ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(労働条件分科会・職業安定分科会・雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会)> 第3回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会(2017年5月16日)




2017年5月16日 第3回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会

職業安定局

○日時

平成29年5月16日(火) 13時00分~16時00分


○場所

東京都千代田区霞ヶ関1-3-1
経済産業省別館 1111各省庁共用会議室(11階)


○出席者

【公益委員】

岩村委員、武田委員、中窪委員、松浦委員、守島委員、山田委員

【労働者代表委員】

梅田委員、小原委員、冨田委員、松井委員、宮原委員、村上委員

【使用者代表委員】

秋田委員、加藤委員、小林委員、高橋委員、中野委員

○議題

・同一労働同一賃金に関する法整備について

○議事

 

○守島部会長 定刻より少し前ですが、ただいまから第 3 回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会を開催いたします。本日御欠席の委員は、使用者代表の田代委員です。公益代表の岩村委員、武田委員、使用者代表の小林委員は所用のため途中退席をされる予定です。なお、中窪委員におかれましては、今回は初回の出席となりますので御紹介いたします。

○中窪委員 一橋大学の中窪です。 2 回まではどうも失礼いたしました。今日からまた追い付いていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

○守島部会長 よろしくお願いします。それでは、事務局から定足数の報告を頂きたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第 9 条で、委員全体の 3 分の 2 以上の出席、又は公労使各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされていますことを御報告申し上げます。

○守島部会長 ありがとうございます。冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきます。

 議事に入ります。まず事務局から資料について御説明いただき、その後、各議題について御議論を頂きたいと思います。事務局から資料について御説明をお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 本日は資料 No.1 と資料 No.2 2 点の資料を御用意しております。前回、前々回と短時間と有期について御議論いただきましたが、今回からは派遣労働者の問題について御議論をお願いしたく思っております。資料 No.1 が派遣労働者関係の論点 ( ) です。

 まず、資料 No.1 を御説明します。「論点 ( )( 派遣労働者関係 ) 」と題しまして、また、その中で、四角囲みの 1 から 4 まで論点を分けております。その構成は、働き方改革実行計画の構成をなぞった形としております。

 四角囲みの 1 番、「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」です。箱の中に、働き方改革実行計画の関係部分の抜粋をしておりますが、この点も含めて、その後の矢印部分の事務局提案に触れておりますので、事務局提案の部分を御説明します。

2 ページです。最初の矢印ですが、現行労働者派遣法の仕組みとして1~3があります。1が派遣先の労働者の賃金水準との均衡、2が同種業務に従事する一般労働者の賃金水準、3が派遣労働者の職務内容、職務の成果等という要素を 3 つ挙げまして、これらを勘案して賃金決定を行う配慮義務の規定が現在、労働者派遣法にはありますが、法的には配慮義務にとどまっている現状です。これに対して、派遣労働者の実際の就業場所である派遣先の労働者との均等・均衡が重要な観点であるということを、まず事務局提案部分で挙げております。

 その上で、「しかしながら」としまして、派遣労働者について、派遣先の労働者との均等・均衡だけで賃金決定をするという仕組みにした場合、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わって、所得、生活等が不安定になるといった問題や派遣労働者の段階的・体系的なキャリアアップ支援と不整合な事態を招くといったこともあり得るとした上で、「こうした状況を踏まえ」というところの 1) 2) ですが、 1) が派遣先の労働者との均等・均衡待遇、 2) が労使協定による一定水準を満たす待遇決定による待遇改善、この 2 つの方式を選べるようにしてはどうかというのが事務局提案のまず第 1 点です。

 その上で、次の矢印ですが、「具体的には、以下のような制度設計とすることが適当ではないか」としている部分です。 1) 2 つの方式の 1 つ、派遣先の労働者との均等・均衡方式です。これについて、まず i) ですが、派遣労働者と派遣先労働者の待遇差について、前回、前々回で、短時間・有期関係の均等待遇規定・均衡待遇規定について御議論いただきましたが、それと同様の規定を設けた上で当該規定によることとするというのが第 1 点です。パート・有期の均等待遇規定・均衡待遇規定に関する論点は、その下の箱の中に「参考」としてお示した通りです。御覧いただければと思います。

3 ページです。 ii) として、派遣元事業主が、 i) の規定に基づく義務を履行できるよう、派遣先に対し、派遣先の労働者の賃金等の待遇に関する情報提供義務を課すこととしております。派遣労働の場合、直接雇用のパートや有期と異なる 1 つの特殊性として、パートや有期の場合には、その比較対象となる側と待遇改善を図られる側の双方が同一人格に雇われているわけですが、派遣の場合にはそこが異なってきますので、両者の間での情報連携の仕組みが要るのではないかという問題意識です。また、待遇情報の提供義務に関して、まず時系列で言えば、労働者派遣契約を締結するという交渉をするときに派遣先から待遇情報をいただくというのが出発点ですが、その他に、労働者派遣が行われている途中で、派遣先の労働者に待遇の変更があった場合があり得ると考えられます。そのような場合にも待遇情報の提供が必要ではないかということで、括弧書きで ( 提供した情報に変更があった場合も同様 ) としているところです。

 また、派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は労働者派遣契約を締結してはならないこととすることとしております。これは若干補足をさせていただくと、この派遣先からの待遇情報ですが、やはり時系列では、最初に活用される場面は、労働者派遣契約の締結の話合いをしている過程で、派遣先から待遇情報を派遣元に送っていただいて、派遣元はそれを見て派遣労働者の待遇を考え、それとの兼合いで派遣料金を考えて交渉するというような流れが想定されると考えております。このため、労働者派遣契約の締結交渉時に待遇情報が確実に来るようにするという観点から、情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならないという仕組みとしてはどうかという提案としております。

 類似の仕組みとして、現在、労働者派遣法で派遣期間の制限に関する規定があります。派遣期間の制限について、何年何月を過ぎて、派遣先から派遣を受け入れると、その派遣期間の制限に抵触してしまいますという、派遣法上「抵触日」と言っておりますが、これを派遣先から派遣元に通知していただいて、その通知が来るまでは派遣契約を締結しないでくださいというのが今の派遣法のルールです。時系列、流れとしてはこれと同じような形がなじむのではないかということで、これを参考とした次第です。

 次に、 2) 労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式という項目です。これについては、派遣元事業主が労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表と話し合っていただいて、以下の要件を満たす書面による労使協定を締結して、当該協定に基づいて待遇決定を行うという方式を第 2 の方式として認めてはどうかという提案です。一定の要件として1~3の 3 つの要件を挙げております。1同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準と同等以上、2段階的・体系的な教育訓練等による派遣労働者の職務内容、職務の成果・能力・経験等の向上を公正に評価し、その結果を勘案した賃金決定を行う、3賃金以外の待遇についても、例えば、派遣会社の方で持っている福利厚生施設などといったものについても、派遣元の正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないことという提案です。

 この後に、ただし書きがあります。 2) では、 1) の原則に対する例外として、この労使協定方式というものを提案しているわけですが、ただし書きでは、一定の待遇、具体的には派遣先方式によらなければ実質的な意義を果たせない待遇として、例えば、食堂や休憩室といったものについては、いくら労使協定を結んでも、派遣会社の本社の食堂に食べに来てくださいというわけにも現実にはいかないと考えられますので、労使協定による待遇決定方式の対象にしない。したがって 1) の方に戻るということにしてはどうかという提案を併せてしているところです。

 次の矢印は、派遣料金の設定に関する項目です。上記 1) 2) の履行に際して、当然、派遣元事業主にとっては派遣労働者の待遇の原資は派遣料金ですので、派遣先に対して派遣料金の設定に際して配慮する義務を課してはどうかという提案です。なお、「※参考」として、現在の労働者派遣法に基づく派遣先指針を記載しております。派遣先指針で求めているような、この通りというわけではありませんが、イメージとして参照いただければと思います。

4 ページの次の矢印です。これはパートや有期とも共通する論点ですが、派遣労働者の均等待遇規定・均衡待遇規定等について、現在、政府が昨年 12 月に法律に根拠をまだ持たない形でガイドライン案をお示ししているところですが、法律にガイドラインを策定する根拠を位置付けて、法律に根拠のある正式なものとしてガイドライン案を位置付けていくための根拠規定を設けてはどうかという提案です。

 続いて、四角囲みの 2 番、説明義務に関してです。説明義務に関しても、実行計画の記述を箱の中に抜粋しております。その上で矢印の提案部分ですが、まず、現行の労働者派遣法の説明義務について、 4 ページの一番下の矢印から冒頭数行で説明しており、12と 2 点あります。1が雇用しようとするときの待遇内容等に関する説明義務、2が派遣労働者からの求めに応じての待遇決定に際しての考慮事項、「こういうことを考慮してあなたの待遇はこう決めています」という説明義務、この 2 点があります。おおむね、現在パートタイム労働法で設けられている現行の説明義務と似通った水準となっております。これについて、パート・有期でも同様の議論を頂いたところですが、説明義務の強化として、派遣元に対して短時間・有期と同様の説明義務・不利益取扱禁止を課すことが適当ではないかとしております。

 「同様の」の中身については、次の四角囲みの中の※を御覧ください。パートタイム労働法の現行の説明義務を記載した上で、パートタイム労働者・有期契約労働者共通に、正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等についての説明義務を課してはどうかとしております。同様に、派遣先の労働者との待遇差の理由について説明義務を課すこと、それから、説明を求めた場合の不利益取扱禁止を課すことについてパート・有期と同様の扱いとしてはどうかという提案です。

 次に 5 ページの矢印です。これも説明義務の関係ですが、若干、労働者派遣独特の論点です。パート・有期の場合に、雇入れ時の説明義務というものがありますが、労働者派遣の場合には、登録型派遣のときには雇用の時期と労働者派遣をされる時期というのが時期的に隣接しますが、常用型派遣、無期雇用派遣の場合には、派遣会社に雇用されるタイミングとそこから派遣されるタイミングは一致しませんので、パート・有期において雇入れ時の説明義務として求めている内容を、労働者派遣においては雇入れ時プラス労働者派遣をしようとするときも加える必要があるのではないかという提案です。

 四角囲みの 3 番です。「行政による裁判外紛争解決手続の整備等」という項目です。働き方改革実行計画の関係部分の抜粋の後で、ページ数としては 6 ページにわたってからになります。まず、ここでも現行の労働者派遣法がどうなっているかを冒頭に書いております。大きく分けて、対派遣元と対派遣先とありますが、派遣元に対しては、現行法では、報告徴収・指導・助言・改善命令・事業停止命令・許可取消しの規定があります。派遣先に対しては、報告徴収・指導・助言・勧告・公表の規定があります。これを前提にして、上記の 1 番の司法判断の根拠規定の整備という均等・均衡待遇の問題、それから、 2 番の説明義務についても、これらの違反に対しては、それぞれの規定の趣旨に応じながら、現行労働者派遣法のこれらの履行確保措置の対象としてはどうかという提案です。

 なお、補足ですが、当然、現在の労働者派遣法においても法違反があった場合に、その違反の程度や法益侵害の重大性などを考慮して、指導・助言から、一番重い場合には許可の取消しという様々な行政措置を使い分けているところで、今回新たに議論をしております均等・均衡の問題、説明義務の問題についても同様の運用をすべきものと考えているところです。

6 ページの 2 つ目の矢印です。派遣労働者について、現在、パート・有期・派遣と横串的に見たときに、パートタイム労働者のみに労働局による紛争解決援助や調停委員の先生による調停の仕組みが規定されている現状にあります。これについて、派遣についても同じような紛争解決援助や調停が受けられるような整備をしてはどうかというのが、ここの矢印での提案です。

 次の「その際には」という矢印です。これは前回、パート・有期の関係で御議論いただいた論点と平行移動してきたような論点ですが、短時間・有期契約労働者と同様、均衡待遇規定の行政措置の在り方として、均衡待遇規定の中で解釈が明確でないグレーゾーンの場合、例えば、基本給の待遇差について職務内容その他に違いがあって、それが待遇差としては 100 70 であったり、 100 80 であったりする、それが不合理と言えるかどうかというような判断については、行政官がパッと行ってパッと判断を下すという性格のものではないだろうということで、報告徴収・指導・助言等の対象としないという一方で、解釈が明確な場合、これは前回の御議論になった点で申し上げれば、例えば、ある事業所でパート労働者に通勤手当が払われておらず、会社にその事情を聞いたところ、「正社員ではないからです」という答えが返ってきたというようなケースが議論になったかと思いますが、そのような、同じような意味で解釈が明確な場合は、派遣においても均衡待遇規定に関して行政措置の対象としてはどうかという提案をしております。また、行政 ADR についても、パート・有期の回と同様、均等のみならず均衡待遇についても救済対象としてはどうかという提案をしているところです。

7 ページ、論点の四角囲みの 4 番の「その他」です。これもパート・有期の回にも似たような論点がありましたが、パートタイム労働法には 1 番から 3 番まで取り上げなかった細かな規定が種々あります。国によるパートタイム労働対策の基本方針の策定や、就業規則の作成・変更時に労基法上義務付けられている全従業員の代表者の意見徴収とは別に、パートタイム労働者の代表の意見徴収をしていただくとか、通常の労働者への転換措置として、例えば事業所内に正社員募集の情報を周知していただくといったことの規定がありますが、これも 3 つの非正規雇用形態を横断的に、できるだけ同じような待遇改善措置を適用していくという観点から、派遣労働者についても同様の措置の適用を検討してはどうかという観点からの提案としております。

