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2017年3月1日 実践的な手術手技向上研修事業に関する評価会議

医政局医事課

○日時

平成29年3月1日(水)16:00~


○場所

航空会館(7階)701+702会議室


○議事

 

○掘岡課長補佐 皆様、お集まりいただきありがとうございます。私は厚生労働省医政局医事課の掘岡と申します。サージカルトレーニングに関しては、本当に先生方にお世話になっております。ありがとうございます。

  評価会議を開始するに当たり、まず資料の確認をしていただけますでしょうか。こちらの黒いクリップに止めたものと、札幌医大サージカルトレーニングセンターから出していただいているもの等と、名古屋市立大学のパンフレットがあると思います。きちんと組みましたので恐らくは全部そろっていると思うのですが、こちらの黒いクリップの中でも何か、プレゼンテーションの途中で資料がなかったり、ページが合わなかったりした場合は、我々まで言っていただければ幸いでございます。

  評価委員の方々には各団体の評価をお願いしたいと思っております。後日、各団体にフィードバックしていただければと思っております。議事録と資料は後日、公表させていただきます。

  座長は昨年まで近藤先生にお願いしていたのですが、今年から伊達先生にお願いしております。伊達先生、一言御挨拶をいただけますでしょうか。

○伊達座長 座ったままで失礼いたします、所属は京都大学の呼吸器外科になります。この 2 月からは CST 推進委員会という名前に変わっておりますが、外科学会の CST ガイドライン委員会の委員長を近藤先生から引き継ぎまして、これをいかに進めていくかという立場にございます。私自身、まだまだ勉強しながらというところですので、皆様とともに、いい形で CST へ進むように努力してまいりたいと思います。今日はよろしくお願いいたします。

  それでは、早速発表に移っていただいてよろしいですか。

○掘岡課長補佐 お願いします。

○伊達座長 時間が限られておりますので、大変申し訳ないのですが、皆様には短いですが 5 分間で発表をお願いします。その後、質疑応答 2 分、 8 大学の先生方に御発表いただきます。そこの部分が大体 1 時間ぐらいで済むと思います。その後、約 60 分を使いまして、  皆さんとフリー・ディスカッションをしたいと思います。

  早速、札幌医科大学の藤宮先生、御発表をお願いいたします。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  本日、このレジュメを見ながら進めさせていただきたいと思います。

  早速ですが、レジュメの 2 ページを御覧ください。札幌医大ではもうこれで 5 年連続、厚生労働省の予算をいただいております。平成 24 年から 800 万円、 870 万円、 504 万円、 257 万円、 247 万円という形で予算をいただいて、サージカルトレーニングをさせていただきました。平成 24 年から平成 28 年にわたって、どのようなセミナーを行ってきたのかを、ここにリストアップしております。

6 ページ、平成 28 年度は 13 団体といいますか、何回か同じ所が繰り返しているものもあるのですが、 13 回にわたってトレーニングを行いました。

7 ページからは平成 28 年度に行いましたそれぞれのトレーニング、その団体がどういうところから来られているか、及び実際のトレーニングの写真などを載せております。それがずっと、同じようなものが続きます。

20 ページ以降はアンケートの結果です、「大変有益であった」とか書いております。

  最後の 26 ページを御覧いただきますと、厚生労働省からいただいている予算をどういうようなことに使わせていただいたかということです。最初に比べて、後のほうでどんどん額が少なくなっていますが、少ないながらも人件費 1 人分、これは事務局担当の職員を雇うのに使わせていただきました。消耗品代などというのは非常に少なくなっているのですけれども、これは開催した時、参加者からの受講料という形でいただいていますもので、こういうセミナーを行うことができました。

  最後に、追加でお配りしましたカラーの資料「札幌医科大学サージカルトレーニングセンター構想図」を御覧いただきたいと思います。これまで厚生労働省のサポートによって、解剖学講座を中心に行ってきたわけですが、この 4 月からは、大学でサージカルトレーニングセンターというものを作ろうという段取りになりました。札幌医大では、このドーナツ状の様々な外科系の講座で、これまで活発にトレーニングを行っており、大学の講座に付随するような病院も幾つかのサージカルトレーニングを行っておりました。

  これら外科系の講座から教授が出て委員を構成し、代表として兼任の教授に 1 人代表になってもらう。事務局として、これまでずっと事務を担当している伊藤が就く。事業費としては大学から支給されるのですが、目下のところは最低限の経費として、職員を雇う費用や消耗品などの購入費用が支給される。それ以外のところはこれまでどおり、参加費を取ることによって、各主催団体がそこから必要経費を出していく。

  解剖学講座としては、献体の提供、注入処理を講座の技官が行う。また、献体の会である「白菊会」への説明を行うということで、これまでの役割とは異なり、ちょっとサイドに行ったわけです。

  専門委員会としては、このようにユーザーたちが構成したものがどういう立ち位置になるかと言いますと、各実施団体から専門委員会に要請があった案件に対して、その判断を行います。この場でサージカルトレーニングを行って良いかとか、若しくは収支決済のプログラムがきちんとできているかなどを判断して札幌医大倫理委員会に諮る。その結果を以って、また各主催団体に許可を与えるという立ち位置です。以上です。よろしくお願いします。

○伊達座長 ありがとうございました。失礼しました。評価委員の先生方の紹介を忘れておりました。評価委員は、私が伊達です。先生方、簡単にお願いします。

○小林委員 慶應大学の小林です、どうぞよろしくお願いします。

○七戸委員 北海道大学の七戸と申します、どうぞよろしくお願いいたします。

○内山委員 順天堂大学の内山と申します、よろしくお願いいたします。

○松村委員 杏林大学の松村です、よろしくお願いいたします。

○伊達座長 ただ今の札幌医科大学の御発表なのですが、評価委員の先生方から、何か御質問はございますでしょうか。

○小林委員 個別の質問をここでするのですか。

○伊達座長 はい、 2 分間ぐらい。

○小林委員 今回、提出されている写真などは、どのような格好ですか。クローズになっているのか、オープンになっているのか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  今回、これはうちの事務局が、今回の発表のために撮影したものです。御遺体のお顔の部分などは出ないようにとか、配慮して撮影しております。

○伊達座長 先生、一番苦労なさっている点は費用ですか、どうですか。運営上で一番苦労なさっている点はありますか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  そうですね、特にないですね。

○伊達座長 そうですか。素晴らしいですね、 5 年間連続で、非常に軌道に乗っているという印象を持ちました。どうもありがとうございました、次に進ませていただきます。

  次は東北大学の北田先生からの御発表、よろしくお願いいたします。

○掘岡課長補佐 一点だけお聞きします、参加費を取ったということですが、幾らぐらい取られたのですか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  主催者によって、様々です。一番高いところで 7 万円、後は 3 万円、 5 万円と、バリエーションがあります。

○掘岡課長補佐  3 万円から最大、 7 万円ぐらいということですか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  そうですね。

○掘岡課長補佐 それはこの 247 万円と比べると。例えば平成 28 年だと、合計ではどれぐらいの収入になるのですか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  収入といいますか、それは各主催団体がリース料や講師料など、それぞれ全て収支決済が合うようにやっていますので、私のところはそれが収入になるとは考えていないのです。

○掘岡課長補佐 そうなのですが、 247 万円と比べて、そちらのほうが大きいのか小さいのかという。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  もちろん大きいです、 247 万円では何もできないということです。

○掘岡課長補佐 申し訳ありません、失礼しました。全然大きい感じなのですね、参加費のほうが。参加費のほうが額としては全然大きい額なのですね。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  そうですよね。

○掘岡課長補佐 分かりました。

○伊達座長 それでは北田先生、よろしくお願いします。

○北田先生 ( 東北大学 )  ありがとうございます。東北大学の北田です、どうぞよろしくお願いいたします。<スライド1>本日は東北大学における手術手技研修を一緒に進めさせていただいている大和田先生が学内の用事で来られませんでした。申し訳ございませんが、私ひとりで発表をさせていただきます。

  まず、私の資料なのですが、他大学が手術手技研修を始めるに当たり参考になるようにということで、同じ内容をベースとして毎年更新とさせていただいております。多少冗長な部分がありますこと、御理解いただければと思います。

  <スライド2~6>私たちは篤志検体の会である「白菊会」を特に大事にするという姿勢で手術手技研修を進めてきております。本事業を開始するにあたり、白菊会会員への意向調査をまず初めに全員に対して行い、なおかつ研修で行ったことの概略について、各段階において白菊会会員に御報告しております。

  <スライド7~8>また、私たちは手術手技研修を始めるに当たり専門委員会を設けました。全ての研修に関しては、その内容をまず専門委員会において審議し、次に倫理的側面を倫理委員会にて審議するといった段階を踏んで実際の研修に臨むこととしております。

  <スライド9~11>私たちの研修の目的ですが、コメディカルスタッフが見学や手術の補助・手順確認という形で介入するというのが一つの特徴と言えるかと思います。医師については、実際の手術とほぼ同様の手技を行う、更に受講者の実力に合わせて解剖学的な知識の確認や、標準的手術手技、あるいは非常に高度な手術手技の習得を目指すこととしております。

  <スライド12~15>実際に取り扱っている手術手技の名称を参考までに記してありますので、ご参考として下さい。<スライド16>これが実際の研修中の写真になります。こういった写真に関しては、撮影等を厳しく管理しておりまして、私が全て写真を見て、供覧対象に応じて開示の可否を判断しています。例えば、一般市民向けであれば駄目だけれども、学会向けとしてはOKとか、全ての写真を確認して、判断しております。

  <スライド17~19>成果を示します。まずは、無記名式の満足度調査になります。 90 %以上の参加者に「満足」との評価をいただいております。「実際の手術手技とほぼ同等の研修が受けられた」ということになります。但し婦人科だけは余り満足度が高くないのですが、ほとんどの参加者が学内の人たちで、途中で病棟から呼び出しがかかるということもあり、満足度が低くなっているということが判明しております。これについてはある意味で仕方のない部分であります。<スライド18>無記名式アンケートの自由記載部ですが、ここは毎年変更同様の評価をいただいております。非常に良い、実際の手術手技が研修できるというだけでなく、触ってはいけない神経や血管を見ることができるという評価をいただいております。

  <スライド20~22>記名式の自己理解度調査の結果を示します。耳鼻咽喉科領域にて 10 段階の自己評価基準を設けた上で調査をしましたところ、手術前・手術後の方が、そして手術後よりも半年後の方が、理解度が高まっていました。すなわち、実際に学んだことを臨床の場で活かして、更に理解度が高まるのではないかということが考えられます。また、整形外科でも同様に研修前・研修後、半年後という形で、研修したことが実際臨床の場で応用されることで、さらに理解度が高まるのではないかといった結果が得られております。

