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2016年5月13日 第113回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

職業安定局総務課

○日時

平成28年5月13日(金) 15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省職業安定局第1・第2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○阿部分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第113回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。議事に先立ちまして、当分科会に所属する委員の交代がありましたので、御報告いたします。当分科会の使用者代表委員として、上野委員に代わりまして、日産自動車株式会社人事本部 日本人事企画部担当部長の吉岡委員が就任されております。本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の太田委員、鎌田委員、労働者代表の青木委員、勝野委員、斗内委員、林委員、使用者代表の熊谷委員、鈴江委員、深澤委員が御欠席です。では、カメラ撮影はここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります。最初の議題は、「熊本地震に係る対応について」です。事務局から説明をお願いします。

○総務課長 それでは、私から資料No.1に基づきまして説明させていただきます。414日に発生し、いまだ余震が続いている平成28年熊本地震について、雇用への影響についての分析は、まだまだというところですが、若干の分析と緊急的に取りました雇用労働対策について御報告いたします。

 雇用への影響について、1ページ目を御覧ください。こちらはどういうデータかというと、資料種々にありますが、ハローワークで使っているハローワークシステムで、職業紹介、雇用保険それぞれで取れるデータです。こちらはハローワーク別に毎日取れるデータとなっております。今回、基本的に1週間で集計しております。

 右に参考値として、前年同時期の数値を挙げております。上段が合計、下が1日平均ということになります。1日平均を中心に御覧ください。

 まず、新規求職者数です。これは求職者数に限らず、全般に共通する動きですが、414日の未明に震災がありました。しばらくの間、ハローワークに来る方がかなり減っています。減少がしばらく続き、最近、段々と増加してきました。ただし、注意をしなければいけないのは、その間にゴールデンウィークを挟んでいまして、ゴールデンウィークについては、カレンダーの並びによって、非常にハローワークの来所者にも影響がありますので、前年と比較する際には、その辺りを御注意いただく必要があると考えております。

 新規求職者数については、まず平成28415日から23日のところですが、これが前のところが、46日から414日の平均が523に対して、198ということで、1日平均が落ち込んでおります。そこから徐々に増えていて、58日、9日、ここだけ2日の集計になっており、589となっています。前年と比べていただくと、最近のところでも、単純に比べるのがどうか分かりませんが、前年の500に対して、今年は589ということで、もしかしたら多くなっている可能性があるかという数字です。

 新規求人数についても、震災後に落ち込み、最近戻ってきている状況です。

 就職件数についても、同じ動きです。水準は昨年よりも就職件数は低くなっております。

 相談件数です。こちらも震災後に減少したものが、最近増えてきているということです。新聞に、熊本労働局の相談件数が、9,000件、1万件といった数字が最近載っています。あちらの数字は、地震に関する相談を特別に集計して出しておりまして、また、出るメディアによって、職業安定行政、安定部、ハローワークで取ったものを出している場合と、監督署で取ったものを含めている場合がありまして、いろいろとちょっとばらついています。そちらは大体最近の水準で、9,000から1万ぐらいと。発災後から11日ぐらいまでを集計すると、1万件近く上がっているという数字になっています。ここに載せている数字は、それも含め、地震に関わらない相談も含めた数字ということです。

 被保険者数については、大体横ばいとなっています。その中で資格取得件数ですが、これも一旦、大幅に減った後、増えてきています。ただ、昨年と比べると、低い水準ということになっております。

 資格喪失件数ですが、これも一旦減少した後、増えており、増えた結果、直近の58日、9日では、ほぼ昨年並みの水準となっております。

 受給資格決定件数は、こちらも減少した後、増加ということで、現在の水準は、昨年とほぼ同じとなっております。

 以上が、雇用への影響ということです。総じてこの数字を見る限り、著しく悪化しているような状況は、まだこれだけでは見て取れないわけですが、もしかすると、離職したけれども、まだハローワークにいらしていない方とか、あるいはこれから離職するおそれのある層もいらっしゃるかと思います。注意をして見守っていきたいと思っております。

 続いて、対策です。2ページを御覧ください。震災に係る労働相談対応として、まず震災直後からハローワークに「震災特別相談窓口」を設置しております。また、基準行政のほうでも、安全衛生、労災等に関する窓口を設置しております。また、災害の際には、休業時の賃金などの取扱いが関心を持たれますので、Q&Aを作成しています。その際に、「雇用調整助成金」も併せてPRしております。また、地震発生直後の416日、17日、避難所を巡回して雇用保険のリーフレットの配布をしております。配布先は限定的でした。ただ、このときの状況を見ると、まだ仕事への関心というよりは、当面の生活ということでして、一旦、その避難所への巡回は、ここで様子を見て、またこれから様子を見ながら必要であれば、再開をというように考えております。

 次に、関係機関と連携した取組です。企業への支援として、融資などの情報も重要ですので、融資等の情報と連携、協力して相談会を実施しております。具体的には、自治体、商工会議所、信用保証協会等々、協力して説明会を開催しております。

 雇用調整助成金の活用については、特に福祉施設・医療施設での人材確保において、地震の後、一旦、人材が離れてしまうと、なかなかその後、事業を再開したときに確保が難しいということがございます。そこで、是非、雇用維持をしていただきたいということで、厚生労働省の強みを活かしまして、福祉部局・医療部局と連盟で関係団体に通知をしております。

 本日、日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に対して、地震に係る雇用・労働問題の配慮について要請させていただいたところです。御協力、ありがとうございました。

 続いて、雇用保険の関係です。こちらについては、426日に災害を受けて事業所が休止した場合には、休業して賃金を受け取ることができない方について、実際に離職していなくても失業給付を受給できる特例。これは激甚災害の指定にリンクしたものですが、これを実施しております。

 一旦離職して、その後の再雇用を予定されている方。この方についても失業給付が受給できる特例を、これは「災害救助法」が適用された段階、414日に公表しております。

 災害救助法に指定されているのは、現在、熊本県に限られていますが、その近隣県についても、一時的離職、2つ目の○と同じ措置を実施できるようにしております。

 今は大分改善されておりますけれども、災害発生直後、道路が途絶したり、あるいは避難されて、本来の住居地管轄のハローワークから遠くなってしまった方、こういった方については、失業認定日を変更するとか、別のハローワークで失業給付の受給手続を可能とできるような、弾力的措置をしております。こういった情報の周知については、厚生労働省と熊本労働局のホームページで周知をしております。

 地震後、ゴールデンウィーク期間にすぐに入ったわけですが、その間、相談が予想されましたので、コールセンターを設置して対応しました。対応した件数は、489件ありました。

 その上ですが、震災についての雇用保険関係の相談件数が、9日までで5,134件に上っております。

 雇用調整助成金の関係です。雇用調整助成金については、リーフレットを作成して、事業主に周知をしております。特例措置として、まず、事業活動縮小の確認期間を短縮するというもの。また、本来であれば休業に先立って計画届を出していただくのですが、この計画届の事後提出を容認するという措置。

 本日、諮問させていただく事項ですが、九州各県内の事業所に限り、助成率を引き上げるという措置。また、クーリング期間を撤廃する措置も、本日諮問させていただきます。

 雇用量が前年比で増加している場合には、通常は支給をしていないのですが、その要件を外して、増加している場合には助成をするということにしております。

 以上の措置については、震災発生時に遡りまして、414日以降に開始した休業に適用できるということにしております。

 また、雇用調整助成金についての相談件数が増加していることを踏まえて、説明会をできるだけ多く開催しております。

 大分県においては、主要経済団体のほか、特に被害を受けているのではないかと予想される旅館業、観光業などの業界団体にも説明会を開催しております。相談件数については、下を御覧ください。

 続いて、新卒者向けの対策です。こちらも地震発生直後に、文部科学省と連携しまして、経済団体に要請を行いました。内容は、企業説明会をホームページ等を活用して、これまで以上に行ってほしいということと、被災地の学生については、エントリーシートの締切等、柔軟に対応していただきたいということをお願いしました。また、熊本と大分の新卒応援ハローワークに、学生の特別相談窓口を設置しました。

 雇用調整助成金については、特に4月に入社された方への影響も予想されたため、要件のうち、雇用保険被保険者期間6か月以上という要件を適用除外としまして、4月に入社した方も休業すれば対象とできるという措置を講じました。

 派遣労働者の関係です。派遣労働者については、派遣関連団体に要請を行っております。内容については、こちらを御覧ください。また、Q&Aも公表しております。

6ページです。こちらは基準局の関係の情報です。後ほど御覧いただければと思います。

7ページも同様です。真ん中の労働保険料は、雇用保険料とか、障害者雇用納付金も含む措置ですが、熊本県内の事業主については、納付期限などを延長する。又は納付の猶予を受けられるという措置です。

