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2016年12月28日 第21回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会議事録

老健局老人保健課

○日時

平成28年12月28日(水)9:00~10:00


○場所

ベルサール九段Room1+2(3階)


○出席者

    田中、千葉、藤井、堀田、山本(敬称略)

○議題

1.平成28年度介護事業経営概況調査の結果について
2.平成29年度介護事業経営実態調査の実施について
3.その他

○議事

○西嶋介護保険データ分析室長 それでは、定刻となりましたので、第 21 回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会を開催させていただきます。

 初めに、本日の委員の出席状況ですが、井口委員より御欠席の御連絡をいただいております。

 議事に入ります前に、お手元の資料の御確認をいたします。まず、資料 1 として、「平成 28 年度介護事業経営概況調査結果のポイント ( ) 」、資料 2 として、「平成 28 年度介護事業経営概況調査結果 ( ) 」、資料 3 として、「平成 29 年度介護事業経営実態調査の実施について ( ) 」、資料 4 として、 5 種類の調査票の案がございます。また、参考資料 1 として、「介護事業経営実態調査等の見直しについて」を用意させていただいています。資料の過不足等がございしたら、事務局までお申し出ください。

では、以降の進行を田中委員長にお願いします。

○田中委員長 皆さん、おはようございます。朝早くからありがとうございます。早速、議事次第に沿って進めてまいります。本日の議題は 2 つあります。議題 1 「平成 28 年度介護事業経営概況調査の結果」及び議題 2 「平成 29 年度介護事業経営実態調査の実施」です。両者は関連しますので、一括して議題といたします。事務局より資料の説明をお願いいたします。

○説明者 それでは、最初に議題 1 「平成 28 年度介護事業経営概況調査の結果」について御説明いたします。

資料 1 を御覧ください。まず 3 ページをお開きください。今回の「平成 28 年度介護事業経営概況調査の概要」ですが、調査の目的は、各サービスの施設・事業所の経営状況を把握し、介護報酬の改定に必要な基礎資料を得るというものです。今回の調査は、平成 28 5 月に実施をしておりまして、平成 26 年度決算及び 27 年度決算を調査したところです。

 調査対象等については、全ての介護保険サービスを調査対象といたしまして、今回の調査による調査客体数が 1 6,280 施設・事業所、有効回答数は、 7,681 施設・事業所ということです。有効回答率に直しますと、 47.2 %でございます。

 各サービスの有効回答数については、 4 ページの左側の上に、「平成 28 年度概況調査」と書いておりますが、こちらが今回の調査です。一番下の合計が 47.2 %で、これが調査全体の有効回答率となります。

 その右に参考として、前回の平成 25 年度概況調査の有効回答数等をお示ししております。一番下ですが、前回の平成 25 年度の有効回答率は 41.7 %ということで、今回の平成 28 年度の概況調査については、有効回答率が改善しているという状況でございます。

なお、平成 25 年度概況調査のところで、左の番号で言いますと、 14 番の定期巡回・随時対応型訪問介護看護、 15 番の夜間対応型訪問介護、 21 番の看護小規模多機能型居宅介護については、前回調査では有効回答数が少なかったということで、公表の対象外としていましたが、今回の平成 28 年度調査では、一定の有効回答数が得られましたので、参考数値ということですが、集計結果を公表しております。

 次に、今回の平成 28 年度概況調査から見直しを行った点について、御説明いたします。参考資料 1 を御覧ください。経営概況調査と次年度に実施する経営実態調査については、昨年度の経営調査委員会、介護給付費分科会において、見直しの御議論をいただいたところです。この参考資料 1 は、昨年 12 月の分科会において、調査の見直しの提言ということで取りまとめられたものです。

経営概況調査については、この提言に基づきまして、この資料の 1 ページ、「1.調査対象期間等について」の 2 つ目の○ですが、介護報酬改定の影響を把握する観点から、改定前後の 2 年分の収支を把握することにしたところです。

 「2.追加調査項目等について」は、御議論の中で、借入れ等を利用して経営を行っている場合もあるということで、介護報酬改定の検討の際の参考として、必要最小限の調査項目を追加するという観点から、長期借入金返済支出を新たに把握するということにしたところです。

 次に、 2 ページですが、調査項目として、 2 つ目の○、国庫補助金等特別積立金取崩額の取扱いについては、収支差率の算出の方法については現行のとおりとしつつ、 27 年度から全ての社会福祉法人が新たな会計基準に移行することを踏まえ、 28 年度調査より、記載する項目を「介護事業収益」から「介護事業費用」に移行し、控除額として計上するという形で、調査項目を見直したということです。以上が今回の調査において見直した点です。

 それでは、資料 1 にお戻りいただきまして、 1 ページをご覧下さい。「調査結果の概要」について御説明いたします。

1 つ目の○です。「各介護サービスの収支差率」についてです。これについては、介護報酬改定前の平成 26 年度と改定後の平成 27 年度の状況を比較しますと、多くの介護サービスにおいて収支差率が低下しているという状況ですが、平成 27 年度の収支差率の数値そのものについては、おおむねプラスになっているということで、居宅介護支援のみマイナスという状況になっています。

 各サービス類型の状況としては、その下のポツ 3 つですが、施設サービスについては、全てのサービスにおいて収支差率が低下しているという状況です。次に、居宅サービスについては、一部のサービスを除いて収支差率が低下しており、福祉用具貸与、居宅介護支援については、対 26 年度増減でプラスになっています。最後に、地域密着型サービスについては、 5 つのサービスで収支差率が低下している一方、 3 つのサービスで収支差率が上昇しております。この「 3 つのサービス」と申しますのは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護の 3 つであり、これらは収支差率が上昇しております。

