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2017年5月29日 第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録

健康局健康課予防接種室

○日時

平成29年5月29日(月)14:00~


○場所

厚生労働省省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○事務局 定刻になりました。ただいまより、第15回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」を開催いたします。

 本日は御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。

 本日の議事は公開でございますけれども、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。

 また、傍聴の方は、傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告を申し上げます。

 本日は、委員10名のうち、伊藤委員、加藤委員、釜萢委員、川西委員、坂元委員、細矢委員、森委員、山口委員の8名に御出席をいただいております。

 また、野口委員、福島委員からは御欠席の旨の御連絡をいただいております。

 現時点で、厚生科学審議会の規定により定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告いたします。

 また、本日は2つの団体から参考人をお呼びしておりますので御紹介いたします。

 米国研究製薬工業協会より、米国研究製薬工業協会ワクチン委員会委員長の櫻井亮太参考人でございます。

 同じく、米国研究製薬工業協会ワクチン委員会委員長のマイケル・マレット参考人でございます。

 欧州製薬団体連合会より、H+B有限会社国際ワクチンコンサルタントのウグ・ボガーツ参考人でございます。

 ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ教授のフレット・ツェップ参考人でございます。

 欧州製薬団体連合会バイオロジクス委員会ワクチン部会部会長の本田淳参考人でございます。

 冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

 それでは、議事に先立ちまして、配付資料の確認をさせていただきます。

 議事次第、配付資料一覧、委員名簿、参考人名簿、資料1から資料3-3、そして、参考資料を御用意しております。

 本日の議題は、前回第14回の部会と同じく「予防接種に関する基本的な計画に基づくPDCAサイクルに関する業界団体からのヒアリングについて」ということでございまして、前回も御用意いたしました「予防接種に関する基本的な計画における記載内容及びこれまでの取り組み状況」を資料1として御用意しております。

 また、資料2及び資料3は業界団体から提出いただいた資料となっておりまして、さらに参考資料の1と2も御用意してございます。

 配付資料一覧と照らしまして不足しております資料がございましたら、事務局におっしゃっていただければと思います。

 次に、審議参加に関する御報告を申し上げます。

 本日の議事内容において個別に調査審議される品目はございませんので、本日の議事への不参加委員はございません。

 それでは、ここからは伊藤部会長に議事進行をお願いいたします。

○伊藤部会長 皆さん、ありがとうございます。

 早速、議事に入りたいと思います。

 本日は、2件の議題がございます。

 議題(1)が「予防接種に関する基本的な計画に基づくPDCAサイクルに関する業界団体からのヒアリング」ですが、これは前回に引き続きまして、きょうも国内にワクチンを供給している海外企業の関係団体2つにおいでいただきまして、お話を伺うことになっております。

 まずは、米国研究製薬工業協会、PhRMAという名称で皆さんは承知されていると思いますが、その取り組みについて御説明いただきたいと思います。

 それでは、PhRMAの方から説明をお願いいたします。一応10分程度ということで御説明いただくことになっております。どうぞよろしくお願いいたします。

○櫻井参考人 ありがとうございます。私は米国研究製薬工業協会ワクチン委員会の共同委員長を務めさせていただいております、櫻井と申します。本日は貴重なお時間をありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、前半は私のほうから、プレゼンテーションを御用意させていただいたものに従いまして、米国、PhRMAの取り組みについて御説明させていただきたいと存じます。

 まず、2ページ目に本日の内容を5点挙げさせていただいておりますので、これに沿ってお話をさせていただきたいと存じます。

 まず、簡単にPhRMAについて申し上げさせていただきたいと思います。

PhRMAは、米国で事業を行っている主要な研究開発志向型製薬企業とバイオテクノロジーの企業を代表する団体でございまして、米国では1958年、日本では1987年より活動を行わせていただいております。

 我々は、加盟企業によって革新的な医薬品、ワクチンを速やかにお届けできるよう、また、その環境や施策の変革を推進するような活動を目標として活動をさせていただいております。

PhRMAには幾つかの小委員会がございますけれども、その一つとしてワクチン委員会がございます。ワクチン委員会のメンバーとして、米国メルクの子会社のMSD株式会社、サノフィ株式会社、ファイザー株式会社、ヤンセンファーマ株式会社の4社でワクチン委員会の活動をさせていただいております。

 続きまして、PhRMAの日本における予防接種に関する基本計画への取り組みについて、簡単に触れさせていただきたいと思います。

 4ページ目、こちらにお示しさせていただいているのが、今、日本で使用可能なワクチンで定期接種のワクチン、任意接種のワクチン、そして現在日本で開発中のワクチンをリスト化させていただいております。カラーの資料をお持ちの方であれば、このうちの赤字で書かれたものが、現在PhRMAの加盟企業によって日本でワクチンとして提供させていただいているワクチンでございます。

 申し上げさせていただきますと、定期接種ワクチンでいえばHibワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、4種混合ワクチン、HPVワクチン、成人用の肺炎球菌ワクチン。任意接種ワクチンで申し上げますと、ロタウイルスワクチン、髄膜炎菌ワクチン、黄熱病ワクチン。これらが現在、PhRMAの加盟企業によって日本で提供されているワクチンでございます。

 また、日本においても、我々PhRMAの加盟メンバーによって新しいワクチンの開発が進んでおりまして、右にお示しさせていただいたものが、現在日本で公になっている開発中のワクチンでございますけれども、これ以外にも現在グローバルで開発しているものを今後日本で開発する計画もそれぞれの企業でもって展開をさせていただいております。

 5ページ目、もちろん製品の供給だけではなくて、我々は予防接種の啓発活動も継続して行わせていただいております。例えば、きょうはお手元にはお持ちしていないのですが、『ワクチンの価値』もしくは『ワクチンファクトブック』といった冊子を御用意させていただいて、予防接種にかかわるステークホルダーの皆さんに状況提供をして、そもそもワクチンとは何か、どんな疾患が予防できて、どんなワクチンが今、提供されていて、各国の制度がどうなっているのかということを御紹介する活動もさせていただいております。

 また、日本の予防接種制度もしくは政策に関するステークホルダーの意見交換の場を提供することも我々の仕事の一つだと思っておりまして、例えば、昨年はPhRMAと米国商工会議所の合同でVaccine Dayイベントというのを開催いたしまして、日本がワクチンのリーディングカントリーになるためにどんなことを取り組むべきかといったシンポジウムもさせていただいたり、日米の政策当局の間での意見交換が実現するようなプログラムを支援させていただく活動もしております。

 6ページ目、これまでの日本における予防接種に関する基本計画の進捗について、PhRMAの観点から成果と今後の課題について簡単にまとめさせていただいておりますので、御紹介させていただきたいと思います。

 最大の成果は、この3年もしくは4年の間に新しく6つのワクチンが日本で定期接種化されたことだと考えております。肺炎球菌ワクチン、Hib感染症ワクチン、HPVワクチン、水痘ワクチン、高齢者の肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、この6つのワクチンの定期接種が導入されることによりまして、いわゆるワクチンギャップと呼ばれていたもののワクチンの種類に関しては、大きく海外との差が縮まったのではないかと考えております。

 また、ワクチンの定期接種化の審議のプロセスに関しましても、2015年5月になりますが、具体的な審議のプロセスが明確化されました。この間に承認された、右側の表に8つのワクチンがございますけれども、承認からほどなく定期接種化の議論が始まっているということは、今後新しいワクチンが導入されるに当たって、定期接種化の道筋というのが示されているものだと考えており、非常にPhRMAとしても高く評価させていただいているところでございます。

 一方で、こうした進展の中でも今後の予防接種行政の課題について、何点か提言、もしくは今後の取り組みのお話をさせていただきたいと存じます。

 1つは、定期接種化の審議の透明性、それから今後の予見性の確保という観点でございます。こちらの表に示させていただいておりますのが、米国と日本において、ワクチンが承認されてから定期接種化されるまでの期間を比較したものでございます。もちろんそれぞれ事情は違うものの、ここに書かせていただいておりますロタウイルスワクチン、成人用の肺炎球菌結合型ワクチン、帯状疱疹ワクチンにつきまして、それぞれ早いもので2011年、2014年、2016年に承認をされておりますけれども、現在もそれぞれ定期接種化の議論が継続中でございます。

