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2017年7月25日 平成29年度第1回血液事業部会安全技術調査会議事録

医薬・生活衛生局血液対策課

○日時

平成29年7月25日(火)
18:00~20:00


○場所

新橋会議室8階 8E会議室
(港区新橋2-12-15 田中田村町ビル)


○出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略、○委員長

内田 恵理子 岡田 義昭 熊川 みどり 白阪 琢磨
長村 登紀子 ○濱口 功 溝上 雅史 山口 照英
横田 恭子 脇田 隆字

欠席委員:(1名)敬称略

大戸 斉

参考人:

大隈 和 松岡 佐保子

日本赤十字社:

佐竹 正博 豊田 九朗 石丸 健 平 力造

事務局:

一瀬 篤(血液対策課長) 山本 匠(血液対策課長補佐)

○議題

・ウイルス核酸増幅試験における国内標準品の力価の再評価について
・感染症安全対策体制整備事業について
・NATコントロールサーベイ事業について
・輸血用血液等の遡及調査に関するガイドラインの見直しについて
・E型肝炎に対する安全対策について
・日本赤十字社におけるヘモビジランスについて
・その他

○議事

○山本()血液対策課長補佐 平成29年度第1回血液事業部会安全技術調査会を開催いたします。なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 初めに委員の交代がありましたので、御報告いたします。新津委員が退任され、新たに福岡大学病院輸血部部長の熊川みどり委員に御就任いただいております。

 また、事務局にも異動がありましたので、御紹介させていただきます。私が、4月より血液対策課課長補佐に着任しました山本と申します。よろしくお願いいたします。新たに委員になられた先生方、引き続き委員として任命された先生方におかれましては、今後ともよろしくお願いいたします。

 本日の出席状況です。安全技術調査会委員11名中、10名の出席を頂いております。本日は、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博血液事業経営会議委員、豊田九朗参事監、石丸健検査管理課長、平力造安全管理課長の4名に参加いただいています。よろしくお願いいたします。また、参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部の大隈和先生、松岡佐保子先生に参加いただいております。

 続いて、事務局から報告があります。当日配布資料を御覧ください。6月29日付けプレスリリースのものです。調査会を開始する前に事務局からの報告です。薬事分科会の委員、臨時委員、専門委員については、薬事分科会規程第11条に基づき、在任中、薬事に関する企業の役員、職員、又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合は辞任しなければならないとされています。

 今般、薬事分科会の部会に所属していた委員について、医療機器製造販売業の許可を取得している企業の役員に就任していたことが判明したため、当該委員には辞任していただいた上、6月29日に本事案を公表し、同日に開催した薬事分科会に報告させていただきました。部会、調査会を含む、全ての薬事分科会の委員については、委員就任時に事務局担当者より、薬事に関する企業の役員等に就任していないことなどを確認させていただいておりますが、今般本事案を踏まえて、改めて薬事分科会規程への適合状況を委員の皆様に確認させていただいた結果、本調査会中に規程に抵触する委員はいらっしゃらなかったことを報告いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中御協力いただき、感謝申し上げます。

 今後の対応としては、同様の事案の再発を防止するため、薬事分科会の委員等就任時及び会議開催時に、薬事分科会規程や薬事分科会審議参加規程の適合状況を書面により御署名いただく形で、御申告いただく方向で検討します。具体的な方法等については、事務局にて検討の上、改めて御連絡いたしますので、御協力をお願いいたします。

 また、例えば薬事に関する企業とはどのような企業が該当するのか、寄付金、契約金等の申告に関する詳細なルールなど、規程が分かりにくい点もあるかと思われますので、そういった点も含めて重要事項については、事務局より改めて分かりやすく御説明、注意喚起を行い、薬事分科会の適切な運営に引き続き努めていきます。

 委員の皆様には御負担をお掛けすることになりますが、この機会に改めて規程を御認識いただきますとともに、規程の遵守に御協力いただきますよう、何卒よろしくお願いいたします。事務局からの説明は以上です。

 カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。以降の進行を濱口座長にお願いいたします。

○濱口座長 お忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございます。事務局から、審議参加に関する遵守事項について御報告をお願いいたします。

○山本()血液対策課長補佐 本日出席いただいた委員の過去3年度における関連企業からの寄付金、契約金等の受取状況を報告いたします。本日の議題に関し、薬事分科会審議参加規程に基づき、議題1について利益相反の確認を行ったところ、岡田委員から、関連企業より一定額の寄付金、契約金等の受領を申告いただいておりますので、岡田委員におかれましては議題1に関し意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。その他の議題は報告事項ですので、確認はありません。

○濱口座長 今の御説明について、御質問はございますか。特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて、御了解いただいたものとさせていただきます。

 それでは、初めに事務局より資料の確認をお願いいたします。

○山本()血液対策課長補佐 お手元の資料を御覧ください。資料は1から6と参考資料があります。資料1は3ページあります。資料2「感染症安全対策体制整備事業(平成28年度)実績報告」は5ページあります。資料3のNATコントロールサーベイに関しては、3ページと表1から表7があります。資料4に関しては12ページあります。資料5に関しては3ページと別添として表が1つあります。資料6は11ページあります。参考資料として、「「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の一部改正について」、別添として「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」があります。不足がありましたら、事務局までお知らせください。

○濱口座長 議題1「ウイルス核酸増幅試験における国内標準品の力価の再評価について」に入ります。松岡参考人より、資料1の説明をお願いいたします。

○松岡参考人 資料1「HCV-RNA国内標準品の力価の再評価」を御覧ください。1999年に制定された現行のHCV-RNA国内標準品(JCV-1b No.122)の力価を、現在使用されている定量法を用いて、多施設の共同研究により再評価しました。共同測定の結果、下記のとおり、国内標準品の力価は26IU/mL95%信頼区間211,000313,000IU/mLと算出されました。ついては下記のとおり、HCV-RNA国内標準品の力価を再評価した力価に改正したく、審議方お願いいたします。

 まず、背景と目的です。血液製剤のウイルスに対する安全性は、1990年代後半より、原料血漿と輸血用血液のウイルスの核酸増幅検査(NAT)が導入されるようになり、飛躍的に向上しました。各施設で様々な測定法で実施されているNATの精度を評価し標準化する目的で、1997年以降にWHOにおいて、世界共通のNAT用ウイルス核酸国際標準品が製造されるようになりました。

 厚生労働省血漿分画製剤の安全性確保対策の検討小委員会(NAT小委員会)では、1999年より国内で使用される全ての輸血用血液製剤及び血漿分画製剤に関わるドナースクリーニング検査等で実施しているNATの精度管理等に使用するための国内標準品(2次標準品)を順次作製し、国立感染症研究所より交付しています。

 HCV、HBV及びHIVの第1次国内標準品は制定されてから10年以上が経過しました。これらの国内標準品には、当時のWHO国際共同研究の方法に準じて、エンドポイント法によって国際標準品に対する相対力価は定められました。その後、定量法の性能が飛躍的に向上したことから、2016年度に多施設共同研究にて定量法を用い、HCV-RNA第1次国内標準品の力価を現行の第5次HCV-RNA国内標準品に基づき再評価しました。参加施設は、資料に示した8施設です。

 測定方法は国立感染症研究所より、参加施設に国内標準品、WHO国際標準品及び希釈用陰性血漿を送付しました。参加施設は直線性の成立する用量範囲で、3段階の希釈系列を作成し、日常実施している定量法で日を変えて3回測定しました。その結果を国立感染症研究所が解析しました。

 結果です。国内の8施設が参加し、9組の測定結果が報告されました。4施設がコバスTaqMan HCV「オート」v2.0を、3施設がアキュジーンm-HCVを、2施設がIn-houseTaqMan PCR法を用いて測定しました。国内標準品の力価を国際標準品に対する相対力価として算出しました。その結果が、図1のようなグラフになります。国際標準品に対するす相対力価として算出した全施設の国内標準品の力価の幾何平均から、国内標準品の力価は26IU/mLと評価されました。制定時にエンドポイント法による測定結果に基づいて決定した力価の10IU/mL2.6倍となりました。

 結論です。HCV-RNA第1次NAT国内標準品を最新のWHO国際標準品に対する相対力価として、多施設共同研究にて現在使用されている定量法を用いて測定した結果、信頼性が高い力価を得ることができました。今後、NATの精度管理や試験法の改良に国内標準品を使用する場合には、再評価した力価を使用することが望ましいと考えます。HCV-RNA国内標準品の力価を、本共同研究において再評価した26IU/mLに改正することを提案いたします。

○濱口座長 ありがとうございました。委員の先生方から御意見がありましたらお願いいたします。

1999年にエンドポイント法で共同測定によって与えられた力価と、18年ほどたって、新しい現在よく使われている検査法で測定した値が約2.6倍違っているということですが、これは測定法の違いによってこういう差が出たと考えていいということでよろしいのですか。

○松岡参考人 はい。

○濱口座長 それでは、HCVの国内標準品については、報告にあった値で再値付けすることを御了解いただいたとします。よろしいでしょうか。

 では、議題2「感染症安全対策体制整備事業について」です。大隈参考人から説明をお願いいたします。

○大隈参考人 資料2を御覧ください。本事業の目的ですが、輸血用血液製剤を含む血液製剤はヒトの血液を原料とするため、ウイルス等の病原体混入のリスクが存在します。社会問題になった輸血後肝炎をはじめ、既存の感染症については、国内献血血液のスクリーニング検査の精度向上等により、安全性は高まってきました。しかし、ジカウイルス、デングウイルス、チクングニアウイルス、ウエストナイルウイルス等の世界の一部の地域に限局的に発生する新たな感染症の病原体についても、今後日本国内に移入されることが想定され、献血血液への混入のリスクはますます高まっており、血液の安全性の観点からも新たな対策が必要とされています。

