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2016年8月4日 第8回がん診療提供体制のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成28年8月4日(木)13:00~15:00


○場所

田中田村町ビル 8階 8E会議室


○議題

(1)がん診療提供体制のあり方について
 ・がん医療に関する情報提供
 ・第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理
(2)その他
 ・がん診療連携拠点病院等の現状(意識調査)について

○議事

○事務局 少し早い時間ですが、揃われましたので、ただいまより、第8回「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は全ての構成員の皆様に御出席いただいております。

 また、本日は議題に、がん医療に関する情報提供を予定しておりまして、参考人を招聘しております。国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報提供部部長の高山智子参考人でございます。

 また、新たに大臣官房審議官が着任しましたので御紹介します。大臣官房審議官がん対策担当の宮嵜雅則審議官でございます。

 それでは、以後の進行を北島座長、よろしくお願いいたします。

○北島座長 皆さんこんにちは。第8回がん診療提供体制のあり方に関する検討会、全員御出席いただきまして、ありがとうございます。本日もどうぞよろしくお願いします。

 それでは、事務局より資料の確認をお願いしたいと思いますのでよろしくお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。資料1「少数例のがんの情報提供に関する課題」、資料2「がん相談支援センターの現状と課題」、資料3「有効かつ持続可能ながん対策推進基本計画の策定のために」、資料4「第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理」()参考資料として、【参考資料1】開催要綱、【参考資料2】がん診療連携拠点病院等の整備について、資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。

 以上をもちまして撮影を終了し、カメラを収めていただきますよう、御協力お願いいたします。

○北島座長 ありがとうございました。それでは、議題(1)のがん診療提供体制のあり方に移りたいと思います。まずは、がんの情報提供に関する課題について、事務局より、資料1について御説明をお願いします。

○事務局 それでは、資料1を御覧ください。資料1、「少数例のがんの情報提供に関する課題」です。まず、がん医療に関する情報につきましては、院内がん登録のデータを国立がん研究センターのがん情報サービスで情報公開しております。各医療機関で診療実績が年間110件の場合、個人情報保護の観点から具体的な件数ではなく「110件」と現在標記しております。

 これに関して少数例の診療実績を院内がん登録に基づき、具体的な件数の公開の是非について検討してはどうかという点について、資料を作成しております。例えば具体例に挙げておりますように、ある病院で診断したがん種が現在「1件~10件」と標記してあるところを、例えば3件ですとか4件ですとか、具体的に標記してはどうかという論点です。

 次のスライドを御覧ください。現在、がん情報サービスにおきましては、髄芽腫、神経膠腫などの希少な腫瘍について、その下の赤枠で囲った部分、2012年ですと1件から10件と、このように具体的な件数は明示していない、こういった標記が現状です。

 この方針を考える上で、1点留意しなければいけないことがあります。現在、個人情報保護法が改定されております。赤枠で囲っておりますとおり、個人情報の定義が明確化されております。

 次のスライドを御覧ください。個人情報の定義の明確化について、真ん中の段の赤枠の中、黄色い線を付けている部分ですが、個人情報の定義として、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と書かれております。例えば、2年間、3年間の間に、ある病院で診断されたがん種が1件だった場合に、これを公開すると、それが個人情報に当たるかどうか、ここを考えないといけないという点があります。

 次のスライドを御覧ください。新たに、「要配慮個人情報」という規定が設けられております。この要配慮個人情報につきましては、下の欄のオレンジの線で囲った部分ですが「要配慮個人情報」に当たった場合、「情報の取得又は第三者に提供する場合には、原則として事前に本人の同意が必要」とされております。

 具体的にどのようなものが当たるかと申しますと、次のスライドを御覧ください。スライドの中段ですが、(1)要配慮個人情報の定義として、1「病歴」に順ずるもの、(i)診療情報、調剤情報、(ii)健康診断の結果、保健指導の内容、(iii)障害、(iv)ゲノム情報。こういったものが当たるとされております。(2)の部分では、本人の利益のために必要がある場合や他の利益のためにやむを得ない場合等、あらかじめの本人の同意なく要配慮個人情報を取得できることとしている。政令においてもこれらに準ずる一定の場合を定めることとしているとされております。

 これらを踏まえまして、最後のスライドです。現時点では、院内がん登録に基づく少数例をはじめとした個別のデータが、個人情報や要配慮個人情報に該当する可能性がある。現在、都道府県がん診療連携拠点病院の相談員は、施設別がん登録システムを利用しまして、具体的な件数を相談員は把握することが可能でございまして、こうした情報を利用し相談対応を行っております。

 院内がん登録における少数例につきましては、こちらが個人情報に当たるかどうか、この個人情報保護法を所管している個人情報保護委員会に、事務局から照会しまして、法律の取扱を、明確化した上で、公開に関する方針を設定してはどうかとさせていただいています。その間、当面、少数例の取扱いについては、都道府県拠点病院の相談の仕組を啓発する等の対応を行ってはどうかとさせていただいています。現在、この個人情報保護委員会に、取扱いについては、相談や照会を行っている最中ではありますので、この間は、現在既存のシスステムをしっかり普及啓発してはどうかとまとめさせていただいています。資料1についての説明は以上です。

○北島座長 ありがとうございました。議題1は、がん情報提供に関する課題で、特に少数例のがんの情報提供に関する問題だと思います。今御説明いただきましたように、いわゆる各医療機関で、院内がん登録において、少数例の場合に、1件から10件という記載がなされている。そのときに、これを例えば1件とか2件とか、実数を出したときに、それが個人情報に到達してしまう可能性もあるのではないか。そして、同時に、個人情報に関する定義も明確化されてきております。特に先ほども第2条で、他の情報と容易に照合することができて、特定の個人を識別することができることとなるものを含むという、微妙なことなのですけれども、そして同時に改正概要については、新たに要配慮個人情報の規定が設けられたと。先ほども、要配慮個人情報の規定については、オレンジで囲まれた、第三者へ提供する場合に、原則として、事前に本人の同意が必要だということになります。そして「要配慮個人情報の規定の新設」ということで、本人の同意の例外もあるということが説明されました。この院内がん登録に基づく少数例データの取扱い、これを現時点では、拠点病院、あるいは相談室から事務局に照会があって、そこで、個人情報保護委員会に照会して、そしてその取扱いを明確にした上でどうするか、こういう説明であったと思います。これに関して、御意見をお伺いしたいと思います。

○三好構成員 ありがとうございます。患者、家族にとって、個人情報というのは大変大事なものだと思いますので、個人情報保護委員会の照会については賛成です。その上で、質問が事務局にあるのですが、スライド5の中に、今ほど座長のほうからもありました (他の情報と容易に照合することができ)という言葉がありましたが、この可能性というのは実際にあるのか、とても少ないものなのか教えていただけますでしょうか。

○事務局 こちらにつきましては、個人情報保護委員会からの見解というわけではなくて、こういった情報について今後どうすべきかという、他の委員会の議論などをお伺いしますと、非常に高い可能性というわけではないという見解はございます。ただし、やはりどういう形で情報を取り扱うかという明確化は必要だというのが、他の分野の見解と一致している部分です。

○北島座長 よろしいですか。例えば1つでも照合ができた場合には、これは問題になってくるので、その辺の取扱いを今後どうするかと、そういうことだと思います。個人情報保護委員会照会、これはいいということでよろしいですね。ほかに御意見ございますか。

○今村構成員 私も個人情報保護委員会に是非確認をしていただきたいと思います。それを踏まえた上で、例えば1件公開した場合、何かの情報が漏れると個人が特定される可能性があると思うのですが、110件では、かなり幅があります。このことも個人情報保護委員会に聞かなければ分からないと思いますが、例えば10件は駄目だけど、11件であれば大丈夫だということになりかねません。どこかで線引きが必要になってきますが、常識的に考えれば10を超えればそれほど特定できないと何となくは分かります。その辺の件数の線引きというのは、110件というのは、大分幅が広いと思うのですが、厚労省としての感じはどうなのですか。

○事務局 現在こういった情報の公開につきましては、他分野でも1件~10件をマスクしているというのが、横並びで多い状態にはなっております。統計学的にはどうかとか、これまでいろいろな経緯を経て1件~10件をマスクしているところが多いのですが、今回は、やはり希少例を詳しく知るということが目的にはなっておりますので、線引きをどこに持っていくかというのが非常に重要な視点と課題だと思っています。例えば、1件~10件をもう少し、全て公開しないまでも、どこかで区切りをつけていくとか、そういった可能性についても探っている最中です。

○北島座長 その1件~10件の幅というか、件数を決定すると。この件数に関しても、保護委員会に相談すると、そういうことですか。

○事務局 そうですね。こちらからある程度具体案ですとか、具体例を持った上で相談をしなければならないと思っております。まず、例えばがんの希少例について、どういった概念に当たるのかという点で、今照会をかけているところですけれども、より具体的なやり取りをしていく必要があると思いますので、その際には、事務局としてもある程度具体案を以って照会をかけていきたいと考えています。

○北島座長 そうすると、この委員会で大体このくらいの件数とか、具体案をある程度出していただくと、そういうことですね。理論的にこの件数ならいいのではないかとか、そういうことだと思いますが、いかがでしょうか。

○山口構成員 この検討会ではゲノム医療のことが話し合われていますが、そこに密接に関係してくる話でもあると思います。ゲノムに関する個人情報保護の観点、まだ最終決着はついていないと思うのですが、どういう具体的なことが起きるかというと、1例と書いた場合、診断名をぼかして書いても、あるいはカルテ上に家族性腫瘍症候群の診断名をしっかり書くことが多いので、病院の関係者が「1例」と書くとその患者が特定されてしまうことがおきます。それが、ゲノム医療上の問題点になっています。医学的には「1例」という明確な数字が明快ですが、個人情報保護の観点からは心配があります。患者団体の皆さんが、その点をどう考えるかというところが、一番大事と思いますが、同時に生命倫理的な観点からも検討が必要です。私自身は「1例」という数字は避けて、例えば3例以下とか5例以下とか、その程度であれば特定できませんから大きな問題にはならないと思います。

○北島座長 そうすると、例えば1以上、3とか。それはゲノム解析をした人に限るとか、何か条件付きになりますか。

○山口構成員 ゲノム医療の将来は見通せませんが、現状では、多くの医療機関が遺伝性がん、家族性腫瘍を取り扱っています。遺伝子検査は外注でできます。すると、ほとんどの症例では生殖細胞系列の変異を見ているということになります。「1例」といった特定できる数字はよくないと思いますが、特定できなければ問題にならないと思います。

○北川構成員 この点に関しまして、例えば治療法として高難度手術が関与するがん腫といったところに着眼しますと、年間1例と年間10例というのは、手術実績として相当差があると見たほうがいいと思います。患者様側から見たときの、その施設の経験数が正確にお知りになりたい情報だとすると、110というのは、かなり大きな開きがあると考えられます。診療情報をより適正に公開していくという観点からは、個人情報保護委員会の承認のもとなるべく具体的な数字を開示すべき考えます

