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2016年7月25日 第39回社会保障審議会年金部会

年金局

○日時

平成28年7月21日(月)14:00~16:00


○場所

東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館2階 「大ホール」


○出席者

神 野 直 彦 (部会長)
植 田 和 男 (部会長代理)
小 塩 隆 士 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
出 口 治 明 (委員)
原 佳 奈 子 (委員)
平 川 則 男 (委員)
藤 沢 久 美 (委員)
牧 原   晋 (委員(代理出席))
宮 本 礼 一 (委員)
諸 星 裕 美 (委員)
山 口   修 (委員)
米 澤 康 博 (委員)

○議事

○神野部会長 定刻でございますので、ただいまから、第39回の「年金部会」を開催したいと存じます。

 皆様には、大変御多用中のところ、さらにまた梅雨明けやらぬ大変蒸し暑いところを御参集いただきまして、本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出欠状況でございますが、菊池委員、小室委員、佐藤委員、武田委員、牧原委員、森戸委員、山本委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。

 本日御欠席の牧原委員の代理として、日本経済団体連合会の清家参考人に御出席をいただけるということでございますので、部会の御承認を頂戴できればと思っておりますが、いかがございましょうか。

 よろしいですか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長 どうもありがとうございます。

 清家参考人、よろしくお願いいたします。

 御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことをまず御報告申し上げたいと思います。

 今回は、後ほどごらんいただければと思いますが、議題の2つ目として「GPIFにおける最近の動きについて」、これは報告事項でございますが、この2番目の議題の説明者といたしまして、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFのほうから、水野理事、三石審議役、青貝投資戦略部長にも御出席を頂戴いたしております。また後ほど御説明をいただけることになっておりますので、よろしくお願いいたします。

 事務局の出席者でございますが、前回の年金部会以降、事務局に異動があったということでございますので、出席者につきまして事務局から御紹介いただければと思います。

 よろしくお願いいたします。

○総務課長 私は、6月21日付で年金局の総務課長を拝命いたしました依田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 私から事務局の人事異動について御紹介させていただきたいと思います。

 年金管理審議官の伊原でございます。

 大臣官房審議官(年金担当)の諏訪園でございます。

 私的年金統括官の井上でございます。

 首席年金数理官の真鍋でございます。

 数理調整管理官の佐藤でございます。

 その他の出席者につきましては、お手元の座席図のとおりでございますので、紹介にかえさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 それでは、お手元に配付しております資料の確認をさせていただきたいと存じますので、事務局から確認をお願いいたします。

○総務課長 お手元の資料でございますが、

 資料1 GPIFにおけるオルタナティブ資産への投資手法の追加(LPSへの出資)について

 資料2 GPIFにおける保有銘柄の開示について

 資料3 基本ポートフォリオの定期検証について

という資料で3つお配りしております。

 よろしゅうございますか。

 以上でございます。

○神野部会長 よろしいですかね。お手元を御確認いただければと思います。

 それでは、大変恐縮でございますが、カメラの方々にはここにて御退室をお願いしたいと思います。御協力を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○神野部会長 議事に入らせていただきたいと思いますが、お手元に配付してございます議事次第をお目通しいただければと思います。

 本日は大きく2つの議事を準備しておりまして、第1に「GPIFにおけるオルタナティブ資産への投資手法について」、第2番目は、先ほど申し上げましたように報告事項でございますが、「GPIFにおける最近の動きについて」を議事として準備をさせていただいております。

 まず、第1番目の議題「GPIFにおけるオルタナティブ資産への投資手法について」、事務局から資料について御説明を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) それでは、事務局から議題1につきまして資料を説明させていただきます。

 議題1、GPIFにおけますオルタナティブ資産への投資手法につきましては、本部会において御議論をいただいておりまして、既に2月の議論の整理の段階で、投資信託に加えまして、現行法の枠内で対応可能なLPS、リミテッドパートナーシップという手法を追加するという方向性をお示しいただいているところでございます。

 事務局では、その後、関係機関との調整等を行いまして、また、運用機関からのヒアリング等も行ってまいりました。その結果、最終的な条文の整理など、事務的な法制上の詰めはなおありますけれども、追加に当たっての要件など、内容が固まってまいりましたので、本日、それについて御説明させていただき、御了承賜れればと存じます。

 1ページ目でございます。

 これはGPIFのオルタナティブ投資に関する現状でございます。GPIFのオルタナティブ投資につきましては、現行の中期計画の中では、運用体制の整備に伴い管理・運用されるオルタナティブ資産ということで、インフラストラクチャー、プライベートエクイティ、不動産といったものが位置づけされているところでございます。どの程度を投資するのかという目安はあらかじめは設けられておりませんので、上限という形で資産全体の5%という規定がなされているところでございます。

 平成2712月末現在でのオルタナティブ資産の積立金全体に占める割合は、0.04%でございます。

 現在、GPIFにおきましては、【運用体制の整備】ということで、独立した課の設置あるいはリスク管理を行う体制の整備やオルタナティブを担当するチームの強化を進めておられるところでございます。

 なお、1点、資料に間違いがありまして、この【運用体制の整備】の1番目の○の行末ですけれども、「平成27年3月にオルタナティブ投資室に格上げ」と書いてありますが、これは「28年3月」、ことしの3月でございます。大変申しわけございません。

 このような運用体制の整備を進めながら、オルタナティブ投資を進めているところでございます。

 2ページ目でございます。

 これは、本部会における2月の議論の整理を写し書きしたものでございます。2ページの下から4つ目の○のところでありますけれども、オルタナティブ資産への共同投資につきましては、さまざまな手法が考えられますけれども、その中でも個別企業や個別のプロジェクトの運営に直接関与するような仕組みに関しては、懸念の声もいただいたということです。

 一方で、海外の公的年金運用機関等が直接投資を行う場合では、有限責任とする仕組みに制限するといった措置を講じることで、そのような懸念に対しても対応できるのではないかなど、積極、消極、種々の御意見もあったところでございます。

 いろいろと御意見があった中で、最終的には、一番下の○にありますように、オルタナティブ資産への投資につきましては、現行のGPIF法の枠内で対応可能な、LPSLP、リミテッドパートナーシップのリミテッドパートナーとしての出資のような、GPIF自身が個別の投資判断を行わず、有限責任の枠組みで行うことが明確なものの実施は認められるべきとの意見が多かったということで、取りまとめをいただいたところでございます。

 3ページは、こうした本部会での議論を踏まえまして、与党のプロジェクトチームなどに厚生労働省が示しました改革の方針でございまして、同じような内容が書いておりますので、説明は省略させていただきます。

 4ページでございます。

 議論の対象になりました中で、現在のオルタナティブ投資の手法、投資信託を通じた共同投資を行っておりますので、その紹介が4ページでございます。

 投資信託を通じた共同投資につきましては、平成26年2月から既に開始をしております。インフラストラクチャー投資として、カナダの年金基金と国内の投資家との共同投資協定を結んだ形で投資信託を通じた海外のインフラストラクチャー案件に対する投資を既に行っているところでございます。

 この際には、種々の調査研究などを行った上で、流動性の犠牲に伴うプレミアムの獲得とか、分散投資による効率性の向上等が期待できるといったオルタナティブ投資におけるメリット、また、そのリスクなども十分踏まえた上で必要だという判断を行い、進めてきているところでございます。

 また、昨年からは、プライベートエクイティ投資、投資信託を通じたプライベートエクイティへの共同投資なども始まっているところでございます。

 5ページでございます。

 今回、新しい手法として追加を予定しておりますリミテッドパートナーシップの大きな枠組みを記載しております。この資料につきましては、年金部会での議論に供したものを基本的にベースとしておりますので、詳細な説明は避けさせていただきますけれども、右側にありますように、リミテッドパートナーシップという組合契約を結び、運用会社が無限責任組合員として投資対象の判断を行っていく。GPIFはこの一員として有限責任の枠組みの中で投資を行っていくという仕組みでございます。

 投資対象につきましては、LPSは投資の手法でございますので、今までのGPIFの投資対象に新たに何かオルタナティブの新しい資産クラスを追加するものではございません。現在基本ポートフォリオなどで対象になっておりますインフラや不動産、あるいはプライベートエクイティといったものが対象になってくるものでございます。

 その上で、7ページをごらんいただければと思います。

 先ほど資料の2ページでも御紹介させていただきましたように、当年金部会におきましても種々の御議論があったことがございますので、そうした御議論を踏まえまして、今回、リミテッドパートナーシップという手法を追加するに当たっては、一定の要件のもとで取り入れてはどうかということでございます。

 要件としては、4つここに掲げておりますが、1つ目といたしましては「特定の案件への投資の回避」、要件の2としては「レピュテーションリスクの回避」、要件の3としては「不動産投資の取扱い」、要件の4としては「適正手続き、透明性の確保」でございますが、要件の1つ目の「特定案件への投資の回避」は資料の8ページを見ていただければと思います。

 リミテッドパートナーシップを通じた投資につきましては、リミテッドパートナーシップの形態によってさまざまに想定されるわけでございますけれども、例えば、8ページの下の絵の右のほうにありますような、あらかじめリミテッドパートナーシップでの投資対象が特定のプロジェクトにあらかじめ決まっているようなもの、例えば、非上場会社のAという会社に投資することがあらかじめ決まっていて、その上でLPSが組成される場合でありますと、GPIFLPSに出資を行うことが非上場会社Aに対して投資を行うこととほぼイコールということになるのではないかと、この年金部会での御議論では、GPIFが個別案件の投資判断を行わないという御議論がございましたので、そういう意味では、このような形態のLPSは今回の対象としないことにしてはどうかということ、同様に、形式的にはリミテッドパートナーシップ自体は特定の個別プロジェクトを名指ししたものではないものの、契約の内容を見ますと、例えば、非上場会社Aに、特定して投資を行うことがあらかじめわかっているもの、これにつきましては今回は対象としないことにしてはどうかということでございます。

 こうしたものを排除した上で、リミテッドパートナーシップがかなり海外の公的年金基金の間では一般的な投資手法として広く行われているものでございますので、海外の年金との共同投資など、必要な投資の枠組みに参加できるように、左側にありますような、GPを介して種々のプロジェクトに投資をしていくようなスキームを積極的に取り入れていきたいということでございます。

