ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会)> 第18回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会議事録(2017年4月27日)




2017年4月27日 第18回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会議事録

○議事

〇大林室長補佐 それでは、定刻になりましたので、第18回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会」を開催します。

 本日は、御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。

 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。

 また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。

 続きまして、出欠状況について御報告いたします。

 現在、委員10名のうち10名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令の規程により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 本年2月に、厚生科学審議会の改選がありましたため、予防接種・ワクチン分科会及び基本方針部会に所属されていた岡部委員と澁谷委員が退任されております。その後任として、基本方針部会に2名が新たに御参加いただくことになりましたため御紹介いたします。

国立感染症研究所所長倉根一郎委員です。

〇倉根委員 よろしくお願いいたします。

〇大林室長補佐 青森県中南地域県民局地域健康福祉部長で、弘前保健所長でもあられます山中朋子委員です。

〇山中委員 山中と申します。よろしくお願いいたします。

〇大林室長補佐 なお、倉根委員は、厚生科学審議会の会長代理及び予防接種・ワクチン分科会の分科会長に選任されておりますことを御報告いたします。

また、本日は、国立国際医療研究センター堀成美感染症対策専門職に参考人として御出席をいただいております。

〇堀参考人 よろしくお願いします。

〇大林室長補佐 それでは、議事に先立ちまして配付資料の確認をさせていただきます。

 議事次第、配付資料一覧、委員名簿、座席表、資料1~4、資料4には別添1がついています。参考資料1~4、各委員からの審議参加に関する遵守事項の申告書を御用意しております。また、委員のみに机上配付させていただいていますものがありまして、「予防接種基礎講座」を委員のみに配付しております。

 配付資料一覧を御確認いただき、不足の資料等がございましたら事務局にお申し出ください。

 申しわけございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので御協力をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○大林室長補佐 部会長の選任は、厚生科学審議会令第6条第3項で、部会長は当該部会に属する厚生科学審議会委員の互選により選出することとなっております。本部会では、伊藤委員、倉根委員、山中委員が厚生科学審議会員ですので、この3名の中からの選出についてよろしくお願いいたします。

〇池田委員 倉根委員が感染症部会の部会長もされており、予防接種・ワクチン分科会でも、これまで、班の検討部会の審議に参加されておられるため、倉根委員に部会長をお願いしたいと思いますが、皆さんいかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

〇池田委員 ありがとうございます。

〇大林室長補佐 それでは、倉根委員は部会長席に移動をお願いいたします。

(倉根委員部会長席着席)

〇大林室長補佐 次に、部会長代理ですが、規程により部会長から御指名をいただくことになっております。

 倉根部会長、御指名をお願いいたします。

〇倉根部会長 これまで中野委員が代理をされておられましたので、引き続き、中野委員にお願いしたいと思いますので、いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

〇倉根部会長 中野先生よろしくお願いいたします。

〇中野委員 はい。

〇大林室長補佐 それでは、ここからの進行は倉根部会長にお願いいたします。

〇倉根部会長 それでは、よろしくお願いいたします。皆様のお助けを得てこの会議を進めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、まず、事務局から、審議参加に関する遵守事項等についての報告をお願いいたします。

〇大林室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。

 本日御出席いただきました委員から、予防接種・ワクチン分科会審議会参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について申告を頂きました。各委員からの申告内容については机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。

 本日の出席委員の申し出状況及び本日の議事内容から、今回の審議への不参加委員及び参考人はおりませんことを御報告いたします。

 以上です。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 それでは、議事次第に従いまして進めまいりたいと思います。

 まず議題の(1)「予防接種に関する基本的な計画」におけるPDCAサイクルにかかるヒアリングに入りたいと思います。

 予防接種に関する基本的な計画については、各事項についてヒアリングを実施していくことになっておりますが、本日は、中野委員より、予防接種センターと「同時接種・接種間隔」について発表をしていただくことになっております。

 まず、その前提として、事務局から予防接種センターについての御説明をお願いいたします。

〇大林室長補佐 資料1をごらんください。この資料は、予防接種基本計画のうち、本日の議論と関係のある部分を抜き出して、それに関する取組状況を記載したものです。今回、御議論と御評価をいただく予防接種センターについては、基本計画の「第二 国、地方公共団体その他関係者の予防接種に関する役割分担に関する事項」のうち、「二 都道府県の役割」の中に、「予防接種に関わる医療従事者の研修と地域の予防接種を支援するための中核機能を担う医療機関の整備及び強化」という記載の部分に該当します。

 予防接種センター事業は、実施主体を都道府県として、平成13年度より実施しています。国から都道府県に対する補助率は2分の1となっています。設置する都道府県は、医療機関を予防接種センターに指定して医療機関が実施しています。事業内容は主に4つありまして、「要注意者に対する予防接種の実施」「国民への予防接種に関する正しい知識や情報の提供」「予防接種の事前・事後における医療相談」「医療従事者向けの研修」となっております。設置している都道府県は現在20府県となっています。全国の設置状況については、参考資料2を御参照ください。1つの府県で2か所以上設置しているところがあるため、設置箇所は33か所となっています。広島県は昨年度に新たに設置されたところでして、設置県は徐々にですが、増えているという状況です。

 また、資料1の2ページ目をごらんください。研修に関しましては、予防接種センター以外にもやっているところがありまして、基本計画のうち研修の部分を抜き出したところですが、基本計画「第六 予防接種の有効性及び安全性の向上に関する施策を推進するための基本的事項」の「四 予防接種関係者の資質向上」がありまして、これについて現在の取組ということで下に書いてございますが、予防接種センターが実施する研修と、予防接種従事者研修という国の委託事業でやっているものと、国立国際医療研究センターで実施している予防接種基礎講座があります。この基礎講座については、後で、堀参考人に説明していただきたいと思います。

 予防接種センターは実際は各府県により、さまざまな事業を実施されており、具体的な内容は実際に実施されている方から御説明をいただいたほうがよいと思いますので、本日は、岡山県予防接種センターの活動内容について中野委員に御説明をお願いしたいと思います。

 以上です。

〇倉根部会長 ありがとうございました。

 それでは、中野委員から資料の御説明をお願いしたいと思います。

 中野委員どうぞよろしくお願いいたします。

〇中野委員 川崎医科大学の中野でございます。資料2に基づきまして、私に頂戴いたしましたテーマ「予防接種センターの取り組み状況」についてを御説明申し上げたいと思います。

 現在、私は川崎医科大学総合医療センターで診療を行っておりますが、そこに岡山県からの委託事業として、岡山県予防接種センターが設置されております。岡山県に異動する前は、私は実は三重県におりましたが、当時、国立病院機構三重病院でも、三重県予防接種センターの委託事業がその病院に設置されておりました。今回は、岡山の岡山県予防接種センターについて御説明申し上げます。

 資料のページ数とスライドに基づいて御説明いたしますが、1ページのスライドの下は、先ほど、「予防接種に関する基本的な計画」におけるPDCAサイクルにかかるヒアリングでございますので、その第二の「二 都道府県の役割」ということで、予防接種センターが挙げられます。三重県も岡山県もそうでございます、他府県もそうでございましょうけれども、都道府県単位で設置されている予防接種センターでございます。そこで、予防接種に関する基本的な計画の実行の部分、Doの部分で、国の取組状況として、平成28年1月よりは予防接種センターの数はふえておりますけれども、予防接種センター事業が行われております。

 ページをめくっていただいて、2ページの上のスライドが、予防接種センター機能につきまして、公衆衛生審議会感染症部会予防接種問題検討小委員会報告書の中に述べられております「予防接種センター機能」でございます。大きく分けて3点でございます。

 1番として、予防接種の効果や副反応、感染症に関する知識、情報等の提供。2番として、相談窓口の開設。3番として、接種要注意者に対する予防接種についての十分な医療相談の実施と専門医師による実際の接種の実施等、この3つが平成11年7月の報告書の中では、大きな3つのテーマとして挙げられております。

 そして、その2ページの下の資料でございますが、これは平成24年の厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の資料から引用させていただいておりますけれども、目的が書いてございまして、目的の中に、予防接種要注意者が安心して予防接種が受けられるよう、ここにも「都道府県」という言葉が出ておりますが、都道府県内に1か所程度医療機関を指定して体制を整備して、予防接種率の向上を図るとともに、健康被害の発生の防止に万全を来そうとするもの。

 事業内容といたしましては、接種要注意者に対する予防接種の実施、事前・事後の医療相談事業の実施。事前というのはもちろんその方に接種をしていいものか、するべきなのか、どうするのかということとか、接種した後にいろいろな症状、これは予防接種に因果関係がある場合もない場合もございますが、いろいろな症状、例えば、複数回接種する不活化ワクチンで1回目の接種後に発熱した場合、局所が腫脹した場合、2回目を接種したほうがいいのか、見合わせるほうがいいのか、このような医療相談事業の実施。3番として、予防接種に関する知識や情報の提供でございます。

 この予防接種センター事業が開始されましたとき、私は三重県におりましたけれども、当初は、接種要注意者に対する接種が第一の目標として始まったのかなと、私自身は現在でも理解はしております。

 3ページ目にまいりまして、これは2015年の予防接種センター機能推進事業ということで、厚生労働省から公開していただいております事業の内容とこの4つの項目に分かれて、さらに、詳細かつ具体的にどのような事業を行っているかというのがここに書いてございます。

内容としては大きな変わりはございませんけれども、例えば(1)の「予防接種の実施等」にふえている文言といたしましては、平日の接種はもちろんですが、休日、時間外、これはいろいろな背景があるかとは思うのですが、数年前に例えば風疹が流行したときも、成人への接種はなかなか平日ではできないというのももちろんあるかと思います。ただ、私たち医療関係者、医療者として思うことは、休日に接種する限りは、アナフィラキシーを含めた副反応は、頻度は高くなくても起こる可能性はあるわけでございますので、接種の場を提供するとともに、それをバックアップする医療体制も並行して整備していかないといけないと考えております。

(2)(3)(4)に関しましては、特に、さらに詳細にここで述べていただいていることかと思います。

また、全国の予防接種センターの設置状況でございますけれども、本資料では、47都道府県中20都道府県で33か所に設置されている時点での状況でございますが、ざっと見渡しますと、人口が100万以上500万未満の都道府県に設置されている傾向があると申しましょうか、非常に人口の少ない100万未満の県あるいは逆に人口の多い750万人以上の県というのでは設置状況がないということで、これは「都道府県内に1か所程度」という文言はございますけれども、先ほど事務局からお示しいただいた資料の中にも、都道府県によっては複数箇所、3か所とか4か所設置されているところもございますので、現在の設置状況はこのような形になっております。

4ページ目にまいりまして、きょう具体的に御説明申し上げます岡山県予防接種センターの機能状況でございますが、開設が平成23年6月でございます。私が岡山に異動いたしましたのが平成22年7月でございましたので、異動をした頃からいろいろ調整もございましたけれども、1年ぐらいの時点で開設していただきました。そして、私の病院内に設置していただきまして、事業内容はマル1からマル3まで、これまで述べてきたことでございます。

