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2016年10月5日 第6回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会 議事録

社会・援護局総務課

○日時

平成28年10月5日(水)10:00~12:00


○場所

省議室


○出席者

田中 滋 (委員長)
阿比留 志郎 (委員)
石本 淳也 (委員)
井之上 芳雄 (委員)
上野谷 加代子 (委員)
(代理:松山茂樹参考人)
川井 太加子 (委員)
(代理:青木良夫参考人)
(代理:関口美栄子参考人)
武居 敏 (委員)
(代理:伊藤彰久参考人)
堀田 聰子 (委員)
森脇 由夏 (委員)

○議題

介護人材の機能とキャリアパスについて

○議事

 

○田中委員長 皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから第6回「福祉人材確保専門委員会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 初めに、社会・援護局長より御挨拶を頂戴し、その後、事務局より本日の委員の出欠状況について報告をしていただきます。

○定塚社会・援護局長 本日は御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。社会・援護局長の定塚でございます。

 この福祉人材確保専門委員会でございますが、しばらくぶりにお集まりいただいたところでございます。前回の委員会では2025年に向けた介護人材の確保のための具体的な方策について御議論いただき、27年2月に取りまとめをいただいたところでございます。現在、厚生労働省でこの取りまとめの考え方に従いまして介護人材の確保に向けて取り組んでいるところございます。特に夏にまとめられました「一億総活躍プラン」におきましても、介護人材の確保、日本社会の今後のために必要不可欠なことであるという重要な位置づけをいただいているところでもございます。

27年2月に取りまとめられました報告書におきましては、介護人材の全体像のあり方、また、介護人材の担うべき機能のあり方について、介護現場の実態を十分に把握、検証した上で、具体的な検討・整理を進めるべきとされていたところでございます。こちらが前回の委員会から引き続きの課題として今回お取り扱いいただくことになろうかと存じます。

 また同時に、社会福祉士でございますけれども、社会福祉士の方々、現場でのさまざまな生活課題への対応、特に最近では重要視されております世帯が抱えている複合的な課題への対応など、複雑化するニーズにどう対応していくか苦労していらっしゃると伺っております。社会福祉士が担う役割もますます重要となっていることから、社会福祉士のあり方についても検討を進めていただく。こちらも御検討をお願いしたいと考えております。

 委員の皆様それぞれ専門的な視野をお持ちでいらっしゃいますので、こうした観点から御議論いただき、今年度中の取りまとめに向けて御協力いただきますようお願い申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○菊池福祉人材確保対策室長補佐 それでは、本日の委員の出席状況について報告します。本日は、鎌倉委員、黒岩委員、高橋委員、平川委員より御欠席の御連絡をいただいております。

 なお、堀田委員から30分程度遅れるとの御連絡をいただいております。

 また、鎌倉委員の代理としまして日本社会福祉士会副会長 松山茂樹参考人、黒岩委員の代理として神奈川県保健福祉局福祉部高齢福祉課長 青木良夫参考人、高橋委員の代理として全国福祉高等学校長会副理事長 関口美栄子参考人、平川委員の代理として日本労働組合総連合会生活福祉局長 伊藤彰久参考人、以上の方々に出席いただいております。

○田中委員長 ありがとうございました。

 ただいま御紹介がありました欠席委員の代理として出席されている参考人について、皆様に承認をいただく必要があります。いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○田中委員長 ありがとうございました。

 どうぞ御発言ください。

 それでは、カメラの方はここまでといたします。

 続いて、議事の前に資料の確認を行います。事務局から説明をお願いします。

○菊池福祉人材確保対策室長補佐 それでは、お手元の資料について確認をさせていただきます。

 本日は、配付資料といたしまして、

 資料1「介護人材の機能とキャリアパスについて」

 資料2「福祉人材確保専門委員会の今後のスケジュール(案)」

 参考資料1「介護人材の機能とキャリアパスについて」

 参考資料2「介護人材の業務実態等について」

 参考資料3「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会開催要綱」を配付させていただいております。

 御確認のほどお願いいたします。

○田中委員長 よろしいでしょうか。

 では、ここから議事に入ります。

 資料について事務局より説明をお願いします。

○榎本福祉人材確保対策室長 福祉人材確保対策室長の榎本でございます。それでは、資料1及び資料2を用いまして御説明させていただければと思います。

 まずは資料1「介護人材の機能とキャリアパスについて」を御参照ください。

 資料をおめくりいただきまして、1ページ「介護人材の業務実態等について」でございます。現状といたしまして、介護職の業務実施状況についてでございますが、介護職の業務の実施状況を見ると、介護に関する資格を有していない者、介護職員初任者研修修了者、介護福祉士の間で明確に業務分担がされているような状況は見られず、サービス間や提供するケアの内容で差異はあるものの、それぞれの者が同様の業務をほぼ毎日(毎回)実施している状況がございます。

 2番目の○に行きまして、また、介護保険の理念である利用者の尊厳ある自立した日常生活を支援するための介護を提供するに当たっては、利用者にかかわる介護職がチームとして同じ方向性で介護を提供することが重要であり、そのためには介護過程の展開、アセスメント、介護計画の作成、介護の実施、モニタリングによる評価、必要に応じて介護計画の見直しといったものが介護過程の展開でございますが、それにおいて介護計画に沿った介護が提供されているかどうかの進捗管理が必要になりますが、現状では介護過程の展開に中心的にかかわっている介護人材は少ないという状況がございます。

 さらに、チームケアを通じて介護過程を展開していくに当たっては、情報収集や情報共有を図りつつ、利用者の自立支援に向けたよりよいケア方法の提案といったことも重要となりますが、外部からの情報収集や、よりよいケア方法の提案を常に行っている介護人材は少ない状況にあります。

 資料2ページを御参照ください。こういった現状について、介護事業所における管理者の認識はどうなっているかということでございます。まず、○の1番目として、介護事業所における管理者の認識では、認知症の周辺症状のある利用者やターミナルケアが必要な利用者など特定の利用者への対応、介護過程の展開におけるアセスメントや介護計画の作成・見直し、他の専門職種や外部の機関・事業所からの情報収集、よりよいケア方法の提案といった業務には介護福祉士以上の専門性が求められるとの回答割合が高くなっています。

 また、介護職のチームリーダーに求められる能力として、チーム内の介護職の方向性を統合できる能力、介護職チーム内の人材を教育・指導することができる能力、個々の介護職の適性に応じた業務を与えることができる能力については、ほぼ9割以上の介護事業所の管理者が必要と回答しているものの、十分に発揮できていないのが現状でございます。

 こういった中、介護職の指導・育成や介護過程の展開の重視、キャリアパスの構築などに取り組んでいる事業所では、次のような特徴が見られます。1番目として、自立支援の考え方や観察のポイントを徹底するため、サービス提供責任者等のリーダー的な者が同行して観察のポイントや心身のアセスメント、できることの見きわめを現場で指導しています。

 2番目に、職員間のケア内容を統一するためのミニカンファレンスや、ケアマネジャーへの情報提供など、多職種との連携による重症化予防を重視したケアを実践しています。

 3番目として、チームケアの実践ではチームリーダーの力量が大きく影響するため、チームリーダーの役割と求められる能力を明確化し、キャリアパスの内容に反映させています。

 こういった現状を踏まえた検討課題でございますが、介護職の機能分化として、業務に着目した各人材層に応じた役割・機能について検討するのではなく、チームケアを推進する上で介護人材に求められる機能や必要な能力、キャリアパスを明確化するなど、目指すべき全体像とその実現に向けた方策を検討する必要があるのではないかということが課題として考えられます。

 3ページを御参照ください。論点として1番目に挙げさせていただいていますのが、多様な人材が携わる介護の現場において、目指すべき全体像はどのようなものかというものでございます。

 方向性といたしましては、平成27年6月に公表した介護人材に係る需給推計によると、2025年には約38万人の介護人材を追加的に確保する必要があり、そのためには介護未経験者を含む介護人材の裾野を広げるとともに、介護分野での定着を促進していく必要があります。

 介護保険制度においては、訪問系サービス、通所系サービス、居住系サービス及び入所系サービスといったさまざまな介護サービスが位置づけられており、介護職に求められる役割や能力は、それぞれの介護サービスにおいて異なるものの、利用者に対するサービスの質を向上させていくためには、各人材の意欲・能力に応じてキャリアアップを図っていくことが重要であります。

