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2016年10月20日 第49回先進医療技術審査部会

(了)


第49回先進医療技術審査部会

(1) 日時:平成28年10月20日(木)16:00~17:45

(2) 場所:航空会館 701+702会議室(7階)

(3)出席者:
山口座長、一色座長代理、石川構成員、伊藤構成員、
上村構成員、掛江構成員、真田構成員、柴田構成員、
関原構成員、大門構成員、田代構成員、手良向構成員、
藤原構成員、山本構成員、中村技術専門委員

  (事務局)
医政局研究開発振興課 課長
医政局研究開発振興課 再生医療等研究推進室長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療専門官
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 医療技術評価推進室長
保険局医療課 専門官
医薬・生活衛生局審査管理課 課長補佐

議 題
1.継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について
2.新規申請技術の評価結果について
3.総括報告書の評価について
4.協力医療機関の追加について
5.千葉県がんセンターから先進医療技術審査部会への報告について
6.先進医療会議の審査結果等について
7.その他

議事録
○医政局研究開発振興課専門官 定刻となりましたので、第49回先進医療技術審査部会を始めさせていただきます。本日は、さわやかな秋晴れの中、お集まりいただきありがとうございます。今回、技術審査部会構成員について改選が行われ、新たに2名が構成員として任命されましたので御紹介いたします。成育医療研究センターより掛江直子構成員、大阪大学医学部附属病院より真田昌爾構成員です。本日は、田島構成員、松山構成員、山中構成員から御欠席の連絡を頂いております。本日は17名の構成員のうち14名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議が成立していることを申し添えます。技術専門委員として、東京医科歯科大学の磯部先生に継続審議の御審査を、前国立障害者リハビリテーションセンター総長の中村先生に新規審議案件の御審査をお願いしておりますが、本日、磯部先生からは御欠席の連絡を頂いております。
 次に、会議を進めるに当たり、座長の選出をお願いしたいと存じます。開催要綱4ページにある項目3、組織の(3)にあるように、構成員の中から互選により選出することとなっております。どなたか構成員の方から御推薦いただければと思います。
○藤原構成員 がん研の山口先生が一番いいのではないかと思います。
○医政局研究開発振興課専門官 ただいま藤原構成員から、山口構成員にお願いしてはどうかと御提案がありました。山口構成員に座長をお願いするということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○医政局研究開発振興課専門官 ありがとうございました。異議なしということですので、山口構成員に座長をお願いすることといたします。座長席へ御移動をお願いいたします。
(山口構成員座長席に移動)
○医政局研究開発振興課専門官 ただいまより、山口座長に議事進行をお願い申し上げます。
○山口座長 座長を仰せつかりました山口でございます。猿田先生のようにうまくできるかどうか分かりませんが、皆様の御協力を得て何とかやりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 開催要綱3、組織の(5)において、「座長は各構成員の中から座長代理を指名する」という記載があります。私といたしましては一色先生に、是非、座長代理をお願いしたいと思います。一色先生、座長代理席へ移動をお願いします。
(一色構成員座長代理席へ移動)
○山口座長 事務局から、配布資料と本日の審査案件の確認をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 事務局です。配布資料について確認いたします。議事次第から始まって、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。次に、継続審議案件の評価を受けた技術の再評価について、資料1-1から資料1-5。新規審査技術の評価結果について、資料2-1から資料2-5。総括報告書の評価について、資料3-1から資料3-2。先進医療Bの協力医療機関の追加について、資料4-1、資料4-2。千葉県がんセンターから先進医療技術審査部会への報告について、資料5。先進医療合同会議の審査結果等について、資料6。会議資料の最終ページは148ページとなっております。本資料については、会議終了後、厚生労働省ホームページにて閲覧可能となりますので、念のため申し添えます。本日の資料は以上です。乱丁、落丁等ありましたら、事務局までお知らせいただきますようお願いいたします。
 続きまして、利益相反の確認です。申請医療機関との関係や対象となる医薬品・医療機器及び再生医療等製品の企業等について、資料1-1、15ページ及び資料2-1、41ページに記載している申請医療機関、医薬品・医療機器・再生医療等製品情報を御覧ください。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業に関して、事前に確認させていただいております。今回、整理番号64の技術について、石川構成員、掛江構成員、藤原構成員、山中構成員、磯部委員より御報告がありました。評価対象技術に含まれる医薬品又は医療機器等の製造販売業者、競合企業等からの受領額は皆様50万円以下でしたので、当該技術の議事の取りまとめ及び事前評価に加わることができます。事前の届出以外に、もし何かしらの利益相反がありましたら、この場で御報告をお願いいたします。該当なしということでよろしいですね。
 また、今回もタブレットを使用していただきたく、届出書類等についてはタブレットから閲覧していただきます。会議資料とタブレットの内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、又はタブレットの何ページと、あらかじめ御発言いただけますと、議事の進行上助かりますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○山口座長 議事に入りたいと思います。まず、継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 説明させていただきます。なお、傍聴の方の御撮影はここまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 資料1-1、15ページを御覧ください。今回、先進医療Bとして、先の先進医療技術審査部会で継続審議の御評価を頂き、今回、再度御評価いただく技術が1件あります。整理番号64、急性心筋梗塞に対するヒトIL-11製剤を用いた心筋保護療法です。適応症はST上昇型急性心筋梗塞(再灌流療法を施行する場合に限る)となっております。申請医療機関は大阪市立大学医学部附属病院です。審査担当構成員は、主担当が山口座長、副担当は田代構成員、山中構成員、技術専門委員は磯部委員です。
 資料1-5、39ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について、事務局より説明します。1.実施責任医師の要件として、診療科は循環器科、循環器内科であること。資格は日本循環器学会認定循環器専門医であること。当該診療科の経験年数として10年以上。当該技術の経験年数及び当該技術の症例数に関しては不要となっております。その他、急性心筋梗塞の再灌流治療に精通し、術者若しくは助手として、100例以上の急性期PCI治療経験を有すること。
 2.医療機関の要件として、診療科は循環器科、循環器内科であること。実施診療科の医師数としては3名以上であること。他診療科の医師数は特にありません。その他、医療従事者の配置として、臨床医用工学士、薬剤師、看護師、放射線技師を要すると。病床数は200床以上、看護配置は10対1以上。当直体制としては、投与後7日間、循環器内科医が毎日当直。ただし書として、試験計画書において、観察期間を投与後7日間としているとなっております。緊急手術の実施体制及び院内検査(24時間実施体制)については要となっております。他の医療機関との連携体制は不要です。医療機器の保守管理体制は要となっております。倫理審査委員会による審査体制については、2か月に1回以上及び要時開催を要件としております。医療安全管理委員会の設置を必要とします。医療機関としての当該技術の実施症例数は不要となっております。そのほか、急性心筋梗塞の再灌流治療に精通し、過去に100例以上の急性期PCI治療経験を有すること。ICU若しくはCCUを有し、重症管理が可能であることとなっております。その他の要件は特にありません。頻回の実績報告も不要となっております。以上です。
○山口座長 今の要件に関して、何か御質問、御意見はありませんか。
○一色座長代理 39ページの一番下のその他の項目なのですが、「過去に100例以上の急性期PCI治療経験を有する」というのは、主語がはっきりしていなくて、「施設が」なのか、「術者が」なのかが分かりにくい。それから、「過去に」というのは、過去いつからなのかが分からないのです。急性心筋梗塞に対するインターベンション治療というのは、既に20年以上の歴史がありますので、20年間に100例という解釈をすると、最近、数年間全くやっていない施設も入れることになってしまいますので、ここは表現として明確にしていただくことが妥当かと思います。
