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2016年7月26日 第1回「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成28年7月26日(火)16:00~18:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

秋池氏、安藤氏、大内氏、大田氏、古賀氏、小峰座長、冨山氏、中西氏、守島氏、森田氏、山川氏、横田氏

○議題

(1)働き方に関する政策決定プロセスのあり方について
(2)その他

○議事

○小林労働政策担当参事官
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」を開会いたします。

 皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。

 懇談会の開会に際しまして、塩崎厚生労働大臣より御挨拶を申し上げます。


○塩崎厚生労働大臣
 皆さん、こんにちは。それぞれお忙しい皆様方に、こうして第1回目の「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」ということでお集まりをいただきました。そうそうたるメンバーにお集まりをいただいて、厚生労働省としても、このような政策決定プロセスについて議論しようということは恐らく初めてではないかなと思うわけでございますが、そのようなことで第1回目の会合に御出席をいただいて大変ありがとうございます。

 安倍政権は、去年の9月に「一億総活躍社会」づくりというのを総理が提唱した後に、働き方改革こそ今後3年間の安倍内閣の最大のチャレンジだということを安倍総理本人から申し上げてきているわけでございます。先日、参議院選挙がございましたけれども、その直後の会見でも総理は、「一億総活躍社会を切り開く「鍵」は構造改革の断行です、そして働き方改革を進めていきます」と、まさに構造改革としての働き方改革をやっていくことが、1億人の1億通りの生き方、つまり働き方もできるようになるのではないか、こういうことを強い意欲として示しているわけでございます。

 少子・高齢化が急速に進み、AIなどの技術革新がもたらすことによって産業構造もどんどん変わるわけでありますし、企業も変わってくるということであり、また、就業構造そのものも恐らく変わってくるだろうと思っております。そういう中にあって、どちらかというと製造業中心でまいりました労働法制に大幅な見直しを迫られるのではないかということは容易に想像ができるわけであります。

 実際に今、就労形態の多様化が進んで、働き方のニーズも多様化をしているわけであります。そうした中で、一人一人が能力を発揮して、それこそ1億通りの働き方、暮らし方ができる社会を実現するためには、働き方に関する政策を決定する場合においても、そういった多様な意見が反映される、そしてまた声を吸収できる、そういう上で政策にそれらが反映されることがとても大事ではないかと思うわけでございます。

 働き方に関する政策の推進に当たりましては、これまで公労使の三者構成ということで言われてまいりました仕組みの中で、労働政策審議会が極めて重要な役割を果たしてまいったところでございます。しかし、雇用を取り巻く環境が変化をし、働き方へのニーズが多様化する中においては、これまで以上にさまざまな分野や立場の声をしっかりと幅広く吸収し、機動的な政策決定も行えるような体制をきちっと組んでいくことが大事になるのではないかと思うわけでございます。

 きょうは大田先生がおいででありますけれども、昨年度の政府の規制改革会議からは、多様な働き手のニーズに応える環境の整備として、従来の主要関係者のみならずさまざまな立場の声を吸収して、それらを政策に反映させていくための検討を行うべしという注文をいただいているところでございます。

 また、与党・自民党の「働き方の多様化を支援する勉強会」というのがありまして、今年2月に、何と十数人の国会議員本人が私の大臣室にまでおいでいただいて、労働政策審議会に関する提言を頂戴いたしました。委員の構成や、運営のあり方など、幅広く課題を御指摘いただいて、自民党からこういう提案が出てくるのも多分初めてのことではなかったかと思うところでありまして、働き方というものが、今、日本の直面する大きなテーマであることを表しているのだろうと思います。

 厚生労働省では、有識者の皆様方に今年の1月から「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」という懇談会を開催していただいております。20年先の医療・保健のビジョンというものをつくっていこうではないか、その上で、今日決めること、これから直ちに決めていくことも20年先のビジョンを考えた上でやろうということで、去年「保健医療2035」というのをやりまして、世界的にも割合読んでいただいているものになったわけであります。今、この「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」という懇談会の最終的な取りまとめが早晩行われると思っておりまして、私も、20年先の働き方を見据えながら、今をどう考えるかということを行っていくためにこの提言を待ち望んでいるところでございます。

 多様な働き方のニーズなどに対応した政策決定プロセスは、当然、働き方が多様化してくれば必要になってくるわけでございますので、こちらの有識者会議で議論いただいた2035の中でも出てきている働き方に呼応できるような政策決定のあり方を当検討会で御議論をいただければありがたいなと思っているわけでございます。

 開催要綱をお手元にお配りさせていただいております。そこにしっかり書いてございますけれども、私の言葉で申し上げれば、今、申し上げたようなことでございますので、これまでのことはこれまでのこととして、ぜひ新しい時代を見据えて、新しい時代にふさわしい政策決定のプロセスのあり方について大いに御議論いただいて参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げて、私からの御挨拶にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


○小林労働政策担当参事官
 カメラの撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)


○小林労働政策担当参事官 
 なお、塩崎大臣は公務により途中退席させていただきますので、あらかじめ御了承ください。

 有識者会議のメンバーの御紹介は後ほどさせていただきます。

 なお、株式会社経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦様がおくれて御出席いただく予定となっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 座長につきましては、メンバーのうちから厚生労働大臣が指名することとしてございまして、法政大学大学院政策創造研究科教授、小峰隆夫様にお引き受けいただくようあらかじめお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。

 また、事務局からの出席者につきましては、配付させていただいた座席表に記載のとおりでございますので、個々の紹介は省かせていただきます。

 議事に入らせていただく前に資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料は、資料1として開催要綱、資料2として厚生労働省提出資料。また、参考資料を1から3として労働政策審議会委員名簿等をつけてございます。

 資料の不足がございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。

 それでは、議事に入らせていただきます。これより先は小峰座長に議事進行をお願い申し上げます。


○小峰座長
 法政大学の小峰と申します。皆さんの御協力を得まして議事を進行していきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入らせていただきます。

 今の大臣の御挨拶にもありましたように、働き方をめぐる環境が変わっていく中で、働き方に関係する政策を決定するプロセスも当然見直していかなければいけない。それを見直すこういう議論の場というのが初めて設けられたということですので、責任は大変重大だなと感じております。

 きょうは、塩崎大臣が途中まで参加いただけるということです。せっかくの機会ですので、メンバーを御紹介する際に一言ずつ御発言いただきまして、その後に事務局から資料の説明を受けて、意見交換ということで議論を進めていきたいと思います。メンバーの皆様方には、実情を踏まえて、政策決定プロセスのあり方について感じておられることをぜひ御発言いただきたいと思います。

 それでは、事務局から御紹介をお願いいたします。

○小林労働政策担当参事官
 それでは、事務局からお1人ずつ御紹介をさせていただきますので、その際、お1人3分以内で御発言をいただければと思います。

 それでは、五十音順に御紹介させていただきますが、おくれての御到着となる冨山様は最後に御紹介をさせていただきます。

 まず、ボストンコンサルティンググループ、シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの秋池玲子様です。


○秋池氏
 秋池でございます。よろしくお願いいたします。

 座って失礼いたします。

 私は、多岐に渡るテーマで、企業経営を支援する仕事をしております。そういった中で感じますのは、特に日本人なのかもしれないのですが、やりがいを持って働くというのは人にとって非常に大切なことで、企業の成長のためには経営者がビジョンとリーダーシップで組織を変革していくことも大事なのですが、働く人が充実した働き方でそれを受けとめて能力を最大限発揮していくのは、企業にとっては改革が実現し、個々人にとっては幸せにもつながることなのだと感じております。

 先ほど大臣のお話にもありましたように、さまざまな働き方、これは高齢者や女性が活躍するということもありますし、ミレニアム世代の台頭、AIやデジタライゼーションといったことで、多様な、充実した働き方を実現する職場の環境、働く環境が整ってきているということによっても、過去とは違う時代になっているのだということを実感しております。こういったことをフェアに議論できるような政策の決定のプロセスであるべきだと考えております。

 また、働くことに関する論点の立て方そのものが鍵になっていくと思っておりますので、その論点の設定、アジェンダセッティングが適切になされるということがこの議論の非常に重要なところだと考えております。

 もう一つの視点としては、働き方についてはマクロに語るのではなくて、地域によって、あるいは産業によって状況が異なるということがございます。マクロから見た全国一律の議論ではなく、カテゴリーごとに議論されるということも今後の問題解決には非常に重要だと思っております。

以上のように、事実に基づいた論点の設定とフェアな議論が行われる政策決定プロセスを考えてまいりたいと思っております。


○小林労働政策担当参事官
 次に、日本大学総合科学研究所准教授、安藤至大様です。


○安藤氏
 安藤です。よろしくお願いします。

 私は、労働政策の決定プロセスについて、多様化、人口減少、技術進歩、さまざまな論点を取り入れることはとても大事だと思っております。それに加えて、基本的なラインとして、労働政策を考える上で、個人的な希望、または労働経済学の視点からこういう考え方を持っていていただきたいなという希望を申し上げたいと思います。

 3点ございます。

 まず1点目は、働き方のルールについてです。普通の企業で働く普通の労働者にとって望ましいものが基本だと思っています。新聞や雑誌、インターネット上で発言が目立つのは、大企業や有名企業で働く人、または若くして起業した人、こういう方々が自分たちの立場からとても元気のいい発言をされるのですが、実態を見ると、日本は99.7%が中小企業であり、そこで7割の人間が働いています。こういう普通の人の働き方をベースにした議論がきちんとできることがまずは基本と考えられます。

 これに関連して2点目ですが、私が労働政策について欠けていると思うのは、守れるルールをつくってきちっと守らせるという考え方だと思っています。雇用・労働分野においては、これまで大企業では守られているルールであっても、中小企業の現場ではあまり守られていない。そして、これはとてもよくないことです。労働関係で何か摘発されたとしても、運が悪かったとか、今度はばれないようにやろうというのでは意味がないのです。駐車違反とかスピード違反みたいなもので、何で他の人たちもやっているのに俺だけ取り締まられるのだという不満があったりするとやはりよろしくないということで、中小企業でも守れるルールをつくってきちっと守らせる。これが労働政策を考える上で大事かなと考えております。

 最後の1点は、世代や地域の違いに関してです。私は今、ちょうど40歳なのですが、就職氷河期の時代でした。同級生とかでも就職が決まる人は決まる、決まらない人は全然決まらないというのを目にしてきて、その後、最初にうまく就職できなかった人がその後ずっと非正規で苦労している、こういうことも感じております。例えば、今、非正規の割合がおよそ4割といいましても、壮年期の方と若年層や高齢者で比率が全然違います。こういうことを考えると、雇用形態や産業による働き方の違いについてはよく議論されるのですが、例えば世代であったり、地域という視点も忘れないで、多様な議論ができる人に労働政策決定プロセスに入っていただきたいと考えております。

 以上です。ありがとうございました。


○小林労働政策担当参事官
 次に、神戸大学大学院法学研究科教授、大内伸哉様です。


○大内氏
 大内です。よろしくお願いいたします。

 私は神戸大学で労働法を研究し、また教えております。先ほど大臣から言及があった「働き方の未来2035」にも出席させていただいています。あまり真面目な参加者ではないのですけれども、やらせていただいております。

