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2017年7月31日 第1回「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成29年7月31日(月) 10:30~12:00


○場所

経済産業省本館 17階国際会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)


○出席者

植松氏、小野木氏、川野氏、北浦氏、佐藤氏、高松氏、立石氏、原氏、若林氏

○議題

(1)中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に向けた政府の取組状況について
(2)今後の検討の方向性について

○議事

 

 

○奈尾労働政策担当参事官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」を開会いたします。


 皆様におかれましてはお忙しい中、御出席いただきましてまことにありがとうございます。

 私は、本日座長選任までの間司会をさせていただきます、厚生労働省労働政策担当参事官の奈尾と申します。どうぞよろしくお願いします。

 まず、お手元の資料の御確認でございますが、検討会のペーパーレス化ということで、本日はiPadを配付させていただいております。使い方でございますが、1枚紙をお手元にお配りしているかと思いますけれども、まず右側のホームボタンを押していただきまして、右にスライドしますとロックが解除され、その中で右上のほうに5つほどアイコンが並んでいるかと思いますが、水色にファイルエクスプローラーというアイコンがございますので、そちらをタップしていただきますと今日の審議会資料が出てまいります。その中で、資料が7点ほどついているかと思います。

 戻るときは左上のほうで左矢印のところを押していただくということでございます。

 もし御不明な点がございましたら、お近くの事務局職員までお知らせいただきたいと思います。

 まず今日の資料でございますが、議事次第がございまして、資料1が検討会の開催要綱、資料2が厚生労働省・中小企業庁提出資料、資料3として中小企業・小規模事業者における「働き方改革」実現に向けた対策(論点案)。

 それから全国商工会連合会小野木委員御提出資料と日本商工会議所小林様御提出資料がございます。

 以上、お手元におそろいかどうか御確認いただけたらと思います。もし不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

 それでは、検討会の開会に際しまして、厚生労働省政策統括官、中小企業庁長官より御挨拶を申し上げます。

 まず、厚生労働省政策統括官より御挨拶を申し上げます。

○藤澤政策統括官(総合政策担当) おはようございます。今日は皆様方、御多用にもかかわらず、「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」の第1回目の会合に御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 「働き方改革」につきましては、今年の3月に政府で働き方改革実行計画を取りまとめたところでございますけれども、日本の雇用の大半を占める中小企業あるいは小規模事業者においても、着実に実施をすることが重要だと考えております。

 我が国の人口は少子高齢化により近年減少の局面を迎えております。また、雇用情勢は人手不足の状況にありますが、より人手不足感の強い中小企業においては、生産性の向上による企業の変革とともに職場環境や処遇の改善などにより女性、また高齢者などにとっても魅力のある職場づくりがますます必要になると考えております。

 一方で、中小企業・小規模事業者において「働き方改革」を進めていくためには、次の3点が課題かと思います。

 1点目は、「働き方改革」の必要性や内容についての御理解がまだまだ十分ではないのではないかということ。

 2点目は今、申し上げましたような人手不足のもとにおいて、どのように労働時間の短縮をしていくのかということが課題です。

 3点目としましては、中小企業における非正規雇用と正規雇用の待遇差の理由が曖昧で、賃金制度なども未整備な事業場も存在することです。

 この3点ではなかろうかと思います。

 そこで、このたび厚生労働省と中小企業庁において皆様に御参集をいただきまして、この検討会を立ち上げたところでございます。

 今、申し上げましたような趣旨も踏まえまして、本検討会におきまして中小企業・小規模事業者において「働き方改革」をこれから進めていくに当たっての現状でありますとか、あるいは課題を分析するとともに、中小企業などの取り組みを促進するための方策についても検討いただきたいと考えているところでございます。

 構成員の皆様方におかれましては、中小企業などがどうしたら働き方改革に前向きに取り組んでいただくことができるのかといった観点から、ぜひ忌憚のない御意見をいただけますようお願いを申し上げたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○奈尾労働政策担当参事官 続きまして、中小企業庁安藤長官より御挨拶申し上げます。

○安藤長官 どうも皆様、おはようございます。御紹介いただきました中小企業庁の安藤でございます。

 日ごろは中小企業政策に大変御指導、御鞭撻を賜りまして、この場をお借りいたしまして改めて御礼を申し上げます。

 この会議の趣旨、狙いは今、藤澤さんがお話しになられたとおりでございます。最近は霞が関の中でも関連するところはしっかりと手に手を取り合って、別に抽象的な用語ではなくて、本当にしっかりと連携をしてやっていくということでございます。中小企業・小規模事業者のまさに働き方改革・人手不足対応ということで、厚生労働省の皆様方と私ども、そして御関係の皆様方としっかりとタッグを組んで、集中的に御議論をさせていただきたいと思っております。

 今、藤澤さんからもお話がございましたように、地域あるいは現場の中小企業・小規模事業者の方々からしますと、「働き方改革」ということで一体自分たちは何をすればいいのだろう、よくわからないという戸惑いの声が多いということを、私どもは耳にさせていただいております。特に長時間労働の是正ということですと、言わずもがなでございますが、現在非常に人手不足感のある中で具体的にどう対応していけばいいのか。下手をすると押しつけられ感が現場の中に出てしまうと、これはまた本末転倒したことになると思います。

 中小企業者の皆様方、小規模事業者の皆様方の今後の経営を考える上においても、「働き方改革」を実行すること自身が中小企業者、小規模事業者の方々自身のためになるわけでございますけれども、どうしてもどうしていったらいいのかよくわからない、何をしていったらいいのかわからないというお声がございます。

 また、同一労働同一賃金につきましても、労働管理、労務管理の徹底をどう図っていったらいいのかと、こういうことだと思っております。

 まさに今、統括官のほうからお話がありましたようにこういうことにつきまして、中小企業・小規模事業者の皆様方に具体的な内容を御理解いただいて、こういう狙いでこういうことをやっていっていただきたい。そして必要な政策というものについては、こういう形で御支援を申し上げる。皆様方で御議論いただいた内容を、私どもは現場でしっかりと展開をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひ御指導、御鞭撻を賜ればと思っております。

 今回官邸におきましても、中小企業者の活性化という観点から「働き方改革」と最低賃金の問題。そして下請取引、慣行の是正というこういう大きな課題を包括的に議論するという関係府省庁の場を設けていただきました。この会議もそういった検討に資するよう努めてまいりたいと思います。

 また、冒頭にペーパーレスの話がございました。一言、世耕大臣からイニシアチブということでちょっと申し上げますと、今、私どもはペーパーレスでほぼ全ての会議を行わせていただいております。

 また、1週間前でございますけれども、テレワークの日ということで、しっかりとテレワークを2020に向けて実験をやっていこうということでございました。

 まず、中小企業の皆さん方に「働き方改革」をお願いする前に、我々自身の働き方も変えていかなければいけないということでございますので、ちょっと御不便があるかもしれませんけれども、御容赦願えればと思います。

 よろしくお願い申し上げます。

○奈尾労働政策担当参事官 まず、資料1の開催要綱をご覧いただきたいと思います。こちらに開催趣旨、検討事項、運営、それから別紙の構成員について整理してございます。

 ただいま藤澤統括官、安藤長官より検討会の趣旨について申し上げたところでございますので詳細は省略いたしますが、資料1の「3.検討事項」に掲げられている事項を主に検討するということでございます。

 それから資料1を右にスライドしていただきますと、別紙ということで構成員名簿が出てまいります。本日は初回でございますので、皆様方の御紹介を簡単にさせていただきたいと思います。五十音順でございます。

 まず、株式会社千葉銀行法人営業部長、植松克則様です。

 全国商工会連合会副会長、小野木覺様です。

 ものづくり産業労働組合副書記長、川野英樹様です。

 公益財団法人日本生産性本部参与、北浦正行様です。

 中央大大学院戦略経営研究科教授、佐藤博樹様です。

 全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟副書記長(日本労働組合総連合会)、高松和夫様です。

 株式会社アテーナソリューション代表取締役、立石裕明様です。

 株式会社クオリティ・オブ・ライフ代表取締役、原正紀様です。

 三重県社会保険労務士会会長、若林正清様です。

 なお、本日は全国中小企業団体中央会副会長、伊藤學人様、日本総研主席研究員、藻谷浩介様、日本商工会議所特別顧問・女性等活躍推進専門委員長、前田新造様、日本労働組合総連合会副事務局長、安永貴夫様は御欠席でございます。