 これに対応して、平成25年4月より、新たな病原体が移入した場合に備えて、実効性の高い対策として、厚生労働省血液対策課、日本赤十字社との連携の下、本事業により感染症リスク管理体制の構築を行ってきました。平成28年度ですが、本事業において以下を実施し、新たなリスクの早期把握と評価を行いましたので、御報告させていただきます。

 2の実施内容を御覧ください。3つあります。1番目として、最近海外で大きな流行が見られているジカウイルスに対する、高感度核酸検査法の開発を行いました。2番目に、献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルス及びチクングニアウイルスに対する核酸検査を実施しました。これについては、これまで本事業において、これらのウイルスの核酸検出系を構築してきたため、このような検査を実施しました。最後の3番目として、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換を行いました。

 まず、1番目のジカウイルスに対する高感度核酸検査法の開発です。血液製剤の安全性を担保する上で、病原体の血液混入を防止することは極めて重要な課題です。しかしながら、国内に輸入されるリスクのある病原体に対する高感度検出法は未整備の部分があり、将来の国内感染発生時に万全に対応できる体制には、現在のところ至っておりません。本事業では、これまでに優れた感度で検出できることが十分に確認できていないそれらの病原体について、高感度の核酸検査法を整備し、将来的な血液への混入に備えることを目的としております。

 平成28年度については、最近海外で大きな流行が見られ、血液への混入が懸念されているジカ熱の原因病原体であるジカウイルスを対象としました。平成26年度にデングウイルス、平成27年度にチクングニアウイルスの高感度核酸検査用のプライマーを同定した方法と同じ方法で、大規模プライマースクリーニングを行い、ジカウイルスに対する高感度核酸検査法を開発いたしました。具体的には以下を実施しました。まとめは図1に示しています。

 まず、プライマーの設計です。ジカウイルスはアジア株とアフリカ株に大別されます。まず、ジカウイルスのアジア株のゲノム全長に対して特異的プライマーを合計510セット設計し、設計したそれぞれのプライマー配列について相同性を確認し、多くの登録株で相同性が高く、良好なPCR増幅が期待できる192セットを選定しました。2番目としてはスクリーニングで、国内の海外渡航者から分離されたジカウイルス2株を用い、ゲノムRNAを抽出しました。これをテンプレートとし、相同性の高いプライマー192セットについて、SYBR Green法を用いたリアルタイムRT-PCRを実施しました。その結果、43セットのプライマーについて、アジア株、アフリカ株ともに優れたPCR増幅が確認されました。

 次に、プローブのスクリーニングです。同定した43セットについてプローブを設計し、相同性を確認しました。その結果32セットを選定し、アジア・アフリカ両方の株で塩基配列の異なる箇所については縮重塩基を用いました。続いて、プライマー・プローブセットの性能を評価するため、今度はTaqMan法を用いたリアルタイムRT-PCRを実施したところ、両方の株において高い増幅効率を示す3セットを最終的に同定しました。これについては図2に示しています。

 最後に、特異性・感度の検討です。同定した3セットのプライマー・プローブについて特異性の検討のために、近縁のウイルスであるデングウイルスのRNA、ウエストナイルウイルスのRNA、黄熱ウイルスのRNA、日本脳炎ウイルスのRNA、さらにヒトのDNAをテンプレートとして交差反応性を確認しました。その結果、ジカウイルス以外の核酸は検出されず、高い特異性を示しました。また、ジカウイルスの第1次国際標準品が整備されたので、それを用いて検出感度を確認したところ、10IU/mLと高い感度を示しました。

 次に()として、献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルス及びチクングニアウイルスに対する核酸検査の実施についてです。血液検体は、平成28年6月以降に東京都内で得られた献血血液のうち、ALT高値により検査落ちした血漿の20人プール100検体、合計2,000人分を、申請により日本赤十字社から譲渡いただきました。これらの臨床検体について、平成26年度に本事業で開発したデングウイルス1~4型のマルチプレックス核酸検査法と、平成27年度に本事業で開発したチクングニアウイルス核酸検査法を用い、検査を行いました。確認のため、日本赤十字社でも同検体を同方法により検査していただいております。その結果、調べた全ての検体において、国立感染症研究所、日本赤十字社ともに、デングウイルス1~4型及びチクングニアウイルスの核酸は検出されませんでした。また、陽性コントロール検体は全て陽性、陰性コントロール検体は全て陰性を示したことから、検出系としては問題なく機能していたことも確認しました。これについては表1にまとめております。

 事業の3番目で、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換についてです。WHOの血液安全に関するカンファレンスに定期的に参加するとともに、各国の血液行政に携わるネットワーク会議(BRN)で活動することにより、感染症リスクの早期の察知及び評価に基づく安全対策の検討を行いました。また、国立感染症研究所の病原体関連部署とも連携し、情報の収集や情報交換を行いました。

 3番の考察です。血液製剤の安全性確保の観点から、蚊媒介性のウイルスに対する血液スクリーニングの重要性は年々増加しています。平成28年においては、本邦への移入が危惧されるジカウイルスについて、核酸検査法の確立を進め、有用な候補検査法を開発したと考えております。本事業で開発したこれらの検査法は、高感度であり、特異性も高く、特にこれまで困難であった血液中の微量な当該ウイルスの検出に有用であり、献血血液等のスクリーニングに適していると考えられます。日本赤十字社の協力の下、実際のドナー検体を用いてスクリーニング検査を実施できたことは意義があると考えています。本事業で確立された高感度核酸検出法は、今後の当該ウイルスの血液への混入をモニターする有力なツールになると期待されます。ほかの新興・再興感染症等、検査法の十分な整備が進んでいない分野においても、早急に対応できるような高感度核酸検査法を提供することが今後の課題と考えています。

 最後の4番目として、平成29年度の実施計画です。これも3つありまして、1番目は、デングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルスの高感度核酸検査法を確立したので、これらの全てのウイルスに対するマルチプレックスの高感度核酸検査法を開発したいと考えています。2番目は、検査落ちとなった献血血液検体を用いて、平成29年度はデングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルスに対する核酸検査を実施したいと考えています。3番目は、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換を今年度も実施していきたいと考えています。

○濱口座長 委員の先生方から御意見等がありましたらお願いいたします。

○白阪委員 感度というか、何IU/mL以上は測れるとかいうような御検討はされたのでしょうか。

○大隈参考人 平成28年度に開発したジカウイルスの高感度核酸検査法については、国際標準品が準備されていますので、それを用いて10IU/mL以上は検出できることを確認しています。

○山口委員 高感度のジカウイルスの開発をしていただいてありがとうございます。確認ですが、マルチプレックスをやらないといけないのかなと正直思っていまして、マルチプレックスの場合は技術的ハードルが高いのと、それぞれのウイルスを測ることでも十分ではないかと。要するに、これは3つとも同時に流行するということでマルチプレックスとお考えなのかなという気がしたのですが、その点が1点です。

 もう1つは、国際標準品が万が一の場合にコントロールに使えないので、できればジカウイルスの国内標準品のようなものを作っていただけるといいのかなと思いました。

○大隈参考人 まず、マルチプレックスに関しては、もちろん単独でそれぞれ検査することも可能だと考えています。ただ、実務的にというか、実際に測定するときに、それぞれ測定するよりは、もし一本のチューブで検査が1度に可能になって、そこでスクリーニングを実施すれば更に効率が上がるのではないかと考え、マルチプレックス化を目指しています。

今のところデングウイルスについては、1型から4型について、マルチプレックス化はできていますので、このような、同じような方法を使って、今まで開発しているウイルス全てのマルチプレックス化もできるのではないかと期待しているところです。

 それから、国際標準品に関しては、先生のおっしゃるとおり、そういった方向を目指す必要はあると思いますが、とりあえず、ジカウイルスの流行により、国際的に国際標準品を作ろうという動きがあり、非常に急ピッチでこの国際標準品は制定されたと思いますので、まずこれを用いて評価したというところです。ですので、そういった検討はこれから必要かなと考えています。

○岡田委員 新興感染症の場合、表面化するものはいいのですが、知らないうちに日本中に広がっている、典型的な例がE型肝炎だと思います。そういう経験が過去にあって、あとはXMRVという、忘れているかもしれませんが、慢性疲労症候群の原因ウイルスではないかと言われたウイルスがあって、それは実は誤りだったということがありました。そのことが分かるまで、何年間か、世界中の輸血関係者が一生懸命研究したのです。そういうときに、日本国内の血漿を事前にストックとして持っておいて、何らかのウイルスが問題になったときに、日本においてどの程度のリスクがあるかを早急に評価する、そのために、血漿をストックするというのが有力な武器ではないかと思うのです。

 E型肝炎の場合、日本では最初に北海道でスクリーニングなどをして、意外に多いということが分かったのですが、それを見てヨーロッパの人たちは、輸血後に肝機能異常を起こした血漿がストックしてあって、それを調べたらかなりの率でE型肝炎が見付かったということが分かったのです。血漿分画製剤の血漿も彼らは持っていたのです。それを持っていて、そのプールを調べたら、2割ぐらいのプールからE型肝炎が検出されたということで、これは結構ヨーロッパ中に流行しているのではないかということを考えて、各国でいろいろな対策をやり出したのです。

 そういう経過からすると、血漿をプールするというのが。一番いい検体として、血漿分画メーカーが分画するときに、プール血漿を作りますので、その血漿50ccとか10ccを感染研に提出してもらうというようなシステムができれば、毎年検体は多くなりますが、それをストックしておけば何か問題が起こったときに、直ちに日本のリスクが評価できると思いますので、そういうストックということも考えてほしいと思うのです。そのときに、全ての原料血漿をプールするというのは大変なので、各メーカーから例えば年間20検体とか30検体とかを提出してもらうというのでもいいと思うのです。そういうことを検討していただきたいと思います。

○大隈参考人 非常に重要な御意見だと思います。ただ、今後の課題かなと考えますし、本事業については、まずはそういった血液への混入のリスクに対する高感度の核酸検査法の整備、確立といったところの技術面の充実を図りたいと考えていますので、事業については、まずはそちらで実施していきたいと考えています。