 介護分野においてキャリアアップしていくことで定着・促進も図られることになりますが、キャリアを積み重ねていく際には、例えばエビデンスに基づいたより専門的な介護の提供や、他の介護職に対する教育・指導、他の専門職種との連携といったキャリアに応じた役割が求められます。

 こういったことを踏まえると、目指すべき全体像は、介護人材の裾野を広げ、介護分野に参入した人材が意欲・能力に応じてキャリアアップを図り、キャリアに応じた役割を適切に担っていけるような姿となるのではないかと考えられます。

 また、こうした全体像の実現に当たっては、介護職が利用者に対するケアに専念できるよう、介護職の職務を明確にし、利用者に直接かかわらない業務、例えば事業所内における清掃や洗濯などを他の人材に委ねていく取り組みを進めることも必要ではないかと考えられます。

 次に4ページを御参照ください。論点の2番目として、目指すべき全体像において、どのような介護の提供体制を実現すべきかというものが挙げられます。

 方向性といたしましては、介護職の指導・育成やキャリアパスの構築などに取り組んでいる事業所では、チームリーダーを中心としたチームケアが実践されています。今後、介護サービスの利用者がさらに増加していく中で、利用者のニーズは複雑化、多様化、高度化していくことが考えられますが、限られた人材で利用者の多様なニーズに対応していくためには、それぞれの介護職の有する知識・技術を効率的・効果的に活用しつつ、介護職がチームでかかわっていくことが必要であると考えられます。

 チームケアの実践に当たり、身体介護や生活援助を担う介護職には介護未経験者から介護福祉士まで多様な人材がいることから、それぞれの人材が有している知識・技術に応じた役割を担うこととなりますが、利用者の尊厳ある自立した生活を支援するためには、提供する介護サービスの質を向上させていく必要があり、チーム内の介護職に対する指導や、介護職チームでのサービスが適切に提供できているかの管理などの役割を担う者が必要です。いわゆるチームリーダーが必要であるということでございます。

 介護分野において介護職として従事している介護福祉士は、平成2610月時点で約72万人おり、介護職員の約4割を占めている状況です。なお、平成26年9月時点の登録者は約129万人となっています。この介護福祉士の評価としては、介護報酬におけるサービス提供体制強化加算として、介護福祉士の配置割合が一定割合以上の状況を評価する加算が設けられていますが、特段の役割は求められておりません。しかしながら、介護福祉士には本来介護の専門職として担うべき役割があるのではないかと考えられます。

 こういったことを踏まえると、利用者の多様なニーズに対応できるようチームケアを推進していくに当たっては、チームリーダーの役割を担う者が必要ではないか。また、その役割を担うべき者としては、介護福祉士の中でも一定のキャリアを積んだ(知識・技術を修得した)介護福祉士が適当ではないかと考えられます。

 次に5ページを御参照ください。論点の3番目として、チームケアの推進に当たり、チームリーダーが担うべき具体的な機能・役割はどのようなものか。また、そのために必要となるチームリーダーの能力はどのようなものかということが挙げられます。

 方向性といたしましては、限られた人材で効率的・効果的に介護を提供し、介護職チームで提供する介護サービスの質を向上させるとともに、介護福祉士の社会的評価を高めるためには、一定のキャリアを積んだ介護福祉士がチームリーダーとして担うべき役割を明確にするとともに、ストラクチャーとプロセスの両面の観点から環境づくりをする必要があると考えます。

 ここでチームリーダーが担うべき役割といたしましては、1点目として、介護ニーズの複雑化・多様化・高度化に対応していくためには、より専門的な知識・技術が必要となることから、多職種と連携しながら、そのようなニーズを持つ利用者への対応といった役割を果たすべきではないか。まとめて申し上げますと、高度な技術を有する介護の実践者としての役割がまずあるのではないかということです。

 2番目としては、介護職チーム全体で利用者に対する質の高い介護を提供するため、チーム内の介護職に対し、みずからが修得している介護技術の指導を通じて介護技術を伝達していく役割を果たすべきではないか。まとめて言いますと、介護技術の指導者としての役割があるのではないかということでございます。

 3番目、利用者の尊厳ある自立した生活を支援するためには、介護計画等に沿った介護が提供される必要があり、サービスの質の改善やチーム内の介護職のフォローを担う者が必要であります。このため、介護職チーム内での介護過程の展開における介護実践を適切に管理する役割を果たすべきではないか。まとめて申し上げますと、介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割があるのではないかと考えられます。

 次に6ページを御参照ください。チームリーダーに求められる能力でございます。チームリーダーが担うべき高度な技術を有する介護の実践者としての役割、介護技術の指導者としての役割、介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割について、それぞれの役割を果たすに当たっては、次のような能力を修得する必要があるのではないかと考えられます。

 まず、高度な技術を有する介護の実践者としての役割を果たすためには、観察力、判断力、業務遂行力、多職種連携力が必要ではないか。

 介護技術の指導者としての役割を果たすためには、介護職に対する指導力が必要ではないか。

 介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割を果たすためには、マネジメント力、多職種連携力、改善力が必要ではないかと考えられます。

 次に7ページを御参照ください。次の論点といたしましては、介護人材の裾野の拡大がございます。介護人材の裾野を広げ、介護未経験者の参入を促進するとともに、利用者の尊厳ある自立した生活を支援するためには、介護に関する的な知識・技術を学ぶことができる機会が必要ではないかというものでございます。

 方向性といたしましては、介護人材の裾野を広げるためには、介護に関する基礎的な知識・技術を学びやすい機会をつくることで、介護分野への参入のきっかけづくりが必要であると考えられます。

 一方で、初めて介護分野に参入した人材についても、利用者の尊厳ある自立した生活を支援するためには、制度の理解や介護に関する基本的な知識・技術など、必要最低限の知識・技術を身につけておく必要もあります。

 このため、介護職員初任者研修よりも簡素な入門的研修の導入を検討する必要があるのではないかと考えられます。

 具体的には、介護人材が担う役割として、食事、排せつなどの身体介護、掃除、調理などの生活援助、身体介護や生活援助を通じた利用者に関する情報の収集ということが考えられますが、こういった役割を果たすために必要最低限の知識・技術として、介護保険制度の理念、身体介護や生活援助に関する基本的な知識・技術、緊急時の対応方法といったようなものについて入門的な研修を行う必要があるのではないかということでございます。

 次に8ページを御参照ください。介護人材のキャリアパスに関する論点でございます。介護分野に参入した人材が、意欲・能力に応じてキャリアアップをしていけるようなキャリアパスの全体像をどのように考えるか。

 また、キャリアパスを考える上で、介護福祉士となった後も組織の中でキャリアを積んでいくことができるような仕組みが必要ではないかということでございます。

 方向性といたしましては、介護人材の確保に当たっては、介護人材の裾野を広げ、介護未経験者を含む多様な人材の参入を促進するだけではなく、それぞれの人材の意欲・能力に応じてキャリアアップを図っていけるような仕組みなど、介護分野に参入した人材が定着していけるような環境づくりが重要であると考えます。

 介護事業所における介護人材の育成に当たっては、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度の在り方に関する検討会における議論の取りまとめ」、ことし3月30日にまとめられたものにおいて、人材育成の方法の多様性を認めた上で、これまでの介護キャリア段位の取り組みを踏まえれば、介護の手順・基準の明確化、個々の介護職員の介護行為の確認を担当する人員の養成及び配置、OJTにおいて目視により必要な手順・基準に沿った介護行為を習得したことを確認すること、職場におけるキャリアパスの明確化などが人材育成に有効であるとされており、キャリアアップの仕組みを検討する際にはこうした視点も視野に入れることが必要であると考えられます。

 ページが変わりまして9ページに続きますが、また、介護未経験者などについて、その意欲・能力に応じてキャリアアップし、キャリアに応じた役割を担っていけるようにするためには、介護の専門職である介護福祉士の中でも一定のキャリアを積んだ介護福祉士がチームリーダーとなり、チーム内の介護職に対する指導・教育やフォローを行うなど、介護職チームで提供する介護サービスの質の向上を図るとともに、チーム内の人材の定着が図られるようにしていくべきである。このため、介護分野への参入のきっかけとして、必要最低限の知識・技術を修得する機会を設けるとともに、介護福祉士の資格取得後も本人の意向に応じて、チームリーダーに必要な知識・技術や、さらなる専門分野の知識・技術、あるいは事業所内のマネジメントに必要な能力を修得できるような現場での実践過程における研修プログラムを検討してはどうかと考えます。

