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2017年1月20日 新型インフルエンザ対策に関する小委員会 第7回医療・医薬品作業班会議 議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成29年1月20日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

(1)新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について
(2)その他

○議事

 

○山崎新型インフルエンザ対策推進室長補佐 ただいまから第7回新型インフルエンザ対策に関する小委員会の医療・医薬品作業班会議を開催いたします。まず、委員の皆様の出席について御報告いたします。本日、委員6名全員御出席いただいております。申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。ここからは大久保班長に進行をお願いいたします。

○大久保班長 私は医療法人幸寿会平岩病院の院長をしております大久保です。どうぞ、本日はよろしくお願いいたします。まず、審議参加に関する遵守事項について、事務局から報告をお願いします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室長補佐 審議参加について御報告いたします。本日、御出席をされた委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金などの受領状況について申告を頂きました。

 本日の議題では、抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル、ファビピラビル、塩酸アマンタジンの各品目の状況を踏まえた調査審議をさせていただきます。

 これらの製造販売業者は、中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、第一三共株式会社、塩野義製薬株式会社、富山化学工業株式会社、ノバルティススファーマ株式会社であり、各委員からの申告内容については、机上に配布しておりますので御確認いただければと思います。あらかじめ、事務局において申告内容の確認をいたしましたが、審議や議決に不参加となる基準に該当する申告はありませんでした。以上です。

○大久保班長 次に、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室長補佐 議事次第、作業班名簿、座席表のほか、議事次第の裏面にある配布資料一覧にある資料、参考資料1-11-4をお手元に御用意しております。なお、第5回及び第6回の医療医薬品作業班会議資料については、お手元の青いファイルになっております。不足の資料等がありましたら、事務局にお申し付けください。

○大久保班長 議事に入る前に、本日の議題を確認します。本日の議題は、新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザ薬の備蓄についてです。委員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザ薬の備蓄について議論を始めたいと思います。本日は、前回の作業班会議の継続となります。前回の作業班会議では、お二人の専門家、菅谷憲夫先生、高下恵美先生をお招きして、論点2つについて御意見を伺いました。

 論点1として、既存の4(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)全てに耐性化した新型インフルエンザウイルスの出現の可能性とその規模はということです。さらに新型インフルエンザ対策として、ノイラミニダーゼ阻害以外の作用機序を持つ抗インフルエンザウイルス薬の備蓄が必要か。

 論点2としては、アビガン錠の有効性と安全性を踏まえ、新型インフルエンザ対策上、備蓄が必要かということです。以上の2つの論点について、前回御意見を伺いました。前回の作業班会議における専門家からの御意見、論点などについて、事務局におまとめいただいておりますので、事務局から御説明を頂きます。よろしくお願いします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室長補佐 事務局から、前回の作業班会議における専門家の意見を踏まえた論点ということで、資料にまとめておりますので御覧ください。1ページ、新型インフルエンザ対策におけるアビガン錠に関する論点。こちらは第5回の作業班でお示しして、こちらに基づいて企業のほうで説明、第6回では、参考人に御意見を伺っております。

1つ目、アビガン錠は、効能及び効果、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症、ただし、ほかの抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分のものに限るとして承認されております。

 これを踏まえて論点として、既存の4剤のタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、全てに耐性化した新型インフルエンザウイルスの出現の可能性、その規模はということです。

 もう1つは、新型インフルエンザ対策として、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の作業機序を持つ抗インフルエンザ薬の備蓄は必要かということです。こちらのほうは、耐性にかかわる論点です。

 もう1つ、アビガン錠は昨年度の厚生科学審議会において、薬事承認のときの条件で付されている季節性インフルエンザ患者に対する臨床試験における有効性・安全性のデータが揃い次第、引き続き備蓄の是非等について検討するということでまとめられております。

 これを受けて、このデータに基づくアビガン錠の有効性・安全性のデータの全体を踏まえて、新型インフルエンザ対策上備蓄は必要かということについて御議論を頂くことで、第5回の際に御説明いたしました。

 第6回では、このような論点を踏まえて、参考人の菅谷先生、高下先生、それぞれ臨床試験等に詳しい方、基礎的なウイルス学のところで、アビガン錠について詳しい方ということでお二方に御意見を伺いました。

 まず耐性に関しては、1.自然界から薬剤耐性ウイルスが発生する場合は、初めから多剤耐性というかたちで流行することはまずないと考えられます。一方、バイオテロや研究室から事故でウイルスが漏れるなどで、多剤耐性ウイルスが流行する可能性はゼロとは否定できないということです。2.免疫抑制状態にある患者は、インフルエンザウイルスがなかなか消失しにくく、ウイルスが耐性を獲得しやすいという状況があります。ただし一般的に耐性ウイルスというものは、伝播能力が低く、感染が拡大することは考えにくいが、数年から数十年かけて感染力が高まる可能性があるということです。

3.耐性への対応として、やはり多種類の薬剤や作用機序の違う薬剤の存在は重要であるということです。アビガン錠のようなノイラミニダーゼ阻害薬と作用機序の異なる薬は、ほかの薬剤(S-033188NTZDAS181)などの臨床試験が現在進行中という情報を頂きました。

4.タミフルとラピアクタについては耐性は出ていますが、現在イナビルには耐性が出にくいと考えられております。一方で、耐性ウイルスであっても、薬剤の臨床的効果に大きな違いはない場合もあるという御意見を頂きました。

3ページ、第6回医療・薬品作業班における参考人の意見の概要、アビガン錠の有効性・安全性についてということです。このようなかたちで参考人の意見を伺っております。

1つ目は安全性についてです。アビガン錠を投与した場合は、胎児に対する催奇形性の副作用が最も懸念される問題点である。抗がん剤のような薬と違って、インフルエンザの病気の程度を踏まえると、催奇形性の副作用は1例でも出てはいけないと考えられる、というのが参考人の菅谷先生の御意見でした。さらに催奇形性においては、妊娠初期の胎児への影響のみでなく、妊娠後期まで考えて対処すべきということです。

