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2016年12月5日 第9回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

職業安定局

○日時

平成28年12月5日(月)14:00〜16:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)12階 職業安定局第1・2会議室


○出席者

川口 大司 (東京大学大学院経済研究科教授)
神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
水町 勇一郎 (東京大学社会科学研究所教授)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・中間報告について

○議事

○柳川座長 ただいまから、第 9 回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。議題に入る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。 

○河村企画官 資料 1 ですが、川口先生のお名前の入った「雇用形態間の賃金差の実態」の資料です。資料 2 ですが、「これまでの主な御議論について」ということで、これまでの検討会でお出しいただいた御議論をテーマごとにまとめたものです。それから、その別紙として、第 3 回の 4 月のときにおまとめいただいた 4 月時点の意見の整理の紙が 1 つ、束としてあります。 3 つ目として、右上に柳川先生のお名前が入っております「中間報告に向けた検討課題案」の資料です。以上、お手元におそろいでしょうか。

○柳川座長 それで、私の名前が入った資料 3 なのですが、全部公開するのはこの段階ではいかがなものかというふうに思うので、厚生労働省が定める「審議会等会議後の公開に関する指針」というのがありますが、それには「公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある」もの等に該当するとして、資料の項目のみ目出しをして公開するということにさせていただくのが適切かと思っているのですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。個人的な意見も書いてありますので、それが適切かと思うので、そのように取扱いをさせていただきたいと思います。

 それでは、議題に入ります。今回は、「川口委員による雇用形態間賃金差の分析結果に基づく議論」と。

○河村企画官 先生、失礼いたしました。今のを御了承いただいた形で、資料 3 を柱だけにしたものを今、同時並行で配らせていただきます。

○柳川座長 分かりました。お願いします。それと、中間報告に向けた議論を行いたいと思いますので、まずは川口委員より御説明をお願いいただければと思います。

○川口委員 資料 1 に基づいて説明いたします。私のほうから報告させていただくのは、「雇用形態間賃金差の実態」についてです。賃金構造基本統計調査の 2005 年から 2015 年までの個票を用いて、雇用形態間の賃金格差の実態を統計分析いたしました。分析に当たっては、賃金水準に影響を及ぼすと考えられる教育水準、潜在経験年数、勤続年数、情報が手に入る限りで、職務の内容などの影響を取り除いた上で、雇用形態間の時間当たりの賃金を比較いたしました。

 雇用形態は、「正社員・正職員」と、それ以外、雇用期間の定めの有無の 2 × 2 で定義いたしました。正社員・正職員か否かは、「身分や処遇の実態」によるというのが賃金構造基本統計調査における定義です。統計上の制約があり、分析対象となる労働者を次のとおりに限定しております。類似労働者については、就業形態、最終学歴等の情報が把握できないため、分析対象とはしておりません。また、短時間労働者に関しては、最終学歴が把握できないということがありますので、完全に外しているわけではないですが、あくまでも参考として分析の対象としております。

 賃金に関しては、幾つか定義があり得るわけですが、主な分析対象としたのは、所定内時間当たりの賃金です。これは決まって支給する現金給与額から超過労働給与額を引いたものを所定内実労働時間数で割ることによって、定義しました。なお、この決まって支給する現金給与額には、超過労働給与額や歩合給、各種手当、休業手当など、労働しなくても支給される給与を含むというように、賃金構造基本統計調査ではされております。雇用形態間の賃金格差を把握するに当たっては、雇用形態ごとに異なる労働者の属性を整理した分析を行うことが必要です。したがって、幾つかの制御変数の入れ方を変えた分析を行いました。

 まず、第 1 には常用労働者、これは一般労働者と短時間労働者を含む分析ですが、幾つかの制御の仕方を変えた分析を行いました。また、学歴が入手できることを重視して、常用労働者の中で一般労働者を対象にした分析を行いました。

 資料の 3 ページまでは説明を終わらせたのですが、 4 ページです。この常用労働者は、一般労働者と短時間労働者の両方を含むもので、就業形態と雇用形態の分布が示されております。男性、女性、それぞれで 100 %になるような形で表を作ってあるのですが、男性常用労働者のうち、一般正社員・無期労働者は約 84 %を占めます。一方で、非正社員が約 14 %を占め、残りの 2 %が正社員の有期、あるいは正社員の短時間労働者ということです。一方で、女性常用労働者を見ると、一般正社員・無期労働者は 45 %を占めて、非正社員が約 53 %を占め、残りの 2 %は正社員の有期や短時間労働者であると。このことより明らかになるのは、労働時間の長短、あるいは労働契約期間の長短といったものよりも、身分・処遇の違いを反映した正社員・非正社員の区分が重要であることが示唆されるということかと思います。そういう正社員・非正社員の区分に基づく、大きな意味での非正規労働者の数が多いということです。

 実際に常用労働者全体に関して、短時間労働者も含めた形で、調査年、年齢、勤続年数、事業所固定効果などを制御した結果を 5 ページにお見せしています。ここで重要なのは、年齢、勤続年数、あるいは事業所の固有の効果を制御しますと、雇用形態間の賃金格差は半減以上に減るということです。ですので、こういう労働者の属性、あるいは勤務事業所の属性を制御することは、分析を行うに当たっては重要であることが分かりました。この制御が十分かという部分に関しては、まだまだ議論の余地がありまして、目に見えるものを制御しただけで、これで結果が変わるということは、まだ目に見えない雇用形態間の労働者の属性の違い、あるいは勤務事業所の違いが残っている可能性はありますので、その点は注意が必要であろうかと思います。

 最終的には、調査年、年齢、勤続年数、事業所固定効果を制御した結果を見ると、男性労働者の中で一般正社員・無期の労働者に比べて、各種のいわゆる非正社員・非正規と呼ばれる人々の賃金は、 0.01 ログポイントから 0.23 ログポイント賃金が低いと。ログポイントというのは、 0.01 、およそ 1 %と解釈しても差し支えないわけですが、そのような発見が得られております。女性のほうは、 0.05 ログポイントから 0.28 ログポイント、賃金が低いというような形になっております。