 まとめますと、このように、介護人材のキャリアパスを考える上では、介護分野は専門性が求められる分野ではあるものの、「入りやすく昇りやすい」仕組みとしていくべきではないかと考えられますが、この「入りやすく昇りやすい」というキャッチフレーズがこれでいいのかどうかというところについては、さまざまな御意見があるかと思いますので、ぜひ御意見をお聞かせいただければと思います。

 次に10ページに移ります。こちらは今、口頭で御説明したものをイメージとしてあらわしたものでございます。まず、介護未経験の方が介護の分野に参入し、知識・技術を身につけ介護福祉士となり、さらに一定のキャリアを積んだ上で、最終的に介護実践の専門職、マネジメント職を目指すというような全体像が考えられます。また、この中でさまざまな研修というものが各階層において行われる必要があるということをあらわしたイメージでございます。

11ページ、論点6として「医療との役割分担について」という論点を挙げさせていただいております。現在、介護福祉士等がその業務として実施可能な医療的ケアには、喀痰吸引と経管栄養がありますが、今後、地域包括ケアシステムの構築を進めていくに当たり、医療と介護の連携や役割分担をさらに推進していく上で、介護福祉士等による医療的ケアのあり方について検討する必要があるではないかというものでございます。

 方向性といたしましては、地域包括ケアシステムの構築に当たり、医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が住みなれた地域で自分らしい暮らしを続けていくことができるようにするためには、医療と介護の連携をより一層推進していく必要があります。現在、介護福祉士などがその業務として実施可能な医療的ケアは、喀痰吸引と経管栄養となっていますが、医療と介護の連携を推進していくに当たっては、医療従事者との役割分担は重要な課題であり、介護人材の専門性を高める一環としても、介護福祉士等による医療的ケアの範囲の拡大は重要な検討事項の一つでございます。

 これを踏まえ、介護福祉士等の医療的ケアの範囲については、喀痰吸引や経管栄養の実施状況について、その実態を把握し、検討することとしてはどうかと考えます。

 なお、この論点については、「新たな医療の在り方を踏まえた医療・看護師等の働き方ビジョン検討会」での議論の内容も踏まえる必要があると考えます。

 次に、資料2に従いまして、福祉人材確保専門委員会の今後のスケジュール(案)につきまして御説明を申し上げます。

 まず、今月から介護人材が担う機能やキャリアパスなどについて、調査研究事業の報告、議論などを含めまして3回程度開催することを想定しております。

 次に、年が明けまして平成29年1月、社会福祉士のあり方について、議論など2回程度の開催を予定しております。

 さらに、来年3月、年度末に向けまして報告書の取りまとめを行うということでございます。報告書の議論など2回程度を想定しております。

 こういったスケジュールを現時点では考えておりますが、今後、検討課題の議論、あるいは「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の開催状況などによりまして、検討の追加・変更等もあり得ることとなっております。

 私からの資料の説明はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

○田中委員長 ありがとうございました。

 ここからは委員の皆様から福祉人材について御意見、御質問があれば頂戴いたします。どなたでも結構ですので、お願いします。石本委員、どうぞ。

○石本委員 ありがとうございます。介護福祉士会の石本でございます。よろしくお願いいたします。

 先ほど室長の御説明の中で、資料1の9ページの「入りやすく昇りやすい」のところは、確かに今までも介護従事者というのがお手軽感といいますか、誰でもなれるではないかと、やゆされるようなところがございまして、こことははっきり今後訣別すべき部分でないかと思いますので、お手軽感が残るような言い回しというのは、少し工夫が必要ではないかと思います。

 とはいえ、やはり深刻な人材不足に関しては、多様な人材を入り口で受け入れていくというのは一定必要なことであるというのは否定するものではないと思っております。

 私ども介護福祉士会としましては、先般の人材のまとめの中でも、中核的な役割というところで介護福祉士というのが示されておりますし、今回のこの問題につきましては、職能としてしっかり介護福祉士のあり方や将来ビジョンを明確に示してまいりたいと思っておるところでございます。

 さきの福祉部会の中でも少し発言させていただきましたが、職能団体として、これからの介護福祉士はこうあるべき、こういう役割を担うべきということについて、現在整理する作業をいたしております。国が示しております10ページのイラスト等も照らし合わせて、私たちのほうで考えております方向性と大筋そごがあるものではございません。ですので、そういった中で、この専門委員会のスケジュールに従いまして、私たちとしましてもこういった明確なものをしっかり打ち出したい。有資格者と資格がない方の役割がどう違うのだということ。その中で介護福祉の実践者としての介護福祉士がどうあるべきであるということを、今までも本来は示すべきだったのですが、なかなか強くそこを打ち出すことができてきておりませんでしたので、そこはしっかりと打ち出していきたいと思っております。

11ページにございます「新たな医療の」というところで、ここ最近、介護保険部会も含めてですが、医療的なケアの介護福祉士及び介護職が担う範囲の拡大の議論が少しずつ出てきております。ここにつきまして、私たちとして積極的に広げたいのだというスタンスではございませんが、生活支援で必要な部分で担わなければならない部分については前向きに考えていく。それが専門性というところでの向上、高い質のケアということで、国民、利用者のためにそれが寄与できることであれば、しっかりと丁寧に検討してまいりたいというところでございます。

 以上でございます。

○田中委員長 ありがとうございました。

○石本委員 済みません、もう一点よろしいですか。

○田中委員長 どうぞ。いいですよ。

○石本委員 失礼しました。

 もう一点。まずは介護福祉士自身がどうあるべきだというのを決めるというのが大事なのですが、その先も見据え、いずれはそれが報酬なり配置基準なりというところでの明確なインセンティブで評価されることは当然念頭に置いた上で考えてまいりたいですし、国としてもそれは引き続き検討、あるいはまとめて示しました、で終わりではなく、具体的につなぐ、という視点を持って御議論いただければと思います。

 以上です。

○田中委員長 きょうは初回ですので、それぞれの専門の立場から広く声を聞くことが目的です。御質問のみならず、御意見をお願いいたします。井之上委員、お願いします。

○井之上委員 私が所属しています日本介護福祉士養成施設協会、今、全国に379校の大学、短大、専門学校に養成校がありますが、ことしの春の入学者の定員充足率が40%なのです。かつて2万5,000人の定員があって、2万5,000人、ほぼ満杯で卒業者がおったわけですが、今、定員が1万7,000人で、実際の入学者が7,000人ほどしかおりません。そのうちの2,000人は、七、八年前から厚生労働省の雇用対策の一環として職業訓練生が2,000名以上入っていただいているわけですが、そういう状況でありまして、高校から一つの進路として養成校に来る学生がほとんどいないという状況、もうどんどん減っているという状況なのです。

 今、介護福祉士の養成校は2年から、大学で4年勉強して資格を取得される方、そして現場で3年働いて取得される方、そして福祉系高校で取られる方という形で、3つのルートがあるわけですが、その中で一番質を担保しているのが我々養成校だろうという自負がありますが、一番核になってきた養成校が今、本当に悲鳴を上げておりまして、どんどん募集停止、撤退していく学校が出ているというのが現状なのです。

 先ほどの富士山型の一番上の部分の介護福祉士をこれから。きょう読ませていただいた中で、本当に介護福祉士が目指すべき方向性というのは、このとおりだと思いますし、我々介養協もここ2年、これからの介護福祉士の養成のあり方検討会をずっとやっておりまして、まさにこういう形で話し合いを続けてきたわけですが、きょう書かれているのと方向性としてはほとんど一緒だと思います。

 ただ、介護福祉士会の皆さんは「認定介護福祉士」というのをつくられ、そして、我々も今、「管理介護福祉士」という形で、より高い資格が求められるだろうということを考えているわけなのですが、ただ、幾ら資格をつくられようが、そこに来る若者たちがいないという現状をどう変えるかということが一番の課題で、資格はあれど、本当にそれを目指してやってくる若者たちが来ないという状況、これをどう克服していくのかということをぜひ考えていただきたいなと思います。

 人材を確保するという意味では、裾野を広げるというのはきょうのこの話も大変いい。参考資料の中にも三重県の例があったり、いろいろ裾野を広げる方法はあるかと思いますが、上に引き上げていく方法、450時間の実務者研修をして介護福祉士を取られる現場の方々の悲鳴も聞いているのですね。やはり働きながら450時間というのは本当に大変ですし、それプラスより高い介護福祉士の資格、一定のキャリアを積んだ方々がこれからどういう研修をされていくのか。働きながらするのか、あるいはまた新たな形で学ぶ場をつくるのか。その辺の厚生労働省のお考えをぜひお聞かせいただきたいなと思いました。

