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2017年2月13日 第12回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成29年2月13日(月)15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎5号館 共用第6会議室(3階)


○出席者

吉田(恒)座長 岩崎構成員 上鹿渡構成員 久保構成員 久保野構成員
杉山構成員 床谷構成員 林構成員 藤林構成員 横田構成員
吉田(彩)構成員

○議事

〇林補佐 それでは只今から第 12 回児童虐待対応における司法関与及び特別養子制度の利用促進の在り方に関する検討会を開催いたします。

構成員の皆様にはお忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は、峯本構成員、森口構成員、山田構成員、山本構成員からご欠席のご連絡をいただいております。 まず資料の確認をさせていただきます。配布資料は右上に番号を付しておりますが、資料1、資料2、資料3、資料4、参考資料、追加資料を配布しておりますので、ご確認いただければと思います。資料の欠落等がございましたら事務局までお申し付けください。

 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただいております。それでは、これより先の議事は、吉田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

〇吉田座長 皆さんこんにちは。どうも到着が遅れてご迷惑をおかけして申し訳ございません。

それでは早速議事に入っていきたいと思います。本日の議事でありますけれども、配布されました議事次第にありますように、特別養子縁組の関係者の方からのヒアリングとして、本日、実親さんとの関係でご苦労された養親さんお二人にお越しいただいております。後程ご説明をお願いし、質疑応答をしたいと思います。その後、金子構成員、上鹿渡構成員、林構成員から資料が提出されていますので、ご説明をしていただくことにいたします。その後、資料1の論点ペーパーにつきまして、各構成員の先生方に更に深めたご議論をお願いできればと考えておりますのでどうぞよろしくお願いします。

それではまず関係者の方からのヒアリングに入りたいと思います。本日は特別養子縁組制度を利用した当事者として、養親の、イニシャルで呼ばせていただきますけれども、Nさんともうお一方、養親のKさんのお二方にお越しいただいております。ご本人の希望により苗字をイニシャルとさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。ご自身のご経験やお考えについてヒアリングをさせていただくと大変参考になるかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

まず、それぞれ5分程度ずつご説明いただき、その後 20 分程度各構成員の先生方からご質問等いただければと思いますので。それではまずK様の方からよろしくお願いいたします。

〇養親K氏 ご紹介いただきました、私○○県から参りましたKと申します。私共は新生児委託の特別養子縁組をいたしました。新生児委託のこの制度の何が良いかと申しますと、資料4にも書きましたけれども、出産した人とほぼ変わらない気持ちで親になることができることです。委託の話をいただいて、予定日を聞いた時から赤ちゃんを迎える準備ができます。できないのは、出産だけなんです。私はまず保健センターにお願いをして私自身の母子手帳をもらうようにいたしました。そして妊娠はしていないけれども出産前に夫婦が受ける両親学級という講座にも出席して母子手帳に記入をもらいました。子どもが学校に行くようになると、母子手帳を見せてもらいましょうとか、お腹にいた気持ちを聞いてきましょうとか、へその緒を見せてもらいましょうというようなことがあるよと先輩の里親さんに聞いていたものですから、そういう準備をしてやりたいと思ってそういうふうにいたしました。子育てをするからにはママ友も必要かなと思いまして、委託を受けてから積極的に子育て支援センターにも通って皆さんと交流も深めました。親になる覚悟を決めて、養親になるからにはそれなりの努力をしないといけないなと思ったからです。でも、実親さんは一旦同意書にサインをしているにも関わらず、心変わりした、の一言でいつの時点でも同意を覆すことができます。私共のように8カ月育てて、もう愛着関係ができていても、やっぱりやめた、という一言で子どもを手放さなくてはいけない事態が起こることがあるので、そういうことを知っていただきたいと思って私はここに参りました。実親さんや児童相談所の方や施設が悪いと言っているわけではないんですけれども、今の制度のままだとそういうことが可能になってしまいます。ましてや私のケースの場合は実親さんが育てるのであれば、納得もいくのですが、育てられる環境がないのに、やっぱり養子に出すのは嫌だ、という意思だけで施設に子どもを入れるという事態が有り得ない話だと私は思いました。私達の気持ちもそうですし、そういう気持ちで子どもを育てると子どもにも伝わると思うんです。いつの時点で養子縁組が成立するかわからない、ひょっとしたらずーっとこの子を育てるけれども縁組が成立しないかもしれないという不安定な状況がとても心理的に大きなダメージになります。なので、私達も養親になると決めて、親になると決めてある程度の覚悟と決断をしたものですから、実親さんもどこかの時点で里親に託す、この子が幸せになるために良い環境で育ててもらいたい、というような決断をする時期があっても良いのではないかと私は思います。あと、私の経緯につきましては、資料を読んでいただくとわかるかと思います。そして、養子縁組が長引くと困ることを申し上げます。苗字が違うことがまず起こります。戸籍上の苗字が違いますので、保険証などの苗字が違うとカルテの名前が変わってきます。そうしますと受付などで呼ばれる時に私の名前と子どもの名前が違う。でもママ友とかを作っていて、近所の診療所にかかると違う苗字を呼ばれるということが非常に違和感がありますし、今後そのことをみんなに説明しなきゃいけないということが長い期間続くものですから、幸い私共は子どもの分別がつく前に養子縁組が成立しましたので子どもはそういうことを知りませんけれども、よそから見るとあそこの人は養子なんだなということがすぐにわかってしまうのでそういうことも防げる制度があるといいかなと思います。短い時間なので私の話はこれぐらいにさせていただきたいと思いますが、なんなりと質問を後程してください。このような機会を設けてくださいましてありがとうございました。

〇吉田座長 どうもありがとうございました。

それでは続きましてN様の方からご説明をお願いしたいと思います。皆様方のお手元に資料があるかと思いますのでそちらの方もご覧ください。それではN様よろしくお願いいたします。

〇養親N氏 まず、このような機会をいただきましてありがとうございます。私は中途養育でございます。すみません、緊張しています。子どもを委託されたのが、2歳4か月の子を委託されました。そして申し立てまでに3年間、そして成立までに4年間かかっております。ごめんなさい。まずちょっと経緯がのっていないので、私の経緯を話させていただきます。私共結婚が遅かったものですから、速やかにすぐ不妊治療に取り組みましたが、残念ながら実子に恵まれませんでした。そこで平成 22 10 月に T 児童相談センターに里親登録をしたところ、 12 月に I 児童センターから里子の紹介を受けました。担当職員からは実父母の様子と説明がありました。実母は平成 20 年に Y を妊娠しましたが、未成年の異父子を一人で養育しており、 Y を出産して育てることは困難と考え、中絶しようとしたが実父が実母と婚姻し、実母と共に Y を養育する意向を示したため、実父と婚姻し出産に至った。しかし、実父は実母と仲が悪くなり、平成 21 年2月5日に Y が出生したものの、実母は Y を同月 17 日に児童相談所に引き渡し、実父と実母は同月 20 日に離婚した。実母は持病があり、日常生活には支障はないものの、異父子一人の養育にも負担を感じており、更に Y を実母一人で育てることは困難である。実母の母親は近くに住んではいるが、関係は良好までといえず、充分な監護補助は期待できない。そして異父子には Y の出生の事実を伝えておらず、引き取って養育する意思もない。従って実母による養育は困難である。このため縁組に同意していました。一方実父は児童相談所からの意思確認で相変わらず、同意しない、親権をとる、と言ってはいるもののいっこうにそのそぶりを見せることもなかった。このような電話をするたびに前妻である実母に当たっていたようです。この時実父は別の女性と同棲生活を送っていました。今の話を少し整理させていただきますと、離婚が成立しているため実母は実父に会いたくない、親権は実母にあるが実父は同意しない、実父は親権をとると主張するものの実質的に行動していない。実父を刺激しないことが得策である。裁判で勝つ為にはとにかく養育実績を積むこと、長ければ長い程良い。このため縁組の申し立てには時間がかかる。けれどその実績が勝算の保障になるわけでもない。真実告知はした方が良い。こういうアドバイスを受けました。私達はここで初めて里子の現状を目の当たりにしました。また同時に実父母がふいにやってきて連れて行かないかなど心配しました。そして翌年、平成 23 年4月より Y との6カ月にわたる交流を経て、同年7月からは正式な委託となり自宅での養育が始まりました。2歳4か月頃の Y は広汎性の発達障害の疑いがあるとの心理士による見立てがありました。ある朝日課のお散歩にこんな言葉をかけられました。「 Y ね、ママが本当のママじゃないって知ってるから。」私は耳を疑いました。こんな小さな子が言う言葉なのだろうかと。「今 Y の目の前にいるのがママだよ。」ととっさに私はそう答えました。 Y は2歳特有のいやいやかみかみ期を存分に出し、 22 時、2時、4時、夜叫びが大変でした。また健康面ではアレルギー性鼻炎でほぼ毎日耳鼻科での吸入や第二扁桃腺からくる高熱を週末ごとに出し、病院はかかせませんでした。この時に町医者だと通称での柔軟な対応をしていただけるのですが、大きな病院ほど電子カルテシステムにより無理がきかず、焦る場面が多々ありました。こういう時に限って名前を聞いていることが多く、騙し騙しやり過ごすしかありませんでした。主人の実家に住んでいるので、町内やその自治区に養子をもらう旨の挨拶回りをしました。古い地域のためよそ者に対しての目は厳しいものでした。真実告知は3歳頃から少しずつ次の内容で始めています。「私はあなたを生んでいない、でもあなたは私達の大事な大事な宝物だよ。」年中からこども園に入園しましたが、当時の園長先生の深いご理解のおかげで Y はほとんどストレスなく過ごせたと思います。この園長先生には入学する小学校へ、次期新一年生の中に里子がいる旨を伝えていただきました。とても嬉しかったです。年長の平成 26 12 月に児相の勧めで特別養子縁組の申し立てを行いました。その際発達検査をしたところ、発達障害ではないという結果になりました。私共は負け戦の覚悟で申し立てに臨みました。それがもし不成立の場合でも、 Y が大人になったとき自分の為に真剣に闘った大人がいたことをほんの少しでもいいから感じてもらえたらいいなという気持ちからです。人間はどんなに小さな愛だとしてもこれが本物ならばもう一度歩き出すことができます。

