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2016年9月21日 第2回生活保護受給者の健康管理支援等に関する検討会議事録

社会・援護局

○日時

平成28年9月21日(水)15:00~17:00


○場所

航空会館B101会議室


○出席者

尾形 裕也 (座長)
岡山 明 (委員)
小田 真智子 (委員)
津下 一代 (委員)
中板 育美 (委員)
松本 純一 (委員)
宮原 恵子 (委員代理(小枝委員の代理))
近藤 尚己 (参考人)
(小枝 恵美子(委員)は欠席)
(藤内 修二(委員)は欠席)

○議事

(挨拶)
○生沼保護課長補佐 それでは、皆様おそろいですので、ただいまから「第2回生活保護受給者の健康管理支援等に関する検討会」を開催いたします。

 それでは、本日の出欠状況につきまして事務局から御説明をいたします。

 本日の御出席でございますが、藤内委員より御欠席の御連絡をいただいております。また、小枝委員より御欠席の御連絡をいただいておりまして、代理で保健師長会副会長の宮原様に御出席をいただいております。また、本日、松本委員におかれましては、所用で若干早目に退席されるということでお伺いしております。

 また、事務局側におきまして9月に人事異動がありましたので御紹介させていただきます。中井川大臣官房審議官でございます。


○中井川大臣官房審議官 中井川でございます。よろしくお願いいたします。


○生沼保護課長補佐 なお、定塚社会・援護局長におきましては、所用によりまして1530分過ぎに到着いたしまして、その後、1630分に退室させていただきますので御承知おきいただけると幸いです。

 なお、今回は参考人として東京大学大学院医学系研究科の近藤尚己准教授にも御出席をいただいており、発表していただくとともに議論に参加していただきたいと考えております。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 よろしくお願いします。


○生沼保護課長補佐 それでは、座長、お願いいたします。


○尾形座長 それでは、議事に入りたいと思いますが、ただいま事務局から説明があったとおり、近藤参考人に議論へ参加していただくということでございますが、それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○尾形座長 ありがとうございます。

 それでは、引き続き事務局から配付資料について御説明をお願いいたします。

(議事)
○生沼保護課長補佐 それでは、御説明をさせていただきます。

 まず、配付資料の資料1でございます。

 資料1では、前回の第1回の検討会における指摘事項について、各委員からの依頼資料などについて事務局で用意させていただきましたので、それについて御説明をいたします。

 資料1をめくっていただきますと、2ページ目が「第1回検討会における委員からの依頼資料」の一覧でございます。

 まず、第1点目としては、生活保護受給者の健康状態・生活習慣について依頼をいただいております。具体的には、医療保険と生活保護における年齢階層別、疾病別の比較についていただいておりまして、これは追加資料の1で御説明をいたします。

 次に、健康増進法による健康診査結果の年齢階層別での比較につきまして、追加資料2で御説明いたします。

 3点目に、生活習慣病の悪化に関する喫煙率や飲酒量等のライフスタイルにつきまして、追加資料3で御説明をいたします。

 続きまして、2番の健康診査の結果、3番目の生活習慣病の重症化予防の実施状況につきましては、私どものほうで各自治体にアンケートをいたしまして、その結果をまとめましたので後ほど御説明をさせていただきます。

 4点目が他制度の状況につきまして、これも追加資料4ということで御説明をいたします。

 めくっていただきまして、4ページ、追加資料1-1ということで、医療扶助における性・年齢階級別の受診率でございます。これは、平成26年6月審査分の、4ページは入院でございます。

 医療扶助における入院の受診率を性・年齢階級別に見ますと、ほぼ全ての年齢階級で男性のほうが受診率が高くなっております。また、医療扶助と医療保険において受診率を年齢階級別に見ますと、いずれの年齢階級におきましても医療扶助のほうが高いという状況でございます。

 また、これらの受診率の差を主傷病別に見ますと、いずれも精神・行動の障害、循環器系の疾患及び呼吸器系の疾患による影響が大きくなっております。

 続きまして、5ページでございますが、こちらは同じように受診率でございますが、入院外の受診率でございます。

 医療扶助における入院外の受診率を性・年齢階級別に見ますと、ほぼ全ての年齢階級で女性のほうが受診率が高くなっています。また、医療扶助と医療保険について受診率を年齢階級別に見ますと、70歳未満につきましてはおおむね医療扶助のほうが高いという状況でございますが、70歳以上につきましては医療保険のほうが高いという状況になっています。

 また、この受診率を主傷病別に見ますと、筋骨格系・結合組織の疾患による影響が比較的大きくなっております。

 続きまして、6ページでございますが、追加資料2ということで、年齢別・男女別の健康増進法による健康診査の結果でございます。

 どの年齢層におきましても、男女とも内臓脂肪症候群該当者は被保険者よりも生活保護受給者のほうが割合が高いという状況でございます。また、男女別に比較しますと、男性のほうが内臓脂肪症候群該当者の割合が高いという結果が出ております。

 続きまして、資料3、健康増進法による健康診査で「たばこを習慣的に吸っている」と回答した方の割合でございますが、男女ともに高齢になるほど喫煙率は減少しております。一般と比較しますと、生活保護受給者の喫煙率が高いという状況でございます。

 続きまして、8ページでございますが、追加資料4ということで、厚生労働省関係で生活保護受給者が生活保護以外で医療扶助を受ける制度としてどんなものがあるかというものの一覧を資料として作成いたしました。主なものとしては、色がついている障害者総合支援法に基づく更生医療とか精神通院医療などが考えられます。

 9ページでございます。追加資料4-2ということで、生活保護受給者の障害者総合支援法に基づく自立支援医療の利用状況でございますが、生活保護受給者で精神通院医療を受けている者は年間に約34万件でございます。更生医療は4万件でございます。更生医療のうち腎機能障害(透析療法を受けている者等)の方は約24万件でございます。ただし、そのうち生活保護受給者の件数は把握しておりませんので不明でございます。

 引き続きまして、めくっていただきますと11ページからが自治体に対して行ったアンケートの結果でございます。

 まず、調査概要としましては、全国の福祉事務所で健康管理支援とか健康診査についてどのような状況かということで調査を行いました。客体となっている福祉事務所を設置する自治体全てでございますが、901自治体に対してアンケート調査を実施しております。

 結果としましては、まず、健康診査について、生活保護受給前に加入していた国民健康保険などの保険者が実施した特定健診の結果を入手しているかということにつきましては、「入手している」と回答した自治体は2%の22自治体でございまして、残りの98%の自治体は「入手していない」という状況でございます。

 続きまして、福祉事務所の管内の自治体で健康増進法に基づく健康診査を実施しているかという状況につきましては、「実施している」と回答した自治体が90%でございます。

 めくっていただきまして、12ページでございますが、生活保護受給者が管内の自治体の行っている健康診査を受診しているかということを尋ねましたところ、相当幅がありまして、0から61%までありますが、おおむね10%以下がほとんどという結果でございます。ただ、どうも健康診査の結果も受診していない自治体においては、健診率がわからないという自治体も約400ほどございました。

 福祉事務所が健康診査の結果を入手している割合としては、入手しているのは17%でございます。

 続きまして、健康診査の結果の入手方法でございますが、これは重複回答ありということで集計をいたしましたが、生活保護法に基づいて市町村長から直接入手している自治体は90、本人から入手しているのが60、医療機関から徴取しているのは9ということになっております。

 続きまして、福祉事務所が入手した健康診断の結果に基づいて健康管理支援をやっているかということでございますが、実施している自治体は75%の102自治体、実施していないのは25%の34自治体でございます。

 続きまして、13ページでございますが、「健診データに基づいた健康管理支援の実施例」ということで2事例ほど御紹介をさせていただきます。

 まず、A自治体におきましては、健診結果の入手方法が市町村長からと本人から、医療機関からの3通りの方法で入手しておりました。

 具体的な健康管理支援の対象者の抽出方法につきましては、HbA1c6.5以上とか、血圧が140以上という方を対象に抽出するというやり方をしております。

 健康管理支援の方法としては、本人の承諾を得まして、まずは健康面談を行い、必要に応じて医療機関への受診勧奨、服薬指導、栄養指導、生活指導を行っております。

 実際、事業の効果測定としては、本人から健診の結果を入手して、数値がよくなっているかどうかという確認をしておりました。

 次はB自治体の例でございますが、この場合は保健所から健診の結果を入手しております。

 対象者の抽出につきましては、A自治体と数値は違いますが、HbA1c6.0、空腹時血糖100、随時血糖200ということでリストアップをしております。

 あと、支援の方法としては、保健師が受診勧奨や保健指導を実施する。

 また、効果測定は翌年度の健診の結果を確認するという方法をとっております。

 最後に14ページでございますが、平成27年度におきまして生活保護受給者に対して生活習慣病の重症化予防を実施している自治体に対してアンケートを行いました。

 結果としては、国の補助金をもらって実施したのは95自治体、それ以外の独自に実施したのが65自治体ございました。

 生活習慣病の重症化予防の実施方法としましては、1の(1)にございますが、保健師や看護師などが中心になって、業務内容としてはデータの抽出とか医療機関への受診勧奨、あとはケースワーカーと同行して保護世帯を訪問するというような介入を実施している例が多いようです。

 あと、ケースワーカーと専門職の連携とか役割分担につきましては、保健師が健康診断の結果情報を伝えて、ケースワーカーが被保護者に対して受診勧奨をするとか、保健師がケースワーカーに専門的な助言をするというような例が多いようでございます。

 あと、効果測定の方法でございますが、医療機関への受診や治療継続割合、検査値の改善などをもとに効果測定を行っているようですが、効果測定を行っている自治体も存在するようでございます。