○濱口座長 輸血用血液製剤のための検査ツールとして、開発しているということですね。将来的には、そういった分画メーカーを対象にしたというようなことも考えていくつもりであるということで、よろしいでしょうか。貴重な意見をありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 それでは、ただいまの感染研の事業については、皆さん御了承いただいたと考えます。事務局においては、ただいまの意見も参考に、今年度の事業の実施をお願いいたします。

 議題3に入ります。「NATコントロールサーベイ事業について」です。松岡参考人から御説明をお願いします。

○松岡参考人 よろしくお願いします。資料3を御覧ください。NATコントロールサーベイ事業の2016年度の実績報告をいたします。事業の目的ですけれども、最近のNAT事業の進歩は目覚ましく、我が国においても20132014年に、血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液のNATスクリーニングの試験法が、それぞれ新しいマルチプレックス法に更新され、それを踏まえて2014年に、「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的としたNATの実施に関するガイドライン」の改正と、輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴うNAT感度の改正が行われました。

2016年度は新しいマルチプレックス法におけるHBV-NATの特異性の実情把握を目的としまして、WHO HBV遺伝子型パネル(A~G型)を用いた、第8回NATコントロールサーベイを実施しました。原料血漿プールのNAT並びに輸血用血液のNATスクリーニング試験と、HBV確認試験を対象といたしました。

 実施内容ですが、参加施設は表1になります。分画製剤製造所が国内3施設、海外2施設、オブザーバーとして試薬メーカー、輸血用血液製剤NAT実施施設として、検査施設8施設、オブザーバーとして試薬メーカー1施設、研究施設1施設となります。

 パネルの調製については表2にまとめております。材料に第1次HBV遺伝子型WHO国際参照パネル(遺伝子型A-G型)、第3次HBV-DNAの国際標準品及び第1次HBV-DNAの国内標準品を使用し、希釈には陰性血漿を用いました。NATガイドラインのHBV-NATの目標感度の1倍濃度に当たる100IU/mLで作製したHBVgt-1~15HBVgt-1920、3倍濃度、300IU/mLで作製したHBVgt-2135、陰性血漿、HBVgt-1636及び参考として目標感度の0.3倍濃度、30IU/mLHBVgt-1718の検体からなるパネルを調製し、ブラインド化して参加者に送付いたしました。

 測定は分画製剤製造所等は、コバスのTaqScreen MPXv2.0を用いて測定いたしました。この試験法は3ウイルスを検出すると同時に、種類を同定いたします。参加施設はHBVgt-1~20を日を変えて2回、2136を1回測定いたしました。輸血用血液製剤NAT実施施設は、Procleix Ultrio Elite ABD Assayを用いて測定いたしました。この試験法は個別検体のスクリーニング試験とスクリーニング陽性検体のウイルスを識別するための3種類の識別試験からなっています。参加施設はスクリーニング試験とHBV識別試験の両方の試験法を用いて、各々HBVgt-1~20を日を変えて2回と、2136を1回測定いたしました。

 結果ですけれども、まず表3が血漿分画製剤の原料血漿プールのNATの結果です。我が国で使用する血漿分画製剤製造所等の原料血漿プールのNATを実施している全5施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、HBVに関する精度管理が適切に実施されていました。また全施設において、Genotype A、B、C、D、E、F、GのHBVを見逃しなく検出することを確認いたしました。試験の不成立の測定はなく、偽陽性もありませんでした。

 輸血用血液製剤のNATが表4と5になります。表4がNAT(スクリーニング試験)の結果で、表5が識別試験の結果です。日本赤十字社ブロック血液センター全8施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、スクリーニング試験法とHBV確認試験法の両方において、HBVに関する精度管理が適切に実施されていました。全施設において、Genotype A、B、C、D、E、F及びGのHBVを見逃しなく検出できることを確認いたしました。偽陽性はありませんでした。ただ、機器のエラーによる測定不成立が4件ありました。試薬吐出異常検知が3件と、装置と制御用PCの通信エラーが1件です。通信エラー1件については多数検体の測定が不成立であったため、パネルを再交付して再測定を実施していただき、全ての検体を正しく測定できました。陰性対照は全て陰性と判定されました。

 考察ですが、輸血用血液のNATスクリーニングを実施する異なる施設において、機器のエラーによる測定不成立が4件ありました。ここで日本赤十字社に、日常の測定における機器エラーによる測定不成立の発生頻度を確認いたしましたところ、全国で1日当たり10件ほど発生しているという状況で、今回、発生した試薬吐出時の異常検知を含め、GMP機能に由来する測定不能が9割を占めるとの回答でした。機器由来の対応策についてはPANTHER導入以降、全機台においてエラーのモニタリングを継続しており、さらに機器メーカーと定期連絡会を開催して、エラーの情報共有を行い、部品やソフトウェアの変更等、改善に向けて取り組んでおり、平成28年度の機器エラー発生件数は、平成27年度と比較して約20%減少しているとのことでした。現状の改善に向けて、取組を今後も継続していくことを期待します。

 今回のNATサーベイにて分画製剤製造所、日本赤十字社ブロック血液センターともに、マルチプレックス法に更新後も全施設においてHBVに関する精度管理が適切に実施され、GenotypeA~GまでのHBVを見逃しなく検出できることを確認できました。今後、HIV及びHCVにおいても遺伝子型のパネルを準備して、特異性の実情把握を目的としたNATサーベイを実施していく方針です。

 本年度2017年度の実施計画ですが、新しいマルチプレックス法におけるHIV-NATの特異性の実情把握を目的として、WHOのHIVのサブタイプパネルを用いて、第9回のNATコントロールサーベイを、輸血用血液のNATスクリーニング試験と、HIVの確認試験を対象として実施したいと思います。パネルの内容としましては、表6に示したものを案として考えております。

 また翌年度に、分画製造会社の原料血漿プールのNATを対象としたサーベイを表7に示すような内容で実施することを、2017年度の実施の結果等も含めて、またこの場で検討したいと思っております。以上です。

○濱口座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表に関しまして、委員の先生方から御意見をお願いいたします。

○山口委員 コントロールサーベイの位置付けに関する質問が1点と、次年度以降のHIVのコントロールサーベイについて、私のほうからこうしたほうがいいのではないかという提案を1つとさせていただきたいと思います。

 1つは、今回、HBVのコントロールサーベイをやって、非常にいい結果であったこと自体は非常に喜ばしいなと思っているのです。ただ、コントロールサーベイは合格することが目的ではなくて、実際にどのような状況であるかを把握することが、多分、主目的であって、実際にコントロールサーベイに配る100IU300IUのものは、配っていただいていると思うのですが、そういうときに実際に100IUあるかというのは、かなりばらつきもあると思うのです。実際には多分、どのぐらいの感度状況になっているかということのほうの把握が、一番重要な目的かなという気がいたします。その観点から次年度の、HIVに関してなのですが、確かに200IUというのはHIVの感度が前は悪かったので、200IUにしたのですけれども、今の感度からすれば、多分100IUはいけると思います。

 もう1つは4課長通知で、回収をしなくてもいいというケースの場合に、100IUの感度があるということを求めていますので、それで100IUは今どうなっているかということは、調査していただくほうが、多分いいだろうと思います。それは100IUが合格するかしないかではなくて、実際に100IUのところを、皆さんが大体、検出できているのか、あるいは検出はぎりぎりなのかというところを把握することであって、実際に100IUは担保できているかは、各社が自分たちで希釈系列を作って、100IU95%の確率で検出できているということを評価できればいいのだろうと思います。

○松岡参考人 HIVのパネルの濃度に関しましては、私どもも検討いたしましたが、平成26年度の個別NAT導入に伴いまして、輸血用血液のNATの95%検出限界値が200IU/mLと定められて、その後のマルチプレックス導入後では200IU/mlの3倍濃度でしか、サーベイをまだしていませんので、200IU/mLという濃度でのNATコントロールサーベイはまだ実施しておりません。100IUでも可能ではないかということは念頭に置きながらも、慎重に進めたいということも考えて、今年度は200IU/mLのパネルで実施したいと考えております。

 来年の血漿分画製剤のパネルは、またこの場で、本年度の結果の報告を踏まえて100IU/mlの濃度で実施するかということも含めて、御意見頂きたいと思うのですけれども、その際に、同じ濃度のパネルを日本赤十字社に測定依頼して、100IUについての検討をしていただくということも、計画の中に考えておりますので、そういう形で進められればと思っております。

○山口委員 しつこいようですが、このコントロールサーベイの中には、血漿分画メーカーも入るということになりますよね。

○松岡参考人 本年度は200IUで。

○山口委員 日赤だけということですか。

○松岡参考人 本年度は日赤を対象に200IU/mLのパネルでサーベイを実施して、来年度、血漿分画のほうは検出限界値が100IU/mlですので、100IU/mlの濃度で作製したパネルを用いて実施したいと今は考えてます。そのときに日本赤十字社のほうに同じパネルを測定していただくということも考えていますが、来年度はまたこの場で御意見を頂ければと思います。

○濱口座長 よろしいでしょうか。

○岡田委員 次の議題の遡及調査の期間に、恐らくこの感度というのはリンクしてくるので、サーベイの値をどの程度厳しくするかによって、この改正案に影響があるのではないかと思うので、ちょっとその辺のことを。日本赤十字社のほうにこのウインドウ期の推定とかに使った数値を、これから恐らく発表していただくと思うので、それを見て、場合によっては、このパネルのほうの値もある程度振って評価するのもいいかなと思います。

○濱口座長 そうしたら、また遡及調査のところのデータをちょっと確認しながら、検討したいと考えます。よろしいでしょうか。

○溝上委員 WHOの標準品というのは、どの様に作られているのですか。患者血清でシークエンスしたものをプールしただけという形になっているのでしょうか。これはワールドワイドで統一されているのですか。

