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2016年9月7日 医師臨床研修制度の到達目標・評価に関するワーキンググループ 議事録

○議事

 

 

 

 

 

 

 

   第11回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ

 

 

 

                                        日時   平成28年9月7日 ( )

                                              15:00~

                                        場所   経済産業省別館104号室 ( 1階 )


 

○櫻本医師臨床研修専門官 定刻より少し早いですが、構成員の先生方皆さまいらっしゃいましたので、第 11 回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループを開催いたします。本日は先生方には御多忙のところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。

 まず、本ワーキンググループの構成員に異動がございましたので御紹介させていただきます。小森構成員の任期満了前の辞任に伴い、後任として、日本医師会常任理事の羽鳥裕構成員に御就任いただいております。一言御挨拶をお願いいたします。

○羽鳥構成員 よろしくお願いいたします。小森先生は視野が広く担当された領域

も多かったので、その後を引き継いでということなのですが、本当に大変です。頑張りますのでよろしくお願いいたします。

○櫻本医師臨床研修専門官 ありがとうございました。ここでカメラの方がいらっしゃいましたら御退室をお願いいたします。

 続きまして、本日の御出席について御連絡いたします。片岡構成員及び神野構成員から御欠席との連絡を頂いております。また後ほどいらっしゃると思いますが、本日は文部科学省の医学教育課から佐々木企画官にお越しいただく予定となっております。また、議事に入る前に事務局に人事異動がございましたので御紹介いたします。医事課長の武井でございます。

○武井医事課長 武井でございます。よろしくお願いいたします。

○櫻本医師臨床研修専門官 そして私、臨床研修専門官の櫻本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 以降の議事運営につきましては座長にお願いいたします。福井先生、よろしくお願いいたします。

○福井座長 事務局から資料の確認をお願いします。

○櫻本医師臨床研修専門官 資料の確認をいたします。表紙、第 11 回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループの議事次第を御覧ください。 1 枚目が議事次第、 2 枚目が座席表です。 3 枚目が資料 1 の新たな臨床研修の到達目標と方略、評価の構成について ( ) です。資料 2 は、経験すべき診察法・検査・手技 検討用シート ( ) です。資料 3 が、経験すべき症候の見直しに関する検討作業一覧表 ( ) です。資料 4 が今後の検討スケジュール ( ) です。ほかに参考資料が付いております。不足する資料、乱丁、落丁等がありましたら事務局にお申し出ください。

○福井座長 よろしいでしょうか。本日は研究班による目標案について、リバイスしたものを説明していただいて、いろいろ御意見を伺いたいと思います。それに加え、資料 2 「経験すべき診察方、検査、手技、検討用シート ( ) 」、資料 3 「経験すべき症候の見直しに関する検討作業一覧表」について、まず、私から説明させていただき、その後、事務局から今後のスケジュール ( ) についての説明をお願いしたあと、御議論いただきたいと思います。

 最初に資料 1 です。研究班で検討を進めつつ、文部科学省のモデル・コア・カリュキュラムの作成グループと横の連携を取りながら、それをまとめる作業では田中先生の医学教育学会のグループにも関わっていただいて、それに日本医師会の生涯教育のカリュキュラムも横目で見ながらということで、医師としてのキャリア全般を網羅する医師の到達目標を作る目的で、いろいろ横の連携を取ってきている状況です。そのために、時間をとっていて、来年の 3 月までに案が出来上がり、医師臨床研修部会にどのような形で上げられるのかはまだ見えにくい状況で、大変恐縮です。到達目標が決まらないと、方略、評価も実際はなかなか手を着けにくいというのが実情です。今日は資料 1 についての御意見を主としていただければと思います。資料 1 1 ページ目の最初の点線の囲みは省令ですので、この文章は変えないという方針できております。 1 臨床研修の到達目標の最初の文章が以前はなかったものです。医師は病める人の尊厳と公衆衛生に関わる職業の重大性を深く認識し、望ましい「医師としての基本的な価値観」と必要な「資質・能力」を身に付けなくてはならない。医師としての基盤を作る臨床研修においては、「医師としての基本的な価値観」を内面化し、一般診療に対応する横断的な「資質・能力」を修得するものとする、という全般的な目標を書いております。

 そして、医師としての基本的価値観、いわゆるプロフェッショナリズムの行動規範に当たるような価値観のところです。 1. 社会的使命と公正性。これは確か前回のときもこのような文章だったと思います。 2. 公衆衛生の向上への寄与。人の集団や地域を対象に、健康や疾病予防の課題に取り組む。 3. 人間性の尊重。患者と家族に誠実に向き合い、個々人の有する知識や感情、意向また社会的・文化的な背景に配慮し、信頼関係を醸成する。 4. チームの成果を重視。組織やチームの一員として共働して、医療の質の向上や患者安全に貢献する。 5. 自らを高める姿勢。自身の心身の状況と周囲の状況に適切に対応し、生涯にわたり、自らを振り返り、向上を図る。先ほど気が付いたので申し訳ないのですが、「生涯にわたり」というのは、恐らくこれは「向上を図る」の前に持っていったほうがいいのではないかなと思います。この文章だと、何となく生涯にわたり自らを振り返り続けるみたいに聞こえますので、「自らを振り返り、生涯にわたり向上を図る」という文章のほうがいいのではないかと思いました。

 次に、資質・能力です。いわゆるコンピテンシー、又はコンピテンスの日本語訳として資質・能力を採用するという方針で現在まできています。 1. 医療における倫理性。 2. 医学知識と問題対応能力。 3. 診療技術と患者ケア。 4. コミュニケーション能力。 5. チーム医療の実践。 6. 医療の質と安全の管理。 7. 社会における医療の実践。 8. 科学的探求力。 9. 生涯にわたって共に学ぶ姿勢。この 9 項目のうち、モデル・コア・カリキュラムの作成チームと整合性を取っているのが、 2 番目から 9 番目の項目です。モデル・コア・カリキュラムでは 1 番目の項目にプロフェッショナリズムという言葉を用いています。私としては、研究班の先生方も、全員ではないかもしれませんけれども、ここにプロフェッショナリズムという言葉を持ってきてしまうと、それが何を意味するかによって、 2 番目以降の項目との重複がどうなるのかという問題があると私自身は思っていて、全体的に抜けている倫理性を一番目に持ってきたほうが整合性が取れるのではないかと思っています。この点についてはいろいろな御意見があると思いますので、構成員の皆さまの御意見を伺って、できましたら本日、これでいこうというような目標案にしていただければと思っています。それぞれ、資質・能力の項目については、更に1~5というような番号で示したサブの項目が案として出されています。 1. 倫理性は、医療、医学研究、医学教育に関連する倫理的な問題を認識し、対応する。その中に1人間の尊厳と生命の不可侵性を尊重する等の項目を 5 項目挙げています。

2. 医学知識と問題対応能力は、発展し続ける医学の中で必要な知識を身に付け、根拠に基づいた医療ですが、これは EBM を入れるか入れないか、もう一度御意見を伺いたいと思っています。それを基盤に経験も踏まえながら幅広い症候・病態・疾患に対応する。その中に、例えば1として主な身体的・精神的症候について鑑別診断と初期対応ができる等の項目があります。

3. 診療技術と患者ケアです。臨床技能を磨くとともに、それらを用いて患者の苦痛や不安感に配慮しながら診療を実践する。1医療面接ができるなどの項目です。研修期間の 2 年間の中で学ぶ項目と修得にかける時間が一番多くなるのが、この 2 番目と 3 番目の項目になると思います。

 次のページの 4. コミュニケーション能力です。患者の心理・社会的背景を踏まえながら、患者及びその家族や医療従事者間と、良好な関係性を築く。そこに1適切な身だしなみ、言葉遣い、礼儀正しい態度で患者・家族をはじめとする他者に接する等の 4 項目です。

5. チーム医療の実践は、医療従事者をはじめ、患者に関わる全ての人々の役割を理解し、連携する。1組織やチームの目的を理解する等、以下の 5 項目です。

6. 医療の質と安全の管理。患者及び医療従事者にとって良質かつ安全な医療を提供する。1医療の質を評価し改善することの重要性を理解する等の 6 項目です。

7. 社会における医療の実践は、医療の持つ社会的側面の重要性を踏まえ、各種医療制度・システムを理解し、地域社会と国際社会に貢献する。1保険医療に関する法規・制度の目的と仕組みを理解し、活用する。以下の 6 項目です。

