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2017年5月29日 第4回がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会(議事録)

大臣官房厚生科学課・健康局がん・疾病対策課

○日時

平成29年5月29日(月)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 12階 専用第12会議室


○議題

(1)がんゲノム医療推進コンソーシアムについて
(2)その他

○議事

○間野座長 定刻になりましたので、第4回「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」を開催いたします。皆様方におかれましては、御多忙にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、出欠の確認を事務局からお願いいたします。

○医療イノベーション企画官 本日は、五十嵐構成員、中西構成員、西田構成員から御欠席との御連絡、また、杉山構成員より少し遅れるとの御連絡を頂いております。また厚生労働省からの出席者につきましては、事務局等座席図一覧の記載のとおりですので、紹介は省かせていただきます。

 誠に恐縮でございますが、カメラでの撮影につきましてはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○間野座長 議事に入る前に資料の確認をいたします。これも事務局からお願いいたします。

○医療イノベーション企画官 資料1「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会 報告書案」を用意してございます。落丁等ございましたら事務局にお知らせください。以上です。

○間野座長 資料については、皆様よろしいでしょうか。特に問題がないようでしたら、議事に入りたいと思います。前回までの懇談会において、皆様に御検討いただきました事項を踏まえまして、事務局において、資料1、がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会報告書案を作成していただいております。この資料1について、まず事務局から説明をお願いいたします。

○医療イノベーション企画官 それでは、資料1につきまして御説明いたします。少々時間を頂きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。まず、「はじめに」から始まり、1パラグラフはがんの状況、また昨年の12月に開催された「がんゲノム医療フォーラム」での、総理大臣より厚生労働大臣への言及についてです。次のパラグラフは、ゲノム解析の技術の進展、またこうした技術の活用により、「がんの撲滅」というものに人類の手が届くところまできている、としております。3つ目のパラグラフは、こうした実現に向けて様々な研究開発などが必要ということです。

1ページ下段から2ページにかけて、こうした新しい技術開発を進めるためには、様々な情報を集約し、研究や診療で利活用できるようにしなければならないということ。こうした仕組みや構築が必要である。2ページ上段の最後で、本懇談会では、「がん撲滅」こそが、がんに立ち向かう国民の望みであるとの認識を共有し、技術革新の果実を確実に国民に届けるための具体的方策について検討を行った。その際、がんゲノム情報、また、がん登録情報や医療機関の電子カルテ情報との相関分析による革新的治療法の探索や人工知能等の情報通信技術のがんゲノム医療への応用を遅滞なく進めるため、これは本年1月、厚生労働大臣を本部長として設置された「データヘルス改革推進本部」と連携しながら検討を進めた、という本懇談会での検討の立ち位置を記載しております。

2ページの中ほど以降、こちらでは、「がんゲノム医療とは」ということで、若干医学的な内容の記載になります。1つ目のパラグラフは、がんという疾患とゲノム変異との関係について。2つ目は、がんゲノム医療というものがどういう性質のものであるのか。3ページ目の上段3行目、本懇談会では、がんゲノム医療を「がん患者の腫瘍部及び正常部のゲノム情報を用いて治療の最適化・予後予測・発症予防を行う医療(未発症者も対象とすることがある。またゲノム以外のマルチオミックス情報も含める)」と定義し、検討を行った。

 その下、ただ、ゲノム解析の結果を治療方針の決定等に用いる場合、医療で用いるという場合には、人的エラー回避のシステム構築等も含め、研究目的の場合と比べて数倍~数十倍もの精度が求められ、検査の標準化等を早急に確立する必要がある。また、仮に、患者のがん細胞の全ゲノムを解析した場合、次世代シークエンサーが示す解析結果は約30億個の記号の羅列ということになり、がん診療に従事する担当医が個々の患者に対する治療法の決定等にこの情報を活用するためには、以下に示す工程が必要となる。一例として、マル1約30億個の記号の羅列から、原因候補変異を抽出すること。マル2抽出された原因候補変異に対して、原因となっている変異がどれなのかということを同定すること。マル3同定された変異を用いて、患者に合った治療法の選択を行う。こういう工程が必要になるということです。

3ページの下段以降は、「制度的対応の必要性」についてです。我が国の医療保険制度においては、有効性・安全性等が確認された製品や技術は保険医療として広く国民に提供し、有効性・安全性等は確認できていないが保険導入を見据えた高度の医療技術等を用いた医療は、先進医療として保険診療との併用が認められている、という我が国の医療保険制度についてです。こうした中、「がんの撲滅」のためには、全ゲノム解析検査等が広く国民に対し医療として提供され、その情報が集約・利活用されることが望ましい。しかし、現時点においては、これらの検査により明らかとなる情報のうち、患者の治療法の決定等の医療上の利用において、有効性・安全性が確認できる情報はほんの一部に過ぎず、全体として有効性・安全性が確認された医療として国民に提供することは難しい状況にあるという現状を記載しています。

  続いて4ページです。一方で、ゲノム解析技術の進展により、各種ゲノム解析検査により明らかとなる知見が急速に拡大し、より柔軟な科学的評価を行う必要性が生じていることも事実であり、厚生労働省において、以下に示す制度的対応が検討されている、ということです。

1つ目、既存治療薬の選択(コンパニオン診断)だけでなく、広く治療に係る医学的判断に資する「遺伝子パネル検査」についても、必要に応じて先進医療の実施を経て、新たな視点で科学的に評価することにより薬事承認し、その有効性や安全性を確保できる一定の要件を満たす医療機関において、保険診療として実施すること。2つ目、全ゲノム解析等の結果により、医学的意義が明らかとなった変異等を踏まえて、遺伝子パネル検査の充実を目指すこと。3つ目、全エクソーム解析や全ゲノム解析等の探索的な医療について、それにより得られる知見を新たな視点で科学的に評価することにより先進医療に位置付けること。さらに、先進医療として実施しながら、その情報解析において人工知能等の応用も期待されることから、その有効性・安全性について不断の評価を行うこと。

4つ目、またこれらの検査結果と、当該患者における治療反応性等に係る情報の集約及び分析により、推定される有効性・安全性を評価の上、未承認薬・適応外薬検討会議において優先的に開発すべき対象を選定する。また、一定の有効性・安全性の確認された医薬品を投与可能医療機関の限定等の条件を付した上で、早期に承認をする。5つ目、併せて、ゲノムに基づく医薬品の適応拡大を進めるため、がん腫別ではなく、ゲノムに基づく患者選択を行う共通プロトコールで、薬剤の有効性及び安全性を評価する治験等を推進する。6つ目、さらに、希少がんなど、製薬企業にとって適応拡大等の開発意欲が不十分な医薬品に対するインセンティブ付与を行う。本懇談会は、検討が進められている上記の事項を前提として検討を行った、としています。

5ページからは、本懇談会での検討の「基本的な考え方」です。1つ目のパラグラフ、「がんの撲滅」のため新たに見出されたがん原因遺伝子に対する分子標的薬の開発のみならず、新たな機序による革新的な治療法や診断法の開発が不可欠である。こうしたものを実現するためには、質が確保されたより多くのがんゲノム情報を効率的に集約・利活用できる仕組みを早急に構築しなければならない。そのためには、今申し上げた制度的対応を着実に進め、我が国の国民皆保険の制度の下、質の高いがんゲノム医療を国民に提供しながら、個人情報を含めた医療情報を集約し、研究での利活用を促す仕組みが必要である。この情報の集約・分析は、最先端医療であるがんゲノム医療の質を保つ観点からも不可欠である。

 次のパラグラフは、海外の状況に照らしたものです。その次のパラグラフは、質の高いがんゲノム医療の提供や開発の推進には、多くの学術領域、職種の参画や発展著しい最先端技術の応用が不可欠である。このため、患者の個人情法を保護した上で、データの囲い込みを徹底的に排除し、優れた医療を提供する医療機関、優れた研究者、優れた技術を持つ事業者が既成概念に捕らわれないオープンかつフェアーな競争を行い、我が国のがんゲノム医療に貢献できる仕組みとすべきである、ということです。

 最後のパラグラフは、ここに構築するゲノム医療の基盤は国民共有の財産であり、広く国民の理解及び賛同なくしては成り立たず、「がんの撲滅」も現実のものとはならない。本懇談会では、がんゲノム医療の基盤整備は国民が主体的に参加し、その恩恵も国民が享受すべきものであることを明記して、検討を進める。

 以降は、「がんゲノム医療に新たに必要となる機能や役割」について、記載しております。6ページを御覧ください。(1)がんゲノム医療を提供する医療機関です。前回の会議において、論点案としてお示しさせていただいたものを土台に、会議での御意見、またその後頂いた御意見を基に適宜修正、付記をしております。修正点を中心に申し上げますと、2つ目のパラグラフですが、がんゲノム医療を提供する医療機関において、必要な機能として、臨床研究や医師主導治験等が実施されている必要がある。またその下のパラグラフ、遺伝カウンセリング等についても的確な対応が求められるということです。

 これらを踏まえ、「がんゲノム医療中核拠点病院(仮称)」、それ以降は「中核病院」と使わせていただきますけれども、その医療機関に求められるということで、6ページ下段のマル1から、7ページの上段のマル8まであります。この中では、マル7として、医師主導治験等の実施について、体制とともに実績も記載しています。

