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2017年5月30日 第4回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会

職業安定局

○日時

平成29年5月30日(火) 15時30分~17時30分


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省職業安定局第1・2会議室


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、中窪委員、松浦委員、守島委員

【労働者代表委員】

梅田委員、小原委員、冨田委員、松井委員、宮原委員、村上委員

【使用者代表委員】

秋田委員、加藤委員、小林委員、高橋委員、田代委員、中野委員

○議題

・同一労働同一賃金に関する法整備について

○議事

 

○守島部会長 第 4 回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会を開催いたします。

 本日の御欠席は公益代表の武田委員、山田委員、使用者代表の小林委員です。なお、使用者代表の秋田委員は所用のため遅れて参加されるということです。

 事務局から、定足数の御報告を頂きます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 労働政策審議会令第 9 条で定める委員全体の 3 分の 2 以上の出席、又は公労使各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされていることを御報告申し上げます。

○守島部会長 冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。

 議事に入ります。本日は前回より引き続き、資料 1 の論点 ( )( 派遣労働者関係 ) 、論点 3 の行政による裁判外紛争解決手続の整備等、論点 4 「その他」について御議論いただければと思います。また、残りの時間で、論点 1 の労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係、論点 2 の労働者に対する待遇に関する説明の義務化等について、前回言い残したことがあればお願いします。

 まずは事務局から資料について御説明いただき、その後に各議題について御議論いただければと思います。事務局から資料について御説明いただきます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 資料は 2 点お配りしており、 1 点目が「論点 ( )( 派遣労働者関係 ) 」、もう 1 つが「現行制度に関する参考資料」です。まず、「論点 ( )( 派遣労働者関係 ) 」ですが、本日は前回に引き続き、 6 ページの四角の枠の 3 「行政による裁判外紛争解決手続の整備等」から御議論いただきたいと思いますので、そこから順に御説明いたします。

 まず、 3 「行政による裁判外紛争解決手続の整備等」です。四角の箱の中に「働き方改革実行計画」の抜粋を載せています。その上での事務局からの御提案です。まず、 1 つ目の矢印です。現行の労働者派遣法における行政措置の規定を、前半でまとめています。派遣元事業主に対しては、行政が必要な報告徴収・助言・指導・改善命令・事業停止命令・許可取消しの規定があります。また、派遣先に対しては、報告徴収・助言・指導・勧告・公表という規定があります。これについて、上記司法判断の根拠規定の整備で取り上げた、均等・均衡待遇関係の規定、 2 の説明義務の関係の規定について、それぞれの規定の趣旨に応じ、現在労働者派遣法で用意されている対派遣元、対派遣先の行政措置、履行確保措置の対象としてはどうかという提案としています。

 なお、ここに書いてはいませんが、現在の労働者派遣法の運用においても、当然のことながら様々な法的な問題が生じたときに、その問題の深刻さ、重大さに応じて、指導・助言で対処するもの、改善命令を発出するもの、許可取消しまでを行うものというのは運用上仕分けをしております。今回の均等・均衡の問題、説明義務の問題についても、同じように問題の重大さ深刻さに応じた対応を取っていくことになるという考え方です。

2 点目の矢印です。これはパート・有期の回でも同様の論点を掲げさせていただきましたが、派遣労働者について、現在パートタイム労働法に設けられているような労働局による紛争解決援助や調停の規定がありません。パート、有期、派遣という 3 つの非正規の雇用形態で言いますと、現在はパートだけにそのような手続が用意されている状態です。パート・有期の回では、「有期でも同様に使えるようにしてはどうか」という論点を掲げさせていただきましたが、今回ここでは、派遣についても同様に紛争解決援助、調停の手続を使えるようにしてはどうかという提案をさせていただいております。

3 つ目の矢印です。「その際には」とありますが、これもパート・有期の回で御議論いただいた点と並行する論点です。現在、パートタイム労働法の運用として、均衡待遇、職務内容や職務内容・配置変更範囲などが異なる場合に、その異なりを見て不合理な待遇差にならないようにしてくださいという趣旨の規定については、現在のパートタイム労働法の運用では、助言・指導などの対象としていないわけですが、これについて「解釈が明確でないグレーゾーンの場合には、引き続き助言・指導等の対象としない。解釈が明確な場合には対象とすることとしてはどうか」という提案をさせていただきました。

 ここでもその議論と並行の関係でありますが、派遣についても「均等待遇規定については、解釈が明確でないグレーゾーンの場合には行政措置の対象としない一方、解釈が明確な場合には対象としてはどうか」、「行政 ADR については、均等のみならず均衡の問題についても対象としていくことが適当ではないか」とさせていただいております。なお、その下の四角では、パート・有期の回で御議論いただいた本日の論点と並行する部分を、改めて掲げているところです。

 四角の 4 「その他」です。様々な意味で、パートタイム労働法が規定が一番多く設けられているわけですが、これもパート・有期の回でも類似の論点を御議論いただきましたが、短時間労働者に対して設けられている 1 3 までに取り上げなかった様々な規定、国による基本方針の策定、就業規則の作成・変更時の意見聴取などについて、パート・有期の回では「有期にも適用してはどうか」という御議論をお願いしました。派遣についても、今回、労働者派遣法において、別途の制度により同趣旨が達成されているものは重複する必要はありませんので除きますが、労働者派遣法で措置されていないと考えられる派遣元の就業規則の作成・変更時の意見聴取 ( 努力義務 ) については、「派遣労働者についても同様に対象としてはどうか」という提案としています。まずは、本日の議題である論点のうちの四角の 3 、四角の 4 について御説明申し上げました。

 続いて、現行制度に関する参考資料です。現行制度に関する参考資料の前半の 16 ページまでは、前回御提出したものと同じものなので、説明は省略いたします。 17 ページを御覧ください。前回の部会で、今回、論点の四角の 1 で御提案している仕組みとして、派遣元の労使協定を締結し、その労使協定が一定の要件を満たす場合には、その協定による待遇決定を認めてはどうかという点がありました。その一定の要件の 1 つが、「同種業務の一般労働者の賃金水準と同等以上である」というものです。これについて、前回「具体的にどのような賃金データが取れるのか」というお尋ねがありましたので、それを御用意したものです。統計データとしては、職種ごとに賃金水準が取れるデータとしては、 2 つあります。賃金構造基本統計調査、職業安定業務統計です。それぞれの統計における正社員なり正職員なりのデータを一般労働者の賃金水準として参考にできるのではないかと考えています。

 まず、賃金構造基本統計調査です。調査対象の事業所は全国の 5 人以上の民営事業所、あるいは 10 人以上の公営事業所です。雇用形態は、本調査においては正社員と正社員以外、一般労働者と短時間労働者という形で取ることができます。賃金の区分は、月々の決まって支給される給与額、そのうち所定内の給与額、月々ではない年間賞与などの特別給与額という区分で取ることができます。

 対象職種は 129 職種ありますが、これは必ずしも世の中の全職種を 129 に分類したものではなく、カバーしていない部分があります。勤続年数は、 0 年、 1 2 年、 3 4 年、 5 9 年、以降は 5 年ごとで、最長は 30 年までという区分で取ることができます。地域は都道府県別のデータです。

 職業安定業務統計の方は、賃金構造基本統計調査と一長一短があります。対象事業所は、全国の公共職業安定所に対する求人企業、求人賃金の平均ですので、求人企業ということになります。雇用形態はフルタイムとパート、フルタイムの中を正社員と正社員以外に区分できます。賃金の区分は、基本給と定額的に支払われる手当を合算したものが出ています。職種は中分類と少し粗めの分類ではありますが、一応全ての職種をカバーしたものを取ることができます。勤続年数は求人時点ですので、勤続 0 年の賃金水準と考えることが妥当かと思います。地域別は都道府県別で取ることができます。以上のような概略です。