 また、要件の2の「レピュテーションリスクの回避」でございます。これにつきましては、リミテッドパートナーシップという枠組みそのものは、法律上は個別の投資判断をGPが行いますし、また、そのリミテッドパートナーシップとして参加する投資家につきましては、有限責任という仕組みで、法的には担保されているわけではございますけれども、その上でも個別の投資対象案件を見たときに、GPIFの出資分が50%を超えるような案件になっていた場合に、例えば、対象の案件で何か予期せぬような不祥事等が生じた場合に、実質的なアセットオーナーというものがGPIFではないかということで、レピュテーションのリスクが生じる可能性があるのではないかということです。これも年金部会での御議論などを踏まえまして、GPIFの投資分につきましては、LPSの投資対象となる個々の案件について50%以下とする要件を入れてはどうかということでございます。

 ただし、GPIFが対象案件について支配的な地位にないことが明確な場合につきましては投資可能とするということで、下に書いてあるような例外を設けております。

 ちょっと説明が前後しますけれども、8ページの「特定案件への投資の回避」ということに関して言いますと、これは決してこのような要件を入れたからといって何かGPIFが一切その対象の案件を判断しないということではなくて、LPSあるいはGPに対するデューデリジェンスの一環として予定されている案件のうちのかなり確度の高いものについてその内容を審査するといったものを排除する趣旨ではございません。ただ、あくまでも出資時点において特定の個別のプロジェクトを明らかに意図したものにつきましては対象外としてはどうかという趣旨でございます。

 以上、要件のうち2つを詳細に御説明いたしました。7ページにお戻りいただきまして、要件の1と2に加えて、不動産投資につきましては、本部会での御議論も踏まえまして、このLPSが不動産を直接保有することはしないという要件を加えています。これは直接保有しないということですので、証券化された不動産への投資の仕組みは排除するわけではございませんけれども、不動産の所有権を直接LPSが持つことは排除するものでございます。

 また、要件の4として「適正手続き、透明性の確保」ということで、運用委員会における適切なモニタリングを行うこと、また、リミテッドパートナーシップを組成した場合には、投資対象分野など、必要な情報を開示していくという要件を付してはどうかということでございます。

 これらの要件につきましては、要件1の1番目の行にあります「運用対象の銘柄を特定して契約するものを除く」というところについては政令で規定しており、それ以外につきましては業務方法書で規定することを予定しておるところでございます。

 こうした要件を付しまして、リミテッドパートナーシップを通じた投資手法につきましてはスタートをしていってはどうかということでございます。

 私からの説明は、以上でございます。○神野部会長 ありがとうございました。

 この年金部会で2月にお示しをした方向性に沿いながら、まとめられたGPIFにおけるオルタナティブ資産への投資手法の追加について御説明をいただいたわけでございますが、ここから、委員の皆様方からの御質問、御意見を頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。

 どうぞ、宮本委員。

○宮本委員 ありがとうございます。

 この資料1の説明をいただいて、何点か意見と、2点ほど質問をしたいと思いますので、お願いいたします。

 まず、年金資産の運用に当たっては、積立金が年金保険制度を維持するための財源という性格上からすると、安全性が最優先されるべきということはこれまでも何回か私も主張させていただいたところであり、不動産投資など、リスク性資産の割合を高めるべきではないこともあわせてこれまで発言をしてきたつもりです。投資手法についても、国民が理解をして納得性のあるものとすべきと考えています。

 このような観点から、201410月からオルタナティブ資産への投資が開始され、その後、拡大されてきていることについては、そのこと自体に問題がないのかという思いはやはり捨て切れません。

 年金積立金全体に占めるオルタナティブ資産への投資割合は、昨年12月現在0.04%と資料にも載っておりますけれども、上限は資産全体の5%ということであり、今後、さらなる資産割合の拡大も予想されます。

 そこで、仮に上限の5%まで投資をした場合、約7兆円前後ということになると思われますけれども、日本の国内市場におけるオルタナティブ投資の総額が、現在は大体どのくらいの規模になるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

○神野部会長 まず、質問の1点目ですね。全国というか、日本の市場規模がどのぐらいか、その中でどのぐらいのウエートを占めることになるかということです。

○大臣官房参事官(資金運用担当) まず、オルタナティブ資産の投資に関しましては、基本ポートフォリオの前の時点から既に開始をしておりますので、基本ポートフォリオの策定によって初めて開始したものではないわけでございますけれども、この際のオルタナティブ資産と称していますものが、国内、国外を分けて整理しているものではございません。

 現状では、国内のオルタナティブ市場と国外のオルタナティブ市場を比べますと、国内のオルタナティブ市場は非常に小さくて、海外のオルタナティブ市場が大きいと承知しておりますので、現在進めているものもそうでございますけれども、オルタナティブ資産の投資対象としてはどちらが主になるかというと、恐らく海外のほうが主になるのではないかと、これは私どもが責任を持って答える立場ではありませんけれども、一般論としてはそのようになろうかと思います。

 そういう前提の上で、御質問の国内の市場規模についてお答えいたしますと、これはなかなか正確な数字は難しいのですが、例えば、インフラストラクチャーについていえば、市場規模として、内閣府の発表しているPFI事業の契約金額ということでとれば、2015年度の契約金額が4,000億円台、投資可能性ということでファンド募集額はどれくらいかということで見ますと、2014年度で400億円台であります。

 プライベートエクイティに関しては、民間企業のレポートを引きますと、2014年の日本におけるプライベートエクイティ市場のディールの規模が大体6,000億、ファンド募集額を見ますと、種々ありますけれども、例えば、バイアウトファンドでいえば1,500億円程度。不動産につきましては、これはかなり証券化されている不動産の市場規模が大きいですけれども5兆円ぐらい、ファンドレイジングでいいますと、国内リートで5,000億円台、不動産ファンドで9,000億円台となっております。これは市場規模という御質問ですのでそういう数字が出てまいります。実際にGPIFの投資との関係はそれぞれ案件を判断してということですので、直接参考になるかわかりませんが、以上のようになっております。

○神野部会長 よろしいですか。

 どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 ということは、オルタナティブ資産への投資対象は、先ほどおっしゃるように、全体的に海外が大きくシェアを占めることになると思いますけれども、そうなると、まさに昨今言われております為替変動の問題とか、あるいは、カントリーリスク等を考えると、積立年金の運用手法としては、やはり海外のシェアがふえるほど不安が残るという感じもしています。

 そこで2つ目をお聞きしたいのですけれども、オルタナティブ資産は一般的に流動性が乏しいものが多いと思うのですけれども、流動性がないことに対するリスク回避といったものに手当てはしっかりなされているのかどうなのか。ここも非常に気になるところで、これも少しお答えをいただければと思います。

○神野部会長 流動性に対しての対処等々、ありましたら、どうぞ。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 当然ですけれども、こうしたオルタナティブ投資は、一般的に長期投資家の間において分散投資を進めていく上でメリットがあるということで認識をされておりまして、海外の年金基金などでも一般的に行われております。その際には、流動性の犠牲に伴って、逆に言えば、それによってプレミアムを獲得する部分もございます。

 そして、実際の案件の判断に当たりましては、そうした流動性のリスクはどの程度あるのか、それに対してリターンがどの程度になるのかということを十分個別に精査をした上で、投資対象とするかどうかの判断をしていくということだと思います。

 そのために、GPIFにおかれましては、専門の担当のチームの強化なども図っておりますし、リスク管理の体制も整備しているということだと理解をしております。

○神野部会長 どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 年金積立金の運用は失敗を絶対にしてはならないわけでありまして、仮に積立金に大きな穴をあけた場合は、年金制度そのものに対する国民の信頼が大きく失墜をするわけです。やはり年金積立金の運用は高いリスクをとって収益の最大化を追及することよりも、先ほどお話ししたとおり、安全性を優先することが求められていると私は思っています。

 公的年金の運用という観点からは、国民の信頼確保ということが何よりも最優先だということが一番大事でありまして、公的年金制度に対する信頼性の低下というリスクをとってまでハイリターンを得ようとするのではなく、オルタナティブ資産への投資はやはり一定程度抑制的であるべきだと、改めてもう一度意見として言わせていただきます。

 今回提案されている手法の拡大等については、コストの削減というメリットが挙げられており投資信託分の運用が節約されるという面は確かにあると思います。

 しかし一方で、債権者会議とか、訴訟への対応など、その分専門的人材の強化といった、体制配置が必要になると思うわけであります。

 そこでお聞きしますが、直接LPSにすることによってどのぐらいの費用削減の効果が生まれるものなのか。数字をできれば示して説明をいただければと思います。

 7ページの説明が先ほどありましたけれども、「適正手続き、透明性の確保」というところでは、運用委員会の事前及び事後の報告をもってモニタリングをすると、先ほどおっしゃっていただきました。

 運用委員会自体が、議事録も7年経過後まで非公開ということでございますし、資料等の公表も極めて限定的ということで、現状では極めて不透明と言わざるを得ないのではないでしょうか。

 透明性を確保するためにも、投資対象分野など、必要な情報開示は当然ですけれども、誰に対して何を情報開示するのかといった点をぜひ明らかにしてもらいたいと思っています。

 オルタナティブ投資については、例えば、政治家による口利きなどという憶測を回避するといったことも非常に大事なことで、投資案件の開示はそのためにも必須でありますし、簿価とあわせて公表するべきだと思います。

 

 また、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式に区分して開示するとされている。現在、オルタナティブ資産については、資料2「GPIFの保有銘柄の開示について」の4ページマル1の※によれば、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式に区分して開示すると書いてありますけれども、オルタナティブ資産については、伝統的な4資産に比べると、国民からは非常にわかりづらくブラックボックス化しやすいということを懸念として持っています。

 したがって、公表に当たっては、ぜひこの4資産に区分して公表することに加えて、オルタナティブ資産だけを再掲して、改めて国民がよりわかりやすい情報公開に努めてほしいと思っています。