 各サービスの収支差率の具体的な数値については、 1 ページの下の表にまとめて記載しております。数値の上段については、税引き前の収支差率、その下にちょっと小さな数値で括弧書きになっておりますのが、税引き後収支差率ということで、二段書きにしてお示ししています。

 次の 2 つ目の○ですが、「給与費割合」についてです。これについては、介護報酬改定前の平成 26 年度と改定後の平成 27 年度の状況を比較しますと、多くの介護サービスにおいて給与費割合が上昇しているという状況です。

 「給与費割合」の具体的な数値については、 2 ページに示しております。この表については、前回の平成 25 年度概況調査の数値も合わせて記載しております。左側が「平成 25 年度概況調査」であり、こちらは平成 24 年度決算を把握しているもので、それぞれ収支差率、収入に対する給与費割合を記載しております。右側が今回の平成 28 年度概況調査でして、こちらは平成 26 年度決算、平成 27 年度決算の 2 か年を把握しておりますので、それぞれの収支差率、収入に対する給与費割合を記載しており、一番右にその差を記載しています。給与費割合の増減についてはこの一番右の数値となります。例えば、介護老人福祉施設については 27 年度の給与費割合が 63.8 %ということで、 26 年度の 62.6 %と比較して、プラス 1.2 %ということになります。全体的な傾向としまして、この増減の箇所を見ていただきますと、ほとんどがプラスとなっております。一部のサービスでマイナスになっておりますが、福祉用具貸与、居宅介護支援、定期巡回、看護小規模多機能については収支差率が改善しているサービスですので、相対的な関係として、マイナスになっているものと受け止めています。

5 ページについては、これは毎回お示ししているものですが、「各サービスの状況」ということで、利用者 1 人当たりの収入と支出、収入に対する給与費割合、収支差率について、サービスごとに整理したものを掲載しています。

 続きまして、資料 2 を御覧ください。資料 2 は調査結果の詳細版ということで、各サービスの収入、支出の金額等の具体的な数値を記載しています。 1 例ですが、3ページは「介護老人福祉施設」の集計表です。前回の調査の集計表からの変更点としましては、先ほど御説明しましたとおり、国庫補助金等特別積立金取崩額について、この集計表ですと、左の数字で 8 と書いてある箇所ですが、前回までは、ローマ数字1の「介護事業収益」の中に入れておりましたが、こちらをローマ数字2の「介護事業費用」のほうに移しまして、控除項目として計上ということでマイナスという形で記載しています。なお、過去の調査における集計についても、同様の整理をさせていただいており、前回の 25 年度調査、前々回の 22 年度調査においても、控除項目としております。

 それから、新たに把握している長期借入金返済支出については、具体的な項目として、左の数字で 20 21 とありますが、「設備資金借入金元金償還金支出」「長期運営資金借入金元金償還金支出」に記載しています。

先ほど御説明しました収支差率については、税引き前の収支差率については、左の数字の 16 と書いてある箇所の「差引 丸3=丸1-丸2」の具体的な金額の右側にパーセンテージを記載しており、「介護老人福祉施設」については 26 年度が 3.0 %、 27 年度が 2.5 %という数値になっています。税引き後の収支差率については、その 2 行下の 18 と書いてある箇所に「法人税等差引」ということで記載しております。「介護老人福祉施設」については、社会福祉法人が非課税となっておりますので、 3.0 %、 2.5 %と同じ数値となっております。

 また、前後して申し訳ございませんが、「給与費割合」については、左の数字の 6 と書いてある箇所の「介護事業費用」の「 (1) 給与費」の各年度の金額の右側のパーセンテージとなっております。「介護老人福祉施設」ですと、 26 年度が 62.6 %、平成 27 年度が 63.8 %となっております。

 今回の調査より新たに把握しました長期借入金の返済状況についてですが、こちらについては、当該年度の経常活動によって手元に残る資金で借入金の返済が可能であるかを把握するための調査項目として把握したものです。具体的な評価としては、まず、手元に残る資金ということですので、左の数字で 7 と書いてある箇所の「 (2) 減価償却費」の金額と、最終的に手元に残る収支ということで、左の数字で 18 の税引き後収支差額の合計額、平成 27 年度の介護老人福祉施設で申し上げますと、 7 行目の 2,114 千円と 18 行目の 631 千円の 2 つの合計額が手元に残るということです。

 これに対して、償還金支出の額としては、 20 行目と 21 行目の額、 27 年度の介護老人福祉施設で申し上げますと、設備資金借入金元金償還金支出、これは施設整備と設備整備を両方含みますが、こちらが 1,115 千円、長期運営資金借入金元金償還金支出が 108 千円ということで、この 2 つの合計額が借入金返済支出となり、この合計額同士の比較によって、一定の評価ができると思われますが、介護老人福祉施設については、御覧になって分かるとおり、前者の減価償却費と税引き後収支差額の合計額の方が大きいということです。

 今回、いくつかのサービスで長期借入金返済支出を把握させていただきましたが、他の全てのサービスについても同様に、減価償却費と税引き後収支差額の合計額の方が大きいという状況になっておりますので、今回の結果によりますと、全てのサービスにおいて、返済が可能な状況になっていると推察されます。

