ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会)> 第64回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録(2016年11月8日)




2016年11月8日 第64回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録

労働基準局勤労者生活課

○日時

平成28年11月8日(火)13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用第12会議室(12階)


○出席者

公益代表委員

勝部会長、小野委員、鹿住委員

労働者代表委員

曽原委員代理、花井委員、松岡委員代理、宮嵜委員

使用者代表委員

白土委員、新田委員、久保委員、円山委員

(事務局)

藤澤大臣官房審議官(労災、賃金担当)、平嶋勤労者生活課長、田中勤労者福祉事業室長、小林勤労者生活課長補佐、竹田勤労者生活課長補佐

○議題

(1) 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(中小企業退職金共済法の一部改正)の成立について
(2)中小企業退職金共済制度の現況及び平成27事業年度決算について
(3)その他

○議事

○勝部会長 それでは定刻になりましたので、委員の方はまだ来られていない方もいらっしゃいますが、ただいまから第64回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を始めたいと思います。
 本日ですが、関委員、内藤委員、川野委員、須永委員が御欠席となりますが、労働政策審議会令第9条の規定、全委員の3分の2以上又は公労使委員の各3分の1以上という規定によりまして、定足数は満たしておりますので、御報告をいたします。
 本日の議題ですが、机上に議事次第がございます。1番目として「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(中小企業退職金共済法の一部改正)の成立について」、2番目として「中小企業退職金共済制度の現況及び平成27事業年度決算について」、3番目として「その他」が議題となっております。
 本日の議題に入ります前に、委員と事務局の異動がありましたので、事務局から説明をお願いいたします。
○平嶋勤労者生活課長 私、本年8月付けで着任いたしました勤労者生活課長の平嶋です。どうぞよろしくお願いします。まず、委員の異動ですが、長谷川悦夫委員の後任として、株式会社浅沼組安全環境管理本部安全環境管理部長の久保久典委員が就任されております。また、委員交代の手続き上、代理出席という形式にさせていただきますが、本日は前の日本労働組合総連合会総合労働局労働条件・中小労働対策局長、曽原倫太郎委員の代理として大久保暁子様に、前の全国建設労働組合総連合賃金対策部長で現専従中央執行委員、松岡守雄委員の代理として、小川拓也様に御出席いただいております。
 続きまして、私のほかの事務局の御紹介もさせていただきます。中退制度を担当します大臣官房審議官の藤澤です。勤労者生活課勤労者福祉事業室長の田中です。勤労者生活課課長補佐の小林です。同じく、課長補佐の竹田です。事務局を代表しまして、審議官の藤澤より御挨拶を申し上げます。
○藤澤大臣官房審議官 厚生労働省の大臣官房審議官の藤澤と申します。今年6月から中小企業退職金共済制度を担当しております。どうぞよろしくお願いします。委員の皆様には、大変お忙しい中を中小企業退職金共済部会に御出席いただきましてありがとうございます。この部会は、前回は3月に開催をいただいておりまして、それ以降のことを少し申し上げると、今日の議題にも掲示していただいておりますが、平成26年度に御議論いただいた確定拠出年金法等の一部を改正する法律が、お陰様で前の通常国会で、6月に成立しております。今日はその成立の御報告と、それから、中小企業退職金共済制度の現況、また、平成27事業年度の決算について御報告を申し上げ、御議論いただければと思います。中小企業で働く方々が安心して働くことができるよう、引き続き中小企業退職金共済制度が安定的に運用されて、従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与していければと考えております。当部会の事務局を一生懸命務めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
