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2015年10月23日  第46回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会議事録

健康局難病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成27年10月23日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省17階専用第21会議室


○議題

1 造血幹細胞移植推進拠点病院の現状と課題について
2 研究目的での臍帯血の利用・提供基準について
3 今後の非血縁者間末梢血幹細胞移植の扱いについて
4 その他

○議事

○小澤委員長 定刻になりましたので、ただいまから「第46回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会」を開催いたします。本日はお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。まず、事務局から本日の委員の出欠状況の報告、資料の確認等をお願いいたします。

○山口室長補佐 事務局です。本日は浅野委員、吉村委員、野村委員から御欠席との御連絡をいただいております。また、今村委員及び坂巻委員が所用により途中で退席されますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は参考人として、公益財団法人日本骨髄バンク、ドナー安全委員会委員長でいらっしゃいます金森平和様に御参加いただいております。よろしくお願いいたします。

 次に、事務局に異動がありましたので紹介させていただきます。本年101日付けで健康局長に着任しました福島靖正です。

○福島健康局長 101日付けで健康局長を拝命しました福島です。本日、委員の先生方には、大変お忙しいところをお集まりいただき誠にありがとうございます。日頃から造血幹細胞移植のみならず、健康行政全般につきまして御指導賜り厚く御礼申し上げます。

 平成261月に造血幹細胞移植推進法が本格施行され、間もなく2年が経過しようとしております。これまでの間も、造血幹細胞移植対策における今後の課題、あるいは施策の方向性について御提言を頂戴しており大変ありがとうございます。平成25年度から事業を開始しております造血幹細胞移植推進拠点病院についても順次選定を進めており、現在、全国8ブロック、9施設で事業を実施しているところです。議題のところで見ていただければ分かりますように、まず第1に拠点病院の現状における課題と今後の在り方について、2つ目として、iPS細胞を始めとした再生医療などの研究を取り巻く環境が日々変化していることを踏まえ、研究目的での臍帯血の利用・提供基準について、第3として骨髄末梢血幹細胞あっせん事業を実施している日本骨髄バンクから御提案のあった非血縁者間末梢血幹細胞の提供時における条件変更について、本日は御議論いただきたいと考えております。是非、先生方それぞれのお立場からの活発な御議論をお願い申し上げまして、局長就任及び本日の会の御挨拶とさせていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

○山口室長補佐 同じく、本年101日付けで大臣官房審議官に着任した樽見英樹です。

○樽見大臣官房審議官 樽見です、どうぞよろしくお願いいたします。

○山口室長補佐 同じく、本年101日付けで難病対策課長に着任しました松原徳和です。

○松原難病対策課長 松原です、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○山口室長補佐 同じく、移植医療対策推進室長に着任しました鈴木章記です。

○鈴木移植医療対策推進室長 鈴木です、よろしくお願いいたします。

○山口室長補佐 なお、福島局長は所用により途中退席をさせていただきます。

 続きまして、資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配布資料一覧がございます。資料1から資料4-3までありますが、不備等がありましたら事務局までお伝えください。

 資料1「造血幹細胞移植推進拠点病院の現状と課題について」、資料2-1「研究目的での臍帯血の利用・提供基準について」、資料2-2「第42回造血幹細胞移植委員会での主な御意見(概要)」、資料2-3「研究目的での臍帯血の利用・提供基準に係る参照条文」。

 資料3-1「今後の非血縁者間末梢血幹細胞移植の扱いについて」、事務局から提出させていただいた資料です。資料3-2以降は日本骨髄バンクから提出していただいた資料ですが、資料3-2は「非血縁者間末梢血幹細胞提供あっせん業務の一部変更について」、以下、資料1、参考資料1、参考資料2、参考資料3とあります。

 資料4ですが、資料4-1は非血縁者間造血幹細胞移植実績の推移、資料4-2は概算要求の概要、資料4-3は臍帯血供給事業者からの逸脱及び有害事象報告です。

 それでは、議事進行を小澤委員長にお願いいたします。報道のカメラは御退室をお願いいたします。

○小澤委員長 議事に入ります。前回、第45回のでは、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」が全面施行され約1年が経過したところでしたので、法施行後の現状等についてということで、厚生労働省及び関係団体の皆様からのヒアリングを行いました。今回は具体的な課題として、造血幹細胞移植推進拠点病院についてと、研究目的での臍帯血の利用・提供基準についてといった点を議論していただきます。更に、日本骨髄バンクから非血縁者間末梢血幹細胞提供の際の条件の変更の要望がありましたので、その点についても議論していただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

 まず議題(1)の「造血幹細胞移植推進拠点病院の現状と課題について」です。事務局から資料1に基づいて説明をお願いします。

○山口室長補佐 資料1に従い、事務局から、造血幹細胞移植推進拠点病院の現状と課題について御説明いたします。

2ページ目を御覧ください。ここでは拠点病院を選定することとした背景を示しております。こちらに書いたような問題点がありました。人材育成の強化の必要性、骨髄の早期採取への取組の必要性、地域連携の強化の必要性があったという状況でした。このような状況から、「造血幹細胞移植医療体制整備事業」を平成25年度から開始したところです。

3ページ目です。先ほどの背景も踏まえ、事業全体の目的を作ったわけですが、目的のおおもとは、移植医療を必要とする患者さんに、どこにいても、適切なタイミングで、骨髄・末梢血幹細胞・臍帯血移植のうち、病状に合った適切な移植医療を提供できるというものになっております。そのため、移植医の育成や医療従事者への研修などにより、地域における造血幹細胞移植医療の体制整備を図るという方向性で進めてまいりました。以上を踏まえ、拠点病院には下の赤で囲った四角にあるような選定条件を求めたわけでございます。

4ページ目には、現在の拠点病院の選定状況をお示ししました。全国を8ブロックに分け、ブロックごとに拠点病院を1施設ずつ選定し、さらに、人口や移植数の面から東京にもう1施設追加し、全国で9施設選定しております。平成25年度から段階的に選定を開始し、平成27年度には新たに4施設を選定しています。また、施設選定の際には、移植数や骨髄採取数などの実績と、あとは5人の構成員での選定評価会議でのヒアリングなどによる評価を合わせ、総合的に選定させていただいております。平成27年度の選定評価会議の際には、平成25年度から事業を実施しております拠点病院の評価も行っております。拠点病院事業について、選定評価会議の際にいただいた御意見や、拠点病院からの御意見、移植医やその他各方面からの御意見がありました。 次のページ以降に、現在、当方で示しております事業実施要綱の内容と、その他いろいろといただいた指摘事項などを示しておりますので、御報告させていただきたいと思います。

5ページ目ですが、まずは人材育成についてです。この表の左側は現在の実施要綱に示してある人材育成事業の内容を書いています。チーム医療の必要性を重視しており、医師や医療従事者の育成、そして地域の医師等を対象とした研修事業を行うこととしております。また、下の留意事項のところに「学会との連携を図ること」と下線を引いてお示ししています。下線を引いた部分は平成27年度の実施要綱で新たに追加した部分です。

 この表の右側には、御指摘いただいた事項をいろいろと示しております。指摘していただいた事項として、一番上の、人材育成後のフォロー体制について、これは拠点病院で研修などを受け、地域に戻ったあともフォローできるようにしておく必要があるという点を御指摘いただいたものです。そのほか、医師の研修には最低でも半年以上の期間が必要と感じているという御指摘や、医師以外の医療従事者の育成も重要であるという御指摘、研修やセミナーの内容などについて学会との連携も重要であろうという御指摘などがありました。

6ページ目では、骨髄の早期採取についてまとめております。事業内容としては、造血幹細胞移植コーディネート支援事業がここに当たります。実施要綱では、造血細胞移植学会認定の造血細胞移植コーディネーター、いわゆるHCTCを配置することとしていますが、まだ全国的にHCTCが少ないという背景や各ブロックに拠点病院を選定するという目的もあったことから、平成27年度は学会認定を取得予定のHCTCでも可能としております。

 表の右側、御指摘いただいている事項としては、まず日本骨髄バンクと拠点病院との連携についてという御指摘がありました。拠点病院のほうでも、日本骨髄バンクの各地区事務局との会議を開催したりなど取組を始めているところです。各地域内で採取曜日を調整したり、コーディネート状況の把握などを進めていければという御意見もありました。また、HCTCについては、育成したあとの課題についても御指摘をいただいております。

7ページ目では地域連携についてお示ししております。実施要綱では、移植医の派遣などの診療支援、患者の受入れを積極的に行うこと、そして平成27年度から新たに追加していますが、移植後のフォローアップについて地域との連携に努めることとしております。地域連携については特にいろいろと御意見があった部分ですが、やはり人口や移植施設数が各地域によって大きく異なりますので、それぞれの地域の特性への考慮が必要である点、また、同様に地域によって移植数も違い、拠点病院間でも得意・不得意分野が出てきますので、それを補うためにも拠点病院間の連携体制も重要であるという御意見などがありました。その他、成人と小児の違いについても御指摘がありました。さらに全部の拠点病院に一律に同じものを求めるのではなく、ある程度役割分担も必要であろうという御意見などもありました。その他具体的なものとして、Webカンファレンスの活用などを目指したが、システムの問題などで達成できなかったという声もありました。

 最後のページは「その他事項」とさせていただいております。実施要綱では、骨髄の早期採取や地域連携など、こちらで示しております留意事項のほうを示しております。右側の指摘された事項は、その他事項と重ならないところもあるのですが、拠点病院の体制面について、全体的なブロックの考え方や拠点病院数などについて検討が必要であるという御意見もありましたので載せました。

 以上を踏まえ、今後の拠点病院の在り方などについて、特に御意見などありました部分、強調したい点やその他追加したい点などありましたら、是非御議論いただければと考えております。事務局からは以上です。

○小澤委員長 どうもありがとうございました。ただいま事務局から、造血幹細胞移植推進拠点病院事業の経緯と現在の状況、そして各指摘事項について説明がありました。拠点病院の主な事業としては人材育成への取組、骨髄の早期採取への取組、地域連携についての取組、その他事項に分けて説明がありました。この議題については、拠点病院の事業の方向性としての事業内容、また具体的な体制の整備について、分けて議論を進めたいと考えております。

 まず拠点病院の事業内容についてですけれども、ただいまの御説明にありましたようにいろいろな指摘事項があったわけですが、そういった中で特にこの点は重要で強調しておきたいところ、また新たにそのほかに指摘しておきたい事項等がありましたら、委員の先生方から活発に御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 今回、最初に認定された拠点病院に関しては中間評価等もあったわけですが、まだこういった拠点病院が選定され活動が始まって、その成果が目に見える形で見えてくるという段階ではないかもしれません。今現在の進捗状況を踏まえ、皆さんの意見をお伺いしたいと考えております。いかがでしょうか。

