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2017年8月2日 第21回厚生科学審議会 再生医療等評価部会 議事録

医政局 研究開発振興課

○日時

平成29年8月2日(水)14:00~16:00


○場所

航空会館501+502会議室(5階)


○出席者

【委員】

福井部会長 荒戸委員 今村委員 梅澤委員 大澤委員
掛江委員 紀ノ岡委員 木下委員 後藤委員 鈴木委員
田島委員 柘植委員 松山委員 山口委員 山中委員
矢守委員

【事務局】

医政局研究開発振興課 森光課長
大臣官房厚生科学課 下川研究企画官

○議題

1 遺伝子治療等臨床研究に関する実施施設からの報告について
2 再生医療等安全性確保法に基づく緊急命令について
3 第一種再生医療等提供計画の再生医療等提供基準への適合性確認(非公開)

○議事

○森光課長

 それでは定刻になりましたので、ただいまから第21回厚生科学審議会再生医療等評価部会を開催いたします。本日は、部会の定数25名に対しまして、現時点で16名の委員の方々に御出席を頂いておりますので、厚生科学審議会令第7条に定められております定足数に達していることを御報告申し上げます。また、花井先生につきましては1時間ほど遅れて御出席ということで伺っております。

 それでは本日の会議資料の確認をいたします。議事次第、座席表、名簿、資料1-1「遺伝子治療等臨床研究に関する実施施設からの報告について」、資料1-2「レトロウイルスベクターの安全性についての遺伝子治療臨床研究に関する審査委員会の見解」、資料2-1Press Release資料」、資料2-2「参照条文」、資料3-1は、東京医科歯科大学附属病院提出の「第一種再生医療等提供計画事項変更届」、資料3-2「認定再生医療等委員会意見書」、資料3-3「変更対比表」となっております。過不足等ありましたらお知らせください。よろしいでしょうか。

 それでは、以後の進行につきましては福井先生にお願いいたします。よろしくお願いします。

○福井部会長

 それでは早速、議事に入らせていただきます。議事1は、「遺伝子治療等臨床研究に関する実施施設からの報告について」です。事務局より説明をお願いします。

○下川研究企画官

 資料1-1を御覧ください。佐賀大学医学部附属病院より、臨床研究計画変更報告書の提出がありましたので御報告します。研究課題名は、慢性動脈閉塞症を対象としたAMG001の筋肉内投与による遺伝子治療です。次に、9ページの横表を御覧ください。人事異動に伴う臨床研究分担医師の削除や所属、肩書の変更がありました。また、実施体制強化のために、研究協力者の追加がありました。1件目の御報告は以上です。

11ページの九州大学病院からの重大事態等報告書について御説明します。有害事象名は、自殺既遂です。本件は、今年の67日に御報告した重大事態等報告の続報になります。

14ページ、「6 重大事態等の概要」の「研究の目的及び意義」の欄の2段落目です。この研究は、いまだに有効な治療法が確立されていない網膜色素変性患者の片眼を対象として、神経栄養因子であるヒト色素上皮由来因子遺伝子を搭載した組換えアフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルスベクターを網膜下に投与することに対する安全性を明らかにすることを目的としております。

16ページです。投与から2年たった2015623日の来院時には、御本人より、「1か月前ぐらいに精神的にとてもショックなことがあった、それから心身のバランスがとれない」と聴取しております。それから投与から3年たった2016712日の来院時には、「軽い鬱病の診断にて、近医よりジェイゾロフトを処方されている」と聴取しております。その後も鬱病は続いておりまして、次ページの一番上の2017221日です。「笑顔はなく、ネガティブな発言が続く」また「昨年10月末より鬱病の内服薬がパキシル錠に変更になった」と聴取しております。2017321日には、前日に入眠導入剤のブロチゾラムを60錠ほど内服し、意識障害になったとのことで緊急搬送されていますが、採血、頭部CTMRI、胸写でも異常がなく、入院の翌日には普段の状態に戻り、323日には退院しております。ここまでの経過は、67日の本再生医療等評価部会での御報告の内容となります。入眠導入剤の大量服用の有害事象につきましては、重大事態と本臨床研究との因果関係は乏しいと判断されております。

 ここからが続報になりますが、退院から17日後の49日、自殺によりお亡くなりになられております。

14ページ、「5 倫理審査委員会の意見」の欄を御覧ください。「今回の重大事態と本臨床研究の因果関係は乏しいと判断する。但し、被験者へのケアについて慎重に配慮する上、研究の実施に当たっては、今回の事態を念頭に承認した実施計画書を遵守し、慎重な態度で臨まれるよう要望する。また、次のフェーズ試験を行う際には、精神科のコンサルタントの内容を含めることとする」との意見となっております。

 この件につきまして、本部会へ御報告する前に、遺伝子治療臨床研究に関する審査委員会の委員の御確認を頂いております。委員からは鬱病の原因について御質問がありました。これに対し、九州大学病院からは、文献等で、網膜色素変性症を含む視覚障害者の方に鬱病が多く、自殺率が高いことが一般的に知られていること。また、鬱病の原因の一部は、自然経過による非投与眼も含めた両眼の視機能の低下によるものと推察しているとの回答がありました。また、委員からは、精神状態の悪化を防ぐための対応や入眠導入剤の大量服用後の精神科治療状況について質問がありました。これに対し、大量服用があった以前は、患者御自身で近医の精神科を受診されていたので、受診や投薬の内容を確認していたが、治療は近医に任せていたとのことでした。自殺未遂後は、近医を急ぎ受診してもらい、近医精神科の医師とも電話で状況を確認するなどの連携を取っていたとのことでした。今回のことを踏まえ、今後予定している医師主導治験においては、被験者の精神状態について、スクリーニング期間、経過観察期間内に九州大学病院の精神科を受診することを必須として、経過観察、プロトコールにすることを考えているとの回答がありました。このようなやり取りの後、審査委員会では報告者の見解について了解を頂いております。

