ホーム > 政策について > 審議会・研究会等 > 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会) > 第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録(2017年7月28日)




2017年7月28日 第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録

健康局健康課

○日時

平成29年 7月28日(金) 16:00〜18:00


○場所

中央労働委員会講堂


○議事

○事務局 それでは定刻になりましたので、ただいまより、第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び平成29年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきありがとうございます。初めに、本日の委員の出欠状況について御報告します。安全対策調査会の遠藤委員、望月委員から御欠席の連絡を受けております。現在、副反応検討部会委員8名のうち8名、安全対策調査会委員6名のうち4名の委員に御出席を頂いておりますので、厚生科学審議会及び薬事食品衛生審議会の規程により、本日の会議は成立したことを御報告します。

 また、本日は参考人として岡山大学小児科准教授の岡田あゆみ参考人、JR東京総合病院小児科の奥山伸彦参考人、国立障害者リハビリテーションセンター病院第三診療部小児科医長の田島世貴参考人、慶應義塾大学病院小児科学教室助教鴇田夏子参考人に御出席いただいております。厚生労働省では今月、人事異動があり、健康局長に福田祐典が着任しております。本日は所用があり、遅れて出席する予定です。申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので御協力お願いいたします。

 本日の審議の前に傍聴に関しまして留意事項を申し上げます。開催案内の「傍聴への留意事項」を必ず守っていただきますようお願いいたします。留意事項に反した場合は退場していただきます。また、今回、座長及び事務局職員の指示に従わなかった方や、会議中に退場となった方につきましては、次回以降、当会議の傍聴は認められませんので御留意願います。本日の座長につきましては、桃井副反応検討部会長にお願いしたいと思います。それでは、ここからの進行をよろしくお願いいたします。

○桃井委員 それでは部会を始めさせていただきます。皆様には、大変お暑い中御出席いただきまして誠にありがとうございます。また、4人の参考人の先生におかれましては、大変お忙しい中、本部会のためにおいでいただきまして厚くお礼申し上げます。それでは、早速事務局から、審議参加に関する遵守事項につきまして御報告ください。

○事務局 審議参加について御報告いたします。本日御出席をされた委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金、契約金などの受取状況について、これまでと同様に申告いただきました。本日の議題において調査審議される品目は、HPVワクチン及び23価肺炎球菌ワクチンであり、その製造販売業者はグラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社であり、事前に各委員に申告を頂いております。各委員からの申告内容については、机上に配布しておりますので御確認いただければと思います。本日の出席委員の寄附金等の受取状況から、柿崎委員がMSD株式会社から50万円を超えて500万円以下の受取りがあるため、柿崎委員はHPVワクチン及び23価肺炎球菌ワクチンについて意見を述べることができますが、議決に参加いただけませんことを御報告いたします。引き続き委員におかれましては、講演料等の受取りについて通帳や源泉徴収票の書類を確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようお願いいたします。以上です。

○桃井委員 ありがとうございます。以上の御報告で間違いございませんか。それでは次に、事務局から配布資料についての御説明をお願いいたします。

○事務局 本日の配布資料の確認をさせていただきます。お手元の資料の一番上から座席表、議事次第、委員一覧、資料一覧があります。本資料は資料一覧のとおり、資料1-1から1-4が本日ヒアリングをさせていただく専門家から御提出いただいた資料、資料2は高齢者肺炎球菌の副反応基準に関する資料、資料3719日に開催したヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る研修会に関する資料です。なお、委員のみではありますが、専門家から提出いただいた個別症例に係る資料を机上配布しています。足りないものや落丁がありましたら、事務局までお申し出ください。以上です。

○桃井委員 資料についてはよろしいでしょうか。それでは早速、議題1から開始させていただきます。本日は、HPVワクチン接種歴のない多様な症状(機能性身体症状)についての専門家のヒアリングについてが議題1です。

 皆様御承知のように、昨年の12月と本年の4月に開催した当委員会において、研究班から調査の結果報告を頂き、様々な議論・審議をさせていただきました。その結果、HPVワクチン接種歴のない者にも、多様な症状が報告されているということが判明しました。その4月の会議で、接種歴がなくて症状を示している方がこれだけ存在されるのであれば、特に重篤な状態はどういう状態なのだろうかということを知ることは、大変意味のあることであろうという御意見を頂き、御賛同いただきましたので、本日4名の参考人の先生においでいただきまして、順に御発表いただく次第です。

 医療は、その医療に従事している者には当たり前なことでも、その医療に従事していない者にとっては、病像や疾患は非常にイメージのしにくいものです。特に調査の数字だけではイメージしにくいと思われます。人間の頭は、数字とそれに関する臨床像のイメージが合体して納得がいく、あるいは理解が促進される、そんな特性がありますので、本日、参考人として、それぞれの御経験の症例を御報告いただく次第です。症例の御報告ですが、個人情報保護という大変重要な観点から、症例の資料につきましては、前面スクリーンの映写と、委員限りでの机上配布の資料があります。御発表でも、もちろん個人情報は秘して特定されないような御発表を工夫していただくようにしておりますが、質疑応答に関しましても、個人情報に抵触する可能性のある場合には、あるいはその質問に適切にお答えできないこともあり得るということを十分、委員の先生方には御理解いただきたいと思います。

 また、そのような議論の後、議事録において、個人情報に抵触する、あるいは個人が特定されかねないというような議論がありました場合には、委員の先生にお願いをして、議事録の修正・訂正などをお願いすることもあり得るということもまた、御了解いただきたいと思います。あくまで、患者さんの個人情報をしっかり守るという観点からですので、御了解いただければと思います。

 また、先生方は大変多数の御経験がおありの先生方ばかりでいらっしゃいますが、今日は限られた時間で限られた症例の御報告ですので、接種歴のある患者さんの臨床像、全体像と、接種歴のない患者さんの全体像の比較をする、その議論をするには極めて不適切な情報提供だと思いますので、その議論は今回はしないということも御理解いただきたいと思います。

 また、症例報告ですので傍聴の皆様におかれましては、先ほども留意事項に関して十分御留意くださいという注意がありましたが、これからここで映写される画面に関しましても写真やビデオの撮影はできませんということを改めまして、大変しつこいようで恐縮ですが、そのことも改めて厳守していただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。それでは、大変前置きが長くなりましたが、岡田あゆみ先生から御発表をお願いいたします。

○岡田参考人 それでは、よろしくお願いいたします。当院では様々な身体症状を呈するお子さんとその御家族の診療を行っています。治療が長期にわたるため、親子の負担が大変大きい状況を御理解いただければ幸いです。最初に、症例提示の前に、今回の症例の診断となった診断基準について少し簡単に御紹介します。身体症状症及び関連症候群は、アメリカの精神医学会の診断基準で、2013年にDSM-5に改定が行われております。今回は身体症状症、それから、転換性障害を紹介します。

 身体症状症は、非常に苦痛となる身体症状があること、また、これを説明する通常の器質的疾患がなく、かつ、この症状に対して非常に持続的な訴えがあったり不安があったりするものです。従来は疼痛性障害という形で分類されていましたように、慢性の疼痛が長期間にわたって持続するような症状を呈する方もこの診断分類の中に入ってきます。

 それから、転換性障害ですけれども、これは小児科領域ではかなり経験することがありますが、運動や感覚神経の異常を呈してきます。歩けないとか見えないというような訴え方で来られますが、それを通常の医学的な検査で裏付けるだけの疾患が見付からないのが特徴です。様々な症状を呈しますので、例えば歩行障害とか、それから、声が出ない、また、もともとてんかんを持っておられる方が偽発作という形でこのような症状を呈されることもありますし、視覚・聴覚といった感覚の症状を伴う方もおられます。

 それから、DSMとはまた別の診断概念になりますが、線維筋痛症という概念があります。これは幾つかの診断基準が出ておりますが、1990年に最初にアメリカのリウマチ学会のほうから出た基準を当院でも利用しています。非常に強い慢性の疼痛が続き、かつ、全身で18か所の圧痛点、うち11か所以上に一定の力で押した場合に圧痛を認め、この病状を説明する通常の医学的な器質的疾患を認めない場合に診断をしております。

