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2016年4月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成28年4月25日(月)14:00~


○場所

厚生労働省共用第6会議室


○出席者

出席委員(14名)五十音順

○新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 川 崎 ナ ナ、 清 田  浩、
 鈴 木 邦 彦、 関 水 和 久、 田 島 優 子、 田 村 友 秀、
 中 島 恵 美、 濱 口  功、半 田  誠 、 森 田 満 樹、
 山 口 拓 洋、◎吉 田 茂 昭
 (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(6名)

大槻 マミ太郎、 川 上 純 一、 菊 池  嘉、 前 崎 繁 文、
増 井  徹、 山 本 一 彦

行政機関出席者

中 垣 英 明 (医薬・生活衛生局長)
山 田 雅 信 (審査管理課長)
宇 津   忍 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
林   憲 一 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
猿 田 克 年 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、ただいまから「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。本日の委員の出席状況ですが、大槻委員、川上委員、菊池委員、前崎委員、増井委員、山本委員より欠席との御連絡を頂いております。また、鈴木委員より、若干遅れるとの御連絡を受けております。現在のところ、当部会委員数20名のうち13名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。以降の議事進行は吉田部会長にお願いいたします。

○吉田部会長 早速本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日は席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1から資料5をあらかじめお送りしております。この他に資料6の「審議品目の薬事分科会における取扱い等の()」、資料7の「専門委員リスト」、資料8の「競合品目・競合企業リスト」、資料9の「審議参加に関する確認事項の追加について」を配布しております。

 続いて本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストを資料8に基づいて御報告いたします。資料8の1ページは、カイプロリス点滴静注用です。本品目は、再発又は難治性の多発性骨髄腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページは、アバスチン点滴静注用です。本品目は、進行・再発の子宮頸がんを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページは、サイラムザ点滴静注液です。本品目は、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○吉田部会長 ただいまの説明に、特段の御意見等はありますか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については次のとおりです。議題1のカイプロリスについては退室委員として山口委員、議決には参加しない委員はありません。議題2のアバスチンについて、退室委員は無し、議決には参加しない委員は清田委員、田村委員、山口委員です。議題3のサイラムザについて退室委員は田村委員、議決には参加しない委員は山口委員です。以上です。

○吉田部会長 ただいまの事務局からの説明について、特段の御意見等はありますか。ないようですので、皆様に御確認いただいたものといたします。まず、資料9について、事務局から説明をお願いします。

○事務局 資料9、審議参加に関する確認事項の追加について御説明いたします。本件については、審議参加規程の運用改善を図るもので、平成28年3月25日の薬事分科会で了承され、4月から適用されていますので御紹介いたします。本参加規程については、平成21年より運用しているところですが、独立した評価委員会で、少なくとも年1回運用状況の評価等を行うこととしております。昨年度にも、この評価委員会の検討結果を踏まえ、委員の先生方からの申告を製薬企業に確認する仕組みを試行的に導入することとし、昨年4月から運用してまいりました。4月から1月頃までの運用状況を見ると、実際に申告の補正があったケースが医薬品第一部会・本部会を中心として10数件ありましたので、一定程度の有用性があると考えられ、この仕組みを本格的に導入する運びとなりました。

 また本格導入するに当たり、試行的な段階では申告対象企業のうち、申請企業のみに確認していたところを、対象を競合企業まで広げて、全ての申告対象企業に確認することといたしました。具体的な確認事項の追加の内容については、資料9の4ページの別添2を御覧ください。手続の流れ自体は従前と変更はありませんが、確認企業を申告企業から競合企業も含めて確認することといたしましたので、別添3のとおり、先生方への申告の依頼を1週間前倒しすることといたしました。事務局としては、審議の中立性、公平性等の確保に努めてまいりますので、委員の先生方におかれましても引き続き御協力のほどよろしくお願いいたします。以上です。

○吉田部会長 ただいまの事務局からの説明について、特段の御意見等はありますか。よろしければ、皆さんに御確認いただいたものとして、議題に入ります。本日は審議事項が3議題、報告事項が2議題となっております。審議事項の議題1に移ります。山口委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題1の審議の間は別室で御待機いただくことといたします。

                               ( 山口委員退室)

○吉田部会長 それでは、議題1について機構から概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、カイプロリス点滴静注用10mgほかの製造販売承認の可否等について機構より御説明させていただきます。本剤の有効成分であるカルフィルゾミブは、20Sプロテアソーム活性に対する阻害作用を示す低分子化合物であり、腫瘍細胞アポトーシスを誘導し、腫瘍増殖を抑制すると考えられております。今般、本剤は再発又は難治性の多発性骨髄腫を効能・効果として承認申請されました。なお、本剤は平成27年8月の当部会における審議を経て、再発又は難治性の多発性骨髄腫を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されております。

 本剤は平成28年1月時点で、多発性骨髄腫に係る効能・効果にて41の国又は地域で承認されております。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料7にあるとおり8名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に、審査の概要を御説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外第III相試験であるPX-171-009試験の成績が提出されました。有効性については審査報告書の45ページの上から4行目以降及び94ページ上から13行目以降を御覧ください。再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象としたPX-171-009試験において、対照群とされたレナリドミド水和物及びデキサメタゾンの併用投与群と比較して、レナリドミド水和物及びデキサメタゾンに本剤を上乗せした3剤併用投与群で、主要評価項目とされた無増悪生存期間の優越性が認められたことなどから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については審査報告書の47ページ上から9行目以降及び94ページ下から10行目以降を御覧ください。本剤の使用時に特に注意すべき有害事象としては、心障害、間質性肺疾患、肺高血圧症、血液毒性、感染症、肝障害、腎障害、出血、注入に伴う反応、腫瘍崩壊症候群、高血圧クリーゼを含む高血圧、静脈血栓塞栓症、可逆性後白質脳症症候群及び脳症、血栓性微小血管症、消化管穿孔、心膜炎並びに心嚢液貯留が認められております。これらの有害事象については、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師による有害事象の観察や管理、本剤の休薬等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断いたしました。

