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2016年9月30日 第60回がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成28年9月30日(金)14:00〜17:00


○場所

航空会館 7階 701〜703会議室


○議題

(1)がん対策推進基本計画の見直しについて
   ・ライフステージやがんの特性に応じたがん対策について
   ・がん患者、家族が安心して暮らせる社会の構築について
(2)その他

○議事

○門田会長 定刻になりましたので、第60回がん対策推進協議会を開催いたします。本日も、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、現時点での委員の出欠状況について事務局から御報告ください。

○事務局 本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は大江委員、松村委員より御欠席の連絡を頂いております。なお、中川委員、宮園委員においては、遅れての御参加と伺っております。委員総数16名の皆様に御出席を頂いておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。

 また、本日は国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科外来医長清水千佳子参考人、聖路加国際病院小児科医長小澤美和参考人、杏林大学医学部腫瘍内科学教室准教授長島文夫参考人、国立がん研究センター東病院精神腫瘍科科長小川朝生参考人、国立がん研究センターがん対策情報センターセンター長若尾文彦参考人に御出席いただいております。以上をもちまして、傍聴いただいている方におきましては撮影を終了し、カメラを納めていただきますよう御協力をお願いいたします。

 また、携帯電話等、音の出る機器につきましては、電源を切るか、マナーモードに設定いただく等、会議の妨げとならないよう静粛にしていただきますようお願いします。事務局からは以上です。

○門田会長 引き続いて、事務局から資料の確認をお願いします。

○事務局 お手元の資料の確認をさせていただきます。資料1、「がん対策推進協議会委員名簿」、資料2、「各検討会の検討状況について」、資料3、「第59回がん対策推進協議会での主な御意見」、資料4、「ライフステージに応じたがん対策について〜議論の背景〜」、資料5、「AYA世代のがん対策に関する政策提言」清水参考人提出資料、資料6、「高齢者のがんへの対策(認知症を除いて)」長島参考人提出資料、資料7、「認知症とがん」小川参考人提出資料、資料8、「がんの特性に応じたがん対策について〜議論の背景〜」、資料9、「がん相談支援センター困りごとアンケートから見たがん患者を取り巻く社会的な問題」若尾参考人提出資料となります。また、お手元の委員提出資料を確認させていただきます。

 桜井委員、勢井委員、難波委員、馬上委員、若尾委員提出資料として、4つの資料があります。「ライフステージやがんの特性に応じたがん対策について」(AYA世代)(高齢者)(難治性がん・希少がん)、「がん患者、家族が安心して暮らせる社会の構築について(がん患者の社会的問題等)」となります。檜山委員提出資料として、「ライフステージやがんの特性に応じたがん対策について」、「希少がん対策について」がございます。また、お手元には机上資料ファイルと参考資料をそれぞれ御用意しております。資料に不足、落丁等がありましたら、事務局までお申出ください。事務局からは以上です。

○門田会長 いかがでしょうか。資料に問題はありませんか。ないようでしたら、議事に入りたいと思います。まず報告です。事務局から報告事項についての各検討会の検討状況について御報告をお願いいたします。

○がん対策推進官 お手元の資料2を御覧ください。各検討会の検討状況について御説明いたします。がん診療提供体制のあり方に関する検討会について520日以降、4回にわたって議論が行われております。現在、第8回、84日に行われた議論を踏まえて、第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理を確定に向け、最終的な調整中です。

 次に、がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会については、530日以降、現在3回の検討会を開催しております。今後、第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理について議論を行う予定です。

 次に、がん検診のあり方に関する検討会については512日以降、3回の検討会、またその下にがん検診受診率等に関するワーキンググループを3回開催して、現在は923日に開催された第19回での議論を踏まえ、こちらも議論の整理の確定に向けて、最終的な調整中です。各検討会の検討状況については以上です。

○門田会長 検討会の御報告を頂きましたが、ただいまの御報告で何か御質問はありますか。

○若尾委員 今、各在り方検討会の議論の整理ということで御報告を頂きましたが、このがん対策推進協議会の中で、整理された議論を協議会として、第3次にいかす時間的余裕はどの程度あるのか。大まかなタイムスケジュールが分かりましたら教えてください。

○がん対策推進官 前回の協議会の資料でもお示しをさせていただいたところですが、先ほど御説明した3つの検討会で整理されている議論について、がん診療提供体制のあり方に関しては、次回の協議会。がん等における緩和ケアの更なる推進の検討会に関しては、次の次の次の協議会。また、検診のあり方検討会については、次の次の次の検討会で議論を整理したものをお示しする予定です。その会の中で、協議会として上がってくる検討会の整理に対して御意見を頂ければ有り難いと考えております。

○若尾委員 分かりました。

○門田会長 よろしいですか。そのほか、どなたかありますか。よろしいですか。これは検討会の御報告で、いずれ整理されたものが出てくるかと思います。

 次に議題1、がん対策推進基本計画の見直しについての議論にまいりたいと思います。まず、前回協議会で同じテーマでディスカッションしており、前回までの意見をまとめていただいていますので、事務局から説明をしていただきたいと思います。

○がん対策推進官 資料3、第59回、前回のがん対策推進協議会で頂いた御意見のまとめを御報告します。

 前回は、将来を見据えたがん対策の実現に向けた課題、がんに関する研究・開発、がん登録について御意見を頂きましたので、そのような形で整理をさせていただいております。将来を見据えたがん対策の実現に向けた課題については、予防や検診を重視すべきという御意見、ゲノム情報を用いたがん医療等の実現に関する御意見、がんの研究推進に関する御意見、その他御意見という形でまとめております。

2ページ、がんに関する研究・開発については、がん研究全般に関する御意見、治療開発に関する御意見、ゲノム研究・医療に関する御意見、政策研究に関する御意見、社会医学系のがん研究に関する御意見、サバイバーシップ研究に関する御意見、その他御意見としてまとめております。

4ページ、がん登録については、情報の収集に関する御意見、情報の利用に関する御意見を頂いております。このような形で前回の御意見をまとめております。以上です。

○門田会長 前回の協議会で田中委員から、高齢者のがん治療の差し控え的な雰囲気の話が出たかという質問を頂いていたのですが、あのとき中川委員は欠席でしたので、この辺りについて御意見をお願いします。

○中川委員 前回欠席させていただいたので、今回話をさせていただきます。これは加速化プランに関する意見収集の中で、どういった論点が今後必要かというところで、私が高齢者に対して治療の差し控えというか、今日の資料の6の「高齢者のがんへの対策」については、若年者と同じように、全てが積極的に治療すればいいというわけでは必ずしもないということです。その中で1つ場合によったら治療を差し控える。

 私どももよく経験するのですが、高齢者の場合、当然認知症とがんの両方を持つケースもあるわけです。がん治療を始めたことによって、認知症が非常に悪化してしまう。あるいはQOLが結果的に大きく下がってしまうという事例もあります。この辺は高齢者と言っても一括りにはできませんので、あくまでもそういった議論を少ししていかないと、結局、患者さんにとってかえって不利益になるという思いでお話をしたところです。

 例えば、高齢男性に多い前立腺がんの場合、結果的には治療をしないで待機的に、待機療法と呼ばれていますが、そういった治療がかえって良い場合もあります。また、これも実際に経験することがありますが、がん検診も、高齢者、特に後期高齢者、あるいは80歳を超えるような方に一律に推奨することが本当に良いのか。結果的には胃部レントゲン検査によってかえって事故が起こるという事例もあります。差し控えるべきであるということをもちろん言うつもりはなかったのですが、その辺、今後議論していく。特に、認知症を持つような方に関しては、どういった形で同意をどのように取るかということも含めて考える必要があるという意味で申し上げた次第です。以上です。

○門田会長 田中委員、何かありますか。

○田中委員 よく分かりました。

○門田会長 よろしいですか。ありがとうございました。今のお話も含めて、事務局から、前回の意見をまとめてもらって説明がありましたが、この件について何か御質問はありますか。

○桜井委員 私から3点ほどあります。まず、最初の予防や検診を重視すべきという意見のところです。この予防とか検診の視点として、どちらかというと、先制医療のような視点を含めて意見していたかと思います。少なくとも私はそういうつもりでお話をしていましたので、ゲノム情報に関わってくるのか、書き振りは事務局にお任せしますが、その辺りの視点も盛り込んでいただきたいと思います。

先ほどの検診の在り方に関する検討会のほうも、やはりこの意見を受けた上での検討を是非していただきたいと思います。また、遺伝子変異の陽性者の検診についても、以前より私は申し上げているので、その辺りも踏まえていただければと思います。

2点目は、2ページのがんに関する研究・開発の所です。国際共同治験の話や、あるいはキャンサームーンショット等々を含めて、国際共同プロジェクトのような話もあったかと思います。今、研究はグローバル化という話になっていますので、是非、国として連携していくという視点も書き込んでいただきたいと思います。

3点目は、3ページの下から2番目の○ですが、サバイバーシップ研究に関する御意見があります。こちらは、サバイバーシップ研究という視点で言うのであれば、多分、患者社会学。つまり、静岡のがんセンターのほうでずっとされているような社会学研究や、あるいは経済的な問題、妊孕性、アピアランス支援、この辺りもかなり絡んでくるのかと思っております。今の書き振りでは、どちらかというと、支持療法的な部分が中心になっている書き振りになっておりますので、前回出た意見をもう少しここに書き込んでいただきたいと思います。以上です。

○門田会長 よろしいですか。

○中釜委員 前回の議論の論点を予防、治療、あるいはサバイバー、社会学という観点からよくまとめられていると思います。ざっと見たときに、少し欠けているのか、読み切れていないのかということだと思いますが、やはり、治療という観点からいくと、いわゆる難治がん。これはそもそも難治ながん、早期発見が困難ながんもありますが、例えば、治療抵抗性の獲得であるとか、あるいは転移のメカニズムによる転移の予防、治療というところが、まだまだ未解決なために、十分な患者さんの予後改善につながっていない部分もあるので、そこが少し明確になるような発言もあったかと思うので追記していただけると思います。

○門田会長 これは前のときも申し上げましたが、これもこういう意見が出て、最終的には、ここにあるものが基本計画に載るかというと、とてもこのような細かいことまで載りませんので、ある方向性で持っていく。こういう項目の話があった。それを集約して文章化していくという扱いになると思いますので、今、おっしゃっていただいているような内容のものは記録に残すことにして、そういう扱いになるという理解はしていただきたいと思います。よろしいですか。これは御意見ということで来ていますので、ここで置きまして、次に進みます。

 本日は、2つのテーマが上がっています。まず、1つ目はライフステージやがんの特性に応じたがん対策についてということです。これについて、まず背景を事務局から説明をしていただきたいと思います。

○がん対策推進官 資料4、「ライフステージに応じたがん対策について」、その背景の説明ということで、事務局より御説明いたします。1枚目の下の絵です。こちらは、がん対策推進基本計画第2期のものです。黄色に色を変えているところが、ライフステージに応じたがん対策に対応する部分です。

 重点的に取り組むべき課題の中で、働く世代や小児へのがん対策の充実。また、分野別施策及びその成果や達成度を計るための個別目標の中で小児がん、がん患者の就労を含めた社会的な問題が上げられております。

4ページ、今後のがん対策の方向性についての概要、「これまで取り組まれていない対策に焦点を当てて」の中で、3つ目、小児期・AYA世代、壮年期、高齢期等のライフステージに応じたがん対策ということで事項が挙げられております。総合的なAYA世代のがん対策の在り方。遺伝性腫瘍に対する医療支援の在り方。認知症対策と連動した高齢者のがん対策の在り方等に検討が必要という御意見を頂いております。

 その中で、今後のがん対策の方向性についてということで、具体的にその中の抜粋を御説明します。

 その下の図ですが、AYA世代のがん対策。高齢者世代のがん対策として上げております。AYA世代については、個々のライフステージごとに異なった身体的、精神心理的問題、社会的問題が生じていることから、AYA世代、高齢者対策等、ほかの人も含めたライフステージに応じたがん対策が必要ということです。AYAについては、就職時期と治療時期が重なるために、働く世代のがん患者の就労支援とは異なった就労支援の観点が必要であること。心理社会的な問題への対応を含めた相談支援体制や、緩和ケア提供体制等を含めた総合的な対策が必要であるといった現状があります。

5ページ、高齢者のがん対策については、先ほど中川委員からの御指摘にもありましたとおり、例えば、平成22年時点で65歳以上の高齢者で認知症有病率が15%と推計されていること等から、認知症対策を行いながら、がん医療を提供することが重要であるという御指摘とか、医療者だけではなく、介護者への教育の充実。また、高齢者では、自律機能の低下や他疾患の併存、加齢による個体差の拡大など、高齢者のがん患者に適した治療法の確立が重要という御指摘も頂いております。

 こうした御指摘も受け、がん対策加速化プランの中では、重視すべき具体策の中で、その治療・研究分野で小児・AYA世代のがん、こうしたものが具体策として上げられております。

6ページ、加速化プランにおける記載の抜粋です。小児期・AYA世代のがん対策については、先ほど触れたとおり、就学・就職時期と治療時期が重なるために、ほかのがん患者への就労支援とは異なった観点が必要。社会心理的な問題や教育の問題への対応を含めた相談支援体制や、セクシャリティの問題への対応、緩和ケアの提供対策等を含めた総合的な対策の在り方の検討が必要です。

 こうした現状、課題を踏まえて、実施すべき具体策として、AYA世代固有の詳細な課題を明らかにするためにAYA世代のがん医療等に関する実態調査や研究を進めることとされております。後ほど、こうした研究を基に御提言を参考人から頂けることになっております。また、高齢者世代についても、その下の図ですが、検診の効率を考慮に入れた対象年齢の設定、後期高齢者における治療の差し控えに関する検討。高齢者、認知症、看取り期等、患者の意思決定支援に関する内容、またグリーフケア等の充実が必要とされております。こちらについては、後ほど高齢者がん対策について参考人から御意見を頂く予定です。事務局からは以上です。

○門田会長 ただいま事務局から、この背景の部分を説明してもらいました。先ほども御案内がありましたように、本日はAYA世代と高齢者に対するがん対策ということで、お二方の参考人からヒアリングを行います。まず、「AYA世代のがん対策について」ということで、清水参考人からお願いいたします。

○清水参考人 国立がん研究センター中央病院の清水です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。厚労科研がん対策推進総合研究事業の総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究班を代表して、隣におります聖路加国際病院の小澤美和代表人とともに本日は政策提言をさせていただきます。申し訳ありませんが、研究代表者の堀部は所用により、本日はどうしてもここの場に来られないということで、代わっての御報告となります。どうぞよろしくお願いいたします。

 資料51ページの下のほうで、AYA世代のがん患者というのが、まず私どもの研究班の中では15歳以上40歳未満と少し幅広く定義させていただいて検討をいたしました。議論を始める前に、皆様にイメージを共有していただきます。がん種やライフステージによる以下の分類でニーズが異なることが予想されます。まずは、がん種による分類、いわゆる希少がんを持っている若年世代の患者さん、成人に多いがんの若年世代の患者さんと2通りに分けられるだろう。希少がんの方は、多くの診療科にまたがっていて、また多様ながん種で構成されております。成人に多いがんの若年世代、これは患者さん自体は非常に多いのですけれども、その中で一番多い乳がんでも7%程度でしょうか、非常に希少なポピュレーションで、そのニーズが完全に満たされていないものがあるということで御理解いただきたいと思います。

 それからライフステージによる分類で、一番大きくはティーンエイジャー、思春期の人たちと、自立をした若年世代でまたニーズが異なることが予想されます。思春期は就学期、精神的・社会的自立に向けた発達段階にあり、まだ就労前であり、経済的にも自立をしていない。そして意思決定の主体は親になりがちです。また性的には発達途上にあります。

