ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> がん検診のあり方に関する検討会> 第22回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)(2017年6月5日)




2017年6月5日 第22回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成29年6月5日(月)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 12階 専用第12会議室


○議題

(1)報告事項
   ・ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証について
(2)乳がん検診における「高濃度乳房」への対応について
(3)がん検診の受診率向上に向けた取り組みについて
(4)その他

○議事

○事務局 定刻となりましたので、ただいまより第22回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は5名の参考人を招聘しております。

 北海道医療大学学長、浅香正博参考人。

 「ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証」の御説明につきまして、国立国際医療研究センター国府台病院の上村直実参考人。

 「八王子市におけるがん検診受診率向上施策」の御説明につきまして、八王子市医療保険部成人健診課の新藤健参考人。

 「大和証券グループの取り組み」の御説明につきまして、大和証券グループ本社人事部の安藤宣弘参考人。

 「女性のがん検診の受診率向上に向けた取り組み」の御説明につきまして、国立がん研究センター保健社会学研究部の山本精一郎参考人にお越しいただいております。

 始めに、資料の御確認をお願いいたします。1枚目が座席表、続きまして議事次第、

 資料1 ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証について (上村参考人提出資料)

 資料2 乳がん検診における「高濃度乳房」への対応について

 資料3 八王子市におけるがん検診受診率向上施策(新藤参考人提出資料)

 資料4 大和証券グループの取り組み(安藤参考人提出資料)

 資料5 女性のがん検診の受診率向上に向けた取り組み(山本参考人提出資料)

 参考資料1 がん検診のあり方に関する検討会構成員名簿

 参考資料2 がん検診のあり方に関する検討回における議論の整理(平成2811月)

 参考資料3 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年2月)

 参考資料4 第21回がん検診のあり方に関する検討会資料・参考資料抜粋(平成29年3 月)

以上でございます。

 資料に不足、落丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。

 以上をもちましてカメラをおさめていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。

 この後の進行は、大内座長にお願いしたいと存じます。

○大内座長 それでは、第22回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 議題(1)報告事項から入らせていただきます。「ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証について」につきまして、上村参考人より御説明をお願いいたします。

○上村参考人 国際医療センター国府台病院の上村です。

 先生方が御存じのように、2013年、4年前の2月に、世界で初めて内視鏡検査と感染診断によって診断されるピロリ感染胃炎に対する除菌治療が公的資金によって賄われることになったわけです。それの胃がん減少効果の有無を検証するというのが、本研究の目的であります。4カ月間という短い間でしたので、また保険が通って4年間ということで、なかなか難しかったことは事実です。

 研究の方法としては、去年の12月からこの3月までの4カ月間で、人口動態、NCCの公開データ、NDB、それから公表されている論文といったものを使用しまして、胃がん死亡率、胃がん死亡者数の推移などを検討いたしました。

 それでは、資料を見ていただきたいと思います。まず資料1の下段は、がんセンターの片野田先生にお願いして、1970年から現在までの年齢調整死亡率に関するグラフを書いてもらっております。最後は予測値で、これのコメントは2013年以降の実測値は予測値を下回った。

 次のページの上段は、しかしながら、男女ともに1990年代後半以降に統計学的に有意な変曲点、これは統計学的に明らかに胃がん死亡率は下がったよということは見出せなかったということでございます。

 そこで、その次の下のグラフは、年代別の胃がん粗死亡者数の年次推移を作図しております。これは人口動態からつくったものです。ごらんのように、60歳以下では著明な減少効果を認めておりますけれども、70歳以上、80歳以上といった高齢者におきましては、死亡者数はまだ減少していないという状況です。

 次のページの上段は、ピロリの感染率を年代別に推移を示したものです。これを見ますと、一番上から下に向かって年代が最近になっているわけですけれども、明らかにピロリの感染率が減少しているということは、先生方も御存じのとおりです。特に若年者では減少しております。

 その下は、生誕年と感染率の関係ですけれども、同じようなものでございます。

 次のページですけれども、それを50歳代と20歳代に分けてみて、上段は50歳代と20歳代の感染率の推移です。1970年代では20歳代でも50%以上の方が感染していましたけれども、現在ではもう10%以下になっている。50歳代でも、90%以上の人が感染していたわけですけれども、40年後の今ではもう半数以下、40%ぐらいになっている。このように、感染率は非常に低下している。

 その下が、50歳未満の胃がん粗死亡率の年代推移です。これを見ましても明らかにわかりますように、1970年代から2010年代にかけまして、55歳未満以下の胃がんの死亡率は激減しているということで、これはパラレルのように見えます。

 次のページですけれども、上段に示しておりますのが、1970年から2000年までは胃がん死亡者数は約5万人で推移していたものは皆さんの御存じのとおりです。それが2000年から徐々に減ってきておりまして、ここに書いておりますが、2000年というのは消化性潰瘍peptic ulcerに対する除菌治療が承認された年です。2013年に胃炎に対する除菌治療が承認されていますけれども、このように赤線の実数と、このブルーはがんセンターのほうで公表されております胃がんの予測死亡者数と比べて、毎年3,000人ずつ少ない数字になっています。なぜかということをお聞きしたところ、がんセンターの予測死亡者数にはピロリ菌の除菌とかピロリ菌感染のファクターが入っていないということでありました。

 では、2013年からどのように一般の診療現場で変化があったかということを下に示しております。これは除菌判定に用いる薬剤ですけれども、2013年、もちろん保険適用になって激増しております。これは呼気テストに用いる薬剤ですけれども、これが激増している。

 次のページでございますけれども、北海道のレセプトデータベースは、今の東北の藤森先生にお願いして出してもらいましたけれども、やはり一次除菌件数がふえてきている。2012年、2013年のところを見ていただければおわかりになるように、3倍近くになっている。

 それから、その下の図も藤森先生、函館病院の加藤先生にお願いしてつくってもらいましたけれども、全国のピロリ一次除菌件数、これは推測になりますけれども、13年に倍以上にふえているということでございます。

 次のページの上段は、内視鏡検査件数です。これもピロリ除菌が保険適用になって医療費は少しふえたかもしれないけれども、内視鏡の件数が非常にふえたということが言えます。

 その下は、早期がんに対する内視鏡的腫瘍切除術数の推移です。これも推定になりますけれども、こういったものがふえているということでございます。

 このような形で、ピロリの感染率と胃がんの死亡者数は、今まではパラレルに来ておりました。除菌治療が始まって保険適用になってからは、何らかの原因で胃がん死亡者数が低下しているのです。しかしながら、統計学的にそれを証明することは、今回は不可能でした。

 次のページでございますけれども、日本では余りなじみがないのですけれども、世界的には遺伝性びまん性胃がんは1998年にマオリ族で発見されて、常染色体優性遺伝をいたします。アメリカの女優さんが乳房をとったことでもよく知られておりますけれども、これは京都大学の一家系を上に示しております。発端者は27歳の男性でありまして、CDH1の変異が原因の遺伝子変異ですけれども、これとピロリ感染が陽性の人でスキルスで見つかっております。

 そのお父さんは49歳男性で、34歳のときに進行がん、これはCDH1変異が陽性、ピロリ感染が陽性です。

22歳と20歳の妹さんがいまして、22歳の妹さんはCDH1が陽性でありましたけれども、ヘリコが未感染で、内視鏡をやりますと、10個以上の印環細胞がんが粘膜内に存在していました。

 次女の20歳の方は、ピロリも感染していないし、CDH1も陰性ということで、全く普通の未感染の胃でありました。

 下に示しておりますのが、国府台病院でこの12月に発見されたのですけれども、これは専門的になりますけれども、2011年から、胃角の前壁というところに印環細胞がんがずっとあるのです。5年間全く変わらない。今回、生検しまして、印環細胞がんということでsignet ring cell carcinomaを内視鏡で切除いたしました。したがって、この方はもちろんヘリコが未感染、すなわち、炎症がないとプロモーションが起こらないということが、ある程度このケースレポートからわかるわけです。

 最後は、一応仮説ですが、ヘリコに未感染、炎症がない場合には、基本的な遺伝子変異が起こっても、胃がんは浸潤しない。ヘリコの感染があると炎症があって、プロモーションがかかって、浸潤がんになっていくということがすごく強く示唆されました。

 以上、まとめますと、胃がんの死亡率や死亡者数は若年者を中心として明らかに減少しております。しかしながら、今、問題になっているのは70歳以上の高齢者における胃がん死亡者数は減少していない。ピロリ感染率の低下が大きな要因であると推測されますが、今後、若年者の感染率低下とともに、胃がん死亡者数のさらなる減少が期待されましたが、75歳以上の高齢者に対する対応は、喫緊の課題と思われました。

 この2013年以降、保険適用になってからは毎年3,000名と、予測値より少ないわけですから、今回の検討では統計学的には有意な形ということはまだ見出しておりませんけれども、今後、この推移を見ていく必要があるということが言えます。

 ピロリ菌の除菌をしてすぐに胃がんが抑制されて、胃がんの死亡者数が減るなどということは絶対にありません。当然ながら10年、15年かかると思います。だから、これは恐らく一般診療現場で内視鏡の件数がふえて、死ぬ前の胃がんが発見されてというように考える。残念ながら、真の原因については、今回の検討では見出しておりません。

 一番大きいのは、ピロリが未感染の胃、いわゆる生まれつき未感染の方は、炎症がない場合に胃がんができたとしても浸潤がんにならない可能性が大ということなのです。これで今後、検診にもピロリ感染の有無をどこかで、例えばバリウムで検診をやっている場合には、バリウムの写真をデジタル化したものをAIで解析すればすぐにピロリ感染の有無は容易にわかります。恐らく、500例ずつでも検討すれば、ピロリが未感染という人を抽出できると思います。そういった形で今後、もちろん内視鏡検診が始まれば、それをファクターに入れなければいけない。未感染の人は検診を受ける必要がなくなる可能性があると思います。