○勝部会長 大変ありがとうございました。それでは、次第に沿って議事を進めてまいりたいと思います。まず議題1ですが、「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(中小企業退職金共済法の一部改正)の成立について」です。まず、この件につきまして、事務局から説明をお願いします。
○平嶋勤労者生活課長 それでは、議題1の「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案の成立について」を説明します。資料2の1ページを御覧ください。本法律につきましては、昨年3月16日の当部会において、厚労大臣からの諮問に対して、厚生労働省案は妥当と認めるとの答申案を頂いた要綱を条文化して、昨年4月に国会に提出し、審議の末、本年5月24日に成立、6月3日に公布されたことをまずは御報告いたします。どうもありがとうございました。今回、新たに委員に御就任された方もいらっしゃいますので、簡単に御説明します。
 この法律による中小企業退職金共済法の改正事項は赤い枠線で囲まれた部分です。中退共制度と企業年金制度との間における資産のポータビリティを拡充するものです。具体的には3ページを御覧ください。ポータビリティ拡充の全体像という表の黄色の網掛け部分のとおり、移換前に加入していた制度が確定給付企業年金、DBである場合は、法律の改正前は中退共制度に資産移換をすることはできませんでしたが、改正後は、中小企業で合併等が行われた場合に限り資産移換が可能となります。企業型確定拠出年金、企業型DCから中退共制度への移換も同様です。以下、確定給付企業年金はDB、企業型確定拠出年金は企業型DCと呼ばせていただきます。また、移換前に加入していた制度が中退共制度である場合、法律の改正前はDBや企業型DCへ資産移換ができるのは、中退共制度に加入している企業が中小企業でなくなった場合に限られていましたが、改正後は合併等が行われた場合にも資産移換が可能となります。
 具体的な資産移換のスキームについて、4ページを御覧ください。ページの中心の灰色の枠に記載されているとおり、例えば、DB・DCを実施していた企業と中退共を実施していた企業が合併等を行った場合、合併後においても、中小企業である事業主の下に、合併後の従業員として、DB・DCの加入者と中退共の被共済者が混在するケースを想定しています。このような場合に、DB・DCか中退共か、いずれかの制度に統一することを可能にするスキームにしています。
 灰色の枠の左側を御覧ください。赤い線で記載しているのが、DB・DCから中退共へ資産移換する場合です。事業主が従業員の同意を得た上でDB・DCの実施団体に資産移換の申出を行い、DB・DCの実施団体は勤退機構に資産の移換をします。右側は、逆に中退共からDB・DCに資産移換する場合であり、赤い線で記載しています。事業主は従業員の同意を得た上で勤退機構に資産移換の申出を行い、勤退機構からDB・DCの実施団体へ資産の移換を行います。いずれにしても、どちらの制度を引き続き実施するかについては労使で判断し、資産移換については従業員ごとに同意を得る必要があります。
 以上が法案の概要ですが、法案を審議いただいた参議院厚生労働委員会において附帯決議がなされております。5ページは、このうち中退共制度に関係する部分を抜粋したものですが、「働き方の多様化及び制度の分立によって加入者が不利益を被ることのないよう、確定拠出年金、確定給付企業年金、中小企業退職金共済等の制度間のポータビリティの更なる拡充のために必要な措置について引き続き検討を加えること」とされておりますので、併せて御報告させていただきます。
 なお、本改正法のうち、中退共制度に関する部分の施行は、公布日、平成28年6月3日から2年以内で、政令で定める日とされております。そこにあたっては関係政省令の改正が必要になりますので、準備を進め、今後、改めてこの部会でその内容を御審議いただきたいと思います。第1については以上でございます。
○勝部会長 ただいまの説明につきまして、御意見あるいは御質問等があればお願いします。
