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2016年7月25日 第1回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○場所

中央合同庁舎5号館共用第8会議室


○出席者

構成員

吉田(恒)座長 金子構成員 上鹿渡構成員 久保構成員 久保野構成員
杉山構成員 床谷構成員 林構成員 藤林構成員 森口構成員
山田構成員 横田構成員 吉田(彩)構成員

事務局

塩崎厚生労働大臣 吉田雇用均等・児童家庭局長 山本内閣官房内閣審議官
吉本大臣官房審議官 川又総務課長 川鍋家庭福祉課長
竹内虐待防止対策推進室長

関係省等

下山法務省民事局局付
石井最高裁判所事務総局家庭局第二課長

○議題

(1)検討会の開催について
(2)意見交換
 ・要保護児童を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与の在り方
 ・児童の福祉の増進を図る観点からの特別養子縁組制度の利用促進の在り方
 ・検討に当たって必要な情報や実態把握について(特に、特別養子縁組制度の利用促進について)                など
(3)その他

○議事

 

○木村補佐 ただいまから第1回「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様にはお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。

 今回の検討会の構成員につきましては、本来であればお一人ずつ御紹介させていただくべきところでございますが、時間の関係もございますので、資料1のとおり資料配付にて代えさせていただきます。また、今回の検討会の座長につきましては、事前に各構成員に御連絡させていただいているとおり、吉田恒雄構成員に座長をお願いしております。

 なお、本日は岩崎構成員、峯本構成員、山本構成員からは御欠席の御連絡をいただいております。

 それでは、これより先の議事は吉田座長にお願いしたいと思います。

○吉田(恒)座長 改めまして、こんにちは。この検討会の座長を務めさせていただきます吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速議事に入ってまいりたいと思いますが、まず最初に開会の御挨拶を塩崎厚生労働大臣よりお願いいたします。

○塩崎厚生労働大臣 厚生労働大臣の塩崎恭久でございます。

 第1回の児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会ということで、少し長い名前になっておりますけれども、第1回目の会合にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日お集まりの皆様方におかれましては、日頃から子どもあるいは家庭の取り巻く環境の難しさに取り組んでいただき、問題解決に向けて御努力をいただいておりますこと、改めて感謝申し上げたいと思います。

 児童虐待につきましては、子どもの命が失われる大変痛ましい事件が相次いでいるわけでございます。これは前々から私も申し上げているわけでございますけれども、言ってみれば社会の抱えている大きな問題の凝縮した形の犠牲が子どもにあらわれていて、氷山の一角としてこの問題が起きており、その根っこはやはり社会の大きな病というか、これを解決しない限りは、なかなかこの問題は解決することはないのだろう。そういう意味では日本の現代社会が抱える根深い問題によって子どもが犠牲になっているということを踏まえた上で、私たちは対応しなければいけないのだろうと思っております。私どもとしては子どもの命、そして、また今回児童福祉法に初めて入れました子どもの権利、さらには子どもの未来を守るというために、新たな子ども家庭福祉の在り方について今回改正が行われました児童福祉法のもとで展開をしていきたいと思っているわけであります。

 今回、児童福祉法等の改正につきましては、通常国会で全会一致で成立をさせていただきました。この改正は昭和22年の児童福祉法制定以来の抜本的な改正だと私たちは思っております。これまで親の権利、親権というのは民法に明確に書かれてきたわけでありますけれども、残念ながら子どもの権利あるいは子どもが健全な養育を受ける権利については、日本の法律どこを探してもなかった。それを初めて権利ということを主体として法律に明確に位置づけるということをさせていただきました。

 それから、家庭における養育環境と同様の養育環境において持続的に、継続的に養育が子どもに関して行われるように、養子縁組というものをまた明確に位置づけて、里親あるいはファミリーホームへの委託をこの養子縁組と一緒に優先をするということを法律に明記もさせていただきました。国、都道府県、市町村の役割と責任というものを再定義しながら明確化させていただき、また、いろいろ議論がありましたけれども、弁護士などの専門職の児童相談所への配置の義務づけの強化、さらには中核市、そして特別区の皆さん方に児童相談所を設置していただこうということで、その促進を図ることなどを盛り込んでいるわけであります。

 このような今回の改正は、子どもの権利を守るための抜本的な改正でありまして、残念ながら法案提出までに結論が出せなかった問題もたくさん残っておりまして、改正法の施行と同時並行で、引き続いて子どもや家庭をめぐる諸課題にスピード感を持って取り組んでまいらなければならないと私どもは思っております。

 今回の検討会は、その中の1つの第1回目の会合ということでお願いをしているわけでございます。今回の検討会では、まず第一に児童虐待対応における司法関与のあり方、もう一つは、特別養子縁組制度の利用促進のあり方について必要な調査、検討を進めていただきたいということでありまして、司法関与につきましては、これまでも新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会というものが行われてまいりましたけれども、そこにおいても1人でも多くの要保護児童を適切に保護するためには、どういう形での裁判所の関与があり得るのかという議論をされてまいりました。

 そうした議論を踏まえながら児童相談所や市町村、そして司法が一体となって子どもの命を守って、子どもの未来を確保するための仕組みはどうあるべきかということを御議論いただきたいと考えておりまして、今回の法改正の際にいわゆる在宅措置というものを新たに考え方を導入いたしまして、今まで児童虐待対応件数という数字が公表されてまいりましたけれども、これはあくまでも対応している件数であって、実際の虐待件数自体は対応し切れない部分も含めれば、はるかに多い件数だろうと言われてまいりました。そういうときに残念な事件が起きるのは、この児童相談所が必ずしも対応できないままに家庭に戻して、そこで残念な事件が起きるということがございました。

 そういうことで今回は措置として在宅で措置をするわけでありますけれども、実際には市町村が中心となって支援を行っていくということを考えているわけでございますが、児童相談所の措置の中で行われて、そこに対する家庭と子どもに対する支援は市区町村がやるわけでございますけれども、この委託を受けてやるわけでございますが、そのときに私どもとしては司法がどのような関与をすれば子どもが不幸なことにならないのかということについて、皆さん方にぜひ御議論を賜れればありがたいなと思っているのが中心的な問題意識と考えていただければと思うわけでございます。

 特別養子縁組については、これまでいろいろと議論されてまいりましたが、この検討会において制度の活用方法、見直しのあり方の議論をしていただきたい。そして、その際には私ども今回の法改正で明確にさせていただいたのは、就学前は施設に基本的にお世話にならない。家庭ないしは家庭に近い環境のもとで愛着形成にとって大変大事な年齢にあっては、できる限り家庭に近い形の養育環境でもって養育が行われることが大事だろうということで今回、児童相談所の明確な業務として位置づけられた養子縁組、中でも特別養子縁組、そして里親ということをしっかりとやっていただくために、この特別養子縁組についてもぜひ皆様方にはどのように変えていけば活用が進むか、そして、子どものためにプラスになるような運用が可能になるかということをぜひお考えいただきたいと思っておりまして、いずれも御議論を重ねていただいて、この秋にぜひ皆様方のお考えを一定の形をもってお取りまとめをいただければありがたいなと考えているところでございます。

 この検討会は先ほど申し上げたように、まず第1弾ということでスタートをしていただきますけれども、今回いろいろな積み残し、あるいは詰めなければいけない点についての検討会を幾つか立ち上げさせていただく予定でございまして、この検討会と並行して新たな子ども家庭福祉の実現に向けた制度改革全体を鳥瞰いたします名称は、新たな社会的養育の在り方に関する検討会。これは雇児局長のもとではなくて、厚生労働大臣のもとに全体を鳥瞰するという形で見ていただく。ですから今日の検討会での検討、進捗状況などもしっかり見ていただきながら、全体を考えていただくという検討会に位置づけさせていただいております。

 専門性の欠如というか、これからの専門性を高めていくために、子ども家庭福祉人材の専門性確保の検討会というのもございます。さらには先ほど申し上げた在宅措置の場合でも、明確に今回市町村が支援の中心の役割を果たすということで、市区町村の支援業務のあり方についての検討をしていただくワーキンググループも立ち上げさせていただいているわけでありまして、これらの検討会の議論とぜひ皆様方にも足並みをそろえていただいて、御議論をいただければありがたいなと思いますし、他の検討会でどのようなことになっているのかということが情報として必要であれば、事務方からまた適宜提供させていただければと考えているところでございます。

 いずれにしても子どもの命、そして権利、子どもの未来を守っていく。その大きな目的のために、いろいろなところを変えていかないといけないと思います。私も地元で松山市の担当課に行ってみたりいたしましたが、やはりいろいろとこれからの課題として先ほどの専門性の問題にしても、今は児童相談所の所長さんを対象に研修が義務づけられてまいりましたけれども、やはりここは相当問題が複雑なだけに、専門性の高い方々に携わっていただきながら、子どもたちの健全な育成、育ちというもの、養育を考えていかなければいけないのだろうと思います。

 そんなこんないろいろございますけれども、この検討会では司法関与、特別養子縁組を中心に御議論を深めていただいて、本年秋に一定のお取りまとめをいただければ大変ありがたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げて、私からの御挨拶にさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 大臣におかれましては、ここで御退席ということでございます。

(塩崎厚生労働大臣退室)

○吉田(恒)座長 それでは、恐れ入りますが、カメラの撮影はここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

(カメラ退室)

○吉田(恒)座長 続きまして、事務局から資料の確認等をお願いいたします。

○木村補佐 資料の確認をさせていただきます。

 配付資料でございますけれども、資料1~3と参考資料1~5となっております。

 資料の欠落等ございましたら事務局までお申しつけください。

 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただきます。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 続きまして、事務局からこの検討会の開催の背景、趣旨等について御説明を願います。

○竹内虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長の竹内でございます。

 私から資料の御説明をさせていただきます。

 まず資料1をご覧いただきたいと思います。併せまして、参考資料1を横に並べてご覧いただければと思います。

 本検討会の開催の趣旨でございますけれども、資料1の「1.趣旨」をご覧いただきたいと思いますが、先の通常国会で成立をいたしました「児童福祉法等の一部を改正する法律」の附則第2条第1項、参考資料1に附則の抜粋をつけてございますけれども、この第1項のところで、政府は、この法律の施行後速やかに、児童の福祉の増進を図る観点から、特別養子縁組制度の利用促進の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとされております。

