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2016年8月31日 第2回児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成28年8月31日(水)13:00~15:00


○場所

経済産業省別館各省庁共用104会議室(1階)


○出席者

吉田(恒)座長 岩崎構成員 金子構成員 上鹿渡構成員 久保構成員
久保野構成員 杉山構成員 床谷構成員 林構成員 藤林構成員
峯本構成員 森口構成員 山本構成員 横田構成員 吉田(彩)構成員

○議題

(1)第1回検討会におけるご指摘事項等について
(2)関係者・有識者からのヒアリング
 ・桜山 豊夫氏  全国児童相談所長会会長
 ・川崎 二三彦氏 子どもの虹情報研修センター長
(3)その他

○議事

 

○竹内虐待防止対策推進室長 それでは、定刻より少し早うございますけれども、皆様お揃いでいらっしゃいますので、ただいまから第2回「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は、山田構成員から御欠席の御連絡をいただいております。

 まず、資料の確認をさせていただきます。配付資料につきましては、右上に番号を付してございます。資料1-1、資料1-2、資料2-1、資料2-2、資料3、構成員提出資料で資料4、ヒアリングにお越しいただいている桜山会長の資料5、川崎センター長の資料6、参考資料1、参考資料2、参考資料3まででございます。

 また、資料4の追加分といたしまして、構成員提出資料として山本構成員から追加で提出いただいておりますので、机上に配付させていただいております。御確認いただければと思います。

 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。

 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただきます。

 それでは、これより先の議事は吉田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 皆さん、こんにちは。今日もどうぞよろしくお願いいたします。

 事務局のほうとの打ち合わせで台風が来ているということで、今日の会議はどうなるかと心配したのですけれども、無事に開催することができました。ここからの2時間、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速議事に入ってまいりたいと思います。

 まず、本日の議事についてでありますが、配付いたしました議事次第にも記載してありますように、前回第1回の検討会での議論を踏まえた資料の説明、意見交換を行い、その後、関係者・有識者の先生方からヒアリングとして、本日は全国児童相談所長会の桜山会長、子どもの虹情報研修センターの川崎センター長にお越しいただいております。後ほど御説明をお願いしたいと思います。

 それでは、議事の1に入ります。まずは事務局から司法関与のあり方に関連する資料等についての説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○木村補佐 虐待防止対策推進室の木村でございます。

 司法関与の関係の資料としまして、お手元の資料1-1、2-1、2-2について、私から御説明させていただきます。

 まず、資料1-1でございますが、前回第1回検討会における主な御意見を事務局でまとめさせていただいた資料となります。

 左側の各項目につきましては、本年3月の新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告における司法関与関係の各項目に沿って項目立てをさせていただいております。

 なお、当該専門委員会の報告では、臨検・捜索について、その要件となっている再出頭要求を削除すべきとされておりますけれども、この点については既に先の児童福祉法の改正により対応済みとなっておりますので、今回の項目には入れておりません。

 前回第1回は時間も限られており、まだ御意見をいただいていない項目もございますけれども、今後、こうした点についても御意見をいただければと思っております。

 続きまして、資料2-1をご覧いただければと思います。前回第1回の検討会での議論を踏まえまして、司法関与に関係する各種の既存のデータをお示しさせていただいております。しかしながら、こうした既存のデータだけでは議論を行うために必要なデータが不足していることから、後ほど御説明いたしますけれども、各児童相談所に調査を行うこととしたいと考えております。

 この後にヒアリングも控えており、時間に限りがございますので、若干説明が駆け足となりますが、御了承いただければと思います。

 データについて御説明させていただきます。

 1ページ目、過去5年間の一時保護の件数と、そのうち児童虐待を理由とする件数をお示ししたものでございます。

 2ページ目、前回の検討会での議論で一時保護の期間について御議論があったかと思います。一時保護の平均の日数につきましては、平成26年度の全国平均値で29.8日というデータを前回お示しさせていただきましたが、日数が非常に短いものと長いものも含めた平均値でございますので、実際の期間に関するデータが議論に当たって必要であると考えまして、過去のデータをお示ししているものでございます。

 (参考1)のデータにつきましては、平成25年の全国児童相談所長会の調査結果でございまして、これによりますと、2カ月未満の一時保護は約77.9%となっております。

 3ページ目、こちらは平成21年の厚生労働省の調査でございますけれども、この際も2カ月未満の一時保護は約83.3%という結果となっております。

 続いて4ページ目、面会・通信制限、接近禁止命令の件数について、それぞれ面会制限のみを行った件数、通信制限のみを行った件数、その両方の制限を行った件数、接近禁止命令の件数としてお示しさせていただいております。

 5ページ目、臨検・捜索については先ほど御説明させていただきましたが、その関係のデータをお示しさせていただいております。

 続いて6ページ目につきましては、児童相談所長の申立てによる親権制限事件の終局区分別の件数で、こちらは最高裁から出されているデータとなっております。それぞれ親権喪失、親権停止について認容、却下、取り下げの件数が記載されてございます。

 7ページ目、今、御説明した資料と同様のデータの福祉行政報告例のデータでございます。先ほどのデータは暦年のデータとなっておりまして、こちらは年度という違い等もありまして、データについては違いがございますが、こちらのデータについては都道府県等別の内訳もお示ししております。

 8ページ目、専門委員会の報告では、28条措置に係る裁判所の承認について、措置の種別を特定せずになすことを検討すべきであるとされておりますので、その関係のデータでございます。家庭裁判所の承認を得て施設入所等の措置を実施したケースについて、その後、措置先の変更があったかどうかを調査したデータでございます。具体的には、平成24年度に措置をとったケースについて、その後2年間の措置の期間中の状況を調査したものでございます。これによれば、全体で203件の措置を行ったケースがございまして、その後2年間のうちに10件、措置先を変更したケースがあるという状況となってございます。

 9ページ目、ただいま御説明した10件について、より詳細をお示ししているものでございます。これらのうち9件につきましては、あらかじめ変更する措置先について家庭裁判所の承認を得ていたため、改めて申立てをすることがなかったという結果となっております。

10ページ目、今の調査の結果の続きでございますけれども、家裁が措置先を特定して承認することにより支障が生じているかを69の自治体に調査した結果となっております。

11ページ目、虐待防止法による都道府県知事による保護者に対する勧告の件数を福祉行政報告例からとったものでございます。

12ページ目、最高裁のデータになりますけれども、児童福祉法28条事件において、家庭裁判所が都道府県に対して勧告をする、保護者の指導措置をとるべき旨を勧告した件数をお示ししているものでございます。

13ページ目、こちらも同様のデータについて福祉行政報告例のデータをお示ししておりまして、こちらについては都道府県等の内訳もお示ししております。

14ページ目、児童福祉司指導の件数について全体の件数と虐待相談に係る件数をお示ししているものでございます。

 以上、駆け足で恐縮ですけれども、関係する資料をお示しさせていただきました。

 続いて資料2-2をご覧いただければと思います。今、御説明したデータだけでは検討、議論を行うに当たって必要な情報が不足していると考えておりまして、今回、ここに記載の項目について調査を実施したいと考えておりまして、構成員の皆様から御意見をいただければと思っております。

 まず、1ページ目、先ほど過去のデータをお示しいたしましたけれども、今後の検討、議論を進めるに当たって、一時保護の期間の詳細を知る必要があると考えておりまして、一定の期間に一時保護が終了したケースを対象に、その期間の詳細や同意のありなしなどを調査しようと考えたものでございます。

 2ページ目、平成23年の児童福祉法の改正の際に、2カ月を超える親権者等の意に反する一時保護につきましては、児童福祉審議会の意見聴取をするということになりましたけれども、その状況を知るという観点から調査をしたいと考えております。具体的には児童福祉審議会に意見聴取をした件数、そのうち審議会が延長を認めた件数や、意見を付して延長を認めた件数、また、延長を認めなかった件数について調査を行うこととしたいと考えております。併せて、意見を付して延長を認めた場合の意見の主な例でございますとか、認められなかった場合の理由についても調査を行ってはどうかと考えております。

 3ページ目、面会・通信制限、接近禁止命令について、先ほど件数について御説明いたしましたが、下の枠囲みのとおり、具体的にどのような状況で実施されているのか、その区分を調査するものでございます。

 4ページ目、1つ目と2つ目のポツの部分でございますけれども、面会通信制限や接近禁止命令の利用件数が必ずしも多くなっていないと考えられることから、その理由を明らかにできないかと考えておりまして、そもそも必要となる事例が多くないのか、あるいは、他の手段により対応しているのか、その場合の具体的な対応方法などについて調査をしたいと考えております。

 6ページ、先ほど28条措置に係る裁判所の措置種別を特定しない承認についてデータをお示しいたしましたけれども、あのデータに加えて何か調査が必要な項目などがございましたら、御意見をいただければと思います。

 マル4、28条に係る裁判所から都道府県の保護者への指導措置をとるべき旨の勧告件数について、その後の状況を明らかにしたいというものでございます。また、運用上、裁判所から都道府県への勧告書の写しを保護者に送付するという運用がなされておりますけれども、その場合の保護者の状況についても併せて調査するものでございます。さらには、保護者への写しの送付については、送付を求める上申書を裁判所に提出することになっているかと思いますので、上申書を提出した件数とそのうち実際に送付がなされた件数を調査するものでございます。

 8ページ目、先ほど件数をお示しいたしましたけれども、虐待防止法に基づく都道府県から保護者への勧告につきまして、これもその後の状況、従ったかどうかですとか、その後どういった措置をとったかといったことについて、調査を行いたいというものでございます。

 9ページ目、保護者に対する指導に関する調査項目といたしまして、児童福祉司による指導について、虐待を理由とする保護者に対する指導が行われている場合について、児童がどういうところに所在しているのかということ、また、保護者に対する指導の方法として、具体的に指導プログラムがどのように活用されているかということで、指導プログラムを活用した件数、そのうち、児童相談所が自ら実施したもの、外部への委託により実施したもの、また、具体的にどういうプログラムを活用しているのかということについて調査するものでございます。

 大変駆け足となりまして恐縮ですけれども、説明は以上となります。よろしくお願いします。

○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 ただいま事務局から説明がありましたが、時間の関係もありますので、児童相談所への調査項目を中心に御質問、御意見等よろしくお願いいたします。

 なお、お手元の資料4のとおり、久保先生、山本先生からは、司法関与に関する資料について御提出いただいておりますので、両先生におかれましては、御発言の中で取り上げていただければ幸いです。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 ただいまの説明に対する御意見、御質問等よろしくお願いいたします。

