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2016年10月26日 平成28年度第2回血液事業部会適正使用調査会議事録

医薬・生活衛生局血液対策課

○日時

平成28年10月26日(水)
17:00~19:00


○場所

弘済会館4階 萩
(千代田区麹町5-1)


○出席者

出席委員:(9名)五十音順、敬称略、○委員長

稲田 英一 薄井 紀子 大戸 斉 上條 亜紀
田中 政信 種本 和雄 ○半田 誠 三谷 絹子
矢口 有乃

欠席委員:(6名)敬称略

稲波 弘彦 兼松 隆之 鈴木 邦彦 鈴木 洋史
田中 純子 益子 邦洋

参考人:五十音順

菅野 仁 北澤 淳一 牧野 茂義 松下 正

日本赤十字社:

井上 慎吾 籏持 俊洋 高瀬 隆義

事務局:

一瀬 篤(血液対策課長) 近藤 徹(血液対策課長補佐) 金子 健太郎(需給専門官)

○議題

・輸血用血液製剤の供給量について
・アルブミン製剤の供給量について
・平成27年度血液製剤使用実態調査(日本輸血・細胞治療学会)
・平成28年度血液製剤適正化方策調査研究事業について
・「血液製剤の使用指針」の改定について
・その他

○議事

○近藤血液対策課課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、「平成28年度第2回血液事業部会適正使用調査会」を開催いたします。

 なお、本日の会議は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日の委員の出欠状況を御報告いたします。

 稲波弘彦委員、兼松隆之委員、鈴木邦彦委員、鈴木洋史委員、田中純子委員、益子邦洋委員より御欠席との連絡をいただいておりますが、15名中9名の委員に出席いただいておりますので、本日の調査会の開催が可能であることをお知らせいたします。

 また、本日は参考人として、日本輸血・細胞治療学会より、

国家公務員共済組合連合会虎の門病院輸血部部長、牧野茂義先生。

 東京女子医科大学輸血・細胞プロセシング科教授、菅野仁先生。

 青森県立中央病院臨床検査部部長、北澤淳一先生。

 名古屋大学医学部附属病院輸血部教授、松下正先生。

 以上の方にお越しいただいております。

 また、日本赤十字社血液事業本部より、

井上慎吾血液事業本部経営企画部次長。

 旗持俊洋血液事業本部経営企画部供給管理課長。

 高瀬隆義血液事業本部技術部学術情報課長。

 以上の3名にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 最後に、事務局の異動がありましたので、御紹介させていただきます。

 6月21日付で、血液対策課長が武井にかわりまして、一瀬が着任いたしました。

○一瀬血液対策課長 一瀬と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○近藤血液対策課課長補佐 カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。

 それでは、この後の進行につきましては半田座長にお願いいたします。

○半田座長 皆様、こんばんは。

 それでは、審議に入る前に、まず、審議参加に関する遵守事項について事務局より報告をお願いします。

○近藤血液対策課課長補佐 本日御出席いただいた委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金などの受取状況を報告いたします。

 本日の議事に関して、「薬事分科会審議参加規程」に基づいて利益相反の確認を行いましたところ、議事1から議事5に関して、稲田委員、薄井委員、種本委員、三谷委員及び牧野参考人、菅野参考人、松下参考人から、関連企業より一定額の寄附金・契約金等の受け取りの申告がなされております。意見を述べることはできますが、議決の際には御参加いただけないこととなりますが、本日の議事に関しては、全て報告事項となっておりますので、特段の措置はございません。

○半田座長 ありがとうございました。

 それでは、まず資料の確認をお願いいたします。

○近藤血液対策課課長補佐 事務局より資料の確認をさせていただきます。

 まず一番上に議事次第、次に座席表、委員名簿、参考人名簿がございます。

 その後に、

 資料1 輸血用血液製剤の供給量について

 資料2-1 アルブミン製剤の供給量と自給率の推移

 資料2-2 血漿分画製剤の自給率の推移(供給量ベース)

 資料3-1 平成27年度血液製剤使用実態調査報告

 資料3-2 平成27年度血液製剤使用実態調査(血液・血漿分画製剤使用状況と自己血輸血)

 資料3-3マル1 輸血管理体制-小規模医療機関-

 資料3-3マル2 外来輸血

 資料3-3マル3 病院外輸血

 資料4 平成28年度血液製剤使用適正化方策調査研究事業に係る企画書募集要領

 資料5 「血液製剤の使用指針」(案)

 参考資料1 「血液製剤の使用指針」平成29年 月全面改定のポイント

 参考資料2 科学的根拠に基づいた赤血球製剤の使用ガイドライン

 参考資料3 「科学的根拠に基づいた血小板製剤の使用ガイドライン」作成のお知らせ

 参考資料4 科学的根拠に基づいた新鮮凍結血漿(FFP)の使用ガイドライン(案)

 参考資料5 「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」作成のお知らせ

 参考資料6 科学的根拠に基づいた小児輸血のガイドライン(案)

 参考資料7 「血液製剤の使用指針」の一部改正について

 委員参考資料 ワクチン・血液製剤産業タスクフォース 顧問からの提言

 委員参考資料 ワクチン・血液製剤産業タスクフォース 顧問からの提言(概要)

 以上となります。

○半田座長 ありがとうございました。特にお手元の資料は大丈夫でしょうか。

 それでは、本日も非常に盛りだくさんの議事で、時間が押しますので、手際よくやりたいと思うので、皆さん、御協力をよろしくお願いします。

 それでは、まず議題1「輸血用血液製剤の供給量について」、これは資料1、及び議題2「アルブミン製剤の供給量について」、これは資料2-1、資料2-2、これについて事務局から説明をお願いいたします。

○金子血液対策課需給専門官 それでは、資料1について説明させていただきます。

 本調査会において、毎年報告させていただいている輸血用血液製剤についての資料になります。

 平成18年を基準とした直近27年までの輸血用血液製剤の供給量の推移をお示ししている資料でございます。データは日本赤十字社調べとなっております。

 上から、赤血球製剤、新鮮凍結血漿、血小板製剤となっており、昨年と比較して大きな変動はなく、新鮮凍結血漿は少し減っております。今後も人口の高齢化に伴い、がんなどの患者さんが多くなる一方で、輸血用血液製剤の適正使用が進むことで、供給量の動向がどうなるのか、引き続き今後の推移を見ていくことが必要と考えております。

 続きまして、資料2-1、資料2-2でございますが、こちらも本調査会において毎年報告させていただいている血漿分画製剤についての資料になります。

 資料2-1は、アルブミン製剤の供給量と自給率の推移を示しています。1980年代に世界の生産量の3分の1を我が国で使用しておりましたアルブミン製剤ですが、その後、適正使用の推進、普及によりまして、供給量は減少してまいりました。供給量の減少に伴い、長期的には国内自給率は上昇しているのですが、平成21年度以降は50%後半で推移しております。供給量については、適正使用が進み、今後も減少傾向が続いていくのか、引き続き今後の推移を見ていくことが必要と考えております。

 続きまして、資料2-2になります。

 こちらは、血漿分画製剤のうち、主要な3製剤の国内自給率の推移をお示ししたグラフです。平成27年度の自給率ですが、前年度と比較しますと、アルブミン製剤は資料2-1の数字と重複しますが、57.7%から1.3%下がり、56.4%、グロブリン製剤は95.8%から0.2%下がり、95.6%となっております。第VIII因子製剤は遺伝子組み換え製剤の供給が年々ふえ、遺伝子組み換え製剤を含む全体で見ますと、前年度の14.3%から1.8%下がり、12.5%でした。

 遺伝子組み換え製剤の供給量が増加する中、国内献血由来の製剤を使用し続けたいという患者さんがいることや、遺伝子組み換え製剤が何らかの理由で供給されなくなった際の危機管理上の観点からも、安定供給に支障を来さないよう、国内献血由来製剤の製造能力を維持していくことは必要と考えております。

 以上、資料1及び資料2の説明でございました。

○半田座長 ありがとうございました。

 それでは、早速委員の先生方から議題の1及び2について御意見あるいは御質問、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

 稲田委員。

○稲田委員 アルブミン製剤は国内自給率はずっと50%、余り変化しないということで、本日参考資料5にあります資料に、日本輸血・細胞治療学会でつくられた「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」、これをいかに広報して、そして、徹底していくのかが非常に重要だと考えています。

 以上です。

○半田座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 種本委員。

○種本委員 今年、国内のあるメーカーの製造工程の問題が発覚しまして、あれで国内産のものの供給が少し滞った影響があるかと思うのです。その影響はこの数字に出ていますか。

○金子血液対策課需給専門官 事務局からお答えします。

 全体としましては、国内の他のメーカーが生産をカバーしておりますので、全体としてはそれ程影響は出ていないと考えております。

○半田座長 ほかにいかがでしょうか。

 アルブミンも、輸血用血液製剤3種類とも供給量は頭打ちの状態が続いている。ただ、少子高齢化を迎えてどんどん輸血用血液製剤の必要量がふえるのではないかという予測がかつてあったわけですけれども、逆にその危惧とは違う方向に来ているのかなという印象がありますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、今の御意見も参考にして、引き続き適正使用の推進を事務局、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、議題3「平成27年度血液製剤使用実態調査」です。

 まず、事務局から背景の説明をしていただいて、その後、資料3-1、3-2、3-3と、それぞれの参考人の方々から説明をお願いしたいと思います。

 まず、事務局、よろしくお願いします。

○近藤血液対策課課長補佐 まず、調査の経緯でございますけれども、本議題にございます平成27年度血液製剤使用実態調査は、医療機関における血液製剤の使用実態を把握することを目的として、国から日本輸血・細胞治療学会に委託して、毎年実施していただいているものです。

 調査結果に関しては、同学会の牧野参考人、菅野参考人及び北澤参考人に御発表いただきます。

 初めに、牧野参考人には輸血管理体制に関して発表していただき、次に菅野参考人には血液製剤の使用実態について、北澤参考人には対象を中小施設、外来輸血及び病院外の輸血に絞った詳細な解析をお願いいたします。

 それでは、よろしくお願いいたします。

○半田座長 それでは、まず牧野先生から、資料3-1について御説明をお願いいたします。

○牧野参考人 それでは、まず輸血管理及び実施体制について、御報告したいと思います。

 お手元の資料3-1をごらんください。

 本調査は、2014年に日赤より輸血用血液製剤が供給されました実績のある1万211施設のうち、返却もしくは辞退されました45施設を除く1万166施設をアンケート対象施設として実施しました。今回の回答施設は、5,261施設でありまして、回答率は51.75%に達し、この同じ体制で行ってきました過去8年間で最も高い値を示しております。

