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2016年8月3日 平成28年度第1回血液事業部会安全技術調査会議事録

医薬・生活衛生局血液対策課

○日時

平成28年8月3日(水)
17:00~19:00


○場所

新橋会議室8階 8E会議室
(港区新橋2-12-15 田中田村町ビル)


○出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略、○委員長

大戸 斉 岡田 義昭 白阪 琢磨 長村 登紀子
新津 望 ○濱口 功 溝上 雅史 山口 照英
横田 恭子 脇田 隆字

欠席委員:(1名)敬称略

内田 恵理子

参考人:

水澤 左衛子 倉光 球

日本赤十字社:

佐竹 正博 豊田 九朗 五十嵐 滋 平 力造

事務局:

一瀬 篤(血液対策課長) 近藤 徹(血液対策課)

○議題

・HEV感染実態調査の結果について
・血小板製剤に係る病原因子低減化技術導入の検討状況について
・ウイルス核酸増幅試験における国内標準品の力価の再評価について
・日本赤十字社におけるヘモビジランスについて
・感染症安全対策体制整備事業について
・NATコントロールサーベイ事業について
・その他

○議事

○近藤血液対策課長補佐 それでは、定刻となりましたので、「平成28年度第1回血液事業部会安全技術調査会」を開催いたします。

 なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 まず、本年6月付で異動がありましたので、初めに事務局の御紹介をさせていただきます。血液対策課長です、よろしくお願いします。

○一瀬血液対策課長 一瀬と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○近藤血液対策課長補佐 本日の出欠状況ですが、安全技術調査会全委員11名中10名の御出席をいただいております。

 本日は、日本赤十字社血液事業本部より佐竹正博血液事業経営会議委員、豊田九朗参事監、五十嵐滋次長、平力造安全管理課長、以上4名に御参加いただいています。よろしくお願いします。

 また、参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部より、水澤左衛子先生、倉光球先生に御参加いただいております。

 カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。

(報道関係者退室)

○近藤血液対策課長補佐 それでは、以降の進行を浜口委員長にお願いいたします。

○浜口委員長 皆さん、こんにちは。それでは、調査会を開催したいと思います。よろしくお願いします。

 まず、事務局から、審議参加に関する遵守事項について御報告をお願いします。

○近藤血液対策課長補佐 本日、御出席いただいた委員の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金等の受け取り状況を報告いたします。

 本日の議題に関して「薬事分科会審議参加規程」に基づいて、利益相反の確認を行いましたところ、大戸委員、岡田委員から関連企業より一定額の寄附金・契約金等の受領の申告がなされておりますので、大戸委員におかれましては議題2に関しまして、岡田委員におかれましては議題1~3に関しまして、意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。

○浜口委員長 ただいまの御説明について、御質問はございますか。

 特にないようですので、競合品目、競合企業の妥当性を含めて御了解いただけたものとさせていただきます。

 それでは、初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○近藤血液対策課長補佐 事務局から資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をごらんください。

 まず、議事次第、座席表、委員名簿、設置要綱があります。

 次に、議題1に関しまして資料1、A4で4枚のものがありまして、その後に参考資料として1枚ございます。

 議題2に関しましては、資料2が、A4が1枚、A3が1枚、その後にA4の紙が4枚続きまして、その後にA3の縦が4枚、8ページまでございます。さらに資料2が続きますが、A4が1枚の後に、左上に「資料7」と書いたものが3枚あります。ここまでが資料2となります。

 議題3に関しまして、資料3が4枚あります。

 次に、議題4に関しまして、資料4が5枚、10ページまであります。ページ数としてスライド番号は20番まであります。

 議題5に関しまして、資料5が2枚。

 議題6に関しまして、資料6が3枚。

 あと、参考資料としましてつけさせていただいたものが3枚ございます。

 資料の確認は以上です。不足がございましたら、事務局までお知らせください。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 それでは、早速議題1に入りたいと思います。日本赤十字社より資料1の説明をお願いいたします。

○日赤・平安全管理課長 私の方から御報告さしあげます。東京地域におけるHEV感染実態調査の結果について、御報告したいと考えております。

 まず、御報告の前に、今、本邦におけるE型肝炎ウイルスの感染状況がどうなのかという現状と、今、私ども平成14年より輸血後の感染事例を経験しておりまして、そういう感染事例からどういうことがわかったのかを少し御説明して、その次に、最近HEVの慢性化ということが少し報道等でなされておりますが、この主な文献等を御紹介させていただいて、東京地域における結果を御説明したい。最後に、HEVに関連して世界が今どのように動いているのかを御説明して終わらせていただきたいと思っております。

 まず、2ページでございます。E型肝炎自体は、感染症法上第4類に分類されておりまして、診断されたら届出するということになっております。こちらについては国立感染症研究所が集計を出されております。その傾向を見させていただきます。

 それと、平成23年に検査用の試薬が保険収載されまして、それ以降、隔年の四半期ごとのデータを示しておりますが、大体平成24年、平成25年では年間100件ぐらいの報告例が、平成26年になりますと151件、平成27年になるとさらに増加して212件、平成28年の第1四半期、第2四半期を2つ合わせて、いわゆる昨年の平成27年を超えるような数が報告されております。

 3ページは、私どもが北海道でやらせていただいております試行的HEV NATの陽性頻度を、これも年ごと、四半期ごとに出させていただいております。こちらを見ていただきますと、私ども平成26年8月から個別NATというものを導入させていただいております。これは導入したことによって95%の検出限界の限界値が1,020IU/mLから7.9IU/mLということで、感度が約120倍程度向上しており、以前の検査法と比較すると、以前の陽性頻度は大体1万人当たり1.1くらいの数値だったものが、今では3.6と上昇しております。これを先ほどと同じように、前年の同時期の陽性頻度と比較すると、平成26年と平成27年のともに第4四半期を見ますと2.0から4.4へ。平成28年の第1四半期、第2四半期それぞれも4.6から5.22.3から3.8ということで、少し増加しているのかなという傾向が見てとれるかと思っております。

 一方、輸血によるHEV感染というものは過去17年間に20例確認しております。4ページを見ていただきますと、平成14年からということで記載しております。その中で、医療機関から自発的に、いわゆる患者様がALT異常を起こして調べた結果、HEV抗体が出たということで報告された件数が赤抜きの8件。日赤から献血血液のHEVの陽性情報、いわゆる他社のメーカーでの受け入れ試験等で行った結果、情報提供して、患者さんを追跡調査、遡及調査した結果判明したものが12件ということでございます。

 この感染した20例で見ますと、感染させるのに必要な感染最低ウイルス量は38,400IU/bag、1bag当たり約4万IUぐらいのウイルスがあったら感染していたということでございます。

 この原因血液の献血者20名のうち18名が抗体は全て陰性ですので、その分、感染初期の抗体陰性例で感染しているというのが見えてきております。

 それと、HEVのジェノタイプにつきましては、4型が3例ということでございます。こちらについては北海道に居住されている方の血液が原因になった例が3例、そして、3型が17例ということでございます。

 この多くの例については、急性の一過性感染ということでございますが、5例においてウイルス血症が遷延していることが見受けられております。

 この20例のALT値のピークを確認しますと、1,000以上2,000IU/L未満、1,000を超えたものが2例ということですが、劇症肝炎や死亡例の報告はなかったということ。

 それと、こちらについてもある程度の症例でリバビリンが使用されております。そういう意味では、そちらが有効であったということがわかっております。

 この感染症の報告とは別に、私ども北海道で遡及調査等もやらせていただいておりまして、そういうところから輸血によるHEV-RNAプラスの血液が入ったときの感染率を求めますと、50%という数値が私どもでつかんでいるところになっております。

 5ページは、今お話しした輸血後HEV感染20例の詳細を示させていただいております。

 まず、15例については、全てALTは正常化し、肝炎は治癒されております。

 臓器移植等で少し問題があった臓器移植例については2例経験しておりまして、こちらについては論文も書かれておりますが、論文の慢性肝炎がどのような基準に基づいて診断されたのかという詳細な記載はございませんが、その論文の中で慢性肝炎という診断をされている例でございました。この2例については、リバビリン投与をウイルスは消失しています。

 続きまして、血液疾患症例の3例でございます。一番最初は血液疾患の例ですけれども、上の2例については、肝生検を行って中等度の繊維化を伴う慢性肝炎ということで先生が診断をなされておる例でございました。

 その中で、バーキットリンパ腫の例は、HEV感染が判明したのが陽性血が輸血されて878日目でございました。そのために判明後リバビリンを投与しておりますが、ウイルスは消失しなかったということが論文の中で報告されております。

 下の20代の男性については、その後軽快されたと記録には載っております。

 次の70歳の男性の方については、陽性血輸血後50日目よりリバビリン投与を開始して、ウイルスは陰性化していると。肝炎はほぼ治癒状態という御報告です。こちらが20例の詳細な情報になるかと思っております。

 続きまして「E型肝炎の慢性化に関する主な文献」ということで5つほど挙げさせていただきました。以前よりHEV感染自体は持続感染という報告はございますが、慢性肝炎は引き起こさないと考えられておりましたが、臓器移植という特異的な状況下ではございますが、HEV感染から慢性肝炎の進展が見られたという初めての報告が2008年の一番最初のKamarらによって報告されております。

 その後に、同じ筆者らが臓器移植後のHEV感染での慢性率を出されております。60%以上が進展するという報告を2011年にしております。

2014年には、臓器移植患者のE型肝炎に関するリバビリン単独治療成績が報告されて、ウイルスクリアランス率が95%、クリアランス維持率が78%ということが報告されております。

 一方、これ以外のところ、同じ免疫抑制等を伴う治療を行う造血幹細胞移植後については、Versluisらが『Blood』の中で報告しておりますが、急性HEV感染の頻度は低いものの、強力な免疫抑制状態のもとでは慢性肝炎に進展するリスクが高い。高いリスクのある患者は、適宜HEVの検査をすべきであるということを論じておるかと思っています。

 続きまして、輸血で見たHewittらが『Lancet』の中で、HEV-RNA陽性血液を輸血された患者の感染率を出していますが、こちらは42%。日本の先ほどの私どもの報告では50%という数を出しておりますが、このくらいの感染率だろうと。そして、輸血感染で発症するのはまれであるが、免疫抑制患者ではウイルス血症が遷延するという記載がございました。

 7ページですけれども、こういうことが背景であって、東京地域におけるHEVの感染実態の調査の結果でございます。

 まず、前回の安全技術調査会で3月中には開始するということで、いろいろな調整等を行いまして、3月31日から検査を開始することができました。6月23日までの間、実稼働で34日検査させていただいております。東京辰巳の関東甲信越ブロック血液センターの検査検体を対象として、ほぼ都内の中心部の採血で平日に実施し、無作為サンプル抽出をしております。

 調査実施本数は15,039本。

 こちらの個別NAT感度は北海道の試行的と同じですので、7.9IU/mLという中で検査を行った結果、陽性が11本ということでございました。男性が7本、女性が4本という結果でございます。こちらの陽性率が0.073%。これを本数で割ると1,367本に1本が陽性ということになりました。

 下は、北海道地域の同じNAT感度で開始したNATの状況を示しておりますが、こちらの陽性率が0.036%。本数が2,816本に1本ということですので、北海道より高い陽性率という結果になりました。