 峯本先生、お願いいたします。

峯本構成員 一時保護の期間に関する調査ですけれども、一応最短が14日以内ということでとられているのですが、司法関与を実現するときの制度設計のあり方として、どの段階で、事後の承認云々の話になったときに、どれぐらいの期間のところでというようなことを判断していく上では、現実には一時保護自体がやや調査的な一時保護をとられたり、保護した上で指導を入れて戻すという形の運用みたいなものも、恐らく自治体によってかなり違いがあると思うのですけれども、行われているようになっていると思いますので、そういう意味では、もう少し短期の、1週間以内とか、5日とか、極端に言うと3日とか、そんなものも中にあるのかなと、その辺の実態がどうなのかによって、制度設計を考える上では意味があるのかなと思います。

吉田(恒)座長 一時保護の期間の区切り方を少し短目のものを設定ということですね。ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。調査項目について内容であるとか、方法であるとかという点で御意見があるかと思います。

 では、山本先生、お願いします。

山本構成員 私も期間は14日よりも短い自治体がたくさんあると思います。前に一時保護の1週間後の子どもの状態調査をしたとき、二十数カ所からそんなに長くいる子はいないと言われて驚いたことがありますので、かなり短い運用が実態としてあるかなと思います。

 もう一つ、これをどうとるのかが私も悩ましいのですが、途中で同意を取り消しているケースがあると思います。もちろん逆で、最初は職権保護で、途中で同意しているケース、移行しているケースがこれだけの長期を分析すると出てくると思うので、それの拾い方を考えておいたほうがいいかなと思いました。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 森口先生、お願いします。

森口構成員 一般論なのですけれども、このように区切りで分布を見るよりは、情報は多ければ多いほうがいいので、何日と聞くというのがはるかにいいのかと思うのですけれども、聞けない理由があるのかもしれませんが。

吉田(恒)座長 何日というのはケースごとにということですか?

森口構成員 区切りのどこかに報告するという調査方法ではなくて、実際の

○横田構成員 質問の仕方ですね。

森口構成員 答えを階級で答えてもらうよりは、エックスという日数を答えられるならそのほうが分析するときに情報量がはるかに多い。

吉田(恒)座長 では、実際にどうするか、また森口先生とよく打ち合わせをして、事務局のほうで組み立てていただければと思います。

○山本構成員 何度も済みません。

 6~7ページの勧告のところですが、どのようにしたかという事実調査のほうが確かに答えてもらいやすいので、それもいいかなと思うのですけれども、これまでにやってきた勧告の調査は、その効果があったかということをひっつけて聞いているのです。若干保護者に指導に従うケースが多かったというところと、全然ばかにされて相手にされていなかったというところとあって、効力感というのは相談所はどう思っているのかというのがあってもいいのかなと思いました。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 では、室長、先にお願いします。

○竹内虐待防止対策推進室長 先ほど森口構成員からいただいた御意見については、実際に児相のほうでの調査の作業負荷の話と、こちらのほうでも集計作業ということと、恐らくそのあたりとの兼ね合いだけで、とれないということでは決してないと思いますので、ちょっとまたよく御相談をさせていただいた上で、どういう形でとらせていただくか、進めたいと思います。

吉田(恒)座長 ぜひその形でお願いします。

 では、久保野先生、お願いいたします。

久保野構成員 久保野でございます。

 調査項目の8ページにあります、児童虐待防止法11条3項の保護者への監督につきまして、もう少し実態を知れるようにもう少し聞けるといいのではないかという感じがいたしました。

 1つは、お示しいただいた数値のほうで、児童福祉司による指導が6,300あり、そのうちということになるのかと思うのですが、11条3項を使っているのが11ページで、20となっているけれども、正しくは11件ということで御紹介がありまして、これもあまり使われていないように思いますので、その理由が何なのかということについて、4ページの面会・通信制限などと同じように聞けるといいのではないかと思いました。

 さらに言いますと、この勧告の使われ方との関係で、司法が関与することの意味合いをどう考えるのかということとつながってくる部分ではないかと思いますので、件数も少ないので、具体的な例でどう使われていて、どういう問題があり、あるいはどういうメリットがありということをもう少し入れると良いと思いました。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。貴重な御意見をいただきました。

 ほかにいかがでしょうか。

 藤林先生、お願いします。

藤林構成員 6ページの裁判所の勧告なのですけれども、指導に従わなかった、従ったということだけではなくて、先ほど山本構成員も言われましたように、成果ですね。アウトカムがどうなったのかということで、結果的に家庭引き取りになったのか、また、単に同意されて措置が続いたのかという、そこのアウトカムももしわかればと思うのです。ただし、調査期間が例えば27年度の勧告件数だけですと、アウトカムの結果がすぐ出てこないので、どの期間、この調査を行うのかということにもかかわってくると思います。印象では、同意になったけれども、そのまま施設に措置されたままの子どもも多いのではないかという印象があるものですから、そこのアウトカムも明確にしていくべきではないかと思っています。

 それと、2点目、これは素朴な疑問なのですけれども、説明いただいた資料2-1の12ページと13ページ、以前から、家裁のデータと厚労省のデータに何でこんなに差があるのかなと思っていたのですが、年と年度の差かもしれないのですけれども、例えば平成25年の家裁の勧告件数は41件あるのに、厚労省のほうは5件というこの差はどう理解したらいいのかというのは素朴に思うところです。

 でも、今回の調査は厚労省が集めたデータの中で勧告件数がどうなのかということですから、それはいいかなと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 調査に要する時間との関係もあろうかと思うのですけれども、わかるところはそういう方法でやっていただきたいという趣旨ですね。

 ほかによろしいでしょうか。

 では、久保先生、お願いします。

久保構成員 調査項目の6ページの調査についてですけれども、先ほど指導に従ったところについては御指摘のあったとおりだと思うのですが、例えば勧告があれば従いそうだと思う保護者についてだけ上申を上げて家裁から勧告を受けているようなところもあるようですので、全く勧告にも応じないような保護者もいるかと思うのですが、その属性がどういうもので、こういう勧告が出されて、本当に従ったのかどうか、全く従わないと思われる人にも勧告して従ったのかどうかというのは知りたいところなので、その点も合わせて入れていただければと思います。

吉田(恒)座長 なかなか微妙なところまで入ってきましたけれども、工夫していただければと思います。

 藤林先生、お願いします。

藤林構成員 今の久保構成員の指摘に関連しまして、この結果の取り扱いなのですけれども、勧告が出て、指導に従ったケースが多いから、イコール勧告が効果があるとは単純に言えない。考察をまとめる段階で、そこの児童相談所として従うかもしれないという予想のもとで行っているわけですから。90%は無理だと考えているわけです。考察をまとめる段階で、そこの調査のまとめ方についてはぜひ留意をお願いしたいと思います。

○吉田(恒)座長 貴重な視点をいただきました。

 ほかにいかがでしょうか。

 調査に関する御意見、御質問ございますか。

 大谷参事官、お願いします。

大谷法務省民事局参事官 法務省民事局の大谷と申します。

 2点ございまして、1点目、一時保護の関係ですけれども、この会議の設立の趣旨として、児童虐待に係る手続における司法関与ということになっておりますけれども、一時保護の理由について、児童虐待の場合が半数ぐらいで、それ以外の場合がまた半数ぐらいあると承知をしております。そこで、児童虐待以外の場合の一時保護における司法関与というのをどのように位置づけるのだろうかというのが、このアンケートを行うに当たっても関係してくるのかなと思うところでございますが、資料を拝見いたしますと、いろいろな場合があると。その全ての場合に、一時保護における司法関与を考えていくことになるのか、そうだとして、内訳というか、児童虐待かそれ以外だけでいいのかというところが一つあるのかなというのが1点でございます。

 2点目ですが、4ページの一番下、28条審判に関するアンケート項目でございます。一時保護中及び措置解除後について、括弧内にこういう目的のためという書き方がされておりますけれども、これは5ページで、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の報告でこれらの観点が示されておりますので、一時保護中に接近禁止命令が必要と考えられる具体的な事例をお書きいただいたほうが、より具体的なニーズが明らかになるのではなりますので、具体的な事例を記載という形にしたほうがいいかなと思うところでございます。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがですか。特に調査に関して御意見等ございませんでしょうか。

 それでは、この調査に関する御意見等、もしございましたら、また後ほど事務局のほうに御連絡いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、特別養子縁組の利用促進に関して、第1回検討会で各構成員から要望がありました資料について、事務局から簡潔に説明していただきたいと思います。

 では、お願いいたします。

田野補佐 事務局でございます。

 特別養子縁組制度の利用促進に関する資料は、資料1-2と資料3でございます。

 資料1-2につきましては、第1回でいただきました御意見につきまして、今年の3月に取りまとめられました「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」の報告に挙げられました、特別養子に関する6つの意見の項目に沿って整理をさせていただいております。年齢、審判の申立権等、順番に6つ並べてございまして、一番最後にその他全般的な御意見ということで、まとめさせていただいております。

 もう一つ、資料3でございます。こちらは第1回の検討会で御発言いただきました事項に関連した資料を御用意させていただいております。

 おめくりいただきまして1ページ目、1番は、この検討会で特別養子縁組の検討が行われることになった背景ということで、先ほど言いました3月の専門委員会で特別養子縁組に関して検討を開始すべきとの提言があったということがきっかけになっておりますので、報告書の関係部分の抜粋を載せさせていただいております。関係のところにアンダーラインを引いております。

 2ページ目、2番、養子縁組を希望する理由や状況ということで、資料をお出ししております。これにつきましては、特別養子縁組の利用が想定されるケースとはどんな場合なのかということで御意見をいただきました部分につきまして、林先生の調査研究から引用させていただいた資料でございます。児童相談所で養子縁組にかかわった事例で、実親が養子縁組を希望した理由ですとか状況についてお調べいただいたものを載せさせていただいております。

 3ページ目、3番は、親子関係再構築支援の現状はどうなっているのかという御意見がございましたので、それに関連する資料ということで、調査研究ですとか、関連する文献から少し引用させていただいておりまして、児童相談所と児童福祉施設等における取り組みについて記載をさせていただいております。

 あと、関係する通知の抜粋を参考ということで4ページ、5ページにつけさせていただいております。

 その次の6ページ目から17ページ目まで、4番は、養子縁組制度各国比較表ということで、資料をつけさせていただいております。これにつきましては、中央大学の鈴木博人先生の著書から養子縁組の手続に関連する部分を中心に抜粋させていただいております。