 また、同じく同条第2項におきまして、児童福祉法第6条の3第8項に規定する要保護児童を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与の在り方について、児童虐待の実態を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると規定されております。

 今年6月に閣議決定されましたニッポン一億総活躍プランにおきましても、同様の趣旨の記載が盛り込まれているところでございます。これらを踏まえまして大きな2つのテーマにつきまして調査・検討を行うために、本検討会を開催するものでございます。構成等につきましては資料をご覧いただければと思います。

 資料2でございます。先ほど大臣からの挨拶にもあったとおり、本検討会のほかに3つの検討会あるいはワーキンググループを立ち上げることとしております。資料2を1枚おめくりいただきますと、新たな社会的養育の在り方に関する検討会という検討会がございます。この趣旨については1のところにございますけれども、先ほど大臣からもお話があったとおり、大臣の下に検討会を開催するということで、改正児童福祉法等の進捗状況を把握する。それから、新たな子ども家庭福祉の実現に向けた制度改革全体を鳥瞰しつつ、新たな社会的養育のあり方の検討を行う。それと併せまして社会的養護の課題と将来像、平成23年7月につくられているものですけれども、全面的に見直しを行っていくというのが本検討会の趣旨でございます。検討事項等については、またこれもご覧いただければと思います。

 2枚おめくりいただきまして、次に子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループでございます。この開催の趣旨につきましては1のところですけれども、今回の児童福祉法等の一部を改正する法律の中で、児童福祉司等については国が定める基準に適合する研修等を受講する、もしくは修了することを義務付けるといったような内容が盛り込まれてございます。このワーキンググループでは国の基準に適合する実際の研修のガイドライン、カリキュラム等を定め、児童相談所等の専門性強化を図るための検討を行っていただくことにしてございます。

 また、2枚おめくりをいただきまして、市区町村の支援業務のあり方に関する検討ワーキンググループでございます。「1.趣旨」ですけれども、今回の児童福祉法改正を踏まえた市区町村の支援業務の具体的な内容やあり方等について検討を行うこととしてございます。以下、検討事項等については説明を省略させていただきます。

 残りの資料も簡単に御紹介をさせていただきたいと思いますけれども、まず参考資料2でございます。これは今回成立をいたしました児童福祉法等の一部を改正する法律の概要についてでございます。今回の法改正は児童虐待について発生予防から自立支援まで一連の対策のさらなる強化を図るということで、大きく4つの柱で構成をされております。先ほど大臣からも御紹介がありましたけれども、児童福祉法の理念の明確化、児童虐待の発生予防、児童虐待発生時の迅速・的確な対応、虐待を受けた被虐待児童への自立支援ということで、それぞれの改正内容については次ページ以降に解説といいますか、説明がついてございますので、またご覧いただければと思います。

 参考資料3は、今回の児童福祉法等の改正に当たって社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会で御審議をいただきました。その専門委員会の報告、提言でございます。今年3月10日に取りまとまったものでございますけれども、1枚表紙をおめくりいただきますと目次がついてございます。今回の検討会で検討いただくテーマに特に関わるところということで、目次の7の下の方ですけれども、16ページ以降の「(8)子ども家庭福祉への司法関与の整備」でございます。それから「9.社会的養護の充実強化と継続的な自立支援システムの構築」の「(3)特別養子縁組制度の利用促進のために必要な措置」ということで24ページ以降、こうした部分がこの検討会の議論に深く関わってくる部分かと思います。またお時間のあるときに御参照いただければと思います。

 続いて参考資料4でございます。こちらは平成23年にまとまっております、社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会の報告書でございます。これも1枚おめくりいただきますと目次がついてございますけれども、16ページ以降の「4 一時保護の見直しについて」、「5 保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方について」、「7 接近禁止命令の在り方について」この辺りがこの検討会の議論に特に深く関わる部分かと思います。またこれもご覧いただければと思います。

 最後に参考資料5でございます。「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組について」というタイトルになってございますけれども、目次のところをご覧いただきますと、児童相談所における児童虐待対応の現状、児童虐待防止対策に関する制度改正の経緯、とりわけ司法関与関係を中心にまとめたものでございます。それから、里親及び特別養子縁組の現状についてということで、あくまでも基礎的な情報や資料、データをまとめたものでございます。

 また、今回の検討会での議論を進めるに当たりまして、必要な情報や資料、データがございましたら、御意見を頂戴できればと考えております。

 私からの説明は以上でございます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、本検討会は開催の趣旨にもありますとおり、要保護児童を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与の在り方、児童の福祉の増進を図る観点からの特別養子縁組制度の利用促進の在り方について調査・検討することとなっております。また、本検討会は関係省庁からも御参加いただいておりますが、今後、議論の状況によって、必要に応じて関係省庁からも御発言をお願いすることもあり得るかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速でありますが、本日は第1回の検討会ということでございますので、児童虐待対応における司法関与のあり方についてどう考えるか、特別養子縁組制度の利用促進のあり方についてどう考えるか、各構成員の皆様から一巡、御意見をいただきたいと思います。

 その際、今後、本検討会で議論を進めるに当たってどのような情報や資料、データが必要なのか。また、現場のどういった実態について把握する必要があるか。そういった点につきましても御意見を頂戴できればと思います。時間の都合もありますので、本検討会構成員名簿の順番にお一人5分程度で御発言をお願いできればと思います。

 別紙の構成員名簿にあります順番ということで、今日は岩崎先生が御欠席ですので、金子先生から5分程度のお話で順にお願いいたします。

○金子構成員 千葉大学の金子と申します。民法を専攻しております。

 私は養子についてかつて多少調べたことがあるのですけれども、継続的に追いかけているわけではありませんし、虐待問題については不案内であるということですので、素人的な発言で御迷惑をおかけすることもあろうかと思いますけれども、どうか御容赦願えればと思います。

 幸いというか、不幸にというか、トップバッターということですので、ほかの方との重複を気にせずに気楽に発言をさせていただきます。

 まず司法関与につきましてですけれども、大きく分けて2つの方向の議論があるように見受けられました。1つは特に一時保護を念頭に置いて事前または事後に一時保護について裁判所の審査を経るべきであるという主張ではないかと思います。これはよく理解できるところで、そうであれば望ましいと個人的には思っております。

 ただ、これもよく指摘されていることですけれども、参考資料3の17ページとか、参考資料4の1617ページあたりにありますけれども、要するに現状の体制等を考慮する必要があって、過度に重い手続を加えるとかえって一時保護が実施されず、児童の利益を損なうような事態になるのではないかという懸念があって、それで参考資料4では結局、司法関与はやめようということになったと理解しておりますけれども、これは5年前のことで、そのころからどれくらい変わったのかというのが私にはよくわからなくて、例えば児童福祉司数という点からは、参考資料5の6ページとかを見ますと15%程度増えたということで、数だけの問題ではないと思いますけれども、そんなに変わったのかなということを率直に疑問に思うところがあります。それが1つです。

 もう一つは、裁判所が親に直接指導してほしいという意見があるのかなと見ておりました。これについてどう考えるかですけれども、私の考えとしては一時保護を含めて児童虐待全体について全般的に当てはまることだと思うのですが、本来の手続の構造としては児童相談所のほうが主導し、それを受けて裁判所が判断する。その意味で裁判所は受動的であるということが基本ではないかと思います。

 例えば親へ指導するという場面で考えますと、内容自体は児童相談所でプランニングして、裁判所のほうはちょっとそれはおかしいのではないかと思えば修正を求めたりすることもあるけれども、あくまで受け身であって、そういうだめ出しを受けて能動的に修正案を考えるのは、それはあくまで児童相談所の役目である。このようなやりとりの結果、裁判所を納得させられれば、裁判所がその児童相談所の案をオーソライズして実行するというたてつけは十分あり得るかなと思います。これはイギリスの例をぱらぱらめくって見た限りでは、そういうことが司法関与のあり方としてあり得るかなと個人的には思っております。ただ、イギリスと日本では裁判所の権威とか、それを裏づける体制などは全然違いますので、そう単純に持ってこられるかという問題は別途あるかなと思いますが、一応イギリスの例を見ると、そういうことは全くあり得ないことではないと思っております。

 司法関与については以上です。

 養子の活用についてでありますけれども、趣旨としては要保護児童には施設ではなくて、家庭での温かい養育環境を用意してやることが望ましいという発想であって、それを促進する手段の1つとして特別養子をもっと活用しようということだと承知しております。

これにつきましては、確かに特別養子制度につきまして、特に実の親から同意をとる手続について改善を要する点が多くあるのではないかと思っております。

 ただ、それはさて置いて1つだけ言うとしますと、要保護児童の年齢としてどれくらいの年齢の方を想定しているのかよくわからないのですけれども、ある程度年長の子になってくると、特別養子は余り向いていないというのが率直な印象であります。つまり外国でも実の親との親子関係を断絶するという、特別養子はそのタイプであるわけですけれども、それで行われている例というのは、年齢が生まれたばかりかそれに準じるという子がほとんどではないか。要するに、ある程度年齢がいってしまうと実の親の記憶は消せない。幾ら虐待を受けていたとしても消せないわけで、そういう子について無理やり実の親との関係はおよそなかったことにするというのは、余り適切でないという事情があるのではないかなと推察するところであります。

 つまり、実の親との関係の断絶を伴うという制度はちょっと重過ぎると個人的には思えておりまして、だから要保護児童に家庭の環境を与える手段としては、むしろ現行制度で近いものとなると里親になるのではないかと何となく思っております。ただ、里親の候補者としてどれくらいの人数がいるのか、よくわからないですけれども、そういう里親の候補者を探すのは大変ではないかと想像いたします。

 イギリスのこともそんなに詳しく知っているわけではありませんけれども、フォスターケアというものがかなり広く行われていると聞いておりますが、日本では血のつながりに妙にこだわるというところがありまして、そういう日本においてフォスターケアというものが十分浸透するのかなというのは、全然楽観できないところがあるように思っております。