 表2に示しますように、病床数が多くなるにつれまして、回答率は上昇し、500床以上の施設では84%以上であったということです。日赤から輸血用血液製剤が実際に供給されております施設の中で、300床未満の施設が全体の90%を占めていることがわかりました。

 回答されました5,261施設が報告しました総血液使用量と廃棄量を合わせました1,411万単位というものは、この年に日赤から供給されました総血液供給量1,877万単位の75.2%に相当しまして、国内で使用されます輸血用血液製剤の4分の3の情報がこのアンケート調査の中に含まれていることになります。

 表2の最下段に示しますように、全血液製剤の83.3%が全体の1割を占めます300床以上の施設で使用されていることもわかりました。

 2ページ、図1に血液製剤の使用状況を示していますが、輸血用血液製剤と血漿分画製剤の両方とも使用した施設が一番多くて、62.4%と多いのですが、2015年には輸血用血液製剤は全く使わなかった施設が550施設、10.45%存在し、これは過去5年間も同じぐらい、10%ちょっと存在していたことがわかりました。

 3ページ、表5に示しましたDPC取得施設ですが、全体で1,231施設でありまして、26.7%ですが、500以上の施設では97.45%において、DPCPDPSを導入されていて、これは年々微増していることがわかりました。また、図2に示しましたように、各血液製剤の8割以上はDPC取得施設で使用されていることもわかりました。

 4ページ、2012年4月に、保険改定によりまして、輸血の管理料と輸血適正使用加算というものが分かれまして、輸血管理体制が整備されていて基準を満たせば、輸血管理料が取得できるようになりましたので、5ページの表7cに示しますように、2012年から輸血管理料取得施設が864施設から1,477施設に急増しまして、2015年には1,710施設に増加しております。

 6ページ、表7dに示しますように、輸血適正使用加算を取得している施設は、1,215施設でありまして、300床以上施設の6割以上が取得しております。取得していない施設での理由は、赤血球分のアルブミン比の基準がクリアできない施設がいまだに4割近くを占めていますけれども、御存じのように、今年血漿交換療法で使用されたアルブミンは、総アルブミンから引いて計算できるようになりますので、来年度は若干低下するのではないかと期待されております。

 6ページ、図3に示しますように、輸血管理料IプラスII取得施設において、輸血用血液製剤及びアルブミン製剤の約9割が使用されておりまして、少なくとも輸血管理体制が整備された施設で本邦の血液製剤は使用されていることが確認できました。

 輸血適正使用加算を取得していない施設、表7fにおけるB及びDですけれども、各血液製剤とも使用量が多く、特にFFPとアルブミンの使用量が多い傾向が見られて、その結果、8ページの図4に示しますように、赤血球分のFFP及び赤血球分のアルブミン比が、A及びCと比べて2倍以上になっていることがわかりました。施設の機能としましては、7ページ目の表7gに示しますように、1施設当たりの年間手術件数と血漿交換療法件数が2倍から4倍と多いことがこの一つの原因と思われました。

 各施設における全身麻酔手術件数、心臓手術件数、造血幹細胞移植件数、血漿交換療法件数を病床の規模別に解析したところ、9ページの表8aに示しますように、医療施設の規模が多くなるにつれて、各血液製剤の使用量は増加し、全麻件数の多い施設や心臓手術、造血幹細胞移植、血漿交換療法実施施設が1病床当たりの血液製剤使用量は3倍から7倍多い傾向が見られました。

 今回の調査では、新たに救急医療の有無、それから、臓器移植の実施状況を調査しました。9ページの表8a及び図5に示しますように、全体の8割の施設において救急医療を行っていました。その救急医療体制は500床以上施設では3分の1の施設において3次救急を担当しているのに対し、500床未満施設では2次救急がメインでした。

10ページ、図6に示しますように、3次救急体制において、各血液製剤使用量が多い傾向が見られ、特にFFPやアルブミン使用量が多いようです。

 施設機能別血液使用状況を11ページから14ページにかけて示しております。1病床当たりの血液製剤の使用量が多いのは、赤血球製剤、血小板製剤、アルブミン製剤では、中規模医療施設から大規模医療施設で全麻件数が多く、心臓手術、それから、造血幹細胞移植及び血漿交換療法を実施している施設であり、救急医療や臓器移植を実施している施設で多い傾向がありました。

 赤血球分のFFPが高い施設は、心臓手術及び血漿交換療法を実施している施設でありまして、赤血球分のアルブミン比が最も高い施設は、14ページの表8eに示しますように、実はアルブミン使用量は余り多くないのですが、赤血球使用量も少ないために高値を示している小規模医療施設であったことがわかりました。

 また、赤血球分のアルブミン比が2以上の群には、血漿交換療法のみ行っている施設も含まれておりまして、これは凝固因子の補充の必要のない血漿交換療法に際して、アルブミン製剤を使用していることが一因と考えられます。

 次に、医療機関の輸血管理体制の整備状況について、15ページから16ページの図7aと図7bをごらんください。「輸血業務の一元管理」「輸血責任医師の任命」「輸血担当検査技師の配置」「輸血検査24時間体制」「輸血療法委員会の設立」の輸血管理体制5項目は、輸血管理料が実施される前の2005年と比較しまして、急速に整備されておりまして、300床以上施設においては、いずれも90%以上の施設で整備が完了しています。しかしながら、300床未満施設では50%前後の整備率であり、小規模医療施設における安全で適切な輸血医療の実施のための輸血管理・実施体制づくりが今後の課題と思われます。これに関しましては、後で北澤先生から報告があるかと思います。

 「輸血療法委員会の設立」は、17ページの図8a8bに示しますように、全ての施設では59.4%の設置率であり、300床以上の施設では実に98.2%で設立し、ほとんどの施設で年6回以上開催されていました。しかし、いまだに回答施設の中で、40.6%の施設では、院内の輸血療法委員会自体が設置されていないのも事実です。一方、院内の輸血療法委員会に日赤の職員が参加している施設が11%程度存在し、血液製剤に関する情報提供などを行っている現状がわかりました。また、18ページからの表9と図9a9bに示しますように、都道府県ごとの輸血管理体制の整備率は、最も高い新潟県と最も低い鹿児島県で2倍の差がありまして、各県や日赤と一緒に行っています合同輸血療法委員会などによる地域のさらなる活性化が今後の課題と思われます。

20ページの図10に示しますように、各職種における認定者の配置状況ですけれども、500床以上の大規模医療施設では認定医や認定検査技師が多く配置されていますが、500床未満施設ではまだ不十分であることがわかります。現在、820名の学会認定・臨床輸血看護師が全国で活躍されていますけれども、大規模医療施設に限られている現状がわかります。

21ページの図11には、300床以上施設に限って専任または兼任の輸血責任医師及び専任の輸血検査技師が配置されている施設では赤血球製剤の廃棄率は低値を示しました。また、学会認定の臨床輸血看護師がいる施設でも同様の傾向が見られました。

 次に、検査法について報告いたします。

22ページからの表11、表12と、図12では、ABO型及びRh血液型検査の実施者について、300床以上施設では主に院内の検査技師が、日勤帯、夜間休日とも血液型検査を担当して、オモテ試験、ウラ試験とD抗原検査を行っていますが、300床未満の施設では、日勤帯でも46%程度は院外の検査機関に検査を委託していました。その割合は年々増加傾向を示していました。不規則抗体スクリーニングは6割、交差適合試験は3分の1の施設で外注委託されていました。

25ページ、図13には、臨床検査技師以外の職員が交差適合試験を行って赤血輸血を実施したことがあるという211施設の情報をまとめています。その90%は100床未満の小規模医療施設でありまして、実施者は担当医もしくは看護師が66%を占めていました。なかなか人員の問題で、検査技師がいない施設があるかと思います。

 図14には、緊急時にO型赤血球製剤を交差適合試験を省略して実施している状況を示しております。大規模医療施設では緊急時のO型赤血球の使用は多くの施設で実施されており、2011年と比較しまして、その傾向は浸透してきているようです。中規模施設では、O型赤血球使用はふえており、使用しなくても院内マニュアルには緊急時はO型赤血球使用をするように明記しているというアンケートのデータが出ております。一方、小規模医療施設では血液型が確定できない緊急時O型赤血球使用施設は少なく、マニュアルに記載されている施設も3割弱でした。一方、AB型のFFP使用に関してもほぼ同様の傾向が見られました。

 次に、26ページの表18には、血液検査の二重チェックの状況についてまとめております。300床未満の小規模医療施設では、同一患者の異なる時点での2検体の血液型検査の実施率は43%と半数以下でありまして、同一検体のダブルチェックは50%程度の実施率でした。一方、300床以上の施設におきましては、86%の施設で異なる時点での検体による二重チェックを行っていますが、同一検体のダブルチェックは47%の施設で未実施でした。

27ページ、図15に輸血実施体制におけるコンピューターシステムの利用率を示しております。今回100床以上の施設だったものですから、300以上ということで区別をしておりますけれども、「輸血血液依頼時」「輸血検査依頼時」「輸血血液の出入庫時」「自動輸血検査機器」「携帯端末による認証時」などに、コンピューターが用いられている施設は年々増加しておりまして、特に500床以上の施設ではかなり高い実施率であることがわかりました。

28ページ、図16に示しますように、輸血前の感染症検査は入院時検査と同時に行っている場合を含め、85%の実施率でした。輸血前検体保存は300床以上の施設は99%で実施していますが、300床未満施設では74.7%とやや差を認めました。表19では、輸血後感染症検査を原則的に全て実施している施設は全体の3分の1にすぎませんが、2010年以降で見てみますと、8%程度の改善が見られ、徐々に増加している傾向が見られました。

29ページ、表20aに示しますように、輸血副作用報告体制は全体では輸血用血液製剤の66.7%であり、300床以上施設では97.8%で、300床未満施設では60.74%と若干差を認め、300床未満施設では主治医がカルテに記載するのみの対応が27%でした。一方、血漿分画製剤の副作用報告体制は全体で61.6%でありまして、輸血用血液製剤と比較しますと、やや低く、300床以上施設では85.5%に対し、300床未満施設では56.9%でした。報告体制は2010年と比較した場合、表20bに示しますように、300床以上施設において輸血部門へ報告する施設が増加していました。

30ページ、表21に示しますように、適正使用に関する取り組みは、300床以上施設では65.8%の施設で院内の輸血療法委員会で検討し、病院全体で取り組んでいるのに対し、300床未満施設では38.3%でした。適正使用の院内浸透のために具体的な取り組みとしましては、輸血マニュアルの配付、輸血療法委員会での話し合い、院内輸血指針の改定などが挙げられました。その結果は図19に示しております。