 またその後の、現在から始まるパラグラフで、4行目からです。中核病院を、拠点病院の仕組みに位置付け、中核病院が提供するがんゲノム医療の状況を踏まえつつ、段階的に、全ての都道府県でがんゲノム医療の提供が可能となることを目指す必要がある。あと、(2)の上の、次世代シークエンサーの配置の部分で、こうした過度な設備投資がなされないよう、国において十分に検討することが重要である、としております。

(2)がんゲノム医療情報の集約・管理・利活用推進機関として、ここでは7ページ一番下の、「がんゲノム情報レポジトリー」というように記載しております。このレポジトリーを構築し、管理・運営する機関として、8ページの一番上、「がんゲノム情報管理センター(仮称)」ということで、新たに設置する必要があるということです。この情報センターを担う機関として、正に国民の機微情報を永続的に取り扱うため、公的機関がその運営に当たることが適当である。また、情報の取扱いに関連して、がん診療を担う医療機関やがん研究を行う研究機関との密接な連携が求められることから、がん診療や研究の実施やそれに伴う個人情報の取扱いについて、相応の実績を有する機関が運営することが望ましい。

 次のパラグラフは、レポジトリーに収蔵される情報について、ここでは患者のゲノム情報のみならず、治療薬に対する効果等の臨床情報も重要である、ということで、そのパラグラフの6行目から、情報センターは、管理する情報について、各患者の同意の範囲、利活用状況等を適時把握し、患者からの照会や意志の変更等にもきめ細かに対応可能な体制を備えるとともに、各医療機関への技術的支援を担うことが求められる。それに必要な各種取組がそのパラグラフの下段になります。

 その下のパラグラフは、具体的に収集・管理する情報の種類、様式や方法等については、がん関係学会や医療情報関係学会等の協力を得ながら、早急に検討を進める必要がある。また医療従事者に過度な負担をかけずに信頼性の確保された情報を収集することが重要ということで、関連する施策とともに記載しております。

8ページの一番下から9ページにかけては、全ゲノム解析も含めて、その情報の質の確保、また管理についてです。まず、9ページ一番上の、全ゲノム解析等の情報の解析プログラムの質確保に係るガイドラインを策定するなどの取組が必要であること。なお以下で、スーパーコンピュータ等の情報解析基盤が不可欠である。こうしたものの利用に係る人材も限られているということで、早急に解析に必要な基盤を整備する必要がある。

 情報センターは、レポジトリーの管理・運営に際し、従来にない規模のデータベースになることを踏まえ、ハードウェア依存のシステム構造からソフトウェアベースでシステム構造を構築するクラウド環境や仮想化技術を提供する民間事業者との委託契約等により、大量の個人情報を含むデータの管理保全機能を確保することが想定される。その際、十分なセキュリティの確保だけでなく、費用対効果に優れた運営とすることが重要である。また、蓄積されるデータの種類や量の増加などによって、電力の消費量や通信回線使用量が増加する可能性があり、こうしたものに必要なコスト等を最小限に抑制できる体制を検討する必要がある。

9ページの一番下のパラグラフです。情報センターの運営コストについて、医療上の利用や研究開発利用等、利用目的が明確な部分については受益者に負担を求め、持続可能な仕組みとすることが重要である。また、事業収支等に賛同する個人や企業等からの協力も広く募り、国民の共有財産として運営していくことが望ましい。

10ページの(3)質の確保された効率的なゲノム検査の実施体制です。中段以降、医療に用いるゲノム解析ということで、遺伝子パネル検査、全エクソームや全ゲノム解析が想定される。こうした検査は、衛生検査所又は医療機関内で実施されることが想定されるため、法令に基づく厳格な精度管理がなされる必要がある。また、次世代シークエンサー等の検査機器についても、高額であるとともに、より低コストで、より信頼性・有用性の高い技術開発がなされる可能性も高いことから、不必要な設備投資がなされることのないよう十分に留意する必要がある。また、ゲノム検査の実施には、専門技術を有する臨床検査技師やバイオインフォマティシャン等の人材も不可欠であり、限られた人的資源についても効果的に配置されるよう対応する必要がある。同時に、検査によって得られる情報は国民の機微情報であり、データが想定外に流出したりすることのないよう適切に管理される必要がある。こうした観点から、がんゲノム医療に参画する検査事業者については、コンソーシアムを形成する関係者により、認定を受ける仕組みも検討する必要がある。

11ページは、(4)がんゲノム知識データベースの構築についてになります。先ほどお示ししましたがんゲノムの工程のマル1~マル3まで、特にマル2、マル3の際の基礎情報となるのがこの知識データベースになります。11ページ上段のパラグラフです。想定される知識データベースについて、がんに関する基礎及び応用、臨床研究等の大量の文献情報、更に前向きにゲノム情報と関連する臨床情報も入力し、個々のゲノム変異の臨床的意義を網羅することを目指したものまである。一般的なデータベースとしているものまであると。本懇談会において想定するデータベースはこういうものとなるわけですが、現在、これに該当するものは、欧米の情報通信事業者等により、大規模事業として運営されているものである。ただ、アジア人集団に関するゲノム情報等は乏しいという課題や、データベースの利用に際し高額の利用料を請求される傾向があるなど、日本人集団でのデータに基づく質の高いデータベースの構築が不可欠な状況になっています。

 こうしたものを受けまして、必要な文献情報等に加え、情報センターが集約する日本人集団におけるゲノム情報とそれに関連する臨床情報を連携させ、長期的かつ継続的に更新されるようにすることが重要である。また、文献情報の入力やがんゲノム情報の分析等においては、人工知能を応用することも不可欠である。

11ページの下段から12ページのパラグラフです。将来的にはこうしたデータベースの構築・運営は民間企業によりされるべきものですが、現時点においては学会等を中心とした基盤づくりの段階にあり、早急に基盤を構築した上で、その知見も含めて民間企業に委譲するなどの取組を進める必要がある。また、データベースは、情報センターが管理するレポジトリー収蔵のデータへのアクセスにより更新していく必要があり、民間企業への委譲に当たっては、事業ポリシー、関連事業での実績、我が国において、継続的なサービス提供体制等の観点から、コンソーシアムが事業者を認定する仕組みを検討すべきである。また、将来にわたっては、我が国でがんゲノム医療を提供する医師等が、リーズナブルなコストでデータベースにアクセスできる体制等の確保のための方策についても適切に検討されるべきである。

12ページ、(5)治験情報の集約と医師主導治験の支援です。1つ目のパラグラフは、がんゲノム情報に基づき、個々の患者に適切な治療を提供するためには、治験・臨床試験を含めた治療選択肢をタイムリーに検討可能とする必要があるということで、情報センターは、どこでどのような治験等が行われているかの情報について、治験実施企業等の協力を得て一元的に集約・管理し、患者や医師がアクセスできる体制を構築することが求められる。現在の取組とか米国の取組について記載した上で、5行目ほど下の、日本においても臨床研究法の施行を契機に、更なる治験・臨床試験情報の一元的な公開に向けて検討するとともに、ClinicalTrial.govを参考にしながら、ゲノム情報による患者選択の有無に関する情報についても集約する必要がある。

 同時に、異なる複数のがん腫において、がん治療薬の薬効に関連する共通の遺伝子変異が認められた場合などでは、適応拡大のための治験等を積極的に実施していく必要がある。情報センターはレポジトリーの解析を常時実施し、厚生労働省に対し優先的に開発すべき対象を提言したり、研究者等に対し、医師主導治験の試験デザインの設計等の支援を行う体制を整備する必要がある。また、こうした医師主導治験の実施に際しては、日本医療研究開発機構を通じた研究資金の配分が必要となることから、こうした機関とも密接な連携を行うことが望まれる。

 さらに、我が国において治験を推進するためには、患者の積極的な参画は不可欠であり、こうした患者に分かりやすい治験情報の提供を進め、患者や患者団体に対して治験参加への働きかけを進めていく必要があるとしています。

(6)革新的診断法・治療法等を創出する仕組みです。コンソーシアムの役割として、革新的医薬品等の開発を飛躍的に推進することである。情報管理センターがハブとなって、オープンかつフェアに、研究機関や企業等が研究活用できるよう、必要な機能について、3つ記載しております。その下には、新たな治療法ということで、まず革新的な治療法を開発するためには、新たな標的分子の探索が不可欠であるということです。既に医療に用いられている医薬品がターゲットとしているゲノム変異であっても、その変異には無数のパターンが存在することが知られており、こうした探索的検討を効果的に行うためには、全エクソームや全ゲノム解析を制度に位置付け、幅広く行うとともに、研究機関と中核病院との共同研究が活発化される具体的な仕組みを構築する必要がある。その下は前回も御議論いただきましたけれども、新鮮凍結検体の扱いなどについてです。

14ページの上段、また以下の部分では、こうした標的探索において、人工知能が必要であるということや、そのための人材とか、スーパーコンピュータ等の高度計算機器の基盤の整備の必要性について。14ページのまた以降、革新的治療法として、免疫チェックポイント阻害剤が有効である患者を投与前に判定することとか、遺伝子改変T細胞を移入する療法、腫瘍特異的抗原を標的とした免疫治療など、新しい免疫療法に係る研究開発についても、世界の状況を確認しながら戦略的に取り組むべきである。