○宮嵜委員 文言的な部分になるかと思いますが、先ほど御説明いただいた中での附帯決議の所で、加入者が不利益を被ることのないようという考え方に賛同します。その上ですが、未請求を増加させることのないよう、このポータビリティ制度の内容と取るべき手続等については、対象加入者への十分な周知をお願いします。以上です。
○勝部会長 ありがとうございました。今の点につきましては。
○平嶋勤労者生活課長 法律の規定上、事業主が資産移換の申出を行う場合は、従業員の同意を得る必要があると定められております。DB・DC政省令においても、資産移換についても事業主から従業員への説明義務を課す改正を行う予定と聞いておりますので、適切な法令担保が行われると考えております。漏れがないようにしていきたいと思います。
○勝部会長 ありがとうございました。ほかに。
○曽原委員代理(大久保様) 今、宮嵜委員からもありましたが、今回の法改正は、合併後にも中小企業に該当する企業において、確定給付若しくは確定拠出、DB・DCと、中退共加入の労働者が共存する場合に、どちらの制度を継続させることになるのかがポイントかと思います。
 ここについては労使で判断し、更に資産移換について従業員ごとの同意を得ることにはなっておりますが、どちらの制度に移ったほうが得なのか、少なくとも損にはならないのか、十分に情報があった上で、それぞれの労使あるいは個々の従業員がきちんと同意の手続を取れることが非常に重要だと思います。その点におきましては、厚生労働省において、事業譲渡指針、それから労働契約承継法指針などで、企業合併時には、企業から労働者に対して十分に説明すべき内容がこれらの指針で示されていると存じます。ですので、その指針の中で、年金のポータビリティ制度についても十分に説明するように、という内容を是非盛り込んでいただければと考えております。よろしくお願いいたします。
○勝部会長 この点につきまして、事務局から何かございますか。
○平嶋勤労者生活課長 どうもありがとうございます。また、エレベーターの混雑につきまして、申し訳ありません。御指摘いただいた件については、他の制度との整合性もよく検討した上で、しっかり検討していきたいと思います。
○勝部会長 ほかには、何か御意見ございますか。
○小野委員 1つコメントをさせていただきます。今の附帯決議の関係で、制度の分立によって加入者が不利益を被ることのないようにということで、これはそのとおりだと思います。3ページを御覧いただくと、最初に、「制度間のポータビリティとは転職時等に制度間の資産の移換を可能とするもの」とあります。確かに、企業年金制度の中あるいは、個人型DCも含めた年金制度の中では、転職に伴ってポータビリティは成立しているわけですが、企業年金制度と中退共との関係を見ると、転職に伴って移換するというのが書いていなくて、結果として給付が発生して、ある意味では老後の資金の1つとなる資産を費消してしまうとか、あるいは、そこで課税関係が発生してしまうとか、そういうことがあろうかと思います。昨今は少子高齢化と言われていますので、資産形成のためにも費消させないというか、受け皿も含めた措置を、これは税法も含めるので、いろいろと難しい問題もあると思いますが、引き続きその辺りを御検討いただければと思います。
○勝部会長 ありがとうございました。この意見についてはいかがでしょうか。
○平嶋勤労者生活課長 御指摘のとおり、ポータビリティが更に拡充するのは労働者のメリットになると思いますが、お話があったように、税制上の課題もありまして、更に検討を進めていきたいと思います。
○勝部会長 引き続きよろしくお願いします。ほかには何か。
○花井委員 私のほうからは、中退共としての直接的な課題ではないと思いますが、1ページ、3の「DCの運用の改善」という所に、継続投資教育の努力義務化とありますが、確定拠出の年金法が成立する過程で義務規定にすべきだという議論もありましたが、努力義務になったわけです。様々な制度が分立して、なおかつポータビリティが拡充してくることになると、直接的ではないにしても、投資教育の重要性が非常に高いと思っておりまして、是非この辺りも、今後、制度を施行、実施されるとき、投資教育という観点を重視した指導をお願いしたいと思います。以上です。
