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2017年2月8日 第2回「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成29年2月8日(水) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室




○出席者

委員 (佐藤委員、池田委員、武石委員、山中委員 )
ヒアリング対象企業 (A社、B社)
厚生労働省 (吉田雇用均等・児童家庭局長、吉本大臣官房審議官、源河職業家庭両立課長、六本総務課調査官、大塚労働関係法課調査官 )

○議題

1 転勤に関する企業からのヒアリングについて
2 その他

○議事

【A社からの主なヒアリング内容】

 

・人事区分として、職務と期待役割によって4つの職種を設定している。

1工場や研究所で製造や分析に従事し、転勤がない職種。

2工場や研究所の技術職で、製造拠点の立ち上げなどで、全国・海外への転勤があり、将来的には会社の経営を担うことが期待されている職種。

3国内の各本部を起点に営業の事務、企画を担い、転勤がない職種。

4戦略企画、法務や経理などを担い、全国・海外への転勤があり、経営を担っていくことが期待されている職種。

 

・また、管理職になると、経営を担う役割から全国転勤がある。

・転勤の目的は、1 能力開発・育成機会、2 主体的なキャリア形成支援、3 労働力の効率的活用、4 組織の活性化、の4つある。

・自律的なキャリア形成の観点から、2~5年ごとに勤務地、職種、担当業務などを変更している。年2回の定期異動があり、入社後10年ほどで3箇所経験することになる。このうち居住地の変更を伴う場合もある。

・特に修羅場の経験が社員の成長を加速させると考えており、国内外を問わず、異なる環境での適応力や業務遂行力の実践機会として、転勤は重要。一方で、キャリア形成において転勤が全てではないと考えている。

・転勤の決定のプロセスは以下のとおり。

 1  生活上の事情又はキャリア形成に関する従業員の意向聴取については、本人が、自分の強みややりたいこと、将来に向けての考え、配慮事項などを申告書に記載し、上司がコメントを付したものを人事部門が把握する。また、人事部門が各事業所を年に1度回り、  個々人の現状や配慮事情などを集約し、人事異動の検討の参考にしている。

2 転勤の決定は、対象者のキャリアや経験年数、適性などを総合的に勘案して行う。人事異動の素案は人事部門が作成し、現所属や転出先の各責任者と、異動の背景や目的、キャリアなどを話し合って決定する。

3 転勤の決定後、赴任の3~4週間前に、上司から内示を行う。その際には、赴任先での期待役割や目的も一緒に伝える。育児や介護などの事情は事前に把握しているので、内示後にこれらを理由に異動を拒否されることは想定していないが、仮に生じた場合は、就業規則に照らして正当な理由か否かを判断する。

  ・現状の課題としては、全国転勤型で入社した社員であっても、育児世代、特に女性を中心に、ライフイベントで転勤を受け入れるのが難しく、結果として退職を選択する社員が一部存在している。

・そのような現状の中で、以下のような制度を設けている。

1 転勤回避制度。継続的なキャリア形成の中で、出産、育児、介護、本人の傷病など、一時的な要因によって転勤ができない場合に対応するため、5年間を上限に1回のみ、現在の職場からの転勤をストップできる。

2 配偶者の転勤への帯同等を理由に3年間休業できる制度。

3 結婚・出産などを理由に退職した者について、会社と本人のニーズが一致した場合に契約社員として再雇用する制度。

【質疑応答】

・転勤回避措置について、1回までというのは、事由ごとに1回ということか。

→勤務している期間の中で1回という意味である。育児で1回利用した場合は、その後、介護で利用するということはできない。

  ・転勤回避措置のほかに、育児・介護に関する転勤の配慮を行っているか。

→運用上、配慮をしている。

  ・転勤回避措置は、転勤の内示の有無に関わらず、いつでも申請できるのか。

→いつでも申請でき、申請から5年間は転勤を回避できる。

  ・転勤回避措置は、申請した時に就業している場所にとどまることができるという制度か。

→その通り。希望地へ転勤できるというものではないため、必ずしも全員が満足するものではないと認識している。ただ、仮に希望地への転勤を認めた場合、特定の場所に希望が集中すると配置しきれないなどのおそれがあり、悩ましい。

・申告書で個別配慮希望欄に記載のある場合、必要な配慮の度合いを確認した結果、経験年数などに照らして異動が適当と考えられる場合であっても、一旦見送るというような判断をしているのか。