○宮村委員 名古屋第一赤十字病院の宮村です。現在、9施設になり、少しずつ開始した時間が違うので始まっていろいろなことがあります。まず1つは、例えばHCTCの会を地域で開こうというときに、なかなか自分たちだけではどのようにやっていいか、あるいは他の拠点病院でどのようにやっているかを、そういったことを参加して学んで、また戻ってやっていく。そういった意味で、先ほど指摘がありましたように拠点病院間の連携というのは非常に重要になります。今回、新しく、学会ともよく連携をとるようにということがありました。この中にも、学会を中心に考えられた方針を各地域でやっていく、その中心になっていく。現在、拠点病院の中で一緒に集まることに関しては基本的には認められていませんので、これは是非認めていただきたいと思います。

 少し話は違いますが、私は日本全国の非血縁者のUR-PBSCT(末梢血幹細胞)の施設にいろいろ関わる中で、ある地域においてはバンクの施設がない県もあります。東海・北陸では福井県、地域で言えば東三河という人口50万の県がありますがバンクの施設がない。やはり、空白地帯をなくしていくのも拠点病院の1つの役割として挙げていただけて、評価していただけたら有り難いと思います。以上です。

○小澤委員長 ありがとうございました。特にHCTC、学会認定の造血細胞移植コーディネーターに関しては、まだなかなか十分確保できていないということもあり、これは拠点病院選定の際にかなり高いハードルになって、若干基準を緩めたりもしてきております。学会のほうで見通しとしてはHCTCの育成状況など、今後の見通しはいかがでしょうか。

○岡本委員 日本造血細胞移植学会の岡本です。今、HCTCは学会でもトップ・プライオリティーを持ち、HCTCの認定委員会を作って順次育成に努めています。HCTCという職種を考えた場合に、各施設でしっかりと患者さんとドナーの間をブリッジングしていく人材を育成するには拙速になってはいけないということで、しっかりとしたセミナー、研修体制等々を作って鋭意進めているところです。どれぐらいの足並みでと言われるとあれですけれども、急に数を増やすというわけには行かないと思います。逆に、しっかりとしたものを増やしていき、継続的にHCTCを育成していくという体制を取っています。

 今、拠点病院ということに関して、平成27年度には、「各事業を行うに当たっては、日本造血細胞移植学会において実施する関連の事業と密接に連携を図ること」ということを入れていただきました。これは私のほうから何回もディスカッションさせていただいたことなのですが、今、話に出ましたように、造血細胞移植学会においてはHCTCの育成、移植を行う移植認定医の認定、その認定を受けたあとの研修といったような人材育成のプログラムをもう既に進めております。恐らく、人材育成ということで、今の拠点病院が行っているファンクションはこれとかなりオーバーラップするところがあると思います。ですから、そこは是非、学会と密に協力を取っていただいて、ティーチング・マテリアルを共有するとか、あるいはその学会の研修のコースといったものをうまく連携して、効率よく地域での人材の育成に役立てていただきたいと思います。恐らく、移植医の先生方はとてもお忙しいですし、地域の方々が学会だけに来て、そこでの研修に加わって認定の単位を取るなどのことはなかなか難しいと思います。そういったことにうまくこの機会を生かしていただいて、オールジャパンでの共通した視点に立っての教育の推進に是非、この拠点病院は関わっていただきたいと思います。

 人材育成という点でもう1つ、なかなか学会全体としてできないことは、ここにあるように座学ではなく、施設に来て実地研修で、どういったチーム医療が必要かを学ぶということです。ですから、決して移植の数だけで拠点病院は決められるものではなく、いかにチーム医療が、その病院だけでなく、その地域と連携して行われているかということも視点に入れていただいて評価をいただくことが不可欠だと思います。

 さらに、そういったチーム医療という視点からは、早期採取ということが拠点病院のミッションに入っておりますが、正直言って、拠点病院を選定した時に、早期採取に貢献をするということが、どういう具体的なアクションを起こして貢献するかということが全く議論されず、恐らく今の拠点病院の先生方は相当お困りになっているのだろうと思います。ここに出てきましたように、やはり私のイメージとしては、拠点病院が地域をよく把握することによって、その地域の中の採取等を日本骨髄バンクとうまく連携をして、いかに採取の枠をつぶさず効率よく採取を行っていくか。むしろ、その施設だけにしっかりと採取をするということではなく、うまく仲介役というか、日本骨髄バンクと同じように仲介を行っていって地域の採取を効率よく行っていただくということだと思います。

 話が前後して申し訳ないのですが、人材育成に関しては、東京は別として、各地域にはそれなりにコアになる大学病院があると思います。その地域の中で、今ではなく今後、次の世代、次の次の世代の移植医療をどのように担っていくべきか、そして、担っていく人たちがどのような人たちかということをよく頭に描いていただいて、そういったコアになる方々をしっかりと教育をするということをよくディスカッションいただいて、それを実際の拠点病院の研修に加えていただきたい。必ずしも、そこの拠点で研修する必要はないと思います。そういった意味では、地域の拠点病院がその研修を担う必要はないはずです。その地域に将来戻ってくる方たちをしっかりと選んで、その方たちにその地域に根づいていただいて、今後の移植を支えていただくという体制を作っていただく、しっかりとした青写真を作っていただいて、そして、この事業を継続していただくことが重要ではないかと思います。まだいっぱい言いたいことはあるのですがとりあえず以上です。

○小澤委員長 ありがとうございました。今の岡本委員のお話は体制整備のほうとも関係してくる内容であるかなと思います。特にこの人材のほうですね、次代を担う移植医も含めた人材ですが、この移植医にはかなり地域格差というか、これは他の医師も同じことですけれども、偏在しているようなところがありますので、どこの地域でもきちんとした移植が受けられるような体制を作ることが大変重要です。その辺で、拠点病院の役割あるいは全体をカバーしていく学会の役割が重要になりますので、その辺の連携をしっかりしてほしいというお話でした。何か御意見はいかがでしょうか。

○坂巻委員長代理 拠点病院が認定されて、全体としてどのくらいのアウトカム、いわゆる本当に拠点病院を選定したことによって、どのくらいの効果が出ているかというのは、なかなか数値で表すのは難しいかもしれない。ただ、私の所も拠点病院になって、それ以外の拠点病院の活動を見る上で、人材育成等についてはHCTCも含めてかなり活発に行われていると思います。HCTCの場合には、ある程度数が増えたかどうかで分かると思いますが、医療人材につきましては地道な長い積み重ねが必要なのかなと思っていますし、そういうものを積み重ねていく必要があるだろうと思っています。

 岡本先生も指摘されましたように、骨髄の早期採取の取組というのが私はとても重要なのだろうと思っています。私もずっと関東地区の造血細胞の事務局のお手伝いをさせていただいた中で、なかなか早期の採取ができない。要するにコーディネート期間がなかなか短縮できない。中には採取病院のオペ室を確保するのが難しい現状もある中で、全体が少しずつ増やしてくれればかなり違うのだろうというところと、ある程度引っ張る病院があって、そこがどんどんやるというのもひとつだろうと思います。

 そういう中で、岡本先生のおっしゃるように、いろいろコーディネートしながら各病院に採取をもっと効率よく行うように働きかけるというのは、本当にそうしたらいいですし、それは以前も関東事務局としてやっていたのですが、なかなかそれがうまくいかなかったところがあります。これは広い関東地区の中で1つの病院だけですと、なかなかこれは難しいと思っています。これだけ広い地域と多くの移植病院を抱えている中では、できればこういう地区はもう少し拠点病院を増やしていただいて、そこが連携して採取を増やすのと、ほかの病院への働きかけ等もできるようになると思いますので、拠点病院の数の見直しみたいなことも私は必要なのかなと思っています。以上です。

○小澤委員長 ありがとうございました。先ほどはこの事業内容と体制整備に分けてと言いましたけれども、既に体制についてのディスカッションが始まっていますので、ここからは体制整備も含めて皆様の御意見を伺いたいと思います。今日はフリートーキングと言いますか、委員の先生方のいろいろな意見を出していただき、それを踏まえて今後の体制の方針決定に役立てていきたいと考えています。今、坂巻委員からお話がありましたような関東の所は、関東1つ、東京1つではとても足りないとか、いろいろな意見を出していただきたいと思います。地域によっては、拠点病院としての活動が十分行えないような状況の所もありますけれども、そういった所はどのように対応していくのか。今後の拠点病院の在り方も含めて御意見を頂けたらと考えていますが、いかがでしょうか。

○張替委員 私どもも東北の拠点に認定されて、この事業で東北地方の19病院を集めた研修会をやっていますけれども、かなり問題点というか、それを随分把握できるようになってきました。どうしても東北地方は医師が多くないので、どこもHCTCはほしい。それはどこも言うのですが、1つ、病院としての経費をどうしたらいいのかというのは、どこもHCTCを雇う上でなかなか加算的なものがないので、それが1点です。それから、HCTCという仕事そのものがなかなか一般の方には分からないので、公募してもなかなか来ないと言いますか、結局、骨随移植を知っている看護師さんは、要するにこういうコーディネート事業というのは分かるのですが、それ以外の医療職は、これは何をやっているかよく分からないので、公募してもその仕事の中身がよく分からない。だから集まらない。その辺の周知をしていかないと、なかなかHCTCをやりたいという人が増えないのかなと。その2点で、みんな東北地方はほしがっているけれども、なかなか増えないというところが正直あると思います。

○小澤委員長 いろいろな移植関連の広報のときに、そういうHCTCというか、こういう言い方をすると一般にはますます分かりにくいような感じもしますけれども、そういう仕事の内容を周知して魅力ある仕事だというイメージを、できるだけ一般の方にお伝えできるような形がいいのかなと思います。何か御意見はいかがでしょうか。

○坂巻委員長代理 張替委員のおっしゃるとおり、これは何らかの形で診療報酬に反映されると随分違うのかなという気がします。

○岡本委員 そう思います。実際にHCTCは、資格として看護師ではいけないということで学会は認定を進めていません。ですから、どんな方でもなれるという形です。その広報はすごく必要だということと、診療報酬という1つのインセンティブが出ることによって、移植病院の管理部門もそれをまた見直すという方向性はあると思います。学会としては今のHCTC、例えば臓器移植にもHCTCはあると思いますけれども、それに勝るとも劣らない研修、経験を積んだ者を、全てを診療報酬というわけではないですが、そういった認定を受けた中でも、更に研修を積んだ者を認定していくという段階的なことを考えています。そういったことで質の向上にもつながりますし、徐々にHCTCを広げていくことにつながるのではないかと考えています。