ここで、私、三重県の頃やっていたのとちょっと変えたことは、火曜日と金曜日、4ページの上のスライドにございますけれども、今まで三重県では、事務の方に一旦お電話をとっていただいて、相談内容を記録していただいて、医師が答えなければならないものは医師が答えるようにしていたのですけれども、そうすると、後ほど、またお電話してもいらっしゃらなかったりとか、御診療の最中だったりとか、自治体ですと、こちらも昼間診療とかがあって夜になってしまいますと、自治体は連絡とれなかったりと、いろいろちょっと不都合があるかなと思って、できる限り火曜日と金曜日の13時~16時。週に3時間が2回あるわけですけれども、この時間は、担当する小児科医が直接電話をとるように、ほぼ100%何とか心がけるようにいたしております。今、私たち小児科医2名でこの電話を担当しておりますが、2名だと、ほかのこともあってなかなか担当できないときもあったり、あるいは、学会場に転送電話で持っていって電話相談をやったこともございますけれども、まず需要があるときに、何か御相談があるときにすぐ出て対応できるというのは必要なことではないかということで、それを現在行っております。

これはある意味すごくよかったかなとは思っていますが、その一方で、何曜日のいつ受診したいというお電話も一部入ってまいったりいたしまして、それはそれで電子カルテに入力したりとか、私たちの余り得意じゃない事務作業の手間もかかったりして、今後、予防接種センターの方向性として、各県できっといろいろ苦心されて運営されていらっしゃるのだと思いますけれども、現場でやっている者の感想といたしましては、そんなことがございます。

4ページの下に予防接種センターのホームページが紹介してございます。予防接種全般の注意事項、接種要注意者のこととか当日の注意事項はもちろんでございますが、各ワクチンについての説明とかも、これは国も自治体もいろいろな資料をつくっていただいておりますし、ほかにも資料はたくさんございますけれども、ホームページをクリックしていただいた方がきちんと読んでいただけるように、ワクチンで予防できる病気、あるいはワクチンの説明についても、定期接種のみならず任意接種も含めて個々に掲載してございます。

5ページにまいりまして。5ページの上は、これも実はホームページに掲載してあることですが、本日の議題は、これは主に定期接種に関することが主体となることは理解しておりますけれども、予防接種相談事業を始めてみたら結構多かったのが海外渡航する方のワクチンですね。そして、現在は、日本から海外に出かけるだけではなくて、海外でしばらく滞在して帰国された日本人、あるいは外国国籍の方が日本を訪れて、その後の予防接種をどうしていこうか。こういう御質問がかなり多かったわけです。この外国語予防接種用語というのは、海外で接種して母子手帳に記録がしてあって、何のワクチンかわからない。その御家族とかあるいは御開業、病院の先生方から御質問が結構多かったので、何かいい情報提供ができないかなと思って、こんなものをつくって掲示したりいたしました。

ただ、医学用語・予防接種用語は結構難しくて、これだけ書いていても、これに該当しない言葉が予防接種記録に記載してあることもございます。これだけで解決できるものではないのですけれども、少しでも適切な予防接種の普及・情報提供になればというもので、こういったものを作成いたしました。

5ページの下は岡山県予防接種センターの相談・接種の流れということで、これは大体岡山県でこういう形でやっておりますが、三重県でも同じような図表をつくって、リーフレットにして、近隣の医療機関とか受診される患者さんにも配ったりしておりました。

ページをめくっていただいて6ページからは、現在の主な私たちの活動状況、実施状況について御説明申し上げます。

小児科医が直接電話をとるという、半日3時間週2回、この電話相談で寄せられた相談でございますが、平成23年に開始し始めてどんどん普及して、だんだんふえてきてくれて、今、大体年間600件足らずというのが電話相談の件数でございます。600件という件数は、週に2回3時間あれば、電話が鳴りっ放しとかずっと話し中とかそういうことはなくて、確かに混み合うときは混み合いますけれども、診療室でほかの資料調べとかいろいろなこともしながらもできる範囲で、600件ぐらいであれば、これは十分対応可能な状況です。これは、恐らくその県の人口とか、あるいはそのときの感染症とかワクチンに関する世の中の話題とかこういうことも関係するとは思うのですが、この程度の件数であれば通常に対応可能でございます。

そして、その中で海外渡航相談が占める割合が結構広いのは6ページの上と下のスライドで示してございますが、海外渡航が占める割合が多いというのは、1点は、私、日本小児科学会、日本感染症学会、その他、小児科医として感染症の分野の活動をいたしておりますが、日本渡航医学会という学会でも活動しておりまして、海外渡航をする方の健康を守るというのも自分のテーマの1つで、あと、渡航の問題は受け皿があるようで割とないのですね。それで、受け皿がないがゆえに、予防接種センターでもそういうことをやってくれるということで、保健所とか医療機関からも、「わからなければここに電話をしたら」というようなお話もあって、きっと通常よりもこれはふえているかなという気はいたします。

海外渡航以外を除けば、不規則接種は結構多いですね。多いというのは、複数回接種するワクチンで間隔があいてしまうと、一からやり直しであるとか、どうしたらいいかわからないというかなり素朴な疑問ですが、一般の方にも医療関係者の方にもすごく多いのです。そういった観点では、本予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、数年前に、接種間隔が開いてしまっても、定期接種の範囲なら定期接種として認めるという、あれはすばらしい一つの決定事項だったと私自身は思っておりますけれども、そういう不規則接種の御相談がかなり多いですね。あとは、接種計画。副反応、アレルギーに関する御質問が多いのはおわかりになっていただけるかと思います。

あとは、あってはいけないことですが、誤接種。接種に関する間違いですね。接種間隔を間違えた、異なるワクチンを打ってしまった。これは昨今もいろいろその辺りをこれは起こさないように、そういうことがないように予防接種活動をきちんとしていかなければならないということで出ておるわけでございますけれども、そういった質問もございます。

具体的なQ&Aを幾つか書いてみました。こんなQ&Aがあるということで、細かいところにはきょうは触れませんけれども、7ページですが、1つは医療機関から照会を受けた保健所よりお尋ねで、3歳で日本脳炎ワクチンを1回接種して、5歳までその後接種がない。さっき御説明したことでございますよね。

あとは、下のほうは30歳の女性で、これは定期接種ではございませんが、妊娠を考えていますが、風疹の予防はどうしたらよいでしょうか。接種のこととか、抗体化検査も多くの自治体が公費でやっていただいているということも御紹介したりしています。

8ページにいっていただいて、副反応に関するQ&A。これは先ほど少し触れたことでございます。肺炎球菌ワクチンは乳児期に複数回接種するワクチンでございますけれども、この方は接種局所の反応、発熱とも、重篤ではないわけでございますけれども、接種後にそのような反応が見られております。2回目の接種どうしたらいいのか。でも、これは病気を守るためには規定された回数の接種を行うことが必要でございますので、その辺りを一般の方にも医療機関の先生方、看護師さんたちにもわかりやすいように御説明することが大切かと思っております。

8ページの下にまいりまして、副反応相談の内訳。これ(アレルギーを除く)といたしましたのは、アレルギーに関しては、個別にいろいろな相談がございますので、副反応相談の内訳で、どんなワクチンに関する副反応の御相談が多かったかということですが、これは、このワクチンが副反応の頻度が高いという意味でワクチン名を分けたのではなくて、いろいろな年齢の方に広く打たれるワクチンほど相談数がふえるかなという結果の数値かなと理解をしております。

9ページにいっていただきまして、アレルギーの内訳。これは、トップがMRで、第2位がインフルエンザワクチンで、この2つが群を抜いて多いのは卵アレルギーとワクチンの関係ですね。ただ、卵アレルギーとワクチンに関しましても、インフルエンザワクチンに関しましては、製造の過程で卵を使いますので、ごく微量の卵成分はワクチンに含まれている可能性はございますけれども、それでさえ、これはかなり微量です。多分、微量でございます。ですから、恐らく通常に卵が入ったお菓子とか食べられる方は安全に接種できるはずなのでしょうけれども、それに関しても、一般の方々、医療機関からの御質問はとても多いという現状と。

もう一点は、MRワクチンというのは、麻疹ワクチンは卵そのものでつくるわけではなくて、これは鶏由来の細胞でつくるというだけで、日本でも海外においてもこのワクチンに関しては卵アレルギーがあっても通常に接種できる、通常の方々と同様の注意で接種できるわけでございますけれども、MRワクチンに関する御質問は結構多くて、なおかつ、かかりつけの先生のところで、卵アレルギーがあるがゆえに、しかも、その卵アレルギーはアナフィラキシーではございません。特異アレルゲンの数値が少し高いとか、家族歴があったので、ずっと卵を除去しているとか、そういったレベルでもなかなか打っていただけなかったり、打つのをためらわれて御照会いただくケースもかなり多いのが現状でございます。

常日頃から申しておることでございますが、ワクチンというのは誰にとっても身近なことで、全ての方にくまなく普及してこそ病気が予防できる手段でございますので、今後の予防接種センターの機能といたしましては、医学的にすごく難しい問題の相談だけではなくて、簡単に解決できる、もっとうまくやればきちんと病気を守れるよということにもきちんとコミットしていくことが、予防接種センターの機能としては必要なことではないかと考えております。

そのような例で、9ページの下のアレルギーに関するQ&Aは、インフルエンザワクチンの御質問を一般の方からいただいたときの答えの例などを示しておきました。

また、10ページには誤接種に関するQ&Aとか、誤接種の内訳をお示しいたしました。これは岡山県で相談があった内容ということでございますので、これは多屋先生が研究班のほうでずっと継続していろいろきちんと御報告をしていただいておりますので、私たち、多屋先生たちが感染研のホームページにアップしていただいているのを参考にしながら、いろいろ相談にも努めておりますし、また、これは接種に関する間違い、誤接種があった場合は報告していただくように、それも御相談をいただいたときにはお話ししております。

11ページにまいります。11ページ、予防接種センターの機能といたしまして、研修・普及啓発活動。そして、これは主に国の事業としての決まりに書いていただいてあるのは、保健医療従事者に対する研修がメーンの目的かと考えております。発足してから、年最低1回は予防接種センター主催で、会場をどこか設定して研修会を実施しております。初年度は、いろいろな方にも知っていただきたかったので、大学の学園祭がございましたので、その学園祭の市民公開講座に引っかけて一般の市民の方と保健医療従事者両方に声をかけてお越しいただきました。平成25年度からは、主に保健医療従事者を対象に行っております。

平日の午後という時間に設定する場言が多いで、本当はいろいろな外部の専門のすばらしい先生方がたくさんいらっしゃいますので、ぜひお招きして開催したいなと思っているのですが、いつも日程調整等がなかなかうまくいかなくて、私自身が講師を務めることも多いのですけれども、平成27年度は、「ヒトパピローマウイルスワクチンと諸症状について」ということで、名古屋市のスタディの解析をいただいた鈴木(貞夫)先生にもお越しいただいて、疫学的な副反応の考え方というような研修会も一度行っていただいたりいたしました。