○勝部会長 ありがとうございました。こちらは、できれば義務化も視野にということで、御意見として承るということかと思いますが、よろしいでしょうか。ほかには何か、御意見、御質問はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、事務局におかれましては、今日の部会の議論も踏まえて、今後の政令や省令の作成作業を行っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 次に、議題2に移ります。「中小企業退職金共済制度の現況及び平成27事業年度決算について」です。事務局から説明をお願いします。
○平嶋勤労者生活課長 それでは議題2の「中小企業退職金共済制度の現況及び平成27事業年度決算について」、報告いたします。資料3の1ページです。中小企業退職金共済制度の現況をお示ししております。まず上段、1の新規加入状況についてです。一番下の段が平成27年度の実績です。左側の共済契約者数、つまり加入事業主の数で見ると、新規加入は合計で1万8,755件となっております。右側の被共済者数、つまり従業員の新規加入者数は合計で47万9,147人となっています。前年度と比較すると、共済契約者の新規加入は全ての事業で増加しております。特に、林退については林野庁の「緑の雇用事業」における助成の要件として、林退共制度への加入を必須としたことなどにより、被共済者の新規加入についても大きく増加しているところです。なお、一般中退では平成23年度を期限として適格退職年金からの受入れが行われておりましたが、平成24年度に新規加入が大きく減少しております。平成26年度、平成27年度は増加しています。
 次に下段、2の在籍状況についてです。平成27年度末現在、左側の共済契約者数は合計で53万7,481人となっております。また、右側の被共済者数については全体で648万9,821人となっています。前年度と比較すると、共済契約者数についてはいずれもほぼ横ばいの状況です。被共済者数については清退で僅かに減少しましたが、その他の事業ではいずれも増加したことから、全体では前年度よりも多い結果になっています。
 2ページは退職金等支給状況です。平成27年度の支給件数は合計で31万6,052件、支給総額は合計4,088億600万円となっています。
 3ページです。左上が4の一般中退の平均掛金月額の状況です。掛金月額の設定は一定の幅の中で任意となっておりますが、短時間労働者の掛金を含めた平成27年度の平均掛金月額は9,312円となっており、ここしばらくは増加傾向にあります。右上の表は、特定業種の掛金日額の状況です。それぞれ日額で表のように決まっておりますが、林退の掛金日額については平成26年度に行われた特定業種退職金共済制度の財政検証の結果を踏まえて、平成27年10月から470円に変更されております。下の表は、運用資産高状況についてです。平成27年度の運用資産高は合計で5兆5,516億円となっております。そのうち一般中退が4兆5,628億円を占めております。
 資産運用状況については4ページ以降に詳しい内訳を載せております。まず、一般中退における資産運用状況です。一番右側が平成27年度末の数字です。自家運用が56.16%、国債等の有価証券で運用を行っております。平成27年度の自家運用の利回りは0.97%です。自家運用については国債等の満期保有を行っておりますが、国債の低金利傾向を反映して利回りが低下傾向にあります。信託銀行等への委託運用については、平成27年度利回りはマイナス2.48%でした。委託運用においては株式等、比較的価格変動がある資産による運用を行っており、利回りはプラスになる年度もマイナスになる年度もありますが、平成24年度以降は大きくプラスとなっておりました。平成27年度は残念ながらマイナスという結果になっております。一般中退の運用全体として、資料の一番右下にありますように、平成27年度の運用利回りはマイナス0.58%となっております。
 5ページは建退における資産運用状況です。建退では中小企業に対する事業と一体的に行っている中小企業以外の大手企業に対する事業で、経理を給付経理と特別給付経理に区分しております。上段の表が給付経理、下段が特別給付経理となっております。平成27年度の利回りは、表の右側にありますように、給付経理が1.14%となっております。こちらは委託運用でもプラスになっておりますのは、資産構成の中で国内債券の割合が高いことによるものです。
 6ページは清退における資産運用状況です。清退においても、経理を給付経理と特別給付経理に区分しております。建退と同様、上段が給付経理、下段が特別給付経理です。平成27年度の運用利回りは表の右側にありますように、給付経理で0.67%となっております。
