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2016年9月23日 第2回「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成28年9月23日(金) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○出席者

安藤氏、古賀氏、小峰座長、村木氏、森田氏、横田氏
認定NPO法人育て上げネット理事長 工藤啓様
東京大学大学院経済学研究科教授 柳川範之様
慶應義塾大学商学部教授 樋口美雄様

○議題

(1)有識者からのヒアリング
(2)その他

○議事

○小峰座長 皆さんおはようございます。
 ただいまから第2回働き方に関する政策決定プロセス有識者会議を開催いたします。
 皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございます。当会議では、今回と次回の2回にわたってヒアリングを実施することとしております。本日は有識者の方々から、次回は労使関係者の方々からヒアリングを予定しております。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。
 まず、議題(1)有識者からのヒアリングでございます。
 はじめに、本日は大変お忙しい中、このヒアリングのために当会議に御出席くださいました有識者の方々を御紹介させていただきます。
 まず、認定NPO法人育て上げネット理事長の工藤啓様です。
○工藤氏 よろしくお願いします。
○小峰座長 東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之様です。
○柳川氏 よろしくお願いいたします。
○小峰座長 慶應義塾大学商学部教授の樋口美雄様です。
○樋口氏 よろしくお願いします。
○小峰座長 よろしくお願いいたします。
 それでは、これよりヒアリングを行ってまいります。
 はじめにヒアリングの進め方について御説明いたします。
 本日のヒアリングですが、はじめに有識者の方々から順に御発言いただきます。順番は工藤理事長、柳川教授、樋口教授の順です。時間はお一人15分以内でお願いいたします。
 次に、事務局から資料1-4に基づいて、その他の有識者の御意見と8月31日に開催された第39回労政審における主な御意見を紹介させていただきます。その後、全部まとめまして、45分程度で質疑・意見交換を行いたいと考えております。
 ヒアリングの進め方についての説明は以上でございます。
 それから、ヒアリングに当たっての留意点を申し上げます。有識者の方からの御発言に当たりましては、資料1-1にもありますように、現状の労働政策の決定プロセスについて、どのような問題があるか、また、維持すべき部分はあるかということについて、委員構成や政策決定に当たっての議論はどうあるべきかといった具体的な論点にも言及していただければと思います。
 私は今、こちらで座長を務めているのですけれども、やはり働き方というのは今大変大きく注目されています。これの検討には大きく分けて2つあって、働き方の中身をどうするかということと、決めたことをどうやって実行に移していくかというプロセスの両方が大切だということで、両方相まって進まないとせっかくいい意見が出ても実行されないことになってしまいます。当有識者会議では政策決定プロセスを主に議論するという位置付けだと私は理解しております。
 それでは、はじめに工藤理事長、御発言をお願いいたします。工藤理事長からは事前に資料1-2を御提出いただいておりますので、あわせて御参照いただければと思います。よろしくお願いします。
○工藤氏 工藤といいます。よろしくお願いします。
 事前に厚労省の御担当者からもいろいろ資料を見せていただきまして、基本的には、地域のばらつき、委員の構成、年齢を含むものが少し気になりました。私は27歳ぐらいのときに初めて国の委員になりまして、それ以来、もう39なのですが、都道府県を含めていろいろな委員をさせていただきました。ほとんど自分より年下の方にこの十数年会ったことがなく、プロセスはもちろんなのですけれども、少し長い目で見たときに私の経験を含めて考えたことをここに記しました。
これまでの議論を拝見しまして、ほとんどもう出されていることが多く、新しいものというのはほとんどないのですけれども、その中で大きく3つ資料に付記しました。
 1つは、やや中長期ということをどうやって検討していくかという話がこの案件の資料にありましたけれども、あるものを決めていくということではなくて、多様な専門家が議論する場ですので、その方々が集まったときに未来に向けてどのような意志といいましょうか、方向性があり得るのかということを出していただくと、次の世代にもそれがある程度引き継がれていくのではないでしょうか。個別テーマではなく、広く日本がこれから30年、40年先にどういう方向を持って働くことを考えていくべきなのかということを示唆されるのは非常に重要かと思います。
 2つ目に、委員は国民、各ステークスホルダーの代表という立場ですので、何を話しているのかということを知り得るためにこの時間、この場所に来ないと聞けないというのは非常にアクセシビリティーの観点から問題があると思っております。いろいろな委員会でも今までネット中継とか、ツイッターで中継するみたいなこともいろいろ議論は出されているのですが、私は子供が4人おり、まだ小さくて、審議会などに来たくても来られないときがあります。自分の生活に非常に関係する議論を物理的に来ないと聞けないというのは、代表している方の話を代表されている側が聞けないという意味において、今後改善していただけるものではないかなと思っています。
 付随しまして、代表性にひもづきますが、自分のことであることが認識しづらい委員構成だなと思います。私は、実際に企業で働いた経験と株式会社を運用した経験がないもので、ここに代表されているメンバーの皆様のもとで働いたこととその立場になったことがないということで、自分の中の何を代表されているのかというのがいまいちつかみづらい部分があります。
 これは、非正規の方の代表者がいないのではないかということも入るかと思いますし、本業として、今働いていない、働けない方々を支援している中で、働いている人の代表というのはとても重要ですけれども、働き方という形でいきますと、今の状況では働けない、もしくは働くことが難しい方の代表者がそこにいるということも非常に重要であると思います。多くの方が既にどこかに所属、または経営者としてかかわっている方の代表として話していますけれども、そこに所属をしていない方、またはこれから所属をしていく子供たちの観点を、どなたかがお話しされるというのはとても重要で、働いている人の問題ではなくて、これから働いていく人の問題でもありますので、当然、公労使の中のどこにも入らないかもしれません。言ってみれば「公」の方に入るのかもしれませんが、働いていない人の代表をどうするのかというのは政策決定の上でも「自分事」化する上でも、非常に重要なものではないかと思います。
 また、政策プロセスの中で、委員会の議論以上に日程の調整コストが非常にかかるというのは私も感じております。個別のエクセル表が飛んできまして、○と×にするだけでも結構時間がかかります。1か月先までの調整を皆さん出した2週間後ぐらいに「合わないのでもう一度ください」と言われて、それでどんどん委員会がずれていくと、やろうとしたところから1~2か月後に委員会が開始されることも結構あります。これは、後ろでバックオフィスを担われている行政の方の調整コストも非常に高く、政策のプロセスの意思決定を早くする以上に開催の時期をあるべき場所で行えるようにもう少し段取りといいましょうか、調整というものを早く進められるだけの基盤整備が必要かなと思います。
 当然、座長がいらっしゃっての委員だと思いますので、はじめから座長の日程をいただければそこに合わせていくこともできると思いますし、誰かをポイントに絞っていけば調整がもう少し早くなるかなと思います。特に○と×しかなくて、△を打ちたいときがたまにあります。この委員会が大事なので、今はアポイントが入っているのだけれども調整することができます。これは○でもなく、×でもないときに△が入れられないものも結構あって、自分で△を入れようと思うのですけれども既にフレームが組まれていて○か×しか入れられないこともあります。これは、全員が議論の手前の日程調整のために相当なコストをかけているという意味で要改善かなと思います。
 委員人選に関して、私はNPOという立場なのですけれども、NPOの関係者がほとんど入っていない。これから伸びていく分野において、当然、多くの雇用を生んでいるNPOもありますし、一部で株式会社とは違う運営や経営の仕方の部分もあります。その働き方というのが必ずしも賃金労働だけではない。もちろん賃金労働の話をここではしているのだと思いますけれども、賃金労働でない働き方や社会参画のあり方が、今後高齢者の方を含めて出てくるときに、今のルールをどうするかということよりは、新規ルールの追加みたいなものがより出てくる可能性があります。それはインターンシップという枠組みをどうするかということもありますし、ボランティアをどういうふうに捉えるのかといったことも含めまして、働き方のルールが画一的でそこから何とか合意点を見出そうというのは非常に難しい側面もあるものですから、公労使の「公」の部分の場合もあるでしょうし「労」の部分の場合もあるでしょうし「使」の部分でもあるかと思いますが、これらの非営利組織をもう少し入れることを御提案させていただきたいと思います。
 最後、3点目ですけれども、これは特に本会にあまり関係はないように見えますが、中長期的に見まして、委員構成のデータが40代以上しかいないというのは、40代になって初めてこういう問題のところにノミネートされてしまうことになります。作法みたいなものもわからないですし、私は周りの先生方に教えていただいたのですけれども、一番よかったのは、自分が活動している代表として呼ばれた人間が、こういう機会をいただくことによって、国や社会のことを早い段階から意識して、経営や活動、運営で発言をするようになるというのは私だけではないと思います。私もまた、20代、30代で入った人間たちから相談を受けることがあります。何を説明したらいいのだろうか、自分の活動を本当に言うだけでいいのだろうか。または、こういう場所に入るためにはどういうふうに頑張ったらいいのだろうかと。それは当然名誉やお金の問題ではなくて、自分たちの活動を幾ばくかでも政策の中に取り入れていただきたいときに、このような場所しかないとするならば、どうやったら入れるのでしょうかということをかなり若い層からも聞かれることがあります。
 その意味において、本会に若い人をいきなり入れるのが難しいとしても、分科会や部会の中である程度年齢構成に配慮する。またはUnder-40、Under-30、Under-20と書きましたけれども、何とか分科会の下にインフォーマルでも構いませんので、30代以下であるとか20代以下という形で、もし本人たちが将来、本会、分科会にノミネートされたときに発言したいことや自分がこれまで積み重ねたものを言葉にできるような機会をつくっておくことが、将来にわたって政策プロセスにも大きな影響を与え得るのではないかと思います。必ず代表者が呼ばれますが、代表ではない人間が呼ばれるというのは組織にとっても、次の代表者になるかもしれない人間に対する非常に大きな機会となりますので、ぜひ御検討をお願いします。
 「その他」としまして、行政の官僚の方が大体バックオフィスに入られますが、できれば「次世代委員会」みたいなものができるときに当該省庁でなくても構いませんので、他省庁でもいいので官僚という立場の中で同じ目線、同じ方向性をどう考えていくのかというのを、一緒に議論ができるような機会が重要ではないかなと思います。立場上の問題等いろいろあると思いますけれども、私たちも行政の方に別でお話を伺ってどうなっているのですかということもありますし、やはり官僚の方それぞれに意見もありますので、代表性の問題を加味しますと本会では難しいかもしれませんが、インフォーマルな形の部分で自分たちの意見を立場にかかわらず言えるという意味で、官僚、厚生労働省の方や他省の方が入っていないことそのものがかなりバランスを欠いているのではないかという部分も私としては感じるところでございます。
 以上です。
○小峰座長 ありがとうございました。
 次に、柳川教授、お願いいたします。柳川教授の資料は、お手元の資料の最後に一枚紙でついている資料でございますので、それを御参照いただければと思います。
 それでは、柳川先生、お願いします。