2.新型インフルエンザで重症度が高く、かつ既存の4剤が耐性の場合に限り、投与する意義があるのではないかと考えているということでした。

4つ目のポツ、小児については、安全性・有効性のデータがない。現在は成人のみ投与ということです。有効性について、下の四角の御意見を頂きました。

1は、アビガン錠はノイラミニダーゼ阻害薬と同様に抗インフルエンザウイルス薬として有効と考えられるが、重症患者や重症化の予防の効果は承認されていない。

2は、アビガン錠は、経口投与薬であり、また、内服量が多いため、重症化した患者に投与するのは難しいのではないか。粉砕した場合や経腸投与における有効性・安全性のデータはないということです。

3は、アビガン錠は、他の抗インフルエンザ薬と同様、投与開始が遅れた場合は、効果が期待できないと考えられるということです。

 こういった参考人の先生方からの意見を踏まえて事務局で論点をもう一度整理し直したものがこちらです。

 アビガン錠は、進行又は再興インフルエンザが発生した際に、どのような場面で使用する可能性があるか、又は使用する可能性がないかというところが1つ目の課題です。もう1つは、アビガン錠の安全性・有効性を踏まえて、新型インフルエンザ対策上、どのような対象患者への投与が考えられるか、又は、考えられないかということです。事務局からの説明は以上です。

○大久保班長 今、御説明頂いたように、論点1をもう一度申し上げますが、アビガン錠は新型又は再興インフルエンザが発生した際に、どのような場面で使用する可能性があるか、または使用する可能性がないかという観点での御議論をお願いしたいということです。

 論点2については、アビガン錠の安全性・有効性を踏まえて、新型インフルエンザ対策上どのような対象患者への投与が考えられるか、または考えられないか。この2つの、それぞれの論点に基づいて議論を行いたいと思います。よろしくお願いします。

 大きいテーマですので、もう少し中身を砕いて、こちらから御意見を求めたいと思います。特に論点1は、4剤耐性のウイルスの発生の頻度。これは非常に少ないと思いますが、それを踏まえるかどうかという点について御意見を伺います。

 現在までに、4剤耐性というのは私は1例と伺っておりますが、そういうものがこれからどのようなかたちで出現してくるか。その発生の頻度を踏まえて、アビガン錠の使い方を考慮すべきかどうかという辺りはいかがですか。

○倭委員 前回、専門家の参考人の先生から御意見を頂いたように、私は、このような薬剤耐性ウイルスがいきなり自然界に出ることはまずないのではないかと思うのですが、先ほど事務局がおまとめいただいた中に、バイオテロとか研究室からウイルスが漏れ出す可能性はゼロではないということですので、もちろんそういった耐性ウイルスがどれぐらい広がるかということはまた別の検討で可能性は低いと思いますが、可能性がゼロでない以上、何らかのかたちでアビガン錠が使用できる体制にしたほうがいいのではないかと考えております。

○大久保班長 ほかにいかがですか。

○釜萢委員 今、倭委員からお話があったのと、私も同じ意見です。やはり、作用機序の違う薬剤を用意しておくことは意義があると思います。

 ただ、なかなか使用の場面がすぐに想定されないかもしれませんが、我が国において薬事承認がされて、そのときの付帯事項もクリアされていると伺っておりますので、アビガン錠を備蓄の対象として考えるということでよろしいのではないかと考えます。

○大久保班長 加藤先生、いかがですか。

○加藤委員 国立国際医療研究センターの加藤です。前回、参考人からも御意見がありましたが、4剤耐性であっても、インフルエンザという疾患を考えると、多くの患者さんは自然に回復する側面を持っている感染症ですので、やはり、普段使っていない薬を初めて使うという状況を考えると、患者さんが死んでしまうかもしれないという、かなり重症度の高いケースにおいて、限定的に使うということが考えやすいのではないかと思います。耐性であっても、重篤度が高い患者さんに限定して使われる可能性はあるかと思います。

 実際に20143月に公表されている厚労科研研究班の成人の新型インフルエンザ治療ガイドラインにおいても、最重症のケースにおいては、ペラミビルと併用を検討するという書き方がなされております。この治療ガイドラインを見ても、耐性という面は考えないといけないと思うのですが、さらに重篤度というものも併せて考える必要があると考えます。

○大久保班長 今出ました御意見は、自然に出るわけではないのですが、その可能性はあるということです。それから、そういう薬剤を用意しておく必要はあるのではないかという御意見です。加藤先生の御意見のように、重症度に限定して使う想定をしておく必要があるのではないかということです。先生、いかがですか。

○馳委員 私も前回のお話を聞いて、リスクは非常に低いがゼロではないと理解しました。こうした類の話はゼロと言い切ることは難しいと思いますので、現実的なリスクがどれくらいかということと、備蓄することのコストとか、その辺のかね合いになると思います。

 現状、アビガン錠の有効性については、それほどのデータはないというのが事実だと思います。非常に少ないリスクに対して、お金をかけてそのような薬を備蓄することは、やはり、すごく限定的な状況を想定した場合の話であり、ほかの薬剤の備蓄とは意味が違うと思います。

 あとはどういう状況で使うかについてですが、耐性のウイルスの情報は、使用するときに既に分かっている場合と、分かっていない場合があると思います。そういったことを考えますと、特別に重症な患者さんや、限定的な状況で使えるような体制を作ることが大切というのは、私もその通りだと思います。

○大久保班長 それに関連したことですが、4剤耐性ということは、治療していく過程において、なかなか早期には分からないことです。後から耐性であったとかということです。ですから、使う状況をあらかじめ規定しておくのは非常に難しいような気がします。

今、馳先生も言われたように、リスクがある中で、頻度が非常に低いところへ、こういう薬剤を備蓄しておくべきかどうかと疑問を投げかけられたわけですが。

○馳委員 1つよろしいですか。流通しているほかの薬剤の場合は備蓄をしていて、まずは流通分を使って、それが足りなくなるような状況で備蓄分を利用すると伺いました。アビガン錠は、通常、特別に国が使用を許可するという状況でないと、一般医療機関で使用することは想定されていないはずです。仮に備蓄というかたちを取らなかった場合で、使用することになった場合、ほかの薬剤と違って流通分がないということで、どのような違いが出てくるのでしょうか。

