ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 周産期医療体制のあり方に関する検討会> 第5回 周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事禄)(2016年6月30日)




2016年6月30日 第5回 周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事禄)

○日時

平成28年6月30日(木) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 共用第6会議室 (3階)


○議事

○伯野救急・周産期医療等対策室長 定刻になりましたので、第5回「周産期医療体制のあり方に関する検討会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、初めに本日の構成員の出欠状況でございますが、本日は飯田構成員が御欠席のため、代理として共同通信社社会部次長の山脇絵里子参考人に御出席いただいております。

 また、今回は参考人としまして、熊本市民病院新生児内科部長、川瀬昭彦先生にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、今回、事務局に異動がありましたので紹介をさせていただきます。

 審議官の椎葉でございます。

○椎葉審議官 椎葉です。よろしくお願いいたします。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 地域医療計画課長の佐々木でございます。

○佐々木地域医療計画課長 佐々木でございます。よろしくお願いいたします。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 母子保健課長の神ノ田でございます。

○神ノ田雇用均等・児童家庭局母子保健課長 母子保健課長の神ノ田です。よろしくお願いいたします。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 お手元に議事次第がございます。構成員名簿、座席表がついております。そのほか、資料1から4をお配りしております。

 まず、資料1でございますが、これまでの議論の整理でございます。

 資料2としまして、川瀬参考人からの資料でございます。熊本市民病院からの報告でございます。

 資料3は伊藤オブザーバーからの資料でございまして、「小児周産期災害リエゾン 活動実績と今後の課題」でございます。

 資料4は「分娩の取り扱いがない助産所の要件について」でございます。

 参考資料としまして、席上に「周産期医療体制のあり方に関する検討会」開催要綱をお配りしております。

 このほか、今回の震災に対する本会の対応ということで、海野先生からの情報提供の資料を席上に配付させていただいております。

 また、前回までの検討会の資料などをファイルとして御用意しておりますので、適宜参考としていただければと思います。このファイルについては会議終了後、机に置いたままにしていただいて結構でございます。

 事務局からは以上でございます。以降の進行は座長にお願いいたします。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 皆さん、おはようございます。

 これから議事に入りたいと思います。

 前回、第4回は2月3日に開催されており、4カ月以上もたってしまいましたので、初めに、第1回から第4回までの議論の整理をしていただきたいと思います。御説明をお願いいたします。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 事務局から説明をさせていただきます。

 資料1をごらんいただければと思います。

 これまでの主な意見をもとに論点を整理させていただきましたので、説明をさせていただきます。

 1、2、3と、大きく3つの柱で整理をさせていただいております。1つ目が医師不足について。2つ目は広域搬送、医療圏と施設などハード的な点。3つ目は災害時の周産期医療提供体制についてです。

 まず、1ページをごらんいただきまして、「1 周産期医療における医師不足・偏在等について」でございます。

 まずは、1の現状と課題のところでございます。周産期医療に携わる医師の不足・偏在が指摘されておりますが、その要因としては産婦人科を専攻する医師が減少していること、小児科のうち新生児医療を専攻する医師が少ないこと、女性医師の割合が増加していること、などが挙げられております。また、出生数は減少傾向にありますが、高齢出産の増加等によりハイリスク新生児が増加しており、今後も人材不足は続くことが指摘されております。また、全体の分娩のうち、診療所での分娩が約半数ありまして、診療所の役割は大きいということを記載しております。

 次に、2。必要と考えられる対応等についてでございます。限られたマンパワーを効果的に活用するために、医師の負担軽減、あるいは助産師の効果的な活用の観点から、院内助産所の活用を推進すること。3つ目の丸にございますが、地域の診療所が後継者不足により廃院になるケースも指摘されており、地域ごとに分娩を取り扱う診療所を維持させていくための方策を検討する必要があること。4つ目の丸でございますが、ハイリスク分娩を取り扱う施設については地域の実情によって違うとは思いますが、その実情に応じて重点化などを行うことも必要ではないか。また、一番下でございますが、女性医師の増加等に対応するためにも、ジョブシェアリングや短時間正規雇用などを積極的に取り入れることも必要ではないか。次のページでございますが、アンケート調査において、国民はローリスク分娩であればアクセスの問題はある程度許容されるという調査結果もあり、周産期医療提供体制がどのような状況であるかをしっかり周知して、適切な受診行動をとってもらうなどの普及啓発を行うことを進めてはどうかという御指摘をいただきました。

 次に、「2 広域搬送や医療圏等について」でございます。

 まずは、1の現状と課題でございます。周産期の救急搬送については、医療機関照会回数や現場滞在時間というのは近年横ばいでございますし、また、2番目の丸にございますとおり妊産婦死亡率についても近年横ばいということでございまして、さらなる改善の余地があるのではないかという御指摘もございます。一方で3番目の丸にございますとおり、搬送受入困難の理由としては、空きベッドがない、対応できる医師がいないということが課題となっております。4つ目の丸でございますが、NICUについては整備目標を設定することで、これまで整備が進んできたという実態がございます。さらなる体制整備のためにはMFICUの病床数の目安等があったほうが整備は進むのではないかという御意見がございました。

 2の対応でございます。より効率的な周産期医療体制を構築するためには、現行の二次医療圏単位に限定して考えていくのはなかなか難しい状況になっているので、出生数や基幹的な病院のカバーエリアなどを考慮して、周産期医療独自の医療圏を設けてはどうかという御意見がございました。また、搬送という観点では、県境を越えた周産期搬送を活用することで、搬送効率の向上が見込めるということもございますので、事前に近隣県との調整を行うことも必要ではないかという御意見がございました。また、最後の丸でございますが、MFICUの整備目標やNICU及びMFICUの医師の配置目標を掲げてはどうかという御意見がございました。

 最後に3ページ、「3 災害時の周産期医療体制について」でございます。

 まずは、1の現状と課題でございます。東日本大震災におきましては、情報伝達網の遮断、あるいは小児・周産期に精通した災害医療従事者の不足などにより搬送等に混乱が生じ、また、周産期医療機関の役割分担の情報が災害医療に携わる人たちの間でうまく共有できていなかったという課題がございました。

 2の対応ですが、平時から災害時を見据えて、都道府県内のみならず近隣県と情報伝達の仕組みを構築していく必要があるのではないか。2つ目として、災害医療コーディネーターのサポートとして、「小児周産期災害リエゾン」を配置してはどうかという御意見がございました。また、周産期母子医療センターのようなマンパワーが一定程度集中しているようなところにおいては、災害が発生した場合には他県に対して人的支援をする必要があるのではないか、といった御意見がございました。

 事務局からは以上でございます。

○五十嵐座長 まとめていただきまして、ありがとうございました。

 それでは、これまでの議論のまとめに関しまして、御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田村構成員 田村でございます。

 2ページ目、2の「広域搬送や医療圏等について」の1の4番目。NICUは確かに出生1万当たり、今、既に30を達成したということで、それ自体は非常に喜ばしいことですが、冒頭でもありましたように、そこで働く新生児科の医者の数はふえていないものですから、むしろ現場で働く新生児科医にとってはより厳しい労働環境で、しかも地域格差が非常に広がってきています。きちんとした広域連携が必要だということを、広域搬送だけのことではなくて、そこでNICUのベッドがふえたが、それに見合うだけの人がふえていないということを、ここでも明記していただきたいということがあります。

 それから一番下のところのNICU及びMFICUの整備のところで、「NICU15床に対して○人の専任の医師を配置」ということですが、これは一昨年と昨年させていただきました、地域医療格差を是正するための研究班で調査した結果では、経営も考えなければいけない周産期母子医療センターの責任者が、一応、新生児科員がそれなりに充足しているという数字がNICU15床に対して10人という医師数で、それはちょうどNICUが不足して医師が不足している、そちらのほうが圧倒的に施設としては多いのですが、そこが一応このぐらいの人が最低限必要だと言っている、15床に対して10人でほぼ一致しておりますので、これについては、NICU15床に対して10人の専任の医師を配置することが少なくとも望ましいというあたりまでは明記していただきたいと思います。