 代理としまして、全国中小企業団体中央会専務理事、高橋様、

 日本商工会議所産業政策第二部長、小林様にお越しいただいてございます。

 オブザーバーといたしまして、日本経済団体連合会労働法制本部長、輪島様、

 総務省自治財政局、出口調整課長にそれぞれお越しいただいてございます。

 事務局からの出席者につきましては、配付させていただいた座席表に記載のとおりでございますので、個々の紹介は省略させていただきます。

 カメラの撮影はここまででございますので、よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○奈尾労働政策担当参事官 続きまして、本検討会における座長の選任に移りたいと思います。資料1の開催要綱の4.にございますけれども、本検討会の座長は参集者の皆様の互選により選出をいただくということになってございます。

 事前に事務局のほうで皆様にお伺いしたところ、佐藤先生が適任という声がありましたけれども、委員の皆様、また佐藤先生、いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○奈尾労働政策担当参事官 ありがとうございます。

 それでは、佐藤座長、座長席にお移りいただきたいと思います。

(佐藤委員、座長席へ移動)

○佐藤座長 御指名ですから進行係として務めさせていただければと思います。

 それでは、議事に入らせていただきます。最初は議事の「(1)中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対策に向けた政府の取組状況について」、事務局から配付資料を御説明いただければと思います。

○奈尾労働政策担当参事官 資料2をご覧いただきたいと思います。資料2の中で働き方改革・人手不足対応ということで、主に厚生労働省分野についてまず私のほうから御説明を申し上げます。

 資料2でございますが、目次を飛ばしていただきまして4ページに「『働き方改革』のポイント」というのがございます。

 背景ですが、まず1つ目ので書いてございますけれども、少子高齢化で労働力人口の減少・人手不足がある、そもそも今後中長期的に見ると、労働力人口自体が減ってくる、それから高齢化が進展してくるということで、労働力人口、人手不足が今後進行する。特に名目GDPが成長していく中、あるいは有効求人倍率が上がっていくわけではありますけれども、その中でも民需は足踏みであるというのは人手不足、労働力人口の減少が背景にあると言われてございます。

 2つ目の○でありますが、「アベノミクス、一億総活躍の目指すもの」ということで、女性・高齢者等の活躍促進と書いておりますけれども、単に労働参加を拡大するというのみならず、働く側の立場にとっても働きやすい環境をつくっていくことかと理解してございます。

 一番下の○ですが、一億総活躍があって「働き方改革」という流れでございますけれども、昨年の6月で一億総活躍の取りまとめがあったわけではありますが、それを受けて労働時間あるいは同一労働同一賃金関係について、既に6月段階で触れられてまして、その延長で「働き方改革」があったという流れでございます。

 次のページですが、「中小企業において『働き方改革』を実施するに当たっての現状と課題」でございます。

 上は人手不足のことが書いてございます。

 下半分ですが、「『働き方改革』で求められる対応」ということで左下に書いてございますけれども、主に2点ございます。これ以外にもありますけれども、大きなものは長時間労働の是正と同一労働同一賃金ということで、2つを代表的に書いてございます。

 まず上の「長時間労働の是正」につきましては、月45時間・年360時間、特例で年720時間ということで、後ほど詳しく御説明いたしますけれども、これが6月に報告がまとまったところでございます。

 それから「同一労働同一賃金等」も6月に報告がまとまってございますけれども、正規と非正規の不合理な待遇差を解消し、非正規でも納得が得られる待遇が受けられることが大事だということでございます。

 右下ですが、「中小企業における現状・課題」でございますけれども、人手不足の中どうやって労働時間を短縮するか。それから時間外の要因としては「取引先の納期や発注量への対応」、外部要因が多いということでございます。

 右下でございますけれども、「同一労働同一賃金等」につきましては、待遇差の理由が曖昧であって、賃金制度が未整備な事業者も多数存在するということが書かれております。

 この現状課題をもとに、方策を検討するということでございます。

 7ページ、8ページが時間外労働の上限規制の話が書いてございます。

 要点のみ御説明いたしますと、まず7ページですが、「(1)上限規制の基本的枠組み」でございます。6月の審議会建議でございますけれども、原則といたしまして月45時間、年360時間。

 右側の特例でありますけれども、臨時的な事情がある場合として労使が協定した場合の特例ということでございますが、年720時間。それから720時間以内かつ2~4でございますけれども、2ないし6カ月で平均80時間以内。3でありますけれども、単月で100時間未満。4の特例は年に6回まで。つまり6カ月までということでございます。

 (2)は適用除外等になっている業務ごとの特例でございますけれども、主なものを申しますと、まず運転関係、運輸関係でございますが、改正法施行5年後に年960時間以内の規制を適用するということがポイントでございます。

 2つ目の建設関係につきましては、改正法施行5年後に一般則の適用でございます。

 そのほか、研究開発、医師等について特例がございます。

 次のページですが、その続きでございますけれども、(3)は基準法で新たな指針をつくるということでございます。指針の内容につきましては、例えば延長する時間はできる限り短くするとか、あるいは36協定の必要的記載事項として時間外規制の上限を超えたものの健康確保措置といった、どういったことが望ましいかというものを指針に書き込むということでございます。

 「2.勤務間インターバル」といたしまして、労働時間等設定改善法というのがございますけれども、こちらの第2条を改正して一定の休息の確保に努めるべき努力義務を課したいということでございます。

 3.でございますが健康確保ということでございまして、特にハイリスクの労働者の方を見過ごさないということで、1カ月で80時間を超えた方から申し出があれば、医師による面接指導を義務づけるということでございます。現行の100時間から80時間に対象者が拡大することになります。

 労働時間は客観的に把握しないといけないということは、2つ目で書かれてございます。

 「4.その他」ですけれども、中小企業を含めて急激な変化による弊害を避けるために、十分な法施行までの準備期間を確保するということでございます。

 書いてございませんけれども、一般的に事業の運営とか労務管理は年度単位でやられておりますので、年度の初日から施行することが望ましいというものでございます。

 続きまして9ページでございますが、「同一労働同一賃金に関する法整備について」、これもいろいろと書いてございますけれども、6月の報告のポイントのみ申し上げます。

 「1 基本的考え方」が左上に書いてございますけれども、正規・非正規の格差を放置すると社会全体に影響をしていく。特に非正規の方は能力開発の機会が乏しいので、生産性が向上される隘路になりかねない。今、雇用者の約4割弱は非正規の方でございますので、能力開発というのは非常に大きな影響を持つ。

 それから賃金については労使との決定が基本ですけれども、不合理な待遇差の是正が必要ということでございます。

 2ですが、まず左下の部分でございまして、「労働者が司法判断を求める際の根拠になる規定の整備」ということが書いてございます。(1)に赤字で「均等待遇規定」と「均衡待遇規定」の2つがございます。簡単に申しますと、均等待遇は待遇をそろえてほしいということで、均衡待遇は差があってもその差が説明できるように、合理的なものであるようにという意味でございます。今はどうなっているかと申しますと、書いておりませんけれども、パートについては均等待遇と均衡待遇の両方の規定が既にございます。ただし、均等待遇の対象になるパート労働者は全体の中では割合は大きくないという現状でございます。

 有期労働者については均衡待遇の規定があって、均等待遇の規定が今はないというものでございます。

 派遣労働者については、どちらもないというのが現在の姿でございます。

 今後でありますが、2の「(1)短時間労働者・有期契約労働者」については、新たに有期についても均等待遇の対象になり得るというのが一つでございます。

 次に2つ目の○でございますが、「均衡待遇規定」につきましては、まず待遇差が合理的かどうかを個々の待遇ごとに考慮要素を決めて判断されるべき旨を明確化する。考慮要素はそこに書いているものを例示として明記するというものでございます。

 右にまいりまして、「(2)派遣労働者」でございます。派遣労働者については派遣先との均衡なのか、派遣元との均衡なのかという議論があったわけでございますが、結論としては派遣先との均衡を原則にするというものでございます。派遣元の職員の方はいわゆる内勤職員でございますので、仕事の性質が違うだろうということで、原則は派遣先労働者との均衡をとるということでございます。ただし、仕事の派遣先が変わるごとに賃金が変わってくる。あるいは派遣先の賃金が派遣先の業務の難易度に必ずしも比例しているかというと、必ずしもそうとは言えないということで、(2)の1)か2)のどちらかをとっていただければいいといたしました。

 「2)労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」ということで、これは労使協定で同種の労働者の派遣先のみならず、地場の賃金にあわせてもらってもいい。1)か2)のどちらかをとっていただければいいという方式でございます。どちらをとるにしても、派遣労働者御本人にはどちらをとったかわかるようにしてくださいということがセットでございます。