 今回、こういう場に参加することになりましたけれども、私、実は2008年に『日本労働研究雑誌』で、一橋大学の労働経済学者でいらっしゃる神林龍さんと2人で『労働政策の決定過程はどうあるべきか—審議会方式の正統性についての一試論—』という論文を発表しております。なぜ2008年にこの論文を書いたか。今回のこの会議とまさにぴったりのテーマなのですけれども、当時、労働契約法が制定されました直後だったのですが、この法律は人によっていろいろ評価があるかもしれませんが、私、あるいは神林さんも、あまりうまくいかなかった、はっきり言ってまずかったということで、それは労政審がうまく機能しなかったのではないかという問題意識を持って検討してみるということがあったわけです。

 労政審というのは、御存じのように、実質的には労働法の立法をやっているわけです。法律をつくるのは国会議員と言いましても、労働立法に関しては実質的に労政審が圧倒的な力を持っておりまして、本当に重要な役割を果たしてきたと思うのですけれども、何でうまく機能しなかったのか。労契法というのは極めて重要な法律で期待も高かったわけですが、そこでいろいろ考えるところがあったわけです。

 もし御関心があれば、後日論文をお配りしますけれども、その論文でも三者構成というのは一体どういうことなのかというのが最後までよくわからなかったというところがあります。なぜ三者構成かということについては、一応、次のような説明があるのです。一つは、公益、あるいは厚労省事務局側が原案を出し、論点を提示して、あとは労使で交渉してもらう。頂上レベルにおける労使交渉の場が設定されていて、それを通して労働立法がなされていくのだという捉え方が労政審には1つあると思います。これは労使自治によるものともいえます。労働法というのは非常に専門性が高いもので、政治家が直接立法をするよりは労使の専門家で決めていったほうがいいだろうということです。したがって、そういう立場では、労働者委員、使用者委員というのはまさに全国の労働者、使用者をそれぞれ代表して交渉していく。そして、公益委員というのはその調整役、あるいは行事というか裁定役みたいな役割になるだと思います。

 もう一つ、労政審には、事務局あるいは公益委員、学識経験者等を通して原案をつくって、あとは労使の意見を聞く、いわば公聴会的な形のものもある。そういう立法の仕方です。相当具体的な案が既にあって、それについて労働者委員、使用者委員の皆さんに、それぞれ労働者、使用者を代表していかがですかというように意見を聞く。公聴会型です。

 この2つはそんなに明確に区別できるものではありませんが、理論的にはかなり違うところがあるわけです。

 実は労契法は、当初は公聴会型でやろうとしたのだろうと思います。なぜかというと、2005年に学識者が集まって労働契約法に関する報告書が出ておりまして、これは非常にレベルの高いものでありました。外から見ていた私はこの線でいくのかなと思っていると、そうならずに労使交渉型に変わってしまい、結局うまくいかなかったということがあったわけです。この経験があって、恐らくこの問題というのを今でも引きずっているのかなという気がしています。詳しくはこれ以上お話ししませんけれども、労政審の今のような経験を考えると、交渉でやるべきことというのはどういうことなのだろう、あるいは公聴会型でやるべきものはどういうものなのだろうか、ここをうまく区別しなければうまくいかないことがあるのだろうということであります。

 もう少し言いますと、労政審というのは、労働立法という極めて重要な立法の策定にかかわることであることからして、まずは公益委員あるいは事務局を通して、厚労省を通して、適切な論点提示をする。それは恐らく、先ほど大臣もおっしゃったように、今後、経済・社会が大きく変わっていくのであり、先ほど述べた「働き方の未来2035」でもやっていますように、AIITのものすごい発達の中で、雇用をとりまく状況が変わっていく中で、立法に関する適切な論点提示をし、そのうえで、労使双方が交渉したり意見を述べたりしながら立法していくというあり方が望ましいのだと思います。個別の利害を越えて労働者全体、使用者全体の現在、将来を踏まえた交渉、あるいは意見の開示をやってもらうということができたら労政審もよくなるのではないかと思っております。

 具体的にはほかにも思うところはありますけれども、時間の関係上、とりあえずこれぐらいでとどめておきたいと思います。

 以上でございます。


○小林労働政策担当参事官
 次に、政策研究大学院大学教授、大田弘子様です。


○大田氏
 大田でございます。よろしくお願いします。

 現在の労働政策の決定システム、決定プロセスの問題点として大きく3つあると思っております。

 1つは、政策決定までに時間がかかり過ぎるということです。規制改革関連で申し上げますと、規制改革会議で1年かけてヒアリングを重ねて答申をまとめる。それが厚労省につくられた研究会でまた一から1年ぐらいかけて議論されて、その後に三者構成の労政審にかけられて答申がまとめられて法案がつくられるということで、2~3年かかったりいたします。現実の働き方というのは非常に多様になったのに、制度の転換がそれに追いつかずにひずみが大きくなっているという現状があると思っております。

 それから、2つ目の問題点ですが、働き方が多様化する中で、労使の代表というのは一体誰をどう代表するのかという問題です。お隣におられる古賀さんの連合も、非正規の声を酌み取る努力は随分しておられるわけですが、本当に労働側の代表が非正規を初めとする非組合員まで含めて労働側を代表する立場に立ち得るのかという問題です。結果として、雇用をめぐる多くのニーズが政策形成の場に反映されておりません。非正規だけではなくて子育て中の女性、就活中の学生、高齢者、それぞれ働き方にニーズを持っています。今は雇用問題というのは労使の問題というよりも国民的な問題だと言えますが、声なき声を吸収する場がないというのが現状だと思っております。

 3番目は、日本の雇用システムがどのような方向に向かうべきかという大きな方向性を議論する場がありません。労使の利害調整の枠を越えて、経済全体の中で労働政策を考える場がない。あわせて、税制・社会保障制度、あるいは産業政策といった他の政策との整合性の中で雇用を議論する場がありません。三者構成というのは大変重要だと考えておりますし、労政審の役割を否定するつもりは毛頭ありません。しかし、雇用をめぐる現在の問題というのはあまりに大きいですから、現状の問題を直視して、大臣が言われたように、これからの時代の政策形成のあり方を考えるというのは本当に待ったなしだと思っております。この委員会はとてもよい機会が設定されたと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。


○小林労働政策担当参事官
 次に、公益社団法人連合総合生活開発研究所理事長、古賀伸明様です。


○古賀氏
 古賀でございます。よろしくお願いいたします。

 雇用労働政策というのは職場を熟知した労使が知恵を絞り合って議論・検討していく、このプロセスは私は必要不可欠だと思います。今、大田先生からスピード感の問題がありましたけれども、私は、これを抜きにしては、制度が職場に定着せず、いわば政策の上滑りをしていくのではないかと思っております。この労使関与の政策決定プロセスは、御案内のとおり、国際労働機関(ILO)の三者構成原則でうたわれたものであり、我が国でこれを具現化しているのがこの労政審。したがって、この原則は崩すべきではないと思います。

 しかし、一方で、大内先生御指摘の労政審の位置づけとは何なのかとか、あるいは、現在を見てみますと、経済財政諮問会議とか、産業競争力会議とか、規制改革会議といった政府の会議体が方向づけをした政策の大枠に沿って個別政策の落とし込みをやっている。したがって、戦略的な議論ができていないのではないかとも思います。特に本審は、ちょっと言い過ぎかもわかりませんけれども、労働関係予算の事後報告を受けることとか、分科会や部会報告の追認とか、そういう場になっているのではないか。また、各分科会や部会のいわゆる横串、横の連携が十分にとれているかどうかということも疑問に思います。労政審自体が戦略的かつ横断的な議論をするためには、本審であるべき雇用や労働政策の方向性の議論を徹底して行って、そこで方向づけした大枠に従って各部会あるいは分科会が個別制度のあり方を議論した上で取りまとめを行っていく。このような変革が必要ではないかと思います。

 加えて、これから先は、私は大田先生の意見と全く一緒なのですけれども、労働とか働くことというのは、経済政策とか産業政策、あるいは社会保障政策、もっと言えば世界の動向、こんなことも含めて他の政策と非常に関連が深い。したがって、雇用・労働政策というのは他のそのような制度・政策とともに中長期的な視点から総合的に立案をしなければならない、そんな時代に入っていると思います。

 この議論は、現在の日本では恐らく、経済財政諮問会議とか産業競争力会議、あるいは規制改革会議とか、さらには一億総活躍国民会議、このような会議体で議論されているのだろうと思いますけれども、乱立をして、たまに労働政策のテーマがばらばらにそれぞれの会議で検討がなされて、少し違う結論が出てくる。このような状況も見受けられるわけでございます。したがって、労働政策の政策ベクトルを議論する場はやはり一つであるべきだと思います。

 そして、これからが重要で、私が極めて強く言いたいことなのですけれども、そのような会議には労働側の代表は1人も入っていないのです。この実態というのは、さきに述べた三者構成原則に則っていないのではないかと私は思う。そんなことを申し上げ、発言としたいと思います。

 以上でございます。

○小林労働政策担当参事官
 座長は最後にコメントをいただきたく存じますので、次に、株式会社日立製作所取締役会長代表執行役、中西宏明様です。


○中西氏
 日立の中西でございます。

 私は、今、大臣がおっしゃられたような観点から議論に呼ばれたのかなと思っておりますのは、産業構造が変わる、今まさに、そういう現場にいると思っております。「製造業中心の」という枕言葉がついた労使関係と言いますけれども、製造業の中身も、大きく変わっております。私ども日立というのは、英語名は違うのですが「日立製作所」という名前がついておりまして、物づくりで生きているわけです。けれども、もう既に、物を単純につくって売るだけのビジネスでは成り立たなくなりまして、いろいろな意味でサービスを付加していかなければ、利益が上がりません。会社として、サービス比率の向上を一生懸命経営目標に掲げております。

 もう一つは、そういうことを展開しようとすると、グローバルという視点が必ず出てまいります。これは、ビジネスの方向づけ、経営の方向づけの話なのですけれども、当然それに基づいて、そこで働いて活躍してくれる方々の働き方にすごく影響が出ております。この前もそんな話をちょっとしたのですけれども、正直申し上げて、従業員の中で、ブルーカラーで、物づくりで、組み立てなどをしている人の比率は約30%です。もちろん、全員がデスクワークかというと、場合によっては、保守等でお客様と一緒に机を並べていたりするようなケースも多いわけですけれども、圧倒的に物づくりという世界以外の働き方が増え、働き方が多様化するとともに、そこで働く人財も多様化しております。

そういうことを考えたときに、働く中でのルール等がどのように変わっていくべきかということですが、多様化と言っても、その幅の広さや深さが相当あるものと考えております。私は、労働政策には素人なのですけれども、私の経験から、違うなと感じることも随分あるものですから、そういうことを議論の過程の中でいろいろ発言させていただける絶好のチャンスをいただいたと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。


○小林労働政策担当参事官
 次に、国立社会保障・人口問題研究所所長、森田朗様です。


○森田氏
 今、御紹介いただきました森田でございます。

 私自身は、現在は厚労省の職員になっておりますけれども、数年前までは大学で行政学あるいは公共政策を教えておりました。現在は、現在の職場の関連で、労働政策というよりもむしろ社会保障政策、医療政策のほうにかかわっております。