 以上です。

○五十嵐座長 御意見、ありがとうございます。

 どうぞ。

○海野構成員 今の田村先生のお話は大変ごもっともだと承りましたが、産科のほうのことに関しましては、第3回の検討会の際に鮫島先生からデータが出ておりまして、1,000分娩当たり0.89というような病床数についての数字が出ております。現実は、それを超えている県もあるわけですけれども、県の中にはそこに全く到達していない、たくさんの県があることも事実で、そういう状況を考えますと、これはNICUでも同じことだと思うのですが、少ないところをいかに引き上げていただくか。これが今後の全国での周産期医療体制の整備の中で非常に重要な部分であろうと。その引き上げていただくための目標の数値ももちろん必要だと思いますし、それを具体的に、こういう形で進めていただきたいというような形で、指針の段階でお示しいただくと、県のレベルでの検討がスムーズに進むのではないかと考えますので、その辺を御検討いただければと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○今村構成員 1ページの2の3番目の丸のところです。地域の診療所における後継者の問題ですが、現場の感覚として、この問題は非常に大きいと思っております。全分娩数の半数を診療所が担っている。地域によっては7割、8割を担っているという地域もございます。そういうところで診療所の後継者、これは子供たちが医学部を卒業しても、父親が産婦人科であるのに自分は別の診療科を選んでしまうという状況が非常に多く見られます。いろいろな要因が考えられると思いますけれども、一つは承継をするときに、その診療所を改修しなければいけない。費用の問題、そして、そこには耐震化を求められるということや、あるいはスプリンクラーの設置を義務づけられるということなど、そういった、既に制度の中で決められているようなものもございます。そのようなときに、億単位の設備投資をして、しかも比較的過疎な地域で診療所を承継するというのは、非常に、経済的な危うさも伴っていくので、そういったところでの制度的な補助といいますか、そういうものを考えていただければ、この問題もかなりの点が改善されていくのではないかと、現場の感覚として思っております。

 以上でございます。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○海野構成員 たびたび発言して恐縮ですが、今の今村先生の御意見に関して。この件は、地域の分娩環境を今後どうやって確保していくかという点で非常に重要な論点だろうと思います。分娩数がだんだん減ってくる状況も想定しなければなりませんが、やはり国全体で地域での分娩環境を確保するということは、大きな大きなテーマだと思います。そのための必要な方策の一つとして、ぜひ、そういうことを都道府県で事業化できるような筋書きといいますか、その道筋をつくっていただけるとありがたいと考えています。

○五十嵐座長 どうぞ。

○山本構成員 2の、必要と考えられる対応策のところで、1つ目と2つ目の丸のところに少し追加で、入院期間が短縮している現状がありますので、早期退院後の現状を踏まえて、産褥入院、産後入院の推進と整備、産後うつ病対策ということも一文つけ加えていただければと思いますのでお願いいたします。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○福井構成員 2ページの2の3つ目のポツで、病床数や医師の配置を検討とされていますが、それに伴って看護職の配置人数も検討が必要です。助産師を活用することとして期待されているのは、院内助産所での活用ですが、助産師の数が不足するのではないかということを、大変危惧しております。急に産科病棟が閉鎖になり、そのままその病院で働き続けると、助産師としての仕事はしていない。いわゆる院内潜在助産師の数が増えているということです。しかし、就業届は助産師として出しているので、一見、助産師の数は不足していないように見えてしまいます。この数をもとに、病床数や医師の配置を検討されて看護職の配置人数を検討されてしまうと、院内助産所を期待されてもなかなか難しいということがあります。現状がどのようになっているかということを明らかにしていただいた上で、この3つ目のポツの、何床に対して何人の専任の医師と看護職の配置人数が必要かということも明確にお示しいただきたいです。よろしくお願いいたします。以上です。

○五十嵐座長 2点の御指摘を戴きました。まず、2ページの「2 広域搬送や医療圏等について」の2の必要と考えられる対応等の一番下の丸のところを検討していただきたい。次に、看護職の必要数も記載することを検討していただきたい。今回、そのような御要望を戴きましたが、具体的に数を記入することは今回行わなくてもよろしいですね。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 数を確定することまでは考えておりません。ただし、本当に目標を設定したほうがいいのかどうかということは御議論いただきたい。あえて目標を設定することによって、逆に偏在が助長されてしまったり、今うまくいっているところが逆にうまく回らなくなってしまったり、そういうデメリットが生じることはないのかという不安も若干持っておりまして、その辺も含めて御議論いただきたいと思っています。

○五十嵐座長 どうぞ、鶴田構成員。

○鶴田構成員 職員の配置は医師にしても看護師にしてもそうですが、病院を経営するという立場からすると、どのくらいの病床規模ではどのくらいの収支バランスになるかということも念頭に置かないといけない。数だけが先行しても運用できなければその都道府県において設置ができないということがあるので、ある程度のそういう収支バランスの数字もあってもいいのかなと思います。

 それと、1の最後の丸の、国民への周知、住民へのさらなる普及啓発の中で、2ページの一番上ところですが、医療の安全性とともに、産婦人科医療の危険性や、高齢化が進む中で合併症が多くて分娩上のいろいろな課題があるので、そういうことについても周知活動が必要だと思います。静岡県において一審は病院が勝訴して、二審は敗訴した事例が今、進行中で、本件は控訴しています。その院長さんと話したときに、負けたら保険が出るけれども、控訴して次に勝っても、一旦支払わなければならず、そのお金は戻らないかもしれない。そうすると病院経営上非常に問題があるので、控訴するかどうかを迷われたケースがあります。ここでの議論にはなじまないかもしれないけれども、やはりそういう、産婦人科医療をめぐる裁判に至る危険性などについても何らかの形で、病院サイドからすると議論してもらいたいという思いはあるのではないかという気がしますが、いかがでしょうか。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 海野構成員、いいですか。

○海野構成員 医療圏の設定のところですが、この1つ目の丸で、「現行の二次医療圏を原則としつつ」という言葉が、ここに書いてあるということだけなのですが、今後、都道府県でいろいろ検討していただく段階では、二次医療圏の中にも出生数が140くらいのところもあれば2万以上のところもあります。その原則というのはどういうことなのかというところをもう少し、ここをかみ砕いたほうがいいかもしれないなとは思います。ですから、現行の二次医療圏あるいはより広域なというような感じで、弾力的に考えていただけるようなことなのかなと感じました。

 それから、どういうことを考慮して医療圏を設定するかということに関しましては、ハイリスクの部分だけではなくて、一次分娩施設の状況や、あるいは地域の周産期関係の医療従事者の状況、それから全体としての病床数ですね。ハイリスクの病床数ももちろん必要なわけですけれども、それだけでなく、一次の、普通のお産がちゃんとできるだけの病床数がきちんと整備されているかどうか、それがどのように配置されているかというようなことも考えに入れていただいて、医療圏の設定をして進めていただくというようなことが必要ではないかと思いました。それをどういう形で記載していただくかはまた御検討いただければと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○今村構成員 今の海野先生のお話は非常に重要なことだろうと思っております。通常の、地域医療計画で医療資源をどのように配分するかということは当然のことながらされますけれども、周産期の医療体制は全然別個のものだという感じがするのです。地域の医療計画の中で、周産期医療圏というものを別個の概念で取り扱ってもらうということを主張していくということは非常に大事なことだろうと思いますので、周産期医療圏というような言葉自体を根づかせていくことも大事なのではないかと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○阿真構成員 2ページ目の一番上の、住民へのさらなる普及啓発のところで、鶴田委員もおっしゃっていましたが、適切な受診行動をとってもらうための普及啓発ではなくて、国民の理解、普及啓発が進むことで適切な受診行動がとれるようになるのであって、順番が逆というか。また、現状を的確に伝えることで普及啓発、国民の理解というものが進んでいくわけですから、「適切な受診行動をとってもらうための」となっていると、ちょっと違和感があるというか、ちょっと気持ち悪いというか、そういったところです。