  <スライド23~24>手術手技研修を進めていく上で、今まで様々な問題に直面しました。例えば、講師数が少ないとか、遺体の数が少ない、研修時間が短いということがありましたが、年々これらの数を増やしてきており、その結果現在では参加者の満足度は高くなっております。

  <スライド25>これは東北大学における本事業の 5 年間の変遷になります。今年度は参加診療科数、講師の数、受講者の数、延べ研修時間、これら全て最大となっております。来年度はそれぞれ更に増加する予定となっており、順調に事業規模が拡大していっております。

  <スライド26>手術手技研修を進めてきた上でのかつての問題点を示しております。厚生労働省補助金では備品は購入できませんし、補助金採択までの期間の事務職員の雇用をどうするかといった問題がありました。これに対し、各診療科から運営費交付金を 30 万円ずつ拠出していただき、これを用いて備品を購入したり、予算確定までの事務職員の雇用に充当したりしてきております。<スライド27>こちらの課題点につきましては、割愛させていただきます。

  <スライド28>今回は今後の課題点として、「かかる費用をどうやって捻出するのか」 という部分について、少しお話したいと思います。<スライド29>現在のところ厚生労働省よりいただいている補助金が 740 万円程度、各医局から 30 万円×診療科数ということで、年間総額 1,000 万円程度の予算で成り立っております。ただ、 CT 等の撮影をしてくれないかとかいった声が高まっていること、解剖実習台を用いても非常に腰が痛いので昇降機能付きの手術台がほしい、あるいは東北医科大が参画したいということで、それぞれ資金的に一定の額を要することが今現在問題となってきております。<スライド30>  これに対し、受益者負担ということで参加費を徴収していくことを考えるわけなのですが、参加者や参加者の所属組織から参加費を徴収することを想定し、内規策定を進めております。東北大学においては医学部よりも大学本部の意見が非常に強いので、内規策定のための調整を試みているところです。<スライド31>参加費徴収について参加者に理解していただくため、研修内容をもっとブラッシュアップする必要があります。例えば、チェックリストを用いた講師による到達度判定、 AI を用いた術前シミュレータ学習、あるいは学会による単位認定といった施策をとることで、より付加価値の高い手術手技研修としていきたいと思います。<スライド32>内規を策定して参加費を徴収する、それにより東北大学における手術手技研修を更に充実・発展させていきたいと考えております。以上、ありがとうございました。

○伊達座長 ありがとうございました。評価委員の先生方、何か御質問や御意見はありますか。

○七戸委員 確か、昨年も参加費の徴収について課題に挙げられていたかと思います。大学の中で、どの部門が障害になっているのか、ちょっと教えていただけますでしょうか。

○北田先生 ( 東北大学 )  東北大学は総合大学で、医学部事務の上に大学本部事務があります。医学部の事務の方と話をすると、必ず「本部に聞いてみます」ということで、そこが一番の障壁になっています。内規策定という部分においても、1万円を超える徴収例がないといったところや、参加費の額の根拠を示す必要がある等、非常に難しいところがあります。ただ、やっと折り合うところが見つけられそうだというところで、来年度を目途に参加費を徴収していきたいとは考えています。

○七戸委員 大学の本部も前例がないことなので、その準備に非常に時間がかかっているということですか。

○北田先生 ( 東北大学 )  はい、そうです。市民公開講座のように 5,000 円とか 3,000 円程度を徴収するとか、そういったことは今までしていたことがあるそうなのですが、 1 万円という、万単位のものを徴収することは今までなかったので、その部分が非常にネックになっていたというところです。

○七戸委員 ありがとうございます。

○松村委員 先ほどちょっとお話が出ましたけれども、東北医科薬科大学が参加を希望されているということでした。これは先ほどの費用の問題も含めて、どういうように参画をされるのかということと、恐らく東北の白菊会が東北医科薬科大学の献体を引き受けられるということですので、その辺の事情も含めてちょっと予想というか。

○北田先生 ( 東北大学 )  分かりました。まず、参加者として参加したいという場合と、診療科として研修を企画したいという場合と、 2 つあると思います。現状では、参加者として参加したいという方が徐々に出てきている段階です。東北医科薬科大学の診療科が私たちの事業に参画して一つの研修項目を企画するということについては、事務的な部分で擦り合わせをしているところになります。

  白菊会の方々に関しましては、東北医科薬科大学への理解が進んで来ています。東北医科薬科大学では年間 100 人が入学し、肉眼解剖実習は 6 名に 1 体の御遺体を用いるということで、計 17 体のご遺体が必要になります。これまでの御遺体搬入数でいくと足らなくなるかもしれないと思ってはいました。ところが、ちょうどそれと前後して入会者の入会基準を少し緩くしており、それが非常に奏功しております。これまで大体、御遺体の搬入が 60 体プラスアルファぐらいだったものが、ここ数年は 80 体を超えてきているような状況です。この形であれば、東北大学と東北医科薬科大学の教育も、手術手技研修も問題なく進めていけるだろうという見通しとなっております。

○松村委員 御遺体の保管スペースというのはどのぐらいお持ちなのでしょうか。

○北田先生 ( 東北大学 )  保管スペースは、通常のホルマリン固定遺体で 100 体分があります。ほかに少し金庫の保管庫で 10 体程度、凍結のスペースもありまして、更に 10 数体程度入ります。

○松村委員 ありがとうございます。

○伊達座長 先生、どうもありがとうございました。次に千葉大学の鈴木先生、御発表をよろしくお願いいたします。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  よろしくお願いします。ちょうど厚生労働省の予算を頂く 1 年前から動かしていたので、これまでの5年間、需要増加に対する対応をメインでやってきました。去年の挙げた課題がそのまま残っているので今回御説明いたします。

  今年度の実績ですが、 2 月末までですけれども、順調に増えてきてで大体定番化してきました。今年度参加は先端応用外科学講座からで、御遺体とはどういう感じですかという問い合わせが今回、来ました。ほかの講座は慣れてきておりまして、噂を聞きつけた他の大学の先生が参加したいと言ってきたりしているので、規模が少しずつ大きくなってきています。またそれぞれの講座から、御遺体をもう一体いただけませんかというような展開が増えてきており、御遺体の割り当てに四苦八苦という状況です。サージカルトレーニングの参加者は、今年は 311 名でした。

  教育のトピックとしては、今年、米国の外傷外科学会の公式プログラム「 ASSET 」というコースをアジアで初開催しました。このプログラムは有名なプログラムであり、日本の救急部の先生たちは結構アメリカまで行って受けています。あちらで 800 ドルの参加費でされていて、技術維持のため複数回行っている先生が多いです。

  その先生たちが日本でやりたいということで、日本の外傷外科学会と米国外科学会のコンバインという形で、ボイヤー博士というプログラム開発者を招いて全く同じプログラムを行いました。 DVD やスライドなども全部できていて、分単位で全身やっていくというプログラムでした。今後は毎年ずっとやっていきたいということで、正に昨日、今年6月開催へ向けたの委員会の会合をしました。

  また、数年にわたり、ずっと教育実施されてきた呼吸器外科の先生たちの脳死肺移植が去年初めてありました。救急部の先生や呼吸器外科の先生たちがもう完璧に、初めてなのに何も問題なく完璧に成功し、これは CAL のおかげだろうという連絡をわざわざいただけるという、非常にうれしかった記憶があります。

  研究ですが、やはり他大学から依頼が来て、間に入っていて立ち合う私たちにもちょっと負担が増えてきたとなっています。教育研究の参加者は、今の段階で 426 名、右肩上がりでここまで来ました。ほとんどが見学ではなく、みんな執刀していますので、非常に濃厚な時間だったのではないかと思います。

  前回残った課題ですけれども、これを挙げさせていただきました。 1 つ目は、倫理審査と術前シミュレーションという問題があります。倫理審査は迅速審査をやって、サージカルトレーニングはそれなりに順調に行ったのですが、この希な疾患・術式の術前シミュレーション ( 準緊急 ) は、患者さんを見つけて早めに手術しないといけないといった場合に問題があります。今、ネットを使えば、珍しい疾患の情報がすぐ手に入ります。状況が切迫していて、倫理審査など通している暇がないというのが実際にはあります。

  今年は発生しなかったので、このまま過ぎてよかったのですが、実際、過去に 2 回ありました。実際の患者の手術の報告では、術前のシミュレーションどおりに全てがうまくいったと連絡を頂いています。しかし実は御遺体では失敗しているんですね、その先生たちは。御遺体で失敗して、これは危ない、論文に書いてあるだけでは気付かない点があったというのが分かって、実際の手術に臨まれて、もう絵に描いたように完璧な手術が終わったというような連絡をいただいています。この可能性は排除したらもったいないと考えています。患者さんにとったらものすごくダメージがあるのではないかと思いますので、これは何とかしないといけない。ただ、我々はガイドラインを守ると決めていますので、迅速倫理審査でお願いしますと言うどまりになります。しかし迅速と言えど、なかなか 1 週間では返ってこない。そうすると、もうこのような術前シミュレーションは厳しくなってくるだろうなと考えています。

  やはり、術前シミュレーションによって医師が学んでから手術に臨めるというのは国民にとって非常にメリットがあります。ポイントは、ガイドラインの改訂の際に倫理審査が不要のケースの定義をはっきりさせるという事があげられます。研究は倫理審査が必要ですというものと、解剖学会からの見解のほうでサージカルトレーニングには研究の面も含まれるのでというコメントが両方存在していると思います。この部分をどのラインで切るのかと言われると分からないので、結局は全部倫理審査が必要だという考えになってしまいがちです。ここのところで何か一つ、中央側で明快な定義設定をやる必要があるのではないかと思います。

  実は、人を使った臨床研究のガイドライン ( 指針 ) を作った先生が千葉大学に来た時、サージカルトレーニングを外すために、あれは臨床研究という名前にしてあるのだから、先生、できるのだったらどんどんやって良いと言われました。ただ、新しい術式にチャレンジする時は研究の側面があると書かれてしまうと、結局倫理審査の段取りが全部必要になっているのですと言ったら、そんな拡大解釈の方法があったのかと、作った側の先生がちょっとびっくりされて帰っていったということがあります。実は作った側もそのように考えていたというのがあると、やはり一番の利益、国民へのメリットを追求すると、そこは何か踏み込まないといけないのではないか、そこをお願いできればと思っています。