 (3)ですが、均等、均衡の解釈明確化のためにガイドラインの策定根拠規定を創設するというものでございます。昨年12月にガイドライン案を示しましたけれども、現行法ではガイドラインの根拠規定はございませんので、現行では案にとどまっております。案がとれるためには法律で根拠規定を策定するということでございます。

 次のページをご覧いただきたいと思いますけれども、「3 労働者に対する待遇に関する説明の義務化」ということで、まず有期の方についての本人の待遇内容について説明義務を課すということでございます。

 2つ目のでありますが、パート、有期、派遣の皆様につきまして、事業主に問われれば待遇差の内容とか待遇差の理由を説明していただくようになります。それから説明を求めた場合の不利益取り扱いを禁止するということでございます。

 4ですが、いわゆるADRの手続整備でございます。

 まず「(1)短時間労働者・有期契約労働者」ですが、有期の方についても行政による助言・指導・勧告あるいは調停等の対象になるということであります。公表の対象にならないというものでございます。

 (1)の2つ目のでありますが、従来は行政による助言・指導・勧告等の対象にしてこなかった均衡待遇についても、解釈が明確な場合は新たに対象になるというものであります。裏を返すと、解釈が明確でない場合は対象にならないということになります。

 ちょっとわかりにくいので補足いたしますと、職務の内容が違うから待遇が違うのですと。これだけでは解釈は明確ではない。黒か白かはっきりしないので、この場合は対象にならないわけでございます。一方で、非正規だから待遇が違うのですというのは明らかに黒ですので、解釈は明確であるということでADRの対象になるということが典型例かと思います。

 (2)ですが、派遣の方についても新たに均等、均衡待遇規定や説明義務について、調停等の対象になり得るということでございます。

 最後に「5 法施行に向けて」ですが、こちらも十分な施行準備期間が必要。それから十分な周知・相談も必要ということで、中小企業・小規模事業者等各事業主の実情も踏まえて、内容については労使双方に丁寧に対応すべきだということでございます。

 これを踏まえてですけれども、現行の各種支援策が同じ資料の41ページ以降に出てまいります。これも時間の都合上、ポイントのみ申し上げますけれども、まず41ページが「職場意識改善助成金について」ということで、労働時間の短縮、超過勤務時間の短縮、それから勤務間インターバルの導入等に関連する助成制度でございます。

 次のページが「キャリアアップ助成金について」ということで、これは多数にコースがわたっているわけでございますけれども、ポイントだけ申しますと、非正規の方を正社員化した場合等、あるいは非正規と正規の方の賃金規定を共通化した場合等について助成制度がございます。

 それから同一労働同一賃金に絡みましては、次のページに「非正規雇用労働者の待遇改善支援事業」と書いてございますけれども、全県に「非正規雇用労働者待遇改善支援センター」を置きまして、ここに外部の専門家の方に常駐していただいて、電話相談に応じる。あるいは直接事業所の訪問等もやってコンサルティングを行うというもので、これは今年度からスタートするものでございます。

 業務改善助成金というのは次のページで書いてございます。これは賃上げ支援のための助成制度でございます。

 次のページは、人事評価システムをつくって賃上げを行ったりする場合に「人事評価改善等助成金」というのを創設いたしました。

46ページでございますが、「働き方改革」と生産性向上の両方をやっていただく必要があるわけでございますけれども、生産性の向上と雇用確保について労働行政と金融機関との連携ということで本格的にスタートするものでございます。

 右側のほうに青紫の囲みが2つございますけれども、助成金関係につきましては、まず金融機関の事業性評価を活用するでありますとか、助成金についても生産性向上を図った場合には支給内容について優遇するといったものが主な内容でございます。

 そのほか、右下のところに書いてございますが、地域活性化雇用創造プロジェクトにつきましても、金融機関に積極的に関与していただいているものでございます。

 雑駁でございますが、私からの説明は以上でございます。

○佐藤座長 続いて、中小企業庁のほうから説明をお願いします。

○水野事業環境部企画課長 中小企業庁でございます。

 今の資料のスライド11からが中小企業庁からの説明でございます。「中小企業・小規模事業者に関する人手不足対応・取引条件改善について」というところでございます。

 スライド12、「人手不足は恒久化しうる経営課題」ということでございまして、左側の上の図1をご覧ください。「中小企業の経営上の不安要素」ということで調査をかけてございますが、その中で経営上の不安要素として深刻化する人材不足が年々大きくなっているところが見てとれるわけでございます。

 またその下でございますけれども、「図2.中小企業の従業者過不足DIの推移」ということで、大企業も中小企業もここ数年は不足のほうに振れているわけでございますが、とりわけ中小企業の赤い線は青い線よりも下振れしているというところでございまして、さらに不足感というのが中小企業には強まっているという状況でございます。

 右側に移りまして図3でございます。生産年齢人口は御承知のとおりかと思いますが、減少してございます。こういった左側のような中小企業の状況に鑑みれば、今後も人材不足は恒常化し得るという問題でございまして、求職難というよりむしろ求人難の時代に移っているのかなという認識でございます。

 こうした中でスライド13ですけれども、「女性、高齢者、外国人等の多様な人材に可能性」という表題のスライドであります。新卒に関しましては、左の上、図5でございますけれども、大企業の志向が強いという状況でございますが、その下、図6の復職の女性について見てみれば、新卒の女性よりも中小企業に就業する割合が高いというデータもございます。右上であります「図7.従業員規模別に見た雇用者の年齢構成割合」につきましても、中小企業は中高年の割合が高いというところでございます。

 その下の「図8.留学生の就職先」につきましても、従業員100人以内の企業に就職する割合が高いというところでございます。

 こういった女性、高齢者、外国人の多様な人材の活用ができるように、中小企業の皆様方に御対応いただけるとありがたいと思っております。

 スライド14の3.でございます。こうした中で我々といたしましては、この春に中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドラインをまとめさせていただきました。ここに記載のとおりでございますけれども、要しますと、多くの100を超える事例を収集してございます。これをきっかけとしてこういう企業、具体的な企業の様子を業種別、規模別に見ていただいて、取り組み、効果をわかりやすく表示させていただいております。

 また、これらにつきましても、好事例の中から抽出したポイントを考え方として整理して、3つのステップで分類させていただいております。今までは働き手をどう募集するかというhowの部分が非常に多かったわけですが、その背景にある求人像、生産性、そのさらに先にある経営課題や業務といったものの見つめ直しといったところまでさかのぼって、ステップに分けて対応策と取り組みを後押しするということで関連施策をまとめてございます。

 スライド15でありますけれども、関連施策につきましてはステップごとにまとめさせていただいております。

 スライド1618でございますが、事例でございます。具体的にどのような事例なのかということで、詳細の御説明は時間の関係で割愛させていただきますけれども、要しますとさまざまな取り組みをしております。やりたいことをリスト化して、スキルマップという形で業務内容を見える化する。あるいは短時間のシフト勤務ができる形で業務を見直していく。そういった形で女性や高齢者といった方々に採用を推進することが実現しているという事例でございます。

 人手不足に関しましては以上でございまして、賃上げにつきましてはスライド19以降でございます。

 「5.中小企業・小規模事業者の賃上げに関する総合的支援策」ということで、賃上げに際しましては、まずは賃上げの原資を確保して強化していくことが重要ということで、2つの大きな柱でもって取り組んでいる次第でございます。

 まず、左側の赤い枠で囲っている部分ですが、生産性の向上、経営力の向上を通じて賃上げの原資を確保していくという取り組みでございます。これにつきましては、法律(中小企業等経営強化法)というものも策定しまして、今般、改正しまして事業分野別にアプローチをするとともに、各種税制の措置、優遇措置を設けてございます。

 また、その下の予算のところでありますけれども、法認定を受けた事業者さんを中心に優先採択させていただくなど、法認定以外の方々にも補助金を提出させていただいております。

 右側の「取引条件の改善」でございますけれども、取引慣行の改善は長年の課題でございましたが、業種横断的なルールの明確化、それから事例の追加等々を行っております。また、ガイドラインについても策定・改訂を行って厳格な運用といったことも努めてまいっております。