○五十嵐座長 わかりました。ありがとうございます。

 どうぞ。

○田村構成員 今の、国民への理解を深めていただくというところにも関連するのですが、国民に理解を深めていただくと同時に、やはり医療関係者に今のこの問題をしっかり認識していただく必要があります。そのためには、五十嵐座長が実は前日本小児科学会の会長であったので、ちょっと申し上げにくいのですけれども、小児科の専門医の必修研修プログラムの中で、現時点では、新生児医療というのは余り重きが置かれておりません。そのために、小児科の数はどんどんふえているけれども新生児医の数はほとんど横ばいということの原因にもなっております。それから、別に新生児の専門医にならなくても、一般小児科をやりながら、なおかつある程度基本的な新生児医療もやっていただけると、周産期センターの仕事を一般小児科でも分担していただけるということになるので、ぜひ、小児科の専門医育成、特に今度新しく専門医制度が変わりますので、その中で新生児医療の研修の比重をもっと上げていただきたいということも、この際、お願いしておきたいと思います。それも明記していただきたいということをお願いします。以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 ほかは、いかがですか。

 もとへ戻りますが、2ページの2の一番下の例のところに数を入れることについては、先ほど鶴田構成員から、病院経営上はある程度数字を入れたほうがいいのではないかという御指摘をいただいたかと思いますが。

○鶴田構成員 数字を入れるというのではなくて、入れたときに経営上どうなるかということを考えてほしい。数字を入れるということではなくて、その数でどの程度、現状でもいいのですけれども、経営がどうなっているかということを教えて欲しい。

○五十嵐座長 あるいは経営を考えた上で、数字を入れていただきたいということですね。

○鶴田構成員 そうです。

○五十嵐座長 それとも、そもそも入れないほうがいいのですか。

○鶴田構成員 ある程度の数字を入れる場合には、現実的な経営はどのようになるかということも、ある程度試算しておく必要があるのではないかという意味のほうがいいかもしれません。

○五十嵐座長 わかりました。

○田村構成員 その点に関しましては、実は第3回の報告のところで、これはページ数が振られていないので見にくいですが、私が報告させていただきました、昨年度の全国調査のところで、先ほど申し上げましたように、現場の若手の医師に、医者が足りているか足りていないかを聞けば、大抵のところが足りていないと言うに決まっているので、ちゃんと経営を考えなければいけない周産期センター長に対して送ったアンケート調査でどのくらいの人数が必要かということで出している数字を全国調査の結果として出してあります。周産期センター長というのは、単に若手のクレームを聞くだけではなくて、周産期センターの経営も考えなければいけない立場の方ですから、そういう方から考えて、先ほど言いました、NICU15床に対して10人の専属の常勤医師が必要だという数字が出ておりますので、その点は、我々としては、あくまで「望ましい」というような表現で結構だと思いますので、やはり一つの具体的な数字として、明示していただきたいと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○海野構成員 実際に、NICUに関しては、もう、24時間の体制を組まなければならないわけで、それが大前提でNICUは動いているわけです。ですから、それに対して最低限これだけの人数が1つのユニットに対して必要であるということはあるわけです。ですから、病床当たり何人というのとはちょっと違う議論かもしれませんが、最低限の数字というのはそこで決まるのだろうと思いますし、さらに病床数の多い施設に関しては、必ずそれによる上乗せが必要という構造になりますから、だから、そこのところも含めて。私が危惧しますのは、数字が出ますと、それを達成しているところは、もうこれでいいやという話になってしまう。あるいは達成できないところは、では、諦めるかという話で、かえって整備がおくれてしまう可能性があるということを懸念するわけですけれども、そこのところ、最低限のところを示しつつ、それで決して満足してはいけないのだというような形の目標値というか目安というのは、出す意味はあると思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○福井構成員 ただいまの海野構成員の発言に続けての発言になりますが、医療の現場での人員配置は診療報酬上の入院基本料7:1や10:1で動いています。周産期に関するNICUGCUMFICUは特定入院料ですので、その7:1や10:1からは外れます。また、周産期以外の診療科は重症度、医療・看護必要度を測定して配置を決める仕組みになっていますが、周産期は重症度/医療・看護必要度の測定対象外でもあります。看護部門では、入院基本料に必要な看護師を配置することを優先せざるを得ない状況にあります。ですから、特定入院料である周産期の人員配置は、配置基準ぎりぎりの状態です。周産期医療を充実させていくためには、ある一定数の、あるべきレベルの医療を提供するという位置に必要な人数をまず置いていただいて、それ以上のものを求めるのであれば、何らかの方策を入れつつ、過配置していればそれはそれで、評価をしていただき経営が立ち行かなくならないような配慮もしていただきながら、人数を確保していくということをお願いします。周産期に必要な人数は後回しになり、他の診療科が優先されてしまうような状況にあるのですから、配置人数は示していただきたいのです。日本のお産を守るために適正配置が必要だと思います。配置人数を示していただけるようにぜひ、よろしくお願いしたいと思います。

○五十嵐座長 数を示したほうがいいという御意見ですね。

○福井構成員 はい。

○五十嵐座長 先ほど海野先生にも御指摘いただきましたように、数字を示すことによって弊害もあるかもしれないので、余りbraveな数字ではなく、最低限この程度はぜひ整備してもらいたいという数字を出したほうがいいという意見が多いように感じますが、それでよろしいですか。

 数字の数そのものを、きょう議論するつもりはありませんけれども、この会が最終的にクローズするときには、そのことも十分検討して数字を出す方向でいきたいと思っております。また後日、この数字に関しては議論する機会がありますよね。そのように理解してよろしいですね。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 そのようにしたいと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○海野構成員 一つだけ。MFICUのほうに関しては若干ニュアンスが違っています。NICUの場合はその場でインテンシブケアということが大前提ですが、MFICUの場合は24時間体制で緊急患者が受けられることや、その手術ができることなど、そういうことも含めての要件になっているものと認識しております。そういう意味では1床当たり何人というよりは、その施設全体できちんとした24時間体制が産婦人科として組めるのかどうかというようなところからの数字も必要になるかなとは思います。ですから、NICUについては病床ごとに決めるのが妥当かとは思うのですが、MFICUについては少し違う形での議論も必要かと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 数字については今後討議する機会がありますので、そのときに議論したいと思います。

 そのほかはいかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、いろいろな御意見をいただきましたので、もう一度事務局のほうで持ち帰っていただいて、ブラッシュアップした形で再度提示していただけますね。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 次回、そのように整理したいと思います。

○五十嵐座長 では、きょうの御指摘いただいた点を考えて、追記したり、あるいは少し修正するようなことで、ブラッシュアップしたものを次回また出させていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 では、次の議題に移ります。4月14日と16日に熊本で大きな地震が起きまして、その結果、被害甚大となり、周産期医療にも影響を及ぼすことが非常に多かったと思います。そのときに現場で御経験をされました、熊本市民病院の新生児内科の川瀬先生に、きょうは参考人としておいでいただきましたので、御説明をいただきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

○川瀬参考人 皆様、本日はお呼びいただき、ありがとうございました。

 熊本市民病院新生児内科の川瀬と申します。

 平成28年熊本地震について、熊本市民病院から報告をさせていただきます。プリントのとおり進めさせていただきます。

 熊本地震は前震と呼ばれる、4月14日の21時半に起こった最大震度7、当院の地域では震度6強の地震が起こり、続いて28時間後の4月16日の1時25分にもう一度、震度6強の地震がありました。

 次のプリントです。熊本市民病院の概要をお示しします。大きな建物が3つあります。真ん中の建物が一番問題の建物で、南館といいまして1979年に建築され、耐震指標が0.33ということで、震度6で倒れるとずっと言われ続けていた建物です。左隣が北館で、1984年に建築され、私たちのNICUはこの館の3階にありました。一番手前は新館といって2001年建築ですが、ここは主に事務棟になっております。

 書き忘れましたが、熊本県においてこの熊本市民病院のNICUは、病床数としてNICUの4割弱を示していまして、特に小さいお子さんをたくさん見ています。大体28週未満、おおよそ体重が1,000グラム未満のお子さんの、熊本県における3分の2を見ておりました。また、先天性心疾患、心臓病のお子さんに関しては100%当院で見ておりました。

 次のプリントです。前震、4月14日の21時半です。NICU内では、後に写真でお示ししますが窒素ボンベという特殊なボンベを使っていました。これが倒れたのですが、幸い赤ちゃんの方向ではなかったので影響はありませんでした。保育器や人工呼吸器などにも問題はありませんでした。当然、柱や床の亀裂などもできませんでした。

