ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会> 第1回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会議事録(2016年10月6日)
2016年10月6日 第1回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会議事録
厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室
○日時
平成28年10月6日(木)10:00~12:30
○場所
東海大学校友会館(阿蘇の間)
○出席者
宮本 太郎 (座長) |
相澤 照代 (構成員) |
朝比奈 ミカ (構成員) |
大津 和夫 (構成員) |
奥田 知志 (構成員) |
菊池 馨実 (構成員) |
櫛部 武俊 (構成員) |
駒村 康平 (構成員) |
新保 美香 (構成員) |
田中 弘訓 (構成員) |
長岡 芳美 (構成員) |
西岡 正次 (構成員) |
野溝 守 (構成員) |
森脇 俊二 (構成員) |
山本 英紀 (構成員) |
(代理:滝沢弘参考人) |
渡辺 由美子 (構成員) |
渡辺 ゆりか (構成員) |
和田 敏明 (構成員) |
○議題
(1)座長の選任
(2)生活困窮者自立支援法の施行状況について
(3)その他
○議事
○金井課長 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから第1回「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、検討会の構成員をお引き受けいただき、お礼申し上げます。
本日は、座長の選任までの間、進行を務めさせていただきます地域福祉課長の金井でございます。よろしくお願いします。
それでは、本検討会の構成員を紹介させていただきます。構成員の紹介に当たりましては、五十音順で紹介させていただきます。
まず、川崎市健康福祉局生活保護・自立支援室長、相澤照代様。
市川市生活サポートセンターそら主任相談支援員、朝比奈ミカ様。
読売新聞東京本社編集局社会保障部次長、大津和夫様。
認定NPO法人抱樸理事長、奥田知志様。
早稲田大学大学院法学研究科長、菊池馨実様。
一般社団法人釧路社会的企業創造協議会副代表、櫛部武俊様。
高知市福祉事務所長、田中弘訓様。
山形市社会福祉協議会事務局長、長岡芳美様。
A’ワーク創造館就労支援室長、西岡正次様。
埼玉県老人福祉施設協議会副会長、野溝守様。
中央大学法学部教授、宮本太郎様。
氷見市社会福祉協議会事務局次長、森脇俊二様。
長野県健康福祉部長、山本英紀様の代理として、長野県健康福祉部地域福祉課長、滝沢弘様。
NPO法人キッズドア理事長、渡辺由美子様。
一般社団法人草の根ささえあいプロジェクト代表理事、渡辺ゆりか様。
ルーテル学院大学名誉教授、和田敏明様。
慶應義塾大学経済学部教授、駒村康平様。
なお、明治学院大学社会学部教授、新保美香様は若干遅れて参加とのことでございます。
それから、野洲市市民部市民生活相談課課長補佐の生水裕美様、また一般財団法人地域活性化センタークリエイティブ事業室長、前神有里様は、本日、御都合が悪く、欠席と連絡を受けております。
それでは、事務局を紹介させていただきます。
定塚社会・援護局長。
中井川大臣官房審議官。
藤原総務課長。
鈴木保護課長。
本後生活困窮者自立支援室長。
下角職業安定局就労支援室長。
渡邊課長補佐。
それでは、開会に当たりまして、定塚社会・援護局長より御挨拶を申し上げます。
○定塚局長 本日は、お集まりいただきまして、本当にありがとうございました。この検討会を開催するに当たりまして、一言、その趣旨等について御挨拶を申し上げます。
この生活困窮者自立支援制度は、関係者の皆様の御尽力によりまして施行2年目を迎えることができました。本日お集まりいただいた方々を初めとして、全国の関係者の皆様の御努力で支援が進んでいることに対しまして、この場を借りて厚くお礼を申し上げたいと思います。
この生活困窮者自立支援制度において、相談者や世帯の抱えるさまざまな問題を包括的に受けとめる、いわば「丸ごと」支えるという支援の形でございますけれども、これまでの制度になかった画期的なものだと考えております。また、地域ごとの資源の違い、状況の違いを生かしながら取り組みが一歩一歩進んでいるところですが、そうした取り組みを通じて、個人に対する支援という面だけではなくて、地域の住民同士、お互いの困難を「我が事」として支え合う地域づくりも始まっているとお聞きしているところでございます。こうした生活困窮者自立支援法の基本理念が生活困窮という枠を超えて、地域共生社会の実現を目指すという政策の方向につながってきているところだと感じております。
厚生労働省におきましては、昨年度「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」を発表しましたが、これもこうした流れがつながってきているところでございます。また、「一億総活躍プラン」にも地域共生社会の実現が盛り込まれたということにもつながってきているところでございます。生活困窮者自立支援の皆様方の取り組みが地域共生社会の実現、特に地域力を強化していく取り組みのトップランナーとして位置づけを持ち、期待されているところだと考えている次第でございます。
今回の本検討会はこのような大きな動きを視野に入れながら、生活困窮者自立支援制度が果たしている機能を一つ一つ丁寧に評価し、見直し、検討していただいて、今後伸ばすべきところは何かということを見極めていただくに当たっての論点整理をお願いするものでございます。
本日、全国、さまざまな分野からお集まりいただきました皆様から忌憚なく活発な御意見をいただけるということを私どもも楽しみに期待いたしまして、私の御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○金井課長 それでは、本検討会の座長の選任に移らせていただきます。
選任につきましては、構成員の互選ということになっております。
立候補または推薦の方はありますでしょうか。
和田構成員、どうぞ。
○和田構成員 推薦です。
宮本構成員を推薦したいと思います。理由は、この制度ができる過程、それから、この制度ができた後の定着・発展を常にずっと中心になってお進めいただいているので、適任だと思います。
○金井課長 ありがとうございます。
ただいま和田構成員より宮本構成員の推薦がございました。そのほかにいらっしゃらなければ宮本構成員にお願いできればと思いますが、皆様、いかがでしょうか。
(賛同者拍手)
○金井課長 それでは、皆様の御賛同をいただきましたので、宮本構成員に本検討会の座長をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。
座長席の方にお移り願いたいと思います。
(宮本構成員、座長席へ移動)
○金井課長 それでは、宮本座長から一言御挨拶をお願いします。
○宮本座長 マイクの都合で着席してお話しさせていただきます。
座長を仰せつかりました。皆様のお力添えを得て進めてまいりたいと思います。どうかよろしくお願いをいたします。
この生活困窮者自立支援制度は施行後2年目を迎えました。産声を上げてから3年目を迎えました。この制度ができ上がったときは、それまでの厚生労働行政の常識からすると、いささか漠然とした、少しわかりにくい制度という声もありました。ともかく、縦割りを超えて包括的に支援を進めていく、あるいは継続的に生活自立、さらには就労自立とダイナミックにつなげていく、分権的、創造的、地域に細かいことはゆだねるというスキームでございました。先ほども局長から画期的というお話がありましたけれども、その当時からすると非常に新しい制度だったのです。その分、定着させていくことは苦労を伴ったかと思います。後から事務局からも施行状況について御説明があると思いますけれども、各方面の御尽力で非常に着実に歩を進めてきたばかりか、いわば時代の半歩先を行っていたわけです。こう言うと少し偉そうかもしれませんけれども、時代の方が追いついてきた。と申しますのも、これまた局長からお話がございましたように、同じような発想に立って、高齢、障害、母子、その他、多様な分野の行政のあり方を地域共生社会という方向で転換していこうではないか、そういう大きな流れが起きてきております。したがいまして、この検討会の課題というのは、1つは、この制度固有の問題を抽出し、その解決に向けて知恵を絞っていくということと同時に、この制度が半歩先を行っていたがゆえに、それ以外の大きな制度の転換が、今、同時に進みつつある。そこにも目を十分配りながら、高齢の分野、障害の分野、母子の分野等とどう歩をそろえていくか。そういう意味では、非常に領域横断的なダイナミックな議論を必要としていると思います。
この検討会に御参集いただいた皆様の顔ぶれを拝見すると、本当に多彩で強力な布陣になっております。座長として、これだけの顔ぶれのそのような力量をきちっと引き出していけるのだろうか。そこは皆さんにおすがりするしかないわけですけれども、これだけの顔ぶれの力を結集して進めていく、それだけの大きなミッションを我々は前にしているということなのだろうと思います。どうかよろしくお願いをいたします。
○金井課長 ありがとうございました。
それでは、以降の進行につきましては宮本座長にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
○宮本座長 それでは、議事に入るわけですけれども、本日の議事は「生活困窮者自立支援法の施行状況について」になります。
まず、事務局から、お手元にお配りいただいた資料に基づいて御説明をいただき、あわせて、この検討会の位置づけについてもお話をいただくことになります。その後、皆様からの質疑応答を行っていきたいと思います。
それでは、事務局から説明をよろしくお願いをいたします。
○渡邊室長補佐 それでは、お手元の資料の御説明をさせていただきます。室長補佐の渡邊でございます。よろしくお願いいたします。
まず、資料2からでございます。1ページでございますが、生活困窮者自立支援法は平成25年に成立、公布をされまして、27年4月から施行されてございます。この法律の附則の中で、施行後3年のいわゆる検討規定が設けられておりまして、この規定に基づいてこの検討会で議論を進めていただく、そのような形になります。
その中では、資料の下の方に「経済・財政再生計画改革工程表」をお付けしてございます。この中で、真ん中ほどの四角い枠囲みでありますけれども、29年度の次期生活保護制度のあり方の検討に合わせてこの検討を進めていくということと、最後のところですけれども、2018年(平成30年)の通常国会への法案も含めて考えるということが政府の現在の方針でございます。
6ページをご覧ください。この生活困窮の検討も含めまして、全体で3本のものを並行して進めていこうと考えてございます。
表の一番上の段にございますのが、生活困窮のあり方の検討ということで、今、御紹介したこの検討会のことを記載してございます。
それから、先に一番下を見ていただきますと、生活保護につきましても、同じように、生活保護の一部改正法の附則に基づく検討ということ。それから、生活保護基準。こちらは5年に一度の定期的な検証ですけれども、次期の平成29年度に向けた議論が生活保護基準部会の方で既にスタートしている。そのようなものが2本目でございます。
それから、真ん中に、局長の御挨拶でも申し上げたような地域共生社会の実現の関係がございます。これは「一億総活躍プラン」に基づく検討だということで、資料の9ページまで進んでいただければと思います。
これは、複合化するニーズへの対応ですとか、支え手と受け手が固定していない、支え合いながら皆が活躍できる地域社会づくりといったような理念で「一億総活躍プラン」に盛り込まれているものでありますけれども、この考え方自体は困窮者法の理念そのものでありますし、困窮者法ができたからこそ新たな福祉のビジョンになり、今、ここの「一億総活躍プラン」までつながって発展をしてきているということでございます。
この社会の実現ということではさまざまなものを検討していく必要がありますが、「具体的な施策」のところで赤字で3つ記載しております。特にこの検討会と関連のあるものということで御紹介をいたしますと、一番上のところ、小・中学校区等の住民に身近な圏域で課題を把握して解決を試みる体制づくりでありますとか、下から3つ目ですけれども、世帯全体の複合化・複雑化した課題について総合的な相談支援体制を進めていくというようなことが課題になろうかと思います。
6ページに戻っていただきますと、今の赤字部分の検討をいたします検討会ということで、2段目に記載しております「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会」を設置してございます。これはおとといの10月4日からスタートしているところでございます。ここまで申し上げたように、この部分が困窮者支援のあり方との関連が非常に深いので、この地域力検討会の状況につきましても随時この検討会で御報告させていただきながら議論をお願いしたいと考えてございます。
続きまして、資料3以降でございます。資料3、4、5と3点御用意してございます。資料3がいわゆるデータで見ていただく施行状況、資料4がさまざまな取り組み事例ということで、ベストプラクティスをまとめたものでございます。資料5はこれまでにお聞きしている施行に関する主な御意見でございます。この困窮者制度の現状認識ですとか課題などについては、この検討会でこれから忌憚なく御議論いただきたいと思うのですが、既に困窮室としまして施行実務の中でお聞きしているものも幾つかございますので、それを現時点でまとめさせていただいたという位置づけでございます。