 この施設の年間の件数を発表されているものを調べさせていただきましたら、年間の急性心筋梗塞に対するPCIは35例でした。これらの現状をふまえてここの表記を明瞭にするように検討していただきたいと思います。
 もう一点、その他の医療従事者の配置の所で、「臨床医用工学士」と書いてありますが、これは「臨床工学技士」と書くのが正しいのではないかと思いますので確認をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 事務局です。1件目の「過去に100例以上の急性期PCI治療経験」の主語に関してですが、こちらは医療機関の要件になると思いますので、こちらは医療機関として100例ということになると思います。これと関連するところで、いつからか、そこは明確にする必要はあると思いますので、その辺りは具体的な目安となる、何年間に何例以上は必要ではないかというところを、ある程度お示しいただければと思います。
○山口座長 これについて、何か御意見はありますか。例えば10年間に100例とか、そのようなしばりでしょうか。
○一色座長代理 これは緊急のインターベンションを行うときにアウトカムが心筋保護液を使うということで良くなるのではないかということを期待する試験になりますから、一定数のPCIのレベルが確保されているべきではないかと思います。施設全体の数もそうなのですが、ここには術者の基準が一切記載されていません。過去に治療の経験があるとしか書いていないため、それが施設を担保することになるのかという点が気になります。例えばインターベンション治療学会の専門医、あるいは認定医でもいいのですが、そういう先生が施設内におられるということなども検討してもいいように思います。
 症例数の件数については大学病院ですと症例数が多くないところもありますから、例えば過去5年間にとか、そのぐらいにしておけば、この症例数でもカバーできますので、そのぐらいでもよろしいかと思います。
○山口座長 これについて何か御意見はありませんか。
○関原構成員 基本的なことですが、これはあくまでも急性心筋梗塞の人ですよね。狭心症で苦しいと言って運ばれてPCIをやる人は、関係ないのですね。狭心症で苦しいと言ってきて治療を受けるのが多いわけですよね。この数字100例にはカウントされていないと、こういう理解でよろしいのですね。冠動脈が完全に詰まって心筋梗塞になってしまったと。
○医政局研究開発振興課専門官 そのとおりです。
○山口座長 でも、これはその後の治療をする予定の方ですよね。
○医政局研究開発振興課専門官 そうです。カテーテルを使ったインターベンションをされる方のみ対象としています。○山口座長 心筋梗塞ですね。
○上村構成員 その他という所に記載があるようなのですが、ここの100例というのは。
○一色座長代理 ですから、先ほど申し上げたとおり、術者ということが明確に書いていないので、術者が過去に100例以上という、その他の項目なのか、施設がそもそも100例の経験があるという意味なのか、この表記だとはっきりしないので、非常に現実的な話としては、術者が100例以上というほうが分かりやすいかもしれないとは思うのですけれども。
○医政局研究開発振興課専門官 事務局です。今回、大阪市立大学から頂いている実施責任医師の要件としては、術者若しくは助手として100例以上ということには一応なっていますので、ある程度の制限は付いているものと考えています。
○一色座長代理 ただ、これは責任医師なので、実際に行う方ではないだろうと思うのです。恐らく教室の主任教授の方の申請になって、その方が責任医師になっていらっしゃいますから、過去なさっていたということで、それは全く問題ないと思うのですが、実質的にこの治療に当たられる方についての記載が全くないままでいいのかというところが、気になったところではあります。
○医政局研究開発振興課専門官 事務局からです。一応この治療に関しては、インターベンションを実際にされる先生の技術が反映されるかどうかというよりも、これは点滴で静注される薬剤ですので、各施設、術者のばらつきは多少あるかと思うのですが、有効性を見ることに関してはランダム化されるものなので、多少のばらつきは受容されるのではないかと思います。
○一色座長代理 本当にそのようにおっしゃってよろしいのかということが、私はちょっと疑問が残ります。
○医政局研究開発振興課専門官 分かりました。術者の要件について、申請者のほうに確認させていただきます。
○真田構成員 急性心筋梗塞のPCI治療の上に、この薬剤の治療が上乗せされることの効果を見る場合にあっては、PCIの施術自体の品質がある程度確保されていて、普遍化されていることが比較の前提になるのではないかと思います。そうすると術者によっても、要は標準治療のうまい、下手というのは、事実ないわけではなく、それによっても品質に差が出るということであれば、このように少人数で差を出そうとしている治療に影響を及ぼしかねないので、そこは一色先生がおっしゃるように、ある程度、術者についての品質保証を、どこかに書き加えていただくような形で示していただければいいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○山口座長 恐らくこの要件は、実施責任医師の要件と施設の要件に分けて書かれていて、それを今まで細かく担当する医師のことを規定したことはないと思うのです。恐らく100例以上の実施責任医師があれば、その指導の下でやれるという形でやっていると思うので、ここのところは別な要件で付けなければ、しょうがなくなってくるのではないかと思うのですが、その辺りはいかがですか。ここで規定することはできますか。
○医政局研究開発振興課専門官 今回、先生方から頂いた御意見を基に、様式9号の内容というよりは、プロトコール上において、カテーテル治療をなされる先生の術者の要件について明確にするように、照会事項として一応、申請者に照会事項として送るようにいたします。
○山口座長 例えば手術でも、それぞれの個々の医師が何例以上やったことがあるかということで規定を作っていくと、とても大変なような気がするのです。実際に、そこの実施責任医師が御自身でこれだけのキャリアがあって、その施設全体としてもそういう技術に慣れていて、先ほどちょっと一色先生がおっしゃったように、5年間で100例やっているということであれば、まず担保されるのではないかというやり方でやっていかないと、なかなか難しいのではないでしょうか。例えばそこの病院ではどの医師ができるかということになってくると、ここではなかなか書ききれないように思うのですけれども。
○真田構成員 大きな病院で術者が何名もいるような所にあっては、誰が術者をやるかによる影響が出る恐れはありますが、多くのハイボリュームな病院や一般市中病院では、症例を集めて技術を高めるために、術者の先生は極力絞られているような現状はありますので、そういう多くの病院においては、先生がおっしゃるようにこの記述を基にされるということでも、事実上大丈夫な気はいたします。ただ、大学病院など術者がたくさんいるような所をどうするかということについては、議論の余地は若干あるかとは思いましたが、そこについては先生がおっしゃるようなもので、ほとんど対処可能なのかと思います。
○石川構成員 今、術者の技術の成熟度みたいなこともお話がありましたが、これはちょっと教えてもらいたいのですが、評価も3か月だとかそういうときにやっていくわけなのですが、患者さんの条件としてSTが動いた、上昇型で動いた心筋梗塞というような患者の規定だけで、例えばどこに責任病変があるのかということで分けなくていいのかなと思うのです。というのは、コラテラールだとか、そういうものは、例えば右と中隔枝とか回旋枝は、全然違います。しかも、これは3か月後に結構アバウトなMRIでやるということで、研究としては相当なばらつきが出てくるような、評価が難しいのではないかと思うのですが、これは一色先生はいかがでしょうか。
○一色座長代理 プロトコール拝見しましたが、一応、前下行枝を基準として、一定の基準を設けて、リスクについては標準化されるような形での振り分けをするという設定になっているようです。ただ、先生がおっしゃるように、しっかりと予後の差を出そうと思った場合には、初回の前下行枝の心筋梗塞に限定するなどのほうがいい可能性がありますし、このプロトコールで24時間という心筋梗塞になっているのですが、24時間たってしまうと、ほとんど梗塞が完成してしまいますので、ガイドラインにあるように12時間以内のほうが予後の差を出しやすいのですが、そうすると、また症例数が確保しにくくなってしまいます。今回のスタディは、予後ではなくて、サルベージ率を出すということがプライマリー・エンドポイントになっていますので、サルベージを出すという観点でそれが評価できれば、それはアクセプタブルなのかなとは、総合的には解釈しております。
○山口座長 今、議論が進みすぎてしまって、中身のことになってしまっているので、施設要件のことについて片付けてしまいたいと思います。
○山本構成員 手技とすごく結び付いてはいるのですが、この試験の介入方法自体は点滴静注の薬であるということですので、手技のところを余り縛りすぎるというのは、この試験の本来の目的から言うと、ちょっと良くないのではないかと思います。もし付けるのであれば、現在はPIの先生の御経験と施設の御経験を絞っていますので、施設要件に変えてしまうと、これがまた後々、ややこしいことにならないとも限らないので、先ほど事務局からあったように、書くのであればプロトコール内にとどめておく。