○大久保班長 事務局からお願いします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室長補佐 例えば、ある特定の医薬品などについては、備蓄してそういったものを供給するという体制と、メーカーさんなり卸さんのほうから、普段はその所に出していないが、トレースをちゃんとさせて供給するという体制の整備とか、そういったものはいろいろなパターンがあると思います。いずれにしろ、使用する患者さんの所で、また使用するお医者さんの所で齟齬が出ないような体制整備がどのようなお薬でも十分検討されておりますので、そういった体制は、今示した方法のほかにもあると思いますが、それぞれのお薬の特性に応じてさせていただいているのが現状かと思います。

 備蓄していない状況の場合は、製造の許可がされている前提で、使用するというかたちでまず国が言うと。一般の市場流通のスキームを使って投与する患者さんの所にメーカーから卸業者、それから医療機関のほうに供給されるというのが通常のルートだと思います。その場合に、特定の患者さんの所に送れないのではないかという懸念もあるかもしれませんが、医薬品によっては特定の患者さんに送れるように、ちゃんとルート整備しているものもありますので、それは体制としては可能かと思います。

○釜萢委員 今、薬事承認をされてはいますが、製剤は造られていないわけですよね。ですから、備蓄しなければ、必要になったときに新たに造らなければならないわけです。ですから、かなり時間がずれるのではないですか。

○長谷川新型インフルエンザ対策推進室長 御指摘のとおりで、恐らく、まず国のほうでこの薬剤を使うことを決めた上で、製薬メーカーに製造をしていただくかたちになり、その後、流通の過程に乗っていくということです。

 今も山岸から申し上げたとおり、流通の工夫はいろいろできるかと思いますが、普段使っていない薬剤を、いきなり患者さんに届けるとなると、一定の時間等々はかかってくるだろうということは考えております。

○馳委員 備蓄をしないということは、即ち生産量に応じた生産体制が整って、それが流通する分に関しては使用ができるが、それはタイムラグがどうしても生じてしまうということですね。よく分かりました。

○大久保班長 ということは、薬剤としての備蓄をしておくわけではなく、すぐ使える状況にしておくかどうかという概念でいいですか。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室長補佐 ある程度の量が、例えばメーカーさんにあれば、国として備蓄しない場合でも供給は可能性としてはあると思います。ただ、ある程度しっかり備蓄みたいなかたちですぐに出せるものがあるかというところで、生産量の所はひびいてくるかもしれませんし、そういったところで、今後、もし使うことになった場合、現場で齟齬が出ないかたちで、どういったかたちでやっていくかというのは考えていってもいいかとは思います。

○大久保班長 供給状況については、一応御了解いただけたと思いますが。その先の議論として、発生した新型インフルエンザの重症度といいますか、重篤性を踏まえて使用を考えていくべきかどうかという辺りはいかがですか。重篤性に応じた使い方という点です。

○倭委員 まず、健常な方が仮にこの耐性ウイルスにかかっても、恐らく臨床的には本人の免疫の力でクリアするのではないかと思うのですが、1例、報告がCDCからあるように、免疫抑制状態にあるがが、なおかつ、重篤な症状になったときに使うようなかたちにできるようにしていただいたほうがいいというのが、我々現場からの意見です。ただ免疫抑制状態にある方でも、最初からいきなりほかの薬剤で全く効かないようなタイプの変異型が流行するわけではないので、多剤耐性ウイルスだと分かった時点で、何らかのかたちでそういった人に使うようなガイドラインであるとか、あるいは厚生労働省の専門家会議でのエボラのアビガンのときのような指定にするかどうか、それをクリアした上でそういう基準を満たせば重篤な免疫抑制状態にある方で、なおかつ重篤なケースに使えるようにすると。そういったかたちを何とか整えていただいたらいいのではないかと、現場の意見としては思います。

○大久保班長 先ほどの資料の2ページに、参考人のお二人の意見の2つ目のポツの所で、「免疫抑制状態にある患者は、インフルエンザウイルスが消失しにくく」という意見は、恐らく抗体ができにくいからという意味でしょうか。なおかつ「ウイルスが耐性を獲得しやすい」、ここを前回お伺いすればよかったわけですが、免疫抑制患者さんがインフルエンザにかかった場合に、ウイルスが耐性を獲得しやすいということにつながっていくかどうかということはいかがですか。

○倭委員 このウイルスは排除できないので、ウイルス側も異変を獲得しやすいと。もし健常者であればすぐ排除できるからということです。

○大久保班長 その期間の問題も含めてですね。

○倭委員 そうですね。ですから、そういった状況になれば、やはり、この患者さんに使用したいというかたちになりますので、そういった方が重篤な症状が出ているときには、使うかたちにという制約か、あるいはガイドラインか何かを作っていただいたら良いのではないかと思います。

○大久保班長 ということは、患者さんの重篤性を踏まえた使い方を考えていくということですね。

○倭委員 そうですね。そういうふうに考えます。

○大久保班長 この辺りについて御意見はありませんか。

○釜萢委員 やはり、ノイラミニダーゼ阻害薬を従来あるものと比べますと、かなり再生と動物実験における幼弱の動物への毒性が強いといったことがあるようですから、これまでの薬と同様の使い方というのは、やはりとても無理だろうと思います。したがって、今後どのような対象にこの薬を優先して使うかということ。今、免疫抑制とか重症とかいう話が出ています。

 あとは備蓄量をどの程度必要になるかという議論を、今後しなければならないかと感じております。

○大久保班長 そういう重症度に応じてということになると、軽症、あるいは中度の症状の患者さんの場合には、これは不要だと考えてよろしいですか。本剤が必要かどうかということです。

○馳委員 重症というだけでアビガン錠を使うことは皆が想定している話ではないので、疫学情報からリレンザ、タミフルの両方の薬剤への耐性が判明している状況の中で、重篤な患者さんが発生した場合に限定した話だと思います。

○大久保班長 疫学情報に基づいて、その患者さんに限定してということですね。論点1の所で、新型インフルエンザ、あるいはアビガン錠の対象となるようなインフルエンザが発生した場合、使用する可能性があるということでよろしいですね。

2番目の論点で、アビガン錠の安全性・有効性を踏まえて、どのような対象の患者さんへの投与が考えられるかという点について御意見をお伺いしたいと思います。確かに安全性と有効性、それに催奇形性という重篤な副作用が、これは全員ではなくて特定の患者さんということですが、そういうことがあるということですので。そういう意味での使い方に関して、どういう状況が考えられるか御意見をお伺いしたいと思います。