説明は資料3を中心にさせていただきます。
最初の2ページのスライドですけれども、困窮者法の施行状況を示す代表的な指標を御紹介してございます。初年度の新規相談件数としては、全国で22.6万件、プランを立てたものとしては5.6万件ということでございました。この相談というところで言いますと、厚生労働省が設定をしていた目安値と比べると7割ぐらいでありまして、まずまずのところで初年度がスタートしたのではないかと思ってございます。
それから、下の方の一番右を見ていただきますと、今年度から新しく把握を始めたものとしまして、就労・増収率というところでは7割ぐらいの数字が出ているという状況でございます。
今、申し上げたこの新規相談件数が全国で22.6万件ということがどうなのかということであります。3ページに進んでいただきますと、申し上げたように、初年度として目安値の7割まで来たということでありますが、この支援を要する方々でこの困窮者制度の支援につながっていない方々がまだおられるのではないかと考えてございます。ここは1対1の対応ではなかなか難しいわけですけれども、参考値としましてさまざまな社会状況を示す指標を下に記載してございます。このような世の中の状況からしますと、支援を要する方にこの困窮者の支援をよりきちんと届けていくにはどうすればいいかということが1つのポイントになろうかと考えております。
4ページをご覧ください。そういう中で、この入口の機能であります相談を受け付けるということとプランを立てて支援を始めるということについて、自治体の取り組み状況はどのようになっているかということを見ていくわけですが、概況としまして、901の実施自治体の分布を図式化したものでございます。横軸の新規相談件数を見ていただきますと、少ない方から多い方まで非常にばらつきがあるということと、一方で、縦軸のプラン作成率については少し低いところが多めになっているという状況でございます。
これをもう少し細かく見てまいります。6ページまで飛んでいただきまして一番上のところです。この検討会で御議論をお願いしたいポイントとしましては、局長の御挨拶でも申し上げましたとおり、困窮制度が果たしている機能をどのように評価して、どこを伸ばしていくというふうな見極めをしていくかということでありまして、まず、その制度の機能の評価の素材ということでデータをそろえてございます。
大きく1と2に分けていますけれども、まず入口機能として、相談・プラン作成の部分でございます。これは、今、どのような状態像の方がこの困窮制度に来ていただいているのかということ。それから、相談を受けとめるというところで言いますと、自治体の特性・地域性みたいなものが影響しているのかどうかということですとか、逆に、もともと相談にみずからたどり着きにくい方々でありますので、自立相談支援機関の運営の仕方、介入の仕方によるのではないかという観点からデータを見ていただきます。
プランの方につきましても同じような観点で、支援メニューですとか職員配置の状況によってプラン作成に影響があるのかどうかといったことを整理してございます。
また、継続的にプランを立てて支援をするということがこの困窮制度の1つの特徴ですけれども、どこに相談していいかわからない課題の方に対して適切にその他機関を御案内してつないでいくということも1つの機能だと思ってございまして、その実態がどうなっているか。
大きく3つを1のところで取り上げたいと思います。
2の方は、いわゆる自立に向けてさまざまな事業を使っていくわけですが、特に法定の事業につきましてその利用状況と効果を御紹介したい、このような構成になってございます。
7ページからでございます。かいつまんだ説明になりますけれども、7ページで言いますと、新規相談というときにどのような経路で来ているか。上側のグラフで赤で囲んでおりますけれども、本人みずから連絡をして御相談されているケース、関係機関からの紹介、この2つが主な相談経路になってございます。
8ページは、新規相談者の状況でございます。このグラフは年代別、男女別、就労しているかどうかという3つのクロスをかけてお示ししてございます。真ん中ほどに赤い棒グラフ、長いところがございますが、これは40~50代の就労していない男性が全体の2割ぐらいを占めているということ。それから、全体的に青と緑の部分を足し上げますと3割ぐらいは就労をしている方で、就労をしていて生活困窮の相談にお越しになっているということ。それから、65歳以上のところで全体の2割弱を占めている。このような特徴が見られるところでございます。
9ページですけれども、こういう御相談にいらした方々がどのような課題を抱えておられるかということで帳票にチェックがつく項目を左側にお示ししています。全体で28個ありますけれども、この項目の中で何個チェックがついたかというものを集計しましたものが右側の円グラフでございまして、これで2個以上という人が半数を超えているというとろでは、複合的な課題の方の御相談を受けとめているということが言えるのではないかと考えてございます。
続きまして、11ページまで行っていただきます。ここから新規相談件数と地域性の関係を少し御紹介したいと思います。横軸に人口規模、縦軸に新規相談件数をとりまして、市区部813自治体分をプロットしてございます。小さい自治体だから、大きい自治体だからというような相談件数の傾向は見られないというのが1つでございます。
同じようなことを12ページ、13ページで同じようにやっております。12ページは所在する地域で見たもの、13ページは自治体の区分、都道府県、郡部、指定都市、中核市、一般市町村という形で見たものでございます。いずれにしても、上から下まで非常にばらついている、地域性によってどうこうということはないのではないかと考えてございます。
一方で、15ページを見ていただきますと、施行実務の実行の中では、相談は待っていてもそれだけでは来ない。冒頭、関係機関からのつなぎというのが3割ぐらいあると申し上げましたが、そういう中では、関係機関とのつながってくる関係をまずつくるところに非常に手間がかかったりするわけであります。そういうところを考えますと、支援員の配置状況と相談の件数というのは一定の関係にあるのではないか。そういう観点でデータを整理してみますと、右下がりのグラフをお示ししておりますが、支援員配置が手厚いところの方が相談件数が多いという関係が見てとれているところでございます。
17ページまで行っていただきまして、今、申し上げたような問題意識で関係機関との連携状況と新規相談件数の関係があるのかないのかというところもデータを作成してございます。ここを検証することはなかなか難しいところではありますが、一般に庁内連携をしやすいと言われています直営の自立相談支援機関におきまして、実際に相談者がつながった実積のある機関の数を横軸にとってみますと、同じように右上がりの関係性があるということでございます。これは、決して直営を推奨するということではありませんで、委託の場合でも関係機関との連携を深めてこういう形でやっていくにはどのようにすべきかというようなことを考えたいと思ってございます。
ここまでが相談のところでありまして、20ページからプラン作成対象者の状態像を見ていただきます。新規相談者に比べまして、プラン作成者になりますと、男性が多めであったり、65歳以上が少なめであったりという特徴と、21ページで見ていただきますと、先ほどの課題の個数というところで比べますと、2個以上課題を抱える複合課題の方は、プラン作成者になりますとぐっと増えるということで、一定の対応ができているのではないかと考えてございます。
22ページは、プラン作成者は一般就労を目標にされる方とそうではない方とおられるわけですが、一般就労目標かどうかによって、プラン期間内での御本人に見られた変化というのは、当然、就労によった変化になるのか、それ以外の生活保護の適用であったり、医療機関受診などの当座の生活をきちんと支えるという変化になるのか、そういう違いが出てきているということかと思います。
23ページですけれども、どういう状態像の方かというものを性別・年代別で整理しますと、経済的困窮、それから就職活動困難が共通に多いわけですが、3位のところを見ますと、性別・年代別に特徴が見られるという状況でございます。
24ページに進んでいただきまして、ここからは御本人の抱える課題の濃淡を見ていこうというものでございます。「新たな評価指標」という実態把握を始めてございまして、これは課題の濃淡を見ることによりまして、そのステップアップの状況が把握できるという調査でございます。したがいまして、5月から把握を始めておりますので、今後、データが整い次第、どういう状況でステップアップしているかというものを随時資料化していきたいと思ってございますが、現時点としては、5月分の新規相談件数約1万9,000件の中で継続的な支援をすることになった4,000人余りの方々の状態像が細かく見られているという状況です。
それから、他機関につなぐことになった5,000人余りについて、どういうところにつないでいるのかというデータを本日はお示ししてございます。
25ページで見ていただきますと、自立意欲、自己肯定感、対人関係、社会参加という4つのグラフを真ん中ほどに載せてございます。これは支援員が1から4の段階で御本人の状態をチェックしているものでありまして、1の方が厳しい状態像、4の方が自立に近い状態像ということです。自立意欲、自己肯定感でいいますと、4の方が一番多い。一方で、対人関係・社会参加ということでは2の方が一番多いという意味で、社会的には少し厳しい状況にあるということかと思ってございます。
それから、26ページに進んでいただきます。あと2つ、この指標で大きく捉えているのですけれども、1つは、左側、いわゆる家計の状況でございます。生活困窮者でありますので、ほぼ全て家計の問題があるのではないかという実感を我々は持っているわけですが、実際に青と赤と緑の部分で95%を占めるということ。借金や債務がある青い部分。それから、そこまでではないけれども、家計管理がうまくいかないという赤い部分。それから、何とか生活は送れているけれども、貯蓄まではできない、何かあると崩れやすい世帯という意味で緑の部分。これらでほぼ全てが占められるという状況にございます。
それから、右側の就労の状況で見ていただきますと、最も多いのは御本人の準備あるいは環境の準備が必要だという方々。次に多いのは、紫の4のところでございまして、既に仕事はしているけれども、困窮の相談に来られているという方。お仕事を探しているという方はその次になるという状況でございました。こういう状態像に対して支援ツールがそろっているかというのが1つのポイントになろうかと思います。
少し飛ばしていただきまして、30ページでございます。相談に比べますと、プラン作成の方が少し低調だということが冒頭見えていたわけですけれども、何が影響しているかということです。30ページは任意事業の実施の個数とプラン作成率の関係を見たものでありまして、当然ながら、任意事業をしている方がプラン作成率としては高めになるということでございます。
31ページは、コーディネートする支援というのは何も任意事業に限らないわけでありまして、他のさまざまな制度や機関と連携しながら、支援を使いながら支援をしていく中では、つながっている機関、使えるメニューを多く持ち合わせているほどプラン作成率が高く出ているというようなデータでございます。
32ページは、支援員配置とプラン作成の関係ということで、先ほど新規相談件数について見ていただいたのと同じ傾向が出てございます。
33ページは、先ほど申し上げたつなぎの機能というところがどうだったのかというデータです。「新たな評価指標」の中で把握したものでいいますと、5月分の相談件数の中でつなぎ先のリストをグラフ化してございます。全体の相談件数の1割強が福祉事務所生活保護担当の方につながっているという実態にあります。ここは、困窮者の相談にお見えになった中で、要保護状態の方については保護の担当を案内するようにということは困窮室から繰り返し申し上げてきたわけですが、その実態が確認できるのではないかということでございます。
34ページからが支援の状況で、任意事業については全国的に実施率がどんどんと上がってきているということでございます。
一方で、35ページ、36ページを見ていただきますと、自治体ごとのばらつきというのはかなり出てきておりまして、実施率が高い都道府県というのは、都道府県の方で共同実施などのリーダーシップをとっていただいているような背景もございます。
37ページに行っていただきまして、認定就労訓練事業所の認定状況でございます。全体としては6月末で555件ということですけれども、まだまだ認定をされていない自治体もございますし、認定をしている自治体におきましても、困窮者の方が日常生活圏の中で通える範囲に十分にあるかというと、そういう状況にはまだ至っていないという状況でございます。
40ページ以降のところでさまざまな任意事業を中心とした事業の27年度の利用実績と利用した場合の効果をお示ししてございます。大体、それぞれ期待をした事業の効果が出ているかと思います。
資料5ですけれども、このような施行状況をまとめさせていただくに当たりまして、これまで聞かれている主な意見を簡単に御紹介いたしたいと思います。
例えば2ページの1つ目、2つ目の□のところですが、困窮者の相談をこの自立相談支援事業の中で受けとめられるようになったと。これが制度施行の評価だと思っておりますが、一方で、やはり待ちの姿勢ではなくて、積極的に届けるということを考えていかなければならないのではないか。その際には、まず、機関同士でつながる顔の見える関係づくりを深めないといけないのではないか。
一番下に行っていただきまして、そうした取り組みの中で体制整備、取り組みについては強化する自治体とそうでない自治体のばらつきが少し見られるのではないかといったことでございます。