 もう1つは、ある程度大きな、例えば大学病院、教育目的もあるような大学病院などで、複数の術者がいるときにというのもありますので、もし入れるとしたら「術者又はその助手として」というような書き方で、カテーテルに立ち会う方のどなたかが、ある程度経験があるというぐらいのところで、とどめておくほうがいいのかと思いました。夜中に今まで3例しかやったことのない人がやって、それが入るというのは、ちょっとよろしくないと思いますが、普通は大学病院などだとチームを組んで、チームとして対処されると思いますので、そのチームの形で、ある程度の経験を書いていただくぐらいであれば、そんなにこの試験の遂行には問題はないかと思いました。
○山口座長 元に戻って、実施責任医師の要件が一応、規定されているということでいいかと思うのです。ただ、問題は施設として、確かに「過去」というのは非常に漠然としていてはっきりしないと。5年ぐらいでいいのではないかという御提案が具体的にあったわけです。それは決して無理ではないのではないかと思います。その辺りはどうでしょうか。
○医政局研究開発振興課専門官 もし、皆様これで御了解いただけるようでしたら、申請者のほうには過去5年間で100例以上、施設としての経験症例数として明記するように、お伝えさせていただきます。
○山口座長 その辺りでいかがでしょうか。
○一色座長代理 山本先生がおっしゃったように、経験のある人が必ず一緒に入るなり何なりの文言が入っていただければ、それで結構かと思います。
○医政局研究開発振興課専門官 分かりました。では、様式9に関しては、過去5年に施設として100例以上経験すること。プロトコール内には、この先進医療に関してインターベンションされる方については、チームとしてある程度の要件を設ける。
○山本構成員 チーム。術者又は助手でいいと思います。
○医政局研究開発振興課専門官 分かりました。
○山口座長 そっちはプロトコールのほうに書き込むということで、この要件については、一応5年がふさわしいのではないかということにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 今、随分議論があったので、説明は余りしなくてもいいかもしれませんが、主担当で私から概要の説明と実施体制の評価を説明します。17ページにタイトルが書いてあるわけですが、37ページのスキームを見ていただいたほうが分かりやすいです。心筋梗塞が起きた後、再灌流させるわけですが、そのとき再灌流することによって、組織にダメージが起きるという現象があって、それを防止するためにIL-11を使うということです。プラセボのほかに低用量と高用量の2種類、要するに3群で比較するという試験です。主要評価項目ですが、MRIで評価するということで、これは後ほどまたあると思いますが、この評価方法について少し問題があるのではないかということが議論されました。副次評価項目は、梗塞のサイズとか左心機能、BNP、心臓死、有害事象などが挙げられています。3か月の追跡期間で、更に6か月やるということです。17ページに戻って、2年6か月の間に予定症例90例、それぞれ30例ずつという予定の研究です。
 実施体制についての評価をさせてもらいましたが、この施設に関しては実施責任医師の体制、医療機関の体制、医療技術の有用性等、全て「適」にしました。この技術について、何か御質問はありますか。
 続いて、磯部技術専門委員による実施体制の評価について、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料1-2、18ページを御覧ください。実施体制の評価、いずれも「適」との評価を頂いています。コメントとしまして、照会事項で要求したMRI評価について10例の報告があった。経時的な複数回評価が全例においてなされておらず、照会事項における全ての要求を満たしたとは言えないが、問題とされたMRIによる評価がおおむね可能と考えられるので「適」と判断した。以上です。
○山口座長 ただいまの御説明について何か御質問はありますか。では引き続き、田代委員から倫理的観点からの評価をお願いします。
○田代構成員 田代です。倫理面での課題に関しては、前回の評価時においてほぼ解消していますので、前回同様、「適」と判断いたしました。
○山口座長 ありがとうございました。続いて、本日、御欠席の山中構成員より、試験実施計画書等の評価について提出されていますので、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料1-2、18ページを御覧ください。試験実施計画書等の評価は、いずれも「適」との評価を頂いています。なお、山中構成員からは照会事項に十分対応されたとして特段のコメントはない旨、承っています。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。それでは、全体を通して御討議をお願いします。
○山本構成員 先ほど、よりちゃんと差を出してするためには、もっと絞り込んだほうがいいのではないかという御意見がありましたが、フェーズは探索的なフェーズで第2相であり、今回、初めてこの薬品をこの状況の方々に使うということですから、どちらかというと早くやることと、あと、いろいろな情報を集めてどういうグループに、どういう用法用量を使うことが一番いいか。情報を集めるためのフェーズであると考えれば、余り絞り込んでゆっくりになるよりは、早目にやって、その次の検証的な試験に進んでいくための準備をしていただくほうが、よりプロダクティブかなというふうに思いました。本当は絞り込んで結果が出たほうがいいと思いますけれども、絞り込むと今度は非常にエンロールメントがスローになると思います。それと探索的であるというプロセスを考えれば、山中先生もこの実施計画書で特に現在でよいとおっしゃっているので、これ以上、手を入れることはないのかなと思いました。
○山口座長 ありがとうございました。ほかに何か御意見、御質問はございませんか。
○一色座長代理 1点だけ、よろしいですか。
○山口座長 どうぞ。
○一色座長代理 この薬剤は血小板を増やす薬として開発されたものですね。PCI時にはステント血栓症予防のために血小板機能を抑える薬を必ず併用するわけですけれども、それに対する考察が全くこのプロトコール内にありませんので、この観点での血液学的な考察を求めたいと思います。
○山口座長 ありがとうございました。ほかにございませんか。それでは、今、一色先生から安全性の考察をもう少し加えたりする必要があるのではないかとか、立ち会うときの医師の要件についてはプロトコール上、ある程度の規制が必要ではないかというご指摘をいただきました。この2点に関しては、直していただいたほうがいいのではないかという気がいたします。私は「適」としたのですが、できれば今日のディスカッションを受けて、「条件付き適」という形にして、今、指摘されたことをきちっと直していただいて認めることにしたいと思いますが、いかがでしょうか。皆さんに同意いただきましたので、そのような形にしたいと思います。「条件付き適」ということで、ありがとうございました。続きまして、新規申請技術の評価結果に移ります。事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料2-1、41ページを御覧ください。先進医療Bとして新規に評価いただく案件は1件ございます。整理番号071、自己細胞シートによる軟骨再生治療です。適応症は変形性膝関節症の軟骨損傷(外傷又は変性により生じたものに限る)となっています。申請医療機関は東海大学医学部付属病院です。審査担当構成員は、主担当が松山構成員、副担当は田代構成員、柴田構成員、技術専門委員として中村委員、以上となっています。
 資料2-5、73ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について事務局より御説明いたします。まず、1.実施責任医師の要件として診療科は整形外科であること。資格は日本整形外科学会専門医であること。当該診療科の経験年数は6年以上であること。当該技術の経験年数及び当該技術の経験症例数に関しては不要となっています。その他、関節鏡視下手術(靭帯再建、半月板損傷等)や骨切り術など膝関節手術100例以上の経験を有すること。2.医療機関の要件としまして、診療科は整形外科、実施診療科の医師数は、整形外科医師としての常勤3名、他診療科の医師数は麻酔科医常勤1名以上、リハビリテーション科医師常勤1名以上、その他医療従事者の配置としまして薬剤師・理学療法士となっています。病床数は100床以上、看護配置は7対1看護以上、当直体制は整形外科の当直を要します。緊急手術の実施体制及び院内検査(24時間実施体制)を必要とします。他の医療機関との連携体制は不要です。医療機器の保守管理体制は要となっています。倫理審査委員会による審査体制としては、2か月に1回以上、及び医学部長又は倫理委員会委員長が必要と認めた場合は、臨時に倫理委員会を召集することができるとなっています。医療安全管理委員会の設置は要となっています。医療機関としての当該技術の実施症例数は不要です。その他、再生医療の取扱い(臨床検査技師、細胞培養士等の技術者を有す)のあるセルプロセッシング設備を有すること。関節鏡視下手術(靭帯再建、半月板損傷等)や骨切り術など膝関節手術100例以上の経験を有すること。その他、頻回の実績報告等は不要となっています。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。ただいまの要件について何か御意見、ございませんか。
○山本構成員 文言の問題でちょっと気になったのですが、倫理審査委員会の審査体制で、倫理委員会召集が医学部長又は倫理委員会委員長になっています。これは、この1施設でしかやらないということですか。増やすときに病院とかでしたら、ちょっとこの文言だと齟齬が出てくるので、施設長又は医学部長又は倫理委員会委員長みたいにしておかないと、ちょっとややこしくなるかなと思いましたので、文言の修正だけですけど。