 革新的診断法として、リキッドバイオピシーへの期待が高いとしています。ここでは低い侵襲により採取可能な血液等の検体を用いて、検体中に漏出するがん由来のDNA等を検査し、治療薬の選択に必要ながんゲノム変異の特徴を明らかにしたり、また侵襲が低い状態で定期的な検査に用いること。また将来的には健常者を対象とした検査により、がんの超早期診断の可能性などが期待されている。

 最後に、15ページの「コンソーシアムの運営体制」です。我が国にがんゲノム医療を普及させ、革新的医薬品等の開発を推進させるためには、関係者が理念を共有し、それぞれの機能や役割が全体として患者や国民の意向に沿ったものとなっているか否かを、自律的に確認し、改善させていくことが重要である。そのためには、がんゲノム情報の利活用に同意する患者・国民を中心として、がんゲノム医療のそれぞれの機能や役割を担う機関や患者団体等がコンソーシアムを形成し、それぞれの機能や役割を互いに確認し、関係する事業の進捗や財務状況等を公表・確認するとともに、厚生労働省や情報センターの運営主体等に対し、改善要望を含めた具体的な提案を行うことができる枠組みの構築を検討する必要がある。また患者・国民が安心して取組に参加するためには、ゲノム情報の取扱いにかかるセキュリティに関する規定や、その実効性確保の在り方について検討も合わせて行われることが望ましい、と記載しております。長くなりまして失礼いたしました。以上です。

○間野座長 どうもありがとうございます。広い範囲にわたって、いずれも極めて重要なテーマで、かつこれまで深い議論がなされてきたことがお分かりいただけたかと思います。本日は、この報告書案を土台にして、一連のテーマに沿って皆さんに個別に議論を深めていただきたいと思っております。今回も検討すべき論点が数多くありますので、項目ごとに皆様から御発言いただいて、それぞれ議論をまとめてまいりたいと思います。

 まず、最初の総論です。16ページの前半にかかる部分、具体的には「はじめに」から「がんゲノム医療とは」「制度的対応の必要性」「基本的な考え方」「がんゲノム医療に新たに必要となる機能や役割」という点について、いずれも総論に当たると思いますが、皆さんの御意見、御議論をお願いしたいと思います。では、いかがでしょうか。

○山口構成員 遺伝子パネルとかリキッドバイオプシーなどは、我々にも理解できます。一方、全ゲノム解析になってくると、臨床的にどのように有用なのかわかりにくいものになります。参考資料の図で示されている、3枚目の絵、スキーム、ちょっと分かりにくいと思います。要するに、どういうものが先進医療としてやられるべきか、どういうものが保険医療でやられるべきかという中で、遺伝子パネルなどは薬事承認をして保健診療を可とするという具合に流れていて、全ゲノムシークエンスは先進医療を活用してという話になっています。たしかに遺伝子パネルとか、リキッドバイオプシーは先進医療の中でやっても、ある程度研究的な要素が入ってもしようがないと思います。しかし、全ゲノムシークエンスまで、これを保険で面倒見るというのは、なかなか臨床家サイドとしては分かりにくいと思うので、その役割分担を少し明確にしていただきたいと思います。

○間野座長

 ありがとうございます。恐らくパネルのほうは実際にダイレクトに患者さんの治療介入というか、診断法決定に役立つ、薬の選択に役立つということで選ばれているのだと思います。日本も国民皆保険の下で遺伝子パネルを解析して、優れた薬が、それぞれの患者さんに届くことが重要ではありますけれども、と同時に、新しい薬や、新しい診断法を日本からも開発していきたいという、せっかくこのシステムのプラットホームを作るのですから、是非、そのように活用していきたいというような議論がこれまでにありました。

 例えば、全ゲノム解析、全エクソーム解析でもいいのですけれども、それは新しい原因遺伝子や、新しいバイオマーカーを探索するということをこのプラットホームに乗せようということの試みではないかというように、座長としては理解しています。ですから、これがすぐに国民皆保険に乗るということでは、また、少し距離があるのではないかと私も考えております。事務局、いかがですか。

○医療イノベーション企画官 いずれにしても、エビデンスというものが重要であるということではそのとおりだと思っております。その先進医療として、まず全ゲノム検査、これがすぐに保険診療になるということは難しいということは、この報告書案にも記載してあるかと思っておりますが、先進医療として必要なエビデンスが何なのかということは検討していく必要があるのではないかと認識しております。

○間野座長 山口構成員、どうぞ。

○山口構成員 私は、たまたま先進医療の会議に出ていますので、ちょっと誤解があるのではないかと思うので申し上げます。3ページの所に、「有効性・安全性等は確認できていないが保険導入を見据えた高度の医療技術等を用いた医療は、先進医療として保険診療との併用が認められている」と書いてあるのですが、これをちょっと読むと、全く安全性も有効性も担保されていないものでも、先進医療に入るのかというようにも解釈できます実際には安全性に関してはかなり厳しく検討されますし安全性が確認できないとこれはやはり認められないと思います。

 有効性に関しても、最近、急速にこういうような進歩してきたゲノムのようなものとか、やはり国民が期待するものではありますが、有効性をある程度データとして出していただかないと、なかなか先進医療会議としても検討しにくいということです。ここのところはフリーパスではないということだけ御理解いただければと思います。

○間野座長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますでしょうか。

○天野構成員 4ページの中段から下に、「上記の検査結果と」から始まる部分があります。この部分については、特に今回がんゲノム医療を推進するにあたって、患者さん、御家族の方々にとっては、御自身のがん治療に関係する新しい治療薬への期待というものは非常に大きいものがあるわけでして、未承認薬・適応外薬検討会議のスキームに乗せた上で、恐らく先駆け承認等に準じた承認をしていただけるものということで、一歩踏み込んだ記載をしていただいているものと思います。

 細かい点で恐縮ですが、この部分について、1点確認です。未承認薬・適応外薬検討会議は、現在、例えば関連学会とか、患者団体等から検討の要望が上がって検討をするスキームになっているかと思いますが、今回、この対象を選定するという主体は検討会議だということは分かりますが、その検討会議へ要望が上がっていくプロセスということをここに書いていただいているのですが、具体的に、誰がどこにどのように上げていくのかということが分かりづらいように感じました。もしよろしければ教えていただければということで質問いたします。

○間野座長 これは厚生労働省から、どなたかお願いします。

○医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長 医薬品審査管理課長です。未承認薬・適応外薬検討会議については御指摘のように、会議に乗せるものについては、基本的には関連の学会等で御検討いただいて、要望をいただいたものということになります。そこのところは今後の検討課題だと思いますが、学会を指定して、御検討いただくという方法もあるかもしれませんし、また、その場合に、患者団体等の御意見を伺うようなスキームも考えられるかもしれません。これはまた今後の検討課題だと思います。

○間野座長 今の件で、情報管理センター自体がレポジトリーを解析して、随時、必要な臨床試験等の提案を行うということも中に記載されていますので、ダイレクトな道筋というのも可能性としては十分考えられるのではないかと思います。ほかにいかがでしょうか。

○北川構成員 同じく4ページの、少し細かくなりますけれども、最後の○で、「さらに、希少がんなど製薬企業にとって適応拡大等の開発意欲が不十分な医薬品に対するインセンティブ付与を行う」と、このインセンティブ付与を行うという内容は、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。

○間野座長 厚生労働省にお答えいただくのでよろしいですか。

○北川構成員 薬価を高く設定するということではないのですか。

○間野座長 例えばシングルアームで、いわゆる第II相のような形でレポジトリーを使って治験をして、その結果、例えば奏効率がある程度以上高ければ早期に承認して、その代わりに承認後のフォローアップ調査を義務付けるとか、通常の薬の第I相、第II相、第III相という仕組みよりも、違ったやり方で承認するということは、希少がんの場合にはどうしても必要なのではないかと思います。そういうことに厚労省側も踏み込んでくれるのかもしれません。いかがですか。私の理解でよろしいでしょうか。

○医療イノベーション企画官 この点については、今、行政というか、厚労省内でどういう方法があるのかということを検討しております。すみません、検討中ということでよろしくお願いいたします。

○間野座長 ほかにいかがでしょうか。

○厚生労働省顧問 大きな問題ではないのですが、2ページの2段落目に書いてあるリアルワールドデータに対する考え方というか、定義のようになってしまいますが、がん登録情報や、電子カルテの情報のみがリアルワールドデータというように、当然そう思う方はいないと思いますが、そう思われてしまうとまずくて、かつ、多分、今回のゲノム情報を使うのは明らかなのですが、そのほかに何の情報と結び付けるかという相関分析、これは因果分析であれば別なのですが、相関分析なので、もっとほかの医療情報の余地を残す必要があると思っていますので、「がん登録情報や医療機関の電子カルテ等のリアルワールドデータとの」という言い方に変えていただいたほうがいいかと思います。

