ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第95回厚生科学審議会科学技術部会 議事録(2016年7月13日)




2016年7月13日 第95回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成28年7月13日(水) 15:15~17:15


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【委員】

福井部会長
相澤委員、井伊委員、石原委員、磯部委員、今村委員、
川越委員、菊池委員、倉根委員、塩見委員、玉腰委員、
手代木委員、中村委員、西島委員、野村委員、橋本委員、
宮田委員、門田委員

○議題

1.平成28年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(三次)について
2.平成29年度研究事業実施方針について
3.平成27年度 健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究の中間評価に
ついて
4.平成27年度 腎疾患重症化予防のための戦略研究及び聴覚障害児の療育等により言語能力等の発達を確保する手法の研究の追跡評価について
5.臨床研究法案について

○配布資料

資料1-1  平成28年度 厚生労働科学研究費補助金 3次公募課題(案)一覧
資料1-2 平成28年度 厚生労働科学研究費補助金の公募状況について
資料1-3 厚生労働科学研究費補助金公募要項(三次)(案)
資料2-1 平成29年度研究事業実施方針(案)
資料2-2-1 平成29年度事業実施方針(案)対応表 
資料2-2-2 平成29年度研究事業実施方針(案)AMED実用化研究 
資料2-2-3  平成29年度研究事業実施方針(案)厚労科研政策研究
資料3-1  平成27年度戦略研究 「健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究」
資料3-2 「健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究」の概要
資料4 「感覚器障害戦略研究」および「腎疾患重症化予防のための戦略研究」の追跡評価について(報告)
資料5 臨床研究法案について
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2 慢性腎疾患重症化予防のための戦略研究追跡調査報告
参考資料3 感覚器障害戦略研究(聴覚)

○議事

議事

○下川研究企画官

 定刻になりましたので、ただいまから厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様には、お忙しい中、お集まりいただきお礼申し上げます。

 本日は5人の委員から御欠席の御連絡をいただいております。出席委員は過半数を超えておりますので、若干遅れてくる方もいらっしゃいますが会議が成立いたしますことを御報告いたします。

 次に事務局ですが、人事異動により技術総括審議官を含む4名が新たに就任いたしましたので御紹介いたします。まず技術総括審議官の福田です。次に、大臣官房審議官の宮嵜です。厚生科学課長の佐原です。私は研究企画官の下川です。

 続いて、本日の会議資料の確認をお願いいたします。座席表、議事次第のほか、資料1は、枝番で1から33種類となります。資料2が枝番で2-12-2に分かれています。2-2については2-2-1から2-2-3まで3種類あります。資料3は枝番で3-13-2があります。資料4は一種類だけで枝番はございません。資料5も一種類だけで枝番はありません。

 そのほか、参考資料1 33種類があります。資料の欠落等ありましたら、お申し付けください。

 それでは福井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。

○福井部会長 本日は5つの議題が用意されております、どうぞよろしくお願い致します。最初に、平成28年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(三次)について、御審議いただきたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。

○下川研究企画官 今年の厚生労働科学研究費補助金3次公募課題()について御説明いたします。

資料1-1を御覧ください。これは3次公募課題()の一覧です。ここに書かれている6事業10課題を3次公募したいと考えております。

 資料1-2、これまでの経緯ですが、1次公募は昨年1222日から今年128日まで、2次公募については今年311日から420日まで行いました。3次公募につきましては、1次公募、2次公募で意図した内容の公募がなく、再度公募が必要なものや、行政上この時期に必要が生じたというものなどについて公募を行うもので、今年727日から824日までを予定しております。

 資料1-3を御覧ください。IからVまでは全課題共通の注意事項、VI28ページ以降に今回の3次公募の個別の課題を記載しております。

29ページをお開きください。臨床研究等ICT基盤構築研究事業です。研究課題名としては電子カルテ情報をセマンティクス(意味・内容)の標準化により分析可能なデータに変換するための研究です。現在の電子カルテの記述は、患者の全体像をあまねく表現するための標準化は行われていないまま発展してきております。今回は今後、大量の医療情報を分析・利活用するとともに、電子カルテ内に書かれているフリーテキストの医療用語を人工知能技術を使って標準化とコーティングを行うものです。

 次の課題が31ページです。人工知能技術を用いた病理画像データ診断の共通化・効率化です。様々な病院から特定の場所に大量に収集した病理画像データ等を用いて、更に人工知能技術を使って機械学習させることで、病理診断等の画像診断の診断見逃しを防ぎ、自動的にある程度のスクリーニングを行うことを可能にするための病理診断の効率化と診断補助を行うシステムを開発するものです。

34ページは循環器疾患や糖尿病等の生活習慣病対策事業です。研究課題名としては、健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究です。この研究事業では、健康寿命の全国推移と地域格差の算定と評価方法の提案を行う。コホート研究等を通じて健康寿命延伸の要因分析を行う。生活習慣病の地域格差に関し、生活習慣や社会経済状況及び健康増進事業等との関連を明らかにする。それから、効果的な生活習慣改善につながる地域・職域連携等の取組事例に関する収集・分析・評価を実施するものです。

36ページをお開きください。研究課題名が虚血性心疾患・大動脈疾患の医療体制の整備のための研究です。内容としては、虚血性心疾患及び大動脈疾患に対する低侵襲な治療法が開発され、両疾患に対する治療の選択肢は広がっておりますが、広く適切に国民へ提供する医療体制が整備されているかに関しては、実態を示すデータがほとんど評価されていないのが現状である。このため、虚血性心疾患・大動脈疾患の医療体制の現状を示す基礎資料の提供と、虚血性心疾患・大動脈疾患に対して中核となる医療機関に求められる要件の指標、医療計画・地域医療構想への反映を見据えた地方自治体においても収集・活用が可能な指標を研究するものです。

38ページを御覧ください。研究課題名としては、脳卒中の医療体制の整備のための研究です。内容としては、脳梗塞の超急性期における閉塞血管の再開通療法は、早く行われるほど後遺症が少ないのですが、rt-PAを投与される患者は脳梗塞患者の5%程度で、超急性期治療はごく一部にしか施されていない。また、血管内治療も新たな治療法として出てきたということで、この研究では脳梗塞超急性期治療の地域別実態把握と評価、及び地域特性を考慮したrt-PA療法の均てん化、血管内治療の集約化を目指した医療体制構築のための指標などを研究するものです。

 次は41ページになります。事業としては、免疫アレルギー疾患等政策研究事業、研究課題名としては、リウマチ性疾患における小児期と成人期の異同性に関する研究です。内容としては、リウマチ性疾患は、近年、小児及び成人における病因・病態の違いが指摘されており、小児科及び成人診療科におけるシームレスな医療提供に関しては課題が多いということで、この研究では、疫学及び病院探索から、病態に合わせた診断・治療法を確立することを目的として基礎データの収集・診療ガイドラインの作成を行うものです。

44ページをお開きください。事業名としては新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業です。公募研究課題としては、梅毒報告数の増加の原因分析と効果的な介入手法に関する研究です。梅毒として報告された症例数が昨年同時期の2.0倍になり、全国的に増加が見られているということで、詳細な原因分析を踏まえ効果的な対策を講じることが急務となっています。このため、本研究では性感染症を多く診断・治療している医療機関や所管の保健所等と連携して、梅毒報告数が増加している原因を分析し、梅毒の感染拡大を防ぐための効果的な介入方法について提言するものです。

47ページです。事業名としては、エイズ対策政策研究事業で、課題名としては、外国人に対するHIV検査と医療サービスへのアクセス向上に関する研究です。内容としては、我が国における外国人のHIV検査受検促進と陽性者への医療関連サービスへのアクセスの改善を目指し、平成30年度末までに、自治体との連携モデルを構築するための研究を行うものです。具体的には検査受検に結びつく効果的な介入方法の開発、自治体におけるHIV検査時の説明資料の効果的な活用方法の検討と評価、HIV検査陽性者に対する支援に必要な医療通訳の教育・活用方法の検討などを行うものです。

50ページは地域医療基盤開発推進研究事業です。課題名としては、看護実践能力の育成に資する効果的な教育方法に関する研究です。社会の変化に対応する看護実践能力を備えた看護師等を育成するために本研究では学生の看護実践能力を育成するための効果的な教育方法を検討するための基礎資料として、看護師等養成所における教育方法の工夫の現状と課題を明確化するとともに、看護師等養成所における今後の教育において学生の看護実践能力を育成するために活用できる具体的な教育方法の提言をしてもらうものです。