3ページでは「就労支援のあり方」ということで、オーダーメード方式での就労支援が特徴なのではないかといったことですとか、就労準備支援事業の実態や使い方、それから認定就労訓練事業の実態について課題の御指摘などをいただいているところでございます。
4ページ「家計相談支援のあり方」というところです。これについても同様に、家計相談支援事業の専門性についての御指摘であったり、その効果的な使い方という意味では、就労支援と組み合わせた使い方など、もっと広い活用ができるのではないかと、そのような御指摘も頂戴をしてございます。
5ページでは「貧困の連鎖防止に向けたあり方」ということです。これは事業としては子どもの学習支援事業というものがございますが、それをどのように実施するのが効果的なのかといったようなことですとか、3つ目の項目のところで、子どもの支援ももちろん大切だけれども、親に対する支援をしなければ根本的には解決しないのではないか、その部分で困窮者法の世帯支援が重要ではないか、このような御指摘もお聞きしているところでございます。
6ページ以降、住居確保給付金のあり方、一時生活支援事業の広域実施を広めるべきではないかというような御指摘、それから、支援を受けている間の生活費のニーズなどについて御指摘を頂戴しています。それから、社会福祉法人の参画を得たいということですとか、7ページに行きまして、先ほども御紹介したような都道府県の役割、支援人材の質の担保ということで、人材養成についての御指摘、あるいは帳票などの実務上のあり方といったようなことも含めて、これまでさまざまなお聞きをしているという状況でございますが、このような点にとらわれず、構成員の皆様から御意見をいただきたいと考えてございます。
以上でございます。
○宮本座長 どうもありがとうございました。
これだけでさまざまな課題が見えてきたところがございます。今日は初回でもございますので、これから質疑応答をいただくわけですが、皆さん全員に御発言いただく、あわせて簡単な自己紹介もしていただくということで、少し機械的になりますけれども、順番にお話しいただければなと思います。
事務局への質問が出た場合はその都度お答えいただくということでよろしいですか。後で一括してお答えいただきますか。その都度でよろしいですか。質問によりましょう。
それでは、和田構成員から順番にお話を。突然に振ることになりますけれども、すみません。
時間の制約もございまして、大変恐縮ですけれども、何とか3分以内におまとめいただくと大変助かります。よろしくお願いします。
○和田構成員 1つは、継続的な支援というものが先ほど出ていましたけれども、一応プランを立てて、支援をして、例えば支援つきの就労をされたとか、中間的就労で働けるようになったという、まさにその後の継続的な支援の仕組みというか。これはこの制度の中で必ずしもということではないかもしれませんが、それが継続されている場合は、その状態が維持される傾向が非常に強いということが言われていますので、そのところを一緒に考えていく必要がある。これは地域づくりとか、その人の社会参加を継続できるようにするとか、仲間づくりをするとか、いろいろなことがあると思うのですが、それが1つはすごく大事かと思います。
もう一つは、家計相談ですけれども、自分の生活の家計、お金がどうなっているかということについて自分で客観的に考えるということはなかなか難しい状態にあると思うのです。それをこの支援のプランの中にできるだけ、特に継続して支援する方の場合はそこを意識的につなぐ仕組みをもう少しきちんとした方がいいのではないか。任意事業で実施していないところに伺っても、何らかの形で同じようなことをしていらっしゃるということもあるので、やはりこれはすごく大事なことなのではないかと思っています。
すみません。とりあえず幾つか考えていたのですが、今、ぱっと出てきませんので。
○宮本座長 あわせて、恐縮ですけれども、これまで取り組まれてきたことを簡単に自己紹介お願いします。恐らく皆さん、和田構成員のことをよく御存じだと思いますけれども、念のため自己紹介をお願いできますか。
○和田構成員 この制度とのかかわりでは、従事者の研修体系をつくる取り組みに参加して、教科書をつくるとか、研修の中身をつくるというようなことを担ってきました。そこが私の役割の中心だったかと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
続きまして、渡辺構成員がお2人いらっしゃいますけれども、渡辺ゆりか構成員から自己紹介も兼ねてお話ししいただきます。
○渡辺(ゆ)構成員 名古屋から参りました。一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトという団体の代表をしております渡辺ゆりかと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトは、経済的な困窮、貧困や社会的孤立にある方々をひとりぼっちにしないということを目標に、2011年に立ち上がった団体です。ようやく5年目を迎えた小さな団体で、私もこのような場に座らせていただくのは初めてで、昨日の夜眠れないぐらいすごく緊張して参りました。よろしくお願いいたします。
私たちの団体は、重複した課題を抱えた方、生きづらさを抱えた方こそ、今、日本の社会では排除されてしまう、社会のつながりが必要な人ほど、人との温かいつながりから遠ざけられてしまうということに疑問を感じています。そのため制度や障害の有無に関係なく、孤立している方の所にまず駆けつけて、困り事を聞き、一緒に試行錯誤しながら応援する「猫の手バンク」というボランティアバンクを立ち上げるところから、活動をスタートしました。今、そのボランティアバンクが名古屋市との共同事業になったり、あるいは「名古屋市子ども・若者総合相談センター」を受託させていただいたりと、少しずつ事業化してきたところです。しかし、事業化した後も当初のボランティア団体のマインドが残っておりまして、地域の中で社会につながることができない、事業所や支援機関とうまくいかず、たらい回しにされてしまう、そのような方々を何とか社会につなげ見守っていけないかということで、地域の中でチャレンジをしている最中です。このような場に立たせていただくような経験はまだまだ浅くて、今回、学ばせていただくばかりですが、どうぞよろしくお願いいたします。
今の説明を受けまして、私から質問というより感想になってしまいますが、まず、資料3の3ページにあります、失業期間2年以上の長期失業者(15~64歳)の多さというのを感じています。その中で、この生活困窮者自立支援法は、23ページにもございますように、困り事の1位、2位が就職活動困難、経済的困窮ということですので、3位の皆さんが持っている環境の困り事、御本人が持っている特性の困り事、社会から排除されたがゆえの困り事に丁寧に寄り添いながら、徹底した寄り添い型の伴走型の就労支援の強化がとても必要なのではないかと思いました。
26ページには、就労の状況のカテゴリーとして「1 就労のために本人、周囲、環境の準備が必要である」とございます。2には「支援付きの柔軟な働き方が必要である」となっていますが、これは特定の方々に1、2を提供するのではなく、窓口にいらっしゃるような、社会のつながりから一旦離れた方、困窮されている方々全てに対して必要な要素ではないかと思いました。それらの徹底した寄り添い型の支援つきの就労支援と、本人をむやみに変えるのではなく周囲・環境を合わせていく就労支援が必要だと思ったときに、今ある制度の就労準備や就労訓練、あるいは自立相談の中の就労担当の方が、一人一人に合わせて、連続性を持って丁寧に支援していく、サポートつきの就労支援を今後強化していけたらいいのではないかと思いました。
最後ですが、37ページにあります認定企業のカテゴリーですが、(4)の、いわゆる事業所は社会福祉法人がとても多くなっていて、株式会社がいま一つ少ない。3分の1くらいになりますか。企業に生活困窮者の方々の受け入れを企業開拓でどんどんお願いして、御本人がそこで実習後に雇用され、長期的な就労のもとに生活困窮を脱するような支援の必要性があるのではないかと思いました。
ありがとうございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
今の渡辺ゆりか構成員のお話も感想、コメントということですので、進めさせていただきます。
続きまして、渡辺由美子構成員、よろしくお願いします。
○渡辺(由)構成員 NPO法人キッズドアの理事長をしております渡辺です。私も今回初めて参加させていただきまして、ありがとうございます。
NPO法人キッズドアというのは、低所得世帯のお子さんの学習支援をやっておりまして、2010年から東京の新宿で始めまして、今は東京と、宮城県の方は仙台市と南三陸町、あと福岡の方で連携団体と少しやらせていただいたりということで、昨年でいきますと、25事業所で1,000人ぐらいのお子さんを継続的に見てきました。この法ができたおかげで昨年、一昨年から実施したいという自治体が増えてきて、私どもで受託させていただけるところも増えており、今年は拠点としては40を超える形になってくるかと思っています。そういう意味で、この法律ができたことで子どもたちの学習支援といいますか、生活困窮世帯のお子さんたちの状況もわかってきましたし、支えることができているということでは非常に感謝している次第です。
私も質問ではなくて現場で見ていて思うこととしては、1つは、学習支援ということで、勉強をさせるのでしょうと思われる方も多いと思うのです。もちろん、勉強はさせるのですけれども、塾とは違って、生活力が非常に足りなかったり、ソーシャルスキル、コミュニケーション能力が低いなど、そういう子たちも多いので、そういうことを一緒に学ばせるような場にもなっていると思っています。
私たちの学習支援ですと、ボランティアがかかわる中で、マン・ツー・マンのかかわりをします。あとは、母子家庭のお母さんとかが多いのですけれども、保護者の方たちに、ちゃんとお子さんを来させてくださいねとか、お子さんの今日の様子はこうでしたよというようなことを伝えることで、そういう方たちの心のケアとか、生活力の向上と言いますか、ソーシャルスキルの向上みたいなことにもつながっていると思っています。
最近少し感じることとしては、お子さんといっても、赤ちゃんから高校生、大学生まで非常に広い中で、小さいお子さんは地域の中で見守るということがすごく適していると思いますし、早くからその体制ができるとよいと思う反面、中学生ぐらいになると、特に子どものところではスティグマと言うのですけれども、そういう支援を受けていることを外に知られたくないということがあったりするので、いろいろなことに気をつけながらやらなければいけないと思っていますし、その段階、段階によって必要な支援が違ってくると思っています。
もう一つは、私たち、メインは中学生で、小学生、高校生を支援しているのですけれども、全体的に見て高校生の支援が非常に少ないと言いますか、せっかくいろいろ積み上げてきても、高校のときに、やはり家庭の生活基盤が弱いので、せっかく高校に入れても高校中退をしてしまうとか、悪い友人関係の中でそちらに引っ張られてしまう。そのようなことがあるので、高校生の支援がもう少しあって、ちゃんと高校を卒業できると、生活保護家庭の自立ということにもつながりますし、ニートやひきこもり、若者、若年無業者の問題になる前に、かなり予防できると思います。そこの観点が、一億総活躍のプランとか、内閣府の子どもの貧困対策でも割と高校生が抜けているのですが、そこが重要かと思っております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
今の短いお話からも随分ヒントをいただいたように思います。
続きまして、山本構成員の代理でいらっしゃいますけれども、滝沢さん、よろしくお願いいたします。
○滝沢代理 長野県から参りました滝沢と申します。よろしくお願いいたします。
本県の取り組みについて若干触れさせていただきたいと思います。
平成23年度からパーソナルサポートのモデル事業ということで、本県では4地区から実施をしてまいりました。27年の法施行を受けまして、長野県内には19の市と郡部を所管する福祉事務所が10カ所あり、合わせて29地区になりますが、一部、市と県で共同設置や併設という形で相談支援事業を実施していますので、生活就労支援センターの数とすれば県下23カ所で事業を展開しているという状況です。
先ほど都道府県のリーダーシップというようなお話もあったのですけれども、支援員の研修については県が質向上のための研修を実施したりですとか、任意事業の就労準備支援については、どうしても市部だけでは事業規模が確保できない場合に、県の方で負担金を頂戴して共同で事業を実施するというような取り組みも今年度から始めております。郡部、県が実施している部分において任意事業のうち子どもの学習支援事業については、長野県の場合、まだ取り組んでいない訳ですが、来年度の実施に向けまして、どういう形で事業を構成したらよいのか担当課の方で検討している状況です。
法施行後1年たっての課題ということですが、当県では生活困窮者の支援団体と定期的に懇談会のような形で意見交換をしています。その懇談会の中で、生活就労支援センターについて、23もセンターがあるとどうしても個々の力量差があるのではないかという課題があります。そのセンターの力量差というのは、支援員の力量差なのではないかと思うのですけれども、中には、いまだにたらい回し的な対応になってしまうということも現場の声として聞く部分があります。今後一層、支援員また生活就労支援センター全体の力量の均てん化と全体でのレベルアップに努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
今もお話があったとおり、この制度、基礎自治体が大変大事な役割を果たすのですけれども、都道府県がその間をコーディネートしていただくことは非常に重要な課題として浮上してございます。長野県は率先して大事な取り組みをしていただいていると理解しております。この辺もいろいろよろしくお願いをいたします。