 一方で、米国のほうを見ていただきますと、例えばロタウイルスワクチンで申し上げますと、最初に5価のワクチンが承認されたのが2006年2月でございますけれども、定期接種化の議論はそれに先だって200412月からスタートをし、定期接種化は承認間もなく半年後の2006年8月に実現をしております。

 同様に、成人用の肺炎球菌ワクチンも承認に先立って議論が開始され、先生方も御存じのとおり、従来型の莢膜型のワクチンとの使い分けというものがありましたので、定期接種化は2014年9月になっておりますけれども、議論は承認前からスタートしていたという状況がございます。

 帯状疱疹ワクチンも同様でございまして、世界で初めてワクチンが承認されたのが、米国で2006年5月。それに先駆けて定期接種化の議論が行われ、承認前にACIPのワーキンググループが構成されまして集中的な議論が行われて、定期接種化自体は2008年6月ですけれども、ACIPからの定期接種化の推奨というのは、200610月には既にファイナルリコメンデーションが出されているという状況でございます。

 このように、米国においては、ワクチンの導入、実用化と公衆衛生の観点からは定期接種化というのが一連の中で議論がされまして、非常に集中的に迅速に議論をされて、定期接種化まで実現をしております。こういった点は、今後日本の予防接種制度を運用していくに当たって、検討する課題の一つではないかと考えております。

 続きまして8ページ目、日本において新しいワクチンを開発するに当たってのさまざまな問題、課題というのが出てきていると考えております。例えば、日本と諸外国において、品質試験の規格の違いもしくは品質試験の規格項目の基準値の違いというものがございまして、こういった基準の違いがあることによって、日本向けのワクチンだけ特別な試験をやらなければいけない、もしくは日本向けの製剤をつくらなければいけないといった状況が、実は輸入ワクチンの多くのワクチンでございます。

 また、感染症予防ワクチンの臨床試験のガイドラインであるとか非臨床試験のガイドラインについても、海外と日本では大きな違いが幾つかございまして、例えば治療薬であればICHのガイドラインが適用されまして、国際同時治験というのが非常にやりやすい環境になっておりますけれども、残念ながらまだワクチンはICHの対象になっていないということもございまして、さまざまな基準の違いをクリアしながら日本での開発を進め、また供給体制を整えるという非常に困難な問題が残っており、今後新しいワクチンを日本に導入するに当たっても、こうした問題というのは課題になってくるであろうと考えております。

 続きまして9ページ目、こちらは供給に関連する部分でございます。先ほど前ページで触れましたとおり、品質基準の違い等によって日本に製品を輸入もしくは導入するに当たって、供給のためのリードタイムというのが、諸外国に供給するものより多くかかる状況がございます。

 左側に、PhRMAの加盟企業が扱っているワクチンのリードタイムの違いをお示しさせていただいております。ここにお示しさせていただいておりますとおり、ワクチンによっては3カ月、物によっては6カ月、海外で生産して日本に導入するために、多くの時間をかけて日本に導入する必要というのがございます。これは検定もしくは試験方法の違いといったものが、海外で生産したものを日本に導入するに当たって、追加的な時間を要する理由になっております。

 ここには記載しておりませんけれども、先ほども少し触れさせていただいたとおり、もともと品質基準が違うことによって、日本向けの製剤だけが違うというケースも実は多く散見されまして、そのために例えば日本で急に需要がふえて日本に導入するケースでも、日本向けの製剤をつくるところから計算すると、場合によっては12カ月、もしくは18カ月くらいの生産のリードタイムが必要になるという状況が、現状の品質基準等の違いによってあらわれてきております。

 また、米国においては、国家の備蓄制度というものが整備されております。備蓄制度自体は1980年代後半に始まっておりますけれども、1990年代後半、2000年代前半で米国でも起こったさまざまなワクチンの供給問題から、そのプログラムが拡充をされまして、現在では小児ワクチンもしくは思春期ワクチンで、6カ月程度の備蓄在庫を設けるプログラムが設けられて運用されている実態がございます。もちろん、供給に関しては企業努力の部分がございますけれども、不測の事態に備えてこうした国家の対応をしているというのが米国の現状でございまして、昨今、日本でもこのような供給問題が起こっている中で、備蓄の必要性もしくはそのプログラムのありようについて、オープンに議論される場があってもよいのではないかと考えております。

 最後にPhRMAから触れさせていただきたい点としまして、現在の日本の予防接種制度においては、公衆衛生のために必要なワクチンを広く提供するというのが理念になっているかと思いますけれども、やはり公衆衛生の観点で申し上げますと、一定の高リスクグループもしくは一定の集団に対するワクチンを推奨するといったことも今後検討すべき課題の一つではないかと考えております。

 例えば、免疫不全の方、腎疾患を持たれている方、特に高リスクの方に対してワクチン接種を積極的に勧めていくということが、欧米、特に米国を中心に積極的に行われているところでございますので、現在の予防接種制度の枠内なのか外なのかという議論は別といたしましても、今後公衆衛生の観点からは、こういった高リスクグループに対する予防接種の必要性ということも検討していく必要があるのではないかと考えております。

 最後にまとめでございますが、4点、課題としてPhRMAから御提言をさせていただきたいと考えております。

 1つは、先ほど申し上げた定期接種化の議論はスタートしておりますけれども、今後透明性、予見性について、いかに確保していくかということが日本の予防接種制度の課題の一つでないかと考えております。

 また、ワクチンの開発を促進するために規制、品質基準の国際的な調和化を進めるフレームワークも必要だろうと考えてございます。

 安定供給のために品質基準の調和化、場合によって国家の備蓄制度の導入に向けた議論の場を設けていくことはできないかと考えております。

 最後に、高リスクグループに対して積極的に予防接種を勧めていくための仕組みの検討も今後の課題として上がってくると考えております。

 いずれにいたしましても、米国であればCDCACIPのワーキンググループが行われているとおり、政府、専門家、産業団体、その他の多くのステークホルダーの緊密なコミュニケーションと連携によって、公衆衛生という共通の理念を目標とした議論をする場というものが、今後さらに求められていくのではないかと考えております。

 以上、PhRMAからの現在の日本の定期予防接種制度の成果と今後の課題について、意見を申し上げさせていただきました。

 御清聴ありがとうございます。

○伊藤部会長 ありがとうございました。

 いろいろと盛り上がりそうなテーマをいただきまして、ありがとうございます。

 まずは委員の先生方から御質問ございますでしょうか。

○細矢委員 2点質問があるのですけれども、1つは定期接種化の予見性ということについて、米国では承認前に定期接種化審議が開始されているという話で、これは非常にいいことだとは思ったのですが、実際に定期接種化されたのは審議開始から2年ないし3年くらいかかっているのではないかと思うのです。早く始めている割合には、承認されてからの期間を見ても、それほど短くなっていないように思うのです。何かそれは原因があるのか、もっと早くできる可能性があるのかどうかという点が第1点です。

 では、こちらからお願いいたします。

○マレット参考人 御質問ありがとうございました。

 ワクチンは非常に複雑なものですので、審査を行うには大変時間がかかるということは御承知のとおりであります。健康な小さな子供たちに対してワクチンを接種するわけですから、そのための審査には非常に時間がかかるということは、これも御承知のとおりであります。このような審議につきましては、日本においても現在よりもずっと早い時期から始められると考えております。理由は2つございます。

 まず、理由の1点目といたしましては、これらのワクチンにつきましては既にほかの国で導入されているということから、非常に多くの情報が既に存在いたします。安全性につきましても、疫学についても非常に多くのデータが既に存在いたしますし、また製造プロセスにつきましても、さまざまな情報が既に科学データとして非常に多く存在しています。

 日本におきましてはワクチンの安全性、そして、正しくつくられているかどうかの確認というのが非常に重要であるということも承知しておりますので、そのタイミングにつきましての重要性は私どもも認識しておりますけれども、現在の承認されてからの審議というよりはずっと早くから審議が開始できるのではないかと考えております。