○濱口座長 我々自身が国際標準品作製に関わっていることはありませんけれども、患者のサンプルを集めてきて、それをある程度のボリュームを取ってきた後に、それぞれ微量ずつに分けた形で、国際的な共同試験として、共同測定を行って、値付けをするということになります。また、それを仕切る所としては、現在のところ、イギリス、アメリカ、ドイツにそれぞれ、そういった標準品を作る施設がありますので、そこでは詳しくGenotypeだとか、中身についての詳しい解析をし、それから標準品としての管理状況というのを、つぶさにモニターしております。

○溝上委員 でも、患者血清をプールした場合だと、同じGenotypeでも配列は8%ぐらいは違っていますので、それでいいのかなと思ったもので、お聞きした次第です。

○濱口座長 一応、国際標準品のポリシーとしては、基本的には標準品は1つで、プールするのではなく、患者さんの血漿をそのまま用いて作成します。すなわち、その当時、その時代によく使われるであろうと思われるものについてのGenotypeが選ばれます。場合によっては、いろいろなGenotypeが欲しいという場合には、今度はパネルとして、標準品ではなくて、最初はパネルとして別個に作るというような流れになっております。

○岡田委員 HIVに関しては、ハイタイターのものがなかなか手に入らないので、これは末梢血か何かで、1回エクスパンジョンしたものを血漿で希釈して、国際標準品は作っていると思うのですね。それで、Genotypeに関しては、感染者由来のもので作るというのも。

○溝上委員 プールするとなると、いろいろなものが入ってくるからと思ったもので、お聞きした次第です。

○濱口座長 ほか、いかがでしょうか。

○白阪委員 前にもお聞きしたかもしれませんが、これはRocheTaqManでいうと、何コピーとかいう表現をすると、どれぐらいなのでしょうか。100IU/mLというのは、コピーでは出せない、Rocheのほうのゴールデンスタンダードを作って、測り直したりはされていない。これは単なる参考で聞いているだけです。なさってなかったら、なさっていなくていいです。

○松岡参考人 いや、値のほうは出していると思います。何コピーですというのは、ちょっと即答できないのですけれども。

○白阪委員 分かりました。

○岡田委員 これはある程度、換算式みたいなものはあります。

○白阪委員 ですよね。ざっとどれぐらいかなというのは。

○岡田委員 HIVに関しては、コピーにかなり近いと思います。

○白阪委員 コピーというのは、大体100コピーぐらい。

○岡田委員 それに近いと思います。それがHCVとかHBVだと、1国際単位が、2ぐらいのコピー数になっております。そういうことなので、HIVの基準そのものが倍になっているというのは、そういう理由もあるのです。

○白阪委員 分かりました。

○濱口座長 よろしいでしょうか。それでは、ただいまのNATコントロールサーベイについては、皆さん、御了承いただいたということで、事務局におかれましては、ただいまの意見を踏まえて、今年度も引き続き、NATコントロールサーベイの実施をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、議題4に移りたいと思います。「「輸血用血液製剤等の遡及調査に関するガイドライン」の見直しについて」です。日本赤十字社から御説明をお願いいたします。

○日本赤十字社平安全管理課長 私のほうから御説明させていただきます。まずは輸血用血液製剤等の遡及調査につきましては、供血者の検査結果から、過去の供血血液に病原体の混入が疑われた場合に実施するものです。そういう観点で平成17年に厚労省の局長通知で「血液製剤の遡及調査について」ということにより、「血液製剤等の遡及調査ガイドライン」及び「輸血用血液製剤等の遡及調査に関するガイドライン」、こちらは日赤のガイドラインといわれているものです。今回の改正ということで、御提案させていただいているものに基づき実施することとされております。

 これらのガイドラインは、献血血液のスクリーニング検査法の更新等に対応するために、これまで3回改正を行っています。1つが、平成20年にCLEIA法に変わったことによって改正したこと。それからHBc抗体基準の変更に伴って改正を行ったこと。それとスクリーニングNAT、個別NATを導入したことによって改正したこと。この3回の実施をしてきておりますが、対象病原体の検査感度が上がるなど、そのようにしておりますが、対象病原体の遡及調査期間については、1996年のSchreiberの論文の個別NATと血清学的検査のウインドウ期間に基づき設定した値を使用してまいりました。

 しかし、今、個別NATを導入し、さらにCLEIA法を実施している現行の検査システムに変更された中で、同等の精度でWPを算出しております、2009年のKleinman論文のWPに基づいて、再設定をさせていただきたいと考えております。また、現在まで行ってきた遡及調査の結果から、医療機関への情報提供の対象についても見直すこととさせていただきたいと考えております。

 まず改正項目ですが、先ほどお話したとおり、遡及期間の設定方法等の改正、それと医療機関への情報提供の対象の見直しの2点です。まず、遡及期間の設定方法等の改正です。こちらの改正理由についてですが、遡及期間が検査法の精度から算出されるWPに基づき設定されております。現在、日赤で採用している個別NATと血清学的検査は、現行の遡及期間の設定の根拠としたSchreiber論文でWPの算出に用いられた検査法より、大幅に精度が向上しております。WPも短縮されております。そのため、現在の検査法によるWPに基づき、遡及期間を再設定する必要があると考えております。なお、今、私どもが行っている検査法の精度によるWPを反映した論文が発表されているということです。

 そこで「輸血用血液製剤等の遡及調査に関するガイドライン」制定時、これは2003年でありますが、この遡及調査期間と遡及調査対象の考え方について御説明させていただきます。2枚めくっていただいて、パワーポイントの資料を御確認ください。まず、こちらの制定時の遡及調査期間です。病原体は、その種類によって、生体内での増殖スピード、ウインドウ期間、検査法によって陽性になる期間がそれぞれ異なります。したがって病原体の種類及び検査法による陽性時期等に基づいて、遡及調査期間を設定しております。設定方法といたしましては、Schreiberの報告したWPというものは、平均値を示しておりますために、個人差による影響及びウイルスの増殖等を考慮して、50プールNAT陰性時の遡及期間については、各ウイルスの病原体のWPの2倍の日数として実施してきております。また、50プールNAT陽性時の遡及期間は、血清学的検査のWPの最長期間というものを取らせていただいて、今まで行っておりました。ただし、HIVにつきましては、感染性ウインドウ期間の2倍に、感染時期から感染性ウインドウ期間に至る最大値30日を換算した日数とさせていただいております。そういう意味で、遡及調査期間については、安全性を考慮し、当面の間、一番最初に作った期間で実施してまいりました。

 次のページ、考え方の整理ということで、少し記載をさせていただきました。まず上のページ、NAT陽転化例の遡及期間です。ポイントといたしましては、NAT陽転化、いわゆるNATがプラスで、血清学的検査がマイナスというもの、これの感染時期というものは、上の図を見ていただきますとおり、当然、血清学的検査のウインドウ期間内に存在する、依存していると考えられます。

 そういう観点から、Schreiber論文を参考にして、NAT陽転時の遡及調査期間は、その感染時期を踏まえて、血清学的検査のウインドウ期間の最大値を使用しております。そこでHBsAg検査は当時、RPHA法ということで、若干感度がEIAより劣る検査法を用いておりましたので、そこを社内のデータから、RPHA法の陽転になる期間を算出して、その上限日数としました。そういう意味ではHBVについては、NATが陽転した場合は、125日以内の献血血液を遡及する。HCVは192日以内、HIVは68日以内の献血血液が対象ということでやっています。

 この下が遡及調査の対象の考え方ということで、まとめておりますが、まず先ほどのお話のように、NAT陽転からHBVが125日、HCVが192日、HIVが68日以内の献血血液がない場合、これは遡及調査の対象はないということで終了します。が一方、NATの陽転日からHBVを例に取りますと、125日以内の複数の献血血液がある場合を、下に図示しております。この中でQ1といたしまして、今回、陽転の125日以内に1件、献血血液があった場合、この1件は遡及調査対象ということで、情報提供等をやらせていただきます。

 一方、今回、陽転125日以内に4件の献血血液があった場合は、どのようにやっているかというと、前回の献血がスクリーニングNATが陰性ということになりますので、スクリーニングNATが陰性ということは、感染時期はWPの期間内に存在します。そういう観点から、安全性を考慮して、WPの2倍という値を取って、HBVについては、遡及期間は前回から92日以内にある血液を対象とします。そういう意味では、これを見ていただきますと、この例に関して言うと、前回と前々回とその3回前というものが、遡及調査の対象になると。4回前については、前回からの日にち、WPの2倍を超えているところにあるので、対象とならないということで行ってきたところです。

 次のページ、血清学的検査陽転化の例です。これはもう、血清学的検査陽転化例は、いつ感染したかが不明ということになるかと思います。そういう観点で、今現在、下にHBs抗原検査の陽転を記載しておりますが、今回、陽性の場合、可能な限り、過去に遡らせていただいております。そこから当該スクリーニングNATが陰性だったということを考慮して、先ほどと同じ理屈で、50-NATのWPの2倍である期間の中にあるものを、全て遡及調査をするということで、今まで行ってきました。

 そこで、WPと遡及期間ということで、少しまとめさせていただきますと、このSchreiberの論文を見てみますと、まずNATのWPというものは、1993年とかそういうところの当時のNATの試薬により算出されたWPでした。血清学的検査のWPは、HBs抗原はラジオイムノアッセイ、感度は0.45ng/mL程度で、HCVとHIVは第2世代の試薬で算出されている値を使っていました。日赤ではRPHA法は感度がこれより悪かったものですから、新たに日赤内の日数を作って、125日にしたということです。

 この改正案のKleinmanの論文をを見ますと、NATのWPは、現在使用しているNAT試薬の検査精度と同等、こちらについては同じ試薬で出されておりますので、使えると考えています。血清学的検査は、このときKleinmanの論文はEIAが大体感度0.07-0.12ng/mLで算出しております。今の日赤のCLEIA法が0.1ng/mLですので、ほぼ同感度だろうと。HCVとHIVは第3世代の試薬で算出しておりますので、日赤のCLEIA法と同じということで考えております。

