというか、孫と一緒に働いているような。私も70代に近いですが、とてもいい関係が築けています。

 特徴的なのは、就職口を見つけているというのは40代が結構多いです。障害関係のほうも40代が多いですし、どういうわけか困窮者のほうも40代が多いなと思っています。

 この事業で必要ではないかと思われる支援ですが、実際に下に書いてある2つは、困窮者の受け入れを始めてから必要だったことです。ホームレスだった方とか、先ほどごみ屋敷の話が出ましたが、おうちはあるものの、おうちの中がごみだらけみたいな方は、衣服にそのにおいがついてしまうのです。それからお風呂もなく、洗濯機も置けないというおうちに住んでいる人も結構いるので、なかなか洗濯もできていないという状況の人が多いです。まずそこから直さないと、お掃除現場でもクレームが出たりしますので、お洋服の着がえの用意とか、洗濯をするとか、そういう支援が必要になりました。

 まだ若くて元気だという人は、生活保護から脱却しようと努力するのですが、脱却した途端に体を壊したり、少し休みが多くなったり、経済状況が不安定になるということがあるので、その辺は少し支援しないといけないので、そういう制度があったらいいなと考えております。

 これからの課題というところでは、これも先ほどから出ておりましたので私が言うほどのことでもないのですが、障害者の就労支援をやっていても生活困窮者の方はたくさんいますし、それから逆、生活困窮者のほうの機関から紹介された方の中にも障害のある人はたくさんいて、あとは障害にならない方も多いです。睡眠障害で、午後2時過ぎから2時間程度しか働けないという方もいますし、首が回らない、腰が回らない、しびれているけれども麻痺ではないので障害の認定を受けられないので、福祉の関係ではお仕事できないという方とか、そういう方がたくさんいらっしゃいます。ほんの少しずつでも働く場、参加できる場があるととても改善していきますので、そういうところが地域の中にたくさんできるといいなと思っています。

 そういうことなので、障害者自立支援も困窮者自立支援も一緒に考えていかないとだめだろうと思いますし、あと、先ほど年齢を見ていただきましたけれども、若い方もいますので、若者自立支援、就労支援の人たちともつながって、みんなでネットワークを組んでやっていくと地域の中にいいものができるのではないかなと思っております。

 以上です。

○宮本部会長 どうもありがとうございました。もっともっと聞きたい気もするのですけれども、短い時間で申しわけございません。今のようなお話を聞くと、就労訓練事業がとてもうまくいっていると誤解するまではいかないのですが、あくまでベストプラクティスということで、どうすればこういうふうに持っていけるのかというところを後で御議論いただければなと思います。

 続きまして、工藤参考人のほうからよろしくお願いいたします。

○工藤参考人 ありがとうございます。貴重な時間をいただきます。工藤と言います。

 今回事務局のほうから就業支援における実践の概況と企業連携、連携における配慮、その他工夫ということで、本日、企業もしくは法人との連携のところに絞ってお話をさせていただきたいと思います。

 就労支援をしていますので、一つの目標としては、仕事につくということ、御支援を差し上げているわけですけれども、2つ原体験がございます。

 1つは、支援を差し上げている若い人たちを企業にある種売り込むわけですが、そんなにすばらしいのだったら、自分のところで雇えばいいではないかと言われたことが原体験のひとつです。雇うということはとても負担があるので、簡単にお願いをしてはいけないものだということが、もう十数年前ですが、ありました。

 もう一つ、企業さんにいろいろ行くのですけれども、非営利組織の人だけではないのですが、御提案の際、99%自分たちのことしか言わない、私たちのことは聞いていただけないのでしょうかと言われたことが非常に大きな原体験になっております。

 現状、基本的には若い人の就業支援をしておりまして、まさに生活保護受給者や困窮家庭、また一般家庭の方、特に出自は問わず御支援を差し上げているのですけれども、障害者のお手帳を持たれている方は、私たちの法人としては受けることはなく、よい事業所を御紹介するということで専門のところにおつなぎをしているということになっています。

 今までは比較的ひきこもっていたり、障害特性があったり、やや内向的な人たちを中心にやってきましたが、ここ3年ほど少年院の内外、中に入って御支援と出てきた方の受け入れ、及び高校の中に入り関係をつくりながら、3月、進路未決定の手前で仮登録をしていただいて、4月1日と同時に本登録をしていただくような、高校の中と外をつなぐようなことも実装しております。

 最近では高校の進路の中に就職何名、進学何名、私たちの事業所何名といったように、進路として位置づけていただくことによって、必ず就職、必ず進学でなくていいのだ、就労支援先につなぐことも生徒にとってすばらしい進路であるということを、校長先生の決裁で認めていただきまして、それがゆえに先生方との連携もうまくとれるになってきたという事例も持っております。