 一応、その後の 18 ページから 19 ページにかけては、賃金構造基本統計調査の産業別をどういう区分で取れるかの統計表です。 20 ページからは、職種別、都道府県別の統計表が 23 ページにかけて続いており、こういう職種が取れるということです。 24 ページは、年齢別と勤続年数をクロスした表です。 25 ページからは職業安定業務統計で、 25 ページは産業別と都道府県別です。 26 ページは職業別と都道府県別です。いずれも現在公表されている統計表としてはこういうものがあり、実際に目安として使っていくということになりましたら、更にこの元データを生かして、さらにクロスさせた特別集計をさせる。例えば、都道府県と職種と勤続年数をクロスさせるといったことが必要になってくるのではないかと思われます。ここの辺りは、具体的にどのようなクロスのさせ方をするか、どういうデータを参考値とすることが適当かについて、引き続き、また施行段階の御議論も含めて、この場の御意見を頂きながら検討していきたいと思っています。本日の資料としては以上です。

○守島部会長 論点 3 「行政による裁判外紛争手続の整備等について」ですが、御意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。

○冨田委員  6 ページの最初の矢印で、行政による履行確保措置について御提案がありますが、これに対し事務局に確認と要望を 1 点申し上げます。

 先ほどの御説明にもありましたが、現行の労働者派遣法では、派遣先に対する勧告・公表の対象は、適用除外の業務への派遣労働者の受入れや、期間制限違反など、 5 つの条文に限定されています。そうした中、今回の論点案では、矢印の最後で「それぞれの規定の趣旨に応じ、これらの行政による履行確保措置の対象としてはどうか」とされていますが、この点について確認させていただきたいのです。具体的には、論点案では、派遣先労働者との均等・均衡待遇をはかるために派遣先に情報提供義務を課すとありました。また、労使協定による待遇決定方式であっても、福利厚生施設、例えば給食や休憩室などについては、派遣先の労働者との均等・均衡としています。これら派遣先に関する 2 つの規定についても、新たに勧告や公表の対象の条文に加えていくという理解でよいのでしょうか。これが確認したい点です。

 要望は、もし勧告・公表の対象となっていないのであれば、対象に加えていただきたいということです。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今回御提案している趣旨は、派遣先の報告聴取・指導及び助言・勧告、公表の対象としてはどうかということですので、法制的には、今の勧告・公表の対象条文に、御指摘のあった均等・均衡関係、説明義務関係を追加することになります。

 その上で、実際にどういう場合に勧告・公表までいくのかについては、自ずから事案の重さや深刻さがあると思いますので、指導・助言でとどめて是正を図るもの、勧告・公表までいくものについては、個別具体の問題の重大さに応じて判断していくという考え方でいかがかと思っております。

○冨田委員 確認したいのですが、先ほど申し上げた労使協定方式の 2 点目の福利厚生施設の利用などに関する派遣先の規定についても、同様に加えていくという理解でよろしいのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 その点も、四角 1 の論点の中で、派遣先の福利厚生施設の利用などについてのルールを書かせていただいておりますが、それに該当するものとして法律上は対象として、運用で実際にどういう場合に発出するかは個別判断でと思っています。

○守島部会長 他にいかがでしょうか。

○宮原委員 行政 ADR の指導主体について、確認と要望をしたいと思います。

 まず、現行の労働者派遣法の枠組みでは、派遣元と派遣先に対する行政指導や処分は、都道府県労働局の中でも需給調整事業室が行っていると思います。一方で、今回の均等・均衡待遇規定に関しては、パートタイム労働者や有期労働者の場合は、労働局の中でも雇用環境・均等室が行政指導を行う整理としていると思います。こうした状況の中で、今回新たに設ける派遣労働者に関する均等・機能待遇規定については、需給調整事業室と雇用環境・均等室のどちらが指導主体となる整理としているのでしょうか。これが確認です。

 続いて要望ですが、派遣労働者が行政に対して不合理な待遇差に関する紛争の解決を求めた場合、需給調整事業室と雇用環境・均等室のどちらに相談してよいか分からないという場合であったり、労働者がたらい回しにされるということがないような対応をお願いしたいのです。実際に労働者から相談が寄せられた場合は、まずは総合労働相談コーナーが窓口となり、その上で雇用環境・均等室や需給調整事業室に割振りされていると思うのですが、外線等で労働者から入電があった場合も想定されていると思いますので、局内での周知はもちろん、労働者に対する周知も合わせてお願いしたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御質問に当たる部分についてですが、本省一本というわけにはいきませんので、労働局において施行事務を担っていくことになると思いますが、労働局の中でどの部門がどの法律のどの部分を担当するかについては、現在検討しており、施行までに省内で議論を進めていきたいと思っております。

 いずれにしましても、どういう体制になっても、たらい回しにならないようにということは当然ですし、またそのためにどの部門の担当かが分からないときは総合労働相談コーナーにお聞きいただくというようなワンストップ窓口にもなっていますので、総合労働相談コーナーと労働局内の各部門の連携もきちんとやっていきたいと思います。

○守島部会長 他にいかがでしょうか。

○松井委員 今の点にも関連するのですが、行政 ADR を使う場合ということですが、派遣労働者に限らず、パートタイム労働者や有期契約労働者の方も共通すると思うのです。今回、均等・均衡待遇規定を整備して、事業主に待遇に関する説明義務を課すとなると、例えば、労働者が事業主に待遇に関する説明を求めたが納得がいかないという労使トラブルが発生し、その結果として雇止めや解雇になるようなケースも想定されると思います。今回、均等・均衡待遇規定について「調停」という仕組みを入れるということですが、他方、結果として解雇になれば、個別労働紛争解決促進法上の「あっせん」という仕組みで解決をはかることになります。問題は、 1 人の労働者が行政での紛争解決を求めた際に、仕組みとしては「調停」と「あっせん」という 2 つの仕組みがあるということです。こうした複合事案の場合、どのように解決がなされていくのかということを確認したいと思います。

 それと、できれば 1 つの仕組みでできるようにした方がいいのではないかと思いますので、その点についてお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御指摘の点については、現在でもパートタイム労働法では、既に調停の仕組みがあります。ですので、パートタイム労働法の均等待遇違反の申出と、不当解雇がミックスされたような事案の場合には、同様な問題があります。

 これについては、法律の適用関係の整理としては、パートタイム労働者に対する均等待遇違反の問題はパート法に基づく紛争解決援助であり、労働局の調停の対象となっている一方、不当解雇の問題については個別労働紛争解決促進法に基づく紛争解決援助の対象となり、労働局であっせんの手続が用意されている形になります。

 ただ、実際の運用として、均等待遇違反の問題が端緒となり、それがいろいろとこじれる中で解雇にも至ったというような場合には、適用法律が 2 つだから 2 つの手続でというようなことではなく、パート法に基づく紛争解決援助の中で一体的に解決を図るということも、仕組みとしては可能にしてあります。事案としてどのぐらいあるかというのは分かりませんが、そのようになっております。

 今回、パート法の紛争解決援助を有期にも適用するとか、派遣にも設けるということを御提案しておりますが、考え方としては同様に、法の適用としてはパート法や派遣法と個別労働紛争解決促進法は別体系としていますし、それぞれに対象となる紛争がパート法なり派遣法にはあって、そこで拾えないものが個別労働紛争法にいくという関係になっていますが、複合事案については一体的な解決ができるような道筋も用意したいと思います。