18ページ、19ページは、第1回で御提出させていただきました資料の訂正等でございます。18ページが特別養子縁組の成立件数の資料でございますが、赤字になっておりますグラフの平成20年のところの数字に記載誤りがございましたので、この場を借りて訂正させていただきます。申し訳ございません。

 欄外に、前回のときにこの数字は年度の集計をしたものと誤って書いておりましたけれども、これは暦年の数字だということで、訂正をさせていただきたいと思います。

19ページ目、これも前回、お出しした諸外国における養子縁組の状況の資料でございます。これにつきましては、日本の普通養子縁組の件数につきまして、裁判所の許可件数のみだということが明記されておりませんでしたので、これに関する記述を赤で追記しております。

 前回、単純に日本と諸外国を比較する文言を記載しておりましたけれども、内容を見ますと、連れ子養子ですとか、あるいは孫養子については日本の普通養子縁組の件数にはカウントできていないということがありまして、諸外国の数字とベースが合っていないということがございましたので、その部分の記述は削除させていただいております。

 資料についての説明は以上でございます。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま事務局から説明がありました点につきまして、御質問、御意見をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、お手元の資料4にありますように、藤林先生からは特別養子縁組を中心に資料の提出をいただいております。もし御発言ございましたら、その中で触れていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、特別養子縁組に関する資料につきまして、御意見等よろしくお願いいたします。

 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 2ページのところについての質問なのですけれども、特別養子縁組の利用が求められるようなケースとしてどういうものが想定されているのかということについてお調べいただいたものを出していただいたわけですが、ここに挙げられているのは出生した産院から直接里親宅に引き取られた例ということかと思うのですけれども、ないから出ていないのかと思いますが、前回の議論の感じからしますと、そういう例ではないものについても必要があるということなのかなと思って伺ったのですけれども、もしそのようなものが何かその点についてありましたら、教えていただければと思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 では、この調査研究を担当されました林先生から御意見をいただきます。お願いします。

○林構成員 前回、調査結果を概説的にお示ししましたように、児相が行う養子縁組の約96%が1歳未満である。そのうちの約4分の1が新生児であるという実態の中で、普通養子を含めて1歳以上、幼児以降の縁組というのは児童相談所に関してはほとんど行われていない。民間機関ももっと新生児の割合が多いという現実の中で、先ほど言及されましたように、幼児以降の子どもたちに縁組をどう提供するかということを含めた検討が今後必要だと思っております。新生児でない縁組に関しましても、生みの親の状況は新生児とほぼ同様に思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 藤林先生、お願いします。

藤林構成員 久保野構成員から前回、そのような御質問があったものですから、私の提出資料の中にそういったいわゆる新生児期ではない幼児さんであるとか、または虐待ケースで現状ではなかなか特別養子縁組に乗りにくいケースを挙げさせていただいておりますので、今日もし時間がありましたら、どういうケースなのかというところで説明したいと思っております。

吉田(恒)座長 まだ若干時間がありますのでどうぞ。

藤林構成員 今、いいですか。ここだけ説明してもわかりにくいと思うのですが。一通り説明しないと。

○吉田(恒)座長 短目でできますか。この後時間が限られてしまうので、今がいいと思います。

藤林構成員 座長からそう言われたので、この時間のタイミングの中で説明したいと思います。

 私が作成しました資料の9ページを開いていただきたいのですけれども、上のグラフは福岡市における里親委託児童数の年次推移ということで、平成17年から里親委託に取り組んできたのですが、見ていただいてわかりますように、グレーの積み上げグラフが特別養子縁組成立児童数ということで、当初は年間2件、3件ということで、大体これぐらいの件数だったのですけれども、24年だけゼロなのですが、23年以降、8件、6件とふえていったというところは、我々児童相談所の職員が里親委託を経験していく中で、子どもにとって里親養育だけではなく、必要な子どもには特別養子縁組の機会をぜひ与えたいという、大分意識が変わってきたというのが背景にあります。この私の資料の中にありますように、国連ガイドラインにおける永続性に対する留意というか、配慮というところも、大分うちの職員も学びまして、特別養子縁組にチャレンジしていこうという中で、8件、6件と増えていきました。

 しかし、そのように職員の意識変革とパーマネンシーの重要性を認識する中で取り組んできたわけですが、背景には常勤弁護士である久保さんのバックアップもあったわけなのですけれども、そうするとどうしても限界事例にぶつかってしまうわけなのです。ぜひこの子どもに対しては特別養子縁組を成立したいと思ってもなかなかできないというケースが、この下の5ケースを代表的なものとして挙げております。

 かいつまんで説明いたしますけれども、1番目のケースは、面会交流がなく、また、親の居住場所はわかっているわけなのですが、意思表示がないという状態で、やっと6歳を超えた後に同意を得ることができたのですけれども、その時点では特別養子縁組は不可能だったわけですから、普通養子縁組ということで、里親さんに打診するわけなのですが、どうしても前の親との法的関係が残るということに養親候補者さんは不安を感じられて、普通養子縁組はなかなかできなかったというケースです。その養親さんのお気持ちもよくわかると思います。

 2番目のケースは、行方不明でないケースで、面会交流がなく、何度も訪問して手紙を送るわけなのですけれども、なかなか意思表示が得られないまま経過いたしまして養育里親さんに委託して数年が経過しているというケースです。この状態で、家庭裁判所に申し立てた場合にひっくり返ってしまう、そこで不同意になる可能性が十分ありますから、怖くて特別養子縁組として委託できなかったというケースです。

 3番目のケースは、この方も面会交流が途絶えて数年経過して、行方不明状態になってしまいました。数年経過して、行方不明状態と認定を行ったわけなのですけれども、その段階で養子縁組里親さんに打診をしましたが、行方不明状態と認定した段階でかなり年齢が高くなっているものですから、6歳直前ということで、決心が困難というケースです。行方不明状態といってもいつ何どき出てくるかもわかりませんので、そのときの家裁の判断も非常に不透明ですから、養親候補者の方は非常に不安を感じます。

 4番目は、お母さんの同意は得られたのですけれども、戸籍上のお父さんの同意がなかなか困難ということで、これは全然返事がもらえないということで、里親養育が時間だけが経過してしまっているという、これも年長になっているケースです。

 5番目は虐待ケースです。28条審判で里親委託になっておりますけれども、里親さんも特別養子縁組の意向はあるわけですが、これは実親さんに養親さんの個人情報を知られることに非常に不安を感じるわけですから、移行できないまま時間が経過しているというケースです。

 代表的なケースを挙げましたけれども、多分、私よりも岩崎さんのほうが私の百倍ぐらい御経験があるのではないかと思いますけれども、以上、この数年の経験ということです。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 久保野先生、よろしいでしょうか。

久保野構成員 はい。

吉田(恒)座長 ほかに先ほどの説明につきまして、御質問、御意見ございますでしょうか。

 では、岩崎先生、お願いします。

岩崎構成員 基本的に私も特別養子縁組の年齢制限を取っ払ってほしいという考え方を持って、今まで訴えていたのですけれども、実際は年齢が大きくなるほど親子関係の形成は難しいです。私の経験では10歳が最高年齢でした。10歳で、当時は当然に普通養子法の時代でしたが、養子縁組後も親子関係が継続していくだけの信頼性を施設で育った大きな子ども と養子里親が つくるというのはまことに極めて難しい問題であって、全てが成功するわけではないのです。

 要するに、年齢を上げてもらいたい理由の一つは、養子縁組が調う状況が出てきているにもかかわらず、例えば6歳までの同居に至らなかったために普通養子にしなければならないとか、年齢は すでに6歳以上ではあったが、たまたまその子どもを気に入ってくれた養子里親との 出会いがあって、とてもいい親子関係ができているのに、そして、複雑な実親の背景をこの子が引きずらないように特別養子が認められたらいいのにというようなケースがあったときに適用ができるということの必要性のためであって、年齢の高い子 もどんどん養子縁組 を増やしましょうということはとてもではないですけれども、今の 養子を 引き受ける側の需要ももちろんありませんが、養育する覚悟ができる申込者はほとんどいないと思っているのです。ただ、まれにあったときに、それがちゃんと特別養子で認められるような、そういう意味での年齢制限の突破というのが私たちにとっては大きな願いなのです。

 5歳半ぐらいに 養子候補児として 候補に挙がってきた子どもに、 適当な養親候補者を探し、その夫婦を 調査し、 施設での実習をしっかりさせ ているうちに、引き取れる日が 6歳になってしまうので、その 前日 里親に引き取らせて、何とか特養で申し立てたいと考えたくなる事例が時折あります。あまりに見え透いたことをすれば、 裁判所もおかしいだろうとおっしゃいますし、少なくとも2週間ぐらい前に引き取って もらって 、8歳までの縁組の可能性にかけるという のがまあ許されるところかと私も思いますが 実際には年齢制限がどれほど私たちの仕事をしんどいものにしているか。 せっかく親子関係ができつつあり、何とか育てていけるのではないかという状況で我々の場合は申し立てるわけなので、そのとき、年齢超過が問題になるというのはとても悔しいというのは本音としてあるところです。制度上がどうであれというより、個々のケースの本音としてそういうところをケアしてもらいたいという思いがあります。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、床谷先生、お願いいたします。

床谷構成員 床谷です。

 先ほどのところにちょっと戻るのですが、資料3の2のところで確認のためにお聞きしたいのですけれども、出生した産院から直接里親宅に引き取られた事例67件ということなのですが、手続として里親の認定とか、どの子をどの里親にということとか、親の同意のとり方とか有無とかということを、67件ではどういう形でどの段階でという引き渡すまでの過程を教えていただければと思います。

○吉田(恒)座長 では、引き続き、林先生からお願いします。

林構成員 いわゆる新生児委託と言われている、要するに産院から直接里親さん、後ほど岩崎さんからも補足いただきたいのですけれども、新生児委託とは、直接里親宅という、里親さんが養親候補者さんである場合と、それ以外の一時保護委託専用の里親さんの場合もございまして、その辺、直接里親宅の里親というのは、2種類が存在しています。

 基本的に、私は家庭養護促進協会にもインタビューに行かせていただいたのですけれども、出生前に同意をとるということは原則しないということだったと思います。

 ただ、愛知方式とか、いわゆる幾つかの自治体で先駆的に行われているのは、出生前からそういう子としてある程度養親候補者さんの目星をつけて委託しているというケースもあれば、多くの児童相談所は原則的には出生前に同意をとるということをしていないと、調査結果からわかっていることです。マッチングも、基本出生後行うということだと思います。