 今回、7ページの要件2の「レピュテーションリスクの回避」についても記載してございますけれども、レピュテーションリスクを回避するために、「LPSによる個別の投資案件について、原則、GPIFの投資分が50%超とならない契約に限る」と、ここで要件を課すことになっています。

 しかし、50%超という要件だけで、レピュテーションリスクが本当に回避できるのか否かについては、少し不安だと思っています。50%を超えない場合でも、例えば、十分に支配的な地位になる場合も想定されるのではないでしょうか。「筆頭出資者とならないこと」という要件も必要なのではないかと思います。 以上です。

○神野部会長 意見は承っておきたいと思いますけれども、事務局からいただく説明は、コスト節約に関してお答えいただくということでよろしいですか。

○宮本委員 はい。

○神野部会長 お願いできますか。

○大臣官房参事官(資金運用担当) まず、これは手法でございますので、それを投じたことによって具体的にどれだけの定量的なコスト削減効果があるかということを示すことは難しいのですけれども、今回、これを追加する議論の発端となりましたのは、労使団体の推薦された方も含みます運用委員会の場におきまして、従来の投資信託を介したオルタナティブ投資の手法では、場合によっては屋上屋を架するケースもあり得るのではないか、つまり、投資信託分のコストがかかるのではないかという御指摘もあり、コスト削減の観点から、リミテッドパートナーシップという海外の公的年金基金が通常行っているような手法も入れてはどうかということでございました。

 そういう意味では、同じ投資をする対象そのものが変わるわけではございませんけれども、投資信託を介した手法に比べて、一定の削減効果があり得るのではないかと思っております。ただ、それ以上のことにつきましては、ケース・バイ・ケースだということだろうと思います。

 あえて念のために申し上げれば、オルタナティブ投資イコールハイリスク・ハイリターンということではありませんので、オルタナティブ投資そのものにつきましてはさまざまな目的を持って行われるものでございますし、例えば、変動幅を減らすことを目的として行われるという性格を持つようなオルタナティブなどもございます。オルタナティブ投資ということで一つにしてしまうとなかなかその性格づけは難しいのですけれども、それぞれの資産あるいはそれぞれのディールに応じて、リスク、リターンをよく精査をして、GPIFでこれまでも進めておられますし、今後も進めていただきたいと思っております。

 また、開示につきましても、運用委員会でのモニタリングは、労使の代表の方も含まれました運用委員会で内容等を見ていくということでございますので、外からの介入等は行われない仕組みになっていると思います。加えて、情報開示につきましては、例えば、契約上の問題とか海外の年金基金での状況なども踏まえまして、国民の皆様にとって必要な情報を開示する方向で検討していきたいと思います。

 以上でございます。

○神野部会長 ありがとうございます。

 ほか、いかがでございますでしょうか。

 どうぞ。

○米沢委員 私がまだ委員長のときにお願いした案件ですので、改めて整理させていただきますと、そのときはオルタナティブをもっとふやせとか何とかという話では全くなくて、既に決まっていたフレームワークの中で、先ほどから出ていましたけれども、投資信託を組成することによって追加的に費用がかかるので、それをスルーすれば、その分はコストが減りますねということで、その仕組みがあるのであれば、そこのところを工夫してくださいということでお願いして、きょう、具体的にお答えいただいたと思っておりますので、オルタナティブをエンカレッジするとかということとは違う話でございます。

 その具体的な内容としましては、先ほど不動産等でややそういう話も出てきましたけれども、これはあくまでもLPSにすることによって出てくる話ですので、私の理解ではこれでもってふやすとか減らすとかという話とは全く別の次元で議論していたかと思っております。

 以上でございます。

○神野部会長 ありがとうございます。

 では、山口委員。

○山口委員 これまでの当部会での議論を反映した形でこの4つの要件をまとめていただいたと考えておりまして、そういう意味では、これでよろしいのではないかと思っております。

 既存の伝統的資産ではなかなか十分なパフォーマンスを上げることができない状況が続いておりますので、GPIFとしても、さまざまな努力を重ねていく中で、このオルタナティブ投資についても一定の範囲の中でやる。その中で、コストの面等を考えたときに、効率的な投資ということから、今回出ているようなLPSを使って有限責任組合員として参画していくという方法としては妥当ではないかと思っております。

 ただ、先ほど宮本委員も御指摘になりましたし、きょうの資料にもありますように、オルタナティブ投資は流動性を犠牲にして、それによってリスクプレミアムが追加されているものと考えられますので、さまざまなリスク管理といったものを従来以上にやっていただくことが大事だと思っております。

 投資する前の段階であっても、途中解約の制限条項がよくオルタナティブにはついていますけれども、そういったものがどんなふうになっているかといった確認でありますとか、投資した後については、従来以上に幅広い情報収集について力を入れていただきたいことと、海外の年金ファンドなどで問題になっておりますが、報酬水準が大き過ぎてそれが開示されないようになっていて、そのあたりが非常に問題になっているケースもありますので、できるだけ適正な報酬水準について絶えざる検証をしていただくと同時に、できるだけ開示できるようにしていただければありがたいと考えております。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 ほか、いかがでございますか。

 平川委員、どうぞ。

○平川委員 ありがとうございます。

 このオルタナティブ資産への投資資本の追加の問題につきましては、先ほどいろいろな懸念点がございましたので、その辺をしっかりと対応していくことが極めて重要かと思います。特に情報公開は重要な観点だと思っているところであります。

 そういった中で、先週、日経新聞の一面にGPIFESG投資に乗り出すという記事が記載されておりました。ESG投資についてさらなる取り組みを進めていくという方向性になると思いますけれども、オルタナティブ投資におけます投資とESG投資の関係性など、説明が可能でありましたら、少し解説などをお願いできればと思います。

○神野部会長 よろしいですか。

 お願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 先日、新聞報道がありましたけれども、ESG要素を考慮した国内株式の指数の公募の件かと思います。その件につきましては、GPIFで発表しておられます。後ほど次の議題でGPIFが最近の取り組みについて報告する場がありますので、もしよろしければその場で補足してGPIFから説明いただければと思います。

○神野部会長 よろしいですか。

 どうぞ。

○平川委員 わかりました。

 言いたいことは、このオルタナティブ投資のみがESG投資の抜け穴にならないようにということを、意見として言わせていただければと思います。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 ほか、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○小塩委員 質問をよろしいでしょうか。

LPSへの出資における要件として2つ示されましたが、そのうち1番目について質問をしたいと思います。ここに書いてあるように、特定の個別案件に投資することはやめましょうという趣旨はよく理解できます。

 ただ、例えば、抱えているプロジェクトが10とか15あるということであれば個別性はそれほど心配しなくていいと思うのですが、想定されているものが2つとか3つとか、中身を見るとよく似ている、関連しているとかということになりますと、個数だけでは個別性は判断できないと思うのです。その辺の見きわめは実際にはどうされるのでしょうか。ちょっとイメージが浮かばないので、説明していただければと思います。

○神野部会長 よろしいですか。

 どうぞ。

○大臣官房参事官(資産運用担当) 小塩先生がおっしゃるように、限界的な事例を考えると難しい部分が出てくるのかもしれませんが、これ自体は、例えば、出資の時点であらかじめ2つ3つ決まっていて、その出資後、LPSが組成された後、A、B、Cというものについて、LPSが出資をやるやらないという新たな判断の加わる余地がなくて、最初からその3つで決まっているというものであれば、やはり特定されていると言わざるを得ないのだろうと思いますが、逆に、3つぐらいを予定はしているけれども、そして、1個目は既にある程度固まっているけれども、B、Cについては、成熟度でいえば、まだ7割、8割、あるいは6割とかという程度で、今後、デューデリ上ではその内容についてGPIFも見てはいるものの、B、Cについて最終的に投資をするのかしないのかということはGPが判断をしますし、無限責任組合、運用会社が判断をするという枠組みであれば、それは特定されているとまでは言えないのだろうと思います。

○神野部会長 原委員、どうぞ。

○原委員 ありがとうございました。

 私からはコメントなのですけれども、このオルタナティブ投資の部分について今回御説明いただいたLPSへの出資ということなのですけれども、積立金全体に占める投資の割合が限られているということ、今は0.04%であり、上限は5%ということで、決められている、制限があるということだと思うのですが、金額として見てみると非常に大きなものであるかと思います。プロジェクトによっては、それによって事業なりに影響を与えるものが出てくる可能性が出てくると思います。やはり情報公開というか、透明性の確保ということが重要と考えます。要件4でありましたけれども、この中で投資対象分野とか金額、出資割合等はもちろんなのですが、その選択理由とか、投資目的とか、あるいは、投資先決定の背景、経緯とかといったものをできる限り開示していただくなりして、政治や政策目的などにもならないようなかたちの工夫が必要かと思います。先ほど小塩先生がおっしゃったのですけれども、似たようなプロジェクトがあったりすることも想定されますので、そういったことのできる限りの透明性を確保していただきたいと思っております。

 以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございます。

 ほかはよろしいですか。

 どうぞ。

○出口委員 今回ペーパーでまとめていただいたものは、2月の年金部会の結論を丁寧に具体化していただいたので、これで問題はないと思うのですが、私は不勉強なのですけれども、この年金部会に付議されて審議されるものはどういうものなのか、こんなことを、委員の私がお聞きするのは恥ずかしいのですが、例えば、法律改正であれば、それはここできっちり協議をして、その意見を反映して法律案をつくるということはよく理解できるのです。でも、今回は政令で、しかも方向が明確に出ているわけですから、そういうものは協議なのか報告なのかちょっとわからないところがあって、これは年金部会の設置令とかできちんと決められているのかもしれませんが、なぜ年金部会にかけるのかその協議か報告かということも、決まっているのだったらいいのですけれども、もしそうでなかったら整理していただいてもいいのかなと思いました。

 今回については、決めたことの枠内でやることであって、それをもう一度協議することは一事不再議になってしまうので、報告ということでいいのではないかということです。

 ちょっと感想めいたことになりますが、付議の根拠を教えていただければありがたいと思いました。

 以上です。

○神野部会長 素人ですが、これは「法令」というと政令は入るのですね。

○出口委員 法令ですね。

○神野部会長 「法令」といえばですが。不見識でちょっと規則がわからないので、今のお話は、法律改正ならともかく、政令のようなものであれば、枠組みの枠内に入っているものであれば、わざわざここで審議事項とする必要はなくて、このような形でと。

