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2016年9月30日 第8回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

職業安定局

○日時

平成28年9月30日(金)14:00〜16:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)3階 共用第6会議室


○出席者

川口 大司 (東京大学大学院経済研究科教授)
神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
水町 勇一郎 (東京大学社会科学研究所教授)
皆川 宏之 (千葉大学法政経学部教授)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・諸外国の裁判例について

○議事

○柳川座長 ただいまから、第 8 回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ御参集いただき誠にありがとうございます。

 議題に入る前に事務局から資料の確認をお願いします。

○河村企画官 お手元の資料ですが、資料 1 「欧州諸国 ( フランス・ドイツ・イギリス ) の裁判例について」、資料 2 「欧州諸国 ( フランス・ドイツ・イギリス ) の裁判例」、資料 3 として < 参考資料 > を用意しております。お手元におそろいでしょうか。

○柳川座長 それでは、議題に入ります。今回は諸外国の裁判例について御議論いただきたいと思います。事務局より資料の説明をお願いします。

○河村企画官 資料の説明に先立ち、去る 9 27 ( ) に総理を議長に、塩崎厚生労働大臣と加藤働き方改革担当大臣の 2 人が共同議長代理の、働き方改革実現会議が立ち上がっております。両大臣で引き続き連携して検討を進めるということになっておりますので、その旨、報告を申し上げます。

 まず資料 3 の参考資料です。改めて今日の議題である諸外国の裁判例について、今回レビューする意義を簡単に振り返ります。 1 ページです。我が国の同一労働同一賃金に関する主な法制度として、パートタイム労働法と労働契約法の条文があります。それらにおいて、基本的にこの表の中段の左側にある (1) 待遇の「違い」の合理性に関する「考慮要素」が挙げております。

 まず、法令上、 1 「職務内容」、 2 は「人材活用の仕組み・運用」と呼び名を付けておりますが、実際に条文に書かれている姿としては、「職務内容・配置の変更範囲」、 3 「その他の事情」という 3 点が待遇の「違い」の合理性を判断する場合の「考慮要素」になっております。図の右側ですが、これらが「正社員と同じ」であれば「同じ待遇」でなければならないし、それらが「正社員と違う」のであれば 1 3 の事情を考慮して不合理な待遇差はあってはならない、「不合理」な待遇差は禁止しているというのが日本の法制です。

 日本の法制における赤字で書いている 1 3 に当たるものが、 EU ではどのように処理されているのかということは、図表の下ですが、 EU の場合は、原則的に客観的な正当化事由がない場合は、パートの方も有期の方も正社員よりも不利益な取扱いは受けない ( 原則禁止 ) とした上で、客観的な正当化事由がある場合は例外的に不利益取扱いが許容される。では、客観的正当化事由は何なのかということは、具体的には司法判断になっています。こういう基本的な枠組みに基づいて、実際に司法判断においてどのような要素が待遇の「違い」の合理性に関する「考慮要素」、日本でいう 1 3 に当たるものになっているのかということを今回改めて調査したという次第です。

 後ほど、資料 2 に基づいて実際に調べた裁判例の概要を報告しますが、全体を概観した事務局の整理が、資料 1 1 ページです。基本的に 3 カ国とも法令上は「同一労働の比較対象者」の存在を前提にして、正当化事由がない場合の不利益な取扱いを禁止するという形を原則形として取っております。イギリス以外のフランスとドイツにおいては、法の適用、司法判断の場面において、必ずしも「同一労働の比較対象者」を厳格には求めておらず、争われている個別の待遇差について、正当化事由の有無や合理性の有無を判断する傾向になっています。括弧書きで書いているとおり、フランスもドイツもそのような判例法理が蓄積されている状況です。

 一方で、概観すると、イギリスに関しては雇用形態間の待遇差の正当性に関する裁判例はほとんどありません。これまでも、神吉先生から御指摘いただいておりますが、イギリスの場合、「同一労働の比較対象者」かどうかということを比較的厳格に判断しておりますので、入口の「同一労働かどうか」というところで、「同一労働ではない」という判断がなされて救済対象から外れていくケースが実際には多く、そういう意味では待遇差の正当性に関する事例が多数蓄積されているという状況にないということが、事務局として調べた結果の概観です。

2 ページです。後ほど個別の裁判例を見ていただきますが、事務局が判例をたくさん見た結果、判例から得られる示唆のたたき台として用意したものです。 1 つ目の○です。まず、待遇差の正当性判断に際しては、日本で言うと先ほどの参考資料p1の 1 3 の事情に当たるものですが、これらの欧州諸国の裁判例においても、かなり多種多様な考慮要素が勘案されています。日本でも考慮要素としてあるような 1 職務内容、 2 キャリアコース ( 職業能力向上のための特殊なキャリアコースでの経験の蓄積 ) 3 職務の成果、 4 職務遂行能力に関するもの、 5 労働市場の需給状況等、いろいろな考慮要素が勘案されております。

2 つ目の○です。ただし、これらの考慮要素が何か 1 つあれば、いろいろな賃金類型の全ての待遇差が合理的でオールオーケーとされるわけでは決してなくて、あくまで個々の賃金なりの性質・目的に応じて判断されていると言えるのではないか。 3 つ目の○です。具体的には、個々の待遇の性質・目的と、労働者間における考慮要素の「違い」との間に、それぞれ合理的な対応関係があるのかどうかということが、個別に判断されているといえるのではないかと整理しております。

 資料 2 に基づいて、個別の主な裁判例の紹介をいたします。裁判例の調査の前提としては、表紙の下に括弧書きで書いておりますが、フランス・ドイツ・イギリスの 3 か国を対象にして、基本的に、主要な日本語としての国内論文、それから、 3 か国の主要な労働法の教科書で引用されている最高裁判例を中心に調査しております。調査したものの中には様々なものがありますが、基本的には待遇差の正当性の判断を中心に抽出しており、ただ、必ずしも待遇差の正当性の判断が直截的になされていなくても、我が国への示唆があると考えられるものは載せております。

1 ページです。 1 ページ以降は、フランス・ドイツ・イギリスという国の順番、さらに労働者の雇用形態がパート、有期、派遣、その他と雇用形態で分けた上で、さらに同じパートタイムの労働者の中であれば、訴訟対象という欄がありますが、どういう給付について争われたものなのかという順番で並べております。

 整理番号 F1 は、基本給について争われたものです。フルタイムで働く人がパートで働く同僚と比べて、フルタイムのほうが低い報酬だということで、フルタイム側が訴えたという事案です。労働の質に関して考慮要素になり得るということを前提とした判断がなされています。 F3 は、一定の業績を達成した労働者に対して支給される手当に関して、ハーフタイム労働者と書いておりますが、労働時間が半分の人であれば、フルタイムの人の半分の数値に到達したら半分の手当を支給しなさいと判断しているものです。

F4 は、年末賞与と訳されておりますが、賞与の性質が日本におけるボーナスと同じようなウェイトのものなのかは定かではありませんが、年末賞与について、パートの人も比例的に享受しなければならないとした。 F5 は、パリ勤務手当という手当について、フルタイムだけに出すことが「慣習だ」という理由だけでは正当化されないというもの。 F6 は、報酬を歩合給から固定給に変更する際に、フルタイムの人に生じた不利益を補償するために設けた手当に関して、パートの人により低額の手当しか支給されなかったが、不利益が生じる度合いにおいて同じ状況だったとはいえないので、同一労働同一賃金原則に反しないと判断された。

F11 は、 35 時間を超えて勤務した人の負担に報いることを目的として休暇を付与しているという場合、もともと短い労働時間の人で 35 時間を超えないという人は、休暇を付与される権利を主張することができないと判断した。 F12 は、長年勤務したということに対して付与される休暇の場合は、パートタイムの人で勤続期間が同じだが労働時間は短いというケースであっても、同じように算定されるべきであると判断した。