○倭委員 仮に、アビガン錠を実際に使うかたちになった場合を想定しますと、安全性の1番にあるように、インフルエンザの病気の程度を踏まえると、やはり催奇性の副作用が1例でも出るというのはよくないと考えます。そこは十分に文書なりで同意をしっかり取っていただいた上で、妊娠初期の胎児への影響のみならず、後期でも考えて対処すべきですから、妊娠中の女性の方への投与はやめるべきだと思います。そこは絶対条件だと考えます。

○大久保班長 前回の参考人の説明の中で、妊娠の全経過中を対象とすべきか、あるいはごく初期の状況を対象とすべきかというようなことで御意見を伺いました。その辺は倭先生のお考えでは、妊娠の可能性のある方全てを対象とすべきだということでよろしいでしょうか。

○倭委員 投与すべきでないと考えます。

○大久保班長 今までの認識だと、妊娠初期ということで説明されてきたと思うのですけれども、やはり倭先生がおっしゃられたように、全経過中を考えるべきでしょうか。

○倭委員 この薬剤に関しては、治験を増やすことはなかなか難しいものですから、どこまで安全だということはとても言えないのではないかと思います。現状、もし備蓄をし、この薬を使う場合に当たっては、妊娠の可能性のある対象者には投与しないという対応が望ましいのではないかと考えます。

○大久保班長 他の先生方もそれでよろしいでしょうか。まだ、これはデータがしっかりないかもしれませんが、そういう妊娠の可能性のあるパートナーに関しての対応はいかがでしょうか。これは事務局にお伺いしたいのですが、そういう意味でのこの薬剤の適応については、どういうかたちでこれまで来ているかをお願いします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 使用している間に、性液のほうに一部移行するということは説明されております。ある程度たったところで移行しないというデータも出ております。そういうデータを踏まえた上で判断されることなのかと考えています。

○大久保班長 それは、使うべきではないということでしょうか。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 添付文書では、男性患者に投与する際は、その危険性について十分説明した上で、「投与期間中及び投与終了後7日まで性交渉を行う場合は、極めて有効な避妊法の実施を徹底。男性は必ずコンドームを着用するように指導すること。また、この期間中は、妊婦との性交渉を行わせないこと」というところが警告の項に書かれています。

○大久保班長 分かりました。そういう状況になっているようです。やはり安全性という点に関しては、いろいろな検討をしておかなければいけないかと思います。これまでの皆さんの御意見では、妊娠する可能性のある女性に対しては慎重に投与する。慎重にと言いますか、投与しないということを前提とする必要があるということです。それから、4剤耐性の患者さんに限って投与すべきかどうかという辺りに関してはいかがでしょうか。安全性の面から考えてです。

○倭委員 女性、男性にかかわらず全体ということでは、四剤耐性ウイルスに限って投与するということでいいと私は考えます。

○大久保班長 その耐性というのが、その患者さんの治療中に分かるということは少ないのではないでしょうか。

○倭委員 そうです。ですから、最初からいきなり投与するわけではないということが1点です。先ほど申しましたように、最初は通常使用している抗インフルエンザ薬で。もし自然界で四剤耐性ウイルスが出る、あるいは最初から四剤耐性ウイルスがテロか何かで撒かれるとか。

○大久保班長 それは別です。治療している過程の中でです。

○倭委員 治療する過程の中でということであれば、免疫抑制状態にある方だと、治療の過程で出てくるはずですので、その段階で改めて使う。もしテロか何かで出ているときには、調べてみた上でそれが四剤耐性ウイルスと分かれば、その段階で考慮するというかたちになります。

○大久保班長 分かればいいですけれどもね。

○倭委員 はい。

○馳委員 免疫抑制者でタミフル、リレンザの両方に耐性ウイルスを認めた症例報告についてですが、この症例では最初に罹患した際には耐性は証明されていなかったにも関わらず、ウイルス排出期間が長くなり、治療経過中にそのような耐性株が検出されたという理解でよろしかったですか。

○田村健康局参事 先生がおっしゃるとおり、こちらの論文の内容では、免疫抑制中の8か月の男児が、インフルエンザに罹患して、そしてオセルタミビルとか、リレンザの治療を行っている最中に、それぞれその薬剤の耐性化を、そのウイルスが獲得していって、最終的には多剤耐性、4剤耐性になったという状況でした。

 その検出する状況なのですけれども、通常医療機関から患者さんの状況が良くないということで検体を採取しても、一般的な検査機関では一般的に行えない検査だと思います。例えば日本国内で言えば感染研のような、若しくは地方衛生研究所のような薬剤耐性ウイルスの検出の経験のあるしっかりしたラボで検査をしていただくことが必要になるかと思います。

○馳委員 耐性ウイルスを検出したことと、そのウイルスが患者に悪さをしていたかは分けて考える必要があると思います。検出された耐性ウイルスが流行株となって、疫学的に有意な流行となった場合に、初めてこの薬を使うことが想定されるわけですが、実際の臨床現場では催奇形性がある薬剤を使わないといけない場面もあるわけです。有用性が危険性に対して優るような場面では、使用することもあります。仮に高度な耐性ウイルスが流行した際に、軽症の患者にアビガン錠を使うのかというところが判断の大きな分かれめになるのではないかと思います。そのような状況を想定したときに、症状が重い人だけに限定的に使うということであれば、使うことのメリットが優先されるような場面だと思いますので、催奇形性の副作用は、それほど大きな問題ではないのかという気がしました。

○大久保班長 論点1の中の議論のポイントはそこに1つあるわけです。軽症、あるいは中等症の方々に対する使用ということも検討しておかないといけないところだと思います。

○倭委員 ハイリスクの患者さんで重症の場合が適用と考えます。

○大久保班長 ハイリスクの場合で重症の患者さんという御意見が出ました。ハイリスクというベースが。

○倭委員 免疫抑制状態にある患者さんが重篤化しているということ。予防投与は有効であると証明するデータがありません。○大久保班長 分かりました。ちょっと話題はずれますけれども、この薬剤はまだ小児についての安全性と、有効性のデータが示されていないと考えるのですけれども、その辺はいかがでしょうか。成人のみへの対応ということでいくべきでしょうか。