○出口委員 しかも決めた枠内であれば、報告でいいのではないかとふと思ったのです。

○大臣官房参事官(資産運用担当) 今回の内容は、確かに方向性としては御審議いただいた内容をより明確にしたものでありますので、方向性としては既に御了承いただいてるものでございますけれども、法律、政令という意味で、法令改正にかかわるものでございますので、このような会議を設けて改めて御説明させていただいたわけでございますけれども、法令に及ばない、例えば、GPIFの運用の内容のような話であれば、そこは基本的には専門機関であるGPIFに任されるべきものではあろうかと思いますけれども、今回は年金部会での1月、2月での御議論があった事項であり、今後、政令改正という形で法令の改正に及ぶものでございますので、改めてこのような場を開かせていただきました。

○出口委員 わかりました。

 法令は一応協議することになっているのですね。

○大臣官房参事官(資産運用担当) そうです。

○神野部会長 よろしいでしょうか。

 ほか、いかがですか。

 ないようであれば、今の議論にもかかわりますけれども、これは、この年金部会でことしの2月にGPIFの改革にかかわる議論の整理で取りまとめた追加の方向性、この枠内といいましょうか、その範囲内ということで、いろいろと御意見を頂戴いたしましたが、いずれも実施するに当たっての留意事項とか要望等々が出されたと思いますが、その点は事務局にも参照としていただくことにしながら、この部会としては、今回事務局で示していただいた法令改正に伴うことに関していえば、一定の要件を付した上で進めていくということで、この部会として了解したということにさせていただいてよろしいですか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長 それでは、そのようにさせていただきまして、続いて、2つ目の議題に入りたいと思います。

 これはGPIFの最近の動きにつきましてGPIFから御報告を頂戴するということでございますので、GPIFの三石審議役からお願いできますでしょうか。

○三石審議役 私から、資料2と資料3をまとめて報告をさせていただきます。

 まず、「GPIFにおける保有銘柄の開示について」でございますけれども、その開示の背景について、1ページにまとめております。

 たまたま先週末のある報道などでは、今週、私どもは27年度のパフォーマンスの報告がございますけれども、そちらが厳しい結果になるので、それに絡めて銘柄の情報公開を検討したようなストーリーで書かれておるのですけれども、この後に詳しく申し上げますけれども、もともとこちらは私どもの自主的な取り組みとしてかなり長い時間をかけて慎重に検討をしてきたものでございますので、その点も含めて御説明をさせていただければと思います。

 「背景」でございますけれども、左側に3点ございます。

 1つは、当然のことでございますけれども、受託者責任として、被保険者、幅広く言えば国民といった方々に対して情報開示を一層進めていくべきだという考え方でございます。

 2つ目といたしまして、この後、基本ポートフォリオの検証についても報告をさせていただきますが、一昨年10月に見直しをした後、特に株式等に対する国民の関心、GPIFがどういうところに投資をしているのかという関心が高まっている。それに対して対応をしたいということがございます。

 3つ目といたしましては、この後、やはり詳しく御説明させていただきますが、海外の公的年金基金におきましては、こういった個別の銘柄開示の即時全面開示がグローバルスタンダードになっているということがございます。

 そこで右側でございますけれども、「対応」といたしましては、7月29日、今週の金曜日になりますが、個別銘柄の情報を全面開示する方針でございます。

 それで「期待される効果」でございますけれども、最初の2つが、ある意味、直接的な効果になりますけれども、私どもの運用に関する透明性あるいはどういうところに投資をしているかという説明責任の向上につながること、そして、それによって私どもの運用に対します国民の方々の信頼性の向上にもつながる。また、そういったことを通じて、今度は海外の投資家の方々が日本のマーケットあるいは日本の企業をごらんいただいたときに、その信頼の向上にもつながっていくのではないかと考えているところでございます。

 2ページでございますけれども、海外の公的な年金基金の開示状況がどうなっているのかということで、上の段が株式、真ん中から下の段が債券でございますけれども、まず、株式のところをごらんいただきますと、カナダから北欧、さらには韓国、米国とございますけれども、韓国を除きまして、株式につきましては、全銘柄を即時開示することがグローバルスタンダードになっているということでございます。韓国だけが上位の10銘柄だけを開示するという形でございます。

 一方で、債券につきましては、カナダは全く開示をしないという一方で、ほかの国々につきまして、やはり韓国を除きまして、全発行体あるいは全銘柄という形で即時開示をしている状況でございます。

 ここでいう「全銘柄」といいますのは、いわゆる第何回国債という形で、満期あるいはクーポンがそれぞれ回号ごとに異なるわけでございますが、その異なるものごとに開示をするというものが「全銘柄」です。そういった回号は別にして、例えば、日本国債であれば、日本国債全体として発行体でまとめるものが「全発行体」としての開示の仕方になりますけれども、ここは国あるいは地域によって発行体ごとあるいは銘柄ごとという違いはございますけれども、いずれにせよ、全面的に開示をしているという状況でございます。

 3ページでございますけれども、開示に至った経緯でございますけれども、私どもはもともと昨年4月から始まりました中期計画におきましても、情報開示をできるだけ進めるということがございました。そういう中で、ちょうど今年の2月、こちらの年金部会におかれましても、可能な限り情報公開を進めていくようにという御意見が出されていったということでございます。

 さらには、2月16日、厚生労働省さんで与党のPTに対しまして、「GPIF改革の方針」という形で、個別銘柄の保有状況を、ここでは一定期間後に公表するという方針が出されております。また、現在、国会で継続審議になっておりますGPIF法の改正法案におきましても、運用実績等の公表の義務づけがございまして、具体的な中身については、省令で規定をすることとされておりました。

 一方、当方、GPIFにおきましては、今年の3月に、28年度の事業計画を公表しておりますけれども、そこでは、銘柄の公開について、市場への影響に留意しつつ、情報公開の充実を図るのだと。それを7月29日の業務概況書の公表日に合わせてそういったものを公表していくのだということを、既にこの段階で方針を打ち立て、公表をしているところでございます。

 右側でございますけれども、具体的な公表の仕方につきましては、労使も入っていただきます運用委員会で3回にわたり丁寧に御議論をいただきました。特に市場等への影響への懸念という御意見もございましたので、この後、詳しく申し上げますけれども、関係団体への意見照会というステップも踏みまして、最終的な方針を7月14日に決め、本日、こちらの年金部会に報告をさせていただいて、今週の金曜日、29日に公表をさせていただくという段取りとなっております。

 具体的な方針の中身でございますが、4ページをごらんいただければと思います。

 枠内のところでございますが、1番目としましては、情報公開を進める観点から、海外と同様に、保有銘柄の即時全面開示を行うことが私どもの基本的な方針でございます。

 2番目といたしまして、ただし、関係者の御意見も踏まえまして、段階的にそれぞれ開示をしたときの実証的な検証、イベントスタディと呼んでおりますけれども、こういったものを行いながら、市場への影響等の懸念がないことをその都度確認しながら進めていきたいということであります。

 具体的には、この7月29日におきましては、平成27年3月末、昨年3月末の保有銘柄を開示し、第2四半期の運用状況の報告が1125日と既に決まっておりますので、この段階では今年の3月末の保有銘柄を開示する。3段階目といたしましては、来年7月の業務概況書の公表時には、来年3月末の保有銘柄を開示する。このように段階的に進めていきたいと思います。

 その都度、特に市場等の影響に懸念がないことが確認されれば、以降は、毎年7月の業務概況書の公表時に、その年の3月末の保有銘柄を開示するということでございます。

 なお、イベントスタディにつきましては、下に※がございますが、既にファイナンスの世界で、ここでも3ファクターモデルの紹介などがございますが、特定の日に特定のイベントが起こったときに、平均的な株式のリターンから外れるような、アブノーマルなリターンが出ているかどうか。こういったものを定量的に分析する手法が確立されておりますので、こういったものも使いながら市場等の影響の分析をした上で、こういった進め方をしてまいりたいと思っております。

 申し上げたことをビジュアル化したものが5ページでございまして、したがって、この7月29日に出すものは昨年3月末のものでございますので、1年4カ月前のものになります。この11月に出しますものはことしの3月末ですので、8カ月前のもの、来年7月に来年の3月末のものを出しますので、これは4カ月ほど前の保有銘柄の開示につながるというイメージでございます。

 具体的な開示された姿のイメージが6ページにございますけれども、業務概況書は紙数の制約がございますので全銘柄を載せるわけにはいきませんので、こちらのほうはそれぞれのアセットクラスごとに、債券であれば時価総額順で上位10発行体、株式であれば上位10銘柄を開示するという前提でございます。

 一方、ホームページは、アルファベット順に全銘柄あるいは発行体を開示するということでございます。

 なお、株式につきましては、各銘柄ごとに、いわゆる企業名ごとに開示をしてまいりますけれども、債券につきましては、先ほど海外の事例でもごらんいただきましたように、第何回国債、あるいは、満期がいつでクーポンがいくつというものまで開示をしますと、実際にそれを市場で読み取られて、私どもの運用戦略にも差し障りがあって、それがひいては年金資産の毀損にもつながるという懸念がございますので、債券につきましては、発行体ごとにまとめて開示をするイメージでございます。

 7ページ以降でございますけれども、この辺は具体的な各団体からいただいた、今回の私どもの案に対する御回答でございますが、16ページをまずはごらんいただきたいと思います。

 私どもが今回の開示の方法について意見照会をする際には、案1から案3、複数案という形で御意見の照会をさせていただきました。

 案1が、海外年金基金のほとんどで行われているような年度結果と同時に全面開示をする、いわゆる即時全面開示の案になります。

 一方、右側の案3でございますけれども、一定期間後に全面開示をする。例えば、数年前の時点のものを全面開示するものが案3でございます。

 真ん中の案2が、ちょうどその中間的な案でございまして、一定期間後のものを全面開示しつつ、その年度のものについては、例えば、時価総額の大きいものだけ開示するという部分開示に留めるのが案2でございます。

