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2016年6月29日 第6回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

職業安定局

○日時

平成28年6月29日(水)10:00〜12:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)12階 専用第14会議室


○出席者

川口 大司 (東京大学大学院経済学研究科教授)
神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
水町 勇一郎 (東京大学社会科学研究所教授)
皆川 宏之 (千葉大学法政経学部教授)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・経済団体に対するヒアリング
  (日本商工会議所、全国中小企業団体中央会)
・労働者団体に対するヒアリング
  (日本労働組合総連合会)

○議事

○柳川座長 ただいまから第 6 回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところを御参集いただき、誠にありがとうございます。

 議題に入る前に、事務局から御連絡をお願いいたします。

○河村企画官  6 21 日付で人事異動がありましたので、御紹介させていただきます。こちらの検討会に参加させていただいているメンバーの中で、グルッと異動した者も 3 名ほどいるのですが、それも含めて御紹介させていただきます。

 派遣・有期労働対策部長に着任した鈴木です。派遣・有期労働対策部企画課長に着任した岸本です。労働政策担当参事官に移った小林です。雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長に異動した阿部です。労働基準局労働関係法課長、昔の労働条件政策課長のうち労働契約法を担当することになった課の大隈です。

 お手元の資料の確認をさせていただきます。資料 1 が日本商工会議所の御提出資料です。資料 2 が全国中小企業団体中央会の提出資料です。資料 3-1 、資料 3-2 、資料 3-3 が、日本労働組合総連合会の提出資料です。あと参考資料として冊子を 3 点、お土産として頂戴しております。おそろいでしょうか。

○柳川座長 議題に入ります。本日は、前半に中小企業団体からのヒアリング、後半は日本労働組合総連合会からのヒアリングを行います。

 中小企業団体として、日本商工会議所産業政策第二部長の小林様、同じく産業政策第二部担当部長の福田様、また、全国中小企業団体中央会事務局次長兼労働・人材政策本部長の小林様、同じく労働・人材政策本部労働政策部長代理の菱沼様をお招きしております。本日は大変お忙しいところを御参加いただき、ありがとうございます。

 中小企業における正規労働者、非正規労働者の賃金の実情、又は同一労働同一賃金に対する考え方について、お聞かせいただければと考えております。早速、日本商工会議所様より御説明をお願いいたします。

○日本商工会議所小林産業政策第二部長 本日はこのような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。私からは、前半に中小企業の現状をお話させていただき、後半は今日のテーマである同一労働同一賃金について、お話させていただければと思っております。資料はお手元の A3 版の資料です。

 まず、図表 1 を御覧ください。私ども日本商工会議所が、今年の 4 月から 5 月にかけて会員企業 4,000 社ほどにアンケートを実施したものです。大体 2,400 社程度の回答があったものです。回答企業の約 8 割が社員数 100 人以下の企業です。なお、本日プレス発表する関係上、取扱いには少しお気を付けいただければと思っております。最近の中小企業における人手不足の状況という資料です。円グラフの内側が昨年のアンケートで、人手不足と回答した企業が 50 %ありましたが、外側の今年のアンケートでは人手不足の割合が 55 %ということで、 5 ポイントほど上昇しています。人手不足が今年のほうが深刻になっている状況です。

 図表 2 を御覧ください。こちらは業種別に見たものです。オレンジの人手不足が 60 %を超えているのは、宿泊・飲食、介護・看護、運輸、建設が、いずれも 6 割を超えています。青の棒グラフが昨年度の状況で、ほとんどの企業が昨年度より人手不足感が深刻になっている状況です。

 図表 3 です。こちらは、こうした状況の中の賃上げの状況です。 2014 年度、 2015 年度とも、ほぼ 6 割の企業が賃上げを実施しています。 2016 年度の見通しについては、今年の 3 月にアンケート調査をしたところ、 44 %の企業が賃上げを実施するということで回答しております。未定の所が 31 %ほどありますが、これは昨年同時期の調査でも同じような傾向になっていますので、今年も 6 割近い企業が賃上げするのではないかと思っております。

 一方、図表の右側を見ていただくと、「賃金を引き上げる主な理由」とあります。人材確保・定着やモチベーション向上のためが 77 %、業績が改善しているとの回答は 26 %に過ぎなかったということです。こうした状況も勘案しますと、防衛的な賃上げという側面が強く、必ずしも収益の伸びを反映したものではないと思っております。

 また、資料にはありませんが、 5 月に日商で景況調査をしております。この調査によると、中小企業においては受注機会の損失や人件費上昇など、人手不足を原因とする影響の拡大、また消費低迷の長期化や新興国経済の低迷などにより、中小企業のマインドは依然として鈍く、先行きについても慎重な姿勢であるという状況です。

 図表 4 です。図表にあるように、中小規模企業の売上高や経常利益は依然として低水準であるので、日本商工会議所としては取引価格の適正化を通じた中小企業の収益力向上や労働生産性の向上により、早期に賃上げを行う環境を整備することが最優先の課題であると考えています。

 中小企業においては、企業が生み出す付加価値をどの程度人件費として分配するかを表す労働分配率は約 8 割に達しており、賃上げの原資となる利益が増えない現状では、総額人件費を引き上げる余力がない企業がほとんどだと思っております。仮に同一労働同一賃金を導入した場合においても、直ちに総額人件費の引上げを行えるような中小企業というのは多くはなく、非正規労働者の待遇を改善したとしても、賃金原資となる価格転嫁並びに生産性向上の結果が不十分であれば、今度は正社員の待遇やモチベーションに悪影響が生じる可能性があることにも留意する必要があると思っております。このような中小企業の経営状況を是非御勘案いただければと思っております。

 図表 5 以降で、同一労働同一賃金について御説明いたします。同一労働同一賃金については、各地からさまざまな意見が寄せられています。資料にはありませんが、中小企業経営者の意見としては、「一見同じ仕事でも、責任の重さや会社への貢献は人によって異なる」「海外の仕組みをそのまま導入できるのかどうか心配である」、また「同一労働の範囲が裁判になるまではっきりしないのではないか」「訴訟などの労働紛争が増え、対応に追われるのではないか」といった声が聞かれております。

 これに対し、同一労働同一賃金について、 2 23 日の一億総活躍の国民会議において三村会頭が発言させていただいた概略が図表 5 です。 「同一労働同一賃金」という考え方が、非正規労働者に対し「不合理な理由による不利益な扱いをしてはならない」という趣旨であるならば、総論としては理解することができます。問題は、同一労働の定義が明確にできるかであり、その定義が明確でないままに、例えば「合理的な理由」の立証責任が企業側のみに課せられるとすれば、現場に大きな混乱を引き起こします。終身雇用や年功序列との関係をどう整理するのか、さらには、キャリアコースや勤続年数の違いなどによる「不合理ではない」賃金格差についてガイドライン等で具体的に整理できるのか、これらはいずれもそう簡単ではないが、是非ともこの場で実行していただきたいと考えております。本件によって、中小企業の労務対策上の負担が過大なものとなることが懸念されます。不要な労使紛争を未然に防止し、経営の予見可能性を確保するためにも、是非とも慎重な検討をお願いしたいと考えております。

 また、付加価値を生む力である「生産性」という視点で、処遇を考えることも重要です。格差是正の観点から、例えば職業訓練の充実等を通じて、非正規社員の生産性向上を支援することも、解決策の一つです。以上が 2 月に申し上げました「同一労働・同一賃金」に関する日商の基本的な考え方です。その後、こちらの検討会において、先生方が海外の仕組みや事例を研究され、ガイドラインの作成をご議論されていると伺っておりますが、中小企業にとって、競争力の源泉はまさに人材にありますので、働き方や人材育成に関する日本ならではの強みが失われないように留意しつつ、不合理な待遇差についてガイドラインなどを整備いただきたいと存じます。

 私どもは先ほどのアンケートの付帯調査として、図表 6 にあるように、同一労働同一賃金に対する企業の意識ついて聞いておりますので、ご紹介いたします。

 まず、会員中小企業が、賃金差に「合理性がある」とした項目です。こちらは青色の棒グラフですが、上位の 3 つは、「責任」が 76 %、「本人の生産性」が 76 %、「将来への役割の期待」が 51 %でした。一方で、企業が合理性の「立証が難しい」とする項目も 3 つあり、「本人の生産性」が 47 %、「将来への役割の期待」が 43 %、「責任」が 38 %となっています。御覧のとおり、このほかにも回答割合が少なくても、「立証が難しい」と考える様々な項目が挙がっており、中小企業経営者の間では、同一労働同一賃金の考え方や、これまで積み重ねてきた社内への雇用慣行への影響などについて不安が大きいというのが現状です。

 中小企業では、現場での創意工夫、努力により、既に多様な働き方が行われております。重ねてのお願いとなりますが、ガイドラインの策定については中小企業の現場の混乱を招かないよう、本日お話させていただいた状況を踏まえていただき、中小企業経営の実態を踏まえた、明確で分かりやすいものにしていただくと同時に、中小企業経営者が同一労働同一賃金の考え方をよく理解した上で対応できるよう、普及啓発の時間を充分に確保していただくことをお願い申し上げます。私からは以上です。ありがとうございました。

○柳川座長 ありがとうございました。続きまして、全国中小企業団体中央会様より、御説明をお願いいたします。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 全国中央会の小林です。この度は、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会でヒアリングの機会を頂きましたこと、厚く御礼申し上げます。政府では、一億総活躍社会の実現に向けた働き方改革として、同一労働同一賃金の実現をうたっております。全国中小企業団体中央会では、内部の労働専門委員会等において、まだ同一労働同一賃金をテーマとする意見集約、検討は行っておりません。これらの対応について、統一見解や取りまとめがなされていない状況です。今回のヒアリングにおいて、組織としての統一見解を申し上げることができないことをお許しいただきたいと思います。

 私ども、全国中央会の組織の御紹介をさせていただきます。 1 ページです。根拠法は、中小企業等協同組合法、中小企業団体の組織に関する法律に基づいて設立されている特別認可法人です。昭和 31 年に設立して、約 60 年になります。組織構成としては、 47 都道府県に中央会があり、全国団体が会員です。都道府県中央会の傘下には、事業協同組合などの中小企業組合が会員になっており、事業者でいえば 272 5,000 社の構成員を持っており、全国の中小企業 385 万の約 7 割を組織している団体です。 2 ページは組織の使命ですので、後で御覧いただければと思います。