 資料1の説明としては以上でございます。


○尾形座長 ありがとうございました。

 資料1ですが、前回の主な意見、追加資料、あるいは自治体へのアンケート結果等をまとめていただいておりますけれども、資料1につきまして御意見、御質問等がありましたらお願いします。

 津下委員、どうぞ。


○津下委員 あいち健康の森の津下です。

 詳細なデータをお示しいただきまして、ありがとうございました。前回の資料ですと、生活保護受給者の健康状態に関するデータが不十分な状況でしたけれども、今回はほかの制度も含めて精査していただいたと思っております。

 特定健診のデータと健康増進法のデータを比較して、生活保護受給者のほうが内臓脂肪症候群の該当者が多い、というデータをお示しいただきました。特定健診のデータを見ますと、内臓脂肪症候群はこれまで平成20年度からずっと繰り返し保健指導をやってきた成果で徐々に減る方向にはあります。特定健診は、今、全国では48%受けていて、国保でも4割ぐらいの方が受けていています。受けることを勧奨されてようやく受けている人も入っているかもしれない。

 一方、生活保護受給者の健康増進法の健診については10%ぐらいの受診率のデータである。そしてそれほどの勧奨をしていないのに受けている方々のデータである点に注意が必要です。そもそも健診を受けていない人がどれだけの状況になるかということについては不明で、今回お示しいただいたデータはどちらかというと良いほうかもしれないと想定されます。未受診の、残り9割の人の健康情報についてはまだ得られていない状況であって今後は受診率を上げて実態を見ていく必要があると思います。ただ、その10%の見えているところだけでも内臓脂肪症候群の問題とか喫煙の問題とか、明らかに健康障害の問題があり、介入できるポイントがあるのだということが明らかになりました。まず何をしていけばいいかということを考える上では非常に重要なデータであったというふうに思います。

 一方で自治体の取り組み状況についてのアンケートですが、かなり格差がありますね。既に生活保護開始前から保険者が前の保険者のデータを入手するほど熱心に取り組んでいる自治体もあれば、健康診断を受けているかどうかもよくわからない自治体もあれば、既に受けているだろうけれどもデータも入手しているところ、していないところということで、この自治体格差については何か傾向がありそうなのかどうなのか。例えば、大都市とか地方で違うのか、または、全国エリアで特に熱心な地域とかそうでない地域とか、そういうような特性が見られそうなのかどうなのか、感触で結構ですけれども教えていただけますでしょうか。


○尾形座長 どうぞ。


○市川保護課医療専門官 御意見ありがとうございます。

 アンケートを見ている中で印象にはなるのですけれども、まず、やはり福祉事務所に保健師さんが配属されているところはかなり意識が高くて、取り組みもデータを使ってされているところが多いなという印象が一つと、あとは、都市部とか田舎という差とか、全国でどの地域が多いとかそういうのはあまり傾向がない印象だったのですが、やや田舎のほうは、恐らく保健福祉センターと福祉事務所の関係が近いのか、連携という形で支援し合っているところが多い印象でした。

 あとは、自治体、県としてとか市として健康支援に取り組むというような市町村とか県がありまして、そこは全部の福祉事務所で健康支援に取り組まれているというところもわずかですがありました。


○尾形座長 よろしいですか。


○津下委員 はい。


○尾形座長 ほかにいかがでしょうか。

 岡山委員、どうぞ。


○岡山委員 感想なのですが、大変驚いたのは、女性の喫煙率が37.5%、32.2%というのは驚異的というか、普通の方ですと十数%ですので極めて高くて、この辺が非常に特徴的だなと思いました。


○尾形座長 ほかいかがですか。感想でも結構です。

 中板委員。


○中板委員 自治体のアンケートの結果のところで、11ページなのですけれども、生活保護開始前に加入していた国保のデータをとっている自治体が22自治体ということなのですが、この22自治体というのは、これをいつごろからされているのかというのはわかりますでしょうか。これを実際に入手した上で、さらに福祉事務所において健康診査の結果も入手しているところの136自治体の中にも入っているのかと思うのですが、その結果を受けて、そういう自治体は何をしているのかというのはわかりますか。


○市川保護課医療専門官 いつごろからというところまでは聞いていないのでわからないです。

 これも印象になってしまうのですが、国保時代の健診までとられている自治体は、健康診査を使った抽出支援までされているところが多かった印象です。


○中板委員 それは、既に健康管理支援をかなり実施しているということなのでしょうか。


○市川保護課医療専門官 そうですね。


○中板委員 そういう22の自治体というのは、それこそ先ほど津下先生もおっしゃったのですけれども、体制とか考えとか特徴というのはあるのでしょうか。


○市川保護課医療専門官 やはり保健師さんがおられる福祉事務所というところがある印象でした。特にそういった方がおられないところはあまり取り組まれていないのかなという印象ですけれども、22自治体を丁寧に分析したわけではないので、また改めてそれは見てみたいと思います。


○尾形座長 よろしいですか。

 小田委員、どうぞ。


○小田委員 13ページの事例なのですけれども、2自治体を載せていただいているのですが、こちらは両方とも福祉事務所に保健師等の専門職がいらっしゃる自治体という理解でよろしいでしょうか。


○市川保護課医療専門官 そうです。


○尾形座長 ほかいかがですか。

 どうぞ、松本委員。


○松本委員 中板委員のご発言と関連しますが、いわゆる健康診査の結果を入手しているところには保健師がいる、いないということを言われたのですけれども、保健師がみずから結果を求めるということだったのでしょうか。


○市川保護課医療専門官 保健師さんがたまたまいるというよりも、福祉事務所にそもそも保健師を置くというのは義務化されていないので、自治体としてそれだけ健康に関する意識とかそういったものが高いという指標の一つかとは思います。


○松本委員 今、お答えになったことが正解ではないかと思います。ただ、そうしたくとも保健師の数は限られているのでできない自治体も結構あるかと思うのです。データをとるだけであれば、福祉事務所に保健師がいる、いないにかかわらずできることだと考えますが、そこまで思う自治体が98%だという理解になってしまう、逆に言えば意識があるところはたった2%というふうな、印象を受けてしまいます。


○尾形座長 そうですね、わずか2%でありますけれども、皆様からの御質問にあるように、どういう経緯で入手しているのか、あるいはどういう形でやっているのか、さらに少しヒアリング等をしていただいて、またわかったことがあれば報告をしていただきたいと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

 私から1点、一委員としてですが、4ページ、5ページの医療保険と医療費を比較しているのはなかなか興味深い結果になっていると思うのですが、特に5ページのほうで上の四角にも書いてありますが、高齢者になると入院外については医療保険のほうが受診率が高いという結果になっていますね。窓口負担の相違を考えるとやや意外な結果かとも思いますが、一方では、恐らく入院のほうがまた逆なので、それと相関しているのかとも思いますが、この辺については何かこれ以上の情報はないですか。


○市川保護課医療専門官 理由については、まだこちらのほうで分析はしておりません。


○鈴木保護課長 補足しますと、通院に関しましては、おおむね医療扶助は、ここにはないのですけれども、国民健康保険と後期高齢者医療の真ん中ぐらいというのが全体的な傾向になっていますので、よく分析したわけではないのですけれども、窓口負担の影響だけということではなくて、もっと根本的な原因があるのではないかと思います。そこはまだ分析できておりません。


○尾形座長 どうぞ、津下委員。


○津下委員 今回は受診率でお示しいただいたのですけれども、医療費分析ではよく使われる3つの指標があると思うのですが、1人当たり医療費とか一件当たり医療費、日数、総医療費など、そういうもののデータで何か特徴的なことはありましたでしょうか。


○尾形座長 データはありますか。


○鈴木保護課長 入院外でいきますと、高齢期において医療扶助のほうが受診率は低いということになっています。壮年期は、むしろ医療扶助のほうが受診率が高い。1件当たり日数とか1日当たりの医療費の3つに分解したときに、日数とか単価は医療扶助のほうが高くなっております。

 そういう意味で、アクセスだけが落ちている。単価とか1件当たりの日数とかは医療扶助のほうが長いので、アクセスがちょっと低いという、3要素で見ればそういうことになります。


○尾形座長 どうぞ。


○松本委員 私の理解が非常に低いのかもしれませんけれども、4ページ、5ページのいわゆる医療扶助、医療保険の入院・入院外というのは、生活保護者に限っての調査ですか。


○鈴木保護課長 医療扶助に関しては、生活保護のうちの医療扶助だけですから、こちらの入院のほうは精神の分も全部入っていますので、おおむね生活保護受給者の大半の医療費は入っているというふうに思われます。そういう意味で、医療扶助のほうが医療保険よりも高くなっている状態です。

 一方で入院外のほうは、精神の通院医療費公費負担とか更生医療の透析なんかは抜けていますので、そういった特有のかなり多いと思われる状況を除くとこんな状況になるというのが入院と入院外の傾向の違いかというふうに思います。


○尾形座長 あと、これは医療保険というのが一般の人の話なのかという御質問です。


○鈴木保護課長 医療保険は、保険全体です。


○岡山委員 今の医療扶助が低いというのは、精神なんかの補助の費用とかを足しても差があるという認識なのでしょうか。


○鈴木保護課長 実は、そこは足し合わせた費用のデータというのはないので、正確にはわかりません。


○岡山委員 それこそ雰囲気なのですけれども、雰囲気としては、それでも差があるかもしれないということなのですか。それとも、それも入れてしまうと結果的にあまり差はない。


○鈴木保護課長 少なくとも入院のほうを見ていきますと、精神の部分も抜けておりませんし、一部更生医療は抜けておりますが、入院のほうは相当程度入っているということなので、通院がそういう制度の影響を受けているということかと思います。