ところで委託から申し立てまでの間、実母は自ら Y の様子を児相に尋ねることもなく、児相は実母に Y の国民健康保険証の有効期限が切れたことを電話や手紙で連絡するも応じなくなり、担当者が自宅まで尋ねるが不在が続き、やむなく受診券が発行されたという経過があります。申し立て後判決が下るまでに時間がかかったのは実母が実父と顔を合わせるのではないかなどと勘違いをして家裁の呼び出しに出向かなかったとのことでした。ただし、特別養子縁組の同意には初めからぶれない姿勢があったのです。実父はすでに別の女性と再婚し、二人の子を養育しており、審判が下る同じ年の平成 27 10 月にもう一人の子の出産予定がありました。その再婚女性が Y の養育に消極的だったため、養育ができないため同意をしたという旨です。これにより平成 27 年8月 27 日に審判が下り、同年9月 25 日に確定となりました。

その後6歳8か月の Y がこんなことを言いました。「おれね、小さい頃沢山の子と一緒に寝てたんだ。その頃も楽しかったけど、今の方がもっともっと楽しいもん。かあちゃんはおれの好きなものだしてくれるし、とうちゃんは映画やいろんなところに連れていってくれる。やっぱここが一番いい。」これが私の経緯です。

そして長期養育で困っていることは小学生に上がる時に入学時前検診で本名が出てしまったということです。小学校に里子が行くよという話をしていただいたにも関わらず、こんなことになってしまって折角築いてきた何もかもが、信頼がなくなりました。本名の名前シールを貼り付けられた子どもは茫然と立ち尽くし、私は必死にこらえ彼に貼り付けられた本名のシールを引きはがし、受付に申し立てました。でもそれは聞き入れてもらえないというか、理解してもらえないことでした。とても悲しかったです。それから時間が経って、青少年相談センター並びに教育委員会へこの旨を話し、そしてなんとか青少年相談センターの方で年1回学校関係者に里親制度について話していただく機会を設けてもらうという約束をとりつけました。すみません。泣けて。申し訳ありません。その他の困っていることは、家族の病歴がわからないということ以上です。よろしくお願いいたします。

〇吉田座長 とんでもございません。どうもありがとうございました。

それでは只今お二方からご説明をいただきましたけれども皆様方からご質問等いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。いかかがでしょうか。

では上鹿渡先生お願いします。

〇上鹿渡構成員 上鹿渡です。今日は本当にありがとうございます。とても貴重なお話しを聞かせていただきました。最初のKさんへの質問です。提出していただいた資料に、「途中で同意が撤回されて、非常に困難を極めた」という記載がありますが、これにつきましてもう少し具体的にどういった点で困難であり、どういった状況であれば良かったとおもわれているのか教えてください。

〇養親K氏 はい、私共は赤ちゃんが生まれた時に実親さんが同意しました、サインをしましたというような説明を受けておりました。それなので養子縁組が成立しないということはこれっぽっちも思っていませんでした。ですが、子どもが6カ月になった時に、こちらが裁判所に特別養子縁組の申し立てをしまして、調査が入ったことにより実親さんが心変わりをしたと。もう子どもは8カ月になっておりましたので、私共はもう自分の子としか思えない状態になっていたにも関わらず、心変わりをしたのでKさんのところは特別養子縁組を希望されている里親さんなので、この子を一旦措置解除、引き上げて、また別の人を紹介しましょうか、という話に児童相談所の所長さんが来てお話しくださいました。それは私共のことを思って所長さんはいつ養子縁組が成立するかわからない子どもさんをずるずる置いておいては気の毒だという気持ちもあったと思うんですが、私共としてはもうこの子じゃなきゃだめだという状態というか、普通に出産した人がある時子どもを替えてくれということは有り得ないと思うんです。それで、生んでいないだけで普通に育ててきたのに8カ月になってから替えましょうかっていう話は本当に信じられない話で、しかも実親さんが育て上げるんだったら、私が生んでいないのだから仕方がないのですが、育てる環境にはないけれどもうちには置いておけないのでとりあえず施設に入れますからという話は本当に信じられなくて。子どもの事を第一に考えるという里親制度がどうなんだろうという。本当に私達は怒れてきたというか、怒り心頭で、そういう赤ちゃんが取り違えで子どもを交換するという映画があったと思うんですけれども、私が説明するより、ああいう心の動きを映像で見ていただいたほうが良く分かると思うんですが、本当に心情的に子どもを替えましょうとかそういうことがあっていいのかと思いました。それで、赤ちゃん縁組をしたので出産前、出産後にできた人間のつながりとしては私が生んだとみんなが思っています。そして突然違う子どもがまた、赤ちゃんが来たというと、もう公表していなくてもあの人は養子をもらったんだよって本当にわかってしまうので赤ちゃん縁組をした意味もなくなってしまうんです。次に赤ちゃん縁組の話が来たとしても。それなのでとても困りました。それと、児童相談所の方が心配してくださったのと同じで、同意を得られないままずっとずるずるずるずると赤ちゃんを育て続けて大きくなってからやっぱり養子縁組は無理ですって話になってもいいんでしょうか。という話で心配してくださって違う話をっていうこともあったと思うんですが、ある程度親になると私達も親になると覚悟を決めて里親の登録をしました。なので、実親もどこかの時点で諦めるという言い方は良くないと思うんですが、育てられないと誰もが判断した時にその一番初めに書いた同意がいつの時点で有効じゃなくなるのか、有効になるのか。同意をもらっているけれど裁判所ではそれはただの紙ですと言われたんです。なので、覚悟を決めて同意をしたのであれば、それがいつかの時点で覆すことができないようになればいいなと私は思っております。

〇吉田座長 ありがとうございます。他の先生方、では横田先生お願いします。

〇横田構成員 Nさんにお伺いしたいんですけども、貴重なお話しありがとうございました。最後のところで縁組成立前の学校とのやりとりのお話をしていただきましたが、お話しを伺っていて素朴に思ったことは縁組成立前にこういうことがあったということであるならば、成立した後も何かこれに似た様なことがあったのではないかということを考えました。こちらの推測なんですけれども、何かそんなようなエピソードとかありましたら教えていただきたいんですけれども。

〇養親N氏 はい、幸いですね、縁組成立後はそういうことは一切なかったです。その後子どもが肺炎で入院するんですけれども、その時に家族の病歴が書けないくらいで全然ストレスがなくて。もう名前も変わっているので。子どもが診察券を見たりとか、先生が回診に来た時に「あ、おれの名前これだよ。」とか本当に堂々と自分の名前を言ってくれているその姿を見て、本当に良かったと思いました。なので、やっぱり縁組成立するっていうことは本当にすごいことだなと思うし、やっぱりなるべく早く縁組成立が整うように変わればいいなって本当に思ってます。もし、児童相談所長に職権の付与がされていたら、どんなによかったことでしょう。すみません。以上です。

〇吉田座長 ありがとうございます。では藤林先生お願いいたします。

〇藤林構成員 福岡市児童相談所の所長の藤林と申します。Kさん、Nさんのお話を伺っていまして、児童相談所長としても心がつぶれるような、非常に想像するだけでとても大変なご苦労であったことが想像できます。Nさんの場合には、委託を受ける段階で実父の同意が得られないということが分かった上で委託を受けられたということと、理解したわけなんですけれども、その時点での児童相談所の説明はどのような説明がなされていたのか。場合によるとずっと同意が得られない可能性について、どう説明されていたのか。そのことについてNさんはどのように受け止められたのか、というところを、もしよろしければ、お話しを聞かせていただければと思います。

〇養親N氏 上手く話せるかどうかわからないんですけれども、児童相談所からはとにかく実績を積んでくださいと。1年でも多く、1日でも多く、実績を積んでくださいという説明でした。だから私達はそれを信じてずっと申し立てを目指して来ました。そして主人も私も同じ意見だったんですけど、もしも不成立だったら、そのときはそれでいい、子どもが 18 歳になって養子縁組をするしないの重大な決断をしなければならないがそれもこの子の人生なんだと、この子が責任を持って決断したことで幸せになるならそれでいいんだって。そのためには、力をつけさせなくてはと責任を感じました。先程も経緯の中でお話しさせていただいたんですけれども、なんていうのかな、親のいない子にとってやっぱり自分のことをずっと見つめてくれている大人がそばにいたんだっていうその記憶をしっかりと心に刻んでくれれば、本当にそれでいいっていう気持ちでした。このとき年齢の上限がなければよかったのにと思ったことがあるのも事実ですが、実際子育てをしてみて年齢の上限を仮に設定をするならば 15 歳で、但し書きで条件付き 18 歳なのかなと感じております。はい、以上です。

〇吉田座長 ありがとうございました。では続けてお願いします。

〇藤林構成員 思い出すだけでも大変と思うんですけれども、重ねてもう一点お伺いしたいのですけれども、では児童相談所の説明の中で、もし特別養子縁組の成立が不成立であった場合には、その後は養育里親としてずっと育ててくださいといった説明があったのでしょうか。それとも、もし不成立であった場合には実親さんの元に戻るとかまたは施設に戻るとかそういった説明もあったのでしょうか。

〇養親N氏 はい、実親の方に戻る説明はありませんでした。もう一つ説明があったのは施設に戻るかもしれないということでした。だけどやっぱり目の前の小さな命を見てそんなことはできないって出会ったときすでにうちの子だと、私達は言葉では言わなかったですけど、夫婦二人の心の中でもう家族なんだからこのままで養育をしていこうっていう方向でした。

〇藤林構成員 はい、ありがとうございました。

〇吉田座長 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。ご質問ございませんか。

では私の方からお伺いしたいんですけれども、特別養子縁組が成立して先程のお話のように苗字のことはほぼ解決したということだと思うんですけれども、それ以外で養育上、お子さんを育てられる上で困ったことが生じたことはございませんか。

あと、もし仮にそうした事態になった時の相談先としてはどういうところを今考えておられますか。お二方にお願いします。ではNさんからでお願いします。

〇養親N氏 ごめんなさい、ちょっと緊張しちゃって。

〇吉田座長 お子さんを育てられる上で何かお困りになったような事柄はその後生じていませんかということと、あとそうした事態が生じた時に相談されるとしたらどういうところに相談されるのでしょうかということです。