 最近の調査の結果について、若干御紹介いたします。 3 ページです。 5 月の中小企業月次景況調査です。これは約 2,600 名の事業者や事務局から調査しているものです。都道府県中央会の傘下の協同組合、商工組合の役職員からの調査で、前年同月比での景況、売上高、収益状況についての調査結果です。ホームページで公表しています。雇用の情勢等も調査しておりますので、御覧いただければと思います。

4 ページです。最初に、本日は同一労働同一賃金という賃金格差がテーマになっているのですが、特に正規と非正規との賃金格差が問題視されているところです。しかし、大企業と中小企業の従業員の賃金格差も依然として存在し、大きな社会的な問題であると認識しております。私が中央会に入ったのは 35 年前ですが、そのときには大企業と中小企業の従業員の賃金格差が大きな問題として、二重構造が問題視されていましたが、この問題は一向に解決されておりません。中小企業経営者は企業収益が上がれば、従業員の給与を引き上げます。経営者は経済見通しが立てば、優秀な人材の確保、生産性の向上のための設備投資も行います。

 大企業では、ここ数年はアベノミクスの影響を受け、また政府からの賃上げの要請もあり、従業員の賃金引上げが行われているところです。しかし中小企業、特に地域の中小企業、小規模企業からは、アベノミクスの経済恩恵を受けていないという声を聞きます。政府からの賃金引上げ要請、ここ数年の最低賃金の大幅な引上げにより、地域の賃金相場は引き上げられ、収益財源がない中で中小企業は賃金引上げを余儀なくされ、対応せざるを得ない状況がずっと続いております。

 製造業では、中小企業、小規模企業の多くが下請企業として存在しております。円高などで景気が悪くなると、元請取引先から、下請取引価格の引下げ要求があります。それに対応しなければなりません。原材料の価格、燃料費などの変動費は上昇する、しかし引上げ要求に対応せざるを得ないため、固定費の縮減、特に役員報酬のカット、人件費を抑えて対応せざるを得ないのが実情です。

 景気がよくなったとしても、下請取引価格の引上げは行われず、元請企業からは、更なるコストダウン要求がきます。これにも対応しなければなりません。どのようにして従業員の給与を上げなければならないのか、多くの中小企業経営者は苦慮しているのが実情です。

 現下の経済環境の下で、アベノミクスの効果が感じられないだけでなく、イギリスの EU からの離脱問題により大幅な円高、株式相場の乱高下、 EU からの離脱の手続がどのように進むのかなど、不透明な要素も多くあります。

 世界経済の先行きに対する見方は依然として慎重なままで、政府、日銀の対応や EU 各国の連携の動きをにらみながら、神経質な取引が今後も続きそうであり、先行き不透明な状況にあります。リーマンショック以降と同様に、将来的な経済展望ができない現状が続くと、中小企業も設備投資をためらう、従業員確保についても正社員ではなく非正規従業員の増加により対応するなど、過去の対応方法からの脱却は難しいのが現状です。

 適正な取引環境が改善され、将来展望、見通しが明るくなれば、どのような中小企業経営者であっても、生産性の高い設備投資を行い、優秀な人材の確保、従業員の給与、待遇面の改善を行うと思っております。しかし、そのような環境にないということを御承知おきいただきたいと思います。

 政府においては、中小企業にもアベノミクスの経済効果が感じられる、すなわち適正な収益分配の社会構造、取引構造が改善されるよう、その改革と仕組み作りに全力を投入していただきたいと思います。そして、中小企業と大企業の賃金格差が少しても解消できる社会の構築に向けた政策を強く打ち出していただきたいと思います。とはいえ、この度は同一労働同一賃金をテーマとするヒアリングですので、現状で把握している一般的な中小企業の給与体系等について説明いたします。

 中小企業・小規模企業の賃金体系は、個々の中小企業により、その決定基準は様々な状況にあります。正規従業員の「基本給」「本給」については、地域の賃金相場、同業種の他企業の相場に加え、職務内容に応じた「職務給」、職務能力に応じた「職能給」、学歴給・年齢給・勤続年数給、業績給、成果給など、総合的に勘案して構成されています。諸手当についても、通勤手当、住宅手当、役職手当、賞与、退職金、これも個々の中小企業によって、その支給金額、支給の有無についても様々な実態があります。

 一方、非正規従業員の賃金を見ると、これも企業の賃金体系に違いがあり、説明するのは難しいのが実態です。有期契約のフルタイム従業員、継続雇用の有期契約による高齢者従業員、パートタイム従業員、アルバイト従業員など、雇用契約の形態の違いにより異なっているのも、その一因です。

 そのため、正規従業員と非正規従業員という大きな括りでは、その扱いが異なり、待遇面での違い、格差が生じているのも事実だと認識しております。また、賃金引上げ、昇給といった側面でも、違いは大きいと認識しています。

 厚生労働省の就労条件総合調査によると、約 7 割の企業で賃金表があり、その賃金表に基づいて賃金改定を行っているとのことですが、賃金表すらない中小企業は数多くあるのが実態です。実際に従業員規模が小さい企業では、ほとんど賃金表がないのが実態だと思います。中小企業・小規模企業にとっては、そのときどきの経営実績、収益状況に応じて「基本給」等の引上げを行っており、その昇級の実態等も、一様ではないのが実情です。

 また、正規従業員に対しては賃金表に基づく昇級基準があったとしても、非正規従業員に対しては、その賃金表や独自の賃金表に基づいて賃金改定を行っている企業は少ないというのが実情だと思います。

 次のページです。なぜ正規従業員と非正規従業員との格差が生じているのかです。これは、正規と非正規従業員とでは、仕事の内容、役割、責任、能力などで異なることにより、その賃金の格差があります。しかし、正規従業員と同じ仕事をして、より生産性の高い非正規従業員が存在すること、手当面でいうと、非正規従業員には通勤手当を支給しないなど、言わば不合理な処遇を受けている方が存在することは承知しています。

 言い訳ではありませんが、経営者側は、支給したくても支給できない経営環境にあるのだと思っております。中小企業経営者にとって、「人件費の増大」は「固定費の増大」という認識が強いことが、大きな要因だと認識しています。人員増大が「固定費の増大」にならないよう、一時的な受注増大は正規従業員の採用で対応するのではなく、従業員の残業、非正規従業員の増大で対応しようという考え方があるのだと思います。

 一時的な需要に対する非正規従業員の獲得は、地域の賃金相場の募集によって対応しています。契約期間の満了が近くなれば、個別の労使交渉により延長するか、雇止めをするかを選択する形になっています。一時的な需要が恒常的な需要になれば、非正規から正規従業員への転換交渉をすることもあるでしょう。一方、非正規従業員の多くは残業や配置転換、責任の重さ等を理由に、正規従業員になることを拒むケースも多いと伺っております。

 次のページです。一方、非正規従業員がなぜ増大したのかについては、幾つかの要因があると思います。 1 つは団塊世代の退職です。高齢者は継続雇用されるとしても、その多くは有期契約に基づく非正規従業員となっているケースが多いこと。また、パートタイム労働者の多くは女性であり、配偶者控除、第三号被保険者などの税・社会保障制度などの問題から、労働時間や収入調整を行い、労働時間が少なくなり、企業としてはより多くのパートタイム労働者を雇用せざるを得なくなること。中小企業では正規従業員を採用したくても、なかなか中小企業には来てくれない、見向きもされないという状況にあり、有期契約労働者、派遣労働者等によって人員不足を解消しようとしていることなどが、要因として挙げられます。そのため、労働契約法の改正、高齢者雇用促進法の改正、パートタイム労働法の改正等が行われ、その対応が取られているところだと承知しております。

 次に、企業の正規と非正規従業員との格差の説明責任についてです。従業員各人の賃金を何によって決めるかということは、言い換えれば何を理由として個人間の賃金額に差を付けるかということです。その企業内における個人間賃金格差の決定基準を明示することが、賃金制度の機能だと認識しております。明示することが人事管理上は重要なこと、格差の決定基準を明示することからこそ、従業員は自分の賃金に納得し、より高い賃金が得られるようモチベーションを高めるという効果が期待できます。

 しかし、先ほど説明したとおり、単に「基本給」「本給」の名称しか持たない企業では、その名称では賃金の決定基準が明らかではないし、また例えば「職務給」という賃金項目を持つ企業であっても、その運用実態を見ると必ずしも職務の違いによる賃金決定とはいえず、勤続年数、年齢等で賃金が決まっている例もしばしば見られます。つまり、各中小企業の賃金制度は、必ずしも名が体を表すとは言えない実態があります。

 このようなことから、経営者に格差の説明責任を負わせることは、それぞれの中小企業における賃金制度の見直し、従業員に納得してもらえる賃金体系を構築した後でなければ難しいという環境を御理解いただきたいと思います。

 ガイドラインについてです。そのためにも、当検討会で検討が予定されているガイドラインが、企業における格差是正への一方策であり、企業経営者における説明責任のよりどころになるのではないかと期待しております。是非とも中小企業にとっても対応可能なガイドラインを御検討くださいますよう、お願い申し上げます。しかし、中小企業にとっては非正規従業員だけの待遇改善、格差是正を行うだけの状況にないということも御理解いただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたとおり、人件費は固定費の一部です。収益が増加しないと、固定費の増加は期待できません。言わば、人件費というパイの中での配分の方法の見直し、それも正規、非正規を問わず、全ての従業員が納得でき、企業経営者の説明責任が果たせる賃金制度が構築されなければ、実現できないものと考えています。政府では、正規従業員への待遇を維持しながら、非正規従業員への格差是正をうたっておりますが、これは内部留保がある大企業では簡単かもしれません。しかし、中小企業にとってはかなりハードルが高いということを御認識いただきたいと思います。