○柳川氏 東京大学の柳川でございます。こういう席にお招きいただき、大変光栄に思っております。
 今週、ゼミ合宿に行きましたら風邪を引きまして、大変申し訳ありません。資料が少し遅くなりましたので番号がついていない形になっておりまして、ちょっとお聞き苦しいかもしれませんけれども、御容赦いただければと思います。
 それから私自身は、労政審に直接かかわってきた人間ではありませんので、実態をきちんと把握できているかどうかはわからないので、そういう意味では、実態の空気を十分把握できていないのかもしれないのですけれども、本日の私の役割はそういう空気を読んだ利害調整の発言ではなくて、もうちょっと空気が読めない発言をすることかなと思っております。全く読まないつもりはないですけれども、その役割を果たしたいと思っていますので御容赦いただければと思います。
 一枚紙で最初に「0」と書いておきましたけれども、これは少し労政審だけではなくて、審議会そのもののあり方についてのコメントでございます。よく言われることなのですけれども、審議会は日本だけではないのかもしれませんが、かなり特殊な意思決定の仕組みでございまして、海外からすると、政策決定は一体誰がどうやって責任を持っているのかがわからないということがよく指摘されます。何度も改革案が提示されてきてはいるのですが、なかなか難しい面があって、現状の状況で進んでいるということだと思います。
 森田先生を前にして私が申し上げることではないので、後でお叱りをいただければと思いますけれども、そもそも審議会そのものは政策や法律の決定機関ではないはずでございまして、当然、現状でも審議会の後、国会を通して、国会で決定をすることになっております。もちろん実質的な決定が審議会の場において行われる。実質的な決定に至る調整プロセスが審議会の中で行われているのが日本の実態でございまして、法制審などではかなり細かいところまで詰めて議論がされていますし、その意見が尊重されていることも事実だと思います。その意味では、労政審においても同様だと思います。ただし、実質的な決定が行われていることと、それが法的な意味で、そこで政策決定がなされなければいけないこととは随分乖離があると思うのです。なので、そもそも審議会のあり方をどう考えるかというところも絡むので、何をどこまで審議会で決めるのかということにはさまざまな御意見があるのだと思いますけれども、最終的には国会なり立法府が政策を決めるので、法律を決めていく前提は踏まえて考えた方がいいのではないかという気がいたします。
 その意味では、この有識者会議も政策決定プロセスということで労政審の話が主に議論されておりますけれども、その点で私は少し違和感がありまして、政策決定はやはり国会でやるのだろう。労政審だけではなくてここにありますように、審議会そのものは本来は第三者や専門家からの意見を集約して、そこからさまざまな諮問を受けて立法府が決定をしていく仕組みであるべきなのではないかと思っております。もちろんそれがなかなか難しいことは承知しておりますけれども、特に労働においては労使双方の意見を十分に聞くことが重要で、また、意見が適切に反映されることも重要だと思いますけれども、意見を聞き、意見が適切にその政策に反映されることと、政策や法律の決定権を持っていることとには随分乖離があると思います。その点を踏まえた議論が必要なのではないかと思っているというのが労政審に限らず、審議会全般に関して私が考えているところでございます。
 資料1-1に<具体的な論点の例>ということで事前にご説明いただきましたので、それに沿って、1、2、3と主な意見を書いてございます。
 「1 長期的な政策の議論」がやはり必要だろうということでございまして、今日はいらっしゃっていない方ばかりだと思いますけれども、ここのメンバーの方の何人かにも入っていただきました「働き方の未来2035」という厚生労働省の委員会でもかなり議論がありましたように、人工知能だとかロボット技術の進展など、かなり働き方、労働をめぐる環境は急速に大きく変化しつつあるのだろう。そういうときには、労働政策においても長期的な方向性をきちんと議論する、狭い意味での利害調整の話だけではなくて、大きな方向性を議論、検討する場を積極的に設けることはどうしても必要なことではないかと考えております。
 その際にエビデンスに基づいてきちんと議論し、検討することはある意味で経済学者の観点からすると当然必要なことでございまして、エビデンスにもいろいろなレベルのエビデンスがあるのだと思いますけれども、できればさまざまな統計的な分析も踏まえたエビデンスに基づいた議論が積極的に行われることが望ましいのではないかと思います。これも先ほど申し上げたように、利害調整の場と考えるのか、意見集約の場と考えるのかでエビデンスが持っている意味が随分変わるのだと思います。なので、私のイメージとしてあるのはさまざまな方がさまざまな意見を出していく。さまざまな考えを出していく際にエビデンスや統計処理、統計分析に基づいた議論をしていくことがより建設的な未来像を語る上で有意義なのではないかと思っております。
 「2 委員構成について」の意見ですけれども、先ほど工藤様からお話がありましたように、やはりかなり多様な働き方をされる方が増えているのだろうと思うのです。これも先ほど申し上げた「働き方の未来2035」の中で大きな議論になり、大きなポイントになった点でございますけれども、いわゆる非正規と呼ばれる方々や、あるいは個人事業主と分類される方、それから先ほどお話があった非営利団体で働いていらっしゃる方など、広い意味で働く立場にある方はかなり多様化が進んでいるのだと思います。そのお立場も、あるいは条件もさまざまだと思います。こういう方々の声や意見がやはりきちんと届くような形、委員構成が必要ではないかと考えております。
 年齢構成や産業属性に偏りがないかどうかは、おそらく何度も議論されていることだと思いますけれども、そういうところもやはり検討すべきだろうと思います。ただ、この話をあまり突き詰めて考えてしまうと、全ての世代ごとに委員をそろえなければいけないとか、業種は全部そろえるのかという話が出てくるので、現実問題としては、やはりある程度偏りのない委員構成にするにしても、そこで十分できない部分は偏りのない意見集約をしていく。そういう委員に選ばれていない分野の方あるいは世代の方、産業の方の御意見もきちんと反映されていく、そういう意見集約ができるような委員会運営が必要なのだろうと思います。
 その面で、先ほど申し上げたように、意見集約の場だと考える前提に立てば、公益委員の方々ももう少し幅広い御専門の立場の方に入っていただいてもいいのではないか。あるいは専門委員の方々から、それぞれの専門委員の立場で御意見を言っていただくことがもっとあってもいいのではないかと思います。もちろん、エビデンスに基づいた検討という観点でも、専門委員の活用は有効だと考えております。
 「3 政策決定のスピードについて」ですけれども、先ほど申し上げたように、環境変化がかなり急速に進んでいることを考えますと、やはり政策決定のスピードは決定的に重要だろうと思います。もちろん拙速に物事を決めればいいことではないので、スピードが重要だといって、いいかげんな決定をしていいというわけではないので難しいところですし、やはり労使双方の意見を十分に聞くことも重要なので、十分な意見を聞きつつ、スピードアップしていくために何ができるのかということは、せっかくこれだけITが進んできているので、スカイプを活用した上で迅速な決定ができるような手だてを考える必要があるのではないか。
 もう一つの重要な点は、利害調整、意思決定の場ということとすると、完全な利害調整、意見調整を待っていると決定が遅きに失してしまうのではないかという面があります。これは、例えば国会を考えれば明らかだと思うのですけれども、なかなか民主主義というのは難しいので、私は中学のときに習って以来いまだによくわからないのですけれども、少数意見も尊重して意見を聞けと。それが民主主義だと言われます。でも、最終的には多数決あるいは3分の2なのです。尊重して意見を聞くことは一体どういうことなのかというのはなかなか難しいことであるのですけれども、尊重して意見を聞くことと最終的な意思決定をすることにはかなりの差があることは事実だと思います。どうしても意見集約ができないときには3分の2、あるいは過半数をもって意思決定をしていくというのが国会のルールでございまして、そのようなプロセスをどのように考えるのかということもスピードの面では考えていくべき点だと思います。
 例が適切かどうかはわかりませんけれども、国連の場では常任理事国が拒否権を持っております。そのことの善し悪しはいろいろな意見があるのだと思いますが、一つの意見はそのような5か国の大国が拒否権を持っているためにクイックな意思決定、十分な意思決定ができないという批判があります。それがどのぐらい正しいかはここで議論はしませんが、ある一面を示しているように思います。5か国全部が「イエス」と言わない限りは何事も動かないとすれば、やはり動かすスピードは遅くなるということだと思います。なので、誰かが拒否権を持つ、あるいは裏返すと全会一致を強く求めるということではスピードが遅くなりますので、その点を考えていく必要があるだろうと思います。
 とはいえ、審議会の場の意思決定プロセスはどういう多数決なのかとか、3分の2なのかということをきちんと決めるのはなかなか至難の業でございまして、やはりそこは、最終的には国会の場なのだろう。元の議論に戻りますけれども、そういう意味では、審議会は意見をある程度集約する場であって、ここを完全な意思決定をする場と考えていくと、やはりどうしてもスピードが遅くなるのではないかと考えております。繰り返しですけれども、もちろん審議会改革が相当大変なことはよくわかっておりますけれども、根本の意見としてはそういうことがあるということでお聞きいただければと。
 ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。ありがとうございました。
○小峰座長 柳川先生、ありがとうございました。
 最後に、樋口先生にお願いいたします。樋口先生からは事前に資料1-3を御提出いただいておりますので、こちらを併せてご覧いただければと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。
○樋口氏 よろしくお願いいたします。
 労働政策審議会に一体何が期待されているのかということですが、これは厚生労働省設置法第6条第1項に基づき設置されております。そして、本審議会においては厚生労働省設置法第9条に基づき厚生労働大臣の諮問に応じて労働政策に関する重要事項を調査審議すること、また、本審議会は労働政策に関する重要事項について、厚生労働大臣等に意見を述べることができる、とされております。この目的の下にまず労働政策審議会、本審がありまして、そして、その下に7分科会、10部会があるということで、それぞれの部会あるいは分科会において専門的な立場、あるいは労使それぞれの立場から審議が行われているということで、申し上げるまでもなく厚生労働省のホームページを見ていただければ、毎日のように行われているのではないかという形で、相当の審議を行っています。
 その中で、当面の課題については、この部会あるいは分科会で議論することになっているわけであります。これは先のお二人の方も御指摘されましたが、中長期的な労働政策についてどうすべきかといったことについて、本来は本審で議論すべきだと思いますが、そういったものが果たして十分機能しているのかということについて、私も見直すところがあるのではないかと思っております。
 さらにはそれぞれの部会で議論する個別の法律でありますとか政策との関連でいいますと、横串の議論、要は分科会をまたがるような大きな流れといったものに対する議論が十分に行われているのかどうかということについて、疑問を持っております。
 しかし、こうした議論をしっかり行うのは本審だということになるわけですが、本審は委員の人数が現在は30名と非常に多く難しい面もございます。そのためにいろいろなやり方はあるかと思いますが、例えば本審の下に「企画部会」を設置して、そこで集中的に議論を行い、この検討結果を本審に戻して総括的な議論を行うようなことが考えられるのではないかと思っております。また、これは柳川先生からも御指摘を受けた点でございますが、エビデンスベースということを考えたときに法律の改正を決めていくことと同時に、やはり各政策間の課題に対応した分科会、部会での議論の進捗状況についての評価ということもありますし、また、行政全体として整合的な取組が行われているのかどうかといったことについて横串を通した議論を行い、なおかつ、そこに基づきまして、例えばエビデンスに基づいた成果についての問題、議論、あるいは評価について何か問題が起こっていないのかということについても、この「企画部会」というところで御議論をしていってはどうかと私は思っております。