○北島座長 そうすると、治療上の視点から見た場合に、患者さんはそこの施設の経験数とか、そういうものに反映してくる。そうすると、1例だとあまりこの施設は治療上は問題があるなという見方をしてしまうと、そういう見方も、治療上はあるという御意見ですね。ほかに。

○川上構成員 今の資料の最後のスライドの所で、矢印を上から2つ目です。がん診療拠点病院の相談員は、登録システムを利用すれば、具体的な件数が把握できるので、これを受けて一番最後の所に、相談の仕組みを啓発するとありますから、具体的には症例数を情報公開していなくても、こういった形で相談をうまく利用していただいて、そこで知りたい方には具体的な数字を含めて必要であれば相談応受をするという考え方も可能かと思います。ですから、どこまで情報公開するかということと、その数値が必要かということは、また少し別の議論かと思います。あと、付け加えますと、一番最後、相談の仕組みの啓発とありますけれども、相談対応を啓発するか、相談の仕組の利用を啓発するか、表現を改められたほうがいいかと思いました。以上です。

○北島座長 そうですね。相談の仕組みというよりも、内容とか、その辺はもう少し議論しないと、ちょっと明確ではない。都道府県がん診療拠点病院の相談員というのは、その辺の周知とか全部把握していると理解してよろしいのですか。

○事務局 はい、補足いたします。この相談員は、国立がん研究センターの研修を受けた、登録システムを利用するための研修を受けた相談員が配置されております。ただ、その情報としても、相談員でさえも1件という数字は分からないような公開になっているということで、具体的には10件の中でもある程度のところでマスクされているということは聞いております。

○北島座長 そうすると、相談員でも、何件という正確な数値はつかんでいない可能性が高い。

○事務局 5件以上の件数について相談員は把握できると聞いております。

○北島座長 5件以上は把握できる。

○天野構成員 患者団体からは、かねてより、特に希少がんであるとか、小児がんの患者にとっては、少数例であっても、極めて貴重な情報ですので、こういった個人情報保護上の問題がなければ、極力公開していただきたいとお願いしてまいりました。先ほど御指摘があったように、相談員を通じて聞くというのは、例えば東京都であるだとか、特定の地域の医療機関を横並びで患者さんが知りたいと思ったときに、1つずつの施設について、相談員の方に個別に症例数を聞いていくというのは、非現実的です。そういった対応は正直あり得ないと考えておりますので、個人情報保護上、問題がなければ、公開いただくということでお願いしたいと考えております。

 また、他の情報と容易に照合することができるかどうかという論点があるかと思いますが、私、不勉強で、具体例のイメージができないのですが、例えば守秘義務のかかっている医療機関の病院関係者であるとか、職員等が漏らすことがない限りは、症例数が公開されても照合するということは、なかなか難しいのではないかと感じるのですが、その辺りはいかがでしょうか。もし分かれば教えていただければと思います。

○事務局 ありがとうございました。今いただいた守秘義務の観点ですと、医療従事者が情報を漏らすというのは、個人情報保護法以前の問題であって、それはまず、あってはならないこととして扱わないといけないものと認識しております。ただ、情報を他の情報と容易に照合するという、この例につきましては、なかなか具体例を想定するのも難しいのですが、ただ、先ほど座長がおっしゃったように、1件も起こってはならないということもありますので、可能な限り慎重に議論をした上で、公開については、引き続き対応していきたいと考えております。

○北島座長 本人の同意とかありますと、やはり相談室の機能というのが、非常に大きな責任を持ってくる。それと同時に、本人の同意も必要だという、第三者に、ですから、その辺の、今後また相談員との相談の内容も、非常に今後重要になってくるなという印象を持っていますが、いかがでしょうか。

○高山参考人 すみません。参考人の国立がん研究センターの高山です。今の仕組みの中で、少し補足をさせていただきますと、今現在院内がん登録の結果を使っておりますので、タイムラグがございます。今現在最新のものでも、2013年の実績になります。とすると、医師の先生は非常に異動されることが多いですので、検索システムを使って、患者さんは検索結果の数を知りたいというよりは、自分のがんを診てくれる先生がどこにいるのかを探したい、知りたいということになりますので、その先生がもし3年前のデータですと、(検索した)病院にその先生がいるのかどうかということが分からない状況にもなります。ですので、原則としては、可能な限り、相談室同士で、対応してくれる先生がいるかどうかということを照会をして、もちろん患者さんに御確認をさせていただいた上で、こういった患者さんがいるのだけれども、そちらに行っても大丈夫かという形で、できるだけつないだほうがいいだろうということは、今、研修会の中でも扱っているような状況です。院内がん登録の件数そのものにも非常に限界があります。たとえば、取り方ですとか、全体のがんの3分の2程度しか登録されていないという現状もありますので、その辺は慎重に、数の議論と、必要としている患者さんがどうつながっていくのか、医療者としてつないでいけるのかということを、もちろん大切なこととして、相談室だけではなくて、対応する仕組み、病院として対応するということが必要かと思います。

○北島座長 ありがとうございます。今非常に高山参考人から頂いた意見は重要で、やはり相談室、相談員の機能だけでは、これからは対応できない。やはり拠点病院における相談室のネットワーク、これが非常に重要になってくると思います。ですから、その辺のもう少し相談室間のネットワークの構築とか、そういうところまで考えないと、これは対応できないのではないかと、そういう御意見だと思いますが、いかがでしょう。本当に貴重な意見、これからまた相談室に関して、御説明いただく予定になっておりますが、いかがでしょう。

○中釜構成員 この定義にもありますけれども、他の情報と容易に照合で、個人が特定できるかどうか。特にがんの領域では、イメージはしにくいですけれども、先ほど山口構成員が指摘したように、とはいっても1という数は、なかなか想定しづらい状況が起き得るということもあるので、どの辺りに数を設定するのかという議論になってくると思うのです。ただ、患者の視点からすると、どの病院がどのくらいの症例を扱っている情報というのは、非常に重要で、それが非常に少ないか、ある程度の数があるかという判断の材料としてほしい。そのときの数を3に設定するのか、5なのかというところではないかなとは思います。

○北島座長 先ほども北川委員から出た治療の視点から見た場合に、その施設がどのくらい扱っているか、これは知りたいことになります。ですから、いろいろなファクターが入ってくる。数を露呈するためには、治療の視点からと、相談室のネットワークの問題も大事だし、主治医がどこにいるか、そういうことは気がつきませんでしたけれども、それも大事なことだと思いますね。特に希少疾患においては。どうでしょうか、意見はこれで出尽したでしょうか。よろしいですか。その辺、こういう意見があって、希少疾患の数値の設定に関しては、こういうファクターを考慮した上で決定するということしか今結論が出ていなくて、1はまずいだろうという御意見がありました。それから、ゲノム解析を考慮に入れるとか、そういう条件を付けて、数値はこの委員会ではなかなか決定しにくいけれども、そういうファクターがありますということは、附帯状況として付けていただければと思います。よろしいですか。ありがとうございました。

 それでは、次にがんの相談支援についてに移りたいと思います。先ほども御紹介いただきましたように、参考人にお越しいただいていますので、御発表をいただきたいと思います。それでは、高山参考人、資料2について、御発表をよろしくお願いいたします。

○高山参考人 国立がん研究センター、がん対策情報センターの高山と申します。相談員の研修を、私どものがん対策情報センターで対応させていただいているという背景もありまして、今日は相談員の方々の声も含めて御紹介させていただければと思っています。よろしくお願いします。

 まず資料2の下の所を御説明させていただきますが、これは拠点病院の整備指針に書かれている内容です。赤字にしているのは、その前の整備指針から、新たに平成261月に加えられた項目になります。ということで、相談支援センターの課題や役割が非常に増えているという背景があります。例えば相談員は2人ですとか、先ほどもありましたが、主治医等から相談室の体制を紹介する、周知される必要があるですとか、相談者からフィードバックを得る体制を作る。そのほかにも業務として、真ん中の所にありますが、就労に関する相談、広報・周知活動を行う、相談に携わる者の教育・支援サービス向上に向けた取組を行うということも追加されました。それ以外に下の所、今、希少がんというお話がありましたが、臨床試験などの情報も提供する。そして、県内の相談に関わる者の指導・研修を行うということも、都道府県拠点病院の役割として加えられているところです。ということで、非常に役割もですが、やる内容も増えてきているという背景があります。

 では、実際どのように変わってきているのかということで、幾つか御紹介していきます。次の3ページですが、上は相談件数になります。これは現況報告で報告されたもので、数の検証はされていませんが、トレンドとして平成21年から見ていくと、拠点病院の数も増えてはいますが、全体として相談件数は増えている。1施設当たりの相談件数も、1日当たり10件程度ということで、これも施設によって、もちろん差はかなり大きくはあるところですが、全体としても増えているという状況になります。

 相談員の数ですが、基礎研修(3)を修了した者が、平成21年度から平成27年度ということで、約1名ぐらいは増えているという状況があります。ただ、こういったデータにはなかなか上がってきていないところもある。これは絶対に上がってこないなというところで、相談員の方からよく聞かれるのは、要件は要件で、実際、現状は違うというような、要件と現実の乖離があるということも、声として多く聞かれるところです。専従のはずが専従でない、あるいは専従であっても週3日の非常勤の専従だと、それでは全然人手が足りないという声も聞こえてまいります。

 その下にまいりますが、これも活動状況になります。これも新たに加えられているところで、患者・家族の方が「語り合う場」の設定をするですとか、「各都道府県で相談員向けの研修」を行うというものの、実績の報告になります。まず左の円グラフで見ると、「語り合う場」というのは全国で1,030の場が設けられていて、1施設当たり2.4程度になります。開催は1施設当たり2週間に1回、あるいは毎週開かれている所、それ以上開かれている所が大多数という結果でした。

 右のほう、地域、都道府県ごとの研修の開催件数ですが、これも非常に増えている。平成261月から、やってくださいということで整備に入ったこともあって、非常にきちんと実績を伸ばして、頑張っているという状況が、ここからも見えてくるかと思います。ただ、こういった非常に頑張って開催しているということにはなりますが、その回数だけで見えてこないものとしては、企画、運営、マネジメントというところも、かなり現場としては負荷が大きくなっているのではないかということも言えますし、実際、都道府県拠点病院の場合には、様々な事務局機能、こういった研修の開催等で、非常に多忙になっているという声は多く聞かれているところです。

 実際にがん相談支援センターはどういうことをするのかということ、相談支援の大事さということは、皆さんも言葉にはされるところですが、では、自分たちは何を目指すのかということで、これは都道府県がん診療連絡協議会の中に、情報提供相談支援部会ということで部会が設けられていますが、そこで自分たちが何を目指すのかということをまとめたものを、更に少し改編したものになります。がん相談支援センターは、院内外を問わず、匿名で、無料で、誰でも信頼できる情報を、中立の立場で、説明や橋渡しをすることで、相談者自らが解決できるよう支援する。これを目指して活動することになります。ただ、こういったことがやりたくてもできない、頑張ってはいるけれどもなかなか背景として難しいところがあるということで、少し整理をさせていただきましたので、この後で御紹介させていただきます。