 ただし、日本人における検討症例は極めて限られることから、製造販売後には、本剤が投与された全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であり、承認条件とすることが適切であると判断しております。

 以上のような審査の結果、機構は再発又は難治性の多発性骨髄腫を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも毒薬に該当し、また生物由来製品及び特定生物由来製品はいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。

 なお、事前に奥田委員から御意見を頂きましたので、機構から回答させていただきます。御意見は、審査報告書の5ページ下から14行目以降に、米国において2016年1月に本剤の単独投与及び併用投与に係る効能・効果が変更された旨を記載しておりますけれども、それに続く英語での原文の表記が、併用投与、単独投与の順となっており、記載順をそろえることが望ましいとの御趣旨でした。機構は御指摘のとおりであると考えて、英語での原文の表記を、単独投与、併用投与の順に修正させていただきます。御指摘いただきましてありがとうございます。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 奥田先生よろしいですか。

○奥田委員 はい。

○吉田部会長 委員の先生方からの御意見、御指摘をお願いいたします。

○半田委員 待ちに待った薬だと思うのです。今まで標準薬として、ボルテゾミブ、いわゆるベルケイドが使われていて、これは標準薬として使われていたわけです。今回は1から3種類の前治療で再発あるいは難治性の疾患を対象としたということです。同じプロテアソーム阻害薬としてベルケイドがあって、そのベルケイドが効かなかった患者、あるいは投与中に進行した患者は除外されているということです。これは009試験ではそうなっています。この辺のところは、どこまで使用上の注意というところで言及するかというのを疑問に思ったのでお聞きしました。

72ページと73ページに、本剤の投与対象ということで、機構のほうからも指摘があって、特に73ページ下から10行目に関しては、対象患者に関しては効能・効果の所できちんと言及し、注意喚起をすると書いてあります。添付文書の1ページの14と書いてある効能・効果の()「臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について」ということで指摘されています。その5ページの右側の段落の注4の所に、確かにボルテゾミブによる治療中に疾患進行が認められた患者に関しては、今回この臨床試験、この承認の基本になった臨床試験に関しては除外されているということです。同じプロテアソーム阻害薬に対して難治、あるいはその不耐容のものに関して、今回この薬を使うということは良いと思うのですが、対象試験にそれが含まれていないということです。そういう意味ではちょっと作為的な感じもあります。

 この辺に関しては、実際にどこまで機構のほうで把握されているか。注意喚起の中に入れているかを聞きたかったのです。この注意喚起に関しては、細かい所でサッと読んだだけではなかなか確認が取れないのです。この辺の表現の方法等々をお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 半田委員から御指摘を頂きました72ページと73ページにある機構の見解、それから添付文書の認識は半田委員から御説明いただいたとおりの考え方でおります。審査報告書の73ページに表44があり、その下辺りに009試験の対象から除外された患者に対する本薬の臨床有用性についてあるのか否か説明を求めたところ、申請者からは、現時点で使用された成績がないという回答を頂いております。除外例1項目に、ボルテゾミブでの治療中に疾患進行が認められた患者が設定されております。添付文書では、効能・効果で前治療歴があること、再発又は難治性であることを効能・効果に記載し、今申し上げましたように73ページを見ると、幾つか除外された条件がありますので、臨床試験成績の項において、その全ての除外された臨床試験での規定を、客観的に明示し、効能・効果、効能・効果に関連する使用上の注意、及び臨床成績の項を併せて御覧いただくことで、適切な患者選択をしていただけるものと考えております。より詳細な試験での設定に関しては、添付文書と併せて適正使用ガイドをリスク管理計画で策定することになっておりますので、そちらも併せて申請者に作成するように要請しています。適正使用ガイドも医療現場には適切に配布していただくことにより、適正使用が推進されるものと考えております。

○半田委員 実際にMR活動の中で、これをある程度確認するということなのですけれども、それに関してはこの資料の中には入っているのでしょうか。その前治療の中で、ベルケイドを使っている患者に対する効果に関してははっきりとしないということですね。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。試験から除外されたこと、それから試験成績がないということについては、しっかりと適正使用ガイドには明示していただく必要があると考えておりますので、そこは再度確認したいと思います。

○吉田部会長 半田先生のご指摘は、これだと分かりにくいということですよね。

○半田委員 そうです。ちょっと分かりにくいと。非常に小さい字で書いてあって、目に飛び込んでこないというか、そこの所がちょっと気になります。

○吉田部会長 添付文書の所にもう少し工夫してもらえないかということだと思いますが。

○医薬品医療機器総合機構 多発性骨髄腫の治療薬の選択肢が増えていて、かつかなり明確な治療体系があるものですから、前治療歴が逆にきっちりと試験で規定されて、今は成績が出てくるという状況もあります。主要な試験における組入れ・除外基準の全てを効能・効果に書き込んでいくのは難しいと思いますので、当該情報がしっかりと医療現場に伝わるように工夫をしていくように続けてまいりたいと思います。

○吉田部会長 よろしいですか。

○半田委員 はい。

○吉田部会長 他にはいかがですか。

○関水委員 今の説明を聞いていても、この薬がどうしてがんの薬として有効であるかについての説明がないと思うのです。記載されているのはプロテアーゼの阻害剤であり、キモトリプシンの活性を阻害する活性を有する。その活性が、細胞のアポトーシスを誘導すると。そこまではいいのですが、それがどうしてがんの薬になるのかと問われたときに、特にセレクティブトキシシティ(選択毒性)についての説明が全く記載されていないと思います。こういう文章を厚生労働省から出せば、こんなことでよろしいのかという疑問の声が上がる可能性があります。セレクティブトキシシティについて、一般的な考えだけでもいいのですけれども、こういう事情で正常細胞よりも、がん細胞にセレクティブトキシシティを示すのだという説明はあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 御質問をありがとうございます。先生の御発言は「セレクティブトキシシティ」ですか。