 では、3症例の概略を提示させていただきます。まず症例1の方です。X2月にドッジボールが背中に当たり、その後、痛みが出現しておられます。夜間に呼吸が苦しくて、頻繁に救急受診をするということで、B病院で入院精査を受けられ、非常に多数の科を受診され、精査を受けましたが、器質的な異常は見つかっておりません。更に、C病院、D医院なども受診しておられますが、検査に異常がなく、心因性ではないかということで当院を受診されています。主訴としては、全身に痛みがある、また、学校にも行けないということで、背中から腰にかけての痛みのほかに、触るだけでも痛いアロディニアや頭痛、腹痛等、様々な痛みを訴えておられます。また、入眠困難や痛みのために夜中に目が覚める、さらに、視力低下とかしびれなど、複数の症状があり、発症時の知能検査と比較してIQ20程度低下しており、これは恐らく疼痛のために注意力や記憶力が低下したことも影響していると思います。当院でも再度様々な検査を行い、ペインクリニックや整形外科の受診もしましたが、特に有意な異常は認めておりません。初診時の症状に加え、さらに、受診後も症状が増えております。

 診断としては身体症状症と考えております。天候の影響等、症状に関係する様々な誘因があるわけですが、楽しく遊んでいるときには症状が少しましになったりというような、社会的な様子でも症状に変動を認める状態です。御家族や御本人のつらさを傾聴して、検査結果等を御説明して、身体面、心理面、社会面に対してそれぞれ対応を開始しています。基本的な方針として、痛みは認めた上で、痛みがあってもできることを行う、また、その結果として、症状が徐々に改善することを御説明しています。

 経過ですが、暖かい時期は松葉杖で歩いたり学校へ行くことが少しできていましたが、寒くなってからは再度症状が悪化して、入院によるリハビリ等も行っております。現在、受診後1年以上経過しておりますが、少しずつ伝い歩きをしたり外遊びを再開しており、登校も再開していますが、しびれ等がまだ持続している状態です。

 次に症例2の方です。運動会の練習中に頸部から肩の痛みが出現し、A病院の整形外科で各種検査を受けられましたが、異常はなく、頸肩腕症候群と診断されました。しかし、翌月から痛みが全身に広がり、肩を触っても痛いと訴えるようになっております。当院の整形外科で精査を行いましたが、異常を認めず、同様の診断を受けておられます。その後も症状が改善しない、更には集中できない、怒りっぽいということもあり、心因性を疑われて当科を受診されています。この方もやはり全身に痛みがあって、線維筋痛症の圧痛点を全て満たし、頭痛、顎部痛、腹痛、月経痛と、様々な痛みがあります。また、入眠困難や、目の奥が痛くなる、音に敏感になるといった感覚の問題、それから、気持ちが悪い、御飯が食べられない等の消化器の症状も認めました。この方もIQが、3年後に約15低下という状態になっておられます。このように、初診時から複数の症状があり、さらに、受診後にも症状が増加しておられるという経過です。

 診断に関しましては、当初は線維筋痛症を考えておりましたが、その後、非常に多彩な症状が出てきておりまして、身体症状症のほうも考えています。この方にも先ほどの症例と同様に病態を御説明して、薬物療法も含めた身体面の治療や心理面の治療も行っていますが、心因性と捉えられることに対しては非常に本意ではないとおっしゃっています。方針は同じです。

 経過ですが、初診2か月後にインフルエンザワクチンを接種したところ、4時間後から左半身の痛みが出現し、1週間で自然軽快したというエピソードを認めています。中学校入学後、学校生活の負担もあり、疲労のために痛みが増加し、各種の症状が出現しましたが、面接等でサポートしながら経過を見ております。高校生になるときに、受験の不安等で過呼吸などの様々な症状が出ましたが、高校に入学されました。しかし、易疲労性があるということで、現在は通信制に転校しておられます。圧痛点も軽少し、大学進学を目標に、体調に合わせた学習を行っておられますが、症状が消失した状態にはまだ至っておりません。

 最後の症例3の方です。この方は既往歴もなく、もともとは元気だった方ですが、特に誘因なく胸の痛みを訴えてA病院を受診されています。精査は行われていますが、原因が分からず、その後、全身各部の痛みを訴えて登校できなくなりました。訴えと所見に乖離があるということで、心因性を疑われて当科を受診されています。非常に多彩な症状を認めましたので、各科とも協力して精査を行い、各科を受診していただいています。過活動性膀胱や、小児外科では軽度の腸回転異常症があり、婦人科では月経困難症があるという指摘もありましたが、単一の疾患で全ての症状は説明できないという状態です。

 主訴は、やはり全身の痛みで、どの部分を触っても痛みを訴えておられます。また、入眠の困難、それから、非常に過眠であったり不眠であったりということを繰り返しておられます。また、光への過敏さがあり、サングラスを使用されています。また、においには非常に敏感ですが、味覚が消失しているということもあります。その他、めまいやふらつき、耳鳴りなど、様々な症状があります。また、この方は記憶がなくなるという解離症状も認めておりますので、精神科のほうでも併診を行っています。他の症例と同様、初診時の症状に加えて受診後の症状の増加を認めています。この方は、身体症状症、そのほか、月経困難症のようなものもあるのではないかと考えております。3症例とも共通ですが、病態を御説明して、身体面、心理面の治療を開始しております。薬物療法は、少し有効だった睡眠導入剤等を使いながら、当初リハビリは拒否しておられましたが、現在はふらつかずに歩きたいということで、再開を希望されています。また、精神科との併診も行っております。経過は時間がないので割愛いたします。結果としては疼痛があったり、一時期嘔吐が出現して体重減少を認めたりということで様々なことがありましたが、現在は希望の専門学校に入学されて、週2日の登校が可能になっておられます。

 まとめですが、予防接種歴といたしましては、子宮頸がんワクチン接種歴のある方はおられません。ただ、症例2はインフルエンザワクチンで副反応を起こしておられます。また、心理的な要因としては、それぞれ症例ごとに違いますが、要因がないわけではありませんが、むしろ発症による2次的な反応としての理解が必要かと考えております。また治療方針は、繰り返しですが、痛みがあってもできることを行うということを提案して支持することで症状の改善を図っているというところです。ありがとうございました。

○桃井委員 ありがとうございました。4人の先生方に全て御発表いただいてから、質疑応答あるいは協議に入りたいと思います。次に奥山伸彦先生、よろしくお願い申し上げます。

○奥山参考人 JR東京総合病院の小児科の奥山と申します。本日はこのような発表の機会を頂き、ありがとうございます。症例が6例と多いので、事実経過を述べて紹介させていただきます。

 まず、症例1は、発症時8歳の女性です。斜視の手術で縫合糸が残り、疼痛が遷延し、また有痛性の発疹が出現し、帯状疱疹を疑われるというエピソードがありました。その後、数週間後に両側大腿に紅斑が出現し、続いて12時間痛みが続くというエピソードを繰り返すようになりました。大学病院で、感覚性ニューロパチーが疑われましたが、検査所見に異常はなく原因不明とされ、更に小児病院を受診しFabry病を疑われましたが、これも否定され、精神科紹介も異常なしとされています。約1年間ぐらい、行きようもなくて大分つらい思いをされていましたが、1年後ぐらいに知人を通じて私のほうに紹介になりました。

 初診時は、顔面、四肢などに、広範にズキズキする非対称性・移動性の自発痛を訴え、下肢皮膚の表面の発赤、浮腫がしばしば併存し、軽度の圧痛が見られました。不意に体に触れられると痛みが生じるということで、アロディニアを疑いました。検査は、一般検査は問題なく、大学病院でMRI、髄液、神経学的検査など、細かく検査を受けて問題なしとされています。

 診断名としては、契機となる侵害刺激があって、不釣合いな持続性疼痛、アロディニアがあり、疼痛領域に浮腫あるいは血流増加が見られ、ほかの疾患に相当しないという診断指標、主にペインクリニック等で使われる診断指標を基に、小児のCRPS、複合性局所疼痛症候群と診断しました。治療は薬物療法を様々試しました。物理療法、運動療法として、以前からバスケットボールをやっていましたので、可能な限りするように、家族を含めてカウンセリングを継続しました。

 初診後、かなり長期間になりますが、まずステロイドは全く無効でした。ほかの薬剤が、かなりプラセボ効果もあると思いますが、部分的に有効で、学校に通うことは何とかできるという生活でした。ただ、しばしば痛みのために急性増悪が見られ、一時的に通学ができないこと、そのために短期入院するようなことも反復しました。それから3年ぐらいたって、やむを得ずペンタジンを筋注したところ、何年ぶりに痛みがなくなって熟睡するようなエピソードがあって、その後は眠気やめまいなどが強くて希望はしなかったのですが、この頃からアロディニア症状は消失し、さらに2年たってトラムセットが使えるようになって、ペンタジンと同様に痛みは軽減し、週1回程度使用していましたが、この頃から皮膚症状も消失しました。さらに1年たって高校に入学し、痛み、体調不良もありますが、学校生活はほぼ可能で、以降も薬剤の服用はほとんどなくなり、定期的にカウンセリングをしているだけです。