これはあくまで岡山県予防接種センターが主催した研修会でございますけれども、その他、医師会とか自治体とかから依頼されて、岡山県内、ときには県外にも予防接種センターのメンバーが講師として出向くこともございますし、あとは、自治体・保健所からの依頼があったのですが、ある高校で3年ほど続けて、講堂で、一学年集めて、感染症と予防接種の講義を3年ほど続けたと思いますが、実施させていただいたことがございます。研修会は広く行っていきたいと思っております。

きょうお話し申し上げたことのまとめでございますが、11ページの下のスライド。予防接種センターの機能の充実を目指して」ということで、行う事業は現在も行っている事業、これをさらに充実してまいりたいと思いますけれども、今後、もしかしたら、いろいろな県に予防接種センターは今ございますけれども、どんな活動をされているか、あんまり挙がってきてないと思うのですね。それを同じような方法で調査したりすると、どんな活動をされていて、どんなニーズが都道府県民の皆さんからあって、あるいは、どういうことをやればさらに充実していくのか。そんなことも見えてくるのかなと思っております。

もう一つは蛇足でございますが、定期接種に関する以外のこと、これは例えば予防接種法に定められた事項以外への対応とか、海外渡航者、これは黄熱ワクチンや未承認ワクチンという問題も今後関係してくるのかもしれませんけれども、こういったことも念頭に置いて、さらに、機能を充実していければと考えております。

どうもありがとうございました。

〇倉根部会長 中野先生、どうもありがとうございました。

 今、予防接種センターの全体の取組から、それから、主に岡山県での状況あるいは御経験というものをお話しいただきました。何か御質問ございますでしょうか。

 どうぞ、池田先生。

〇池田委員 先生の施設でのさまざまな活動が、県民のために、あるいは国民のために役に立っているのだなということで、大変感銘を受けました。私、予防接種センターの機能を十分理解してなかったので、大変よくわかりましたが、予防接種に関する基本的な計画の中では、地域の予防接種を支援するための中核機能を担う医療機関及び強化というのが記載されているわけで、予防接種センターが必ずその都道府県に最低1つあったほうがこれが果たせるのか。それとも、これはなくても、ほかの形で十分担える。つまり、予防接種センターを、今後、各都道府県にもっとふやしていきましょうということが1つ方向性としてあったほうがいいのか。それとも、同等の機能があれば、それでよろしいというお考えなのかというのが1点です。

 もう一点は、ちゃんと時間をとって主に電話相談で対応されているということで、これは県に1つあれば、遠方からわざわざ来なくてもいろいろ御指導、アドバイスをいただけるということで、大変便利だと思うのですが、これは国民ないし県民のことを考えますと、都道府県ではなく、国に1つとか2つとか、あるいは関東に1つとか、そういう形であれば、この機能は十分果たせるものなのか。隣の県で、例えば先生のところでは週2日されていますけれども、輪番制みたいな感じで、いつかけてもどこかがやっているという形で対応したほうがいいのか。これを国民のためにより充実させるには、どのような方法が考えられるか教えていただければと思います。

〇倉根部会長 中野委員どうぞ。

〇中野委員 御質問ありがとうございます。

 まず最初の質問でございますけれども、確かに予防接種センターという名前がついてない医療機関あるいは施設においても、今もきちんと予防接種の専門性を持って活動をしていただいているところはあると理解しておりますし、また、そうでないと国全体の予防接種はカバーできないと思いますので、決して、予防接種センターだけがそれを担うべきだという意味ではございませんけれども、自分が予防接種センターという活動を、今、岡山県、その前に三重県でもやっていて思うことは、都道府県単位で設置していただくと、都道府県の方とのお話しする機会とかふえてくるのですね。研修会のときでも、都道府県の担当の方は絶対お越しいただきますし、都道府県を通じて各保健所とか保健センターに御連絡いただきますし、また、テーマによっては、学校関係とか保育所関係にも声をかけていただいたことがございます。ですから、予防接種事業が自治体の事業である以上は、自治体と何かリンクしたこういった予防接種センター機能を持ったものが、ある地域ある地域にあることの意義は私は大きいと考えております。

 もう一点の電話相談が、これは人手も要るし、時間もかかるし、国単位とか地域単位で集約できないかということでございますけれども、きっと少ない労働力の中で保健医療をきちんとやっていくという観点からいけば、集約したほうが望ましいとは思うのですが、私、予防接種もやっておりますし、小児救急にも携わる身でございますけれども、例えば救急受診なんかでも、子供の病状の一般的なことは、専門家の医師であれば答えられるでしょうし、適切なお答えができるとは思うのですが、その地域に合致した事情の御説明は遠隔地の者では十分説明できない場合がございます。

ですから、予防接種に関しましても、原則論、正しいことはプロフェッショナルであれば十分お話はしていただけるでしょうし、きちんとしたことができると思うのですが、では、「私は今どこに接種に行けばいいのですか」卑近な問題ですが、卵アレルギーがあると言われたけれども、重くないし、MRワクチン打ちたいのですけど、かかりつけの先生は打ってくださらないのです。専門のあるところへ行けと言われました。ただ、ほかの医院に御連絡をすると、やはりかかりつけの先生で打ったほうがいいから」ということで打っていただけない。本当にプリミティブな御心配というか、そういったことにお答えしていくためには、地域においてそれに答えるセンターは存在価値があると考えています。

〇倉根部会長 池田委員どうぞ。

〇池田委員 ありがとうございました。大変よくわかりました。

 そうなると、ほかの都道府県でこれが大きくふえていかないことには、どんな阻害要因といいますか、何を改善する必要があるのでしょうか。

〇倉根部会長 中野委員どうぞ。

〇中野委員 3ページの下のスライドで私が御説明申し上げたことですが、三重県も岡山県も人口は大体190万前後ですね。もしかしたら、自治体に1つという単位でまとまった行政範囲でお電話の相談をお受けしたりとか、接種の機会を提供するというのが、きっと人口200万前後というのが、もしかしたら、今、日本の行政区分とかが、予防接種センターは現在の活動状況だと、一番実施しやすい人口単位なのかなと。そうなると、人口がそれよりすごく多いところ、あるいは、少ないところ、人口密度の小さなところは、ほかの対処方法もあるのかなというのも考えたりしています。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 ほかにございませんか。

 釜萢委員どうぞ。

〇釜萢委員 中野先生どうもありがとうございました。

 先生のきょうの資料の6ページ、「電話相談の年度別推移」で、海外渡航相談が多いわけですが、海外渡航の前にワクチンを接種しておきたいという希望に対しては、先生のセンターでは、ほとんど希望に応じて大体完了できているのか、それともなかなかそうはいかないのか、その辺りを教えていただけますか。

〇倉根部会長 中野委員どうぞ。

〇中野委員 これはなかなかちょっと一言で申し上げられないところがあって、例えば海外渡航をする人も大人から子どもまでいらっしゃいます。子どもは国内のスケジュールと海外のスケジュール、その子の月齢、年齢とか、どこの国へ行くかを考え併せた上で接種計画を立てますよね。そういたしますと、きっとかかりつけの先生のところは定期接種はやっていただけても、A型肝炎とか、また、中には狂犬病とか、あるいは国内に承認製剤がない腸チフスを希望される方もいらっしゃるのですね。そういった方々の御要望に全部応じられているかというと、これは正直なかなか難しいところがございます。

 ただ、海外渡航というのは、任意接種で決して海外へ行く人だけが対象ということではなくて、小児であっても、成人であっても、日本の予防接種制度の中で、その中で健康を守るということと併せて、海外へ行くというプラスアルファが加わった健康を守るための手段だということで、この予防接種センターがコミットしていくところは私は大きいと思うのですね。

 ですから、十分対応できているかというと、十分はできてないのですが、もっと申し上げれば、2か月後にお父様のバンコク赴任が決まりました。その御家族、お母様は「え、病気って大丈夫なんだろうか。日本と違う病気があるんじゃないだろうか」そういう不安もいっぱいなのですよね。そんな中で、ホームページをクリックしただけだと、海外にはこんな病気もありますと病気の名前ばかり出てくるのですね。そんな中で、適切なワクチンを打つだけではなくて、どの病気のリスクが高くて、どれを最低限守ることがあなたにとって必要なこと、あなたの御家族にとってベストな手段なのですよということを御指導することが、ワクチンを打つだけではなくて、センターの機能ではないかと考えています。

〇釜萢委員 どうもありがとうございました。

 質問をさせていただきました背景の1つに、なかなか一般の医療機関では入手できないワクチンがあって、その接種の希望があった場合に、必ずしもセンターだからといってワクチンがすぐ手に入るわけでもないだろうと思うので、その辺りのところの様子をちょっと教えていただきたいと思ったのです。

〇倉根部会長 中野委員どうぞ。

〇中野委員 ありがとうございます。

 では、一番わかりやすい例をお話しいたします。狂犬病ワクチンでございますが、長年にわたって供給結構厳しいですよね。御希望される方は多いのですけれども、どの方が狂犬病のリスクが高いのか。これは日本あるいは海外の学会でも、いろいろなリスクに関するコメント、アセスメントはございます。私たち、県下からの相談を全部受けているわけですので、あなたは特にリスクが高くて、あなたはリスクは高くないという言い方はできません。なおかつ、コンサートのチケットのように予約順ということをするつもりも毛頭ございません。病気を守りたい人全てに打ててこそ予防のためのワクチンですから、今、私、岡山県予防接種センターの方針としては、当センターでは、暴露前免疫の狂犬病ワクチンは原則として接種いたしておりません。そのかわり、暴露後免疫で必要な方がいらしたら、これは優先的に確保するべきであるということを関係各所がコメントしてくださっていますし、製造販売メーカーもそのように動いていただいていると理解しておりますので、そのような対応をしております。希望する方全部に打てないというのはとても歯がゆいのですけれども、そこで、どなただけが打てるというのがすごく難しい点がございまして、そういったことが先生御指摘の点かなと思います。

〇釜萢委員 ありがとうございました。

〇倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。

 先生、私から質問ですが、岡山県での設置ですけれども、他県からの電話であったり、患者さんではないですが、他県からお見えになる方の場合にはどういうふうに対処されていますか。

〇中野委員 ありがたいことですが、私も学会とかでワクチンに関する発表をしばしばやりますし、研修会も県をまたいで医師会とかに講演にお邪魔することも多いですので、正直、他府県からの電話もある一定数ございます。もちろん1割も2割もあるというわけではございませんが、お電話いただいた場合はきちんと対応しています。

 と申しますのは、病院で勤務していても、私的につながりのある方からお電話をいただいて相談を受けることはあるわけですよね。この予防接種センターの番号に電話をいただいてお断りする理由は全くないと思っていますので、これは電話がすごく混み合ってきて、県民の方の電話がつながらないということだったら問題でございますけれども、今、年間600件を切るぐらいですと、そういうことはございませんので、現状では、どこからお電話をいただいてもお答えをいたしております。

〇倉根部会長 それから、電話の内容は、医療を提供する側からも来るでしょうし、受ける側からも来ると思うのですけれども、県で違うかもしれませんけれども、率的にはどういうことになっているのか。