簡単ではございますが、議題 1 の説明については以上でございます。

○説明者 続きまして、議題2「平成 29 年度介護事業経営実態調査の実施」について御説明いたします。

資料 3 を御覧ください。まず 1 ページですが、調査の実施案ということで、基本的には見出しに書いておりますが、平成 29 年度経営実態調査については、平成 28 年度の概況調査における見直し内容も踏まえて、以下の基本的な考え方に沿って調査を行ってはどうかということでございます。

 前回の平成 26 年度の実態調査からの変更点を中心に御説明いたします。まず、 2 (1) の「調査時期」についてですが、これまでの実態調査が 1 月分、いわゆる単月分の調査でしたが、これを 1 年分に変更することに伴い、調査の実施時期を 4 月から 5 月に変更いたします。参考として記載しておりますが、 26 年度の実態調査の調査時期は平成 26 4 月で 26 3 月分の収支を調査しております。今回は、平成 29 5 月に調査を実施し、 28 年度の決算額を把握するということにしたいと思っております。

 次に、 (2) の「公表時期」ですが、結果の公表については、従前どおり、 10 月を予定しておりまして、この経営調査委員会において、結果をお諮りし、分科会に報告するということにさせていただきたいと思っております。

 次に、 3 (1) の「調査対象」ということで、全てのサービスということに変更はありませんが、平成 28 4 月から通所介護と地域密着型通所介護が分かれておりますので、実態調査においても、この 2 つのサービスを分けて調査したいと思っております。

 次に 2 ページを御覧ください。 4 の「調査の基本方針」ということで、見直し内容を記載しております。前回の実態調査からの変更点として、 1 つ目の○ですが、平成 29 年度実態調査における新たな見直し内容として、先程も御説明したとおり、実態調査の調査対象期間を単月分から 1 年分に変更するということです。なお、概況調査については、既に改定前後 2 年分に変更しております。

2 つ目の○ですが、 28 年度概況調査において既に見直し済であり、今回の実態調査でも同様に見直す内容ということで、長期借入金の返済支出の把握、国庫補助金等特別積立金取崩額の記載項目を移行について、今回の実態調査においても同様に対応していくということで考えております。

3 ページから 5 ページに、具体的な調査項目を記載しておりますが、こちらについては、文章にも記載しておりますが、具体的な調査項目については、調査年度の修正や形式的な変更を除き、基本的には平成 28 年度概況調査と同様の項目としたいと考えています。

 最後に 6 ページですが、サービスごとの抽出率を記載しております。いくつか抽出率にアンダーラインが引いてある箇所を見直す予定ですが、この抽出率の考え方としましては、調査全体としての精度を向上させるという趣旨でございまして、前回の 26 年度実態調査におきまして、結果精度が低かったサービスについて抽出率を上げる一方、前回の実態調査において、十分な結果精度が得られているサービスについては、抽出率を下げるといった調整をさせていただいております。

 なお、 6 ページの下の※の 2 つ目ですが、本調査は、政府統計の一般統計調査をありまして、調査の企画案について御承認を頂きました後に、総務大臣の審査・承認を受ける必要がございます。このため、総務省における審査の段階で、抽出率等に変更があり得ることを御了承いただければと思います。

 最後に、資料の 4 1 から 4 5 ですが、本調査において使用する調査票案を添付させていただいておりますが、本日は時間の関係もありますので、説明の方は省略させていただきます。

事務局からの説明は以上でございます。

○田中委員長 ありがとうございました。ただいま説明のありました事項について、御質問、御意見、結果の読み方の示唆でも結構ですのでお願いいたします。

○藤井委員 「人件費率」というデータを比べていただいて、これが高まっているということと、報酬のマイナス改定という影響があって、事業所の黒字が減になっているという結果だと思いますが、この人件費率の出し方で、これは毎回少し出ている話だと思いますが、確認の意味なのですけれども、アウトソーシングとの関係ですが、介護職員の派遣、給食、清掃、この 3 つがアウトソーシングだと思います。清掃の影響はそんなにないと思います。派遣職員というのは、やはり人材難になりますと、割合がどうしても増えてくるのですが、給食委託費もそうなのですが、社会福祉法人の会計基準とその他とちょっと取扱いが違っておりまして、派遣の介護職員のほうですと、社会福祉法人会計では、「派遣職員費」という形では人件費に含める形ですが、その他では、「派遣委託費」ということで、委託費に含める形になっております。

 それから、給食に関していいますと、社会福祉法人では、「給食委託費」ということで、材料と人件費を分けて見られないようになっていると思うのですけれども、その他では、「給食材料費」という勘定を取っております。これらの介護職員の派遣、給食の委託というアウトソーシングのときの人件費、これをどう見るかによって人件費率が、例えば 2 年間でも派遣の委託がどんどん進んでいれば、それが適正に人件費の中に集計されていなければ、この数字よりもより多く人件費率が増えたはずだということになると思いますが、その辺りの数字の取扱いの確認をお願いします。

○説明者 給与費割合の算出についての御質問ですが、派遣職員の取扱いについては、調査対象事業所において、派遣職員を雇い入れている場合、現行の取扱いとしまして、事実関係としましては、給与費ではなく、派遣委託費として整理をさせていただいております。具体的に申しますと、例えば、資料 2 3 ページを御覧いただきますと、人件費として計上されている場合には、 6 行目のローマ数字2の「 (1) 給与費」に金額が計上されますが、派遣職員ということでありますと、このローマ数字2の「 (4) その他」に計上されます。「うち委託費」とありますので、内訳としてはこの委託費に計上されるということで、いわゆる人件費か物件費かということで言いますと、物件費の扱いということになっておりまして、現状の算出方法ですと、給与費割合の算出にあたっては派遣委託費については含まれていないというのが事実関係でございます。