 症例2は、発症時12歳の女性です。前年に運動会の組体操で転落事故を起こし、頸部から左上肢のしびれと痛みが遷延しました。さらに、3月にスキーで左膝を挫傷し、以後は階段昇降、歩行時の痛みと、長時間の座位で左右の腰部から大腿痛が遷延したというエピソードがあります。困ったのが、6月以降になって、ほてりと両膝の関節痛、左上肢、肩から小指までの痛みが出現したため、学校を休まざるを得なくなったという状況です。近医で検査をした上で問題はないということで紹介になりました。

 初診時は、ほてり、測ると37度前後ぐらいですが、熱感です。両肘の関節痛、左上肢、肩から小指までの痛みを訴え、また朝に起床はできるけれども動くとめまいがし、周囲が紫色になるといった症状を訴えました。検査は膠原病などを追加して、除外しました。

 診断名は、この段階では外傷後の慢性疼痛、それから体位性頻脈症候群(POTS)という仮の診断で経過を見ました。治療は、有効なものがあればという意味で薬剤療法と、自発的な運動は制限しないことを指導しながら、カウンセリングと家族の意識調整をしました。

 経過は、1か月後ぐらいにNSAIDs、主に私はリウマチを診ますので、ナプロキセン辺りをよく使いますが、それを使ったところ、何とか症状が少しよくなったという印象の中で外来で継続して診ましたが、痛みは持続して、膝と腰を中心に頭痛とめまいといったほかの症状も出てきて、それでも週に12回は登校し、倦怠感も強いけれども、クラブ活動の吹奏楽は参加できるという状況でした。学校に行けないということで、本人は美大を希望しているということで、デッサンなど自分の夢につながることや体調のよいときの外出を勧めるような、積極的に外に出るように勧めました。薬物療法は段階的に中止しています。

 初診7か月後になって、スキー教室に参加し、結構滑れたと喜んで帰ってきたようなエピソードの後は、痛みは部分的になって、頭痛、耳鳴りはときどき、学校はときどき休むといった状況になり、それから1年後ぐらいにはほぼ普通の生活になったということで、診療は終了し、何かあったときの連絡のみになっています。

 続いて症例3は、発症時9歳の女性です。128日にインフルエンザワクチンの1回目を接種し、その8日後に足の痛みを訴え、学校へは自転車で家族が送るという状況でしたが、帰宅時には普通に1kmを歩いて帰ってきたとのことでした。ただ、翌日から発熱し、痛みが徐々に悪化し、頭部、腹部以外の全身に拡大し、痛みは朝に強くて睡眠時には訴えないという状況でした。2回目のインフルエンザワクチンを接種し、3日ぐらいたって痛みが悪化し、整形外科を受診し、当院に紹介になりました。

 初診時、腹部と頭部以外全身の骨格、手指、足指に圧痛があり、症状は左のほうが少し強いといった状況でした。筋力低下はないのですが、痛みのためにしゃがむことや、その位置からの起立は不可でした。一般検査には問題なく、1か月続く原因不明の疼痛。ただ、どこを触っても痛がるので、アロディニアという所見はあると考えていました。治療は、とりあえず鎮痛剤としてアセトアミノフェンを投与してみたのですが、それと同時に家族が比較的突き離して見ていましたので、「それでいいよ」という表現をしました。自発的な運動を制限しないことを指導しています。

 この子については、プラセボ効果ですがアセトアミノフェンが有効で、痛みはかなり楽になったということで、1か月ぐらいでやめようと思ったら、頭痛、腹痛、胸痛などを訴えるようになり、それを頓服で使っていましたが、その後に上顎部の痛みであるとか、下肢の痛みなどが散発的に発生し、それでもときどき薬を飲んではいたのですが、4月末になって頭痛、前腕の痛み、爪が白くなる、心窩部が痛いといった様々な症状を訴えました。アセトアミノフェンはこの段階では全く無効ということです。「効くと思ったら飲んだらいい」ぐらいの表現で、本人は結構気丈な子で、それでも我慢して学校に行っていました。1年たって、時に痛みがあるけれども自制内になって、さらに1年たって、頭が痛いという以外は特に問題はなくて、今後のワクチンはどうしようかという相談をしているような状況です。

 症例4は発症時17歳の女性です。822日に生理不順のために、超低用量ピルの内服を開始し、2日目から吐気、5日目に発熱、手足のピリピリ感、両側下腿の蒼白が出現、救急病院で血栓傾向、炎症反応を認めず経過観察になりました。その後しびれ感は消失したが、下肢などのピクつき、全身の痛みが続くということで、約1か月後に当院産婦人科を受診した際に、34年前に接種したHPVワクチンとの関係ではないかということで紹介されました。

 初診時には膝などのピクつき、安静時のミオクローヌス、運動は可能でした。両側の肘関節、手関節、右第2指のMP-PIP関節間の痛みを訴えて、発汗がかなり過剰になっているという訴えもありました。検査は発症時の凝固系を含め、一般血液、尿検査に異常は認められていません。診断名も慢性疼痛と転換性障害の疑いという見方でしてみましたが、5歳時の無菌性髄膜炎での入院歴を克明に覚えており、医療行為や痛みに対する過敏反応が非常に強くある子でした。本人もピルが原因だと思っていたので、本人の考えは特に否定していません。ダンス部でしたので、運動は続けるようにという治療方針でいきました。

2か月後にダンス発表がうまくいったということで、下肢のピクつき、痛みともに改善傾向を示していき、1か月過ぎて、朝の両膝の痛みが出てきたとか、その後も両肘が痛いなどがありましたが、ピクつきが数日間消えるようなこともあり、そういう症状も断続的になり、軽快傾向を認めていきました。初診18か月で大学に入学し、久し振りにしびれ感やピクつきがあったと本人は言っていますが、全体的にはもういいということで、診療は終了しました。

 症例5は発症時7歳の男の子です。4月、5月に日本脳炎ワクチンを接種し、そのときは何の異常も訴えていません。614日から発熱と風邪症状があり、数日で軽快したのですが、その後に下肢痛による跛行が出現しました。近医の小児科、整形外科で検査上は異常はなかったのですが、716日頃から下肢痛のため自立歩行が不可能になったため、当科を受診し、精査目的で入院となりました。

 初診時には両下肢痛を訴え、膝下から足関節にかけての自発痛、圧痛です。明らかな持続的な筋力低下は見られませんでした。頭痛、咽頭痛、手関節痛、腹痛など、間欠的に起きていました。軽度の倦怠感、突発的な吐気なども見られました。検査は小児病院の神経内科の先生と、短期検査入院なども混ぜて一通りしています。最終的には慢性疼痛の疑いということで、薬物療法を試すことと、男の子なので動きたがるので、好きにやらせておいてくださいということを指導しています。

 その後、NSAIDsがやや有効で、介助ありで歩行可能になって退院して、下肢の痛みと倦怠感は続き、外出、階段歩行等は困難だったのですが、910日の夏休みを過ぎたところで、1時間目から学校へ行こうということで、少し行きたがったということもあるのですが、無理矢理行くスケジュールを作りました。外出、温水プールも積極的に実施しましょうと。投薬は結局効いていないということで中止しました。その後、自立歩行が可能となり、友だちとサッカー遊びを20分ぐらいできるようになって、表情も改善し、遊びたい意欲に任せて、もう好きなようにさせてくださいという状況にしました。11月になって、12時間、週3回は学校に行けるようになって、帰宅後に外遊びもできるようになってという、ゆっくりとした経過ですが、この子については比較的改善傾向が明らかでしたので、経過に任せました。最終的には、2年たって生活がほぼ正常化して、まだお母さんだけが見えています。

 最後に症例6ですが、発症時6歳の女性です。下肢の痛み、筋肉痛と短時間に移動するようなものでしたが、それと重症の口内炎が出現し、大学病院でSLE疑いとされました。以後、全身性の痛みに進展し、血尿、下肢の出血斑などが見られ、腎生検などの検査を進めましたが、SLEとしては診断的所見は確認できなかったとのことです。母親の言い方ですが、痛みの悪化時など、救急対応を求めたのですが、大学病院が対応不能として診療拒否されるようになる。それから2年ぐらいたって、知人を通して私に紹介がありました。