 教育水準まで制御可能な常用一般労働者に分析を絞りましたということが、 6 ページ以降の分析結果です。ここでは、もう短時間の方をサンプルから外しているということですが、男性労働者のうち 92 %が正社員の無期の方です。正社員・有期は 2 %、非正社員・無期は 2 %、非正社員・有期は 5 %という分布となっております。女性労働者のうち、 74 %が正社員・無期で、正社員・有期は 3 %、非正社員・無期は 6 %、非正社員・有期は 17 %という分布になっております。

 学歴まで入手可能な常用の一般労働者に分析を絞って、調査年・最終学歴・潜在経験年数・勤続年数・事業所固定効果を制御した分析を行ったところ、いわゆる非正規労働者の賃金は、一般非正社員・無期の労働者に比べて、 0.08 ログポイントから 0.20 ログポイント低いことが分かりました。女性の場合は、 0.08 ログポイントから 0.21 ログポイント、賃金が低いということです。

 このログポイントをパーセント変換すると、どのような結果が得られるかということですが、正社員・無期の方に比べて、男性の正社員・有期の方は 7.7 %賃金が低い、非正社員・無期の方は 15.8 %賃金が低い、非正社員・有期の方は 18.4 %賃金が低いことが分かりました。女性に関しては、正社員・有期は 8 %賃金が低い、非正社員・無期は 16.9 %賃金が低い、正社員・有期の方は 18.8 %賃金が低いといった結果が分かりました。男女ともに、正社員であれば無期と有期の差は 8 %程度である一方で、正社員と非正社員の差は 16 19 %前後となっており、雇用期間の長短よりも身分・処遇の違いによる賃金差が大きいことが分かります。なお、この正社員・正職員とそれ以外の差は、身分・処遇の違いによりますので、この違いの中には職務の違い、配置転換の可能性の有無などの違いも当然に含まれてきていると考えられます。したがって、ここでの賃金差が全て不合理な賃金差というわけではない点には留意が必要かと思います。

 参考までに、時間当たり賃金について超過労働を含む時間当たり賃金を、きまって支給する現金給与額÷所定内実労働時間+所定外実労働時間を使って分析を行いました。これは参考として、資料にお示ししてありますが、ほとんど結果は変化しませんでした。

 一方、参考までに、時間当たり賃金について賞与を含む時間当たり賃金を計算しましたが、これが 18 ページの結果です。賃金差が拡大して、大体 3 割から 5 割増しになることが分かっております。

 企業規模ごとに、雇用形態間の賃金差の計算もしております。 10 ページを見ていただくと、生の数字が報告されておりますが、非正社員に関しては、規模間賃金格差がそれほど大きくない一方で、正社員に関しては規模間賃金格差が大きいものですから、生の数字で見ると、大企業のほうは雇用形態間の賃金格差が大きいことが分かります。

 その一方で、 11 ページに様々な変数を制御した結果、具体的には調査年・最終学歴・潜在経験年数・勤続年数・役職・職種・事業所固定効果を含めた推定の結果をお示ししておりますが、それぞれの列に企業規模ごとの係数が報告されております。大企業のほうは、雇用形態間の賃金格差が明確に大きいというような単純な関係は、男性、女性ともに見られないことが分かりました。このことも労働者属性、あるいは事業所の属性といったものを制御したファクトファインディングに基づく政策論議を進めていただくことが重要だということを示唆する結果であると感じております。

 参考までに、欧州諸国における研究結果をレビューしたわけですが、調整する前、フランスでは 11 %あったパートタイム、フルタイム間の賃金格差が、様々な労働者の属性を制御すると 0 %まで縮まるといった結果が得られております。ドイツでは 19 %が 6 %まで縮まり、イギリスでは 18 %が 3 %まで縮まっております。ただ、ここで重要なのは、欧州諸国におけるフルタイム・パートタイムの区分は、労働時間の長短に当たり、どちらかと言うと日本の分析における一般労働者と短時間労働者の区分に近いということですので、「身分・処遇による違い」といったカテゴリーが、そもそもヨーロッパのデータには入っていないということがありますので、単純の比較はなかなかしにくいような事情があろうかと思います。

 まとめますと、労働者及び事業者の属性を制御すると、雇用形態間の賃金差は半減すると。半減以上する場合もあるわけです。したがって、雇用形態間の差違には賃金構造基本統計調査の調査項目では、なおも制御しきれていない労働者あるいは事業所の属性が反映されている可能性に注意するべきであろうと思います。ですので、観察できるものを制御しただけでも半減するので、これで完全なコントロールができている、制御ができているわけではないので、まだ重要なものが抜け落ちている可能性があるので、その点には注意が必要かと思います。

 また、日本における雇用形態間賃金差は、身分・処遇の違いに基づく正社員・正職員とそれ以外の違いによって発生している部分が大きいということです。この身分・処遇の違いには、職務の違いや配置転換の範囲の違いなどが含まれている可能性が非常に高いということです。一方で、このような雇用形態の区分は欧州諸国には見られないものであって、同一労働同一賃金を考えるに当たって、日本の雇用管理の在り方の特殊性への配慮が十分に必要だということを示唆しているかと思います。以上です。

○柳川座長 ありがとうございます。今の御説明に関して、御質問をお願いすることとして、御意見についてはこの後の全体の御意見をまとめたところでお伺いしたいと思うのです。御説明に関して、何か御質問がおありでしたらお願いします。よろしいですか。時間もありますので、また御質問、御意見をまとめて出していただければと思います。

 恐縮ですが、私の資料 3 に基づいて、お話をさせていただきます。皆様からいろいろ御意見を出していただきたいということで、何かこの目次案で決めるということではなくて、検討課題を少しお話させていただいて、それに基づいて皆さんにお考えを出していただくのがいいだろうと思って作った紙です。これに沿った形で簡単にお話させていただいて、また皆さんからそれぞれの点に返って御意見を頂ければと思っています。

 まず 1 番は、問題の所在ということで、この検討会で報告書を出す問題意識と課題は何かというところをどのように書くかということなのですが、一番簡単なやり方は、政府なり 1 億総活躍の所で決められた課題とか問題意識みたいなことをそのまま書いてしまうことなのだと思うのですが、それでは検討会の意義がないかと思って、ここに書いたように雇用形態間の賃金格差の問題とか、欧州各国との賃金格差の比較とか、正規・非正規に関する社会的な課題をどこまで書くかというところで、少しお考えや御意見を頂きたいということです。