 血液製剤の適正使用について、国の適正基準を遵守しているかどうかという質問に対しましては、30ページの図17に示しますように、赤血球製剤では75%以上で遵守していると回答がありましたけれども、300床施設においては、血漿製剤及びアルブミン製剤は75%を下回り、適正使用基準の遵守率がやや低いという結果でした。また、300床施設では赤血球製剤以外は70%以下でした。

 昨年発表されました「科学的根拠に基づくアルブミン製剤の使用ガイドライン」の認知度は、3分の2、64%の施設では「知っている」と回答され、300床以上施設では83%で「知っている」と回答されました。

32ページの図20に示しますように、アルブミン製剤の国内製剤使用割合は57.4%でした。5%製剤の国内献血由来製剤は37.2%であり、残りの6割がいまだに海外からの輸入に頼っているという現状もわかります。

33ページの図21、血液製剤使用時のインフォームド・コンセントに関しまして、輸血用血液製剤使用時にはほとんどインフォームド・コンセントを行っていますが、血漿分画製剤使用時には必ずICを行っているのは86.2%にとどまっており、説明同意書がないと回答された施設が7.3%存在しました。その血漿分画製剤同意説明書に採血国や献血・非献血の情報を含んでいる施設は15%以下でした。これは施設の規模による大きな差はございませんでした。

 最後に、2014年に保険改定で新規収載されました、貯血式自己血輸血管理体制加算についてですが、取得施設は34ページの表24に示しますように、241施設でした。昨年と比較してほぼ横ばいですが、今回、取得する予定と回答された施設が203施設から173施設に減少していました。取得施設におきましては、1病床当たりの自己血採取件数はやや多く、輸血マニュアル及びVVRマニュアルがよく整備されていることが判明しました。

 以上、輸血管理及び実施体制について、アンケート調査の結果を過去のデータを含めて報告しました。

 私の報告は以上です。

○半田座長 牧野先生、大量の資料を手際よくわかりやすく御説明いただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速委員の先生方、御質問あるいは御意見、いかがでしょうか。

 稲田委員。

○稲田委員 稲田でございます。

 非常に大量のデータを手際よくわかりやすく説明していただき、ありがとうございます。

 2点あるのです。先ほどの科学的根拠に基づいたさまざまな適正ガイドライン、周知度は診療科によってかなり違っているということで、当然輸血部の方は早いし、輸血に関心がある麻酔科は割合早いのですが、今度は外科系などになってくると非常におくれてくる。この辺が均等化してこないと、なかなか適正使用は進んでいかないだろうということが1点目です。

 2点目が、今後注意していかなければいけないのはFFPの使用量だと思います。先ほどお話しになりましたように、3次救急施設であるとか、あるいは全身麻酔が多い侵襲の件数をたくさんやっているところでは、現在フィブリノーゲンを早く補おうということで、こちらの参考資料4のところにありますような「科学的根拠に基づいた新鮮凍結血漿(FFP)の使用ガイドライン(案)」を見ましても、今までよりもっと多いFFPの使用、RBCFFPを1対1あるいは1対2.5という形で使うといったところで、このあたりの動向を見ていく必要があると思います。特に救急領域ではMassive Transfusion Protocolという格好でかなりこういった赤血球とFFPを同時に投与することが多く行われ始めています。このあたり、少し注目すべきところかと考えています。

 以上、2点です。

○半田座長 大変的確かつするどい御指摘だと思いますが、特に何かそれに対していかがでしょうか。

 牧野参考人。

○牧野参考人 今回アンケート調査が輸血部の技師さんが回答される施設が多いと思いますので、それで、このアルブミンに関するガイドラインを知っていますという回答率は高かったと思います。これを臨床サイドに周知していくということがこれからの大きなテーマであろう思います。

○半田座長 三谷委員。

○三谷委員 牧野先生、膨大なデータのまとめをありがとうございました。

 実際に現場で運用していますと、数字だけではなく、各施設での工夫ですとか、運用の実態等を知りたいと思われるアイテムが幾つかあるのです。私が特に興味を持っていますのは、1点は廃棄血の問題です。専任の医師や技師がいるところは赤血球の廃棄率が低いという数字を示されて、確かにそうなのだろうと思うのですけれども、実際に赤血球輸血を生み出すルールが各施設によって少し違うのだと思うのです。一旦ちょっとでも出庫したものは機械的に廃棄血にされているところと、そうではない運用をされているようなところもあると伺っていますので、この点に関しては、数字だけではなく、各施設での運用の実態を今後お調べいただけるとありがたいと思います。

 もう一点は、輸血後感染症の件なのですけれども、なかなか検査していただけない実態があるのですが、うまくいっている施設での工夫等もあわせて教えていただけると、今後役に立つかと思いました。

 以上です。

○半田座長 牧野先生、特に何かコメントはございますか。よろしいですか。創意工夫というところもアンケートの中に入れていただきたいということです。

 大戸委員。

○大戸委員 三谷先生の質問であった輸血後の感染症の検査です。これはむしろ見直す時期に来ているのではないかと思うのです。つまり、輸血によって感染症になる人は年間1人か2人か、非常に少なくなってしまった。医療費が増大していることを考えると、輸血後に感染症検査をすることは、導入された15年ぐらい前は必要な検査だったかもしれないけれども、この時代になってはむしろ何かしら症状がない人、肝炎になるとか、熱があるとか、何もない人にルーチンで検査をするのは、もはや見直す時期ではないかと思っています。できれば、来年以降そこをテーマの一つにしていただければと思っています。

○半田座長 ありがとうございました。

 非常に重要な課題を言っていただけたと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

 薄井委員。

○薄井委員 東京慈恵会医科大学の薄井です。

 牧野先生、ありがとうございます。先生がお調べになったコンピューターシステムの導入とそのアウトカムのところを伺いたいのです。

 コンピューターシステムを導入することは、一つは輸血事故をなくすことがあると思うので、それはうまくいっているのかもしれません。もう一つ、先ほどの三谷先生の御質問とも関連するのですが、輸血の後の副作用チェック、あるいは感染症のチェックに、このコンピューターが導入されたことで少し改善があるのか、あるいは変わらないのか、その辺のところは何かわかる方法はあるのでしょうか。

○牧野参考人 輸血後感染症検査に関して。

○薄井委員 その頻度等々が、コンピューターを導入してくると上がるとか、どうなのか。

○牧野参考人 各施設とも輸血のシステムの中で、いつ、どれぐらい輸血をしたかというデータがすぐわかるようにして、そこから例えばある一定の時期に検査のお知らせを主治医、それから患者さんにお知らせするシステムを導入している施設があると思いますけれども、そういうところにこういうコンピューターシステムが役に立つのかなと思います。

○薄井委員 コンピューターシステムを入れたことによって、そのサーチ率が上がるなど、そういうことまではまだ反映はしていないということなのでしょうか。

○牧野参考人 そうですね。そこはちょっと解説していないです。

○半田座長 では、最後、矢口委員。

○矢口委員 確認なのですけれども、救急医療施設の解析というものは、今年から始めていただいたということですか。

○牧野参考人 はい。

○矢口委員 非常に膨大なデータの中で恐縮なのですが、もし可能であれば、図14a14b14cで、これは緊急時ということですので、かなり救急がかかわっているのではないかと思うのですけれども、1次施設、2次施設、3次施設でデータは出るものでしょうか。緊急時にO型の交差適合試験をしないで省略してやった輸血の中で、1次施設、2次施設、3次施設の差を出すことができるのかどうかなのです。

○牧野参考人 なるほど。試みてみます。

○矢口委員 膨大なデータのところ、申しわけないのですが、そうすると、緊急時は救急で使っていることが多いかとも思います。患者さんの重症度によって使い分けがされているのか、施設間の使い方の問題なのかが見えてくるかと思いました。

○牧野参考人 そうですね。特にこの図からもわかるように、500床以上の施設が、3次救急も非常に多くやっているのですが、そういうところでのO型赤血球の使用が多いですので、そのあたりの3次救急、救急医療の体制とこういう使用状況ということで見てみたいとは思います。

○半田座長 ありがとうございます。

 まだいろいろと御質問はあると思いますが、次に進みたいと思います。

 続きまして、菅野先生から、資料3-2について御説明よろしくお願いします。

○菅野参考人 では、よろしくお願いいたします。

 まず初めに、昨年度この調査会で各都道府県別の1病床当たりのアルブミン、それから、IVIGの記入の記載ミスがありまして、気がつかずにこの部会に至ってしまったこと、まず、心よりおわび申し上げます。

 きょうの資料3-2は、血液・血漿分画製剤の使用状況、それと、一部自己血輸血における分析を試みましたので、よろしくお願いいたします。

 まず、過去1年間の輸血実施状況ですが、この表1に示したように輸血の実施率、このアンケート回答のあった施設のうち、どれぐらいの施設が輸血を実施しているのかということです。回答率のことは牧野参考人から御発表がありましたけれども、実施施設、「同種血のみ」「自己血のみ」「併用」に分けますと、昨年度の輸血実施施設に比べてそれぞれ98.9%、100.6%、98.9%と、ほぼ横ばいであるということです。輸血の実施率に関しては「同種血のみ」と「併用」がわずかに低下、「自己血のみ」が同等であるということです。

 2ページ目、表2(A)でございますが、これは仮に全ての施設から御回答を得たときに、輸血実施予測患者数、どれぐらいの方が1年間で輸血を受けるだろうという推測値が示されています。「同種血のみ」「自己血のみ」「併用」と分けてありますけれども、「同種血のみ」のところで病床数0、病床がない診療施設での増加が明らかであることと、「併用」のところでは今年度と前年度と比べると500床未満のところで併用されている施設がかなり多くなってきた。500床以上だと逆に併用する施設が少なくて、輸血の実施予測患者数も減ってきているということになります。このことに関しては、「併用」は、自己血のみで手術を迎えたけれども、予想外の出血があったのか、あるいは全てを自己血で賄うことができないことを承知の上で、少しでも減少を補う形で積極的に自己血を併用することになったのか、ここら辺の分析をしてみないといけないと感じています。

 3ページ目、表2(B)、輸血実施患者予測数ということで、先ほど申し上げましたように、回答が100%であったときの予測数の年次推移でございます。これは2015年、今年が937,090人、これは同種血輸血患者数、先ほどの「同種血のみ」と「併用」を足した数です。それから、自己血輸血患者数、これも「自己血のみ」と「併用」を足した数ですけれども、今年は同種血輸血患者数が100万人を下回ったということと、2014年に少しふえた自己血輸血患者が減少傾向にあることが見てとれます。

