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2017年1月11日 第1回「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会

雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課

○日時

平成29年1月11日(水) 13:30~15:30


○場所

中央労働委員会講堂(7階)


○出席者

委員

佐藤委員、池田委員、武石委員、平野委員、山中委員

参考人

奥田栄二氏

厚生労働省

吉田雇用均等・児童家庭局長、吉本大臣官房審議官、源河職業家庭両立課長、六本総務課調査官、大塚労働関係法課調査官

○議題

(1)座長の選任について
(2)転勤に関する現行の制度等について
(3)有識者等からのヒアリング
  ア「企業における転勤の実態に関する調査」について(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
  イ「ダイバーシティ経営推進のために求められる転勤政策の検討の方向性に関する提言」について(武石委員)
(4)その他

○配布資料

資料1 「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会開催要綱
資料2 「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会 参集者名簿
資料3 研究会の公開の取扱いについて(案)
資料4 まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版について)平成27年12月24日閣議決定(抄)
資料5 転勤に関する参考資料
別添1 雇用管理上の留意事項
別添2 「多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説」(厚生労働省HP掲載パンフレット)より抜粋
資料6 転勤に関する裁判例
資料7 「企業における転勤の実態に関する調査」調査結果の概要
資料8 ダイバーシティ経営推進のために求められる転勤政策の検討の方向性に関する提言
資料9 労働者の仕事と家庭生活の両立に資する「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」の策定に向けて議論する事項(案)
参考資料1 転居理由別 常住地移動者数(平成24年就業構造基本調査)
参考資料2 企業における転勤の実態に関するヒアリング調査(抜粋)

○議事

 

○源河職業家庭両立課長 ただいまから、第1回「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会を開催いたします。委員の皆様方には、本日は大変御多忙のところ御参集いただき、本当にありがとうございます。雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長の源河です。座長選出までの間、議事進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は第1回目ですので、委員の皆様に簡単に自己紹介をお願いいたします。五十音順に、池田委員からお願いいたします。

 

○池田委員 労働政策研究・研修機構で主任研究員をしています池田と申します。ずっと育児・介護休業法ですとか、均等行政に関わる調査研究をしてきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○佐藤委員 中央大学大学院の佐藤です。いつもはビジネススクールで社会人を教えています。専門は人事管理です。よろしくお願いいたします。

 

○武石委員 法政大学の武石です。私も人事管理を研究しております。よろしくお願いいたします。

 

○平野委員 神戸大学経営学研究科の平野と申します。専門は人的資源管理です。よろしくお願いいたします。

 

○山中委員 弁護士をしています山中でございます。労働法分野を専門としております。日常的には企業の相談を受ける機会が多くございます。よろしくお願いいたします。

 

○源河職業家庭両立課長 ありがとうございます。池田委員の隣にお座りいただいておりますのが、後ほど転勤に関する調査について御報告くださる、JILPT主任調査員補佐の奥田様です。

 

○奥田氏 よろしくお願いいたします。

 

○源河職業家庭両立課長 続いて、事務局を御紹介させていただきます。雇用均等・児童家庭局長の吉田です。同じく審議官の吉本です。総務課調査官の六本です。労働基準局労働関係法課調査官の大塚です。

 議事に先立ち、雇用均等・児童家庭局長の吉田より御挨拶申し上げます。

 

○吉田局長 改めまして、雇用均等・児童家庭局長の吉田です。今日は忙しい時期に、先生方におかれましては今般の研究会にメンバーとして御参集いただきましたことを有り難く存じます。また、今日この会に御参集いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。

 この研究会の出発点は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」です。資料にもありますように、この閣議決定に基づきまして、私どもは20173月末までに、いわゆる転勤に関する雇用管理のポイント、これまでのいろいろな知見を整理した上で、一定のまとめをするようにというミッションを帯びています。

 今日も資料に入れているように、これに先立っての取組として、制度は事業の仕組みから言うと2つほどあると受け止めています。1つはモデル就業規則という形で、これまで一定の人事管理の中の1つとして、この転勤問題についても取り上げさせていただいているということです。平成26年に有識者の方々にお集まりいただき、多様な正社員という切り口から、言わば勤務地の限定という形でどのように切り取れるのかについてのまとめを頂き、それに基づいて我々はこれまでも取り組ませていただいております。今回の研究会においては、先ほど申し上げた「まち・ひと・しごと」という流れですので、仕事と家庭生活の両立、取り分け子育てをはじめとする、そういう分野についての両立というものも含めて、仕事と家庭の両立について、この問題について必ずしも限定正社員という形に捕らわれず、かつ就業規則というルールも然ることながら、日々企業で行われているであろう人事管理、雇用管理の中で、どういう点に御留意いただくのかという点について整理してみたいということで、御参集いただいております。

 まずは、そのためにも本日から、これまでのファクトを我々として整理いただければと思っておりますし、先行して有識者の方々との研究の知見も勉強させていただき、全体を整理していきたいと思っておりますので、御変お忙しい中で恐縮ではありますが、委員の皆様方には御議論をよろしくお願い申し上げまして、冒頭の御挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 

○源河職業家庭両立課長 次に当研究会の開催要綱について御説明いたします。資料1を御覧ください。

 資料1が、この研究会の開催要綱ですが、1の趣旨は局長の吉田から先ほど申し上げたとおりで、まち・ひと・しごと創生総合戦略の中で、労働者の仕事と家庭生活の両立に資する転勤に関する雇用管理のポイントの策定を目指すこととされております。そのため、後ほど御説明いただきますが、JILPTで実施された調査の結果を踏まえ、転勤に関する雇用管理のポイントの策定に向けて検討を行うというものです。

2の検討事項は3点です。転勤の実態の把握、転勤を取り巻く課題の分析、転勤に関する雇用管理上の留意点の整理を予定しています。

3の運営は記載のとおりですが、この(3)にあるとおり、座長については互選により選出することとされておりますので、議題1の「座長の選出」を行いたいと思います。座長の選出については、事前に事務局より各委員の皆様に御相談させていただいており、佐藤委員に座長をお願いさせていただきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

 

                              ( 異議なし)

 

○源河職業家庭両立課長 佐藤委員に座長をお願いいたします。早速ではありますが、以降の議事進行を佐藤座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 

○佐藤座長 御指名ですので、研究会の進行役として役割を務めさせていただければと思います。ただ、今回は先ほど御説明がありましたように、20173月末までにまとめるということで、まず最後が決まっていて、すごく期間は短いです。ただ他方で大事なテーマです。働いている人にとって、特に広域に事業所を展開している企業に勤めている社員の方にとって、転勤は非常に大きな課題です。他方で企業からすると、転勤の背景にある配置転換、異動は、会社が人事権を持つというような日本の雇用システムに関わる問題ですので、どのようにするかは範囲も影響が大きなところにありますので、そういう意味で、皆さんのいろいろな知見を伺いながら、短期間ですがガイドラインとしてまとめられればと思いますので、よろしく御協力を頂ければと思います。

 最初に、資料3にある研究会の公開の取扱いの案について、事務局から御説明ください。頭撮りはここまでということですので、よろしくお願いいたします。

 

○六本調査官 資料3に基づいて御説明いたします。厚生労働省としての審議会等の公開に対する取扱いについては、例外的な場合を除き公開することとしております。この研究会においても、原則として会議を公開し、特段の事情により非公開とすることが適当な場合は、座長の判断により非公開とすることとしたいと考えております。また、議事録についても原則として公開とし、発言者名を伏して公開することが適当な場合は、座長の判断により発言者名を伏して公開することとしたいと考えております。

 

○佐藤座長 厚生労働省が定める審議会等の公開ルールにのっとってという御提案ですが、よろしいでしょうか。それでは、事務局の御提案の方法で、研究会の公開の取扱いを決めさせていただければと思います。

 議事に入ります。幾つか議事がありますが、それぞれ御報告していただいた後、まとめて最後に質疑の時間を取るという形で運営させていただければと思います。まず、議題2「転勤に関する現行の制度等について」、御説明いただければと思います。

 

○六本調査官 資料4から資料6、参考資料について、続けて御説明させていただきます。

 資料4です。こちらは先ほどもお話がありましたが、この研究会の開催の契機となった閣議決定の抜粋です。下から3行目の所に、労働者の仕事と家庭生活の両立に資する雇用管理のポイント、企業向けに示すポイントということですが、これを策定することとされております。

 資料5は、転勤に関する基本的な情報をまとめたものです。1.が関連する法令、2.がその他の資料です。これらは全般的な情報です。3.は少し場面が絞られて、いわゆる勤務地限定正社員に関する資料を付けています。

1ページ、労働契約法3条に労働契約の原則が規定されています。その中で、33項には、仕事と生活の調和にも配慮しつつ契約を締結すると書かれています。また、5項には権利濫用の禁止の規定があります。

2ページです。労働基準法は、労働契約を結ぶときに、使用者が主な労働条件を明示する義務を定めています。真ん中の下線部にあるとおり、就業場所もその1つですが、一番下にも書いているように、将来のことも含めた網羅的な明示もあり得ます。

34ページは、法令の中で、直接、転勤すなわち就業場所の変更に言及している例です。3ページ、育児・介護休業法26条は、平成14年から施行されている条文なのですが、この中で、転勤によって育児又は介護が困難となる労働者がいるときは、その育児・介護の状況に配慮しなければならないとされております。その配慮の具体的な内容は指針に書いていますが、育児・介護の状況を把握すること、本人の意向をしんしゃくすること、育児・介護の代替手段の有無を確認すること等となっております。

4ページは雇用機会均等法です。均等法には、形式上は性別に中立的な措置であっても、実質的に男女の一方に大きく不利に働く措置は、実質的に差別となるおそれがある。そういった措置については合理的な理由がなければならないという規定があります。いわゆる間接差別の規定です。その間接差別となり得る措置を施行規則で列挙しており、真ん中の下線部ですが、2条の2号で定めているのが、募集・採用・昇進などのうち、転居を伴う転勤に応じられることを要件とするもの、3号で定めているのが、昇進のうち転勤を経験したことを要件とするもの。これらの措置は合理的な理由があるものでなければならないということになります。以上が法令です。