 コットというのは安定して赤ちゃんが寝るためものですが、ロックできないコットもありましたので、それらは床におろして対応しました。

 院内の一部は激しく揺れ、本棚がある場所などは一部倒壊したりしました。

 次のプリントに写真があります。左側が新館5階の医局ですが、本棚は結構倒れています。夜中でしたので誰もいませんでしたが、人がいたら少し危なかったかなという状況でした。

 右隣はNICUの看護師控え室で、たまたま1名、看護師が休憩していました。食器棚などが倒れていますが、けがはありませんでした。

 次のプリントです。左側の写真は窒素ボンベを寝かせているところで、これはこのまま、寝かせたまま使用しました。右側はコットを床に置いている写真です。

 次のプリントです。前震の後です。前震というか、当時はこれが本震だと思っていたわけですが、前震の後、トリアージを再確認しました。トリアージの基準は次のプリントに載せていますが、この時点でNICUには黒タグ、すなわち最重症のお子さんはいませんでしたが、次に重症の赤タグが14名ということで、ほとんどが赤タグでした。

GCUにおいても、すぐにだっこで移動できる緑のお子さんは2人しかおらず、何らかの医療を要する黄色のお子さんがほとんどを占めていました。

NICUは赤がほとんどでしたので、後にNICUから出る際に優先順位でちょっと苦慮しました。

 次のプリントはトリアージの基準です。これはNICUにおけるトリアージの一般的な基準になります。先ほどほとんどいなかった緑は、哺乳瓶で飲んで退院間近のお子さんで、これは看護師が2人を抱えて階段をおりられるというレベルの赤ちゃんです。黄色は点滴や経管栄養を要する児になります。赤は酸素投与中のお子さんや保育器に入っているお子さん、循環作動薬を点滴しているお子さん、あるいは人工呼吸管理をしているお子さんになりまして、スタッフ1人では避難させることができない赤ちゃんになります。黒タグはいませんでしたが、さらに特殊な治療を行っているお子さんになります。

 次のプリントです。前震の後、避難経路の再確認を行いました。倒れた窒素ボンベと床に置いたコットはそのままで通常業務に戻りました。

 次のプリントです。本震は4月16日、土曜日の1時25分に起こりました。当時、NICU18床には18名の赤ちゃんがいて満床でした。人工呼吸管理を6名、CPAPという鼻にはめる呼吸補助を5名、酸素投与を1名にしておりました。

GCU24床ありますが、20名の赤ちゃんがいて、人工呼吸1名、CPAP1名、酸素1名の赤ちゃんがいました。

NICUにおいては、今回も例えば屋根の一部が崩壊したり、壁に大きい亀裂が入ったりということはなかったのですが、保育器や人工呼吸器が30センチほど動き、児の横に置いてあるパソコンが倒れるといったことはありました。

GCUにおいては、コット、モニター類は前回の前震の後から砂のうで固定するなどしていましたので、倒れたり大きく移動するようなことはありませんでした。

 次のプリントです。本震と、約20分後に同程度の余震が起こりました。たまたま院長が院内にいましたので、重症患者を避難させようという決断を2時ぐらいにしたということですが、これは後で聞いた話です。当然、全館放送などの告知はなく、各病棟が適宜動き出すという状況でした。

 本震の時間帯がたまたま、看護師さんでいう、いわゆる勤務交代の時間に当たりましたので、勤務が終わりかけの看護師10名と、これから勤務の看護師10名、計20名で対応することができました。さらに当直医1名と、たまたま残っていた医師1名で避難の決断及び避難開始となりました。

 トリアージ順に緑から、建物外の非常階段を使い、同館1階のリハビリ室へ避難しました。ただし赤のお子さんのうち、赤でも重症と中等度のお子さんがいるのですが、重症児をどういう順番で避難させるかに関しては少し混乱がありました。

 次のプリントです。これは同じ館の1階のリハビリ室です。本来の北館から少し出っ張っているところで比較的安全と言われて、ここに避難するように指示された場所です。幸い、非常電源はすぐつきました。

 それから搬送で重要になってくる携帯電話ですが、これはずっとつながりました。御家族から病院へは回線が混雑してつながりませんでした。

 気温は比較的暖かかったと書いたのですが、当日の熊本の最低気温は13.1度でした。写真はかなり赤ちゃんがよその病院に避難して、残り10名ぐらいになったころのものです。大人も同じところに入ってきたのですが、私たちの避難のほうが早かったので、場所的に困ることはありませんでした。

 次のプリントです。リハビリ室での様子です。招集はかけませんでしたが勤務以外の医師、看護師が次々に集まり、看護師は児の人数38人を超えましたので、1:1対応が可能となりました。

 とにかく保温に努めました。タオル、毛布、スタッフの上着などで保温に努めました。余震のたびに赤ちゃんに覆いかぶさりました。

 人工換気中は6名と書いてありますが実際は7名で、ずっと用手バギングでした。つまり、手でずっとバッグを押すという行為が数時間必要でした。CPAP治療及び酸素投与中の児が8名いましたが、リハビリ室ですのでもともとの酸素配管がなく、酸素ボンベを上から持っておりてきたのですが8本はなかったので、交代交代に適宜使用しました。吸引の配管もありませんでしたので、ポータブルの吸引器を利用しました。

 こんなときになっても赤ちゃんはおなかがすきますので、母乳やミルクも適宜、哺乳・注入を行いました。

 主治医はバッグを押したり赤ちゃんの観察をしつつ、親御さんへ連絡をしたり、転院先に向けてのサマリー記載を並行して行いました。

 実際、ほかの病院への避難を開始するわけですが、次のプリントです。熊本県内外のNICUへ連絡を開始しました。主に2つのルートで連絡をしました。1つは新生児成育医学会災害対策委員会委員長の和田先生。阪大の和田先生に連絡をとり、そこから新生児医療連絡会災害時連絡網というものがありますが、聖隷浜松病院の大木先生に和田先生が連絡をとられました。この2名より、主に福岡、佐賀、大分、鹿児島という、熊本県外のNICU並びに部長へ連絡をとっていただき、そこから逆にこちらに連絡があったということで、スムーズに連絡をとることができました。

 当院からは県内のほかの2つのNICU、熊本大学と福田病院、そして久留米大学へ連絡をとりました。

 次のプリントです。このように二重の連絡体制がとれたことが、比較的搬送が速やかにできた一つの理由ではないかと考えております。先ほどと重なりますが、まず、熊本市民病院から携帯電話で新生児医療連絡会災害時連絡網に連絡をとります。災害時連絡網には病院の代表電話などではなく、部長の携帯電話とメールアドレスが登録されていますので、部長に直接電話をして、部長がみずから、ないしは当直医を介してこちらに迎えに来てくれることになりました。また、私たちは熊本大学病院と福田病院に連絡をしましたが、もともと熊本県から新生児科と産科にそれぞれ1台ずつ、各病院にPHSが配布されていました。こちらもすぐにつながりましたので、これも病院の代表などを介することなくスムーズに連絡をとることができました。

 次のプリントです。本震の一次搬送では結果的にこのように、県内に23名、県外に14名が搬送となりました。このうち久留米の聖マリア病院と佐賀病院、鹿児島市立病院からは4時台にドクターカーが熊本に向けて出発しました。この当時、高速道路は不通でしたので、一般道を通って来ることになりました。

 熊本大学からもドクターカーでピストン輸送をしていただきました。そのほか、福岡こども病院に向かった当院のドクターカーとDMATの手配による福岡県の自治体救急車、あるいはドクターヘリ、防災ヘリなどで次々と搬送しました。

 本震後8時間後には、残っている赤ちゃんは1名となりました。

 次のプリントです。熊本大学病院と福田病院で2桁の患者さんをとっていただきましたが、当然、2桁も収容は不可能です。一部、ライフラインの問題もあったということで、そこからさらに、主に鹿児島市立病院のヘリにより九州大学病院や鹿児島市立病院などに二次搬送が行われまして、その結果、県外搬送児はもともと入院していた38名中21名となりました。