○田中委員長 質問ですか。

○井之上委員 はい。

○田中委員長 いかがですか。お答えいただけますか。

○榎本福祉人材確保対策室長 どうもありがとうございます。

 きょう論点となっています介護人材のキャリアアップを図る上では、さまざまな知識・技術を身につけていく。しかも、それは介護の分野に参入した後、身につけていく必要があると考えます。ただ、そのやり方としてはさまざまな方向が当然考えられます。職場でのOJTも考えられます。それから、先ほどなかなか実務者研修450時間、仕事をしながらというのは大変であるという話があって、実は私もそういう話を聞きます。ですが、もちろん、それまでに受けた研修によって時間が軽減されている部分もありますので、そういった形で働きながら研修を受けるというのもあります。

 それから、社会人になってからの学び直しというのでしょうか、そういった形で、社会人になった後、一旦仕事をお休み、あるいは仕事を軽減して続けながら学校に行くというようなことも当然考えられると思います。そこについては、どういうやり方が厚労省として望ましいということではなくて、お一人お一人の介護人材の方に合った知識・技術の修得、あるいはキャリアアップのやり方があるのではないかと思います。

○田中委員長 では、松山参考人、お願いします。

○松山参考人 社会福祉士会、松山でございます。

 先ほどの説明の中で介護の参入とか定着とか、そういった意味では、キャリアパスを担う介護リーダーの役割というのは、非常に大切なキーパーソンになるかと思います。煎じ詰めて言えば、介護リーダーがやる役割というのは、一つは介護実務、介護過程のマネジメントも含めてOJT機能と、いま一つは労務管理も含めたマネジメント機能、この2つにあるかと思われます。

 その中で、OJT機能は従来の介護福祉士養成教育の中で十分行われていると思いますし、また、これからもより質の高いということで、認定介護福祉士云々というものがあります。

 いま一つのマネジメント機能ですけれども、現在の介護福祉士養成教育の中でこういった部分を入れていくのか、あるいは先ほど話がありました管理介護福祉士、そういった中に委ねるのか、あるいはマネジメント機能ができるほかの職種、例えば私どもソーシャルワーカー、こういったものに委託するのか、こうした形でもう少し内容を精査していく必要があるのかなと感じました。

 以上です。

○田中委員長 ありがとうございます。

 川井委員、お願いします。

○川井委員 10ページの「介護人材のキャリアパスの全体像」を御説明いただいたのですけれども、ここで見ていきますと、介護福祉士の資格を取り、そして一定のキャリアを積んだ介護福祉士がさらにチームリーダーとして必要な知識等を修得する研修プログラムを受ける、さらに専門知識の修得に向けた現場での研修プログラムの導入というふうに、研修ということを強化されていると思うのですが、そうしたときに、このキャリアパスの全体像からして、チーム内の介護職に対する指導・教育、フォローをする人が必要で、そのための教育、研究というところがこの図から抜けているような気がするのです。

 ですから、介護実践の専門職、そして右にマネジメント職、そしてもう一つ引き出しがあって、そこに教育、研究者というのが入ってくるのかなと思っています。それを入れていただくほうが、そういう方々を目指すということ。今の介護福祉士の養成課程では実務経験5年以上という要件がございます。ですから、ここを通らないと教員になれないという仕組みですので、ぜひその上につけていただきたいと思います。

 それから、先ほど石本委員がおっしゃっていましたが、「入りやすく上りやすい」という表現は、私も初めに見たときにお手軽感満載のように思いましたので、これが世の中に出るとすれば、「昇りやすい」のところを目指す人は昇っていけるのですよというような表現。私も何か提案ができればと思ったのですが、いい案が浮かびませんので、皆さんでお考えいただけたらと思います。

 中身の細かい話になってきますが、6ページ「チームリーダーが担うべき役割と必要な能力」でございます。6ページのところに方向性が示され、そしてチームリーダーが担うべき役割と求められる能力ということでまとめてくださっているのですけれども、この中の文言に少しこだわってみたのですが、例えば「高度な技術を有する介護の実践者としての役割」の中に「障害を持つ方への対応」というところがあるのですけれども、上は「認知症の症状に応じた対応」とか、「医療の必要性が高い方への対応」がありますが、「障害を持つ方」というのはいっぱいいらっしゃるわけで、先の並びで表現を変えていただくとすれば、「障害を持つ方の状況に応じた対応」とか「障害の程度に応じた対応」とか、そういうことが判断できるということかなと思いました。

 その横に行きまして、「介護技術の指導者としての役割」のところですが「チーム内の介護職に対する自らが持っている介護技術の指導・伝達」となっていますが、ここは多分チームリーダー「自らが持っている介護技術」ではリーダー個々の力量によって教えられる内容が変わってくる可能性があるようにも読めるため「自らが持っている-----。」は削除していただき「チーム内の介護職に対する介護技術の指導・伝達ができる」というようにしていただけたらと思います。

11ページの「医療との役割分担」のところでございます。先ほど石本さんもおっしゃっていましたが、私も、さらに医療と介護の連携をより一層進めていくということについて反対するつもりもありませんし、それが地域包括ケアシステムの中で必要だということは非常に感じております。ただ、今、喀痰吸引と経管栄養の研修をやっていますが、これらの行為については、かなり医師や看護師の指示を受けないと介護職ができない仕組みになっています。即生命に直結するものなので、利用者さんの状況が安定しているという判断が必要なため、かなり医師や看護師にチェックしてもらわないとできない仕組みにしてあります。これでは介護職に拡大した効果があるのかという思いでいます。多分、医療行為と言われるものの中に医療職にたびたびチェックを受けなくても安全で、かつ安定して継続的に行われる行為のようなものもありますからそうした視点から今後検討の余地はあるかと思います。

 以上でございます。

○田中委員長 資料1について幾つかコメントがございましたが、室長、何かお答えになりますか。

○榎本福祉人材確保対策室長 ありがとうございます。

 まず、松山参考人からマネジメント機能について、今後どういう研修、養成が必要となってくるかということでございますが、基本的には介護福祉士としてはキャリアを積み重ねていく上でそういうことが必要となりますので、当然介護福祉士になってからの現場での実践の中でそういうものが身についていく部分もあると思うのですが、ただ、当然ながら基礎的な部分、介護福祉士の養成カリキュラムの中でそういうことが触れられる必要があるのかどうかということについては、今後整理をしていく必要があると考えます。

 それから、今、川井委員からさまざまな御指摘をいただきまして、ありがとうございました。あと、石本委員からも同じ御指摘をいただいているのですが、「入りやすく昇りやすい」というのは、どうしてもこれだけ聞くとお手軽感というのが出てしまうということはあるのですが、介護職、専門職ですので、非常に厳しい部分はあるのですけれども、一つ「入りやすく」というほうは、裾野を広げるという意味では必要だと思うのですが、「昇りやすい」というのは、何となく何もしなくても昇っていけるというような印象になるのは、確かにどうかなというのもありますので、そこは少し考慮が必要かなと思いました。

 医療的ケアについて、石本委員、川井委員から御指摘いただいていまして、今後、介護職がどんどん医療的ケアをするということではないということかと思います。ただ、生活に関連する部分、あるいは石本委員のお言葉をかりれば、生活支援に必要なものということついて、まずは今、行われています喀痰吸引や経管栄養の実施状況についての実態の把握が必要だと思いますが、それをした上で、そういった生活支援という中でどういった医療的ケアが必要なのかということについて、慎重に検討していく必要があるのではないかと思います。いろいろ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

○田中委員長 上野谷委員、お願いします。

○上野谷委員 

感想も含めて2つほどございます。

10ページ、先ほどコメントをいただいておりますのに、そのとき申し上げたらよかったのですが、この図には左に、「就業していない女性」、右のほうには「中高年齢者」とございます。右のほうの「中高年齢者」にも女性が入るわけですね。イメージするところはわからないでもないのですが、就業していない男性も含めておりますので、表現を変えるなど、御配慮があったほうがいいのかなと感じました。

  もう一つは、先ほど石本委員も井之上委員も松山委員もおっしゃったのですが、すばらしい政策だと思っております。この流れを実現していくためには、方法と技術があって初めて浸透していくと思うのです。医療や看護の専門性が高いというのは、その方法や技術がきちっと研究に裏づけされたものとしてあるからだと考えているわけです。そういう意味から言いますと、社養協も社会福祉士の養成課程において、教材開発や教育方法が不十分で、教員の養成がなかなかでき切っていません。これは循環でございますけれども、本委員会でどうこうではないかもわかりませんが、関連しますのであえて申し上げます。そういう意味では、そこを何とか図の中に描いておいていただくことが今後養成校としても頑張れるのではないか。