3 ページです。有期の方の裁判例です。 F15 は、無期の方の代理として有期で入った労働者間において報酬の差があったという場合、このケースでは有期の方が無期の方よりも能力面で劣っていたので、能力について考慮要素として待遇差が合理的だと判断された。 F16 は、同じく能力の判例ですが、同じ職業格付けで同じ仕事に就いている場合、報酬が同じでなければならないと、能力を考慮要素にしているものです。

F17 は、保育園長が病気休暇に入ったので、臨時代替として雇用された有期の園長で、有期のほうがより高額だったというケースにおいて、有期の人を緊急に採用する必要性があったので、そういった採用の緊急性のような事情は賃金差を正当化する事由になると判断された。 F18 は、期間の定めのない雇用の人と、番組があるときだけ雇用される有期の方を比較したときに、有期のほうが高くて無期のほうが低いというケースにおいて、法的状況の違いという言葉で言われておりますが、待遇差を正当化する事由になり得ると判断された。 4 ページです。 F19 は、在職期間 ( 勤続年数 ) の違いを考慮して差を設けることが合理的だと判断された。

5 ページです。派遣労働者の判例です。 F21 は、職務経験について考慮要素として、派遣先の企業の社員は、その会社での勤務を通じて実務経験を積んでいるが、原告側である派遣労働者はそういう経験がないので、それが賃金の格差を正当化する理由になり得るという判断がなされた。 F23 は、派遣元は、派遣先に適用される付加給付、手当諸々を支払わなければならないとした上で、派遣元は、派遣先に対して、派遣労働者の給料を計算するための全ての情報を提供するよう求める義務があると判断された。

6 ページ以降です。上に「その他」と付しているものは、必ずしも正社員と非正社員が争われた事案ではない、例えば、無期同士の方の事案や、判決上どのような雇用形態の方だったのかということが必ずしも十分分からないものもありましたので、そういうものも含めて、「その他」の所に分類しております。

F27 は、フランスにおける重要な判例法理の基になった【 Ponsolle 判決】と言われているものです。これは無期労働者同士のものです。勤続年数の違いについて考慮要素になり得るという前提の上で、それが別の年功手当で手当てされているから、基本給で区別する正当化理由にならないと判断されております。判例法理になっている論理は、一番下の○の所ですが、「使用者は性別を問わず全ての労働者の間で、当該労働者が同一の状況に置かれている限り、報酬の平等を保障しなければならない」という、この同じ状況に置かれている限り平等を保障しなければならないという点が、判例法理として引き継がれていると理解しております。

F29 は、先ほども一部出てきましたが、労働の質を考慮要素とした上で、それを立証できていないという判断がなされている。 F30 は、前職における職業経験の違い。 F33 は、能力の 1 つの指標である免状、免状がフランスにおいて何かということは、 7 ページの F35 に注釈を入れており、基本的に特定の高等教育の修了を証明する証書だと位置付けられておりますが、免状を持っているということが待遇差を正当化する事由になり得るとされております。

F36 も前職の職業経験を正当化事由にした上で、能力なり経験の違いが、そのポストに求められる職責と関連性を持つ場合にのみ正当化事由になり得ると判断された。 F39 は、職務の遂行に有用なものであれば正当化事由になり得ると、後ろの年代になるとだんだんそのように職務との関連性を問われていっております。 F40 は、先ほど資料 1 で紹介した裁判例の 1 つですが、労働協約によって職業能力の向上のためのキャリアコースが設定されていて、そのキャリアコースにおいて経験を積んで昇進してきている人と、そのほかの労働者との間は、同一の状況にあるとは言えないので、同一労働同一賃金原則に違反しないと判断された。

8 ページです。 F41 は、自宅での管理業務をしている人に対する代償措置として自宅勤務手当が支払われている事案において、職業カテゴリーが違う「部門責任者」という人と「地方長」という人であっても、それは自宅の一部を仕事に使用していたという点においては同じ状況なので、双方にそれを支払うべきだと判断された。類似のものとして、 F45 F46 に関しては食券が争われたものです。幹部と非幹部で職業カテゴリーが違うというだけでは正当化事由にならないと判断された。フランスの主立ったものとしては以上です。

10 ページ以降はドイツです。ドイツのパートタイム労働者の判例の中で、 D1 は、報酬の違いに関して、専門的な資格の有無を待遇差の正当化事由として認めることを前提にした上で、このケースにおいては違法な不利益取扱いではないとされた。 D3 は、パートタイムの人が副業として働いているケースにおいて、その人が副業だからといって、低い賃金を支払っていいという客観的な理由にはならないとしているものがあります。

D4 は、一番下の 1 2 行ですが、正当化のためには、労働の質、資格、経験、職場に関する異なる要求水準を賃金差の正当化事由とする前提の上で、それをきちんと主張・立証しなければならない、それができていないと判断したものです。 D5 は、クリスマス賞与です。賞与と訳されておりますが、恐らく日本の賞与と大分、性質が違うのだと思いますが、パートの新聞配達員にはクリスマス賞与を出しておらず、事業所内の内勤のフルタイムの方には出しているケースにおいて、パートの新聞配達員が外回りをしている中で定期講読者からチップを得る機会があるので、内勤の人にだけクリスマス賞与を払うということは目的に照らして違反しないのだと判断しているものがあります。

11 ページです。 D6 は、フライトの時間が 1 か月に 75 時間を超えた場合に、時間外の手当の割増しをしている。パートに関して、それを時間比例で減らすことが適切なのかどうかが争われているわけです。パートでも 75 時間を超えて働けば割増し手当を払う義務が生じるが、これはあくまで、肉体的な負担を補償することにあるので、例えば、 75 時間を半分にする必要はないと判断されております。

D8 は、時間外の手当が家族と過ごす自由時間や家庭生活の形成の時間を奪うことに支払われているものだと裁判所で認定した上で、日曜、祝日、深夜に対して払う劇場手当と呼ばれている時間外手当について、劇場手当が支払われるべき日の勤務時間が同じなのであれば、時間比例による減額はしてはならないとしております。

12 ページです。 D11 は、短い時間しか就労していない短時間労働者の人についても、企業年金について勤続期間の長さに応じた給付をしなければならない、除外してはならないとした例があります。

D12 は、勤続していた期間を昇給の要件にしているケースで、パートとして 1 年就労して、その後、フルタイムに転換したケースにおいて、フルタイムの就労のみを昇格の基準を満たす要件としてカウントすることは違反すると判断されております。 D13 は、パートの方について、雇用期間をきちんと通算すると事務管理上の負担が生じるという理由で平等に取り扱わなかったケースにおいて、管理費用の高さというだけでは正当化する客観的な理由にならないと判断されているものがあります。

14 ページはドイツの有期の方の裁判例です。 D17 は、これも同じく賞与と訳されているものの、ほかの賞与とだいぶ性質が違うように感じられますが、労働者の過去の貢献に報いる性格を持っている賞与については、有期の方についても貢献の割合に応じて手当を支給すべきである。その一方で、それが将来に向けての忠誠を確保する勤労奨励的な性格なのであれば、そこに定められている期日に雇用関係が終了している有期の方に対しては、それを支給しないことも正当である。同じ「賞与」と呼ばれているものについて、その性格に応じた判断を切り分けた上で、過去の事業所への忠誠心に報いるのであれば、有期の人を除外してはならないという判断がなされています。

D18 は、これも同じ企業年金の事例です。有期の方に関して適用を認めても給付額が僅かなものにしかならない、企業への忠誠を形成して老後の生活保障を補充するという年金の目的を達成することが難しいのであれば、有期の方を企業年金の適用範囲から除外することも許容され得ると判断されております。