〇養親N氏 そういった事態は生じなくて、本当に、変な話ですけど、子どもに一切勿論話していないんですけど、子どもは自然にわかるのかわからないんですけど、「本当にもうこれでとうちゃんとかあちゃんの子だね。」っていう態度をみせるのです。だから成立後はものすごい成長を見せてくれました。なのですごく幸せです。もしもそういう事態になっても、ならなくても、2歳4か月で一人の命を見守るというのか、一緒にやっていくということはすごい大変なことで、変な話、不調を訴えた時期もありました。だけどやはり同じ里親仲間の先輩や児相関係者の方達にそこでしか話せない話をいっぱい聞いてもらって、いっぱいいっぱい励ましてもらって、勇気をもらって、もう一度何とか頑張ろうって自分達を奮い立たせました。それが里親サロンです。はい。

〇吉田座長 ああ、そうですか。同じ里親の経験された方の支えがとても大きかったということですかね。

〇養親N氏 はい。

〇吉田座長 ありがとうございます。Kさんいかがですか。

〇養親K氏 私は新生児委託ですので、本当に出産していないだけで、一般の方と同じように子育てができております。ただ出産していないということは事実でありまして、子どもが学校でいのちの授業とかそういうものが最近あるらしく、お母さんの気持ちを聞いてきなさいとか、先程も申し上げましたけれども、そういうようなことが宿題で出るんですね。私は子どもに本当の真実告知はしてあります。ただみんなに言うことではないんだよということをどのように子どもに説明したらいいのか、まだ年齢的なこともあるのでそういうことを教えていなかったら、そういう授業の後の子ども同士の会話の流れで、うちの子に対して、女の子、女の子の方が発達が早いみたいなんですけれども、お母さんから生まれたんだよねって軽い気持ちで聞かれたんだそうです。聞かれたようなんです。そうすると違うよってうちの子は正直に答えたらしく、そうしたらその子何て言った?って私が聞きましたら、うちの子はかわいそうってその子が言ったんだよって言いました。ただ、養子縁組とかそのことがそんなに世間に浸透していないと思いますので、たとえその女の子が家に帰って、あの子お母さんから生まれていないんだってっていう話を家でしたとしても、多分私は後妻で迎えられたんだなという理解になるとは思うんですけれど。こういう養子とか、そういう状況にいる人がいるにも関わらず、学校で均一的に今度赤ちゃんの時の話を聞いてきましょうとか、そういう話があることが今すごい困ったことです。今3年生で来年になると二分の一成人式というものがあるそうです。そうするとお母さんへの感謝とか親に対する気持ちとか親がどう思ったとか、そういうことを作文にするんだそうです。でそれはよそのお母さん達に聞いたんですけれども、そういう、どうやって書こうって言われたときに、嘘は書かせたくないけれども、対外的にどのように繕って書かせたらいいのか、本人がましてやそういうことが書けるのかどうなのか、とても今不安だし、心配の種です。

〇吉田座長 はい、わかりました。ありがとうございます。先生方他によろしいでしょうか。では横田先生お願いします。

〇横田構成員 はい、繰り返しですみませんが、先程の質問とも関係するんですけれども、恐らく、学校に行った後、学校とのやりとりでちょっとなかなか理解されてもらえないなということがあるのではないかということがあるのではないかと思っているのですが。具体的な問題がなかったにしても、学校の方にこういうふうなことをしてもらえたら、或いは理解してもらえたら有難いなということがもしあれば、教えていただきたいのですけれども。

〇吉田座長 はい、どうぞ。

〇養親N氏 はい、あのちょっと長くなるかもしれませんけど、その事件があった翌年度校長が変わりました。なので新任の校長へご挨拶に出向きました。その時にこの出来事を知っていますかということと、それから里親制度というものをご存じですかという質問をさせていただきました。答えはその出来事も知らないし、里親制度というのも知りませんと言われました。私は子どもの現場なのにどうして知らないんですかっていうような、ちょっと失礼かもしれないんですけど、そういう質問をさせていただきました。そしたら、我々は文部科学省の法律に基づいて、それを守っていけばいいっていうのか、それに従って動いていけばいいというような言い方をされました。だけど私は腑に落ちませんでした。だって子どもがいっぱいいる中でそんなことおかしい。子どもの命の現場にいる職員がなぜ現社会のあり様を知ろうとしないのか。なんでわかってくれないのかなって。だから、青少年相談センターと教育委員会へお話しをさせていただいたことと同じなのですが。その後、学校側とのいざこざっていうのは全然なくて、校長先生も良く分かってくださったのか、事故とかは一切起きていません。けれども、絶対数で言ったらば少ないかもしれないけれど、実際にこの制度を利用している子供が存在するのです。対象の子供はすでにランドセルより重たい荷物を背負い傷ついています。親の目が行き届かない学校の中で、職員がこの制度を知っているかいないかでは対応に大きな違いがあります。場当たり的な対応では、その担当者がいなくなれば、また同じ繰り返しなのです。出自がいじめの原因になりかねないとも心配しています。大変厚かましいのですが、厚生労働省から文部科学省やいのちの現場いのちを預かる現場へ里親の心配ごとをお話いただけないでしょうか。私たちもお願いするばかりではなく、私たちにできることでお手伝いをさせていただきたいと考えております。例えば、いのちの現場やこれから教員または医療従事者を志す方々へ里親体験を話すことはできると思われます。これは制度を正しく理解し広めることにつながるのではないでしょうか。どうか何卒よろしくお願いいたします。

〇吉田座長 ありがとうございます。よろしいですか。それでは只今ご説明いただきました大変貴重なお話を、また思い出とか、辛い思いをされて、それもお話しいただいて私達としては大変参考になりました。ありがとうございました。

 只今いただきましたご説明につきましては、今後この検討会における議論を深めていく上で参考にさせていただきたいと思います。どうも本日はありがとうございました。

続きまして、本日ご出席の金子先生、上鹿渡先生、林先生から資料が提出されております。皆さん方のお手元にあるかと思います。それぞれ5分間程度ご説明いただきたいと思います。まずは金子先生からご説明お願いいたします。

〇金子構成員 はい、ありがとうございます。前回の最後に発言させていただきまして、パーマネンシ—ということだけならば、特別養子という制度にこだわる必要はないのではないかというような主旨のことを述べたつもりだったんですけれども、議事録をちょっと見てみたら支離滅裂で、何が何だかよくわからないという。自分でもそういうふうに思いましたので、ちょっとそのときにイギリスの特別後見という制度がちょっと頭にあったというのが、今回資料を出した一つの動機です。あともう一つは、前回イギリスの養子制度について久保構成員から資料が出されたということもありまして。それを扱うのであれば、これも情報提供した方がいいだろうというふうに思いましたので、それで一枚紙のペーパーを作りました。非常に不十分で申し訳ないんですけれども、ちょっと簡単に説明させていただければと思います。

養子制度というのが勿論イギリスにもあって、イギリスには実の親との親子関係を切断するというタイプしかないんですけれども、それと並んで特別後見という制度が 2005 年から出来ておりまして、こちらは養子とある程度機能的には代替するものとして構想されていますが、実親との関係は切れないというその点に特徴があるという制度があります。当初、想定されていたのは資料の2段落目にありますけど、やや年長の子で、実親との関係切断を望まないという場合があるとかですね、あとは叔父叔母とか祖父母に養育されていて、そこと親子関係を作ってしまうと何というか、親族関係が歪められるということであるとか。あとはイギリスですと色んなエスニックなバックグラウンドがある人達がいますので、そのエスニックグループのその宗教的な観念からしてですね、養子というのが受け入れ難いとか、そういうような場合が主に想定されて、特別後見という制度が導入されたという、そういう経緯があります。

それでですね、どのくらい使われているかということで、資料の3段落目からです。1とか2とかいうのはその資料の最後の方に参考資料と書いてありますけど、それの番号です。端的に言うと、養子と大体件数としては同じ程度、ちょっと少ないですけれども、養子とほぼ均衡するぐらいには増えてきているということがあります。特にその育成児童という言葉が書いてあるんですけれど、児相が扱っているような子というふうに大まかに考えていいと思いますけれども。それが育成児童のステータスから抜けたという、その抜ける原因としてどういうものがあるかという統計があるんですけれども、それを見ると大体養子と特別後見っていうのがかなり近づいてきているという、そういう事情があります。あと1ページの一番最後の方ですけれども、当初は割と年長の子を想定したということがあるんですけれども、実際にはもうちょっと低い年齢の子にも使われているということがあるんだそうです。

 2ページの方にいっていただきまして。一つ最近、比較的最近大きな動きがあったといいますか、 2013 年に最高裁判所あるいは控訴院の方で判決がありまして、そちらは養子制度の活用という、活用というか、養子制度をちょっと安直にやり過ぎなんじゃないかという、そういう懸念を示した判決が出てですね、それは結構実務的に大きな影響を与えているのではないかという、そういう観測もあります。参考資料4、これは去年の 11 月の朝日新聞の記事ですが、これがたまたま目についたんですけれども、これは養子里親の関係の団体の方のインタビューですね。なかなか養子が使いづらくなっているという趣旨のご発言がありました。そのまま引用してありますのでそちらをご覧いただければと思います。

それで、この現状をどう理解すべきかというのはなかなか難しくて、そもそも外国の制度をそのまま持ってくるってわけには勿論いかないわけですね。養子は最後の手段だと 2013 年の判例とかは言っているわけですけれども、それは、日本と比べてかなり積極的に児童相談所にあたるところが介入するという、そういうバックグラウンドの元で多分理解するべきものであって、直ちに日本にですね、だから養子を抑制すべきだとかですね、そんなことを言えるという状況では恐らくないだろうと思います。また、こういう制度を仮に考えるとすると、一番最後に問題になるのは相続の話と、今お話しにもありました氏の話というのがとても問題になるかなと思いますけれども。そこは勿論よく検討する必要はあるだろうと思います。ただ、イギリスの養子の話が出てきたのであればこういう面もあるということを情報提供することは必要だろうというふうに思いましたのでこういうペーパーを作ったという、そういう次第です。ありがとうございました。