 欧州各国との賃金格差は、比較的この検討会が始まる前から、政府のほうで議論されてきたことではあるので、そこは書くのが適切かなと思う反面、先ほどの川口先生のお話ではないのですが、やはり厳密な比較はなかなか難しくて、いろいろなものをコントロールしてからでないと、実は正しい比較にならないのではないかというところもあります。

 正規・非正規の雇用形態間の賃金格差の問題も、正に今、川口先生がお話になったようにコントロールしていくと、いろいろ減っていくということなので、こういう数字を最初に出すのが適当かどうかというのは少し悩むところなので、皆さんの御意見を伺いたいということです。さはさりながら、非正規の待遇を改善していくことは政府全体の非常に大きな目標なので、その方向はここできっちり書くということなのだろうと思います。その辺りの書きぶり等、何かあれば皆さんの御意見を頂ければなと思っております。

 2の所で、日本の実態に関する詳細分析ということで、今、御説明があった川口先生の分析結果を入れて話をつなげるのかなと思っていますが、今の御説明にもありましたように、属性を制御していくと、半分ぐらいに差が減ることをどのように解釈するかということです。これが半分とはいえ、残っている差を埋めていくのが本検討会の課題と、そのための提言なのだという話にするのか、あるいはそれと同じことなのかもしれませんが、属性がきちっと制御されていない部分が残っているということは、ある意味でまだ明確化されていないということなので、明確化していくことが大事ですねというところにつなげていくという話なのか。もう 1 つ、これは報告書でどこまで検討するかということではあるのですが、属性を制御していくことが一体、制御して消えていくものは問題ではないと考えるのかどうかという辺りも、実はきちっとした議論が本当は必要なのかなと。どこまで時間があるのか分からないのですが、ということもありますので、その辺りのところを諸々どのように書くかということです。

 全体の大きな枠組みとしては待遇の改善なのですが、生産性を上げていって、待遇を改善するという側面もやはり重要だと思いますので、川口先生のどこかの所にもあったような気がするのですが、結果的に非正規の労働生産性を上げる機会が少ないと。上げる機会が少ないために差が出ているのだとすれば、その機会を増やしていくことも方向性としては出てくるので、そういうものもどこまで書くかということです。大きな話としては、ここを余り分厚く書いてしまうと、イントロが分厚くなってしまうという悩みもあるので、そこの辺りもどう書くかなということを考えると、少し悩みどころかなと思います。

 そのようなところで、次には同一労働同一賃金という話が出てくるので、非正規の待遇改善と、同一労働同一賃金の考え方と、欧州諸国の実態を参考にしてと、この 3 つをどのようにうまく組み合わせて話をもっていくかというのが、まとめていかなければいけないところです。ここの検討会でも何度か出てきましたが、非正規の待遇改善という話と同一労働同一賃金の実現というのは、最終的な方向性では一致しているのかもしれないけれども、少しターゲットが違うところがありますので、この辺りをどう書くかということです。なので、この感じとしては、どこまでが同一の労働で、何がそろえるべき賃金というのは、厳密に定義することはなかなか難しいのですが、欧州で行われている実態を参考にすることで、この原則に踏み込んだ形で非正規の処遇・待遇の改善が実現できるのではないか。その方向性を定義するのが報告書の目的ということでまとめると、きれいかなと思っているのですが、そのような形でいいかどうかと、この辺りも是非、御意見を頂きたいということです。

 そのようなイントロがあって、 2 番として欧州諸国と日本の現状比較ということで、 (1) の部分で欧州諸国の賃金等の待遇決定の仕方ということで、法制度と実態というように、1、2で分けてみましたが、このように分ける必要があるのかどうかは、ちょっと分かりません。御議論の中ですと、やはり 3 か国でも実態がかなり異なるということだと理解していますので、各国別に詳細を説明するということでいいのかどうかということです。後で是非、御意見を伺えればと思いますが、同一労働同一賃金原則という関係において、 3 か国に共通して、ある意味で本当はどこの国でも共通すべきポイントが何かあるのかどうかというところは、何かあるのであれば書いておいたほうがいいかなと思います。

 主には判例の所から得られる示唆というところが、議論の検討したポイントだったと思いますので、法制度の説明と判例から得られる示唆を分けて記述すべきなのかと思っております。この辺りは全く決めているわけではないので、是非、専門の方々に御意見を伺いたいということです。

 その後に、日本の賃金等の待遇決定の法制度と実態とを説明して、ヨーロッパと日本との比較をするということだろうと思っていますが、ここの詳細な説明は、恐らく長々と書くよりは、後ろのほうに回して付録等に持っていくということが、形式上ですが、いいのかなと思っています。それから、日本の賃金の決定の仕方だとか雇用慣行というのは、将来変わっていくこと、あるいは変わっていくことを期待する面もあるのだと思いますので、時間軸との関係で、そういうところを考慮に入れる必要がどこまであるのかというのも、できれば御意見を頂きたいところだと思います。

3 番で、欧州諸国の実体験等から得られる同一労働同一賃金への示唆というところが、欧州からの参考というところで重要なポイントになってくるのだと思うのです。この辺りは、取りまとめるのが今のところ最適か分かっていないので、御議論を伺っていて、こんな感じなのかなということで私がまとめていたものです。多分に間違っているかもしれないので、御指摘を頂ければと思います。これで押し通すつもりは全くありません。

 詳細は各国で異なるのだとすると、やはり同一労働同一賃金の原則は、雇用システムとか労働市場の全体で作られていて、やり方は各国で異なるということなのかなと。共通点として言えるのは、ある意味でジョブ型で、労働市場の流動性が高いようなところなのだろうと思っていて、フランスとドイツでは、賃金表の存在とか、産業別労働組合がその鍵で、フランスとドイツの違いは私はまだきっちりよく分かっていないのですが、イギリスはどちらかというと労働市場の流動性の高さで、それを実現しているというようなことなのだろうと思います。