8. 科学的探求力は、医学と医療における科学的アプローチを理解し、学術活動を通じて、医学医療の発展に寄与する。1医療上湧き上がってきた疑問点を研究課題に変換する。以下全部で 3 項目です。

9. 生涯にわたって共に学ぶ姿勢。医療の質の向上のために絶えず省察し、他の医師・医療者と共に研鑽しながら、後進の育成にも携わり、生涯にわたって自律的に学び続ける。1早い速度で変化・発展する医学知識・技量・技術を吸収する機会に参加する等の 3 項目です。全体的には、臨床研修の方略・評価の中に加えていきたいということです。まだ具体的な形になっていなくて大変申し訳ありません。

 資料 2 については、恐縮ですが前野先生からお願いします。

○前野構成員 資料 2 を御覧ください。実は、これは研究班の中ではまだ具体的な突っ込んだ議論は行われておりません。今、福井先生から御紹介いただいたコンピテンシーでは資質・能力の議論でかなり時間を使っていて、これはあくまでも、まだ論点整理の段階ですので、またいろいろ御意見をいただければと思います。このシートをどのように作ったかということをお話したいと思います。この項目はお気付きのとおり、現行の到達目標・経験目標をそのまま書いたものです。取りあえず、これを現実的なものにしていこうと考えております。現在は膨大な手技と疾患がリストに挙がっておりますけれども、必修のものは下線を引いてあり、それは must となっていますけれども、それ以外に関しては特に数値目標、要するに何割やればいいとかは特に書いていないので、多くの現場ではこの必修だけをやればいいみたいな雰囲気になってきている部分があります。それから、はたして本当に全員がこれをできるのだろうかというような問題もあり、今回はもともと見直しで、少し簡素化するという方向が示されておりますので、増やすというよりはここから絞っていくという方向で論点を整理したものです。各論を全て説明すると時間がありませんので、簡単に幾つか代表的な所を申し上げようと思います。

 カテゴリーでは、 (1) 医療面接の所は全部いいと思うのですが、例えば (2) 身体診察法の中で、 3) の胸部の診察に、 ( 乳房の診察を含む ) とあります。この案を作るときに考えたのは、多くの研修医ができるという意味ではなくて、全国の 8 千人、 9 千人が残らずできるかということを考えた場合に、果してここは「乳房の診察をできるようになる」というのが、今のローテーションの仕組みの中で現実的なのだろうかと思いました。これは、まだ最終的に入れるとか外すとか決めているわけではないのですが、あくまで、問題提起ということで書いてあります。これは先ほど言いましたように、まだ研究班で詰めていないので、まだ試案の段階なのですが、プログラム責任者としてやっている私の個人的な経験から、これなら全員できるのではないかとか、これはちょっと厳しいのではないかというようなものを一応仕分けしたということです。

(3) 臨床検査です。ここの「できる」とは何を言うのかということです。例えば心電図とかは、自分で付けて自分で取って自分で解釈するというものになるでしょうけれど、血液検査とかでは、自分で検体を機械に流してということは大きな病院ではほとんどやっていないので、これは適応を判断して結果を解釈できればいいかなと思っております。

 あと例えば最近では、クロスマッチは昔は研修医がやっていたのですが、医療安全上の都合から普段やっていない人にはやらせないところがほとんどで、少なくとも研修医のみがクロスマッチしたものを患者に入れるということは今ではほとんどやっていないと思うのです。そうすると、ここは何をもって「できる」というのか。例えば、 On the Job でない講習会のようなものを 1 回やってみればいいのか。逆にそういうものをやることが本当に臨床研修上で必要なのかとか、そういう議論が必要なように思います。

2 枚目の (4) 基本手技です。例えば 18 番の気管挿管ですが、これは「指導医の下で実施できる」と一応カテゴリーには書いてありますけれども、例えば 19 番の除細動は、全国の研修医が患者さんに 1 人残らず実施できるのだろうかと、現場からそういう意見があります。例えば全身麻酔をやっているような患者さんの気管挿管は麻酔科での研修であればできるかもしれないですけれども、実際の本当の救急で、慌ただしい心肺停止状態で、研修医に挿管をさせるということはしていない病院が結構あります。除細動も 1 人残らず、実際に人間にかけられるだろうかと。たまたま回った日に除細動がなかったという研修医は、 2 年間の研修を終れないのかと。むしろこれは実際に教育的に作られたシミュレーターを用いたシナリオで、きちんと手技をチェックして修了証をもらうほうが現実的な部分があるかもしれないです。ですから、この手技に関しては、実際の臨床でということで、これまで議論してきたわけですけれども、ある意味でシミュレーション教育という部分も織り込んでいかないといけないかもしれません。今後そういったところも議論が必要かと思っています。

 次の (5) 基本的治療法とか、 (6) 診療記録、 (7) 診療計画の部分は、手技なのかという部分です。どちらかというと、これは頭をどう使うかということで、例えば輸液を挿すのなら注射の手技ですし、輸液計画を立てるのであれば、それはこのカテゴリーでいいのだろうかというような部分も今後議論が必要かなと思っております。こういう意味では、まだ論点の整理にとどまっておりますので、議論はこれからというように思っております。取りあえず現状ということで御報告いたしました。以上です。

○福井座長 資料 3 について、大滝先生からよろしいでしょうか。

○大滝構成員 資料 3 A3 縦長のものです。この内容は今後、目標よりも方法あるいは評価のところに活かしていくことになると理解していまですが、現行の研修目標の中の「頻度の高い症状」とか「緊急を要する症状・病態」を参考にしながら、経験すべき症候のリストをどのように作っていくかという検討作業をするために、研究班で検討するための資料として、作成したものです。いろいろな情報、が含まれていますので少し時間をいただいて、順番に御説明します。まず、一番上の参考資料という囲まれた所を御覧ください。ここに書いてある丸のゼロから5までの項目は、下の大きな表のそれぞれの列の見出しの所に番号が振られていますが、その説明です。これらの資料を参考にしたということです。丸のゼロとなっているのが平成 26 年度の臨床研修修了者アンケート結果です。確か、これは毎年なさっていると思いますが、その中で前野先生からのお話にもありましたが、どれぐらいの研修医がこれらを経験できているのかに関する根拠として、ここでは仮に、 6 例以上経験したと回答した者の割合を入れてあります。ただし、御覧いただくと分かるように、そのアンケートの内容の項目と現行の研修目標にある頻度の高い症状あるいは緊急を要する症状・病態というリスト ( 一番左側の列にある項目 ) とは、必ずしも全て一致しているわけではないので、空欄が幾つかあります。

 1が医学教育モデル・コア・カリキュラム ( 卒前 ) です。これも現在見直し作業が進んでいますが、見直す前の段階の内容で、 F-1 の項目です。そこに「症候・病態からのアプローチ」として書かれている項目を挙げてあります。それらを臨床研修の現在の到達目標の順番に合わせて並べ替えて、全く同じ又は似ているものを横に並べてあります。1の列の一番上の項目名の所に矢印で◎は追加候補と書いてありますが、これは現在行っているモデル・コア・カリキュラムの見直しの作業の中で、幾つかの項目を外して幾つかを増やすことを検討しているものを示しています。これらの項目は増やしたほうがいいだろうと、ほぼ合意されている項目です。意識障害・失神となっている項目と、不安・抑うつ、外傷・熱傷、一番下のもの忘れにも◎印が付いていますが、これらを追加する方向で現在、モデル・コア・カリキュラムの会議で検討が進んでいます。なお、同じ◎が付いているのですが、心停止という項目には?マークを付けています。これは今議論の途中ということです。

 2国試出題基準ですが、これは最近、平成 30 年度版に基準が改定されましたので、それにバージョンアップしたものを、現在の臨床研修の到達目標に近い項目、あるいは同じ表現の項目に合わせて並べ替えたものです。頭に付いている番号は国試出題基準の中の番号です。

 3日医生涯教育については、以前にもこのワーキングでも資料として御覧になったと思います。冊子になっている中の「カリキュラムコード 2 症候論」の項目に対応させたものです。

 4は、今回こうした見直しをするに当たって、何か基礎になる、根拠になる資料がないかと探したものの 1 つで、国民生活基礎調査です。これは平成 25 年版です。分母が約 4 万、その中のある時点でその症状があると答えた方の数がここに書かれています。年間を通じて症状があったとか、そういうことではありませんので、分母から見るとやや数が少ないように思われるかもしれませんが、そういった形の数字です。