 最後ですが、51ページの課題名としては、患者の医療機関選択に資する制度に関する研究です。既存の医療機能情報提供制度が患者の医療機関選択により一層資するものとなるようにするために検討し、47都道府県における医療機能情報提供制度の報告方法、公表方法等について好事例を収集し、より患者に分かりやすい公表方法等について提案すること。また、遺伝学的検査等の実施時に患者が求める情報とその提供方法を検討するため、悪性腫瘍等の特定疾病領域の遺伝子検査を受ける患者を対象としたアンケート調査を試行的に実施し、その精度をまとめるということにしております。3次公募の案についての御説明は以上です。

○福井部会長

 ありがとうございます。ただ今の説明について御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。テーマ自体の意義なり、内容なり、何でも結構です。

○門田委員

 内容はそれぞれ必要なものというのはよく分かるのですが、全てのものがほとんど1課題程度という表現になっています。この1課題程度というのは、どういう意味合いを込めているのでしょうか。

○下川研究企画官

 多分、公募がどれぐらい来て、どれぐらい良いものがあるかによって1課題になるとか2課題になるとか、研究内容の計画書を見た時にどれぐらいの金額になるかによって1課題だったり2課題だったり、ちょっとフレキシブルになるというということかと思います。

○門田委員

 分かりました。

○井伊委員

 最後のほうの50ページの看護実践能力の育成に資する効果的な教育方法に関する検討は、2次の時にも公募課題であったように思いました。そのとき質問をさせていただいて、これは応募がなかったような御説明だったと思います。もし、3次でも応募がなかったら、この課題は着手できないということになるのでしょうか。

○医政局総務課

 医政局総務課です。2次公募時に御指摘のとおり公募させていただきまして、応募は幾つかあったのですが、公募要綱の趣旨になかなかピッタリなじむものがないので、評価委員のほうで全て一度不採択という結果になっております。今回、3次公募に当たっては、公募要綱の中で研究の趣旨をより明確化させていただいて再度公募させていただいたということになります。

○井伊委員

 採択がなかったら、もうやらないのですか。

○医政局総務課

 採択がなかった場合については、また評価委員とも御相談しながら再度検討させていただきたいと思います。

○井伊委員

 ということは、3次で応募があるような工夫はしたということなのでしょうか。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○倉根委員

 公募期間が824日までということになっています。それから審査して、実際には、お金と言いますか、研究はいつから始められることになりましょうか。

○下川研究企画官

 課題が出てまいりました後で、評価委員会を開きますので、評価委員会が終わったあとに、すぐ公募手続をすることになります。何か月もかからないとは思います。

○倉根委員

 私が質問した意図は、3月一杯ということになると、10月から始めても6か月、それから恐らく3月一杯はなかなか研究として使いづらい状況かと思いますので、できる限り早く、良い提案をした方にできる限り長くできるようお願いするものです。

○福井部会長

 できるだけ短期間で決めていただいて、すぐにお金を出していただきたいということだと思います。

○下川研究企画官

 御指摘の部分は分かっておりますので、なるべく早く採択して研究が始められるようにしたいと思います。

○福井部会長

 お願いします。ほかにありますか。

○磯部委員

 磯部です。非常に個別のことで恐縮なのですが、36ページから37ページにかけて、虚血性心疾患・大動脈疾患の研究という課題で、37ページの一番上を拝見すると、検討会との連携体制がとれているとあります。私もこの検討会の委員をやっていますけれども、10数名の委員で、かつこういうことに関われる方というのも本当に限られた方で、余り公募研究課題になじまないような気もいたします。検討会の中でこういう研究をされるということだったら、そういう体制のほうがよろしいのかなと思って、伺いたいのですが。予め、何か検討会の打合せがあった上でのこういう公募なのでしょうか。

○板倉(がん疾病対策課)

 がん疾病対策課の板倉と申します。この検討会で医療体制、提供体制の検討させていただいているのですが、この検討会では連携を取っていただくというか、情報を共有しながら進んでいただければと考えています。必ずしも、委員の方の中で進めていただくことを想定しているわけではなく、ここであった議論を受けて検討できるような体制で、なるべく連携体制を取っていただければと考えています。

○福井部会長 

よろしいでしょうか。

○野村委員

 この間、たまたま人工知能の最先端の研究者、また医療関係者と、ちょっとお話する時がありました。Deep Learningを使ったことは画像診断に非常に向いているのではないかという話が議論で盛り上がったところがあります。それについては、人工知能にはいろいろな不安や御心配をする方もいらっしゃいますが、そういった形で向いている分野というのはどしどし、逆に言うと研究段階ではなくて実践段階のほうに入っていくような最先端のところが幾つかあるかと思います。

 すみません、これが3次まで残っている理由が、不勉強でよく分かりません。いわゆる、最先端のところに情報が届いているのかどうかという部分と、やはり医療関係者ではない方たちへのこういった科研費や研究というのは縦割だけではうまくいかないところがあると思います。実践に基づき、かつ社会的に横のつながりを持って研究成果を利用していかなければいけない分野だと思っていますので、その辺りが3次まで残っていてなかなか進まないということもあるかもしれない。また、最先端の人工知能の研究者たちは、それが実践できるような形でのほうに狙いを定めているので、その辺はどのような感じで、その辺りがもうあるのかなどはどのような感じでしょうか。

○下川研究企画官

3次になりましたのは1次、2次で出していたというわけではありません、今回初めてです。人工知能でどのようなことができるのかを探っていて、こういうことができそうな研究生もいそうだということで、今回の3次として挙げさせていただきました。

○野村委員

 医療関係以外の公募というのはきちんとされている形なのですか、こういう研究の情報がきちんと届くような形にはなっているのですか。

○下川研究企画官

 ホームページに載せます。

○野村委員

 工夫していただければと思います。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○西島委員

 先ほども出たところですが、看護師の実践能力のところですが、目的としては地域医療の中での地域包括ケアということで、その推進に向けてということでした。そういうことであれば、もちろん看護師のそういった教育も大事なのですが、看護師だけではなくて医師や薬剤師、そのほか医療関係者がそろってこれからやるということがとても重要なわけです。そういったことも配慮して、そのほかの医療関係者についても同様なことを含んで進めていただくと、より効果的であると思うのですが、その辺の検討はどうされたでしょうか。もし情報がありましたら教えてください。

○福井部会長

 広く、健康教育なども含むお話でしょうか、それとも看護師以外の医療職を対象にということでしょうか。

○西島委員

 そうですね、後者のほうで御質問させていただきました。

○福井部会長

 何か、事務局で、そのような検討はされたのでしょうか。所管課の方はいらっしゃいますか。

○医政局総務課

 医政局総務課です。すみません、直接の担当が不在で、詳細は別途、メールか何かで御回答させていただきたいと思っております。

 御指摘いただきました医師や薬剤師、その他の職種についても、一定の教育方法に関する研究やカリキュラムの作成などは、担当課において進めています。専門性教育とか、今、まさに検討しているところもありますので、各職種でそれぞれ行っているという状況だと個人的には認識しております。

○西島委員

 連携ということであれば、それぞれのところの担当者が連携の意味合いを含めて教育、内容を考えていただければありがたいと思います。以上です。

○福井部会長

 今、医療職で、Interproffesional Learningと言って、いろいろな職種の人が顔を合わせて一緒に学ぶよう外国では強く奨励されています。それぞれの職種が縦割りで行う教育プラス、横櫛を刺した形の教育もまた、事務局としても考えていただければと思います。ほかにはいかがでしょうか、よろしいでしょうか。よろしければ、ただ今の案につきましては科学技術部会として了承したということで進めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 続いて、平成29年度研究事業実施方針()について御審議いただきたいと思います。事務局より説明をお願いします。

○下川研究企画官

 来年度の研究事業実施方針()について説明します。昨年の8月に開催された科学技術部会において、平成28年度研究事業に関する御審議を頂いたときに、厚生労働科学研究についての御審議をお願いし、AMED研究は参考として資料を提示しましたが、先生方の御意見を踏まえ、平成29年度事業からは、厚生労働科学研究とAMED研究と両方について、事業実施方針という形で御審議いただくこととしました。これについては、昨年10月に開催された科学技術部会において御了解いただいております。

