ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会食中毒部会)> 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録(2017年3月16日)




2017年3月16日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

○日時

平成29年3月16日(木) 14:00~


○場所

航空会館201会議室


○議事

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  定刻より少し早いですが、全員おそろいになりましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会を開催いたします。本日の進行を務めさせていただきます監視安全課食中毒被害情報管理室の岡崎です。どうぞよろしくお願いいたします。開会に当たりまして、北島生活衛生・食品安全部長から御挨拶を申し上げます。

○北島生活衛生・食品安全部長  生活衛生・食品安全部長の北島です。本日は年度末の大変お忙しい中、食中毒部会に御参集いただきまして誠にありがとうございます。委員の皆様方におかれましては、日頃より食品衛生行政の推進に格別の御高配を頂いておりますこと、改めて深く感謝申し上げます。食については、本当に人々の暮らしに欠かせない重要な問題で、昨年の年末にかけてTPP特別委員会が開催された中でも、食の安全に関する御質問を連日頂いておりましたところ、改めて国民の皆様の関心の高さに、私どもも身の引き締まる思いをしたところです。

 本日は、昨年の食中毒の発生状況の報告のほか、近年、大規模事例が発生しているノロウイルスやカンピロバクターによる食中毒、そして昨年、残念ながら 10 名の方が亡くなられるという事例も発生いたしました腸管出血性大腸菌による食中毒について、大量調理施設衛生管理マニュアルの改正案などを含んだ食中毒対策について、御議論いただきたいと考えております。御忌憚のない御意見をたくさん頂戴できればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  報道機関の方がいらっしゃいましたら、頭撮りについてはここまでとさせていただきますので、御退室のほうをよろしくお願いいたします。

 次に、本年1月に定期の委員の改選がありましたので、事務局から御紹介いたします。今回の改選で新たに本部会の委員になられましたのは、国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長の朝倉宏委員、浜松医科大学健康社会医学講座教授の尾島俊之委員、公益社団法人日本医師会常務理事の松本吉郎委員です。この3名以外の委員については再任となっております。また、部会長については、東京農業大学教授の五十君委員が選任されていますことを御報告いたします。

 次に、事務局の異動がありましたので、説明させていただきます。生活衛生・食品安全部長には北島が着任しております。大臣官房審議官に橋本が、企画情報課長には長田が着任しておりますが、本日は業務により欠席しております。また、輸入食品安全対策室長に梅田が、食中毒被害情報管理室長に森田が着任しております。

 本日の部会は、 16 名の委員のうち、清嶋委員、倉根委員の2名の委員が欠席との連絡を受けておりますが、 14 名の御出席ということで、薬事・食品衛生審議会の規定に基づき成立していることを御報告いたします。なお、賀来委員については 20 分ほど遅れるという旨の連絡が入っております。議事進行については、部会長にお願いします。それでは、よろしくお願いいたします。

○五十君部会長  早速、議事に入りたいと思いますが、初めに事務局から配布資料の確認をお願いしたいと思います。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  まず、議事次第がありまして、その後、委員名簿があります。資料1として「平成 28 年食中毒発生状況 ( 概要版 ) 」、資料2として「平成 28 年食中毒発生状況」、資料3として「食中毒対策について ( ノロウイルス、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌 ) 」です。参考資料として「大量調理施設衛生管理マニュアル」を付けております。資料2ですが、一部訂正があります。6ページ、都道府県別食中毒発生状況の保健所設置市再掲の資料がありますが、こちらは一部訂正がありましたので、先ほど差替えをお配りしております。資料の不足等がある場合は、事務局のほうに申し付けていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○五十君部会長  資料は大丈夫でしょうか。過不足等はありませんか。よろしいですね。早速、議題に入ります。 ( ) として、平成 28 年食中毒発生状況について、御審議いただきたいと思います。資料1及び資料2の平成 28 年食中毒発生状況について、事務局から説明をお願いいたします。

○道野監視安全課長  資料1に基づいて説明いたします。監視安全課長の道野と申します。よろしくお願いいたします。平成 28 年の食中毒の発生状況を御報告して、内容について皆様に御承知いただくという趣旨で、議題1を説明させていただきます。本来の資料としては、資料2で全体のデータがあるわけですが、資料1に主なものを抽出して整理しておりますので、ここでは資料1に基づいて説明いたします。

 資料1の2ページ、食中毒事件数・患者数の推移ということで、平成 28 年の状況について、全体像ということです。赤の棒グラフが事件数、青の折れ線グラフが患者数になっております。上段の表でも分かるのですが、事件数、患者数ともに、 1,140 件、約2万人の患者数ということで、例年と大きく変わらない数字となっております。ただ、死亡者数については 14 名という結果となっております。

 3ページですが、私どもが大規模食中毒と言っております患者数 500 人以上の事例です。1件が都の江東区の飲食店、これは臨時営業なわけですが、いわゆるイベントで鶏のささみ寿司を原因としたカンピロバクター食中毒です。患者数 609 名でした。2番目は京都の旅館で発生したノロウイルス食中毒で、患者数が 579 名でした。

 次に、死者の発生した食中毒事例です。昨年もこの部会で植物性自然毒の食中毒が増えていて、なおかつ高齢者ということで御報告申し上げ、また、その後、部会での審議結果を踏まえて、注意喚起等も行ったわけですが、やはり4月、5月の時期、これ以外にも死者のなかった事例も含めて発生が継続しております。上の4つの事例、4人についてはいずれも高齢者で、植物性自然毒でお亡くなりになっています。いずれの事例も有毒植物を誤認して食べられたことが原因と、都道府県からの報告が上がってきております。

 5番、6番が千葉県、東京都で、8月下旬に発生した、これは同じ系列の老人ホームで、きゅうりのゆかり和えを原因とするO 157 による食中毒ということです。この3ページに挙げたそれぞれの事例について、事例の概要、再発防止対策については、また後で説明いたします。

 次は年齢階級別の食中毒患者数ということで、過去3年間の傾向を見ているわけですが、4ページは患者数、いずれも過去3年間の分布は大きくは変わっていないということです。

 5ページは月別の発生状況です。上の棒グラフが事件数、下の棒グラフが患者数です。近年、冬場の食中毒事例、患者数が増えているということで、内容はノロウイルスによる食中毒が大きく影響しているという状況です。

 6ページは病因物質別の事件数です。今申し上げたとおり、冬場にウイルスによる食中毒が増えているということがあり、赤の所、多くが、ほとんどがと申し上げたほうがいいですが、ノロウイルスです。平成 28 年、飛び抜けて増えているということではなくて、平成 27 年のほうがウイルスについてもかなり多かったということが言えると思います。 7ページ、患者数については、昨年 12 月にノロウイルスの食中毒の発生がかなり多く、一昨年の 12 月と比べても、かなり多い数という状況です。ただ、全体の変動の傾向は大きくは変わっておりません。

8 ページですが、原因施設別の事件数です。食中毒の事件の6割以上が飲食店で発生し、旅館、仕出屋、事業場、家庭です。

 9ページは患者数で、患者数で見ても飲食店は1件当たりの患者数が若干少なく、事件数から見ると割合は多少下がっておりますが、 55 %が飲食店です。次いで旅館、仕出し、学校、病院等々という順になります。

10 ページですが、原因食品別の事件数で、下の注釈を御覧いただくと分かりやすいのですが、「その他」というのは、何月何日の食事とか、何月何日の昼だとか夜だとか、割と大雑把な形でしか原因が分からなかった場合は、その他に入ります。酒精飲料、氷菓などと書いていますが、これは統計上、このように整理していますということを書いているだけですので、実際の「その他」の数字の内訳としては何月何日の昼食だとか、食事だとかいうような形で、自治体から報告がされた場合にその他という分類に入れております。