 こうした2本立ての取り組みで、我々としては賃上げに対する総合的支援を行ってまいっているところでございます。

 時間の関係で、スライド474849に今、申し上げました取り組みについての詳細を記載してございます。後ほど御参照を賜れればと思います。

 私からの説明は以上でございます。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 まずは最初に厚労省と中小企業庁から御説明いただいた資料について御質問を伺って、この後に今後の取り組みについての御意見を伺う時間をとりますので、まずは今、説明していただいたことに対して、ここがわからないとかここをもうちょっと説明してということがあれば、伺いたいと思います。手を挙げていただければと思います。

 厚労省と中小企業庁の資料の説明内容について、もうちょっと説明してみたいなことがあればですけれども、いかがですか。

 よろしいですか。

 それでは、この後は次の議題ということで、「今後の検討の方向性について」です。最初に事務局の配付資料について、一応事務局の考え方みたいなことを御説明いただければ、その後に皆さんから御意見を伺うことにしたいと思います。

 では、よろしくお願いします。

○奈尾労働政策担当参事官 それでは、資料3をご覧いただきたいと思います。

 資料3に「中小企業・小規模事業者における『働き方改革』実現に向けた対策」、論点案というのが書いてございます。

 3つに分けて書いてございますけれども、問題意識といたしましては、現下の人手不足の中で「働き方改革」に対応する必要がある。その中で、やはり労働参加の促進ということと働きやすい職場、それから生産性向上といったものに取り組んでいく必要があるということでございます。

 例えば1.の(1)みたいなものにつきましては、人手不足対応にもなるし、「働き方改革」の対応にもなるといったものでございますけれども、一応便宜上、分けてございます。

 内容でございますが、「1.人手不足への対応」で3つ書かせていただいておりますけれども、有効求人倍率は1.51倍でございますが、これは1974年以来の高い数字でございます。こういう中で人手不足感は今後も継続する可能性が高いということで、人材確保のためには「魅力ある職場づくり」、それから人材投資による生産性の向上が課題になっているというものでございます。

 「(1)女性、若者、高齢者等が働きやすい環境整備」でございますけれども、多様な人材に今後可能性があるというのは、御説明を省略いたしましたが資料2の13ページにも書いている言葉でございます。

 女性についてはいろいろな両立支援策、それから高齢者については助成金等あるいはハローワーク等における支援等が考えられるわけでございますけれども、今後いろいろな観点で検討するというものでございます。

 「(2)人材確保に向けたマッチング支援」ということで、人手不足が経営上の不安要素としてますます大きくなっているという中で、マッチング支援を行う必要があるというものでございます。

 (3)でございますが、産業構造の変化の中で人材投資を強化していくということで、「人材の育成・活用力の強化」ということでございます。能力のミスマッチの解消というものでございます。

 「2.中小企業等における『働き方改革』実現のための支援」ということで、(1)~(6)まで書いてございます。

 まず(1)が「働き方改革」自体の理解促進と特に中小企業等における理解促進ということで、国による周知・徹底を図る必要があるというものでございます。今も非正規雇用労働者相談支援センター等でやってございますけれども、相談支援体制は引き続き強化に努めていく必要があると考えてございます。

 「(2)中小企業の経営力の強化、生産性向上の支援」ということで、「働き方改革」を変革・成長のための機会と捉えるということでございますけれども、経営力の強化、生産性向上を促す観点から何か検討できないかというものでございます。

 (3)でございますが、時間外規制。先ほど少し御説明いたしましたけれども、人手不足の中で労働時間を短縮していく。それから取引先の状況というのがかなり大きいということでございますので、負担軽減の観点から何か検討できないかというものでございます。

 「(4)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善と賃金の引上げ」でございます。不合理な待遇差の解消でありますとか、賃上げの支援という観点から検討すべきものがないかということでございます。

 (5)は先ほど少し御説明いたしましたけれども、健康確保ということで今後検討するものがあるか。特に中小企業においても、産業医・産業保健機能の強化で何かできないかというものでございます。

 「3.業種別の支援策」ということで、業種別団体に対する支援策の周知とともに、業種別の個別支援策も検討していく必要があるということでございます。

 現在ではまだたたき台でございまして、これ以上具体化したものはないわけでございますけれども、今後の方向性ということで御紹介申し上げたものでございます。

 以上でございます。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 それでは、資料3に「中小企業・小規模事業者における「働き方改革」実現に向けた対策」の論点案が出ております。この中身について、もう少しここはこういうようにということでもいいですし、またここにないもの、すごく大事なことが落ちているということもあるかと思います。その辺について今日は最初ですので、順に今日は十何人いらっしゃるので、まず1巡目は一人1、2分でということで、そうすると短めの自己紹介、それはなくてもいいですけれども、プラス論点についての御意見をうかがえればと思います。

 植松委員のほうからお願いいたします。

○植松委員 私は千葉銀行法人営業部の植松と申します。

現在地方銀行各行では、地域の発展なくしてみずからの成長なしという共通の認識のもとで、地域のお客様とともに地域産業の競争力強化、新たな業務への取り組み支援などを行っております。その中で弊行が会長行を務めております全国地方銀行協会では、「地方創生」、「お客様本位の業務連携」、「働き方改革」の3つのテーマを今年度の柱としております。

 柱の一つであります「働き方改革」につきましては、人工知能、情報通信技術の活用などによりまして、生産性向上の支援を行うことや、女性やシニア層の活躍推進を始めとする人材活性化に関する取り組みを支援することで、地方が抱える人手不足という課題解消に向けた活動に取り組んでまいっております。

 地銀界の活動としましては、女性の活躍支援を行うために地銀人材バンクを発足させております。これは、会員行に勤める職員が配偶者の転勤や家族の介護を理由とした転居により銀行を退職する場合に、本人の希望によって転居先の地域にある会員行を紹介することで再就職が可能となる仕組みでございます。2015年からこの制度を開始しておりますけれども、既に147件の紹介実績がありまして108件が成約をしております。

 また、弊行の取り組みとしましては、本年6月より行内に人材ソリューション担当を設けておりまして、地域のお客様のためにさまざまな人材ソリューションの提供をしておるところでございます。皆様の御意見、お考えをお伺いする中で、地域金融機関として貢献できることをこれから考えてまいりたいと考えております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 小野木委員、お願いします。

○小野木委員 全国商工会連合会の副会長を仰せつかっております、小野木でございます。今日はこのような会議に出席できたことを感謝申し上げたいと思います。

 働き方に関しましては、まず長時間労働の是正についてでありますが、現下の人手不足の状況では容易に人材を確保できないことから、中小企業・小規模事業者は既存の人員で業務を遂行するしかない状況を抱えております。このような中、発注元から短期間工事の要請があればそれに対応せざるを得ず、やむなく長時間労働にならざるを得ないといった自社だけでは解決できないことが起こり得るわけであります。現在もそういったことが往々にしてありました。

 その中でやはり大企業というのは、我々中小企業の背中を踏み台にして大きくなったと言わざるを得ないだろうと思います。踏み台にされる立場でありますけれども、こういったものが「働き方改革」の中で受け皿となる中小企業であります。例えば公正取引委員会に訴えるとかそういったことをやった業種があります。それがどういう業種であるかというと、いわゆる電化製品の安売りでありました。量販店は大量に仕入れるものだから、1万円のものは8,000円、7,000円と一気に仕入れるわけであります。したがいまして、商店の電気屋さんはほとんど地方では見当たらなくなった。大手電化メーカーだけ。これを公正取引委員会に訴えたわけであります。そうしたらそれが直りまして、やっと今は町の電気屋さんが細々と息をついているというのが実態。規制緩和がいいようで町を破壊したと言っても過言ではないと思っております。

 今更それをどうしようというのは難しいわけでありますけれども、その中で我々小規模の会員を抱える商工会の立場からみれば、罰金とかという話もありますが、罰金を取るのは大手から取ってもらいたい。交渉力の弱い中小企業は、押しつけられたら返事をしないと仕事にならない。これはどちらが正しいのかと。小規模の方々はお願いされれば真面目に生活のためにやるわけです。その違いがここにきているのかと。したがって同一賃金についても、それなりの能力に応じた報酬のあり方というものは考える必要があるのではないかと。そういう思いでおります。

 ぜひこれからの改革については、年金をもらうよりも働けと言わんとしているような政府のあり方ではないかと思っております。年金そのものもだんだん目減りしますので、そういうものを見ますと、規制緩和からいわゆる岩盤規制を改革するということになりますと、海外で事業をやっている方々が結果的には上場し、営利を得ている。では、我々中小は海外に行けるのかと。地域の中小・小規模事業者は、この土地で生まれ、この土地で育ち、この土地で商売をせざるを得ない方々が多いわけです。そうしますと、海外に行けた企業は、結果的に本社も海外に行ってしまったらこの国はどうなるのですか。ある種、人件費の差が商品の差につながっているのではないかとそう思っております。大手の一部では、大分儲かって世界を制覇しておるわけでありますが、賃金の安いところで物をつくれば儲かるわけです。ここに出席される方々も多分そういう方々がいらっしゃると思いますけれども、この地域で事業をし、この地域から出られない、海外に出られない人たちはどうなるのですか。

