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2016年7月14日 平成28年第2回目安に関する小委員会 議事録

労働基準局

○日時

平成28年7月14日(木)
10:00〜12:15


○場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)


○出席者

【公益委員】

仁田会長、戎野委員、鹿住委員、中窪委員

【労働者委員】

須田委員、冨田委員、萩原委員、松井委員

【使用者委員】

小林委員、高橋委員、横山委員、渡辺委員

【事務局】

藤澤大臣官房審議官、増田賃金課長、川田代主任中央賃金指導官
伊勢中央賃金指導官、由井賃金課長補佐、大野賃金課長補佐、成川賃金政策専門官

○議題

平成28年度地域別最低賃金額改定の目安について

○議事

(第1回全体会議)


○仁田委員長
 それでは、ただいまから、第2回目安に関する小委員会を開催いたします。議題に入る前に、事務局に異動及び組織変更がありましたので御紹介をお願いします。


○成川賃金政策専門官
 この度、厚生労働省の人事異動がありましたので御紹介します。まず、大臣官房審議官が交代しました。藤澤大臣官房審議官です。


○藤澤大臣官房審議官
 6月の1回目の目安小委員会の後に、この中央最低賃金審議会及び目安小委員会の担当の審議官を拝命いたしました藤澤と申します。事務局を一生懸命務めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


○成川賃金政策専門官
 続いて、大野賃金課長補佐です。


○大野賃金課長補佐
 6月21日付けで賃金課課長補佐になりました大野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 