 これに関連して、同じく情報提供・相談支援部会で、これは7月、一番直近のデータになりますが、都道府県拠点病院を通じて、現在、(全国のがん相談支援センターで)対応や解決がされていないと思われる患者・家族・市民のがんに関する困り事ということで、意見をまとめさせていただきました。47都道府県中40県から706の意見が寄せられています。これで全体として見て取れるのは、やはり相談室だけでは解決が難しいことがたくさんあって、これが相談を対応している中で、いろいろな状況が見えてきている。そこが解決されないと、なかなか患者さん、家族も救われないということで、相談支援センターから上がってきているものになります。社会状況ですとか社会保障制度上の困難、医療体制の変化・ひずみ、全国のネットワーク、機関連携、アクセスの保障、院内の機能・立場。あとは、対応する必要があると思いつつも、なかなかできていない活動ということでも上げられています。こういったことも交えながら、次のページから御紹介させていただきます。

 先ほどのがん相談支援センターの役割・機能ということで、この4つの側面から、まず「誰でも」ということに関しては、相談支援センターが知られていないということがあります。「信頼できる情報を」ということに関しては、やはり情報環境の変化、(施策)で求められている範囲が広がって、相談員として、相談支援センターとしての知識・スキルが必要になって、この力を付けることも必要ですが、これだけでは対応しきれない状況も生まれているようです。「自ら解決できるように支援する」ということに関しては、相談者が非常に多様化している、社会背景も影響していると思います。複雑なニーズ、こういったことに対応が難しくなっているという状況があります。そして、「中立の立場で橋渡し」ということで、やはりこれまでの病院の機能とは若干違う、誰でも無料で相談対応するということで、なかなか院内でも協力が得られないとか、理解されないという状況もあるようです。これについて、少しずつ説明を加えていきます。

 まず、知られていないということに関してですが、認知度、これは皆さん、いろいろな所で御覧になっているかと思いますが、上2つが市民を対象としたもので、世論調査も入っていますが、10%未満の認知度。2014年、一番下にあるのが拠点病院患者体験調査ということで、拠点病院の中でがんの患者さんを対象にした調査で、約5割しか認知度がないという結果です。これに関して、整備指針でも周知活動を行うということで、平成261月から、まずは相談支援センターの名称がばらばらだったものを統一していきましょうということになって、周知のPR素材・資源なども、がん対策情報センターでも作らせていただいて、全国でもこういった下の写真にあるような活動が行われているところです。土日返上で、いろいろな所で、イベント等で周知活動を行っているということがあります。ただ、これだけではやはり限界があるということが言えます。

 次の10ページの上に行きますと、これはパイロット調査ということで、がん相談支援センター16施設に関して、実際に相談室に来られたケースに関して、担当医からの紹介が有ったか無かったかということで見たものですが、整備指針には主治医等から周知されるような仕組みということになってはいますが、施設によってはなかなか主治医、担当医等からはつながれていない状況がありそうだというところになります。こういった、まずは整備指針に書かれていることを、きちんとやっていくことが必要ではないかということと、あと、相談支援センターだけで周知活動することは、やはり限界がありますので、県、国、その他の地域の医療者、あるいは県内で養成されているサポーターなども、いろいろな所で出来てきていますので、そういった所からも周知を図っていく仕組みということと、あと、先ほど申し上げたように、院内の医療者からきちんとつなげる体制作りというのが、非常に大事になってくるかと思います。

 次に情報の背景、環境が変わってきているということになりますが、診療ガイドライン、これも10年前と比べて、学会によっては2年に1度、あとは毎年改訂される所もあります。これに基づいて、がん情報サービスの情報も作っていますが、まず実際問題、間に合っていません。こういった背景もあります。

 あとは医療制度が変わって、支援の背景が臨床から生活までということで、相談員のスキルはこれまで以上に求められていますが、なかなか間に合っていない。あとはスタッフの異動が多く、これも前から指摘をされているところですが、まだ全体の約3割は経験が2年未満という相談員で占められています。

 次の12ページが、実際に提供させていただいている研修になりますが、上の赤線、右のほうに矢印を引いてある上のほうが、基礎研修(1)(2)(3)ということで、整備指針で示されている研修。それ以外が、それをサポートするため、継続研修や県内での研修をサポートするために、(国立がん研究センターで提供する)研修としていろいろな試みをして、学習の機会を設けさせていただいています。

 あと、その下ですが、これも平成27年度からになります。ようやく継続研修という形で、Eラーニングで研修を提供できるようになりました。がんに関して学ぶ内容や情報が、1回受けただけではいいというわけではありませんので、情報のupdateということで、がん対策や相談支援、あとは施策なども新しくなることを知識としてupdateするとともに、新しい研修内容ということも加えて、3年で必ず更新されるような形で、ようやく提供を始めたところです。こういったところも充実させていく必要はあると思われます。

 課題ということになりますが、こういった継続研修、あるいは計画的な人材育成と配置を促すということのほかに、先ほども連携ということで上げられていましたが、なかなか専門的なところ。相談室は窓口になれたとしても、治験、臨床試験、遺伝カウンセリング等、こういった窓口自体を充実させるということときちんとつなげる体制。そして、生活面に関しては、やはり県内での施策というのは県ごとに進められていることもありますので、県内の地域の状況を俯瞰しつつ、都道府県拠点病院と行政が連携するとか、あと、都道府県拠点病院も事務局機能として強化することも必要になってくると思います。

 あと、こういったものをまた県ばらばらで進められてしまうと、均てん化という面で課題がまた残されてしまいますので、全体が俯瞰できるようなモニタリング機能、これも相談室で一部担い始めているところだと思いますし、私ども国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンターでも一部、担わせていただいている状況かと思います。

 その下が、やはりこれも相談員からあげられていることで、最近、相談内容が非常に困難になっている、多様化しているという声が聞かれます。相談者の二極化、多様化とありますが、実際に非常に情報を持って来られる方の一方で、救急外来に肝破裂などで来られて、始めてがんがそこで見つかったと。そこで、がんだからということで相談室に紹介されるというケースも増えてきているようだ、ということも聞かれるケースがあります。ということで、1件当たりの対応時間も非常に増えています。(相談に来られる人が)困難な状況ということで、その状況を示すものということで、患者体験調査のがん相談支援センターの利用者と全拠点病院利用者で、背景を少し比較して見てみますと、やはり病気が非常に悪めというか、進んだ状態、あるいは入院、通院、あとは痛みがあるという、身体などにも、やはり少し重めの方が相談室を利用しているという状況が見えてきています。

 次の16ページになりますが、患者体験調査の結果になりますが、がん相談支援センターを実際に利用された方がどのくらい満足されているかということでは、81%ほど。その下のパイロット調査では、相談室の利用者に聞いたものでも85%ということで、状態が悪い方に対して、ある一定以上は非常に良く対応しているのではないかなと思います。

 相談室に来られる人が、情報を持っている人だけではないということでは、やはり罹患前、がんになる前の人たちにも正しい知識の普及というのが、ここからも見えてくる課題だと思いますし、各現場、制度の間で見落とされてしまう、あるいはそこの狭間に入ってしまうようなケースも、相談室には紹介されることもありますので、そういった現場から上がってくる実状というものも、こういった病院の中でのフィードバック、がん対策のフィードバックにも生かしていく必要があると思いますし、そういったものを(がん相談支援センターで)担えそうになってきているという状況もあるかと思います。

 一番最後の課題、病院内で認知されていないということがあります。やはり認知されていないと、相談が必要そうな、例えば認知症でなかなか状態の理解もできない人が、そのまま何のサポートもなく外来で対応されているということも、起こり得るということでは、病院の中できちんと必要な人に相談対応の支援を利用していただくことが必要かと思います。ただ、補助金で運営されているということで、お金が入るような退院支援のほうに人(スタッフの配置)が流れているという状況もあるようです。現場からも、気力だけで頑張っている、使命感だけで頑張っているということで、なかなか続かないという声も聞こえてきますので、こういったことも対応していく必要があるかと思います。

 これに関するネットワークということで、次のページですが、平成24年度から少しずつ始めてきている取組です。今は県内で施策が進んでいる所もありますが、やはり患者さんやご家族は、県を超えて病院を利用するということもあります。親御さんが遠くにいる、また、悪くなってから地元に帰る、あるいは先ほどの希少がんという例もそうですが、地域を超えての支援ネットワークということで、地域のがん相談支援フォーラムということで、ブロックごとの研修。これで、だいぶネットワークが出来てきているかなと感じられるところです。

 これが生かされた例が、その下にあります熊本地震のときの受入体制です。がんの方々が、そこの病院で対応できないといったときに、どこで受入れができるかということの情報を、比較的迅速に相談支援の方がお互いに助け合おうということで、がん対策情報センターで情報を集めさせていただいて、提供させていただいたという背景もあります。

 最後になりますが、こういったことでまず拠点病院内の相談支援センターの活動の理解を促すということが必要かと思いますし、あと、十分な相談支援体制が出来るようにということで、ここに支援していくとともに、病院のインセンティブが働くような、頑張っている病院には何か報酬が付くような、DPC係数とか、そういった診療報酬化なども一方で検討していく必要があるかと思います。

 ただ、その一方では、無料で相談できる機能というのもやはり残していかないと、これは非常に困っている方もいらっしゃいますので、こういったことに対応していく必要があるかと考えています。以上で終わります。

○北島座長 ありがとうございました。この何年か、相談センターの内容が12項目と非常に多様化してきて、それをどうやって対応していくかということと、やはりスキルとかそういうものが、時代の背景でだんだん変わってきている、それをどうやって対応していくのだろうかと。それから、お互いに勉強するために、今はいろいろネットワークの構築もされている。そのような発表を高山先生から頂きましたが、どなたか御質問、あるいは御意見がありましたら、お伺いします。

○神野構成員 よく分かりました、ありがとうございます。恐らくがんの患者さんからしてみますと、我が事ですから、自分のことに関しては一生懸命調べます。そうしますと、今のネット環境とか、いろいろな環境の中で、御自分のことを一生懸命調べる知識と、相談員の方の広くいろいろなことを知っていらっしゃる知識との間のdiscrepancyがどれぐらいあるかということで、これからの利用ということになると思うのですが、恐らく社会は高齢化もしているし、ゲノム医療も入ってくるし、おっしゃるようにいっぱいいろいろな要素があるという、背景があると思います。

 その中で一番大事にしなければいけないKPI(Keep Performance Index)というのは、私はやはり利用率よりも、患者満足度なのかなと思うのです。今回、80数パーセントの満足度ということですが、ただ、これは利用している方が少ない中での満足度ですので、この満足度をまず前面にお出しになって、利用率を上げていくという戦略なのかなと思うのですが、その辺のどれを重視しているかということに関して、いかがでしょうか。