 次のページです。感染症の推定ウインドウ期間及び遡及期間を少しまとめさせていただきました。先ほどお話したように、血清学的検査のWPが、最大値を取ると。HBVについてはRPHA法だったので、その部分の評価をプラスして、遡及期間は125日と、NATのときには考えるようにしております。当然NATが陰性の場合は、安全性を考慮して、WPの2倍ということで、46×2で92日をやるということで計算させていただいています。

 改正したときにどのような形になるかということで、下ですが、Kleinmanなどの論文を見てみますと、まず、Kleinmanらの論文は、血清学的検査のWPが、HBVが36日ということですので、2倍の安全性はマージンを取るということで、遡及期間もHBVは72日です。HCVについては65日ですので、×2の安全域で130日、HIVについては、血清学的に19日ですが、これに×2をして、先ほど言った感染性のWPまでの期間30日を足して68日、上と同じことですですけれども、そのようにやらせていただきたい。

 それと、個別NATが陰性の場合の遡及期間ということで、HBVについては、このKleinmanの論文は21日ですので、×2で42日、HCVは3~5となっておりますが、これは最大値を使わせていただきますので、HCVは10のほうを採用したいと。HIVは5日ということですので、5×2+30日で40日ということで、改正をさせていただきたいと考えております。

 では、そこで戻っていただいて、今御説明をしたとおり、改正案としてKleinmanの報告したWPを使用して、合理的にやらせていただきたいということを記載しております。マル3の病原体の倍加時間についても、HBVが現状2.0日で記載しております。これは以前、私どもがBBIのパネルを使って調査したとき、2.0ということで試算をしておりましたが、その後、Kleinmanなどの論文も2.6日と。その頃、日赤のNAT導入後のデータからも2.6日ということがありますので、この病原体の倍加時間、HBVのところを2.6日と改正させていただきたいと考えております。

 続いて2点目の医療機関への情報提供対象の見直しについてです。現行、医療機関への情報提供については、感染症関連検査の陽転化によって遡及調査の対象となった輸血用血液は“通常の輸血用製剤と比較して感染リスクが高い”とした、15年の3課長通知の考え方に基づき、同製剤をリスク1と。遡及対象として保管検体の個別NATをやったら陽性でしたというものはリスク1です。

 それと、個別NATをやったら陰性だったけれども、先ほどお話した血清学的検査のWP、HBVであれば個別NATが陰性で、かつ陽転から125日以内のものについてはリスク2、そして、その125日より過去のものであれば、リスク3、ウインドウ期の可能性が血液由来、この3分類の感染リスクで評価をしてきております。

 ところが日赤では、更にもう1つ、HBV感染既往、HBc抗体の陽性者、その献血者の感染リスクを評価するために、独自に1分類を追加して、4分類とさせていただいて、実施してきました。ここはなぜかと申しますと、当時、凝集法で検査を行っていまして、スクリーニング検査で凝集法を行った場合、そのthresholdより上であれば、引っ掛けて再検をやるというロジックですが、そのthresholdより下のところは、もう最初から陰性という結果になっているものですから、それがどういう結果になったかが見えないということもあって、感染リスクの評価は困難ということで、4という数値を付けさせていただいて、医療機関には情報提供させていただいておりました。

 そういう観点で今現在、遡及調査の対象となる輸血用血液製剤は年間3,000件もあります。その全てについて、今回、陽転化した病原体の情報、保管検体の検査結果及び感染リスクの評価等の情報を医療機関のほうに提供させていただいております。医療機関ではその情報を受け、原則として私どもの保管検体検査結果の陰性・陽性にかかわらず、当該製剤の受血者の感染症検査等の調査を行っているというのが現状で、かなり先生方にいろいろ御負担をお掛けしているところがあるかと思っています。

 その中で、医療機関への情報提供数と、輸血後感染事例数を、別添2のほうにまとめております。パワーポイントの資料の別添2、10ページです。感染リスクの評価と情報提供対象については、先ほどお話しておりますので、次の11ページ目の下の所を御確認いただければと思います。まず実際に、平成24年8月~平成28年7月まで、4年間に発生した遡及調査の状況です。この中でHBVを見ますと、リスク1とされたもの、要するに保管検体の個別NATは陽性、これは時期は全然勘案しません、そういう製剤が282本ありまして、医療機関のほうに情報提供させていただきました。このうち、輸血後感染が確認されたものが5例ということです。

 リスク2につきましては220件、こちらについては、後ほどヘモビジランスのところでお話しますが、感染ごく初期の個別NAT陰性による感染事例が1例あり、それが1件ということで出ております。

 リスク3については、4,250件の情報提供をして、感染事例が0件、そしていわゆる日赤独自で作らせていただいているものについては、2万4,542件、情報提供をさせていただいて、輸血後感染事例が0件ということです。HCVとHIVについては、リスク1のものについて感染事例がHCVで1件、HIVで1件ありました。このような結果でした。この受血者情報の解析を見ますと、リスク3及びリスク4の事例については、輸血後感染の報告が確認されていないという状況です。

 また戻っていただいて、見直し案ということで記載しております。平成24年から、これは4年間のデータを見てきたところ、リスク1、リスク2により情報提供したものについて、輸血後感染事例を、HBV5件、HCV1件、HIV1件、確認をしております。そういう意味では、これらのリスク1、2というのは、当然のことながら、医療機関へ情報提供して、患者さんの調査には重要性が確認されています。一方、リスク3及びリスク4により情報提供した2万9,059件については、輸血後感染事例が確認されておりません。

 以上のことから、HBV感染既往者のHBc抗体の判定基準の強化をやって、HBV感染既往献血者は除外したこと及び個別スクリーニングNATを導入した現在において、輸血用血液製剤による感染リスクは、リスク1及びリスク2を除き、極めて低いと考えられるため、リスク3及びリスク4についての医療機関への情報提供は終了としたいと考えております。資料の説明は以上です。

○濱口座長 ただいまの御説明に関して、委員の先生方からの御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。

○山口委員 今までウインドウ期の期間を、感度が変わったときに変えてこなかったのは、むしろそれを適切に変えること自体は賛成いたします。ただ、少し気になるのは、リスク分類も各医療機関に提供される資料として使われるのではないかと思うのです。そうした場合に、リスク3を今後解析しないという話になるわけですよね。そうすると、書いてある文章が「ウインドウ期に採血された可能性が否定できない血液」というままというのが、少し気になります。現行の科学的な判断では、ウインドウ期の期間を超えていると判断されるという文言を付け加えるか、何か適切な文章で、*か何かで。3の判断そのものが変わったわけですよね。要するに、否定できない血液という判断ではなくて、むしろその可能性が非常に低いというような、そういう情報提供をするべきかなという気がするのですが。

○濱口座長 今の御意見に関して、いかがですか。「可能性が否定できない」と言っておきながら、そこをなくしてしまうというのは気になります。

○日本赤十字社平安全管理課長 そうですね。確かにおっしゃるとおり、今は検査法自体も個別NATを入れて2年ぐらいが経過した中ですので、もう少し3の所を、どのような事例が起こるかも、中止するのではなくて、進めながら1、2年どういうデータが出るのかを整理をして、この部分に関してはそれ以降の改正ということで、いかがでしょうか。

○山口委員 急に文章を変えられなかったとしたら、例えば*で下に何か付け加えておくという。今の日赤としての判断というか、この判断そのものがそれほどおかしいとは思わないので、むしろその辺りの判断を少し付け加えていただいたほうがいいのかなと思います。

○岡田委員 確かにこのリスク3に関しては、要するに一番問題になるのは、血清学的検査が陽転したときに、いつ感染したか分からないということで、例えば1年間全然献血をやっていなくて、今回来たときに血清学的検査で陽転したときの1年前のものを遡及するかどうかだと思うのです。その場合、HCVやHIVの場合ですと、ウインドウ期の可能性があるので、それを遡及しないというのは厳しいのかなと思います。

 それと、9ページに遡及調査期間ということで、改正案にもきちんと遡及するような記載があるのですが、例えばHCVなどのときは可能な限り過去に遡って検査をするということで、そもそも日本赤十字社がやると言っているのとリスク3を外すというのが、少し矛盾するのではないかと思います。

○日本赤十字社平安全管理課長 一応遡及調査の対象というのは、検査の対象であって、その結果によって医療機関への情報提供をどうするのかというのとは別の話になります。まず直近、過去まで遡って、そこから何日のものについて、保管検体を使った調査等は行い、その結果に基づいて1であれば情報提供をやらせていただくし、という話になります。ですから、情報提供と遡及の考え方は平成20年に1回御議論いただいて、ここについては御了承いただいていると認識しております。

○濱口座長 よろしいでしょうか。ほかはいかがですか。そうしますと、一応御提案いただいているのは、遡及の期間について検査法の感度の向上に合わせた形での改正をやりたいというのが1つと、もう1つはリスク評価のところでのリスク3をどうするか、この2点が提案として挙がっているということでよろしいですよね。そうしたときに先生方からは、期間を短くすることについては合理的であるというお考えであるということでよろしいでしょうか。リスク3に関しては、今、日赤から御提案がありましたように、しばらく様子を見て、今後輸血療法の実施指針の改定が行われると思いますので、そこまでに一応結論を出すという形で、日赤でも検討していただくということでよろしいでしょうか。

○長村委員 本質的なところではないと思うのですが、改正案で切りの悪い数字というか、42日とか、これまでもずっと思っていたのですが、我々受け手側が教育などでやるときに、この2にすごい意味があるのかなと。その辺りはいかがでしょうか。45にするとか、40にするとか。では、これを覚えろと言って、若い医者などがそういうものができるのかなというところがあります。きっと、やるたびに変わってくるものではあるとは思うのですが、そこはもう少し簡単でもいいのかなと思います。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 実務上のことで、その感覚はよく分かるのですが、ただ短いほうに丸めることは少し不可能だと思いますので、長いほうに丸めるとすると92日が100日と。そうなりますと、やはりこれは随分離れるかなということで、理論的根拠も薄くなってしまうということで、このままの数字にさせていただければと思います。