 一番右側の5は、同様に根拠になる資料として探した、 2013 年の健康日記調査というもので、医療機関を受診したかどうかを 1 か月間、日記を書いてもらって取った調査です。分母が 4,039 で、そこから引用しました。これらを参考に、現在の到達目標の項目の見直しを今後進めてはどうかと考えて、お示した資料です。私からの説明は以上です。

○福井座長 事務局から、今後のスケジュール案についての説明をお願いします。

○櫻本医師臨床研修専門官 資料 4 は、今後の検討スケジュール ( ) です。まず、平成 28 9 月の第 11 回ワーキンググループは今回ですが、最終的には、年度末の来年の 3 月の臨床研修部会までに、一定の取りまとめをしていくというスケジュールを考えております。今後の進め方としましては、まだ変更の可能性はありますが、 10 月か 11 月に次回のワーキンググループを開催させて頂く予定で、目標の素案と方略・評価方法の素案等を再度提示させていただき、もう一度 1 月か、 2 月のワーキンググループで、目標案・方略・評価方法案等の提示をさせていただき、最終的に部会で取りまとめを諮るといったスケジュールを考えております。以上です。

○福井座長 そのようなスケジュール案を頭においていただきながら御議論いただきたいと思います。最初に今までの説明について何か質問なり、御意見がありましたら。よろしいですか。それでは、それぞれの資料についての御議論を頂きたいと思います。資料 1 の到達目標の案についてはいかがでしょうか。考えれば考えるほど難しいというのも事実ですが、モデル・コア・カリキュラムの改訂グループと、できるだけ一致させたいというのが、最近では最優先項目になっているようなところがあります。

○田中構成員 田中です。先ほど福井先生の御説明だと、 2 9 はモデル・コア・カリキュラムの調整が済んでいるという話で、 2 9 というのは、「資質・能力」の 2 9 という意味ですね。

○福井座長 そうです。

○田中構成員 ですから、基本的価値観というところは、別に全然、調整はされていない。

○福井座長 されていません。

○田中構成員 ないのですね。

○福井座長 モデル・コア・カリキュラムにはありません。そういうのを全部組み込んだ形で、ここでは 1 番目の項目に「医療における倫理性」と書いてありますが、モデル・コア・カリキュラムの改訂案ではプロフェッショナリズムという項目を持ってきています。

○田中構成員 全く、何か基本価値観というのは、臨床研修でのみ出てくるというのは、ちょっと何か違和感があるような気がしますけれども。それはここで議論することではないかもしれませんけれども。

○福井座長 そういうのも合わせて全部、モデル・コア・カリキュラムと一致させる必要があるかどうかということになるかと思いますので、御議論いただきたいと思います。古谷先生、どうぞ。

○古谷構成員 「医師としての到達目標」というように福井先生がおっしゃったのですが、これは「研修医としての到達目標」ということではないのでしょうか。

○福井座長 モデル・コア・カリキュラムは、学生のときの目標です。

○古谷構成員 はい。

○福井座長 こちらは臨床研修なのですが、医学部卒業後も同じ項目について、我々が研鑽していかなくてはならないという意味で、生涯を通じて医師としての研鑽目標ということになるのではないかということです。

○古谷構成員 それでは、研究のことですが、現時点で、臨床研修の中で研究を行わないことになっている思います。当然、医師としては研究活動が入ってくるのですが、研修の中ではそれが入ってくると、また、そういうことを研修プログラムに入れようとする傾向も出てくる可能性があるかということが気になりました。いかがでしょう。

○福井座長 例えば資質・能力の 4 ページの 8 番の科学的探究力というのは、一生を通じて当てはまるのでしょうけれども、この中で特に、臨床研修の時期はこういうレベルではないかということで、123を挙げています。

○古谷構成員 ということは、運用の中で運用規則がこの目標とは別にできてきて、その中で、ある程度の規制をしていくという形になっていく。

○福井座長 それぞれの項目について学ぶ事柄の量と修得は、医学生なのか、研修医なのか、それから出来上がった一人前の医師としての、いわゆる生涯教育の時期なのか、によってで必要とされる学ぶ事柄の量とか修得にかける時間は、随分変わってくるということになります。評価のときにマイルストーン的なものの考え方を入れていこうというのが、現在の考え方です。

○古谷構成員 これは臨床研修というよりは、やはり医師としての到達目標として書かれているということでしょうか。

○福井座長 それらの項目は、そうですね。

○古谷構成員 分かりました。

○福井座長 このように作れないかという、かなりアンビシャスな作業になってきています。臨床研修だけではなくて、卒前教育も、それから生涯教育も一緒に横の連携を取れないかということで、最初にこのワーキングがスタートしたときとは、随分違った方向に、でも、すばらしいことだと思っているのですが、それが重要なミッションになってきたという経緯があります。

○古谷構成員 臨床研修の到達目標と書いてありますが、そこのタイトルさえ変えてしまったりさらに、臨床研修の中でどうやっていくのかというのを後のほうに入れるほうが、今のお話を聞くと、合っているのかなと思います。

○福井座長 大項目は、医師としての研鑽というか、到達目標ですが、その123の項目については、臨床研修に特化した項目が入ってきますので、そういう意味で、臨床研修の到達目標にしておいたほうが安全ではないかとは思います。

○古谷構成員 分かりました。ありがとうございます。

○福井座長 金丸先生、どうぞ。

○金丸構成員 細かいことで申し訳ありませんが、最初の臨床研修の到達目標の所で、「医師は」から始まる 4 行目の所ですが、言葉尻というか、言葉遣いの感覚的なことかもしれませんが、「医師としての基本的な価値観を内面化」という言葉が、スッと入りにくい感じがしていて、例えば「内包化」とか、「価値観を内包化する」とか、含むというか、「内包化し、一般診療に」というのはどうなのでしょう。そこら辺がちょっと個人的に感覚的なことで申し訳ありませんが、そこが気になったのが 1 点と。もう一点は、こだわっていて申し訳ありませんが、やはり資質・能力の所までと、あと、全般で。

○福井座長 どうぞ。

○金丸構成員  2. 医学知識と問題対応能力ですが、前回のこのワーキンググループで議論した意見を生かしていただきましたが、 1 行目の根拠に基づいた医療ということを全て幅広く理解してもらうためには、 (EBM) というアルファベットの文字は消していただくことはできないのかなということが気になっていて、度々で申し訳ありません。

 それと、 3 ページのコミュニケーション能力です。前回もここで発言したのですが、何となくしっくりしない、感覚的なことだけかもしれませんが、1~4とありますが、その頭の所に、「良好な関係性を築く」ということで、コミュニケーションを言葉に置き換えていただいた中に、最後に「他の医師や医療従事者と適切なコミュニケーションをとる」と。ここにコミュニケーションを使うということがどうなのかなと思います。むしろ、ここをあえてするならば、最初の 1 2 行で、1の上の所に「患者の心理・社会的背景を踏まえながら、患者及びその家族や医療従事者間と、良好な関係性を築く」と、うたっていますので、あえて4番目が要るのかどうかということも含めて、もし要るとすれば、ここもコミュニケーションを換えて、「適切な関係性を築く」とかにしていただくとか、そういった検討がもし可能であればしていただけると、どうなのかなということです。

 最後に、 4 ページの 9 番の「生涯にわたって共に学ぶ姿勢」の2の所です。「周囲の同僚、後輩、医師以外の多くの医療職」と、この辺りが全部同じ土俵の中に入っているのを考えると、「医療職と共に教え学ぶ」というほうが、どうなのかなと気になった所でした。「教え」というのを後ろにずらして、「医療職と共に教え学ぶ」とか、そのようなことで、本当に細かいことで恐縮です。以上です。

○福井座長 ありがとうございます。伊野先生、どうぞ。

○伊野委員 今の先生のお考え、多分、個人的にいろいろな取り方がおありになると思いますが、私は「内面化」で割合しっくりくるほうでしたので、「内包化」と言うと、少し漠然とすると感じました。

 あと、 3 ページ目の 4 番のコミュニケーション能力の所の4「他の医師や医療従事者等と適切なコミュニケーションをとる」ですが、私は実は、4と 5 番の「チーム医療の実践」とを、どう住み分ければいいのかというように考えておりまして、これはコミュニケーションという切り口で、それをすれば、ぎりぎりダブらないのかと思ったり、ただ、ここを関係性としてしまうと、 5 番がどちらかというと、チームビルディングのようなところをお考えになって、「連携をして」とすると、「関係性」にはしないほうがいいのかどうか、コミュニケーションのままのほうがいいのかと思ったりして、そう感じました。