7ページの雇用指針です。これは国家戦略特区法という法律の372項に基づいて作られたものですが、日本の労働関係の裁判例を分析、類型化して示した文書です。この中で転勤に触れている部分を抜粋しました。下線部です。「配転」というのが労働者の配置の変更、すなわち職務内容又は勤務場所の変更です。このうち勤務地の変更が転勤と称されることが多いとあります。これは、転居を伴う場合もあれば、そうでない場合もあるかと思います。

 その下の囲みの中で、配転に関する裁判例の判断枠組みがまとめられています。これは後ほど出てくる資料6の東亜ペイント事件の最高裁判決の判断枠組みです。

 まず、就業規則うんぬんとありますが、就業規則については8ページに一例として、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の規定例を載せています。「会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある」といった規定です。

7ページの囲みに戻ります。そういった定めがあり、勤務地や職種を限定する合意がない場合には、企業は労働者の同意なしに転勤や配置転換を命じることができるとしております。後ほどの裁判例では、勤務地を限定する合意があったかどうかが争点となった例もあります。

 次に、ただしこの配転命令権は無制約に行使できるものではなく、濫用することは許されない。濫用となるのは、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的でなされた場合、労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等となっています。資料5の本体は以上です。

 次に、別添1と別添2ですが、こちらは勤務地限定正社員などの、いわゆる多様な正社員について厚生労働省が平成26年に雇用管理上の留意事項を出しているので、参考に御覧いただくものです。これは佐藤先生にも入っていただいた有識者懇談会の議論を踏まえて作られたものです。報告書の一部分なので、ページ数は途中なのですが、例えば3233ページに掛けて、均衡処遇ということで、勤務地限定などの、いわゆる多様な正社員と、いわゆる一般的な正社員との間で納得性のある均衡処遇という観点で、賃金や昇進・昇格についてポイントがまとめられています。また、35ページの辺りでは、いわゆる一般的な正社員と多様な正社員との間で、転換制度があることが望ましい等としております。

 別添2は、別添1と同じ流れで作られたモデル就業規則なのですが、勤務地限定正社員がいる場合の就業規則の規定例ということです。内容としては、雇用契約で勤務地などの限定がある場合に、その限定の枠内で配転を命じるという形になっています。以上が資料5です。

 資料6は転勤に関する裁判例を集めたものです。先ほど出てきた東亜ペイント事件が基本となりますが、そのほかの判例についてもグループ分けをして、まず配転命令権の範囲ということに関して、勤務地限定の有無が争点になったもの、配転命令権はあるとされた上でその濫用が争点となったものを、必ずしも網羅的ではないと思いますが、まとめております。

2ページの東亜ペイント事件の判旨は先ほどの雇用指針の内容と重複するので、説明は割愛いたします。

3ページ以降が、現地採用の人について勤務地の限定があるとされた例が2件、限定がないとされた例が1件あります。

3ページの事案は、仙台で採用された原告について、面接のときに「家庭の事情で転勤はできない」と言っていた等のことがあり、勤務地を仙台に限定する合意があったとされ、配転命令が無効になりました。

4ページの事案は、関西で採用された原告について、採用の経緯等から勤務地の限定があったとされました。なお、仮にそう認定できないとしても、本件の事実関係では権利の濫用に当たるとも述べております。

5ページの事案は、茨城の工場で採用された原告らが、経営合理化で広島に転勤となった事案です。このケースでは、勤務地の限定があったとは言えず、配転命令は有効とされております。以上が配転命令権の範囲に関する事案です。

 また表紙を御参照ください。次の事案からは、配転命令権があって、勤務地限定がない、また、配転命令の業務上の必要性はあったとされた上で、その配転命令権の濫用があったかどうかが問題となった事案で、特に労働者の不利益の大きさに照らして問題となった事案を取り上げています。権利濫用ではないとされた事案が2件で、この2つは最高裁までいっております。逆に、権利濫用があったとされた事案については、下級審のものですが幾つかのパターンを4件取り上げています。

6ページの事案は、製薬会社のMRをしていた男性が、東京から名古屋に転勤となりました。同じ会社で働く妻と3人の子供がいましたが、単身赴任を強いられたとして訴えた事案です。原告の不利益は社会通念上甘受すべき程度を著しく超えるとは言えず、配転命令は有効とされました。

7ページの事案です。こちらは目黒から八王子に異動になった女性が、長男の保育園の送迎ができなくなる等として、異動命令に従わずに懲戒解雇された事案です。判決では、原告の不利益は必ずしも小さくはないが、なお通常甘受すべき程度を著しく超えるとまでは言えず、配転命令は有効とされました。※にあるように、この判決には元原判事の補足意見が付されております。

8ページの事案は、帯広工場から札幌の工場への転勤に関する札幌地裁の決定です。原告の事情として、子供の病気や親の体調不良があったと。それに加えて、転勤候補者はほかにもいたとして、原告の不利益が大きいとされました。

9ページの事案は、東京から大阪への異動を命じられた男性が、共働きで子供2人が重度のアトピー性皮膚炎だったケースで、転勤命令を無効として仮処分を申し立てた事案です。この地裁の決定の少し前に、育介法26条が施行されております。この条文に言及があり、26条は、配転をしないといった「結果」を求めるものではないが、配転命令を所与のものとして押し付けるような態度を一貫してとる場合は、26条の趣旨に反する等と述べた上で、通常甘受すべき利益を著しく超えるとされました。

10ページの事案は、姫路の工場から茨城県の霞ヶ浦の工場への転勤を原告2名が争った事案です。このうち1名について、育介法26条に言及しつつ、原告が母親の介護の必要があることを申し述べたのに、その後もその実情を調査もしなかった等として、配転命令権の濫用で無効とされました。

11ページの事案は原告が5人いまして、このうち4人は北海道内で、1人は北海道から東京に転勤となって争った事案です。東京に転勤になった1人について、父親の介護の必要性が強いなどとして権利濫用とされました。この判決でも、余り詳細には論じていませんが育介法26条に言及があります。

 最後の12ページの事案は、その他の参考事案として挙げておりまして、東京から埼玉への転勤で、通勤時間が2倍になる等のことから配転命令に従わずに懲戒解雇された事案です。判決で、配転命令自体は有効だと。ただし、その際に十分な情報を提供していなかったということで、後のほうの懲戒解雇のほうが無効とされております。以上が裁判例でした。

 最後に、参考資料1、参考資料2を御覧ください。こちらは日本人が実際にどれぐらい転勤しているのかに関するデータです。参考資料1が、就業構造基本調査のデータで平成24年の調査です。転居の理由別の常住地、住まいを移動した人の数です。「本人の仕事の都合」で転居した人が左下で、男女計で177万人ぐらいです。そのうち「転勤のため」が男女計で約60万人です。同じ調査で、正規の従業員である人は約3,300万人いるという数字が出ており、ざっくり言えば、年間で、その2%ぐらいに当たるということかと思います。

 参考資料2JILPTのレポートの抜粋です。こちらは本日プレゼンをしていただく調査とはまた別の調査のレポートを抜粋したものです。4ページの右下のグラフには、企業規模別に転居を必要とする人事異動があるかどうか、単身赴任者がいるかが示されています。6ページのグラフには、雇用者に占める単身赴任者の割合を推計したものなどが載っております。以上、データの御参考でした。事務局からは以上です。

 

○佐藤座長 先ほど、説明が全部終わった後に御意見をと言ったのですが、忘れてしまうと思うので、確認や質問だけは先に伺おうかと思います。

 まず、研究会開催要綱と経緯について、御質問はありますか。よろしいですか。

 資料5以降、別添についての御質問はいかがでしょうか。御意見は後で伺います。よろしいですか。

 付属資料で見ていくと、基本的に転勤は比較的規模の大きな企業で、複数の事業所や広域に展開しているということですから、働いている人全員という話ではないということです。あと、年間にざっくりですが、約2%ぐらいということで、正社員だけを考えると2%ぐらいが対象になっているということです。規模感でいうと、そのような感じです。ただ、結婚しているカップルを考えると家族に及ぶので、影響の範囲は広い可能性もあります。よろしいですか。

 

○武石委員 資料53ページの育・介法の労働者に対して配慮すべきことですが、配置の変更とか就業場所の変更の条文が入ったのは、何年でしょうか。

 

○六本調査官 平成13年の改正で、施行が平成14年です。

 

○佐藤座長 ほかに確認しておきたいことはございますか。よろしいですか。また何かあれば、後で御質問を受けたいと思います。

 この後は、労働政策研究機構で、研究会のために準備していただいている調査についてお話を伺うということで、まず最初に有識者等へのヒアリングの最初で、企業における転勤の実態に関する調査について、労働政策研究・研修機構の奥田さんから報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 

○奥田氏(JILPT) ありがとうございます。労働政策研究・研修機構の奥田と申します。資料7に基づいて、説明をさせていただきます。企業における転勤の実態に関する調査、アンケート調査ですが、早速2ページの目次を御覧ください。本調査は企業・従業員調査ですので、企業調査と正社員調査の2つの調査を実施したものです。調査概要と企業調査、正社員調査を目次に沿って報告させていただきます。

3ページ目、調査の概要です。まず本アンケート調査の転勤の定義ですが、転居を伴う異動に限っており、転居を要しない異動については含めないこととしています。ただし、転居を伴う出向は含むという形で定義しています。調査実施期間は2016819日から99日、方法は郵送による調査票の配布・回収。

 調査対象は、企業調査については転勤でありますことから、規模の大きな企業として300人以上の企業1万社を調査対象として、当該企業を通じて転勤経験のある正社員8人に配布いただく。そうしますと、正社員調査は8万人が調査対象として配布されたこととなります。配布方法としては8通ありますが、男性4人、女性4人。女性の確保が難しいとの観点があったものですから、半々でというお願いをしていますが、配布の実際の按分は企業に任せています。有効回収数については、企業調査は有効回収数が1,852件、有効回収率18.5%。正社員調査は、転勤経験者の有効回収数として5,827件で、有効回収率7.3%。111日時点の速報値として取りまとめました。