 考え方といたしましては、下に矢印がありますように、案3から案1に行くほど透明性の向上は大きい。一方、市場等への影響の懸念に関しましては、逆に、案3から案1に行った場合にその懸念がより大きくなるのではないかという形で、複数案で意見照会をさせていただきました。

 その結果でございますが、7ページに戻っていただきますけれども、まず、経済団体の御意見でございます。経団連さんでございますけれども、御回答の上から2行目、案1、即時全面開示が望ましいと。ただし、引き続き市場への影響を見きわめつつ、適切な開示方法を検討されることを期待したいという御意見でございました。

 2番目の日本商工会議所さんでございます。

 上から3行目の後半の部分ですが、市場当事者である上場企業、とりわけ情報開示に伴う影響を受けやすいと想定される流動性の低い株式や小型株を中心に意向調査を行うべきではないか。そして、金融庁とも協議し、市場の混乱を最小限に抑えつつ情報公開の充実を図る開示方法を慎重に検討する必要がある。提示された3案に限って言えば、一定程度の期間を経て開示する案3を試行的に行い、影響度合いを検証した上で他の案に移行していくことも一案ではないかという御意見でございます。

 経済同友会さんでございますけれども、8ページの一番最初の行でございますが、GPIFが示された3案の中では、案1、即時全面開示が原則的に望ましいという御意見でございます。

 続いて、労働団体、連合さんでございますけれども、8ページの一番最後の行でございますが、GPIFは保有銘柄に関する情報を全面的かつ速やかに開示すべきという御意見でございました。

 9ページでございます。

 ここからが金融市場関係の団体になりますけれども、日本投資顧問業協会さんでございますが、上から4行目の終わりのほうでございますけれども、原則としては、年度結果と同時に全面開示、いわゆる案1が適当であると考えますという御意見でございました。

 2番目、信託協会、信託銀行さんの協会でございますけれども、こちらは上から3行目、年度結果と同時に全面開示する案1が、情報開示の観点からは最も好ましいという御意見でございました。

 一方、その下の東京証券取引所さんでございますけれども、そもそも情報公開の充実を図る観点から、保有銘柄の開示について検討が進められているとの由、こうした検討が行われることは非常に有益であり、その趣旨に賛同いたしますということで、ただ、その投資行動が推測されることによって、当法人の運用資産の毀損を避けることが適当ではないかという御意見をいただいております。

 最後に、日本証券業協会さんでございますけれども、こちらは何か一つの御意見という形ではなくて、案1から案3に対しまして、ここでは全部個社名は掲載しておりませんけれども、各社さんはそれぞれ意見が分かれたということで、それぞれの社の御意見とその理由がリストアップされるという御回答でございました。

 このような回答を踏まえまして、やはり特に経済団体の一部の団体さんなどから、市場への影響の懸念といった御意見も出ましたので、先ほどのような段階的な形で、しかしながら、即時全面開示を目指すという方針に至ったところでございます。

 まず、資料2については、以上のとおりでございます。

 続いて、資料3「基本ポートフォリオの定期検証について」でございます。

 1枚おめくりいただきまして、これは既に今年の5月31日に公表させていただいている資料でございますけれども、御案内のように、一昨年の10月に基本ポートフォリオの見直しをいたしまして、この基本ポートフォリオにつきましては、定期的に検証を行って、必要があれば、さらに見直しを行うとしてきたところでございます。

 そこで、今年の3月から4月にかけまして、私どもの運用委員会で丁寧に3回にわたり御議論をいただきました。その際には、特に今年の1月末にマイナス金利が導入されましたので、その導入後の市場データ、特に金利等のデータも使って定期検証を行ったところでございます。

 このポイントのところの2番目の○に結論を書いておりますけれども、2つ結論がございまして、1つは、年初からの金利低下などによる国内債券の期待リターン低下の影響は見られますけれども、現行の基本ポートフォリオはおおむね目標利回りを満たしている。詳しいデータは後ほど申し上げます。

 2番目といたしましては、一昨年10月に策定したときと比較いたしまして、年金財政で必要とされる積立金水準を下回るリスクはむしろ現時点では低下をしている。必要な積立金水準を確保できる見通しが高まった。この2つを理由にいたしまして、今の基本ポートフォリオを見直す必要がないという結論に至っております。

 具体的なデータを御紹介したいと思いますが、その裏面に今の基本ポートフォリオの資産構成割合とその乖離許容幅を載せております。

 そして、この年金部会の先生方にも御報告させていただいておりますので、ちょっと振り返るような形になりますが、一昨年10月の基本ポートフォリオを策定したときの考え方を別添で振り返っていただきたいと思います。

 まず、「(1)運用目標」につきましては、実質的な運用利回りを1.7%といたしまして、これを最低限のリスクで確保することを目標といたしました。

 「(2)想定運用期間」につきましては、25年間、2039年までとしております。

 「(3)金利シナリオと想定ケース」でございますけれども、ここでは特に金利につきまして、フォワード・ルッキングな分析を加えまして、足下から向こう10年間に金利が上昇するというシナリオを想定しております。

 それも含めまして、経済シナリオとしては2つのケースを想定しております。一つが、成長戦略の効果が着実に発現する「経済中位ケース」、これは財政検証で8通りのシナリオを描きましたが、それのEにちょうど該当する形になります。もう一つが、市場に織り込まれている将来の金利水準を前提とした「市場基準ケース」、これは経済シナリオでいきますとGに相当することになります。この2つを想定して検証しております。

 その検証の結果、金利上昇後の実質長期金利につきましては、経済中位ケースでは金利がスティープに上がっていく形で2.7%、市場基準ケースではその上がり方が経済中位ケースよりはやや緩やかということで1.9%という形になっています。物価上昇率は、経済中位ケースで1.2%、市場基準ケースで0.9%を想定するという形でございます。

 したがいまして、この賃金上昇率、物価上昇率、あるいは名目の金利などにつきましては、基本的に財政検証のデータを使っているということでございます。

 2ページでございますけれども、各資産ごとの期待リターンと標準偏差でございますけれども、まず、国内債券におきましては、先ほど申し上げたような足下から金利が上がっていくというシナリオに基づいた平均収益率を使用しております。他の3資産につきましては、通常のビルディングブロック方式によりまして、短期金利にリスクプレミアムを積み上げるという形で出しております。さらにはそれらの標準偏差、相関係数の計算には、過去20年の過去データを活用しております。

 基本ポートフォリオの属性といたしましては、先ほどの目標のところで申し上げましたように、まず、運用目標(名目賃金上昇率+1.7%)を満たしつつ、名目賃金上昇率を下回る確率が全額国内債券運用の場合を下回り、かつ、名目賃金上昇率を下回るときの平均不足率、いわゆる下回るときのマグニチュードですが、これが最も小さいポートフォリオを選定した結果が先ほどごらんいただいたような基本ポートフォリオになったというところでございます。

 今回の検証について、3ページをお開きいただきたいと思います。

 特に大きく変わりましたものが、マイナス金利が導入されまして、足下の金利が下がり、かつ、今後、足下の金利が上昇しているときにいわゆるキャピタルロスが生じることになりますので、それも織り込んで国内債券についての期待リターンを出しております。

 そうしますと、その下に経済中位ケース、市場基準ケース、それぞれの国内債券のリターンが出ておりますけれども、その下の策定時に比べますと、いずれも-0.4ということで、策定時よりも-0.3から-0.2ほど下がるという結果になっております。

 外国の債券、株式につきましては、単純に直近20年間をとりますと、そのまま過去データを使いますと、むしろリスクプレミアムが上がる。したがって、期待リターンが上がるという結果になりますけれども、ここを保守的な前提もつくりまして、このリスクプレミアムを変更しない場合と2つを想定しておりますので、変更なしと引き上げという2つの欄になっております。

 ただ、一番大きな特徴は、国内債券のところの期待リターンが策定時に比べると下がっているところでございます。

 4ページは、単純に直近20年間のデータに置きかえた標準偏差と相関係数の表でございますので、割愛をさせていただきます。

 5ページでございますけれども、「(3)基本ポートフォリオの属性」をごらんいただきたいと思います。

 特に注目いただきたいのは、「実質的なリターン」のところでございます。これも策定時と比較して若干下がっているわけでございますけれども、ちなみに注1のところでございますが、運用目標は1.7%を確保することになっておりますが、短期資産を2%ほど保有するとみなしておりますので、その分の目減り分、ここから逆算すると経済中位ケースでは、実質的リターンは1.77%の確保が必要、そして、市場基準ケースでは1.76%の確保が必要ということになります。

 ここから見ますと、例えば、経済中位ケースの外貨建て資産のリスクプレミアムの変更がないケースでは1.70ですので、0.07%ほど目標リターンを下回る。あるいは、市場基準ケースでも、変更なしでは1.72ですので、1.76に比べて0.04%分下回るということでございますけれども、ここは私どもは乖離許容幅もかなり幅広く持っておりますので、その中で十分に泳げる範囲かということで、冒頭に申し上げた結論の目標利回りをおおむね満たしているという結論を出させていただいているところでございます。

 最後に、6ページでございますけれども、「(4)予定積立金額の確保」でございますが、この時点で最も新しいデータが昨年12月末の積立金水準を発射台にいたしまして、25年後、2039年までに予定積立金額、財政検証上の積立金額を確保できない確率について、いわゆるモンテカルロシミュレーションで実際に10万回ほど試算をして、そのうち何回が予定積立金を下回るかどうかというシミュレーションをして、出しています。

 そのときに、一昨年10月の策定時では、経済中位ケースでは下回る率が40%、市場基準ケースが25%でありましたけれども、これが今回のシミュレーション結果では、いずれのケースにおきましてもかなり大幅に下がっているということになっております。

 この原因は、文章の一番最後のところにございますけれども、2014年度、一昨年度の積立金が約15兆円増えておりますので、その分、積立金の発射台が上がったことによって、下回る確率が低下をしたというところでございます。

 このような形で、おおむね目標利回りを確保している、さらには、予定積立金額を下回る確立がむしろ策定時よりも低下をしているという2つの理由から、マイナス金利下におきましても、今の基本ポートフォリオを変更する必要はないという結論を導き出して、また、運用委員会にも報告させていただきまして、5月末に公表をさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 どうぞ。