○福井座長 ありがとうございます。言いたいことを言っていただければ。羽鳥先生、どうぞ。

○羽鳥構成員 言いたいことを言っていいということですので。私も小森先生の後を継いで、集中的に厚労省、文科省などからいろいろな講義を受けていますが、昨日文科省の佐々木室長からモデル・コア・カリキュラムのことを伺いましたので比較しておりました。やはり微妙に文言が違うので、医師の研鑽というのは、らせん状に深堀しながら学び実践していくのみですので、医学生、初期臨床研修、専攻医、専門医となったあとの生涯教育を含めて、文言、用語はある程度、統一して使われたらどうかということを提案したいと思います。

 もう 1 つは、先ほど、伊野先生からコミュニケーションの話がありましたが、コミュニケーションという言葉は、英語でコミュニケートと言うと、「言葉を伝えるということだけではなくて、相手を強く説得して同意させる」という強い意味もあると思います。そういう意味で、コミュニケーションをとるということだと、また少し違うかもしれないので、日本語で全部というのは難しいかもしれませんけれども、何か統一感のある方法がいいと思いました。

○福井座長 清水先生、どうぞ。

○清水構成員 今の羽鳥先生のお話に関連して、恐らく基本的価値観の部分と同じようなことがモデル・コア・カリキュラムの 1 番に入ってくるのだとすると、このワーキンググループの一番最初の頃に、プロフェッショナリズムというのは、医師としての根幹を成すもので、それ以外のところは、それを基にして積み上げていくものだという考え方で統一しようということは皆さんのコンセンサスを得ていたと思いますし、そのプロフェッショナリズムについてモデル・コア・カリキュラムはプロフェッショナリズムという言葉を使っていて、新しい専門医制度のほうもプロフェッショナリズムを使っています。日医も使っていらっしゃると思いますが、それぞれのどこが、この医師としての基本的価値観に当たるのかということを、何かはっきりさせておいたほうがいいような気がしました。

 この臨床研修の目標だけが、際立ってプロフェッショナリズムのボリュームが大きくて、しかも、別の言葉を使っているということになると、その辺が、ほかと整合性を取ろうと思うときには難しくなるのではないかと思ったのが 1 つです。プロフェッショナリズムを基本的価値観というようにしましたというのは、そのままでいいと思います。ほかのもののどこに相当するのかということをはっきりさせたほうがいいと思いました。

 もう 1 つは、 4. コミュニケーション能力の件ですが、私は羽鳥先生と同じで、コミュニケーションというのは、他者への働きかけという意味合いがあるので、チームビルディングとは少し違うかと思うので、4の所で、自分以外の方たちに働きかけるとか、行動変容を促すとかのようなことであればいいのかと思って聞いておりました。以上でございます。

○福井座長 どうしましょうか、プロフェッショナリズムについて。その言葉で何を意味するかが随分違うという理由で、こういう形にしました。

○清水構成員 そうです。

○福井座長 例えばモデル・コア・カリキュラムでは、資質・能力の 1 番目の所にもってきて、その中に「倫理」も入っています。それ以外の幾つか内容が考えられているようです。

 ただ、「医師としての基本的価値観」に書いたような事柄が全部入っているわけではない。 4 ページの 9 番目の「生涯にわたって共に学ぶ姿勢」というのは、世界中のプロフェッショナリズムの定義の中に入っていますし、なかなか難しいですね。どれが正しいということではなくて、みんなが納得できるようなものであれば、構わないと思います。

○清水構成員 すみません、ちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、臨床研修目標ではそれらを踏まえて、このような言葉にしたと思います。ですので、臨床研修の到達目標はこのようにしておいて、今後モデル・コア・カリキュラムにしても、専門医制度にしても、日医にしても、新しくリバイスするときに、それぞれがどの表現に相当するのかがわかるようにしていただくとよいと思います。おっしゃったように、プロフェッショナリズムについての考え方は、人によって全然違うので、臨床研修目標はこのままでもいいのではないかと思っています。

○福井座長 大滝先生、モデル・コア・カリキュラムですが、大学の先生方で考えているプロフェッショナリズムを御説明していただけますでしょうか。

○大滝構成員 以前にも少し話題になったかと思います。今、モデル・コア・カリキュラムの改訂と同時並行で、国立大学医学部長会議や全国医学部長病院長会議が連携して、「モデル・コア・コンピテンシー」というのを検討しています。これには幾つか事情があると伺っていますが、その一つは、マッチングでいろいろな大学の卒業生が、それぞれの研修プログラムに集まってくるようになったときに、大学によって、身に付けている能力にかなりの差があることが指摘され、そこをある程度そろえたいということになり、その目的で、今、モデル・コア・コンピテンシーという名前で卒前教育の目標の検討が始まりました。そちらでも同じような議論で、特に大きい項目については、医師としての能力という形で作った上で、レベル設定を卒業時点のレベルを、この項目については、これぐらいという構造にしてはどうかということで、今、作業をしています。

 その枠組みの中で、福井先生からお話があったように、 1 項目めは、プロフェッショナリズムという名前になっています。 2 項目め以降は、こちらとほぼ同じですが、 1 項目めがプロフェッショナリズムです。ちなみに、モデル・コア・コンピテンシーの検討のワーキンググループでは、それぞれのコンピテンシーの項目を「大項目」と呼んでいますが、それらを細分化した項目も既に作り始めています。その大項目のプロフェッショナリズムに含まれる細分化した項目は、 6 項目です。一応、読み上げますが、これはまだ ( ) ですので、今後、変わる可能性があると御理解ください。 1 項目めは、医療人としての倫理観。 2 項目めは、研究者としての倫理観。 3 項目めは、利益相反と守秘義務。 4 項目めは、利他的、共感的かつ誠実な対応。 5 項目めは、責任感と自己規制。 6 項目めは、社会的責務となっています。

 先ほど、福井先生がおっしゃった、「生涯学び続ける」ということについては、このプロフェッショナリズムの大項目には含まれていません。それについては、大項目の 9 項目めである「生涯にわたって共に学ぶ姿勢」に入っているので、プロフェッショナリズムからは外すという切り分けを、モデル・コア・コンピテンシーのほうではしています。そういった状況です。

○福井座長 ありがとうございます。

○中島構成員 あの、さっぱり分からないのですが、アホには分からん議論をされているような気がしていて、特にモデル・コア・カリキュラムとか言って、それに合わそうという議論もありますが、モデル・コア・カリキュラムそのものが、完全に職業教育ではないですか、完璧な。もっと本当のリベラルアーツという言葉があるように、私は横文字は嫌いですけれども、そういうものはどんどん専門教育的なものに置き換えられていっているのですよ。だから、コアカリに合わそうと思うことは、私は全然ないと思います。到達目標・方略・評価でも、とてもよくできている。このままでよいと思います。細々な言葉の解釈などはどうでもいいのです。そういうことは人が後からまた勝手に解釈します。

 ただ、若干気になるのは、医師の目標です。「いろいろな医師は」というようにはっきり書いている。これが、恐らく医学教育では「医師は」になり、それから、専門医のところでは専門医になるのかな。「医師は、医師は」になるから分かりにくいので、逆に、「臨床研修医は」というように明確に打ち出して、臨床研修医はここまで勉強しなさいと、ここまでのものを身に付けなさいとはっきりしたほうがいいのではないかと思いました。それは私の勝手な思いですので、無視されても構いません。

 それから、基本的価値観を内面化するということはあり得ません。そのようなものは、もともと内面にあるものです。それが価値観ですよ。価値観を内面化したら、あなた、無茶苦茶になるよ。だから、むしろ価値観の確立に努めるとか、そのように明確に言い切ったほうがいいと思います。

 あとは、「チームの成果を重視」とかの意味がよく分かりません。私はアホですから、分からなくてもいいのですが、自らを高める姿勢、私は余り高めたくないのですがね、もう。いろいろな人がいていいのです。価値観もいろいろあっていいのです。それで、いろいろな価値観を持つけれども、ここだけは抑えてくださいと。これが臨床研修医に対する到達目標であると私は思います。いろいろな人がいていい。いろいろな医者が育っていいというのを大前提に考えないと、変なことになると思います。以上です。