○尾形座長 どうぞ。


○宮原委員代理 今のところのデータの見方として、重複診療している、主たる疾患と重複する疾患というのはこの表の中でどういうふうに読み取ればよろしいですか。延べなのでしょうか。


○鈴木保護課長 この4ページ、5ページは、レセプト上の主傷病を分類しただけですので、主傷病の一番上のものにひもづけて分類しているので、あまり正確ではないということで御理解ください。


○尾形座長 よろしいでしょうか。


○津下委員 違うことでもいいですか。


○尾形座長 どうぞ。


○津下委員 先ほど岡山委員が指摘された喫煙率が高いということですが、とくに若い世代の喫煙率が高いということが気になります。子供の世代への影響というのは非常に懸念される状況かというふうに思います。今回の主たる対象は成人の生活保護受給者ということですので、生活保護を受けている子供たちの健康状況に関しては医療費で見ても特段大きな差はないかもしれないのですけれども、世代にまたがる課題にも着目する必要があると思います。親がタバコを吸っていれば子供も吸いやすいとか、親が肥満であれば子供も同じような生活習慣、生活環境にありますので、成人したときにはかなり病気ができ上がってしまっているという心配があるのですけれども。子供に関するデータというのは特にお持ちではないでしょうか。


○鈴木保護課長 健康状態までは持ち合わせておりませんが、先ほどの外来の医療費分析でいきますと、受診率1件当たり日数1日当たり医療扶助費を子供について見ますと、先ほどの高齢者と同じように、受診率が医療保険よりもかなり低くなっておりまして、それ以外、日数とか費用はあまり変わりがない。病院にかかったお子さんは同じぐらい単価とか回数はいくのだけれども、受診率は明らかに低いというので、親御さんの健康意識の状況がお子さんの医療へのアクセスに影響している可能性はあると考えております。


○尾形座長 よろしいでしょうか。

 それでは、資料1につきましてはこの辺にしたいと思います。

 続きまして、資料2について近藤参考人のほうから御説明をお願いしたいと思います。先ほど事務局から紹介がありましたけれども、近藤先生は東京大学大学院医学系研究科の

准教授で、社会疫学、健康格差対策を御専門とされております。

 それでは、よろしくお願いします。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 こんにちは。御紹介にあずかりました東京大学の近藤尚己です。このような貴重な議論の場にお呼びいただきまして、大変光栄に存じます。

 私のほうから資料2を用いまして、20分ほど説明差し上げたいと思います。

 あと、追加の資料として2部、僣越でございますが、私が昨年度出した総説にきょうのお話のエッセンスが書かれていますので、参考にお配りいたします。

 もう一つは、「健康格差対策の7原則」というリーフレットになります。これも同じように、これはウエブサイトからダウンロードできるものですが、参考までに格差対策の考え方を載せたリーフレットになっております。

 では、資料2を見ながら進めたいと思います。よろしくお願いします。

 内容についてですが、まず、健康格差の状況について最近の社会疫学的な研究の結果をお見せしたいと思います。その後、社会的なストレス、生活保護を受給されている方はいろいろなストレスを感じておられます。そういう方がどういう行動の傾向を持っているのかというあたりのことを説明します。それを踏まえて、では、格差対策はどうしたらいいのだろうというのを主に5つの視点に絞って説明いたしたいと思います。

 1枚めくっていただけますでしょうか。

 まず、健康づくりというと「健康日本21」が我が国のヘルスプロモーション対策としてはあると思います。21の最初の10年間の結果が、目標が17%しか達成できなかったということでなかなか芳しくなかったという結果に終わりました。

 最終報告書が非常に印象的でして、書かれていたのが個人の健康設計における「こうすべき型」であった。つまり、もっとあなたは痩せるべきですよ、もっと野菜をとるべきですよというような形で、まず動機づけして、そこから本人が自覚して行動を変えてもらうというところを追求し過ぎたのではないかという反省の内容でした。

 そう考えると、なぜ「健康日本21」がなかなかうまくいかなかったのかということがわかります。

 次のページをめくっていただくと、その理由の一つが健康格差にあるのだと私たちは考えています。

 これは高齢者のデータですけれども、所得で見ても、教育年数で見ても、社会的に弱い立場にある方のほうが、閉じこもり、週に一度も外に出ないという方が多い、社会的に不活発であることがわかります。

 1枚めくっていただいて、糖尿病は、これも同じ高齢者のデータですけれども、低所得の方のほうが糖尿病の有病割合が高い。また、重症度、通院しているのにきちんと治療されていない、アドヒアランスがよくない方も低所得の方のほうが多いということがわかります。

 もう1枚めくっていただくと、これは介護保険のデータベースからとってきた保険料区分の所得段階、5段階を使って所得を判断していますが、4年間追跡したところ、やはり低所得の方ほど要介護になったり、死亡する確率が高いということがわかります。

 こういうふうに、特に最後のグラフなんかは印象的だと思うのですが、この第1段階、生活保護にかかるレベルの方々のリスクが最も高いのですけれども、こういった方は強い社会ストレスを抱えていますので、そういう動機づけによるような指導というのは声が届きづらかったのではないかといったことがわかります。最大のターゲットであるべき人たちになかなか声を届けられるサービスができなかったのではないかということが考えられます。

 1枚めくっていただきますと、こういう結果から社会疫学では、健康の多くが社会的な環境で決まるのではないかというふうに考えております。運動や食事という生活習慣が健康に影響する、これは確固たる事実なのですが、それを取り巻く社会的ネットワーク、人のつながりであったり、まさに今お見せしたような学歴や所得、職業といった社会経済状況、そして住んでいる地域の環境、ひいては社会そのもののありようとしての文化や制度、経済動向、そういったものが多層レベルにわたって健康を規定しているのではないかというふうに考えております。

 めくっていただきますと、そういったことが「健康日本21(第2次)」のほうでは基本姿勢に盛り込まれまして、目標の一つに健康寿命の延伸に加えて、健康格差の縮小ということが入りました。そして、それを社会環境の質の向上で達成しましょうということがうたわれるようになりました。まさにスタートラインに立ったなというふうに私たちも思っております。

 ただ、問題なのが、それをどうやるのか、どうやったら効果的に健康格差を減らせる社会環境の整備ができるのだろうかというアクションの部分です。それを今、まさにいろいろと検討している段階なのだと認識しています。

 1枚めくっていただきたいと思います。

 ここからが、どうして社会的なストレスを抱えている方が健康行動をとりづらいのかというお話になります。これを私なりに3つにまとめてみますと、物質面で言うと、まず、シンプルにお金もない、時間もないので、健診に行ったり、ジムに通ったりということができないということがあります。

 もう一つは心理面、これが今日注目したいところですが、慢性的なストレスによって認知バイアスがかかる、考え方がせっかちになってしまうということが最近の神経生理学や脳科学でもわかっています。

 それをわかりやすく説明したのがKahnemanなどの社会心理学者たちですけれども、左の図になります。私たちのリスク認知、考え方というのはタイプが2つあって、1つはケーキを目の前にすると思わず食べてしまうというような自動的なシステムです。もう一つは、熟慮して食べようか、食べるまいか考えて、熟慮の末決定するというような熟慮システム。この自動システムと熟慮システムがお互いに補い合いながらいろいろな意思決定をしているということが言われています。

 脳がストレスを感じると、まずストレスホルモンが副腎から出ます。ストレスホルモン自体が血圧を上げたり、血糖値を上げたりしますので、糖尿病や高血圧のリスクになるということもあるのですが、さらに興味深いのは、それが脳にフィードバックして考え方を変えてしまう。ストレスがかかると、まず、理性的な判断を失う。熟慮システムを低下させてしまい自動システムを優位にさせてしまうということが言われています。我慢がきかなくなったり、記憶力が低下したり、そういったことが起きるということが言われています。

 それがデータでもあらわされていると思うのが、次の資料の9ページ目になります。これはWHOが引用しているイギリスのデータですけれども、社会的に不利な立場にある貧困層ほど、お金がないはずなのにアルコールやニコチンやドラッグに投資をしてしまう。これは、まさに健康づくりというのは20年後、30年後の自分への投資だというふうに考えると、ストレスを抱えている方の興味というのは、20年後の健康というよりも今の快楽であるとか楽しみであるとか、そういったところにあるということがあらわされていると思います。先ほど岡山先生が御指摘されたように、喫煙率が高いというのも、まさにこういったところの反映だと思っています。

 1枚めくっていただいて、こういうことを踏まえると、健康格差対策は5つぐらいに分けて考えるとわかりやすいのではないか、そういう5つの視点があるのではないかというふうに考えます。

 今から1つずつ説明しますけれども、1つ目は、まずは健康格差を縮小する新しいポピュレーションアプローチの考え方です。

 もう一つは、見える化による課題共有とPDCA。これは、まさにこの会のテーマでもあると思いますが、いろいろな方がかかわって対策していかないと。例えば町の福祉事務所に保健師さんが数人いたとしても、全員の方をやることはできません。いろいろな方の力を借りる必要があります。そういうときにパワーを発揮するのが見える化したデータです。これが求められると思います。そういったものを踏まえて、横断的・縦断的な組織連携をつくって町づくりの観点で弱者対策もしていく必要があるのではないか。

 4つ目が、健康無関心層に効果的な戦略を打って出ましょうと。先ほどもお伝えしたように、日々の暮らしで精いっぱいなので、健康づくりに関心を寄せられない、そういう方を動かす新しい戦略というのを考えなければいけないのではないかということです。