 若年成人は就労している若年者をイメージしておりますけれども、精神的・経済的に自立を始め、意思決定は基本的には本人がされ、その次世代を産み育て、社会を育てる大事な人たちだということです。ただ、このように分類をすることは結構なのですけれども、同じ年齢であっても自立の度合い、就学・就労、経済的状況、家庭環境、ライフプランはかなり個人差があり、具体的な政策を立てる場合に、画一的な対応をすることは望ましくなく、個別のニーズをどのように対応してきめ細かに対応できるかということが、その政策を行っていく上での大事なところではないかと考えています。

3ページにあるのが、AYAがん対策として私どもが政策提言をしたいと考えている4つのポイントです。1つ目は、疾患構成、個別ニーズ、生活を考慮した診療連携体制の構築。2つ目は、包括的・継続的な支援を目指した対策の推進。3つ目は、患者の自立・自己管理を促す対策の推進。4つ目は、関連する個別の課題への取組への推進。それらを順を追って御説明してまいります。

 私どもがこの政策提言をするに当たり、患者さん、がん経験者の方々、健常のAYA世代の方々に対してのアンケート調査を行っております。また、そのAYA世代のがん患者さんに対応しております医療者、医療従事者の調査、そして医療機関の調査も併せて行っています。患者さんの調査に関してはまだ中間の解析の結果での提言ということで、詳細なデータを御提示することは困難であることは御了解いただければと思います。

 まず、疾患構成と個別ニーズ、生活を考慮した診療連携体制の構築です。現状ではAYA世代のがん患者さんは、全国に一定の割合で存在しています。私どもの調査では全患者さんの中の4%程度です。頻度は非常に少なくて、医療機関も、医療者も非常に経験数が少ない。がん診療拠点病院を対象にして行った調査の中では、医療機関の中での診療経験数は年間47人です。25歳未満に限って言うと、中央値で5人ということです。医療機関も、医療者も経験数が少ないところです。AYA世代のがん患者、「AYA」と書いておりますけれども、サバイバーシップに関連した様々なニーズがあります。私どもは23項目について調査をいたしましたけれども、そのゼロニーズがないと申しますか、全ての項目に対して3割以上の方が必要であると回答している状況です。ただし、患者さんごとの優先順位というのは、その23項目の中でも、それぞれに異なります。

AYAの診療数の多い医療機関と少ない医療機関を比較すると、AYAの診療数の多い医療機関のほうが、専門医や施設認定が充足しているという状況があります。しかし、診療数の多い医療機関においても、生殖医療の専門医、緩和ケアの専門医、精神腫瘍医などAYAの人たちが特に必要とするような人的なリソースが不足しているような状況であり、またAYA病棟などのケア環境も充足しておりません。

AYA世代のがん患者さんは、年齢が高くなるほど頻度が増加します。ただし、小児がんの患者さんよりはもちろん頻度は高いわけです。疾患の構成で見ると、25歳未満では希少がん、25歳以上では子宮頸がん、乳がんなどの患者さんの割合が増えてまいりますが、25歳以上であっても、非常にがん種の分布は多様で、子宮頸がん、乳がんの対策ではカバー仕切れないということです。

 米国では、NCISEERのデータベースから取ったAYAの治療成績を踏まえ、この20年間で治療成績の改善が不良であることを非常に重視しております。その背景に、AYA特有の心理・社会的な要因、特に私どもの調査にもありましたけれども、がんという病気にはまずならないだろうと信じている世代でもありますので、そういう要因も関連していることも踏まえ、その要因を考慮したAYA対策、がん対策を講ずるような政策を行っております。

 これを踏まえ、私どもとしては以下の3つの点を提言したいと考えております。国には、AYA診療数が多いがん診療連携拠点病院を中心に、AYA診療拠点を整備し、そのための適切な予算措置を講じていただきたいと考えます。AYA診療拠点では、AYAの多様なニーズに対応できるよう、院内外の専門家によって構成された、AYA支援チームを組織するとともに、入院環境を整えるなどの検討を行っていただきたいと考えます。また、AYA診療拠点は必要に応じて、地域の医療機関からのコンサルテーション業務を行い、ある程度その地域での集約化を行ったほうがよろしいかと思います。

 希少がんについては、治療成績向上のため、診療拠点の整備、ネットワークの構築が必要だと考えます。その際、AYAの治療拠点と生活拠点が異なる可能性に留意していただき、地域のAYA診療拠点と連携し、治療とケアの医療連携を行っていただきたいと考えます。

 また、データがないというところで対策を講じられない所があります。国立がん研究センターがん対策情報センターでは、がん診療連携拠点病院の院内がん登録によるAYAの治療数及び治療成績を集計して公開していただくとともに、治療成績に関連する要因の研究を進めていただきたいと考えます。

2点目は、包括的・継続的な支援を目指した対策を推進していただきたいということです。現状としては、がん体験は、AYAの将来構想に非常に悪い影響を与えるということが調査の結果出てきております。また、AYA世代の患者さんは、健康な若年者に比べて不安を抱えている人の割合が高いということです。AYAの中でも、ライフステージによってニーズの傾向が異なる。また、がん治療前、治療中には認識されていなかったニーズが、治療後の時間経過とともに新たなニーズとして認識される場合もあります。

 それに対して医療者の調査では、AYAのニーズを十分に認識できていない可能性が示唆されました。がん対策加速化プランでは希少がん、小児がん、緩和ケア、生殖機能温存、就学・就労などについての個別の対策の取組が進められているところではありますが、患者の視点から見ると、包括的な、あるいは継続的な情報・相談体制の提供が十分ではないと考えます。

 方向性としては、AYA診療拠点病院は、院内及び地域のAYAのための相談支援窓口を明確にし、AYAの不安軽減と、AYAの自立・自己実現の支援のための包括的・継続的な支援を行います。また、AYA診療拠点では、AYAのニーズへの対応が、患者さんの生活圏にある地域医療機関においても可能となるよう、人的交流・ITなどを十分に活用しながら、地域の医療者及びその関係者の教育を行っていただきたいと考えます。国のほうでは、関連学会と協力をしながら、AYAのサバイバーシップに関する医療従事者の教育・啓発を是非行っていただきたいと考えます。

 また、いろいろな情報、各地での取組の情報をなかなかパッと見られるリソースがないということで、国立がん研究センターがん対策情報センターには是非関連省庁、地方公共団体、その他の団体によって先行して行われているAYA対策に関連する情報、AYA支援に役立ち得る既存のリソースに関する情報を収集し、患者さん、医療者、医療機関並びにその他の関連の団体にも発信していただきたいと考えます。

3 点目は、患者さんの自立・自己管理を促す対策を推進していただきたいと考えます。AYAの多くの患者さんは、治療に関して意思決定に参加したいという意欲が非常に高く、また自分の健康を管理していきたいという意識が高いことが調査で分かっております。そうは言うものの、自己管理に必要ながん治療の合併症、後遺症、それらの生活に対する影響や管理方法について第三者に説明することが困難だと感じております。また、データという観点では、がん治療後の二次がんの発症や、それ以外の健康上の問題についてのデータが圧倒的に不足していて、またフォローアップの体制も確立しておりません。

AYA患者さん同士のピアサポートのニーズ、家族支援のニーズもありますが、そちらに対しても充足していない状況です。AYAの患者さんは、がんの遺伝に関する情報に非常に高く関心を持っておられます。健康な若年者についても、遺伝子検査や予防についての関心が高い状況が調査の結果分かりました。そこで国には、AYAの長期予後、二次がん、他の健康上の問題に関するデータベースを構築するための研究事業、あるいはAYAの長期フォローアップの健康上の効果及び費用対効果を評価するための研究事業を行って対策を講じていただきたいと考えます。

AYA診療拠点は、患者さんの治療拠点となる医療機関、地域医療機関との連携によって、AYAの長期的な健康管理、心理的支援の可能なフォローアップ体制を構築していただきたいと思います。AYA診療拠点では、がん治療後の健康管理についての患者教育を充実させて、他の医療機関と情報を共有していただきたいと考えます。国は、AYAやその家族の情報や相談支援のアクセスを向上するため、ITを活用した情報提供、相談支援窓口の周知、ピアサポートなどの取組を推進するための事業を行っていただきたいと考えます。がん治療後の健康管理に関する患者教育や研究を推進すると同時に、今後のゲノム医療の実用化を目指している国の方針も踏まえ、遺伝性腫瘍に関する教育、カウンセリング、医療体制の構築を推進していただきたいと考えます。遺伝性腫瘍に関する社会的不利益がないように、その予後の仕組みについても検討していただきたいと考えます。

 最後は関連する個別の課題への取組ということで、5つの課題についてまとめてまいりました。意思決定・緩和ケア、生殖、教育、就労、経済の5つについてです。このページに関しては11枚目、12枚目のスライドを上下と交互に見ていただければと思います。意思決定・緩和ケアに関してですが、AYAの多くは治療方針決定の積極的な参加を希望されております。医療者からの意思決定支援は十分であるとは言えません。AYAは誰にも相談せずに、1人で悩む傾向が見られます。しかし、この潜在的な問題についての具体的な相談窓口について、情報提供の体制が十分整っておりません。今回の調査では、6割以上のAYAは終末期を在宅療養で過ごすことを希望されております。ただ、その介護に対する支援が不足しております。介護保険も利用できない世代であります。

 そこで、方向性としては下のスライドで、国は緩和ケア研修に、AYAの特性を踏まえた意思決定支援の研修を取り入れていただきたい。介護保険を利用できないAYA世代の在宅療養における介護負担の軽減策を検討していただきたいと考えます。在宅診療医や、訪問看護ステーションスタッフへの啓発を行っていただきたいと思います。

2点目の生殖に関しては、AYAへの生殖に関する情報提供と、生殖医療の連携が十分ではありません。20代後半の生殖関連ニーズは高いですが、若年発症でも、治療終了後にニーズが顕在化することもあります。話合いの中で、がん患者における生殖医療についての治療成績、安全性に関するエビデンスが不足していること、保管した配偶子・胚保管管理上の問題のこと、あるいは生命倫理的な問題がいろいろあって、そういうものに対しても対応の検討が必要と考えております。今回の調査でも、経済的な理由により、妊孕性温存を行わないということを選んだ患者さんも少なくなく、こういう問題にも対応が必要です。

 そこで、AYA診療拠点は、がん患者の生殖に関わる適切な情報提供を支援し、地域における生殖医療機関との連携の窓口となっていただきたいと考えます。学会等と連携し、エビデンスの構築、妊孕性温存に関わる管理、倫理上の問題に対する対策を検討していただきたいと考えます。妊孕性温存に対する経済的支援策の検討も始めていただきたいと思います。

3点目は教育です。これはAYA世代でも思春期世代の患者さんの課題です。その患者さんの多くは調査によると、教育の継続を希望されております。AYAの高校生に対する特別支援教育、在籍校による教育のニーズがありますが、そのニーズが充足しておりません。一方、都道府県の教育委員会の約8割は、がんのある高校生に対して何らかの教育支援が行われているということですが、必ずしもそれが患者さんに届いているわけではないというのが現状のようです。

 そこで方向性としては、AYAが学びたいときに教育を受けられる機会を保証し、継続した支援が受けられるよう、AYA診療拠点は教育に関する相談窓口を明確にし、更に教育機関側との調整を行っていただきたいと考えます。教育委員会のほうに、個々の学校だけではなく、特別支援教育と高校教育の部署で十分な調整を行っていただくような役割を果たしていただきたいと思います。国は遠隔教育の活用の推進、単位認定基準の検討を行っていただき、加えて特に高等学校や医療機関に対して、がん患者さんの教育という観点での啓発を行っていただきたいと考えます。

4点目は就労です。AYA患者さんの9割近くが就労を希望されております。ただ患者さんの調査を見ると、がんを開示することが雇用に当たって不当な扱いにつながるのではないかと危惧する患者さんの声は少なくありません。職業訓練のニーズが充足しておらず、大学等における病弱、虚弱を含む障害学生の就職支援、キャリア教育支援の実施も非常に少ないです。そこで国には、就労に関する相談窓口である教育関係者、医療者、職場関係者の相談対応能力を向上するための研修事業を実施していただきたいと考えます。AYA診療拠点病院は、就労関連の相談窓口を明確にするとともに、その情報を地域の医療機関に周知徹底していただきたいと思います。大学等の教育機関、ハローワーク等との協働により新規就労、キャリア支援等における職業訓練を充実させていただきたいと考えます。

 最後は経済についてです。がん患者さん一般的な問題かもしれませんが、特に一般にこの若年層は保険加入の割合が低い年代です。20代で55%という調査結果があります。今回の調査でもAYA患者さんのほとんどが公的な医療費助成制度を利用しておりますが、経済的な負担感は高いと答えております。特に低所得のAYA・被扶養者の治療関連費、治療以外の負担、治療以外の部分、入院費差額や交通費、ウィッグなどの支出に対する負担感は大きいものです。

 既存のいろいろな制度はありますが、国立がん研究センターやAYA診療拠点は既存の助成制度についてまず周知を徹底していただくとともに、低所得者における交通費、装具、療養宿泊費等の間接経費の助成の対象を拡大させていただきたいと思います。これに関しては細かくて恐縮なのですが、スライド14にあります。1540歳の所、一番上の医療費支援のグラフを見ると、ちょうど小児慢性疾患の医療費助成というのが切れている世代です。介護保険も利用できない年代となっておりますので、この辺りで何らかの施策が検討できればと考えております。

 最後のページで総括すると、AYAニーズに関して、担当医等医療機関の医療者が、まず十分にこのニーズを認識することが支援の第一歩ということで、医療者教育が重要であると考えます。AYAのニーズは既存の制度・リソースを活用することによって支援し得るものが少なくありません。医療機関における相談窓口を明確にし、既存の制度に関する周知を徹底することが必要だと考えます。一方でAYAの支援には専門的な対応が求められます。各種ニーズに専門的な対応が可能な、AYA支援チームや、AYA病棟等の環境を有する、AYA診療拠点を指定していただき、AYAの診療・支援の充実を図るとともに、その診療拠点を中心とした地域における医療者教育・人材教育・治療及びケア、長期フォローアップの連携体制を整備していくことを提言いたします。

 全体的なAYAの患者さんの少なさから考えると、単一の施設で全てのニーズに対応することは困難と予想されます。そういうことを考えて、医療機関・専門領域の壁を越えた弾力的な医療連携を通じて、既存のリソースを有効に活用していくことが期待されるかと存じます。以上です。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。AYA世代のがん対策について、班研究としての報告を頂きましたが、この件についての御質問、御意見がありましたらお願いします。

○檜山委員 AYA世代の患者さんの検討は非常に素晴らしいものだと思って拝聴いたしました。第2次のときに小児がん拠点に関わらせていただいたときに出てきた問題はほとんど網羅されているのではないかと思います。質問は、AYA診療拠点というものについてですが、小児がん拠点病院の中にもAYAを診療することが必須項目に入っていると思います。小児がん拠点病院との関係をどのように考えておられるのか。AYA診療拠点というのは一体幾つぐらいを全国にお考えなのかを教えていただけますか。AYA診療というのは、AYAがんではなくて、AYA全体を診療されるというようにお考えなのでしょうか。

○清水参考人 AYA診療と申しますのは、全てのAYAに対応するというのは難しいことだと考えております。最初の御質問にもありましたが、小児がん拠点病院でAYAに対応している診療拠点はありますけれども、それ以上に多くのAYAの患者さんが全国に点在している状況と、多くの患者さんは成人診療科で診療されているということもあります。小児がん拠点でAYAの全てに対応していくというのは困難だと考えております。

 ただ、思春期世代のAYA患者さん、ティーンエージャーに関しては、やはり特殊な就学とか、あるいは療養環境についても特殊なニーズがありますので、そういうティーンエージャーの患者さんに関しては、小児がん拠点病院が中心になっていくのが望ましいのではないかと考えます。