 最後に製造の点でありますけれども、ワクチンを日本の市場のためにつくる際には、そのほとんどが日本専用のワクチンを開発しておりまして、これは海外で使うことはありません。そのために、製造ラインも別につくらなければならないということで、これが何千万ドルも余分の費用がかかるという状況があります。また、GMPの設定に関しましても時間がかかりますので、ワクチンができていても実際に定期接種化されるまでに何年もの間、冬眠状態、休眠状態にあるということもあります。

 以上が私どもの考えていることであります。

○伊藤部会長 よろしいですか。

 私どももやはり定期接種化は大事だと思ってはいるのですけれども、一番ひっかかっているのはHPVワクチンの定期接種の件です。定期接種後、日本だけ独特の副反応が問題化していて、これは製造、販売前には予測ができないような代物だったと思っています。一方で、ある一つの意見だろうとは思いますけれども、定期接種までの期間が早過ぎて、注意しなかったのではないかという意見もあったと思うのです。そういうのが一つあると、次からはやはり慎重に考えざるを得ない。だから、ガイドラインも含めてでしょうけれども、ある程度スピードも考えていかないといけないと思う反面、定期接種化を急ぐ、急がせるという話をされるのであれば、例えば今回のHPVワクチンに関してどういうように理解すると製薬業界では考えているのか、教えていただけますでしょうか。

○櫻井参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、今回HPVワクチンで起こった有害事象のケースが、そもそも日本特有であったかどうかという議論があると思うのですけれども、今、日本で起こっていること自体は非常に特有なことであろうかと思います。海外でもワクチンに対する反対の声というのは非常に強くて、思春期の女性の方に打つワクチンですので、接種後に生じた有害事象という意味では、海外でも同様のことが起こっているとお考えいただいてもいいと思います。

 大きく違いがあるとすれば、海外はサーベイランスの仕組みがしっかりしておりますので、ワクチン接種群もしくは非接種群との間での有害事象の発症の頻度というのを的確に、タイムリーに情報収集をして、それに対して対応をとる。もしくは、関係団体で声明を出すということが、比較的スムーズに行われている状況があるのではないかと思います。

 逆の例は、先生方も御存じのとおり、ロタウイルスワクチンの第一世代のものはロタシールドというワクチンがあって、当初、導入されてすぐ定期接種化されましたけれども、腸重積のリスクが高まるというサーベイランスの結果が出ましたので、定期接種化がすぐやめられて、その後新しいロタウイルスワクチンが開発されるまで、ロタウイルスワクチンは定期接種にならなかったということもございますので、一つ検討すべきことがあるとすれば、日本の制度の中でどういった形でやるかは非常に課題だと思いますけれども、サーベイランスの仕組みをしっかり整えていくということは、検討すべき課題の一つかなと思います。

○伊藤部会長 山口先生、どうぞ。

○山口委員 2点ほど伺わせてください。

 1つはスペシックグループに対するワクチネーションの話をされたかと思うのですけれども、例えば臓器移植なんかでは、移植後、免疫抑制になって感染症を非常に引き起こしやすいということがあるかと思うのですが、もう一つこういう場合に課題になるのが、対象患者の数というか、どれだけの数の人があったときに、PhRMAとしては開発を進めるのかなど、その辺のストラテジーについてお伺いしたいという話です。

 もう一点は、要望として国際ハーモナイゼーションの話が出てきたかと思うのですけれども、幾つかは例えばFDAのガイドラインや日本のガイドラインの違いでしょうが、もう一つは、品質なんかだとUSPの基準とか、そういう各国間の話と、もう一つはWHOがやるような提言でしょうが、どういうような形でPhRMAは取り組めばいいと考えているのか。ハーモナイゼーションをやっていくには、どういうようにやっていけばいいのかと考えておられるのかを教えていただければと思います。

○マレット参考人 ありがとうございました。

 よろしければ、2番目の質問に最初に答えさせていただきます。まず、この規制の基準の観点からですけれども、日本においてできることは多くあると思います。まずは、品質の一貫性を確保すること。また、供給の面でワクチンを国に受けられるようにするということです。

 幾つか具体的な例をお話しします。まず、5価ワクチン、6価ワクチンと多価が入ったワクチンでありますけれども、まだ日本においては開発されていません。その理由は幾つかありますけれども、中でも大きなものがありまして、まず1つ、非常に単純な理由としましては、ジフテリアの毒素についてのレベルがほかの国と違うということで進んでおりません。もちろんこれが違うということについては理由はありますけれども、その議論が進んでいないということから、この15年、20年と使われていないという状況が発生しております。

 それから、ワクチンの供給の状況についてでありますけれども、PhRMAの加盟企業あるいはEFPIAの加盟企業はいずれも供給の問題について直面をしてまいりました。一つの状況といたしましては、全く同じワクチンでありますけれども、ほかの国で使われているものを日本に持ってくることができないということで、これは製造ラインを日本専用に分けて、日本の基準に合わせたものをつくらなければならないからというところにあります。

 特に具体的な例を申し上げますと、今、フランスから日本に輸入しているあるワクチン製品がありますけれども、これは製造ラインの中で、全く同じワクチンをつくっているものではありますが、ラインを完全に分けて製造しなければなりません。そして、日本向けの製品は、出荷するに当たって60人が視覚的な製品の検査を行った上で、日本に向けて出荷を行います。また、日本に入ってきてからも別に60人の人間がいて、これを再び目視で検査をして、その上で工場からお客様へお出しするという形になっています。

 こういった状況につきましては、私ども企業と政府との間で話し合いを行って、妥当な解決策を見出すことができるのではないかと。質の基準は維持しながらも、効率をもっと上げることができるような方策が見つかるのではないかと考えております。

 それから、特別なニーズがあるグループに対してのワクチンの推奨といった話についてでありますけれども、もちろん私ども企業といたしましても、日本の市場に合わせたワクチンの製品、必要であるものをつくっていくという用意はございます。ただ、私どもがプレゼンテーションの中で皆様に申し上げたかったのは、定期接種に入っているワクチンの中で、さらによい役割を果たすことができるものであるのではないかと考えました。特に髄膜炎ですとか旅行者に対するワクチンの接種ですけれども、もちろんこれは大規模に接種が行われているものではありますが、同時に、特殊なグループに対してもよいといったものではないかと考えております。

 日本で定期接種に入っていて、その対象となる人たちにとってはアクセスがありますけれども、高齢者の方であっても、例えば手術を受ける、免疫が低下するといった場合には、ワクチンがとても有用ではないかと考えられるけれども、この人たちは自分から支払いをしなければ、そういった接種を受けることができないといった場合につきましても、議論ができるのではないかと考えました。

○伊藤部会長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 定期接種化の予見性という御提案をいただいたのですが、確かに定期接種化の見通しが立てば、市場的には非常に安定するから、ワクチンメーカーとしても開発しやすいというのはよくわかります。これは、以前にこの会でも同じ意見が出たかと思うのです。

 そこでお聞きしたいのですが、実際に日本では定期接種化されると、予防接種の種類はAとBの2種類あって、Aは基本的には市町村、自治体が全額負担をしているということで、Bに関してはそれぞれ市町村によって負担率が違うという点。それからワクチン代も含めて、つまり予防接種を実際にやってかかる費用というのは自治体間で統一されていなくて、自治体ごとにさまざまな接種単価が設定されるという事実があるのです。米国の場合、定期接種化がされた場合に、どこがどれくらい費用負担を行うのか。例えば、全額を国家が負担するのか、州によって違うのか。もしそこら辺がわかれば、費用負担のあり方についてお教えいただければと思います。

○マレット参考人 まず、アメリカにおきましては、保険制度が日本と大きく異なっておりまして、私どもの国には皆保険制度はございません。しかし、アメリカには2つの大きなワクチンの支払機関があります。VFCと一般的に呼ばれております、小児用ワクチンのプログラムがあります。これは国の政府が運用しておりまして、その拠出を行っているのは州政府になりますけれども、ワクチンの接種が不十分な事例に対しましては、無料でワクチン接種を行うというプログラムです。

 このワクチン製品そのものについてでありますけれども、これはアメリカの50州、各州がそれぞれ州政府として購入を行って、それを無償で医師に提供して、医師が接種を実際に行いますので、医師と州政府の間にお金のやり取りは発生いたしません。