○宮村委員 私、学会の社保委員もやっているのですが、今年、学会としては、HCTCを診療報酬の中で認めていただくことを第1として申請しています。いろいろな病院において新しくHCTCを作っていこうという動きにしても、なかなか病院の理解を得られないので、診療報酬という形で付けていただくことが、HCTCを安定させ、また増やす方法だと思います。

○小澤委員長 その辺のHCTCの待遇ですね、その辺についてどうでしょうか。厚労省的な考え方、これは室長でしょうか。お願いします。

○山口室長補佐 宮村委員からもお話がありましたように、学会の方で色々と動いていただいているところです。HCTCを活用することによってどのくらいコーディネート期間が短縮されるか等、既に駒込病院のほうでデータを出していただいているところもありますが、是非、そういうところも拠点病院の先生方に御協力していただいてデータを出していただければ、こちらもいろいろと検討する素地になると思いますので、そういうところで連携していただければと思います。

○小澤委員長 このHCTCの活動で診療報酬が付くまでの間は、移植法に関連した形で、別途、財政面でサポートができるかどうか。

○山口室長補佐 拠点病院のほうの補助金には、HCTCの方の育成や人件費なども入っているのですけれども。

○小澤委員長 それ以外に、もう少し学会全体として要請をしているわけでしょうから。

○鈴木移植医療対策推進室長 一般的には、拠点病院にお金が補助金で行っていて、その中に育成の話があると。いわゆる診療報酬というのは診療に対する対価としてあるものですから、その診療としての対価というところで何かをやるというのは、また別の話です。その付け方というのは、当然、先生方がおっしゃるような加算の話もあるし、基準の中の要件になるやり方とか、これは保険局のほうが考えることだと思います。一方、今の補助金の話というところでは、今、この拠点ができて、いわゆる育成といったところに補助金が出ているわけですから、この中で今はやっていただくという形になると考えています。

○小澤委員長 いろいろ工夫していただければと考えています。時間も限られていますので、現在の拠点病院の在り方、地域バランス、数といった問題については、何か御意見はいかがでしょうか。

○鎌田委員 各拠点病院で非常に御努力されて、この目的に向けて非常に力を尽くしていただいていると思いますけれども、実際に地域間での差というのはあると思いますので、それぞれが蓄積された情報とか御経験などを、どういった形で共有していけるか。連携の具体的な手段はどのように確保されていくのかというのが、1つ気になるところです。あと、そういった各地域間での連携の仕方と地域内での均質化の問題です。例えば、そもそもこの区割りとか拠点病院の決め方という意味で、この区割の中で地域内でもともと連携が取りやすい基盤があったのかどうか。あるいは、こういった事業が行われることによって、それが取りやすくなったのか。この地域の中で拠点病院として、先ほど先生方が御指摘されていた点とか、その区割りの中でやっていくことが本当に適当なのかどうなのかも含めて、それは次に検討していく必要があるのかなと思います。

○小澤委員長 ほかには何か。

○岡本委員 今の御意見に賛成です。地域ということで、今は日本地図の中国地方等という形に大体なっているわけです。ただ、これまでも大都市は別として、こういった地域ではなく各ブロックにおいて、何となくではあるかもしれませんが、それなりの連携体制があったと思います。そういったものをうまく使って地域の先生方が密にコミュニケーションを取り、それを生かしながら地域の中、それから地域間、日本全体と地域という形の連携が取れるように問題を共有し、議論し、解決していくといった地域の考え方を、是非、入れていく必要があるのではないかと思います。

○小澤委員長 ありがとうございました。ほかには何かありますか。9ブロックで基本的に各ブロック1つと言うと、なかなかカバーしきれない所もあって、このブロックの在り方を見直すのか、あるいはブロックはそれほど大きくは変えずに、1つのブロックの中に複数の拠点病院を置いていくのか。いろいろなやり方はあるかと思いますが、この拠点病院を置くことによって、一応、いい方向に動き始めているようであれば、もう少し数を増やすことを、予算の絡みもあるかもしれませんけれども、是非、検討していただきたいと考えています。

○岡本委員 あと、ここの最後に出ています地域での連携というところで、確かに移植推進拠点病院ですので移植の中の職種とお考えにならず、是非、ここに書いてあります移植後のフォローアップについて、一般の先生方あるいは健康管理の方、在宅医療といったものと連携していくことは、恐らく地域においては極めて重要ではないかと思います。そういったものを全部移植施設が受け入れてしまうとなると、かなり機能も落ちますし、そういったところの役割分担をするには、ある意味、この拠点病院という体制は1つのいいモデルになるのではないかと思います。そういったことも、ミッションとしてしっかり認識して検討いただければいいのではないかと思います。移植医をどんどん育成することが本当に正しいかどうか。次世代を育成するのは正しいことだと思いますが、数を増やせばいいかということは、今後の移植の数として、どれくらい適切な移植が必要かということも冷静に考えてみる必要がある。それに対してどれくらいの医師が必要であり、その後のフォローアップをするのにどういった体制が必要だとなってくると、必ずしも移植医の数だけでなく、それ以外の医療従事者の関連するチームのメンバーの育成も、すごく大切だと思いますし、是非、それはこの拠点病院のミッションとして、もう1回、しっかり確認いただければと思います。

○小澤委員長 ありがとうございました。そのほか何か特に追加発言、よろしいでしょうか。また何かお気付きの点がありましたら事務局に御意見をお知らせいただければと考えています。議題(1)に関しては、この辺りとさせていただきます。その次が、議題(2)の「研究目的での臍帯血の利用・提供基準について」です。事務局から資料2に基づきまして説明をお願いいたします。

○上村室長補佐 資料2について説明させていただきます。説明に入る前に経緯を先に説明させていただきます。研究目的での臍帯血の利用・提供基準については、平成25621日開催の第42回の委員会において、利用・提供することが認められる研究目的等について御議論いただき、施行規則及びガイドラインを定めています。しかしながら、当時は再生医療に関する新しい法律が国会に提出され、成立していなかったこともあり、特に臍帯血の提供者に対する再同意の取得について、様々な御意見を頂いたままとなっていました。本日は、再同意の取得も含め、臍帯血バンクが研究目的で提供する場合に必要となる基準について、検討11から44まで用意していますので更なる御議論をいただき、まとめさせていただきたいと考えています。また、検討55にありますように、臍帯血を用いた研究が将来的に実用化・商業化された場合に、臍帯血バンクからの臍帯血の提供を認めるか否かについて御意見を頂き、こちらについては、次回以降の委員会でも議論していただいて論点を整理させていただきたいと考えています。

 まず、研究目的での臍帯血の提供について、現在の基準や仕組みを説明させていただきます。資料2-12ページを御覧ください。研究目的での利用及び提供については、法第35条で、省令で定める基準に従い、業務の遂行に支障のない範囲内において、臍帯血バンクが自ら利用し、又は提供することができるとされています。その下の省令で定める基準では、第13条第1号、イからハまで掲げる研究のいずれかに該当するものを提供の対象としています。第2号では、提供する臍帯血は、研究の内容や性質を考慮して適切なものとすることとしています。第3号では、提供する際の手数料の額について定めています。

3ページを御覧ください。研究目的で利用・提供する臍帯血の種類・品質・数量については、移植に用いる場合と同程度の細胞数を要する研究か否か、ヒトに投与する研究か否かといった、研究の内容や性質に応じてガイドラインで定めています。

4ページを御覧ください。研究目的での利用・提供が認められる主体と審査手続についてはガイドラインで定めていますが、臍帯血バンクからの提供先としては、現在、医療機関と研究機関としています。審査手続については、まず研究機関等に提供する場合、右側になりますが、その機関の中に設置される倫理審査委員会等で研究の実施について審査を経て、承認を得た上で臍帯血バンクへ申請をしていただきます。申請を受けた臍帯血バンクでは、バンク内に設置する倫理審査委員会等で申請内容について審査を行い、了承が得られた場合に臍帯血の提供ができることとしています。提供を受けた研究機関等では、研究を関係法令や倫理指針等に従って実施することや、臍帯血バンクに対して実施状況を毎年報告すること。研究実績を公表した場合は、それを臍帯血バンクに情報提供することが必要となります。また臍帯血バンクが自ら利用する場合には、左側の内部利用となりますが、そのバンク内の倫理審査委員会等で審査を受け、了承を得なければならないとしています。なお、バンク内の倫理審査委員会等の構成については、この資料の最後の21ページに参考資料を付けさせていただいています。第43回の委員会で、外部の委員、医療関係者及び法律・倫理の関係の専門家を含む構成とすることについて、御提案をさせていただき、この際、御了承を頂いています。

5ページにお戻りください。研究のために臍帯血を利用・提供するに当たっての個人情報の取扱いについて、こちらについてはガイドラインで定めています。ヒトに投与する研究については、連結可能な形での匿名化、ヒトに投与しない研究については、連結不可能な形での匿名化とし、個人情報の提供についてはその利用が不可欠な場合であって、関係する法令や指針の規定に基づき適切に実施される場合には、提供を行うこととしています。

6ページを御覧ください。造血幹細胞移植法では、臍帯血が何に使われるかについてなどを採取に当たって説明し、同意を得なければならないと条文に書かれているため、臍帯血提供者に対しては、研究に使用されることや、研究者から説明を行うことについて臍帯血バンクから同意を求められる場合があること、研究内容には、iPS細胞の作成など再生医療その他の医療分野に関連するものが含まれることについて説明し、同意を得ることとしています。以上のような現在の基準と仕組みを踏まえた上で、7ページに本日、検討していただく項目について整理しています。

7ページを御覧ください。11から44までが臍帯血の研究目的での利用・提供に関する検討項目となっています。55の検討項目については、本日、いただく御意見を踏まえ、今後、整理していくことにしています。

8ページを御覧ください。検討11として「研究」の範囲の考え方について、整理案を書いています。「研究」については、施行規則でその範囲が定められている他、法に特段の規定はございません。そのため、一般的に「研究」とは、臨床研究として行う「再生医療等」、「治験」又は医学研究に関する倫理指針の対象となる研究が含まれると解されるのではないか、と考えています。そのため、一般診療として行われる「再生医療等」や製造販売の承認を受けた医薬品等の原料等とする場合など、実用化・商業化されるものに利用することを目的とする場合は、研究目的での提供ではありませんので、法第35条に基づく臍帯血の提供はできない、と整理しています。この「研究」の範囲については、検討5について御議論いただく際の前提となる整理となります。なお、京都大学iPS細胞研究所の行うiPS細胞ストックを、研究の具体例として挙げていますが、これについても研究の範囲に含まれる場合には臍帯血の提供は可能であるとしています。