○檜山委員 数はどれぐらいを考えているのですか。

○清水参考人 都道府県に1つぐらいあるといいなという気がします。

○檜山委員 それは何か根拠というか。

○清水参考人 25歳以下の患者さんを診ている診療拠点、今回433施設に調査用紙を配布して、235より回収した結果です。年間11例以上の25歳未満の患者さんを診療している施設は47施設ありました。割と全国に点在している形になります。11というのが十分な数字なのかは分からないのですけれども、全体の433を調べた結果、カットオフを11にするのか、もう少し高い所で設定するのかは分かりませんが、各都道府県に点在するような形で拠点があるほうが望ましいとは考えます。

○檜山委員 御指摘のように、15歳からいわゆる思春期の方々は、いわゆる小児がんと同じように希少がんが多いのです。今お示しの25歳以上40歳の方は、乳がんとか子宮頸がんという、いわゆるジェンダースペシフィックながんのほうに偏っているのかなという集計だったと思うのです。

○清水参考人 必ずしもそうではありません。

○檜山委員 その辺の検討をされているかということと、今の小児がん領域では移行期医療が非常に問題になっているので、その辺をAYA診療拠点でどのようにお考えなのかを教えてください。

○小澤参考人 施設調査、専門医調査で、小児を診る側としては約半数が大人の診療科に回したほうがいいのではないかという結果に今回はなっております。ただ、成人診療科のほうではそのまま小児の特性を理解している医師が診たほうがいいのではないかということで、ディスクレパンシーがあります。今回私たちの班としては小児がん、AYA拠点病院を清水参考人が申し上げましたように、思春期の時代は恐らくハードの面、ハードというのは、入院しながら教育が受けられるとか、コミュニケーションもその専門家がいるようなシステムが必要に思われます。小児がん拠点病院でできれば思春期、アドレッセンスを診て、あとは特にがんセンター等々に集まる固形腫瘍の、少し年代の大きな若年層は、がんセンター等々のがんに特化したような施設が診られるようなシステムが取れるといいと。あとはどちらの移行期医療も、がんを診療するというよりも、今度は健康管理という面になっていくので、できれば現場の拠点病院とは違う所で、総合診療が受けられるような所での移行が考えられるといいのではないかと思っています。

○檜山委員 AYA診療拠点というのが、そういう晩期障害とか、長期フォローとか、移行期医療に対しての受皿になっていただけるというふうに考えていいということですか。

○清水参考人 全てのAYAの患者さんの受皿になるのは難しいと考えています。最終的には患者さんの地域で、患者さんが地域で生活されている所で健康管理をしていただくのが一番よいかと思います。AYA診療拠点は、そういう地域の医療機関に対して、こういう晩期障害の問題があるのだよというのを教育していただいて、地域のAYAの医療の中心になってリーダーシップを取っていただく。

○檜山委員 でも、都道府県に1つずつ作られるのですよね。

○清水参考人 数に関しては私ども何とも言えないところではあります。地方に1つなのか、都道府県に1つなのかは。

○小澤参考人 ブロックに分けて1つぐらいなのか。人数から考えると、理想としては都道府県に1つあったらいいのかもしれません。人数を考えるとハードをそろえるというのは非常に費用がかかってしまうと思います。例えば関東圏に1つの小児がん診療連携拠点病院の幾つかある中のどこかが1つになる。あとは、例えばがんセンターに思春期の方がいたときにはアウトリーチで相談ができて、ハードがなくても、既存のものがこういう形で使えるというようなコンサルテーション機能をそこが持ってくれるといいのではないかと思っています。可能であれば、そこに患者さんが集約されるといいとは思いますが、外にいる場合もあるので、プラスコンサルテーション機能も持てるといいのではないかと思います。

○門田会長 そのような形で考えておられるということですよね。

○清水参考人 はい。

○門田会長 考えとしての話とさせていただきます。他の面から何か御質問、御意見はありますか。

○馬上委員 ちょっと重なる点があるかもしれないのですけれども年齢の定義です。15歳から40歳未満の定義の根拠を教えていただきたいのです。今の小児科で20歳まで診ている所もあります。そうすると、小児科で20歳まで診たり、小児がん拠点病院だと20歳を超えても診ている所もたくさんあります。以前にも申し上げましたけれども、15歳から20歳までの5年間の方は、一体全体どこに行ったらちゃんと診ていただけるのかということで問題があるのですけれども、そういうことでAYAの拠点を作って行くお話になっていると思うのですが、何か科学的根拠があって、15歳以上となっているのかどうかをお伺いします。

○小澤参考人 小児医療は、現在保険的には15歳までなのです。ただ、総合診療を行う小児科、小児医療としては成人までを、移行期も含めて診ていく必要があるだろうという、学問的にはそういう流れになってきています。そこに政策と医療現場との差がありますので、できればそこが一致していくと、医療システムは20歳まで診ていくシステムになりつつありますので、報酬がそこに付いてくると、なお現実的になるのかと思っております。

○馬上委員 今問題になっているのは、若年成人でも、小児のプロトコールで治療したほうが成績が良い場合があります。そういう情報が成人科のほうになかったりして、予後が悪くなっている例があります。今は小児がん拠点病院がある中で、AYAの診療病院を作っていただくと、必ず連携は必要で、患者側としては一体どこに行ったらいいのかというのが多分迷ってしまうことになると思うのです。その点は考慮していただきたいと思います。

○清水参考人 それは班として考える中で、診療が遅れる理由の1つに、まだ、がんという疾患がイメージできないので診察が遅れるという本人側の問題もあります。あとはそうかもしれないと思ったときに、どこに行ったらいいか分からないのは、やはり情報の発信を何歳ぐらいの患者さんを、どこの施設がどれぐらい診ているとか、治療効果ということをアクセスのしやすい方法で情報発信を、患者さん側も情報が探せて、ここに行こうと思えるような情報発信システムができるといいかと考えます。

○馬上委員 今、国立がんセンターに希少がんセンターがあります。やはりAYA世代の方が当てはまっているところがあると思うのです。国立がんセンターのほうで希少がんのワーキンググループを作っているのですけれども、そことの連携について御意見を伺います。

○清水参考人 この研究班の中にも川井先生が入っておられて、希少がんの政策、ある程度希少がんは集約の方向で進んでいると伺っています。そういう集約されたセンターの所では、AYAの診療拠点となる可能性は高いとは思います。ただ、それ以外の腫瘍も数としては結構多い状況です。その他のニーズに応えるための拠点というのもある程度準備が必要かとは思います。

○馬上委員 生殖医療について、うちの娘も今その時期なのです。治療前に温存するということは本当にやっていただきたいと思うのです。うちの娘が言われているのは、治療後にその可能性があると言われていて、それに関して主治医がいる病院では分からないので、他でセカンドオピニオンを聞いてきてくださいと言われて、3件ぐらい聞きに行っています。そういう不妊治療的なことについても、患者側には全く情報が正確に伝わっていないことがありますので是非御配慮いただきたいと思います。

○清水参考人 生殖に関しては、生殖小班のほうでネットワークづくりに取り組んでおります。それも情報の発信というところになるかと思います。窓口が分かるような形で患者さんに発信していくようにしたいと考えております。

○門田会長 それでは中釜先生、これで最後にしたいと思います。

○中釜委員 AYA世代のがんの場合には、そのライフステージの特殊性であるとか、診療提供のニッチという観点からかなり特殊な状況なのかもしれません。基本的には希少がんという範疇の中で抱える問題を同様に抱えているのかなと考えられます。希少

がん・小児がんに関する共通の問題としては、拠点あるいはネットワークの問題があるかと思うのです。その数がどのぐらいが適切かというのはまた難しい問題かもしれませんけれども、重要なのは、そのネットワークをどうやって回すのか、ドライブするのかというところだと思うのです。

 そうすると、総括の最後にいみじくも、「単一施設での対応は困難であり、医療機関・専門領域の壁を越えた弾力的な医療連携が重要だ」と書かれています。弾力的な医療連携で具体的に何をするのかということが、今の問題を解決するのかと思うのです。診断による協力なのか、病理診断、あるいはゲノム診断というものをどうやって協力体系でやっていくかということが、この弾力的な連携のところの具体性が出てくると、適切な数の問題も含めて解決するのかなと、ある一定の答えが出るのかなと聞いていて思いました。その辺りに関して、現時点で具体的に弾力的な医療連携に関してどういう手段を考えていますか。

○清水参考人 個別具体的な例に関して言うと、例えば国立がん研究センターにおいては、生殖医療の専門医はもちろんいません。聖路加国際病院が地理的に近いということもあって、妊孕性温存を希望される方は、聖路加国際病院のリプロダクションセンターで妊孕性保持に関する説明を受けたり、治療を受けたりしています。その医療機関間の連携体制を作ろうとしております。そうすると、例えば国立がん研究センターが、AYAの診療拠点となった場合に、地域のAYAの患者さんから、それに関するコンサルテーションがありましたら、私どもの所から、聖路加国際病院でやっているということはお伝えできるかと思います。ある程度その連携に必要な情報というのは何かということもお伝えした上で、その患者さんの妊孕性保持に関するお手伝いができるかと思います。それなので、全ての施設が全てのニーズに見合うようなリソースを持っているとは限りませんので、1つの地域で専門家の集団を作るということで、地域の患者さん一人一人のニーズに応えていくというような体制が作れればいいかと考えました。

○中釜委員 そうすると、例えば生殖であるとか、教育であるとか、そういうより具体的な、個別的なテーマを解決できるような拠点を設けて、そこで回すというのが1つのアイディアだということですか。

○清水参考人 はい。

○桜井委員 私自身AYA世代でがんを罹患し、早く40歳になりたくてしようがなかったのです。介護保険が使えるからということで、そう思っていました。40歳未満の介護支援体制の部分というのは是非応援していただきたいと思っております。

 その他に2点お願いします。1点目、妊孕性の部分が書かれておりますが、これは女性と男性で社会的な医療制度が少し違っています。女性のほうは42歳が上限として設けられています。男性のほうは本人の希望という形になっています。これはAYAだけの問題ではないと思っているのですけれども、その辺りの見識がどうなのか。2点目は就労の部分で、AYA期の親の就労というのが非常に問題なのではないかと思っています。要はお子さんが療養生活に入られ、治療期に入られると、付添いのために仕事を失ってしまうのです。その辺りはどのようにお考えなのかを聞かせていただけますか。

○清水参考人 1点目の妊孕性に関するものの、男性と女性の違いというのは確かにあります。恐らく生命倫理的な観点での議論が必要かと思っております。女性の場合には43歳という上限があるけれども、男性の場合にはないというのが本当にそれが適切と言えるのかどうか。そこはかなり社会的な議論も必要なのではないかと考えています。

2点目のAYA期の患者さんの親御さんの就労ということに関しては、小児期のがんの患者さんの親御さんの就労というのと連動するような形になるのではないかと思います。ここの中で全てを対応するというよりも、小児期のがん対策と併せて御検討いただきたいと考えております。

○門田会長 その他にもあろうかと思うのですが、時間が押していますので次に移ります。本日のお話を伺うと、非常に重要なポイントであることだけは間違いない。そしてやらなければならない問題点もいろいろあるのも分かる。ただし、それはマンパワーとして、そういうスキルのある人が欲しいのか、施設が欲しいのか、ネットワークが欲しいのかという辺りが、これから先どう考えていくかということです。それから、AYAという問題として班を立ち上げてやったので、AYA中心に考えると、AYAを中心にした考え方ができるのですけれども、隣に小児がんがあり、あるいはがん拠点があり、あるいはまたネットワークというのか、地域連携があったりという形で、全体でどうするのかということが、我々とすればそういう見方が必要かという感じを受けました。どうもありがとうございました。

 次にまいります。高齢者の対策です。本日は長島参考人と小川参考人に来ていただいています。まず最初に小川参考人から説明をしていただき、2人の参考人が終わってから質疑をしたいと思います。それでは、長島参考人お願いいたします。

○長島参考人 杏林大学の長島です。よろしくお願いいたします。私のほうは認知症を除いたというところで2枚目のほう、「今後のがん対策の方向性について」からです。高齢者に関連するところを私が抜粋しますと、この6項目になります。6については、次の小川先生のほうからですので、5項目について、私の研究班で検討した内容について、現状について共有させていただければと思います。

 最初に、全体を通じて是非共有いただきたいのは、高齢者の多様性の大きさということです。これは生命表を基に作成した年齢・全身状態別余命データですが、例えばこの左側、男性の85歳のところを見ていただくと、青のバーは比較的元気な85歳で、あと9年ぐらい生きられるのではないか。一方、状態の悪そうな85歳、つまり、緑のバーですが、これは3年弱と見積もることが可能です。しかも状態の悪い70歳と健康的な85歳では余命が同じくらいなのかもしれないという、そんなことも伺えます。このように、歴年齢は1つの尺度ではありますが、多様性を適切に評価することが、高齢者の医療において非常に重要である。そのように考えております。まず、高齢者に適した治療法の確立、臨床研究という、私が主に担当しました研究班では、これをやっております。

 次のスライドは、平成26年度のがん対策推進総合研究事業のうち、課題名に「高齢」が含まれるものをピックアップしたものです。ここ数年で高齢者を対象とした臨床研究が展開されるようになり、各がん種における標準治療に関連するエビデンスは蓄積されていくことが期待されます。一方、いわゆる脆弱な高齢者はこれらの臨床研究の対象外になることも多く、その研究方法論についても議論の多いところです。世界的に見ても確立しているものではありませんので、私のほうではこの臨床研究の方法論・標準化といったものを担当させていただきました。

 次のスライドですが、臨床研究エビデンスをどうやって一般化するのかという、現状です。まず高齢者の臨床研究についていろいろな分野の研究者で議論を行いまして、ある程度の考え方については共有ができたので、JCOGで研究ポリシーとしてちょうど今年の6月に作成し、公開をしたところです。ただ、先ほども申しましたように、どちらかというと元気な高齢者に対して得られたエビデンスや結果を、より一般的な対象である脆弱な高齢者へどのように一般化できるのかといったことは、まだまだこれからの課題というところです。

 そして、「治療の目的は予後の延長のみではない」とここに記載はいたしましたが、通常は当然治療の目的としては予後の延長、つまり延命が重視されるわけですけれども、高齢者においてはQOLの維持に重きを置いた目標設定が行われることもあり得ます。例えば、寝たきりにならないような治療法がいいとか、あるいは認知機能障害が進まない治療といったものは、非高齢者に比べれば重視される傾向が出てきます。

 現時点でのエビデンスを取りまとめる作業も重要ですので、臨床腫瘍学会のほうで、「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」の作成を開始したところです。これには、癌治療学会と老年医学会の協力は不可欠ですので、相談をしながら今進めているところです。また、現状のエビデンスのみでは解決しない現場の混乱も多いと予想されますので、海外のガイドラインも参考にしながら、「高齢者のがん治療の考え方」についても作成を始めた、そういったところになります。

 次に「高齢者総合的機能評価」とありますが、高齢者の多様性を評価する方法として期待されているのが、この高齢者総合的機能評価、Comprehensive Geriatric Assessment(CGA)です。老年医学においてはこの考え方が広く共有されており、実地診療でも活用されているという状況です。このCGAが、がん領域においても非常に活用が期待されており、通常の診療では気付かないリスクの発見や、あるいは有害転帰の予測、予後予測といったような利用法が提案されている、そういったところでございます。

 次に、このSIOGという写真付きのものですが、国際老年腫瘍学会のコンセンサスとして2014年に出ている項目です。CGAにおいて評価すべきものとしては身体機能、それから併存症、認知機能、抑うつなどの精神機能、ソーシャルサポートですとか、栄養、老年症候群といったこれらを評価することが、既に推奨されています。

 一方、本邦では一部の腫瘍担当医がこの考え方を理解しているかもしれないのですが、まだまだ一般的にこのアセスメントが広く行われているといった状況ではありません。ただ、例えばDPCではこのADLというものを記録するようにということになってはいるのです。今のところが、実際に臨床研究をどうやって展開して、標準治療を確立して、一般化するかといった視点のお話です。