 最後、8ページです。今回の地震については「特定非常災害」というものに指定されました。これに指定されると、権利利益に係るその締切期限の延長や、その間に履行されなかった義務に係る免責といった措置が行われます。紹介派遣事業の有効期間、外国人雇用状況届出等の提出義務などについての措置があります。駆け足ですが、以上でございます。

○阿部分科会長 それでは、本件について、御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○清水委員 熊本地震における緊急の雇用労働対策について、ただいま御報告いただきました。雇用労働分野に関しては、熊本労働局を中心に、引き続き多数の問合せが想定されると思っております。厚生労働省におかれましては緊急対策を含めて、十分な周知と、丁寧な対応を是非お願いをしたいと思います。以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。

○森下委員 今、清水委員からもお話がありましたが、雇用調整助成金については、地震発生後、速やかに生産仕様書確認とか、計画届の提出を本日の審議を経て実施をしていただくということですが、この特例について、やはり利用を実際にしたり、中小企業並びに小規模の企業者の方々に対して周知を徹底していただきたいということと、申請に際して、手続等で非常に煩雑な手続ということにならないように、是非、柔軟で、かつスピーディーな対応をお願いしたいと思います。我々、業界の方も、地震に際しては、非常に建物の半壊とか、機械の損壊等で、まだ事業が始められないというお話も聞いております。いろいろと大変かとは思いますが、是非、行政のほうのそういう対応をお願いしたいと思います。以上でございます。

○阿部分科会長 ほかにいかがですか。では、この件はこれでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、次の議題に移ります。「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」です。本件については、512日付けで厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛てに諮問を受けております。事務局から説明をお願いします。

○雇用開発企画課長 議題の2番目の雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について御説明いたします。

 改正内容は、この度の熊本地震の発生により、熊本県を中心に全国で事業活動の縮小等による雇用への影響が懸念されていることから、雇用調整助成金について、特例措置を講じるということに関するものです。

 資料No.2-1を御覧ください。これは、震災直後の雇用不安に対応して、緊急に雇用調整助成金の特例を打ち出すことが必要と判断されたことから、支給要領の改正によって、措置が可能な特例としまして、震災の1週間後、421日に施行した事項について御報告する内容です。

 具体的には、ページの中ほどの下線部分の所ですが、通常、雇用調整助成金の支給に当たっては、支給要件である生産指標の減少を確認する期間について、3か月で10%以上減少しているということを確認しますが、これを1か月の確認で足りるという特例を講じたという内容です。

 資料No.2-2を御覧ください。今回、お諮りしようとしている改正省令案の要綱です。次ページが諮問文の本文、次ページが要綱の内容になっております。

 その内容は、熊本地震に伴う経済上の理由により、急激に事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して、雇用調整助成金を支給する場合に、その支給要件について、第一の所に掲げた()から次ページの()5項目の特例を適用する内容になっております。この省令改正の趣旨については、資料2-3を用いて御説明申し上げたいと思います。

 資料No.2-32の改正の内容の所に柱書きがありますが、414日の震災当日から6か月にわたって、その間に開始された休業等について、以下の特例を講じようというものです。6か月ごとに内容を見直して、必要であれば延長ということもあり得ますけれども、まず6か月間ということです。

1つ目の○です。雇用調整助成金の受給可能日数については、通常、1年で100日、3年で150日を原則としており、過去に受給したことがあると、その分を控除した残り分しか受給ができないというような要件があります。しかし、仮に事業所がそれらの受給可能日数について、既に目一杯使っていたところで、今回の震災の関連で休業等を開始したような場合、この要件があるがために、雇用調整助成金を使うということはできないということになってしまいますので、新たに震災関連で開始された休業等については、過去の受給日数を考慮せず、受給可能日数をリセットして、改めて1年で100日、3年で150日のカウントを開始できるという内容の特例です。

2つ目の○です。これは、ただいま申し上げた特例によって、震災関連で開始された休業等について、受給可能日数のカウントを開始した後に、その事業所が、更に震災以外の理由で休業を余儀なくされるような場合、震災関連で受給可能日数を目一杯使ってしまった場合は、その震災以外の理由のほうでは雇用調整助成金を使うことができないということになってしまうので、その震災以外の理由による休業等が開始された時点で、受給可能日数をリセットしようという中身です。

3つ目の○です。雇用調整助成金は、原則として、雇用保険の被保険者として継続して雇用された期間が6か月以上の労働者の休業等を支給対象としておりますが、これを継続して雇用された期間が、6か月未満の労働者の休業等についても支給対象とするという特例です。この特例により、例えば、41日に採用された新規学卒者なども支給対象となり得るかと思います。

4つ目の○です。雇用調整助成金は、一時的な雇用調整に対する助成を目的としていますので、通常は、1回の支給の対象期間を1年として、2年目はクーリング期間として不支給としております。しかしながら事業所が震災関連で、新たな休業等を開始しようとしたときに、たまたまこの2年目に当たっているようなことであると、雇用調整助成金を使うことができなくなりますので、この2年目のクーリング期間を撤廃するというのが、この特例の内容です。

 最後、5つ目の○は、雇用調整助成金の助成率を中小企業3分の25分の4へ、大企業の2分の13分の2へアップするものです。これは震災という、突然のショックによって解雇等の危険性が高くなることから、助成率を高めることにより、雇用維持のインセンティブを高めようとするものです。ただし、この項目は、支給額に直接響く項目であることから、一定の条件が付いております。震災直後の時点では、教育訓練のプログラムを作って、内容のある教育訓練を実施することが困難であるとか、また、出向先を探すことも困難であるということから、この項目の適用は、休業に限るとしております。また、対象となる事業所の所在地としては、被災地である熊本県内の事業所は当然であるとして、その事業所の影響を受けやすい取引先事業所や、震災による風評被害を受けやすい事業所は、この1つの地域経済圏内にある九州各県内に所在する場合が多いと考えられますので、この項目の適用は、九州各県内に所在する事業所に限るということとしております。

 なお、今回の諮問の対象ではありませんが、※の所に要領事項の特例を、1項目を掲げています。

 これは、通常であれば、最近3か月に雇用量が一定以上増加している場合は支給対象としておりませんが、最近の好景気の中で、4月に新規学卒者を採用して、雇用量が増加していた事業所も多く、その場合は雇用調整助成金を使うことができなくなってしまうので、この要件を撤廃するのがこの特例の内容です。

 以上が、雇用調整助成金の支給要件の改正に係る省例改正の内容で、答申を頂き次第、速やかに施行してまいりたいと考えております。以上です。

○阿部分科会長 それでは、本件について、御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○清水委員 先ほどの議題1の報告にもありましたが、59日時点で、熊本労働局だけでも、約1,500件もの雇用調整助成金に関する相談が寄せられているとの報告でした。既に422日には、特例措置の第一弾が発動されているということですが、特例措置に係る申請状況等が分かれば教えていただきたい。

 あわせて、本日の諮問内容が答申された場合には、例えば、九州各県の助成率は引き上げ後のものが適用されるのか等、既に申請された企業への対応について確認しておきたいと思います。

○阿部分科会長 お願いします。

○雇用開発企画課長 現地からの報告によると、相当相談はありますが、申請そのものは、まだございません。ですから、今回諮問を答申いただいたところで、来週から施行されたとしても、それでちょうど適用になろうかと思います。

○清水委員 少ないのではなくて、ないということでよろしいでしょうか。

○雇用開発企画課長 支給が今ないので。

○清水委員 はい。

○雇用開発企画課長 その問題はないということです。

○清水委員 労働側としては、本特例措置により雇用の維持が図られるよう、十分な周知と万全の対応をお願いし、本諮問の内容については了承することといたしたいと思います。

○阿部分科会長 ほかに御意見、御質問はありますでしょうか。

○雇用開発企画課長 今、ちょっと言い漏らしましたけれども、414日の休業開始まで遡及適用ができますので、今後、申請があったとしても、そこまでできます。そういった意味で問題がないということを申し上げます。

○阿部分科会長 ほかはいかがでしょうか。では、御意見がないようでしたら、当分科会は厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、報告文案の配布をお願いします。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 お手元に配布された報告文案により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。

 次の議題に移ります。「労働移動支援助成金の見直しについて」です。事務局から説明をお願いします。

○労働移動支援室長 では、議題3の労働移動支援助成金の見直しについて説明いたします。資料が多く、資料No.3-1から参考資料の下のNo.3-8までです。本日、見直しの論点について各委員から御意見を頂戴して、それを踏まえて次回27日という日程ですが、その中で何らかのものをお示しできればと考えております。よろしくお願いいたします。

 まず、参考資料について確認も含めて説明いたします。参考資料No.3-1は、平成28年度の労働移動支援助成金全体の概要版です。ここの図の左側に送り出し企業として、再就職支援奨励金が本日の論点の中心で、下に助成額、委託開始分10万円、訓練関係の助成金を書いております。