 資料もかいつまんでということになりますが、3ページ、私たちのほうで目指すものとありますが、ポイントとしましては、ここで何度も御議論されていると思いますが、所属をつくるということが大事だということが1つ。2つ目に働き続けることを大切にしていきたい。つまり、ややもすると就労支援は就職支援になりがちなのですけれども、その後どうなったのかということをちゃんと追っていく。または転職もしくは別の会社、ステップアップとして派遣から正社員ということもあるかと思いますが、働き続けることを前提にする就労支援と就職を前提とする就労支援は中身が変わってきますので、私たちのほうは、働き続けるためにどんなことができるかということを常に大切にしている団体であります。

 5ページから8ページまではうちの法人のものですので、基本的に若者支援、高校生の支援、今ですと小4から中3までの子供たちの支援、そして保護者の方々への支援という4つの事業をやっているという御紹介です。

10ページは、企業連携のアクションにつきましてです。今、情勢が変わったなと思うのは、毎月何件も企業や人材会社の方々から依頼があります。東京限定かもしれませんけれども、採用できない、若い人たちがいないので、失礼な言い方をされる方は、誰でもいいので雇うと。よい方は、一緒に育てていきましょうと。両方言い方があるのですが、企業さんのほうは本当に採用ができなくて困っているのだなということをひしひしと感じていまして、いい機会が就労支援関係では生まれてきているのではないかと思います。

 連携に関しまして、基本は営業をしないと企業とのつながりができません。向こうから声をかけてくることは少ないです。しっかり営業をしていくことが大事だということが大前提になります。そのため、どのような事業でも営業経験のある方を雇用する、またはなくても営業をきちんとできるようにするということが大変重要であるかと思います。

 2つ目に、企業ニーズに応える提案をしなければいけません。自分たちの活動の紹介に終始するのではなく、連携の提案をするということがとても重要だと思っております。そのため、企業側にもいろんな課題であったり、KPIであったり、担当者が課されているものがそれぞれありますので、しっかりそれを聞いて、一方的にこちらの都合であるとか、こちらの対象像だけを押しつけて何とかしていきましょうということ、社会性をかざしてお話をしても向こうは困ってしまいますので、向こうにも受け入れられる落としどころを探して提案書をつくるというのが大切かなと思います。

 その上で、先方さんにもどういう人材像が欲しいとか、こういうことができる人がいいなということが当然ありますので、先方にも受け入れの対象者に対する選択可能性をしっかりとお預けするということも大切にしているところであります。

 提案段階では大きな話をしたくなるのですけれども、小さいところからやっていかなければいけない。受け入れというのは、ロジコストも含めていろいろかかりますが、事業所に来ていただいてお話をしていただくということも一つのきっかけになりますし、インターンシップという比較的重いものも、小さな一歩から始めていくという意味では、企業で受け入れてくださいというよりは、まず御担当者の方ができること、見学してもらえませんかとか、そういうところから始めることが重要かなと思います。

 続きまして、就労支援における企業の連携につきまして意識していることですけれども、まず、私たちはNPOですが、NPOであるとか就労支援であるとか、生活困窮者自立支援を受けている団体というのは、原則信頼がありません。なので、私たちは信頼をされていないのだという前提で物事をお話しする必要があると思います。それはむげにされているというよりも、NPOが何かわかりませんし、生活困窮者の支援が何かというのは、一般的には誰も知りません。安心と信頼につながる情報をまず提供していかないとテーブルの俎上に乗らないだろうというのが一つございます。

 2つ目は、連携を提案していくという意味では、相手の企業を理解する、職業を理解する、職種を理解する、御担当者がどういう職務を担われるかということをしっかり理解した上で、先方企業と提案者の私たちの役割を明確化する。細かいところで言うと、何かあったときの保険はどちらが持つのか。個人情報に関してはFDAを結ぶのか、最低限の前提をやらないと信頼がなかなか得られず、先方さんも安心できませんので、やや技術的かもしれませんが、少しかたいくらいちゃんとやっておくことで、大丈夫かもしれないというふうに言っていただくことがあるかと思います。ここは専門性の技術やスキルではなくて、対法人同士、お互い何かあった場合にどちらがどういう責任をちゃんと持ちましょう、しっかり契約をしましょうということを事前にやっておくということが大切かなと思います。

 3つ目に、対象人材も、困っている方とかいろんな課題を複合的に抱える方と御説明してもわかりませんので、それは先方企業の受け入れの可能性を含めて、こういう方もいましたとか、全体的には何%こういう方ですよということをしっかりと伝えていく。