4ページを御覧ください。属性を簡略に説明します。まず企業調査については、業種、正社員、国内拠点という形で御覧いただければと思います。勤務地限定正社員の制度がある企業は292社で、15.8%となっています。正社員の転勤の状況としまして、これは全ての企業に転勤があるわけではありませんので、選択肢として「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」「正社員でも転勤をする者の範囲が限られている」「転勤はほとんどない」という、この3選択で聴いたところ、「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」「正社員でも転勤をする者の範囲が限られている」の2つで61.2%が転勤のある企業となります。転勤がある企業は※1にありますが、この両者で1,133件あります。これを国内転勤、海外転勤、双方で聞く設問も設けています。国内転勤のある企業、これは下のほうに※2、「国内転勤のみあり」と「国内・海外いずれもあり」というのを足したものですが、これが1,124社。転勤のある企業のうち、ほとんどの企業が国内転勤がある。一方、海外転勤のある企業は44.2%である。これが企業調査の回答属性です。

 一方、正社員調査の回答属性も説明しますと、転勤経験者のみが有効回答数ですので、5,827件の有効回答がありました。性別で男性81.7%、女性18.2%とありますように、先ほど4:4で配るというお願いをしましたが、実際のところ女性に配るのはなかなか難しいらしく、女性は2割ぐらいです。補足としまして、「国内転勤あり」「海外転勤あり」も選択肢で分かっているので、「国内転勤あり」という方々は5,431件、「海外転勤あり」というのが620件です。この両者は重複があります。

 本題の企業調査の概要として、5ページ以下に行きたいと思います。6ページを御覧ください。転勤の状況と転勤理由、ジョブ・ローテーションについてまとめています。図表2-1は先ほど申し上げた転勤がある企業というのを浮き彫りにするために聞いた設問ですが、正社員(総合職)のほとんどが転勤の可能性があるというのが33.7%で、範囲が限られているのは27.5%です。これは正社員規模が大きくなるほど、また、拠点数が大きくなるほど、「ほとんどが転勤の可能性がある」というのは増える傾向にある。

 図表2-2で転勤の目的を聞いています。社員の人材育成がトップで66.4%、次いで社員の処遇・適材適所、組織管理上の人事ローテーションの結果、組織の活性化、欠員補充、幹部の選抜・育成という形で多くなっています。

7ページです。図表2-3で、大手の企業が対象となっていることから、ジョブ・ローテーションがあるという企業が53.1%というように半分を占めていまして、正社員規模が大きくなるほど高くなると。また、図表2-4で、人事異動の頻度についても多いものを聞いていますが、3年と5年というのがかなり多い。ジョブ・ローテーションの有無でクロスを掛けますと、「ある」で3年が36.5%と、少し高くなるという形です。

8ページで、「転勤に関するルール」を載せています。これは図表2-5で、「明文化して定めている」「明文化していないが、運用上のルールがある」という形で聞いていますが、「定めていない」という企業が76.4%で最も多い。「明文化」は11.6%で、「運用上のルールがある」が10.1%です。図表2-6は、では、どういうルールかという点で、明文化した企業と運用ルールがある企業に聞いています。転勤の期間(長さ)が53.2%で、転勤する地域・ブロックが28.4%。年齢、勤続年数、役職などで転勤の時期を定めているのが25.1%という具合となっています。

9ページでは、男女別で実際どのような感じで転勤経験者がおられるかというのを聞いています。図表2-7で、全国転勤型の正社員(総合職)の中で何割程度、実際に転勤経験者がおりますかというのを、男女で分けて聞いています。男性のほうは、多いものから1割程度が21%、次いで2割程度が17%などとなっています。これは男性のほうは「ほとんどの者が転勤の経験をする」を含めて、かなりばらついている。しかしながら女性に関しては、「転勤はほとんどない」が51.7%で過半を占めているような状況です。

 図表2-8でクロス集計を上げています。先ほど転勤の状況というのを、ほとんどの方が転勤する、あるいは転勤範囲が限られているという形で聞いていますが、そのようにクロス集計で男女別で見ますと、男性は「6割以上」が転勤する企業の割合で見てみると、やはり「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」の割合が高い。男性に比べれば女性のほうが「6割以上」の割合は少ないのですが、やはり女性も「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」のほうが高いということとなっています。

10ページでは、転勤のパターンを、国内転勤と海外転勤に分けてみました。国内転勤、海外転勤のある企業を識別できているので、それで設問ごとに聞いていますが、まず赴任期間としては、1回の転勤による赴任期間、これが多いものというのは、やはり先ほどジョブ・ローテーションでもありましたが、3年と5年というのがかなり高い。赴任期間は国内転勤と海外転勤、同様の傾向です。

 図表2-10で、定年まで働いた場合の転勤経験者の中で、1人当たりの転勤回数はどのくらいかというのを聞いております。国内転勤は12回が40.6%、34回は31.4%、56回が15.3%と、ややなだらかになっていくように広がっています。海外転勤は81.4%が12回です。いわゆる生涯にわたって12回行く方が、海外転勤は多いのかと。国内転勤の場合は、かなりばらつきがあるという結果かと思います。

 転勤のパターンの中で、11ページの図表2-11で転勤が多い年齢層についても聞いております。転勤はどの年齢層でも偏りなくあるという企業が多いのですが、これが国内転勤だと66.2%、海外でも52.7%ぐらいですが、偏りがあるという企業もあります。それが図表2-12で、偏りがあるという所を見ると、国内転勤は30代、40代、あるいは20代で転勤が多い。一方、海外転勤は、やや年齢が上がりまして、30代、40代にボリュームゾーンがあるのかなということとなります。

12ページ、図表2-13で転勤頻度の多い職種です。棒グラフを見ていただきますと、国内転勤、海外転勤ともに、管理職と営業職が多いのだなというイメージです。職種で偏りがないというのはかなり少数で、むしろ職種で偏りがあるという印象です。国内と海外で比較しますと、海外だとやはり技術系の専門職や製造で行かれている所が多い。いわゆる製造系かと思います。

 図表2-14は転勤費用や社宅費用、単身赴任の諸手当、帰省旅費を含めて、1人当たりの転勤コストはどのくらいですかということを選択肢で聞いています。「70万円以上で括ってみますと、54%ぐらいで、規模が大きくなるほど、その割合はやや増えていくという傾向が見られます。

13ページ、過去1年間の転勤者の状況、ここからは実際に過去1年間の転勤者の状況はどうでしたかということを聞いています。図表2-15によれば、国内転勤ではかなりばらつきがあるのですが、海外転勤はむしろ少なく、110人未満のところに集中している面があります。国内に比べて海外のほうが、やや少ない人数を派遣している。国内転勤のクロス集計については、図表2-16になります。

14ページの図表2-17は、単身赴任者をどのような割合で送っているのかも聞いております。「ほとんど家族帯同」というのが一番右にありますが、国内転勤だと8.4%、海外転勤だと15.6%です。家族帯同オンリーでやっているという所は少なくて、実は何らかの単身赴任者がいるような状況であり、結構ばらついているかと思います。

 では、女性はどのくらいおられるのかという点を見ますと、図表2-18で、過去1年間の女性の転勤者数の有無ですが、大体、国内転勤だと46%ぐらい、つまり半分の企業は女性もいる、海外転勤だとそれがずっと少なくなるということです。図表2-19で、今度は大体どのくらいの女性転勤者の人数割合かを聞いています。国内・海外を問わず、「1割程度」で、国内で7割ですし、海外で82%くらいありますので、大体人数で言うと男性が主体かなと思われます。

15ページで、女性の転勤者の年齢層を図表2-20で見ますと、若手の方に集中している。次の図表2-21で女性の未・既婚を聞いているのですが、女性転勤者というのは「ほとんどが未婚」というのが半分強おりまして、未婚者中心で派遣されている傾向が垣間見える。

 同じ15ページの図表2-22も国内転勤、海外転勤での女性(既婚)転勤者の単身赴任者の有無を聞いています。これは先ほど単身赴任の割合がばらついていると言いましたが、女性の場合はいることはいるのですが、少ないという感じであろうかなと思います。

16ページは転勤に関する配慮関係です。転勤に関する配慮を申し出る制度・機会、これはいわゆる自己申告制度や目標管理制度です。83.7%がそういう機会があると言っています。図表2-24では、転勤を実施するに先立っての事前の人事ヒアリングを行わないという企業が22.9%です。何らかの形で人事ヒアリングを行う企業があることがわかります。

17ページの図表2-25は、転勤命令の決定方法です。これはABの、つまり転勤命令が会社主体か、あるいは社員の意見を踏まえてかという形で聞いております。8割方の企業は会社主導であるA計になります。

 図表2-26は転勤前の打診時期です。国内転勤でも「2週間超~1ヵ月前」が34.9%。「1ヵ月超~2ヵ月前」が32.5%ですので、かなり前倒しして打診しているという傾向も見て取れます。これが海外転勤だと、更に早い時期が多いということです。

18ページで配慮事項を書いています。図表2-27は過去3年間の転勤配慮の要望があったかを聞いています。やはり男女双方とも全ての方が配慮を求めているというわけではなくて、35.6%の企業は男性から転勤の要望はない。45.8%の企業が女性でも要望がないと言っているのですが、ただ、増えた割合を見ていきますと、やはり減った割合よりはかなり多くて、要望が増えているという近年の傾向が見て取れます。

18ページの図表2-28です。これも男女別の配慮事項の要望を聞いています。男性では親等の介護、子の就学・受験、本人の病気が上げられています。一方、女性でも親等の介護、あるいは出産・育児、結婚、配偶者の勤務が上げられています。

19ページの8.転勤配慮の考慮事項を見ています。図表2-29は、過去3年間に企業が考慮した事項ですが、実際のものはどうかというと、やはり親等の介護や病気など、病気関連がかなり上位に来ているのかなと思います。