 労政審は公労使三者構成でございますが、これを私は維持すべきだと思っておりまして、その理由はILO三者構成原則でうたわれていることもございます。また本来、働くルールは労使交渉で決めるべきものでもあるかと思いますが、労使間での交渉といったことも必要になってくると思いますし、また、法令等で決める場合にも労使と十分に協議していくことが重要です。これは冒頭、座長からお話がありましたように、政策決定の中身と同時に政策を決めたことの実効性が上がっているのかどうか、上がるような仕組みがとれているのかどうかというところにおきましても、現実的な対応といったものが私は必要ではないかと思っております。職場の実態を熟知した労使が政策決定に関与することで、政策が実際の職場に根差したバランスのとれたものというような、そして、その実効性が担保されていくことについては申し上げるまでもないかと思います。公労使三者構成による労政審で、雇用政策をしっかり議論していただくことはその意味も非常に大きいのではないかと感じております。
 政策決定スピードということについて、いろいろ御議論をいただいているようでございますが、私もこれは重要な指摘であると考えております。しかし、必ずしも労政審の審議が著しく遅いということは言い切れないのではないかと思っております。例えば個々の法案について見れば、労政審では秋口から審議を始め、通常国会に間に合うように年明け早々までに答申を行うケースが多いというのが実態ではないかと思います。よく精査していただき、御議論いただいた方がよろしいのではないかと思っております。
 その前の検討会やあるいは法案提出後の国会での審議といったものも時間を要するものでございますので、全体として政策決定が長くなっているような印象を皆さんお持ちではないかと思っております。これは審議会の問題といいますか、全体として考えていかなければならない問題ではないかと思っております。
 以上、私の述べたいことをお話しさせていただきました。ありがとうございました。
○小峰座長 樋口先生、ありがとうございました。皆様から大変貴重な御意見をいただいたと思います。
 それでは、事務局からその他の有識者の御意見を紹介していただきます。また、8月31日の労政審でも委員から発言があったと聞いておりますので、それも含めて御説明をお願いいたします。
○佐藤企画官 それでは、私から資料1-4に基づきまして、他の有識者の方々の御意見を御紹介させていただきたいと思います。
 前回の第1回会議後、我々事務局でも何人かの有識者の方々にお話を伺っていまして、それをまとめて御本人にも御確認をいただいたものでございます。また、先ほど座長からもお話をいただきましたけれども、8月31日には労働政策審議会の本審でも、こちらの会議の議論を御紹介させていただきまして、その場でもいろいろ御意見がございましたので、そちらも御紹介させていただきたいと思います。
 1ページ目でございます。まずNPO法人POSSE、これは労働関係の相談などをされているNPOでございますけれども、そちらの代表をされている今野晴貴さんは『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』という本を書かれている方でございます。
 <政策決定にあたっての議論について>ですが、データは確かに大事なのだけれども、そのデータの解釈の仕方が結構実態からずれていると感じることがある。データの背後関係をよく分析していくことが大事で、そういう意味では事実ベースも確かに大事なのだけれども、データの背後関係の分析は特に大事なのではないかというご意見がございました。
 <代表性について>は1つ目の○ですけれども、今はあまり多様な立場の労働者の声がなかなか反映されにくい状況ではないかと感じているという御意見と、2つ目の〇ですけれども、そういった意味では、幅広い対象から労働相談を行っているような現場の実態を知っている人が委員に入るのが大事なのではないかという御意見がございました。
 3つ目の<政策決定スピードについて>は、スピードを上げるよりも時間をかけて、仮にその政策を導入した場合にどういう影響が出るかというアセスメントが今はあまり十分ではないのではないかということで、そこをもうちょっとしっかりやるべきではないかという御意見がございました。
 2ページ目でございます。フューチャー株式会社グループCEOの金丸様でございまして、柳川先生から先ほどお話がございました「働き方の未来2035」の座長をしていただいた方でございます。
 金丸様からは、<政策決定にあたっての議論について>は、労使の立場よりも委員個人の意見をもっと言えるようにした方がいいのではないかという御意見がございました。
 <代表性について>は、労働者代表について、全ての労働者を代表しているとは言えないのではないかということと、使用者代表についても、もっと業績が伸びている企業を委員として入れていくべきではないか。公益委員につきましても、民間企業での勤務経験があるような方も入れた方がいいのではないかという御意見がございました。
 <政策決定スピードについて>は、スピードを早くする会議体にしないといけない。オピニオンリーダーのようなものをつくっていく必要があるという御意見がございました。
 3ページ目でございます。NPO法人スチューデント・サポート・フェイスの代表の谷口様、こちらの方は地域若者サポートステーションなどをされていて、若者の就労支援をされているNPOの代表をされている方でございます。
 <代表性について>につきましては、特に地方の公務部門の非正規で働いていらっしゃる方の声がなかなか拾え切れていないのではないかという御意見と、ひきこもりやニートのような方、行政に自分からアクセスできない人たちの声をどうやって拾っていくかというのが大事で、そのためにはこれをアウトリーチでこちらから出向いていくことが必要なのではないかという御意見がございました。また、いろいろな意見を各地から拾うという意味では、都道府県ごとに審議会がいろいろございますけれども、その都道府県の審議会から意見を拾っていく仕組みのように、現在ある仕組みをうまく活用できないのかという御意見がございました。
 <政策決定スピードについて>でございますけれども、課題によって使い分けが必要なのではないか。スピードを求める場合と徹底的に議論する場合を事前に判断して、どちらでいくかというのを考えないといけないのではないかという御意見がございました。
 ちょっと飛びますけれども、最後の<その他>のところで、現在パブリックコメントについて、基本的には法律の改正案がある程度まとまってからかけていますけれども、そういうものがまとまる前に幅広く意見を聞くようなパブコメのあり方もあるのではないかという御意見をいただいております。
 さらに次のページに行きまして、こちらが8月31日に開催された労働政策審議会でこちらの会議の議論を御紹介させていただいたときの審議会の委員の皆様からの御意見でございます。白い□が公益委員の方の御意見、白い○が労側委員の方の御意見、黒い●が使用者側委員の方の御意見でございます。
 まず「政策決定に当たっての議論について」は、1つ目の○のところでございますけれども、先ほどからも議論に出ておりますが、基本的には、政府の会議体が決めたところに沿って、個別施策についての議論が行われることが多いので、なかなか戦略的議論が行われていないのではないかという御意見がございました。
 その次の〇でございますけれども、横通しが不十分であるので、本審であるべき雇用労働政策の方向性の議論を行い、その大枠に沿って、分科会、部会で個別の議論をしていく運営がいいのではないかという御意見がございました。
 1つ飛びますけれども、制度改正の目先の議論が多く、短期的な話に目が向きがちであるとか、その次のところでございますけれども、長期的な労働政策の議論をここ数年していないのではないかという意味で、労政審の中で中長期的な労働政策を議論する場があってもよいのではないかという御意見がございました。
 「三者構成について」でございますけれども、こちらはご覧いただければわかるとおり公労使それぞれの側から基本的には、三者構成の原則は労働政策を立案していく上では必要なのではないかという御意見をいただいております。
 次のページに行きまして「代表性について」のところでございますけれども、こちらは労側委員の方から現在の労側委員がなかなか非正規や中小企業の方を代表していないのではないかという意見がみられるけれども、実際は連合運動の多くが非正規とか中小、未組織の方に対する取組であって、労政審の労側委員は全ての働く方の代表という立場で参加をしている。そこはちょっと理解をしていただきたいという御意見がございました。
 多様な働き手の意見を取り入れる方法としては、委員として入っていただくとか、そういう方法以外にも、非正規や中小企業の労働者の方からヒアリングを行うなどの手法も含めて検討するというのが必要なのではないか、地方の方の意見をどう聞くかということについても、テレビ会議の活用や、テーマに応じてヒアリングを行うようなことも有効ではないかという御意見がございました。
 最後の「政策決定スピードについて」でございますけれども、まず1つ目のところは、先ほど樋口先生からもございましたけれども、最近の審議状況を振り返ると、労政審での審議時間がそれほど長くなっているものはあまりないのではないかという御意見がございました。
 最後のところでございますけれども、現在の就労ニーズの多様化、変化が結構激しいということもございますので、迅速な審議運営がやはり必要ではないかという御意見が使用者側から出ております。
 主な御意見は以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございました。
 それでは、これから質疑・意見交換を行いたいと思います。どうぞ御自由に御発言をいただきたいと思います。
 どうぞ。
○古賀氏 3人の先生方、貴重な意見を本当にありがとうございました。
 3点ほどお考えをお聞きしたいと思います。
 1つは、先ほど工藤先生から労政審としての意思をきちんと出すべきだという意見があり、柳川先生からも労政審で長期的な方向性を議論すべきとの意見がありました。この点、樋口先生からは中長期的な労働政策を議論するために「企画部会」を立ち上げてはどうか等々の具体提案もされておりましたけれども、工藤先生と柳川先生はこの種の議論する場として具体的に何かイメージを持っておられるのかどうかということです。持っていなければ持っていないで結構でございますので、具体的なイメージを少しお聞きしたいと思います。
 2つ目は、エビデンスについてです。エビデンスというのは非常に重要だと思います。ただ、私はエビデンスというのは統計数値だけではなくて、現場で起こっていることや現場の声、あるいは現場のトラブルも含めてエビデンスだと思うのですけれども、その辺をどう見ておられるかということを柳川先生にお聞きしたいと思います。また、樋口先生には、これまで労政審会長としてお務めいただいているご経験から、現在の労政審では、労働現場の声などのエビデンスの位置付けはどうなのかということをお聞きしたいと思います。
 最後の3点目ですけれども、前回の有識者会議の場でもいろいろ議論になったのですけれども、メンバーの問題です。年齢、業種、あるいは非正規といっても一括りに捉えることはできず、非正規といっても、パートタイマー、嘱託、あるいは契約社員、派遣労働者など、多様な形態があるわけです。したがって、こういう多様な形態の人たちの意見を取り入れるべきといって、全部の雇用形態の代表を参画させることは現実的ではないのではないか。そういう意味からすれば、労政審の労使の中では意見が出ておりましたけれども、こうした多様な人たちの声を本当に吸い上げていくような仕組みを考えるべきではないかと思います。この点についてどういうふうにお考えになっているか、何か具体的なアイデアがあれば、ぜひお教えいただきたいと思うのですけれども、これはお三方からお願いしたい。
 以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御意見に対してお三方から順番にお願いしたいと思います。
 工藤さんからお願いします。
○工藤氏 中長期のものを具体的にどういう枠付けでというイメージは持っていないのですけれども、少なくとも中長期の「長」がもし40年後、50年後であるとするならば、その時代にもまだ働いている人の意見はリアリティーのある中長期になると思いますので、その意味で、責任とか今後のアセスメントが実際にどうだったのかという話については、先行きそこでも働いているだろう人が何名か入っているということは、実感を持った中長期の意見は出しやすいのではないかと思います。