 この11名の献血者の詳細なデータが8ページの「HEV RNA陽性献血者」に示させていただいておりますが、こちらは見ていただきますと、IgMIgGの抗体の陰性例、全て陰性という感染初期のものがナンバー1、ナンバー2、ナンバー3、ナンバー5、ナンバー9の方でございました。出ているウイルス濃度も定量限界以下から、高いものは1万というものがございますが、比較的低いところを感度がいいためにとらえているという傾向が見てとれます。

 続きまして、HEV-RNA陽性献血者への対応でございますが、こちらの11名の方にはHEVの陽性通知をさし上げて、受診勧奨と6カ月間の献血延期、あと、喫食歴のアンケート調査票を送らせていただいております。日赤のシステムへの登録ということになると、今回陽性となった11名の方には、6カ月間は献血に来ても製品化されないというシステムを作動させまして、安全確保措置を実施しております。

 喫食歴のアンケートにつきましては、今現在集計させていただいています。感染時期と結びつける直接的な証拠がないのでなかなか難しくて、データをポッポッと出せるものではないということで、いろいろ献血者とのコミュニケーションも含めて少し慎重にやらせていただきたいと思いますので、もう少しお時間をいただきたいと思っております。

 遡及調査でございますが、11名の献血者のうち2名の方に6カ月以内の献血がございました。それぞれ陽性献血の106日前と113日前ということでしたが、個別NATをやったところ陰性ということで終了させていただいております。

 9ページが、HEV-RNA陽性となった献血者。こちらについては献血者にまた、その後の感染動態の調査等に御協力をいただいております。11名中8名の方に協力をいただいて、これらのデータが出てきておりますので、このあたりもデータを先生に御確認していただければと考えております。

 続きまして、10ページでございます。推定されるHEV陽性血液数とHEV感染の報告についてまとめさせていただきました。

 今回、関東甲信越で検査をやらせていただきました。この地域の1年間の献血数が180万本でございます。そうすると、先ほどのドナーのHEV-RNA陽性率が0.073%ということですので、これを単純に掛けて推定のHEV-RNA陽性献血が年間幾つあるかを試算しますと、1,314本という数が出てまいりました。ただし、このような数が出ていても、過去に関東甲信越地域で、先ほどの輸血による感染事例の20例のうち関東甲信越での血液が原因だったものが13例ということですので、ほぼ年に1件程度ぐらいの報告でございます。

 一方、北海道地区ではどうかというと、北海道については20プールNATを実施しておりました。個別NATに変えて感度が上がって3倍検出率が上がったと先ほどお話ししましたが、その差を試算しますと、20プールNATをやっていた8年5カ月の間に、計算しますと538本の個別NATでは陽性になるけれども20プールでは陰性の血液が出庫されていたということで推定されております。では、この8年5カ月間に北海道地域の血液が原因でHEVの感染があったのかというと、その報告の疑いもなかったという現状でございます。

 そういう観点から申しますと、輸血血液中のHEVは感染性が低いのか、感染しても臨床的に問題にならないのではないかと考えております。

11ページは、こういうデータを出しておりますので、各集団におけるHEV感染数を推定してみました。

 関東甲信越が0.073%の陽性率ということで、関東甲信越ドナーの年間のHEV感染数を計算しました。そうすると、HEVは1~2カ月間RNAがプラスになると言われておりますので、その2カ月間だけしか選出されないとすると、捕捉率が6分の1になりますので、それを掛けると毎年献血者群の中で8,000人が感染しているのではないかということが推定されました。

 北海道については、スポットではなくてずっと検査しておりますので、ドナーの各年代のHEV-RNA陽性率から年間感染率を算出して、それを北海道の各年代人口に掛けて積算すると、毎年7,000人が感染しているのではないかということが計算されました。そして、平成27年、先ほどの2ページにございましたが、北海道地域の感染症発生報告件数が41件ということですので、有病率という書き方はどうかと思いますけれども、推定される有病率は41割る7,000ということで0.6%程度かと考えています。

 肝移植については先ほどの論文にございましたとおり、肝移植の患者でIgG抗体を検査すると2.9%が陽性。患者2名がRNA陽性、これは多分輸血での感染例かと思われます。

 一応こちらが関東地域をやった結果と、どれくらいのものが感染しているのかを推定させていただきました。

 最後は「輸血後HEV感染にかかる各国の対応」ということでとりまとめさせていただきました。

 まず、各国・地域ごととIgG抗体陽性率、RNA陽性率、各国のコメントを載せさせていただいております。この中で詳細に見ていただければ、各ウイルスのプール数が違ったりしていますけれども、まあまあ一定の数が出ている。

 そういう中で特筆すべきことは、まず、考えられるとしたらオランダでございます。オランダはIgG抗体の陽性率が27%、そして、RNA陽性率が658本に1本という数でございます。オランダの場合、こちらは96プールのNATでこの数が出ておりますので、そういう意味では感度を上げると実はもっと高いのだろうなと。こういう観点もあって、一般国民の陽性率が非常に高いので、現状ではHEVスクリーニングの導入は考えていないということを記載されておりました。

 続いて英国については、イングランドとスコットランドとそれぞれございますが、こちらについては選択的HEV-NATを導入しておりますので、これについては次のページで詳細に御報告したいと思います。

 米国については、抗体の陽性率が7.7%、RNA陽性率が9,500本に1本ということでございました。ただし、献血者18,829名中のNATの陽性者が2名。さらに検討が必要ですが、導入するのであれば選択的検査でよいのだろうという書き方はされておりました。

13ページが「HEV-NATを導入した国の状況」でございます。

 まず、アイルランドが、今年1月から個別NATでやっております。検査対象は全ての献血血液でございます。供給製剤は全ての製剤。

 こちらの詳細な状況を下に記載しておりますが、アイルランド自体、年間の採血量が15万献血程度。そして年間予算、これだけの検査をするに当たって1億円程度の予算をもって3年間限定の国家予算で取り組んでおるみたいです。ということは、こちらについては3年間やってみて、感染性の問題などを調査しながら4年後以降の国の施策を決めていくのではないかと考えております。

 次は英国でございますが、こちらは2016年3月から、NAT方式は24プール以下ということで選択的に検査をしているところでございます。こちらについては、基本的には先ほどございました臓器移植の患者であったり、免疫抑制を伴う治療をする方、臓器移植の方で血液腫瘍の方を対象にやられております。こちらについては追加検査として実施しますので、1本当たり血液代金にプラス17.18ユーロ、大体2,500円ぐらいが加算されているという状況でございます。

 今やっている国はこの2か国で、ただし、アイルランドについては限定的にやって見ていこうということかと思います。

 最後のスライドについては、先ほどオランダのお話をしました。Sanquinというオランダの血液事業者でございますけれども、こちらがホームページにどう記載しているかを載せております。基本的には食物からHEVに感染しています。したがって、HEV感染に対して輸血用血液を通じた感染防御に係る追加の対策は実施しませんということで、ホームページ上に掲示されるということです。

 一応、私の報告は終わらせていただきます。

○浜口委員長 ありがとうございました。本年3月から6月までの間、関東地区で行われたHEVに関する疫学調査、この中にはRNA、抗体の検査が行われて、その実態を把握できたと思います。

 それでは、委員の先生方から御質問・コメント等ございましたら、お受けしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。新津委員どうぞ。

○新津委員 資料6ページ目の輸血後のHEV感染20例のうちの血液疾患症例が3例あり、その内訳はバーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、AMLとなっていますが、全て同種造血幹細胞移植をやっている患者さんなのでしょうか。それとも同種移植をしていない患者さんも含まれていますか。バーキットリンパ腫と悪性リンパ腫の患者さんはどのような化学療法を行っているのでしょうか。20代の男性の悪性リンパ腫は、もしかするとバーキットリンパ腫とかLymphoblastic lymphomaだとすると、白血病に類似した強度の高い化学療法をやっているリンパ腫かなと思ったのですが。

○日赤・佐竹経営会議委員 このバーキット非常に激しい治療をしています。骨髄抑制が非常に強くて、低γグロブリン血症が非常に遷延しているという非常にプアな状態の方でした。

 それから、20代の悪性リンパ腫の方も記載によりますと、強力な化学療法によってパンサイトペニアの状態になっているという記載がございます。

○新津委員 では、同種移植をしなくても感染する場合があるということですね。

○日赤・佐竹経営会議委員 はい、そうです。

○浜口委員長 では、溝上委員どうぞ。

○溝上委員 E型についてなんですけれども、これは劇症化が東京でこれだけいて、東京の中で劇症化の報告はあるのでしょうか。

○日赤・佐竹経営会議委員 もちろんありません。

○溝上委員 ジェノタイプ3だからということでよろしいでしょうか。北海道でジェノタイプ4があったように思ったのですが。

○日赤・佐竹経営会議委員 先ほどもありましたように、最高に上がったものはALT1,600台でして、劇症と思われるものは1例もございません。全体でいいますとALTの中央値、平均が大体500600ぐらいの間でした。マキシマムは1,600ということで、E型肝炎としても比較的マイルドな方向でした。

○浜口委員長 では、山口委員どうぞ。

○山口委員 まず、1つは確認なのですけれども、もともとこの調査をお願いしたのが、随分前の調査で東京の抗体保有率が高かったと。全体的には西日本が低くて、東日本が高いという傾向で、しかも東京は非常に高かったということで、東京に集中してやられたらいかがかという話だったかと思うのですけれども、今回のデータは過去の抗体保有率が高いというデータを追認しているデータと考えてよろしいのですね。

○日赤・佐竹経営会議委員 おっしゃるとおりです。前の抗体保有率にぴったり一致するRNA陽性率でした。

○山口委員 今回は、年齢階層別解析はこれだけの数なので無理かと思うのですけれども、海外だと例えば5060代になると抗体陽性率が4割ぐらいになるケースもあるということを考えると、東京がどういうわけかE型肝炎の感染率が非常に高いということを表しているのかなという気はします。そうしたら年齢層別解析をすれば、さらに高い年齢層があるかもしれないし、その辺はこれ以上調査をすべきかどうかという議論も含めて考えなければいけないと思います。

 もう一つは、E型肝炎に感染したときの劇症度あるいは慢性肝炎化というところで考えると、いわば免疫抑制になっているほうが肝炎の慢性化するリスクは非常に高い。それは文献的にもそうだし、そう考えると、そういう患者さんに特別にサイトメガロと同じように検査を提供するというのは一つの考え方で、それをやるべきだと私は思います。

 もう一つ、今回の海外の調査は輸血用のものを考えてやっていただいているのですけれども、多分EDQMなどは血漿分画製剤のHEVの検査を推奨しています。要するに、中にはHEVの感染タイターが非常に高い10の7乗ぐらいのものがあって、血液製剤の分画の工程の中では逆に濃縮が入るようなケースもあるし、特にノンエンベロープはクリアランスが非常に悪いのはよく知られていることなので、そうすると高い製剤が出てくるリスクがあるということでEDQMは考えていると思いますが、その辺については日赤まではそこまで調査できていないということでよろしいですか。