  次はマンパワーです。私はもともと、解剖にきた時は 3 番目ぐらいのポジションで来ました。この数年にわたり交付金の削減の波で、解剖学の教員のポストが異動とともに、取り上げという形になってどんどん減っています。今は教授と私だけです。兼任教員のアシストで何とか維持しています。やはり研究は外部資金を取ってこられるのですが、教育というものに関しては資金が得られないのであれば、どうしても削っていくというスタンスが垣間見えてしまいます。大学の運営母体の上層部としては、それは仕方がない判断だろうなとも思うのですが、特にこれは卒後教育も含めてしまうので、大学の先生に卒後の教育までお願いしますと言うと、それはそもそも too much だろうという判断になりかねない。ちょっと、やはり医師の教育に向けて何らかのアピールを国のほうで考えない限りは、今後、学生も含めて教育側の負担が増え、教員のマンパワーは減っていって、残った熱意ある先生の負担が一層増えていくという状況になることを危惧しています。研究が取れる分野にだけ大規模投資をするという感じの状況なので、教育には絶対にお金は回ってこない、人も回ってこないというのが現状だと思います。

3 つ目は運営資金です。数年置きに、私たちが一番、改定していったものになります。当初、術着その他のために 4,000 円という金額を参加する講座から頂いて、翌年度の運営資金に割り当てるという形でやっていたのですが、 Thiel 法の導入に伴い、それを 1 万円の額に上げて運営しています。なので、今、単純に考えると、 400 名参加した場合というのは 400 名の運営資金をいただいています。実際にはスコープが 1 本折れましたし、去年は冷凍庫の値段が分からなかったのですが、壊れたら 300 万円だったということで、これは大学にも泣き付いていろいろな所からお金を工面して直しました。

  この 1 年に始めたルールは御遺体の適正な管理・施設維持を目的として外部団体からの調査依頼がたくさん来ています。当然、外部団体は内情を知らずに、 4 体でも 5 体でもたくさん貸していただけますかというような依頼をしてくるわけです。ですので、たくさん使われる場合はたくさん寄付金をいただかないといけないというルールを作ることにしました。御遺体 4 体の場合が 50 万円という形で、臨床講座と基本的に同等の負担をお願いするということで、まず今年 1 年やってみています。

  しかし、自助努力では解決できない問題として、やはり私たちのところは奨学寄付金と外部から頂く寄付だけで運営しております。大学からはもらっていないのですが、組織として安定しないだろうなと思います。大学で運営するための資金なり、負担しやすい環境を何かしら、大学外から与えていただかないと多分大学は動きにくいのではないかと思います。

4 つ目は、外部利用者増加による相体的な御遺体の不足です。参加者は増加の一途で全国の医師が切迫した現状を反映しています。来年、学会の共催を 3 つ予定しています。他大学からの施設利用依頼も増加しています。できるだけ、全国の医学部で CAL のようなもの、もちろん御遺体の数によって、できるできないはあると思います。ただ、やりたいが、あと一押しがないという大学に対しては是非、何らかの一押しで皆で CAL ができるようにしないと解決できないかと思っています。

CAL の利用の増加、これは医師自身がやはり深い解剖の知識への渇望と技術習得への期待や医療安全への不安が切実に表われていることだと思います。最初は臨床医から「どうしたら CAL ができるのですか」という問い合わせがあったのですが、やはり最近は、少し困惑気味の解剖の先生から、みんなにお願いされるのだけれどもどうしたらいいかという問い合わせが増えてきています。 CAL は卒後教育の目的のためで、卒前教育担当の解剖学教室へのプレッシャーは想像に絶する大きさなのではないかと思います。解剖教室にメリットが全くない中、教授陣の善意で幾つかの大学で試みが続いているのですが、普及という状況ではないと思います。競争的獲得資金に依存する政策のもとでは今後、大学の教育や社会貢献という使命は形骸化していくと思います。 CAL は国民に直接メリットを与えられると強く認識していただいて、善意の献体を使って日本中の医師を教育して国民に還元するという卒後教育を、大学に明確に支援することをしていただかないと根付かないだろうと思っています。御清聴ありがとうございました。

○伊達座長 評価委員の先生、一つだけ質問をお願いします。

○内山委員 千葉大学でマンパワーと解剖学教室が 1 1 というのは大学の問題なのでしょうか、今まで 1 1 という解剖学教室というのは聞いたことがありません。それは千葉大学自身の問題なのか、大学の問題ですよね。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  大学で今、とりあえず異動したところが消えるのです。以前、新聞で、新潟かどこか。

○内山委員 不補充ですよね。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  はい。

○内山委員 それは千葉大学の問題で、今まで 1 1 しかいないマクロの教室というのは見たことがない、聞いたことがありません。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  私も驚きです。

○内山委員 大学でどうしてそのような対応をするのか、やはり大学として大きく問題にしたらいいのではないですか。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  でも、そこが多分一番難しい。しかも、オフレコにしないといけないかもしれないところなので。

○内山委員 いや、だから、オフレコにしているから問題なのではないですか。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  そうですね、でも何とも言えない難しさがあります。

○内山委員 いや、マクロの教室で、そんなに少ないところは聞いたことがない。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  私もありません。他大学、医科歯科大学さんが調査した中で全国の解剖実習を担当している教員数の調査がありました。全国平均で 5.2 人で解剖実習を担当されているということで、尋常ではないなという状況ではあります。ここでマンパワーを取り上げたのは、 Surgical Training を普及させるためには、解剖学教室のマンパワーも最低限ないと難しいという意味でお伝えしました。

○伊達座長 先生、どうもありがとうございました。このペースで行くと総合討論ができなくなってしまうので、一応、御発表の先生は申し訳ないのですが 5 分前後で要領よく、よろしくお願いいたします。

  次に東京医科大学の本間先生、御発表をよろしくお願いいたします。

○本間先生 ( 東京医科大学 )  東京医大の本間でございます。よろしくお願いします。スライドを使って説明いたします。昨年の評価会議では、今後の課題として参加費や外部資金の導入を挙げていただきました。この課題に対応するため、また、サージカル研修献体の火葬関連費を、今年度は厚労省予算から支出できないという現実的な問題が生じたことを受け、今年度より各科受講生より参加費を徴収することで火葬関連費に充てることとしました。

  費用は、今年度に使用する献体実数に対する火葬・棺代を、延べ使用献体数に応じて各科に負担してもらうこととしました。各科は、この負担金を受講生・見学者の人数に応じて受講料・見学料として徴収する方針としました。なお徴収に際しては、大学会計課で管理する関係により、法人税を含む 30 %の間接経費も計上しています。

  この参加費徴収を含めた各科の開催状況について提示します。最初は今年度から新規参入した産婦人科です。東京医大のサージカル研修で使用している飽和食塩溶液固定法遺体を用い、「腹腔鏡婦人科悪性手術セミナー」が行われました。受講料は 1 4,000 円で、受講生 10 名、見学者 13 名、講師 3 名の参加となっています。開催スケジュールはこのような状況です。

  次に脳神経外科です。ここでは 2 つの研修が行われました。最初に「下垂体ハンズオンセミナー」です。本セミナーは日本間脳下垂体腫瘍学会が主催となった関係で、火葬関連費に加え、諸経費が必要とのことで、受講料 5 万円、見学料 1 万円を徴収し、受講生 15 名、見学者 19 名、講師 11 名の参加となっています。開催スケジュールを提示します。

  もう 1 つは、頭蓋底手術を研修する「 Skull base micro cadaver dissection course 」です。本研修献体は、先の下垂体セミナーとの共用献体のため、受講料は無料とし、学内から受講生と講師を合わせた 18 名の参加となっています。開催スケジュールはこのような状況で、 2 日間のコースです。

  次は麻酔科です。「献体による神経ブロックの臨床解剖学的研究会」が行われました。受講料は 9,000 円で、受講生 15 名です。なお、学内は 5 名でした。見学者 1 名、講師 7 名の参加となっています。開催スケジュールはこのような状況です。

  次は口腔外科です。「献体によるインプラント骨造成の臨床解剖学的研究会」が行われました。受講料は 3 5,000 円、見学料 4,500 円を徴収し、受講生 12 名、見学者 11 名、講師 7 名の参加となっています。開催スケジュールはこのような状況です。

  最後に、救急・災害医学です。まずは、献体による外傷手術臨床解剖学的研究会 ( 基礎コース ) です。全 4 回の開催となっています。このうち 11 16 日の開催については、日本医大が主催の日本救急医学会総会のプレカンファランスコースに位置付けてもらい、専門医所有の縛りを外し、医師 10 年以下の若手を対象に、評議員推薦のみの条件で公募としました。これは若手にも受講経験をさせてほしいとの各所の要望に応えたものです。なお、救急災害医学は日本損害保険協会から自賠責運用益拠出事業に対する助成を得ており、これを献体火葬関連費に使用することを認めていただきましたので、受講料は無料としています。

  これが開催概要です。全 4 回の開催概要はこのとおりです。

  もう 1 つは、献体による外傷手術臨床解剖学的研究会 ( アドバンスドコース ) です。これは昨年度から始めたもので、これまでの基礎コースを受講した、上級者グループに属した医師を対象とし、欠席者 (2 ) を除いた 10 名が受講しました。なお、他の動物外傷手術研修 (ATOM) や、先ほど鈴木先生からもお話がありましたが、昨年から東京医科歯科大学の救急が千葉大を会場として開催を始めた、米国の献体外傷手術研修の日本版 (ASSET) の主催者も見学者として受け入れ、彼らとの連携も図れるようにしました。こちらも受講料は無料としています。開催スケジュールはこのような状況です。

  これは以前にも評価会議で供覧しました平成 24 25 年度の全 135 名の受講者に対するアンケート結果をグラフ化したものです。自己習熟度評価点、すなわち手術に対する自信は受講前と受講直後、受講前と半年後と有意に上昇しています。しかし、受講直後と半年後では全体的に下降していました。ただし、結果をサブ解析すると、救命救急センターで手技を実践している者は評価点は維持され、また文献的には複数回の研修に参加することで評価点は維持されるとされています。

  この結果他を含んだ検討は、資料としてお手元にも配布しましたが、『 Acute Medicine & Surgery 』という英文誌への投稿が受諾され、本年の 1 号に掲載されました。本雑誌はオープンジャーナルであり、日本発の献体手術研修成果を広く世界に知らしめるものであると自負しております。なお、黄色でマーキングしたごとく、ガイドラインの発表と本厚労省事業が募集された経緯もしっかりと記載しております。ここまでの内容の「総括 1 」をスライドに提示します。