 もう1件、国立成育医療研究センターからの重大事態等報告がありますが、一旦、ここで説明を終わって、御意見を頂いた後に、次の国立成育医療センターからの御報告に移りたいと思います。以上です。

○福井部会長

 最初に、佐賀大学の件についての研究分担医師、それから研究協力者の変更ですが、これについてはお認めいただいてよろしいでしょうか。

 次に、2件目の九州大学の事例です。これについてはいかがでしょうか。何か御質問、御意見等ございませんでしょうか。

○木下委員

 眼科の立場なのですが、20167月から20171月にかけて、およそ半年で、治療を受けたほうだけではなくて両眼の視力が急激に低下しております。一般的に、慢性疾患、目の視力低下もなのですが、それと鬱病は非常に関係することが最近、欧米を含めて言われております。その中で特に治療眼のみならず非治療眼、対象となっていない目も、両眼とも急激に視力が低下したということは、やはり非常に、何らかの心理的なもので更に悪化させていた可能性がありますので、治療対象眼のみならず、やはり両眼を診て、そういうときには精神科のコンサルタントがしっかりと必要なのだろうと感じました。

○福井部会長

 眼科疾患の患者さんは一般の人々に比べて、鬱病の頻度はどれくらい高くなりますか。

○木下委員

 ちょっと話が違いますが、例えば単純なドライアイ、たかだかドライアイというものであっても、やはりこれも非常に鬱病の頻度が高いことが、日本のみならず欧米、韓国やそういう所も含めて最近、随分とそういう報告がされています。腰痛症であるとか、そういうのと一緒で、持続する慢性の疼痛であるとか、あるいは持続する慢性の徐々に視力低下することが精神的にとても影響するということが言われております。

○福井部会長

 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。この事例につきましても御了承いただくということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは3例目の、国立成育医療研究センターの事例について、まず事務局からの説明でしょうか。

○下川研究企画官

 まず、研究機関から御説明を頂こうと思っております。

○福井部会長

 分かりました。それでは、総括責任者の小野寺雅史先生に御説明を頂き、その後、この報告に関する遺伝子治療審査委員会の見解を、遺伝子治療審査委員会委員長の山口照英先生に述べていただきたいと思います。それでは小野寺先生、よろしくお願いします。 

○小野寺先生

 よろしくお願いします。成育医療研究センターの小野寺です。今日はお忙しい中、ありがとうございます。それでは、成育医療研究センターで行いました遺伝子治療において重大事態報告が発生しましたので、本日御報告いたします。まず、通し番号の資料23ページの図を用いて説明したいと思います。

 対象疾患としては、慢性肉芽腫症という病気です。これは生まれながらにして食細胞、好中球の異常でありまして、細菌ですとか真菌症に感染する病気です。基本的な治療としては、HLAがあった造血幹細胞移植が適用ですが、なかなかこういう患者さんがいらっしゃらないということで、今回、ほぼ3年前ですが遺伝子治療に踏み切ったというのが現状です。

 図1です。簡単に御説明します。患者さんにG-CSFというサイトカインを投与しまして末梢血から造血幹細胞を回収します。それを培養バックに置いてウイルスベクターと混ぜて、また戻すという方法を行ったものです。

 図2です。このような方法において、向かって右側ですが、もともと括弧で囲っております0%、これは活性酸素を出しているものですが、もともとないものが遺伝子治療後、遺伝子導入後には78.4%、すなわち80%の細胞に機能的な遺伝子が入りまして、またそれを、今回の場合はブスルファン(BU)で前処置を行った後に、患者さんに投与したというのが現状です。

 その後の経過に関しては図3です。もともと患者さんは頸部のリンパ節炎、肺膿瘍、肝膿瘍、複数の感染症が抗生物質に抵抗性を示しておりましたが、図3に示しますように、治療後4か月目のところで、これはPET-CTですが、もともとあったホット(赤くなっている部分と白くなっている部分)がこのような形で軽快したということで、患者さん自身も非常に体調が良かったということです。

 これは実はただ短期的な話でありまして、では長期的にどうなったかと言いますと、それが図4です。ここに書かれておりますように、四角内にパーセンテージを書いております。これが実際に患者さんに散在している活性酸素、あるいは機能的な細胞ですが、6か月ぐらいまではまだ確認できますが、9か月、12か月になりますとほぼ確認できなくなったということで、この遺伝子導入細胞というものは6か月ぐらいまでは患者さんの体の中にいましたが、その後はいなくなってしまったということです。その後2年間にわたって、ほぼ半年に1回、成育医療研究センターに来ていただいて観察しておりました。特に造血系には異常がなく、また先ほどお話ししましたように、特に遺伝子導入細胞を認めるわけではなかったということです。

 その後、今年の3月になりまして近くの病院から、この図5に書いているような末梢血にブラスト(芽球)というものですが、こういうものが見つかった。この段階で3%の芽球があったと。また同時に血小板の減少を認めたということで、これはやはり何らかの影響によって骨髄異形成症候群という、MDSという名前で診断されるのですが、造血系に異常が発症したのではないかと考えました。

  そこで、図6、図7、図8とありますが、基本的に32か月という所が、これがMDS(骨髄異形成症候群)を発症したときの値ですが、やはり体の中にはこのような機能的な遺伝子導入細胞は見つかりません。図6もそうですし、32monthsの所も0%、それから図7、図8。図7は骨髄中、図8は末梢血中ですが、やはりこのような遺伝子を持った細胞がいないということで、当初は、やはりこれは先ほどお話ししましたブスルファンの影響ではないかと考えました。

 ただ、やはり確からしさを確認するために図10を見てください。もともとは今まで確認したPCRなのですが、これは青の部分をprimerとして検出の方法を行っておりました。

 しかし1か所ではやはり危険だということで、場所を、LTRと呼ばれる場所ですが、この赤の部分にprimerを作ってPCRをかけた結果が、図11、図12です。このように、12か月目の段階で、やはり何らかの遺伝子が入った細胞が増えていることが確認されました。また、図12CD45low sortという、芽球を層とした細胞にPCRをかけると、やはり芽球の中にこのような遺伝子を持った細胞がいることが確認できました。