 資料2-1は飛ばして、まず資料2-2-1を御覧ください。表の字が小さくて恐縮ですが、表の左側がAMED研究事業名で、右側に厚労科研事業名を記載しております。左右の欄の行をそろえる形でAMED事業に対応する厚労科研事業を記載しております。AMED研究事業は医療分野の技術開発に関する研究、厚生労働科学研究は医療以外の分野の技術開発です。それから医療分野においては政策立案、基準策定等のための科学的根拠を得るための調査研究や各種政策の推進評価に関する研究を行う位置付けとなっております。

 表の左右を比べると、AMEDにしかない事業、厚労科研にしかない事業、両方ある事業がありますが、今、説明したように食品や化学物質といった医療以外の分野は厚労科研費にしかありませんし、医薬品や医療機器の開発そのものといった分野についてはAMED研究費にしかありません。もし、AMEDに対応する厚労科研の分野が必要な場合は、AMEDの成果を行政施策に生かす段階で必要に応じて使えることになりますし、この表は11の対応しか表が作れなかったのでこのようにしておりますが、複数の分野のAMED事業にまたがるものを1つの厚労科研事業で対応するものもあるかと思います。

 次に資料2-1に戻ります。平成29年度の研究事業の実施方針()ですが、目次を御覧ください。AMED実用化研究、厚労科研研究、それぞれについて各事業内容が記載されております。

4ページを御覧ください。実施方針()の項目立てとして、創薬基盤推進研究事業を例に取ると、事業の概要として、(1)現状と課題、(2)研究事業の概要が書かれております。

5ページですが、要求要旨としては、平成29年度に優先的に推進する研究課題、それから平成29年度に新たに推進する研究課題などが書かれております。また、3番の研究成果の政策等への活用/実用化に向けた取組、6ページのII参考の1番の研究事業と各戦略との関係、7ページの2番の行政事業費との関係、3番の他省庁との研究事業等、AMEDが実施する研究事業との関係からなっております。

 この資料は細かいですので、概要版のほうで説明します。資料2-2-2は、実施方針()のうちAMEDの研究部分、資料2-2-3は厚生労働科学研究部分を概要としてまとめております。平成29年度実施方針には、既存の事業において前年度から継続している課題と新規の課題が立てられているものと、事業として平成29年度から新規のものからなっておりますが、時間の関係で平成29年度からの新規事業についてのみ説明します。

 まず、資料2-2-211ページ、AMED研究のオレンジ色のポンチ絵を御覧ください。革新的医療シーズ実用化研究事業(新規)です。革新的医療技術創出拠点で創出されたシーズの更なる実用化促進が必要、また、拠点のARO機能を更に強化し、国内外に支援できる体制の構築が必要ということで、研究課題としては3つあり、1つ目は拠点のシーズの実用化に関する臨床研究・医師主導治験、2つ目が拠点のARO機能の支援を受けて実施する多施設共同臨床研究・医師主導治験、3番目がARO機能を活用した国際共同臨床研究・医師主導治験を行うこととしております。

 次に、55ページを御覧ください。これも新規事業ですが、発展途上国・新興国等における医療技術等実用化研究事業です。健康・医療戦略において、新興国等への医療技術・サービスの国際展開を目指すとしており、達成すべき成果目標として、2020年に医療機器の輸出額を倍増、2030年に日本の医療技術・サービスが獲得する海外市場規模を5兆円と定めており、日本の医療技術等の国際展開をしようとしております。それには課題があるということで、3つのテーマについて研究するものです。

1つ目は、下の表の研究概要ですが、日本での利用環境には適しているものの、途上国等の医療環境に適さない医療技術等について、途上国等の医療レベル、電力や気候等の状況を踏まえた研究を開発し、実用化するもの。2つ目が、日本では有効性等が確立している医療技術等について、現地の人種や環境等におけるエビデンスが必要なものについて研究開発し、実用化するもの。3番目が、国際展開につながる可能性の高い優れた技術・シーズについて、日本に適応症例がなく、外国において疾病負荷の高い疾患等のデータを用いてエビデンスを構築し、実用化するものです。

56ページです。これも新規課題ですが、医療研究開発推進事業費補助金です。労働安全衛生総合研究経費ですが、課題名としては、CT画像を用いたじん肺の診断基準及び手法に関する調査研究で、現在じん肺健康診断は、粉じん作業についての職歴の調査のほか、胸部X線写真や臨床検査、肺機能検査等の方法を用い、診断基準に則り行われておりますが、精度向上等の観点から、健診にCT検査を導入することが強く求められております。導入のためには、CT検査の有用性、安全性、経済性を明らかにすることが不可欠ということで、平成28年度までの研究成果を踏まえ、平成29年度は、じん肺健康診断に必要なCT画像の至適撮影条件、再構成条件の設定、コスト・ベネフィットの解析等を行うこととしております。AMED研究の新基準は、以上の3事業です。

 次に、厚労科研の新規事業ですが、青いほうの資料2-2-3になります。56ページを御覧ください。厚生労働分野におけるELSI研究です。ゲノムや人工知能等の新たに生み出された科学技術を社会実装して、より一層イノベーションを推進していくことが重要となっております。しかしながら、厚生労働分野は国民生活と密接する部分が多く、国民の関心も高く、健康医療分野での新たな技術には倫理的、法的、社会的問題ELSIが発生しやすい状況にあります。ELSI問題がイノベーション推進にブレーキをかけることがないように、新たな技術がもたらすELSI問題を整理・解決して、持続可能な社会を実現していくことが必要ということで、本事業を行うこととしております。

 平成29年度の課題としては、ゲノム関連検査結果がもたらす社会的不利益に関する具体的懸念・実態の調査と、AIを厚生労働分野に導入した場合に想定される社会的利益・不利益のバランス等のシュミレーションに関する研究を考えております。平成29年度研究事業実施方針案についての説明は以上です。

○福井部会長

 ただいまの説明について、御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。たくさんある中で、あくまでも新たなものだけについてほんの一部の説明をしていただきましたが、何か御質問なり御意見なりありませんでしょうか。ないようでしたら、ただいまの案については、科学技術部会として了承したということで進めさせていただきたいと思います。

○倉根委員

AMEDのほうの11ページの革新的医療シーズ実用化研究事業の課題という所ですが、(1)(2)(3)とも、医師主導治験という言葉で終わっているのです。すみません、全部読まずに質問しますが、これは、そういう何かシステムを作るという研究なのですか。それとも何か、それぞれのシーズに対して、そういうことを行うという研究になるのでしょうか。

○研究開発振興課

 研究開発振興課でございます。本事業では、拠点のARO機能を活用した臨床研究あるいは医師主導治験を行うというときのものを補助する事業です。

○倉根委員

 行うということですね。そういうことですね、分かりました。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。それでは、よろしいでしょうか。了承したということで進めていただきたいと思います。

 それでは、3つ目の議題です。平成27年度「保健医療分野のデータベースを用いた戦略研究」の中間評価について、事務局より説明をお願いいたします。

○下川研究企画官

 資料3-1の平成27年度健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究の中間評価について報告します。1ページ、1.経緯です。「健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究」については、平成27年度に4人の研究代表者を採択したことを、昨年の科学技術部会において報告しております。研究期間は平成27年度から平成28年度までの2年間、条件付きで採択したものは1件ありましたが、それは1年間ということで、平成27年度に中間評価を行っております。

2.評価結果です。中間評価は、平成283月に開催された第50回戦略研究企画・調査専門検討会において、研究代表者によるプレゼンテーション形式で中間評価を行っております。審議を行った結果、3課題については平成28年度も継続して、原則1年間としていた1課題についても平成28年度まで研究期間を延長することとしています。なお、評価に際して委員から指摘されたコメントは取りまとめの上、各研究代表者にフィードバックを行い、平成28年度の実施計画策定のために活用いただくこととしております。今後、平成28年度中に研究状況を戦略研究企画・調査専門検討会においてモニタリングするとともに、年度末に成果報告を行う予定にしております。以上が中間評価の全体の概要ですが、個々の4つの研究評価について説明します。

2ページ目を御覧ください。大規模データを用いた運動器疾患・呼吸器疾患・がん・脳卒中等の臨床疫学・経済分析という課題ですが、大規模保健医療データベースを用いて、個々の医療技術の効果と費用の分析、医療サービス提供の量・質及び効率性に関する分析を行うことを目的としております。