○山口座長 事務局、よろしいですか。
○医政局研究開発振興課専門官 今回、御指摘いただきました件は、申請者へ修正していただくようにいたします。
○山口座長 至極妥当な御意見だと思いますので、よろしくお願いします。御質問、ありがとうございました。ほかにございませんか。今のところを直していただいたうえで、この要件でということにいたします。それでは、整理番号071の評価結果につきまして、本日、御欠席ですが、松山構成員からリポートが来ていますので、概要の説明と実施体制の評価について事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 まず技術の概要ですが、資料2-4、71ページを御覧ください。外傷及び変性による変形性膝関節症の軟骨損傷に対して、高位脛骨骨切り術等の標準的手術を行う際に、ここから図になりますが、患者自身の軟骨組織、滑膜組織から作成した自己積層化軟骨細胞シートを、軟骨損傷部の大きさに合わせて移植する技術となっています。主要評価項目は、アンケートスコアであるJ-KOOSの術前から術後の改善比率とした単群試験で、予定症例数は10例、試験期間は4年となっています。
 実施体制の評価ですが、資料2-2、43ページを御覧ください。実施責任医師の体制及び実施医療機関の体制については「適」、医療技術の有用性につきましては「不適」の評価を頂いています。コメントといたしまして、先進医療として、当該技術が標準治療よりも有益であるという研究結果が得られる計画になっている必要がある。事前照会事項に対する回答にて、既存治療である骨髄刺激法およびモザイクプラスティとの比較を念頭に入れるよう修正がなされた。しかしながら、併用される既存治療法による治療効果が、本技術の有用性の評価に及ぼす影響については十分勘案する必要がある。以上となっています。
○山口座長 ありがとうございます。続いて、中村技術専門委員から実施体制の評価について説明をお願いします。
○中村技術専門委員 中村です。よろしくお願いいたします。問題は、有効性と言う場合に何の課題に対して有効性があるかということではないかと思います。つまり、従来の外科治療を併存して行いますので、その外科治療の有効性と軟骨細胞シートの有効性という2つの種類のことがあると思います。今回の対象となる患者さんにつきましては、O脚がある、前十字靭帯が損傷している、半月板が損傷している、骨折をしているといった状態に加えて、軟骨損傷があるという患者さんになります。
 これに対して、従来のそれぞれの治療法、すなわちO脚の矯正、前十字靭帯の再建、損傷半月板の部分切除又は損傷部の縫合、骨折に対しては骨接合術などが行われます。それに加えて軟骨損傷に対して軟骨細胞シート処置という、2つの課題に対して2つの治療が行われています。つまり、O脚がある、前十字靭帯が損傷している、半月板が損傷している、骨折しているといった状態に対する従来の外科治療の有効性と、軟骨損傷に対する細胞シートの有効性という2つの評価すべき課題があるように思われます。従来のO脚がある、前十字靭帯が損傷している、半月板が損傷している。あるいは骨折に対する外科治療は既に標準治療として広く世界的に用いられているものであり、術前より術後のほうが臨床症状が改善するということは、ほぼ常識になっているわけです。
 そして、軟骨損傷を同時に伴っている場合の現在の標準治療はモザイクプラスティということになりますし、これによっても症状の改善が知られています。したがって、今回の申請の場合、本来は対照コントロールを考えるとすると、標準治療である外科治療+モザイクプラスティということになります。したがって、前後比較の改善を基礎にするような今回の計画書の評価法を採用するにあたっては、それを用いることの合理性や、その内容について、2つの有効性が考慮されている必要がある点を構成員の皆様には御判断いただく必要があるのではないかと考えます。以上です。
○山口座長 大変分かりやすい御説明、ありがとうございました。それでは続いて、田代構成員から倫理的観点からの評価について説明をお願いします。
○田代構成員 お手元の資料の44ページから、倫理的観点からの評価について書いています。結論としては、同意に係る手続、同意文書に関しては「不適」、補償内容については「適」という判断をしています。事前に幾つか照会をさせていただき、それによって分かってきた部分もあるのですが、先ほど来、問題になっていますように、患者さんへの説明に関しても既存治療が何なのか、それとこの試験治療がどういう関係にあるのかということが、なかなか分かりにくい。特にこの分野はいろいろな治療法があって難しく、今回多様な患者さんが入っていて、入って来る患者さんによっては、かなり説明が変わってしまうのではないかと思っています。
 コメント欄の所を読みますと、事前照会事項に基づいて、一定程度説明文書は改善されましたけれども、既存治療と本試験治療との関係について不明確な点が残っていますので再確認させていただきたいと考えています。もう1点、これは恐らく、もう一度確認いただければ簡単に修正できる点だと思いますが、補償についてもいろいろやり取りがありまして、最終的には医療費と医療手当はないものの、補償保険への加入による補償金の支払いは準備されていますので、一定程度の配慮はされていると判断いたしました。なので、「適」としています。ただ、説明文書の補償に関する記載はまだ不十分だと思いましたので修正をお願いしたいということで、2点、下に実施条件を書いています。
 実施条件欄の所の1点目ですが、追記をいろいろしていただきましたが外傷による場合と変性による場合で、既存治療の状況が違うということがまだはっきりしていないように思います。追記していただいているのですが、そこで書かれていることと、例えば他の治療法、この臨床試験に入る場合に他にどんな治療法があるのかという記載が、まだ一致していないように思うところがあります。特にこの試験、200万円程度のお金を負担して患者さんが参加することになっていて、その辺も兼ね合わせますと、現在の標準治療や既存の治療と、どういうところが違うのかを十分に理解して入っていただくことが必要かなと思いまして、少し慎重に判断しました。
 45ページ、補償に関してですけれども、これも指摘しましたように、無過失補償についての説明をしていただきたいということを書いていますが、多くの部分が賠償の話で占められています。1つ大きなポイントとして、医療費の負担に関しては3割負担を自分でしていただくということをなのですが、それが明確に書かれていません。これについてはマイナーな修正だと思いますけれども、書いていただければいいのかなと思っています。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。引き続き、柴田構成員から試験実施計画書等の評価について御説明をお願いします。
○柴田構成員 お手元の資料45ページを御覧ください。試験実施計画書等の評価につきましては、幾つかの項目で「不適」との印を付けています。先ほど中村先生から御指摘いただきました点を、臨床試験の方法論、あるいは生物統計学の観点から表現しますと、こちらに書いたようなコメントになると御理解いただいていいかと思います。
 まず、コメント欄を読み上げさせていただきますが、事前に照会事項をお送りしまして回答いただいてはいるのですが、その回答をもってしても、本試験の計画には解決すべき重大な問題点が残っていると考えて「不適」としました。後ほどお手元の資料2-3を御覧いただければ、詳細を把握していただけるのですが、ここでは省略いたします。
 先ほど中村先生から御指摘いただいた点ですが、軟骨シートに関係なく既存の外科手術によって臨床効果が予想されるわけですから、スコアが改善したことのみをもって、この治療法が有効であると主張するのは無理です。そうなると、この既存の外科手術のみで改善するスコアに比べて、今回の治療を上乗せしたことによって、より良く改善しているかどうかを調べる必要がありますので、それに関して今回の試験では閾値を適切に設定する必要があることになります。ただし、既存のデータ等を拝見しましても、今の閾値の設定は妥当ではありませんし、今の適格基準のまま、この新しい治療行為の良さを主張することが、現状では困難ではないかと思われる部分もありますので、適格基準を見直す等の検討が必要なのではないかと考えています。詳細につきましては46ページ、47ページに書いています。
 閾値奏効割合の設定が不適切であることについて、ちょっと御説明いたします。申請者の先生方は、46ページの上に挙げたような治療法の6研究のデータに基づき、各研究のKOOSスコアの治療前値に対する治療後値の比を統合して算出した平均値、つまり治療後にスコアが1.4355倍になることを根拠に、KOOSスコアの治療前値に対して治療後値の比が1.40倍以上になった場合には、「奏効」したと判断することにしようと御提案いただいています。この御提案が妥当かどうかというのは、別途、議論の余地がありますが、まず「奏効」はこのように定義されています。
 申請者の先生方は、この定義によって「奏効」とされる患者さんが、自己細胞シートによる軟骨再生治療の先行研究で8例中6例の患者さんがこの奏効基準に合致する、すなわち75%が奏効であった、8例中2例がこの奏効基準に合致しなかった、非奏効と判定されたということをもって、primary endpointの期待奏効割合、閾値奏効割合を、それぞれ75%、25%と設定しています。この設定はおかしいということが、まず1つ指摘しなければならないことです。