→その通り。

・遠隔地は無理でも、近県であれば異動可能という場合は、それを踏まえて異動案を策定するのか。

→その通り。
・転勤の目的として挙げられている能力開発や組織開発を、そもそも居住地変更を伴わない異動で達成しようという考え方はないのか。

→そういった考え方もあるとは思うが、居住地を変更しなければ就けないポストもある。

・転勤回避措置がある一方で、個別の運用上の配慮も行うとのことだが、配慮を求める者は転勤回避措置を利用すべきであり、当該措置を利用しない者には配慮をしない、ということにはならないのか。

→明確な線引きは難しい。原則としては転勤回避措置を利用してほしいが、それ以外の者について全く事情を聞かないということではない。

・転勤回避措置を導入した時期や目的は。

→転勤を理由とした離職が実際に発生しており、会社として何かできないかと考え制度を導入した。自律的なキャリア形成と会社によるその支援という考え方から、キャリアの断絶期間を長くしないために、まずは1回5年という形で導入した。なお、導入して間もない制度であり、効果の検証はこれからの課題である。

・資料によると、人事区分の1と3は、原則転勤がなく、限定的なケースで、期間を明示し、元の職場に戻す前提でのみ転勤があり、さらに、2回目の転勤は本人同意が必要とのことだが、これらの運用を、全国転勤のある2や4にも適用することはできないのか。

→2や4について赴任期間の明示や、元の職場に戻すことについては、業務上の理由もあり、難しいというのが率直なところ。

  ・配偶者帯同等による休業は3年までとのことだが、配偶者の勤める会社が赴任期間の明示をしているとは限らないのではないか。

→難しい点である。結果として離職せざるをえない場合もあると思う。
・転勤の際に、拠点というのは特段定めず、どの場所も等価に回していくのか。

→その通り。職種に求められている期待役割に応じて必要な場所で様々な経験をしてもらうため、本拠地という考え方自体ない。

・転勤回避措置などの利用実績は。

→転勤回避措置の登録者は2ケタ。配偶者の転勤への帯同による休業や再雇用の利用は少ない。

【B社からの主なヒアリング内容】

・人事区分は、総合職、専門職、嘱託・契約・バイトの3分類。このうち総合職と専門職は、異動の仕方に応じ、全国転勤型(海外を含めた全国に転勤)、ブロック転勤型(一部の地域に限定して転勤)エリア型(転居転勤がない)に区分される。全体として女性が多い。

・総合職と専門職は本社人事部で一括採用、嘱託・契約・バイト、地方支社の社員は、各事業所で都度採用している。

・異動や転勤の目的は、大きくは人材育成と欠員補充。形を変えながら事業成長する上で、戦略に基づいて人を配置すると、転勤が発生する。

・異動や転勤の基本方針は、新卒者については明確にしている。人材育成の観点から、入社から3~5年程度の間は、様々な事業所に配置し、営業や管理部門など異なる経験を通じて、視野を広げるとともに適性を見極める。その適性や希望に応じて、その後の異動を決めていくため、転勤の多い者と少ない者が分かれてくる傾向はある。

・異動の時期は、年2回を基本とするが、実際にはかなり柔軟に異動を行っており、毎月2回、年間合計24回の異動発令をかけている。異動の頻度や赴任期間は、3~5年が目途。

・転勤の決定プロセスは、原則年に1回、総合職に対して、今後のキャリア形成の意向、希望職種、家庭の事情(結婚・出産・育児・介護)などをヒアリングする。

・その際に、全国転勤型から地域限定型への申請をすることができ、会社は柔軟に認めている。処遇の違いは勤務地コース手当の有無のみ。

・このように、コース転換の機会が定期的にあるため、実際の転勤発令が出た後で転勤できないとの申告をすれば、ペナルティの対象になる。

・転勤者の決定方法は、調整型で、ヒアリングシートの内容を人事部門が確認し、本人の志向や経験、評価、現所属の長の意向もマッチングしながら決定する。決定内容は、原則として上司から本人へ、直前に通知する。
・年間で、転勤する者は、概ね1割である。

・処遇については、職能等級及び転勤範囲別のコースによって、手当の金額が異なる。会社としては全国転勤できる者を多く確保したいので、全国転勤型に多く支給する仕組みとしている。

・転勤の課題としては、転勤の効果を測定するのは難しい一方、逆に転勤させない場合は、同じ者が同じポジションに居続け組織が活性化しない、という難しさがある。人の入れ替えの手段としての転勤の必要性を感じる。