 そこでなぜ、先ほどの青の部分(CYBBの部分)では、PCRがかからなかったかを調べると、図13とか、後ほど御説明しますが、図18のように、数多くのCYBB4か所の部分にGtoA変異が入っていたということで、どうもこの変異のためにprimerがかからずにPCRがかからなかったのではないかということが分かりました。及び図12、図14もそうです。非常に多くのGtoAのミニュケーションが入っていたことが分かりました。このために、もちろん活性酸素も出ませんし、それからCYBBprimerをかけたときにPCRがかからなかったというのが、多分これが原因ではないかと思っております。

 次に、では私たちは今、遺伝子がどこに入っているかを調べる方法、次世代シーケンサーを用いて調べる方法があります。それが図15と図16です。このように、次世代シーケンサーを使って、このウイルスが、ベクターがどこにいるかを調べた方法なのですが、基本的に、移植後9か月、12か月、18か月、20か月ほどの間、常に1か所のプロウイルスがこのMECOMと呼ばれる、MDS-EVI1という部分ですが、その第2イントロに入り込んでいることが分かりました。この挿入部位が確認できたのは1か所ですので、多分1個のプロウイルスが、このMECOMの第2イントロに入っていたのではないかと思っております。

 その発現に関してが図17なのです。やはり、移植後1年後が15.07.17、それから発症後が17.06と書いておりますが、やはりMECOMの発現、これはEVI1だと思うのですが、EVI1の発現が起こりまして、このような形でのMDSの発症を来したのではないかと思っております。

 また、この芽球が一体どこから来ているかということなのですが、先ほどお話ししましたように、ほぼ挿入部位は1か所であること。それから、図18に、ちょっと見にくくて申し訳ありませんが、向かって上のほうに書いてある数字が、17.16、今年の615日です。それからちょっと見にくいですが、丸で書いてある所が2年前の416日です。すなわち、これが全てAからGに入っているミューテーションの場所なのですが、ほぼ2年間、変異の場所が変わっていないことを考えまして、やはりもともとは多分、1個の細胞が何らかの形で造血系を維持し、そして2年後に多分何らか、ここはちょっとまだ今、調べておりますが、多分セsecond hitか何かの形でこのような形の造血系異常を発症したのではないかと現在考えております。まず重大事項に関しては以上です。ありがとうございます。

○福井部会長

 次に、山口先生お願いします。

○山口委員

 今、小野寺先生から御報告いただきましたが、我々はこの重大事態報告を受けて、先月の726日に審査委員会を開き、小野寺先生にも出席いただき、これについての見解案をまとめるべく情報を収集した上で議論をいたしました。資料1-2を御覧ください。見解案に関しては、大きく15まであります。全部読むわけにはいきませんので、ポイントとなる所だけを御紹介させていただきます。

 これは5年前に臨床研究を承認させていただいたのですが、もともとX-SCIDの遺伝子上で白血病発症ということが報告されていましたので、本遺伝子治療の想定されるリスクを評価して、患者にどのようなメリットがあるかというリスクとベネフィットの評価をしました。まずリスク要因として、既にX-SCIDWAS、今回のターゲットになっているCGDなどで白血病の発症があると考えられておりました。ただし、この時点ではCGDに関しては造血幹細胞移植ができる場合は、もちろんそれが第一選択になるのですが、造血幹細胞移植ができないような場合、例えば重篤な感染創傷があって造血幹細胞移植ができないような場合、あるいはマッチするドナーがいない場合には、造血幹細胞遺伝子治療は重要な選択肢になるだろうという考え方でした。そのような考え方から、患者にとって、本遺伝子治療は一定のメリットがあるだろうと考えて、承認させていただきました。

2.です。今回発生したMDSの評価ですが、先ほど小野寺先生から御説明があったように、ウイルスベクターのLTRのほうが1か所に挿入されて、しかもそれがクローナルに増幅して芽球を作っているだろうということで、これは因果関係があるだろうという判断をしました。そういう意味では、もう海外のCGDで起きたことと、多分同じことが起きてしまっただろうと。

 ただ、もう1つ追加するべき点として、先ほど御説明があったように、ターゲットとしたのは導入している遺伝子にPCR primerを設計して、クローナリティを測定されていたのですが、ターゲットとなったCYBBに変異が入っていたために、比較的初期の段階からMDSへの挿入があった可能性は考えられるのですが、それが検出できなかったということです。3ページ目の上の2つ目の●を御覧いただきたいのですが、こういったターゲット遺伝子に変異が入る可能性があることを考慮すると、今後ウイルスベクターの適切な配列に対して複数のプライマープローブを選択するようなPCRを設定する必要もあるかという点です。こういった変異があったという事例も今回が初めてでしたので、今後の対応として考えていかなければならないと思います。

 本研究の今後に関してですが、先ほど言いましたように、CGDというのは抗生物質の研究開発が進んだために、細菌性の病巣というのは非常にコントロールしやすいのですが、真菌性はかなりコントロールが難しいということが言われています。そういう意味では、投与後、一過性遺伝子導入された白血球の発現が数箇月持続できたわけで、一過性の発現によってでも、真菌に由来すると思われる病巣に対して治療効果が認められたという点では、患者にメリットがあったのだろうと考えて良いと思います。