 岩崎さん、いかがですか。

○岩崎構成員 実質協会だけで新生児委託をさせていただいた総数が大体150ケースぐらいなのですが、何件か同意が翻って、私たちも、夢を見ていた養親さんたちに、短い間のことですけれども、赤ちゃんが来るのではないかと思っていた人たちの失望と、同意が翻るということが子どもにとってどういうことを意味するのかというところをいろいろと考えてきた結果、絶対に出生前の訴えを同意としない。 生まれる前から養親候補者を 用意しないことにしました。

 用意をすると、私たちにも新しい親子関係の想像ができ上がっているのです。そうすると、親の同意が翻ることに対して、ワーカーでもよほど気をつけないと、それまでの面接ではあらゆる養育できる可能性を提案しても、なおかつ養育しない、できないと言い続けてきた母親が、出産を経過しただけで同意が翻るような状況の中で、本当に育てられるのかという疑いを持ってしまいやすいのです。こちらが新しい養親を想定してしまった場合には、より母親に対して、同意を翻したことにある種の裏切られ感みたいなものを持ってしまいやすい状況があって、中には本当に心から育てたいという 気持ちになっている母 親、特に常識的な母親である場合の方が、より養育したくなったのに、養育したいということを言えない状況をつくってしまう心配のほうが強く 考えるようになりました。私たちは、新生児委託の養子縁組は、とてもいい親子関係が作られている事例をたくさん経験しますから、それを進めたいというオーラが出てしまいやすいと、心配しています。しかし 、やはり本当に子どもにとって親になる人は本来は実の親であるべきで、そこをどれだけ我々はちゃんと追求しただろうかということを、幾つも幾つも反省させられる中で、極めて慎重に同意をとることを私たちが納得してやらないといけない。本当に時間をかけて母親が本当に育てられないのですという答えを出すまで、辛抱強く待たなければいけない。

 そのかわり、母親とその関係者に、これから新しい養親を用意する期間、あなたは養育することができるかどうか、あるいは、養育するに必要な費用がかかる場合、それを一部負担することができるかどうかみたいなことも含めて考えていかなければいけないことなので、とてもケースワーク力が必要とされるところです。私はとても慎重にやってもらいたいと思っているのです 。しかし 実際は、私の周りの児相の場合には、翻ったことは仕方がないので、だめでしたよと、養親候補者に対しても簡単におっしゃるだけで、相変わらず出産前から用意していらっしゃるケースのほうが実際は相当多いと私は見ています。うちの職員でも、私がそばにいて、いつも繰り返しそう言っていても、例えば年末に産まれてくるとか、 連休の間が出産予定日になっているとか、 例えば土曜日出産だと日曜日出ていかなければいけないという状況の中で、 そして同意が変わらなければ、母親が退院するまでに養親候補者を用意しておいて、出来るだけ早く引き取らせてやりたい 気持ちがなんとなく出てきてしまうのです。 その職員の気持ちもわかるのですが、 何でこれだけ言ってもわからないのだと私が怒って、とりあえず今はじっと辛抱して、産んだ母親の気持ちが固まるまで、私たちは見守っていかないといけない し、必要なら毎日病院に通って、母親に付き合わないといけないのよ と言わないといけないぐらい、実際は本当に大変なことなのです。

吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 まだお話を伺いたいところですけれども、この後ヒアリングがありますので、またこの後の時間で御意見をいただけるかと思います。ありがとうございました。

 それでは、ただいまいただきました御意見を踏まえて、特別養子縁組の利用促進に関する議論をする上で必要な資料についても事務局で引き続き準備いたしますけれども、各先生方、お持ちの資料につきましても、次回までに御提供いただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

 また、今後でありますけれども、本日のこの後の時間と、次回を含めて関係者からのヒアリングを行うことにしております。その後、司法関与と特別養子に関して論点ごとに議論を深めていきたいと思っております。

 それでは、続きまして、本日の議事2のヒアリングに入りたいと思います。

 本日は、関係団体として全国児童相談所長会の桜山会長にお越しいただいております。この検討会の議題となっております司法関与のあり方、また、特別養子縁組の利用促進のあり方を今後考えていく上で、児童相談所の現場の実態についてヒアリングさせていただくと、大変参考になるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に10分程度御説明いただいて、その後、各先生方から御質問等いただければと思います。

 それでは、桜山会長、どうぞよろしくお願いいたします。

○桜山会長 御紹介いただきました、全国児童相談所長会の会長を務めております、東京都児童相談センター所長の桜山でございます。

 本日は、このような発言の機会をいただいたことに、まずもって御礼申し上げます。全国児童相談所長会の会長として、私の意見を少し述べさせていただきます。

 まず、司法関与のあり方についてでございますけれども、先般、国から発表がございましたが、平成27年度に全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は前年度比16.1%増の103,260件と、初めて10万件を超えました。全国的に、いわゆる面前DVとして警察からの通告が増えたのが大きな要因となっております。当然ですが、一時保護を必要とするケースも相対的に増えております。

 構成員の皆様には既に御案内のことと存じますが、児童相談所は虐待を受けている疑いのある児童を一時保護した場合、児童相談所は虐待の有無や程度について調査し、その上で虐待を行っている親を指導して、在宅での指導でさらなる虐待を防止できると判断すれば、御家庭に児童を戻しますし、また、すぐにはお戻しできないと判断した場合には、親子を分離して児童福祉施設などへの入所が必要と判断することになります。

 児童福祉施設入所等の措置は、原則として親権者または未成年後見人の意に反してとることができないとされておりますので、児童福祉審議会の意見を聞いた上で、家庭裁判所に入所措置の承認を申し立てております。

 平成26年度の請求実績を見ますと、家庭裁判所に対する入所措置の申立ては全国で350件となっております。

 児童福祉施設等への入所に当たりましては、まず、子どもや保護者の状態を十分にアセスメントし、在宅での援助では、子どもの最善の利益が得られないと判断した場合に、子どもの本人の意向を十分に聴取した上で、保護者に対しても入所の必要性を十分に説明し、理解を得るようにしております。親権者の同意が得られない場合には、家庭裁判所の承認を求める申立てを行っていますが、申立て後も親権者への説得は継続して行い、2割程度は親権者の同意を得て申立てを取り下げているのが現状でございます。

 しかし、保護者とのやりとりの中では、面会の約束を何度もほごにされる、あるいは夜間や休日に訪問をしないと会えないなど、大変第一線の児童福祉司は苦労しているのが実態でございます。同時に、関係機関からの情報収集を行うなど、審判に必要な書類を作成し、裁判所の理解を得られるように準備しております。

 これも今般「児童虐待の防止等に関する法律」が改正され、情報提供を求められる対象が医療機関や学校にも拡大されました。このこと自体は大変ありがたく思っております。しかし、規定の書き方が「できる規定」であることから、個人情報保護の観点からどこまで情報を提供していただけるか、私どもは危惧を抱いております。また、医療機関が提供できるのは児童虐待に関わる情報のみと狭く解釈されて、保護者の情報を提供していただけない場合もあるやに伺っております。全国児童相談所長会といたしましては、児童虐待事案への対応に際し、必要な情報等を迅速に入手するため、刑事訴訟法や弁護士法と同様に、対象機関を限定しないとともに、児童相談所の調査権に対する応答義務を明記されるよう、国に要望しているところでございます。

28条審判の申立書には、入所の必要性を説明するため、事実経過、特に日時、出来事、場所、人名、状況等を明確に記入する必要があります。また、虐待の事実を述べ、子どもが重大な危機にさらされ、看過できない状態にあることや、親子分離が必要な理由を明記しております。さらに、保護者の性格や状況を説明し、児童相談所の指導に応じないことや、指導しても虐待が繰り返されるおそれがあることを記載しております。直接面接で聴取できない場合などには、電話で聴取した事項を報告書として提出しております。また、医学的所見、診断書も重要な証拠となりますが、虐待かどうか原因が不明で判断できないと医師が言った場合でも、虐待者の供述がけがの実態とかみ合わず、納得がいかない説明であること、客観的事実、担当医の所見などをできるだけ詳細に記載していただいております。医師からの診断書や所見の発行を拒否された場合には、申立書の中に診察の受診日と医療機関名を記載し、家庭裁判所からの所見照会をしていただくようにお願いしております。

 審判で申立てが却下された場合には、審判書が送付された日から起算して14日以内に高等裁判所に即時抗告をすることができるので、対応を検討することになります。即時抗告しない場合にも、法的には一時保護を継続することは可能でございますが、却下の趣旨に鑑み、お子さんを御家庭に帰すことになります。

 家庭裁判所は、措置に関する承認の申立てがあった場合は、児童相談所に対し当該措置の終了後の家庭その他の環境の調整を行うため、当該保護者に対して指導の措置をとるべき旨を児童相談所に勧告することができますが、児童相談所が家裁の勧告に基づいて保護者指導をしようとしても、保護者がその指導に従わないことも多々ございます。

 一方で、一時保護やその後の面会通信制限について、司法が関与することは児童相談所の判断で緊急かつ即時に対応していた行政処分を速やかに課すことができなくなり、緊急保護が必要な場合に支障を来し、保護のタイミングを逃してしまうおそれもあります。子どもの安全が図られるよう、慎重な御検討をお願いするものでございます。

 ちなみに、東京都では、平成27年度に一時保護所に入所した子どもの約4割強が夜間休日の入所であります。こうした現状を踏まえた上で、子どもの安全確保を第一に御検討いただきたいと考えております。

 児童の権利条約にも、父母の意思に反して児童を父母から分離する場合には、権限のある当局が司法の審査に従うことが条件とされており、子どもの権利保障という観点から、一時保護を行政判断のみで行わず、一時保護した後に司法が関与することについて否定するものではありませんが、平成23年にも法制審議会や社会保障審議会の検討で同じような議論があったと記憶しております。当時の議論としては、一時保護の開始前、または開始後に司法のチェックを受ける仕組みを設けることが望ましいという意見がありましたが、一方で、司法や児童相談所等の体制を考慮する必要があり、一時保護に過度に重い手続を加えることによって、かえって一時保護が避けられ、児童の利益を損なうような事態は避けるべきという意見もありました。

 さまざまな御議論の結果、当時の結論としては、一時保護期間について、2カ月を超えてはならない、超える場合には第三者機関である児童福祉審議会に意見を聞かなければならないと整理されたものと考えております。一時保護に司法の関与を求めるのであれば、児童相談所や家庭裁判所の体制強化、児童相談所への調査権の付与や、家庭裁判所が判断できるような一時保護の要件の明確化など、検討すべき課題は多々あると思います。時間をかけて整理、検討すべき課題と考えます。