 ただ一方で、先ほどの代表性の問題になりますと、30年もその人が代表なのかという話はやや問題があると思いますが、今の問題点としまして、代表者が自分を代表していないことを思う人はたくさんいらっしゃると思うのですが、その人が少なくとも何かしらの意見を述べる機会があったらいいのではないか。それは先ほど谷口さんのパブリックコメントでありましたけれども、私はそう思わないということを本審に言えるというアクセスがちゃんと開かれていることがあれば、まず第1段階はクリアできるのではないか。すごく大量に来てしまうかもしれませんが、それはある程度事務局の方でばっとまとめていただいて、こんな意見もちゃんと来ているのですよということを本審の代表の方々が見た上で、個別の立場で議論をされるという意味では、声なき声を拾う仕組みがまずあることが大事かなと思います。
 以上でございます。
○古賀氏 ありがとうございます。
○小峰座長 柳川さん。
○柳川氏 1点目ですけれども、具体的なイメージはそれほど持っているわけではありません。具体的というのは、こういう部会を設置して、こういうメンバー構成で、あるいはこんなタイムスパンでというところのイメージはありません。
 ただ、樋口先生が御提案になった「企画部会」のようなものの設置ということは一つのアイデアとしてあり得るかなと思っておりまして、大きく本審を変えれば別ですけれども、現状の本審の中で、大きな方向性を全て議論していくのはなかなか無理があるという認識ですので、ある種のそれに特化した検討する場を設けて、そこで出てきた提案なりを本審で議論していただくというのが現実的だろうと思っています。名前が「企画部会」でいいのかどうかというのは私はよくわからないです。
 2番目のエビデンスのところは、御指摘のとおり現場の声も非常に重要なエビデンスでございますし、例えば、取締役会で何か議論をしているときに全て数字で議論していると、目の前でいろいろな数字が出てくるわけですけれども、その数字だけで全ての現場が把握できるかというと、それはそうではないということは多くの経営者の方が感じることだと思いますし、そういう例にありますように、現場の数字でなかなか表しにくい声もエビデンスとしては非常に重要だと思います。
 ただ、例えばそれに極端な偏りがないかとか、あるいはどこまで実態を反映しているかということはできるだけサポートするエビデンスを増やしてやっていく。そのエビデンスの中には本当の意味での数値だとか、いわゆる統計処理を含まない、もう少し広い意味での分厚い情報提供が必要だという意味でエビデンスと申し上げました。
 3番目の組織体のところですが、これもなかなか難しくて、先ほど申し上げたようにやはり多様な働き方をしている人がいるので、そういう方を可能であるならば委員として入れていくことは一つの重要なことだと思うのですけれども、あらゆる側面の代表者を委員としてそろえるのは現実的ではないので、そうすると、多様な立場にいる多様な働き方をしている人の声を具体的にどうやって集約をして、議論の場に出していくかということだと思います。
 そのためにパブリックコメントみたいなことを用意されているわけですけれども、先ほど工藤さんが御指摘になったことに近いのだと思いますが、パブリックコメントは必ずしも意見の提示という形にはなかなかなりにくい面があるので、例えば具体的には、もう少し意見提出メンバーのような多様な方に今回のヒアリング意見提出のような形で、きちんとしっかり個別意見を出していただくとか、何かそういうことはいろいろな工夫のやり方があると思うのでそこを考えていただきたい。私自身はこれでなければと考えているというよりは、今のような視点で御検討いただければという立場でございます。
○古賀氏 ありがとうございました。
○小峰座長 樋口さん。
○樋口氏 私への御質問は2点だったかと思います。
 2番目の御指摘でございますエビデンスについてということで、これは現行の審議会ではどうなっているかということでございますが、現行の審議会におきましては、一つはいろいろな調査結果が説明され、そして、それを基に議論するというのが多くの分科会、部会で行っていることかなと思います。また、この審議会の設置の前にいろいろな研究会が用意されて、そこで議論するのは専らこの統計に基づいたようなものもございますし、あるいはそこで多くの方々からヒアリングをやって、そして一つの研究会報告ということをまとめていくような、現実的にはそういったことにあるかと思います。
 その点、日本の統計といいますのは申し上げるまでもなく、中央集権的に一統計省が全てやるということではなく、それぞれの省庁に調査部局が用意され、そこで行っていく分散型という方法をとっておりますので、問題がどの程度発生しているのかということについても、その分散型の統計、ここで言うと厚労省の方でそれに応じた調査を行い、統計をまとめ、それに基づいて議論することが行われているのかなと思います。また、ヒアリングについても同じだと思います。
 ただ、出てきた統計の資料についての解釈といいますか、その分析が十分なされているか。ある現象が起こっているときにもその要因というのはたくさんあるわけです。その中で主たるものだと思ってやっているわけでありますが、果たして他の要因がどの程度それに影響しているのかといった分析力のところも、この審議会の中で議論していくところだろうと思いますが、そこについて、今後はさらに進めていくような、本来公益が果たすべき役割かもしれませんが、そういったことを感じているということでございます。
 3番目の御質問でございますが、組織体でいろいろな意見をどういうふうに審議会に反映させていくかということでございますけれども、これは専門委員になっていただくとか、あるいは参考人という形で来ていただくことがあるかと思います。また、先ほど申しましたようなヒアリングの段階でいろいろな御意見を聞いていることがございますが、法律にするときに全ての意見を反映した法律は、ある意味ではなかなか成立しにくい、あるいは一定の方向性を法律は示すのだろうと思いますので、全ての考え方を包摂したような法律になっているかということについて、忸怩たるものもあるかと思います。
 それと、例えば審議会、部会の委員でも結構ですが、なっていただければおわかりのように相当の時間をとられます。この時間をどこまでの人が耐えられるのかということもございまして、そういう方が積極的にいらっしゃるということであれば、先ほどの働いていない方、あるいは働くことができない方についての意見も聞くべきだと、まさに私もそうだろうと思いますが、直接委員になることによって、どこまでそこに参画できるのかということについては、本来そういった声をそれぞれの委員が十分に考慮して、判断をしていかなければならないところが現実的な対応としてはあるのではないかと思っております。
○古賀氏 ありがとうございました。
○小峰座長 ほかにいかがですか。
○村木氏 3つほどあるのですが、まず1つ目は、柳川先生が0番ということで、大きな枠組みで議論をしていただいて非常に勉強になりました。この中で本当は国会が政策決定をやる、労働政策をここで決めても、結局国会に持っていって議論するのだからということですが、日本の国会を考えると非常に政府提出法案が多くて、議員立法が少ないという特殊性があって、このあたりで日本の特殊性として、ある程度審議会、役所のウェイトが多くなるのは仕方がないのか、もうちょっと違うやり方があるのかということについて何かあれば。
 もう一つは、それと同じで政策決定の枠組みについて、樋口先生がおっしゃったように本来労働条件というのは労使の契約で決まることで、私的な自治の世界に特別に割って入っているのが労働関係の法律なので、ここは他の分野とは少し違うという考え方をしてもいいのかどうか。他の国だったら労使の代表が決めたことを拡張適応で、他の小さいところまで拡張をして、国会が介在しないようなやり方もありますよね。そのあたりでこの分野の政策決定について、何かさらにお考えがあればお二人にお聞きをしたい。これが1つ目です。
 2つ目も、柳川先生が言ってくださった意見集約ということを審議会の一つの機能と考える、むしろそれが大事ではないかというのは非常におもしろかった。他の方の御意見にも、自分が代表されていない、聞いてもらっていない、自分たちの意見を反映していないというのが労政審に対する不満の一つの根源にあるというのは、意見集約という機能と絡めて考えると、非常にわかりやすくて、考えるべき点だと思いました。その意味で、あとのメンバーの方にも少し「意見集約」というキーワードで言ったときに何があるか、さらにこういうことを考えたらということがあれば教えていただきたい。私は非常に一つの大事なキーワードをいただいたと思ったので、これが2つ目です。
 3つ目は、工藤さんが言ってくださった役人も参加したら、というのが私はすごく新鮮でした。厚労省で役人も一緒のメンバーでフラットに参加させてもらう会議を1~2回やっているのですが、他の先生方も含めて役人が参加をすることで意味があるかとか、どういう参加の仕方があるか、それとあわせて政治家も参加すべきなのかどうか。政治家はもう国会の場があるので、ここはもうちょっと違う形がいいのかとか、その辺についてもしお考えがあればお聞きしたいと思います。
 以上です。
○小峰座長 それでは、また工藤さんから順番に。
○工藤氏 3番目の方かと思うのですけれども、本会に参加をするとなるといろいろ難しいと思いますが、あまりフォーマルでない形であれば、今そういう場所がどこにあるかというと、外のカフェとか居酒屋で同世代の仲間が集まり、立場を超えて議論したりということはあるのですけれども、その場がある程度パブリックの場でも実現できる方が望ましいのではないか。特に村木先生はまさにど真ん中にいらっしゃると思いますが、自分たちが意見を言う場はもともと持っていないし、あるものとも思っていないし、例えばある程度の職域までいけば政策は動かせるのだけれども、省庁の中の役割としての認識がすごく強くて、本人が考えていることを発露する場があまりないのかなと。組織の一員としてはそういう部分があるかもしれませんけれども、国民の一人という意味では、立場というものをどこに置くかというのも出てくるかと思います。
 あと、今後、流動性が高まっていく中で、前に一般企業にいて、今は役人の方もいらっしゃれば逆の方とか、いろいろなセクターで働かれる方がいますので、役人でなくなったら審議会に入れるとか、役人のときは入れないということよりは誰であっても、その方の各部会における専門性は所属が変わってもあまり変わらないと思うのです。大学の先生で民間に行く方もいると思うのですが、その専門性を所属によって既定される可能性があるとするならば、その一環として例えば政治家の方であるとか、行政の方が入れないとか入らないように配慮するということは専門性の損失につながり得るのかなと。同じ組織にずっといらっしゃれば別かもしれませんが、これから動いていく中で、所属をどこまで規定するのかというのは考えてもいいかなと思って発言をさせていただきました。ありがとうございます。
○小峰座長 柳川先生、お願いします。
○柳川氏 1点目ですけれども、なかなか立法府だけで現実的には全てを決めることはできないし、利害調整もできないのはそのとおりだと思いますので、ある程度行政、あるいは行政の下というのでしょうか、審議会でさまざまな意見が出され、利害調整も含めた形で政策決定がされて法律が決められていくのは、現実的にそういうことが必要だというのはやはりあると思うのです。ここを全て国会で決めてください、議員立法にしてくださいということは現実的ではないし、現状を考えるとそれは望ましいことでもないのだろうと思います。なので、審議会のような形で利害調整が行われることには、割と透明性が高く、実は利害調整がされるとかメリットもありますので、白地に絵を描くのであればいろいろなことが考えられるのでしょうけれども、現状の日本を考えたときには、やはり一つの合理性のある仕組みなのだろうと思うのです。
 ただし、あまりにもこの審議会で全てを決めなければいけないとか、ここで合意がとれなければ先に進めないというのは、そもそもの実質的な決定を担っていることからちょっと逸脱しているのではないだろうか。私もここの全てを見ているわけではないのですけれども、他の省庁の審議会に比べると、厚生労働省の審議会は必ずここで決めなければいけないというイメージが皆さんの頭の中で少し強いような気がするのです。このあたりは実質と形式があるので、形式というのは誰もここで決めると言っているわけではありません。先ほど樋口先生から御紹介をいただいたように法律でそんなことが書いてあるわけではありません。一方では全ての官庁の審議会においても、実質的な決定を審議会が担っていることも事実だと思うのですけれども、その実質の度合いを当事者がどういうふうに認識しているかというと、ある意味で最後は自分たちが出したものが他でひっくり返ってもしようがないと考えて報告書を出しているものもあれば、そのあたりのところはバリエーションがあって、やや私の印象論かもしれませんけれども、厚生労働省の場合はここで決めなければいけないという意識が強過ぎるのではないか。