○高山参考人 本当にそのとおりだと思います。まずは利用された方が、そこで救われるというか、自分の向き合う先が分かるとか、情報が整理されるということが大事かと思いますので、まずは満足度というところが一番大事かと思います。ただ、一方で相談員の者たちも非常に懸念しているのは、そこまで(情報が)届いていない。利用された方は、もっと早く(がん相談支援センターを)知っていればよかったと、口々に言われることもあるようで、何でもっと知る機会が提供できなかったかというところを、やはりそこもサポート、作っていかないといけないということと、あと、おっしゃっていただいたように、利用率を上げることだけで見てしまうと、例えば何でも相談室に送り込んでしまえみたいなことが本当にいいかというと、そんなことは絶対になくて、主治医の先生なりがきちんと対応されて、ただ、主治医の先生方も非常に時間が短い中で対応しきれないところを、病院としてサポートするという1つとして、地域の中で相談支援センターという所があると思いますので、まずは満足度と、本当に必要な人にうまくちゃんとつながれるというところが、もう1つ大事かなと思います。

○北島座長 ほかにありますか。

○三好構成員 2点あります。まず1点目ですが、相談支援センターの存在というのは、本当に私たち患者にとってはとても大きな場所でして、うちのメンバーや患者さんたちも、本当に相談支援センターに行って心が癒されたというのもそうですし、情報提供していただいたということで、大変有難く思っています。その上で1点ですが、今の高山先生のお話にもありましたし、机上配布の資料等も拝見しますと、本当にたくさんの分野の御相談が来ています。これが本当にがん対策の縮図のような気がしまして、これだけの問題が、まだたくさんあるというのを感じています。なので是非、相談支援センターで相談して終わりということではなくて、医療機関へのフィードバックであったりとか、医療機関全体の問題として、今一度こういったことを考えていく時期にもなっているのかなと思いますので、相談支援ということを大きな柱の1つとして、捉えていっていただきたいというのが1点です。

 もう1点は患者・家族が語り合う場というところです。私たち患者会の部分にもなってくるのですが、今のところ拠点病院の指定要件が、そういう場を設けることが望ましいという書き方に留まっていると思いますが、実際、患者サロンであるとか、そういった所に集まってくる患者さんにとっては、「私もそうだったよ」という一言でとても癒されたりとか、また治療に向かえる気持ちになったとか、本当にそういった話がたくさん出てきているので、そろそろ「望ましい」というところから「設置すること」という条件に変えていっていただけたら大変有難いと思っています。以上です。

○北島座長 ありがとうございます。

○今村構成員 まず高山先生にお伺いしたいのは、今、がん診療連携拠点病院の中の周知が十分でないという話を伺って驚いたのですが、周知の方法はいろいろあると思いますが、周知が徹底してきて、本当に多くの患者さんが利用される状況になった場合、これだけ多岐にわたる内容の業務をされている現場としては、やはり負荷が相当掛かって、対応できないという悩ましい問題もあるのかなと思っています。つまり、現状の数だから丁寧に対応できている。でも、周知されて患者さんが増えてきたら対応できなくなるというのは、矛盾した感じがするのですが、その辺はどうなのでしょうか。もう少しスタッフが増えなければ、とても無理なのかということが1点です。

 もう1点は周知について、例えばがん診療連携拠点病院の外来を1回目に受診したとき、あるいは入院したときに、簡単に中身を知らせる、お困りがあったらこういう所を利用してくださいというパンフレットを1枚渡しておくだけでも、すいぶん違うと思います。整備指針にある主治医あるいは担当医から周知するという話は、恐らく個人の先生で一生懸命意識のある方は詳しく紹介し、そうでない所は全然していないという状況だと思うのですが、そういう対応というのは可能なのかどうかということを伺いたいと思います。

 それから、厚労省に教えていただきたいのは、少し異質な質問になるかもしれませんが、今、日本の国民の方というのは、例えば医療保険やがん保険など、民間の保険会社を利用している方というのは相当に多いのではないかと思いますが、そういう保険で様々な情報提供のようなことをサービスとして提供している、どこの病院にどういう件数があるというようなことを教えてくれる保険もあると聞いているのですが、保険会社から例えばそういうアクセスが高山先生のほうにある、あるいは病院では利用していないけれども、民間保険のほうで、いろいろな相談体制に応えているといったデータがあるのかどうかを教えていただければと思います。

○北島座長 では、まず高山先生からお願いします。

○高山参考人 まず1件目の、今の件数だから対応できているのではないかということに関してですが、私もそのように思います。恐らくこれからの日本を考えると、もっともっといろいろな課題が、先ほどもゲノム医療というのがありましたけれども、新たな課題がいっぱい医療現場に持ち込まれることになると思うのです。まず取っ掛かりとしては相談支援で、こういうやり方があるとか、施策としてもいろいろな活動がそこに入ってくることもありますので、やり方はそこで作り上げて、先ほど三好構成員からもありましたが、病院にフィードバックしていくことで、相談支援センターだけで対応することではないこともいっぱいあると思いますので、そこは病院の中に還元していく、あるいは地域に還元していくことで、まず作り上げるきっかけは相談支援センターかもしれませんが、そこは徐々にみんなでできるようにしていくということも、一方で必要かなと思います。それにこちらも耐えられるかどうかということがあるかもしれませんが、そういったことができるといいのかなと思っています。

 もう1つ、仕組みとして相談支援を紹介するというところかと思いますが、先ほど御紹介させていただいたパイロットの中でも、担当医からの紹介が有りで件数が多かったところは、例えば退院支援で情報をそこの相談支援センターでもらってきて、みたいなことでつながれている。それであったとしても、本人はそのときは相談は必要でなかったとしても、相談支援センターを知る仕組みにはなると思いますので、うまく流れの中に取り込むというのは、一番手っ取り早いというか、必要な体制なのかなとは考えています。

○北島座長 それでは、民間の保険会社から提供情報があるのかどうか。

○事務局 今、具体的な数値ですとか、相談内容の詳細なデータは持ち合わせていないのですが、会社によっては確かに今村構成員の御指摘どおり、会社とある決まったがん専門の病院で連携をして、必要な情報を提供している、御相談に応じているという例もあると聞いていますし、あと、無料で相談の内容に応じて、看護師さんや栄養士さん等、適切な職業の方につないでいるという取組をされている会社もあるとは聞いていますので、そういった取組は今後、参考にさせていただきたいと思います。

○山口構成員 企業・民間保険の話は、静岡がんセンターと生命保険会社、がん保険をやっている所の共同研究で、もう10年近くになると思うのですが進めてきていて、我々はノウハウを提供し、保険会社は看護師を専従でそれに当てて、がん保険に加入していた人ががんになったときに、その場に駆けつけて、寄り添って、一緒に診療に当たるということをやってきました。私自身、すごくいいサービスだなと思っていたのですが、余り周知されない、使われないという状況が一方でありました。ただ、アイディアとしてはすごくいいので、今は3社か4社が、そういう形でやっているはずです。

○北島座長 そのときに看護師さんは、看護協会が認定しているがん専門看護師とか、何かそういう決まりがありますか。

○山口構成員 そこまではいっていないと思います。少なくとも私たちが始めたときは、いっていませんでした。

○北島座長 高山先生、何か御意見はありますか。

○高山参考人 保険会社に関して、私も補足のコメントをさせていただきます。国立がん研究センターと幾つかの保険会社さんと、情報提供の包括的提携という形で結ばせていただいておりまして、保険の勧誘とは切り離した形で、情報提供を一緒にお手伝いいただいているということがあります。

 実際にはパンフレットを一緒に作らせていただいて、そこに相談支援センターなども載せさせていただいて、県ごとに配布をしたりですとか、あと、非常に保険会社さんはお金もお持ちというか、そういった資材にお金を掛けていただけるので、私たちができないような立派な資材を作っていただいて、何十万件にも、特にがんになっていない方をターゲットとされている場合が多いので、そういったところに周知という協力をさせているようなことはあります。

○北島座長 先ほど相談センターの業務を、内容として12項目頂きましたが、非常に多岐にわたってきた。そうすると、人が足りない。すると、相談員をがんセンターの講習で基礎12、それから指導相談員ですか。そういう教育をしてくる。ただ、やはり相談員になりたいという人がどんどん出てこないといけないと思うのですが、その際に相談員になったということが、キャリアパスにどうやって持っていけるかという、そこまでやらないと、そういう人は増えてこないと思うのです。

 ですから継続研修、これは知識とスキルを補完するために絶対必要だと思うのですが、やはりがんセンターの継続研修のみならず、各拠点病院の中で、例えばセンターが周知徹底しないのだと、やはりキャンサーボードとか、そういう機能をもう少し大きくして、院内で徹底させるとか、そういう工夫を病院がやるべきだと思っているのですが、いかがでしょうか。

○高山参考人 今も相談支援センター、あるいは相談員、個別の努力で、いろいろな所に顔を出す、そういったカンファレンスに顔を出す、キャンサーボードに顔を出すということはされているようですが、それが全体に行き渡っているわけではないので、やはり制度というか、整備指針なのか分からないですが、形だけではいけないのですが、そういったことで、やはり体制ということで強化をしていただけると、院内に必ず知ってもらえるということができるかと思います。

○北島座長 そうですね。相談センターの充実のためには、今、幾つか御意見を頂きましたが、やはりこれから今出た意見、それから高山先生の研究の内容、これを加味して相談センターの充実、こうすれば充実できるのだと。それから、相談員の育成とか、そういうことを是非これから充実させていくようにしていただければと思います。

 だいぶ時間が過ぎましたので、次に進ませていただきます。高山先生、どうもありがとうございました。続きまして、がん診療拠点病院の現状、意識調査に移りたいと思います。今日は藤構成員から資料3でご説明をいただきたいと思います。藤先生、よろしくお願いします。

○藤構成員 よろしくお願いします。今回この時間を頂きましたのは、私がこの検討会に入れていただきまして、私自身の立場を考えたときに、拠点病院で実際に実務に当たっていることも含めて、拠点病院の声を上げるということが私の立場かと思いました。

 その理由は、全国の拠点病院の人たちと交流をする中で、先ほどから話題になっている「拠点の活動は、結構情熱だけで持っているのだ」ということ。それから「これ以上指定要件が高くなってきたら、次のときには手を挙げられない」という病院の管理者の声も多く聞いております。したがって、せっかく基本計画が第2期、第3期になろうとしていて、実績を上げているのに、これを維持するためには、やはり拠点病院のことも考えなければいけないのかと思って、この発言をさせていただいているわけです。

 資料を御覧ください。下のほうですが、意識調査をしました。ただ全国の、特に地域拠点の声を聞くわけにはいきませんので、私が所属している国立病院機構の中のがん診療連携拠点病院でアンケート調査をさせていただきました。国立病院機構には都道府県が3、地域が32、全部で35ありますが、28の施設、このうち25が地域拠点です。そこから回答を得た結果をお話させていただきます。