○福井座長 ありがとうございます。先生に反論するようで申し訳ありませんが、プロフェッショナリズムに関わるような基本的な医師としての価値観は、生まれ付きのものなのか、又は大学に入った時点から変わらないものなのかということは随分議論されてきて、研究論文もたくさん出ています。今のところは、それらは教えることもできるし、変わっていくもので、レベルが上がっていくものだという考え方のほうが、文献上はマジョリティーだと思います。基本的な価値観は医師になってからも身に付けることができるという考え方です。

 ただ、学生の頃は、言葉を理解することが、どちらかというとメインですが、研修医は実際に患者さんを診ながらそういう価値観を自分のものとしていく、自発的なものにしていくということで、医学教育の分野で使われる「内面化」という言葉を用いています。

○中島構成員 使われているのですか。

○福井座長 ええ。

○中島構成員 普通の日本語で書かないといけません。

○福井座長 なかなか難しい。そういう経緯があって、案としては、書いてあります。

○中島構成員 よく分かりました。あえて言っただけです。

○福井座長 古谷先生、どうぞ。

○古谷構成員 資質・能力の 3 番の7「信頼関係に基づくインフォームドコンセントを受けることができる」は「受ける」で良いのでしょうか。

○福井座長 これにも理由があります。一昨年に施行された人を対象とした医学系研究の倫理指針を作る過程で、インフォームドコンセントは得るものなのかどうなのかについて言葉の検討がなされました。結果として、人を対象とした医学系研究の倫理指針では、インフォームドコンセントを「得る」のではなく、「受ける」という言葉で統一しようということになった経緯があります。それで、ちょっと違和感を皆さん感じるかもしれません。私も最初は、そう思いました。厚生労働省、文部科学省の法律に関わる部署のチェックを受けた上で、「受ける」という言葉になりました。そのために、あえてここに書いたという次第です。

○中島構成員 もう一言だけ申し上げますが、これは、本当に福井先生がとことん考えられて書かれたのですから、それでいいと思います。だから直す必要はありません。

○古谷構成員 もう 1 つですが、その次の 4 番のコミュニケーション能力の2ですが、「患者・家族によって必要な情報を整理し、分かりやすい言葉で説明して、主体的な意思決定を支援する」という言葉と、先ほどのインフォームドコンセントということは、かなり重なっている概念かなと思います。重なってもいいとは思いますが、何か整理をしたほうがいいのか、若しくはどちらかにしたほうがいいのかという気もしたので、いかがでしょうか。

○福井座長  3 番目の「診療技術と患者ケア」の所は、手続としてこのことをできるようにという意味で書いたもので、内容は先生がおっしゃるとおり、 4 番のコミュニケーション能力の2の所に、かなり近い内容になっています。実は全体を読まれると分かると思いますが、幾つか微妙に重複する事柄があります。

○古谷構成員 分かりました。

○福井座長 田中先生、どうぞ。

○田中構成員 熟考されて決められたことなので、教えていただきたいと思いますが、例えば、 3 の56はどちらも文書に関わることですが、これを切り分けているのは、それなりに理由があったと思います。

○福井座長 何番ですか。

○田中構成員  3 の56です。どちらも文書と証明書なのですが、例えば、ほかのブレークダウンの仕方に比べると、少しここら辺は細かいかという感じもするのですが。

○福井座長 そうですね、そう思います。

○田中構成員 そうですか。

○福井座長 まとめられるものはまとめたいと思います。これはどのような文章にすればいいでしょうか。

○田中構成員 ですから例えば、診療上で必要な文書を適切に作成できるというように書いてしまえば。

○福井座長 それだけで。

○田中構成員 診断書も全部含まれるのではないでしょうか。

○福井座長 その方向で考えたいと思います。

○田中構成員 また御検討ください。

○福井座長 簡略化しようと言いながら、実はどんどんボリュームが増えていくのではないかと危惧しています。先ほどの診察についても、検査手技や経験すべき症候なども、今までと同じ形式にするのか、全然違う書き方にするのかということも、考える必要があると思っています。一方では、せっかく慣れていますので、余り変えないほうがいいのではないかという意見もありまして、なかなか難しい。ほかにはいかがでしょうか。

 プロフェッショナリズムのところはどうしましょうか。大滝先生が先ほど説明されたように、プロフェッショナリズムに含まれる項目を書き出して、 1 番目をプロフェッショナリズムとして、基本的価値観をなくしてしまう。つまり、基本的価値観に書いてあるような事柄を意味するのがプロフェッショナリズムと考えて、 1 番目の所にもっていって、基本的な価値観をなくすのか、それとも、この基本的価値観の所はプロフェッショナリズムに相当すると説明するのか、どうしましょうか。全体の統一性を取ろうとのも大きな流れではありますけれども。高橋先生、どうぞ。

○高橋構成員 個人的な感想で恐縮です。プロフェッショナリズムという言葉自体は、ものすごく広がっていて、捉え方、内容の理解の仕方は個人差はもちろんあるかもしれませんけれども一般化している言葉ですので、私、個人的にはその文言が入っていたほうが、その文言、名詞が入っていたほうがいいのかなという、理解しやすいのかというように感じます。

 それで、それぞれの資質・能力に、全てではないかもしれませんけれども、ほとんどのところにプロフェッショナリズムが係りますので、やはりこの構成で、資質・能力の上としてプロフェッショナリズムがあると。その言葉もどこかに生かしていただくと、パッと見たときに、非常に理解しやすいかなと私は感じます。

○福井座長 医師としての基本的価値観という言葉に換えて、プロフェッショナリズム。

○高橋構成員 括弧にするか、あるいは到達目標の所にそういう文言を入れるか、いずれにしても、その言葉が入っていたほうが、むしろ混乱が少ないのかと思いました。

○福井座長 プロフェッショナリズムとして、括弧を付けて「医師としての基本的な価値観」というような書き方でもよろしいのでしょうか。もしそうだとすると、資質・能力の所も、コンピテンシーとして、括弧を付けて「資質・能力」とするのも 1 つのやり方かと思います。コンピテンシーも、確かにいろいろなところで出てきているのは事実です。

○高橋構成員 そこで用語の使い方で、コンピテンス、コンピテンシー、コア・コンピテンシー、コア・コンピテンスと、いろいろな使い方があって、それぞれの定義があって、ばらばらなので、その辺りでコンセンサスが得られれば、それでいいと思います。

 一方、プロフェッショナリズムの理解に関しては、範囲がいろいろで、理解によっていろいろだとは思いますが、言葉ひとつとして、割とイメージしやすい内容なので。

○福井座長 そうですね。伴先生、いかがでしょうか。

○伴構成員 皆さんおっしゃることももっともですけれども、結論的には中島先生の結論になりそうなのですが、やはりプロフェッショナリズムというカタカナを使うと、非常に曖昧なままで推移していく可能性が高いですよね。ですから、このように分けてあるほうが私は、より分かりやすいと思います。「医師としての基本的価値観」というものが一番根底にあって、という考え方ですよね、これは。

 それと、どうしても翻訳できないような、例えばプライマリーケアとか、カタカナのままで使っているわけですが、プロフェッショナリズムは非常に世界の医学教育学会でも、まだいろいろ議論が分かれているところですし、余り無理して使って、「いや、それ違いますよ」とか、何か変な議論に巻き込まれる必要もないのではないかと思います。

○福井座長 厚生労働省のオフィシャルな文書で、プロフェッショナリズムという言葉をどこかに遣っていますでしょうか。課長、どうぞ。

○武井医事課長 一応、ブループリントのほうで既に使っております。

○福井座長 国試のほうですか。

○武井医事課長 はい、国試のほうです。今日、先生方からいろいろな意見を頂いておりまして。これは、 1 つは事務局の提案ですが、中島先生がおっしゃったことは本当にそのとおりだと私も思いますが、いろいろ意見を頂いておりますので。例えばですが、文科省のコア・カリの話も出ましたし、座長と、先生方から頂いた意見と、それから関係各省の御意見も伺いながら、座長思案のような形で、次回までにここを整理させていただいて、また皆さんにお諮りするというのはいかがかなと思います。どうでしょうか。

○福井座長 その間に、モデル・コア・カリキュラムの作成チームと、田中先生の医学教育学会の全体をまとめるチームとも、いろいろ話合いの機会がありますので、その結果をまた踏まえて、もう一回 ( ) として出させていただく。