 社会福祉法人会計基準につきまして、新しい会計基準ですと、この派遣職員費につきましても、人件費という勘定科目に入っておりますが、本調査の調査票上の取扱いにつきましては、例えば、資料 4 1 に、「介護老人福祉施設」の調査票がありますが、このうち、費用の調査票になりますので、 12 ページをご覧いただきますと、「 1 人件費」の「うち派遣職員費」と書いておりまして、内訳で記載していただくこととしております。この集計に当たり、派遣職員費については、先ほど御説明しましたとおり、委託費に計上した上で、人件費割合を算出するということにしております。

 それから、給食につきましても、給食業務の委託費ということで、同じ 12 ページの「 (11) 業務委託費」の「丸1 給食委託費」ということで、ここに計上されるということになり、同様に委託費の取扱いということになっております。また、調理員について、直接雇用している場合には 1 の人件費に入ると思いますが、給食業務全体を外に委託しているような場合については、「給食委託費」ということで、こちらに計上されるという取扱いとさせていただいております。以上でございます。

○藤井委員 それぞれの会計基準、事務職等というのは、財務会計上の目的がありますので、それを統一するときに一定の考え方で整理されるということで今の状態は納得いたしました。ただ、介護報酬を考える上での基礎材料になるという意味では、こういう言葉を使うと、千葉委員や山本委員に怒られるかもしれませんが、制度的な管理体系の側面があると思うのです。それを考えますと、人件費というのは今、人が集まらない。したがって派遣に頼らざるを得ないという状況を、制度側としてどう見るかというと、やはり同じ人件費の一部として見るという考え方もあり得ると思うのです。ですから、現在のまとめ方はまとめ方でいいとして、できる限り人件費は人件費で固めたときのパーセントはどうなのだろうかというパーセントも見せていただいたほうが、介護職員の給与等を考える上では重要だと思います。それをお願いしたいと思います。

○田中委員長 ありがとうございました。ほかにございますか。

○千葉委員 私のほうから、今回の結果を見た所感を申し述べます。

 今回は 2 つの議題があって、平成 28 年度の概況と平成 29 年度の実調の案ということで、実施案が出ています。いずれも、先に見直し案という参考資料の事項を適切に反映した調査になっているという点があります。更に特筆すべき点は、今回の概況調査については平成 26 年度決算、平成 27 年度決算という形で、いわゆる改定前後のデータが取られているということで、厳密に改定効果が見えてくるのかなと思いました。

 御説明の中にはなかったのですが、推定するに、資料 2 3 ページを見ると、「介護老人福祉施設」の所の真ん中辺りの「平成 28 年度概況調査」に平成 26 年度決算、平成 27 年度決算がありまして、ライン番号で 19 の「施設数」を見ると、同じ数字がありますので、これは両年度の比較可能なサンプルで厳密に見ているのだろうということで、そういう意味でも、 2 つの平成 26 年度、平成 27 年度の決算期におけるサンプル標本誤差がない状態で、改定効果が測定されたというところで言うと、非常に進歩したのかなと思っています。調査の仕方はそのようなところです。

 中身について見ると、先ほど御説明があったように、かつてない低いレベルの収支差に今回は出たというところで、前回の報酬改定からすると、過去の中では 2 番目に大きな引下げ率だったという話も一部ありましたので、それを反映した結果なのかなと思っております。

 先ほど今回新しく導入した資金収支系の所で、借入金の返済状況の話がありましたが、 1 点、補足かどうか、修正と思われる御説明を申し上げますと、先ほどはこの表の見方、具体的に言うと、借入金の返済支出の 20 番と 21 番を合わせた額を、減価償却費と税引き後の収支差額で合わせた額で比較するという話があったのですが、厳密に言うと、減価償却費と国庫補助金のマイナス分を足したものに収支差額を合わせた額という形にしないと、本当に手元のキャッシュフローにはならないだろうと。

 それで見たときでも、一応はプラスにはなっているということは、特養などは見て取れます。国庫補助、特に社福系だと、これはかなり大きく出ますので、この部分を勘案すると、かなり資金的にはぎりぎりの線にきているのかなという感じがしております。

 特に、介護老人福祉施設などを見ると、収支差率の差額が平成 27 年度の直近で 2.5 %というところでいうと、これは全国平均で 2.5 %ですから、当然、かなり赤字の所も一定数はあったのだろうということが推定されていて、業界全体としてはかなりぎりぎりのところに差し掛かりつつあるのではないかと感じております。

 特に資金収支上、そういうぎりぎりのところで言うと、経営の理屈から言えば、融資を受けられれば資金繰りができるだろうという話があるのですが、なかなか社福法人の場合はそういうことがままならない。自前で上がってくる資金のゆとりの中で、今後増大していく福祉ニーズ、特に介護需要はまだこれから伸びていくという推定もある中で言うと、ある意味の拡大再生産というのが今後しばらくの間は求められていくのではないか。そう考えると今回の調査結果は拡大再生産にはかなりぎりぎりの線ではないか。果たしてどの程度拡大再生産のブレーキ要因になるのかということは慎重に見ていく必要があるのではないかという気がしています。