○間野座長 ありがとうございます。では、そのようにお願いします。ほかにいかがでしょうか。

○直江構成員 1点目は文章の整理だけなのですが、15ページに、上から2つ目に中国の状況が突然ここで出てくるのです。例えば、韓国や中国では随分進んでいるという文章のくだりが5ページの2段落目に、「積極的に新技術の取り込みを図る中国、韓国からも遅れを取っている」というところがありますので、この文章はもうちょっと前に回したほうがいいのではないかということです。

 私が1つ聞きたいのは、先ほどから出ている4ページの○の一番上です。「既存治療薬の選択(コンパニオン診断)だけでなく、広く治療に関わる医学的判断に資する」というこの文言と、それから、2行目の「必要に応じて先進医療の実施を経て」というところがありますし、その「新たな視点で科学的に評価する」という、うがった見方かもしれませんけれども、すごく言葉がちょっと漠然としているという感じです。多分、おっしゃっている意味は、11対応をするものではないと。つまり、コンパニオン診断のように11対応をするものではないということが、多分、広く治療に関わるということの意味だろうと思います。それはそれでいいのかということが1つと。

 それから、「必要に応じて先進医療の実施を経て」というのは、これは普通は検査は治験ということで進むと思いますが、治験ではない場合には先進医療の実施を経てと。これも一般論としてはそのとおりなので、この「必要に応じて先進医療の実施を経て」と、わざわざ書いているのはどのような意味なのかということ。それから「科学的に評価する」、これは、保険収載のときは科学的に評価するのは当たり前なのですが、その新たな視点でというのはどういうことを新たな視点というように言っているのか、この懇談会として確認したいと思います。

○間野座長 これは厚生労働省にお願いします。

○医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長 医療機器審査管理課長です。今の直江先生の御質問に関しては、実は、今のコンパニオン診断薬、先ほど間野先生からもお話がありました。この遺伝子変異がある場合にこの薬剤、こういう遺伝子変異がある患者さんにはこの薬剤が効果があるということで認めてやっているのが今のコンパニオン診断薬ですが、がんゲノム医療で、これまでいろいろ議論されているように、薬剤の選択のみならず、例えばいろいろな治療方針の選択に、今までいろいろながんのたくさんの研究がされてきて、がんの例えばこういう変異と、こういう治療方針とか、診断、予防の議論もあります。いろいろ研究が出てきております。こういったことをいろいろがんに関連する遺伝子の変異の情報と臨床的な判断等を、今のコンパニオン診断薬という薬剤選択という部分だけに着目するのではなく、広くがん診療にいろいろ関わるようなものを取り込んだものをパネル検査と理解しております。そういったいろいろな用途があるものについて、私どもでよく精査をさせていただいて、がん診療に寄与するものを作り上げていくというイメージです。

 そういう中では、基本的にはこの臨床意義に関しては、既にたくさんある研究の成果の論文をかなり活用していこうと思っておりますが、その中には、臨床意義を見るためには先進医療のような臨床研究データも付け加えてあったほうが判断しやすいという部分もあろうかと思います。たくさんがん関連遺伝子でも、100を超えるような遺伝子パネルということですので、その点については、必要に応じて先進医療や臨床研究のデータも積み重ねてそれで評価をしていくということが適切であろうということで、このような記載になっているという理解をしております。

○直江構成員 ありがとうございます。大変すばらしい案だと思います。

○間野座長 ほかにいかがでしょうか。では、次に進ませていただきます。それでは具体的な各論の議論になりますが、まず、6ページの(1)がんゲノム医療を提供する医療機関について、御意見、御議論をお願いいたします。いかがでしょうか。

○北川構成員 まず6ページの下の所で、非常に重要なところかと思います。がんゲノム医療中核拠点病院の要件という箇条書の項目がありますけれども、まず、2番目の医学的解釈可能な専門家集団との記載がありますが、これは何か特定の資格で定義するのかどうかという点ですが、いかがでしょうか。

○間野座長 いかがでしょうか。

○医療イノベーション企画官 私どもとしては、今の時点で具体案を持っているわけではありません。ここではこういった機能を有しているということをまずは必要なのか否かということを構成員の皆さんに御議論いただき、必要であれば、今後、別の場で具体的な議論を進める必要があると認識しております。

○北川構成員 それにちょっと関連しますけれども、例えば、要件マル7の「先進医療、国際共同治験も含めた医師主導治験等の実施について適切な体制を整えており、一定の実績」、こういったもの、例えば、臨床研究中核病院とか、あるいは、がん診療都道府県拠点病院、あるいは地域連携拠点病院等々の現在ある、様々な施設要件というものと直接関連しているものなのか、あるいは先ほどおっしゃったように、まだそこまでの具体化はされていないものなのか、そこはいかがでしょうか。

○医療イノベーション企画官 これからの議論かと思っております。

○間野座長 公的なゲノム医療は、我が国で初めて行われる試みでありますので、多分そこに必要とされる要件は、既存の拠点病院のシステムと同じでいいのか、あるいは、更に違うことが求められるのかということも、この懇談会が提言するべきかもしれません。

 例えば、パネル検査の結果を医学的に解釈する体制というのは、かなり広汎な人材を必要としています。もちろん臨床家は必要ですし、ゲノム解析の専門家・遺伝カウンセラーあるいは分子病理医のような方も必要でしょう。パネル検査の結果をエキスパートグループが解釈可能であるという実績というのも、もしかしたら要るのかもしれませんし、そういうこともこの懇談会の役割のような気がいたします。

○北川構成員 そうすると、もう少し細かい規定をこれから作っていくという、そういう理解でよろしいのですね。

○医療イノベーション企画官 これからその要件を策定すべきと考えますが、同時に7ページに記載させていただいているように、先ほどもお話が出ましたが、がん診療連携拠点病院を軸にがん診療を提供しておりまして、そこでの要件の中でどう位置付けていくかという議論が必要ではないのかということで、本懇談会では、病院の要件というか、全体の方向性、考え方をまずは1つの方向に合意をして、それぞれを今後明らかにしていくべき点がいろいろありますので、それぞれの枠組みの中でそこを進めていきたいと考えております。

○間野座長 ほかにいかがでしょうか。

○天野構成員 今の議論に関連してです。7ページの中段の部分で、「中核病院を、拠点病院の仕組みに位置付け、・・・段階的に、全ての都道府県でがんゲノム医療の提供が可能となることを目指す必要がある」という記述がありまして、具体的には、例えば指定される中核病院のおおよその数とか、スケジュールとか、既に一部の報道でもそういった数字が出ているようにも見受けられるのですが、具体的には「がん対策推進基本計画」が現在策定されていて、かつ、恐らく指定要件は、がん診療提供体制の在り方に関する検討会などで検討されていくことになるのかと拝察しますが、その辺りについて既に決まっていることがあれば教えていただければと思います。

○間野座長 事務局でお願いします。

○医療イノベーション企画官 決まっているとおっしゃられると、まだこれからその要件を定めていくということかと思っております。どのぐらいのイメージで体制を構築していくかということは、今、我々もその内部でいろいろなディスカッションを進めておりますが、以上ということで、よろしくお願いいたします。

○間野座長 山口構成員、どうぞ。

○山口構成員 今のところに関連するのですが、確かにがん診療連携拠点病院にくまなく行き渡るのは、最終的な目標だと思います。でも、67ページに書いてある要件を、これ、やれる病院はあるのでしょうか、実際に。これはかなりハードルが高くて、これを今、直ちに各都道府県にと言ってもなかなか難しいので、現実的には、先ほど北川先生のほうから出ましたけれども、臨床研究中核病院が、がんゲノムに関してそういう設備を整えなさいというところから始めないと、絵に描いた餅で、現実性が全然ないと思います。

○間野座長 実際には研究中核病院がやはり重要な候補になると思いますが、それ有りきという形のが要件ではないと思いますので、まずはゲノム医療を最初に日本で走らせる場所としてはどういう要件が必要かということから、やはりここでは書き込まれるべきかと思います。

○山口構成員 そういう意味では、ゲノム医療というのは、別にがんに限ったことではなくて、いろいろな遺伝子疾患が対象になります。がんの専門病院が、そういう遺伝病について非常に見識があるか、そういう体制が整っているかというと、全然ない所が多いと思います。むしろ、そういう意味では、今、選ばれている臨床研究中核病院といった所が、総合的に体制を整えて、そこで人材を整えて、がんの専門病院に伝えるというのは順序としては正しいと思います。

○間野座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

○加藤構成員 小さな点ですが、要件マル8の所で、患者さんたちにとって分かりやすい情報提供とか、窓口をきちんとという話ですけれども、全体として、今回、患者参画の話は入っているのですが、中央がデータ、患者さんとの関係をつくるのか。例えば、中央の拠点なのか、それとも都道府県で順番に広げていくときに、あるいは、もしかしたら今の中核病院のところがつくるのか、役割分担についての議論がなされていないように思います。

○間野座長 恐らくそこはまだ決まっていないことだと思います。ここで基本的な要件のようなものを定めた後に、具体的な、中核拠点病院と都道府県の病院との関係性とかは、次に議論されることかと考えますけれども、そういう理解でよろしいですか。