 私自身の研究関心は、そういう意味でいいますと、働き方そのものよりも政策決定プロセスのほうに関心があるわけです。特に今回のお話で感じておりますのは、私自身、ちょうど昨年の今ごろまで、医療費を決定いたします社会保障医療協議会、いわゆる中医協の会長を4年ばかり務めておりまして、中医協といいますのも、いわゆる支払い側、そして診療側と公益委員という三者構成になっていて、ある意味でいいますと、似たような代表性の問題、議論の問題というのがございます。そこで会長を務めているときには批判的なことは言いがたかったのですけれども、やめたからあえて申し上げますと、中医協のあり方そのものも時代にそぐわなくなってきているところが出てきているかと思います。

 中医協自体は2007年にかなり大きな改革があったわけです。しかしながら、三者構成で、支払い側、診療側の議論によって医療費を決めるという構図は変わっておりません。先ほどの大田先生のお話ではございませんけれども、診療報酬の改定が2年に1度ございますけれども、そのときには毎週2回、3カ月にわたって審議をするという形での密度の高い審議を行っているわけでございます。それでも恐らく、十分な形での議論ができないであろうと。したがいまして、議論の仕方そのもの、決定の仕方そのものを変えていくことを考えていくべきではないかなと思っております。そうした経験がこの有識者会議でも少しお役に立つのかなと思っております。

 現実に医療費がどのように決まっているかというのと、どういう問題点があるかということにつきましては、宣伝するわけではございませんけれども、最近、本を書きましたので、御関心のある方はお読みいただければと思っております。

 一言で申し上げますと、双方の側が交渉といいましょうか、いろいろな形でやりとりをして、ある意味で物事を政治的に決めていくという構造が続いているわけでございます。言われてはいるのですけれども、もっと進めていくべきだし、本来あるべきというのは、できる限りきちっとしたデータ、エビデンスに基づいて物事を決めていく、そういう姿勢が非常に重要ではないかと思っております。

 医療に関しましては、現在、厚生労働省のほうで保健医療に関してICTを活用する、有識者懇談会のほうでそうした検討をしているところでございますけれども、可能な限り、エビデンス、データに基づいて何が言えるか。それで全てが決まるわけではありませんけれども、それをベースにしてできるだけ科学的知見を使いながらロジカルに決めていく。それが大きな環境変化のもとで正確に課題を捉えて迅速かつ公正に政策を決定する方法ではないかと思っております。理想に近づくのも容易ではないということは十分認識しておりますけれども、そうした観点から、多少なりともこの有識者会議に貢献できればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


○小林労働政策担当参事官
 次に、一橋大学大学院商学研究科教授、守島基博様です。


○守島氏
 今、御紹介にあずかりました守島でございます。よろしくお願いいたします。

 恐らく私がここの会で求められていることというのは、私は実は現役の労政審のメンバーでございまして、そういう意味では、労政審を見てきた、そこからの感想を少しと、全体的なことをちょっと申し上げたいのです。

 過去5~6年か7~8年、労政審を見てきてちょっと感じるのは、本音の議論がされているのかなというのがなかなか疑問があります。何でかなと考えると、もしかしたら、紛糾することを恐れて本音を言わないのかもしれないし、自分に守りたいものがあって、守りたいものを守るために、逆に言うと、相手をアタックしない、そのような規範ができているという可能性もありますし、可能性はいろいろあると思うのです。先ほど大内さんが言われたような労使交渉という目で労政審を見てみると、本音の議論がなかなかされていないところがあるのではないかなということが常に気になっているので、ある意味では、喧嘩してもいいという言い方はいいのかどうかわかりませんけれども、そういう本音の議論がもっと出せるような場にしていけるといいかなという気が1つはいたします。

 あと、大田先生が言われたことに近いのですけれども、やはりスピードというのが大切だろうと思います。スピードがなぜ大切かというと、政策も、企業の意思決定も同じなのですけれども、環境変化に応じて変えていかなければいけない。変えていくためには、スピードを持ってある程度変化に応じた意思決定をしていかないといけないと思うのです。1年、2年かけて1つの法律をつくっていく、そのことに慎重であるということ自体はいいことなのかもしれませんけれども、環境変化が起こったときに変えていくという意味では、スピードというのは非常に重要な要素ではないかなと思います。

 3番目は、先ほど秋池先生が言われたことと似ているのかもしれませんけれども、一体この問題はどこから出てきているのだろうかというのがなかなか見えないと私は思います。本来、労政審で議論すべきことというのは、このような労働問題があるから働く人たちが幸せでない、もしくは企業が十分に人的資源を活用し切れていないからこのような法律の改正をしなければいけないのだという話になるのだとは思いますけれども、それが具体的にどういう問題なのかというところが、先ほど森田先生も言われましたけれども、必ずしもデータをもってきちんと出されているわけではないのではないかという気がしております。私が不勉強なのかもしれませんけれども、問題がふっと上がってきて、それについて議論するという傾向が多いように思いますので、労働市場の実態であるとか、どういうことが起こっているのかということをベースに踏まえた上での議論ができればいいかなと思います。それが3番目です。

 4番目も簡単に済ませますけれども、先ほど大田先生が言われたように、皆さん方が言われたように、多様な意見が反映されていないというのがあるのではないかと思います。労働側の多様な意見というお話は先ほど大臣のお話にもありましたけれども、企業側も、中小企業であるとか、零細企業であるとか、労働場面というのはどこの企業にもあるわけですから、ふだん、経団連であるとか、そういう大きな団体には必ずしも反映されないようなタイプの意見も取り入れる必要があるのではないかなと思います。もちろん、労働側の多様性も大切ですけれども、企業側の多様性も同時に確保していかないといけないのではないかなという気がするのです。そんなことがこれを通じてどこまでできるのかわかりませんけれども、この会を通じて議論できればと思っております。

 以上です。


○小林労働政策担当参事官
 次に、東京大学大学院法学政治学研究科教授、山川隆一様です。


○山川氏
 山川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、守島先生と同じく労政審のメンバーでもありますし、また、先ほど大臣の言われた「働き方の未来2035」の懇談会のメンバーでもあります。労政審のメンバーであると、まないたのコイみたいな感じでもあるわけですけれども、参加していての感想といいますか、イメージを申しますと、労働政策を考える場合に、多分、その内容の問題と政策の実現の手法の問題と決定プロセスの問題、3つぐらいの局面があるかなと、それらはやや重なり合っている部分もあるのかなという感じがしています。

 今回は決定プロセスということですけれども、審議会での経験からしますと、どういうプロセスになっているか。これから事務局からも説明があるかもしれませんが、まず、テーマ設定がある。その設定されたテーマについて多様な意見、意見というよりも利害と言ったほうがいいかもしれませんが、利害状況が存在することを前提にして、それを把握するというプロセスが次にやってくる。そこでは審議会での議論のほかに、いろいろな調査等も含めたデータを把握するという把握のプロセスがありまして、その後、審議会での議論に向けて意見集約のプロセスが多分あるのであろう。これをするのは、基本的には労使のそれぞれの参加者の方かと思います。その意見集約を踏まえて労政審の中で検討したり、議論したりする。ここでは、今日、委員の方々がおっしゃられたようないろいろな課題が出てきているのであろうかと思います。

 その議論を踏まえて次のプロセスが政策決定をするということで、そこでは、1つは、ポリシーミックスみたいなことになる。テーマ設定が必ずしも1つではなくて、いろいろなことがミックスで議論されて、そのバランスをとりながらということが出てくると思われます。政策を決定したら、後は立法の話になるのですが、最後には、フィードバックといいますか、形成された、決定された政策がどのように機能しているかというプロセスも本当は視野に入れる必要があろうかと思います。行政としての持続性ということもありますので。

 全体として見ると、今回の検討対象になるかどうかわかりませんが、テーマの設定から、利害の把握、意見の集約、議論・検討、ポリシーミックスの決定、さらにその評価とフィードバックというような全体的なプロセスを検討するとよいのではないかという感じを持っております。特に意見集約が重要かと思います。これは政党の役割と少し似ているところがあろうかと思います。その点では、突飛なことを申し上げるようですが、今回のイギリスのEU離脱の国民投票などは意見集約の重要性を非常に示した事例ではないかと思っております。

 ということで、お役に立てるかどうかわかりませんけれども、よろしくお願いいたします。


○小林労働政策担当参事官
 次に、株式会社コラボラボ代表取締役、横田響子様です。


○横田氏
 コラボラボの横田響子と申します。現在、女性起業家1,900社、うち35%が個人事業主の方々の事業継続支援ということでお仕事をさせていただいています。ダイバーシティーや女性活躍関連で会社を独立して12年ほどこの周辺のことを一生懸命やっており、最近はAI時代の意思決定機関のあり方や、将来の労働市場と社会保障の連動というところに個人的に非常に関心を持ってございます。

 今回の会議で申し上げたいことは、個別の課題解決、法整備にとどまらず、大臣がおっしゃられていたように、長期視点に立った課題を並行させること、また、現メンバーの構成のさらなる多様化を図ることは非常に望ましいのではないかと思っています。

 メンバー構成の多様化について具体的に申しますと、会議の中で、性別に関しては女性が3割入るということで既に決まっているかと思うのですけれども、私は個人的に年齢のダイバーシティー、あと、雇用形態も踏まえた多様性の担保を再検討していく必要があると思っています。例えば非正規と一括りにしてしまっていますが、契約・派遣社員にとどまらず、シニアの嘱託や複数企業と業務契約をする個人事業主、また、最近若者の個人請負も非常に増えていると聞いておりますので、雇用保険外の労働者が増えている。これがさらに増えていくであろうということを踏まえてメンバー構成をしていったほうがいいと思っています。

 次に、年齢のダイバーシティー。私、ちょっと若手のほうなので、ここで私が言うのもというのもあるのですけれども。国の働き方の未来2035のほうも若手が入っているかと思うのです。そういう将来を考える会議には若手が入ってくるのですが、日本全体的に、普通の会議、意思決定機関というのはシニアの方も比較的多いのかなと思っています。例えば45歳未満とか40歳未満が3割ぐらいまざるとか、そういったことも検討いただいてもいいのではないかと思っています。

 あと、ややエキセントリックかもしれませんが、有識者の1人にAIを加えてみるみたいなことも検討の余地があるのではないかと思っています。最近、MITメディアラボの伊藤穰一さんが記事で、既に香港のあるファンドでは取締役の1人は人工知能が務めている、多分あと10年ぐらいでほとんどの上場企業には人工知能の役員がいるでしょうとおっしゃっています。

 あながちエキセントリックだとか、突飛だとかいうのではなく、ニュートラルかつエビデンスベースドのAIなのか、情報なのかを踏まえた意思決定をすることを視野に入れたほうがいいということが言いたいのです。

 議論内容についてもちょっと意見をさせていただきます。やはり長期視点ということが非常に大事だと思っています。審議会における各分科会の熟議は本当に価値があると考えてはいます。本審の議事録などもさらっと拝見したのですけれども、どうしても積み上げ型のものを議論する形になっていて、全体俯瞰すること、未来を見据えてどう予算配分をしていくかという視点が非常に弱いのではないかと感じました。財政が限られた中であれもこれもやっていくのが難しいということもありますし、当然、格差解消や雇用の流動性を担保した上で、将来の労働市場のあり方を描いて、時に、社会保障の連動をさせながら、中・長期視点と短期視点をリンクさせて俯瞰した議論ができる場になることが望まれます。