 下の評価コメント欄を御覧ください。研究計画の策定時のリサーチクエスチョンは12個あったのですが、研究期間中に新たにリサーチクエスチョンを増やし、現時点で17個まで増えております。研究するスピードが非常に速く、既に40編の論文がアクセプトされ、その他32編の論文も投稿中ということで、成果物の量は極めて多いです。研究代表者の下に研究参加者が集まっており、教育効果が高いという評価の一方で、研究参加者以外の研究者へのデータ活用の標準化に向けた検討が必要という課題も指摘されております。

 次の3ページを御覧ください。高齢者医療の適正化推進に向けたエビデンス診療ギャップの解明です。京都大学オンサイトリサーチセンターにおけるナショナル・データベース(NDB)の活用についてですが、研究目的は、NDBを始めとする複数の既存データベースを用いて、4つのテーマを検討するとともに、医療経済評価の実施、さらにデータベースの精度を検証するバリデーション研究を実施することとなっております。

 評価コメント欄を御覧ください。オンサイトリサーチセンターの利用体制づくりに貢献しており、同センターの今後の活用が期待できる。それから若手研究者が参加しており、教育的効果が評価できるという一方で、中間評価の時点でNDBデータの入手が遅れており、時間的に分析が十分にできているのかどうか、また、今後、他の研究機関の研究者にノウハウをいかに伝えていくのかといった指摘も受けております。

4ページ、地域包括ケア実現のためのヘルスサービスリサーチの二次データ活用システム構築による多角的エビデンス創出拠点についてです。この研究目的は、地域包括ケアのための効果的サービス提供の在り方を明らかにするために、全国介護レセプトデータ、国民生活基礎調査データ等のデータ分析や、介護保険サービスについて、地域特性を加味した分析を行うものです。

 評価の欄を御覧ください。介護レセプトデータを利用している点に独自性がある。地域包括ケアの多様な側面をデータ横断的に解析する取組が評価できるとする一方で、アウトカムとして要介護度の変化でよいのかといった指摘を今後の課題として、他の研究所にも役立つような2次データの入手のノウハウを、日本全国へ分かりやすい形で示していただきたいといったコメントがありました。

 次に5ページを御覧ください。レセプト情報・特定健診等情報データベースを利用した、医療需要の把握・整理・予測分析及び超高速レセプトビッグデータ解析基盤の整備についてです。この研究の目的は、超高速レセプトビッグデータ解析基盤を利用して、レセプト情報・特定健診等情報データベースの全データ、及び保険者から収集した500万人規模の医療・介護データを活用し、医療・介護制度の質的向上を目指した分析と提言を行うものです。具体的には、次世代NDBデータ構築と、FWA分析等による医療費適正化、診療エビデンスの明確化と治療方法の標準化等の研究を行うものです。

 評価の欄を御覧ください。大規模医療データの解析システムの構築において、他の研究班と一線を画する新規性を有する。また、解析した結果や、解析ツールを自治体に提供しようとする点が評価できるといった評価の一方で、自治体への提供など社会への還元とは別に、中間評価の段階で学術的なアウトプットが出ておらず、論文として成果が出せるのかどうかという指摘も頂いております。平成27年度の健康医療分野ビッグデータベースを用いた戦略研究の中間評価についての説明は以上です。

○福井部会長

 ただいまの説明について、御意見、御質問等ありますでしょうか。

相澤委員

 これは研究の結果から得られたデータについては、これを広く利用してもらう、公開するという考え方で、研究が進められているという理解でよろしいでしょうか。

○下川研究企画官

 最終的には、この成果を利用して、例えば、1番目や2番目であれば、オンサイトリサーチセンターにおいて、ただ情報を切り出していくだけではなくて、今後どのように、その研究を支援する。この事例でいうと、若手の研究者に教育しているわけですが、どのようにして分析していくかというような機能も、このオンサイトリサーチセンターに乗せていく形で、皆さんが活用できるようなものになるかと思います。

○中村委員

 関連で、今の御質問と同じようなものですが、そのデータの結果を多くの人が利活用できるようなことを、残りの期間でどのように考えていただいているかということを、お聞きしたいのです。もう1点は、そのデータそのものを、さらに再利用できるようなことまで、お願いすることはあり得るのかという、この2点について、お考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

○下川研究企画官

 それにつきましては、今、研究の中で検討していると聞いております。

○中村委員

2つ目はなかなか難しいと思うのですが、少なくとも最初のほうは是非、実現するような方向で、御指導というか、そういう方向性を是非、追求していただければ、残りの研究機関は有り難いと思っております。以上です。

○下川研究企画官

 承知しました。

○福井部会長

 アメリカなどでは、ナショナルデータを第三者的立場の研究者や学生が手続を取って、解析して、論文も書けるし、実習でそれを使うということが幅広く行われています。そういうレベルまでいくといいですね。

○倉根委員

1つ意見、1つ質問です。まず、2ページの「進捗状況・次年度の見通し」で、40編の論文がアクセプト済みで、その他と。ちょっと誤解がないように言っておきたいのですが、成果として論文をいっぱい出すのは当然で、私は非常に大事なことだと思っております。ただ何か、目標が100編以上というように論文の数を決めておいて、そしてそれを超えるというのは、恐らくそれだけの実績が出るように進めるという意図だとは思いますが、ここに100編以上と書くと、何か100を目指すという、少し誤解を受ける書き方ではないかと思います。意図としては何となく分かるのですが、文字だけで見ますと、私はちょっと、そのように感じましたので、ここで意見として述べたいと思います。

 それから、もう1つは、5ページの4番目です。ちょっと聞き漏らしたのかもしれないのですが、本来は1年で評価するということだったが、非常にいいので2年になったということでしょうか。それとも、もともとが1年やってみて、その成果に応じて2年になるというものだったのでしょうか。恐らくこれは審査されているときは私は委員ではないので、そこも含めて少し教えていただければと思います。

○下川研究企画官

 最終的には4課題を行ったわけですが、3課題採るか、4課題採るか、予算の配分などもいろいろと検討する中で、相対的な評価の観点から、取りあえず1年だけ様子を見て中身がよかったら次年度にしましょうということで、条件付きということです。今回は中身がそれなりに評価されたので、もう1年ということに決まりました。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○川越委員

 大規模データを用いた戦略研究というのは非常に大事で、やっとスタートに立ったかなという感じで伺っておりました。それで、2つお伺いしたいのですが、今回は中間報告ということで伺っておりましたけれども、こういう大規模データを用いた研究が、何か阻害するというか、阻害されるというか、ちょっとやりにくいという要因が、テクニカルなことも含めて、もしあったら教えていただきたい。これが第1の質問です。

 それから2つ目は、この大規模データを使った研究というのは、当然、切り口が本当にたくさんあると思うのです。将来的にはこういう種類の研究、大規模データを使った戦略研究というのは、ずっと残していただきたいという気持ちを私は持っているのです。その場合に、そこを統合するというのは、やはり、この場なのですか。それともどこか別な所があって、こういう大規模データを用いた戦略研究を総合的に推進するというような仕組みみたいなものがあるのか、あるいは考えていらっしゃることがあれば、教えていただきたいと思います。

○下川研究企画官

 まず1点目ですが、この研究のテーマでもあるのですけれども、情報の入手を、厚労省や地方の自治体などの行政で、どのようにしたら入手しやすいか、どのように申請したらやりやすいとか、そういうノウハウも溜めるべきだというコメントももらっております。そういったノウハウも、ここで試行錯誤した結果を、そのほかの人たちにも還元できるような形にしています。そういったことがなかなかやりにくいということで、こういう研究テーマにも入っています。戦略研究を今後続けるかどうかということについては、まだ検討が必要ですが、戦略研究だけではなく、それ以外の研究の枠組みの中でも、いろいろなICT関係のものはやられていますので、最終的には全て生かすような形で考えなければいけないとは思っております。

○石原委員

 この問題はとても重要な問題だと、私は認識しております。特にこの中で、レセプトデータを使う試みというのが、最後の5ページの課題で行われてきているわけですが、日本の保健医療のシステムが基本となっておりますので、レセプトデータというのは極めて貴重な内容をたくさん含んでおります。

 ただ、我々研究者の立場からいくと、このレセプトデータへのアクセスというのは、決して容易なものではないです。頂ける範囲、あるいは頂くまでの期間が非常にかかることを共同研究者から聞いております。やはり、これは貴重な国民全体の財産である以上、これらのデータをきちんとまず蓄積しておき、それに対していかなるアクセスもできるという体制を作るかというところが最終的なポイントとなると思います。