○医療イノベーション企画官 そのような理解ですけれども、要件マル8は、中核病院に求められるものとして必要ではないかという趣旨で、一応記載させていただいております。まずは、その中核病院という所が最初の段階で、がんゲノム医療を提供する機関と。段階的に、先ほど山口先生からの御指摘もありましたように、目指すところとしては、全ての都道府県で提供できるように目指してはどうかということを記載しております。

○間野座長 加藤構成員、どうぞ。

○加藤構成員 傾向としては、中央にどんどん情報が行って、しかし、患者さんは全国に住んでおられて、中央のウェブサイトを見てくださいという形になる傾向があるように思っているので、私たちが二次的所見の検討をしたときに、やはりすぐそばでいろいろと相談できる所と、本格的な専門の中央の所と両方要りますねという話をしたので、指摘させていただきました。

○間野座長 ありがとうございます。それも重要な指摘だと思いますので、是非、取り入れていただきたいと思います。

 私からすごく小さなことなのですが、今、要件マル7で、「先進医療、国際共同治験も含めた医師主導治験等の実施について適切な体制」という文言があるのですが、これだと医師主導治験を少し過重に書いたような書き方のような気がします。別に医師主導治験も、企業治験も等しく重要なことなので、例えば、「先進医療、医師主導治験、国際共同治験も含めた臨床試験・治験等の実施について」という書き方のほうが素直な気がいたしますので、御検討いただければと思います。ほかにいかがでしょうか。

○厚生労働省顧問 実行面で中核病院、実は電子カルテの在り方について、連携する所では特定の技術面でどのように連携するかということのイメージはまだ全くできておりません。ただ、必要だということはもちろん認識しています。その点を両面で正しく記載しておきたいと思うのは、現行の拠点病院等で使われている電子カルテのシステムのまま使えるかというと、セキュリティ面を含めてそのままは恐らく使えないと思っております。

 その場合に1つ気になるのは、いわゆるシステムの調達に関する話なのですけれども、いわゆる各病院の病院情報部門の方が、勝手に調達と言うと語弊がありますけれども、このことを目的としたのではなくて、各病院の目的で調達したものが、がんのゲノム用に使われるかというと、そこはちょっとハレーションが起きると思うのです。つまり、調達を含めて、私はデータヘルス本部におりますので、データ利活用はどちらかというとかなり強く推進したい側ではあります。そうとは言え、例えばカルテの情報を製薬会社に販売できるのではないかみたいな、ちょっとおかしな議論になるというか、当然何らかの規制がなければいけないような議論が出てきてしまうようなことは排除しなければいけないと思っています。

 その点において、例えばITに関しても、ちゃんとセキュリティの維持ができること、それから……の本部では、今後ことごとく入れていきたいと思っているのは、情報が漏れた際にどんなことが起きてしまうのかというリスクの評価をすると同時に、ちゃんと監査を受けてくださいと。監査対応はできませんというのを否定する方は多分いないと思うのですが、そういったITガバナンスに関する記載と同時に、当然この仕組みはがんゲノム治療全体のスキームと合わさっているので、費用対効果がこの面だけで費用がかかってしまうと大問題になりますから、費用対効果面を含めて検討していただくという、いわゆるITインフラに関わることの記載がちょっと抜けていると思いました。どんな文章かというのは、今後御相談いただければと思うのですが、こういうことは必要だと思って、念のためにお伝えしておきます。

○間野座長 重要な御指摘をありがとうございました。事務局で議論を深めてもらいたいと思います。他にいかがでしょうか。

○宮園構成員 中核病院とか、レポジトリーとか施設に関する記載が非常によくまとまっていると思うのです。人材育成に関して、バイオインフォマティシャンと、もう1つちょっとだけ書いてあるのですけれども、どういう人材育成が必要かということも整理して列挙しておいたほうがよろしいのではないかと思いました。

○間野座長 それも内部で検討してもらいたいと思います。他にはよろしいでしょうか。ないようでしたら次に移ります。次は、7ページの(2)がんゲノム医療情報の集約・管理・利活用推進機関について、御意見、御議論をお願いいたします。

○北川構成員 非常に大きい枠組みとして、がんゲノム情報レポジトリーを構築して、管理・運営する機関の、がんゲノム情報管理センターというものの位置付けが8ページの上のほうに、「国民の機微情報を永続的に取り扱うため、公的機関がその運営に当たる」と記載されています。一方で9ページの中段には、「従来にない規模のデータベースとなることを踏まえ、ハードウェア依存のシステム構造からソフトウェアベースで・・・民間事業者との委託契約等により」という記載もあります。

 この情報センターの規模と、恒常的運営というのがこのプロジェクトの大きな核になると思うのです。ここは、国費で公的機関として、経常的に運営されていくものなのか、あるいは、「創薬を目的とした企業からの投資」という言葉が出ていましたけれども、そういうもので自立的に運営していくことを目指しているのか。この大きな方向性についてお伺いします。

○間野座長 いかがでしょうか。これは研究者側と厚生労働省では違う意見かもしれませんけれども、まず厚生労働省の方からお願いします。

○医療イノベーション企画官 本報告書での記載の趣旨としては、責任の所在として、まず運営に当たるという意味で「公的機関が」ということです。一方で、その運営コストについては9ページの下のほうにあるように、この仕組みによって利益を受ける受益者の負担を求めていくことを記載しています。先生がおっしゃられたように、創薬とか革新的治療法の開発ということも重要なミッションでありますので、そこにおいて企業等から、運営に関しての支援というか、助けを受けられるということであれば、そうしたものも活用することも1つ考えられるのかと思います。

○北川構成員 少なくとも、これは立ち上げのときの初期投資というのはすごく莫大なものになるのではないかと想像いたします。これが軌道に乗って、いろいろなアウトカムが出てくれば、受益者負担でかなりメンテナンスできるのかと思います。当面は相当な機能をここに持たせなければ、なかなかこれが軌道に乗らないということを考えると、その初期投資は公的に行っていただけるのかというところをお伺いしたいと思います。

○間野座長 いかがでしょうか、「はい」と言ってもらいたいのですけれども。

○医療イノベーション企画官 おっしゃるとおりだと思っております。公的に頑張れるところはもちろん頑張りたいと思っております。具体的にこの議論の中でも、費用対効果ということが随所に出てまいりますので、無駄がないようにとは言え、必要なものを確保するということが、この懇談会でそういう方向性を一にしていただくことが、まずは出発点になるかと思っております。行政としてやるべきことはやらせていただきたいと考えております。

○間野座長 これは、本当に国家プロジェクトだと思います。もちろんこの事業が、いろいろな製薬会社とか、診断メーカーなどと連携して、ある意味共同研究の経費などを入れてもらうことも、今まで以上にやっていくべきだと思います。それでも、その根幹となる日本のがん患者さんの臨床情報、ゲノム情報を維持していくことに関しては、本当に国家プロジェクトになると思いますので、厚生労働省だけではなくて、日本政府として前向きに取り組んでもらいたいと私も考えます。

 先ほど、情報管理センターと、それからデータをクラウドに置くという話がありましたけれども、逆に情報管理センターそのものに患者さんの情報やゲノム情報を集めておくというのは、むしろ危険なことですので、安全のためにもどこに置いたかは、外からは分からないようなクラウドを使わざるを得ないような気がいたします。他にはいかがでしょうか。

○直江構成員 今の話ですけれども、これは国民全体の財産として、そのレポジトリーと言いますか、情報をセンターに一元化して、あるものはそれを利活用するための情報のデータベースとして、一部は多分公開になるということが後で書いてあります。一部については、これは企業との共同研究とか、新薬開発につなげるということなので、そのデータの公開については、これからいろいろ階層化されて、あるものは公開、もうちょっと深いところは企業との共同研究の中で公開されるということになってきます。どんどん下へ行けば行くほど、個人情報との関係とか、非常に倫理的な問題が出てくる可能性はあると思います。そこは、慎重にしていかなければいけないです。

 この情報センターが、「がんゲノムコンソーシアムのハブになる」という書き方もしてあって、そこが中心的に窓口にもなるということです。この情報センターというのは非常に大切で、しかもキーになっています。そこを管理すると言いますか、その運営する仕組みというのもないと、やはり全国民的な合意というのは絵に描いた餅になってしまう可能性もある。余り規制が厳しすぎると、全然動けないということもあるので、そこのバランスを取るための運営の仕組みというのが、まだ具体的にはなっていないと思います。これからの議論でとても大切なところではないか。

 一方ではその運営費の問題もあります。ここがどこの機関を意味しているのか分かりませんが、例えばナショナルセンター辺りが中心になったとすれば、この役割というか、重責はものすごく大きいのではないかと思って読ませていただきました。感想です。

○間野座長 実際にはまだ定まってはいないことだと思います。直江構成員のおっしゃることはもっともです。多大な要求がなされていて、これをうまくやっていくのは本当に難しいと思います。しかし一方で、国民の情報を預かる以上、何としてもやり遂げないといけないことだと思うのです。こういうデータベースが日本にあると、ある遺伝子変異に対する治験をしたいと言ったときに、日本だったらこのレポジトリーがあるから、その遺伝子変異がある人は1,384人いますということが分かるわけです。そんな国はこれまで世界にないわけですから、治験がやりやすい国家に日本がなるのではないかと期待しています。他にはいかがでしょうか。