 最後になりますけれども、私、もともと新卒でリクルートに入りまして6年ほどなのですが、ずっと人材組織畑におりました。上場企業やベンチャー企業の組織づくり、採用育成に絡んでおりましたが、最近は、役所回りで言うと、男女共同参画会議の「重点方針専門調査会」だったり、行革では「国・行政のあり方に関する懇談会」。ここ3年は行政事業レビューで厚生労働省、文部科学省、あと農林水産省、内閣府の案件も担当してきましたので、どうしてもお金の使い方みたいなところに、非常に関心を持っております。若輩者ではございますが、以上の知見を踏まえて、この有識者会議にも少しでも貢献ができればと思います。よろしくお願いします。


○小林労働政策担当参事官
 最後に、株式会社経営共創基盤代表取締役CEO、冨山和彦様です。


○冨山氏
 冨山です。よろしくお願いします。遅くなりまして申しわけありませんでした。

 今、言いたいことを横田さんに結構言われてしまったのでかなりかぶってしまうところがあるのですが。

 今、並行して、働き方に関する研究会を大内さんなどとも一緒にやっているわけですが、一言で言うと、働き方の多様化と流動化は既に進んでいるのですが、この後、ものすごい勢いでさらに加速するでしょうと。今、言われたように、多分、AIとかネット化の話はますます加速化するわけであります。1つはっきりしていることは、いわゆる従来の典型的な、例えば大学を卒業して終身年功型の大組織に新卒一括採用で入って定年までずっと生きていくというケースはどうしても減っていくことは間違いなくて、これは多分いろいろな階層で同時並行的に起きているような気がします。

 私の縁者が東京大学の理系の大学院にいますが、東大の中でも比較的優秀な子たちの話題のほとんどは、いかにして大企業に入らないかということだそうです。はっきりいって、志向性その1は、スタートアップ、あるいはPh.D.。まずスタートアップ。このPh.D.とスタートアップはトレードオフではなくてどちらもやってしまいたいという感じです。そうではない場合に、ややモラトリアム的に外コン。彼らの言葉で「外コン」と言うのですけれども、外資系コンサルティング会社で、要するに秋池さんのところとかうちみたいなところの外コンが次のややモラトリアム的選択肢。いずれもなかなかかなわなかった場合に、中西さんに怒られてしまうかもしれませんけれども、しようがないから日本の大手メーカーへ行こうかと。実際、そういう感じがあるわけです。なぜそうなるかというと、今の世の中として、例えば大組織に入らなくても、仮に東大のPh.D.に残ってスタートアップをやっても、やれることにあまり差がないという感じを彼らは持っている。それというのは、ネットの威力というのは大きいのですね。逆に下手に大企業に入るとやりたいことができないまま無為に年をとっていくかもしれない。多くの先輩たちをみているとそう言わざるを得ないということのようです。

 今、ディープラーニングという非常に先進的な技術が出ていますが、実はディープラーニングの基本的なソースコードというのはオープンになっていて誰でも使えるのです。ですから、大学にいたまま、みんな学会発表で論文で出してしまっているので、どちらかというと、みんなそれを使いながら、それこそ私の家で土日とかパソコンで東大の高精度・高能力のコンピュータにクラウドでアクセスして、いろいろなことをチャカチャカやっているのです。そういう時代になっている。昔であれば、いわゆる大企業・大組織でないと持っていなかったような経営上の資源というのが個人として使えてしまう時代になっていて、今回のポケモンGOなどもある種その例なのです。

 あれはどういうことかというと、世の中みんな持っているスマホと、既に存在している通信と既に存在しているGPSにフリーライドしてどひゃっとやってしまうということ。あれは実際にやっているのはアメリカのベンチャーに近い会社ですけれども、そういう時代になってしまっているので、当然、彼らのほうがそれをうまく使う方法をわきまえていますし、実際、研究などで開発とかをやっているのを見ていると、当然のごとく、チャットの向こう側にはMITの学生がいたりするのです。

 だから、どこに住んでいようが、お金を持っていようが持ってなかろうが、物を持っていようが持ってなかろうが、大組織に帰属していようがしていまいが、そういうことができてしまう時代にますますなっていくような気がしているわけです。そうすると、従来的働き方の典型的な働き方というのがある意味では選択肢として相対化するし、恐らく、その優位性が薄れてくるのだと思っています。

 逆に、もうちょっと目線を下げて、偏差値的に言うと、そんなに高くない世界に行くと、これまた個人事でちょっと恐縮なのですが、私、売れないバンド活動を40年近くやっています。売れないバンド活動をやっていると、仲間はどちらかというとマイルドヤンキーなお兄さん、お姉さんになっていくわけでありまして、大会社に所属している一般の人はいなくなってくるのです。

例えば、高卒で専門学校に行ってウエブデザイナーやプログラマーをやっているとかが典型ですけれども、彼らの生活様式というのは、まず1回も大企業に就職したことはないです。私の知り合いは40代の人が多いですが、ほとんどいないです。実際、今、どのように仕事をしているかというと、個人事業主です。一人会社をつくって、一人会社でいろいろな会社と契約をして働いています。先ほどちょっとおっしゃっていたようなその類型です。

 あの年代から以下のデザイナーさんというのはそれが主流です。それが普通です。まず、ウエブの世界というのは大きなデザイナー会社というのはないし、みんな個人でそうやって働いていくような働き方になっています。そういう働き方が増えてきてしまうと、ああいうものは多分雇用ではないのですね。労働法の保護対象にならないはずなのです。先ほどの、割とエリート類型であれ、マイルドヤンキー類型であれ、どちらにしろ、労働法の対象外の人たちがどんどこ増えていくし、多分、このトレンドは、AIが登場するとますます加速すると思っているのです。そうなりますと、多様性と流動性というものを前提にした政策意思決定プロセスが必要になるということ。

 あともう一つはスピード感です。加速するということは、従来の労政審型の意思決定のスピード感で果たしていいのでしょうかということです。もちろん、労働の問題、働き手の問題は大事な問題だから、慎重にいろいろな状況を勘案して決めていきましょうというのも大事なのですが、その問題以上に、スピード感が速くなっていってしまうと、決めたころにはその話は時代おくれになってしまっている。要するに、3年、4年ずれてしまっている危険性があるわけです。そうすると、決めた段階によっては誰も救えないという状況が常に起き続けるということは、私はより不幸だと思っているので、このスピード感をどう上げていくかというのも多分大事だと思います。

 そういった意味合いでいうと、この先10年から20年間というのはものすごく変化がある。ある種、働き方のシンギュラリティーはもう来ているような気がしているので、それにどうついていくかというところ。この決め方の問題、それから決めていく構成メンバー、その両面においてかなり有意な改革ができたらすばらしいなと思っています。

 以上です。


○小林労働政策担当参事官
 なお、本日は、前厚生労働事務次官、村木厚子様は御欠席でございます。

 最後に、小峰座長からコメントをいただきたいと思います。


○小峰座長
 私はこれまでずっと経済問題とか人口問題に関心を持って取り組んできたのですけれども、そういった中で、いろいろな節目ごとに、多くの問題が結局は働き方の問題につながってくるということを非常に強く感じています。例えば生産性の問題であるとか、潜在成長力の問題だとか、人手不足の対応だとか、少子化問題、ワークライフバランス。全部突き詰めていくと、基盤のところにある働き方をどうするのだというところと関係してくるので、この問題はとても重要だなと常に考えていました。

 ただ、これを変えようとするとこれまたなかなか大変で、働き方というのは、それぞれの人々が働いて、企業が人を採ってという、実際にやっていることに関係してくるので、簡単に右から左に変えるわけにはいかないということで、なかなか難しい問題になっているのを常に感じていました。それだけに、こういう問題をどういう場でどうやって議論して建設的な議論を引き出していくかというのはとても重要だというふうに強く感じています。

 それから、私、経済企画庁という役所にずっといたのですけれども、今はないのですが、かつては経済計画というフレームワークがありまして、4~5年に1度、長期的な政策体系を閣議決定するというのがあったのですが、これを議論する経済審議会という議論の場があった。私、その事務局を担当したことがありました。そのとき議論になるのは、経済審議会で何を決めるかとか、どういう数値を出すかというのももちろん重要なのですけれども、そこで議論するというプロセス自体が重要だというのがそのときの我々の議論でした。経済計画をつくるときは各界から200人ぐらいの代表が来て、いろいろな部会に分かれて、長期的な問題はどうかというのを議論して、半年ぐらいかけて議論していくと、こういうことしかないのではないかというコンセンサスがだんだん生まれてくる。そういうのを見ていますと、どういう場でどういうプロセスで議論していくかというのがとても重要だなと感じています。

 以上が私のコメントです。

 それでは、皆さんからも一言ずついただきましたので、ここで塩崎大臣が公務で退席されます。


○塩崎厚生労働大臣
 では、どうぞよろしくお願いいたします。


○小峰座長
 どうもありがとうございました。


○塩崎厚生労働大臣
 ありがとうございました。

(塩崎厚生労働大臣退席)


○小峰座長
 それでは、議論に入りたいと思います。

 まず最初に、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。


○小林労働政策担当参事官 
 それでは、資料1をご覧いただきたいと思います。この有識者会議の開催要綱でございます。「開催趣旨」でございますけれども、先ほど大臣からの御挨拶にもございましたように、さまざまな分野、立場の人の声を広く吸収し、機動的な政策決定を行うことが不可欠であるというような問題認識のもとで、「主な検討項目」として2に挙げてございます。

 1番目が労働政策に関する企画・立案などのあり方について。

 2つ目が労働政策審議会の機能、委員構成等、運営、事後評価などのあり方について。

 3つ目が労働政策に関する国民の意見聴取などのあり方について。

 4つ目がその他ということでございます。

 「4.運営・その他」でございますけれども、議事は原則として公開するとさせていただいております。

 続きまして、資料2をご覧いただきたいと思います。資料2は、大きく目次のところをご覧いただきたいと思いますけれども、「労働政策審議会の概要等」と「就業構造の変化等」のバックデータでございます。

 まず3ページをご覧いただきたいと思いますけれども、労働政策審議会とは何ぞやという資料をつけさせていただいております。

 「1 概要」のところでございます。3つ目、4つ目の○は労働政策審議会の所掌事務でございます。「厚生労働大臣の諮問に応じて、労働政策に関する重要事項の調査審議を行う」「労働政策に関する重要事項について、厚生労働大臣に意見を述べることができる」となっております。

 「2 三者構成について」でございます。1つ目の○が三者構成の機能でございますけれども、労働問題の直接の当事者である労使がともに議論に参画することで、現場の実態を踏まえた議論が尽くされて、実際によく機能する法制度が立案されて、労使双方が納得して遵守できるという面があると考えてございます。その下の○でございますけれども、「労働分野の法律改正等は、公労使三者構成の労働政策審議会における諮問・答申の手続きをとることとしている」ということでございます。

 「3 委員の任命について」でございます。委員の任命は、労働者を代表する者、使用者を代表する者、公益を代表する者のうちから厚生労働大臣が任命することになってございます。具体的には、労働分野の学識経験者などから選任された公益委員、それから、労使それぞれの代表的団体の意見を踏まえて、労働者一般の利益を代表するにふさわしい労働者委員、使用者一般の利益を代表するにふさわしい使用者委員の三者で構成しているところでございます。委員の任期は2年、再任可で最大10年ということでございます。