 図表2-30で、そういう理由があった場合の措置を見ています。転勤対象からあらかじめ外すという企業は64.7%あり、かなりの企業は理由があれば外すという考え方をとっており、何も措置をとらないで予定どおり転勤するというのが、右端の3.2%ですので少ない、やはり何らかのことはするという傾向が見て取れるかと思います。

20ページ、過去3年間の転勤に対する認識です。ここで転勤で難しいと思う点について聞いていますが、上位に上げられているのは、やはり子育て期の女性を転勤させること、介護中の社員を転勤させること、女性の既婚者を転勤させることについては、「そう思う」と「ややそう思う」の合計で見ますと、かなり比率が高いようです。

21ページ、勤務地限定正社員の導入状況です。この定義は四角く括ってありますが、いわゆる正社員(総合職)の中で、勤務地について一定の制限がある者、勤務地限定が掛かっているようなニュアンスで、定義を少し細かく掛けています。図表2-33では、その定義によれば、先ほど言いました15.8%が勤務地限定の雇用区分がある。図表2-34は勤務地限定正社員と全国転勤型の年収差をみています。右端に10%以上の合計でみていますが、43.8%の企業が、10%以上の格差を設けているという形で、これは拠点数が大きくなるほど高まる傾向にあります。

 全国転勤型から勤務地限定正社員への雇用区分の転換を見たものが図表2-35です。全体計で「できない」が17.8%となっており、「理由にかかわらず本人希望で転換可能」「転換理由があれば転換可能」を合わせると、何らかの形で転換「できる」企業が多いということです。

22ページ図表2-36は、勤務地限定正社員のままでの管理職の昇進可能性の有無です。図表の右端、「課長相当職以上計」を見ますと、62.3%の企業が勤務地限定社員の雇用区分のままで管理職相当職以上に昇進可能と言っております。

 図表2-37で、勤務地限定正社員の制度の導入で生じたことを聞いています。上位の「そう思う」「ややそう思う」の合計で見ると、女性の採用がしやすくなった、女性の勤続年数が伸びた、女性の離職者が減ったが、やや割合が高く出ているかと思います。

 続いて23ページの正社員調査を、掻い摘んで説明します。まず直近の転勤経験という形で概略を申しますと、24ページの図表3-1です。先ほど女性の転勤者は未婚者が多いということをいいましたが、正社員調査でもやや正確ではないかもしれませんが、確認できるものとして、直近の転勤開始時の未既婚の状況を見ています。国内転勤、海外転勤、ともに男性だと未婚、既婚というのはやや半々に近いのですが、女性の場合は78割方が未婚であるということです。

 図表3-2は、転勤先でどういう仕事に就いたかということで、後ほど御覧ください。

25ページ(2)直近の転勤を経た後の職業能力の変化です。図表3-3によれば、国内転勤、海外転勤、ともに能力が高まったという傾向が出ています。図表3-4で、先ほどの役職変化、仕事内容の変化、難易度でもクロス集計していますが、やはり役職が上がったり、難易度が高まったり、仕事が変わったりすると、かなり職業能力が高まったという傾向が見て取れます。

26ページ、転勤配慮と免除配慮の有無です。図表3-5で、男女ともに1割程度は、転勤免除配慮を求めたことがある。図表3-6では親等の介護というのが、全体計では28.2%と多いのですが、男性、女性を見てみますと、男性のほうでは親等の介護がかなり高くなっており、女性も親等の介護は高いのですが、やはり結婚、出産・育児なども高い。男性でも出産、育児などの申し出をしています。

 図表3-7で転勤免除配慮の有無、すなわち、実際に配慮されたかを見ます。先ほどの企業調査では、理由があれば配慮しているという話でしたが、実際には転勤対象から外されたが29.0%で、配慮はなく転勤したというのが3割ぐらいあります。転勤配慮事項(複数回答)でクロス集計していますが、病気関連ですと比較的配慮されているようです。配慮はなく転勤したというのは、持ち家の購入、子の就学・受験などは、やや配慮はなく転勤したという傾向が見て取れます。

27ページでは、個人が考える転勤のルールの希望について聞いています。企業調査でも聞いていましたが、正社員調査では、図表3-8で転勤に関するルールがないという者が62.8%で、労働者側もやはりないと思っている。これは企業と同様の傾向です。図表3-9で、正社員調査では、必要と思う転勤に関するルールについて聞いていますが、転勤に関する「ルールが必要だとは思わない」というのが3割程度ありますが、それ以外の6割程度はルールが必要だと思っている。必要と思うルールとしては、転勤の期間(長さ)が最も高いようです。

28ページで転勤に関する認識を聞いています。これも後ほど御覧いただければと思います。図表3-11で、ライフステージに応じてどのようなことが困難に感じるかという点で、結婚しづらい、子供を持ちづらい、育児がしづらい、進学期の子供の教育がしづらい、持ち家の所有がしづらい、介護がしづらいということで、そう思う、ややそう思うの合計の割合がだんだん高まっているということです。

29ページで、最後に現在の会社における転勤に対する認識について聞いています。図表3-13で能力開発関連のものを上げていますが、先ほども言いましたように、能力開発についてはかなりの者が高い評価をしていることがうかがえます。その一方で図表3-14で、できれば転勤はしたくない、できれば単身赴任はしたくないというのを聞いておりますが、「そう思う」「ややそう思う」の計の割合を見ると、できれば転勤はしたくないが39.6%、単身赴任はしたくないは53.5%、転勤は家族に与える負担が大きいというのは85.8%と、ある程度あることがわかります。また、図表3-15で「そう思う・計」の割合を男女別で見ていますが、やはり男女ともにそう思っている。図表3-16の性・子供の有無別にみると、特に「できれば転勤したくない」「できれば単身赴任したくない」は、女性で子供を持っている層で、そう思う意識が強まっているということです。以上です。

 

○佐藤座長 企業調査と、転勤を経験している社員の両方を説明していただきましたが、ここがちょっと分からないのだけれども、どうなのというような質問があれば伺っておきますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。現状で言うと、転勤の対象は、女性よりも男性のほうが多い。年齢が30代、40代ぐらいですので、そういう意味で介護の課題がかなり出てきているということ。後で出てきますが、25ページの読み方として、転勤を経験した人の能力向上の評価を聞いています。

 その事業所へ行って、ある仕事を経験し、仕事の中身が変わるとか、レベルが高くなって、能力が高くなるのだけれども、隣の事業所から来た人もそこに就けば能力が高くなったということだと思うのです。これは転勤の効果ではなく、転勤で経験した仕事の効果なので、読み方は結構難しいと思うのです。その仕事に転勤でなく異動した人も同じような能力向上効果はあったはずだと思うのです。大事なのは下のほうだと思うのです。違う仕事とか、レベルの高い仕事が、経験できるような転勤だったから能力が高くなったと読むのかと思います。

 次は、武石委員から、ダイバーシティ経営推進のために求められる転勤政策の検討の方向性に関する提言について御説明いただきます。

 

○武石委員 資料8について御説明いたします。まず、この提言は何かということなのです。資料の2ページですが、佐藤先生が代表になって進めておられる中央大学のワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクトというのがあります。ここで2014年から転勤の研究をしてまいりました。研究のやり方としては、企業へのヒアリング、アンケート、それを踏まえて企業の人事の方も入ったメンバーでディスカッションをするという形で研究を進めてまいりました。昨年11月に、このプロジェクトの成果報告会という形で、シンポジウムを開催しました。その場で提言を発表しました。この委員会の佐藤座長、それから池田委員も一緒にこの研究をしてきて、一旦11月に提言をまとめました。それについて、私から報告をさせていただきます。

1ページと2ページは「提言のポイント」と書いてあります。ここは御覧いただければいいのですけれども、女性の活躍を進める中で転勤が問題になってきているという背景があり、転勤の実態を把握して、その中で課題を提起していきましょうという趣旨です。提言とは言いながら、課題をまとめるという趣旨での取りまとめになっています。

2ページの真ん中辺りの枠囲いですが、提言はこの5つです。提言1は、人材育成政策としての転勤の効果について再検討する時期に来ているのではないかということ。提言2は、転勤対象が有る無しによって雇用区分がある場合に、その処遇格差というものが合理的か、ということに関して問題提起をしています。提言3は、実際に転勤をする場合に、社員の希望とか事情とすり合わせをするような仕組みが今後は必要になってくるのではないか。提言4は、少し長期的なスパンで社員の生活設計ができるような制度対応が必要ではないか。提言4は中長期的なスパンであるのに対して、提言5は、転勤を命令する場合に、実際に行く社員から見て、かなり不透明な部分があるので、それを排除していく必要があるのではないか。この5つについて提言をまとめています。

 資料の3ページから14ページまでが提言の中身です。15ページからが、それに関連する付属資料になっています。それぞれを御覧いただく時間がないので、ポイントだけ御紹介いたします。先ほどJILPTのアンケートの紹介がありましたが、それよりも時期的には前の2015年にアンケートを実施しています。このアンケートが、この提言のバックデータになっていますので簡単に御紹介します。

 企業調査に関しては、300人以上の企業で、事業所が複数あって、転勤が発生する企業に関して分析をしています。分析対象は370社です。個人に関しては、企業と個人は別々の調査でやっていますので、この企業に勤める個人ではないのですけれども、300人以上の民間企業に勤務していて、転勤の可能性がある。先ほどのJILPTは転勤の経験がある方でしたが、これは可能性がある人ということで、30代、40代を対象にしているので、この辺りもJILPTのデータとは少し違うかと思います。こういう対象に対してアンケートをしています。

 提言の3ページに戻って、ポイントのみ御紹介いたします。まず、人材育成政策としての再検討が必要ではないかということに関してです。企業調査の中で、先ほどのJILPT調査もそうですが、育成というのが大変重要な目的として挙げられています。もう1つは、事業所がいろいろな所にあるので、事業展開上転勤は避けられない。大きく分けると事業展開上の必要性と、社員の人材育成と大きく2つの目的があります。この提言では、育成に関してかなり懐疑的なスタンスで提言させていただいています。