 以上、今回の検討の報告であります。

○大内座長 ありがとうございました。

Hp除菌の保険適用によっての胃がん減少効果についての説明がございました。

 これにつきまして、きょう来ていただいております浅香参考人から、コメントをお願いいたします。

○浅香参考人 医療大学の浅香でございます。

 今、上村先生が詳細な報告をされましたけれども、それに対して私なりの評価をしてまいりましたので御報告いたします。

 まず最初に、保険が通ったことで発生件数が減少した疾患があるか。これはあるのです。2000年に胃・十二指腸潰瘍に対して、ピロリ菌の除菌が保険適用になり、その後何の対策もしないのにもかかわらず、2011年には発生件数が57%の減少を示しております。十二指腸潰瘍に至っては75%減って、恐らく十二指腸潰瘍はここ10年、20年で日本人からなくなる病気になっていく可能性があると思います。ですから、原因療法の威力は、いわゆるがんの一次予防に相当するものであり、きわめて大きいと考えられます。

 今回、保険が通ったのは、ピロリ感染胃炎という慢性胃炎の一種ですけれども、この疾患から胃・十二指腸潰瘍や萎縮性胃炎、さらには萎縮性胃炎を経由して分化型の胃がんが発生するわけでございます。分化型の胃がんは萎縮性胃炎を経由して発生するものですから、除菌だけで予防可能かどうかは難しいと思われます。

 それでは、検証を始めたいと思います。まずは、除菌数です。上村先生のほうから、2012年に60万件だったのが、保険が通ってから年間150万件に増加し、4年間で約600万件に達しているという電子レセプト分析による報告がなされました。

 これが事実かどうかを判定するために、ピロリ菌の呼気試験用診断薬であるユービット錠の販売実績、これはガイドラインでも書かれているようにピロリの除菌の判断には必ず使われるものですから、これを大塚製薬の協力で調べましたところ、4年間で約650万件と、除菌数を基にしたレセプト分析の件数とほぼ同様であることが明らかになりました。

 もう一点、除菌薬の販売実績をIMSというところに調査をしてもらったところ、これも4年間でほぼ600万件前後ということでございました。

 したがって、上村班による除菌数のデータは、信頼性が極めて高いと思われます。

 次に、最も重要な胃がん死亡者数についてでございます。わが国の胃がんの死亡者数は、上村先生が言われたとおり30年以上、ほぼ5万人で変化がなく経過しており、4万8,000人を切ることはありませんでした。

 今回は除菌適用後の2013年から下がり始めまして、2015年には4万6,659人となっています。しかし、統計学的な証拠は見出されなかったと報告されました。

 私は、愛知医大の公衆衛生の菊地正悟教授と共同で有意差検定を行いました。過去20年の胃がん者死亡数の平均値を出しますと、5万42名ですのでこれと比較しますと、2013年までは有意差はなかったのですけれども、14年から有意差が見られて、p値は0.001でした。

2015年になりますと、p値はゼロが20つくぐらいの値になり、両者間の有意差はさらに明瞭になりました。

 我が国の胃がん死亡者数が予測と乖離して減少したことになります。実は2016年の死亡者数のデータが先週の金曜日、6月2日に厚労省の統計局から公表されました。

 それによりますと、がん死亡者数の総数は2015年では29万人亡くなったのが、2016年では307,000とふえているのです。ところが胃がんだけ減っています。胃がんの2016年の胃がん死亡者数は4万5,509人、2015年よりさらに1,200人も減少しました。 過去20年の胃がん死亡者数から見ると、9.2%の減少であり、統計学的に有意な減少であります。過去50年にさかのぼって、胃がんの死亡者数を調べたところ、これだけ継続的に下がったことは一度もございませんでした。今後の傾向もみる必要がありますが、胃がん死亡数が減少に転じた可能性が高いと考えられます。

 ちなみに、国立がん研究センターの胃がん死亡者数予想では、2016年に達成した4万5,000人に減少するのが2020年となっています。保険適用のおかげで4年も早く目標を達成したことになります。

 この間、保険が通ったことによって命を救えたと思われる人の数を計算してみましたら、1万1,670人にもなりました。保険が認可されたことでこれだけ多くの人命が実際に救われているのです。

 次は、なぜ減少したのかを考えてみます。先ほど上村先生が説明されたように、保険適用後、上部消化管内視鏡検査の件数の増加が見られることから、いわゆる保険を利用した内視鏡検診が行われた状況になってきていると思われます。 その結果、早期がんの発見が増加し、ESDなどの内視鏡的手術の件数が、増加が出てきたのではないか。要するに、今回の胃がん死亡者数の減少がこんなに早く達成できたということは、上村先生が言われたとおり、ピロリ菌の除菌による罹患者の減少というより、無症候者で内視鏡検査を受ける人が急増したため、見つかる胃がんの頻度が増えその中でも早期がんの頻度が上昇したため生じた現象であると考察できます。

 実際に、日本消化器病学会での発表によりますと、保険適用後に内視鏡で発見された胃がんは95%が早期がんと言われています。

 最後にこれからの展望を述べます。保険適用後、明らかに胃がんの死亡者数が減ってきていますが、間もなく、ピロリ菌の除菌効果による胃がん罹患者数の減少が始まると思われます。将来的には、これらの相乗効果によって、さらに胃がん死亡者数は減少してくると考えられます。

 すなわち、2020年には、わが国の胃がん死亡者数は国立がんセンターの予測より1万人少ない3万5,000人程度になって、我が国の胃がん死亡者数は30%以上の減少を示すと考えられます。

 総括です。ピロリ菌の除菌がピロリ感染胃炎で適用になったことで、わが国では一次予防と二次予防を組み合わせた理想的な胃がん対策が我が国でできるようになったと考えられます。これは、世界でもわが国しか施行できない方法であり、IARCなどから高く評価されると思われます。

 以上でございます。

○大内座長 大変貴重なコメントをありがとうございました。

 かなり踏み込んだコメントになりましたけれども、構成員の皆様におかれましては、ただいま、特に上村参考人の資料を拝見されて、御質問等ありましたらお願いいたします。

 斎藤構成員、どうぞ。

○斎藤構成員 この胃がんが減っているというのは、数も率も間違いないことですけれども、何で減っているのかというのは普通、判断が非常に難しいと思うのです。

 今回、お示しになった資料の中の、今、減っている、それから除菌の件数の推移とパラレルだとおっしゃった根拠は、この9枚目のスライドだと思うのです。このがんセンターの予測死亡者数をどうやってだしたのか方法がわからないので、実測値が予測より下がったかどうかについてはコメントは差し控えたいと思います。ただ、これを見ると、実測値は2000年からずっと連続的に死亡者数が減っているということです。一方、その原因と御説明があったその下の図の除菌件数ですけれども、これがふえているのは2013年からなのですね。

 死亡というのは減少効果が出るまで随分時間がかかるわけで、減少する2000年以前に何か原因があったと考えるのが普通、疫学傾向を見るときに考えることだと思うのです。

 それで、関連するほかの要因として何があるのかよくわかりませんが、13枚目のスライドを見ますと、これは内視鏡の件数の推移が書いていまして、2006年からしか書いていないので、これ以前のトレンドはわかりませんが、少なくとも2006年からは連続的に増加しているということが見てとれます。2006年以前も増加している可能性があると思います。

 そうすると、パラレルということですが、そうではなく、死亡数の減少はこの除菌との関連よりは、むしろ内視鏡の増加というように私には見えるのです。

 胃がんとヘリコバクターには因果関係はあるわけですけれども、お示しのデータでは、除菌で胃がんが減ったということはちょっと言えないのではないかと考えます。

○大内座長 上村参考人、いかがでしょうか。

○上村参考人 私も、除菌でダイレクトに減ったとは言っていないし、また、それはまだそういう段階ではないと思います。

 今、斎藤先生が言われたのは、まさしくそのとおりで、2000年ぐらいから減り出しているのです。これは恐らくヘリコ感染率の、これも推測にすぎないのです。何が本当のファクターで、どういうファクターによって胃がんの死亡者数が減っているかということを、今回の私たちの検討でも明確に出ていません。

 しかしながら、これを見ますと、30年間5万人に推移していたものが減ってきたというのは、何らかのものがあったと。そこにあるのは、ヘリコの感染率が低下しているのは間違いないです。

 それからもう一つは、先ほど浅香先生が言われた、消化性潰瘍のあれで、ヘリコ感染に対して日本の医療が興味を持ち出したのが2000年です。だからその前に、1994年にWHOが承認いたしました。その辺から、日本でもヘリコ感染といったものに対して、内視鏡で見ていったり潰瘍もヘリコ陽性かどうかとかを見ていった。そういった臨床現場における変化、ファジーな部分で減ってきたのではないかと推測はしております。

 ただ、除菌によって減るということは、まだまだ先の先の先の話だと思います。

○大内座長 ほかに御意見ございますか。

 どうぞ。

○浅香参考人 除菌による胃がんの発生の減少と、保険適用による内視鏡検査の増加によって見つかる早期がんの頻度の上昇の二つの相互作用によってわが国の胃がん死亡者は劇的に減少してくると考えられます。

 これまで50年間で、胃がん死亡者数が4万7,000人を切ったことは1度もないのです。保険が通ったことによる除菌数の増加に伴い、胃がん死亡者数が、2016年には4万5,000人まで減少したことはきわめて大きな意義を有するのです。 わが国では胃がん予防に関して一次と二次予防の両方が合わさって理想的なものが動き始めてきたのではないかと思っております。

○大内座長 上部消化管内視鏡が、これでパラレルに推進されておりまして、先ほど、浅香参考人が触れられたように、内視鏡検査及び内視鏡的粘膜下層剝離術、ESDの件数もかなりふえているということです。そのようなデータは、例えばレセプトデータ等から拾えるのでしょうか。

○上村参考人 それは、今回ちょっと時間がなかったのですけれども、今、北大と東北で、藤森先生のほうでもっと詳しいデータがだんだん出ていますけれども、多分、浅香先生のほうがもしかしたら知っているかもしれない。

○浅香参考人 保険が認可されたことにより、早期がんの頻度が増えてきているということは、内ESDがふえていて、外科手術は減っているという藤森教授の分析から明らかなのです。ですから、保険適用後は進行がんが減って早期がんがふえているといえます。

 本年より、内視鏡を加えた胃がん検診が始まりますが、この保険適用のときから、内視鏡検診が始まっているような状況になっているのではないかと考えられるのではないでしょうか。

○大内座長 ただいまお名前の出ました東北大学の藤森研司教授が、厚労省の検討班等でもレセプトデータを把握されております。その中身については、今後さらに個々の胃がんの推移と予防的な除菌との関連について、それから具体的にはESD等の件数も含めて検討していただければと思います。