○日赤・佐竹経営会議委員 3つ目の質問から、血漿分画製剤による肝炎が起きているということは私の知る限り、2つぐらいそれを示唆する論文が出ております。日赤の場合には、感染例の中の実は8例が、ある血漿分画センターからの情報によるもので、御存じかと思いますが、一部の日本の血漿分画製剤メーカーが受け入れ試験としてHEVのスクリーニングをしております。ですので、そこではその感度以上のものは全部はじいています。はじいた場合に、うちのほうにその連絡が来まして、うちのほうでその片割れ製剤、ほとんどの場合は赤血球ですけれども、その赤血球を輸血された患者さんを遡及調査して、感染例を見つけているものが8例でございます。それが、血漿分画製剤についての現状です。ほかの分画メーカーについてはわかりません。

 2番目の質問についてですが、選択されたそのようなリスクを抱える患者さんに対して、特別にスクリーニングしたものを提供すればいいのではないかという考えですが、それはまさしくイギリスの方式と全く同じで、我々もそれは一つの選択肢なのであろうなとは当然考えております。

 1番目の質問は、どこかの年齢層に特異的に高いRNAの陽性率のものが見つかるかもしれないということですけれども、今回例数が少な過ぎて、おっしゃるようにどこが高いとかはわかりませんが、一応ここに年齢が出ていますので、2060代まで全体的に分布しているのが現状です。

 ただ、どこにピークが向かっているかを推定するには、CMVなどの場合を考えますと2030代、3040代に抗体陽性率の増加がございます。そこでの感染率が一番高いのだろうということは言えるかもしれませんが、HEVの場合には20から60代までのIgGの陽性率の増加がほとんど直線になっています。ということは、どの年代でも増加幅は同じですので、意外にどこの年代でも同じくらいの確率で感染しているのかもしれないなという感じがいたしております。もちろんこれは推定ですので、実際にやってみれば、いろいろな食べ物の関係で危ないものを食べている年齢層というのはあるかもしれません。

○浜口委員長 では、脇田委員お願いします。

○脇田委員 いろいろな意味で興味深いと言っていいのかどうかわかりませんけれども、非常に重要なデータだと思いました。

 まず、最近、感染症動向調査でもE型肝炎の報告例が多くなっているということは我々も認識しています。ただ、IgA抗体の測定キットが保険収載されたための報告例がふえているのだろうということで今見ているわけですけれども、それでも実際にどうなのかというところで、感染研でも実態調査をするべきだということで、1993年の血清バンクの感染症流行調査から今20年ぐらい抗体の調査ができていませんので、それをやるべく今、準備をしています。

 先ほど2050代ぐらいまで直線だと言われたのですけれども、その1993年の我々のデータでは、20代からずっと上がってきまして、5054歳でIgG抗体がピークになるというデータになっています。その後、55歳以上の方では下がっていくと。IgG抗体陽性率のピークは大体30%ぐらいです。ですから、20年たってこれがどのようになっているかを調査したいと考えています。

 それから、北海道よりも東京でNATの陽性率が高いということが非常に重要なデータだと思っています。ただ、それでも免疫が正常な方に輸血されても、それほどリスクは高くないのではないかということを考えますと、慢性化するリスクがある患者さんにHEVの検査済みの血液を提供できる仕組みをつくっていただくのが必要なのではないかと我々は考えています。

 以上です。

○浜口委員長 ありがとうございます。

 では、長村委員お願いします。

○長村委員 1つは、検査が医療機関でも確実にできる方法が今そんなにないと。SRLですとかLSIメディエンスのカタログを見てもIgAの抗体しかなくて、いわゆるウイルスをディテクトするようなPCR法といったものがまだ掲載もされていない状況なんです。あと、これまでの症例を見る限りは、劇症化していないということを考えると、まずはその辺のインフラ的なところ、検査会社にも少し喚起を促す、そういう検査を導入することを促していくことも一つかなと。

 我々医療側もその辺の認識が実はそんなになくて、確かに全体的な形を考えるとサイトメガロウイルスなどの部類にもしかすると入るかもしれない。ただ、本当にBでもCでもない肝炎ということで何となくわからなかったのが、これで見えてくるのかもしれないなと思っています。

 その意味では、そういうインフラの整備と参考資料に載っておりますが、平成271116日に日本移植学会と日本造血細胞移植学会御中で出されておりますE型肝炎ウイルス感染への対応についてというところも、移植だけではなくてリンパ腫とかがリツキサンとかそういったB細胞を抑えるような抗体薬も結構出ていますので、全般的に免疫を抑制するような治療をしている人に対して、もう少し注意喚起をしたほうがいいのではないか。その上でどのくらい本当にかかって、何が起こっているのかということが見えてから対応をしたほうがいいかなと思います。

○浜口委員長 ありがとうございます。

 では、白阪委員どうぞ。

○白阪委員 非常に詳しく調べていただいていると思います。ありがとうございます。10ページで臨床的な影響ということで、北海道では「この間に、北海道地域では輸血後感染疑い報告なし」と書いていただいていることの確認なのですが、これは例えば、E型肝炎のウイルス血症があったかなかったかというのはわからないので、そうではなくて、例えばその地域に住んでいる方の自覚症状あるいは検診等で引っかかった人がおられないという事実からこれを述べておられるのだろうなと考えました。そういう意味でも、今までの御議論を聞いていても、例えば、日本の中で食事で感染している方ももちろんおられますし、ほとんどが重症化しない。ただ、重症化する方にとっては非常に大事な看過できないウイルスだと思うので、イギリスのように選択的な対応というのは非常に理にかなっているのではないかと思いました。

○浜口委員長 ありがとうございます。ほかの先生方いかがでしょうか。

 岡田委員どうぞ。

○岡田委員 確認ですけれども、たしか10年近く前に、東京のE型肝炎の抗体陽性率を測定したときがあったと思うのですけれども、今回はNATですが、今回も抗体の検査はチェックしていないのですか。

○日赤・佐竹経営会議委員 抗体というのは全員のことですか。

○岡田委員 15,000検体の抗体の有無は調べていますか。

○日赤・佐竹経営会議委員 いいえ、それは見ていません。

○岡田委員 というのは、10年も時間がたっているとA型肝炎のように過去に感染して今はもう感染するリスクが非常に減った場合には、年齢とともに抗体は低下するし、一方、現在も10年前と同じくらいに暴露が続いていれば抗体の年齢ごとの保有率というのは変わっていないので、そうなると現在も10年前と同じぐらいにウイルスに暴露されているリスクは変わっていないということになって、対策を考える上でも今は豚の生肉の販売禁止とか、そういうことが功を奏して下がっているのか、それとも全然効果がなくて現状維持なのかということによっても対策は変わってくると思うのですけれども、その点はどうなのでしょうか。

○日赤・佐竹経営会議委員 全くおっしゃるとおりです。そういった観点で今回はRNAだけを見ていますけれども、同じようなかなり大規模なスタディーを感染研の清原先生と今組んでおりますので、先生のほうから。

○脇田委員 先ほど血清銀行のお話をしましたけれども、実験の計画では血清銀行の1,000検体、それから、日赤から提供していただく8,400検体を使って抗体検査をやるという計画にしております。

○浜口委員長 追加でお聞きしたいのですけれども、その1,000検体というのは、年代はかなり古いものから現在に至るまでという形になるのでしょうか。

○脇田委員 ということではなくて、それはなるべく最近のもの。年代は2年間分ぐらいだと思います。というのは、2000年にやったのですけれども、そのときと比べるために余り前のものではなくて、最近がどうなっているかを調べるということです。

○日赤・佐竹経営会議委員 日赤のものは現在最もフレッシュなものを年代別、地域別、男女別にきれいに層別に分けて、同じ数だけ全部感染研の先生にお送りして一緒にやらせていただくと。

○浜口委員長 いかがですか。では、溝上委員どうぞ。

○溝上委員 私の理解では、最初に抗体が形成できてもいろいろな問題点があって、結局、保険採用になっているのはIgAだけだと理解しておりますので、10年前と比べるときもきっと大きく変わっておりますので、その辺はどのようになっているか教えていただかないと比較できないのではないかと思います。

 それから、E型が最初に報告されて日本でも問題になった10年ぐらい前のときには、IgGのデータだったと思うのですけれども、抗体が非常に早く下がるとか、2度目の感染のときに非常に上がるとかいろいろなことがあって、キットの問題かどうかというところまでは詰めていなかったと思います。それでIgAだけしか現在は保険に載っていないという現状がありますので、その辺も踏まえた検討をぜひよろしくお願いいたします。

○浜口委員長 脇田委員、そういう方向でよろしいですか。

○脇田委員 前回の調査もそうですが、我々のところでIgG抗体を調べるということにしております。市販のキットとは違う方法ということになります。

○浜口委員長 よろしいでしょうか。

 それでは、皆さん御意見いただきましたが、基本的には重症化しないという状況は一応今回確認できたと思います。今すぐにスクリーニングをやるかどうか、どう対応するかについてはまだ少し検討が必要であろうと思います。特に、感染研と日赤で検討が進められようとしている、もう少し幅広の疫学調査のデータを待っても、まだ十分ではなかろうかという観点かなと思います。

 それから、もし、これを実際に患者さんに供給する場合にも、選択的な供給のやり方というのが、何名かの委員の先生方からいただきましたので、この辺を含めて、多分経済的な負担というのが少し考えられますので、そこは日赤内部でも少し検討していただくことになろうかと思います。

 きょうは疫学調査のデータを見させていただいて、委員の先生方から率直な意見をいただきました。そして、さらにまた検討していただくという形で進めていきたいと考えておりますけれども、そういったことでよろしいですか。

○岡田委員 E型肝炎の発生の報告から見ると、北海道と関東甲信越の患者さんの割合が80%なんです。ですので、始めるとすれば北海道と関東甲信越を優先的に始めたほうがいいと思います。

○浜口委員長 意見をいただきましたけれども、そこも含めて日赤でも検討していただきますよう、よろしくお願いします。そういったことで御異議ないですか。

(「はい」と声あり)

○浜口委員長 では、そういったことでお願いしたいと思います。

 佐竹先生、何かありますか。

○日赤・佐竹経営会議委員 こちらは製薬メーカーですので、こちらから言うことではないのですけれども、もちろんこれは血液に関する安全技術調査会ですので血液のことがテーマですけれども、臨床ということから言えば、リスクのある、あるいは慢性になったら困る患者さん、あるいはそうなりやすい患者さんはたやすく同定できるわけですから、そういう患者さんを見ていくということが基本的に臨床的に血液のスクリーニングという前に臨床的に大事なのではないかと。そういった人が感染しているか、していないかを見て対応していくのが、血液スクリーニングの前にあることではないかと思います。

○浜口委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

 では、引き続き必要な情報の収集及び検討をお願いしたいと思います。

 それでは、議題2に入りたいと思います。血小板製剤に係る病原因子低減化技術導入の検討状況につきまして、日本赤十字社から御説明をお願いいたします。

○日赤・五十嵐次長 それでは、資料2をお願いいたします。「血小板製剤への感染性因子低減化技術の導入について」。

 まず「1.はじめに」。

 感染性因子低減化技術、以下「同技術」と言いますけれども、導入検討は2004年、輸血用血液の安全対策の1項目として公表し、血小板製剤に対する細菌感染防止を目的として低減化処理血小板の品質、感染性因子に対する低減化能について日赤が独自に行った評価試験の結果や、海外諸国の導入状況について報告してまいりました。