 雑駁で申しわけございませんが、意見としては以上でございます。

○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 それでは、上鹿渡先生、お願いします。

○上鹿渡構成員 長野大学社会福祉学部の上鹿渡和宏と申します。

 私は児童精神科医です。もともと児童相談所で勤務していたこともありまして、情短施設ですとか、その後も里親、ファミリーホームなど、社会的養護のもとで生活している子どもたちもいろいろな領域があるわけですけれども、いろいろな領域にバランスよく関わってきた者です。今は社会的養護の研究を児童精神科医として進めております。

 まず司法関与についてですけれども、今回先ほど紹介されていた新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の報告書の16ページにもあるのですが、この中で非常に大切なことがきちんと書かれていると思います。

 これまで司法関与ということで言いますと、親の権利を制限するというイメージが現場でも強いわけですが、ここにしっかり書かれてあるのは、子どもの権利を制限する行為であるということです。このことをこの検討会でも十分にいつも留意しながら話し合いが進められたらと思っております。それは私が児童精神科医ということで普段の臨床、相談の中でも大人が問題だと思うことを子どもの視点で、子どもはどう感じているのか、子どもにとってはどういう問題なのかということで問題を考え直して、その間にあるずれを親御さんであったり学校の先生や大人に伝えるという子どもの代弁者としての役割があるわけですが、この検討会におきましても私に与えられた役割は、子どもの視点でここで議論されることがどういう影響を子どもに与えていくのかということをしっかり考えていくことだと思っております。

 それと、これは司法関与でいろいろな場面のことを想定して検討されるわけですが、そこで決められたことがその後の子どもにどういった影響を与えるのかということにも十分配慮しながら話を進めていきたいと思っております。私が実際に臨床の場で出会った子どもの中で、自分が担当している子どもが虐待されている状況にあって、その状態は危険なので安全・安心を考えて家ではなくて一時保護所で生活しようねということを子どもに言うわけですが、実際には子どもはその後、一時保護所や児童養護施設、里親さんなどで社会的養護内の虐待ということにも出会ったりすることがあります。

 ですので、こちらとしては安心安全をと思ってそのときの決まりやいろいろな評価によって進めていくわけですが、その後、どういったことが子どもに起きているのかということも、ここでもし決定されることがあれば、その後どういったことが実際起きるのかということまで含めて、我々は考えていかなければならないのではないかと思います。この検討の場では、子どもの視点でどういうことが起きそうかということを想像しながら何か私のほうから言えることがあれば、随時述べていきたいと思っております。

 もう一つ、特別養子縁組についてですけれども、こちらにつきましてはこれまで新生児や乳児を対象とする議論が多かったかと思います。これから家庭養護が進む中で、施設養護から里親養育、特に乳幼児が里親養育になった場合は、その後がとても重要になります。パーマネンシーの獲得ということでは、そこから実の親のもとに戻れるのが一番よいパターンだと思いますが、それがかなわない場合には養子縁組の可能性が検討されることになります。もう少し上の年齢の子どもについてもそういったことが言えると思います。

 そうしたときに、これまであまり多くはなかったかもしれない虐待やネグレクトを受けていた子どもたち、家庭の中で既にそういった経験をしている子どもたちを養子縁組にするという形、または一度施設での生活を経験してその後、しばらく後で養子縁組されるという形も増えてくるのではないかと思います。このような場合にこれまで以上に、これまでも養子縁組した養親さん同士の集まりなどはあったわけですが、さらにもっと専門的な支援といったものが必要になるのではないかと思います。

 海外でも養子縁組を社会的養護の1つとして使っているような国では、養子縁組後の支援というのは非常に重視されています。里親支援とは全く別な形で、チームや組織としても違うところが、それぞれのチームで専門の支援をしているということがあります。日本でそれをどこまで分けていくのかといったことはまだまだこれから先の話かもしれませんが、最初からそのような子ども、養子縁組したその家庭だけで見るのではなくて、社会的養護の1つの手段として養子縁組を考えることが増えていくのであれば、そこを社会がしっかり支援していくことも考えなければならないと思います。そういったことを議論できればと思っています。

 これは司法も特別養子縁組も含めてですけれども、司法のほうで親や子どもの権利を制限する場合に、そこの判断が非常に困るのではないかと思います。何をもってそれを制限するのかといったところでアセスメントする場というのが非常に重要になるのではないかと思います。それが一時保護所だけでできない、既存の施設なんかではできない場合には、例えば親と子ども、親というのはお母さんの場合もありますし、お父さんの場合もありますし、両親の場合もあるかと思います。そういったところで子どもと一緒に施設、または海外では里親でもそういったことが、トレーニングされた里親のもとできちんとした評価をして、それを裁判所に報告して、それで実親のもとに戻すのか、もしくは評価の最中に教育的な配慮で親御さんが自分でできるということがあれば、それで家に戻ってやってみるということになると思いますが、そういったことも行われております。今後施設養護や家庭育を変えていくに当たって、これから生じてくる子どもの新しいニーズに応じて、それぞれのこれまでの形態をあわせて変えていけるといいのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 上鹿渡先生、どうもありがとうございました。

 続きまして久保先生、お願いいたします。

○久保構成員 福岡市こども総合相談センターで虐待対応課の課長をしております、弁護士でもあります久保と申します。よろしくお願いいたします。

 私からは司法関与について、まず結論のほうから端的に申し上げたいと思います。

 子どもの保護に関する裁判所の関与につきましては、現行よりも関与すべき範囲を広げるべきだと考えます。理想としては司法中心の制度を構築すべきだと考えています。とはいえ、現行の児童相談所の体制のままで直ちに裁判所が関与することは難しいと考えております。ただし、それはその体制が整ったときにということではなく、いつまでに裁判所の関与が開始するという期限をきちんと決めた上で、それに向けて体制を整えていくべきだと考えております。

 また、裁判所の関与の問題は児童福祉の制度全体の構築にかかわることであるため、裁判所の関与という点だけを論じるのではなく、児童相談所の業務のあり方、今後検討されるであろう要保護児童の通告のあり方などの方向性を見通しながら論じていきたいと思っております。

 裁判所関与の必要性についてお話します。裁判所関与の必要性は在宅支援の場面で顕著にあらわれております。例えば子どもを一時保護するほどではないが、かといってそのまま放置できるような適切な養育とも言えないというような事案があります。このような事案では、現在でも児相等がかかわって保護者に対して指導をしております。しかし、行政の指導程度では強制力があるわけでもなく、あくまで支援ベースになってしまいがちです。ですので、これに従わない保護者も少なくありません。そうしますと、子どもたちは適切とは言い難い環境にい続けなければならなくなります。

 そこで法的強制力を伴う措置が必要になると考えます。これを判断する機関としては裁判所が適当であり、裁判所が直接保護者に指導命令を下す制度が考えられます。その命令後、保護者が指導に従わない、または指導しても一定期間改善がなく、将来にわたって改善の見込みがないというときは裁判所が子どもを一時保護するよう命令を出し、その後、子どもを永続的に安定した環境で生活させる仕組みをつくるべきだと考えています。

 また、条約9条1項は、父母の意思に反する子どもと父母の分離に関して司法審査を要求しております。ですので強制的一時保護について裁判所が関与するのは必須だと考えております。そして、一時保護の後、社会的養育に進むのか、その他の処遇に進むのかについては、保護後の状況等を総合して判断するために一時保護を成した裁判所が主導的に関与すべきだと考えています。

 なお、強制的一時保護に裁判所を関与させることについて、子どもが救えなくなるから反対であるとの声があります。しかし、全ての事案について裁判所の令状が必要であると考えているわけではありません。緊急時には令状がなくても一時保護ができるようにするべきであって、また、緊急一時保護の後、一定期間のうちに一時保護を解除した場合、または保護者の同意がある場合は裁判所の事後審査は必要ないとする仕組みであれば、子どもを救うことに支障はないと考えます。

 また、司法関与によって児童相談所が一時保護をしなくなるとか、裁判所に判断を委ねてしまうなどの指摘がありますが、今回の改正によりまして弁護士の配置またはこれに準じる措置が義務づけられました。適切な助言が期待できると思われますので、指摘されているような可能性は低いかと考えております。

 さらに踏み込んで申し上げますと、立ち入り調査、臨検・捜索、強制的一時保護など強制的処分につきましては、警察が執行すべきだと考えています。現在、警察は虐待対応におきまして児童相談所の後方支援のように位置づけられておりますが、実際には110番通報を受けて子どもの安全確認をしたり、子どもを保護すれば児童相談所に身柄付通告としてなされている例も少なくありません。

 一方で児童相談所は福祉機関であって強制的処分になじまないこと、保護者との関係性を考慮する余り、強制的処分にためらいがあることなど、児童相談所に強制的処分の執行を担わせるのはそもそも無理があります。また、全国の児童相談所で警察との連携強化が図られており、現職警察官を虐待対応部署に配置しているところも少なくありません。とすれば虐待に警察官が積極的に関与することの障壁は低くなっているだろうと思います。このほか、児童相談所が虐待通告を受けて活動していても、警察のほうから、警察に早く情報提供すべきだという要請がされることも少なくありません。これらのことからすれば、もはや警察が虐待事案に積極的に関与することが一概にだめだとは言えない現状があります。それに実際の問題として緊急時の対応は26万人を超える警察官を要し、合計1万4,000カ所に近い警察署、交番、駐在所を設置する警察のほうが、3,000人程度で、支所を含めても二百数十カ所しかない児童相談所よりも迅速な対応が可能ですし、現実に110番通報で近くの交番から迅速に対応していただいているところです。

 以上、述べてきましたように、虐待事案の強制的処分に警察が主体的に関与し、迅速な対応ができるのであれば、通告窓口が一元化されないということを前提とすれば、警察を通告先として加えるべきことも検討すべきだと考えています。もっとも、単に犯罪捜査をする警察をそのまま福祉領域に入ることにはちゅうちょがあるのも確かです。そこで、子ども福祉につき十分理解をしている、または研修を受けた警察官が関与すべきだと思います。とはいえ、警察が介入することによる人権侵害のおそれがあることは考えられます。ですので、なおさら裁判所の介入が求められると考えております。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 続きまして、久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 東北大学の法学研究科で教授をしております久保野と申します。

 これまで児童の保護に関する法制について、主にフランスとドイツを参照しながら親権との関係という観点から少し勉強をしてまいりました。

 今回の検討会につきましては、長らくの課題が山積しているところ、ほかの検討会と相まって本格的に検討を進める好機と思っておりまして、その中で司法関与全体の中でどう考えるかということ、また、再統合なのか新たなパーマネンシーなのかというのは理念もかかわるところだと思いますので、そのあたりを踏まえながらしっかり、かつ、慎重に議論できればよいのではないかと考えております。