 7ページは林退における資産運用状況です。平成27年度の運用利回りは、表の右下にありますように2.23%となっています。
 続きまして平成27年度決算について御説明します。資料4を御覧ください。1ページ目には、まず機構全体の貸借対照表と損益計算書の要旨を示しております。下段の損益計算書の要旨を御覧ください。一番下の数字は当期総損失の額となりますが、平成27年度は一般中退における運用収益がマイナスとなったことなどにより、機構全体では685億円の当期純損失を計上いたしました。この数字には勤退機構で行っている財形事業等の数字も含まれており、今回の資料には入れておりませんが、財形事業の当期純利益が約20億円でありますので、退職金共済事業のみで見ますと706億円の当期純損失になります。
 個々の事業については2ページ目以降に記載しております。まず、一般中退についてです。下段の損益計算書を見ますと、平成27年度については運用収益がマイナスとなったことで、654億円の当期損失が生じております。この結果として、上段の貸借対照表の下から3つ目の数字ですが、平成27年度末の利益剰余金は3,130億円となり、平成26年度末の3,780億円から650億円ほど減少したところです。
 3ページが建退についてです。こちらについても累積剰余金がございますが、平成27年度は49億円の当期純損失となりました。この結果、平成27年度末の利益剰余金は1,184億円となり、平成26年度末の1,234億円から50億円ほど減少したところです。
 4ページが清退についてです。平成27年度は7,800万円の当期純損失となり、その結果当期剰余金は25億円となったところです。
 5ページは林退についてです。こちらについては、先ほど現況のところで申し上げましたように、平成27年度はプラス2.23%の運用収益を上げたところですが、平成27年10月からの予定運用利回りの見直しに伴って、責任準備金の算定に用いる脱退率等の基礎率を改めたことにより、責任準備金の額がこれ以上に増加したということがありました。これにより、結果として1億2,700万円の当期純損失となりました。これにより、貸借対照表の下から3つ目にありますとおり、繰越欠損金は9億9,100万円に拡大しています。
 6ページは決算決定までの流れを示したものです。平成27事業年度決算については、法律に基づいて6月30日に機構から厚生労働大臣に財務諸表が提出され、7月21日に厚生労働大臣が承認いたしました。平成27年度現況と決算については以上です。
 3月のこの部会において、機構の資産運用委員会における審議の内容については適宜この部会にも情報を共有させていただくこととしておりました。そこで、今年度に入ってから開催された5回の委員会のうち、議事要旨が確定している第3回までの審議の内容について、併せて御報告させていただきたいと思います。資産運用委員会では、今年度に入ってから一般中退の基本ポートフォリオの見直しについての議論が行われております。これが3回までの主な議題になっております。議事要旨については資料5に付けております。
 まず2ページの一番上ですが、議論の開始に当たり、厚労省のほうから3月のこの部会でいただいた御意見をお伝えしております。具体的には、この部会と資産運用委員会の間で、互いの議論の内容について情報連携を図っていく必要があるということ。また、この部会では過度なリスクをとった運用ではなく、安心・安定の運用が求められていることなどについてお伝えしております。第1回の委員会では、こうした中退部会の議論の内容を踏まえた上で、機構の運用の基本方針である「安全かつ効率的な運用」とはどのような運用のことをいうのか、議論がなされたところです。
 第2回の委員会において、5ページの4.の下にありますように、これは「必要な運用利回りを最小限のリスクで達成する運用」であり、これに最も合致した運用方法は、国債等の安全資産を満期に保有することによる運用であるとの基本的な考え方の共有が図られました。ただし、同じく4.の2ですが、現在は金利が低く、国債の満期保有だけでは必要な運用利回りを得ることができない状況にあるため、このような状況下においてどのようなポートフォリオを組むことが適切かという問題意識が、議論の出発点になっています。