○濱口座長 よろしいでしょうか。ほかはいかがでしょうか。

○溝上委員 他の国で遡及調査とはやっているのですか。私の知る限りではないように思ったのですが。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 いえ、国によっては日本を真似ているのですが。

○溝上委員 日本のほうが先に進んでいたという形で考えてよろしいのですか。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 そうですね。他の国も大分、保管検体を持つようになりましたので、同じようなことをするようになってきています。

○溝上委員 例えば、中国や台湾でHBc抗体陽性を除いたりしたら、血液が足らなくなるのではないですか。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 全くそうだと思います。

○濱口座長 よろしいでしょうか。それでは、日本赤十字社の説明については。

○山本()血液対策課長補佐 日本赤十字社からの案ですので、差し出がましいですが、リスク4に関してはなくすことでよろしいでしょうか。

○濱口座長 すみません、そこをスキップしていました。リスク4については、一応日赤の提案どおり、今後はこれは外すという形でいきたいと考えます。よろしいでしょうか。それでは、ただいまの意見を踏まえて、更なる検討をお願いいたします。事務局におかれましては、遡及調査のガイドラインの改正に向けて、検討をお願いいたします。

 それでは、議題5に移ります。「E型肝炎に対する安全対策について」です。日本赤十字社から御説明をお願いいたします。

○日本赤十字社平安全管理課長 まず、前回の安全技術調査会の中で、先生方から世界の動向がどうなっているのかというお話と、その当時イギリスが選択的試験を入れだしていましたので、では選択的検査をやった場合、日本はどれぐらい該当するのかというようなことを調査して、報告してほしいということを言われていましたので、その辺りについてまとめさせていただきました。最新の情報ですが、世界各国の動向ということで、HEV-NATを導入している国の状況を書かせていただいております。現在、アイルランド、イギリス、オランダでスクリーニング検査が開始されております。まずアイルランドを見ますと、開始時期が2016年1月からで、個別NATで実施をしております。その結果、HEV RNAの陽性率が2,778本のうち1本です。こちらについては、全数検査をしており、大体15万献血ぐらいの検査をやっております。費用については、国家予算として、日本円で約1億円程度が国家から支給されているような状況下です。こちらは、一応3年このNATをやって、その結果によってそれ以降どのような対策を検討するかということが言われております。

 次に、イギリスです。イギリスは先ほど申したとおり、2016年3月からプール検体によるNATを開始しております。その検査対象については、選択的検査の適応患者として、臓器移植、急性白血病(移植有無問わず)、造血幹細胞移植の対象者と、胎児・新生児・乳児、これらを対象として開始されております。ここで、追加料金で1製剤当たり17ポンド、日本円で2,500円程度を、普通の薬価に上乗せ料金ということで開始しました。しかし今年の4月からは、プールNATで全数をやると。検体数については、210万献血ありますので、こちらについて4月から開始をしております。こちらの料金は、赤血球製剤に2.11ポンド、292円を上乗せをして対応しているというように報告がされておりました。

 今月から開始されたのは、オランダです。オランダについては、当初から陽性率が高いことから、NATの導入についてはかなり否定的な見解でしたが、国の保健衛生当局などからの指導、指示があり、今月からプールNATが開始されています。オランダは、陽性率が726本に1本程度ですので、なかなか高い数値が出ております。こちらについても、全数検査です。

 イギリスにおける選択的検査から全数検査への変更の経緯等です。まず、変更経緯です。臓器移植患者等を対象にした場合の選択的検査では、採血本数全体の25%についてHEV-NATを実施しておりましたが、検査の煩雑さやシステムの困難さ等のため、2017年4月より全数検査に変更しております。ここは何を言わんかというと、血液センターかつ医療機関も2つの在庫を持ちますので、そのハンドリングいかんによっては、インシデント、アクシデントが発生するところも非常に大きく、このような政策に変えられたと報告されております。その中で、全数検査に係る費用概算、先ほど赤血球1本当たりというお話をしましたが、これを供給実績から試算しますと、年間約6億円程度の費用となっております。

 続いて、その他の国の献血者のHEV陽性率と、スクリーニングの状況を、別添1に示しております。これは、ECDCのLisbonEurosurveillanceからのレポートに、欧州外の情報を追加したものです。デンマークは、ID-NAT(Grifols)で陽性率の調査をしたとき、2,331本分の1が陽性でしたが、こちらも陽性率が高いということで実施しないと記載されておりました。フランス、ドイツは、輸血によるHEVの感染例報告があります。こちらは、現在検討中という状況になっております。ドイツでは、一部のセンターによっては、スクリーニングを実施している旨の記載もありますので、今後この辺りがどのように変わるのかは注視していきたいと考えております。アイルランドは、既に開始をしております。オランダは、7月から開始をされており、24-NATでRoche社の試薬を用いて、全数スクリーニングGrifolsが開始されております。

 スペインは、陽性率が3,300件に1件ぐらいですが、こちらの情報としてつかんでいるのが、今年の10月からCataluna地方ではGrifolsのID-NATを導入予定と伺っております。スイスは、検討中です。英国はお話したとおりです。一方、米国の周りの陽性率を見ますと、Stramerの報告ですが、米国では9,400本検査をして1本が陽性でした。カナダは、1万4,000本検査をして、陽性がありませんでした。オーストラリアも、各地域によってばらつきがありますが、一番大きい所では1万5,000本やって1本の陽性が報告をされております。これらの陽性頻度から見ると、これらの国が何らかの対策を取るというのは考えにくいのかなと思います。一方、ISBTの情報で得ているのは、シンガポールです。こちらは660本に1本陽性だということが、Copenhagenでレポートされておりますので、何で陽性率がこのように高いのかなということを示しております。今後も引き続き、各国の状況等については注視をしていきながら、御報告させていただければと考えております。

 元に戻って、2ページを御覧ください。こちらは、選択的検査の対象となる受血者の製剤別輸血用血液製剤使用量等の予測をいたしました。まず、臓器移植患者の調査をしました。この調査に関しては、脳死移植については、臓器移植ネットワークより実施件数を引っ張ってきました。それと、これらの臓器移植に関連する輸血準備量、使用量については、輸血学会誌に記載がありますので、これらを用いて試算をしました。生体移植については、日本肝移植研究会、日本移植学会等より実施件数、日本輸血学会誌から血液製剤の使用量を試算しました。

 試算いたしますと、脳死の場合は1年間で赤血球製剤が6,000本、FFPが6,000本、PCが10単位で750本、計1万2,750本という数が出てまいりました。一方生体では、赤血球が2単位で3,000本、FFPが3,000本、PCが600本ということで、6,600本、合計1万9,350本の輸血用陰性の血液が必要と試算されました。

 悪性腫瘍と血液・造血器疾患の患者を見ますと、こちらは厚労省の委託事業である血液製剤使用実態調査の使用状況から試算をしました。これらの対象者を見ますと、赤血球製剤が2単位製剤で80万本、FFP製剤が25万本、血小板が10単位で60万本ということで、165万本が必要と試算されました。このうち、造血幹細胞移植機関だけの輸血ということで調査をしましたが、これを見ると赤血球で5万本、FFPで4,000本、PCが10万本と試算されております。新生児・小児の輸血に関しては、実態がなかなかつかめないところですが、東京都の輸血状況調査結果から、約2万人の患者がおられるのではないかと試算されています。

 これらの3つを合わせて、適応患者の輸血用血液製剤の必要量は、全ての適応患者に必要なHEV陰性の輸血用血液製剤は、少なくとも約180万本。これは、血液型を加味しておりませんので、そこまで加味すると、もう少し増えるのかなと試算され、献血本数としては約150万本に該当するのではないかと試算をしました。

 続いて、今のHEV-NAT用の試薬です。現行試薬は、HEVの単独検出試薬を用いて、北海道ブロックセンターで試行的にHEV-NATをやっております。開発可能試薬ということで、現行のHBV/HCV/HIV同時検出試薬にHEV用の抽出プローブ、増幅プライマー及び検出用プローブを追加する4ウイルス同時検出用試薬のフィジビリティスタディの結果、開発可能であろうという回答を試薬メーカーから受けている状況です。

 そのような中で、まず選択的検査を導入する場合の課題ということで、現行試薬を少し書かせていただきました。HBV/HCV/HIV同時検出試薬で、個別NATを終了後に最低150万検体、全献血本数の約30%、これはイギリスとほぼ同じ状況だと認識しておりますが、これについて、HEVの個別NATを実施する必要があるということになります。その場合の課題としては、当然30%検査本数が増えますので、検査機器の増設が必要になると考えています。それと、検査機器の増加に伴う検査エリアの拡張については、個別で3ウイルス同時を念頭において検査室等を構築してまいりましたので、機械が増えるということはそれだけの共有面積が広くなりますので、そういうものがまた必要になるだろうと。それから、HEV用の試薬の保冷用冷凍庫や冷蔵設備の増設がかなり必要になるだろうと。現在、マルチプレックスの試薬は、4トントラック1台に4万検査分の試薬が入っていくような、消耗品も含めるとかなり大きなものです。serologyのパッケージのものではなくて、かなり大きなものがあるということは御理解をしていただければと思います。

 そういう意味では、新しくやろうとしても、設備もあれば保冷庫、冷凍庫とともに、同じような試薬ですので、物理的に別の管理をしないといけなくなりますし、二重管理というところも問題が出てきます。やるとしても、検査職員の増員、費用の増大、それとイギリスも陥ったような取違い防止対策。日赤は輸血用血液性剤は薬機法上、ラベルの表面にいろいろなことを記載することができないようになっており、「E-」というのが伝票にしか書かれていない中で、私どもが間違いなく対象患者に届ける、この辺りの対策が必要になるとともに、我々の血液基幹システムであります血液事業情報システムの改修が必要になると考えております。