○関水委員 そうです。セレクティブトキシシティががん細胞に対してあるなら、正常細胞には余りダメージを与えないけれども、がん細胞にダメージを与えるという説明が成り立ちます。ここに示された文章が出されれば、セレクティブトキシシティの証拠が当然示されているであろうと、普通の方は錯覚すると思うのです。この薬ががん細胞にセレクティブトキシシティを示すかについて、全くエビデンスがないのではないですか。

○医薬品医療機器総合機構 腫瘍細胞のみに効力を発揮するというデータはないかと思うのです。そういう意味では、正常な細胞に対しての影響も否定できず、結果として副作用等々が起きることが推定されますが。

○関水委員 私には、がん細胞に対するセレクティブトキシシティがあるというエビデンスがない状態で、がん患者に対して試験をやったら効いたのだから問題ないのだと、そのように見えるのです。それでよろしいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 先生の御質問は、臨床試験成績については特段御懸念はないのだけれども、薬理学的な観点で明確な説明が足りてないという御趣旨ですか。

○関水委員 そうです。説明が足りていないと思うのです。私は、臨床成績に問題があると言っているのではないです。その点はよろしいと思います。ただ、有効性に関する説明で、がん細胞のアポトーシスを起こすからがんに効くのだというだけでは、説明にはなっていないと思うのです。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の10ページを御覧ください。この項が悪性腫瘍細胞株に対する増殖抑制作用をin vitroで検討した結果を示しております。真ん中辺りの表3で、造血器腫瘍由来、固形腫瘍由来、正常組織由来の細胞株を用いて、増殖抑制作用という観点でのIC50値内部比較ですけれども、腫瘍増殖抑制作用が比較されており、造血器腫瘍由来の細胞株に対して効力が高いということは示されております。

○関水委員 そのことは了解した上での話です。正常細胞には効かないのだというエビデンスは全くないですよね、あるのですか。正常細胞には効かないかもしれないということを考えるのに、合理性があるということが分かればそれでよいと私は考えています。

○医薬品医療機器総合機構 抗がん剤の一般的な医薬品開発では、腫瘍細胞に効いて、正常組織になるべく作用を示さないということが求められるのだと思いますけれども、正常細胞に全く効かないのだということを証明するのはなかなか難しいです。

○関水委員 私は、そんなことを伺っているのではなくて、例えばがん標的薬、受容体標的薬などについては、その受容体を有する細胞を殺すというはっきりした説明があるわけです。ところが、このプロテアソームの阻害剤に関しては、プロテアソームというのは、どんな細胞にもあるのですから、セレクティブトキシシティを期待できると言っても、説明がつかないと思うのです。そういうことでよろしいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 薬理に関する審査結果は、審査報告書の13ページにお示しております。特にこの薬剤はボルテゾミブという、既承認の薬剤があります。その薬剤と同様に、プロテアソーム阻害作用を有する薬剤であり、臨床ではベルケイドを使用された後で本薬が使われることも想定されましたので、ボルテゾミブに抵抗性を示した多発性骨髄腫に対する有効性というのが、薬理の審査での主な論点となりました。その点に関しては明らかな機序は分からない。つまりボルテゾミブに耐性だったけれども、本剤で有効性が期待できるという機序については、今のところはっきりしていませんが、既に承認されているボルテゾミブと同様に、本薬が多発性骨髄腫に対して有効性を期待できるという申請者の説明に関しては受け入れているというのが薬理の審査での結論となっております。

○関水委員 批判的に言えば、駄目な二つの薬を、さも効くように出しているということになりませんか。

○医薬品医療機器総合機構 薬理学的な説明としては、可能な限り作用機序について申請者に説明いただいておりますけれども、やはり承認の決め手になるのは、臨床成績がどうなのかを重視させていただいているのが現状なのかと認識しております。

○審査センター長 関水先生の御質問は、、プロテアソームというのはどんな細胞にもあるわけだから、正常細胞にもあるはずである。にもかかわらず、がん細胞選択的に効くのはなぜかということに対する合理的な説明がないではないかという理解でよろしいですか。

○関水委員 そうです。

○審査センター長 例えば、タキソールとか、いわゆるチューブリン阻害剤という抗がん剤がこれまでにあります。チューブリンというのはどんな細胞にでもあります。にもかかわらず、これらはがんに効くということで薬になっています。プロテアソームの場合は、もう少し合理性のある説明ができるかと思います。マルチプル・ミエローマという細胞は御承知のように、イムノグロブリンの前躯体をたくさん作るわけです。タンパク合成が非常に盛んな細胞ですので、このタンパクを分解するほうのプロテアソームの機能が非常に重要です。タンパク合成と分解のバランスを保つ上で、プロテアソーム機能が非常に重要な細胞だと見て取れます。そういう細胞でプロテアソームを阻害すると、正常細胞に比べ、細胞を殺しやすいということがあり得るのではないか。これはよく言われていることです。

 究極的な選択性の証明は難しいと思います。非臨床薬効評価ではこの薬を、in vitroで正常細胞に振り掛け一方で、in vitroでがん細胞に振り掛けます。この結果は表3にお示ししたとおりです。これは、ほとんど差はないということです。それでは全然薬にならないのかということで、次にやる試験はin vivoで、がんを移植したマウスで効果があるかどうかを見ます。ここで全く選択性がないような場合は、マウスが毒性自体で倒れることになるわけですが、本剤でマウスが毒性で死ぬような状況は起こらずに、がんの増殖が抑えられているということです。現段階では詳しい機序は分かりませんが、in vivoの現象として、その選択毒性が示されています。これが通常の抗がん薬理非臨床試験の在り方です。