 その分析をして、何かアウトカムとして出すことも、もちろん重要でありますが、まず、継続すること。この12年というレベルの戦略研究から離れて、例えば5年なり10年なり、少なくともそういう長期的計画に基づくナショナルデータベースの構築について、是非、厚生労働省のほうからリーダーシップをとっていただければと思う次第です。

○中村委員

 こういうときに、私はいつも思うのですが、今、言われたような意見は非常に重要なことですよね。だけど、これが課題に課せられていたかどうかを知りたいのです。というのは、今のことは研究者たちが解決できる課題ではないので、それも含めて、その研究者に課題の設定として伝えているのかどうか確認しておく必要があると思います。そうでなければ最終のときに、「言ったじゃないか」という話になってしまうので、どこを目標に設定されたかというのは非常に重要で、成果が上がれば上がるほど、さらにこれもこれもと、どんどん上がっていくと、それはなかなか難しい問題も起こってくるので、今回の2年間の研究でどこまでを設定してあったかというのは、ここでやはり、はっきりしておく必要があると思います。希望を言うのはいいと思うのですが。そうでなければ研究者にとって非常に窮屈なことになってしまうので。

○福井部会長

 いかがでしょうか。

○下川研究企画官

 研究者のほうからも、そういったノウハウは蓄積するという、評価のときのコメントを踏まえて、そういうことはやると言っております。公募のときも、単に分析するだけではなくて基盤整備の観点でも取り組むと書かれております。

○中村委員

 設定してあったということですか。

○下川研究企画官

 はい。

○中村委員

 分かりました。

○福井部会長

 最初の研究で、あっという間に40点の論文がアクセプトされたりするというのは、恐らく多くの研究者のグループが関わって、いろいろな切り口での分析をして論文にしているのだと思います。石原先生と中村先生がおっしゃったように、そういうことができるような基盤作りが最も重要ではないかという御意見だと思いますので、そちらについても是非、今後ともお願いしたいと思います。

 一方で、内閣府でも似たようなことをやっていますね。いろいろな電子カルテのデータをビッグデータとして使えるようにするといった話もICT関係で確か進んでいるように思いますので、恐らく似たような事柄が、いろいろな所で動いているのではないでしょうか。そこのところを統合して、できるだけたくさんの研究者がデータを分析できるようにしさえすれば、あっという間にいろいろな論文は出てくると思います。何かほかに、御意見、御質問などありましたら。よろしいですか。では、その方向で是非、事務局もアプローチしていただければ有り難く思います。

 それでは、議事の4に移ります。平成27年度腎疾患重症化予防のための戦略研究及び聴覚障害児の療育等により言語能力等の発達を確保する手法の研究の追跡評価について、説明を事務局からお願いしたいと思います。

○下川研究企画官

 感覚障害戦略の研究及び腎疾患重症化予防のための戦略研究の追跡評価について報告いたします。1.経緯です。戦略研究においては、5年間の戦略研究の成果と、その波及効果等を把握するために戦略研究の終了後、3年をめどに追跡評価を実施しております。平成19年度から平成23年度にわたって実施された感覚障害戦略研究実施期間、重症化予防のための戦略研究について追跡評価を行っております。

 平成283月の戦略研究企画・調査専門検討会において、研究代表者によるプレゼンテーションが行われております。追跡評価の位置付けを踏まえ、当該研究の効果・波及効果、社会への説明、政策・施策形成への活用の3つの観点での成果が報告されております。この結果、各研究テーマとも、一定の成果が得られていることが確認されております。

 以上が追跡評価の全体の概要ですが、個々の2つの研究評価結果について説明いたします。2ページです。聴覚障害児の療育等により言語能力等の発達を確保する手法の研究です。研究目的としては、聴覚障害児の日本語言語発達能力に影響を与える因子を明らかにし、発達を保障する手法を確立するとしております。

 事後評価においては、聴覚障害児の日本語言語発達影響に与える要因が明らかになり、この成果を基にALADJINと呼ばれる日本語言語発達評価方法を作成して、介入研究において言語発達評価と言語指導を併せて行うことにより、言語発達の有意な改善を示すことができたことが評価されております。

 そして、事後評価の時点で今後の期待としてALADJINのさらなる普及と個別言語指導内容の精度の向上と、聴覚障害児の言語発達を支援する教育体制整備等への在り方に示唆を与え得るデータの提示等に期待が寄せられております。

 追跡評価においては、ALADJINの解説書を公開し、論文を掲載された。ALADJINに基づいて聴覚障害児の指導を実施するための児童発達支援事業所であるKIDS FIRSTを設立して、啓発活動や実際に障害児の指導を行いながら新しい指導法について研究が行われております。また、日本耳鼻咽喉科学会の「小児人工内耳適応基準」の改定根拠として取り入れられております。それから、日本語文法検査である失語症構文検査において、戦略研究による言語発達評価データの一部は小児用標準値の主要部分として用いられているという評価がなされております。

3ページです。かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究についてです。この研究は、慢性腎臓病(CKD)の診療を行うかかりつけ医に通院するCKD患者への受診促進支援、栄養指導、生活習慣改善指導の介入を行う場合と行わない場合で、どのような違いが出るのか研究し、CKD患者の診断受容を向上させ、新規透析導入患者の減少につながる医療施策を見いだすことを目的としております。

 事後評価の所を御覧ください。3年間の介入期間を通じて、「受診継続率」「かかりつけ医と腎臓専門医の連携達成率」について、介入群のほうが数値が高くなり、CKDステージ進行率においても介入群のほうが病状の進行が緩やかであるとの結果が出ております。これらの結果から、かかりつけ医と腎臓専門医との連携による診療システムが腎疾患の重症化予防に対して有効性を持つ可能性が示されております。

 事後評価時点で、今後は介入手法の均てん化に向けた実効性のある検討を継続してほしい。また、大規模な人的資源が投入されていることについてのコストパフォーマンス分析、生活習慣病全般に対する研究成果による貢献等について検討が必要とされております。

 追跡評価においては、介入手法の均てん化に向けて、本研究の成果である生活・食事指導マニュアルを最新の診療ガイドラインに準じて更新して、「医師・コメディカル全般が活用できる生活・食事指導マニュアル」と、「栄養指導に活用できる生活・食事指導マニュアル栄養指導実践編」をそれぞれ日本腎臓学会のホームページで無料ダウンロード可能としております。

 それから、腎臓専門医と協力してCKDの医療連携体制を確立するために、日本腎臓学会において、CKD療養指導士制度を2016年度中に開始する予定であり、診療報酬改定において本研究での30分の指導、繰り返しの生活・食事指導の効果が認定されて算定要件に明記されたということが評価されております。2つの課題の追跡評価の報告は以上です。

○福井部会長

 ありがとうございます。ただいまの説明について御意見、御質問等をお願いします。

○倉根委員

 追跡評価について質問いたします。これは5年間の研究を行ったと、そして、その主任研究者、研究者は、その後も研究の成果が生かされるように努力するということを評価するのですか。それとも、5年間行い研究は終わったのだけれども、その成果が特に自分の努力なしにということではないが、やはり広く社会に評価されて使われるということを評価するものなのでしょうか、どちらですか。主任研究者が、その後どこまで努力したかを評価する。

○下川研究企画官

 研究成果が、その後社会にいかされないと意味がありませんので、それをどのようにその後研究者がほかの研究費やそのほかの手段を使ってもいいのですが、どのように発展させて社会に貢献しているのかということを評価しております。

○倉根委員

 分かりました。

○福井部会長

 ほかにいかがでしょうか。

○川越委員

 門外漢の質問です。少し恥しいかも分からないですが、3ページの別添2の追跡評価の所で黒丸が3つ付いておりますが、真ん中のものです。コメディカルの育成が書かれておりますが、これは具体的に専門的なものがいるのでしょうか。それと関連して、CKD療養指導士制度を開始する予定ということですが、それもこの中に含まれる予定なのでしょうか。

○下川研究企画官

CKD療養指導士は、今年度の学会で創設予定ということで、詳細は分からないのですが、栄養士やかかりつけ医や腎臓専門医による連携によってCKD患者を治療するチームコーディネーター的な役割を担う人ではないかと思います。