 次のプリントです。今回の被災及び緊急避難を通して、ということです。

 たまたま本震の時間帯や周りのNICU施設の協力、また当日、最重症のお子さんが入院していなかったことなどにより、避難した赤ちゃんの生命は保たれましたが、問題点としてはやはり搬送された超低出生体重児の体温が、一時、33度台となったことや、長時間の用手換気を要した児がいたこと、病院に入ったDMATとの調整が若干困難であったなどの課題が残りました。

 また、県外の施設に21名が避難しましたので、ただでさえNICUに入院しているお子さんは母子分離の問題があるのですが、なかなか面会にも行きづらいということで、さらに面会が難しくなり、退院後にも影響を及ぼすと思われました。

 次のプリントです。先ほど示しましたように、今回の被災で県内の38%のNICU37%のGCU65%の超早産児、100%の手術を要する先天性心疾患を見ていた施設が機能不全に陥ったということになります。

 次のプリント、考察です。災害時に周産期医療体制に起こる問題と解決策。今回、県内最大の総合周産期母子医療センターの全機能喪失という、本邦初の事象が発生しました。

 どの医療機関も大切だと思いますが、NICUに限らず特に補完のききにくい部門を抱える医療機関においては、免震などの災害対策の重要性を痛感しました。また、大規模NICUは自治体病院にあることも多く、これは推測ですが経営状況が思わしくない病院や自治体もあるのではないかと思います。今後、何らかの形で国の補助も検討に値すると思われます。ほかのところに、私たちのような目には遭わせたくないという思いがあります。

 また、災害は地震だけではなく大規模火災なども含まれることから、新しい免震施設でも平時の避難訓練などは重要と考えます。

 次のプリントです。災害時を見据えた周産期の望ましい「事業継続計画」とはどのようなものか。また、平時からの備えには何が必要かということです。

 当院は熊本県下の4割弱のNICU病床を有していましたので、残りの施設での補完は難しく、今のところ事業が継続できていないという状況にあります。

 このような事態を想定し、NICU病床数にふだんから余裕を持たせておくことは、理想的ではあるが現実的ではないと考えます。現時点においても、隣県のNICUと密に連絡をとっていますが、やはり都道府県の垣根を越えた強い連携、また、多数の総合周産期母子医療センターを有する都道府県においてはセンター間の強い連携を常日ごろより意識しておくことが重要であろうと考えます。

 また、阪神・淡路大震災や東日本大震災のように、ライフラインが大規模かつ広範囲に断たれる際の想定も別個に必要であると思います。

 次のプリントです。被災後の中長期的な体制整備について。当院の機能は本日現在をもっても、外来は行っていますが入院機能は全く回復していませんので、熊本県下における新生児収容能力には引き続き限りがあります。

 当院のように大規模NICUがあり、免震基準などを満たしていない施設があれば、早急に検討すべきであると思います。

 他施設との連携の重要性は先ほど述べましたが、連絡手段の確保も重要です。今回はたまたま携帯電話がずっと通じましたのでスムーズな連携ができましたが、今後はSNSや衛星携帯電話など、他の手段も用いた複数の連絡手段の確保が必要であると考えます。

 次のプリントです。最後のまとめです。

 災害はどのNICUにも起こり得ることを再認識し、ふだんからの心構えが必要です。都道府県などの垣根を越えた、広域の連携の構築が重要であると考えます。

DMATとの連携に関しては、今後の課題の一つであり、周産期担当の災害医療コーディネーターの都道府県別の設置も考慮すべきかと思います。

 新生児医療連絡会災害時連絡網に登録されている施設は総合周産期の6割程度とお聞きしておりますので、さらなる充実や複数の連絡手段の検討も必要です。

 最後、書き忘れましたけれども、何よりもやはり施設の充実。マンパワーも今回、医者は結構ぎりぎりで苦労しましたので、マンパワーの充実も望まれるところであります。

 以上です。御清聴ありがとうございました。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 続きまして、熊本震災のときに小児周産期災害リエゾンとして熊本県の災害本部で御活躍をされました伊藤先生に御説明をいただきまして、その後、お二人に御質問や御意見をいただきたいと思います。

 では伊藤先生、お願いします。

○伊藤オブザーバー あいち小児保健医療総合センター救急科の伊藤と申します。

 今回、小児周産期災害リエゾンという形で熊本県の災害対策本部の横で活動しておりましたので、その活動実績とそれに伴う今後の課題ということで、ここに発表させていただきます。お手元に資料3を御用意ください。

 めくっていただきまして、このプレゼンテーションでお伝えしたいことを、まず先にまとめさせていただきます。

 1つ目。東日本大震災の教訓から、災害時に機能する小児周産期医療体制を平時から構築する必要が指摘されてきております。

 2つ目。「小児周産期災害リエゾン」の活動要領を作成し、検討を進めてきました。

 3つ目。熊本地震では熊本県庁の災害対策本部に設置されたDMAT調整本部内にリエゾンが設置され、活動を行っておりました。

 最後、4つ目。災害時に小児周産期医療に関する情報を集約し、適切に発信できるリエゾンは有効と思われ、人材育成と体制整備が必要であります。

 これが今回のプレゼンテーションの要旨であります。

 次に3ページ。災害時の小児・周産期医療ということで、この震災が発生するまでの経過、このリエゾンという構想が出てきました経過を御報告いたします。東日本大震災での問題点として、さまざまなところから問題点が指摘されております。上の4つ。小児周産期医療ニーズへの対応がなかった。被災地における医療ネットワークの形成が未熟であった。災害時支援物資の供給体制に問題があった。DMAT等の救護班との連携体制が難しかった。これらの点は日本小児科学会の、東日本大震災での総括ということで挙げられた問題点であります。

 次に、災害医療の側からも指摘がなされております。災害医療センターの小井土先生がまとめられた厚労科研の報告書にございますのは、災害時の小児・周産期医療システムが行政と乖離しているという点が問題であり、災害対策本部のもとで適切な助言を行うコーディネーターの配置が必要であるとの提言がなされております。

 さらに母子保健の側の研究班からも提言が出ております。医療・保健・行政が連動できるような災害対策ネットワークの平時からの形成や、それらが実現できるような、災害医療コーディネーターを中心とした、災害拠点病院と総合周産期母子医療センターが連動する体制構築が必要との提言も出ております。

 それに基づきまして、小児周産期災害リエゾンという、コーディネーター的な役割をするようなものの活動要領の作成を、研究班で開始したところであります。

 次のページです。小児周産期災害リエゾンの活動要領を昨年度つくってまいりました。先ほどお話ししました東日本大震災の教訓から必要性が検討されてまいりまして、特に以下の3つをポイントに活動要領を検討してまいりました。

 災害時のコーディネーター的な役割、平時のネットワーク形成に貢献するような役割、さらに訓練などを通じてDMATなどとの日常的な連携ができるような仕組み。こういったものを含めた、それを統括するようなリエゾンの活動要領を作成してまいりました。特に狙いとしましては、平時に既に新生児・母体搬送等のネットワークができているところが多いと思いますので、そこに、災害時にも情報収集のネットワークができるような、そういった既存のシステムを用いたシステムを実現するような形で活動要領を計画してまいりました。

 次のページです。その中で小児周産期災害リエゾン参集基準の案をお示しいたします。震度6弱、6強、震度7、それ以外。さまざまな災害に対して、どのような場合に参集するかというところを示しておりますが、これは簡単に申し上げますと、DMATの参集基準と同一でございます。つまり、DMATが入るような超急性期のところから、小児周産期に通じたリエゾンが入りまして活動を開始するのが望ましいと考えて、このような参集基準をつくりました。

 次のページです。では、その小児周産期災害リエゾンがどこで活動するかという点でございますが、案として、小児周産期医療調整本部というものを定義してはどうかと考えております。具体的な場所としましては、都道府県の県庁災害対策本部内、またその横、災害拠点病院、総合周産期母子医療センター、大学病院、保健所、医師会等々。あるいはDMAT本部や災害医療コーディネート本部と隣接するような場所、または連携がとりやすい場所で活動するのが理想と考えております。