〇中野委員 3つに大きく分けられますね。医療機関、自治体、県民の皆様ということで。年度によって少し変動はいたしますけれども、きょうはその資料をちょっと持って来なかったのですけれども、済みません。定時の報告ではいつもやっているのですけれども、年度によって少し差はございますが、案外、少ないのが医療機関ですかね。ただ、医療機関の先生や自治体関係者が患者さんに「ここに電話して」と依頼する場合もございますし、どこから発信されたかはさまざまですが、直接お電話して見えるのは医療機関からが割と少ないという状況です。相談件数としては一般の県民の皆様御本人からがもっとも多いです。

〇倉根部会長 ほかにいかがでございましょうか。

 山中委員どうぞ。

〇山中委員 2つお願いしたいと思います。

 まず、先生のセンターではどういう体制で。先ほど電話相談はお二人の小児科の先生で対応されているとお伺いしましたけれども、事務の方のサポートとかそういったものも必要だと思いますが、体制についてまず1点御質問させていただきます。

〇中野委員 事務方のサポートといたしましては、予防接種の予約は大体外来でとりますから、外来に電話相談をする場を設定しています。ですから、少し歩けば小児科の外来の事務の方がいらっしゃいますので、初診の方とか、入力とかいろいろ必要ですので、それを紙に書いて手渡しで渡せるようにやっております。

 それと、私の教室の小児科学教室の研究補助員、予防接種・感染症に関する研究も私が行うべき業務の1つでございますので、その彼女にも手伝ってもらって、例えばこのような相談数のまとめとか、あるいは資料をつくって、自治体とか研修会の会場に送ったりとか、教室の補助員の者にも手伝っていただいて運営しております。

〇山中委員 ありがとうございました。

 もう一点よろしいですか。

〇倉根部会長 どうぞ。

〇山中委員 先生の最後のスライドのほうに、実際の活動状況を調査することが有用と考えるとまとめていらっしゃいまして、これは非常に大事なことかなと思いました。

例えば青森県などは、4つの機能があるということではありますけれども、人口密度も薄くて、子どもが少なくて、また、医療機関のアクセスが悪いところに関しましては、ニーズとしては、医療相談が一番あるのではないかなと思っております。実際、例えば難しい予防接種の要注意者に対する接種は、そういう状況ですから、機能としてはあっても、現実的にはなかなか使えないと思いますと、地域にどんなものが必要なのかということを、まだ設置していない都道府県が考えるためにも、まずはどういうニーズが多いのかということを調べていただくことはとても重要だと思いましたので、ぜひこういったことを進めていただければありがたいなと思いました。

〇倉根部会長 ほかにございますでしょうか。

 多屋委員どうぞ。

〇多屋委員 大変すばらしい活動の御紹介ありがとうございました。

 1つ教えていただきたいのですが、定期の予防接種の対象疾患のお子さんがお見えになられたときに、市区町村をまたいでも全県下で定期接種として受けられるというような、最初から事務委託とかはされていらっしゃったりされるのでしょうか。

〇中野委員 ありがとうございます。

 それはとても大切なところだと思うのですが、幸いなことに、私がいた三重県と現在いる岡山県は県下全部相互乗入れ可能です。

〇多屋委員 それはすごいです。これがないと大変だったのでお伺いしました。ありがとうございました。

〇倉根部会長 それでは、よろしゅうございますか。いろいろな御意見をいただきまして、また、御質問もいただきましたし、中野委員からのお答えもいただきました。まだいろいろ御質問もあるかとは思いますが、まずは、本日この部分についてはここで終わりたいと思います。

 また、本日いただいた御意見等については、事務局にまとめていただければと思いますので、事務局どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、ヒアリングの2つ目に入りたいと思います。「予防接種の啓発・信頼確立のためにプラットホームづくり」でありますが、国立国際医療研究センターの取り組みについて、堀参考人に御説明をお願いしたいと思います。

 堀先生よろしくお願いいたします。

〇堀参考人 堀でございます。このたびは貴重な機会をいただきましてありがとうございます。

 私の情報提供は、予防接種支援センターという名前を使いますが、今、お話にこれまで出てきておりました予防接種センターとして動かしているわけではなく、ちょっと独自の試みであることを先に申し伝えさせていただきたいと思います。

 まず、私は感染症対策専門職という変わった肩書でございますが、私、看護職であります。この仕事をするに当たり、病院で病気の人を待つよりは予防をしたいという思いからこういった経緯になったのですけれども、感染症で最も大事な1次予防、そこで最も大切な社会の財産であるワクチンが適切に使うためにはどうしたらよいかという模索を施設でしているところであります。

 私どもの病院は、800床程度の新宿の端っこにある病院ですけれども、ワクチンそのものに関しては小児科が一部しておりますし、私が所属しております部門ではトラベルクリニックといいまして、主に渡航をされる方やそれに付随して、それまでの定期で漏れがある方たちのキャッチアップなどをしているという意味では、医療行為としてワクチン接種も行っております。大体月に1,1001,300本、この中には定期のワクチン、お子さんは私たちは対象にしておりません、開業医さんにお願いしていますが、ここには黄熱ワクチン、また、輸入のMMRワクチン、ダニ脳炎ワクチンなども入っております。

 2枚目のスライドでございますけれども、予防接種の取り組みといたしましては、今申し上げましたワクチン接種のほか、特別なケアニーズのある患者支援と書きましたが、基礎疾患があり、免疫不全の方などがよく例に挙げられますけれども、私どもの病院は新宿区という登録人口の12%が外国人、しかも、特定に偏りがなく、164か国もの方がいらっしゃるというところのため、この特別なケアニーズという中に外国人が入ってきます。スケジュールが違う、ワクチンの種類が違う、宗教によっては豚由来のゼラチンが入ってないか確認をされる、言葉は英語や日本語ではだめで、現在、病院が13言語の電話通訳と契約しておりますが、全く足りず、トータルで大体20言語通訳を駆使して医療や予防接種の提供に当たっております。24時間救急科がありますので、暴露事故対応などもしておりますし、ほかの病院では余りやらないこととしては、1番目にあります予防接種に関する研修会の開催。これは後ほど詳細にお話ししますが、「予防接種基礎講座」と「トラベラーズワクチン講習会」をやっております。

 また、5番ですね。医療機関によってどの程度されているかわからないのですが、例えば風疹流行時には、ふだんやっていない日曜日のワクチン外来をみんなを説得してやってみたり、あと、麻疹とかが注目されますけれども、私どもが今成人でちょっと危ないなと思っているのは、あちこちで水痘のアウトブレイクが起きていることで、例えば近隣の日本語学校で起きたときは、「アルバイトに行かないようにお家にいてください」とかそういったことや、日本語学校に対して、日本に入国する前にワクチン接種を終えてくるようにしてはどうかといった提案をしています。同様の提案は、家事労働者として入ってきております人たちのために、雇用主となっております幾つかの人材派遣会社の方や戦略トップの方に申しております。

 その下に書きましたが、予防接種支援センターは2017年4月1日に院内で開設しているところで、構成としましては、センター長、医師が1名。これはトラベルクリニックの医長でございます。また、今後、私のかわりに専門看護職を育成する予定ですが、当面、私が予防接種の支援専門職という形で業務を行う予定であります。この看護職というのは予防接種にとても大事で、小児看護の専門職や一番期待をしておりますのは保健師ですね。保健師さんを育てて、相談業務や啓発に当たってもらえたらと願っております。

 2ページ目にまいります。取り組み事例の中で、「予防接種基礎講座」の内容を御紹介させていただきます。これは2015年から2017年、パイロットで3回、3回目はパイロットではないですけれども、評価をするために行いました。これは、目的は一番は医療安全ですね。安全に予防接種を行うためには、どのような訓練が医療者に必要かという視点から始めております。もともと私たちがオリジナルに開発したのではなく、例えばイギリスであるならば、予防接種に関わる人は必ず受けなくてはいけないという講習会であります。これを受けさせずに予防接種に関する業務をさせると、その人事管理者が責任を問われるというものになっていて、みんな必ず学んでいる基礎知識とは一体何なのかというものを、こういったイギリス、カナダのものをもとにしましてつくりました。

 企画に当たっては、厚生労働省、国立成育医療研究センターの皆様にも御協力いただいております。事務局は当院にございます。

 これまでに参加者は約200名が参加されており、医師や看護師が中心となっております。一部メディアの方が傍聴に来られたりもしておりました。

 内容がほかのものとちょっと違うのですが、通常、私たち医療職が学ぶ勉強会は、何々ワクチンの講演会というものが大変多いですね。一個一個のワクチンの特徴を学ぶのではなくて、安全に予防接種を行うにはどうしたらよいのかということに着目しておりますので、事故防止あるいは有効性を失わないためにはどのように冷蔵庫に保管するべきなのか、誰がそれに責任を持つべきなのかといったことや、アナフィラキシー対応、これは大変頻度は少ないですが、医療者にとっては患者様を守るために必須の知識と技術でございます。私どもの病院では、半年に1回ワクチン外来を担当する者がアナフィラキシー訓練をしておりますので、そういった内容を紹介させていただきました。

 次の下のスライドにまいります。今回、予防接種支援センターを新設するに至ったのは、今までも、研修会、電話相談が来たら相談という形でやっていたのですが、外側の人から見て、私どものこのセンターは何を提供しているのかちょっとわかりづらいだろうということで、感染症関係の取り組みはこれまでにもいろいろあるのですが、予防接種という名前をつけた活動をしようということにいよいよなりました。

主に1から4番までの活動をしておりますが、ほかの方もやっていらっしゃると思いますけれども、ちょっとつけ加えることとしては、例えば2番目にe-learningの企画と書きました。これは何かといいますと、予防接種の勉強会、参加したい方はいらっしゃいますが、皆さん大変多忙なのですね。遠方にいても勉強ができる。お金を払わなくても勉強ができる。あそこは寝てしまったので、もう一回聴きたいなというときにもう一回勉強できる。そのような形で私たち医療者が勉強をすることが、最終的には国民の皆様が、予防接種大事なのだ、安全なのだと思ってもらうことにつながるのではないかという思いで計画しております。

3番は、私どもの地域特性から入っているのですが、今は、大事な定期接種の情報でさえ届いていないコミュニティがございます。それは日本語がわからない。そういったことが壁となっておりますので、多言語・多文化対応を今の延長でやり、これは考えているのは、こういった苦労をほかの地域や医療機関が時間をとられるのは大変無駄だと思いますので、みんなで同じように使えるものを公開したいと考えております。

 検討中とした相談対応というのは、既にやってはいるのですが、これは、例えば私どものところで週5日やりますみたいになったら、すごいたくさんいろいろなものが来てしまうと思うので、カテゴリーを整理して、人員配置ができるかを検討してからやる予定でございます。

 現在、ホームページは公開準備中で、5月1日に公開予定でございます。

 3ページ目にいきます。私どもが一番重視しているものは、情報発信も大事なのですけれども、情報発信が目的なのではなくて、情報発信の中身やどのように発信するかという姿勢を信頼につなげたいというふうに考えております。それはなぜかといいますと、予防接種でとても大事な接種率に影響が及ぶからであります。