 そうすると、日本ではある意味では、本当の意味で中長期的に言えば企業横断的な、あるいは雇用形態横断的に賃金が決定されるような仕組み、あるいは比較検討できるようなシステムに移行していくことが、最終的には同一労働同一賃金が結果として実現される上で非常に重要なのではないかとは思うのですが、いきなりそれを実現するのが難しいとすれば、 1 企業内の正規社員・非正規社員の待遇を改善するということがステップであって、そのためには賃金決定のルールや基準を明確にして、技能や能力と賃金水準の関係が明らかになって、それで待遇改善が可能になっていくということが重要なのだろうということを書いております。

 能力開発の機会の均等・均衡を促進することという意味で、やはり生産性の向上も、私は重要なのではないかと思っていますが、そういう形でガイドラインの手段と位置付けがうまくまとめられるような書きぶりでいいかどうかということで、ここはイメージしております。

 その後に、ガイドラインの位置付けと労使の取組ということがあって、 5 に考えるべき課題ということを書く感じかと思っています。

(1) のガイドラインの位置付けは、今のところは現行法の解釈の明確化というのを事例をもって示すという形のガイドラインかと考えていますが、事例をもって示すという形と、立法に向けての提言も含む形のガイドラインを想定するのかという辺りを、どのように位置付けを書きましょうかということです。解釈の明確化ということになると、それは基本的に均衡待遇とは何かの明確化ということになるのかどうかというところの位置付けを、どのように書くかということが課題かと思っております。

 ポイントとしては、 2 番目としてはガイドラインの位置付けとともに、ガイドラインの適用とか運用に向けた労使の取組、あるいは社内での仕組み作りの重要性が「一緒に回っていかないと駄目ですよね」という辺りを、ここで何か書ければと思っていますが、余り詳しく長々と読んでもと思います。

 まず、待遇の位置付けを明確にして、そもそもどのように賃金が決まっているか、どのように手当が決まっているかということが分かっていないと、そもそもガイドラインのようなものは実効性を持ち得ないので、まずはそういうところの明確化。それから、透明化、客観化をして、正規・非正規が比較できるようにすることが重要なのではないかということが書いてあります。

 手当と基本給とでは、決まり方の因数分解という話が、ここの中では何か出てきたと思うのですが、因数分解を明確にしていく上での時間軸がかなり異なるのではないかという話を書いております。ただ、時間がかかるのでというのは、言い訳に使われる可能性もあるので、やはりスピード感を持って整備していくための施策も必要な気がしています。この辺りはまるっきり私見ですので、何か御議論があれば、このようなところを重視してということでお話いただければと思います。

5 番の所は、考えるべき課題としては、既に何度か、いろいろな方から御議論が出てきていますが、形式的に非正規社員に異なった職務を与えてしまうような、いわゆる職務分離が行われてしまうと、結果的に非正規社員の待遇を明かしてしまうという事態が起きるので、そういうことを避けるための現実的なステップと、ある意味での時間軸を考慮したガイドラインの作成・運用が必要だということが大きな検討すべき、きっちりすべきポイントであろうと思っています。

 その点では、手当に対してできるスピードと、基本給にできるスピードでは大分差がありますねという気はしていますが、そのようなまとめでいいのかどうかということです。能力開発支援とか、横断的労働市場の整備みたいなことも、重要性を指摘しておく課題のところでは指摘しておくべきかなという気はしております。先ほどの派遣労働者の所に関しては、どのように進めていくかというところは、丁寧な制度設計が不可欠だろうと思いますので、この辺は御議論を出していただければと思っております。

 先ほどと同じようなことを書いていますが、能力開発で生産性向上を通じた待遇改善の視点だとか、日本的雇用慣行自体が今後大きく変化していくことも考えられるので、それらの変化も見据えた制度設計の在り方が求められるであるとか、そのほか、こういう将来展望みたいな課題も少し付け加えられればと思っております。大体考えていることはそんなことです。何度も繰り返していますが、これに必ずしもこだわっているつもりはありませんので、たたき台として御議論の参考にしていただければと思います。

 それでは、いろいろな点に関して、皆さん、各御意見、少し事前に御意見をまとめておいていただければということでお願いしたと思いますので、どうしましょうか。どなたからでも順番にお話をお願いします。

○神吉委員 基本的なまとめ方をどうもありがとうございました。私も、今回まとめに入るに当たって、議事録などを読み返してみました。この検討会でのミッションとして、第 1 回のところできちんと欧州の法制度や裁判例などを見て、ファクトファインディングをしていくことが非常に重要であるという示唆がありました。それに沿った形で、特に欧州諸国からの示唆は十分注意してまとめていく必要があるだろうと考えております。

 座長から、各国別で見て詳細を説明するという御提案を頂きました。この 3 か国を一言で「欧州」とまとめきれない違いがありますので、正にそれが適切ではないかと思います。

 そういう視点で、これまでの議事録を見直したときに気付いたのですが、例えば資料 2 7 ページに、「いわゆる「人材活用の仕組み」について」という項目があって、ここに幾つかの○があります。その 2 つ目と 3 つ目の○で使われている「キャリアコース」という言葉が問題です。このキャリアコースというのは、この検討会の中でも幾つか出てきて、その多くは第 8 回に川口先生から御説明を頂いたように、雇用管理区分としてのキャリアコースという使われ方が中心的だったと思います。

 ただ、そう見ていった場合に、資料 2 3 ページの「欧州諸国から得られる示唆」の「フランス・ドイツの裁判例における待偶差の正当性判断」のまとめの中で、欧州諸国の裁判例で考慮されている、この多種多様な考慮要素の中の2に「キャリアコース」という言葉が出ています。

 ところがこれも以前、検討会で川口先生が御指摘になったように、前回の裁判例の束がありますけれども、そこでキャリアコースという言葉が使われているのは F-40 の事例ただ 1 つです。その 1 つの事例で、ここに代表させてしまっていいかという疑問が出てきました。それは当然のことだと思うのです。さらに F-40 の裁判例の中身を検討していったときに、そもそも、このたった 1 つのキャリアコースという雇用管理区分の違いの事例として持ってくることすら適当ではない事例なのではないかと思い至っております。