  最後に献体による外傷手術臨床解剖学的研究会の受講生らが、今年度経験した研究会関連手技の社会的災害事件への臨床応用例を 2 つ提示したいと思います。この研修では、四肢が挟まれて生じるコンパートメント症候群に対する研修を行っています。

  これは昨年 4 月に発生した熊本地震の例です。受講生の先生よりは、下腿の切断が避けられないケースだったということですが、救急以外に災害時の診療の柱となった一般外科医の先生にも、こういった手技が必要なのだということをトレーニングしてもらうと、より診療がスムーズにできたのではないかという意見を頂きました。

  研究会の実習項目には、頸部の血管損傷への対応もあります。症例は、昨年 7 月に発生した社会的にも大きな問題となった相模原の障害者施設の殺傷事件の被害者の症例です。東京医大の八王子医療センターにも分散搬送されました。対応したのは長期的外科研修を受けていない医師 7 年目のスタッフで、彼は外科専門医等は持っていないのですが、解剖研究会のアシスタントとして複数回参加しており、頸部血管の解剖学的位置関係を冷静に把握して対応し、救命につながっています。

  「総括 2 」をスライドに示します。以上です。御清聴ありがとうございました。

○伊達座長 評価委員の先生、御質問はありますか。参加費がそれぞれの会によって、 0 5 万円まであるのですが、これは札幌医大と一緒で、それぞれの会、 1 1 回で収支をやっているということですか。

○本間先生 ( 東京医科大学 )  そうですね。各科に、これでやるので拠出金を出してくださいという形でお願いしましたので、開催回数及び受講者の人数が少ないか多いかで、かなりばらつきが出てくるという状況です。ただ、脳外科に関しては、学会主催でやっているということで、去年ほかの大学でもこの様な研修会をやっており、それに準じた受講料を徴収させてほしいということで、この 5 万円は認めている状況です。

○伊達座長 よろしいですか。先生どうもありがとうございました。

  では、続きまして、名古屋市立大学の植木先生、よろしくお願いいたします。 

○植木先生 ( 名古屋市立大学 )  名古屋市立大学の植木でございます。よろしくお願いいたします。私ども名古屋市立大学は、手術手技研修を行っている大学の中で最後発で、去年から参画させていただいております。当然、私どもが始める以前に先行してやっておられた大学、特に藤宮先生、松田先生の教室の御事情などをよく伺った上で、どういったところに問題があるのか、どういったことをクリアすべきなのかを御教授いただきまして、その上でこういったものを走らせております。

  平成 28 年度の実績ですが、多岐にわたる診療科の参加を得ております。実施回数、持ちました献体は全て Thiel 法固定による献体ですが、こういった内容でやっております。詳細につきましてはお手元の資料を御参照願いたいと思います。

  私どもの所の 1 つのトピックとしましては、この 1 月に、先端医療技術イノベーションセンターを開設しました。私は解剖学の教室と、計算解剖学 AI の教室の 2 つの教授を兼ねておりますので、そのうちの 1 つのプロジェクトとして、アナトミカル・ラボというのを立ち上げました。こちらはサージカルトレーニング専用の施設です。これを造るに当たりましては愛知県と、名古屋市立大学から予算的なサポートを頂きました。この箱を造るのに整備費として大体 1 5,000 万円程度かかり、名古屋市立大学からは 3,750 万円、それ以外のものは愛知県から頂いております。こういったものを土台として、私どもの所の各診療科は手術手技研修を行っております。内視鏡、手術台、 C アーム、それぞれ 3 式そろえておりまして、オペルームも鉛で遮蔽しておりますので、 C アームによりましては椎体固定術なども可能となっております。

  各診療科ごとに、それぞれの診療科が自前で寄付金、あるいは系列病院などからの寄付金を集めることによって必要な消耗費代は全て集めてくるという前提の下で、私どもではそれ以外の部分、 Thiel 法を用いた固定に必要なもの、あるいは火葬に伴って発生してくる費用を厚労省から頂いたお金で賄っています。あるいは人件費としては、サージカルトレーニング専用の技術職員 1 名、事務職員 1 名を雇用しております。厚労省から 700 万円頂いておりますので、主にそれは人件費で、あとはほとんど Thiel 液の購入費用です。

  こういった形で通常のオペ室と同じような環境下で、内視鏡下で手術のトレーニングをしたり、整形外科領域では C アームを使って椎体固定術などを行っております。参加者からの評価はおおむね上々です。医局によって資金の回収方法は多少異なっており、整形外科では、 1 名当たり 10 万円ほどの参加費を得て、医局では特段の寄付金などは募らないで参加者からの費用を用いて行っているという実情があります。

  サージカルトレーニングセンターのこういった体制を作るに当たっては、藤宮先生、東北大学の北田先生、愛媛の松田先生から、いろいろ御教授を頂いた上で、専門の管理委員会、外部の有識者を入れた管理委員会の下に、当事者教授からなる運営委員会を作り、直接の運営に当たっています。この運営委員会が実際にプログラムの立案・評価に当たっております。

  個々のサージカルトレーニングは医学研究科の中の倫理委員会、サージカルトレーニングに関する倫理審査を行う部署を作っておりますので、そちらに管理委員会から諮っていただくという形を採っております。

  愛知県の特異的な事情としては、愛知県内に 5 大学、名古屋大学、名市大、愛知医大、藤田保健衛生大学、愛知学院大学 ( 歯学部 ) という、解剖をやっている 5 つの大学がありますが、献体の受入れ団体は「不老会」という形で一元化されておりまして、そこを窓口に献体を集めております。各大に支部があって、献体されるに当たっては、当然、生前同意あるいは亡くなってからの御遺族の同意を頂いた上で、 Thiel 法あるいは一般の系統解剖に献体を回していただくということです。各大学ごとに多少温度差があって、名古屋大学はこれからは献体受入れを減らしていきたいという方向で動いておりますし、私どものほうではサージカルトレーニグを積極的に推進していきたいという立場から、今後受入れを増やしていこうということになっております。私どもの現状としては、保管庫 (140 体収容可能な施設 ) を作っております。現状は年間に 80 体程度を受け入れているという状況です。

  手術手技研修を継続的に実施するための最大の技術的な障壁あるいは倫理的な障壁等は、これまでは先生方の御努力によって、かなり改善されてきているのではないかとと考えております。これを継続的に進めていくために、やはり資金をどうやって得ていくか。ランニングコスト、あるいは箱物を造って整備していくには、どういう所からお金を集めていくかということが大切になってくるのではないかと思います。私どもの所では、地域医療、特に外科医を養成していくという非常に大切な役割を担っているという立場から、県や市の御理解を得る、医師会の理解を得るということで、各病院あるいは地元企業からの寄付をたくさん募っていくことによって運営を行っていきたいと考えておりますし、またこういったものをオーソライズしていく上では、当然、学会からのクレジットに参加した医師の方々がこういうものに参加することによって単位を取っていく。そうすることで将来的な外科の指導医などになるためのクレジットとしていくことができるといったことを学会と連携しながら考えていく必要があるのではないかと思っております。また、これまでは口腔外科あるいは一般歯科との連携がサージカルトレーニングの上では取られておりませんが、今後はそういったものに力を入れていくべきではないかと考えております。手短かですが、以上です。

○伊達座長 評価委員の先生方から御質問はありませんか。

○七戸委員 初期投資は非常にうまくいかれて、非常に素晴らしい施設ができたのですが、先生からも課題としてランニングコストの話が出ていると思いますが、実際にどのようなことを今後考えられていて、実際にどのようになってるのでしょうか。

○植木先生 ( 名古屋市立大学 )  やはりランニングコストが課題ではないかと思っております。継続的に地元の病院から毎年奨学寄付金の形で、この解剖トレーニングのための資金を各病院当たり、例えば 50 万円から 100 万円頂くということをやっておりますし、あるいは医師会からも 1 年間に 300 万円から 400 万円ぐらいを頂くことを考えております。実際のところ、厚労省のサポートがない場合、 1 回の手術手技研修で 3 体をやるとして、大体 50 万円程度必要ではないかと弾いております。全体で 60 回やるとなりますと、 3,000 万円という費用が出てきますので、通年で、少なくても 2,000 万~ 3,000 万円程度を企業、病院、地域自治体から集めるような枠組を作らなければいけないと思っております。市議会などの場にこちらから出掛けて行き、説明しているところですが、今後、社会の理解を急いでいく必要があるのではないかと思っています。

○内山委員 不老会との関係がちょっとよく分からなかったのですが。不老会が全体の方針を。

○植木先生 ( 名古屋市立大学 )  不老会というのは、愛知県の。

○内山委員 不老会が全体の方針があって、先生の所はその中で、サージカルトレーニングをやっている所は先生の所と同じような歩調でやっている所というのはほとんどないと思いますが、そういう場合に、これはサージカルトレーニング用に使っていますというのは、どのように不老会の中では評価するわけですか。先生の所はそのために、この遺体を収集したのだと理解されているわけですか。

○植木先生 ( 名古屋市立大学 )  事前に名市大に登録していただく御遺体というのは、大体 100 体前後ありまして、生前同意の中で、この御遺体は医学部の教育以外にサージカルトレーニングに使ってもよろしいですかということを御理解いただいているのが、現状ですと 8 9 割程度です。

  他大学に関しては、今そういったことをやっておりませんので、不老会の中の大学の中で聞きますと、うちの大学だけが手を上げているという状態です。

○伊達座長 私はまだ質問したいのですが、後で総合討論で質問させていただきます。

  それでは、続きまして、岡山大学から武田先生、御発表をよろしくお願いします。

○武田先生 ( 岡山大学 )  岡山大学の武田です。始めさせていただきます。岡山大学では 2012 年から始めて今年で 5 年になります。毎年大体 200 名前後の参加者数で推移しています。御覧の 6 つの診療科が毎年参加しています。今回は 5 回目ですが、だんだんとリピーターが増えてきました。黄色がリピーターの方々で、今年は参加者数の 3 分の 1 ぐらいがリピーターになっています。