 4ページ目、製剤の使用量では、血漿製剤、自己血の使用量が、量としては減りました。一方、赤血球製剤、血小板製剤及び明らかなのは免疫グロブリン製剤の増加傾向であります。免疫グロブリン製剤の増加傾向については後ほど分析結果をお示しします。病床規模別に血液製剤の総使用量を製剤別に集計すると、小規模の医療機関では赤血球、それから、血小板製剤、それから、規模が大きくなるとこれにFFPが入ってくるという傾向が見てとれます。

 5ページ目、表5でございますけれども、全血製剤の使用施設の病床別集計結果をお示しします。これは昨年の集計では全血の使用施設が、お答えになった施設の3%ということですけれども、成分輸血の考え方が行き渡ってきたということでしょうか。日赤血を使用した5,152施設のうち83施設、1.61%まで減っているということが明らかになりました。

 血小板に関しては、小規模から大規模に行き渡ってかなり使われている傾向がありますけれども、外来でのPC使用、昨年度は10.7%ということですから、今年は11.7%、それから、HLAマッチとのPCの使用に関しても、22.1%が昨年度でございましたけれども、今年は27.7%と増加傾向が明らかであります。これは造血器腫瘍、あるいは特に慢性的な血小板減少症を来す骨髄異形成症候群(MDS)などの増加が背景にあるのではないかと推測しているわけでございます。

 7ページ目、血液製剤の使用量の総供給量に占める比率、これは先ほど牧野参考人からもありましたけれども、捕捉率という言葉で捉えて、回答された総使用量との赤十字血液センターからの総供給量との比較でございますが、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、以下のようになっています。この下の図は総供給に対する総使用量の割合を、捕捉率を赤血球、血小板、血漿製剤に対して年次変化を見ていますが、合計を見ると、徐々にそれが上がっていることがわかると思います。

 8ページ目、血液製剤使用状況の年次推移ということですけれども、赤血球製剤は全体、500床以上で漸増傾向にあるということで、血小板は横ばい、500床以上では増加の傾向がございました。血漿製剤の全体使用量は、昨年に関して減少して、特に300床未満での減少が明らかでした。アルブミン製剤としては、全体としてはわずかにふえている傾向ですが、300床未満の施設での使用量がふえています。

10ページ目、免疫グロブリン製剤のことです。2011年以降の免疫グロブリン製剤の使用量増加傾向は今年も明らかであったわけですけれども、免疫グロブリン製剤は重症感染症に対する使用から、徐々に免疫性の疾患に対する使用にシフトしてきたということが各医療機関の実感としてあると思いますが、この病床規模によらず重症感染症での使用をしていると回答した施設が90%に達していたのに対し、病床規模が大きいと川崎病、ギランバレー、ITPCIDPなどの免疫学的な機序による疾患の使用が非常にふえてきていることがわかります。

11ページ目、輸血を受けた1患者当たりの赤血球の使用量は増加傾向に、前提としては、病床別ともに1患者当たりの赤血球製剤の使用量は増加しております。

12ページ目、これは1病床当たりの赤血球の使用量ですけれども、これも微増の傾向にございます。

13ページ目、表8は血液製剤の購入単位数と廃棄率、これは牧野参考人からの分析もありましたけれども、小規模の医療機関では、赤血球製剤に関してはいわゆる使い回しができないということと、血漿製剤に関しては700床未満のところに多いということがございます。

14ページ目、過去5年間の施設規模別の血液製剤の廃棄量をお示ししましたけれども、血漿製剤のところで目につくのは、「有効期限切れ」に関しては各製剤同じぐらい、50%前後でございますが、凍結状態で取り扱う血漿製剤に関しては、「破損」が少し目立つ傾向にあります。これは医療機関の中で、看護師あるいは看護補助者に対する取り扱いに対する周知が必要なのではないかと分析しております。

15ページ目、これは昨年も同じような集計をいたしましたけれども、未照射血使用施設ということで、これは全てここに書いてある11施設に関してはガンマ線あるいはX線による照射施設を持っているところでございます。昨年の調査では全体で227単位ということですけれども、今年度は1施設で500単位以上の未照射赤血球製剤が投与され、全体で704単位ということなので、この緊急輸血に対する院内の態勢が整備されていないことが原因なのかということで、これは各県の合同輸血療法委員会等を通じて、詳細に調べる必要があるのではないかと考えております。

16ページ目、これは大量出血時の輸血で、これも昨年同じような分析を申し上げましたけれども、希釈性の凝固障害、重症外傷、特に頭部外傷あるいは産科危機的出血などの疾患で、濃縮製剤が必要であるということは、医学的には確認されておりますけれども、いまだ本邦ではクリオプレシピテートあるいはフィブリノーゲンの供給がなされていないということで、クリオに関しては日本輸血・細胞治療学会の製剤委員会で院内調製のプロトコルができてきていますけれども、全体で53施設のみが可能ということで、今後この領域に関して、この濃縮凝固因子製剤をどのように使えるようにしていくのかも考えなければいけないと思います。

17ページ以降、自己血についてのコメントがあります。貯血式自己血の使用量が減少傾向にあるということですけれども、病床別では500床以上の大規模医療機関における減少傾向が明らかであるわけです。

 昨年1年間の自己血採血症例数は、集計では9万1,735例ということで、もちろん、病床規模が大きくなると、1施設当たりの採血症例数はふえてくる傾向にあります。

 実際に医療者はどういう職種が静脈穿刺しているかに関しては、この表11に書いているように、「医師」「看護師」あるいは「医師及び看護師」ということで、こういう比率になっていますけれども、表12をごらんになるとわかるように、必ずしも輸血部門にいる専任の医師が穿刺しているわけではなくて、ほとんどが診療科の先生方が御自分の患者さんの自己血の貯血でこれを担当されている状況があることがわかりました。

19ページ目、表13ですが、この静脈穿刺する看護師さんの立場も、「自己血採血専任」の方よりも、10倍ぐらい「その他の看護業務と兼任」という方が多いということと、学会認定・自己血輸血看護師制度、これについても今後の状況を見て判断するという方が多いということでございます。

 それから、先ほどちょっと申し上げたように、20ページ目以降の都道府県別の血液製剤の使用状況のグラフと順位に関しては、あらかじめ今回はここで御発表する前に、各県にこれを見ていただいております。新しい集計としては、27ページの表15でございます。表1527ページ、28ページと続きでございますけれども、北海道から東北、関東という順番で、都道府県別のアルブミン製剤の原料血漿の集計。それと、国産率というのは、こういう言葉でいいのかどうかわかりませんけれども、全体に対してどれぐらい国産のものを使っているのかを示してあります。

29ページ、表16のところでは、都道府県別の国産アルブミン製剤の使用率ということで、これはもちろん回答率は100ではありませんし、これは皆さん、お気づきになるように、施設によって27ページ、28ページ目のこの集計は、各施設で国産を使っています、海外献血を使っています、海外非献血を使っていますという複数回答で手を挙げていただいて、だから、これは施設数の集計の結果なので、実際にどれだけの量が国内原料血漿由来なのかというボリュームについてはこれで推しはかれないのですけれども、この各都道府県でどれぐらい国産アルブミン製剤を使っている割合、それを表16に示してあります。御参考になれば幸いだと思います。

 以上、簡単ですけれども、終わりです。

○半田座長 菅野先生、ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御報告に関しまして、御質問あるいは御意見、委員の先生方、いかがでしょうか。

 三谷委員。

○三谷委員 菅野先生、ありがとうございます。

 免疫グロブリン製剤の使用目的に関する質問なのですけれども、10ページで重症感染症での使用実施に関しては病床数を問わずたくさんあって、病床の多い場合にはこういう疾患でガンマグロブリン製剤が使われているということを御記載なのですが、表の3つ目に「低・無ガンマグロブリン血症」とあるのです。これはしばらく前までは先天性の疾患なのかなと思っていたのですけれども、最近は悪性リンパ腫の抗体療法に伴う2次性の低ガンマグロブリン血症の方がすごくふえているような印象を持つのです。これはプライマリーとセカンダリーと分けられますか。

○菅野参考人 この集計の中では、今年度の集計まではそれは分けることができないと思います。おっしゃるように、重症感染症と先生がおっしゃるように例えば造血器腫瘍などで起こるセカンダリーの低・無ガンマグロブリン血症、かなりオーバーラップするところがあると思います。どちらかというと、重症感染症プラス低または無ガンマグロブリン血症の群と、その他と色分けしたほうがいいとは思うのですが、アンケートの集計に際して、設問を考えたほうがいいかと思います。貴重な御意見、ありがとうございます。

○半田座長 ほかにいかがでしょうか。

 稲田委員。

○稲田委員 これは私は非常に興味のあるデータだと思ったのですが、例えば3ページ目を見ますと、輸血実施患者予測数の年次推移は減少しているという理解でよろしいでしょうか。

○菅野参考人 はい。

○稲田委員 実際に、例えば手術で使うことが多いと思うのですが、手術件数自体が増加していることを考えると、ここで輸血の患者数が減っているというよりは、恐らく適正使用がかなり進んできていることを示唆しているデータではないかと思います。

 もう一つ、それに関係する要因として、いわゆる低侵襲手術ということで、内視鏡手術がかなり普及をしてきて、前立腺などで、da Vinci(ダヴィンチ)手術はほとんど出血しないということで、過去開腹で自己血もとって、また、同種血も使うといった症例は、ほとんど今は無輸血、同種血もとらない状況になっているような手術医療の進歩が、特に大規模病院でこういったことが行われていることを示唆するデータではないかと思いました。

 もう一つ、質問になるのですけれども、こちらのクリオの使用量ということで、16ページの資料で53施設しかないわけですが、ここのところで、「適応有」と「適応無」という判断基準はどのようなところでなされたのかを教えていただきたいと思います。

 以上です。

○菅野参考人 16ページの図10に関することですね。これは、適応があったのではないかと考えた症例がありましたかという質問なので、こちらからあらかじめ、例えばフィブリノーゲン濃度とか、そういう設問の中にここをクリアしている症例がありましたかという聞き方ではないので、回答者の主観ということになると思います。

○稲田委員 どうもありがとうございました。

○半田座長 薄井委員。

○薄井委員 先生、ありがとうございます。

 教えていただきたいのは、自己血なのでございますけれども、貯血式のものは減ってきているということなのですが、手術自体は自己血を使うところは結構多いと思うのですけれども、そうしますと、回収の自己血が使われているという理解でよろしいのでしょうか。