 最後に、ライフコースにわたる対策。先ほど、子供の話も出ましたけれども、親が貧困だと子供が不健康になる。そうすると、健康状態というのは将来の稼ぐ力となりますので、また貧困につながるという貧困の連鎖が起きてしまいます。それを小さいときからとめていかなければいけないのかと考えております。

 理論的な根拠は、WHO2008年に出版した健康の社会的決定要因に関する特別委員会の報告書にまとめられています。同じように推奨事項として、まず、生活環境を改善することが健康づくりには大事だということ。あとは、公正な資源分配のためにも連携とガバナンスが必要だということ。そして、健康格差をモニタリングすることが大事だというふうに掲げております。

 1枚めくっていただいて、まず、1点目の新しいポピュレーションアプローチについてです。

 ポピュレーションアプローチというのは、ジェフリー・ローズという疫学者が提唱した話ですけれども、ハイリスクな方に特化した健康指導をするだけではなく、集団全体のリスクを下げるようなアプローチをしないと大きな効果は得られませんよというのがその趣旨です。

 1枚めくっていただきますとわかるように、例えばポピュレーションアプローチとして最もよくやられるのが、いわゆる知識の啓発型の対策だと思います。集団全体にたばこは危ないよとか、もっと痩せましょうということを啓発していきます。ただ、これの危険性は、そういうことを言うと、一番リスクが低くてもともと健康な人がまず気づいて、もっと健康になります。そうすると、一番リスクが高い右寄りの方々が置いていかれてしまいますので、健康格差を広げてしまうことになります。ですので、追加の対策が必要になってきます。

 1枚めくっていただくと、そこで2つ、今日御紹介したいのは、1つは社会弱者に特化したポピュレーションアプローチという考え方です。集団に対するアプローチなのですけれども、まず集団をセグメント化して、社会的にリスクがある方に対して特別な支援をする。例えば、まさに生活保護受給者への健康支援であったり、レセプトデータを使った支援システム、あるいは、ペイシェント・ナビゲーションなんていうのがアメリカではとても成功しているというふうに言われています。移民の方とかなかなか医療にかかわれない方に寄り添うように、一緒に相談しながら受診したり、いろいろ難しいペーパーワークをやったりということを半年ぐらい続けることで適正な医療を受けてもらう、こういったサービスがあります。この介入研究でも、それによって健診の受診率が上がったということが示されています。

 この社会弱者に特化したアプローチの注意点として、スティグマを与えてしまう可能性です。自分は弱者であるということを自分が認識してしまうことで行動が抑制されてしまったり、引け目を感じたり、あとは外からのスティグマもあります。まさに差別を生んでしまうということですが、ここに注意します。

 ですので、全体としての考えとしては、次のページに書きましたように、やはりケアというのはユニバーサルに、全員をカバーしましょうということになります。ですが、社会的に不利な度合いに応じて対策を強めましょうということがWHO等では言われている状況です。

 次のページに行きます。健康無関心層に向けた対策をどう打っていけばいいか。

 これは、まず、下のほうを見ていただきたいのですが、考え方の発想を思い切って変えてみたらどうかというふうに思っております。今までのやり方は、健康になろうという個人の努力、まず、個人が意識することを前提としておりました。ただ、それで健康になれる人はすでにかなり健康になっている。であれば、今、健康になれない健康に無関心な方々にはどうしたらいいか。そういう方でも無意識に健康になれるような仕掛けづくりをしていくことも大事なのではないかというふうに考えます。

 これを紹介した有名な本が、右上のベストセラーになった「ナッジ」という行動経済学の本なのです。ナッジというのは、ちょっと後押しするというようなことを示す英語になっています。別に健康は押しつけないのだけれども、ちょっと健康になってしまうような仕掛けをかけてあげるということです。

 次のページに移ります。この健康至上主義というのもその際に気をつけなければいけないことで、健康づくりをしましょうということを健康に無関心な方に言っても余計なお世話だというふうになってしまうわけです。これをうたわないで、健康づくりではないのだけれども気づいたら健康になっていたというような仕掛けも大事なのではないか。

 例えばアフリカの子供の手洗いを励行するために何をしたかというと、NPOがやったのは、石けんの中におもちゃを入れました。そうすると、手をきれいにしたい気持ちはないのだけれども、おもちゃは欲しいので手を洗います。そうすると下痢が7割減るという結果につながります。

 次のページ、日本でもおもしろい取り組みをしている健診会社があります。簡易的な健診サービスをいろいろなところで、スーパーとかデパートとかパチンコ屋さんでやっているところなのですが、パチンコ屋さんで健診をしても、パチンコに来る方はなかなか健診に興味はないです。そこでお店がやったのは、ナース服を若い女性に着せて、これで勧誘するということです。そうすると、どんな人が来たかというと、私の分析では、まず、無職の方、国民健康保険の方が割合として多かった。健診には興味ないけれども思わず健診を受けてしまうナッジ戦略になっているのではないかと思います。こういった発想の転換が必要なのではないかと感じております。

 もう一つ、次のページ、これはアメリカの事例ですが、ギャンブル依存症の方にどうやって自分でギャンブルをしないようにさせるかというのを支援する仕組みです。ミズーリ州で実現していますが、依存症で病院に入院したりしているようなときに、もうギャンブルはやめましょう、つきましては、カジノ出入り禁止リストへ名前を載せますのでいいですかと、サインします。そうすると、そのリストが州の中のカジノに配布されます。禁断症状が出てカジノについつい行っても、そこで門前払いされるわけです。自分の意思でサインしたことで、自分で認知力が低いときの自分をコントロールできる、そんな仕組みを州がやっているということになります。こんなことも役に立つかと。

 あと、先ほどお伝えしましたように、次のページですが、生活保護だけで健康づくりを進めることはできませんので、地域保健との連携も大事だと思っています。町では、高齢者の社会活動をふやすようなコミュニティーサロンの活動が盛んになっています。これをやると要介護のリスクが半減するというような追跡研究の結果も出ています。こういった町の活動と生活保護対策も連携して取り組んでいく必要があるのではと思っております。

 次のページに行きます。これを戦略的にやっているのが神戸市であります。神戸市は、各生活圏域を色塗りして、介護のリスクスコアと地域資源スコアを見える化しました。リスクと資源のギャップが大きいところを戦略的に選び出して、健康づくりの対策を打っています。そういうふうにして限られた資源を集中投資している。こういった活動を生活保護受給者の健康づくりにも応用できるのではないかと考えています。

 次のページ。これは、最後のライフコースにわたる戦略のところですけれども、先ほども言ったように、小さいときから対策を打っていかないと間に合わないのではないかということです。

 1枚めくっていただくと、アメリカのデータですけれども、小さいころの逆境体験、親の離婚であったり、死別であったり、虐待であったり、そういったことの数がふえると大人になってからも、ずっとそのリスクが残ってしまうというデータです。自殺企図などが高くなっているのがわかると思います。小さいときにこういう体験はできるだけしないようにする。こういった体験は、やはり社会弱者の家庭の中に起きやすいので、そこを対策していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 以上から、私の提案としては次のようなことを挙げさせていただきます。次のページになります。

 まず、生活保護受給者の管理データを最大限に活用して、どこにどんな方がどういう理由で健康リスクを背負っているのか、これを見える化して戦略的に対策することが有用なのではないかと思います。

 2番目に、対象者の求める価値に訴える健康づくりです。健康ということをあまり訴え過ぎずに、本人が求めているものは何なのだろうか、これを明らかにして、そこに訴えながら気づいたら健康になるような、そういったアプローチが必要なのではないかと思います。

 生活保護の方に特に重要なのが、やはり社会的なつながりだと思います。孤独なために病院に行ってしまったり、そういったことが起きます。まず、外の部分につながりをつくってあげることで健康づくりもやりやすくなるのではないかというふうに思います。

 以上になります。


○尾形座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御発表につきまして、御質問、御意見がございましたらどうぞ。

 どうぞ、岡山委員。


○岡山委員 お示しいただいたのは大変おもしろいデータなのですが、私たちはこういう疾病の因果論とかをやっていると、因果の逆転というのが入ってくる余地というのがあって、先生のお示しいただいたのは、みんな比較的短いので、結局そういった因果の逆転も入っている可能性もあるなというのもあって、どこまでそういう要素を排除して、より強いエビデンスにしていくかというところではないかと思うのですが、その辺については、今、研究というのはどんなふうにしているのでしょうか。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 確かに所得と健康の問題は昔から言われていて、ただ、それは一生涯にわたる問題なので、行ったり来たりなのです。所得が低くなって不健康になって、不健康で仕事ができなくなって稼げなくなるので、これは因果関係というよりは、まさに因果のあやになってしまって、どちらかというのは言い切れないのだと思います。


○岡山委員 例えばわかりやすいところで、サロン参加の有無による介護認定なんかの場合は。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 これはかなり厳密にやっていまして、操作変数法というのを使って因果の逆転を抑えています。つまり、これはサロンに参加しているかどうかではなくて、サロンまでの距離をはかっているのです。お家に近いほどサロンに参加するというのはわかっているので、だけど問題なのは、参加したい人はもともと元気なのではないかというところなのですが、近くにサロンがあるからといって、その人が元気であるとは限らないですよね。なので、近くにあることで参加するかどうかを予測させて、それによってさらに要介護になるかどうかを予測させるというツーステップをとることで逆因果を抑制しています。