 まず司法関与の全体像につきましては、参考資料5の27ページに現在認められている司法関与がまとめられておりまして、その中で何がどう足りないのかということかなと思っております。

 今回のテーマは2つになっておりますけれども、司法関与は平成23年改正前からかなり議論がされていて、23年改正のときも今日出ている報告書と、もう一つ別の報告書とかなり立ち入った検討がされていたものだと理解しておりまして、特別養子のほうはそれに比べれば比較的新しい問題提起なのではないかと思いますけれども、その2つが関係するのかどうかというところも気になっているところでございます。

 個別にですけれども、司法関与につきましては先ほど来、出ておりますように一時保護への関与と保護者指導の実効性の確保という、これは従来から議論されていた両面が問題になっているのだと思いますが、先ほど金子構成員から指摘がありましたとおり、5年前に一旦、直ちには導入しないという議論がされた状況がある中で、何がどう問題なのかというところの確認、実務でどうなっているかというところを知りたい点が幾つかございます。

 その23年のときの検討会の報告書を見ますと、法務省のほうを見ますと児童虐待防止法の中で11条4項、5項があり、その周知等がどのぐらいされているかという課題が指摘されていたりですとか、あと児童福祉法28条の5項での、済みません、順番にいきますと11条4項、5項が現状としてどのように、どう使われていて、そこにどのような課題があるのかといったようなことが1つ気になります。その次に、28条の勧告の制度があるわけですが、これがどの程度使われており、その使われているケースで再統合等あるいは親指導等でどのようなことになっているのかという具体的な情報を知りたいというように思います。

 さらに言いますと、23年当時は親権喪失しかなかったところが課題として認識されていて、親権停止制度を設ければ少し変わるのではないかということが期待されていたのだと思いますので、親権停止の申し立てというのがどのぐらい使われているのか、それで足りない部分はどこなのかということがあるかと思います。

 また、より一般的な話で言いますと、行政が主導しているのが例えばイギリスなどの例ではないかという御指摘が先ほどありましたけれども、私の理解におきましても、フランスでもイギリスでも要は最終的に個別のケースについて専門的な関与ができるのは福祉行政以外になく、そこの充実とセットになって司法が働いているからうまくいっていると言えるのではないかと思っておりまして、まさにそれも並行して見直していく段階だと思いますが、その点を注目したいと思います。

 特別養子につきましては、なぜ今、注目されているのか、どのようなケースで利用が考えられているのかというのをもう少し具体的に知りたいというところがございます。また、確かに特別養子縁組制度について、福祉のために導入された新しい制度であるにもかかわらず、活用されていないと私も思いますけれども、そのこととの関係でも先ほど挙げましたほかの司法関与、例えば親権喪失がどのぐらい使えるのか使えないのか。というのは、親権喪失を申し立てて認められるようなケースであれば、父母の同意も、ここは解釈上まだはっきりしていないところがあるにせよ、父母の同意がネックになるようなところが残るのか残らないのかというところもあるかと思います。

 最後に理念にかかわるところがあるのではないかと冒頭で申しましたが、特別養子のお話は恐らく再統合、親子関係再構築がうまくいかないときということが前提にあるのだと思いますけれども、再統合、親子関係の再構築について現状、どこの機関がどのように、具体的にはどのような形で担っているのか。それがそこの専門性に裏づけられてどこまでできているのか。そしてまだ課題があるのだと思いますけれども、今後そこをどのように充実していくことが考えられるのかというところとの関係で、特別養子の使い方も関係するのだと思いますので、そちらについても情報が欲しいと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 さまざまデータであったりケースであったりのリクエストが出ましたので、事務局のほうよろしくお願いいたします。

 それでは、次に杉山先生、お願いいたします。

○杉山構成員 一橋大学大学院法学研究科の杉山と申します。

 私は民事訴訟法を専門としていますので、本日は司法関与のあり方について今の段階で考えていることについて述べたいと思います。

 これまでの議論等につきまして、いただいた資料等から拝見する限りでは、まず一時保護で事前等の司法関与が必要とされる理由、問題の背景事情としては、一時保護の期間が長きにわたる可能性があり、実際にも長いので、このように長期の期間にわたって親子を分離するためには、司法による事前あるいは直近の事後的なチェックが必要なのではないかという議論であったように見受けられます。

 また、司法関与に関しては、一時保護の問題もそうで以外にも児童相談所の指導等に司法が関与すべきだという議論があり、その背景には、司法によるチェックがあることにより、児童相談所による行政処分等に司法によるお墨つきが与えられる。それによってより指導等に従う可能性、実効性が上がるのではないかという議論が背景にあると思われます。

 あとは誤解がなければ、特に一時保護においてなるべく早期の段階で保護者等の意見を聴取する手続を構築する必要性もあるのではないかという議論もあったように見受けられます。

 これについてどう考えるかですが、第1点目の期間が長過ぎるという問題につきましては、参考資料5の23ページに各都道府県の平均データが出ておりますが、平均期間が長い県はございますが、あくまでも平均ですので母数によって違ってくる可能性もあります。また、実際には1カ月以内の県が多いわけで、本当にこのデータだけで著しく長いと言えるかどうかぴんと来ないところもあります、もしもう少し詳細なデータがあれば参考になるのではないかという気もします。

 その結果、実際にも期間が長期であるとか、更新もよく行われているのであるならば、相談所以外の第三者によるチェックがある方が望ましいのですが、現行制度のままでいいのか、あるいは第三者が司法機関である必要性があるのか、司法機関であった場合にどのようなメリットがあるのかといった検証も必要なのではないかと思います。

 さらに、より問題だと思われるのが、2点目の司法によるお墨つきというものを与える必要性があるという点です。司法と行政との役割分担という根本的な問題もありますが、仮にその問題が乗り越えられたとしても、裁判所による命令が加わることによって、より実効性、履行の可能性が上がるかどうかは必ずしも明らかではないからです。実際の民事事件などを見ましても、裁判所が命令、裁判を出したからといって、それが100%従われることはないわけでありまして、そのために裁判所が関与すればより実効性が高まるとは言い難いのではないか。さらには仮に裁判所に関与させた場合に不服をどう申し立てるのかとか、あるいは履行しなかった場合にどのような制裁、サンクションが用意されるのかということも、詰める必要性はあるのではないかと思われます。

 逆に一時保護のような手続に司法関与を認めることによる弊害の方が懸念がされます。過去にも現在の家庭裁判所で人的、物的に対応できるのかという議論がありまして、もちろんその点については将来的に運用等を整備して、対応できる体制を整えていくことは可能かもしれませんが、仮に裁判所が一時保護について事前とか、あるいは直近の事後にチェックをするのであれば、かなり精細な要件を立てなければならないと思われます。そうしますと、現在のように児童相談所が迅速かつ幅広い柔軟な裁量に基づいて救済をしているところに制約が加わって来ざるを得ないと思われます。それがいいかということも検討が必要かと思いますし、また、裁判所がかかわることによって、例えば最近見られた、保護者などの意見聴取の手続が構築できるかという問題に関しましても、2カ月とか1カ月という短期間に十分な意見聴取ができる手続を構築することは難しいと思われます。2カ月で短期と言えるかどうかは別といたしまして、短期かつ緊急性が求められる一時保護に関しては裁判所に事前の許可を求めるとか、あるいは裁判所がその都度チェックするよりは、ある程度行政、児童相談所の判断権を尊重するのが望ましいのではないかという気が現在はしております。

 先ほど久保構成員から具体的な案が出されておりましたが、それに対する回答は今日は準備できておりません。いずれにしても、司法関与が具体的にどのような形でなされるのかという具体像を挙げていただき、シミュレーションしつつ詰めていかないことには問題点が明らかになってこない。抽象的な議論で終わってしまうような気がいたしますので、その点が明らかになると非常に助かります。

 あとは比較法の議論なども参考にはなりますが、行政と司法の役割分担というような根本的な問題にもかかわるものですので、慎重にしなければならないような気もいたしております。非常に雑駁でございますが、以上が私の意見でございます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 では、床谷先生、お願いいたします。

○床谷構成員 大阪大学の床谷と申します。

 私は法学の中で特に家族法を研究しております。この問題につきましては、私は最初の研究テーマが養子法でしたので、1980年代初めぐらいから研究はしておりますけれども、83年に私法学会で養子法の改正の議論があり、特別養子法ができる前ですが、それに向けての議論のときの様子とか、そういうものを思い出しながらこの問題は折に触れて考えてまいりました。

 特別養子法ができたときに、その当時から子どもの年齢については非常に問題があって、結果的には現行のような形になりましたけれども、当時の意見としては未成年者全てを対象にしたほうがよいという意見もあれば、中学校に入る前、12歳ぐらいまでだったらいいのではないかという意見もあり、必ずしも乳幼児に限定した発想ではない形で検討はされていたわけですけれども、結果的に6歳未満を原則とするという形になったということです。

 その理由として親を替えるとか、親の記憶が残らないうちにという言い方をされることもあるのですけれども、これはあくまで養子法のつくりたてとしては、親子関係を新しく組みかえるというものではないかと私は理解しておりますので、子どもが親を記憶しているかどうかということと、特別養子法を適用できるかどうかというのは別の問題だろうと考えております。そういうところから2009年に私法学会で家族法改正の検討をしたときに、私も養子法を担当させていただいたのですが、年齢については15歳未満というところを今のところ提案させていただいている立場であります。

 なぜ15歳以上にしないのかということについては、15歳以上になりますと現行の家族法上、本人の意思による身分行為というものが原則でありますので、特別養子縁組は身分行為とするかどうかという問題がありますけれども、子どもの意思としては15歳を超えると本人の意思を単に同意をするとかそういう立場ではなくて、主体的な立場をとらせるべきであろうと思いましたので、15歳未満という形で提案をさせていただいております。