 また、今回の熊本地震の経験からも、できるだけ都道府県庁の災害対策本部内で活動したほうがよいのではないかというような、実際の経験を踏まえた印象も受けております。

 次のページです。このように本部内で活動することのメリットの背景を図でお示しいたします。これは被災地の中でどのような組織、指揮命令系統になるかというところを、DMATを中心に書かせていただきました。ふだん、災害拠点病院が幾つか指定されておりまして、災害が発生しますとそこにDMATの活動拠点が設置されます。そのDMAT活動拠点を統括する形で、県庁の災害対策本部の横にDMATの調整本部が設置されます。このDMATの活動拠点から上がってくる、さまざまな情報についてはDMATの調整本部で統括をし、さまざまな搬送や医療の調整を行っております。ですから、そこの横に小児周産期災害リエゾンというものが活動しておりますと、災害拠点病院あるいはその救護班等々から上がってくる情報に関して、統括して情報を把握することができて、必要な指示や情報提供がしやすいという形で考えておりますので、DMATや救護班からの情報を収集しやすい場所、つまりDMAT調整本部あるいは県庁の中で活動するのが望ましいと考えております。

 次のページです。ただ、一方で、DMATとの連携だけではないというのが現実でございまして、各専門分野、今回の場合ですと小児・新生児・産科という形のネットワークとどのように連携をとるかというところをこの図で示しております。上のほうは実際の被災地内外を含めて都道府県やDMAT、日赤、それからそこの行政と連携をとる形になっております。そこで集まってきた情報、あるいは支援の要請といったものを小児・新生児・産科のネットワークに提供し、そこでどのような支援がいただけるかというところをまたまとめて、窓口を一本化して、各部門に情報提供をするという形が理想ではないかと考えております。

 次のページです。このような形で、実際に小児周産期災害リエゾンというものを研究班で検討し、具体的な研修計画等に、今年度のうちに取り組み始めようと。研修計画については今年度立案していこうとしていた矢先、今回の熊本の地震が発災したという状況です。これ以降は、実際に我々が活動したことを報告させていただきます。

 小児周産期災害リエゾンには3つの柱があると考えております。左から、情報収集及び発信、医療支援の調整、保健活動。こういったものが柱となっていると思います。

 情報収集・発信に関しては、県庁内で活動して、医療機関などからの情報を収集して得た情報を、県や市、DMAT、自衛隊等と適切に共有していくというところです。

 それから医療支援の調整に関しては、必要な医療資源を把握して、関係する学会等への派遣依頼の調整を行ったり、それをもとに計画を立案するというところです。

 それから保健活動に関しましては、救護班や保健所からの情報を活用して、避難所などにおける乳幼児や妊産婦のニーズに対して適切な対応を図っていこうというところがあります。

 この3つの柱を念頭に、活動をしてまいりました。

 以下、具体的に内容を御報告いたします。情報収集・発信に関しましては、特に今、搬送調整や支援物資の調整、アレルギー食や特殊ミルクの調整、それから医療機関の状況把握と情報発信について、主に活動をしておりました。

 搬送の調整に関しましては、先ほど川瀬先生から御報告がありましたように、個別の医療機関を含めまして、右にお示ししましたように、ヘリコプターでの搬送の調整を行っております。やはり周産期に関するニーズがございまして、新生児に関しては10名、妊婦に関しては6名のヘリコプター搬送を行っております。

 支援物資の調整に関しましては、特に分娩キットなど、そういった周産期に関する物資のニーズがありましたので、それがどこに届いていて、どのようにしたらお手元にお届けできるのか、そういったところの調整を行いました。

 また、アレルギー食や特殊ミルクというところも、実際に行っている部門と調整をして、県庁内でどのように配ることができるかというところの調整をいたしました。

 次のページです。医療支援の調整に関しましては、このように大きく3つ、活動内容がございました。1つは医師の派遣調整です。現場のニーズを把握して、行政、学会、地元の大学や医師会の先生方と派遣の調整を行いました。それから、そのような実際のニーズに応じまして、現地で調整会議の設定も行いました。このプリントでお示ししております写真は、熊本大学を中心として病床を有する小児医療施設の先生方、それに行政の関係者、災害の関係者等が集まって、現状の把握とどのような方向性で行くか、それから、亜急性期以後の体制をどのようにしていくかというところを検討する会を設定いたしまして、その調整等を行っております。産婦人科領域に関しても同じような、助産師会等も含めた会を調整いたしました。

 次のプリントです。保健活動に関しましては、子供の遊び場の提供について、NPO団体と調整をしたり、それから2番、3番、特に避難所における妊婦・乳幼児の評価というところの計画をいたしました。これに関しましては、日本産科婦人科学会等に依頼をいたしまして、超音波を持参した形でのチームの派遣を依頼いたしました。また、実際に派遣した後に、計画の修正等が必要でありましたので、その後の妊婦や乳幼児への情報提供の仕方なども現場で臨機応変に対応していたというところが現実でございます。

 以上、3つの大きな柱を念頭に活動を行ってまいりました。

 最後のプリントです。小児周産期災害リエゾンについて、このような形で活動計画を立て、実際にその場で活動してきた経験から、今後の課題として以下2点が大きくあると思います。

 1つ目は、リエゾンとなる人材の養成が今後必要であるというところ。それから2つ目、平時から連絡体制の整備が必要というところです。人材の養成に関しては、県庁で活動できるようなコミュニケーション能力を有する人材が必要で、同時にDMATや災害医療にも割と知識のある小児周産期医療の人材が必要であると考えております。また、被災した現地の地域の小児周産期医療体制を知っている人材が現地には必要かと考えております。今後、研修計画案を研究班の場で検討していく予定であります。

 それから2つ目の、平時からの連絡体制の整備につきましては、もともと現在、各都道府県で周産期医療協議会というものが設置されております。その中で、災害対策についてもより具体的な議論をしていただく必要があるかと考えております。また、小児医療に関しましては、新生児搬送、母体搬送よりも平時のネットワークに関してはまだ弱いというのが現実だと思いますので、その点もこれからネットワークの構築が必要であろうと考えております。また、そういったネットワークの構築に関してもリエゾンが関与していくというところを構想しております。さらに、リエゾンを都道府県が委嘱できるような制度化も必要と考えております。例えばDMATの隊員でありましたら身分や費用の保証ができておりますけれども、それに関してはまだ、リエゾンについては具体的な方向性が検討できていない状況です。このような、平時からの連絡体制の整備という観点に関しましては、今後、広域搬送訓練で小児周産期の訓練を実施していく方向で考えておりまして、具体的には愛知県でこの夏に行われます訓練で、こういったNICUからの避難、あるいは小児に関しても搬送訓練といったことを実施していこうと考えております。

 以上、小児周産期災害リエゾンということで、熊本の活動の報告等を踏まえて今後の課題を御報告いたしました。ありがとうございました。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 お二人の、熊本地震での御経験をもとに、この災害医療という面から今後の周産期医療体制の整備への御助言があったものと思われます。どうもありがとうございました。

 それでは御意見、御質問、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○田村構成員 日本新生児成育医学会の災害対策委員として20日、本震の4日後に入らせていただいて、川瀬先生たちの見事な搬送ぶりを拝見いたしました。きょう、また改めて御報告をありがとうございます。

 熊本市民病院というのは、熊本県の中での中核総合周産期センターであるだけでなく、日本全国の総合周産期センターの中でも10本の指に入る、非常にアクティビティーの高い施設でございまして、そこが機能しなくなるというようなことは我々も全く想定していなかったので、非常に慌てたわけです。しかし今回は川瀬先生たちのこの報告にあるように、いろいろな不幸中の幸いが功を奏して被害者を出さずに済んだ。でも、これが関東で起きたときに果たしてこのような見事な搬送や避難ができたかというと、決してそうではないと思います。したがって、ここから何を学ぶべきかということは、我々関東の人間だけでなく全国の周産期医療関係者にとって非常に大事なことだと思います。

 その中で、確認しておきたいのですが、今回、オール九州という形で搬送先がうまく手配できた。それは、一つは新生児成育医学会の災害対策委員が全国に散らばっていて、そこでいろいろ連絡をとれて、その中で九州の人たちも連絡をとりやすかったというのが一つ。それともう一つ、ふだんから先生方がオール九州という形でお互いに搬送をし合ったり、それから九州新生児研究会を半年ごとに合宿のような形でやるなど、そういったことがオール九州という形で今回、活動できた、その背景になっていると思うのです。