9ページを御覧ください。検討2として、研究機関等から申請を受けた臍帯血バンクでは、その設置する倫理審査委員会等で審査をすることとなっていますが、その審査項目等について、今回、御議論いただき、各バンク共通の標準的なものとして通知等で示すことにしたいと考えています。まず、左側の研究機関等は「利用申請書」と「添付資料」を、提供を求める臍帯血バンクごとに提出することが必要となります。「利用申請書」の内容としては、右側の四角囲いの中にお示ししている審査に必要な項目としています。また、「添付資料」については、研究機関等内に設置される倫理審査委員会等の承認を経た研究実施計画書等と考えています。右側の各臍帯血バンクにおける審査項目についてですが、四角囲いの下の欄外に審査する際の着眼点を書いています。審査では、臍帯血バンクの業務の遂行に支障のない範囲内であるか、施行規則に定める研究内容であるか、更に申請してきた研究機関等に研究の遂行能力や管理能力があるか、この3点を確認する必要があると整理し、それらを確認するための項目として、右側の四角囲いの中に審査項目を挙げています。これらについて御意見をお願いいたします。

10ページを御覧ください。検討3として、臍帯血の提供を受ける研究機関等が、その臍帯血の提供者に対し再同意を得る必要性について整理しています。まず、研究機関等は、その実施しようとする研究内容に応じて適用される関係法令や倫理指針に基づき、臍帯血の提供者に対して研究内容等を説明し、同意を得る必要がある場合があります。しかしながら、先ほどの6ページで説明させていただいたとおり、臍帯血バンクが採取に当たって研究内容について一定の説明を行い、同意を得ています。そのため、研究機関等が研究内容等について提供者の同意を得る必要性については、一律に求められるのではなく、その機関の中に設置される倫理審査委員会等で判断されることとしてはどうか、とさせていただいています。なお、その判断とは別に、臍帯血バンクの中の倫理審査委員会等でも提供者の同意の必要性について、研究に関する関係法令や倫理指針に基づき審査することとしています。また、倫理審査委員会等で判断いただく場合には、昨年1月以前の、法が施行される以前の従前の同意書では、移植以外の研究目的での提供については同意を得ていないことに留意する必要があると考えています。

 次の11ページで、下の点線で囲った中に、研究機関等が設置する倫理審査委員会等で判断されると考えられるものをまとめており、臍帯血の提供の全体の流れをお示ししています。

12ページを御覧ください。検討4として、研究成果及び残余検体の二次利用についての整理案となります。臍帯血を提供された研究機関の研究成果については、その知的財産権は成果を挙げた研究者に帰属することが、臍帯血の提供者から同意されています。例えば研究成果をiPS細胞としますと、臨床研究や治験等に用いるために提供される場合には、研究に関する法令に基づき提供者の同意を得る必要があります。また、次の○ですが、臍帯血が研究目的で提供されたものの、その研究に使い切らず残った場合、それの二次利用をどの範囲まで認めるかについては11から44まであると考え、選択肢として挙げさせていただきました。11は研究の一環として捉えるべきなのかもしれませんが、遡及調査の実施のための保管としています。22や33については下の※に記載していますが、再度、提供を行った臍帯血バンクに対する申請と審査が必要となるのではないかと考えています。また、44は、例えば22や33を一旦認めますと管理が行き届かない恐れがあるということも考え、そうであれば11の遡及調査の実施のために必要な分の保管は認めるが、それ以外は44の廃棄という御判断もあると考えています。どの範囲まで認めるかについて御議論をお願いいたします。

13ページを御覧ください。最後の検討項目である検討55となります。移植と研究目的以外での臍帯血の提供については、これまで委員会で御議論いただいたことはございません。しかしながら、臍帯血については再生医療や創薬等の臨床応用に対する期待も高いと考えています。また、今後、研究目的での提供が進められても、廃棄される臍帯血は出てくると考えています。造血幹細胞移植法の解釈としまして、下の四角囲いに整理させていただきました。移植及び研究目的以外での利用又は提供について禁止する規定は、法律上、設けられていないため、禁止されているものではないと整理していますが、臍帯血バンクの事業は国庫補助金の対象となっていることや、研究目的での提供についても「業務の遂行に支障のない範囲内」とされていることに留意する必要があると考えています。そのため、移植及び研究目的での提供に支障のない範囲内での臍帯血については、臍帯血バンクが移植及び研究目的以外で提供することは、法令上、禁止されているものではないと整理しています。なお、その提供に支障のない範囲内での臍帯血としては、保存期間が10年以上経過したもの等と考えています。

 次の14ページにおいて、移植及び研究目的以外で提供ができる臍帯血の範囲について、整理案をお示ししています。

 最後に、15ページを御覧ください。臍帯血への期待があることや法的整理もさせていただきましたが、移植及び研究目的以外での提供については十分な議論が必要であると考えています。本日は、まず提供を認めるべきか否かについて広く御意見を頂き、認める場合には11から77に掲げる論点があると考えていますので、次回の委員会以降、整理をさせていただきたいと考えています。

 以上、駆け足となりましたが、説明を終わらせていただきます。

○小澤委員長 ありがとうございました。事務局から研究目的での臍帯血の利用と提供の基準について、現在、整理されている内容と検討すべき項目について説明がありました。検討すべき項目としては、7ページにありますように1から5ということになります。それでは、順に区切って議論を進めたいと思いますけれども、まず、1の「研究」の考え方についてということです。事務局では、最初の検討項目である「研究」の考え方については、臨床研究として行う再生医療等や治験、そして医学研究に関する倫理指針の対象となるものを研究の範囲とするという整理がなされました。本日の検討の5では、その研究以外の目的でのということになりますので、そことの関連する議論になりますけれども、ただいま整理された「研究」の考え方につきまして、委員の皆様の御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○武藤委員 武藤です。検討1についてですが、今、具体例として京都大学のiPS細胞ストックのお話が出ています。こちらにお配りすることをお認めしたいという範囲で考えたときの範囲や定義の問題で、2点、気になることがあります。1つは、このiPS細胞ストック事業は医学系研究に関する倫理指針の中で言いますと、CiRA自体が試料・情報の収集・分譲を行う機関というものに属します。もちろん研究活動をされながら、しかしながら出てきた成果を他の研究のためなどに配っておられるわけなので、そういった試料・情報の収集・分譲を行う機関に、お配りするのだということを念頭に置いた定義づけが必要ではないかというのが、1点です。

 それから、こちらの細胞ストックは、この後、そこで作られた成果物、株化したものを企業も含めて出庫されているわけですから、検討1の2つ目の○に、「研究ではなく、実用化・商業化されるものに利用することを目的とする場合は、提供はできない」とありますが、CiRAからのものは研究を経て実用化・商業化されるものに当たると思いますので、それについては含むのだということを分かるようにしないと、ちょっと誤解を招くように思いました。

○小澤委員長 ありがとうございました。研究と言っても、その延長線上にはビジネス開発と言いますか、実用化・商業化という話が出てきますので、かなりこの辺の議論は難しいところがあって5と本当に関連してくるわけですが、御意見、いかがでしょうか。

○辰井委員 今、武藤委員から御指摘の点で、これは事務局に御確認したほうがいいのかもしれませんが、その研究を経て実用化ということは大変よく分かるのです。しかし、普通に読みますと、これは研究までは認められているけれども、その先は認められていないと。事務局の御説明も、一応、そのことを前提にされているように理解したのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。

○上村室長補佐 事務局から説明させていただきます。まず、検討1の武藤委員から御指摘いただいた点については、誤解を招くような表現となってしまっていたら申し訳ありません。実用化・商業化を目的として研究を行うものは、もちろんございますが、その研究については、研究である限り臍帯血の提供はできると、法律上、考えています。その研究について、研究に関する関係法令や倫理指針が適用される限りは研究と考えて提供するのですが、今、法律上、明記されているものが移植と研究目的とされていますので、研究の結果、承認されたり一般的な再生医療になった場合は、研究の範囲を超えてしまうのではないかと考え、そのところに対して臍帯血を引き続き提供するということについては今まで議論されていませんので、今回5として検討していただければと考えています。

○山口委員 血液製剤のほうでも研究利用の話は出ていて、血液製剤の企業に研究であれば渡すということになっています。要するに商業利用でないということ。研究の部分については、もちろん委員会にかけた上で渡すことになっていますけれども、多分、CiRAの場合に問題になるのは、ホモのものを75作るというのは、そのものを将来的には商業利用を見据えているわけで、もう一度作り直すということはあり得ない。作ったものは必ず商業利用していくということになるので、そのことの議論はきちんとする必要があるだろうと思います。再生医療を推進するという考え方からすれば、商業利用を見据えた上で、それを認めるという方向にならざるを得ないという気がいたします。

 もう1つは、血液製剤の場合、ホモの方が献血の情報としてあった場合に、それをCiRAに情報提供し、CiRAがその方の同意を得た上で、もう一度、新たに試料提供していただく。この場合には直に商業利用のほうにいけるという判断になるかと思います。

 あと、もう1つ、上の○の所でついでに意見を述べさせてください。「治験」と言う場合、医師主導治験は、もちろん研究としてやられる側面もあるのですが、治験というのは将来的には薬事法での承認を受けることも見据えているわけです。薬事法の承認を受けるという場合には製販がやらない限りは承認を受けられませんので、そこも将来的には医薬品開発につながっていく。もちろん大学で治験をやった上で、その治験の答えをどういうふうにするかというのは、大学あるいは病院の判断になるかもしれませんけれども、その辺は治験というものでの研究を認めるというときには、将来的にはそれが何になっていくのかも考える必要があるだろうと思います。

○小澤委員長 ありがとうございました。この研究の定義付けが非常に難しいところはあるのですが、多くの場合、今の議論にありますように、その先に実用化が入ってきますので、どうしても5での議論と関連してくると思います。併せてその辺りは後で議論にしたいと思います。そのほか何か御意見はありますか。よろしいですか。

 取りあえず2の事項に入りたいと思います。9ページの「臍帯血バンクが設置する倫理審査委員会等の審査項目等について」です。この項目について御意見を頂けますでしょうか。

○武藤委員 度々申し訳ございません。このスキーム自体は、ほかの研究用の資源バンクの例を見ても同じような形であると思いますし、よろしいと思います。また、各臍帯血バンクさんと審査項目を統一化するというのは、できればフォーマットも統一していただいて、同じような審査ができるような体制にすることは望ましいと思います。