これは大変有名なプロトキン先生らのVaccine 6版という教科書の中でよく引用される図でありますが、私どもが一番注意しなくてはいけないのは、何らかのきっかけで、例えば最近ですと、センセーショナルな報道などがきっかけで一般の方の信頼を失う瞬間がございます。信頼は失うのは一瞬、取り戻すためには物すごい時間がかかります。この信頼を回復する際も、放っておいて回復するのではありません。こういう情報があるけれども、でも、専門家はこういっているじゃないと思っていただけるような場所をつくることが必要なのではないかと、ここ数年胸を痛める事案が続いた中で、皆が一番注目していることであります。信頼の話は後ほど、また、お話ししますが、このような状況の中で、私どもが開設に至った背景を3つお話しさせていただきます。

 まず、3ページ目の下ですが、皆が困っていることはここにいらっしゃる方は既に御存知だとは思いますけれども、どこに情報があるかわからない。発信している側からしたら、「ありますよ」と思いますけれども、わからないと言われたり、さらに、どれが正しい情報なのかわからない、新しい情報なのか確認が難しい。これは反省もございますが、専門家のつくった情報の中に日付が入っていない、更新がいつ行われたのかが入っていないといった反省からです。信頼が失われるとき、例えばセンセーショナルな報道が起きますと、皆さん急いでインターネット検索を今されます。そのときに出会うものが必ずしも正しいものかどうかがわからないときに、何が正しいのかのよりどころが、例えば国のものだ、県が言っている、県がお金を出しているセンターが言っている、あるいは、専門家の団体が言っているのだ、そういったカンターと申しますけれども、デマとか曖昧な情報に対峙する、こっちのほうが正しいに違いないと思うものがタイムリーに出てくるかということが問われているように思います。

 また、同時に、医療関係者からも、自分は予防接種ばかりやっているわけではないけれども、みんなと同じようなレベルでやらなければいけないのだが、調べる時間などがとても大変だ、調べてもなかなか見つからなくて困っているという御指摘が続いております。

 4ページにまいります。

 また、信頼をどのように獲得するかということですが、予防接種の情報が欲しい方は、かなりその人の個別の状況がございます。私が今欲しい情報はこれなのだというところにフィットすれば、ああ、情報があってありがたいなと思いますけれども、探しても探しても見つからないとき人はどのように感じるかといいますと、私のような思いやニーズは軽視されているのだろうか、あるいは、無視されている、極端ですけれども、そのようにとられたり、そうではなくても、本当に予防接種って大事なのかなと疑念を持たれる可能性があることを患者さんとの対応の中で感じます。ですので、このようなカテゴリーをつくって情報発信ができる、あるいは、ここのページへいけばあるのだというふうにしたいなと思っています。

 1例としましては、文部科学省指導要領には予防接種を学べるように明記されているのですが、学校の先生からすれば、予防接種が大事なのはわかるけれども、どうやって教えればいいのかわからない、何か教える教材とかないですか、といった相談がございますが、そういったものは、思春期のワクチン接種や進学・海外修学旅行のときの説明資料がここにありますという形にすればいいのかなと思っております。

 背景の2番目は、どのような情報を皆さんは信用されるのかということで、当院の和田という医師が行ったインターネット調査の一部を紹介させていただきます。基本的に、国の予防接種推進情報を信用する方が7割以上でございますので、日々の皆様のお力が大変大きいことがわかります。しかしながら、不信感を持つという方たちも一定数おります。このような方たちは実際ワクチンを打たないのかもしれませんが、そのような方たちよりも、この人たちが大変声が大きかったりしますので、この人たちの意見に左右されて正しい情報にたどり着かないということもございます。

 そのような中注目すべきは右のグラフでございますが、どのような情報を信頼するのかといったときに、医療従事者、自分が通っている医療機関の先生を信頼するという方はこんなにたくさんいるのかと思うのと同時に、私たちは医療機関の中だけ、目の前の患者さんだけにしゃべっていればよいのだろうかという疑問を持つわけでございます。もちろん学会やいろいろな団体の発信はしておりますが、まだできるのではないか、もう少し何かできないというのが背景にございます。

 3番目が、ここで既存の予防接種センターのことが挙がるのですけれども、東京には実は予防接種センターがございませんで、私どもがなるのかならないかということはまだ検討の段階には挙がっておりませんが、既にある他県の予防接種センターと連携することで、一つのセンターではできないことができたり、より多くの情報発信ができるのではないかと期待しております。

 その下ですが、予防接種情報の目指す方向性としては、商業バイアスのかからない情報づくり。これは何かといいますと、多くの方が、製薬会社がお金を出している情報に対して疑念を持たれます。そういったものがない情報発信をしようと思っております

また、公的なサイトへの集約というのは、私どものところということではないのですが、そういったリンク集でみんなをより適切なほうに誘導できればと思っております。

3番目、これはかなりテクニカルに、あるいは、予算的にお金がかかるのですが、ついつい私たちはPDFを載せるということで情報を発信したと言ってしまいがちですが、多くの子育て中の方にしても、大学生にしても、パソコンを持ってない方がたくさんいます。スマートフォンで見れる情報をつくるというのは、2つのスキームをつくらなくてはいけない、情報発信についてはちょっとお金がかかりますが、どうしても知っていただきたいのだ、あなた方に理解をしてワクチンを大事に思ってほしいのだということを伝えるために、これはどうしてもやらなくてはいけないと思っております。

最後に、事務伝達的な情報だけでなく、私たちが、打つ側の保護者側が予防接種は大事だと思えるような情報をぜひ伝えてほしいとよく言われます。海外のサイトにはありますが、毎年ワクチンの予算はこれだけ政府はお金を使っており、何とこんなにたくさんの子どもと大人の命を救っていますという統計上の数字が紹介されております。そういったものも私たちのコミュニケーションの努力の課題だと思っております。

最後の6ページになりますが、簡単な例を言いますと、情報は最低限3つ、保護者・医療関係者・報道関係者などといった形で分け、対象の関心に沿ったものを発信できればいいのではないかと思っております。特に3番目の報道関係者への情報発信は大変重要に思います。彼らは間違った情報を報道したいとは全く思っておりません。しかし、私たちが何でこんなふうになるのだろうといった情報があったときに、それは報道関係者のせいではなくて、十分なコミュニケーションをとってない私たち医療者の課題もあるのではないかと思い、メディアセミナーなども計画しております。

一番最後のスライドですが、信頼に必要な要素としては、今まで言ってきたことなので読み上げないですが、問題指摘に対して改善をしている姿勢や、疑問を持っている、問題指摘されたことを直そうとしている専門家の姿勢を見せていかねばというところから取り組んでおります。

以上でございます。

〇倉根部会長 堀参考人どうもありがとうございました。

 ただいまの御説明、御発表に、何か御質問はございますか。

 伊藤委員どうぞ。

〇伊藤委員 大変エネルギッシュな話をありがとうございました。

 この手の情報はたくさんのところから出ていると思っておりまして。私どもは、例えば予防接種とか感染症の話に関しては、こちらにいらっしゃる感染研とか厚生労働省から随分出ていて、今のお話を伺うと、それでは不十分なので私たちが立ち上がるというふうにも聞こえるのですけれども、どこが十分ではないとお感じになられて、こういう活動をされているのか教えていただければと思います。

〇倉根部会長 堀参考人どうぞ。

〇堀参考人 既にあるものは前向きに全部とらえればいいと思っております。ただし、検索ですぐ引っかかるのか、あるいは、例えば感染研の情報を見ますと、はしかの情報はすごく多いです。でも、それと同じようにほかのものが同じボリュームと同じレイアウトで並んでいるかというと、例えばそういうことではないと思ったときに、私は、それはそれではしかが重要だということでいいと思うのです。ただ、情報を探している人から見ると、はしかはすごく重要らしいとわかった。ほかのものがないというときに、それは要らないように見えるとおっしゃる方が時々いるのですね。

同じことが厚生労働省の検疫情報「FORTH」というホームページにもございまして、そこを検索しますと、先ほど中野先生もお話しされた渡航者にとって命・健康を守るために重要なワクチンのリストの中に、なぜだかわかりませんが、水痘とかムンプスが落ちていたりするのです。そういうのを見て、会社のお金を出す人は何と言うか。国のホームページに載ってないのだから重要ではないのだろう、なぜ会社がお金を出さねばならないのだ、みたいなコミュニケーション上のそごは現場的には幾つも例を挙げることができるのですが、間違っているならば、それは直してくださいということを言いますし、私たち医療者も、ここには載ってないけれども、年間を通じて水痘は亡くなっている方もいるから、流行のところに行くにはやはり打ったほうがいいですよみたいなことはやってはいるのです。ただし、今の情報という話だけで言いますと、なぜつくったかと言われましたらば、つくらざるを得ない状況を見たということは事実ではございます。ただ、どこがいけないとかそういうことではなくて、足りないものを補いたいと思っております。

〇倉根部会長 ほかに御質問いかがでしょうか。

 私から1つ伺ってよろしいですか。

 2ページ目の辺りに、多言語・多文化というのがありますね。先ほど先生も少しおっしゃったのですけれども、宗教上の理由によってそれぞれ制限される部分があると思うのですが、そういうものの情報は、こういう宗教はこうですよとか、こういう制限があるとか、こういう宗教だとこういう制限があるとかいうようなまとめも非常に必要なのかなと思ったのですね。特に、国立国際医療研究センターはそういう海外の方が多いだろうけれども、ほかの地域でも、近年の状況を見れば、数はともあれ、やはりそういう方は当然来るだろうと思うので、そういう情報はいかがでしょうか。まとめということでは。

〇堀参考人 今やっていることは、オーストラリア、カナダは、移民の健康政策が大変進んでいる国に職員を派遣して、そのような調査を研究費でやっております。例えばオーストラリアですと、例ですけれども、イスラム教の患者さんが来たときに必ず病院で問題になる事項みたいな教材があるのですね。そういったものを日本語にしたりしておりますし、ワクチンに関して言いますと、まさにさっき言いました、豚由来のゼラチンとか、飲み薬でもカプセルのところに豚由来のものがないですかという問い合わせが、先に受診前に来るのです。そういったときには私たちも急いで勉強し、大使館などに問い合わせて、どのように対応すればいいのかを学びます。そういったものを私たちの学びを例えば資料にして、ホームページに公開することで、イスラム教の患者さんのお子さんがワクチン接種にいらしたらというようなチラシをつくれば、ほかの医療機関が検索で探せればお役に立つのかなと思います。実際に、1つの情報を得るのに数時間かかりますので、皆さんがそういう苦労をしないようにするにはどうしたらいいかなとちょっと思っています。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 ほかに御質問・御意見はございますか。

 よろしいですか。

 どうもありがとうございました。貴重な御発表をいただきました。御質問・御意見がありましたら、事務局でぜひまとめていただきたいと思いますので、事務局よろしくお願いいたします。

 それでは次にまいりまして、続いては、ヒアリングの3つ目の「同時接種・接種間隔」のお話に入りたいと思います。このテーマについて、事務局から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

〇黒崎室長補佐 それでは、事務局から、「同時接種・接種間隔」について御説明させていただきます。資料1にお戻りいただきまして、3ページ目をごらんください。

 四角で囲った箇所をごらんいただきますと、「予防接種に関する基本的な計画」におきましては、第八「その他予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関する重要事項」の一「同時接種、接種間隔の検討」ということで書いてございます。