続きまして、森脇構成員、よろしくお願いします。
○森脇構成員 よろしくお願いします。森脇です。私の立場としては、この生活困窮者の自立相談支援事業を市から受託している立場でもあり、この制度の目指すところである地域づくりというところで言うと、社会福祉協議会という立場、この2つで少し考えていきたいと思っています。
私ども氷見市は、この制度ができるということを1つの契機として、市の庁舎の中にこの自立相談支援機関を設けて、私ども社協がそこの一角でいろいろな相談を受けておりまして、私も主任相談支援員としてそこに常時いるような状況になっております。従来、市役所に来られた方々、制度的にはどうしようもないですねと言われていた方々は、これまではお帰りになられていた。そして、何回も足を運ぶ。この2年、モデル事業も含めると3年になりますが、そういう方に実に多く出会った。その都度、市役所に行ってもだめ、では、私たちはどうすればいいのだということで、どこにも頼れないという方々が私どもの支援機関の方につながっていただいたということがあり、この制度ができた意義というのはとても大きな意味があると思います。
あわせて、市役所の各担当も悪気があってそうしているわけではなくて、やはり自分の担当の範囲の中でどうできるだろうかということを真剣に考えた上でも、結果的に、残念ながら難しいですねということになってしまう。隣の課が何をしている、どんな制度を担当しているかということが全くわかっていなかったのでつなぎようもなかったということも、連携をしていくうちに何となくわかってきました。私どもは私たちだけで何かできるわけではないので、必ず各課に何かできないだろうかという御相談をさせていただきながら行くので、そこの課がどういう制度に基づいてどのような支援をしているかということが必然的にわかってくるのです。最近は、変な話ですけれども、私たちが市役所の課と課を、担当と担当をつながせていただくようなこともあります。1回つながればそこ同士がつながりますので、そこは担当もぐるぐる変わる市役所ならではの組織体制なので、どこがよくてどこが悪いというわけではないのかなと感じております。
今回のこの制度の法律的なところというよりは、1つ、現場でやっていて、都道府県の役割というのはとても大きいとすごく感じています。私ども5万人規模の人口であると、住まい、そして就労は氷見市の中で完結しません。特に就労に関しては、お隣の市に就労先を求めていくということがあります。そうすると、多くの方々が移動手段を持っていませんので、住まいもあわせてそちらに移らざるを得ないということと、本人がそれを希望されるということもあり、広域的につながっていく必要があると感じています。
できれば氷見市の中でいろいろなものを本人に合った形で提供できればいいとは思うのですが、住まいも含めてかなり限りがあるということを考えたときに、私たちもしっかりアセスメントして、本人の了解をとってつなげますが、その後、関係がぷつりと切れてしまう事例というのが二、三ありました。その中のお一人から、ある日突然私どもに電話がかかってきて、まだお隣の市にいるのですけれども、何とかならないかという相談を受けた。その市の担当から何も聞いていないかというと、引き継いだときは顔合わせをしておりますので、そのときに困ったことはないかと聞かれて、今はないと答えて以降、何の連絡もなく、自分もよくわからないのでどうしたものかという相談がありました。そういった中で、どのように連携をして引き継いでいくかということはとても難しいことでもあるのですけれども、これはどこがよくてどこが悪いというわけではなくて、都道府県レベルでもう少しそういったことに対してどういう連携がとれるかということを考えていく必要があると感じております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
この制度が氷見市の中でも課と課をつなぐ1つのきっかけになっているということは、大変勇気づけられる話です。あわせて、住居と就労をめぐる都道府県と市町村の役割分担、これまた大事なテーマを出していただいたと思います。
続きまして、野溝構成員、よろしくお願いをいたします。
○野溝構成員 御紹介いただきました野溝です。私は、埼玉県老人福祉施設協議会副会長という立場でこの席にお招きいただいておりますが、法人といたしましては、社会福祉法人崇徳会理事長といたしまして、特別養護老人ホームマザーアース等、介護保険事業にかかわらせていただいております。
生活困窮者自立支援制度とのかかわりにつきましては、この法律ができる以前、この中にも任意事業として子どもたちへの学習支援事業がありますが、皆様も御存じのとおり、埼玉県が全国に先駆けまして、子どもの貧困の連鎖の解消ということから子どもたちの学習支援事業を始めました。学習支援事業は、本来であれば教育部局の仕事でありますけれども、埼玉県は福祉という観点から、生活保護世帯の子どもたちの学習支援を行うことによって、独立して親になっても生活保護世帯にならないようにということで学習の支援を開始したわけであります。
2010年9月よりこの事業が始まったわけでありますが、私はこの事業が始まるときから特別養護老人ホームの食堂、あるいはデイサービスセンターを実施会場として提供いたしまして、子どもたちの支援のサポートをさせていただいております。御存じのとおり、この学習支援教室の事業は、アスポートという一般社団法人が主に県内で行っております。私ども埼玉県老施協の施設はそこに会場を提供するということでありましたが、ただ会場を提供するだけではありません。子どもたちの偏差値を上げるためだけの事業ではなく、入所しているお年寄りの皆さんとの触れ合い、そして何よりも、そこで働いている自分のお兄さんやお姉さん、あるいはお母さん、お父さんのようなこういう職員の働く姿を見ていただくことも、子どもたちへの支援だと感じております。
特に生活保護世帯の子どもたちは、学力が低下すると学校にも行けない、ひきこもりになってしまうというところから、ますます学力低下になってしまい、高校進学がままならなくなってしまうわけであります。中学校卒でも本人の意欲によっては十分仕事ができるわけでありますが、今日の日本の社会・経済情勢の中では、中学校卒という中での就労というのは大変厳しいものがありますので、どうしてもその後が不安定な就労になってしまいます。
そういったことからいたしますと、私たちの特別養護老人ホームがお年寄りとの触れ合い、そして職員の働く姿を見ていただくことにより、子どもたちが学習意欲を高める中で、高校に進学し、将来の自分の進路の選択肢が広がっていく。そういった中で、何よりも信頼できる大人が自分の周りにいるのだということを、職員あるいはお年寄りの姿を見ながら感じ取っていただいているのではないかと思います。
ひきこもりであった子どもたちが学習支援教室マザーアースには通ってくる。そういった中から、学校にまた戻っていった姿を何人となく見させていただいております。そういう意味におきましては、私どもの特別養護老人ホームというものが子どもたちの居場所にもなっている。また、成長の結果にもなっているということを自負させていただいています。
しかし、その親、保護者を見ますと、やはり生活保護状態という大変厳しい現実を見させていただいております。そういった中から、先ほどのお話にもありましたとおり、親への支援というものも私たち社会福祉法人として手がける必要があるのではないかということから、私どもの施設での簡単なパート・アルバイトも紹介させていただきまして、一時期の就業にかかわっていただいたこともあります。今後もこの事業には、私ども埼玉県老施協といたしましても、もちろん我が法人といたしましてもかかわっていく所存であります。
もう一つは、生活困窮者の自立支援法が制定されまして、制度が始まったわけでありますが、それに先駆けまして、埼玉県では県内全ての社会福祉法人等に参加をしていただき、埼玉県社協と各市町村の社協にもかかわっていただきまして、彩の国あんしんセーフティネット事業という生活困窮者の総合相談事業を始めております。
現在、埼玉県内の法人の約20%であります165の法人に加入をしていただいております。施設といたしましては、老人福祉関係で128の施設。これは特別養護老人ホームを中心といたしまして、軽費老人ホーム、ケアハウス等でございます。障害福祉施設では31の施設に会員となっていただいております。その他、保育所、児童養護施設、母子生活支援施設等で22施設でありまして、現在52の市町村社協に加わっていただきまして彩の国あんしんセーフティネット事業を行っております。
26年9月1日から事業を開始いたしまして、28年9月28日現在、980件の相談支援を行ってきております。その中で、困窮状態である方には現物給付を行うわけでありますが、現物給付といたしましては661件行ってまいりまして、金額といたしまして1,745万5,871円、給付1件当たりの平均ですと2万6,408円という額になっております。この額は食料品の給付が主でございますので、このような額でありますが、中には、ライフラインでありますところの光熱水費が支払われないために止められている、あるいは家賃を滞納しているために退去を求められている、そういった方々には光熱水費の給付、あるいは家賃等の支払いも行ってきております。
年齢構成としては20代、30代、40代、50代が全体の相談件数の64.8%になっております。まさに稼働世帯の方々の相談件数が多く、男女の比では男性66%、女性が34%であります。
給付の主な内容といたしましては、先ほど申し上げたとおり、食料品支援等が一番多く、光熱水費、日用品費、それから、就労活動するにもハローワークに行くにもお金がないということから、そのための交通費を支給したり、また医療機関にかかるにもお金がないという場合には医療費の方もお支払いさせていただいております。
私たちは、伴走型で寄り添って自立の支援をしておりますが、このような方々は現物給付だけではなかなか自立支援にいかないということから、来年4月より始める予定で、就労支援についての事業を準備させていただいております。現物給付から、自立するために就労できる方には就労していただく。このような方々は、就労につきましては自分の力だけでは大変難しい方が多いわけでありますので、参加していただいている社会福祉法人で就労訓練をしていただきながら、マッチングできる制度にしていきたいということで、現在、準備をさせていただいております。
生活困窮者自立支援制度の相談プロセスの中で、他機関からの紹介というところがありますが、できますれば、我々彩の国あんしんセーフティネットが自立相談支援機関と連携して生活困窮者の把握、そして相談支援への橋渡しを行い、そして支援調整会議の中でプランをつくる中で私どもも参画できればと思っております。
○宮本座長 ありがとうございました。
今、地域の多くの福祉事業者が高齢だとか子どもだとか困窮だとか、そうした従来の境界線を越えて活動が広げられて、むしろ人々の支え合いを支えるといったような取り組みに広げられている。これをこの困窮者自立支援制度にどうきちっと連結させていくのかということが今のお話からも大事なテーマとして浮かび上がったと思います。ありがとうございました。
引き続きまして、西岡構成員、よろしくお願いをいたします。
○西岡構成員 西岡です。A’ワークという地域職業訓練センターにおりますが、もともと自治体の職員ですから、自治体の観点から発言をしたいと思います。
1年目の事業の評価について報告いただいたのですが、もう一つの観点として、それぞれの自治体がこの制度をどう受けとめたのか評価して欲しい。地域共生社会や働き方改革、介護分野での地域包括ケア、生涯現役社会などと、いろいろな形で重なっているようですから、自治体ごとにそれら重なりをアレンジ、政策化しないといけないというテーマが出てきている。その中の1つにこの制度があるとしたら、自治体はこの生活困窮者自立支援制度をどのように評価しているのだろうか。
例えば、27年度の政府予算をどのように自治体レベルで執行したのか。執行率です。国は財源制度を用意したが、自治体はどこまで使ったのか知りたいところです。
いろいろな自治体を回る機会があるのですが、自治体は新しい事業と理解して実施しなければならない義務的な仕事なので、財政の制約の中で苦労しているのが現実的なところだと思うのです。
しかし、中には一歩踏み込んで、先ほどあった地域共生社会のような発想あるいは働き方改革という発想から、人的資源として住民の力をどうしたら伸ばせるのかという形で捉える自治体も当然あります。そういう自治体は予算のつけ方が大分変わります。
義務的な仕事として、福祉部門に位置づけて、その予算枠の中でシャッフルして、可能な事業化をするみたいなことは従来の発想かもしれません。では、福祉部門を超えて、働き方改革というアプローチになると、もう少し違った、政策的な事業の設定というか、自治体全体の観点からの設定になると思うのです。そういう自治体の動きも見ていただきたい。ひとり親関係や高齢関係など、さまざまな事業・政策が動いているわけで、自治体としてそのような政策や制度、財源をどう組み合わせていくのがベストな地域づくり、地域共生社会の政策づくりなのか。そういう方向を何らかの形で示していかないと、ますます自治体財政が厳しくなるわけですから、自治体としてこの制度の先行きが見えなくなる。この制度の意味みたいなものがはっきりしないし、なかなか継続できないと思ったりしています。
この制度自身が直接狙っていることも大事ですが、自治体という枠組みから見ると、地域の人材を狭いサービスの対象というよりも広く見て、人的資源としてエンパワーするというか、よりよい生活、よい働きができるように支援する政策の材料、手段なのだと捉えたら、もう少し違った観点の事業執行スタイルもあるのではないかと思っています。福祉と労働との連携とか、教育との連携などとともに、自治体目線からこの制度のアウトプット、アウトカムみたいなものを見て議論していただくことも、大事な制度評価になるのではないかと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