 もう一つの制度が、当然ながら民間の保険会社の導入している制度でありまして、これは個々に独立していて、それぞれが金額を設定いたしますし、また、医師も製品ごと、患者ごとにどのくらいの金額あるいは費用で接種を行うのかということを別個に決定します。

 したがいまして、日本の医療制度がユニークであると言われておりますけれども、ワクチンの場合、ユニークであることが非常によい効果をもたらしていると言えます。確かに、医師によって費用のばらつきは存在いたしますけれども、例えばアメリカのような国に比べて、それほどばらつきの度合いは大きいものではありません。

 そして、保護者にとって負担すべき金額という懸念がなくなりますと、接種率が非常に高くなります。ワクチンの受け入れ率が高くなるということは、日本の例でもごらんのとおりで、定期接種に入るか入らないかで違いが出ています。

○伊藤部会長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 細かい質問になりますが、ドクターにワクチンそのものを無料で供与するということは理解したのですが、いわゆるドクターのコスト、いわゆる技術料は誰が支払うのかということが1点。

 もう一点が、接種対象となるいわゆる収入が不十分というのをどのような方法で認定しているのか。日本の場合は、ほとんどの自治体が収入については非課税世帯という形で認定している自治体があるのですが、日本の予防接種制度は、定期接種に認められれば相手の収入の多寡に関係なく全て自治体が見るという形をとっています。

 この2点です。収入が不十分という点と、ドクターのコストは誰が支払っているのかという点をお教えいただければと思います。

○マレット参考人 ワクチン接種のドクターにかかる費用ですけれども、小児ワクチンがメディケイドの対象になっている場合には、メディケイド、公的保険制度からの支払いになります。また、民間保険に入っている場合には、これは民間保険からの支払いということになりますので、医師からの請求がいく先というのは、公的保険のメディケイドまたは民間企業となります。

○櫻井参考人 1つ補足させていただきますと、所得が十分かどうかに関しましては、そもそもプライベートインシュアランスに入っているかどうか。入っていない方は、メディケイド、メディケアの対象になりますので、その方たちはメディケアから支払いが行われると御理解いただければと思います。

○伊藤部会長 あとはよろしいですか。

○釜萢委員 スライド9のところで国家備蓄のお話が出ましたが、国家備蓄というのは国が一定量のワクチンを買い上げる。その場合に、ある時期になると備蓄したワクチンはまた市場に出てくるわけですね。先ほど、必要量の6カ月分くらいを備蓄するというお話がありましたが、今度は市場に放出される時期としては、使用期限がどのくらいある状態で市場に出てくるのか。その場合の費用は、市場に出した場合は市場からまたお金を回収できるわけですから、それはいずれ国庫に戻すことになるのか。そこを教えてください。

○櫻井参考人 御質問ありがとうございます。

 これもVFCの基金で備蓄を基本的に回しているのです。ですので、メーカーから納入したものを備蓄をしておいて、6カ月備蓄されたものから出荷されていく。常に古いものから出ていって、新しいものが入っていくということがずっと行われているとお考えください。ですので、一方で市場で流通していて、一方で備蓄をしているということではなくて、常にVFCの基金で持たれている備蓄在庫から物が出ていく。言ってみれば、先入れ、先出しのような形で出ていっているとお考えいただければいいと思います。

○釜萢委員 そうしますと、最初に基金を積めばそれは回っていって、それ以上の費用負担は基本的には発生しないと考えていいのですか。

○櫻井参考人 おっしゃるとおりです。VFCも今は基金という形をとっておりますけれども、1990年代までは国家予算の中で毎年予算をとられていたのですが、この備蓄のプログラムを拡大するに当たって基金をつくって、一度積んだお金の中でぐるぐる回しているということです。

 その後、ワクチンの数がふえていたり接種数がふえているので、基金自体は拡大はしておりますので、そのたびにCDCがリコメンデーションをして国家予算が追加されていますけれども、先生がおっしゃるとおり、基本的には基金が積まれてその中で運用されているとお考えいただければよろしいかと思います。

○釜萢委員 ありがとうございました。

○マレット参考人 備蓄でありますけれども、これは物理的にどこか備蓄する場所があってそこに保管しているということではございませんで、アメリカ政府もそれほどワクチンの倉庫を多く持っているわけではございませんので、各企業がそれぞれの施設にワクチンを取っておいて、これを回転させて使っていくという状況です。ですから、ストックパイリング、備蓄というのは各企業がコミットメントを行い、ワクチンを別に持っている、別に取っておくという状況であります。

○加藤委員 1つ質問があるのですけれども、PhRMAさんは日本というのを単純にマーケットと考えているのか、それとも、いいワクチンを開発していくパートナーと考えているのかというところなのです。

 例えば、スライド8のところで品質規格や基準値に違いがあると書いてあります。少なくとも、全く日本に既存ワクチンがない新しいものについて、日本側から規格試験を追加することがあっても、基準値を変えることはなかったと思います。基準値が変わるといっているのは、既に日本で同様のワクチンが存在していて、新たに海外からワクチンが来たときに、日本の規格とPhRMAさんの規格が違ったときに、どちらをとるかということなのです。私はたまたま国立感染症研究所に属しているのでわかるのですが、少なくとも日本のDPTワクチンは欧米で使われているよりもよい規格、よい品質なのです。それをあえて落としてまで海外性のDPTワクチンをベースとしたペンタバレントやヘキサバレントやシックスバレントをつくる必要があるのか?、逆にそうおっしゃるのであれば、日本のメーカーさんが持っているいいワクチンをベースにすることで、よりいい多価ワクチンをつくっていきましょうというアプローチがここであってもいいのではないかと思うのです。

 日本というのを単純にマーケットと考えるのか、パートナーと考えるのか、そこはいかがなのでしょうか。

○マレット参考人 コメントありがとうございました。非常に複雑な答えになるところではございますけれども、単純に短くしておきます。

 ワクチンにつきまして、各企業が一緒にお仕事ができるパートナーであると考えたいと思っております。また、同時にパートナーシップというのは、二方向の対話を通じて形成していくものであるとも申し上げたいと思います。しかしながら、メーカーとしてなかなか適切なコミュニケーションの場を見つけることが難しいと感じることがございまして、そのために私どもといたしましても、ぜひこの定期接種化の透明性を求めたいと考えている次第でございます。

 そして、質ということでありますけれども、当然感染研の製品、試験にいたしましても非常に質が高いということを承知しております。しかしながら、やはり質について、医療の違いについて、あるいは業界の仕事のやり方の違いについての対話の場がぜひ必要だと感じるところがございます。質の高さの尺度といたしましても、例えばワクチンの純度にいたしましても、それは違うからといって安全性が違う、人にとっての安全性が変わるということは必ずしも意味しないということもございます。

 そこで、ぜひ委員会の皆様方にお願いしたいのは、そのような対話の場を設けていただければということでございます。非常によいディスカッションをすることができると思いますし、世界中に非常に多くのワクチンに関するデータがあります。20年、30年と使われてきたワクチン、対象者も3億人、5億人と世界中で使われてまいりましたので、今ある日本のワクチンとの比較を行って、そして、それらのワクチンが日本において適切であるのか否かといった話をする機会があればと考えております。

 そして、日本の国民の方々にも、できるだけ早くワクチンにアクセスできるようにすることの重要性についても申し上げたいと思います。当然、日本のワクチンのメーカーというのは非常に信頼性が高く、これまで長年、ワクチンの製造をしてこられた強いメーカーさんがいらっしゃいますけれども、急に必要になった場合の国外のワクチンへのアクセスの問題というのも、最近のDPT-IPVなど10ものワクチンの名前を挙げることができますけれども、供給の問題があったということから、やはり御考慮をいただければと考えております。

○伊藤部会長 そろそろ時間が迫ってきているので、次に代わっていただかなければいけないと思うのですけれども、アメリカは、ワクチンを安全保障の一環として自国で製造するという考え方を持っていない国だと認識しているのですが、アメリカで使われているワクチンのうちのどれくらいのボリューム、金額もしくは全体数として、アメリカ国内で生産されているのでしょうか。