2つ気になる点としては、今、申請者のほうも倫理審査委員会、臍帯血バンクさんも倫理審査委員会となっていますが、倫理審査の二重審査というよりは、貴重な試料を厳格に審査して配布することを審査されるということだと思うので、倫理審査委員会で臍帯血バンクさんのほうを呼ぶかどうかというのは少し検討していただいたほうがよく、また、こちらの観点では、臍帯血供給業務の遂行に支障を来していないということを確認していただく必要などがあって、倫理審査委員会と審査する項目は少し違ってくるのではないかと思います。このため、本来業務に差し支えていない提供であるということを、やはりこの委員会では確認していただく必要があるというのが1点目です。

 また、もう1点は、臍帯血バンクさんには本来業務があるということではあるのですが、先ほど申し上げた医学系研究に関する倫理指針では、臍帯血バンクさんもやはり試料・情報の収集・分譲を行う機関としての義務を負うことになり、そこは、研究専業のバイオバンクと同じような業務計画の策定などいろいろな指針上の義務が発生するので、やはりこちらの臍帯血バンクさんのこういった研究絡みの業務に関しては、いろいろな支援が必要ではないかと個人的には感じております。

○上村室長補佐 事務局から1つ説明させていただきたいのですが、武藤先生がおっしゃった2つ目のものについて、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」で、試料・情報の収集・分譲を行う機関というものがあり、こちらの機関に対して提供する際の研究計画書等を作成させる義務を課しているのです。こちらについて確認をさせていただいたのですが、法令に基づいて試料を提供する機関については、この分譲を行う機関ではないというふうに整理をされているようで、その点については説明をさせていただきます。

○武藤委員 御指摘ありがとうございました。

○辰井委員 細かいというか、大したことのないことですが、臍帯血バンクの審査項目としてこうやって挙がっていて、その外に「審査する際の着眼点」として3つ挙がっていて、これはこの後、指針か何かになっていくのですか。

○上村室長補佐 こちらについては、委員会で御了承いただきましたら、局長通知という形で各バンクに対してお示ししたいと考えております。

○辰井委員 そうでしたら、その際に是非とも外の着眼点の所を少し強調した形で、審査項目というか審査事項としてきちんと挙げていただいて、こういうものを審査するためにこういった項目を見ていただくのだということが指針上はっきりするようにしていただけると、とてもいいと思います。

○小澤委員長 それでは、着眼点というところの位置付けをもう少し上げてもらって。

○上村室長補佐 はい。

○小澤委員長 そのほかいかがでしょうか。何か御意見はありますか。特にないようでしたら、ただいま頂いた御意見等を反映させた形で、マイナーな修正を行っていただきたいと思います。

 次の検討項目に移ります。3です。「医療機関・研究機関が臍帯血提供者の同意を得ることの必要性について」という項目です。これについては参考資料もありますが、これまでにもいろいろと御意見があったわけです。今回の事務局の整理では、現在のガイドラインで示されている同意の内容で十分とされる研究もあると思われますが、一律に再同意が必要と求めるのではなく、個々の研究内容に適用される関係法令に基づいて、提供者への説明及び同意が必要とされる研究なのか否か、各研究機関の倫理審査委員会等で審査してもらうという案が出されております。これについて少し御意見を頂たいと思います。各研究機関に任せるとなると、また少しいろいろ微妙な問題もあるのではないかと思いますが、何か御意見はいかがでしょうか。

○武藤委員 今、小澤委員長におっしゃっていただきましたように、この点を各研究機関の倫理審査委員会の判断に任せるとなると、責任を負いたくない所も多々あったり、審査の質もまだばらばらな現状を鑑みますと、十分なガイダンスを倫理審査委員会のほうに情報提供する必要があると思います。つまり、それぞれの法令、指針において、こちらの臍帯血バンクにあるサンプルはどういった位置付けのカテゴリーに入るものなのか、そこで求められている説明、同意の要件というものがどうなっているのかということを、やはり情報提供しないと、もうそれは再説明、再同意を研究者にやってもらえということで、そのリスクをできるだけゼロにという方向にみんなが傾くと、やや過剰な対応になりがちな傾向があり、郵送でいろいろな連絡だけもらう提供者の方は大変で、どんなお気持ちか分かりませんが、その方々のフォローアップも必要になりますので、倫理審査委員会に委ねるに当たっての説明というのは、是非きちんとしていただきたいと思います。

○小澤委員長 医療機関によって判断、考え方が異なってしまってはまずいようなところもありますので、今の武藤委員の御意見はもっともだと思います。そういう方向も是非検討していただくということでお願いします。そのほか何か御意見はありますか。

○山口委員 今の武藤委員の御意見のとおりでいいと思いますが、少し付け加えたいと思っているのは、再同意が必要になると、もう一度その臍帯血の提供者、ひょっとしたら提供者が大きくなっていると。子供かもしれませんし、子供にインフォームド・コンセントを取らないといけないのかもしれないです。

 もう1つは、もう一度同意を取る連絡をしてほしいか、ほしくないかという判断も必要になってくると思うのです。場合によっては、提供はするのだけれども、そういう同意を後から問い合わせてくるのはやめてほしいという、お母さんになるのか、誰になるのか分からないのですが、そういう方もいらっしゃるので、その辺りはあらかじめ今後に当たって、もし再同意を取る必要がある場合であったら、そういうことも付け加えておく必要があるのではないかという気がします。

○小澤委員長 この辺りは、再同意を実際に行うのは非常に大変なことではないかと思いますが、実例もあるようですから、可能であれば少しその辺りの東海バンクのものを説明していただけますか。

○上村室長補佐 法律が施行される前ですが、東海バンクからCiRAのほうが臍帯血を譲り受けまして、iPSの作製のための研究を行うということがありました。その際には東海バンクのほうで説明会を開くということを、該当する臍帯血提供者の方に郵送で通知しまして、研究内容について同封をした上で、説明を聞いていただける方については説明会にお越しくださいと。その際にはお母様だけではなくてお子さんもということで対応されているようです。説明を聞いた上で納得いただける方については、その場でもいいですが、帰ってじっくりでもいいので、考えた上で同意をしてくださいと。同意をした上で、CiRAのほうにお越しいただいて、必要な問診をした上で臍帯血を採取するというような流れをとられていたと聞いております。

 現在のICの取得の流れについては、同じ資料2-1の中の参考資料として位置付けさせていただいているのですが、併せて説明させていただきます。16ページです。「臍帯血の提供者に対するIC取得の要否」ということでフローチャートを用意させていただきました。これは研究一般ではなく、臍帯血を、研究をするために提供する際のICの取得のフローチャートと御理解ください。

 まず1としまして、研究機関等から申請が来た場合に、研究内容が施行規則で定めるイからハの研究に該当するか否かで判断して、該当するということであれば次の項目に行っていただいて、その研究の内容が臍帯血を人に投与するものなのか否か。する、しないで分かれていただいて、個人情報を必要とするものか否か。また、4で、情報提供することについての同意の取得なども、これは個人情報について要否を定めています。なお、この4については、バンクが個人情報を提供する際には、提供した本人に同意を得ることになっておりますので、研究機関等が行う必要はありません。

 こういったフローチャートを辿っていきますと、右側ですが、「バンクから臍帯血の提供を受ける医療機関・研究機関が準拠する法令・指針名及びIC取得の要否」ということで、次ページ以降に整理をしており、123があります。まず1は、臍帯血そのものとその個人情報が欲しい場合、匿名化されていない臍帯血という形になります。これを使った研究としては3つあると考えており、1番の中の3つですが、臨床研究として行う「再生医療等」と「治験」、また人、この場合の人を対象とする研究というのは、試料を対象とする研究ではなく、人に投与する研究と捉えてください。準拠する法令・指針名それぞれ書いております。

 一番右の「医療機関・研究機関のインフォームド・コンセントの要否とその根拠」ということで、「再生医療等」と「治験」は同じ内容となっており、法律上に、試料の提供を受けた場合に、その試料の提供に当たって、試料を採取した機関が同意を得て、研究の内容について説明して同意を受けているかどうかの確認をすることという規定が、法律と省令上ありますが、同意を取得しなさいという義務は、再生医療のほうと薬機法のほうでは法令上ありません。こちらについて担当課のほうにも確認したところ、やはり研究内容について提供者の同意が得られていなければ研究には使えませんので、確認することだけではなく、同意を取得することが必要になります。この際、バンク側が研究内容について再同意を取るのか、研究機関側が再同意を取るかについては、定めは現在ないのですが、バンクが提供者から採取して同意を得たときに、研究内容については研究者から説明をさせていただくことについて同意をお願いする場合がありますという説明をさせていただいておりますので、まずバンクから個人情報の提供について同意してもらえるか、なおかつ研究内容について説明させていただいてもよろしいでしょうかという同意を得させていただいた上で、研究機関からその提供者に対して説明していただくという流れになるのではないかと。

3つ目の「人を対象とする医学研究」としては、移植の安全性及び有効性の向上のための研究を想定しているのですが、匿名化されていない既存試料等を用いる場合は、研究の実施等についての情報を公開し、研究対象者等が同意を撤回できる機会を保障すること」ということが倫理指針上定められています。ただ、1番の研究については個人情報をお渡しすることにしていまして、匿名化されていない場合には、個人情報の提供について提供者の同意を得ることにしていますので、このIC取得の内容についても研究機関は必要ないということになると考えております。

2番ですが、こちらは臍帯血の、連結可能匿名化された臍帯血を提供され研究する場合です。こちらについては、もう連結可能匿名化されている場合には、医療機関・研究機関側のインフォームド・コンセントの手続は必要ないということで倫理指針上、整理されております。

 最後に3番は、臍帯血を人に投与しない研究ですが、個人情報を必要とする研究内容があるかもしれませんので、個人情報を必要とする臍帯血又は連結不可能匿名化された臍帯血を提供され研究する場合です。人(試料・情報)を対象とする医学研究、また、ヒトゲノム・遺伝子解析研究があると考えております。人を対象とする医学系研究の場合、匿名化されていない既存試料等を用いる場合となりますので、こちらについては「研究の実施等についての情報を公開し、研究対象者等が同意を撤回できる機会を保障すること」となっております。また、ヒトゲノム研究については、「原則として、細胞提供機関においてICを取得していること」となっております。