 初診時には、下肢の痛み、限局的で短時間に移動、持続することもありました。下肢全面に紫斑様皮疹が数個見られました。しばしば頭痛、腹痛、吐気が見られます。検査では、一般血液・尿検査は問題なく、抗核抗体も80倍、尿潜血プラスですが、何せ腎生検もやっていますので、特異的な所見がないという判断です。紫斑はGardner-Diamond症候群という極めてまれなもので、自己赤血球感作性紫斑というものを疑って観察しました。慢性疼痛の疑いということです。

 症状が軽くなるような薬物療法はないかというものを探しながら、自発的運動はどんどんやりなさいということを指導しました。翌年から当院で診療することとなり、大学病院ではフォローしないという形になりました。一時、入院して家族の希望に合わせて幾つか治療を試みましたが、NSAIDsがやや有効で通学が可能になったということで、以後、経過が非常に長いということにお気付きかと思いますが、様々な症状の訴えがありました。吐気と顔色不良というのもときどきあり、短期入院することもありました。それでも、更に4年ぐらいたって、薬はもう効かないと本人が飲まなくなった割に痛みの訴えも減ってきて、更に2年ぐらいたって紫斑も出なくなって、その後に中学校を卒業して痛みは自制内になり、訴えは減少し、通常の生活が可能となっているという、かなりの長期間のゆっくりとした回復経過でした。

 以上、6例を発表させていただきました。御清聴ありがとうございます。

○桃井委員 奥山先生、ありがとうございました。次に、田島世貴先生から御発表をお願いいたします。

○田島参考人 国立障害者リハビリテーションセンター病院の小児科の田島です。私から報告する症例は、3名は発達障害の診断が入っていますが、そこを少し補足しますと、私がいる病院が基本的に発達障害のある方で、ほかの医療機関では対応が困難な方の症例を診ております。そのために、どうしても発達障害ということが診断名に入ってきてしまっておりますが、このような多様な症状を来す方が全てそういう背景があるはずだということを申し上げているわけではないということだけ、頭に置きながら聞いていただけたらと思います。

1ケース目です。10代後半の男性で、最終的には慢性疲労症候群と皆様に診断を提示しているケースです。補足として、下に慢性疲労症候群とはどのような疾患かを書いていますが、医学的に説明のできない、原因不明の6か月以上継続あるいは断続的に見られる、日常生活に支障を来すような疲労状態を主な症状としています。様々な精神神経症状や機能性身体症候を合併する疾患です。本邦の有病率は0.3%ということが調査で分かっています。ほかの国でも大体同じような数字なのですが、2015年に米国医学研究所が、この疾患概念のもともとの診断基準は、研究のために作られた診断基準を使って皆さん診断をしていまして、それをもっと臨床的に使えるものにということで、改定したものでいくと、この3倍ぐらいの有病率があるのではないかと言われていますので、本邦でも1%程度はいるのではないかと推定しているような疾患です。

 この方自身のことですが、詳細な経過に関してはここに書いてあるとおりなのですが、非常にアクティブで優秀なお子さんでした。睡眠時間を削ってでも、自分のクリエイティブな活動を優先するような方でしたが、ある日、突然こちらにあるような様々な精神神経症状を呈しております。

 これらを見ると、多くの方が精神疾患ではないかと考えるような症状ですので精神科を受診されておりますが、その後も何年か置きにいろいろな専門機関を行かれているのですが、うつ状態はあるかもしれないが精神疾患ではないということを言われております。一応、念のためにうつの治療をしようということでやっておりますが、反応がないということはありました。しばらくすると、更に多様な症状が出てきているという状況です。3年ほど経過してから、慢性疲労症候群の診断が付いています。

 うつに対しての向精神薬の治療では改善がありませんでしたので、本人の希望もあり、減量、中止しています。そのときに、一部の精神神経症状は軽快していますが、ほかの症状が少し強くなったりということはしています。向精神薬の中止後、慢性疲労症候群の基本的な治療をしています。ただ、軽度改善していますが、根本的な解決にまでは至っていません。かなり時間がたって、10年たってから睡眠のことに対して少し前進するようなことができました。その後、本人の活動のマネジメントが難しいということで、最終的には注意欠陥多動性障害があるだろうということで、そちらの治療も開始して、かなり改善してきているという状況です。

 検査としては、器質的疾患を除外するために一通り必要な検査を行っているのですが、異常所見はありませんでした。最終的な診断としては、こちらに挙げているとおりです。治療としては既に経過で簡単に説明しましたが、向精神病薬の治療効果は見られませんでした。あと、慢性疲労症候群の標準治療を行いましたが、やや改善するというところでした。睡眠に関しては、クロニジンという薬でかなり改善しました。非常に活動の調整がうまくいかないことに関してはADHDに対する薬物治療を併用しつつ劇的に改善して、最終的には高校は途中で行けなくなっていますが、今は自分の体験等をWeb上で情報発信して収入を得ているということで、生活しておられる方です。

 症例2は、10代前半の女の子です。これは線維筋痛症の姉弟のケースのお姉さんのほうです。線維筋痛症は岡田先生のほうでもお話いただいたところです。この方の経過は、小さい頃から、恐らくこの方の発達特性の自閉スペクトラム症というものですが、それに伴うと思われる入眠困難があったけれども、特段それによって社会適応が悪くなるとか、日常生活で困るということはありませんでした。11歳の頃に、こちらに挙げているような痛みを中心とした症状が出ております。その年に、この方も不注意などもありましたので、最終的には注意欠陥多動性障害、痛みに対しては偏頭痛もあるのではないかということで治療が開始されていますが、症状は改善していません。

 その後、非常に眠気が強いということで、睡眠の検査で睡眠ポリグラフ(PSG)、夜間の睡眠の状態が何かということを調べました。あと、日中にすごく眠くなるというのが、睡眠のシステムの異常によるものかを調べる検査でMSLTというものがあり、暗い部屋に2時間置きに行っていただいて、すぐに寝てしまうようなことがあるかを調べるものです。そういう検査の結果、特発性の過眠症だろうという診断になっています。有名な過眠症の病気でいくとナルコレプシーというのがあるのですが、そういうものではないということで判断されたことになります。ただ、過眠症の治療というのは、最終的に覚醒度を上げるような中枢神経刺激をするしかないものですから、既にADHDの治療でそれに類するお薬が使われていますので、特段の追加の治療はなされていません。後ほど出てくる弟さんが線維筋痛症だろうと診断されたときに、姉も以前からあったのだろうということで診断が付いた方です。

 検査もこちらにあるように、体の器質的な疾患がないことを確認した上で、線維筋痛症に関しては、岡田先生のお話にも出てきたような米国リウマチ学会の基準を満たすということで、診断が付けられています。睡眠の評価に関しては、こちらに挙げられているとおりで、典型的なナルコレプシーのような詳細が分かっているような過眠症には該当しないという結果でした。最終的な診断としてはたくさん並んでいますが、発達の特性として自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害、線維筋痛症、過眠症があるだろうということです。治療としては、ADHDに関しては薬物治療があるのでそちらと、環境調整を行っています。高校生に入って症状が軽減していますが、更なる進学を目指して勉強を行っているような状況です。

3ケース目は、10代前半に発症した男性で、先ほどのケースの弟さんです。この方も幼少期からの状況として、お姉さんと同じようなことがあります。この子は14歳のときに、どちらかというと眠気のほうが先に出ています。しかし、その後に痛み症状なども強くなっていくのですが、そういうところで治療が始まりました。この方も過眠症に関しての検査を同じようにされて、やはり特発性過眠症であり、ナルコレプシーのようなほかの過眠症ではないという診断で、発達特性等に合わせて薬物治療が開始されました。その後、痛みのほうがグッと悪くなり、線維筋痛症だろうと診断され、弟さんのほうは痛みに関してはノイロトロピンというものでの治療が行われています。