 これは、全く雇用管理区分の問題ではありません。事例としては基本給に関して「上乗せ手当」とありますけれども、勤続年数に応じて 2 %から 4 %の加算率が加えられるところ、正職員のカードルと言われる管理職同士で、加算率が低いほうのカードル労働者が、高い労働者と同じ仕事をしているのに率が違うのはおかしいではないかと争った事案です。そこでこの 2 人に関しては、それまでの昇進履歴が違うので、その違いが正当化されると言ったにすぎない事例です。この場合のキャリアコースと訳されている言葉、これは parcours professionnel という言葉です。これは雇用管理区分という意味では全くなく、昇進履歴。一般的にも「職歴」というように訳される言葉です。

 そうだとすると、ここでキャリアコースとして、正に雇用管理区分であるかのような訳を付けて、欧州からの示唆として受け取られる危険があるのは非常に問題であると考えています。提案としては、キャリアコースは 3 ページのまとめから削除して、必要であるとすると、 (4) に職業経験もありますので、この辺に「職歴」として入れられるのではないかと考えています。

 提案の 2 つ目に関しては、カードル同士ということを申し上げました。つまり、これは正社員同士で、かつ管理職の間の話で、いかなる意味でも正規、非正規の待遇の違いが問題となった事例ではないことからも、この事例を使うことに問題があると考えております。

 この裁判例の束、 F-27 以降は「その他」となっております。この「その他」の事例というのは、基本的には正社員同士の事例なのです。「その他」と書いてあるから問題はないのではないかと私は考えていたのですが、 11 26 日のある全国紙で、同一労働同一賃金に関する記事が出ていました。それを見ると、ここの表の F-48 の事例が引かれております。この表を見て出したみたいなのです。

 正社員と非正社員に関する法整備の違いが欧州ではあるということで、「使用者の資金不足は、入社記念日手当を一部の労働者に支給しないことを正当化する事由にはならない」とフランスの事例を引いて、 EU 各国ではこんな細かい裁判例がたくさん積み重ねられてきたというようにまとめられています。

 しかし、 F-48 の事例というのは、正に「その他」の所に入っています。これは、ある一定の事業所の労働者と、違う事業所の労働者との間の異別取扱いの問題で、全く正規、非正規の話ではない。にもかかわらず、新聞記者でさえも、これだけたくさん数があると、「その他」という意味もきちんと考えずに受け取ってしまう。誤解を与える 1 つの証拠であろうと思われます。

 私の提案としては、「その他」に関わる F-27 以降の裁判例については、せっかく調べていただいたのですけれども、このように間違った捉え方をしてしまう危険を鑑みれば、削除すべきではないかと思います。

 長くなって申し訳ないのですが、 F-26 以前の事例についても、例えば F-24 で、派遣に関する事例が出ています。これも訳が間違っています。「 13 か月分の賞与 ( 年末手当 ) 」とありますけれども、これは単なる 13 か月目手当という名前の、クリスマスボーナスのことだと思うのです。まず、そこの訳がおかしいです。

 それから、派遣労働者は、「派遣先における勤続要件を満たす限り、派遣先の労働者に対して支払われるクリスマスボーナスの支払いを受ける権利を有する」というようにまとめられております。これは私が調べたところ、この事例において破毀院は、この派遣労働者が既に派遣先の無期雇用労働者に転換していることを前提として、こういう一般論を述べております。

 つまり派遣労働者と、派遣先の労働者との待遇の格差の問題ではありません。そうなってくると、ここで派遣労働者と派遣先労働者の比較という位置付けになっていることも問題があります。ですから、 F-26 までの裁判例に関しても、もう少し精査をして、本当に示唆を得られるものなのかを検討し直して、その厳選した事例のみ残していくのが、この検討会の使命であるところのファクトファインディングという観点からは適当であろうと思っています。

○柳川座長 何か御意見はありますか。

○川口委員 私の発言を引いていただいたのですが、キャリアパスとキャリアコースという違いがあるのではないかという御指摘がありました。キャリアコースと言うと、将来の展望のようなものを含んだ時間軸が入った、そういう将来へ向けての時間軸が入った概念かと思うのです。キャリアパスというと、後ろ向きで、今よりも前を見てどういう職務をこなしてきたのかということだと思うので、かなり重要な違いなのかという気がしています。

1 つしか例がないのではないかと申し上げたのですけれども、そういう中で将来に向けての考慮というのが入っている判例だと判断するのか、そうではなくて過去の事実を基にして、 2 つの仕事は違うのだという判断を下された事例なのか、その点は十分に精査して、日本への示唆というものを導いていただきたいと思いました。

 もう 1 つは、 3 か国の比較をしたというのは非常に意義があることだと思うのです。共通点は何かということも重要なのですけれども、違う点があったときに、一体その違いが何からもたらされているかということを、しっかり考察することも重要です。それは、ヨーロッパの中でも違うということは、その違いをもたらしている要因が、例えば労働市場の仕組みにあるとするならば、それを日本に、労働市場の仕組みが欧州とは違いますので、それを日本に持ってくるときに、どういう点に注意をしなければいけないかということを考えるに当たって非常に重要な点だと思います。

3 か国の共通項を抽出するというのも大事なのですけれども、違うというときに、なぜ違うのかということについて、踏み込んだ記述を、時間的な制約もありますけれども、できる範囲でしたほうがいいのではないかと思いました。

○柳川座長 順番にどうでしょうか。中村委員どうぞ。

○中村委員 時間が限られているのですけれども、より良いものが出せるといいと思います。ある種、一般人として思うのは、欧州の判例を分析した結果、然るべき法律的な解釈や然るべき労働市場に対する考察というものが出てきたときに、結局欧州でいう同一労働同一賃金は何だったのということと、それを日本に適用するときにはこういう理由でこう変えましたという、シンプルなメッセージが、取り分け欧州から日本への示唆の所は重要だと思っています。それには神吉先生も御指摘くださったように、より丁寧に見ていくステップが必要です。

 構造的に何があって、それが実現できているのか、できていないのかという考察を踏まえた上で、最後に、欧州の判例を分析した結果、こういうメカニズムに着目して、結果として日本的雇用慣行に乗せた場合は、ここから取り組むのであるというストーリーが明確になるといいというのが、一番気にしているポイントです。