○倭委員 この間、富山化学さんから示していただきましたアメリカでの季節インフルエンザのデータも成人のみということで、それ以外でも小児についてのデータがないとなれば、やはり安全に使えることが条件ですので、成人への投与というように考えたほうがいいのではないかと思います。

○大久保班長 安全性ということから考えて、小児への投与はしないということですね。これについても、皆さんに御同意いただけますか。

○笹井委員 今の、小児への投与は控えるべきだということに加えて、授乳中の方は避けるべきだと注意事項にもありますので、母乳を介して乳児に移行することは十分考えられます。そうすると、小児に投与したということになりますので、避けるべきだと思います。

○大久保班長 そうですね。授乳中の方も加えて、投与は控えるということですね。他にはよろしいでしょうか。

○釜萢委員 今の御議論については全く同意見です。リスクの高い患者さんが、重症の場合に投与するというのは、確かにそのことは全くそのとおりでいいのです。それでは、そこまで対象を限定してしまってよいかどうかというところは、少し慎重に議論したいと思います。やはり疫学データなどで、この薬剤の使用が望まれる場面というのは、耐性ウイルスだというのがかなり強く前面に出てきたような場合には、もう少し使用の適用の範囲が広がってもよいのかなという気はするのです。そういう場面の想定が極めて限られるということもあります。それは、インフルエンザの対策として備蓄するという場合には、そもそも国がこの薬剤の使用を決めるという判断が前提になりますので、その場合においてはある程度適用をもう少し広く見てもよいのではないかと感じておりますが、皆様の御意見はいかがでしょうか。

○加藤委員 今の御意見は少し同感なところがありますので、付け加えます。新型インフルエンザだと、学童などが最初の流行の発端となることが多いかと思うのです。そういう小児でも、軽症で自然に回復するようなケースについては、このアビガン錠は使わないということでいいのかと思っています。

 一方で新型インフルエンザの場合には、もともと基礎疾患がない、比較的若年の成人とか、小児で重症例が出る。これは季節性のインフルエンザと少し疫学的に違う点ではないかと思います。免疫不全者に限定することになると、健常成人で重症の方について使う機会をなくすことにもつながるのかと感じます。

 ただ、重症の方に使う場合においても、私もこれまで議論をしてきて、やはりアビガン錠というのは普段は使っていないお薬であって、安全性と有効性の点で不明な点が非常に多いということです。こういう場合には、現在は条件付きの承認ということで、大臣の許可が下りれば広く使うことも可能なのかもしれませんが、対象患者の適格条件などをしっかり決めて、臨床試験として導入すべき薬剤なのではないかと感じています。

 これは最近の傾向であって、エボラ出血熱の流行においても、あれだけの流行時に臨床試験を行うというのはとても大変なことだったと思うのですが、このアビガン錠についても、臨床試験というかたちで有効性と安全性をきちんと評価する枠組みを作って投与されたという経緯もあります。

 ですから、事前にどういう患者さんに使うかというようなことを決めておいて、臨床試験として計画を準備しておいて、流行の初期に患者さんを受け入れるような施設、入院の措置とか勧告などが行われるようなことも予想されますが、そのような病院で臨床試験として、有効性や安全性を確かめるという導入の仕方も、この薬剤にはあるのではないかと考えます。

○大久保班長 これは、エボラ出血熱のときには、そういうかたちで実際に行われたわけですね。

○加藤委員 はい、そうです。

○大久保班長 臨床試験として、安全性・有効性についての検討をしたということですね。

○加藤委員 はい、最初にそういうかたちで。

○大久保班長 そういうかたちが可能なようにあらかじめ計画をきちっとしておくということ。

○加藤委員 新型インフルエンザにおいてもそういうやり方をとったほうがいいのかなと感じます。有効性、安全性が分からない、本当に重症の患者さんに有効かどうかも、まだはっきりしない点がありますので、そのような導入の仕方もあるのかと思います。

○大久保班長 1つの導入の仕方について御提案を頂きました。安全性という面では大体御意見は出たと思います。今度は、有効性という側面から、もう少し議論を進めていきたいと思います。

 まずは、先ほども申し上げましたように、免疫抑制患者、いわゆる耐性化しやすい患者さんへの配慮をどのようにしていくかということです。あるいは、重症患者さんへの投与。重症患者さんというのは、呼吸管理下の患者さんを言うわけですけれども、粉末経口剤としてのものをどのように投与していくかという、その有効性についてはいかがでしょうか。

○倭委員 前回、私も質問させていただきましたけれども、重篤の患者さんで経口投与が難しい場合には、経腸投与ということになると思うのです。粉砕懸濁して経腸投与の場合の有効性、あるいは実際の血中濃度といったものを測ったものはないということなので、先ほど加藤先生のお話にもありましたように、もし現実にアビガン錠を投与するようなケースがあれば、臨床登録をしっかりと全例に行ってして、そこで使いながら、血中濃度が上がっているかどうかを確認する。そのようにせざるを得ないのではないかと思います。

○大久保班長 投与しながらと。

○倭委員 そのデータがない以上。

○大久保班長 試験をしていくということですね。

○倭委員 はい、そうです。

○大久保班長 経腸投与しかルートがないということになります。あとは量的な問題もかなりありました。アメリカとは少し投与量が違うかもしれませんが、かなりの量の錠剤を投与しなければいけないという状況があります。他に、重症患者さんへの投与法について御意見はありますか。かなり内服の量が多いということ。経腸投与というかたちだと、粉砕しなければいけないわけですけれども、粉砕した場合の安全性について、あるいは有効性についての資料がまだ十分得られていない状況だと思うのです。それと、有効性の中でもう1つ先ほども出ましたが、発症から経過時間が過ぎている場合には、従来の薬でもそうですけれども、効果が得られにくいという点がありますので、その辺の時間が経過した場合に効果が得られないとすべきかどうかというところもあると思うのです。そういう有効性についての御意見、更にもう少し発展すれば、予防投与と言いますか、免疫抑制患者等への予防投与ということも考えられるかどうかという辺りの御意見をお伺いしたいと思います。