 このような背景の中、今後の対策()として、選択的検査として、適応患者全てにHEV陰性血液を供給するためには、少なくとも約150万検体にHEV-NATを実施する必要があると試算されました。この検査数は、全献血血液の約30%に該当し、その検体数増加に対応するためには、検査機器の増設、エリアの拡張、試薬保冷庫の増設及びシステム開発等が必要となり、早急な対応はなかなか困難と認識しています。そのため、当面の間は、北海道ブロックセンターで疫学調査として実施している試行的HEV-NATで陰性とされた輸血用血液製剤を、医療機関からの依頼に基づき供給することを検討したいと考えています。

 その対象者については、新生児・小児患者では、日本での輸血によるHEV感染事例がなく、また血液腫瘍と血液・造血器疾患の患者は、HEV感染後の遷延化頻度が臓器移植患者よりも数値上低いこと、さらに国内で発生した輸血後HEV感染症例の経験から、HEV感染後の遷延化頻度の高い臓器移植患者を優先することを提案したいと考えています。しかし、対象患者の限定については、医療機関や関連学会等への周知及び了解が必須であり、対象でない患者については輸血後肝炎が疑われ、HBV、HCV感染が否定された場合には、今保険収載されていますHEV IgA抗体検査を実施するなどのHEVに対する早期発見、早期治療の促進も必要と思われております。

 また日赤としては、北海道ブロックセンターのHEV-NAT陰性の輸血用血液製剤を全国に展開できるよう、体制を構築し、同製剤が間違いなく対象患者に届くよう、取違い防止対策や輸送費用等についても検討を進める必要があります。さらには、選択的検査の実現に向けた検討と並行して、4ウイルス同時検出用開発試薬による全数検査についても、輸血用血液製剤の安全性や初期投資を含む費用的観点から、検討を進めたいと考えております。説明は以上です。

○濱口座長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見をお願いします。いかがですか。

○白阪委員 教えてください。北海道のブロック・ブラッド・センターで該当する製剤は、何本ぐらいになるのでしょうか。

○日本赤十字社平安全管理課長 今、北海道ブロックでは、大体、年間23万献血の検査をしている状況に思います。

○白阪委員 ほとんど陰性ですから、20万ぐらいはいけるかと。全然いけますよね。

○日本赤十字社平安全管理課長 それは……あったとはいえ、全てをお回しすることよりは、少し対象患者を絞りながら検討を進めていただければと考えております。

○白阪委員 もちろん。そうですね。想定では、臓器移植は年間2万本ぐらいと推定されているのですかね。

○日本赤十字社平安全管理課長 はい。ただ、臓器移植としても、脳死移植の6割ぐらいは多分、土・日とかで緊急的に発生をしておりますので、それに間に合わせることができるかというと、実態はなかなか困難ではないかと考えます。そういう観点から言うと、生体肝移植である小児の所とか、そういう所への待機手術的なもので予定が立つものについての対応ぐらいが、多分目いっぱいなところではないかという感じをしております。

○白阪委員 ありがとうございます。

○脇田委員 費用対効果等を考えて、今、現実的な案としては、生体肝移植とか、そういう待機的な手術の臓器移植という方を優先するところは、やむを得ないところかと思います。

 確か経口肝炎の研究班、AMEDですね、そちらからも移植あるいは悪性腫瘍でのHBV感染の慢性化について、あと確か1年ぐらいでまとめが出てくるということですので、その結果をまた見て検討していくということが大事かと思います。いずれにしても、4ウイルス同時検出系の開発は重要かと思いました。以上です。

○濱口座長 ありがとうございます。ほか、いかがですか。

○長村委員 2点です。4ウイルス同時検出用開発試薬による全数検査という検査法自体については、どのぐらいをめどにこの開発できると、その辺のめどが立っているのでしょうか。その期間的な意味です。

 あともう1点は、最初は臓器移植の患者さんを対象にということではありますが、医療機関側からするとイギリスと全く同じ経緯をとって、早晩、全数検査という形になると思うのです。やはり造血幹細胞移植をやっている、長期のステロイドとか免疫抑制剤を投与している患者さんが多いですので、その意味では、そういう要求は1つ患者限定で出していくと、すぐにこちらもという形になるかと思っています。その辺のめど的なところはいかがですか。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 全くおっしゃるとおりで、要するに、こちらで限定した患者さんから外れたところの患者さんの主治医と患者さんからの要求が来るというのは、すぐに見えておりますので。では、それでということで現在の北海道方式のものを全部全国に広めるまでには、先ほど説明したような設備とかいろいろなことを全部大改修して始めることになりますので、それにもやはり2年ぐらい掛かってしまうわけです。

 ところが、クアトロの4者のこれは、実は我々としてはかなり前から試薬としては可能かどうかということは問合せをしておりました。現在では、約2年ぐらいで何とかなるのではないかという見通しです。あくまでも現在の見通しですが、そのようなことです。

○長村委員 逆に、現在2年ぐらいというめどで患者限定で始めるという形で、まずは間に合わないのでという形であれば、多分、医療機関側は受け入れられるかもしれませんが、先が見えない状態で患者限定だけというのは、なかなか厳しいのかと思います。

○山口委員 当面、臓器移植対応ということで、北海道からのそれの供給と、そう理解したのです。ただ、要望が多いときに、北海道だけでいけるのか、あるいは本州の中でどれか1つの機関でやらないといけないのか、その辺はスタートしたときに、それだけで限っても2万人ぐらいになるわけでしょうから、多分その辺の手当てをしておいたほうがいいのかという気がするのですが。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 全くおっしゃるとおりです。実は最初どのぐらいの数が上がってくるかにもよりますが、おそらく足りなくなれば、本州といいますか北海道以外のどこかでもそういったことをやる所を設定しなくてはならない事態にもなるだろうなというふうには、十分予想しております。

○山口委員 関連することとして、今、輸血用血液製剤の話ばかり御議論させていただいているのですが、平成24年8月7日に血漿分画製剤のE型肝炎についても議論させていただいて、どういう取組をしているかを議論させてもらったのですが、それからちょうど5年たっているので、今の海外では、EDQMは血漿分画製剤についてもE型肝炎の対応を考えているところだと思うので、国内の血漿分画メーカーについても今どのような対応しているかは、調査したほうがいいのではないかという気がします。

○濱口座長 事務局からありますか。

○山本()血液対策課長補佐 国内分画メーカーのHEVに対する対策については、次回報告させていただきます。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 追加ですが、クアトロの試薬がもしスムーズに入った場合には、実は設備投資とか何かは全く要らないです。現在のトリプルでやっている所にそのまま試薬が変わっているだけ。非常に大きなメリットはあることを付け加えさせていただきました。

○岡田委員 全数検査まではある程度の時間が掛かるのはしょうがないと思うのですが。あと、E型肝炎は基本的に輸血よりも経口で感染をするのが圧倒的に多いので、その患者さん自身にも自分の身を守ることは啓発しないといけないと思うのです。ですから、臓器移植を受けた患者さんとか、あとは悪性腫瘍にかかっている患者さんの食生活も、本当にリスクがある食事を控えるようにという啓発が必要かと思います。ですから、関連学会にも、そういうことを伝える必要があるかと思います。

○溝上委員 おっしゃるとおりだと思います。今迄は何でもかんでも輸血のせいにされてきましたので……。関連学会に伝えるということは必要と思います。

 もう1つ、E型肝炎の場合は、劇症肝炎の頻度も低いし、万が一感染しても、リバビリンで治せるとかいうこともありますので、何でもかんでもやらないといけないのかなとちょっと思っていたものですから、今の御意見に賛成します。

○濱口座長 ほかはいかがでしょうか。御意見を伺いますと、これまでの経緯もあって、E型肝炎ウイルスがマイナスの血液を供給する必要性は、この委員会の中でも皆さんは十分認識されているところだったと思います。今回、日赤から北海道の血液を臓器移植、取りあえずはそこに限った形で一応供給できそうだということですので、それは是非お願いしたいというところまでは、多分皆さんOKということでよろしいでしょうか。その後で、これが始まると、場合によっては加速度的に需要が高まる可能性があるので、そこについては少しコスト面の問題、技術的な問題を含めて、まずは先ほど脇田委員からありましたように、いろいろなデータもひとつ加味しながら、1年後ぐらいにまずはどういう状況かを確認させていただきたいと思います。

 その上で、一方で技術的なところでq-NATの検査の開発についても、同時並行で一応検討していただきながら、この委員会の中で準備を進めていただく、また報告いただく形にしていきたいと考えております。

 というところかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。それでは、取りあえず日赤では臓器移植対象者、ここで言いますと、6,000若しくは2万という数字が出ていますが、具体的にどのような形で供給ができるのか検討して下さい。もう1つは、啓発活動は結構大事で、その後の患者さんのケアのところ、もう一方では食肉からの感染のところの啓発も含めて、少し対策をしっかりと取った上で準備を進めていかなくてはいけないかと考えております。具体的にこれを供給するとなった場合、どういうタイムスケジュールになるのでしょうか。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 すみません、具体的にはどういうふうにというのは決まっていませんが、早急にプランを立てて進めたいと思います。

○濱口座長 是非、そこの部分までは皆さん合意されていますので、できるだけ急いでやるべきことを出していただきたいと思います。よろしくお願いします。そういうことでよろしいでしょうか。

 議題6に移ります。「日本赤十字社におけるヘモビジランスについて」です。日本赤十字社から御説明をお願いします。

○日本赤十字社平安全管理課長 「日本赤十字社におけるヘモビジランス2016」の御報告を差し上げます。2ページのスライド、副作用・感染症報告の推移です。2016年は、非溶血性副作用が1,476件、溶血性副作用が21件、GVHD疑いが0件、感染症が80件という報告が、医療機関よりなされております。