 ちょっと気になったのは、まとめの中で75歳以上に対しての対策ということが書かれておりますが、この件については時間の関係上、次回以降でまた検討したいと思います。

 本日は報告ですので、この辺でよろしいでしょうか。

 どうぞ。

○祖父江構成員 時間を頂戴しまして、済みません。

 3ページ目の年代別のピロリ菌感染率あるいは生誕年とピロリ菌感染率の関係とありますね。この図で除菌によって感染状況にない人と、もともと感染していない人の区別をした上で感染率は求められますか。

○上村参考人 先生、もう一度お願いします。

○祖父江構成員 ですから、除菌によって感染でなくなった人の割合をこの図の中に示せますか。

○上村参考人 除菌によって陰性になった方ですか。それは入っていません。

○祖父江構成員 それが割合として大きくなければ、全体としての影響は余りないのではないですか。

○大内座長 詳しいデータについては、これは分類できるのですか。除菌は全く含まれていないのですか。

○上村参考人 除菌治療によって陰性になった人のデータが、この中に含まれていることはほとんどありません。日本で除菌治療が保険承認されたのが2000年なのです。それも消化性潰瘍です。したがって、この方たちは除菌治療をされてなくなったという方々は、ほとんど入っておりません。

○祖父江構成員 今後、そういうデータを積み上げていくことは可能ですか。

○上村参考人 今からは不可能というか、要するに今からは、除菌治療をされてなくなった人の陰性は、結局、感染診断の問題になります。血清抗体法だけでは不可能です。話になりません。

 内視鏡検査とか画像診断を用いれば簡単に、除菌していて陰性になっている人か、未感染、最も重要なのは生まれつき感染していない人はまず胃がんで死ぬことはほとんどないです。99.9%ないと言えます。

 しかしながら、今からこういうデータをマスで見るためには、血清抗体とかで見なければいけないから難しいです。

○大内座長 どうぞ。

○浅香参考人 最後なのですけれども、今、私も不思議な図だなと思ったのですけれども、これは13年から通っていますから、13年、14年だと、まだ除菌で減った人はすごく少ない。151610%近く減っていますから、大変だと思いますけれども、ぜひ20152016のデータをつけ加えていただいて、報告していただければありがたいと思います。

○大内座長 では、これはまだ途中経過ということで、とどめたいと思います。

 ありがとうございました。

 次に、議題(2)に移ります。「乳がん検診における『高濃度乳房』への対応について」でございます。

 3月27日の第21回本検討会でも集中議論されたところですけれども、資料2を用いまして乳がん検診における「高濃度乳房」、デンスブレストへの対応について、まず事務局より説明願います。

○事務局 事務局より、資料2の説明をさせていただきます。

 資料2の2つ目のスライドは、前回の「がん検診のあり方に関する検討会」において、構成員の方々からいただいた御意見をまとめたものであります。内容につきましては大きく分けて3つございます。1つ目が高濃度乳房そのものに関する御意見、2つ目が乳がん検診における検査方法の検証について、3つ目が乳がん検診における乳房構成の通知について、まとめております。

 1つ目に関しましては、高濃度乳房自体は乳房の構成であって疾患ではない。また、そのため高濃度乳房であることを理由に、その後の保険診療を受けることが原則認められておりません。また、我が国における、高濃度乳房と乳がんリスクとの関係について明らかではないということが挙げられました。

 2つ目の検査方法の検証についてですが、乳房超音波検査併用における乳がんの死亡率減少効果に関しては、現時点ではまだ明らかにされておりません。また、乳房超音波検査を行うに当たりましても、その実施体制が市町村で整っていないことが挙げられます。乳房超音波検査は、こういった理由から対策型の検診の検査方法として推奨されておりません。

 3つ目の乳房構成の通知についてですが、我が国における乳房構成の比率が明らかになっていないということから、乳房構成に関する実態調査が必要であると考えております。また、マンモグラフィの乳房構成に関する判定基準が曖昧であることも踏まえ、高濃度乳房に対する対応が確立されていない中、結果を一律に通知することは時期尚早であるという意見が挙げられました。

 一方、乳房の構成に関しましては受診者個人の情報であるため、受診者が通知を希望した場合は知ることはできますので、受診者が高濃度乳房を正しく理解できるための仕組みが必要であるという意見も出されております。

 前回の検討会での議論を踏まえまして、3枚目のスライドに、今後の対応の案をお示ししております。

 上半分の「現状と課題」に関しましては、先ほどの2枚目のスライドと一部重複しますが、おおむね前回の検討会で出された議論を踏まえたものをお示ししております。

 続いて、下段に「今後の対応の方向性(案)」をお示しいたします。

 1つ目として、高濃度乳房に対してでも高い感度で実施できる計算方法について今後検証してはどうかと考えております。その一つとして、乳房超音波検査併用検診の感度等について検証してはどうかと考えております。

 2つ目に、マンモグラフィの判定基準に関する検討を行ってはどうか。

 3つ目に、我が国における高濃度乳房の高濃度乳房の実態調査をしてはどうか。

 4つ目に、受診者が高濃度乳房を正しく理解できるよう、通知すべき標準的な内容を明らかにしてはどうか。

 最後に、検診実施機関におきまして、あらかじめ乳房の構成の通知に関する受診者の希望を事前に把握してはどうか。これらを今後の方向性の案として挙げさせていただきます。

 事務局からは、以上です。

○大内座長 ただいま、高濃度乳房への対応案が示されました。参考資料4のほうに、前回の笠原参考人からの資料が添付されておりますので、それも御確認の上、この議論を進めたいと思います。

 ただいま、今後の対応案が示されたところですが、構成員の皆様から意見等ありますか。

 斎藤構成員。

○斎藤構成員 この件に関しては、今の要約にあったように、高濃度乳房の定義、実態といったものが標準化されていないということもありますが、社会的に知らせるべきという意見がすごく強い背景には、知らされたらどうなるかということを考えなくてはいけないという検診の原則が余り共有されていないためかなと思います。

 診療では、患者さんとフェース・ツー・フェース、一対一で、その場でほとんどの情報も伝わるし、その後のこともコントロールできるわけですが、検診というのは顔が見えないので、知らせた後にどうなるかということまでケアしなければいけないのです。

 がん疑いになった乳がん検診の受診者が、非常に不安が強いという報告もあることを考えると、普通の診療とは別に、検診特有の顔が見えない多くの対象者の方が、知らされた後どうなるかということ、そこで発生する不利益も考えなくてはいけないということを、いま一度考えてみる必要があると思います。

○大内座長 今、斎藤構成員からの御意見は、この事務局から出ました3枚目の「現状と課題」のところにも書いてあるところでして、それに対応して今、動きがあります。国としても、本検討会で議論を重ねつつ、この実態調査、あるいは受診者にマンモグラフィ検診における濃度判定について通知する場合どのようにすべきかということについても、検討に入っているところです。

 ただ、まだ平成29年度の研究班等についての未確定事項がございまして、きょうはお示しできない点もございます。この点について、事務局から何かコメントはございますか。がん対策推進官のほうからお願いします。

○がん対策推進官 先ほど、座長から御指摘いただいたとおり、国としてもここに示したとおり、実態調査や標準的な通知の内容について、研究の形で検討していきたいと考えています。

 どう進めるかは、これからの検討になります。

○大内座長 ほかにいかがですか。御意見等ないですか。

○白川構成員 私も、斎藤構成員の意見と同じであり、裏面の今後の対応の方向性は5項目挙げられておりますが、その中で気になったのは一番最後で、「検診実施機関において、あらかじめ乳房の構成の通知に関する希望の有無について把握する」ということを書いてあるのですが、実態を知りたいというお気持ちはわかりますが、希望の有無を聞くからには、高濃度がどういう影響を及ぼすのか詳細に説明した上でないと、希望の有無はとれないと思います。

 単純に、希望しますか、しませんかであると、検診機関側にこれはどういう意味かという問い合わせ等も相当来ることが想定されます。確かに個人の情報ですから、御本人から希望があればお答えするのは当たり前ですが、順番としては上4つの案を一定程度実施したところで、次の段階として希望の有無を伺うような、ステップを考えたほうがよろしいのではないかなと思います。○大内座長 ただいま、白川構成員から大変貴重な御意見、まずは体制づくりを進めた上で正しい通知、高濃度乳房は不利益に入るわけですけれども、乳がん検診、マンモグラフィ検診についての利益、不利益の点について、よく検討された上で受診者の希望通知に関する検討も進めてほしいという御意見です。

 それでは、祖父江構成員。

○祖父江構成員 特にないです。強いて言えば、ここに書いてある5つの項目は、特に反対意見はないかなという感じで、もう既に検討を進めているものもありますね。こういうものを検討した上で、やや問題先送り的なところはあるとは思いますけれども、現段階でクリアな対応はなかなか難しいということも実情なので、こういうことを検討した上での方向ということでいいと思います。

○大内座長 対応の方向性の最初の項で、高濃度乳房に対しても高い感度で実施できる検査方法、その一つとして乳房超音波検査併用検診の感度等について検証するとあります。

 これは、実は今、祖父江先生が最後にコメントされたことでして、国のがん対策のための戦略研究で、今そのデータを取りまとめております。しかし、未発表の部分がございますので、本日お示しできませんが、近いうちに皆様に報告できると思っております。

 よろしいでしょうか。

 それでは、議題(3)に移ります。「がん検診の受診率向上に向けた取り組みについて」としまして、資料3に基づいて、八王子市におけるがん検診受診率向上施策に関しまして、新藤参考人より御説明をお願いいたします。

○新藤参考人 皆さん、こんにちは。八王子市医療保険部成人健診課から参りました新藤と申します。本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 早速、我々「八王子市におけるがん検診受診率向上施策」というところで発表させていただきたいと思います。

 まず、下になります。「八王子市の概況」でございますけれども、多摩地域に位置しておりまして、人口規模としては56万~57万人といったところでございます。都会的な要素から地方的な要素、いろいろな顔つきを持っておりまして、いろいろな自治体の参考になるのではないかと思っております。

 また、個別の小さな診療所から中規模病院、中核病院まで、医療資源として比較的完結するという特徴がございます。本年度は市制100周年というところで、こういったところでも盛り上がりを見せているところでございます。