 すなわち、申請者の先生方の論理に従いますと、閾値奏効割合は先行研究のデータに基づいて100%から期待奏効割合を引いたものとして算出されることになります。となると、もし期待奏効割合が50%であれば閾値は50%になりますし、期待奏効割合が30%であれば閾値は70%になります。抗がん剤の第2相試験は大体、期待奏効割合は30%ぐらいになりますが、抗がん剤の奏効割合を評価する試験で、閾値奏効割合を70%に設定するということはナンセンスな話であって、この論理には勘違いがあるということです。
 以上は数理的な話ですが、その他、2の所を御覧ください。先行研究では自家軟骨細胞移植、前十字靭帯再建術、高位脛骨骨切り術等の成績も提示されていますけれども、これらの先行研究結果によりますと、治療後のスコアが治療前に対して、ACLの研究では1.25倍、HTOの2研究では1.42倍と1.66倍になっています。一方、自己細胞シートによる軟骨再生治療の先行研究8例の平均は1.44倍であって、これらの外科手術のみの成績と比べて、著しく勝っているわけではないというところが1つ問題だと思います。つまり、選択バイアスであるとかいろいろな可能性はありますけれども、字面だけ素直に読みますと、人工細胞シートによる軟骨再生治療はACLに優る可能性があるけれども、HTOに優ることはないという解釈になります。
 もちろん、この解釈はちょっと強引で、この先行研究8例の患者さんが受けられた外科手術の内容を踏まえて解釈する必要がありますが、大ざっぱに言って、この1.44倍という先行研究8例のデータは、既存の外科手術の成績と比べて著しく成績が上がっているわけではないので、このまま試験を行っても、外科手術に対する上乗せを証明できない可能性が高いという状況になっています。ですので、適格基準を絞り込むことによって、きちんと優越性が示せる対象に絞って、本医療技術を評価するほうがいいのではないかと考える次第です。
 もう1つ、先ほどちょっと申し上げましたが、奏効と判断する基準を、スコアが治療前の1.40倍にするという定義自体が低過ぎるのではないか。あるいは臨床的に妥当ではないのではないかという懸念もあります。例えば、考え方としては47ページの3になりますが、スコアが一定のポイント数以上増加した場合に奏効する、という定義を用いることも可能ですし、ある点数を超えた場合に奏効とする、などという定義もありますが、そのような選択肢の中で、どのような奏効の定義が、この治療法の評価にとって妥当なのかということは検討しておくほうが、このものの有効性を示すしっかりとした研究をする上で、より良い設定になるのではないかと考える次第です。以上のように考えまして、幾つかの項目について「不適」といたしました。
 最後に、今までの説明の中で、コメントの記載でのスコアが1.4355倍であるとか、改善と判断する基準を1.40倍以上とするなどと私は書きましたが、申請者の先生方の書類の中では、それぞれ改善率43.55%、改善率40%以上などと書いています。いろいろな意味でのパーセントが混在していることによって論旨が見えにくくなるために、私の書類では、このコメント欄の最後に示したような形で書き換えていますが、これに伴って、もともとの申請者の先生方の論旨が変わることはありませんので、あくまで表記上の問題です。私からのコメントは以上です。
○山口座長 ありがとうございました。それでは、松山構成員からの事前のまとめと総合評価について、事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料2-2、47ページを御覧ください。事前の総合評価として「継続審議」の御評価を頂いています。コメントとしまして、医療技術としての有用性を示すため、より丁寧な論理構築がなされ、かつ被験者に対する説明・同意取得のあり方について追記修正がなされれば、適と評価しうる、とのコメントを頂いています。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。では、御審議をお願いします。中村先生、どうぞ。追加をお願いします。
○中村技術専門委員 いろいろな病態が入っているということで、少し追加をさせていただきたいと思います。それは端的に言いますと、適応症の名前に表れているように思います。この変形性膝関節症の軟骨損傷というのは、一般の整形外科医から見ても何のことだろうと思ってよく分からないです。変形性膝関節症というのは軟骨の変性をもって有症状になった場合を言うわけです。それに損傷という言葉が入ると、損傷の定義と変性の定義がよく分からない事態になります。
 一般に言いますと、臨床的に問題になるのは前十字靭帯損傷での併存する軟骨損傷とか、あるいは半月板損傷における併存する軟骨損傷、あるいは骨折のときに併存する軟骨損傷に対して軟骨の処置をするというのは、基本的には将来の変形性膝関節症の予防ということで、多くの場合はそうだと思います。一方、O脚を伴う内側型の変形性膝関節症に対する軟骨の処置は確実に変形性膝関節症に対する治療です。予防ではなくて治療そのものということになります。したがって、一般的に、途中もあるかもしれませんが、予防がメインになるような対象と、治療そのものが対象になるのが混在したような形になっているので、その成績を1つの基準で検出するのは非常に難しいと思います。今、柴田構成員から数字が出ましたが、恐らく前十字靭帯が切れると、階段を下りるときにカクッと膝が抜けるようなことが起こるのですが、普通の所は歩けたりするわけです。一方、治療を要する変性膝関節症というのは相当痛くて歩けないみたいな人が出てきますし、もともとの点数がすごく低いところに骨切り術治療でかなり上がりますので、恐らく点数の上がりとかは違うと思います。それらを区別なく足すと、今回、試験としてやった人にどういう人が入っていたかで、恐らく点数のばらつきは、ものすごく出る。どういう人がたくさん入るかによって変わってしまうのではないかと思います。
 そのおおもとは、軟骨が変性していることそのものに対する治療が主なのか、将来そうならないようにするための治療が主なのか、両方入っているところに、多分、問題があるのではないかと私は思います。その辺は慎重に考える必要があると思います。このような理由で、適応症の名前が一般的には非常に分かりにくくなっているのではないか、このように私は思います。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。ほかに何か御追加あるいは御質問はございませんか。山本先生、どうぞ。
○山本構成員 実施体制なのですが、タブレットのほうの418ページです。プロトコールに実施体制が記載されていて、実施責任医師、実施者医師、実施協力者、実施体制とありますけれども、基本的に試験をすることと評価をする。それから、かなりの方が細胞シートの作成に関わるということで、1人、臨床研究コーディネーターが書かれていますが、モニタリングの責任者とデータマネジメント責任者、それと統計家の記載がないので、モニタリングと監査をすると書かれていますが、監査の担当者も実施体制の中に含まれていませんから、プロトコールにやると書いてあって手順書は出ていますが、誰がやるのかが分からないので、恐らくプロトコールをかなり修正されると思います。その際に実施体制についても、やると書いてあることについては責任者なり体制なりは記載していただきたいと思います。
○山口座長 ありがとうございました。ほかに何かございませんか。私自身もこれを見て、松山先生がまとめておられますけれども、優越性を示すための論理的な構築がなされていない。これは実は根本的な欠陥であり、技術的な問題ではなくて、そもそも論になってしまい、継続審議にするのではなく、一旦、お返しして、論理構築からきちっとして出し直していただいたほうがいいように思います。その辺り、御意見、いかがでしょうか。
 というのは、結構、これだけ不適が付くことはあまりないと思います。技術委員の方の負担もものすごく大変で、言ったことに対して「そうですね」と言って直されても、全体の中の流れがきちっと変わっていないと、その部分しか直していないことになり、本当に自分たちが指摘されたことは、何か十分に理解されていないようなところがあります。是非、今日の議論も踏まえて不適ということでお返しして、これは新しい技術ですから、この技術が生きる道はどういうところかということから、そもそもよくお考えいただいて再提出していただいたほうがいいように思います。いかがでしょうか。一色先生、どうでしょうか。
○一色座長代理 この領域は専門ではありませんからなかなか判定は難しいのですが、ただ、中村先生がおっしゃっていたところが全てで、明確に対象を絞って有効性が明らかに示せるものを対象にしていただくのが、恐らく先生のおっしゃった目的に該当するのかなという印象を持ちました。
○山口座長 ほかに何か御意見、ありませんか。山本先生、どうぞ。
○山本構成員 継続審議か不適か、どこで線引きするかという問題だと思います。内容的に試験の目的が変わる。あるいは対象となる疾患が大きく変化するのであれば継続して、つまり同じ研究であると言うのは難しくなると思いますから、一旦、不適にして、新しく目的、対象疾患をきちっと作り直して出していただくほうが、確かに審査を担当する側の先生方も、そちらのほうがよろしいかなと思います。ですから、これが今回、変更の内容が、研究の目的と対象疾患を大きく変えることになるかどうかではないかと思いました。
○山口座長 ありがとうございました。
○上村構成員 根本のところと違って細かなところですが、書き換えてまた戻って来るということであれば、感染症の患者さんを完全除外するという、B型肝炎とかC型肝炎というところの合理的な根拠です。これは他家の細胞であれば分かるのですが、自家の細胞で本当に必要であるという、例えばプロセスの問題で他とのコンタミネーションが起こるとか。
○伊藤構成員 それは多分、関連する事業をやっている所からお答えさせていただいたほうがいいと思いますが、培養する培養士の人たちの安全を担保するために、感染細胞の培養をしないということだと認識しています。