○マレット参考人 割合がどのくらいだったかは記憶しておりません。申しわけありません。

 確認を別にとることができますけれども、基本的に必要なワクチンにつきましては、そのほとんどがアメリカで製造されているはずだと考えておりますが、製品の一部には他国でつくられたものが使われて、その上でのアメリカでの製造になりますので、比率としては恐らく日本とそれほどは違わない、フィフティー・フィフティーではないかと思っております。

○伊藤部会長 ありがとうございました。

 時間も限られておりますので、PhRMAの方のヒアリングに関してはここで終わらせていただいて、続いて欧州の製薬団体連合会、EFPIAと呼ばれていると思いますが、そちらのお話を伺いたいと思います。

 それでは、EFPIAの方からどうぞよろしくお願いいたします。

○本田参考人 ありがとうございます。欧州製薬団体連合会、EFPIA Japanの本田でございます。よろしくお願いします。

 本日は基本的な計画に基づく、PDCAサイクルに関する内容についてのEFPIAの取り組みということでお話をさせていただきます。

 本日の内容は2ページ目ですけれども、まず私から簡単にEFPIA Japanの紹介をさせていただいて、その後、きょうは専門家を欧州から呼んでおりますので、その方から欧州の状況、それからドイツにおいての状況という形で話をしていきたいと考えております。

 最初にEFPIA Japanですけれども、3ページ目にありますように24の欧州の製薬企業からなっている団体でありまして、革新的な医薬品・ワクチンを日本に早期導入をすることを目標にしております。

 4ページ目にEFPIA Japanの組織が書いてありまして、幾つかある委員会の中にバイオロジクス委員会というものがあります。

 この中の内訳が5ページ目にありまして、3つの部会から成っているうちのワクチン部会というところで、ワクチンのことをやっております。

 6ページ目、我々が昨今重要と考えている資料に関して述べてありますけれども、厚生労働省から「予防接種に関する基本的な計画」というものが2014年に出てきまして、その後、去年にもタスクフォース顧問からの提言という形で、非常に重要な資料が出てきていると思います。

 いずれも、いわゆるワクチンで防げる疾病というのは予防するべきであるという基本理念がもとにありまして、基本計画の中にはワクチンのギャップの解消ということがうたわれております。EFPIA Japanとしても、これらの実現に向けては協力と努力を惜しまないと考えております。

 7ページ目と8ページ目に我々の今までの取り組みについて記しております。きょうは時間がありませんので詳細は申し上げませんけれども、実際に会員会社が日本にワクチンを供給してきたこと。

 8ページ目は、我々が行っている提言、それから普及啓発活動の例について示させていただいておりますので、御参照いただければと思います。

 9ページ目、今回我々がフォーカスを絞ったのは、ワクチンの定期接種化のプロセス、勧奨についてであります。やはりワクチンの定期接種化というのは、接種率向上に非常に有効な手段でありますが、そのプロセスについては、2015年に新しいスキームの運用が始まりまして、それが運用されていく中で、手順あるいは審議にかかる時間といったものに関しては課題が見えてきたのかなと考えております。

 また、任意ワクチンであっても、特定の集団に対して勧奨をするというやり方もあってはいいのではないかと考えます。

 そういったことで、ワクチンの定期接種化に関して、欧州においては諮問委員会という形で何十年にもわたって運用しているという実績について、欧州ではどうなっているのかという情報を今回は2人の専門家からお話ししていただいて、今後の日本のワクチン行政について考える材料としていただければと思います。

 最初にボガーツ先生から欧州の状況について、説明いただきたいと思います。

○ボガーツ参考人 本日はこのような機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 お手元に資料として配らせていただいておりますので、この内容につきまして全て繰り返すことは避けたいと思います。

 スライドごとにメーンメッセージといったところで、ハイライト的に御紹介したいと思います。

CDCは、ワクチンというのは最も偉大な功績の一つであると言っておりますけれども、それだけではなくてビル・ゲイツのような人が「本当に奇跡である」というような言い方をしているわけです。そういった意味でも、本日の審議の重要性といったものを背景としてもおわかりいただけるかと思います。

 これはWHOの目標としているところでありますけれども、2020年までには全ての国におきまして、こうした予防接種の技術的な諮問機関を持つべきであると言ってます。

 こうした中におきまして、WHOとしましても、先進国がここにおいて先鞭をつけるべきである。そうした中において、途上国においてこうした諮問機関というものを確立するに当たって、支援をしていくべきであるといったことを言っています。

 スライド3、4のところでお話ししておりますけれども、全ての人々、全てのワクチンにつきまして、こうした施策というものを作成するということを狙いとして、こうした機関が位置づけられています。

 スライド5、こうした目的に沿いまして、6つの基本的な基準というものがWHOによって定められております。

 スライド6、これが一番重要な基準ではないかと思いますけれども、多種多様な領域における専門性というものがここで代表されなければならないということを言及しております。

 それから重要なことは、何らかの利益相反があった場合に、それをクリアに開示していかなければならないという要求であります。

 このコアグループとなっております常任専門委員でありますけれども、それがそれぞれの専門家として個人の立場から参加するようになっております。

 それから、非常任委員、リエゾン委員というのが位置づけられておりますけれども、ここに参加する人たちというのはそれぞれの行政機関、さまざまな機関の代表者としての資格で参加しています。また、WHOへの機関を代表する形で参加する委員ということになります。

 スライド7でありますが、この意思決定のプロセスを改善しようということで、大きな進展が見られております。NITAGは「GRADEシステム」というものを採用しておりまして、これはもともとACIPで採用されていたような方式であります。そして、さまざまなエビデンスの質をスコアによって示していくわけでありまして、例えば臨床試験におけますデザインですとか、母集団の大きさなどによってそのスコアが決まってきます。

 このようにして、一般的に採用されていく基準が決まっているわけですけれども、それだけではなくて各国の状況を鑑みる、そうした基準も定められております。

 ですから、このような財政上の制約でありますとか、非常に実際的な実施面におきまして、現行の接種スケジュールの中に果たして入れ込むことができるかどうかといった制約も検討いたします。

 スライド8、これが非常に現在の社会にとって重要な点であります。これはいかにエビデンスの質が高くて、そこで提示されている資料の質が高いといたしましても、何といたしましてもコミュニケーションというのが必須になってくるわけで、さまざまな決定を透明性を持って理解してもらうためには、コミュニケーションが非常に重要です。

 その中において、マスコミの役割を忘れることはできません。先ほどの話にもありましたけれども、メーカー側にしましても重要な利害関係者であるわけですから、このようなNITAGとの協力を惜しまないというところでございます。

 そういった意味で、ヨーロッパにおきましてもさまざまな産業界との対話の場というものが設けられています。英国におきましては、これはHorizon Scanning、それからドイツの事例は後ほどの発表がありますけれども、Jour Fixeというものがありまして、メーカー側の開発パイプラインについても、話し合いがされていきます。

 スライド9におきまして、ヨーロッパにおけます幾つかのNITAGの事例について、御紹介させていただきたいと考えております。この後、ツェップ先生のほうからドイツの事例についてお話しいただきます。

 最初の例がオランダでありますけれども、非常に国民の福祉ということを重視している社会であります。そういった意味で、1902年ということで、ヨーロッパで最も古い段階から保健審議会というものを持っています。

 同じように、フランスも非常に確立された体系的な制度というものを持っているわけで、その一部はナポレオンの時代にまでさかのぼるものがあります。

 そのような状況にありながら、近年になりまして、フランスの予防接種技術委員会が非常に世論からのプレッシャーにさらされているという状況がございます。

 ですからこそ、スライド11のスクリーンショットですが、これは予防接種技術委員会の全ての委員の履歴書、CVが載っている状況になっています。といいますのも、もともとは医薬品に端を発するスキャンダル的な事象がございまして、そのことがワクチンにもこうした影響を及ぼしているといった実情がございます。

 ということで、フランスにおけますこうした委員会の技術的なエキスパートというのが、非常に高い質での専門性を発揮していることは疑いのないところでありますけれども、近年のフランスにおける問題としましては、やはり予防接種自体に対して、世論の非常に深い不信の念が芽生えているという問題がございます。