 ちなみに、社養協としましては、潰れていっている養成校があります。ですから、国策として介護人材や社会福祉人材を本当に必要だと考えられるのであれば、今日に至るまで、私学に依存しながらつくってきたこの政策でございますので、今さら国立にしろとは申し上げませんが、違った形で教員養成、リーダーに対して、文科と一緒に厚労省としてどう考えられるのかということを、別の機会で結構でございますけれども、ちょっと考えていただけましたらと思っております。

 少しまとまりのない発言をいたしました。

○田中委員長 武居委員、お願いします。

○武居委員 10ページの「キャリアパス全体像(イメージ)」についてでございます。

 2月の報告書のときには、従来のまんじゅう型から富士山型へという話で、そのときには富士山型のこの形をある程度そうかなと思っていた経緯もございます。

 ただ、ここまで介護人材の不足が非常に深刻になっているという状況を考えますと、今までやってきたような方向性は相当変えていかなければいけない、ドラスティックな変化が必要なのではないかと思っています。

 というのは、私も特別養護老人ホームを経営する法人の理事長などをやっていた経緯からしますと、そもそも介護というのはどこから出発したかと言うと、いわゆる生活者という支援から始まって、近所のおばさんが通常の生活の中でやっていることをケアという方向に持っていき、しかし、そのことはそのままではだめなので、その中でよりケアの専門性を高めるという意味で言えば、専門職が必要なのではないかということできたと思うのです。

 現場の中では資格がある人も資格がない人も皆一緒に生活者という視点でケアをすることが大事なのではないか。資格がある者も、やはり生活という視点で考えれば、資格のない人とともにケアをしていくことが大切なのではないか、としてきたのが今までの流れだと思うのです。しかしながら、その状況ではなかなか介護の専門性が高まらない。なおかつ介護職というものに対する魅力も高まっていないというのが、今の非常に深刻な介護職員不足につながっているのではないかと思われるわけです。

 だとしますと、前回のときの報告書から今回の流れとしては、今まで資格のない人もある人と同じような方向を目指して、資格のない人たちが一緒に資格を取って、その資格をさらに高めるような方向に行きましょう、という方向はもう変えなければいけない時期に来ているのではないか、というのが、今、我々が考える変わるべき方向なのではないでしょうか。階層化が果たしていいのかとか、差別化したような資格職種がいいのかという問題は、もちろん我々として同時に考えなければなりません。しかしながら、裾野を広げていくということを考えますと、資格を取ることを考えずに、ケア全体の中の区別された、いわばケアの一部だけを担う人をある程度入れながら、しかし、専門を持った人たちに対してはさらにキャリアを上げていくという役割分担なのだという方向を明確にする必要があるのではないか。

10ページの表でいきますと、就業している人もみんな一緒になってある程度知識をつけて、さらにそこからみんな介護福祉士を取って、その人たちがみんなキャリアを積んでいきましょうというような図に見えて、このままだと従来の流れとちっとも変わっていないような、そんな感じがするのです。

 もしそうだとしたら、もうちょっと別なイメージを持ったキャリアパスの構造をつくらなければいけないのではないかと、今、皆さんのお話を聞いたり、この図を見ながら思っているところでございます。

  以上、意見です。

○田中委員長 整理された意見をありがとうございました。

 伊藤参考人、お願いします。

○伊藤参考人 資料1の3ページに「目指すべき全体像」ということで、現状の介護人材の状況についても書かれていますが、私どもの認識を申し上げますと、ここに「38万人の介護人材を追加的に確保する必要」と書いてありますが、これはあくまでも需給推計に基づく25年における需給ギャップなので、今、180万人ぐらいまで来ているのだと思うのですが、政府の見通しでは、2020年初頭までに231万人というような目標だと思いますので、今後50万人ぐらいの必要人員があると思っています。そのような中で、労働力人口が減っているし、雇用情勢が改善しているので、人手不足が加速しているというのは数字からも見てとれます。有効求人倍率の上がり方、スピードが介護の分野は高いので、38万人以上確保していく必要があると考えています。そのために、私どもとしては、現に働いている人の処遇という問題が一番大きいと思っています。離職をさせないという意味で、処遇改善というのが一番大きな取り組むべき課題だと思っています。

 今回の提案の論点の中には、8ページのところに介護プロフェッショナルキャリア段位制度の整理も出ておりますが、このようにキャリアパスを明確にして、客観的な評価と処遇を結びつけていくことにより、働きがいのある職場にしていくということが絶対必要だと思っています。

 5ページのチームリーダーの話ですが、今、訪問介護でサービス提供責任者が担っている役割に近いのではないかと思いましたが、サービス提供責任者の現状を見ますと、苦情処理をやって、プレイングマネジャーで、結局サービス提供責任者に求められる仕事が忙しくてなかなかできないというような実態が多く報告されていると思いますので、そういったことも踏まえながら機能するようなものにしていかないといけないのだろうと思います。

 裾野を広げるということが7ページに出てまいりますが、この点については、資料のほうでもそれを補強するようなものが出ているのだと思います。参考資料2の1ページのところを見ますと、生活援助、身体介護、特定ケアの順に専門性は高くなっている。どのサービスでもそういうふうに認識されている。また、生活援助については、それほど知識・技術を有していない人や、基本的な知識・技術を持っている人の業務だと認識されているというように整理されているのですが、丁寧にこの資料を私なりに読んでみますと、2ページのところ、訪問介護と通所、認知症、施設系というところではシェアがかなり違うと思っています。

 訪問介護というのは、1人で居宅に伺って、身体介護だけでなく生活援助、健康状態の確認だとか生活に関する相談・助言といったところまで含めて、1人で担ってくるという実態がとしてあることをこの辺はあらわしているのだろうと見ましたので、そういったものも踏まえながら検討が必要ではないかと思います。

 裾野を広げるという提起に対しては、「簡素な入門的研修の導入」ということをもってして、これが質の向上を目的としているものであれば非常にいいことだと思いますが、今できないような業務を、これさえやれば認めようということになれば、質の低下という点で心配もあります。そうなると、さらに処遇の低下につながり、また人材確保が困難になるという悪循環につながっていくことを一番心配しており、そういったことも考えながら丁寧に検討していく必要があると思っています。

 最後に医療行為ですが、この点についても、責任や処遇といった点でいろいろ現場からも声があるところですので、介護、医療を含めて、働く者を含めた関係者の意見を聞きながら丁寧に検討していっていただきたいと思います。○田中委員長 阿比留委員、お願いします。

○阿比留委員 今回の「目指すべき全体像」の論点の中で、チームリーダーを今後どうするかというところが一つの論点になると思うのですが、チームリーダーを養成するに当たっては、4ページにもありますように、チーム内の介護職に対する指導、介護職チームでのサービスが適切に提供されていく必要があると。管理とか役割を担う者が必要だということが書いてありますが、先ほど武居委員からも話がありましたように、介護職というのは、今までみたいに全体的にレベルアップをするのか、それとも専門性のところをやっていくのかという話の中で、3ページの一番最後の○のところに「介護職が利用者に対するケアに専念できるよう、介護職の職務を明確にし、利用者に直接かかわらない業務(例えば、事業所内における清掃や洗濯等)を他の人材に委ねていく取り組みを進めることも必要」ということで、専門性の部分、いわゆる介護部分にスポットを当てて、それ以外は外部に移すという考え方で、チームリーダーという考えをすると、例えば施設の中でチームリーダーを養成するとなると、全体的に見られる人材を確保していかないといけないとなってくると、この部分とちょっと考え方が違ってくるのかなというところがあります。

 私は養護老人ホームをやっておりまして、この中には介護もそうなのですけれども、支援であったり、援助という言葉はまだ使っているのですが、支援の計画を立てて、その中で当たっていくということになってくると、いわゆる効率化とは逆の無駄の部分、人に寄り添って、その中でコミュニケーションを図っていって、その人の生活歴まで含めた支援を行っていくというような取り組みが必要になってくるのです。

 今回、複雑化であったり、多様化であったり、高度化ということを介護ニーズに求めるのであれば、介護に支援ということをぜひ含めた上で検討していただかないと、専門性の向上は図れないのではないかなと思っておりまして、これはお願いも含めてなのですけれども、よろしくお願いいたします。