 それから、前回の改定のときに行った、今回は参考的に扱われていますが、前回の平成 26 年度決算の実態調査です。例えば資料 2 で言うと、表の一番右側に参考として載っていまして、これも勘案して見ると、特に前回突出して高い数字ということで、各団体の中でも、これは実感に合わないという指摘があった、例えば特養とか特定施設、認知症グループホーム、デイサービスといった辺りが、今回の調査を見ると、いずれも大幅に収支差率が下がっているという点が見られるということです。

 そういう意味では、改定が相当厳しかったということが 1 つ推定されるのと、あとは前回の実態調査が高く出たということです。前回の実態調査というのは 3 月の単月調査だったのですが、その効果がもしかしたらオーバーシュートして出てしまったのかなというところがあるのかもしれません。

 そうした場合、これは 2 の議題になりますが、平成 29 年度実調では、決算ベースでの調査になるということで、単月の季節変動要因はなくなっていくのではないかというところでは、調査結果に期待を持ちたいと思っています。今回の調査というのがモデレートな状態に落ち着いてきた、いわゆる熟れてきた状態にきたのかなと全体としては評価しています。

 それから、人件費については、今も藤井委員からも御質問がありましたが、今は労働市場は介護安定センターの統計などを見ても、需給としての逼迫感が相当強いような調査結果があちこちで出ています。そういう意味では、今回のいずれもほとんどのサービスで収入に対する給与費の割合というのが上がっているというのは、こうした要因が背景にあったのだろうなと思います。

 これは特に人件費率の場合に、人件費が上がった部分と、逆に分母である収入面のほうが下がった部分の両面の影響が出ると思うので、そこのところは丁寧に見ておく、特に実態調査などのセンシティブな分析のときには丁寧に見ておく必要があるのではないかと思っております。

 これは蛇足なのですが、減価償却の関係の所です。これは私ども福祉医療機構のデータなどを見てもそうなのですが、比較的、経年的に安定した割合になっている指標だと思います。長期的な固定費と考えていいかと思うのですが、趨勢的に我々も貸付の現場を持っている者として危惧するのが、最近は非常に建設物価が高騰してきている点です。ということは、今後かつて建てた特養が建替えを迎えていくと、当然、減価償却という将来の償却負担は構造的に上がらざるを得ない要因がどうしても含まれてくるのではないかと思っていまして、少なくとも今回は居宅介護支援を除いてプラスだというところで一安心ということはあるのですが、こういう構造的な長期的要因を考えると、今回の収支差をもって安心しているわけにはいかない、予断を許さない状況にあるのではないかという点は、 1 点指摘しておきたいと思っております。

 あと改定の効果を厳密に見られるというところでは、確かに先ほど申し上げたとおりなのですが、例えば資料 2 の特養、 3 ページのライン番号で 34 の「利用者 1 人当たり収入」を見ていただきますと、これが利用者単価に当たるのだと思います。本当は、欲を言えば、これが 2 か年の間でどう動いたかということが見られると一番いいのだろうなと思いつつも、ただ調査設計上、利用者数の把握は単年度分しか取らないというか、逆に記入者負担のことも考えたり、回収率を考えたりすると、記入者負担はそんなに増やせない。そういう意味では、前の調査との比較で単価が上がったか下がったかというところを見れば、一応のものはできるのかなとは思うのですが、それを見ても、今回は単価的には前回の概況調査と比べて、ほぼ横ばいということは、いわゆる本体報酬を切り込んだところ、加算で戻したという形跡がどうも見て取れるのかなと思っております。

 最後に、実態調査の関係で申し上げます。資料 3 以降の部分についてです。今回から決算を取るということで、それが非常にいい効果になるのではないかと期待している点があります。気になる点を 2 つばかり申し上げますと、 1 点目は、今度の平成 29 年度の実調については、調査時期が平成 29 5 月とされている点で、これは全ての事業者ではなくて、その中の社会福祉法人についてだと思うのですが、今回社会福祉法改正に基づいて制度改革が行われ、平成 29 年度から本格施行ということで、例えば定時評議員会が初めて動き出すとか、そういう辺りで、かなり事務方がばた付いているという状態が推定されます。特にこの時期は所轄庁に提出などいろいろなものが出てきます。そういう意味では、ばた付いた相手に対して調査するというところになりますから、今までも丁寧にやっていただいていると思うのですが、引き続き、より丁寧に回収の管理とか、督促、更にはそういう辺りをサンプル確保するという努力を普段以上に丁寧にされるといいかなと思っているところです。

 最後に 1 点、調査票の所の質問ですが、資料 4 1 の介護老人福祉施設ですが、これの問 4 10 ページです。ここで、冒頭に適用する会計基準の選択肢が書いてあるのですが、もはや社会福祉法人しかやらない介護老人福祉施設の場合に、「指導指針」というのはあり得ないと思うので、この一番上の選択肢は要らないと思います。それに続いて出てくる (3)-A という指導指針に基づく回答欄のこの一式、 10 ページから 11 ページについては、もはやなくてもいいのかなと感じたのですが、何か残した理由があれば、教えていただきたいと思います。以上です。

○田中委員長 「結果の読み方に関する所感」と言われましたが、丁寧な解説並びに調査に対する懸念もありがとうございました。質問の部分にお答えください。

○説明者 まず、御指摘のありました 29 年度実態調査の提出期限のお話ですが、こちらについては、先生から御案内のあったとおり、平成 28 年度の決算分から社会福祉法人における決算書の作成期限がこれまでの会計年度終了後 2 か月以内から 3 か月以内に変更され、この規程が施行されたということです。実態調査については、調査票の提出期限を基本的には 5 月末日としておりますが、締切を過ぎても調査票の提出がない事業所に対しては、調査票の提出をお願いするお電話等をさせていただいておりまして、締切日以降に提出された調査票についても、可能な限り集計に反映させていただくということで、これは従来から行っているところです。