 また、2番目に多いのが複合調理食品ということです。複合調理食品については、下の※の所を見ていただくと、コロッケ、ギョウザ、肉と野菜の煮付け等々ということで、食品そのものが2種類以上の原料により、いずれをも主とせずに混合調理又は加工されているもので、そのうちいずれかが原因食品であるか判明しないものという整理になっております。主たる原料、食品がはっきりしているものについては、それぞれほかの分類にありますように、野菜とか穀類の加工品という形で分類されます。その他が約半分、次いで魚介類、複合調理食品、肉類・加工品の順になっております。

11 ページが原因食品別の患者数で、その他の割合が大きくなっています。次いで、複合調理食品、魚介類、肉類・加工品という順になっております。

12 ページは原因食品別の事件数の推移で、これも先ほど申し上げた「その他」の分類のところが、事件数としても非常に多くなっております。次いで魚介類という順になっております。

13 ページは病因物質別の事件数の発生状況で、毎年同じような傾向ではあるのですが、原因病因物質としてはノロウイルスとカンピロバクターが事件数ベースで言うと多くなっています。

14 ページは患者数ですが、患者数についても同様です。ただ、ノロウイルスの場合、給食施設だとか、仕出しだとか、そういったところでの発生が顕著であるということもあって、患者数ベースで見ると、割合としてはかなり大きくなる。カンピロバクターの関係については、主に鶏肉の調理品で飲食店での発生が多いものですから、これはまた後ほど御説明いたしますが、そういった意味で、1件当たりの患者数はノロウイルスよりも少ない傾向があるということで、このような数字になっています。

15 ページ、主な食中毒事例について概要を説明します。 16 ページですが、冷凍メンチカツによる食中毒、これは原因物質が腸管出血性大腸菌O 157 ということであったわけです。概要にあるように、平成 28 10 月から 11 月にかけて、製造者は静岡県内の製造業者です。そこで製造された冷凍メンチカツを原因としたO 157 の食中毒で、患者が 12 自治体で計 67 名、報告・確認がされたわけです。食中毒の原因になった製品の特徴です。生肉にパン粉等が付けられた状態で冷凍された「そうざい半製品」で、商品の設計としては消費者が加熱調理して食べるというものです。食べる際には 170 ℃から 175 ℃の油で6分間揚げることが必要という表示がされていたというものです。食中毒の発生状況ということで、この静岡県の製造業者については、いろいろな販売者から委託を受けてこういったものを製造しているということがあり、3つの種類のメンチカツから、それぞれ有症者数ベースで言うと、 62 、4、1という形で、また自治体についてはここに掲載されているような範囲で、患者が確認をされて報告されているという状況です。

 こういった未加熱の食肉調理品に関して、私どもの対応として、消費者庁と相談をして、もちろん消費者への加熱徹底の周知も重要なわけですが、適切な情報提供に関する指導を各都道府県から事業者の方にしてほしいということで、通知しております。特に小さな字で一応書いてあるというものもありますので、そういったことについて、もっと分かりやすい形での情報提供を求めたということがあります。

17 ページから数ページは御参考までなのですが、こういった冷凍メンチカツの調理が、今、家庭で適切に行われるかというと、少し難しい部分でもあるのではないかということで、こういった調査をしております。関係自治体の聞き取り調査によると、今回の事例でも加熱不十分で食べられたケースも含まれているということがあります。

 次の次のページから、順に写真があります。1つは油の量と温度と時間と、この3つのパラメーターが関与しているのではないかということでした。要するに適量調理というのは、十分に油を使った場合ということです。それぞれ揚げてみると、こういう結果で、おおむね中心温度もそこそこ上がっているということがあります。 18 ページの表を見ると、こういった場合であっても時間が短いと加熱不十分になる。一番上の段、1、適量 (1.2 ) という所の表の右のほうを見ると、このような結果になっています。この商品自体は、実際に 170 175 ℃で6分間揚げるという指示になっているわけですが、6分で揚げた場合は中心温度が 60 75 ℃未満ということで、少し微妙なところ、微妙に加熱不十分な可能性がある。 170 180 ℃で6分間、確実に揚げていれば、加熱十分であるというところです。

 以降、油の量を減らしていくということで、実験をした結果が掲載されております。適量の半分でいくと、 160 180 ℃、若しくは 150 180 ℃で6分ないし7分揚げることによって、ようやく加熱が十分になる。さらに、フライパンの底のほうにちょっと油を引いて揚げるというのが 22 ページです。これで見ていただくと、加熱十分になるまでには、油温としては 140 165 ℃で 20 分ぐらい揚げないと、なかなかその中に火が通らないということです。こういった揚げ方にも注意する必要があるということで、厚生労働省のほうでもホームページ等々で情報発信をしているということです。

23 ページですが、こうしたことを踏まえて、先ほども若干触れさせていただきましたが、都道府県等を通じて注意喚起をしております。1番目、2番目の話としては、もちろん家庭での調理の注意事項です。3番目の枠ですが、こうした未加熱の食肉調理品を製造・販売する事業者に対しては、字の大きさや配置にも配慮した容器包装への表示、店頭表示等、適切な手段によって調理方法や使用方法等、安全な喫食方法を分かりやすい表現で消費者に情報提供するようということで、周知を依頼したところです。また、この内容については関係業界団体も含めて通知をして徹底していただくように、対応したところです。

24 ページです。近年、ヒラメの刺身を原因とするクドア・セプテンプンクタータという原虫ですが、これの食中毒が継続しているということで、この部会においても御議論等いただいてきたところです。現状について、簡単に報告します。右下のヒラメによるクドアの食中毒ですが、 2013 年以降の数字を出させていただいておりますが、全体の事件数は 2014 年から比べると、少し減ってきている状況にあります。この減少の要因は、国産の養殖物については生産段階での対応が進んできているということもあり、国産の養殖物を原因とするものについては減ってきております。一方で、天然物についてはなかなか対策が難しいということもあって、数字自体は大きくは変わっていないということです。

 一方で、韓国からも養殖ヒラメが輸入されております。韓国側でも対策は進められているところですが、国内並みにはまだなっていないという状況です。左側は輸入時の対策ということで、韓国産のヒラメ及びその加工品についてはモニタリング検査ということでやっているので、特定のというのはそれまでにクドアが検出された養殖場であるとか、そういった特定の養殖場について、輸入の都度、検査対象となる。その他の養殖業者、養殖場については、モニタリング検査で検査を実施しているという状況にあります。輸出国対策ということで、韓国側においても自主ガイドラインに基づいて、種苗、養殖、出荷の各段階で検査を行って、ロットごとの分別管理を実施しているということです。ただ、韓国については、まだ食中毒の発生があるということもあり、昨年の 12 月に日本側から専門家、担当官を派遣して現地調査を行い、追加対策について要請しているという状況です。

25 ページは平成 28 年の食中毒ではないのですが、最近の事案ですので、資料を用意しました。平成 29 年1月 26 日に和歌山で学校給食を原因とするノロウイルス食中毒が発生しました。後になって分かるわけなのですが、使用された「キザミのり」が原因ではないかということで、その後、東京都の立川市、小平市、そのほかにも大阪府内の飲食店、久留米市内の事業所と、ノロウイルスによる食中毒が発生しており、また、大阪の事業者が加工したキザミのりが使用されていたという事案です。下に書いてあるとおり、6施設で同一の製造者が加工したキザミのりが使用されたという事案です。患者便から検出されたノロウイルスの遺伝子配列が和歌山県及び東京都の食中毒事例と一致という調査結果になっております。

 次ページですが、「キザミのり」の調査状況で、販売者から委託されて刻み加工をしているわけですが、そこの事業者が加工したもので、再び販売者Aを通じて販売・流通したというものです。この加工業者については、従事者が 12 月下旬に嘔吐等の体調不良、板状の海苔を素手で機械に投入等々の状況があったということでした。右側が大阪市で加工所での検査を行ったわけですが、結果としては、ふきとり検査の結果、 25 検体中8検体、トイレとか海苔の裁断機等からノロウイルスが検出されたということです。現在、回収命令対象品、同一ロットのものということで、 780 ( 賞味期限 12 月1日 ) が回収命令の対象品となっております。また、関係食品として、同一加工所が加工した 14 商品についても、自主回収の対象食品ということで、現在、対応がされております。