 続きまして、データベースとか情報提供の在り方、意思決定支援等々は、これからの課題と我々も考えておりまして、国の政策とも直結する内容であるため、いろいろな形で工夫が必要だとは考えています。今回は、意思決定を行うための情報提供といった意味で、データベースを活用する取組を1つ紹介させていただきます。これは、参考までにNCCNのガイドラインから、高齢者における治療法決定のプロセスといったものを抜粋したものです。余命を考慮して、患者さんの意思決定能力を評価する。続いて、患者さんの治療目標と価値観の確認を行う。その上で、リスクアセスメントを行って、それに応じて標準治療なのか、減量治療なのか、対症療法なのかといったような提案をするといった流れになっております。

 「意思決定のための情報へ」ということで、クオリティーインディケーターというものがございますので、高齢者においても標準治療は実施されているのかといった切り口で、少しデータを集めているところです。実際にほかの患者さん、つまり80歳ぐらいの患者さんがどのような治療を受けていらっしゃるのかとか、あるいは減量治療なら可能なのかというのを広範囲にまず見てみようと、そういった取組です。院内がん登録とDPC/レセプトデータから全国規模、地域ごとの診療実態の把握ということでデータを集めてみました。これら診療情報の精度が向上すれば、実際地域ごとの医療政策にも応用可能なのかなと考えています。

 次のスライドに、院内がん登録とDPCを組み合わせることで、どのような患者さんに、どのような治療がなされたか。例えば、ステージIVで、新しく治療を受けた胃がんの患者さんに標準的な化学療法が受けられているのかといったことが把握できると、そういったことです。具体的にはQIと胃がんと書いてありますけれども、これは切除不能胃がんの患者さんの抗がん剤治療の内容です。実際には、このフッ化ピリミジンとプラチナ系の薬剤を組み合わせることが広く行われているわけですが、70歳代ぐらいまでは67割の頻度で標準治療が行われている。ただ、75歳を超えると、この化学療法の実施率が減少しているといったことが把握できます。

 一方、同じステージIVの胃がんの患者さんに対して、薬種別に細かく見ますと、つまり、どのような薬剤を具体的に用いたかといったデータになります。一番上の青の線が、化学療法を実施した割合。標準治療は先ほども言いましたように、S-1、シスプラチンの併用療法になります。この矢印、赤で示したように、74歳を超える辺りからシスプラチンの実施頻度というか、使用頻度は急下降しているような、そんな印象です。一方、S-180歳以降下がってくるといったような印象です。ここに示したデータはあくまでも抗がん剤治療のみのデータになりますが、例えば手術の場合ですとか、緩和医療のデータ等も同様に調整できますし、地域ごとのデータやコストのデータといったことも今後検討は可能になってくるのかなと理解しております。

 最後に、医療と介護の連携といった話題です。これは地域や担当者によって様々な工夫があるのかと最近は理解しております。私のほうから、東京都多摩地区でのアカデミアの取組を紹介させていただきます。これは私の所属している杏林大学が、地域において高齢者のがんを意識して取り組んでいるといった内容で、栄養と運動です。それと専門指導を組み合わせることで何かできないかといった、そんな立場です。まず、地域包括ケアにおける摂食嚥下・栄養支援というのは、ちょうどAMEDの長寿班の菊谷先生のところと、私のほうで、ここでクロスする場を用意して、やはり老年医学とがんの領域、これをうまく組み合わせるということは非常に重要だと考えております。あと、地域の基盤整備という視点では、行政がどのように街づくりを考えているのか。多くのキャンサーサバイバーが高齢者でもありますので、街づくりの過程で連携のきっかけをということで取り組み始めたところです。

 次の写真の出ている図ですが、これは教育という点で私が追加した内容になります。国際老年腫瘍学会というところでは、やはり腫瘍医と老年医学の医者がクロストークをするということを非常に強調しております。各国において、腫瘍医と老年医とが協働して、診療および研究に取り組むきっかけになるようにということで、このアドバンストコースというのが設けられています。例えば、フランスでも卒前卒後教育から始めて、この高齢者の問題に取組を始めて、やはり15年ぐらい制度を工夫するまで掛かったというように聞いておりますので、本邦でどのような工夫を展開するかというのは非常に重要なところだと思っております。

 最後の資料ですが、特に取組が必要なものとして3つほど挙げさせてもらいました。まず、一番現実的な話として、多様性評価の考え方を診療にしっかり組み込むということです。まだまだこれを組み込んだ診療や臨床研究が必要ではありますが、意思決定支援につながる、そういった医療情報が少しずつ出てくるのかというのがまず1つです。

2番目としては、やはり医療者。これは医師だけではなくて医療者、介護者も含むと思いますが、腫瘍学と老年医学、これは老年医学だけか、一般内科なのかということは議論があると思いますが、しっかりした教育と啓発が必要だろうと。地域という意味では、患者さん本人・家族への老いることと死ぬことといったことの教育といいますか、そういったことを共有することも非常に重要と感じております。

 そして社会として地域にマッチした体制基盤を作っていかなければいけない。これは医療・介護・居宅の、あえて私が「見える化」と書いたのは、ICTをいろいろと活用するということもあります。ICTで済まないことも高齢者の場合は多いので、そこを工夫する。その際には恐らく医療・介護、それから民間といいますか、タスク/リソースのシフトもやはりいろいろ工夫して、柔軟な対応が必要と考えている次第です。以上になります。

○門田会長 ありがとうございました。それでは、引き続き小川参考人のほうからお願いいたします。

○小川参考人 よろしくお願いいたします。資料7に基づいて説明させていただきます。国立がん研究センター東病院の小川と申します。私のほうは、長島先生に引き続きまして、特に高齢者の中でも施策として関連する認知症とがんについて、御報告をさせていただきます。資料71枚目の下のところで、今回話させていただく内容は、まず高齢化とがんです。その次に、認知症について簡単に触れさせていただいた後に、がん治療において特に認知症がどのような問題になるのか。一番の問題は、この認知症の方の意思決定をどうするか。この御本人の権利を守るということと、その最適な治療というところが一番の課題になるのですが、それを中心にお話をさせていただいて、最後また、課題というところまでつなげていきたいと思います。

 資料をおめくりいただき超高齢者とがんというところで、先ほどの長島先生の話と重なりますが、高齢化の中でがんの領域というのは1つ問題になってきております。高齢者のがんというのが非常に多いということで、先ほど出なかったのですが、いわゆる65歳以上を高齢者というふうに定義をした場合、こちらの1枚目の下にありますように、7割以上の方が65歳以上になる。要するに、がんと高齢者というのは、そのボリュームで見ると非常に強く関連しているというのが明らかになるかと思います。

 その中で、併存症として問題になるのが、認知症でございます。認知症は、定義としては、一度正常なレベルまで達した精神機能が、何らかの脳機能の障害によって回復不可能な形に損われた状態を総称していいます。先ほど、高齢者のがん対策というところで、資料の4に出ましたけれども、65歳以上の方の大体15%以上が認知症と推定されるということで、一般病院含めて相当の割合で既に治療の現場にいるというのが分かるかと思います。大体人数としては、462万という数字。そして認知症の診断はついていないけれども、軽度認知機能障害の方を含めると、大体1,000万人弱というのが現状です。

 次のページめくっていただき、この認知機能と、ではがんの治療、あるいは一般の診療がどのように問題になるかというのも、簡単にその認知機能の障害の程度で示させていただきました。ポイントとなりますのは、このMMSEというのは認知機能検査ですが、点が下がるにつれて重症化していくという、そういうプロセスになります。見ていただきたいのは、このMMSE2430とか、1723という、いわゆる認知症としては軽度、あるいは軽度認知機能障害という段階でも、サルコペニアとか、いわゆる筋肉量が落ちるとか、食事摂取の問題が出るとか、既にその時点で問題が生じる。要するに、認知症が重い、軽いだけではなくて、既に軽度の段階からがん治療を含め一般診療には影響を与えるということが分かってきております。

 下に行きまして、ではこのような認知症がどれぐらいいるかというと、実はなかなか正確な数字というのがありません。それは一般診療において、認知機能障害に関してアセスメントというのが十分になされていないという現状があります。その中で、こちら下に、我が国の一般病院での認知症というところで、昨年度中医協で出たデータなのですけれども、大体71とか、101の病棟においては、2割程度は少なくともいるだろうと。療養型の病床においては6割以上で認知機能障害の方がいるというのが推測されております。実際に、私もおります東病院におきましても、精神科のコンサルテーションの件数が大体年間に800件程度あるのですが、そのうちの36%ぐらいは認知機能障害が絡むというぐらい、実はがんの専門施設においてもいるということが明らかになっております。

 おめくりいただきまして、では認知症が、がんにどのような影響を与えるかというのを、主にがんの経過に合わせて、簡単にまとめてみました。まず、受診の時点で、認知症もがんも進行してから気付かれるということが多い。特に、がんにおいては進行してから見つかることが多くて、なかなか予後が厳しいというのが指摘されております。臨床において一番の問題は意思決定に関する課題でして、認知症があるからがんの治療ができないとか、あるいは認知症に気付かれずにインフォームド・コンセントが無事に取れたと思って実施されて、後で実は認知機能が怪しかったというので気付かれると、この辺りの課題が大きいかと思います。

 治療になりますと、まず最初に問題になりますのが支示療法の問題です。手術、そして抗がん治療では、この認知症の重症化というところでせん妄の問題が一番大きく出てまいります。せん妄を合併しますと、退院時に認知機能は低下し、認知症の重症化を招くというのが、一般に知られているところです。また、長島先生のところとの課題と関連しますが、治療適応の判定というのが、今の段階では治療医の個々の臨床経験に基づいて実施されていることがあり、系統立てた評価までが十分になされていないということがあります。

 緩和ケアとの関連でいきますと、療養場所の問題というのがあり、この認知症のBPSD対応とがん治療・緩和支示療法を同時に提供できる施設が非常に少ない。中には徘徊等があるということで、緩和ケア病棟の受入れを断られることがあるというのも現実にあると言われますので、こういう在宅連携含めた療養場所の課題というのもございます。それぞれについて、資料等を続けて用意させていただきました。

 まず、認知症とがん治療ということで、大腸がんの場合のデータが海外等でありますが、認知症の有る無しで、かなり6か月以内の死亡率が変わるというのは言われております。この背景は、先ほど出ました進行期での発見があるというのと、合併症が多いということ。そして、せん妄・うつ状態というのが、その中でも1つの問題として言われております。

 具体的に、この認知機能障害とがん治療で、治療が安全に進められないので、どこが問題になるかというのは、主に3点指摘されております。まず1つは、適切な意思決定ができるかどうかということ。その次に、治療のアドヒアランス、抗がん剤等ではレジメンにのっとった服薬等が必要になるのですが、服薬管理等が難しいというのがあります。3点目は、有害事象の管理ということです。特に抗がん剤の場合には熱発とか、下痢とかの管理が重要なのですけれども、御本人自身がそれを適切に伝えることができない。また、がんの治療全体を通して緩和ケアとの関連でいきますと、痛みを適切に御本人が伝えることができないので、放置される結果、ADLを落とすということも言われております。これだけ問題があるのですけれども、認知機能が十分にアセスメントされていないので、かなりの割合で見落とされているというのも現実にございます。

 では、高齢の認知機能障害を含めたがん患者の意思決定支援はどうあるべきかというところで、先ほど長島先生のにもありましたNCCNのガイドラインより、その支援のプロセスをこちらの図で示させていただきました。ポイントとなるのは、治療のアセスメントと合わせて、御本人がこの治療をしっかりと理解して、そして今後の見通しを立てた上で、治療選択ができるかどうかというのを、一点確実に把握をして、それが難しい場合には、その意思決定のサポートを行いながら進めるというところが、特に強調される点かと思います。

 おめくりいただきまして、ではそのプロセスの中で、特に障害されている場合には何をしたらいいのかというのも、ある程度この辺のつくりというのは見えてきております。特に、認知機能障害では、いわゆる記憶障害、覚えられないというのもあるのですが、より現場で問題になるのは、実行機能障害というものです。例えば、治療の選択肢を並べて、総合的に比較をするとか、あるいは今後どうなっていくのか、見通しを考えるという力自身が落ちる場合がありますので、ここをしっかりとサポーターが伝えて、御本人の理解を得た上で治療に入るということが、療養生活をする上でも重要になってまいります。

 現実には、この意思決定が十分にできていない事情があります。まず1つは、こちら下に書かせていただきましたように、認知症と診断がつくと、認知症に関するまだ誤解もありまして、もう何も分からないだろうというふうに判断されて、家族と医療者のみで治療は決められてしまうという、そういう倫理的な問題があります。また、もう1つ見落としている点でいきますと、認知症と気付かれずに治療に入ってしまって、後でセルフケア能力がかなりがん治療の場合求められるのですけれども、それができないということで、訪問看護を含めてどうサポートするかというのが、結構課題となって上がってくるという場合があります。

 多くありますのがせん妄を合併して、在宅療養が難しい。特に、家族が介護する在宅ですと、せん妄で昼夜逆転が生じると、2晩続くと家族が疲弊するというのは、在宅療養が続かない三大要因の1つとして言われております。また、がんの治療では食事の摂取とか、栄養のサポートというのも重要なのですけれども、認知症に伴うアパシー、意欲低下で容易に陥る。また、経口抗がん剤の内服の管理とか、特にストーマ等がこの辺りのリスクが高いところです。

 認知症が治療に及ぼす影響というのを、最後簡単に図でまとめておきました。まず、認知症では認知機能障害がメインになるのですけれども、せん妄の問題。そして併せて、がん治療では身体管理が重要になります。セルフケア能力をしっかりと確認しつつ、治療に入るということと、入院中に身体機能を落とさない。そして疼痛コントロールをしっかりしてADLを維持するというところは、ポイントです。また、退院支援も重要になります。認知症というのは、やはり退院、移行時のリスクが非常に高いというのも知られております。この辺りでケアの断絶を防ぐための工夫というのも必要なのですが、現場ではなかなか急性期の病院がまだ対応できてないという現状もあります。

 家族に関する負担も認知症では同じように重要になりますので、1点挙げさせていただきました。まず、家族はほとんど認知症についても、がんの治療についても十分に知らないまま、この意思決定を迫られる。特に、認知症の場合は御本人に代わって、合意とか様々な決定を求められるというのが、慣習で行われておりますが、これは非常に家族に対して苦痛を強いるというのも言われております。この辺りの家族の意思決定身も支えないと、なかなか家族への総合的なケアが難しいというのは明らかになっております。

 このようにいろいろ課題はあるのですけれども、では急性期の病院において認知症対応はどうなっているかというのも、私どもが主に厚生科研で、認知症関連のところで全国調査をしましたので、その中の一部を御紹介させていただきます。まず、急性期の病院においては、認知症に関するそもそも体制の基本となるマニュアルがどれぐらいあるかと言いますと、大体DPC施設でいきましても10%ないというのは、今の日本の現状です。では、医療安全とか連携体制で、認知機能の評価がどれぐらいなされているのかというのも、下で一部挙げさせていただきましたが、2割弱というところで、なかなか進んでいないというのも、同じように見えてきています。

 おめくりいただき、連携とか退院支援に関してもどうかといいますと、ほとんど認知症に関して、ある程度マニュアル、サポートを意識している施設というのは1割ぐらいではないか。その結果、在宅復帰が困難になる理由としても、ADLの低下とか、あるいはストーマケアのように、医学管理の問題をきっかけに在宅復帰が難しくなる事例もあるというのも見えてきています。