 スライド12、実はNITAGが司令される前の段階、25年も前の段階から各国で既に努力がされてきたということで、これは英国におきまして既にポリオに端を発しまして、1960年代からこのような予防接種合同委員会ができ上がっているという事例がございます。

 ここでの構成の特徴としましては、英国国外の方も委員となっているといったところで、これによりまして知識レベルを拡大し、拡充して、そして透明性を高めようという努力がされております。

 それだけではなくて、この機関は自主研究を行っていくところでありまして、臨床試験や疫学的な研究でありますとか、それから医療経済学的な研究といったものをみずからやっているという事情がございます。

 その成果となってきたのが、まさにスライド1415を対比していただければおわかりかと思いますけれども、スライド14のところに51年前のワクチン、予防接種がこのようになっていたところが、スライド15に示しているように、今日はこれだけのワクチンスケジュールとなっています。

 申し上げたいのは、やはりワクチンに対して、予防接種に関しては何らかの意思決定をするというのは、ある一点をとってできることではないわけで、一点をとって決定をしたところを最終化ということは決して言えないわけです。ですから、そこがまずはスタートポイントになるわけで、そこから継続的なモニタリングが必要になってくるといったところが、スライド16に示されておりますところのさまざまな不可欠なサーベイランスということです。

NITAGにつきましての3点を申し上げるとすれば、evaluateimplementmonitorということですので、評価をし、実施をし、そしてモニタリングが必要であるということでございます。

 ありがとうございました。

○ツェップ参考人 私はフレット・ツェップでございます。私はもともと小児科医でございますけれども、現在におきましては、マインツの大学におきまして小児科の教授を行っておりまして、1998年からドイツにおけます諮問委員会においての委員としての仕事を行っております。

 本日はこのような機会をありがとうございます。ドイツにおけます状況について、経験を共有させていただければと思っておりますけれども、非常に時間も限られておりますので、広範なスライドを準備してまいりましたが、その一部のスライドを抽出してお話をさせていただきます。

 2ページ、ドイツにおける予防接種制度の基本概念です。ドイツにおきましては、義務化された予防接種というのはないわけでありますから、制度上、基本的には任意で提供されるものであります。

 基本的に接種勧奨されたワクチンにつきましては、完全に保険によってカバーされるということになっています。ドイツ国民というのは100%保険によってカバーされていくわけでありまして、90%が公的な保険、10%が民間の保険でありますけれども、そこで費用としてカバーされる面につきましては、同じようにどちらも予防接種についてはカバーされていきます。

3ページ、接種勧告でありますけれども、これを行ってくれるのがSTIKOというドイツの予防接種常任諮問委員会でありまして、ドイツ版NITAGということでありますが、こちらの委員は、ドイツの保健大臣によって直接任命される人たちであります。

STIKOの勧告というものが既に法的な拘束力を持ち、これは予防医療におけるゴールドスタンダードと見なされていくわけでありまして、それをその後実施していくのが16の連邦州の保健局であります。

2007年以来、法律によりましてSTIKOの接種勧告において行われた予防接種につきましては、医療保険制度によって賄われるということになっております。

 接種勧告された際に、ワクチン接種に関連する健康被害が生じた場合にも、州がこれを補償するという約束をしております。

 次に、飛ばして8ページにおきましては、ワクチンの承認審査と接種勧告との違いを示しております。承認審査におきましては、当然ワクチンの安全性、有効性のデータに基づいての審査がされていきます。

 しかしながら、接種勧告に至るまでには、こうして承認されたワクチンが国の中において最善に使用されるのがどういったところなのかということが検討されていきます。その際に検討される内容といたしましては、当然、ワクチンによります公衆衛生上のインパクトがどういったものであるのか、それによって予防されるところの重症度も考えていくわけであります。それから、現行の予防接種スケジュールへどのように組み入れることができるのか。そして、近年になって特に重要性が増しておりますのが、費用対効果という側面であります。

 9ページ、どのようにして接種勧告が出されるのかを示しています。左上の真ん中のところに出ておりますのがSTIKOでありまして、まずそこにおきましてエビデンスが収集されて、そこでの審査がなされていきます。これがいわゆるワクチン自体のライセンス、承認のプロセスということになってきます。その際にはロベルト・コッホ研究所から得られたようなデータ、それから欧州医薬品庁から得られたデータというものが検討されていて、接種勧告につながっていきます。

 一度この公的な予防接種の勧告が出ますと、ドイツにあります16の連邦州の当局にそれが発行されてくるわけでありまして、そこから6週間の期間の上でコメントが返ってくることになっております。6週間以内のコメントが返ってきたところで、私どもでそれをさらに検討いたしまして、必要であれば接種勧告の内容に調整を加えていきます。そして、それが終了した段階におきまして情報公開となってきますが、右下に示してありますように、これは公的な政府の持つさまざまな情報提供手段というものを用いていきます。

 先ほど、ボガーツ先生からもお話がありましたように、このような接種勧告が出た後で非常に重要になってくるのが、その効果のモニタリングになります。対象集団における効果のモニタリングということで、私どもは常にこうした接種勧告内容について継続的なモニタリングを行って、必要な場合にはこの内容に際して調整を加えていきます。

 次に12ページ、STIKOの構成についてお話いたします。STIKOは独立した科学委員によって構成されるメンバーで、大体1218名の名誉職としてのメンバーが定められてくるわけでありまして、背景としましては小児科医、一般開業医、感染症の専門医、そして疫学の専門家などが入ります。

 3年ごとに選任されるわけですけれども、委員は連邦保健省のほうから任命されます。そして、この期が始まる段階におきまして、STIKO自体、NITAG自体が今後の取り組むべき論点というものの優先度を定めていくことになります。

 また、科学者からの支援も必要になるということで、ロベルト・コッホ研究所が現在、STIKOの事務局機能も担当しておりますので、そこで6名のサイエンティストがフルタイムでSTIKOの仕事をしております。

 ワクチンが承認される前から既に新規のワクチンについての審議を始めるという場合もありますが、その場合、メーカー側からの直接の資料の提供を受けてはおりません。ただ、ロベルト・コッホ研究所が年に2回、メーカー側、産業界側との会合を持っておりまして、その会議の内容、抽出された文章といったものが私どもに提供されてきます。

16ページ、私どもとしましても、完全にWHOが求めているところのNITAGの基準というものを満たしていると自負しているわけでありまして、最大限の透明性を保っているということで、私どものプロトコル、さまざまな意思決定プロセスといったものが完全に公開されています。そして、履歴書に至るところまでインターネットで公開することによりまして、利益相反というものを最小限に抑えています。

20ページ、STIKOでどのように勧告を出すのかといったところを示しております。まず、私どもが取り組むべき論点というものが明らかになりますと、その時点でそれに取り組むべきワーキンググループができ上がります。私どもSTIKOのメンバーとしては四、五名が参画し、ロベルト・コッホ研究所から2名の事務局の方々が参加いたします。

STIKOの公式な会合の間にこのワーキンググループでの会合が開かれてくるわけで、対象としてのポピュレーションがどうあるべきなのか、それに対しましてどういった介入が現在あるのか、果たして代替的な手段があるのか、例えば水痘ワクチンに対しましてそのワクチンでいくべきなのか、それとも抗ウイルス薬を使うべきなのかといったところの検討はされて、最終的にこの予防接種によって何を達成するのかといった転帰についても検討がされてきます。

 その上で、私どもの評価としては、最重要なのか、重要なのか、それとも重要ではないといった転帰なのかを検討するわけで、それをもとに私どもが評価の方向性を定めていきます。

 今度はそこから右の箱に移っていただきまして、ここのところでさまざまな文献の検討が始まっていきます。その際に、ACIPでやっているようなGRADEシステムでの評価がなされてきます。そして、それが今度は右下のところにきまして、最終的な報告書という形をとってくるわけでありまして、これがエビデンスとして報告書の形で全体のSTIKOのメンバーに対して開示されてきます。

 その上で、STIKO側にこのデータが提示されるわけですが、正式な会議の3週間前までにはこのデータの搬入が行われていきます。そして、会議におきましては、全て審議、討論がされてきまして、そこではワーキンググループからのプレゼンテーションがされてきて、そして、STIKOのメンバーによります最終決定がなされるわけです。この決定におきましては、採択もしくは棄却というところだけでありまして、そこで「強・弱」のGRADEをつけた判断というものはいたしません。