○成川賃金政策専門官
 また、同日付けの組織変更により、事務局が、労働基準局労働条件政策課賃金時間室から労働基準局賃金課に変更となっています。以上です。


○仁田委員長
 それでは議題に入ります。まず、用意した資料について事務局から御説明をお願いします。


○成川賃金政策専門官
 本日はお手元の資料のほかに、各種団体の要望書の一部を回覧していますので、適宜御参照ください。
 配布資料について御説明します。資料No.1「平成28年賃金改定状況調査結果」です。1ページでは、本調査における調査地域、調査産業等についてお示ししています。主要な調査事項は、昨年6月と本年6月の月間所定労働日数、1日の所定労働時間数と基本給及び諸手当であり、そこから賃金の上昇率などを算出しています。
 2ページの第1表です。これは、今年の1月から6月までに賃金の引上げ、あるいは引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で集計したものになります。産業・ランク計を見ていただくと、1月から6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合が43.1%、括弧内が昨年の実績で42.6%ですので、増加しています。ランク別に見ると、Aが45.9%、Bが39.9%、Cが46.6%、Dが39.9%となっています。それから、今年の1月から6月までに賃金の引下げを実施した事業所の割合が0.6%、昨年は0.8%でしたので減少しています。産業別に見ますと、今年の1月から6月までに引上げを実施した事業所の割合が高いのは、医療,福祉で57.7%、一番低いのは宿泊業,飲食サービス業で34.3%です。
 第2表、回答していただいた平均賃金改定率を事業所単位で集計したものです。産業・ランク計で見ますと、賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は2.7%、賃金引下げを実施した事業所はマイナス8.2%、改定を実施した事業所と実施しなかった事業所を合わせて全体を平均した平均賃金改定率は1.1%で、昨年の1.1%と同水準です。
 第3表、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値です。産業計・ランク計をご覧ください。第1・四分位数が1.0%、中位数が2.0%、第3・四分位数が3.0%で、分散係数は0.50で、それぞれ昨年とほぼ同水準です。
 第4表、一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率です。5ページの第4表1が男女別、6ページの2が一般・パート別に見られるようになっています。第4表1の産業・男女計を見ると、ランク計の賃金上昇率は1.1%で、昨年の0.9%から0.2%ポイント増加しています。ランク別では、Aが1.3%、Bが1.2%、Cが0.9%、Dが0.9%となっています。産業ごとに見ると、製造業が1.0%、卸売業,小売業が0.9%、宿泊業,飲食サービス業が0.5%、医療,福祉が1.2%、その他のサービス業が1.2%となっています。男女別の賃金上昇率を見ると、産業・ランク計で男性が0.7%、女性が1.5%となっています。
 次に、第4表2の一般・パート別の賃金上昇率を見ると、産業・ランク計で一般が1.0%、パートが1.3%という上昇率です。男女別の女性、一般・パート別のパートは、いずれも昨年に比べ本年は増加していることが分かります。
 7ページから11ページまでは、参考1から5の表をお付けしています。これらは第1表から第4表まででお示しした集計結果をもう少し細かく集計したものです。適宜御参照ください。
 12ページは付表です。まず1のパートタイム労働者比率は25.3%となり、昨年から0.9%ポイント上昇しています。2の男女別の比率については、女性の比率が昨年に比べ0.5%ポイント上がっています。資料No.1の御説明は以上になります。
 資料No.2「生活保護と最低賃金」の比較についてです。1ページは生活保護水準と最低賃金額との関係を示したグラフで、ともに平成26年度のデータに基づくものです。右上にグラフの説明があります。破線の△は生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助実績値を加えたもの、実線の◇は最低賃金額で法定労働時間働いた場合の手取額を示しています。全ての都道府県において、生活保護水準が最低賃金を上回る逆転現象は生じていないことが確認できます。
 2ページは、1ページの最低賃金額のグラフを平成27年度のものに更新したものです。生活保護水準は1ページと同じで、最低賃金が1ページより引き上がったグラフになりますので、同様に逆転現象は生じていません。
 3ページは、47都道府県について最新の乖離額を示したものです。全てマイナスとなっています。
 資料No.3「地域別最低賃金額、未満率及び影響率(ランク別)の推移」です。今回、一番右の列に平成27年度を追加しています。未満率についてランク別に見ると、Aが2.1%、Bが1.4%、Cが2.2%、Dが1.9%、ランク計は1.9%です。平成26年度と比較すると、CランクとDランクで未満率が上昇した状況となっています。影響率についてランク別に見ると、Aが12.8%、Bが6.0%、Cが6.9%、Dが7.4%、ランク計は9.0%です。平成26年度と比較すると、いずれのランクにおいても影響率が上昇しています。
 資料No.4「賃金分布に関する資料」です。平成27年の賃金構造基本統計調査を基にした賃金分布になります。一般・短時間計、一般、短時間の順でそれぞれAからDランクまで、総合指数の順に都道府県を並べています。個別の御紹介は割愛しますが、適宜御参照ください。
 資料No.5「最新の経済指標の動向」です。ここでは幾つかの指標を御紹介します。まず、名目経済成長率です。今年1-3月期で0.6%、年率換算2.4%となっています。第3次産業活動です。今年3月から5月はいずれもプラスで推移している状況です。企業収益です。今年1-3月期は、企業規模の小さい所が1.3%のプラスとなっていますが、企業規模計では前年同期比9.3%のマイナスとなっています。
 2ページ、個人消費です。おおむね前年同月比でマイナスとなっています。業況判断です。日銀短観の6月調査では、規模計ではDIがプラスとなっています。一方、中小企業景況調査4-6月期では、昨年の4-6月期と比較してマイナス幅は増加しています。賃金です。現金給与総額の前年同月比で見たものです。今年4、5月のパートタイム労働者はマイナスとなっていますが、一般労働者は横ばいだった5月を除きプラスになっています。労働時間です。所定内労働時間は、一般労働者の今年3月はプラスとなっていますが、それ以外はマイナスとなっています。所定外労働時間は、パートタイム労働者の4月を除きいずれもマイナスとなっています。なお、5月調査の数値の前のpは速報値であることを示しています。
 3ページ、経済成長率です。名目経済成長率の動向については、2015年度はプラス2.2%、2016年の1-3月期は、先ほど御説明しました前期比でプラス0.6%、年率換算で2.4%、前年同期比では0.9%と、いずれもプラスで推移しています。内閣府年央試算については、昨日の経済財政諮問会議で資料が提出されており、名目GDPは2.2%程度、実質GDPは0.9%程度と見込まれています。
 4ページは、消費者物価の見通しについてです。今年1月22日に閣議決定された「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」では、消費者物価指数(総合)については、2016年度は前年度比でプラス1.2%程度と見込んでいます。また、消費者物価指数、生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPIの日本銀行政策委員の大勢見通しの中央値は、2016年度はプラス0.5%、2017年度にはプラス2.7%、2018年度にはプラス1.9%となっています。
 資料No.6「東日本大震災関係資料」です。まずは、被災3県の雇用状況として、1ページに有効求人倍率と失業率の過去10年分の結果を掲載しています。被災3県のいずれにおいても、有効求人倍率、失業率ともに震災前の水準よりも改善しています。
 2ページには、賃金の状況として、現金給与総額と定期給与を掲載しています。
 続いて、復興庁の資料から産業の復旧・復興の状況の資料を掲載しています。3ページでは、被災3県の製造品出荷額がおおむね震災前の水準まで回復していることが分かります。
 次の資料は、前回の目安小委主要統計資料の42ページに誤りがありましたので、訂正するものになります。恐縮ですが適宜御参照ください。
 続いて、前回の目安小委において、各委員から御要望のあった資料について、参考資料として御用意しましたので説明させていただきます。
 1ページは、前回の小委員会の資料No.1、主要統計資料の20ページにありました「地域別最低賃金と賃金水準との関係」について、一般労働者・パートタイム労働者別に時間額比が分かるようにお示ししたものです。
 2ページから5ページは、成長力底上げ戦略推進円卓会議合意及び雇用戦略対話合意です。
 6ページから9ページは、厚生労働省及び中小企業庁における賃上げ支援施策をまとめたものになります。6ページは、厚生労働省の賃金引上げ支援施策で、7ページにその実績を掲載しています。8・9ページは、政府全体で生産性向上を支援するということで、中企庁の施策を掲載しています。
 10ページ以降は、「熊本地震関係資料」です。雇用情勢と雇用労働対策を御用意しました。
 16ページは、雇用調整助成金の計画届の件数が載っています。6月27日時点で502件、対象者数は約1万5,000人になっています。
 資料の説明は以上です。