 問題に対して、今がんの診療連携拠点病院等で、どのような対応をしているのかと言いますと、主にコンサルテーション型の診療支援をしているチームが、認知症対応を行っているというのが現状です。主たる支援チームは、緩和ケアチームになりまして、精神症状を緩和、担当医師を中心に認知症せん妄への対応を進めておりますが、なかなかまだ標準化がなされていないというのがあります。そのほかに、せん妄対策チームとか、最近では認知症ケア加算等で、認知症ケアチーム等も出てきており、この辺りがそれぞれの施設の特徴を生かしてサポートを行っているという現状があります。

 ただ、どのチームにしてもそうなのですけれども、認知症の診療ケアに関する知識・情報不足というのが現実にあります。特に、この治療開始時の意思決定というところがほとんど気付かれずに治療に入っている例というのが、やはり多いということ。今後の臨床試験を進めていく上では、この高齢者の治療同意、そして臨床試験に対する同意能力の評価というのは、倫理的にも問題になり、かなり臨床試験と併せて、対応が重要になるかと思います。

 おめくりいただきまして、認知症施策に関しても簡単にまとめさせていただきました。まず、認知症の施策は新オレンジプランで進められており、その中で急性期の病院、がんの治療においては身体合併症等への適切な対応という中で進められております。具体的に進められている主な内容に関しては、その下にまとめさせていただきました。1つは、今年度から始まっております認知症ケア加算の算定とか、あるいは急性期の病院の看護職員の認知症対応力向上研修等が都道府県を通して今年度から開催が徐々に進められている状況です。また、昨年度には一般医療機関において、体の病気を持ちながらの認知症対応についての院内体制の整備規定等も、老健事業で出されており、この辺りが公開され、利用され始めたというような段階です。

 具体的にこのような中で求められている、このがんの治療を含めた急性期病院における認知症対応についても課題は挙げさせていただきました。まずポイントはがんの治療においては認知症の見落としを防ぐということ、そして入院の治療中においてはせん妄の対応、そして身体機能を落とさないための栄養管理とか痛み等、特にこの急性期に特化した管理、そして退院支援というポイントにしぼられております。重要なことは、圧倒的に数が多いということもありますので、個々人の臨床技術ではなくて、施設としてシステムとして構築していくことが重要です。特に、アカデミア等でなくて、まず一般の拠点病院で、どの施設でも提供できるようにするということが急務かと思います。そのために、これは1つの取組の事例なのですが、入院中のせん妄へのマネジメントプログラム等も今現在少しずつ進められておりますので、参考までに挙げさせていただきました。

 最後に「課題の解決に向けて」というところで、この対応について簡単に紹介させていただきたいと思います。まず重要なのは、認知症、特に治療中に関するせん妄の問題とか、様々な身体機能を落とすリスクになるということについて、早く普及・啓発等が必要であるということ。特に、がんの医療においては治療開始時の意思決定の問題です。治療の差し控えというところと、逆に負荷がかかるというところと両面がありますので、適切な意思決定につなげるための、どの拠点病院でも使えるようなプログラム開発と標準化というのは必要かと思います。ガイドライン等という話もありましたけれども、かなり現場としては緊急の課題であり、手引等、すぐ使える、そういう簡便な方法が必要かと思います。実際に意思決定能力の評価等は、ある程度その標準化がなされておりますので、やはりその啓発というのは重要かと思います。また、治療中のせん妄とか、認知症に関する基本的な身体管理に関してはかなり要点がまとまってきておりますので、そういうのもプログラムとして提供する。あるいは、すぐ使える体制というのも、普及・啓発と併せて必要かと思います。

 より詳しくいくためには、先ほど長島先生が触れられましたように、高齢者のレジストリー等を含めて、実際に認知機能障害がどれぐらいのリスク因子になるのか等を見るような、大規模な観察研究等も必要かとは思います。最終的には、この高齢化のインパクトというのは既に今年度から始まっておりますので、2025年度までに少なくとも全国のがん診療連携拠点病院で、最低限のこのプログラムの提供ができるようになることが目標になるのかと考えております。以上になります。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。それでは、今からお二方に対する御質問あるいはコメントをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。若尾委員、どうぞ。

○若尾委員 長島参考人にお尋ねしたいのですが、報告していただいた文書の中に「高齢者」という言葉がたくさん出てくるのです。先ほど小川参考人は、高齢者は一応65歳で定義した場合ということで認知症とがんのお話をしてくださいましたが、一般的ながんの臨床の場において「高齢者」という言葉はとてもファジーなのです、がん種によって高齢者の扱いは違ってきますので。ここの、先生が報告してくださった中での高齢者の定義をお聞きしたいということと。それから、最後の「取組が特に必要な課題」の中には「高齢者」という言葉が一言も入っていなくてすごく安心したのですが、腫瘍医と老年医の連携というか、そういった形でがんと高齢者の取組を考えていただけるとすごくいいなと思うのですが、その辺に関するコメントをちょっとお願いします。

○長島参考人 まず高齢者の定義についてですが、実際の診療においては、がん腫、治療のモダリティ、つまり、例えば手術を対象にするのか抗がん剤にするのかということでも全然違うということがあります。ですので、例えば行政上は65歳とか、後期高齢者は75歳とか、そういった、区画上はいろいろありますが、実際の診療では、抗がん剤の先生は75歳以上だろうとか、食道がんの手術は80歳でもやれるとか、それはいろいろな考えがありますので、一概にはなかなか定義をしづらいというのがございます。それで、高齢者という言葉も大事なのですが、あくまでも暦年齢としての尺度の1つと考えて、いろいろな多様性を加味してその脆弱性を評価する、多様性を評価するというような考え方かなとは理解しているところです。

 それから、取組ということで腫瘍学と老年医学がうまく結び付くといいなというのは、やはり腫瘍学が高齢者のいろいろな多様性といったことに着目した、今までのトレーニングですとか、そういったことが基本的にはないのです。それから、老年医学の考え方自体が老年医学以外の、例えば循環器内科とか呼吸器内科など他の診療領域においても必ずしも一般的ではないのではというのがございますので、そこは工夫が必要なところだろうとは思っています。

○門田会長 よろしいですか。

○若尾委員 ちょっといいですか。

○門田会長 はい。

○若尾委員 一般としますと、高齢者という言葉自体にすごく戸惑ったりするのです。個人的な場合、私はリンパ芽球性のリンパ腫になったわけですが、ここで移植をするときには既に高齢者という部門に入り、治療が限られたりするわけです。どちらかというと高齢化とがんはリンクしていきますので年を取れば取るほどがんになるわけですが、「あなたは高齢者ですから」というような言葉遣いをがん領域でされてしまうと、では実際、何歳から高齢者なんですかというような問題が発生しやすくなるので、年金などの場合と違ってがん領域で高齢者という言葉を使うこと自体に一般として少し疑問を感じます。その辺、研究をなさる先生方においてもちょっと片隅に入れて言葉の使い方の工夫をしていただきたいと思うところです。

○門田会長 よろしくお願いします。では田中委員、それから桜井委員、順番にお願いします。

○田中委員 今年、非常に高額な抗がん剤が登場したことがいろいろな所で取り上げられて、1年に3,500万円ぐらいかかって何箇月か延命するというような薬ですが、それをみんなに使ったら、とてもじゃないけど医療保険がもたないじゃないかということが問題になりました。そういうことはとても無視できない話であって、超高齢の人にそういう薬を、みんなに使っていいのか、そうすると結局、全体でお金が足りなくなって必要な治療ができなくなってしまうではないかということは、やはり考えていかなければいけないと思います。そういう高額な治療が出てくれば出てくるほど、高齢者の治療はどうあるべきかということは考えなければいけないと思っています。

 長島先生にお聞きしたいのは、スライドの13番の所に、75歳以上になると化学療法の実施率が低下するというデータがあります、これはどういう事情によるものかということと、こういったものを基に高齢者に対する化学療法について、治療を始めるか始めないかといったことに関して何か指針のようなものを作ることができるのかどうかということを教えていただけるでしょうか。

○長島参考人 まず、スライド13についてです。確かに実際の治療内容の頻度が減っているという、この事実がまず集まったということで、この原因というか、実際、どういう患者さんで併存症がどうであるとか、そういった情報にまではまだ結び付けることができていない状況です。というのは当然、こういった患者さんの生存期間とか、どんな状態の患者さんであるかということが仮にビッグデータ等から分かれば非常に有意義な話になるのですが、現状ではまだそこまで結び付けることができていないので、実際にはよく分かりません。

 ただ、実際の診療で考えてみますと、80歳ぐらいになると腎臓の機能が低下したり、やはり全身状態が悪化してくることが多いですので、例えばシスプラチンという薬は使いにくいし、使わないだろうとか、あるいはTS-1であれば何とかやっていけるだろうといったように、治療強度を弱めて対応しているのが実際なのだろうということは、何となく類推することはできると思います。そういった情報をどういった形で集めて、ある程度、どのぐらいのレベルで集めた時点で指針なりガイド、エビデンスと表現し得るのか分かりませんが、そういった、実際の診療がどのように行われているかといった情報はかなり診療の参考になるとは思っております。

○門田会長 よろしいですか。では桜井委員、どうぞ。

○桜井委員 2点ほどあります。

1点目は長島参考人に、あと、中川委員にもお聞きしたいです。意見書にも書いてあるのですが、高齢者に対しては、QOLの観点から手術よりも放射線療法のほうが良いケースとか、そういうところの臨床研究等々はあるのでしょうか。もちろんこの人材育成という部分は、私たちがん患者は放射線科医あるいは病理医等の増加を非常に願っているところですが、高齢者向けの医療に関してもどうなのかというところをお聞きしたいと思います。

2点目は小川参考人にです。この老健局の報告書は私も読ませていただいたのですが、例えば療養とか退院支援に関するマニュアルのようなものを、プログラムと同時にこういうマニュアルも整備していくことで、ロコモの問題とかアドヒアランスの問題、身体拘束の問題等々が解決されるのでしょうか?、その点についてお聞きしたいと思います。以上です。

○長島参考人 私のほうはQOLと手術 VS radiationという話をします。

 例えば肺がんの早期のステージ1ぐらいですと、当然、手術して治療するということが広く行われていますが、やはり高齢になりますと手術はやめておこうかということで、照射にしようということで実際に診療が行われているといったような先ほどのQIの切り口でのデータも、今日はお見せしておりませんがそういったデータもあります。それから、すごく弱々しい方を対象にした肺がんで、例えば、どういった治療がいいのか、通常は手術を行う疾患ですが放射線の効果をみるといった臨床研究も展開されております。

○門田会長 では小川参考人、どうぞ。

○小川参考人 この辺り、こちらにもありますように、マニュアルというのは本当に最初の一歩というところですね。現在、なぜこの辺りがうまくいかないのかと言うと、1つは、まず急性期の病院において認知症に関する知識が十分に入っていないということ、その上ですので、当然、まずシステムも何もないというところなのです。ですので、まずマニュアルを整備して、そして、院内でどういう情報を共有したらいいのかとか、その辺の恐らく、プログラムというのでしょうか、実際に動くものを、特にシンプルなものを1つ提供して、そして臨床現場の行動変容を図る、多分そこのシンプルな介入が必要だろうと思っております。ありがとうございます。

○門田会長 では中川委員、お願いします。

○中川委員 例えば前立腺がんではごく粗い、ガイドライン的に言うと、75歳以上は手術より放射線というように一般的に言われています。ただ、da Vinci手術のようなものが普及してくるとまた変わってきますし、実際に肺がんの手術のガイドラインも以前70歳だったのが75歳になったり、当然、その治療技術とともに変わってきます。ただ、一般論としては、放射線治療は高齢者に向いていると考えております。実際に、若干治療強度は落としますが、化学療法の部分ですね、化学放射線治療の場合の化学療法のドーズは落としますが、それでも若年者と余り大きな違いはないという論文が多数出ています。そういう意味では放射線治療に着目する1つかなという気はいたします。

 もう1つ、認知症との関連においては冒頭で申し上げた認知症。例えば小川参考人のお話の主なテーマは認知症ががん治療に与える影響だったのですが、そのがん治療が認知症に与える影響も大変大きいです。そういう意味で、田中委員から前回御質問があった治療の差し控えということも少し考えたのですが、これは大変大きな問題で、そもそも、寿命というものにどのような価値を置くのかという根源的なものを含めてそうそう簡単には解決しないもので、多分、ここの議論だけでは済まないような気もいたします。

○門田会長 それでは川本委員、どうぞ。

○川本委員 認知症とがんにつきまして小川参考人から、正に、本当に、現状というか、急性期病院の現状をまとめて御説明いただきまして、本当にありがとうございました。病棟ケアのマネジメントをほとんど担っておりますのは主に看護職でして、急性期病院の認知症の問題は切実になってきております。3月の協議会におきましても意見書を提出させていただいたところですが、特に夜勤のときのトラブルも多く、医療安全の観点からも有害事象が発生するリスクが見られております。そういった場合には、どうしても抑制をせざるを得ないということで、看護職自身も倫理上のジレンマを抱えております。是非、施設とシステムとして提供していくべきだというように御提案いただきましたが、そのように進めていただきたいと思います。今回、診療報酬で認知症ケア加算を付けていただいたのですが、なかなか研修がニーズに追いついていないような状況でして、急ぎ、これからも対応していただきたいと考えております。また、この問題につきましては、是非、今後も検討を続けていただきたいというようにお願いしたいと思います。以上です。

○門田会長 それでは山口委員、馬上委員。

○山口委員 高齢者に対するがん治療は、検診も含めて非常に大きな課題です。加速化プランのときにもこのテーマは確か上がったと思うのですが、余りにも問題が大きいから次の機会にというような対応をしたのだと思うのです。私が委員になる以前からもこれは非常に大きな問題になっていたということは承知しております。実際に静岡がんセンターで全診療科に高齢者、特に75歳以上の診療をどうするのかを問うて、マニュアルというわけではありませんが情報共有しているのですが、結論的には、今日皆さんがおっしゃったようにケース・バイ・ケース、病気によってすべて違うと。中川先生がおっしゃったように、ほぼ同等の治療効果が上げられるQOLの良い治療があれば、当然そちらを選ぶことになります。また、100歳でも積極的な治療を実施している診療科もありますし、一方で、高齢者には実施不可能な治療があることも事実で、皆さんも重々御承知のとおりだとは思います。

 そういう中で何が一番欠けているかというと、まずは、75歳以上は、多くの場合、臨床試験の被験者になっていないので、エビデンスがほとんどありません。だから、医師の裁量で75歳以下のエビデンスを意識しながら治療を進める。結果的には、外科医は、迷ったら最後はFファクターで決めると言います。Ffaceで、その治療をやるかどうか、顔つきで決めると。その世界がここには十分に残っていますので、推進協議会として高齢者のがん対策をどう考えるかというのは非常に大きな問題で、難しいだろうなと思います。ただ、今日、お二人の先生方、それぞれに課題は挙げていただいているのですが、この課題を協議会の結論というわけにもいかないので、今、何が一番必要か、あるいは、協議会として、国の施策として具体的に何をやるべきかというのを1つ、2つ教えていただけると有り難いと思います。

○長島参考人 では私からまず。正に山口先生が言われたとおりでして、私のほうで最後に示したスライドにそこは一応盛り込んでおります。

 やはり年齢だけではない。つまり、高齢者という言葉は先ほどもどうなのかという、正にそこでして、65歳ぐらいでも脆弱な方はいろいろいらっしゃいます。身体的、精神的、社会的に脆弱という、そういう意味になります。ですので、弱々しい対象、つまり、標準治療が受けられないような弱々しい方を対象とした政策かなと思っております。ですので、それをまず評価する。実地診療でFファクターでやっている面も多いのかもしれませんが、やはりきちんとした、確立した手技にのっとって多様性を評価する。これは老年医学のCGAということで実際に診療加算も入院時には、少ないようですが取れます。ですから、がん診療においてもそういったことを広く行うという意識がまず第一歩かと思います。そして比較的元気な方が対象かもしれませんが75歳以上で非高齢者で確立している標準治療が本当にできそうなのか、あるいは無理そうなのかというエビデンスをまず作るということが少しずつ動いているという、そういうところです。それともう1つ、医療者側の教育といいますか、老年医学というようなアプローチがあることを広く認識していただくための教育、それから、地域でそういった理解を得るための啓発、そういったことも大事かなと考えております。