 これは件数は多くないのではないかということはよく言われます。私法学会のときとか、あるいはその前の年の家族<社会と法>学会のときも同じような議論があったものですが、子どもの年齢を引き上げる立法事実はあるのか。上げればどれぐらいのものが増えるのかというような形で立証を求められたりもするのですけれども、これはなかなか私どもとしてはその判断ができるような材料がないというところで、可能性としては引き上げておきたい。件数は多くなくても年齢で完全にとめられるということがないようにしたいというようなことで、最終的な基準としての子どもの福祉の必要性、縁組の必要性を基準にすることで、年齢で妨げることはないのではないかと考えております。

 特別養子縁組については同意の取り方が当然問題になってくるわけで、いただいた資料の中にもありますように、申立の段階からは児童相談所が行って、同意をとるというところまでは児童相談所が主体的になり、養子縁組の成立の段階は親となる側がするという形に現在の法律を変えてはどうかという考え方もあるように聞いておりますけれども、このような手続の流れというものもよく考えてみるとなかなか難しい問題があるなということをこのごろ思います。だから私ども実定法の民法をよく見るので、手続のほうになると途端に不安になるところがありまして、もう少しその点、手続法の先生方と話をしながら詰めていきたいなと思っております。

 児童福祉法の司法関与については、私は一時保護については2カ月を超えるときには裁判所がチェックしたらどうかということを論文で書いたことがありますけれども、資料を見ますと2カ月を超えるケースはそれほど多くはないということでありまして、それならかえって2カ月を超えるものについては、チェックをかけても現在の司法リソースでは無理だという意見に対しては、反論になるのかなと思ったところがあります。非常にたくさんあって裁判所が対応し切れないというのが現状ではないかという意見が強いのですけれども、件数的に日数とか状況とか、それでセレクトしてやったらどうかと思っています。

 私は93年にドイツに留学したときに現地の少年局、児童相談所に対応するような機関ですけれども、そこで里親とか養子縁組とか、そういう担当者とも話をさせていただいたりもしたのですけれども、民法の中に児童相談所、少年局が明確に位置づけされていて、民法と児童福祉法の関係が非常に密であるということで、非常に感銘を受けた記憶がございます。当時、特別養子法のときに児童相談所の前置主義が途中で消えてしまったというのは、体制不足だということが大きな理由だったようですけれども、それがようやくここに来て、こういう形で民法と児童福祉法のより直接的な対話、つながりができるというふうになってきたことに非常に期待をしております。

 以上です。

○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 ほぼここで半分ですけれども、先生方の御協力で大体スケジュールどおり進んでいますので、また後半もよろしくお願いいたします。

 それでは、林先生、よろしくお願いします。

○林構成員 資料3の5ページからです。厚労科研の結果を踏まえ主に下線部分を中心にご報告致します。 児童相談所における現在の里親及び養子縁組の体制に関することです。そこにありますように常勤職員を配置している児相は3割弱です。ただし、自治体間の格差というものが非常に大きくて、最も手厚く配置されているA市は常勤専任職員が4人、非常勤が2人という体制で、なおかつ養子縁組の業務を全てある民間機関に業務委託をされています。そうした手厚い体制及び民間機関の協力を得て、ようやく1年間で十数件の養子縁組里親の委託が可能となっているような状況です。

 そうした体制の中で次の黒丸の2点目ですけれども、実際にどれぐらいの数の養子縁組を前提とした里親委託が児相によって行われているのかといいますと、平均1.5件です。非常に自治体間の格差も大きいです。ゼロ件である児童相談所というのが45%弱存在するという現状です。

 次の黒丸のところです。以上のように、こうした状況の中で児相自身が成功体験を十分に蓄積できない状況の中で悪循環に陥っているということも、縁組が進まない要因となっているように思います。

 次の参照のところをごらんください。国のほうからお出しいただいた参考資料5の49ページに、特別養子縁組の成立件数に関する棒グラフがございます。それとあわせてごらんください。

 特別養子縁組制度ができた平成1年は1,205件ありました。内訳としましては民間機関がほとんどなく28件で、児相が354件で、その他というある意味私的な縁組というのが823件とほとんどを占めていたわけです。ところが、平成5年になりますと徐々にその他の件数が減って、民間機関がわずかに増えて、児相が増えるという状況です。そして平成25年、厚労省に出していただいた平成25年に当たるデータを見てみますと474件。この内訳というのは民間機関が現在23カ所となっていますが、この当時は18カ所だったと思います。当時18カ所で約200件ぐらい、474のうち200件ぐらいが民間機関であり、児相が大体270件ぐらいで、その他は減少しているという現状かと思います。その後、26年、27年と49ページを見ていただきますと増加しているのですが、この増加部分というのはほとんどが民間機関、つまり18機関から23機関に増え、民間機関が非常に積極的に縁組にかかわる中で、成立件数への貢献というのは民間機関によるものではないかということが予測できます。

 私のレジュメに帰っていただきたいのですが、こうした現状を踏まえたときに、例えば児童相談所の体制を強化するというのがどれぐらい縁組件数の成立に貢献できるかというと、私は非常に限界があるのではないかということです。民間の強みというものを生かした、この民間の強みというのは何よりも職員の継続性というところだと思います。職員の継続性のためには一定の待遇が保障されることが必要になってきます。一定の待遇が保障されれば、民間機関の専門職員というのはよりやる気を持ってやる。それが専門性を高めてより縁組を促進させていく。もう一つ、民間機関がかかわるということは、市民意識の変革に大きく結びついていく部分も大きいかと思います。養育文化を変えていくということにも民間機関というのは大きく貢献できる。だから児相ができないからという消極的理由から民間機関を活用するというよりは、積極的にそうした意識変革も含んで民間の力を使っていく。そのために財政的な支援を都道府県及び国がしっかりとやっていくことのが大事かと思います。そして、そのモニタリングをきちんと都道府県がやっていくという体制が重要に思います。 次の(2)のところです。パーマネンシーというものの理念の不徹底というところです。日本でパーマネンシーといいますと、やはり家庭的養護あるいは家庭養護というところで論じられるかと思います。リーガルパーマネンシーを含んでどう定着化していくかということが重要に思います。データに基づいて見てみますと、平成25年度の成立件数が270件ある。そのうちの1歳未満及び出産前から相談にかかわったというケースが95%を占めているということです。普通養子はほとんどなくて特別養子が96.3%を占めています。

 つまり児相を通して行う養子縁組というのは、新生児及び乳児に限定されているということです。法の安定に基づいたパーマネンシー、つまりリーガルパーマネンシーというのは里親と違って永続的に家族であるということです。それは措置解除後、非常に重要な資源として機能するわけですが、リーガルパーマネンシーがあらゆる年代の子どもにとって必要であるという認識あるいは理念を法レベルで明確にする必要があると同時に、長期里親と養子縁組というものを明確に区別していく具体策が重要ではないかと思います。その対応策としては後ほど触れたいと思います。

 (3)のところですが、いわゆる新生児委託です。産院から直接里親さんに委託されるようなケースというのは、大体国のデータと同じぐらいです。70件ぐらいあります。関わっている児相というのは2割弱ぐらいです。このプロセスのあり方というのは、国として通知レベルで愛知方式が1つの例として明らかにされているわけですが、実はそのあり方というのも自治体によって違いがあるということです。

 下線部のところ、直接養親候補者である里親に委託するか、乳児院あるいは別の里親さん、乳児委託になれている別のベテラン里親さんに一旦、一時保護委託して、それは何のためかというと、生みの親の意思決定につき合うという期間。ある一定の期間です。そういう別の里親さんに委託してから、新生児を養子縁組候補者さんに委託するというあり方もあるということです。

 6ページ目の2つ目の下線部のところをごらんください。できるだけ早期に養親候補者に養育を託すことで、養親のその後の子どもへの思いが強化される。藤林先生なんかはそう言われていたように思います。しかしながら、一時保護委託として別の里親に委託し、生みの親の心の揺れにつき合う、あるいは養親候補者さんに委託される際、養育方法などを縁組後の支援ということを含めて考えた場合に、重要な資源になっていく可能性もあるのではないかと思います。だから一番下の下線部のところ、私が申し上げたいのは、せめて乳児院の活用は避けて、一時保護委託を含めて別の里親さんという選択肢も考えながら、個別応答的な環境を保障できる里親さんを新生児の段階から保障していくことが重要ではないかということです。

 (4)は障害児委託に関してです。2014年に障害者の権利条約が批准され、そしてあらゆる子ども、子どもの養子縁組も障害を理由でもって阻害されるということはないようにということかと思います。ここに書かれていますように下線部の「現在」というところです。手厚い医療ケアを要する子どもというのは、母体が病院である日赤や済生会の乳児院などに措置される傾向があります。自治体が作成する社会的養護の推進計画なんかでも、堂々と乳児院の対象児としてこうした子どもが明記されている自治体もあります。

 次のところです。障害児に対する積極的な家庭養育提供策のあり方というものを考える必要があるのではないか。手厚いケアを含めて地域の中でどう提供していくかということ、それから、縁組後の扶養義務を養親のみ経済的なことを含めて頼るということが、非常に無理があるのではないか。この辺は民法の扶養義務との絡みが出てくるところですけれども、もう少し要保護児童の養子縁組というものを特別に考える必要性はあるのではないかということです。

 7ページの民間機関の補助のあり方です。公的助成のあり方を含めて考える必要がある。これはどの方も認識を持たれていることかと思います。補助のあり方を出来高制というか、民間機関が妊娠相談の機能も持っているわけで、中立的なポジションから生みの親の意思決定を支援するということを考えたときに、やはり一括補助でなければ養子縁組という方向性でもって意思決定を支援してしまうというリスクもあるのではないか。あるいは市町村の妊娠相談機関が今、徐々にでき上がっています。あるいは市区町村独自でやっている妊産婦ホームのようなものをより普遍化していき、そういう機関と協同して意思決定を支援していくという体制が非常に重要ではないか。

 7ページの「さらに」というところなのですけれども、現在、児相を通す養子縁組ケースに関しても、里親手当や事業費の支給のあり方というのは実は非常に多様です。試験養育期間には養育里親として手当も支給され、事業費も支給されているところもあれば、そうでない自治体もあります。