16 ページは、ドイツにおける派遣の例です。ドイツの派遣の判例として私どもが確認したものの 3 点について、いずれもドイツの法令における枠組みである労働協約による適用除外に関するもので、正当化事由に関するものではありませんので、説明は割愛いたします。

17 ページの D24 は、雇用形態は分からなかったのですが、労働契約の不利益変更をするときに、不利益変更を承諾した人と承諾しなかった人で、その間の待遇差が争われたものです。使用者側の主張である、労働契約の変更に伴う不利益の相殺だという目的以外に、手当に関しては過去や将来の忠誠心に報いようとしたものであると裁判所で認定されて、契約の変更を承諾しなかった人に出さないことは正当化事由が見当たらないとされたものです。

18 ページ以降はイギリスです。イギリスは数自体が非常に少ないです。 E1 は、救急救命士の事例です。フルタイムの方はパートタイムの方よりも待機時間が短いので、それはパートにとって不利益な取扱いだと訴えた事例です。そういう取扱いは地域の救急の需要を満たすために必要であるから、取扱いの差は正当化され得ると判断された。

19 ページです。 E5 は、ほかの国の法令と同じように、地位・資格・技能に関して正当化事由だと前提として置かれた上で、それが違うので、そもそも同一労働と認められないという判断がなされているものです。 E6 は、これも少し特殊な事例ですが、裁判所のパートタイムの判事とフルタイムの判事の間に職域年金を適用するのかしないのか差を設けることについて、使用者側である裁判所側が「国家資源分配の公平性、良質な人材確保、年金の持続可能性」を正当化理由として主張したが認められなかったという事案です。

20 ページです。 E8 は、有期の事例です。これも賞与と訳されているのですが、 1 行目にあるとおり、実際の手当の性質は銀行統合に向けた作業の完了に対する手当に関して、有期の人にも支給すべきだとされた事案です。説明は以上です。

○柳川座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、委員の皆さまから御質問や御意見等がありましたらお伺いできればと思います。裁判例も踏まえて、自由な御議論をしていただいても結構ですので、どこからでも、どのような論点からでも結構ですので、よろしくお願いします。

○水町委員 細かいところは置いておいて、資料 1 2 ページ目、判例から得られる示唆 ( たたき台 ) の所について、 1 つ目の○の「待遇差の正当性判断に際しては 1 5 など多種多様な考慮要素が勘案されていると言えるのではないか」という所で、ここで書かれている 1 5 は、基本的には賃金、その中でも基本給又は基本給に準ずるような手当について、基本的にこういうものが賃金差を正当化するものと認められていますよという代表的なものをまとめていただいていると思います。それで 2 番目の○で、「ただし」として、「あくまで個々の待遇の性質・目的に応じて判断される」ということで、そのことがカバーされているのではないかと思いますが、逆に言うと、この 1 5 があったとしても、職務能力とかに関連していないような諸手当みたいなものは、この 1 5 と関係なく同様の状況とか同様の地位にあれば払いなさいというようになっているので、こう書くと少し誤解される可能性もあるという気がします。

 ですので、ここの 1 番目の○か 2 番目の○で、基本給又はそれに準ずるもの、賃金については 1 5 のようなまとめでいいと思いますが、その他の諸手当については、表の中にも出てくるように、労働時間や置かれている状況の違いとかいろいろなものが更に考慮要素となるので、対象となっている給付とか労働条件に応じて、ここで正当性判断で考慮される要素はもっと多様だということが分かるような整理にしたほうがいいと思いました。

○柳川座長 今の点も含めて、いかがでしょうか。

○川口委員 雑ぱくな印象ですけれども、 1 個目の○の所で、 1 5 というのを列記されているのですが、 2 の所にキャリアコースの話がきていて、数えればいいというものではないと思うのですが、 80 個を越える判例が載っている中で、恐らくこれに相当するのは F40 1 個の判例だけになっていて、 1 5 の順番は余りこだわりがないのかもしれないのですが、この順番だと重要性が何か含意されているようにも読める可能性があって、そうすると 2 番目にキャリアコースというのをいきなり持ってくるのは違和感を与える可能性があると思いました。

○河村企画官 資料の 2 ページの 1 5 の順番は、単純に我が国の法令の並べ方の順番を基本にしております。パート法の 8 条や労働契約法の 20 条における考慮要素が、まず最初は「職務の内容」と書かれた上で、その後に、「人材活用の仕組み」と通称で呼んでいる「職務内容と配置の変更範囲」があるわけですけれども、基本的に職務ベースで雇用管理をしている欧州にはそれに相当する観念は必ずしもないので、それにぴったりはまるものが必ずしも判例の中にあったわけではないのですが、比較的、近似性の高いものとしてここの位置に持ってきております。さらに、仕事の成果とか能力は通常我が国の法令では「その他の事情」で読んでいるものというように理解をして、この順番で並べているもので、決して重要度における何か意味付けをしているものではありません。確かにちょっと誤解を招くような表現でしたら、大変申し訳ありません。

○柳川座長 確かにこれは示唆 ( たたき台 ) というときに、今日御説明いただいた裁判例のこの情報から読めるものと、それからそれを日本の中に当てはめたときに得られる意味合いというのと、恐らく両方含んだ言葉になっているので、川口先生のほうは前者を強調されたところの整理だとそのようになるし、後者を強調すると今お話になったようなところになるだろうと思うのです。最終的にどこまでこの示唆の所を具体的に書くかというのも含めて、恐らく両方の情報を、ここの情報から読み取れるものと、そこから日本へという話のときには多分少しジャンプがあるのだろうと思うので、少なくとも我々の中では両方を多少区別しておいたほうがいいのかもしれません。そのほかいかがでしょうか。

○松浦委員  2 つ、自分の中でもあやふやなので確認です。 1 つは、イギリスについては判例が非常に少ない一方で、フランスとドイツの判例は多いのでそれらを参考にされたということの背景として、イギリスについては同一労働ということに非常に厳格な姿勢をとっているので、そもそも同一労働でなければ裁判の俎上に上らないというニュアンスの御説明があったと思うのですが、それがなぜなのか。また、逆にフランス、ドイツについては、同一労働ということに対してどういうスタンスに立っているのか。先ほど水町委員が少しおっしゃいましたけれども、別に同一労働でなくても、幅広く多様な事情を考慮して決めるというスタンスなのか、そこら辺のところをもう一度整理させていただきたいというのが 1 つ目の確認です。

2 つ目は、フランス・ドイツの判例から得られる示唆の一つは、日本の「その他の事情」がそれほどかみ砕いて示されていないなかで、細かく並べていただいたフランス・ドイツの考慮要素の一部を組み込めるのではないかということかと理解しております。では、フランス・ドイツと日本で、「違い」の合理性を判断するうえでの考慮要素の何が違うのかということを、改めて整理しておきたいと思います。キャリアコースを考慮要素とした判例は、先ほど川口先生がおっしゃったようにフランスにおいては少ないけれど、日本においてはおそらく相当重視する必要があり、またフランスやドイツで重視されている学位や免状は、もしかしたら日本で言う学歴に相当するのかもしれない。つまり、合理性判断の考慮要素が、フランス・ドイツの判例からの示唆と日本の現状を比較して、どういうところが同じでどういうところが違うのかということを、この場でなのか、次回でなのか分からないですけれども、どこかで整理しておく必要があるのではないかというのが 2 つ目の確認です。

○神吉委員 イギリスの部分についてできる範囲でお答えしたいと思います。イギリスの裁判例が少ないのは、ドイツやフランスなどと違って、まずは同一労働同一賃金的な原則が、例えば労働法理一般に通底するような一般的平等法理として位置付けられていないことが大きいと思います。ですので、あくまでもこのパートタイム規則、有期規則、派遣規則が設定した枠組みの中で初めて認められる権利で、その枠組みに合致したときにだけ権利が実現される、限定的な仕組みをとっているのがイギリスの特徴です。