 そうなると、山形大学の先生にお願いしたら、ロボットをどんどん開発していったらどうかという話をいただいた。しかし、ロボットは腹が減ったからご飯が食べたい、寒くなったから服装を変えたいと言うことはなく、ロボットは買い物をしません。したがってロボットは機械でありますから、輸出産業にはなく、あるいは労働の一部の手助けはできるわけでありますが、地域経済そのものには全部イコールにはならないわけであります。

 だとすれば、経済とは何か。人でしょう。だとすれば規制緩和をある程度していただかないと、先進国は肌の色がみんな違うわけです。同じ親から生まれたような顔をしているのは、日本だけです。だとすれば、先進国のようにきちっとした88カ国くらいの日本語学校があるわけですから、そこにちゃんと内申書を調べて学校に入った方は永住許可の出せるようなその政策を打っていかないと、人口は減る状況で労働力を確保することができません。どうするのか。どうするどうすると言いながら、何も結果は出てこない。そのこと自体が日本の経済を弱体化しているのではないか。

 それから地方は農業が基幹産業になっておりますから、ぜひ農家の跡継ぎがいないような地方というのは、果たしてこれからどうなるのか。そういったものも含めまして、改革というものをみんなでまとめ上げていただきたい。そう思っております。

 よろしくお願いします。

○佐藤座長 川野委員、お願いします。

○川野委員 JAM副書記長の川野と申します。

 我々の労働組合は機械金属産業、中小ものづくりを中心とした約2,000企業労組が加盟する35万人の労働組合でございます。中小企業労働組合の構成比が高いということが特徴でございまして、300人未満の単組が85%を占める組織であるということを御理解いただければと思います。

 そうした中、「働き方改革」における中小企業・小規模事業者への影響の論点についての課題提起として触れておきたいのは、私どもの調査の中でも中小企業の景況感の改善が顕著に進んできたということは景況調査からも出ている一方、人手不足と時間外労働の増加といった、課題が明確になっていることです。

 加えて、我々の調査の中で見えてきたものは、売上高、生産量、経常利益ともに全規模でプラス傾向になっている反面、先ほど言いました人手不足感が強まっているとともに時間外が一月当たり19時間台になっております。これは押しなべての平均時間でありますから、3年間の比較をしても18時間台から19.2時間まで上昇したということは、顕著に労働時間がふえているというのはこの調査からも出ているところでございます。

 また、問題と感じておりますのは、先ほど論点案の中にも出てきましたけれども、魅力ある職場づくりや人手不足感の解消に向けた諸施策についてでございます。中小企業の魅力というのはある意味、処遇や環境の部分で明確に大企業と比べて差があるわけでございます。私どもの調査の中でも18歳の賃金、高卒初任給の数値は余り差がなく、大企業と中小企業の差は1ポイント程度にとどまっているのですが、30歳時点の賃金となると従業員300人未満の企業の労働者の賃金は平均値の90%程度の賃金になっており、従業員1,000人以上の大企業になると105%まで上がっており、その差は顕著にあらわれ、それが生涯賃金等々で比べてみると大きな差になるということです。こうした企業規模間に見られる処遇格差の改善なくして、中小企業で働く仲間というか、労働者が中小企業を就職先として選んでいくということは、解消されないのではないかと思います。

 このことはかねてから課題としてなっており、諸施策の中に3%の賃上げを実施した場合に法人税の減税をという施策が平成24年からスタートしていますが、我々の構成企業に調査をしたところ、知っているところがごく一部にとどまっています。また、以前の減税対象は給与総額を5%以上増やした企業でしたけれども、この3年間は2~3%に緩和されましたが、その緩和を知らなかったりして、実際に利用したのは本当にごく一部にとどまっているということでございます。こうしたさまざまな諸施策、いいものもいろいろと展開されていますが、その周知や徹底が欠かせないことと思います。

 もう一点、問題意識を持っているのは、2014年の中小企業白書でもふれていただいていますが、中小の価格交渉力の弱さや不利な取引環境が存在し、本来の価値を価格に転嫁できない状況が今なお存在していることです。こうした状況を是正するルールを厳格化する等々の施策がありますけれども、取引間において値戻しを含めて価格転嫁の要請をするというのは、特に中小企業にとっては非常に難しい取り組みであるということは御存知のとおりだと思います。

 我々の組織の中で3割が取引先に対して価格改定の要請をしたところ、85%が価格の値戻しに対応していただいたという調査結果もあり、要請すれば8割を超える取引先で一部、もしくは全額の要請に応じた対応をしていただいているということですから、そうした取り組みをより一層展開できるような環境づくりが強く求められるものと思っております。以上の論点から今後の「働き方改革」の実現に向けた取り組みを主張させていただければと思いますので、よろしくお願いします。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 北浦委員、お願いします。

○北浦委員 日本生産性本部などでアドバイス役の形でおります、北浦でございます。

 先ほどちょっとお話がありましたテレワークなのですが、そちらのほうも日本テレワーク協会の副会長をやっておりまして、そういったことでテレワークの推進にもかかわらせていただいております。

 そういった観点から2つ、3つ申し上げたいと思いますが、何といっても人手不足の問題は一過性ではなく、今後構造的につながるという問題でありますので、これについてはやはり相当短期的な対応と同時に中長期的な対応と、やはり両面から考えていく必要があるのではないかと思います。

 長い目で見てもやはりどうしても減っていく中において、確かに人は重要なのですが人に補うものもしていくためには、省力化投資というのが大事だろうと思います。生産性の向上ということは言っておりますが、業務改善による生産性向上には限度があります。そういった意味において抜本的にとなると、省力化投資。

 そうするとお話がありましたが、まだ問題は多いのですが、ロボットというものが本当にどこまで使えるのかというのは、そろそろ真剣に議論する時期であろうかと思っています。ただ、現実にこれはまだまだ高価であり、また部分的にしか使えない面もありますが、これを本格的にやっていくのは長い目では大事かと思います。その際、短期的に見てもこれは有効かと思われるのは、いわゆる加重負担、身体的負担の軽減に寄与している例であります。例えば介護事例においては典型でありますが、そういったような例から見ますと、短期的にもロボットによって、それでここのお話にあります女性あるいは高齢者の参入というものに便を図っていく面もあるかと思っております。

 しかしながらそれだけで解決するものではありませんが、業務改革と並んでもう一つ中小企業も含めてでありますが、多分アウトソーシングということはかなり真剣に考えていくのかと思います。アウトソーシングということになりますと、先ほどのテレワークの問題も出てまいりますが、全体としての共同化の中において、特に中小企業さんなんかではその中での効率化というのはやはり大きな要素かと思います。そういうアウトソーシングビジネスとの絡み合いというものも十分に考えていく必要があるかと思っています。

 ただ、中小企業も含め、サービス業の生産性というところに特化いたしますと、大変これは難しい。それは企業の意識を変えるというのが冒頭の御挨拶の中にもございましたけれども、サービス業ということになりますと企業だけではなく取引慣行、これは御説明もございましたが、それだけではなくて社会意識を変えないと、なかなかそこのところを容易に生産性向上には持っていくことができない問題だと思っています。消費者の行動の問題もそうだろうと思います。そういった面も含めた大きな取り組みというのが、一つ要るのかと思っております。個々の取り組みはここにいろいろと出ておりますが、そういったものも含めて大きな観点からの検討をいただくことも、始めていただく必要があるのかと思っております。

 それからこの施策の中で一つありますのは、人材マッチングの話が出ておりました。とりわけ中小企業さんにおいての労働者とのマッチング支援。大事な点だと思っております。そういった流れの中で、大企業においての高齢者対策ということで70歳ないしそれ以降への雇用延長というのが進んでおりますが、大企業から中小企業への雇用の流れというのも大分出てきております。そういった意味において、出向、転籍という形がいいのかどうか、それはわかりませんけれども、一つ、高齢化が進むと同時にそういったような大企業から中小企業への流れ。その人材をいかに活用して全体で効率よくバランスをとっていくのか。その観点の施策というのもあろうかと思いますが、充実が一層望まれるところであります。