 佐藤座長からのコメントもありましたが、転勤と異動でどれほどの違いがあるのだろうかというのが、もともとの問題意識としてありました。1つデータを御紹介します。19ページのデータを御覧ください。企業調査、個人調査が交互に出てくるのでちょっと見にくいのですが、19ページの上です。転勤を経験した人に対して、転勤とそれ以外の異動と、能力開発面でどう違うかを聞いています。転勤経験のほうが、能力開発面でプラスだったという人が38%、違いはないという人が35%、転勤以外のほうがプラスだった人が5.2%です。転勤の38.5%をどう評価するかのなのですけれども、ものすごく能力開発にプラスになっているとも言えないのではないかということです。

 資料の20ページの上のデータです。転勤をした人に対して、自分の経験した転勤が、キャリア形成のために役に立ったか、自分の希望どおりだったかを聞いています。ここに0%、50.5%と書いてありますが、要は自分の経験した転勤が、キャリア形成のためだと考える、そういう転勤がゼロであった、つまり、そんな転勤は全然なかった、という人が、転勤だと51.2%、全く希望どおりではなかったが0%、それが56.5%ということなので、個人から見ると転勤というものは希望どおりでもないし、キャリア形成に役に立ったのかなと懐疑的な結果が出ているのではないか。

20ページの下は、転勤経験者に対して、企業がどう見ているかを聞いています。上が、転勤を受け入れる社員と、受け入れない社員。下は実際に転勤をした社員と、していない社員ということで、どう違いますかというのを聞いています。上を御覧いただくと、社員に占める転勤対象者の多さによって、4つの区分に分けています。雇用区分有り、転勤無しが2割程度以下という、4つの区分の一番上が、転勤対象者が多い企業なのですけれども、ここで特に違いはない。転勤する人も、しない人も違いはない。下の表では、転勤をした社員と、しない社員で特に違いはないが43.9%となっています。かなり頻度が高く転勤をしている企業で、特に転勤経験者に対して、特別何か能力が高いというような見方がされていないと、こんな実態が明らかになりました。

3ページから御覧いただくと、ポイントは5ページの辺りです。「以上のように」という文章がありますが、企業が転勤の育成効果を非常に重要な目的として挙げているのですが、転勤によって十分にその効果が発揮されているのかということに関して、もう一度しっかり現状把握する必要があるのではないか。ないとは言えないのですが、本当に企業が期待しているだけの育成効果があるのだろうかということが、社会環境の変化の中でもう一度問われるべきではないかということが、提言1のポイントになります。

6ページからが提言2になります。転勤区分の社員でも、転勤をする人としない人がいるわけです。そういう中で、実際に転勤の可能性がありますと言っている人たちの中でも、先ほどのJILPTの調査でもありましたが、転勤を皆がしているかというと決してそうではなくて、その中で転勤をしていない人も結構います。勤務地限定の有無によって、雇用区分を設定している場合に、転勤の可能性がある人に対しては、賃金を高く設定したりという処遇上のプラスの部分があります。それが、実際に転勤可能性があると言いながら、転勤をしていない人が結構いる。転勤をする可能性だけで賃金を高く設定していることがコストになっているのではないかというのが1つの観点です。

 それから、勤務地限定の有無によって、賃金とか昇進可能性ということで処遇の格差があるわけです。皆が転勤をしているわけではないので、転勤をする人としない人がいることによる不公平感などもある。それから、提言1の育成効果という辺りも併せて考えると、本当に転勤をしないことが、昇進できないということとリンクさせていいのかという幾つかの問題があります。この辺りは雇用管理区分の勤務地の限定の有無による区分設定をする場合に、割合安直にその処遇設定がなされているのではないかというのが提言2になります。

8ページで提言3になります。これは、先ほどもJILPTの調査でいろいろな事情を聞いていますか、みたいな結果がありました。本日も、東亜ペイント事件等の御紹介がありましたが、基本的に転勤命令というのは拒否できないものという受け止められ方をしています。従業員の意識などを見ると、かなりいろいろな事情に配慮してほしいという意見が出てきています。

26ページの上のデータが、企業調査で、一番上に「転勤を実施する上での課題」というのがあります。枠で囲ってある、個別事情に配慮しなければならない社員が増えているということを、半分近くの企業が問題意識として感じています。下は個人調査ですけれども、転勤に社員の希望を反映させてほしいとか、子育てなどの事情に配慮してほしいという、従業員のニーズが出てきています。

28ページの上は、先ほど自分の経験した転勤がキャリア形成に役に立ったとか、希望どおりだったかというのを、その制度の有無によって確認したデータです。網掛けのある所を御覧いただくと、つまりこういう制度があるとキャリア形成、あるいは希望どおりという納得感が高まっていく可能性があります。全く企業の都合で異動させるよりも、本人の事情などをきちんと聞くことによって、転勤の納得性が高まるのではないかという分析をしています。提言3に関しては、企業の人事権ということではなく、本人の事情というものと、両方調整しながら転勤政策を進める必要があるのではないかというのが主な内容になります。

 提言411ページです。社員の生活設計の見通しということで、転勤というのが持ち家を持つことが難しくなる、共働きのカップルが増える中で、夫の転勤が妻の就業に影響を及ぼすということが出てきています。生活設計の見通しが立てにくくなっています。例えば、本拠地もないままに定年を迎えるようなケースもあります。こういう点に関して、もう少し従業員側が将来ビジョンを持てるような対応があるのではないか。本拠地とか、いつ頃転勤ができるとか、ある年齢になったら転勤はしなくてもいいとか、そういう長期的な見通しを可能にしていく必要があるのではないかというのが提言4になります。

 提言5は、実際に転勤命令があるわけです。先ほどのJILPTの調査でも内示の時期などがありましたが、そういうのが非常に短期で転勤命令が出たり、転勤先で何年そこに赴任するか、赴任期間がよく分からない。従業員調査だと、それがよく分からないという結果がかなり多いです。自分の目の前にある転勤が、その後どういう展開になっていくのかが分からないままに転勤命令がなされていくことに関して、もう少し透明な転勤の運用ルールができないかというのが提言5になります。

非常に駆け足でしたが、以上がポイントです。

 

○佐藤座長 短い時間内に御説明をありがとうございました。JILPTと調査の内容はかなり重なっていると思います。企業調査と個人調査から、このプロジェクトの研究から企業28社の人事の人の意見を踏まえたり、ヒアリング調査を踏まえて、基本的には勤務地限定の場合でも、全国転勤の人は異動はあるわけですし、ブロックでも異動はあるわけです。いずれにしても会社が転勤についての人事権を持っていることを前提としながら、社員の事情を配慮したようなどういった運用ができるかということで提言をまとめていただいたようです。今のことについて御質問はありますか。

 個人のほうは、転勤経験者と、可能性のある人で多少違うし、年齢層も限定されています。企業調査と個人調査でそんなに違うという話ではないのかと思います。そういう意味では、それぞれのデータの信頼性が高くなったということかと思います。よろしいでしょうか。

 それでは、こういうことを踏まえながら、もし何かあれば、この辺はどう読むのかというようなことを伺うことにします。事務局が、今回の転勤に関する雇用管理のポイントをまとめるに当たって、この辺が論点ではないかと。もちろんこれに縛られる必要はないわけですけれども、何はどこで議論をするということで、一応このような論点があるのではということでまとめていただいていますので、それについて説明をしていただきます。

 

○六本調査官 資料9について御説明いたします。この研究会で議論していただく項目について、事務局のほうで仮に1枚にまとめたものです。1番は「現状と課題」です。1つ目の○は、実態の把握です。ただいま御紹介を頂いたようなデータや情報が該当するかと思います。2つ目の○は、仕事と家庭生活の両立という、閣議決定に書かれているフレーズがありますが、その観点から見た、転勤を取り巻く課題とは何かを整理していただきたい。

2番は「雇用管理のポイント」についての項目です。1つ目の○は、踏まえるべき現行の制度です。現行の配転法理や、関連法令を踏まえた上での雇用管理のポイントになろうかと思います。

2つ目の○は、雇用管理のポイントを考える際の視点ということで、()で書いているのが、今ほどもお話に出てきた、転勤の目的・効果、あるいは企業の雇用管理の多様性といった、企業側の視点から見た事柄があるのではないかということ。その他に、従業員との関係については、時間軸に関するものとして、武石先生のお話にもありました、一定期間の見通しとか、個人の事情に対応するといったこと。あるいは納得感ということがあるのかということで書いています。

3つ目の○は、具体的に転勤に関する雇用管理のポイントとしてどんなことがあるか。手順とメニューで分けておりますけれども、まずは手順です。()として、転勤に関する現状の把握や目的の確認をしていただくということがあるのか。その上で、企業が取り組む雇用管理上のメニューについて、例えば雇用管理のパターンごとに示す方法があるのか。3つ書いてありますが、1つ目は勤務地を限定しない場合に、どのような仕組みや、工夫や、配慮が考えられるか。2つ目は、勤務地を限定する雇用区分を設ける場合には、特有の考慮要素があるかどうか。3つ目はその他として、社内公募などのパターンもあるのかということで作っていますので、本日のフリートークの参考としていただければと思います。

 

○佐藤座長 本日は1回目ですので、委員の先生方から、企業の人事管理の転勤問題をどのように考えていて、最終的にガイドラインでこういうことを議論したほうおがいいのではないかということで、少し広めに伺おうと思っています。一応私の理解では、最終のアウトプットは、この研究会で出たものを踏まえて、厚生労働省が転勤に関する雇用管理のポイントというものを作るのだと思うのです。これは企業向けのものだと。今回のJILPTの調査でも、武石委員から報告していただいた調査でも、企業が課題を感じているのは事実です。従来のような異動が難しくなってきて、かなり社員の意向を汲んだような転勤になっている。そういう企業はあります。

 その中で、うちが今までやってきたことでいいのか、少し見直したほうがいいのかと、そのように考えている企業に、こんなやり方があると。これは、こうしろではないのです。それぞれの企業が置かれた状況とか、人事管理の仕組みは違うと思います。あるいは展開していても、全国展開していなくてあるブロックとか、うちは全国かつ世界へ展開しているという所、あるいは社員の構成も違うと思います。そういう意味で、それぞれの企業が置かれている状況を見ながら、多少今の転勤の在り方を見直すときに、参考になるようなメニューを用意するようなものを作るのか。それが多分出口なのかと思います。