○守島部会長 他にありますか。

○高橋委員  6 ページの 3 番目の矢印については、パート・有期と全く同じ主張を述べることになります。「均衡待遇について解釈が明確な場合は対象としていくことが適当ではないか」という問題提起がありますが、誰が見ても明らかに不合理だと言い切れる事案は非常に少ないと考えられます。パート・有期のときにも議論がありましたが、専ら非正規雇用であるということだけを理由とするといった場合は理解いたしますが、それ以外については、個々の事情に応じて考え方も様々であろうと考えますので、やはり労働局長が事業主に対して助言・指導等を行うということについては基本的に反対であるということを再度申し述べたいと思います。行政 ADR 等において、調停委員に弁護士が入っているといった説明がなされているところですが、弁護士と言えども裁判官ではありませんから、不合理かどうかの規範要件について判断はできませんので、これは調停員が行う助言・指導等についても、基本的に反対であるということを申しておきます。

○守島部会長 他にいかがでしょうか。

○小原委員 前回部会で労働側から、労使協定の過半数代表者の選出方法に関する規制や、協定内容の労働者への周知義務といった手続き規制の必要性を主張させていただきました。その上で、手続き規制に違反している場合は違法であり、手続き規制違反の中で締結された労使協定は無効だということを明確にしていただきたいと思います。

 先ほど、行政指導の対象に関し、「誰が見ても明らかに不合理な場合」という御発言がありましたが、過半数代表者の選出に関する手続き規制違反は、グレーではなく真っ黒だと思いますので、行政指導や改善命令などの対象にすべきであると思います。

 加えて言うならば、前回部会で委員から御指摘がありました通り、労使自治は大切です。その労使自治が、過半数労働組合がない派遣元企業において、期待された機能を発揮するためには、過半数代表者の選出が正しく行われていることが大前提です。また、 1 か月以下の労働者派遣契約が 4 割であるという実態を踏まえれば、労使協定の期間もある程度短く設定すべきです。労使自治が期待された機能を発揮するためには、前提条件が必要であると思います。

○守島部会長 他にいかがでしょうか。

○村上委員 先ほどの 6 ページの矢印についての確認です。派遣労働者については、労働者派遣法の中に均等・均衡待遇規定を設けた上で、「調停」についても規定を設ける改正をするのでしょうか。

 それから、高橋委員から御発言のあった 3 つ目の矢印にある行政 ADR の実務的な運用についてお伺いしたいと思います。現行法でも「調停」とは、紛争調整委員会では厳密な事実認定はしないで、紛争を簡易迅速に解決していくものと理解しています。そういうことからすると、今回均等・均衡待遇規定を行政 ADR の対象とする場合でも、待遇差について厳密に合理、不合理というところまで行政が認定するという話ではなく、「少し配慮したらどうか」というような解決をしていくのではないかと理解しています。その辺りについて、実務的に現在のパートタイム労働法、男女雇用機会均等法などに基づく「調停」ではどのような解決がはかられているのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 お尋ねの 1 点目です。派遣についても、今パート法にあるような紛争解決援助、労働局による調停の規定など、労働者派遣法に同様の規定を設けてはどうかという、今回の提案の法律上の形としては、そのような形を想定しています。

 それから、現在の調停の実務というか、短時間・在宅労働課から補足があれば後でお願いしたいと思いますが、行政 ADR ですので、もともと調停にせよ、あっせんにせよ、出頭義務が法律上掛かるわけではなく、また調停案なり、あっせん結果なりを受諾する義務が両当事者にあるわけでもないことから、調停委員、あっせん委員になっていただく先生は、事実認定をきちんとして法律上の白黒を付けるということよりも、お互いが受け入れられる、妥協できる解を模索するということを優先に運営いただいているケースが一般的かと思います。

 どうしても事実関係が納得できないとか、法律上の白黒を付けることに当事者がこだわりをお持ちの場合には、それは司法での解決に馴染むということではないかと思いますし、また行政 ADR の中で、むしろそこにおこだわりなのであれば、労働審判の利用を考えてはどうかというような助言をすることもある。このような実態ではないかと思います。

○守島部会長 他にございますか。それでは、論点 3 は意見が出尽くしたようですので、次に論点 4 「その他」に移ります。これに関して御意見等がございましたら、伺えればと思います。特にございませんでしょうか。

 それでは、論点 1 「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」及び論点 2 「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」について、前回言い切れなかった、若しくは後で考え付いたということがございましたら、是非お伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

○梅田委員 労使協定の要件の1つである「一般労働者の賃金水準」について、冒頭の事務局からの資料説明の中で、賃金水準に関する統計データの説明がありました。これについて意見を述べさせていただきたいと思います。

 今回、事務局が「一般労働者と賃金水準」のイメージとして示したものは、賃金構造基本調査と安定統計の生データであって、結局、「一般労働者の賃金水準」がどのような形で示されるのか、具体的なイメージが分からないのです。例えば、秘書、エンジニア、エンジニアの中では IT 関係やメカといろいろな業種があるかと思いますが、その中で 1 つでもいいので具体的な職種を例に取り、実際の「一般労働者の賃金水準」のイメージを示していただきたいのです。

 また、前回部会で労働側から、「一般労働者の賃金水準」は経験年数や勤続年数に応じて上がっていく水準が示されるべきと意見を申し上げました。そうした観点で今回事務局から示していただいた資料を見ると、職業安定業務統計は、あくまでもハローワークでの求人時点での賃金水準、つまり勤続ゼロ年数時点の賃金水準であって、勤続年数などを踏まえた統計数値ではありません。仮に職業安定業務統計を活用する場合でも、例えば、賃構のデータのカーブを参考にするなどして経験年数に応じた賃金水準が示されるべきであると思います。

○守島部会長 ありがとうございます。岸本課長、お答えになりますか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今の御指摘の点ですが、実際に賃金構造基本統計調査なりで目安をお示しするという場合に、この生データの区分ではちょっとおそらく粗くて、都道府県別と職種別のクロス、あるいはそれに勤続年数をクロスするといった加工が必要になるのではないかと思います。ただ、特別集計という手続が物理的には必要になってまいりまして、それが手続的には、他省庁との関係もあって簡単にできないものですから、本日はこのような生データがあると、これをクロスすればここに載っているデータからクロスして取れる数字が取れますということを御説明させていただきまして、具体的にどういうクロスのさせ方をして目安を作っていくかというようなことについては、厚労省で御議論いただきながら検討して、また施行段階で詰めさせていただければと思います。現時点でお出しできるものということで、恐縮ですが、今ある賃構、それから、職業安定業務統計のデータを示させていただいたところです。

○守島部会長 よろしいですか。他にありますでしょうか。

○高橋委員 今の件に関してです。どのような統計とすべきかという点は、施行段階までに検討していくべき点で、現段階において、まだ詰める段階にはないと思いますけれども、賃金構造基本統計調査を一つ取って見ても、派遣で言えば、旧 26 業務といったような業務ごとに全て賃金構造基本統計調査で取れているのかという、そもそもの問題点があると思います。

 事務局に御質問です。 26 業務全て個々に賃金構造基本統計調査で取れているのでしょうか。

 

○守島部会長 岸本課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 実際、賃構が、賃金統計の我が国においては一番詳細な優れたものであると思いますが、それにしても、カバー職種の限界、それから、カバーしている職種についても、その刻み方について、やはり賃構なりの刻み方をしておりますので、 26 業務の中にもカバーできていないもの、あるいは、その 26 業務が含まれているけれども、それと職種区分の仕方が合っていないものというのがあります。したがって、賃構と言えども、これが唯一、絶対の目安として使えるかというと、そこはやはり検討が必要ではないかと思っております。