○尾形座長 よろしいですか。

 ほかに。津下委員。


○津下委員 頭の整理ができてありがたいです。

 まず1つは、ポピュレーションアプローチでもそうなのですけれども、社会弱者を意識はしつつも、ほかの人もやっている方策の中で特化したやり方を考えるとよいのでは、と思いました。例えば、生活習慣病対策であれば、一般の方が特定健診保健指導とかをやっている流れがあって、メタボ対策は大事だよと言われている中で、特に生活保護の人に対しては、同じテーマで取り組んでみる。その中で、もう一歩手厚くやらないと動かないかもしれない。例えば本人の自己管理に任せるのではなくて、もう少し寄り添い型でどうしたらいいのか一緒に考えていくとか、もう少しきめ細かい目を入れていくとか、そんなようなやり方を考えたらどうだろうか。

 高齢者の場合は、例えば総合事業とか介護予防などの一般的な高齢者がやっているようなものに対して、どううまく相乗りできるか。ただ呼びかけてもなかなか参加できないので、もう少しプッシュするようなものを工夫するとか。自信をなくしてやめてしまうということのないように、自己効力感を高めるよう工夫する。改善できない理由として、ストレスを訴える場合にも、ストレスに対してどう解釈したらいいのかとか、を支援する。ストレスがすごくたくさんあっても小さなこととして受けとめる人とすごく大きく受けとめる人、すぐに諦めてしまう人。考え方のくせに気づくようなアプローチとか、そういうことが考えられるのかというふうに思ったのですけれども、いかがでしょうかというのが1点。

 もう1点は、ケーキが目の前にあればぱっと食べてしまうよねということで、ケーキがない状況にしていく。暇にしているとどうしても食欲のほうに行ってしまうので、例えば一定の時間トレーニングに通うとか、そういうある程度外からリズムを整えるということを介入していったらどうだろうか。一定期間アクセスできないような状況をつくる。仕事をしている間はたばこが吸えないので、それで禁煙する人がふえたように、何かそういう生活を変えるようなアプローチを考えていかなければいけない、そのような理解でよろしいでしょうか。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 おっしゃるとおりだと思います。特に働けない方は、社会的な役割がないのですね。生きがいもないので、ついついそういうところに走ってしまうということもありますので、そこは時間の使い方の優先順位なので、もっと楽しくて生きがいになるようなことを提供できることが大事だと思います。そういうチャンスは町のいろいろな事業でもあったりしますので、生活保護に特化した新しいサービスをどんどんつくるのもいいのですが、そういったところにつなげていくようなことをしていくことで効率を上げられるかというふうに思います。


○津下委員 もう一つ、カジノに入らないでという拒絶されるリストが出るというのは、あれはアメリカではどういうふうに受けとめられているのでしょうか。そういうリストが流れることについて抵抗感があるかもしれないと思ったのです。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 大きな政治的な議論になっています。いろいろな州でできるところ、できないところがあって、ミズーリ州も一定の成功をしつつも、またやめようかという話にもなったり、それは常に議論しながらですが、一定の成果はあるということです。

 アメリカは絶対にそういうところではIDを見せないと入れないし、お酒を買うにも必要なので、それがあるからできるのですけれども、日本だともう2歩ぐらい前進が必要かなという感じになっています。


○尾形座長 よろしいですか。

 松本委員、どうぞ。


○松本委員 大変おもしろい研究で興味深く聞かせていただきました。20ページの神戸市の例ですが、今、介護予防を非常にうたわれていて、自治体によっては介護予防を受けるとポイントを与え、ポイントを貯めて換金する。各自治体の介護予防の結果がよければよいのですが、国家を挙げて、介護予防の話をするときに、厚生労働省の介護保険部会でそれを実行するのはどうなのか。ここにありますように、ナッジ戦略のように健康になろうという個人の努力を助けるために指導し直す。やはり介護予防は本人のためであり、ポイントを貯めてお金をもらうためのものではないですので、その辺の考え方を事前にきちんと整理してからポイント制にするといったやり方が必要であり、介護予防ができれば何でもよいのだという印象を受けてしまうのですが、先生、その辺はいかがですか。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 そのお話は、まさに先ほどの黄色い『Nudge』という本の中でも議論されている倫理の問題ですね。やはりデザインする側の高い倫理性が求められます。

 先ほどの看護師さんのあれですが、これは業者さんが販促活動としてやっているからいいのですけれども、私たちが研究としてにせの看護師さんを雇ったら批判が来るのです。その辺は、やはり丁寧なコミュニケーションと議論をしながら進めていく必要はあると思います。

 国がそのような民間の戦略を支援するのはいかがなものか、という意見があると思いますが、では、ほかに何の手があるのですかというのが私からの逆質問です。健康に無関心だという人に、関心を持つまで待たなければいけないのかという点です、その前にその人の人生が終わってしまうことになるのではないかと思いますので、何らか今のような倫理的な課題を克服しつつやれることをやっていく必要があるのかと思っています。


○尾形座長 どうぞ。


○松本委員 倫理観はもちろんなのですけれども、何もしないでポイントだけを与えるというのが何となく割り切れないという感じなのです。無関心の人をこちらに向けるという努力を続けながらだったらよいと思うのです。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 ありがとうございます。例えば関心を持ってもらうための入り口にそれを使うということですね。継続には至るようにすることが目標ですね。ここで関心を持ってもらって続けてもらうというところに結びつけることも大事だと思います。


○尾形座長 では、津下委員、どうぞ。


○津下委員 今の松本先生のお話は、まさしく本当に大事なポイントと思います。悪循環を断ち切るとか、見向きもしなかったことを無理やりにでもいいから一回は体験してねというチャンスは必要かもしれないのですけれども、やはり、そこで受けてよかった、自分のことだもんねという言葉につながっていくことが大切と思います。目先の御褒美をもらうことだけに気が向いてしまうと、本当の健康行動にはつながっていかないので、今、どの段階にいるのか、だからどの手段を使っていくのがいいのかということを考えることが大切と思います。どういう仕掛けで振り向くかというのは、その人の関心とか属性とかいろいろなことがあるし、地域性というのがあるので、それぞれが工夫しやすいやり方をとっていくということが必要と思います。戦略的に仕掛けていく部分と、継続や満足感を与えて自己効力感につながって、ちょっとした自信につながっていくような取り組みと両方用意をしないといけないのかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 そのとおりだと思います。ありがとうございます。

 健診にポイントをつけてドラッグストアで買い物ができるとか、いろいろな自治体でやられているのですが、それだと本当にそれだけが目的になってしまう。それでも僕は今のフェーズではいいのではないかと思っているのですが、さらに健診に来るとそこでつながりができて、そこで新しい社会参加の仕方が見つかるとか、そういうものを健診の場に仕掛けられるとよりよいのではないかというふうに思います。あれだけ人が集まる場なので、何かそこでできるといいのかと思います。


○尾形座長 よろしいですか。

 私から2点ほどコメントと質問をさせていただきたいのですが、先生の資料の23ページで提言をいただいておりまして、大変参考になる具体的な提言をいただいているというふうに思います。特に24ページに概念図も載っていますが、仮にこういう実施体制を構築していくとしたときに、どういったところが課題になるのか。特に自治体あるいは福祉事務所の人的な資源、先ほども話がありましたけれども、そういった制約を踏まえたときにどんな課題があるのかというあたりについて少し話していただければというのが1点目です。

 それから、もう一つは全然違う話なのですが、海外のアメリカ等の事例やデータもいろいろ出していただいているので、もし御存じであればということで結構なのですが、例えばアメリカのメディケイドで対象者に対する健康支援とか健康管理で何かやられているのかどうか、その辺をもし御存じであればで結構ですが、教えていただければと思います。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 1点目は、まず、データシステムを誰がペイするのかというところが問題で、また、その開発費もそうなのです。生活保護のレセプトデータは、一般のレセプトに比べると規模も小さいですし、顧客もこの健康管理をやられているところはまだそんなにないので、市場として成り立つのかという心配もあるようです。その辺を克服していくことが特に初期の段階では必要だと思います。

 もう一つは、やはり仕組みだけつくっても使われなければだめということです。見える化データづくりを私たちは介護予防でいろいろやっているのですが、例えばそういう塗り分け図みたいなものを見せても、「おもしろいね、でも、どう使うかわからない」と。その使い方をガイドしていくようなところもあわせて持っていかないといけないのではないかというふうに思っています。

 1個目はそのぐらいでよろしいでしょうか。


○尾形座長 はい。ありがとうございます。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 2個目、アメリカで言うと、メディケイドの枠組みと直接関係するものは存じ上げないです。ただ、先ほどお伝えしたペイシェント・ナビゲーションは、メディケイドにかかわらず、特にコミュニティーヘルスセンターとか社会弱者が集まるところに常駐してNPOと一緒になって、この人はちょっとリスクが高いかなと思うとナビゲーターをつけるというようなことで取り組まれているようです。


○尾形座長 ありがとうございました。

 岡山委員、どうぞ。


○岡山委員 近藤先生のお話をお聞きして、2つポイントがあるかと思いました。

 1つは、こういった弱者の人たちを何らかでどんどん絞っていってリスクの高い人を見つけてというよりも、弱者全体に対してどうアプローチするかという視点を持たないと難しいのではないかというのが1つ。

 それから、こういった生活保護を受けている人たちの特性に応じた支援の仕方というのを、最初からこうやるべきだというよりも、そういった方法論的なアプローチの仕方も含めた開発というか、一つ一つの支援の仕組みというのは、想像の中で今、私たちはこうやるべきではないかみたいなことを考えることはできても、実際に地域によって、また、その人たちの特性によって効果があるかないかというのはやってみないとわからないというところがあるので、その辺のところも大きな課題かというふうに思いました。