 ただ、労働者派遣制度の場合には、例えば、パートタイム労働法で、相談体制の整備や雇用管理者の選任といった規定がありますが、これは現在の労働者派遣法の、例えば、派遣元責任者制度などによって、名前は違いますが実質は同じことが担保されていると考えられますので、現在の労働者派遣法で拾えていないと考えられる就業規則の作成変更時関係の規定のみを対象とすることとしてはどうかという提案としているところです。

 以上が事務局が実行計画をもとに御議論いただくことをお願いする項目として挙げた論点 ( ) です。なお、労働者派遣については、今回と次回も、引き続き、御議論を頂戴できればと思っておりまして、本日は、まずは四角囲みの 1 番の司法判断の根拠規定、四角囲みの 2 番の説明義務の関係を御議論いただければと思っております。

 次に、資料 No.2 です。これは労働者派遣に関する現行制度を中心とした参考資料集です。 1 5 ページはパート・有期の回にお出しした参考資料と同じで、パート・有期・派遣の均衡待遇規定など主な規定を拾ったものを付けております。 6 ページからが、今回新たに労働者派遣の関係でお付けした資料です。

 まず 6 ページは、現行労働者派遣法の待遇に関する様々な規定を大きく派遣元に対する規定と派遣先に対する規定に分けて、かつ、義務規定の重さによって、義務規定、配慮義務規定、努力義務規定に分けて挙げたものです。例えば、派遣元に対する義務規定としては、現在、待遇に関する説明義務が義務規定としてはあります。配慮義務としては、冒頭にも少し申し上げました派遣先労働者との均衡、それから同種業務の一般労働者の賃金水準、派遣労働者の職務内容等を勘案する配慮義務が課されているなどの規定があります。こういった全体像を必要に応じて御参照いただければと思います。

7 ページは、労働者派遣法の直近の改正である平成 27 年改正の概要をお付けしております。これは御参考です。

8 9 ページでは、平成 27 年改正の前後で、特に派遣労働者のキャリアアップの推進の関係の規定と、均衡待遇の確保の関係がどのように変わったかを左右で対照にしたものです。これも御参考にしていただければと思います。

10 ページからは、労働局を通じて行った、労働者派遣法の平成 24 年改正と平成 27 年改正の 2 回の改正の施行状況の調査を挙げております。調査期間は平成 28 2 月から 4 月にかけて、調査対象は派遣元に御協力いただいて、約 1,100 の事業所を対象にしております。

11 ページ以降、主な項目だけ挙げますと、均衡待遇について、平成 24 年に配慮義務規定ができまして、「どのような配慮をしていただいていますか」という問いに対して、 11 ページの一番上の (1) の答えでは、賃金について、職務内容や成果の勘案をしていますというものが 41 %、派遣先労働者との均衡を勘案しているというものが 30 %、一般の労働者の勘案をしているというものが 28 %などとなっています。また、派遣先に協力を求めた事項がありますかという問いで、回答数の多い項目としては、福利厚生に関する情報提供を求めたというものが 59 %、派遣労働者の職務の評価、どんな働きぶりかというものを求めたというものが 56 %などとなっています。その下の (5) は、この求めたことに対して派遣先からの協力を得られた事項がどうかということです。求めた数値と協力を得られた数値が似通っているところと、若干乖離しているところがあります。

13 ページは、平成 27 年改正の施行状況調査です。説明に関して、均衡待遇確保のために派遣労働者から説明を求められたことがあるかという問いに対して、求められて説明をしたというものが 111 事業所、求められたが説明しなかったというものが 2 事業所で、これは説明義務がかかった後ですので、本来は説明していただく必要があるところです。また、派遣先に対して賃金情報等の提供を求めたかという問いに、求めて提供してもらったというものが 307 、求めたが提供しなかったというものが 98 。教育訓練に関しては、求めて教育訓練を実施していただいたというものが 498 、行われなかったというものが 39 などとなっています。

14 ページからは、労働者派遣法の現行法の説明義務の規定や、 15 ページでは、履行確保措置の規定についての現行の条文と、業務取扱要領という通達に書かれている主な解釈をまとめております。

17 ページには、議員立法で平成 27 年に公布、施行された法律、私どもは職務待遇確保法と略称しておりますが、この内容を挙げております。特に第 6 条が今回御議論いただく均等・均衡待遇に関わる職務待遇確保法の規定です。

 最後は、前回もお付けしました EU 3 大指令、 EU パートタイム労働指令、 EU 有期労働指令、 EU 派遣労働指令の概要です。資料は以上です。よろしくお願いいたします。

○守島部会長 それでは、資料 No.1 「論点 ( )( 派遣労働者関係 ) 」に沿って議論を進めていただきたいと思います。まず今回は、論点 1 「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」及び、論点 2 の「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」に関する論点について議論していただきたいと思います。どなたからでも、どうぞ。

○秋田委員 基本的なことを確認させていただきたいのですが、今回のこの制度に則ると、派遣先との均等・均衡ということなので、派遣先の労働条件によって派遣労働者の労働条件が上がったり下がったり、変動するということになります。それを避ける労使協定等もあるのですが。いずれにしても原則変動するということであれば、上がるときはいいのでしょうが、下がったときに就業規則の不利益変更といった問題にはならないということでよろしいのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず、労働者派遣にもタイプがありますが、登録型の場合には、その都度、労働契約が締結されますので、賃金水準の高い派遣に従事をした、その後の次の派遣先は低い所だったというのは、それは労働条件の不利益変更には当たらないと解されます。

 それから、常用型派遣、無期雇用型派遣で、派遣先によって、派遣会社がそういうことを実際にするかどうかは別にして、考え方の整理として、派遣先によって上げ下げをした場合に、これは通常の直接雇用の労働者が配置転換によって、かつ、その会社の賃金制度によって、その配置転換の結果、賃金が下がるといったことがあった場合に、それがどう扱われるかということと共通する論点があると思います。一律に不利益取扱いに当たるとか、当たらないとかというよりは、個別の事案も見ながら判断が必要な点になるかと考えております。

 ですので、今回の実行計画、あるいは、それを受けた今回の論点 ( ) で、派遣労働者の賃金が、その派遣先均等・均衡の場合に上がり下がりをするということを挙げましたが、これは、まず登録型の場合には、その登録型の中で、仮に派遣元が登録型とはいえ、ずっと同じ所に登録し続けて継続的に管理をしているような場合でも、派遣先によって上がり下がりしてしまうということが起こるということは、まず 1 つ、該当するケースとして想定しております。常用型については、先ほど申したようなことが不利益変更に当たるかどうかが個別の判断ということになろうかと思います。

○秋田委員 もう一回質問させていただきます。今、御回答があった中身だと、賃金の変動、賃金だけでなく、労働条件ですので、賞与や労働時間も入ると思うのですが、これの変動は不利益変更になるかどうかは、就業規則の不利益変更の合理性と同じような尺度で見るということですね。

 そうすると、一度、例えば、良い労働条件の所に派遣された場合、次に行ける所がものすごく狭まって、行き先がないなどという事象もあり得ると思うのですが、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 すみません。私の説明が良くなかったのかもしれませんが、まず、登録型の場合には、高い所、低い所というのが、上がったり下がったりということがあっても、これは労働条件の不利益変更には当たらないと思っております。

 常用型の場合には当たるかどうかというのは、これは直接雇用の労働者の配置転換の場合にも、法的には同じ問題があり得る問題で、一律に当たるとか、当たらないとかというような形よりは、個別の事案ごとに判断されるのではないかと思います。

 その上で、常用型の配置転換のケースと全く同じと言えるかどうかについては、ちょっと正確なお答えができていなかったかもしれません。そこは検討させていただきたいと思います。

○秋田委員 御説明は分かりました。では意見として申し上げます。通常の同一事業主に雇われている労働者の配置転換は、同一企業内ですので同じような賃金制度で適用されている一定の範囲内での合理的な範囲だと、通常は理解します。派遣の場合は、派遣契約が切れれば全く違う会社に派遣されるという、そもそもがそういう仕組みですので、そこが同じような合理的な範囲内の賃金制度を持っているかどうかは全く保証がない。それでありながら、そこに対して配置転換と同じような範疇の労働条件を求めるというのは、そもそも制度として成立するのかどうかと、ものすごく疑問を持っております。これは意見です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 少し余計なことかもしれません。 1 点だけ、念のためですが、 1 1 回の派遣ごとに関係が切れるような形態が、私が登録型と申し上げた派遣の形を想定しておりまして、 A 社に 6 か月派遣されたら、この 6 か月間だけ雇用関係がある。その後戻って、また次の派遣先を派遣会社と一緒に探して、今度は B 社に 1 年派遣されるときに、また、その 1 年間の雇用契約を結ぶという形が登録型という形として申し上げたケースです。この場合には労働条件の不利益変更には当たらないと解釈してよろしいかと思います。

○秋田委員 私の説明が申し訳なかったのですが、私は常用型の仮定で話をしています。制度としての構造的な問題が内在するのではないかというような意見です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 分かりました。

○守島部会長 他に何かありますか。

○小林委員 すみません、途中退席する関係で少し早めに申し上げさせていただきます。 3 点お話させていただきます。まず、情報提供義務の部分です。中小企業においては、人手不足が最大の経営課題になっており、人材を採用したくてもなかなか採用できない中で派遣労働者を何とか活用しているのが現実だと思います。そうした中で、派遣先の立場から考えますと、過重な情報提供義務や説明義務を課されますと、派遣労働者を活用しにくくなるということがあるのではないかを懸念しております。したがって、提供すべき情報の範囲や説明すべき事項については、最小限化していただき、事業者に過度な負担が掛からないような制度としていただきたいと思います。また特に派遣労働者について補助的な業務をお願いしている関係で、比較対象の正社員がいない場合も多いと思いますので、提供すべき情報は何なのか、一度整理していただきたいと思っております。また、一般論ではありますけれども、企業の賃金制度というのは、外部になかなか公表していないこともありますので、そういった日本の労働慣行についても十分配慮していただきたいというのが 1 点目です。

2 点目として、施行時期については前から申し上げている通りなのですが、今回、関連 3 法一括改正という大掛かりなものであり、特に中小企業においてはマンパワーが限られているような状況ですので、新たなルールを決め、周知を行った後は、実務担当者が法改正の内容を十分に理解したうえで処遇体系全体の見直しをするという作業があると思います。特に丁寧な労使交渉を行うことを要するとなると、相当な時間が掛かるのではないかと思っておりますので、政府としても本件に関する省令や通達等をできるだけ早期に公表・周知していただき、影響を最小限にしていただきたいと思います。とりわけ、現在、時間外労働の上限規制についても議論されており、この施行が同時に来ると対応したくても対応できない中小企業は数多くあろうかと思いますので、施行に当たっては十分な準備期間を設けていただきたいというのが 2 点目です。

 最後になりますが 3 点目は、法案や制度設計を検討するに当たり、現場の実態を踏まえた丁寧な対応が必要だと私どもの会頭が常に申しております。事務局の皆様には大変かと思いますけれども、多くの企業実務担当者や様々な属性の労働者から丁寧にヒアリングしていただきたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 事務局に答えをお求めになった部分がありますので申し上げます。まず、派遣先から派遣元への提供を頂く待遇情報ですが、 1 つには派遣労働者、パートタイム労働者、有期契約労働者、雇用形態を横断的に待遇改善を図れるような法制度にしてまいりたいという観点から、それに見合う派遣元が適切にその待遇を判断できるような情報を送っていただくという要請はやはり不可欠であると思っております。ただ一方で、それは直接雇用の場合にもそうですが、実務が回らないような仕組を構築しても結局は守られないということにもなりますので、労働者保護の観点から必要な情報であって、かつ、実務的にも回るやり方でどういうやり方があるかについて、おそらく法律レベルでは、情報提供をいただくくのは骨格を変えていくことになると思うのですが、その運用でどのようなやり方を想定していくかについて、またこの同一労働同一賃金部会の場で、今回だけでなく法律の後の施行段階の議論も含めて、 3 点目にもありましたように現場の皆様の声もお聞きしながら議論させていただければと思います。

 それから施行時期についての御指摘がございました。これは現場において様々な御苦労があることと思います。非正規雇用で働く方の待遇改善は、今ここで解決しなければいけない労働問題であるという点と、実務が間に合うようにという点の両方を見ながらどうするか、おそらく法律の仕組みとしては、法律の附則というところに何年何月施行と書くことになりますので、この場でいずれ法案要綱をお諮りする場面が出てこようかと思います。それまでの間に、事務局でも受け止めて検討をしてまいりたいと思っております。

○小林委員 前回も申し上げたのですが、企業におきましては、同一労働同一賃金制度の導入にあたって、何をどのように取り組んでいったらいいのか分からないというのが実態だと思います。例えば、取り組みの順位付けやマニュアルのようなものを求める意見もありますので、マニュアルの整備や、相談窓口の充実、加えて紛争の未然防止や早期解決のための手段の拡充なども是非、お願いできればと思っております。よろしくお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 分かりました。

○岩村委員 先ほどの常用の場合の賃金の問題ですが、私もまだ即座に頭が回っていないのですけれども、常用ですので、少なくとも就業規則上は賃金の決定について書かなくてはいけないということになっています。他方で、例外的に今回のこの労使協定を除くと結局、派遣先の賃金との均衡でもって賃金を決定していくことになるので、場合によっては派遣先ごとに賃金が大きく変動することになります。