○仁田委員長
 1点追加で、私から御報告申し上げます。熊本地震の件について、前回御意見がございましたが、一般的なデータ等については資料のとおりですが、7月4日、5日に熊本に参りまして、現地視察をいたしました。熊本地方最低賃金審議会の会長、労使それぞれ代表お一人、労働局、県の商工観光労働部のお話を伺いますとともに、県北の精密機械工場1社と益城町を視察しました。
 それで縷々伺ったわけですが、熊本県が5月上旬から中旬にかけて被災企業を中心に行った調査があり、その調査時点では営業・操業を再開している企業は全体の79%であるということでした。ただ、製造業は97%で操業を再開しているということでしたが、観光関係は65%ということで、復興状況にばらつきが見られるということです。また、復興需要で潤っている産業もあるというようなことでした。
 熊本地方最低賃金審議会の公労使の代表から御意見を承ったわけですが、労働者代表の方は、思ったよりも復旧は早かったのではないかということでした。東日本大震災の場合と違って、先行きがある程度見えていると考えている。断層のあった地域は被害が大きいけれども、周りの地域は比較的好調で、県全体をどう捉えるかが悩ましいという問題はあると認識しているということでした。
 使用者代表の方のお話は、観光については広い範囲で打撃を受けている状況だと。復興は進んでいるけれども、産業や地域で差が出ているということでした。一方、3か月程度たって、経済活動はほぼ回復したとも言えるということで、こういうときこそ地方最低賃金審議会での審議を一生懸命やりたいというお話でしたが、他方では体力があるのかどうか慎重に考える必要があるという認識ということです。
 最後に熊本地方最低賃金審議会会長ですが、被害が局地的だったこともあり、中央最低賃金審議会における審議で、何か特段の配慮をしていただく必要はないのではないかという御認識でした。以上、御報告申し上げておきます。
 それでは、先ほどの事務局からの御説明について、御質問等があれば承ります。いかがでしょうか。