 もう1つ、その下の小さな矢印の所を御覧ください。今後、この遺伝子治療臨床研究を中止すべきなのか、中止すべきでないのかという議論も深く行いました。現時点では、真菌感染に一定の効果が認められたということから患者にメリットがある場合があるだろうと考えられます。実際に海外の論文で、「つなぎ」と言ったら語弊があるかもしれませんが、こういう感染症があって、その感染症がコントロールできないときには、遺伝子治療によって感染症をコントロールした上で、造血幹細胞移植にいくという治療法の提案をしている発表もありました。そういう観点からすると、本遺伝子治療の中止を求める必要はないのではないかというのが委員会としての結論です。ただし、一旦臨床研究をholdingしていただき、ここに書いてある5つのことを確認して研究するということで、先ほどのCYBBがどういう時点で変異が起きたのかは明らかにする必要があるだろうと。あと、本研究はあくまでも2次的選択としての研究であり、造血幹細胞移植ができる場合はそれが第一選択になるだろうと考えられること。それができない場合に、こういう選択肢として考慮すべきであると。さらに、最初の研究申請時にリスクとベネフィットを5年前にしましたが、そのときよりもリスクの部分は確かに上がっていると判断すべきと思われ、要するにMDS発症の確率がより高くなってきてしまっているということは言えるでしょう。ただこれ以外のCGDベクターに代わる、より安全なベクターというのは開発途中です。まだ日本では入手できていないのですが、SINベクター、活性化能が低いベクターの開発が進んでいるので、将来それを導入できるような事態になった場合には、むしろそちらのほうにいくべきだろうというように考えています。

3番ですが、今後この発症を受けて、国内的にどのような対応をしていくべきかということで、レトロウイルスベクターについては、どういうリスクを想定しないといけないのか。これは2002年にX-SCIDで白血病が起きたときにも、FDAとかEMAと一緒にリスク評価を行ったことと同じ視点でる。このようなリスク評価もう一度行ってみました。こういう白血病が起きているのは、今のところX-SCIDWASCGDだけである点。さらに、レトロウイルスベクターが染色体に入り込んだために起きた白血病は少なくとも造血幹細胞への遺伝子導入でのみ起きているという点、すなわち対象細胞としては造血幹細胞に遺伝子導入したときにのみ起きている考えてよいということ。ほかの細胞に関して、レトロウイルスを使った研究が実施されていますガ、これらの研究では白血病は発症していないわけです。すなわち造血幹細胞以外の細胞で、レトロウイルスベクターによる遺伝子導入をした場合には、今のところは造腫瘍性(がん化)というものは認められておりません。やはり造血幹細胞に入れるというところに非常に高いリスクがあるのだろうという判断できるということで、これはFDAなどは長期フォローアップの中で、「造血幹細胞に関してだけは、より緻密なフォローアップをすべし」と書いており、その辺の考え方が正しいというか、科学的に妥当なところだろうと考えるわけです。

5ページ目の上の所を御覧ください。今回の報告を受けて、、レトロウイルスを使っているほかの遺伝子治療においては全くリスクがないとは言えないので、理論的にはある得るとせざるをえないわけで、そういう意味では一定の情報提供が必要だろうと考えております。すなわち、レトロウイルスのリスクについて、各実施機関等に情報を提供し、モニタリングなど必要な対応を取っていただくことを考慮していただくように考えております。

 その他のウイルスベクターに関して、挿入変異に関してだけ言えば、今のところ世界で1,800プロトコル以上が行われていますが、このレトロウイルスによる造血幹細胞に入れたとき以外に白血病は出ていません。そういう意味では、ほかの遺伝子治療に関して特段の白血病発症ということが今近々の問題ではないと我々は考えております。

5番です。これで今後の対応としてどのようなことが必要かということで、従来から白血病の造血幹細胞異常がレトロウイルスを用いて起きたということは、X-SCIDWASCGD3つの対象疾患で、同じようにADAの遺伝子治療では起きていません。すでに海外でADAを対象とするレトロウイルスベクターが承認されていまして、造血幹細胞に入れていながら起きていない。その辺は一定のリスクはあるのだろうと思うのですが、対象疾患によって結果が異なっているというか、副作用の発症が異なっているところだと思っています。

 現在実施されている研究への対応ということで、レトロウイルスあるいはレンチウイルスベクターを用いたものには一定のリスクがあるということで、先ほど申したような重大事態についての情報を提供した上で、何らかの必要な対応がないかということを各研究者に照会させていただきたいと考えています。

 もう1つは、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療、臨床研究の終了した研究に対してもフォローアップの体制、要するに、ほとんどの場合には実際に治療した機関ではなくて、地元に帰られている場合もあるので、そういうところのフォローアップも必要なのではないか考えております。最後のページです。今回の重大事態は非常に重大なことなので、海外の規制当局への情報提供も行うべきだと結論しました。以上です。

○福井部会長

 続いて、本報告を踏まえた今後の対応について、厚生科学課より説明をお願いいたします。

○下川研究企画官 厚生労働省としては、山口審査委員長より御説明のあった審査委員会の見解を踏まえて対応を取りたいと考えています。今、御説明のあった資料1-2の審査委員会の見解の3ページを御覧ください。(3)「本研究の今後について」というものがあります。国立生育医療研究センターに対しては、本遺伝子治療の中止を求めるべきではないけれども、継続する場合には研究を一旦留保して次の5項目について、国立生育医療研究センターに対しては、本件の更なる原因究明や研究計画書、患者説明同意文書の変更等の指示をしたいと考えています。

6ページを御覧ください、国立生育医療研究センター以外の遺伝子治療臨床研究実施施設に対しては、これも山口審査委員長より御説明いただいたとおりですが、「5  今後の必要な対応」の2つ目の●にある丸1から丸3に記載された内容にありますが、現在遺伝子治療臨床研究を実施中の施設や既に臨床研究を終了した施設、海外の規制当局への情報提供などを行うとともに、重大事態等が生じた際は速やかに報告するよう指示することにより、引き続き遺伝子治療等臨床研究の安全性確保に努めたいと考えています。以上です。

○福井部会長

 小野寺先生、山口先生、厚生科学課から続けて御説明いただきました。御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。

○掛江委員

1点質問です。3ページの小さな矢印の2つ目の3行目で、「Bridgingとしての治療法であることを計画書と説明同意書に」と書いてあるのですが、これはもともとプロトコルとしては移植ができない、ドナーがいない方が、これを受けるということですよね。それで「Bridgingです」と書くということは、受けられた患者たちは、遺伝子治療中にドナーを継続的に探して、骨髄をキープするようなことができるという想定なのですか。