○柳川座長 派遣のところはいいですか。

○中村委員 派遣労働に関して言うと、柳川座長が書いてくださいましたように、他の異なるアプローチも含めて、丁寧な制度設計が必要ですということについては、必要だと考えております。その上で改めて申しますと、欧州の同一労働同一賃金は外部労働市場に一定の流動性があり、そこの中の相場賃金が形成されている上で作られている制度だと理解でき、一方、日本に関して言うと、企業の中の非正規、正規の均衡、若しくは均等というところに焦点を当てています。外部労働市場にある制度を、内部労働市場に転用して、今回日本の制度を設計しようというのが、まず 1 つ大きなポイントになっています。

 派遣制度は先般の 2015 年の大改正でも、一時的・臨時的需給システムであるという大原則については残すという判断をした上での抜本改正になっています。そのときに、それと並行する形でキャリア形成支援措置と、有償の教育機会の設定、雇用安定措置というような、様々な周辺的整備もしています。外部労働市場で、労働者がキャリア形成していく仕組みというように整理されているものに、今回日本の直接雇用の中で整理されているものを、そのまま転用できないということが起こるはずだと思っています。

 そもそも、どのように制度設計をすれば、派遣労働者にとっての待遇改善を、基盤となっている制度に整合的な形で乗せられるかについては、非常に丁寧な制度設計が必要だと思います。

 併せて、欧州に関して言うと、派遣先均衡に関する適用除外、若しくはその制度設計にかかると年数の多さということを含めて、派遣は直接雇用と同じようにはいかないということが欧州からの学びです。派遣に関して言うと、欧州からどういうことが得られ、その結果日本に転用する際の留意点は、現状はこうなっているからこうである。それであれば今回の検討会としてはこういう方針を検討していくことが必要であるということが、一連整理していただけたらと思っています。

 非常に回が限られているのですけれども、可能であれば次回に派遣制度については一度検討会で議論した上で、最終報告書を取りまとめるというステップが取れるといいのではないかと思います。

○松浦委員 先ほどの派遣のことについても、私はガイドラインというものは、あくまでも法解釈の範囲内で出されるものだと理解しております。ただ、もしそうではなく法解釈の範囲を逸脱したものが出てくる可能性があるのであれば、中間報告の取りまとめの前に、派遣のことについても一度しっかりと議論の場を設けるべきではないかと思います。ガイドラインそのものについては、働き方改革実現会議のほうで内容を決められるということですので、私がとやかく言うべきではないかと思います。ただ、それが政府のガイドラインとして外に出ていく限り、そのガイドラインがどういう位置付けのものなのかということを、少なくとも中間報告ではきっちりと書かせていただくべきだと考えます。これまでの経緯から、中間報告ではガイドラインを法解釈の範囲とした場合としてしか整理できないような気もするのですけれども、その位置づけについては、この検討会の中でも御検討いただきたいと思います。

 もう 1 つ、確か欧州の判例を参考にするということからこの検討会が始まったと思いますが、日本の判例に全く言及しないというのも、やや違和感を覚えるところです。待遇によって合理性を判断するというような点は、ハマキョウレックスの判例などからも示唆を得ることはできるのではないかと思っています。そういう日本の判例についてこの検討会でどう取り扱うのか、これは問題提起です。

 また、ハマキョウレックスにしても、長澤運輸にしても、遠からず最高裁判決が出るのではないかと言われている中で、その判例が出てきたときに、ガイドラインとの整合性をどうするのかという問題がございます。ですので、ガイドラインの内容については見直しの可能性があるということも含めて、こちらの中間報告の中に書いておくべきではないかと思います。

 柳川座長が挙げてくださっている「ガイドラインの適用に向けた労使の取組」は、恐らく中間報告としては非常に重要な部分だと思います。欧州では共通の職種別賃金相場が産業別の労働協約によって形成されているという事実が、日本で同一労働同一賃金について議論される上で、十分に踏まえられていないのではないかと思っています。日本の場合は産業別の労働協約ではなく、基本的には個別企業と単一労働組合との労使交渉になると思いますけれども、そういう労使の取組を通じて、日本的な同一労働同一賃金、つまり均衡を実現していくということを、中間報告にきっちりと書くべきだと思います。

 ガイドラインは「名は体を表している」という前提で作成されざるを得ないのでしょうけれど、実際には、必ずしも名が体を表していない手当や福利厚生があります。ですから、実態をなるべく「名は体を表す」形に持っていき、賃金表を整備していく。さらに、例えば正社員が職能給で、非正社員が職務給であれば比較できないからということで、今までは必ずしも十分に考慮されてこなかった均衡に、具体的にどう踏み込んでいくかということを提示しないと、恐らく非正社員の待遇改善にはつながらないのではないかと思っています。

 柳川座長のペーパーに対して、あと 2 つだけ手短に申し上げます。まず、統計的に制御すれば消える格差は問題にしなくて良いのか、という問題提起があったと思います。恐らく制御すれば消える格差には、職務分離等による要素が含まれているのですが、職務分離は賃金アプローチで改善するのが難しいことから、非正規社員のキャリア形成支援や正社員転換といった別の施策で改善を図っていくという整理になると思います。ただし、賃金を規制することが、キャリア形成支援等の施策にマイナスの影響を及ぼすことがないように、慎重な検討が必要だと思っております。

 もう 1 つ、柳川座長のペーパーで 1 つだけよく分からなかったのが、「このような整備がされてくれば、やがて企業間の賃金比較も容易にできるようになってくると考えられ」という所です。企業横断的な賃金相場が掲載されることが、良いことなのか悪いことなのか、まだ正直はっきり分かりません。ただ、少なくとも 1 企業の中での均衡がある程度達成されたとしても、それは企業間の賃金比較を容易にすることにはならない、そこは別の話ではないかと私は考えております。

○柳川座長 時間をオーバーしそうですけれども、ちょっとだけ延長してもよろしいでしょうか。水町先生はまだしゃべっていないのですが。

○河村企画官 皆川先生は、本日急遽体調不良で御欠席なのですけれども、御意見を事務局のほうでお預かりしておりますので、ごく簡単に御紹介させていただきます。皆川先生から、既に先生方から出ていた話と共通するのですけれども、欧州諸国の待遇格差に関する法制度に関して、同一労働同一賃金原則、また同一価値労働同一賃金原則と、あとは雇用形態間の不利益取扱い禁止法制の関係はやはり整理、明記するべきではないか。