○伴構成員 高橋先生が言われたコンピテンス、コンピテンシーのどちらが上位概念かというのも違うのですよね、領域によって。

○福井座長 差がある。

○伴構成員 そうです。だから、医学教育ではコンピテンスを上位概念として、もう少し下位に分かれるところをコンピテンシーとしようと言っているのですが、それは英語の世界で言っているだけの話なので、日本語でわかりやすく表現すればいいのだろうと思います。

○福井座長 そういう考え方もあります。伊野先生、どうぞ。

○伊野構成員 

ちょっとずれますが、基本的価値観と言うように、 Profess1onal1sm を上の階層にあげるというお考えについてですが、今までは、横並びのコンピテンスの中の一つであったものを階層づけると言うのは、多分、福井先生が学術的にもお調べになってこられたものと考えております。北村聖先生も米国の Prof. Lawrence M Opas がご講演の中で、 ACGME The S1x General Competenc1es のご説明の折に Profess1onal1sm の重みづけを強調する意味で「 Profess1onal1sm and the others 」と表現されていたと言うエピソードをよくお話しになります。

そういった階層構造にした方がよりわかり易いのであれば、モデル・コア・カリキュラムの先生方ともご議論なされた上でお決めになっては、と思います。

○福井座長 では、またその方向で。金丸先生、どうぞ。

○金丸構成員 議論を引き戻して恐縮ですが、やはりこの議論は、根っこに、これが基本的価値観が必要だという議論があって、ここに努力して、作っていただいた部分なので。根っこ中の根っこというのは、私は、その言った経緯を思い出しながらですね。是非、これは研修医としては、基本的価値観の一番の核心、核的なものなので、是非、これはこの姿で、「適切な関係性を築く」とかにしてこれを中心に、議論をしていただけると大変有り難いと思っております。

○福井座長 はい。前野先生、どうぞ。

○前野構成員 この議論は切りがないというか、逆に切りがないということは、決定打もないということなのかと思います。ですので、ある程度、「えいっ」と、決めるしかない部分も大きいと思います。

 その中で、私が 1 つ気になっているのは、ここにおられる方、あるいは、これから議論に加わる方々、ある意味、医学教育の専門的な立場でその用語の違いとか、そういうところもかなり理解されている方だと思います。私は、メッセージ性というのも大事だと思っていて、これを研修医や医学生、それから、臨床教育に関わる指導医の方々だけではなくて、病院の各職員の方々にも見ていただくわけです。そうすると、正確だけど、複雑で、違いが分かりにくい用語と、多少ごっちゃになっているかもしれませんが、短かくてメッセージ性の高い、いわゆるキーフレーズと、そういうメリットもあると思います。ですから、正確性にこだわるあまりに分かりにくいものを作ると、最終的に本質的に使われない部分があるというので、そういう要素も加味して、最終決定をする必要があるのではないかと思っています。

○福井座長 ありがとうございます。それでは、先ほどの武井課長の意見のとおり進めさせていただいて、よろしいでしょうか。次回までに、また案を詰めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。資料 2 について、少し御意見を伺えればと思います。

○古谷構成員 すみません、 1 つだけいいですか。

○福井座長 はい、どうぞ。

○古谷構成員 先ほどの 1 番の医療における倫理性の5です。医療における倫理性の所の最初に「医療、医学研究や医学教育」と書かれておりますが、5で医療が抜けているのは何か意図があるのですか。

○福井座長 全くありません。

○古谷構成員 これはやはり入れたほうがいいと思いました。透明性、不法行為をしないであるとかという。

○福井座長 医療のでしょうか。

○古谷構成員 医療を医学研究、医学教育における。その一番上のタイトルに医療が入っていて、ここでは抜けているというのは、何か医療は別なのかということなのかと思いました。

○福井座長 ありがとうございます。検討します。

○田中構成員 資料 2 で、前野先生から、例えば、乳房の診察や除細動は現実にシミュレーターでやるしかないのではないかというお話がありました。私もそれは賛成なのですが、そうであれば卒前教育でいいのかと思います。なぜかというと、シミュレーターを全部の研修病院が備えるとなると現実的ではありません。それこそ資源は集約化したほうがいいと思うので、今整理される段階で、これはシミュレーターでいいというものは、逆に卒前教育に移すという提案をここからしてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○前野構成員 私もおっしゃるとおりだと思います。この案を作ったときは生身で経験することをベースとしています。例えば、もちろん除細動を本当にかけられたらそれがいいわけなのですが、それができない場合は、シミュレーションでも替えられるみたいなイメージで捉えておりました。ただ、その辺のところは確かに、全てをシミュレーターに落として卒前に落とすということもありだと思います。ただ、それだと学生レベルと研修レベルで何が違うのかというところもあると思います。やはり本当の臨床の現場でできるものが必要であればそうですし、ただ、できなかった場合は、それを代えられるという、いろいろな考え方があると思いますので、また検討させていただきたいと思います。

○高橋構成員 市中病院で普通に臨床研修をやっていると、挿管が数症例とか、どうしても出てきます。あるいは除細動をしたことのない研修医がいることが信じられないのですが、つまり除細動を経験できない研修医がいるということは、全国的には一般的なのですか。

○前野構成員 それに関しては、大多数ができると思います。まず、挿管に関して言えば、今は麻酔ローテーションが必修になっていないので、救急ローテーションでは病院のルールで研修医に挿管をさせていない。

○高橋構成員 なるほど、そういう所もあるということですね。

○前野構成員 要するに、救急ですから失敗したら次はないというシチュエーションなので、やはりそういう意味ではさせられない。そうすると除細動も 100 %経験できるのか、どのような巡り合わせであってもというほど頻度が高いわけではないので、そういうシチュエーションは、あり得ると思います。

 調査をしても、これは必須なので 100 %で返ってくるのです。ですから、本当はどうなのかということは、そのように聞いてみなければ分からないと思います。

○高橋構成員 ここで議論していいのか分からないのですが、私の理解では初期臨床研修が終わったときには、専門領域は別にして、ある程度、基本的な領域は独り立ちができるというレベルにして、初めて臨床研修が修了と認めていいのかと思っております。そうすると、挿管をシミュレーターだけでやっているとか、あるいは除細動をシミュレーターでしか経験したことのない人でも初期臨床研修が終わったレベルだと理解すると、少し混乱します。

○前野構成員 逆にお聞きしたいのですが、 1 回でもやったことがあれば「できる」と判断していいのかという部分もあると思います。結局は非常に本質的な議論なのですが、 2 年終わった後にできるというのは何かという場合、例えば、挿管の適応を判断して挿管ができるというところまで全員がいけるのかというと、多分、かなりできる研修医でも、 1 人でできるところまでは当然いかないわけですから、結局「できる」とは何かという議論になります。

 ですから、やろうと思えばできるということでいいのであろうかと。今、手元に櫻本さんに作っていただいたデータがあるのですが、これは研修医に聞いている生の声です。平成 28 年度の臨床研修修了者アンケートで、「挿管ができない」と答えた研修医は 0.3 %、除細動を実施できるかという質問に「できない」と答えた研修医は 0.4 %、「余り自信がない」とか、「 1 人では不安」が 10 %ぐらいいるということです。

○高橋構成員 除細動は分らないのですが、確かに挿管に関しては非常に難しい症例もあるので、全例できるのかと言われるとできないと考えるかもしれませんが、基本的な挿管の手技ができないということは問題のような気がします。

○前野構成員 実際に現場で聞いたことがあるのは、救急の間はできないので挿管のためだけに 1 日麻酔科に回しているという配慮をしている所もあると聞いたことがあります。

○福井座長 麻酔科を回れば確実に気管挿管の経験はできるわけです。

○前野構成員 ただ、同じことを除細動ではできないので、タイミングが。こちらではスケジュールできないですから。

○高橋構成員 確かにうちだと選択必修ではなくて、挿管の経験症例が少ないと問題なので、麻酔科は必須で回してはおります。

○前野構成員 ですから実際、これの経験を決めると、もう少し大きな話で、必修科とその期間をどのようにするのかというところに絡んでくるのです。

○高橋構成員 そうですね。

○前野構成員 要するに麻酔科を必修としないのならば、それでも終わることができるような、かつ目標を達成するには何かということ、それと麻酔科で筋弛緩が終わった状態で、きちんとセットアップして 1 回だけやった人を「できる」と呼んでいいのかということも含めて議論が必要かと思います。

○高橋構成員 分かりました。世間的に考えた場合の初期臨床研修を修了した、いわゆる研修を修了した人のレベルとして、どの程度のレベルを期待するのかということも含めて議論していかないといけないのかと感じました。ありがとうございます。