 また、同一労働同一賃金については、マスコミ等で報道されてはいるものの、多くの中小企業経営者は同一企業内での正規・非正規の格差是正ではなく、欧州諸国のような、全ての従業員間の格差是正と捉えていること、また多種多様な賃金制度を採用している中小企業にとっては、早急な対応が難しい企業も多いのが実情です。十分な周知期間、対応の時間、言わば時間的な猶与をもって対応してくださいますようにお願い申し上げます。

 さらに幾つかの意見を申し上げます。中小企業の若年者雇用に与える影響です。若年者の給与、賃金は、採用の際、特に地域相場を意識した賃金となっている企業が多いのが実情です。若年者の給与は、職務内容を意識した賃金体系というより、採用確保を目的とした賃金として、いわゆる将来の期待値を加味した賃金水準を取っています。このような現状を説明して、果たして非正規従業員の方々が納得してくださるか疑問に感じております。

 また、中小企業の高齢者雇用に与える影響です。高齢者の賃金についても同様です。特に継続雇用の従業員については、雇用保険の高齢者雇用継続給付との意味合いから、賃金が引き下げられるケースが多いのが一般的です。これをどのように説明するのかについても、十分な配慮をお願いしたいと思います。

○柳川座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、委員の皆様から御質問等がありましたらお伺いします。

○中村委員 ありがとうございました。実態がよく分かりました。全国中小企業団体中央会の小林様にお伺いします。頂いた資料の 10 ページに、中小企業の経営者は、同一企業内の正規・非正規の格差ではなく、全ての従業員間の格差の是正だと捉えているということです。その理由を改めて御説明いただけますか。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 御質問をありがとうございます。後ほど連合の方が説明されるということです。欧州型の同一労働同一賃金は産別間の賃金相場ができているということで、他の企業に移動しても大体同じような給与水準が担保されています。そういう同一労働同一賃金というのを連合が主張しているというのは、多くの経営者が知っているところです。

 先ほども申し上げたように、同一企業内での正規・非正規での同一賃金の在り方というよりも、他の企業間とか、同業種間の同一労働同一賃金というように捉えている経営者がかなり多い。戸惑いを持っているというのがよく聞く話しです。ここのところ 5 月、 6 月、会員傘下の組合の通常総会へ出ていると、企業経営者の方々は、同一労働同一賃金というのはどういうことだ、実現できないと言われます。

 先ほど申し上げたような、賃金体系自体の作り方は、今はいろいろな形のが出ています。基本給というものと、支払方法も年俸制を採っている所もあったり、非常に職務の内容、同一労働という捉え方が難しい状況になっています。どうやって説明するのかというのは、かなりの経営者が悩んでいるということです。

 ただ、非正規の方々の待遇が悪いというのは、企業経営者は承知している、せざるを得ないという環境にあると言っても過言ではないと思います。 4 割程度まで非正規の方々が増えた理由というのは、支払いができないからです。安定した経営が難しい状況になっている中で、解雇が難しい、どうやって雇用を維持していくのかという部分で、非正規の方が増えたということだと思います。その辺は先生方には御承知おきいただいていると思います。

 その中で同一労働同一賃金をどうやって実現するのかというのは、根底では非常に難しい。同じ固定費、人件費の中で、パイが決まっていますから、非正規従業員の賃金等を上げようと思うとかなり難しい。悲鳴を上げているのが実情だと思います。

○柳川座長 よろしいですか。

○中村委員 はい。

○柳川座長 その他にはいかがですか。

○水町委員 ありがとうございました。説明が大切だということと、中小企業でも対応できるような、分かりやすい具体的なガイドラインを作っていただきたいということについて、心強い御意見を頂いたと思います。いろいろな所でお話を聞いて、大企業と小さい規模の企業との賃金格差の状況について見ると、基本給については先ほど、若い人は地域相場プラス期待・貢献というのを考慮して、地域相場で、入口の時点では決まっていることが多いと。入口の時点で、基本給についてはいわゆる正規の人たちと、いわゆる非正規の人たちでそんな差がない。

 かつ大企業みたいに昇給がどんどん勤続によって上がっていく状況ではないので、大企業の中での基本給格差と比べると、中小の小さい規模の所では、かなり実態に合ったような形の基本給にしないと良い人が来てくれない。正社員に余り高い給料をあげすぎても負担が大変になるというので、その辺はいろいろな実態を見ると、そんなに差はないかという気がします。

 諸手当のところで、ほぼ正社員に丸ごと払っているのと、非正規の方々には一切払っていないという差が大きい。その諸手当の比率が、賃金総額の中でかなり中小の企業では大きいのではないかと思います。

 そんな話をいろいろ聞いていくと、弁護士の先生とか、社労士の先生方の御指導の下で、手当について一定の枠を用意しながら、それについては正規の人には出すけれども、非正規の人には出していないという対応をされているという話を、いろいろな所で漏れ聞きます。その辺の現状の認識、例えば手当について、今、手を付けないような状況になっているとか、場合によっては説明不可能。大企業で手当から基本給へという移行の動きもありますが、その辺の動きがどうなっているか、現状はどうなのかというのを少し教えていただけますか。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 水町先生の御質問にどれだけ回答できるか分かりませんけれども、諸手当の部分はいろいろな諸手当が確かにあります。先ほど例に挙げた通勤手当ですが、皆さん御承知のとおり派遣の方々はほとんどが、通勤手当は本給の中に含まれていて、別立てしていないのが実情だと思います。これは派遣会社の考え方なので何とも言えません。

 中小企業の場合でも、通勤手当については払っていない所もあるように伺っています。これは、募集の段階での採用条件として、もともと支給しないとか、近場から来ていただく。また、地方へ行けば行くほど交通手段がないので、車での通勤ということで、ある程度の前提としてどこから来るか分からないというので支給していないということがあります。これは不合理な取扱いだと思います。通勤手当を片方に出して、片方に出さないというのはおかしいので、これは直すべきだと思います。

 ただ、そのように直せということになると、多分企業経営者が採る方法というのは、正規のほうに支払っていたのを止めてしまって、本給に込みにして、両方に支給しないというのも選択の方法としてあります。何らか変な指示やガイドラインを出すと悪い方向に使われる可能性もあるので、その辺は御注意いただきたい。

 それから、諸手当というのはいろいろな手当があります。家族手当とか、一番大きいところの賞与とか退職金の制度は、非正規従業員の方々にはほとんど付いていません。これをどう考えるか。企業によって、例えば賞与については労働組合、中小企業の場合は労働組合が余りないですけれども、従業員との契約に基づいて何箇月出すという形で、契約段階から提示しているとともに、その改定も労使で話し合って決めていると思います。非正規の方々はほとんど払われていません。

 これを、成果というか売上げ、収益が出た上での報酬として考えているのか、定期的な給与として考えているのかというのは企業の違いがあると思うのですが、実情としては非正規従業員には払われていないという部分があります。ただ、中小企業の経営者というのは、従業員の数が少なくなれば少なくなるほど、フレンドリーな企業になっていますので、片方の正規従業員に出して、もう片方の非正規従業員に出さないわけにもいかない。例えば、正規従業員に何箇月分出しているのに対して、非正規従業員の方々は 2 万円とか 3 万円とか、一時金的なボーナスを支給して、利益の分配をしている所も多く見受けられます。

 それから、退職金については完璧に勤続年数に応じた積立金、給与の一部として退職給与を最終的にお支払いする。積金的な要素が強いということで、これも非正規の方々にはほとんどない。非正規従業員の退職金についてはどうなのだと聞いたときに、いやいや非正規従業員の中でも無期パート、短時間労働者で無期の契約をしている方々についてはそれなりに支払っていると伺っています。それから有期契約でも長期に関わって、契約法では 3 年になっていますけれども、継続していって長期になっている方々にはそれなりのお支払いをしていると聞いています。これも企業によって対応が違うのが実情です。

 でも、先生御指摘のように大企業は一切出していないでしょう。退職金についても、賞与についても、いろいろな諸手当については出していないという状況が多いと思います。

 先ほどちょっと申し上げたのですが、大企業と中小企業の賃金格差はこんなに大きいわけです。同一労働同一賃金というより、私が聞きたいのは中小企業の従業員が、もっと給与が支払われるような環境整備というのが、政策的には考える必要があります。賃金決定というのは労使交渉の問題です。それは、それぞれの企業経営の実情があるわけですから、その中でどういう手当として、どのように支払うかとか、本給はどういう考え方に基づいて払っているのだというのは、当然企業側は説明責任を負います。先ほど申し上げたように、賃金格差というのは、当然付けるべきなのです。

 モチベーションとか、仕事の能力向上のためとか、経験年数に応じた賃金格差というのはあるわけです。ただ、大企業ほど中小企業の場合は正規と非正規従業員の賃金格差はないのです。フラットな状態になっています。それも、規模が小さくなれば小さくなるほど寝ている状態になっています。この改善をより一層進めるための政策投資をするとか、いろいろな施策を御検討いただくというのを、まず私どもはお願いしたいということです。

○日本商工会議所小林産業政策第二部長 先生に御指摘いただきました手当については、商工会議所で何か調査したということはないものですから、そちらについては申し上げられません。中央会様のほうからお話のありました点でちょっと補足をさせていただきます。私どもの資料の図表 4 をご覧ください。大企業と中小企業の売上高という点で考えると、大企業の資本金 10 億円のほうは、 2010 年から 2015 年を比較すると順調に伸びてきている現状がありました。

 一方で青い線の資本金 1,000 万〜 2,000 万円の比較的規模の小さな企業の売上高は横ばい、むしろこれは下がっているという現状です。こうした状況の中、経常利益を見ると、大企業は上がっています。これは、売上高も上がっているから当然上がっているということです。一方で売上高が変わっていない中小企業 1,000 万〜 2,000 万円についても、経常利益が上がっているということです。その背景を調べてみました。販売管理費の内訳をみると従業員の給与と賞与については基本的に伸びています。厳しい中でも、中小企業の従業員の給与・賞与については少しずつ上げてきています。