 または、都度で先方の疑問を解消するのではなくて、同じような不安や疑問がありますので、なるべくFAQみたいなものを先につくっておいて、皆さん、同じ疑問を持たれますけれども、こういうふうに解消していますということを書類か何かでつくっておかれるといいのではないかなと思います。

13ページ以降は、企業ごとに変わるのですが、提案書のサンプルをつけさせていただいております。最初に法人の紹介。15ページも法人の紹介です。その後、自分たちがどんな活動をしているのか、行政と連携していますとか、企業と連携していますということをくどいぐらい書いています。くどいと思いますが、まず信頼されていないという大前提に立ちますと、信頼に値することをしっかりとお伝えしていかなければいけません。いいことをやっているということだけでは信頼されませんので、ちゃんとした団体でありますよということを信頼してもらうために、くどいほどそういうことが書いてあるということであります。

19ページ以降は、私たちはどこまでの訓練、就労支援をやっていますということをお伝えする資料になります。基礎訓練をやっていますとか、仕事や体験もやっていますとか、アフターケア・家族支援もしっかりとやっている組織でありますということ、全体像を見せるということが1つ目。少し詳しく言いますと、基礎訓練で言うと、こういうことをやっていますということを書きますけれども、大切なのは何をやっているかではなくて、何を狙いとして就労支援のサービスを提供し、どこにこだわっているかということを先方に聞いていただく。ここには書いていませんが、JILPTさんがつくられたGATBVRTといった職業興味検査もやっていたり、あるいはキャリアカウンセリングも行っていますが、総合的な支援をするとともに、企業さんともそれを共有して、こういう傾向がありますよということも。口頭だけで言ってしまうと、なかなか理解が。障害特性が強いという言葉で理解できる人はほとんどいませんので、この辺が弱いとか得意だ、苦手だ、でも、実際にやってみたときにこうでしたということを伝えるようにしています。

 そのほか、仕事体験・インターンの中でもインターンシップや会社に行かせていただくには最低限の身だしなみが必要になりますので、証明写真をプロの方に撮っていただいて、見た目もしっかりする。スーツを持たれていない方がいますので、こちらからレンタルをして、全部自前で用意をさせないということを大切にしています。やはり経済的に苦しい方もいらっしゃいますので。

23ページ以降は、私たちは活動としてこういうことをやっています、こういう実績がありますということを書いています。ほかの会社の人事担当者はどういうことを言っているのということで、横と比較をされたがる方もいますので、そういうコメントをしっかりつけたり、一番右に就労の継続とありますが、何人就職していますということよりは、企業さんのほうとしては、どれぐらい続くの、ちゃんと続くの、やめないのということも大事ですので、やめる人もいます、理由はこういう理由で離れていますということと同時に、しっかりとしたケアも含めて受け入れていただければ、長く働いていい人材になりますよということなどもしっかりと伝えていく必要があるかと思います。

 その後に大手の企業さんとの連携とかを載せてあります。ただ、連携企業は、個人事業主から中小企業までと広くございまして、伝えていくことの内容は大きくても小さくても同じだということをここでは申し上げたいと思っています。

 実践としての役割としまして、経済的に苦しい方もございますので、生活保護の方であれば少し行政支援があるのですが、困窮家庭というのは非常に難しいこともあると思います。通常のサービスでは支援費をいただくわけですが、経済的に苦しい方であれば、支援費を個人や法人の寄附で、いわゆるバウチャー的にあがなうとともに、こういう就労支援は通いですので、交通費が非常に重くなります。なので、私たちのほうで交通費を全部寄附から負担をしています。月で最大4万円ぐらい交通費分を負担したこともあります。一つの成果としましては、家庭は最低限維持しているけれども、交通費が出せないので就労支援に通い切れないから諦めていた方々。特にシングルペアレントの御家庭であるとか、年金家庭になってしまった御両親のもとにいらっしゃる方々というのは、支援が無料でも支援を受け続けるためのコストが拠出できないので、支援を受けることをそもそも諦めているという実情がよくわかりました。過去30名ほどやりましたが、ほぼ全員就職しています。もちろん、全員就職できるわけではないのですけれども、それであってももったいない状態になっている。実費負担の原則が超えられないため、どれだけ行政が無料にしても、そこまで通えない。この部分を何とか皆さんのお力で変えていただきたいというのが私たちからの願いであります。

 そのほか、今、尼崎市の生活福祉課の方と連携して、ただし、予算は別の財団さんからいただいた案件でやりましたが、実費負担というものを全て出せたり、行政の事業だとなかなかできないような一緒に御飯を食べるとか、ちょっとどこかに出かけるときの費用をこちらが拠出するといったような自由度の高いアプローチというのが重要になります。きめ細かく本人に寄り添うのはいいのですが、仕様書でやることが決められて、予算の使途が完全に限定されたとき、家庭訪問しても外で会いたいと。でも、ファミリーレストランでこちらがおごることができないと、相手はお金がないので、外の公園でしゃべるということなどに限定されますので、一定程度社会の中で関係をつくるに当たって、自由度の高いアプローチができる予算設計が非常に重要ではないかと考えています。