 次に、里親制度の関係について申し上げます。

 まず、養子縁組里親についてでございますが、実親に養育意思が全くなく、親族養育も将来にわたって期待できない場合に、特別養子縁組を検討することになります。

 特別養子縁組を進めていく上で、実父母の同意は課題の一つでございます。特別養子縁組は、実親との法律上の親子関係を断絶してしまうものであり、子どもの出生後、実親が気持ちを整理するための時間を設ける必要があります。

 一方、子どもの側から考えますと、出自の事実を知る権利が保障される必要があり、実親の情報を完全にシャットアウトすることもできません。特別養子縁組成立後に、子どもが思春期にさしかかり、親子関係が不安定になっているケースが時々見受けられます。そうならないために、児童相談所が養子縁組成立後も継続的に援助していくことが必要であり、今回の法改正でも盛り込まれたものです。

 しかし、養親の側に養子縁組であることを秘密にしたがる傾向があることも事実です。養子縁組成立後に行政のかかわりを絶ってしまったり、時には他県に転居することで養親や子どもの居所が不明となってしまう場合もあり、援助方法の課題であると考えています。

 次に、特別養子縁組の離縁についてですが、現行法では、養親による虐待、悪意の遺棄、その他養子の利益を著しく害する事由があることとともに、実父母が相当の監護をすることができることを条件に、養子の利益のために特に必要が認められるときに離縁することができることになっています。

 親子関係の安定性という意味での必要性は理解できますが、養親による虐待や養育の放棄がなされるような場合に、実父母の監護を要件とするのではなく、未成年後見人等の選任を前提に、離縁を認めることも必要な場合があると考えます。この点についても御検討いただきたいと思います。

 また、特別養子縁組の年齢ですが、児童相談所の実務の中では、6歳未満ということでの不具合はそれほどは発生しておりません。年齢について議論するのであれば、未成年の養子縁組について、普通養子縁組も含めて議論する必要があると考えます。未成年養子については自己または配偶者の直系卑属についての養子縁組については、家庭裁判所の許可対象外です。実務上、養親子関係において虐待が起きている事例も見られるなど、未成年の養子縁組について家庭裁判所の許可を求めるなどの検討が必要ではないかと考えます。

 里親制度は、里親のためではなく、子どものための制度であることを社会全体で受けとめる必要があると思います。

 最後に、児童相談所のあっせんによらない場合には、児童相談所は試験養育期間中の同居児童の届出をするよう指導するとともに、調査を行い、法27条第1項第2号の児童福祉司指導の措置をとって、子どもの養育状況を確認し、家庭裁判所に報告していますが、今後、民間等あっせん法案によって、児童相談所と民間あっせん機関との共同が求められるようになると思います。どちらが関わっても子どもの立場に立った養子縁組が実現できるような法律制定をぜひお願いしたいと思います。

 簡単でございますが、私からの説明になります。

吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいま御説明いただきました内容、また、児童相談所の現場の取り扱い等について、御質問、御意見がおありかと思いますので、ぜひお願いいたします。

 山本先生、お願いします。

○山本構成員 2つございます。

 今日は貴重な時間、お越しいただきましてありがとうございます。

 まず、司法関与の方ですが、これまでにも確かに児童相談所は職務の現状の中で、これ以上の手続整備による司法関与は実務を非常に圧迫するという意見があったことは皆さんも重々承知の上だと思うのですけれども、本来あるべき制度として、一時保護に対して司法審査の手続を何らかの形で導入していく、そのためには時間をかけた議論が必要だと先ほどおっしゃっていましたが、その基本的な方針についてはどのようなお考えでおられるのか、お伺いしたいのが1つ目です。

 2つ目、特別養子に関しては、大体におっしゃっていただいていることはここで議論されていることと本当に重なっていると思ったのですが、1点、私自身の実務の経験でいいますと、養子になった子どもが将来にわたり自分の出自を知る権利の保障が必要だと思っているのですけれども、それについてはどのようなお考えをお持ちか教えていただきたいと思います。

吉田(恒)座長 それでは、桜山会長、お願いいたします。

桜山会長 なかなか難しい質問をありがとうございます。

 1番目の御質問でございますが、基本的な根拠といいますか、考えるべきは児童の最善の利益ということだろうと思っております。実際に一時保護という場合に、先ほどどなたかからございましたが、全ての虐待ではございませんで、もちろん非行傾向のあるお子さんの場合、あるいは養育困難、それらのケースが複雑に絡み合っている例もございますが、虐待の事例に関して申し上げますと、我々児童相談所は虐待の疑いのあるお子さんに対してその児童の利益から保護が必要かどうか判断するわけでございますが、100%完璧に虐待の事実を間違いなく、このケースは虐待がない、このケースは虐待があると判断する自信はございません。これは当然のことでございます。

 ただ、児童の生命と安全を守るためには疑いがある場合、法律家の先生方がいらっしゃると思うので、口幅ったい言い方でございますが、疑わしきは児童の利益にと考えて一時保護を決定する場合もございます。ですから、当然それを間違っている場合も、中には本当は虐待の事実がないにもかかわらず保護してしまうということもゼロではないと思いますので、そこに司法の関与が加わるということを否定するものではないと私は考えておりますが、ただ、それによって児童の生命、安全を守るスピードが阻害されることはあってはならないことだと思っております。

 ちょっとお答えになったかどうかわかりませんが、そのような考えで私ども現場では臨んでおります。

 2番目の出自を知る権利の保障という点に鑑みましても、私どもは児童は将来適当な時期に自分の出自を知る権利が保障されるべきと考えております。中にはその事実が余りに重いという場合もあるでしょうから、それはケース・バイ・ケースですし、養親の判断も尊重しなければならないと思っておりますが、それを隠し通して子どもが成長するというのは好ましくないと考えております。

 現行制度におきましても、戸籍の記録を追うことによって実親を探すことは全く不可能ではないわけですが、養子縁組に至った経緯については戸籍だけではわかりませんで、そういう意味では、その記録も適当な期間といいますか、かなり長い期間になると思いますが、児童相談所では保管しておくべきだと思いますが、それをどのようなルールで養子に伝えるかということについては検討していかないと、先ほど申しましたように、養い親側の考えもあるでしょうから、そういうものも尊重しつつ、ルールづくりをしていかなければいけないのかなと思っております。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 ほかに御質問、御意見ございますか。

 金子先生、お願いします。

金子構成員 貴重なお話をどうもありがとうございました。

 2つありまして、1つは司法関与関係で、先ほどのお答えのところですけれども、ある程度たってから事後承認を求めるというのではだめなのかということをお伺いしたいということですね。

 あと、養子縁組の関係ですけれども、プレゼンテーションでは里親との関係ということが、むしろそちらのほうが主だったとまでは言いませんが、かなり関係させて論じられていたと思うのですけれども、児童相談所から見て養子縁組というのは里親のある種のグレードアップバージョンといいますか、そういう位置づけなのか、それとも、両者は別の方向の制度なのかという、その辺の捉え方をお聞かせいただければと思うのですが、よろしくお願いします。

桜山会長 ありがとうございます。

 2番目のグレードアップバージョンとは、特別養子縁組と普通養子縁組のことですか。

○金子構成員 里親と特別養子との関係、里親と普通養子との関係のそれぞれについて、ということです。

○桜山会長 里親と養子縁組のバージョンについてという意味ですね。

金子構成員 そうです。

桜山会長 まず、1つ目の事後承認ならいいではないかという点については、理想を言えば、同意を得られているケースは別としても、同意を得られないケースについて第三者的な、特に司法の場からの御判断をいただくということは、私どもの業務について広い意味ではバックアップしていただけるものだとは思っておりますが、ただ、事後承認までの期間を考えますと、該当する、児童福祉法の場合は子どもですけれども、例えば感染症法などですと、感染の疑いのある個人の自由を束縛するということで、72時間以内に感染症協議会の意見を聞かなければならないとなっておりますが、72時間になると、児童相談所では今のままではとても調査が行き届かないと思います。

 そういう意味では、もし司法関与の関与する枠が広げるということで事後の承認を得るということであっても、先ほどちょっと触れましたけれども、児童相談所には確実な調査権がございませんし、現行の体制ですとそれだけのマンパワーもない中では、児童相談所側としてはあまりに短い期間に事後承認を得るとなるのは事実上不可能で、そうなると、逆に保護をためらうような事例が出てくるのをむしろ私としては恐れております。

 里親と養子縁組の関係でございますが、グレードアップバージョンとは考えておりません。里親の中でいい方に養子縁組をお願いするとか、そういう問題ではなくて、本質的にはちょっと異なるのかなと。結果として里親で養育された親御さんが、里子さんが成長されて、成人を迎えた後に養子縁組をされたような例も承知はしておりますけれども、そういう例もあるでしょうが、それは家庭の中でそういう関係になったということであって、最初から養子縁組を前提として本来養子縁組里親でない普通の養育里親さんにお願いするということは児童相談所では考えておりません。これは先ほどの発言の中で誤解を受けられると困るのですが、あくまでも児童の利益のためにどちらも行っているものでございますので、それは別の制度と考えております。

吉田(恒)座長 よろしいですか。

 それでは、久保野先生、お願いします。

久保野構成員 お話どうもありがとうございました。

 久保野と申します。

 今の里親と養子縁組の関係の質問と関連しますけれども、児童の利益のためにどの方向でいくかというときに、特別養子縁組を選んで実親子を切ってしまうと判断する場合と、そうでない場合の限界というのがどこかということが問題になってくるのだと思うのですが、先ほどのお話の中で、出自を知る権利の重要性ですとか、あるいは実親子関係の構築がまず出発点であると今回の話にもありまして、一方で、そのような利益があり、他方で特別養子縁組がいいのではないかということの限界で迷われるようなケースがあるのか、あるとしたらどういう御判断なのかというあたりを教えていただければと思います。

桜山会長 御質問ありがとうございます。

 クリアカットにお答えできるかどうかわかりませんけれども、中には棄児といいますか捨て子のように最初から実親が知れない場合もございますが、多くの場合にはなかなか最初からすぱっと決めるのが難しい中で出発しております。基本的には今、申しました棄児あるいは保護者が死亡し、または養育を望めない状況、ほかに養育をできる親族等がいない子どもについては、長期的な安定した養育環境が必要だと考えて、養育里親への委託とあわせて養子縁組を希望する里親も検討することになります。