 3ページですが、その中で非溶血性副作用を見ますと、副作用症状別報告件数ですが、例年どおり蕁麻疹は30%程度、あとアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、呼吸困難等のアレルギーがその大半を占めている状況です。こちらの傾向は、前年とそう大きく差はないと認識をしております。TRALI/TACOの評価については、この症例のうち呼吸困難、アナフィラキシー、アナフィラキシーショックの症例のうち155例について実施をしております。

 5ページを見ていただきます。2016年のTRALI・TACO症例評価結果です。副作用が1,476件でして、このうち155(10.5)の評価をTRALIを行っております。「TRALI疑い症例」に関しては、呼吸困難、急性肺障害、呼吸不全、酸素化低下、アナフィラキシーショック等が起こった場合、評価をさせていただいていて、評価数141の評価をしております。その評価の際には、感染症記録、呼吸困難調査票等、肺の浸潤影の状況であったり、胸部X線写真を入手して評価をしております。

 評価をしたうち4例をTRALIと評価をしております。3例についてはp-TRALIという評価をしております。残る134例については、TRALIではないと考えられています。このうち71例は心原性肺水腫でありましたので、TACOの評価、overloadの評価に回し、TACO評価として合計85例やったところ、TACOと評価されたものが45件、TRALIから流れてきたものが37件、「TACO疑い」が8件でした。その他については、34件と6件でした。

2004年からのTRALI・TACO評価状況ですが、これを見ていただきますと、緑がTACOです。2012年4月からTACO評価を開始して見ていきますと、やはりTACOとされるものが非常に多い。それとともに心原性肺水腫、薄い緑、こういうものが非常に多いという傾向です。2016年のTRALIとp-TRALIからの患者さんの死亡例は確認されておりません。

 抗白血球抗体検査の結果です。これはトータルで見ておりますが、TRALIとされ、評価件数で2004-2016年までをまとめたものですが、評価症例1,963件のうちTRALIと評価したものが357件、人数は1名2回重複されたものがありましたので、356名です。このうち献血者の検体から白血球抗体陽性となったものは、140件ということでした。結果としては、TRALIの全てが白血球抗体に起因して起こるものではないというのは、これで見るものではないかと考えております。

 その下がTACOと評価されたものの内訳です。患者様の内訳を見ますと、男性と女性が同じぐらいの数おられて、原因となった製剤を見ますとやはり赤血球製剤、もともと、若干、心原性肺水腫があって、そこにoverloadをすることによって漏れ出す事象ですので、そういう意味では血管内の量が増えるものという観点で言うと、体積を持つ赤血球製剤が多く含まれ、かつ、複合製剤が多いのが特徴に挙げられております。

 TACO評価内訳を2012-2016年で全体を見ました。こちらも傾向はほぼ同じで、赤血球製剤が原因となるものが61%、複合製剤は54%ということで、このような数を占めてきております。

 TACOについては、2016年を少し詳細に評価をさせていただきました。先ほどあったように85例評価をしたということですが、TACOの必須4項目を満たしたもので見ますと、これはTACO評価基準については、右側に記載しておりますが、急性呼吸不全とか、ここの4つが全部認められたものが85例のうち75例でした。この中で除外項目があったもの、除外項目は、もともとリスクのある方、透析をされている方であったり、人工心肺を使用しているとか、補助体外循環装置を使っているとかですが、このような人、最初からもともとTACO評価基準を満たすけれども、このようなリスクのあるものが30例、そういうもののないものが45例ということで、TACOが45件という評価になっております。そういう意味では、もともと除外項目があるものについても報告されているということで、TACOの認識は進めていかなくてはならないと思っております。

 TACOの評価状況と評価結果ですが、これは見ていただくとおり、TACOの評価数が増えていますと。その中で2016年にはTACOの輸血情報を配布して、その中で血液製剤の指針の改定等がありましたので、若干増えている状況になっております。このような状況の中、今まで日赤は、TRALI、TACOと評価した場合、TRALIかTACOかのみの御報告を医療機関にお返ししていたのですが、それではなかなか分かりにくかろうということで、その評価の内容、評価結果を、本年4月から一緒に付けて送らせていただくようにさせていただきました。評価基準を明確に示して、先生方に注意喚起をしてほしいという思いで、こういうことの開始をさせていただいております。

 輸血後感染症です。こちらは病原体別感染症疑い報告件数の推移を見ますと、2016年は80件という数でした。HBVが18件、HCVが28件という数でした。HBVについては、安全対策の効果が、だんだん報告数まで減ってきているというのが、明密と出る。一方、HCVについては、ほぼこれぐらいの数が上がってきているという状況下にあります。

 そこで、病原体別解析結果です。HBVは18件の報告のうち、確認試験が陽性ということで、輸血による感染が確定されたものが1例あります。この詳細については、後ほどお話させていただきます。対象外としては、輸血前から陽性であった例が2件、輸血前後の検査が陰性であった例が1件です。HCVについては28件ありましたが、確認試験陽性はありませんでした。細菌については1例ありますが、後ほど御報告させていただきます。HEVですが、4件報告があって、3件の感染事例を経験している状況です。

 その下を見ていただきます。今度は採血年別のHBV・HCV・HIVの感染症の推移です。これは安全対策導入後、このように減ってきて、上の段でお示した2016年のHBVの1件の採血年が2015年ですので、ここは1という数が挙がっている状況です。ほぼ安全性は非常に高まってきていることは、これで見てとれると思っています。

 HBV感染症例です。これはたまたま患者さんがHLA抗体をお持ちの方で、対象の献血者が2回連続この方に使用されたということです。これは、2016年1月8日、献血に来られたときにHBV-DNAが陽性となって、遡及調査を行っています。そういう中で遡及のロジックに基づいて調査していくと、70歳代の女性に使用されていた。このまま追跡をさせていただいた結果、この女性が感染したという事例でした。という事例が1例です。

 そういう意味では、その下を見ていただきますと、検査システム別・献血者感染状況別の状況ですが、HBcの基準を変更したのが2012年9月ですが、それ以降は感染既往の血液による感染例は0になったと。2014年8月に個別NATを導入しましたが、これ以降は個別NAT+のものによる感染は0になっている。どうしても個別NAT-の感染事例がこの程度残るのかというのは、ずっと以前の20プールNAT時代を見ても、年間1件とかは確認されていますので、ここら辺が残ったリスクになろうかと思っております。

 HEVです。HEVは、2016年、3件の輸血後事例を経験しております。うち2例は自発報告から、1例は遡及調査からでした。この3例とも、下のほうに記載しておりますが、3名とも全て転帰は、回復、軽快、回復ということで頂いている症例でした。

 輸血後細菌感染症例です。これも1件、患者さんが60歳代の男性で、Aeの患者さんでした。血小板製剤で、採血後日数が3日目で、Citrobacter koseriが検出されたということです。転帰としては、回復したが後遺症ありということで、先生から御報告を受けております。こちらの献血者については、20歳代の男性で、頻回献血者でした。過去には副作用報告等もなく、当該献血時及びその後も健康状態には異常がなかったと報告を受けております。

 これらをまとめますと、輸血後関連急性肺障害については、評価対象155例のうちTRALI又はp-TRALIとされたものは7例で、死亡例はありませんでした。

2016年2月に輸血関連循環過負荷の注意喚起のため輸血情報を作成・配布した。その結果、「TACO疑い」と報告され、TACOと評価される事例が大幅に増加しております。さらに、「TRALI疑い」と報告され、評価の結果「TACO」と判断される例が非常に多く、TACOと評価された症例は合計45症例となっています。このようなことを鑑み、また、新たな輸血情報を作成させていただきまして、医療機関にTACO、TRALI、この辺りの周知をするべく、多分、本日ぐらいに月次の新たなものが発出している状況下です。

 HBc抗体判定基準の厳格化、個別NATの導入後、個別NAT陰性の血液を輸血された受血者1名にHBV感染を認めております。E型肝炎については、2016年も3例認められておりますが、いずれもGenotype3による感染であり、受血者はその後回復をしておりました。

 輸血後細菌感染では、血小板による1例が認められたということでした。一応、ヘモビジランス2016については、御報告を終わらせていただきます。

○濱口座長 ありがとうございます。委員の先生方から御意見ありましたらお願いします。

○溝上委員 9ページの輸血後HBV感染症例についてですが、この方はHIVも感染している方ですか。

○日本赤十字社平安全管理課長 先生、この症例ですか。

○溝上委員 そうです。

○日本赤十字社平安全管理課長 これはHIVは感染されてない。

○溝上委員 そうですか。この方は過去にワクチンは打った方ですか。

○日本赤十字社平安全管理課長 この方は、このデータを見ていただくと、これは献血者のデータですので、このデータを見ますと、S抗体は陽転時が0.3、その当該が0.30.6ですので、多分、陰性ですので、ワクチンを打たれた方ではない。

○溝上委員 分かりました。こういう症例は、ワクチンで防げたということですよね。これ以上献血でいくら金を掛けても、こういう新規に感染なさる方はどうしようもないということでよろしいのでしょうか。

○日本赤十字社平安全管理課長 それで結構だと思っています。

○横田委員 素人ですが、TACOが増えたというのは、しかも高齢者にすごく増えてきているというのは、医療施設側の使用の不適切さがすごくあると理解していいのでしょうか。

○日本赤十字社平安全管理課長 なかなか言いにくいところですが、多分そのようなことではないかと思います。

○横田委員 だから、それをちゃんと訴える方向でやらないといけないと。

○日本赤十字社平安全管理課長 はい、それはきちっと情報提供させていただいて、国民の健康安全に努めるように情報は発信していきたいと考えています。

○濱口座長 ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、日本赤十字社におかれましては、引き続き情報の収集をお願いしたいと思います。ありがとうございました。本日の議題は全て終了しましたが、ほかに何か御意見ありますか。よろしいですか。それでは、事務局に議事を戻したいと思います。

○山本()血液対策課長補佐 濱口座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途連絡差し上げたいと思います。本日は長時間にわたり、委員の皆様、本当にありがとうございました。これにて、平成29年度第1回血液事業部会安全技術調査会を終了します。


(了)

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