【質疑応答】

・全国転勤型などのコースは、入社時に選択するのか。また、その変更のルールは。

→原則として、総合職で入社する場合は、全国転勤型かブロック転勤型を条件としている。その後のエリア型への変更は、結婚・出産・育児・介護などのライフイベントに応じて、個別の申請があり、それを認める形。

・変更が認められるのは、全国転勤型からブロック転勤型もしくはエリア型への方向のみか。

→エリア転勤型から全国転勤型への変更はいつでも歓迎である。

・各コースの違いは手当のみで、昇進の上限や基本給の違いなどはないのか。

→ない。

・ブロック転勤型を選ぶと、地域によっては部長ポストが少ない等の理由で結果的に昇進が遅れることがあり得ると思う。それはポストの数の問題という理解でよいか。

→そのとおり。実際、エリア型の社員が部長職に就いている例もある。

・年間で、転勤者は約1割とのことだが、単純計算すると、 10 年に1回転勤が回ってくるということか。

→そうであるが、近年の入社で全国転勤型やブロック転勤型を選んだ者については、入社時点で転勤をさせるため、ほぼ全員が転勤していることになる。

・入社5年目以降に、転勤をする者とそうでない者とに分かれていくとのことだが、分かれる要因は何か。

→適性によるもの。当社の地方拠点は、殆どが営業拠点であるため、全国転勤が必要なのは、営業の適性を持っている者、つまり営業のスキルや経験、ヒューマンマネジメントに長けた者である。逆に、対人業務は得意でないが、特定分野で高い能力を発揮できる者は、本社に置く。後者について、公平性を保つために転勤させるようなことはしない。

・総合職で全国転勤型の手当をもらいながら、実質的には長期間転勤しない人がいると、エリア型などとの間で不公平感はないのか。

→それはあるかもしれないが、制度として、総合職は、全国転勤型又はブロック転勤型が原則で、エリア型は特例であるという建て付けのため、整理ができているという認識である。

・転勤がないと組織が活性化しないとの話があったが、それは規模の小さい事業所のことか。

100 人~ 150 人規模の拠点の場合でも、トップやマネージャー層が変わらないと組織が活性化しない、あるいは弊害が生じることがある。

・規模が小さい等により転勤がない会社も実際にはある。そのような会社は、転勤以外の方法で組織を活性化させているのではないか。

→転勤以外の方法による組織活性化は、考え方としてはありうると思う。

・異動と昇進、昇格、昇給は概ねリンクするのか。

→分析はしていないが、様々な事業所を経験した者は、視野が広く、視座が高くなるため、結果的に昇進、昇格のスピードが速まる可能性は高いと考える。

・全国転勤型は選択時から、ブロック転勤型は転勤した時点から、手当がつくようだが、全国転勤型も、実際に転勤した時点から手当を乗せるという方法は難しいか。

→そのような方法もあるかもしれないが、当社の制度の沿革からは、今変えるのは難しい。

・ブロック転勤型の人は、例えば東京から大阪に異動するとその時点から手当がつき、東京に戻ると、同額がさらに上乗せされるのか。あるいは、一度転勤を経験すれば、その後ずっと定額が支給され続けるのか。

→一度手当がつけば、そこからさらに上乗せすることも、逆に外すことも基本的にはない。全国転勤型より少し低いが、定額を支給し続ける。実際には、ブロック内でのローテーションは運用が難しく、発生頻度が低いということはある。