 その他、幾つかございますけれども、以上で説明を終わらせていただきます。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 高松委員、お願いします。

○高松委員 ありがとうございます。

UAゼンセンの高松でございます。最初の委員紹介のときに正式名称で御紹介いただきましたけれども、UAゼンセンにつきましては、繊維化学食品流通サービス、そのほか一般というような数多くの産業で組織した産業別組織であるのですが、現状組合数が約2,500、組合員数は約170万人となっており、おかげさまで日本では最大の組織ではございますけれども、産業構造のかなり幅の広い部分で運営しておりまして、それなりの悩みも多いのですが、特徴としましてはやはり中小の組合が多いということでございます。組合委員数が100人以下の組合数が1,300強であり、全体に占める比率は53%となっています。また、組合員数が100300人の組合数は14%となっており、これをあわせると67%が300人以下の組合となっています。日本の労働組合の組織率からいいますと、従業員100人以下の企業の労働組合組織率は1%に満たないという状況ですから、いかに組織化された中小零細が多いかというのがおわかりいただけると思います。

 さらにもともとは繊維からスタートした労働組合なのですが、現状は流通及びサービス業に従事する組合員が8割以上を超えていまして、同じ組織の中で取引慣行の受け手と仕手の両方の課題を抱えたようなところがございます。

 「働き方改革」や、人手不足対応に関しては追々じっくりお話をさせていただきたいと思うのですが、常日ごろからUAゼンセンとして、中小企業政策について特に行政等に要請をしている項目が3点ほどございますので、そこをお話しさせていただきたいと思います。

 1点目は、中小企業基本法の問題です。この法律はたしか昭和38年くらいにできたかと思いますけれども、中小企業の定義が業種を問わずに統一にしていないというところがございます。法制定当初は製造中心だったと思うのですが、御承知のように流通サービスが非常にふえた中で、少なくとも雇用に関する助成金につきましては、趣旨に応じて中小企業の基準を連動させていただきたいという点が1点目です。

 2点目は、公正取引の確立とサプライチェーンにおける付加価値の適正配分というために、独禁法あるいは下請法等の強化、あるいは大規模小売業の告示、あるいは下請けガイドラインの周知、徹底を図っていただきたいということです。時間がありましたらまた御報告したいのですが、昨年約3,000社に及ぶ食品営業の取引の慣行のアンケート調査を実施しており、その中でもかなりいろいろな情報や実態が浮かび上がってきております。また話をさせていただきますが、まさに下請法等の周知、徹底を図っていかない限りは現状の改善は難しいだろうと思います。

 最後に3点目ですが、やはり労働条件の基本に関してです。具体的には中小企業の退職金あるいは企業年金の導入に向けた支援を促進していただきたいということです。最近では厚生年金基金の解散が多くなっておりますけれども、労働者の退職金あるいは企業年金の減額というもので対応されてしまうということのないように、企業への徹底を指導していただきたいと思います。また、中退共についても、業種毎に加入対象となる事業主の規模が違ってきています。中退共に入らないと無理な体力の企業が入れていないということもございますので、一定規模の従業員数の企業までは、仮に従業員数が増えたとしても300名を超えた瞬間加入できないというのではなくて、柔軟に対応いただきたいと思います。加えて自治体による加入事業所への補助などについても、御検討いただきたい。細かい部分についてはまたお時間いただければ話したいと思います。

 以上です。

○佐藤座長 どうもありがとうございます。

 立石委員、お願いします。

○立石委員 

立石でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

この数年間、小規模企業振興基本法の制定から持続化補助金を発案、よろず支援拠点等々の小規模企業支援施策について政策ブレーンとして、真剣に向き合ってきた者として発言させて頂きます年間150カ所以上全国の商工会、商工会議所、中央会、金融機関等々での小規模事業者の研修、講演を行ってきました。毎年数千人から数万人の方々の現場意見を聞いてきました。その観点からお話をさせていただきます。

 現場を見てきた中で考えますと、中小企業と小規模企業を分けて議論しなければならないと言うことです。中小企業基本法は昭和38年にできています。それから51年後小規模企業振興基本法が4年前にできております。せっかく閣法の基本法が2つできているにもかかわらず、この2つを分けた観点での議論をしていかなれば、そもそもおかしいのではないかということですこの資料の事例では小さい規模の事例も出していただいてはいます。世間の観点からしますと、中小企業というものはどうしても池井戸潤さんの「下町ロケット」、佃製作所クラスの従業員が100人、200人いるところ、売上数十億から100億以上の企業のイメージになります。そこと本当に小規模、家族経営で従業員3人、5人の大工さん、板金屋さん、居酒屋さんところは、全く違う論点にしていかなればなりません。また、賃金格差ということにおいても、小規模になればなるほど格差が少なく、経営者、専従者も、高額ではありません。

 それから労使の問題があるというのも百も承知なのですが、余り突き詰めていき過ぎると、全てのしわ寄せが経営者にいきます。特に小規模企業は顕著です。私はもともと旅館の息子でございますから、そういう光景を子供の頃からをずっと見てきました。ですからこの観点は大変重要です。もしくは論点を分けて考えないといけないと思っております。

 もう一つ重要なのは、小規模事業所の数です。325万社あります。この数はやはり圧倒的です。中小企業の86.5%が小規模です。とりわけ地方にいきますと90%を超えております。この方々が抜け落ちていると言うことです。

 小規模基本法ができてからの、この数年間、中企庁を始めとして、各省庁で、多くの施策を打っていただいたおかげで、世の中が変わりつつあると感じています。持続化補助金に関する調査では、90%を超える方々から、ちょっと経営を見直し、簡単な経営計画を作り、業務改善すれば、売上、利益が増えた、もしくは、増える見込みだという、驚異的な結果が出ました。よろず支援拠点関係者からも、単純な本当に簡単なことをほんの少し行い、経営を見直しただけで売り上げ、利益が伸びたと言っている小規模事業者が余りにも多いという事実です。この事実から我々が今、ここで議論しなければならない点は、この方々は、どんぶり勘定経営だったということです。語弊がありますが、経営をやっていなかった方々です。決してゾンビ企業ではありません。このどんぶり勘定こそが実は伸び代の大きい成長企業群であったということです創業以来、きちんと経営というものをやってこなかった、それでも何十年継続し、雇用や地域需要を支えてきた!これは、逆説的ですが、凄いことでは無いでしょうか?この方々に、ほんの少し見直してもらう。どんぶり勘定をやめ改善をしてもらう。そうすると、きちんと経営してこなかったことは、大きな強みで伸び代なので、飛躍的に改善した事例が顕著に表れました。スマホ、タブレット等の簡単なITをどんどん導入する。そして「稼ぐ力」を上げていく。やっていないですから、伸び代が大きいです。GDP600兆を達成するための一つの大きな柱が小規模企業であることは間違いありません。稼ぐ力、生産性が上がれば、雇用確保、事業承継につながります。この現実がこの数年間、地域を回って確実に見えてきました。この点もご理解頂きたいです。 最後になりますが、女性、高齢者の活用ということもありました。これは統計資料にもありますように、この活用の場は地域の小規模企業が大変多いです。中小企業、中堅・中規模というよりも小規模企業、小規模事業者です。ここの論点をしっかり入れて議論していくこと大事であると考えております。

 以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤座長 どうもありがとうございます。

 原委員、お願いします。

○原委員 クオリティ・オブ・ライフの原正紀と申します。

 私自身のポジションは、恐らくまず1つは自分自身が中小企業経営者であるということで、20人程度ですが中小企業、そのほか社団法人も2つくらいやっております。

 もう一つは事業としてやっていたり、私自身も中小企業診断士という資格を持っていますので、中小企業支援者といったところでの視点から。

 3つ目が、実は大学の客員とか講師をもう10年くらいやっていまして、中小企業研究をしていたという、そのような立場からの意見として受けとめていただければと思います。

 最初に、やはり支援の方向性として皆さんからも出たとおり、中小企業、小規模企業といっても余りにも雑駁というか大ざっぱ。そこのセグメンテーションが必要でしょうというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 そこで2つの軸が必要だと思うのですが、1つは今、皆さんがおっしゃった対象の軸です。規模で分けてもいいですし、産業という観点もあると思いますが、私のイメージとしては単に規模というよりは、例えばトップ層でどんどん成長して新しいことにどんどんチャレンジしていく。日本社会として投資すべき企業層。それからミドルクラスの大多数を占める一般的な層。それからセーフティーネットや支援が必要な層。この辺をやはり分けるべきでしょう。

