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2017年2月7日 第12回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

職業安定局

○日時

平成29年2月7日(火)14:00〜17:00


○場所

312各省庁共用会議室(経済産業省別館 3階)


○出席者

神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・法制の議論

○議事

○柳川座長 それでは、ただいまから第 12 回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ御参集いただきまして誠にありがとうございます。お久しぶりですという感じですけれども、再開ということで、よろしくお願いします。

 議題に入る前に法整備に向けた働き方改革実現会議との関係について、事務局から御説明があるとのことですので、よろしくお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 企画課長の岸本です。また法整備という新しい段階での御議論をお願いすることになりましたので、引き続きよろしくお願い申し上げます。昨年の中間報告に向けた議論の過程で、この検討会と働き方改革実現会議との役割分担の整理がなかなかうまくいかず、先生方には大変な御迷惑、御心配をお掛けしたものですから、今回の後半の法整備の議論をするに当たり、働き方改革実現会議との関係について内閣官房とも相談した役割分担について、本日の冒頭で御説明したいと思います。

 本検討会につきましては、この検討会のもともとの設置要項でも法整備については、それに向けた考え方の整理を行うという表現になっておりましたが、今回、法改正について、有期・パート・派遣と、それぞれ様々な論点が想定されるわけですが、それぞれについて必ずしも 1 つに絞った結論を出すということではなくて、先生方のそれぞれの専門的見地から考え得る論点について、考えられる選択肢や各選択肢の利害特質のメリット、デメリットを整理いただいた論点整理を最終的に頂戴できればと思っております。

 働き方実現会議のほうでは、この論点整理も参考とさせていただきながら、総理の下で労使トップを交えた場という、実現会議の役割として法改正の大きな方向性を決めるというように、分担をしていきたいと思っております。

 本日は、まず有期とパートについての御議論を頂きますが、派遣についても、また御議論いただいて、内容的には法改正の方向性をどう決めるということよりも、その専門的見地からの選択肢の整理、利害特質の整理などをお願いしたいということです。何とぞよろしくお願い申し上げます。

○柳川座長 それでは、ただいまの事務局からの御説明に関して、委員の皆様から何か御質問等ありましたら、お出しいただければと思います。では、そういう形で論点を整理することが、この検討会の役割ということでよろしいですか。 

 それでは続きまして、本日の議題に入りたいと思います。まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。

○河村企画官 それでは、お手元の資料確認をさせていただきます。まずは資料 1 として「法整備に向けた論点」の 1 枚紙、資料 2 として「これまでの主な御議論について」で、過去の検討会において法整備関係について出していただいた主な御意見をまとめたものです。資料 3 は、水町先生の御意見と皆川先生の御意見の紙を配布させていただいております。参考資料 1 には、様々な制度等の参考資料をお付けしております。参考資料 2 として、パート法と契約法について、条文をそのままお配りしております。参考資料 3 は、同一労働同一賃金のガイドライン案が 12 20 日に働き方改革実現会議で提示されておりますので、参考として机上に配布しております。以上、お手元におそろいでしょうか。

○柳川座長 それでは議題に入ります。先ほどお話がありましたように、今回の検討会より法整備に向けた議論を行うことになっております。本日は、パート・有期雇用関係の法整備に向けた議論として、司法判断の根拠規定の整備関係、説明義務の整備・いわゆる「立証責任」関係、それから履行確保の在り方など、その他の事項について検討を行いたいと思います。

 まずは、司法判断の根拠規定の整備に関する議論から始めたいと思います。事務局より資料の説明と、この論点に関する本日御欠席の委員の方々からの御意見の説明をお願いいたします。

○河村企画官 それではお手元の資料 1 、論点の 1 枚紙を御覧ください。 1 番の 1 つ目の論点として、現行の法制、パート法や労働契約法の規定が司法判断の根拠規定として十分に機能を果たし得ているか。主な観点として、「規定の明確性」を挙げております。 2 点目として、比較対象労働者をどのように定義するかという論点を挙げております。

 参考資料 1 6 ページを御覧ください。現行のパート法の第 8 条が、いわゆる均衡待遇規定と呼んでいるもの、第 9 条が均等待遇規定と呼んでいるものです。それに 7 ページに、労働契約法の均衡待遇規定があります。委員の皆様方御承知のとおり、パート法と契約法も考慮要素としては共通して、1.職務内容、2.職務内容・配置の変更の範囲、それから3.その他の事情という 3 点を挙げております。

 比較対象労働者としては、パート法のほうが当該事業所に雇用される通常の労働者を、いわゆる正社員側として、それをパート労働者の待遇と比較するという構図を取っております。労働契約法のほうは、有期の雇用契約を締結している労働者の労働条件と、期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働条件を比べるという形を取っております。

 この論点に関連して、本日御欠席の委員の先生方からの御意見です。資料 3 の水町先生の御意見を御覧ください。水町先生の御提起のうち、 1 番目の○のところが、水町先生から、この論点に関して御提起いただいている内容です。現行の規定は、待遇差の不合理性について給付の趣旨・性格に応じて判断するという点が明確になっていない。合理性・不合理性の判断は給付の具体的な趣旨・性格に応じて行われることが分かるような規定にすることが必要ではないかという御意見を頂いております。

 それから、皆川先生のほうの御意見ですが、 1 番目のところがこの論点の関係です。皆川先生のほうから御提起いただいている 1 つ目の黒ポツですけれども、パート法の 9 条の均等待遇規定のほうは、要件とその効果において明確さがあって、司法判断の根拠規定として、機能し得るものと考えると。

2 つ目の黒ポツですけれども、一方でこういったパート法の 8 条や労働契約法 20 条の規定に関しては、我が国の雇用慣行等に配慮して、柔軟な解決の在り方を可能にする内容であると言える一方で、考慮される要素と効果との関連性が必ずしも明確でなく、待遇格差に関して、何をどのように考慮すれば、不合理と認められるのか否かが分かりにくい面があると。全ての裁判官が、企業での雇用慣行や処遇制度等について、よく分かっているわけではないので、今後の改善のために検討の余地があるのではないかという御意見を頂戴しております。事務局からの説明は以上です。

○柳川座長 それでは、ただいまの説明につきまして、委員の皆様方から御質問、御意見等ありましたら、御自由にお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

○松浦委員 御説明ありがとうございます。最初に確認しておきたいのが、司法判断の根拠規定というときに、恐らく法律のたたずまいとして、例えば裁判で強制力を持つ、裁判である程度参考にされる、あくまでも決定権が司法のほうにある、という 3 つぐらいの段階があると推測されます。その段階はどのように整理されるのでしょうか。つまり、どうすれば裁判で強制力を持つ法律になって、逆にどうすればそこまではいかないのかという仕切りが、最初の段階で少し分からないので、説明していただけると大変有り難いです。

○河村企画官 御指摘の今の御趣旨は、裁判で強制力を持つということの意味合いとして、契約を無効にする効果を、いわゆる民事効を持つために、どういう条件があるのかという御趣旨ですか。そうではなくて、ですか。

○松浦委員 まず、その根拠規定の意味がよく分からなくて。

○河村企画官 ここでいう意味ですね。

○松浦委員 そう、根拠規定といったときにも、いろいろ段階がありますよね。どうすればどれぐらい強い根拠になるのかということですね。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 お答えがずれていたら恐縮なのですが、まず現行のパートタイム労働法 8 条、 9 条、労働契約法 20 条は、いずれも政府の理解としては、司法判断の根拠たり得る規定であると解しております。それがまず 1 点あります。

 御指摘の話は、こういうことなのでしょうか。司法判断の根拠規定となるときに、規定として、どういう場合に法律行為というか、主従間の行為が無効になるかが、かなり明確な、例えば、ある法律行為を何日前に通知しないでいれば無効になるといったタイプの規定と、今のパート法の 8 条や 9 条、契約法 20 条などがそうですが、この法律で無効となるかどうかについて、ある程度、単なる事実関係だけではない、価値判断や評価といったものが介在する規定とがあると思います。

 そういう意味では、今のパート法の 8 条や 9 条、契約法の 20 条も、そういう価値判断なり評価を伴う規定だと思っております。その価値判断なり評価は、その司法の場で最終的に行われる。そのときに、どういう枠組みで評価をしていただくかについて、現行の規定であれば、待遇差が不合理かどうかを判断する際に、職務内容と職務内容や配置の変更範囲と、その他の事情等を考慮して合理性を判断するという枠組みは設けているわけです。

 ただ、それは言ってみれば枠組みですので、具体的にどういう職務内容の違いがどの程度あれば、どの程度の待遇差が許容されるかというのは、裁判所の判断に委ねられているという規定であると思います。

 今回、ここの論点に記載した、あるいは今日、提出していただいた書面の御意見を拝見し、私どもなりの解釈をしますと、今よりも若干、待遇の性格との対応関係を明確にすることを御提起されている意見もありますが、それはこの待遇であれば、この要素だけで判断するというようなことを、決め打ちにすれば、かなりデジタルな判断になります。

 ただ、そこまで書かずに、でも今よりは少し具体化するという書き方もできて、そこは法律の条文、司法判定の根拠規定をどれぐらい明確にして、どれぐらい司法の判断の余地を残しておくか。その工夫というか、判断というか、それができる法律の構造ということだと思います。

 ですので、今の規定は司法判断の根拠規定であるけれども、ガチガチに絞るというよりは、その枠組みを提供しているという規定であると。そういう性格を意識しながら、少しその性格を明確化することでいくのか、それともデジタルな判断のために、もっといちいち書き込んでいくのか。それが議論の別れ道になるのではないかと思います。

○松浦委員 もう 1 つよろしいですか。司法の判断の余地をどこまで残すかということと、法律に根拠規定をどの程度書き込むかというのは、裏腹にあるというお話なのだと思うのですけれども、法律には、例えばパート法の条文になるものと、省令として決められるもの、さらには指針等、いろいろ段階があると思うのです。

 その法律の段階と司法との関係においては、どの段階であればどこまで司法がそれに絞られるのか、あるいは司法として違う判断が成し得るのかという辺りについても、教えていただいてもよろしいですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 基本的には裁判所、司法を拘束するのは、法律の規定なわけですが、法律でもって明確に政省令なりに細目を委任することがあります。その場合に、委任の範囲内で定めたものは、法令の一部をなすと解されると思います。

 ただ、そのときに、 1 つは委任の規定の仕方をどうするかという問題があって、これは法律の規定によって様々な委任の仕方があります。よく手続的なことなども「厚生労働省で定めるところにより」と、丸ごと落としてしまって、何日前にその申請書を出しなさいと、省令で決めてしまいます。

 今回のガイドライン案の案を取っていくプロセスで、いずれ正式なものにすることを想定しているわけですが、その正式なガイドラインを、法律の一部を成すかのように、どういう書き方になるのか、ちょっと法制局にも相談しなければいけませんが、法律の条文の一部を告示に落とすような、強い委任の仕方をするのか。それとも均等なり均衡待遇の司法判断の根拠規定の解釈を示す指針だというような形で、条文の一部であるかのような委任にはしない形で根拠規定を置くのかということは、いろいろな法制的な選択肢があり得ると思っております。

 それもまた、ガイドライン案を、「案」はいずれ取れるわけですが、ガイドラインをどれぐらい法律の一部であるかのように、きちんと位置付けるのかどうか。それとも、もう少し包括的なというか、フワッとした存在と位置付けるのか。それがまた、法律の整備内容のあるべき論として、議論の別れ道になるのではないかと思います。