・全国転勤型の人の移動を考える際には、まずは組織活性化や人材育成を念頭に考えるのか。

→まず人物ありきで、ある従業員を動かしたいと考え、そこから、その個人の個別事情を確認するという順番である。

  ・可能であれば居住地変更を伴わない事業所に異動させるという考え方はあるか。

→当社はむしろ、地方の営業なのかそれ以外なのか、また、営業として出すならどこに出すのかという考え方である。

・赴任期間を明示するのは難しいか。

→約束できるものであれば明示したいが、各事業所の人員状況など様々な要素があり、約束することは難しい。

・転勤に配慮すべき個別事情を申し出る人の割合は。

→おおむね3割。ただし、実際の配慮は、転勤の対象になって初めて行うので、3割という多さはあまり気にしていない。

・配慮の申し出が3割、実際の転勤者が1割とすれば、全体の中で、これらを掛け合わせた割合の人が配慮の対象になるとみてよいか。

→そうなる。ただ、配慮事由のレベル感も多様で、例えば、「親の年齢からそろそろ介護が必要になるかもしれない」という漠然としたものもあり、個別に判断する。

・配偶者の転勤に対する配慮は実施しているか。

→配偶者の転勤先に近い事業所に異動させるケースが一定数ある。その他、配偶者の転勤に伴って退職した者を再雇用する制度がある。

  ・いわゆる配偶者帯同休暇はあるか。

→ない。

・再雇用制度は、再雇用が約束されているのか。

→事象所の人員状況等もあるため、再雇用すること自体を約束するものではない。約束しているのは、再雇用する場合には、退職時と同等の条件で戻れるということ。

・離職後何年以内の人が対象か。

10 年以内が対象。

・転勤の告知は直前に行うとのことだが、実際にはいつから赴任先で仕事を始めるよう指示しているか。【吉田局長】

→人事発令後、1週間以内に着任し引継も終える決まりだが、現実には難しいため柔軟に対応しており、2週間程度かけるのが実情。あまり早期の告知では現在の業務に対するモチベーションが低下する懸念もあるため、難しい。

 


【委員の意見交換】
○本研究会で扱う「転勤」の範囲について

・「転勤」とは、勤務する事業所の変更を広く意味する場合もあるが、この研究会では、このうち居住地の変更を伴う異動をテーマとすべき。

・判例では、「特に転居を伴う転勤は」との表現が用いられており、転居を伴わない「転勤」もあることが前提とされている。

・転居を伴わない事業所間異動であっても通勤時間に影響する、という議論はありうる。しかし、今回の検討の対象は転居を伴う異動とするのが適当。

○労働者の事情等の把握について

・労働者の仕事と家庭生活の両立に関する事情の把握は、定期的に把握する場合と、転勤を打診する時点での確認とが考えられ、いずれも重要。なお、前者は多くの企業で既に実施しており、後者のほうがハードルが高いのではないか。

・事業運営上や人材育成上の転勤と労働者の意向との折り合いをつける観点からは、定期的に把握した上で、決定に当たっても聴取するのが効果的。


○転勤の有無により雇用区分を分ける場合

・コース別に雇用区分を分ける場合、いわゆる総合職・一般職の別もあるが、この研究会では、同じ仕事をしているが転勤のある人とない人がいるという、いわゆる勤務地限定正社員について整理する、というスタンスにするのが適当。

・転勤の有無により雇用区分を分けている企業では、転勤ありのコースの労働者には個別の状況把握や調整が必要ないとの考え方もできるが、仮にそうした場合、ワーク・ライフ・バランスを重視する労働者は、転勤なしのコースしか選べなくなる。転勤ありのコース の労働者にも個別の調整を行うこととすれば、むしろ当該コースを選択できる者が増えると考えられる。

・キャリア開発上の意思確認の意味からも、労働者の個別の状況把握を行うことが適切。

 

○転勤に関する賃金のプレミアム

・転勤を理由として賃金にプレミアムを付加する場合、事前のプレミアム(実際の転勤の有無にかかわらず、転勤する可能性があることを理由とする賃金の付加)、事後のプレミアム(実際に転勤したことに対する賃金の付加)のいずれも考えられるが、後者は、アイデアとしてはよいが、本拠地が決まっている場合等を除き、いつ支払うべきかが難しい。

・事前と事後のいずれかが常にベストということではなく、企業の選択によるべき。 


○転勤に関する企業の基本方針

・労働者の個別の状況に応じて転勤の調整をする前の段階のこととして、異動頻度を変えることでそもそも転勤の頻度そのものを減らすことや、転勤に代わる方策を検討することも重要。

・また、転勤をさせる場合には、赴任期間を明示することが望ましい。

・転勤の頻度について、転勤に付随して企業が負担する費用に見合っているのか、投げかけをしてはどうか。


○報告書の性格について

・本研究会がまとめる雇用管理のポイントは、事業主に対して個別に法的義務を課すものではないということを、報告書の中で明記した方がよい。

・その前提として、企業の側も転勤の雇用管理について悩んでおり、参考となる情報を求めているという現状にも言及することが適当。

○その他

・本日のヒアリング対象企業で導入している、配偶者の転勤に伴う制度(休職や再雇用等)について、報告書でも何らかの形で言及してはどうか。

・転勤の問題は、転勤する労働者の配偶者の勤務先にも雇用管理上の影響を与えるという点からみても、一社だけの問題ではなく波及性のある問題であることを報告書で明記すべき。

 

 

 


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