 もう一つ重要なのが、時間軸だと思います。当面の危機突破、もしくは成長のための対策と中長期で見たときに、将来の日本社会を見据えて何をすべきかという観点。この時間軸と対称軸で分けて何をすべきかを明確にして、しかもそこで優先順位をつけて取り組んでいく。これしかないのかと思います。

 優先順位はさっき言いましたとおり、2つの観点で考えるべきで、1つは対象にとっての必要性です。これをやってあげることが重要であるということと、もう一つは社会にとっての投資という観点で、将来伸びてもらうために今やるべきこと。この観点が必要。そのメリハリをつけていければと思っております。

 2つ目の観点として今、「働き方改革」ということなのですけれども、これをチャンスと見るか、ピンチと見るか。もちろんチャンスと見るのですが、要は大きな変革、変化の時期であるということは間違いないと思います。それも従来日本が得意だったいわゆるインプルーブメントではなくて、イノベーションという観点で今、何をすべきかが必要だと思います。ただ、チャンスと見て投資すべきだと思うのですが、ピンチの観点を忘れないということがやはり大事かと思っています。

 例えばチャンスでいうと、これまで言われていた生産性の向上、特に労働生産性と資本生産性の2つを大きく向上させるチャンスである。これは中小企業経営者として私も意識しなければと思って、今、何をすべきかをまさに考え、実行したいと思っていますので、そういうことをうまく支援してくれる制度とかがあればぜひ乗っていきたいと思います。

 もう一つはピンチへの配慮ということなのですが、やはり1つは産業によっては現状では時間でやっていくしかないという難しい部分があります。特にさっきから出ているサービス業とか流通、飲食、場合によっては介護とか物流なんかもそういう面があります。そういったところではやはりいきなり時短と言われては、業績ダウンに直結する危険性があるということで、そこのところをどう配慮するか。

 もう一つが、今回の趣旨から外れるかもしれませんが、人の部分です。やはり世の中には時間でしか稼げない、そういう状態の人がいっぱいいらっしゃいます。例えばシングルマザーで子供を育てて、子供にいい教育を受けさせたいと思ったら長く働くしかないとか、若者でもローキャリアの若者が例えば何らかのことで借金を背負ってしまって返しながら暮らしていくときに、やはり長く働いて返していく。こういった実態があるので、やはりそういった配慮を充分にしながら、その上でチャンスに投資していくことが大事かと思います。

 もう少し具体的な話をしたいのですが、私は実は先月タイのバンコクに1週間弱行ってきました。なぜかというと、御存じのとおり今、タイは失業率1%を切る完全雇用状態と言われています。私も経営者もしくは支援者として、そういう状態下で企業経営はどうなるのだろうととても興味があったので、行って7社ほど回ってきました。いろいろとあるのですがポイントだけ言うと、ものすごく人材が流動化していて、採用は割とできている。採ろうと思って活動したらそれなりに流動性が高いので人が来る。半面恐ろしいのは、近くで好待遇の求人が出たときに、同時に5人辞めてしまったなどということが起こるのです。それも明日から来ないといった、経営者としてはとても恐ろしい状態になっていて、実は大事なのはリテンション(人材定着)とか人材育成策なんです。ここで大きな発見だったのは業務改善の5S活動がすごく効果を発揮しているということです。つまり、小集団活動をやることによって、リテンションにもなり人材育成にもなり本人たちのモチベーションアップにもなるということで、非金銭的なつなぎとめができていると感じました。ただこれは製造業の場合なので、サービス業などの対策には、5Sとは別のフレーミングが必要かなと思います。

 私は『企業診断』という60年くらい続いている雑誌でトップインタビューを10年以上続けて、いろいろな優れた経営者の話を聞いてきました。優れた経営者の大きな共通特徴としてわかったのが、皆さんは1つの何か施策をやってそれで多くの効果を上げるということです。一石五鳥、六鳥を目指すということで、例えば人をリテンションするための離職防止策をやって、採用のための採用強化策をやって、人材育成のための研修をやってみたいなことを1個ずつやっていると、課題だらけなのでとても追いつかない。ですから、5Sという一つの活動をやることによって幾つもの効果を出していく、こういったやり方がとても現実的なので、政策のほうも何かそういった肝を突いた、ポイントを突いた、これをやることによっていろいろなものがよくなる。こういったものを見つけていければいいのではないかと思います。そのようなことを、これから考えていきたいと思っています。よろしくお願いします。
○佐藤座長 若林委員、お願いします。

○若林委員 私は全国社労士会連合会の副会長の若林と申します。

 全国社労士会は会員数4万人を超えておりまして、日ごろ中小企業を中心に労務管理等の指導を手がけている社労士の連合会ということになります。そういう立場を踏まえつつ、個人としての意見を述べさせていただきたいと思っております。

 中小企業において「働き方改革」については、長時間労働の是正や同一労働同一賃金による賃金の上昇、あるいは最低賃金が今、上昇している状況の中で大変ピンチな状況なわけですけれども、一方生産性を上げること、あるいは多様な人材を活用できる職場をつくっていくということは、次世代に向けて魅力ある職場づくりになれるというチャンスでもあろうかと思っています。

 本日、資料3についてということで、佐藤座長のほうからもお話がありましたのであれですけれども、トップに人手不足への対応というように挙がってきているわけでありますが、生産性向上も多様な人材活用も今、お話ししたような魅力ある職場づくりという未来志向な前向きな目的もあるわけですので、そういった部分も少し強調していただければとも思っています。

 一方で、我が国は大規模災害が想定されているわけで、私は三重県社労士会の会長なのですが、今月は三重県と大規模災害時における労働社会保障の相談会を速やかに開催するための協定を締結したところであります。「働き方改革」についても柔軟な働き方としてのテレワークやサテライトオフィスというのは、一たび大規模災害が起こったときの有効な活用ということもあります。

 また、本日御説明いただいた属人化していた仕事を見える化するということも、大規模災害が起こって人材が欠落しても、企業活動を続けていくための有効な手段となると思っています。そういった意味で、「働き方改革」をなぜしていかなければいけないのかということについて、中小企業・小規模事業者に対してもう少し丁寧な御説明を加えていただければと思っております。

 2つ目の実現のための支援というところですけれども、本日既にいろいろとお話をいただいたように、省力化投資あるいはITの活用ということがお話にありましたが、長時間労働を是正するための勤怠管理だとか先ほど話したテレワークだとか、あるいは属人化している仕事を脱するためのマニュアルの電子化だとか、こういったことについてはICTの情報技術の活用というのが、どの項目にもかかわってくることであろうと思います。こういったことについては、民間の経済活動に任せておけばいいという視点もありますけれども、やはり中小企業・小規模事業者にとっては、ICT、情報技術の活用について何らかの政府の支援があれば、「働き方改革」全体の進みぐあいに大きな力になるのではないかと思いました。

 きょうのところ、以上です。

○佐藤座長 高橋様、小林様、輪島様、もし御意見があれば、順にお願いできればと思います。

○伊藤委員代理全国中小企業団体中央会専務理事高橋様 高橋でございます。

きょうは会長の代わりということで、事務的な要望等々を申し上げることになりますけれども、資料2に非常によくまとまっていて、その中で具体的な例が細かく書いてあるので、なるほど、そうかと非常にわかりやすいのが出ていたということにまず敬意を表したいと思います。

 資料3のところで一つずつ申し上げますと、人手不足の対応というところですが、御承知のように中小企業の雇用というのは、基本的にはハローワークに頼っておりまして、ハローワークの機能が非常に大事だろうと思います。

 渋谷のハローワークにまいりましたけれども、若者向け、女性向けについて非常にそれぞれの方々の特性に応じた指導といいますか、紹介をされていました。男性が多いわけでございますので、一般的なハローワークももう少し明るい感じのようにしていただきたいと思います。 人材確保のそもそもの件ですが、中小企業の魅力、どういうところがいいのかというところも文部科学省の観点かもしれませんけれども、そういうことをぜひ伝えていただきたいと思います。

 たしか厚生労働省だと思いますけれども、マイスター制度ということで小学校、中学校などにある特定の技能を持った方、技能士会を使って説明にいったりして、少しでも興味を持ってもらうようなことをやっていただいておりますが、こういう地道な活動をぜひお願いをいたしたいと思います。

 それから中小企業の場合に、本来は教育訓練をいろいろとしなければいけないのですけれども、人が足りないということでOJTでやっているのだと言っていますが、中身をもうちょっとよくやっていただければと思います。