 あともう 1 つは、実務において、こういう労働をしていたら大体賃金はこれぐらいだろうという相場が余り形成されていないことがあります。賃金の設定がかなり個別化している社会なので、まずは同一労働の比較対象者を見つけなければ自分の権利は救済されないところ、同一労働をしている人を見つけるのが難しいのです。資格などでランク付けされているわけではないので、限られた枠組みの中で、更にその枠組みに合致する比較対象者を見つけるのがすごく難しいのです。資料 2 19 ページの E5 番の判決ですが、そこの 2 つ目の○で、「他の差別禁止法制とは異なり、仮定の比較対象者は認められず、現実にフルタイムで就労している者でなければならない」とあります。実際に自分と同じ働きをしている人はこの人だということを労働者が探し当てて、そしてその人との比較を主張しない限り、まずは裁判に持っていくことすらできない、そういう枠組みなのです。

 実はパート法では、「実在の」とされ、もし自分がフルタイムだったらという仮定ではなくて、実際にフルタイムで働いている人を見つけなければいけないのですが、この有期法は、現在、実在している人、現存している人でないといけないというように、更に要件が厳しくなっています。有期はパートよりもっと厳しいため裁判数も少ないのです。何が具体的な違いかというと、自分の前任者が無期で自分が有期だったという場合は、その人と比べたいところですが、その人は現存していないので、比較対象とならない。パートの場合は、前任者がフルで自分がパートの場合、前任者との差を問題にできるのですが、それもできないような厳しい枠組みをとっているのです。そうなると、同じ仕事をしている自分の比較対象者をまず見つけるのが非常に難しいので、裁判に至らず少ない状況になっています。

○松浦委員 分かりました、ありがとうございます。イギリスの状況というのは、同一の人を見つけるのがなかなか難しいという面で、日本の今の状況にも通ずるところがあるというか、似ているところがあると思います。自分で過去に批判しておきながら大変恐縮なのですが、 1 回目の資料で出していただいたデータブック国際比較の単純な国際比較をみると、何もコントロールされていない国際比較ですので余り参考にはならないかもしれませんが、この中で、イギリスというのはフルタイム労働者の賃金を 100 とすると 70.8 %で、雇用形態間の隔差が日本ほどは大きくないようにみえますが、この背景には何があるのでしょうか。

○神吉委員 雇用形態間で差がないというか。

○松浦委員 要は同一労働同一賃金が法の中で規定されていない国であっても、正規と非正規の間の賃金格差がそれほど大きくないということをどう理解すればいいのかというのが、まだよく分からないのですけれど。

○神吉委員 そうですね、はっきりした数字の根拠を挙げられるわけではないですが、日本との大きな違いだと思うのは、賃金分布において、フルタイムの労働者が上にいて、その下にパートタイム労働者がいるという位置付けになってはおらず、パートタイム労働者の範囲が広いのだと思います。日本だと管理職でパートということはまずないですけれども、イギリスの場合は柔軟労働を申請することも権利として認められていますし、例えば管理職で、図書館の館長を 2 人のパートで行うとか、そういうことも多いです。そうなると、パートだから必ずしも補助的な仕事というわけではないので、パートタイム労働者が下のほうに位置付けられている人ばかりにはなりません。そうなってくると、フル対パートというのが、日本の正社員対パートと同じ構図かというと、違ってくると思います。

○松浦委員 それは多分イギリスだけではなくて、フランスやドイツも恐らくそういうことだということですね。ありがとうございます。

○水町委員 今の点で 1 つ質問なのは、イギリスは職務に対して賃金が必ずしも関連していない実態として、だとすると、実際の判断のときに、同一労働に逆にこだわらなくていいのではないか。ドイツとかフランスは労働協約で、職務給で、同一労働だったらこういう賃金だという社会規範としての同一労働同一賃金があるので、法律を適用しようというときにも、まずは同一労働かどうか、同一労働であれば法的にも同じ賃金を支払いなさいという、特に基本給の部分とか大切な部分については同一労働というのをこだわるというのは分かるのですが、そもそもバラバラなのであればそんなに同一労働にこだわる必要もないだろうし、今の E2 番というのは必ずしも基本給の事案ではなくて、年金とか疾病手当という話になってくれば、別に職務内容とダイレクトに関連しているわけではないので、賃金としても職務に対して賃金が社会規範として設定されているわけでもないのに、同一労働という入口のところでこだわって適用されないとなるのには、今言ったようなフランスとかドイツの論理的な思考とは何か異なる判断が前提としてあるのではないかと思うのですが。

○神吉委員 それは何を政策目的とするかだと思うのですが、日本で言うところの非正規の待遇を上げていこう、どんどんこの仕組みを活用しようというのであれば、確かに同一労働にこだわるということはマイナスでしょう。ですが、イギリスの枠組みというのは、基本的には市場に規制をすることをよしとしない、経済に余り規制を掛けないということをよしとするのが政策的な判断の大きな要素です。規制をなるべく小さくしたいという欲求があり、そのためにできている枠組みだというように御理解いただければいいのではないかと思います。

 もともと EU の指令を国内法化するというのがイギリスの各規則の位置付けですので、イギリスとしては、ドイツやフランスでの枠組みを押し付けられているというところがあるので、なるべくイギリスの経済に影響を与えないような形で具体化すると、同一労働の入口を小さくする選択になる。そういう意味では、イギリス的には合理的な選択なのかと思います。

○松浦委員 逆にフランス・ドイツは、判例を考えるに当たって、同一労働ということをとても重視していると理解していいのですね。

○水町委員 基本的には、基本給に関わるようなところについては職務とのリンクが非常に強いので、職務と賃金との関連性というのをすごく言います。差があるときには、本当に職務に違いがあるのかと、形式的に同じ職務で同じ格付けで位置付けられていても、成果とかアウトプットが違う場合には、質が違うのではないかというようなことも含めて、職務に対する裁判所の認定、こだわりは非常に強いです。それ以外に職務以外のものを考慮するのであれば、職務以外のものがどう影響しているのかを個別事案ですごくチェックします。

 逆に、更にこの正規・非正規の待遇格差を広く見ていこうという場合には、基本給以外のものがたくさんあるので、いわゆる賃金以外の処遇手当がたくさんあるので、そういう場合には、同一労働と全く関係ない性質・目的で支給されているとすれば、同一労働は関係ないと、事案によっては、同一労働と条文に書いてあったとしても、同一労働かどうかを問わず、職務の性質によって、なぜその手当が支払われているかによって、同一労働かどうかは全く問わずに、同じ状況にあるのだったら支払いなさい、違う状況にあるなら支払わなくていいというので、事案によっては同一労働は全く問われていない。そういうところで、正規・非正規の待遇格差を法一般原則によってなるべく公正なものに是正していこうというのがドイツ、フランスの規範だし、イギリスは、先ほど神吉先生がおっしゃったように、それを EU の社会的な位置の中に位置付けられたことによって、 EU 指令に基づいて条文をイギリスが作ったのですが、それをフランスやドイツみたいにきっちりと内容を精査しながら適用するというよりは、条文のある一部分の同一労働というのにこだわって、フランス、ドイツではここは同一労働をこだわらなくてもいいという事案にまで同一労働にこだわって、適用外というので、そもそも救済された事案が非常に少ないということになっているのではないかなと。そういう意味で、フランス・ドイツとイギリスはかなり前提状況が法律の適用の前にあるところが大分違うのかなという気がします。