○尾形座長 いかがですか。

 どうぞ。


○津下委員 今、アウトカムということを言われたのですけれども、生活保護受給者に関する健康支援のどういうアウトカムを見ていくべきか、それから、アウトカムの指標としては、少なくとも標準化して共通のものさしを持っていることが必要と思います。取り組みを一生懸命やっているところはアウトカムがいいので、ほかもやったほうがいいよねというふうにつながっていくとよいと思うのですが。ポピュレーションアプローチのアウトカムというのは結構難しい部分もあるかと思うのですけれども、マクロ的に実際のデータを分析していくような方法なのでしょうか。


○岡山委員 私は、生活保護の方の実態というのをあまり知らないでお話ししているのですけれども、1つはケースワーカーですか、ソーシャルワーカーの方がいらっしゃって、必ず一人一人に目が届いている状況というのは普通の集団とはちょっと違って、ポピュレーションアプローチをコントロールできるという、その研究成果は逆に日本人全体の評価にもアプローチにも使えるかもしれないのですけれども、そういう状況にあるということを考えると、ポピュレーションアプローチも非常におもしろいアプローチではないかと思うのです。

 これはこれからの話になると思うのですけれども、全員に一度にやるという発想にすると必ず行き詰まるので、何年か計画をかけてぼちぼちやっていくというような仕組みにすると、今のエネルギーをかなり使えるかもしれないというふうに思いますし、評価のところ、今、先生がおっしゃったように、仕組みをどうやってつくるのだというのはあるのですけれども、ただ、もう既にレセプトが電子化されていて、健診もデータ化されているということになれば、既存の仕組みをうまく活用すれば結構使えるものができるかもしれない。

 そういったものを使う中で、しっかりアウトカムが評価できる仕組みと、先ほどのやり方を最初から限定してしまってやるというのではなくて、何年かは試行的にやってみるというのも組み合わせることで新しい保健事業の形が出る可能性があるという気はします。


○尾形座長 ありがとうございます。

 ほかはよろしいでしょうか。どうぞ。


○宮原委員代理 私どもの自治体の中でも現実的なところですけども、生活保護のケースワーカーは、非常に保護費の管理にウエイトがあって、生活保護者の健康管理というところは、しなければいけないということは当然わかっているけれど、そこが二の次になってしまっているということ、それから、主たる疾患とか主たる相談の支援が主になっていますので、生活習慣病というところになかなか着目していかないというところがあります。

 ですから、そういった部分を、当然、法の中では年に1回健診をやるようになっているので、そこをどう押していくのかということと、今御説明の22ページの子供への影響がありまして、生活保護の家庭の子供はその中で成長していくので、本当に連鎖していくため、こういったあたりをしっかりと着目しながら、できる支援というのが考えられるのかなと思います。

 以上です。


○尾形座長 小田委員、どうぞ。


○小田委員 今、宮原委員代理がおっしゃったところの補足になるかもしれませんが、ケースワーカーさんが受給者の把握を行うというのは当然するべきところなのですけれども、実際多くのケースを抱えている中で、その方の状況に応じてかかわる頻度というのはかなり差があります。実際には年間2回訪問するという基準を設けて、着実に状況だけを確認していくという方から、いろいろ健康状態、生活状況の変化に応じて濃厚にかかわるような時期の人がいたりということがありますので、健診データで一律に対象者を挙げたときに、かかわりの度合いをどういうふうに変更させていくのかということを少しガイドしてあげるような仕組みがないと、今までの受給者へのかかわりのシステムと健康管理支援のシステムをどうあわせていくかというところは切り離してはいけないところというふうに思っています。

 今、こちらの資料で御説明いただいた中で、社会弱者に対するいろいろな方法が考えられるのではないかと御教示をいただいたのですけれども、例えば川崎市で今までやっていた糖尿病の教室は、それこそ年間1回とか3回という少ないものですけれども、やるときに当たっては生活保護の方だけを対象にやってきましたが、地域で生活している人ということを考えると、生活保護の方に限らずいろいろな方が参加して、その中で少しでも横のつながりができるということが行く行くの社会生活に有用になるのではないかということも意見として出ていました。

 この例を見ますと、恐らく生活保護に限らず社会弱者全体の方に向けた政策ということが考えられているとは思うのですけれども、そちらには恐らく自治体の力だったり、すごく時間がかかることだと思うので、こういったことも念頭に置きつつ、個別からできること、福祉事務所単位でできることを考えていかなくてはいけないし、そちらのほうが実効性が高いような気もします。


○尾形座長 よろしいですか。

 それでは、近藤参考人、大変貴重な御発表をどうもありがとうございました。

 それでは、引き続き資料3につきまして、事務局のほうから御説明をお願いします。


○市川保護課医療専門官 資料3の説明をさせていただきます。

 「健康管理支援の介入方法について」ということで、今回のメーンになります。

 次をおめくりいただいて、最初は今の生活保護受給者の現状について簡単に述べさせていただきます。

 2ページ目、生活保護受給者の身体的健康状態ですけれども、障害・傷病ありの者は91万人、そして、若年者で何らかの疾患を持つ方が多く、レセプトを見ましても、内分泌疾患、いわゆる糖尿病等は約20万件、循環器疾患は約40万件と多いものになっております。

 次をめくっていただいて、これは第1回にもお見せしたものなのですけれども、健康増進法による健康診査の方のメタボリック症候群の該当者がかなり多いというもので、一般の方に比べてそういった生活習慣病リスクが高いというものです。

 4ページ目をめくっていただいて、今度は生活保護受給者を取り巻く生活状態や社会的因子についてです。これは、被保護者調査よりまとめたものですが、ひとり暮らしの方がだんだんと年をとるごとに多くなっておりまして、男性の方にひとり暮らしがかなり多いというものです。

 下のほうのグラフが就労していない者が大体9割ということで、若い方でも働けない方が多いというものです。

 次、5ページになりますけれども、これは科研費で研究されたものをいただいたものなのですけれども、A県の福祉事務所の生活保護受給者4064歳の方に健康についての意識調査をされたものです。

 研究結果によりますと、中学卒の方が約半数程度なのですが、その方に対して健康に関する相談相手はどんな方ですかというふうな質問をしますと、医師が最も多く、次に家族や友人となっております。そういった意味で、ケースワーカーさんという回答はかなり少なかったです。

 あとは下の表になりますが、市町村の保健サービスの利用者は少ないという現状でした。

 続きまして、6ページ目になりますけれども、同じ研究の結果、市町村の保健サービスを使っていないという方が多いのですが、どうして健診を受けていないのですかという質問に関しては、まず、費用がかかる、実際にはかからないのですけれども、そういうふうに誤解されている方。また、知らなかったなど、健康にかかわる情報の入手ができない人が多い。

 右の表になりますけれども、まず、保健師やケースワーカーにどのようなことを期待しますかという問いに関しては、わからないというふうに答えている方が多いのですけれども、一方で、線を引いているところになりますが、健康に関する情報はかなり求められておりまして、身近に相談をできる人として期待しているところが見えています。

 次、7ページ目になります。これも第1回のときに載せさせていただいたものなのですが、国民生活基礎調査と同時に生活保護受給者に対しても同じ質問をしたもので、それを比較したものになりますが、食生活に関しては、2ポツ目になりますけれども、健康状態がよくなく、一般の世帯と比較して、食事の習慣や運動習慣ができていない方が多い。

 4つ目のポツになりますけれども、生活保護受給者は社会活動について疎遠気味であるというデータが示されています。

 次が、これは近藤先生からいただいた資料になりますけれども、大阪府のA市で生活保護受給をしていた方の健診の結果を分析したものです。

 研究結果によりますと、生活保護受給歴が1年未満という方を対象にしまして、生活保護歴で区切って健診の受診率を見ているものなのですけれども、生活保護歴の短い層は健診受診に意欲的、健診受診率は約3倍であるとか、年をとるごとに健診の受診率は減っていますので、生活保護受給歴が短いほど健診の受診率が高いというものです。

 次のグラフになりますけれども、9ページ目、同じA市のものですけれども、A市の中でも地域としてニュータウン地域と市街地があるところなのですが、ニュータウン地域で暮らされている生活保護受給者の方は健診の受診率が高く、市街地の方は少ないという結果が出ておりまして、同じ福祉事務所の地域であっても健診受診率が違う傾向が見られまして、支援対象になる集団というのを分析していく必要があるというふうに示唆されます。

 次、10ページ目になりますが、これは先ほどからもお話が出ていました子供に関してですけれども、厚生労働省の母子保健課から公表された調査になります。乳幼児栄養調査で、主観的にはなりますけれども、経済的な暮らし向きにゆとりがないと答えられた家庭のお子さんの食生活は、野菜をとる生活が少なくて、インスタントラーメンやカップ麺を食べる傾向があるというものが見られております。そういった意味で、生活保護受給者の親御さんに栄養指導をすることで、そこの家庭におられる子供の食生活にも影響を及ぼすことができる可能性があるのではないかと考えております。

11ページ目になりますが、今までの現状を踏まえてまとめた表になります。現状、左がそういった生活保護制度と受給者の特徴、真ん中がそれを踏まえた今回の健康支援の考え方というものを案で示させていただきました。そして、右のほうは具体的な要素としていろいろ並べさせていただいております。

 それを紹介させていただきます。まず、生活保護制度の受給者の特徴になりますが、岡山先生もおっしゃっていたように、福祉事務所というのはケースワーカーという人が1対1でついておりますので、ケースワーカーが中心となって受給者の生活を把握して自立支援に取り組んでいるところです。ただ、受給者の健康状態をデータで把握し支援しているという福祉事務所は、まだ少ないです。