狭い意味での福祉の縦割りを超えるだけではなくて、西岡構成員のお話は、もっと大きく、福祉と経済、そうした分野も超えていく、実際にその転換を促していくということの大事さをお話しいただいたと思います。
この制度は1つの社会的投資なのだというお話。逆に、野溝構成員からは、社会福祉法人が今、就労支援に取り組んでいるというお話がありましたし、その双方からアプローチして、接近していく。経済部局と福祉部局、経済関係者と福祉関係者が双方から接近していくことが重要かと思いました。
続きまして、長岡構成員、よろしくお願いをいたします。
○長岡構成員 私は東北地方の山形県の山形市社会福祉協議会の事務局長の長岡と申します。よろしくお願いいたします。
私を構成員として選んでいただいた理由は、まず、25万ぐらいの人口の中規模の都市ということと、25年からモデル事業を始めているということ、あわせて、権利擁護関係の事業を成年後見センターですとか、法人後見を今、90名ぐらい受けておりますが、そういった権利擁護の物証とともにあわせて進めてきているということ、あと、今回、多機関の協働による包括的構築事業の方も受けて進めているということもあって選んでいただいたと思うのです。そんな受託事業の中で感じていることを述べさせていただきたいと思います。
資料2の最初の附帯決議のところですけれども、「包括的・継続的に支えていく伴走型の個別的な支援のための体制を整備」ということで、これはすごい事業だと思いまして山形市社協で受けたわけです。実際にやってみますと、相談の件数が半端な数ではない。とにかくどんどん相談が来る。当然、いろいろな地区に出向いて行っての広報ですとか、やり方もいろいろ工夫しながら支援してきておりますので、地域の方々からの相談も上がってきます。そのような中で、伴走型、そしてアウトリーチが難しいというのが現場の声でございます。そんなことを言わないでどんどん外に行くように伝えても、相談の対応に忙殺されてしまっているという状況がありました。
そこで、8ページです。山形市では、この度多機関の協働による包括的支援体制構築事業を行政との連携で受けることになりました。現在、さらに充実させていこうということで、こちらの支援員とあわせて支援を進めているという状況でございます。それでも行政では生活困窮とこの多機関の協働の関連がいま一つ御理解いただいていない、ばらばらに捉えられているという感じを受けています。
今回、10ページの「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現や、12ページの「地域における住民主体の課題解決・包括的な相談支援体制のイメージ」が出されたことによって、行政の職員は、山形市の今後のあるべき姿を構想していこうと勉強会を進めようという状況になっております。
社協としては、地域包括支援センターができる10年前からこういった地域の相談体制構築の提案などもずっとしてきてはいるのですが、なかなか進んでこなかったという現状があります。
ここでこういうことを申し上げるのはどうかとも思うのですが、どうしても東北地方は、何か新しいことをしようとすると、必ずほかの市町村はどうしているのということになって、財源の問題もあるのでしょうが、なかなか率先してできないという状況があるのではないかと思います。それで、配布資料で見ますと、任意事業もかなり低い状況です。家計相談も大事だ、大事だと一生懸命伝えているのですが、なかなか難しく、社協から県社協の取りまとめで県の方に提案していただいて、今度、県から各市町村に進めていただいているような状況です。来年からは始められるのではないかと思っておりますが、そのような状況でございます。
もう一方で、行政の方でのソーシャルワーク機能がどうなのかと非常に疑問に思う部分があります。そこは恐らく、当然、異動があるものですから、そういった専門機関の活用とか利用とか、どんどんしてもらえればよいと思っているのですが、その辺もなかなか進まない。そういう中で、このたび多機関の協働によるモデル事業を受けたことによってとても画期的になってきました。職員の1人が毎朝市役所に出向いていっている、出勤して行くということで、先ほど森脇構成員がおっしゃられたような横を何とかつなごうという形で、9月から進めているところでございます。
もう一点は、資料5にありました困窮なのか生活保護なのかというところです。□の3番目です。「対象者が生活困窮者であるか、生活保護受給者であるかにより法体系を分けているが、対象者の立場からすれば両者は連続的な状態像である」ということですが、今現在、支援員が一斉に口をそろえて言っているのは、離れてしまえばそこで関係が途切れてしまうという問題があるという状況が出てきております。この仕組みづくりの突破口として、この多機関協働のモデル事業で何とかしたいと思っております。あるいはまた、別の面からの何らかの仕組みがあれば、もう少し継続的な支援ができるのではないかと考えているところです。
もうちょっとよろしいですか。
○宮本座長 どうぞ。ただし、あと短めにお願いします。
○長岡構成員 すみません。
それと、プラン作成に至るか至らないかというデータがあったのですけれども、どうしてプラン作成に至らないのかという理由のところですが、ここはやはり分析が必要なのではないかという気がいたします。もしかしたら、早期の相談、問題が複雑化しないうちの相談であれば、いろいろなところにつなげやすいですし、プランが必要でないというふうに判断できるかもしれません。あるいは、もっと深刻化してしまえば、きちんとつながるような働きかけの仕組みも必要になってくるかもしれない。あるいは、また別のネットワークをつくっていく必要があるかもしれないと考えますので、この辺は分析していただいて考えていく必要があるのではないかと思ったところです。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
最後のプラン作成の数の問題は引き続き分析を深めていかなければならないなと思います。
あわせて、社会福祉協議会が多機関協働という本来の強みをこの制度に関して発揮していただくことが大変大事かと思っております。
引き続きまして、反対側のテーブルに移りまして、田中構成員、よろしくお願いをいたします。
○田中構成員 高知市福祉事務所の田中でございます。宮本座長と奥田構成員には当市の岡崎市長がお世話になっております。
高知市の保護率というのは全国平均の倍の37.8‰、パーセンテージでいうと3.8%。平成22年度ですけれども、高知市内の私学、高知市の学校全体のうち生活保護受給者の生徒の進学率が非常に低く6割程度だったということがあって、23年からチャレンジ塾という事業を始めております。当初は5カ所で35名の学習支援員を配置して実施していましたが、年々増加しまして、25年度から10カ所、70名に増員しております。
このチャレンジ塾の事業の予算が生活困窮者自立支援事業の予算の半分を占める規模になっていますけれども、1つは貧困の連鎖を断ち切らなければいけないということと、高知県でいいますと、医療機関であったり、介護だったり、いろいろなものが高知市に集中しておりまして、郡部からも集まってくるというところがありながら、生活保護の受給率がなかなか下がらないという実態がございます。中でも、この事業を始める前からもそうなのですが、水際作戦ではないですけれども、これまでは生活保護に相談に来てもどうしようもないねと帰ってもらっていた方たちをこの制度で救うことができるようになったというところが非常に大きなところだと思います。
この事業で支援していく中で見ると、一般就労に結びつきにくい方が非常に多いということ。疾患でいいますと、精神疾患、神経系の疾患が非常に多いという傾向がありますので、どうしても中間的就労や障害の方の就労移行支援とか、いわゆる混合型の事業を展開していかないと非常に難しいです。さらに、その家庭にいる子どもたちの進学率は低いです。
27年度は生活保護の世帯に中学3年生が54人いらっしゃったのですけれども、2名が転校しまして51名が高校に進学できました。生活保護以外の世帯も約9割が高校へ進学できておりますので、チャレンジ塾の効果は非常にあるかと思います。
あと、これにかかわってくれている教育学部の学生たち、あるいは民間企業の理学系の方たち、あるいは社会科専門の教員OBとか、こういった方々が参加してくれておりまして、効果が非常に上がっております。学校に行かない、不登校だけれどもチャレンジ塾には来るという生徒もおいでになりまして、そういった意味では効果があります。しかし、先ほど来話が出ていますように、チャレンジ塾で頑張ったとしても、家庭環境に非常に左右されやすいので、家庭への支援も欠かせません。それと、森脇構成員からもありましたけれども、支援の継続性というところ。例えば生活保護から自立してしまうと、はい、そこでおしまいと。この制度につないだとしても、就労につながったらそこで支援はおしまいよとしてしまうと、先ほどみたいに対象の方が一般就労できる方であればいいですけれども、そうでない方が多い中では、その先の継続をどうしていくのかというのが1つ大きな課題だと思います。
もう一つは、この相談支援事業にかかわる支援員のスキルアップです。これは経験を重ねていかないとなかなか無理な部分がございます。例えばハローワーク職員の研修を受けるとか、そういったスキルアップの場面をつくっていかないと、いろいろな機関につなぐとしても、そういったところのノウハウは必要だと思います。困窮者への支援だけではなしに、困窮者を支援する支援員への支援というものをこの枠組みの中では1つ考えていただけたらいいのかと思います。
保護率がなかなか下がっていかない。私は3月まで国民健康保険を担当していたのですが、前年からいうと、国保に被用者保険から入ってくる割合が意外と少なくはなっています。そういう意味では、多少なりともアベノミクスの効果もあるのかと思うのですが、今言ったように、仕事という面でいくと、認定を受けてくれる法人が少ない。そこにはインセンティブがないというのがある。企業も、アベノミクスの効果がない中で、ボランティアでやっていくというのも企業のステータスを上げるために必要なのでしょうけれども、そこには何がしかのインセンティブがないと、認定事業をやりましょうと言ってくれるところが非常に少ないというのが現実ですので、そういったところへの支援があってもいいという気がしております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
いろいろな論点を出していただきました。先ほどの渡辺由美子構成員からのお話にもありましたけれども、子どもの支援をしているところは多いわけですが、家計、世帯を全体として支援する場がなかなかないということで、この制度はその1つのきっかけを提供しているわけです。これをどう育てていくのかということも今のお話の中の大事なポイントかと思います。
続きまして、新保構成員、よろしくお願いをいたします。
○新保構成員 明治学院大学の新保と申します。本日は遅れての参加となり、申し訳ありませんでした。
私は、この制度が始まりましてから、自立相談支援事業、就労準備支援事業の従事者養成研修の企画部会などに携わらせていただいております。自立相談支援事業の国の研修というのは、主任相談支援員、相談支援員、就労支援員、3つの職種、それぞれ6日間、丸一日が3日ずつ前期・後期に分かれるのですけれども、かなり濃密な研修会を実施されてきています。今までになかった新しい支援を担うという支援員の方々が熱い思いを持って全国から集まって来られていまして、年々、そういった方たちとともに歩みを重ねてきています。
これは、これまでなかった新しい支援を地域の状況に合わせて創造していくものですので、高度なスキルを持った支援員を養成するということが1つの目標としてあるわけです。それをどう養成していくかが課題です。研修では全国の課題がそこに寄せられます。講師の皆さんはもちろんなのですけれども、参加者の中にもさまざまな地域の課題をこんなふうに解決してきたという経験を持った方がたくさんいらっしゃいます。単に人材養成をする場としてではなくて、課題を改めて見つめ直して、それに何ができるかということを共有していく場にもなっているのかと思っております。
加えて、自立相談研修の方は3年目になりましたので、研修内容も現状にあわせてかなり充実してきています。それは、厚生労働省の生活困窮者自立支援室の皆様の御尽力、それから研修を受託されている全国社会福祉協議会地域福祉部の、少しでもよいものにしていこうという思いの中で、かかわっているメンバーも取り組みを進めているというところだと思います。
この制度は、人がとても大切だと思いますので、先ほど構成員の皆様からのお話がありましたように、現状の中でどういうふうに人材養成ができるか、この制度の特性や現状に合わせて何ができるかという発想を大切にしながら考えていくことができるといいのではないかと思っております。
以上です。よろしくお願いいたします。
○宮本座長 ありがとうございました。
領域横断的というのは、言うのはたやすいわけですけれども、支援員の皆様にしてみれば、非常に包括的なスキルを育て、駆使しなければならない。それにどう応えていくかということも新保構成員のお話から浮かび上がったのかと思います。
さて、時間は十分ございます。事務局からは皆さん3分程度でというお話ですけれども、事務局としては恐らく10倍ぐらい話すと予想したのか、時間はたくさんとってあります。十分に時間はあるのでございますが、皆様いろいろ御予定もあろうかと存じます。伺っている限りでは、菊池構成員が少し早目に退室の要ありということで、もし差し支えなければ先にお話をいただいて、また駒村構成員の方に。