○田中委員長 ここまでのコメントについて、何かお答えになりますか。

○榎本福祉人材確保対策室長 いろいろありがとうございます。

 恐らく介護職の中での役割分担ということについては、さまざまな御議論があり得るのだろうと思います。なかなか一律にキャリアアップしていくという姿は難しいのではないか。確かにそれはそう思います。それこそ従来の日本企業のように新卒一括採用をして、その方がずっと同じ会社で勤めるということであれば、そういうことは成り立つわけですが、現在、企業でもそういうことは崩れてきて、さまざまな方々が企業に携わるようになってきている中で、当然お一人お一人の方の考え方なり目標なりが異なってくるということになりますので、そういった方々それぞれのお立場に応じた知識・技術の修得、能力アップということは考えられるべきでありますので、決して一律にこういう姿が望ましいということではなくて、そういった方々に応じた介護職としての役割を考えていくというのは当然必要ではないかなと思います。

 簡素な入門的研修について、伊藤参考人からも御指摘いただいたのですが、これも恐らくイメージがいろんな方によって大分違うのだと思います。こういうのを受けることによって、今まではこういう研修もなかったので、こういう研修を受けることによって、より質の高い介護が提供できるのではないかと考える方もおられると思いますが、先ほど伊藤参考人から御指摘があったように、これさえ受ければ何でもできるというふうに考えれば、介護の質の低下を招く懸念があるというふうにも捉えられます。

 ただ、当然ながらその中で入門研修そのものをどういう内容にするのかということについても、さまざまなお考えがあると思いますので、そのあたり、まさにこの専門委員会の中で御議論いただければと思います。

 阿比留委員から御指摘いただきました支援という考え方を取り入れていくということについても、せっかく御提案いただいていますので、ぜひこの委員会でも御議論いただければと思います。

 先ほどコメントするのを忘れてしまったのですが、上野谷委員、川井委員から介護に関する研究とかそういったものについてもこういった介護職のキャリアパスの中に位置づける必要があると。具体的には、川井委員から目指すべき姿として、今は「介護の実践」「マネジメント」という2つの箱があるのですが、その隣あたりに恐らく「研究職」というのがあるのではないかというようなお話がございましたけれども、当然ながらそういった学問的な裏打ちがあるということをもって介護の専門性ということが出てくるという部分があると思いますので、そういったことについても検討する必要があるのではないかなと思いました。

 非常に雑ぱくでございますが、以上でございます。

○田中委員長 ありがとうございます。

 森脇委員、お願いします。

○森脇委員 日本商工会議所から参加させていただいておりますダイヤル・サービスの森脇と申します。お願いいたします。

 私からは2点ございまして、まず1点目は、10ページ目に「キャリアパスの全体像(イメージ)」として挙げていただいている富士山型のキャリアパスについてです。先ほど武居委員からもお話がありましたが、チームとして働く施設系の方の場合はとてもしっくりくるのですけれども、商工会議所ですと、訪問系の事業をされている事業者さんが多いですので、チームとして動くというよりはお一人で動かれるということが多いところから、また別の違った視点でのイメージが必要なのではないかなという意見が商工会議所の中でも出ております。

 2点目ですが、8ページ目のキャリアパスの中の「人材が定着していくような環境作り」というところですが、私どもは48年前からさまざまな分野の電話相談の事業を行っている会社でございまして、介護職員の方からの御相談というのもたくさん入ってきております。例えば新しく介護の仕事についた方からとしましては、自分が理想としていた介護のイメージとは違ったとか、もっと一人一人と向き合えると思って熱い思いを持って入ってきたのに、実際は先輩方の利用者の方々への態度に少し疑問を感じてしまったとか、毎日疲れていて利用者さんにイライラしてしまって、自分は介護の仕事に向いていないかもしれないなと感じたり、余り眠れておらず、集中力がなくなってしまって、このまま何か大きな事故を起こしてしまうのではないかなとか、そういった理想とのギャップであるとか、職場での人間関係とか、疲労から来る精神面の不調など、そういった声はたくさん挙がっております。

 一方、マネジメント層の方からの御相談というのもたくさんいただいておりまして、そういったメンタル面の不調に陥った部下の方の対応をどうしていったらいいのかという相談はもちろんですけれども、管理職の方御本人もいっぱいいっぱいの状況の中で、本来やりたいという理想があるのにそれができないというジレンマであったり、精いっぱい頑張ってきたけれども、もう限界というところまで頑張り過ぎてしまって、燃え尽きてしまっているというような声も聞こえてきます。

 新しく介護の職場に入った方々のフォローをするということももちろんですけれども、管理職の方こそ施設の中では立場上、誰にも相談できずに抱え込んでしまって精神面を病んで、やめてしまわれるというお声もたくさん聞いておりますので、そういったお話をお聞きして一緒に対応を考えさせていただいたりしております。

 また、これは11ページの医療との連携のところにも少し絡んでくるのかもしれませんが、私どもではある区の特養さんに向けまして、夜間、施設の看護師さんがおうちに帰られた後、利用者の方に急に発熱してしまったりとか、嘔吐してしまったりとか、あとは転倒して頭を打ったかもしれないとか、そういった救急の場合、今までは施設の看護師さんにオンコールの形で、夜中であっても電話をして対応の指示を仰いでいたりという状況があったのですけれども、私どもの看護師のほうにお電話していただいて、救急搬送を今すぐしたほうがいいのかとか、少し様子を見て朝まで待っていいのかとか、こういったポイントに注意して観察してみてくださいとか、そういったアドバイスを私どもでワンクッション受けることで、施設の介護士さんも今まで、同じ職場で働く看護師さんを夜中起こしてまでというところがすごく申しわけないなという気持ちが強かったらしくて、そこが別のところに相談ができるということで、負担が減ったというようなお声をいただいて、大変好評なお声をいただいております。

 あと、看護師さんのほうも、今まで寝ぼけながら対応してしまっていて、電話を切った後にあれでよかったかなとか、次の日、何かあったらどうしようかなと。1回電話を受けてしまうと、その後眠れないとか、そういった状況がずっと続いていたようなのですが、そういったことも今はなくなっていますということで、大変助かっているというお声もいただいています。

 施設長の方からもそういった取り組みで職員の方の離職の防止につながっているとか、あと採用活動にもとてもよい影響が出ていますという声がありまして、こういった取り組みが全国的に広がると各施設の方の負担も少しずつ減っていって、いい方向に向かっていけるのではないかなと思っていますので、国のほうからも何か手助けをいただけるようなことがあるといいなと思っております。

 職員の方が大切に扱われて幸せに働けないと、本当に心から利用者の方を大切に扱うということは、人間の心情としてなかなか難しいのではないかなと思いますので、人材としては、介護の業界だけではなくて、今、あらゆる分野で人材の不足がもう始まっている状況かと思いますので、こうしたメンタルケアの窓口であったり、夜間の医療面の救急のサポートであるとか、そういった体制を少し整理していくことで、キャリアパスと同時に一度入職した大切な職員の方がやめないようなサポートを導入していただけるといいのかなと持っております。

 以上です。

○田中委員長 ありがとうございました。

 石本委員、お願いします。

○石本委員 たびたび失礼いたします。5点ほどございます。

 まず1点、医療的ケアに関しての部分ですが、現状行われている研修や養成についての実態を把握するということで、おっしゃっていただいていますが、実際現場からしますと、既存の介護福祉士が医療的ケアを行うためにその研修を受けなければいけないということで、平成39年ぐらいまでがたしか移行期間でしたでしょうか。ただ、実際都道府県で行われている研修会を受けたいけれども、定員がいっぱいですぐ受けられないということで、なかなか研修を受けたい人はいるけれども、受けられないのだという実態が非常に問題だと考えています。

 この関係では、指導看護師の確保等々でも、研修を行う側が非常に苦慮されている実態があるようでございますので、まずこちらのほうを整理する必要があるのではないかというのが1点目。

 2つ目、先ほどから出ております「入りやすく昇りやすい」のところですが、今まで介護人材の色々なアンケートの中で、介護従事者は将来像が見えないとか、向かうべきビジョンが見えにくいということで出されておりましたので、昇る道筋が明確に見えるのですよというようなニュアンスの文言が入ってくると、あと、昇るか昇らないかは本人が目指すか、目指さないかであろうと思いますので、そういった表現がふさわしいのではないのかなと。これはあくまで私の私見でございます。