 次ページです。そのアンケートの内容、質問項目そのものが決まったものがあるわけではありませんので、私が「何がいいか」と考えてやったということです。基本的には、「がん拠点病院は患者、御家族の満足度を向上させるために何をしたらいいのか、それから我々の使命感を維持・向上させるためにはどういうことを求めていったらいいのか、要望はないかという視点で答えてくれ」ということで、その15項目をアンケートしました。これは国立病院機構の答えではありますが、国立病院機構としての意見ではないということは御理解いただければと思います。

 その下は実際のデータです。全ては申し上げられませんが、まず「患者・家族の満足につながっているか」ということに関しては、50%は「はい」と答えています。ただ、これは「はい」だけれども「まだ不十分」だと言っていますし、「いいえ」ということでも「少しは進んでいる」ということで、パーセントは意味が余りないかもしれません。ただ、その中のコメントでよくあったのは、自分たちがやっている施策というか、日々の行動が、本当に必要な条件としてやっているのかどうか検証がなされていないので実感がないということがあります。質を問うような項目が少ないので、「我々の活動が患者や御家族の満足につながっているかどうかの実感が持てない」ということかと思います。

5ページです。「がん診療拠点病院に格差があると感じるか」ということに関しては、7割が「ある」と考えている、「均てん化が実現されているか」ということに関しては、21%しか「はい」と言っていない。一方、「集約したほうがいい領域があるか」ということに関しては、64%が「はい」と答えております。これに関してのコメントでは、「そもそも格差があるのは当たり前で、都市と地域で同じレベルを求めるのは現実的ではないし、格差があるということはお互いに認めて、それを一般の人に周知することが大切なのではないか」、「がん拠点病院ならどこに行っても同じことができるか。それが均てん化の意味ですが、その現実はしっかり周知することが必要なのではないか」ということです。アンケートの中で常にあるのはマンパワーの不足だったり、専従・専任の配置が名ばかりであったり、補助金であったりということは多々あります。

 それから、その下の均てん化・集約化と言いますが、「何を均てん化して、何を集約化すればいいかというのが具体的に分からない」ということ。本当に均てん化が望まれる分野をはっきりさせて、それに注力していくべきだという意見がありました。

 申し忘れましたが、この言葉そのものはアンケートそれぞれにフリーコメントを求めておりましたので、そのフリーコメントをそのままコピーペーストしたものです。集約化した領域はそこに書いてあるようなことです。

 次に、「都道府県の行政の協力支援は十分か」という質問です。これに関してもいろいろな県から「協力してくれている」という所と、「県の協力がない」という意見をしっかり聞いておりますので、質問してみたわけですが、協力支援が十分かと思っているのは4県に1県しかないということです。都道府県の行政や診療連携拠点病院以外の専門病院などにも厚労省から明確な指示を出していくべきであろうということ。それから、多くの県がそうなのかもしれませんが、がん対策の執行に関わるような専任担当官が1人もいないと答えている県がありました。実際に「現場の者として、県とがん医療の推進に対して関係を築けている実感がない」と答えている人がいます。これはもちろん国からの指導も要るのでしょうが、行政自体の取組の評価を行わないといけないのではないか。これは都道府県内の均てん化というよりも、日本全国の均てん化を考えるときに都道府県の取組をベンチマークなどを通じて見える化をしていく必要があるのではないかということだと思います。

 一番下にも拠点病院自らの広報活動のみではなかなか届かないので、行政が積極的に広報にも関与すべきだという意見がありました。

6ページです。現行の指定要件についてですが、これは直截的な質問ですが、「要件を実現可能と感じているか、現実的か」、そもそも現実的、可能と思っているからこそ拠点病院は手を挙げているという大義、前提がありますが、実際には39%は実現可能とは思っていないということ。それが「これから持続可能なことか」ということになりますと、「いいえ」と答えているのが29%です。ただ「はい」と答えているのも36%ありますが、コメントを見ますと、本来これは持続させるのが拠点の仕事だから「はい」と答えているということだったり、現行の要件のままなら「はい」だということです。ここでコメントとしてよくあったのは、「設備、専従・専任等々の一定の形に関しては、これで大体良くなってきているのではないか。今後はそれの質の向上に力を注ぐべき時期にきている」ということがありました。もちろんこれ以上指定要件が高くなると満たせなくなる地域ができてきて、それはある意味で均てん化に反することになってしまうのではないか。そして、「自分たちがやっているその要件がそのまま患者の要望なのかどうかの実感がない」ということです。「新たな要件を加える際には、やはり目的や方向性をしっかり周知してほしいし、有効性などを検討した上で要件化をしてほしい」という意見がありました。

 その下です。「混乱を来している指定要件がある」、「根拠が分からないものがある」ということに関しては、64%、53%が「はい」と答えております。この中で、具体的な指定要件としてたくさんの病院がコメントしていたのは緩和ケア研修です。これは緩和ケアの検討会で話し合うべきものかもしれませんが、それをやっている割には、その必要性、有用性、有効性が本当にあるのかという疑問を持っている病院が非常に多くありました。

 それから、非常に具体的なことで多かったのは病理医の必須化というのは、テレパソロジーなどができる現在は必要ないのではないかという各論のコメントもあります。

7ページです。現行の指定要件については、3の都道府県拠点病院が地域拠点病院の監査・実地調査をすることがありましたが、「これに対して問題と感じる点はあるか」という点については、「はい」が36%、「いいえ」も36%でした。コメントの中には、それはやめてくれとか、不要だという意見を言っている人がありますが、これは実際やる気がないというわけではなく、一生懸命やっているのだと思いますが、実際に受けるほう、このアンケートの回答の多くは地域拠点ですから受けるほうですが、「何のことを評価されるのか、視察されるのかがはっきり分かっていない。評価基準などをもう少し整備した上でなければ監査の質は保てないので、そういう意味において、いい加減な査察を受けるのだったら要らない」ということを言っているのかと思います。

 これに関しては拠点病院全体のチェック体制を強化するべきですし、理想的には今の現況報告の問題点だとは思いますが、「査察を受けなくても、その質が分かるような現況報告を作っていくということこそが重要なのではないか」という意見があります。

 それから、その下の客観的評価に今後加えるべきものとしては「満足度調査や、患者・御家族の声が反映されるようなものがないと、自分たちがやっているものがうまく機能しているのか分からない」ということです。

 最後に書いてあるのは院内職業の意義の周知です。これは今、相談支援センターの話でありましたが、実は相談支援センターだけの話ではなく、拠点病院の責任ですが、例えば地域連携パスで福岡市でアンケートを取ったときに患者からの声であったのが、「自分はもう拠点病院でパスに乗ってやっている。しかし、ドクターが代わったら、そのドクターは僕はパスしないからと言われた」というコメントがありました。要するに、がん対策推進基本計画にのっとって拠点病院になっているのだというのが、院内全体に周知されていないということです。これは大きな問題で、拠点病院側が考えるべきものだと思いますし、それの周知度を測る評価指標も必要なのかもしれないと思っています。

8ページです。より一層の強化が必要な取組について、「均てん化と集約化のバランスを取るために我々は何ができるか」というフリーコメントを求めました。これに関しては、「希少がんなどは集約するべきだ、難しい手術、放射線は集約するべきだ。一方、均てん化するのは化学療法とか終末期医療。」で、これは今まで言われていたことかと思いますが、それが多い意見でした。病院の数は充足されているので、今後はその中の質の担保へ重点をシフトするべきだろう。「県が中途半端に独自のがん推進病院などを指定して集約化を妨げるのではないか」という意見もありました。

15番の「情報がたどり着いていない」ということに関しては、先ほど高山先生がおっしゃったようなことです。その中では、「がんナビゲーターを育成する」というコメントを言っている所もありますし、その部門に人を投入できるような仕組みを作らないと行き詰まるということです。

 相談支援センターや相談窓口を周知するというのは、拠点病院からだけで、そのシステムをセッティングするのは無理があるのだということで、行政の指導に期待するというのがありました。情報はたくさん出しているのだが、出し方がまずくて点在していて、患者に届いていないこともあるのだろうということで、方法論を考える必要があると思います。

9ページです。以上、まとめようがないのですが、無理にまとめてみました。設備や体制の要件の設定は、一定程度の役割を果たしているとは思います。しかしながら、拠点病院のスタッフの努力は少なからず限界には達しております。今後この計画を持続していく、現場のスタッフの使命感・情熱を維持するためには、自分たちがやっていることの意義を実感させることが必要になると思います。したがって、それに関しては我々がやっているアクションの効果、質の評価をするようにしていかなければいけないと思います。

 その下は、「行政の取組が一緒になってくれないと難しい。その行政の取組も評価をする必要がある」ということです。それから、拠点病院だけの話ではなくて、市民などの協力を得ていく必要があるということで、がん相談支援のナビゲーターの育成などです。これは1例ですが、佐賀県ではがん予防推進員ということで、市民に勉強してもらって、推進していこうという取組をしている所もあります。拠点病院だけの話、行政だけではなくて、広くそういう人材を集めていくという取組が必要なのかと思っています。

 以上がまとめですが、この中で補助金のことは余り述べておりません。国立病院機構の補助金は10分の10ということで、国から来ております。全てが国から来ていても、全然人が足りないとか、補助金が足りないという意見が多々あります。国立病院機構と大学以外の拠点病院というのは、県から半分、国から半分ということで、まず県の予算が前提になっての話ですので、国立病院機構よりももっと厳しい状況にあるかと思います。今まで申し上げた状況は、恐らく国立病院機構よりも悪いことはあっても、良いことはないのではないかと思っております。

 「追記」ですが、これは事務局のほうからクリティカルパスなどと関連して、「地域でのがん医療という視点で考えることを述べてください」と言われましたので、追加しました。これは「拠点病院を中心とした」と書いてありますが、拠点病院以外の大きな病院も含めた話です。

 地域におけるがん医療については、終末期の緩和ケアというのは、緩和ケアの検討会で議論すると思いますので、そこにはがんの終末期のことは書いておりません。今後、我々が考えていかなければいけない対象は、例えば治療が終わってフォローアップの時期の患者で、再発の不安や手術の合併症、後遺症に苦しんでいる人たちへのケアが十分ではないだろうと思っています。

 パスに関して言いますと、地域の全ての医療者が参加するようながん医療をどうにかして作っていかなければいけない。それは拠点病院とかかり付け医の関係だけではなくて、薬剤師、相談員、全ての職種、最終的には市民も含めたがん医療体制を作っていかなければいけない。これは簡単ではありませんが、地域連携パスというのは、そのためのツールとなり得る可能性は秘めているのではないかと思っております。

 資料にはありませんが、一昨日、「拠点の議論で抜けがちな地域でのがん医療について、例えば入院・通院の在り方についてとか、拠点病院と後方支援施設の関係性についても意見を述べろ」ということでしたので、簡単に申し上げます。

 御存じのように、治療などが入院から外来へシフトしているというのは常識ですが、治療のことだけではなくて、例えば告知だったり、手術の説明だったり、再発の告知だったり、その治療だったり、ベストサポーティングケアへのギアチェンジの最終の説明だったりというのは、ほとんど全ての所が外来で行われるようになっています。これを十分認識しておく必要があります。