 それでは何を削っているかということなのですけれども、役員の賞与・給与を削ってきているというのが 1 点ありました。また、販管費項目の中には、「その他」というものがあるのですが、こちらも大きく削っているということです。法人企業統計上、これ以上細かく分析できなかったのですけれども、推測ではありますけれども、中小企業においては広告・宣伝費、接待・交際費というようなところを削っているのではないかということです。

 何を言いたいかというと、厳しい状況の中で売上高はなかなか伸びない中でも、中小企業においては従業員の給与・賞与については何とか伸ばしてきている。一方で役員の給与・賞与、広告・宣伝費、接待・交際費辺りで調整して、何とか捻出しているという状況を御理解いただければと思います。

○松浦委員 貴重なお話をありがとうございました。非正規の方々の処遇向上の一番のネックが財源だというお話は、ご指摘のとおりだと思いました。その上で 2 つ御質問させていただきます。全国中小企業団体中央会の小林様の資料の中で、スライド 4 の「適正な取引環境に改善され、適正な収益分配がなされる社会の実現」というところが、恐らく財源問題の一番の根っこであり、大企業、中小企業の格差の根底にある課題のようにみえます。この「適正な取引環境に改善され」ということを実現するために、どのような方策をイメージされているかをお伺いしたいのが、 1 点目の質問です。

2 つ目の質問は、スライド 9 で、説明責任が非常に重要だという部分と、加えてガイドラインがその説明責任の拠り所になるものであれば、使いやすいというお話があったと思います。さらに、説明責任を果たすためには、賃金制度が構築されなくてはいけない、ある程度制度的なものがないと説明ができないということ。

 一方で、賃金制度を作ることについては、 1 人、 2 人しか非正規社員がいない中小企業もある中で、相当な負担になる可能性もございます。いろいろな企業がある中小企業に対して、賃金に対する説明責任を果たすということを、どうすれば後押しできるのかについて、もし御意見があればご教示いただけるとありがたいです。ややこしいことを聞きましてすみません。どうぞよろしくお願いいたします。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 適正取引という部分では、法律改正という側面では 2 つあると思います。 1 つは優越的地位の濫用の部分で、独禁法の改正、独禁法の制度強化という側面だと思います。

 優越的な地位の濫用という部分では、課徴金などのいろいろな制度がありますけれども、ほとんど取締りがなされていません。ですから先ほど言ったような形で、中小と大手との取引関係でいけば、圧力的な行為が相当に散見されます。価格を下げろというのは常日頃言われています。

 もう 1 つ下請法の関係でいけば、アベノミクスの効果は株の価格も順調に回復をしてきた状況もあって、決算を見ても、大企業はどこも収益を上げている状況です。それを人件費や内部留保に回しているわけです。しかし、大企業は、下請企業に対しては原材料費などが上がっているので配慮してくれればよいのに、それも面倒を見てくれない。なおかつ人件費を上げるようと政府から要請され、人件費を上げたとしても、その部分の人件費の部分は下請価格に反映されていないわけです。

1 つの生産工程の中で、例えば塗装をするというのであれば、安定的に塗装をするために、始めと終わりはカラで出すような段取りが必要です。きれいに塗装するために仮塗装部分を 1 センチメートル持っていたのを、下請の企業に対して、大企業はこれを 5 ミリメートルにしろと指導がある。そうしたら、 5 ミリメートル部分の塗装費用が値下げできるので、下請価格を下げるような要求を平気で言ってくるわけです。僅か 5 ミリメートルのもので 1 円下げろ、何銭下げろというのが 1 個単価に出てくるわけです。これは、圧力以外の何でもない。取引をするのだったら他の会社がいくらでもあるというような取引圧力は、今なおかつ続いています。

 ですから、独禁法、下請法の改正をするという部分は十分これから対応する必要があるのだろうと思います。法の改正の中でなくても、運用としてもうちょっと基準を高めていくというような制度の見直しも必要だと認識しています。

 それから賃金制度を作ることは負担ではないかというのは、確かに負担になると思います。負担になるけれども、それぞれの企業の賃金体系の在り方自体、根幹からもう一度つくり直すべきだと思います。いろいろな労働関係法令も改正されていますし、就業規則の中の 1 つに賃金規定があるわけですから、ここで賃金の在り方をどのような形で見直すかそれぞれの企業がより明確化にしていくために検討していくことは必要だと思います。ですから時間をくださいと言っているのです。

 その上で私ども中央会も、会議所も支援、指導をすると思います。それからいろいろな団体、社労士などの団体が、それぞれの中小企業に対して、賃金体系や賃金制度をどのようにしていくのかを指導する。その上で、より従業員に分かりやすい形の賃金体系づくり、賃金制度の見直しに、それぞれが努めなければならないと思います。その上で、だからこういう賃金がこうやって上がっていくという説明をしっかりできるような状況にしておかないと、従業員もこれからは来てくれないです。そういう仕組みを作っていくことが重要なので、私は別に否定していませんし、大変なことでもやっていかなければいけないと思っています。これで回答になっているかどうか分かりませんが、以上です。

○松浦委員 ありがとうございました。

○日本商工会議所小林産業政策第二部長 私どものほうでも、政労使合意の件がありますので、担当部長のほうから御説明させていただきます。

○日本商工会議所福田産業政策第二部担当部長 状況については中央会から話があったとおりです。政労使合意に基づいて、経団連、商工会議所中央会と、適正取引の推進に取り組んでいます。日商も、全国 514 の会議所を通じて、政労使合意に基づいた適正取引の推進に今後も取り組んで参ります。

○柳川座長 その他に何かありますか。

○神吉委員 ありがとうございました。先ほどの松浦委員の質問と関連して、中央会から頂いた資料の 8 ページについてお伺いします。ここで、従業員の納得に何度か言及されていて、賃金は労使交渉の結果だからとおっしゃっていました。それは、労使関係の原則どおりで非常に重要な視点だと思います。日本の場合、賃金決定が非常に個別性が高いものだからこそ、各企業での格差是正にあたって、正規・非正規両方の納得感が非常に重要になってくると思うのです。ここの最後の○では、今後従業員に納得してもらえる賃金体系を構築することが課題として挙げられています。もし現在までの間に、従業員の納得を得るための仕組みなどがあれば、今後の展開の足掛かりになるかと思います。そういう具体例があれば教えてください。

 例えば、先ほどの例で、賞与が正規だと何箇月分、非正規に対しては金一封といった対応をしているときに、それは納得されているのか、そもそも納得されているかどうかについて、使用者側はどの程度気にしているのかといった実情を教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 納得するというと、労働関係法令に基づいて言うのであれば、一番最初に労働契約をしたときに、賞与があるかないかを明確にしているわけです。その中で金一封を出すと言ったら納得するのでしょう。出さないものだったのが、出してくるという形では納得いくのだと思います。こうして見てみると、正規は何箇月出ているではないか、それなのに金一封というのでは納得しないということもあるでしょう。この辺は後ほど来る連合の方に聞いていただきたいと思います。従業員が納得するか、納得しないかの問題であります。

 多くの中小企業の場合は、地場、それぞれの地域に根を置いているわけです。大企業のように事業所を撤退するというのは、会社の倒産、破産、廃業ということを意味します。大体がそれぞれの地域に根を置いて、事業所を設けて、地域の方々を雇用しているわけですから、その評判が悪くならないよう、また地域の方々に来ていただけるような、地域相場に合う形の賃金をお支払いし、なおかつ手当面でも、契約上はないものを 1 つ上積みするような形で維持しているというのが実情なのだと思います。それで納得していただけるかどうかというのは、正に個別の企業との関係になると思うので、難しいところです。連合の方に聞いていただければと思います。

○神吉委員 中小企業では、労使が一緒になって賃金体系を見直したりという経験は余りないと考えていいのでしょうか。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 ここ数年はないでしょう。従来は、採用イコール正規従業員だったと思います。そのときには、いろいろな仕組みの中での労使の交渉というのがあったと思います。現状は先ほど言ったように、なかなか中小企業に従業員の方が来ていただけないというのも 1 つあります。非正規に頼っているというか、非正規の比率が増えているのが実情だと思います。正直、それぞれの企業の労務担当責任者というのは、その賃金体系を作りたくても作れない。先ほど言ったように、人件費は固定費として押さえられていて、これだけしか出せない状況で、生産の受注は受けたとする。そのときに従業員を増やすにはどうしたらいいか。一時的な要因であれば、やはり地域相場の安い賃金の従業員を調達するという手段をとったから非正規従業員が増えているわけです。今は安易な方向に動いているというのは否めない事実だと思います。

 体系的にしっかりした形をとって、正規従業員だったら幾ら、非正規従業員だったら幾らで、何年たてばこうして賃金を上げていきましょうと、賃金体系について見直しているところもあるかも知れません。しかし、労働契約法が改正され、無期転換ルールが導入され有期契約従業員については 5 年を超えてはできなくなります。来年、再来年は一斉に有期雇用従業員の方は雇い止めされるケースが出てくると思います。それを従業員の入れ換えのチャンスだと思っている企業もあると思います。そのための賃金体系を作るまでは考えていない企業も多いと思います。そんな方法がいつまで続けられるかということなのです。

 先ほど申し上げたように、正規従業員の方々、非正規従業員の方々のいろいろな支払いの基準というものを、それぞれの企業がもうちょっとしっかり考え直さないと雇用できない状態になっています。労働人口が減っている中でそれぞれの地域、特に地方に行けば行くほど高齢化が激しいわけですから、どういう形で対応するのかというのは企業の存続の問題に関わってきます。それを、この同一労働同一賃金というテーマで挙げるのであれば良い機会で、賃金制度の見直しというので広く打ち出したほうが有効なのかなという意味で申し上げています。

○神吉委員 ありがとうございました。

○川口委員 日本商工会議所様に、資料の補足説明をお願いします。細かい所で恐縮なのですけれども、図表 2 の人材不足の状況を見ると、宿泊・飲食というのが一番上に来ています。 2015 年の数字は入っていないみたいなのですけれども、これは調査の対象になっていなかったのかというのが確認の 1 つ目です。