 第3回の議論ではこうした意識を念頭に、7ページの3.の下にございますように、より具体的にリスク・リターンの異なる3つのケースを設定し、それぞれのポートフォリオに平均的に期待できる収益率や、収益率の振れ幅、リーマン・ショックと同等の金融ショックが発生した場合の想定損失額等について、検証が行われています。具体的には7ページ下から8ページの上にかけてです。リーマンショックと同等の金融ショックが発生した場合の想定損失額は、3つのケースとして現行の基本ポートフォリオを維持した場合、すなわち期待収益率1.47%を狙うとした場合は3,500億円。期待収益率で1.1%を狙う場合は1,700億円。0.6%を狙う場合ではほとんど影響なしになるという推計結果が紹介されています。以上が第3回までの議論の経過です。
 第4回以降の委員会では、投資対象資産についての検討、期待収益率やリスクの推計方法についての検討など、技術的な部分も含めた議論が行われております。この内容については議事が確定次第、改めて共有させていただきたいと思います。資産運用委員会では非常に安全面を重視した議論が行われている状況であると思っております。以上、簡単ではございますが、資産運用委員会における議論の状況の御報告です。議題2については以上です。
○勝部会長 大変ありがとうございました。現況及び決算、それから資産運用委員会の内容ということですが、決算につきましては平成27年度はかなり厳しい状況ではあったわけです。ただ、それでも利益剰余金はまだかなりあるという状況であったかと思います。ただいまの説明につきまして何か御意見あるいは御質問等ございましたら、お願いいたします。どなたからでも結構です。
○宮嵜委員 資産運用委員会の関係なのですけれど、資産運用委員会との連携、先ほど御説明がありましたように、前回3月の部会での議論も踏まえまして、6月と9月にその議事要旨を送付いただきました。ありがとうございました。また、本日の部会でも先ほど資料添付していただいて、説明もいただいたのですが、やはり今後の予定利回りと損失のリスクをシミュレーションするための材料とか、あるいは先ほどの説明の中にもありましたように、議事からは読み取りづらい情報など、今後においても更なる情報の共有化というのを是非お願いしたいと思っております。以上です。
○平嶋勤労者生活課長 ありがとうございます。2つの、こちらのほうの部会と機構のほうの資産運用委員会、両輪、大事な会合だと思っておりますので、しっかりそれがブリッジできるように努めていきたいと思っております。
○鹿住委員 同じく資産運用委員会の議事録の中身についてなのですが、7~8ページにかけまして、1つは期待収益率を変化させた場合のリスク値、振れ幅がどのくらいかということをシミュレーションしていただきました。これは私どもで、例えば今後期待収益率をどうしていくか、予定利回りをどうしていくかということを議論する上で非常に参考になるのではないかと思います。
 一方、その下に、付加退職金制度のことが言及されております。現行、当然ですが、予定運用利回りを上回ったときには追加で支払う一方、下回っても支給金額が予定運用利回りよりも低くなるわけではないという特徴が指摘されております。次の8ページの委員の方の「主な質問、意見等」のすぐ下の御発言ですが、「運用利回りが変動し、損失も発生し得る中で、追加で支払うだけの現行付加退職金制度は、制度的に無理があるのではないか」という御発言があります。付加退職金制度そのものはもともとそのように設計されて、運用利回りが予定利率を上回った場合に払いますと。今は、その前に利益準備金を積みますということが前提となっておりますので、より制度の安定的運用のために、私どもも制度の見直しを図ってきたところなのです。
 更に、現行の制度に、この退職金制度の安定的な運用において、今の付加退職金制度は非常に無理があるものだというふうな御指摘であれば、私どももそれを引き取って、その付加退職金制度について見直しを図らなければならないわけですから、この辺もう少しどういった意図で制度的に無理があると、どういうことを想定されておっしゃっているのか。あるいはどういう制度に改めることが安定的な制度の運用にとって必要なのかというところです。もう少し情報があれば、私どもも検討の必要性を議論することができるのではないかと思います。先ほどおっしゃったブリッジの役割ということで、その辺御確認をいただければありがたいと思っております。