 ページをめくっていただきまして「八王子市のがん検診実施状況」でございます。八王子市の場合は、基本的には国の指針どおりの検診を実施させていただいておりまして、唯一、子宮頸がんが2年に一度を推奨しながら、毎年受診が可能になっているところでございます。

 胃がん検診だけが集団検診になっておりまして、ほかの肺、大腸、乳、子宮頸については個別医療機関で受診をする。コールセンター方式というのをとっておりまして、市民の方は直接医療機関に御予約をとっていただければ、医療機関から我々のほうに確認が入ってくるという状況でございます。

 また、後で数字的にはお示しをさせていただきますが、我々はこういったところにお呼びをいただくところも、制度管理のところで非常に医師会の協力もありまして、いい成績をおさめさせていただいております。

 例えば精検の受診率でいいますと、肺、乳がほぼ90%の後半というところで、大腸がんを除くとほぼ90%を超えているという状況でございます。

 下段に行っていただきまして「八王子市のがん検診業務体制」というところで、こちらも後で少し関係をしてまいりますので、御注目をいただければと思います。我々は医療保険部といって、保険がインシュアランスのほうの保険になっております。そういうことで、国保情報といったところとも連携が可能になっているような状況でございます。

 それでは、次のページに行っていただきまして、我々は平成26年度大腸がん検診の事例から、受診率向上の施策について御説明をさせていただきます。キーワードとしましては定量法、定性法です。あとは採便セットです。後ほど私は検査キットという言葉も使ってしまうかもしれませんが、これは採便セットと同じ意味でございます。それから検査方法の統一、クーポン券、受診券への同封、診療報酬ルールに基づく医師会との委託料というところがキーワードになってくるかなと思います。

 下段に行っていただきまして「平成25年度以前 八王子市の大腸がん検診の状況」でございますが、先ほど申し上げたとおり制度管理体制が非常にしっかりしている自治体だと自負はしておりますけれども、大腸がんにつきましては要精検率が大体、毎年10%前後で推移してきたという状況がございます。

 めくっていただきまして、これにつきましてどういった原因があるかというところになりますと、検査方法につきまして定量法、定性法というのが実施医療機関においてばらばらであったところの統一が図れていなかったところがございます。

 8枚目のスライド、下段に行っていただきますと、検査キットA、Bという左のものが、一番右がカットオフ値を150に設定していた検査キットです。そして、11.5というのは定性検査で見ていたものでございます。検査キットにいろいろばらつきがある中で、なかなか要精検率が許容値内におさまっていなかったという現実がございました。

 続いて進んでいただきまして、そうしますと、ここで統一の基準をつくる必要があるということで、定量法によってカットオフ値は150に設定しましょうというところで、これもいろいろな検査キットのアンケート調査によって、大体7%におさめるにはカットオフ値150ぐらいが適正ではないかというところから算出をしております。

 また、今回この発表では、受診率向上策というところで発表させていただいておりますが、この取り組みの肝のもう一つは、あわせて精度管理も向上させていくというところでございます。検査キットを可能な範囲で統一するというところで、検査キットを自治体のほうで購入をして、それを無料クーポン券ですとか昨年度特定健診を受診してくださった方に同封をするというところで、検査キットを統一して約9万個を送りつけるというような施策でございます。

 一方で、こういった財源をどこから生み出してくるかになってくるかと思うのですけれども、これにつきましては、医師会の協力をいただきまして同日2科目め、初診料は半額にするというような診療報酬のルールを適用させていただきまして、当時の初診料で1,350円の減額が可能である。これによって、非常に受診者はふえるだろうという想定のもと、検査キットを購入することもできましたし、かつ市民の方にも還元をしようというところで、自己負担額700円からワンコインの500円でというところで実施をさせていただきました。

 それでも財源としては余裕がありますというところで、財政部門にも説明をさせていただき、かつ医師会のほうにも御理解をいただいたところでございます。

 下段が結果でございます。受診者につきましては約2万人増、1.64倍、受診率につきましては9.9%、ほぼ10 %増を達成しております。あわせて要精検率でございますが、今、25年の9.4%から7.3%まで許容値に近づいてきたところでございます。

 ここからは少し余談になってしまうかもしれませんが、あわせてカットオフ値、年代ですとか受診歴別の精度管理状況なども確認をしておりまして、若い世代のほうで、だんだん年代を追うごとに要精検率が初回と非初回で開いてきてしまう現実ですとか、精検受診率が低くなってくるという状況も捉えております。

 下段につきましては、カットオフ値150で統一をさせていただきましたが、この中でどれぐらいがんの人が出てきたかというところも確認をしている数字でございます。

 続きまして、これが現状でございまして、今年度、27年度の精度管理状況でいいますと、大腸がんの要精検率は6.3%まで落ちてきて、この数字で一旦推移をしていくのかなと思います。

 また、精検の受診率につきましては、まだ若干低いところがございまして、これについては取り組みが必要だと認識をしておりまして、今年度から成果報酬型、官民連携モデルというSIBというモデルを少し導入をして、この辺も少し改善を図っていきたいと思っております。

 続きまして「受診率向上の施策2」ということで、胃がん検診の事例からということで、先ほど申し上げました医療保険部内の連携、自動音声・自動架電システムを使った勧奨、また費用対効果も少し確認ができればと思っております。

 こちらは、簡単に言いますと胃がん検診の場合は集団検診で申し込みをいただいているのですけれども、平成25年度、胃がん検診を受けていただいたのですが、26年度未受診だった方に対して受診勧奨を実施した事例でございます。

 下段に行っていただきまして、自動音声システムがどういったものかといいますと、これは国保の収納課のほうで導入をしているシステムでございまして、自動音声によって催告を促すというもので、回線によりますが、マンパワーに比べて4倍のスピードで架電が可能でございます。

 また、いつでもできますので、土日、夕方の時間帯も架電が可能というところで、自動音声ですので感情的になることも少なく、非常に効果的なシステムということです。下を見ていただくと導入効果というところで、25年の8,000件、4,000万円の納付額から、27年度でいいますと21,700件、納付額でいいますと2億6,000万という非常に効果のあったシステムを、同じ部内ということで回線を簡単に引っ張ってくることができまして、こちらに導入をさせていただきました。

 5、6月に手紙によってまず勧奨をかけまして、11月に自動音声によって再勧奨するということでございます。

 下段に行っていただきますと、着伝率もしくは情報の伝わる率は、大体4分3ぐらいかなと思っております。

 右のページに行っていただきまして、受診勧奨の申し込み状況というところでございますが、一度、手紙によって勧奨をかけますと、5月、6月、7月、8月のところを見ていただきますと、大体100人ぐらいの方から応募があり、その翌月はその2分の1、その翌々月は2分の1というような推移をたどっていくことが数字で確認ができるかと思います。

 これに対して、10月に実施しました11月分以降の電話による受診勧奨によりますと、これも100から2分の1、2分の1というような、同じような効果をたどっているかと思います。

 下段を確認していただきますと、受診勧奨効果は40.3%と出ましたが、一般的に受診勧奨しなくても、その前々年度を見ますと25.5%ということですけれども、15%程度の受診率向上効果はあったかなというところです。郵送と自動音声の違いですけれども、大体ざっくり10分の1以下で自動音声のほうでコストはかからないというところで、これは保険収納課のほうで既に引いてあったという初期投資は除くところではございますけれども、10分の1のコストで実施が可能というところで、今後これを積極的に活用していきたいと考えております。

 ちょっと駆け足で雑駁な説明になってしまいましたが、八王子市の事例の紹介でございました。

 御清聴、ありがとうございました。

○大内座長 大変すばらしい取り組みを御紹介いただきまして、ありがとうございました。

 これに関しまして、構成員のほうから御意見をいただきたいと思います。費用対効果も含めて、福田先生いかがでしょうか。

○福田構成員 非常に参考になる情報をありがとうございました。

 実際にこれは効果を検証するだけではなくて、今、お話がありましたが費用がどのくらいかかっているかというところを見ていらっしゃるので、非常に興味深いなと思います。

 やり方としては、特に後ろのほうですけれども、自動音声・自動架電システムというのは、今も御説明がありましたが、もともと設備はあって、それを利用したという形だけなので、この単価が12円という形になっているということですね。

○新藤参考人 そうです。

○福田構成員 もともとのシステムは、どれくらいかかるものなのですか。

○新藤参考人 ちょっとそこまできょうは把握はしてきていないのですけれども、多少のコストはかかっているかと思います。

○福田構成員 これだけではなくて、2段階で、最初郵送でやって、その後電話をするという手続が重要というお考えでしょうか。

○新藤参考人 そのとおりでございまして、実は28年度の最初にいきなり電話をやって、もう一回電話、電話でやったらどうかということをやってみまして、いきなりコールの段階で電話を使ったら効果がほとんどなかったというところで、やはり手紙に行ってインプットがあった後に電話に行って再勧奨があると、ここで皆さんの手元にあるものに対して反応してくるということがあると思います。

○福田構成員 これに関して1990年代ですがアメリカで行われた研究があります。乳がん検診の推奨について、幾つかのやり方について費用対効果を見ているのですけれども、郵送の資料と電話という組み合わせが一番、費用対効果もよかったということでした。非常に共通しているなと思い、大変興味深く拝聴いたしました。

○大内座長 井上構成員。

○井上構成員 ノウハウがおもしろくて、御質問させていただきたいのですけれども、まず電話に出た方がこれを聞くということなので、電話に出なかった場合あるいは留守番が応答した場合にはどうなってしまうのでしょうか。

○新藤参考人 20枚目のスライドで言いますと、留守電も含めまして、20秒程度流れると八王子市から胃がんの検診の案内であると。大体1分ぐらいの電話なのですけれども、20秒ぐらいあればいわんとすることはわかっていただけるかなというところで、一応、情報伝達率は75%ぐらいで出させていただいています。

 もう一枚めくっていただいた21枚目の上のスライドで言いますと、電話のところのマークの1,194というのが実際架電をかけた方に対してで、887というのが伝わった方の数字でございます。ですので、1024424というのは、実際に伝わった方の中でこれぐらいの数字ということでございまして、その下の参考で紫の文字でリコール、自動架電非情報伝達というところで、実際に伝わっていない方でも申し込みがあったので、ここは除いている状況でございます。