○上村構成員 それは一般的なのですか。
○伊藤構成員 少なくとも私どもがやっている所とか、iPS細胞などをやっている所はそういう取扱いをしている。だから培養される人たちの安全を確保するために、そういうものについては手掛けていないという取扱いをしていると認識しています。
○山口座長 分かりました。ありがとうございました。
○中村技術専門委員 軟骨の部分的な損傷の状態と、全面的に広範囲に変性が起こっている、いわゆる変形性関節症になっている状態では、恐らく全然状況が違うと思います。そして、今までのところ軟骨に対する治療として成り立っているのは、部分的な軟骨の欠損あるいは部分的な損傷なのです。結局、周囲が生きていて、部分的に損傷している所についていろいろな治療法がやられていて、これは有効なのです。ところが、本来、どうしても踏み込んでいきたいのは変形性関節症なのです。ですから、多くの研究も変形性関節症を最終的なターゲットにしてやるということをうたって、つまり罹患者数で言うとものすごい数になりますから、そういうふうに文書を書くのですがなかなか越えられないのです。したがって、これまでの研究では、そこを明確にして部分損傷で有効性があるということでクリアしてこられたのです。今回は、そういう部分的損傷も変形性関節症と同じ対象としている所に、対象症例の先ほど申し上げたような混乱があったり、評価方法が少し矛盾を感じるというか、どうしてこのような評価をするのだろうと思うようなことに、結果的にならざるを得ないのだと思います。
 本当に変形性膝関節症をターゲットにするのであれば、それを対象にするようにしないと、どうやっても答えは出ないし、汎用される良いものだという評価を受けることはできないと思います。ですから、そういう意味で対象疾患、病態を明確にすることは、是非ともこの研究には必要なことだと思います。私は何もこの研究はそこを乗り越えられないと言っているわけではありません。乗り越えるためには、それ相応のやり方で体制を組み直していかないと、多分、越えられないと思います。是非、越えていただきたいと思うのです、以上です。
○山口座長 ありがとうございました。ほかに何か御意見はございませんか。
○関原構成員 私はこの同意書は説明不足で、患者はこの説明では理解できないというのが結論です。ところが、この同意書の最初には「先進医療の内容を十分理解していただき、参加されるか決めていただくための文書です」と言っているのです。しかし、本の文内容は全然そうなっていないわけです。こういうものが、病院の中の倫理委員会や必要な手続き等を全てクリアして上がって来るというのは、そもそも病院のガバナンスというか管理が不十分で、この会議が病院に代わって審査委員会をやっているような話です。その辺も含めて、もうちょっと考えてもらわないといけないのではないか。
 具体的に言いますと、全然分からないのは、手術の説明として「軟骨と滑膜を採取していただくことと、作成した細胞シートを手術時に軟骨損傷部に移植する」と書いてあるのですが、そもそもシートをどういうふうに作るのか、どのぐらい日数がかかるのか等、この説明では全く手術のイメージも何も分からないわけです。ということで、とても患者に理解していただくための文書になっていない。そういう箇所が幾つかあるので、山口先生のご意見は別として、相当見直してもらわないと、なかなか患者の理解は得られないというのが私の印象です。
○山口座長 ほかに何か御意見はございませんか。これは継続審議にするか不適にするかによって、どういう差が実際に申請者側にあるかということを簡単に御説明いただけますか。
○医政局研究開発振興課専門官 これまでの経緯からしますと、例えば対象疾患を絞る程度の修正を要する程度であれば継続審議が多いように思われます。そもそも対象疾患含め、もっと大きな枠組みで考え直したほうがいいというご意見であれば、そこは不適でもいいのではないかと考えております。その辺りの妥当性も含め御審議いただければと思います。
○山口座長 手続はどうですか。
○医政局研究開発振興課専門官 手続に関しましては、一旦、不適となりましたら、改めて申請し直していただくという形になります。
○山口座長 いかがでしょうか。継続審議でも指導はできないことはないわけですね。ただ、受け止め方の問題で、一度、いろいろなコメントを書いていますけれども、それに対して正確に答えが返ってきていないので、また同じことが起きると審査の先生たちの負荷もものすごく大きいですし、病院全体の体制として、先ほど倫理委員会の話もありましたけれども、見直していただくという意味ではリセットしていただいたほうが、ちょっときついかもしれませんけれども。
○一色座長代理 絞るという話が出たので、中村先生に御確認です。変形性膝関節症が未解決の一番の問題であるということでした。このシートを変形性膝関節症だけに絞るということであれば、アクセプタブルだというお考えでおられるのですか。
○中村技術専門委員 ええ。その場合の問題は、これは高位脛骨骨切り術に併存して行われるのです。つまり、軟骨の膝の内側にO脚があって、内側に負荷がたくさんかかっていて、内側の軟骨が変性しているわけですが、外側は残っているわけです。ですから、それをX脚気味にして、外側で荷重を主に受けるような形にするため、症状も改善しますし、内側にも少なくとも線維性の軟骨は再生するというのが基本的な理解です。したがって、かなり成績はいい治療なのです。
 ですから、X脚にすることをしないで内側にシートが植えられるかという、つまり単独でするのと、高位脛骨骨切り術に併存するのとどちらを選択するかが問題になります。私は個人的には、骨切りをしないと無理ではないかと思います。もう傷んでいる所に、そのO脚というメカニズムを残したまま入れても、軟骨がつぶれてしまって駄目だろうと想像するわけです。
 したがって、そのO脚という荷重軸を減らす高位脛骨骨切り術だけのものと、高位脛骨骨切り術に軟骨シートの処置をして、軟骨の再生が内側で得られるようになるというと、これはかなりインパクトがあると思います。そのように、かなり対象を限らないと難しいのではないかと思います。そう限れば、軟骨細胞シートがそれだけのパワーがあれば、それを証明できる可能性はあると思います。
ですから、High Tebial Osteotomyが先ほど1.4幾つとなっていましたが、かなり改善するわけです。40%ぐらいは症状が改善するわけですから、高位脛骨骨切り術というのはすごくいい治療法なのです。それを凌駕しないと変形性膝関節症に使う意味は出ないと思います。限られた部分損傷部に植えて、将来そこが起点になって、変形性膝関節症になるのを予防するというのなら、今のほかの軟骨の再生治療でやられているということです。
○一色座長代理 その作業を一旦お返ししてやるか、修正でやるかということになるわけですね。
○中村技術専門委員 そうです。
○山口座長 私はかなり大きな変更と理解するのと、そのほかの細部についても、この案件は不十分な点も多くて、そこだけ触って、またまたということになりかねないという懸念を持ちます。
○中村技術専門委員 もう1つすごく気になっていることは、硝子軟骨で再生できるということがうたってある点です。硝子軟骨と言っているものが、生体では正常な関節軟骨のもので、基本的に2型コラーゲンがメインの組織なわけです。先ほど、高位脛骨骨切りでも治っていく線維性の軟骨というのは、タイプ1のコラーゲンでメインにできている軟骨性の組織です。
 この申請者によると、モザイクプラスティはモザイクで入れたものは硝子軟骨だけれども、それとの結合部が線維性軟骨になってしまうのが欠点なのだという評価をしておられるのです。そうすると、今回やるのは本当に硝子軟骨であることをきっちりといかないと、それを越えられないはずなのです。そうすると、この申請によるその点の評価が、実はきちんと書かれていないように思うのです。
 本当に2型コラーゲンなのか1型コラーゲンなのかというのは、前の8例のことを聞くと、2例は1型コラーゲンが少し混じっていたという表現になっているのです。そうすると、免疫染色ですから、それの評価が技術的にvalidateしたやり方できっちりとやって、どこからをもって硝子軟骨であったという評価をするというのは、非常にcriticalなことになると思うわけです。そのことをお聞きしても返事が返ってこないのです。
 硝子軟骨が大事だと言っている割には、そこをどのように、どういう手順で、誰が、どういう染色法で、温度管理とか、私は非常に難しい問題があると思うのですが、その辺が全然書かれてこないというところは、少し問題があるのではないかと思うのです。ほかにも結局答えていただいていないというのが、私は現状だと思います。
○山口座長 柴田先生から何か御意見はありますか。
○柴田構成員 私はいろいろ書きましたが、この医療技術自体の芽をつぶそうという意図は全くありませんで、これをきちんと開発しようとするのであれば、遠回りに思われるかもしれませんが、しっかりと計画を詰め直していただく必要があると思います。
 仮に、この試験で統計学的に有意な結果が出たとしても、中村先生はじめ、臨床の先生方から御指摘を受けているような部分、総括報告書の評価のときに言われることになりまして、そうするとまた数年間巻き戻して評価をし直さないといけないことになると思います。
 短期的には少し遠回りに見えるかもしれませんが、そこは詰め直して出していただくほうが、この医療技術の評価という意味で、もし本当にいいものであるのであればゴールは近付くのではないかと考えています。
○山口座長 田代先生から御意見はございますか。
○田代構成員 私も対象疾患を絞っていただく必要があると思っています。現状では、もしこれで患者に分かるものを作ろうとすると、相当な種類の説明文書を用意しないと、状況が違いすぎて分からないと思うのです。それを1つのものに盛り込むと、非常な長文になってしまいます。