○厚生労働省顧問 もう一点、今の話に付随して9ページの一番下にある、正にコストと受益者負担等の持続可能な仕組みというのはすごく重要で、これは徹底して維持する必要があると思うのです。途中でやめてしまうわけにはいかないと思います。現状、政府でやっているゲノム関係のプロジェクトも結構多数あります。予算面で言うと公的な公費である所と、独立行政法人の予算と、それから民間の予算が絡まってくるような、かつ、そこで受益者負担が発生するとなると、そういう枠組みづくりはすごく難しいと思うのです。

 少なくともここでは、まず運用していくことが望ましいという、ちょっと柔らかめの言葉よりもちょっと踏み込んで、まずそういう枠組みだけでも少なくとも構築を急ぐべきではないかみたいな、枠組みづくりがないと、これはビジネスモデルが成り立ちませんので、この辺りはもう少し強く書いていただくと同時に、このページの中の上にある、正にクラウドに関しては、諸外国どこもそうですけれども、これは政府系です。ゲノムに限らないですが、アメリカにもFISMAがあります。当然ですけれども、クラウドの認証制度がなければ、どのクラウドベンダーの所に置いてもいい話は当然ないですよという認証制度です。これは認定認証制度がなければいけないということも含めて記載していただいたほうがいいかと思っております。

○間野座長 事務局はよろしいですか。

○加藤構成員 関連してなのですけれども、今見ていたところの、「早急にデータフォーマット等のプロトタイピングを実施する」という、臨床情報も繋いでいかないといけないので簡単ではないと思います。ゲノムデータについても課題がいろいろあり、当然いろいろな所で議論されているのですけれども、特に臨床情報については、さらりとこのように「プロトタイピング」と書くようなことでは終わらないと思うのです。もうちょっと具体的アクションをしっかりとプッシュするように書けないかと思います。

○間野座長 今の臨床情報をどうやって集めるかということに関しても、可能だったらもう少し前向きに推進するような書き方を、事務局に御検討いただきたいと思います。他にはいかがでしょうか。よろしいようでしたら(3)に移ります。10ページの(3)質を確保された効率的なゲノム検査実施体制について、御意見、御議論をお願いいたします。

○加藤構成員 ちょっと分野外からですけれども、コストの話をいろいろな所に入れるという話があります。検査のコストについては、ここに何か書いてありましたか。私が個人的に聞いている話としては、オーストラリアで有名なエクソームシークエンスとこれまでの既存の検査を比べて、実はエクソームシークエンスのほうが安く、かつ診断の効率もよいという有名な論文があります。これは世界中の人が引用していて、結構意識されているのですが、そういったコストに関することを、ここに何か書かなくてもいいかどうか。

○間野座長 それは技術の進歩とも関係してきます。今30掛けぐらいの深度でよければ、全ゲノム解析とエクソーム解析というのはほとんど差がないというか、全ゲノム解析のほうがむしろ安くなっている時代です。どちらがより効率的かということは、余り明確に書かないほうが良いかもしれません。

○加藤構成員 それはどちらがではなくて、そういうことを実証的にやっていかないと、「大きくコストを意識する」と書くだけよりも、検査そのものと、それに付随するいろいろなプロセスのコスト計算がシビアにいるということです。

○間野座長 はい、分かりました。検査のコストに関して、その時点での最善の検査法を、コストを計算しながら決めていくというような形を、この中に文言として加えてはどうかと思います。

○加藤構成員 イギリスで、UKGTNという遺伝子検査のネットワークがあります。あそこは、検査所が検査を提案するようになっていると私は理解しています。その際に、必ずコストも含めたエビデンスを出して、それでNHS全体としてコスト削減に寄与すると分かった場合に、その検査が収載されるということみたいなのです。それに似たような検討が要るのではないか。

○間野座長 これまでのコンパニオン診断薬と、ここで提案されている遺伝子パネル検査というのが、果たしてどちらが本当に、医療経済学的にコストが低く済むのかということも、是非この事業内で検討していただければと考えます。他にはいかがでしょうか。

○山口構成員 10ページの(3)2つ目の○です。先ほどもちょっと触れましたけれども、全エクソーム解析や全ゲノム解析は先進医療に位置付けて、先進医療として継続的にやるというようなことが書かれていますけれども、これは極めて不適切だと思います。先進医療はゴールのあるもので、先進医療で評価できるものもあります。評価もなしにただ、ダラダラとやるものではないです。

 もう1つは、明らかにこれが患者さんにとって良い点は何かということが見通せないまま、やってみたら分かるよという形では到底評価はできません。やはり、これは研究として位置付けるべきだと思います。

○間野座長 既にパネル承認を目指しているということをプレスリリースしているものも何社かあります。そういうものを見ると、やはり遺伝子数はかなり限られています。例えば、あれをパネル承認されたからといって、既にもう薬の臨床試験が走っている薬に対応する遺伝子が全て網羅されているわけではないです。少なくとも今の時点では、先進医療で、全ゲノム解析やエクソーム解析をすることが、患者さんのメリットには十分なると思うのです。ただ、それが将来にわたって同じようなことが言えるかどうか、それは今の段階では分からないのではないかと考えます。

○山口構成員 適応というものは、この場合は問題になると思うのです。例えば、早期がんの患者さんに何かメリットはあるのかと。あることもあるかもしれません。でも、進行がんにもあるかもしれません。どういう範囲で、どういうメリットを提供できるのかということをある程度言うべきです。全国民を調べたらいいに決まっているのですけれども、余りに研究主体になってしまうと、これは中医協でもなかなか通りにくいのではないかと思うので、その辺りは関係者をここに是非入れて議論していただいたほうがいいと思います。

○間野座長 他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは今のところは終わりにいたします。次に、11ページの(4)がんゲノム知識データベースの構築について、御意見、御議論をお願いいたします。

○北川構成員 このCKDBも、先ほどの情報センターの機能、あるいはデータベースと並んで非常に重要かつ高度な機能を要求されていると思います。特に、関連する臨床情報を入力し、かつ11ページの下の段に書いてある「長期的かつ継続的に更新されるようにする」という仕組みが非常に重要です。欧米等では、学会を中心としたネットワークが構成され、患者さんがあるご自分の情報をアップデートしていくようなシステムができております。これを構築するのも、かなり難しい課題ではないかと思います。

 その点で、12ページには、「現時点においては学会等を中心とした基盤づくりの段階」と書かれています。これを主体的にどこが、どういう形で作っていくのかという構想について確認させていただきます。やはり、これは情報センターがやるということになりますか。

○間野座長 私の理解では、情報センターと各がん関連学会、医療情報関連学会、それから情報処理の専門の会社が一緒になって作っていって、やがてはその情報処理の会社にアウトソースして維持していく形になるのではないかと思っています。私の理解でよろしいでしょうか。

○北川構成員 これは、情報センターが中心になり、かつ、がん関連学会とか民間企業が協力して作っていくということですね。

○間野座長 やはり、諸外国で行われているものは、皆保険とカップルしているわけではないので、各それぞれの検査会社と保険会社がペアとして患者さんに医療を提供している。でも、日本は国民皆保険制度下にこれをやるわけです。例えば、いろいろなメーカーが、うちのほうがコストが安いCKDBですよというようにして、それを医療として提供したときに、その情報が不正確であったりしたときに問題になると思うのです。ですから、リファレンスとなるようなCKDB1個国内で作り上げる必要があるのではないかと考えます。

○北川構成員 オールジャパンで1つという発想でよろしいですか。

○間野座長 はい。もちろんそれがアウトソースした後は、いろいろな所が作ればいいのでしょうけれども、まず皆がリファレンスとするようなCKDBは国内に1個作るべきではないか。それが、海外のものをただ利用したらいいというのが望ましくないのは、そこに完全に依存してしまうと、値段の交渉になったときに、日本人の患者さんが不利益を被る可能性もありますので、やはり日本でそういうものを作り上げる必要があるのではないかと考えます。他にはいかがでしょうか。

○加藤構成員 ちょっと難しい話を2つ出して恐縮です。1つは北川先生がおっしゃったように、海外では、小さい保険単位だからこそできるのかもしれませんが、患者さんが自分でデータを入れたりしていると。私は日本でも最初からそれをやれと言っているわけではないのですが、一生懸命日本のものをきっちり作ったのだけれども、5年たったら世界は本当に至る所で開かれたデータベースだったということになると、ちょっと気になるのです。それとおそらく関連しているのが、患者さん本人が自分のデータを全体の中に位置付けたりして見られるようになる。例えば、自分と同じ病気の方の情報、それは集団としての情報だけですが、そんな情報が見られるようになる。何度も申し上げているように、そういうことが信頼関係の構築になったりするので、難しい話なのですけれどもどうかと思います。

 もう1つは、患者さんが海外からやってくる、海外へ帰っていく、日本の方が出ていく。海外からのアクセスもあり、早めに検討したほうがいいと思います。すみません、難しい話ばかりで。