 今年は先生から御指摘のあった社会福祉法人における特有の御事情もあるということで、この辺りについては電話照会の際に、そのような提出遅れの理由等についても十分に確認することによりまして、適切に対応していくということにさせていただきたいと思っております。

 もう 1 つのいわゆる指導指針と会計基準の御指摘ですが、こちらについては、どちらを選んでもいいものとして残しておりますが、詳細を調べまして、適切に対応したいと思っております。

○田中委員長 調べて頂いて、もし修正が必要ならそのようにしてください。報酬改定を前後した定点観測は初めてできたと言えますので、その点は大変画期的だと思います。それから、社会福祉法人に限っての国庫補助金取崩額についての視点は間違いないので、そのように理解しましょう。ほかにいかがでしょうか。

○山本委員 感想が 1 点、質問が 2 点です。感想としては、日々監査であったり、決算の現場でクライアントといろいろと話をしている中で、経営環境が非常に厳しくなったという声を聞きますので、今回の調査結果として、おおむね全てのサービスで収支差率が低下したという結果が出ておりますが、この辺りの実感値というか、現場感覚としてもおおむね認識としては一致している結果ではないかと思いました。

 質問です。資料 2 の「収支差率分布表」が下のほうにグラフがあります。おおむね施設系はきれいな分布になっているのですが、それ以外の所で少しばらつきが多いです。一般論として、介護報酬、いわゆる公定価格的な価格が統制されているということと、あとサービスの内容自体もいろいろな施設基準等もありますので、理論的に言うと、ほぼ収束するはずだとは思うのですが、そうなっていないというのを推測しますと、この調査票の設計の段階からも議論があったとおり、共通費の配賦のようなところについては会計理論上も非常に難しい論点ではあるのですが、まだ更に検討する余地が残されているのではないかと感じたところもあります。この辺りについて、調査を担当された結果として、何か原因として思い付くところがあれば、是非教えていただきたいというのが 1 点です。

もう一点は、今回せっかく資金繰りということで設備資金の借入償還支出等を見ていただいて、先ほどはいろいろと意見交換もしていただいたのですが、この中で 2 年分取って、時系列でのデータがありましたので、そういう観点で拝見しましたところ、利益率というか、収支率が悪くなっているということもあって、施設系のデータを見ると、償還支出がおおむね減少しているというか、一定と言うのでしょうか、ある意味で設備投資の意欲が、利益率が下がってくると減退するというか、そのような傾向が出ているのかどうなのか。だけれども、施設系以外の所を見ると、案外そうでもなくて、借入支出等が増えているということで、そこは設備投資が進んでいると見るのかどうなのか。非常に限定されたデータですので、このデータだけで利益率と設備投資の比率、先ほど千葉委員からもございましたとおり、「拡大再生産」という意味で、適正な利益率と将来に向けた設備投資の関係をしっかりと把握しておく。「管理」と言うと、言葉が過ぎるかもしれませんが、ある程度影響度合いを見ておくことも必要ではないかと思いましたので、せっかく時系列のデータがありましたので、この辺りで調査の過程でお気付きの事項があれば教えていただきたいと思います。

○田中委員長  2 点ほど御質問がありました。

○説明者 まず、 1 点目の分布のばらつきの御指摘でございますが、これについては、サービスによって要因が若干違うものと思っております。例えば、資料 2 9 ページの「訪問リハビリテーション」については病院等の中での訪問リハビリテーションということで、費用の割合が病院等の全体のシェアに比べて小さいということがあります。そうしますと、先生がおっしゃったとおり、費用の配分の辺りで微妙なところが結構大きく影響してくるという要因があると思います。

 今回の調査については、その辺りも気を付けて疑義照会等をさせていただいておりまして、この分布で見ますと、前回はクリーム色の分布になっていますが、今回はブルー、グリーンの分布になっています。まだ少しばらついていますが、前回よりは正規分布の形に近くなっているのではないかと思っております。

 もう 1 つが、調査客体数がまだやや少ないサービスがあるということです。例えば、 16 ページの「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」ですが、前回調査では集計結果を公表しておりませんでしたが、今回は集計結果を公表しております。御覧のとおり、ここもばらついております。これは創設から間もないサービスということもあり、まだサンプル数も少ないということもあるということ、経営的に安定しているかどうかという点などもあると思っており、このようなサービスごとの特有の事情もあるのではないかと思っているところです。

 それから、 2 点目の設備投資の関係でございますが、基本的には設備投資の状況について、この調査については、基本的には「財務三表」と言われる中の「損益計算書」をメインとした調査となっており、設備投資の状況については「キャッシュフロー計算書」等の範疇に入ってくるものかと思っています。今回、そのキャッシュフロー計算書の一部の数値を調査したのですが、調査項目としてはあくまでも償還支出だけですので、設備投資が実際にいくら行われたのかということは把握しておりませんので、その辺りの評価は現時点では難しいものと思っているところです。以上でございます。