 一番最後の「雇用管理のポイント」の所ですが、なぜ転勤を見直す必要があるのかというのが最初のほうで、見直すときにそれぞれの会社は現状を把握してください。これは、女性活躍新法もそうだと思うのですけれども、現状はどうなっているのですかというところを押さえて、どのぐらい転勤の対象になる人がいるのか。うちはこんな形で転勤させている、社員はどんな希望があるか。そういうことを踏まえた上で取り組んでください。多分そんなものを作るのかと思っています。その辺も皆さんの御意見を伺います。ただ、企業向けだということは間違いないと思います。別に法改正がどうこうではなくて、企業が自主的に取り組むときに参考になるものを作るという趣旨は間違いないと思います。

 そのことを念頭に置いていただいて、ただ少し広めに御意見を伺いたいと思います。それでは、山中委員から、まず1周御意見を伺います。2周目もあります。

 

○山中委員 ご報告をお聞きした上で思ったところをお話させて頂きます。先ほどの武石先生からの提言の説明の中にもあった3ページの所です。人材育成策としての効果に関して、確かに個人調査の中では、特別な育成効果に同意する意見は必ずしも多くはない。果たして転勤と人材育成はどう結び付いているのだろうか、というのをもう一度検討する必要があるのではないかという御意見でした。

 一方で、企業のヒアリング調査の回答でいくと、例えば金融業で、転勤は社員の成長にとっては重要である、エリアの違いは変化が大きいことから、通常の異動以上の成長が期待できる・広域の異動により、適性とのマッチングがしやすくなるなどといった回答結果が紹介されました。私個人としても、多様な地域特性に触れながら新たな環境で周囲との関係を築いていくことや、新たな環境で仕事に取り組んで、経験を積んで成長を実感していくというのは、それはそれで理解ができないことではありません。

 私が感じたのは、企業側の回答と、個人側の回答には一定のギャップがあるという点です。そしてそのようなギャップは、その辺りはどのようにすれば解消できるのだろうかということに関して、例えばもっと制度そのものを透明化すべきなのか。また、異動の際の意向聴取なり、会社の考えをもうちょっと丁寧に行うべきなのか、法律的に言うと権利濫用とならないように配慮義務を尽くすべきなのか。果たしてそのような対応によって企業側と個人側のギャップは解消できるものなのだろうかということを問題意識として持ちました。

 

○佐藤座長 武石先生、もし何かあればお答えいただけますか。

 

○武石委員 確かに育成効果について、企業の方は皆さん、転勤というのは育成にとって非常に重要なのだとおっしゃいます。企業ヒアリングを最初に実施して、アンケートをしたのですが、企業ヒアリングをしたときに、そこまで本当に育成効果があるのかというのが私の素朴な疑問でした。関西で働くのと、関東で働くのでは能力が異なるとおっしゃるわけです。何となく分かる気もするのですけれども、実際にどう異なるのかというのが、何となく感覚的なところでお話をされているので、実際に転勤をしている人と、していない人でどれだけの違いがあるのかということを、やはりきちんと見ていく必要があるのではないか、ということでの問題提起です。

 もう1つは、この中でも5ページ辺りに書いてありますけれども、育成というのは、企業が成長していろいろな拠点を展開していって、新しい経験をするというその成長段階での転勤と、事業所展開がある程度の規模まできて、そこをメンテナンスしていくような所で、新しく立ち上げるのとはまた違う局面で、育成効果というのは違うと思うのです。そうなってくると、今までの拡大期における転勤は何らかの育成効果はあったかもしれないのですが、時代が変わってきたときの転勤というのがどれほどの意味があるのかということをもう一度考えるべきなのではないかということを1つ考えました。

 ヒアリングで話をしていると、確かに転勤は育成になるのだけれども、うちの会社の偉い人たちを見ていると、そんなにバンバン転勤しているわけではなく、意外と偉くなっていない人がバンバン転勤していたりというのも確かにありますよね、というような話を人事の方がされると、転勤というのが育成につながるものもありますけれども、何となく玉突き的に育成につながらないような転勤も一方である。その辺りをごっちゃにして、全部が育成だというのもちょっと乱暴な議論なのかと思いました。もう少し丁寧に転勤の中身を見ていく必要があるのではないかという問題意識を持ちました。

 

○山中委員 そういう意味では、これまでは、既定路線に倣ってずっとやってきたという流れがあったわけですが、もう一度今の時代に合わせて、各社で転勤の目的・効果を考えてみるべきではないかということでしょうかね。

 

○佐藤座長 転勤での育成効果はないと言っているのではなくて、以前のようにあるかどうかというものを考えて、育成としての転勤というのを見直して、育成であればそういうことで転勤したらという趣旨なのです。今までと同じような育成効果があるかどうか、何となくやってきてしまった企業が多い感じなのです。それでは平野先生お願いします。

 

○平野委員 私は20年前に人事をやっていました。実際に人事異動をやる立場でした。今は事情が大分違うと思うのですけれども、私の経験談で言うと、要するに人事異動というのは、人材の需給調整があります。必要なポストに配置しなければいけないわけです。その時に、ポストと人材が11の関係でいけば話は簡単ですけれども、いわゆる玉突き異動ということで、かなりきめ細かく異動をかけていく。その際に、人事異動をする人事部の立場で考えていることは、もちろん人材育成ということ。人材の需給調整と人材育成を主眼に考えます。

 ここで考えなければいけないことは、特に武石先生の調査の結果で、企業側が思っているほど、異動している側は人材育成上の効果があるとは思っていないという、そこのギャップの話です。実は、ポストを空けるために人事異動をかけるという場合があります。すなわち、人材育成のために、そのポストというのは必要な装置と言いますか、リソースになるわけです。そのリソースをある特定の人がずっとそこにいると、そのリソースを使えなくなりますので、そこは空けてもらわなければいけない。空けてもらって、そこに配置する人は、それは人材育成上効果があるということで、本人もそう思うのでしょう。しかし、ポストを空けてもらうということで異動してもらう方に関しては必ずしもそれはその人の人材育成にはつながっていない。人事異動のときには、それは総合的に考えてやります。

 この調査の回答の聞き方で言うと、人材育成上効果がありますかということを全員に聞いていますので、効果がある人はもちろんいますけれども、場合によってはポストを空けるということの観点で異動がかかった方に関して言うと、必ずしも効果がないということだと思うのです。そこがミックスになって回答として出ているので、もしかするとギャップが出ている可能性があるのかと推測します。

 

○佐藤座長 全体のこの研究会で議論する範囲についてあればお願いいたします。今のは育成のところで、先ほどの山中委員もそうでした。

 

○平野委員 ちょっと違う観点で言うと、武石先生の提言は素晴らしいというか、全くもっともだと思います。今後の方向性として考えたときに、公平性と言いますか、個別管理という問題があります。それに関しては今回の研究会もそうですし、いろいろな専門家からそういう方向で話が出ています。このときに個別管理ということに関して言うと、ある人には希望を叶えるが、ある人にはそうでもないと言いますか、かなり今までのように制度で公正性を担保するということではなくて、個別に管理するということは、個別に説明責任を果たしていかなければいけない。すなわちアカウンタビリティの問題が出てくると思うのです。

今までは、総合職はみんな異動するのだという1つの制度の下で管理をしていきます。そうすると困ったことに、しょっちゅう異動する人と、めったに異動しない人が出てきます。そうすると、同じ総合職なのに、異動ばかりする人と、そうではない人がいて不公平だから、それでは余り必要ないかもしれないけれども、この人もついでに異動してもらおうというような、いわゆる本末転倒ということになります。でも、人事として考えると、非常に重要なことなのです。すなわち、総合職である限りにおいては、同じ拘束性、負担リスクを背負って立つのが公平であるのなら、なるべくそこは押しなべてやらないといけない。そういうメカニズムも実際にはあるのだと思うのです。

 そういうことを前提として、いわゆる異動は誰がやっているかといったときに、今の日本の企業の場合は誰が責任を負っているかはっきり分からないのです。すなわち人事部が異動をかけているのか、上司がイニシアティブを取っているのか、何となくファジーで分からない中で異動が決まっている。それが本人は納得がいかないのです。例えば、上司だったら人事部に聞いてくれと言うかもしれないし、人事部に行ったら上司がという話なのか、その辺がはっきりしていないということを前提として考えたときに、やはり個別管理するということになってくると、アカウンタビリティを、きちんと説明責任を果たさなければいけない。それは誰が果たすのかと言ったら、私は人事部ではなくて上司がやらなければいけないということです。

 それは、諏訪先生のキャリア権、人事権の話に関わりますけれども、人事権がラインに移譲していくということの流れの中で、そういうことをもう一回考えないといけないということです。

 

○佐藤座長 平野委員が最後に言われた、特に大企業の製造業だと事業部ごととか、あとは職能ごとの人事管理に実態としてはなっている。ですから、今回もそういう意味では人事がやるとすればガイドライン的な、転勤の場合にはこのぐらい前に明示しなさいとか、できれば期間はこのぐらいというような使い方になるかと思います。

 

○武石委員 転勤に関しての課題は、先ほど私がお話した内容です。平野先生のお話を聞いていて、異動と転勤という、先ほどはポストがリソースで、リソースを空けてしまう必要があると。それは異動でもできると思うのですけれども、わざわざ転居転勤が必要かどうか、異動でできないか。それが駄目なら転居転勤になるのだと、広域異動になると思うのです。多分、異動でいろいろな仕事を経験することの重要性は分かるのですが、そこに転勤が絡むかどうかということを考えなくてはいけないのかということが1つあります。