○倭委員 先ほども申しましたが、重症化の予防効果のデータはこの薬にはないということです。例えば先ほど加藤先生のお話にもありましたように、エボラ出血熱のアビガン錠のときであればマウスですけれども、予防投与の実験がありました。このアビガン錠はインフルエンザでの予防投与の動物実験というのはなかったということでよろしかったですよね。ないですよね。ですから、動物実験の結果もないというのであれば、ヒトでも重症化の予防効果のデータもないのであれば、そこを考えるのは少し尚早ではないかと考えます。

○大久保班長 議論の余地がないと言いますか、まだそういう状況でないということですね。予防投与に関してはそういう御意見でよろしいかと思います。内服が不可能な患者さん、重症な患者さんに対する粉砕したかたちでの投与とか、投与量としてかなり錠剤の数が多いということもあって、その辺りの効果についてのきちっとしたデータがまだ十分ないという状況はいかがでしょうか。重症者への投与方法も含めていかがでしょうか。何か良い方法はあるのでしょうか。

○倭委員 現実は難しいですけれども、エボラ出血熱のときにもあったように、やはり粉砕して、懸濁して、経腸で入れるしか、今の静注製剤がない以上仕方ないのではないかと思います。この前も私から質問させていただきましたけれども、尿酸が上がるのであれば、例えば尿酸が上がっている副作用の数値を見て、ある程度吸収されているのではないかということを、現場の医者としては考えながら、エボラ出血熱のスキームのように血中濃度を測って然るべき。国立感染症研究所ですぐに濃度を測定していただいて、本当に上がっているかどうかを確認してもらうということしか、現状では難しいのではないかと思います。

○大久保班長 血中濃度を調べながら投与するということですね。あるいは尿酸値を。

○倭委員 現実すぐにリアルタイムで分かるとすると、尿酸が一番簡易に測れるところではあります。あとは時間がかかると思いますので、1人の患者さんが終わって、次の患者さんが使うときに、そのときの血中濃度のデータを見てというかたちになるのではないかと思います。

○大久保班長 もう1つ、妊婦とか小児への投与については、先ほど御意見がいろいろ出ました。それから授乳中だとか。ただ、いわゆる重症例の場合には、授乳どころではないわけですよね。一般の家庭でというわけではないわけですから。そういうことも考えると、あえてそこまで言及すべきかどうかと。重症患者というかたちで考えた場合に、その辺は。

○倭委員 先ほど申しましたけれども、やはり使うときにはガイドラインでチェックする項目を一つ一つ確認して、その中で全て確認して、重篤な患者さんで、実際に妊娠していないとか、授乳する可能性がなければ、女性でも使うべきだと思います。その辺も投与前の項目の確認をガイドライン等でしっかり作ってやればいいのではないかと思います。

○大久保班長 だから、本来はどういう場合に使用する可能性があるとか、どういう場合は使わないというようなことをきちっと表明できればいいのですけれどもね。

○倭委員 そうです。確認した上でということを、文書か何かで確認した上での使用がいいかと思います。

○大久保班長 そうすると、この薬を使用すべき可能性のある状況として、1つは免疫抑制患者、それから重症化した患者さん、他に使うべき状況としてはどういう状況があると思いますか。

○倭委員 これは先ほど加藤先生がおっしゃられたように、もしこれがドミナントで流行するような状況になることがあった場合でも、こういう四剤耐性ウイルスというのは、前回の専門家の先生の御意見にもありましたように、伝播能力は低くて、いきなり感染拡大することは考えにくいので、かなり時間がかかると思うのです。その間の公衆衛生の疫学の対応を見ながら、柔軟に考えていくみたいなことも、使うときにエボラ出血熱のようなスキームがいいのか、あるいはガイドラインの中にそういう条項を入れておくか何か、そういうかたちにして含みは持たせたほうがいいかとは思います。もちろん現実に起こってみないと、想定以外のことが起こる可能性もゼロではないと思います。ただ、まだ可能性が低くても起こり得るということが言われていることを主に、状況を見ながら先ほど加藤先生が言われたようなかたちがいいのではないかと思います。

○大久保班長 確かにそうですね、逆にこういう場合には、使用すべきでないと言える状況というのは、妊娠する可能性のある方、それから、先ほどの授乳中というのを入れるかどうかということはあるのですが、明らかにこれは使用する対象ではないと言える患者さんとしては、具体的に、特に適用するとすれば、どのような状況が考えられるのでしょうか。

○釜萢委員 なにしろ、使用経験がない薬なので、どうするかというのはとても難しいのですが、想定を考えてみると、この薬の投与を決めた当初は、これを使うということになった場合には、免疫不全であったり、あるいは非常に重症者、これも、ただ、余り発症から時間がたっては効果がないということなので、重症者に限って早期に投与するということで、知見の蓄積をするということではないでしょうか。その場合には、エボラのときのような、きちんとデータが集まるようなやり方で、まだ最初の投与の始まった時点では、それほど例数もすぐに増えるということでなく、いけるのではないかと思いますが、そこできちんとできるだけのデータの蓄積を行って、そして、その次の段階として、かなり適用を広げて、一方で、流行が拡大しているような事態になった場合に、適用拡大していくというようなことが考えられるのではないかと思います。投与の開始の時点で、しっかりデータが集まるような体制を取るということを、まず決めておけばよろしいのではないかと思います。

○大久保班長 いずれにしても、評価は十分できない状況だと思いますので、先生が言われましたように、知見の集積は、これは最も大事なことだと思います。それから、使う現場としてはどんどん感染が拡大していって、なすすべがかなり限られてきている状況には使わざるを得ないだろうということ。確かにそのとおりだと思います。ほかに安全性と有効性に関して、今日お伺いした以外の角度から御意見があれば、お伺いしたいと思います。

○馳委員 条件設定が非常に多いというのがすごく難しいところです。高度な耐性が生じる可能性やそういった耐性ウイルスが流行する可能性は低いと考えられるわけですが、もし流行した場合に致死率がどれくらいなのかによっても、かなり状況が違ってきます。