 参考資料No.3-2は、再就職支援奨励金の概要です。一連の支給までの流れを少し整理しております。図の真ん中に赤字で「事業規模の縮小等を行う企業」と書いております。マル1として離職者が決定され、それを受けてマル2として離職者の氏名が記載された「再就職援助計画」を企業で作成して労働組合の同意を得た上でハローワークへ提出、認定ということになります。

 マル3ですが、その後、再就職の援助を実際の紹介会社に企業が委託します。これも、委託契約を結んで支払が完了したタイミングで、図の左に行きますが、労働局でマル4の委託開始分の支給が110万円支給されます。その後、右の再就職支援会社があり、ここでマル5で再就職の援助を実施して、下にありますマル6で実際に対象者の再就職が実現されます。再就職がかなった段階で、左の労働局のマル7で最終的に再就職実現分の支給がなされるという一連の流れです。

 参考資料No.3-3です。これも本日の論点の中で少し触れさせていただくものですが、これは、対象者を受け入れた企業に対する助成です。概要の上に四角として早期雇入れ支援、人材育成支援、3か月以内の雇入れに対する助成と雇入れて訓練を実施した場合の訓練助成という内容です。

 参考資料No.3-4です。リーフレットのような形でお配りしております。これは、離職者が決定した段階で企業に作成していただくものです。開いていただくと左側に企業に記入していただく内容、記載例としていろいろと吹き出しを設けております。左の下に6として労働組合の意見を記入していただく欄、見開きの左上は事業規模の縮小に関する理由を書く欄、この右下に対象者となる方を1名、1名ここに記入していただきます。参考資料No.3-5は、労働移動支援助成金に関連する法令根拠を抜粋したものです。雇用対策法、雇用保険法から抜粋したものです。

 参考資料No.3-6は、労働移動支援助成金の拡充の契機になったと申しますか、平成256月の日本再興戦略における「成熟分野から成長分野への労働移動」という形で当時整理されたものの抜粋です。参考資料No.3-7は、「国の雇用関係助成金の支給申請に関与する民間職業紹介事業者に求められる条件に係る同意制度の概要」です。同意制度と申しておりますが、これは従前ならばハローワークの職業紹介があったケースに雇用関係の助成金を支給しておりました。この制度ができてから10数年たつのですが、助成金の利用を民間紹介事業者の紹介であっても助成金の支給ができるという形で、一定の条件をクリアした形の事業者であれば国同様に雇用関係の助成金が利用できるということで制度を整理したものです。

 労働局に民間紹介事業者が同意書を提出すれば手続としては完了するというもので、ペーパーの真ん中、下にBとして「再就職給付金」という項目が、労働移動支援助成金に対応した部分です。2ページの上に(2)として「再就職給付金を取り扱う場合」が労働移動支援助成金に関連した条件ということで整理した部分です。マル1は支援内容の説明や周知に関する部分、マル2は支給に関係して、対象者が再就職した場合に証明書を発行するという内容を条件として設けており、本日、見直しの論点の中で少しこの条件について見直しをすべきということも後ほど触れさせていただきます。参考資料No.3-8は、実績等です。これについても論点の中で少し実績について後ほど説明いたします。

 資料No.3-2は、今国会での議論がいろいろ重ねられたわけですが、その中で329日、参議院の労働委員会の場で付帯決議として、第三、四が労働移動支援助成金関係の付帯決議の内容の抜粋です。資料No.3-3は「労働移動支援助成金の支給要件の厳格化」です。これは、41日から要件の厳格化を図った内容の支給要領の該当部分を抜き出したものです。「退職コンサルティング」、「退職強要」に関する部分等を整理したもので、それを抜粋したものです。

 資料No.3-1です。冒頭1は、国会等の指摘を踏まえて論点整理の柱として2つ大きな柱に分けております。まず、1として、本助成金が紹介会社からの働きかけ等によって退職強要と受け止められるような退職勧奨を行う企業への支援となっているのではないかという1つの視点。3ページの頭ですが、2として、本助成金が「成熟産業から成長産業への円滑な労働移動」という日本再興戦略、平成25年度に拡充した際の趣旨に沿わない労働移動に支援しているのではないかという、この大きな2つの論点の柱に沿って、各細かい論点を事務局で設けております。

1ページに戻ります。(1)は再就職支援サービスを受託する紹介会社が企業に対して人員削減を働き掛けたり、再就職支援サービスの内容が不十分であったりなどということがないようにすることについてどのように考えるかです。現状は、実際に再就職支援サービスを委託した紹介会社と同一の紹介会社が事前コンサルをするケースについては、4月から不支給という扱いで対応したところです。

 一方、この紹介会社については、企業が準備したものを本人が利用するという状態ですので、そういう状態もある中で、やはり紹介会社から何らかの人員削減への働きかけが生じやすいという現状は、まだ残っているという状況です。

 論点です。マル1マル2マル3と設けております。マル1は委託を受ける紹介会社とは異なる会社、若しくは個人、弁護士、社労士、個人でやっている退職コンサル業を想定しております。そういうケースには、例えば、支援サービスを受託する紹介会社と両者の中で何らかの連絡を取っていた場合どのようにするのかという論点です。

 矢印は事務局で準備したものです。対応として、そういうケースも同様に不支給ではどうかということです。マル2は職業紹介会社の適正な取扱いを担保するための措置をどのように考えるのかです。今、同意制度について少し触れさせていただきました。今回、そこの部分を少し見直して充実してはどうかということで、ア、イ、ウと項目を設けております。

 アは再就職支援サービスを行う紹介会社の実績やサービス内容、一例を挙げれば、就職率や再就職の割合、実際の委託料の支払い方を紹介会社に自ら公表していただくことはどうか、再就職支援サービスを行う支援会社が発注者である企業へ実績等をしっかり報告していただく。ウは、これは当然ですが、事前の人員削減を行う「退職コンサルティング」は行わないということをしっかり同意制度の中の条件として明記してはどうかという視点での論点整理です。

 マル3は本人が紹介会社を選べるようにするということについてです。これは、いろいろなサービス支援会社がありますが、業界の中で平均的なものであれば特に問題ないのではないかという部分ですので、ある一定の数字をクリアしていれば本人が希望する紹介会社に、企業が紹介会社を準備する前段階で御本人が企業へ契約を申し入れれば、御本人の希望する会社も使えるようにしてはどうかという論点です。

2ページの上の(2)です。「退職強要」と受け止められるような退職勧奨を行う企業に支給しないようにすることについてどのように考えるのかです。現状、マル1については、この4月から要件の厳格化をしたところで、御本人に退職強要があったという受け止めがあれば支給要件上は不支給という扱いにしております。退職強要の確認です。マル2は30人に1人程度労働局から電話等で本人に確認するということをやっております。論点としては、本人確認票を申請書の中に添付していただいておりますが、結局それは事業主経由で書類が提出されるわけですので、事業主経由ではない部分で確認ができないかということで、論点マル1にありますが、労働局が本人に直接、想定ですが郵便を使って確認することについてはどうなのかという論点。

 マル2は30人に1人という電話連絡ですが、これを10人に1人という形で率を少し上げてみてはどうかという論点です。(3)は委託時の10万円助成についてどのように考えるのかという部分です。委託開始時の10万円の助成については、この助成金を活用した支援を実施するというインセンティブを働かせるために企業規模にかかわらず助成金を設けたという経緯があります。

 論点としては、大企業について廃止してはどうかということですが、ここについては参考資料No.3-85ページを御覧ください。「再就職支援の対象者の再就職状況(企業規模別)」です。上の表です。これは平成26年度に支援対象となった方で、委託開始申請分10万円の対象となった方の再就職の状況を整理したものです。大企業、中小企業と分けておりますが、マル1は大企業が2,000名、中小企業が1,300名弱で、右ですが、この中のうちマル3に実際に再就職実現申請分の対象となった方の数字を入れております。割合としては大企業が4割程度、中小企業が6割程度で、全体は50%を少し切っておりますが、大企業、中小企業でこういう実績となっている部分が参考になると思っております。

 資料No.3-1に戻りまして、(4)は大企業への助成を見直すことについてどのように考えるのかです。現行については大企業と中小企業については助成率に差を設けております。論点としては、大企業への助成率を更に下げることはどうかということ、また、対象となる規模を大企業に限っては、例えば、30人以上の規模に限定して助成してはどうかということが考えられております。

3ページです。2(1)は事業規模の縮小について、やむを得ないものであるということの確認を強化することについての論点です。現状は、再就職援助計画を企業に作成していただき、ハローワークがそれを受理して内容確認して認定しております。その確認の強化という部分ですが、論点としては、例えば、人員削減を行う部門単位、当然、企業単位や事業所単位ということも考えられるわけですが、そこについては赤字を確認することを要件にすることにより強化できないかという部分です。何をもって赤字がどうかという判断はあるわけですが、例えば、赤字を算定できない場合については、生産量を確認して、もし低減があればそれを要件とするということも可能ではないかという論点です。