○須田委員
 資料2の3ページに、生活保護との乖離があります。今でなくていいのですが、毎年乖離の要因別に分解していただいていると思いますが、今年も用意していただければと思います。


○仁田委員長
 これはよろしいですか。


○増田賃金課長
 昨年も出させていただいていますので、用意するようにいたします。


○仁田委員長
 ほかにはいかがですか。よろしいですか。後ほど何かありましたら、次回の審議に向けて、御質問をいただければと思います。
 前回の目安小委員会で委員の皆様にお願いいたしましたが、今年度の目安についての基本的な考え方を表明いただきたいと思います。まず初めに、労働者側委員からお願いいたします。


○須田委員
 労側のいろいろな思いについては、この後に各委員から発言させていただきたいと思っています。基本的な点、あるいは今年は特にこういう点について考えたいということを、総括的に私から申し上げます。
 大きくは2点です。1つは、あるべき最低賃金水準の議論が必要ではないかということです。最低賃金法第1条の目的を達成するために、上げ幅だけではなく、最低賃金水準はどうあるべきなのかの議論を、これまで以上に深める必要があると思っております。
 難しいのですが、あるべき姿を示すことで、それぞれ、特に中小企業において、毎年のこの審議会での上げ幅だけを気にするのではなく、公正競争あるいは計画的な事業、生産性の向上という目的に、計画的に対応できるのではないかと思っております。したがって、毎年、賃金改定状況調査の第4表や、一般労働者のアップ率等を重視した議論をさせていただいていますが、そのことのみならず、生活できる水準あるいはワークペイとしてどういう水準がいいのかということについて、議論を深めていくべきではないのか。
 振り返ってみれば、円卓合意のときに高卒初任給という、ある意味での到達目標値を掲げました。雇用戦略対話では800円、1,000円ということで、到達目標を掲げました。これもどういう水準か、あるべき水準という議論があったという認識をしておりますので、上げ幅議論だけではなくて、どういう水準を目標にするのかという議論を深めていったらどうなのかと思っております。
 2つ目です。これ以上のランク間格差の水準の拡大は、何としても阻止したいという点です。今現在で最高額は907円の東京ですが、最低額の693円は高知、宮崎、沖縄、鳥取です。この差が214円と拡大しています。2002年に時間額表示に切り替えたときの差は104円だったと記憶しています。法改正があって、生活保護との乖離等々をやってきたということは承知していますが、それにしても214円という差は、昭和53年から始まっている目安制度を採用した目的と趣旨からして、一体どうなのだろうと。全国的整合性を図るという目的で、この目安制度は始まったと認識しておりますが、214円の差というのが、果たして地方の経済実態等を見ても、全国的整合性は図られているのだろうかということを率直に疑問に思っています。したがって、これから議論を詰めていく中にあって、これ以上のランク間格差の拡大は、どうしても阻止したいということです。
 基本的に以上の2点を申し上げた上で、労働側として今年の目安金額についてどう考えるかということです。我々としては、雇用戦略対話における政労使合意という社会対話の結果を重く受け止めたい。当時、早期に800円、全国平均1,000円、前提は付いていますが、これを目指すと言ってきたわけです。今現在、800円未満の道県が40県あるわけです。47分の40が800円に未達であるということから、この800円と1,000円への到達の道筋を、早期に行うべきだということです。その上で、先ほど申し上げた地域間格差の拡大を阻止したいと思っております。
 6月14日に諮問された段階で、様々な点に配意ということをお聞きいたしました。最低賃金を今の水準から引き上げていくという思いは一緒ですが、それは最低賃金近傍で働いている人の生活実態、あるいはそれぞれの働いている人たちの役割と責任を見たときに、今の最低賃金水準でいいのかという問題意識を持っているから、上げたいといっているわけです。
 ニッポン一億総活躍プランによると、政府方針は「全国加重平均1,000円を目指す」という表現になっております。最低賃金は地域ごとに決められているわけで、加重平均の最低賃金を適用されて働く人は誰もいないということですから、それぞれの地域でどういう最低賃金水準にすべきなのかということを真摯に考えていくべきではないのか。
 加重平均でと言われますと、適用労働者のウエイトが高い所だけを上げればいいのかと。地方はそのまま捨て置いていいのか。先ほどの800円未満という県はどうするのだということに、我々としてはどうしても着目した議論をしたいと思っています。
 そういう意味で、様々な現場の状況を熟知している、ここに集まっておられる皆さんと、この三者構成の審議会の中で、きちんとした議論を進めていくということで臨んでいきたいと思っております。総括見解は以上です。