○三石審議役 先ほどのESGのお答えをこのセッションでということでございましたので、続けてよろしゅうございますか。

○神野部会長 どうぞ。

○水野理事 GPIFの水野でございます。本日は、どうもありがとうございました。

 先ほどの議論の中で、私どものESG投資に対する御質問が出ておりますので、回答させていただきたいと思います。

 もう一つは、宮本委員からの御質問でも、私どもがお答えしたほうがいいかという点がございましたので、ついでにお答えさせていただければと思っております。

 まず、ESGに関しましては、私どもの受託者責任を果たすという観点から、一昨年、スチュワードシップコードに署名させていただきまして、その後、私どもにふさわしいスチュワードシップ活動ということを検討してきたわけでございますけれども、その中で、非財務的な要素、いわゆる財務諸表の数字にあらわれていない要素をどうやってその投資の判断に取り入れていくかということについてグローバルな議論が進んでおりましたので、私どもはそこにキャッチアップすべくいろいろと検討してきたところでございます。

 このESG、環境、社会、ガバナンスという要素なのですけれども、この議論を始めましたときに、GPIFが環境原理主義的なことになるのではないかとか、先ほども御懸念を拝聴いたしましたけれども、政治的なバイアスという懸念も出ておりましたが、GPIFは世界でもまれに見る、幅広く世界中の株式を保有しておりますユニバーサルオーナーと呼ばれる投資家になります。日本の株式は7、8%、世界中の株式は約1%弱保有しておりまして、そのほとんどをパッシブで持っているということですので、ある企業さんが環境を破壊するような行動をされた場合、その企業のリターンがよくても全体には我々のリターンが下がるということで、我々は環境全体に気を配って投資をしていく必要がある、いわゆるユニバーサルオーナーの典型だという認識でおります。

 かつ、このような環境問題と社会問題は、期間が長くなればなるほどリスクとして顕在化してくる傾向がございますので、GPIFはただいま三石が御説明いたしましたけれども、基本ポートフォリオの策定においても、25年の投資期間という、世界でもまれに見る超長期の投資家という性格を備えてございます。さらにもう一言申し添えれば、政府が申しておられます100年安心年金の一環ということですので、ユニバーサルオーナー性と超々長期の投資家であるというGPIFの性格を踏まえた場合、ESGのような要素を我々の活動の中で十分配慮していく必要があるという考え方から、我々がESGへの取り組みを進めているところでございます。

 新聞で報道されておりますESG投資につきましては、昨年、国連責任投資原則というものに我々は署名をいたしまして、我々の運用委託先である運用機関に、ESGのようなものを考慮して投資活動を行っていますかという問いかけは既に行っていますけれども、これを具体的な投資に落とし込んでいくことができるかどうかということを考えたときに、海外では割とESGをテーマにした運用会社が出てきておるのですけれども、日本ではまだ出てきていないということで、このようなインデックスをGPIFでいろいろと募集することによって、ESGに対する興味と投資が進むのではないかという期待をして、今回、募集をさせていただいております。

 平川先生の御質問は、直接的にはオルタナの場合はどうなるのかということだったかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、運用委託先には全てこのようなUNPRIESG投資の原則について賛同してもらうことを求めております。

 具体的に申し上げますと、UNPRIに署名をするか、署名をしないのであればなぜ署名をしないかということを説明してくださいということを求めておりますので、そのようなやりとりを通じて、オルタナの運用機関とも同じような会話、パートナーシップをつくっていくのであろうと思っております。

 次に、先ほどの宮本先生の御質問にお答えしたいのですけれども、オルタナのマーケットは、実際、日本はかなり小さいものですから、私どもも日本でやりたくてもそんなにできないことは十分認識をしております。一方で、海外のオルタナの割合がふえたからといって、為替のリスクがふえることはございません。海外のオルタナティブをやった場合は、既に持っております海外の株や海外の債券と入れかえてまいりますので、全体の為替等のリスク量はオルタナにしても全く変わらないということだけ、少し申し添えさせていただければと思っております。

 以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 先ほど、三石審議役から、GPIFの最近の動きということで、保有銘柄の開示と基本ポートフォリオの定期検証に焦点を絞りながら要領よく御説明をいただいたところでございますが、これにつきまして、委員の方から御質問あるいは御意見がございましたら。

 宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 まず、保有銘柄の開示の資料2についてです。年金積立基金の運用はこの年金制度の一部であり、その目的は、もっぱら被保険者の利益のため、これからもほかならないことであることはこれまでも何回も私どもも発言をしてきたところでございます。

 このような観点から、これまでの年金部会において、GPIFの情報公開については、国民に対してしっかりと透明性の高い説明責任を果たせるよう、しっかり担保してもらいたい。 保有銘柄の情報開示については、とりもなおさず、このGPIFに対する国民、被保険者と言ってもいいのでしょうけれども、その信頼を高めることにあるという目的が、関係者、特に運用する側あるいは預ける側を含めて共有するところから出発しなければならない。これが基本だと思っています。開示する内容が極めてわかりやすく、あるいは、その手法がよりシンプルであってこそ、「我々国民にきちんと開示でき、この監視機能がしっかり担保できている」と評価ができ、あわせて安心感を持つことができるわけです。

 したがって、今回の保有銘柄の公表については、全面即時開示とするということでございますので、この点については連合も意見表明をしましたけれども、今回示された保有銘柄の開示方針については、全面即時開示に向けた前向きな対応ということで私どもは受けとめさせていただきました。

 しかし、一方で、開示項目については、株式の取得価格が公表されずに、5ページで保有銘柄の開示スケジュール等が示されているとおり、イベントスタディというのかもしれませんけれども、市場への影響の検証などの実施をするために段階的な開示となることについては、やはり一抹の課題もあると思います。

 2ページに記載をされています海外の例を見ても、その多くが即時開示をしており、簿価を公表している年金基金も複数あります。これによって何か重大な支障があるという報告も聞こえてこないとすると、GPIFは今後株式の取得価格も公表すべきでありまして、スケジュール等についても、2017年7月以降は4カ月程度前時点の保有銘柄の公表を基本としつつ、イベントスタディなどを理由に、公表がこれよりもさらに遅れることがあってはならないと思っています。ぜひそこのところはお願いしたいと思います。

 続けて、資料3のポートフォリオの定期検証では、おおむね目標利回りを満たしているということと、したがって、現在の基本ポートフォリオは見直す必要がないと結論づけられております。

 そこで一つお聞きしたいのですけれども、別添「基本ポートフォリオの検証結果について」の3ページ、「(1)各資産の期待リターン」の表についての質問ですが、市場基準ケースは、先ほどの説明では、財政検証時に使われた内閣府の経済前提の係数はGと言ったと思うのですけれども、その確認と、このGのケースとここに記載の市場基準ケースの数字が合っているのかどうなのか。

 国内債券について、-0.4%になっておりますが、マイナス金利がいつまで続くのか、その辺も想定をしているのかどうなのか。それが数値のところにあらわれているのかどうなのか。そういった数値の根拠もあればぜひ教えていただきたい。

 賃金上昇率について、名目賃金上昇率だと思いますけれども、経済中位ケースで2.7%、市場基準ケースで1.9%と上昇率が記載されていますけれども、この数値も公表されているデータに基づくものなのかどうなのか気になるところでございまして、教えていただければと思います。

 基本ポートフォリオの定期検証は、このままの形で5月に公表されたということですけれども、特にこの別添の掲載データについては、バックデータが明らかになっていないというか、しっかりとまだ根拠が示されていない数値も掲載されているように思いますので、少しわかりにくいと感じられます。

 したがって、ホームページ等を見れば、データの根拠がわかるように、また、国民の誰もがわかりやすいような工夫もぜひしてほしいと思います。これが意見です。

 以上です。

○神野部会長 それでは、とりわけ資料3の御質問等々についてコメントをいただければと思いますので、よろしくお願いします。

○青貝投資戦略部長 今、宮本先生から御質問が幾つかございましたので、順を追ってお答えしたいと思います。

 資料がA4の横になっていますが、3ページのところに関してだったかと思います。

 まず、「市場基準ケース」とは何を指しているのかということでございますが、201410月に基本ポートフォリオの見直しが行われた時点では、財政検証におけるケースGを参照いたしております。先ほど三石審議役からも申し上げたとおりでございます。

 今回の検証におきましては、市場基準ケースにつきましては、ケースGとケースHの平均の値を使っております。このような値を使いましたのは、マイナス金利に関しても言及がございましたけれども、マイナス金利が導入された後も、金利のイールドカーブから推察されます将来の長期金利について、財政検証の各ケースが想定しております長期金利と見比べましたところ、ケースG、それから、ケースHのおおむね間のところにあったということがございまして、冒頭に申し上げましたとおり、今回の基本ポートの検証における市場基準ケースにおいては、GとHの間をとっております。

 続きまして、国内債券のマイナスの利回りでございますけれども、-0.4%の根拠でございますが、-0.4%につきましては、名目賃金上昇率対比のマイナス幅を示しております。資料の3ページ、策定時との比較でごらんいただきたいと思いますが、市場基準ケースが(参考)というところで表が下のほうについております。

 一番下の行の左から2つ目に-0.1ということでございまして、今回はそれが上のほうの表の-0.4という形になっておりますので、今回、国内債券の利回りは0.3ポイント下がったということになっております。

 この理由でございますが、上の長期金利が0.5%下がったのに対しまして、名目賃金上昇率は0.2%下がったということで、0.50.2の差ということで、今回、国内債券の実質的な利回りは、-0.4だったということでございます。

 数字の説明が続いて恐縮でございます。

 マイナス金利がいつまで続くかということについて、冒頭、市場基準ケースは何を参照したかというところでも申し上げたのですけれども、マイナス金利を導入した後のイールドカーブに基づきまして、そこから出てくる将来の長期金利を推察するという形の分析を行っております。その中で、マイナス金利がいつまで続くかということについては想定を行っておりません。説明が相前後して恐縮でございます。

 数字で続けて恐縮でございますが、資料のA4横にしていただいて、3ページ、上の表の右上に、賃金上昇率が2.71.9といったものが、経済中位ケース、市場基準ケースで示されております。