この書き方をすると、そういう実態がなければ、患者も困るだろうなと思ったのですが。

○山口委員

 個別の患者の話は小野寺先生に答えていただかなければいけないと思うのですが、真菌の感染巣があると、なかなか骨髄造血幹細胞移植も適応になりにくいところで、実際に感染症があったときに骨髄抑制をしてしまうと感染を拡大してしまう可能性もありますので、そういうことも1つ考慮しないといけないと思います。

 もちろん、そこがコントロールできていれば、当然、造血幹細胞のドナーがおられれば、特に今だとハプロ移植がかなり進歩していますので、それができるのだろうと我々は思っています。

○小野寺先生

 この患者についてですが、基本的に先ほどお話しましたように、感染症自体はかなり改善したということは事実です。今回、このようなことが起こったので、もちろん原病の観点もあります。原病の機能的な細胞が少なくなっていますので、やはり感染症の機会が増えているという点が1点です。

 それから、今回このような造血系の異常があったことを言うことで、やはり移植に踏み切ろうということになりました。私たちがこの計画書を出したのは5年前なのですが、今はハプロ移植というのが、特に血液で、御両親からの移植がかなりうまくいっていると、ここ12年の間にPT-CYというものが出まして、かなりうまくいっています。これはここ12年の話です。ただ、今回においても、山口先生からありましたように、感染症があるとどうしても強い副作用が出てくるということがありますので、今回は結果論になってしまうかもしれませんが、やはり一定の感染症の治癒ブラス、PT-CYという、ここ数年間での進化が、実際に感染自体としては非常に順調に回復されておりますので、その点は非常に私たちも安心していることなのですが、そういうような新たな治療法の選択というものが、今後展開できるのではないかということで、可能であれば、このような形で継続させていただきたいと思っています。

○鈴木委員

 実際の患者の治療についてということでお伺いできればと思います。実際には、白血病という形を発症されているという理解でいいわけですよね。

○小野寺先生

 ……的から言うと、白血病ではなく、要は芽球の数によって、白血病と骨髄異形成症候群が分かれており、いろいろな定義はありますが、基本的には20%以上の芽球が存在したときに、初めて白血球という形にしています。この患者は、実際56%の間をずっと維持しているのです。現段階では、骨髄異形性症候群という形で、ただ将来的にこれが時間がたっていくと、その5%、8%がどんどん増えて、20%になっていくと白血病という形になりますので、現段階では骨髄異形成症候群という形が正しいかと思います。

○鈴木委員

 現段階で骨髄移植を実施されるという予定と伺いましたが、骨髄移植を行うことによって、現段階の病状というのも完治が期待できるのでしょうか。

○小野寺先生

 先ほどお話しましたように、今回このようなことになりましたが、少しずつ導入細胞が減ってきて、感染症が増えていたというところで、実際にそろそろ何らかの移植を行おうとは考えていました。今回、このような形で同時ということになりました。基本的には、もし移植が成功した暁には、原病の慢性肉芽腫自体も治癒できます。プラス、今後はこういうような異形成のある細胞ですので、俗に言う再発ということも全くないことはないですが、現時点ではそういう芽球は消えており、一応寛解状態にあるので、移植によって原病と、今回のMDSに関しては、一応一定の治療効果は得たのではないかと考えています。

○福井部会長

 レトロウイルスを造血幹細胞に導入するという研究だと思いますが、受けた患者の何パーセントぐらいで、このような異常が現れているのでしょうか。外国のデータなどではいかがですか。

○山口委員

 国内ではX-SCIDはゼロです。X-SCIDに関しては世界で20例実施されており、2002年から20072008年ぐらいまでだったと思いますが、5例発症し、それは3年から5年経過してですが、今年になって15年たって白血病がX-SCIDで発症したというのが1例出ています。短期間では評価できない、長期でホローアップでは評価できないということだと思います。WASに関しては、それほど正確な値ではないのですが、全体数の母数がよく分からないのです。というのは、世界中でどれだけやられているかというのは我々は先進国のほうは割と把握できるのですが、例えば韓国でやられたりというようなケースもあります。CGDは、世界で今回で4例目になります。WASは。

○小野寺先生

 ガンマレトロは10名で、発症したのが7名です。かなり疾患によって異なり、例えば先ほど出たADA欠損症は、今はレトロウイルスにもガンマレトロウイルスというものとレンチウイルスの2つがあります。今回のは以前のタイプですが、ADAは、もう40名以上行っていますが、1例も発症していません。それから、CGDに関しては、今回の、このような形が初めてですし、X-SCIDに関しては20名中5名が発症しています。WASに関しては10名中7名が発現しているということで、疾患によって、かなり白血病やMDSの発症が異なりますので、一概には言えませんが、やはりこのようなタイプのウイルスベクターを使うと発症しやすいということは確実になってきていますので、現在レンチウイルスというHIV由来ですが、そちらのほうに変わって、長いもので8年ぐらいたっていますが、今のところは1例も発症していないというのが現状です。

○後藤委員

 確認したいのですが、今回のMDSの発症というのはかなり最初から予測されていて、最初の説明同意の段階で、きちんと説明されていて、そのときに今議論があったように、どのぐらいの可能性で発症するかということがきちんと説明された上で同意を得ていたという理解でよろしいのでしょうか。

○小野寺先生

 まず2つありまして、慢性肉芽腫症の遺伝子治療には、1つは欧州で行われている遺伝子治療と、アメリカを中心に行われている遺伝子治療がありました。ヨーロッパの遺伝子治療とアメリカの遺伝子治療は使うベクターが少し違いまして、ヨーロッパのほうはかなり多くて、4例中4例起こったということが言われています。最初、私たちもヨーロッパのグループと共同でやろうと思ったのですが、今のことがあり、より安全性を考えてアメリカのほうで行いまして、アメリカはその段階で5年、6年たっていて、3例やって1例も発症していなかったということで、安全性を取る意味でアメリカと行いました。

 ただ、今おっしゃられるように、このウイルスを使う限りは、必ずしも安全とは言えないので、その辺のICの取り方は全部の、これまでの白血病が起こった例とか、こういう可能性があるということを一応説明して、納得していただいていると思います。