  各科、全診療科に同じアンケートを行っています。ですから、毎年 200 ぐらいの参加者でアンケートを行っていますが、有意義かというアンケートに対して、ほぼ皆さん有意義だと言われるのですが、中に 1 割ぐらい、そうでもない方がいらっしゃいます。その比率が過去 4 年間ほとんど変化がありません。このように変化がないのは考えてみて、我々の教え方が進歩していないのではなくて、参加者の目的意識が少しずれているのだと思います。今年度からは参加者目的意識を明確にしようと考えています。サージカルトレーニングに参加したら全てが分かるわけではありません。解剖の何が知りたいのか、はっきり目的意識を持って参加するようにお願いしています。

  そして、問題は参加者数に及ぼす影響ですが、 2013 年度は無料で行っていました。応募を開始するとあっという間にいっぱいになります。それが 2014 年度は 1 人当たり 2 万円徴収すると 35 名ぐらいで頭打ちになります。 2015 年度は 3 万円に値上げしました。これは 2 日コースですが、 2 万円に値上げしても立上がりは変わりません。 35 40 名ぐらいで頭打ちになります。そこでもう一度メーリングリストでメールを配信すると、また増えていきます。情報の周知が必要です。そして、有料というのは必ず何らかの影響があります。

  そして、今年ですが、 1 日コースにしてみました。金額は 1 人当たり 2 万円です。そうすると、無料のときと同じ勢いで参加者数が増えてきました。今回、土曜日と日曜日の 2 日コースより 1 日コースの方が参加しやすいということが分かりました。特に、参加者に含まれている開業医の割合が、今まで 10 %ぐらいだったのが今年は 20 %になっています。開業医の先生は土曜日も仕事をされているので、そういったことが影響したのだと思います。もう 1 つは交通の便です。岡山はピンク色の所ですが、新幹線が通っている所、若しくは岡山に飛行機の直行便がある所から参加されていることが分かります。

  最後に周知方法ですが、岡山大学ではこういったホームページを使って全診療科が同じ所に載せて、「いつあります」という掲載をして参加を募っています。しかし、ホームページの情報発信力は余り大きくありません。ほとんどの場合はメーリングリストとか、口づてで来られています。麻酔科の場合は大阪大学が行っているメーリングリストから周知することによって多くの方が来られています。

1 つ提案ですが、実際に参加する側で考えてみると、一体いつ、どこで、どういったサージカルトレーニングが行われるのか、よく分かりません。そういったものが、もしも今回参加されている施設の方々が全員参加するようなポータルサイトがあれば、より参加がしやすくなって参加者を集めやすいのではないかと考えています。ポータルサイトの作成が難しかった場合、例えば単純にホームページを相互にマルチリンクするだけでも参加者数が増えるのではないかと考えています。以上です。ありがとうございました。

○伊達座長  6 つの診療科がありますよね。それぞれが工夫してアドバタイズしているという形ですか。

○武田先生 ( 岡山大学 )  そうです。このホームページは全員、同一です。

○伊達座長 だけど、そこを見にくる人は意外に少なくて、各科の努力によるという形ですね。

○武田先生 ( 岡山大学 )  そうです。

○伊達座長 評価委員の先生方、何か御質問はありますか。

○武田先生 ( 岡山大学 )  学会のホームページに載せていただくのが一番いいのですが、学会のホームページに載せようとすると、どうしても共催になってしまいます。そうすると、共催の次には学会が主催になってしまう可能性があります。それはそれでいいのですが、自分たちがしたい教育が必ずしもできるわけではありません。そういったことから自分たちのしたいことがあるときには自分たちの何らかの情報の発信源を持ちたいと思います。

○伊達座長 先生、どうもありがとうございました。引き続きまして、愛媛大学の松田先生、御発表をよろしくお願いします。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  愛媛大学の松田です。 5 年間の総括ということで発表させていただきます。 5 年間、支援を受けまして、ありがとうございました。この支援に関しては学外参加者に特に配慮することとなっておりますので、予算配分では他施設からの講師費用を全額上乗せして、他施設からの参加者数を参考にして配分の額を決めました。これによって多くの学外医師会の人たちの参加がありました。医師会からも認知されて、昨年度は医師会から 1,000 万円ほど支援を頂きました。これを詳しく説明いたします。

  講師料、レンタル料は全額出すということです。あと各科への配分ですが、開催回数、参加者数、特に学外からの参加者数を参考に考えておりまして、多い所では 70 万円とか、解剖学は一番少ない 25 万円とか 30 万円という感じで配分をしております。そういうことで参加者数が増えて、医師会から 1,000 万円の予算を頂いて、こういう良い解剖実習台を 3 台そろえて、かなりしっかりした実習ができるようになりました。

  現状ですが、 16 講座、 6 センターが参加しております。参加者の分布は学内よりも学外の参加者が増えています。

  この 5 年間で見ますと、最初の 3 年間は増えましたが、 600 名ぐらいになってからは、ほぼ同じです。これは土・日がすでに全部手術手技研修で埋まっていて、これ以上回数を増やすことができないという状況にあります。

  もう 1 つの理由として、最初のほうは、とにかくやれば皆さんが満足して帰ったのですが、最近はせっかく参加するならば、きちっとしたレベルの高いものをやってほしいということになって、中央からとか、著名な方を講師に招いてやらなければ皆さんが満足しないということで、数よりも質を重視しているという傾向です。

  各科の内容については、昨年の冊子に書いておりますので省略いたします。特記すべき研修としては、内科が 3 講座やっております。これは第 1 内科ですが、臨床研修センターで研修生に胸腔穿刺とか脊椎穿刺などをやっております。その結果、平成 22 年度では 50 名ぐらいの研修医だったのが、平成 28 年度は 100 名程度に倍増しております。このことは学内外から大きく評価を受けております。

  第 2 内科はカテーテル、第 3 内科は内視鏡をやっております。それ以外に外科系の関連講座でジョイントセミナーをやるというのも流行っています。あと AI センターとの共同もやっております。

  今後の展開ですが、 TRC センター長の今村教授は大風呂敷を広げるのが好きな先生ですが、あながちこれは大風呂敷でもないと思っておりまして、医療機器開発が日本を救うということです。日本全体の工業力を考えますと、医療機器開発はかなり遅れています。まだまだ伸び代があると考えられます。そういう中で、愛媛大学では小動物のブタを扱っており、臨床研究はできるのですが、本当にやりたい医療機器開発というのは、御遺体を使ったものであるということで、ここを何とか埋めてほしいという希望が強くあります。

  それもありまして、今、手術手技研修センターを大きく変えております。今までの御遺体利用検討委員会、倫理委員会に加えて、新たに企業等参加検討委員会と運営費等検討委員会を作り、その委員会の内規を作っております。これが明日の教授会で通るはずになっています。倫理委員会は省略いたします。企業参加等検討委員会については、企業参加を推進するために適正な方法を検討するということです。それから更に、外科学会のガイドライン検討委員会に報告する利益相反報告書を取りまとめるということです。運営費等検討委員会は、運営費 ( 参加費 ) について、適正な参加費を取っていこうということです。それから各講座からのガイドライン検討委員会に報告する経理報告書を取りまとめていこうと考えておりまして、こういうことによって献体していただいた方々の       真摯な御遺志に合うような地道な研修を続けていきたいと思っております。以上です。

○伊達座長 先生、医師会から 1,000 万円ということですが、これは愛媛県の医師会ですか。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  そうです。

○伊達座長 これは毎年、頂けるのですか。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  毎年ではありません。 1 回だけです。

○伊達座長 評価委員の先生、何か御質問はありますか。

○内山委員 企業参加というのが昔から一番の問題で、そのことについての適切な方法を検討するというのは、どういう方法で検討されるのですか。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  やはり、先ほど出ていましたが、実は 11 月から始めていまして、本部とのやり取りにすごく時間が掛かっておりまして、そこが大変なのですが、企業が参加して、そこにどういうお金が動くかとか、パテントはどうするのかということに関して、かなりややこしい細則を今、作っている最中です。

○内山委員 実際に解剖する中で、どのように企業を参加させているのですか。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  例えば整形外科であれば、人工関節を作る企業が入り込んで、御遺体の骨とか、関節に当てていって、開発していくということを考えているように思います。

○内山委員 ガイドラインを作るときに、その点に関しては随分ディスカッションがあったのですが、そういうことはお聞きになっておられますか。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  はい。ガイドラインの中にそういうのが入っていましたので、多分それは前向きにやっていいことだろうと考えておりますが、かなり慎重にやらなければいけないと思っております。むしろ、その辺はサディスチョンを頂けたらと考えております。

○伊達座長 それでは、先生どうもありがとうございました。総合討論でも企業の参加のことには触れたいと思います。最後に産業医科大学から西澤先生、御発表をよろしくお願いします。

○西澤先生 ( 産業医科大学 )  産業医科大学脳神経外科の西澤です。よろしくお願いします。産業医科大学では、 3 年目になります。採択を受けまして、現在の取組みと現状について御報告させていただきます。現在の事業遂行のための経過です。

  「平成 28 年度実践的な手術手技向上研修事業選定通知」を、昨年の 6 14 日に受けまして、その時点から、外科系の診療科に参加有無の確認と、研修事業遂行のための準備を行っております。 11 21 日に、厚生労働大臣から交付金が決定したという通知書を頂きまして、 11 月~ 12 月に、この研修事業のための準備、事業の計画・立案に入りました。この間に計画を立てておりますので、その計画書を 12 月の 9 日に、利益相反委員会に書類を提出しております。 12 月後半に倫理委員会と利益相反委員会から承認を頂いております。参加希望科は、脳神経外科、整形外科、耳鼻咽喉科、第 2 外科、泌尿器科、産婦人科、救急医学、第 1 外科です。この 3 年間、全く同じで、 8 つの科から参加の希望がありました。もう予算はこの時点で、既に各科から頂いていますので、倫理委員会が通った段階で予算案を正式に作成して、日程の調整に入っております。これが私たちの大学で初年度に確立しました体制です。

  外科手術手技研修の実施者は、それぞれ手術手技専門委員会に申請を出します。この専門委員会でオーケーが出たところで、倫理委員会と利益相反委員会に承認をもらうようにしております。外科手術手技専門委員会の委員長は私が務めていますけれども、病院長と学長に報告をいたしまして、最終的なオーケーのゴーサインを頂いております。手術手技専門委員会からは、毎年、外科学会と日本解剖学会に報告をいたしております。