○松井委員
 私のほうからは、最低生活保障の観点から補足を申し上げます。2016年4月に連合総研が実施した調査によれば、回答全体の8割近くが、何らかの費目で支出を切り詰めているという回答をしております。その割合は、消費税増税直後の76.4%より上がり、今回85.1%と上昇傾向にあるということです。
 また、非正規労働者が主な稼ぎ手である世帯では、生活苦のために食事の回数を減らしたという回答も2割を超えています。なお、厚生労働省の平成26年就業形態の多様化に関する総合調査によれば、正社員以外の労働者のうち、主な収入源が自分自身であると答える割合は47.7%に上っているわけですので、更に深刻な状況だと理解しております。
 また、近年拡大を続けている所得格差に歯止めをかけることも、重要な視点だと考えております。日本の地域別最低賃金の水準は、フルタイム労働者の賃金中央値に対する比率が38.9%と4割を切っており、OECD諸国でよくこの数値が比較されておりますが、OECD28か国の中で下から4番目ということで、最低賃金の水準はOECD諸国に比べると低い水準にあると認識しています。
 以上の現状を踏まえれば、現在の地域別最低賃金が適正水準に到達しているとは到底言える状況にはないと考えております。労働者側委員としては、最低賃金法第9条第2項の3要素のうち、特に地域における労働者の生計費と賃金の2項目を重視し、地域別最低賃金を適正水準に引き上げる、それにつながる目安を示す必要があると認識しております。
 先ほど須田からも申し上げましたが、雇用戦略対話の合意においては、2020年までの目標ということで、一定の経済的な条件は付いておりましたが、早期に全国最低800円、景気状況に配慮しつつ全国平均1,000円を目指すということでしたので、それについて早期に今回の目安で実現させていくことが重要だと考えております。


○冨田委員
 私からはもう1点、労働の対価としての賃金水準の在り方について申し上げます。我が国の生産年齢人口は1995年をピークに減少しており、ここ数年は有効求人倍率も1倍を超え、完全失業率も3%台前半で推移するなど、人手不足が顕在化していると見ております。少子高齢化の更なる進展により、今後も生産年齢人口は減少の一途をたどることが見込まれておりますが、こうした人口動態の見通しを踏まえた上で、国民経済の健全な発展を図っていくためには労働生産性を上げていくことも求められていると考えております。
 労働の質や量など、労働者が担っている役割と責任に見合った形で賃金水準を上げていくことが、公正な競争を促し国民経済の健全な発展に資するものとなると考えておりますので、こうした論点も踏まえた形で論議を進めていきたいと考えています。