○平嶋勤労者生活課長 ありがとうございます。御指摘の、もともと事務局の説明であったわけですが、リスク・リターンをどう考えていくかという議論の中で、そのハイリスク・ハイリターンのポートフォリオとローリスク・ローリターンのポートフォリオを比較していった場合に、仮に両者の長期的な収益が同じであったとしても、ハイリスク・ハイリターンのほうは途中で付加退職金が出ていくので、より累積欠損金が生じやすいのではないか。だからローリスク・ローリターンのほうがいいのではないかという議論の中で出た意見と承知しております。議論の中では、付加退職金がというよりは、どちらかというと予定運用利回りをやめて、付加退職金一本でいいのではないかというような意見もあったわけです。いずれにしましても、どちらか何か定まった方向でこうして欲しいという状況ではなくて、より安定的に運営していくためにはどうすればいいかというような、ブレイン・ストーミング的な議論が行われていたと承知しております。この部会では、剰余金をしっかり確保して、安定的な運営に資するようにしていこうということについて、コンセンサスが得られていると思いますので、現時点においてはこれをしっかりやっていくことが大事ではないかなと思っているところです。
○勝部会長 それはこの部会でも付加退職金についてはかなり議論、長く議論されてきたと思うのですが、基本的には付加退職金についてはこの部会で決定されるという理解でよろしいですね。
○平嶋勤労者生活課長 そうです。
○勝部会長 そういった意見も運用委員会では議論されてきたということで。ただ、運用委員会としては、やはり予定運用利回りをどのように考えていくかということが非常に重要になってきたかと思いますので、この辺の情報の流れというか、そういったものも多分これから重要になってくるのかなとは思われます。ほかに何か。
○田中勤労者福祉事業室長 補足をさせていただきます。ここの8ページで、最初にそういった御意見をいただいたということで、鹿住委員から御指摘があったというところでございます。その後の勤生課長からの発言の後も見ていただきますと、例えば「予定運用利回りを上回る運用利回りとなる確率の高さだけではなく、その場合の下方リスクを併せて判断する必要がある」とか、また、細かい話なのかもしれませんが、「平均値を含む下方部分積率等も検討する必要がある」ということで、どちらかというと、付加退職金制度のこういうものがあるという前提で考えた場合には、上だけを見てだけではなく、下のどれだけブレを少なくしていくかということについても考えたポートフォリオを、やはり向こうが考えるという立場においてやらなければならないという。最初の切り出しはこうあったと思いますが、この資産運用委員会のほうでの話の流れといたしましては、必ずしも付加退職金に関して直接的な御意見をいただいたという認識ではないということでございます。
○勝部会長 分かりました。
○曽原委員代理(大久保様) ありがとうございます。そこに関連しますけれども、今回の中退共の状況、資料3から読みますと、委託運用分のマイナスが響いて、利回りがマイナスの0.58となっております。更に、さっきから何度も出ております資料5の7~8ページ、シミュレーションしたところでは、現行の基本ポートフォリオの場合、リーマン・ショック並みの、サブプライム・ショックとリーマン・ショックが立て続けに起こった場合という、非常に可能性の低いケースだとは思いますが、それでも累積欠損金の状態に戻ってしまうということが、事務局のほうでシミュレーションされた結果だということと理解しております。いささか現行ポートフォリオだとリスクを取りすぎているのではないかと、そのようにも言えるのかと思います。
 資料5のほうで今回出していただきました資産運用委員会のほうでも、必要な運用利回りを最低限のリスクで行うという考え方を共有していただいているということですので、労働者の代表といたしましては、ともかく退職金がもらえることであり、もらえなくなるという状況、何とかこれだけは絶対に回避しなければなりません。制度の安心・安全を求めて、この必要な運用利回りを最低限のリスクで行うという考え方をこの資産運用委員会とも共有すべく、そのブリッジの役割は事務局のほうで果たしていただけるということですので、是非ともそこの部分よろしくお願いしたいと存じます。
○勝部会長 ありがとうございます。ほかにどうぞ。