○堀田委員 一部、今の山本委員の御質問に重なるところがあるのですが、感想と課題だなと思ったところが 1 つです。

 まず、資料 1 1 ページ目を見ると、「対 26 年度増減」というので、プラスでやや大きく出ているのが定期巡回と看護小規模多機能型居宅介護、続いて幾つかとなるわけですが、この 2 つが、いずれも同じ資料 1 4 ページにいくと、今回やっと掲載されるぐらいの数に至ったということではあるのですが、 1 分の 1 で全数対象だったと思いますが、それでも有効回答率を見ると定期巡回が 22.4 %、看護多機能が 26.5 %となっていて、まだまだ新しいということもあって、このような調査に書いている余裕がないというところも非常に多く、比較的全体として見ると、大分軌道に乗りつつある所が答えているのではないかと思われます。今回こうやって集計してくださったことは、 78 とか 30 幾つとか、とても少ない数だと思いますが、それでも意味があったと思います。

 その一方で、これだけで議論するのが難しいところもあって、来年度の経営実態調査の母集団を見ると、事業所数も増えているとは思ったのですが、これからしっかりと伸ばしていきたいと位置付けている地域密着型サービスの基幹的なサービスでもありますので、本当にこの事業の実態を知りたいということであれば、この同じスタイルのものとは別の、それは老健事業なり何なりのものを重ねて見るというのも必要なのではないかと思いました。

 そのことが、先ほども正に触れてくださった資料 2 16 ページの定期巡回と 23 ページの看護小規模多機能型で、いずれも正規分布にはならない、特に定期巡回はならないことかと思って見ていたのですが、全体として実態を把握することに加えて、 16 ページの定期巡回などを見てみると、マイナス 50 %というのがまだそれなりにあると。では、他方で右のほうに行っているのも結構あるなと感じて、平均値で表わされているのと、この分布では大分当たり前だと、本当にばらつきが大きいと思います。

 逆にプラスが大分出ている事業所はどういった実態になっていて、まだまだマイナスの所というのはどういった実態になっているのかといったような分析も、それはこの調査そのものの目的ではないと思いますが、今後やっていく必要があるのではないかと思っていました。

○説明者 御指摘のとおり、定期巡回と看護小規模多機能について、今回の調査において公表はさせていただきましたが、まだまだ有効回答数、有効回答率ともに低くなっておりますので、実態調査につきましても、引き続き、有効回答数や有効回答率の向上に努めていきたいと考えています。

○藤井委員 今回のデータの見方という観点で 3 点、次回以降の調査ということで 2 点ほど申し上げます。

 まず、堀田委員と山本委員からお話のあった分布の件です。 2 点おっしゃいましたが、それ以外にも、例えばそもそも規模が違う。そうするとヘッドクォータの費用をどう乗せるか。例えば訪問介護ですと、 20 人の利用者というのは明らかに損益が合わないようになっているわけですが、これが 50 人、 100 人となってきますと利益が出るようになっていますので、その問題があります。これが施設に関して言うと、一定の規模感に納まるという違いがあると思います。

 もう一点は、正に今議論のあった定期巡回、訪問リハもそうなのですが、費用の区分を介護のほうではやっております。医療の診療報酬でずっとやれなかったことを介護ではもともと分けようというところで、これは田中委員長も以前からおっしゃっておられるように、全体として法人とすれば、利益をどう出すかということを考えていますので、もともと区分するのに無理があるものがあるのですが、何よりも定期巡回というのは訪問介護と一体的にやっているのが多いと思いますので、区分するのがそもそも無理というか、相当難しいことがあります。

 これは将来的な研究とか提案なのですが、公定価格の一種だと介護報酬を考えれば、今はやっておりませんが、タクシーの値段を決めるときに標準事業者というものを設けて、これをどのように分析して、どう公表するかは置いておくのですが、堀田委員のおっしゃっていた趣旨も踏まえて、いろいろな事業者を全部平たく見るというよりは、ある程度のサービスモデルのようなものを前提としたときに、本当に損益は成り立っているのかという見方もしていかない限り、特に定期巡回はどうやっても。今後、定期巡回だけでやっていくモデルが標準になってくればいいのですが、今のところはそうなりそうもないのですが、定期巡回は伸ばしていきたいサービスですので、その辺りは少し検討が必要だと思っています。

 あと 2 つは、そもそもこの委員会が全体的に否定的で、私もかなり否定的な意見を述べた「定点調査」と「資金繰りのデータを取った」ということなのですが、むしろいずれも大変貴重なデータが取れたと、ほかの委員もおっしゃっていましたし、私もそのように思いました。

 改めて、「定点調査」というのは私も含めほかの先生方も、なぜ否定的であったかと言いますと、定点ということをすると、代表性がどんどんなくなっていきます。病院とか診療所ですと、そんなに出たり入ったりのない事業ですが、そもそも株式会社等であれば儲からなければやめるわけですから、介護の場合は出入りが大きいということで、定点調査でやると代表性が失われるという問題です。それから、かなり負担が増えると回収率が下がるのではないかということだったと思います。

 この代表性の問題に関して言うと、 1 回で 2 年度分取るというやり方をすれば、これはよかったですよねということだと思います。回収率に関して言うと、有効回答率というものだけを見ると、むしろ上がっているということで、これは回収率そのものはそんなによくなるとは思えないので、有効回答率というか、いろいろな工夫を事務局でしていただいた結果として、より使えるデータが増えたということだと思いますが、そうであればこういう定点調査もいいのだろうと思います。

 提案が 2 つあります。 1 つは千葉委員がおっしゃったことです。今後、概況調査というところで 2 年分、報酬改定の前後で取るという意味があるということを踏まえて、 2 年分取るということですと、延べ利用者数だけは 2 年度分取っておけば単価を出せたり、様々なものが出せますので、負担がそんなに増えない範囲で、データがこれだけ意味がありそうであれば、再度検討したほうがいいという点が 1 つです。