(2)は紹介会社に対象者を良質な雇用に再構成するインセンティブを与えることについてどうかという部分です。現状は紹介会社と企業が契約して全額の支払いが完了した段階で助成金が支給される流れとなっておりますので、全額必要経費が支払われておりますので、そういう中でなかなか紹介会社としては良質な雇用という部分での再就職へのインセンティブが弱いのではないかという部分、それから紹介会社が訓練を行った場合の助成制度も現行にあり、それは、1人月6万円程度の定額で加算するというものですが、これが少し弱いのではないかという現状にあります。

 論点としては、紹介会社が良質な雇用に再就職するためのインセンティブとして、同意制度にも関連する部分ですが、ここにアとしてa)b)c)と書いてあります。委託料の支払いとして出来高払いではないのですが、委託料の半分以上を後払いにするのはどうかという部分、紹介会社で訓練を実施した場合、定額ではなくて経費の全額、若しくは一部率を設けて経費を支払うこと、紹介会社が実際に、より賃金面も含めて良質な雇用に再就職させた場合のケースとして、当初の契約よりも5%以上、成功報酬的な部分という要素もあると思いますが、委託料を少し割増しして払うことが考えられないかという論点です。

4ページです。マル2は再就職支援サービスを行う紹介会社の実績等を情報公開させることについてはどうかということです。これは同意制度に関連する部分です。実際に支援会社が行ったサービスの実績等、就職率の公表を義務付けることについてはどうなのかという論点です。マル3は紹介会社が行う訓練です。これも、本人の希望に沿った訓練を行えば、それについて助成する見直しができないかという論点です。

(3)は実際にリストラを行う送り出し企業が直接、職業紹介会社を介さずに職業訓練を行うことについてどうなのかという部分です。現状は企業が直接、紹介会社を介さずに訓練を行うケースの助成の仕組みはありませんので、そういう仕組みを考えてはどうかということです。あくまで、本人の希望に沿った訓練を行う場合を想定しているわけですが、企業が直接、そういう訓練を行う場合の助成を新設してはどうかという論点です。

(4)は実際に対象者を受け入れる企業側へのインセンティブについてどうかという論点です。現状は特に成熟産業から成長産業への労働移動という部分、そういう色合いを仕組みの中では設けておりません。論点としては、実際問題、成熟から成長へという認定といいますか、それを判断することは容易ではないわけですので、例えば、金融機関の経営判断などを活用して個別企業、場合によっては事業所単位、事業部単位、部門単位について少し成長性に着目して助成率等を優遇することはどうかです。

 各論点は以上ですが、今回、見直しを行うに当たっては不断の見直しを行っていくということで、その検証についても国会等でしっかりやるべしという御指摘もありますので、最後に※として「見直し内容については適切に検証を行い、1年後を目途に更に見直すことはどうか」という論点も設けております。事務局からの説明は以上です。

○阿部分科会長 それでは、本件について御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○村上委員 幾つか質問と意見があります。資料No.3-11ページの1(1)についてです。ここでは論点マル1として、再就職支援サービスを委託した紹介会社と異なる会社が「退職コンサルティング」を行って、両者が連絡を取っていた場合についてどのようにするのかということですが、こういうことは不支給にすべきであろうと考えます。

 次の論点マル2です。ここでは、こういうケースが発生しないように抑止力をどのように働かせるのかという点で、幾つか職業安定局長が定める条件を厳しくして、それに同意した会社については労働移動支援助成金の支給対象となる再就職支援サービス会社として認めていこうということだと思います。

 そこで質問です。まず、アは就職率や再就職割合等について紹介会社自身が公表することとしておりますが、どういう場で公表することを考えているのかということ、そして、公表した内容が実際と違った場合はどのようにするのかということです。イは再就職状況を企業へ報告することとあるのですが、これがなぜ盛り込まれているのかという背景をお聞かせいただければと思います。それから、ウは労働移動支援助成金の受給企業、送り出し企業に対して「退職コンサルティング」を行わないということですが、こちらはどのように担保するのかということについて具体策を教えていただければと思います。

 論点マル3は本人が紹介会社を選べるようにするということで、選べないよりは選べるほうがよりよいのだろうと思うのですが、本人はどのようにして選択できるのだろうかと。退職せざるを得ないということに同意された方が再就職支援を受けるとき、どのように紹介会社を選べばいいのか、選択しろといわれてもなかなか材料が乏しいのではないかと思っており、それがどのようにできるのかということについてお考えがあれば教えていただければと思います。紹介会社と結託して退職強要が行われるというケースに厳格な対応をしていくということが必要ですし、それだけではなくて抑止力を強めていくという方向性を推進していただきたいと思っております。その実効性をどのようにして担保していくのかということが課題になっていると思いますので、その点についても御見解を教えていただければと思います。

○阿部分科会長 では、お願いします。

○雇用開発企画課長 まず初めに、紹介会社自身が自分の会社のパフォーマンスを公表する方法です。私どもは、どういった紹介会社がこの労働移動支援助成金に係る再就職支援サービスをやっているのかについて、ホームページ上で一覧表を掲示しております。その中で、自分の所の紹介会社はこういった就職率であるというようなことを記載する欄を設けて、それに公表する、つまり、厚生労働省のホームページ上の一部にそれを公表することを考えております。

2点目は、この数字が違っていた場合どうなるのかですが、就職率などの数字については、私どもは雇用保険のデータでフォローできますので、これをチェックして違っているようであれば、ここは違うということで指導をしていくということがあり得るだろうと思います。そういった同意の条件の中に、それを指導するという趣旨として盛り込んでいけばよろしいのではないかと思います。

 それから、紹介会社が就職させた実績を、委託元である企業に報告することについて、どうしてこういったことを義務化するのかです。実態を見てみますと、紹介会社は初めに前払いでサービスを受託して、その後、御本人の就職に対して努力されているわけですが、最後の最後までフォローし切れないで、例えば本人がハローワークで自ら就職をしてしまったといったような場合については、全部把握し切れていない。そのことを、元請に報告をし切れていない状況が、数字上見えてきております。そういった状況であると、委託した企業としては、本来であればその情報があれば申請をして助成金がもらえるべきところ、その機会を失ってしまっているというような状況もあります。紹介会社は着実に御本人の就職の状況を把握して、企業に報告する義務があるのではないかといった趣旨で、これを設けているわけです。

 それから、退職コンサルを行わないことについて、どのように担保するのかです。これは、室長から申し上げた同意制度の中で考えていくものです。この同意制度の中には、一定以上同意条件に反するようなことが積み重なった場合には、その同意を取り消すというような仕組みも実態上あります。その程度問題ですが、できるだけそういったことのないように担保するという方法が現実的な方法かと思っております。

 それから、御本人がどうしてその紹介会社を選べるようになるのかという話ですが、これは冒頭に申し上げたホームページで情報公開をしておりますので、その紹介会社がどういうサービスをやるのか、そのパフォーマンスはどうであるのかということが公開されますので、それを見て御本人がこの会社がよかろうという判断ができる流れです。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○松原委員 私からは、2ページ目の(2)の退職強要と受け止められるような退職勧奨を行う企業に支給しないことについての部分です。まずは、この退職強要が起きないことが、非常に重要だと思っております。この退職強要があるか、ないかの確認において、事業主経由だけでなくて、別途労働局から本人に直接確認をしていくことは、非常に重要なことだと思っております。

 ただ、取り扱う情報を考えてると、労働者本人の退職ということにもなりますので、極めてデリケートな内容ですから、これは最大限の配慮をしていただかなければならないだろうと思います。例えば、家族には心配をかけたくないということがあり、退職することを労働者本人しか知らないケースも想定されますので、郵送、電話での確認にあたっては、プライバシーの保護が確実に徹底されるようで、是非万全の対応をお願いしたいと思います。

○阿部分科会長 御意見として伺います。ほかにいかがですか。

○高橋委員 今、資料No.3-1を御説明いただいたのですが、余りにも細かいところまでガチガチに規制を強化しすぎているような印象を受けました。やはり、失業なき労働移動というものはとても大切なことで、それを手助けする助成金の位置付けから考えますと、それを余りにも厳しく事前規制をかけるということは、逆に本当に必要な部分が阻害されかねないのではないかという全体的な印象を持っておりますので、余りにも細かいところまで規制をかけるのは私はよろしくないのではないかと思います。

 その上で、具体的に幾つか懸念を述べたいと思います。まず、1ページ目の論点のマル3、本人が紹介会社を選べるようにすることですが、本人の希望する紹介会社に契約を申し出ることとするのはどうか。やはり、企業には経済活動の自由が保障されていますので、どの紹介会社と契約を結ぶのかということも、当然のことながら自由があるわけです。ところが、これが入りますと、企業として望む、望まないにかかわらず、一定の条件に合致して労働者本人がこの紹介会社と、と言ってきたら、契約を締結しなければならないことになり、経済活動の自由の原則を犯すことになってしまいますので、このようなことは適当ではないと思います。