○川越委員

 コメディカルというのは、具体的に上がってくるのは栄養士、看護師とか、何かあるのでしょうか。

○下川研究企画官

 具体的には書いていないのですが、多分看護師も含まれると思います。マニュアルを2種類作っておりますが、もう1個の栄養指導実践編というのは、明確には書いていないのですが、栄養指導士向けの実際の実践的な、似たような内容なのですが、より実践的な内容が書かれているものであると思います。

○福井部会長

 ほかにいかがでしょうか。

○磯部委員

 厚生労働省の事業にこういう研究の成果がどのように反映されるのかということをお伺いします。今、川越委員が御指摘の3ページのプロダクトが出て追跡評価の中でCKDの療養指導士制度を開始する予定であると、この研究班の研究成果の中から出てきたプロダクトを実社会に事業として展開するということなのだと思います。

 これは厚生労働省の事業として、具体的に指導士制度というものは民間で行う制度なのか、あるいは国が何らかの後ろ盾をして資格として認めるような資格なのか、厚生労働省の事業として行われた研究成果が、どのように国の施策として実社会に反映されているのかということの例として伺いたいのですが、いかがでしょうか。

○下川研究企画官

 これは日本腎臓学会の制度です。

○磯部委員

 本来であれば、研究の成果が得られて、こういう制度が生まれるということであれば、やはり国として何らかのバックアップをすることがあってもしかるべきで、学会レベルでやるということとは少し役割分担が違うのだと思います。学会レベルで調査研究して、それを実社会の医療の中に反映させるということももちろんやっておりますし、ということで少しお伺いしました。

○下川研究企画官

 資格の面では学会に反映されたということになるのですが、国に対してということですと、先ほども説明したのですが、診療報酬改定にも影響を与えており、もともとこの研究の前は、外来栄養食事指導料が130点で15分以上の栄養指導ということだったらしいのですが、この研究の成果で初回が260点になり2回目以降は200点で初回が30分以上と時間が延びまして、2回目以降も20分以上の栄養指導を行うということで、診療報酬が改定される根拠となったということです。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○健康局がん疾病対策課

 健康局のがん疾病対策課です。いただいた御意見を踏まえて、こういう研究を通じてこれから腎疾患対策に国としてどのように取り組むかということにも反映されてくると思いますので、そういう方面からも検討していきたいと思っております。御意見ありがとうございました。

○福井部会長

 私から伺いたいのですが、感覚器障害でしたら最終目的は言語能力を身に付けた子供がどれくらい増えたといった、最終アウトカムはどこかに書いてあるのでしょうか。または算出不可能なのか、そして腎疾患については透析を回避できた人はどれくらいいたのかとか、質で調整した余命がどれくらい伸びたとか、患者自身に関わるアウトカムがどれくらい改善したという評価まではなかなかできないのでしょうか。

 参考資料を全部見ているわけではありませんので申し訳ないのですが、参考資料に書いてあるのかもしれません。

○下川研究企画官

 感覚器障害は参考資料3です。10ページ(パワポの10枚目)ですが、「研究結果1」の所に、介入研究によってスコアが対照群と介入群で、このように変わったというデータが出ているようです。

○福井部会長

 分かりました。こういうことを踏まえて実際に全国的にどれくらい良い影響をもたらしているということが分かると、研究の意義が強くアピールできるのではないかと思います。

○野村委員

 お願いなのです。腎臓の重症化予防の評価の今後の話だと思うのですが基本的なこういうことが、要はCKD患者は長く一生ものの形の生活に影響してくることだと思います。指導マニュアル及び実践編等の情報を無料ダウンロード可能としたというところは、全て医療側コメディカル全般側から、あくまで患者を指導する立場としての情報提供だと今読んでおります。

 やはり1人だけではなかなか慢性疾患の治療はやっていけないのですが、毎食3食の食生活に関わることなので自立的に患者が主体的に何か頑張ろうという情報提供の在り方まで踏み込んでいただいて今後研究が進んでいけばいいと願っております。医療側からの見方と自分がどうしたいのだろうというときに必要な情報提供は違うと思っているので、その辺まで進んでいけば、やはり自治体的にやっていかないと何ともならない病気だと思っていますので、その辺をお願いできたらと思います。

○福井部会長

 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。ここで伺った意見はどのように生きるのでしょうか、又はここで言って終わりの話なのでしょうか。

○下川研究企画官

 事後評価については特に終わっておりますので、どうということはないのですが、今後研究するときに生かせる場ということです。中間評価については、いただいた御意見を返すことができます。

○福井部会長

 今の2つの研究は既に終了していて、フォローアップの評価も行われました。今後は、これら2つの研究について、フィードバックは行われないということでしょうか。

○下川研究企画官

 ただ、評価委員にはフィードバックしたいと考えております。

○福井部会長

 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。よろしければ次の議事に進みます。臨床研究法案について事務局から説明をお願いします。

○森光研究開発振興課長

 研究開発振興課から説明します。現在、先の通常国会に提出した臨床研究法案について説明します。資料5です。まず、臨床研究法案を出した経緯について、先生方は重々御承知とは思いますが、簡単に説明いたします。次ページの下段から経緯について少し説明いたします。

 臨床研究については、平成25年の夏頃から、ディオバン事件、タシグナ事件、CASE-J事件ということで、幾つかの大きな不適正な事案が特に報道されました。特にディオバン事件については、ノバルティス社の高血圧症治療薬ディオバンに係る臨床試験において、データ操作等があり、試験結果の信頼性や研究者の利益相反行為等の観点から非常に社会問題化したという背景があります。この事件については、平成261月に、ノバルティス社を薬事法の誇大広告禁止規定違反で刑事告発しており、現在、裁判等で争われているという状況です。その後、平成26年タシグナ事件、CASE-J事案ということが起こっており、これについて次のページの上のほうですが、高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会を開催して、ディオバン事件に係る状況の把握、再発防止策を具体的に検討いただきました。

 この報告書の内容については、そこに矢印がありますように2つ、1つは臨床研究に関する倫理指針の見直しということで対応を図るべしということ、もう1点は国は平成26年秋をめどに臨床研究の信頼回復のための法制度の必要性について検討を進めるべきというように、大きくは2つの具体策について提案が出されました。

 その右側にあるように、臨床研究に関する倫理指針の見直しについては、その後、平成2612月に、この部会でも報告があったかと思います。研究の質の確保、被験者の保護、研究機関と製薬企業間の透明性確保のために、倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性確保のための規定の充実、2番目に、研究責任者の責務の明確化と教育、研修の規定の充実がなされました。

 また、データ改ざん防止のために、モニタリング・監査の規定の新設ということで、介入や侵襲を伴うような臨床研究については、これが義務化されるようになり、資料の保存に関する規定を新設し、利益相反に関する規定も新設したということで、倫理指針の見直しについては、平成2612月に告示を行っております。

 もう一方の法政化の関係については、臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会を開始して、平成2612月に取りまとめを公表しております。その下の下段ですが、「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」報告書(概要)を御覧ください。この検討会において、法規制の必要性ということで、不適正事案が判明した場合の調査、再発防止策の策定、関係者の処分等の迅速な対応には、これまでの制度では限界があり、信頼確保のためには倫理指針の遵守だけでは十分とは言えないということが言われております。

 一方で、過度な規制導入は研究の萎縮をもたらすという影響を懸念して、法規制と研究者の自助努力・法規制以外の対応策とのバランスが重要だということで、一定の範囲の臨床研究には法規制が必要、また運用面において過度な負担を課すことのないよう配慮が必要という方向性を示されております。

 法規制の範囲としては、この報告書において、赤で書いてありますとおり、未承認又は適応外の医薬品・医療機器等を用いた臨床研究、さらに医薬品・医療機器等の広告に用いられることが想定される臨床研究、この2つについては法規制の対象とすべきであるということが提示されました。また、具体的な規制や対策の内容ということで、行政による研究計画の事前審査を受けることを更に求めることについては、慎重であるべきという方向性が示された報告です。この報告書を受けて、新しく臨床研究法案を作りました。

 前のページに戻っていただき、法制度による見直しの考え方ポイントがパワーポイント2にあります。法の対象としてどういう見直しを法規制の制度の中に入れたのかということが見直し前、見直し後を図に書いてありますので御覧ください。