 そうだとすると、あらかじめ賃金表みたいなものを作っておくことが難しいということになれば、これは素直にそのように書くしかないのではないかと思います。つまり賃金については派遣先ごとに決定するとか、そういうことにならざるを得ないかなという気がします。あまり自信はありません。だけどそれ以外にやりようがないのではないかという気がしています。そうだとすると、なかなかそれを不利益変更だと言うのはちょっと難しいのかなという、それはそれとして合理性があるというように言わざるを得ないような気がします。あるいはむりやり、賃金表を作っておくとか、あるいは企業内の措置として、ある程度の賃金変動を避けるために、例外は作れないけれども最低保障の区分のラインを作っておくとか、そのような形で平均化してやるとかいうことを考えるかどうかです。それより多分、シビアな問題は、常用だけれども 1 回派遣に行って 1 年か 2 年で別の所に行くことになったところで意に沿わない賃金の額になってしまうということで、常用の人が、「いや、それではちょっと困る」というので、派遣先を受け入れないといったときに、派遣元は賃金支払義務を負うのかということです。負うとしたら一体どのくらいの額を払わなければいけないのかと。むしろ、その問題の方がひょっとするとシビアな問題として出てくるかもしれないという気がちょっとします。詰めて考えていないのですけれども、その辺の問題が発生するかなという気がします。

○守島部会長 他にどなたか。

○松浦委員 すみません、最初に、そもそも論のところで確認だけしておきたいのですが、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会でも、この派遣についての御議論はさせていただいて、最終の報告書はあくまでも論点整理で、その論点整理を基に最終的な判断をするのは「働き方改革実現会議」で御判断されるということは重々承っているので、新たに蒸し返すつもりはないですけれども、実現に向けた検討会の報告書の中でも、派遣先均衡というものを原則にすることに対しては、報告書の中にも記載があったと思いますが、慎重な意見が多数指摘されたという議論の経緯があったと思います。それも踏まえて最終的に、やはり派遣先均衡を原則にされたという理由について、今後議論する上での参考として確認までに教えていただければと思います。お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 実現会議において決定された実行計画では、派遣先均等・均衡を原則としつつ、労使協定方式を併せて提言するという内容になっていることは御案内の通りです。これにつきましては、原則を派遣先均衡にするかどうか、有識者検討会では多大なる議論が行われ、各論があった状態ですが、その中の実現会議自体の実行計画等にそうした考え方が明記されているわけではないのですけれども、内閣官房も兼務して実現会議の事務局を兼ねておりました立場で観察をしておりましたところでは、派遣労働者の待遇について、待遇改善を図る上で、派遣労働者の就業実態を見る上で一番近い場面というのは派遣先であって、派遣先で労務を提供して、指示を受けて、何か付加価値を見出していると。それに口語的ですけれども、見合う扱いを受けているのかというのが一番の根っこにあるもので、派遣労働者の方々が納得できるかできないかという思いの根源なのではないかと。そこにいろいろな考え方があるから、検討会は各論併記になったことは重々承知をしておりますけれども、そこに手を付けることを、ウエイトとしてそこを重視をしたというのが結果として派遣先の均等・均衡を原則にするという考え方につながったものと理解をしております。ただ、重ねて申し上げますが、実行計画は比較的こういうことをやるというのをバーッと書いており、今申し上げましたような、どういう思いでというようなことは必ずしも明記されておりませんので、観察をしていて、そのような議論であったのではないかという意味での答えであることを御容赦いただければと思います。

○松浦委員 承りました。

○守島部会長 他の方。

○村上委員 資料 1 2 ページ、矢印の 1 つ目について意見を申し上げます。今も御議論がありましたけれども、派遣先均等・均衡か労使協定方式かということについて、論点案では「選択制とすることが適当ではないか」とありますが、原則は派遣先均等・均衡であるべきだと思います。先ほど松浦委員からもございましたが、今回の「働き方改革実行計画」で示された考え方は、パートタイム労働者、有期契約労働者、派遣労働者について同じ均等・均衡待遇の規定を置くということが主眼にあるということからすれば、派遣労働者についても、基本的には就業実態に近い派遣先労働者との均等・均衡を原則とするという考え方を取るべきです。

 その上で、次の議論にもなるのですが、労使協定方式の場合には、必ずしも派遣先均等・均衡ではなくても良いということなのですが、締結の相手方は労働組合とし、基本的には労働組合と労働協約を締結した場合に例外を認めるべきであると考えています。というのは、今回の労使協定は派遣先均等・均衡という法の例外を認めるということに留まらず、派遣労働者の賃金や労働条件そのものに踏み込む部分があり、いい加減な内容の労使協定が結ばれてしまえば、結局派遣労働者の処遇改善が実現しないという懸念をもっているからです。そうしたことから、労働組合と労働協約を締結した場合に例外を認めるということが基本と考えております。

 それから先ほど秋田委員と岩村委員との間で、労働条件の問題で登録型か常用型かというお話があったのですが、常用型と言われている中にも様々な形態があります。無期雇用派遣と有期雇用派遣の中でも様々なタイプがあります。労働組合を作って労働協約を締結し、春闘できちんと労働条件も改善していくような取組をしている派遣労働者もいますので、一律に常用型だから、登録型だからというような話ではないのではないかと思っております。そこは実態に応じて考えていくべきであると思います。

○守島部会長 では、他の方どなたか。

○梅田委員 今、村上委員からお話があったように、基本的には派遣先均等・均衡の例外は、労働協約を締結している場合ということが妥当であると思っています。労働組合は、労働条件については労働協約で締結をしているからです。

そうした中、労使協定で例外を認める場合であっても、対象範囲を定めなくてはいけないと思っているところです。

また、これは意見ですけれども、現に派遣で働いている者はもちろん、これから派遣で働こうとする労働者の立場からすれば、自分の待遇が派遣先均等・均衡方式と労使協定方式のどちらで決定されるかは非常に重要な情報になります。よって、派遣元事業主には、派遣先均等・均衡と、労使協定方式のどちらの方法を採用しているのか、ホームページ上などで公開する義務を負わせるべきだと思っております。

そこで、質問ですが、 1 つの派遣元の中で、例えば無期雇用派遣労働者は労使協定方式、有期雇用労働者派遣先は派遣先均等・均衡とするといったように労使協定の対象範囲を限定することはできるのでしょうか。

その上で意見として 1 つ言わせていただきたいと思います。 1 つの派遣元の中で、労使協定方式の適用対象者を選択できるとすると、理論上は派遣先ごとに派遣先均等・均衡か労使協定方式かを半ば意識的に選択することができることになりますが、これは全く適当ではないと思います。そもそも労使協定方式を設ける趣旨は、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、所得が不安定になることを防止するためのものです。それにもかかわらず、派遣先が変わるごとに、原則と例外が使い分けられることとなれば派遣労働者を不安定な労働条件に置かないという労使協定方式を設けるという趣旨に明らかに反すると思います。従って、有期先ごとに労使協定の範囲を限定することは禁止すべきであると思います。

○守島部会長 質問の部分も多少ありました、お答えになりますか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず、派遣労働者にとって、協定方式なのか派遣先均等・均衡方式なのかが分かることが重要というのは御指摘の通りであると思います。今お話がありましたのは、派遣会社のホームページで公開する義務を課すというお話でしたが、どのようなやり方がいいのか少し検討をさせていただきたいと思います。現在、労働者派遣法で設けられています雇い主の説明義務で説明を求めている事項との並びから考えましても、協定方式なのか、派遣先均衡方式なのかというのは少なくとも本人への説明義務の内容に含むのが今の説明義務の範囲の取り方からすると、均衡が取れているのではないかというようには思いますが、その点も含めて、預かって検討させていただければと思います。

 それから労使協定の対象者を分けるというお話でしたが、協定につきまして、最初の例でおっしゃられましたが、ある派遣会社で無期雇用派遣の方と登録型と両方をやっていらして無期雇用派遣の方は協定方式で、登録型は派遣先均等均衡方式というのは、これは実際そのようなニーズもあってもおかしくはないのではないかと思っております。分けることに関して、これはこの場での御議論ですが、事務局としては分けることはありうべしではないかと現時点では思っております。

 一方、派遣先で分けることというか、要するに派遣の都度、協定対象、派遣先均衡対象、また協定対象というように、派遣労働者を行き来させますと、結局ある意味でのいいとこ取りと言いますか、そのようなことができてしまうだろうと。そこら辺は先生がおっしゃられました通り、派遣先均等・均衡でその都度揃うことでいいのだという考え方でいくのか、それとも段階的、体系的に賃金改善が図られるルートがいいのかということを選ぶのが、 1) 2) の、 2 つのルートのもともとの意図ですので、そうした形で何か、いいとこ取りで行ったり来たりするのは、 1) 2) 方式を立案した趣旨には合致しないと思います。

○守島部会長 よろしいですか。

○中野委員 あくまでも配慮していただきたいという話ですが今回の改正をそのままイメージすると、派遣料金が上がることが想定されると思うのです。そうしますと、人件費は企業経営において非常に影響が大きいので派遣先の会社の経営状況に直結していくと思います。実際、派遣会社はとても好調だと言われ、今後もオリンピック等にむけ建設業とか IT 産業も大変な需要があります。そのため、今は無理にでも人を集めたいという企業があると思いますけれども、逆に景気が悪化した場合に、労働力の選択を企業側ができなくなるようなことにならないようにしていただきたい。いずれにせよ、経営を圧迫することにはなってきます。また直接雇用が進むのはと思うものの、一方で派遣会社の経営という視点もありますので、いろいろな角度から是非、御配慮をいただきたいです。

 また一方で、派遣という働き方を選択する人もいます。今おっしゃった通り、自分のキャリアアップのためにいろいろな仕事をしたいという人もいれば、派遣先の労働就労環境を自分で選びたいから派遣を選ぶ人も正直います。友人とかにも多いですが、育児や介護があるので、定期的に働けないから派遣という働き方を自分で選択しているという人も一方ではいるので、そういう方たちの働き方の自由度があまり損なわれないように配慮していただきたいというお願いです。

○守島部会長 他にどなたか。

○岩村委員 資料 1 3 ページの ii) です。派遣元事業主が義務を履行できるよう、派遣先に対し、派遣先の労働者の賃金等の待遇に関する情報提供義務を課すという規定、それから、提供した情報に変更があった場合も同様で、かつ情報提供がない場合は締結してはならないと、そういう規定があるわけですが、まず第 1 にお尋ねしたいのは、派遣先が提供すべき情報とされている派遣先の労働者の賃金等と言っていますが、具体的にはどの労働者の情報を提供すべき義務があるのかということについて、お聞かせいただければと思います。

 それから、もう 1 つは、情報提供義務の提供がなかった場合には派遣契約を締結してはならないということになっているのですが、情報提供義務が履行されてないのに、派遣契約を締結してしまった場合に、私法的な効果というのはどうなるのかということです。あるいは、その場合は是正をさせて、つまり、情報提供をもらった上で派遣契約を直せということを行政の方で助言・指導・勧告という形で監督していく、それを通じて是正を図るということをお考えなのでしょうか。更にいうと、情報提供義務が実際に履行されたかどうかをどうやって把握するのかということを、行政側ではお考えなのかを 1 つお尋ねします。

 それから更に、それとの関連で 5 ページです。説明義務とかをパートや有期と並びで入れましょうということになっているのですが、パートと有期との並びということになれば前回までも議論したように、結局どういう待遇になっていて、その理由は何かという説明をすることになると思うのです。そのときに、実際上は派遣先との間での賃金がどうなのかという話になるので、そうすると派遣先からどういう情報の提供を得ているかということをベースにしないと回答のしようがないのではないかという気がしますが、そのところについては、今のところ事務局ではどのようにお考えになっていらっしゃるのか。さらに非常にやっかいな問題は、パートも有期もあるのですが、仮に派遣労働者が労働組合に加入していて、組合の方が待遇の内容について説明せよという団体交渉を申し入れてきたときに、併せて、そのベースになっている情報についてもちゃんと説明せよというようにいったときに、派遣元としては応諾義務があるのかという応用問題があるのですが、それは今答えろとは言いませんけれども、事務局のお考えを聞かせていただければと思います。

○守島部会長 関連してですか。

○宮原委員 先ほど岩村先生からお話があった事項に関連して、意見を申し上げたいと思います。先ほど御説明いただいた参考資料の 13 ページの中で、「派遣先の賃金情報の提供を派遣先に求めたことがない」と回答している派遣元が 6 割超に及んでおり、派遣元としてはなかなか派遣先に対して賃金情報などの開示を求めにくいという状況がある実態が出てきていると思うのです。

そうした中、論点案の 3 ページでは、「派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならないこととする」となっていますが、派遣元が情報提供を求めたにもかかわらず派遣先が情報提供を拒み、こうした中で実際に労働者派遣が行われてしまった場合の対処としては、労働者の司法的救済は勿論のこと、派遣元に対しては派遣事業の取消を含めた行政措置が行われるべきと認識しております。こうした措置についてはどういうものをお考えなのかを回答いただければと思います。

○守島部会長 岸本課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 いずれも事務局への質問ですので、考え方を申し上げます。まず、派遣先からどのような待遇情報を派遣元に提供いただくかということです。大元の考え方は、派遣元が均等待遇規定、均衡待遇規定を踏まえて派遣労働者の待遇決定をするに際し、しんしゃくしなければならない情報を派遣先から提供いただくというのが法制化の発想です。したがって、待遇というのは賃金や賃金以外も含めてですが、待遇の内容と、派遣先のどういう労働者の待遇がこうで、どういう労働者と派遣労働者との待遇の近いのか、理由を併せて提供いただく必要があるのではないかと思っております。