〇吉田座長 ありがとうございます。イギリス法の状況をご説明いただきました。はい、では続きまして、上鹿渡先生からご説明をお願いしたいと思います。

〇上鹿渡構成員 はい、ありがとうございます。上鹿渡です。今日はこれまでのヒアリングで養子縁組支援に関する要望というか意見がいくつも出ていましたので、それに関連してご報告をいたします。新たな社会的養育のあり方に関する検討会でも同じ資料で報告させていただきました。本検討会第 10 回のヒアリングの中で子どもの虐待防止センターの岡崎さんからは早急に特別養子縁組独自の登録前後の研修充実の必要性、別の支援専門機関の早急な設立、官民問わずあっせん後の現状把握と担当者の研修必要性が提言されておりました。前回の第 11 回のヒアリングの中でも石井さんから、いくつか挙げられていました。特別養子、普通養子縁組に特化した専門的な支援機関を新設し対面やネット活用等継続的な支援を充実してもらいたい。直接、間接に子どもの支援に結びつく経済的な支援の仕組みも養子縁組においても必要ではないか。社会的養育に関わる様々な家庭児童環境が社会に浸透しているとは言いにくく、教育現場等への理解促進、浸透が急務と考える、など。本日来ていただいたお二方からも挙げられていた学校現場への周知ですとか、その協力体制をどう整えるかといったことが述べられておりました。

これからご紹介するのはイギリスの例ですが、例えばイギリスではこういった支援が具体的になされているということでご報告をさせていただきます。本日提出した資料の7ページをまず開けてください。そこに質問9と書いてある下に養子縁組支援機関( adoption support agency )と書いてありますけれども、養子縁組機関という養子縁組に主にかかわる組織とまた別にこの支援を専門にする機関があります。養子縁組機関が支援機関も兼ねているという場合もあるようですけれども、このサポートという部分が特に大事に扱われているということです。その実際の内容としましては、7ページの下の3つの箇条書きがありますが、養子縁組のための準備やトレーニングに関して、養子縁組をしている機関を補助したり、養子縁組された子どもや大人またその実親へのサポート、養親が子どもにとっての安定した永続的な家庭を子どもに提供するためのサポートがあります。次に8ページにうつりますが、養子縁組された子どもや大人が血縁関係者とコンタクトをとることの補助。これには養子の血縁関係者の追跡調査も含まれるということです。また後程 PAC-UK という養子縁組支援機関として非常に有名な機関の話をしますが、ここに大まかにそのサービスの内容が挙げられています。ソーシャルワーカーや学校の教員等にこの領域に関わる専門職を対象とした研修会も実施されているということです。

続きまして8ページの質問 10 というところの下からになります。先程ヒアリングの中でも認定前後の研修が重要であるという意見がありましたが、それについて書いてあります。自治体の養子縁組機関や民間の機関もあるわけでけれども、これらの機関が全て認定前の養親候補者に対して準備研修を提供しております。 Preparing to Adopt Trainers Guide &Applicants Guide という本が先程も出てきました BAAF というところから出版されています。これが主に使われていまして、一貫した研修プログラムが準備されているということです。養親候補者として認可されるまでの間にこの研修が実施されるわけですが9ページにいきまして、認定後の研修もあります。まだ子どもは来ていない状態ですけれども認定前、認定後にこのような研修を実施する機関があるということです。これは PACT という団体が実施しているもので養親さんの家族や友人に向けた研修もあります。養子縁組後、養親と一緒に子どもをみていくことになるわけで、そのような研修も準備されているようです。また無料のオンライントレーニング(これも要望にありましたが)もすでに実施されているということです。

110 ページの質問 21 24 の下の方になりますけれども、これは養親認可後のサポートについてです。子どもが委託されたけれども、まだ養子縁組としては成立していない状況でもサポートがあるということです。養子縁組支援について前後という言葉が使われていますが、その間、まだ養子縁組が完全に成立する前にもサポートがあり、ここも重視されているようです。裁判所からの placement order が出たところから Adoption Placement Plan が作られるということで、この後どういったサポートが得られるかということは個別に検討されそのプランが作成されるということです。どのような養子縁組サポートサービスがいつどのように提供されるかということが示されることになっています。実際具体的にはそこに記された通り必要な経費の支援ですとか、養子縁組休暇制度ですとか、いろいろなことがこの機会にすでに計画されていくということのようです。それで次は養子縁組後のサポートということで、その下に箇条書きになっているあたりを見ていただきたいのですが、非常に広範囲で今我々が養子縁組というとどのような支援が必要かと考えるよりも広いものが、こういったことが必要ということで実際実施されているようです。

3 ページに戻ります。養子縁組後のサポートをしているとても有名な団体で、ポストアダプションセンターという組織があります。これは 2007 年に京都府立大学教授の津崎哲雄先生が紹介してくださり、その後も発展をしておりましてその内容を調査したものになります。4ページを開けていただきますと対象範囲とサービス内容が書かれてあります。この対象範囲がすぐにイメージできる養子縁組の親子だけでなく、実際にはその周辺、親族や様関わる様々な専門家、そして学校関係者まで含めてこのポストアダプションセンターの対象となっているということがわかります。サービス内容としましては、ここに挙げられている通り、実の家族、親族、特に実母に対してのサポートですとか、養子、その後大人になった方や専門職への支援というのがあります。5ページの真ん中あたりには自治体への支援ということも入っています。子どもと家族へのサービスという欄があります。ここは子どもに対して、養子、養親さんに対しての個別のプログラムですね。6ページに挙げられています。実はこれよりも更に沢山のプログラムが準備されているのですが、非常に多様性のあるというか、様々なものが準備されていて、子どもやその親子に合ったものを合った形でしっかり提供するということがなされています。アダプション・サポート・ファンドといいまして、確か 2015 年からだと思いますが、別枠で経済的に配慮された形でこのようなケア、通常よりもさらに専門性の高いケアを必要な養子は受けられるような制度が整ってきているということです。特に大事だと思うのは養子縁組支援サービス規則というものがありまして、自治体の方では特に社会的養護の中から養子縁組された子どもについては3年間は色々な支援をしていくということになっているようです。また今回紹介したような養子縁組支援機関や、養子縁組機関についてその最低基準が決められており、それをしっかり実施できているか確認する監査機関もあります。これらが一体となって、きちんとした養子縁組やその支援が実施されているということです。そのような中で本日紹介したようなプログラムが作られてきたということですね。民間で頑張るだけでは難しいことで、後ろ盾となる施策があって、予算がきちんと組まれたうえで継続的な実践がなされ、監査によってその質が担保されるということが重要な点であり、英国ではそのようになっているということをご報告させていただきました。

今回成立した民間斡旋機関による養子縁組の斡旋に関わる児童の保護に関する法律の第 33 条にも養子縁組成立後の支援について書かれてありますが、養子縁組が子どもにとっての最善の利益を保障する一つの手段となるためにはこのような支援をこれから包括的に整備していく必要があると思い報告させていただきました。ありがとうございました。

〇吉田座長 ありがとうございました。養子縁組成立前後の支援、研修支援というところでこの検討会でも重要な論点となっておりますし、また社会的養育の検討会でも議論されているところでありますけれども、本日上鹿渡先生からイギリスの取り組み例などをご紹介いただきました。ありがとうございます。

それでは続きまして林先生から追加の資料が出されておりますので、こちらの方の説明をお願いいたします。

〇林構成員 はい、私の方からはこれまでここで検討されてきたその手続きの二分化、要するに特別養子縁組と養親の適格性の判断を二分化するというご提案について、民法学者、ここに床谷委員もおられるわけですけれども、ドイツの養子縁組に関して研究を継続されている中央大学の鈴木博人先生にドイツはヨーロッパ法に基づくというふうに言われるわけですけれども、その手続きが二分化されていると。どういう要件を揃えることによって二分化が可能なのかというご示唆をいただけないか、というそういうことを鈴木先生にお願いしてコメントをいただきました。

この1の(1)のところですけど、当時その民法学者の方々を中心にその手続きの二分化というと、この縁組成立の判断とは縁組成立の前提となるその父母の同意の撤回をなくする手続きの二分化っていうことを意味していたと。

これは今我々が検討している二分化とも手続き的には絡んでくることですけれども、(2)ですね、日本法は縁組の成立と実親子関係断絶の手続きを一つの手続きで行っている。そういうことが先程養親さんからもありましたように成立した親子関係が水泡に帰してしまうという問題点を持つ。

(3)はですね、でも手続きはこうした理由で二分化されなかったという見解が示されています。(4)でじゃあドイツではどうなされているかというと、ここにありますように公証人制度というもの、それから公正証書というものに基づいてその機関がとった同意っていうのはそれ以降の撤回は不可能となるということです。

(6)のところであらゆる子どもに、鈴木先生から訂正が指摘されております。「多く」が公的後見と書いてあるんですけど、「全て」が公的後見ということです。少年局が後見人となるというふうなことで。じゃあその児相に相当する少年局は一体何をするのかというとここでも度々出てきた援助計画をきちっと提示する必要性がある。縁組を回避するためにどういうことをきちっとやったのか。そういうことを含めて文書化するということ。後以下です。

3のところはドイツ民法の 1748 条という日本民法でいう 817 条の 6 の但し書きに相当する父母の同意不要条文だと思うんですけども、それに対しても公的な後見人の同意っていうものに基づいて同意が撤回されることはないっていうことが記載されています。私からは以上です。

〇吉田座長 はい、ありがとうございます。この検討会でも特別養子縁組の成立要件のところでこの二段階の手続きに関して議論が出されておりますけれども、ドイツ、同じ二段階をとるドイツでのこの仕組みについて詳細にご報告いただきました。ありがとうございました。

それでは続きまして意見交換に入りたいと思います。今回はより深く先生方にご議論いただくために私の方から具体的にご意見をいただきたい論点について提起をさせていただき、それをもとに意見交換をしていただければと思います。先生方のお手元にございます論点ペーパーですね、これなどもご参考にしていただき、また今日のヒアリングそれから調査資料等、ご参考にご議論いただきたいと思います。

まずは特別養子縁組制度全体についてでありますけれども、これまでの議論では特に知る権利や成立前後の支援、それから養親確保等に関しての一元的な体制とそれから各児童相談所レベルで行うものとの線引き。また普通未成年養子縁組との関係、特に成立要件ですね。この在り方等。更に言えば先程イギリスの判例でもありましたけれども、実親による養育の、これは尊重と言っていいんでしょうか、そうした動向等や今回の児童福祉法改正でもそうした趣旨の改正なされましたけれども、それらのものを踏まえて特別養子縁組制度全体のまず議論をしたいと思いますので、この点についてご発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。はい、林先生お願いいたします。

〇林構成員 前回の会議の最後で私自身がお願いしたその一元体制についてっていうことをその横断的な議論としてお願いしたいっていう。できれば修正いただきたいんですけど、一元的或いはその連携体制を作る必要があるという一元化とその連携っていうものでもって連携しなければならない業務部分とそれから一元化しなければならない部分っていうものの、すみ分けを考える上での一元的或いは連携体制で双方を検討するというふうに修正いただく。