○井上構成員 もう一つ教えてください。

 これは自動なのですけれども、これに関してクレームは別にかかってくるとか、クレーム状況はどのようなものなのでしょうか。

○新藤構成員 これは、かける前はいろいろ心配もあったのですけれども、年齢層が高くなりますと非常に嫌がられる傾向はあるのですが、我々のほうでは大体65歳ぐらいまでの方にやったのですが、そのぐらいですとほとんどクレームはございません。

○井上構成員 非常に参考になりました。

 ありがとうございました。

○大内座長 それでは、椎名構成員。

○椎名構成員 大変すばらしいお取り組みの御報告、ありがとうございます。

 私どもも、大体人口が57万人ということで、八王子市さんと同規模なのですけれども、大腸がん検診について伺いたいのですが、このカットオフ値を150ナノグラムで、7%におさめるといった工夫をされて、キットを統一されたというすばらしいお取り組みだと思うのですが、実際には大変だったのではないかと思うのですけれども、特に実施医療機関でいろいろなキット、検査機関をお使いになっている中で、ここをどうやって統一されたか、そのあたりの御苦労を伺えればと思います。

○新藤参考人 これは、医師会の協力がなくしてはなかなか成り立たないというところでございまして、八王子市は非常に一枚岩で強固な医師会に協力をいただきまして、しっかりと施行、説明をしていただいたところでございます。

 また、医師会のほうも、こういった正しい数字で持っていくと、それに御理解をいただけるというところがございます。ただ、初年度に関しましては、ここまで統一をしましたけれども、使っているラボが違ったり、150でないところで要精検率を出してしまったり、150149でどちらをとるのだとか、そういった細かいところのトラブルは若干ありましたけれども、今、3年目を迎えましたので、比較的その辺もルーチンというか落ち着いている状況でございます。

○椎名構成員 ありがとうございます。

 杉並区でも、ぜひこういったお取り組みを参考にさせていただきまして、充実してまいりたいと思います。ありがとうございます。

○大内座長 がん検診の品質管理まで踏み込んでおられまして、すばらしいと思っています。

 大腸がんに関しまして、斎藤先生、何かコメントはありますか。

○斎藤構成員 この例で非常にいいモデルといいますかお手本になるのは、個別の医療機関がたくさんある場合のやり方です。見かけ上は要精検率は許容値を少し出るぐらいの9%でも、ばらして個別に見ると例えば0%から50%までばらつくことがあるということで、個別にみて初めて具体的な改善策が見えてくるわけですね。

 実は平成20年に出された厚生労働省のがん検診事業評価の委員会の報告書の中にも、個別に評価し、対応すべきというような趣旨のことが書いてありますので、特に個別検診における精度管理のお手本みたいな例だと考えます。

○大内座長 日本医師会のほうからということで、道永構成員から何かコメントがあれば。医師会の協力なくして、本当にこれはできないと思います。いわゆる検査キットの統一もそうですけれども、方法とか、踏み込んだ検討会が必要ですから、各市町村あるいは自治体等の検診については、必ず医師会のほうからも委員が入っているわけですので、その観点から何かコメントがございましたらどうぞ。

○道永構成員 これは医師会の委託事業になっているのでできることではあるのですが、先ほど椎名構成員からお話があったように、それぞれの医療機関はキットも違うし、検査業者とかが異なっているので、そこを医師会と行政がちゃんと統一してやることはすばらしいことだと思います。どこの自治体もそのようにやってくださると、非常にいいなと思います。

○大内座長 松田構成員のほうからも、お願いします。

○松田構成員 大変参考になりました。ありがとうございます。

11ページ目のスライドで、初診料を半額にしたとか、さまざまなことが書いてあったのですけれども、その下の25年と26年の大腸がん検診の受診者の比較をすると、2万人ほどふえていますね。キットはたしか9万個配ったと。9万個というのは、4万5,000人分という意味でしょうか。

○新藤参考人 9万人分です。

○松田構成員 9万人分ですね。

 そうすると、9万人分配った中で、一体どの程度が受けているのかということと、その3万人がふえたのは、どういうことがきっかけでふえたのかと。本当にキットを送りつけるだけでふえたのか、あるいはその間にも受診勧奨とかをされているのだと思うので、何が効果的だったのかと非常に興味のあるところです。いかがでしょうか。

○新藤参考人 セット受診というのを一緒に始めたところがありまして、医療機関のほうからも説明がしやすく、かつ進めやすかったというところがあると思いますので、一概にキットを送ったからだけではないと思います。セット受診というのを一緒に始めたという効果があるので、そこは少し分離してわからない、切っても切れないところなので、効果をどうやって切り分けていくのかなということは少し難しい問題かなとは思っております。

○大内座長 祖父江構成員、どうぞ。

○祖父江構成員 この自動音声システムの対象を、一応65歳以下の方に限っているということですね。

13枚目のスライドで、八王子市における大腸がん検診の受診者の年齢分布を見てみますと、ほぼ半数が70歳以上ですね。要するに、70歳以上の方にはこういう対応をしないということにしますと、種々の精度管理を年齢別に行ったほうがよくはないかと思ったりしまして、15ページ目のがん検診の実施状況のところに受診率、要精検率、精検受診率云々とありますね。こういったものも見てみると、5万4,000人なので全年齢層に対してやっていますね。だから、これを70歳以上、以下というように区切って精度管理をしていくのはどうなのかなと思うのですけれども、いかがですか。

○新藤構成員 数字上、我々はそういった数字も当然、把握はさせていただいております。

 先ほど、胃がん検診の65歳というのは、大体キャパシティーというか、かけられる時間というものと勘案をしまして出しているものですので、一概に除外をしているわけでもなく、予算と時間の問題でこの数字を出しているというところでございますけれども、将来的には高齢者の受診をどうするかというところも検討していかなくてはいけない問題かなとは思っております。

○大内座長 よろしいでしょうか。

 この表も、確かに65歳までであれば区切っていただくともっとわかりやすくなるかと思いますので、引き続きお願いいたします。

 ただいまは市町村におけるがん検診受診率向上の一例として、八王子市の事例を紹介いただきました。

 次に、企業からの取り組みとしまして、大和証券グループのほうから本日、安藤参考人に来ていただいておりますので、資料4を使って説明をお願いいたします。

○安藤参考人 大和証券グループ本社人事部の安藤と申します。本日は貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 私からは、当社グループの健康増進の取り組みに関しまして、御説明をさせていただきます。

 資料にはございませんけれども、当社グループは社員数が1万3,000名、男女の比率は男性5に対して女性が3という状況でございます。

 資料4の1ページ目をご覧ください。右側に「健康増進への取組」とございます。当社グループは2008年度より、社員の健康増進の本格的な取り組みを開始しております。この年は特定健診、メタボ健診が義務づけられた年でございますけれども、これをきっかけに人事部、健保組合、産業医が集まって、社員の健康状態の分析と情報交換を始めたということが本格化するきっかけでございました。

 2ページをご覧ください。従来は人事部、健保組合、産業保健スタッフを有する総合健康開発センターそれぞれが独自に健康に関する情報を社員に送っており、社員から見ると窓口が複雑でわかりづらい状況でした。このため、2008年以降、人事部と健保組合、総合健康開発センターの3つの主体が強く連携し一体となって、取り組みの検討からアナウンスまでを行うこととしました。

 3ページをご覧ください。2015年度に健康経営の推進体制強化を行っております。1番ですが、当社グループが経営戦略として、より社員の健康保持・増進に積極的に取り組んでくことを社内外に示すために、CHO、最高健康責任者を設置し人事担当役員を選任しました。 2番目ですが健康経営推進会議を四半期ごとに年4回行うこととしました。これはCHO主催で総合健康開発センター、健保組合、グループ各社の人事部が出席をいたしまして、社員の健康状況の把握、各種取り組み等の検討などを行っております。グループ各社の人事部は、各社の人事担当役員レベルが出席をしております。

 3番目は、人事部内に新たに健康経営推進課を設置いたしまして、健康保持・増進に関する企画、立案、推進を行っております。

 4番目は、健康白書の発行でございます。こちらはレセプトデータ、健康診断等の結果等を分析するとともに、健康増進の取り組みの成果、課題、今後の対応方針を記載しております。これは一昨年度初めて発行しております。

 健康白書の発行により、社員の健康状況や生活の見える化が進みました。分析結果をもとに予防措置を検討して、その一環として社員の健康増進のイベント等の新設など、取り組みに生かしております。

 4ページでございますけれども、昨年度、幾つかのがん対策を実施しております。

 1つ目は、ABC検診、肝炎ウイルス検査を、当社グループで昨年度初めて定期健康診断で全社員に対して実施しました。これは胃がんと肝臓がんの発症リスクを減らすことを目的として実施をしたものでございます。

 感染があった社員に対しましては、医師と除菌等について相談をするよう、個別に案内を行っております。

 おおむねピロリ菌は全体の約1割が感染をしておりました。肝炎についてはごく一部、1万3,000人のうちの数十名程度に感染が見られました。

 また、2番目でございますが、当社は定期健康診断とは別に、35歳以上の社員に対しまして健保組合から人間ドックの費用補助を行っております。未受診者に固定化が見られ、受けない人は毎年受けないという状況がございましたので、対策を行いました。グループの全部室店長から配下の社員に、がんの早期発見のためには人間ドックの受診が極めて有効なのだということの説明をしてもらいました。

 複数年、未受診の社員に対しましては、人間ドックの予約をしているかを毎週チェックしまして、未受診者が所属する会社の人事部から、3か月間メールによって受診勧奨を行いました。

 その結果、人間ドックの対象者約8,000人のうち510人の3年連続未受診者がおりましたが、まだ道半ばではあるのですけれども、297名まで減少いたしました。全体の受診率につきましても、過去最高の85.9%となりました。

 また、50歳、55歳の社員を対象に、人間ドックの「節目年齢オプション」を実施しております。これはがんの早期発見等を目的に、記載しておりますオプション検査項目に対して補助を実施いたしました。

 次は、サポート体制につきまして「ライフサポート有給休暇」とございますけれども、こういった名前の休暇を新設しまして、がんを含め病気の治療、あるいは介護、不妊治療などのために利用できるようにいたしました。