 3点目は、いわゆる初任者研修の一歩手前の初歩的研修というところについて御質問ですが、新総合事業を行うに当たって、短いところは確か10時間程度、長いところは40時間程度ということで、各自治体のほうでもう既に始まっている研修会がございますが、これとこれがイコールという話なのか、今、各自治体でやっていただいているけれども、今後一定のガイドラインを示して、今後はそれに伴ってやっていってほしいということなのか。ここは御質問でございます。

 4点目は、先ほど阿比留委員がおっしゃった支援という話で、実は私たちも生活支援という視点にものすごくこだわっております。メディアなどで介護福祉士を「介護士」と表現される場合があるのですが、福祉というところがすごく大事だというこだわりを持っております。そこにこそ生活全般に寄り添う専門性と質の高さというのがあるので、これは少し生意気な言い方ですが、ぜひ今後いろんな形で表に出すときは、「介護士」と略すことなく、「介護福祉士」と正確にしていただきたい。

 介護福祉士以外のことを表現されるのであれば、もう「介護職」でいいではないですか。そもそも介護士など世の中に存在しませんので、そこはぜひこだわっていきたいと思っております。

 5点目でございますが、先ほど武居先生がおっしゃった、一定すみ分ける必要があるのではないかというお話は、参考資料についておりますが、三重県の老健協がやられた介護助手制度のやり方がありまして、それに多分相通ずるところもあるのではないかなと思います。私どもはその辺は非常に同感で、みんなが一緒に底上げで上がっていきましょうというのは現実的に無理ですし、今までのまんじゅう型、混在型からの脱却にはならないだろう。

 そういった中で、例えば介護過程、介護計画を作成するというところは、介護福祉士が養成課程においてしっかり勉強してきておりますし、この業務は介護福祉士がしなければならないとか、そういった一定の方向を打ち出されることによって役割の明確化とか、根拠ある介護を実践できるのが介護福祉士だということにすることがチームリーダーとしての役割を担うということにつながっていくのではないかと思いますので、そういった視点も踏まえて私どもからも提言いたしますし、できればこの専門委員会の中でも御議論いただければということです。

 長くなりました。5点でございます。

 以上です。

○田中委員長 4点の御指摘と1つの御質問でした。

 質問にお答えください。

○榎本福祉人材確保対策室長 今、石本委員から御質問いただきました、今回の資料で出てきている初任者研修よりも初歩的な研修、入門的研修というふうに言っていますが、それと現在総合事業の中で各地方で行われている研修が同じなのかどうかということですが、結論的に申し上げますと、これは別物でございます。総合事業での研修というのは、総合事業を受ける方についてのみ対象となっております。私どもが考えておりますのは、施設等で働く方は一般的にそういう研修を受けていただくということを考えておりますので、それは別物と捉えていただければと思います。

○田中委員長 堀田委員、お願いします。

○堀田委員 大幅に遅刻しまして、全然趣旨を踏まえない発言だったら申しわけないのですが、フリートークだろうなと認識して、大きく2つお話をさせていただこうと思います。

 資料をざっと拝見しまして、改めて昨年度の老健事業なども踏まえられた上で、今後の論点が示されたのだと認識していますけれども、目指すべき全体像とか提供体制、その中での役割分担といった論点が挙がっているように拝見にしましたので、それを前提として大きく2つです。

 1つ目は、改めて足元、現在行われているケアのあり方が効果的かつ効率的なのかということを振り返る余地があるのではないか。それに基づいた形で、より自律と尊厳を高めるケア、その担い手という立場に立ってこの役割分担ということを考えるときに、少し議論を整理する余地があるのではないかと思っています。

 効果的・効率化かどうかということを振り返って役割分担を整理するというときに、4つレベルがあるのかなと、今、ざっと資料を拝見しながら思っていたところです。

 1つは基本的なケアです。先ほど医療的なケアということもありましたけれども、ケアそのものに関する中身あるいはそのあり方みたいなもの。それは対象によって、あるいは医的なことも含むのかどうかといったことによって分けるのか、それともどうするのかという議論があるでしょう。それが1つ目。

 2つ目は、そのケアのマネジメント、あるいは介護過程全体のマネジメントと言えるところだと思います。基本的なケアのマネジメント。

 3番目がチームのマネジメント。

 4番目は、今回のこの中、射程に入っているかどうかわからないのですけれども、繰り返し申し上げますと、自立と尊厳を生かす、あるいは効果的・効率的ということを考えたときに、より御本人の力を伸ばす、あるいは御家族、地域の力をエンパワーメント、引き出していくということを考えたときには、事業体としてサービスのあり方、もちろんそれは自治体の計画とも関係してくると思いますけれども、例えばより地域密着型サービスにシフトしていったほうがいいのではないかとか、あるいは総合事業にも積極的に取り組んでいったほうがいいのではないかとか、もっと地域に展開していったほうがいいのではないかとか、そういった事業マネジメントです。ですので、基本的なケア、それからケアあるいは介護課程のマネジメント、チームのマネジメント、事業マネジメントといった形で、そのレイヤーごと役割分担が必要なのかどうなのかといった議論を整理してはどうかというのが1つ目です。

 2つ目、キャリアなのですけれども、これは前のラウンドの専門委員会のときにも御紹介したと思うのですが、介護人材に関してキャリアパスあるいはキャリアの展開ということがここ10年ぐらいようやく話題になってきたのではないかなと思いますが、しかし、単純に1つの法人の中で例えばさまざまな事業種別を経験するとか、時によっては職種を変わるとか、あるいは職位が上がっていくとか、単純にそういったキャリアが展開するというだけでは、本人の少なくともその法人、事業所に対するコミットメントを高めるとは限らないというような調査研究を私どもがやってきていまして、そのことが事業所におけるサービスの質を高める、そのチームとしての質を高めているのだということに対するコミットメントと連動しているのでなければ、単にキャリアが展開していきますというラダーをつくっただけでは、少なくともその職員さんたちのコミットメントを高めることにはならないということは一つ留意する必要があるのではないかというのがキャリアに関連する1つ目です。

 キャリアに関連する2つ目は、参考資料3で配られています、月曜日にあった医師・看護師等の働き方ビジョンのところでも、特に看護やリハビリに関して申し上げたところだったのですけれども、今までの介護も看護もリハビリなども多くがそうだと思うのですが、比較的1つのところにずぼっと、どーんと完全に。例えば病院なり施設なりにずぼっとフルにいてということではなくて、介護においても既にサービスとして組み合わせられているものもありますが、泊まり、通所、通い訪問というものを小規模多機能、看護小規模多機能のようなものは既に1つのところで組み合わせられていますけれども、1人の職員の側からしても、それを循環するキャリア、あるいは対象としてもこれから地域共生ということも言われているところでもありますし、1つの法人や事業者の中でだけキャリアを考えるというよりも、地域全体として対象を超えた形で、それもケアの受ける場の形態も超えた形でキャリアの循環をつくっていくということを考えることが、今後、地域全体のケアのリソースを有効活用する上では極めて重要ではないかなと思っています。

 以上です。

○田中委員長 研究に基づく発言をありがとうございました。

 私も地域包括ケアシステムを推進する上では、1つの事業所あるいは事業者の中での進化だけでなく、地域全体を見られるような視点を持った育ち方が必要であると常々思っています。ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょう。

 青木参考人、お願いいたします。

○青木参考人 神奈川県の参考人の青木です。

 今まで資料を拝見しまして、それから議論をお伺いしまして、10ページのイメージ図で、介護福祉士の位置づけを明確化していくということは非常にいいのではないか。

 私も平成19年以降、県立の大学の運営とか、看護の関係の人材の養成などにかかわらせていただいたのですけれども、歴史的な経緯で名称独占資格になってきたというところが、介護福祉士を目指す方々がなかなか増えないという一番の原因でありまして、介護福祉士の業務上の位置づけを明確化していって、先ほど石本委員がおっしゃったような一部業務独占の部分も導入していくというのは、方向性として必要なのではないか。資料も拝見しますと、介護福祉士の割合もかなり高くなってきていますので、かつてのような業務独占を一部入れてしまうと人が足りない、そういった議論はもうないのではないかなということで、必要条件としての介護福祉士を認めていくという方向性がいいのではないか。