○松浦委員 ありがとうございました。

○神吉委員 司法判断の根拠規定としての機能を果たしているかという問題意識ですけれど、今、岸本さんがおっしゃったように、現在、司法判断の根拠規定としては機能しているわけで、実際これに基づいて裁判例が出始めています。そのような状況で、この論点を考えると、誰のためなのかなと思うのです。司法の判断の余地を残しておきつつも、少し明確にする。これは何のため、誰のためという位置付けでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 例えば、何のためというか。

○鈴木派遣・有期労働対策部長 この「司法判断の根拠規定」といったときに、行政の中で議論があったのは、 1 つは次回以降で御議論いただく派遣法 30 条の 3 については、配慮義務の規定なので、やった、やらないは行政的に指導することはあっても、大きく司法の判断の根拠になり得ないので、派遣については、そういうパート法や契約法と同じような規定を作るべきだというのが 1 点です。

 パート有期の 8 条、 20 条につきましては、現行でも司法判断の根拠規定になっているのですが、これについては労働者がこの規定ではなかなか訴えにくいと。何を証明して、どうすれば、この裁判で、情報に比較対象性がある使用者と、ある意味、互角に訴訟ができるかという観点から、もう少し具体化なり強化なりすべきではないかというのが、これまで行政の中で行われた議論です。

 そのとおりやっていただくというよりも、そういう我々のもともとの意識があって、では、それでやるのであれば、それは間違っていると言っても結構ですし、そのとおりやるのであれば、こうしたほうがいいのではないかという御指導をいただけたらという趣旨です。

○神吉委員 ありがとうございます。労働者が最終的には個別訴訟で訴えて、物事の救済を図っていくことが望ましいということですか。

○鈴木派遣・有期労働対策部長 原則としては、そのように考えて「ニッポン一億総活躍プラン」は作ってあると、私は理解しております。ただ、それが本当にやり過ぎだという意見もあるでしょうし、その辺はどのぐらいが本当はいいのかということを、御議論いただけたらと思います。

○神吉委員 私は根本的に、個別訴訟でどんどん解決できるようにしていくことが本当に救済になるのかという問題意識を持っています。互角に訴訟できるようにとありましたが、例えば、韓国などは、もう既に使用者側に立証責任があって、個別訴訟の枠組みは、日本よりも形は整えられていますけれども、実際は全然使われていないと。

 それはやはり、法律があって、訴訟できる、救済されるといっても、自分の権利が侵害されていることを、今自分が雇用契約を結んでいる使用者に対して働きながら訴えていくことは、すごく難しいのですよね。ですので、そういう方向が 1 つはあるとは思いますけれども、それで解決できるわけではないというところを念頭に置きつつ、事前に労使が解決できるように、話し合って解決をして訴訟まで至らないで済むように、重点を置いて議論していきたいと思っています。

 それと、「少し明確にする」ことが、そんなに意味があるのだろうかという疑問もあります。

○柳川座長 この辺りは学術的にはとても面白い。面白いと言うと失礼かもしれませんが、重要な話なので、議論はあり得るのだと思うのですが、 1 つは、ここに書いてあるように、十分に機能を果たしているかどうかというところに関して言うと。根拠規定としては機能はしているので、どういう形で根拠の規定を機能させるかということに関して、それでいいと思うのか、より改善する余地があると考えるのかということなのでしょうね、きっと、ここの「十分に」というところは。先ほどディスカッションの中にあったように。

 そうすると、岸本課長がおっしゃったように、もう少し、強制力を高めるとか高めないという話というよりは、具体的あるいは明確にする規定をどこまで置くかということの程度に関しての御議論ということで、それは恐らく意見が分かれると思うのです。それは冒頭にもありましたように、ここで意見の一致を見るというよりは、分かれるのであれば分かれて書く形にしたいと思うのですけれども。

 多少なりとも私見を交えて言うと、 1 つは裁判に任せれば任せるほど裁量的な余地があるので、そのときに使える情報であったりするものが使えるというメリットがあるわけですね。それを具体的にすればするほど、その裁判所の判断の余地は小さくなるので、そこは裁判所がいろいろなものを考慮できなくなるという意味では、硬直的なことにはなるのだろうと思うのです。

 でも、硬直的にすることのメリットはあって、 1 つは、ある種、立法府がある程度、裁判に関してこのような判断をしてほしいという立法府の意思を明確にするということですよね、これは通常言われていることですね。

 もう 1 つが、今、出てきたように、ある種の明確性を高めることで、当事者が行動しやすくなる、訴えやすくなるということです。ですから、労働者の側が、より訴えやすくなるというところに、もう 1 つの。不明確だと、どうしていいか分からないので、訴えやすくするというメリットに、どこまでウエイトを置くかということですよね。

 その更に手前にあるのが、訴えるだけではなくて、実は手前のところの契約関係の整備や労働条件の整備など、先ほど神吉先生がおっしゃったように、訴えられないようにするための整備を促していくために、ここを明確にすることも 1 つのメリットとしてある。幾つかの段階がメリットとして考えられるのだと思います。

 それは考えられる論理的な幾つかのパターンであって、それぞれにどのぐらい重要だと考えるかということ。それから先ほどから議論に出てくるように、そのデメリットの部分をどのように考えるかということで、恐らく意見が分かれるのかなと思います。

○松浦委員 労働者側、企業側のいずれからも、労働契約法の不合理な取扱いや、パート労働法の均衡に対して、分かりにくいという声は確かにあったので、それが少しでも明確になるであれば、メリットは一定程度あると思います。

 ただ、余りにも法律の委任を強くしてしまったときに、先ほど神吉委員がおっしゃったように、例えば労使交渉で労使が合意して決めたことまでが棄却されるおそれが出てくる。ですので、例えば指針などの中で、法律の委任という面で法律と慎重に距離を取った形で内容の例等を示すのは問題ないと思いますが、やはり強制力をかなり持たせるという形にしてしまうと、労使の自治に対する侵害になり得るのではないかと思います。

 ですので、御意見の中に出てきている個別の処遇について判断するということを書き込むかどうかということも、特に法律の条文に書き込むことになると、強制力を持つ形になってしまいますので、それが本当によいのかどうかということはかなり疑問です。

○神吉委員 大分前に、水町先生と、この検討会で議論したときに、例えば基本給を年齢給とした場合、年齢という要素は、基本給という趣旨や性質に照らして合理的なのか、不合理なのかと聞いてみたことがあるのですが、そのときも水町先生は、もしそれを合理的なものだと認められたいのであれば、それはガイドラインに書いておくべきだというようなことを、多分お答えになったのです。

 ただ、年齢給は、事務局から頂いた資料でも結構取り入れているところが多かったと思うのですけれども、客観的に要素・要因で分解して、合理か不合理かと固められるかというと、恐らく年齢みたいに、何となくみんな、そこの会社では合理的だと思って続いていたものが、客観的にどちらかに分けられるのか、事前に全部振り分けられるのか。そこに限界があると思うのです。

 年齢に関しては、基本給という性質で何を考えるのか明確ではありませんけれども、能力などに応じる職能給制度ということにした場合、勤続年数ではなくて、本当に年齢であれば、直接には関係ないじゃないかと言えるわけですよね。そういう生活給的な要素というのは、客観的に不合理なのかもしれない。だけれども、労使の枠組みの中で話し合って納得してそれでいいと、ずっと賃金体系として合理的なものだと取り入れられてきたと、そういう経緯があれば合理的だと認められるとすれば、客観的な要因分解だけでは絶対に説明できない部分が残るはずです。

 ですので、例えば水町先生が、ここで言われているようなことを法文化するとすれば、均衡待遇に関しても、「待遇の趣旨及び性質に応じて、不合理と認められる相違を設けてはならない」といったような条文になっていくのだろうとは思うのですけれども、それで何か説明し切れるわけでもないし、「少し明確にする」と、さっきおっしゃった、その「少し」は、実際、中身としては、それほど明確にもならないのではないだろうかと、私は懸念しております。

○松浦委員 今の御発言に関連して、ガイドライン案が出されてから、企業の実務家から、特に基本給に関する記述内容の意味が分からないという声を多く聞きます。つまり、企業の賃金制度というものは複雑で、これは不合理、これは合理と説明する上で、個別に因数分解をするのだと言われても、どう因数分解していいのか、さっぱり分からないと。

こういう状況をみるなかで、私も神吉委員と同じ危惧を持っていて、「少し分かりやすくする」というつもりで書き足したものが、余計に実務上の混乱を招くことになりかねないのではないかと思っています。

○柳川座長 何かありますか。

○中村委員 これまでのお話を伺っていると、機能させられるのかというところでいくと、今日の論点になっている最後の部分と非常に絡んでいると思います。これは条文にまで書き込むことが、待遇の不合理な差を是正するのに有効かというときに、条文に書き込み過ぎることの懸念が幾つか出ていて、むしろ、それを省令や告示の様々な形で総合的に担保する方法があるということが、先ほどの岸本課長の御発言だったと理解しております。どこまで条文で書くのか、若しくはガイドライン、法改正も含めた後の新たなガイドラインの在り方として、どういう体系があるのかという論点なのかと、聞いていて理解しました。

○柳川座長 冒頭から出ているように、ここで意見を全部集約する必要はないので、賛成意見、反対意見がきちんと明確になれば、それはそれでいいのだと思いますが。多分、意見が分かれるポイントは少し明確にしておいたほうがせっかく御議論する上で重要かと思います。

1 つは、中村委員がおっしゃったように、どういう法的な仕掛けの中で明確性を高めていくかというので、実態に与える影響は少し違うので、その辺りのグラデーションはあるのだろうという話が 1 つです。もう 1 つは、神吉先生がおっしゃったような、当事者である労使がある程度合意していたものに関して、どの程度明確化したものが合理、不合理の判断として引っかかってくるのかといった場合の話です。これは私はよく分からないのは、その話は現行法でもある程度、潜在的にあり得るということではあるわけですよね。現行法のその他の事情のところで何が引っかかってくるかということで、それが恐らく、私の理解では、明確になればなるほど、そこのカテゴリーがバッティングする可能性が高くなるという理解でいいのですか。

○神吉委員 待遇の「趣旨・性格に応じ」というのは、明確にするだけでなく、確実に狭めていますよね。それが、先ほど松浦委員が言われたことと同じように、副作用がないかという懸念です。

○柳川座長 そこは今おっしゃったように、明確になっている話と、ある程度焦点を狭めていくこととの関係ということですかね。それに関係するのですが、恐らく、先ほど松浦委員がおっしゃったように、この話は結局のところ因数分解して、それぞれで合理、不合理を判断していきましょうという構造を持つので、ある種の因数分解をできるようにしてもらうというところが裏側の話として、どうしても入ってくると思います。それは現状でいくと、できている会社もあるかもしれませんが、海外の会社が手当は別として、基本給のところできちんと因数分解ができるような状態でないと、因数分解をして、このパーツに関しては合理ですよ、不合理ですよとされると、そこのパーツを切り出すことができないというところに大きな課題があると思います。

 そういう意味では、通常でいくと、現状でやられている賃金体系を前提にいろいろ法律なりで判断していくのだと思いますが、やや前向きというか、未来志向的な部分がガイドラインの一連の議論の中には入っていて、何となくそういう方向に持っていってくださいと。それを基に判断をしますよというところが入っているというのが私の感触です。その部分がどこまでできるのか、あるいはできないのか、あるいはやってもらうのかというところで、多分スタンスが少し変わってくるかと思います。それは細かいところでいけば後から出てくるような、どの程度の猶予期間を持たせるのかというところと関係するのだろうとは思いますが、それだけではなく、全体の今の法制度のあり方に関するフィロソフィカルな、そもそも論に関する御議論の違い、意見の違いがそこから出てくると思います。