 具体的には、定期の予防接種に位置づけられるワクチンがふえ、より効果的・効率的な予防接種を推進するため、現在、学会等で議論されている同時接種、接種間隔等に関して、国が一定の方向性を示すため、分科会等で検討する必要がある、とされております。

 それに対するこれまでの取組といたしましては、参考資料3に簡単にまとめさせていただいております。

 第6回、第7回の当部会におきまして、同一ワクチンの接種間隔の緩和に関する検討がなされ、日本小児科学会等の御協力を得まして案を作成し、第3回予防接種・ワクチン分科会におきまして、同一ワクチンの接種間隔について、上限の緩和が了承されております。それに続きまして、平成26年3月に実施規則の一部が改正され、現在に至っております。

 事務局からは以上です。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 それでは、次に中野委員から資料の御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

〇中野委員 では、資料4をごらんになってください。

 「同時接種・接種間隔」についてということで、同時接種はその名前のとおりでございますが、接種間隔というのは、異なるワクチンの接種間隔というテーマとして考えていただければよろしいかと思います。資料がたくさんございますが、この中には文献とか資料を御参考の資料にと思って掲載したものもございますので、それらの説明は簡単に飛ばしてまいりますので、全体の資料の中で、後ほど、また、御確認いただければと思います。

 1ページの下は、先ほど事務局から御紹介いただきました、第八の一「同時接種、接種間隔等の検討」ということで、同時接種、接種間隔等の検討に関する取組状況でございます。

 ページをめくっていただきまして、2ページの上のスライド。これはわかりやすいように、現在、定期接種、任意接種含めて、生ワクチンと不活化ワクチンに大きく分けられると思いますが、原則的にはというか、生ワクチンを打った後は27日以上の間隔をあけて次のワクチン、不活化ワクチンの場合は6日以上の間隔をあけて次のワクチンでございますね。ただし、医師が必要と認めた場合は、複数のワクチンを同時に接種することができる。

 まず、同時接種について御説明いたしますけれども、2ページの下のスライドでございます。同時接種というのは、あらかじめ混合されてない2種類以上のワクチンを、別々の注射器や器具を用いて、同一の対象者に対して一度の受診機会に接種することでございますが、厚生労働省の定期接種実施要領、各ワクチン製剤の添付文書には、同時接種は可能とは書いていただいてあるのですけれども、定期接種実施要領では、「医師が特に必要と認めた場合に」、各ワクチン製剤の添付文書では、「ただし、医師が必要と認めた場合には」同時接種はできるのですけれども、どちらかというと、この2ページの上にお示しした間隔をあけるのが通常で、同時接種はこのような場合にはできるのですよと、そのような現状の理解であると私は思っております。

 きょうプレゼンテーションさせていただく理由は、これを、同時接種というのが別に特殊なケースではなくて、通常に実施できるものであるというような位置づけにいろいろな決まり上もできないかなというのが私の一番の考え、希望でございます。

 私、小児科医で日本小児科学会の会員でございますけれども、日本小児科学会が同時接種に対する考え方を示しております。2011年1月に学会のホームページにも公開しておりますけれども、日本小児科学会といたしましては、3ページの上のスライドですが、同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要があると。そして、これは子どもたちを病気から守るために必要な医療行為であると。これが日本小児科学会の見解でございます。先ほどお示しいたしました定期接種実施要領とワクチン添付文書とは少しニュアンスが異なるかなと御理解いただけるかと思います。

 3ページの下のスライドにございますように、日本小児科学会が、同時接種をより一般的に行っていく必要があると考える理由は、それぞれのワクチンで予防できる病気の乳児期の好発時期でございます。ワクチンは病気にかかる前に予防をする必要があるわけですね。そうすると、子どもたちはこういった病気にどの順番でかかるかは誰にも予想はできません。実際もわかりません。そうなりますと、より早い機会に複数の疾患に対する免疫をつけたほうが、子どもたちが病気から守られるであろう。だから、同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要があるのではないかというのが日本小児科学会の考え方でございます。

 そして、4ページの上にも、同時接種をお勧めすることと併せて、では、同時接種、複数の薬剤を体に入れるわけですけれども、それで、それぞれのワクチンの効果が落ちたりしないのか、あるいは安全性に対する懸念事項が一つずつ打つよりより高くなるのではないか。そのような懸念事項が当然あって然るべきなのですけれども、海外のいろいろな資料を引用いたしまして、有効性に関しても、安全性に関しても、同時接種と個々の接種とで差異はないというのが、今、海外の一般的な考え方である。なおかつ、同時接種できるワクチンの本数に原則制限はないということを同時にホームページの中で、日本小児科学会は示しております。

 4ページの下から何枚かのスライドは、米国のCDCの資料でございます。これを順次ごらんになってください。4ページの下は同時接種の定義ですね。これは英語で書いてあるだけで、私が最初にお示ししたのと同じ定義かと思います。

 5ページにいっていただきまして、海外諸国では通常に行われているけれども、いつから行われているのだろうとちょっと調べてみたのですが、これがCDCMMWRに、週報に登場するのが1986年なのですね。このときのレファレンスを見ますと、このときは、まだアンパブリッシュデータ、文献としてはまだ報告されてないデータということですね。1980年代から米国もこのエビデンスを積み重ねていったわけでございます。

 そして、5ページの下は、1994年の時点でMMWRにいろいろなワクチンも、多くのワクチンが同時接種できますよという文言に変わり、そして、6ページにいっていただいて、2002年のMMWRでは、あらゆるワクチンを同時に接種することを推奨すると。このような形で米国の記載は変化してきております。

 これを見て私思ったのですが、1980年代後半はどんな時期かというと、欧米諸国でもHibのワクチンがきっとデビューしたころだと思うのですね。乳幼児期に打つワクチンがどんどんふえてきて、これは、病気から守るためには複数の同時接種が必要だろうという観点から起こってきたことであろうと思います。そういった観点から、日本では、Hibを初めとしたワクチンの導入が20年近く遅れたということがございますので、海外での検討に少し時期が遅れてきているというのは、これは時間的な経過はある程度ちょっとやむを得ない点もあるかなと思いますけれども、逆に言えば、今こそ、同時に打つことのメリットのほうが高いのではないかということを少し考えなければならない時期に来ているのではないかと思います。

 6ページの下のスライドは、早期から病気から子どもたちが守られるということと、1番として、各ワクチンの接種率が向上する。あとは、いろいろな意味での負担を軽減するというメリットもございます。ただ、同時接種を行う際にはいろいろな注意も必要で、下に書いてある1から3までがございますけれども、通常、複数のワクチンを1本のシリンジに混ぜて打つのはだめですよ。定義にもあることですが、体のほかの部位に打つということ。あるいは、接種部位はどこなのか。また、複数のワクチンを打つときに、何センチ以上間隔をあけなければならないのか。これは日本ではなかなか引用できるものがないのですが、日本小児科学会が2.5cmと書いてあるのは、米国の基準に1インチから2インチ以上という記載が米国には多いと思いますので、それをセンチに換算して2.5cmが記載してございます。

 小児科学会のホームページ7ページにいっていただいて、接種部位に関しましても、上腕の2か所ですね。三角筋に相当する部位と下3分の1の部位、あるいは、大腿の前外側部、この辺りが接種部位でございますが、接種部位と、7ページの下はCDCの文章の引用でございますけれども、赤線が引いてございますが、1インチから2インチ以上あける。こういった資料を参考として出させていただきました。

 また、この接種部位とか接種間隔と併せて、細かないろいろな規定も決めていかなければならないと思いますが、例えば8ページの上に関しましては、これは、以前のHibとか肺炎球菌ワクチンの公費助成が始まったころに、集団接種と個別接種を実施しているときに、クリニックでHib・肺炎球菌を個別接種して、午後にDPT接種を集団でやるというのは同時接種に当てはまるのかというのに関して、これは一応同時接種には当てはまらずに、同日接種になるので間隔をあけてくださいという、参考資料としてこういったことも今後同時接種を行っていく上では、こんな定義もきちんとしていくことが大切かと思っています。

 同時接種、早期に病気から守るためにはすばらしいことですけれども、8ページの下のスライドにお示ししたようないろいろな懸念事項が、エビデンスに基づいて、この点に関しては大丈夫ですよというのを海外のデータはもちろんですけれども、国内データとしてもこういったものを示していく必要があると思っています。

 また、実臨床で、現在、同時接種がどうでしょう、70%以上は同時接種が行われていますかね。私の現場での印象ですけれども、7割とか8割は2本以上の同時接種が行われていると思いますけれども、乳幼児はやはり体がまだ未熟でございますので、ワクチンが原因でないにしても、しばしばひどい場合には突然死、あるいは発熱をしたり、いろいろな体調不良を来すことがございます。それがワクチンを打ったことによって、あるいは同時接種によって起こってないかということのデータはモニタリングしていく必要があるかと思っておりますけれども、2011年、ちょうど公費助成が始まったころに、多くの新しいワクチンが接種されて、同時接種も行われ始めて、このような接種後の死亡例に関する調査も行われたわけでございますが、このときも、これはワクチンそのものが悪かったのではなくて、SIDS、乳幼児突然死症候群とか、あるいは、時によっては基礎疾患、あるいは、他の感染症によるこういった体調不良であって、頻度から見ても、接種後のこのような重篤な有害事象としては頻度は上がってないということで、ワクチンとの因果関係は特にないということで、この時点で結論は出ておりますし、その後も、副反応検討部会で毎回報告していただいていますように、この頻度が増加してないかというのはきちんとモニタリングしていただいていて、現状ではその頻度の増加はないということは確認されていると理解しております。

 もう一点、現場の医師として思うことは、9ページの下ですが、基礎疾患を有する方は、接種要注意者なのですね。接種に関して十分な問診とインフォームド・コンセントを得た上で接種をする。ですから、逆に、複数の薬剤を入れるということは、ある意味では、大丈夫かなという御心配も多いのですが、逆に、彼らは病気にかかると重症化するリスクも高いのですね。だから、そういった対象の方であるからこそ早期に病気から守ってあげたいということも事実であって、ただ、いろいろな体調不良が起こりやすいのも事実ですから、きちんとした技術的にもいろいろな意味でも慣れた施設で接種するとか、いろいろなことは整備していかなければいけないと思いますが、私は、基礎疾患を有する方であっても、同時接種をしっかりと考えていく対象であると思っております。

10ページにまいりまして、日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール。これはかつては日本のワクチンは、何か月から何か月の間に接種するという印象が強かったと思いますが、今、日本小児科学会のスケジュールは、何か月になったら接種するという印象で書かれていると思います。同時接種を無理に勧めるという意味ではなくて、何か月になったら接種を始めるんだよという観点からいくと、同時接種が自然の選択肢として出てくるかなと考えています。