 例えば、致死率が非常に低いウイルスであれば、仮に高度な耐性ウイルスであっても特別な薬剤を使う意義は低くなります。今は備蓄をどれぐらい確保すべきかという議論をしていますが、現実的には備蓄分がどれくらいあって、では、流行状況がどれくらいで、致死率はどれくらいなのによって、投与対象の範囲も変わってくると思います。条件を幾つか決めていかなければ、どれくらい備蓄するべきかを議論するのは難しいという印象を持っています。

○大久保班長 だから具体的な状況が幾つか列挙できればいいのですが、現在のところですと、余り細かい状況は設定できないと思います。使うべきでない状況、あるいは、使わざるを得ない状況と分けて今日も少し御議論いただいているわけですけれども、使うべきではないという辺りで、小児は一応、今日の皆さんの御意見では使うべきでないというところに入っていると思いますが、重症例か、重症でないかというくくりで言うと、これは重症例に使うわけですけれども。ほかの妊娠の可能性とか、先ほどの授乳の問題も含めて、重症者であればそれどころではないということになるかもしれないですね。そういう点もあって、これは線を引くのはなかなか難しいと思います。

 今後のこの薬の治験の進め方、治験というか、いろいろなデータの出し方とかそういう面で、事務局のほうで何か御意見があればお願いしたいと思います。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 情報が現時点では限られているところで、パンデミックが起こった際に、どのようにデータを集めていくか、いろいろな課題と、それから、工夫が要るところだと思います。そういったところで、先生方の御意見を踏まえて、適切に情報が取れて、フィードバックしていくようなかたちについては、今後また、調整しながら考えていきたいと思います。

○大久保班長 現時点で、使える状況とか、使えない状況を厳しく線引きするのはかなり難しいと考えますし、線引きしたところで、重症化であればまたそれは崩れてくるわけですので。現時点できちんとそういうことを決めるのは、かなり難しいと思います。影響は、いろいろそういう意味で参考となる御意見も伺いました。まだ現実的にこの薬を使うというそういう事例がない中で、いろいろな議論をするのは非常に難しいと思います。馳委員、どうぞ。

○馳委員 以前、ほかの抗ウイルス薬の備蓄の量を議論した際に、製薬会社の生産体制の話が出たと思います。備蓄の量を考えるに当たって、流通分と、生産量、仮にフル稼動で生産した場合に、どれくらい薬剤を確保できるかという話があったと思います。

 アビガンに関しては、現在製薬メーカーに在庫が多量にあったり、生産しているわけではないわけですが、仮に耐性のインフルエンザが流行して、使用する状況になった場合に、生産体制としてどれくらいの数が用意できるのかについては、今後の議論のために把握しておいても良いかと思いましたがどうでしょうか。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 今後、メーカーのほうからお答えいただいたところで、また次回以降というか。

○馳委員 オーダーしている所ということでしょうか。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 オーダーしている所ですので、よろしくお願いいたします。

○加藤委員 議論でいろいろなことを話題にしていますけれども、私も先ほどの評価ということで、不明な点を実際の臨床試験のようなかたちでデータを取りながら導入するというのがいいのではないかと思っています。新型インフルエンザが始まる前にできることとしては、中国等で発生している鳥インフルエンザ、あるいは、季節性でも重症な肺炎を起こしているような症例について、先ほどの経鼻胃管からの投与で血中濃度がどうなのかとか、安全性がどうだったか、そういったもののデータを企業の努力なのか、あるいは、研究者主導のような研究を奨励するとか、そういうかたちで少しでも新型インフルエンザが発生する前にデータを集めておくべきだろうと思います。もし、それが十分集まらなくて、新型インフルエンザ発生のときに導入するというような場合でも、やはり初期に臨床試験というかたちで導入するのがいいのかと思います。

 ただ、そうすると、流行が発生したときに、薬がすぐに医療機関に届くということが必要になってくると思います。先ほどの馳先生なども御意見を出されていたように、企業から出てくる具体的なスケジュール感というか、臨床試験というかたちでしたら、その試験の薬として保管しておくことになると思いますので、余り問題ないのかと思います。通常の診療で使われるのを観察するような研究として導入するというような場合ですと、流行の初期にすぐ薬が使えないといけないので、流通のスケジュールが、パンデミック発生でアビガンがある程度使えるようになる時間というか、これは具体的に1週間とか、2週間か、1か月なのか、そういうスケジュールがもう少し、今、調査中だと事務局の方がおっしゃられていますけれども、具体的に薬が市中に出回るイメージが、ちょっとぼやけている感じがあります。そこを具体的にしないと、我々の備蓄の議論も立てづらいという面があるのかと思います。この部分は、十分調べて、具体的な薬が医療機関に届くスケジュールをはっきりさせていただくと、もっと議論がしやすいのかと思います。

 重症な患者さんに使うとなると、今、被害想定なども新しく算定ということをされていると思いますが、重症な患者さんがこれぐらい発生して、企業から出る薬の数がこれぐらいというように、具体的に備蓄のほうも話を進めやすいと思いましたので、意見を付け加えさせていただきました。

○大久保班長 ありがとうございます。非常に貴重な御意見だと思います。実際に使われていない薬を想定しながら議論するわけですので、実際にその症例が発生した場合に、現場にどういうかたちでどのぐらいの時間で届くかという、具体的な備蓄の議論を進めにくいという状況になっているわけです。先ほど来言っておられるように、臨床試験をしながら導入すべきであるということと、それから、既に現在、発生しているような鳥インフルエンザ、あるいは季節型のインフルエンザの重症例などにこれが使用できれば、そういうデータを集めるというようなことも、そういうことを積極的に行えないだろうかと。最終的には、流行の初期にこういう薬が、いかに使えるかという準備だけはしておく必要があるといった御意見を頂いたと思います。これは確かにそのとおりだと思います。

 今日の会議では生産状況とか、その辺りについてはっきりと提示されることはないと思いますが、そういうことも含めて、今後、明らかにしておいていただきたいと思うわけです。

 今日の審議は、安全性と有効性についてということで、皆さん方に御意見を伺っているわけですが、これまでに出なかった意見、あるいは方向性等で何か御意見があれば、お出しいただきたいと思います。今日は、具体的な結論を導く議論ではなくて、いろいろな御意見を出していただいて、それを最終的にまた事務局で取りまとめていただくという、そういう会議にしたいと思います。何か御意見はありますでしょうか、全般的に見て。