 このような勧告が出ますと、それが連邦州のほうに提示されていきまして、その後、実施というのを連邦州が行うということになります。

 私のプレゼンテーションはここまでにいたしたいと思います。

○伊藤部会長 ありがとうございます。

EFPIAからお話いただいたのは、私どものやっている予防接種・ワクチン分科会と同じようなものがヨーロッパにもあって、その運営の形態がどのような形になっているのかという御説明をいただいたと認識をいたしております。

 前回のときに「ACIPには業界団体が入っているのだけれども、予防接種・ワクチン分科会には業界団体が入っていないではないか」という点については、今のお話から察すると、ヨーロッパには業界団体を入れるという枠組みはないという話です。

 それから、ドイツは一般保険診療の一環として予防接種がされていて、学会のガイドラインに近い状態で決めていて、特に日本医療評価機構もやっているGRADEという方式を用いたエビデンスに基づいた、いわゆるガイドラインをつくっているという御説明だったような気がします。

 せっかくの機会ですので、それ以外にもヨーロッパの実情について御質問をさせていただいたほうがいいと思っておりますが、皆さんいかがでしょうか。

 細矢先生、どうぞ。

○細矢委員 先ほどはアメリカのほうで国家備蓄の話があったのですけれども、ヨーロッパでも同じように国家備蓄のようなことはなされているのでしょうか。

○ツェップ参考人 私どもSTIKOといたしましては、基本的にはここには関与していないわけで、備蓄ということに関しましては、メーカー側が責任をとってくるところになるわけですけれども、これにつきましては、ロベルト・コッホとパウル・エールリッヒの研究所のほうで検討をし、話し合いをして、そして、ワクチンのアベイラビリティーといったところが検討されていきます。

 ドイツの側では、まずメーカー側が自主的に報告をすることになります。何らかの供給上の困難があった場合には、パウル・エールリッヒ研究所に対しましてメーカー側が自主的に報告をいたしまして、それがロベルト・コッホのほうに報告されていき、そしてそこから医師、医療従事者側に情報が提供されて、問題解決のための対処がされていきます。

○伊藤部会長 ヨーロッパでは、例えば日本で起きたようなMRワクチンの不足といった問題は発生しないのでしょうか。

○ツェップ参考人 過去におきまして、実際にそうした問題はあったわけです。例えば多価の混合ワクチンにおきまして、百日ぜき成分が不足したといったところでそれが製造できないといった問題が生じたことがあるわけですけれども、基本的にドイツにおきましては、複数のメーカーで複数の製品が市場にあるので、その問題は解決することができているわけでありまして、インターネット上でパウル・エールリッヒ研究所のほうから小児科医、開業医に対しまして、どのワクチン製品を使用すべきかといったところの勧告が出ます。

○伊藤部会長 森先生、どうぞ。

○森委員 ドイツでは予防接種は義務ではないということなのですが、接種率はどれくらいなのでしょうか。

○ツェップ参考人 私自身、小児科医ですので、非常に誇りに思っているところですけれども、予防接種は基本的には小児科医が行っておりまして、95%という接種率になっております。

 だからといって全く問題がないわけではございません。例えばイタリアのような状況にはなっておりませんけれども、しかしながら、そういった意味でイタリアにおきましては、小児用ワクチンにつきましては、全て義務化といったところが先週決断がされたわけですけれども、実際にはこうした麻疹の症例が時々出てくるということは実際にあります。

 ただ、ドイツにおきましては、親御さんが小児科医と予防接種につきまして必ず話をし、説明を受けなければならないということになっております。子供を幼稚園や保育園に入れる際に、小児科医と予防接種につきまして十分に問診を行ったといったところが証明されなければならないということが一つのやり方となっております。

○森委員 ありがとうございました。

○ボガーツ参考人 ヨーロッパにおきまして、やはり完全な接種率を達成することができなかったワクチンとなりますと、これは2種類になるのではないかと思います。

 1つは今、お話がありました麻疹のワクチンでありまして、もう一つはHPVワクチンであります。しかしながら、これらは全く違う理由によるものであります。

 まず、麻疹のワクチンにつきまして、なぜこのように接種率が低いのかということですけれども、これはもともと全く根拠のない話ではあったわけですが、MMRのワクチンにつきまして、非常に人を恐れさせるような話が蔓延したといったところがありまして、そういったことが指摘されたこと、アンドリュー・ウェイクフィールドの言ったことによりまして、10年以上前のことでありますけれども、それがまだ尾を引きずっているといった状況であります。

 もう一点としましては、予防接種自体がどのように実施されているのか、実施体制によっても変わってくるというところでありまして、HPVのワクチン接種につきましては、学校での予防接種をされた場合には、個人に任せられた場合に比べまして、非常によい接種率になるといったことがあります。

○伊藤部会長 川西先生、どうぞ。

○川西委員 今の全体のお話を聞いていると、ヨーロッパは医薬品でいえば、例えばバイオ医薬品などはEMAが実際に承認審査、コントロールしていると聞いております。今のワクチンのお話を聞かせていただくと、各国の独立性が極めて高く、予防接種の計画を含めて各国別にやっているという印象を受けたのですが、それはそういうことと理解してよろしいのでしょうか。

○ツェップ参考人 近年になりまして、ワクチンの承認につきましてはEMAが行うことになっております。ただ、各国の薬事当局がそこに協力をするということになりますので、ドイツの場合ですと、パウル・エールリッヒ研究所がこの承認に関して関与することになってきます。ですから、メーカー側としましてはEMAのほうに承認申請を行っていく。その上でEMAが、ある一つのヨーロッパの国に対しまして、これの担当国というのを決めていくわけで、そして、そこで審査がされていきますと、欧州全域における承認を得ることができるということになってきます。

 ただ、予防接種計画自体ということになりますと、それは国ごとに非常に変わってくるわけで、やはり財政上の制約といったものが影響するわけであります。ドイツは比較的恵まれた国でありますので、非常に広範なる予防接種制度を設けておりますけれども、しかし、ほかの国におきましては限定的な予防接種になっている国もありますし、また、ある特定のワクチンに対しての見方というものが必要性ということに関しまして、国ごとにその評価が異なっているという場合もあります。

○伊藤部会長 坂元先生、どうぞ。

○坂元委員 ドイツの場合は、予防接種を医療保険で見るということなのですが、日本では、以前から自治体の中には予防接種を医療保険で見るべきではないかという意見も出ておりましたが、日本の場合は予防というものは医療保険になじまないということで、その意見は反映されてはおりません。アメリカの場合も、お聞きすると一部メディケイドで見ているということなのですが、ヨーロッパでは、ほとんどの国が医療保険で予防接種を見ているという理解で正しいのでしょうか。

○ツェップ参考人 まさにそのとおりでございます。ただ、本当にマイノリティーでありますけれども、保険でカバーされていないような人たちがいた場合には、国が面倒を見るということになっております。

 確かに、ドイツにおきましても50年前から全く同じ議論がされてきて、果たして、医療というものと予防医療といったものが同じことなのかといったところの議論がされてきたわけですけれども、政府はそうした議論を乗り越えてきまして、これはこの医療保険によって賄われるべきであるという立場になっております。

○伊藤部会長 最後に山口先生。手短にお願いします。

○山口委員 サーベイランスの重要性を少し述べておられたと思うのですけれども、サーベイランスの中で例えば安全性と有効性を別々の機関で見ているというか、パウル・エールリッヒ研究所が安全性のサーベイランスをして、コッホ研究所が有効性。その理由というか背景について教えていただければと思います。要するに、そういうように分けている理由です。

○ツェップ参考人 これはあくまでも歴史的な経緯というところでありまして、2つの機関の成り立ちによるものでありまして、ロベルト・コッホはいってみればCDCのようなところであります。ですから、疫学ですとか緊急事態、特に感染症などに対応するという機関になっています。