 この裏返しとしてある話は、in vitroで直接正常細胞に振り掛けたときにはほとんど効かない、一方でがんには非常に薄い濃度で効く。しかし、これで動物実験をやってみると全然効かないということはよくあることなのです。したがって、ここで得られた結果について、先生の望まれる究極的な説明はできないのですが、現象論的に常道にのっとって、非臨床試験で有効性が示されたということです。よろしいでしょうか。

○関水委員 一般の方が納得するような説明をすることに、御努力願いたいと思います。私も、この薬がどうして統計学的に有意な差を示したかについて説明しろと言われてもできるわけではありません。それを分かっていて質問しているわけではありません。プロテアソームの阻害剤というのは新しいわけです。そういう新しさがある故に、素晴らしい抗がん剤であるかのような錯覚を与える説明になっているということを私は申し上げているのです。

○審査センター長 審査報告書に、それを詳細に書くことはなかなか難しいと思いますが、資材の説明をするときなどに、先ほど私が説明いたしましたマルチプル・ミエローマという細胞の特殊性というのを、一般の方によく説明できるよう努力するということでお許し願いたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 適正使用ガイドで、本薬の作用機序について分かりやすい説明ができるように検討させていただきます。御指摘をありがとうございます。

○吉田部会長 そうなると、ボルテゾミブのときはどうだったのという話になってしまうのだけれども、その辺も含めて直接関係はないにしても、やはりこういうタイプの薬に対する有効性の説明をきちんとできるようにしなさいということは、言っておいていいのではないかと思います。本薬に限らず、そういう指導をお願いできればと思います。

○医薬品医療機器総合機構 分かりました。

○吉田部会長 他にありますか。

○新井部会長代理 先ほどの審査センター長の説明ですごく納得しました。この文章にもエムプロテインとか、タキシジョイン分泌タンパクが多いがん細胞だということが、選択的に殺す理由の一つかなと。逆に言うと、そういう危険を持っていれば、副作用はどういう所に起こりやすいか。一番分泌系の高いのはB細胞ですし、あとはインスリンベータ細胞だったり、そういう所に起こる可能性も考えられるので、やはりメカニズムをある程度想像しておくのは重要なのではないかというのが、同じ流れのコメントです。

 もう一つはマイナーでどうでもいい話なのですけれどもお聞きしたいのは、9ページ目の3.1.3に血中及び組織中プロテアソーム活性に対する阻害作用という項目があります。「血中」というのは微妙な表現で、「血漿中」なのかよく分からないところがあります。

 このプロテアソーム活性を測るときには、全体を見ればもっと分かるのかもしれませんけれども、すり潰して、in vitroで活性を測っているのではないかと思うのです。血液というのは、どのように活性を測っているのか。要するに「血中」というのが血液細胞なのか、血漿なのかが曖昧なのです。これがもし血漿だとすると、聞きたい点は、血漿にプロテアソームがあるのか。キモトリプシン様活性は血漿にあるとは思うのですけれども、その活性があったからといって、常識的に考えると、血漿中にプロテアソームは絶対にあり得ないし、漏れてきたとしても、普通は酸化されて活性が出ない状況だと思うのです。もし血漿中のキモトリプシン様活性がこの阻害剤で阻害されたら、それはキモトリプシン様のプロテアソームではないプロテアーゼだろうと我々は想像すると思うのです。

 その辺で測定法として、血中の場合はどうやって。細胞を壊さないで、あるいは組織は壊してやっているのか、その辺をちゃんと教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 手元の資料を確認させていただきたいので、少しお時間を頂戴したいと思います。

○吉田部会長 それではこの件を調べている間に、追加の御意見、御質問がありましたらお願いいたします。

○鈴木委員 遅れてきたので、説明を全部を聞いていないのですが、これを見ると小野薬品と出ています。新有効成分で抗がん剤というと、非常に高い薬がありますのでどうなのかなと思ってはいます。類薬があるとのことですけれども、それはどのぐらいの価格で販売されているのか参考までに教えていただきたいと思います。

 この作用機序からすると、他の悪性腫瘍でも有効なのでしょうか。その場合、またどんどん適応が拡大されることはどうなのかという気がするのですが、その点について教えてください。

○審査管理課長 類薬のボルテゾミブ、ベルケイドですけれども、これは3mgの1瓶で137,409円というのが現在の薬価です。これはサイクルごとの投与ですので厳密ではありませんが、月に最大6、7回ぐらい投与されますので、恐らく月の薬価が数十万円ぐらいになろうかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 適応拡大の可能性について、今のところ把握しているのは同じ多発性骨髄腫ですけれども、用量を変更するという開発が進んでいると聞いています。審査報告書の101ページの表63に、PX-171-007試験というのがあります。これは、開発早期の海外の試験なのですけれども、この試験で欄外というか、下の脚注の21に、固形がん患者コホートであるとか、用量についてこの試験の記載があります。コホートが少し追加されているような試験が今進んでいるようですので、多発性骨髄腫以外のがん種に対する開発も想定されているのかもしれないのですが、そこまで今は正確な情報は把握しておりません。

○鈴木委員 作用機序からすると、適応拡大もあり得るということですね。実験も始まっているし、治験もですね。

○医薬品医療機器総合機構 可能性はあるのだろうと思います。

○鈴木委員 そうすると、先ほどの話とは違ってくるのではないですか。先ほどは、特殊な事情があるという説明があったと思います。

○審査センター長 補足なのですけれども、企業なので何とも言えませんけれども、プロテアソームというのは、分泌タンパク質をたくさん作るような細胞によく効くということが想像されます。そういう意味では、PD-1抗体のように、非常に広く適応拡大が行くというものではないと想像しています。

○吉田部会長 そうですね。類薬の動向から見ても、それほど広く適応される可能性はむしろ少ないのではないかと思います。その辺は企業がどういう展開をするか読めないところはありますけれども。先ほどの件は分かりましたか。