 そこはメリットがあるのですけれども、一方では先ほど御指摘をいただいたように、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういう点が強過ぎるがゆえに多様な意見を集約するところがややおろそかになっている。そこのところが手薄になってしまったりだとか、それから御議論になっているように中長期的な方向性を割とフラットにというか、フランクに議論することを決める場だと考えてしまうことで、逆にいろいろな発言を縛ってしまっているところがあるのではないかという感じがするのです。なので、要するに、一つはそういうさまざまな意見が出されるあるいは本当に決めることではない中長期的な方向性を議論するようなところも、積極的につくっていくことが大事なのではないかと思って申し上げました。
 労働問題に関しては、私的自治にある程度任せられる部分がかなりあって、本来の法律業務でない部分がかなりあるのではないかというところの御指摘はそうだと思いますので、ここのところが当事者でうまく回るようであれば、そこはある意味で労使ですので、労使の当事者間で議論するようにする仕組みはあり得るのではないかと思います。
 問題のポイントは、そういうところの整理を幾つかしていって、本来議論するべきことをどこにフォーカスするかということなのではないかと思います。先ほど樋口先生からの御指摘にあったように、かなりいろいろな部会が走っていて、そこに相当な時間、労力も予算もかけて議論されていることは事実だと思うので、そういう意味で、ある程度の選択と集中と言うとちょっと言い方がまずいのかもしれませんけれども、やはりどこに本格的な議論のポイントを割くのかということも考えて、ある程度やるべきことを幾つか整理するのがいいのではないかという気がいたします。その中で意見集約というのが非常に重要だと、特にこれだけ環境が変わってきて、いろいろな方々が出てきている中ではとても重要なことだと思っています。
 3番目の点もそれに関連することでございまして、役所の方々が出てくるというのも一つはあるのだと思います。ただ、そのときにはある程度監督官庁としての立場というよりは、一労働者、働き手として意見を述べてくれるかどうかというところがポイントになってくるのだろうと思いますので、厚労省の方が出てきたときに自分のやっていらっしゃる仕事の部分がいろいろ見えてしまうと、一個人としてなかなか言えない部分はあるのだと思います。そのあたりの工夫が必要だと思います。
 それから、政治家の方々が入っていただくというのも、本当は政治家の働き方も非常に特殊な働き方ではあるのですけれども、重要な働き方の一つなので、一応働いている個人として御意見を言っていただくというのが本当はあるのでしょうけれども、そういうものはなかなか難しいことがあるので、できるだけ働いている立場の人で政治家の方、役所の方々を含めて、個人の立場として御議論がいろいろ出てくるのは、本当はいいことだろうなという気がいたします。
 それとは別に、審議会の中で、かなり三役の方々が出てきて意見を述べたり、議論をリードする場合が他の省庁だったり、ある時期に結構あるので一つのやり方なのだろうとは思います。ただ、そこは先ほど申し上げたように審議会で一体どこまで何を決めるのか、政治的にどういう決定をするのかというところもかかわってきますので、審議会にどういう役割を実質的に担わすのかということを決めた上でないと、なかなか政治家が入った方がいいとか、大臣、副大臣が参加した方がいいかどうかということはちょっと申し上げられない、なかなか難しい、細かいことを検討しなければいけない問題かなと思っております。
 以上でございます。
○小峰座長 樋口先生。
○樋口氏 私は何を答えればいいのかというところもございますが、一つは働き方がまさに多様化していますし、今は働いていない人も含めた社会にとっての利害ということも、当然この法案を議論するときにはかかわってくることでありますし、そこについては主に公益がまさに公益ということでありますから、社会にとってどうであるかということについて判断をしていくことが必要なのだろうと思います。それが十分できていないということであれば、我々公益ももう一回襟を正すべきだと思っております。
 もう一つは、具体的に官僚の方あるいはそのOB、元官僚の方が入るかどうかということでありますが、座長のような立派な方もいらっしゃいますし、中立的な立場からいろいろ御意見を聞くことも重要だろうと思いますが、往々にして、その発言が中立的な発言をしているにもかかわらず色眼鏡で見られるようなことがあって、あれは私より皆さんの方がよく知っていると思うのですが、例えば役所をやめてから一定期間はクーリングオフということで、それは入れない形になっているのではないかと現実的には、これは多分何か法律にはないのですよね。
○村木氏 法律ではないですよね。
○樋口氏 倫理規則ですか。
○小峰座長 利害関係のある先に就職してはいけない期間がたしかあったと思います。
○樋口氏 審議会はどうですか。
○小峰座長 審議会の先生は問題ないと思うのです。
 審議官、何かありますか。
○酒光総合政策・政策評価審議官 多分、何かの申合せだと思います。女性を何割以上入れなければいけないというのと似たような形で、以前は特に審議会の委員に行政OBの方が入っていることが多かったので、そういうのはよくないのではないかということでかなり前ですけれども、申合せみたいなものがあったと思います。ちょっと調べておきます。
○樋口氏 そこは、ちょっと調べていただいて。あと、国会議員の方に審議会に入ってもらったらという御意見がありましたが、ご存じのとおり労働政策審議会の議論する対象というのは往々にしてかなり対立する内容が多い。その中で国会議員といっても誰に入ってもらうのか、どの政党なのかということがまた出てくるかと思います。そこで政治色を出さないようにということで、公益、社会のためということで考えたときに、この法案はどうかということを審議しているわけでありまして、そこのところがなかなか難しいと思います。ご存じのとおり審議会で決めたものがなかなか国会を通らないことも現実には起こっていることですので、おそらくさらに審議の時間は延びるのではないかと思います。
○小峰座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。安藤さん。
○安藤氏 日本大学の安藤です。よろしくお願いします。今日は貴重な御意見を聞かせていただきありがとうございます。また私としては、自分の大学院の師匠の柳川先生がいらっしゃっているのでなかなかやりづらいところではあるのですけれども、皆さんの議論を聞いていて幾つか注目するポイントがあると思いました。
 1つ目は、誰が議論をするのかという話と誰の意見を聞くべきなのか。これが今回の大事なテーマかなと思います。例えば工藤さんもそうだし、今野さん、谷口さん、さまざまな方が自分たちの代表者が中に入るべきだとか、声を聞けとか、いろいろなことをおっしゃっていますけれども、誰の意見を聞くのかというのは幅広に聞くのが当然なのでしょうが、誰が議論すべきなのか、また、どういうテーマはどういう人が議論すべきなのか、このあたりをもうちょっと明確にしていかないといけないのではないかなというのが1点目です。
 例えば樋口先生の資料にありますとおり「本来、働くルールは労使交渉で決めるべきもの」だと。先ほど村木さんからもそういうお話がありましたけれども、当事者で議論ができるのであれば別にこういう審議会が口を出す必要はないわけで、例えば労働基準法のように仮に労使が合意したとしても、それは許されないよという別のラインがあるからこそ一定の外からの強行法規としての規制をかけるわけで、労使が議論をすればいいのかといったらそこには私は少し疑問があります。労使の意見をしっかり聞くことは当然大事ですが、誰が議論すべきなのかと言われてもなかなか難しいわけです。そこは公益委員が本当に長期的なことを議論できる立場なのか、また、それはどういうプロセスで選ばれているのかというところも問題になると思うので、お三方に誰が議論すべきかについてお聞きしたいのですけれども、樋口先生の場合にはおそらく現状のことをもしかしたらおっしゃるのかもしれないですけれども、それを教えていただきたい。
 2点目は、どこまで議論すべきかというのも問題だと思います。労政審で1個のプラン、法案の形になって、それが国会で是か非かと審議されるのがいいのか、労政審で意見をぶつけ合ったあげく、別に法案がいろいろな立場から2本、3本出てもいいと思うのです。幾つかの考え方、幾つかの立場から出てきたものを国会で審議するのだったらいいと思うのです。そう考えるとどこまで議論すべきなのか。
 そして3点目、先ほど中立的な議論ができるかどうかという話がありましたけれども、どうすれば緊張感を持ったよい議論ができるのかについても、御意見があればぜひお聞かせ願えればと思います。例えば透明性が高いこと、先ほど工藤様からインターネット中継みたいなお話がたしかあったかなと思いますけれども、そうであるのがいいのか、個人の名前が全部入った議事録がフルオープンになることがいいことなのか、それとも、例えば外から対案のようなもの、シンクタンクなどから他の法案みたいなものがどんどん出てくれば中立的なものを出さないといけないのか。どうすればこの審議会の議論のクオリティーがさらに上がるのかという点について御意見があればと思います。
 どうぞよろしくお願いします。
○小峰座長 それでは、また順番にお願いします。
○工藤氏 非常に難しい問題なので、本当はよく考えなければいけないと思いますが、誰が議論するのかというのは、この人たちが議論するのだったら、そこで出た意見はある程度承認されることが代表性だと思います。でも、もちろんその承認はとても難しい。ただ、昔の消費税を上げるかどうかのところで一度検証みたいなところに入ったことがあるのですが、たまたまそのときの代表が非正規の方であったり、働かれない方、若い世代の代表者としてと言われてしまったものなので、いろいろなところからいろいろな御意見が届きまして、代表するということはこういうことなのだと。おそらくいろいろな意見をいただき、あのときは自分が○か×かを伝えるという話だったのです。
 △がほぼ許されない状態の中で発言はしたのですが、そのときに自分の中で考えたのは一個人として話しているのか、組織の代表なのか、多くの人たちの代表なのかということを非常に考えた上で、何があっても自分の発言に責任を持とうと思ったのです。そこで言った意見がブーメランで戻ってこない方であるのか、つまり、やっていない人がこうあるべきだと言っても、ブーメランで戻ってきてやっていないではないかと言われてしまうので、あるテーマに関しては一貫した主義主張であるとか、自分の意見に責任を持ってできることというのは、ある程度社会的な合意をとるための前提要件になるのかなと。言いっ放しではないところをどこまで個人に求めるのかというのは仕組みではないかもしれませんけれども、あのときは本当に厳しい状況に置かれました。緊張感があるわけです。○をすれば×の人からどういう意見を受けるのだろうとか、×をすると○の人からものすごくいろいろなことを言われましたので、3番目になりますが、あの緊張感は何かというと全公開されたところです。つまり全ての人に意見を言われ、審議会が終わったらメディアの人からばっと囲まれて、所属も全てオープンにして、ほとんどの審議がほぼオープンの状態になっている中で準備をする側としても物すごく準備しましたし、考えもあった。
 私は、先ほど樋口先生がおっしゃったように、法律的に意思決定をする場でなく、議論する場であるという前提に立てば、それはフルオープンだと思います。どこにいても聞け、議事録は口頭として読みにくいものの修正はともかくとして、逐次公開と言われながらも言ったことが削除されているときがあるわけです。そういうものもいろいろ経験をしてくる中で、全部公開して議論できるものを議論するものであって、言いづらいことは言わないとか、もしくは言いづらくあっても言うことそのものがクオリティーある緊張感であり、おそらく選ばれた人が責任を持って発言しなければならない部分なのかなと思います。
 以上です。
○小峰座長 柳川先生。