 こういった事案を踏まえて、加熱せずに喫食する乾物であるとか、摂取量の少ない食品であっても、ノロウイルスの対策が必要であるということで、小規模施設も含めて立入検査の際には食品取扱者の健康状態の確認等の汚染防止対策の徹底ということで、ノロウイルス対策に関して、こういったきめ細かい対応が必要であるということで、地方自治体に対して私どものほうから通知を発出して、更なる対応についてお願いしたところです。資料1について、説明は以上です。

○五十君部会長  ありがとうございました。平成 28 年度の食中毒の発生状況の概要と、それから、引き続きまして、3つの具体的な事例について御紹介があったと思います。ただいまの事務局の説明に関しまして御質問、あるいは御意見等がございましたらよろしくお願いしたいと思います。

○賀来委員   ただいまノロウイルスの御説明を頂いたのですが、 25 26 ページ目にあります、いわゆるノロウイルスを体内で持っておられた方が 12 月下旬に嘔吐などの体調不良で、その段階でノロウイルスがこの食べ物:キザミのりの中に混入したということですね。そうしますと、食物中のノロウイルスが2か月近く残存していたという形になるのですが、それぐらい長くウイルスが残存するというのは、ウイルス学的に、実際にそれだけ長く生き残っていくと考えてよろしいのでしょうか。私は現在、院内感染対策などの業務に対応しておりまして、環境などの清掃あるいは消毒も医療施設の中で対応しているのですが、これはそのように考えてよろしいかということを御質問したいと思います。

○五十君部会長  ノロウイルスですので、野田委員からまずコメントを頂きまして、あと、砂川委員からお願いしたいと思います。

○野田委員   ノロウイルスの生存性に関してです。御存じのようにノロウイルスは、培養することが最近やっとできるようになったのですが、これまでできていなかったということで、その代替ウイルスの結果ということになります。私共のデータとなりますが、生存性はどのような状態で乾燥させるかということに大きく依存するのですが、一番生存性が長い状態で乾燥させますと、少なくとも2か月は生きています。ウイルス量は、2か月で大体 1,000 分の1ぐらいに低下します。今回の事例で、ノロウイルスにおいて実際の食品で 2 か月程度性生存性があったということが、証明されたと理解しています。

○賀来委員    分かりました。2か月間で 1,000 分の1ということになると、かなり少ない量でも多分生き残っているので、ノロウイルスの伝播性というか、感染性から考えると、今、先生がおっしゃったような形で、やはりノロウイルスがある程度残っていたと考えてよろしいわけですね。

○野田委員   そうです。

○賀来委員   どうもありがとうございます。

○砂川委員   私自身はノロウイルスの生存性の実験等に関わったことがありませんので、そこについてのコメントはできません。ただ、確か 2007 年に東京都内のホテルだったと思いますが、非常に有名な、いわゆる掃除機で吸い込んだ乾燥したノロウイルスによる、かなり空気感染に近いような大規模な事例がありました。ああいった事例が発生するようなことを考えると、かなり乾燥してしまったような状況においては、長期的にも感染し得る状況が維持されるのではないかとは思います。しかし、生存性自体の実験には関わっておりません。

 1点、事務局の方に質問ですが。先ほどのキザミのりの関係で、加工所等からノロウイルスが検出されているという情報がありましたが、このウイルスと、いわゆる食中毒事例で検出されたウイルスの遺伝子レベルの一致は見られているのでしょうか。

○道野監視安全課長  全部が一致しているわけではないのです。例えば施設の拭き取りから検出されたものに関しては、こちらに連絡が来ているものに関しては、遺伝子型については一致ということで報告を受けています。 11 について、施設については、東京都のものと一致していますという報告が来ています。一方、残品に関しては、若干違うものもあると報告が来ています。残品というのは、キザミのりの食品のほうです。

○五十君部会長  最初の質問については、賀来委員、それでよろしいでしょうか。

○賀来委員   結構です。

○五十君部会長  砂川委員、今の御質問の回答はよろしいでしょうか。

○砂川委員    はい、ありがとうございます。

○五十君部会長  それでは、松本委員ですね。

○松本委員   ちょっと分からないので教えていただきたいのですが。私、ノロウイルスについて詳しく知らないのですが。遺伝子型によって、その毒性の違いとか、最近の流行の違いとか、もし何かお分かりになることがあったら専門の先生に教えていただきたいと思うのですが。

○五十君部会長  こちらは、どちらの委員からいきますか。では野田委員、お願いできますか。

○野田委員   ノロウイルスの病原性は、細菌の毒素などの病原性とは違うので説明が難しいのですが、少なくとも、患者の年齢や疫学的な様相については、遺伝子型の種類によって違いがあるのは確かです。

 今回のキザミのりの原因となったのは GII 17 というタイプで、最近はやりだしたウイルスが原因になっています。これは、ほかの遺伝子型のウイルスと比べて、どちらかというと二枚貝に関連する食中毒によく関与するなど、これまではやっていた GII .4と比べると、疫学的な様相は違いがあります。それをもって「病原性が違う」という表現にはならないのですが、少なくともその性質には違いがあるようです。

○五十君部会長  よろしいでしょうか。

○松本委員   ありがとうございました。

○五十君部会長  このキザミのりの事例につきましては、どうやら海苔という、乾燥剤の入っている食品がウイルスの生残性に関係した可能性もあるので、その辺りは、今後、また検討していただければと思います。ほかに。

○今村委員   御説明の中で、資料の2ページの食中毒の件数で、事件数が減ってきているという御説明で、事件数は減ってきていると思うのですが、いつも本体のほうには2例以上と2例以下が分かれて書いていて、2例以上で見た場合には、患者数は減っても余り減っていないかなという話があったと思うのですが、1例報告しているのがごく一部の県なので、そこが廃れて減ってきているのか、それか、本当に件数そのものも減ってきていると考えておられるのか、そこら辺のところはいかがでしょうか。

○道野監視安全課長  数字としてはこのように表れているわけですが、この程度のぶれであれば、これぐらいの差で減った、増えたという感じではないのかなというようには受け止めています。必ずしも減っているという表現が適当とは私も思いません。

○今村委員   O 157 のときに1例報告がバーッと増えて、一時、件数がすごく増えて、だんだん1例報告をする所が減ってきて件数が減ってきていて、今まで、割と2例以上報告と1例以上報告を並行して出してきてもらっていたと思うのですが、2例以上報告で見たら余り変わっていないかなという話もあったので、その辺が説明のときにちょっと気になったのです。以上です。

○五十君部会長  ありがとうございました。

○益子委員  川崎市宮前区役所保健福祉センターの益子です。 18 ページの冷凍メンチカツの調理法ですが、これは、同じ時間であっても油の量によって加温が不十分になり得るということを示しているのでしょうか。もしそうだとすると、私は主婦なのですが、油の量というのは余り厳密に測って揚げたりしていないので、そこら辺は喚起する必要があるのではないでしょうか。少量の揚げ焼きというのは別にしても、その半量とか適量か、どれをもって判断するのか。いつも 1.2 Lも使っているかなとちょっと思ったので、油の使用量は人によって随分違うと思うのですが。

○五十君部会長  これまで油の量は余り考慮していなかったと思いますので、その辺りは皆さん関心があるかと思います。これはどうしましょうか。事務局。

○道野監視安全課長  本件につきましては、厚生労働省で昨年の 12 月に注意喚起ということでホームページに載せたりツイッターに載せたりしています。これは、継続して情報提供していきたいと考えております。それともう 1 つは、やはり解凍したものと冷凍したもので違う。

○益子委員  私も解凍したものとは違うと思いますけれども。

○道野監視安全課長  字で書いてもなかなか分からないので、こういったものに関しては、画像付きで情報発信しないと、なかなか伝わらない部分はあるのかなと思っています。