 フランスに関しては、既に 9 30 日にも御議論いただきましたとおり、 Ponsolle 判決によって、同一の状況に置かれている限り、報酬の平等をという原則が確立しているわけです。ドイツとイギリスに関しては、こういう判例法理は確立されているとは言えないのではないか。ドイツとイギリスでは同一労働同一賃金原則と、雇用形態間の不利益取扱い禁止法制というのは厳格に区別されているのではないかという趣旨の御意見を頂戴しております。

2 点目に、欧州諸国の雇用形態間の待遇格差に関する法制度の運用に関してです。実際にフランス、ドイツ、イギリス各国で実際の運用に差が大きく見られます。その原因の 1 つは先ほども御指摘があったとおり、各国における労働市場の構造として、産業別労働協約の適用の有無などがあるということをきちっと示すべきではないか。そういった産業別の横断的な賃金のなさが、イギリスにおける訴えの少なさにつながっているのではないか。ドイツとフランスにおいては、協約による産業別の横断的なものがあるわけですけれども、ドイツとフランスにおける協約の運用の在り方について概要を示して整理をしていくことが必要ではないかという御意見を頂いております。

 不利益取扱い禁止の要件とされているような、比較可能な労働者を特定するということが、まず可能になっている面がその協約によってあるのではないか。実際にそれによって共通の基準で行われていることによって、同一労働に対して同一賃金に近い賃金を受けることが比較的容易に可能になっているのではないか。そういうことをきちっと位置付けていくべきではないか。

3 点目に、フランスとドイツの判例の整理ですけれども、異別取扱いが正当化されるか自体は、給付の性質・目的から判断されている傾向にあって、フランスとドイツはこのようなことが言えるけれども、イギリスは異なるのではないかという御指摘を頂いております。両国に共通する産業別の協約の仕組みが非常に重要な基盤として存在していると見ることが妥当であって、この点についての考慮を欠く場合には、イギリスの例に見られるように、雇用形態間の不利益取扱禁止法を整備しても実効性を欠くことになりかねないのではないかという疑念をお示しいただいております。

 最後に、日本の法制への示唆としてです。日本の法制は欧州諸国に存在しない均衡の観念を持っていて、その意義を検討しているわけです。欧州諸国での賃金決定の実情との比較をしながらやっていくことが必要なのではないか。最後に、協約において、正規・非正規を問わずに、知識・技能だとか責任に基づいた等級が客観的に設定されることで、職場における均衡が実質的に図られているので、その点に留意が必要ではないかといった趣旨の御意見を頂いております。

○柳川座長 それでは、水町委員お待たせいたしました。

○水町委員  2 点お話させていただきます。 1 点は比較法のところです。ほぼ皆さんがこれまでにおっしゃったことと共通することなので確認です。フランス、ドイツ、イギリスなどをここでは参考にしながら、法制度とか判例を見てきたわけです。これは、イギリスとか、ドイツとかフランスの制度を日本に直輸入しようとか転用しようという意味では全くなくて、参考にしながら、かつ日本の実態とか、日本の慣行を考慮して、日本の非正規労働者の待遇改善をするために、どういうルールが考えられるかと。

 そういう意見で、外国のこれまでの素材というのはプラスで参考になるところもあるし、こういうのだったら駄目だというマイナスの面でもある。そういうのをプラスとマイナスを見極めながら、日本の制度設計のときに考えていくというのが、日本のこれまでの比較法の蓄積で、これまで報告させていただいたものの中には、そういう形でどうやっていかせるのか、反面教師とすべきなのかということで報告させていただいてきたつもりです。

2 点目はキャリアコースです。キャリアコースというのは、フランスの判例で、パーク―・プロフェッシオネルというので、職業的なコースという意味で、キャリアコースというように訳しています。キャリアコースと訳してしまったがために、やや誤解を生んでいるところがあるかもしれません。

2 つあって、 1 つは過去に本当に蓄積されていた能力とか資格だけを見ているかというと、そもそも産業別の労働協約で、基本給が職務給として決められているのに、上乗せ部分として企業の中での、企業内の労働協約で、将来に向けた職業訓練とかキャリア展開を促すために、そういうキャリアコースを歩んだ人については、キャリア手当を設定して付与するという制度を労働協約で決めた。そういう意味では、単に過去の経験に基づく賃金が決まっているというよりも、将来の職場訓練を促すために、将来の視点も入れてそういう給与が設計されているのです。

 翻ってみて、日本の雇用管理区分みたいなものかというと、そういうキャリア展開でキャリア訓練を受けている人についてはキャリア手当を、例えば同じ職務であってもキャリア手当を支払いますというものです。そもそも雇用管理区分を全体的に分けてやっているわけではない。例えば、これをキャリアコースという言葉を使うと、日本の雇用管理区分で、日本の雇用管理区分を正当化するような判例として引用しているのではないかと言われると、これは全く誤解です。

 雇用管理区分については、例えば主観的な、抽象的な役割が違うというものでは、職務管理区分の違いによる賃金差を正当化できない。もっと実態とか客観的な違いがないと、それによる賃金差というのは正当化できないですという教訓にも生きてくるかと思います。

 そういう点を踏まえながら、柳川先生に本日お出しいただいた論点について見れば、個々の点について比較法の観点から若干気を付けなければいけないかなという点もなくはないですが、おおむねこのような方向でおまとめいただくことに私は基本的に賛成です。

○神吉委員 今の点に関して、欧州からの示唆というのは、確立した裁判例から取ってくるというようなお話だったと思うのです。フランスに関しては破毀院だと。将来に関してのキャリアコースの事例というのがもしあるのであればそれを示していただかないと、ここに欧州からの裁判例の示唆という形で、将来に向けたキャリアコースという、この F-40 からの示唆ではないものを入れてしまうと、誤解を生むのではないかと思います。

○水町委員 今、話したのは F-40 の話です。 F-40 から得られる示唆というのは、これまでのこの研究会の中でも説明してきたとおりです。それが日本の雇用管理区分による違い、雇用管理区分による賃金差を正当化するというように受け取られるとすれば、それは誤解なのではないかということです。