5ページをご覧ください。2009年度より実施をしておりますハイリスク者対策のイエローペーパー制度というものでございます。2008年当時、定期健康診断の後に要医療・要精密検査等の受診が必要な社員のうち、実際病院に行った人は約2割しかいないことがわかりました。そこで受診が必要な社員に定期健診結果を送付する際に、こちらにありますイエローペーパーを同封するようにしました。

 イエローペーパーをもらった社員は、病院に行って、医師の意見をこの紙に書いてもらった上で、2週間以内に会社に提出することが義務づけられます。督促も何度も保健師あるいは人事部から行いまして、医療機関受診率は2割から8割に上昇いたしました。

 6ページをご覧ください。健康意識向上は受診率の向上に必要不可欠と考えております。特に20代の若手社員につきましては、健康に関して無関心の人たちが多く、こういった社員を取り込むべく、イベントを幾つか実施しております。

 これは定期健診の問診票の結果等から、例えば朝御飯を、20歳の社員は約半分ぐらいしか食べる習慣がないということがわかっておりますので、毎日朝食を食べるイベントを行いポイント付与をしています。ポイントは、景品と交換でき寄付に使うこともできます。 最後に、7ページをご覧ください。取り組みの効果と考えているデータ集でございます。左下、ハイリスク者の医療機関受診率については87.8%と上昇してきております。

 右上の健診受診者に占める肥満者割合の推移ですけれども、特に男性の40代、50代、60代は肥満率が減ってきておりまして、これは健康意識が高まってきたのかなと考えております。

 右下、人間ドックの受診率につきましては、現在85.9%ですけれども、今後も受診率が上がるように取り組みを行っていきたいと思います。

 がん検診の受診率を高めるためには、健康意識の向上、それから健康リテラシーの向上が極めて重要だと考えておりまして、今後も取り組みを進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

○大内座長 ただいま、がん検診のみではなくて健康増進対策としての大和証券グループの取り組みですが、本日、安藤参考人においでいただいたのには背景がございますね。実は、がん対策基本計画に基づいた企業アクションというものがあって、多分、厚労省の委託事業でも採択されたプロジェクトだと思うのですが、事務局のほうから追加説明はございますか。

○事務局 事務局から説明いたします。

 大和証券グループ様におきましては、先ほども座長より御説明がありましたが、厚生労働省の委託事業でありますがん対策推進企業等連携事業、通称がん対策推進企業アクションにおかれまして、厚生労働大臣賞を受賞されております。

 その理由といたしましては、本日のプレゼンテーションにもございましたように、がん検診の受診率の向上だけではなく、精密検査の受診率の向上や、あるいはがんに対する新しい知識の普及に努められたためでありまして、今回、そのような経緯により、この検討会にお越しいただいたということでございます。

○大内座長 では、構成員のほうから御質問いただければと思います。

 井上構成員、どうぞ。

○井上構成員 ちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、ABC検診と肝炎ウイルスの検査を導入したということで、これは生涯1回、単発という意味づけと考えると、この年にぼんと行って、その後はどのように継続されていくのでしょうか。

○安藤参考人 その後は、新入社員、等の新たに入ってきた社員にのみ実施をしてまいります。

○井上構成員 あと、もう一つよろしいですか。

 最後のデータ集がとてもおもしろくて、だからどうというわけではないのですが、下に4つ図が並んでいて、その右上の肥満者割合がかなり減ったというのは、これはもう単純に上のほうのイベントとか講座の効果と考えてよろしいのですか。

○安藤参考人 これは特に40代、50代等の男性社員が減りましたというグラフなのですけれども、この層は2008年からメタボ指導等で一番手厚く対策を実施してきた層でございまして、職場の雰囲気などを見ていても、健康に関する話題がふえてきたりですとか、あるいは通勤時、当社のビルの階段を上って歩く社員がふえてきたりというようなところがあって、健康に対する意識が高まってきたのかなと考えております。

 上のイベントのほうは、昨年度から始めたばかりですので、まだ効果は出ていないのかなとは思います。

○大内座長 どうぞ。

○上村参考人 済みません。参考人なのですけれども、今、井上先生が言われたABC検診にはリスクが伴うことは御存じですね。1回しかやらないと言われたのですけれども、すると、この検診でピロリ菌に感染している率がというようにおっしゃったのですけれども、感染しているかどうかということと、血清抗体のほうで陽性だということは全然違うのですね。

 血清抗体法は、要するにキットによってカットオフが全然違います。そして今、栄研化学などでやっているもので、10ユニットで切って陽性、陰性と分けていますけれども、学会で1,500例調べたところ、3~10ユニット、いわゆる陰性と判断された方の3~10というのは未感染、いわゆる全く生まれつき感染していない人はほとんどいないのです。

 だから、もしもこれはABCを使われるのであれば、血清抗体のキットは何か、そしてカットオフを3に、今、学会ではそのように推奨しております。注意喚起もしております。これはコメントです。

○大内座長 では、祖父江構成員。

○祖父江構成員 要医療・要精密検査とされた人の受診率を高めたということですけれども、この2割から8割に上昇したというのは、どうやって確認されたのですか。

○安藤参考人 2割のときは、最初に健保組合のほうで人間ドックの補助を行っていますので、その中で要医療・要精密検査の人をレセプトで追いかけてやったところ、2割弱という数字が出てきまして、それにかなりみんなびっくりしました。最終的に8割のところは、先ほどのイエローペーパーを1万3,000名のうち約1,300名ぐらいに配付しておりますけれども、この回収率ではかっております。

○祖父江構成員 やはりレセプトのデータを活用されているということでよろしいですか。

○安藤参考人 最初のところはですね。イエローペーパーの回収については、レセプトの確認はしていないです。

○祖父江構成員 通常、レセプトのデータを利用するというのは健保組合のほうでやることであって、人事部のほうでは、またそのデータを余り公開するというか共用するのもどうかというところもありますので、そのあたりはどのように仕切られているのか。

○安藤参考人 人事、健保、総合健康開発センターで強く連携して一体でやっていきましょうということではあるのですけれども、健保組合にあるレセプト情報等の個人情報に関しましては、一切、人事には来ないようにということでやっております。ただ、健保組合のほうで集計をして、分析をしたものについては利用していこうということでやっております。これは、総合健康開発センターと人事の関係でも同じでございます。

○大内座長 では、白川構成員。

○白川構成員  実は、大和証券さんは健保組合でも各種検診等々で非常に熱心であることで有名な企業であり、人間ドックを35歳以上全員に実施するという健保組合もほかでは余りない例でございます。

祖父江構成員から、事業主と健保組合のデータの共有等について御質問がありました。安藤参考人がお答えになったとおりだと思いますが、実は事業主と健保組合が一番困っているのは、個人情報の共有の部分であり、はっきり言うと共有できないのです。ただ、定期健康診断の結果といいますか特定検診の結果だけは共有できるという法の定めになっているからいいのですが、それ以外は共有できないので、各企業ともに随分苦労をしております。 実際にどう行っているかというと、ドクター、産業医と健保組合は情報を共有するところまではある程度許容されていると思っていますが、事業主のほうに例えば精神疾患とかがんの疾患の情報が行きますと、職場配置の問題ということに結びつくものですから、そこにならないような努力はしていると御理解いただければと思います。

安藤参考人に、逆に私から聞きたいのですが、大和証券さんは、全国に社員の方がいらっしゃるので、相当数の人間ドックの契約を医療施設、健診施設と締結していると思います。私はこの場でいつも申し上げているのですが、健診機関ごとにフォーマットが違うため、データの集積をするときに電子データでいただけないので、紙でいただいた分を、健保組合では手で集計をせざるを得ないのです。フォーマットも基準も全部違うので、これを統一してほしいと幾度も申し上げているのですが、実態として大和証券さんは、どのように処理をされているか、あるいはお悩みがないか。その辺の御意見をお願いいたします。

○安藤参考人 当社グループの健保組合では、人間ドックの補助をしておりますけれども、当社は北海道から九州まで支店が140カ店ございまして、それぞれ社員は地元の医療機関で人間ドックを受けることができるようになっています。

 結果につきましては、当社グループはある業者さんと契約を結んでおりまして、各医療機関で人間ドックを社員が受けますと、その情報がその業者さんのほうに集約されるようになっています。業者さんのほうでデータを作成いたしまして、当社グループの健保組合に送ってきてもらうというようなやり方をしております。

○白川構成員 ありがとうございました。

○大内座長 では、祖父江構成員。

○祖父江構成員 今の追加で確認ですけれども、イエローペーパーに関しては、受診した医療機関から結果をいただいて、それをもとに集計をするということをされるようですけれども、そういうことをしなくても、レセプトのデータを見れば受診したかどうかがわかりますね。だから、そこの操作は特に必要なくても、精密検査を受けたかどうかに関しての情報がレセプトを見れば把握できるということがみそだと思うのですけれども、そうではないですか。

○安藤参考人 レセプトでできるのではないかというような話し合いをしたことはあるのですけれども、なかなかレセプトの情報をきちんと分析をすることが、まだまだ技術的に、人的な問題かもしれませんけれども、うまくできていないところがありまして、今のところは紙を使ってやっています。将来的にはやはり先生がおっしゃられるような形でできればなと思っております。

○大内座長 白川構成員、どうぞ。

○白川構成員 私が補足するのも変ですが、レセプトのチェック体制さえ整備すれば、レセプトで受診状況をチェックできることは確かです。

 ただ、レセプトは健保組合だけが所有している情報ですが、健保組合からこういう結果ですから精密検査に行ってくださいと言っても、余り効き目がないのです。事業主の上司あるいは人事部門から言ってもらったほうが、強制力がより高いのです。そのために情報の共有をしたいのですが、今の法律上できないというのが悩みであります。イエローペーパーみたいなものは健保組合でつくり、それを上司経由で渡していただくようなことを大和証券さんはされているのではないかと思います。そういう法律の制限の中で苦労して、なるべく再検に行っていただくような努力をしていると御理解いただければと思います。