〇吉田座長 はい、わかりました。連携というのはどことどことの連携を具体的にイメージされているんですか。

〇林構成員 それはあっせん法には民間機関どおし、あるいは児相と民間機関の連携ということが記載されてます。それ以外を含めて例えば妊娠相談だと市町村関係がくるでしょうし、或いは民民との連携もあるでしょうし、児相間の連携もあるでしょうし、様々な連携の形があるかと思います。

〇吉田座長 はい、そうですか。ありがとうございます。補充の説明をしていただきました。他に特別養子縁組制度全体についてこの位置づけ、例えば大事なところかと思うんですけれども、はい、久保先生お願いいたします。

〇久保構成員 先程あの金子構成員から紹介いただきました2ページ目の判例なんですけれども、これについて若干ちょっと申し上げたい。この判例色々なサポートをやったとしても、だめな場合、究極的な場合なんだというようなことで養子縁組が考えられてますけれども、確かに家庭養育原則、今回の改正法で入りましたので、当然家庭でまずは養育できる態勢を構築するのは当然なんですけれども、そこでは家庭養育が難しいというお子さんについて、支援をしても難しいということになったときにはやはり養子縁組なんだというところはまずは、問題ないのかなと思います。だからこういった判例があるから特別養子縁組はだめなんだという議論にはならないかと思います。

もう一つ、こういった非常に極端な最終手段であるというふうに厳格な要件を突き付けられているからこそ、一段階ではなくて、二段階にして、一段階目できちんとこういった要件があるのかどうかを判断して、その上で養親となるべき方の養育状況を見て成立させるべきで、これを一段階にしてしまいますと養育、養親の方が何か月も育て上げたのに最後の最後でそれはだめですよと断ち切られてしまい、先程の話にあったような悲しい思いをしてしまうということになってしまいますので、こういった点からしても二段階というのは有り得るべきかなというふうに思います。

〇吉田座長 はい、ありがとうございます。他にいかがでしょうか。はい、床谷先生お願いします。

〇床谷構成員 この論点の1のところでよろしいですか?

〇吉田座長 特別養子縁組全体についてですけども、各段に分けるという。

〇床谷構成員 特別養子縁組の位置づけについてなんですけれども、ここでは普通養子縁組ではなくて、特別養子縁組でなければ保障できないものは何かという論点なんですけれども、先程の金子構成員のご発言、ご説明いただいたイギリスの特別後見人の制度ですね、これをご紹介されたご趣旨からすると縁組をしなくても例えば監護権とか、日本で言うと親権を付与するような仕組みを親権制度の中に設ければ足りるというそういう考え方も選択肢の中にはあるのではないかというご趣旨かと思います。ただ、ここでの議論は普通養子では足らなくて特別養子が必要だという方向で議論をしておりますので、その際に金子構成員がおっしゃるようなところまで含めて議論をすることが良いのかどうかという点がちょっと気になったところです。イギリスのスペシャルガーディアンというのは、確かにイギリスの場合は特別養子に当たる断絶型しかない為に、それがあまりにも厳しすぎる場合の代替策として作られたというご説明ですけれども、そういったようなものは日本では普通養子が果たしているのではないかというような捉え方もありますし、普通養子の場合でも親子関係を作ることに意味があるので、スペシャルガーディアンの場合には親子関係はありませんから。また親責任のところは残りますので、併存するような形ですので日本に移し替えると実親の親権を残しながら、例えば里親とか児童相談所所長が同列或いは優位的に親権を持つという制度を新設するという提案につながるのではないかと思います。そういうところも含めてご検討をする方が良いのかどうかちょっと私もわからないのですけれども、そういう形で特別養子の位置づけについては広く議論していただければと思います。

〇吉田座長 金子先生いかがですか。

〇金子構成員 はい、一つ補足しますと、特別後見の場合はそれが命令が出ますと特別後見人のみが基本的には親権を行使するという制度になっているので、実の親と併存するわけではないということが一つあります。前回申し上げたんですけれども、どこまで検討の範囲にするべきかということなのですが、私自身これはパーマネンシ—を確保するための手段を考えようという話で、現状では確かに特別養子しかあまりそれの受け皿になりそうなものはないっていうのは、それは確かだと思うんですけれども、じゃあ、でも翻ってこれからあるべき姿を考えようというときにですね、特別養子にこだわる必要は必ずしもないのではないかというふうに個人的には思っています。あと、前回終わった後に岩崎先生とちょっとお話しをいたしまして、結局親子関係を作らないと真剣にその子どもを育てるっていうことにならないんじゃないかという趣旨のお話しをいただいたというふうに私は受け止めていますけれども、確かにそれはそういう面はあるかもしれませんが、ただ、この会議全体としてどうするかはともかくとしてですね、親子関係を作らないで、しかし親権を排他的に行使させるという枠組みというのを、選択肢として排除する理由は私自身はあまりないのではないかというふうに個人的には思っております。

〇吉田座長 ありがとうございました。ここで論点を広げるというのは難しいところですので、課題として受け止めておきます。では久保野先生お願いします。

〇久保野構成員 今のやり取りとの関係で、まず一点。金子先生に質問になるかもしれないんですけども、私は個人的にはこの普通養子縁組ではなく特別養子縁組でなければ保障できないパーマネンシ—とは何かというところを明らかにすることが、今後の議論のためにとても重要だと思っていまして、金子先生の意見書のスペシャルガーディアンシップ的なものを日本で考えるとすると、普通養子縁組なのかなと思って伺ってたんですけれども、先程日本で対応するっていうか特別養子縁組以外にはなかなかないとおっしゃったのはそれは何か、普通養子縁組についてのどのような評価を前提としていらっしゃるのか、もしよろしければ先にそれを伺ってから私の意見を言わせていただいてもよろしいでしょうか。

〇吉田座長 金子先生お願いいたします。

〇金子構成員 ええと、そんな深く考えているつもりはないといいますか、普通養子で提供できないということまで言ったつもりはありません。前回最後に言いましたけれども、近いモデルを考えるとすると、親権喪失プラス後見人の選任なのですが、ただ後見人の候補がある程度の時点ですでに決まっていると、その意味では完全に親権を喪失するまでの要件が必要ではないかもしれないという、そういうものとして考えているということです。はい。

〇吉田座長 では久保野先生お願いします。

〇久保野構成員 はい、わかりました。ありがとうございます。今のご意見にもどちらかというと賛成ですけれども、その前にといいますか、先程申し上げようと思っていた意見は、その普通養子縁組ではなぜだめなのかということについて考える必要があると、重要であるという意見です。なぜかと言いますとこの後具体的に個別に問題になる要件、この場合の要件っていうのはその同意の要件の話ではありませんで、 817 条の 7 で子の利益のため特に必要があると認める時というふうに意識的に限定的に要件が立っているのはどうしてかですとか。同意について、どうしてこのような扱いになっているかですとか、撤回がどうして認め、確定するまで認められているかですとか。申し立て権が養親になっているのはどうしてかといったようなこと。それぞれがやっぱりその立法趣旨はほとんどすべて、立法趣旨はやはりその実の親族関係を絶断する型の養子縁組であって、普通養子縁組とは異なるものであるからどのような要件の下で、どのような手続きでなされるべきかということを判断した上でこのような限定的な枠組みがとられていますので、今それがきつすぎるので緩くしたらどうかという話をしようとしていますので、やはりその普通養子縁組と比べた時になぜこちらをとらなくてはいけないのかということについて立法当初、特別養子縁組の立法当初に考えられていたのとちょっと異なる、やっぱり評価が必要になってきているんだということがあるんだとすればそれがどこなのかということを考えたいというふうに思いました。

それでちょっと私なりに具体的に考えてみたんですけれども、勿論実親との関係が切れるかどうかが違うということなので、相続権、相続関係や、扶養関係が残るということがあるわけでして、氏と親権については普通養子縁組でも養子に排他的に合わせることができると思いますので、その相続や扶養と考えた時に、或いはそのような法的な効果として語ることのできない何かといったようなものがあるとしたらそれは何なのかということですけれども。それを切るべきものはどういう場合なのかなというふうに考えてます。

それで、相続については放棄の選択ができるので法律論としては対応が可能なのかもしれないと思います。扶養についてはこれは大きいだろうとは思いまして、なんていうんですかね、ずっと養育はしていない実親が子どもがある程度成長して収入を得るようになった頃にふらっと現れてというのはまさにそういうことが懸念されるんだろうと思いました。が、ただそれとの関係ではここの会議で虐待ケースとそうじゃないケースを混ぜない方がいいという指摘が何度も出ていると思うんですけれども、問題のありそうな実親の場合には同意免除の問題を考えてみなくてはいけないという別の側面がありますので、もしかしてその同意免除で、ごめんなさい、そういうケースについてはまた別途の考慮をしつつ普通養子縁組との比較というのをしていく可能性があるのかなというふうに思います。ということでちょっと普通養子縁組ではだめだということについてもう少しご議論いただければなという意見です。

〇吉田座長 はい、わかりました。では藤林先生から。

〇藤林構成員 あの、いろいろあるのですけれども。さっきのスペシャルガーディアンについて、少し私なりの理解を話したいと思います。金子構成員が書いているように、 87 %の事例が、親族が特別後見人となっていると書かれているわけです。私の理解では、イギリスの要保護児童の養子縁組制度の中で親子関係を終結するまでの必要がないケースに、このスペシャルガーディアンの制度が活用されている。それが親族であったり、または、十代後半の子どもであったり、といった場合です。「必ずしも特別養子縁組制度が必要じゃない」ということではなくて、新たに、子どもに対してよりパーマネンシ—に近い制度が作られた、というのがスペシャルガーディアンの制度というふうに私は理解しています。ですからこのような制度が日本の普通養子縁組と大体類似かなと思うのですけれども、それはそれで参考にしていいと思うんです。けれども、ここで議論するべきはスペシャルガーディアンの導入の是非ではなくて、特別養子縁組をもっと利用促進するために、どのようにしていくのかっていうのが本来の議論なので、ここでスペシャルガーディアンまで含めると議論が拡散するのではないか思っています。