 児童相談所によっては最初から、お子さんが小さい時代からどんどん進める場合はあるのですが、多くの児童相談所では今みたいな感じで、養育里親に委託したり、子どもの状況によっては乳児院の場合もありますけれども、そうしながら同時に養子縁組里親を探すことになります。こうした場合には特別養子縁組は、普通養子縁組であっても法的に安定した親子関係を築くことが望ましい状況になっていくと考えております。

 また、望まない妊娠や若年の妊娠などハイリスクと言われる要支援家庭については、出産前に地域の保健所、保健センター、あるいは医療機関、子育て支援機関等で情報をつかんで、そういうところと協力して、児童相談所が出産前からの相談支援を行っていきます。まずはその場合も、実親子関係の構築に最初は努力いたします。先ほど申しましたように児童相談所によって手続の進め方に若干の相違はあるにしても、こうした援助を行いつつ、実親から養子縁組を希望された場合には、実親の意思を確認しながら養子縁組を進めております。この場合も、何より児童にとっての最善の利益が何であるかという視点に立って進めることは言うまでもございません。

 なお、実親にしてみますと、当初養子縁組を希望されていても、実際に子どもが産まれますと養育をしてみたいといって、気持ちに揺れが生じることも多々ございます。これも当然のことではないかと考えております。例えば東京都でございますと、相談の段階から地域の社会資源や地域での支援体制を調整したり、加えて親族調査を行ったりいたしまして、実親の養育が可能かどうかを見きわめるために努力しておりますので、どうしても一定の期間が必要であることから、一度乳児院に入所していただいて、その後に養子縁組を進めるという順番になっております。

 このような説明でよろしゅうございましょうか。

吉田(恒)座長 久保野先生、よろしいですか。

 続けてお願いします。

久保野構成員 わかりました。

 今日、いろいろな意見が出されている中に、先ほどの藤林構成員からの御紹介もあったようなケース、つまり、育てるつもりはあるのだと親は言っているのだけれども、実際には面会に来ないと言ったり、いろいろ働きかけても面会に来ない、どうしようかというので、2年、3年たっていくというケースなどの、御判断という言い方は不適切ですが、外国法などを見ましても、そういうところをどちらに持っていくかというのがかなり価値判断が分かれるのかなという印象を持っておりまして、そのようなケース等についてもし何かありましたら教えていただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。

吉田(恒)座長 では、会長、お願いします。

桜山会長 先ほど藤林先生が御説明された資料を拝見しながら、うちも同じだと思いながら見ていたところもあるのですけれども、特に飛び込み出産のおそれがある方、あるいは若年のハイリスク妊娠などの方については、先ほど申しましたように、出産後養育環境がどうかというのを調査するわけですが、なかなか難しいだろうと思う親御さんもいらっしゃいます。その親御さんも、産まれたら特別養子縁組に出したいということをお話になるかと思いますし、中には私どもに連絡しないで民間のあっせん業者と連絡をとる方もいらっしゃるので、なかなか難しいのですが、そういう親御さんに対しても、基本は先ほど申し上げたような手順で進めていくのですが、中には出産後行方がわからなくなる親御さんもいるものですから、そういうおそれがある親御さんに関しては、特別養子縁組とはちょっと別に、家庭的養護を進めるということであれば、施設で育つよりは養育里親さんにお願いするという同意だけは取りつけるようにしております。予想どおりといいますか、居所がわからなくなって連絡がとれなくなってしまった場合に、たまたまそれ以前に特別養子縁組の同意を得ている場合にはその形で進めますけれども、とれていない場合には残念ながら今の状況では社会的養護の中で成長を見守るという方向になってまいります。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 床谷先生、お願いします。

床谷構成員 床谷といいます。

 2点お聞きしたいのですけれども、1点はアンケートのことなのですけれども、平成22年1月のアンケートなのですが、平成23年の改正以後についても児童相談所のこのときの全児相のアンケートでとられた対応というか意見というのは全く変更がないと考えてよろしいかどうかということが1点です。

 もう一点は、特別養子縁組のことですけれども、御提案のところに特別養子縁組の離縁というのがあって、未成年後見人等の選任をして離縁をという御提案だったかと思いますけれども、もともと特別養子縁組をつくったときに離縁というのはほとんどないということで、養育環境が非常にまずくなった場合については新たに、離縁するのではなくて、社会的養護といいますか、里親等による児童保護をするというのが当時の議論だったと思うのです。未成年後見人を選ぶというのは、手続としてはわかるのですけれども、もともと実親の方に原状復帰をするのが可能であれば、そういう場合には戻る可能性を残した離縁ですけれども、そうでないのであれば、戻すということは考えないで前向きに別の形で保護するという議論だったかと思うのです。その点について、御提案の御趣旨といいますか本意をお聞かせいただきたいと思っています。

吉田(恒)座長 それでは、桜山会長、お願いいたします。

桜山会長 まず、1点目の質問ですが、その後のアンケートは行っておりません。

 2点目に関してでございますが、離縁を簡単にしてみんな離縁させろという趣旨ではございません。やはり親子関係の安定性、継続性という点で言えば、特別養子縁組は実親子関係に近いということで、その安定を図るということが大事だと思っておりますし、そのときに実親のほうが監護できる状況であれば、そちらを優先するのが当然のことと思いますが、手段として子どもの利益を考えた場合にほかに方法がないというときに、未成年後見人を立てるような方策も選択肢の一つとしてあってもいいのではないかという趣旨でございます。

吉田(恒)座長 床谷先生、いかがですか。

床谷構成員 確認ですけれども、離縁の手続のために立てるということではないということですか。未成年後見人を立てるとおっしゃったのは、離縁をするための手続として後見人を必要とするという趣旨ではなくて、ほかの意味で。

桜山会長 それは手続論の中で、そこの時点でも必要な場合もあろうかとは思いますが基本的にはそういうことを条件に特別養子縁組の解消といいますか離縁を認める手段をもう一つ欲しいかなということでございます。里親からの虐待というのもなくはございませんで、そのときに、実親子関係ですとなかなか切れないわけですけれども、養親子関係についても解消することが必要な場面も中にはあるであろうし、そういう場面を想定した意見でございます。

 なかなか真意が伝わりにくいところがあるかもしれません。

吉田(恒)座長 よろしいですか。

 まだおありかと思うのですけれども、時間が限られています。あとお一人だけにさせていただいて、先ほど手を挙げられた藤林先生のほうからお願いします。

藤林構成員 すぐ終わるのですけれども、確認なのですが、桜山会長さんのこのペーパーを私は今日初めて見たのですが、このペーパーと発言は、冒頭に、「会長としての意見」と言われましたが、これは会長としての意見であって、全国児童相談所長会としての意見ではないと理解していいでしょうか。

桜山会長 今回、御指名をいただきましたときに、児童相談所長会の意見として取りまとめる時間の余裕もございませんでしたので、普段からこの問題についてはブロック幹事などと協議しておりまして、今回も全国児童相談所長会のブロック幹事、あるいはブロック幹事を通じて各会の所長さんたちには、こういうのがあるので御意見があれば寄せていただきたいといって、幾つか意見をいただいてそれをまとめておりますが、今回は私の意見ということで申し上げさせていただきました。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 いろいろこの点に関しまして、お聞きになりたいこともたくさんあろうかと思いますけれども、この次のヒアリングもございますので、御容赦いただいて、続きまして、子どもの虹情報研修センターの川崎センター長から、司法関与を中心にお話をいただきたいと思います。

 では、よろしくお願いいたします。

川崎センター長 本日は、発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 私は、司法関与のあり方を中心に発言しますが、その前に、大変僭越ですけれども、先程来議論のあった児童相談所の調査について一言申し上げさせていただきます。虐待防止法第11条第3項のこと ですが、児童虐待を行った保護者に対して、 児童福祉司等による2号措置をとった場合、保護者は指導を受けなければならず、指導に従わない場合、都道府県知事は、指導を受けるよう勧告できるという規定 です。この勧告 件数が非常に少ないということが今、議論されておりました。

 実は、都道府県知事のこの権限を児相長に委任している自治体が結構あるかと思うのです。 そうしますと、 児相長が児童福祉司指導 の決定 通知を出して、従わない場合、知事に代わって、再び児童相談所長が勧告 することになります。 これではほとんど効果が期待できません。

件数の少ない要因に、知事権限の委任という問題がないとも限りませんので、 できましたら、知事権限が委任されているのか否かということも併せて 調査していただければ、 11 条3項についての実情がより深くわかるのではないかと思った次第です。余計な発言で、大変失礼いたしました。

 それでは、司法関与のあり方について、レジュメに従って申し上げたいと思います。

 まず、参考資料について説明します。「一時保護及び一時保護所について(未定稿)」という文書は、 子どもの虹情報研修センターが、 津崎哲朗先生に委嘱し、 3 年計画で実施した 「今後の児童虐待対策のあり方について」という研究 の該当部分の 報告書 素案です。 一時保護の関係のところは私が分担して執筆をしたものですが、未定稿であり、津崎先生の了解もないまま出して おりますので、 その点だけ御了解いただければと思います。

 もう一つは、全国児童相談研究会代表委員会 が出した「親権制度の見直しに関する意見書」です。 の意見、これは2009 に公表したもの で、 親権制度について議論された「児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会」 にも提出しております。その後、親権の一時停止等が 制度化されましたが 、未だ実現していない課題も幾つかあり、一時保護の問題を考える上で 参考になると考えて 提出をいたしました。お時間のあるときに読んでいただければと思います。

 さて、レジュメに入っていきたいと思います。ちょっとページをめくっていただいて「現在の一時保護制度の特徴」 をご覧下さい 。これは言うまでもないことですけれども、児童相談所長の判断があれば一時保護ができる。児童自身の意思を問うことなくできる。保護者の同意を得られなくてもできる。家庭裁判所の決定がなくても児童に対して強制力を行使することができる。児童虐待の場合は面会・通信を制限でき、児童の居所についても明らかにしないこともできるという制度になっている、これだけの権限が、児童相談所長に与えられているわけです。

 ちょっと前に戻っていただきまして、「一時保護にかかる児童相談所長の権限について(推移)」をご覧下さい。一時保護制度が現在の形になった経過を眺めた資料です。児童福祉法が施行された昭和23年頃は、浮浪児対策が非常に大きな問題で、子どもが一時保護所から飛び出すこと も珍しくなかった。 しかし、 それをそのまま認めることは、児童の福祉に沿わないということで 、子ども の意に反しても 一時保護所にとどめることが必要だ とされたわけです。

次に、 児童の行動の自由が制限できるということにつきましては、行動の自由を制限するためには家庭裁判所の決定が必要であるという 法改正があった際 、児童相談所の一時保護に関しては、ごく短期間のものであるので、家庭裁判所の許可を得なくてもできるということにされたわけです。