○菅野参考人 ここの集計は全て貯血式です。

○薄井委員 そうすると、自己血全体の中の割合がわかるわけではない。

○菅野参考人 大変大事なポイントで、御承知のとおり、平成28年度の保険改定で、希釈式ができてきています。これがどれぐらい使われてきているのかということは、次年度の集計の中にぜひ加えたいし、回収式についても詳しく調べてみたいと思います。ありがとうございます。

○薄井委員 よろしくお願いいたします。

○半田座長 稲田委員。

○稲田委員 追加のコメントになるのですが、回収式に関しては、恐らく余りふえていない印象があります。回収式の場合ですと、適応としますと、一番多いのは整形外科疾患、心臓血管、それから、外傷などの血管損傷ということで、そちらの症例が余りふえていなくて、恐らくふえているのは、例えば悪性腫瘍ということになってくると、回収式が禁忌になっていきますので、我々の印象としては恐らく回収式はそれほどふえていないだろうという印象を持っています。

○菅野参考人 ありがとうございます。

○半田座長 では、最後の質問をよろしくお願いします。

 種本委員。

○種本委員 今の自己血の問題ですけれども、貯血式の自己血は毎年減っているということで、今のお話の中で、いろいろな手技の進歩によって必要なくなってきているというお話もありますが、一方では、心臓領域では自己血離れを私は非常に懸念しております。先ほどからのデータでも、実際誰がとっているのかというと、主治医がバッグを抱えて走ってとっていると。それが大変だから、今はこれだけ同種血が安全になったから、もう自己血はやめておこうという手術がふえてきているのかどうか、それを裏づけるデータはございますでしょうか。

○菅野参考人 今回の集計の中では、先生の御指摘のところを証明できるデータはございません。次回以降の質問項目にぜひそういう観点を含めていきたいと思います。ありがとうございました。

○半田座長 ありがとうございました。

 まだいろいろと御意見はあるかと存じますが、次の北澤先生の資料3-3、御説明をよろしくお願いします。

○北澤参考人 北澤です。よろしくお願いします。

 資料3-3のマル1、小規模医療機関から始めたいと思います。

 1ページ目の下、輸血の血液製剤を使用したと答えた施設は全体的に減っているのですけれども、この中で、20床から99床と、0床の診療所では、平成26年と比べまして、多少増加が見られているという結果でした。

 2ページ目、本年度は昨年の設問とほぼ同じものが多かったので、順番が変ですけれども、右側に昨年度の調査、左側が本年度の調査です。

 下の1-017という設問なのですけれども、昨年度は輸血用血液の管理部門が「その他」というところが診療所では大変多かったのですが、今年度は「院外の検査機関に委託」という項目が入ったところ、左側の平成27年のように、0床のところで15%ほど、有床診療所で20%強ということで、さらに「その他」というものがありますので、この辺はわかりませんでした。

 3ページ目の図、輸血責任医師がいると答えている施設と、責任医師が認定医であるという施設の割合が、棒グラフとヒストグラムの青いところなのですけれども、平成26年も平成27年も、専任の医師がいる施設は認定医が責任医師であるという割合とほぼ同じになっておりました。

 4ページ目、上の図なのですけれども、これは認定の輸血看護師の在籍割合なのですが、平成26年では99床未満の小規模施設では図で見えないところなのですが、左側の平成27年をごらんいただくと、99床未満、有床診療所でも図にあらわれるような数値になってまいりました。また、0床でも在宅専門の診療所で、たしか臨床輸血看護師さんが今年誕生したと思います。

 その下の臨床検査技師に関して、輸血を担当する検査技師さんはいますかという設問に対し、右側の平成26年では、検査技師がいる施設よりも、輸血担当という施設の割合が低かったのですけれども、本年度の検査では、それが検査技師がいる施設で輸血担当がいる施設の割合が水色の棒グラフと折れ線グラフの紫色なのですけが、これがほぼ一致している結果でした。また、輸血担当専任という施設の数と、認定技師がいる施設の数がほぼ同一でした。

 5ページ目、輸血療法委員会の有無につきましては、診療所ではかなり低くて、100床未満の病院でも50%程度でしたが、昨年度と比べると、有床診療所では減っておりましたが、それ以外ではふえているということでした。輸血療法委員会の開催回数については、診療所等では数が少ないのですけれども、委員の出席率は、100%の施設が病床数が小さいほど高くなっております。これは、委員の数が3人とか4人という数なので、そうなるかなと考えました。

 7ページから9ページまでは、血液型の検査の実施者なのですけれども、これは複数回答でしたので、それぞれについてヒストグラムであらわしてございます。100床以下の病院、診療所については、「院外の検査に委託」がふえ、土日、休日の検査については、「検査を実施していない」という施設が特に診療所でふえております。これはいずれの検査についても同様でした。

10ページ目、年間の検査技師以外の職員が交差試験を行って輸血を施行した症例の有無なのですけれども、ここはスケールが最高が50%になっておりますが、「ある」という答えの施設は100床未満の小規模の施設に見られるようです。

 幾つか重なっているものを飛ばしまして、12ページの下の輸血前の検体保存の状況なのですけれども、診療所では「保存していない」という施設が昨年度よりも多少ふえているように見えておりますが「原則的に全ての患者さんの検体を凍結保存している」という施設もふえてきております。

13ページ目、1-076、下のグラフなのですけれども、インフォームド・コンセントについては昨年と比較しまして、「書面を用いて説明し、同意書を得ている」という割合が病院ではふえているのですけれども、診療所では減っているという結果でした。

14ページ目、下のグラフは、先ほど大戸先生からお話のあった輸血前の感染症マーカーの検査なのですけれども、入院前や術前検査とあわせて行っているのは輸血用の検査ではありませんので、その下の2つ、輸血前検査として行っているという割合を見ると、病床数にかかわらず、ほぼ同様の値だということがわかりました。

15ページ目、上の段に、輸血前の感染症検査を実施しない理由の中に、大規模施設では、輸血前の検体保存を行っているからということなのですけれども、診療所や100未満の施設等では「その他」が多く、これに関しては細かい理由はわかりませんでした。

16ページ目、上の段に、輸血後の感染症マーカーの検査を行っているかという割合なのですけれども、500床以上でも40%、診療所でも25%程度ということで、これは病床によって減ってはいるのですが、「症例によって行っている」まで入れると、特に診療所等では50%以下という割合でありました。

19ページからは、国の使用の基準を遵守しているかという設問なのですけれども、これは先ほどの牧野先生の御説明にもありましたとおりですが、特に血小板やFFP、アルブミンに関しては診療所について割合が低かったことがわかりました。

 その他、23ページに「指針」についてきちんと周知しているのかというところを見ても、診療所では少しそういう割合が低いことがわかりました。

 続きまして、資料3-3マル2、外来輸血に移ります。

 外来輸血を行っている施設ということで、今回御回答いただいた施設の数を見ますと、平成26年は2,602施設でしたけれども、平成27年の調査では2,462施設と140施設減少しております。

 2ページ目、上の段に病床数と外来輸血件数ということで、記載がされておりますけれども、病床規模が大きいほど外来輸血の件数も多いというデータになっております。

 外来輸血の実施場所、これは未回答という846施設のほとんどは診療所で、外来輸血の調査では診療所には回答を求めておりませんでしたので、小規模病院と中・大規模病院という2つで分けております。これは300床未満の病院と300床以上の病院という分け方でございます。外来処置室でほぼ行っているというところでした。

 外来で輸血する際の、外来での輸血マニュアルを作成しているのかどうかという設問については、診療所では6割程度、中・大規模病院でも7割程度という回答でした。

 その次の3ページの下と4ページの上は、外来輸血で経験した輸血の副作用ということで、これはヘモビジランスの研究でなされているような血液バッグ数当たりどれだけで起きているのかを数値では出せませんでしたので、お答えいただいた施設の数で調べております。「帰宅してから経験」という数を見ますと、余り数が多くないので、これは今年から始めた設問でしたので、まだ十分周知されていなくて、チェックしていない施設も結構あるのではないかと考えております。

 4ページ、下の段なのですけれども、帰宅後に発生する輸血副作用への対応についてどのように決めておりますかということなのですが、中・大規模病院では救急外来がしっかりしておりますので、そちらで対応しているようですけれども、小規模病院や診療所では、「その他」という回答が多く、今回の調査では原因はわかりませんでした。

 続きまして、病院外輸血について、資料3-3マル3をごらんいただきたいと思います。

 病院外輸血実施施設形態という1ページ目の下をごらんいただくと、今までの調査ではN数は減少していたのですけれども、この調査に関しては、平成26年が120施設、平成27年が134施設と増加しております。

 2ページ目、ここでは今回も20床で切って、病院と診療所という枠で調べてみました。都道府県別の回答の施設数は、病院と診療所ということで分けて見ましたけれども、「東京都」や「大阪府」といった大規模、あと「愛知県」で多くありましたが、特に診療所での回答が、「鹿児島県」で目立っていたというところが今回わかりました。

 病床数と輸血件数ということで、3ページをごらんいただくと、上の段は平成27年の結果なのですけれども、診療所等の小規模医療機関で多く実施されているところがありまして、病床数としては、20床未満かと思いますが、赤血球製剤を80件行っていたところもあるという回答でした。26年と27年の調査で比較してみましたところ、平成26年には無床診療所で400件以上という施設が1件あったのですけれども、平成27年ではそのような施設はなくなりました。また、平成26年で600床ぐらいの施設のところで赤血球製剤の使用が27件から28件というものがありますけれども、27年にはその施設はありませんでした。

 4ページ目、病院外輸血の実施場所というところで、介護施設と在宅ということで御回答をいただいておりますけれども、介護施設というもので見ると、平成2642施設が、平成27年では40施設、在宅では平成26年が91、それが平成27年では107施設とふえてきていることがわかりました。

 病院外輸血の実施場所を病院と診療所で分けてみますと、病院で実施しているのは「関連病院と連携して在宅で実施した」というものが50%でしたけれども、診療所に関しては連携するしないにかかわらず、在宅で実施したところが多くありました。

 5ページ目、今回初めて入れたのですけれども、輸血の実施者は誰ですかということで、針を刺す人というイメージなのですが、病院では医師、看護師、訪問看護ステーションの看護師という割合が高くなっておりますが、診療所では医師が最も多いという回答でした。

 インフォームド・コンセントに関しては、診療所で在宅用に別につくっている割合が高かったのですけれども、病院に関しては、病院内と同じものを使っているほうが高くありました。