 もう 1 つは図表 6 です。確かに責任に基づいて格差を説明するのが合理的だと答えている方が多いです。立証責任が課せられたときに、立証するのが難しいと答える方も多いです。実を言うと、 40 %強の方は、逆に言うと責任に関しては説明できるというように答えていて、過半数の方は説明できると答えているようにも読めるのです。将来の期待というのは合理的なのだけれども、立証するのが難しいとも読めます。こういう読み方でいいのかどうかを確認させてください。

○日本商工会議所小林産業政策第二部長  1 点目の図表 2 の宿泊・飲食の部分なのですが、昨年はここを取り出していなかった関係で、 2015 年の調査結果はないということです。傾向として統計を出していれば、同じような傾向になっているのかと思っています。

 図表 6 については、「責任」の割合が 37.5 %で、逆に言えば 6 割近くの所が説明できるのではないか、ということではありません。基本的には難しいと理解しています。「責任」と言葉で言うのは簡単だと思うのですけれども、実際は何なのだということになると、かなり厳しいと思っていますので、立証する具体的な材料を用意するのが非常に煩雑ではないかと思っています。

 三村会頭が言っているのは、繰り返しになりますが、総論としては理解できています。例えばということで、先ほども手当のお話がありましたけれども、社員食堂を利用できるのが正規だけで、非正規には利用できないというのは明らかにおかしいだろうと。こういう不合理な待遇差についての分かりやすいガイドラインを是非作っていただきたいと申しております。例えば司法の場にならないと、基本的には判断ができないようなことになると、労務対策上弁護士を雇わなければいけません。それに加えて、裁判のための資料調べに 1 人必要となると、ただでさえ中小企業は人手が足りないところに、また 1 人取られます。そういうことが懸念されるので、今回作っていただくガイドラインについては、抽象的なものはできるだけ避けていただき、明確なものを作っていただきたいということを申し上げております。

 私どもの中小企業の会員の中には、同一労働同一賃金というと、全く同じにしなければいけないのではないかという理解があるようなので、ガイドラインが示された際は、普及・啓発の時間を作っていただきたいということです。よろしくお願いいたします。

○川口委員 中央会の方に質問です。最後のページで、先ほど中村委員からも質問があった点です。欧州型のものが入ってくるのではないかということで、経営者は驚かれているというお話がありました。ここの含意としては、同一企業内の正規・非正規の格差の是正ということであれば、適切な賃金体系の構築などを通じて、ある程度実現していくことができるだろうという含意だというように捉えてもいいのでしょうか。先ほど大企業と中小企業間の賃金格差の話も同時にされておられました。それを突き詰めていくと、欧州的な賃金体系であれば、企業規模間の賃金差というものも縮小していくことがある程度予想されるかと思うのです。ここのインプリケーションというのはどっちに捉えたらいいのかを確認したいのです。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長 そういう意味で申し上げているのではなくて、同一労働同一賃金という言葉は従来から言われている同一労働同一賃金、欧米型の同一労働同一賃金と思っている経営者が多いので、非常に拒否感を持っている。今こういうところで検討していること自体「嫌だ」と思っている経営者が多いということです。企業の数でいけば、 99 %が中小企業なわけです。中小企業は本当に数が多い。

 まともに取り組もうという企業もあれば、逸脱している所もあるわけです。いろいろな考え方を持って同一労働同一賃金に対して、受け入れようという所もあるだろうし、考えていかなければいけないだろうと思ってる企業も多いと思います。しかし、大方はすごい反発を持っているという意味で申し上げているのです。これは正確に伝えていかないとならないが、正確に伝えていくのも非常に難しい部分もあるという意味で書かせていただいた、ということで御理解いただきたいと思います。

○柳川座長 その他にいかがですか。

○皆川委員 本日はありがとうございました。 2 点確認させていただきます。中央会の小林様からの御説明で、例えば賞与や退職金については、中小では出している所が多いというお話がありました。賃金の決め方は、基本的に労使交渉で行っていくというお話もありました。その点について、お分かりになる範囲で聞かせていただければ幸いです。中小で賞与や退職金を出しているという実態があるときに、それは賃金表に何か統一的な基準があるというわけではなく、その都度出しているケースが多いというように捉えていいのでしょうか、あるいは賃金表や退職金規定があるケースもそれなりにあるということでよろしいのでしょうか。

 もう 1 つそれに関連してお伺いしたいのは、まだ、そうした統一的な基準がないという所に、そうしたものを作るほうがいいとか、作ったほうがいい、というような方向性を出したときに、本日も他の委員からの質問にもあったように、賃金に関する納得性というのは高まる方向に作用するとお考えでしょうか。

 もう一点は、労使交渉に関してです。例えば、中小企業の現状では、従業員代表とのコミュニケーションなり協議などによって、企業の賃金制度をどうするか。それは、賃金表を作るか作らないかというところもあるかもしれませんが、具体的な賃金実務の中で、従業員代表との労使交渉のコミュニケーションでは余り機能していないのではないかと察するところではあるのですが、その他の実情についてもお分かりになる範囲で教えていただけますか。よろしくお願いいたします。

○全国中小企業団体中央会小林事務局次長兼労働・人材政策本部長  1 つ目の、賃金の規定が中小企業に整備されているかというと、整備されていないと思います。厚生労働省が出している総合就業実態調査で、 7 割が賃金表があるとありますが、あれは企業でも調査協力しているような優良な企業だと思っていいと思います。賃金表のない企業のほうが圧倒的多数だと思います。あの統計データが正確なものかどうかというのはちょっと疑問を感じています。

 まず賃金表がないのと、就業規則上での退職金規定で、何箇月と正式に決めている所がどれだけあるのか疑問です。退職金を支給する規定だけにとどめる所もあるでしょう。これも十分精査する必要があると思うのです。先ほど申し上げたように、無期の雇用契約をしている方々については、退職金の規定はしっかりしています。中小企業退職金共済とか、いろいろな生保などで補填する、支給する部分の手当てをしていますけれども、有期契約の方々については、それは一切行っていない企業が多いと思います。

 規定上や契約上払えない形になっているので御苦労さんということで辞めていただく。ある意味きたない言い方かもしれませんけれども雇止めに該当するので、その期を円満にするためにお支払いをしているケースが多いのが実情だと捉えたほうがいいと思います。そのため、しっかりした仕組みづくりというのは、ある程度それぞれの企業に要求するというのも 1 つの方向だろうと思います。それが整備できていないので、していくべきではないかということで御意見申し上げています。

 それから従業員代表制なのですが、これも過去の労働条件分科会の御指摘があったとおり、中小企業の場合、労働組合の組織率が今は 1.8 を切っていますので非常に少なくなっています。従業員代表をどのように選んでいるかというのが非常に曖昧になっているのも大きな問題だと認識しています。経営者からみて親しい方に「あなたお願い」と決めているとか、互助会的な組織の代表者に従業員代表をお願いして、印鑑を押して頂いているというのが現状だと思います。これは、 36 協定で残業ができる職場を取るためには、どうしても従業員代表を選ばなければならない。それが「あいつに決めた」という方法になっているということです。後で労働組合に聞いていただければ分かりますけれども、非常にお叱りを受けているところです。

3 年前ぐらいから中央会でもいろいろな研修会などで、従業員代表の選び方はちゃんと選挙で選びなさいということを、機会を通じて指導しているところなのですが、なかなか改善しないところであります。それぞれの経営者は、個別の紛争を起こしたくないということで、個別の労使の話合いというのは、それぞれの代表者に対しては十分やっていると思います。先ほど納得性の話がありました。従業員数が多くない企業においては、しっかり個別にそれぞれの待遇、処遇等を含めて話し合っているのが現実だと思っております。

○皆川委員 ありがとうございました。

○柳川座長 ありがとうございました。時間となりましたので、日本商工会議所の小林様・福田様、全国中小企業団体中央会の小林様・菱沼様にはここで御退席いただきます。本日は御多忙のところ御参加いただきまして誠にありがとうございました。

                 ( 日本商工会議所・全国中小企業団体中央会退席 )

○河村企画官 次のヒアリング対象者である連合様がいらっしゃるまで少々お待ちください。

                           ( 日本労働組合総連合会入場 )

○柳川座長 続きまして、日本労働組合総連合会様より御説明いただきたいと思います。本日は総合労働局長の須田様、同じく総合労働局長の村上様をお招きしております。大変お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。非正規労働者の処遇改善に向けた取組や、同一労働同一賃金に対する考え方についてお聞かせいただきたいと思っております。早速御説明いただけますでしょうか。

○日本労働組合総連合会村上総合労働局長 ありがとうございます。御紹介いただきました連合の総合労働局長の村上と須田でございます。このような機会を頂きましてありがとうございます。 2 人で来たのは、法制担当と、春闘を担当している部署ということで 2 人でまいりました。本日はお時間を頂きまして、前半で均等待遇の法制化の考え方について私のほうから御説明させていただき、後半は、春季生活闘争の取組を中心に、具体的な事例についてお話を申し上げたいと思います。資料をたくさん配布させていただいておりますが、主にこのパワーポイントの資料を用いて御説明させていただきます。

 最初のページです。まず連合の紹介ということですが、現在、組合員は 686 万人で、 51 の産業別組織が加盟をしております。そのうち、分かる範囲で、パートなどの非正規の人たちがどれぐらいいるかといいますと 97 万人と、 100 万人近くになっているというところです。右のグラフで見ると、連合の組合員の中で 14 %程度が今は非正規の組合員だということです。

2 ページです。では、非正規雇用問題にどのように取り組んでいるのかということで、具体的なものを少し持ってまいりました。今回のように、非正規労働者の均等待遇の問題について法制化を求めていくということももちろんですが、職場で具体的に取り組んでいることとして組織化、そして処遇改善があります。組織化の取組をどうやって進めるのかということで、「職場から始めよう運動」を展開いたしました。また、様々な産業でもっと組織化を進めていこう、処遇改善を進めていこうという情報交流をしたり、全国各地を訪問して、非正規で働く皆さんと意見交換をするといったこと、さらに、組合員に入っていない派遣労働者の皆さんの声も聞くということで、右下の写真にあるような、派遣社員の「おしゃべり Cafe 」などの取組もしているところです。