○後藤委員

 ということは、今御説明にあった、ヨーロッパではこういう形でというのと、アメリカでもこういう形であるという両方を説明されていたという理解でよろしいでしょうか。

○小野寺先生

 そうです。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。それでは、遺伝子治療等臨床研究に関する実施施設からの報告については、本部会として了解することとしてよろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただきます。ありがとうございます。

 議事2に移ります。再生医療等安全性確保法に基づく緊急命令についてです。事務局より説明をお願いします。

○森光課長

 資料2に基づいて説明させていただきます。前回、同じように緊急命令ということで出させていただきましたが、それに引き続いての御報告となります。前回、緊急命令を出した施設に立ち入ったところ、実はその施設が引き受けていたはずの細胞加工が、実は無許可の所に委託をして、そこで加工されていたという話です。少し説明をさせていただきます。

 平成2969日に、再生医療等安全性確保等に関する法律に基づいて、株式会社生命科学研究所が設置する施設に立入を行ったところ、許可なく特定細胞加工物の製造を行われていたことが確認されました。そこで、612日付けで株式会社生命科学研究所に対し、法第47条に基づいて、特定細胞加工物の製造の一時停止を命じました。

 この特定細胞加工物というのは、前回お示ししました緊急停止命令を掛けた医療法人社団博心厚生会「アベ・腫瘍内科・クリニック」内の細胞培養加工施設「アベ・腫瘍内科・クリニック細胞加工センター」を経由して、別表の後ろにある18の医療機関に提供されていたことが確認されました。非常に広く、多くの医療機関に提供されていたということで、この18の医療機関に対して、患者さんの健康の状態、健康被害の発生状況を確認するという作業を現在も引き続き行っています。このような事案がありましたことを御報告させていただきます。

 現在、この18の医療機関に対し、健康被害の発生状況を確認しております。健康被害としては、皮疹などが出たという患者さん数名の報告があります。それについては速やかに認定の再生医療等委員会のほうに諮って、それがこの治療と関係するのかどうなのか、若しくは必要なプロトコールなり何なりの変更、それから確認をするようにということで指示を出しております。以上です。

○福井部会長

 ただいまの説明について、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。今村委員どうぞ。

○今村委員

 ディストリビュートされた18の医療機関というのは、無許可の所で製造されていたのかどうかを知っていたのかどうかということ。それから、許可を受けていた細胞加工センターと、生命科学研究所との関係。逆に言うと、ここにオーダーをして、加工センターから経由して、されたというのは何となく隠蔽工作みたいな感じがするので、余りたちが良くないという感じがするのですが、いかがでしょうか。

○森光課長

 それぞれの医療機関について、18の医療機関の中にはアベ・腫瘍内科も入っておりますので、アベ・腫瘍内科以外の17の医療機関に関しては、恐らくアベ・腫瘍内科・クリニックのほうに細胞加工を委託したというように認識しております。アベ・腫瘍内科・クリニックが、自設内の細胞加工施設ではなくて、外の無許可の所に委託をしていたということを、ほとんどの場合が知らなかったと聞いております。

 アベ・腫瘍内科と生命科学研究所との関係なのですけれども、数箇月前までは非常に密接な、いわゆる腫瘍内科・クリニックの管理者と、生命科学研究所との間で、一部役員が重複等々の関係があったと聞いております。そこで、生命科学研究所とアベ・腫瘍内科・クリニックとの間については、一応委託契約が結ばれて細胞加工物が提供されていたという状況です。その間の関係については、今、両者から詳しくお話を聞いたり、情報を頂いています。

○今村委員

17の医療機関については、許可を得た加工施設に依頼したつもりだったということで、悪質の程度は非常に低いということですが、もともとのアベ・腫瘍内科・クリニック細胞加工センターというのは、当然のことながら無許可というのを知っていながら、そこに加工をお願いしていたということでよろしいのですね。

○森光課長

 そこについては、どこまで知っていたのかということについても、今、双方から聞いているところです。

○今村委員

 この処分をどのようにして解除していくかということについては、極めて慎重な対応が必要だと感じます。

○森光課長

 はい、分かりました。

○福井部会長

 木下委員どうぞ。

○木下委員

 ほぼ同じような質問かと思います。アベ・腫瘍内科・クリニックの細胞培養細胞加工施設がどういう立場にあるのか。普通、こいうものの場合、どこが最終製品かということになると思うのです。多分、生命科学研究所が最終製品だということで法律違反ということになっています。介してというのは、単にペーパーワークなのか、その物がちゃんとそこへ行ってということになると、最終製品は細胞培養加工施設ということになります。そうなると、ここも含めて法律違反という考え方になるのではないかと思ったのです。

○森光課長

 私どもが確認したのは、各医療機関は、アベ・腫瘍内科・クリニックに委託をした。ところが、アベ・腫瘍内科・クリニックのほうから、そのまま生命科学研究所に委託をして、生命科学研究所で最終的なところまで作成をして、それをアベ・腫瘍内科・クリニックに渡し、そこでどれだけチェックをしたかというのは私どもも分かりませんけれども、そのままそこから出荷されたという状況です。ある意味、非常に悪質かというところは感じております。

○福井部会長

 紀ノ岡委員どうぞ。

○紀ノ岡委員

 今のことに関連するのですけれども、まず規則の範囲で、何が違反で、何が大丈夫かという定義が必要だということ、その後は委員会の対応はどうであったか、今後どう対処するか、という3段階があると思うのです。まず規則の段階で、医療機関が再生医療をやったわけです。そのときに、無許可の所に委託したということに対しては、医療法だと思ったのですけれども、それは気付かなかったというよりも、規則上はいけないことをしたと言ったら、医療行為をしたほうも、再生医療の規則に反した。それと、無許可であるのに作ったというところは、まず規則に違反している。まず2つあって、なぜそれが違反だと思わなかったのかというところは、委員会が何もチェックしなかったから、又は細胞加工施設の登録番号を書く欄がなかったからとか、それは対処方法になると思うのです。そもそも何が違反で、なぜセキュリティを抜けてしまって、こういうことになったかという解析はされているかどうかを教えてください。