10ページの下は少し補足事項ですが、私は実際の接種の現場でも、乳児2か月から始めるのは基本同時接種で行っています。でも、現場ではいろいろな素朴な疑問も結構あって、1歳を超えた時点で定期・任意を合わせると6本ぐらいワクチンがあるのですね。それを6本全部一緒に打つほうがいいのか、あるいは、2本ずつ、3本ずつ、いろいろな選択肢があると思うのですね。これは、さっき申し上げた原則的な病気にかかる前に予防をすることと、あと、周囲の流行状況あるいはいろいろな意味でのその患者さんとか家族にとっての負担、いろいろなことを考え併せた上で、それこそ、せっかく個別接種なので、かかりつけ医がいいスケジュールを持って接種を対応してあげればいいかと思っています。これは、海外のいろいろな文書を見ましても、いろいろな意味で子どもたちが一番病気から守られるように、負担が少ないように対応するのがいいのではないかと書いてあるものが多いかと思います。

11ページにまいりまして、ここから何枚かは現在日本で使われているワクチン、わかりやすいように各ワクチンに関しては商品名で書かせていただきました。同時接種に関する有効性や安全性を検討したいろいろな論文でございます。中には学会誌に掲載されているものもあれば、商業誌に掲載されているもの、あるいは英文論文もございますけれども、それぞれでスタディデザインは異なりますけれども、Hibワクチンが同時接種の必要性を一番口火を切るワクチンであったためか、アクトヒブに関するものが文献としても多いですね。それ以外にも、肺炎球菌ワクチン7価、13価、あるいは、不活化ポリワクチン(イモバックスポリオ)、ロタウイルスワクチンとか、乳幼児ワクチン関連全般、いろいろなワクチンがございます。このようなデータは集積されつつありますので、同時接種を現在とは、また、違うような形で何か規定上もう少しワクチンを専門としない方にもわかりやすいような文言で同時接種の位置づけを決めるのがいいのではないかと考えております。

 ここから後半部にまいります。17ページの下に、また、ワクチンのスケジュール。これは、接種間隔は先ほどお示ししたとおりでございますが、18ページにいっていただきまして、異なるワクチンを接種する場合の接種間隔。現在、不活化ワクチン接種後、中6日以上、また、生ワクチン接種後は27日以上、これだけの間隔をあける理由。いろいろな資料を見てみたのですが、詳しく書いてある資料はそんなにないのですね。「予防接種に関するQ&A集」ということで、これは多屋先生と岡部先生が御監修いただいていると思うのですが、ここから引用させていただいたのですが、不活化ワクチン後の6日以上は、1週間例えばワクチンによる反応がほぼなくなる時期であるから。27日以上は、生ワクチンの後はウイルス同士の干渉を防止するため、副反応は、生ワクチンが体の中で一定期間ふえますので、そういった副反応が出現する期間をある程度避けるため、これが理由として挙げられるし、これ以外には理由としては余り見当たらないと思います。

 ただ、ウイルス同士の干渉は、恐らく最初に生ワクチンを打って、次に生ワクチンを接種する場合、しかも、それが注射するワクチンを接種する場合、体の中で弱毒ウイルスがふえるわけでございますので、注射の生ワクチンを打つ場合は、この4週間以上というのが該当するかと思いますが、きっと不活化ワクチンとかではそれは該当しないでしょうし、言葉を変えれば、私たちはワクチンを打った後、いろいろな病原体の暴露を日常生活で受けているわけでございますので、同様のことは日常生活でも起こっていることかと思います。

そういたしますと、接種間隔の緩和という観点からは、注射する生ワクチン同士の間隔は、4週間は残すにしても、不活化ワクチンとか、あるいは経口の生ワクチンに関しては、接種間隔を緩和できる可能性があるのではないかと考えております。それで、諸外国の資料を調べてみたのですが、18ページの下は米国小児科学会の資料をちょっと中野のほうでまとめさせてもらったのですが、今申し上げましたように、注射する生ワクチン同士は27日以上の間隔でございます。でも、それ以外は接種間隔に規定はございません。翌日でももちろん接種は可能でございます。

19ページにいっていただいて、上が、私がまとめるものの原点の米国の資料、また、19ページの下にはカナダにおける接種間隔の記述がございますが、カナダにおける記述は米国と同様でございます。

ページをめくっていただきますと、20ページの上には、英国における接種間隔に関する推奨がございますが、これは例えば黄熱とMMRが、英文そのまま訳すと、同時接種ではなくて、同日接種という英語の日本語訳になるので、あえて、同日接種と書きましたが、これはたしか、抗体価の免疫原性の問題から上昇が別々に打つより悪いのでということで、こういった規定を設けておりますけれども、英国も原則は生ワクチン同士は同時でなければ、4週間以上の間隔、そうでなければほかのワクチンは接種オーケーなのですね。ただ、恐らく日本と欧米諸国の異なるところは、日本は規制が割と厳しくて、ちょっとそこから動きがとれないところがあって、海外は原則としてはオーケーというのがあって、各ワクチンでいろいろなデータとか、いろいろな市販後のデータも併せながらメッセージを発する機会があったら発していく。そこの大きな違いがあるかと、諸外国の資料を見て思っておりました。

そして、20ページの下は、日本小児科学会は、資料4の別添1がございますけれども、厚生労働大臣宛に平成24年9月19日に日本小児科学会から出させていただいた要望書でございますが、「異なるワクチンの接種間隔変更に関する要望書」ということで、今御説明申し上げました欧米諸国と同様に、注射する生ワクチン同士は27日以上の間隔をあける。それ以外のワクチンには特に接種間隔を設定する必要がないように改訂することを要望するということで、日本小児科学会は平成24年に要望書を提出しております。

21ページにまいります。接種間隔を緩和するということは、有効性・安全性に懸念事項がないことはもちろんでございますけれども、それによって国民の皆さんの便宜が図れるのかということもあると思うのですね。これ、また、海外渡航のお話になりますが、日本渡航医学会から予防接種推進専門協議会に、今回、PDCAサイクルのヒアリングに関して、私たち渡航医学会から出させていただいたコメントですけれども、今、黄熱ワクチンは、検疫所等一部の機関でのみ接種可能でございます。黄熱ワクチン、御承知のように生ワクチンでございますので、その後の接種間隔はかなり厳しい規定がございます。また、さっき釜萢先生からも御質問をいただいた狂犬病ワクチンに関しましても、今、狂犬病ワクチンだけではございませんが、もし、一部供給不足があるワクチンがあったりすると、どこかの施設でそのワクチンを打って、ほかの施設で打つときに、接種間隔の余り細かい規定があると、病気から守りたいがためのワクチンを打てないという機会があるのですね。そういった機会を奪わないためにも、異なるワクチンの接種間隔の緩和は、私は必要な事項ではないか考えております。

ただ、イギリスの例でもお示ししましたように、原則として規制は緩和し、有効性と安全性に関するモニタリングはもちろん継続していく必要がございます。その後の何枚かの資料でございますが、21ページの下から22ページの最初に関しましては、米国のTdap(思春期成人用の百日咳含有ワクチン)と4価の結合型髄膜炎菌ワクチンMCV4(メナクトラ)、これは両方とも比較的新しいワクチンでございますが、新しいワクチンが出て、エビデンスがそろわないうちは、同時接種とか接種間隔に細かい規制を設けていたころもございます。

また、22ページの下からは、これも米国の例でございますが、帯状疱疹予防の生ワクチンZOSTAVAXと肺炎球菌多糖体ワクチンPPSV23(ニューモバックス)の間隔に関しまして、これは国とかCDCが出したということではなくて、メーカーとして、これは両方とも同じメーカーのワクチンですが、同時接種をしたときのZOSTAVAXの免疫原生が同時接種しないときよりもちょっと劣るということで、逆に、同時接種しないほうがということをメーカーとして出したこともあったのですが、その後、帯状疱疹の罹患率その他を検討したら、差がなかったということで、CDCとしてはこれに関して全然規制を設けていません。

ただ、今回のこの規制緩和をどうするかで申し上げたいことは、何よりも国民の皆さんとか医療従事者にわかりやすい、間違いとならないようなメッセージで規制緩和をすることが必要かと思っています。よりわかりにくくなっては意味がないので、それを目指すことが必要かなと思っています。PPSV23(ニューモバックス)とZOSTAVAXに関しては、論文によっては、メーカーのホームページに書いてあったこととCDCのポジションでは異なるとかえって混同のもとになるので、どちらかに統一したほうがいいのでないかと、こんな論文が出ていたこともございます。

また、小児の例で申しますと、2009年にパンデミックが起こったときに、インフルエンザワクチンでちょっと発熱率が高くて、小児は、予後良好な疾患ですが、熱が出ると熱性けいれんを起こすことがございます。そういたしますと、発熱を来す頻度が高いワクチンを同時接種したりした場合に、熱性けいれんのリスクが上がるのではないかということで、一部これも情報が発信されたことがございましたが、このときも米国CDCは、発熱率は上がって熱性けいれんのリスクが少し上がる可能性はあるけれども、これは決して同時接種して病気を守ることのメリットから考えたら同時接種を妨げるものではない。ですから、大きなところで緩和しつつ、きちんとした細かい情報を発信していく。そのほうがワクチンとしては望ましい姿かと思っています。

最後のスライドでございますが、先ほども予防接種センターのところでもちょっと申し上げたかと思いますが、同一ワクチンの接種間隔を緩和していただいたことは、ある意味でも本当に今まで打てなかった方がきちんと予防接種法に基づいてワクチンを接種する機会をつくっていただいた、すばらしい御英断だったと私は考えております。異なるワクチンに関しても、これを考える時期に来ているのかなと考えております。

どうもありがとうございます。

〇倉根部会長 中野先生どうもありがとうございました。

 ただいまの御発表に関して、何か御質問・御意見はございますか。

 坂元委員どうぞ。

〇坂元委員 ちょっと教えていただきたいのは、私が聞き逃したかもしれないのですけれども、同時接種の定義ですが、ここの最初の4ページのところのNational Vaccine Advisory Committeeは、same clinic dayと書いてあって、6ページには、例えば、during the same office visitというふうになっていております。これについて、同日だが、クリニックが別になってしまった場合、同時接種というふうに小児科学会では呼ばないのか、そこの定義について、自治体側としては、市民から聞かれたときにどう答えていいか困りますので、よろしければお教えいただければと思います。

〇倉根部会長 中野委員どうぞ。

〇中野委員 小児科学会の会員はここにも複数いらっしゃいます。私のコメントが十分でなければ、また、補足いただきたいですが、異なるクリニックで打つことに関して、小児科学会としては、現在、特にコメントはしてないと思います。これはいろいろな理解がありますし、医学的なことと併せて、きっと法律的な考え方とか、どの先生がどのように予診をしてどのワクチンを打つということにも関係してきますので、逆に、それは今後整理していかなければならない課題ではないかと私自身は考えておりますが、ほかの小児科学会の先生方は何かコメントはございますか。

〇倉根部会長 宮崎委員どうぞ。

〇宮崎委員 これは同時接種が一般的になったときに最初に話題になったことですが、むしろ、国が、同時接種は、一つのクリニックで同時にやったときが同時接種であって、同じ日でも違うクリニックあるいは保健所とクリニックの場合同時接種と認めないと、厚労省のほうから見解がでました。それは「同日」接種を定期接種と見なすかどうかという問題です。だから、その見解が今も変わってないかどうかはちょっと確認しておいてもいいかと思います。