 で、二点目の普通養子縁組の件ですけれども、多分私より岩崎さんの方が何十年の歴史があるので、以前の特別養子縁組制度が始まる前からの数々のケースでご発言があると思いますけれども、要するに相続と扶養義務という、この法的な関係が残ることが、「放棄すればいいじゃないか」とか、扶養義務を「扶養しません」と言えばいいじゃないかということじゃなくて、そういったことが突然、成人になった子どもにその知らせが寄せられてくる。それも子どもだけじゃなくて養親さんに対してもそのような知らせが送られてくる。または、そういった知らせが送られてくるかもしれない。そのことも、養親さんに対する心理的な影響が非常に大きいということがあると思います。実際の実例っていうのは、今日持ってきたんですけれども、この「子ども養子縁組ガイドブック」にもいくつか実例が書いてあります。実親さんとの関係を終結させる意味っていうのは、子どもも養親さんもその影響から離れて安定した子ども時代を送っていく、というのが非常に大きな意味があると思っています。

もう一点、離縁の可能性ですね。離縁の可能性がないということが、その子ども時代にどれだけ大きな意味があるのか。確か、子ども虐待防止センターの方のヒアリングであったように、養親さんがもう児童相談所にお返ししたいという気持ちになることは、あり得るわけなんですね。それでも特別養子縁組を組んでしまった以上これはもう返せない。その覚悟が養親さんと子どもとの絆を深めていく。それが思春期になって激しい家庭内暴力になったとしても、そこでこう踏ん張っていく一つの大きなファクターが、「離縁ができない」ということです。それは子どものその 18 年間とか 10 何年間の子ども時代を送っていくにあたって、養親さんとの関係は、これはもう「返される」とか離縁っていうことがないということがどれだけ子どもに大きな安心感を与えるのか。反対に言いますと、我々は児童相談所としてよく経験する、里親さんが 10 15 年と養育して、長期養育里親さんが思春期になってやっぱり子どもさんを返したいというふうな事例が出てくるときの、子どもの傷つき体験を考えると、特別養子縁組のその離縁の可能性がないっていうことの意味っていうのをつくづく感じます。普通養子縁組を一生懸命頑張っていらっしゃる方も、あるんですけれども、普通養子縁組は離縁の可能性があるという点に、やっぱりその子どもの心理的な影響は否定できないというのが大きいです。

〇吉田座長 ありがとうございます。では横田先生お願いいたします。時間もおしてますので手短にお願いします。

〇横田構成員 私が言わなくとも誰かが言うかと思っていたんですけれども、なぜ普通養子縁組ではなくて、特別養子縁組かということに関してですけれども、最近最高裁判決が出ていますよね、相続、節税対策のものでもいいんだと。で、孫の年齢はちょっと確認しなかったんですけれども、孫が小さい子どもの時だったとしたら代諾ですね、民法 797 条で代諾ですけれども、要するに、子どもの意向なんか関わりなく親が節税対策の為に子どもを養子縁組をやるということがあっていいということを最高裁が言ったわけですよね。勿論、これはチェックが入りますけど、床谷構成員によるとそこはあまり厳しくないというお話だと思いますけれども、要するに子どもの福祉なんか関係なく大人の意向でそういう養子縁組が有り得るということなんですね。ということであの判決を見た時に私はやっぱりこれは普通養子縁組は子どもの福祉のための制度じゃないなと思ったので。このことは一応踏まえて議論した方がいいんじゃないかと思ってます。

〇吉田座長 はい、床谷先生の手が挙がってましたね、お願いします。

〇床谷構成員 私の先程の質問の前に今の横田構成員の言われたことについてちょっと補足しますと、今年の1月の末に出た判決はお子さんは、孫、1歳の時の養子ですので、これは親権関係は父母にあるのを、形式的には祖父母に移しながら、実質的には父母が監護をするという形を実現することになる。その目的が税理士に意見として節税対策であるというようなことだったので問題となったと。ただそのことと、所謂縁組意思として議論してきたものは併存しうるというのがこの事件については、というのが最高裁の判断でしたので、ケースによるんだろうと思います。それから私はそういう親権が実質的に変わってしまうのに、実態は変わらないような孫養子は反対ですけれども、特に裁判所はこれ孫ですので、裁判所のチェックは許可要りませんので、当然素通りになってしまうこともあって余計に問題が多いということかと思います。それからあと特別養子縁組の議論はもうすでにここでもどういう趣旨で作られたかということは前提にして議論していると思うんですけれども、前回のヒアリングでもそうですけども、法律を作ったといいますか、法律を議論している法律家の方の議論としては養子制度としての従来のものとは違う断絶型の養子を作るということで、菊田医師事件もありましたけれども、もっとそれ以前にあった養子の改正論がベースになって作られているものですが、ただ実際にその当事者になる方々の受け止め方はやはり戸籍に自分達が親として書かれる、生んだ人が親として載らないというところに非常にこう意味を感じていて、普通養子との決定的な違いはそこに尚且つ見出しているんだろうと思います。前回のヒアリングでもその籍を抜くという言葉が非常にこう強調されていました。法律的には籍を抜くという表現は正しいというふうには思いませんけれども、一般の受け止め方としてはそこに非常に意味を見出していると。完全に生みの親とは縁が切れて、形の上でも法的にも自分達だけの子であるという。そこに絶大なる意味を持っているのであろうと思います。ですから普通養子では足らない。勿論離縁あるなしというのはありますけれども、特別養子も離縁は件数は些少ですけれどもありますので、全くその当時の議論で離縁制度そのものを置かないという意見は否定されましたので、有り得るという前提で議論されておりますが、やっぱりその法律作っている側の考え方と実際に当事者として関わっている方の考え方の違いがこの制度は非常に大きいのではないかというふうに思っております。

〇吉田座長 では林先生お願いします。

〇林構成員 はい、そもそも論というかその1ページ目の課題・留意点の2で普通養子と特別養子の違いと同時にパーマネンシ—といった時の中身についてもう少し議論するという必要性が書かれています。要はその、この委員間でパーマネンシ—保障とは何かという、その根本的な合意が形成されていないように思う。で、我々はその一貫した関係性プラスアルファ法律的な安定って言っているわけですけど、一体法律的な安定っていうのは何を意味するのかという捉え方の違いと、それから今までの各委員の方々のご発言を聞いていますと、確かに扶養とか相続権とか戸籍の記載というものは大きな要素ではあるけど、それが養育にどんな影響を与えるのかということも含めてきちんと考える必要があるということですね。そのあたりは岩崎委員の方から長年のご経験の中で養育にどういう影響を及ぼすのかというあたりをお聞きしたいということと、それから以前岩崎委員の方からアメリカの養子縁組のドリフトの問題ということに言及されていて、実態としてどれ位起きているかというその客観的なデータ把握というのはなされていないんですけれども、これは一つ大きな問題だと思うんですね。先程藤林委員の方から普通養子における離縁の問題、言及されましたけれども、私自身も里親サロンとかああいうところに関わらせていただくと、やはり思春期の荒れ或いは犯罪とか重篤な非行というところで離縁したケースっていうのは年配の里親さんから少数ではありますけれども、お話しを聞くことがあります。特養でも確かに離縁はあるけれども基本的には養親さんからは認められないということは、やはり養育における普通養子、特別養子の影響というのはかなり違いがあるのではないかなというふうに認識しております。以上です。

〇吉田座長 続いてはご要望でございますので、岩崎先生お願いいたします。

〇岩崎構成員 普通養子でかなり長く社会的養護の子ども達の養子縁組をしてきました。それはその時にはそれしかございませんでしたから、それでも成り立つのだというふうに思いながらやってきました。実は特別養子制度が審議されるようになったとき、私は時期尚早だという考えを当時持っていました。というのは文化が整わないのに、特別養子制度を作ったって上手くいかないのではないかというふうに当時は思っていたのです。でも今になって考えれば制度を作ることによって文化も作られていくと考えたら、そこのところをどうしていくのかっていうこともありますので、特別養子制度が子の福祉の為の制度であるという観点に立ってもう一度改めて制度を見直してみると、普通養子の子ども達と特別養子の子ども達とでは何が違うかということになると、今何度も出ましたけど、扶養義務と相続のことについては非常に明らかに違うんですね。一人私の担当しました普通養子の時代の子どもが 20 代の後半になりまして私のところへやって来まして、なぜ僕たちは特別養子ができた時にそれに変えてもらえなかったのだということを訴えました。どうしてそんな事が貴方にとって大事な事なんだっていうふうに聞きましたら、「僕は最初に恋愛をした相手に養子だということを話した。そうすると彼女の方の両親から付き合うのを止めろと言われた」と云いまして、非常に彼は傷ついていました。なぜ止めろと言われたのかっていうのは、彼を育てた親だけが親ではなくて、もう一人いる彼を産んだ親の存在が、自分の娘の結婚生活にどういう影響を及ぼすのかということに不安を感じられたんだと思うんです。普通養子は基本的に親族間養子を中心に行われてきました。日本の中では。それを我々が敢えて社会的養護の為に使っていった中で、実はやっぱり養子に出されなければならない子どもの存在の社会的な評価の低さだとか侘しさみたいなものをやっぱり日本人は文化としてずっと持ってきたことが、結婚を迫られた娘の親としては反対に及んだんだろうと思うのです。彼は、「育て親については、僕は扶養する気持ちでいる。しかし、結婚をした女性に対して、ひょっとしたらもう一組の親の扶養を貴方に頼むことがあるかもしれないなどというようなことは、僕はとても言えない。だからこそ、普通養子ではなく特別養子で、今の親が唯一の親であるようにどうして切り替えてもらえなかったのだ?」と彼は一生懸命言っておりました。「それは新しい特別養子法ができた時の貴方の年齢が決められた要件に適さなかった。それだけのことで変えることができなかったんだけど、それはもう現実問題として普通養子でやっていくしかないので、結婚に対して不安を持つことはとてもよくわかるし、扶養をしなければならない義務はたしかにあるけれど、育ててもくれなかった親の扶養を断ったところで、貴方が社会的に責められるようなことは、少なくとも今の世の中では私は考えられないと思うよ。相続については相続放棄の手続きをしなければ親の借金や何かが関わってくることは当然にある。だからそのことは気を付けておいた方が良い」と言ったんです。普通養子で縁組した社会的養護の子ども達は、実の親が死んだからとて何の通知もないんです。親族間養子だったら、漏れ伝わってくるものがあるでしょうけど、何の通知もなく、逆に言えば、借金をしていた親だからこそ、突然通知されるんですね。「貴方の親がした借金は貴方にも返済義務があるんですよ」みたいなことが。ましてや子どもは、死亡を知った後三カ月以内に相続放棄の手続きをしないといけないことなど知りません。三カ月を超えてから相談にきたケースもあって、私達も慌てふためいて、弁護士をたのんで、免れたケースもあったんです。逆に言えば、普通養子の子どもが死んだこともいつ実の親達は知るのでしょうね。そういうふうに普通養子が社会的養護の子どもに適用されること自体に色々な問題がこうしてあるではないかということになったら、これは全て特別養子の枠の中で考えられて然るべき問題ではないか。果たして年齢要件にしてもどうだろうというふうに考えるんです。特に自分の今の社会的立場だとか親子関係による損得を考え判断できる能力、それが 15 歳かやっぱり 20 歳なのかわかりませんけど、ましてそれ以下の6歳や7歳、8歳位の子どもがチャンスを奪われるなんてことはとても私達にとっては耐えられないことになります。その社会的養護の子どもが、親の色々な養育ができない理由があって、新しい親を持ったにも関わらず、ずっと普通養子の子どもだけはその親を引きずっていかなければならないということが、子どもにとって幸せになるというところにつながることの割合は極めて少ないであろうと思いますので、何とか特別養子が社会的養護の子どもだからこそ保障されるという法律にしてもらいたいというところです。