○森光課長

 それぞれの医療機関の先生方が知らなかったとはいえ、ちゃんとした加工施設に頼むという責任があります。その先がいわゆるトンネルになって、別の所に頼まれていたということです。投与する側の先生についても一定の責任はあると私どもは考えています。ただ、今回に関してはアベ・腫瘍内科・クリニックに頼んだのだけれども、という状態でありました。

 委員会のほうには、それぞれのクリニックは、計画を全て再生医療等適応計画として、それぞれ認定委員会に掛けて許可をもらって、それぞれのクリニックはしております。しかし、その細胞加工を頼んだ、そこに記載されているのは生命科学研究所ではなく、アベ・腫瘍内科・クリニックの中の細胞加工センターで加工してもらうことに、一応その計画上ではなっていた、というところまでを私どもは確認しております。

○紀ノ岡委員

 そうであっても、実施した医師は責任があるのではないですか。

○森光課長

 そうです。

○紀ノ岡委員

 要は医療法として再生医療に反し、計画どおり行わなかったというのが大前提ですよね。それが先にあって、それに付随して無許可の所がありましたという順番だと思ったのです。

○森光課長

 そうです。

○紀ノ岡委員

 だからこの通知を見ていると、製造している所に罰則があるかのようにあるのですけれども、そもそものところは、再生医療を行っている所が予定どおりしなかったことに起因するというのが。

○森光課長

 一応、責任についてはそうです。

○紀ノ岡委員

 責任はあるという話で、普通はプレスリリースされるのかと思ったのですけれども、そうではないわけですね。違反した医療法人に対して問題があるのではないか。

○森光課長

 それについても責任はありますけれども、今回私どもはそこに。

○紀ノ岡委員

 プレスリリースする、しないは別の話だということですか。

○森光課長

 はい、責任はあるというふうに思っておりますけれども、取りあえず今回の内容としてはこういう内容だということです。

○福井部会長
 他にはいかがでしょうか。山口委員どうぞ。

○山口委員

 アベという所は、医療機関ですか。もともと認可を受けているはずなのですが。届けだけでいいということになってしまう所なのですよね、きっと。

○森光課長

 アベはそうです。

○山口委員

 そういうところで抜けてしまうというのは、この制度そのものが、届けと、PMDAが査察に入る所と2つに分かれているところの間隙を突かれたような印象を受けるのです。そのようなところを是正していく、あるいはちゃんと届けをしてやっているということを、委員会が確認するようなシステムが必要なような気がするのです。

○森光課長

 少し検討させていただければと思います。

○福井部会長

 他にはいかがでしょうか。後藤委員どうぞ。

○後藤委員

 今回の対応は別として、今回のようなことが分かった以上、山口先生がおっしゃったようなことと関係するのですが、他の施設でこのようなことがあるということも、可能性としてはあるわけです。これを契機に、全ての機関に対して何らかの調査を行うような予定はないのですか。それとも、出てきた所を叩いていくというか、潰していくというようにお考えなのでしょうか。

○森光課長

 前回からずうっとこういうお話をさせていただいておりますので、1つはちゃんとした情報を提供施設、加工施設に提供するということ。それから認定委員会のほうの審査、先ほど先生がおっしゃられたように、どのようにちゃんと審査をしていただくのか、というようなことに関して、どのように進めていこうかと。いわゆるチェックポイントはどこなのか、それからどのように対応してもらうのかという、いわゆる模範的なところをどのようにしていこうかということについては、今年度は検討させていただいて、来年にはある程度のことを進めていきたいと思っております。

○福井部会長

 こういうことをやろうと思ってもできないような、手続をうまく組み込むことが必要なように思います。

○森光課長

 検討させてもらいます。

○福井部会長

 紀ノ岡委員どうぞ。

○紀ノ岡委員

 しつこいのですけれども、今回は無許可の施設が行ったことではなくて、文書に書かれていない行為をしたというのが、そもそもの一番重いところだと思うのです。それが、たまたまそのクリニックが勝手に委託していた、更に再委託していたというところの、文書に書かれていないことを行っていることがまず大きな間違いのスタートなのです、ということだと思っています。たまたまその先が無許可の所で、無許可がポイントではなくて、無許可であろうと、許可されていようと、書かれていない行為をしていることがいけないのですよねというところだけ確認したいのです。それが先にあるのだと思うのです。

○森光課長

 それぞれの医療機関に対しても改善命令を出させていただきます。当然それぞれの医療機関が、それぞれ責任を持つ必要がありますので、そういう意味での改善命令というのは併せてさせていただいています。

○福井部会長

 よろしいでしょうか。この件については本部会として報告を受けたことといたします。掛江委員どうぞ。

○掛江委員

 各クリニックは改善命令とおっしゃったと思うのです。でも、製造している所が停止であれば、改善命令と言っても、皆さん一斉に停止になっているという理解でよろしいですか。

○森光課長

 すみません、改善命令自体は、アベのクリニック側とCPCに改善命令を出しました。それぞれの施設に対しては報告命令を出していますし、併せて計画どおりやっていないということですので、そもそも計画をしっかり見直しをしていただくということでお願いをしております。正直言えば、細胞加工施設自体が、違う所で作られていたということですので、その計画自体が今は出荷停止になっています。そこは、事実上その内容自体については止まっているのですけれども、そこについては、もう一回違う所に委託するにしろ何にしろ、計画をもう一回掛けていただく必要があります。見直して掛けていただくということになりますので、それについての指示を出しているということです。

○掛江委員

 私も紀ノ岡委員と同じ意見だと思うのですが、これは、プロトコル違反を、各提供施設がしたというところが一番問題なのではないか。要は、各クリニックが騙されたとしても、そこは責任をもってプロトコルどおりに提供する責任が患者に対してあったわけで、それをもって認められて再生医療を実施できたわけです。そこがプロトコルどおりできていないということで、まずプロトコル違反があったということが第一に患者に対する安全性・倫理性の観点で大きな問題ではないでしょうか。提供施設としての責任をきちんと果たさずに、医療行為をしていたというところが問題なのかなと。