 通常大企業の場合でしたら、複数の紹介会社と契約を結んでいることが一般的ですから、そうしたことをしっかりと労働者の方に周知をしていく活動が大事だと思います。また、もしどうしても何かしたいということであれば、1社というよりは、できれば複数の紹介会社と契約するよう努めてくださいといったようなことをお勧めするといったような対応でしたらまだ分かりますが、原案のままというのはよろしくないのではないかと思います。

 それから、2ページの(2)ですが、そもそも退職強要かどうかを行政は判定することができませんし、司法の判断を待たねばなりませんので、受け止められるかどうかも含めて、なかなか微妙な問題であることが大前提だと思います。現状で、41日から新たなことを始めているわけで、まずはこうした新しい試みについてどのような効果が生じたかを検証することを最初にすべきであって、その検証結果も踏まえずに更なる強化をしていくのは、少しいかがなものなのかなと言わざるを得ないと思います。

 それから、(3)(4)はいずれも大企業に関わる論点です。そもそも、この助成金というのは雇用保険二事業で運営していますから、企業だけが負担している保険料から出されている財源で行われているわけです。その際に、大企業と中小企業に差を設けていくという考え方は理解し得るのですが、大企業だからといってなしにするというような01というのは、雇用保険二事業の趣旨からいっても、私はふさわしくないのではないかと思うところです。

 それから、3ページの2(1)ですが、やむを得ない事業規模の縮小であるかどうかの確認の強化です。やむを得ない事業規模の縮小かどうかは、これは経営者しか分かりません。外部の方が分かることではないと思いますので、現状でよろしいのではないかと思います。(2)の紹介会社に対するインセンティブですが、論点のマル1のアについて、契約条件についていろいろと書いてあるのですが、ここまで民、民の契約内容に介入するということは、いかがなものかと思います。紹介会社に対してインセンティブを設けるのであるならば、やはりそれは成果に基づいてインセンティブを払うことが然るべきであって、アを設けること自体がそもそも疑問であると申し上げざるを得ません。

 それから、4ページの(3)に、送り出し企業による支援対象者の職業能力開発とあります。そもそも、これは再就職先が決まっていませんので、どのような具体的なスキルを講じていったらいいかが見えませんので、そうした中で行うのは余り有効な策ではないのではないかと思います。したがって、むしろ送り出し企業に対して職業能力開発を図っていくというよりは、受け入れた企業において対象者の方の職業能力開発について、更なる上乗せの助成などを行うほうが、遥かに現実的なのではないかと思います。

○阿部分科会長 御意見として承りますが、何かありますか。

○雇用開発企画課長 1点目ですが、御本人が紹介会社を選べるようにというような趣旨で、ここで論点を書かせていただいております。いずれも、御指摘いただいた点は受け止めさせていただいて検討をしていきたいと思っております。1つだけ、契約を強要するとか、事業主が契約をしなければいけないということではなくて、御本人から希望があったところを、その希望を尊重して契約を申し入れるという姿がいいのではないかという趣旨で書かせていただいているということを、コメント申し上げたいと思います。

2点目の、検証が先ではないかというお話です。本人の意思の確認について、いろいろな取組をして、まずそれを検証してから新しい取組をしてはいかがかという話がありました。この郵送や電話の確認というのは、本人が退職強要をされたと受け止めているようなことがあってはならないので、そういったことのないように本人の気持ちをきちんと確認したいという気持ちで、そういった取組はいかがかということで書かせていただいていますので、御指摘については受け止めさせていただいて検討していきたいと思っております。

 大企業について、ことさら廃止するとか、01かということではいかがかという話がありました。例えば、10万円の委託時の助成については、今回大企業について廃止したらいかがかという話がありました。室長からも説明申し上げたとおり、委託開始時分の10万円の対象になった方を100としたときの再就職実現分の支給の割合を見てみると、大企業では4割、中小企業では6割ということで、比較の問題ではありますが、大企業のほうで委託開始時分の効果が余り出ていないこともあり、10万円については大企業のほうはどうだろうかということでお話申し上げているという趣旨です。

 赤字のチェックも御指摘のとおりですが、どうしてもリストラの促進をしているのではないかという批判を浴びかねない面もありますので、そういったことのないようにするにはどうしたらいいのかということで、これも少し考えていきたいと思っております。

 それから、紹介会社と企業との間の契約について、余り行政が介入すべきではないかという趣旨であったかと思いますが、これについても本来紹介会社が前払いで料金を取ってサービスをする中で、必ずしも御本人のサービスを貫徹して、最後の最後までフォローしていっていない面もあるということで、紹介会社にもっと頑張ってもらうということをするときに、この助成金は紹介会社に対する直接の助成金ではありませんので、受給する企業経由で紹介会社に何らかのインセンティブを与えなければいけないという間接的なものを考えなければいけません。そういった意味で、こういった契約についても一定の条件をクリアした場合に割増しの助成という間接的なインセンティブではいかがかということで、趣旨を考えたものです。

 最後の教育訓練の話についても、確かに受入れ先で新しい仕事の能力発揮に資するような訓練を講じるのがよろしいと思います。そちらの受け入れる助成金の制度もありますが、送り出し側についても例えば大企業で勤めておられた方が今後地方へ帰って、あるいは中小企業へ勤めるときに、大企業の仕事の仕方と地方や中小企業の働き方が違うといった場合に、何でも屋さんにならなければいけない部分があるかもしれませんので、そういう仕事の仕方を勉強していくという、職業訓練といっても広い意味で考えることもできるかと思っております。そこも少し幅広に考えていきたいといったことで、コメントさせていただきたいと思います。

○阿部分科会長 では、ほかにいかがですか。

○村上委員 労働側としては、高橋委員の御意見について、もっともだなと思う部分と、かなり意見が違う部分とあります。1点、規制強化はよくないとおっしゃるのですが、そもそもこの労働移動支援助成金をどのように位置付けていくのかということに関わるかと思いますが、やむを得ず退職をせざるを得ない方々、リストラせざるを得ない状況になったときに、少しでも労働者の再就職が円滑にいくように助成しようということが趣旨であると思っておりますので、その目的がきちんと果たされるようなことにしていかなくてはならないと考えます。なぜ本助成金を見直すことになったのかといえば、やはり悪用されるような不適切な利用があったからということがあるので、そこを見ずして規制強化はよくないということではないのではないか。やはり、必要な部分は少し抑制的にも悪用されないように、規制を強化していくべき部分は強化するべきだと思います。

 それから、紹介会社を労働者本人が選べるようにすることについてですが、紹介会社との契約主体が会社だということは確かにそうではあるかもしれませんが、これは多分国会などの議論にもあったように、企業と契約した職業紹介会社だけで再就職支援を受けるのではなくて、むしろ労働者にバウチャーを渡したほうがよいのではないかというような議論があって、それに対応した中で工夫をされた事務局からの提案ではないかと考えております。会社との契約を縛るのが問題だというのであれば、バウチャーのことも再度検討されてはいかがかと思っております。

 それから、2ページの(3)の委託開始時分の10万円の話です。委託開始時分の10万円については、以前からも、また前回も私ども労働側としては、委託開始時分の10万円はもうなくしてしまい、再就職を実現した時点での支給に一本化すべきだと申し上げてきました。大企業と中小企業で差を付けるのはおかしいというか、大企業だけなくしてしまうのはおかしいということであれば、私ども労働側としては、中小企業も含め、いっそのこと委託開始時分10万円をすべてなくしてしまえばよいのではないかと。その代わり、再就職支援が実現したときの分を手厚くするということもあるのではないかと考えております。差し当たり、以上です。

○阿部分科会長 その他、いかがでしょうか。

○小野委員 極めてシンプルな疑問点があります。資料No.3-11の論点のマル1です。今回、このように変えようと思われた根本的なものです。再就職支援サービスを委託した紹介会社と異なる会社等が、退職コンサルティングを行い、両種が連絡を取っていた場合の取扱いをどう考えるかと書かれています。ここを規制すると、随分多くの会社が規制に関わってしまうのではないかという疑問を持っております。退職コンサルティングと括弧書きで書いていますが、恐らく多くの会社には経営コンサルティングみたいな人がいたり、あるいは社労士みたいな人が経営の相談に乗ったりとか、人事労務の相談に乗られたりしていると思います。そういう方が経営人の相談を受けて、人員削減をしようという話になったときに、会社の人よりもそのような方のほうが人材ビジネス会社を知っているからといって、悪意はなくて、では私が紹介しようかというようなことで口利きをするようなことは、私は結構起こるのではないかと思っているのですね。