 こちらの方の検査所見も、体のほうの疾患を除外するため一通りの検査を行っています。診断基準に関しては、米国リウマチ学会の基準で線維筋痛症の診断を満たすと。睡眠の評価では、やはりナルコレプシーのような過眠症を満たすわけではなかったと。ただ、入眠潜時といって、暗くしたら3分足らずで寝てしまうというぐらい、すぐに寝てしまうという状況がありましたので、何か過眠を来す背景が体の中にあるということになります。診断は、最終的にはお姉さんと全く同じになっています。治療に関しても、ADHDと過眠症に対しては薬物治療を試みて、線維筋痛症に関してはこの方は薬物治療、痛みを抑えるような薬と、直接的な鎮痛剤ではないのですが、それと別のもので治療をし、環境調整を行って、学校生活の中で自然と動いている中で、少しずつ改善を目指して運動療法的なことをやっているという状況にあります。

 最後のケースは、10代前半に発症した女性です。起立性調節障害と最終的には考えています。起立性調節障害はよく知られている疾患ですので細かい説明は必要ないと思いますが、補足で下に付けています。起立など急激に循環の状態が変わるような、心拍の状態を変えなければいけないような状態のときに対応しきれず、気分不良とか意識消失を起こすような状態です。

 このお子さんは、小さな頃からまぶしい光ですごくつらいということがあったそうなのですが、ほかの人も同じだと思って、ほかの人とは違うとは思いもよりませんので、このようなものなのだろうと思っていたそうです。ただ、真っ白な背景に字が書いてある教科書などが非常に見えづらく、本人としては困っていたそうですが、皆も同じだから私もこれで頑張れるはずだということでやっていたということです。月経が開始した頃にお腹の症状が出始めていて、その少し後に起立性調節障害の症状が出てきて、診断を受けています。漢方治療等を少し行っているのですが、主症状は改善せず、高校に入った頃から疲れやすさなども出てきたということです。

 光へのまぶしさに関しては、最終的に種々の検査をして、光の感受性障害と呼ばれるものなのですが、アーレン症候群という通称があります。英語ではScotopic sensitivity syndromeと言うようです。Scotopic sencitivityというのが夕方の暗くなってきた頃の明るさぐらいがちょうどよく見えるという状況を、このような英語表現をするようです。ですので、本人は暗いほうが楽なのです。日中は明るすぎて、この部屋の明るさぐらいでも本人はまぶしいというようなことがあるのです。しかも、ただの明るさだけではなくて、特定の周波数の明るさが特にきついというような個人差がある疾患だそうです。それに合わせて、基本的にはサングラスのようなものを作って、それを掛けてもらうと劇的にいろいろなもののストレスが下がる、文字の認識もよくなるということで、アーレン症候群であろうという診断が下されています。それらの器質的な疾患等は除外されています。先ほど紹介したアーレン症候群というものに関する検査をしていくと、かなり重症型にあるということを診断されています。最終診断としては、アーレン症候群と起立性調節障害があるだろうと考えています。治療としては、基本的にレンズによって非常に本人のストレスが減ってきていることで身体症状が減ってきているということで、これだけでも随分変わるという状況でした。

 最後にまとめです。このように、4ケースを提示しましたが、総合すると、基本的に身体的なストレスだったり、心理・社会的なストレスであったり、あるいは物理的なストレスだったり、様々なストレスが人間にはかかっています。ただ、これだけで様々な症状を呈するようになるかというと、全員がそうではありません。その中に、発達の特性、あるいは遺伝的なものかもしれませんし、生来の免疫系の弱さだったり、内分泌系の弱さだったり、あるいはエネルギー代謝等の弱さだったりというものがあると、最終的にストレスがスイッチを押してしまって、いろいろな機能が破綻することで種々の症状を呈することがあるということで、これらの症例について我々は理解して、治療を行っているという状況です。以上です。

○桃井委員 田島先生、ありがとうございました。それでは最後になりますが、鴇田夏子先生から御発表をお願いいたします。

○鴇田参考人 慶應義塾大学医学部小児科学教室の鴇田夏子と申します。私からは、多様な症状を生じた2名の患者について報告いたします。個人情報の保護のため、詳細はスライドを御参照いただきますよう、お願いいたします。

1症例目は思春期の男性です。経過です。X6月、テレビで同年代の自殺報道を見た後、過呼吸と両腕・両足の脱力を認めました。7月から10月の間、地元の神経内科へ入院しました。退院後、両足が伸びきった状態となりました。X+1年の2月にけいれんのような発作ほか、スライドにお示ししたような神経症状を認め、当院の神経内科へ転医されました。そこで症状の改善を認めなかったために、同年4月に当院の小児科に転科となっています。

 初診時の男性の主訴は、両腕・両足が伸びきった状態のほか、スライドにお示ししたような神経症状です。なお、両腕と両足が伸びきった状態は、睡眠時にも認めていました。検査では、今までの地元の神経内科や当院の神経内科、私たちの小児科のほうでも、以下にお示ししたような検査を行いましたが、特に異常を認めませんでした。以上の経過から、検査では特に異常を認めなかったこと、そして身体症状、御本人や患者から伺った面接の内容などから、ストレスを神経症状に転換した転換性障害と診断しました。

 治療です。男性は両腕が伸びきった状態であったために、自分で食事をすることができませんでした。ですので、私たちが13回、朝昼夕の食事に必ず介助に入り、そこでよくお話を聞いて、信頼関係の構築に努めました。食事中、中学校、高校と学校でいろいろつらい体験があったのですが、そのことを誰にも言うことができなかったことが徐々に男性から語られました。そこで私たちは、併行して、御両親に対しても定期面接を1週間に1回行ってきましたが、そこで男性が御両親にも、いろいろつらい本音を伝えることができるように、男性の本音の表出を御両親にできるようにということを促していきました。

 初診後の経過です。X+14月に小児科に入院後、患者に対して社会的に生活が全くできない重症の状態であるということを御本人に認識いただくために、生活の制限をさせていただきました。御両親に対しても、治療のためには本人に病識を持っていただくことが非常に重要であることを説明させていただき、了承を頂きました。X+1年の9月に、両腕や両足が長期にわたって伸びきった状態であったために、それを伸ばしていくためのリハビリを導入しましたが、男性は当初強く抵抗を示しました。翌月の10月には、先ほど申し上げたように両腕・両足が長期にわたって伸展した状態が続いていましたので、関節が拘縮していないかを調べるために鎮静を行い、それを確認してみることを御両親と御本人に説明し、承諾を得た上で鎮静をして検査を行ったところ、膝と腕の関節の両方が屈曲しました。その結果をお伝えしたときに、御本人は最初は非常に動揺されて、けいれんのような発作を起こしたのですが、そのときにお母さんから男性に「つらいことは全部吐き出していいのだ」ということを告げたところ、男性は徐々に御両親に対してもつらい思いを語るようになりました。

X+1年の11月、その検査の1か月後に、御両親から「離れていても気持ちは寄り添っている。リハビリを応援している」という手紙を受け取り、その翌日から、意識があっても両腕・両膝の関節を曲げることができるようになりました。そのお陰で私たちの介助なく食事の摂取をすることができるようになりました。X+2年の2月に退院され、翌月から学校の部分登校を開始することができました。以上で1症例目の報告を終わります。

 次に、2症例目です。2症例目は学童期の女の子です。初診までの経過は、X3月に頭痛と吐気が出現し、翌年2月に、それに加えて脱力感とふらつきを認めました。X+1年の10月に歩くことができなくなり、検査目的で当院の小児科に入院となりました。初診時の女の子の主訴は、頭痛と歩けない、そして力が入らないということでした。当院の小児の神経内科の専門医のほうで、血液、尿、MRIMRA、長時間の脳波を行いましたが、いずれにおいても特に異常はありませんでした。以上から、先ほどのケースとも同じように、検査では特に異常を認めなかったことと、身体症状、そして患者と御両親の面談から得られた情報から、ストレスを神経症状に転換した転換性障害と診断しました。

 治療です。お父さんが、御本人の父親とよい関わりを持つことができなかったということを両親の面接で語られたため、私たちの面接で健全な父性が発揮できるように指導させていただきました。また、患者に対しては、退院した後に、まだ学童期のお嬢さんでしたので、お母さんに十分に甘えられるようにしてみましょうということをお伝えしました。

 初診後の経過です。X+1年の10月に、検査入院でしたので4日間で退院していただきました。そして、先ほど申し上げた治療方針を外来診療で継続していきましょうということを御両親にお話しました。このお嬢さんは、お母さんとの関係で甘えることをたくさんして、たくさん公園に遊びに行ったり、1日中一緒に遊んでもらうということをしていくにつれて徐々に歩けるようになっていったのですが、X+1年の11月の退院後1か月のときに、1度御本人の意思もあって学校に行かれましたが、そこで再び症状が悪化してしまいました。12月の私の外来で、今は無理をして学校に行かなくてもいいということを伝えて、その後から症状が再び劇的に改善しました。