 ディオバン事件等を踏まえて、まず、見直し前ですが、不透明な奨学寄付金の提供があったこと、資金提供の公表は自主開示であるということがあります。その下にありますように研究機関のデータの改ざんが行われていたということで、利益相反関連が不十分であったということ、また記録が破棄されていたことです。倫理審査委員会については、研究不正に対する歯止めにならなかったということ、厚生労働省の上に書いてありますように行政指導に強制力がなかったという点が今回の法規制の見直しに関するポイントです。

 これらをどのようにしていくのかということで見直しのほうを見ていただくと、まず、資金の関係については、臨床研究に関する資金提供については契約の締結や公表を義務付けるということで、不透明な資金の提供については、このことによって歯止めが掛かることを想定しております。臨床研究を実施する者については、モニタリングや利益相反管理等に関する実施基準を遵守することを求め、記録の保存を義務付けるということを法の中に入れております。

 また、倫理審査委員会の委員構成等については、厚生労働大臣の認定を受けた臨床研究審査委員会が研究計画や有害事象等の対応を審査するということを入れております。また、厚生労働省の行政指導に強制力がない点については、法に基づく調査権限・監視指導を法の中に取り入れるということで対応していきたいということです。

 最初に戻っていただき、1ページです。これらのことを入れて、法律の概要です。目的として、第1番目に臨床研究の実施の手続、認定臨床研究審査委員会による審査意見業務の適切な実施のための措置、臨床研究に関する資金等の提供に関する情報の公開制度を定めることにより、臨床研究の対象者をはじめとする国民の臨床研究に対する信頼の確保を図ることを通じて、その実施を推進し、保健衛生の向上に寄与することを目的とするということで、この法案が作られております。

 法案の内容ですが、先ほどの見直しのポイントに書いてあるように、大きく実施に関する手続として3つあります。(1)特定臨床研究の実施に係る措置ということで、ここの下に少し小さくて申し訳ありませんが、特定臨床研究とはということで、薬機法における未承認・適応外の医薬品等の臨床研究と、製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究と書かれています。この2つについては、特定臨床研究と位置付けてモニタリング監査の実施、利益相反関連の実施基準の遵守及びインフォームド・コンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存等を義務付けるという内容です。

(2)特定臨床研究を実施する者に対して、厚生労働大臣の認定を受けた認定臨床研究審査委員会の意見を聞いた上で、届出することを義務付けております。(3)それ以外の臨床研究に対しても、これは努力義務という形で義務付けようということです。2番目に重篤な疾病が発生した場合の報告ということで、特定臨床研究を実施する方に対して、研究に起因すると疑われる疾病等が発生した場合に、認定臨床研究審査委員会に対して報告して意見を聞くとともに、厚生労働大臣にも報告することを義務付けるということです。

3つ目は、実施基準違反に対する指導・監督ということで、改善命令を行い、これに従わない場合の中止命令ということを規定しております。また、厚生労働大臣は、保健衛生上の危害の発生や拡大防止のために必要な場合には、改善命令を経ることなく直接、中止を命ずることができるという規定も入れております。2番目に、製薬企業等の講ずべき措置ということで、これは資金等の関係です。1番目に製薬企業に対して当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究に対して、資金を提供する際は契約をもって資金を提供してくださいということを義務付けております。また、2番目に、当該製薬企業等の医薬品の臨床研究に関する資金提供の情報を公表することを義務付けるという内容になっております。

 詳しい内容を少しだけ説明いたします。4ページで、医療における規制の区分ということで、先ほど2つの種類の特定臨床研究ということを説明しました。全体としてどのような形になるのかはパワーポイント6に記載されております。

 医薬品等の臨床研究については様々なものが行われておりますが、治験として実施されるものについては、医薬品医療機器法等で規制されております。今回は特定臨床研究、中ほどにある未承認適応外の医薬品等の臨床研究と、製薬企業等から資金提供を受けた医薬品等の臨床研究について臨床研究法案、それ以外のところについては努力義務という形で臨床研究法案が適用されると、通ればなります。

 手術・手技の臨床研究、一般の医療については、今後検討していくということで、それは宿題ということになっております。ただ、小さく赤い線でくくったものですが、様々な事故等があった関係もあり、その病院で事前に行ったことのない難度の高い医療技術であって、患者の死亡等の重大な影響が想定される高難度新規医療技術については、各病院ごとに導入の可否を判断する部門の設置や当該部門を中心とした審査プロセスの遵守を特定機能病院の承認要件として義務付けており、610日に改正して通知を発出しました。そういう形で医療の全体を見ていただければと思います。

 次の7ページには、特定臨床研究の実施の手続のプロセスを時系列で書いております。特定臨床研究の研究実施者は研究計画を認定臨床研究審査委員会に提出して、認定臨床研究審査委員会が研究計画を審査し、意見書を添付して厚生労働大臣に届出を行い、研究実施者が特定臨床研究を実施します。そこに書いてあるとおりの実施基準を守っていただくということです。その手続に違反した場合の対応ということで、立入検査・報告徴収、そして改善命令ということが、この法の中に位置付けられています。

8ページです。重篤な疾病等の報告の義務付けです。先ほど、重篤な疾病等の報告については厚生労働大臣に報告ということでしたが、これについては、情報の整理・調査をPMDA(医薬品医療機器総合機構)にお願いするということで、これはほかの医薬品等の副作用情報とほぼ同じような形で、そこで情報等を整理していただくということを想定しているものです。

 次に、法律に基づく資金提供の公表範囲です。そこに挙げておりますが、研究費、寄付金、原稿執筆料・謝金等は公表です。

 この法案については、次の臨時国会等で審議されて、できるだけ早く成立をお願いしたいと考えております。施行については、公布の日から起算して、1年を越えない範囲で政令で定める日ということで、施行が予定されております。以上です。

○福井部会長

 ただいまの説明について、御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。

○玉腰委員

 認定臨床研究審査委員会についてお伺いします。これは一昨年度の暮から認定が始まっている委員会を指しているのでしょうか。

○森光研究開発振興課長

 現在これは厚生労働省の予算事業ということで、倫理審査委員会の認定事業ということを行っております。これは平成26年、27年、今年の28年と、3年間実施しております。現在、15病院が認定を受けております。この制度の上に新しく全く同じ法律ができますので、基本的にはこの認定倫理審査委員会が認定してきた制度を利用していく形を考えていきたいと思っております。

○玉腰委員

 その場合、実際にこの法案に掛ってくる研究の数と倫理審査委員会の数が幾つぐらいと想定して運用される予定であるのかを教えていただけますでしょうか。

○森光研究開発振興課長

 幾つぐらいというのは。

○玉腰委員 幾つぐらいあれば適切と考えていらっしゃいますか。

○森光研究開発振興課長

 これは実際問題、この研究を実施するに当たって、認定審査委員会の審査を経なければならないので、施行までにできるだけ急いで審査をしていきたいと思っておりますけれども、最初のスタート時には、最低でも50程度の認定をしていこうと思っております。

○玉腰委員

 そうしますと、その50おける施設以外の施設の研究者はよそへ依頼をして審査をしていただくと、そういうことでよろしいですか。

○森光研究開発振興課長

 これは申請していただいて、基準に合った申請をしていただければ認定をしていきますので、50より多くても全然それは構いませんし、それはそうであってほしいと思っておりますが、その認定臨床研究審査委員会を自施設に持っていない場合については、他の施設の認定臨床研究審査委員会に依頼して審査をしていただくことになると考えております。

○宮田委員

 了解しましたけれども、数は急がないほうが良いのではないかと思っております。というのは、再生医療新法で認定特定再生医療等委員会を設置しましたけれど、これは実は乱立していると思っていて、そういうきちっとした審査ができるような人たちの人材の数が日本にどれだけいるのだということを考えると、50を慌てて作る必要はなくて、良いものからきちっと認定していくという態度が重要だと思います。できれば先ほど言ったように広域倫理審査のようなものが欧州などでは進んでおりますので、そういう方向も頭に入れながらきちっと審査してください。再生医療新法はちょっと失敗したと思っていて、是非、その蹉跌を踏まないようにしていただきたいと、それだけは言っておこうと思っています。

相澤委員

 私は宮田委員に別に反論するわけではありませんが、こういう新しい規制を設けたために、これまで円滑に行われていた研究が円滑に行われなくなることが、やはり懸念事項の1つであろうかと思いますので、特にこれは、この法律は多様に運用が非常に重要かと思いますので、研究に支障がないような円滑な運用を行っていただきたいと思います。