 そうなったときに、これを一概に全部アウトとするのか、それとも何らかの手順ですね。社労士は、経営人にこういう会社がありますよ。その代わり、その会社には私からは言えないので、その会社にはあなた方からアクセスしてくださいとするのか。何か、その辺りのうまい回避策を考えて示してあげないと、ちょっとまずいのではないかと思いました。会社側に聞きたいのですが、こういうことは大丈夫なのでしょうか。

○阿部分科会長 誰に質問しているのか分からないのですが。

○小野委員 厚労省でもいいのですが。

○雇用開発企画課長 これが出てきたもともとの趣旨は、職業紹介会社は求職者の方の再就職を実現させるのが本来の仕事であるなかで、その一方で、求職者、失業者の方を作り出すようなことをやっていたとすると、これはいわばマッチ・ポンプのようなもので、いかがなものかというところが出発点でした。こちらで人を辞めさせることを促進して、出てきた失業者の方を私どもが受託してサービスして、そこで料金を取るということはいかがなものかという議論です。それを、41日から不支給の対象としてきたわけです。

 そういう中で、再就職支援サービスをやる会社と、人員削減を進めるような会社が別々であったら、それは今お話があったように、そこまで縛るのはいかがかということは確かにそうだと思います。それが一体的なものとして動いていたとすると、これは不支給のほうに持っていくということが妥当ではないか。ただし、どうやって両者が一体なものかということで判定するのかは、運用上いろいろ問題があるわけですが、ここでは連絡を取っていた場合と書いてあります。本来、不支給という要件を決めた趣旨にのっとって、運用については考えていかなければいけないと思っております。

○玄田委員 大変難しい論点で、小野委員がおっしゃったこととかなり共通することを思っておりました。別の言い方になるということで御理解いただきたいのですが、1つ何か重要な論点があるかなということで御意見を申し上げます。うまく言えるか分からないので、仮想的に私が事業主であると。しかも、やむを得ない事情によって、大規模な事業縮小をしなければならなくなった事業主であるとします。そして、幸いなことに、これが初めての経験であって、全くそういうことに対するノウハウが十分ではない。もちろん社労士や経営のコンサルティングの方にも相談をしているのだけれども、これだけ大規模なことに対しては全く初めてであるという状況だとします。今度は、初めて再就職援助計画を作ることになろうとしているわけですが、いかんせんノウハウも経験もないと。その場合に、どうやってこれをやっていくのかを調べてみたときに、資料3-3にある退職コンサルティングという言葉に初めて思い当たったと。それで、現在の労働移動支援助成金については、退職コンサルティングに関して非常に社会問題になったがために、いろいろな取り決めがあるということが初めて分かったと。そのときに、もちろんこのマル2、マル5にある退職コンサルティングの説明のうちの、まだ退職者が具体的に決定する以前の段階で、今思い悩んでいるとします。

 何を思い悩んでいるかというと、そこにあるマル1の実施を提案することについては、もう自分で決めたと、やらなければいけないと思っている。しかも、できるだけ自分の大切な従業員の方の未来を考えて、退職強要はしたくない、できるだけいい形で送り出したい、それが一応良心的な事業主だと思っていただきたいと。ただ、一番心配なのは、マル2、マル3です。つまり、どのような制度設計をすればいいのかについて分からない。ソーシャルワーカーに相談しても、十分納得いく形では自分ではまだ分かっていないと。もっと言えば、マル3の実施方法に関してもよく分からないと。こうなったときに、それが退職強要になってしまわないのかということについて、非常に悩みを抱えると。つまり簡単に言うと、誰に相談すればいいのかが全く分からないということになってしまわないようにすることが、ここにある全ての論点を含めてとても大事なことであるように思います。

 何とか、あとからはもちろん再就職支援サービス会社にも契約しようと思っているけれども、どうもそれとは別の会社に相談しなければならないようだということで、それとは全く違う経営であるといったような所を探すことにはなるのでしょう。ただ、もし私が経営者であるならば、何で再就職支援会社と私が自分で探してきたコンサルティング会社が相談し合ってはならないのだと思うはずです。つまり、実際その制度を作った上で円滑に運用されるためには、何かの形で退職再就職支援サービス会社と密接に連絡を取り合って作られた制度が、ある程度従業員が次のステップに進むためには、やはり連絡を取り合って密にこの仕組みをやっていかなければいけないと当然思うはずで、そこでもし仮に連絡を取り合っていたなんてことが事後的に分かった場合に、大変なトラブルになったとすれば、私が決して悪意があるわけではない。それについて、何かマッチ・ポンプしたいわけでもない。ただ、それによって一番被害を被るのは、大切な従業員ではないかと思い悩むのではないかと。では、これを分からなくてハローワークに相談に行ったら、退職コンサルティングをハローワークがするわけにはいかないと言われかねないか。それで、社労士の人たちもそういうことに何かコンサルティングを強要したとなって、あとで何かのレッテルを貼られて自分たちがそういうものを受けるのが嫌だとなると、全く孤立無援の状態に置かれてしまうのは、良心的だが経営権のない事業主の人が、全ての責任を持ってやらなければならないか、非常にリスクを取ってその人たちに、場合によっては非常に危うい相談を受けるような人たちが、結果的にバックをしてしまうことにならないかということが、一番の不安です。

 多分、それはここに書かれている論点と全ていろいろな形で関わってくると思うのですが、先ほど高橋委員がおっしゃったように、いろいろな意味で規制をすることは大事ですし、村上委員がおっしゃったように、悪意の利用がないようにすることは大事です。一番に考えるべきは、誠実でありながら残念ながら経営の事情でこういうものをやらなくなってしまった経営者の方々が従業員を思う気持ちのときに、制度設計をするときに誰に本当の意味で相談を受けられる体制をどう作っていくのかが明確でないと、どの論点についてもうまくいかないのではないかと。これはどのような論点として表現すればいいか分かりませんが、一言言うと誰が必要なコンサルティングをこの制度を見直した場合にするかということを明確に設定しなければならないのではないかということを感じた次第です。

○雇用開発企画課長 今のお話の中で、紹介会社と退職コンサルをやる会社のそれぞれ2つの会社があったとすると、そのときに、企業がその2つの会社が連絡を取り合っているということがあらかじめ見えて分かっていて、そこで退職コンサルも受け入れ、紹介サービスもお願いするということであった場合は、その両方の会社が1つのものと見なされて不支給とする扱いがよかろうと思っています。善意でA社のほうに紹介をお願いし、全く違っていたB社のほうに退職コンサルをお願いし、全くお互い関係ない会社だと思っていたけれども、あとで分かったことだけれども、A社とB社は後ろで連絡を取り合っていたという場合までを不支給とするのは、酷ではないかと思っています。そこは、企業のほうがそれを知っていたかどうかで判断せざるを得ないのではないかと、運用上そのように今のところイメージはしております。

○玄田委員 一部その説明で理解する部分と、若干気になるのは、私はどちらかというともう一歩踏み込んで、今の御説明でいうと、A社とB社が密接に連絡を取らなければならないと思っています。1998年から2001年の一番多かった早期退職、大規模退職があったときにも、やはり大事な論点はここでいうマル2、マル3の制度設計と運用がいかにうまく進むかであるわけです。結果的にA社とB社が連絡を取り合ったかどうかではなく、今でいくとコンサルティングと実際にそれを行う所が密接に連携を取らないと、必ずトラブルが起こると。そこがうまくいかないと、多分先ほどの論点で言った退職強要と受け止められたかというと、恐らく全ての人が退職強要を受けたという状況になります。それは、A社とB社が、きちんとお互いが納得いくような状況を作っていなければならないからであって、連絡を取り合っていたか否かの問題ではなく、マッチ・ポンプではあってはならない、利益のための目的であってはならないけれども、先ほどの言い方をすれば、真に従業員のために、再就職をする人のためにA社とB社が連絡を取らなければならない、それが社会的に公正であり、合理的なことである場合に、それを決して躊躇させるような体制であってはならないということを申し上げたいと思った次第です。

○阿部分科会長 どうぞ。

○岩村委員 先ほど来、皆さんがおっしゃっていることなのですが、この仕組みというのがものすごく微妙な制度であると同時に、誰のための制度かが今一つよく分からないところがある仕組みだと思っています。

 先ほど高橋委員もおっしゃったように、これは二事業でやっているので、要するに負担は事業主の負担でやっていて、そういう意味では事業主全体で支え合う仕組みとして作っているというところはあるのですが、他方で誰がベネフィットを受けるかというと非常に難しくて、第一に、個々のこのサービスを利用する事業主はどうかというと、恐らくこの事業主はこの仕組みを使うことによって、事業の立て直しを図れるということにより、その意味での事業主にとっての利益はあるでしょうし、またこの仕組みを使うことによって、例えば本当に整理解雇を行うことにより発生する様々なコストを回避できるとか、そういう点での利益を受けるというのはあると思うのです。