○大内座長 確認ですが、安藤参考人はこのChief Health Officerなのですか。

○安藤参考人 私は健康経営推進課長でございまして、Chief Health Officerは人事担当役員がやっております。私は人事担当役員ではございません。

○大内座長 わかりました。

 福田構成員、どうぞ。

○福田構成員 非常におもしろい取り組みをいろいろされていて、成果を上げられていると思います。ちょっと確認をしたいのですけれども、きょう御紹介いただいたのは基本的に社員の方、健保組合でいえば被保険者の方かと思うのですけれども、まずそういう理解でよろしいでしょうかということと、配偶者等の被扶養者の方に関しても何らかの、例えば一部はこういうことをやっているとか、そういうことはあるのでしょうか。

○安藤参考人 被扶養者に対しましては、まだまだ対策ができておりませんで、現在、社員を中心にやっております。被扶養者に対しましては、健保から郵送物等でぜひ受診をしてくださいというような受診勧奨はしていますけれども、まだ今のところは、そこまででございまして、これからの課題と考えております。

○大内座長 かなり新たな取り組みなのですが、制度上の問題等も多々見えてきたところかと思います。更に続けていただいて、よい制度にしていただければと思います。

 では、本日の参考人としまして最後になりますが、資料の5をもとに、がん検診受診率向上に向けた取り組みの最後としまして、「女性のがん検診の受診率向上に向けた取り組み」と題しまして、国立がん研究センターの山本参考人から説明願います。

○山本参考人 国立がん研究センターの山本です。よろしくお願いします。このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 我々のこの取り組みは、ここのところずっと継続してやっておりますので、何年か前ですけれども、前回この会の報告と重なるところもありますが、最近の進捗をお伝えしたいと思います。

 スライド番号2をごらんください。米国疾病管理センターのレビューによれば、皆さん御存じのとおり、コール・リコールが効果的であるということで、我々の方法は基本的にはこのコール・リコールによっております。

 次のページをごらんください。このコール・リコールなのですけれども、ただ送ればいいということではなくて、できるだけ効率的に送るにはどうすればいいかということで、ソーシャルマーケティングといういわゆるマーケティングの方法を取り入れて、受診勧奨資材を開発し、送付していることになります。

 下の段のスライド番号4ですけれども、これは我々の前身の研究班による東京都で行われた取り組みでありまして、がん検診を受けていない対象者にはそれぞれ無関心、関心者、意図者というような方々がいらっしゃるので、それぞれに対してテーラードなメッセージを送ることが効果があったというようなランダム化比較研究をされました。すなわち無関心な方、私は絶対に大丈夫と思っていらっしゃる方には「乳がんは今や誰しもが心配すべき問題です」ということを伝えるために、少し怖い目の青いようなリーフレットを用い、2番目のがんが怖くて検診が不安という関心者には「早く見つけてしまえば乳がんは治ります」というようにソフトなメッセージ、ピンク色のようなもので送る。

 それから、既に受けようと思っている意図者に対しては、わかりやすく具体的ながん検診受診の方法を伝えることが大事ということで、それぞれ比較すると、大きく受診率が向上したという結果がありました。

 特に右のほうに行くほど受診率が高くなっているということで、ベースラインも違うということがわかっていただけると思います。

 スライド5番をごらんください。ただ、実際にこのような方法を活用するためには、市町村において事前に調査を行って、ターゲットがどういう人かということを調べた上で、3種類印刷して、それぞれの特性ごとに送り分けるということがありまして、これはなかなか難しい、手間もかかるということでありまして、我々としましては1種類だけ送ればいいという普及版のリーフレットを開発して、広げるということを考えてやってまいりました。ただ、余り一緒にしてしまうと、先ほどのテーラーリングが逆に成り立たなくなってしまいますので、主に関心者、意図者に対してターゲットをしたということであります。

 実際に5つのがん検診に対してリーフレットをつくりまして、今回、前の席の方にはお配りしましたけれども、それに加えて、同じような内容なのですけれども、圧着はがきというようなバージョンもつくりまして、市町村の方々に使っていただこうということであります。

 スライド番号7をごらんください。乳がんについて簡単に紹介しますと、先ほどの3つの層に対しての内容を効果的に含むことになっております。まず、中面を開いていただくと、検診無関心な層に対しては、近年、日本人女性の14人に1人が乳がんにかかると言われていますということで、乳がんは今や誰しもが心配すべき問題であるということを伝え、次、下に行きまして、検診が怖いと思っていらっしゃる層には、右の欄、早く見つけてしまえば乳がんは治りますというようなことを伝えています。

 次のページに行っていただきまして、検診の意図者に関しては、わかりやすい受診の具体的な方法、動作指示と言われるものをしている。それから下の段、もう一つ、検査内容についてどのような検査なのかをわかりやすく伝えて、受診の不安を解消するということで、マンモグラフィの内容とその結果についてどうかということをお伝えしています。

 スライド番号11をごらんください。その動作指示のところに、特に女性向けのがん検診に関しては、いろいろ初めての場合に不安があるということで、女性医師による検診が受けられるところもありますということをお伝えしたりということで、女性のがん検診に対して多く見られるような不安に対応している。

 下の段に行きまして、ただで受けられますとか500円で受けられますだけではなくて、もともとのお値段を示すことによって、自治体からきっちり助成があって、本当は高価な検診であって、それが安く受けられるというお得感を強調、しかも税金とか自分たちが納めているものなのだから、使わなければ損だということもお伝えできるような内容にしています。

 同じようなコンセプトで子宮頸がんもつくっておりまして、皆様に配付させていただいているところであります。

 このようなものをつくりまして、それを実際に使っていただかないと意味がない、つくりましたでは研究で終わってしまいますので、いかに普及するかということに腐心してまいりました。

 ここからが普及の話なのですけれども、次のページを見ていただきまして、スライド番号15です。ごちゃごちゃ書いていますけれども、実際にがん検診の実施主体である市町村に関して、我々研究班というか我々の部が、全国1,700の市町村に直接アプローチするのは不可能ということで、都道府県は自分たちが実際の主体ではないのでなかなか難しいところではあるのですが、都道府県に間に入ってもらって、都道府県にノウハウを蓄積することでやっていくということがこのモデルの特徴であります。

 我々研究班がモデルの都道府県、モデルの市町村をお手伝いして、そこで出てきた成果を、その都道府県内のほかの市町村あるいはほかの都道府県に勧めるというような体制でやっております。

17ページ以降、どのような形で普及を行っているかなのですけれども、都道府県と協力して、市町村向けの研修を行って、そのところで、後で述べますようなどうすれば上がっていくのかというようなコンサルも含めた個別コンサルも行ったり、あと、郵送にて都道府県に資材、サンプルを送付したり、あるいはメーリングリストで都道府県のコンサルをするということとか、次の下の欄、ウエブサイトにこのような資材を全部置くということ、「手引き・効果検証の行い方」もお伝えするということ、それから成功事例として具体的な自治体の声も載せるということで、なるべく使っていただくことを進めているところです。

 次のページは一昨年、厚生労働省が作成したがん検診受診率向上ハンドブックでも、我々も監修させていただいて、我々のリーフレットを載せていただいたということで、広げていこうと考えています。

 効果的な方法は幾つもあると思うのですけれども、なかなかそれを広げるというステップがないと実際には役に立たないので、愚直な方法ではありますが、このように毎年広げることによって、現在これまで35都道府県、160の市区町村に利用していただいています。

 実際、このようにして効果があったのかどうかなのですけれども、その下のページにありますように、既にランダム化比較試験において効果があったということは、幾つかこれまでにやってきました。ただ、それが実際の現場で本当に効果があるかどうかということを検証しないといけませんので、いわゆるeffectivenessというのを調べた結果を、次から報告しています。

 次のページはリコール後の受診率なのですけれども、胃がん、大腸がん、肺がんは今回は対象でないので飛ばしますけれども、一昨年、平成26年に対して、27年、我々の研究班資材を用いたところに関しては、年次の比較になっていますけれども、全てのところにおいて受診率が向上したという結果がありました。

24ページは乳がんについてでありますが、ほとんどのところで、この赤で示す研究班資材ありのところが伸びているのですけれども、中には余り変わらない、もしくは下がったところがあります。もちろん研究班資材を用いて下がることは余り考えにくいので、きっと恐らくほかの要因があるだろうということで見てみますと、市町村としては、なるべくこれまで未受診の方に上がってほしいということで、昨年度は全員に送ったのが、今年度は例えば未受診の人に送ってしまった。そうすると下がってしまうとか、リコール時期を変えることによって、ちょっと比較可能性が落ちてしまったということもあります。

25のスライドですけれども、子宮頸がんについて、ほとんど上がっているのですけれども、下がったところについて見ると、受診経験のない方に送った、あるいはリコール後に集団検診の回数が減ったということがあって下がっているということです。

 これまでの我々の経験でわかることは、特によく上がったところ、あるいは全然上がらなかった、下がったところを検証することによって、どういうことが大事かということで、その下にまとめたものがあるのですが、我々のリーフレットを使うことによって、数倍から3倍程度の受診率向上が可能なのですけれども、ポイントとして、コール・リコールに合わせて集団検診や個別検診の受け皿を十分に確保することが重要であるということ。

 それから、無関心な方よりも関心者、意図者のほうが受診率を上げやすいとか、予算が限られている場合は、まずそういう方からターゲットにする。あるいは検診の案内を受け取ったら、すぐに申し込める体制が必要。一度の通知の効果は3カ月程度ということで、年に何度も受診の山をつくると効果的ということで、この資材を用いるだけでなく、それに合わせて体制を整えることが受診率向上の要件と。

 先ほどの新藤参考人の取り組みにもありましたけれども、研究ではないので、それに合わせてほかのこともいろいろ工夫してやるということが非常に重要かなと思っております。現在、普及する際には、このような内容も含めて伝えているところであります。

 最後のページをごらんいただきまして、特に女性のがん検診特有の問題と、我々が考える対応策なのですけれども、特に子宮頸がんですけれども、若年層が対象であることから、検診を受けたことがない人が多い。あるいは病院に行きなれていない。がんは遠い先のことということで、基本的に関心が低いや遠いということですので、なるべく自分事感を出す。若い人も対象であることがわかるようなイラストやメッセージで伝えるということ。それから、女性のがん全般について、他のがん検診よりも抵抗がある。特に子宮頸がん等、そういう傾向がある、抵抗があるということがありますので、女性医師による検診もできることや、イラストなどで具体的な検診方法を示して安心感を出す、お伝えするということなどです。