○医薬品医療機器総合機構 先ほど新井部会長代理から御質問いただきました、非臨床薬理試験ですけれども、全血を使用していることを確認いたしました。

○新井部会長代理 通常は、血漿中の活性しか測れないはずなのだと思うのです。この基質は細胞内に入るのですか。要するに、「血中」と言われると、普通我々は血漿を想像するのですけれども、血漿にプロテアソームがあると言われるとドキッとしてしまうぐらい、生化学的には非常識で、それも活性を阻害したら、これはプロテアソーム以外のキモトリプシン様の活性を阻害しているのだろうと想像するのです。表現としてプロテアソーム活性をというよりは、キモトリプシン様活性ぐらいにしておいたほうがいいのではないかという気がします。これは機構として、血漿にプロテアソームがあるということを認めているようなイメージにも取れてしまいます。もしかしたら最新の知識はあるのかもしれないので、私のほうが最新のところまでフォローしていないので、その辺は注意深くしたほうがいいかなと思います。

○医薬品医療機器総合機構 この非臨床薬理の検討に用いたのは全血という説明に加えて、主成分は脱核した赤血球ということで、赤血球をメインに評価しているということです。

○新井部会長代理 赤血球のプロテアソームということですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○新井部会長代理 分かりました。それだったらいいですけれども、そうすると「血中」というのは表現としてどうかなという気もします。

○医薬品医療機器総合機構 以後、御指摘を踏まえて対応してまいりたいと思います。ありがとうございます。

○吉田部会長 他にありますか。よろしいでしょうか。質問、意見もないようですので議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議はないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で御待機されている山口委員をお呼びください。

                               ( 山口委員入室)

○吉田部会長 議題2に移ります。議題2について、機構から概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、アバスチン点滴静注用100mg/mLほかの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤はヒト血管内皮増殖因子に対する免疫グロブリンG1サブクラスのヒト化モノクロナール抗体であるベバシズマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。

 現在、本剤は治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん、扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、手術不能又は再発乳がん、悪性神経膠腫及び卵巣がんに対して承認されております。今般、本剤は進行・再発の子宮頸がんを効能・効果として承認申請されました。なお、本剤は平成27年8月の当部会における審議を経て、子宮頸がんを予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されております。本剤は平成28年1月時点で子宮頸がんに係る効能・効果にて、67の国又は地域で承認されております。

 本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料7にありますとおり4名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に審査の概略を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外第III相試験であるGOG-0240試験の成績が提出されました。有効性については審査報告書6ページ下から7行目以降、9ページ上から8行目以降及び22ページの上から13行目以降を御覧ください。進行又は再発の子宮頸がんを対象としたGOG-0240試験において、対照群として設定された化学療法群と比較して、本剤と化学療法を併用する群で主要評価項目とされた全生存期間の優越性が認められたことから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については審査報告書11ページ上から4行目以降及び22ページ下から10行目以降を御覧ください。子宮頸がん患者に対する本剤の使用時に、特に注意すべき有害事象としては消化管腟瘻、膀胱腟瘻等が認められております。

 これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師による有害事象の観察や管理、本剤の休薬等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人子宮頸がん患者における検討症例は限られていることから、製造販売後には使用成績調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。

 以上のような審査の結果、機構は進行又は再発の子宮頸がんを効能・効果として本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、今回追加する効能・効果等に対しては、再審査期間は10年と設定することが適当であると判断しました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○関水委員 VEGFが標的を中和することを示すエビデンスがあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 今回、報告書に記載しておりませんが、初回の、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんの審査の際に確認しておりまして、その報告書上で記載しております。

○関水委員 審査の方法の問題ですが、今の時点で、提出された医薬品が、その活性を持っているということを示しなさいということを言わなくてもいいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 薬理作用自体は今回子宮頸がんに関しても、既承認の結腸・直腸がんに関しても変わりはないと考えておりますので、結腸・直腸がんの審査の時点で記載しています。

○関水委員 薬の管理についてですが、全てのロットについて、いちいち中和活性を示しなさいとは言っていないのですか。標的とするタンパク質について、薬がきちんと結合するという生物学的な活性を有していることを示しなさいとは要求していないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。製造管理過程で確認しています。

○関水委員 薬品を実際に患者に打つときに、その医薬品がターゲットとする分子に対して、きちんと結合活性を示しているかということです。全てのロットについて示すのが当然だと思うのですが、やっているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘の点に関して、製造管理の工程において、委員がおっしゃられた生物活性に関して確認しております。

○関水委員 分かりました。

○吉田部会長 子宮頸がんの細胞系でみているかということですね。つまり、子宮頸がんがVEGFを発現しているらしいから、これを使ったらいいのではないかというような根拠だけで、実際にどのぐらい抗体が、活性を持って押さえ込んでいるかというのは調べてないのではないかという御指摘だと思います。そこまで調べていますか。

○医薬品医療機器総合機構 活性については、個々のがん腫で全てのものを調べているわけではありません。

○吉田部会長 全てのものを調べているわけではなくて、大腸がんのところで、既にやっていて、同じようなメカニズムだろうということで、適用拡大が進んでいるという説明でいいのですか。

○関水委員 私が伺ったのは、そこではなくて、製品ごとに、ターゲットに対する結合性を検査しているか、という点です。

○吉田部会長 ロットも含めてという意味ですか。

○関水委員 いちいちターゲットモリキュールに結合する活性、すなわち、アフィニティはどのぐらいあるかということをきちんと証明しているのですねということに対して、念を押しているだけです。それは全てのロットについてやっているのですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○関水委員 そのデータはこういう審議会の資料には全く出てこないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。初回の承認のときには申請資料に含まれておりますが、今回のように効能・効果の追加の場合には申請資料に含まれておりません。

○吉田部会長 なるほどね。適用拡大なので、そこの所は省略しましたということですね。分かりました。

ところで山口先生、生存率の差がかなり厳しいですね。例えば8ページの図1で、交叉してしまっているように見えている所もありますし、ほとんどの患者がそれまでの間に亡くなっているということもあって、推計学的に意味があるかないか難しいのではないかと思いますが、この辺は有効と判断するということで問題ありませんか。先生の御意見をお伺いしておきたいと思ったのですが。