 これについての根拠ということについて御質問があったと承知しておりますけれども、名目賃金上昇率でございますが、物価上昇率と実質賃金上昇率の2つで構成されております。

 数字を口頭で申し上げて恐縮でございますが、経済中位ケースにおきましては、実質賃金上昇率は1.3%、それに乗る形で物価上昇率は1.4%、合計で2.7%でございます。市場基準ケースでございますが、実質賃金上昇率は1%、それに物価上昇率分の0.9%を加えまして、合計で1.9%でございます。

 今、数字をたくさん申し上げてしまいましたが、基本ポートフォリオの検証につきましては、先ほど先生から御指摘があったように、よりわかりやすくといったことについては、工夫してさらに続けてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

○神野部会長 どうぞ、山口委員。

○山口委員 ありがとうございました。

 個別銘柄に関する情報開示を積極的に進めていくということは極めて重要であり、私も賛成なのですが、これは質問というよりも一種の懸念なのですけれども、今回は市場への影響ということでいろいろなところに確認をされているわけですけれども、市場への影響という話以外に、個別の運用手法への影響といったものがあるのではないだろうかといったことを少し懸念する面があります。アクティブ運用の場合には、小型株投資とか、市場のアノマリーを利用して追加収益を獲得していくといったケースもあるわけでございまして、この情報開示によってファンドマネージャーの運用手法が制約されるといったことが出てくる可能性があるのかないのか。それを懸念した場合に、開示の時期でありますとか、回数であるとか、現実の運用に支障がないように運用者との間で十分なコミュニケーションを図って、今もやっておられると思うのですけれども、そういう懸念、心配のないように進めていただければと感じました。

○神野部会長 これについては、何かコメントはございますか。

 どうぞ。

○水野理事 ありがとうございます。

 今のアクティブ運用に関する影響ですけれども、先ほど三石のペーパーにも書いてございましたが、こういう定量的なFama-Frenchのモデルの検証だけではなくて、私どもの委託先には全てヒアリングをしながら進めていくということで、今のところ、私どもの委託先でこのようなスケジュールで問題があると言われたことはございません。

 多分、全体の合計しか開示いたしませんので、実際、個別の運用の手筋が明らかになるという懸念は、現実的には少ないかと思いますけれども、引き続き運用会社とも議論をして進めてまいります。

○神野部会長 ありがとうございます。

 ほか、いかがでございましょうか。

 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 今のところについてですけれども、資料2の17ページのような考察で、市場にはほとんど影響を与えないのではないかという形で開示をするということで、基本的な考え方としては賛成です。

 ただ、今、水野さんからお話があったように、ステップ・バイ・ステップでやるということですけれども、Fama-Frenchの方式等、多様な角度から検証されると思いますが、仮にこの各段階でもしちょっと変だということがあったとすれば、それは公開をして、もう少しじっくり議論をしようということになるのかどうなのか。そのプロセスでもし想定外のことがあったらどうするのかということをお聞かせ願いたいと思います。

 次に資料3は、資料のつくり方としては、先ほど説明があったのですけれども、これは資料の作り方としては、工夫してほしい。委員の席上には平成2611月のものがこのボックスの中に入っていますので、比較しながら見たわけですけれども、こちらの資料には以前のものが入っていないので、比較しようがなかった。

 その市場基準ケースのときに、最終的には平成51年に122兆円という数字が出てくるのですけれども、かつての評価のときには129兆円という話になっているのです。この差が一体どうして違ったのかとよくわからなかったのですけれども、説明があって初めてGとHの平均値を出しているということになると、これは過去のものをちゃんとつけて比較できるような形で説明しないと、適切な開示とは言えないのではないかと思いますので、そういう点を今後お願いできればと思います。

○神野部会長 それでは、前者の想定外の対応等々につきまして、コメントがございましたら、頂戴できればと思います。

○三石審議役 検証の方法につきましては、ここで「例えば」ということでFama-Frenchの3ファクターモデルと挙げておりますけれども、これは実際にデータを当てはめて、安定性などの問題もありますので、よく検証してみてということですが、基本的にこれは運用委員会にも報告し、その結果については、公表する形で、きちんと透明に進めていきたいと思っています。

 基本的には私どもは市場等の影響の懸念はないと思ってはおりますが、仮にあった場合にどうするのかということもあわせて運用委員会にも報告をし、その結果、どうするかということも対外的に説明ができるようにしていきたいと思っております。

○神野部会長 ほか、いかがでしょうか。

 平川委員、どうぞ。

○平川委員 保有銘柄の関係と今回のポートフォリオの検証の関係で、両方あわせて意見を述べさせていただきたいと思います。この2つは情報開示の大切さはいかに重要かということをあらわしているのではないかと思います。

 特に、先ほどGPIFのほうから意見がありましたけれども、例えば、今回は業務概況書の公表の関係で、相当いろいろな御意見が社会からあったのではないかと思います。

 この業務概況書の公表の時期も、平成24年度7月2日、平成25年度7月4日、平成26年度は7月10日ということで、この日付の前後で公表されるものだろうと思われていたところ、今回は保有銘柄の開示の準備のために7月29日となったと説明されているところであります。こういう開示の方向性などについては、それが不信感を招かない形でぜひとも対応すべきだったと思います。

 おくれた理由が私はよくわからないのですけれども、保有銘柄の開示の準備のためというところが、本当に国民の皆さんが、そうか、しようがないなと思われるようなものであるのかどうなのかというのは、一つ押さえていく必要があるかと思います。

 こういうところで不信感を招くことは、本当に大変もったいない話でございますので、ぜひともそういう方向でやっていただきたいと思いますし、今回のポートフォリオの検証につきましても、しっかりとしたデータの裏づけが明確になっていれば皆さんもやはりこうなのだなと御理解いただく場合も多いと思いますので、ぜひともしっかりとした情報開示をお願いしておきたいと思います。

 一方で、今回のポートフォリオの検証結果においては、変更の必要がないという方向で結論づけられておりますが、一方で、このポートフォリオを策定したときの経済状況、当時から見れば、想定外のことも多々起きていることもあります。

 これはGPIFというよりも厚労省のほうに検討をお願いしたいのは、策定時に想定した運用環境がかなり変わってきているということもありますので、場合によっては、財政検証も含めて、本当に経済前提が当時のままと現在でどうなのかということを見きわめつつ、財政検証を行っていくかということも含めて、さらに総合的に検討していただければと考えているところであります。

 以上です。

○神野部会長 原委員、ありますか。

 どうぞ。

○原委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。

 コメントというか、お願いというのもあるのですけれども、まず、基本ポートフォリオの定期検証の部分のところからコメントさせていただきます。日本の公的年金制度は現役世代の保険料負担で、受給者世代、高齢者世代を支える賦課方式ということで、あとは国庫負担があり、そして、一定の積立金もあるということで、やはりそういったことが理解を難しくしているところかと思うのですけれども、その積立金については、規模が大きいということと、四半期単位で運用実績が発表されることになっています。

 特に、運用結果が良いときはなかなか話題にならないことが多いのではないかと感じております。一方、運用結果が悪いときには特に大きく取り上げられるような傾向があるのではないかと感じております。そのような時は、国民の皆さんが不安を感じたり、それが公的年金制度全体に向けられてしまうというようなことがあるかと感じています。したがって、何よりもGPIF側の方々にお願いしたいのは、説明責任者とは別に、一般の方々に向けて情報を発信する広報担当といいますか、その専任者を置いて、情報をきちんとわかりやすく発信していくことはぜひ体制をとってやっていただきたいと思います。

 例えば、この別添の資料の1~7ページは難しい内容だと思うのですが、こういうことをわかりやすく丁寧に説明をしていくことが大事であると思います。例えば、これは、過去20年間の数値をもとに今後も同じことが起こると仮定して今後の25年間を仮定したものかと思います。そして、経済中位ケース、市場基準ケースで検証したものかと思います。

さらに、現在のポートフォリオを基準に、あとは全額国内債券ポートフォリオの属性でも数値を出したりしていらっしゃるということで、そういったことを一つ一つきちんと説明することが必要になると思います。難しいとは思うのですけれども。

また、基本ポートフォリオは、概ね目標利回りというものを満たしているということだと思うのですが、この別添の5ページを見ると、気になるのが、ぶれ幅、標準偏差のところです。その部分は、ぶれ幅がより大きくなっています。これはもちろん運用としては基本ですけれども。運用が悪いとき、よいときというものの差が、短期的に見ると、大きくなってしまうということになるのですが、こういったことも広報の部分で、例えば、そういう方がいらっしゃったら、きちんとわかるように伝えていくことが必要なのではないかと思います。

 結果として、その振り幅というものに一般の方がどれだけ耐えられるかということも非常に大事になってくるので、振り幅に耐えられず国民の年金制度全体に対する信頼が揺らいでしまうのであれば、それは懸念事項の一つであると思っております。賦課方式で保険料が大部分を占める公的年金制度ですから、積立金の部分が、もちろん長期で見るのですけれども、発表されるのは四半期ごとですので、短期的な運用がもたらす精神的なマイナスのダメージが大きいということが続くのであればそれはよくないのではないかと思います。まずは広報というものをしっかりしていただいて、運用がよいときも悪いときも同じように情報発信していって、それがわかりやすくは当然として、継続して説明することが重要と考えます。長期投資が前提ですから、説明はぶれずにしていただきたいことと、例えば、短期の四半期のパフォーマンスだけではなくて、短期に加えて長期のパフォーマンスで、粘り強く説明していただくことがいいかと思います。

 そういったことで、利回りの基準値、目標値との関係などを説明するという方法を確立していただきたいと思いますし、リスク許容度を引き上げるために、国民の皆さんの投資や年金に対するリテラシーを高めることが大切なのではないかと思います。

 そういった意味で、銘柄の開示のところについても、この保有銘柄開示の期待される効果に、運用に関する説明責任の向上と国民の信頼の向上と挙げていらっしゃるのですけれども、やはり開示しただけではなく、きちんと中身を説明していただくことが大事だと思いますので、ぜひその辺りはお願いしたいところでございます。