 現行、今の労使の慣行を前提に、そこで問題が起きないようにすると考えるか、もう少し変えてもらうというところまで踏み込んでいる話なのか、あるいはその中間なのか、多少の議論があるような気がします。

○松浦委員 方向性として、なるべく説明がしやすい賃金体系にしていくべきということについては、私も賛同しています。できるだけ比較しやすいような制度にしていくことについても否定するつもりはありません。

 しかしながら、賃金制度の体系というのは、従業員のモチベーション、企業としての人材マネジメント等々、様々な考慮要素のもとで、限られた資源をどう配分していくかという観点から決めていくわけで、比較しやすいこと、説明しやすいことも賃金体系を決める上での考慮要素の 1 つではありますが、それだけで決めるわけではないと思っております。

具体的なお話をしますと、例えば正社員に対してコンピテンシー評価を導入している企業があります。コンピテンシーというのは行動特性です。こういうことをやっている、ああいうことをやっているというように、企業が求める行動特性を細かく決めて従業員の行動を評価する手法で、それなりにとても手間がかかります。例えば、それを正社員に対して適用している企業が、非正規社員にも同じようにコンピテンシー評価を適用しなさいとわれると、管理職に対しておそらく非常に大きな負荷がかかります。

ですから、制度を共通化するなどして説明・比較しやすい因数分解ができるようにすることは、限られた資源をさまざまな社員に効果的に配分するという目的の 1 つの手法に過ぎず、因数分解自体が目的になるのは違うのではないかと。これは私の意見ですので、他の委員の方とは異なるかもしれませんが、 1 つの意見としてお聞きいただければと思います。以上です。

○神吉委員 私はむしろ松浦さんと同じように思っておりまして、賃金をどういうふうに配分するかというのは、本当は企業の腕の見せどころ、知恵の絞りどころだと思うのです。そこに、あまりにも硬直的な縛りをかけることは、生産性を阻害すると思うのです。もちろん、不合理なものは許されないのですが、合理的だと必ず説明が付くものまでギリギリと絞っていくのは、むしろ社会にとっても良いことではないと思います。

 あと大前提の話ですが、コンピテンシーを、正社員と非正規の両方に掛けていくのは難しいとおっしゃっていましたが、その場合の非正規で念頭に置かれているのは、パート、有期、派遣で言うとどれですか。パートと有期を一緒にされていますが、無期のパートは同じような待遇はできませんかね。実はパートは、本来的に臨時雇用の人たちとは違うのではないかと思います。

○松浦委員 非正社員を 1 つの集団として一括りにして議論することに対しては、私もずっと違和感を持っています。

先ほど申し上げた例のように正社員にコンピテンシー評価を適用するのであれば、無期転換した元有期の方々が、そこに近づけられる可能性が最も高い集団ではないかと思われます。無期転換した元有期の方々は、おそらく非正社員のカテゴリーに含まれないという整理になっているのだと思うのですが。

 一方、非正社員には有期、パート、派遣だけではなくアルバイト、アルバイトの中には学生さんと、いろいろな形態が含まれていて、就労ニーズも大きく異なります。こうした多様な非正社員が、全部一緒に議論されていることに対しては、やはり違和感を覚えます。

○神吉委員 今おっしゃったとおり、法律上非正規と言えば、フルに対するパート、直用に対する派遣、無期に対する有期となってしまいますが、しかし、その中に先ほど言われた無期転換の有期も既に無期になっていて、パートですらなければ、もう非正規ではないのですよね。ですから、法律上は非正規に入らないとは思いますが、同じパート、あるいは有期であっても、学生なのか、それとも定年後の再雇用なのか、それとも主婦パートであるとか、それぞれ状況が違うと。企業の中では、ニーズに合わせた雇用管理区分を、法律上のとは違う管理区分で使って、限られた資源を配分していると。そこで、確かに格差は生じているのかもしれませんが、それが合理的か不合理かというのは、企業ごとに見ていかないと、杓子定規に要素に分解して、こちらは不合理で、こちらは合理と客観的に決まるものでは決してないと思います。この立て付けの仕方が、一方向に向かう在り方で良いのだろうかという疑問は持っています。

○柳川座長 よろしいですか。これは次回の分もですが、全部かなり重なっているので、相当つながっている部分があるので、また同じような御議論が出るかと思いますので先に進んで、また御議論があれば戻って意見を出していただければと思います。続きまして、説明義務の整備・いわゆる「立証責任」関係に関する議論に入りたいと思います。事務局より資料の御説明と、この論点に関する、本日、御欠席の委員の方々からの御意見の説明をお願いします。

○河村企画官 資料 1 2 の論点です。 1 つ目として、「説明義務の在り方」として、意義や説明の時期、具体的内容をどうするか。この関連で、現行制度の資料は、参考資料 1 13 ページと 14 ページに付けております。現行のパート法の 14 条において説明義務の規定を置いておりますが、 13 ページの一番上に条文をそのまま付けております。 1 項がパートの方を雇入れたときの説明義務。法律の書き方としては、「第 9 条から前条 ( 13 ) までの規定によって措置を講ずべきこととされている事項に関し講ずることとしている措置の内容」という言い方をしております。

 この具体的な内容として、下の 14 ページの左側に「雇入れ時」の説明事項として書いております。一番分かりやすいのは、その下の「説明内容の例」です。賃金制度がどうなっているかとか、どういう教育訓練があるか、どの福利厚生施設が利用できるかなどを説明していただくという現状となっております。

13 ページの一番上に戻って、第 14 条第 2 項が「求めがあったときの説明義務」ですが、これも「第 6 条、第 7 条、第 9 条から前条までの規定によって措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項」を説明しなければならないと。これも 14 ページの右側に 2 項の関係の説明義務の中身が書かれております。例を見ていただきますと、どういう要素をどう勘案して賃金決定をしたか、どんな教育訓練とか福利厚生施設がなぜ使えるか使えないのかといったことを説明することを想定して、この規定が置かれております。

 説明の方法等については、 13 ページの中段ですが、基本的に口頭で行うことを原則として規定しております。

 資料 1 の論点の 2 3 4 つ目ですが、まず、 2 つ目として、いわゆる「立証責任」について、報道等においても、今回の議論の焦点として、立証責任を転換すべきなのかどうかという言われ方がされておりますが、立証責任について整理を事務局でさせていただいたものが、参考資料 1 17 ページになります。

17 ページの一番上の四角の箱にあるとおり、法律用語としての立証責任の意味は、基本的に、ある「事実の存否」が不明な場合に、事実がないとみなされることによって受ける不利益のことであると。ですから、交通事故やお金の貸し借りのような事実の存否の問題に関しては正に当てはまりますが、基本的に今回の待遇差が不合理なのかどうかといった裁判官が最終的に判断することになる要件、「規範的要件」と呼んでおりますが、規範的要件に関しては、こういった意味での立証責任の問題ではないわけですが、世間一般として言われているときの意味合いとしては、 3 つ目の○の1にあるとおり、立証活動を法廷に立って立証するという行為自体の実務的な負担の意味合いや、あと一部には、2にあるような裁判での負けやすさに関しての意味合いとして、報道等において使われている印象を持っております。

 実際に世論の論調としては、先進国である EU のように法改正をすれば、これが何かしら変わるのではないかといった期待感の中に議論がされているように感じられますが、実際には立証活動の実務負担の1の意味では、 17 ページの下の図の所ですが、現行法でも待遇の相違に関しては、主に労働者が立証活動を行って、不合理であるか否かは、労働者と使用者がそれぞれ立証活動を行うと。これが EU 指令のような形で改正を行ったとしても、右の欄ですが、不利益な取り扱いがあるのかどうかは、主に労働者が立証して、合理的な理由があるか否かは、労働者と使用者でそれぞれ立証活動を行いますので、この構造自体については、基本的に変わらないと考えられると。

 一方で、使用者側の裁判での負けやすさにおいては変わらないとする考え方と、使用者側が負けやすくなる、増えるという考え方の両方があるのではないかと事務的に整理しております。

 こういったことも踏まえて、資料 1 に戻って、論点の 3 つ目の○として、現行、待遇差に対する規範として不合理を禁止しているわけですが、これをどのように規定していくかということです。

4 点目ですが、裁判での法廷に立って立証活動をしなければいけないという意味での実務負担の意味合いにおいては、それは事前に使用者側から説明を受ける形で待遇差の理由等について、どれだけ情報を得られるかということも非常に関連性を持っておりますので、両者の関係性についてどう考えていくかという点について御議論を頂ければと思います。

 本日欠席の先生方から出されている御意見について少し御紹介をさせていただきます。まず、水町先生は○の 2 つ目ですが、今、事務局から御説明させていただいたものと重複しますが、不合理の禁止に関しては、基本的に規範的要件と呼ばれるものですので、使用者と労働者の双方がそれぞれの主張を基礎付ける事実について立証する構造になっているということで、具体的に例を挙げていただいております。水町先生の御意見としては、ここで、より重要なのは、労働者の待遇について制度の設計と運用をしている使用者に、待遇差について労働者への説明義務を課していき、その情報の偏りをなくすことではないかという御意見を頂戴しております。

 皆川先生の御意見ですが、皆川先生の紙の 1 ページの下半分の所に、 2 の関係の御意見があります。 1 つ目の黒ポツですが、現行のパート法の第 14 条の説明義務について、具体的にどんな措置の内容について説明をすべきことになるのか判然としないところがあると。これでは法律の規定が当事者の行為規範として十分に機能しないおそれがあるのではないかと。

2 つ目のポツですが、事業主に課される説明義務と、民事訴訟等における主張立証責任の配分自体について、非常に議論として混同されがちですので、通知などによる周知のための措置が考えられてよいのではないかという御意見を頂いております。

 更に現行のパート法第 8 条と、契約法第 20 条の解釈として、「不合理」であることの立証責任を基本的に労働者が負担すると解すると、仮に今回の改正において、事業主に説明義務を課していったときに、結局、将来的に労働者が不合理性を立証する際の材料になるものを、事業主が説明義務に基づいて提供するという関係にも捉えられるので、積極的な説明をしない方向の動機付けが生じてしまうのではないかと。事業主に説明義務を課すことの趣旨が損なわれないように、訴訟における立証責任の配分の観点からも考慮がなされる必要があるだろうという御意見も頂戴しております。

 ペーパーではないのですが、川口先生から、メールの文章にて御意見を事前に頂戴しております。読み上げますが、川口先生のお考えは、実際に合理的でないものは経済活動の中で淘汰をされていくものであるが、実際に合理性を持っている賃金制度だったとしても、個々の主体が合理的にそれを説明できるかどうかというのとは少し開きがあるのではないかという趣旨の御意見を頂いております。

 今般の挙証責任の議論においては、雇用主が合理的に説明できる範囲を超える合理性を持った賃金制度があり得ると。その範囲は広範に及び得るという点に十分な配慮をする必要があると考え、以下に意見を述べます。

 経済学の分析では、雇用主や労働者が合理的に行動することを仮定しながら分析を行います。例えば、雇用主は利潤を最大化するように賃金制度を設計するという仮定を置いて、どのような賃金制度を雇用主が設計するかを分析します。このような分析手法に対して、経済学を学び始めたばかりの学生や実務家から、雇用主は経済学が想定するような合理的な行動をしていないとの批判がなされることがあります。雇用主を含めた私たちの日々の行動が説明し難き経験や勘に基づく判断、その時々の感情に突き動かされていることを考えれば、この批判はもっともなものです。