 パート・有期の場合、これは直接雇用ですから同一人格の中での説明義務になりますが、待遇者の説明義務という規定についての議論で、誰との待遇差を説明すればいいことにするかという議論がありました。これについては施行段階まで含めた議論ということで、確定的な議論にはなっていないものと承知しておりますが、現行のパートタイム労働法のような行政解釈で、こういう状況の事業所においてはこの人、こういう状況においてはこの人というように、かっちりと対象労働者を特定していく解釈のやり方と、労働契約法のように司法判断や司法救済を念頭に、そこも含めて両当事者の裁量と言いますか、判断を生かすやり方があるという議論があったかと思います。派遣労働についても待遇差に関しては、派遣先が受け入れる派遣労働者の仕事内容から見て一番近い待遇情報、我が社の社員はこの人たちだというのを基に、その人たちの待遇情報と、この人たちはこういう仕事をやっているのです、こういう移動範囲ですということを提供いただくのが、 1 つのやり方ではないかと考えております。

 それから情報提供がないままに、労働者派遣契約を締結してしまった場合の効力です。現在、労働者派遣法においては、抵触日の通知が来ないままで労働者派遣契約を締結してしまうということが理論上はあり得ます。この場合には司法上、直ちに労働者派遣契約を無効とはせずに、行政的には違法なので是正を図っていくわけですが、司法上、直ちに無効とは解しておりません。それを踏襲いたしますと、行政としては待遇情報が来るまでは派遣契約を結ばないでくださいということの義務違反です。これは四角囲みの 3 番ですから次回の御議論のテーマにはなりますが、事務局の提案としては一応、現行労働者派遣法の派遣元に対する行政措置を用意して、それを相手の対応に応じて使っていく過程で是正を図っていくと。行政はそういう対応になると思っております。

 履行されているかどうかの把握については、よく検討させていただきたいと思います。結局、来た待遇情報を保管しておいてもらうとか、何か 1 点考えないと。来たものを見て決めましたというのか、それが分からないという御指摘だと思いますので、よく検討させていただきたいと思います。

 最後の集団的労使関係との関係は、引き続き検討させていただきます。宮原先生からお話がありました点も、今の点と重なりますが、法律上は派遣元の派遣契約締結の法律違反に該当するとしますと、現在の事務局提案の四角囲みの 3 番では、今の派遣法に対する行政措置が用意されるという考え方です。

○岩村委員  1 点だけ。集団的労働法ではなくて個別レベルで考えたときも、なぜこういう処遇になっているかという理由を聞いたときに、その根拠になるのは結局、派遣先から来た情報のはずなので、そこはどう整理されているかということです。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 例外ケースを別にすれば、原則は派遣先から来た情報を信用して待遇を決定するというのが、派遣元に可能なことですので、それを前提に説明するというのが具体的な説明の範囲になると思います。例外と申しましたのは、例えば基本給の記述がないとか、明らかに形式不備な待遇情報を、そのままというわけにはいかないだろうということです。原則は来たものを前提にするしかないだろうと思います。

○岩村委員 そうすると、やはり派遣元としては労働者側から説明を求められると、派遣先からもらった情報をベースにして説明することになるということでしょうか。モディファイというか、アレンジメントはしてもいいけれども、それに基づいて説明してもらうことになりますという理解ですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 そういうことでしょうか。

○松井委員 いま、派遣先へ課す情報提供義務に関連し、どういう情報を提供するかという論議がありましたが、そもそも情報提供義務が果たされない場合や、情報提供はされたとしても情報が適切でなかった場合は、行政としてどういった措置を考えているのかということも重要です。論点案では「派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならないこととする」としているので、実質上は少ないのかもしれませんが、派遣契約の変更の際にも情報提供義務を課すわけですから、この点は重要です。情報提供義務が適切に果たされなかったら、今回のスキームは成立しないのです。派遣先の情報提供義務が履行されない場合、どういった措置を講じるのか。労働側としては何らかの措置を行うべきだとは思っているのですが、事務局としてはどう考えているのか。

 併せて、今回は労働者が司法救済を求める際の根拠規定の整備ということですから、情報提供義務がきちんと果たされてない場合は、司法判断において不合理性を基礎づける根拠になるような解釈をとるなどの措置が必要であると思います。これらの点をお答えいただければと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 待遇情報の変更時の提供場面、変更時の提供をどうするかということ自体を論点として御議論いただいているところですが、事務局提案の延長線上でお答え申し上げます。例えば、派遣先でそういったことが分かる端緒というのは、おそらく派遣労働者が周りの派遣先の社員を見て、この 4 月に手当が新しくできたようだけれども、自分はその話を聞いてないということがあった場合が想定されるのではないかと思います。そういったことでおかしいと思った派遣労働者が、労働局に相談に見えたということだと思います。この場合は実際に手当の新設などがありながら、それを派遣元に情報提供していなかった場合には、事務局提案では情報提供義務違反ということになりますので、今度は四角囲みの 3 番の方で、派遣先に今の労働者派遣法で設けられている行政措置を同じように用意するという提案をしております。それらにより、派遣先から派遣元に漏れている待遇情報を提供していただくように指導していくということが想定されると考えます。

○小原委員 関連して 1 点お伺いしたいと思います。労使協定方式をとる場合は派遣先には情報提供義務が課されないことになりますが、派遣先としては、派遣元事業主が派遣先均等・均衡と労使協定方式のどちらを選択したのかが分からないと、情報提供すべきかどうかが分からないと思うのです。ですから、派遣元事業主には、派遣先に対して自分たちが派遣先均等・均衡か労使協定方式のどちらを選択しているかを通知する義務を課すべきであると思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 ここも詳細については、また検討させていただきたく存じますが、派遣先というか、労働者派遣契約の締結交渉をしている場面で、派遣を受けようとしている会社からすれば、協定方式なのか派遣先均等・均衡方式なのかは、非常に重大な関心事項であることはおっしゃる通りです。それも明らかにしない派遣会社というのは、交渉自体が成り立たないレベルの話だと思います。厳密に申しますと、 2) の方式によっても、食堂の利用などは派遣先均衡が残ります。それにしても、そこは大きな違いなので当然、派遣先は派遣元に、どちらの方式なのかをきちんと知らせてもらうようなプロセスを用意しなければいけないと思います。

○加藤委員 今お聞きしていて、情報提供義務の部分というのは、中小企業も本当にやっていかなければいけないのですが、どういうように対応していけばいいかというのは、これから非常に苦慮していくところかと感じております。実際には、いろいろな普及活動とか、国の御支援もいただきながらということになるのですが、直接的には求める派遣元に、おっしゃるような流れで対応せざるを得ません。末端の事業者になればなるほど、こういう書類が必要だからそれを用意してくれとか、そういう形になってくるのだろうと思いますし、こういうことをしなければいけないので、例えば、派遣料金もこのくらいになるのだというような形で、どちらかというと、これからは受け身で進んでいくことになるのかと思われます。

○高橋委員 他にもいろいろ意見はあるのですが、情報提供義務は大変重要ですから、情報提供義務に限って質問・意見を述べたいと思います。まず、派遣先の労働者の賃金等の待遇に対する情報提供に関してです。先ほどの議論からして私の理解では、派遣先で受入れ予定の派遣労働者と同種の業務に従事する労働者の賃金等の待遇に関する情報の提供義務を課すという理解でしたが、それでいいかどうかというのが 1 点目の質問です。

 仮にそうだとしたときに、例えば有期雇用の派遣労働者を受け入れる場合は 3 年の期間制限がありますよね。その場合に提供する情報の範囲ですが、同一の業務に従事する会社の社員が 3 年ぐらい勤めている間に見られる情報、賃金等の待遇に関する情報でよしとするべきだと私は思うのですが、それでいいかどうかというのが 2 点目です。

3 点目ですが、 ii) の中の提供した情報に変更があった場合も同様ということですが、先ほどの松井委員の御質問に関してです。岸本課長の説明では、どうも派遣契約の期間中に派遣先の賃金制度に変更が生じた場合に、期間中であっても情報提供せよということを言っているように聞こえたのです。しかしながら、それに関しては今年の 3 月に公表されている平成 27 年度の派遣労働者事業報告書などを見ますと、派遣契約というのは、 1 か月以下が全体の 4 割以上を占めているのです。 1 日以下というのも 25 %以上あり、非常に短期の契約が多い。 3 か月以下に丸めますと、それだけで 87 %以上になっているということです。ですから、提供した情報に何らかの変更があった場合に、契約期間中であっても情報の変更について提供義務を課すというのは非常に現実離れしているのではないかと思います。派遣契約の更新とか新しい派遣契約の締結の際には、必ず情報提供義務を課されているわけですから、それで十分とすべきであって、提供した情報に変更があった場合も同様な提供義務を課すというのは、いかがなものかと思ったのです。もし私の理解が正しくなければ、それを指摘していただければと思いますし、もし私の理解が正しければ、 3 番目については私の意見として聞いていただければと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御質問ですので、事務局の所見を申し上げます。まず、 1 点目の派遣先からの待遇情報についてです。派遣労働者を受け入れる同一の事業所に、同一又は類似の業務に従事する派遣先の正社員がいる場合には比較対象についてあまり悩むというか、迷うところはないだろうと。その労働者の待遇情報が該当すると思います。そのようなケースがいない場合、派遣労働者を受け入れる事業所に、正社員はいるけれど業務が掛け離れている、あるいは同一の業務に従事している人はいるけれど、契約社員であるというケースもあり得るかと思います。そのような場合に待遇情報の対象をどうするかというのが、実務上非常に問題になってくると思います。これについても実務の問題ですので、どのようなケースで、どういう待遇情報の提供相手にするか、あるいはそこも含めてある程度幅を持って当事者判断にするかという点は、引き続き施行に向けた段階も含めて御議論させていただければと思います。

 現時点で申しますと、やはり今回の非正規の待遇改善の趣旨が正社員と非正社員の格差是正ですので、同一事業所に同一業務の正社員がいない場合には、派遣先の正社員との何らかの比較が含まれるような形で待遇情報を提供いただくことが、政策から言えば筋論であると思います。

 分かりにくい表現で恐縮ですが、逆に申しますと、ピッタリ同じ業務をやっている契約社員がいらっしゃるとすれば、その待遇情報を提供すること自体は非常に判断が付きやすくて容易にはなります。しかし、仮に、その契約社員と派遣先の正社員が今の労働契約法あるいは改正後のパート有期法に照らして不合理な格差状態になっているとしたときに、不合理な格差の契約社員とそろっているというだけでは、派遣労働者の待遇として適切に図られているとは言えないという問題が起こるだろうと思われます。

 そう考えますと、ここは考え方の整理なので、それを実務にどう落とし込むかという議論があると思っております。そこは恐縮ですが、違う業務だけれど正社員を、業務がどれぐらい違うかも含めて提供するというのが 1 つのやり方だと思います。また、同じ業務の契約社員について均衡が取れているということを前提に、それを活用するというのも 1 つのやり方かもしれません。そこら辺でどのようなやり方を実務上認めていくかという議論が、今後必要になるのではないかと思います。

 それから勤続期間と言いますか、派遣先での就業期間についても、ざっくり申しますと、その方が派遣先で正社員であったならば、どういう扱いになるかを考えた場合に、例えば、派遣先において正社員でも、 5 年目から適用される福利厚生上の権利があるとしますと、その仕事を始めたばかりの派遣労働者の場合には、 5 年目から適用される福利厚生を提供されても活用のしようがない情報になりますので、それは提供いただく必要がないという整理が可能ではないかと、事務局としては考えます。

 それから変更情報について、一方で派遣の場合の労働契約期間は極めて短いものが多いという御指摘でした。考え方としては派遣についても、もともと三者関係ですから、全く同じわけにはいかない点も多々あるのですが、できる限り直接雇用のパートや有期が、今回の待遇改善のために法的保護を受けられる度合いと同じ保護を受けられるようにするために、どういう工夫ができるかという観点から考えたいということで、事務局としては案を考えております。

 直接雇用の場合には、 1 か月契約であっても使用者が同一人格ですので、正社員の方にどういう待遇改善があったかが分かります。ただ、それを残存期間があまりに僅かなときに追随させるかどうかというのは使用者の判断であり、最終的には裁判所がそれをどう評価するかという問題になるのだろうと思います。そういう意味で、有期とパラレルだと考えますと、派遣についても残存期間が 1 か月契約の残り 1 週間のところで正社員の待遇に何か見直しがあったというときに、派遣元としてそれを追随するかどうかというのは、派遣元の労務管理上の判断があり得るかもしれないと思います。最終的には司法がどういう評価を下すかになってくるのだろうと思います。ただ、待遇情報が全く来ませんと、派遣元としてはそういう判断をする契機もないという場面もあろうかと思っております。それがパート・有期とパラレルに考えた場合の考え方です。あとは派遣の三者関係に対応した、いわば応用問題として、使用者の人格は同じではないので、本当に残存期間が極めて短い場合とか、派遣先の待遇に改善があったけれども、非常にごく僅かであるとか、何か線引きができるかどうかという議論は、別途、派遣の特殊な論点として施行段階での議論になり得るのではないかと思います。現時点での事務局としての頭の整理は以上ですが、いかがでしょうか。