 最後になりますけれども、今、チャレンジを幾つかしています。インターンシップ、職業体験、就労支援、非常に重要なのですが、エリアで限定されて産業が固定される可能性がありますので、今、全てのインターンシップをインターネット経由で行う取り組みをしています。私たちの事業所に集まった若い人たちが、ネットの環境は整いますが、相手の企業さんとオンラインでつないで、一般のインターンシップと同じように指導や宿題みたいなものが出されて、物理的な空間は離れてはいるのですけれども、まさに横にいるかのように指導を受けて、課された課題をこなしていくということをやっています。来月ぐらいから2カ所同時にやってみようというふうにやっていますけれども、いいことも結構あります。

 まず、企業がないところでも余り関係なく、インターネットなので、どこの企業さんともできますというのが1つ。

 2つ目に、今、働き方改革をやっていますが、テレワークと言われても、ほとんどの人はテレワークで働いたことがないので、テレワークを推奨している企業がどういう仕事の働き方か、イメージがつかないという意味で、そこでやっておくことで、ああ、こういう働き方もあり得るのだ、そういう企業さんはこういう働き方を許してくれているのだということを理解することができる。企業側にとっても、テレワークをやったことがない人をテレワークで雇うときに、ちょっとイメージが合わないということもありますので、全てインターネットでやります。

 2つ目に、支援者がずっとつく必要がないのと、会社の側で机とパソコンを用意する必要がないので、受け入れに当たって非常にスムーズです。ずっとインターネットをつなげているわけではありませんので、必要に応じてアクセスするだけでも大丈夫というのが2つ目。

 3つ目に、コストはほとんどかかりません。インターンシップはそこに行くまでのお金がかかりますけれども、ふだんの場所からできますし、自宅からでも可能になります。まだやったことはありませんが、そういうことをチャレンジとして今やっています。これはエリア特性を超えることができますし、東京でつなぐ必要はありませんが、インターネットを通じてインターンシップをやってもいいよと言ってくださる企業さんがいらっしゃれば、どこからアクセスされても余り関係がないという意味で、ここの取り組みというのは、そろそろ各地の実勢以上、超えてやっていく、または皆さんがそれぞれで企業を開拓するのではなくて、そのような企業さんをまとめて、みんなでシェアして、その機会をいただくということができるのではないかと思います。

 就職支援の大半は、基本的に被雇用を前提とした支援になっています。雇われるということが大前提ですので、もちろん雇われている方がほとんどだと思いますが、今後複業とか多様な働き方が出る中で、必ずしも1社にひもづいて雇用されていくだけが働き方や生き方ではないということ。これから考えているチャレンジとしましては、小商いといいましょうか、今、それぞれ自分で要らない本をインターネットに上げて売ったりということもありますが、それを推奨するわけでも、それを本業にするわけでもないのですけれども、一つの収入の確保の手段として、さまざまに出されている手段、選択肢を若者に提供して、何かあったときの収入源になるような取り組みを始めようかなと思っています。

 日本のものを日本の方にインターネットを通じて売る必要もありませんし、最近では写真を撮って上げて、価格をつけておくと、それを買いたい人が世界中から買えるというのもありますので、趣味的にやってチャリチャリ入ることもあるかもしれませんが、大事なのは、雇われることだけを前提としていると、必ず雇われるだけの支援になってしまいますし、給料を上げていきたいとか、もう少し余力が欲しいといったときに、あいている時間で何かできないかなと考えたときの選択肢も提供していくということが重要ではないかなと考えております。

 その意味では、就労支援、地域で頑張るということが大前提で、私たちもそうですが、地域を超えた頑張り方ということも今後は進めていければいいのではないかと思います。

 私からは以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 工藤さんにも短い時間で大変無理なお願いを申し上げてしまいました。にもかかわらず、例えば通うコストの保障等、大変具体的な御提案もいただきました。

 それでは、事務局からの説明も踏まえ、そして今のお二人からの貴重なプレゼンテーションもいただいた上で、議論に入っていきたいと思います。つまり、今のお二人に対する質問もできれば御発言の中に織り込んでいただければと思うのですが、なかなかそれは無理な話で、今、ここで1つ、2つ聞いておきたいということがございましたら。では、駒村委員、お願いします。