大丈夫ですか。
○菊池構成員 大丈夫です。
○宮本座長 では、菊池構成員、お願いします。
○菊池構成員 恐れ入ります。午後の授業がございまして、12時過ぎに退出させていただかなければいけませんので、先に御挨拶させていただきます。
私は法律学者でございまして、中でも社会保障の分野を専門領域としております。その中でも、生活保護ですとか貧困関連の雇用・社会保障にかかわる論稿を書かせていただいたことがあります。この生活困窮者自立支援法に関しても、法施行後に『社会福祉研究』という雑誌で論文を書かせていただきました。しかし、今日は第一線の皆様の御発言を拝聴させていただいて、現場の、あるいは行政のお話をいろいろ伺いながら勉強させていただきたいと思っているところであります。
今、この場で個別具体的な意見があるわけではないのですが、皆様とは少し観点が違うのですけれども、若干気のついたところを2点発言させていただくとすれば、1つは、最初の御説明にもありましたが、共生社会の実現をどのように位置づけていくのかということであります。
最初の事務局の資料の御説明の中で、地域共生社会の実現は法の理念そのものであるという御発言がありましたけれども、生活困窮者自立支援法のどこを読んでも、地域共生社会の位置づけなどという文言は出てこないわけでございます。私も論文を書くときに、従来の行政の議論、審議会の議論等を一生懸命ひも解く中で、確かにそういう議論がされていて、それは重要なものであるというのは重々認識しましたけれども、それは少なくとも法律上は組み込まれてはいないと言わざるを得ないわけです。その中で、この検討会で自立支援のあり方を議論していきましょうというのは、1つすっきりした議論の方向性だと思うのですが、同時並行でもう一つの研究会が走っているということですけれども、もしこの共生社会の実現というものも見据えて、本法の中に何らかの形で位置づけるということであれば、そういった方向で法律改正を考えるべきだと思いますし、さらに、具体的にどういう形で組み込んでいくのかという議論をしっかりしていかなければいけないと思います。
自立支援に関しては、恐らく、日常生活自立、社会生活自立、就労自立といった1つの考え方の枠組みみたいなものがかなり一般的に理解されてきていると思うのですけれども、共生社会の実現というのは非常に耳障りのいい言葉ですが、その中身が何であるかということについて詰めた議論というのは余りされていないのではないでしょうか。
私の知る限り、この「共生社会」というのは、障害者基本法の改正の中で入ってきた文言だと思います。実は障害者基本法ではそれまで「連帯」という文言が用いられてきた。これをわざわざ削除して「共生社会」という文言を入れたのです。「連帯」というのは、日本の社会保障を支えてきた理念の1つだと考えられてきたのですけれども、わざわざそれを削除してまで「共生社会」という文言を入れたということ。私自身はこれは問題だと思っているのです。これが単なるシンボルとしてのアドバルーンであれば、それはそれでいいのかもしれないのですが、何らかの意味内容を持った文言として捉えていくのであれば、例えばそこに共生社会の位置づけのためには何らかの責任とか責務とか義務とか、そういったものがかかわってこざるを得ないので、それはしっかりと議論する必要があると思います。
自立支援と共生社会の実現ということは、ちょっと哲学的ですけれども、緊張関係をはらむ場面があるかもしれませんし、少なくとも自立支援と共生社会が全く無条件でイコールというわけではない。そこまで何ステップかあるはずですので、そこを曖昧にしたままで、ここでの報告書か意見書かわかりませんが、あるいはその後の法律改正につなげていく議論の中で、きちんと議論してほしいという希望がございます。これが1点です。
もう一点は、この生活困窮者自立支援制度は、基本的には自治体に大きくゆだねているものであります。つまり、自治体の裁量に広くゆだねざるを得ないということでありますけれども、それでよいのだろうかという問題意識が1つあって、今回のこの論点整理のための検討会につながっているのだと思います。今日の資料の中でもありましたが、例えば任意事業をやればやるほどプラン作成率は高いという相関がありそうだと。そうすると、国がもうちょっと前面に出て事業を義務化してやらせた方がいいのではないかという発想にも行きかねない。
先ほども自治体のお話が構成員の方からありましたけれども、例えば介護保険の対応で、地域で地域でという方向での対応の中で、自治体もアップアップしているという話、限られた人員の中でとても対応できないという話はよく聞くのです。そういったこともありますし、単に義務化していくとか、強制化していくとか、事細かにルール化していくとか、いろいろな手法があり得るとは思いますけれども、どういった手法でこの自立支援のあり方を今より改善していくかというのは、義務化とか強制とか、そういったものを強める方向での統制のあり方だけではない、いろいろソフトなやり方もあるのではないかということで、ちょっと間口を広げて議論されるとよろしいのではないかと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
私も研究者の端くれとして、今の菊池構成員の御発言には大変刺激を受けるところも多くございました。「共生社会」という言葉はきれいで抵抗感の少ない言葉であるだけに、こうした議論において非常にきちっと定義して使っていくべきである。その自立支援と共生社会の関係は大変大事なところであって、恐らく、支え合いのつながりの中にみんなが入っていけるように自立を支援するということなのだと思うのです。つまり、そういう意味で支え合いを支えるということなのだと思うのですけれども、支えないけれども支え合いなさいという話になると、これまたちょっと筋が違ってきてしまうわけでございまして、そのあたりを踏まえて議論していきたい。非常に大事なところを社会保障の専門家の観点からお話をいただいたかと思います。ありがとうございました。
それでは、ちょっと戻ることになりますけれども、駒村構成員、よろしくお願いします。
○駒村構成員 慶應義塾大学の駒村でございます。特別部会から引き続いての参加になります。よろしくお願いいたします。
今、事務局から御説明がありました、あるいはキーワードになっております資料2の9ページを拝見しますと、この「地域共生社会」という概念は、社会保障、社会福祉の大きな転換期を意味してくる言葉になるのではないかと思います。ある意味、オペレーションシステムの変更を意味しているぐらいの効果がある。この9ページを見るとそういうイメージを持っています。
その上で3つぐらいお話しさせていただきたいと思うのです。
この自立支援制度を今回バージョンアップするということだと思います。従来は生活困窮の問題は現金給付というのが中心だったわけですけれども、支援サービスというものを充実していくというバージョン1の入り口があり、これをバージョンアップしようということだと思います。
私は今日のお話を聞いて3つぐらい考えたのですけれども、1つは、自治体間のばらつきの原因は一体何なのかをきちんと検討しておいた方がいい。あるいは、利用者側にとって利用障壁がないのか。提供者側、自治体側については、生活保護行政や福祉行政の枠組みの中にこだわっていて、今ある地域の資源を有効に利用しているのか。あるいは、ない場合はそれを開発しているのかどうかといったことも考えていかなければならない。
それから、都道府県の取り組みは、今までも御発言があったように、ちょっと遅れている部分もあったかと思いますので、今後、この部分は充実しなければいけないだろうと思います。
それから、今日の資料の中で少し気になったのは、こういう支援をやった結果、今、どういう状況になっているのか。利用された人がどうなっているのかというところの情報が余り多くないような感じがしました。就労自立とか、収入が増えたかどうかだけではなくて、自立のプロセスも丁寧に評価をしていく。心理的な部分や社会的なかかわりの部分も丁寧に評価して、プロセスという部分も評価した字句も重要ではないかと思いました。
それから、子どもの学習支援のところは特に私も関心があるところですが、貧困の連鎖の問題というのがいろいろなルートで発生していると思います。所得から就学機会というルートで見ますけれども、それ以外にも健康面もあると思いますし、生活習慣といったものもあると思います。やはり劣悪な子どもの生育環境というのは、生涯にわたって望ましくない影響を与えるということはもう既に明らかになっていると思います。ただ、どうしても学習ということが入ってきて、先ほどもお話がありましたけれども、塾的な要素が前に出てしまっているような自治体もあるのではないかと思います。この辺は世帯支援という部分をきちんと開発して定着していく必要がある。そこについてきちんと評価していく。できるだけファクトに基づいた評価をして、よい事例を共有していく必要があるのではないか。塾に行かせるみたいな発想では、この制度の本来の趣旨からは狭過ぎるのではないかと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
3点にわたって大変大事なポイントをお話しいただきました。2点目の利用者の変化、状況、それは、心理的ないろいろな変化も含めて少し情報を補強していいのではないかということについては、ぜひ事務局としても少し御考慮いただいて、また追加的な資料等をお願いできればと思います。
引き続きまして、櫛部構成員、お願いできますでしょうか。
○櫛部構成員 櫛部と申します。
私どもの団体は、支援されている側が支援に回ろうということで、地場産業である漁網の製網という基幹産業のニッチな分野で、なかなか後継者がいなくて、やる人がいない。そういう領域を生活保護受給者なり困窮者が担おうというコンセプトがあってできた団体です。
これは地元の銀行の常務さんに大変褒められました。たった5人や10人でもすごく価値があるのだぞと言われて、その気になって、今、生活困窮者の相談のセンターと就労準備、それから一時生活もやっている。子ども支援というのは別の団体がやっている。そういうところであります。
私はもともと釧路市の職員でありまして、2011年に退職するまで、障害の分野と生活保護が一番長くて23年やってまいりました。ここに鈴木保護課長がいるので御存じだと思いますが、生活保護というのは本当に褒められないのですね。ワーカーの自尊心もなかなかないし、当事者の自尊心もなかなか湧きにくいという状況があります。かつての自立論というのは、「死亡自立」という言葉が普通にありまして、死ななければ自立できないのか、そういう世界で仕事をしていました。高齢の自立というのはそれしかないという感じでした。
ところが、2003年に3つの自立論、生活保護を受けながらの自立がある。経済的自立、社会生活の自立、日常生活の自立といったときに、本当に衝撃を受けて、本当にそれをショックに思ったことがあります。利用しやすく出やすいという設計に変えていくということで、2005年に自立支援プログラムをつくりなさいという国の技術的助言というのがありまして、釧路市でモデル事業をやりました。
ポイントは、中間的就労による当事者の自尊心の回復というのが大きかったと思うのです。参加者が、私は今まで褒められたことがないと言うのです。自分のケースワーカー人生を振り返って、確かに当事者を褒めたことはない。点検はしたことはあるのです。子どもはどうしているかとか、病院へ行っているかとか。でも、褒めたことはなかったのです。地域のいろいろなところへ出かけていって、自立支援プログラムに利用者のお話を聞くボランティアというのがあって、利用者にありがとうと言われて、とてもうれしかったと言っていました。
それから、保護費はもらうのだけれども、誰ともしゃべらない日がほとんどだと。11時ぐらいに起きて、1日に2食食うという感じなのだよと言われました。昼間は家でじっとしていて、夜になったらぱっと走ってコンビニに買い物に行く。近所のおばちゃんに見られたくない。ところが、こういう自立支援プログラムで毎日あるいは一日置きに作業などに出かけていくと、近所の団地のおばちゃんが、「今日は仕事?」と言うから、「仕事です」と言える、というふうに言っていました。こういう取り組みを経済界の人たち、ロータリークラブとかいろいろな人たちに見てもらったら、おお、一応働いているのだなと言ったのです。つまり、ペイドワーク、アンペイドワークというのは基本的には関係なくて、そういう状態というのがすごく大事なのだということがわかりました。
釧路市福祉事務所から聞きますと、今、自立支援プログラムに1,000人ぐらい参加しているのです。そのうちボランティア参加は300人ぐらい。参加率が上がると、生活保護を受けながら働く就労率が上がっているのです。すごく大事なことだと思っております。
私はこの3つの自立という問題、この困窮者支援を進めていく上で自立をどのように考えるかが大事だというのが1点です。
それから、私どものところも昨年から相談をやっています。モデル事業のときには、行政も私たちもお互いに理解が稚拙で、時々もめたり、何となく生活保護の取り次ぎみたいなニュアンスが強かった。つまり、ディフェンシブなイメージだったのですが、相談者が増えてきてつながってくると、絵姿が変わってきたということをすごく感じています。
1つは、相談者の中で生活保護につながる人は5%ぐらいです。実は3分の1ぐらいの方が仕事を求めていらっしゃいます。障害の手帳は出ない程度だけれどもそのままでは働けない、あるいは高齢者の場合。70・40問題で相談に来た方が、デイサービスへ行っても楽しくないのよとか、子どももこうだしさとか言っていました。和商市場というところの入店調査でカウンターを打つ仕事があるのですね。これをやると時給が出るのですけれども、それを勧めると皆さんわくわくするとおっしゃるのです。そういうわくわくすることがサービスでできるのかなと。つまり、なりわいとか生業、そういうことを中心に考えていくことが大事なのではないかと思っています。