  これが本年の実施計画書です。基本的に私たちの大学は、 12 月まで大学の解剖教育がありますので、 1 月から 3 月の間に行っております。 1 8 日から始まりまして、現在まで耳鼻咽喉科までが済んでおります。第 2 外科、第 1 外科、脳神経外科は 2 回行いました。産婦人科は 1 回、耳鼻咽喉科は先週の土日に行ったところです。泌尿器科と救急と整形外科が残っております。 26 年度と 27 年度の違いで、ここはちょっとハンドアウトで追加させていただきたいところなのですが、参加者全員から誓約書を頂いております。これは個人情報を確実に確保することということで、中には写真を撮られる方がいらっしゃるのですが、スマートフォンとかでは絶対に撮るなということと、撮るなら普通のカメラで撮ってほしい。それから、学会で発表するときは、必ず学内の専門委員会に申請をして許可を得てくださいということを申し上げております。

  それから、昨年度までうちの大学で非常に大きな問題になっていましたが、解剖学教室の技術職員の方に対する負担が非常に大きかったのです。これまでは代休しか認められなかったのですが、時間外手当というのが支給されることになりましたので、この点では少し大学の中でも前向きに改善が行われたかなと思っております。

  これが脳神経外科の初日 (1 29 ) に行いました実習の風景です。最初に 20 分ほどの講義を行いまして、これは私が実際に顕微鏡でドリリングして見せているところなのです。その後に実習に移るというような格好になっています。この写真はうちの教室の医員が撮りましたが、このような写真は決して公開しないということになっております。

  これが、耳鼻咽喉科と第 1 外科と、第 2 外科と脳神経外科の参加者です。ちなみに脳神経外科は、学内が 8 ( 延べ 13 ) 、学外が 18 ( 延べ 25 ) 、計 38 名です。脳神経外科では、京都、広島、山口、愛媛、福岡、宮崎、鹿児島、沖縄などからいらっしゃっています。

  アンケートの結果ですけれども、幸いにして脳神経外科におけるアンケートです。全ての科でアンケートを取っております。最終的に、これは 3 月の時点で集計することにしていますが、「非常に良い」「良い」といった回答を頂いています。これは、実習時間についてなのですが、一応、適切だと答えていただいた方は 9 割、長いとか、短いと答えていただいた方も中にはいらっしゃいますが、概ね適切だったということです。大体、実習が始まるのは 9 時からで、 4 時半ぐらいには終わるようにしております。手術器具なのですが、鋼製小物に関しては全てリースでやっております。「非常に良い」「良い」ということで、これも 90 %近くの方に御評価をいただいております。

  サージカルトレーニングで得られた効果は、もちろん困難な手術アプローチの外科解剖の理解に非常に役に立ったということと、若手の教育に役に立ったということがありました。ただ、 Thiel 法に関する評価が各科で分かれまして、実際に手術と同じような感覚でトレーニングが行えたということで、それは特に、肺、腹腔内臓器、筋肉、頭蓋骨、頸部の解剖なのです。脳神経に関して言いますと、脳実質そのもののことに関しては少し弱くて、時間がたつに連れて、特に午後になってきますと、やはり脳が少しずつ溶解してくるという感じなので脳ベラを掛けたりしますが、脳の実質に関しての手術トレーニングにはちょっと厳しいところがあるというのが正直なところです。

  事業の運用における課題ですが、予算配分と日程調整に苦労しました。予算配分は 700 数十万円のお金をいただきましたが、最終的には 70 万円の赤字になりました。うちは全部無料ですので、 70 万円は各科で分担して負担しています。

  日程調整も、 1 月から 3 月までという期間の間に行っておりますので、その間にセンター試験及び学内の入試があり、その間は入れられませんので、それ以外を除いた土・日で日程調整を行っています。私自身が各科から日程調整の希望を聞きまして、調整を行い、最終的に運営委員会で承認していただくということになっています。また、予算配分に関しては、やはり消耗品と講師謝金が嵩みまして、各科によって違うのですが、講師をたくさん呼びたいという科があります。その科の謝金などが問題になりまして、最終的に、それも専門委員会で調整をしております。

  各科からの献体の御遺体に対する要求は、当然のことですけれども腹部臓器の手術をしていない方を希望されるということなのですが、必ずしも 1 月から 3 月までの間に、そうした御遺体を調整するということは難しいことがあります。今年、脳神経外科で行ったときに、片側を既に開頭手術をされておられる方がいらっしゃいまして、午前午後で両側をやらせていただくのですけれども、片側しかできなかったということがありました。そういう意味で、御遺体の数が足りないということがあるのですが、それでも大体 30 体ぐらいの献体を使わせていただいていますので、非常に恵まれていると考えております。日程調整に関しては、先ほども申し上げましたけれども、 1 月から 3 月の間で行わなければいけないのですが、 3 年目になり、専門委員会は私自身が調整しているのですが、何とかスムーズに、今のところはいけているかなと思っております。

  解剖学教室のスタッフの負担がまだまだ多いことは事実です。先ほど申し上げましたように、時間外手当が支給されるようになりましたが、ほとんどの土・日は来ていただいていますので、特に技術職員の方の負担が非常に大きいと考えています。

  今後の課題なのですが、予算配分をどうするか、超過分の調整とか、こういうところがあります。何とか今のところはスムーズに来ています。日程調整に関しても、過密スケジュールと献体の確保ということがありますが、これも 3 年目になりまして、ようやく何となくスムーズに行けるようになったかなと思っております。先ほどからお話を聞いていますと、サージカルトレーニングセンターという、非常に立派な施設をお持ちの所がありますが、私たちはありませんので実習室でやっております。場所の確保という点では、学長にも話をしているのですが、そういう予算がなかなかつかないということがありまして、確保が難しいです。受講料に関しては、基本的に無料なのですが、やはり赤字が出ます。その赤字の分を誰が補填するのか。受講料を取ったときに、一体誰が管理するのかというのは、うちの大学では未解決の問題として残っております。

  それから、解剖学教室のスタッフの負担が非常に大きくて、いつも感謝はしているのですが、時間外手当が出るようになりましたが、毎週出てきていただかないといけないという負担が非常に大きいと考えております。以上です。どうもありがとうございました。

○伊達座長 ありがとうございます。先生、 1 月から 3 月にしかできないのは、解剖学スタッフの点なのか、それとも場所的なものなのか、これはどうですか。

○西澤先生 ( 産業医科大学 )  両方ですが、基本的に場所的な問題で、解剖学実習室以外の場所でやることはできません。 12 月までは系統解剖をやっておりますので、それ以外は、実際の解剖台を使ってやらせていただいていますので、 1 月から 3 月までしかできないというのが 1 つと、最終的に交付金の通知を頂いてから倫理委員会を通しておりますので、そうすると 1 月ということになってしまいます。

○伊達座長 ありがとうございます。評価委員の先生、よろしいでしょうか。では、先生、どうもありがとうこございました。

  あと 30 分ちょっとありますので、 18 時過ぎには終わりたいと思いますので、ここからはフリーディスカッションに移りたいと思います。とは言え、ちょっと整理して。

  ディスカッションとしては、サージカルトレーニング自体がどういう点が評価できるかということ、それから、今後普及していくための課題の整理、今後実施するに当たっての提言のようなものや課題の提供を順番に進めていきたいと思います。

  まず、サージカルトレーニニング自体が、評価すべき点ですが、これが非常に役に立つというのは、各先生方のアンケートを見ても、これは疑う余地がないと思うのですが、その点に関してはよろしいですよね。実際にやれば非常に役に立つのは間違いないということです。

○小林先生 慶應大学の小林ですが、 8 大学、本プログラムの御発表を頂いてありがとうございました。厚労省の評価委員会なので、外科学会の評価委員会とは意味が違うということを触れておきたいと思うのです。本領域のリーダーがこの 8 大学であることは、本プログラムがお金の額ではなくて、一応メンバーは同じような顔をしていますが、外科学会の評価委員会とは違って厚労省の評価委員会ですので、ある意味、公的なお墨付きをもらって、このプログラムを先生方が引っ張っているということで、大変高い評価があるのだということを大前提の上で、先生方とディスカッションしたいなと思っていた点です。それと、外科学会は先生方御存じのように、外科学会でも、 CST ガイドライン委員会から推進に変わるのですが、予算を自前でやっている所も提出してきています。予算は外科学会の委員が、外科学会以外の先生方が入って、予算が適正に使われているのかとか、何かチェックしている期間が 3 4 年と経過してきていますので、どんどん増えて 10 幾つになっていますので、先生方がひな型であることは間違いないと思うのです。ですから、今日の評価からすれば、厚労省的に、公的な資金を投じて、先生方がリードをしてきているというようなことを前提の上で、質問させていただきたいと思います。

  まず、普及への課題なのですが、 1 つ、植木先生が去年から始められて、そのときに、先行して軌道に乗っているところから、かなりノウハウを教わったということなのですけれども、今後、新しく施設が始めるのであれば、大学間の連携といいますか、そういうのも必要かなと思ったのですが。

○植木先生 ( 名古屋市立大学 )  大学連携という意味では、私たちの所では、名大の先生方にも、講師でも人事交流を図っていますし、受講生も、名大から、あるいは愛知大から来ていただいて地域の中での連携は取れているのではないかと思います。今後、だんだん私どもの所でも、結局、受講生というのは全国から集まっておりますので、今回この 8 大学の先生方が連携して、全診療科というか、得意な診療科等があるかと思いますので、傾斜をかけていただくとかというような分担を図っていただく必要もあろうかと思います。

○伊達座長 やはり一番の課題は費用ですね。費用に関してなのですが。

○内山委員 いくつかありますが、まず札幌医大が一番よくやられているのですけれども、 13 ぐらいやられる中で、今年の予定で幾つか忘れましたけれども。要は学会が主催するとか、先生の所以外の所が主催されているケースが多いと思うのですけれども、その場合の学会の最終的な収支がプラスになっているのかマイナスになっているのか、その点はどのように。例えば 10 万円なら 10 万円、 5 万円なら 5 万円と設定する中で、もしプラスになった場合に、学会としてはどのように使っているのか。要するに、利益につながるようなことが絶対にないと言えるのかどうか、そこがすごく問題だと思うのです。解剖学教室を使って、そこで学会が主体でこういう設定でというときに、それが学会の利益につながるとしたら、すごく問題であると思います。その点はいかがですか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  最初に参加料を幾ら取る、その中でどういうところにその経費を使っていくのかということを、倫理委員会に提出していただくときに、全て明確に示していただいております。その範囲内でこちらとしては行っていただいているというので、後から報告書が出てくるのですが、これまで行っていただいているもので、余ったお金が出ているとは思えないです。

○内山委員 思えないではなくて、実際のところのフローがどうなっているのかというのをどのように捉えているのか、それをどのように評価しているのか、それはすごく問題なところですよね。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  そうですね。計画書に応じて、こちらはそれを判断させていただいて、そのように行っていただいているという。