○高橋委員 ありがとうございます。今、正に課長がおっしゃられたとおり、絶対的にこれだというマクロ統計は、この世の中には存在しないと思いますから、あくまでも行政が示すものは参考として、その参考データを活用しながら派遣元の企業において、労使で話合いをして、どのような水準にしていくのかということを労使協定で定めるといったような手続を踏んでいくということになるのではないかと思います。いずれ、それは施行段階で、再度、議論させていただきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。

○松井委員 関連の質問です。今回「一般労働者の賃金水準」のイメージを出していただきましたが、実際のデータの示し方には今後検討していく必要があると思います。その上で、実際に具体的な「一般労働者の賃金水準」が示された場合、労使協定では具体的な賃金水準が定められていくと思います。そのような中で、例えば、労使協定でこの職種は「時給 2,000 円以上」と決めた場合に、前回も質問したのですが、労使協定で定めた賃金額と、就業規則で定めた賃金額に齟齬があった場合はどうなるのか。また、実際、労使協定で定めた賃金額より低い賃金しか支払われていない場合は、法的にどういう整理になるのかを改めて確認したいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。では、課長、どうぞ。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今回の仕組みを御提案申し上げている事務局の考え方の整理ですが、就業規則における賃金の定めと、労使協定の定めに齟齬がある場合で、 1 つは、就業規則が実態としては使われていなくて、労使協定の方で賃金が決まっているというケースが 1 つあるとすると、この場合には、就業規則において、賃金の定めを置くことは労働基準法で義務付けられていることです。労働基準法で就業規則に、賃金の定めを書かなければならないという義務を履行していないというように解釈せざるを得ませんので、その場合には、労働基準法の違反の問題が発生すると思っております。

 一方、就業規則の方が実際には生きていて、労使協定の方がそれと違う内容があって、それは空文になっているとか、使われていないという場合には、今回の仕組みにおいては労使協定を締結して、それが適正な内容で実施されているということが派遣先均等・均衡とは別の選択肢を取る要件ですので、その要件を満たさないということになると思います。言わば、協定を適正に締結していることにならないと評価せざるを得ないということで、そうすると、法律の原則としては、原則である派遣先均等・均衡に戻るということになるかと思います。したがって、両方の内容が乖離していて、片方しか動いていなくて、片方が空文化しているという場合は、労基法違反なり、派遣法違反なり、どちらかの法律上の問題が発生するのではないかと思っております。

○松井委員 今の事務局からの御説明で言うと、「どちらかが機能していないケース」ということだと思いますが、例えば、労使協定では「時給 2,000 円」と書かれていている一方で、就業規則では「時給 1,500 円」と書かれている場合で、実際の賃金も「時給 1,500 円」しか支払われていない場合はどうなるのでしょうか。今の事務局からの御説明だと、労使協定は「時給 2,000 円」と書いてあるものの、実際には機能していないとみなして、原則の派遣先均等・均衡に戻るという整理になるのですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法律の適用関係としては、そのような形だと思います。ここはまた施行でも御議論もあるかもしれませんが、それを実際に是正していくときに、派遣先均等・均衡であればこういう額であると。それを救済していくのか、それとも、協定の要件をきちんと満たすように是正をしてもらって、協定に書かれている額が実際に払われるようにするという形で是正するのかというのが個別の事案によって、労働局と関係当事者の意思をよく聞きながら現実的に適切な解決をしていくという、こういう考え方も必要かもしれないと思っております。

○守島部会長 ありがとうございます。では、中野委員、どうぞ。

○中野委員 質問が変わりますがよろしいですか。均等待遇規定の規定要素について確認させていただきます。短時間労働者、有期契約労働者の均等の規定の要素は、職務内容と職務内容・配置変更範囲ですが、ガイドライン案を見ると、派遣元事業者については、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対して、派遣先労働者の同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならないとあります。実行計画の 7 ページの方も同様の記載になっているのですが、基本的には、今回の改正によりまして、派遣労働者に対する均等待遇については、職務内容と職務内容・配置変更の範囲が同一だけではなくて、その他の事情も含まれるということなのでしょうか。質問です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 この 12 月にガイドライン案を公表しまして、 3 月の実行計画の中でもガイドライン案ではこういう内容を記載したということを改めて紹介、整理しているわけです。 12 月の時点では、そもそも派遣先均等・均衡を原則にするのかどうかといったことも法律などの検討がまずガイドラインの案を作って、それから法律論の検討という順序だったものですから、全く法律論としてどうするか決まっていない状態でガイドライン案を公表いたしました。ですので、この時点で、政府が根拠とし得ると考えた議員立法の「職務待遇確保法」をベースに 12 月のガイドラインは書いております。これは当然、法律の枠組みが決まったら、ガイドライン案の派遣部分は実際にどのような形にしていくのか、ガイドライン案を正式なガイドラインにしていく過程で議論しなければいけないと思っておりました。

 今回、提案している法律の枠組みは、派遣先均等・均衡の中身は、パート・有期と横並びで、職務内容と職務内容・配置変更範囲その他の事情に照らして、不合理な待遇差にしないでくださいという考え方を派遣においても適用しようという提案としております。それと、もう 1 つは、労使協定方式の 2 つを用意しております。その法律の枠組みがそうなれば、それを前提にしたガイドラインが必要になります。

 ガイドライン案の派遣の部分についてどうするか、また法律が通った後の御議論になるわけですが、おそらく、理屈の整理からいくと、ガイドライン案の中で派遣先労働者と比較して、特に賃金部分について、こういう場合が問題となる事例とか、こういう場合が問題にならない事例と書いていくのは、「派遣先均等・均衡方式を使った場合は」ということになると思います。

 労使協定方式を使った場合も今回の提案では、給食施設や休憩室の利用などについては派遣先均衡としておりますので、そういった施設、福利厚生施設の利用に関する部分は、常に適用されるというような、項目によって、かつ、どちらの方式を使っているかによって、適用される部分が変わってくるという整理になるということが考えられるのではないかと思います。

○中野委員 おっしゃるとおりです。申し訳ないですが、ちょっと分かりにくい。まず、派遣先と同一の訓練を派遣元で実施することは不可能ですし、福利厚生が指す範囲が広すぎてどこまでを指しているか全然分からないので、非常に誤解を招くと思います。私が誤解してしまっただけかもしれませんが、このような曖昧な記載については外していただくよう要望します。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。他にありますでしょうか。

○高橋委員 

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 この件、ちょっとすみません。お役所的になるのですが、お手元にあるかどうか分かりませんが、 6 7 ページにかけてガイドライン案の紹介をしています。ガイドライン案の紹介の中に、今、御指摘のありました「派遣労働者の取扱」という文章があります。そこで派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じたという記述になっております。そこの記述も含めて全体がその前の箇所に「ガイドライン案の概要は以下のとおりである」となっております。あくまで、その実行計画のガイドライン案に関する記述は、昨年 12 月にお示ししたガイドライン案はこういう内容であるということを書いている、以上でも、以下でもない記述です。

 具体的に、派遣に関する均等待遇規定をどのような内容で設けるかというのは、法改正の議論の中で決めていくということになっております。実行計画の中では、派遣労働者について均等待遇及び均衡待遇を求める法改正を行うと書いてありまして、均等待遇規定の書き方をどうするか、パート・有期と同じような形にするのか、また別の均等待遇規定を考えるのかということについては特定しておりません。そこは今回の事務局の御提案では、パート・有期と同じような形での均等待遇規定という提案を申し上げているのが議論の流れです。