○秋田委員 また基本的なことを御質問します。先ほどの事務局の御説明の中に、例えば常用型の場合は労使協定方式、登録型の場合はそうではない方式も実際にはあり得るというお話がありました。常用型が派遣元事業主に無期雇用されている場合、登録型が有期だとすると、同一の派遣元事業主の中での無期と有期の均等待遇等は問題にならないということですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 現在、労働者派遣法は配慮義務ですので、そういう法律の適用の重なりの問題は生じておりません。今のような難しさとは違いますが、パートタイム労働法と有期契約労働法も、適用対象をお互いに除き合うような関係ではなくて両方が適用されております。今回、労働者派遣法で均等・均衡を義務規定としますと、やはり労働契約法が適用されつつ、かつ、パート・有期法も適用されるという場面も出てきます。まず 1 つには、今のパート法と労働契約法の整理から言うと、法律の適用として除く除かれるという関係の整理よりは、解釈の中で妥当な処理をしていくという問題ではないかと思います。ここも御議論の論点ではあると思います。

 その場合に、確かに派遣元において協定方式の無期雇用労働者と派遣先均等・均衡方式の有期雇用労働者があって、更に無期同士や、無期と有期の均衡を、今度はパート・有期法的な観点から取れと言っても、解がないようなこともあり得るかもしれません。そこは何らかの解釈においてどちらを優先するか、労働者派遣という法律の三者関係の特殊性を優先すると考えるか、そこはいろいろな考え方があり得るかもしれませんが、解釈上の考え方の整理は要るのではないかと思います。

○岩村委員 先ほどの情報提供義務をめぐる高橋委員と事務局との議論の間で、特に派遣先が提供すべき待遇情報の観点で、最初に私が質問したことに戻るところがあるのですが、どの労働者の待遇情報を提供するかといったときに、事務局のお答えだと、同種の仕事をしている正社員の待遇情報も提供することがあるというお話だったと思うのです。そうすると、もともとの出発点として同一労働同一賃金というのは、あくまでも職務の内容とか責任とか、その他の事情で比較対象の可能な人との間での問題のはずなのですが、派遣先に求められる提供すべき待遇情報は、それよりも対象労働者がもっと広いという理解になるような気がするのですが、そういう理解でよろしいかどうか。

 つまり、同じ仕事をしていて正社員というと、それは精査しなければ分かりませんが、職務の内容や責任の程度などは当然違っているはずです。それをなぜ提供しなければいけないかという根本的な問題があるような気がするのです。そこのところ、事務局はどのようにお考えになっているのでしょうか。

 関連してもう一点、派遣先が情報の提供をしたのだけれども、それが虚偽であった場合は、一体誰にどういう責任が帰属することになるのかについて、もし何かお考えがあれば伺いたいと思います。もしなければ、御検討いただければと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず 1 点目のお尋ねですが、私の理解、事務局の理解が間違っていれば、また御指摘いただければと思います。現在の均等待遇の規定は職務内容、職務内容・配置変更範囲が同一であることが要件となっておりますが、均衡待遇の規定は、職務内容や職務内容・配置変更範囲、その他の事情が違った場合でも、違いに応じて不合理な待遇差とならないようにという規範です。極端に言えば、職務内容も難易度も相当掛け離れており、片やグローバル転勤、片や 1 事業所固定の正社員対非正社員という間でも、均衡待遇の法的ルールは適用されているものと考えられます。その事業所に極端に距離の遠い正社員とパートしかいない場合でも、観念的には距離の遠い正社員との待遇差について、職務内容や職務内容・配置変更範囲、その他の事情に照らして不合理であってはならない。そのことを会社として、こういうことで不合理ではない、何らかの整理をしているはずであろうという前提に、待遇差の理由の説明義務なども課されていく。そこは派遣の場合でも、三者が介在するという点は違いますが、考え方は同じではないかと思っております。

 実際問題として、本当に業務内容も移動範囲などが掛け離れて違う場合に、例えば基本給について、 100 60 ならいいのか、 100 50 ならいいのか、 70 はどうかということが、少なくとも司法に行かずに白黒がつくということはなかなか難しいところはあろうかと思います。ただ一方で、待遇の性格によっては、食事関連の手当とか、職務内容が違っていても正社員にはこういう手当が出ているということから均衡を論じ得る場面もあろうかと。そこはかけ離れていても待遇の性格によっては、なお均衡を適用して、実際の何らかのアクションが必要となる場合もあるのではないかと思います。

 虚偽の情報は、あるべきルールを考えるところまでは考えておりますが、虚偽だった場合は当然、虚偽であることを善意で信じた者がひどい目に遭って、虚偽をした者が大手を振ってということがあってはならないと思います。いろいろなケース分けを検討したいと思います。

○岩村委員 お答えありがとうございました。納得したような、納得しないようなところもあるのですが、一言だけコメントすると、労働者派遣法は大部分が事業規制立法になっていて、その中に同一労働同一賃金ということで、私法的な発想を取り込もうというところに、全体構造に照らしてやや不整合があるのではないかという気がします。本来だったら事業規制立法ということである程度徹底した方がいいような気がするのですが、最後になると、そこは私法的な規定なので裁判所の判断で決めましょうというようになってしまうのです。お伺いしていて、そこが少し気になるところではありました。致命的だということではないのですが、そこのところの整合性を少し検討した方がいいかなという気はいたしました。

○高橋委員 情報提供の部分です。先ほど、同種の業務に従事する労働者だけではなく、何らか正社員にひも付く情報の提供が求められるというようなことを言われました。具体的な例を考えてみますと、当社では受付業務については直接雇用の社員でやっていなくて、全部派遣会社から受け入れてやっていますという場合だと、そもそも受付業務ということが社内に存在しないので、同種も何もない。そういう場合に一体どうしたらいいかという問題を考えると、考えられるのはヨーロッパの仮想労働者のような形です。仮に当社が受付業務をしていただくために募集するとしたら、このような条件で募集しますといった情報でも可とするようにしていかないと、とにかくどこまで行っても正社員とひも付けなければいけないというのは、現実問題として無理があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 同種の業務は全面的に派遣なりにお願いしているケースで、それでも業務内容上で類似業務があって、その類似業務に直接、雇用労働者が従事していれば、それとの比較も可能ではないかと思います。しかし、それすらないような本当に難しいケースを御懸念されていると思いますので、その場合にどうするか。ただ、先ほどから考え方としてはばかりで恐縮ですが、直接雇用の世界で、パート・有期について、正社員が非常にグローバルなトップクラスの仕事をやっている人たちばかりで、パートの方はその補助業務ばかりというのは、仮に真ん中が抜けたような組織があったとしても、そこはその間の待遇差に不合理であってはならないというルールは、ルールとしては掛かっていますので、今のような受付業務を全面的に派遣に活用していて、類似業務すら直接雇用労働者は従事していないケースでも、その場合には、もう均等ルール・均衡ルールは適用のしようがないということにはできないだろうと思っています。ただ、ルールを適用できないということではないということと、実務上で意味のある情報提供の形はどういうものがあり得るのかは、また別の次元であろうかと思います。

 グローバル勤務の正社員の待遇情報を一応提供だけして、職務内容も配置変更範囲も全く違いますけれどもこれしかありませんのでという形が役に立つのかどうか。その手当の部分ならば役に立つ部分もあるかもしれないのですが、基本給の役に立つのかどうかという点も、それが派遣労働者にとってもいいかどうかということも考えなければいけないという意味での御指摘かなと思い、そのように受け止めました。今の点も含めて、待遇情報の提供の具体的な在り方にどのようなパターンがあり得るかを、事務局でもよく検討し、また施行段階で当部会でも様々な御意見を賜れればと、現時点では思っています。

○冨田委員 戻って恐縮ですが、先ほどの高橋委員や松井委員からの質問の中で、派遣期間中に派遣先労働者の労働条件が変わった場合にも派遣先から派遣元に情報提供が必要であるという論議がありました。その中での事務局の回答で、派遣先から派遣元へ情報提供を行う起点は派遣労働者が派遣先で「どうも派遣先労働者の労働条件が変わったらしい」と気付くことが起点になるケースが多いのではないかという趣旨の事務局発言があったと思います。その前提としては、派遣労働者には派遣先労働者のどの人と比較されているのかということまで説明されている必要がありますが、その理解でよいかを確認したいと思います。

 それから、派遣期間中に派遣先労働者の労働条件が変わった場合の説明義務について、事務局からは、派遣契約の残りの期間や、経営者の判断というような発言もあったかと思います。更に言えば、情報提供を踏まえて待遇に反映させるのかさせないのかという経営判断に合理性があるのか、ないのかは司法判断というような事務局発言もありました。そうすると、そもそもの情報提供がない場合の派遣契約締結の問題や、情報提供義務の位置関係がどうなるのかが少しわかりにくくなってしまったので、もう一度説明を頂きたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず 1 点目ですが、私がお答えの中で申し上げたのは、少し分かりにくかったかもしれず申し訳ありませんでした。派遣先で待遇変更があった場合に、それが派遣元に通知されていれば何の問題も起こらないのですが、通知がなされなかったことを仮に行政が知り得るとしたら、どのような場面がどのような流れで知り得るだろうかという例として、派遣労働者の方が社内報や周りの社員の話を聞いて、おかしいなと思って労働局に相談に見えるというケースなのではないかという意味で申し上げました。何というか、素朴なというか、単純な意味で申し上げた程度の例です。

 それから契約期間の問題は、先ほど私がお答えした趣旨は、できるだけ派遣労働であっても、直接雇用の有期やパートと同じような枠組で保護が適用されるようにという観点から事務局案を考えた際に、やはり派遣期間が短くても待遇が変わったという情報を派遣先から派遣元に来るようにするのが原則であろうと。ただ、それを受けて派遣元が雇い主として、それを反映させるかどうかは派遣元の雇用管理上の判断になるのではないかと。それは派遣だけではなく、直接雇用の有期で、例えば 1 年契約の有期の方の残り日数が僅かな時点で正社員の方の待遇が変わったときに、それを残りの期間を有期の方の待遇に反映させるのか、もう僅かなので反映させないとか、次の更新から反映させるという扱いにするのかというところは雇い主の判断があるのではないかと思います。同じような意味で、派遣の場合にも判断があります。ただ判断があるということだけで止めてしまうと、会社判断で、そこは自由だと受け止められても本意ではないと思います。ただ、その判断があまりにも不適切な判断だと司法判断が下るというような趣旨を続けて申し上げたつもりです。

○冨田委員 ありがとうございます。

○守島部会長 他にいかがですか。

○秋田委員 今の情報提供のところで、派遣先で変更があれば、また情報提供するというのは、それはそうだろうと思いますが、今回この法律が施行されれば、そのときに多くの企業で、そもそもの正社員と有期雇用者の賃金制度を見直すというアクションが相当幅広く起きると思います。そうすると、それが決着しない限り、情報が提供できないので労働者派遣契約が締結できないということが起きてきて、実務的には各企業は現行の派遣契約はその施行日までにして、そこから先は新たな契約を結ぼうと考えると思います。派遣料金も変わるでしょうからその意味でもそうなると思います。そうなると、なかなか情報提供がされないということになり、現実問題として施行移行期の実務的な混乱が起きるような気がするのですが、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 これも、きちんと受け止めてお答えできているかどうか分かりませんが、法改正の X デーに備えて、社内で自社の賃金体系を見直す場合で、 X 年何月何日から新賃金制度を適用するということが予定されているような場合に、一番面倒がないのは労働者派遣を受け入れる際に新賃金制度の施行の前日までの受入期間で一旦派遣契約を結んでおいて、そこで終わりではなくて、賃金制度改定が予定されているので、賃金制度の改定自体はあまり前であればともかく、ある程度前の期間であれば内容が見えるのでしょうから、その後の賃金制度については見えた段階でそこから先の情報として、ここで変更されるという提供をし、それを踏まえて派遣会社で派遣労働者の賃金や待遇を変える必要があるかをよく考えてくださいというやり方をされるのが、 1 つのやり方のように思います。そこは、ちょっと行政がこういうやり方が一番というよりは、民間の派遣会社や派遣先の間で、お互いにとって混乱が起きにくいやり方を相談していただければと思います。その過程で、行政でこのような指針を示した方がいいというものがあれば、また御指摘いただければと思います。答えがずれているかもしれませんが、いかがでしょうか。

○秋田委員 そういうことなのだろうと思います。ただ、派遣料金も大きく変動する場合もありますので、それがなかなか契約当事者同士で本当に円滑にいくのかどうかは、やってみないと分からないと思います。

○守島部会長 他にはいかがですか。

○村上委員 情報提供の話ではなくて、 1 つ前のことについての意見です。先ほどの梅田委員とのやり取りの中に、労使協定の締結の範囲の問題がありました。派遣先が変わるごとに労使協定方式か派遣先均等・均衡方式かを選ぶようなやり方は不適当だという事務局答弁があったと思います。不適当ということであれば、何らかの形で禁止である旨を明らかにしていただきたいと思います。

 また、秋田委員とのやり取りの中で、派遣労働者は有期契約労働者に関する均等・均衡待遇規定の対象となるかならないかというお話があり、その中では「解釈で考えたい」という事務局答弁がありました。この点について、派遣元で雇用される労働者は有期派遣労働者だけではなくて、派遣元の内勤の無期契約労働者などもおります。そういったことを考えますと、派遣労働者については、当然に有期雇用労働者に関する均等・均衡待遇規定もかかりますし、派遣法の均等・均衡待遇規定も適用されるという整理しておかなければ問題が生じると思います。この点は検討事項であるとは思いますが、一律に何か一方の規定は掛からないというような解釈を示すべきではないと考えます。以上です。