 こうした体制と、あるいは養子縁組と里親を差別化する上で、一番下の下線部のところですけれども、養子縁組里親というある種の形容矛盾的な用語を廃止して、あるいはそういうあり方を廃止して、公民機関のいずれが関与するかにかかわらず、これまでの縁組里親に支給されていた額に相当する経済的な支援を、縁組支援として公平に提供すべきでないか。その際、気をつけなければならないのは試験養育期間後、速やかに縁組申し立てを行うよう指導する。要件ということではなくて指導するということ。つまりある種、児相と民間機関の大きな違いというのは、試験養育期間後、縁組申し立てするまでの期間が相対的に児相のほうが長くなってしまう。それはなぜかというと、1つとして経済的な支援というものが少なからず影響しているのではないかということも予測できるかと思います。

 8ページのところは、一番言いたいところなのですけれども、養親候補者さんを含めた情報の一元化をどう具体化していくか。せっかくの資源を公民が連携して使う、活用するということでもって縁組を促進する上で、非常に重要なところではないかと思います。

 一番最後の「6.今後について」です。我々の調査で非常に欠けていたのは当時者の意識調査です。養親さんあるいは養子縁組を組まれたお子さん、こういう方々は特別養子ができて30年が経過して、徐々にスピークアウト活動なんかもされるようになってきました。そういうものをデータ的にきちんと蓄積するということが必要ということと、離縁ケース、受理ケース、認容ケース、却下ケース、取り下げ内容を含めて、どういうケースがあったのかということをきちんと明確化するということです。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。無理やりまとめさせてしまって申しわけございません。

 では藤林先生、お願いいたします。

○藤林構成員 福岡市児童相談所長の藤林と申します。

 私からは、なぜ司法関与、特別養子縁組の促進を必要とするのか。児童相談所長という措置をしてきた立場で子どもたちが現在、置かれている現状、子どもの権利保障の観点から発言を行いたいと思います。

 短い時間ですので、ほかの委員さんとダブるところは省きたいと思っています。

 まず日本の社会的養護の特徴として、この場で共有しておきたい事実があるわけなのですけれども、今日配付いただきました参考資料5の46ページ、これはよく言われているところで里親委託16.5%、施設ケアが84%という日本の社会的養護は圧倒的に施設ケアに偏重しているという事実があるわけなのですが、もう一つ重要な特徴がありまして、それは43ページのところです。2を見ていただきますと、例えば4年以上、児童養護施設に入所している子どもは約50%、8年以上ですと23%になります。福岡市の統計も調べてきたのですけれども、ほぼ同じ割合で4年以上45%、8年以上24%、また、福岡市だけの数字になりますが、これは昨年度集計したわけなのですけれども、例えば8年以上入所している子どもの中で、その約半数の48%が乳児院から連続して入所している子どもたちであることを改めて把握いたしました。つまり、赤ちゃんのころから家庭で暮らすことのないまま大人になっていく子どもたちが、この国には大勢存在するということを意味しています。

 今回の改正児童福祉法の趣旨からいたしますと、このような長期間入所している大勢の子どもが家庭環境で暮らせる措置を我々は講じなければならないと思っております。

 社会的養護の里親委託率の国際比較はよく紹介されますけれども、入所期間を国際的に比較した文献というのは探し当てることができませんでした。ただ、インターネットでイギリスの社会的養護の入所期間のデータを見つけ出しまして、今日はお配りすることができなかったのですけれども、口頭で申しますと、例えば措置解除になった10歳以上の子どもの入所期間のデータがあるわけなのですが、施設の場合で2年以上が8%、里親の場合で21%ということになっています。多分アメリカでも同様に、社会的養護に措置されている期間が短い。日本と比べますと、非常に短いということが英米の社会的養護の特徴としてよく言われております。要するに親族も含めました家庭復帰であるとか、または養子縁組の移行が積極的に進められている。今、林構成員も言われましたが、英米におきましてはパーマネンシーの保障を1つの理念として積極的に進めていることが言えるのかなと思います。

 日本の場合には、この家庭環境への移行ということがどのように取り組まれているのかということなのですけれども、これも今日準備できなかったわけなのですが、例えば厚労省が5年に1回調査しております児童養護施設入所児童等調査結果という資料が今、ネット上にもあるわけなのですけれども、例えば児童の今後の見通しについて自立まで、要するに大人になるまで児童養護施設での養育という方針が55%、里親家庭の場合には68.5%ということですから、日本の場合にはなかなか家庭復帰であるとか養子縁組を積極的に進めていくというパーマネンシー保障に向けた取り組みが不十分という事実があると思います。

 この日英の差がどこにあるのか。林構成員の言葉で言いますと、パーマネンシー保障の理念が根づいていないといったこともあるかもしれませんし、児童相談所の取り組み不足とか、またはマンパワーの問題が背景にあるのかもしれません。確かにそれも1つのファクターだと思いますけれども、もう一つ、法制度上の問題もあるのではないかと思います。平成23年の民法改正または児童福祉法改正において、このような社会的養護児童のパーマネンシー保障という観点から法改正が活用されたのかどうか、またはパーマネンシー保障という観点から議論されたのかどうかといった疑問が私はあります。

 そこで本検討会の検討する視点といたしまして、私はこれら社会的養護に長期間入所している児童のパーマネンシーをどのように保障していくのかというところが1つの出発点になるのではないかと思っています。先ほど久保構成員は、在宅でなかなか適切な養育環境に移行できない多くの子どもがいるということも1つの事実と主張しておりましたが、それも確かにそのとおりなのですが、もう一つの事実は長期入所、社会的養護に長期間入所している1万人以上の子どもたちの問題があるのかなと思っています。

 なお、誤解のないように言っておきますけれども、里親さんの中には18歳ないしは20歳措置解除後もずっと支援していただいている方も多く知っております。しかしながら、法的な安定性、法的なパーマネンシー保障という観点から、特別養子縁組に勝るものではないと思っています。多分、里親さんの中には、可能であれば特別養子縁組の申立を行いたくても、現行法制度の制限のため断念されていらっしゃる方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。

 次に、パーマネンシー保障という観点から、私ども福岡市での最近の取り組みを少しお話したいと思います。以前は家庭復帰の可能性がなく、面会交流もない子どもは長期の里親委託という方針を私どもも少し前まで持っておりましたが、この最近、年齢または親の同意の有無に関係なく、必要な子どもには養子縁組という方針を持つようになってきました。また、年長児童で特別養子縁組の成立になったケースも何例か経験してまいりました。しかしながら、ここで立ちはだかる法制度上の問題が年齢制限でありますし、申立権者の問題でもあり、親の同意が得られないときの要件の問題と思っています。

 もう時間がありませんので、児童相談所が申し立てる必要性について少し詳しく述べたいと思いますけれども、その理由は養親さんの心理的負担という問題もあるのですが、一番は子どもの安全確保です。実親から虐待を受けている場合であっても、虐待している親であろうが、特別養子縁組を必要とする子どもにその機会を提供していくとなりますと、虐待された子どもまたはその養親さんの個人情報が実親に知られないという必要があります。これは施設措置であるとか、里親委託では法制度上、守られていることでありますけれども、特別養子縁組にはその保障は一切ありません。子どもの福祉のための特別養子縁組という観点からは必要不可欠なことであり、それを実現するためにも専門委員会報告書にありますような2段階の手続に分け、児童相談所長に申立権を付与するという仕組みを行う中で、縁組成立後の子どもの安心安全を図るという仕組みをつくるべきではないかと思います。

 最後に、参考資料5の50のところに諸外国における養子縁組の状況、非常によくまとめていただいているわけなのですけれども、できましたらもう少し詳しく、そもそもドイツ、フランス、イギリス、アメリカにおきまして誰が申し立てているのであるとか、同意がない場合という、いわゆる同意が不要の具体的な場合であるとか、日本の場合にはなかなか行方不明であるとか、同意が得られない場合はたくさんあるわけなのですけれども、ほかの国ではどのような場合に不要としているのか。それから、先ほど言いました養親または子どもの個人情報がどのように守られているのか。そういった具体的な仕組みにつきまして、もう少しお知らせいただければと思っています。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、森口先生、お願いします。

○森口構成員 一橋大学経済研究所の森口です。

 私は経済学者で多分、養子研究をしている経済学者というのはほかにいないと思うのですけれども、私が知っているところと知らないところが大きく偏っているので、今日は主に皆さんの意見を聞く側に今日は回りたいと思います。ただ、私に何が言えるかということについてですが、経済学者というのは実証分析を非常に重視していて、特にミクロデータといって個人レベルのデータを毎年とってきてパネルデータにして、それを使って政策の評価とかインパクト、または因果関係を分析することに卓越していると思います。

 私自身は今まで日本とアメリカの養子制度の発展を、戦後70年位の統計をとって比較し、今は日本と韓国の養子制度の長期的な発展を分析しています。日本について特に感じるのは、養子に関するデータが本当に少ない、というよりほとんどないということです。厚生労働省の社会福祉関連の統計には里親と児童福祉施設については、集計データでありミクロデータけれど毎年詳細なデータが載っています。ところが、要保護児童の措置に養子縁組が含まれていないため、 つまり児童福祉法に養子縁組という言葉が一度も使われていないために、養子縁組については厚生労働省の統計は全くない。その結果、養子縁組の統計は法務省の司法統計だけになり、それでさえ1998年を最後に養子縁組の細別表が掲載されなくなったために、現在では特別養子縁組の成立件数さえわからないという状況です。そういう意味では、私の仕事は主に統計データから長期的な趨勢を把握して、現在の制度のどこに問題があるかを発見するという仕事をしているのですけれども、その問題も発見できないほど養子縁組についてのデータがありません。昨年度に終了した厚労省科研のプロジェクトでは、こちらの林さんの研究グループが現状把握のために調査をしてくださったわけで、このような試みは非常に大事だと思いますが、本来もっと体系的に統計を公表する仕組みが必要だと思います。例えば、戸籍統計には養子縁組の届出数が毎年掲載されていますが、総数だけでそれ以外のデータは一切ないんです。過去に特別調査が2回あり、そのときに普通養子縁組の詳細が初めてわかり、実は成人養子が大多数だとか、連れ子養子もかなり多いのだとかわかるのですが、それでさえ1989年の調査だけでそれ以降は何もわからない。戸籍統計でぜひ、もう少し詳細な養子統計を発表していただきたいと思います。問題は、このようにデータがないところでどうやって政策提言をするかです。児童の最善の利益という理想があってそれに向かって政策を立てることはできます。もちろん政策デザインは大事ですが、そのデザインした法制度を実際に履行する、そのインプルメンテーションにはさらにいろいろな難しさがあって、理想通りにはいかないときの方が多い。だからこそデータに基づいた政策評価をしていくことが、非常に大事です。今回、児童福祉法が改正されたわけですが、これを機会に改正の前と後のデータをきちんと取れば、それを用いて新しい法律がどのような効果を持つかという分析ができます。