○山口委員 リスク数とか、まだ生きられている患者が、後期のほうはかなり少ないということで、全体としては差が認められているという解釈でよろしいかと。

○吉田部会長 クロスしていても、後ろのほうであれば、臨床的にもそれほど問題がないだろうと。

○山口委員 そのように考えます。

○吉田部会長 分かりました。ありがとうございます。ほかにありますか。では、御質疑がないようですので、議決に入りたいと思います。なお、清田委員、田村委員、山口委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題3に移ります。田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題3の審議の間、別室で御待機いただくことにいたします。

                                  ( 田村委員退室)

○吉田部会長 それでは、議題3について、機構からの概要説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、サイラムザ点滴静注液100mg他の製造販売承認の可否等について、機構より説明させていただきます。

 本剤はヒト血管内皮増殖因子受容体-2に対する免疫グロブリンG1サブクラスのヒト型モノクロナール抗体であるラムシルマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。現在、本剤は治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対して承認されております。今般、本剤は治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんを効能・効果として承認申請されました。本剤は平成28年1月時点で結腸・直腸がんに係る効能・効果にて、5つの国又は地域で承認されております。

 本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料7にありますとおり、4名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第III相試験であるI4-MC-JVBB試験(RAISE試験)の成績が提出されました。有効性については審査報告書12ページ上から1行目以降、14ページ下から3行目以降及び34ページ上から13行目以降を御覧ください。治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんを対象としたRAISE試験において、対照群として設定されたイリノテカン塩酸塩水和物、ホリナート及びフルオロウラシルを併用するFOLFIRIとプラセボを投与する群と比較して、FOLFIRIと本剤を投与する群で主要評価項目とされた全生存期間の優越性が認められたことから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 なお、RAISE試験の日本人部分集団における生存期間は、全体集団と結果の一貫性を確認できませんでした。ただし、当該結果は日本人の部分集団の結果であり、また、審査報告書18ページ上から4行目以降に記載のとおり、 . 副次評価項目とされた治験責任医師判定による無増悪生存期間の結果は、全体集団と日本人集団で一貫しており、日本人患者においても本剤の薬効が認められていると考えること、 . 既承認薬効能・効果である胃がんにおいて、本剤の有効性に明確な国内外差は認められていないこと、 . 結腸・直腸がんの進展に関与する遺伝子に明確な国内外差は認められていないこと等を考慮すると、日本人の結腸・直腸がん患者においても本剤の有効性は期待できると判断しました。

 安全性については審査報告書18ページ上から13行目以降及び35ページ上から1行目以降を御覧ください。本剤の使用時に特に注意すべき有害事象としては、高血圧、タンパク尿、出血等が認められております。これら有害事象については、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師による有害事象の観察や管理、本剤の休薬等の適切な対応がなされるのであれば本剤は忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人結腸・直腸がん患者における検討症例は限られていることから、製造販売後には使用成績調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。

 以上のような審査の結果、機構は治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんを効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は新効能医薬品及び新用量医薬品に該当することから、再審査期間は平成35年3月25日までの残余期間とすることが適当であると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○関水委員 17ページに「日本人集団に対しても、本薬の有効性は期待できると考える」とあります。この文章は、正式な文章として残していいのだろうかという観点から質問するのですが、いろいろ操作をしたら効いているというように出たと、この文章は書いてあると思います。そのように受け取るのは間違いですか。

○医薬品医療機器総合機構 まず、このRAISE試験の評価としましては、国際共同第 III 相試験として実施された試験であり、日本人の集団だけでOSの延長を検証可能な症例数が入っていないと。

○関水委員 私の質問にイエスかノーで答えてください。私の質問は、ここで「本薬の有効性は期待できると考える」と書いた理由は、日本人について、その生のデータを取っただけでは、とても有効であるとは出ていないが、ある操作をしたら有効性が期待できるという条件が見つかったと書いてあるのですね。

○医薬品医療機器総合機構 17ページのご指摘の部分は、申請者の意見です。

○関水委員 お言葉ですが、ここに書いてあることを認めるということは機構が認めて我々に提示しておられるわけだから、申請者がこう言っていると逃れることはできませんよ。

○医薬品医療機器総合機構 機構の意見は、次の段落に記載をさせていただきました。

○関水委員 日本人集団に対して「本薬の有効性は期待できると考える」と申請者が言ってきた、この文章を機構としては認めるのですね。

○医薬品医療機器総合機構 機構としましては、申請者とは異なる考察をさせていただいた上で、日本人に対しても期待できると考えております。まずは、国際共同第III相試験であるRAISE試験の全体集団において、OSの優越性が検証されたということが重要であると考えております。

○関水委員 私としては、「日本人集団に対して、本薬の有効性は期待できると考える」という記載はとても認められないから、そういう観点から伺いますが、どのデータから、本薬の日本人集団に対する有効性は期待できると考えるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 まず、審査報告書15ページの表7にあるとおり、繰り返しになりますが、RAISE試験は国際共同第 III 相試験として実施されたもので、全体集団として表7に示すとおり、有効性が示された成績が得られています。

○関水委員 ちょっと待ってください。全体として認められているというのは表7ですよね。

○医薬品医療機器総合機構 申し訳ありません。12ページの表6です。

○関水委員 表6にp値が0.02だと書いてありますが、これは非常に小さい値です。統計的有意の差が認められたのだということですが、これは私もそう思います。その上で、どうして日本人について、有効性が示されたと言えるのですか、というのが私の質問です。

○医薬品医療機器総合機構 先生のご指摘のように、先ほどの表7では、全体集団と日本人集団で一貫性のある結果は認められていないという成績がここで得られています。しかしながら、繰り返しの説明になってしまう部分はあるのですが、後治療の影響を受けにくいとされているPFSの成績が17ページの中ほどにありますが、こちらで一貫性がある成績が得られているということです。