 また、福祉事務所に常時医療専門職がいるわけではありません。

 また、健康診査を受ける機会がないという自治体も存在しまして、さらに実施していてもその健診結果を入手していない福祉事務所も多く存在します。

 また、受給者自身に関してですが、既に身体疾患や精神疾患を罹患して医療機関に受診しているという方が9割ほどおられるということで、受給者の中の医療の罹患率は高いです。

 また、若年で疾患を持っている方も多く、社会的にもひとり暮らし、不就労といった孤立した方が多く、さらに意識としても健康に無関心層であったり、健康の情報が入手できない方が多く存在します。

 また、御本人の生活の中で自己管理スキルというのが確立していない方も多いと推測されます。

 そういったことを踏まえまして、考え方の案をお示しします。

 まず、支援の視点としましては、やはり健康というのを全面に押すというよりも、受給者の自立支援の一環であるということを中心に置いて、受給者の生活全体の中で支援を行うということでどうかと考えております。

 また、受給者本人の健康への意識と生活スキルを高めるというような視点で支援を行ってはどうかと考えております。

 対象者になりますが、今回は、ずっと生活習慣病と言っていますが、やはり明記するということで予防可能である生活習慣病への支援というものを支援の中心に据えたいと思っております。

 また、自己管理スキルが確立していない受給者も多いため、既に何らかの疾患により医療機関に受診している受給者も支援の対象としてはどうかと考えております。

 仕組みの骨格としましては、福祉事務所が主体となって受給者の健康データを用い、福祉事務所の集団の特徴に基づいた戦略を立ててはどうか。

 また、受給者のそれぞれの身体的・社会的機能に応じた対応策を作成する。

 さらに、福祉事務所はそれだけでは今のところ医療の専門職もおりませんので、受給者の生活に関係する各機関とそれぞれ連携して多職種で協働して支援を行うという考え方でどうかと考えております。

 具体的に仕組みの要素としましては、福祉事務所として今あるデータを分析した上で、受給者全体への健康支援の戦略・方針を作成してはどうかと考えております。

 また、その健診結果などを用いて、ハイリスク・要医療の受給者に関しては、福祉事務所が主体となって情報を集約し、関係機関が協力して個別のアセスメントを実施し、支援プランを作成してはどうかと考えております。

 また、ハイリスクになるおそれのある者、健診としてまだハイリスクになっていない方に関してもポピュレーションアプローチを組み合わせた対策をとってはどうかと思っております。

 また、福祉事務所は、地域の社会資源を活用して、保健センターなどさまざまな関係組織との連携を図る体制を整備してはどうかと思っております。

 また、対象者になりますが、まずは特定健診ということで4074歳を支援の対象としてはどうかと考えております。

 さらに、健診データ、レセプトデータを組み合わせて活用したデータに基づく支援を行う基盤を整備してはどうかと押す。

 また、福祉事務所で健康支援にかかわる職員、ケースワーカーさんとか保健師さんに関して、健康支援とか生活習慣病に関する知識の啓発を兼ね、また、保健師さんに関しては生活保護受給者の特徴を知っていただくというような研修を強化してはどうかと考えております。

 中長期的には、現在、ケース記録というものがとられているのですけれども、健康に関するデータというのは一律にとられていないため、中長期的にケース記録に記載するという健康情報の標準化を行ってはどうかというふうに考えております。

 具体的にプランをどう作成するかというものですが、下のグラフを見ていただければと思うのですが、まず、横軸は通常の特定健診で行う健診結果に基づいて、ハイリスク、要医療というのをセグメント化する。ただ、こちらと特定健診との違いというのは、縦軸に御本人の生活自己管理能力というものも視点として1つ入れてはどうかというふうに考えております。

 そういったことを2軸で考えるという考え方をお示しさせていただいていますが、一番上のポツになりますけれども、この健康支援というものは多職種で御本人さんを支援しようというふうな考え方をとっておりますので、それぞれ違う職種同士でもお互いの支援の効果とかそういった評価をできるように、職種間で共通かつ客観的な指標が必要ではないかと考えております。

 また、先ほど少し述べましたけれども、生活習慣病のリスクと、さらに生活の自己管理能力の2軸で測定して、それをアセスメントする方法をマニュアル化してはどうかと考えております。

 横軸のほうになりますが、生活習慣病のリスク測定は特定保健指導の基準に準じることでよいかということを考えております。

 また、ハイリスク以上の受給者に関してですけれども、本人の生活、社会スキルに応じたアセスメントと個別支援計画の策定をしてはどうか。また、要医療未満ハイリスク以上の方に関してポピュレーションアプローチを併用してはどうかと考えております。

 さらに、要医療の方の個別支援に係りましては、医療機関に既に受診されているので、医療機関と連携を図っていただくということも考えております。

 次、13ページになりますが、先ほど岡山先生からも御意見をいただいたものと似ているとは思うのですけれども、まず、考え方としまして、同じ特定健診の基準値で切った場合、生活保護受給者はハイリスクの者がかなり多く想定されます。そのために、特定健診の基準で支援対象者を選定すると、受給者では対象者がかなり多くなることが推測されます。そういった問題がある中で案としましては、ハイリスクの個人に対して健康支援を行う場合、支援の中でも支援することでより改善ができたり、自立の可能性が高いある程度若い層であるとか、あとは小さいお子さんがおられる層など、そういった取り組みの優先順位をつけてはどうかというふうに考えております。

 また、対象者がかなり多い場所、生活保護受給者がかなり多い地域とかそういったものもありますので、そういったところは個別支援から集団や地域までを含めたポピュレーションアプローチなどいろいろな方法を組み合わせた弾力的な方法で支援をしていくという方向でどうかというふうに考えております。

 そういったものを模式図にしたものが次の絵になります。左のほうが現状になりますけれども、現状は、今、ケースワーカーさんがケースワークの中で生活習慣病の方を発見して支援するという体制ですので、健診未受診の方や自覚症状がない生活習慣病の方は発見できないというものになっていますが、右のほうに行っていただくと、そういった生活保護受給者の方のさまざまなデータを活用して、ハイリスクの方、リスクがない方、要医療の方というものを網羅的に発見しまして、福祉事務所として全体的な戦略や方針を立てていただく。

 そういった中でハイリスクや要医療の方に関してですが、その特徴を見て、本人の自立可能性とか健康意識、家庭状況を考慮して優先的な順位をつけながら支援をしていくという考え方になります。

 最後のものは、事業所ごとの役割(案)になります。福祉事務所として主体となってやっていただく役割として右のほうに書かせていただいています。今の体制ですと、かなり医療的な面は難しいところもあると思いますので、専門的業務の委託も含んだ中での福祉事務所の役割となります。

 まず、健診の健康データを分析すること、戦略を立てること、そういったアセスメントを実施すること、個別支援のプランを作成することであったり、関係機関のケース会議を開催したり、ケースワークの中で生活状況を把握したり、民間と連携をとったり、支援前後での評価を行うということを福祉事務所としてやっていただければという案として挙げさせてもらっています。

 また、保健センター、医療機関など関係各機関と連携やプラン作成のときはお互いの情報を共有していただく。民間の団体の力も借りていろいろな支援を行っていくような案を提示させていただきました。

 以上になります。


○尾形座長 ありがとうございます。

 生活保護受給者の健康管理支援の考え方と仕組みもかなり具体的な案までお示しいただいていると思います。時間の許す限り、皆様から御質問、御意見を受けたいと思います。どなたからでも。

 岡山委員、どうぞ。


○岡山委員 私、これを見まして、1つ大きなポイントがあるのではないかと思いますのは、先ほどもちょっとお話ししたのですけれども、単年度で順繰りやっていくというやり方をすると、いつまでたってもなかなか集団全体にアプローチができないということですので、それを年次計画に基づいてアプローチをかけていくということをぜひ実現していただきたいと思います。

 保健事業をやる際に単年度の実施率だけを見て、できた、できないではなくて、集団全体に何年かけてやっていくかということを、そこの地域のリソースに応じて展開していく。サービスを必要とする人に全体にアプローチができるような仕組みというのは非常に大事ではないかと思いますので、そこら辺を、新しい制度ですので自由な発想でぜひ設計していただければと思います。


○尾形座長 ちなみに、これは何年ぐらいで考えておられるのでしょうか。


○鈴木保護課長 イメージなのですけれども、特定健診の場合は該当した人がプログラムに参加していただくというスキームなのですけれども、現在、私どもが想定しておりますのは、生活全体の中で支援をするということですので、そうすると、おのずとその人の必要とするものが、例えば日中活動の場に行っていただくとかそういったことも支援の中に入ってきますので、プランを立てるところは一遍にやると当然過密になってしまいますので順番にということになるのでしょうけれども、継続した支援はその人の状況によって疎密が相当あるのではないかと思いますので、そういう意味では、毎年類似したプログラムを繰り返すというよりは、その人の生活全体の中で状態に応じてプランニングを立てて観察をして、一定期間の後に、これもいろいろな幅がある中で見直しをしていく、そういうことをイメージしております。


○尾形座長 よろしいですか。何か。


○岡山委員 そのときに、ケースワーカーの方々というのが、専門的な知識がないという部分がありますので、専門家とどうリンクするかというときに、私は、専門家が積極的にかかわる期間とケースワーカーの方がフォローする期間というのをうまく組み合わせていく中で、ケースワーカーの役割のよさと、専門家がかかわることによって問題の深堀りができるという仕組みができると非常にいいのではないかと思います。