○平嶋勤労者生活課長 ありがとうございます。運用委員会のほうでも、いかにリスクを下げていくかと議論が行われているところですが、今の御意見はしっかり伝えておきたいと思います。
○勝部会長 ほかに何か御意見、御質問等ございますでしょうか。
○小野委員 2つございまして。1つは平成27年度の決算に関してですが、確か独立行政法人の会計基準の改定というのがあったと思います。恐らく今回の決算から適用されているのではないかと思いますが、その関係で、従来の基準と比べて何か異なる点があったかどうか。基準改定がありますと、その基準改定に伴う差額というのが出て来ると思うのですが、その辺りについて何かあればコメントをいただきたいというのが1つでございます。
 それから、先ほど来問題になっておりますポートフォリオの関係でございます。ちょっと分からなかったのは、7ページに基本ポートフォリオ、期待収益率1.47%、これは設定された仮定に基づいて期待運用収益率を算定すると、1.47になるということだろうと思うのですけれども、それ以外に1.1%と0.6%の2つのケースについて検証されているということなのですけれども。この1.1と0.6の何か根拠といいますか、それがありましたらお教えいただきたい。この2点でございます。
○平嶋勤労者生活課長 後段についてお答えします。中退共制度の場合は事務費、事務局の運営経費がその0.1%ということになっておりまして。今の予定運用利回り1%を回していくために必要な収益は1.1%ということなのです。それが2つ目の仮定です。3つ目の0.6というのは、ほとんどリスクを取らずに運用するレベルはどれくらいかということで出て来たのが0.6%です。
○田中勤労者福祉事業室長 前段の部分でございますけれども、資料ですと、例えば資料4の1ページ辺りから見ていただくと分かるかと思いますが、多少会計基準が変わっていく中で起きました。退職給付債務、つまり職員への給付の関係の積算の仕方ということで、調整が必要になるということでして、こちらの調整額をそれぞれの経理に積んでいるというようなことで、こちらに、比較がここに影響してきているというようなことです。
○勝部会長 調整額と小さな、ポイントが小さくなっているところですか。
○田中勤労者福祉事業室長 ちょっとそうですね、ここで文字が小さくなっています。下の損益計算書の下から5行目、退職給付会計基準改正に伴う調整額というふうに計上されている、ここの部分が該当をしてきているというところでございます。
○小野委員 これ、利益ということですか。
○田中勤労者福祉事業室長 こちらそうですね、臨時利益という形で。多分その積むべき額が少なくなったことになるだろうと思います。
○小野委員 評価の基準が変わったことによって債務の評価額が小さくなったとか、何か原因があると思うのですけれども。もしお分かりになりましたら教えていただきたいのですが。
○田中勤労者福祉事業室長 割引率というのですか、そういう将来に向かっての率を想定したときの割り戻しの額だと思いますけれども。そういったものを見直しているということで影響してきていると。
○小野委員 割引率が少し高くなったということですね。
○田中勤労者福祉事業室長 そうですね、はい。
○小野委員 はい、承知しました。
○勝部会長 ほかに何か質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、2番目の議題はこちらで終わりにしたいと思います。本日の議題ですが御意見は出尽くしたと思われますので、少し予定時間よりも早いのですけれども、本日の部会はこれで終了とさせていただきたいと思います。
 本日の議事録の署名委員ですが、新田委員と花井委員にお願いしたいと思います。事務局から、最後に何かありましたらお願いをいたします。
○平嶋勤労者生活課長 本日はどうも御議論ありがとうございました。いただいた御意見はしっかり検討していきたいと思いますし、資産運用委員会とのつなぎについても、引き続きしっかりやっていきたいと思います。今週また資産運用委員会がありますので、私も参加してきたいと思います。どうもありがとうございました。
○勝部会長 それでは、本日はこれにて散会といたしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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