○守島部会長 よろしいでしょうか。では、田代委員、どうぞ。

○田代委員 前回の議論と一部重複するところもあるかもしれませんが、改めて意見を申し述べさせていただきます。まず、派遣先の労働者との均等・均衡方式ですが、社員の賃金情報の取扱いについては個人情報であるがゆえに、それを収集、加工する場合においては、情報の利用について追加で本人に利用許諾を得るなどの課題が考えられます。そうなると、派遣先企業側の労務管理のコスト、社員とのコミュニケーションコストというものはおのずと高まってくるかと思っています。

 加えて、制度変更等に関する情報を細かなものまでその都度、派遣先、派遣元で共有することを求められると相当の負荷となると思われます。また、派遣先は、機密情報を開示するからには、正当に派遣労働者の報酬に反映されているのかといったことについて、派遣元に情報開示を要求することも考えられます。したがって、派遣元に対しても、派遣先のそういった求めに対応するよう指針等で定める必要も出てくると考えられます。派遣先、派遣元のそれぞれに掛かるコストを勘案すると、派遣先としては、直接雇用した方がコストは小さくて済むので、結果として、派遣社員の活用が減っていくといったようなことを懸念いたします。そのように考えると、現場としては、労使協定方式の採用を検討しますが、本来、派遣契約は労使で自由に締結できるはずなので、なるべく労使の裁量の余地を残した簡素な制度となるようにお願いしたいと存じます。

 例えば、協定期間について、あまりにも短い期間で設定されると、何度も協定を結び直さなければならず、また、派遣労働者の長期的な育成、スキルアップが難しくなるといった弊害が生じます。加えて、協定期間に派遣契約期間を合わせるといった御意見もありましたが、派遣での働き方を選ぶ労働者にとって、望ましい状況にはならないのではないかとも思います。派遣労働者や企業実務に配慮した検討をお願いしたいと存じます。以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。御要望ということです。では、岸本課長、お答えになりますか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 個人情報保護の派遣先から派遣元に待遇情報を提供する際に、それが労働者の個人が特定されるような形で言えば、その人の給与明細を見せてしまうような形になってはいけないということは全くおっしゃるとおりだと思います。派遣先から派遣元への待遇情報に関しては、正社員の数が非常に少なくて、個人特定ができてしまう場合、あるいは逆に多くて、実務的に何か現実的にやり方を考えなければならない場合に様々あるかと思いますが、そこはやはり派遣労働者の適切な待遇決定に必要な情報であるかどうかという観点と、同時に企業実務が回るかどうかという観点の双方から望ましいやり方を、引き続き施行段階でも、様々なお知恵を拝借しながら検討させていただければと思っております。

 それから、変更の都度、待遇情報を提供するという点についても、できるだけ有期とパートと派遣が同じようなレベルのその保護を受けられるようにしたいというのが事務局の発想としてあります。パート・有期であればその使用者が同一人格でありますから、正社員の待遇を変更すれば必ずそれを知ることができるわけで、できるだけその状態に近付けたいと思いますが、そこも実務上の観点も含めて具体的な情報提供の在り方は施行段階で検討、議論をさせていただければと思います。協定の有効期間などの点もありましたが、いずれも、やはり派遣労働者の適切な保護と、実務が回るかどうかという観点の両方が必要なのではないかと思います。

○守島部会長 では、加藤委員、先にどうぞ。

○加藤委員 説明義務の部分について事業者が負うということは理解しますけれども、今もお話が出ていましたように、非常に理解がまだまだ薄い、同一労働同一賃金という言葉自体がまだ十分理解されてないようです。特に中小事業者を見ている中で、ここがこのまま進んでいくことになると、中小事業者は非常に混乱するのではないかと思われます。

同一労働同一賃金の問題もそうですし、個人情報の問題を例に取ると、個人情報保護法は今回改正されましたが、平成 19 年からの改正でどこまで十分に対応できていたかということ自体が非常に我々も危惧をしているところです。今回は 5,000 件という枠組みが全部撤廃されたということで、全ての事業者が対象ということになります。そうすると非常にその辺りの負荷も大きくなってくるということも含めて、十分な理解していただくということがまず大きな課題かと思っております。過度な条件というのは極力避けていただけないだろうかというお願いです。

○守島部会長 ありがとうございます。では、村上委員にお願いいたします。

○村上委員 論点案の 3 ページにある労使協定方式の件ですが、労使協定方式は、原則である派遣先均等・均衡からの除外を例外的に認める措置です。であるからこそ、労使協定が信頼に足る形で締結され、内容的にもきちんとしたものにすることが必要であると思います。過度な手続を課すということではなく、労使協定は手続き的にも内容的にもきちんとしたものにしなければならない、これが労働側の意見です。その点は、是非御理解いただきたいと思います。

 また、先ほど、梅田委員から「一般労働者の賃金水準」の関係で御意見を申し上げたところですが、労働側は現時点で特別集計までしていただきたいと申し上げているのではなく、どのように示すのかということのモデルを提示頂けないかということを申し上げているのです。数字は、×××円とかで構いませんので、どういう項目でどのようにして示すことができるかということを、部会の中で共通のイメージを作っておくことが今後の議論にも役立つと思います。その点は、御検討いただければと思います。

 続いて、労使協定の内容に瑕疵があるケースについてどのように考えるのか、どのようになっていくかということについて御質問いたします。論点案の 3 ページの 2) 123 3 つの労使協定の要件がありますが、例えば 2 の違反の可能性が高い派遣労働者の賃金は何年働いても何年勤続を重ねても 1 円も上がらないという内容の労使協定である場合や、 1 の違反の可能性が高い一般労働者の賃金水準について根拠のないような数字を使っている労使協定である場合は、明らかに認められないケースとして違法、無効であるとしておくべきではあると考えます。内容的に明らかにおかしい労使協定については行政はどのように判断するのか教えていただきたいのですが、行政取締法規としての側面からも指導の対象として是正を促すことが必要であるかと思います。

 また、前回、労使協定は行政届出を要件としていくことが必要ではないかという意見を申し上げましたが、適正な内容の労使協定が締結されるように誘導していくという意味では、労働者派遣事業適正運営協力員が各労働局で任命されています。労働者派遣事業適正運営協力員は職場実態についても熟知した人たちですので、そういった人たちも積極的に活用して適正な内容の労使協定が締結されるように誘導していただきたいと思います。そういった点も考慮いただきたいと思います。以上です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 労使協定に関連して、×××円でいいのでということについては、現時点でそのレベルで示すことができるかどうかも含めて検討させていただきたいと思います。

 労使協定の内容に瑕疵があった場合の行政の対応ですが、基本は、均衡待遇の問題について御議論をお願いした解釈が明確な場合は、行政としても指導・助言などをさせていただく一方で、グレーゾーンの場合には、そこは行政裁量でもって入っていくことは控えるという基本的な考え方であると思います。協定の具体的な要件の不備について、どういう場合が、誰から見ても×というか、と言えるかどうかという点については、更に詳細を施行段階でも検討させていただければと思います。

○守島部会長 では、中野委員、どうぞ。

○中野委員 グループに派遣会社を持っておりますのでその点も含め発言します。法律施行時期の件です。パート・有期と派遣を、もしかして同時にやろうとされているのではないかと思ったのですが、派遣会社は当然、派遣先の均等・均衡待遇への対応状況を見るわけです。そういう意味で、同時に実施した場合に、派遣業務が滞る可能性もあるのではないかという懸念があります。合理的対応として、先にパート・有期を先行させて、法律の成立は同時でもいいのですが、派遣だけ施行時期を変えることができるのかできないのか。また、派遣だけを遅らせるというように考えられないでしょうか。