 それから、この研究会で勤務地限定の話が多分1つのポイントになっていくと思うのです。勤務地限定を、1つの解決策にはしたくないという気持ちがあります。つまり、転勤をしたくない人がいるのだから、この区分を作ればそれで終わりでしょうということではなくて、このポイントにもありますが、勤務地を限定しない人に対しても、やはりいろいろなことを考えなくてはならない時期に来ている。勤務地を限定しない人たちに対して、いろいろな個別事情を聞くとか、そういう配慮をしていく。それだったらそっちの区分でも大丈夫かなという人も出てくる可能性があると思うのです。

 それなので、勤務地を限定しない人に対してどうするかというのは重要で、転居転勤ができますという人たちが野放図にその人たちは何でもできますという、そのメンバーシップという言い方がされていますが、そういうものとしてあるべきではないと思っています。要は勤務地限定というのは解決策として1つのメニューであって、それを作れば解決ということにだけはしたくないと感じています。

 このテーマは、仕事と家庭の両立というのが1つの前提になっているので、その趣旨からも勤務地を限定してしまったら、処遇も賃金も一定のところで、それが結局女性の仕事になってしまうというようなことは避けるべきだと思っていますので、そこを気を付けたいと思います。

 

○佐藤座長 では、池田委員。今回順番が逆ですから。

 

○池田委員 そうですね。

 

○佐藤座長 どちらがよかったかというのは。

 

○池田委員 先のほうがよかったかもしれないですね。結構いろいろ出たので、話すことがないのですが、最終的に企業向けに情報提供することを考えたときに、やはり1つは、転勤をめぐる労使の思わくの違いが問題の背景にあるということを指摘しておきたいと思います。例えば、育児・介護休業法で転居転勤の配慮義務ということが書かれていますが、これは特に労働者に対して何もフィードバックが要らないのです。しかし私が調査をしたときの経験でいうと、例えば人事意向調査で転勤できませんという要望を書いて出したけれども、それが聞いてもらえるかどうか分からないという当事者の方が結構います。片や企業のほうは、いや配慮していますと言っているという、ここの思わくの違いです。これは労使のトラブルの種になることだと思います。これに対して、法律的な規制とかということではないにしても、何らかのトラブル防止に資するような情報提供というのは考えていいのではないかということを1つとして思います。

 そういう意味で言うと、例えば判例で見せていただいた、「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」ということの意味を考える余地はないかと思います。資料にある判例をずっと見ていくと、最初が昭和61年ですから、それから今までのワーク・ライフ・バランスを考えたときに、ライフに対する観念は大分変わってきています。端的に言えば、片働きで男性が仕事で女性は家庭という価値観が強かった時代から、デュアルキャリアで男女ともに家事・育児を分担していく時代になった。果ては、今、介護という問題が起きていて、男性介護者なども出てきているというところで、この時代の流れをどう受け止めて労働者の利益を考えていくかを考える基本的なフレームぐらいは何かあってもいいのかと思います。

 もう1つは、そうは言っても平野先生がおっしゃるように、どうしても異動させなければいけない事情があるのはそのとおりだと思うのです。そのときに、どういう事態が不可避なのかということの、ある程度輪郭が描けたらいいと思うのがもう1つあります。先ほどお話があった人材育成機能の中身です。平野先生がおっしゃるように、ポストを空ける方の人は人材育成機能がないというか、乏しいというのもあるでしょうし、あと、都市から見ると、別に異動しなくても人は育つように見えると思うのですが、例えば人口が余り少ない地域で、事業所にいる人数も少ないという状況で、何年もそこにいる地域限定正社員でいいのですかという問題もあります。

 片や、ある程度地方といっても大きな事業所を構えていて、中での内部異動ができるというところもある。いろいろな企業の事業の形態によってやはり転勤の不可避性は変わってくると思いますので、あと2回、時間のある限り整理して情報提供したほうが混乱は少なくなるかという印象を持ちました。

 

○佐藤座長 2周目どうするかというか、ランダムに行くかどうかですが、今、伺っていて、1つは、今回転勤の課題をどうするかという議論なのですが、武石委員も言われたように、大事なのは、転勤というのは、居住変更を必要とする異動です。居住変更が必要な配置転換なので、転勤だけが別にあるわけではなくて、基本的には企業の異動政策みたいなものの中で、居住変更を必要とすれば転勤となって表れる。そういう意味では、先ほどの、能力開発上転勤が必要だというのは、多分、能力開発上異動が必要だというのがあった上で、ここは近くにいないから少し遠くのということになると思うので、それで私はやはり、異動を見直すことも含めて少し考える必要があるかと思います。

 それと、今度異動の理由で、1つは業務上の必要です。例えば、どこかの店舗を閉めなければいけない、それは当然そこの仕事がなくなるわけですから、これは当然必要な異動なり転勤だと思うのです。ただ問題になるのは、能力開発と組織活性化という部分がかなり、これまで能力開発に結び付いたかとか、確かにそれは事実としてあったのだけれど、それを引きずってしまって、今までもやっているようなことがないのかというところの見直しがすごく大事なのかもしれない。特に、1か所にいるといろいろ仕事が経験できないとよく言われるのですが、ただ今、1か所にいて同じ仕事を2年も3年もやるような職場があるのかという気もしなくはなくて、異動しなくても仕事がどんどん変わっていく時代だろうということも少し考えなければいけない。あと組織活性化と言ったとき、では11事業所は活性化しないのか、あるいは人が育たないのかというと怒られてしまうのではないかという気もしていて、たくさんそういう会社もあるわけです。実際上、異動先がないとか。ですので、多少やはり、企業としては転勤というのは会社にもコストがかかるし、本人もコストがかかるので、そうしなくても同じようなことがやれればそのほうがいいだろう。ですから、少し代替機能を考えるのがすごく大事。その上で、必要があれば転勤も含めた異動というかとは考えています。あとは自由にやりますか。それとももう一度回りますとか言って。初めだったので山中委員、どうぞ。

 

○山中委員 先ほど判例の話もありましたが、東亜ペイント事件の最高裁判決は、労働者側の不利益について、労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超えるものであるかどうかという判断基準を示しており、この認定は、使用者側の広い裁量を前提として、労働者側にはかなり厳しく認定されてきました。では、今後の方向性として、単純に使用者の裁量権を狭めていけばよいということになるかといえば、必ずしもそれが正しい方向とは思えません。

 使用者の裁量権を狭めずとも、使用者としての判断根拠については、必要に応じてできるだけ丁寧に説明を尽くすこと、そのような対応によっても労使のトラブルを相当程度防止することはできるのではないかと思います。先ほど御紹介いただいた平成12年メレスグリオ事件の東京高裁判決においても、懲戒解雇を権利濫用として無効と判断する理由として「生じる利害得失についてXが判断するのに必要な情報を提供することなくしてなされた本件配転命令に従わなかったことを理由とする懲戒解雇は、性急に過ぎ」ると指摘している点は、使用者側としても注意をしなければなりません。

 それと、話が変わりますが、先ほどの報告の中で、転勤が多い年齢層としては30代、40代であるとのことでした。しかしながら、30代、40代の世代の方は、一般的にいえば、子育ての世代であり、また、年齢の上昇とともに、突発的に介護の事情が発生する可能性が高くなる世代でもあります。つまり、転勤の多い年齢層と育児・介護の負担が生じている年齢層が重なってくることがあるという認識を持つことも大切といえます。

 

○佐藤座長 そうですね。

 

○山中委員 ではそれを、武石先生がおっしゃるように、勤務地限定正社員制度で全て解決するという話ではなく、勤務地限定のない正社員を含めて対応策を考えた場合に、どのような点がポイントになるのかということを考えていくとした場合には、やはり先ほど述べたように使用者側としても一定の説明責任を尽くすという方向性になるのかなと思いました。

 あともう1点申し上げます。いざ転勤というときに、その判断根拠を必要に応じてできるだけ丁寧に説明を尽くせるようにしておくことはもちろん大事だと思うのですが、転勤を内示するときだけなく、定期的に、個々の従業員の現在の状況や今後のキャリアプランなどを把握しておくこともまた大事なのではないかと思います。というのも、労働契約関係は、継続的な契約であり、先ほど述べた、従業員の個々の家庭生活上の事情は、日々変化するものですし、また、それに応じて、その企業での自分自身のキャリアプランというのもまた変化していくものだからです。これは法律的な義務を使用者側に課すべきであるというような話ではありませんが、使用者側としても、個々の従業員とのトラブルを防止することを考えていくうえでは、一考に値するのではないかと考えます。

 

○佐藤座長 平野委員は、昔は人事異動をやられたことがあるのですが、比較的海外勤務だと赴任期間を明示する企業は多いのですが、国内の場合だとほとんど期間を明示しないというのは、人事としては余り、3年といって3年で戻せないときのことを考慮すると言いたくないということなのですか。その辺はどうですか。

 

○平野委員 約束できないから。

 

○佐藤座長 約束できない。

 

○平野委員 はい。

 

○佐藤座長 約束したくない。

 

○平野委員 未来は不確実性に富んでいますので。

 

○山中委員 転勤については、必ず何年とはやはり。

 

○平野委員 言えない。

 

○山中委員 出向の場合は原則3年で例外的に延長可能性有りという規定などはありますが、転勤の場合には、事前にあらかじめ何年などとは明示しないですね。 

 

○佐藤座長 海外はただ比較的言っている企業がある。国内はやっていなくても海外でやる場合は多いですね、相対的に。ですからそれはなぜかというと。

 

○平野委員 海外とか国内でも出向の場合はやはり労使で、あらかじめ事前合意で3年とか5年とかあるので、そこは労使合意の範囲だと思うのですが、通常の国内異動の場合で言えば、やはりなかなか約束できないです。ただ、今後のことを考えると、やはり約束しないといけないと思うのです。約束と言いますか、ある程度のガイドラインというのも示して。

 

○佐藤座長 なるほど。

 

○平野委員 必要に応じて異動してもらうということをしないといけない。そうすると、誰がそれに責任を負うか、誰がその約束を履行するのだということです。一方では、人事部がといっても、人事もどんどん変わりますので、約束してくれた人はどこかへ異動していなくなってしまったというのがある。そういうことになるわけで、そこのいわゆるルールですね。誰かがやはり履行に対して、事前の約束に対して履行するという担保をきちっと付けるということ。