3 ページです。均等待遇の問題ですが、私ども連合としては、雇用形態の違いによる格差を解消するために均等待遇の原則の法制化は必要だということで以前から求めてきたところです。具体的には、 2001 年の定期大会において、「パート・有期契約労働法」というものを作っていくべきだということで、その考え方を確認しています。また、労働者派遣法については、これまで累次の改正が行われてまいりましたが、その度に「均等待遇」原則の法制化ということを主張してきたところです。

 では、具体的にどのような中身を考えているのかということで 4 ページを御覧ください。パート・有期契約労働法というものの中では、パートタイム労働者・有期契約労働者の均等待遇の確保というものを目的とするということで、具体的にはパートタイム労働者・有期契約労働者の処遇について、労働時間が短いこと、また、雇用期間に定めがあることを理由に、通常の労働者と差別的取扱いをしてはならないということを規定すべきだということをまとめております。また、その際には、労使協議というものも重要視しており、過半数組合あるいは過半数代表者とともに協議を行って、非正規労働者の処遇について決めていくべきだということも確認しているところです。

 それが具体的にどのようなことなのかということを、 5 ページで説明します。「均等待遇」原則というふうに私どもとして求めておりますが、その中身は、同じ仕事をしていれば同じというだけではなくて、仕事が違っても、あるいは、仕事が全く同じでなくてもバランスを取るということが必要だと考えており、均等も均衡も含まれるべきと考えております。また、異なる仕事であっても、休暇や安全衛生など、基本的に格差を設けるべきではない労働条件もあると考えているところです。そういう中で、具体的に不合理な差というのは何なのかとか、同じ処遇というのはどういうことなのかということについては、産業の特性や、各企業の賃金制度の違い、また、働き方の多様性などもあり、法律で一律には決められないと考えております。その中で、やはり職場の実情を踏まえて、非正規の皆さんの声も聞きながら労使交渉、協議を経て、納得性のあるものにしていくことが重要だと考えております。ただその際、法制化して、処遇格差の解消を理由として非正規雇用労働者の労働条件の不利益変更というものがあってはならないというふうにも考えているところです。

6 ページです。 2001 年、 2003 年に、私どもはパート・有期契約労働法の考え方を取りまとめておりますが、それを更に今回の議論を踏まえて再確認するということで連合内にプロジェクトを作り、考え方を取りまとめました。その中で、 2016 6 16 日中央執行委員会で確認した考え方のポイントを御説明いたします。

 まず、法制化の方法です。同一労働同一賃金というと、いろいろ議論がありますが、私どもの考え方は、同一企業内での雇用形態間の処遇格差の禁止ということを基本としています。ただ、派遣労働者については、派遣先企業で直接雇用される労働者との均等待遇が必要だと考えております。適用すべき労働条件としては、賃金・一時金だけではなく、慶弔休暇などの休暇、通勤手当、福利厚生、安全衛生なども含めた待遇・処遇全般とすべきであろうと考えております。

 法規定の在り方としては、労働契約法に総則的な規定を置いて、関係法もその見直しを行ってはどうかと考えています。総則規定は強行規定であるとともに、補充効も持たせるべきだと考えているところです。また、労働条件や人事管理に関する情報の偏在を解消するということや、法律の実効性を高めるということからも、合理性の立証責任は使用者が負うものとすべきであろうと考えております。また、今、ガイドラインの議論をされていると伺っていますが、ガイドラインというものは労使が現場で合理性の有無を判断する際の参考資料と位置付けるべきではないかと考えているところです。

 次のスライドです。連合として処遇差の合理性の判断についてどのように考えているのかということです。 2003 年に「『均等待遇』の判断基準と実践の方法」というものをまとめ、 2016 年にも基本的にはこの考え方でやろうということでまとめたものです。上のほうに、「合理的理由」となるのではないかと考えられるものとして、職務の違い、職務遂行能力の違い、成果・業績の違いなどを挙げております。職務の違いについては内容の難易度なども含まれると考えています。また、勤続などももちろん含まれるだろうと考えています。「合理的理由」とならないものとしては、学歴や性別、また、所定外労働の可能性の有無等々があるのではないかと考えています。一律に合理的理由となるとは言えないものとしては、配転や転勤の可能性の有無や雇用管理区分の違いです。これらについては、それぞれ企業の実態を見ながら判断すべきではないかと考えております。

 また、均等にすべき処遇・労働条件は、先ほども申し上げましたが、合理的理由がない場合には同じルールを適用すべきものとしては、賃金、一時金、休暇、各種手当等々があるのではないかと考えています。一方で、合理的理由の有無にかかわらず同様の制度を適用すべきとしては、安全衛生、通勤手当等々があるのではないかということです。

8 ページです。どんなことが合理的理由になるのだろうかということを議論してまとめておりますが、これらはあくまでも目安であり、こういったことを参考に、労使で話し合って、より納得性を高めていくことが重要ではないかと考えております。また、その際には、職場における労使交渉・協議というものが大変重要でありまして、その中では非正規で働く皆さんの声も、きちんと踏まえた自主的な話合いが重要であろうと考えております。

 その他として、賃金規定すら整備されていない事業所もまだまだあるということからすれば、就業規則において賃金規定を整備するということを求める必要があるのではないかということや、過半数代表者が、きちんと職場の声を代表するものになっているのかどうか等も検討すべきと考えています。また、均等待遇にするからといって、非正規労働者の自主的な賃金切下げといった不利益取扱いを心配する声もありますので、そういったこともクリアしていかなければならない課題ではないかと考えております。私のほうからは以上です。

○日本労働組合総連合会須田総合労働局長 引き続きまして、須田のほうから春闘を中心に、組織されているところの労使間の具体的な取組ということで御説明したいと思います。

 パワーポイントの 9 ページに、闘争方針の一部を抜粋していますが、お手元の「連合白書」の最初のページに、白書の構成という見開きの部分を参照ください。正規・非正規という前に、現状をどう認識しているかということで、言わずもがな、少子高齢化、労働力不足に対する問題意識です。 2 番目に、生産性と労働分配率という所に折れ線グラフがありますが、これは、労働者一人当たりという見方をずっとやってきたのですが、いわゆる非正規と言われる人が、働く人の 4 割という状況になってきましたので、青い線が「投入労働時間」で、それに対する「労働時間当たり GDP 」というグラフを作っています。そうすると、時間当たり生産性が下がっているということです。つまり、処遇の問題だけではなくて、働き方の問題を含めて何とかしなくてはいけないという問題意識を持っているということです。

 その上で 9 ページに戻っていただくと、 (1) 3 行目の後半ですが、「総合的な労働条件改善の取組が必要」だという表現をしています。それから、 (2) の最後の行ですが、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動にチャレンジする」としています。いわゆる春闘が始まって 61 年目になります。還暦を越えて、新たなサイクルの初年度ということで、個別労使が個別交渉だけではなかなか労働条件の向上が難しいという弱点を克服するために、 1955 年に 8 単産が集合して産別共闘という形で春闘がスタートしたわけですが、逆に言うと、これまでの春闘は金属を中心に、パターンセッターと呼ばれるところがあって、その回答の横にらみ、あるいは横並びということがずっと続いてきました。その結果については、もう 1 つの春闘の回答のプレス資料で、第 6 回回答集計結果という 2 枚のとじた資料があるのですが、これの最後のページの 4 ページにも折れ線グラフがあります。お分かりになりますでしょうか。

○柳川座長 資料 3-2 4 ページです。

○日本労働組合総連合会須田総合労働局長 これは連合結成以来の平均賃金方式の賃上げの結果なのですが、黒い線の丸のドットが付いているのが連合全体です。点線が 300 人未満の組合、我々は中小組合と呼んでいます。連合全体と中小との賃上げ率の差が 95 年ぐらいから広がってきていて、この差の累計が中小と大手の賃金水準差ということになっています。累積で、この面積部分です。これは結局、大手追従・大手準拠、要するに平たく言うと、サプライチェーンの中の川上の企業を超えられないという変な慣行になってしまったということが、この 60 年間の結果なのです。

 これを打破しなくてはいけないというのが 2016 年春闘の最大のテーマでした。 3 月のヤマ場のテレビの報道等々で、トヨタの系列がトヨタと同じベアという報道があったと思うのですが、あれは今年の春闘の最大のねらいだったということです。そのことは、正規・非正規にかかわらず、働く人のモチベーションをどう高めて、どう能力を発揮してもらうかということにつながるわけです。そうしたことから、 10 ページにあるとおり「非正規共闘」を立ち上げ、非正規の人の具体的な取組方針を掲げました。

 処遇といっても、やはり、いわゆる不本意非正規と言われる方々が一番望んでいることは、雇用の安定ですので、一番先に掲げたのが雇用安定に関する項目ということで、正社員への転換ルール、無期契約への転換促進です。連合加盟組合も無期転換には取り組んでいるのですが、残念ながら、労基法の 18 条の関係でいうと、労働条件は必ずしも変える必要がないというのが現行制度ですので、正社員として最初から採用した人を「正社員」と呼び、有期から無期に変わった人は、私の発想からすると、正社員に転換すればいいではないかと思うのですが、現実は「無期転換労働者」ということで、社内で、正規社員、無期転換社員、有期契約社員の 3 つの区分が現実としてはあるということです。それでも、有期よりは無期のほうがいいだろうということで、この正社員化・無期化ということで取り組んでいます。

 その上で、無期も含めてですが、均等処遇に関する事項ということで、実は今年、一番力を入れていたのは 2 の一時金の支給です。従来取り組んでいましたが、いわゆる寸志のような一時金が多かったのです。社員と同じように勤続を加味するとか、仕事の責任や役割に応じた一時金というもの、正社員のような制度としての一時金が少なかったものですから、これを制度として導入せよということに今年は力を入れてやったということです。

 もう 1 つは、 5 の有給休暇の取得促進です。これは制度の問題というよりも、現場の各ラインの班長さんと言われるようなマネジメントをやっている末端の管理職の人が、基本的なワークルールを知らないという問題があります。有期契約なのだから有給休暇なんかないだろうと勝手に思っている中間管理職が多いのです。したがって、ワークルールの徹底ということを含めて、この有給休暇の取得促進に今年は取り組んだということです。