 そういう中で、今回の搬送の中で、これは伊藤先生のほうにも絡むことですが、DMATと少し食い違いがあったということについて、恐らくそのためにこそ周産期リエゾンができたのだと思うのですが、そこの点について、先生に御迷惑のかからない範囲でお話しいただければありがたいのですが。

○川瀬参考人 御質問、ありがとうございます。

 田村先生がおっしゃるように、九州というのは島なので、まとまりやすいというところがまずあります。また、九州新生児研究会という、半分は宴会が中心のような集まりが年に2回あります。当然、各病院の医者はみんな顔見知りですので、今回、連絡もとりやすかったということがあります。

DMATとの関係につきましては、正直、私が勉強不足で、ずっとこの震災の後はリハビリ室にこもって連絡をとって、赤ちゃんを見たり連絡をとったりしていたわけですが、DMATDMATで、ちょっと離れた場所に入っていて、院内の調整をしてくれていたようで、私たちが何となく、何か福岡の救急車が来たから、赤ちゃん、乗っていいよと言っているから、乗せちゃえというところで乗せた救急車が、実はDMATの方が手配してくれた救急車だったということを後で知ったという、お恥ずかしいお話なのですが、久留米などとの関連で、ヘリで、やはり赤ちゃんを、今回、少しだけ書きましたけれども、人工呼吸管理をしていたお子さんを、ずっとバッグで手押しで押していた。手自体は何時間押していても医者が疲れるだけですからいいのですが、それは赤ちゃんにとっては乾燥した空気をずっと肺に入れ込むということで、決していいことではなくて時間との闘いだったわけですが、うちだけではないので県内のほかの患者さんとの兼ね合いもあったのでしょうけれども、ヘリ搬送でなく陸路で行けと指示されたという面もありましたし、私はヘリをちょっと違うルートで探してもらっていたのです。県庁の違うルートで探してもらっていたのですが、手配を終えたところで、DMATの側もヘリを探してくれていて、最後の1例になるのですが、そこでDMATの方から、DMATの流れに反した動きというか、DMATに報告をしていない動きを私が勝手にやったということで、少しお叱りを受けたというところではありました。

○五十嵐座長 どうぞ。

○伊藤オブザーバー 今のDMATとの調整という点で御報告いたします。恐らく新生児のネットワークが逆に強過ぎてというか、うまくでき過ぎていて、そこで独自に連絡がとれてしまったというのが一つはあると思います。それは平時の搬送が常に連携されていて、勉強会などをされているというところの成果だと思うのですが、ただ、災害時になると、御指摘にありましたように、DMATが実際に入って、DMATは独自に窓口というか、自衛隊、海上保安庁、各防災ヘリコプター、それからドクターヘリ、そういったところを駆使して搬送をやっていく体制をとるという前提で動いておりますので、そこの情報の共有ができなかったというところが一つ大きなところなのかなと考えております。

 ですから、例えば今後、総合周産期あるいは地域周産期のセンターがDMATの訓練と連携してやっていくという中では、恐らく情報共有の仕方というのが、EMISというものが共通のプラットホームでありますので、そこに入力していって共有をしていく。あるいはDMATとも、現地でフェース・トゥー・フェースの情報共有をしていくというようなところを、訓練などもやりながら成熟させていければいいのかなと思っています。

 恐らくこういう事例は今回が初めてでしたので、そういった問題点なども出てきたというのは、今後につながるところだと思いますので、これからそういう研修計画の中でも小児周産期の医療従事者に対して災害がどのように動いているか。そのときに、どのように情報共有すれば、どのようなメリットがあるかというところを、また研修等で共有していけばいいのかなと考えております。

○五十嵐座長 どうぞ。

○今村構成員 この熊本地震の場合には、かなりうまくいったなという感じです。熊本の地域的なといいますか、特色として、福田病院という日本で最大の民間の病院があって、そこが統括できた。しかも、そこの院長、理事長先生が熊本県医師会の会長さんだったということで、そういう意識が非常にうまく働いたということが、非常にうまくいった理由の一つかなとも思います。

 それから反省材料ですが、ここにDMATという言葉は出てきても、JMATという言葉が全く出てこない。小児周産期に関しては救急災害対策がほかの診療科と全く別に動くという、典型的なあらわれ方だなと思います。

 他の診療科においては、DMAT、そしてその後をすぐ引き継ぐような形でJMATが機能して、非常に重要な役割を演じているというように思っておりますけれども、こと、この小児と周産期に関しては、JMATの体制がほとんど組めないというか、産婦人科・新生児領域においては、やはり全く別の人材が必要になってきて、これについてはやはり学会のサポートがどうしても必要になってくる。ほかの診療科が、特に学会の支援を必要なく構成できるのに対して、この分野に関しては、やはり新生児学会や、あるいは産科婦人科学会など、こういうところの学会の支援がどうしても必要になってくるということで、通常のDMATJMATとは別個のリエゾン、周産期に特化したようなリエゾンがどうしても必要になってくるのではないかということを改めて痛感いたしました。

 東日本大震災のときの教訓を得て、JMATの活動というのは今回も相当しっかりした対応ができたと、日本医師会内でも評価をしておりますけれども、こと、この分野に関しては全く力不足だったなということで、改めて医師会、それから行政を含めたこういう対応が必要だなと思いましたので、今後の対応が望まれると思いました。

○五十嵐座長 小児医療に関しては、熊本地震の後、1カ月間にわたって全国から小児科のボランティアを募り、日本医師会のJMATに登録させていただき、派遣をさせていただきました。新生児の先生方はJMATはお使いにならなかったのですか。

○伊藤オブザーバー 新生児の先生に関しては、恐らくJMAT登録はされていなかったのかなと思います。

 田村先生、そのあたりは御存じでしょうか。

○田村構成員 日本新生児成育医学会のほうは、独自に赤ちゃん成育ネットワークという、新生児をやっていたOBの方々から募金をいただいて、その募金を用いて現地に新生児科医を派遣するという活動をさせていただいています。

○五十嵐座長 わかりました。

 海野先生、どうぞ。

○海野構成員 新生児のほうは本当にもう、大分準備をされていて、特に新生児医療連絡会で準備されていた成果がここで大きく発揮されたということで本当にすばらしく、感心いたしました。

 本当に総合周産期が機能不全というか、機能しなくなるということは、我々も全く想定していませんでしたが、その場合でも九州だからこそ何とかなったというのが本当のところかと思います。

 同時に、産科の領域で申しますと、一般の開業医の先生も含めての分娩の取り扱いが、今回の場合は比較的日数が短かったのですけれども、できない状況が当然発生しております。それに向けて、産科側でどのような対応をしたかということに関しまして、きょう、席上の資料で、今回の震災に対する本会の対応。これは日本産科婦人科学会でつくった理事会内の資料でございます。

 これを見ていただきますと、最初の6番のところに、4月16日の本震発生後の段階で、産婦人科学会と産婦人科医会で災害対策本部を設置いたしました。

 めくっていただきまして、その5番のところです。4月22日の段階で、熊本県から産婦人科医師の派遣要請を受けたということで、直ちにその日から派遣を始めました。実際にはその前日に、小児周産期リエゾンの伊藤先生のほうから学会に御連絡いただいておりまして、こういう状況なのでということで準備を進めるようにというお話になりました。

 その結果といたしまして、3ページ目。ちょっと黒塗りにしてありますのは、それぞれの行ったドクターの名前がここにあるわけですけれども、4月の22日から6月の末まで、熊本市民が一番大きいわけですが、分娩施設がある程度できなくなっていると、そこの方々のお産をほかの施設で引き受けなくてはいけません。そこのところでの対応の人的な不足、産婦人科医の不足に対応するということ。それから、あとは小児周産期リエゾンチームの追加派遣のような形での派遣を今回、こういう形で進めさせていただいたということでございます。

 さらにめくっていただきまして、この医療対策プロジェクトと申しますのは、これは熊本県の産婦人科学会と産婦人科医会で、具体的に現場でどのようにされていたかということについて御報告をいただきましたので、これもあわせてごらんいただければと思います。