1つ訂正させていただきます。上の匿名化されていない既存試料等を用いる場合については、臍帯血バンクが御本人に、提供についての同意を得ることとしておりますので、こちらについては医療機関・研究機関側でICの取得が必要とされるものではありません。ただ、ヒトゲノム・遺伝子解析研究については、連結不可能匿名化されているものですが、「原則として、細胞提供機関においてICを取得していること」となっており、もし連絡先が、もう転居などをしてしまって取れない場合には、こういった研究をしますよという情報を公開するとか、オプトアウトの機会を設けるなどで研究は実施できることになっております。

 以上のように、ICの取得の要否についてフローチャートでまとめさせていただいており、以前、CiRAが東海バンクから臍帯血の提供を受けたときのように、説明会を開いて、というところまでは現在の法令や指針では求められていないということになっております。説明が長くなりましたが、以上で終わらせていただきます。

○小澤委員長 ありがとうございました。何か確認すべきことはありますか。いずれにしろ、なかなか再同意関連は大変なステップではありますが、不可能ではなさそうな手続のようではあります。

○辰井委員 そうしますと、今の再同意の要否の確認の手続というのは、まずは申請してくる研究機関側で判断し、それをその研究計画書なり何なりに書き、それが臍帯血バンクのほうに来て、臍帯血バンクのほうの倫理委員会でも、もう一回、それで妥当かどうかを確認するというステップになるということですね。

○上村室長補佐 はい。

○小澤委員長 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。できるだけこの内容がクリアになるように、また必要があれば修正を加えてまとめていただければと思います。

○坂巻委員長代理 再同意を取るときに、遡及的に提供者にアクセスできる頻度は相当落ちるものですか。

○小澤委員長 東海バンクの例でいくと、かなり連絡はついているのですね。

○山口室長補佐 事務局からです。東海大バンクの例ですが、HLAホモの臍帯血を提供していただいたお母さん方に、郵送して案内を出したようです。ところが、郵送しても、住所が不明、もう引っ越していらっしゃったりとか、そういう方も半分以上いらっしゃったように伺っていますし、実際にお受けになっても返事をいただけなかったりという方もいる中で、1割ぐらいがお返事いただいて、実際に提供に同意されたと伺っています。そのぐらいの頻度のようです。

○小澤委員長 そのぐらいであっても、返事はかなり届いてはいるのですよね。

○山口室長補佐 返信自体はもっとあったのですが、それを受け取って説明会に来ていただける方はその程度だったと聞いています。

○坂巻委員長代理 ただ、今度は説明会ではなくて、研究機関がアプローチして同意を取るという格好になる。説明会となると、いろいろな都合もあったりして合わないこともあるでしょうし、10%などというよりはもう少し歩留りは良くなるのですかね。どう予想するのですか。

○上村室長補佐 現在、再生医療法や薬機法のほうでは、文書により説明し、同意を得ることとされていますので、説明会を開くかどうかは研究機関側の判断となります。

○坂巻委員長代理 そうですね。とにかく、まとめてではなくて、個々のドナーさんへのアプローチということになるわけですよね。

○上村室長補佐 はい。

○小澤委員長 よろしいでしょうか。それでは、その次の検討4です。「医療機関・研究機関の研究成果及び残余検体の二次利用について」ということです。まず、研究成果の取扱いについては、その研究成果を臨床研究や治験等に用いるのであれば、その研究に関係法令が適用されますので、それに基づいた適切な対応が必要であるということです。

 そして、もう1つの、この臍帯血を用いた研究後に残った残余検体の取扱いについては、事務局のほうで4つの選択肢を提示しております。12ページの一番下のほうです。これらの点について御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

○辰井委員 提供された臍帯血の残余検体ということは、その提供先で余ったものをどうするかという話ですよね。

○上村室長補佐 そうです。

○辰井委員 これは意見ですが、やはりその場で別の目的に利用するとか、ほかに配布するなどというのを認めると、大分、コントロールが行き届かなくなると思います。

 一方で、それが使えないのが非常にもったいないという程度の量を発生するのだとすると、バンクのほうに戻すか、あるいは、バンクが更に配布するという業務が過剰に負担である場合には、それこそ理研BRCのような機関に一旦戻して配布してもらうか、それができないのであれば廃棄というのが考えられるところではないかと思います。

○小澤委員長 1から4ということであれば、1は、やはりいろいろ「遡及調査等の実施のための保管」と書いてありますから、これはまずやらなくてはいけないでしょうから、1と4は残して、23はどうかなという御意見でした。また、理研のBRCとか何とかということになると、ちょっとややこしいかもしれませんが、御意見はありますか。

○山口委員 特に、もし臨床研究に使用されるようなことが想定されるのであれば、再生医療の関連では、投与した、あるいはその原材料を保管して、何らかの感染症が起きた場合のフォローアップというか調査に使うということは逆に求めていますので、そういう場合はむしろ積極的に保管しておく必要があるのだろうと思います。

 それから、第三者への配布というのは多分、基本的には認められないのだろうと思いますが、唯一、例えばその成果について論文投稿して、その後、もし追加の試験を求められると、そういう機関であればそのためだけの保管はあり得るのではないか。それ以外は、戻すということ自体も、サンプルそのものをどう扱うかという話も難しいですので、むしろ廃棄という方向が正しいのではないかという気がします。

○小澤委員長 追加のいろいろな検討というのは、研究の中に大枠で含まれるような内容ですよね。そうすると、1と4という形でよろしいでしょうか。ではそういうことにしていただきます。

 次が難しいテーマですが、検討5の「移植・研究目的以外での臍帯血の提供について」です。このテーマでの検討課題については、これまで余り議論されてこなかった内容です。検討1で研究の範囲がある程度議論されて示されたわけですが、臍帯血については再生医療や創薬等の臨床応用の分野で期待が高まってきている現状があります。特にiPSを作ってどうのこうのというようなテーマですが、これに対して、臍帯血を現行法の下で提供することを認めてもよいかというようなものです。今の造血幹細胞移植法には、移植と研究目的以外については、臍帯血を提供することは明示的に規定されていませんが、事務局の整理では、禁止されるものではないという若干曖昧な形ではありますが、そういうことになっているようです。そこで、提供を認めるべきか否かについて、また、認める場合は様々な点について整理が必要となりますので、先ほどの続きになりますが、御意見を頂きたいと思います。

iPSだけでなく、どうしても研究で提供ということになると、多くの場合にはその先に実用化の創薬等という問題が入ってきますので、その辺りを考えていくとどういうふうに扱っていったらいいのか、御意見を頂きたいと思います。

○張替委員 確認というか質問です。検討1で「実用化・商業化されるものに利用することを目的とする場合は、提供はできない」と書いてありますが、それとこの5はどういうふうに整理されるのでしょうか。5では、移植及び研究目的以外での提供についても禁止するものではないと書いてありますが。

○上村室長補佐 法第35条になるのですが、こちらでは「研究のために自ら利用し又は提供することができる」と書いてありますので、「研究目的で利用又は提供できる」の中に、研究の先のことに対する提供も、この条文で根拠として提供できるのだという整理はなかなかしづらいかなと。「研究目的で」と限定して書いてしまっていますので。

 ただ、法の全体を見渡しますと、例えば血液の製剤に関する法律では、必ずこれとこれについての採血以外はしていけません、また、その採血したものについては、これら以外について製造してはいけません。また、それに対する罰則規定もきっちり書いてあるのです。そういった法律と比べると、造血幹細胞移植法のほうには、研究目的又は移植以外に提供してはならない、利用してはならないというような規定はありませんので、そういう意味で、法全体としては、移植又は研究目的以外の提供は禁止されているものではないと。ただ、「出します」とは明示していませんので、その点について、法律上禁止されているものではないという消極的な意味になってしまいますが、御議論いただければと考えています。

○小澤委員長 どういう形で提供できるかという議論を少ししたほうがいいだろうということだと思うのです。特にCiRA等からiPS作製に使いたいという要望が強いわけですので、どうしても先ほどの武藤委員のお話にありますように、それはその先、企業のほうに提供したりといった形がつながっていきますので、どういう形をとるのがよろしいのかという議論をしておいていただければと思います。

 現状でも、企業には提供できないという縛りがありますが、企業と共同研究をしている研究機関であればよろしいとか、そういう理解でよろしいのですか。現状は提供先としては。

○上村室長補佐 提供先としては研究機関であれば可能としていますので、企業とタッグを組んでやる場合でも、申請自体が研究機関から来て、研究機関内の倫理審査委員会等を通ってまいりますので提供は可能と考えております。

○小澤委員長 企業も研究をやりたいということであれば、アカデミアと組めば入手可能みたいな状況ではありますが、ここでの議論はもっと積極的に、実用化、製品開発等を目指した活動に提供できるかどうか。できる場合にはどういう形があり得るか。そういうことについて少し御意見を頂いて、先ほどのお話にもありますように、本日1回では結論が出るようなテーマではありませんので引き続き議論は続くと思いますが、何か御意見を頂ければと思います。

○山口委員 韓国ではもう、臍帯血を事業化している企業などもあります。多分、韓国のKFDAが承認している品目もあったと思うのです。そういうものに使うというと、これは多分、臍帯血の提供者というか、国民としての同意はなかなか得られないのだろうなという気がします。

 その一方で、iPSというのは、山中先生がノーベル賞を取ったとか、そういうことも含めてなのですが、再生医療を特別扱いしているところから、できるだけ皆さんが積極的にそれをサポートしようとしていて。ただ、その研究のほうはもちろんサポートしやすいのですが、その先に企業が使うということになったら、やはり、ある意味、最初に企業に渡すのと、最後に企業に渡すのにどれだけの差があるのかという、その辺りが非常に、コンセンサスをまず得ておかないといけないのだろうなと思います。

 将来的にはやはり、企業がやることは悪いということではなくて、ある意味、脳硬塞の治療やいろいろな治療に使える可能性もあるわけで、そういう開発を促進すること自体は私は悪いことではないだろうと思います。ただ、やはり一番大事なのは、そういう提供者のコンセンサスが得られるような提供であることが必要なのだろうなという気がします。

○宮村委員 私も同じようなことを考えていたのですが、今、臍帯血あるいは日本骨髄バンクのドナーが提供するに当たっては、やはり目の前に患者さんがいてそのためにという気持ちでやっていると思うのです。そういう人たちの気持ちの中で、やはりこれを将来、企業の利益と結び付く、それと同時に患者の利益とも結び付くのですが、その辺りを上手に説明していかないと、かえってその辺りが強調されると、臍帯血のドネーションに対する影響が出てくるのではないか。その辺りはよく検討して、よく考えてやっていく必要があると思います。

○辰井委員 法律的な整理の話にも関わってきますが、先ほど、現在の移植法では禁止はされていないというお話で、それもそうかなと思う気持ち半分、ただ、やはり業者というか、臍帯血バンクの規制としては、バンクがそれ以外に提供できるかどうかという観点から見ますと、やはり禁止されていると読むほうがリーズナブルなような気がします。