 4ページには、ILOの三者構成の原則をつけてございます。この大きな四角囲みの中の2つ目の○の「職業安定組織の構成に関する条約」の第4条のところでございますが、「職業安定業務に関する政策の立案について使用者及び労働者の代表者の協力を得るため、審議会を通じて適当な取極が行われなければならない」となってございまして、「審議会における使用者及び労働者の代表者は・・代表的団体が存在する場合には、それらと協議の上それぞれ同数が任命されなければならない」となってございます。

 5ページでございますけれども、労働政策審議会の構成図でございます。労働政策審議会(本審)と分科会が7つ。それから、部会が分科会の下にぶら下がってございまして、全部で10あるということでございます。

 6ページでございますけれども、これは労働政策審議会(本審)の委員名簿でございます。政令で、30名で、公労使各委員は同数ということになってございますので、10名ずつお入りいただいているところでございます。

 7ページ、8ページ、9ページと審議会の審議の流れについて整理をさせていただいております。

 7ページにつきましては、本審の流れ図でございます。先ほど委員の方からのお話にもございましたが、年2回程度開催ということで、夏ごろに翌年度の労働政策の重点事項の議論をしていただくとともに、法案の審議状況の報告、春ごろに翌年度予算案や各分科会の審議状況について報告・聴取を行っているところでございます。各政策分野の具体的な制度改正の議論は主として分科会や部会で行われているところでございます。

 8ページのところは分科会等の議論でございますけれども、一番最近の労働関係の法律改正を例にとってございます。雇用保険法等の改正でございまして、中身は大きく3つの分野に分かれてございます。仕事と家庭の両立支援、雇用保険制度の見直し、今後の高齢者雇用対策ということで、それぞれ雇用均等分科会、職業安定分科会、雇用保険部会、雇用対策基本問題部会で議論を行ってございます。

 例えば、一番上に仕事と家庭の両立に関する議論の流れをつけてございますが、まず、審議会の議論の前に研究会を開いて、そこで議論いただいた上で、その論点等をもとに、分科会のほうで対策の充実について議論をして、報告書をまとめていただいた上で、審議会の建議ということで報告を建議していただいているということでございます。

 その建議の中身のうちの法律に関する事項を取り出して、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」ということで厚生労働大臣から分科会のほうに諮問があって、おおむね妥当との結論に至って、本審議会長に報告して労働政策審議会からの答申という流れになってございます。これは、分科会が所掌事務について議決したときは、その議決をもって本審の議決となるということが労働政策審議会運営規程9条の中で決められているところでございます。

 9ページでございますけれども、これは労働基準法改正法案のときの流れでございます。これは、成長戦略等を議論するところの決定の中で労働政策に関する論点や具体的な議論の方向性が示されて、労働政策審議会で当該事項を踏まえた議論が行われることもあるということで御紹介させていただくものでございます。労働時間法制のあり方について議論をしたときのものでございまして、平成25年6月の「日本再興戦略」の中で労働時間法制の見直しということで労働政策審議会において検討を開始するということとされて、平成25年9月から検討を開始し、平成26年6月のときにまた「日本再興戦略」の中で、時間ではなく成果で評価される働き方への改革ということの閣議決定を受けて、そこを取り込んだ上で議論をしていただいて、建議をおまとめいただいたというものです。その建議に基づき、「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」ということで厚生労働大臣から審議会に諮問し、おおむね妥当との結論をいただきました。ただし、労働者側からの意見がついているということでございます。

 これが今の審議会の議論の流れでございます。

10ページ、11ページは、大臣からの御挨拶にもございました、労働政策審議会等についていろいろ御意見を頂戴しているものをつけてございます。

10ページは、規制改革会議の中で御議論されて、規制改革実施計画の中で、多様な働き手のニーズに応えていくために、さまざまな立場の声を吸収して政策に反映するための検討を行うということが盛り込まれてございます。一番右側の「今後の予定」のところで「働き方の多様化等により的確に対応した政策作りのため、労働政策審議会等の在り方について検討を行う」ということでまとめてございます。これを踏まえまして、今回、このような有識者会議を立ち上げさせていただいております。

 また、11ページは「自由民主党多様な働き方を支援する勉強会からの提言」でございまして、いろいろな提言をここの中でも出されているところでございます。例えば、2つ目のポツのところの「5割を地方人材にすべき」や、3つ目のポツのところの「委員構成は定期的に大臣が評価をする」や、下から2つ目のポツの「ILOの政労使三者構成の原則を踏まえ、政務三役が会議に参加するなど、『政』の役割を強化すべき」や、一番下のポツの「労使代表委員については、現行の労働構造・産業構造と比して著しくバランスを欠くことがないよう見直し・・我が国の労使の代表たるに相応しい委員を選任すべき」というような御意見を頂戴しているところでございます。

12ページ以降は、数字でございまして、今の産業構造、就業構造、雇用形態の変化等を整理させていただいております。

13ページは、雇用者につきまして非正規の方の占める割合が増えてきているというグラフでございます。最近の数字では、雇用者の中の37.5%の方がいわゆる非正規の労働者の方ということでございます。

14ページは、委員のお話の中でも、年齢別にみていくことも大事ではないかということもございましたので、男女・年齢別に分けて見たものでございます。男性の場合に非正規雇用割合が高いのが、若い方、あと55歳以降の中高年齢の方となっています。女性の場合は、年齢が高くなるに従って非正規率が高くなる傾向があるということでございます。

15ページでございますけれども、非正規雇用増加の要因でございます。年齢別・性別で増加分の部分を見てみますと、60歳以上の男女と59歳以下の女性がこの大きな要因になっています。特に高齢期の方について非正規率が高まっています。60歳以上の男女のところ、高齢期の方の非正規増というところが大きな要因となっているところでございます。

16ページが非正規雇用労働者の産業別割合ということで、産業別に見た非正規労働者の割合を示したものでございます。飲食店・宿泊業などは非正規の方の占める割合が高くなっているということがおわかりいただけると思います。

17ページが産業別の就業者数の推移でございます。2014年の点線の左側が実積で、右側が見通しでございますけれども、製造業の就業者数の方が減っているということと、医療・福祉が増えているということで、右側の将来推計につきましても医療・福祉が伸びているという状況にあるということでございます。

 あとの資料は参考につけてございますので、私からの説明は以上でございます。


○小峰座長
 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの事務局の説明に関するもの、または皆さんの発言に関するようなこと、それぞれ御質問、御意見があれば、どうぞ御自由に発言いただきたいと思います。

 どうぞ。


○大田氏
 今の資料で質問をよろしいでしょうか。

 4ページの下のほうの「労働政策審議会における審議手続」の一番下に「法律改正には、労働政策審議会において議論を行い、建議、法律案要綱の諮問・答申手続が必要」とあるのですけれども、その前のページにある厚労省の設置法では、労働政策に関して労政審に諮問できるということを定めているだけであって、労働政策について全て労政審を通さねばならないと規定しているわけではないわけですね。労政審を通さないと法律改正とか新立法ができないというのはどこに規定されているのかというのが質問の1つです。

 すみません、もう一つあるのですが、同じ4ページの黄色い括弧の中の一番上です。「ILO条約では、労働政策について、労使同数参加の審議会を通じ政策決定すべき旨規定されるなど、数多くの分野で、三者構成原則をとるように規定」と。数多くの分野で三者構成原則をとるように規定しているというのはそのとおりなのですけれども、労使同数の任命を求めている条約が全てではないわけです。ここでは「職業安定組織の構成に関する条約」の例だけが書かれていますが、全体の中で労使同数を求めているのはどれぐらいあるのか。それ以外の条約については、三者構成であれば労使同数の会議でなくてもいいと理解していいのか。

 以上2つ御質問をお願いします。


○小峰座長
 では、お答えがあれば。


○小林労働政策担当参事官
 建議、法律案要綱の諮問答申手続が必要ということを法令上はっきり示したものではございませんので、権能といたしましては、9条の1号、2号のところで「諮問に応じて・・重要事項を調査審議すること」と、3号のところで「重要事項に関し、厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べること」が書かれているということでございます。実際上の手続といたしまして、労政審の重要性にも鑑みましてこういう手続を通常とらせていただいているということでございます。

 それから、条約につきましては、労使の同数原則というのが通常だと認識していますけれども、次回までに調べてお答えをさせていただきたいと思います。


○酒光総合政策・政策評価審議官
 ちょっと補足させていただきます。

 説明をちょっと省略したのですけれども、同じページに「フィラデルフィア宣言」というのが上にありまして、こちらの1の(d)に「労働者及び使用者の代表者が、政府の代表者と同等の地位において」云々というのがあります。要するに政府と労使が同等。その場合は、労使も本来同等であるべきという理念があって、ILOの委員もそういう構成になっているわけですけれども、そういった理念から、直接書いていなくても、まあそうだろうということでやっている部分はあると思います。ですから、もともと労使同数入るという理念があるのだろうというふうには解釈をしております。直接の部分については後で調べてお答えをいたします。


○大田氏
 よろしいですか。


○小峰座長
 はい。


○大田氏
 ありがとうございます。今の点は重要だと思っています。労政審を通さないと全ての法律改正、新立法ができないという前提で考えるのか。それとも、それは単に、これまでの慣例といいますか、そういうことであるのかというのは重要だと思いますので、法律上の規定がないのであれば、この会議でもその点は議論したほうがいいと思っております。

 それから、三者構成ということと、労使が同数の審議会でなければならないというのは違うと思っております。フィラデルフィア宣言でも、政府と対等でなければいけないと。つまり、政府というのは政策当事者ですけれども、政策当事者ではない労使も同じ立場で政府と対等に議論するのだということは言っているわけですが、労使同数でなければならないというのはまたちょっと違うと思います。三者構成イコール労使同数でなければいけないのか、あるいは三者構成であれば、全ての議論の場が労使を同数でなくてもいいのか、これも重要な点ですので、またこの会議で議論できればと思います。


○小峰座長 
 はい。


○小林労働政策担当参事官
 すみません。最初の御質問を含めてもう一度整理をさせていただいて、次回、御説明させていただきたいと思います。ありがとうございます。


○小峰座長 
 ほかはいかがですか。


○大内氏 
 今、大田先生から言われたところが議論になり得るとしても、私自身は労使同数というのは必要なのだろうと思っています。むしろ、三者構成でやる場合の、なぜ公と労使が同じ数でなければいけないのかというほうに問題があるのではないかと思うのですが、労使は対等で、先ほど言った労使交渉、実際に本当の交渉をやっているかどうかはともかく、労使交渉のイメージですよね。ヨーロッパなどのコーポラティズムのイメージで、そこはやはり労使が対等でやってこそ法律の民主的正統性も出てくるということだと思いますので、もし三者構成のあり方が議論となりうるとしても、個人的には、大田先生と見解が違うかもしれませんけれども、労使対等なほうがいいかなと思っていますし、役所のほうで調べていただけると思いますけれども、これはかなり強い要請だと思います。それが1つ。