 やはり、何と比較してこれがいいということを言おうとしているのか。この試験に参加する際に、本来であれば試験以外のところでどういうものがあって、それではなくて今回はこれを利益と不利益を勘案して選ぶのだということをはっきりしないと。先ほども指摘しましたが、結構な額の負担を求めていますので、このままでは十分な理解がされたとは言いにくいところがあると思っています。やはり患者の理解というところからしても、対象疾患を絞っていただくほうが理解は上がるのではないかと思っています。
○山口座長 石川先生から御意見はございますか。
○石川構成員 結構です。
○山口座長 ほかに御発言のある方はいらっしゃいますか。
○真田構成員 関節の治療に関しては、先ほど来、中村先生その他の御議論を頂いているように、例えばこの技術であっても損傷している面積のパラメータ、この細胞成分を埋め込む面積のパラメータ、短期の治療効果を評価すべきなのか、あるいは短期的には現存の手術でも新しい技術でも同等の効果は得られるのであるけれども、それ以降の長期の評価にフォーカスを当てつつ、その探索的な評価をすべきなのかというパラメータ。いろいろなところが問題になっていて、姿が定まっていないような印象を受けます。
 この技術審査部会でも、去年に半月板損傷の議論をさせていただいた経験があると思いますが、そのときにも短期と長期の問題はあったと思います。そのような評価を参考にされつつ、そのフォーカシング、ターゲットをしっかりと決めていただくことは、少なくとも必要ではないかと思います。
 そうなると、それに関連して継続審議なのか、一旦不適になるのかという議論がきます。継続審議にあっては、論点は明らかなのだけれども回答していただくのに時間がかかるか、あるいは回答していただいた内容を慎重に再検討しなければいけないという場合にあっては、継続審議という判断を頂き、論点が多々ありすぎて整理が付かないという場合には、一旦フリーハンドにして新しい形で持ってきていただくのも1つの方法かと思います。なぜなら、継続審議のときには新旧対照表を作らないといけないのです。そうなると、変更点が多いと、とてつもない作業になって、お互いに不幸かと思いますので、そのようなことも御勘案いただければと思います。
○山口座長 ほかにいかがでしょうか。
○山本構成員 同じことを考えていました。継続審議にして、照会事項を全部回答を作っていただいて、プロトコールを変えて、照会事項の回答を作って、新旧対照表を作るより、不適にしてもう一回新しく出していただいたほうが作業量は少ないと思います。申請書などは今のものをそのまま使っていただけるのだと思うので、純粋に作業量を考えると、不適にしてあげるほうがお互い楽なようが気がいたしました。
○山口座長 ほかにございませんか。そろそろまとめたいと思いますが、この技術を否定するものでもなく前向きな意味で、柴田先生がおっしゃったように、生かしたいということからも、対象疾患をしっかりと絞っていただきたい。そうすることによっていろいろな説明書も明快なものになるということで、その辺りを十分に受け止めて、今回は不適にしてリセットしたほうが、お互いにいいのではないかということで、そういう具合にさせていただきます。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 続いて総括報告書の評価に移ります。事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料3-1、75ページを分析ください。本日、総括報告書に関する御評価を頂くのは1件です。平成25年5月に開始された告示番号(従前)31、食道がん根治的治療後の難治性良性狭窄に対する生分解性ステント留置術です。
 申請医療機関は国立がん研究センター東病院です。審査担当構成員は、主担当が山本構成員、副担当が手良向構成員です。試験概要は、既存治療に抵抗性である難治性食道良性狭窄に対して、生分解性ステント(BD-stent)を留置することで狭窄解除を行い、主要評価項目を介入後3か月時のdysphagia score改善割合として、既存治療に対する優越性を検証する単群試験となっています。以上です。
○山口座長 続いて、山本構成員から評価についての御説明をお願いします。
○山本構成員 75ページが評価表です。主担当は私で、副担当は手良向先生です。医療技術の概要については資料3-2のほうが分かりやすいので、そちらを御覧ください。
 生分解性ステントです。大体、1.5か月から3か月ぐらいで、ステント構造が分解吸収されるものということです。もう欧州では使われているということです。82ページに申請までのロードマップがあります。欧米での現状ですが、米国は通っていませんが、欧州はCEマークを取っていて、Best studyという臨床試験もやられていました。米国では、食道の良性狭窄患者を対象として第3相試験を実施中です。
 75ページ、資料3-1です。私の評価を77ページに書いております。有効性はBのやや有効です。コメント欄に書いていますが、主要評価項目では、施設判定に基づく3か月のDS改善割合が66.7で、90%CIの下限値が44.6だったので、事前に定めた閾値は上回っています。研究者自身も考察されているように、6か月時点の成績が、改善割合が16.7ということで、欧州の先行研究のBest studyが、観察期間中央値が53週でDS改善割合が45%ということで、恐らく研究者自身が予想していたよりも、6か月時点ではよくなかったということです。ただ、欧州と国内で、恐らく入った患者の背景が大分違うということで、国内のこのスタディで入っている患者というのは良性狭窄とはいっておりますが、原疾患は食道がんということです。しかも、前治療歴が多い難治例が多かったということも言われていますし、基本的にradiationとか化学療法などをされた後での治療ということになっています。欧州のほうは食道がんの患者は余り入っていなかったということがあるようです。ですので、ひょっとすると、より有効性を発揮する対象集団を今後検討されるほうがいいのかもしれませんが、それでも3か月の主要評価項目は上回っているというところは評価すべきと思っています。
 安全性はBで余り問題なしとはしましたが、重篤な有害事象は3例に4事象発現しています。一応「回復又は軽快」とは書いてありますが、粘膜過形成の発生頻度は少し高かったということです。技術的成熟度はCとしまして、その理由は重篤な有害事象の個々の事象への対応内容が、かなり専門的で、食道気管支瘻も1例できておりますし、その後の対応に専門的な治療を必要とする患者が少数ではありますが出ていますし、粘膜過形成の頻度も高いこともありますので、当面の間は、専門性が高く経験を積んだ医師を中心とする体制が実施されるほうが、より安全でしょうということです。
 総合的なコメントとしては、主要評価項目は満たしました。安全性についても一定の許容範囲内ではあります。ただし、長期の成績は先行研究というか、対象が大分違うと思いますが、そういう意味で6か月の時点でも、すごく効くとまでは言えないということです。一方で、主要評価項目が施設判定ということで、これは中央判定と比較するなどして主要評価項目の客観性については、できる範囲でいろいろと考察していただいておりますので、そこについては担保されていると思いました。効率化については、食道がん患者のその後の経口摂取を支える治療技術として、当該医療機器の一定の有効性・安全性、有効性の限界についても示されています。幾つか検討すべき点はありますが、薬事承認申請の効率化に資する可能性は十分にあると考えています。次に、手良向先生の判断をお願いします。
○手良向構成員 付け加えることはほとんどありませんが、私の評価を申し上げます。有効性については、3か月では効果があったけれども6か月では少し低下したということで、これを割引いてBのやや有効としています。この原因は考察に書かれていますが、明確には特定されていないということなので、今後検討していく、データをもう少し解析するとか、海外のデータと比較する必要があると思います。
 安全性についても、18例中3例に重篤な有害事象が認められたということで、比較的多いと判断しましたが、回復又は軽快しているのであまり問題なしとしました。技術的成熟度については、この試験は経験豊富な先生方が参加されているので評価が難しいところはありますが、安全性についてやや懸念があるため、Cの「かなりの経験を積んだ医師を中心とした体制」に○を付けました。以上です。
○山口座長 ただいまの御説明について、何か御質問はありますか。
○伊藤構成員 6か月の無症状の生存割合は0%ということですが、多くの方が亡くなっていたということなのでしょうか。もともとは食道がん根治術治療後ということなので、食道がんについては、ある程度は治療された人と認識していたのですが、教えていただけますでしょうか。
○山本構成員 無症状の生存割合なので、必ずしも亡くなっているわけではなくて、何らかの症状が出てきたというようなことです。
○伊藤構成員 そうすると、この技術そのものは半年しか持たないということですか。
○山本構成員 そうですね。
○山口座長 今の質問に対してすぐには分からないようですから、ほかには何かございますか。3か月の時点では有効性が証明されたということと、長期については少し分からないところがある。実施に当たっては重篤な副作用が出ていて、その対応もかなり専門的な技術を要するので、最初は絞るべきだという、非常に貴重なコメントを頂きました。
○医政局研究開発振興課専門官 ダブレットの567ページに、無症状生存期間(DFS)が6か月時点ではゼロです。こちらは開始時、介入時には100%嚥下障害等が解除されました。その後、6か月時点では皆さん嚥下障害等の症状が発生したということですので、もともと2か月から3か月以内に溶けてしまうステントですので、これは自然ではあると思います。生存に関しては。