○守島部会長 ありがとうございます。では、岸本課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 施行期日については、おそらく法案要綱をお諮りするときに、法案要綱の中で附則に施行期日を書くのが通例です。そこで御審議をお願いする形になるかと思います。現時点で行政として施行期日をどうするかは確たる決定はしておりません。

○守島部会長 よろしいですか。

○中野委員 実際に施行日を異ならせることができるのかできないのかということを確認したい派遣会社からすれば、自分たちは同時に対応していいのかどうかと当然考えるわけです。この部分についてもう少し御意見を頂ければと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法律論としては、「パート法」「労働契約法」「労働者派遣法」のおそらく 3 法の改正が発生すると思います。その改正の施行日を異ならせることも、同じにすることも両方とも技術的には可能です。その上で、政策論としてそろえるのか、分けるのかということになると思います。この点については、現時点でどちらとも政府としては今後、検討ということですが、異ならせる場合には、異ならせることによるメリットとして、よりパート・有期の動向を見た派遣側の対応ができるということがあるという御指摘かと思いますけれども。

 一方で、両方が施行されてしまえばそこは是正されるのですが、パート・有期だけ施行されて派遣が未施行という状態の間は、非正規雇用の労働力を見たときに、均等・均衡待遇義務がかかっている労働力と、かかっていない労働力というのが併存してしまう。それがかかっていないところにグッと利用圧力が掛かるのではないかといった点があるかもしれないと思います。そこら辺を異ならせるかどうかについて、一致させる場合、異ならせる場合の利害得失をよく考慮する必要があることではないかと思います。

○守島部会長 岩村委員、どうぞ。

○岩村委員 今の議論について少しコメントすると、派遣会社としては、まず第一に、派遣先均衡というのがいろいろ不安定であるのであれば、今回の労使協定方式を使えばいいので、その点に着目すれば別に施行日をずらす必要は全然ないだろうと思います。

 また、有期・パートに関して言えば、均等待遇とかそういったことによって全体の賃金体系を正社員も含めて見直すといったときに、そういう意味で不安定な状況になるのは確かなのですが、派遣先均衡ですので、当初決めた状態から派遣先の方が変更すれば、それに均衡するように変えればいいだけのことなので、別に困らないのではないかと。そういう意味では、あまり施行日をずらす必要はないかと思います。

 

○守島部会長 ありがとうございます。では、秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 すみません、遅刻して参ったので、これまでの論議の中で何か出ていれば重複なので失礼いたします。

 今、派遣先均衡の場合は労使協定でそれを回避できるというお話がありました。正に制度としては、そのとおりなのですが、ただ、労使協定が必ずしも整うとは限りませんので、これが不調に終わると自動的に、あるいは労使協定をしない不作為の場合は自動的に派遣先均衡になるということですので、必ずしも派遣先均衡を避けられる状態とも限らない。

 その関連で申し上げると、前回か前々回に御質問したのですが、派遣先均衡で労働条件が変動する場合に、いわゆる就業規則の不利益変更との関連はどうなのだというお話を申し上げたところ、事務局から、派遣先均衡の場合と労働条件の不利益変更は別個の話で、独立して考えるというお話がありました。

 ただ、今申し上げたように労使協定が整わない場合は自動的に法律の規定によって派遣先均衡になり、それに従って労働条件が変動するという法制度です。法制度に則ってやった結果が不利益変更だと言われたら、どのように賃金を払っていいのか分からない状態が可能性として存在するということです。したがって、程度の問題はあるのでしょうが、いずれにしても、少なくともこの制度によって派遣先均衡で労働条件が変動した場合は、就業規則の変更の合理性が補強されるぐらいの解釈がないと、制度の安定性が保てないのではないかと思いますがいかがでしょうか。

○守島部会長 ありがとうございました。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今、御指摘の点ですが、民事問題でもあり明確に行政解釈のようにこうなりますと申し上げることは性格的に難しいです。特に、前回の常用型を念頭に置いての御議論だと伺いましたので、常用型を前提に考えると、やはり常用型において派遣先の変更によって、それを理由として待遇を引き下げる、引き上げる場合は問題にならないわけですが、引き下げる場合にそれが不利益変更に当たるのかどうかということは、例えば、就業規則において賃金の定め方をその場合にどのようにしているのか、就業規則において、そもそも派遣先との均衡によってその都度に定めますとなっていて、それが発動されて上がったり下がったりしているという場合であれば、それは不利益変更ということにはならないのではないか。

 実は、これは前回に岩村先生からそういう考え方の御示唆があった点です。ということも言えるかと思いますので、一律に常用型の場合に派遣先均衡による上がり下がりが不利益変更に当たるのかどうかというよりは、派遣会社が就業規則で賃金をどのように定めているのか、派遣先均衡による変動を織り込んだような定めになっているのかどうかということを見なければいけないという意味で、個別の実状によるところがあるのではないかと思っております。

○守島部会長 よろしいでしょうか。他に何かございますか。論点 1 2 、若しくは 3 4 でも構いません。

○松浦委員 本日、新しく出していただいた賃金水準に関する統計データに絡んで、確認したいことが何点かあります。まず、 1 点目として参考資料の 17 ページで、賃金構造基本統計調査、職業安定業務統計、いずれも雇用形態のカテゴリーが制約されていて、どこと比べるのかというところがなかなか難しい、ドンピシャというところがないのではないかと思います。まず、比べる選択肢として、それぞれどういうカテゴリーになっているのかという事実関係を確認したいというのが 1 点目です。

2 点目として、その選択肢の中から一般労働者の概念について、ここでは「正社員・正職員」、「正社員」のデータを一般労働者の賃金水準として参考としてはどうかと書かれています。なぜ、ここで「正社員・正職員」、「正社員」のデータを選択されようとしているのかということをお尋ねしたいです。

3 点目として、同じ労使協定の基準の 1 のところですが、「一般の労働者の賃金水準と同等以上であること」という、この同等というのは解釈が難しいところでもあります。また、他については、例えば、派遣元の正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないことという表現になっているのですが、ここだけを同等以上という表現にされたのはなぜでしょうか。この 3 点について可能な範囲で御教示いただけるとありがたいです。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず、雇用形態の選択肢としては、御質問の趣旨を誤解しているかもしれませんが、賃構において、 1 つは雇用形態として正社員と正社員以外で取ることができ、労働時間に着目して一般労働者と短時間労働者で取れる。この 2 つを取ることができ、また、特別集計をすれば、この 2 つをクロスすることも可能です。

 職業安定業務統計においては、まず、フルタイムとパートに分かれてフルタイムの中が正社員と正社員以外に分かれているという状況です。フルタイムの正社員、フルタイムの正社員以外、パートタイムという 3 つの選択肢が統計としてあります。今回、それぞれの統計における正社員のデータを一般労働者の賃金水準の参考としてはどうかとしておりますが、これは、今回、均等・均衡ルールを導入することでパート、有期、派遣、共通として大きな政策の目的としている正規、非正規間の待遇格差の是正を果たしていこうという問題意識ですので、比較対象の正社員としているところです。

 また、なぜ、同等以上なのかということですが、考え方として 1) の派遣先均等・均衡というルールを適用しない、代替的なルールとして労使協定方式があります。そうすると、代替するに足るだけの水準であることが求められるのではないか。世の中の様々な派遣先、大企業もあれば中小企業もあり、派遣先の賃金水準が高いところもあれば低いところもあります。広く満遍なく派遣されれば、その都度、派遣先との均衡を図れば、中間的なところに平均として収斂していくのではないか。