 それから、実施体制として、親と同居されている場合に、本人に直接連絡が行かないことがある。個別のコール・リコールではなくて、回覧や地域のお知らせとか世帯宛てに送る場合に、親のみが見てしまうということもあるので、もちろんそのためには個別にコール・リコールする。それから、住民票を移していないという場合もありますし、ほかのがんに比べて個別検診が多いということもあって、セット検診がなかなかできないという事情がある場合もありますので、お母さんに声をかけて一緒に行くとか、女性のがん検診としてまとめて乳がんと子宮頸がんを提供することが個別検診でもできればいいのではないかと考えております。

 最後、今後に向けてですけれども、継続受診、全く受診経験のない人に対する取り組み、検診の利益・不利益を正しく伝える取り組みや、皆さんよく御指摘される網羅的な受診管理システムや職域への取り組みについても進めていきたいと考えています。

 全てが八王子市さんのようにきっちり自分たちで工夫してできるようなところではないので、いかに基本的な、既にお金をかけているところをより効率よくやっていくかが大事だと思っておりますので、我々の方法だけで何十パーセントも上がることはないのですけれども、こういう取り組みをできるだけ広く広めること、都道府県にそのノウハウを蓄積していくことが大事だと思って取り組んでいるところを御報告させていただきました。

 以上です。

○大内座長 ただいま、山本参考人から厚労科研の研究班としまして、がん検診受診勧奨研究班モデル事業の途中経過ということでお示しいただきました。お手元にパンフレットの例も配付されておりますが、この2年ほどで、かなり成果は上がっておりまして、35都道府県の160市町村が利用しているということで、さらに工夫を重ねているということでございます。

 皆様から、御質問等ありますか。

 では、松田構成員。

○松田構成員 ありがとうございました。

 これまで受診経験がある人のほうが、このような受診勧奨に応える傾向があるというか、効果が上がりやすいというお話だったと思います。多くの市町村が、これまで受診経験がない人たちをどう受診の現場に連れてくるかと腐心されていると思うのですが、先生は、これまで全く受診経験がない、あるいは無関心の人たちをがん検診に結びつける方法、連れてくる方法は何が効果的だとお考えでしょうか。

○山本参考人 先ほどの議論にもありましたように、何らかの強制力というか義務的なものがないと、難しいと思っています。一つの方法は、日本人に傾向としてあると思うのですけれども、受診率が非常に上がってくると、行っていない人が、自分だけ行っていないみたいなことになることもあると思いますので、そういうノルムを作るということも一つの方法ではあるかと思うのですが、できればより具体的な、何らかオプトアウトな方法を用いるなどして、いいスキームが実際我々も思い浮かんでいるわけではないのですけれども、何らか強制的あるいは義務に近いような形の枠組みを考える必要があるのではないかと思っています。

○松田構成員 ありがとうございます。

○大内座長 斎藤構成員、どうぞ。

○斎藤構成員 未受診者に3つのセグメントがあると。一番動機づけがある、最も受診しやすそうな、反応しそうな人は意図者ですね。このターゲットは、今のお話では意図者を主体にしている。つまり、手堅く今までの取りこぼしを取り込もうということですね。ただ、意地悪な言い方をすると、一番てこでも動かない、その反対の全く無関心な人が本当はターゲットですね。これについてどうお考えになるかが一点。

 もう一つは、受診率を、この基本計画で最初からこれ単独で目標にしてしまった弊害があるのですね。これは、自治体はもうその受診率が目標になっているものだから、一番手っ取り早く受診してくれる人たちをターゲットにしがちなのですね。先生が、都道府県を拠点にして取り組みをする場合に、その辺をきちんと指針どおりの検診間隔を守った上で、それで安易ではなく受診者を掘り起こしてくれというポリシーで多分やっておられると思うので、そのあたりをお聞かせください。

○山本参考人 まず、未受診者のところですけれども、先ほども言いましたが、そんなリーフレットを送ったぐらいで未受診者が行くというのもなかなか難しい問題で、全てを我々に期待しないでというところもあります。

 できれば未受診者に効くようなリーフレットなりを、今後もつくっていきたいとは思っているのですけれども、結局、継続といっても、我々が都道府県の方々と協力してデータを調べたところによると、3回、4回ぐらい受けると、その後は大体ずっと受けるというようなことがありますので、1回受けたまま来ていない人とか、何年か前に受けたけれども来ていない方たちは結構意図者なので、呼び起こしやすいということがありますから、そういうことを上げて、ベースを上げていくということで、どんどん受けても抜けていく、1回だけ受けたけれども抜けていくということがないようにするということが、我々ができることかなと思っています。

 2つ目の御質問ですけれども、確かに我々のものを、ちょっと間隔を変えて使っていいかというような御指摘があるのですが、それに関してはやめてくれということで、厚生労働省から推薦しているような形での検診に限ってこれを使ってくれということでやっていますので、例えば今回は示していないのですけれども、5がん全体のものもつくっていて、1個だけ違う検診をやっているけれども変えていいかみたいな希望もあるのですけれども、それは使わないでくれということで進めているところです。

○大内座長 ほかに御意見はありますか。

 椎名構成員、どうぞ。

○椎名構成員 大変参考になるお話をありがとうございます。

 細かなことなのですが、資料の26ページのところで、下のほうに、一度の通知の効果は3カ月程度というお示しがあるのですけれども、私どもは実際にがん検診の実施の期間をどう考えるかということはいろいろございまして、例えば通年でやってほしいという御意見もあったりするのですが、実際には、こういった勧奨を送った直後は非常に受診者数が多いのですけれども、後はずっと少なくなって、結局終了間際にどっと来るという傾向にあるのです。

 このがん検診の実施期間は、どのように考えたらよろしいか、何かヒントになるものがいただけたらと思います。

○山本参考人 恐らく私よりも新藤参考人のほうがお詳しいと思うのですけれども、今の話の繰り返しになりますけれども、結局、コールなりリコールをしたらそれで呼び起こされていくことが基本的な皆さんの行動パターンなので、まずコールをしたりリコールをしたときに、すぐ申し込めるような体制をつくって、すぐ行けるようにする。そのときに、いっぱいなのでだめです、みたいなことがないように、まず受け皿を十分そのときにつくっておくということ。

 それから、3カ月ぐらいということだと、コールで3カ月、リコールで3カ月、あと何らかの形で締め切りのことをうまくお伝えできると、締め切り前にもう一個山が来るので、そういう山をつくる、それに合わせて検診をずっとやるというよりも、そういうコールとかの後に重点的に集団検診などの回数を置いていくということが効率的ではないかと考えています。

○椎名構成員 ありがとうございました。

○大内座長 浅香参考人、どうぞ。

○浅香参考人 私はがん予防内科学講座というものを北海道大学医学部に創設し、学生たちに講義を行ってきました。がんの予防には一次予防、二次予防があるので、なぜがんが起こるのかということをリーフレットに書く必要はないのでしょうか。がんの根本予防である一次予防は乳がんなど生活習慣に基づくがんに対しては非常に難しいので、二次予防である検診を受けることが重要なのだという持っていき方の方が良いような印象を持ちます。私は学生の講義ではがんの予防の意義を説明し、一次予防が基本で二次予防はそれを補完するものであると教えてきました。ただ、乳がんは恐ろしいというだけではなかなか受診されないのではないのですか。

 ○山本参考人 ありがとうございます。

 我々のこのリーフレットは、今、先生がおっしゃったようなことも含めている部分もあるのですけれども、今のようなお話も含めて、対象の方々にいろいろインタビューをして、最も刺さったものを載せている。マーケティングの基本として、余り情報量が多くなるとみんな読まなくなることがあるので、できるだけぎりぎりに絞ったものになっています。

 先生がおっしゃるような内容については、別の形になるのですけれども、予防についても我々は取り組んでおりますので、そちらのほうでは、むしろそちらに重点的なメッセージを置いたものを使わせていただいているところであります。

 ありがとうございます。

○大内座長 ほかに御質問はありますか。

 福田構成員、どうぞ。

○福田構成員 1点確認させてほしいのですけれども、先ほど無関心者のところの話なのですが、26枚目のスライドで、無関心者よりも関心者、意図者のほうが受診率を上げやすくて、だから全くの未受診者よりも受診経験者のほうが効果を上げやすいと読めるのですけれども、これは全くの未受診者は無関心の方が多くて、受診経験者は関心者、意図者が多いという意味ですか。

○山本参考人 直接的な証拠ではないのですけれども、4枚目のスライドで下のほうに、無関心者、関心者、意図者のところでどれぐらい上がったという数字があるのですが、ベースラインを見ると、無関心者のほうが受診率が低くて、関心者、意図者になるほどもともとの受診率も高いですし、それから効果も大きくなるということで、直接調べたわけではないですけれども、我々はそのように考えてアプローチしているということであります。

○福田構成員 そうすると、これはもともと事前に調査をして、関心者などを分けるのが難しいというお話でしたが、全くの未受診者であれば、そのようなことをしなくてもわかるわけですね。そういうアプローチは難しいですか。

○山本参考人 可能だと思います。全くの未受診者に対しては送らないほうが効率的とかいうようなこともありますけれども、市町村的にむしろ先ほどからお話があるように、そこに何とかしたいということがあるので、逆に、むしろそこに送りたいということもあります。

 実際、この我々のリーフレットを用いて、全然掘り起こせないわけではなくて、データとして、初めて受けた人がどのくらいいるかということも調べていまして、前年度と比較しているのですけれども、大体のところでは、初めて受けた人もふえてはいるのですね。ただ、なかなか手ごわいということで、全く効果がないということではないので、そこは実際にどこをターゲットにしたいのか、あるいは幾らお金を使えるのかというところで市町村の方々が考えて決めていくことになるのではないかと思います。

○大内座長 研究班として今、動いているデータですので、これからさらに深まっていくものと期待しております。山本先生、引き続きよろしくお願いいたします。

 では、全体を通して何か御質問等ございますか。

 本日の議題については、ほぼこれで終了と考えますので、一旦、マイクを事務局にお戻しいたします。

○がん対策推進官 どうもありがとうございました。

 次回の検討会の詳細につきましては、また調整の上、御連絡させていただきますので、よろしくお願いします。

 事務局からは、以上です。

○大内座長 それでは、本日第22回の「がん検診のあり方に関する検討会」を終了いたします。


(了)

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3826)

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