 それと先ほど出てきた話の中で気になったのは、今回の主たるテーマにもなっている、委員の多様性です。国民のなかにはいろいろな人がいる。そういう中で、就労形態も変わってきて多様な代表というものが必要だと。この議論と、他方で先ほど出ていたスピード感、迅速性、これはなかなか両立しないところがあるのではないかという気がしています。

 仮に国民のなかに多様な国民における労働者、非正規労働者も含めて働く人全般の多様な利害を非常に忠実に代表しようとすると、大変なことになると思います。カテゴリーごとに代表者が出てくるみたいな話になって、そんなものはとてもワークしないわけです。私自身はそういう形の代表の多様化というものに個人的にはあまり賛成ではありません。それは今回のこの会議の設置の趣旨には反するかもしれないのですけれども、例えば非正規が増えたからといって非正規の代表者を入れるといっても、先ほどの説明にもありましたように、非正規の中には、最近の増加要因の中心には年齢の高い人たちで、そういう人は元正社員の方が結構多いと思うのです。それで嘱託になっているという人と、若者、あるいはパートで働いている人たち。あるいは派遣労働者。そういう人たちとでは利害がかなり違う。そういう代表者たちを全部引っ張ってくるのか。そうなってくるとこれは機能しないわけです。

 私自身の個人的な考えは、理想論かもしれませんけれども、やはり人選のところで大局的な観点から、労働者全体あるいは使用者全体のことを語れるような人をぜひ選んでもらいたいということです。

 例えば連合さんであったら、連合さんはもちろん非正規のことも考えて発言すべきであるし、現実にそうされているとは思いますが,個々の委員を見ると、出身母体というのがあり,そうなるとどうしてもその母体との関係だけで、そこの利害を考えて、こういう法律ができれば損とか得とかという話になってしまいそうですが,それは現実にそうだというわけではないのですが,いずれにせよ自分たちの母体はあっても、これまでの経験を生かしてより高い観点から労働者全体の利益を守っていく。企業側もそうですが、そのような人を選んでいただければ、無理に多様なカテゴリーの人たちを代表委員の中に入れ込む必要はなく、そうやっていくと、かえって迅速な解決等の要請に反するのではないかと私は考えています。


○小峰座長 
 私から2点コメントしたいのです。

 1つは、ILOで同数と言われているかどうかという話で、大内先生は、ILOにかかわらず同数が望ましいという意見だと思うのですね。私、素人なので、ILOというのはどのぐらい偉いのかというのはよく知らないのですが、こういう方針でいこうというときに、ILOが言っているからやろうというよりは、本来、それが望ましいからやろうという議論にしたほうがいいのではないかと感じました。


○森田氏 
 直接参考になるかどうかわかりませんけれども、その三者構成と労使同数というのは、まず原理的にそうなるかなと思っております。

 というのは、この会議でどうやって決定をするかというときに、いわゆる多数決の原理が働くとしますと、対立する側は同数になって、最終的には公益委員ないしILOの場合は政府ですけれども、そちらのほうがどちらにつくかというので決まる。そういう決め方をする前に労使で交渉して妥協ができればそれがベターである、基本的にそういう組み立てになっていると思います。したがって、労使ばらばらになって多数決で決めるというのも可能性としてあり得ると思いますけれども、基本的に労働側は1つの見解、使用者側は1つの見解。それをどのようにして決定するかということなのです。私、この法律を詳しく見ていないのですが、決定の方法についてはどのように書かれているのか。少なくとも中医協の場合には法律には決定のルールが書いていなくて、政令で多数決と書いてあるのですけれども、通常の多数決と違ってこういう構成の場合には意味がある内容ではないと思います。それは構成の話。

 ついでにもう一つ伺いたいのですけれども、今の労働政策審議会(本審)と言われるものは、今世紀の初めの行政改革のときに審議会が統合されたときに、いわばかぶせるような形でできた審議会だと思います。その下にある分科会というのも全部同じルールで、それこそILOとか個別の法律があるようですけれども、それに基づいて同じような仕組みになっていると理解してよろしいのでしょうか。

 といいますのは、ほかのところでもそうですし、厚生省系でいいますと、社会保障審議会もそうですけれども、いわばアンブレラ審議会としてつくられて、年に何回かの形式的な審議しかしない。実質的に骨抜きというのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そうした形の運営がされていると思います。その意味でいいますと、労働政策審議会の場合、むしろ実際にどういうことを決めてどういう審議をしているかというのは分科会レベルのあり方のほうが重要ではないか。

 先ほどもありましたように、ほかの省でもそうですけれども、分科会の決定を本審の決定とみなすという取り決めをして、実質的に本審を開かないでそのまま全体の会長の名前で答申をしているというところは幾つかあるかと思います。


○小林労働政策担当参事官 
 参考資料3のところに、設置法と労働政策審議会令をつけてございますが、まず、委員の任命、同数かどうかというところでございます。政令の中で、労働政策審議会令の中で条文がございまして、ページ数をつけていなくて申しわけありませんけれども、2ページの審議会令の3条のところに「(委員等の任命)」がございます。「委員は、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者のうちから、厚生労働大臣が各同数を任命する」ということ。

 以下、書いてございますけれども、分科会につきましては、3ページ目の「(分科会)」というところに第6条がございまして、1項目に所掌事務が書いてございます。飛びまして5ページでございますけれども、2項目のところに「分科会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、厚生労働大臣が指名する」と書いてございまして、「前項の委員のうち、労働者を代表するもの及び使用者を代表するものは、各同数とする」と書いてございます。また「臨時委員のうち、関係労働者を代表するもの及び関係使用者を代表するものは、各同数とする」ということ。「専門委員について準用する」ということが書いてございます。分科会のほうは公労使の全てが同数というわけではなくて、ここは労使の同数というのが最低条件ということでございます。部会についても同様の考え方と考えてございます。

 それから、議決の関係につきましては、最後のページに「(議事)」ということで9条がございます。9条は、まず、会議を開く際の定足数と議決のときの決定数の話が書いてございます。会議開催の定足数でございますけれども、委員及び議事に関係のある臨時委員の3分の2以上、または公労使の三者それぞれの3分の1以上が出席しなければ、会議を開き、議決することができない。議事につきましては、その会議に出席した者の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによるというふうな規定でございます。

 以上です。


○酒光総合政策・政策評価審議官 
 ちょっと補足させていただきます。間違っていたら誰かに訂正させますけれども。

 まず、議事のほうは、今、説明したとおり、形式上は多数決になっているわけですけれども、実際上は全員が合意するという形でやっています。ただ、その部分でも労使が必ずしも意見の一致ができないような場合については、反対意見を付すような形で答申をしているというのが実態かと思います。

 もう一つ、委員の構成です。資料2の5ページに分科会、部会があります。基本的に、このほとんど全ての分科会、部会で公労使3分の1ずつということになっているのですが、1つ障害者雇用分科会だけは公労使に加えて障害者代表委員が入っているということ。労使は数は同じですけれども、公益と障害者代表委員が別途いるという構成になっています。

 記憶で言っているので、もし間違っていたら後で訂正しますけれども、以上です。


○小峰座長 
 ちょっと1点だけ。

 今、お伺いしていて割と重要だなと思ったのは、代表という意味をどう考えるかということです。先ほど横田さんから、若い人の代表という話がありました。確かに、今ここにいるのは、高齢者が結構多い。問題になるのは、若者の代表は若者のためのことを言うという前提に立っていると思うのですね。高齢者は高齢者の代表として高齢者のためになることを言うという前提に立っていると思うのです。ただ、私自身は高齢者のためを思って何か言っているかというとそうではなくて、日本全体の雇用のあり方をどうするかという点で言っているので、どういう出身母体から来た人かということと、その人に何を期待するかというのは分けて考えたほうがいいのではないか。

 さらに言うと、今みたいに労使同数でなければいけないというのは、多分、労働者側は、労働者の利害を代表して言うのだと。使用者側は使用者の利害を代表して言うのだと。そういう前提だと、それは同数でないといけないでしょうということになると思うのですけれども、先ほど大臣などが言われたように、今、問題になっているような労働問題というのは、そういう枠組みで議論すべきものなのかなということ自体も問われているのではないかという気がしました。

 すみません。では、古賀さん。

○古賀氏 
 ありがとうございます。

 大内先生がおっしゃった多様性とスピード感というのは非常に重要なテーマで、それは、今、小峰座長が言ったことと一緒だと思うのです。何か見かけで多様性をやっても、まさにその人の立場だけで議論をすると、スピード感などは絶対生まれません。したがって、そういうときには、例えばヒアリングをきちっとしてみんなで勉強するとか、いろいろな手法はあると思うのです。ただ単にそういう人たちが寄ればいいのかどうかということについては私も大きな疑問があるというのが1点です。

 それから、スピード感の話が出ました。私ももちろん、スピード感は非常に重要だと思います。ただ、スピード感というのはこの労働政策だけか、ほかの政策はすべてスピードがあって、労働政策だけもたもたしているのですかと。そうではないと思うのです。そういう意味で、正確に。ほかの、経済政策、社会保障などはスピードがあって、労働政策だけが全然スピードがないというような認識で議論をするとちょっとおかしいのではないか。もちろんスピードを上げていかなければならない。そのことは重々わかりながら問題提起をしておきたいと思います。

 3つ目は、これは言いわけみたいになるのですけれども、皆さん方にまず正確にお伝えしておいたほうがいいと思うのです。すぐ労働委員のメンバーの構成が言われるので、今の連合の構成員のパーセントだけお知らせをしておきたいと思います。

 今、690万弱ですけれども、100としますと、中小企業と言われる100人以下をとっても約30%いる。公務員が16%。したがって、あと、中堅・大企業というのが54%。その中でも1,000人以上というのは41%です。加えて、非正規の問題があります。非正規は全体の14%、約100万人というような構成が連合の構成で、連合は大企業、公務員の集まりだと代名詞のごとく言われるのですけれども、中身はそういうことだということを忠実にお伝えだけしておきたいと思います。

 次に、これまた大内先生がおっしゃったのですけれども、ヨーロッパのコーポラティズムみたいなもの。これはやぶ蛇になるのかどういう議論になるかわかりませんが、例えば諸外国ではどういうことをやっているのかみたいなことも、事務局で一度調べていただいて、議論の材料にしたらいいのではないかと思いましたので、御発言申し上げます。

 以上です。

○小峰座長 
 安藤さん。


○安藤氏 
 先ほど小峰座長からあった、個々の委員が多様に分布していなくても多様な視点をちゃんと取り入れられればいいではないかというお話は、もちろん、そういう観点から人選がされることがベストだと思いますが、やはり人間には限度があるのではないかという気もしております。というのは、大学生などと接していましても、自分が行きたいベンチャー企業に決まった、でも、その前に内定をもらっている大企業もある、そこで親に相談すると、親は絶対大企業に行けと言うわけです。先ほど冨山さんがおっしゃったようなお子さんのように、優秀で、または東大の大学院にいるような人たちというのは、それこそ新しい会社に行きたい、そこでもしうまくいかなくてもいろいろな選択肢があるわけです。でも、現実、全ての大学生とかを母集団にアンケートをとれば、公務員になりたい、大企業に行きたい、こういう人がマジョリティーであって、かつ、それに行けないからこそ中小に行くわけです。これが例えば教育でもそうですが、労働も自分の経験というものに引っ張られがちなので、もし委員のほうで多様性を確保しないのであれば、ヒアリングとかインタビューとか、この段階で相当多様な人を呼ばないといけない。または、それを受け入れる柔軟な視点が必要であり、「俺の時代はそうではなかった」という人ばかりでは困るわけです。