○山本構成員 有害事象で上がってきていないので、亡くなった方はなかったと思います。
○山口座長 これは、がんが再発して亡くなっているのですよね。
○山本構成員 亡くなってはいないのです。タブレットの579です。無症状生存なので、dysphagia scoreが一定以上に上がってきた方が、ほとんど全例が6か月の時点ではdysphagia scoreが上がってしまった、若しくは評価できなかったということで、結局0%になっているのだと思います。
 タブレットの579で、施設判定の6か月の所で、「評価できない」という方がすごく増えているのです。評価不能はその下に書いているのですが、後治療を実施してしまったので、dysphagia scoreの評価ができない、あるいは有害事象で絶食しているからできないというようなことで、亡くなっているわけではないのですが、結果的にdysphagia scoreが低いということは確認できなかったということだと思います。ただ、結局3か月から6か月の間で、何らかの後治療を有してしまっているので、3か月ぐらいまでだったら、確実に効くのだけけれども、その先は難しいかなということだと思います。
 そこをどう考えるかですが、前向きに考えるのであれば、たとえ3か月でも十分に食事が摂れるということについては非常に重要なことだろうと思いますし、これは生分解性ですが、国内でも悪性狭窄については金属ステントが通っているので、金属ステントだったら、ずっと残ってはいるだろうと。ただ、金属ステントの場合は、結局これはある程度の確率で落ちてしまうのです。そうなったときに、金属ステントの場合は取りに行かないといけないのだけれども、こちらの場合は、もし落ちたとしても溶けるので、放っておくことができるということ、使い方の簡便さというものもあるようなので、総合的に判断したたら、どちらがいいのかというのは難しいだろうと思います。
○山口座長 6か月ぐらいすると、化学療法をやらなければいけない人とか、いろいろなことが出てきて、それどころではなくなってきているのではないかと思うのです。これは恐らく手術後の良性の狭窄というのは、そこの部分にがんの再発がないというだけであって、ほかの所にはくるわけで、その後の評価が難しいのではないかと思います。
○山本構成員 そうです。しかも、3回ぐらいバルーンで広げているのです。3回ぐらい広げても、まだ食べられないから、これを入れるということで、かなり難治例をやって、それで、なおかつ難治例の方々が3か月はお食事がちゃんと摂れるというようなことなので、実際に対象になるような疾患の患者数も、ここまで限ると非常に少ないということもありましたので、そこから先はこの機器としての総合的な判断をする話であって、総括報告書としてはここまでで、事前に宣言してやることは、全てやっていただいているかと思います。
○山口座長 食道がんの術後というのは、縫合不全があると術後にすごく狭窄がきたりして、予後がそんなに長くないのに毎週のように病院に通って、ブジーをやらなければいけないという非常にかわいそうな状況があります。そんなときに、biodegradableなものがあったらいいなということだと思うのです。ほかに御質問はございませんか。
 それでは、告示番号31については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告いたします。続いて協力医療機関の追加に移ります。事務局より御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 83ページから84ページ、資料4-1を御覧ください。これまでに大臣告示されている10の技術について、協力医療機関の追加申請がありました。資料5-1に、各々先進医療名、適応症、申請医療機関、追加協力医療機関について記載しています。
 85ページから95ページの資料4-2を御覧ください。事務局において、協力医療機関として提出のあった先進医療実施届出書等を確認し、いずれも先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件(様式第9号)を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。
○山口座長 何か御意見はございませんか。特に問題はないようですので、御承認されたということにいたします。ありがとうございました。
 次に、千葉がんセンターからの先進医療技術審査部会への報告について、事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 96ページ、資料5を御覧ください。まず、これまでの経緯です。平成28年1月の先進医療技術審査部会において、協力医療機関追加の妥当性審査の際、千葉県がんセンターからの申請については、平成27年12月に発生した病理検体取違え事故を受け、医療事故に対し検討した結果が出るまで保留することとされておりました。こちらを受け、院内事故調査委員会による病理検体の取違え事故に対する報告書が、平成28年2月に公表されております。今回、改めて千葉県がんセンターが申請するに当たり、再発防止策等の報告を受けたものです。97ページ以降の内容を御確認いただき、申請医療機関又は協力医療機関として、改めて新規申請をしてよろしいかどうか、御審議をお願いいたします。
○山口座長 今、先進医療をストップしているわけです。それを申請していいかということです。99ページに再発防止策など、いろいろ書いてあります。この後、ガーゼの遺残事故があったりしましたが、それについても対応の見直しはするということが書かれています。
 これを検討して、「これでよろしいです」というか、「こういうやり方で直すことは分かったけれども、その進捗状況を見て改めて判定する」という回答の仕方もあります。私が読ませていただいた感じでは、ごく当然のことが書いてあって、当然のことがなぜ行われなかったのかということがありまして、踏み込みが足りないということがあります。それと、このとおりに行われるかどうかということです。これは本来やっているべきことであって、当たり前のことですから、これが行われているかという検証が必要なので、これらの対策の運用状況について御報告いただいた上で、実際に行われている報告を更に頂いた上で、判断するという回答にしたほうがいいと思うのですが、御意見はありますでしょうか。石川先生はいかがでしょうか。
○石川構成員 私も説明を受けたときに、全くそのとおりで、何でこれができなかったのだと思いました。ですから、進捗状況を克明に見させてもらったほうがいいと思いますし、そのほうが向こうのためになると思います。
○山口座長 一色先生から何かございませんか。
○一色座長代理 病院でも、こういう対策をしたときには、どのようなアウトカムになっているかのチェックは病院内で必ずされるはずですし、そういう資料がないということになると、ちゃんと検証していないということになってしまうので、そういうものを求めることは非常に妥当だと思います。
○山口座長 ほかに御意見はございませんか。それでは、照会事項として、これらの対策の運用状況について報告を頂いた上で判断するとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 次に、先進医療合同会議の審査結果について、事務局より御報告をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 103ページ、資料6を御覧ください。整理番号100、腹膜播種を伴う膵がんに対するゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル点滴静注及びパクリタキセル腹腔内投与併用療法となっています。適応症は腹膜播種を伴う膵がんです。申請医療機関は東京大学医学部附属病院です。
 本技術について、9月8日に開催された先進医療合同会議で「適」との評価を受けましたので、御報告いたします。なお、本来でしたら、9月15日の前回の第48回先進医療技術審査部会で御報告すべき内容でしたが、御報告が遅れましたことをお詫び申し上げます。
○山口座長 これは御報告ですので、本来であれば終わった直後の9月15日にやるべきことが今日になったということで、御了承いただきたいと思います。ありがとうございました。
 本日の議題は以上です。何か御発言はございますか。ないようでしたら、次回の日程を事務局からお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 次回は、翌月の11月は新規審議案件等がないため、持ち回り開催とし、会合は中止とさせていただきます。持ち回り案件については、事務局より別途構成員の先生方にお諮りし、その結果については後ほど公開とさせていただきます。なお、12月の開催については、12月15日(木)の16時から18時までの予定としております。場所については別途御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。
○山口座長 本日はいろいろと難しい案件が多くて、皆様には貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。非常に有意義なディスカッションができたと思います。
 それでは、第49回先進医療技術審査部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

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