○間野座長 確かにおっしゃるとおり、海外からのCKDBへのアクセスはどのような形であるかというのも重要なことだと思います。また、患者さんが自分の情報を見ることに関しては、それはどちらの方向でもまだ議論はされていないと思いますので、ここの中で議論を深めていただきたいと思います。他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(4)は終わって、12ページの(5)治験情報の集約と医師主導治験等の支援について、御意見、御議論をお願いいたします。

○天野構成員 12ページの真ん中から下の部分の記載で、「米国においては、医薬品等を用いた治験・臨床試験の情報の登録が法律により義務づけられている」という部分を受ける形で、「日本においても、臨床研究法の施行を契機に、更なる治験・臨床試験情報の一元的な公開に向けて検討する」というような記載を書いていただいています。この部分は重ねてお願いしてきたところで、多くの患者さんが是非その情報を分かりやすく入手したいと願っております。米国の「義務づけ」というような状況を準ずる形で、是非日本でもこの部分を進めていただきたい、ということを重ねてお願いいたします。

○間野座長 懇談会としても、そのことを強く訴えていきたいと思います。他にはいかがでしょうか。

○直江構成員 私の理解が間違っているかもしれませんが、今でもUMINとか、医師会とか、幾つかの中で、治験情報や試験情報というのは、検索することはできますよね。ただ、患者さんに聞きますと、結局どこの医療機関で受けられるのかとか、適応が自分にマッチするのかどうかという、もう少し微細な情報が知りたい。ただ、日本の中ではそれがまだ公開されていないので、ちょっとギャップがあるという、私の理解はそうだったのですが、これを見ますと「一元的な公開を検討する」ということになっていて、私の理解とは違うのですが、現状はどうなのでしょうか。

○間野座長 では、厚生労働省から。

○医政局研究開発振興課長 私は臨床研究法を所管しておりますので、今のお話は2段階あると思います。1つは、まず1次の情報がきちんと登録されるというところを、どう担保するかという話と、それを患者さんに分かりやすく伝えるという、この2段階の話があるかと思います。

 米国においては、登録が法律により義務付けられている。そのとおりでして、1次情報は必ず登録しなさいという形になっています。今回、臨床研究法が通りましたので、特定臨床研究というものに関しては、国に届け出る。そして始まるということになりますので、その情報については一元的に国に登録される。全ての情報が登録されることになりますので、それを一元的に集約できているということになります。それを、きちんと公開していこうというお話です。

 その後、患者さんにどう分かりやすくするかというところについては、もう1つ工夫の話があると思いますので、その2段階がありますので、そういう意味では国が取られる.govのほうは、いわゆる法律で義務付けられているし、更に患者さんにとって分かりやすいという視点で、それをちゃんと情報の提供というところで、正にいろいろな工夫がされているということですので、その2つの視点から検討していくということになるかと思います。

○間野座長 アメリカのClinicalTrial.govなどでも、やはりあれでも検索しにくいですよね。1,000を超える治験情報がありますし、それがどういう遺伝子変異の患者さんを対象にしているのかということで、そのタグで串刺し検索することも、やはりなかなか難しいです。せっかく日本で今回こういうものを作るのであれば、がん種とか、遺伝子情報とか、あるいは薬の耐性の有無とか、それを階層的な構造にして、そのフォーマットに全ての治験を登録するという形に、是非この機会ですから変えていただきたいと、個人的には思っています。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。もう1時間半たちましたので、それでは続きまして、13ページの(6)革新的診断法・治療法等を創出する仕組みの欄について、御質問、御議論をお願いします。

○北川構成員 (6)の最後の15ページの上段です。「情報センターは、リキッドバイオプシー開発における効率的な試験デザインの提案等を目指し」という、この辺のくだりがありますが、この研究をデータベースを用いて行うときの主体と言いますか、どの程度、一般にオープンにされるのか。あるいは、この研究センターが主体となってやるのか。この書きぶりですと、情報センターが研究を提案して、推進するような書きぶりに見えてしまうので、ちょっと私が持っていたイメージと違うかなと思ったのですが、この辺はいかがでしょうか。

○間野座長 いかがでしょうか、事務局。

○医療イノベーション企画官 あくまでも研究の主体は研究者・研究機関だと認識しています。記載ぶりによって誤解を生じかねない所があれば、修正したいと思います。

○北川構成員 分かりました。そうであれば特に異存はありませんが、ここを読むと、そのように読めてしまうので、少し書きぶりの修正が必要かなと思いました。

○間野座長 ありがとうございました。では、事務局のほうで誤解を生まないような書きぶりに変更してもらいたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

○杉山構成員 13ページの最初のほうに、「オープンかつフェアに研究機関や企業等が研究活動できるよう」ということがあるのですが、これは国内の企業や研究機関だけではなくて、海外の研究機関や企業も含んでいると考えてよろしいのでしょうか。

○間野座長 それはまだ議論が十分にされていないですが、恐らく海外の所も含まれているような議論になると思います。

○杉山構成員 先ほど12ページの(4)の一番上の所で、「将来的には民間企業により構築・運営されるべきもの」だという所も、それが国内の企業とは限らないという認識でよろしいのですか。

○間野座長 企業の選定に関しても、推進コンソーシアムが認定するという書きぶりになっていますので、国内か国外の企業かというのは、コンソーシアムが決めるのではないかというように、この文から理解します。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。恐らくここには患者さんの情報とか、ゲノム情報の膨大なデータが集まってきますので、新しい治療標的とか、バイオマーカーの探索研究に関しては、非常にやりやすい環境だと思いますので、それをいかにフェアに研究者、あるいは場合によっては企業に開示するかということは、十分に議論して開始する必要があると思います。ほかにいかがでしょうか。

○直江構成員 ちょっと話が戻るのですが、これから情報管理センターというのが中心になって、臨床情報、ゲノム情報を一元化に管理して、新しい創薬につなげていくということですが、データとしてスピードを持ってこういうことをやろうとすると、やはり重要なのは過去のデータをうまく使うことだと思うのです。

 今回の話から少しずれますが、そうしますと、つまりこれから集めて、患者さんがどういう薬でどのようになったかというのをこれから集めようとすると、結構時間がかかることですし、世界に伍してデータベースを作るのに、相当時間がかかると思うのです。

 ただ、過去にいろいろな研究されたものも含んで、そういうものを一元化して管理して、患者さんのアウトカムなどを付けて管理するということなのか。情報管理センターの話に戻って恐縮なのですが、その辺を事務局としては、現時点ではどのようなことを考えているのか、教えていただければと思います。

○間野座長 事務局、お願いします。

○医療イノベーション企画官 研究を推進するという意味では、御指摘いただいたように過去の情報も含めて、利活用していくことが重要だと認識しています。今回、医療を支え、医療を作っていくために必要なデータセンターという観点でまとめておりますので、将来の話ということになりますが、今後、これまでのデータとの連携とか、そういったことは患者さんの同意の取得の方法とか、いろいろな注意すべき観点があるかと思いますが、そういったものがクリアできた情報については、連携して使うことも視野に入れて考える必要があるのかなと、事務局としては考えています。

○直江構成員 そうすると、念頭に置いているのはあくまでも、これから前向きに患者さんが中核等にいらっしゃって、このゲノム医療を受けるというところからスタートすることが一応念頭に考えられているけれど、過去検体についてはケースバイケースという理解でいいですか。

○医療イノベーション企画官 そのような認識です。

○間野座長 過去検体は研究でされてきたデータになりますので、それを蓄えるところは、国内に既に幾つかありますから、むしろそことの連携を図ったほうが効率的ではないかと思います。情報管理センターは前向きの患者さんのゲノムや臨床情報が集まってきますので、むしろ切り分けたほうが、データのセキュリティの意味でもいいのではないかと、個人的には考えています。

○直江構成員 私が言いたかったのは、情報センターのデータと、CKDBですか、これは分けて考えたほうがいいのかなということを言いたかったのです。

○間野座長 おっしゃるとおりでCKDBというのは、中期的には企業にアウトソースしていく形になるのではないかと、この中では議論されています。

○北川構成員 前回の会議でも触れさせていただいた件ですが、13ページの中頃の「適正な手続を経た上で公平に情報アクセスを可能とする機能」ということで、恐らく非常に重要なトピックに関しては、同じような提案が様々な企業体から出されて、きっと重複してきますよね。そういった場合の整理をどのように行うかが問題となると思います。 もう1点は、データをどこまで生で提供するのか。ある程度、情報センターが委託されたデータを解析して、解析結果だけを返すのか、生データを提供する可能性があるのかについてはいかがでしょうか。○間野座長 それは本当にまだ決まっていないことだと思います。データの利活用はもちろん大事ですが、一方、患者さんの実際の治療情報などに関わってくることなので、それをどの程度そのまま出していいかということは、やはり十分注意深い議論が必要ではないかと思います。

 恐らく企業からすると、今の時代にあっては、単にゲノム情報だけではそれほど価値はなくて、それがどんながんか、どういう薬を使ったのか、その反応性はどうだったのかという情報がついていればかなり貴重なデータになると思います。セキュリティと有用性の一番いいバランスを見つけて、そこで提供していくしかないのではないかなと思います。今の段階では、そこまでの議論は多分定まっていないのではないかと、座長としては考えます。