○益子委員  要するに、鍋の大きさとかによっても油の量は違いますし、本当に一般の主婦がその適量をどのように判断したらいいのか。

○道野監視安全課長  製品にもよるのですが、どれぐらいの油でということを書いているものもあります。そういった意味で、業界サイドでも、油の量というか、そういったものについてもきめ細かく情報発信してもらう。あと、個数を何個でというように書いているようなものもあります。いろいろ調べたところ、業者によって調理方法に関する情報にばらつきがある。昨年 11 月末に関係事業者に対して調理方法等に関するそういった情報提供をきめ細かくやってほしいということも併せて通知したところです。

○五十君部会長  よろしいですか。

○調委員    今の問題ですが、これだけ温度にばらつきがあるとなると、正しい表示というのは、一体どうすれば正しいのかというのが分からなくて。正しい表示というのは、中が変色するというか、赤い色がなくなるまで加熱するというのが正しい表示なのか、その辺のところはどのように考えたらいいのでしょうか。

○雨宮委員   今のメンチカツなのですが、その赤色の部分とおっしゃっていたのですが、「中心部の色が変化するまで」という表現がどうしても気になっていて、この見本の写真を見ても、例えば加熱不十分の( 1 )( 2 )と加熱十分の( 3 )のような、ぱっと見てそこまで分かるとはちょっと思い難くて。ほかには生っぽく見えるものももちろんあるのですが、この( 1 )( 2 )と( 3 )( 4 )の違いは特に分かりにくいので、これを見ると、このぎりぎりの所が 170 ℃、 180 ℃で5分だと加熱不十分だけど6分だと加熱十分だということですよね。そこをきちんとというか、数値的にも表していただかないと難しいのではないかと。

○道野監視安全課長  いや、この件は突き詰めて言うと、中心温度を測ってもらうしかないです。欧米では挽肉を加熱して食べる文化が進んでいて、そこまで言っているのですが、日本では、政府広報等々中心温度、数字は出すのですが、中心温度を測りましょうというところまでは皆さん、やりましょうというところまでは現状では言えていないというのが実際です。

 この加熱による色の変化というのは、実は以前、O 157 で食中毒が多発した時期にも、業界に協力してもらって加熱実験をやってみたのですが、真っ茶になるまででないと十分な加熱にならないかというと、必ずしもそうでもないというところがここの微妙なところなのです。少なくとも真っ赤でなくなるということは必要なのですということで、色が変化したらと。データから言うと、多少赤みを帯びていても実は温度は掛かっているというところがあって、その誤解を避けるために、色が変わったらということをそういう趣旨で書いているということです。我々も、どういう表現をしたらいいかというのはなかなか悩ましいところでして、こういった情報発信については従来からいろいろな関係の団体の方にも御意見を聞きながらやっているのですが、また、アドバイスがありましたら、是非頂ければと思っています。

○五十君部会長  まだまだ御意見等はあると思いますが、こちらに関しましては、情報発信の課題として検討していただきたい。役に立つような情報提供をしていただければと思います。それでは先に進めさせていただきたいと思います。資料3、「食中毒対策について」です。内容は、ノロウイルス、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌の3つについて対応が必要ということで、その各項目別に進めていきたいと思います。まず、ノロウイルスの対策について事務局から御説明願いたいと思います。

○道野監視安全課長  それでは、資料3に基づいて御説明いたします。まず、ノロウイルスについてです。御承知のとおり、ノロウイルスの食中毒の発生原因というと、3ページを御覧いただくと示しているわけですが、原因は、約 8 割が調理従事者由来というようなデータになっています。これは、平成 28 年の地方自治体から報告された食中毒詳報に基づく数字です。

 次のページを御覧ください、昨年のこの部会で私どもから御説明した内容となるわけですが、原因や発生要因の特定が困難な事例が多いこともあって、実際に食中毒調査や予防対策の中でどういったことが難しいのか、どういうことが課題になっているのかというのがなかなか見えてこないということがありました。そういったことで、昨年8月に、その前のシーズンのノロウイルスの食中毒の調査結果について、集団事例があった5つの自治体に来ていただいて、感染症研究所、医薬品食品衛生研究所の御協力を頂いてヒアリングを実施いたしました。調理従事者が原因だとされているわけですが、実際にその調理従事者がどのような手洗いをしていたのか、手袋を付けていたのか付けていなかったのか、トイレの使用状況はどうだったのか、調理作業の内容等々、こういった汚染経路に関する調査をもう少し掘り下げてみないとこういった要因はなかなか整理できないのではないかというような結果でした。

 5ページですが、昨年 12 月、1月にかけて発生した食中毒についての詳細な調査の結果をこちらに報告してほしいということで、汚染経路の調査のため、病原体を保有する又はそのおそれがある調理従事者の行動であるとか、施設の衛生状況について調査を依頼いたしました。主な調査項目としては下の 5 つです。作業室での手洗い等に関する事項、手袋、トイレ、従事者の健康管理、作業着です。 6 ページにその結果が出ています。先ほど申したとおり、昨年 12 月、1月に発生したノロウイルスの食中毒の発生施設での状況のデータです。参考までに、これは非発生施設のものと規模とか対象にしている人たちとかをマッチングすることができないので、あくまで参考ということで右側には書かせていただいています。和歌山で先ほど御説明した給食による食中毒が発生した後に非発生施設についても調査をされましたので、そのデータを参考に右側に付けています。

 特徴的なものといたしましては、手洗いに関しては、手洗い設備は設置されているけれども使用していない、物置になっていたり、使用されていない手洗い設備があるところが発生施設のうちの2割。手洗い設備に手洗い方法のそういった掲示がない所が 69 %。それから、手袋の使用とか、交換のタイミングとか、そういったものの手順がルール化されていないという所が半分。トイレ内の手洗い設備に手洗い方法の掲示がない、これは先ほどの調理場の手洗い方法の掲示と同じで、今度はトイレの場合ですが、これがない所が 85 %です。

 次のページ、従事者の健康管理の部分です。従事者の健康状態の確認記録がないという所が7割。健康状態の確認で記録があったとしても、下痢を確認していないとか、吐き気を確認していないという所もある。それから、体調不良者についての措置について休暇を指示している、8割はそういった対応をしているということでした。トイレに入る際に専用の履き物に履き替えていない所が 56 %。病原体を保有する調理従事者が食品に直接接触する業務を行っていたという所が 58 %。さらに次のページですが、作業着の交換頻度が決められていない、 51 %。便所に入る前に作業着を脱衣していないという所が 64 %。右側の非発生施設と比較してみても、かなり差のある項目もあります。例えば手洗いに関して言えば、方法の掲示がないとか、手袋の使い方の問題、さらには、健康状態の確認記録がないというようなところについてかなりの差があったということです。また、作業着の交換についても、発生施設と非発生施設の差がかなりある項目というようなことでした。そういったことで課題といたしまして、調理従事者の健康管理とか、食品取扱者からの汚染の防止という観点での対策が必要ということです。

 「大量調理施設衛生管理マニュアル」というのがこういった給食施設等々の指導マニュアルになっているわけですが、これは資料として別に配布させていただいています。これは、前年の腸管出血性大腸菌の食中毒の多発を踏まえて、予防ということで平成9年に策定されて以来、随時、改訂を続けてきたものです。この中の、ページ数を振っていないのですが、3枚めくっていただきますと、「調理従事者等の衛生管理」という項目があります。こうした調査結果を踏まえまして、大量調理施設の衛生管理マニュアルにつきまして改正をしてはどうかということで、私どもで検討しております。

 改正点は2点です。9ページですが、1つは、現行の規定は、上にありますように「責任者は」これは施設の責任者ということですが、「調理従事者等に定期的な健康診断及び月1回以上の検便を受けさせること」としています。これはもともと細菌性の食中毒を念頭に置いていまして、「検便検査には、腸管出血性大腸菌の検査を含めること」としています。「また、必要に応じ 10 月から3月にはノロウイルスの検査を含めることが望ましいこと」と記載しております。下の記述も同趣旨の記載です。