3番目に相談の主訴で増えてきているのが住宅、住まいの問題です。高齢者で転居するとき保証人がいないという問題が最近増えてきています。就職したときの保証人のなり手がいないというのもあるのです。生活保護のディフェンシブではなくて、もっと働きたいという第1のセーフティネットと生活保護の両方に貫くような包括的な取り組みというのが人に着目したら出てくるのではないか。つまり、ハブですね。そういうものとして困窮者支援というのは成立させていかなければいけないのではないかということを思っている毎日です。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
この法律は「自立」という言葉を掲げているわけですけれども、実はそこは同時に、「自立」とは何ということを投げかけている仕組みでもあるのかもしれません。
櫛部構成員、念のため伺うと、3つの自立というのは。
○櫛部構成員 経済的な自立、社会生活の自立、日常生活の自立という定義です。
○宮本座長 それをきちっとつなげていくと同時に、それとまた別次元で認められてあると言いますか、きちっと承認されているということをその全てのフェーズで重要な要件として考えていくということを今お話ししいただいたと思います。
ありがとうございました。
では、菊池構成員はお話しいただいたところですので、奥田構成員にお願いをいたします。
○奥田構成員 すみません、奥田です。私は主に九州でホームレスの支援をずっとやっていました。今はこの生活困窮者のこととか、子ども・世帯の支援等もしております。
こことのかかわりは、振り返ると、パーソナルサポートの頃からだと思います。あれぐらいから始まって、その前の審議会などにも参加させていただきました。今は、生活困窮者自立支援全国ネットワークという組織が立ち上がりまして、宮本座長と一緒に共同代表をさせていただいています。11月に大会がありますので、ギャラリーの皆さんも必ず参加していただけますようによろしくお願いします。
私にとって、この法律、制度ができたのはすごくよかったというか、すごく感銘を受けました。正直、もっとよくなればいいなと、今、思っております。そのための今回の会議だと思っております。
私は、今回の制度自体はたくさん意味があると思うのですけれども、1つは、困窮の概念を経済的困窮と社会的孤立という2つで押さえた、これが非常に大きかったと思います。もう一つは、人を属性もしくは制度で見るのではなくて、その人をそのまま見るという包括性が非常に大事で、まず人を見る。人を見ていたら、必ずその周りにいる人が見えてくる。それは世帯であったり、地域であったり。そういう関係の中で見ていく、その観点が非常に大事だと思います。何よりも一番大事なのは、貧困を社会的な問題、つまり社会的貧困だとしたこと。だからこそ、これは個人の問題ではなくて国が責務を負うのだということをはっきりさせたという意味で、私はこれは大事だと思います。とかく自己責任とか個人の問題と言われるところを、いや、これは違う。地域社会の問題であり、経済社会の問題であり、国の制度の問題だということです。
一方で、私がちょっと気になっているのは、今回「我が事・丸ごと」が出てきて、私は概念的にはすごくいいなと思って実は見ています。例えば「我が事」ということにおいても、主体をどこで形成するかということにおいてとても大事。一方で、助けると言ったらちょっと語弊があるのですけれども、例えば自助から始まって、自助、互助、共助、公助ですか、この間まで3つだったのがこのごろ4つに増えている。公助がだんだん先の方に行かれているような雰囲気もある。現実にはそんなことにはなっていなくて、自助が本当に機能するためには公助が並行して必要だと。これが事実だと思うのです。順番にダムが1個ずつ壊れていくように、ここがだめなら次、次がだめならその次と。最後の最後に、そういうことを言ったのではない、この制度は逆に言うと最初の時点から公助というものがどう機能していくかということも含めた議論である。だから、先ほど菊池構成員がおっしゃったところは本当にそうだなと思います。「共生社会」という言葉と、国が行う自立支援ということがどういう関係に置かれるのかというのが、私は今のところ、ある意味わくわくしながら、ある意味心配をしているというところがあります。
2つ目として、資料3の3ページ。これは23年のデータですが、生活保護の窓口に行ったけれども保護受給に至らなかった40万人というのが出てくるのです。これは年代が違いますけれども、今回の新規相談数は23万件です。生活保護の相談に行って生活保護受給に至らなかったのが40万人いたとして、新規の自立相談に来た人が23万人ぐらいですか。その差の約20万人はどこに行ったのかという話。もともと何のニーズもなかったのだ、御本人のちょっとした心配で来たのだよという程度だったらそれでいいのですけれども、私はそこの差の20万人というのがどうなっているのか気になっています。
3番目としては、資料3の15ページで、スタッフが多いほど件数が増える。単純でいいな、やはり人勝負だと思いました。これはどちらが先かの議論でいうと、間違いなくスタッフが先です。スタッフを先に充実しないといけない。件数が上がったらスタッフを増やすと言っているうちはこの制度は伸びない。やはり人の配置をまずやってみる。その後、見直すのだったら見直すというふうに考えるべきだろうと思います。
4番目は、資料3の23ページあたりですが、住まいの不安を抱えている若者たちが増えているというところです。今回の制度は居住支援が弱いのではないかと思うのです。住居確保給付金にしても、就労ベースでなされているので、果たしてそれでいいのかなと。今、世間的に話題になっているのは老後破綻とか年金破綻の話が出ていて、これからは多分、高齢者層の居住問題が大きく出てくる。地方創生などの議論では、もう既に空き家活用等は話し合われている。今後、この制度で果たしてそこまでちゃんとつながるのかというところは大きいのではないか。若者の居住支援は当然だけれども、年金で、特に夫婦のときはまだ何とかなっても、基礎年金で1人になったときに、例えばその賃貸物件が維持できないという人たち。高齢単身のいわば低所得層、このあたりがどうなるのか。一時生活支援事業との組み合わせも含めて、このあたりはどうしていくのかなということを感じていました。
それから、資料3の33ページの他機関につないだという話ですが、つなぎ先をどうしたか。これは考え方の話になるのですけれども、「つなぎ」とは何でしょうか。この制度における「つなぐ」という概念の中身をはっきりさせておかないと。つまり、その人そのものとして包括的に受け入れているわけです。いろいろなことを内在的に持っている、3つ、4つテーマを持っているのに、つなぎ先は、この表に出てくるところだけを見ると縦なのですね。多分、それを組み合わせて使っているのだと思うのだけれども、つなぎ先が縦で、引き受けていただくのだけれども、やはり継続してコーディネートしていかないといかんのではないか。
もっと言うと、当初、このつなぎ先でいいと思ってつないだところが案外そうでもなかったとか、また本人との相性もあるわけです。私は、伴走支援というのは、つなぐということと戻すということの連続的な行使、それがある程度継続していくということだと思います。そのつなぐという概念をどう捉えるかということはもう少し考えた方がいいのではないか。つないだ後どうなったのかも含めて。ただ、つなぐが総合的なところから縦割り的なつなぎ先になったところで総合性が失われているとしたら、多分大変なことになるのではないかと思うのです。
あとは、私はホームレス支援が主な活動なのですが、資料5の6ページのまさに一時生活支援事業の広域化。これは私も地域で、福岡県に対しても言っていますし、いろいろな県に行ってもこのことを言っているのですが、どうも進まない。これはやはり何か仕掛けをつくらないと広域化できないと思います。ある程度、都道府県はコーディネートだけではなくて、実施できるような形の仕組み、仕掛けをつくらないと、特に一時生活支援事業の広域化は進まない。どこの自治体も自分のところにホームレスの人たちに来てほしくないのですね。ましてや、一時的にだったらいいけれども、そのまま居座ったらどうしようかみたいなことをはっきりおっしゃる。その中で、ホームレス問題自体が都市化していく問題というか、都市問題として集約されていく面がありますので、ここは国がもう一歩進まないとどうかと思います。
それと、これも意見の中にありましたが、給付が一部必要なのではないか。私は、北九州市で就労準備支援事業とか一時生活支援事業、それから中間市では子どもも含めたフルセットでこの事業を受託しています。先ほどから出てきていますように、相談に来たときに、就労活動の費用がないとか、最低限の生活は維持できているのだけれども、そこから先に新たなアクションを起こそうとしたときのお金がない。そこのところはどうなのか。この制度自体に一時的な給付をつけるか、もしくは生活保護との一部相乗りをできるようにするか。ホームレス自立支援法の場合は、ホームレス自立支援法の枠の制度と生活保護を併用するということが法律に明記されている。今回の法律はどちらかですよとなっている。他法利用でやるということ。概念的にはわかるのですけれども、どんな制度でも、はざまというか、グレーなところが出てくるので、ここのところを埋められるかというのが大きいと思います。
それと、これは資料2の1ページのKPIのところです。事業の実績評価なのでしょうけれども、一言で言うと、これは国のいろいろな調整があって御苦労されているというのは、ずっと見てきていますのですごくよくわかるのですが、このKPIのところはやはり就労実績に相当特化されている。これは高齢者のことも含めて、今後、年金破綻等とかそのあたりを評価するときにはこのKPIだけでいいのか。当然、ここに書かれていることは大事なのですけれども、もう少し評価軸を多様化してもいいのではないかと思います。
最後に、地域の共生社会チームとの連携が私はとても大事ではないかと思います。これはまさに入り口であり、この制度の出口であるので、そことの調整をちゃんとやらないと、今回のこの制度がまた新たな縦割りで終わるという危惧もあります。そこのところはすごく期待をしたいと思っています。
私からは以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
大事な論点をたくさん出していただきましたけれども、「つなぐ」ということが結局どういう変化を引き起こしたのか。このあたりは、先ほど駒村構成員から御要請のあった利用者の具体的な変化をめぐるデータ等、事務局に補強をお願いしたわけですけれども、その際に今の「つなぐ」ということの中身についても少し配慮してお願いできればと思います。
給付の問題もございました。就労準備支援の間どうやって食べていくのかという非常に根本的な問題は一貫して指摘されている事柄でございまして、大変大きな問題ですけれども、これも避けることなく皆様から議論していただければと思います。
さて、先ほど申し上げたように、タイムスケジュールを見ると、皆さんがもし3分ずつのお話だとすると、1時間ぐらい時間が余ってしまうのではないかと思っていたのですけれども、ある意味では事務局の読みどおり、皆さんにたくさんお話をいただいて順調に進んでおります。終了予定時間は12時25分でございますので、そこには終わるように御配慮いただいた上で、あとお三方にお話をいただければと思います。
それでは、大津構成員、よろしくお願いをいたします。
○大津構成員 初めまして。読売新聞社会保障部のデスクをしております大津と申します。
社会保障部というのは、生活困窮者だけでなく、福祉、医療、介護、年金、雇用、子育て、最近は住宅問題も取り組んでおりまして、まさに生活困窮者自立支援法の取材対象のストライクゾーンということで、こういった制度の仕組みについては非常に注目をしておりました。当時、我々としては、生活保護でもなく、雇用保険でもなくといった、駆け込み寺だと認識していました。自治体職員の方から見てもそうでしょうし、利用者の方から見てもそうでしょうし、制度のはざまにおった方々がこの制度を利用することによって救われる部分が多分にあるのではないかということで非常に期待をしていた制度でございます。
今回、資料3で、目からうろこの思いだったのですけれども、生活困窮者の利用者がどういう状況にあるかということを、限界はあったとは思いますけれども、今回の調査によって見える化したということは、とかく福祉業界やそういった業界だけで語られていた経験値というものをほかの人にも気づかせる、知らせる上でよかったと思います。特にこの分野に全く関心がない方の理解を深める一助になるのではないかということも含めまして、こうした調査というのをぜひ実態の目に見える化というか、困窮者とは何なのだということを経験値ではなく数字で見せていただいたことは一定の法律の成果だと思います。
その上で1点だけ。これは我々の自戒を込めてですけれども、視点が足りなかった点もあって申し上げますと、支え手支援というのがこれから非常に重要になってくるのではないか。我々、メディアも含めて、とかく困窮されている方の方に注目は集まりがちではあるのですが、実はそういった方々を支えている一人一人の支え手がしっかりしていかなければ、持続可能な支援というのは成り立たない。そういった方々がどういう状況で、すなわち待遇はどうであるとか、この間も再三出ていましたけれども、支え手同士のネットワークあるいは研修・知識はどうであるのかということを踏まえていかなければならない。
実際、この資料3にありますように、手厚い支援ほど、あるいは連携が深まっているほど新規プラン作成が増えていくという一定の相関関係が見られるというデータからもエビデンスがあるように、支え手ということに対する意識を今後深めていく必要が十分あるのではないかと考えています。