 しかし、経済学者があえて雇用主の合理性を仮定しながら分析を勧めるのは、雇用主が様々な賃金制度を導入して試行錯誤しながら行き着いた賃金制度は合理的なものとなるだろうと想定しているからですと。あるいは合理的な賃金制度を設計できなかった雇用主は、合理的な賃金制度を設計できた雇用主に比べて、その利潤の点で劣るために市場競争において淘汰されると想定しているからですと。つまり、雇用主の合理性の仮定は、必ずしも雇用主が明確に目標を設定し、それに向けて合目的な行動を取っていることを想定しているわけではなく、雇用主の試行錯誤や淘汰を経て、合理的な行動が選ばれているという事態をも想定したものだと言えます。そのため、経済学者が想定する合理的行動の中には、雇用主自身が意識して取っている行動の範囲を超えるものが含まれる可能性が多分にあります。

 雇用主が採用する賃金制度に関しても、雇用主が合理的に説明できる範囲を超える合理的賃金制度があり得るという点に十分な配慮が必要だと考えます、という御意見をメールにて頂戴しております。事務局からは以上です。

○柳川座長 ただいまの説明について、皆様から御意見、御質問をお出しいただければと思います。

○中村委員 幾つかの論点が提示もされていますが、立証責任を課すかという話と、説明義務の履行の有効性をどう担保していくかの 2 つに論点が大きく分かれていると改めて思いました。

 その上で私自身の意見としては、日本型雇用慣行の中で、特に基本給を中心として賃金については非常に説明が難しいということが言われている中で、今回、同一賃金に第一歩を踏み出すという、第一歩の段階で立証責任までいくことが現実の企業活動の中で可能かどうかという点については、疑問があります。

 一方で、説明義務の強化という観点で言うと、欧州の同一労働同一賃金を日本に持ち込むと大きな方針を決めたときに、労働者側の納得性、透明性ということを日本でも、もう一段高めていきたいという趣旨だったと思いますので、そういう意味で言うと、説明義務の在り方というのは工夫の余地があると考えました。

 その中での大きなポイントは、まずはパート法には雇入時等の説明義務が課されていますが労契法のほうではないということに関してどう考えるかというのが 1 点です。

 続いて、パート法も含めて、今回同一企業内での待遇差、単純にその人が幾らもらっているかではなくて、待遇差について考えるということなので、そういうことが例えば、 14 ページの雇入時の説明事項というような所に追記されるべきではないかというのが 2 点目です。

 併せて、既に指針か何かで定められていると思うのですが、納得性、透明性を労働者側が求めない一番の理由は、それを言うことによって結局、雇止めに遭ってしまったり職場で嫌な思いをしたりという、何よりも求めることによるリスクが高い、それが許されない職場の雰囲気であることがあるので、そういう意味で言うと、こういう求めをしたことによって直ちに不利益扱いをすることは許されないということを少し明示的に扱うというような、そちら側の配慮はあり得ると考えています。

○松浦委員 まず、そもそも立証責任の議論は、欧州では企業に立証責任が課されている例があるので日本でもそうすべきではないかというようなところから出てきたお話ではないかと思います。ただ、それについてはこの検討会の前段の議論でも随分整理していただいたように、欧州では産業別労働協約によって共通の職種別賃金相場が形成されており、それと違うということに対して立証責任を課すことが理解され得る。一方で、日本はそういうものが何もない中で、さらに非常にややこしい賃金体系の中で、合理、不合理の立証責任を企業だけに課されることに対して納得を得られないでしょうから、そもそも立証責任を日本の今の現状において課すことは非常に難しいのではないかと思っております。

 水町委員の提出された御意見を見ても、立証責任を課せとはおっしゃっておられないように見えます。また、皆川委員の提出された御意見の中で、立証責任の話と説明義務の話が混同して用いられる懸念があると指摘されていますが、それは非常に重要な論点だと思います。

 水町委員がおっしゃっているのは、私の理解では、あくまでも説明義務を強化したほうがいいというお話で、立証責任の話ではないのではないかと思います。皆川委員がおっしゃっているように、企業に対して説明義務を強化した上で立証責任を課すと、立証責任を問われないようになるべく説明しない懸念もあるということは、私も同じ意見です。

 私は、立証責任を課すということ関しては、名を取って実を捨てるといいますか、いいことのように見えて実は労使とも余りいい結果にはならないと考えているので反対の立場にいるのですが、説明義務を強化することについては、ある程度必要なのではないかと考えています。

 そのときに、例えばパート労働法では、説明義務に関しては説明を求められたときというようになっているのですが、これは先ほど中村委員からも御指摘がありましたように、労働者の立場から「こういうことを説明してください」とはなかなか言いにくいと思います。もちろん、それによって不利益はないと言われたとしても、恐らく職場の中では実際に不利益があるかもしれないと思うから言わないわけです。そういう意味では、どこまでどういう形で開示するかは別にして、むしろある程度あらゆる人に説明する、あらゆる人に情報提供するというような形にしていかないと、説明義務がうまく機能しにくいのではないかと思います。

○神吉委員 今、松浦委員がおっしゃったことに関してです。現行法も、待遇の相違が不合理と認められるものであってはならないので、水町先生のペーパーだと、例 1 、例 2 とありますが、例 2 のほう、立証責任自体は不合理と認められるという方にあって、これを転換するかどうかという議論だと思うのです。例 2 を例 1 のほうにするかということです。

 でも、このペーパーではそこまではおっしゃっていなくて、不合理禁止から合理性を要求するというところまでの転換は主張されていなくて、ただ説明義務で、実効的なものにしていこうという御主張かなと思いました。

 私の考えとしては、先ほどから述べてきたとおり、使用者側だけではなくて、使用者と労働者で一体となって、会社の中で形成されてきた合理性、不合理性というのがあると思うので、そういった自由度をなるべく認められるように、不合理な格差を禁止するという現在の在り方自体は維持すべきだと考えています。

 立証責任は問題にしないほうがいいと思っているのですが、その説明義務をどのように詰めていくかに関しても、私は松浦委員と同じく、説明義務を充実させていくという方向がいいだろうと思っています。

 例えば水町ペーパーで上がっているような、労働者に対する待遇差についての説明義務というのは、サラッと書いてありますが、意外と内容が難しいと思っています。先ほどの論点ペーパーの 1 2 番目の○で、比較対象労働者をどう定義するかというのが飛ばされていると思うのですが、これとの関係です。何との待遇差なのかということは、実務上、非常に大きな問題になってくるでしょう。雇用管理区分ごとの比較なのか、何であの人と待遇が違うのかということなのか。それについて説明を求められたとき、答えられるか。しかも、雇入時に誰との差を説明しなければいけないのかということになってくると、簡単に「待遇差について説明すべき」という一言を入れるだけで、実務はかなり混乱するのではないかと思っています。

○中村委員 私自身もそこは同意します。今回、同一企業内の待遇差の是正ということを前半の議論での大方針と掲げてきた中で、一方で待遇差そのものをどのように説明していくのだ、明らかにするのだというところは、非常に難しいポイントで、そもそも比較対象者がいるかという話もそうですし、企業内で全く賃金テーブルがそもそもない、若しくはあってもブラックボックスになっているというときに、金銭給付の、特に基本給の部分を、ここからここは幾らというレンジをすべからく開示しましょうということが、本当にリアリティのある施策かどうかというのは、かなり議論が必要なポイントだと思います。

 ですので、法律の条文で書き込む範囲という話と、そういうことの運用の中でどこまでのことを期待していくかということは、丁寧な議論が必要なのではないか。取り分け待遇差については、そういう論点だろうなと考えています。

○柳川座長 少し整理させていただきます。参考資料 1 17 18 ページにあるように、法律用語としての立証責任であったり、立証責任の転換という話は、基本的にはメインの話ではなくて、そういう議論はする必要はないのだろうと。

 ここで書いているように、一般用語としての立証責任の転換みたいなことが、 1 つのポイントになっていて、それはこの表でいくところの現行法と EU 式の違いで、不合理であるか否かを説明するのか、合理的な理由があるか否かを説明するのか、立証するのかという違いとして、捉えられるでしょうというところですよね。

 この 2 つには、どちらがどれだけ立証活動の実務負担があるかというところを超えて、現状をどこまで肯定されるかというところに大分差があると。今が OK だ、今が確実に OK だということを言わなければいけないのか、駄目なところはないかというように言えばいいのかということに関しては、やるべきことに差がありそうなので、そこに関しては神吉先生がおっしゃるように、現行を EU 式にすることには問題が大きいのではないかという御意見があったということだと思います。

 もう 1 つのポイントは、説明義務の在り方との関係で、充実させていくべきは説明義務のほうで、説明義務が充実すれば、恐らくこの 2 つの差は余り問題にならない、あるいは説明義務のほうを充実させることで、実質的に、この左か右の方向に持っていくことができるというような御意見がありました。

 そうすると、説明義務の在り方のほうに掛かるのですが、説明義務の在り方を充実させて、立証責任うんぬんと言っている方向に持っていくことに関しては、おおむね皆さん賛成なのだと思いますが、説明義務の果たし方のところは結構難しいよねというのが、今出していただいたところなのだろうと思います。これを、 1 つは比較対象者の話をどうしていくのかということと、現状でどこまでできるのかという話は、留保条件が付くということだったのかなと思います。

 それから、説明を求められたときには説明をするということは、説明義務の果たし方としてはいいように見えるのだけれども、実質的にはなかなか機能しないので、このパターンはやめたほうがいいのではないか。求められたら言うのではなくて、言うべきことは開示して説明するという方向がより現実的なのではないかという御意見があったと思います。

 まず、今の整理で何か問題があれば言っていただきたいと思います。もう 1 つは、比較対象労働者との関係です。全体の今日の御発言で見ると、個別のところを「あの人と比べて」というのはとても難しいので、管理区分ごとがぎりぎりではないかという感じでしょうか。それとも管理区分でもハードルは高いということでしょうか。この辺りがクリアになるのであれば、クリアにしていただければと思います。

○松浦委員 雇用管理区分ごとになるのだと思います。個別にあの人とあの人という話になると、それこそ雇用管理区分の中の外れ値と比べるというようなことになりかねないので、余り生産的な議論にならないと思います。

 雇用管理区分と雇用管理区分で比べるといったときに、例えば該当する非正社員がいる雇用管理区分と、正社員の中で最も近いと考えられる雇用管理区分が比較対象になるのだと思います。どの雇用管理区分を比較対象にするかということも難しいのですが、それが決まったとしても、非正社員の雇用管理区分と比較対象者の雇用管理区分で、どう比較するかということが技術的には非常に難しいということもあります。

 ですので、それをどうするか。例えば正社員の中の雇用管理区分の賃金表を見せられたとしても、わけが分からないでしょう。次善の策として、モデル賃金か何かを示すということがあるのかもしれないですが、例えば正社員の雇用管理区分が職能給の等級表で、非正社員が職務給の場合、実際には職務給も多くないのですがあくまでも一つの例として、モデル賃金といっても両者の物差しが違うので、つまりそれぞれの等級が対応関係にないので比べられない。この点が、これまで均衡の議論に十分踏み込めなかった一番のネックだと思うのです。

 私も物差しが異なる賃金体系をどうすれば比較し得るかについて、いろいろ考えてみましたが、今のところのアイディアとしては実務負担が大きい職務評価しか浮かんでおりません。具体的には、ある雇用区分の何人かの正社員と非正社員のサンプルを取り出してきて、それぞれの仕事の内容というものがどうなっているかというのを点数化します。点数化した上で、職務配置の幅、転勤があるかどうか、残業するかどうかなどを考慮した人材活用係数を乗じて比べて、均衡が図れているかどうかをチェックするわけです。