 もう1つは、これは労働者にとっても利益になる部分があるというのは否定できないように思うのです。これがうまくいけば、一方では会社のリストラの対象にならない人たちにとっては雇用が確保されるという意味において労働者の利益になる部分がありますし、他方で残念ながらリストラされてしまう人にとっても、きちんとしたものであれば、いろいろな再就職支援が受けられるという意味での利益が、労働者にも発生するだろうと。

 もう1つは、実は雇用保険本体にも利益が発生するわけです。結局失業給付を出さずに再就職が図れるということであれば、それは失業保険本体の財政にとってもプラスという方向で働くだろうというのがあります。

 もう1つ実は利益を受けるのは、ここで登場してくる紹介会社であって、紹介活動を行うことによって、当然これは営利会社ですから、そこから利益を受けるというような仕組みになっていて、本当のところ、誰がこの仕組みから利益を受けるのかというのはやや微妙なところがあります。

 それと、先ほど村上委員もおっしゃったように、労働者にとってみると若干微妙な仕組みです。一方では、ひょっとするとリストラを促進しかねないところはあるわけですが、他方で再就職のお世話をきちんとやってくれれば、それはそれでいいという面が労働者の側にもあるということになります。

 その観点から幾つか考えてみますと、第一に、今問題になっている退職コンサルティングと支援サービスとの関係です。なぜこれを禁止しなければいけないかを考えていくと、余りはっきりしない気がして、難しいところがあるような気がするのです。

 というのは、先ほど玄田さんがおっしゃったように、両者がきちんと連携を取っていないとうまくいかないということは起こり得ると思います。しかし、それでも駄目だということがあるとすると、法律家の観点からすると、退職コンサルティングをする場合も、その契約の相手方というのは事業主であり、再就職支援サービスをする会社の契約の相手方も事業主である。そうすると、この2つの会社というのはいずれも事業主のために、つまりそのためにきちんと契約上の信義誠実にのっとって事務を履行しなくてはいけないはずなのです。しかし、両者がもしその義務に反するような形で事務を履行するとすると、その被害を直接的に被るのは事業主であり、場合によってはそこから派生して労働者に被害がいくことになる。一種の利益相反状況というのが、この2つの会社と事業主との間で発生し得ると思うのです。

 つまり、誰のためにサービスを提供しているかといったときに事業主のためにサービスを提供しているのではなくて、自分たちのためにサービスを提供するということが起こり得る、だから駄目でしょうというのが1つの理屈と思います。

 そこからいくと難しいのは、いわば連絡を取り合っていたというのを駄目だという範囲をどうやって設定するかというのが、非常に難しいと思うのです。そうすると、典型的に、今申し上げたようなそれぞれの会社と事業主との間で利害の抵触が起こるようなケースを駄目だとするしか、制度設計上ないのではないか。あとは、もちろん一般条項として、連絡を取り合ってマッチ・ポンプになっているようなものを設けるとしても、それは事実認定は非常に難しいです。そうすると、駄目だというとすると、定形的なものだけを駄目だというしかないのではないか。

 そうすると、一番簡単に考えつくのは、グループ会社で両者が連結でつながっているとか、あるいは親会社と子会社とか、そういうようなものを想定するとか、そのようにしないと実際上、全てのケースについていちいち調べていたら切りがないという気がするし、そういうことを考えざるを得ないのかなと思いながら考えていたところです。

 もう1つは本人確認についてです。先ほど本人確認表とはどのようなものかを一生懸命見ていたのですが、幾つかの項目について、「はい」「いいえ」で答えるスタイルのものになっていて、退職強要がありましたかというのも「はい」「いいえ」で確認することになっています。これが本人の自由意思によるのかどうかというのを担保しようとすると、結局事業主の支配の及ばないところで、この本人確認表を作成してもらうしかないのではないかという気がします。本当にやろうとするとです。

 ただ、それをやるだけの事務コストを掛けるのはどうかという議論が一方であるでしょうし、大事な問題だから事務コストを掛けてでもやるべきだという議論はあると思います、そういう意味でどこまでこれを徹底してやりたいのかということとの兼ね合いで、確認の方法というのは考えざるを得ないのかなと思います。

 電話というのは、先ほど組合側の松原さんが指摘されたように、本人のプライバシーの問題など微妙な問題もはらんでいますし、郵送するとなると返ってこない可能性もありますし、なかなか掛けるべきコストとの関係でどれだけの制度的効果があるのかというのは、考えると難しいかなと思います。現在の本人確認表を前提とすると、余りうまい手はないのではないかという気がしていました。

 もう1つは大企業の問題です。これも先ほどの議論と関係していて、一体誰がベネフィットを受けるかという問題と関わると思います。大企業の場合は確かに財力があるかもしれない、資力があるかもしれないから、助成なしでもある程度のサービスを自らやるという可能性もありますが、他方で助成がないならやらないという可能性もあります。そうすると、単純に退職勧奨でもって辞めていただいて、あとは、さようならと。あとは自分で頑張ってくださいとなってしまうということにもなりかねません。大企業の人は、それでいいのだということになるのか。大企業の労働者はそれでいいのですという理屈になるのか。それは先ほど、誰がこの制度からベネフィットを受けているかということを考えないといけないかなと思いながら、お話を伺っていました。

 最後に、やむを得ない事業規模の縮小等であることの確認の問題です。赤字かどうかの確認をしようとすると、多分財務諸表やバランスシートなどが読めないと、確認はできないのではないかと思います。そうすると、そもそもこの手続の中で財務諸表など、そういったものを申請時に全部出させるのか。仮に出させたとして、それを一体誰が読んで判断するのか。実際に動かそうとすると、そういう問題を考えなくてはいけないように思います。現実問題としては、非常に難しいのではないかという気がしながら、お話を聞いていました。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○森下委員 今、学者の先生とか、大企業の方のいろいろな議論を伺っていたのですが、問題点はたくさんあると思うのですが、この法律の趣旨というのも、最初にできた経緯についても私も分かりませんが、資料No.3-83ページのように、「平成26年から成熟産業から成長産業への円滑な労働移動」という大きなタイトルが付けられたためか、予算がかなり大きく変化して、今に至っております。このうち、実績を見させていただきますと、例えば平成27年度ですと842億という数字に対して、支給が158億で、約20%に満たない数字になっています。それと同時に、私も中小企業、小規模企業の立場から言いますと、そこに使われている金額は更に少なくて、5400万円、全体の約6%程度というように見られます。

 それと同時に、せっかくこの助成金がいろいろな仕組みの中で使われた後、実際に残念ながらリストラをされた方々が再就職をした場合に、この資料の6ページにもありますが、例えばフルタイムの労働者、どういう状況を指しているのかよく見えないのですが、正社員なのか単純に期間の定めのない労働者なのか分かりませんが、これが約6割です。その他の方が逆に4割もいらっしゃる。同時に8ページの資料でいくと、賃金額の割合でも、例えば100%以上の方というのは本当に数えるばかりで、ほとんどの方が結局大きな給与の減額に遭遇しているということで、この制度そのものが1000にする方を救う制度なのか、それから考えるとこれも致し方ない数字かもしれませんが、もう一回この制度そのものを、今の御議論の中で見直していく必要があるのかなと個人的に感じたところでした。余計な意見でした。

○阿部分科会長 玄田委員、どうぞ。

○玄田委員 今の森下委員の御意見に全く賛成です。先ほどの資料No.3-82ページを見ていただきますと、こういう大規模な離職計画が短期間に集中する傾向もあるということで、先ほどの1998年から2002年とか、リーマンショック直後です。つまり、こういう状況というのは、ある一定期間に集中して膨大な件数が起こり得ることが今後予想されたときに、一件一件を慎重にやむを得ない事情がどうかとか、そこで両者に連絡を取れないかとか、慎重に判断する一方で速やかな移動ということを考えた場合には、非常に難しいのですが、ある程度の期間を定めてそれぞれに対して処理していくようなスキームがないと、先ほどの岩村委員の言葉で言うと、あらゆるステイクホルダーが不便を被ってしまいます。

 さらに、輪を掛けて難しいことを言うのを承知の上で申し上げますが、これは、ある程度余裕のある状況では時間を掛けて処理すべきことであるけれども、この事案は緊急性に対する助成金であることを踏まえた上で、100%が納得ではないにせよ、ある部分でルールとして対応できるようなスキームを組めるかということも踏まえて考えていかなければならないということを、今の森下委員の御指摘を伺って思いました。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○松原委員 先ほどから私も意見を聞かせていただきまして、森下委員がおっしゃった根本的な見直しというところも、本当に大事なことになってくるのかなと思いますし、先ほど岩村委員がおっしゃった誰のための制度なのかということを考えてみること、これももう一回見直さないといけないのかなとも思います。また、更に緊急度が増しているときの対応ということで玄田委員がおっしゃったところも、正にそのとおりだと思っています。