 6ページ目、病院外輸血の理由なのですけれども、病院群では、終末期医療だということと、在宅医療を行っているということと、患者さんの希望というところがベスト3なのですが、診療所については、最も多いのは在宅治療を行っているということと、終末期医療と、あとは通院困難があるということで、昨年と同じですけれども、病院までの距離が遠いなどの理由は少なくなっております。

 クロスマッチと検体保管と輸血中の観察ということで、これは毎年聞いている設問なのですけれども、主に交差適合試験に関しましては、ほぼ全部で行っているということと、検体保管に関しては、診療所ではほとんど実施できていないところが多いということと、輸血中の観察については、病院と同様だということで記載されておりました。

 8ページ目、輸血中の付添者ということで、これは輸血中に誰が一緒にいてくれるのかというところなのですが、病院では訪問看護ステーションの看護師が多かったのですけれども、診療所ではドクターが一緒にいる、看護師さんがいる、訪問看護ステーションということで、少し違いが見られました。

 輸血副作用への対応に関しましては、病院に関しては、病院内と同様に行っているということなのですが、診療所に関しては、連絡をもらってからということです。

 9ページ目、輸血終了時の抜針は誰が行っていますかということを聞いてみたのですが、病院では訪問看護ステーション、診療所では医師、看護師、訪問看護ステーションということで、実は、その他の中に恐らく家族が入っているのではないかと思うのですが、そこまでは調べておりません。輸血バッグの廃棄等も今後問題になってくるかと考えております。

10ページ目、輸血後の感染症検査を実施していますかということで聞いてみましたが、診療所では「ほとんど実施していない」ということと、病院では「院内と同様に実施している」という回答でした。ただ、この「院内と同様に実施している」ということが本当に正しいのかどうかを確認したのですけれども、輸血後の感染症検査としてガイドライン、指針等で推奨されている2項目を行っているのではなくて、HBs抗原とHCV抗体だけを検査しているという施設がほとんどで、1施設のみ、これは青森県の症例でしたけれども、HCVのコア抗原とHBVDNAを検査している施設はこの中でも1施設だけでした。

 以上です。

○半田座長 ありがとうございます。

 今回も大変膨大な資料をまとめていただきましたけれども、委員の先生方、御意見あるいは御質問、いかがでしょうか。

 稲田委員。

○稲田委員 かなり小規模施設で、また外来輸血も行われているということですが、外来輸血のところを見ますと、院内と同じような形で帰宅後にもかなり副作用が発症しているということで、一つ見てみますと、マニュアル作成も進んでいないということで、こういった小規模施設、あるいは外来輸血に対して、例えば日本輸血・細胞治療学会でひな形をつくってこれをお使いくださいというような提案ができるのかということが第1点です。

 2点目は、前に輸血手帳という御提案をなされていたかと思うのですが、外来輸血に関しては、こういった輸血手帳の普及といったものも考えてもいいのではないか。この2点でございます。

○半田座長 いかがでしょうか。

○北澤参考人 学会に関しましては、今、松下先生のグループの中でも、在宅や小規模医療機関に対する輸血の、これは科学的根拠が出せないので、ガイドという形で出したいと思いますけれども、今、作業を進めております。その中で、既に青森県、東京都、石川県などで、小規模医療機関に対するインフォームド・コンセントの道具などもかなりそろっておりますし、先ほどお話のあった輸血手帳についても、大変立派な東京の母子手帳のような形のものとか、広島の合同輸血療法委員会でも小さ目の薄いものをホームページからダウンロードできるというところもありましたので、そのような情報を、学会を通して、また血液製剤を届けるときに日赤の職員の方などに持っていっていただくという形で周知していけばいいのではないかと思っております。

○稲田委員 どうもありがとうございました。

○半田座長 いかがでしょうか。

 在宅医療が推進されてきているという今の方向性の中で、どこまで許容するのか、安全性、あと実施体制ですね。この辺はなかなか小規模施設や外来では完璧なものを求めるのは難しい。だから、どの辺ですり合わせるのかというところを学会が指針を出されることをぜひ期待しておりますので、よろしくお願いします。

 それでは、時間も大分過ぎました。ただいまの御意見、非常に貴重なものが多かったので、事務局におかれましては、引き続き、適正使用の推進に努めていただいて、今年もまた実態調査がありますね。この調査に関しましては、今、いただいた意見を取り入れて実施していただければと思います。

 続きまして、議題4です。

 資料4について、事務局から御説明、よろしくお願いします。

○近藤血液対策課課長補佐 事務局から、資料4について説明いたします。

 本議題は報告事項となります。

 平成18年より実施している血液製剤使用適正化方策調査研究事業を、今年度も実施させていただいております。本事業は各都道府県にある合同輸血療法委員会のうち適正使用に資する研究計画を立てていただいた10県を選定いたしまして、調査研究を委託するものでございます。

 平成26年度に、当該事業の基本的な目的を踏まえて体制整備が不十分な地域の事業の採択を促進するよう、評価事項の見直しを行いましたが、本年度も同じく、適正使用推進体制と事業計画が高評価である、また、適正使用推進体制と事業の発展性が高評価である、それぞれ5者程度として、両者重複して選定されないものとして引き続き設定いたしました。

 今年度は19県から応募があったのですけれども、評価の結果がこの資料4の一番最後のページになりますが、青森県、秋田県、山形県、茨城県、長野県、石川県、兵庫県、福岡県、佐賀県、大分県、以上の10県に関して、研究事業の課題を採択させていただきました。

 来年度も同様の事業を行う予定であります。公募の日程等の詳細はホームページ等でも御連絡いたしますので、各地区の皆様方に御連絡の上、御応募いただき、適正使用の推進に向けて事業を進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 説明は以上です。

○半田座長 ありがとうございました。

 特に何か、委員の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 続きまして、議題5「「血液製剤の使用指針」の改定について」ということです。

 資料5、参考資料もたくさんありますが、事務局及び松下参考人から御説明をよろしくお願いします。

○近藤血液対策課課長補佐 まず、事務局から説明させていただきます。

 「血液製剤の使用指針」に関して、経緯に関して、昭和61年に採血基準を改正して、血液の量的確保対策を講じるということで、「血液製剤の使用適正化基準」が設けられました。そして、血液製剤の全ての国内自給の達成を目指すことにしました。平成6年に「血小板製剤の使用基準」、平成11年には「血液製剤の使用指針」及び「輸血療法の実施に関する指針」というものを策定いたしました。

 「血液製剤の使用指針」に関しては、各領域における最新の知見に基づいて、血液製剤の使用適正化の一層の推進を図るために、平成17年に大きく改定されております。

 その後、輸血医療の発展に合わせて、一部改正が重ねられてきたところです。

 今回、10年以上たったということで、全面的に見直す方針で、まずは研究班を立ち上げて、日本輸血・細胞治療学会に中心となって進めていただきました。

 まず、平成22年度から平成24年度に、牧野参考人が研究代表者となって、研究班の中でアルブミンの適正使用に関して研究していただきました。

 平成25年度から平成27年度は松下参考人に「科学的根拠に基づく輸血ガイドラインの策定等に関する研究」という形で厚労科研及び27年度からはAMEDに移りましたけれども、研究をしていただきました。現在もAMEDのほうで、28年度からは「さらなる適正使用に向けた、血液製剤の使用と輸血療法の実施に関する研究」という形で引き続き学会を中心にこの指針の改正に向けて研究をしていただいているところです。

 それと同時に、大量出血症例に関しての輸血療法のガイドラインは、また別の研究班になっておりまして、国立循環器病研究センターの宮田先生を中心に厚労科研及びAMEDで平成24年度から研究班で検討していただいております。

 今回は、各製剤ごとに学会のガイドラインがまとまってきておりますので、その学会ガイドラインを踏まえて「血液製剤の使用指針」の改定案を、まず、研究代表者の松下参考人に御作成いただきましたので、本日は、当該改定案をもとに、この改定の方針についても含めて、中身に関しても御議論をいただきますようお願いいたします。

 続きまして、松下参考人より詳細について御説明をお願いいたします。

○半田座長 では、松下先生、よろしくお願いします。

○松下参考人 名古屋大学の松下でございます。

 残りの時間を使いまして、簡単に御説明いたします。

 まず、先ほど近藤補佐がおっしゃいましたように、こちらの「血液製剤の使用指針」がつくられた経緯に関しましては、資料5の本日の案でございますが、そこの「はじめに」のところに書かれてございます。

 今回、主にエビデンスに基づいたガイドラインを学会で作成することをもとに、指針の改定を行う事業がスタートしたことの結果を、まずは御報告することになっております。

 参考資料はたくさんございますが、参考資料1が「「血液製剤の使用指針」平成29年 月全面改定のポイント」になっておりまして、これは事前配付になかったものですが、ポイントを本当に簡単にまとめてございます。改定内容がかなり膨大になっておりますので、30分の時間で御説明できる部分ということで、ポイントを作成いたしました。このポイント、参考資料1と資料5を適宜見比べながら御説明させていただきたいと思います。お忙しくて恐縮なのですが、おつき合いいただきたいと思います。

 まず、学会のガイドラインがどのような背景、方法によってつくられたのかということに関しまして、参考資料2の「科学的根拠に基づいた赤血球製剤の使用ガイドライン」を例にとって御説明いたします。

 なお、参考資料3の血小板、参考資料4のFFP、参考資料6の小児輸血に関しましては、来月の学会の理事運営委員会に報告、提出予定になっておりまして、若干の記載不備あるいは文献の整理が十分ではないところがございますので、お見苦しい点があったかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。

 それでは、参考資料2をごらんいただきながら、「2)作成の経緯」につきまして、3ページに記されたところから御紹介いたします。

 本事業の始まりに関しましては、今、御説明があったとおりなのですけれども、日本輸血・細胞治療学会のガイドライン委員会、現在委員長は奈良医大の松本教授であります。組織する50人ぐらいのかなり大きな委員会がございますけれども、この委員会が基本的には5つのタスクフォースに分かれまして、各製剤についてのガイドラインを作成中ということになっております。

 どのような形でつくられたのかということなのですけれども、6ページ、「3)作成方法」にございますように、これは赤血球のところですので、「赤血球濃厚液の適正使用」に関するというところになっておりますが、文献検索といたしまして、1995年から2014年、実際には2014年の途中に検索を行いましたので、2014年の後半は含まれておりませんが、2014年までの論文が検索対象になっています。