 ただ、それなりに手間がかかるので、全ての企業に職務評価ができるかといわれると、難しい面が大きいと思います。大企業はある程度できるかもしれませんが、特に人員が限られている中小企業では難しいでしょう。そうすると、本来は物差しが違うのだから比較できないのだけれども、もう少し簡易な、勤続 5 年、 10 年までいったときに、正社員のモデル賃金であればこれぐらいの水準、非正社員で同じ勤続なら、これぐらいの水準ということで両者の差を示して、その差の根拠はこういう違いによるものですと説明してもらうという手段も、ある程度許容せざるを得ないのかもしれません。

○中村委員 松浦委員がおっしゃるように、私も雇用管理区分というものに賛成です。その上で、モデル賃金等で比較するときに、今のような幾つもの工夫が必要になると思うのですが、今まで正社員のモデル賃金は勤続年数が 30 年あるようなことを想定して作られていたものが、有期に関しては今後最大 5 年になっていくので、最大 5 年目のところでこういうことが起こるというようなものを、例えば 2 つ提示するというのはリアリティがあると思われますか。 5 年目の時点で、この有期若しくはパートの方は、こういう職務をしていたら標準的にはこのぐらいの賃金になっています。近接する正社員区分の人たちの中には、 5 年目でこのぐらいになっています。なぜならばというような。

○松浦委員 それはモデル賃金で比較するということになると思います。それで正確な比較ができるかどうかというのは疑問ですが、 1 つの目安ぐらいにはなるのかなと思います。

 ただし、正社員のモデル賃金というのはある程度用意されていると思うのですが、非正社員の場合は、数が少なかったりすると、モデル賃金そのものがない可能性もあるので、やはり両者の待遇差を説明する材料をどのように作るのかというのが非常に重要な宿題になります。これを示せないと説明義務を強化しても実効性が期待しにくいので、必ずやらなくてはいけない宿題だと思うのですが、難しいのは難しいです。

○神吉委員 それこそ何をやっていいか分からないものが、説明義務違反という法的な効果をもたらしてしまうので、何をすれば説明義務を果たしたことになるのか、特に待遇差に関しては、それこそガイドラインか何かで知らせるべき事項なのではないでしょうか。本当に入れるべきなのかどうかも含めて。

○柳川座長 説明義務を重視していって、その方向で持っていくことは、少なくともここにいらっしゃる皆様は合意していて、対象は管理区分でしかあり得ないだろうということも合意していて、そこは今日御欠席の方も、そんなに大きな違和感はないのだろうと思います。

 ただ、今回は法整備に関する議論なので、それを具体的に法整備にどこまで落としていけるのかということです。それから、その裏側に、松浦委員や中村委員からお話を出していただいたような具体的なアイディアをどこまで進めていくのかを、今回のところで、どこまで書き込むのかという話です。

 もう 1 つは、その意味では、ガイドライン案がありますので、あれをここの話に活用させていくことができるのかできないのかということです。その意味では、ガイドライン案で作っていったときに、同一というところの見方に関して 2 つのパターンで作っていただいたので、そこのところだけでも説明義務を課すような形にするのが、どこまで今後のためにいいと考えるのかどうかというところは、大きく今のように作っていくという話と併せて、もし議論があれば。

 順番が逆なのですが、今ガイドラインがあることを考えると、それを梃に、この説明義務の在り方を作っていくというのも、 1 つの考え方ではあります。

○中村委員 先生がおっしゃるように、雇用管理区分間の待遇差を説明するときに、もう 1 つのポイントとしては待遇の中の要因の分解の仕方というのは、 1 つ論点にあって、基本給、手当、賞与、退職金、福利厚生等ということの分解の中で、当該雇用管理区分については、こういうものがモデルとしては想定されている近接雇用管理区分としてはこういうものが想定されているという、そこの部分を少し分かりやすく説明するということはできるのではないかと思います。

 一番の難度は、基本給のところの金額的な差、水準の差をどこまで期待するかというところは、最後まで残るのではないかと聞いていました。

○松浦委員 待遇差の説明を入れるかどうかということなのですが、入れるということにすれば、先ほど神吉委員がおっしゃったように、何をすれば義務を果たしたことになるのかということを明確にする必要があります。また、それは 1 つに絞ってしまうと、遂行しにくいケースも出てくると思いますので、幾つか選択肢を示す必要があるのではないかと思います。

1 つのやり方として考えられるのは、選択的措置義務のような形で、義務か努力義務かは検討する必要がありますが、企業に対して幾つかの選択肢を提示し、そのうちの必ず 1 つは履行してくださいというような佇まいにすることもあり得るのではないかと思います。

 選択肢としては、必ずしも水準差を示すということだけではなく、例えば非正社員に対してきちんと職場懇談会を開いて労働条件等を説明している等、手法面からのアプローチも考えられると思います。

○神吉委員 今おっしゃったのは比較の方向性自体だけではなくて、決まり方にも着目して、職場懇談会をということでしょうか。要因分解という考え方とは、若干、性質が違ってきますよね。

○松浦委員 確かに若干、性質が違ってくるのですが、一番の目的が、待遇差に関して正社員と非正社員の両者から納得を得られることであれば、説明の仕方についてはもう少し幅広に考えてもいいのではないかと。この資料は必ず提出しなくてはいけないとかだけではなくて、幾つかの選択肢を出して、その中で労使が一番やりやすい方法、あるいは両者の納得を得られやすい方法を選ぶというほうが現実的で実効性があるのではないかという、 1 つの意見です。

○神吉委員 私もそのように、ある差について客観的に、何割分はこれで、何割分はこれでと説明していくのは、恐らく不可能だろうと思います。仮に、表面上できたとしても、フィクションだと思うのです。

 どこかには、「納得しているからいいのだ」という要素が入ってこざるを得ず、しかも実際に納得しているということは、紛争にならないという意味では非常に重要なことなので、その要素をどこかに入れられないかなと思っています。

 水町先生の資料の下の○の所で、「不合理な待遇差を是正するための労使のコミュニケーションを深めていることが重要」とあるのですが、これを説明の場面、あるいは「その他の事情」などで、きちんとコミュニケーションを取って、その上で作られた賃金体系なのだということが積極的に評価されるような制度設計にできないでしょうか。それは説明義務のところでも松浦委員がおっしゃったように、比較という場面でも出てき得ますし、合理か不合理の判断のところでも、そういう要素を積極的に入れていくのがいいのではないかと思っています。

 そもそもヨーロッパであれば大きな物差しがある中で、その物差しからどれだけずれているかという問題なのに対して、日本は企業ごとに物差しが違い、かつ企業の中に幾つも物差しがある中で、要素を客観的に分けて説明するのは、どこかに無理が出てくるのではないかと思います。

○松浦委員 補足的に言いますと、企業の中には、賃金を比較できるような形にして共通化、透明化している事例もないことはないので、そういう企業についてはそれでいいでしょうと。それができない企業、あるいはそれが最善の策だとは考えない企業については、正規−非正規で別の物差しによる賃金体系を採用するということももちろんあり得るわけですが、そういう企業に対しては、先ほど申し上げたような、選択的にでも待遇差の納得に向けた何らかの行為を求めるという縛りを掛ける必要があるのではないかと思います。

○柳川座長 今の話は、管理区分ごとの違いをきちんと説明させるということの説明義務をもう少し見方を変えて、賃金体系の決まり方に関してきちんと説明をさせるというタイプの話ですよね。決まり方を、透明性のある比較可能な賃金表を作るという形で比較可能にするやり方もあれば、そうでない労使が納得のある形で決まり方、あるいはコミュニケーションを取るという形で担保するやり方もあるし、基本は賃金表を作って透明性のものにするということであるにしても、そうでないのであればきちんと説明するように求めるということですよね。それは仕組みに関しての説明義務という方法に近いということですかね。

○松浦委員 柳川座長に整理頂いたような大きな 2 つの選択肢があって、その中で先ほど申し上げた技術的な比較の問題は、後者の、賃金体系が違うのだけれども労使のコミュニケーションで何らかの合意を得ようとするときの材料をどう作るかという話になると思います。

 その材料として、今私の中にアイディアとしてあるのは職務評価なのですが、それは全ての企業ではなかなか難しいかもしれないので、中村委員がおっしゃったような、モデル賃金の比較によってある程度目安を示すようなことも含めて、コミュニケーションの材料が必要になってくるということだと思います。

○柳川座長 ここは法律論なので何らかの法律を作るにしても、社内で作っていく仕組みなので、ぽんと作れば、それを直ちに強制的にやってくださいというわけにはいかないので、ある種、現実的な対応可能性を踏まえた時間軸を確保した議論をしておかないといけないのだろうと思うのです。その意味では、割とすぐに対応できる話と、少し先にならないと企業側としては対応できない話と、あるいは先ほどおっしゃったように、大企業なら簡単にできる話と中小企業ではなかなか難しい話と、そういう話を丁寧に、ここで議論したことは示して、その上でそういうものを踏まえて、ではどのような形の法律の立て付けにしておくかというところは、また出てくるのだろうと思います。

 難しいですけれども、少なくとも同一労働同一賃金みたいな話で、多少前へ進めようとすると、きちんと説明をするということに関して何らかの仕掛けを作っていかないと、みんなが納得感を得られないだろうというところは大筋では皆さんの合意はできているかなと思います。

○松浦委員 資料の 17 ページの所で、現行法の場合と、 EU 指令に倣って改正した場合があるのですが、この EU 指令に倣って改正した場合というのは、あくまでも EU 指令に倣ってだから、1・2・3の職務内容、職務内容配置の変更範囲、その他の事情というのがカットされているという理解で、もし EU 式に倣って改正したらこのような感じだというイメージを参考に示していただいているという理解でいいのですか。

○河村企画官 そうですね。この「 EU 式の合理的な理由」という所に、現行法が挙げている 3 考慮要素が当てはまるという判断もあるのでしょうし、当てはまらないという判断もあるのでしょうけれども、 EU 式ですと、それは全部裁判だということになりますので、法律上は「合理的理由」としか書かないという。

○松浦委員 ということですね。これは、もしそう考えた場合はこうなりますという参考ですね。

○河村企画官 そうです。

○柳川座長 事務局にお伺いしますが、ここの話は、先ほど出ましたガイドライン案の中身とは、どういう形でリンクさせて考えればいいのですか。そこはもうフリーハンドであると。

 ガイドライン案はあるのですが、例えばガイドライン案の中身を遵守していることをきちんと説明すれば、説明義務を果たしたというような話というのは、想定され得るのか。説明義務のところは、ガイドラインとは別に何か、先ほど松浦委員からお話があったようなアイディアをやっていこうとすると、それはガイドラインで規定された同一労働同一賃金のポイントとは違うというか、更に進んだ話になりますよね。その辺りは、どのように、ここを整理すればよろしいということでしょうか。

○河村企画官 冒頭に説明を飛ばしてしまったのですが、政府が一億総活躍プランの中で宿題を負っている説明義務の形としては、 2 ページに一億総活躍プランの抜粋を付けておりますが、赤枠の 3 行目を御覧ください。

 「非正規雇用労働者と正規雇用労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備」と言われていることがありますので、基本的には正規と非正規に待遇の差があるときの「差の説明義務」という言われ方をしておりますが、今御議論いただいている説明義務の在り方自体は必ずしもこれに縛られずに、説明義務の具体的な内容として、差なのか、それとも別の形なのか、今御議論いただいたように賃金決定のプロセスのようなものを説明していくというのもあり得るのでしょうし、それ自体が御検討いただくべき事項なのだと思いますので、その中の 1 つの形としては、もちろんガイドラインに、ある程度参考にしながら、あれを足掛かりとして説明義務の内容を考えていくというやり方もあるかとは思います。