 一時保護に関する保護者の意向については、昭和26年に厚生省児童局長が執筆した、「児童福祉法の解説と運用」という書物の中に、「児童の親権者または後見人が反対の意思を表示しているときは、一時保護はとれないものと解すべき」と記されていました。それが昭和36年の法改正時に変更されました。このときは、28条の要件 として「保護者が児童を虐待し、又は著しく監護を怠り、これによって刑罰法令に触れ、又は、触れるおそれのある場合」とされていたものから、「刑罰法令に触れ云々」が削除されたわけですが、 そのときに出された通知の中で、 「なお、これと関連して、法第33条に規定する一時保護は、児童の親権を行なう者又は後見人の同意が得られない場合にも行ない得るものであるので留意されたい」との文言が付け加えられたという経過があります

逆に、児童相談所長の権限を制限する方向が出されたのは、 虐待防止法ができたとき のことです。 一時保護 の期間について、無制限に認めるのではなく、 2カ月を超えて はならないとされました。 ただし、必要があれば延長できますよということ も、合わせて規定されています。

 そして、平成19年の虐待防止法の改正のときには、子どもの保護を優先させる必要があるとの判断だったのでしょう、児童虐待事例であれば面会・通信の制限ができる。一時保護に支障を来す場合は居場所を明らかにしないものとするということにされました。再び、児相長の権限が強化されたわけです。

 ただし、2カ月を超えても必要ならばできる、保護者に子どもの居場所も言わない、面会・通信も制限するとなると、あまりにも児童相談所長の権限が強いということでしょう、平成23年の議論をふまえ、保護者の意に反して2カ月を超える一時保護の場合には、児童福祉審議会の意見を聴かなければならないという形で、制限的な方向が出されました。

 本年の児童福祉法改正は、一時保護の制限とは言えないかもしれませんが、児相長が必要と認めるという要件だけでは幅が広過ぎるということで、一時保護の目的を明確化することとなりました。

 次に、「一時保護制度の課題」というページをご覧下さい。大変恐縮ですが、平成12年の衆議院青少年問題特別委員会で、本検討会の座長をされている吉田先生の発言を引用させていただきました。「子どもの権利を守るためにしているはずの一時保護が、長期化することによって、逆に子どもの権利を侵害しかねない、子どもの立場に立って一時保護の制度を考えていくべき」という趣旨の御発言であります。先生のこうした発言もあって、一時保護の期間は2カ月を超えてはならないという改正がおこなわれたわけです。

 とはいえ、一時保護所の平均在所日数は、現在も平均が30日近く、2カ月を超える一時保護も非常に多いわけですから、子どもの立場に立ったときにこの制度がこのままでいいのかということを考える必要があるかと思います。

 次に、保護者の立場から考えてみます。にとっていうことなのですけれども、児童相談所長が決定する制度である限り、児童相談所長が判断を翻せば返してもらえるわけですから、子どもを保護をされた親御さんが訴える先は児童相談所ありません。勢いさまざまな形で児童相談所に抗議をします。私もかつて児相にいましたが、子どもを返せという保護者と7時間、8時間という面接を深夜にわたって行うということも何度も経験しました。どうしても子どもを返してほしいと思う保護者は、自らの行為を振り返るのではなく、児相長の考え方を変えるために全精力を傾けますので、たまには暴力的な行動に出ることもしばしばあ ります。 本来ならば、一時保護という事実をふまえて自らの虐待行為を振り返り、 養育態度 を改善していく必要があるはずですが、そのエネルギーが全て児相長に向けられる。なかには人生の全てを児相長と闘うことにかけていると感じられるような人もいるぐらい です。つまり 、今の制度は、保護者が 養育態度を 改善していく契機を失わせてしまう面もあるのではないかと思っております。

 では、児童相談所にとってはどうでしょうか。一時保護にまつわる保護者とのトラブルというだけでなく、それが身の危険に及ぶこともあるため、多くの児童相談所で防刃チョッキだとかさすまたなどを用意しています。しかし、こういうもので身を守るのではなく、法律制度、仕組みによって児童相談所(及び職員)は守られるべきではないでしょうか。子どもにとっても保護者にとっても、また、児童相談所にとっても、今の制度は大きな課題があると思っております。

 そこで、「司法関与を導入する必要性、意義」というページをご覧下さい。そこに書いていますように、虐待対応は緊急性を求められる場合もあります。速やかな一時保護は法律上も求められておりまして、緊急に保護する場合には、司法の判断を求めるいとまはないわけですので、緊急の場合は児童相談所長が一時保護を行う権限を持っておくべきだと思います。しかし、保護を継続していく場合には、第三者である司法の関与が必要ではないかということです。こうしますと、現在の(児童相談所と保護者の)二者関係の対立から、第三者として中立の立場に立つ司法が関与することになりますから、保護者もそれなりに自分の主張を整理して裁判所で申し立てる。児童相談所は一時保護した理由などを説明していくということで、冷静な関係がつくりやすいのではないかと思います。

 子どもさんにとっても、児相長が必要と認めるだけではなく、裁判所が 認める基準というものも次第に明確になってくると思われますので 、一時保護の期間のことなども含めて見通しが立てられるなら、子どもにとってプラスになるのではないか。児童相談所においても、裁判所に資料を提出するためにはそれなりに客観的な証拠を揃えなければならないなど、大変な面もありますけれども、保護者との関わりにおいて、現在一番大きな問題になっている援助と介入の矛盾は、裁判所の関与によって緩和され、児童相談所側はむしろ援助に重点を置いた取り組みをすることが可能になっていくのではないかと思います。

 ただし、次のページ「司法関与を導入する場合の課題」をご覧下さい。司法関与を簡単に導入することができないというのが、現在の日本の実情だと思います。これは全児相桜山会長が代表者となって行った平成25年度の調査研究の結果ですが、一時保護における保護者の同意を見ていきますと、平成25年4月、5月の2カ月の間に受理した児童虐待事例において、職権で一時保護をして 9月末時点でも保護者が 不同意のままというのが353件、最初は同意していたが翻して不同意となったのが10 でした。したがって 363件は一時保護に不同意ということになります。かなりの数で、これら全てを裁判所に申立て、判断を委ねるとなりますと、児童相談所の実務を圧迫し、逆に本来の援助活動ができなくなる。裁判所のほうもこれだけの件数が持ち込まれることになりますと、今の体制で対応できないという問題が出てまいります。司法関与は是非とも必要だと私は思っておりますけれども、その前提として、こうした児童相談所の体制、また、それを受ける側の家庭裁判所の体制を抜本的に強化していく必要があるのではないかと考えております。

 以上で報告を終わりたいと思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御報告に関しまして、御意見、御質問ございますでしょうか。

 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 先生、ありがとうございました。

 最後のほうに述べられた、保護者の同意に関するグラフなのですけれども、少なくとも職権保護した件数が、途中で同意したものも含めますと600件強ですが、1年の間に全国の児童相談所での件数ということですかね。

川崎センター長 これは平成25年の4月、5月の2カ月間で新たに受理をした児童虐待について、9月末の時点での評価ということになります。

○久保構成員 2カ月で、全国ですね。

○川崎センター長 全国の児相で回答率100%でした。

○久保構成員 負担が大きいということなのですけれども、どれぐらいの負担になるものでしょうかね。先ほどから体制強化が必要だという話になっていますけれども、どれぐらいの体制強化があれば、質と量というのが具体的にわかれば教えていただければと思います。

川崎センター長  保護者が不同意の一時保護が、2カ月間で約 360 ですから 、単純に計算すると、 1年間では、その 6倍の数 が司法 審査 の対象になります。実際には、裁判を嫌って同意するような保護者が出てくるかも知れませんが、 やはり、今これを行った場合、児童相談所はパンク ぐらいの、 大変非常に厳しい数字かなと思っております。

久保構成員 追加で、先ほど来、事後審査でも児相が保護をためらってしまうということなのですけれども、少なくとも一時保護する必要があったのは児相の判断として間違いないと思うのです。その時点での資料等を示すことによって、一時保護の許可というか承認がされるということであれば、それほど負担にはならないと思うのですけれども、事後審査が入ることだけで負担になるものでしょうか。

川崎センター長 事後審査というのはどういう意味でしょうか。緊急で保護した後の審査という 意味でよろしいでしょうか

久保構成員 72時間という話が出ましたけれども、72時間とは言わず、5日なら5日とか、1週間なら1週間以内にそういう審査を受けるということです。しかも、その場合は途中で同意されれば当然省かれますし、一時保護が解除されれば当然帰される。特に事後審査は必要ないということですが。

○川崎センター長 制度ができて 運用されて いけば、どういう例であれば一時保護が承認され、どういう場合は承認されないのかということも整理されていくと思いますので、この数字をそのまま 基準にする必要はないと思いますが 、しかし、実務量が相当増えるということ は言えるのではないかと思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 ほかに。

 山本先生、お願いします。

○山本構成員 貴重な発言、ありがとうございます。

 児童相談所にいた者として、まさにそのとおりなのですが、一時保護というのはもともと親権と子どもの自由行動を制限する手続ですね。なので、それが十分に法的に問われていないということで、全部児童相談所がそれをかばって親と闘ってきたというのはとても矛盾した消耗的な出来事であったということはみんなで共有しないといけないと思いますが、ただ、それを乗り越えて何らかの司法関与をするということを考えついただけでも、これだけのえたいの知れない膨大な社会的コストと何か業務コストが発生するというところで、ずっと足踏みしてきているように思うのです。それについては、今、どのような絵をお考えかということだけで構わないのですけれども、基本的に司法審査を導入することが最終目標である。ただ、それに向けての道のりについてもっと現実的にできる、できないという議論をずっとしてきているのですが、それは今できるかできないかばかり話し合ってきているので、そうではなくて、もう少し段階的に何年間かの間にどんな体制整備があればどこまでできるのかという、もうちょっと具体的に実現させるための方策を考えるべきときが来ているのではないかと私は思うのですけれども、川崎先生はどのようにお考えでしょうか。

○川崎センター長  山本先生のおっしゃる とおりだと思います。 児童福祉法33条第5項(一時保護が親権者等の意に反する場合は、2カ月を経過するごとに、児童福祉審議会の意見を聴かなければならない) も、 児童相談所 の考えだけではなく、客観的な判断をしていこうということ の一つの内容かと思いますが 、これでは不十分だと思います。