○守島部会長 他にいかがですか。

○松浦委員 派遣の三者関係は複雑で、なかなか直接雇用と同じように議論ができないところが幾つかあると思います。今までの議論の中で、 3 つほど確認をいたします。 1 つ目は、実務のイメージとして、おそらく 1 つの企業の中の直接雇用の中で、均等・均衡を確保するために情報提供を行って説明を行っていくときには、特に大企業であればパートの雇用管理区分、あるいはそれに近い一般職の雇用管理区分があって、カテゴリー単位の説明が可能になってくると思うのです。一方で、派遣については、例えば同じ企業に派遣されている派遣労働者であったとしても、職務がバラバラであるケースが結構あると思います。先ほどあったような受付業務は全員派遣というような塊で管理できる場合もあるかもしれませんが、一方では非常に高度な職務で専門的な業務をしていただいている派遣の方や、あるいは補助的な業務で働いていらっしゃる派遣の方というように、いろいろな派遣の方が同じ企業の派遣先の中にいらっしゃいます。同じ派遣労働者それぞれについて、同種の業務の労働者を特定し、それに対して派遣先は情報を提供し、派遣元は説明義務を負うと。もっと言いますと、派遣元の中にも大手の派遣会社であれば何万人もの派遣の方がいますが、それぞれ派遣先ごとに、更に派遣先の職務ごとにそのような実務が発生するという理解でよろしいかどうかが、 1 つ目の質問です。

2 つ目は、先ほど秋田委員がおっしゃっていたこととも関連しますが、派遣先と派遣元それぞれに、派遣労働者に対して均衡規定がかかります。特に、登録型であれば、有期もダブルで掛かるというような整理の場合に、やはりいろいろなパターンが考えられるので、そのケースを少し示していただいて整理して議論した方がいいのかなという感想をもっています。

 その中で、例えば、派遣先に有期で派遣されている方と同種の業務の方がいて、派遣元には雇用期間が違う常用型の方と有期の方で同種の業務をしていると。そうすると、比較の問題になる方が 3 人出てきます。派遣先の A さんと、有期の派遣労働者の B さんと、派遣元の C さん、それぞれの労働条件がバラバラなときに、まずどこに合わせばいいのか。その場合、派遣先均衡が大原則だという話であれば、派遣元の常用の派遣労働者についても、少し乱暴かとは思いますが、全部一緒にしてくださいという話になると思います。なおかつ、労働条件の範囲が今かなり幅広に捉えられているので、あらゆる手当や賞与といった処遇に関して全部そろえろという話なのかという辺りは、少し議論をしておく必要があると思いますので、今の段階でどのように考えていらっしゃるのかということが 2 つ目の質問です。

3 つ目の質問は、労働協約についてあまり理解ができていないのですが、労働協約を組合と企業との協約として限定しておっしゃっているのであれば、それは派遣労働者に組合に加入して組合費も払いなさいという前提になるということでよろしいでしょうか。要は組合費が発生すると思うのですが、そういうことも含めて労働協約とおっしゃっているのでしょうか。以上、 3 つの質問です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず 1 点目の派遣先については、様々な業務で、ある派遣会社から派遣労働者を受け入れていれば、それぞれ比較対象となる派遣先の社員は異なることがむしろ通常だと思われますので、それぞれごとに待遇情報の提供は必要になると思います。それから派遣元から見て、今度は派遣元が数千、数万の派遣労働者を様々な派遣先に送っています。これも純粋の人数分というよりは、おそらく 1 本の労働者派遣契約で、これこれの部署に、これこれの業務で 3 人、 5 人という形で派遣している場合には、その 3 人なり 5 人に対して提供する説明は、同一で足りることが通例ではないかと思います。そういう意味で、 5,000 人いれば 5,000 通りの説明ということではないと思います。しかし、そういう意味では労働者派遣契約の本数の方が近いのかもしれませんが、それぐらい説明すべき内容が異なってまいります。例えば同じ業務であっても、派遣先の会社自体が異なれば異なってまいりますので、その説明はお願いしたいと思います。

 それから事例については、必ずしも今日は最終的な回答でなくてもということでしたが、派遣の場合に直接雇用のパート・有期のルールと、三者関係の派遣のルールとが重なって適用される場合にどう整理するかという問題で、途中段階では、事務局から両方重なると解がない場合もあるのではないかという解釈で申し上げましたが、それに対して両方適用されるという大原則で検討すべきだという御意見もありましたので、もう少し検討したいと思います。

○村上委員 労使協定については申し上げたいことがたくさんあるのですが、労使協定と労働協約とは全く性質が違うものです。釈迦に説法ですが、労働組合というのは労働条件の維持・改善のために労働者が自主的に団結して結成するもので、労働組合と使用者が交渉した結果締結するものが労働協約です。一方の労使協定は、まったく違う性格のものです。

今回、派遣先均等・均衡を法律上の原則として、その例外を認める場合には派遣元が労使協定を結ばなくてはいけないとされています。あくまでも均等・均衡待遇規定がかかるのは派遣元事業主ですので、派遣労働者にむりやり労働組合に入れとかそういうことを言っているわけではありません。派遣元が派遣先均等・均衡ではなく、派遣先から様々な情報提供を受けずに自分たちの会社の中で派遣労働者の賃金をきちんと決めてキャリアアップさせていきたいと思うのであれば、それに相応しい内容の労使協定を結ぶ必要があります。その際、労使協定ということでは、労使協定の中身や締結主体の選出手続きに懸念があるので、やはり基本的には労働協約であるべきではないかと申し上げているのです。

○松浦委員 労働協約に限定してしまうと、特に、常用型の派遣の方は 1 つの企業の中で賃金を決める。要は、労使協定方式を選びたいという派遣労働者の方もいらっしゃるのではないかと思いました。そのときに、自由な選択が結構限定されないかなという懸念もありました。ただ、今のお話ですと、必ずしも労働協約に限定するということではなく、労働協約を原則としつつも労使協定についても適切な手続であれば、もちろん許容されるという理解でよろしいですか。

○村上委員 原則的にどう考えるのかと問われれば、労働側としては労働協約であると申し上げざるを得ないのです。

しかし、今回御提案の中で、ある程度現実的な線として労使協定という提案がありますので、それについては現実的に検討する必要があるとは思います。あくまで、原則的な考えは労働協約であるべきであると考えています。

○守島部会長 他にいかがですか。

○山田委員 先ほどのことに関連しますが、村上委員がおっしゃるように、恐らく理想は労働協約でやっていくということなのでしょうが、現実問題としてはなかなかそうではないという中で、労使協定も現実的なこととして考えていかないと駄目だということと思います。そのときには、もちろん今の案の、労働組合があるケースでは労働組合と協定を結ぶ。ない場合は、労働者の過半数代表になってくるわけです。このときに、おそらくケースによると思うのですが、通常は派遣会社の内勤の方が中心になってくるのだと思うのです。そのときに、もちろん現実にはそのようにならざるを得ないケースも多いと思うのですが、本来は派遣労働者の処遇を改善するということですから、例えば派遣労働者の意見をしっかり聞くというような条件をある程度つけていく必要があるのではないかという意見です。

 それから、派遣先均衡の話があって、これは原則論で、その通りだと思います。ただし、やはり私自身は、もう 1 つの、労使協定による待遇決定方式も現実には一定の重要な役割を果たしていくと考えています。これは質問なのですが、 3 つの条件が上がっています。同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準と同等以上であるという条件があります。これは、具体的にどういう統計を使うかで、いろいろと違ってくるのではないかと思います。というのは、やはりこれは決め次第によって当然、賃金水準は変わってきますので、どの程度派遣が使われるのかどうかということを大きく左右します。今の段階で結構ですので、どのようにお考えになっているかを教えていただければと思います。
○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今の点は事務局にお尋ねだと思いますので、お答えいたします。現時点で検討しているのは、やはり同種の業務の賃金水準は協定の
3 要件の 1 つとして重要な要件であると思っています。データ的には、政府としては大きく 2 つの賃金の統計のデータを持っています。 1 つは、賃金構造基本統計調査、いわゆる「賃構」と言われるものです。もう 1 つは、職安の求人賃金ですが、「職業安定業務統計」です。それぞれ、やや一長一短はありますが、いずれも都道府県別で産業別、職種別の賃金水準が取れるのですが、賃構の方は対象職種のカバーに一定の限度があります。一方、職業安定業務統計の方は、対象職種のカバーは広いのですが、職安を利用した職安の求人賃金の平均ですので、必ずしも母数として全部をカバーはしていません。しかし、現実的に活用可能な賃金統計としては、この 2 つだと思っています。ただ 1 点申し上げますと、特に賃構は、我が国の賃金統計では一番の水準のものではありますが、派遣労働者に派遣契約に基づいて従事してもらう業務は、賃構の職種区分と同じような、何々の製造というような業務でやってもらう場合もあると思いますが、賃構の職種区分に照らすと、その中の更に一部、細部であったり、またがるような業務であったりというような、いろいろなケースがあり得ると思います。そういう意味では、ぴったり当てはまるかというとミクロには限界があるところもあるのですが、それでも我が国を代表する賃金統計、かつ、都道府県別で産業別、職業別のデータが取れる統計ですので、目安としての役割は期待できるのではないかと、事務局としては思っております。

○山田委員 いずれにしても、派遣という制度が、でき上がってからもう 30 年以上たちます。いろいろな考え方があって、制度自体も何度も大きな変更がされてきています。既に 130 万人ぐらいが日本で働かれており、やはり一定の社会的な役割や重要な地位を占めています。おそらく派遣に関しては幾つかの機能があって、いわゆる一時的な専門的なスキルを企業が活用し、労働者としてはそのスキルを生かしていくことが一つの重要な機能です。それにプラスして、現実にはなかなか仕事が簡単に見つけられない人が仕事を見つけて、そのあと可能な限りスキルアップをしていくという機能も重要な機能だと思います。特に、後者の機能をなくさないように、すでに働いている人たちもいるわけです。正に賃金をどう設定するかということに関わってきますので、そういう観点を意識しながら、実務でどう設定するかを具体的に考えていっていただきたいという要望です。

○小原委員 今、山田委員が前半の部分で御発言された点に関連して発言します。前半の部分で、過半数労働組合、それがない場合は過半数代表者が労使協定を締結する場合、実際の派遣労働者の御意見を聞いて締結すべきだと御発言されたかと思いますが、全く同感です。それに併せて、過半数労働組合、若しくは過半数代表者が派遣労働者からきちんと意見聴取できるように、例えば、就労義務の免除、会議室の貸与、掲示板の貸与などといった便宜供与の義務を派遣元事業主にセットで課すということも必要であると思います。

さらに、先ほどもありましたが、派遣元事業主には、協定締結時の協定内容の労働者への開示、周知義務も併せて法定化すべきです。

加えて、少し遡りますが、そもそも過半数代表者の場合はその代表を民主的な手続きで選んだのかということも、きちんと担保すべきだと思います。例えば、 36 協定の締結において、過半数代表者は不適切な選出方法がとられているケースが多く、役職者の交代制などの事例も散見されると聞いております。

 今回の労使協定は、派遣労働者の賃金、労働条件そのものに踏み込む大変重要なものです。過半数代表者の選出方法は、必ず無記名の投票による選挙とするなど、手続き規制も併せてお願いしたい。以上、要望いたします。

○守島部会長 ありがとうございます。御要望ということです。

○冨田委員 今の意見に関連して、労使協定の取扱いについて意見を申し上げたいと思います。事業主が労使協定方式を選択する場合、労使協定は行政への届出も要件とするべきであると思います。今、小原委員が指摘したように、労使協定が適切に結ばれているかといった内容の精査や、行政指導を適切に行うこと、更には行政によるデータ収集を考えても、労使協定は行政届出が必要であると思います。

 また、この部会とは別の審議会で議論されている時間外労働の論議の中でも、 36 協定の締結主体となっている過半数代表者の選出手続きの適正化については議論となっていると思いますので、こういうことも含めて労使協定の届出についても検討いただきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

○高橋委員 今、冨田委員から届出とすべきだという意見が出ました。届出をして行政が何をチェックするのかというところが全く分からないです。123の中身といっても非常に多様ですから、123が何もないという形式要件のチェックはできるかもしれませんが、中身をチェックすることはできないと思うので、届出方式は現実的ではないと思います。

 その上で、労使協定方式の1です。先ほど山田委員との間でやり取りがありましたが、職業安定業務統計と賃構のデータが一応あるということで、これは当然ですが職種別で地域別のデータを取ることができればよろしいのでしょうが、職安の統計と賃金構造基本統計調査とではベースが明らかに違います。

 しかも賃金構造基本統計調査のどこの何を取るのかということになると、我が国の企業の賃金制度は、職能給的に決まっている企業も多いので、勤続年数に応じて賃金水準がだんだん高まっていくような統計になっています。同種の業務に従事する一般の賃金水準といったときに、何を取っていくのかということは非常に重要な点だと思っております。これは、もしかしたら法案が国会で通った後の審議になるのかもしれませんが、何か単純な算術平均値みたいなものを参照するのは必ずしも適切ではないと思っております。