 改正案といたしましては、今は 10 月から3月にノロウイルスの検査をすることが望ましいとなっているのですが、「月に1回以上のノロウイルスの検便検査を受けさせるよう努めること」ということで、頻度についても、ノロウイルスの食中毒、感染性胃腸炎の流行時期には月に1回以上のノロウイルスの検便検査について努力目標として設定したいということがあります。

10 ページです。本質的に大事なのは、少なくとも有症者の方が従事しないということが一番大事なことだと考えております。現行は単に「職員の健康管理及び健康状態の把握を組織的・継続的に行い、調理従事者等の感染及び調理従事者等からの施設汚染の防止に努めること」と記載されているのですが、この内容を具体的にしたいと考えています。内容としては、ここのなお書きですが、「なお、衛生責任者は毎日作業開始前に、各調理従事者等の健康状態を確認し、その結果を記録すること」ということで、実際に毎日、調理従事者の方の健康状態を確認して記録するということを習慣付けていただくということを、この通知を改正して盛り込みたいと考えております。以上です。

○五十君部会長  ノロウイルスに関する現状の分析と、対策の提案がありました。ただいまの御発言に関しまして御質問、コメント等はありますか。

○今村委員   毎回のように言わせてもらっていることではあるのですけれども、ノロは明らかに感染症の領域で、食中毒とすることに限界が近付いてきている。課長からも、有症状者に対しては、特に厳密な対応が必要という指摘です。例えば3類感染症の就業制限は、有症状者に関しては3類にかけるというようなことは、感染症対策として持っていかないと、これは食中毒対策で2か月も乾燥で生き残るものを対策していくこと、そのものが難しいのではないかと思います。なかなか向こうの法律に位置付けるのは難しいというのも分かります。でも、どこかで感染症として扱い始めないと、食中毒だと限界があると思います。

○五十君部会長  なかなか難しい問題で、前々回から、ノロウイルスに対しましては感染症対策も含めて考えていただきたいという御要望があったと思います。ほかにコメント、御質問はいかがでしょうか。

○尾島委員  給食の海苔で食中毒が発生しました。給食などにおいて、どこの業者の食品を仕入れるかを決めるときに、今の辺りの管理がきちんと行われているかどうかを参考にしながら決められるような体制を作っていけるといいと思います。衛生管理状況などをきちんと記録にして、要求があれば出せるようにしていただく。そして、買う側がその確認をしやすくするようなことも推進していただけるといいと思いました。

○五十君部会長  取引先の情報を収集するような記録について検討してもらいたいという御提案かと思いますが、事務局いかがですか。

○道野監視安全課長  御意見をありがとうございます。一般衛生管理の中で、従事者の管理と並んで、原料の管理は非常に重要なことであると思います。大量調理施設の衛生管理のマニュアル自体は、完全な HACCP というわけではないのですけれども、そういう HACCP の考え方を取り入れた管理マニュアルということです。私どもとしても、更にこの内容について充実していきたいと思っています。この部会で御議論いただいているというわけではないのですけれども、食品産業全体に、 HACCP による衛生管理を入れていこうということで進めております。

 ただ、大量調理施設に関しては、食品製造に適用されるような HACCP というのはなかなか難しいところがあるので、一般衛生管理を中心にして、温度チェックなど、重要管理点を必要に応じて設けて管理していってもらおうという路線で進めようとしています。大量調理施設衛生管理マニュアルを、義務化に近い形で進めていくという方針でやっております。そういう新たな制度に向けて、その中では原料に関するチェックというのも、当然中に入ってくるわけです。大規模な事業者から小規模の事業者まで、可能な限りやってもらおうという方向で今検討を進めているところです。

 原料等に関しては、この管理マニュアルでもそんなに深くは書いていません。そういう管理を徹底しろということではあるのですけれども、原料の取扱い施設まで何とかしろというところまでは行き着いていません。規模によって、現状で可能な所もあれば、そうでない所もあると思います。このマニュアルに関して、そういうことがどこまで規定できるか。もちろん「望ましい」という書き方もあると思いますので、そういうことも含め、できる限り記載する方向で検討させていただきたいと思います。

○五十君部会長  是非その点の検討をお願いします。

○調委員   まず、基本的なことを確認させてください。調理従事者からノロウイルスが検出された場合は、調理に従事させないということでよろしいのですか。

○五十君部会長  従事させないということだそうです。

○調委員   3ページの発生の原因で、従事者由来で、発症よりも非発症の方が原因になっているのが倍以上あります。今回の改正で、「ウイルスの検査を受けさせるよう努める」ということですが、検査に努めて、「ウイルスが検出された場合には調理から外さなければならない」というのがあって、なかなか検査を受けることをしない所もあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○道野監視安全課長  今回、私どもの改正案の趣旨としては、第一に健康確認というか、健康管理の状況、健康状態を的確にまず把握していただきたいということです。御承知だと思いますけれども、食中毒が起きてしまった後に、従事者に、「あなた症状はありましたか」と聞いても、過去の状況に応じた答えが本当に返ってきているかどうかというのは難しいところもあります。端的に考えれば、発症している従事者がリスクとしては一番大きいのだろうという観点で、まずは健康管理のほうは「望ましい」ではなくて、「しっかりやってください」と。

 その上で、検査が定期的に行われれば、申告もされやすくなるだろうということも含め、従事者の健康管理をしっかりやることを徹底する観点からも、その検査をそのツールとして入れていきたい。ただ、ここはできる所とできない所があることも想定をして、「望ましい」という表現にしています。

 そういうことが浸透していけば、症状がある方が申告した場合に、こういう仕事をしましょうと。直接食品を扱わないような体制が、事業者の中でできてこないと、有症状者がある場合に、従事させないという仕組みはなかなかワークしていかないと思います。私どもの趣旨としては、そういう形で、職場の環境として、ちゃんと申告をすれば、それなりの役割分担がされて、ノロウイルスの予防体制の 1 つがしっかりできていくところが狙いになっています。ただ、従業員の数などについてもかなり制限がある中でやっているので、すぐにそういう体制ができるというのは現実には難しいところがありますけれども、私どもの狙いとしては、そういうことを考慮して、こういう改正にさせていただいています。

○調委員   健康な方のどれぐらいが、ノロウイルスのキャリアであるかどうか、症状のある方と、キャリアの方の便中のノロウイルスの濃度と言いますか量というのはどれぐらいなのかという科学的なデータはほとんどないです。来年度から、ノロウイルスの研究班でその辺りのことを検討すると伺っています。そういうデータも加味しながら、これからの対策を考えていただきたいと思います。

○松本委員   私は本日初めて出させていただいたので分かりませんけれども、多分これまでにも議論があったかもしれません。私は産業医をしているものですから産業医の立場から、参考資料9ページの (14) に「施設に所属する医師、薬剤師等専門的な知識を有する者」とあります。実際にその施設に所属する医師というのは、よほど大きな事業所でないとないわけです。多いと言っても、ほとんどは 50 100 人の施設でしょう。そうすると、普通は嘱託産業医しかいないので、ここの書きぶりとしてはどうなのか。

 例えば、「産業医」という言葉をしっかり使っていただいて、 50 人以上であれば嘱託産業医はいなければいけないわけです。大きな会社であれば専属がいますけれども、作業管理、作業環境管理、健康管理の3管理と言われているものを、産業医の立場から助言してもらう。はっきりと「産業医」という言葉を書かれたらいかがかと思って提言いたします。

○五十君部会長  事務局はいかがですか。

○道野監視安全課長  私も、今までに議論があったかどうかというのをはっきりお答えできないのですけれども、少なくともここ1、2年そういうことはなかったので、御指摘を踏まえて検討させていただきます。ありがとうございました。

○櫁柑委員   確認なのですけれども、「月に1回以上のノロウイルスの検便検査を受けさせるよう努めること」というのは高感度になるのか。今症状があって、ノロウイルスが陽性であれば、もちろん調理従事はしないわけです。健康保菌者の場合の規定なども入るのですか。症状はないけれども、ウイルスを持っていました、というような検査結果が出た場合の措置等も何らか示されるのでしょうか。そこは、それぞれの調理場というか、事業者の判断になるのか、そこをお伺いします。