○松浦委員 ありがとうございます。

○皆川委員 簡単にドイツの状況についてお話しますと、ドイツはもともと平等取扱原則、グライヒベハンドルンクスグルントザッツ( Gleichbehandlungs-grundsatz )というのが判例法理として戦後の労働法判例で定着してきたのです。これはもともと判例法理なのですが、これが問題となる事例がそもそも手当とか追加的な給付の部分が多かったわけです。というのは、もう既に御指摘があったかと思いますが、ドイツでも労働協約による賃金決定、特に基本給部分は労働協約によって決定するのがメインでしたので、基本給の部分については職務と、特にドイツの場合はどのような学歴、職業訓練歴で、それは結局どの程度の専門知識を持っているかというところにウェイトが重く置かれ、それをベースに基本給は格付けによって決まる。追加される手当の部分の支給については、一定程度集団的に、例えばある事業所で、この人たちにはこういう手当を出していて、しかし一方でこちらの人たちには支給されていないというときに、ある程度集団的に設定された労働条件に従業員グループ間で違いがあるときに、それは正当化されるのかどうか、合理的な理由によってその違い、支給の有無とかは正当化されるのかどうかというところで、もともと平等取扱原則というのが形成されてきたという前提があります。

 その構造はパート・有期法ができた今でも基本的には、法的判断のベースのところは変わっていないです。ただ、パート・有期法は強行法規ですから、単なる判例法理ではありませんので、これは労働協約に対しても優位しますので、ドイツの裁判での争い方でも、基本的にパート・有期法の要件を満たすのであればそこで行くということです。同じ仕事をしているというか、比較対象のフルタイム労働者なり無期労働者なりというのが分かれば、そことの違いを立証すれば、あとは使用者のほうで労働条件に相違があったときにそれを正当化する違う理由があるのかということは、完全にこれは使用者が立証しないといけないことになります。

 ここで挙がっている例でも、例えば大学の助教とか、救助職員とか、こういう職責と、どういう学歴や職業訓練歴を持ってこの仕事をしているかというそういう職種などがはっきりしている場合には、これは比較対象が労働協約で同じ格付けを受けているとか、似た仕事をしているとか、そういうところで比較対象になっているというのが前提になっているケースというのももちろん多くあります。ですから、ドイツでもパート・有期法の適用を考える場合には、当然、比較対象者をまず探すことになります。しかし、ドイツの場合はパート・有期法の要件、比較対象となるものではないという、そこを満たさなかったとしても、先ほどお話したように、判例法理として形成されてきた平等取扱原則というのがなお適用が有り得ますので、これは必ずしもパート・有期法のような比較対象者の間でのみ適用される判例法理ではありませんので、そうなるとまたそっちはそっちで「違い」に合理的な理由があるかどうかというのが検討されることになります。

 例えば有期労働者と無期労働者の企業年金などの違いについての判例が挙がっていますけれども、これは同じ仕事かどうかは考慮していません。その企業で企業年金の運用がされていて、有期の人は入っていないというときに、ここでは仕事が同じかとか比較対象かどうかは考慮されていないということになります。有期の場合には入れなくていいという判断がなされたりするわけです。ドイツの場合はパート・有期法のような明確な法規で争えるのであれば、まずそこから、そういう段階があるということです。

 以上を踏まえると、先ほど神吉委員、水町委員からのお話にもありましたが、ドイツの場合には、特にイギリスとの違いかと思いますけれども、まずそういった労働協約による賃金設定、プラスのところは平等取扱原則、更にパート・有期法という形で、特に雇用形態などに注目した労働条件格差を是正しようという幾つかの法規制の仕組みが最初からあって、その上での判断となりますので、神吉委員のお話を聞いていると、イギリスの場合と社会的な前提の状況は違うのかなという感じはいたします。

○川口委員 フランスとドイツに関して、パートタイム労働者に関しては基本的に労働時間比例で、金銭に関して分割可能なものは払いなさい、有期に関しては勤続年数比例で払ってくださいと、基本的に比例の原則というのが入っていると思うのです。ただ、その中にあって、今、皆川委員から御指摘があったように、企業年金に関しては最後まで忠誠を誓ってもらうためのものなので、有期の方に関してはカバーしなくてもいいというような特例的な話があったりとか。あとボーナスについても、その 1 つ前の判例ですが、 D17 を見ると、今までの働きに対しての報酬なのか、これからの働きに対しての報酬なのか、その性質を分けて、場合によっては前向きというか、将来に向けての支払いである場合には、有期の方には払わなくてもいいですというような判断が下されていて、結構踏み込んだ判断があるように思うのです。要するに報酬の性質というものが何なのかを考えた上で、場合によっては比例でなくてもかまわないと。

 フランスのほうを同じような視点で拝見させてもらうと、何かそういう踏み込んだ判断という感じではないような気がするのです。基本的には、例えば F42 F43 の辺りが賞与に関しての判断になっているのですが、裁量的な性格を有するからといって払わなくてもいいわけではないというようなことになっていて、 F43 番にいくと、あらかじめ賞与を支払う客観的な基準というのがあるかどうかが問題だということを書いてあります。フランスの判例で、ボーナスとか退職金に関して、比例的な原則から外れているようなことを示唆するようなケースが何かあったら教えていただきたいと思います。お気づきの判例とかありますでしょうか。

○水町委員 どっちが進んでいるか進んでいないかは微妙なところですが、基本的には、パートについて適用する場合には、労働時間比例で、量の部分については基本給も時間比例になっていますし、その他の賞与等の手当についても時間比例で、食事手当とかは別にしても、絶対的な量が変わらないものについては比例的な給付でいいとなっています。

 有期については、条文上、勤続年数比例、在職年数比例と書いてあるのですが、実際の判断で在職年数比例という判断はほとんど見たことがないです。在職年数と言っても、例えばフルタイムで無期契約の労働者であっても勤続 3 年とか 4 年の人もいるわけだし、有期の人でも 1 2 年たって、そのときまでの勤続年数は同じなので、勤続年数に応じて同じ取扱いをしなさい、だけども勤続 5 年とか勤続 10 年の人にしか支給しないものについては、 1 年契約で 1 年で終わる人には支給しなくてもいいという判断になっています。

 例えば短い人とかパートタイムの人について賞与を支払うべきかどうかというときに、ドイツの発想と基本的に似ているのは、この賞与が何のために支払われるのかを確定しなさいと。そのためには支給基準がはっきりしないと、何をもって何月から何月までの勤務状態に対して査定を入れて、こういう計算式で払っていますだと、有期の人にも短時間の人にも同じような計算式が当てはまるかどうかという判断を裁判所ができるけれども、それすらはっきりしないで、裁量的に、恣意的に、この人には払う・払わないと決めていますという判断にすると、これはそもそも前提条件がどのように同じか違うか判断できないので、それだったら全部払いなさいという判断がなされているというものです。それをもう少し進めて、支払いの仕方とか要件や基準がはっきりすれば、ドイツのように、これは将来に向かって払うので、将来いない人には払わなくていいというような、同じ判断になると思います。質的にはそんなに差はないけれども、事案に応じて、こういう判断がなされている事案がフランスにはあったということです。

○川口委員 分かりました。

○皆川委員 ドイツの件について補足させていただきますと、水町委員のお話を伺っていても、ドイツも恐らく基本的な考え方は似通っているところがあるのではないかと思うのですが、ドイツの場合もパート・有期法の規定も、確かに期間比例ということが書かれています。ただ、この条文をよく読みますと、一定の算定期間について支給されるものがあれば、その場合はという書き方になっていますので、逆に一定の算定期間に掛かって何か決まる賃金でなければ、それは基本的には同じように取り扱えというのが前提となっています。ですから、ドイツの場合も賞与とか企業年金とか、ある一定期間働いたとか、そうしたことを前提として算定されるような賞与部分、そこに特に掛かる規制だということなのだと思います。