○小川参考人 2点ほど言ってみますと、まず臨床においては、認知症の意思決定という所に非常に絡むというところを含めた、まずこの基本的な研修。本当に簡単なプログラムでいいと思うのですが、これだけは押さえておきたいというようなところを拠点病院でも早く普及させるというのが1点かなと思います。

 もう1つは、もう少し研究と具体的なエビデンスを介していけるところでいけば、長島先生も触れられたのですが、高齢者はなかなか背景が多様ですので臨床試験は組みにくい。そういう中でいけば、高齢者の数からいけば数施設でもいいのですが、実際にどんな経過をたどるのかみたいにこういうレジストリーを構築して、その中で、例えば擬似的な比較であったりとか、支持療法の効果とかが推測できればいいのではないかと思います。実際に高齢者というのは、統計を含めてまずないとか。高齢者のがん治療でいくと、実は多重がんの問題が非常に多いのですが、全くデータがないという中でほとんど手探りで動いていますので、そこの何らかの指針が1つ出てくれば現場は随分変わるのではないかと思っています。ありがとうございます。

○門田会長 では馬上委員にいきます。

○馬上委員 長島先生と小川先生にお伺いしたいのは、患者家族の支援の観点についてどのような御意見をお持ちかということなのです。私の年齢ですと、親御さんをがんで看取られた方が非常に多くいらっしゃいます。お話を伺っていますと、遠方で毎日、往復4時間掛けて介護をされている方とか、又はお仕事を休まなくてはいけない方とか、あと、疾病科がなくて転院したけれども、元の病院と今の病院との連絡が悪くてカルテのやり取りなどもないので、自分でカルテを取りにいってまた渡したりとか、あとはケアマネージャーさんとの調整です。在宅医療についても、そういった調整を全部患者家族が担っている。そしてまた、意思決定の問題で患者さん自身に意思決定ができない場合は、患者家族が意思決定をしなければならない。そういったことに関しての支援に関してはどのようにお考えかということをお伺いしたいです。

○長島参考人 意思決定に関しましては、ちょうど小川先生にも御協力いただいて、法的な基盤といいますか、代諾の話ですとか、そういったことがまだ日本では整っていないということもありますので、まずは臨床試験における同意についてはといったところから勉強会を始めようかと、考えてはじめたところです。ただ、実際の診療の現場では御家族の負担もかなり大きいことは容易に予想できますし、なるべく多くの、多職種によるお話をする場を工夫するということから始めるのかなとは思っています。やはりそれは、比較的首都圏と地方では医療リソースが、あるいはいろいろなリソースの違いがありますので、そこは本当に工夫次第かなというところです。

○小川参考人 幾つか課題を頂いた感じかと思うのですが、まず家族の負担というところでいけば、先ほどもチラッと触れたのですが、実は、がんと認知症を両方持った方になると療養場所がかなり限られているというのが現実にあります。これは、拠点病院の中でもある程度認知症に対応する、これは具体的にいけば総合病院の精神科医と神経内科医になるのですが、それがまだ十分に拠点病院にいないということと、もう1つは、療養先になると緩和ケア病棟とか地域の一般病院になるのですが、その時点では今度、その辺の対応は両方が難しいという。そこの時点でかなり制限されたり、受入れの問題が出ているというのがあります。これに関しては恐らく、1つは地域に向けた、これは認知症もそうですし、がんに関しても緩和ケアという所になるかと思うのですが、その基本的な技術を伝えるというところが最初の一歩かと思いますし、拠点病院ができるものとすれば、恐らく、緩和ケアチームを中心としたアウトリーチとか、地域に向けた啓発になるかと思います。

 このときに医療だけではなくて、御指摘のように、多分、介護を含めて。具体的にはケアマネの知識と技術になると思うのですが、これも実は、両方、なかなか難しい状況です。がんに関しての軽快についてケアマネージャーがまだ十分把握していないということと、認知症が絡んだときに、いわゆる家での認知症のケアに関してはある程度知識が普及しているのですが、体の問題にどう影響を与えるのかというのが、実はほとんど知られていないのです。認知症のケアは家での過ごし方などと言われているのですが、実は基本的な、ADLを保つ方法とかを知らなかったとかで、かえってそちらのほうで悪影響を及ぼすことがありますので、やはり、そこも1つケアの提供で重要かと思います。

3点目の意思決定に関していきますと、これはケースマネージメントというところになるのですが、医療者と介護をしている者と家族とで最終的に決めていくという。御本人の意思を推定しながらというところも重要なのですが、そういう意思決定、特にベストインタレスト等についてはまだ十分な知識が現場にないというのが課題かと思っています。

 これに関しては1つ難しい事例、日本でいきますと家族の問題があります。具体的には家族がいないということと、もう1つは家族のネグレクトというのがあって。そのときに最適な意思決定をどうするかというと、多分ある程度、病院の中でいけば臨床倫理委員会みたいな少し医療者の、特に医師と現場の看護師だけでは負担が多過ぎる場面が起きるので、それへの対応というのと、もう1つは、御本人が意思決定が難しい場合の意思の代諾、そこの制度の整備が重要になるかと思います。先ほど出ましたが、日本ではこの医療、特に体とか生命に関しての代理というのをどうするのかというのが実は余り厳密に定められていなくて。家族が慣習として同意をしているのですが、あれは何らかの根拠がない中でしていますので、やはり、そこをある程度きちんとさせていくというのが必要になってくるところかと思っています。ありがとうございます。

○馬上委員 もう1点だけ、長島先生に18ページの「本人・家族(中高生を含む)へ『老死』を含む教育」という所です。こちらは、今、がん教育というのが始まっているのですが、そちらで、命には限りがあるとか、そういった教育をしていくというような形をお考えでしょうか?

○長島参考人 はい、正に医療者だけの問題ではないということと、家族がどのように考えているのか、御本人がどのように考えているのか、これは当然、様々であるわけなのですが。生老病死のうち、生まれることと病気についてはいろいろな情報もあるかもしれませんが、老いることと死ぬことを自分のものとして、あるいは身近なものとして実際に受け入れられるのか、もちろん受け入れられなくてもいいのですが。やはり、そういった場がないとなかなか多死社会をどのように作っていくのかの議論が始まらないのかと、あくまでもそういった意味合いです。

○門田会長 では秋山委員。これで最後にしたいと思います。

○秋山委員 私は、在宅の看護の立場から少し意見を述べさせていただきたいと思います。認知症とがんと、両方合わさった方はどこへも行きようがなくて、在宅でお世話をさせていただくことがたくさんあります。そういう、在宅と言っても自宅のみではなく、在宅に近い様々な、例えば宮崎の「かあさんの家」とか、そういう、一緒に住むというか、グループリビングとか、そういう形でもがんと認知症の方を看取りのところまでお世話をさせていただいているというところです。

 そこの1つの問題は、そこにうまくつながってくるところの退院調整支援のところでなかなか、がんの治療病院というか、拠点病院等との連携が、在宅に戻すということよりもどこかの施設へ転所という例などが多くて、しかもその施設がなかなか受け取らないので、結果としては在宅につながってくるとか、そのように遠回りをしてきて、逆に非常にこじれた状態でお引き受けするというようなことがたくさんあります。実はおうちに帰ったほうがずっとせん妄も落ち着きまして穏やかな経過をたどることもたくさんありますし、そういった在宅での仕組みと急性期の病院とのつなぎをしっかりして、そこで、御家族がいらっしゃる、いらっしゃらないに関係なくその方の意思決定をどうするかを地域を巻き込んで、やはりネットワークを作りながら対応していくということが本当に必要な時代ではないのかなと考えます。

○門田会長 たくさん御意見を頂きました。皆さんの関心の高い、高齢者、がん医療をどのように考えるかというのは一番重要なことで、山口委員からも中川委員からも、そろそろ、真剣に考える時期が来ているというような意見を出していただきました。確かヨーロッパなどの考え方と日本とでは大きく、これは遅れていると言っていいのか、どのように表現すべきか分かりませんが、我々がディスカッションを少し避けてきているというような感じがいたしますので、できるだけこれについては、ある程度意見交換をしっかりしてやっていけたらと思います。先送り、先送りというテーマではなくなっているというような感じがいたします。

 今日は3時間の予定でスタートしていまして、ここで5分間休憩を取りたいと思います。よろしくお願いします。

                                     ( 休憩)

○門田会長 よろしいでしょうか。それでは再開したいと思います。では次は、「がんの特性に応じたがん対策について」ということで、資料8に基づいて事務局から説明をお願いします。

○がん対策推進官 資料8、「がんの特性に応じたがん対策について」、議論の背景ということで事務局より御説明します。特性に応じたがん対策ということで、第2期のがん対策推進基本計画の中では、個別目標の中でがん医療、様々ながんに対して様々な施策を進めていくということです。

 具体的に申し上げますと、1ページに、希少がんとか、そういう難治性のがんに対してどういった支援ができるのかという内容です。今後のがん対策の方向性について、議論の中で、2つ目にあります「全てのがん患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会の構築」の中で、難治性がんに対する有効で新しい治療法の開発や、効果の期待できる治療法を組み合わせた集学的治療の開発が挙げられています。具体的に申し上げますと、膵がんや胆道がんのように、いまだ治療困難ながん等については、5年生存率も低く、患者は診断時に多大な精神的、心理的苦痛を抱え、がんと向き合うことができないことが多い。こうした難治性がんに対して、どういった対策、支援ができるかという内容です。

 現在、がんの5年生存率はどんどん良くなってきています。放射線治療、化学療法、手術療法の進歩が目覚ましく、今、62.1%といった現状ですが、1枚めくり、先ほど申し上げたように、胆嚢がんや膵臓がんについては、残念ながらまだ5年生存率が非常に低い状況があります。その次のグラフで申し上げますと、年齢調整死亡率については、肺、胃、肝臓については大きく低下をしてきているわけですが、年々年齢調整罹患率については、下がっているものが肝臓、ほかの疾患については必ずしも下がってきてはいないという現状があるわけです。こうした中で、研究分野においては、10か年戦略の中で、具体的研究事項として、ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域というものを定めて研究を進めています。

 また、次ページに、平成28年度ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトということで、文部科学省、厚生労働省、経済産業省が一体となって実用化に向けて様々な研究を行っている。この中でも、2020年頃までの達成目標として、小児がん、難治性がん、希少がんに関して、未承認薬や適応外薬を含む治療薬の実用化に向けた治験への導出ですとか、薬事承認、効能追加に向けて目標も定めてやっていくという現状です。また、政策研究事業の中でも、希少がん対策に関する研究ということで進めている現状です。更に、がん対策加速化プランにおいても、実施すべき具体策の中で、研究・治療の中で希少がんを立ててそういう対応を進めているところです。

 がんの特性に応じたがん対策、加速化プランの中でも、希少がん対策について、また難治性がん対策について検討すべき事項として挙げられるところです。以上です。

○門田会長 ここでは、がんの特性に応じたという単語を使っていますが、多くは希少がん、難治性がんがずっと今、課題として上がってきていますが、それについての説明を頂いたということです。単に希少がん、難治性がんというだけではなくて、そのほかにもそれぞれ何かの特性ということがあれば出していただくということで、皆さんの御意見を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。

○桜井委員 まず最初に、難治性がんの言葉の定義が非常に曖昧であると思っています。患者の支援活動をしている中で、早期に発見できないケース、これは膵臓がんに代表されるように、ほかにも大衆がんの中にも多々あると思っています。これと同時に、高い薬剤耐性があるということです。薬を使っても全然PD、効かないケースというのは乳がんの中でもかなりあるのです。これは、机上配布の資料にも添付してありますが、5年相対生存率50%切っているがん種というのは大衆がんの中にもあります。それから早く転移していってしまうというところです。こういう3つの条件をそろえたものを私は難治性がんと考えて、その対策。要は治療の部分と早期発見の部分。特に研究、先ほど中釜委員からもありましたが、何でそういうがんができるのか、何でがんが転移するのかという、その病態解明の部分と次世代シーズの開発の部分を、是非私は進めていただきたいと思っています。そのためには、やはり国際共同治験も必要ですし、人材育成も必要です。ゲノムの解析も必要。それから国内臨床試験グループの連携というものもすごく重要だと思っています。患者に対して希望の光を与えていただくこういう対策を私自身は望んでいます。以上です。

○門田会長 中釜委員何かありますか。よろしいですか。

○中釜委員 はい。

○門田会長 では、馬上委員、それから若尾委員お願いします。

○馬上委員 がんの特性についてちょっと申し上げたいのです。ライフステージに応じたがん対策についての議論の背景の2ページの一番下に、「小児がん、AYA世代のがん等については、遺伝性腫瘍も存在することから、今後、遺伝性腫瘍に対する医療・支援の在り方についても検討していく必要がある」とあるのですが、遺伝性腫瘍は、小児がん、AYA世代だけではなくてがん全体に関わることだと思いますので、そういう検討の場を設けていただきたいと思っています。がん自体も今、偏見ということが言われていますので、この遺伝性腫瘍についても、その偏見に対する対処法とか、あと実態についての研究をお願いしたいと思っています。

○門田会長 よろしいですか。若尾委員、どうぞ。

○若尾委員 希少がん、難治性がんに関して3つお願いしたいのです。1つは、東京とか大阪とか京都とか、医療施設がたくさんある所と、それから地方都市での希少がん、難治性がんの患者の立場は全然違ってくるのです。地方で希少がんや難治性がんになった患者は、いまだにがん難民と言われるような形で、実際の正確な診断治療名を確定するまで多くの時間が掛かることが多いです。今、希少がんセンターとかありますが、一般の開業医から中核病院、拠点病院、国の希少がんセンターという所につながる連携みたいなものは、患者自身にきちんと分かるような対策がとても必要だと思うので、そこを1つ、次のがん対策推進計画の希少がん、難治性がんの中に、地方で起こった患者の治療に向けての均てん化という視点を盛り込んでいただきたいと思います。

2つ目です。希少がん、難治性がんはエビデンスがとても少なくて、標準治療とか、エビデンスに基づいて推奨することがなかなかしにくいのです。そして、患者の自己責任で決定していくという局面に立たされることがとても多くて、資料を調べようと思っても、数が少ないのでそれがデータ化されていないのです。これからがん登録がしっかりできていくと、院内がん登録の中で希少がんの事例というのも分かってくるかとは思うのですが、現在、私自身も、自分がどういった治療を受けたら最適、最善なのかということをとても悩みながらやっています。これから10年に向けて、希少がん、難治性がんになったときに、標準治療ができるとはとても数が少ないので思いませんが、ある程度患者が自己決定をするときの参考になるような事例が分かるような、院内がん登録の情報提供等を含めた情報決定をするための支援が速やかにできるようにお願いしたいと思います。

3つ目です。これは、私の住む地方都市山梨の拠点病院の現役のドクターからの提言と言うか意見なのです。人材育成が全然できていないのです。私はたまたま血液がんになっているのですが、私が住む山梨県で、大人の造血幹細胞移植ができるドクターは1人しかいません。この1人のドクターに私はたまたま当たったので県外に行かなくても済んで、しかも最適、最善の医療が受けられていると思うのですが、がん医療の均てん化の中で、人材育成は全然できていないのです。これを都道府県や医療施設の努力だけに頼るのではなくて、がん医療の均てん化のために、対策として人材育成、希少がん、難治性がんに対する人材育成がしっかりできるようになってほしいと思います。若尾別添資料でグラフを示しましたが、本当に東京とか都会と、それから山梨とか佐賀とかそういう所では、専門医の数、移植の数などはもう全然違ってきて、これは同じ日本なのと思うようなことが現実なのです。どこに住んでいてもより最適な治療が得られる日本であるためにも、人材育成に対しても均てん化という視点を盛り込んでほしいと思います。