○駒村部会長代理 2人の御報告、2つとも大変興味深く聞かせていただきました。ありがとうございます。

 浅川さんから教えてもらいたいのですけれども、もともとNPOはこれという形で、障害者制度というふうに制度から入ったのではなくて、困った方、ターゲット、対象から入っているということで、お話を聞いていると、生活困窮のこの事業に入るのも余り抵抗感がなかったというお話で、非常に説得力があるなと思いました。

 ちょっと確認させてもらいたい点が1つです。手帳を持っている人、持っていない人それぞれいると思いますが、障害のある方と生活困窮のほうで入ってきた方、支援に当たって、共通点、そして違う点があれば教えていただきたいなと思いました。

 厚生労働省のほうにお願いなのですが、障害者部会に入っているのは、ここでは私と菊池委員だけなのですけれども、障害者部会のほう、有識者も審議会も制度ごとにばらばらに議論している傾向があって、審議会も「我が事・丸ごと」のように重なる部分は相互に紹介していただいたほうがいいかと思います。恐らく障害者部会のほうで、生活困窮のほうでもかなり障害と重なる部分があるよという議論は余り知られていないのではないかと思いますので、この辺、お願いしたいと思います。これは浅川さんに対するお願い、御質問。

 逆に工藤さんのお話は、たくさん議論したいところがあって、就労支援のイノベーションをやられているので、大変おもしろく、SIBも大変関心があるところでございます。ただ、そういう話をするとなかなか終わらないので、1点だけですけれども、冒頭で障害者手帳を持っている方は専門のほうを御紹介しているという発言があったと思います。ただ、一方では、手帳を持っていなくてもそちらのほうに行く方もいらっしゃると思います。この辺の考え方はどういう考え方なのかという点を教えていただきたいなと思いました。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 では、お二人には無理ばかり申し上げますが、短目にコンパクトにお答えいただければと思います。

○浅川参考人 余り大きく変わるところはありません。手帳を持っている人も持っていない人もいますが、うちは補助金制度とかを全く使っていないので、事業が対応することにおいてはどちらでも余り変わりません。ただ、本来事業ということで障害者が何割ぐらいというふうになっているので、そういうことでは多少ありますけれども、手帳を持っている人より手帳を持っていない人のほうが重症な方もたくさんいるので、本当にそのはざまの支援(対応)になります。そこで元気になってもフルでは働けない人がとても多いので、私たち事業所も対応出来る働き場を広げていく必要があります。また元気になってフルで働ける人にはフルで働ける場所をできるだけ私たちもアンテナを張って探すということです。

 精神障害の方と生活困窮の方は対応が割と似ていると思います。生活困窮になる方は、別に怠けたからではなく、一時的に体を壊したとか、そこで精神が不安定になったとか、そういうことが多いですので、精神障害の方と生活保護の方は似ている。

 知的障害の方は、その障害特性を知り部分的にどこを助ければいいかということがわかれば、安定して働くことができます。それから余り休みがないとかあります。

 精神障害の方も生活困窮の方も技術的やら能力的にレベルが高い人はたくさんいます。レベルと言ったら変なのですけれども。ただ、体調、精神面がとても不安定なので当日急に休んだり、長期休みになったりする人が多いです。とても忙しい会社とかそういうところだと、当てにならないということになりますから、最初からそういうことを覚悟してやる団体がたくさんふえるといいなと思います。ジグソーパズルのように当てはめていくというふうに言われますが、固まらないジグソーパズルでないとだめですね。片方が足りない部分をほかの人が伸ばしていけるという感じでということです。

 資料に書きましたが、生活保護の方は、食の問題もありますし、お米の提供やら、炊飯器がないのとか言って、リサイクルショップから調達したり、そういう支援があるので、先ほどのあれにもありましたけれども、そこの団体で必要と思われるものに使える補助金があるといいなと思っております。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 工藤さん、お願いいたします。

○工藤参考人 ありがとうございます。

 1つは専門性と役割分担ということで、手帳を持たれていると、制度がしっかりしていますので、それを理解したりするという部分では別の専門性もしくは人材が必要となります。組織をむやみに大きくすると、それだけいろいろなコスト、いわゆるバックオフィスコストがかかってきますので、自分たちの中で今どこまでできるのかということが1つ。

 2つ目に、私たちの法人は若者支援を大前提としていますので、多くの公的な事業を含めて年齢制限がない。それはすばらしいことで、年齢で区別する必要はないかもしれませんが、自分たちは若い人たちを支援したいと思ったときに、多くの制度は年齢で区切ることができませんので、ここは役割分担をしようと。全方位、全年齢対象というのは、理想なのですけれども、それを推し進めるための法人の財政基盤とか、人材獲得要件の難易度がすごく上がってしまいますので、できることをやる。その上で多くの方々と連携する。