〇吉田座長 ありがとうございました。だいぶ各論の方の議論にも入って参りましたけれども。

それでは次の論点、年齢要件に移りたいと思います。論点ペーパーにもありますけれども、これまでのご議論では 15 歳未満それから 18 歳未満という考え方も示されてきております。要件によってメリットや課題もあろうかと思います。これも合わせて議論を深めていきたいと思います。例えば現在の原則6歳未満とする年齢要件、例外的に6歳未満で養育されている場合は申し立てが8歳未満ということで成立しうるという要件ですけれども、これは物心がつく前に親子関係の形成を開始できるというメリットはありますけれども、もし仮にそれ以上の年齢ということになってきますと、ただ今岩崎先生のお話のように、特別養子縁組の機会がないということになってしまいます。従いまして例えば6歳未満というものを変えないで、8歳未満これを変える。養育の事実がある場合には8歳未満というものを更に引き上げるということで、6歳未満で養育を開始されていれば 15 歳未満まで申し立てをすることができるというふうにする考え方もあろうかと思います。またそれとは別に6歳未満8歳未満共に引き上げて、申し立ての時に 15 歳未満または 18 歳未満であれば成立可能とするという考え方もあろうかと思いますので、それぞれメリット、デメリットもあろうかと思いますのでそれぞれどのように考えたらよろしいかご意見をいただければと思います。また年齢を引き上げるとした場合、ご意見として子どもの意向確認、これをどのようにして行うのか。また年長の子どもと養親との親子関係の形成の可能性。反対に年長の子どもに特別養子の機会を保障するという只今のご意見のような、そのメリット、デメリットについてもご意見をいただければというふうに思います。養子の年齢だけに限らず、養親の年齢ですね。それから、年齢差、これをどう考えるかということもあろうかと思いますし、子どもの意思確認、意見表明の機会の保障ということも大事な論点になろうかと思います。大変多岐に渡りますけれども、年齢要件に関連してご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

これまでのご意見を伺っていると、子どもの年齢要件を引き上げるという、何歳にするかという点ではまだ固まっておりませんけれども、引き上げる点でこれは必要ないというご意見は出ていないように思いますけれどもいかがでしょうか。

ただ何歳までがよろしいのかということと、それに伴う問題をどうするかというのが残ります。

はい、では横田先生お願いいたします。

〇横田構成員 ちょっと私が言うことじゃないかもしれませんけども、恐らく 15 歳までについてはある程度コンセンサスがあるようにも思うんですけれどもどうでしょうか。

〇吉田座長 林先生お願いします。

〇林構成員 今、座長の方からご提案があった、単純にその引き上げるということではなくて、私自身が今までの議論を踏まえるとしたら、例えば例示として挙げられた8歳未満までに継続的に養育した場合は 18 歳までっていうのも考えられるのかなとか。それを 15 歳にすべきかなっていうふうな思いを持ちました。ただしその 15 歳以上に関しては本人の同意が必要であるというふうなものを加えるとか。それから引き上げた時の養親の年齢の要件というのはやはり必要になってくるということですね、今みたいにその 25 歳以上でいいのか、ヒアリングの時に 15 歳の年齢差というのが一つ出たかと思うんですけども、そのあたりがこう考える材料になるのかなというふうにも思いました。

〇吉田座長 床谷先生お願いします。

〇床谷構成員 今の年齢の問題なんですが、立法時にも年齢要件というのは散々議論されておりますので、その子どもの年齢と親の年齢とで、現行法ではおのずと何歳以上の差があるという形になっていますけれども、その最低年齢の他に最大幅というか、上限といいますか、何歳以上離れてはいけないとかいう、そういう決め方も外国法にはあるわけですし、当時の議論では親の方の最低年齢とか、年齢差というのは諸外国のように固定したものにしないで、その運用といいますか、裁判所の中でその要保護性の要件とか、親の適格性ということを判断する中でおのずと決まってくるのではないかというようなことで、逆にこう明確なその差や年齢ということは柔軟性を欠くので望ましくないということで当時は否定されたというふうに記憶をしています。

〇吉田座長 そうですか、はい、ありがとうございます。では横田先生。

〇横田構成員 今床谷構成員のお話を受けて思ったことなんですけれども、要するにかなり子どもの年齢が高くなった段階での特別養子縁組のニーズはそれほど多くない訳ですよね、そしてその時に、そういうニーズが起きたときに、普通養子縁組の場合よりも特別養子縁組さんの場合は相当に厳格な審査をするわけですよね。そうすると、元々レアな人数なところに、それを更に裁判所がチェックする時に、いや裁判所がひょっとしたらおかしなことやるかもしれないからと言って、一定の枠をはめる必要がどれほどあるのかなと思っていて。だから今床谷構成員が言われたお話でいうと、後者の判断、つまり後は家庭裁判所の裁判官をこの場合は信じて、つまり、非常にレアケース、の更にレアケースなので、年齢の固定したルールを定めないと、おかしなことになるということはそんなに心配しなくてもいいと思っています。

〇吉田座長 年齢要件について他にいかがでしょうか。岩崎先生お願いします。

〇岩崎構成員 本当に何歳にするかというのはとても難しいんです。例えば特別養子法ができた時、養子を迎える夫婦の最低年齢は 25 歳と決められて、最高年齢は決められなかったことを、私達とても腹立たしく思ったんです。当時私達は親子の最大年齢差を 40 歳と決めていました。その枠はかなり論理性があると思っています。経験的には、子どもが 20 歳になった時に、育て親が 60 歳というぐらいの年齢差がまだ認められるだろうと。それでも 10 年位、一般の人達の結婚からは遅れた子育てだと思っています。それで 40 歳を死守すべく、ある時代は必死に申込者達に、「もう貴方の年齢では 0 歳の赤ちゃんは無理です。 42 3 歳の人にはせいぜい2歳3歳まで対象の子どもの年齢を上げてください」と言っておりました。しかし、どんどん不妊治療期間が長くなりまして、 45 歳でも産もうと思っていらっしゃる人にしてみれば、協会に来るなり、それは5歳ですよって言われることは相当しんどかったことで、本当にすさまじい面接を当時はしておりました。 40 歳なら大丈夫だと思っていましても、実際には 0 歳の子どもを育ててもらいたいのは少なくとも 30 代ですよ。せめて 37 8 歳です。それでも「あなたは 38 歳だから赤ちゃんをお世話したよ。でも考えてみて、あなたが 50 歳になった時、やっと子どもが小学校を卒業する年齢なんだと。 50 歳から中学の3年間と高校の3年間の子どもの思春期に対応しようと思えば相当なエネルギーを持っていないと、体力的に子どもとの闘いに立ち向かえないよ」と言っていました。それで済ましていたんですけれど、現実的にはどんどん申込者の夫婦の年齢が高くなりまして、今うちでも 45 歳の人に2歳や3歳をお世話することになりましたから、明らかに、年齢制限は崩れております。今も 49 歳の妻と 50 歳の夫に、何歳でしたかね、3歳前の子どもの話を進めながら、しんどいなと思っております。お父さんが 50 歳お母さんが 45 歳のご夫婦に5歳の男の子を委託しましたところ、今小学3年生に子どもはなったのですが、つい最近お父さんが急死しました。脳卒中です。 50 近くなったお母さんと小学校3年生の子どもとの母子家庭がこれから生きていかなければならない。その子は勉強でもスポーツでもなかなかの力があることが分かって、お父さんは今やっていた商売を少し大きく安定のあるものにしようと頑張っておられました。その無理が仇になったのかなと思いました。やっぱりあの父親の年齢はどうだったかなどと反省になるわけです。死は若くても起こり得ることですので、決して決して年齢ではないと思いたいのですけど、でも、年齢が高くなると、病院になったり、死亡する可能性が高くなることは当然のことです。そうこうしているうちに、 40 歳以内で委託した子ども達が、思春期を迎えた養親達が、しんどいという訴えを私達にするようになりました。早い人はもう幼稚園の年長さんあたり位から、養子のお友達のお母さん達と付き合っていくのに体力が違うっていうことに気が付き始めて、子どもが大きくなるにつれてどんどんしんどい思いになっていると。それで、「 45 歳に3歳や4歳の子どもをマッチングしている」と言ったら、その人達が声を揃えて、岩崎さんそれはあかんで、そんな無茶なことしたら子どもがかわいそうやと、私達は言われています。言われていることの現状が判っていても、それを止められない現状もあるので、養親の年齢の上限を法律で決めるべきかについてはなんとも言えないので、望ましくは、親子らしい年齢として 40 から 45 歳位であること等を運用で提示してもらうことでそこをおさめられたらいいのではないかというのが妥協案です。

〇吉田座長 ありがとうございました。なかなか上限を決めるというのも、ケースによって、また時代によって変わってくるという部分もありそうだし、また枠というのが必要ではないかというご意見もありました。また、子どもの意向の確認ですけれども、これも制度として設けるとすると子どもの意思、同意っていうんでしょうかね、これをどう位置付けるかという問題も。現行の手続き法のように、単に陳述の機会を保障するっていうんでしょうか、子どもの意見を聞くというものでよろしいというふうに捉えるのか、もうちょっと踏み込むのかっていうことも出てくるかと思います。