 以上です。

○神野部会長 今の原委員の御意見等々を含めて、これまで委員の皆様方から出た御意見とか助言とか要望とか等々について、コメントをいただけるところがあればお願いできればと思います。

○水野理事 私のほうから申し上げます。

 まず、原先生、ありがとうございます。エールをいただいたと思っておりますが、私どもは広報の責任者は既に設置しておりまして、昨年から、ユーチューブ、ツイッター等々による発信を強化しているところですけれども、なかなかネガティブなメディアの報道を押し返すほどの効果を上げておりませんので、私もじくじたる思いではありますけれども、引き続き活動をしてまいります。

 今週の金曜日の発表にあわせまして、私どもの概況書もまたつくっているわけですけれども、昨年までに比べまして、そのような長期な観点とか、年金制度全体に占める我々の積立金の意味合い等も含めまして、解説をしたようなものになっておりますので、皆さん、特に委員の方にはぜひ一度お目を通していただいて、また忌憚のない御意見を頂戴したいと思っておるところでございます。

 あと、基本ポートフォリオについて幾つか御質問が出ているわけですけれども、経済中位ケースということで、財政検証に基づく基本ケースとして使ってきたわけです。実際によく言われますのは、GPIFはアベノミクスの成功を信じているかもしれないけれども、マーケットは誰も信じていないよということをよく言われるわけですが、まさに市場基準ケースというものは、マーケットがどう見ているかというものをベースに我々はシミュレーションをしているということですので、そういう意味では、経済成長路線が予定どおり軌道に乗るというケースと、今、市場がどう見ているかというケースを2つ使いながら検証を常に行っているということでございます。

 あと、まさに原先生にはいいことを言っていただいたのですけれども、我々は25年で基本ポートフォリオをつくっておりまして、それをさらに5年に1度、法律上の要請として全面改定をするというサイクルでやっております。

 この1年の見直しがさらにその間で変える必要があるかということですので、ある意味、マイナス金利が想定の範囲を超えていたかといえば、多分超えていたのでしょうけれども、25年の想定を全てひっくり返すような状況が起きるかどうかということを1年ごとに確認しているということです。もちろん予断なく検証を行っておりますので、必要に応じて我々はいつでも変更する用意はございますけれども、25年、5年、1年というスパンの中でそれぞれの検証活動に役割があることをぜひ御理解いただければと思っております。

○神野部会長 済みません。お待たせしました。米沢委員、どうぞ。

○米沢委員 今、水野CIOのことと大分重なりますけれども、GPIF側としても、発表の仕方です。広報のことは、今、ユーチューブなどを見ていただいても、すごく変わっていて、非常に理解しやすいようにされています。

 ただ、今回、報告の日にちが少しおくれたことを議論した際に、一番は、言ったように、材料が非常に多くなったので、事務方の作業が大変だということが一番主なのですけれども、できれば年度末の発表から余りおくれないようにということと同時に、来年の発表からは、わかりやすく、四半期ごとが必要なのか等、もっと全部を洗い直して、どう発表したら一番本質が国民の方々によく伝わるかどうかです。そこのところを見直そうということでもって、今、進んでいると思いますので、そういう附帯のもとで申し送りをしております。

 1つは、いつも幾ら幾らの得とか、幾ら幾らの損とかというのですけれども、せめて評価損とかという言葉に直していただきたく、そもそも何か利益が出たとか損が出たとかという話ではありませんので、その辺からお願いするところもあるし、発信の仕方はやはり工夫する必要があるかと思っております。

 もう一つ、もしかしたらきょうのこの会合も、運用委員から、いろいろ環境も変わってきているので、年金部会で報告したらいいのではないでしょうかという議論があったので、もしかするとそれも一助になってきょうの年金部会が開かれたのかなという感想も持っておりますので、そのような意見も発議しております。

 最後に、毎年毎年このような定期的な見直しをしているので、これは絶対に必要なわけですけれども、どなたか、第三者の機関が同じような必要なデータ全部でもって見直すことは必要ではないかと思っているのです。毎回言っているのですけれども、余り実現していないということですので、5年に1回検証するというのはそのとおりですけれども、途中の経過も重要です。年金数理部会は非常にそれに近いことを毎年やっていらっしゃるので、もう少し工夫すればうまくマッチしたような検証が違った委員の方からは出てくるので、そういうものが本来の検証としては必要ではないかと、個人的に考えております。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございました。

 ほか、いかがでしょうか。

 小塩委員、どうぞ。

○小塩委員 まず、情報開示の件ですが、私も即時全面開示で結構だと思います。

 やはり問題になるのは市場への影響なのですが、資料2の最後のページに説明されていることは正しいと思います。ただ、そうはいっても気になるのは小型株とか、流動性の低い株への影響であり、やってみないとわからないというところがあると思います。

 ですから、イベントスタディをしっかりとやって、もし問題があるのだったら方針を変えるという柔軟な対応で臨んでいただきたいと思います。また、諸外国は全面即時開示が基本になっているのですが、どのように問題を議論してきたのか、どういう問題が実際に発生したのかという点について、実際に日本では進めるまでにはもう少し時間があるようですので、しっかりと勉強していただきたいなと思います。

 これが1つです。

 2番目は、基本ポートフォリオの件です。きょうも非常に丁寧に説明をしていただいたのですが、ずっと聞いていると、マーケットのパフォーマンスは予想していたよりも悪いですね。悪いのだから、普通に考えると積立金を下回る確率が高くなってもおかしくないのですが、低くなるという結論ですね。それはどうしてかというと、2014年度の積立金が高まったからだということです。その1行だけでそれまでの議論が全部ひっくり返されているわけですね。むしろそこをしっかり説明していただきたいのです。2014年の積立金が予想よりもよかったということが積立金の割り込む確率が低くなった原因だと思うのですが、これからもそのようなことが引き続き起こると考えるのはちょっとおかしな話です。パフォーマンスは悪くなっているわけですし、さらに市場だけではなくてマクロのパフォーマンスもよくないわけですので、やはり基本ポートフォリオについてもうちょっと慎重に議論しておいたほうがいいのではないかという印象を受けました。

 以上です。

○神野部会長 コメントがありますか。

○水野理事 今の2つ、先生からいただいた1つ目の小型株への影響については、私どもは今の保有銘柄についてはある程度自分たちで調査をしておりまして、私どもの見るところ、実際にそれほどの影響はないだろうと思っております。

 ただ、実際にやってみないとわからないところはございますし、逆に言うと、懸念がないという証明は、不可能でございますので、実際に何かが起きたかということをチェックして、何かが起きたということが逆に確認できれば、我々としても何らかの対応策をとらなければいけないと思っておりますので、そのあたりのさまざまな要素を考慮した上で今回の3段階案というものにたどりついたということを御理解いただければと思います。

 基本ポートは、まさにおっしゃるとおりで、発射台そのものが毎年当然変わっていきますので、今度は逆に下に下がっているときだと逆に苦しくなるということが繰り返されるわけですけれども、これに関しましても、5年に1度に基本ポートフォリオを見直す。これは多分日本だけではなくて、多くの公的年金も大体5年から10年の期間でやっておりまして、1年ごとに見直しているところは、ほとんどというか、多分ほぼ皆無だと思います。

 そういう意味では、こういう長期の運用の方針と、四半期あるいは年次で数字を合わせていくというところの不都合がどうしても出てしまうところでございまして、そこに関しましては、さまざまな要素を考慮しながら、毎年毎年検証のたびに正確に状況を把握して、できる限り皆さんの懸念やマーケットの予想状態を取り入れて検証していくということを繰り返し行いたい。それについて説明を繰り返しさせていただくことになるかと思います。

 先ほどの発射台のところで説明が足りないということでしたら、それはそこも一言申せればよかったかと思いますけれども、どうしても基本ポートフォリオの運用に関しましては必ず起きることであろうと思っています。

○神野部会長 ほか、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○出口委員 2つの報告をお聞きして、本当に丁寧にやっていらっしゃるので、これで全然問題はないと思ったのですけれども、ちょっと思ったのは、初めて年金部会に出させていただいて、財政検証の議論をしているときに、事務局の方が財政検証の前提をこんなに丁寧にやっている先進国はどこにもないというお話を聞いたことをちょっと思い出して、これは年金部会で我々が勝手なことを言うので、GPIFの皆さんのお仕事をふやしているのかもわからないのですけれども、例えば、この開示の検討についていえば、余りにも丁寧過ぎるようなことになっていないかと。

 もちろん懸念点を全部消すために丁寧にやっていくことは大事なことで、プロセスは透明で丁寧なことが望ましいのですけれども、やはり時間もスタッフも有限ですから、これは私ども年金部会の委員がいろいろなことを申し上げるからだろうと思うのですが、我々も本当に必要なお仕事をちゃんとやっていただくことが大事なので、いたずらに丁寧に精緻にやっていただくことが本当に市民のためになるのだろうかということはちょっと考えなければいけないなと、お話を聞いていて思った次第です。

 だから、本当に大事なことはたくさんあるのですけれども、それは時間と経営資源が無限にあったらどんなことでもできるのですけれども、多分、オーバーに言えば、今の日本に求められていることは生産性の向上ということですから、GPIFの皆さんには、我々は外野席でいろいろと勝手なことを言いますけれども、そこは取捨選択していただいて、本当に市民のためになる必要なことに重点的に時間と経営資源を使っていただいたほうが、形をいたずらに整えるよりも大事なことではないかと、そんなことをちょっと感想として思いましたので、特にコメントは結構ですが、一言申し上げたいと思いました。

○神野部会長 ほか、よろしいですか。

 そろそろ時間でございますので、貴重なお時間を割いていただいて、私どものためにわざわざ御報告を頂戴いたしましたGPIFの皆様方に深く感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、次回以降の予定等々について、事務局から御連絡いただければと思います。よろしくお願いします。

○総務課長 次回の開催日程につきましては、追ってまた御連絡をさせていただきたいと存じます。

○神野部会長 それでは、時間でございますので、本日の審議はこれにて終了したいと思います。最後まで御熱心に御議論を頂戴したこととGPIFからわざわざおいでいただきましたことに深く感謝を申し上げながら、終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。


(了)

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