 この結果については、先ほどの集計結果の次のページに、 1. 「賃金引上げ」という欄があります。ここの「昨年対比」という所を見ていただくと、残念ながら賃上げは前年比でマイナスという結果です。それに対して、次のページの 2. 「非正規労働者賃金引上げ」という、いわゆる時給と月給の部分ですが、ここは昨年対比でプラスということになっています。正社員の賃上げよりも非正規の賃上げにウェイトを置いた結果といえます。言い方は少し気をつけなくてはいけないのですが、昨年の 5 月に、 2015 春闘の中間まとめをやりました。そのときに、光を当てなくてはいけない人は誰なのだという提起をいたしました。それから約 1 年かけて、この 2016 闘争方針を決めたわけですが、結論から言うと、中小企業で働く人と、非正規で働く人、ここにより光を当てなくてはいけないのだというのが 2016 闘争方針の特色です。

 お手元にいろいろな事例集をお配りしていますが、「パート・有期契約労働者等の組織化・処遇改善取組事例集」を御覧ください。この資料の 36 ページに、情報労連に入っている KDDI の組合の事例を載せています。これはマスコミにも報道されていますが、正社員の賃上げを要求せず、非正規の賃上げだけを要求した事例です。これが 2015 年です。 2016 年は、正社員の賃上げも要求しました。回答は、正規も非正規も同額ということでした。正に大手のそれなりの賃金水準にある所は、平たく言うと、「放っておいてもいいじゃない」と。それよりも、中小で働く人、非正規の人の賃金をどう上げるのだということに力を入れてやったということです。

 また白書に戻っていただいて申し訳ないのですが、連合が賃金水準を考えるときに、今、 4 つの項目を重視しています。 1 つは、 116 ページの最低生計可能な賃金です。リビングウェイジということで、マーケットバスケットで、埼玉で調査したものを 100 とし各都道府県の物価指数に置き直して設定しています、最低限これをクリアするようにということを言っています。本質的には「誰でも時給 1,000 円」というのは 2007 年から言っているのですが、さはさりながら地域の経済実態等々もあるので、まずはこの最低生計費 ( リビングウェイジ ) をクリアしようということが 1 点目です。

 その次には、同一労働同一賃金という意味でいうともっと広いのですが、 120 ページの「職種別賃金」を設定しています。例えば上の自動車の、自動車製造組立、これは 11 社の現実の水準ですが 31 2,400 円、これは 35 歳の人です。自動車製造組立という仕事をやっている人は 31 万円を目指していこうじゃないかということで、職種別賃金というか、世間相場という言い方もしていますが、こういう水準を目指そうということです。ただ、自動車総連の中で組立の 11 社というと、正にメーカー 11 社のことですから大手ですので、この水準にはそうすぐには行かないよねということで、例えば 119 ページにある、厚労省の賃金センサスで出ている都道府県別の大ぐくり産業別の時給の水準、あるいは連合独自という意味でいきますと、 59 ページに連合加盟組合の 38 5,000 人の個別賃金データを収集していますので、それを分析し、都道府県別の大ぐくり産別の現実の特性値を出しています。

 それぞれの地域の中で、それぞれの企業のポジションというものがあると思うのです。企業城下町のトップという企業もあれば、先ほど言ったサプライチェーンの末端で頑張っている所もある。したがって、第 1 十分位を目指すのがいいのか、第 1 四分位がいいのか、中位数なのかというのは、それぞれの労使で議論すべきと考えています。これが、そういう意味での世間相場ということです。それぞれの水準がキープできている場合に、いわゆる実質賃金ということで、物価上昇分についてはきちんと増やすということです。

 その上で、最後の目標は可処分所得の向上ですから、それは支給額を増やすか、税と社会保障を工夫するかという取組になるということで、 4 段階で賃金水準をどう考えるのかということをやっていただいているということです。これは、正規・非正規にかかわらずということでやっているということです。

 最後になりますが、白書の 46 ページです。これは今年の闘争方針の参考資料で、中期的な課題ということで、エッセンスだけ書いています。課題意識等々は先ほど申し上げましたが、超少子高齢・人口減少という中で、どうやって生産性を上げていくかということが、企業の存続、あるいは雇用の確保、処遇の改善につながるという前提を置いて、 47 ページの 2 . です。労働組合版の多様な働き方ということを掲げております。その中の 2 つ目の所、働く側の就労ニーズに応じた柔軟で多様な働き方の実現を図るためには、役割と貢献に応じた処遇などについても検討を深める必要があると考えています。ここにも、先ほど村上からありましたように、あらゆる差別の禁止の徹底を図る。それから、使用者は、雇用・処遇に対する均等処遇の説明責任を有すると。労働組合は、運用結果の開示を含め、透明性を高め、従業員の納得性を高めるということに、もっと労働組合もコミットせよということを提起しています。

 これは春闘だけで片が付く話ではありません。個別の労使で、多分 3 年とか 4 年をかけて、いろいろな議論をした上で、それぞれの産業、企業によって働く現実がそれぞれ違いますので、それぞれの現場に応じた多様な働き方と処遇を考えてほしいということです。そのときの原則はこうだということで、今年、示しましたので、これをベースに、今、個別に議論をしていただいているということになります。

 それから、もう 1 つ、資料 3-3 というのは、先ほどパワーポイントの 10 ページで御説明した内容の、 5 月末段階に各産別から報告が来ている具体的な取組の事例ということで記載しております。大変申し訳ないのですが、個別の単組名、企業名についてはオープンにできないというところもありますので、どういう取組で、どういう結果を出したのかということを参考に見ていただければと思います。私のほうからは以上です。

○柳川座長 どうもありがとうございました。それではただいまの御説明について、委員の皆さま方から御質問等を出していただければと思います。いかがでしょうか。

○川口委員 お忙しい中、丁寧な発表をありがとうございました。勉強になりました。村上局長と須田局長、それぞれに質問があります。村上局長から御説明いただいた資料 3-1 7 ページ、処遇差の合理性の判断要素について御紹介いただいています。これは実践の方法ということで、かなり実践のときにも参照になることを念頭に置かれて作られたのかなとも思うのです。

 合理的理由となるものというところで、非常に納得のいくことが列記されており、合理的理由とならないものの中に、例えば学歴、所定外労働の可能性の有無、あるいは雇用契約期間の違いといったものが入っております。実態としてはこういったものが賃金差の決定に当たっては大きな役割を果たしていると思うのです。何でこういうずれが出てくるのかを考えてみると、恐らく合理的理由となるものというのが全て正確に測れるのであれば、合理的理由とならない学歴などは、例えば生産性の部分、労働の負荷とか、あとは責任の度合い、職務遂行能力の違いとか、こういったもので全て吸収されるはずなので、理屈としては学歴というのはそれらがきちっと制御できるのであれば、学歴などはあまり合理的な理由にならないという、一種の理念の部分もあるのかなと思っております。

 仮に合理的理由となるものが正確にはなかなか測定ができないような状況になったときに、合理的理由にならないものも、実務においては理由として挙げざるを得ないのではないかというような印象を少し持って、この表を拝見していました。その辺についてお考えをお聞かせいただければありがたいのです。

○日本労働組合総連合会村上総合労働局長 ありがとうございました。今御指摘いただきました 7 ページ、何が合理的理由になるのだろうかということについては、組織内議論、討議もしまして、喧々諤々いろいろな議論があったところです。合理的理由になるならないと分けていますが、異論や、さまざまな意見があったということは事実です。その中で先生がおっしゃっているように学歴だとか、所定外労働の可能性があるかどうかだけで処遇差を設けるのはやはりおかしいのではないかという意見もありました。しかし実際、所定外労働をしなくてはいけないような責任だとか、役割だとか、あるいは実際に対応したといったことに対して評価すればいいわけであり、その可能性があるかないか、学歴だとかということで評価すべきではないのではないかということで整備しました。

 どうやって測っていくのかという話ですが、数値ではなかなか測れないものではないかと思っています。非正規労働者を組織化して処遇改善を進めている組合のお話を聞くと、きちっと話し合っていけば、そこはこういう理由だったらこのぐらいの処遇差があっても、それは当然だよねというような納得感が形成されていくと考えています。合理的理由になるものが説明しきれないから、形式的な、たとえば学歴などで、差を付けざるを得ないのではないかという話には、正直なっていかないのではないかと思います。きちんと話し合えばそこは納得感が高まっていくのではないかと考えています。

○川口委員 どうもありがとうございました。続いて須田局長に御質問申し上げたいのですが、白書の内容も御紹介いただきまして、ちょっと同一労働同一賃金と離れてしまうかもしれないですが、白書 12 ページの図 10 を拝見すると、これは政府の資料などでもよく配られている表で、労働生産性が上がっているけれども、実質賃金が上がっていないと。これは恐らく実質賃金を実質化するときに、消費者物価指数で実質化されているのではないかと思うのです。長期にわたって石油の価格などが上がっていって日本の物価は上がっているのですけれども、必ずしも日本の国内で生産している物の値段が上がっていないと。それで実質労働生産性は国内で生産している付加価値を労働時間の投入で割ったものですので、ちょっとずれがあるということで、同じ価格指数で実質賃金を作ると、 GDP を作っているのと同じ価格指数で実質賃金の系列を作ると、 2 つの系列というのは非常に似たような動きをしています。

 ですので賃金がなかなか上がらないという現実は全くそのとおりでそれ自体は問題だと思うのですけれども、問題の所在が労働分配のメカニズムがおかしくなったからというよりも、やはりグローバル化など外的な市場環境が変わ

ってきた中で、なかなか労働者に分配できないような現実が出てきてしまっているというようなこともあるのではないかと思っております。

 その辺の外的環境が変化していく中で、労働者間の格差がどのように変化していくのかに関しての議論は、連合の中でどのように進んでいるか、何かあれば御紹介いただけるとありがたいと思います。