 同技術を日本の血液事業に導入する場合、低減化能の強弱も重要な要素でありますけれども、その点からCerus社のインターセプト導入を期待する意見もあるのは承知しております。ただ、現状の事業に対する適合性等を考慮いたしますと、総合的にテルモBCT社が開発したミラソルを導入すべきと考えております。

 また、当初、製造販売承認取得後の低減化血小板製剤の製造体制については、新興感染症等の対応が必要となった状況において緊急避難的に製造・供給するとの案を提示してまいりました。しかし、薬価が収載された医薬品については供給しなければいけないという規制もありまして、製造地域を限定するなどの運用により、製品の安全性を確認しつつ、製造量や製造地域を順次展開していくことが妥当ではないかと考えております。さらに、従来の血小板製剤にかわる製剤として、血小板を浮遊する血漿の一部を血小板添加液(PAS)で置換した製剤についても、同技術の導入について検討することなどを報告してまいりました。

 同技術導入のための次段階として、臨床試験の準備も進めていく必要があると判断し、ミラソルの導入を前提に医薬品医療機器総合機構(以下「機構」)と協議を進めてまいりましたけれども、現在のところ血液事業部会で明確な採用技術が確認されていないという見解により、機構相談がこれ以上進められないという状況になっております。

 今後導入に向けた準備を進めるためには、採用技術を明確にすることが喫緊の課題でありますので、今般、従前の議論において説明が十分ではなかった血液事業導入時における両技術の実用面についても報告し、同技術導入の要否や採用技術について改めて御判断を仰ぎたいと考えております。

 これから添付資料の説明をさせていただきます。

 まず、1枚めくっていただきまして、A3の資料1ですけれども、これは以前にもお出ししたものを一部改訂しておりますが、基本的には表面の一番下、インターセプトはもともと欧米向けの高用量の製剤を対象につくられたキットでございまして、日本の10単位の処理ができるキットは今のところまだ開発中という状況でございます。

 裏面の真ん中にあります低減化処理製剤1バックの製造に関する処理時間ですけれども、ミラソルはリボフラビンを添加して照射するだけで済みますが、インターセプトはアモトサレンを添加した後に光照射して、その後吸着処理に少なくとも2時間、今開発中の小容量のキットでも2時間以上かかるという状況がございます。それと吸着処理終了後にバッグをもう一度移しかえなければならないということがあります。

 それについて、資料2のA4の紙で詳しい工程を記載していますけれども、資料2の表面ではミラソルの作業を書いていますが、四角で囲ったミラソル処理の部分が現行の作業に加わるという格好になります。これに実際に要する時間を計算いたしますと、1150秒程度ということになります。

 一方、裏面にインターセプトの作業工程を載せてございますけれども、ミラソルと同等の処理に加えて吸着処理、それに伴うバックの入れかえ等が発生いたします。浸透時間を抜きますと処理時間としてはミラソルとそう大差ございませんけれども、この吸着処理時間分だけ工程が長くかかってしまうことになります。

 この吸着の工程に海外仕様のキットでは4~16時間必要ですし、日本向けの試作中のキットでも2時間あるいは3時間が必要となります。

 また、インターセプトは吸着処理した後にバックを入れかえるという操作が加わりますので、この工程で血小板のボリュームロスが生じまして、それに伴って血小板も減少してしまうと。その割合が1割程度発生するということになってしまいます。

 資料3につきましては、辰巳で一番処理本数が多いわけですけれども、その辰巳で実際の製造工程がどういう時間で経過しているかをグラフ化してみました。血小板は一日何回かにわたって辰巳に入ってくるのですけれども、それを順を追って処理していきます。

 1枚目が今の血小板製剤ですけれども、ほとんどの製剤が翌日の10時半頃までには製造が終わって出荷できるという格好になっています。上段が平日、下段が休日という格好で示させていただいています。

 同様のグラフを次のページではミラソルで試算してみますと、ミラソルは処理時間が10分ちょっとで終わりますので、現在の血小板とそう変わらずに供給することができる。

 それに対しまして、3枚目のインターセプトになりますと、どうしても2時間、3時間の吸着時間が足かせとなってしまいまして、翌日の午前中に供給できない製剤がかなりふえてしまうという結果になります。

 次の資料4で、海外における処理本数を示させていただきましたけれども、一番有名なEFSのアルザスで一日にPCの製造本数としては50本程度なのに対しまして、辰巳でいきますと平日で360本、休日では530本処理しなければいけない。吸着処理するときには浸透機にかけてやりますので、浸透機を置くスペースも必要になってくるという状況がございます。

 実際、海外施設においても浸透時間が煩雑だということで、インターセプトからミラソルに乗りかえる施設が幾つか出ております。それにつきましては、資料5で示してございますけれども、資料5は海外の情報をまとめたものです。

 1枚目にフランス、イギリスがございますけれども、フランスはメチレンブルーでアレルギーが出たということで、メチレンブルーからインターセプトに切りかえて血漿を処理していましたけれども、インターセプトについては操作が煩雑であるということで現在は中止しているようです。

 イギリスに関しましては、導入についてずっと検討されてきましたけれども、現時点では導入しないということを決定しています。ただし、将来どうするかについては今後も検討していくという格好になっています。

 先ほど申しましたインターセプトからミラソルに乗りかえているのがイタリア、スペインになりますけれども、操作が煩雑だということでインターセプトからミラソルに移行しているセンターが幾つかございます。

 アメリカについては、また最後に別の資料で報告させていただきます。

 検討開始当初は、検出限界以下のHBVHCVHIVによる感染防止が主な目的でしたけれども、個別NATの導入により3種のウイルスに対する安全性は格段に向上しています。また、デングやジカなど新興再興感染症が国内で蔓延した場合、赤血球にはいまだ不活化技術がないということがございますので、検査や献血制限でまずは対応する必要があるということを考えております。

 次に細菌ですけれども、実際に報告されている細菌感染事例は少数で、2007年以降幸いにも死亡症例の報告はございません。それは資料6でグラフに示していますけれども、2006年に死亡例がありました。白血球除去や初流血除去を導入して以降は、死亡例は発生していない。ただし、輸血前に確認される細菌汚染事例が幾つか報告されています。供給の現場や医療機関の輸血前のチェックで見つかるのが、年に数例あるということでございます。細菌に汚染された血小板の輸血というのは、重篤な副作用を来す可能性が高いということがございますので、さらなる安全対策を講じる必要があるのではないかと考えております。米国においても本技術の導入の目的としては、細菌感染が一番に上がっているところです。

 米国につきましては資料7をごらんください。テルモ、Cerusから得た情報をまとめたものですけれども、導入の目的としては血小板製剤への細菌混入、新興感染症。それと米国では細菌の検査を実施しておりますので、それをやめたり、CMVのスクリーニングをやめたり、あるいはγ線がテロ対策にもあるのですけれども、γ線照射器をなくしたいというようなことがありまして、このような理由で導入を進めています。

 米国機関の支援状況ですけれども、FDAはガイダンスを去年暮れと今年に出しまして、ジカウイルスと細菌対策としてインターセプトを承認していますので、インターセプトを使うことができるという記載をしています。

 また、米国生物医学先端研究開発局(BARDA)や国防総省(DoD)などは臨床試験に対して資金協力しているという状況にございます。

 ミラソルによる細菌感染予防の可否については、これまで報告してきましたように、文献報告による菌株及び日本で見つかった臨床株について、日赤の検証結果を報告し、おおむね良好な結果が得られているところです。

 以上が、現状になります。

 最後ですけれども、細菌に対する安全性を向上させるため、血小板製剤にミラソルを導入することについて、明確な御判断をお願いしたいと考えております。

 以上です。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 目的としては、血小板の細菌感染に対してミラソルを導入したいとおっしゃいましたけれども、私の興味があるところで、イギリスがこの導入を見送っている理由が何かあれば、教えていただけませんか。

○日赤・五十嵐次長 たしか費用対効果だったと思います。

○浜口委員長 ありがとうございます。

 それでは、委員の先生方からコメント・御質問をお願いします。山口委員どうぞ。

○山口委員 2点質問させてください。1つは、もともと我々はアウトブレイクのときに対応するために不活化技術を導入してほしいという要望を出したように思っております。ただ、そのときに供給減を生じるので、いわゆるライセンスだけを持つということはできないということでしょうか。要するに、承認を受けて薬価がついてしまうと提供しないといけないから、そこのところが一つの壁になっているということですか。

○日赤・五十嵐次長 薬価が収載されますと3カ月以内に供給を開始して、注文があれば出さなければいけないという義務が発生します。インフルエンザ薬で富士フイルムのものは、たしか薬価に収載されていないんですね。

○山口委員 逆にいうと、そういう方法もあるわけですか。

○日赤・五十嵐次長 そうすると、混合診療になってしまいますので。

○山口委員 ですから、実際に議論していたときは緊急時にちゃんと使えるようにしておいてほしい。ですから、緊急時に薬価さえつけてしまえば、すぐに使えるわけです。

○日赤・五十嵐次長 それは行政の問題だろうと思いますけれども。

○山口委員 そこを余り壁にしてほしくないというのが今の私の質問の意図で、だからだめなんだという話ではないような気がします。それはPMDAだけではなくて厚労省に言っていただかないと、その辺は相談していただきたいなと思っております。

 それともう一つ気になるのは、資料2の一番最初のページに、血液事業部会で明確な採用技術が確認されていないからだめなのだというお話なのですけれども、技術の提案は日赤がされるものだと私は理解していて、さっきおっしゃったミラソルをもともと推奨されていたので、それはそれで我々はもちろん反対しないし、それをちゃんと評価してやっていただけるなら、ぜひやってほしいというスタンスであったのかなと思っております。

○日赤・五十嵐次長 PMDAの見解としては、インターセプトも引き続き検討してくださいというところが引っかかっているようで、それをどちらか一本にしてもらわないと次には進めませんねという話でした。

○山口委員 医薬品の開発者としては日赤なわけですよね。日赤がこういうふうにメリットがあってやれるんだと。もちろん今までの議論の中でそれはサポートしてきたつもりなので、ミラソルのほうが導入も非常にやりやすいし、今の御説明でも非常に短時間で済むということであれば、それはそれで問題ない。逆に言えば、こういうことだから進めたいという話であれば、血液事業部会がそれをサポートしないとだめだという話ではないような気がします。もちろんサポートはしますけれども、そういうことのような気がするんです。

○浜口委員長 ほかの先生方いかがですか。長村委員どうぞ。

○長村委員 1点確認とコメントなのですが、以前はインターセプトのほうがウイルス除去率が高いということで何となく引っかかっていたのですが、前回もインターセプトだとPASで置換するということだったんですね。原理的に単純に置きかえれば、それはそうだろうなと。ただ、今回ミラソルのほうも日赤としては置換するとお聞きしているのですが、その点はいかがでしょうか。

○日赤・五十嵐次長 ウイルスの不活化能の違いは、置換なのか血漿に浮遊した血小板なのかの違いではないと思っています。もともと核酸の破壊の仕組みが違いますので、そこは不活化能の違いで出ているのだと我々は認識しています。

○長村委員 今回この流れにおいて置換はされるのでしょうか。

○日赤・五十嵐次長 置換血小板につきましては今、検討を進めているところですけれども、間に合えば置換血小板に導入をするほうがいいとは思っています。ただ、いろいろまだ問題が残っておりますので、現時点で始めたとして置換血小板に導入できるかどうかは今のところまだ不明な状況です。