 今、ある会社のコンサルティングというか、相談に乗る仕事をやっているのですけれども、そこで何が問題かといったら、労働者同士の利害対立です。若い男性社員が育児休暇を取りたいと言うと、シニアの男性が大反対するわけです。おまえ、何を考えているのだ、出世できなくなるし、そんなものは俺の時代にはなかったと言って足を引っ張るというような感じで、自分とは違う考え方を受け入れるのはなかなか難しいということも踏まえつつ、多様な意見が取り入られるといいなと思っています。

 また、今でも大学進学率は約5割、そして大学へ行っているその5割の中でも、勉強があまり得意ではない子もたくさんいるようなところが現実です。そこで、きらきらした東大だとかMITの人だとか、そういう人たちをターゲットに政策を考えるのは危険だと思っています。もちろん、そういう人たちをうまく生かす視点、そういう人たちが自由に活躍できる視点が今まであまりに足りなかったので、そちらに目配りが必要だというのはわかりますが、この多様性ということを考えたときには、どこが中心で、どこにも配慮するみたいなバランス感覚が大事なのではないかと感じました。

 最後にもう一個だけ言わせていただくと、スピードの問題です。経済学でもよく言う機会損失の問題がありますので、ゆっくりとなかなか変えないでいると、その間もかわいそうな人がどんどん生まれているわけです。拙速に変えたらトラブルが起こってかわいそうな人が出てきたらどうするのだ、責任をとれるのかという議論になりがちなのですが、変えないでいることの損失もある。では、すぐに変えればいいかといったら、すぐに変えて拙速に事を進めたら、そこで発生するかわいそうな人もいるかもしれない。これは両方あり得るので、そのバランスはきちっと考えていかないといけないのではないかと思います。

 また、これは、政策を決める人たちに対して、少しでもミスがあったら国民はすごくたたくわけです。それだったら、確実なものにしてから次に行こうとするメンタリティーになるのは当然だと思いますので、スピード感プラス、もしうまくいかないところがあったときにいかにそれを許容できて方針転換できるか、そういうところも込みでないと、スピード感を持ってと言われても、実際に決める人たちは、後でいろいろ言われるのだったらそんな早く決められないよと思うような気もします。

 以上です。


○小峰座長
 冨山さん。


○冨山氏
 今の観点は私も大事だと思っていて、私たちも企業再建とかやっていると、対立のほとんどは労使ではありません。使使、労労です。要は、会社と会社の間、働き手と働き手の間の対立のほうが深刻です。例えば、企業統治改革とかみんなそうですけれども、経済界だけで出ている議論でも、最近、意見は全然一致しないのです。全く一致しません。ガチに近いぐらい対立します。どことどことは言いませんけれども、対立をします。そうすると、こういった働き方の問題というのは、まさにいろいろな対立軸が存在していて、例えば世代といっても、今、安藤さんが言われたように、同じ世代の中でも特に分かれてしまっているのですね。

 わかりやすいので、あえて超エリート層の話をしましたけれども、私のG型・L型大学の理論で言えば、圧倒的多数は大学に行ったものの就職先がなかなかなくて、平均的な大学でいうと、実際に大企業に行けているのはたしか3割ぐらいです。3割ぐらいしか行けなくて、残り7割の子は、正規なのだけれども、中堅・中小企業に行きます。たしか3年間で3割ぐらいやめてしまうのですね。実はそこは流動的な雇用市場に放り出されていきます。

 一方で、そういうグローバルな世界で活躍できる子は、大企業就職の呪縛が弱まって、どちらかというと割といい感じの状況になっていて、例えば同じ若い世代の中でも、Gの世界でもっと高く上がれ、天まで上がれと乗っかってしまう子と、割とローカルに沈殿する子の間にある種の格差分離みたいなことが起きていて、多分、そういう対立軸のほうが、それこそ今のブレグジットの話とかトランプ現象においては説明しやすくて、あれは明らかに労使ではないのですね。何か知らないけれども、アンチ・グローバル・キャピタリズムを言っているのは、どういうわけか保守党と共和党で、普通、説明しにくい現象が起きてきている、そんな感じがしています。

 となると、これは今までの議論と同じことなのですけれども、いわゆる形式的な労使、ある種の労働者を代表している人たちがこの人です、形式的に使用者側を代表しているのがこの人たちですという枠組み自体が物すごく有効性を失っていると思っています。だとすると、一方で意思統合しなければいけない。そうすると、一番の理想は、確かにけつの穴の小さくない代表者を選ぶということなのですけれども、その一方で、私もいろいろな審議会の経験上、それこそ何とか団体とか、そういうのを背負ってしまうと、出てきた委員というのは、いろいろな決め事で。大体、かたいところほどこういうところに来ると文章を読む人が多い。そして事務局が書いた文章の頭には「経済界としては」という枕言葉が必ずついていたりする。経済人の私からみても首をかしげるような内容でも。そういう現実があるので、そこは代表概念というのをいわゆる代理に近い概念で言うのか、それとも要は信託型の代表概念で言うのかというところはぜひとも突き詰めてもらったほうがいいというのは、私も小峰先生と同じ意見です。

 なおかつ、だとすると、言い方は悪いけれども、けつの穴が相当大きくて、労労対立なり使使対立みたいなものもちゃんと自分の中で両方とも実感としてわかっていて、なおかつ、それぞれをある種統合できるだけの見識なり心の柔らかさというのか、頭の柔らかさがある人が出てきてくれないとだめだということになろうと思うのです。となると、当然、個人に対するリクワイヤメントがすごく高くなるということと同時に、これも安藤さんが言われたように、相当いろいろな情報をここで集めなければいけないという感じがします。

 もう一点は、資料関連で言うと、毎回思うのだけれども、データが頭数のデータなのです。私は今の日本の労働政策をこれから先、10年、20年語るときに、頭数の議論というのはあまり重要ではなくなってきていると思っていて、やはり雇用の質なのだと思います。そうすると、雇用の質を問うときに、いろいろなセグメント別に押さえておかなければいけないのは、やはり賃金水準の問題と流動性の問題です。

 たしか、この別の研究会のときにお願いして出てこなかったのは、例えば企業のサイズ別に流動性、離職率がどのくらい違うのかというデータをちゃんととるべきで、日本の雇用は流動性が低いという神話があるのですが、私が実際、企業再生の現場とかで見てきた現実は、中堅・中小以下の企業においては正規雇用でも流動性が既に高いです。サービス産業においては既に流動性が高いです。そうすると、実は流動性が低いという神話は、ひょっとすると公務員とか一部の大企業の一部の業種に限られた話であって、もう既に流動性がかなり高いということになります。そうすると、流動性と賃金水準。賃金も、年収だけではなくて、例えばパートタイムになってくると、年収よりまず大事なのは時間単価です。

 あるいは雇用上のプラクティスの問題でも、正直言って、古賀さんがいるから言うのではないのですけれども、企業再生をやっていて、労組のあるところは安心なのです。組合があるのでめちゃめちゃなことを企業はやっていないので、とんでもないことが起きない。ある意味では、リストラの議論をしても、組合がちゃんとしていれば、そこと協議していくと意思統合ができるからいいのですけれども、危ないのは組合のないところです。ここは、労働実態についてデューデリをちゃんとやらないと、すごいことが平気で起きています。あるいはブラックなことが平気で起きているのが普通なのです。ブラックなことが平気で起きているのだけれども、そういった状況をある意味では見逃してこないと、従来であれば、会社が潰れてしまったりという問題があったので、それこそ前も申し上げましたが、労働基準監督署というのが現実にはダブルスタンダードでやってきたという歴史があるので、要するに実態のところです。そこの議論をやっていかないと、頭数の比率だけ言っていても、実際、誰がどんな働き方をしているのかというのを。くどいようですけれども、今後、日本の国が雇用の頭数で苦しむということは当分起きないと私は思っています。それは、私自身が東北地方とかああいうところで中小・中堅企業の再建をやっていて、失業問題があの経済不振世界で顕在化する感じがしないのです。圧倒的に雇用の質の問題です。だとすると、雇用の質に関するデータというのですか、そのファクトをどれだけちゃんと踏まえた議論ができるかというのはぜひお願いしたい。

 たしか、解雇問題でも、労働審判の金額が幾らかということを調べられましたけれども、ああいう数字は、本来、普通に常に把握されているべき数字だと思うので、そこはぜひお願いしたいなと思っています。

 ちょっと長くなりましたが、以上です。


○小峰座長
 どうぞ。


○山川氏
 代表性の問題についてです。先ほど座長がおっしゃられたように、それぞれが利害を代表するということにはやはり限界があるのではないかと思います。先ほどの意見とか利害の把握ということですが、そのあたりですと、データとか調査とかを活用しうる。もちろん、委員がきちんとそちらの利害を反映していただけるようなことも含まれるでしょう。データとか調査とかヒアリングも含まれるかもしれませんが、いろいろなものを併用して把握をする。ただ、その次の、意見を集約して何らかのプロポーザルをつくるときには、どこかの部分はある意味では譲ってもらわないといけないということもあるし、この部分を強調するというディシジョンメーキングをやらざるを得ない。そのときには、いろいろな意見がデータとして出てきましたということだけではどうにもならないので、そのあたりはまさに審議会の議論の役割かなと思います。

 その際に適切な委員の選出をということはそのとおりなのですけれども、それを求めるだけですと、何となくお題目だけになりそうな感じもするので、具体的にどういうことが適切なのか。1つ考えられるのは、今のこととの関係では、データに基づいた議論を委員の方々にもしてほしいといいますか、あまり起きそうもないようなことをあげて、労使双方、こんなことが起きたらどうするのだみたいな話になると、あまり議論が進まないような気がします。現実のデータからするとこういう問題があると双方で言っていただけると議論が建設的になるのではないかと思います。そのことによって、ある部分はギブ・アンド・テークみたいなことはあるのですが、それは労使のギブ・アンド・テークというか、政策のポリシーミックスの中でのギブ・アンド・テークのお話になるのではないかという感じがします。その場合、労使それぞれのシンクタンクの役割というのも非常に重要になってくるのではないかと思われます。きちんとデータを準備して、審議会用の資料を出していただいて議論ができるということになると、代表性の機能も増すのではないかと思います。かつ、それによって集約の議論も建設的に進むのではないかと思います。

 以上です。


○小峰座長
 中西先生。


○中西氏
 これはかなり本質的な話ですよね。私も冨山さんのおっしゃられることに同じ感覚を持っています。従来の、経団連とか業界団体のクライテリアというのはある意味では成立しないといいますか、呉越同舟みたいな業界団体とか、経団連の中でも幹部になるのは、いわゆる伝統企業の大企業であり、こうしたストラクチャーから出てくる意見というものに違和感を持つ経営者とそうでない経営者がはっきり分かれています。使用者側も労働者側と同様に均一ではなくなっていますが、それは当たり前だと思うのです。同じような業界構造でたくさんの企業が生きていけた時代はもうとうに終わっており、そういう中で、業界の中で生き残れるのは1社か2社という状況になっています。当然、そういう立場で考えてみると、働く人に対する目配りのやり方みたいなことが企業の競争力そのものに直結しているので、ある意味で、そういう企業の競争力の本音のところを業界団体で議論できているかというと、できていないと思います。労働政策審議会の代表の選び方についても、従来型で何ら問題ないというのは大変難しい話ではないかなと思います。