○柳川座長 そうすると、ガイドライン案の法制化を少し超えた議論が、ここでいろいろあって構わないということですか。

○河村企画官 そうですね。少し別の切り口の御議論を頂くべき事項かと思います。

○松浦委員 同じことを言っているのかもしれないのですが、検討会の役割は、あくまでも法整備の方向性の選択肢の提示とそれぞれのメリットとデメリット、考え方の整理までだということは承知しているのですが、その後、所定の意思決定プロセスを経て、説明の内容やプロセスのあり方等が決まった場合には、その内容がガイドライン案に盛り込まれることもあり得ると考えてよろしいのでしょうか。

○河村企画官 それは本日の論点の最後にも、「法整備とガイドライン案の関係性」という論点を挙げていますが、 12 20 日に出されたガイドライン案は基本的には現行法に当てはめれば、第 8 条や第 20 条のように、不合理な待遇差の禁止の解釈というか、考え方を書くようなイメージですが、そうではなくて説明義務の内容などに係らしめて、そういうものについても告示で、事業者が果たすべき義務内容を詳細に規定していっている例というのは他法にもたくさんありますので、そういう設計は当然あり得ると思います。

○柳川座長 取りあえず議論は尽くされたということで、続いて履行確保の在り方等の「その他」の事項に関する議論に入ります。事務局から資料の御説明と、この論点に関する御欠席の委員の方からの御意見の説明をお願いいたします。

○河村企画官 資料 1 3 の「その他」の 1 つ目の○です。まず 1 点目に、既に御議論いただいております非正規雇用労働者を含む労使のコミュニケーションの在り方、個別の労使も集団的労使も、両方についてどういう深め方があるかという論点です。あと 2 点目に、司法による待遇改善と行政の ADR ・報告徴収等による待遇改善の利点・欠点とさせていただいております。この関係の現状の資料として、 10 ページの所に関係法律の主な改正の経緯があります。今のパート法の 8 条の形になったのが、この資料の一番左の平成 26 年改正、 27 4 月施行で、パート法は比較的若いですけれども、契約法は少しそれよりも前の平成 24 年に公布されております。 25 4 月に施行されているという状況で、それ以降、実際に現行法に基づいて裁判が起きて、それが最高裁まで確定したのはまだ 1 件も出てきていません。 19 20 ページに、こうした現行の規定がない時代の確定判決を少し載せしておりますが、そうだとしても、かなり数としては少ない状況となっております。こうした裁判の件数自体については 31 ページに資料として挙げてあります。やはりドイツやフランス、イギリスに比べても日本の労働関係の紛争の裁判の件数自体は非常に少なくなっているのが実状です。実際に非正規の方が待遇差について、司法において争うのは現実的に少ないこともありまして、現行法では 15 ページですが、パート法の体系の中では、一定の場合の都道府県労働局が報告聴取に入って助言・指導・勧告をその事業主に対して行うという仕組みのほかに、都道府県の労働局において紛争の解決の援助をする。それから調停委員会が調停をするというような仕組みについても、 15 ページの右下のほうに設けている現行の状況であります。

 資料 1 に戻り、論点の 3 つ目ですが、法制の枠組をどうするか。特に、パートと有期の間の規制の内容がいろいろ異なっているわけですが、これについてどう考えるかということです。参考資料 2 として、パート法と契約法をそのままお出ししているのですが、労働契約法に関しては皆様方これまでも何回か御議論いただいていますとおり、基本的に労働契約のルールを一般に書いているものですので、こうした事業主に一定の行為義務を課していて、それを行政が報告聴取、助言・指導等を行って、行政の ADR も設置をするような枠組みに根本的になっていないところがあります。パートと有期の間でもパート法は様々な規定を置いていますけれども、例えばパート法の 7 条では、就業規則の作成に当たって、パートの方の意見聴取をするという努力義務なども設けていたりしますが、そうした規定が有期の雇用を規制している労働契約法には現実的にないという現状があります。その点をどう考えていくべきかということがこの○の 3 つ目です。

 資料 1 の最後の○、法整備と先般のガイドライン案との関係性をどうしていくか。法的根拠を設ける場合には、それは何についてのガイドライン案としてどういう効力をもたせていくのか自体についても論点としてあるかと思っております。この点の関係について、本日御欠席の委員の皆様からの御意見です。まず、水町先生の御意見の 3 つ目の○で、不合理な待遇差を是正するための労使のコミュニケーションを深めていくことが重要であり、この点は待遇差の合理性、不合理性の判断にも影響を与えうるものだと。コミュニケーション自体は交渉力の格差を考えれば個人間の個別的なものとすることは適切でない。手続の公正さという観点からは集団的なプロセスというように考えることが肝要だという御意見を頂いております。更にその下ですが、実際に待遇差についての解決の機関として、裁判だけでなく、より簡易で迅速に問題の解決ができるような、いわゆる行政の ADR の仕組みを身近に利用できるような法整備を行うことも重要だという御指摘を頂いております。

 続いて皆川先生の、 2 ページの 3 番で、 1 つ目の黒ポツです。今後、法改正を検討するに当たって、労使の自治的な取組を促すための手法として、例えば非正規の代表がきちんと選出をされているとか非正規の方から意見を適切にくみ取っていることが認められる場合に、待遇差について「不合理」とは言えないことの評価要素の 1 つとして位置付けていくことが考えられるのではないか。下の黒ポツで、こういったことがあったとしても、やはり格差是正を実効的にやろうとすれば、司法上の強行性を持つ規定を通じた規制を伴わないと、なかなか容易に実現できないので、労使のコミュニケーションを通じたとしても、実際の格差是正を導くような実体法上の規制はやはり必要だ、というコメントを頂いております。以上です。

○柳川座長 ただいまの御説明につきまして、委員の皆様から御質問や御意見をお出しいただければと思います。

○中村委員 教えていただきたいのですけれども、水町先生の資料の「紛争解決手続、いわゆる ADR が利用できるように法整備を行うこと」と、例えばこれを仮に法整備を行うとしたらどういうことが想定されているのかという観点と、同じく皆川先生の最後の所で、「司法上の強行性を持つ規定を通じた規制が必要である」というときに、これは何をおっしゃっているのかを事前のやり取りも含めて分かる範囲で、もう少し教えていただければと思います。

○河村企画官 水町先生のおっしゃっている行政の ADR を身近に利用できるようにというところで水町先生が念頭に置いておられるのは、パート法に、ある程度それがあるわけですけれども、ただ、実際、そのパート法の運用においては、第 8 条で、不合理な待遇差の禁止の規定は、この対象から実は除いている運用をしておりますので、それを乗せることも意図されていると思います。あと、明示的に先生に確認したわけではないのですが、有期についても、そうした同じような仕組みを利用できるようにする体制をすることを念頭に置かれている可能性があるのかなと思います。実際にそれをしようとしますと、契約法の体系の中に労働局で調停をしてとか、紛争解決援助をしてという規定を、そこだけポコッと入れるというのはちょっと実務的には想定が難しいところがありますので、技術的には内閣法制局とよく相談をして、いろいろとやっていかないといけないですけれども、 1 つの考えられ得る方法論としては、パート法の体系の中に、有期の方についても併せて規定をしていくことは考えられうるのかなと思います。

 皆川先生の、 2 ページの「格差是正を実効的に行うとするならば、やはり司法上の強行性を持つ規定を通じた規制をやらないと」というようにおっしゃっているのは、すみません。ここはもう私どもの理解は、先生が前段の所で、特にそうした集団的労使としてのプロセスをきちんと踏んでいるということを不合理性の判断の要素としてはと、先生はおっしゃられていますので、これは以前に先生から少しお伺いしたのは、その他の事情という考慮要素が 3 番目にありますけれども、そこで読むといったことは考えられるのではないかと、先生からお話をお伺いしたことはあります。その上で、そういうことをやったとしても、やはり今の 20 条とか、 8 条とか、そうしたきちんと民事効をもって規制をできる規定自体が伴わないといけないとおっしゃっているのかなと理解をしました。

○中村委員 ありがとうございました。

○松浦委員 参考資料 1 15 ページが現在のパート法の中のいわゆる ADR の仕組みだと思うのですが、この枠組みを使うとすれば、対象となる苦情や紛争の中に待遇差を入れていくというイメージになるわけですね。ちなみに、この仕組みは随分前からあると思うのですが、これまでどれぐらい使われているのかが分かれば教えていただけますか。

○河村企画官 これまでの累積の、例えば調停の件数とか紛争解決援助の件数ですね。累積だと、 31 ページの下の右側です。河野課長、すみません、参考資料の 31 ページの右側の、紛争解決援助の申立受理件数というのはパート法全体で 2 件でしたか。

○河野短時間・在宅労働課長 そうですね、平成 26 年度について、援助の申立が 2 件、平成 27 年度は手元の資料だと 1 件ですけれども、 26 年度は 2 件で、調停申請が 1 件というのがパート法全体です。

○神吉委員 今の件数にも現れているかと思うのですが、行政 ADR の利点というのは簡易で迅速で、インフォーマルに解決が図られることです。先ほどどうして裁判に訴えられないかで、中村委員がおっしゃったと思うのですが、やはり訴え出ることに不利益を被るのではないか、雇止めにあってしまうのではないかと、そういうおそれが裁判を踏み止まらせている原因だとすれば、行政 ADR だったらそれがないのかというと、法的な性質上は、司法と行政は大分違うといえ、同じ問題はあるわけです。紛争解決援助を申し出ることで不利益取扱されてはいけないことになっていても、事実上は何かマイナスが起きるのではないかと。簡易で迅速な解決が悪いとは言いませんけれども、根本的な問題はなかなか解決しづらいのではないかと思うわけです。やはりそこまで至らない事前の段階で、企業内の労使できちんと紛争が生じないように納得を担保する、あるいは不満があったとしてもそれを解決していくような仕組みがあることのほうが非常に重要で、その点からすると、水町先生の 3 つ目の○は全く賛成で、労使コミュニケーション、特に非正規労働者が参加できる集団的なプロセスを構築することが非常に重要だと思っています。これを制度化して、きちんと運用するインセンティブを法的な仕組みとして持たせることが重要です。これは皆川先生のペーパーでいうと、きちんと非正規労働者からの意見をくみ取っていることが認められる場合に、それを不合理と言えないことの評価要素、つまり「その他の事情」ですが、これで汲んでいく、これを明らかにしていくことが非常に有意義であると私も考えています。

 集団的なプロセスとすることがすごく重要です。イギリスは情報提供の仕組みをもちつつ、それが全て個別労働者へのアドホックな通知でいいということになっています。実は、それが労働者の個別化・孤立化を進めて、実際には労働者の権利が実現されにくくなると指摘されているところでもあります。ですので集団というのは単なる個の集まりではなくて、企業という組織の中での公正さを保つために必須の要素です。ここは是非、「その他の事情」で不合理と言えないことの評価要素と位置付けることを積極的に考えていきたいと思います。

○松浦委員  ADR の活用状況については多分、神吉委員がおっしゃったような裁判、紛争に対する躊躇や懸念と共通した理由でなかなか使われないという面も確かにあると思います。ただ、制度の周知が行き渡っているのか等、他の課題についても検討する必要はあると思います。