 ここからは私の確認です。1に関して、行政としてもピッタリとした参考データを提供するにはおそらく限界があると思います。もちろん業界団体等が提供するようなデータも参考になり得ると思いますが、その上で結局は、派遣元の労使が話し合って決めた内容ということでいいかどうかということについて確認をさせていただきたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 一般労働者の賃金の点は、考え方だけ書いてあるような 1 行ですので、様々な御指摘を頂いた点、いずれも引き続き検討していかなければと思っております。現在、労働者派遣法第 30 条の 3 の配慮規定で 3 つ配慮要素が上がっております。

1 つ目は派遣先の労働者の賃金、 2 つ目は一般労働者、 3 つ目は派遣労働者自身の職務内容等ですので、派遣先均等という 1 つ目の配慮要素に対応して、延長していったようなルールと別のやり方の何かを確保して創設するとすれば、一般労働者の賃金は今の派遣法第 30 条の 3 からいっても見ていくこと自体は必要であろうと。さらに、そこを見ていくためにどうするか。どういう幅を許容しながら運用可能なやり方を作っていくのかについて、これは本当に労使の皆様の知恵を借りながら検討させていただきたいと思います。

 その際に、賃構と職業安定業務統計のことを申し上げて、調査対象の範囲に違いがあったりしますので、その 2 つのデータの金額は必ずしも一致しません。ということは、すごく狭い唯一絶対の都道府県で、この業務で産業を受け入れるならば時給 1,237 円だというようなものがあるわけではないと思います。一定の一般労働者の賃金水準といっても常識的な、賃構で見ればこういう額になっているし、職業安定業務統計ではこういう額になっているという幅があるのだと思います。更に言えば、そこに業界団体が独自データを取っているとか、都道府県の経営者団体が独自データを取っていらっしゃるということもあるのかもしれないと思います。

 今の事務局の考えでは、行政データが唯一の数字で、要するに賃構か、職業安定業務統計のどちらかを使いなさいということでは、両統計の性格に照らしてむりやり当てはめを求める場面が出てきてしまうのではないかと思います。

 一方で、派遣元で話し合って決めたならば、もうそこにはあらゆる客観的な妥当性の判断が及ばないかというと、均衡・均等の民事的な性格からいって、そういう問題にはならないのではないかと思います。賃構や職業安定業務統計という公的データと、例えば、同じ額ではないけれど独自の○○県経営者協会調べというデータがあり、あまり離れていない水準の数字があって、その地域でも受け入れられているというような場合もあれば、全く出所不明のデータというようなこと、出所不明だったらないのかもしれないですが、データの信頼性にも様々な温度差があると思います。その中で、妥当性の低いものを使った場合は使ったこと自体が最終的に司法の場で判断されることになるのではないかと思います。

 ただ逆に、極端に行政統計のこの数字のどちらかを使いなさいというのではカバーしきれないという性格なのではないかと。その中間の妥当な実務的な線を何か作らなければいけないのではないかと思っております。

○松井委員 今の件に関連してですが、私も、労使協定の1の要件である、一般の労働者の賃金水準をどのように示すのかは非常に重要な問題だと思います。そもそも正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差の大きな要因は、正規雇用労働者はキャリアに応じて賃金が上がっていくものの、非正規雇用労働者は勤続等に関わらず賃金が一定というところに大きな問題があると思います。だからこそ、2の要件として、キャリアアップに応じて経験等を適正に評価するということが含まれているのだと思います。一般労働者の賃金水準を示す際にも、キャリアアップに応じて賃金が上昇していくことが明確となるように目安を示していくべきであると思います。

 労使協定の行政届出に関連して、先ほど、高橋委員から行政が労使協定の何をチェックするのかという御指摘がありました。労働側として懸念しているのは、例えば、1の「同種業務に従事する一般の労働者の賃金水準と同等以上」とする要件が実質的に守られるのかということです。極端に言えば、1から3の文言を単純に書いた労使協定も考えられなくもないです。労使協定では、一般の労働者の賃金水準についてはきちんと紛れのない具体的な数値を示す、それをもってはじめて原則からの例外を認めるのだと思います。

 また、 36 協定等にも様式がありますが、そういうものも必要だと思います。それに基づいて、行政が何らかのチェックをするということは、今回の適用除外をするに当たって欠かせないと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

○梅田委員 関連して質問をしたいと思いますが、例えば「同種業務に従事する一般の労働者の賃金水準」の目安より明らかに低い指数を用いて労使協定が締結されていた場合、行政による助言・指導さらには改善命令・事業停止・許可取消の対象にするでしょうか。これは質問です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今の点ですが、広く言えば均衡待遇に関する問題について、行政措置としてどこまで関与していくのかという問題であろうかと思います。

 均衡待遇に関しては、パート・有期の回の中では、前回、均衡待遇について従来は指導・助言等の対象としていなかったわけですが、一定の解釈が明確にできる場合という線引きをして、そこについては指導・助言の対象としたいという事務局の提案について御議論いただきました。

 今の御指摘の点も、結局、一般労働者の賃金水準として個々の労使協定の中で使われているものが、今の「解釈として明確な」に該当すると言えるかどうかの線引きに照らして判断することにならざるを得ないのではないかと思います。グレーゾーンについて行政が指導を能動的にやっていくことに対して、一定の抑制をしなければいけないという要請もあろうかと思います。

 行政 ADR の中で、労働者や当事者から相談があって労働局が紛争解決援助をする場面もあります。その場合には、調停まで含めて均衡待遇に関わる問題全体が議論可能だと思います。

 具体的に線引きとして、協定の場合に何をもって解釈上明確な場合と、先ほど、そもそも法定の記載要件1~3の記載が欠けている場合という御指摘がありました。欠けている場合は、さすがに私どもの感覚としても「客観的に明確な」に該当するという思いがあります。更なる線引きについては、引き続き御議論を頂きながら検討したいと思います。

○小原委員 今のお話で、労使協定について行政への提出や届出を不要とすると、この部会に出席されている使用者の方々にはそうした方がいらっしゃるとは思いませんが、何か問題が起きた後に後追いで労使協定を締結することもできてしまいます。行政への届出を要件化することで、例え届出の際に中身のチェックをしなかったとしても、行政への届出を要件化すること自体で適切な内容の労使協定を結ぶインセンティブ効果も働くのではないかと思いますので、行政への届出は必要であると思います。

 併せて、労使協定の有効期間についても検討いただきたいと思います。先ほど高橋委員から、派遣契約期間が 1 か月以下の派遣労働者の方が 4 割いるというお話もありましたが、労使協定の有効期間をあまり長くしてしまうと、協定を締結した時の人が、誰もいなくなってしまうということも考えられます。そのため、例えば 1 年以下などと有効期間を法定化して、さらに行政への届出を要件化すべきであると思いますので御検討いただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

○村上委員 今回の労使協定には1~3の要件がありますが、1の要件が大変重要だと思います。1については今日も様々な議論があるので、何か参考になるような統計やデータがあるのであれば、次回部会で是非イメージを出していただきたいと思います。その上で議論した方がよいと思いますので、事務局に御検討いただければと思います。

 それから、労使協定に関していくつか確認します。まず、1の「一般の労働者の賃金水準」より低い水準で結んだ労使協定についてです。賃金水準に幅があるということは理解しますが、「一般の労働者の賃金水準」の半分という賃金水準の協定といった明らかに内容に瑕疵がある場合は、この労使協定は無効となって原則の派遣先均等・均衡に戻るとすべきであると思いますが、そういうことで良いでしょうか。

 また、過半数労働組合がない場合、過半数代表者の選出方法で、社長の指名や、自動的に総務部長が選ばれたといった不適切な選出方法がとられていた場合、あるいは派遣労働者に協定内容を周知していない場合など、手続的に瑕疵がある場合も、労使協定は無効として原則の派遣先均等・均衡に戻るべきです。

 さらに、仮に労使協定の内容や手続に問題がないとしても、派遣元事業主と派遣労働者が結ぶ労働契約において、労使協定で定めた内容を下回るような労働契約が結ばれていては意味がありません。労使協定方式で原則である派遣先均等・均衡の例外を認めるのは、労使協定がきちんとした内容で締結され、それが実際に守られていることが重要です。そういう意味で、労使協定で締結した内容が実際にきちんと守られるようにしていくことも制度的に担保しておく必要があると思います。

 労使協定方式の実効性を担保するためには、派遣元事業主に対するサンクションも重要ですが、派遣労働者の救済を考えれば、労使協定で締結した内容を何らかの形で、例えば、就業規則に記載させるという形で最低基準効を持たせるようにして、未払いの賃金請求などができるようにしておくことも必要であると思います。また、派遣元事業主には、労働者への労使協定内容の周知義務なども規定すべきと思いますので、意見として申し上げます。

○守島部会長 ありがとうございます。

○秋田委員 労使協定の関連ですが、先ほど、あまり協定期間を長くしない方がいいという御意見もありました。仮に労使協定が失効すると、基本原則である派遣先に合わせるという仕組みがありますので、労使協定が常用型等 ( 無期雇用等 ) の方々にも相当程度、活用されるのではないかという御説明もありました。そういう制度や労働条件の安定を求めるのであれば、期間は、労使にある程度任せて決めてもらうということが基本だと考えます。

○守島部会長 ありがとうございます。

○中窪委員 協定から少し離れますが、よろしいですか。

○守島部会長 今の議論の協定関係についてどなたか、大丈夫でしょうか。

○中窪委員 多分、第 1 回目に議論されたのではないかと思うのですが、改めて質問いたします。今日の資料 1 1 ページの辺りの文章、あるいは、その元になる働き方改革実行計画のところで、同一労働同一賃金と、均等待遇・均衡待遇という言葉が出てきて、私はこの関係がどうしても落ち着きません。私自身は均等待遇のほうが先にあり、その中に同一労働であれば同一賃金になるというものが出てくると考えています。

 しかし、この計画は、むしろ同一労働同一賃金を実現しなければいけないということがあり、そのための法整備として、均等あるいは均衡を求めている気がしますが、そういう理解でいいのでしょうか。

2 点目として、派遣に関しては、他の使用者の下で働くという点で特殊なものですから、自分のところだけではなく派遣先との間で均等・均衡を考える必要があり、これを今回新たに加える。それは本来、外部の労働者であるがゆえに不利になっている部分があるのではないか、ということだろうと思います。

 ところが、その派遣先においても、正社員と非正規の待遇の改善という同一労働同一賃金の理念があり、そこで非正規の人が非常に低い条件で働いている場合には、むしろ不合理な状態になっているかもしれない。派遣業者にとっては、単にそこで一緒に働いている人だけではなくて、その先のところまで、その周辺の正規の人まで見てきちんと決定しなければいけない。そこまで均等・均衡の中に求められる。そのために、情報を提供する義務が派遣先にある、ということになるような気がするのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず、 1 点目ですが、働き方改革実行計画の世界における概念整理としては、政策の大目的として同一労働同一賃金の実現、更に言えば正規と非正規の待遇格差の是正、非正規の待遇改善です。同一労働同一賃金というときに、特に講学上というか、ヨーロッパにおける厳密な意味で用いられるような意味合いからすると、例えば、どちらかというと議論の流れとしては、性差別や人種差別という本人にはどうしようもできない要因による差別に対して、それを是正する義務として用いられてきた原理・原則はあります。今回の正規、非正規の待遇格差改善の文脈で、その用語を用いております。

 待遇格差の是正の大きな政策の枠組みが同一労働同一賃金で、均等・均衡と論点資料等で用いているのは、現行のパートタイム法の 9 条のような職務内容、職務内容・配置変更範囲が同一の場合には、こちらも同一にしてくださいというのが均等であり、職務内容、その他が異なる場合には、その異なりに照らして不合理な格差にならないようにしてくださいというのが均衡だという、法的なルールの射程と効果といいますか、それによって用語を使い分けております。その 2 つの規定や説明義務などを使って、同一労働同一賃金を実現する法的枠組みを整備し、それが効果として非正規の待遇改善を図るという流れです。

 これは、三者関係であることによる派遣独特の難しさがありますので、最終的にはそれとの兼ね合いも、また合わせて考えなければいけないと思って議論を提起しております。これも出発点としては、派遣労働者についてパートや有期で受けられるような待遇格差是正の法的保護を、できるだけ同じような形で提供することができないかという発想があります。

 そうすると、直接雇用の場合には、あるパートタイマーの待遇が不合理でないかどうかを考える際に、雇い主として比較するとすれば、この正社員グループであろうということを企業なりに考え、それとの待遇差はこういう要因で説明できるのではないかとか、あるいは少し説明が不十分かもしれないと考えるという順序を取っていただくのだろうと思います。

 そのことと同じように考えると、派遣の場合には三者関係ですので、派遣先においてそのような考慮を担っていただく必要が出てくると思っております。派遣先において、当然、同じ事業所で同じ業務に従務している正社員がある場合には、誰と比較したらいいのだろうかということについてあまり迷うところはないと思いますが、それがいない場合にどの対象と比較したら良いか、ちょうどパートでも同じことを雇い主が思うことになると思うのですが、それを派遣先に考えていただく。それを受け取った派遣元は、それを踏まえて待遇決定をしていただくという枠組みにするということが、今回の事務局の提案の基本線です。

○中窪委員 その枠組みは分かったつもりなのですが、 2 つ分かれていることによって、先ほど岩村委員は虚偽とおっしゃいましたが、虚偽ではなくても派遣先から来ている情報がかなり限られていて、本当はその周囲まで考慮すべきだったりすると、より違った結論になるということもあり得るのかと思います。またそういうところを少し詰めていかなければいけないと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。他にありますでしょうか。