 それは、血液製剤の法律も、そんなに詳しく見たわけではないのですが、今、ちょっとパパッと見ますと、あちらの場合はやはり、血液製剤自体をコントロールするという観点がかなり強い法律のようで、こちらのような、何というかプロセスを重視して行っているものと少し性質が違うかもしれないと思いました。

 ただ、そう考えると、全くできないかというと、そうではない可能性もあるかなというのは、先ほど武藤委員や山口委員などがおっしゃっていたように、やはり、研究に使ったものがそのままそちらに使われるというような特殊な性格があってという、そこのところから、やはり、研究に提供するということの延長線上にあるという説明ができてはじめて、バンクがそこに対して提供していくということができるようになる気がします。そして、その場合には当然、目的も、35条に基づく施行規則にあるような、このイ、ロ、ハの中の延長線上にあるものとして位置付けていけば、可能性があるのではないか。その限度であれば、現行法を改正しなくても説明を付けていく可能性があるのではないかと思います。

○小澤委員長 もし禁止されているとなっている場合には、今、議論していることの方向性を縛るような厳格なものではないという理解でいいですか。

○辰井委員 そうですね。ですから、現在認められている研究目的での配布というものの延長線上に位置付けられるものであるという限度で進めていくことは可能かと思います。

○小澤委員長 直接、企業に提供するなどというのは縛られているような内容ですか。ちょっと確認してみないと分からないですね。

○辰井委員 すみません、直接企業にというときの目的が、私はもう一つピンときていないので、ちょっとお答えしにくいのですが。

○山口委員 血液製剤のほうで、研究目的で出したときに、その研究目的ともう1つ、企業活動そのものに使えるような場合、例えば、企業が出しているキットの中の血液の成分を、その検体として作るというようなものは禁止されています。ただし、研究開発、要するに、例えば診断薬を開発するための血清の陽性検体あるいは陰性検体として用いるのに使えるかどうかの開発などというものであれば、将来的に医学研究に貢献するのだろうということでオーケーにしている。だから、研究の範囲というのはそういうようなことかなという気がしています。

○岡本委員 細かい法律のことは分からないのですが、実際に提供したドナーの立場に立ってみると、この利用ということに関しては、その方の臍帯血は移植に使われなかったということですよね。でもそれを、どういうふうに利用したいとドナーが考えたとする、その目的が、いわゆる造血幹細胞移植の広い意味での、何というか新しい治療、私たちが対象としている患者さんの治療に直接、間接に貢献できるという視点に立つのであれば、多分、同意は得られやすいのではないかと思うのです。そうなってくると、今の議論している研究者に行くか、企業の研究者に行くか、その研究を踏まえて、それが実現化するというプロセスはありではないかと。

 問題は、その研究というところのどのレベルで、それが良い、悪いかというところを少し細かく議論しないといけなくて、この方向性をかなり絞ってしまうのはどうなのかなと。やはり善意をうまく生かすという視点に立つと、そういう方向性もありなのではないかと思います。

 少し確認なのですが、今の凍結されている臍帯血の同意を取るときに、使われなかったものに対しては、このお話が行くことは同意がどういうふうに取れているのですか。もう使われなかったと知るのは嫌だから、その同意を取っていないとか、その辺りです。すみません、根本的なことなのですが。

○小澤委員長 事務局からお願いします。

○岡本委員 今の議論は、結構細かい倫理とか、今のレギュレーション、私たちがとにかく作ったレギュレーションにどう合うかという議論になって、一番大切なのは、やはり提供した人に、どう考えるかという視点でこういった同意を取っていって、なるべく、それによってドネーションをする人が減らないように、うまく利用できるように、そういったところも視点として入れていかないと、何か自分たちで作ったレギュレーションによって首を締めているような感覚が少しあります。

○小澤委員長 そうしましたら、かなり難しい点もまだ残されていますので、簡単にお願いします。

○上村室長補佐 先ほど先生から御質問いただいたことですが、提供に当たっては、提供に同意しても、諸般の事情により臍帯血が採取及び保存されない場合があることということを説明させていただいております。臍帯血を採取しても、採取量や細胞数、検査結果によっては移植治療に利用できないことがあります。その場合には廃棄するか、又は研究に役立たせていただきますとしていまして、廃棄する際に、廃棄しますよという連絡をしたりなどはしておりません。

○岡本委員 分かりました。非常にオプトインの形で同意を取っているのですね。

○小澤委員長 いろいろな御意見が出ていますので、また、次回の委員会でこの議論を進めていただきたいと考えております。事務局のほうで、少し考え方の整理をしておいていただければと思います。議題(2)についてはこのくらいにしておきます。

 議題(3)です。「今後の非血縁者間末梢血幹細胞移植の扱いについて」です。一部変更ということですが、事務局及び日本骨髄バンクから、資料3に基づいて報告をお願いいたします。

○山口室長補佐 資料3-1に基づいて、まずは事務局から御説明いたします。末梢血幹細胞移植、いわゆるPBSCTについてですが、御存じのとおりドナーにとって骨髄移植ドナーと異なり、全身麻酔を必要としないという大きな特徴があります。また、移植を受ける患者にとっては、骨髄移植と比べて生着率や生着までの日数が短いという長所と、免疫反応である慢性GVHDについては骨髄移植と比べ頻度が高いという様々な特徴があります。

 経緯ですが、2000年に末梢血幹細胞採取・移植は健康保険の適用を受けて、血縁者では盛んに行われていますが、非血縁者への導入にあたっては、委員会で議論を重ねて20108月に、導入について委員会で了承しています。その後、20113月に1例目を実施し、現在までに120例を超えて実施されています。

 この非血縁者間PBSCT、末梢血幹細胞移植の導入にあたっては、こういう経緯もありましたので、安全性を確認しながら順次段階的に導入していくこととしており、資料3-1の、「今回審議をお願いしたい内容」の1にありますように、最初の導入にあたっての条件として、従来の骨髄ドナーの選定条件に加えて、移植患者さんの安全性の観点からとして1) HLA遺伝子レベルで8/8一致ドナーからの移植であること、ドナーの安全性の観点からということで2)末梢血幹細胞採取施設に1時間以内で通院可能であることという条件を付けていました。3)は同じくドナーの安全性の観点からで、末梢血幹細胞採取中は医師の常時監視を要すること、という条件を加えた形で運用を開始しています。

 今般、厚生労働科学研究や日本骨髄バンクドナー安全委員会などの非血縁者間末梢血幹細胞移植のデータ解析や、ドナーの安全性の検討を行った結果の報告がありましたが、その内容を踏まえて、今お話させていただきました1)3)の条件の緩和が妥当かどうかについて審議をお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いします。事務局からは以上です。

 続いて、日本骨髄バンクの医療委員会委員でもいらっしゃいます宮村委員から、まずは非血縁者間末梢血幹細胞移植の際の条件である、HLA遺伝子レベルの一致度の緩和について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○宮村委員 現在まで120例、もう既にUR-PBSCTは行われていますが、最初の50例において8/8で非常に予想外のことは起こらないか、また、もともとGVHD値、免疫反応が強く起こって、それによっていろいろ不適当なことが起こるのではないかということの安全性を確認するために、50例の臨床研究を行っています。登録症例は51例になっています。

 資料の1ページ目ですが、年齢は中央値50歳ということで、これは比較的高齢者が集まった研究になっています。右のほうの移植前病期は、寛解またはCML慢性期というのはグッドリスクになり、非寛解期というのはリスクになりますが、非寛解が25例と多いことが特徴です。

 続いて次のページです。この成積を比較するに当たって、同様な国内の非血縁者の骨髄移植1,486例が行われていますが、こういうものと比較していくという形で今日は述べさせていただきます。まず、コーディネート期間はUR-PBSCTは中央値が123日、従来の骨髄のUR-BMT148日で、予想どおり、あるいは予想以上に約1か月間、3週間以上の短縮を認めています。これは既に述べられているように、自己血あるいはオペ室などの制限がないことによります。

 最大のポイントの生存率ですが、100日生存率をプライマリーエンドポイント値で行った研究ですが、86.3%でありました。また下のほうにいきますと、3度以上の急性GVHDというのが予想より非常に少なくて、9.8%ということでした。右のほうに海外のデータが出ていますが、ほぼUR-BMT、骨髄も同等の成積、あるいは重症の急性GVHDにおいてはそれより少ないという、そういう成積でした。

 次のページでは、国内のUR-BMTとの比較をしています。真ん中の所にUR-PBSCT、末梢血幹細胞移植、右にUR-BMTが成人と高齢者それぞれに解析されています。この中で、まず年齢の中央値に関しては、先ほどこちらが50歳と言いましたが、骨髄のほうは約40歳ということで、年齢がリスクとしては今回のPBSCTがリスクが高いという、そういう集団になっていることに留意ください。

 またリスクに関しても、スタンダードリスク、ハイリスクを見ますと、先ほどの寛解とちょっと定義は違うのですが、ハイリスクが多いのに反して、UR-BMTのほうはハイリスクのほうが少ない。ということで、集団として、全体としてはUR-PBSCTのほうが悪いという成積でした。

 最終的に比較すると、いわゆるPBSCTは全症例で100日生存率が86.3%でした。一方、UR-BMT88%。このことから考えると、リスクの集団を比べると両方の成積はほぼ同等であったということになります。海外の成積でもそのように同等であったということが示されています。

 さらに、今後HLA8/8アリルフルマッチから7/8あるいは6/8にいったときにどういう傾向になっていくかということですが、海外のUR-PBSCTUR-BMTのデータを見ていきますと、特にUR-PBSCTのほうでそういうリスクが上がるということは報告されておらず、約1アリル下がることによって0から10%生存率が下がるということで、PBSCTにおいて特にミスマッチが骨髄に比べて不利益ということはありません。

 また、これはあくまでもデータですが、患者1人から見ますと、どこにもドナーがいない、そういう中でUR-PBSCTのドナーしか見つからない患者もいますので、そういった意味で選択肢を広げていくために、8/8の制限を緩和していただくことは一部の患者に確実にメリットがあります。移植ができるということですので。そういったことから、是非とも制限の緩和をお願いしたいと思います。

 続いて、日本骨髄バンクのドナー安全委員長であります金森参考人から、ドナーが末梢血幹細胞採取施設に通院することなどについて、発表いただきます。よろしくお願いします。