 また、パートは直接雇用であることからその企業でもめごとがあると雇用が失われる懸念が特に大きく、また配偶者控除の問題や社会保険料の被扶養者枠の問題もあって賃金の水準向上に対してそれほど執着しない方々がある程度いらっしゃるということを踏まえると、パートの ADR の需要は相対的に低いと推測されます。一方で、パート労働法の ADR の仕組みを例えば有期労働者とか派遣労働者に広げたときに、かなり需要が出てくる可能性があります。そのときにこの援助制度が機能し得るように、体制を考える必要があると思っています。

 裁判の負担が非常に大きい中で、こうした制度が機能することは労働者の利益にかなうとは思います。ですので、これについては賛成ですが、作る限りは、きっちりと機能するものにしていくべきだと考えております。

○柳川座長 行政 ADR に関しては、作って活用することは恐らく多くの方が御賛成で、それが本当に活用されるように周知と使いやすさをもう一回検討することが重要だけどということです。それから、それだけで全て解決するわけではないし、雇止め等を考えると、ここでどんどんやるのが出てくるとは限らないので、 1 つ目の○にあるような労使のコミュニケーション、非正規雇用を含んだコミュニケーションが大事で、ここも集団的な労使で対応するようにするということもほとんどの方が御異議のないところかなと思います。それをどうやって法的にやるのかは、 1 つのアイディアは皆川先生が出していただいたように、不合理と言えない評価要素の 1 つにするというのがあると思います。そのほか、もう少し御意見あるのかもしれませんけれども、ということかと思います。 1 つ目、 2 つ目はやり様は多少あるにしても余り意見が分かれていないところかなと思います。

 あと、下の規制レベルの違いの話と、法整備とガイドライン案の関係性のところで、御意見はいかがでしょうか。

○松浦委員 この法整備とガイドライン案の関係性については、私自身が法律の専門家ではないからかもしれませんが、まだよくわからないところがあります。以前の検討会でも御説明いただいたかと思うのですが、ガイドライン案が出る前は、均衡というのは基本的に民事であるということで、民事だから行政解釈を示してこられなかった経緯があると思います。それを今回、ガイドライン案というものが世の中に出されたことに対して、どういう法的なプロセスが必要なのかが、まだはっきり頭の中で整理ができておりません。つまり、ガイドラインの根拠となるような規定を法律の中に新たに置いて、これによってその法律の詳細を別途、指針のような形でガイドラインとして示すという形式を整えれば、今まで民事だから行政解釈を示せないといってきた領域に行政が入っていくことについて、法律としての整備ができたということになるのかというところです。何か非常にややこしいことを言っているようですけれども、これまで入っていかなかった範疇に行政が入っていく上で、どういった法律の整備が必要になってくるのかということです。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御指摘のとおり、今のパートタイム労働法や労働契約法については民事規定であるので、国会での審議過程で明らかになった立法指針とか、確立した判例法理以外に、行政が踏み込んだ解釈を示すことは原則やってきていないわけです。今回、法改正がどういう内容で、それが国会でどのように審議され認められるかどうか分からないわけですけれども、仮に均等規定や均衡規定の解釈に関する指針を厚生労働大臣が定めるという規定において、それが国会で成立したならば、そこは行政が妥当と考える解釈を示すことを国会から授権されたことになると。そこから先は行政の裁量として、そうはいっても政策的に望ましいものと、合理か不合理かというのは時限の違うもので、いわば好き勝手にというか、政策的な理想論を書き並べるような、解釈指針を作るということは、授権の範囲を越えるということはあり得ると思いますが、行政なりに均等、均衡規定を見て、そこから無理のない解釈と考えられるものを指針として示すことは可能にあると。ただ、それは行政として授権されるので、そういう指針を作れることは作れるわけですが、裁判所がそれに従うかどうかは裁判所の判断だということになると思います。

○松浦委員 今おっしゃっている指針というのは、今のガイドライン案の案が取れたものをイメージしておっしゃっているのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 形式的には、このガイドライン案というのは逆に言うと法改正がなったときに、正式なプロセスを経て出されるガイドラインの案として出していますので、両者の関係はそういうことになりますが、この内容は並行移動になるかどうかは、ガイドライン公表後の関係者の御意見や、国会での審議過程を経て見直していくということになります。

○柳川座長 そのほかいかがですか。

○神吉委員 一言だけ。やはり今回は行政府の長のほうから出されてきたガイドライン ( ) ですので、これが法律的な効力を持つということになるためには、きちんとした立法プロセス、特に労働法制というのはずっと労働政策審議会で議論を重ねられてきたものですので、そこできちんと議論を尽くされることが必須であろうと考えます。

○松浦委員 テーマを戻ってもいいですか。

○柳川座長 戻ってもいいです。

○松浦委員 集団的な労使コミュニケーションというところが、どうすれば実効的になるのかということを、具体的に示すことが非常に重要だと思います。

 ただし、例えば過半数代表に非正社員を立てるなどということが現実的にできるかというと、中にはそのような負担を担えない、担いたくないという方もいらっしゃると思います。集団的労使コミュニケーションを通じて労使の賃金財源の適正な配分につなげていくというプロセスを、より現実的に幅広く議論していく必要があるではないでしょうか。

 この点については先ほど出てきた、説明義務をどうやって課すかということと同じぐらい重い宿題だと思っています。多分これらを具体的に示せなければ、企業は何をしていいか分からず、結果として何もしないという結論に至る可能性が高いでしょう。この集団的労使コミュニケーションのプロセスのところと、説明義務のところを、いかに具体的に示せるかということが、実質的に同一労働同一賃金を進めていく上での非常に重要なポイントだと思います。

 こうすれば全てうまくいくというような単純な話ではないとは思います。過去に神吉委員も参加されていた労働政策研究・研修機構での集団的労使コミュニケーションに関する御検討内容なども勉強させていただきましたので、既に多くの示唆は提示されているとは思います。ただ、実際にどうすれば実効的な集団的労使コミュニケーションが形成され得るのかということは、恐らく雇用管理区分によって異なるアプローチが必要で、それぞれ十分具体的に示し切れていないということが、これまでなかなかうまくいかなかった理由の 1 つなのではないかと。これは自分への反省も含めて思っております。投げ掛けだけになって申し訳ないのですが。

○神吉委員 それは多分、皆川先生も同じ問題意識を持っていらっしゃって、この 2 ページに挙がっているのが、今ある法制上の制度だと思うのです。ここの 3 3 行目にある過半数組合ないし過半数代表者からの意見聴取という場面、それから過半数代表との労使協定という場面、それから 3 つ目が労使委員会の決議というものを出されており、手掛かりとしては、現行法上やはりこの 3 つになってくるのだろうなと思っています。ただ、労使委員会の決議というのは「企画業務型裁量労働制」だけの場面に限定されています。

 しかし逆に、今回、同一労働同一賃金の実現に向けて、例えば労使委員会の決議に、この労使委員会自体にきちんと非正規の人を入れて、そして 5 分の 4 で決議を取ったことが不合理と言えないことの評価要素として大きく評価されるというようなことになれば、労使委員会の設置というものが後押しされるという結果になりえます。そういった意味で、ここは考えどころだと思うのです。

 先ほど言ってくださった JILPT の研究会でも、そこでは正に労使の集団的コミュニケーションの在り方を議題に考えてきたのですが、その限界としては、手続の場面だけを考えて、こういう手続が理想だと考えても物事が動かないとことなのです。むしろ今回のように集団的な労使コミュニケーションが問題になるような場面、それが必要だという場面で、どういったコミュニケーションが必要なのか、今の既存の制度のどこを充実させていったらいいのかを考えていかないと、手続のほうも進んでいかないといきません。実は今回、同一労働同一賃金の実現に向けた議論の中で、そこが本当はずっと議論できればよかったなと思っているところなのです。最後の最後になって、この辺りをチョロっと議論するのはもったいないぐらいの大きなテーマです。

 過半数代表制を複数化するとか常設化するという案も、先ほどの検討会報告書でも出てきますが、そういうふうにしていく。あるいは、既に複数化したものがこの労使委員会なので、この労使委員会の決議をうまく使って、労使コミュニケーションのインセンティブにしていくというふうに、こちらから働き掛ける方向もあり得るのではないかと私は考えています。全く新しいものを作るというのは難しいので、既存のものを手掛かりとすると、やはりこの 3 つですかね。

○松浦委員 ありがとうございます。

○柳川座長 今回の議論は法制備を伴う話になるので、せっかくだから、それを有効に活用することで、今のような話の実質的な効果を上げる仕掛けをこの中に作れれば、法制度を現状のままでいろいろなことを考えるよりは、はるかに実効性を持たせられるのだと思うのです。その中の 1 つのアイディアが、皆川先生の評価要素の 1 つとして入れるという話だと思うのですが、それだけではなくて、せっかく法改正と一緒にやれるからこそできることを考えるというのが 1 つのポイントではないかと思います。

 一方で、やはりこの中の難しさは、先ほど松浦先生がおっしゃったように、先ほどの説明義務の話のところも、ある種、法律だけで全てを動かすのは難しくて、労使も含めた民間側の取組がないとなかなか実質的なところが動かないのです。それを動かしつつ、法律がそれを後押しするのか、引っ張っていくのかということを考えなければいけないところになかなか難しさがあるので、何か経済学でいうところのインセンティブ付けを、そちらの方向に企業なり労使が動きたくなるような仕掛けをできるだけ考えていくということなのだと思うのです。

○神吉委員 実際、今の状態でも集団的なバックアップは必須です。これだけ訴訟が出てきていますが、大体組合がバックアップしています。どんな格差があるのかは個人では分からないので、一生懸命情報を収集して、そして訴訟を後押ししてというところには、何らかの集団が今でもあるわけですよね。でも、組合の方の話を聞いていると、それがすごく大変だと言うのです。だから、同一労働同一賃金ができて、ガイドラインができて、説明義務が使用者側に課されたら、その負担が少なくなるのではないかと非常に期待されていたりもするのですが、逆に使用者側が全部出すことになって、それで終わりだったら、組合の存在意義はなくなりますよねという話もあります。

 そうなってくると、むしろ集団的なコミュニケーションというものは必要なくて、使用者側に「これを教えてください」と言えばいいというだけになりかねない。集団的なコミュニケーションを意識的に制度化していかないと、結局、組合の出番がなくなって、更に、組合はこれから何をしていくのかという存在意義すら問われるような状態になっていく。今、日本のかなり低調な労使の活動自体が、むしろ同一労働同一賃金の法制化をギリギリ詰めていく中で危うくなっていく副作用があるのではないかとすら思っています。

○中村委員 集団的労使関係の強化をこれを機に進めるということについては、賛同します。日本の中での同一賃金は企業内で取り組むと意思決定をしている時点で、企業内の労使自体の在り方が、より健全な方向に待遇改善につながる方向にいろいろなことを検討していくというのは建設的だなと思いました。ですので、今言ったような論点がクリアに、もう少し明確な形で具体性を持って、最後に報告書でまとめられたらいいなと思うというのが 1 点です。

 その際に、少し論点が変わるかもしれないのですが、パート法と労契法が先ほど来、制度体系が違うという話をしていて、一方で非正規の人たちの不満が多い不本意非正規の最大いるのはパートではなく直接雇用の有期の社員の人たちです。そのときに、一連のこういう論点を法制化を労契法の中で実現するのか、直接雇用の有期の話も含めてパート法を再構成するのか、全く違う何かがあるのか、その辺りは何らか、もう少し方針が出せるといいのかもしれないなと思います。