○五十君部会長  健康保菌者の場合はかなり難しい問題もあるかと思うのですが、事務局いかがでしょうか。

○道野監視安全課長  症状がある調理従事者に関しては、既に「大量調理施設衛生管理マニュアル」の4に記載があります。健康な病原体保有者、無症状病原体保有者に関しては、恐らく文献的にも数パーセントということで発生が想定されています。私どもとしては検査をして陽性になった場合には、陰性になるまで、直接、食品を取り扱うことは避けていただきたいというのが基本になると考えています。

○砂川委員   月に1回以上のノロウイルスの検便検査というのは、これまでが赤痢や EHEC などの細菌検査のみが通常でしたので、大きな追加だと思います。「1回以上」との記載がありますが、適切な頻度として想定されている部分はあるのでしょうか。

○道野監視安全課長  むしろ、何かアドバイスがあればお願いしたいところなのです。細菌の検査に関しても、検査だけでコントロールするのは無理です。やはり、定期的にやっていくことによって、確認の意味もあるわけです。従業員の健康管理だとか、そういうことも含めて検証するためにも検査をしていくことは重要なのだと思います。検査でコントロールするというのは、なかなか難しいところもあります。私どもとしては、フィージビリティを考えても、努力目標としては、まず月1回なのかということで書かせていただいています。本来専門の立場からお考えになったときに、どういう姿があるべき姿かということについては、先生方のアドバイスを頂ければ非常に有り難いと思います。

○五十君部会長  何かコメントはありますか。

○砂川委員   野田先生の御意見もお聞きしたいところですけれども、陰性確認、すなわち1回陽性になった人が、次にいつ検査をして確認をするかというところが非常に悩ましいのではないかと思われます。どうなのでしょうか、ずいぶん長くウイルスの検出がある例もあることを聞きますが、現実的には2週間ぐらい開けての再検査というのが、分かりやすい感じを私は受けます。そうなると、月に2回ぐらいが考えられるのかもしれません。けれども陰性確認ではなく、ルーティーンとして行う検査においては、特に症状も無ければ月に2回行うことについての意義は小さくなるかもしれません。

○野田委員   目的によってその頻度は大きく違ってくると思います。ノロウイルス感染者をつかまえようという目的であったら、平均的には1週間ぐらいは便中にウイルスが出るということですから、1週間おきに見れば、ほぼみんな引っ掛けることができるという話になります。今回は、大量調理施設衛生管理マニュアルに掲載するということで、目的としては、あくまでツールの1つとして、定期的にチェックするという考え方に立っているということで、努力目標としても、適切ではないかと思っております。

○五十君部会長  私も、検査でもって対応ということはなかなか厳しいと思います。今回ひとまず対策としては、直接、症状のある方を排除しやすい環境に持っていく。そちらが中心で、検査につきましては腸管出血性大腸菌の検査もやっておりますので、それに合わせてモニタリングを入れていく。それで対策が必要ということになれば、その頻度等の議論をしていくほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。

○調委員   なかなか悩ましい問題だと思うのです。普通に使われているノロウイルスの検査キットの検出感度は6乗ぐらいですか。感染が成立するのは 100 個ということを考えると、陽性は陽性で調理従事はできないということでいいと思うのです。陽性であった方が、通常の検査で陰性になったときに、本当にその方は感染性がなくなったかどうかというのは、少し検討を要します。非常に高感度の検査で、ウイルスの消長を追ったようなデータを参考にしないと、どのぐらいの期間休むべきかといったようなことの結論は出ないのではないかと思います。

○五十君部会長  いろいろ御意見があるということですが、この検査については今の意見を参考に、事務局のほうで最終的には判断をしていただいて、また提案していただければいいかと思うのですが、いかがですか。

○道野監視安全課長  大量調理施設の衛生管理マニュアルについては、これを改正する際にパブリックコメントを毎回取っています。この内容でパブリックコメントを取り、その各コメントに対する行政庁の考え方としてどう整理していくのか。そういう中で、本日御議論いただいたことも踏まえながら、私どもとしては、最終的な改正まで持っていきたいと考えております。そういう中で、技術的な問題で私どものほうで判断に困った場合には、また個別に御相談することもあると思いますので、よろしくお願いいたします。

○五十君部会長  事務局の方針で特に異論がある方はいますか、よろしいですか。よろしいようですので、次のテーマであるカンピロバクターの対策に移ります。事務局から説明をお願いします。

○道野監視安全課長  カンピロバクターについては 12 ページからです。昨年の本部会において、カンピロバクターの食中毒そのものは加熱不十分な鶏肉を原因食品とするため、食鳥処理段階での対策ということで、実証事業を進めますという御報告をいたしました。一方でカンピロバクターの食中毒全般としては、事件数で3割、患者数で食中毒の2割となります。ここにあるように、食鳥肉処理段階での汚染の低減のほかに、飲食店等における加熱の必要性、加熱不十分な料理の提供の防止、更には消費者への啓発が必要と考えております。

13 ページですが、昨年、平成 28 年度より微生物汚染低減策の有効性実証事業ということで、特に最近使用が認められてきた殺菌剤も活用しながら、生産県の食鳥処理場において実証実験をしております。導入前後のカンピロバクターの数であるとか、そのほかに汚染指標菌などのデータも見ながら評価を進めているところです。1年目については、基本的に効果はあるのですけれども、その適用の仕方、例えばチラー水につけるのは難しくて、実際には噴霧したり、もしくはとたいに直接掛けるとかいろいろな形があります。そういう適用の方法も含めて、平成 29 年度の低減策について、更に実証事業で検討していきたいと考えております。

14 ページは、平成 28 年度の実証事業の内容です。こういう形で食鳥肉の生産県で、食鳥処理場の御協力を頂きながら、実証事業を進めている状況です。平成 29 年度も継続する予定にしております。

15 ページです。昨年の大規模食中毒事例の所でも御報告いたしましたけれども、「肉フェス」というイベントで食中毒が発生いたしました。オレンジの囲みにあるように、全国5会場で開催されたこのイベントのうち、2会場で鶏肉の寿司を原因とする大規模食中毒が発生いたしました。2会場合計で 875 人の発症者が報告されました。こうしたことを踏まえ、昨年の夏季一斉取締りで、右下にあるように飲食店の営業者向けに、十分な加熱をして鶏肉の料理を提供してくださいということで、各保健所で立入検査の際に、こういう啓発をお願いして対応しました。

16 ページは、消費者団体、各地方自治体保健所を通じて、消費者向けのリーフレットについても活用していただいて、周知をお願いしています。

17 ページです。現状の発生状況を、こうして分析すると、下の表にもあるように、飲食店での事例というのが多くて、割合としてはカンピロバクター食中毒の約7割が飲食店で発生しています。

18 ページです。先ほどのイベントの話に戻ります。この鶏肉の流通経路を見ると、鳥取県内の食鳥処理業者が出荷したものが、このイベントでは使用されています。加熱不十分というか、ほとんど加熱していないかのように見えるぐらいのものが提供されていたようです。それでは、実際にその製品に加熱が必要ですということが明示されていたかというと、特にそういう表示もなければ、そういう情報の伝達も特にされていない。そういう中で、中心部まで加熱せずに提供されているという状況でした。自治体のほうの分析では、鶏肉が加熱不十分な状態で提供されていて、調理マニュアルもなかったということで、提供者サイドにもリスクに対する認識が非常に不足していました。食鳥処理業者を所管する鳥取県のほうでも、取引先に対しても、加熱用であることを改めて周知徹底することという指導がされております。

 問題意識としては、飲食店での発生が多い。誤解を恐れずに申し上げますと、いろいろなものを出している中で、鶏肉の例えば鶏刺しだとか、たたきなどを出している所では、指導によって提供を中止する所もあるように聞いています。一方、専門店というか、そういうものを中心に出している所に対してはなかなか難しいところがある。全体として見た場合に、飲食店で加熱しないものを出しにくいような状況を作っていく必要がありますし、そういう認識をしっかり持ってもらうことが大事だと考えています。