 対象としたデータベースは、その下の表にございますように、「PubMed」「Cochrane」「医中誌」の3データベースです。2014年以降の論文、したがって、2015年、2016年の論文で非常にエビデンスが有力なものもたくさん出ているわけなのですけれども、基本的には、それは含まれておりません。ただ、ある程度CQに沿った形のものとして取り上げるべきものに関しましては、委員の間で議論を行った上、ハンドサーチとして別途取り上げるという手続を踏んでおります。ですから、一部の論文には2015年以降のものも若干出てまいります。そういった方法でガイドラインを作成しております。

 ガイドラインの作成方法に関しましては、原則、「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」沿って作成しております。「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」は、その前の2007からかなりGRADEシステムにやや近づいた形になっておりまして、GRADEシステムですと、実際にはメタ解析などを自分たちでやらなければいけないといったようなことがあるのですが、なかなか資金的にもそういったことも難しいので、定性的なエビデンス解析といったものが主体になっているところがGRADEシステムと少し違うところでありますが、かなりGRADEシステムに近づいたものになっているということであります。

 参考資料1に戻りまして、まず、「製剤の使用の在り方」から御紹介したいと思います。

 旧指針では「要約」が最初についておりましたが、現在では削除されております。「要約」があったほうが便利だという御意見があるようだしたら、今後復活させることも検討されるかと思われます。

 続きまして、「血液製剤使用上の問題点と使用指針の在り方」という章なのですが、こちらに関しましては、「治療開始のトリガー」「目標値の達成の仕方」等について、学会による「科学的根拠に基づく輸血ガイドライン」現在はまだ仮称になっておりますが、それに準拠した形になっております。

 学会のガイドラインの推奨の準拠の方法は、その下にございますように、「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」に準じて推奨の強さを「1」「2」強く弱くに分けます。その根拠となってものに関しまして、A、B、C、Dの4段階で指定するという形式になっております。Aが最も強く、Dがとても弱いということになっております。ですから、推奨の方法の記載といたしましては、1Aが一番強く、2Dが一番弱いということになります。本日こういった形の推奨度の強さ弱さといったものが本文中に入っておりますので、こういった記載が適当かどうかということも含めて御議論いただきたいと考えております。

 ポイントの2ページ、まず「赤血球液の適正使用」のところから簡単に御説明いたします。

 赤血球液に関しましては、一番古くから使われている製剤でありまして、ほぼほぼ適正使用の方向に大きな変化はなかったわけなのですけれども、幾つかの新項目といたしまして、d)鉄欠乏性、ビタミンB12欠乏性、e)自己免疫性溶血性貧血、f)腎不全が追加されました。

 続いて、「2)急性出血に対する適応」、「4)重症または敗血症患者の貧血」が新項目として加わりました。これらは近年あらわれました高いエビデンスに基づきまして、それぞれ1Aといたしまして、いわゆる外国でいうところのRestrictive transfusion strategy、日本語に訳しますと「制限輸血」と私たちは訳しておりますけれども、そのポリシーに従ったヘモグロビン値のトリガーを推奨する形になっております。

 続きまして、項目II-1で、「疾患別の自己血貯血の適応」が新項目として追加されました。旧指針が参考資料7としてお手元にあるかと思いますが、これが現在、血液対策課が配付しております「血液製剤の使用指針」のものであります。今年の6月に一部改正されているのですが、こちらの16ページを見ますと、自己血輸血は推進されるべきであると記載されておりまして、実際、この方針に従って自己血輸血を幅広く国も推進してきたところなのですけれども、先ほどからの御報告にありますように、近年、自己血輸血の件数が若干減少しつつあるということと、海外も含めた実際の科学的根拠がどれくらいあるのかということを改めて検討することにいたしました。ですから、疾患別といたしまして、整形外科、婦人科、産科、心臓血管外科、あとはその他の外科手術という形で自己血輸血、これは貯血式、回収式、最近希釈式が少し出てまいりましたので、希釈式も含むものでありますけれども、それを含んだ自己血輸血の推奨度を、ここに提案するものであります。

 例えば2ページ、整形外科ですと、貯血式、回収式に関して、それぞれ2D1Bということで、貯血式の推奨度が余り強く推奨できていないという結論になっているところが少し変わっているところでございます。先ほどちょっとお話がありましたように、欧米では専ら現在、膝や股関節の手術は回収式がたくさん使われている状況で、日本も少しずつそうなっていると聞いているのですが、貯血式を使っている施設もまだまだございますので、そういった背景も含めまして、こういう記載になっております。

 3ページ、婦人科あるいは産科といった手術に関しては、いわゆる出血量が多い子宮筋腫等の手術に関しましては、回収式輸血がかなり推奨される外国の現状がございます。一方、産科に関しましては、ある程度手術日も前々から決まっているといった事情もありますし、実際に特に前置胎盤などはかなり出血することが予想されることから、貯血式を含んだ自己血輸血がより強く1Bとして推奨されております。

 一方、心臓血管外科に関しては、開心術なので、特に人工心肺を使う手術では広く回収式が用いられていることから、推奨されています。サポートする論文もたくさんございます。

 その他の手術に関しましては、2Cの推奨にとどまっております。

 ここまでが、赤血球輸血に関するものでございます。

 続きまして、「血小板濃厚液の適正使用」、ここが今回一番大きく改定されているところかと思います。

 順番に、大きく変わったところだけ御説明いたしますと、「5)がん・造血器悪性腫瘍、自家・同種造血幹細胞移植」における血小板輸血のトリガーに関する使用指針の変更がございます。資料5では、ちょうど18ページに相当いたしますので、あわせてごらんいただきながら、お読みいただきたいのでありますけれども、こういった場合には、化学療法では血小板が非常に数千レベルに減少することも珍しくないわけなのですが、近年の研究から、血小板輸血のトリガーは2万ではなく1万が適切であるという研究結果が非常にたくさん出てきたことから、今回も検討の対象になりました。現在の指針ではぼやかしでありますけれども、2万程度となっているところが多いと思うのです。これを1万とする。ただし、推奨レベルは2Cにしております。

 一方、この血小板輸血を予防的に行うかどうかに関しましても、議論が行われました。近年、特に欧米では、血小板輸血を予防的に行わず出血症状、つまり、例えばWHOのグレードでいきますと、グレード3以上の重篤な出血が起こった場合のみ血小板輸血を行うべきである。そういったアテンプトに関するRCTも行われているところなのですけれども、現時点ではそれは採用せず、2Cと若干弱目ではありますが、血小板輸血は予防的に行うことにさせていただいております。

 この背景といたしましては、資料5の19ページに「d)予防的血小板輸血」として詳細に記載しておりますが、日本の事情と国外の事情が異なることを念頭に置いております。きょう日赤の方もいらっしゃっていますけれども、(1)国内の血小板輸血製剤の発注は多くが予約制であること、(2)日本はアメリカに比べてかなり連休が多いので、一定の間隔で血小板数を測定することがしばしば困難になること、また、(3)遠隔地でも一定の血小板輸血需要、つまり、日本の場合、かなりこういった医療を行う施設が広く全国に広がっているということが念頭にあり、2行後に書いてあるところに「血小板数の推移などからトリガー値を下回る日を予測した血小板輸血製剤の予約発注も許容される」というよく読んでもわからないような表現になっております。つまり、担当医は、血小板輸血のトリガー値として設定されている1万を切る日がいつかを予測した上で、あらかじめ発注を行ってくださいといった意味にとっていただけるような表現にさせていただきました。

 その下、19ページの次の段落のところで、「本指針では、「血小板数1万/μL以上は血小板輸血の適応外」の意味ではない」ということを強調しておきたいと思います。血液内科の先生はよく御存じだと思うのですけれども、血小板数が低くあっても、出血のリスクが高まるような臨床的な状況があることはよく知られております。その下にずっと書いてありますけれども、例えば発熱しておりますとか、あるいは凝固障害を伴う肝障害が合併している、DICが合併している、こういった臨床的状況を加味して、適宜トリガーを設定してくださいということを追記で記載いたしました。

 続きまして、ポイントに戻りまして、3ページ、「11)免疫機序による血小板輸血不応状態が疑われる患者」を新項目として追加いたしました。対応する資料5のページ数は21ページになります。

 こちらに関しては、現在血小板輸血の領域で幅広く使われているCCIといったものを念頭に置いて、CCIが一定のレベルを下回った場合には、HLA血小板をオーダーしてくださいといった考え方を、4つのCQに対する答えとして表現しております。

 それに伴いまして、4ページを見ていただきたいのですが、血小板輸血不応の診断におけるCCIの計算方法、免疫学的な血小板輸血不応状態、非免疫学的な血小板輸血不応状態の鑑別といった表現を記載いたしました。血小板輸血そのものはたくさんあるのでございますけれども、ポイントは以上となります。

 続いて、4ページ、「新鮮凍結血漿の適正使用」に移ります。

 対応するページは、29ページになります。

FFPに関しましては、従来凝固因子の欠乏に対する凝固因子の補充が治療目的であるとされておりましたし、新指針でもそれは変わらないのですが、新指針が問題といたしますのは、そのときに行うべき凝固検査としてのPTAPTT、フィブリノーゲン値の有用性であります。これをCQにいたしました。その結果、そこに書いておりますように、学会ガイドラインでは、FFP決定におけるトリガーとしての凝固検査の有用性について、各病態患者において検討した結果、大量輸血が必要な場合、非常にたくさん出血する手術とか、外傷の場合が相当いたしますが、これらのマーカーはトリガーとしては十分ではないといたしました。ただ、現状、ほかに何か検査があるのかということになりますと、ありませんので、引き続きマーカーが悪化した場合には、FFP輸注を考慮すべきであるとした推奨度2Dということで、一番弱い推奨になっています。ほとんど根拠はありませんということになるのですが、そういった表現にいたしました。

 一方、低侵襲手技、肝臓の針生検をしますとか、そういった場合に、PT延長例でも出血リスクが増加しないため推奨できないとさせていただきましたし、高度の出血を伴う手術等では、FFPが実際投与されておりまして、目下はこれを測定することを推奨いたしますが、有用性は不明であるとさせていただきましたので、旧指針が必ず凝固検査を行いなさいという表現になっていたものから、若干強さが弱くなっているところが違ったところでございます。

 続きまして、5ページ、「1)大量輸血の必要な手術・外傷患者」の使用指針の変更に関しましては、旧指針から異なりまして、実際に必要な患者さんのFFP投与の量といたしましては、10から15ということが旧指針に書いてあるのですが、今回はFFPRBCを1対1から1対2.5の比率で投与することを提案する形に新たに記載を追加いたしました。