 

○佐藤座長 あと公務員の方、向こう側に座っている方は転勤がたくさんあったのだと思います。必ずでも、期間は大体決まっているのですね、運用上かな。あと一度戻ってくるみたいな形。この辺は大体民間との違い。

 

○平野委員 国家公務員の方の異動に結構学ぶべきかなと。

 

○佐藤座長 学ぶべきですか。

 

○平野委員 はい、公務員の方も、やはり全国転勤がありますが、しかし、かなり個別の配慮があると思うのです。例えば、地方に行ったときに実家がある地方に行くとか、あるいは3年たって帰ってくるとか。ある程度民間に比べると随分事前の約束にかなりガイドラインが出ていて、そして安心して異動ができるというのがあると思うのです。

 

○佐藤座長 全体について御意見でもいいのですが、あともう少し具体的に、このようなものを作るというほうで言うと、こういうものが。先ほど、労使の納得性を高めるような、紛争防止みたいなことも大事ではないかとお話がありました。あと、企業の側の人事が受け止められるような内容にしなければいけないし、ですからニーズに合ったものですね。

 

○武石委員 資料58ページにモデル就業規則がありますが、これがモデルになって企業に相当定着しているような気がしています。業務上必要がある場合は労働者に対して就業する場所を、及び従事する業務の変更を命ずることがあるとか、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできないという、先ほどの、これまでの社会の中で人事権が、人事なり、会社側にあったのを前提としたモデル就業規則なので、これを見直す必要があるかなと。これもあってもいいのですが、これだけではなくてもっといろいろなバリエーションがあってもいいのではないかという気もします。

 

○佐藤座長 これは別に、モデル就業規則は法令に基づいているわけでも何でもないのです。すみません、根拠はどういう話なのですか、これ。お願いします。

 

○大塚調査官 モデル就業規則は何個か種類があるのですが、これはいずれにしても法令の根拠はないのですが、労基法第89条に基づいて、10人以上の事業場であれば、就業規則の作成義務と監督署への届出義務があるわけです。ただ、実際には労務に余り詳しくなかったりして、1から作るのは大変だということで、便宜的に示しているものが一般的なモデル就業規則です。

 

○佐藤座長 分かりました。

 

○大塚調査官 あと、いろいろなバリエーションがあって、例えば私どもの労働関係法課では、多様な正社員など、一定程度の配慮を要する人たちに対する特別な規定ぶりについてお示しもしています。ここでは、限定正社員を始めとしていろいろなバリエーションについて示していることもありますので、そのどちらに修正を加えていくかも含めて、この検討会で御議論いただければと思います。

 

○佐藤座長 今、8ページにあるものは、中小企業も含めて、変ですがそれを持ってきてちょっと微調整して届け出ればいいようなものの中に入っているのですか、こちらは。

 

○大塚調査官 おっしゃるとおりです。

 

○佐藤座長 そうすると、極端な話、将来も通じて転勤がないという会社もこれを作っているものですね。

 

○大塚調査官 それぞれの実情として。

 

○佐藤座長 いやもちろん、将来にどこかに事業所ができるかもしれない会社はたくさんあると思いますが、いや、うちは絶対ないという所もこれは入っているのですね。可能性があると。

 

○大塚調査官 そのままパクッてしまえばですね。

 

○佐藤座長 そう、余りそういうことは気にせずに。

 

○大塚調査官 先生方に申し上げるのは釈迦に説法ですが、転勤の場合には、基本的には個別の合意があればそれは問題なく行われるわけで、問題はその個別の合意がないときに、契約上の根拠とそれが濫用に至らないこと、これが裁判例の判断スキームだと考えています。就業規則に書くということは、これは合意がないときにではどうするかという話でして、ものすごく基本的なことだけを一般的なモデル就業規則に、今、書いているわけです。それは配転させることがある。それは拒めないということだけです。先ほどJILPTの調査結果にもありましたように、実際には個々の会社によっていろいろなやり方、配慮の仕方があるわけで、それは個々の企業の人事業務上の管理に従って、適切にモデル就業規則の規定を変えていただく必要があると考えています。

 

○佐藤座長 ちょっと話が変わってしまいますが、いわゆる副業の禁止規定もこれは入っているのですね。あちらも見直すのですか、併せて。

 

○大塚調査官 それは正に労働基準局の担当なのですが。

 

○佐藤座長 そうだけれども。

 

○大塚調査官 兼業・副業につきましても、働き方改革実現会議の中で議論が行われていますので、このモデル就業規則の改定も含めて検討することにしています。

 

○佐藤座長 そういうことですね。見直すのであれば併せてやるということはあるかもしれない。それはちょっと今回の、広い意味で別の形で企業に情報提供している一部ということかも分かりませんので、モデル就業規則は。そういう意味では、今回作るアウトプットのところで、このようなこと、最終的にどうなるか分かりませんが、御意見を伺っておけば。今日1回目ですので。私は、多少、何て言うのですか、例えばやる場合、事前にこのぐらいとか、赴任期間も明示とか、いろいろあると思うのですが、まずは、現状把握みたいなものもあってもいいかなと思っています。すぐ何か改善というよりかは、自社の異動、転勤がどのように行われていて、実態としてどのようになっているか。企業も社員もどのような課題があるのかみたいなのを把握してからという作りになるといいかと思っています。余り、実態把握をきちっとやっていなかったりとか、では育成と考えたら、何で効果があると思っているかを気付くようなことが大事だと思っています、個人的には。山中委員なども、企業からこういう異動、転勤の相談とかあるのですか。ちょっと余り具体的に。

 

○山中委員 私の場合は、実際に異動するに当たっての計画についての相談というよりも、実際にトラブルになりそうだ、あるいは実際になってしまった場合の相談が通常です。

 

○佐藤座長 そうですね、紛争になりかかったときね。

 

○山中委員 人事異動にあたっての方針の策定や実際の判断については、会社の中で人事が判断することになりますが、そのやり方や理由は、各社各様です。

 

○佐藤座長 平野委員、何かありますか。企業に情報提供するものとしては、どのようなものが盛り込まれたらいいかということがあれば。

 

○平野委員 やはり限定正社員の考え方で、いわゆる転勤リスクのプレミアムで、賃金に相応の格差を付けるというのはある意味合理的かもしれませんが、いわゆる勤務地限定正社員が昇進は、ある職位で天井になるという企業が多いと思うのです。それは、転居転勤できるかできないかの拘束性の受容を、能力に置き換えてしまっていると言いますか。

 

○佐藤座長 そうですね。

 

○平野委員 そこは、確かに転勤できるかできないかのリスクを負うか負わないかで賃金にプレミアムが付くというのは、私は合理的だと思うのですが、しかし、昇進に天井を設けることが、果たして合理的かどうかというのは、やはりここで議論をしたらいいのではないかと思うのです。場合によっては、そこは違う論理なのだということであれば、勤務地限定正社員においても総合職と同様の昇進ということになると思いますので、そこはちょっと議論として重要なポイントかと思います。

 

○佐藤座長 多分、まずは武石委員が言われたように、すぐ勤務地限定、つまり転勤できない人が増えてきているから、転勤しなくていいような雇用区分を作ろうという考えではなくて、まずは、転勤の現状を見直して、運用の仕方を見直して、そうすれば、そういう人も、今は駄目でも、しばらく先、転勤できることが起きるかも分かりませんので、そうした上で、やはり勤務地限定が必要なら導入すると。ただ、そのときの、今度運用の話だと思うのです。ただ1つは、多様な正社員のほうで、かなり今言ったようなことも議論しているので、またそれをゼロからというのもあれだと思いますので、多少、こちらをリファーすればいいものはそちらに振るという形でやれればいいかと。

 

○池田委員 多分、勤務地限定のところに関しては、議論がまだそこは十分ではないかと思うので。

 

○佐藤座長 それは御指摘のとおりで。つまり、異動と能力の進捗が確実に対応していれば私はいいと思うのです。そうでない場合は、別に異動するしないではなくて、能力のほうで昇進昇格したらいいかというのは、私は企業の方も理解していただけるかと思っていますので、その辺はそうだろうと思います。

 

○池田委員 多分、勤務地限定正社員の話と、仕事と家庭生活の話が重なるようでうまく重なり合わないのは、雇用区分というのはそこに人を収めていく静態的な箱のようなものですが、転勤に関するワーク・ライフ・バランス上のニーズというのは、ライフステージによってやはり流動するからだと思います。今、子供が小さいからここ数年は動きたくない。特に進学などが絡むところは、おそらく乳幼児期よりも転勤したくないでしょうが、しかしそれは結局、子供が高校を卒業するまでの間の数年間という話ですし、親の介護と言っても、平均して3年ぐらいの話となりますと、そうすると、その度ごとに、例えば区分転換制度を使うと人事管理が複雑になる。ちょっとある企業から相談を受けたのですが、あるとき一気にみんなが勤務地限定に転換する申入れをされても困るということが起きている。

 

○佐藤座長 実際上、毎年雇用区分変更を可にしている会社もないわけではなくて。

 

○池田委員 はい。ですが、結構その。

 

○佐藤座長 結構、大手でそうやっていたというところもあるので。大体、今日1回目ということで、企業の転勤の実態とか、働く人がどのような課題を感じているかを少し共有し、ガイドラインのまとめ方についていろいろ御意見を伺うということで、進め方をみんな共有できればと思うのですが、大体よろしいですか。何かあればお伺いします。

 では、一応、今日1回目で、やるべきことはやれたということで、議論はここまでにさせていただきます。それでは、次回以降の進め方について説明いただければと思います。

 

○六本調査官 次回の日程については、後日、場所とともに、決まり次第御連絡したいと思います。

 

○佐藤座長 やる内容もまだこれからということですね。

 

○六本調査官 はい。

 

○佐藤座長 では、事務局から、内容と日時等御連絡があるということですので、調整していただいて、また御連絡させていただきます。それでは、ちょっと早いですが、どうもありがとうございました。


(了)

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