 そういうことで 19 ページの頭にあるように、食鳥処理場で処理された鶏肉における卸売業者、飲食店等への「加熱用」である旨の伝達ができないかということで、食鳥肉の生産県の4つの県に聞き取り調査をいたしました。細かくは申しませんけれども、4県をざっと見て、表示だとか、若しくは生食用には使用しないでください、加熱してお召し上がりくださいというのは、卸し段階のかなり大きなパックなのだと思いますけれども、そういうものに表示をしているということがありました。ただ、中には表示のない所もありました。

 私どもは、食鳥肉の関係業界団体とも話をしているところなのですけれども、そういう関係団体のほうでも、加熱用です、よく加熱して食べてくださいということは、従来から広報している、答えているということです。これについては、飲食店までの販売過程において、加熱用であるというこの情報をしっかり伝達してもらうということが大事ではないかと考えております。関係団体と連携をしつつ、また都道府県の保健所を通じて、例えば表示で加熱用と書いてもらう、若しくは規格書だとか商品説明だとか、卸しや飲食店に伝達する文書に、加熱用である、加熱が必要である、十分加熱してお召し上がりくださいといった情報をきちんと伝えてもらう。今年も食中毒シーズンが近付いているわけですけれども、こういう指導を徹底していきたいと考えております。

○五十君部会長  ありがとうございました。カンピロバクターにつきましては、カンピロバクターに対するリスク認知あるいは理解不足が非常に重要なことになるかと思います。その点に重点を置いた対策ということで今御提案があったと思います。今の御提案に対しまして、質問、意見等はございますか。

○雨宮委員   質問なのですが、 14 ページに、微生物汚染低減策の有効性実証事業で「実施中」とありますけれども、この肉は市場に出回っていますか。

○道野監視安全課長  一つ一つ実証事業に使ったものが流通しているかどうかは、私もちょっと手元に情報はないのでお答えできませんけれども、いずれの添加物につきましても、使用がもう認められていますので、もちろん市場流通することは可能です。

○雨宮委員   それが使われたものかどうかは消費者には分からないのですか。

○道野監視安全課長  これについては、最終食品に残らないものに関しては、表示の義務の対象に基本的にはならないので。

○雨宮委員   全く残らないということですね。

○道野監視安全課長  はい、そうです。

○雨宮委員   この目的だけのために使って、最終的に全く残らないのですね。

○道野監視安全課長  はい。どこまで測ったらというのはありますけれども、一般的には残らない。もちろん適用した後に例えば水で洗浄することもできますし、そうしたことで念には念を入れて除くということもあると思います。

○雨宮委員   残らない状態で市場に出回っているかもしれないということですか。

○道野監視安全課長  はい、そうです。

○雨宮委員   分かりました。ありがとうございます。

○五十君部会長  ほかに御質問等はございますか。

○西渕委員  13 ページに「次亜塩素酸ナトリウム以外の殺菌剤」のことが書いてありますけれども、将来的にそういう効果があるものが開発されれば、もちろん食品添加物として認められるならばですが、使用可能というものを考えていいのですか。それが生食を目的とした場合でもいけるのかどうかと。規格基準の関係が引っ掛かってくるのか。

○五十君部会長  事務局、いかがですか。

○道野監視安全課長  カンピロバクターの食中毒自体は、御承知のとおり、加熱不十分、若しくは未加熱の食鳥肉を原因とするものはかなりあるのですが、それ以外にも二次汚染とかいうものもあるわけですので、この事業の目的自体は、元々の食鳥肉の汚染レベルを少しでも下げていこうということが目的でありまして、生食のできるものを作ろうということを狙っているものではないのです。まずはそういうベースラインを下げていこうということが基本です。

 そういう中で、今回使用されたものに関しては、近年認められている殺菌剤が 14 ページに例示されていますけれども、こうした有効なものについては、効果のあるものについて業界でも使用したいというようなニーズもあるという一方で、我々としても、できるだけカンピロバクター対策として汚染のベースラインを下げていこうという考え方の中で、こうした実証事業を進めているところです。将来的にまた有効なものが出てきて、添加物として指定された場合には、そういったものの効果というのも見ていきたいと考えています。ただ、目的としては生食ということではなくて、あくまでも汚染のベースラインを下げることがこの事業の趣旨であるということです。

○西渕委員   その場合、どれぐらいのレベルまで下げられるかというガイドラインみたいなものが示されるのでしょうか。

○道野監視安全課長  この事業につきましては、初年度はフィールドで一定の効果があるかどうかに着目した事業だったわけですけれども、2年度目以降からは、先ほど申し上げたような提供の仕方とか、それからどこまで下げるとか、そうしたことに関して、各県に事業を任せるだけではなくて、事業計画等についても専門家の先生方の御意見も頂く仕組みを作って、御指摘のような面についても整理をした上で、平成 29 年度についてはまた事業を継続していこうと考えております。どこまでというのはなかなか難しいところではあるのですが、1年目のデータとか外国の文献等も見て、目標とするものがどれぐらいかを整理してまいりたいと考えております。

○調委員   食中毒患者数、カンピロバクターは恐らく保健所が探知したもので 3,000 人ぐらいと。昨年のこの委員会でも医薬品食品衛生研究所の窪田先生が御報告されましたように、あの推計では少ないほうで 90 万人ぐらい、多いほうで 270 万人ぐらい。この数は恐らく妥当だろうなと思うのです。そういう患者数が多いということが1つ。

 それから、ギラン・バレー症候群という、極めて予後の悪い運動ニューロンの侵される病気に、大体 1,000 人から 3,000 人に1人が罹患されるということを踏まえた上で、様々な対策を取られていると思うのですが、この加熱について、例えば一般のスーパーで売られているものであるとか、飲食店で提供されているものについて、カンピロバクターは、鶏肉は牛肉と違って非常に筋線維が粗なので、大体 30 分ぐらいあればその中心まで到達するというデータもあると聞いていますので、中心まで十分加熱することをやはり強調していただきたいと思います。ですから、たたきというのは多分あり得ない提供の仕方ではないかと思うのですが、その点についていかがでしょうか。

○道野監視安全課長  鶏肉を含めて食肉を調理する際に、十分な加熱が必要ということに関しては、国サイドとしては、一般消費者に向けた政府公報とかそういう所でも毎年、周知PRをしているところです。また、御承知のとおり、地方自治体においても保健所を中心に、そうした啓発をやっているところです。そういう中で、食肉の中心部分まで加熱が必要ですということについては、今年度も引き続きそういった機会を活用して消費者の方にも周知していきたいですし、また、消費者団体の方の御協力も得て、普及啓発も進めていきたいと考えております。

○尾島委員  ここまでの議論とも関連するのですが、専門店もあるということで、生食を食べたいというニーズはあると思います。現状として、生産者として生食用ですと販売しているものはあるのか、生食用として売り出したいという御相談があるのか、その辺りはいかがですか。

○道野監視安全課長  南九州では、一般的には大規模の食鳥処理場ではなくて、大規模の食鳥処理場では機械で、と殺から内臓の摘出まで機械的にやっていて、1日に数万羽処理したりするというような形態ですが、南九州では、そうした生食に適するということで自治体なども支援をしながら、安全対策をとって販売されているものについては、外剥ぎ方式といって、要は順々に外から剥がしていって、内臓を傷付けずに処理するようなやり方で処理しています。それから、生食と言っても、結局そういった一定の表面の加熱とかをしているものの流通は現にあると承知しております。またそれによる食中毒事例は、実はほとんど報告がないということもございます。

 先ほどの話に戻りますけれども、食中毒の発生は大規模食鳥処理場で処理をされた食鳥肉を、例えば都市部の飲食店がそれをそのまま加熱不十分で出すというのが、全体の傾向としては多いのではないかと受け止めております。そうした意味でも、加熱加工用だということを飲食店のユーザーに認識してもらうことが重要ではないかという考え方です。