 もう一点は、概況調査と実態調査の意味合いを今後どう考えていくかです。そもそも診療報酬では 2 年に 1 回ですから、 1 回しか調査はやっておりません。費用区分であるとか、様々な多様な事業所があるということで、一発の調査だけでデータを出すのが心配であるということで、概況調査があり、実態調査があったという歴史があったと思います。この間、千葉委員、堀田委員も評価されていたと思いますが、事務局の様々な努力もあって、介護事業経営実態調査、概況調査というものが、かなりきちんと調査として成立してきているという実感を持っております。そうなったときに、概況調査、実態調査と二段階で同じものを規模を変えてやるという意義は、だんだん薄れつつあったところだと思います。

 概況調査というのは、今後 2 年間報酬改定の前後で見るということと、今度は実態調査は、それこそ実態がよく分からないのですが、診療報酬の世界ですと、できる限り報酬が変わった時点に合わせて、いかに早く飛び付いて経営を変えるかということをやっていますので、報酬にかなりキャッチアップが早いのですが、しかも診療報酬の場合には、制度改定が 4 1 日ではなくて、後ろにずれ込んでいるものも多いものですから、準備期間があるということで、前後を比べやすいのですが、介護の場合、私が知る限りで言うと、報酬が変わった年度に関しては、大変だねというような感じがあって、これは何とかしなければいけないというのが、報酬が変わった年度です。それに対応していくのが次の年度ということで、今は前後を比較しているわけですが、おそらくもう 1 年取ると、通常はもう少しよくなることはありますので、やはり実態調査というもので実態が見えてくるのだろうと思います。

 そういう関係で見ると、概況調査が今はN数が少なくて、実態調査が多いということも、比率をどう考えるかという点はあるかと思いますので、この概況と実態の関係について、検討いただければなと思います。

 それから、 2 番目の山本委員がおっしゃった資金繰りです。私も、これは否定的だったのは、そもそも様々な法人がある中で、それこそ小規模の法人であると、経営者が個人的に貸し付けるというやり方もあります。大きな法人になると、余り多くはないですが、株式を発行したり、社債を発行したりというものがある中で、資金繰りの優劣を、こういうきっかけで見ても見えないということだったかと思います。ただ、老健、特養に限りますと、かなり限定的な法人であり、資金繰りといったものもかなり似たような範囲に納まるということがあります。

 千葉委員がおっしゃっていたように、今までは報酬の利益、減価償却を合わせて市場の拡大をやっていく、補助金がどんどん減っていくという中で、社会福祉法人はそれをやってきたところはあると思います。今回、社会福祉法人改革によって利益を出して、それを将来の投資にしていくというのは、よほどきちんと経営企画的にやらない限り、別の目的で使っていかなければいけないということもありますので、今回のデータを見るにつけ、そういった問題についても、踏み込んで見るべきではないかという、ほかの委員の考え方に私も賛成です。

 それから、将来の調査に関しての意見です。 1 つは総務大臣のところで変わるかもしれないということで、これはごもっともなことだと思うのですが、総務大臣が調査の中身について言うとは思えませんので、おそらく回答者負担、それから誤差率といったところから問題を指摘されるのだと思うのです。負担については、我々も十分に勘案することは可能だと思います。誤差率というのも、最終の誤差率を予測するのは難しいですので、期待誤差率のようなものを出していただいて、こういった何分の 1 抽出しますといった形で、今までは何分の 1 抽出するというのが必ずしも明確な方針の下に出ていなかったと思いますので、期待誤差率のようなものを出していただいて、総務大臣のところでいろいろとコメントされるときに、こういう考え方で議論したということが言えるようになったほうがいいのではないかと思います。

 最後になりますが、「将来の意見」ということです。これは参考程度ということなのですが、片方で介護の質の評価ということを進めていまして、「ビー・フォワード」ということが言われています。質で「ビー・フォワード」ということを言うのであれば、こういったきちんと事業所の方が会計を届けて書いていただけるというのも、きちんとした体制をお持ちになっていて、経営をやっておられて質を維持しているという重要な要素の 1 つだと思います。「将来的に」ということですが、介護事業経営実態調査、概況調査にきちんと答えていただいた方、あるいは質の体制を持っておられる方に何か報酬を差し上げる、つまり要素の 1 つです。答えたから報酬を幾ら上げるというのは、せせこましいと思うのですが、全体的にこれに答えてくれているということは、質を維持しておられることの 1 つであるという捉え方をしていただくことを御検討いただければと思います。

○田中委員長 将来にわたってのアドバイス等も含めた意見をありがとうございました。参考にしてください。

 大変いい議論が出て、本当はもっと続けたいのですが、年末で本日は 10 時半から介護給付費分科会がありますので、ここまでとさせていただきます。また実務的にアドバイスがあれば事務局に伝えてください。御議論ありがとうございました。

 議題1、議題2について、細かい説明の仕方は別として、資料としては本日提示させていただいた内容で特に反論はなかったと思います。当委員会としては了承し、この後に開催される介護給付費分科会に報告させていただくことでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○田中委員長 では、早朝からの審議でしたが、ここまでといたします。次回の予定について、事務局より説明をお願いいたします。

○西嶋介護保険データ分析室長 本日はありがとうございました。次回の日程等については、事務局より追って御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

○田中委員長 本委員会はこれにて閉会いたします。お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

 


(了)

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