○門田会長 関係して。

○檜山委員 今のお話は非常に重要なお話で、私が出させていただいた希少がん対策という資料を見てください。希少がんというのは、発生数も少ないのですが、いわゆる専門家とかそういう治療をする人も非常に少ないというのが大きな問題なのです。我々は小児がんをとにかく扱っている領域ではある程度行政からサポートもしていただいているので、現在、成育医療センターが中央センターになっていますので、そこへ全部画像のデータを集めるシステムを構築しています。これは、地方のどの施設からもDICOMのデータが簡単に取れる時代になったので、それを成育医療センターに送っていただければ、そこで匿名化してクラウドに載せるというシステムで、そういう情報が入りましたというのが私のiPadにもこの携帯にも入ってきますので、簡単にそれでデータを見ることができます。専門家にそれを見ていただいて、タイムラグなく診断を付けていただくというシステムが走り始めて、その裏側に臨床試験グループがいて、エリジビリティのある適応の患者さんがいれば臨床試験の中に入っていただけるというシステムが今、動き始めています。少ない人材の中で、どうやって高いクオリティの人たちから、良い最新の治療を提供できるかということを今、検討して、走り始めたので評価していただけたらと思って、1つのソリューションだと考えています。

 それから治療についても、先ほど難治の話が出たのですが、日本でも非常に難治には困っているので、今、米国、欧州から希少がんの15の難治を選定して、アメリカも欧州からも全てのデータを集めて、とにかくどういうエビデンスがあるかを、各15の施設にそれぞれ一つずつ割り当てて世界的な報告例の検討を始めることを行っています。

 それからグローバル臨床試験としてのモデルは、今日はAYAの医療がテーマでしたのでこれを出してきました。アメリカのCOGという子供のがんのグループと、我々のJCCGのグループが、大人のジェンダースペシフィックなグループと一緒に、頭蓋外の胚細胞性腫瘍のグローバル試験が今、走ろうとしています。このような、ここに世界地図があるのですが、イギリスもインドもブラジルも入ってくれたので、恐らくこういう希少がんにおいても、早い時期にエビデンスが出せるということで、こういうグローバルな取組も少しずつ進めているので、是非、支援をしていただければと思って、小児腫瘍医としてこういう取り組みを紹介させていただきました。

○門田会長 桜井委員、どうぞ。

○桜井委員 今のと関連してです。がん対策推進基本計画というこの模式図の中で見たときに、希少がん、難治性のがん対策は、個別目標の中だけではなくて、やはり重点的に取り組むべき課題であると思います。特に難治性がんにおいては、10年たっても20年前から全く生存率が上がっていないのが現状ですので、これは大きな全体目標の中にも私は入るべき課題だと思っています。ここを削減しない限り、死亡率の削減というのもできないぐらい大きな課題だと私は思っています。もちろん人材育成、ドラッグラグの問題、研究、いろいろな問題がこの難治性がん、希少がんの中には入ってきていると思うので、難治性や希少性のがん対策を進めることでほかのがん対策も引っ張っていけるような形を取っていただければと思っています。

○馬上委員 今のと関連しまして、小児がんを含めて希少であること、難治性であることがなぜ遅れてきたかということを、多角的に分析していただきたいというのがあります。患者、家族の声を聞きますと、まず専門医がいないとか、あと手術を受け入れてくれないとか、また病理不一致、治験が少ない、あと集学的治療がなっていないとかいろいろな声が聞こえてくるのですが、遅れてきた原因や発症の原因についてはまずはっきりしていないのです。その原因をはっきりさせて、そこに対策を重点化していくことが必要だと思いますので、是非、第3期の基本計画ではよろしくお願いしたいと思います。

○門田会長 癌学会理事長。

○宮園委員 まず最初に、難治性がんに対して桜井委員がおっしゃった定義です。これは非常に重要で、私どもがん学会の執行部の何人かで相談したときに、正に今日、御指摘になったとおり、膵臓がんを始めとした臓器別で非常に見つかりにくいがん、化学療法等に対して耐性のがん、転移したがん、この3つを難治性がんと言うのは、ある意味ではコンセンサスとして非常に重要ではないかと思います。ですから、こういうことをもう少し議論を深めていきたいということ。

 それから希少がんに関しても、これからがん登録が行われていろいろな情報が入ってきますと、かつて、例えば家族性がんでいろいろながんの遺伝子、あるいはがんの抑制遺伝子が見つかったときに、それがひいては普通に起こってくる。例えば、家族性の大腸がんのがん抑制遺伝子が、実は多くのがん、大腸がんで同じようなことが起こっていたということで、新しい診断法、あるいは治療法につながったということもありますし、こういった希少がんについても、これから研究が更に進んでいくと思いますが、是非、癌学会としても重点的に考えていきたいと思います。

○門田会長 ありがとうございました。勢井委員、それから難波委員お願いします。時間がないので、できれば簡単にお願いします。

○勢井委員 若尾さんが言ったネットワーク、これも本当に早急にしてほしいと思います。そのためには、やはり中核となる所が何箇所もあるのでうまいこといかないと思うのです。それをしっかりとまずはがんセンターが中核になってやる、そういうことをやってほしいと思います。更には、希少がんセンターのホットラインの今後の取組の所も読んでみたのですが、非常にいいことが書いてあるのです。これをどういったスケジュールでやるのか、書きっぱなしであるとかではなくて、それを1年ごととか、そのようにしっかりとやっていってほしい。それは、今後、次の3期のがん対策計画が出ますが、それも先ほど話したのですが、5年先にこういった数値目標を取るとか、10年先に何パーセント落とすとか、そういった非常に遠い話ではなくて、11年ごとに検証できるようなシステムであるような対策を盛り込んでほしいと思います。

 初期基本計画ができたときに、徳島でも、5年後にこうしようということでは難しいということで、1年ごとの目標を決めました。ところが、いつの間にやら、それが断ち切れてしまったのです。それはなぜかと言うと、そこまでやりなさいということは国から入っていなかったというのもあるのかもしれませんが、何時の間にやら消えてしまいました。結果的に、5年たち、10年たちどこまで進んだかと言うと進んでいないと思うのです。ですから、決めたことに関して1年ごとに検証できるように、それでまずかったら、例えばがん検診であれば、徳島では24市町村あります。全国でいくと1,000とか2,000とかあるとは思うのですが、どこか必ずいい事例が出てくると思うのです。そういうことを出し合って、そして次の期に向けてやっていくとか、そのようなことを少し考えていただけたらと思います。

○門田会長 それでは難波委員、これで最後にしたいと思います。

○難波委員 意見書のほうに、希少がん、難治性がんに関するがん基金の創設を明記させていただきました。社会全体で考えたときに、発症数が少ないことから軽視されがちだという印象を見受けています。これだけ重点課題として取り組むべき希少がん、難治性がんを、限られた社会保障財源の中でどう解決していくかということもそうなのですが、社会全体を巻き込んで啓発もしてお金も集めてという仕組み作りが今、必要なのではないかと考えます。

○門田会長 まだまだ御発言したい方がいらっしゃると思いますが、いつものようにこの件については、メールで意見を寄せていただきたいと思います。そうするようにしたいと思います。あと、予定されている議題がありますので、そちらに移らせてもらいます。

 それでは、今度は、今回の第2期の全体目標として取り上げましたが、がんにかかっても安心して暮らせる社会の構築ということを入れておりますが、この件について、第2期で全体的にそういうようなことをやってきたはずですが、この今の状況ということで、若尾参考人のほうから御説明をお願いしたいと思います。

○若尾参考人 資料9を御覧になってください。私のほうから第2期で追加されましたがんになっても安心して暮らせる社会の構築、こちらについての現状について、御説明させていただきます。

 スライド2番目です。こちらは43回の協議会での資料なのですが、研究班のほうで協議会の委員の方々のフォーカスグループインタビューを行いまして、安心して暮らせる社会としての要素を抽出したもので、縦に並んでいるもの、654が安心して暮らせる社会に関連するものということになりました。

 スライド3枚目です。そのために全体目標の質問項目として、19の項目を取って、これをその下側にあります患者体験調査で計測をしたということです。ただ、これは最初の計測で、出た数値が高いのか、低いのかというところの評価はまだできていないのですが、まず、この時点でのタイムスタンプを取ったという形でする調査自体、スライド4の所にありますが、返送率が55.2%、この手の調査では高いのですが、それでもまだ半分強の患者の御意見だというところが1つの留意点です。

 その結果、細かいスライド、中間報告書から取ったものなのですが、少しめくっていただき、1つはスライド7番目の上にあります「治療費用の負担が原因で、がん治療を変更・断念したことがありますか?」という問いに対して2.7%という低い値で、「ちょっと低いのではないですか」という御意見がありましたが、調査の結果はそういうものが出ています。

 その下、全体の18abですが、家族から必要以上に気を使われていると感じている方が約3割、それと友人、近所の方、職場の方から必要以上に気を使われていると感じている方が2割ぐらいいるという、そのような状況でした。

 今回御紹介しますのは、スライド9を御覧になってください。都道府県のがん診療連携拠点病院連絡協議会の中で、情報提供・相談支援部会というのがありまして、こちらで次の第3期のがん対策推進基本計画に向けて相談支援センターとしてどのような相談・提供をしていくことが必要だろうかということでアンケートを取りました。スライド9の下側にあります全国の都道府県拠点の相談員の方々10名からなるワーキンググループを構成して、こちらでアンケートを行いました。

 スライド10にありますのが、今回実施したアンケートです。「患者・御家族・市民のがんに関する困り事のうち、相談支援センターで現在対応されていない、解決されていないと思われることはどのようなことですか」というアンケートを行いまして、7月に行ったものですが、746件の回答を得ました。当初、こちらのアンケートは、相談支援センターの問題を考えるということで実施したものなのですが、スライド11を御覧になってください。結果として約3分の2は相談支援センター関係のものがきましたが、残りの3分の1として、相談支援センターでは解決できない、あるいは拠点病院では解決できない、がんの医療の範疇を超えたような問題が上がってきましたので、社会的問題ということで、このような問題があったということで今回報告させていただきます。

 一部は今日の前半で出ましたAYA世代の問題、あるいは高齢者の問題とかぶるようなところもありますが、実際、相談支援センターにそのような相談がきているということで、余り定量的な評価ではありませんが、実際現場としてこのような相談に日ごろ困っているということで、次の対策の参照にしていただければと思います。

 その中で、ワーキンググループの御意見を頂きながら、これをカテゴリー分けしました。とは言っても、それぞれの課題がきれいに7つ、あるいは8つのカテゴリーに分かれるわけではなくて、それぞれ複数の所に関連するものも多いのですが、一応どこかに属するような形で分けています。

1番目として社会全般での状況と顕著化している困難ということで、スライド12、スライド13に書かせていただいています。このそれぞれの下に付いているバーは、それぞれの項目の相談支援センターから寄せられた頻度となっています。11.としては市民や組織の知識、意識の不足、啓発の必要性ということで、住民の方々のがん、健康、あるいは医療提供体制、社会保障体制等についての基礎知識が不足している、あるいは先ほどもありましたが、日ごろから何か病気になったり、あるいは最期の迎え方について、余り考えられていない。地域の中でがんに関わる社会資源の間での交流や情報交換ができていない。

12.としては情報の氾濫と書きましたが、情報が溢れている、その一方で正確な情報になかなか辿り着けないということ、2つ目のポツで、医学的に根拠のない免疫療法などの民間療法やメディアの偏った情報に多くの方が翻弄されているという状態があると思います。

13.孤立者・困難者の増加ということで、無治療で過ごしている方が非常に、想像以上にいらっしゃる、あるいは治療を自己中断する方もいらっしゃるということ、先ほどから高齢者の方で、高齢独居の方などで、キーパーソン、あるいは介護をするような方がいないような方がいらっしゃって、更に認知症、精神疾患、生活困窮、老々介護などのなかなか対応困難なケースがやはり多くなってきているというようなことがありました。

 独居の方ですと、なかなか、特に地方で公共交通手段がないので、通院もできない、通院ができないために治療をやめるというような方もいらっしゃるということです。

14番です。患者・家族のリテラシー不足、医療についての知識が不足しているということで、様々な困難が生じているということです。その1つとしては、医療に対する過度な期待と現実のギャップが大きい中で、非常に大きなショックを受けるということや、緩和ケアに対する正しい認識がなく、最後まで緩和を拒むということがある。なかなか帰れるうちに帰すことができない、おうちに帰りましょう、緩和をやりましょうという医療者側の説明の悪さもあるかもしれませんが、最後まで積極的な治療を望んでいるという方がやはりいらっしゃって、もうぎりぎりになってから帰って、なかなかいい時間の過ごせない方が多いということがあります。

 スライド14番、その下にいきまして、2番目の大きなカテゴリーとしまして、社会保障制度の上の困難ということで、21.の中で経済的支援制度の限界というところがあります。いろいろな高額療養費の制度等がありますが、それを利用しても生活が経済的に非常に困っている方が増えてきている。先ほどと重複しますが、やはり経済的な理由によって、治療を断念する。もう自分でやめてしまう。病院に来なくなってしまうという方もいらっしゃいますし、今日のAYA世代の話にもございますが、働く世代、子育ての世代の方の生活支援などの制度が、ややもう少し上の世代に比べて弱いのではないか。若い世代ですと、貯金等も非常に少ない中、経済的な負担も大きくなっているということがあります。

 それから22.介護保険制度の限界ということで、これも先ほどAYAの所で御説明がありましたが、40歳未満の方の介護保険がなかなか使いにくいということ、更には末期でない方でも介護を必要とする方になかなか適応できない。更には末期ということで申請しても、なかなか認定までのタイムラグがあることがあるという課題がありました。

 スライド15枚目、4番です。地域・全国のネットワーク、機関連携に関わる課題としては、地域の情報不足、連携不足ということで、拠点病院についてはある程度の情報が共有できてきましたが、拠点病院以外の情報が不十分であるということ。

42.で連携方法の模索ということで、これも先ほど御指摘がありましたが、介護、福祉分野と医療の分野、拠点病院との連携がまだまだできていないというところで、地域包括ケア等進められていますが、なかなかまだ地域の中でがんをどうするかというところまでは具体的に進んでいない所がある。

 次の下側、3.医療体制の変化・ひずみによる困難ということで、医師が十分に対応できない、医師が非常に多忙な状態で十分にお話ができていないということは、残念ながら事実だと思います。

32.在宅資源・緩和ケア病床・地域資源の不足ということで、緩和ケア病棟、受入れができる療養病床などが少ない。これは地域の格差もあると思いますが、非常に偏在しているというところがあります。それから在宅で看取りをするための資源が地域によっては非常に不足しているということ。

33.医療資源の不足・偏在、偏在によって遠くへの通院が必要となる場合がある。そこにはまた交通費の問題なども出てくる。

34.病気の段階に応じた説明、情報提供が不足しているということで、治療が困難な患者への事前の情報提供ができていないために、急にバッドニュースを聞いて、そこで困惑してしまうということがまだ起こっているというところがあります。

17枚目、医療体制の変化・ひずみによる困難というその続きですが、現在の医療体制が生み出している患者の困難ということで、1つ目のポツ、今、がん医療自体が入院から外来にシフトし、在院日数が非常に短くなって、化学療法も外来でするようになっているのですが、逆に医療の世界では、病棟が優位視されて71看護で、看護師が全部病棟に引き上げて、外来に看護師がいない状態で、外来でしっかり告知をサポートしたり、その辺の体制ができていないのではないか。それが非常に大きな、数も比較的たくさんありました。

 高齢者のところでもありましたが、やはり複合疾患、合併している方への対応が十分できていないということ。1番下のポツで、これも医療計画の中に関係しますが、医療機関の役割分担がまだまだ進んでいない、あっても十分対応できていないというところがあります。