○釜萢委員 今、加藤先生が御指摘いただいたところは、とても大事だと思います。もう少しそこに触れてみますと、薬事承認をされている、適用がそこに書いてあるとおりでして、「新型又は再興型のインフルエンザウイルス感染症で、他の薬が無効、効果不十分」ということになっておりますので、鳥インフルエンザの単発例がヒトにうつったとして、それが、まだヒトヒト感染を起こさない段階では、新型インフルエンザとはならないわけなので、そこは薬剤を投与するという対象には、このままだとなかなかなりにくいのだろうと思います。

 大臣の指示によって製造を開始してから流通するまでというのは、常識的に考えると、備蓄していないとそれは無理な話で、備蓄してあっても、すぐにはなかなか出ないわけなのですので、流通を非常にしっかりやったとしても、やはり備蓄していないと、いざというときの役には立たないのです。そこから生産して、対応するというのは、私は現実的にはかなり困難を来すだろうと思います。その日数等は今後、また報告があると思います。

 したがって、今の薬事承認をされている適用の基準に当てはまるかたちで、今後、新たな知見が蓄積されてくるというのは、なかなか実際には難しいので、そういう事前にもっといろいろ調べておきたいという思いが強いので、それがどういうかたちならできるのかという検討は、ひとつ必要だと思います。

 一方で、この薬を使おうというように大臣が判断する事態において、きちんとデータが取れるような体制、これは、できる施設がかなり限られますので、投与の初期において、どこで投与するかというのを、ある程度絞っておかないといけないのかと。そこで、疫学的な様子、流行の様子が非常に拡大してきて、この薬の適用が広がるという事態になったところで、投与できる医療機関がグッと増えるというような想定ではないかと思います。以上です。

○大久保班長 今の御意見も非常に重要で、いざというときに使える状況に備蓄しておく必要があるということですけれども、いざ使おうとする場合、大臣の判断という言葉も出てきましたけれども、そういう国が、その投与方法とか、投与対象者に対して、言及というか、指示する必要があるかどうかという辺りはいかがでしょうか。

○釜萢委員 それは、国としても専門家の意見を聞いて、あらかじめ想定しておかないといけないだろうと思います。ですから、これまでのインフルエンザに限っても、これまでの薬は、通常使っている薬を備蓄しているのを、パッと放出するという、そういうことでしたけれども、今まで使ったことのない薬をどう使い始めるかというところは、今まで経験がないので、その意味では、投与の開始時点における体制の整備というのは、今回、新たに策定しておかなければいけないのではないかと思います。

○大久保班長 医師の治療選択の裁量権にどういう配慮をすべきかというところが非常に難しい状況にはなると思いますが、国として、ある程度そういう指示することを示す必要はあるということです。

○倭委員 もし、今、目の前にそういう患者さんが来たときに、臨床家の立場とすれば、投与して、助けたいという気持ちはやはりあると思います。ですから、ガイドラインを作成する上でも、現場の医師の裁量ということも、きちんと項目の中に入れていただくようなかたちにしていただいたらよいのではないかと思います。

 備蓄の量をどの程度するかということは、我々、臨床家の立場からだと難しい面もありますので、それについては、上の小委員会の先生にも、公衆衛生の先生方がたくさんいらっしゃいますので、そういった先生方のご意見をまた聞いていただいたほうがいいのではないか。我々、現場の人間としたら、使えるような体制にしておくことは、皆の総意でいければいいかというのが私の思いです。

○大久保班長 馳委員、何か御意見はありますでしょうか。

○馳委員 私も今日の議論を通して、有効性がはっきりと定まっていないものを使用するときに、しっかりとデータを取る体制を整えるべきという御意見は正にそのとおりだと思いました。新型インフルエンザに限らず、今後、新興感染症が流行したときに、同じような状況になると思いますので、新規の薬剤を使用する体制を整備する方向に繋げていければ良いと思います。

○大久保班長 ほかはよろしいでしょうか。事務局で何か補足するべきことがありましたらお願いしたいと思いますが、よろしいですか。

○長谷川新型インフルエンザ対策推進室長 今日は様々な意見をありがとうございました。特に毒性が弱いパターンと、また流行を繰り返すことによって毒性を強く獲得し、致死率が高くなってきたケース等々を含めて御議論いただけたかと思っております。

 私ども備蓄に当たっては、いざ、メーカーのほうで実際に追加なり、新規に薬剤を製造することにおいては、製造した上で流通する過程の期間については、これからまた確認したいと思います。次回、そこを含めて皆様にお返しできたらと考えております。

○大久保班長 今日は、いろいろな方面からまとまりのない議論になってしまって、座長として、非常に御迷惑をおかけしたことをお詫びしたいと思います。

 実際に使われていない薬について、議論するのはなかなか難しいところもありまして、最終的にというか、今日の議論の中では、どういう場面で使用すべきか、あるいは、どういう場面で使用すべきでないかということに関しては幾つかの御意見を頂きましたので、非常に参考になったと思います。全般的に本剤の有効性・安全性を踏まえて、使用する中では、事前にガイドライン等で適応、投与方法、投与対象者などをきちんと示す必要があると思います。そういうことと、それに加えて、先ほども出ましたように、医師の裁量権にも留意した上で、このガイドライン、新しくできるであろうガイドラインの位置付けをきちんとしていくべきではないかということ。今日のところは、その辺りまでしかまとめることはできないと思いますが、また今後も、こういう議論を進めていく必要があるのではないかと思います。

 今日の議論を踏まえて、事務局のほうで意見をもう一度集約していただいて、これをまた皆さんのほうに還元していただくということで、よろしいでしょうか。では、事務局で何かあればお願いします。

○山岸新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 水色のファイルにつづられた資料は次回も使用いたしますので、事務局に預けていただくか、お持ち帰りの場合は、次回お持ちいただくということで、よろしくお願いいたします。次回の日程については、追って御連絡いたします。

○長谷川新型インフルエンザ対策推進室長 先ほど座長から御指示がありましたとおり、次回、事務局のほうで、これまで頂いた資料を論点として取りまとめて、皆様に御提示できたらと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 


(了)

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