それでは残りの時間が充分ではないにも関わらず、大きな課題である審判の申し立て、成立要件、これが残りました。それ以下の論点、今日は全てできると思いませんけれども、審判の申し立て権、成立要件について、若干なりともご議論いただきたいと思います。これまで児童相談所長に申し立て権を付与するという考え方、また今日ご説明ありましたような二段階として実親の同意権、これを制限するという考え方が示されました。それぞれメリット、課題があると思いますけれど、これをどのようにするかということですね。児童相談所長に申し立て権を付与するということで養親候補者の負担、これを軽減できるということになりますけれども、もう一方では身分関係のことでは、実親子関係の解消という重大な法律効果を伴う請求を、当事者以外の者が行うというのは民法の体系にそぐわないのではないかと。当事者の意思というものが不明確になるのではないかというご指摘もございます。また、二段階として実親の同意権を制限するという場合に養親候補者の申し立てがしやすくなる。同意によってそれに翻弄されることがなくなるというメリットはありますけれども、もし仮に二段階目で養子縁組が成立しないということになると子どもの法的な親、これが存在しないということになってしまうのか、どうか。これをどう扱うのかという問題が残されます。また、同意権が制限された場合、その実の親の地位、実親がどのような権限を持つのか。この面だけ制限されるのかどうか。実親が本来持つその同意権ですね、これを制限すべき範囲、これをどう考えるのか。親権喪失、親権停止等との関係。これも議論する必要があろうかと思います。更に先程、久保野先生からお話ありましたような、同意権のはく奪ですね、同意免除の制度、この活用ということも考えられます。様々論点ございますけれども、これまでのヒアリングや調査結果等ご参考にご意見をいただいて、今日はこの段階では頭出しというところでまた次回続けますけれども。はい、じゃあお願いします。横田先生からどうぞ。

〇横田構成員 最初に私が提案した申し立て権の話でちょっと決着つけておきたいと思うんですけれども。これ今日の林構成員が紹介された鈴木先生のご意見がありましたけれども、要するに法律関係に関してやっぱり当事者の意思が大事でしょということですよね。ドイツもそういう前提で運用しているというお話でしたけども。であるならば、確かに当事者の意思というのは民法で大事だということを私が充分に理解していないなということは思いましたけれども、それならば申し立て権は確かに当事者だとした上で、しかし当事者の申し立てを児童相談所がサポートする、そしてそれを家事審判手続きの中に組み込むということ。例えばですね、鈴木先生がドイツのことを紹介されていましたけれども、この林構成員追加資料の2の少年局は日本の児童相談所ですけれども、それが何をするかというところで青少年援助法、日本でいえば児童福祉法に、児童相談所が関わるという仕組みが法令としてある訳ですよね。勿論最近あっせん法できましたけれども、それとは別に児童相談所が関わると、要するに当事者の申し立てに関わるということを制度として組み込むべきじゃないか。そして私が追加的に考えているのは、家事事件手続法の 164 条に例えば児童相談所の必要的陳述聴取とかいうものを入れるのはどうかなと思っています。ということを提案する理由は、特に民法 817 条の6の虐待の場合に虐待の情報を申立人が得ているという前提の仕組みですよね。だけど、そもそもなんで養親になる人が実親の方の虐待の事実の情報を収集しなければいけないのかということが全然わからないんですけれども。これは全然筋が通っていないと思っていて、じゃあ誰が情報収集するかというと、家庭裁判所なのか児童相談所なのか、でも家庭裁判所って例えば親権喪失の時にもそんなに職権で調査とかしますか。わかりませんけれども、もし家庭裁判所じゃないとしたらやっぱり児童相談所が虐待に関する情報は当然収集しないと。あとそれは誰が相応しいかという話と別に、そもそも虐待の事実ってこの検討会でもなかなかその情報がわからないからということで色んな方法考えてきたわけですよね。なのでつまり普通にしていると虐待の情報というのは得られない訳ですね、それを公権権力によって情報を得たりする訳ですよね。そしてまた他方で今は個人情報保護ということで普通の人は情報を得られない訳ですよね。なのでそもそも養親になる人は虐待に関する 817 条の6の情報は得られないということを前提にして考えるべきだと思うんですよね。つまりどの程度この制度を促進するかということについては色々温度差があると思うんですけれども、これは促進するかどうかとかのレベルの話じゃなくてそもそも制度に最初から欠陥があったと理解すべきであって、そういうことを言うと導入された時の先生方、色んな方に失礼ですけども、当時は虐待も今程ではなかったし、全く個人情報の仕組みも前提も全然違っていたと。だけども、もう親権喪失の申立権が児童相談所長に与えられて、そして他方で個人情報という縛りがかかっていて、そして最近あっせん法ができていて、養子縁組の成立の段階に着目して公的な関与を強めていきましょうという流れですよね。であるならば特に虐待対応のところであるにも関わらず児童相談所が関与する仕組みがこの制度のどこにも法律上定められていないというのは、おかしいのではないかというふうに思います。だから、提案としてはですね、もう最低限のコンセンサスとして虐待対応のところだけでも児童相談所がこの手続きの中に関わるということを単なる運用ではなくて、法制度の仕組みとして何か組み込むべきだと。そこについては何とか最低限のコンセンサスが得られるんじゃないかと思っているんですけど、どうでしょうか。

〇吉田座長 申し立て権までは踏み込まない、踏み込めないにしても、ということですか。

〇横田構成員 今のところあっせんのところを除くと、特別養子縁組に関して児童相談所の存在の形跡が法律上ちょっと見当たらないんですけれど、ありますか。ないと思うんですけれど、それはやっぱりおかしいんじゃないかということですね。

〇吉田座長 床谷先生、お願いします。後これで最後になりますね。

〇床谷構成員 はい。すみません。これも前に申し上げたことなのですが、立法時も児童相談所があっせんするということを前提にしてこの法律は途中まで作られていて、ただ最終段階でその行政機関としての児童相談所の制度的な整備がまだ不十分だったということもあると思いますし、その行政機関が整えたものを裁判所がただ OK するだけというのは司法の役割として行政の役割との関係に問題があるんじゃないかということでこれはあの先ほどの鈴木先生のところの中に書かれてありますけれども、ちょっとそういうことで、その最終段階であっせんの前置主義というのは外されたので形跡がないということになるなと思うんです。だからそれが 30 年経って、今新しく相談所の養子縁組に対する体制を見直されてきているということなので、今の時点であれば、福祉法の中にあっせんに、特別養子に関して、特別的な規定を置いて、民法を触らずに、養子と特別養子に関わる支援する、援助するということを福祉法の中に置くという形で。それが可能な体制になっているかどうかですね、児童相談所自体がまだ進んでいるところもあれば、全然そういうことに関わっていないところもあるという今の状況でそういうものを置けるかどうかと、その見極めが問題なのかなというふうに思います。

〇吉田座長 そうですね。横田先生がおっしゃったケースでいうと児童相談所が殆ど関与していないケースでの申し立ての場合なんかは、大変難しい場面が出てくるだろうということは容易に想像できますよね。はい。どうしてもということで、はい、金子先生。お願いいたします。

〇金子構成員 今日はヒアリングがせっかくあって、そこで出てきた同意の話をしないのも勿体ないし、まあそもそも5分遅く始まったのですからもうちょっと延ばしてもいいような気がするのですが。すみません。

それでちょっと同意についてだけ申し上げますと、撤回不能にする仕組みっていうのは当然あって然るべきだっていうふうに思うんですけれども、その前提としてその同意をとるときに司法関与の時にもありましたけれども、相当厳格な手続きを踏むということが必要ではないかというふうに思います。ちょっと今イギリスの制度を調べていると、その無条件でかつそれを同意すると何が法的に起こるかということをきちんと説明して、サインをして、かつサインをする時に CAFCASS という組織があるんですけど、そこのオフィサーがちゃんと署名をするっていうのを見るということをやると。そういう手続きをとるということになっていて、そのままではないにしても、そういう厳格なことをやるということは必要ではないかと思います。それで、そういう制度を入れることによってなかなか同意が得られないというケースも増えるかもしれませんけれども、その点は、養子というものがそういう重大な効果を伴う以上は、甘受して然るべきではないかというふうには思っています。

〇吉田座長 ありがとうございます。それでは。

〇藤林構成員 5分遅れましたので。

〇吉田座長 はい。

〇藤林構成員 せっかくなので。ヒアリングにおいでいただいたお二人の方のご意見を少し参考に、意見を述べたいです。途中で同意が撤回されたり、または同意がないままその手続きに入っていかれるというのは、これはものすごくまれなケースじゃないかなと思いますし、それこそ多分そこの県の児童相談所は色んなサポートも多分あったんじゃないかと思うのです。これは多分全国的にはまれなケースというふうに私は思います。実際には同意がないケースを、特別養子縁組前提の里親さんに委託するということはもうほとんど行われていない。または途中で撤回した時に、多分 K さんは覚悟を持って養育するんだというふうに言われたので、施設に措置変更にならなかったと思うのです。けれども、大体現在の児童相談所の考え方でいくと、こういうケースは養子縁組前提の里親さんに委託されずにずっと施設で生活をしているというのが現状です。だからこそ、この問題をクリアするために、二段階といったことが必要であるというのをここで強調しておきたいと思います。以上です。

〇吉田座長 はい、ありがとうございます。同意の点に関しては、更に深めるべき議論が必要かと思います。私もやっぱり、実親さんにメンタルの問題があったりして非常にこう揺れるということがあると、そういう現実があるとすれば、じゃあそういう親御さんの同意をどのように確実に得たらよろしいのかと。それをすることによって、その後の手続きが円滑に進む訳ですから。やっぱりそこを無視して通常の判断能力のある人を前提とするような手続きというのはこの場合には難しいのではないかというふうに思っております。その点も含めて次回にまた 議論したいと思います。今日は開始が遅れ、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

それでは次回の事も含めて事務局の方からよろしくお願いいたします。

〇林補佐 次回日程につきましては2月 28 日火曜日 17 30 分から 19 30 分を予定しております。

引き続き特別養子縁組に関して更に深めたご議論をお願いしたいと思います。

〇吉田座長 はい、それでは本日の検討会はこれで終了にしたいと思います。今日はどうもご協力ありがとうございました。


(了)

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