○尾形座長 松本委員、どうぞ。


○松本委員 岡山先生が言われたように、単年度事業ではないと思うのです。ただ、ある程度の道筋を示して、これを取り入れた各自治体がどういうふうな色づけをしていくかが重要だと考えます。そういった意味では、決して私は先生に難癖をつけているわけではなくて、各自治体が目的を持ってやる中で、まず、医療費の削減というか、適正化というのも当然出てくるわけですから、それを実現するために少しえさで釣ると言ったら語弊がありますが、そういう手法にはいろいろなやり方があるかと思うのです。

 ですから、国ではある程度「建前論」で理想をお話ししながら、各自治体では本音の部分で実務的に実行していくといったアプローチの仕方でよいのではないかと考えております。そういう意味では、長期的な視野に立った提言ができればと考えております。


○尾形座長 中板委員、どうぞ。


○中板委員 単年度では無理だなと思うことと、12ページの健康管理支援プラン(案)で、自立度と生活習慣病の重症度という2軸で見ていく点はわかりますが、この中のメニューが生活保護世帯にマッチしているのだろうかという懸念はあります。

 先ほど説明のあった健康増進法に基づく健診を受けた方の10%が実際に生活保護受給者の中でどのような層の方なのか。想像するに生活保護受給歴が短い方などの特徴があると思います。関心度も高い層ですので、いわゆる一般的なポピュレーションアプローチでも一工夫あれば効果が期待できる方々と思われますが、そうではない人たちというのは、私が生活保護の方たちと関わってきた経験からいいましても、健康に関心を持つというよりは、生活に精いっぱいですし、健康というものに関心を持つだけの力が奪われているという状況、つまり、健康リテラシー、情報リテラシーも弱いし、世代間連鎖している方も多いと思われます。今、自分にとって何の情報が必要なのかという判断をする力も、それが与えられたときにそれをどう解釈していくかという力も、その情報をどういうふうに活用していけばいいのかという判断力も、ある意味弱い。また、そのどこかの部分が弱いために、行動変容につながりにくい。そのような方も同じアプローチでは成果は出にくいと思うのです。

 それで、前回もお話ししたように、決して多くはないが実際資料にもある22の自治体から国保のデータを取り寄せて、分析し、今回今の健診を受けた人たちにアプローチをしている自治体の考え方と成果は参考になると思うのです。

 以前から例えばアルコール依存症などで心身に障害をもち、働けなくなった方の生保受給者に対し、生活のたてなおしと再飲酒防止をねらって、1週間に1回福祉事務所に来て、そこで保健師やケースワーカーと対面で話す仕組みをとっていた自治体もあります。1週間のお金の使い方なんかも話をしたり、日常生活はどうだったかというコミュニケーションをとったりすることで少しずつ生活のリズムをつけていくとか、先ほどの近藤先生からもお話があったように、健康ということを表に出して話をしても乗らないので、日々の努力というものをケースワーカーと積み上げていくというやり方をしていました。対象に合わせた保健指導でなければ効果は出ません。

 もう一点、体制の問題は重要です。例の22自治体も、保健師がいるからしたのでしょうか。するために保健師が必要だからおいたのでしょうか。情報のやりとりの工夫もどのようなプロセスで整理していったのでしょうか。是非ヒントに体制をどのようなシステムにしていくのかという、それがこの中でどこまで提言できるのかを考えたいと思いました。


○尾形座長 先ほども申し上げたように、22については少しヒアリングを深めていただくということでお願いします。

 宮原委員。


○宮原委員代理 この生活保護とは別に2年前から始まっています生活困窮者自立支援法で、私どもの自治体でも事業をやっていて思うのですけれども、やはり生活サポートをして、生活困窮に陥っている原因がどこにあるのかということを一緒に考えて、特に家計相談というのを2年目からやっているのですけれども、家計の考え方とか借金の返済をどうしていくのかということを知らないで苦しい思いをしている人が、きちんとそこを何とか乗り切れれば、生活保護に陥らないという事例も出てきているのです。仕方なく生活困窮を乗り切るのは生活保護しかないと言ったとしても、その人がサポートを受けながら生活保護申請に行きますので、今の話を考えても、8ページにありますような5年以内とか1年、2年、生活保護に入った時にどういうことを生活保護の中で、保護費を出すけれども、生活支援もしていくということと、健康管理はしていくという入り口のところで仕組みづくりをしていかないと、20年になっている方に今の必要性を説いてもそこは難しいので、入り口の支援が重要かと感じています。


○尾形座長 ありがとうございます。

 近藤参考人、どうぞ。


○近藤東京大学大学院医学系研究科准教授 このシステムをつくっていくときに考えることが幾つかあるなと思いました。1つは、健康のデータを集めるということなのですけれども、今の先生方のお話にあったように、まさに大事なのはその人の生活背景なのです。ケースワーカーさんが持っている情報もすごく大事で、それが今は結構手書きでデータ化されていないのです。そこを効率よくデータ化する仕組みが欲しいと思います。

 それと、レセプトデータとか健康データを合わせると、どういう生活をしている人がどういう病気にかかりやすいのかということがわかります。これは、私たち疫学者の本当のジレンマで、健康づくりのニーズが一番高い社会弱者の方々はアンケートに答えてくれないので、どういうふうに行動しているのかわからないのです。ここが日本の生活保護のシステムのものすごい強みだと思いますので、ぜひそこを活かしていただきたいと思います。

 そのときにあれなのが、現場にそのデータとりを押しつけてしまうと疲弊してしまいますので、現場が楽になる仕組みをつくっていかなければいけないだろうというふうに思います。そこをどれぐらい自動化できるかというのがもう一つのポイントかというところと、あとは、データを集めて、どんな生活をしていたり、例えばストレス対処能力とか、そういう方が実際に健診を受けるのかどうなのかとか、そういったことを分析する、その分析を誰がやるかですね。これは、地域保健でしたら、もちろんいろいろ、でも、地域保健でも難しいところなので、分析を誰がやるかというところは考えていかなければいけない問題だと思いました。


○尾形座長 ありがとうございます。

 では、津下委員、どうぞ。


○津下委員 2点あるのですけれども、1つは健康データについて、健診を入り口というのは、受けていただいている方はいいのですけれども、多くの方は受けていただいていないので、先ほどからあるように、3年計画で全員受けていただくというのも一つの方法とは思うのですが、既に医療機関にかかってみえる方については、医療機関での検査結果の活用なども含めて、自分の健診データをちゃんと見てもらうということも方策としてあるのかもしれません。単にデータを集めるという意味ではなく、健康課題をしっかり意識していただくようなやりとりの中で、そういうデータを一緒にワーカーさんと見ていただくみたいな、そこで収集ができるというような形も考慮していく必要があるのかというふうに思いました。

 2点目は、例えば食事の問題がいろいろある。管理栄養士さんが指導したときに、生活実態に合った話がちゃんと具体的にできるかどうか今、旬の安い食材でうまくやるとこんなに簡単で楽にできますよという具体的なものがないと、話で聞いても現実には全然落ちていかない。指導者側のスキルも求められます。言葉で話を聞いて、選べる経済力やスキルがある人たち、子供のころから栄養だ、バランスだなんていう話を聞きながら育ってきている人たちと、そうでない場合には、指導方法を変えていく必要があります。子供のころから生活習慣がよくなかった方々の、大人になってからの再教育の難しさを感じるわけですけれども、どういう手法がよく理解していただいて行動できるか、そのあたりはより工夫が必要になってきます。先ほどから中板委員がおっしゃっているように、表面的にやってもしようがないので、生活実態に合わせた指導の方法なども研究していく必要があるというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。


○尾形座長 小田委員、どうぞ。


○小田委員 15ページの役割のところですけれども、事業所ごとにまとめていただいていますが、例えば福祉事務所の役割としてデータ分析とかアセスメント、個別支援プラン作成ということが書かれているのですけれども、福祉事務所の保健師さん等の配置状況の違いによっては、これがどこまで現実的かというところは当然出てくると思うのです。

 今、健康データと考えるのがレセプトであったり、健診データだと思うのですけれども、これ自体はすごい数になっていて、情報量もとり方によってはすごい種類があるので専門職がいない福祉事務所がどこまで分析できるのかというのは非常に難しいところです。データがあっても活かし切れないということがあり得ると思いますし、アセスメントをするに当たり保健師がいる部署との連携をどこからするかといったところも事前に議論が必要になってくる自治体もあると思うのです。日ごろから、いつも連絡がとれているところと、川崎市のように大規模なところではやり方にも違いが出ます。全部を福祉事務所というような見え方ができる表にしてしまって大丈夫かなという心配も少しあります。

 あと、生活保護受給者の生活習慣病の重症化予防なのですけれども、自治体ごとには健康づくりの施策というのが既にずっと立てられているので、そことの整合性もとっていかないといけないと思います。具体的な方法は生活保護の受給者だけで考えていくとしても、健康づくり施策の中の一環として生活保護受給者に対してどういうふうにやっていこうかという発想は大事だと思うので、そういう意味でも連携をとっていくというようなことを入れていただけるといいと思います。


○尾形座長 ありがとうございます。

 まだいろいろ御意見、御質問はあろうかと思いますけれども、そろそろ時間ですのでこの辺にしたいと思います。

 まだこのお話は今日出たばかりですので、引き続き議論していきたいと思いますし、それから、今日いただいた御意見あるいは御要望を踏まえて、さらに事務局のほうで資料等を工夫していただいて、次回また引き続き議論をしたいと思います。

 それでは、本日の審議はこの辺といたしたいと思いますが、最後に次回の開催につきまして事務局のほうから連絡をお願いします。


○生沼保護課長補佐 次回日程につきましては、現在、まだ調整中でございますので、追ってまた各委員に御連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。


○尾形座長 それでは、本日の会議は以上とさせていただきます。

 長時間にわたりまして、熱心な御審議をありがとうございました。

 


(了)

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