 一方におきまして、パウル・エールリッヒは、法律によりましてワクチン、血液製剤の承認にかかわる機関ということで成り立っています。

○山口委員 それは他国でも一緒でしょうか。例えば、フランスのAFSSAPSと他の機関というか、そういうところが役割分担をしているのでしょうか。

○ボガーツ参考人 原則的には同じということになっておりまして、有効性、安全性というものにつきましてローカルのレベルで、国内におきましても監視されているという状況があります。それから、国を超えたレベルにおきまして、例えばEMAでは、リスクベネフィット比をモニタリングしていくところに責任をとっているところがありますし、それからECDCがありますので、そこにおきましては接種率、ワクチンの効果についてのモニタリングを行うという責任を負っております。

○伊藤部会長 ありがとうございました。

 予定の時間を相当過ぎておりますのでこの辺で打ち切らせていただきます。どうもありがとうございました。

 議題2について、事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局より御説明をさせていただきます。参考資料の2をごらんいただければと思います。

 本年5月8日でございますけれども、「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの安定供給に係る対応について」と題しまして、日本脳炎ワクチンの供給に関する事務連絡を発出してございますので、内容について御報告申し上げます。

 日本脳炎ワクチンは、一般財団法人化学及血清療法研究所、いわゆる化血研と一般財団法人阪大微生物病研究会、いわゆる阪大微研の2者が製造販売をしてございますけれども、このうち化血研につきましては、昨年の熊本地震の影響を受けたところでございます。

 化血研は、熊本地震の影響を踏まえても、日本脳炎ワクチンの安定供給は可能と発表してございましたが、今般、日本脳炎ワクチンの市場の増加と想定を上回る需要が生じたということで、一定期間、化血研製剤の供給ができない見込みであるという旨が改めて発表があったところでございます。

 このことを踏まえ、日本脳炎ワクチン全体に関する供給の見込みを改めて検討いたしました結果、現時点において、日本脳炎ワクチンの全国的な不足は生じない見込みと考えております。

 しかしながら、製造販売業者が異なる製剤への切りかえ等に伴いまして、一部の地域や医療機関におきまして、日本脳炎ワクチンの偏在等が発生するということが懸念されますことから、安定供給に係る取り組みといたしまして、事務連絡を発出することといたしました。

 事務連絡の「記」の下に取り組みの内容を列挙してございますけれども、これまでワクチン供給に関連して行ってきた取り組みを踏襲したものとなってございます。

 簡単に御説明させていただきますと、1.では、定期接種の確実な実施に努めること等について述べております。

 2.では、都道府県の取り組みとして関係者と協議し、管内の在庫状況等の把握が可能な体制づくり等について取り決めを行って、その偏在等が生じないよう努めること等について述べております。

 3.では、市区町村の取り組みといたしまして、管内の医療機関における在庫状況の把握でありますとか、卸売販売業者等関係者との情報の共有等、適切な措置をとること等について述べております。

 4.は、各都道府県は管内の全体において供給不足が明らかになったときは、厚生労働省に状況を連絡すること等について、

 5.では、医療機関等の取り組みとして過剰な発注は控えること等について、

 6.では、製造販売業者や卸売販売業者の取り組みとして、正確な情報提供を行うこと等について、

 7.では、卸売販売業者の取り組みといたしまして、在庫融通を積極的に行うことや、都道府県や市区町村と必要な連携を行うこと等について述べてございます。

 最後に、別紙としてつけております日本脳炎ワクチンの需給の見込みを示したグラフにつきまして、簡単に御説明を申し上げます。

 このグラフは色の濃いほうが需要、すなわち1カ月間に医療機関に納入されるであろうワクチンの総量見込みを示しておりまして、薄いほうが一月の間に供給可能となっている製品の量を示しております。

 これらはいずれも2者の製剤の合計でございまして、例えば5月の欄を見ますと、5月の1カ月間に使用される見込みの量が40万本弱である一方で、流通段階にある月初の在庫量と5月の1カ月間に新たに製造販売業者から流通可能な状態になる製品の量は120万本以上と想定されておりまして、使用される見込みの量を上回っていることから、全体として不足はしていないと考えられます。

 このグラフでは、3月分は実績でございまして、4月分以降は見込みでございますので、この見込みの部分は今後の状況によって変動することもあり得るということでございますが、現時点ではこのように考えているところでございます。

 報告事項に関する御説明は以上でございます。

○伊藤部会長 ありがとうございました。

 御説明をいただきましたけれども、先ほどのランニングストックの概念からいうと、2.5カ月分のランニングストックがあるという整理なのだろうと思います。

 御質問などあるでしょうか。

 釜萢先生、どうぞ。

○釜萢委員 たびたび申し上げて大変恐縮ですが、濃い色の医療機関への納入量ですが、現実には出荷調整が行われていて、卸に注文を出しても10本注文して7本あるいは5本しか来ないという状態が医療現場であると、医療機関はワクチンが足りないと判断するわけです。一方で、厚労省の立場からすれば、実際に接種率が下がるというところを見て、不足しているというのを判断されるので、そこに大きな認識のずれがあります。

 出荷調整を厳格に行えば、この黒い色のところは全然上がりようがないわけでありまして、実際の接種は在庫が十分ある中で順調に行われているとこのグラフは見えてしまうので、もうちょっと医療現場の実際の感覚が反映されてくるような情報提供がなされないものかと常々思っております。

 厚労省は大変しっかり今、動いていただいているので感謝なのですけれども、医療現場の認識とこのグラフとが余りに違うという声が全国から寄せられておりますので、あえて発言をさせていただきます。

○伊藤部会長 ありがとうございます。

 何かコメントされますでしょうか。

○江浪予防接種室長 予防接種室長の江浪でございます。

 昨年度はMRのワクチンの供給の関係で、総供給量の関係と現場での実際のワクチンの不足の現状を、先生方の感じられる部分とのギャップに非常に我々も悩みながら取り組みをしてまいりました。

 日本脳炎のワクチンに関しましても、これから特に会社ごとの供給量の見込みが大きく変わってくるということもありますので、我々としては前倒しに情報を出していきながら、現場の先生方の御意見もしっかりお伺いしながらやっていきたいと思っております。

 日本脳炎ワクチンに関しましては、今、申し上げたような課題があるので、これから当分の間、御協力いただきながらしっかりやっていきたいと思っておりますが、またさらにその先の取り組みに関しましては、この部会を中心に意見を積み上げていきたいと思っておりますので、引き続き御協力をお願いしたいと思っております。

○伊藤部会長 ありがとうございました。

 細矢先生、どうぞ。

○細矢委員 この供給量の不足といいますか、ショーテージというのは、いつも問題になるのですけれども、やはり少なくとも定期のワクチンについては、年度の初めに需要量、供給量というのはどういう見込みかというのを出すべきではないかと思うのです。その上で変化すれば、対応のしようもあると思うのです。いつも在庫がどれくらいあるのだというのがわかっていて、それが少し減ってきたのだというのが見えれば問題ないのですけれども、突然これだけ出てくると、いつも不安になってしまいますので、ACIPでもあったと思いますが、年に1回ないしは2回、現在の供給量、需要といったものを定期的にここの場でお示しいただけるといいのではないかと思います。

○伊藤部会長 お願いします。

○江浪予防接種室長 ありがとうございます。

 これまで供給の見込みに関しては、一体どのくらいまで我々も公表すればいいのかと悩んできた歴史があります。1社供給であれば、ある会社がどれくらいの量を製造しているということがわかるわけですけれども、例えば2社供給の場合だと、全体量を示すということは一体どういう効果があるのだろうかということも含めまして、どこまで情報を出すべきかというのは常に悩みながらやってきております。

 昨年から今年にかけての取り組みの中では、むしろ情報をしっかり出していったほうがいいのではないかということでいろいろと判断をして、今回もこういった形で出させていただいているのですが、今後どういった形で情報提供すべきかということに関しては、まさに先生方からも御意見をいただきながら、しっかりと検討していきたいと思っております。

○伊藤部会長 ありがとうございました。

 そろそろ時間でございますので、この辺で議事を閉めさせていただこうと思います。

 どうもありがとうございました。

 その他、事務局から何かございますでしょうか。

○事務局 次回の開催につきましては、また追って御連絡を申し上げたいと思います。

○伊藤部会長 それでは、本日の「予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」を終了させていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2017年5月29日)

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