 例をあげてもいいでしょうか。司法関与の例なのですけれども、アメリカでは一時、裁判所が積極的に介入して虐待やネグレクトの事件については親権剥奪というのでしょうか、親権を停止していた時期がありました。でも、親権を剥奪して子どもを実親と引き離して、フォスターケア(里親)に措置することの結果、つまりアウトカムはどうなのかというのは、ずっと謎だったわけです。社会福祉学ではアウトカム・スタディーというアプローチがありませんし、いいデータもなかったのです。ところが10年ほど前に、MITの経済学者でジョン・ドイルという人が初めてフォスターケアのアウトカム・スタディーの論文を書き注目を集めました。フォスターケアに措置された子ども達の5年後、10年後のアウトカム、犯罪歴や学歴、就職、所得などを見るのですが、もちろん普通家庭に育った子どもと比べると、もともと困難な養育環境にいる子どもたちなのでアウトカムは悪いわけです。だから普通の子どもと比べることには意味がない。ジョン・ドイルはイリノイ州のミクロデータを使って、詳細は省きますが、非常にうまく考えて、親権停止された子とされそうでされなかった子を比較したわけです。ちなみに結果なのですが、実は親と引き離したほうがよくなかった、特にティーンエイジ男の子については里親家庭にいった子どもの方がアウトカムが低かった、という結果が出て、非常に話題になりました。

 その後も、このような研究は多くの個票データができない、しかも個々人の追跡調査をしないといけないわけですから、あまりないのですが、最近スウェーデンのデータを用いた研究が出てきています。日本でも、このようにエビデンスに基づいて政策をデザインし、評価していくということをやっていく必要があります。だからまず、養子縁組については長期的な統計データが、集計データさえ存在しないのが現状だということを知っていただきたい。そして、できればこれから個票データを収集すること、もちろん匿名化したものを研究者は用いるわけですが、個人を追っていくことによって、例えば施設養護と里親と養子縁組のどの選択がどのような子どもにとって最適なのかを、データで実証的に確かめることができるようになります。例えば、児童虐待もいろいろなパターンがあり、里親による虐待もあれば、施設の中の虐待もあれば、実親による虐待もあるのですけれども、その頻度はどれくらいなのかというと、アメリカではある程度データがあるが、日本ではない。そういう意味でデータベースを整えていく。そして、実務家の方もそうやって「見える化」をして、お互いのベストケースやうまくいかなかったケースをシェアするとか、そのようなことは非常に大事ではないかと思いました。これらの点を今日はまずお話しして、具体的な政策については今後発言させていただければと思います。

○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 この検討会のためのデータということで、それ以前の問題としてやるべきことがあるということですね。ありがとうございます。

 では横田先生、お願いします。

○横田構成員 同志社大学司法研究科の横田といいます。専門は行政法です。

 これまで虐待を初めとする子どもの問題全般について、行政法学というよりも公法学の観点から子どもと親と国家の関係について研究をしてきました。この検討会のテーマである特別養子縁組、司法関与につきましても、公法学の観点から論文を書いてきました。

 私が特に強調したいことは、特に司法関与ですけれども、後始末のことを考える必要があるだろう。後始末と言いましたけれども、後始末まで考えることで全体が見えてくる。この後始末というのは何かというと、行政活動に対する司法関与ですから、その行政活動に対する行政訴訟のことを考える必要がある。司法関与ということで裁判所が判断する。それをまた後で裁判所が訴訟手続で判断するということを踏まえた上で、この司法関与のあり方を考える必要があるだろう。そういうことを言ってきました。

 例えば28条審判についても、従来から立法論あるいは解釈論でその審判の対象はどうだという議論がありますけれども、28条審判の対象から外すということは、それは同時に行政訴訟の審査対象になるということを念頭に置いた議論を展開する必要があるだろうということを言ってきました。あるいはまた別の例で言うと、2007年の臨検・捜索です。これも司法関与の手続が入りましたけれども、このとき同時に虐待防止法10条の6で差止訴訟の排除というものが入りましたが、臨検・捜索は私の理解では司法関与の手続、これは適正手続の保障で、それに対して差止訴訟というのは裁判を受ける権利の問題ですから、話がずれていて、差止訴訟の排除はまずいと個人的には思っています。こういうことが、この検討会で起きてはいけないと思っています。

 臨検・捜索のほうは実際に使われていないと聞きますけれども、もともとゼロだったものを新たにつけ加えたもので、それが動かなくてもプラスを期待したのだけれども、プラスにならなかったということですが、一時保護の場合は今、動いていますから、それはマイナスにならないように気をつけないといけないということを考えています。つまり訴訟手続のことを考えないといけないということは、その前提として司法関与は適正手続の保障という憲法上の要請だと思いますけれども、それと同時に憲法32条の裁判を受ける権利との関係を整理する必要があるだろう。そう考えると、さらに何でその憲法上の権利の保障が大事なのかということになってくると、それは個人にとっての利益の話を抜きに、実体法上の利益を抜きにして考えられないだろう。つまりは一時保護の話で言うと司法関与で一体どのような子どもの利益あるいは保護者の利益が問題となるのか、どの利益のために司法関与を求めるかということを詰めた上で議論をしないと、話がずれてしまうということを考えています。

 もう一つ、児童相談所の指導に従えという、それへの裁判所の関与という話もありましたが、これも現状で私は既に在宅指導に対する行政訴訟は可能だというか、保障されないといけないという立場ですけれども、先ほど御提案がありましたが、これでさらに裁判所がかかわって指導に従わなかったら一時保護ということをきちんとやるということになると、ますますこれはその指導に対する行政訴訟が当然に保障されなければいけない。しかし、そのときに訴訟で何を審査するかということを考えたときに、そのことを考えてもとの制度、今ここで議論しようとしている制度のことを考えると、つまり裁判所は何を審査するのか。今、裁判所の手元に出された児童相談所のこの指導に従えというようにかかわるのか、それともこれから相談所が何か指導するかもしれないけれども、これに対して裁判所が従えと言うのか、それによって裁判所の立ち位置が変わってくる。それによって訴訟で何を裁判所が審査するのか変わってくる。そのことも踏まえて議論する必要があるだろうと考えています。

 それで特別養子縁組のほうについては、これはまだ私は特別に定見があるわけではありませんが、2段階に分けるという御提案がありましたけれども、私はそれはちょっと慎重に考えたいと思う理由は、親から子どもを引き離すという手続と、その後、子どもに新しい環境をという制度、そういうシステムにすると理解しましたけれども、これは先ほどの28条審判の話も踏まえて言うと、審査の対象というか、何を審査するかということが変わってくるだろう。審査の対象が変わったときに、そのずれを意識して議論する必要があるだろう。それを外して議論していいのかなということは慎重に感じますが、これはまだ定見がありませんので、いろいろ皆さんの意見を聞いて考えたいと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、山田先生、お願いいたします。

○山田構成員 山田です。

 まず司法関与に関する課題は3点あるのですけれども、2つに分けてお話をさせてください。

 私はNPOを運営している医師で、法律の専門家ではないので、構成員の先生方の議論と少しちぐはぐなところがあるかもしれませんけれども、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会のメンバーだったということも踏まえてお話をします。

 改正児童福祉法に、児童の権利に関する条約の精神にのっとりということが第1条に明記されました。であるならば、児童の権利条約の第9条第1項に、「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。」という規定に沿って、一時保護に司法審査を加えるというのは当然のことなのではないかと思います。

 ただ、一方で何人かの構成員の先生方がおっしゃっていたとおり、家庭裁判所が関与することで、お隣が判事さんなのでとても申し上げにくいのですけれども、その準備に児童相談所側の手間がかかることとか、家庭裁判所自体、まだ児童虐待事案に慣れていないということで、判断を誤って迅速な保護が見送られ、現状よりも危険な状態になってしまうという懸念が相当訴えられているところではあります。けれども、今回の児童福祉法の改正で常勤とは限りませんけれども、久保弁護士さんが御発言のとおり、児童相談所に弁護士が配置されることになりました。そうすれば、例えば厚生労働省が一時保護決定に向けてのアセスメントシートというものをきちんと発行していて、あれにのっとってやっていけば、また、その裁判所の判事さんが必要とする情報を児童相談所の弁護士さんが勘所を押さえた文書、書面をつくるということが適正に行われていくのであれば、そうそう家庭裁判所の判断が誤るということにはならないのではないかと思っています。

 現状、児童相談所であのアセスメントシートが本当にきちんと適正に採用されているのかということについても若干疑問があるので、それは児童相談所が改めなければいけないところだと思います。その実例として相模原市児童相談所で子どもが保護を求めたのに保護をせず、保護の要件の一番上に書いてあるのが子どもが保護を求めている場合となっているにもかかわらず、それに従わず、結局、保護者の意見に従ったために子どもが自殺未遂を起こし、その後、蘇生後脳症となり、1年数カ月後に亡くなるという事件が起こったわけです。

 もう一つですが、治療命令と特別養子縁組についてはあわせて、2つ目の論点としてお話をさせていただきます。

 治療命令について、法的強制力を持つものが必要だということにつきましては久保構成員が御発言されましたので、養子縁組との関連でお話しますと、私もこれは東北大学の水野先生や、今日ここに御出席の久保野先生からお聞きした話等によるので正しい理解かどうかわかりませんが、欧米でも昔から親子関係に家庭裁判所、ファミリーコート(Family Court)とか、少年裁判所、ジュバナイルコート(Juvenile Court)がぐいぐい食い込んでいたわけではないようで、私の資料、ポンチ図、これは新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会のほうでも出した資料になりますけれども、今、家庭裁判所は児童相談所がとろうとする措置が保護者の人権侵害にならないかという視点で采配を振るってくださっているわけですが、なかなか親子関係そのものには余り関与してくださらないという状況があります。では、ほかの国はどうやって進んできたのかというと、例えば上鹿渡構成員、林構成員、藤林構成員がおっしゃったとおり、パーマネンシーの考え方というのが育ってきた歴史があると聞いています。