X+2年の4月に、お父さんと関係がうまくいかなかった時期があり、寝るまでの時間はお父さんと別々に過ごしていただきました。それにより、症状は著明に改善しました。ただ、ずっと別々に暮らすということはできませんので、お父さんのほうに面接でいろいろとお話をしていったところ、徐々にお父さんのほうも優しくなって、1か月後に一緒に住むようになりましたが、特に症状を認めることはありませんでした。以上で私からの症例報告を終わらせていただきます。

○桃井委員 ありがとうございました。大変限られた時間で申し訳ありませんでしたが、4名の先生にポイントを押さえて様々な症例を御提示いただきました。

 これらの症例報告を踏まえ、接種歴がなく、重篤な症状を示している方々がどういう状況にあるのかについて御質問や御意見等ありましたら、委員の方々からよろしくお願いいたします。

○多屋委員 先生方、どうもありがとうございました。状況が大変よく分かりました。

 報告していただいた患者さんたちは皆さん、適切な診断や治療によってよくなられているという方を御報告いただいたと思っています。HPVワクチンの接種歴がないにもかかわらず、多様な症状を認められた思春期の患者様がこのような治療によって症状がよくなっていくというように理解したのですが、そういうことでよろしいのでしょうか。

○桃井委員 いかがでしょうか、どの先生からでも結構です。そのような理解でよろしいかどうかということについてお願いいたします。

○奥山参考人 HPVワクチンに関係なく、同様の多様な症状が出現する方がいらして、その方に対していろいろなアプローチがあると思います。発達障害の視点からとか心身症的な意味合いから、私は単純に病態をそのまま受け止めてその形でやるという、小児リウマチやペインクリニックの手法でやっています。それらには一定の共通した治療方針があって、痛みを消すことでは基本的にはありません。QOLを改善する、やりたいことができるようにする、それを年月をかけて、必ずよくなるからという前提で辛抱強く対応する。この間の診療というのは書けないのです。これは大変なことです。エビデンスの全くないところで様々、個人的な対応を組み合わせながらやっていきますので、そこが書けないことが非常に重要なポイントですが、それぞれの医療機関の様々な先生が独特な取組をしていって、ここではよくなったケースを挙げていますが、実際のところは母数を見ているわけではありません。みんながよくなるといったことの説明はちょっと皆さんもできないのだろうと思います。

○桃井委員 ほかに参考人の先生から、今の点について何かありますか。

○田島参考人 私も基本的には奥山先生と同じような意見です。少し具体的なこととして、慢性疲労症候群という病態について少し取り上げましたが、アプローチとしては疲労などをゼロにするのではなくて、QOLを上げるようないろいろな支援をやっていく。その中で、1年で大体3割程度の方は概ね元と同じような活動が戻ります。5年ほどたつと、大体6割強ぐらいは戻ってまいりますが、そこまでが我々の調査の中で分かっていることです。

 逆に言うと、5年経過しても3割以上の方がまだ十分な活動を取り戻せていないという状況が残っています。その方々がどのようになっていくかに関してはまだ分かっていないところもありますというのが現状です。

○桃井委員 それぞれの先生方がそれぞれの得意分野で、割合に一定の背景がある一部の患者さんたちを見ておられますので、これに関しては全員の先生からお答えを頂きます。岡田先生、どうでしょうか。

○岡田参考人 御質問ありがとうございました。まず疾患によっても違いますが、少し分かりやすい例で、例えば起立性調節障害で非常に重症な方、日常生活がままならないような場合、大体56年かけて78割の方はよくなられますが、やはり成人期への移行が知られています。それから、身体症状症も非常に難治で10年程度かかるということもあります。基本的に多くの方がよくなられますが、必ず全例がということではなかなか保証ができないということがあります。

 治療に関しましては他の先生方と一緒で、症状そのものを消失させるというよりも日常生活の質を上げていくことが非常に大事だと思います。逆に言いますと、症状を取ることとか検査をし尽くすことにあまり集中してしまうと、かえって治療期間が長引くような印象を持っていますので、どこかで転換が必要なのではないかと思っています。ありがとうございました。

○桃井委員 ありがとうございました。鴇田先生、お願いします。

○鴇田参考人 私たちの病院では1993年から小児精神保健の診療を開始しております。そこでは、今回御報告させていただきました転換性障害の患者さんを多く診てきていると思います。その方たちを診ていくに当たって、常にほかに身体疾患がないかどうか、診療の最後まで見落とさないようにという意識を強く持ちながら、疑わしいというときには神経内科医に依頼をして、また改めて診ていただいたり内分泌のドクターに診ていただいたり、そういうことを繰り返しながらやっていきます。

 基本的にその方の生育歴であったり御家族が語られるストーリーの中で、今よりもよくしていくことはできるだろうと思うところに関しては、私たち小児精神保健班が専門的な治療を行ってまいりました。例えば背景に非常に重い家庭内暴力があったりする場合には非常に治療が長引くこともあります。例えば、今まで10あった症状が8になった、6になった、4になった、消えたと思ったら環境が増悪したことによって症状が再燃したということを繰り返しながら、ほかの先生方もおっしゃられていたように、経過としては長い方で10年かかるという方もいらっしゃいます。ほかの先生と同じですが、完全に消失するかということよりも、その方や御家族にとって皆さんが本当に安心して生活できることを目指していくと、症状のほうも改善していくと経験的には思っております。

○桃井委員 ありがとうございました。4人の先生にお答えいただいたということで、より様々な視点が明確になったと思います。

○倉根委員 先生方、今日はどうも貴重な御経験を教えていただき、ありがとうございました。

 まず体制といいますか、治療体制や診断体制、医療体制について伺いたいのですが、今日先生方に教えていただいた症例と類似の方々で、器質的な要因がなかなかみつからないことが非常に多いように拝見いたしました。そうしますとAの病院で検査をしてみつからない、Bの病院に行って検査してみつからない、Cの病院に行って検査してみつからないような状況が続いている中で、十分な治療が受けられない状況が発生していることが多いのかと、お話を伺って感じました。そういう診療体制といいますか、治療体制の状況、臨床の現場では実際ではどういうようになっておりましょうか、あるいはどういうようにお感じになっておりましょうか。

○岡田参考人 所属の病院が違いますので当院の事情をお伝えいたします。まず私の地域は岡山ですので、ある程度長期入院して精査をする病院が限られています。こういう患者さんが来られましたら、前医の情報を集めて患者さんや御家族にとって負担となる検査を余り重複しないようにということは気を付けています。一方で、こういう方は非常にドクターショッピングが起こりやすいということがあります。結局のところは関係をしっかり作って、じっくりやっていくということになります。同じ検査をあえてもう一度するということもあります。患者さんたちもある程度関係ができてくれば納得してくださいますので、いずれかの機関につながって治療を開始されているというように考えています。

○桃井委員 よろしいでしょうか、ほかにありますか。

○倉根委員 あと、先生方に今日お示しいただいたような多様な症状が思春期あるいは小児期で出てくるのですが、今後類似の疾患の方々を治療していくに当たって、あるいは診断していくに当たって、どのような体制を構築していくと良いかお考えを聞かせていただけると有り難いと思います。

○奥山参考人 私は小児のリウマチを診ている立場で、ヨーロッパでもアメリカでも小児のリウマチの中には必ずこういう分野が入っています。痛みを主体として、どういうわけか増幅された痛みの症候群という1つの分野があって、ペディアトリックリューマトロジストがこういう疾患を診るという窓口があります。それから、いわゆるペインクリニックです。皆さんも御存じと思うのですが、ペインクリニックは、日本では小児のペインクリニックの医者が1人もいないという特殊状況があります。前に静岡の先生が亡くなって以来、1人もいないというように私は聞いています。今は新しくHPVについての窓口ということで、ペインクリニックの先生たちがいろいろ仕事をされていると思います。

 そもそも、痛みを主体として受け入れる窓口がないという日本の特質を理解していただいて、リウマチまで診るという医者は数人ぐらいしかいません。ですから、除外診断として精神科の先生とか、専門の先生にピタリと当てはまると非常に経過はいいと思うのですが、実際のところは基本的には窓口がないということです。