○長村委員 まだそこは検討中ということですね。前回も2つぐらいあったほうがという話もありましたが、現場で一番いい方法を時間的に実働的にできる方法というものを採用すべきだろうと思います。

 もう一点大きなところが、もし置換してミラソルにして、バクテリアの細菌感染も抑えられるということであれば、有効期間を延長できるかどうかについてはいかがでしょうか。資料2の資料5を見ますと、いまだに日本だけ3日間、ほかが最低でも4日以上でございますので、もしそこが本当に1日でも延期できるのであれば、輸血行政としてかなり恩恵は大きいのではないかと思いますが。

○日赤・佐竹経営会議委員 おっしゃるとおりです。ミラソルにしてもインターセプトにしましても、病原因子を添加するだけではなくて、かなり血小板を痛めることは間違いありません。ですので、そのバランスを見なければいけませんので、海外では添加・不活化しますと全部そのまま期限延長に結びついていますけれども、我々の評価ですと、恐らく日本のバッグの容量のせいかと思いますけれども、ヨーロッパで見ているよりはクオリティーの低下が少し大きいようです。ですので、本当にこのまま期限延長になるかどうかは、もう少し見てみないとわかりません。我々自身も、期限延長になったほうが非常に働きやすいので、こちらもそれは希望しています。

○長村委員 今ちょうど洗浄血小板の販売があって、こういう形で少しでも抗原となるものが少なくなることによって、アレルギーとかそういう副反応も同時に抑えられるようであれば非常にいいかなと。その意味では、確かにインターセプトはほかの物質を入れるので、もしかしたらそれが逆によくないかもしれないなとはちょっと思います。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 岡田委員どうぞ。

○岡田委員 そもそもミラソルを導入するといういきさつは、決定した当時の製造のほうで日本の規格に合わないということでインターセプトは導入が難しいのではないかということで、ミラソルは当時の日本の規格に合うようになっていましたので、それで導入されたというか、選択の余地がないということで導入されたと記憶しています。その後、初流血除去、あとは白血球除去、臨床の現場で血小板製剤の外観検査というのがかなり徹底して、先ほど日本赤十字社から報告がありましたけれども、結構医療現場でもスワリングがないということで使用をやめて、そのバッグから細菌が陽性になったりということで、結構医療現場で見つかることがあるんです。そういう努力によって血小板による細菌感染というのは非常に減って死亡事故もなくなっています。そういうことで、当初ミラソルで予定していた細菌感染対策は、ミラソルを使わなくてもある程度目標は達成できたかなと考えています。

 その一方で、ミラソルはもともと抗ウイルス活性が明らかに弱いということだったのですけれども、その後、いろいろなウイルスが方々でアウトブレイクしているのが現状ですので、そうなると、血小板の病原体不活化というと細菌のほうからウイルスにターゲットが変わらざるを得ないのではないかと考えられると思います。

 もちろん、ウイルスに関しては処理能力以上のウイルスが入っていれば、幾ら不活化しても完璧ではないのですけれども、例えば、ある一定の地域でアウトブレイクがあったときにNAT検査が立ち上がるまである程度の期間がかかります。そのときに赤血球とかFFPはある程度有効期間が長いということで、NATが立ち上がるまでどうにかもたせることが可能もしれませんけれども、血小板は採血から4日しかないので、そういう面ではNATが立ち上がるまでのリリーフ的に病原体の不活化というのは必要かなと考えます。当初の予定では細菌対策がメインだったのですけれども、現状から考えると、細菌よりもターゲットはウイルスになったのではないかということで、そうなると、まだ治験もやっていないので、このままミラソルの治験をやるよりも、ここで方向転換してインターセプトも考えたほうがいいのではないかと考えました。

○浜口委員長 ありがとうございます。

 大戸委員どうぞ。

○大戸委員 5月の「Transfusion」に載った新しい論文ですが、病原体不活化技術によってメリットよりはるかにデメリットのほうが大きいと。特に、不活化技術によって血小板も損傷を受けて、2030%の機能低下。ミラソルの場合には血小板の活性化が起きますので、今4日間で運用しているのが4日間運用できなくなるかもれしない。同じ機能を期待した場合には、逆に3日間に減らさなければいけないかもしれない。

 それから、インターセプトは今回導入しない予定だということですけれども、インターセプトですと凝固因子の活性も20%ぐらい落ちてしまうと。そうすると、アメリカでは1万人ぐらいが事故によって毎年亡くなっているのだそうですが、不活化技術を導入することによって、さらに400人ぐらい出血多量で死ぬ人がふえるだろうということです。

 日本の場合には、病院で術中術後まもなくの死亡が麻酔科学会の統計で2,000人ぐらいいると。そのうち出血多量で死ぬのが200人ぐらいだったと思います。それで考えると、この技術を導入することによってメリット、1人の血小板による細菌感染者を減らすよりも、もっと大きなメリットが受血者にあるのかどうかを冷静に考えたい。むしろデメリットのほうが大きくなる可能性がある。

 もう一つ、非常に重要なことは、日本ではフィブリノゲン製剤が大量出血には認可されておりません。出血多量に対して1つの武器を無しで外科医は戦っているということになります。そうしますと、現場で働いている救急や産科の医師たち、凝固因子が少ないところで手術している肝臓外科医に機能が落ちた血小板を導入していいのかということは真摯に聞く必要があるのではないかと思います。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 白阪委員どうぞ。

○白阪委員 ウイルスについては、非常に将来未知のウイルスがまたアウトブレークする可能性がないとは言えないわけですけれども、先ほど御説明いただいたB、C、Iについては、個別NAT等の御努力でクリアーしていると考えれば、ミラソルでいかれるというのは妥当ではないかと思いますが、今御指摘があった、あるいは日赤のほうでも有効期限を検討されているということで、血小板の機能がどのくらい保たれるのかという検討は進めていただけるということですが、どちらかというと、今お考えのミラソルのほうでいいのではないかと個人的には思います。

○浜口委員長 ありがとうございます。

 委員の先生方から意見が出てまいりましたけれども、導入の検討を開始された状況と現在においては多少状況が変わってきたのかなと思います。特に、目的として挙げられている血小板の中に入っている細菌の対策ということでのミラソルというのは、場合によっては少し方向転換が必要なのかなと感じます。

 もう一つは、メリット、デメリットを考えたときに、果たしてミラソルを入れることによって患者さんに対してメリットが大きくなるかどうかということも少し検討が必要だろうと。

 それから、新興再興感染症等に対する対策として、ミラソルでどの程度ウイルス低減化というのが実際にできるのかということを今一度、細菌感染というよりもウイルス対策ということで少し検討してみてはどうかという御意見があったと思いますけれども、先生方、そういったことでよろしいでしょうか。

 それでは、今回安全技術調査会としては、きょう課題として幾つか出てまいりましたので、これについてもう一度、日本赤十字社のほうで御検討いただくということでお願いしてよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○浜口委員長 では、そういったことでお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、議題3に移りますけれども、先ほど利益相反のところで少し説明があって、岡田委員に関しましては議題1と2のみが利益相反に関係するということで、3は関係しないという訂正が入りますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、議題3、ウイルス核酸増幅試験における国内標準品の力価の再評価について、水澤参考人から説明をお願いします。

○水澤参考人 それでは、御説明させていただきます。

 血液製剤のウイルス安全性の確保対策として実施されている、ウイルス核酸増幅試験のためのHCVHBV及びHIVの国内標準品が製造されてから10年以上が経過しました。これらの国内標準品は当時のWHO国際共同研究の方法に準じて、エンドポイント法によって国際標準品に対する相対力価が定められました。その後、定量法の性能が飛躍的に向上したことから、国際標準品の更新のための共同研究において、主に定量法を用いて標準品の力価を決定するようになりました。また、これらの共同研究において定量法による測定結果に基づいて力価を決定するほうが、エンドポイント法に基づくよりも誤差が小さいということが示されています。一方、我が国においては、血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液のNATのスクリーニングの試験法が、それぞれ平成25年と平成26年に新しいマルチプレックス法に更新されました。それを踏まえて、平成26年にNATガイドラインの改正と輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴うNAT感度の改正が行われ、新技術に応じて評価された国内標準品の整備の必要性が高まりました。

 このような現状を踏まえて、現行のHBV国内標準品とHIV国内標準品の力価を現在使用されている定量試験法を用いて、それぞれの国際標準品に対して再評価をいたしました。共同研究の結果、HBV国内標準品の力価は1057,000IU/mLHIV国内標準品の力価は752,000IU/mLと算出されました。ついては下記のとおり、国内標準品の力価を再評価した力価に再値づけする旨、御審議をお願いいたしたいと思います。

 下にまとめてB型肝炎の国内標準品の現行の力価が43万のところが再評価して106万、HIVが現行が18万のところが7万5,000と再評価されました。

 2ページの「1.背景と目的」は、今説明したのと同じですので省略させていただきます。

 「2.HBV-DNA国内標準品の力価の再評価」。これは4枚めくっていただくと図表が出ておりますけれども、表1にHBV国内標準品の参加施設による測定についてまとめてあります。

 検体は、第3次HBV国際標準品と現行の国内標準品。測定方法は、参加施設が日常実施している定量試験法によって、直線性の成立する範囲で3段階の10倍希釈系列をつくって、日をかえて3回測定しました。参加施設が測定したものを感染研が解析いたしました。全部で7施設、合計で9セットの測定結果が得られまして、この表に示したように、主に3つの試験法で測定が行われました。

 その結果が下にまとめたものですけれども、この表は、国際標準品に対する相対力価で表した各施設の平均値をまとめたものです。相対力価は、測定ごとの国際標準品に対する相対力価を平行線定量法によって算出して、3回分の幾何平均として求めたものを表にまとめました。それをヒストグラムに表したのが左側の図で、測定法ごとに色分けしましたが、このように施設間の測定値もよく一致していましたし、特定の試験法による偏りもありませんでした。

 次の表2ですけれども、よってHBV-DNA国内標準品の国際標準品に対する相対力価の全体の平均というのは、log10IU/mLで示しますと、平均で6.02。これを真数に戻しますと、1057,000IU/mLと評価されました。

 この結果から、HBVの標準品の再評価した力価というのは、現行の約2.5倍になったのですが、今回の測定によって精度よく測定された値が得られたと思っております。

 次に、HIVについても同様の方法で再評価をいたしました。それを表3にまとめましたけれども、先ほどと違う点は6倍希釈系列の3段階で行ったということで、6つの施設がここにお示ししました3つの測定方法で測定を行いまして、次ページが、各施設ごとの相対力価の平均値を表にまとめたものですが、これをヒストグラムにしたのが左側のグラフになります。先ほど同様に、誤差の範囲で非常に結果はよく一致しておりますし、また、特定の試験法が外れているということもありませんでした。

 これに基づいて、全体の相対力価を計算したのが表4になります。全体の平均は4.88log10IU/mL、すなわち7万5,200IU/mLと計算されました。HIVについては、現行の0.42倍という数値が得られたのですけれども、本共同研究において前よりも精度よく測定することができたので、信頼性の高い値が得られたと考えております。