 藤林構成員がおっしゃったとおり、日本の場合、家庭外措置がなされた後、社会的養護が非常に長期間にわたって、場合によっては乳児院からずっと18歳になるまで非家庭的な養育を受け続けるということも相当数あるわけです。海外の場合、特に欧米では施設より里親養育というように方針が変わったわけですが、一方で、里親さんから里親さんへと子どもがたらい回しされるという実態が生じました。子どもが問題行動を起こしたり、里親不全が起こると別の里親さんへという形で、里親さんのところを転々とする子どもが生じて、その子たちの問題が非常に大きく取り沙汰されるようになり、そこでパーマネンシー、できるだけ安定した家庭を長期間にわたって提供していくことが子どもの健全な成長発達に重要であるという視点に立って、であるならば、現在の実親子の関係を断って、新たな親子の関係をつくっていくに当たって、その判断ができるのは、当然どの国でも家庭裁判所のお仕事になるわけで、そうしたときに、家庭裁判所が「実親は無理です。やはり新しい親御さんが必要です」と判断するためには、実親さんに対して「このプログラムを受けてごらんなさい」とか、受けた場合に親御さんの養育が変わらないということであれば、どこかで見切って新たな家庭、親子をつくっていくという作業をせざるを得ず、よって、家庭裁判所が親子のソーシャルワークにかかわっていくという形になってきたわけで、そういう歴史について、報告書を読む限り、5年前には、この部分の議論はなされていなかったので、ではないかと思うのです。そうすると、ここ5年でそういうパーマネンシーの考え方が日本でも広がってきた以上は、「5年前に議論した際、あそこまでで踏みとどまったから、もう同じ議論はなし」というのではなくて、より一歩進めていっていただきたいということです。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、最後になって時間も押して申しわけございませんが、吉田先生、お願いします。

○吉田(彩)構成員 東京家裁の吉田でございます。

 裁判官として家庭裁判所で勤務した年数は合計で7~8年となります。今日話題になっています児童虐待にかかわるケースとしては、児童福祉法28条の事件ですとか、親権喪失、親権停止の事件というものを扱っております。私の裁判官としての経験の中でも児童虐待がかかわる事件というのは、事案そのものが非常に重たいということもありますが、非常に迅速性を要求されるということ。それから、家庭内での虐待であるとか、不適切な看護であるとか、そういう閉じた世界の中でのケースが多いので、どうしても司法機関として判断する材料が乏しいことが多いという意味で、非常に難しい事件だと思っています。非常に気を使いますし、非常に判断に悩むケースも多々あります。

 今回の検討会は、立法を見据えての検討会ということですので、司法機関としての裁判所の構成員として、積極的にこういう制度であるべきだということを発言する立場にはないのですけれども、実際に制度がつくられた場合にはその運用の一翼を担う重要な役割を果たすということになりますので、その意味でも強い関心を持っております。

 特に今日はいろいろな御意見をお伺いすることができて非常に参考になりましたが、裁判所が司法機関であるということ自体は変えられないものだと思っております。裁判所の司法関与に関して迅速な手続ということが要求されますので、それに対応していかなければいけない。親だけの権利ではなく子どもの権利の侵害にも当たるんだというところを意識すべきだという重要な問題提起もあったかと思うのですが、ある意味、権利侵害に対してどう裁判所が判断するのかという構造を取らざるを得ませんので、そうすると権利を侵害されるほうの手続の保障はどうなるのかとか、その後の不服の申し立てとかの手続はどうなるのかということに関して、関心を持たざるを得ません。

 その円滑な制度の運用であるとか、迅速な審理の進行などを考えると、特に一時保護については、実際に28条の事件などを担当していて、一時保護の場面がどういう場面だったのかということを間接的に証拠資料の中から見ることがあるのですが、非常に緊迫した場面で、非常に難しい判断で一時保護をされているケースも多いと思います。そういった場面で保護者であるとか子どもの権利保護という視点から、どういった手続保障が実際できるのだろうかということに関しては、非常に難しいのではないかという意識を持っております。それから、そういう状況の下で児童相談所の側が申立人になることだと思いますけれども、的確な資料を提出することができるのだろうかという問題意識を持っております。

 いずれにせよ、児童相談所の態勢といったところも踏まえて、この制度が円滑に運用されるようなものである必要があると思っております。

 それから、先ほど横田先生、杉山先生からも御指摘があったかと思うのですけれども、裁判所の司法関与というときに裁判所に対して何をやらせようとしているのか。何について判断を求めるのかということを明確にしておく必要があるのかなと思っております。一時保護についても、違法かどうかというところがその司法機関としての判断の対象に通常なるかと思いますが、一時保護が相当かどうかといったような問題に対して司法機関である裁判所が適切に判断できるのかどうか、判断する機関としてふさわしいのかどうかということが問題になろうかと思います。

 裁判所命令の話もそうなのですが、今、山田先生からは23年の法改正のときとは違った問題状況が出ているんだということの御指摘がありました。そのあたりについても十分お話をお聞きしたいなと思っているところなのですが、やはりこの点についても司法と行政の役割分担という観点からして、家庭がどうあるべきかといったようなものについて裁判所が適切に判断できるのかどうか、ふさわしいのかどうかというところを御検討いただかなければいけないのではないかと思っております。

 私からは以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 予定された時間はほとんど残っておりませんけれども、最後に私も一言だけお話させていただければと思います。

 今回の検討ですけれども、先ほど大臣がおっしゃいましたように秋までに取りまとめということで、時間も大変限られております。その一方で司法関与の問題であり、特別養子の問題であり、大変大きな課題だというので、この難しい問題を短期間でこなしていかなければいけないというので、先生方には大変御苦労をおかけするかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

 それに当たっては先ほど来、何人かの先生方からお話がありましたように、やはりエビデンスをきちんとここで出して、そして、それに基づいた議論をしていきたい。特にこれまでの報告書で議論されていることがありますので、それを踏まえた議論をし、その後、状況がどう変わったのか。その運用も含めて大きな状況の変化があったものについては、それは取り上げる。同じことの蒸し返しにならないように時間の配分をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 司法関与に関しましては先ほど来、出ておりますような人権の問題、子どもの人権であり、親の人権でありということで、そうした配慮が欠かせない。特に今回の児童福祉法改正では子どもの権利という言葉が入り、児童の権利条約の趣旨にのっとりという文言が入ったわけですから、これに基づいた次の改正を目指す、また、運用を目指すということが求められようかと思います。

 特別養子に関しましては、これは私の理解では言葉が適切かどうかわかりませんが、劇薬だと思うのです。1つ、子どもの生活環境を法的に安定させるという点では大変すばらしい制度。でも、もう一方では親子の関係を断ち切るという、これも重大な問題なのです。こうした大きな影響を与える部分をいかに少なくして制度設計して運用していくのかという大変難しい作業がここで求められる。丁寧な作業が必要かと思います。長い間、子どもに、または親に大きな傷を残すかもしれない。こうした問題を我々は議論しようとしているのだということを私自身、よく自覚しながらこの検討会を進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最後に先生方からもう一言ずつと思ったのですけれども、もう時間もありません。恐らくまだ物足りないと思われるかと思いますが、また次回以降の検討で御意見をいただければと思います。

 最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。

○木村補佐 次回日程につきましては、また改めて御連絡を申し上げます。今後の開催の頻度につきましては、議論の状況に応じて月に1~2回程度と考えております。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 これは私からの提案でございますけれども、今回の検討テーマにつきましては、関係団体等にもさまざまな御意見がおありかと思いますので、関係団体からのヒアリングという機会も設けたいと思います。このため、各構成員の先生方におかれましてはヒアリング先であるとか、ヒアリング事項について何かお考えがございましたら、あらかじめ事務局に御連絡いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○久保構成員 1点だけ、先ほどの先生方のお話でも司法関与と特別養子縁組の関係でかなり差があるように思うのですけれども、このままこの検討会の中で一緒にされていくのか、関連性がどこまであるのか疑問なのですが、いかがでしょうか。

○吉田(恒)座長 そのあたり、事務局のほういかがでしょう。

○竹内虐待防止対策推進室長 今日先生方からさまざま御意見をいただきましたので、まずその御意見を整理させていただいた上で、今後の進め方についても次回また御相談をさせていただければと思います。

○吉田雇用均等・児童家庭局長 事務局を務めております雇用均等・児童家庭局長でございます。

 今、久保構成員からもお話がございましたし、吉田座長からも事務局の整理を踏まえてとの言葉をいただきました。

 非常に限られた時間で、これだけの大きな問題を、かつ、これまでの蓄積があるとはいえ、そこから何が変わったかというエビデンスもという座長のお話でございますので、我々事務方として精いっぱい務めさせていただきたいと思いますが、今、久保構成員から御提案のありましたように少し整理が必要ではないかという点については、いわば2つの課題になっておりますものについてどういう形であるのか、少し整理をしながらやるというのが我々事務方としても必要かなと今日の御議論を聞いていても思いましたので、具体的なあり方についてはまた座長の御指示をいただきながらと思います。

 また、これは事務局として出過ぎなのかもしれませんが、今日も会において御欠席の委員あるいは御出席いただいた委員から、委員提出資料ということで幾つかのペーパーをいただいております。限られた時間、今、座長からお話がありましたようにお時間を調整させていただいて合うときに、例えばいろいろなゲストの方のお話もいただくことなども考えますと、どんどん日程が厳しくなってまいりますので、やり方につきましては座長と御相談させていただいて、事務局として汗をかくということでございますが、こういう集まっての会議以外にいろいろと意見をいただいたり整理をしたりするというような手法もどういうやり方があるか、今すぐに頭にあるわけではございませんが、限られた時間の中でより議論を進めていただけるような工夫をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 ということで、今日いただいた御意見を参考に論点整理して、今後の進め方を御検討いただければと思います。また皆さん方の御意見等メールでいただいたりということもあるかもしれませんので、そうした場合にも御協力いただければと思います。

 私の不手際で若干時間をオーバーいたしましたけれども、本日の検討会はこれにて閉会といたします。御出席の先生方、どうもありがとうございました。

 


(了)

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