○五十君部会長  それでは次にいきたいと思います。最後は、腸管出血性大腸菌の現状と対策について、事務局から御説明をお願いします。

○道野監視安全課長  先ほど昨年 28 年度の死亡事例を含む食中毒の発生状況の所で御報告したとおり、 21 ページですが、昨年8月に東京、千葉の同一の事業者が経営している老人ホームにおいて、「きゅうりのゆかり和え」による食中毒がございました。現状の大量調理施設の衛生管理マニュアルでは、こうした野菜の取扱いが、これはO 157 の食中毒が以前もきゅうりとか浅漬けの白菜とかで発生しているのは御承知だと思いますが、その中で、「野菜及び果物を加熱せずに供する場合には、流水で十分に洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いを行うこと」と規定をされております。

 次に 22 ページです。昨年、老人ホームで発生した食中毒事例はこういう概要になります。8月 22 日に同一の給食事業者が提供した食事を原因とするO 157 による食中毒が発生し、調査の結果、メニューの中の「きゅうりゆかり和え」から腸管出血性大腸菌O 157 が検出され、原因食品と断定された、というようなことでした。この結果を受けて、私どもではこの3の対応を取っております。原因施設ではきゅうりの殺菌工程がなかったということでしたので、「高齢者等に食事を提供する施設への指導に当たり、野菜を加熱せずに供する場合には、次亜塩素酸ナトリウム等による殺菌を徹底するよう指導を要請」、今までは必要に応じてと言っていたものについて、必ず殺菌をしてくださいということを指導するという対応にしたわけです。

23 ページです。今回私どもで検討していますのは、昨年の本事例の対応については、高齢者の施設に関して、野菜について殺菌をしてくださいという内容だったわけですが、一方で、腸管出血性大腸菌感染症の有症者を年齢別に見ると、高齢者も一定の数いらっしゃるわけですけれども、 23 ページのグラフにもあるように、 14 歳以下の若齢層についてもかなり有症者が多いというデータが出ております。本当に高齢者だけでいいのかどうかということが1点です。

 次のページになりますが、一方で、加熱せずに提供されるものとして、野菜のほかに果物があります。大量調理施設の衛生管理マニュアルでも、野菜と果物は並べて書いてあるわけです。果物による過去の食中毒事例はどういうものがあるかと。日本では 1997 年に遡るわけですけれども、米国におきましては、数件、 2011 年~ 2016 年にかけての報告があります。

25 ページです。そうしたことで、この大量調理施設の衛生管理マニュアルの内容として、高齢者に提供する生野菜だけではなくて、若齢者、果実という要素も加えていくべきではないかということで、改正案の所にありますように、「特に若齢者及び高齢者に対し、加熱せずに供する場合」、括弧書きは基本的に果物を想定しているわけですけれども、「加熱せずに供する場合 ( 表皮を除去する場合を除く。 ) には、殺菌を行うこと」ということで、必要に応じてという規定ですが、その後に、若齢者と高齢者に対して提供する場合には、殺菌を行ってくださいということを追加したいという内容です。

○五十君部会長  少し厳しくなるという御提案かと思います。御意見、コメント等がございますか。

○今村委員   この対策そのものは必要なものだと思うのですが、次亜塩素酸で野菜を洗うのをためらった理由の1つに、洗うと臭いが残るというか、一言で言うとまずくなるという問題があったと思うのです。それを天秤に掛けて今まではそこまで強制的にしなくていいのではないかというようなことがあったと思うのです。今回、これは高齢者に向けては義務化することは、野菜に関してはちょっと味は落ちても仕方がないということなのか、よく洗えば味は落ちないと考えるのか、ちょっとその辺の所は天秤に掛けるものが何かを教えていただければと思います。

○道野監視安全課長  まずは、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤で洗浄した後に、流水で洗えばある程度除去できるのではないかということ。それから大量調理施設の衛生管理マニュアルの後ろのほうに、野菜や果物の洗い方がありまして、その中でも、次亜塩素酸ナトリウム「等」となっているのは、先ほども食鳥肉の所でも出てきましたけれども、最近指定されてきている殺菌剤の中に、次亜塩素酸ナトリウムに比較して多少臭いが少ないものも出てきているという状況もございます。そうしたことで、食べ物はおいしくないといけないというのは、もちろんそうなのですが、天秤に掛けるというわけではなくて、こういうものも活用していただきながら、工夫して安全なおいしいものを提供してほしいと、そういう趣旨ですので、決して天秤に掛けて、まずくてもいいという趣旨で改正しようということではございません。

○今村委員   是非その辺のところも加味して通知してもらいたいと。これはばしゃっと野菜を浸して食べたらすごくまずいと思うのです。だからそういうことが現実に起きないように是非御配慮いただければと思います。

○五十君部会長  御意見ありがとうございます。食べ物の要素においしさもありますので、その辺をなるべく公表していっていただきたいと思います。ほかには御意見はありますか。

○西渕委員   基本的なことの確認で恐縮です。統計の対象になっている、あるいは我々で今議論している対象になっている腸管出血性大腸菌、その定義ですが、出てきている悪者は皆O 157 になっていますけれども、近年はノンO 157 が世界的に問題になっています。ここで対象とする腸管出血性大腸菌の定義というのはどのようになっているのでしょうか。

○道野監視安全課長  腸管出血性大腸菌の定義につきましては、食品関係の検査法も提示していまして、その中で要は STEC と言いますか、ベロ毒素と言いますか、産生するものということで、血清型だけで決めることはしておりません。幅広くベロ毒素を産生するものについて、腸管出血性大腸菌ということで、その件数等々、対策についても同様に対応していくということです。

○五十君部会長  よろしいですか。ほかにはありますか。

○櫁柑委員   基本的なことで大変申し訳ないのですが、この若齢者というと、大体何歳から何歳を想定されているのか教えていただけますか。

○道野監視安全課長 23 ページの資料には、一応、 14 歳以下の若齢層と記載はしているわけですが、私どもの感覚としては小学生以下というか、特にこうしたこれまでの集団事例の発生状況などを見ると、腸管出血性大腸菌という観点で若齢者ということで考えられるのは、もちろん中学校での発生がないわけではないですが、頻度から言うと、やはり小学生以下の集団事例の際に、死亡者も含めて、かなり深刻な食中毒が発生しているというように考えております。

○五十君部会長  よろしいですか。

○調委員   今のことに関連して、年齢を決めるときに多分HUSの発生率と言いますか、そういうことを基準にして決めるべきではないかなと思います。HUSに掛かられて、一旦退院されても、十数年前ですか、堺の集団食中毒で、そのとき小学生で食中毒に掛かられて、昨年でしたか一昨年でしたか、女性が亡くなられた事例がありましたけれども、確か3分の1ぐらいはHUSになると後遺症が残るというか、腎機能の低下が残ってしまうことが知られていると思いますので、やはりそれを防ぐということが重要だと思いますから、その発症率を勘案されて、年齢については考えていくべきではないかと思います。よろしくお願いします。

○道野監視安全課長  ありがとうございます。堺市のときも恐らく小学校3年生ぐらいまでだったというように記憶しています。分布としては恐らくその辺までなのかとは思うのです。ただ、逆に今度は食品の調理の現場のサイドで見ると、3年生まで別の取扱いというのは実は余り現実的ではなくて、学校給食の調理となると6年生まで少し大括りな形で考えざるを得ない部分もあるかと思います。もちろん御指摘のことを十分踏まえて対応したいと思います。

○五十君部会長  ほかに御質問等はありますでしょうか。ないようですので、今御提案になった方針の対策を進めていただくということでお願いいたします。細かいところにつきましてはまた事務局にコメント等をいただければ、対応していただけると思いますので、よろしくお願いします。その他事務局から何かありますでしょうか。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  特にありません。

 

 

 

 


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会食中毒部会)> 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録(2017年3月16日)

ページの先頭へ戻る