 あわせて、最近、働く側の話としても、先ほど議論に出た流動性や賃金水準について十分なスタティスティックスがありません。時々びっくりするのは、チャイルドプアの議論をする際に年収レベルで200万を切るような方々がそのボリュームゾーンとして存在しますが、この人々の職業的バックグラウンドが何なのかについて、業界団体の幹部同士で議論していても十分によくわからないのです。ですから、まずは事実を把握するためのスタティスティックスのところから見直しが必要ではないでしょうか。私は素人ですけれども、そのように思います。


○小峰座長
 どうぞ。


○大内氏
 今、御議論を聞いていて、それぞれごもっともで、特に労労・使使問題とか、労と使の境目もはっきりしなくなるとかはそのとおりで、ここで我々が本当に考えなければだめなことは、三者構成というのを維持するのかどうかなのです。三者構成では、特に労使二者の対立というのがやはり前提なのです。労使間で合意はしたほうがいいのだけれども、基本的に利害が対立している。ILOが誕生したのもそもそも20世紀初めでありますし、その当時の生産の現場というのを考えたら、これはまさにブルジョアとプロレタリアの対立の世界です。階級的に格差があることが前提で組織ができているのです。現在は、それと全く同じではないというのは、そのとおりなので、だから変えろというのはもちろんそうなのですが、三者構成の持っていた意義というのはやはりあったのだろうと思います。そこは、ここでは時間がないのでとても言い切れませんけれども、三者構成は多くの国でもやっているわけですし、そこのメリットというのはあったわけです。今、御議論を聞いていくと、三者構成は要らないという話になっていきそうなのですけれども、本当にそれでいいのか。

 ただ、労働者の多様な利害を反映させるために多様な代表者を出すという議論を、三者構成の枠で何とかやろうとするとしても、私はそれは機能しないと思っています。多様な労働者の利害を反映した代表者が出てきて、労使で話し合うとか調整し合ってやっていくというのはうまくいかないと思います。

 実は労働立法というのは、もともと大田先生の質問にもあったのですが、理論的には労政審を通す必要はないわけで、国会議員が立法をしたり、政党主体でやっていくということもあるわけです。若者が政党を作ったり、団体を作ってロビー活動をやって立法を促すという方法もあるわけです。そういう別の立法プロセスとの比較で,労政審の三者構成というのを考えていく必要がある。私は別に三者構成の絶対的な擁護論者ではありませんけれども、それを変えていく、あるいは捨てていくということになるならば、一歩立ちどまって、そのメリットを考えてもいいのではないかということです。

 もう一つだけ。コーポラティズムの話がありましたけれども、ヨーロッパは組合の構造が企業別組合ではないわけです。産業別組織が中心で全国レベルで組織されている。そこで、そういう産業全体を代表する組合として,その内部での調整をやっているのだと思うのです。三者構成を維持するために、恐らく、私は労働組合が内部でいろいろな対立がある中でそこをまとめ上げて、集約して、労働者全体の代表として意見を言えるということが実は大前提で、さきほど三者構成擁護論を言いましたけれども、実はそこがなければやはり三者構成は苦しいなというところもあるわけです。そこは、実は労働組合の力を発揮してもらうところでもある。つまり、三者構成を維持できるかどうかは労働組合の力量にかかっているのではないかと。ちょっと偉そうなことかもしれませんけれども、私はそういうことを考えております。


○小峰座長
 この点は、私、先ほどのと意見は同じなのですけれども、三者構成がいいと言うにしても、変えようと言うにしても、例えば三者構成を維持するのだったら、今までやってきたからとか、ILOで言われているからやりますというのではなくて、こういう議論をするのに三者構成は一番ふさわしい枠組みなのだという論拠をちゃんと示した上で維持するというのが非常に重要だと思います。

 それから、ちょっと質問なのですけれども、三者構成と言うとき、ILOは政労使と言っていて、日本は公労使で、何か微妙に違うのですね。これというのは、違うものをあえて三者構成という名前だけ同じにして言っているのか、それとも実態はそんなに変わらないのか、その辺はどうなのでしょうか。


○小林労働政策担当参事官
 同じ三者構成という言葉を使っておりますが、おっしゃるとおり、ILOのほうが一般的に使っているのは政労使でございますので、日本の場合の審議会の構成としての公労使という意味では違うと考えてございます。条約上の要件は、三者構成ということで特に労使が対等でということでございますので、そこのところは批准をしている身としては担保できていると考えているところでございます。


○大内氏
 そこは本当に痛いところで、なぜかというと、もし政労使でやっているとなると、公益委員は要するに行政,あるいはそれを支配している政治側と同じだということになるのです。そう説明すると政労使になるのです。しかし、公益委員はそうではない独立した存在だということに一応したいわけですね。だから、ILOに則してやってしまうと少しまずいのだけれども、ILOに則していると言わなければいけないという苦しい状況があるのだと思います。 山川先生、もし違っていたらご指摘ください。


○小峰座長
 どうぞ。


○山川氏
 私も同意見でして、政とは何かということ自体、それほど突き詰められていないのかもしれませんが、もう亡くなられたある大先生は、日本は政労使ではなくて公労使である、むしろそれがいいのだということを、外国に向かって力説していたということがありました。それは恐らく政治的な、完全に中立性というのは難しいと思いますけれども、例えば、先ほどの労使同数にしないという話をした場合に、政権がかわった場合には逆のしっぺ返しが起こるのです。繰り返し囚人のジレンマゲームにおける協調性みたいな話があります。そうすると、ある程度政策の安定性みたいなものを考える上では、今の公がいいかどうかというのは全然別の話としても、政よりは公のほうのメリットというのもあるのではないかという感じはします。


○森田氏
 よろしいですか。


○小峰座長
 はい。


○森田氏
 今の点ですけれども、日本の場合には、政治と行政というのは違うものだというふうに位置づけられていて、そして、各省の主任の大臣のもとにある審議会の場合には、その行政のほうの公が中立的という位置づけだと思います。ただ、政治のほうが公についてそのまま承認しないケースがあって、それが幾つかの審議会で設けられていますけれども、国会同意人事ということになります。公益委員の場合には通常は特別職の公務員になりますけれども、国会同意の場合には公務員法の適用が一部排除されることになりまして、例えば守秘義務などはかからないとか。その意味でいうと、少し違うものとして日本の場合には位置づけられていると思います。これは、議院内閣制のあり方と歴史的な経緯というのがヨーロッパの場合と違うということで、そこは非常に巧妙に政労使を公労使というふうに言いかえていると思います。

 もう一点ちょっとよろしいでしょうか。

 先ほど委員の代表性の話が出ておりました。これは、三者構成のこの種の審議会の場合、幾つかあるのですけれども、この資料で言いますと、例えば4ページの黄色いところの「ILOの三者構成の原則」の下のほうですね。「88号」と書いてあるほうですけれども、その下の3のところに「それらの審議会における使用者及び労働者の代表者は、使用者及び労働者の代表的団体が存在する場合には、それらと協議の上それぞれ同数が任命されなければならない」という書き方をしておりまして、いわゆる委員が誰を代表しているか、委員が代表している母集団から正統性を得ているかどうかということがかなり重視される仕組みになっているかと思います。したがって、例えばこの人は非正規の労働者を代表しているというふうに厚生労働大臣が任命しても、それでもいいのではないかということになるわけですけれども、それだけでは本当の代表性は担保されないだろうと。いろいろな審議会は、その団体が推薦をするという仕組みになっているわけでして、そこのところがその代表性の問題をどう考えるかというときに問題になってくると思います。ある種の団体がかなりの労働者なり使用者側の利益をカバーしていればいいわけですけれども、先ほどお話がございましたように、労労の間、使使の間で対立が起こってきたときには、誰が本当の母集団であるか、そこの代表性というものが非常に微妙になってくるわけです。かといって、この人が代表しているであろうという形で、大臣なり何なり、事務局が委嘱したり任命した場合に、果たして本当にその人が委員としての利益といいましょうか、その主張というものが正統性を持つかどうかというのがかなり問われるところだと思いました。これは、この制度を考えるときに相当慎重に代表性の問題と選任の方法というものを考えていかなくてはならないかと思います。


○小峰座長
 いいですか。


○安藤氏
 今、三者構成をどうするかみたいな議論になっていますけれども、個人的には、現在の三者構成か、それ以外かではなく、三者構成でももうちょっといいやり方というのは多分あると思うのです。それとほかの手段を比べないといけないと思っています。

 そして、個人的な見解では、労働組合側でも講演会をさせてもらったり、シンポジウムに出させてもらったり、経団連のほうでも仕事をさせてもらったりして両方とおつき合いがあるのですが、結局はわかり合えないと私は思っています。

 というのは、労働組合の方、労働者側の人というのは、会社を経営したことがなくて、人を使ったりしたことがない。究極の判断をしていないような気がするのですね。もう一方、会社を経営している使用者側というのもやはり偏っている。私の意見では3種類しかいなくて、昇進競争に勝ってトップまで上り詰めた人、自分で起業して会社を潰さない力量がある人、そして親が会社をやっていた二世や三世、こういう人に普通の労働者の気持ちはわからないだろうということで、お互いの意見を出し合うというのは避けられないことだと思います。だからこそ大事なのは公益委員だと思っていまして、場合によっては、労使が同数であっても、公益委員はもっと多くてもいいのではないのかと思っています。

 特に、今ある問題に対処するだけではなくて、時代の変化を先取りして、先回りして対策を考えるとか、またルールを考えるとか、もしそういう視点を持つのだったら、公益委員にももうちょっと多様なというか、いろいろなスペシャリティーを持った方に入っていただいて、そこできちっと議論ができること。また、労使が合意しなければ実質的に先に進まないというのが問題であるのだったら、十分に意見を聞いた後は、公益委員や政治が決めるという感じでもいいのではないかということで、三者構成を生かしつつ、最大限これを活用するとしたらどういう道があるのか、これも議論できたらいいのではないかなと感じました。

 以上です。


○小峰座長
 古賀さん。


○古賀氏
 冒頭発言させていただいたように、私は三者構成の原則というのは崩すべきではないという意見です。今の議論の中では、どうも労政審の三者構成だけを議論しているような気がしてならない。これも冒頭発言しましたけれども、幾つかの労働政策は、現実、政府の会議体で労働側の代表が全くいないところで決定をされ、その具体的制度設計を労政審がやっているようなところもあるわけです。それは三者構成にどのように照らし合わすべきなのかというところもぜひ私は議論していただきたい。そのことを要望しておきたいと思います。

 以上です。


○小峰座長
 大体時間になりました。何か特に御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、事務局からは何かありますか。


○小林労働政策担当参事官
 次回の日程につきましては、また御調整をさせていただいた上で追って御連絡させていただきたいと思います。

 本日は本当にありがとうございました。


○小峰座長
 それでは、これで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。  


(了)
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03-5253-1111(内線:7720、7718)

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