○萩原委員
 地域間格差の課題について、改めて一言申し上げます。先ほど須田委員からあったとおり、もともとの目安制度というのは1978年に地域間の整合性を取るという観点から導入されたと認識しております。そうした中、近年最低賃金をめぐるいろいろな状況から、とりわけ最低賃金の水準については引き上がってきました。そうした中で、高位の地域と低位の地域の格差が大きくなってきています。
 もちろん制度の問題ですから、実際に行われている目安制度の在り方に関する全員協議会の中で、制度面については論議をいただくと思いますが、この単年度の目安小委員会の中でも、地域差という観点に眼目を置いた審議を今年は特にやっていくべきではないかと思っています。
 また、水準論については過去の円卓会議の中で、高卒初任給との関係に言及しております。もちろん、この高卒初任給の在り方については、労使双方で必ずしも一致しているとは思いませんが、近年労働市場が逼迫している中、高卒初任給等を含む採用賃金が上がっている中、それに伴って地域別最低賃金も引上げを図っていくべきと。こういった高卒初任給と地域別最低賃金との関係も、きっちりと合わせていく、同様に上げていくという観点も必要だと思っております。
 いずれにしても、今年の審議は大変注目されておりますし、大変難しい審議になると思いますが、私としても、この与えられた三者構成の中で、きっちりと労働側としての矜恃を持ちながら、最終版における目安になるか、公益委員見解になるか分かりませんが、きっちりとした論議に参加していきたいということを申し上げまして、私からの意見とさせていただきます。


○仁田委員長
 引き続き、使用者側からの御見解をお願いいたします。


○小林委員
 使用者側の見解を申し上げます。初めに、我が国経済に対する現状認識について申し上げます。景気は緩やかな回復基調にあるものの、国内総生産、GDPの約6割を占める個人消費は伸び悩んでおり、今年に入って株価は下落、為替も円高傾向にあります。
 また、1月に日本銀行が導入したマイナス金利政策の効果は、これまでのところマイナス面のほうが強く出ており、先行き不透明な経済環境から、企業経営者は設備投資のため積極的に借入を行うという状況にはありません。
 さらに、イギリスのEU離脱問題が生じたことによって世界経済の不透明感が一層増しており、テロへの世界的な不安などとあいまって、日本経済の先行き懸念は高まっています。
 次に、中小企業が置かれている現状について申し上げます。中小企業の経営状況は依然として厳しいと認識しています。中小企業庁が発表した本年4月から6月期の中小企業景況調査では、全産業の業況判断DIはマイナス19.5、前期比でマイナス1.4ポイント減となり、2期連続して低下しています。また、日本銀行が発表した6月の全国企業短期経済観測調査においても、全規模計、全産業の業況判断DIは最近が4、先行きが2とプラスになっていますが、中小企業では最近が製造業マイナス5、非製造業は0、先行きが製造業はマイナス7、非製造業はマイナス4と、3月調査時より業況が悪化しており、中小企業の厳しい現状と先行きへの不安が広がっています。
 また、中小企業は2009年には420万者ありましたが、2014年には381万者と、40万者近く減少しています。近年、中小企業の倒産件数は減少しておりますが、廃業は依然として多く、東京都大田区ではほぼ2日に1つ工場が消えているという報道もあります。地域の雇用の源泉である中小企業においては、人手不足、事業承継の問題が深刻化している所も多く、総じて厳しい経営状況にあるというのが現状です。以上のような現状認識に基づいて、今年の目安審議における使用者側の基本的な考え方を申し上げます。
 最低賃金の決定に当たっては、最低賃金法第9条に定められているとおり、地域における労働者の生計費及び賃金、通常の事業の賃金支払能力の3要素を考慮しなければなりません。したがって、中央最低賃金審議会においても、あくまでも3要素を中心とした目安審議を行うべきであります。
 中央及び地方の最低賃金審議会において、使用者側はこれまで各種統計データ等に基づく調査審議を基本とし、特に中小零細企業の賃金の引上げ実態を示す賃金改定状況調査結果の第4表を最大限に重視すべきであると主張しており、この考え方は現在も何ら変わりありません。
 近年の最低賃金は景気や経営の実態とは関係なく、いわゆる時々の事情によって大幅な引上げが行われ続けてきたと認識しております。
 経営基盤の弱い中小零細企業にとっては、経営体質を強化できる支援策が拡充されないまま大幅な最低賃金引上げに対応することは困難です。
 これ以上実態にそぐわない最低賃金の大幅な引上げが続くことになれば、中小企業の存続自体も脅かし、雇用や地域経済に重大な影響を及ぼすと懸念しています。
 また、厚生労働省の最低賃金に関する基礎調査によると、2015年度の従業員30人未満の企業における影響率は、全国計で9.0%と高いレベルになっています。これは2006年度には1.5%であったことから、10年で6倍に増えているということになります。このように地域別最低賃金に張り付いている労働者が増加している中では、最低賃金の引上げが中小企業に与える影響は極めて大きなものがあると考えています。
 6月14日の中央最低賃金審議会において、塩崎厚生労働大臣から仁田会長に諮問文が手交されました。諮問文では、ニッポン一億総活躍プラン、経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太の方針)及び日本再興戦略2016に配意して審議することが求められています。ニッポン一億総活躍プランでは、最低賃金について「年率3%程度を目途として名目GDP成長率にも配慮しつつ、引き上げていく」とあります。その意味は、毎年自動的に最低賃金の3%引上げを行うのではなく、名目GDP成長率が3%を下回っているような場合は、そうした経済状況に配慮して、最低賃金の引上げを抑えていくということであると認識しております。
 また、ニッポン一億総活躍プランの検討を始めた昨年秋と比べ、我が国経済の状況や中小企業をめぐる経営環境が悪化しているという点は考慮されるべきと考えています。
 最低賃金を引き上げるためには、あくまでも生産性の向上が前提とならなければなりません。しかしながら、中小企業、小規模企業全体の生産性向上は確認できず、政府の支援施策の成果も見られていないのが現状です。
 こうした中で、必ずしも根拠が明確でないままに、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会に対し、最低賃金の大幅な引上げ目安を提示してきたことによって、目安に関する地方最低賃金審議会の混乱を招いてきたと認識しています。
 そもそも3要素を考慮して、公労使が徹底的に議論して定められるべき最低賃金において、政府が提示する目標値に基づく引上げという手法はなじまないと考えます。今年度、データに基づかない目安を提示することになれば、地方最低賃金審議会はますます混乱に陥ることになると危惧します。
 最低賃金の引上げの前提条件である名目GDP成長率、中小企業、小規模事業者の生産性の向上に資する支援、取引条件の改善等が満たされていないことや、中小企業、小規模事業者を取り巻く経営環境を踏まえながら、賃金改定状況調査結果、特に第4表のデータを重視した議論を行うべきであることを、改めて強調したいと思います。
 以上が、今年の目安審議における使用者側の見解です。