○神吉委員  F-40 の事例というのは、将来に向けたキャリアコースが協約で設けられている事例ではないですよね。

○水町委員 判決文の中に、オージュドゥウィ・エ・ドゥマンと書いてあって、将来に向けてこういうキャリアコースを設定して、それに対して給付をしますというふうに書いてある。

○神吉委員 それをキャリア手当とおっしゃったのですけれども、手当の話になるのですか。

○水町委員 基本給の上乗せ部分を協約で、企業の中で。

○神吉委員 加算するのですね。

○水町委員 上乗せしている。

○神吉委員 そうすると、手当の話になってしまって、基本給に対する示唆ではなくなりませんか。

○水町委員 それは前の検討会でもお話しましたが、日本で言う基本給に当たるのか、それとも外国で言う手当に当たるのかというのは、名目ではなくて実態で見て判断すると、日本の基本給でいろいろなものが入っているけれども、そこには職務対応部分とか、能力対応部分とか、キャリア対応部分とかいろいろあるかもしれないので、日本の中で言うと、基本給の一部分に相当するものとして示唆になるかもしれないということです。

○神吉委員 キャリアコースという言葉を、そもそも使わないという提案についてはどう考えていますか。

○水町委員 判例の言葉として使うかどうかはまた別として、日本の具体的な報告書なり、何か政府の報告として出すときに、片仮名でキャリアコースと使う必要は必ずしもないと思います。

○神吉委員 それは対応していただければと思います。

○川口委員 追加的に質問します。フランスの判例で、裁判所は、要するにコースが違うから問題ないですよと言ったのか、それともコースが違っていて、更に過去のトレーニングの参加状況とか、過去の実態が違うので、それは違うというように認めたのか、どっちなのですか。

○水町委員 そこは、判決文の中では明確にならないのですけれども、そもそも制度設計するときには将来に向けて教育・訓練をするためにプラスしましょう。実際に教育・訓練を歩いたコースの人が、今たまたま同じ職務なのだけれども、同一の職務に対して上乗せがあるということは、そのキャリアコースの違いとして正当化できる。そもそも労働協約で設定したときに、将来に向けてキャリア展開を促していきましょうというので、そのようなコースを設定している。

○川口委員 それを、キャリアコースが違うからオッケーだと判断したのか、実質的に今までその人が配置されてきた職務とか、実質的にどんなトレーニングに参加してきたのかというところまで見て。

○水町委員 そこまで具体的な判断はしていないです。そういう労使の設定の仕方自体が、客観的に合理的だと。それ以上、判例は具体的なところには踏み込んでは書いていないです。フランスの破毀院の判決文は簡潔なので。

○松浦委員 今の御議論で素朴な疑問です。もし、そのフランスの判例が、過去の職歴だけではなくて、将来の期待役割を含めて加算を認めたということになると、日本で将来の期待役割ではなく、職務範囲で整理しようとするのは、矛盾してくるので気になります。

○水町委員 それは両方含めて、どっちしかないというような判決ではない。

○松浦委員 でも、日本の場合は、将来の期待役割か、職務範囲のどちらかでというか、むしろ職歴だけで判断しようというご意見もあるわけですよね。

○水町委員 いや。

○川口委員 ちょっと整理したほうがいいです。

○水町委員 雇用管理区分と言うときに、抽象的な期待では駄目ですよ。だけど、これまでの労働契約法第 20 条の中で認められたように、配置転換の義務が違って、配置転換の義務が広い人については、それに対して将来の期待を実際上の配置転換義務の違いとしてキャリア展開を期待している人には、それについた賃金差を設けるというのは、日本では少なくともこれまでは適法だと、合理的だと考えられてきました。

○松浦委員 そうしたら、日本の場合も、将来の期待役割も含めて判断して良いということですか。

○水町委員 少なくともフランスの判例から、これは駄目ですよというものではない。

○松浦委員 ない。なるほど。

○水町委員 だけれども、ただ違いますよと、正社員と非正社員は雇用管理区分が違うので、配転義務の違いが実際にあるかどうか、実態の違いがあるかどうか分からないときに、ただ将来の期待が違うと言って賃金差を付けるのは少なくとも駄目だよねと。フランスの判例もそこまでは認めているものでは全然ありません。

○松浦委員 でも、将来の期待役割については、フランスで認められている、ある程度考慮されているということなのですね。

○水町委員 制度設計のときにはそういうことを含めて制度設計をしていると。労働協約で。

○川口委員 ポイントは、労働協約でそういうキャリアコースが、将来の期待が違うということを明確にした上で、労使で合意しているので、それが判断の基準になってということですか。

○水町委員 はい。

○川口委員 分かりました。

○柳川座長 報告書の中でも、将来の期待役割と賃金の関係は 1 つのポイントではあろうと思うので、今のようなところは少し丁寧に書くことだろうと思います。司会の不手際で時間が過ぎてしまいました。次回は 12 13 日に予定されています。その次が最後になります。実質的には 13 日にかなりの部分ができていないと、最後に出せないという形になります。大変申し訳ないのですけれども、 13 日に向けて、私が柱だけ書いてあるようなものをきちんと書いていく作業が必要になります。本日もやっていただきましたけれども、皆さんのほうで、できるだけ御意見を出していただいて、私が事務局を通して案をお送りするので、それに御意見を頂くのと、私から送ったものに対するフィードバックを頂く。もちろん 13 日にいろいろ議論していただいて、これがあれとか、こういうのを追加とか、先ほど中村委員からあったような派遣の話を御議論いただくとかがあります。少し形にしていかないと、とても間に合わないので、その辺りは御負担をお掛けしますけれども御協力を頂ければと思います。あるいは本日まで間に合わなかったけれども、何かこういうことをきちっと入れたいということがあれば、事務局のほうに出していただければと思います。そんな感じでよろしいですか。突貫工事なのですけれども、そんな感じでやらないと間に合いません。最後に事務局から次回のアナウンスをお願いします。

○河村企画官 次回の開催予定は、 12 13 ( ) 9 時から 11 時でお願いいたします。

○柳川座長 それでは、以上で終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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