○清水構成員 今のことに関連してです。例えば、挿管をするとしたら麻酔科をローテーションしないとできないので、ローテーション診療科、必須診療科を、また考え直さなければいけないということが先なのか、それとも、この項目が 2 年間修了した時点で独り立ち、どの程度の独り立ちかはまた問題かもしれないですが、できるようになっていなければならないので、そのローテーション科を決めなければいけないと、各病院に考えていただくほうがいいのではないかという気がします。

 なので麻酔科のローテーションは必須ではないから気管挿管を経験目標から除くとか、循環器ローテーションが必修ではないから除細動を除くという考え方ではないほうがいいのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。

○前野構成員 基本的におっしゃるとおりだと思います。結局、今私が代表しているのは、そういう研修目標に合わせた研修のコーディネートを余りそこまでしても、という人がいるのではないか、病院があるのではないかということで申し上げただけなのです。この新規の領域ではないのですが、実際に今の研修目標でも、例えば、精神科の研修は A 項目に統合失調症が入っているから、研修において必修ではないけれども実質的には回している所が多いと思います。それも同じ考え方だと思います。

 なので、もちろん実現可能性を考えないといけないと思いますが、やはり一番のプライオリティは、ゴールとなる研修医は何を、どれぐらい経験しておくべきかというところだと思っております。

○福井座長 できるレベルのディスカッションに入ると実は大変難しくて、本当に 1 人で任せていいかどうかが問題になる項目はかなりあります。一般の人と違い、また医学生とも違って、やはり実際に患者さんを受け持って経験するということですので、最低限、研修医のときに必要な事柄が大部分ではないかと思います。ですから、こういうことを経験してほしいという目的が先にあって、それからローテーションを考えるというように、必修化を決めた頃の考え方にどうにか戻したいと思っています。ローテーションの数が多いと駄目だという議論ではなくて、 100 %の研修医が 2 年修了時にこうなってほしい、したがってこれこれのローテーションを含むプログラムで、というように、もう 1 回考え直してもらえればと思っております。こういう考え方を踏まえて、前野先生から案として出されましたので、これをたたき台にして。

○中島構成員 資料 2 の中で、小児精神というのは「小児の診察ができ、記載できる」の下に※で入っていますが、これは児童精神です。小児精神といったら小児科だけで、「児童精神科」と、精神科の医者は呼んでいます。それをなぜ小児だけを入れて精神科は入れないのか、これは非常に不都合に思います。それから、その下に 9) で「精神面の診察ができ、記載ができる」と、わざわざ書いているのだから、ここはもう※で児童精神と書けばよろしい。以上です。

○櫻本医師臨床研修専門官 この資料について補足いたします。※が幾つか書いてあるかと思います。これは今の行動目標に入っているものではなくて、実はこれは研究班での検討段階において、先ほど前野先生から御説明のありました臨床研修修了者アンケートの結果を考えたときに、小児精神という項目ではないのですが小児の精神に関連した項目がありましたので、便宜上ここに入れたものであります。

 例えば、 (2) 身体診察法の 2) 頭頸部の診察の部分も、 2) 頭頸部の診察の後に括弧書きで、記載があるものが今のものです。その下の※で鼓膜や甲状腺と書いているものは、今はこのような項目ではないのですが、研究班の中で検討をしている際に部分部分を見ていくと、細項目としてこういうものがあるということで記載したものですので、大変恐縮なのですが 8) 小児精神は今はないということです。これは我々が研修修了者アンケートを基に項目として検討している段階で考えていたものということです。大変失礼いたしました。

○中島構成員 なぜ、そのようなことを言ったのかというと、小児科の先生が ASD 、自閉症スペクトラムの子供を診た場合、診断はできるけれど、その後の療育をどのようにすればいいのか、これを非常に的確にアドバイスしていかなかったら子供はきちんと育たないのです。そこまで診るのが児童精神科医なので、そこを誤解されると困るのです。大変困っているので一言申し上げました。

○前野構成員 結論から申し上げれば、※は無視してください。作業のときに残ったメモです。深い意味はなくて、いろいろ検討する意味で作業のときに付けたタグをそのまま消さずに出してしまいました。すみません。

○中島構成員 小さいことですが、困るよ。

○前野構成員 すみません。

○福井座長 ありがとうございます。それでは、資料 3 について御意見を伺います。こういう症候、病態などを経験してほしいという項目を今回の研究班では具体的にどのようにピックアップしていくのか、又は変更していくのかということです。卒前、モデル・コア・カリキュラムを含めて、全体を見ると、かなり共通している部分があることも事実だと思います。国試はかなり細かいのでしょうか。

○大滝構成員 細かいですね。

○中島構成員 私は精神科なので、どうしても精神科の所に目がいきます。上から見て全身倦怠感、不眠とかも、これも全部関係はあるのですが、特に関係があるのは不安・抑うつ、意識障害、精神科領域の救急です。精神科領域の救急ができればいいと思っていたら大間違いです。これが、決定的に今日一番言いたかったことなのですが、今から認知症の方がどんどん増えてくる。認知症の人の意識障害があったときに、せん妄との区分がきちんとできなかったら、使う薬も違いますし、全てがうまくいきません。

 だから、当然、認知症と記憶障害、もの忘れと書いてありますが、せん妄が入っていないというのはおかしいです。せん妄が分からなかったら医者として全然役に立ちません。これは、最初の 2 年間できちんと研修してもらわないと困ります。

○福井座長 せん妄は病態としての名前でしょうか。

○中島構成員 そうですね。

○福井座長 認知症は病気の名前ですよね。せん妄は。

○中島構成員 せん妄状態ですから。

○福井座長 「センモウ」ではなくて「センボウ」と読むのですか。

○中島構成員 「センボウ」です。「センモウ」という人もいますけどね。

○福井座長 そうなのですか、それは初めて知りました。

○中島構成員 どちらが正しいということはありません。

○福井座長 勉強になりました。

○伊野構成員 意識障害の 1 つです。

○中島構成員 意識障害だけではないのです。意識障害というと昏迷に至るまでの、垂直方向で考えますが。

○伊野構成員 質的な変様がある。

○中島構成員 そこに幻覚とか妄想が入ってきたものをいうのです。これがきちんと区別できないと困るのです。私は大学病院にいましたが、たくさんおられます。たくさんいる人をきちんと鑑別できていないために、私たちが呼ばれることになる。

○福井座長  2 年間の研修で、診察手技的なこと、経験してほしい症候や病態、疾患と、大きく分けると 3 つのカテゴリーがあると思います。先生の案では、病気のほうに認知症を入れるべきだということで。

○中島構成員 認知症は、ある意味で本当は症候です。疾患と言えば疾患かもしれないですが、レビー小体型の認知症とか、いろいろあるわけです。その中で向精神病薬を使っていい疾患と絶対に使っては駄目な疾患があるわけです。そういう見分けは医者だったらできないと困る。

○福井座長 この認知症というのは、もともとカテゴリーとして疾病に入っているのですか。

○中島構成員 認知機能の障害と書いてある。入っていましたよね。

○大滝構成員 お手元の資料の 5 分の 1 ぐらいの所、 152 ページを見ていただくと、現在の到達目標の「経験が求められる疾患・病態」のリストの中の精神・神経系疾患で、認知症は A です。

○福井座長 認知症は入っているのですね。

○大滝構成員 そちらに認知症は入っております。ただ、症状に入っていなくて、コア・カリキュラムでも症状に入っていなかったのです。

○福井座長 症候に入っていないということですか。

○大滝構成員 コア・カリキュラムでも入っていなかったのです。それが問題だという御指摘を頂いて、今回は◎印で、もの忘れが、資料 3 の右から 3 列目の1の一番下に書いてあります。この項目の表現についても議論がありましたが、もの忘れを新たな項目として入れたといういきさつがあります。