○仁田委員長
 補足して御意見はございますか。よろしいですか。
 ただいま労使双方から御主張いただきましたので、それぞれについて御質問等があれば、お出しいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それぞれのお立場をかなり明確な形でお述べいただいたと思います。労使の御主張には、かなり大きな開きがあると認識をしました。この段階で、公労・公使で更に御意見を伺いながら審議を進めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、公労から始めます。


(第2回全体会議)


○仁田委員長
 ただいまから、第2回目の全体会議を開催いたします。本日は本年度の目安取りまとめに向けて、労使双方から基本的な考え方をお出しいただき、それに基づいて御議論をいただきました。その結果、双方の御主張はかなり明確になってきたと考えますが、その御主張の隔たりはかなり大きなものがあると考えております。
 そこで、本日の段階では、これ以上の議論を行う時間的余裕もありませんし、適切ではないと思いますので、次回の目安小委員会において、更なる御議論を行っていただき、目安の取りまとめに向けて御努力いただきたいと思います。
 それでは、次回の日程及び会場について、事務局から連絡をお願いいたします。


○成川賃金政策専門官
 次回の第3回目安小委員会は、7月21日(木)の14時から、経済産業省別館3階の310会議室で開催いたします。会場の案内図は、追ってお送りいたします。よろしくお願いいたします。


○仁田委員長
 本日の小委員会は、これをもちまして終了といたします。次回はいつもの場所と違うので、お間違いなきよう、経産省別館のほうでお願いいたします。
 本日は萩原委員、高橋委員に議事録署名をお願いいたします。お疲れ様でした。

 


(了)
<照会先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

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