 続いて、対応するページは30ページですけれども、「2)大量輸血を必要としない外傷・手術患者」、予防的輸注に関しまして、重篤な凝固障害を呈している場合を除き、施行しないことを推奨する、2Bとして記載いたしました。これは、予防輸注に関しましては、いわゆる患者さんのアウトカムの改善が見られないばかりか、害のアウトカムが目立つというエビデンスを参考にしたものであります。

 「3)ギランバレー症候群」CIDPについては、アルブミンを置換液としたものを推奨しております。

 「5)ワルファリン効果の是正」、これは旧指針ではFFPも使用してよいということになっておりますが、最近の研究でFFP投与がほとんど行われていないということと、緊急補正に関しましては、もちろんビタミンKを投与することが一番なのですけれども、濃縮プロトロンビン複合体製剤の使用を推奨するガイドラインが、日本循環器学会のガイドラインを初め、非常に多数になっていることから、この部分は保険適用は実際に今のところないのでありますけれども、推奨する、2Cとさせていただきました。

 時間がありませんので、「アルブミン製剤の適正使用」に関しましては、さまざまな改定点があるのですけれども、こちらに関しては、アルブミンのガイドラインが昨年出たときに、牧野先生から御説明があったかと思いますので、省かせていただきます。

 それでは、8ページ「新生児・小児に対する輸血療法」に移ります。

 こちらに関しましては、お隣にいらっしゃる北澤先生が主となってつくられたものでありますので、北澤先生からもし何かあったら追加でお教えいただきたいと思うのですけれども、簡単に申し上げますと、「1)使用指針」の変更といたしまして、赤血球輸血において未熟児早期貧血に関しましても、制限輸血を推奨する、1Bといたしました。

 また、「新生児への血小板濃厚液の適正使用」に関しましても、使用指針を変更いたしまして、トリガーといたしましては、この場合新生児ということも加味いたしまして、2万から3万とさせていただきました。ただし、RCTを主体としたエビデンスが不足していることから、既存のガイドラインを参照する形で、表1をつけてあります。

 「サイトメガロウイルス抗体陰性血の適応疾患」に関しては、日赤から現在も提供がございますけれども、母体が陰性または陰性が確認されていない場合における胎児輸血に関しては推奨する。臓器移植に関しても同様とさせていただきました。

 最後に、旧指針は参考として、輸血の教科書的な記載がかなりたくさん見られたのですけれども、必要なものを残して削除させていただきたいと考えております。

 以上、本当に駆け足でございますけれども、新指針の概要を簡単に御説明いたしました。

○半田座長 ありがとうございました。

 大変膨大な資料を簡潔に説明いただきました。

 余り時間がありません。ただし、これだけは今、指摘をしておきたいということがたくさんあると思いますが、簡潔に御質問あるいはコメントをいただければと思います。いかがでしょうか。

 種本委員。

○種本委員 種本です。

17ページをごらんください。血小板のことが心臓手術に関して大きく変わっているように思います。旧指針では複雑な心大血管手術で長時間に及ぶ云々とずっと書いてあります。これは複雑な心大血管手術を対象としたもので、5万から10万になるように血小板輸血を行うと、旧指針ではこうなっているということで、その後に、「しかしながら、現時点では積極的に推奨する根拠は乏しい」と書いてあるのですけれども、その次に参考データとして書いてあるのが、成人非心臓手術です。これは心臓手術でないもののデータを持ってきて、あたかもこの前のデータを否定するような書き方は、ちょっとこれはミスリードするのではないかと心配しております。

○半田座長 いかがでしょうか。

○松下参考人 御指摘の点は大変ごもっともだと思います。術前血小板輸血のいわゆる非心臓手術の解析についてここに記載されていることに関しましては、確かに先生のおっしゃることも一部あるかと思いますので、高見リーダーにも確認いたしまして、学会ガイドラインの記載に関して、もう一度念のためにチェックしてみたいと思います。ありがとうございます。

○半田座長 種本委員。

○種本委員 手短に申し上げます。自己血の適応等のところで新しく入った項目ですけれども、総論のところにでも、少し自己血に関してもう少し書いていただきたい。といいますのは、エビデンスから言うと、自己血のエビデンスは非常に乏しいものがあるわけなのですけれども、将来の需給関係の破綻の防止のためには、これは非常に重要な問題だと思っているのです。自己血をちゃんと維持しておくことが、将来の需給関係の破綻を心配するときに有用なツールになるだろうと思っています。

 もう一つは、自分の貯めた血液だけで済ませようと一生懸命やるのは、外科医に対して良い手術を短時間でしようという、まさしくその教育になるわけなのです。そういうエビデンスにあらわれないようなものを、総論の中で少し述べていただければと思っています。

○半田座長 いかがでしょうか。

○松下参考人 学会のほうは基本的にはガイドラインですので、自己血の精神とか、そういったことに関しては余り記載していないのですけれども、こちらは指針ですので、今、先生がおっしゃったようなポイントは追記されてしかるべきかと思いますので、事務局のほうと相談いたしまして、何らかの形で追記してはいかがかと考えます。

○半田座長 ほかにいかがでしょうか。

 稲田委員。

○稲田委員 こういったガイドラインができますと、一番問題なのは、保険点数とのリンクということだろうと思います。先ほどの複合プロトロンビンコンプレックスのお話がありましたけれども、例えば自己血回収は推奨されているにしても、現在で、保険点数は600ミリリットル以上の出血、あるいは小児、12歳未満では10mL/kgの出血といったことで、実際に使い場合には、もう事前から準備しないということで、こういった出血量がない場合には、病院の持ち出しにもなりますので、ほかのものも含めて今後、このガイドラインと保険点数はどうなっていくのかということの検討は必要だろうと思います。

 以上です。

○半田座長 ありがとうございます。

 それでは、三谷委員、それで、矢口委員、これでおしまいにしたいと思います。

○三谷委員 松下先生、ありがとうございました。

 エビデンスに基づいて、膨大な改定をしていただきまして、学会のガイドラインとしては本当にすばらしいのもだと思うのですけれども、1点は、学会のガイドラインをこのまま今回の厚生労働省の「血液製剤の使用指針」に持ってくるのかどうかは議論の余地があるのだろうと思うのです。エビデンスに基づいた記載はしていただいていますので、逆に言うとエビデンスがない領域に関しては記載がないということになってしまうと思うのです。具体的に、私が輸血療法委員会等を主催していまして、困るのは、生体肝移植後の大量のFFPの輸血ですとか、そういうものはエビデンスがなくてなさっている施設とそうではない施設があるのです。そういうことに関しては、多分エビデンスがないので記載がないのだろうと思うのです。もしこれを今後、「血液製剤の使用指針」としてこれをベースに国の使用指針を改定するのだとしますと、保険審査の基礎的な資料にもなると思いますし、逆にエビデンスがないものは何なのかを記載していただけたらいいのかなと少し思いました。

○半田座長 何かありますか。

○松下参考人 学会のガイドラインに関しては、当然これをそのまま国の指針に平行移動させることに関する問題点、特に推奨度の規定などに関して、いろいろな議論があるはずなのですけれども、恐らくガイドラインはあくまで学術的に結論が得られたものであって、当然一般的な医療で行われるものとは違うかもしれないという議論が一つございます。それは、学会のガイドラインはガイドライン、使用指針はあくまでもこの場で国民の健康のために最適なものをということで定められるべきだと私も思います。

 エビデンスに関してなのですけれども、エビデンスがない理由は2つあって、1つ目は、余りにも当たり前の医療なので、当然誰も調べない。したがってエビデンスがないということがございます。ですから、そういったものに関しては、医療としてはスタンダードなものということで、エビデンスの有無にかかわらずこれは当然やるべきだということは書き込まれてしかるべきだと思いますし、旧指針に書いてあったそういった項目はできるだけ残すようにはいたしました。

 ただ、今、先生のおっしゃったような最近行われてきた治療で、まだ余り誰も検証していないものに関しては、大変書きにくい部分はあります。個人的な意見はそれぞれ先生方お持ちだと思うので、事務局と相談いたしまして、できるだけスタンダードに近い形の意見を表明してはいかがかと考えます。

○半田座長 それでは、最後よろしくお願いします。

 矢口委員。

○矢口委員 時間が押しているのですけれども、済みません。

 先ほどのエビデンスのお話なのですけれども、指針の場合はどの時点のエビデンスかということを明確にお書きになるようなことかどうか。実は、皆様御存じのように、「重症敗血症」なのですけれども、敗血症の定義が今年の3月で変わりまして、「重症敗血症」という類いがなくなったものに関して、国の指針として、この平成29年の何月になるのかわからないのですけれども、「重症敗血症」という言葉を使っていくのかというところをどのように、どの時点でのエビデンスかということが明確にあったほうがよろしいのではないかと。

○松下参考人 それは大変難しい問題なのですが、冒頭に申し上げましたように、2014年までの論文が対象になっておりますので、2016年現在の最新の知見は反映されていないということと、言葉の定義に関してもほとんどの場合はその時代の論文を参考にしておりますので、変わってきている可能性もございます。ただ、今、先生の御指摘の点に関しましては、いわゆる「重症敗血症」の定義でありますとか病態、そういったものはできるだけ現時点に即した形で正しい記載を心がけたいと思いますが、少しお時間をいただいて、検討したいと思います。

○半田座長 ありがとうございました。

 それでは、時間が超過いたしましたが、事務局から今後の進め方について、よろしくお願いします。

○近藤血液対策課課長補佐 ありがとうございます。

 本日いただいた御意見を踏まえて、今後事務局及び松下参考人及び座長と相談をいたしまして、事務局で指針の改定案の修正を行ってまいりたいと思います。

 修正内容に関しましては、引き続きこの調査会の委員の先生方に御議論いただくということで、今年度内に確定を目指しております。

 本調査会においても、改定作業が円滑に進むように、委員の皆様の御協力をお願いしたいと思います。

 以上です。

○半田座長 ありがとうございました。

 今、御報告のように、委員の先生方、皆様にチェックしていただいて、すばらしいものをつくっていただくということになると思います。期限が非常に押し迫っていますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、最後、議題6「その他」について、事務局から説明をよろしくお願いします。

○近藤血液対策課課長補佐 委員の参考資料として「ワクチン・血液製剤産業タスクフォース 顧問からの提言」を配付させていただいておりますので、御参照ください。

 以上です。

○半田座長 よろしいでしょうか。

 最後、急いでしまって、座長の不手際で申しわけありませんでした。

 それでは、次回の調査会等々のスケジュールは、後でお伝えをよろしくお願いしたいと思います。

 本日は皆様、ありがとうございました。


(了)

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