○関水委員 一貫性という用語は使わないほうがよいと思います。一貫しているというのは辻褄が合うという意味で使っておられるのですね。一貫性があろうがなかろうが、表10の日本人集団についてのデータはp値は0.3と書いてあって、統計的有意の差を認めるとは言えないわけです。これをどういう論理で、本薬の有効性が日本人集団で期待できると言ったのか、そこを私が伺っているのですが、そのことについては答えておられません。

 

○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。基本的に先ほど先生に御指摘いただきました表10の日本人集団の結果、この結果だけを見ると、確かにp値のほうはかなり大きくなっております。繰り返しになって申し訳ないのですが、RAISE試験は、国際共同治験ということで、基本的には全体集団で仮説がクリアできるかどうかを検証しに行った試験です。

○関水委員 それは私も認めているのですから、そこの所は議論しないでください。

○医薬品医療機器総合機構 分かりました。

○関水委員 全体的に統計学的に有意の差があった。しかしながら、日本人について検討したら、p値は0.3だとのことです。そういう状況で、日本人集団に対しても本薬の有効性は期待できるかと問われた場合、できると考えるという申請者の提出した文書を、なぜ機構が認めているのかを私は質問しているのです。

○医薬品医療機器総合機構 この日本人集団の結果自体の解釈なのですが、これは症例数がかなり少ない状況ですので、このOSの結果のみで、良い、悪いというのは判断できないのだろうと考えています。

○関水委員 そうだったら削除すべきです。これは明確に日本人集団に対しても本薬の有効性が期待できると書いてあって、それについて機構は支持したとおっしゃっているのですが、それは問題であると私は思うのです。

○医薬品医療機器総合機構 では、どのように日本人の有効性を評価しようかというところなのですが、これが先ほど繰り返しになりますが、RAISE試験は国際共同試験でして。

○関水委員 それを議論とすると、日本人に関しては特別に有効性がないということが示唆されたということになります。そのような表現であれば、正しいのです。そうすると、当然ですが、日本人については、こんな薬は使うべきではないのではないかという、ことになる。それが論理的な考察であると私は考えます。

○吉田部会長 いや、違いますよ。示唆もされてないのです。

○関水委員 私は、示唆されていると思います。

○吉田部会長 つまり、500例ずつ症例を集めて、2群比較をやった第III相試験の中から、日本人の成績を70例ずつ取り出してきて比較してみても、推計学的には全く根拠がないのです。だから、私は何回も言っていますが、日本人だけの部分集団解析はやめた方がいい。意味がないのです。変なデータが出てきたとしても、いたずらに不安を煽るだけで何の根拠にもならないと思うのですが、山口先生いかがですか。

○山口委員 議決権がないのでコメントはどうしようかと思ったのですが、個人的には、私は機構の考え方に同意できます。まずPFSとOSですが、大腸がんに関しては一定の相関というか関係性があるということで、代替エンドポイントとしてPFSを使うことは、ある程度国際的にも確立された話です。

 今回のプライマリーのエンドポイントはOSですが、そのPFSで日本人で有意差はありませんが、これは数少ないので、もともと検定というのは意味がないようなところで、ただし、ハザード比が0.8ぐらいということで一貫した結果が得られている。PFSのKaplan-Meier曲線も似たような形になっていますので、有意差はないけれども、全体集団と似たような傾向がPFSで認められているということで、ここは担保できるのかなと思います。

 あとは機構も御説明されていましたが、日本人でOSのほうは確かに有意差はありませんが、数の問題もありますし、後治療の影響、背景の影響はどうだったのですか。恐らく日本人は割付因子に入っていないと思うので、多分群間で少し背景が偏ったりしているのではないかと思います。その辺の解析なども恐らく要求されていると思います。PFSで一定の似たような傾向が得られていています。日本人の数が少なくて、有意差は出てないのですが、メカニズム的に考えて、日本人で人種差が特段出てくる可能性は低いのではないかというところで、個人的には機構の考え方に同意できないわけではないというか、私だったら、多分こういう形で整理するかと思います。

○吉田部会長 関水委員のご意見は、正々堂々と大丈夫だと言い切れますかということですよね。だとすれば、答えとしては、根拠をもって日本人でも有効性が考えられるとまで言えるような話ではないということになります。だから「うかがわれる」とか「全体の傾向と矛盾するものではない」とか、ある程度消極的な意味でしか言えないのです。

○関水委員 私はそのように思います。ただ、そうしてしまうと、結局日本人できちんと成績が出せるような数をそろえてやるべきだということになると思います。

○吉田部会長 それはそれで市販後やってもらえればいいだけの話です。だから、有効か、有効でないかと言えば、有効なのです。関水委員も認めているように、国際治験でやったら、有効性が明らかになったのは事実なのですから。しかし、日本人に対して有効か有効ではないかは確かに分からない。「分からない」が正しくて、効くのだというようには言えないのではないかと。

○山口委員 効くのだという言い方はしていませんが、今のコメントの市販後の話は似ていますが、このデータからは効かないわけではないのではないかと。だから、否定する可能性にはならないのではないかと。

○吉田部会長 そうですね。否定する根拠にも肯定する根拠にもならないということを書けばいいのに、肯定するように言ってしまうのは、ちょっとオーバーコメントではないかと思うのです。だから、その辺は少し言葉を考えられたらいいのではないかと思います。申請者はこう言っているけれども、ある程度矛盾するものではないと機構は判断したとか、そうしないと禍根を残す可能性もあるのではないかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。18ページの上から4行目から5行目にかけて機構の意見としては、「日本人患者においても本薬の有効性が期待できる旨の申請者の説明は、一定の理解が可能であると判断した」という書き方をさせていただいております。