○武田委員 意見を 2 点述べたいと思います。 1 点目は、情報提供義務に関する意見です。先ほど小林委員からご意見がございましたほか、高橋委員も頻度の点で御指摘されておりましたけれども、事務頻度が高く、かつ繁忙になりますと、これは派遣される側にも悪影響が及び、次の働き先が決まるまでに時間を要してしまうことにもつながりかねないため、ある程度簡易で、誰にでも使いやすいようなプラットホームを最初に用意いただくことが重要ではないかと思います。

 本来的には、スキルマップと企業のニーズをマッチングしていくシステムが必要です。ビッグデータ解析や AI が急速に進化している環境下では、それらを実現していくことは可能ではないかと思います。今回の法改正とは直接の関係はございませんけれども、効率的なマッチングが技術的には可能になってきていることを踏まえ、個別の会社ごとの対応にならないように、今から制度設計をしておいた方がよいと思います。つまり、派遣元ごとに派遣先に対して要求するフォーマットとかがばらばらですと、事務負担も重くなりますし、時間が掛かってしまう。したがって、まずはプラットホーム化し、ゆくゆくは技術によって、よりスムーズなマッチングを可能にするという、短期の対応と、中長期の視点の両方が必要ではないかという意見です。これは、シニアの雇用を考えても、日本にとっては重要な論点ではないかと思います。

2 点目は、均等・均衡処遇に関する点です。派遣先の均等・均衡処遇について、理想としては、ここに書かれているとおり、派遣先と同じ仕事をしている労働者がいればよいのですが、全く同じ仕事をしている労働者は必ずしもいないことは現実としてございますので、ある程度現実離れしない範囲で落としどころを探すことは必要ではないかと思います。

 突き詰めて考えると、日本的な雇用慣行のもとで、果たして正社員の賃金も成果・職務・能力により説明できているかという点に問題の本質があるように思います。 1 回目に意見として申し上げましたけれども、本来、正社員、非正規、あるいは有期、パート等々を含めて、雇用慣行の在り方の検討が、会社ごとに必要になってくるのではないかと考えます。

 中野委員が先ほどお話されたように、企業にとっては今回の法改正がコスト増に繋がるとして意識されていると思います。しかし、マクロ経済を見ている立場からお話すると、これだけ人手不足で失業率が 2.8 %という現状ですと、今回の法改正に関係なく、優秀な人材を確保しようとするならば、賃金が上がってくるという時代になってきていると思います。したがって、企業の立場からみても、労働者のスキルを把握し、そのスキルに見合った賃金を支払うことが従来にもまして重要になってきています。優秀な人材を確保し、企業自体が生産性を高める努力をする。また、生産性に見合った賃金が、あらゆる雇用形態・立場でもきちんと反映される社会になっていく、それが究極的には働く人のキャリア形成やスキルアップに見合った賃金の上昇と、企業の生産性の上昇を両立させていく唯一の機会ではないかと思います。正社員も含めた賃金体系をどのように考えていくかという点を、公労使ともに考える良い契機、良い時期にきていると考えますので、一言意見までです。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。村上委員、どうぞ。

○村上委員  2 点申し上げます。 1 点目は、労使協定方式について再度意見を述べたいと思います。今回、いろいろ意見を申し上げましたけれども、労働側としては、労使協定方式をしっかりしたものにしなければいけないと思っているのです。誰でも労使協定を結んでおけば派遣先均等・均衡の例外にできるという話ではなくて、きちんとした内容と手続の中で締結されていくことが必要だと思うのです。

 過半数代表者の選出手続や、派遣労働者からの意見集約について申し上げましたが、派遣労働者がどのように関与していくのかということが必要だと思います。例えば、過半数代表者を選ぶときにも派遣労働者の方がその手続に参加できる、具体的には「こういう人を選んでよいか」ということをきちんと聞いた上で過半数代表者を選ぶとか、労使協定を締結するときにも「こういう協定でよいか」ということを派遣労働者自身が知っておくことが必要であると思います。そのような観点から意見を述べました。

 労使協定の有効期限についても同様で、労使が決めればよいとして、あまりに長い有効期間の労使協定が締結されると、労使協定を結んだときに働いていた派遣労働者の方がいなくなってしまう。そのような労使協定を認めていいのかという問題があります。あまりに長い有効期間の労使協定は、公正さ、適正さという観点からは課題があると思っており、一定程度の有効期限は法律で定めるべきであるというのが労働側としての意見です。

 もう1点は質問です。労使協定方式とは違う話ですが、資料 3 ページに「派遣料金の設定に際し派遣元事業主が規定に違反することがないよう配慮する義務を設けることが適当ではないか」とあり、参考情報として現行の派遣先指針の記載があります。現行の派遣先指針の語尾は「努めなければならない」となっています。本日、配布いただいた資料 2 6 ページで、派遣元と派遣先でどのような規定があるのかということを強さ別に整理されている資料がありますが、その中で先ほど申し上げた資料 1 3 ページで出ている派遣先指針は、「努力義務」として整理されています。戻って、資料 3 3 ページで「配慮する義務を設けることが適当ではないか」となっているのは、資料 2 6 ページで言う法律上の「配慮義務」とするのか、それとも法律上の「努力義務」とするのか。どちらを意味しているかということについてお伺いしたいと思います。

○守島部会長 では、課長にお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 混乱を招く資料でありまして、申し訳ありません。派遣先指針をこの項目の下に付記したのは、もともとの矢印の文章を直前に読み返したときに、もともと派遣料金の設定に際しての配慮なのですが、「規定に違反することがないよう配慮」と書いてしまったがために、派遣料金を設定した後、それが派遣会社のマージンにどれだけ入って、派遣労働者にどれだけ入ったのかまで派遣先がフォローしなければいけないような配慮にも読めてしまうのではないかと思いまして、それはちょっと本意でなかったものですから、発想の基の指針を付記しました。

 今の指針の記述との関係ですが、実行計画は詳しく言うと、「本文」と「工程表」と分かれています。工程表というのは、スペースの関係もあって、本文より若干詳しめに書いており、工程表では派遣料金については配慮等の規定というように書いておりまして、実行計画では配慮規定であることが前提となった記述となっております。そういうことで、これも論点資料の本文も配慮する義務と書いたのですが、説明が不十分で恐縮でございます。

○守島部会長 では、高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 今の 3 ページの下の矢印に関して、この意味は、派先指針を法律に格上げすると。しかしながら、現在の「努力義務」を「配慮義務」に更に格上げをするという理解なのですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法律上の「義務」「配慮義務」「努力義務」というのと比べまして、法律で書き分けるほど厳格に指針において配慮義務的な書き方と、努力義務的な書き方を書き分けているかは、どうかケース・バイ・ケースだと思いますが、いずれにしても、今回、ここで御提案しているのは、今の派遣先指針の、内容は今の法律上の配慮義務を前提にしますので、書きぶりは変わると思っております。位置付けとしては、法律上の配慮義務への格上げの提案です。

○高橋委員 派遣先指針を法律に格上げするまでは理解しますが、今の努力義務を配慮義務に変更するというのは非常に理解に苦しむところであります。すなわち、派遣料金の設定というのは当事者間の契約自由の原則ですから、設定に当たって何らかの配慮をしなければならないとなったら、それは派遣料金を上げろと言っているのと同義ですよね。そこまでは、ちょっとやりすぎなのではないかと。やはり派遣料金の設定に当たっては、努力義務としている今の規定を法律に格上げするというのが妥当な対応なのではないかと思います。

 あと、 2 点あります。 2 点目は、先ほど村上委員が整理されましたけれども、労使協定方式、これについて、ガチガチに縛っていくような提案のように労側の皆さんの意見を聞きましたけれども、やはり大切なのは、労使自治というものが非常に重要になってきますので、労使自治を最大限尊重した制度設計とすべきではないかというように思います。これは私の意見です。

 それから、今日はいきなり具体論から入ってしまったので、そもそも論的なところについて意見を述べたいと思います。御承知のように、労働者派遣制度というのは常用代替防止というのを基本理念に掲げて、主たる労働者の像というものを臨時的、一時的な業務に従事される方々という者を主たる対象者として制度設計してきたわけです。ところが今回、派遣先の均等・均衡で、派遣先の正社員の方と比較してどうのこうのというような制度設計なのですが、それは常用代替防止の理念と本当に整合的なのかというところがよく分かりません。もし、今後ともこの法改正を進めて、派遣先の同種の業務に従事する正規労働者の方々との均等・均衡を含めて追求していくのだということであるならば、現行の労働者派遣法における常用代替防止等の基本理念等についても見直しが必要なのではないかと考えますが、その辺りはいかがなのでしょうか。整合性がよく分からないのです。以上です。

○守島部会長  2 番目は質問ということでしょうか。では、課長にお願いします。

○高橋委員 はい、最後は質問です。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 常用代替防止理念との関係についての考え方ですが、事務局としては、今回、働き方改革実行計画を受けて御提案申し上げている法整備は常用代替防止の観点から御提案しているものではありませんが、このようになった場合の効果を推測すると、派遣先の常用労働者と職務内容や、職務内容・配置変更範囲、その他の事情において、均衡の取れた待遇で派遣労働者が派遣されてくるということは、派遣先からすれば、言葉は悪いですけれども、割安なというか、そういう労働力である場面、あるようなケースがこれまであったとすると、それが均衡が取れた形になるというような効果を持ち得るという意味では、効果としては、常用代替防止という労働者派遣政策の方針に合った効果も持ち得る。少なくとも、違う方向に走るような方向性とはちょっと違うのではないかと思っております。

○守島部会長 他にありませんでしょうか。

○山田委員 先ほどの関連で、私なりの理解を申し上げますと、もちろんヨーロッパでも常用代替という考え方が強くて、いろいろな業務規制とか、期間の規制というところから入っていったと思いますが、それで段々広がってくる中で均等待遇規定というのですか、そういう話が入っていったという経緯だったのだと思います。先ほどの御説明にもありますように、やはり価格の面で規制して必要以上に派遣の市場が広がらないように、というような考え方というのがあったのだと思います。ただ、ヨーロッパの場合も、もともと派遣先均等というのが原則にはなっているわけですけれども、これは御案内のところかと思いますが、現実には「働き方改革実現会議」のペーパーの中にもあったように、派遣先によって賃金が上下するというのはよくないと。ヨーロッパの場合は一応、職種別労働市場があるわけですが、それでも現実には、ドイツの場合は賃金ドリフトということで、企業によって上乗せをしていますので、それがあるということで現実には適用除外ということをつくっていると。日本の場合は、特に、まだ職種別の賃金制度が十分整備されていない中で、原則は、派遣先均衡ということを取りながらも、今回のような、もう 1 つのパターンというのをつくっているという理解かなと思っております。

○守島部会長 ありがとうございます。では、松浦委員、どうぞ。

○松浦委員 派遣法はもともと常用代替の防止という考え方を色濃く反映して創設された法律だというように理解しておりますが、少なくとも、 2012 年改正で派遣労働者の保護というのが強く打ち出され、 2015 年改正で派遣労働者の正社員転換も含めた直接雇用の転換、要は、そういうことを希望する人については進めていくといった保護規定が設けられてきた経緯があるのではないかと、それは理解しております。ただ、派遣法との関係で言うと、今、御議論にあったように、派遣労働者が割安な労働者として使われるということは、本来の派遣労働者の保護という観点から避けなければならないということは重々理解しておりますが、一方で、派遣先均衡というのを突き詰めて考えると、同種の業務に就いている労働者と全く同じ賃金ということになった場合には、派遣料金というのは、その分、派遣会社の必要経費等も加算されてくるわけですから、むしろ割高な労働力というようになってしまって、そのときに派遣労働者の雇用の保護、キャリアの保護とかも踏まえて議論する必要があるのかと思っております。これは意見です。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。他にありますでしょうか。ありませんか、大丈夫ですか。

○中野委員 いずれにしろまだ議論の途中ですし、法案が通った後の議論だとは思うものの、議論を聞いていると、必要と認識しながらも仕事量が増えていくことは目に見えている気がします。先ほど御意見もありましたが、本当にみんながきちんと実施できる内容で、かつシンプルな方法を何か提示していただかないと、皆さんが実際に行動に移すときに非常に混乱すると思いますし、ひいては、この法案が生きないことになりますので、是非、その点をよろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。他にありますでしょうか。

○高橋委員 今の中野委員の意見に全く賛成です。論点ペーパーの 5 ページのところに、その説明義務を課すということが提案されていますが、結局、派遣元としては、派遣先から提供された情報でしか説明できないわけです。それで、派遣労働者の方が、いや、そうではなくて、もっとこういう説明も、もっとこういう情報をと、五月雨式に次々に情報を求められては、派遣先としてエンドレスに情報提供という形になると実務が回らないということが想定されますので、今の中野委員がおっしゃられたことは、大変重要な御指摘ではないかと思います。どこまで情報提供したら、情報提供は履行されたのかという点については、明らかにしていく必要があるのではないかと思っております。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。他にありますでしょうか。よろしいですか、大丈夫ですか。それでは、時間となりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。

 最後に、事務局から、次回の日程等について御説明いただきたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 次回の同一労働同一賃金部会の日時と場所ですが、調整中ですので、おって御連絡させていただきます。

○守島部会長 それでは、これをもちまして第 3 回同一労働同一賃金部会を終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表は小原委員、使用者代表は加藤委員に御署名をお願いしたいと思います。

 本日は長時間にわたり、どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(労働条件分科会・職業安定分科会・雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会)> 第3回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会(2017年5月16日)

ページの先頭へ戻る