 この制度の趣旨は何であったのかということで、もう一回よく考えると、事業規模が縮小して経営が立ち行かなくなった企業、そこで働く労働者を救うための支援制度であったと思っていますので、本制度を支援する必要性のない対象にまで支援をする必要は全くないと思っています。

 そういう意味でいうと、これの3ページの(1)の「やむを得ない事業規模の縮小であることの確認」は必要になってくると思っていますし、むしろ厳格化をしていかなければならないと思っています。また、そういう事業規模を縮小せざるを得なくなる状況というのは、経済情勢もあるでしょうし、もしかしたら自分たちの事業の失敗ということもあるのだと思うのですが、企業が労働者を雇って、そこで働く人たちをしっかりと大事にしていく、これが大事なことであって、企業は雇用した従業員に対する雇用責任を安易に放棄してはいけないと思いますし、こういった制度を使うことによって回避していくということを求めてはいけないのだろうと思っています。

 ですから、この制度をもう一回見直すとともに、企業が本制度を使うのであれば、制度を使わなければ労働移動の実現が難しいないという所に限定することが必要になってくるのではないかと思っています。これは私の意見として申し上げさせていただきたいと思います。

 もう1つは質問がございます。そもそも事業規模を縮小することを、本助成金の運用にあたりどのように今まで判断されてきたのかという点を教えていただけないかなと思います。どういう所で縮小したと判断をしてきたのか、ということです。

○雇用開発企画課長 これは再就職援助計画の中に事業の規模を縮小するという中身を書いていただいて、そのことについての必要な証拠書類も出していただくことを必要に応じてやっており、確かにその企業が事業規模の縮小があったかどうかは判断していますが、それが妥当であるかどうかまでは判断はしないというのが、再就職援助計画の認定の現状ということです。

○松原委員 ただ、そうすると妥当かどうかの判断までは客観的な事実をもってできていないということで、それが今回あったような問題にも派生しているのだろうと思います。先ほどから申し上げているように、支援が必要な企業に対して使うべきものであると思いますので、そういったことが必要でない所を明確にしていく、厳格化していく。そのためには、もう一度、事業規模縮小の判断基準について再検討していく必要性があるのではないかと思っています。

○雇用開発企画課長 補足で御説明申し上げますが、参考資料No.3-5です。この助成金制度が誰のための助成金制度であるのかということについて、その議論の参考になろうかと思います。ここに、そもそものこの助成金の根拠が掲げてあります。

 雇用対策法の6条ですが、「事業主は事業規模の縮小等に伴って離職を余儀なくされる労働者について、その求職活動の援助に努めなければいけない」とありまして、これが全ての出発点で、事業主がやむを得ず離職者を出さなければいけないときに、御本人のために再就職先を援助してあげるというのが、法律上で努力義務として課されていまして、ここから出発するわけです。

 それに基づいて第24条で、どういう再就職の援助をするのかを計画に書いていただいて、それをハローワークに提出することが第24条の中身であります。それに基づいて第26条で、この再就職援助計画の対象になった方に対して、「企業が再就職の支援をするのであれば、それに対して必要な助成及び援助を行う」とありまして、これが労働移動支援助成金の根拠になります。

 ですから、基本的にはこの労働移動支援助成金というのは、この雇用対策法の第26条に基づいて、事業主の行うべき再就職援助の措置を支援するという中身から出発しているわけで、本助成金が企業のためでもあり御本人のためでもありという部分でいろいろと御議論はありましたが、基本的にはただいま申し上げたところが、本助成金の本来の根拠であり目的であるということを御理解いただければと思います。

○阿部分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○村上委員 まず、退職コンサルと再就職支援サービスとの関係については、岩村委員の整理でかなりクリアになってきたのではないかと思います。そもそも、リストラをせざるを得ないということを企業が意思決定する前に、そういうことをしないかということを働き掛けた会社が再就職支援サービスを受託することを禁止しなければならないということで、その措置を行ったところですが、それだけでは十分ではないのではないか。性善説を取るのか性悪説を取るのかということになれば、数社で結託すれば受注できてしまうのではないか、悪用してしまうのではないかということで、事務局からこういう提案が出てきているのだと思います。

 そうなると、どのようなケースに当てはめていくのか、どういうことをケースとして禁止していくのかを列挙して書いていく、考えていくということも大事ですし、その際に、退職コンサルティングをいつ行ったのかという時期も、重要になってくるのではないかという感じがいたしました。

 それから、資料No.3-13ページで、先ほど高橋委員から、(2)の紹介会社との契約の在り方について細かく言うのはどうかという御指摘がありましたが、正にそこの部分は、前払いをしていると良質な雇用に再就職させることができないということ自体が問題ですので、そのように良質な雇用に再就職させるインセンティブが弱いケースに、こういう助成金の対象になることがどうなのかということがあります。ただし、細かくいろいろ規定して、運用していくのがいいのかどうかという点は考えなければならないと思っております。

 論点1としては、良質な雇用に再就職させることができた所には優遇する、と書いてあるのですが、優遇するのではなくて、良質な雇用に再就職させることができなかった所のほうを引き下げていくということも、インセンティブとして考えられるのではないかと思いますので、その点も御検討いただけないかと思います。

○阿部分科会長 ほかになければ、もう少し時間があるので私も少し意見を言いたいのですが、よろしいでしょうか。

 私は本日、前半は雇用調整助成金、後半が労働移動支援助成金ということで、前から裏腹の関係にあると思っております。雇用調整助成金も労働移動支援助成金も、根本は経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が利用する助成金であって、その経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされたという事象は同じなのですが、そこから次のステップで雇用調整助成金にいくのか、あるいは労働移動支援助成金にいくのかという判断を、経営側が労働組合等と協議をしながら進められていっているのではないかと思います。

 そういう意味で、どちらの助成金にしても、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされることが大前提としてあるので、その確認は厚生労働省としても必要だろうと思うのですが、問題は、雇用調整助成金を使うのか労働移動支援助成金を使うのかという判断について、厚生労働省が判断できるかどうかという問題はあると思います。それをどのように仕組みの中に落とし込んでいくのかという点が最大の問題だと、皆さんの意見を聞きながら思いました。

 当然、労働移動支援助成金になれば、小野委員や玄田委員がおっしゃるように、業者間での連絡を密にしないと再就職支援はうまくいかないと思います。ですので、どの助成金を使うのかといったところを明確にしていって、問題のないようにしていくかといったところが、最も大切なのかなということで、それを見直しのところでお考えいただければ、いろいろと今回は論点が出てきましたが、現段階で考えておくべき論点ではないようなところもあるのかなという気がしました。

 松原委員が手を挙げていますので松原委員の御意見もお伺いしますが、それも含めて今日の御意見が今後の議論につながるように、整理していただければと思います。

○松原委員 本日の論点で、まだ話題になっていなかった部分で少し意見をと思っているのですが、よろしいですか。

○阿部分科会長 どうぞ。

○松原委員 資料No.3-14ページ(3)の「送り出し企業による支援対象者の職業能力開発を図るということについてどう考えるか」です。新たな助成スキームが提起されていると思うのですが、ここで懸念をするのは、委託開始時分10万円の助成金が形を変えて継続されてしまうのではないかという点です。

 助成金の趣旨を鑑みても、移籍後に必要とされる知識、技能の習得のために訓練を行うことが筋なのだろうと思っています。本人の希望に沿った職業訓練を行う場合に支給するということで想定していますが、本人が受けたい訓練を受講したからといって、結果として移籍できなかったとか、質の高い雇用に就けなかったというケースも発生し得るのではないかと思います。新たな助成スキームを追加することについても、少し慎重に考えていく必要があるのではないかと思っております。

○阿部分科会長 その他に御意見はいかがでしょうか。

○清水委員 先ほどから判断ということが出てきておりますが、資料No.3-14ページの(4)の論点のマル1の矢印の所にも、「いわゆる成熟産業、成長産業の認定」というところで、「金融機関等の経営判断を活用」ということが出ております。

 先ほども少し意見がありましたが、こういった判断基準で助成要件を決めていくことが、ほかの施策にもあるのかないのかというところを、次回以降で結構ですが少し説明を頂きたいと思います。

○雇用開発企画課長 あるのかないのかという観点でいきますと、これが初めてのことなので、ありません。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

 時間もまいりましたので、本日の御意見を踏まえて再度検討していただきたいと思います。今後の進め方については、改めて事務局より皆さんに御連絡させていただきたいと思います。

 本日予定されている議題は以上で終了となりますが、特に御発言があればお願いいたします。なければ、本日の分科会はこれで終了いたします。本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規定第6条により、分科会長のほか2人の委員に署名を頂くこととなっております。つきましては、労働者代表の村上委員、使用者代表の吉岡委員にお願いしたいと思います。本日もどうもありがとうございました。


(了)

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