とはいえ 、直ちに司法関与の制度を導入することは難しい。他方で、今現在も 一時保護を巡って深刻な 問題がたくさん起こってきているわけですから、司法関与の実現を待っていればよいということもできません。そこで、先ほど示しました 「一時保護及び一時保護所について(未定稿)」をご覧下さい。 提言案1というのが司法審査の導入と なっていますが、それに加えて、他の案もいくつかお示ししています。 案2は 「一時保護を決定、実施した段階で、保護者の主張を代弁する者を選任できる制度を創設する」というものです。これは 弁護士その他、保護者の意向を代弁する役割を担う者を立てることで、先鋭化してしまいがちな対立構造を和らげ、 冷静な話し合い を促進するという狙いを持った案です。 ただし、この間の経過 を見て いきますと、むしろ対立を深める、言葉は悪いですが、かえって火に油を注ぐような 方が出てくる場合もあり その点で、必ずしも狙いどおり進まない可能性があります 。第3案は、 「児童相談所と保護者の間に入り調停が可能な第三者を置く制度を創設する」というものです。児童相談所及び保護者と等距離に位置して客観的な立場で調整、調停を行うことができれば、メリットがあると思いますが、あくまでも調停ですので限界もあろうかと思います。 第4案は、 「子どもの立場に立って意見を述べる代理人制度を創設する」というものです。今までの案とは少し角度が違いますが、 保護者と児相が対立しているうちに、子どもの意向が置き去りにされる可能性があるということで、子どもの立場に立った人を代理人として選任するということも、当面の対策として必要ではないか と考えました 。そして、 案5は、 今回、既に 法改正がなされた わけですけれども、 「児童相談所に弁護士を配置し、適切な権限行使に努める」というものです 。一時保護の判断を含めて、児童相談所の方針や手続きをより妥当性の高いものにし、保護者の理解を高めるという狙いです。なお、これらの案を導入し たからといって、 司法関与の必要性がなくなるわけではありません。できるところからこれらの案を導入しながら、 最終的に は司法関与へ到達する。そうでなければ、根本的な解決にはならないと思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 御提案をいただいてということで、今後の課題、これをどう実現していくのかというのも一つの検討課題かと思います。ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 峯本先生、お願いします。

峯本構成員 私も山本さんが言われている、制度設計と体制のことはきっちり詰めないと、ちょっと意見的になるところもあるのですけれども、今の一時保護の運用の実態と今の虐待の現状を見たときに、司法関与の制度は非常に重要で、多分、きちっとできればメリットも大きいと思うのですけれども、片一方で、入れ方によっては恐らく今の一時保護に躊躇させてしまう要因になる可能性は十分にあると思うのです。少なくとも、今の日本の虐待の現状等からしたら、一時保護を躊躇しなくてはいけない、消極的にならなくてはいけないような形になるのは避ける必要があるかなと思うのです。

 ただ、司法関与自体は絶対必要になってくるところであり、かつ、意義というかメリットも大きなものがあるので、その点の制度設計をきっちりできるかというところがすごく大きいと思いまして、そこら辺は会長のお話の中にも川崎さんのお話にもありましたけれども、片一方で必要性を感じておられるところもありながらも、恐らく児相の中にもいろいろな意見を持っていると思うのですけれども、そこに行って、このままだったら躊躇を感じることになってしまうという感覚はかなり強くあるという中で、きちっとどういう制度にすることによって躊躇しないでいいのかということを示して、かなり違うと思うのです。

 事後承認のお話が出ていましたけれども、それを例えば3日にするのか、5日にするのか、1週間にするのかによっても全然変わってくるでしょうし、そのときに裁判所に求められる基準みたいなものが、早くやったほうが割と簡単な基準で通るのではないか。後になればなるほどより高い基準が求められるのではないかとか、そういう問題も恐らくありますし、その一時保護の要件をどうするのかというようなこと、調査的なものを認めるのかとか、さまざまな論点が出てくると思うのです。その一時保護制度の要件効果というようなこともきちっと決めていかないといけないかなと、それをしっかりやっていく必要性が高いかなと、恐らく過去の議論でもそういうお話になったのかなと本当を言うと思いますので、片一方で、実際の今の中でもある程度体制が整って、手続が簡易化されて、一時保護に司法関与することによって、児童相談所としても、きちっと裁判所のお墨つきをもらえて、その辺でやっていけることのメリットを感じられるところもあるかなと思うのですが、そこは率直な印象としてどう感じておられるかということをもしお聞きできたらということ。

 先ほど久保先生のお話もありましたが、体制の整備で具体的にどれぐらいのことが必要なのか。実は、大阪でも実際の手続をとるのに多分これぐらいの時間が要って、件数が大阪府だったら2,000件ぐらいあって、これを裁判所に申し立てるのにこれだけの時間をこれぐらいでしないといけないので、そのためには体制をどういうかということも検討しないといけないのだということを言われているので、そのあたりは実際にどう考えておられるのか、質問になっていないような質問ですが、お聞かせいただければ。

川崎センター長  司法関与のために、どのようなことが必要か、是非 ともこの検討会でいろいろ議論していただ きたい というぐらいの回答しかでき ません。大変申し訳ありません。ところで、 御質問にはなかったことですが、事後審査 については、 緊急保護した後に保護者が行政訴訟を起こすこともできるので、司法審査が入らないわけではないという意見 があるかも知れません。 しかし、児童相談所が司法審査を求めることと、保護者が自ら裁判所に行政訴訟を起こすというのでは、エネルギーも随分違いますし、 一時保護について司法審査を受ける道があるという 理屈は通るかもしれませんが、 保護者にそこまで求めるのは現実問題として 難しいと思いますので、 やはり、 児童相談所側が申し立てるという制度であるべきではないかと私は思います。

 もう一つ、この制度を実現するためには 児童相談所や家庭裁判所の体制の充実が不可欠ですので、必然的に 財政 問題も絡んできます。 ということは、今の児童虐待の現状ですとか、あるいは一時保護の実情ですとか、そういうことを社会的にも十分理解していただく、虐待問題は非常に深刻であり、社会全体で解決していかなければいけないのだという合意をつくることが 、私たちの大きな課題だと思います。それが できなければ、永遠に司法関与はできず 、背負いきれない荷物を背負わされている 児童相談所は 、ますます苦しくなり、結果としてわが国の虐待対策全体が困難に直面する ということになると思います 。子どもにとっても保護者にとっても、また児童相談所だけでなく関係機関にとっても司法関与が重要であるという理解を 社会の中にどれだけ広めることができるかが、司法関与が実現するか否かの鍵を握っているのではないかと私は感じております。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 時間も迫ってまいりましたので、司法関与に関しましての質問、意見交換はここまでにさせていただきたいと思います。川崎先生、どうもお忙しい中御発言いただきまして、ありがとうございました。

 それでは、改めまして、本日、ヒアリングに御対応いただきました桜山会長、川崎センター長、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 本日いただいた御意見等につきましては、今後、本検討会における議論を深めるに当たりまして参考とさせていただきたいと思います。

 予定の時間が大分近づいてまいりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。

 何かございますか。

○岩崎構成員 お願い事が。

藤林構成員 私も意見がありまして。

吉田(恒)座長 わかりました。

 それでは、3時終了ですので、ごく手短にお願いいたします。

○岩崎構成員 こんなことがお願いできるのかどうかわかりませんけれども、先ほど法務省の参事官さんとお目にかかったこともあって、私がどうしてもわからないのは、44件の離縁の申し立てがあって、確か17件認容されているのです。全然判例が報告されていない。これは我々にとって実務上非常に何が問題になるか。それから、現れ方としては養子縁組を認容されてから、いわゆる思春期の子どもの年齢になってから離縁の申立てが現れてきているところを見ると、思春期のころの親子関係の問題が大きな課題になっているのだろうと思われますので、もう少し詳しく、何が離縁を認めないとしようがない状況にあるのかが、少なくともティピカルな何ケースかを報告していただくようなことを、この委員会として法務省並びに最高裁のほうにお願いすることはできないのでしょうか。

吉田(恒)座長 そういう御意見があったということをお伝えしておきたいと思います。御検討よろしくお願いいたします。

○藤林構成員 この検討会の今後の進め方なのですけれども、先ほど座長さんから第3回目にまたヒアリングというお話があったのですが、1回目の冒頭の塩崎大臣からは秋までにこの検討会でまとめると言われていまして、今日もヒアリングだけで1時間とってしまったわけなので、それはそれなりの貴重な御意見だったと思うのですが、なかなか構成員相互のディスカッションができないまま進めていっていいのだろうかと思っていまして、1回目も1人5分話しただけ、今回もヒアリングに対しての質問だけで終わってしまいまして、せっかくこれだけのメンバーが集まっているのにディスカッションのないまま進めていくということに非常に疑問を持つわけです。

 大体私の理解する範囲では、大抵の論点は出ているわけなので、十分ディスカッションした上で、なおかつ必要なヒアリングを求めていくことが重要ではないかと思いますし、前回、座長さんからヒアリングの候補を皆さんに振られても、誰も出てこないというのは、ヒアリングの必要がないということのあらわれではないかと思うのですけれども、今後の進行方法について、いかがなものでしょうか。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 資料なり情報なり、また、進め方について御意見をいただきました。

 この点について何か事務局の方からございますか。

竹内虐待防止対策推進室長 今、藤林構成員からも御意見をいただきましたけれども、次回日程につきましては、9月26日月曜日、17時から19時を予定してございます。次回の検討会につきましては、先ほど座長からも御紹介いただきましたけれども、本日と同様に2部構成で開催をしたいと考えておりまして、実はヒアリングにつきましても内々に打診をさせていただいております。事務局と座長とで相談をいたしまして、日本弁護士連合会、子どもの虐待防止センターの岡崎京子氏をお招きしてヒアリングをさせていただきたいと思っております。

 また、今、藤林構成員からもお話がありましたが、本日の議論でとりわけ構成員の先生方からお話をいただく時間が非常に限られているという御指摘をいただいておりますので、そうした点で、構成員の先生方に御意見をいただく時間もしっかりと設けさせていただきたいと思っております。

 また、ずるずるとヒアリングをやる予定はございませんで、今回と次回で関係団体、有識者からのヒアリングは終え、その後はヒアリングでいただいた御意見も踏まえまして、さらに、本日御意見をいただいた児童相談所への調査の結果も踏まえまして、論点ごとに議論を深めていきたいと考えておりますので、御理解をいただければと思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、今日の議事は全て終了いたしましたので、本日の検討会はこれで閉会といたします。御出席の皆様、御多用のところ、誠にありがとうございました。

 


(了)

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