 川口委員からも御指摘がありましたように、ドイツの場合も細かく賞与の性質を判例で検討されているのですが、この賞与の支給については有期・無期との待遇差の違いとはまた無関係に、ドイツも賞与請求権がどういう場合に発生するかというのは、一般的な労働条件紛争でも割とよく争われるところで、ドイツの判例でも賞与の請求権がどういう場合に生じて、どういう場合に失われるかというのは、それはそれとして膨大な判例の蓄積があるという事情があります。そうした判例法理の中で、以前まで働いたこれまでの勤続に対応するものであったら、要はそれに応じて払いなさいと。日本の判例で言う支給日在籍条項のような争いがドイツでも非常に多くて、日本の支給日在籍条項のような場合も設けて、それはそのときまでに辞めていたら払わなくていいという判断がどういう場合に認められるかというときに、その賞与がどういう性質のものかというのは様々な例で細かく見られてきたという経緯があります。それがこの有期と無期との賞与のところでもダイレクトに反映していると。そういった事情があります。

○川口委員 ありがとうございます。

○水町委員 松浦さんがおっしゃった 2 つ目のヨーロッパと日本の考慮要素の違いというのを、概略的に私なりの印象をお話させていただくと、資料 1 2 ページと参考資料 3 1 ページです。先ほど事務局のほうからも説明がありましたが、日本の今のところの労働契約法 20 条とパートタイム労働法 8 条の「考慮要素」というのは、左の上の箱の 1 職務内容と 2 人材活用の仕組み・運用、それプラス 3 その他というものになって、裁判例でも 1 2 を考慮したものが比較的多い。だけど、これについて争われた裁判例の絶対数が少ないので、 1 2 が考慮されて、 3 その他の事情についてはまだ分からないという状況。

 フランス、ドイツではどうかと言うと、資料 1 2 ページを見ていただくと、 1 2 3 4 、これは川口先生からも先ほど質問があったところですが、裁判例を見てもらうと、基本給とか賃金の基本的構成要素については 1 の職務内容と 4 の職務遂行能力の事例が比較的多い。だから、同一労働同一賃金、職務給と言ったとしても、その背後にある経験とか能力というのもかなり見ている。それに対して日本では 1 2 がこれまで大きな要素だと考えられてきて、 2 のキャリアコースはどうかというと、それを考慮した事例もあるけれども、これはたくさん裁判例があるわけではないというのが、ヨーロッパと日本の実態の違いだと思います。

 これは実態の違いとこれまでの多さですが、日本だと要はこの 1 2 以外の 3 4 5 など、それプラス賃金の基本的構成要素以外の諸手当その他の諸々の待遇については、ほとんどこれまで判断の蓄積がない状況で、これからその蓋を開けるときに、フランス、ドイツで見てみると、フランス、ドイツでもこの 1 2 3 4 5 以外にいろいろなものがあると。それが日本で参考にならないかというと、日本でもかなり参考になりそうだと。多様な処遇労働条件について多様なことを考慮しながら、個別具体的に判断しているのだなと。

 それを見ていくときに注意すべきなのは、日本でこれから見ていくと、 3 4 5 などとその他の諸手当について、いろいろな考慮要素が出てくるけれども、考慮要素があったら違いを付けていいと、そういう単純なものではなくて、こういう考慮要素と給付、労働条件と関連性があるかどうかとか、関連性があって、それに見合ったようなものになっているか。前提条件の違いが本当にあるのかどうかを個別に精査しながら適用しているということを見ていかなければいけないので、かなり注意深い作業が必要になってくるのではないかと思います。そこがヨーロッパと日本の違いで、かなり参考にできるところもあるけれども、違いがなくはない。

○松浦委員 日本の場合は判例が非常に少なく、特に 3 の判例はほとんどないということが言えるということですか。

○水町委員 これまでの数少ない裁判例の中では、 1 2 が基本的に考慮されています。 3 以降とその他諸手当等についてはほぼ事案がないので、これから一生懸命考えなければいけない。

○松浦委員 手当については、先ほど水町委員が裁量的だと前提条件が分からないということをおっしゃっていたと思うのですが、実際の企業の中では裁量的な部分が相当ある気がします。本来そこから変えていかなくてはいけないということになるのでしょうけれども。あと、フランス、ドイツの判例には、労働時間比例だとか、勤続年数比例といったことが分かりやすい手当については比例的に判断される一方で、それ以外は、基本的にオール・オア・ナッシングということ、つまり払うか、払わないか、 100 0 かという判断がなされるということですね。

○河村企画官 事務局が質問してしまって大変恐縮なのですが、水町先生のほうから、イギリスというよりは、むしろフランスにおいて、基本給だとか、基本給に準じるものについては同一職務かどうかは見られているという御説明を先ほどいただいたと思うのですが、事務局の翻訳能力の限界といいますか、もしかしたらちょっと誤った解釈をしてしまっているかもしれないと思って、多少不安になっている点があります。今回フランスの裁判例は 51 調査をしているのですが、裁判例の判断のところに、同一職務かどうかという部分が問題になっているところが、正直ほとんどありません。資料 1 の<判例から得られる示唆 ( たたき台 ) >の 1 で「職務内容」と書かせていただいているものの、説明は割愛させていただきましたが、イギリスは同一労働でないという判断をしているものが幾つかありました。ドイツだと、例えば D4 番で仕事に対する要求水準という言葉の使い方をして、これは恐らく求めている仕事のレベルといいますか、内容がどうかという観点なので、この整理でいきますと職務内容に相当する観念なのかと思うのですが、フランスの裁判例ですと、「職務内容」に相当するような判断事項が余り見受けられません。その一方で、「労働の質」という独特な言葉を何箇所かで見まして、労働の質と言っているものは、職務内容とはまた違って、それで出しているパフォーマンス、成果を表している言葉かと事務局は理解して、 3 として整理してしまっているのですが、もしかしたら、これはひょっとしたら職務内容のことなのかなと。職務内容の違いも含んだ観念なのかなということがちょっと不安になりまして。いずれにしても先生に教えていただきたいのは、フランスにおいて基本給で職務内容が見られていると仰っているけれども、実際に裁判例の中で職務内容に関する判断がほとんど出てこないのが何でなのだろうというのを教えていただければ有り難いのですけれども。

○水町委員 私の認識だと、それぞれの労働者が労働協約上どういう職種で、どういうカテゴリーに所属しているかというのは権利として認識して、格付けをはっきりさせなければいけないので、私は労働協約のこの職種のカテゴリー 3 に所属していますということが分かるわけですよ。それを前提にまず事実関係が成り立っているので、同じ職種のカテゴリー 3 の労働者がいるのに賃金が違うというときの前提として、同じ職種だと同じ賃金が支払われるということで、職種とか職務自体の格付けを争われるというのは、こういう事案では余りない。前提として同じ職種だったら同じ賃金だよね、同じ職務だったら同じ賃金だよねというところからスタートして、同じ職務なのに賃金が違うのはなぜと争われたときに、同じ職種で同じカテゴリー 3 に所属している労働者間ですが、実際、仕事をさせてみたらアウトプットが違うというので、労働の質という違いが出てきて、そういう意味では成果に近いものです。これを日本で言う業務内容に入れるのか、その他事情に入れるのかというのは、業務内容の定義の問題なので、微妙なところではあると思います。そういう意味で、アウトプットとかの成果の違いであったり、同じ職務で同じ格付けなのですが、一方は大学院の修士課程を出ていて、一方は普通の大学 4 年生しか卒業していないというときに、違いがあるのはなぜかとかいう争い方になってきて、それだと 4 の違いとか、そういうところが実際の紛争になっているので、そもそも職務内容が違うか、違わないかという形式的な当てはめは余り問題にならない。実質が事実認定として問題になる。

○河村企画官 格付けが同じであれば、それは同一職務なのだというようにみなされるから?