○金森参考人(日本骨髄バンクドナー安全委員長) よろしくお願いします。「非血縁者間末梢血幹細胞提供者の安全性に関する検証」という資料を御覧ください。ページ2は提供者の基本情報ですけれども、これは肘の太い静脈に針を刺す関係で、比較的年齢の若い男性ドナーが選ばれている結果だと思われます。

 次の3ページ、これはG-CSFという薬、これは骨髄中から末梢血に、移植に必要な幹細胞を動員するための薬剤ですけれども、その投与日数と、実際に体外循環を使った幹細胞の採取を何回やったかというグラフです。左側の投与日数は実際には4日ないし5日間がほとんどです。それから採取回数は、87%のドナーは1回で済んでいます。

4ページです。外来で投与している施設は数施設で、多くは入院で投与されています。上段の横の棒グラフは数施設、初日あるいは2日目に外来でG-CSFを投与して、その後入院に切り替えて採取を行っています。全体で見ると13%のドナーがこのような形でG-CSFを投与され、残りは全て入院で投与、それから採取がされています。

5ページです。左側の棒グラフはG-CSFの薬を投与されてから採取されて退院されるまでの日数です。7日までに98%のドナーが終わっています。右の棒グラフは退院されてから日常生活復帰までの日数を、3か月後のアンケートで広報誌的にお答えいただいたものですが、おおむね4日程度で社会復帰されていることが分かります。

6ページ、患者に採取された造血幹細胞が移植されるわけですが、約1割のドナーが2日間の採取が必要でした。真ん中の円グラフ、総数とありますが、2.0以上と書いてありますけれども、これは造血幹細胞を患者の体重当たりどのぐらい必要かということが経験上分かっていて、2×106/kg以上が、94%の患者に投与されています。比較的少ないと考えられる1.0未満は、104例のドナーのうち、1人のドナーに過ぎなかったということで、99%の方は移植にある程度十分な細胞が採取されたということです。

78ページは、実際にドナーに起こった身体症状あるいは検査所見を示しています。上段は自覚症状・身体所見ということで、G-CSFの薬を投与して3日目、採取当日、退院時、退院後の症状と時系列になっていますが、発熱や疲労であったり、様々な症状がありますが、これは血縁者間ドナーで既に分かっている有害事象、副反応です。御覧のとおり日にちが、採取後、退院時、退院後と、頻度ならびに重症度が減っている、改善していることがお分かりになると思います。

 下の図は、疼痛に限った報告です。これも同じように時間とともに軽減しているということが理解されます。全体としましては、重篤な副作用は見られなかったということです。

9ページについては、1人のみ発熱が40℃で、高度だったということで別途報告いたします。この方は採取1日はされたのですが、細胞数が1点台ということで、翌日の採取を予定されていましたが、1回目の採取の当日の夜に発熱39℃、翌日2日目の採取予定日に40℃を超える発熱を認めたために、薬を中止して採取も中止されています。発熱以外の例えば間質性肺炎等の重篤な合併症はなく、その後、薬によって対処可能で、数日退院が延期したものの、回復されています。

10ページは、通常は肘の静脈に針を刺すのですけれども、2人のドナーに足の付け根の大腿静脈というところに血管確保がされて、そこから体外循環がされた。幸い特に穿刺部位等に後出血等の合併症は見られなかったという報告です。

 最後1112ページは、フォローアップ状況です。通常、退院されて23週間後に健康診断を行います。そこで問題がなければ、後はコーディネーターの連絡、聞き取り調査になりますけれども、もう1度診察を必要とする方が9例ありました。その内訳が下段の12ページです。特に重篤なものはありませんでしたが、1例のみ、まだこの時点ではフォロー中になっています。以上が採取および採取後のドナーの安全性を104例のデータから示したものです。

 もう1点、採取時の医師の常時監視を緩和して、基本的には緊急時に医師が迅速に対応可能であるという体制を構築するという形に、緩和していただきたいというのが、2点目の依頼です。1点目は通院の制限時間を緩和してほしいということです。以上です。

○小澤委員長 ありがとうございました。今御説明いただいたフォローアップうんぬんの次のところに、国内外の状況ということで参考の資料がありますけれども、その裏の4ページ、日本と世界の状況で、世界は移植の過半数が末梢血である。日本は1%で、かなり大きな開きになっていますので、何とか現在の条件を緩和していきたいという方向です。

 この資料の最初の3ページに、「変更案」があります。フルマッチではなく1抗原不適合の移植を認める、通院の条件を撤廃する、アフェレーシスの条件を少し緩和する、医師が緊急時には迅速に対応可能な体制を構築できればいいのではないか、という方向ですけれども、何か御意見いかがでしょうか。

○梅田委員 梅田です。ドナーの立場から、ドナー選定条件が緩和されてくるということを、非常に歓迎したいと思います。先ほどのデータでもあったように、末梢血幹細胞の移植については、世界の趨勢とだいぶ日本は離れているということで、こちらのほうをますます増やしていくということでは、1時間以内の通院可能というのは非常に大きな条件だったと、私は認識しています。ただ、ここのところが、安全の確保ということで、ドナーに必要な医療処置、フォローアップについてはさらに手厚くということも重要かと思います。

 さらに常時監視もなくなってくるということですけれども、こちらも熟練した医師が緊急に迅速に対応できる体制をまだ残すことも重要かと思いますので、こちらも進めていただきたいと思います。

○小澤委員長 現在の日本造血細胞移植学会が定めるガイドラインは、もっとハードルが低いような感じですけれども、いきなりそこに行くのではなく、もう少し、ちゃんとした緊急時に対応できる体制は残してほしいという御意見ですので、よろしいでしょうか。

○鎌田委員 1番目のHLA8/8アリルフルマッチであることという条件の緩和についてなのですけれども、それは結構だと思うのですが、医療委員会で出されている資料11ページにあります条件緩和にあたっては慢性GVHDが多いことや解析が不十分であることなどの理由のただし書きを考慮し、8/8アリルフルマッチ以外のUR-PBSCTを行う場合には、有効性と安全性について患者と担当医が十分に話し合った上で、慎重に判断することが必要であるという指摘は、非常に重要だと思います。こういいう点は、実際にどのような形で周知されるのかというのが気になっています。

○小澤委員長 実際に移植を行うときには、その辺は他のことも含めて非常に話し合いが念入りに行われると思いますけれども、宮村委員、御発言よろしくお願いします。

○宮村委員 そうですね、説明にあたっては1時間から2時間ぐらい取って、場合によってはセカンドオピニオンというシステムが非常に発達していますので、8/8だけではなくて7/8も選択肢の1つに入るというところで考えていただければと思います。

○岡本委員 恐らくそういう点はまず問題ないと思うのですけれども、末梢血がいい悪いだけの問題ではなくて、実際、移植までどれぐらい短くできるか、それから正に今回の移植の拠点病院を作った概念に当たりますけれども、その人に合った細胞ソースという中に、末梢血が必要であって、それをいかに使うかということのプロトコルをしっかりディスカッションするということは、多分、移植施設は十分熟知していると思うので、問題はないと思うのです。

 あともう1つ、先ほどの移植推進拠点病院、移植と付いていますけれども、正にこういう採取のドナーに関する連携というのも、特に地域は各施設が離れていますので、そういう点の連携ということもしっかり認識していただくことが重要ではないか。採取ではありますけれども、移植と採取は表裏一体なので、そのような点もぜひ移植推進拠点病院の中でバンクと連携して、いかに迅速に緊急時に対応できるかという体制を、地域で作ることが極めて重要かと思います。

○小澤委員長 ほかには御意見はよろしいですか。もし必要であれば、てにをはなどの文言の微調整は必要かもしれませんけれども、一応新しい改定案、変更案で皆さんの賛同をいただいたということで。次のステップはどういう形になりますか。いつ頃からこれでオーケーと。

○山口室長補佐 本日、ご議論をいただきまして、この条件緩和が妥当であるという御意見を頂きましたので、日本骨髄バンクにおいて適宜準備を始めていただき、12月に新しい条件で始められるように準備していく、と伺っていますので、進捗状況次第になりますけれどもそのような手続きになると思います。

○小澤委員長 ではその辺をよろしくお願いします。それでは本日の大きな議題は以上となりますけれども、そのほか事務局から何かありますか。

○山口室長補佐 本日はありがとうございました。時間が迫っていますけれど、最後に資料4についてだけ簡単に説明いたします。配布資料4-1から4-3までありますが、資料4-1は「造血幹細胞移植の現状について」、ということで、非血縁者間の移植数の推移を示しています。次の資料4-2については、「平成28年度の造血幹細胞移植医療対策関係概算要求の概要」です。適宜御参照いただければ幸いです。資料4-3は支援機関である日本赤十字社でまとめました「平成26年度の臍帯血の逸脱・有害事象」の報告です。有害事象において2件が重篤となっていますが、いずれも原因としてはアナフィラキシーが考えられるという事象でした。以上になります。

 本日は活発な御議論をいただき、ありがとうございました。事務局におきましては、今回頂いた御意見を踏まえ、今後の委員会の議論につなげていきたいと考えておりますので、今後とも御指導のほどよろしくお願いします。また、次回以降の開催については別途調整させていただきますので、よろしくお願いします。

○岡本委員 ちょっとごめんなさい。1つ、緩和になったときに、一番キーになるのは、ドナーに対してどういう情報提供をして、どのように末梢血のメリットをアピールするかによって、ずいぶん変わると思うのです。今必要なのは、とにかくどちらでもいいので、なるべく受け入れてほしいというのを考えるのであれば、その辺のアドバイスのツールというか内容も、すごく慎重にするのか、それともメリットを大きく出すのか、そういうところをしっかり考えていかないと、私はむしろ後者のほうで、これを推進していかないと、単に紙の上で緩和しましたと言うだけではなくて、実際にドナーに登録する人たちに対して何がメリットなのかということをもっとはっきりするように。ここに出ているデータだけでは十分ではないですね。入院からといっても入院は必要なくなるわけだし、移植してからすぐ早く帰れますとか、そういったところをアピールしていかないと、今後せっかくやったとしてもその成果がすぐに出てこないと思うので、それを最後にコメントしたいと思います。

○小澤委員長 この末梢血のほうの条件緩和の意味も、先ほどの資料のところに書かれていますけれども、末梢血がオーケーになると協力してくれるドナーも増えると思いますので、その辺のメリット・デメリット、しっかり分かりやすく整理していただいて、スムーズに12月にスタートするようによろしくお願いします。

○山口室長補佐 了解いたしました。事務局からは以上となります。

○小澤委員長 それでは10分ほど遅れてしまいましたけれども、本日の会議を終了したいと思います。活発な御議論ありがとうございました。


(了)

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