 たまたま私どもの会員会社のところに行きましたら、課長クラスが座学で教えて、その後に実務をみんなに教えているということを週1、2回やるということで、単にやっているからこれでわかるだろうというのではなく、きちんとやっているのを見たことがございますので、OJTのやり方はこういうようなのがいいのですよというのがあるのだろうと思いますけれども、ぜひいい例を見ていただければと思います。

 2番目でございますけれども、生産性の向上が大事ということでございますが、先般、働き方改革実現会議がございまして、第1回のときに岡山の中小企業の方が人手不足で困ったと。海外に行くのかどうしようかというときに、たまたまでございますがものづくり補助金があって、それを利用して24時間稼働できる機械を導入して人手がきちんとうまく回ったり、また若干余裕ができてほかのところに当てることができたと言っています。やはり、新しい機械、性能のよいものを取り入れるような助成措置をずっととっていただければよろしいのではないかと思います。

 それから「働き方改革」そのものでございますけれども、地方へ行って各会長さんたちとお話をいたしますと、こんなに日本は休日があるのに何で働いてはだめだというのだ、けしからんと。一つには休日と労働時間をごちゃごちゃにしているからだと思いますので、日本は労働者が相当働いて、長時間働いていることがわかるようによく説明していただきますようお願いいたしたいと思います。

 それから仕事の関係で、仕事の進め方というのも大事だと思いますので、年金だとか労務の問題ということだけではなくて、こういうように仕事をすると無駄が省けるのだという指導、診断士の仕事かと思いますけれども、そういう仕事に対する補助とか何かがあればよろしいのかと思います。

 3番目の業種別の支援策ですけれども、私どもの全国中央会は業種別の中小企業団体が集まったところでございますので、私どもとして全国中央会の中に協議会を設けまして業種ごとにどういう問題があってどうすればいいのかと、どういう施策を講じていけたらいいかということを検討して、またこういう場でお話をさせていただければと思っています。

 以上でございます。

○佐藤座長 小林様、お願いします。

○前田委員代理日本商工会議所産業政策第二部長小林様 商工会議所で労働政策・労働法制を担当する部の部長をしております小林でございます。本日は前田委員の代理として発言させていただきます。

 お手元には日商の調査をお配りしております。本日はこれをもとに御説明を申し上げます。

 まず、人手不足の状況です。2ページをご覧ください。企業の人手不足の状況につきましては、今年の調査では60%の企業が人手不足と回答しておりまして、この割合は毎年5ポイントずつ増加しております。

 業種別には宿泊・飲食、運輸、介護・看護、建設等でより人手不足は深刻となっております。

 詳細は割愛いたしますけれども、中小企業ではいわゆる第二新卒などの即戦力に対するニーズが高く、また人員が充足できない理由といたしましては、応募がない、求めていた人材ではない、定着しないが上位に挙げられております。

 現在中小企業の人手不足や処遇改善に向けまして、さまざまな助成制度がございますけれども、こういった企業のニーズや課題を踏まえまして適宜見直しを図っていただき、わかりやすく活用しやすい制度としていただきますよう、まずはお願い申し上げたいと思います。

 次に「働き方改革」に関する課題ということでありますけれども、11ページをご覧ください。長時間労働の是正に向けまして、国に支援してほしいことを聞いたところ、「人手不足の解消」「長時間労働を生みかねない民間の商慣習・取引条件の是正」が上位にございました。

 また、同じく11ページの下段ですが、同一労働同一賃金について聞いたところ、ガイドライン案について知らなかったと回答した企業が最も多く、4割を占めております。

 さらに13ページですが、ガイドライン案が参考にならなかった理由といたしまして、「自社の賃金制度や就業規則をいつまでに、どのように変えていけばよいか分からない」「グレーゾーンが広すぎる」が上位に挙がっております。

 なお、資料はございませんが、この5月に日商で公表いたしました「働き方改革」に関する考え方におきましては、時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金ともに法施行まで十分な準備期間を確保していただきたいということを要望させていただいております。

 中小企業では「働き方改革」を進めたくとも、一社だけの取り組みでは難しい状況ですので、政府におかれましては、情報発信の一層強化と、中小企業が働き方改革に取り組めるような環境整備をぜひ推し進めていただきたいと思います。

 以上でございます。
○佐藤座長 輪島様は何かありますか。

○日本経済団体連合会労働法制本部長輪島様 長時間労働是正の関係でございますけれども、時間外労働の上限規制を入れるということの改正でございまして、私どもとしてはある意味で命に関わる法律改正、大事な改正だろうと思っておりますものですから、継続審議になっている法律案も含めまして労働基準法につきましては早期の審議、成立をお願いしたいと思っているところでございます。

 それから労働力の増加という点でございますけれども、資料3にあるように「1.人手不足への対応」の(1)の女性、若者、高齢者というようなところで、確かにそういうところが大事だろうと思っております。その点でいいますと、高齢者は高年齢者雇用安定法の要請に基づいて、それなりに労働市場にとどまっているというかいると思いますので、労働市場になるべく長くいて、支えるというようなこと。

 それから若者につきましては、ミスマッチみたいなものをどういうように解消していくのかというのが課題ではないかと思っています。

 女性につきましては、働くことに対する希望と実際の就業率にまだ乖離があると思っておりますので、そういう意味では短期的にはまだ労働市場に参入しきっていないといいますか、高齢者と若者と女性の労働施策、雇用政策を打って、短期的な対応というのは可能な政策がまだ幾つもあるのではないかと思っている。その間に中長期的な観点でいうと、省力化の投資であるとかAIとか私どもとしてはSociety5.0というようなことで、中長期的な政策についてどのような課題を解決していくのかということを短期と中長期に分けて、いろいろとさまざまにやっていく必要があるのではないかと考えているところでございます。 以上です。

○佐藤座長 まとめませんけれども、私も皆さんから伺って少し感じたことがあります。

 一つは、皆さんが言われたような「働き改革」というのは、生産性や仕事の仕方を変えて労働時間を下げることだけではなく、多用の人材が活躍できるような仕事の仕方にしていく。そしてそういう意味では、これまで採用していなかった人たちも採用し、活躍するようにするということだと思うのですけれども、問題なのは企業の側に変わっていただくということなのです。

 もう一つは働く側で、多分今、失業率が2%くらい。さっきタイが1%ありましたけれども、日本も1%の時代がありましたが、特にパートなんかでいうと本当に求職者は少なくなっているということがありますので、多分大事なのは例えば子供が大きくなったら働こうとか、仕事を探したのだけれども仕事がなかったと諦めてしまっている。つまり求職者ではないのです。労働所を出ていない人に、先ほど輪島さんも言われたのですけれども、働こうと思ってもらえるかということを厚労省、あるいは全体で考えていただかないと、企業の側はいろいろな方を雇うというのが、これまで雇っていない人も雇っていいですよとか、仕事の仕方を変えて短時間で雇いますよとしたときに来てもらえるかどうかということがあるので、大事なのはタイの人材が活躍といったときに労働所を出ていない人たちが、働こうと思ってもらえるような取り組みというのが結構大事かと。

 ある企業、例えばキッザニアでお子さんが遊んでいる間は親が待っているのです。待っている親御さんに家計のシミュレーションをして、早く働いたほうがいいのではないかと思ってもらうとか、あるいは幼稚園で家計シミュレーション、つまり幼稚園ですから働いていないのです。お母さん方にこれからのキャリアとか生活を考えてもらう。働こうと思ってもらうとか、このようなことももしかしたら必要になってくるかと思います。

 それでは、皆さんから出た御意見について、厚労省なり中小企業庁からもし何かあればお願いします。きょうのことについて、そのことはやっていますとか何かあればどうぞ。

 いかがですか。いいですか。

 それでは、一応きょうは最初ということで、皆さんに御意見を伺うというのが大事ですので、本日の議論はこの辺までとさせていただければと思います。

 事務局には本日の議論を踏まえて、引き続き検討をお願いしたいと思います。

 最後に次回の予定について、事務局から御説明いただければと思います。

○奈尾労働政策担当参事官 次回の日程につきましては、現時点では8月末を予定してございます。

 また対策案については、本年秋口ごろまでに取りまとめることとして、次回は幾つかの自治体から取り組みとか御意見をお伺いするようなことも考えておりますけれども、具体的には私ども事務局で調整の上、追って御連絡申し上げたいと思います。

○佐藤座長 お忙しい中御出席いただき、活発に御意見をいただいてどうもありがとうございました。

 それでは、これで検討会を終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。


(了)

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