○宮田委員

 それはそういう意味で、広域化というような運用が重要であるということも議事録に残したいと思います。

○玉腰委員

 関連してです。広域化ということできちんと倫理審査委員会が位置付けられればいいのですけれども、各施設が自分の所で手いっぱいのところに、よその審査を引き受けられるかということも考えていただいて、制度設計をしていただかないと、やはり形だけになってしまうのではないかということを懸念いたします。

○森光研究開発振興課長

 私どもは、広域化というか、セントラルIRBのようなことは非常に重要だと考えておりまして、今年度はAMEDの調整費で、セントラルIRBの試行的な事業を行って、そういう形で、一方で進めていきたいと思っております。

○菊池委員

 ちょっとお聞かせいただきたいのですが、この法案が実際に走っていればディオバン事件は防げただろうと思っていらっしゃいますか。ちょっと御感想だけお聞きしたいです。

○森光研究開発振興課長

 はい、防げるようにこの法案を作って、再発防止策として御指摘いただいたところを踏まえて、この法案を作っております。取りあえず今、分かっている問題点については、この法案で対処できるのではないかと思っております。

○宮田委員

 ちょっと僕も実はよく読んでないので申し訳ないのですが、教えていただきたいのですけれども、北風と太陽ではありませんけれども、罰則だけでこういう不正が防げるとは思っていなくて、いわゆる教育みたいなところはこの法案でどのように盛り込まれているのでしょうか。

○森光研究開発振興課長

 教育については、この法案自体に教育しなければならないというようなところは入っておりませんけれども、基本的に、まずディオバン事件を受けて、倫理指針の見直しの中に倫理審査委員会の委員の教育もあります。また、それから研究者の教育というのも入っております。更に実際の私どもの施策の中にも、そういう教育とか研修事業というものを併せて実施しておりまして、教育として一人一人の意識を高めていくことは非常に大事だと思っておりますので、法案以外のところで進めていることだと思います。

○宮田委員

 ずいぶん誤解があるので議事録に残しておきたいのですが、倫理指針と、この法案は共存するのですよね。

○森光研究開発振興課長

 もちろんです。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○手代木委員

 片方の製薬会社側ですが、おっしゃっていただきましたように、法律があれば防げるという万能な話ではなかろうというのは我々も十分認識をしております。この6ページの治験特定臨床研究に使われる薬剤は、ほとんど製薬協に加盟する新薬の研究開発を志向する企業が関わっております。現在、製薬協には73社が加盟しておりますが、ここが中心になるような話であろうということで、常任理事会、理事会そして総会の場で、かなりの回数、この問題を取り上げ、我々の共通認識の形成とその実効に対して徹底させていただいています。これは継続して行っていかなければ、喉もと過ぎれば何とやらになるのも非常に困るということで、製薬業界として実効性の確保についてはお約束をさせていただきたいと思っております。資金の提供等については、もう34年前から製薬協が独自に透明性ガイドラインを制定し、製薬協に加盟の73社に関しては速やかに情報を開示させていただいてきております。最初は紙ベースという会社もありましたが、現在はウェブ上での開示ということで、多くの方に御覧いただけるという、透明性の高い公開方法にさせていただいております。今後の課題と言ったら何なのですが、製薬協に加盟されていない企業では、どうなのかという点については、実は製薬協も悩んでおります。ほかの企業についてもこの話は当然適用されるわけですが、そこについては、例えば業界全体を統括する日薬連において、徹底いただくようなことを我々としてもやっていきたいと思っております。少なくとも法律があったら、ディオバン事件はおきなかったということにはならないように、そこは自助努力を続けていきたいと思っております。

○門田委員

 ただコメントだけですが、私は日本医学会に関係しているのですが、日本医学会もディオバンのことが公になったときに、医学会とすれば、どういう形のことがいろいろ絡んでおろうとも、研究者そのものがやはり質の向上なしには法律そのほかで規定して完璧にできるものではないというようなことから、我々はもう研究者そのものの質の向上がするためにどうするということにするのであって、今回のことについても相当そちらにも問題があるのではないかというメッセージをホームページで、そのタイミングで出しました。この解決のために先ほどの北風等のあれではないですが、それだけで解決には決してならないということを強くやはり認識すべきだろうと思います。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○菊池委員

 私も法律家ですけれども、余りこういう法制度というのは賛成し難いのです。大変申し訳ないですけれども、これができたからといって一般予防論的なところはあるし、これで法律ができて厳しくなったからやめようやという人もいるのかもしれませんけれども、これでどれだけのものが防げられるのかというと、ちょっと疑問は感じております。結局、所詮は性善説で、やはり素晴らしい医薬品を作り上げるとか、素晴らしい研究を成し遂げるために、我々は研究者の先生方、製薬会社の皆さんに倫理感を期待するという、そういうところで考えていかなければいけないと思っておりますので、その点もどうぞよろしくお願いします。

相澤委員

 あまり時間があれですが、ただ今回開示規制をしたということは、現在法規制の全体としては開示規制というのはこの分野だけでなくて、全体的にやはり開示をすることによって、みんなが律していくということも非常に大きな要素かと思っておりますので、この法案について私は円滑に運用が行われるのであれば、一歩前進ではないかと理解しております。

○福井部会長

 ほかにはいかがでしょうか。

○野村委員

 私もきちんと読み切れないであれですけれども、教えてください。公表範囲に法律に基づく資金提供の公表範囲が書かれていたのですが、そのほかの8ページの絵の所ですが、倫理審査委員会からの提供報告とかいろいろある中で、情報公開というのはどのレベル以上のものがどうやって速やかにされていくのかは、要は企業名公表というところまでいかないと全く情報は世の中に発表されないのか。どういうような情報がこの資金提供以外の情報については公開されることを想定されていらっしゃるのか教えてください。

○森光研究開発振興課長

 重篤な疾病等の報告の義務付けというところでの公表の話でよろしいでしょうか。そこについては基本的には厚生労働省で情報を整理していただいたものを通知いただきます。それについて当然厚生科学審議会等に御報告させていただきますが、これについては公開という形で、もちろん個人情報に関わる部分については、消した上でということになると思いますけれども、そこで公開になるということだと思います。

○野村委員

 基本的には何かあった以降という形の情報しか出てこないということでしょうか。

○森光研究開発振興課長

 あった場合に報告ですので。

○野村委員

 いいえ、いわゆる審査委員会の提供報告というようなものとかについては、ということですよね。

○森光研究開発振興課長

 倫理審査委員会については、各施設もしくは中央的な所でやります。そこはそれぞれの施設もしくはその機関でやるということですので、そこについては、そこの公表義務というのはありません。そこは厚生労働省に報告をしていただく形で厚生労働省の中で情報整理をし、ここの審議会に出す形になると思います。

○福井部会長

 よろしいでしょうか。製薬協に所属していない製薬会社はどれくらいあるのでしょうか。

○手代木委員

一時期、医療用医薬品から一般用医薬品までいろいろなものも入れると、3,000ぐらいあるという説もありましたが、現在は330社くらいかと思います。ただ、新薬のほとんどの売上げは製薬協加盟の73社が占め、それ以外には例えば、薬局で買われるようなOTCを専門にやっていらっしゃる企業とか、ジェネリックを中心にやっている企業などは、別のグループになっております。そこは先ほど申しましたように、製薬協の上部団体に日薬連という連合会があり、そこでは漢方とか、輸液とか、OTCとか、日本の製薬団体すべてを網羅しております。しかしながら、こういった話に関して、日薬連から傘下の団体にすぐ対応してくださいと指示しても、各加盟団体がその趣旨を徹底できるのか、また、対応できる体制が整っているのかという点については、私自身も理解が及んでいないというところです。

○福井部会長

 ありがとうございます。この点について何か厚生労働省から。

○森光研究開発振興課長

 当然、この法律については製薬協以外の日薬連等も含めて、できるだけ速やかに、この法律が通りましたら、情報提供させていただいて、1年後の施行に向けて準備をしていきたいと思っております。

○福井部会長

 ありがとうございます。ほかにないようでしたら、全ての議事がこれで終了しました。その他事務局から何か連絡がございましたらお願いいたします。

○下川研究企画官

 次の日程については824()を予定しておりますので、正式に決まり次第、委員の皆さま方には改めて日程、場所等について御案内申し上げます。なお本日お配りした資料に一部誤記等もありましたので、ホームページに掲載する場合には修正したものを掲載いたします。事務局からは以上です。

○福井部会長

 それでは本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。


(了)

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