○内山委員 終わったときに、これだけ収入があって、これだけ使いましたと、これだけプラスになりましたと。そして、もしプラスになった場合にどのように考えるのか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  それに関しては、このサージカルトレーニングについて外科系学会にも報告を出しておりまして、収入と支出の部分は全てうちの事務局がチェックし、私も最終的にチェックを行い、それを報告しております。

○内山委員 そうすると、お金に関しては学会には関係ないのだということですか。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  そうですね。このサージカルトレーニングの枠内で、私たちはその判断をするしかありませんので。

○内山委員 そこが一番の問題で、要するに学会主導ということで進める、教育に関してはのですが、それが学会のプラスになるような、要するに収入になるような方向だと、今のこのようなシステムでは問題になるだろうと。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  はい。

○伊達座長 ほかに費用に関しては、いかがでしょうか。

○小林委員 普及に関してのディスカッションですか、費用ですか。

○伊達座長 今は費用です。普及と費用は表裏一体だとは思うのですが、特に。

○小林委員 少し発言させてもらってもいいですか。

○伊達座長 どうぞ。

○小林委員 普及事業に関して先生方の御意見を頂きたいのです。伊達先生が委員長になられて、今度、外科学会で推進のためのプログラムを、メジャーな外科系の学会に推進シンポジウムとかワークショップというのが組んであって、委員の先生方から肝入りで、この人に話をしてもらいたいということで、 4 月もお願いしたような形になっているのです。

  それは先生方がリーダーであるから、こういうことをやってうまくいった、またこういう課題もあるということで、学会員に周知していただくという形で、先ほど名市大の話が出ましたが、先輩として後発隊にその情報を発信しながら、大きな成果が上がっているという推進事業をやろうということで外科学会でやっています。私の第 2 の質問は、これは松田先生の所でも出てきたのですが、内科系、放射線、実は技術的なことが involvement すべき点があるのですが、平成 26 年に日本医学会の高久先生にお願いして全通知を出したことがあるのです。

  経緯は、耳鼻咽喉科だったと思うのですが、単独で自分たちのガイドラインを作って配布するという話があったので、一応こちらのほうを遵守した上でやってほしいということを医学会全体の会員でガイドラインを遵守してほしいということがあったのです。

  ですから、実は、先ほど内科の先生が簡易シミュレータとコンビでやって、 CST(Cadaver Simulation Training) involvement しているというのは大変私は評価できるような普及のやり方かなと思ったのですが、これは「外科手術手技」という名前が付いているもので、内科系とか放射線科の先生に学内で働き掛けることは難しいものなのでしょうか。そういう普及の仕方も私はあるのではないかと思うのですが、どのようなものでしょうか。松田先生、どういうきっかけで内科の先生が入ってきているのか。

○松田先生 ( 愛媛大学 ) 3 講座が全部そうではないのですが、結構、外科の先生方がやっているというのを聞いて、うちもやらせてほしいと内科のほうから話があったのが主だと思います。

○小林委員 その点が学内での普及のポイントかなと思って、先生方の発表を聞いていたのです。

○西澤先生 ( 産業医科大学 )  産業医大の西澤です。脳外科でやっている場合は、放射線科の先生と神経内科の先生が実際にいらっしゃいまして、それはほとんど見学なのですが、実際に私たちが dissection をやったり、脳を実際に出したりするところを御覧になっているというか、そういう形で、それはもうほとんど口コミというか、そういうことをやっているということを、いつも交流していますので、それで結構いらっしゃっていただいている先生が多いです。

  それから、麻酔科には参加してくださいと働き掛けているのですが、今は人的な問題でなかなかできないところがあります。ただ、そういうところも参加されると、例えば内科の先生が静脈を puncture されるとか、そういうこともできるようになると思っていますので、そういうところまで広げていきたいと思っております。

○小林委員 岡山の武田先生が言われた、各大学のプログラムなどが一括してどこかにアクセスすると情報が取れるというような仕組みというのは、普及事業の中で有用なものなのでしょうか。既に先生方は連携網をお持ちなのでしょうか。

○松田先生 ( 愛媛大学 )  最初に愛媛と岡山で一緒にやっていて、その普及の中に愛媛も入れさせていただいたのです。でも結局、愛媛のほうでは岡山でアナウンスしていただいたのは余り効果がないと言うか、結果的には四国とあれだったのですが、ほとんどアプローチがなかったのです。ですから結果的には、各科からアナウンスしてもらうのが一番効果的だと、私は思っています。

○小林委員 各科というのは、外科だったら外科とか、耳鼻咽喉科とか、脳外科とか、そういう学会を通じた普及事業のほうが effective だということですね。

○堀岡課長補佐 私どもが口を出す話ではないのかもしれませんが、 2 点ほど発言させていただきます。

  例えば 14 大学やられていますが、カダバートレーニング実施大学協議会というものを作って、そこにホームページをぶら下げたらどうでしょうか。行政はそういうことをよくやります。それで、例えば四国で、カダバートレーニングに行きたいという人が日々見ていると、愛媛でやるのだなというのを見て連絡が来るようになって、大きな普及になるのかなと。各学会にぶら下がっていると、なかなか難しいのかなと思うのです。他人事のような言い方で申し訳ないのですが、ほかの分野でも、そのようなやり方はよくやられていまして、効果があると思っています。

  もう 1 つは、普及に向けて事務的に面倒くさくないというのがものすごく重要で、面倒くさいと大学の本部は動かないです。大学の本部の事務が面倒くさいと思って、また動かなくなってというようになってしまうので、厚労省でも事務を簡単にするということをすごくやっていて、いろいろな大学で思ったのですが、私たちのお金を各講座に更に再配分しているのでしょうか。それは面倒ではないですか。そうすると、どのように配分するのかなどものすごく揉めたり大変なので、一括でやっては駄目なのでしょうか。

  例えば補助金がボンといって、講座からの参加費も全部どこかで管理していて、一括で事務を少し楽にするというのは難しいのでしょうか。その辺で、私たちが知らない大学内の事情があったら、お教えいただければと思ったのですが。

○西澤先生 ( 産業医科大学 )  基本的に専門委員会が、各科から全部予算を出してくださいとして、私は専門委員長なのですが、専門委員会と予算の調整をしていますので、各科に配分するというよりは、各科から出てくるものを最終的に、それは配分ということになるのかもしれませんが、総合的に集めたところで専門委員会で全体の調整をするという、例えば鋼製小物、備品、消耗品はこの辺でカットするというような格好にしています。

○堀岡課長補佐 例えば消耗品を買うときに、解剖学教室がやると、また解剖学教室が大変になるのかもしれませんが、誰かが一括して、買ってということをして、各科に配分するのか、それとも今日は脳外がやりたいから脳外の使いたい器具を脳外が買ってきて。

○西澤先生 ( 産業医科大学 )  いえ、違います。専門委員会でやっています。うちの大学ですが、専門委員会で一括してやっています。

○堀岡課長補佐 誤解していました。

○北田先生 ( 東北大学 )  誰が一括で管理するかによるのだと思います。管理運営する責任者的な立場の人が一人もいない所は、そういったバラバラな状態になりやすいのだと思います。東北大は本部があって医学部もあって、どちらかというとややこしい大学のうちの 1 つだと思いますが、ただ、私たちの所は基本的に予算の大部分は私が管理して、事務の方が 1 人いて、予算の細かい配分はその 2 人で采配しているような形です。財布が 1 つで、そこから各診療科からどういう研修をやるかを勘案して、その配分額はほぼ私が決める形となっています。各診療科からは伝票を上げてきてもらって、伝票の処理もこちらの事務の方がやるような形になっています。

  そのように、誰か 1 人管理する人がいると、大きな混乱なく収束するのだと思います。

○堀岡課長補佐 分かりました。ありがとうございます。

○本間先生 ( 東京医科大学 )  今の話は非常に重要なことで、むしろ私も教えてほしいのですが、各大学でサージカルセンターとか、委員会を立ち上げていると思うのですが、そこに大学や、若しくは病院の事務方がどのように関わっているかということは非常に大事で、私どもでは本事業は厚労省事業なので、科学研究費などを扱ってくださる研究支援課という部門が携わってくれるのですが、もしそうでなかった場合には、どこの部門が事務方として関わってくれるかということが 1 つ問題になってきます。

  また、お金の管理ですが、今回私たちは受講料を徴収するに当たって、大学の会計課に関わってもらったのですが、徴収したお金は解剖学教室名の新しい口座を作ってもらって、そこに一括で納める形にしたのですが、それはあくまでも火葬に関係する費用だということで集めたのですが、これが例えば消耗品、レンタル代、謝金といったことに関係するとなった場合に、果たして解剖学教室がこれを管理するべきものなのかという問題が出て来ます。結構その辺りは難しい問題だと思うので、うまく回っている大学があったら是非とも教えていただきたいと思っている次第です。

○堀岡課長補佐 そのように、「火葬費用でなければ駄目だ」とか細かいことをいう人というのは誰なのですか。事務方がうるさいのですか。

○本間先生 ( 東京医科大学 )  逆に言うと、事務方も「どうしたらいいのでしょうかね」と私たちに聞いてくるので、私たちも回答しようがないのです。

○大塚先生 ( 岡山大学 )  これは各大学の対応が全部、微妙に違うのではないかと思います。もちろん公的な補助金ですので、それは国立大学と私立大学では違うというところがあると思います。

  岡山大学の場合ですと、厚労省から頂いたお金と、もう 1 つ参加費を徴収しています。参加費は、いわゆる奨学寄附金の形で運用して、そのトータルの部分がもともとの事業計画経費の枠というか、その部分でやらせていただいているというところです。

  実際にお金から支出できる項目というのは、それぞれ補助金使用の範囲、奨学寄附金の使用の範囲というのがありますので、それで研究推進課が管理してやっています。我々は臨床応用解剖専門委員会というのを作っているので、そこの管理下で、実際の出納をやっているのは解剖学教室の非常勤の事務職員がやっているという状況です。

  一番問題なのは、共通に掛かるような経費の部分をどうするかということと、高価なリースの機器、例えば手術用顕微鏡です。マイクロをやる所は絶対にそれで赤になるわけです。それをこれから先も援助していただけるのか、それともそれも自前で離陸しなさいと言われるのか、そこのところで、この事業はどのようになっていくのが大きく変わると思います。