 渡辺委員がこれから進められると思いますけれども、概念としてはコレクティブインパクトとか、みんなで同じ社会課題を解決して、共通の指標を使って、かつ専門性をそれぞれ分けていきましょうというのが日本にも入ってきますので、これからも自分たちの得意なところはここなので、そうでないところは得意な方々と手をつないでやっていくということを前提としています。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、就労支援をめぐって全体の議論を進めてまいりたいと思います。それでは、浦野委員、お願いいたします。

○浦野委員 ありがとうございます。

 特に認定就労訓練についてですけれども、全国で七百数十ぐらいの事業所の中で社会福祉法人が55%ぐらいでしょうか。辛うじて過半数という状況で、余り自慢できる状況ではないなと思っていまして、もっともっと社会福祉法人がみずからの職場を認定就労訓練等に提供していくということを進めていかなければならないなと思っております。

 その上で、それをどうやって進めていくのかということについて、先ほどからもお話が出ていますが、交通費の問題、保険の問題、特に非雇用型ということであれば、労働者災害補償保険は当然適用にならないわけですから、それに代わる保険が必要だと。そういった保険に係る費用、交通費等をどのように賄っていくのか。

 私の法人自身でも昨年1年間で70例ぐらいの受け入れをしていますけれども、保険とか交通費は全部法人が持ち出し、そのぐらいの金はあるではないかという、多少大ざっぱなところもあるのですが、そういう形でやっておりますが、これを普及していくときに、小さな法人もありますので、そういった実費がかかる部分についてきちんと面倒を見てあげることが必要なのだろうなと思っております。

 今、特に工藤さんのお話を聞いていて非常に思ったのですけれども、これは社会福祉法人に限りませんが、実際に認定就労訓練の事業所としてみずから登録する、手を挙げるというときに、一体自分たちは受け入れた後、どういうふうにサポートしてもらえるのか。特に自立相談支援機関からどんな支援をしてもらえるのかということがあると思うのです。今の工藤さんの実践例のような支援を受けられると、多分たくさんの企業も含めて手を挙げるのだろうけれども、なかなか自立相談支援機関がそこまで行っていないということもあって、そこの力量をどう高めていくかも非常に重要と思っております。

 もう一つは、これも第2種社会福祉事業として位置づけられている部分もあります。位置づけられたことがよかった部分も当然あるのですが、一旦こういうことが位置づけられますと、この訓練を受ける人たちに対して支援をする職員は一体配置基準とどういう関係にあるかという議論に、過去の例から言うと、いろんなことをやろうとすると、配置基準の問題で兼務がどうだとかいう話になりがちです。これが例えば、介護福祉士の養成校の実習を引き受けているというと、別にこれは社会福祉事業ではないので、実習を引き受けるのは当たり前ということになりますが、私としては、こういったこともやって当たり前のことであって、それに職員の工数がとれだけかかったみたいな話、むしろ余り細かいことをほじくらないほうがいいだろうと思っています。

 そういうことでなくて、本来これはやることが当たり前の仕事だというくらいに制度としても位置づけていただければ、もっともっと広がっていく可能性があるかなと思っております。

 以上でございます。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、新保委員、渡辺由美子委員、よろしくお願いいたします。

○新保委員 断らない支援というのが一つの到達点だとすると、その出口をどうするかというところは本当に重要で、その中で例えば就労準備支援事業とか、任意事業は本当に大事なツールとなるので、今の議論で言いますと、準備支援事業については必須化は検討されるべきだと考えています。

 次に、認定就労訓練は、一般市や町村がこの認定にかかわることができるような仕組みづくりによって、かなり進んでいくのではないかと期待されるところです。

 最後に、生活保護のことについて49ページに挙がっていますが、これを一層充実させていくということを考えたときに、きょう2人の参考人の方からもお話がありましたけれども、就労支援、就労準備支援は、御本人への支援というのは当たり前なのですが、働く先、出口の先の企業さんとか民間団体さんへの支援がむしろ重要であって、そこに力を入れていくべきだという流れで生活困窮者支援の研修なども進んできていると思っています。そのような出口づくりに力を入れていくことで、生活保護も困窮も、どちらも働く力を持っていたり、社会参加したいという思いを持った人たちの活躍の場が保障されていくと思います。

 ただ、そのときに、意見がたくさん出ていましたけれども、生活保護受給者と困窮の制度を利用する方との間に費用負担、必要経費の面で差異があると、いろんなことが進みにくいので、ぜひ必要経費の認定、特に生活困窮者について保障していくということも検討できるといいと思います。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 渡辺委員、お願いします。