〇倉根部会長 事務局コメントはございますか。

〇江浪予防接種室長 予防接種室長の江浪でございます。

 同時接種に関しましては、先ほど御意見がありましたとおり、別々のクリニックで行われた場合を同時接種というふうに我々はとらえておりませんで、基本的には、一回の診療所なり医療機関の診療の中で同時に2種類以上のワクチンを接種される場合ということを指しているものと考えてございます。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでございましょうか。

 伊藤委員どうぞ。

〇伊藤委員 同時接種をしなければいけない状況は、ワクチンが1製剤で開発されたりするのにという思いがあって、でも、そういったのは進めていかなければいけないというまずもって最初の考え方として成立させなければいけないと思っているのですけれども、先ごろ、アジュバントが入っているワクチンがたくさん不活化ワクチンが出てきておりまして。アジュバントが入っていて、最近の研究だと、昔のアルミアジュバントみたいなものであれば、ワクチンを局所に滞留することによって有効性を増すという考え方だったのが、最近のアジュバントはそうではなくて、免疫全体を不活化をする。だから、アジュバントの入ってないワクチンに対してどんな影響をするかわからないものも出てきております。そういう意味ではやって結果を見ずに、今のような切り方ができるかなというところが大変不安なところがあるのですけれども、そういったアジュバントの入っているワクチン、特に不活化ワクチンについてのデータはお持ちなのでしょうか。

〇倉根部会長 中野委員いかがでしょうか。

〇中野委員 アジュバントに関しましては、先生おっしゃられたように、確かに旧来からのものはほとんどがアルミ系のアジュバントですよね。ただ、アルミ系のアジュバント自体でも、何と結合しているかとかによっても抗体反応は異なると思うのですね。

具体的な例で申し上げれば、例えばセービン株由来のDTP-IPVワクチンが出たとき、2社から国内のセービン株由来のDTP-IPVワクチンが出て、両方ともアジュバントはアルミアジュバントでございますけれども、それぞれの2製造所でアジュバントは微妙に異なると理解しています。抗体反応を見ますと、決して同一ではないのですよね。ブースターで抗体価がすごく上がるタイプのものもあれば、最初の3回で抗体価が上がるものもあれば、また、Hibのワクチンに関しましても、恐らくアクトヒブに含まれている破傷風トキソイドの量は量的には非常に多いですよね。

ですけれども、量的には多くても、結合体となっているせいか、これはアジュバントとは関係ないのですけれども、破傷風トキソイドに対する抗体反応は、きょうお示しした同時接種のデータを見てもほとんどないですよね。ですから、これが混ぜてしまうと、製剤としてもっとややこしい話になってしまうのでしょうけれども、別々の部位に打っても、先生がお話しされたようなモニタリングはもちろん必要とは思いますが、アルミアジュバントのレベルにおいては、海外でのデータとして、それで途方もないことが起こっているということはないと私は理解しています。でも、これから出てくる、さらに新しいアジュバントについては、さらに、データを慎重に集めていく必要はあると思います。

〇倉根部会長 ほかに御質問。

 宮崎委員どうぞ。

〇宮崎委員 コメントと質問ですけれども、平成25年の法改正のときに、ワクチンギャップの解消ということを目指して、ワクチンそのものに関して言えば、かなり種類は多くなってきて、今足りないのは、むしろ、混合ワクチン辺りがまだ薄いかなということですが、もう一つソフト面といいますか、制度的に、日本はローカルルールがまだいっぱい当時残っていて、それを一つ一つ今解決していっている途中だと思うのですね。その1つが同一ワクチンの接種間隔の上限撤廃の問題で、これは厚労省にやっていただきました。私の本音としては、もっとシンプルにわかりやすく、例えば「定期予防接種の対象年齢内であれば、接種間隔が延びても定期接種と見なす」という一言を書いていただければ、本当はあの細かい文章は全部クリアできたはずなのですけれども、なかなかその辺のところが国として処理するのに非常に細かいワクチンごとの記載になっているのが、ちょっとわかりにくくはありますが、実際問題、上限撤廃で接種現場は助かっているということはそのとおりです。

 同時接種と接種間隔に関して言いますと、1つは副反応の問題で、生ワクチンと生ワクチンの場合は干渉ということがあって、世界的にも、今でも4週間隔で接種しますが、それ以外は余り規制がないというのが世界標準なわけですが、日本では従来からこういう決まりがある。それは歴史的に言えば、ワクチンの数が非常に少なくて、副反応の観察期間を十分とっても接種が間に合う時代に丁寧にやっていったということだと思うのです。平成8年から今に至るまで、予防接種後健康状況調査はずっと行われていまして、最初のころは、単独のワクチンの副反応の出方のデータがかなり積み重なっていって、最近では混合・同時接種のデータがここ数年非常にたくさん集まってきているので、そこを解析していけば、同時接種によってどういう関係性が出てくるかということがより大きなデータでわかってくると思います。

 例えば、5%の発熱率のワクチンAと2%の発熱率のワクチンBがあって、それを一緒に接種した場合、発熱の機序が同じであれば、大体5%におさまってしまうのですね。ですが、AとBの発熱の機序が違えば足し算になることが多いですね。足し算の場合はふえたと言えるのかという意見もある。別々にやっても出るものが一緒になったという考え方にもなりますので、少なくとも世界的には掛け算にはならないというのが一般的な考え方ではないかなと思います。そういうのを具体的なデータで出していけば、世界標準より近づきやすくはなるのではないかと思います。そのことによって、もう少し接種しやすくなっていけばいいかなとは思います。

 多屋先生のほうで副反応の解析をされていますので、単独接種時代と同時接種が普通になった時代のデータの出方とか解析についてコメントがあったらお願いします。

〇倉根部会長 多屋委員いかがでしょうか。

〇多屋委員 宮崎先生ありがとうございます。

 今、私もお話しさせていただこうかなと思っていたのですけれども、副反応疑い報告書の解析をさせていただいております。感染研では、毎週、厚労省やPMDAと共有しているのですけれども、そういうデータを委員の先生方と共有させていただくために、ディスカッションの俎上に載せていただけるのであれば、まとめた資料などを御紹介できたらなと思っています。

 もう一つ、今、先生からお話があった健康状況調査ですが、少し前から厚生労働省のほうで、同時接種のパターン別に、種類はちょっと絞らざるを得なかったところはあると思うのですけれども、出していただけるようになって、それと単独接種のときと比較することで、そんな大きな違いが出てないということが、国民の皆様や接種医の先生方にしっかり伝われば、もう少し安心して、説明して受けていただけるのかなと思いました。

 もう一つ同時接種のことですが、昔のように、一つずつ接種するのはほぼ不可能なぐらいの接種の数と種類になっているので、そろそろ同時接種が当たり前になっていい時期に来たのではないかなと思います。

 それから、抗体反応や免疫については、予防接種法に基づいて行われている感染症流行予測調査事業などの抗体保有状況調査もあるので、それを見ながら、単独接種のときと変わってきてないかというのを比較することも、有効性の部分での検証につながるのではないかなと思いますので、そういう情報をこういうところで共有していただくことができればと思いました。

〇倉根部会長 ありがとうございました。

 いろいろ御意見をいただきまして、恐らくもうちょっと続けても、いろいろな御質問・御意見があるのかと思いますが、うしろがございますので、きょうはここでとめたいと思います。

 きょう出ました御意見につきましても、事務局でまとめていただければと思いますので、事務局よろしくお願いいたします。

 それでは、続いて、議題2に入ります。報告事項でありますが、事務局から資料の説明をお願いいたします。

〇大林室長補佐 参考資料4をごらんください。「平成27年度予防接種実施率について」というタイトルの資料です。

 毎年度、厚生労働省が実施している統計調査で、「地域保健健康増進事業報告」がありまして、この中で、定期予防接種の接種者数の数をとっておりますが、27年度分の調査集計が終了して、本年3月に公表されています。この接種者数の数字に対して、対象人口を分母にして実施率を計算したのが参考資料4の表です。

脚注に記載がございますが、対象人口当該年度に新たに標準的接種期間に達した人口とし、実施人員を当該年度に定期予防接種を実施した人数をとっているということで、双方の対照が全く同じになっていませんので、100%を超えるような数字もありまして、純粋に接種を受けた方の割合という意味ではなく、あくまでトレンドを見ていくというような数値になってございます。

25年度、26年度は、毎年度、定期接種対象のワクチンが増えている状況でしたが、27年度については新しく追加になったワクチンはありませんでした。乳幼児を対象としたワクチンはおおむね100%前後の高い実施率が出ております。

 事務局からは以上です。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 今、報告がありましたが、これについて何か御質問はございますか。

 多屋委員どうぞ。

〇多屋委員 1つだけ教えていただきたいのですが、当該年度に新たに標準的接種期間に達した人口、例えば水痘の場合ですが、1回目と2回目が少し違っているのと、あと、MRとは、また、少し違っているのですけれども、水痘の1回目と2回目はどのときの人口が使われているのか教えていただけるとうれしいです。

〇倉根部会長 事務局いかがでしょうか。

〇江浪予防接種室長 予防接種室長の江浪でございます。

 この対象人口の計算の仕方は、従来から少し工夫をした数値で歴史的に行ってきたという経緯がございまして、単純に、0歳人口とか1歳児人口を置いているわけではなくて、別の例で参照してしまうと適当ではないかもしれませんが、DPTの例で言いますと、3か月から接種可能であるということで、0歳児の人口の12分の9に1歳児人口の12分の3を足すというようなことで、少し工夫をして、どうも歴史的に行ってきたのだという経緯があると確認をしております。

 実際に、こういった形で母数を出すことが技術的に正しいことなのかどうかということに関しましては、多屋委員を初めとした有識者に御相談しながら、もう一回考えていきたいなと思っているところです。

 以上でございます。

〇倉根部会長 多屋委員どうぞ。

〇多屋委員 ありがとうございました。

 分母の考え方が非常に難しいので、MRのときは単純に10月1日現在の1歳児人口だったら、全市区町村同じ数字で出していただけるのではないかということで議論をして決めた経緯があって、それが1,023,796人ですけれども、それとちょっと違っていたので、どういう計算かなと思ってお伺いした次第でした。ありがとうございました。

〇倉根部会長 ありがとうございます。

 ほか、よろしいでしょうか。

 ありがとうございました。

 それでは、本日の議事は以上でございます。

 事務局から何かございますか。

〇大林室長補佐 倉根先生はワクチン評価に関する小委員会の委員長を務めていただいておられましたが、この部会の下に設置されている小委員会ですので、基本方針部会長から、改めて委員長の指名をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

〇倉根部会長 承知いたしました。

 小委員会の委員長については、 国立感染症研究所の副所長の脇田先生を指名したいと思っております。本人、きょうここにはおりませんので、私のほうから、また、お伝えするとともに、事務局から正式にはお伝えをいただくことになろうかと思います。よろしくお願いいたします。

〇大林室長補佐 わかりました。ありがとうございます。

 次回の開催につきましては、追って、御連絡させていただきます。

 事務局からは以上でございます。

〇倉根部会長 それでは、これで本日の第18回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会」を終了したいと思います。非常に活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。これで終了いたします。


(了)

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