具体的には、その支え手の方々がどのような待遇で、恐らく非正規の方が多いのかもしれませんけれども、生活困窮者の相談を受けている方が、実は自分自身が生活困窮者という笑えない現実というのもそこここに聞かれますので、そうした待遇の問題。それから、再三出ていますけれども、研修の問題です。非常に地味ではあるのですけれども、これだけ多くの問題を、しかも自治体が今まで対応できなかったような案件を受け止めるということですから、福祉から、医療から、教育から、場合によっては警察から、介護保険から、年金から、あらゆる知識。それから障害者、高齢者、お酒とかDVとか虐待とか、さまざまな経験の複雑多様な問題を解決するには、やはり人というのがキーワードになっていくと思われますので、そのあたりについての思いというのを私も見ながら今回参加させていただこうと思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
大事なことを言っていただきました。支える側と支えられる側の境界線というのはもう曖昧になってきているわけでございます。実は日本はこれまで、支える側も、倒産しない会社とか公共事業とかいろいろあって、支えられていたのだけれども、その支えが崩れてしまったわけです。そこをどう支え直すかというのも実はこの制度に絡む大事なテーマなのだと思います。
続きまして、朝比奈構成員、お願いをいたします。
○朝比奈構成員 朝比奈です。
私はもともと千葉県が平成16年に設置いたしました中核地域生活支援センターという対象を限定しない総合相談、包括的な相談支援事業で働いてまいりまして、その実績で、平成27年本法施行から実施されました市川市の自立相談支援事業の主任相談支援員も兼務しております。これまでの経験から何点か申し上げさせていただきたいと思います。
まず第1に、今回の法律は大変画期的な法律だと評価しております。中核センターでどこも連携先がなかった方々が、生活困窮者の法律ができたことでつながり合って支えていくことができるようになったという点が大変大きかったと思っております。ある意味、ニーズのふたがあいたということで各現場は大変な状況になっているかと思いますが、先ほど御説明いただきました施行状況はとても興味深く拝見させていただきました。とりあえず、これまでのところで相談につながった方々の状況というふうに理解をするのが適当なのではないかと思っております。
例えば、働いている方が3分の1程度いらっしゃるということですが、恐らくほとんどの方々が不安定雇用だと思います。そうしますと、平日日中にお仕事を休むことで給料が減ってしまう方々ということで言えば、平日日中の時間帯に相談できない人たちにどうやって相談を保障するかという点では、まだここはアプローチできていないところかと思います。
もう一点が、40代、50代の相談が多くなっておりますが、このあたり、世帯の状況もぜひ類型別に示していただければと思うのです。親御さんの年代で経済的な基盤が弱くなったり、親御さんが亡くなられて年金に頼ることができなくて、社会的なニーズとして表面化したというのがこの辺の年代なのかと思っております。
そういう意味では、若年層がどうなっているかということにもっと気を配る必要があろうかと思います。私どものセンターで出会ってきた若年層の年代の方々は極めて過酷な状況に置かれています。家庭の基盤が失われていたり、虐待またはそれに類する環境のなかで傷ついているという方々ですので、その後の回復にも非常に時間がかかっています。 個別支援に追われていて、仕組みづくり、地域づくりにまだまだ手が回っていないのですけれども、これから先できていくといいなと思われることでは、先ほどもお話しがありました高校生年代へのアプローチです。在学中の人たちには家庭への支援が必要だろうということと、もう一つ、どういう人たちが大人になって困窮に陥るのかということがもうわかってきているわけですから、在学中に教育のプログラムにコミットするような形で何らかのアプローチができるといいなと思っています。
それから、ドロップアウトする人たちへのアプローチです。最近、先生方は「中退」と言わずに「進路変更」とおっしゃるのですけれども、そこも含めて数を見ていくということと、そこを受けとめていく仕組みづくり、関係機関のつながり合いということが重要だろうと思います。入り口としては、この2つの問題を指摘させていただきます。
それから、出口の問題。和田構成員から、それから田中構成員からも御指摘がありましたけれども、例えば10年近くネットカフェで生活をしてきた方々が、一時生活支援からスタートして、さまざまなメニューを活用していただいて、アパートに入居し、先日、就職を果たされました。お仕事で平日会えないので日曜日の日中に訪問したのですけれども、カーテンは締め切りで、部屋の電気をつけずにパソコンの明かりだけでネットカフェと同じような明るさで生活をしていらっしゃったのです。こうした状態がゴールなのか。このあたりのことをどうするか。本法が施行されて1年半になりますので、職場への定着をどういうふうに支えていくかということが重要かなと思います。
例えば生活福祉資金などの貸し付けを活用している方も多くいらっしゃいますので、償還も含めて、継続したかかわりを社協などとも連動しながら進めていきたいと思っているのですが、やはりここでも土日しか休みがないという方が地域にどうやって参加できるかということが問われてきていて、そういう意味では、従前から西岡構成員などが取り組まれてきている企業への面的な支援を活用しながら、その後の生活をフォローしていきたいと思っています。
しかし、就労支援自体が分野ごとに縦割りで分断されていて、企業にとっては障害の就労支援センターからも、生活保護からも、困窮者支援からもアプローチが来るということで、分野を超える就労支援を地域ごとにどうやって組み立てていけるかということも重要になってくるかと思っております。
さらには、先ほど償還のお話をいたしましたけれども、家計相談自身も、個別的なカウンセリングにとどまらず、生活力を高めるようなかかわり、大人の学習支援とも言えるような内容になってくるかと思うのですが、そのあたりを地域福祉にも期待しながら面的に展開していけるとよいと思っております。
最後に、都道府県の役割です。中核センター自体も県の事業であったということがいろいろな意味で市町村との関係づくりにおいても効果的な意味合いがあったとも思っております。今後、都道府県に具体的な財源の裏づけを持った役割を位置づけていくような議論にしていっていただきたいと考えているところです。
私からは以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
これもあわせて朝比奈構成員から、利用者の状況、特に40代、50代の相談者が多いわけですが、これは明らかに世帯に大きなダメージをもたらしているはずだと。特に若年層、子どもがこういう相談者の世帯においていかなる状況に陥っているのか。そのあたり、私たちとしてもリアルな感覚を持って見ていかなければいけないのだと思います。データとしては大変難しいところがあると思いますけれども、何か工夫をしていただいて、少しでも見通しのいい形でデータを出していただければと思います。
最後になりますけれども、相澤構成員、よろしくお願いします。
○相澤構成員 川崎市の相澤です。
川崎市について簡単に御説明しますと、北に東京都、南に横浜、サンドイッチの具に当たるところにある横長の人口148万人の都市になっております。政令都市の中では、保護率で言いますと2.15%ということですので、ちょうど中位、11番目ぐらいの保護率になっております。私の所属が生活保護・自立支援室となっておりまして、生活保護と生活困窮者自立支援法の両方の制度を担当している部署になっております。
川崎市における生活困窮者自立支援事業の取り組みにつきましては、生活困窮者自立支援法の施行前の平成25年12月からモデル事業として開始させていただいております。そのモデル事業の結果をこの『いっしょに歩けばだいじょうぶ』という冊子にまとめておりまして、宮本座長、駒村構成員、新保構成員にも御協力をいただきまして作成させていただいたものになっております。今日何冊か持ってきておりますので、御興味のある方はぜひお持ちいただければと思います。
川崎市におきましては、住居確保給付金の前身である住宅支援給付金を拠点型、いわゆるセンター方式で実施しました。川崎市は7つの区、9つの福祉事務所がある横長の市ですが、最初、住宅支援給付金を2カ所で行ったという経緯から、この生活困窮者自立支援事業についてもJR川崎駅から1~2分の場所にあるところに拠点を設けて開始しております。川崎市生活自立仕事相談センターというのが正式名称で、通称「だいJOBセンター」という名称にしておりますが、そこで実施しております。
川崎市では、自立相談支援事業、住居確保給付金という必須事業2事業と、任意事業であります就労準備支援事業、一時生活支援事業、子どもの学習支援事業という事業を行っております。先ほど和田構成員からお話がありましたように、家計相談支援事業については実施していないのですが、やはり自立相談支援事業を行う中で、就労に結びつけると同時に、家計の相談というのは一番大きい要素を持っていて、大方がそこに問題を抱えているということがあります。任意事業としては実施していませんが、自立相談支援事業の中で必要な支援として行っているという実態にありますので、ここのフレームというか、枠組みというか、予算措置も含めたところで、ここは変更なりが必要なのではないかということを御提案させていただきます。
それから、川崎市において学習支援事業も行っているのですが、たくさんの構成員からお話がありましたように、子どもの貧困対策に関する大綱の中で、他部署でも本来的にこの学習支援を行う必要が出てきています。この生活困窮制度の学習支援事業と他部署の事業との複合的なというか、重なる部分ですとか、どこが主体的に行うのか、予算措置も含めてそのフレームについてもやはり問題性があると認識しております。
それから、資料2の12ページにあります「地域における住民主体の課題解決・包括的な相談支援体制のイメージ」ということで、最下段に、市町村で「包括的・総合的な相談支援体制の確立」というものがあります。この中で川崎市は、地域包括ケアシステムの推進という形で、今年の4月から各区に地域みまもり支援センターというものを置きまして、この最下段の包括的な相談体制の確立というのを実際に始めているところであります。ここの対象者に生活困窮者とうたってあります。ここと、今、我々が行っている生活困窮制度とのかかわりを具体的にどうしていくのだというところ。私ども、拠点型で川崎市の最南部の川崎区でセンターを1カ所置いて、実施しておりまして、中部の高津区というところと最北部の麻生区というところでは月に1回出張型の相談支援体制を構築しています。先ほど来何度も出ているように、地域の中でどのようにこの事業を定着・推進していくのか、このセンター型での私どもの運営が正しいのかというところはこの会で勉強させていただいて、この後検証もしていきたいと思っているところです。
最後に、先ほど朝比奈構成員からありましたように、資料3の8ページに、相談をしている相談者の年代の構成が出ております。やはり40代、50代が多くて、10代、20代という若年者、若者の相談が非常に少ないというところが国の調査でも出ております。これは、川崎市も全く同じような状態にあります。生活困窮の問題というのは若年者の問題だというふうに広く思っているところもありまして、ここへのアプローチというのが私どもの課題の1つだと考えております。
私からは以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
「川崎モデル」という言葉も生まれていますけれども、その具体的な中身をさらにこれからの会議でお話をいただければと思います。
大体時間は参っておりますけれども、もし皆様の方で、ここはちょっと補足しておきたい、言い忘れたぞというところがあれば。
では、和田構成員、簡単にお願いをいたします。
○和田構成員 1つ、自治体の地域福祉計画で、例えば、今まで生活保護とか、そういう問題について議論がされることがなかったのですが、この困窮者支援法ができた後、重要課題として、生活保護だけではなくて、この困窮者問題も含めた計画化が実際に今進んできて、そのデータが出されたりするようになってきましたので、自治体がどう取り組むかという動機づけをしていく上でも、これはすごく重要なのではないか。自治体の計画に位置づけられているかどうか。それと、この動きがどうなっているかということの関連を、もしデータがあれば示していただくとありがたいと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
では、今の和田構成員からのリクエストもぜひ御検討いただければと思います。
事務局から次回の会議について御案内をいただきたいと思います。
○金井課長 どうもありがとうございました。
次回の会議につきましては、10月24日月曜日の15時から、厚生労働省9階の省議室を予定しております。正式な開催通知につきましては追って御案内申し上げますので、よろしくお願いいたします。
○宮本座長 ありがとうございました。
これで今日の会議は終了となります。当初、台風が直撃するのではないかと心配されたのですけれども、皆様の大変熱い議論で台風の方も避けていったのかもしれません。無事開催することができました。いろいろ御協力ありがとうございました。また次回も引き続きよろしくお願いをいたします。
これで終了いたします。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会> 第1回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会議事録(2016年10月6日)