○柳川氏 なかなかお答えするのが難しい質問ばかりで、これを完璧に答えられたら、多分この有識者会議は要らないのではないかというぐらい重要なポイントで、むしろ委員の方々から御意見を聞きたいぐらいの話ではあるのですけれども、せっかく安藤委員からの御質問ですので、私が今のところ考えられる御意見を述べさせていただきます。
 情報集約の話と決定するところを少し分けて考えた方がいいのではないかというのはそのとおりだと思います。誰がどう議論するのかということでいくと、これは先ほど申し上げたように審議会に一体どういう役割を実質的に担わせるのかというところとかなり裏腹な関係だと思います。私の極端な意見を申し上げれば、これはある程度先ほどの意見集約と議論の場だと考えるとすれば、一つのクリアな考え方は現実的にはないです。公益委員の方たちだけが議論をして、その他の方はいろいろな情報、意見提供をすることにおいて公益委員の人たちが議論をして、その結果をまとめる形だろうと思います。
 ただ、この形は私の記憶だと間違っているかもしれないので、後で必要だったら修正しますけれども、金融審議会で一時期とられたことがあったと記憶していまして、金融審議会で業界団体の方を一切排除して、学識経験者だけで委員をやったことがあります。その方がいろいろな横やりが入らなくていいのではないかと思ったのですけれども、結果的には、そこからその状態が長続きせずに業界関係者の方々が最初はオブザーバーということで入り、その後は委員という形で入っています。現状では、私の理解だと業界関係者の方が委員として入っています。
 そういうふうになってきた理由は2つあるのだろうと思っていまして、一つは公益委員の先生方は専門性の高い方々が選ばれていますけれども、やはり現場の実態を本当に把握できているかというと把握できていないので、ある種の実態を本当にわかっている人に委員に入っていただいた方が適切な判断ができるということ。もう一つは、やはり金融審議会も実質的にはかなり利害調整の場になっていますので、そこがオブザーバーと利害調整をすることではなく、委員会で利害調整をした方が実質的な利害調整ができるということだったのだと思います。その点では、先ほど申し上げたような情報提供の場、意見集約の場ということではなく、ある程度ここで利害調整をして何らかの実質決定をしようと思えば、かなり利害にかかわっている方々に委員として入っていただかないと実質的な決定ができないということなのだろうと思いますので、先ほど申し上げたようにどちらかというとできるだけ多様な方々を入れていく必要はあるのだと思いますけれども、そういう方々に委員に入っていただくことが必要なのだろうと思います。
 ただ、どこまで議論するのかということも先ほどからずっと申し上げてきた実質的な決定に依存するのですけれども、あまりにもここで全てを決定すると実質的に考え過ぎるとやはりスピードが鈍る面があります。しかも、全員の合意をとることを強く考え過ぎると、実質的な拒否権を一人ひとりが持ってしまうことになりますので、多様な人たちを入れてくれば入れてくるほど実質的な拒否権を全ての人が持つので、誰かが反対して決まらないことになります。実質的な拒否権を持つような完全合意をとることはある程度諦めて、建設的な議論あるいは提言をしていく方向に舵を切った方が私はいいのではないかと思っています。
 先ほども樋口先生から御指摘、御感想があったように審議会でまとめても国会で止まるので、そのくらいであればという言い方はちょっとあれかもしれませんけれども、場合によっては両論併記のようなものも含めて、むしろ迅速に必要な提言を出していく方向に舵を切った方が本当の意味でのみんなにとって望ましい立法ができるのではないかという気がしております。このあたりは私が実態を正確に把握しているわけではないので、あくまで感想ということでお聞きいただければと思います。
 3番目、緊張感が高い意思決定をしていくにはどうすればいいかということは、私は現状でそんなに緊張感がない審議運営がなされているとは思っていないですけれども、ポイントはできるだけ多数の方々、多様な方々がきちんと意見を言えるようになる。みんなが自分のことだとして考えられる意見が言えるようになるということと、先ほど工藤さんからお話があったことですけれども、透明性が高い中で議論がされていくことによって緊張感は持続できるし、それぞれが自分のことだけを考えるのではなくて、ある意味で、社会全体の働き方がどうあるべきかという公益性の立場に立って発言をしなければいけないという気持ちを醸成していく上でも、透明性が高い議論が重要なのだろうと思っております。
○小峰座長 樋口先生。
○樋口氏 「本来、働くルールは労使交渉で決めるべきもの」と「本来」という言葉が書いてありますので、まずそこを御了承いただきたいのと、どうも安藤さんは労使交渉が個別企業における労使交渉であると念頭に置いているのかなと思うのですが、それは非常に日本的なところでありまして、社会全体におけるルールは多くの国で、それぞれの個別企業ではなくて産業間でありますとか、あるいは産業を超えた労使でルールを基本的には決めていっていることですし、ましてや、そこに公益がなぜいるのかということになれば、それは他の企業にも適用することで、個別企業が勝手にルールを決めてくださいという話ではないことは御了承いただきたいと思います。
 2番目の緊張感を持ったよい議論ができるという話ですが、私どもは緊張感を持って臨んでいるつもりでございまして、それを緊張感がないとみられるのであれば、どういうところでそれがないとおっしゃっているのかという御批判を承りたいと思います。
さらに審議のクオリティーを上げるというのは、何を持ってクオリティーを上げるとおっしゃっているのか。まさにここで議論なさっているのが、どうやればクオリティーを上げるということなのでしょう。クオリティーをこう測ります、メジャーメントはこうですということがあって、効率をもっと早く出せということでクオリティーを上げることであれば、逆に私の観点からみれば、それはクオリティーが下がることでありまして、早ければいいというものでもございませんし、やはり慎重な審議が必要だろうと思いますので、そこでおっしゃっている審議のクオリティーをどうやれば上げられるのかという質問に対しては、クオリティーをどう測っていらっしゃるのですか、という御質問をむしろ逆にさせていただきたいと思います。
○小峰座長 安藤さん、何かありますか。
○安藤氏 ありがとうございました。
 クオリティーとか緊張感というお話を申し上げたのは、私も議事録であったりとか、こういう労働関係の仕事に触れるようになって、審議会のお話をできるだけ追っかけるようにはしていたのですけれども、やはり労働契約法の審議の段階でいろいろなところから注目されていたのですが、それまでだったら労働者の代表と使用者の代表、それぞれ意見をぶつけ合ってでもある程度はお互いに折れると言ったら言い過ぎかもしれないですが、譲るべきところは譲って、ある程度話をまとめていこうという全体的な議論の流れを過去の審議会には抱いていました。
 これに対して労働契約法あたりからどちらかというと、もともと持っている意見をぶつけたままで、結局、同意がほとんど進まず、最低限のラインしか法案にならなかったところを見ていると、どうすれば個々の人がもともと自分たちの持っている考え方を出してきて、それ以上何も議論しませんというのではなく、その場の議論によって内容が深まっていくことができるのかなというところが私の関心事だったので、それについてお伺いしたということです。
○小峰座長 私の方からも1点、これは今回御出席の方以外の委員の方の御意見もお聞かせいただきたいのですが、何回か議論に出ている公労使の三者構成という議論なのですけれども、私の印象では、確かに働くルールを決めて、それを労使双方が守らなければいけないタイプのものは、しっかり労使双方が合意したものを決めていかなければいけないことですから、三者構成にはある程度意味があると思うのです。
 ただ、この審議方法はルール設定型の審議方法ではないかという印象があって、例えば今日の議論になっている中長期的に働き方をどうするかという長い目で見た場合は、必ずしも決まったことを全員が守らなければいけないことではないので、もうちょっと抽象度が高い議論になりますので、そういったところは必ずしもルール設定型の意思決定にこだわらないので、いわば全員が公益代表です。つまり、日本のあり方をどうするかということを議論するのだから全員が公益委員、そもそも「公益委員」という言葉が私はややおかしいのではないかと思う。公益委員ではない人たちは私益なのかという感じなので、そういう全体の大きな流れを議論するときは、全員が立場にとらわれずに議論するというのがあってもいいのではないかということで、その辺はもうちょっと弾力的に考えられないかなという気がするのですが、この辺、樋口先生はいかがですか。それは他の方の御意見もぜひお聞きしたいのです。
○樋口氏 「企画部会」でという発言をさせていただきましたが、それはもちろんその点を考慮に入れた上での「企画部会」でということを申し上げたつもりです。
○小峰座長 どうぞ。
○柳川氏 今、小峰座長から御指摘があった点はまさにそうだと思っていまして、先ほど村木委員の方からも御指摘をいただいたところでお答えしたのもそういう趣旨でございます。決めていることあるいは考えていることを議論していることにはいろいろな種類があって、少しそこを仕分けしていくことによって、本来どういうことをここで自主的に決めなければいけないのか、あるいは決めるのではなくて議論が大事なのか、議論よりもむしろ意見集約が大事なのかという幾つかのフェーズがあるのだと思うのです。それぞれに応じてある種柔軟な意思決定といいますか、議論のスタイルはあるはずなので、労働をめぐる話はかなり多様な問題が入っているので、それを全て一つの同じような切り口で、同じスタイルで意思決定をしなければいけないと考えると、ややそこに難しさがあるのだと思いますので、そこを先ほど仕分けと申し上げたのはまさにそういうシステムでございまして、座長がおっしゃるような形で、少し整理をしていくことでより建設的な議論ができるようになるのではないかと思っております。
○小峰座長 この点について、何か皆さんからありますか。
 どうぞ。
○横田氏 この点についてですか。
○小峰座長 もしほかにあれば。
○横田氏 三者構成の件はいろいろな意見が出てきた中で大半の方が守るべきと言っていたのですけれども、私も、どの部分は絶対になどグラデーションをつけ分ける必要があると思います。
 工藤さんがおっしゃっていた日程調整の件は非常に共感しております。事務方の方も苦労されていると思いますので、皆さんの能力を使う場所はそこではないだろうというふうに思います。また前回、年齢だとか代表性という言葉でダイバーシティとスピード感との矛盾が出てくるとお話がありました。
 実は私、いろいろな委員会に出ているのですけれども、公益委員としてしか参加したことがなかったので、どこかの組織代表として議論を闘わせる観点で言うというのとちょっとごっちゃにしていたかなと思っています。ただ工藤さんがおっしゃっていた若手をこういった場に入れていくというのは、国の政策を考えたりするのに非常に前向きになったりもしますので、私自身も成長し考えるきっかけになったためいいことだと思っています。ここまでは意見です。
 柳川先生にお伺いしたい点があります。海外から見た日本の特殊性というのは、決定する場が明確でない点でしょうか。要は、海外から見ると非常に日本の状況は特殊であるとおっしゃっていて、村木さんからは、国会でのやや決め事が多いため日本は審議会に重きが置かれているというお話がありましたけれども、海外もおそらく決め事がたくさんある中、海外のベーシックと日本の違いをぜひ教えていただきたい。
○柳川氏 私の理解ですと、世界各国いろいろな国がありますので、海外はという言い方はあまり適切ではないのだと思いますけれども、ある種、議員の側に相当なスタッフを抱えていて、その専門スタッフが実質的な法律の立案をするというタイプの国が結構あると理解しております。
 現状でいきますと、そういう法律の立案部分あるいは場合によると法律の文言まで、そこを行政府が実質上やっているのが日本だと言うと言い過ぎですが、かなりそれに近いのが日本だという理解をしています。
 それから審議会というのも、言い方がなかなか難しくて、ある種専門家委員会みたいなものがつくられて、そこから何らかの答申を受けて大きな改革の方向性を決めたり、あるいは専門的な意見を求めたりということは、世界中どこでもあると私は理解をしています。
 ただ、それは基本的には、アドバイザリーボードだったりスペシャリストのコミッティーであるという、そういう位置づけなので、そこで実質的な意思決定をされているということを当人あるいは周りが理解しているケースというのはあまりないのではないかと思うのです。