○堀岡課長補佐 大変申し上げづらいのですが、実はこれ以外の経費は全部毎年 10 %切っているのです。シーリングが掛かっていて。これだけは優先的に守っていて、ずっと 4,500 万円ぐらいで固定しているのです。大変恐縮なのですが、これが明日から 5 億円になるということは絶対にあり得ないもので、 270 万円で大赤字で本当に申し訳ないのですが、これが減ることはあっても、抜本的に増えることはないです。

  ただし、同じ額は頑張ってキープしてやるよう、いきなり官僚的になりますが、努力してまいりたいと思っています。

○大塚先生 ( 岡山大学 )  ありがとうございます。その言葉は非常に有り難いと思います。

  一方で、今も発表がありましたように、無料でやっている所と参加費を取ってやっている所と、いろいろと差があると思います。それで、それはやり方次第だと思うのですが、それはどこが違うかというと、補助金の額がそれぞれ違うからなのです。そこのところは、これから先普及活動をしていかれる中で、やはり高額なもののリースといった部分は、こういう税金を投入していってでも当面のサポートをしようとか、そういう基本的な方針があると、我々としては有り難いと思います。

○北田先生 ( 東北大学 )  参加費を徴収するというのが、もちろん方向性としてはどうあっても避けられない部分はあると思うのですが、参加費を徴収されている先生方にお話を伺って、それを大学に持ち帰って「このような方法がある」と紹介しても、それは受け入れられないと。東北大学ではそれは認められないと。

○堀岡課長補佐 それは、誰が何の理屈で、どのような規程で言うのですか。

○北田先生 ( 東北大学 )  ちょっと一言言わせてください。私が言いたいことは、どの大学でもこの方法なら問題がないという、そういったものを構築する必要があって、例えば今、録音されていますが、それで表に出ます。そういう表に出るような議論ではなくて、完全にクローズドで、完全にオフレコで話をして、どういう方法があるのか。それをいろいろと話し合って、その中でこういう方法なら表に出しても絶対に大丈夫であるといった話合いをする機会があると、非常にいいのではないかと思うのです。

  私は、資料作りでも何でもそうなのですが、結局、最終的に表に出して、それを次に別な大学が始めるときに参考になるようなものを作りたいと思っていて、常に考えているわけです。参加費徴収に向けて、いろいろな方法が考えられる。ただ、その中で内規策定に動いた理由は、資金の動き方は明瞭にしていく必要があると思っていて、大学事務を介して進めれば資金の動きに必ずチェックが入り明瞭な形になるということで、内規策定という方向に動いていて、それに対して非常にややこしい圧轢があったりするわけです。

  ただ、新しく普及という意味でいうと、資金の流れは必ず明瞭にする必要があるというのは、これは第一義的に大事であると思いますから、その意味でオフレコの会議を持って、本当に全ての大学において、これなら大丈夫というような仕組みを見いだすような場が必要なのではないかと常々思っています。

○小林委員 北田先生、個人的なディスカッションよりも、むしろ公的な委員会なので、是非オフレコではない議事録を残したいと思うのです。厚労省の堀岡さんの「予算は死守する」という名目は是非頑張っていただきたいと思うのですが、皆さんとシェアしておきたいのはお金をどうするかということでは、皆さん御存じのようにガイドラインの中で、報告書の書き方の中で、教育と研究、 ABC とそれぞれ分けてあります。

  教育の面からすれば、厚労省のマターで死守してほしい予算案だと思うのですが、研究の領域というのは文科省の領域にもあるわけですから、厚労省と文科省が力を合わせて予算をうまくシンクロナイズする仕組みをどうやって作ってもらうかというのが、堀岡さんと評価委員の中で、今後論議するべき点があると思うのです。その点は議事録にきちんと残しておきたいと思います。

  あとは、これも堀岡さんが言われましたが、事務方にどう介入してもらって、先生方が簡便に補助金をきちんと透明性を持って使えるような体制をどうしたらいいかということには、このようにやってくださいといって、北田先生のような個人の努力ではなくて、公的に事務方をきちんと引っ張ってくる仕組みを作ったほうがいいのではないかと私は思います。

○北田先生 ( 東北大学 )  東北大はその部分は非常にうまく動いていまして、統括する人がいるかいないかというのが非常に大きな部分だと思います。例えば専門委員会が管理というと、一元管理にはなり得ない部分が大きいのではないかと思います。誰か統括する人がいて、その人が采配する形が一番難しいことがなくていいのではないかと思います。

○伊達座長 あと時間が 5 分しかありませんが。

○藤宮先生 ( 札幌医科大学 )  先ほど愛媛大学のときに話題に出てきたことで、評価委員の先生方にお聞きしたいのですが、これから企業の寄付が増えてくる可能性が非常にあります。その利益相反というものをどうするのか。例えば人工関節であったら、自分の所の商品を使ってトレーニングを行い、関係する医師にその人工関節を売っていくとか、内視鏡でしたら自社製品を使って内視鏡のトレーニングを行うために、高額な寄付金が支払われるということも十分に考えられるわけです。これをどのように、大学として判断していくのかというところを、是非先生方にお聞きしたいのです。

○松田先生 ( 愛媛大学 ) 6 時に出ないと飛行機に間に合わないので発言させていただきます。先ほどおっしゃったようなことが、既に進行しています。人工関節をやるときには、必ずどこかの会社の人工関節を使っているわけです。その関節を使っているときには、必ずその会社の人が来て、それなりに参加しているわけです。

  そうすると、その会社というのは有利になるわけですが、その会社に参加している人はさらにその器具を開発する所にも参画していることにもなっているわけです。そうなりますと、実は調べてみますと、そういうことは整形外科だけではなくて他の外科系でも起こっているということでした。

  したがって、これはそのままにしておいてはいけないと。とにかく早く対処して、委員会を立ち上げて、その中でちゃんと参加しているという現状を全部洗い出して委員会に報告してもらって、それを医学部が把握していることが最低限必要だろうということで、今回、あのような委員会を立ち上げて始めたというような経緯があります。

○堀岡課長補佐  COI の考え方は、我々がお答えしたほうがいいような種類になると思うのですが、まず、別に一律、駄目ということはあり得なくて、そもそも寄付を受けること自体が駄目だということは全然言っていなくて、臨床研究とかそういうものの COI の考え方に沿った考え方をするべきで、各大学に COI 委員会というのは作っていただいているとは思いますが、サージカルトレーニングをどう考えるかというのは別の問題なのです。例えば 1 億円もらって 100 万円しか実際にはかからなくて、残りの 9,000 万円は事実上講座のポケットに入るというのは論外ですが、実費を出して器具をレンタルするような形だったり、若しくは 50 万円、 100 万円の、本当に運営費を寄付するようなことまで COI になるとは、普通に考えたら考えられないです。

  それについてどう考えるかというのは、どうでしょうか。研究班の報告書などにも、うまく書いて、各大学の先生方が考えやすいようにする。私が研究班からの報告書を言うのもあれなのですが、そのほうがいいかなとも考えます。それについての行政的な整理は、我々もします。

○七戸委員 この点には 2 点の問題点があると思います。 1 つは医療機器の値段の問題です。現状では、企業から医療機器を借りるときに、臨床使用のリース料で借りる必要があります。て使っているのです。臨床の使用であれば、当然医療費の中に含まれて、患者の負担で返していくのですが、トレーニングの場合は、このような補助金あるいは寄付金、または参加費から出すしかありません。つまり患者用の値段で医療機器の価格を設定されると、そこでサージカルトレーニングが立ち行かなくなるという問題です。

  もう1つ、あと企業側の問題としては、企業が医療機器等を提供するのには、景品表示法に基づいて、臨床試用という、そういうルールの中でしかできないので、どうしてもある一定の企業が自社製品の安全使用のために提供するという形を取らないといけない。

以上の 2 点が問題で、今後検討していく必要があると考えています。

○内山委員 今の説明がすごく大事で、この委員会にも、そういう企業の代表の人とか、今の実際の法律の問題とか、そういうことに関して、こういう所でも先生方向けに説明があったほうがいいと思うのです。今ここまで理解が進んでいるのだということはすごく大事なことだと思います。特に、松田先生が言われたことはすごく大事で。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  私は整形外科なので、インプラント会社とよく話をします。大きなインプラント会社はグローバルスタンダードでは education 部門というのが存在していて、企業責任として正しい使い方を教育するための独立した派があるのです。営業の人は、今度 educational の人が話をしたいと言っているので連れて来ていいですかといって、営業の人はいなくなってしまうわけです。 educational 部門の人がそれだけの予算を使って海外でやっているのだけれども、今後日本で実施できる可能性はあるのですかという話になるわけです。

  当然、彼らが予算を組んで、多少は参加費も取って実施します。それが整形だと 5 万円とか 8 万円とか、それなりの金額が普通なのです。結局はそれだけの金額を払ってでも勉強しないと、自分で実際にやるときは本当に不安ですので、皆それでやっているのが現状です。

  ですので、企業といってもすべて営利で動いている訳では無く、営利とは違う部門が既に海外ではできているのが実情です。日本では逆にそれが遅れているところだと思います。

○内山委員 そのことの説明がもっと徹底してあったほうがいいと思うのです。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  そうですね、安心して。

○内山委員 外科学会の研究会の所で聞きましたよね。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  はい。

○内山委員 そういうのをもっとオープンにして、いろいろな所でやっていったらいいと思うのです。ガイドラインを作るときに企業の参加をどうするのかというのは、かなり徹底してディスカッションしたところですので、それはすごく重要なところだと思います。

○鈴木先生 ( 千葉大学 )  また、現状では企業もよく分かっていないのです。どこまでがいいのですかというような質問が最近続いているレベルで、まだ企業側への認知も十分とは言えないです。

○伊達座長 ありがとうございます。時間がきました。当事業を実施するに当たっての課題については、今日提言いただいたことの 1 つは、一定のシステムです。各大学の先生方がそれぞれ工夫されていて、随分温度差があるというものを、できるだけ一定のシステムを構築すること、できればホームページのようなものがあって、皆さんがアクセスできるようにすること、それから是非、厚労省からも、今後のお金のサポートを継続的にお願いしたいということです。そして、特に企業の寄付とか、 COI のところが、どこまでいいのかというのが皆様もどうしていいのか分からないところがあるのを、できるだけ整理して、皆さんが分かりやすいようにしていくということです。これらが、今後の実施と普及には不可欠なものということで、まとめさせていただけたらと思います。

  時間がきましたので、これで終わりたいと思います。今日は皆さんお疲れ様でした。どうもありがとうございました。(了)

 


(了)

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