○水町委員 格付けが同じだと協約上、同じ賃金が支給されているので、基本給は一緒です。その他の手当で違いが出てくるので、手当が違うのは何かというときに 2 以下の要素が理由として、根拠として挙げられるかどうかが紛争になる。

○河村企画官 訴え自体にならないということですか。

○水町委員 ならないことが多いです。

○河村企画官 分かりました。

○柳川座長 そういう意味では、本当はある意味で日本はそこが一番のポイントというか、大きな問題になるわけで、今の御説明はその部分はある程度仕組みとして、このカテゴリーであれば同一賃金というところはもうできているので、争いもならないし、それで判例として出てこないということですよね。そこの部分はある意味で、我々がこれから大きく考えなければいけないポイントのところはクリアされてしまっているのでということにはなるのだろうと思いますね。もうちょっと言うと、もしそこを本当に詳しく見ていくとしたら、そのカテゴリー別に分けたものが、ある意味で同一労働というように定義していいかどうかという問題はまた別個、残っているのでしょうけれども。

 今の話が典型的だと思うのですが、水町先生がおっしゃったように、これは日本で判例が少ないというか、ほとんどない中では、ガイドラインを作っていくときには海外の事例は非常に参考になるのだと思うのですが、ここで出てきたみたいに海外の判例をやはり直接は使えない。そのままダイレクトに持ってくると、やはりミスリーディングな部分があって、ここで出てきたみたいに、そもそもの法の趣旨が違ったりするし、そもそもの今のような給与決定の仕組みの部分が各国で違うし、イギリスのケースはそうだったかもしれませんが、パートとか有期などの持っている意味内容が違うしということで、そういうものをある程度、何が日本と共通していて、何が違っているかということを、全部は完璧には分からないのですが、できるだけうまく酌み取りながら、かつその判例から出てくる情報を使えるものは使っていくと。判例も、要するに判例として出てくるということは、ある種もめたから出てきている話なので、今のフランスのケースのような話は、もめるまでもなく実現しているものだとすると、実は判例には出てこない。だけど、日本としては大事にしなければいけないプリンシプルだったりするというものもあるので、必ずしも判例上出てくるものを集めればそれでいいというものでもないという難しさもある中で、ガイドラインを作ると。先ほどの話に出てきた年末と言っている中、作らなければいけないので、この辺りが重要な難しいポイントにはなるのですが、今、大分御議論いただきましたように、うまく吸い上げながら。

○水町委員  1 点だけ、今の関連で、仮に労働協約で基本給のところは職務給で形成されていて、そこのところは実際上ほとんど争いがないとしても、それを上乗せして企業の中で成果に対する支払いであったり、勤続に対する支払いであったり、キャリア形成に対する支払いであったり、上乗せの手当が大分、最近発展してきていて、それが紛争になっているので、その辺の紛争をつぶさに見ていくと、日本に有余ある職能給的なものに対する争いとか、勤続給的なものについての争いなどから得られる示唆はあるかもしれない。そういう意味で、ここの中にはいろいろな紛争が盛り込まれていますので、参考になる点は少なからずたくさんあるような気がします。

○松浦委員 日本の場合は比較対象をどうするかというのが、なかなか悩ましいと思います。日本の基本給は必ずしも職務給ではないですが、仮にフランスのように基本給が同じなら同じ職務というように定義するとしたら、雇用形態格差があって基本給が同じ人はほとんどいないですよね。その中で、同一労働を日本においてどう定義するかということを、やはり一番最初に話しておかないと、ガイドラインのスタート地点に着けないような気がします。

○中村委員 今日のお話を伺っていて、同一労働同一賃金といったときに、労働側の同一性をどう判断するかという話と、賃金側の同一性というか、賃金をどのように分解し直すかという話と、対応関係をどういうロジックで説明するのかという、議論としてはその 3 点が出ているのだと思っています。これまでのパート法の改正も含めて、均衡待遇の議論というのは、ずっと同一労働は何かということを起点に待遇を議論してきた。でも、今日ここまでの議論を聞いていると、むしろ今回の検討会は、賃金側の分解を先にしてしまって、特に職務に連動して決まっていくものと、それ以外というところは、まずはっきり分けた上で、賃金については分解しますと。賃金を説明する要件は何なのですかというアプローチを、今までの均衡待遇の議論とは、むしろ逆に 1 回やるとステップができるのではないでしょうか。その上で、基本給のところは、やはり職務給と職能給という大前提の違いがあるので、最後まですごく論点になると思うのですが。そういう進め方をするといいのかなという気はしました。

○川口委員 今までの議論を聞いていて、言わずもがなのことなのですが、日本で正社員と非正規社員の賃金格差みたいなことを話したときに、正社員と非正規社員と分ける基準は幾つもあると思うのですが、例えば労働時間で分けるとか、契約の期間で分けるとか、直接雇用・間接雇用で分ける、呼称で分けるというのがありますね。賃金差の説明要因として知られているのは、呼称の部分がかなり大きいわけですよね。呼称というのは一体何なのかを考えてみる。正社員と呼ばれている人と呼ばれていない人の違いは何かというと、結局、雇用管理のカテゴリーの違いで、キャリアコースの違いと言ってもいいのだと思うのですが、ここでの検討は、今までキャリアコースが違うから賃金が違うのは当然ですよねと言われていた考え方を一歩進めて、もうちょっと中身を見て、先ほどの資料の整理でいくと、 1 から 5 までありますが、先ほどの水町委員の説明だと 1 で来て、 2 で来て、もうここで判断が止まっているというのが多くの現状で、 3 以降のところに行かなかったということがあって、それなので 2 のところで判断を止めてしまうのをちょっと考え直して、 3 から先に話を進めたときに、一体どういうことを考えなければいけないのかということを、ここでは検討しているのかなという印象を私は持っています。

○水町委員 今、中村さんと川口さんがおっしゃったように、賃金から見たときに、今までキャリアコースが違うというので職務区分を分けていて、もう分けてしまったら全く比較もしないで別々の賃金制度でやってきたのですが、これをちょっと比べてみて、バランスを取ったり公正なものにしましょうというのが今の大きな発想なので、キャリアコースによって違いをつけてはいけないという話には恐らくならない。だけど、キャリアコースというので全く分けてしまったものをもう少しバランスを取るとすると、もうちょっと基準が分からないといけないので、賃金制度をどうやって見ていますかと。

 今まで例えば正社員の賃金というのは、職務の部分もあっただろうし、キャリアコースの部分もあっただろうし、生活給的な部分もあったかもしれないし、それを手当も含めて少し分解していったところを、ここの部分は同じように及ぶねとか、ここの部分は及ばないねとか、ここの部分は量的にこういうバランスで及ぶよねというのを少し精査していくと、全体としてのバランスが個別具体的な判断の積み重ねとして成り立つのではないかという作業をするというのが、今回の最も重要なタスクで、そういう意味で職務給にしようとか、職能給は駄目だとかそういうものよりも、どういう賃金制度を取るかは企業とか労使の選択の問題ですが、それをもう少し説明可能で、今、問題となっている人たちについて比較して整理できるようなものにするための基準なり、ガイドラインをどう作っていくか。それは基本給だけではなくて、諸手当が入ってくるという話になるのだと思います。

○柳川座長 今、御議論があったみたいに、キャリアコースが呼称で大きく分かれている中身にもう少し踏み込んでいって、どこかの議論で因数分解という言葉が水町先生からあったと思うのですが、その中身をもう少し合理性のある形で判断ができるようにするというのが、今のところ見えてきている 1 つのアプローチなのだと思うのです。それは今ここで御紹介いただいたような海外からの事例から、参考にしたことで見えてきたことでもあるし、それは全く日本の現実と掛け離れたものではなくて、事務局から御説明いただいたような資料 3 1 ページ目の所にあるように、不合理な待遇差は禁止というところの、ある意味で解釈の明確化ということになるのだろうというのが今の整理で、それがここに出てきている 3 4 5 、このほかにもあるかもしれませんが、ポイントがこうやって見えてくるのだろうというのが、今のところ何となく見えてきている整理なのだろうと思うのです。