 私は子宮頸がんのあとの子も十数人見ていますが、基本的には痛みの勉強をしながらアメリカのリウマチの教科書を基本にして対応をしているというベースでやっているのですが、これを拡張する方法というのは多分ないと思います。

 それから、地元の小児科の先生が大概診療しながら診ていたのです。「ああ、そうだね」と話を聞きながら、いろいろな対症療法を組み合わせて。1人の医者がずっと診るというのはとても大事で、ペインクリニックの先生も、ドクターショッピングに走ったり診療を拒否したりせず、1人の医者に診てもらうという診療体制が最終的には予後が一番いいということは痛みが専門の先生もおっしゃいます。地元の先生が昔やっていらしたものがどんどん専門領域に切り替わっていって、大学病院と専門病院に行ったのだけれどもそこで分からないとなったらもう行きようがないという、痛みの治療に関する基本的な体制を作るのは根本的なことをよく考えて、医学ではなく医療を主体とするような、正にペーシェントセンタードメディスンを根本的に見直さないと、このような子供たちはこういうHPVに限らずなかなか窓口が作れない。ちょっと大きな話をしてしまいましたが、そう思います。

○桃井委員 痛み以外の点から、鴇田先生、今の点に関していかがでしょうか。

○鴇田参考人 治療の体制ということですよね。転換性障害と私たちが考えて診療しているような患者さんに関しては、慶應の場合は関連病院が静岡から北は栃木まであります。基本的には私たちのチームのトレーニングを専修医が受けて、その彼らが地方病院に行って、自分なりに一生懸命治療をして、それでもどうにもならないというときには私たちが直接出向くなどしながら治療を行っています。そういったシステムが今、大学の中ではできあがりつつあります。

 大学の中では思春期から成人期に移行していく患者さんも非常にたくさんいますので、例えば認知行動療法が必要になってくるとか、そういう治療に加えたほうがよくなるような患者さんがいらっしゃれば精神科の先生と併診して、治療を併行して進めていくようなことをしています。

 こういったシステムが大学の中のみならず、今後、日本の大学全体が私たち小児精神保健の領域を専門としているような医師が指導を行って、地方の病院に行っても活躍できるようになっていくと全国的に治療が充実していくのではないかと考えております。

○桃井委員 ありがとうございます。古くから知られている状態像であるにもかかわらず、学問的、あるいは臨床的には精神科と神経科の狭間に入ってしまうため、通常、我々専門医が比較的日常的に遭遇するにもかかわらず、なかなか研究が進んでいない現状があると思います。医療体制、あるいは医師の教育も含めてこれからの課題ではないかと思います。ほかにいかがでしょうか。

○山縣委員 今のことにも関係するのですが2点発言します。1つは、先生方はこういった多様な症状を持つお子さんたちを診る機会が多くなっているのかといいますか、疫学的な調査というのはきちんとされていないと思うのですが、それに関してはいかがかということが1点です。もう1つは、今日伺ったお話だとやはり何らかの家庭環境、イベントがきっかけになっていろいろな症状が出てきているというのがあると思います。例えば家族歴があるようなケースがあるのか、その2点についてお伺いします。

○桃井委員 それについてはいかがでしょうか。田島先生は発達障害が基盤にありますので、ちょっと特殊なグループを御覧になっていますが、何か御意見があればお願いします。

○田島参考人 今回、発達障害という背景があるお子さんがということですが、多分、もう1つの私のキーワードは、睡眠不足が種々な症候につながるということでお伝えしたつもりです。睡眠不足という観点で言えば、やはり大人も引っくるめて日本全体が睡眠不足ですので、医療を必要とする子供たちが増えてきている状態にあるとは思います。

 文部科学省の不登校の調査の中で、それを推定するのに十分だろうという情報があり、それから考えますと、中学生ぐらいですと毎年12,000人ずつぐらい睡眠の医療を必要とする子たちがいる。その子たちが治療すれば、恐らく様々な社会不適応を起こしてしまうような身体症状を呈さずに済むのではないかということが推定されています。多分、それは前よりも増えてきていると思います。日本で睡眠不足が全体的にひどくなっているというか、それが定着しているということがあると思います。

 実際、これを地域を挙げて睡眠不足を減らすように、小学生の低学年から予防という観点で睡眠教育を行った地域では、そのような多様な症状を呈する子供さんが中学生になって0人になったという自治体もあります。これは福井県若狭町です。私の上司がそういう取組をやりました。実際、そういうことを見ても睡眠が国民的に悪い状態なので、実際にニーズが増えている。でも、それを予防するような手立てをいろいろな分野と連携して、教育も一緒にやらないといけません。そういう中でやっていくことで変わっていくことがあるだろうということは1つあるだろうと思います。

 すみません、前半の部分に対して余計なことまで申し上げました。前半に対してはそのように考えておりますという、ちょっと増えているだろうということが私の意見です。

○桃井委員 神経科外来の初診者患者の何パーセントかという論文は多々ございますが、小児に限定した疫学的なデータというのは私は知りません。小児に限定してもしなくても結構ですので、今の御質問についてほかにお答えが頂ければと思います。いかがでしょうか、明確なエビデンスはないと理解してよろしいでしょうか。昔からそうまれな病態ではないと理解しておりますが。

○岡田参考人 申し訳ありません、はっきりしたデータということではないのですが、先ほど睡眠のこともおっしゃっていただきましたし、いわゆる起立性調節障害など、自律神経系の失調を来すような機能的疾患については増加傾向という印象や報告があると私は思います。IBSのようなものも増えているということですが、明確な数字が言えず申し訳ありません。

 それから、先ほどの御質問のもう1つの家族歴ですが、個人情報のことがありますのでどの症例とは申し上げられませんけれども、そういう方もおられる場合もある。でも、必ずしも心理・社会的なことや家族歴があるというわけでもなく、本当に孤発の方もおられる、経験的にはそういうところです。

○桃井委員 ありがとうございました、ほかに御質問や御意見はありますか。

○稲松委員 私はもう少し年齢が上の内科系のドクターです。診療に来られる患者さんは、それなりの訴えを持って来られるわけです。そこで一通り検査して、場合によっては内視鏡(いわゆるCTI)ということで解決が付いて訴えもなくなる中で、「先生、何もなかったですか」と一件落着なのです。ただ、どうにもそんなはずはないと納得されない方がいて、そういう方が結局ドクターショッピング的になっていくわけです。

 そういう方というのは、1つには腰痛症の中にかなりある。ヘルペスの痛みの問題、もう少し心因的なものと、年齢層が上だと少し様子が違います。いろいろ検査して大丈夫という中に、患者さん自身の経験の中で、こういうときにはこのように対処すればという身に付いた知恵みたいなものがだんだん育ってくる。それが何もなければ何もない、ああ年齢のせいだということでけりが付いてしまう。今の症例は思春期の例が大部分なので、年齢のファクターがかなり大きくあるのではないかと感じました。そういう意味で非常に貴重なお話を伺って有り難いのですが、患者さんたちが先生方から内科連携に移っていくところで何か御意見がありましたら教えてください。

○桃井委員 小児年齢から20歳、25歳となった患者さんについて。

○稲松委員 大体、先生方は10代ですよね。先生方を卒業していく人たちがどうなっているのかがちょっと気になりましたので。

○桃井委員 非常に様々であろうかと思います。まとめてはおっしゃれないと思いますが、何か御意見がありましたらお願いします。いわゆるキャリーオーバーでしょうか。

○奥山参考人 少なくとも私の診ている範囲内の理解ですが、様々な家庭環境や基礎疾患があるような方については多分そうではないと思います。私はそういった背景が余りない方を診ていますので。そうすると、少なくとも欧米の理解では、9歳から16歳辺りが1つのピークで、小児のCRPSというのはそういうことです。大人は47歳前後がピークなのですが、子供は思春期なのです。私が診ているHPVで一番年齢の高い子が20歳を過ぎていますけれども、やはりピークは思春期で、小児期を越したとしても、その後で内科的な専門治療、基礎疾患等や環境の問題が強くなければ、それで落ち着いていくような例ばかり、私の限られた20人程度の経験ではそのように思っています。欧米のデータのCRPSなどもそのようなデータが出ています。