 それから、外来通院の人には、現場で見ていますと、どんどん重い人が増えています。冗談ではないのですが、救急車で外来に来て、外来で治療を受けて、介護タクシーで帰るという人が現実におられます。そういうことを考えますと、外来の手厚さを今後はシステムとして作り上げていかなければ、なかなか患者に声が届かない、うまいケアができないということになります。病棟のスタッフが移行すればいいかというと、病棟は病棟でどんどん忙しくなるばかりという現実があります。方法はないのですが、外来スタッフ、特に看護師を増やす必要性がありますし、数だけ増えても現実的ではなくて、それに関わる専門の看護師なり、スタッフを増やしていくことを早急に開始していかなければいけないのかと思っております。その一方で、患者や御家族がセルフケアができるような仕組みも必要です。患者・家族の教育やアドバイスの在り方を考慮していくことも現実には必要になると思います。

 最後に、後方支援施設や在宅医療の関係性についてです。まず1つは拠点病院とそれらの関係だけではなくて、今後は非拠点の中核病院も巻き込む方法を考えなければいけません。患者の3割は拠点ではない所で治療している、実は小さな病院でも結構胃の手術などがあります。そういう人たちも含めた計画を立てていかなければいけないと思います。

 これはもう皆さん御存じですが、認知症とがんの併存です。2025年には5人に1人が認知症ということになっていますが、2025年という問題ではなくて、現実にがん患者の認知症患者で病棟が困って、疲弊しているというのは日々ルーチン化をしております。早急にがんの人たちに対して認知症のケアに対する勉強とかバックアップ体制を整える必要があると思います。

 介護施設でもそうです。例えばケアマネージャーを中心とした介護福祉職員に対するがんの教育、小学生・中学生に対するがんの教育も大切ではありますが、喫緊の課題としては、そのような方向のがん教育も必要かと思います。これは認知症の人たちから言えば、がんの人たちは認知症の勉強ももっとしろと言いたいに違いありませんが、これは双方人事交流などをしていかなければ現実の問題になりつつあるということを、私自身は認識をしております。長くなりましたが、以上で終わります。

○北島座長 大分時間もすぎておりますが、どなたかお願いします。

○大江構成員 現行の指定要件について、実現可能と感じるかで、「いいえ」が39%ということですが、指定要件はいっばいあるとは思います。その中で、私は「五大がん」に対する標準的治療、集約的治療が提供できるというのが一番根本的な指定要件なのかと思っています。そこに関して皆さんは、懸念をどのぐらい持たれているのかをお聞きしたいと思います。

○藤構成員 それに関しては、具体的なコメントはありませんでした。ここで答えているのは、多分現場の人間で、そこまで大きな指定要件全体を考えた上での発言ではないと思いますので、これに対しては答えがありません。

○大江構成員 そこは問題なくできていると考えてよろしいのですか。

○藤構成員 五大がんの標準治療ができているかということですか。

○大江構成員 はい。

○藤構成員 人にもよるのだと思いますが、それに対しては、できていると思っているのだと思います。ただ、中間評価でもありましたように、病院によって標準治療等もやられている施行率が60%とかということもありますから、それが本当にできているかどうかは分かりませんし、地域によっていろいろ事情があるということも確かだと思います。

○北島座長 これは拠点病院によって、人員の配置とか、格差があるというのは、どうしようもないことだと思います。それとあとはトップのオピニオンがどうなるかとか、その辺はかなり影響してきます。

○鶴田構成員 11のスライドに「県が中途半端に独自のがん推進病院などを指定し、集約を妨げる」と書いてありますが、これは1つには病院の経営とか、また、補助金の問題とか、患者さんは近くで受診したほうがいいという、いろいろな配慮でこういう方向になっていると思います。

 従来の均てん化は診療体制とか設備整備とか手術件数等が指定要件となっていたのですが、一応、全国的な均てん化が図れたとすれば、今後何を均てん化の目標値とするのか、方向性として何を示すのか、そういうものを議論したらどうかと思います。

 それと、この中では述べられていませんでしたが、3ページの1-4に、がん拠点病院で費用対効果の面から妥当かというのがありました。それに関して将来も持続可能かという観点もあります。実際は先ほどのがん相談支援センターの所で発言したかったのですが、がん支援センターの5ページにある12341の「誰でも」の所に「院内・院外を問わず、患者・家族を問わず、必要なら匿名で、かつ無料で」とあります。この無料でというのは、私はないと思います。医療は応分の負担をするのが原則だと思います。もし無料でというのであれば、その相談に当たる人はボランティアであるべきだと思います。専門性の高い相談に応じるのであれば、その人は応分の対価を得て、病院としては人を確保できるようにしなければ継続的な体制は組めないと思います。したがって、この「無料で」ということには私は反対で、質の高い相談員を置くのであれば有料で応分の負担を求めて、病院経営としても成り立つという方向が望ましい方向であり、費用が払えないのであれば、減免制度を作るとか、いろいろな方法でその相談に応じることはできると思います。

 同じ相談センターの19ページにDPC係数とか、診療報酬とか書いてありますが、これは点数を付ければ、当然患者から自己負担を取ることになるので無料ではない。ここの文章には矛盾を来す点があると認識しています。

○北島座長 先生の質問は、相談センターに対する質問ですか、コメントですか。

○鶴田構成員 質問ではなくて、コメントです。

○北島座長 藤先生に対するコメントか、質問はありますか。

○鶴田構成員 質問はなく、藤先生が出されたものに対しては、今後、均てん化のレベル、どこを均てん化するのか。レベルについては各都道府県においても、都道府県の拠点病院と、その下の地域連携拠点病院とでは全く同じということはないので、そのことを明確に周知し、なおかつ県の拠点病院の質の向上を図るような施策展開にしたほうがいいのではないか。財源とか人の配置も周知をして、質を上げたほうがいいと、この文章からは思います。コメントです。

○北島座長 均てん化、集約化というのは、結局拠点病院の基準が決定されて以後、今日までやってきて、こういう反省の面からこういうことが出てきた。では、どういう所を均てん化していくのか、集約化するかという辺りは先生のアンケートでどうなのですか。

○藤構成員 そこを明確化しないと進んでいかない。それを明確化したものを周知しないと国民は困るのではないかというコメントを書いている人が何人もいました。

○北島座長 だから、例えば均てん化とか、集約化に具体的にここに書いてある病理・病理医の問題、テレパソロジーの導入とか、いろいろありましたよね。それから先進放射線治療の装置とか、希少がんの問題等いろいろ出ているのですが、その辺が今後集約していったほうがいいですよという御意見でよろしいのですね。

○藤構成員 そういうことだと思います。そういう意見はかなりあります。化学療法とか終末期医療は均てん化ができるのではないか。化学療法も簡単でない場合は困ると思いますが、大きく分ければそのような形になると思います。

○北島座長 1つ国に伺いたいのですが、都道府県がん診療拠点病院の活動の効果や課題について、6ページで行政で専任担当官が、がん対策の執行に関して担当官が1人もいないという現実は本当なのですか。

○事務局 一応各県に拠点病院については、各戸津府県において取りまとめていただいている担当者はいらっしゃると認識していますし、普段のやり取りもその方を通じてやっていますが、活動状況にどのぐらいの差があるかという点については把握しかねておりますので、そういった意味合いかと考えて、拝見しておりました。

○鶴田構成員 多くの都道府県では、ある人ががんの担当であっても、その人ががんの専属担当ではない、ほかの仕事もしていますし、3年置きに異動がありますので、全く知らない人がその担当に就くというのが現実です。

○北島座長 それは全ての県でそう言えるのですか。

○鶴田構成員 例えば疾病対策課で、がんを担当していれば、課長はドクターである可能性はありますが、課長レベル以下でドクターである可能性はほとんどないというのが実態です。静岡県では疾病対策課長は医師ですが、がんの専門家ではありません。

○北島座長 確か基準を決めたときに、国が都道府県がん拠点病院あるいは都道府県が地域がん拠点病院にオンサイトビジッティングをやるべきだという意見が出ていたのです。そして、拠点病院に対して緊張感を与える必要があるのではないか。ペーパーだけで評価するのではなくて、サイトビジットというのはいろいろなことでやられているのです。「もしサイトビジットすれば専門官はいないではないですか」と言えるのです。全部をやる必要はなくて、そのうちの何施設かをやれば緊張感が伝わってくる、そういうことだと思うのですが、その辺、現状はどうですか。

○事務局 現在直接厚生労働省から拠点病院にサイトビジットをしているということはありません。各都道府県によっては、その都道府県の行政官が年間に何施設ずつ決めてやっている都道府県もありますが、それも全てで行われているわけではないということは認識しております。ご指摘のように、今、質の評価のお話などが出ておりますが、そういった形で、何らかの質を担保できるような仕組みの必要性は認識しておりますので、その仕組みについては引き続き検討させていただきたいと思います。

○北島座長 藤先生のアンケート調査は、いろいろな示唆に富んだコメントが中に含まれていたと思います。相談ナビゲーターの育成とか、そういうコメントもありましたが、例えば佐賀県においては、がん予防推進員を県が独自に作ってやっているとか、やはり県の対応の格差もあるのではないか。ですから、やはり成功例をみんなが情報を共有していくということで、成功例の情報を流していくことが、これからは非常に重要だと思います。佐賀県の情報というのは、私たちも知りませんでしたが、今聞きました。

○中釜構成員 今、北島座長にまとめていただいたことと強く関係するのですが、先ほどの高山参考人の話を聞いていても、拠点病院がこの10年で果たした役割は、前回山口構成員もおっしゃいましたが、非常に役割は大きいと思います。その中で、特に相談支援の機能として、患者と情報をつなぐ、病院をつなぐ。それに応えて各拠点病院が質を求める要件を満たすことによって均てん化がかなり進んできた。その成果の1つとしては、5生率、10生率の改善が見られたことは間違いないと思います。お話を伺って、その過程において様々な問題点も見えてきた。同時に拠点病院の負担も見えてきたということだと思います。拠点病院という所を視点に考えても、相談支援に関して、先ほど高山相談員も言っていましたが、その努力に対するインセンティブ、あるいはDPC係数の問題、診療報酬は難しいのかもしれませんが、何らかの努力に対するインセンティブが十分なのかどうかという問題と、更には拠点病院が行っている努力に対して、その成果がどのように反映されていて、議論に反映されたのかという実感が持てるのかというところの解析・分析、そのフィードバックの所は考えるべきでしょう。加えて、これまでは均てん化ということで要件を満たすべく進んできたわけですが、これからはその中から集約できることによって、その負担を減らしながら、各拠点の良い所を伸ばすような仕組みも同時に考えていくべきと思います。問題点、論点は次々と出てくると思いますが、その全てを満たすべくハードルを上げていくと、その一方で疲弊につながるのかという感じがしました。

 繰り返しますと、十分な努力に対する何らかのインセンティブ及び均てん化に向けた集約化というファクターがどのように推移していくか。その辺りを考えていく必要があるのかと思います。