○松浦委員 すみません。先ほどの労使コミュニケーションの続きなのですが、組合の負担については、多分 2 つの面が、つまり情報収集が大変だというのと、交渉が大変だという面があると思うのです。恐らく企業に「このような情報を出してほしい」と言っても引き出せないというような負担については、今回の説明義務の実効化によって負担が軽減できる面はあるのではないかと思っています。

 一方で、組合の役割として、より重要になるのは、やはり交渉のところだと思います。個別交渉は労働者にとって不利なので、やはり集団的に交渉できることが望ましく、その交渉のところで、特に非正社員に関する集団的労使コミュニケーションの仕組みを作れるか、それをどれだけ有効に機能させられるかという点が一番問題になると思います。

 そのときに、組合の役割としては、正社員の中で非正社員に一番近い雇用管理区分の人たちと、非正社員の労働条件について、例えば両者の格差を是正しようといったときに、必ず両者の間に利害が発生するので、それを調整する役割がより重要になってくるだろうと思います。逆に言うと、このような調整がこれまで十分にできていなかったということが、今の問題を根深くした背景にあるのではないかと思います。

 先ほど中村委員がおっしゃった、労働契約法、パート法を今後どういう規制のたたずまいにしていくかということについては、中身によるという気がしています。ある程度ほぼ共通してくるのであれば合体させるということもあり得るのでしょうけれども、中身がどうなるかによると思います。

○神吉委員 行政 ADR を、先ほど有期のほうも充実させていくというお話があったと思うのですが、そうすると、今の枠組みではちょっと難しいですよね。やはり契約法に行政 ADR は入れづらいので、だから、そこはセットになってくると思うのです。しかし、有期に行政 ADR が必要だから、パートと有期法を一緒にするというような在り方でいいのかなと。有期とパートとは、やはり労働市場における位置付けも違ってきますし、私は一緒にすることに抵抗はあるので、行政 ADR を有期にも拡大するということがパート・有期を 1 つの法律で、特にパートに近づけて考える理由だとすると、そこ自体ちょっと躊躇します。

 有期の、特に最長でも 5 年という立て付けになったところからすると、本当に同一労働同一賃金というようなやり方が適するのか。労働市場への参入のための 1 つのステップという特質をもう少し柔軟に見ていく規制の在り方でもいいのではないかと考えます。どこまで一緒にするか、正に、今、松浦さんが言われたとおりなのですが、内容的にどこまで一緒にしていいか、そこはまだまだ考える余地があるように思います。

○松浦委員 神吉委員がおっしゃったように、パート・有期それぞれについて規制をどう変えるかという案がある程度固まらないと、法律を一緒にするかどうかの判断もつかないと思います。

 もう 1 つ、これまで論点としては出てきたのですが、きちんと議論できていなかった課題として、無期転換した元有期をどう位置付けるかということがあると思います。無期転換の元有期の方々が、仮に正社員のカテゴリーに入るとすると、神吉委員が御教示くださったイギリスで問題になっているような、格好のダミー比較対象者になってしまう懸念があります。

 一方で、無期転換した元有期の方々は、非正社員として入社して 5 年以上過ぎた方々なので、本来は正社員の位置づけに一番近く、なおかつ賃金体系をある程度共通化することが相対的に合理的ではないかと推測される人たちです。しかしながら、労働契約法上は無期転換のほうがある程度優先されて、処遇については元のままでいいという位置づけになっているわけです。 2018 年には、法律に基づく無期転換の第 1 号の事例が出てくるわけですが、その目前になって、「やはり均等にしてください」とか「均衡をこういうふうに図ってください」と規制を強化することになると、直前に雇止めが出てしまうことが懸念されます。

このように、無期転換の元有期の位置づけはかなり悩ましい問題ではあるけれども、ある程度明確にしておかないと、ガイドラインを含むいろいろな規制の抜け穴になってしまう可能性があります。保護が必要であるにもかかわらず、法律上はどこからも保護されていないというような人たちになってしまう懸念が大きいということだと思います。

○柳川座長 この話はガイドライン ( ) を作っているときから出てきた大きな話で、処遇ぶりの話や雇止めの話や、本来保護しようと思って作ったのだけれども、結果的にはその枠組みから大きく外されるようなところに持っていかれてしまうと、結局は不利益を被るということが一番恐れなければいけない、心配しなければいけないところなので、そういうことが起きないようにと。副作用が大きく出てしまって、結果的には全体にマイナスにならないようにするというのは、やはり気を付けなければいけないポイントなのだろうと思います。

○松浦委員 多分、現行法制で無期転換した元有期の方々は、均等・均衡の対象になっていないと理解しております。短時間労働の場合はパート労働法で保護されますが、フルタイムで無期転換した元有期の方々は労働契約法でも保護の対象にならないでしょうし、派遣法でもならないでしょうから、少なくとも正社員との均衡という面では網の目から外れてしまっているという理解でいいのですよね。

○神吉委員 そうですね。契約法 20 条はかかってこないと思います。

○中村委員 ガイドライン ( ) も無期と有期の比較になっているので、かかってこないので、そういう意味でいくと、無期転換後の元のフルタイム有期の人たちは、恐らく今回の同一賃金の取組の第 1 弾の中では直接的な射程には入っていないという理解で合っていると思います。

 今の議論は労働市場、若しくは企業の人材活用の在り方そのものが、特定の就業形態に対してどういう機能を期待するのか、どういう保護が適切なのかという議論を内在しています。当然ながら旧フルタイム有期の人たちに対して、従来の正社員のようなものを期待している企業もあれば、ジョブ型の、ある一定の仕事をずっと長くやっていただきたいという期待の仕方もある中でいくと、掘り返すと、ここの中だけで議論ができないぐらい非常に重要なテーマだと思うのです。今回の同一労働同一賃金のまず最初の踏み出し方としてどこまでの議論をやるかというのは少し整理して、まずは第一歩として。それで、先生がおっしゃるように不利益が最小限に抑えられるような制度の打ち出し方ができたらなと考えます。

○柳川座長 そういう意味では、この下から 2 番目の○印の「法制の枠組みの在り方」で、規制レベルの違いを考えるというような話は非常に重要な話ではあるのですが、先ほどのパートと有期雇用というものを一緒にして考えるかどうかというのは、ある意味で日本の労働市場や日本の働き方をどういうふうにグループ分けしていって、それぞれにどのような働き方を期待するのかということの根幹に関わる話なので、ここは皆さんで大分御意見が違うかもしれませんし、あるいは、将来的には大分変わってくるかもしれないしと、相当大きな話だと思うのです。なので、本当は議論はしたい話ではあるのですが、ここでチョロチョロとやって何か大きな結論がとても出るような話ではない話なので、言い方としては逃げのような感じになってしまいますが、そういうところを少し慎重に考えて、きちんとした枠組みを検討することが必要だというぐらいのことしか、ここでは言えないのかなと。むしろ、それ以上言ってしまうと、かなりミスリーディングな話になってしまうのではないかという気はしています。本来は規制レベルを合わせる話なども含めて、あるべき方向性は何か考えられるのだとは思うのですが、ちょっと議論が尽くせないかなというのが正直なところではあります。

○神吉委員 非正規の問題は、ここで議論している「格差」の問題ももちろんありますが、もう 1 つ、「不安定」というのが非常に重要な問題です。無期転換は、その不安定さへの手当てです。特に有期は期間が決まっているので、法律的にはそこで終わってしまう関係であると。そこで不安定という一番問題の凝縮している非正規が有期だということで、無期転換によって、労働条件はそのままで、とにかく一番不安定な有期の契約期間のところだけを、どうにか変えて、不安定という問題に立ち向かえるようにしたという位置付けです。

 もちろん格差も問題になってくるのですが、ただ、格差を問題にして、先ほど言われたように、そこで格差の是正まで必要になるのであれば、もうそこで雇止めをする、絶対に 5 年を超えないようにするというような運用に間違いなく進んでいくと思うのです。とすると、せっかく不安定という問題への対処ができていたところが駄目になりかねない。無期転換すると、もう有期ではないですし、そこは別問題として、今回は法的な現在の射程のところで話をとどめておくというのもあり得ると思っています。

○中村委員 非正規の方たちに対する過去の調査でも、やはり不安定雇用に対する不安、不満というところが非常に強いので、まずは安定雇用へという、第一義の施策を前提にした上で、待遇格差を更に是正していくというほうがいいと私も思います。

○松浦委員 無期転換の元有期の話に踏み込み過ぎると、かえって逆効果になって雇止めなどを誘発するという懸念は強く持っているのですが、例えば同一労働同一賃金のガイドライン案で、無期転換の元有期が正社員カテゴリーに含まれて比較対象になるとすると、ガイドラインの実効性は危ぶまれると思います。

 また、同一労働同一賃金のガイドライン案を踏まえて、例えば 非正社員の手当が正社員と同じになる場合に、無期転換の元有期がその対象から外れるのはやはり問題だと思います。したがって、非正社員の中でも現在有期の方々の待遇が是正されるのであれば、無期転換の元有期の方々についても同じような是正の取組が図られるべきだということぐらいは言っておく必要はあるのではないかという気がします。

○中村委員 その際に手当等は、例えばフルタイム有期からフルタイム無期になったときに、フルタイム有期の人たちは手当が正社員と均等になっているにもかかわらず、無期になった人たちが網から外れるというのは違和感があるので、そこは是正が必要だと思うのですが、恐らく一番論点になるのが基本給のところだと思っていて、そこについては、松浦委員はどういうふうにお考えですか。それ以外のところは比較的、今回の非正規全般に対する整理の中で、ある程度同様であるというような整理は、そんなに違和感がないのではないかと思うのですが。

○松浦委員 本来、基本給についても、正社員の基本給体系に相対的に近づけやすく、近づけたほうが合理的な人たちが無期転換の元有期だと私は思っています。そういう意味では、無期転換の元有期が規制の対象から外れているというのは、やはり違和感があります。ですので、本当は無期転換の元有期の位置づけも整理できれば良いのですが、タイミングが悪いというか、 2018 年が目の前なので、今の段階で規制を強化すると雇止めにつながる懸念が大きいので、そういう方向性を打ち出すにしても相当の猶予期間を設ける必要はあると思います。

○柳川座長 こうなったら、書きぶりが難しいのですが、多分、そういう人たちに関しては、少し時間的な猶予を見てということで、 2018 年の無期転換のタイミングのところで、今回はいつ法改正になるか分かりませんが、タイミングのところで引っ掛かるのはやはりまずいので、特に大きな不利益にならないようにはするのだけれども、少し時間的に猶予を見るような書きぶりにするということだと思います。

 長期的に言えば、片方の有期のほうが上がってくるので、そうすると全般的には転換しても、上がった後から転換する人であれば大きな問題はないはずなのです。そういうふうに考えれば、ある一時期の、ちょうど法改正のタイミングで出てきてしまう人たちには特別な考慮をしながら走るということなのだろうと思います。そこは一文を書いて、トランジションの処置をするということになるのだろうと思います。

○神吉委員 もともと正社員でも、限定正社員と正社員など、そういう比較は対象としないことになっていたので、それとパラレルに、今回は検討対象から外すことも理屈は通るかとは思います。

○柳川座長 よろしいですか。今日はスケジュール的には 5 時まであるのですが、シナリオ的には、そこまではないようですので、特にこれ以上御意見がなければここまでにさせていただきます。事務局から次回の開催予定について御説明をお願いいたします。

○河村企画官 長時間ありがとうございました。次回は、 20 ( ) 14 16 時に開催予定となっております。場所については追って御連絡をさせていただきます。

○柳川座長 それでは、これをもちまして本日の検討会は終了いたします。本日もお忙しいところを、どうもありがとうございました。


(了)

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