○桃井委員 岡田先生、いかがでしょうか。

○岡田参考人 ありがとうございます。移行については先生がおっしゃってくださったように課題だと思います。思春期の中で自分を客観視して、自分でストレスや身体症状に対してマネジメントできるようになりますと一旦終了できるケースも多いのですが、移行の場合は内科に移行するのか、それとも精神科・心療内科に移行するのかということで、患者さんとの共通理解を得る点では難しいときもあるというのが現状です。幸い当院には痛みを専門とする外来や総合内科がありますので、そういう所と連携して最終的には地域の、地元のかかりつけ医を探していただくような形にしております。

○鴇田参考人 私たちのチームは「小児精神保健班」という班ですので、基本的にはやはり御本人がストレスや心の痛みを抱えていらしたりとか、御家族もそういったことで非常に悩んでいらっしゃる方たちが私たちのチームを目がけて来るというケースが非常に多いのです。私たちは身体を診ながら、そちらも併行して治療を行っていきます。

 移行期、思春期から大人になるという時期に心が内省的になって成長を遂げていくと、劇的に精神的にも成熟されて、症状もとてもよくなるというケースが、今まで私たちが経験したケースではほとんどでした。一方、成人期に移行してもなかなか症状が改善しないケースというのは、もともとのトラウマの体験が非常に重かったりとか、そういう方たちが非常に多い。基本的には私たちはそのまま、非常に症状が重いときからずっと家庭の御事情や御本人の気持ちも診てきていますので、ずっと追っていきつつ、そこにほかの科の介入があったほうがいいだろうと判断したときには併診しながら治療をするという形を取っています。

○桃井委員 ありがとうございました、ほかに委員の先生から御意見・御質問はありますでしょうか。

○永井委員 今日は本当にどうもありがとうございました。特に質問ではないのですが、奥山先生が、例えば痛みに関して小児の窓口がなくなっているとおっしゃいました。それから、多彩な症状を訴える子供たちのQOLを守るような観点の関わりが大事だということもおっしゃいましたが、本当にそうだと思います。実際、1例、確か救急で行っても受診できなくなってしまったようなケースがあったと思います。やはり、今の医療というのは診療の見通しを持てないと入れなくなってしまうようなところがある。全面的にその子のQOLを診てあげるような形の診療が、ちょっと弱くなっているかなと思っています。

 このHPVの子供たちに関しても、原因の検索と併行してQOL、生活を守ってあげるような関わりが非常に大事だと思います。実際、HPVの子供ではないのですが、救急で診てもらえなくて、非常に傷ついたような経験をしている子供たちもおりますので、学校生活も含め、その子の生活を守るような関わりを考える観点が必要だと思って聞かせていただきました。ありがとうございました。

○桃井委員 ありがとうございました。ほかに御意見・御質問等ありますでしょうか。

 それでは、大分御質問も頂きましたのでまとめさせていただきます。4人の先生方から大変幅広く、様々な症状を示している症例を御報告いただきました。本日は先ほど申し上げましたように、410日の副反応検討部会における議論を踏まえ、接種歴がなく、接種後に報告された症状と類似の様々な神経症状など本当に広い様々な症状を生じた方の経過や治療、その治療への反応性等を確認するために、例数は限られておりますが、大変多くを診ておられる先生方の御意見とともに伺わせていただきました。大変参考になりましたこと、改めて御礼申し上げます。

 この御報告により、接種歴のない方で接種後に生じた重篤な症状と類似の症状を、多彩な症状を有する方々の症状の経過、治療の実態、よくなる方はどういうようによくなっているかも確認させていただきました。何人かの先生がおっしゃったように検査検査と追求するのではなく、あるいは症状を早く取ろうと薬漬けになるのではなく、先生方も薬が効かなければ少しやめてみようかという、非常に柔軟な対応で御治療を進められたことをお伺いいたしました。患者さんのQOL、毎日の日常生活をよりよくする方向で患者さんとともに、あるいは患者さんの御家族とともにそれに努めることで、その経過の中で症状も改善していくということも、この症状群の特徴であろうと思いますが、そういうことを御提示いただきました。

 また、御意見として、特に日本の医療は検査に偏りがちである。そういう意味では、この群の患者さん方に対する診療体制のみならず、医師のほうの知識も含め、あるいは技量も含めてだと思いますが、診療体制の整備が小児にかかわらず大人もこれからますます求められるという御意見も頂戴いたしました。しいてまとめなくてもいいように思うのですが、このようなことを教えていただいたということでよろしゅうございますでしょうか。改めまして、4人の参考人の方々に大変貴重なプレゼンテーションをしていただきましたことを御礼申し上げます。

 議題2に移らせていただきます。副反応基準(肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る))に対する定期接種後の副反応報告基準について、事務局から御説明ください。

○事務局 資料2を御覧ください。高齢者の肺炎球菌感染症に対します定期接種後の副反応報告基準についてです。平成25123日の予防接種部会副反応報告基準作業班からの報告において、添付文書の重大な副反応として記載されている症状につきましては、重篤であり、かつワクチンと一定程度の科学的関連性が疑われるものと考えられることから、副反応の報告基準に類型化して定める必要があるとされております。したがって、添付文書の重大な副反応が追加された場合には、当該疾病の副反応報告基準の変更の是非に関する検討を行う必要があるということです。

 高齢者の肺炎球菌感染症に対するワクチンであるニューモバックスに関しては添付文書の改訂が行われ、重大な副反応の項の「蜂巣炎・蜂巣炎様反応」について「注射部位壊死、注射部位潰瘍」が追加になっております。

 裏のページを御覧ください。この注射部位壊死、注射部位潰瘍につきましては蜂巣炎から進展するとも考えられますが、蜂巣炎と比較してより重篤な症状であることから注射部位壊死、注射部位潰瘍の発生状況を把握し、評価する必要があると考えております。また、平成18年の発売開始から平成291月までに注射部位壊死、注射部位潰瘍の副反応の疑い報告として企業から報告されました13症例があるわけです。そのうち、接種日から診断日までの期間が明らかになっている症例が8例ですが、接種後421日で診断をされており、いずれも1月以内の発症であることが分かっております。これらを踏まえ、ニューモバックスの定期接種後に発症した注射部位壊死、注射部位潰瘍につきましては、定期接種後の副反応報告基準に定める。また、接種後28日以内に確認されたものを報告対象とするとしてはどうかと考えております。この点につきまして御審議をよろしくお願いいたします。

○桃井委員 ありがとうございます。これにつきましていかがでしょうか。これを加えること並びに期間についてもですが、御意見を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。特に異論はおありにならないでしょうか、よろしいですか。それではこの案に対してお認めいただきました。ありがとうございます。最後に事務局から報告事項についてお願いします。

○事務局 お手元の資料3を御覧ください。先日、719日にヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る研修会を開催いたしましたので、その開催をしたということにつきまして本部会に御報告申し上げるものです。

1ページ目の下、青い四角で囲んでいる部分ですが、HPVワクチン接種後に症状が生じて牛田班所属医療機関を受診し、症状が軽快した方につきまして主治医から症状、経過、診療方針、転帰などについて御報告を頂いたものです。

 このページ以降は参考です。牛田班に所属する医療機関とその対応者の一覧をお付けしております。また、平成2811月末現在の牛田班における治療実績について整理した資料についても、この審議会の中で御報告を頂いております。なお、この研修会の概要に関しましては次回の副反応検討部会の際、この研修を行っていただきました牛田享宏愛知医科大学学際的痛みセンター教授から更に詳細なことについて御報告いただく機会を頂ければと考えております。簡単ですが、研修を行ったということに関し御報告申し上げます。

○桃井委員 ありがとうございました。これで準備いたしました本日の議案は全て終了いたしました。次回の副反応部会は、定期的に行っております各ワクチンの安全性の評価の御議論、それから今御報告いただきました研修会の内容につきまして牛田先生からの御報告という予定になっております。

 その他、何か事務局からありますか。よろしいでしょうか。

○事務局 本日は長時間にわたり活発に御議論いただきましてありがとうございました。次回の開催につきましては日程調整の上、日時について御連絡差し上げます。

 また、傍聴者の皆様へお願いです。審議会委員が退出いたしますので、退出が終わりますまで、そのままお待ちください。事務局からは以上です。

○桃井委員 ありがとうございました、本日はこれで終了いたします。本日は大変お忙しい中、また暑い中、一部には大変御遠方から4人の先生方に症例をお教えいただくためにおいでいただきました。また、症例提示のみならず、豊富な御経験から様々な御意見や知見を頂戴いたしましたこと、改めまして最後に御礼申し上げます。ありがとうございました。それでは、これで終わらせていただきます。

 

 


(了)

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