36.医療の限界とあります。少しタイトルとはずれるかもしれないのですが、緩和をするために向精神薬などを使っていると車の運転ができない。都会ですと電車で通えますが、地方ですと車を使わないと病院に通えない。それだったらもう緩和を受けない、あるいは病院をやめてしまうという方が、やはり一定数いらっしゃるというような問題が出てきました。

18枚目は参考で、相談支援センター側のもので今日は軽くしますが、相談支援センターにまだまだやはりアクセスができていない。それから相談支援センターが院内においてもなかなか立場を認めていただいていない。いろいろな医学の進歩に追い付けていないというような問題も、相談支援センターの中ではありました。

 では、このような問題に対して考えられる対応策ということで、ワーキンググループの中で考えたものです。今までの問題が1から8までありますが、大きな対応策として3つ掲げました。矢印がちょっとゴチャゴチャしてしまっているのですが、この矢印は本当にそれぞれ関与するもので、付けないほうがよかったのではないかと思っておりますので、その矢印はちょっと無視してください。

 やはり相談支援センターにまずつなげるということが必要、スタートだろうということで、1があります。2として医療体制の変化やひずみ、あるいは進歩、あるいは社会の状況の変化に応じた制度的な支援を拡充するということで、下のスライドにありますが、外来の強化が必要、体制の整備をする必要があるだろう。2番目で経済的な理由により治療を中断する方がやはりいらっしゃるので、その数の把握ができていないので、それを調査する必要があるだろう。社会保障制度の変更を検討していく必要があるだろうということと、在宅療養を支える地域資源の整備についても、その地域地域で検討を進める必要があると思います。

21枚目で、これも非常に時間がかかることなのですが、国民の医療や健康に関する知識・リテラシーの向上と日常において病気や生死に関わる課題に向き合える国民風土の醸成に向けた長期的な取組ということです。健康、医療に関する意識、知識・リテラシーを上げないといけないということや、あるいは死生観と簡単に一言で言ってしまうとそうなってしまうかもしれないのですが、生死に向き合える、先ほども中島先生からもございましたが、向き合えるような取組、そういう啓発を進めていくことが必要だろうと思います。

 最後、22枚目は相談支援センターですが、こちらは割愛します。

 がんだけではない話が非常に多いのですが、やはりがんの計画を考えるに当たって、スルーはできない問題だと思いますので、次の計画でできること、できないこと、ほかに検討を依頼しないとできないことを含めて、御検討の材料としていただければと思います。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。この社会全体というか、制度的ないろいろなものが関わっているわけですが、何か問題が見えてきているような感じがしましたが、皆さんの発言をお願いしたいと思います。北川委員、どうぞ。

○北川委員 若尾参考人におかれましては非常に広範に的確な御指摘を頂き誠にありがとうございました。若尾先生が指摘された顕在化している問題の一つとして、「情報の氾濫」は非常に重要な課題です。医学的根拠のない様々な医療情報で本来の標準治療を適切な時機に受ける機会を逸して、非常に予後を悪くしている事例が未だに散見されます。こうした事例を少しでも減らすために、適切ながん医療情報を科学的根拠に基づいて明確にカテゴリー化して一般の皆様に分かり易く提供することが大変重要です。これは非常に難しい問題ではありますが、国立がん研究センターがん対策情報センターとして、一番重要なミッションの1つではないかと考えます。この辺りの取組について、若尾先生は何か具体案をお持ちでしょうか。

○若尾参考人 今までも免疫療法などは、どちらかというとエビデンスがあるものはこれですという示し方をしていたのですが、今、外部の方にもレビューしていただいている情報で、情報の更新をしているのですが、お勧めできないということを明示するような形で今、情報を作り換えてきています。

○北川委員 それは非常に難しいと今までされてきたのですが、それが今後できるようになるということですか。

○若尾参考人 やはりやらないと、多くの患者が非常にそれによってミスリードされているので、それを防ぐためには1歩踏み込まないといけないということで、理事長とも御相談しながら、進めるべきところは進めないといけないと考えております。

○北川委員 ありがとうございます。

○門田会長 桜井委員、どうぞ。

○桜井委員 若尾参考人が本当に患者目線というか、患者の声を非常によくまとめてくださったと思っています。その中で少し確認したいことなのですが、私たち患者は今、診断直後、本当に1人で外来の中で再発の告知を受けたり、診断を決めたりというような現状になっています。外来の中でほとんど看護師と会わないです。これは川本委員にもお聞きしたいのですが、看護師の外来の配置基準は昭和23年から130のまま、ずっとこのままでなっています。私は交通整理をする役の人が完全に外来からいなくなっている気がするのですが、看護協会のほうとして、この辺りの課題というのはどのように認識されているのか、あるいはこうしていってほしいというような要望はあるのでしょうか。

○川本委員 外来における看護配置についてはおっしゃるとおりの配置基準になっておりますが、病棟から外来のほうへの対応などもしているところです。実際の外来において看護師がどういう役割を担うかということで、診療の介助だけでなく、専門性をもった働き方をしなければならない、機能を働かさなければいけないということを考えており、今、新しい外来の取組ということで、病棟と外来の配置を一元化している施設やあるいはラウンドナースが活動している施設など、様々な取組がされておりますので、そういうところの情報収集に努めているところです。

それと、看護外来といった機能も充実させております。様々な課題はあることは承知しておりますので、これからも検討を深めていきたいと考えているところです。また、御意見をたくさん頂きながら、検討させていただきたいと思っております。

○桜井委員 患者としては、これはちょっと診療報酬にも立ち入ってしまうことかもしれないのですが、看護機能をもっと強化していただきたいのです。この配置基準もしくは緩和ケア、あるいはいろいろな部分に交通整理をしていただけるコーディネーター役としての看護師の配置というのを、是非御考慮いただきたいと思っております。以上です。

○門田会長 では、こちらから馬上委員、山口委員、若尾委員としましょう。

○馬上委員 若尾先生、御発表をありがとうございました。社会的問題について本当に網羅されていると思いました。20ページと22ページについて、20ページの3番の医学の進歩に合わせて社会保障制度の変更を検討していくということ、こちらは小児がん経験者のみならず、治療後に医療の進歩とともに生存率が上がっていながら、合併症を抱える方が非常に増えていると思います。障害者認定制度から漏れ落ちて生活困難になっている方もいらっしゃいますので、是非そういった実態を把握していただいて、そうした社会保障制度の変更を検討していくことを是非、始めていただきたいというふうに思います。

 もう1点、22ページのほうですが、相談支援の強化に関して、やはり患者家族として、また患者会としてピアサポートということをこれから強力に推進していかなくてはならないというふうに思っているのですが、そのことについて若尾先生の御意見をお伺いしたいです。

○若尾参考人 ピアサポートについては患者さんの心の悩みを聞くということで、非常に大きな役割を持っていると思います。ただ、まず、プロフェッショナルがん相談支援をしっかりさせた上で、それを補完するものというような位置付けとなるもので、ピアサポーターだけを進めるというふうに総務省のレポートはそんな形で出ていたのですが、それだけでは駄目で、やはり相談支援センター本体もしっかりと進めないとというふうに考えております。

○馬上委員 心理的な面のサポートは、ピアサポートというのが非常に重要であるというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○門田会長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 相談支援センターというのは、拠点病院のある意味大きな目玉で15年間の歴史があります。現状はどうかというと、しっかりやっている所はしっかりやっていただいていると思うのですが、やはり格差が大きいということが、全国的には問題になっていて、相談件数を要件に入れるかといった議論が提供体制の検討会でも出ております。今日、若尾先生のまとめられたのは、相談支援センターの運営に携わっている人たちが、どういう意見を出してきたかということのまとめで、よくまとまっていると思うのですが、この話と相談支援センターをもっと強化しなければいけないという話を、次の計画はやはり書くべきではないかと思います。

 私の経験から申し上げると、たぶん、2つの点が重要だと考えます。1つはまず医療機関の中で、相談支援センターの位置付けが十分にまだなされていない。私どもはかなりの担当者数で運営していますが、多くの拠点は1人、2人の体制でやっている。そうすると、ここに書かれていることを全てやるということは不可能です。あくまでも相談支援センターの担当者は振り分け役で、そこに来た相談を、病院内でどの専門科や部門につなぐか、そこを強化するような体制、それを要件の中に書き込むことが1つの方法論かなと思います。うっかりすると、何か患者がいろいろ言っているから全部あとは相談支援センターでやってというケースが結構多いのです。そこを何とか改めるために、要件を少し書き換える必要があるのではないか。

 もう1つは、特に地方に行くとそう感じるのですが、地域が相談支援センターを育てていない、あるいは患者が相談支援センターを育てていないというところが多く見受けられます。知らないということから始まって、言ってもしようがないのだとか、こんなことを聞いても教えてもらえないのだとか、お医者さんの問題だから、あそこへ行っても駄目だとか、そこを改める必要があると思うのです。相談支援センター充実のために一番大切なのは、患者が、あるいは関係者がそこに行って、しっかり相談をして、件数を増やして経験を積んでいただくことだと思いますので、この2点、医療機関内での位置付け、それから地域での積極的な活用が大きなテーマだと思います。がん対策推進計画において、患者さんたちがどうやってこの計画を育てていくか、どう参加するか。そこをもう少し書き加えることを希望します。以上です。

○門田会長 若尾委員、どうぞ。

○若尾委員 今、山口先生がおっしゃったこととも少しダブるのですが、医療者として若尾参考人が医療者を通じての患者の意見として、まとめてくれたこと、これはとてもまとまっていると思います。でも、先ほど山口先生がおっしゃったように、ちょっとバイアスがかかっているかなと思うことが幾つかあります。答えられる人が答えている。答えたい人が答えているというような面がなきにしもあらずなので、そこをある程度理解した上で、考えなければいけないと思うのですが、私は当事者としての若尾として、2点ほど、やはりお願いしたいと思うことがあります。

 若尾先生のアンケートと少しダブるところもあるのですが、1つは情報とか知識とかリテラシーというようなものに関して、一般の人も含めた啓発活動が全然足りないと思います。意思決定するのに情報が不足しているし、偏った情報があるし、情報に対する理解度がすごく違っているので、ここは基本法の中で全都道府県、どこに住んでいても、どういう状況であっても、正しく理解できるような施策が大切なのではないかと思います。

 それから若尾先生の報告の中にも、制度的な問題というのがありましたが、これは個人的な私の体験になりますが、医療資源が乏しい地方都市の場合ですと、入院とか外来とか、それによって高額療養費の制度が違ったり、本人が望むと望まざるとに限らず、同じ病院内で同一の疾患に対する検査ができなくて、わざわざ1回退院して、別の施設、あるいは別の県に行かなければならないというようなことがあるわけです。これも制度の問題と大きくかぶってきますが、どこに住んでいても同じように、きちんとその病気に対する療養ができるというような拡大した体制を作っていかないと、治療をあきらめるとか、経済の問題でより良い治療ができないことが、いつまでもまかり通りますので、この辺は次の10年計画の中でも、難しいとは思いますが、制度設計も含めて再検討してもらいたいというふうに、当事者から提案というか、意見というか、提言したいと思います。

○門田会長 確かに制度的なシステムというか、そういうものが1期、2期と、もう少し具体的になる。2期のときに安心して暮らせる社会の構築という社会ということを言ったけれども、それが今おっしゃっていただいたような制度面で、次々とというわけにはいかなかったというところだと思うのです。今からの問題だと思いますね。では難波委員、どうぞ。

○難波委員 意見ですが2つあります。まず、若尾先生、信頼性の低い情報に対して、これはお勧めできませんというメッセージを明記していただける方向性を検討しているということで、本当にありがとうございます。患者は本当にそういった信頼性の低い情報に振り回され、不利益を被り続けているので、是非ともその対策に期待させていただきたいと思います。

 もう1点、今、門田会長もおっしゃったようにがんと共生するというテーマはこれから優先すべき対策だと思うのですが、まだまだがんに関わる業界以外というか、一般社会ではがんに対してどういうふうに取り組んでいいか、関心も薄いような状況だと思います。

 意見書にどんな組織であれ、雇用形態であれ、企業内でがんサポートチームをなどの受け皿作ってはどうか、それの設置を国として通達してはどうかというような内容を書かせていただいたのですが、具体的に今はがん対策推進企業アクションもあるので、そこの強化を次期に向けて更に推進していったらどうかと考えます。企業の中では、主に福利厚生の一環で行われているので、これをしっかりと国が課題の重要性、立場を明確にして、経営課題として企業が取り組むよう指導していくと良いと思います。

○門田会長 中川委員、どうぞ。

○中川委員 今のことに関連してなのですが、御承知のように来年の4月から全国の学校でがんの教育が始まります。それに対応して、大人たちに対してどういうふうに教育していくか。その場合はやはり企業しかないと思うのです。自治体のセミナーなどは本当にリピーターしか来ませんし、その点は重要だと思います。

 私、実は中座しなければいけませんので、最後に若尾参考人がちょっと触れられましたが、総務省の行政評価・監視のレポートが、がん対策について今日公表されていました。それを見ると早期発見、あるいは診療体制、緩和ケアに関して、私も実はヒアリングを受けた1名なのですが、やはり計画だけでは駄目かなと、計画をきちんと実行していく必要もあって、そういう意味では3期に向けて、今までの目標の達成ということを少し考えていく必要もあろうかと思います。

○門田会長 では、秋山委員。

○秋山委員 私は新宿区の委託を受けて、病院以外の場所で、商店街の一角で、暮らしの保健室という中で、がんの一般の方の相談を受けているという立場でお話をしますと、病院の中ではなかなか誰にどう相談したらいいか分からない、病院の中だととても遠慮がある。それでもやもやした気持ちとか、最初トンネルに入ったようなそういう気持ちをよく聞いてもらいたいという声が、たくさん上がってきます。なので、病院の中のがん相談支援センターの充実はとてもうれしいことですし、本当に相談員の方の技量も上がり、とても頑張っているという手応えはあるのですが、病院以外の場所での相談支援の場を、やはり是非考えていただきたいというふうに思います。

○門田会長 若尾参考人、どうぞ。

○若尾参考人 病院以外の場所の相談支援ということでは、平成23年に、地域包括相談支援センターという制度を厚生労働省のほうで補助事業として始めていただいて、昨年ですか、対がん協会の委託事業で調査したのですが、今、47都道府県中で地域包括相談支援センターを作っているのは16ぐらいしかないのです。加速化プランにも地域包括を進めると書かれていたのですが、地域包括相談支援センターなどを活用するような形が、既存の枠組の中で地域の相談室を作るという1つの手段になるのではないかと思います。

○門田会長 まだほかにも意見があろうかと思います、時間ですので途中でも申しましたように、今までやってきておりますように、事務局に御意見をお寄せいただきたいというふうに思います。一応事務局には来週の金曜日ということをデッドラインにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

○事務局 本日は長時間にわたり、御議論いただき、誠にありがとうございました。事務局より2点御報告があります。本年8月末に、来年度の予算に対する概算要求を行いました。机上に事務局参考資料として「平成29年度予算概算要求について」を配布しておりますので、御参照いただければと存じます。

2点目は919日、米国ニューヨークにおいて、日米韓保健大臣会合が開催されました。3か国の保健大臣に加えまして、がんに関する研究機関のトップが参加し、日本からは塩崎厚生労働大臣に加え、国立がん研究センター、日本医療研究開発機構のトップが参加されました。今後、3か国の協力を一層深めていくという点で、合意に至っておりますことを報告いたします。

 次回の協議会の日程については、1026日を予定しております。また、お手元の参考資料ファイルは事務局で回収いたしますので、お持ちにならないようお願いいたします。

○門田会長 それでは本日の協議会はこれで終わりたいと思います。どうも御協力ありがとうございました。


(了)

健康局がん・疾病対策課

代表 03−5253−1111(内線3826)

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