○関水委員 山口先生の意見に反対するようで恐縮ですが、私はこのデータは日本人には効かないということが示唆されていると思います。学術的な論文に、そう書いて、レフリーから「あなたが言っていることは言いすぎだ」と言われることはないと思います。ですから、そういう状況があるにもかかわらず、わざわざ「本薬の有効性が日本人集団で期待できる」と書くのは大変良くないと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。確かに先生がおっしゃるように、これで全然問題がないのだというような言い方は適切ではないと考えます。機構としてはそこまでのつもりで書いたわけではなかったのですが、ちょっと誤解を生じさせるような書き方だったということなので、この点については以後気を付けたいと思います。御指摘ありがとうございました。

○吉田部会長 示唆だったかどうか分かりませんが、表7の時点でちょっと逆転しています。それが有意差を持って逆転しているということであれば、それはそれでまた示唆もされるのでしょうが、どちらも有意差はないのです。そういうことで言うと、いいとも悪いとも言えないというのが私は正しい解釈だと思うのです。何回ももめるので、何回も言っているのですが、日本人だけの部分集団解析の結果を出せという申請者への指示はやめたほうがいいと思います。本当にいたずらに不安を煽るだけで、やらなくてもいい議論をしなければいけなくなってしまいます。グローバル試験をやるときの解釈の仕方というかルールというものをもう少し統一されたほうがいいのではないかと思います。よろしくお願いします。ほかにありますか。その辺の配慮をお願いするということで、ほかに御意見がなければ議決に入りたいと思います。

 それでは、議決に入りたいと思います。なお、山口委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。別室で御待機されている田村委員をお呼びください。

                                  ( 田村委員入室)

○吉田部会長 それでは、報告事項に移りたいと思います。報告事項につきまして、事務局からの説明をお願いします。

○事務局 それでは、報告議題1、医薬品レミケードの製造販売承認事項一部変更承認について、御説明いたします。資料4を御覧ください。本剤の有効成分であるインフリキシマブですが、ヒトTNFアルファに対するキメラ型モノクローナル抗体でして、既存治療で効果不十分な乾癬に対して承認しております。しかし、現在の承認用法・用量では効果不十分な患者が存在することが知られております。

 今般、田辺三菱製薬株式会社より、既承認の用法・用量で効果不十分な乾癬患者を対象とした臨床試験において、乾癬患者に対する本剤の増量効果が確認されたとして、乾癬の効能における本剤の増量に関する用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。

 続きまして、報告事項の議題2に移ります。優先審査の審査結果です。資料5-1を御覧ください。優先審査の取扱いについて御説明します。2ページです。この優先審査制度ですが、医薬品医療機器法に基づき、希少疾病用医薬品や、適応疾病の重篤性や医療上の有用性の観点から必要性が高いと認められる品目について、他の品目に優先して審査を行うものです。

1ページを御覧ください。今回の対象品目は二つあり、グラジナ錠とエレルサ錠です。一般名はそれぞれグラゾプレビル水和物、もう一つがエルバスビルです。申請者はMSD株式会社、効能・効果は、セログループ1のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善に係る効能・効果で、本年3月中旬に承認申請がなされました。

 それでは、要件の二つに即して御説明いたします。まず適応疾病の重篤性ですが、7ページを御覧ください。1.適応疾病の重篤性に記載がありますが、C型慢性肝炎やC型代償性肝硬変につきましては、治療を行わない場合は、最終的に肝不全や肝細胞がんに至るリスクのある疾患ですので、当該疾患は生命に重大な影響がある疾患に該当すると判断しました。

 次に二つ目の要件の医療上の有用性です。9ページの下段の「機構は」で始まる段落を御覧ください。国内臨床試験の結果、既存薬と同等の有効性が期待できること。また、10ページの「また」で始まる段落ですが、本剤はハーボニー配合錠で禁忌とされている重度の腎機能障害又は透析を必要とする腎不全の患者においても、有効性や安全性が臨床試験の結果、確認されていることから、本剤は医療上の有用性が既存の治療法、予防法若しくは診断法より優れているものに該当すると判断しております。以上を踏まえ、本剤は優先審査品目に該当すると判断しました。

 次の品目は、資料5-2を御覧ください。対象品目の販売名はベムリディ錠、一般名はテノホビル アラフェナミドフマル酸塩。申請者はギリアド・サイエンシズ株式会社です。申請された効能・効果ですが、B型肝炎ウイルスの増殖を伴い、肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるB型肝炎ウイルスの増殖抑制ということで、本年3月末に承認申請がなされております。

 それでは、優先審査の二つの要件について御説明いたします。まず、適応疾患の重篤性ですが、8ページを御覧ください。B型肝炎についても、先ほどのC型肝炎と同様に、治療を行わない場合は最終的に肝不全や肝がんに至るリスクのある疾患ですので、当該疾患は生命に重大な影響がある疾患に該当すると判断しました。

 次に、医療上の有用性ですが、9ページのイの段落を御覧ください。本剤は既存薬であるテノホビルのプロドラッグ製剤で、テノホビルの特徴的な有害事象である腎機能障害等の発現を抑えることが期待されて開発されたものです。

11ページの中段の「機構は」で始まる段落を御覧ください。国際共同試験の結果、既存薬のテノホビルと同等の有効性が期待できること。また、腎機能への影響に関しては、テノホビルと比較して、良好な安全性が期待できる可能性があることから、本剤は医療上の有用性が既存の治療法・予防法、若しくは診断法より優れているものに該当すると判断しております。

 以上を踏まえ、本剤は優先審査品目に該当すると判断いたしました。なお、これらの薬剤についての承認の可否については、今後機構の審査を経た後に改めて本部会で御審議いただきたいと考えております。以上です。

○吉田部会長 それでは、報告事項について、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。特によろしいでしょうか。ないようですので、報告事項については御確認いただいたものといたします。

 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告がありますか。

○事務局 次回の部会の日程ですが、5月30()の午後3時から開催させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、本日はこれにて終了させていただきます。御苦労様でした。

 


(了)

備 考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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