 3ページの「4.結論」ですが、現行のHBV-DNA国内標準品とHIV-RNA国内標準品の力価を現在使用されている定量法を用いて精度よく測定した結果、信頼性の高い力価が得られました。今後NATの精度管理や試験法の改良に国内標準品を使用する場合には、今回再評価した力価を使用することが望ましいと考えておりますので、HBV国内標準品とHIV国内標準品の力価をそれぞれ本共同研究において再評価した力価、106IU/mLと7万5,000IU/mLに再値づけすることを提案させていただきたいと思いますので、御審議よろしくお願いいたします。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 それでは、委員の先生方から御質問・コメントをお願いします。溝上委員どうぞ。

○溝上委員 国内標準品は国産標準品か何かがあって、それに合わせていったということでいいのでしょうか。

○水澤参考人 国際標準品も今、御指摘のように世代が変わってきております。つくった当時は第1ジェネレーションのものにすり合わせを行いました。今回はジェネレーションの第3世代に変わっておりますので、それに対してすり合わせを行いました。ただ、国際標準品が変わったからということだけではなくて、この国内標準品を測定した時代というのは10年以上前ですので、実際にはnested PCRを用いてエンドポイント法で力価を測定するという非常に古い方法で行ってきましたが、現在そういう方法で測定しているところはほとんどないので、現実に使われているリアルタイムに基づいた定量法でもう一回力価を設定したほうが、より正確だと考えたのと、より正確な標準品がガイドラインの改正などを機会にして提供したほうがいいだろうということで行ったものです。

○溝上委員 例えば、臨床のほうでは過去10年、20年もHBV-DNAというのはずっとフォローアップして患者さんを診ていて、がんになる、ならないとか、お薬を使うとか、例えば4logあれば治療の対象になるとか、4log以下はウエイティングでいいというようなガイドラインが出ているわけです。それは古い方法で決まっていて、今度新しい方法で決まったことによって、臨床のほうを変えないといけないんです。そうすると、それを換算する式か何かはあるのですか。例えばこれですと、実数で見ると今まで43万だったものが、今度は100万になって4分の1になっているわけですね。logではそんなに使わないように見えるけれども。そうすると、それ全部を換算して比較しなくてはいけなくなるのですけれども、そういう換算式か何かもつくってもらえるのでしょうか。

○水澤参考人 まず、国際標準品自体も世代が変わるたびにずれがどうしても生じてしまうのですけれども、国際標準品のほうは世代が変わっても1国際単位は1国際単位で変わりませんよということで、多少の変動がありながらもずっと世代を重ねて使われてきています。そういうことを考えると、先生がおっしゃったように実際にlogの誤差というのが今私たちができる測定法の誤差としては、そんなに悪い誤差ではないのですけれども、真数に開いてしまうとちょっと目立つかなというところはありますが、当時としては。

○溝上委員 それはわかります。そのことを言っているのではなくて、つまり、これで変わるのであれば、その換算式をつくってもらっておかないと、臨床の一貫したデータはなかなか直しにくいのではないかと。臨床のほうでガイドラインに4log以上は治療せよ、4log以下はしなくていいとはっきり載っていますので、そこは刷新させる必要がまずあるのではないでしょうかということを、ぜひお願いしたいと思います。

○浜口委員長 白阪委員どうぞ。

○白阪委員 ちょっとお尋ねしたいのは、確認かもしれませんが、臨床検体があります。それを過去の国際標準品と今回はかったので値が違うということをおっしゃっているのか、それはほとんど変わりませんよと。いわゆる誤差範囲の話は別にして、そのことがポイントなので、新しいのでやると従来よりも何倍にふえますよとか、そういうことなのかそれを教えてください。そういう意味であれば、先ほどからおっしゃっているような換算式をいただかないと、ガイドラインにはずっと幾らコピーがどうのこうのという話がありますから。我々はそれ使って治療する、しないを決めているわけです。

○水澤参考人 基本は国際単位ですから、それ自体は変わっていないです。実際に先生方が国内標準品を測定するときの標準に使ってこられたかどうかにかかわると思うのですけれども、ある面残念なのかもしれないのですけれども、実際の体外診断薬として承認されているものはWHOの国際標準品のほうに基づいて決められているので、今回の国内標準品の変更に伴って臨床の先生方のほうに影響が出るということは現実にはないと思っています。

○浜口委員長 山口委員どうぞ。

○山口委員 一次標準品は、この標準をつくった立場として、水澤先生がおっしゃったように、当初のものはエンドポイント法ですので、ハーフlogぐらいの誤差はあるという前提のもとでつくりました。ただし、これを使う目的は血液製剤のNAT試験においてその精度管理に用いていただくものの標準品です。ですから、診断薬等で使われているのは国際標準品に対して各社で較正された標準品が使われているはずので、大元の国際標準品は同じなのですけれども、目的としては血液製剤のNAT試験のときにスクリーニングあるいはランコントロールとして用いる、その較正用の国内標準品です。ただし、そのときは今回も前回も国際標準品に対して一応較正はしております。ただし、国際標準品もずれてきていますし、今度はリアルタイムPCRでやっていますので、今度のほうが真の値に近いとは思いますが、使う目的が違っているということは申し上げておいたほうがいいかと思います。

○溝上委員 だけれども、これはアキュジーンとかロシュとかがつくっているキットで測定してやられたわけですよね。我々がオーダーを出すものは、ロシュとかアキュジーンで測定した結果が帰ってきて、それを我々は診療に使っているわけですね、違いますか。

○山口委員 ロシュの中身の話になると我々もわからないのですけれども、基本的に診断薬を使われるときは国際標準品のIU単位に合わせて国内は較正されています。要するに、自社の標準品は較正されていると思いますので、国際標準品に対して較正している限りは、このデータというのは影響は与えないとなるかと思います。

○溝上委員 影響を与えないなら、これは何のためにあるのですか。

○山口委員 NATガイドラインに基づいて血液製剤の。

○溝上委員 わかりました。

 もう一つ、根本的なことを教えてほしいのですけれども、B型肝炎ウイルスは非常にクワシスピーシスでジェノタイプもものすごくありますし、ダイバーシティーがすごいですよね。HCVはもっとすごいですね、HIVはさらにすごいですね。クワシスピーシスでウイルスはいろいろな配列で存在しているわけです。そこの変異の少ないところを狙ってプライマーをつくったって、それだけではパーフェクトではないですよね。それでこうやってスタンダードをつくって何とかコントロールしようという気持ちはよくわかるのですけれども、そのスタンダードそのものの材料というのはクワシスピーシスのものをプールしてそれを使うのであれば、こんな一定になるはずはないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○山口委員 もう一つのほうのC型もHIVもBもそうなのですけれども、NATガイドラインで書いてあるのは、それぞれジェノタイプ、サブタイプがあるから、ジェノタイプ、サブタイプで同等の感度を保証するような形でバリデーションしてくださいということを申し上げています。ですから、これを使ってバリデーションするわけではなくて、もう一つ参照パネルを用いて、要するにBでも1Aとか1Bとか数々のサブタイプを用いて、それが同等に検出できることをガイドライン上は求めています。ですから、そういうもので評価してくださいということになっています。

○溝上委員 実際の臨床のほうから使わせてもらうと、非常に不思議な現象がアボットとかロシュ、日本には2社しかないからそれを使った場合には大きく違うんです。1logぐらいは簡単に違うんです。我々が知らないところで病院の事務が、こちらが安いからと変えると途端に数字が1logぐらい下がって、おかしい何でだろうと思ったらそうだったということはざらにあるんです。それは仕方がないという面もあるのでしょうけれども、そういうことを考えていたときに、それでインターナショナルにしないといけない、それもわかります。だけれども、この数字を見たらlogで見たらそんなに差はないけれども、4分の1とか4割とか言われると、本当に自分たちが治療しているのが正しいのだろうかという気になってしまいました。

 以上です。

○浜口委員長 ありがとうございます。

 では、白阪委員どうぞ。

○白阪委員 失礼しました。私は、これは臨床の話と直結している話と思いましたけれども、そうではないと。日赤の中での標準の力価の再評価ということですので、これについては私は了承いたします。問題ございません。

○水澤参考人 ありがとうございました。

○浜口委員長 よろしいでしょうか。標準品に関しましては、やはり時代とともに検査のやり方というのが変わってくる中で、そのときそのときにきちんと値づけをやっていくことが非常に重要だということも今回我々も学びましたので、今後そういった方向で進めてまいりたいと思います。

 それでは、再値づけについては委員の先生方から一応了解を得たということでいきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、議題4「日本赤十字社におけるヘモビジランスについて」、日本赤十字社から御説明をお願いします。

○日赤・平安全管理課長 私のほうから資料4を用いて御説明させていただきます。こちらについては、日本赤十字社における2015年のヘモビジランスの結果ということで、輸血後副作用と感染症疑い報告を中心に御説明させていただきます。

 3ページをごらんになってください。副作用・感染症報告の推移ということでございますが、2015年は非溶血性副作用の報告が1,533件、感染症疑いの報告が93件ということでございます。この非溶血性副作用の1,533件を症状別に報告数を分類しますと、アナフィラキシーショックやアナフィラキシー血圧低下、呼吸困難、こちらはアレルギー反応を伴うような重篤なものが約半数ぐらい。そして、蕁麻疹等が30%、発熱等が10%ということでございました。

 こちらの報告時の担当医師による副作用分類でございますが、TRALITACOの評価については、主治医の先生の副作用診断名等を参考に、このうち呼吸困難、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック等の症例中187例についてTRALI疑い症例・TACO疑い症例について評価を実施いたしました。

 5ページを見ていただきますと、医療機関の先生方からTRALI疑いと報告された178件のうち、副作用記録、呼吸困難調査票やX線の写真で浸潤影等も含めて見させていただいた結果、TRALIと判定したものが7件、TRALIの症状はあるけれども診断除外基準等を含めてポッシブルとされたものが6件でございました。

 残る165例について、X線写真から心原性肺水腫があったか、なかったということで分けさせていただいて、心原性肺水腫があったものが92例でございます。そこから、いわゆるオーバードーズの評価をさせていただいた結果、TACOと評価されたものが63件ということでございました。

 こちらの2004年からのTRALITACOの評価状況を6ページのグラフに示しております。青がTRALIの症例で、赤がポッシブル。そして、TACOが緑ということでやっておりますが、2012年のTACOの評価を開始して、TACOの症例が非常に多くふえているということが散見されております。

 7ページですが、TRALIの原因については抗白血球抗体というものがあると言われておりますので、こちらはポッシブルを含む過去の症例を少し評価してみました。350件のTRALIとされた症例のうち、献血者のほうに白血球抗体があった症例が138件。こちらは1件に複数本輸血が使われていることがございますので、人数からすると198名ということでございますが、350名のうち140例に白血球があったところでございます。こちらも解析数を見てみますと、やはり女性が多いというところが特徴かと考えております。

 年代についても献血者について、このような年代が得られてきていると。

 8ページについては、ポッシブルと入れると少しよく見られないところがあるかなということで、20122015年のTRALI症例とポッシブルと2つに分けて、献血者のHLA抗体検査結果といわゆるクロスマッチをする、献血者の抗体と患者のリンパ球でクロスマッチをして反応したか反応しないかということを見させていただきました。これをTRALIとポッシブルで分けてみますと、TRALI症例24例中HLA抗体が献血者にあったものが15例で63%でございました。このうちダイレクトクロスマッチを9件やらせていただいておりまして、このうち8件はクロスマッチが陽性。コンピュータークロスマッチも見させていただきまして、これは2件やって2件ということで、やはりTRALIと診断されて献血者のほうにHLA抗体があった場合は、その確率は信頼度としては高いということかと思います。