○北川構成員 ナショナル・クリニカル・データベースの事例が参考になると思います。NCDにおいては幾つかの提案があった場合最も合理的な提案を採用して、、NCDの中で解析をして解析結果のみ出しています。フリーアクセスにして、自由に活用していただくのか、ある程度レギュレーションをかけるのかというのは、今後議論が必要かなと思います。

○間野座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○山口構成員 これは間野先生にお聞きしたいのですが、例えば検体を集めるとか、データベースを作るとか、ものすごい作業ですよね。しかも更新が加わるということで、1,000万人分のデータを取るのがいいのか、5,000万人がいいのか、あるいは病気別に何検体ずつ集めるのか、何かそういう目安というのはあるのでしょうか。集められるものは全部集めるというスタンスでしょうか。

 というのは効率が悪すぎて、1億件集めてもしょうがないものもあると思うのです。ですから、その辺りをもう少しスリムにするということはできないのでしょうか。

○間野座長 それは、もちろん懇談会の中で、どのような枠組みを作っていけばいいのかというのは議論することだと思います。これまでの議論では中核病院を作って、まずはそこでゲノム医療を推進していく。そうすると、新聞などで書かれているような7拠点とか10拠点という数字ですと、恐らく年間1万人に行かないぐらいのデータ数になると思いますので、それが何年か経た後に、もう少し大きくなるという形になっていきます。そこで集めたデータが本当に有効かどうかということを、医療経済学的にも見直して、それで次のステージに行くかどうかということを、議論することになるのではないかなと、今までの議論からは感じています。今の段階で1,000万人を解析するかとかということは、ちょっと決めかねるかなと思います。

 日本人のがんの新患の患者さんが年間で100万人ぐらいですから、もしそのうち23割がパネル解析をするとなると、年間2030万人ぐらいはパネル解析するというスケール感ではないかと思いますが、でも、実際に2030万人をパネル解析するキャパシティは、今の段階では日本にはないので、それをいかに混乱なく、ゲノム医療を根付かせていくかということのために、その段階的なゲノム医療体制を作っていくことになるのではないかと、今までの議論から理解しています。

○山口構成員 ありがとうございました。15ページの所に中国の例が出ていて、1,800万人分と書いてあったので、先生もこういうところを目指しているのかと思って、ちょっと質問しました。

○間野座長 これは私が書き込んだのではないので。

○宮野副座長 この情報は中国のチャイナ・オックスフォードセンター・フォー・バイオメディカル・リサーチという国のセンターがありまして、そこはスパコンから病院まで持っていて、全国の1万弱の病院から、トップダウンにカルテの情報、これを電子化して持ってくるということと、あと検体の情報というかサンプルそのものを集積するシステムが、実はオックスフォード大学の医学部と一緒に運営しているというものです。これが実際に2020年ぐらいまでには、この規模になると聞きました。今年が900万検体集まると言っていました。既に去年で600万検体と言っていました。

 システム自身は、東大医科研に液体窒素のタンクのシステムがありますが、あれと同じシステムです。もっと高度になっている可能性もあります。

○間野座長 いかがでしょうか。せっかく日本でこういうプラットホームを作るのであれば、先ほど宮野構成員がおっしゃったような、こういう諸外国の試みに、日本が伍して戦っていけるような、新しい診断薬や新しい治療薬開発の、世界でも有力な国になっていけるということを、患者さんにゲノム医療を提供すると同時に目指すことも、極めて重要ではないかと思います。

○加藤構成員 単純な質問ですが、有名な外科系学会のNCDは今、何万人ぐらいですか。

○北川構成員 今の蓄積データは年間170万件ぐらいでしょうか。専門医制度とリンクして急速に普及しましたので悉皆性は95%を超えています。例えば日本で行われている食道がんの手術のうち、95%以上は登録されているという状況まで来ています。

○加藤構成員 ありがとうございます。では、それは世界に伍して行けるものですね。

○北川構成員 その点は、やはりデータの精度が重要だと思います。例えば中国で年間900万人のデータが蓄積された場合、全て中国の解析結果で決まってしまうことになるのですが、やはり継続的なデータのアップデート、フォーアップデータの集積は中国ではできないことなので、日本において精度の高い臨床データを長期に蓄積していくデータベースを構築すべきでしょう。NCDもそういう方針で運営しています。

○間野座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。そろそろ時間も押してきましたので、最後のところで15ページ目、「コンソーシアムの運営体制」について、御意見、御議論をお願いします。

○宮園構成員 今日はこの報告書案には非常に重要なことが、どれも重要なのは間違いないのですが、書いてあります。そうしますと全体の運営を、目標の数値とかそのほかも含めまして、今後の運営方針をきちんと、リーダーシップを持って行うヘッドクオーターのようなものが必要だと思います。それはコンソーシアムに任せるか、あるいは別にヘッドクオーターのようなものを作って、そこで方針を決定していくことが必要だと思います。例えば全体のプロジェクトの進みが悪いときには、どこどこが非常に遅れていて、何らかのアドバイスをするとか、そういった組織を別に置いておいたほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○間野座長 事務局、御対応いただけますか。

○医療イノベーション企画官 現時点では15ページに運営体制として書かせていただいている、これまでの御議論を踏まえて、このような記載をさせていただいております。

 ここでは、国民・患者の皆さんも含めた関係者がコンソーシアムを形成して、進捗管理でありますとか改善点について検討していくということですが、今、宮園先生から御指摘があったような点を入れるべきなのか否かという辺りは、御議論いただければ有り難いと考えています。

○間野座長 実際問題、コンソーシアムというのが出来上がっても、そこを実際に運用するためには、その中にコンソーシアムの協議会とか運営協議会、ヘッドクオーターとかいう形のものは置かざるを得ないのではないかなと思います。これだけ大きな事業体ですので、実際に推進する体制はつくらざるを得ないのではないかなと思います。ほかにいかがでしょうか。

○加藤構成員 今の点について抽象的なのですが、やはりトップというか、中央での様々な意思決定と、ボトムというか各関係、やがて拠点が広くなってきますから、そういう所とよりよい連携というか、要るということは何か書いておいたほうがいいのではないか。

 どうしても日本の場合は国が大きいので、数が大きくなるとなかなかうまくキャッチボールができないというように、私はいろいろな分野を見ていて思いますので、一言申し上げました。

○間野座長 今の加藤構成員の御指摘は極めて重要で、特にこういう事業においては、中央と地域の拠点との連携が極めて重要になりますので、そのことをむしろ書かれていたほうがいいかもしれません。ほかにいかがでしょうか。

○厚生労働省顧問 運営体制なのでITだけではないのですが、恐らく結構リーダーシップを取ってヘッドクオーターが出来たとしても、かなりやるぞと言わなければいけなくなるはず。私がもしここにいたら、絶対にそう言うと思うのです。

 ただ、この報告書の中には、今は全くブレーキがない。なので、やはり最低でも統制レベル、何らかのガバナンスに関する記載は、我々、私自身もそうですが、自戒の念を込めて、簡単にでもここに記載しておかないと、とりあえずどんどんやるぞという感覚であっていいとは思うのですが、今のところ、例えば監査であるとか統制を1つ取っても、このコンソーシアムが自分が知らない間に間違った方向に向かっていても、全くブレーキが効かなくなるので、それは別途、例えば統制に係る委員会が整備されるであるとか、そういうことはどこかに記載したほうがいいのではないかなと思います。

○間野座長 ありがとうございます。是非その点についても、事務局で文言を考えていただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

○加藤構成員 別の点です。2つ目のパラグラフで、患者・国民を中心としてコンソーシアムを作る。それから最後のほうに、運営主体等に対して、改善要望を含めた具体的な提案を行うことができるという、これは患者さんも含めてのことだと思うのですが、ここの所は非常に重要で、単なる情報発信ではなく、ローカルなフォーラムとか、大変なのだけれども、大きな会場でシンポジウムをやるだけではなくて、国民と小さいスケールで対話するようなことを、いろいろな街を回るとか、それぞれがやるとか、拠点がやるとか、ちょっと工夫があったほうがいいのではないかと思います。

 そこから改善や様々な意見を吸い上げる。そして、それがやがて全体のガバナンスにも反映されていくという、大型のプロジェクトでそうしたガバナンスがうまくいかなくて、いろいろ反省すべきという事例は過去10年、20年にあると思うのです。

○間野座長 ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいですか、ありがとうございました。今年の3月から、このがんゲノム医療推進コンソーシアムの懇談会において、大変活発な議論を行っていただきました。非常に有意義でありましたし、かつ、貴重な議論が深まったと思います。

 この報告書は少し文言を、今日の御議論を基に直させていただいて、厚生労働大臣に報告する形になります。最終的な報告書の案については、座長に一任いただければ有り難く存じます。もちろんその前に、皆様にはお目通しいただきます。では、報告書は私に一任いただいたとして、決まりましたら大臣に報告したいと思います。

 このがんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会の議論が、一刻も早く全国にがんゲノム医療を届けるための、大きな力になるものと確信しています。報告書案も、志の高い報告書ではなかったかと、一緒に作った者として思います。座長として、構成員や参加員の皆様に厚く御礼申し上げます。

 それでは、本日の懇談会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

健康局がん・疾病対策課

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