○中島構成員 もの忘れでいいと思います、あるいは耄碌でもいいしね。私なんか耄碌じじいになったから、もう 70 だから耄碌じじい。

○__ 耄碌、懐しいですね。

○中島構成員 懐しいでしょう。

○福井座長 せん妄は症候で、資料 3 のカテゴリーに入れたほうがよろしいのでしょうか。

○大滝構成員 私が前に聞いたところでは、せん妄は精神科領域の救急の中に入って。

○中島構成員 救急ではない人がたくさんいるのです。

○大滝構成員 確かにそうですね。

○中島構成員 救急に限定するからおかしくなるのです。救急ではない人がものすごく多い。一般の普通の科へ行かれるから困るのです。

○福井座長 入院患者、急性期の病院では本当に多い。

○中島構成員 そうですね、私も入院したらすぐなると思いますけど。不安、抑うつと書いているのに、興奮がない。右には躁状態がある。国試のほうです。

○福井座長 国試のほうですね。

○中島構成員 躁状態といったら、これは躁うつ病になってしまいますから、不安、抑うつ、興奮にしてください。興奮した患者が来ても、きちんと対応できるのかどうか、これはせめて卒後 2 年間で覚えてほしいです。

○福井座長 今の先生の御提案は、興奮を入れるということと、せん妄は救急とは別立てで入れてはどうかという案と捉えてよろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

○田中構成員 大前提として、今回はいろいろな目標が羅列的なので減らそうという考え方がありました。そうすると、症候があって疾患があるという今のやり方ではなくて、症候にしてしまうという考え方でよろしいのですか。

○福井座長 はい、そちらをメインにしたいという案です。ただ、疾患を 0 にしてしまうのか、つまり、この到達目標全体の中で全く疾患を書かないのか。あるいは、少数に絞って疾患を書き出すのかということは相談したいと思います。

○田中構成員 そうすると、議論の過程で、症候だけにすると決めてしまえば、症候の定義を少し緩めて、これはもしかしたら疾患と言っていいかもしれないが疾患というカテゴリーがないから入れるという議論になると思います。ですから、疾患を入れるか入れないのかということを議論することで、この症候の所の議論が変わってくるのではないかと思います。

○福井座長 参考資料 2 は、村岡先生が作られたものです。これは、まだ完成型ではありません。最初のページの一番上に症候、一番左のカラムに疾患名が書いてあります。例えば、 1 番の全身倦怠感の所には鉄欠乏性貧血、脳内出血とか、心不全、ずっと下にある消化器系疾患の所にも丸印や三角印が書いてあります。症候からこういう病気を経験し得るということを分かり易く示す表を大変な作業で作っていただきました。

 最初の 2 年間は、症候をメインに勉強してもらい、せいぜい鑑別が十分できるというところにフォーカスを合わせたらどうかということが、今までこのワーキングで何度も提案されてきました。このような大変な作業をしていただいたプロダクトですので、これを参考にしながらうまく症候につなげて、こういう疾患をもを勉強できるということを示すことができればいいと思います。

○田中構成員 症候を中心に考えて、例えば、全身倦怠感 1 件を経験したら終わりでは、いくら何でもということがあり、やはり全身倦怠感という症候を何種類か経験する。しかも異質なものを経験するということでやっていけば、かなりのことが整理されるのではないかと思います。

 もう 1 つは、病気をやり始めると、この病気があってあの病気がない理由は何だということはなかなか説明が難しいと思います。そうなると、結局いろいろやってみたが、元と同じ形になり兼ねないのではないかと思います。

○福井座長 先生のお考えでは、病気を書き出したほうがいいのでしょうか、書き出さないほうがいいのでしょうか。

○田中構成員 書かないほうがいいです。

○高橋構成員 一般市中病院で研修医を教育している現場から考えると、幅広いプライマリ・ケアの診療能力を身に付けるには病名ではなく、症候からの臨床推論なので、私も田中先生と同じで病名はいらないと思います。

○福井座長  1 つ懸念するのは、多くの病院で既に診断が付いてしまって入院している患者を受け持つという機会が結構多いことです。そのために、症候からリアルタイムで、まだ診断が付いていない患者をドキドキ、ワクワクしながら最終診断は何だろうと、フォローする患者を受け持つ機会がどれくらいあるのかということも考えなくてはなりません。外来は外来で、できるだけ一般診療をやっていただければいいのですが、入院患者については、実際に診断が既に付いてしまっている患者を受け持つ場面が多いのも事実です。

○前野構成員 今の研修目標の構成は、いわゆる場の経験は、例えば、緩和や小児がありますが、今は外来というカテゴリはないのです。救急はありますが、全身倦怠を主訴に救急に来る人は余りいないと思いますので、もし症候を通して今言った趣旨を実現しようと思ったら、外来の場にも、ある程度言及しておかないといけないと思います。

○福井座長 できたら今まで以上に外来での経験を積んでもらえるような案を出したいと思いますが、その方針でよろしいでしょうか。それと連動して症候からのアプローチをメインにした形の到達目標ということで。

○古谷構成員 外来を中心にするのはすごくいいのですが、現時点では外来での経験症例をレポートには書けない、入院症例のみということになっていることが 1 つ。それから、症候を評価する評価者がすごく難しいという現状があります。めまい 1 つ取っても耳鼻科のめまいは耳鼻科が書いてくれるのですが、それ以外のもの、例えば精神科でも過換気症候群でめまいを起こしていたりということもあります。そういう症候に対しての評価が耳鼻科ではできる人が少ないという現状もなかなか難しいところかと感じております。

○伴構成員 難しいですね。左のカラムは目標に書いてある現在のものですか。こういうリファランスは必要です。これを満たさないといけないということではなくて、満たす目標は症候であって、症候を来すもののリファランスがないと、それこそ呼吸障害は呼吸器内科しか診ないという形になり兼ねないのです。

○__ リファランスが少ないですよね。

○福井座長 疾患についての研修は専門医の研修でやっていただくとして。

○伴構成員 疾患を満たすと、国家試験の出題基準がそうなのですが、これがあって何でこれがないのだという話になって非常に生産的でない話になってくる。中島先生のような声の大きい人が来たら、そちらの領域ばかり入ってしまって、ほかの領域に。

○中島構成員 入らないから心配ない。

○伴構成員 やはり私も症候ベースで、それから今まで不足している外来研修は、どれくらいできるのかというと、そんなにはできないと思いますが、ある程度入れておくということは必要だと思います。今のシステムでは足りないということは同感です。

○福井座長 そうですね。ほかにいかがでしょうか。

○大滝構成員 今の件について情報提供も兼ねてのコメントです。今、コアカリの検討でも症候重視ということで、先ほどの資料 3 にもありますが、症候のリストの見直しもやっています。その症候と、疾患をどのように関連付けるのかということも検討しております。それぞれの症候別に頻度の高い疾患と緊急性の高い疾患を幾つか例示して、こういう疾患で主に経験できますという形のリストをお示ししてはどうかと、私の担当ではないのですが、臨床実習のガイドライン的なものを作る担当の方たちがそういう作業をしていると伺っています。おそらく 10 月頃にその案が出てくるのではないでしょうか。

 臨床研修となると、コアカリのそれに更に上乗せするわけですが、内容が余り食い違ってもいけないので、それを研究班でも共有して、整合性という意味でも参考にしながら作っていくと、今の議論ともかなりかみ合うのではないかと思いました。

○福井座長 恐らく、卒前教育よりも臨床研修のほうで項目が多くていいのではないかと思います。ほかにいかがですか。

○中島構成員 もう一度言わせてもらいます。参考資料 2 は今日出たものですか。

○福井座長 いえ、今回初めてで、村岡先生が。

○中島構成員  35 番の「不安・抑うつ」の後に、「興奮」を入れてください。どのように考えても入れないといけません。一番困るのは興奮している患者でしょう。それに、

○__ 先生、それだけは大丈夫です。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

○前野構成員 確認的な話で申し訳ないのですが、症候は割と内因性のものが多くて外傷や熱傷、熱中症などは。だから実際に 2 ページの下のほうの所は、ほとんどなかなか丸印が付きにくいということになっているのではないかと思います。もし症候で統一するのなら、今度は逆にそういう部分を項目に立てないといけない部分も増えるのではないかと思います。

○福井座長 資料 3 の「緊急を要する症状・病態」の所に、外傷が入ったりしていて、こちらには、ショックも入っています。ものによっては、こちらから移す必要があると思います。ほかにいかがでしょうか。もしないようでしたら、予定より少し早めですが本日の議論はここまでとしたいと思います。これから研究班でも、モデル・コア・カリキュラムの作成チームともいろいろ話合いを進めていきたいと思いますので、次回はもっと完成度の高いものを見ていただけるようにしたいと思います。

 この時点で、事務局から今後の予定について何か連絡はありますか。

○櫻本医師臨床研修専門官 特にありません。

○福井座長 それでは、第 11 回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループを終了いたします。ありがとうございました。


(了)

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