 それを代替するルールとして考えると、同等以上というのは、例えば、賃金構造統計基本調査と職業安定業務統計で仮に同じ職種でも同額は出てまいりませんので、参考値として示したからといって、 1 円単位で何円以上というものにはならないかもしれませんが、しかし、集計された一般労働者と同等以上であることを求めるというのは、やはり派遣先均等・均衡ルールの代替に足る同じような保護水準を果たすものとして、必要ではないかという考えで提案しております。

○松浦委員 ありがとうございます。今、御説明いただいたように、同等というところの解釈は多少柔軟になるのかもしれないのですけれど、同等以上というと、要はそこが最低ラインになるとも読めます。

一般的な賃金水準ということになると、通常は正規社員が一番高くて、次が契約社員、若しくは派遣社員で、パート労働者が一番低いという現状になっていると思います。 直接雇用の契約社員については、同じ仕事をしている正社員との賃金で不合理な格差かどうかということが問われるのに対して、派遣社員についてのみ、正社員と同等以上と設定されたロジックがよく理解できなかったものですから、お尋ねしました。

 また、同等が柔軟に解釈されるのであれば、あまり問題にならないのかもしれないのですが、いくら特別集計をされて細かい数字を出されたとしても、あるいは旧 26 業務の職種別の賃金水準が出されたとしても、実際の派遣社員の職務は、例えば、複数の業務にまたがっているとか、あるいは 5 号業務がほとんどなのだけれど別の業務もしているとか、いろいろなパターンがあり得ます。同等の解釈が硬直的になされると、現場の運用が回らなくなるのではないかという懸念もあり、先ほどのような質問をさせていただきました。現時点では今の御回答で結構なのですが、そういう危惧は持っていた上での質問だということを、御理解いただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

○秋田委員 今の関連で質問いたします。「正社員・正職員」は、データ的に総合職と一般職が混在していると見てよろしいのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 混在していると思います。

○秋田委員 そうすると、職務内容や配置変更が当然違うというものたちがこの中に入っているわけです。公のデータはこれしかないみたいな感じでは、行政サービスとしていかがなものかと思いますので、できれば、こういう統計調査も更にそういうところを深掘りして何かデータ的に取るという、項目を増やすということはあり得ないのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 統計自体が、賃金統計についてよりきめ細かな把握をすることが、その労働政策なり労使の実務に役立つのであれば、統計の在り方として検討する価値がある論点だと思います。一方、一般労働者の賃金水準について、これもその 1 つの既存統計の中で使える目安という位置付けですが、これについてはミクロ的に総合職と一般職の違い、職務内容の違い、職務内容や配置変更範囲の違いを見て、適正な水準にするという考え方を取るならば、派遣先均衡・均等で待遇決定をした方が、そういう考え方からは親和的なのだろうと思います。

 労使協定方式は、その派遣先均等・均衡が労使ともに納得するというケースもあると思うのですが、一方で待遇の変動などを吸収して、滑らかに待遇改善を図るという道を選びたいという労使に選択肢を開くものなので、そのときに、ある程度、個々の派遣ごとにきめ細かく総合職的な仕事をするからとか、一般職的な仕事をするからという形で比較対象を分けるよりも、標準値というか、そういう世の中の一般労働者の標準相場に照らして、同等以上が確保されていることを要件とすることの方が馴染むのではないかという提案です。

 ただ、これも今回決め打ちで、この統計 2 つを使うとか、どのようにクロスするとかいうことまで決めていただこう、我々も決めようということではありません。今の御指摘もございますし、それ以前にもこの部会でいろいろな御指摘を頂いておりますので、それも含めて施行段階も交えて、また引き続き検討させていただければと思います。

○秋田委員 是非、議論を踏まえて有用なデータをお願いしたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に何かございますか。

○梅田委員 年休の取扱いについて 1 つお願いさせていただければと思います。派遣先労働者との均等・均衡待遇を取る場合、法定外休暇について派遣先労働者と合わせることとなると、派遣先が変わるごとに休暇制度が変わるなどして、かえって派遣労働者の計画的な休暇取得が難しくなる場合もあります。特に有期派遣労働者の場合はいくつかの派遣先を数箇月ごとに変わることもあるので、こうした場合を考慮して、派遣労働者として働く方が安心して計画的に休暇を取得できるようにしていただきたいと思います。以上、お願いです。

○守島部会長 ありがとうございました。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法定外休暇に関する御指摘でしたので、派遣先均等・均衡方式を取る場合には、法定外休暇について確かに行った先によってどのような法定外休暇制度を持っているのかによって、派遣労働者もどのような休暇を取ることができるのかが変わってくることがあります。

 その派遣先独特の法定外休暇制度は、その派遣先に行っている間に希望に応じて、あるいはその会社の利用条件に応じて取れるようにということが基本だと思います。派遣の場には、派遣先と派遣元にもコーディネーターがいて、派遣先といろいろ話し合って調整されていると思います。派遣先で使えることになっている休暇制度は、適正な利用条件を満たしているのであれば派遣労働者も享受できるように、元先でよく話し合っていただくことが大切ではないかと思います。

○高橋委員 派遣先均等・均衡方式を採用した場合の派遣先からの情報提供の義務に関してです。先ほど田代委員が個人情報の件に言及されましたが、必ずしも派遣先から提供される賃金等の待遇に関する情報は、特定社員の情報に限らず、雇用管理区分ごとの情報でも可とするべきだと考えるというわけです。派遣先の雇用管理区分ごとの賃金等に関する待遇データ情報等は、一般的には対外的に公表していない大変重要な情報です。これが目的外使用ということになると大変な問題が生じてくるわけです。

 もちろん、派遣法に秘密を守る義務が第 24 条の 4 で規定されているのですが、まず、私の質問は、今回、仮に派遣先に情報提供義務を課した場合の目的外利用の禁止規定が、第 24 条の 4 で読めるのかどうかということについて、質問させていただきたいと思います。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御指摘のとおり、派遣元事業主等の秘密保持に関する規定が第 24 条の 4 にあります。これは、もともと労働者派遣事業の在り方として、派遣労働者を通じて派遣先の営業上秘密等に触れる機会があるということで、特別に義務規定が設けられた経緯があります。おっしゃるような派遣先の待遇情報についても、公表されているようなものであれば格別ですが、そうでなければ第 24 条の 4 で保護される秘密に該当すると解釈しております。

○高橋委員 そうであったとしても、第 24 条の 4 があるからそれでいいのだとするべきではなく、派遣元指針等で派遣先から得られた待遇等に関する情報の取扱いについて、しっかりと規定を設けていくべきであると考えます。

○守島部会長 ありがとうございました。他に何かございますか。

○中野委員 少し関連してです。人を信用していないようで申し訳ないのですが、今のお話で、派遣、パート、有期も全て説明責任があるので説明することになる。その内容についても同じように情報取り扱いの規定を設けなくて大丈夫なのでしょうか。今、ネット上には情報が出ていく中で、本人の説明に限って使うのはまだしも、そこで知りえた情報をネット等に流されてしまう恐れがあると思うのです。あくまでも、現行の個人情報保護法の範囲で守られているとするものなのでしょうか。質問です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 説明義務のお話ですので、会社が本人待遇の理由や待遇差について労働者に説明した場合に、それを労働者が SNS 等で発信してしまったらどうなのかという問題かと思います。この問題は、当然、全く放置であっていいという問題ではないのだろうと思います。労働者に対して秘密保持義務を課す、そこで会社の商談に関する情報を SNS に載せてはいけないというルール作りが、各企業でなされていると思います。そういう中で、みだりに社外に漏らしてはいけない情報の 1 つとして、待遇情報などもどのように取り扱っていくか、各者の労使で話し合っていただいて社内のルールを整備していただくという問題なのではないかと思います。