 一方、ポッシブルを見ますと、どちらかというとHLA抗体の症例数が減るということと、感度の問題もあるかと思いますが、ダイレクトクロスマッチの陽性率が下がってくるということが特徴になっています。そういう観点で見ますと、TRALIの確定された症例に残るHLA抗体が検出されていない9例については、その原因等について研究をとり進めて安全対策に進めていきたいと考えております。

 9ページですが、TRALIについてはそういう観点でHLA抗体ということでございますので、男性由来血漿の優先製造をやらせていただいております。今400mLFFPについては、その999%は男性の血液から製造させていただいております。成分由来については少しずつ増加しながら、今68%程度というところでございます。

 そういう観点で横のグラフでございますが、TRALI症例の原因製剤がFFPの症例を見ますと、これは2011年ぐらいから開始して少しずつやっていますけれども、女性血液のFFPによる感染が少し減ってきておりますので、一つの安全対策としては効いてきていると認識しております。

 一方、TACOについては10ページでございますけれども、なかなかオーバードーズということでございますが、こちらを見ると原因製剤が非常に特徴的です。もともとたくさん輸液等されて膨れ上がった状態のときに細胞成分がボンと入る、赤血球が入る、もしくは複合製剤が入るということで、TACOを起こしているということが見受けられる結果になっています。

 そういう観点から、私ども今年2月に輸血情報を作成させていただきまして、輸血関連循環過負荷に御注意くださいということで、このような例が報告されていますということで医療機関のほうに情報提供させていただいております。

 続きまして、輸血後感染症でございますが、13ページをごらんになってください。こちらは病原体別の感染症疑い報告数の推移でございます。2015年は合計で93件の報告が上がっております。やはりHBVについてはHBコアの力価の強化と個別NATで、疑い報告の件数自体も少しずつ減ってきている状況ですが、HCVはほぼほぼ変わらない数が報告されているような状況下でございます。

 こちらの症例につきまして、保管検体等を用いまして解析をしたところ、陽性が確認されて因果関係が高いと特定されたものが細菌で2例、HEVで3例、パルボB19で1例ということでございました。

15ページは報告別ということで記載させていただきましたが、済みません、1カ所誤植がございまして、一番下の細菌の自発報告は1例と記載しておりますが、2例の誤りですので訂正をお願いいたします。

 細菌感染につきましては、1例は大腸菌による感染事例でございました。もう1例が黄色ブドウ球菌による感染事例でしたが、大腸菌の患者様のほうは軽快されたと報告されております。一方、黄色ブドウ球菌の方については、少し後遺症ありということで最終的には報告をもらっておりますという状況下でございます。

16ページが、BとCとIのいわゆる被疑薬の採血年別の輸血後感染症の推移でございます。こちらは昨年12月末までに報告のあったものということで締めさせてもらっています。2014年、2015年はB、C、Iの輸血による感染は確認されておりませんが、前回の運営委員会等で御報告いたしましたけれども、2016年1月に個別検体の陰性の血液による極めてウイルス量が低いレベルでの感染事例を1例起こしておりますので、そういう意味では来年は、Bは2016年が1ということになるということでございます。

 続きまして、17ページのHEVでございますけれども、先ほどもお話ししておりますが、2015年はジェノタイプ4の感染が1例、3の感染が2例ということですが、こちらについては患者様は全て軽快、回復されているということでございます。こちらの製剤は全て血小板製剤ですので、先ほど最低感染力価のお話をしましたけれども、このウイルス量掛ける200mLですので、そう計算するとタイター自体は5乗とか7乗という濃度でございました。

18ページは、サイトメガロ感染疑い報告数の推移でございますが、疑い報告数は上がっておりますけれども、献血者検体の調査からは全ての症例で因果関係が認められておりません。

 そういう観点で19ページでございます。こちらについては、昨年8月に新生児のサイトメガロウイルス感染の原因解明のための御協力のお願いということで、周産期実施医療機関にお願いして、もし疑われた場合はお母さんの母乳もいただき解析させてくださいということでお願いさせていただきました。そういう症例の中で、もらい乳も含む母乳の御提供をいただいた10例の解析でございますが、9例から母乳から検出されたサイトメガロウイルスと患児から検出されたサイトメガロウイルスの塩基配列が一致した。1例については、母乳からは検出されておりませんが、こちらについては感染原因が不明ということでございました。

 まとめさせていただきますと、先ほどもお話ししたとおり、抗HLA抗体が検出されなかった群の原因調査を継続していかなければならない。それと、TACO(輸血関連循環過負荷)と評価される症例がふえています。そういう観点から注意喚起を目的にこのようなお知らせ文をつくっておりますが、今現在も報告でTACOは非常にふえてきていますので、医療機関にどのように情報提供していくかということをまた考えたいと思っています。

HBCの厳格化と個別NATの導入によってB、C、Iについては、ほぼほぼ確認されてきておりませんが、今後も継続してこの効果を検証していきたいと思います。

 それと輸血によるE型肝炎については、今年間3例程度でございますが、今後も引き続き情報収集して、リスク等について検討していく。

 最後のサイトメガロについては、上がってくる症例のほとんどが母乳から出ているということもございますので、関連学会の先生方と情報を共有しながら、どのような対策がとれるか、安全対策をとり進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 それでは、委員の先生方からの御意見をお願いしたいと思います。大戸委員どうぞ。

○大戸委員 副反応有害事象のことで患者情報を日本赤十字社に提供することと、患者の個人情報の保護という立場から、現場では大変苦労しております。患者が特定されないと言いながら、実際は肝炎になったとか、肺炎になったとか特定されてしまうわけですね。まして0歳だと実際に特定しようと思えば可能になってしまう。そのことで倫理委員会から最近、患者情報の漏えいが起きないような指導をいろいろな場面で受けるようになってきています。これは赤十字社というよりも、もし可能であれば厚生労働省のほうで、いわば一種の薬剤の有害事象に関して個人情報の提供と個人情報の保護という立場から、どのような取り扱いをしたらいいのか全体的な立場から指針を示していただけると大変助かります。 

○浜口委員長 厚生労働省からありますか。今でなくて構わないみたいですので、御検討いただきまして、委員にまたフィードバックしていただければと思います。

○近藤血液対策課長補佐 厚生労働省で検討させていただきます。ありがとうございます。

○浜口委員長 ほかにいかがでしょうか。ありがとうございました。

 内容としては、年々対策が進んでいるなということを実感することができましたし、このヘモビジランス活動をさらに進めていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 それでは、議題5に移りたいと思います。感染症安全対策体制整備事業につきまして、倉光参考人から御説明をお願いします。

○倉光参考人 よろしくお願いします。

 「1.事業の目的」ですけれども、ジカウイルス、デングウイルス、チクングニアウイルス、ウエストナイルウイルス等の世界の一部の地域に限局的に発生する新たな感染症の病原体についても、今後日本国内に移入されることが想定され、献血血液への混入のリスクはますます高まっており、血液の安全性の観点からも新たな対策が必要とされる。

 これに対し、平成25年からこれらの病原体が移入した場合に備えて、実効性の高い対策として、厚生労働省血液対策課、日本赤十字社との連携のもと、感染症リスク管理体制の構築を行ってきました。平成27年度は以下を実施し、新たなリスクの早期把握と評価を行いました。

 「2.実施内容」。

 「()チクングニアウイルスに対する高感度核酸検査法の開発」につきましては、3ページの表1を見ながら説明したいと思います。高感度プライマーの大規模スクリーニングの結果ということで、まず、チクングニアウイルスの登録配列に対して、プライマーを206セット設計しました。このプライマーに対して相同性検索等で候補となる148セットを絞り込みまして、一般的な株であるチクングニアのS27株を用いてPCRを行い、良好なプライマーを64セット同定しました。この64セットに対してプローブを設計し、相同性の高いものということで17セットを準備し、それに対して輸血症例から分離した3株に対してスクリーニングを再度行いました。その結果、非常にすぐれたプライマーセットとして2セットについて高感度法ということで同定いたしました。

 この方法でとってきたプライマーについては、これまでの文献で載っているプライマーとも同等以上であるということを確認しています。この情報については、日本赤十字社と情報共有をしたところです。

 「()献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルスの核酸検査の実施」。こちらにつきましても、表2を参考にしていただきたいのですけれども、日本赤十字社の協力のもと20人プール100検体、合計2,000人の検体についてデングウイルスの核酸検査を実施しました。その結果、見ていただくとわかるとおり、全ての検体で陰性であることを確認しました。

 「()海外における血液安全に関する情報の収集及び交換」。WHOの血液安全に関するカンファレンスに参加するとともに、各国の血液行政に携わるネットワーク(BRN)に加盟し、活動することにより、感染症リスクの早期察知及び評価に基づく安全対策の検討を行った。また、国立感染症研究所の病原体関連部署と連携し、情報の収集や情報交換を行いました。

 「3.考察」。

 デングウイルスは平成26年8月に約70年ぶりに国内発生し、当該ウイルスに対する血液製剤の安全性確保は喫緊の課題となった。平成26年度のデングウイルス高感度核酸検査法に続き、本事業でさらにチクングニアウイルスに対しても複数の高感度プライマーセットを同定できました。臨床分離株の検討により、これまでの方法に比べて効率的な検査法が準備できたと考えられました。

 また、日本赤十字社の臨床検体を用いて約2,000人について実際にデングウイルス核酸検査を行い、結果を評価できたことは意義深いと考えられる。

 本事業で確立されたデングウイルス及びチクングニアウイルス高感度核酸検査法は、今後のウイルス血液への混入をモニターする有力なツールになると期待される。また、引き続きジカウイルス等への対策も喫緊の課題と考えられる。

 「4.平成28年度の実施計画」です。

()献血で検査落ちとなった等の臨床検体を用いて高感度デングウイルス及びチクングニアウイルスの核酸検査を実施する。()国内移入が危惧されるジカウイルスに対する高感度核酸検査法の開発。()海外における血液安全に関する情報の収集及び交換を行うということです。

 以上です。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 それでは、委員の先生方からコメント・御質問をお願いします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 では、続きまして、議題6に移りたいと思います。NATコントロールサーベイ事業について、水澤参考人からお願いいたします。

○水澤参考人 よろしくお願いします。

 その前に、表の訂正がございます。3枚目の表1の左から3列目の「IS」「JPS」と書いてあるところですが、オレンジのところは全てISInternational Standard)を使ったので、オレンジの部分については全て「IS」に訂正をお願いいたします。

 同様の間違いが、次のページの緑の部分にもございまして、3列目の「IS」「JPS」が交互に入っておりますが、緑の部分については全てInternational Standardを使いましたので、表2も表3も「IS」ですので、御訂正をよろしくお願いいたします。