 その背景に、その各クリニックを騙した悪い人たちがいましたね、という話はもちろんそうだと思うのです。ただ、各提供施設のプロトコル違反について、何もお咎めがないというか、注意されたというのは分かったのですけれども、この程度でいいものなのかというのが引っ掛かります。

○森光課長

 そこはバランスの問題です。実際はアベの、要するに生命科学研究所という非常に大きい規模の話ということで、私どもはプレスリリースをさせていただきました。通常の医療機関において、再生医療等計画が出されていたけれども、一部変更届を、ある意味変更届を忘れてやっていたとか、そういうものに関しては私どもは指導という形で、それはプロトコールどおりでない、プロトコールの変更なり、届出をきちんとした上でやってくださいという形で指導をする。それから委員会に対しても、そういう指導をしたりというようなことをさせていただいています。

 今回は、ある意味それぞれのクリニックの責任というのがあるでしょうということで、実はそれぞれのクリニックに全て発表前にお電話をして、それぞれの責任がありますと。それだけであれば、プレスリリースまではしないぐらいのこれまでの話であったということですが、規模が大きいということと、それぞれの医療機関が責任を持ってやる必要があったというようなことも含めてお話をした上で、これだけのプレスリリースをさせていただいたということです。決して何らか軽く思っているという話ではなく、実際にここまでプレスリリースまでしたというのは、そういう意味での話になっています。重みがあるということでお話をさせていただいています。

○福井部会長

 山口委員どうぞ。

○山口委員

 恐らく製薬会社だったら、委託先が不正をして何かやったときも、委託会社の先の話で済ませられなくて、その提供をしている製薬会社が最終責任を負わないといけない。多分、紀ノ岡先生も掛江先生もそのことをおっしゃっているような気がするのです。ただ、善意の何とかという形で、本当はちゃんとやろうと思っているのに、そこでという話になるのだけれども、全責任という、例えば患者さんがもし死亡されたとしたら、恐らく患者さんの損害賠償請求は、その実施したクリニックになるのではないかと。また、更にそこからアベ・クリニックのほうには請求できるのでしょうけれども、多分第一次責任はそこだろうというのは、そのように思います。

○森光課長

 はい。

○福井部会長

 プレスリリースで名前が出たこと以上の何か処分をと。後藤委員どうぞ。

○後藤委員

 第61条に、第35条第1項に対して罰則が可能だとなっています。罰則を科すのが全て良いとは私も思いません。例えば、罰則を科すという手続に、もし今後行く可能性が、このケースだけではなくて、一般的にあるとすれば、例えば厚生労働省が告発して、当該地検等に告発するというような手続が予定されていると理解してよろしいのでしょうか。

○森光課長

 基本的にはこれまで御報告をさせていただきました案件等については、今、警察等と相談をした上で、今までどういう指導をしてきたかとか、どういう違反なのか、我々はどういう記録を持っているのか、というようなことも含めて情報を提供して相談をして、状況が整えば告発していきたいと思います。

○福井部会長

 これは、まだ完結したわけではないということでよろしいのですね。

○森光課長

 はい、そうです。

○福井部会長

 また御報告を頂くということですね。掛江委員どうぞ。

○掛江委員

 先ほど、再発防止に関して、例えばシステマティックにこういうことが起こらないようにという御意見があったと思います。結局、そのときに審査委員会というようなことが出てきたと思いますが、やはり、これは各クリニックで提供計画を作成している人たちが、まず提供計画どおりにきちんと実施されているかの確認責任があるのではないか。それを審査委員会だとか、厚生労働省だとか、別の所がチェックをするという話ではないと思うのです。もちろんチェックできればいいですけれども、数から考えてそれは不可能ではないでしょうか。それなので、そういう観点からも、この各クリニックのプロトコル違反の責任は非常に大きいと思うのが1つです。

 各提供施設の情報はプレスリリースするほどのことではないのではないかという判断をされたという説明だったのですけれども、確か一番最初にプレスリリースされた違反案件というのは、届出をしている製造施設の図面と何か違う構造で製造して、提供していたというので営業停止か何かの指導をされたのが最初のプレスリリースだったような記憶があります。そういう意味では、プロトコル違反はプレスリリースに載ってもおかしくない、重大な問題かと理解しました。その辺は課の中で整理をされていて、バランスを取っておられるのだとは思うのですけれども、今回はすごくバランスとして、明らかに騙した人たちがいるというところで、この騙された人たち、すなわち提供機関が若干被害者的な位置付けになっているような印象があります。でも、この人たちは被害者ではなくて、患者さんにとって被害があったとすれば正に加害者であるというところを、もう少し重く評価していただきたいような気がしています。

○森光課長

 プレスリリースの基準というのは、広く公衆衛生上の危害が広がる可能性がある等々のことで私どもは出しております。ですので、最初のケースも、無許可の加工施設でやっていたものを提供していたということです。それに加えて、そこは正直言えば、不衛生な状態で細胞加工を行っていたということで、通常の細胞加工施設に求められる衛生の基準、清潔の基準を満たしていないというのが一見して見えたというところで、これは緊急に停止しないとまずいということで、プレスリリースしましたし、影響が大きいだろうということで出したものです。

○福井部会長

 よろしいでしょうか。それでは、本件について、本部会としては報告を受けたということにいたします。

 

(非公開部分の議事概要については以下のとおり)
議事:第一種再生医療等提供計画の再生医療等提供基準への適合性確認
議事概要:
 以下の第一種再生医療等提供計画の変更について、再生医療等提供基準に適合していることを確認した。

【再生医療等提供機関】
東京医科歯科大学医学部附属病院


【提供しようとする再生医療等の名称】
HLA
半合致以上の血縁ドナーから作成した複数ウイルスに対する抗原特異的T細胞を用いた造血細胞移植後の治療抵抗性ウイルス感染症に対する細胞療法


(了)

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