 もう一点、入門研修の話で、かつてヘルパー3級資格というのがありまして、それがなくなった後、いろんな団体ですとか一般の方からなくなって残念だと。あれを受けていた方々というのは、まさに裾野を広げる意味で、まずは自分の御家庭で御両親がちょっと弱ってきたので、先々介護するときに備えて勉強してみようという方々が大勢いらっしゃったのです。研修をやっている事業者さんなどもそれでかなり大勢お客さんを集めていたという時代がありまして、ある程度標準的なもの、しかも全国標準で、どこに引っ越しても共通化できるものが必要ではないか。基本的に日本の人たちというのは真面目な人が多いので、ヘルパー研修は資格というのとちょっと違うかもしれないですけれども、簡単な資格でもちゃんと修了証を手に入れて、それでかかわっているということが一つ有効なのかなということがあります。できればその後、初任者研修とかそういったものの一部免除につながるとかいう仕組みがあると、より有効的ではないかと思います。

 3点目として、「入りやすく昇りやすい」というのは、私もスローガンとして見たらちょっとどうなのかなと思いまして、どちらかというとキャリアパスの中ではいろんな可能性が先々広がっているという言い方をしていくほうがいいのかなと。特に若い人にこの業界に来ていただくとしたら、38万人足りなくなってしまうというネガティブなほうから入るのでなくて、38万人の雇用を生み出すビジネスのチャンスがあると。介護保険が始まったころは、かなり大勢のいろんな業種の方々が県庁に一時期来られまして、事業所をつくりたいと。全く異業種の方が相談に来られたという時期がありまして、私は指定とかにかかわっていない、別の部署にいたのですが、総動員でそういう方々に対応したという時期、起業フィーバーのような時期がありました。

 そういう形で、今、若い人は大学を卒業しても大企業に必ずしも志向していないということで、この道で苦労してやっていけば、将来起業家にもなれるというような、そんな打ち出し方もいいのではないか。ちょっとそういうことを感じました。

 以上です。

○田中委員長 ありがとうございます。38万人足りないのではなくて、180万人まで成長してきました。さらに40万人分成長しますと前向きの説明のほうが魅力的であろうと。大変いい点ですね。ありがとうございます。

 関口参考人、お願いします。

○関口参考人 高校の福祉教育のところで来ております。参考人ですので、私見になってしまうかとは思いますけれども、発言させていただきます。

10ページのキャリアパスの全体像を見たときに、高校における福祉教育というのがどこに位置づけられてくるのかなというところを見ておりました。福祉人材を確保していく上で、介護福祉士というのはやはり中核的な存在になるところであって、高校でも今、介護福祉士の養成を行ってきているところです。非常に感性豊かな高校生のときに福祉教育が行われるというのは非常に意義があるものであり、また、高校から福祉を目指してくる子供たちは非常に目的意識が高く、就職してからも離職をしないで頑張っている子供たちが多いと聞いております。そういった意味では、就職した後もさらに上のキャリアを目指して頑張っていける子供たちにつながっているのではないかと思っております。

 また、高校全入時代と言われていて、多くの中学生が高校に進学してきておりますので、高校の教育の中で福祉教育をしていくというのは、今後の社会の中では非常に重要なことなのではないかなと思っております。入門的研修というのが取り入れられていくのであれば、普通科の高校生が受けられる研修のような形であれば、そういったものも高校教育の中に取り入れていくことができますし、さらにその上では初任者研修ということで、総合学科であるとか、あるいは普通科のコースであるとか、専門学科のある高校で実施しているところもありますけれども、そういったものにつなげていくこともできますし、さらに福祉系の高等学校では介護福祉士の養成ということで、国家試験に十分耐え得るような教育を実施してきておりますので、そういった形で高校教育の中でもいろんな形で福祉教育につながっていけるようなキャリアパスになっていったらいいのではないかなと思っております。

 そうしたときに、入門的研修、例えばこういった内容を何時間受けたということであれば、次に行って初任者研修を受けるときに、一部この部分は免除ということで、昇る先が見えるというか、どのように昇っていけるのかというのが見えるということが、非常に魅力を持ってそういった職に参入してきてくれるのではないかなと感じております。

 以上です。

○田中委員長 一わたり御発言いただきましたが、さらに言い足りないことがある方はいらっしゃいますか。伊藤参考人、どうぞ。

○伊藤参考人 質問なのですが、先ほども申し上げた7ページの「簡素な入門的研修」ですが、ここの場とは違いますけれども、厚労省のほうで「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部で医療・介護、福祉分野を含めた複数資格に共通の基礎課程を検討して、2階建ての養成課程を再編していくというようなことが検討されているようですが、これとの関係があるのか、ないのかということについて教えていただければと思います。

○榎本福祉人材確保対策室長 今、御指摘いただきましたこと、要は、医療・介護の職種の資格取得に関して基礎的な共通の課程を設けるという話と、今回の専門委員会での議論の関係性ということなのですが、まずこの専門委員会で議論をすべきことというのは、介護人材のあるべき姿ということですので、それはそれで一つ独立した議論であると思います。ただ、私どもとして今、考えていますのは、今回の専門委員会の議論を踏まえて、来年度介護福祉士の養成カリキュラムの検討ということを考えております。それと今、御指摘いただきました基礎的な共通課程の話というのは関連してくるわけでございます。

 大まかに申し上げますと、カリキュラムの中でこれはほかの職種とも共通的な部分ではないか、あるいはこれは介護福祉士に特化した部分ではないか、いわゆる専門的な部分ではないかということは当然考えていかなければいけませんので、その意味では、この専門委員会の議論そのものに関連するというよりは、むしろこの専門委員会の議論を踏まえた次の検討との関連性が大きくあるのかなと考えております。

○田中委員長 よろしゅうございますか。ほかに御意見はございませんか。上野谷委員、どうぞ。

○上野谷委員 今のお話と関連させて、社会福祉士及び介護福祉士法という1つの法律で2つの資格を出すというのは非常にすばらしい発想だったと思うのですね。歴史的な状況の中で法というのはできてきますので、今、お話があったホームルパーさん、1級、2級、3級、時間をつくりますときも私はお手伝いをさせていただいた経緯があるわけですが、日本の社会的介護の状況は、さまざま研究とさまざまな運動によってここまで来たと思うのです。ですから、そのあたりのことを考えますと、今は介護人材をやっていますけれども、次は社会福祉ですとぶちぶち切れるのではなく、先ほどおっしゃっていただきましたように、福祉ということの意味をきちっと踏まえるということで、いろんな昇り方があっていいと。高校の介護のものがあってもいいし、一般の方々も含め、それこそ就業していない方々を一億総活躍、持っていかないといけませんから、いろんなものがあっていいのだけれども、中核のキャリアパスはきちっとやっていただく。介護と福祉、両方の資格を持つ学生も今求められておりますので、そのあたりの考え方も次、また教えていただければありがたいなと思っております。

○田中委員長 松山参考人、お願いします。

○松山参考人 先ほど140万市場だと。そういう意味では前向きに捉えて参入を促進していく、これはこれで一つの方法なのですけれども、いま一つ、先ほどあったように、実際に現場では介護職員は本当に疲弊している、そういったことも事実あるわけです。

 たしか平成26年の虐待調査で、養護者による虐待は対前年度比0.6%ぐらいの増だったのが、養介護施設の虐待がたしか30%を超えて300件ですか、そういう数字になっていきます。ある意味では、悪貨は良貨を駆逐すると言ったら非常に語弊があるかもしれませんが、そのように核になる介護福祉士養成教育をきっちり検証しながら、高めるものは高める、こういった作業も必要なのかなと感じました。

 以上です。

○田中委員長 川井委員、どうぞ。

○川井委員 皆さんが今、教育のこと等も言ってくださいましたので、少し追加させていただきますと、私のところには大学で介護福祉士と社会福祉士を4年で取りたいという学生が集まってきています。文科省年間単位の上限に縛りがあって、4年間で取ろうと思ったら、単位は確実にとっていかないといけないような現状があります。

 ですから、今は社会福祉士と介護福祉士、先ほど上野谷委員もおっしゃいましたけれども、福祉士としてのものは共通のベースがあるのではないかと思いますので、そのあたりは別のところで議論されているものがあるのかもわかりませんが、ここでもカリキュラム改正の話が出ているので、そういう議論ができたらと思っています。

 以上です。

○田中委員長 では、よろしいようですね。

 第1回はフリートーキングにしましたけれども、それぞれ考える種を提供していただきまして、感謝いたします。

 多少時間が残っていますが、本日の審議については終了してよろしいでしょうか。

 では、次回の開催については追って事務局より連絡するようにお願いします。

 本日は御多忙の折、お集まりいただき、どうもありがとうございました。


(了)

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