○森構成員 中釜委員の御意見も非常にもっともで、賛成です。藤委員からのレポートを拝見しますと、拠点病院というのは非常にやり甲斐を前面に出している所と、非常に負担が増えているということが出ている所と2つあると思います。その中で、中釜委員がおっしゃったように、私どもは大学病院の中でやっていても、指定要件の中で本当にこれが必要かなというところも多々あります。ですから、その辺の見直しをしっかりやって、やるべき所と、もっと削っていい所と減り張りを付けた形でやっていただくと、そういう面での負担も大分減るかもしれないということが1つです。

 あとは病理のテレパソロジーも非常に重要だと思いますが、これは病理学会などがどのように考えているかということも視点を変えれば非常に重要な所だと思います。その辺も検討いただければいいかと思います。

○北島座長 病理とか、指定要件を決めたときから何年かたっていて、病理医の数や配置が年数によって大分変わってきた。今は病理医が少ないから、病理医を増やすNPO法人みたいなのができて、病理医を増やしましょうという努力も実際に行われて、当時は病理学会から常勤病理医を送ったときに、ものすごく喜ばれたという現実があるので、時代的に変わってきているのだなと思います。その辺のファクターを見据えて、これから見直しをしていくことが大事だと思います。

○清水構成員 藤先生、いろいろな観点でまとめていただきまして、ありがとうございます。一番最後の追記のところに関係するかと思うのですけれども、要件には直接関係しないかもしれませんが、今、うちの病院で2年ぐらい前からやっている取組の1つで、病院の臨床倫理委員会という場を設けて、いくつかの病院の大きな指針も設定したりします。また、ケースコンサルテーションという取り組みで、一つ一つのケースで問題点を検討するときに、4分割法という方法を用いて、医療の観点(医学的適応)は当然入るのですけれども、患者さんの意向あるいはQOL、周囲の状況という4つの観点で捉えると、インフォームドコンセントもどうしても医療者の視点が前面に出てくると思うのですけれども、患者さんの意向を1回確認することで、医療者と患者さんの視点、両方で取り組んでいけるのかなと思います。11例やるのは非常に時間の問題がありますけれども、臨床倫理という観点を取り入れてやっていくと、医療者の視点が少し変わっていくということで、要件も当然必要ですけど、視点を変えるということで、がん医療の質の向上につながっていくのだろう、そういう意味合いで取り組んでいます。今は院内だけで体制を整備していますけれども、この間、地域の連携のところで紹介しますと、やはり地域の先生、あるいは医師会の先生が、地域のがん医療に関してもそういう観点で検討する場を設けてもらえるとありがたいという反応もありましたので、そういう取組も検討していきます。臨床研究やIRBとは別の病院臨床倫理で、2年前に病院機能評価のときに、IRB以外にそういうのも検討したらどうですかというコメントがあって、それを受けて取り組んでいます。参考までに、これが都道府県の要件にはすぐにはならないと思いますけど紹介です。

○北島座長 貴重な意見、ありがとうございました。いわゆる治療側と患者さんの意向をすり合わせる機会が大事。コンサルテーションというのは、チームがあるのですか。

○清水構成員 医者とほかの多職種で、ファシリテーターというか、そのケースケースを相談を受ける人材育成をしながら、どういう方向性があるかを今検討しています。

○今村構成員 清水構成員がおっしゃったこととかなり近いと思うのですけども、私も、かかりつけ医の立場で、追記に書かれている地域におけるがん医療の中の拠点病院の役割は、非常に大事だと思っております。私も日頃診療している中で、患者さんが高齢化しているので、がんの手術をされたあとに、例えば生活習慣病でフォローアップしている患者さんもおります。私が健診で見つけて拠点病院にお送りして、がんの手術を受けられている方もたくさんいるのですが、実は、パスに載っている人はほぼゼロです。ここに地域連携パスの重要性が記載されておりますが、実際拠点病院から地域に戻っている患者さんの中で、パスに載っている方の割合はどのぐらいいるのかを教えていただければと思います。それから、我々かかりつけ医が、専門家の先生方と連携しながら一人のがんの患者さんを診ていく中で、先生方がかかりつけ医に期待されることについて教えていただければと思います。例えば耳鼻科の先生が、耳鼻科領域のがんで耳鼻科の専門の先生に手術していただく場合には、これは元々の専門のところですから、かかりつけ医に戻ってきても対応できると思うのです。そうではなく、私のように生活習慣病を診ている医師が、その患者さんに偶然乳がんが見つかり手術され、そのあと自分のところでまた生活習慣病を診るというようなケースで、一般のかかりつけ医に対して、がんの専門の先生が、かかりつけ医に望むことがどういうものかが、未だによく分かりません。そういう意味で、地域の中の連携をしっかり取ることが、非常に大事ではないかなと思っておりますが、いかがでしょうか。

○北島座長 昔、医師会で、かかりつけ医に関していろいろ議論したことがあるのですが、やはり藤先生の報告にもありますように、地域全ての医療者が参加する医療体系、そうすると、開業している先生たちと拠点病院のネットワークですよね。あるいは共通の国からパスを使ってるとかがあると思うのですが、その辺は、今、医師会としてどうですか。

○今村構成員 現在、日本医師会でもかかりつけ機能の強化を図るための取り組みを進めており、がんの緩和ケアも含め、がんの患者さん専門医と連携して診ていくというスタンスで研修会等も様々にやっております。先ほど私が申し上げたように、自分の患者さんを診ておりますと、ほとんどパスに載ってる人がおりませんので、それは理念としては分かるのですが、実態として、拠点病院の中でどの程度パスというものが機能しているのか、分からなかったもので、お伺いしたということです。

○北島座長 ほかに。

○西村構成員 先ほど集約化の話が出てきて、放射線治療の集約化をとあったと思いますけれども、粒子線治療が今年の4月から一部の疾患に保険収載され、粒子線治療に関しては集約化が是非必要なものだろう。一方で、IMRTも最新の放射線治療、これに関しては、もう少し広く地域拠点病院に更に広がっていくべき放射線治療法だろうと思います。前々回、天野構成員から離島の話があり、私、沖縄の放射線治療の先生にも相談したのですけれども、宮古島、石垣島には全くリニアックそのものがないということで、現実は本島に来たり、東京に来ている方もかなりおられるそうです。それで、どうしたらいいのだろうということでお話しましたら、例えばですけど、石垣島にリニアックの装置さえ作ってあれば、非常勤で医師がそこに行って、そちらで離島の患者さん方を診ることは可能だと言ってました。ただ、それは大きな投資と、病院には多分少なくとも利益は出てこないと思われますので、そういう辺りを県が補助するとか何かそういう体制がいいのではないかみたいなことは、そのときに話になりました。だから、いろいろなレベルで集約化と均てん化を考えていかなければいけないと、放射線治療に関しては思っております。以上です。

○北島座長 もっと御意見いただきたいのですが、時間が大分過ぎていますので、藤委員の発表に関して御意見をいただきました。特に藤先生のまとめのこと、それから、最後に認知症の問題が提言されておりましたけれども、既に700万人か何かの認知症の患者さんがいるということで、今、国のほうも認知症に関してどう対応していくか、診断法とかいろいろ提言もなされておりますので、また、それは、そういうところと一緒に研究を進めていくことも、今後大事だと思います。ありがとうございました。

 それでは、時間が大分過ぎて申し訳ございませんが、第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理に移りたいと思います。事務局、資料4の説明をお願いします。

○事務局 資料4です。これまでいただいた御意見を元に、第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理()として事務局でまとめました。こちらでは本日の御意見を含ませていただき、また、これからいただく御意見を反映する形で、がん対策推進協議会に、提示することを想定しております。時間の関係もありますので、各項目ごとにまとめております1項目ずつ音読して、御議論いただければと考えております。

 まず1ページ目、はじめにということで前段を設けております。

2ページ目です。初めに、II.がん診療提供体制についてということで総論的な部分を設けています。(現状と課題)として、厚生労働省は、これまでがん医療の均てん化のため、2次医療圏ごとに必要ながん医療を提供することを目的とし、がん診療連携拠点病院等(以下「拠点病院等」という)の整備を中心に施策を推進してきた。全ての拠点病院等は「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」に基づき、集学的治療の提供、各学会の診療ガイドラインに準ずる標準的治療の提供、がん相談支援センターの設置、緩和ケアの提供、院内がん登録の実施、キャンサーボードの実施等に取り組んできており、その結果、がん医療の均てん化については一定の成果が得られている。以下、現状と課題をまとめております。また(今後の方向性)として、がん診療提供体制については、これまで拠点病院等の整備を中心として取り組み、一定の成果が得られていることを踏まえ、均てん化が必要な取組に関しては、引き続き拠点病院等を中心とした体制を維持する必要がある。以下、(今後の方向性)についてまとめております。

 次にIII.各施策の意見と今後の方向性ということで、1に、がんのゲノム医療をまとめております。(現状と課題)として、近年、個人のゲノム情報に基づき、個人ごとの違いを考慮した「ゲノム医療」への期待が高まっている。以下、(現状と課題)をまとめております。 次のページです。また、(今後の方向性)として、検査を行うに当たっては、米国の臨床検査ラボの品質が保証基準である、CLIAや、臨床検査ラボの国際規格「ISO15189」、米国病理学会の施設審査基準の認定等に係る国際基準と同様の水準を満たすことが必要であり、日本独自の施設審査基準を定める等、国内においても遺伝子関連検査の品質・精度が保証できる体制で検査を行うべきである。以下、意見をまとめております。

2.がん医療に関する相談支援と情報提供ということで(現状と課題)として、現在、日本の全がんの5年相対生存率は58.6%となっており、がん患者、経験者の中には長期生存する者も多い。平成2712月に策定された「がん対策加速化プラン」では、「がんとの共生」という考え方が重要視されており、がんとの共生を支えるための相談支援、情報提供が重要な役割を担っていると考えられる。

 以下にまとめております下線の部分です。本日、高山参考人から提出された資料などを基に、事務局案として記載しているものですが、こちらは、本日の御意見を踏まえた形で、一部変更を予定しております。

(今後の方向性)として、医療機関が実施するがん診療に関する情報を提供する場合は、院内がん登録等の既存のデータを利活用し、より質の高い情報を公開すべきである。また、平成281月より開始されている全国がん登録についても、そのデータ等をより活用するため、一定数の症例が集まっている医療機関については、拠点病院等以外であっても情報公開を検討する必要がある。以下、(今後の方向性)をまとめております。

 次に3.がん診療連携拠点病院等における医療安全についてです。(現状と課題)として、拠点病院等は、全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、がん医療の均てん化を目指すことを目標としているが、指針には医療安全に関する具体的な指定要件は定められておらず、「がん対策加速化プラン」では、「特定機能病院に対する集中検査の結果や承認要件の見直し等も参考にしつつ、拠点病院等において備えるべき医療安全に関する要件の見直しを行う」こととされている。以下、(現状と課題)です。次に、(今後の方向性)として、特定機能病院が高度な医療を提供する機能を担うことと同様、拠点病院等には質の高いがん医療を提供する機能が求められているため、医療安全に関する要件は、特定機能病院と同様の高いレベルを求めることを基本とすべきである。ただし、拠点病院等は病床数や人の配置について医療機関ごとに差があるため、医療機関の規模を勘案し、医療現場への過重な負担を課すだけの要件とならないよう、指定要件に工夫や配慮が必要である。