○守島部会長 よろしいですか。他に何かございますか。

○松浦委員 先ほどの御議論の中に出てきた点と、前回申し上げた点について、確認というか質問です。 1 つは、法案の議論のときで良いのかもしれないのですが、派遣の場合は、三者関係ということで、有期の規制と派遣の規制の両方が掛かってくるケースが出てまいります。さらに、派遣先均衡と派遣元均衡の両方の規制が掛かってまいります。

結果として、おそらく特にいくつかの手当で解釈が問題になるケースが出てくると思います。例えば、手当が派遣先にあった場合、あるいは派遣元にあった場合、いろいろなケースがあって、どちらに合わせれば正しいのかということに迷うケースが、相当出てくるのではないかと考えております。どこかのタイミングで結構ですので、そういうケースを列挙していただいて、議論の場を設けていただけるのかどうかということが、 1 つ目の質問です。

 もう 1 つは、これは質問というか確認に近いのですが、先ほどもおっしゃっていただきましたが、同一労働同一賃金ガイドライン案の件については、私が参画していた有識者検討会でも随分その位置付けについて御議論があったかと思います。本来、法案が通って法律ができて、その後に議論がスタートする行政指針の案が、政治的な御判断で先に出たのだということは承知しております。ただ、あくまでもそれは確定ではなくて案であって、法案が今回の議論を踏まえて通ったその後に、もう一度行政指針案についての議論があって、その行政指針案の議論のときには変更の余地があるものだと理解しておりますが、それでよろしいでしょうかという質問です。よろしくお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず、 1 点目ですが前回も御指摘、御質問を頂き、まだ整理中で申し訳ございません。派遣の場合にパートタイム労働法、有期契約に関するルール、派遣労働に関するルールが重複して適用される場面が出てきて、その場合に解釈の優先順位なりをどのようにするのかという点が、論点ではないかという御指摘かと思います。

 この点については、現在のパートタイム労働法と労働契約法も法律上適用関係を除き合うような関係としては整理しておりませんが、派遣が入ることによって、より複雑化しますので、解釈の整理については引き続き検討して、またこの場でも御議論いただけるようにしたいと思います。

 ガイドラインの性格ですが、これは先生がおっしゃるとおり、あくまで政府は案として出しております。ガイドライン案の前文にも記しているところですが、今後、関係者の御意見や法案が国会に出る段には、国会審議での様々な御指摘なども踏まえて正式なものにしていく、プロセスを経て案が取られていくという手続が想定されておりますので、またその中で様々な御議論をしていただくことになると思います。

○守島部会長 他に何かございますか。

○中窪委員 今の質問を聞いた感想みたいなものです。先ほど松浦委員がおっしゃった 1 点目は重要なことで、パート・有期と同じような形で派遣についても均等・均衡と言っておりますが、そこで言う均等・均衡の意味が問題です。本来は派遣であることと直用の人との関係のはずなのですが、その向こうにまた有期・パートと正規との関係が更に広がって、これは前回のテーマでもあります。

 その辺りが、働き方改革実行計画では非常にさらっと書いてしまっています。 1 で均等待遇及び均衡待遇を求める法改正を行うと言い、他方で具体的な 4 で協定を満たした場合には例外とするとして、協定の内容のことをいろいろ書いているものですから、そこで言う一般の労働者はどういうことなのかということが、実は今ひとつはっきりしない。先ほどのように問題になってきますので、もう少しここをきちんと詰めないと、実際うまくいかないのではないかという気がします。これは感想ですが、先ほどのお答えを聞いていて改めて思ったものですから、またよろしくお願いしたいと思います。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

○高橋委員 本日の冒頭に冨田委員が御指摘された点についてやり取りがあったのですが、私は十分に聞き取れなかったので、理解が十分ではないかもしれません。今日の 6 ページの最初の矢印に関わるところの、行政による履行確保措置の関係のやり取りだったのではないかと思います。冨田委員の御指摘は、派遣先に対する行政による履行確保の関係だと理解しました。

 派遣先均等・均衡方式を取る場合、前回の論点でも出されておりましたが、派遣先が情報提供をしなければ、そもそも派遣契約を結べないという仕組みになっています。そもそも派遣元への行政措置により、対応の是正が図られる部分がかなりあるのではないかと考えます。したがって、派遣先に対して決して一切の行政措置を講じるべきではないということは主張しませんが、派遣元が求めても、派遣先が全く情報提供しないというものに、限定的に考えるべきであり、幅広く派遣先に対して行政により履行確保を行っていくということについては、私は疑義があるということは申し上げておきたいと思います。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。他に何かございますか。

○岩村委員 今日の論点について、大体、議論が出尽くしたという前提で、多分、次回以降は建議の話に入るのかと思いますので、私の要望を 2 点申し上げたいと思います。

 第 1 は、いずれも既に申し上げたことではありますが、今回の同一労働同一賃金の議論をやっていくということは、結局のところ企業における正社員と非正規を含めた賃金体系全体をどのようにするのかという話であり、そのためには労使の自主的な話合いが非常に重要であると考えております。

 そういう点で、今回の法律に盛り込むというのはもう無理だというのはよく分かっているのですが、とりわけ非正規の労働者の意見が、そういう賃金体系の見直しに反映されるような仕組み、具体的には労働者代表制とかについての今後の道筋なり、何かの言及なりというものを建議の中に、是非、盛り込んでいただきたいということが私の要望であり、意見です。

 もう 1 点は、これも既に申し上げたとおりですが、企業全体の賃金体系の見直しというものも、大企業のみならず中小企業も含めてスムーズに、かつ、混乱なく更に紛争も起きないような形で進めていくためには、もちろん、法施行までのという期限は付きますが、やはり一定の計画的な進行を考えるべきではないかということが、私の従前からの意見です。ですので、計画法というところまで言おうとは思いませんが、計画的な進行を図れるような何らかの仕掛けを考えられないか、その点も建議の中で何か言及しておいていただけるとありがたいかと思います。

 少し気になったことは、労働局による助言・指導は普通何もしないと改正法を施行してからでないと助言・指導が動きません。したがって、同一労働同一賃金の助言・指導は改正法施行後にならないと動かないとなってしまうのですが、それでは何か変なので、少しそこの点はスムーズに進ませるための何らかの仕掛けの規定が、改正法の本体の施行の前に何かあった方がいいのかなという気もしながら、議論を伺いつつ考えていた次第です。そういう私の意見、コメントだけ最後に申し上げておきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます、非常に重要な御意見です。他に何かございますか。

○中野委員 全く違う話ですが、今、移行期間とはいえ派遣会社は許可制になり、運用面でいろいろな規制が強化されてきています。派遣会社には、当然、想定される経費増もあれば、先ほども話に出ていますが企業の直接雇用が進むだろうとか、経営環境の見通しが立たない状況になると思われます。あまり派遣会社の数が減っていないという実態はデータで知っているのですが、結果的に派遣業界がどのようになっていくのかということも、話の中に入れておいていただきたいという意見です。

○守島部会長 ありがとうございます。他に何かございますか。よろしいですか。それでは、議論も出尽くしたようですので、これで終わりにさせていただきたいと思います。最後に次回の日程等について、事務局からお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 次回の同一労働同一賃金部会の日時、場所については調整中ですので追って連絡いたします。

○守島部会長 これをもちまして、第 4 回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会を終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表の松井委員、使用者代表の田代委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、長時間どうもありがとうございました。


(了)

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