 では、説明させていただきます。

 「1.目的」については、先ほど標準品のときにも御説明したのですが、平成26年度にNATガイドラインの改正と輸血のためのNATの感度の改正がありました。また、輸血や分画プールの実際に実施している試験法の変更もありました。そこで平成27年度は更新したマルチプレックス試験法において、改定後の感度とNATガイドラインに従って、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びヒト免疫不全ウイルスの3つのウイルスのNATの検出感度とそれぞれの同定試験が適切に精度管理されているかの実情把握を目的として、第7回NATコントロールサーベイを実施しました。

 さらに、異なる遺伝子型のウイルスを見落としなく検出できるかという実情把握を目的として、次回はHBV遺伝子型パネルを用いた第8回NATコントロールサーベイを予定しておりまして、その実施要綱を作成しました。

 「2.実施内容」の()から説明させていただきます。

()は、3つのウイルスの感度パネルを用いた第7回NATコントロールサーベイの実施です。パネルの材料には、HCVHBVHIV-1HIV-2の国際標準品と、HCVHBVHIVの国内標準品を用いました。これらの標準品を陰性血漿で希釈して、NATガイドラインの目標とする感度の3倍濃度のパネルをつくって、それを用いました。

 「結果1」ですけれども、まず、分画製剤の原料プールのNATについてサーベイを行いました。その結果が表1になります。パネルは2種類つくりまして、A5B14までのピンクのところですけれども、これは単独のウイルスを感度の3倍濃度に希釈してつくったパネルです。分画メーカーの結果で赤く示したところが不成立の測定があった部分で、2つの不成立がありましたが、それを除いてはA4のネガティブコントロールは全て陰性。そのほかのところは3回試験をして、3回とも検出もウイルスの種類の同定もきちんとできたということでした。

B14の不成立については、インターナルコントロールがインバリッドだったのですけれども、目的としたHIVそのものはポジティブに出ておりましたので、感度的にははかれていたのだと思います。

 それから、A5の2分の2となっているのは、3回中1回がHIVインバリッドということで試験全体が不成立になっておりましたが、検出目的としていたC型肝炎に関しては検出ができていましたし、B型肝炎に関しては陰性ということで、それなりの感度をもって検出はされていたと判断しております。

 B14は、HIV-2という国際標準品は非常にタイターが低くて材料に限界があったのですが、ぜひはかりたいと思って1回だけでしたが測定した結果をここにお示ししました。

 次のB1117までのものは国際標準品を希釈したパネルですが、例えばB11HCV300IU/mLなのですが、同時に10の4乗以上のHBVのウイルスを共存させたというパネルをHCVHBVHIVそれぞれについて組み合わせてつくったものです。 全体として見て、これは1回だけの測定なのですけれども、全ての施設で1回測定して、全て検出できて、ウイルス種も正しく同定できました。

 よって分画製剤のコントロールサーベイにつきましては、不成立があったものの偽陽性もなく、また、陰性コントロールは全て陰性でしたし、適切に精度管理されていることが確認できたと考えております。

 次に、2ページの「結果2」は、輸血用血液製剤のNATについて実施したものです。輸血用血液のスクリーニング実施施設である日本赤十字社ブロック血液センター全8施設が参加して、Procleix Ultrio Elite ABD Assayを用いて測定しました。この試験法は、3つのウイルスを識別しないスクリーニング試験の部分と、スクリーニング陽性の検体のウイルスを識別するための3種類それぞれの識別試験からなっています。

 その結果は、青と緑の表2にお示ししてあるのですけれども、まず、表2はスクリーニングの検出試験の結果ですが、3回行って全ての施設で3回とも検出することができましたし、ネガティブコントロールは全て陰性でした。それから、EはHIV-2で1回だけの測定でしたが、全ての施設で検出できました。

 下の緑の行は省略させていただきまして、表3は、ウイルスの識別試験の性能をコントロールサーベイいたしました。同じ検体なのですけれども、それぞれ3つの異なる識別試験で測定していただいた結果をまとめて書きました。その結果、1つの施設において赤で書いてあるのですが、ネガティブコントロールでHBVの試験でBが陽性になりました。それからD16の検体はHIVHCVだけが陽性になるはずなのですけれども、ここもBの検査でBが陽性になりました。そのほかの成績については、全ての施設において期待どおりの結果となりました。

 識別試験でBが陽性になったことにつきましては、2ページの中ほどに戻っていただきまして、日本赤十字社によれば、検体C4と検体D16が陽性となった原因として、()検査機器の異常、()試薬の安定性と汚染、()作業手順の3点について調査した結果、()()は考えにくく、()の教育訓練を含めて作業手順に問題は見出されなかったのですが、()の可能性を完全には否定できないと考えられたので、その対応策として当該サーベイ実施担当者に対する座学及び実地研修を実施しました。対応策を実施した後で検体を再送付いたしまして測定してもらいました。その結果が表3の*がついているところですけれども、再測定の結果は、検出試験も識別試験も全て正しく検出・同定できました。

 「結論」として、以上の結果から、分画製剤製造所等と輸血用血液のスクリーニング実施施設において、更新したマルチプレックス試験法において改訂後の感度とNATガイドラインに従ってHCVHBV及びHIVの3ウイルスのNATの検出感度と同定が適切に精度管理されていることを確認いたしました。

 以上が、第7回のサーベイの御報告です。

 次に、3ページの()が実施内容の2番目になりますが、第8回NATコントロールサーベイ実施要綱を作成いたしました。前回と同じ施設と試験法を対象としますが、ただし、輸血用血液製剤のNATにおいては検出試験とHBV識別試験を対象とします。第一次HBV-DNA国際参照遺伝子パネルというものがございまして、それをNATガイドラインで目標とする感度である100IU/mLの3倍濃度となるように希釈して遺伝子パネルを調製し、それをブラインド化して参加者に送付する予定です。参加者は1回測定して感染研が結果を解析するという要綱を作成しました。

 「3.平成28年度の実施計画」です。

 まず、()は上述の平成27年度に作成した実施要綱に従って、HBV遺伝子型パネルを用いた第8回NATコントロールサーベイを実施します。

()は、HIV遺伝子型パネルを用いた第9回NATコントロールサーベイの実施要綱を作成して実施する予定でおります。前回と同じ施設と試験を対象としますが、輸血用血液製剤のNATにおいては検出試験とHIV識別試験を対象とします。第二次HIV-RNA国際参照遺伝子型パネル、ここにお示しするようないろいろなものを含んでいるのですけれども、それをNATガイドラインで目的とする感度の3倍濃度となるように陰性血漿で希釈して、遺伝子型パネルを調製し、ブラインド化して参加者に送付します。参加者は1回測定して、国立感染症研究所が解析する予定です。

 このHIVのパネルの濃度は、原料プールは100IU/mL、輸血用血液は200IU/mLがガイドラインの感度になっていますので、それぞれそれに応じた濃度を用いる予定でいます。

 以上です。

○浜口委員長 ありがとうございました。

 それでは、委員の先生方から御意見・コメントがございましたら、お願いします。山口委員どうぞ。

○山口委員 コントロールサーベイの目的なのですけれども、95%検出限界の3倍を入れるということは、確実に100%検出できないといけないという試験のような形になっているのですが、本来コントロールサーベイの目的は、実際に行われているものの動態を把握するということであって、試験に合格するかどうかというのは主目的ではないような気がするんです。遡及調査ガイドラインの中でもコントロールサーベイについては、むしろ100IU/mLと書かれているわけですので、3倍を使うことを否定はしないのですが、むしろ95%のうち検出限界の5%は逸脱しても構わないという、実際にどの程度の感度があるのかという評価をするのであれば、その辺の感度をサーベイしたほうがいいのではないかなと。これは前にも言ったことですが。

 もう一つは、95%検出限界の3倍というのは各施設がバリデーションでやるべきことではないのかと。国際標準品を使ってその3倍、要するに95%検出限界が100IU/mLであれば、その3倍は必ずポジティブになるということはバリデーションとしてやるべき試験かなという気がするんです。

○水澤参考人 昨年、先生からそういう御意見をいただいて、7回のときはもうパネルがつくってあったのでできないということで、そのまま実施しました。3倍というのがバリデーションだけではないと思うのは、海外のExternal quality controlなどのときに3倍使って1検体でやっているというものも結構ありますので、そういうことも可能とは思いますが、日本のサーベイはもう少し柔軟に、もう少し実情を比較できるようにということであれば、100のパネルは今からでもまだつくることは可能です。ただ、その場合、1本で100だと実情把握が難しいので、複数本数で見ないといけないでしょうかね。

○山口委員 それは考え方の問題だと思うのですが、やはり95%のところで100IU/mLあれば希釈系列をつくったときに送るわけなので、自分たちで希釈系列をつくるわけではないので、希釈のときの誤差も当然出てくるわけですので、限界ギリギリのところですので、そういうことを考えると、実際に95%のところの100IU/mLが、逆に言うとネガティブになることももちろんあり得るわけなので、ただ、本数はどこまでやれるか、実際に配付する作業がありますので、そこは実態に合わせてやっていただかざるを得ないだろうとは思います。

○浜口委員長 よろしいでしょうか。では、山口委員からの御提案について、検討をお願いいたします。

 ほかにいかがでしょうか。溝上委員どうぞ。

○溝上委員 教えてほしいのですが、今、国の事業でB型肝炎の母子感染については補償するということで、いろいろな測定計で測定して、それを書類として出して裁判にかけて補償金が出るというシステムが進んでおります。そうしますと、国際交流というようなこともあって、B、Cだけではなくいろいろなジェノタイプが出ております。そのときに、第一次DNA国際参照遺伝子型パネルを分けてもらえると、そういうコントロール、我々は本省から言われて簡単にジェノタイプを分けて、さらに、その配列で母子感染の有無を識別するという方法をつくりましてやっているのですけれども、どうしても変なものが出てくると。そうすると、どう考えても違うジェノタイプだろうということがございますので、これも分けていただけるとありがたいということでお願いしたいと思います。

○水澤参考人 国際標準パネルというのは実はWHOに請求すると、数に制限はあるのですけれども、有償だとは思いますが、どなたでも交付を受けることができるんです。

○溝上委員 こんなことを言っていいのかどうかあれですけれども、前にWHOからもらったものが非常に雑なものでクワシスピーシスになっていまして、単クローンではなかったんですね。同じジェノタイプFとかも非常に判断に困ったようなことがございますので、一緒のものでやらせてもらえればいいかなと思った次第です。

○水澤参考人 でも、そうすると、今回予定しているのは先生が御指摘になった同じパネルではないかと思うのですが。WHOのB型肝炎の遺伝子型パネルというのは今1種類しかないので、ポールエーリッヒから出ているのですけれども。

○溝上委員 わかりました。そうしたら、もう一度それでしてみますけれども、もしあったら日赤でチェックされるのと、自分のところがどうだということもチェックできれば。

○水澤参考人 わかりました。

○浜口委員長 よろしいでしょうか。ほかにいかがですか。よろしいでしょうか。では、水澤先生、ありがとうございました。

 本日の議題は全て終了いたしましたが、ほかに何か御意見等ございましたらお願いします。いかがでしょうか。

 それでは、事務局に議事を戻したいと思います。

○近藤血液対策課長補佐 浜口委員長、ありがとうございました。

 次回の安全技術調査会の日程は別途、御連絡さしあげたいと思います。

 本日は、長時間にわたり委員の皆様、本当にありがとうございました。これにて「平成28年度第1回血液事業部会安全技術調査会」を終了いたします。


(了)

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