 次に、4.がんの放射線治療として、(現状と課題)です。がんの放射線治療においては、従来からリニアック装置を用いた多方向、あるいは3次元的な照射が行われており、拠点病院に整備がなされている。以下、現状と課題をまとめております。(今後の方向性)として、日本放射線腫瘍学会で取り組まれている粒子線治療を含めた放射線治療症例全国登録のデータベースや今後の分析を踏まえ、手術や化学療法に関する学会と連携しながら、がんに対する標準治療の中で適切な放射線治療を提供する体制を推進する必要がある。以下、今後の方向性についてまとめております。こちらのまとめた意見について、さらに御意見をお伺いできればと考えております。事務局からは以上です。

○北島座長 ありがとうございました。第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論の整理を()として説明いただきました。何か質問ございますか。特に、放射線のところを最後に項目として取り上げた西村委員、どうですか。

○西村構成員 時間がと思って遠慮していたのですけど、たくさん修正したいところがあるので、お話してよろしいでしょうか。

○北島座長 またあとで御意見をお伺いする機会もあると思いますので。

○西村構成員 あまり細かいことを言ってもあれなので、4.がんの放射線治療の(現状と課題)4つ目に、「治療計画を担う人材(放射線治療医、放射線技師、医学物理士)」と書いてあるのですけど、放射線技師の方が治療計画をすることについては、結構グレーなところがあるので、ここの書きぶりを、「治療計画を担う人材」ではなく、「高精度放射線治療を担う人材」と直していただくと、確かに治療の専門技師の方も不足しておりますのでいいのかなと、是非、ここは直していただきたい。あと、もう1点、(今後の方向性)の2に、「拠点病院等における放射線治療の整備については、既存治療との比較検討、検証中の粒子線治療よりもIMRTを適切に」うんぬんという。この書きぶりだと、粒子線治療がかなりネガティブと言いましょうか、先ほども申しましたように、今年保険収載されたところで、集約化に関しては全く異論のないところですけれども、「粒子線治療に関しては地域性に配慮し、集約化をする放射線治療として配置するべきである。一方、IMRTは、拠点病院に広く提供できるような体制を整備できるようにするべきである」。あと、もう1点追加として、病院でどういう放射線治療をやっているかというのは、患者さんに分かるように何か仕組みを、是非、この中に入れていただけるとありがたいと思います。あと、その次のマルで離島の件があるのですが、「僻地や離島においても必要な放射線治療を」、この「必要な」というのは、「基本的な」と書いていただけるとありがたい。「基本的な放射線治療を提供できる体制」にして、その次に、「がん治療の治療計画を担う人材の育成と配置」、これは、ここには全く必要ないので削除して、むしろ、さっき申し上げたように、「非常勤医師でも対応できるような対応」も考えていただくというような、そういう書き方にしていただけると、離島に関しては、かなり現実的な提案になるのではないかと思います。以上です。

○北島座長 ありがとうございました。それと、もう1点、非常にこれからのがんの医療として大事なのは、がんゲノム。山口構成員、最初からいろいろゲノムのものをいただいてますが、その辺、いかがですか。特に、がんのゲノム医療について現状と課題ということで、もし簡単に御意見があったらお願いします。

○山口構成員 前回、私の文書の中にある程度書き込みましたので、それを参考にしていただければ結構だと思うのですが、全般的に、こういう形でまとめるときに、医療機関の医療資源に限りがあり、この内容が要件定義につながっていくことを理解しておくべきだと思います。現在の要件でも苦戦しているときに、さらに厳しい要件が加わることは、本質的な問題でなければ可能な限り避けるべきだと思います。さきほどの相談支援センターが、私、ずっと見てきて一番いい例ですが、最初は患者さんに寄り添う導き役で、院内の専門家につなぐ程度の役割を想定していたものが、12の業務が加えられています。また、担当者も、看護師が担当する相談支援センターが半数、ソーシャルワーカーが半数、事務職がやっているのが一部あるという状況もあります。私は選択と集中、原点に返ることを、もう一度考え直す部分が、これに限らず、全体の中にはあるだろうなと思います。以上です。

○北島座長 ありがとうございました。ここで、がんゲノム医療に関しては、ここにも記載がありますように、オバマ大統領のPrecision Medicine Initiativeですね。PrecisionMedicineということを、もうちょっと我々も理解していかなければいけない。これは、Personalize Medicineとはまた違う意味があって、オバマさんが、なぜPrecision Medicineを言ったかというと、これは遺伝子以外に環境やライフスタイルなどを全て包括して、健康維持、疾病の発症を予防するなど、もっと非常に大きな規模できているわけですから、いわゆる、Personal Medicineというのも、我々治療側からすると、あるいは患者さんに対して非常に大事、むしろ、それも大事ですが、もう少し大きな視点で今後がん治療をやっていく必要があるのではないか。今、私自身も少しPrecision Medicineという勉強をしているのですが、この辺の意味付けをもう少し書き入れたらいいのではないかと思います。

○天野構成員 3点ございます。1点目が5ページの下から2ポツ目で、「希少がん、難治がん、小児がん対策」という言葉が出てきております。これについては繰り返し申し上げてきておりますが、次期がん対策推進基本計画において是非重点的な取組としていただきたいと考えております。2点目ですが、6ページの下から3ポツ目になります。医療機関における専門職以外ということになるかと思いますが、「がん医療ネットワークナビゲーター」という言葉が出てきておりますが、これに加えて、ピアサポート活動についても御検討いただきたいと考えております。千葉県においては、県庁と地域統括相談支援センターが連携し、がん診療連携拠点病院においてがんサロン活動が行われていますし、熊本県においては、県のがん診療連携協議会の緩和ケア部会が協力する形で、緩和ケアの一環としてピアサポート活動が行われているという例がありますので、こういったピアサポーターの活用についても加えていただきたいと考えております。3点目は、7ページの下から3ポツ目になります。「科学的根拠に基づいたがん医療に関する情報を提供すること」が書かれておりますが、逆に科学的根拠が必ずしも明らかでない、がん医療の情報提供に関する注意喚起も、改めてお願いしたいと考えております。先日、報道にもありましたように、免疫チェックポイント阻害剤と自由診療のがん免疫療法を併用した患者さんが死亡した例を受け、日本臨床腫瘍学会や厚生労働省からも、適切使用を求めるような通知も出ているところ、医療機関等の情報提供において、誇大な表現や不適切な表現を掲載しないようにガイドラインを作成していくことも、厚生労働省の医療情報の提供のあり方等に関する検討会で検討いただいていると聞いておりますので、そういった動きと連携していただけたらと考えております。以上です。

○北島座長 では、鶴田構成員。

○鶴田構成員 2ページから3ページにかけての均てん化の内容ですけども、3番目の「一律に均てん化するという方針を見直す必要がある」、これはそうだと思います。次の(今後の方向性)のところに、「均てん化が必要な取組に関して」というのは、従来は人員配置や設備整備、症例数ということでしたが、ここには具体的にどのような方向で、例えば医療の質での均てん化、高度医療の手術例、そのような均てん化なのか記載したらどうか、今、回答を求めているのではなく、それが分かるように書かれたらどうかなという意見です。3ページの拠点病院間に格差が生じないようにするためと書いてあるけれども、これは、拠点病院間で格差があるのは皆さん認めていることなので、都道府県がん診療連携拠点病院間の格差がない、もしくは地域がん診療連携拠点病院間の差がない、特定医療機関と3つぐらい分かれているので、そこでの取組に格差が生じないようにという意味だと理解してよろしいですか。

○北島座長 もう1人、中釜構成員、いいですか。今のところで3ページに、がん医療を提供する際に、拠点病院において、がん以外の併存疾患、これが、これから非常に重要になってくると思います。特に循環器、呼吸器、あるいは、さっき認知症の問題も出てまいりました。そういう意味で併存疾患にどのように対応していくか、これは大きな問題になります。ですから、その辺もここに書いてありますけど、ここも体制の整備、これは早急にやる必要があるのではないかと思っております。では、中釜委員、どうぞ。

○中釜構成員 2点ほどあります。3ページ目の上から2ポツ目、集約化のところで「特にゲノム医療」が書かれているのですが、本日の藤構成員からの提案にもあったように、ほかにも集約化を考えるところは丁寧に書き込んだらいいかなと思います。それから、先ほど他の委員からご指摘がありましたけど、重点課題の1つである希少がん、難治がん、小児がん、これも集てん化、均てん化の議論と切り離せないものであると思いますので、そことも連携をしながら重点課題をいかに効率よく進めていくのか、均てん化を進めるのかを、少し丁寧に書き込んでいただけたらと思います。2点目は6ページ目の下のほう相談支援機能、先ほども指摘させていただいたのですが、これは均てん化という点においては、非常に重要な役割を果たしてきていると思いますので、もし可能であれば、その継続性のためにも、「財政的な基盤については今後十分に考慮する、何らかの対策を考える」と書き込んでいただければと思いますので、御検討いただければと思います。

○北島座長 ありがとうございました。非常に短時間で、いろいろ貴重な御意見を賜りました。ありがとうございました。本日いただきました御意見を、事務局で整理して、先生方の御意見を反映するような整理をして、最終的に私も拝見して、委員の先生方にお送りしたいと思いますが、そのような方法でよろしいですか。

(了承)

○北島座長 ありがとうございます。この検討会は、これで一旦区切りを付けたいと思います。短期間に何回か委員会がありまして、それぞれ今までがんの拠点病院について、基準を議論して何年か経ちましたけども、それに対する時代背景も含めて、いろいろな貴重な御意見をいただきました。やはり時代は動いているので、その時代に合ったことを対応していくのが我々の責務だと思っております。そのために、今日、いろいろな御意見いただきましたし、我々も、最初相談室の、センターの充実からやりましたけども、今日、本当に先生から現状を説明していただき、あるいは将来的にどうしたらいい、そういう御意見までいただいて、非常に参考になりました。ありがとうございます。そういう意味で、先生方の今日の御意見を反映させていただいて、よりよいがん診療の提供体制を我々求めていくという責任もありますので、是非、これからも御指導、御支援のほど、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、事務局から連絡事項、ございましたらお願いします。

○事務局 ありがとうございます。少し御意見をお伺いする時間がなかったこともございましたので、追加の御意見、ございましたら88日、月曜日までいただければと思います。その後、事務局で取りまとめたものを構成員の皆様にお送りし、さらに、その時点で、メール等を通じて御意見をお伺いできればと考えております。最終的には、内容を北島座長にお諮りした上で、取りまとめたいと考えております。

○北島座長 ありがとうございました。それでは、構成員の皆様方におかれましては、長時間にわたりまして、いろいろ貴重な御意見賜りましたことを感謝させていただきます。本日の検討会、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

健康局がん・疾病対策課

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