○日本労働組合総連合会須田総合労働局長 ありがとうございます。今、交易条件の悪化が 1 2 あるというのは承知した上で、先ほども言い方を気をつけなければいけないと言いましたが、議論したときに経済成長が昔ほど右肩上がりではなく鈍化している、潜在成長率でいくとゼロぐらいの現状の中で、……労働分配率が一定だとするならば、ゼロサムゲームだということです。例えば大手の輸出産業が高い賃金を取れば、その分マイナスがどこかに行くという労働問題だという認識がある。したがって先ほど言ったように光を当てるべき労働者は誰なのだと。大手はいいよねと。中小と非正規だと言ったのはそういう意味で申し上げました。

○神吉委員 どうもありがとうございました。今日いろいろと御報告と資料をいただいて見たところ、やはり雇用の安定が労働者が一番求めていることだということからして、無期化、さらに進んで正社員化が一番のポイントなのかなと私は理解しました。

 それが法制化のところに反映しているものとして、 5 ページで「均等待遇」を中心に置いていて、ただここだけ「均衡」 ( バランスを図ること ) が出てくるのですが、正社員化が一番いいと考えたとき、連合がこの均衡待遇をどのように位置付けているかを伺えますか。というのは均等待遇、正社員化があるからこそ、 2 つ矢印があって、上は同じものを同じくということ、下は違うものでも同じくということをおっしゃっているのだと思うのです。そこで違うものを違うなりにバランスを取れたものにするというよう考え方があるのか、それを望ましいと思っていらっしゃるのか、そこを伺いたいと思っています。

 それが関係してくるのが 6 ページで、直律的効力に関して言及されていますが、これは均等、すなわち同じものを同じくであれば、補充的効力は認められるでしょうが、これが均衡、バランスを取るというものであった場合に、直律的効力はどのように位置付けられるのでしょうか。

7 ページ、これも均等にすべき処遇、労働条件ということで、同じルールを適用、あるいは同様の制度を適用という帰結しか出されていないのですが、均衡待遇に対してどのようにお考えかを教えてください。

○日本労働組合総連合会村上総合労働局長 ありがとうございます。まず 1 点目の 5 ページの均等・均衡の話です。その前に正社員化が必要だということは、ここでは均等・均衡をメインに出しておりますけれども、確認した文章の中では均等・均衡だけで、均等待遇だけで非正規労働者の問題は解消するものではないと考えております。正社員化であるとか、あるいは社会保障の問題など、様々関連して取り組まなければならない課題はあると思っています。そのうちの 1 つの課題が均等待遇だと考えております。

 均等・均衡についての 5 ページの部分は、言葉足らずのところはありますが、 1 つ目の矢印の所で、ここに均等も均衡も入れているつもりでありまして、賃金水準の差を仕事に応じたものに近づけるといったことも、均衡の考え方だと思っております。均等も均衡も使う方によってニュアンスが異なる言葉なので難しいのですが、要は同じだったら同じというだけでは処遇改善は進まない部分がありまして、バランスというものも 1 つ入れていく必要があると考えております。

○神吉委員 同じ仕事をする労働者という前提なのですね。

○日本労働組合総連合会村上総合労働局長 ただ同じ仕事というものも、その瞬間の業務が同じだったら、同じ仕事なのかということを考える必要があります。ローテーションでたまたま同じ仕事をしているけれども、こちらの A さんは 1 年たったらまた別の部署に行く人だったり、 B さんはずっと同じ仕事を同じ職場でする人であるというケースでも、瞬間的に見れば同じ仕事となってしまっている。その同じ仕事をどう見るのかということは大変難しいので、そこは下の四角になりますが、その実情に応じて考えていく必要があります。その中で均等と均衡が必要だということです。

6 ページ、補充的効力の所は、御指摘のように、均衡をどう考えるのかによって変わってくるとは思っています。 7 ページに移りますが、均等にすべき処遇・労働条件の所で、同じルールを適用、同じ制度を適用と考えていますけれども、要は同じ賃金とは何なのかということがあって、同じ賃金制度を適用すれば、同じ賃金ではないかとか、私どもはそのように考えています。そうするとそれなりのバランスの取れた賃金にしていくということが補充的効力になっていくのではないかと考えています。具体的な条文をどうするかについては、専門家の先生方に考えていただかなくてはいけないことだと思っております。実現したい中身としてはそのようなことだと考えております。

 ただ 7 ページの同じルールといったところでは、かなり幅があると考えています。瞬間的に同じ仕事、同じ職場で同じものを作っていたり、同じラインにいれば、必ず同じ時間給にすればいいという話では、必ずしもないと思います。勤続年数をどう考えるか、能力をどう考えるのかなど、さまざまなことを反映しながら、納得性があるものにしていくことが必要と考えております。

○中村委員 ありがとうございました。今のところに絡んで 2 点伺いたいのです。 1 つが、 7 ページの合理的な理由とならないものの中にある採用手続の違いというのは、具体的にどういうものをイメージされているのかを教えていただきたいのです。もう 1 点は、 6 ページにある派遣労働者については、派遣先との均等待遇をうたっていらっしゃるのですが、 7 ページの均等にすべき処遇・労働条件には、例えば配置のルール、昇進のルールなどが出てきて、これも含めて派遣先と均等というのは、どのように整理されているのかを教えていただきたいと思います。

○日本労働組合総連合会村上総合労働局長 ありがとうございます。まず、採用手続で、よく指摘されたのが正社員は厳しい試験、面接などを通して採用されたのに、店舗採用のパートタイム労働者は簡単な面接で採用しているではないかということです。その採用手続の違いは合理的理由になるのではないかというような議論がありました。その議論に対して、採用手続はそうだったかもしれないけれども、恐らくやっている仕事の中身、責任ということは異なっているだろうから、単なる手続の違い、形式的な入口の違いで差を付けるのは合理的ではないのではないかという整理をしました。ですから今後、労働契約法 18 条で有期から無期に転換いく方々について、こういうところを考えながら、処遇を考えていくことが必要ではないかと考えています。

 それから派遣労働者については、賃金は確かに派遣元で決めていますが、実際に働く職場は派遣先で、そこで食堂を使えないなど、そういったところから始まって、様々な処遇格差があるということからすれば、派遣先もきっちり考えていかなくてはならないということが 1 点目です。

 では具体的に 7 ページの賃金、一時金などもどうなのかというところでは、派遣先の直接雇用労働者がどのような賃金水準なのかも考える必要があります。また配置のルールなどについては、義務は派遣元にあるけれども、無期雇用の派遣労働者が派遣先で、長く働いているときに、派遣先の直接雇用労働者と同じように評価をするとか、ステップアップ、キャリアアップしていくために同じように教育訓練するとか、あるいは徐々にグレードの高い仕事をしていってもらうとか、そういったことも配慮することが必要ではないかということが、具体的な中身です。今のところ考えているのは、派遣元、派遣先についての処遇・労働条件と考えているイメージというのはそういうことです。

○柳川座長 いただいているお時間は 12 時までですが、大変貴重な機会なので申し訳ないですが、最大 10 分ぐらい延長させていただいてもよろしいですか。 12 10 分までには終わらせるということです。先に御質問がある方は全部出していただいて、まとめてお答えいただくということでやりたいと思います。

○松浦委員 先ほど派遣の話が出たので、その点について私もお考えをお伺いしたいと思います。 6 ページのスライド、これは従来からの御主張だと思いますが、「派遣労働者については、派遣先企業で直接雇用される労働者との均等待遇をいう」というように記載があります。これに関して 2 点お伺いしたいと思います。

1 点目は、先ほどの議論の中にもありましたが、大企業と中小企業の規模間格差が非常に大きい一方で、派遣労働者の方の賃金はどちらかというと、職種別・横断的賃金に近い形態になっているかと思います。結果として、中小企業では正社員よりも派遣労働者のほうが賃金が高いというケースも実態としてはございます。そういう場合の均等については、どのように考えておられるのかというのが 1 点目の質問です。

 もう 1 つは、無期の派遣労働者の場合は、配置転換によるキャリアアップが必要だというお話について、私もおっしゃるとおりだと思います。一方、無期でない派遣労働者も含めて、派遣労働者のもう 1 つのキャリア形成の手段として、横断的なキャリア形成があると思います。しかしながら、派遣先企業に直接雇用されている労働者との均等待遇を進めた場合、たとえば大企業に派遣されている派遣労働者の方が、キャリアアップのために中小企業でより難しい仕事に就こうとしたときに、そこに給与差が生まれることになると思います。つまり、大企業の派遣先に派遣労働者の賃金を均等化させることが、中小企業の派遣先も含めた横断的なキャリア形成に与える影響をどのように考えていらっしゃるかについても、 2 点目の質問としてお伺いしたいと思います。

○柳川座長 御質問あれば、よろしいですか。では今の点をお答えいただければと思います。

○日本労働組合総連合会村上総合労働局長  1 点目が、中小企業においては派遣労働者のほうが賃金は高いのではないかというご指摘ですけれども、そういったこともあるので 8 ページにその他として掲げたのはそのことです。基本的に均等待遇だからといって非正規労働者が上回る分には構わないと思っておりますので、そこは中小企業の派遣先の労働者にそろえる必要はないというのが基本的な考え方です。

2 点目については、私どもも派遣労働者についてはまだまだ研究しなくてはならなくて、様々なケースがあると思いますので、いろいろなケースを見ながら考えていかなければならないと思っております。派遣先が変わると賃金が下がるのではないかということですが、それは今でも転職したときに賃金は下がるということはありますので、派遣労働者の場合も派遣先が変わればそのような部分もある程度あるのではないかと考えております。もちろん横断的な賃金相場が本当にできているのかどうかというところも見ていかなければならないと思いますので、これについてはもう少し私どもとしても検討してまいりたいと考えています。ありがとうございました。

○松浦委員 ありがとうございます。

○柳川座長 それでは、どうもありがとうございました。少し時間をオーバーしてしまいましたけれども、日本労働組合総連合会の須田様、村上様、本日は御多忙のところを御参加いただき、誠にありがとうございました。では次回の予定などをお願いします。

○河村企画官 次回は日本経済団体連合会さんからのヒアリングを予定しております。

○柳川座長 ありがとうございました。それでは不手際で少しオーバーしましたけれども、これをもちまして本日の検討会は終了いたします。お忙しい中、御参加ありがとうございました。


(了)

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