○渡辺委員 私も認定就労訓練の事業所がふえないというお話で、片や工藤理事長もおっしゃっていたように、非常に雇用が逼迫しているという中で、先日お会いしたある企業の方は、無職の人を紹介してくださいというのですけれども、どういうことをされているかというと、コンビニ専門の派遣事業をされていて、その方は自分でコンビニを経営されていて、そこに御紹介いただいた方を雇ってトレーニングをして、ほかのところに派遣で出すという商売をされていて、先日も御紹介いただいた2年8カ月失業されている方を受け入れて、ちゃんと派遣に出しましたということがあります。

 もう一つ、うちのほうでも今、お話を少しいただいているのが、地方のほうで非常に人材が少ないということで、介護とか医療とか保育士さんとかの文面で、うちの若い高校生とかが対象なのですけれども、ぜひ地方への移住とか就労も考えて、来てみてほしいと。いきなり来て就労というのは難しいだろうから、まずは地方を見てほしいというところで、夏に2泊3日ぐらい旅行に連れていってくれるというのですが、交通費も宿泊費も全部あちらが出してくださるということで、何でそんなにしてくださるのですかと言ったら、地方だと、人がいないと、どうしても外国人の方を御紹介いただいて雇うようなことになるのだけれども、そこへのあっせん費用が巨額、びっくりするぐらいの額で、そんなにお金をかけるのだったら、もし日本の方で働きたい人がいれば働いてもらったらいいのではないかということ。

 もう一つは、工藤さんもよく知っていると思うのですが、青少年の更生事業、要は、少年院から出てきた方たちを何とか職業につけようという職親プロジェクトみたいなもので、建築業を中心にぜひそこに参加したいという企業さんがふえているというところで、双方の需要がマッチするようなところで、大変な人なので、雇ってくださいと言うだけではなく、無料でちゃんと働ける方を御紹介できるのですよといったところで、少し御協力いただけるところがふえてくるのかなと。本当にいろんな方がいらっしゃる中で、全部それでいくわけではないと思うのですけれども、状況的にはそういうところが少し出てきているのかなと思っています。

 もう一つは、先ほどから出てきている実費負担の原則というのは、私たちが学習支援をしていたり、高校を中退した後の支援をするところでも、通ってくる交通費が重くて、交通費の補助をしてあげることでここに来て、高卒認定の試験を目指して勉強しているというところでは、交通費とかという小さいお金ではあるのですけれども、生活困窮家庭ではそれが払えないということで、成果も出るので、そこは考えたほうがいいのかなと思います。

 前の議論に戻ってしまうのですが、個人情報の問題は、非常に有益ではあると思うのですけれども、片や、税金を払えなかったら個人情報が出てしまうというか、何かされるということが、生活困窮の方にとっての新たな脅威になる可能性はあるなと思っていて、私たちのところに来てくださる方も、いろんなところから紹介されて、自分で電話をするとか、ちょっと来てみるとか、一歩を踏み出すところが非常に前向きな姿勢につながっているので、本当に命にかかわるというところでどこまで線引きするかというのは重要だと思うのですが、安易にそれをしてしまうことで生活困窮の方たちが新たな脅威を感じる。

 銚子のほうでひとり親家庭のお子さんで、親御さんが自分の子をあやめてしまうという事例もあった中で、いろいろ難しいとは思うのですけれども、そこは少し慎重にしたほうがいいのかなと考えております。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、吉岡参考人にお願いいたします。と同時に、この後、1230分という終了時間が迫っておりまして、到底この就労支援の議論をここで終わらすわけにはいかないというふうにも思っております。二巡目の方で赤札を挙げてくださっている方がおりまして、これも残りの時間との相談になりますが、岡部委員が今、挙げてくださいました。松本委員、もし何かございましたらよろしくお願いいたします。

 とりあえず吉岡参考人、よろしくお願いいたします。

○吉岡参考人 そしたら、時間もありませんので、簡潔に。

 自立支援が25年に始まりまして、高知市の生活保護の状況、開始と廃止の世帯が逆転しました。26年から廃止が圧倒的にふえています。その中でも稼働による理由が15%前後になっていますので、非常に効果が上がってきているのではないかと考えています。

 ただ、自立支援、今もお話がたくさんありましたが、相談の段階でただ単に相談するだけではなしに、何らかの相談給付というか、そういう支援制度が必要であるということ。もう一つは、支援員さんをきちんとした形で構えるなら、基準とか財源的な措置をお願いしたいということです。

 次に、認定訓練についてですが、高知市にはまだ3事業所しかありませんでして、ここをバックアップするようなことを財源的な面も含めて考えていただきたいなというのが高知市の意見です。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、岡部委員、お願いいたします。

○岡部委員 1つ目として就労準備支援事業の必須化については、全国どの地域、自治体においても、労働の機会を提供するということで、意義があるということで、必須化に賛成です。