 ただ、松浦委員がおっしゃったみたいに、その話で、それで本当に同一労働同一賃金なのかなどと言い出すと、そこには少し差があるのかもしれなくて、この検討会は「同一労働同一賃金の実現に向けた」と、「向けた」という辺りが微妙な言葉ではあるのですが、そういう意味ではこれで本当に同一労働同一賃金なのかが多少距離のあるところで、恐らく御議論のあるところなのだろうと思いますね。そもそも何を持って同一労働同一賃金と言うのかは、恐らくこの中でも皆さん意見が分かれるのでしょうけれども、検討会の外でもいろいろな御議論があるので、その辺りの整理を今のような話とどう絡めるのかというのが残されてしまうポイントなのだろうと思います。

 もっと言うと、今のような話でいけば、いわゆる非正規と言われている人たちの待遇が本当に高まるのかという話は、ある意味でまた別の話にはなるので、極端なことを言えば合理的に説明できるのであれば、それで別に上がらなくてもいいというような結果も、そうなるかどうか分かりませんが、論理的な可能性としてはあるので、必ずしも上げることを目的とした提言にはならないかもしれないというところはあって、それはそれでいいのかというご議論ももちろんあろうかと思うのです。

 この辺りは本当は全ていろいろ議論できるといいのですが、座長として思うのは、「年末ってすぐだよな」というのがありまして、それに向けてできることをやって、あるいは整理できるところは整理して、議論の残るところは残るとして、一度残すということかなと今のところは思っております。

○松浦委員 同一労働というのは何なのかというアプローチをすると、中村委員もおっしゃっていただいたように、確かに隘路に入って検討に時間がかかる気はいたします。賃金アプローチでの議論は、タイムスケジュールの問題だけではなくて、やってみる価値はあるのではないかと思います。

 水町委員がおっしゃったように、どういう賃金制度にするのかについては労使の判断であることを担保しつつ、今まで当たり前だと思っていた賃金差というものが本当に合理的なのかどうかを労使が判断するに当たって何を考えればいいのかという要素を、改めて整理する意味はあると思います。ただ、書きぶりは気を付けなくてはいけなくて、柳川座長がおっしゃったように、こういう要素を基に判断するということだけで言いっぱなしで終わってしまうと、この手当はやめましょうとか、完全に職域を分けましょうというマイナスの方向にミスリードしてしまう懸念が大きいと思います。多分、このようなマイナス方向の対応のほうが現場はやりやすい面もあるので、余計に心配です。そういうことにならないように、実質的に労使が賃金制度の合理性を判断する上での有益な要素分解を示し、その上で労使が何をすればいいのかまでをしっかり示すことが、ガイドラインにおいて非常に重要なポイントだと思います。

○柳川座長 今の御指摘の点は、とても大事なところだろうと思います。実質的な効果が上がるようにしないといけないと思いますし、考えなければいけないポイントが幾つかあるので、その辺りはきっちり漏らさずに議論して、できる限り報告書に反映させる形でやりたいと思います。

○神吉委員 今の松浦委員のお話と、フランスでは協約で職務が格付けされているが、日本にはその仕組みがないので、そこをどう対応するかというところに関わってくるのですが、日本で抜けている部分を補う方法は多分 2 つあると思っています。 1 つは、どういう労働に対してどういう賃金が適正なのかに対して、客観的な職務分析をしていくことを奨励していく方法です。それは日本でも男女差別の文脈で、均等法を中心になされていますし、イギリスでもパートに関する紛争例は少ないと申し上げましたが、一部は男女差別の文脈で紛争化しており、その 1 つの背景として、男女差別の分野は客観的に職務分析の手法がすごく発達しているので、それを使って不合理な差別を明らかにしやすいという状況があります。

 もう 1 つの方法としては、協約で格付けしてあるという前提条件、それはつまり労使の話合いで、職務の内容を吟味してどのように格付けするということを決めているということだと思うのです。それが日本で事前にできていないのであれば、事後でも、紛争が起きている途中にでも、それをどこかの段階で設けることが 1 つの解決になるのではないでしょうか。

 今は、非正規労働者は入口の段階でどの仕事を選択するかで労働条件が固定化してしまって、それに対して自分の意見を表明したり使用者と協議するなどして、賃金に反映させていくシステムがありません。それが低賃金の固定化の 1 つの原因になっていると思うのです。ガイドラインの中で要素分析をして、どういう要素をどのような給付に反映させていくべきかを実体的に詰めていく方法も大事かもしれませんが、手続的な側面で、労使の話合い、特に非正規の人たちの声をどのようにつなげていくか、そういったプラットホームの形成を検討することも重要なのではないかと思っています。

○柳川座長 そうですね。今のような手続的なところ、それから、ある意味では本当の意味での活躍の場が広がるような仕掛けをどうやって作っていくのかということを一緒に考えていかないとというのは、やはりそもそもの同一労働同一賃金だとか、非正規の待遇改善などという大きなテーマに関しては完全な回答にはならないだろうと思いますので、その辺りの考えるべきポイントは、幾つか重要なポイントがあると思いますので、その辺りは引き続き出していただいて、どういうことをきちっと言っていくかということは議論したいと思います。あとはよろしいですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 本日は大変中身の濃い議論を聞かせていただきまして、まずありがとうございました。もちろん、まだ 1 つの塊に凝集されたということには至っていないとは思うのですが、そうは申しましても本日の議論を拝聴しておりまして、私ども事務局からお示しした判例から得られる示唆、これを更に深掘り、掘り下げていただくような形で、例えば我々は全ての待遇を包含するような記述の抽象化を行ったものですから、こういった 3 つの○になったのですが、御指摘があったように、基本給について言えば考慮要素の多種多様性が高い。手当にいくと、手当というのは、そもそもこのために払うという目的がある程度絞り込まれているのが通例ですから、必ずしも多種多様な考慮要素の総合決定ということではなくて、専らこの要素で見るというように絞り込まれていくという、正に待遇の性質・目的に応じて、どのぐらい多様な考慮要素を拾うのか、あるいはピンポイントで見てくるかで違ってくるという話もいただきました。

 また、総合的な考慮要素の中に 1 つあるキャリアコースについて、キャリアコースが違う以上は比較できないではなくて、もう少し一歩進めて、その違いは何なのかと中身を見る必要があるというお話もありました。

 また、多種多様な考慮要素が勘案されているところの基本給についても、私ども事務局としては、いわば手当と比べると、コップの水量が半分という感じなのですが、それをコップに半分からではなくて、コップに水が半分入っているという方向で、是非、形にしていきたいということを考えると、考慮要素が多種多様であるのであれば、それを前提に、例えば考慮要素ごとに分解して比較できるところと、できないところと仕分けをしていくということもお考え、議論としてはあったように思います。

 また、こういったガイドラインを作った効果として、職域を分けるとか、手当をやめるとかいう方向に行くのではなくて、より実際の効果が非正規の待遇改善につながるような書きぶりであったり、打出し方であったりということが必要だということもあったと思います。その他、ちょっと拾いきれていないところもありますが、何となくこの判例の示唆と、次にガイドラインにつなげるどういう議論を組み立てていくかという、つなぎのいろいろな手掛かりを頂けたように思います。どうもありがとうございました。

○柳川座長 それでは、ちょっと時間は早いですが、大体議論は尽きたと思いますので、これをもちまして本日の検討会は終了いたします。次回の日程や議題については、私と事務局で御相談の上、また事務局から追って御連絡ということにさせていただければと思います。本日はお忙しい中どうもありがとうございました。


(了)

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