 日本の場合は、かなりそういう審議会が実質的な意見を決めているかのように皆考えているのだけれども、では、本当にあなたが決めたのですかというと、例えば樋口先生の話を出すのはちょっとあれなのですが、審議会の座長が、では、あなたが決めたのですか、と言われると、そこは私ではないということにやはりなるのだろうと思うのです。
 では、専門家のメンバーなのですかと言うと、いや、私ではありませんということになる。国会議員は立法だから決めたのですねというと、すみません、ちょっと後で議事録修正するかもしれません、国会議員の先生は、いやいや、審議会の方で決まったことをそのままというようなことになって、本当の意味で誰がどう決めたのですかというのが、外側からなかなかわかりにくいよね、と言われるのが、多くの外国人だったり、外国人の研究者から言われることでございます。
 なので、そこの部分は濃淡があるので、では世界中どこの国でもそんなにクリアなのですかと言われると、そうではないのだと思いますけれども、これは労政審に限らず日本の審議会システムがやや世界的に見て特殊で、外から見ると誰が意思決定を自主的にしているのかわかりにくいと一般的に言われることの私の理解です。
○森田氏 大変おもしろいというか、失礼ですけれども、私自身の関心のあることを議論されているのです。
 今の問題も含めてそうですけれども、先ほどありましたが、基本的な中長期的な方針とか、政策というものをどこで決めるのかという話なのです。私が知っている限りで多くの国の場合には、選挙でもって正当性を持っている政党ないし内閣でもってきちんと決めましょう。それで、その方針に従って具体化する作業は各省がやるということです。そういう意味でいいますと、日本が他の国と比べて特殊だと思います。いわゆる分担管理の原則で、各省の決定が内閣、日本政府の決定になる。なぜかそういう憲法の理解がされているものですから、その意味でこの労働政策に関して言えば、厚生労働省が国の政策を決めるということになると思います。多分、これはどこか他の省がやっている産業政策と抵触してくるということになってきて、これは日程調整以上にコストのかかる各省間調整をやらなければならないということだと思います。
 そもそもというのが、柳川先生のペーパーにありますけれども、労政審で企画もいいのですが、労政審の親会議自体が、橋本行革などの行革のときに審議会の数を絞るという形で、いわばアンブレラ審議会という形でつくられたものでして、厚生省系の場合には社会保障審議会とか、あとは特殊な法律で決められた審議会がありますけれども、その下に部会という形で、それまでの審議会をいっぱいぶら下げている。そういう意味でいうと、親審議会というのはそもそもやることは何なのだという議論が出てくると思います。
 それぞれのところがそれぞれのことをやっていて、それは大臣の下で統合されて、内閣提出法案として各省から出されるという形になっていたわけです。そこで、労政審でなぜ基本的な中長期的な方針を決めるのかということも問題がありますし、それが無視されるというのも、今申し上げましたとおりに、他の省とか内閣全体からみたときに、それは、政府全体として決めることなのだという解釈も成り立つというところだと思います。
 それで、この位置付け自体が曖昧なままで、これは他の省でもそうでして、思い切って合理的にやるというところは、ほとんど親審議会は名前だけで、下の審議会の委員の人事以外は何もやらないというところもあります。その辺は、少し審議会の機能というものを位置付けなければならないと思います。最近ここ20年ぐらいの政治情勢の中で、安定した形で政権与党が一貫した政策をつくるということが、一方でマニフェストが強調されながらなかなかされないものですから、長期的により整合性、体系性を持った政策をといったら、やはりそれぞれの所管している各府省がつくらざるを得ない。それが現状ではないかなと思っております。
 何といいましょうか、コメントなのですけれども、それが1点目のところでして、2点目はその場合に、会議体が大きくなればなるほど、代表をどうするかという話で、委員の数が増えてくると思うのですね。
 私もいろいろな会議に入っていますけれども、厚労省関係というか、厚生省関係の会議でいいましても、大体関係団体が30人ぐらいになってくる。日程調整もものすごく大変なのですけれども、30人の方が集まって2時間の会議時間で、単純に割っても一人4分しか発言できないとか、それで特に代表されている方は、後ろに団体を持っていらっしゃる方はポジショントークになりますので、おそらく1回発言をせざるを得ないということになると、ほとんど議論ができない状態なのですね。言いっ放しになってくる。そうすると、言いっ放しの意見を聞いて、事務局がそれぞれの意見を統合する形で原案を出して、それについてまた御意見を言ってくださいと、また3分ずつとそれを何回か繰り返して決めるということになったときに、誰が自分の主張をしてどういう議論を戦わせて決まったかということが非常に見えにくい形になっています。
 これは、労政審の場合はどうか知りませんけれども、果たして使側が誰を代表しているか、労側が誰を代表しているかという議論になったときに、それこそ非正規の方はもちろんそうですし、世代の若い方もそうですし、ニートの方も代表するという話になってくると、これはどんどん拡大してしまう。
 そうすると、どこかで絞り込まなければいけないわけですけれども、それをどういうルールに従って誰がやるのか、そこのところがはっきりしませんと、私は代表をされていないという声がある以上、皆さんに入ってくださいとなる。すると、今申し上げた悪循環が起こってくるということだと思うのですね。
 ここのところは、ちょっと話が戻るようですけれども、本来ならばもう少し内閣の方がしっかりと方針を決めるということであればいいのですけれども、必ずしもそうでないために、そのまとめ役を誰がやるかというところが非常に難しくなってきて、今日の事務局のおつくりになりましたヒアリング項目で、まだ出ていないことの論点ですが、政労使と公労使の違いというのは、外国と比較したとき、そこに微妙な違いがあるのではないかと思いますね。
 日本の場合には、政労使になるともっと大変なのかなという感じがして、公労使で行かざるを得ないところだと思いますけれども、本当に公が公たりうるのかということが問題になると思います。
 時間をとって恐縮ですけれども、もう1点、先ほどから議論で出ているところで、議論のクオリティーの問題がありますが、これは私自身も幾つかの審議会にかかわってきましたけれども、クオリティーの問題というのはかなり重要だと思います。
 限られた時間の中で、最も重要なことについていかに効率的に議論できるかということで、先ほどのポジショントークの話もありますけれども、その発言があったからといって審議に影響がないし、なかったとしても別に問題ないような発言がかなりある。これを減らす方法がまさにエビデンスではないかと思っていまして、エビデンスとは何ぞやという話もありましたけれども、これは簡単に言いますと、いろいろな委員が共通して前提として認める事実ないしデータだというように私は定義していまして、これ自体、訴訟法上の証拠と同じ考え方です。
 したがって、誰もが争わないようなデータというのをできるだけ積み重ねていって、違う部分についてだけ議論を絞り込んでいく。そういう形の議論ができるかどうかというのが重要ではないかと思っていまして、現在の労政審について私はよくわからないのですけれども、先ほどの安藤先生と同じような質問をすると、代表者を誰がどうやって決めるのか。そこが一つのポイントになってくるのかなと思います。
 私自身の経験から言いますと、非常に異例と言いましょうか、超異例な中医協という審議会にかかわってきたのですけれども、いわゆる会議体が大き過ぎるから小委員会をつくって基本的な事項について議論をしようといったときに、何が起こったかというと、あそこは支払側と診療側と公益委員になっていますが、それぞれから代表を出してというときに、代表を絞り込めないので、全員小委員会に参加するという不思議なことが起きて、それならば小委員会を設ける意味がないと思うのですけれども、仕方がないから全員参加の小委員会を作ったのです。なぜそう思うかといいますと、かつてと違って、使用者側と労働者側もそうですし、支払側と診療側もそうですけれども、それぞれの側がなかなか一枚岩で内部の利害調整ができなくなってきた。
 したがって、できるだけ決定の高いレベルのところに自分たちの代表を送り込もうとするものですから、そういうことが起こってくる。
 多分、同じようなことが起こる可能性がある。これは人間の行動ですので、それをどう見て仕組んでいくかというのはなかなか難しいところだと思います。私も元政治学者として、そういうことに関心を持っています。すみません、質問というよりコメントでした。
○小峰座長 ありがとうございました。
 ちょっと私からも、今お話があったエビデンスに基づく議論という、これは今回のような政策決定プロセスを考える際にも大変重要なポイントではないかなと考えています。
 今、森田先生からお話があったように、共通の土台をなるべく広く厚くしていくという意味で、エビデンスを積み重ねておいて議論をするというのは大変重要なのですが、私はかねてからこの点で日本は非常に遅れているのではないかと考えていまして、昨日たまたま日経の2面に、EBPMという言葉が出てきまして、Evidence Based Policy Makingということなのですけれども、私はついに日本の新聞にもこの言葉が出てきたかというので、検索してみたら、昨日が日経史上初めて出てきたのです。
 これを実際に実施していくためには、おそらく統計そのものを整備していかなければいけないし、それからそれを分析する人材をまたきちんと養成していかなければいけないし、何よりも議論に参加する人が、エビデンスが重要なのだという心構えというか、共通認識を強く持つ必要があるという点で、なるべくことあるごとにエビデンスというのを言い続けた方がいいのではないかと思っているのですが、もしこの点をもう少し強調した方がいいとか、この辺がネックになっているとか、そういった御意見が委員又は今日の出席者の方でおありになればぜひお伺いしたいと思います。
○森田氏 よろしいですか。
 エビデンスは医療費の決定の方でもさんざん出てくる言葉なのですけれども、いわゆるサンプル数が十分であって、できれば悉皆に近いような形でのデータというのはなかなか出てきません。したがって、必ずあるエビデンスが出てきて、自分の主張に反する内容だった場合に何が起こるかといったら、サンプルバイアスがある。ならば反証が挙げられるかというと、それは必ずしもないのですけれども、現場感覚と違うというのが一番強い説得力で、必ずその議論になってきます。
 別な形で、では、反証しろ、挙証しろと言ったら、今度はまた別にその方たちに都合のいい数字が出てきますけれども、それも同じようなことになりまして、結局Evidence Based Policy Makingと言いながら、Evidenceなしで決定せざるを得なくなってくる。
 冗談で言うのですけれども、むしろ出てくる数字はPolicy Biased Evidenceというのがすごく多くて、それをどう改善していくかというので、私自身はこれを特に社会経済的な統計であるとか、医療の方もそうですが、せっかくマイナンバーというベースになる制度ができたものですし、ヨーロッパでも北欧諸国等では、それによってかなり詳細なデータを集めています。
 我が国は、今のマイナンバーではそのままで使うことはできませんけれども、将来的にはそうした形で、特に所得であるとか生活状態については非常に精密なデータを集めるということが必要ではないかと思います。
○小峰座長 樋口先生。
○樋口氏 私も統計委員会の委員長を一昨年までやっていましたので、政府統計についてはよく、いろいろ調べさせていただきましたし、また、責任ある立場であったということで、おっしゃるのはもっともですし、私はそうあるべきだと。そういったことを実施されている基本計画にも言って、そして今、5年計画で実施している。
 基本的な問題は、やはり人です、人材です。おっしゃるようにEvidence Based Policyをつくることができるか。あるいはエビデンスを集める統計の専門家、これがそれぞれの担当としてどれだけ配置されているか。人数は十分にあるのかというようなところについて、これがあります。
 もう一つは、客観的なデータをどう集めていくかと言ったときに、やはりこれは基本的な問題として、それぞれの行政担当が行うということ、ある意味ではよく現実を知っていますから、何が問題かということについて調べるということでは重要だろうと思いますが、一方で客観的に、誰もが信用できるようなデータをつくっていくことについては、もしかしたら省庁を離れて、中央集権的に集めた方がいいかもしれないというような。それについては、多分いろいろなところで議論されておりますので、基本的な考え方は全く同じということです。