 2つ目の箇所では65歳以上の就労について、エージレス社会、そしてこれからその年世代の人が増えてきます。就労機会を提供するということに賛成です。

 3点目は、若者と障害者の方のお話を聞きましたが、社会には、さまざまな状態にある方々がいらっしゃいます。そして御本人の働き方は多様だと思いますので、多様な働き方を保障することが必要だと考えます。それに見合った多様な雇用、労働の場を創出していくということが必要と思います。

 4点目は、きめ細かい対応ということでお話しします。雇用ということは、一般就労を前提にしているかと思いますけれども、日常生活と社会生活と就労ということを一体的に考えていく必要があります。就労についても意欲、能力、場の問題を考えてやっていただくということが必要と考えます。そのためにはそれを支える人員の配置を質と量の両面から検討していただければと思います。

 また、先ほどの自立支援でどうしてもお伝えしたいことがありますので、つけ加えさせてください。1つ目として、生活困窮者につなげる仕組みである入り口において広報活動など、どう周知するか、周知の方法と内容を検討する必要があると考えます。

 2つ目、情報を収集について。ワンストップ的な担当部署の設置は必須です。そこで、相談や情報の振り分けを行いますが、その部署に専門的な総合相談できる人の配置と機能を持たせる必要があります。

 情報共有の関係では、これは個人情報保護法等や条例でいってます。具体的に言いますと、住民から情報を上げていただくときに、それをどういう形で受けとめるかということも大事です。もう一方では、情報収集・情報共有・情報提供について、住民、関係機関、団体、行政等と一体的に行う上で、法改正ということに踏み込むことが必要ではないか、あるいは、現行の枠の中でガイドラインで明確にお示しすることが必要なのではないか。

 3点目、断らない相談支援があります。相談支援について、私は社会福祉学を専門としていますので、その視点からお話しします。相談は傾聴に始まり傾聴で終わるといわれています。相談耳を傾けるということです。そこで1つには相談を受けとめて、話し合うことによって解決することが一定数あります。そのため、制度、サービスにつなげるとか、関係の部署につなげるということに終始せず、そこで受けとめることをどれだけできるかということを先ず、業務として考えるというとです。2つにはその上で、つなげるとするならば、つなげるためにどういう方法をとったらよいのかと考えます。相談も解決方策の1つと位置づけるべきではないでしょうか。

 最後の支える体制については、必要な人材を配置しなければいけません。生活保護では、標準数を定めておりません。担当ケース数で設定。それ以外の法で、人口別算定根拠で行っています。自立相談支援を支える体制を真剣に考えていく必要があると考えます。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、松本委員、よろしくお願いいたします。

○松本委員 私は今、日本医師会のほうでは小児在宅医療について少し力を入れて頑張っているのですが、在宅で医療的ケアを必要としている障害児の方は約1万7,000人いると言われております。この中には、お母さんがかかりっきりで子供さんの支援をしていますので、なかなか満足に働けないという事情もあって、生活困窮者の方がたくさんいらっしゃいます。そういった方を助けるためにはコーディネーターが必要なのですが、介護保険ではケアマネジャーがコーディネーター機能を果たしているわけですけれども、これに相当する者がなかなかいらっしゃらないということで、そのためには相談支援専門員の方にやっていただくしかないなと考えております。

 最初にこの資料をいただきましたが、全国でも4,500人の方しかいらっしゃらないということですから、我々も現場で相談支援専門員の方に入っていただきたいのですが、仕事が手いっぱいで、なかなか小児在宅のほうに手が回らないという状況があります。こういったことを考えると、何とか人員をふやしていただいて、小児在宅のほうにも目を向けていただけるような状態をつくっていただきたいなというのを感じましたので、発言させていただきました。

 以上でございます。

○宮本部会長 大変ありがとうございました。

 赤札を挙げていただいている菊池委員、小杉委員もいらっしゃいますが、お二人の御発言、少し差し迫った中でお伺いするよりは、会議を改めて、ゆっくり伺ったほうがよいかなと思いますし、皆さんもそのようにお考えではないかと思います。

 繰り返しですが、私の不手際で議論が最後慌ただしくなってしまったことをおわび申し上げます。

 それでは、次回の審議会について、事務局のほうから御案内をお願いしたいと思います。

○金井課長 次回は6月27日火曜日、1330分からを予定しております。場所につきましては、追ってお知らせいたします。よろしくお願いします。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 就労支援について、そして部分的には自立相談支援、情報共有等についても次回改めて議論の機会を設けたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。


(了)


<委員名の漢字表記について>
岡崎委員の「おかざき」の「さき」のつくりの上部は、一部ブラウザ上で正しく表示されないために、便宜上「崎」の字で表示しています。正しくは「大」ではなく「立」ですので、あしからずご了承ください。

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