○小峰座長 古賀さん。
○古賀氏 先ほど小峰座長から話があった、中長期的なことについて一言、コメントだけさせていただきたいと思います。
 1つ目は、第1回目でも言いましたように、働き方や雇用・労働に関する政策は、いわゆる産業政策や社会保障、税制など、幅広い分野にかかわるということです。したがって、私自身、樋口先生のおっしゃる労政審本審の「企画部会」的なもので本当に議論が完結できるのかとも思います。森田先生がおっしゃったように、まさに内閣の中、例えば官邸の中にそういう機関をつくってそこで大きな方向性の議論をする。もちろん労政審とタイアップしながら議論する。そういうことも、非常に難しいことだと思いますけれども、選択肢としてはあるのではないか。雇用・労働政策が、それだけで完結できないような状況になっているということは、我々は頭に入れておかなければならないと思いますし、そういう議論の中の雇用・労働政策というのを常に考えておかなければならないのではないかということが意見です。
 2つ目は、森田先生がおっしゃったような、中長期的な方針は内閣で議論、決定するということですけれども、中長期的な方針は、具体的な雇用・労働のルールに直結していく場合が多いわけです。だからこそ、中長期的な方針を議論するときに、労使の声がきちんと反映するようなメンバーを私は選ぶべきだと思うのです。また、ルール決定というのは何も労使の利害関係ということだけではなく、ルールが職場に根づくかどうかが非常に重要な視点であると思いますので、そのことをあえて申し上げたいと思います。
 それから3つ目は、樋口先生がいみじくもおっしゃったのですが、今日の厚労省の説明にもありますけれども、前回の有識者会議でも政策のスピード感が非常に問題になったのですが、労政審のスピードは超特急みたいなものでやっているのではないかと思うのです。政治や国会の関係で、少し延びたものとかはありますが。その辺の事実というのは、ファクトベースで検証しなければならないと思います。また、口幅ったい言い方ですけれども、雇用・労働政策は、労働力A、労働力B、労働力Cを扱っているのではなく、人の営みを扱っているわけですから、そういう観点からも考察をする必要がある。コメントですけれども申し上げておきたいと思います。以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございました。
 まだ御発言があるかと思いますが、今日はもう一つ議題が残っておりますので、こちらの議題を処理したいと思います。まずは事務局から資料について説明をお願いします。
○小林労働政策担当参事官 それでは資料2をご覧いただきたいと思います。
 事務局提出資料でございまして、2ページは第1回会議で御紹介をさせていただきました、労政審の在り方に関する提言等でございます。規制改革会議や自由民主党の多様な働き方を支援する勉強会でいろいろ御指摘等があるということでございます。
 次の3ページ、4ページですけれども、これは第1回会議における主な御意見を整理させていただいたものでございます。
 「政策決定に当たっての議論について」「三者構成について」、また4ページですけれども「代表性について」「政策決定スピードについて」ということで、各委員の意見をまとめさせていただいております。
 次に5ページですけれども、これは前回の会議の中で、私どもに宿題があったものでございまして、労働分野の政策立案過程の各国比較の資料でございます。この資料出所ですけれども、下に書いておりますが、フランス、ドイツ、オランダ、イギリスにつきましては、JILPT、労働政策研究・研修機構の2010年の資料からとっておりますので、若干古いものになっておりますが、この点御承知おきいただければと思います。
 まず、フランスでございますが、労働立法及び改正の際には、労使との事前協議を行うことが政府に法令上義務付けられているということでございまして、事前協議の後、法律案のテーマに応じて、政労使の三者構成による全国団体交渉全国委員会又は雇用高等委員会若しくは全国生涯職業訓練評議会に対して諮問がなされるということでございます。
 また、その下の○でございますけれども、憲法第70条で、「経済的、社会的性格をもつ全ての計画または全ての法律案は、意見を聴取するために経済社会評議会に付託される」ということでございます。この経済社会評議会ですけれども、ここはかなり多い人数の議員で構成されるということで、組合、経営者団体、職業団体などの代表的な団体と政府の任命による学識経験者で構成されております。
 それからその下の○ですけれども、上のような三者構成の機関以外としても、雇用方針評議会、労働条件評議会、年金政策指導評議会等が存在しているということでございます。
 次にドイツでございますけれども、ドイツでは連邦省庁共通職務規程第47条で、法案を作成する際に利害関係が生じる州、地方自治体、中央団体、専門家団体や諸団体に草案を送るということが規定されております。この規定に基づきまして、労働政策関連法案をつくるときには、関係の団体ということで、労使の団体から意見を聞くという手続をとっているということでございます。また、最低賃金の政策に関しまして、最低労働条件法に基づく公労使の中央委員会が存在しているということでございます。
 その下の○の連邦雇用エージェンシーの管理評議会でございますが、これは職業紹介や、職業実習のあっせん、それから求職者の雇用機会の拡大とか、所得代替給付金の支給をしている機関ということですので、日本でいうとハローワークに近いものと思いますけれども、そこの理事会が民間企業の取締役会のような仕事をしておりまして、その理事会の業務を監視する監督機関として管理評議会がございまして、これが三者構成制度になっているということでございます。
 それからオランダでございますけれども、オランダは社会経済協議会(SER)というものがございまして、これが公労使三者構成になっているということでございます。この社会経済評議会ですけれども、重要なのは社会経済政策関連の法案については、通常政府が議会提出前に、この協議会に諮問をするという枠組みであるということでございます。
 これは政労使三者構成ですけれども、狭義の労働分野のみならず、社会保障や医療の関係、環境政策、国土計画まで含む社会経済政策全般に及ぶものであるということでございます。
 それからその下の労働協会(SvdA)ですけれども、これは何か法律上の規定があるものではございません。設置に係る法令が存在しない、労使が私的に集う機関とされておりますが、ここによる労働協会と政府との協議に基づいて、産業別労使交渉の大枠を決定するという機能を実質上持っているということでございます。
 それからイギリスでございますけれども、イギリスは一般的に法案を議会提出する前にパブリック・コンサルテーションというものを実施しているということでございます。労働政策の法案については、広く一般からの意見を募集するパブリック・コンサルテーションの一環として、労使を含めて広く意見聴取を法案に反映する前に行っているということでございます。
 その下の3つ目の○でございますけれども、個別分野では、例えば我が国の最低賃金審議会に当たる低賃金委員会で、労使の参加する諮問組織が政策の立案、実施に影響力を持っているという状況でございます。
 最後にアメリカでございますけれども、全米レベルで労働政策の立案に関する常設の三者構成機関はないということで、特定の分野について三者構成の審議検討機関が設けられているという状況でございます。
 6ページ、労働政策の政策決定スピードでございます。これはいろいろ議論が出ておりまして、樋口先生からも全体でみることが必要ということで、審議会だけではなく、その前後も含めて全体で精査が必要というような御意見を頂戴しています。
 まず、労働政策の一般的なプロセスでございます。6ページの1から5に書いておりますが、まずは「1法改正の契機」のようなものが出てくるということで、骨太の方針や日本再興戦略、また法律であれば改正法の中に何年後見直しのような規定もございます。それを契機として始めるというものもございます。
 次に「2研究会・検討会」がございまして、その次に「3労働政策審議会」ということで、大臣への建議と、その後法律案要綱について大臣から労政審の会長に諮問して、会長から大臣に答申という手続が一般的でございます。次に「4国会審議」があって、その後成立すれば「5成立・施行」ということでございまして、次の7ページ、8ページで労働政策の政策決定スピードについて整理させていただいております。
 これは当省提出法案の中で、過去5年間で成立しているものを抜き出しているものでございます。8ページの最後の平均のところでございますが、必ずしも全部に研究会、検討会があったということではございませんが、あるものについての平均が7.6か月、労政審での審議期間が平均6.5か月、国会での審議期間が平均5.8か月、総期間が平均19.0か月ということでございます。ざっと見ていただきますと、労政審につきましては大体半年、6か月ぐらいが通常で、先ほど樋口先生からも御紹介がありましたけれども、8、9月から検討を開始して、大体年内か年明けに建議、1、2月に法律案要綱の諮問、答申の手続ということでございまして、大体半年以内に収まっているのかなという感じでございます。少し長いものもございます。
 また、国会の審議でございますけれども、これは一開会期間中に成立したものはそれほど長くなっていませんが、廃案になったり、継続審議になったりということで、そういった法案につきましては、期間は長くなっているというような状況でございます。
 具体的な日付につきましては、参考資料の最後の16ページからつけさせていただいておりますので、省略させていただきます。
 最後に、10ページ以降はエビデンスということでございますので、今回の議論に関連する数字を少し御紹介させていただきます。
 まず、10ページは「1.労働組合の推定組織率1」でございまして、雇用者全体と一般労働者、パートタイム労働者に分けております。一般労働者と比較して、パートの方の労働組合組織率は低いという状況でございますが、11ページをご覧いただきますとわかりますように、一般労働者の組織率は下がっていますが、パートタイム労働者の組織率は上昇傾向にあるということでございます。
 次に、12ページ、委員の年齢構成も議論になっております。ほとんど50歳代、60歳代の委員で占められているということで、公労使でそれぞれ分けておりますが、やはり使用者代表委員の方は経営者の方が多いので、労働者代表委員よりも年齢が高めとなっております。
 それから、13ページでございますけれども、地域、勤務地はほぼ首都圏となっております。
 最後に14ページですけれども、産業別の雇用者数と労使委員の産業別の構成ということで比較をさせていただいております。ご覧いただきますとおわかりいただけますように、雇用者数の産業別構成比と、労使委員の産業別構成を見ていただくと、製造業においては労使委員数の割合は雇用者数の割合より高くなっているのですが、逆に1番目の「卸売業・小売業・宿泊業・飲食サービス業」、3番目の「医療・福祉」では、雇用者数と比較して労使委員の占める割合が低くなっているという状況でございます。
 それから、第1回目の宿題として、ILO条約では労使同数原則がどうなっているかという宿題がございましたけれども、すみません、間に合っておりませんので、次回に提出させていただきたいと思います。
 以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございました。
 ただ今の説明について、御質問等はありますか。
 ないようでしたら、事務局から何かありますか。
○小林労働政策担当参事官 事務局から、次回の日程について御連絡をさせていただきます。
 次回の会議でございますけれども、10月21日の金曜日、16時から18時、場所はこの建物17階の専用第21会議室でございます。
 以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございました。
 以上をもちまして本日の有識者会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 第2回「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 議事録(2016年9月23日)

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