 以上でございます。

○五十嵐座長 産婦人科学会の御対応について御説明いただきまして、どうもありがとうございました。

 どうぞ。

○山脇参考人 きょうから参加させていただくことになりました、山脇です。よろしくお願いいたします。

 川瀬先生、貴重な御報告をありがとうございました。

 先生がおっしゃった、ほかの病院にこんな思いをもう二度としてほしくないと言われたお言葉を、私たちは国全体で重く受けとめなければいけないと感じています。どの診療科も大切ではありますけれども、やはり大規模NICUという、ほかではかわりがきかないこと、そして、ただでさえ不安なお母さん、赤ちゃんにとって、県外避難させれば済むということではなくて、より遠くで、遠距離の母子分離が起きてしまうという重大な結果が起きることを今回、本当に痛感いたしましたので、厚労省のほうで病院の耐震化については詳細に調査してくださっているとは思うのですが、全国の同様の施設が現状で耐震化がどうなっているのか、有事の広域搬送の訓練、あるいは計画がどのような感じでできているのかを把握することが大事だと思いますし、そして、病院の計画では何年後に耐震化ができるのか、それを待つのではなく、何らかの国としての緊急の措置が、ほかの県でも必要ではないかと強く感じました。

○五十嵐座長 どうぞ。

○山本構成員 熊本県助産師会の安否確認の様子が日本助産師会に直ちに到着しまして、そして、助産師会が地域の開業助産師を中心に、各避難先の避難母子と避難妊産婦の把握に努め、直ちにケアに入っております。それらはテレビなどでも放映されましたけれども、今回、被災先での助産師会の、分娩を取り扱わない開業助産師の活躍に目覚ましいものがありましたので、各県の周産期医療体制への組み入れや、リエゾン組織への助産師会の組み入れということも正式に検討していただきたいと思います。保健活動の部門で大変活躍が期待されるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 どうぞ。

○鶴田構成員 今回の熊本地震は、熊本大学を中心としたグループの支援や医療の熊本市内一極集中の中での話なので、静岡とはまた違うと思うのですが、2つ質問させていただきます。

 今後、熊本大学を中心とした周産期医療体制の整備が行われると思います。現時点において熊本市民病院は第三地点への移転をすると聞いています。そうすると、完成まで3年ぐらいはかかると思います。その間、医師や看護師の異動が起こると思うのですが、その現状はどうかということをお聞きしたい。

 もう1つは伊藤先生にお聞きしたいのですが、私も現地へ行きましたけれども、現地の人たちは現場を知っている分だけ手を出したいという部分と、リエゾン的機能を持つのと、両方必要な面があると思います。我々は保健師さんの支援の関係で行きましたが、そこにいる保健師さんに、どこどこへ行ってくださいということをしないと、来た人は実際、動けません。先生のように外から来たリエゾンと、内部で働くリエゾンとでは、何が違ったのか。参考になる御意見があれば教えていただきたい。

 私が実際に行ってみて感じたのは、保健師さんを中心とした動きを見ると、地元の保健師たちが現場へ行くものだから、応援に来た人たちをどう配置していいかわからないような印象を持ちました。

○川瀬参考人 御質問ありがとうございます。

 市民病院は平成31年春の新築を目標にやっているわけですが、その間、当然、医師と看護師の問題があります。医師は今、既に熊本大学病院と福田病院のNICUに1名ずつ出向というか派遣というか、そういう形になっていますが、いつまでもそれは続きませんので、今後は熊本大学のスタッフもまぜて複数人を熊本大学と福田病院と、それからうちも先ほどの管理棟の一部に小さいNICUができる予定になっていますので、その3カ所でこの1年間回すという計画を今、立てつつあるところです。

 看護師に関しては、うちの小さいNICUで半分ぐらい雇用できるのですが、産科がありませんので、重症患者さんを見られません。したがって、一部の看護師は九州内の自治体病院と提携をして、研修という形で派遣されることが決まりつつあります。そこでNICUのナースとしてのスキルを保つという形になる予定です。

○伊藤オブザーバー 御質問ありがとうございました。

 被災地の中にいるリエゾンと外から来たリエゾンとの違いというところですが、今回はまだリエゾンというものが発足していない状況でしたので、中にいるリエゾンという立場の方はいらっしゃらなかったのですが、実際に川瀬先生たち、あるいは産婦人科の先生方とお話をする中で感じたことを御報告いたします。

 被災地の中にいらっしゃる先生方は中にいるリエゾンという想定ですが、その先生方に関しては、地域の中でどのような医療体制があって、どこがどういう機能を持っているか、あるいはどういう先生方がおられるのか、何が得意な医療機関なのかというのを把握されています。そういったことは、やはり外から来た私たちにはわからないというのが正直なところです。ですから、そういった被災地の中で、被災した中でどのように機能分担をさらにしていけばいいかというところに関しては、やはり中にいる先生方、あるいは助産師さんの御意見というものが非常に貴重であると考えております。

 一方で、私のように外から入ったメンバーに関しましては、幸い、私は学会の先生方と検討会あるいは研究班等でつながりがありましたので、そういった学会や県、国といったところとの情報共有ですね。あるいは、どういうところに情報を出したらいいかというところを、ある程度整理することができましたので、外から入るリエゾンに関しては、そういった学会や、国を含めた行政と、それから学会以外の関係団体。今回は栄養士会などの方々にも御協力をいただいたのですが、そういったところとの連携にどう取り組むかというところが大きな仕事になるのかなと考えます。

 そういった点で違うのかなと考えます。

○鶴田構成員 リエゾンについてはそういうことを踏まえて研修計画をつくっていただければと思います。

 熊本市民病院の再建については、熊本大学の産婦人科を中心として構成されていくと思うのですが、1県1大学的なところと、複数の大学があるところとでは、再建の過程はきっと違うだろうと思っています。

○田村構成員 今の鶴田構成員の質問にも関係するのですが、今回のこの熊本での事例を各都道府県、ほかの都道府県でも生かすためには、伊藤先生につくっていただいている資料の最後、13ページのところに書いておられますけれども、周産期医療協議会で災害対策を議論するというときの、この周産期医療協議会が現時点では都道府県単位でしか原則的には行われていませんので、やはりこれは広域で周産期医療協議会をつくって、必ずそこで災害のときにお互いにどう支え合うか協議するということを義務づけるということを厚労省のほうから指導していただくことが大事ではないかと思います。

 また、伊藤先生がおっしゃったように、本来はこの小児周産期リエゾンは各都道府県に最低1組はつくるべきだと思います。ただ、総合周産期センターにもし、そこの産科、小児科、新生児でつくった場合に、そこ自体が被災した場合には隣県の周産期リエゾンが入ってくることになりますから、そことも平時から協議をしておく必要があります。そのためにも、やはり広域の周産期医療協議会をつくるということと、全ての都道府県に小児周産期リエゾンを配置するということを一体化した目標として、今回の整備指針の中に入れることも、検討していただければと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○海野構成員 本日の資料1の3ページ目、「災害時の周産期医療体制について」の最後のところで、周産期センターの要件として、人的資源等で支援するということについてのことが書かれております。

 川瀬先生、伊藤先生のお話を伺っていて感じましたのは、超急性期のことに関しては、とにかく急いでチームが入ってやらなければならない部分があると思いますので、周産期母子医療センターで、各県でそういうチームをあらかじめつくっておくことができれば、それは非常に有効に機能する可能性はあるだろうと。

 それから、新生児のほうでも直接の人的支援のお話がありましたが、産科や新生児では、そういうことがどうしても必要になるだろうと。その場合には、実際には学会等で若い人に積極的に行ってもらうようなやり方を今までもやってきているわけですが、それがある程度有効に機能するかと思います。

 ただ、もう少し長期的なこと、例えば避難所のお母さんや子供さん、妊婦さんたちの支援という体制になりますと、なかなかそれだけでは十分ではないところもあると思いますし、これに関しては先ほど今村先生のお話もありましたが、JMATの枠組みの中で産科や小児科、新生児科のメンバーも、そういう形でのトレーニングや組織づくりというのも今後、進めていかなければならないだろうと。そういうことによって、全体を見渡した形での災害対策を進めていけるのではないかと感じております。

○五十嵐座長 どうぞ。

○峯構成員 峯です。

 先ほど田村先生からありましたように、周産期の特にNICUを経験して、今、実地医療として開業しているメンバーが赤ちゃん成育ネットワークというものをつくっております。実は前回の東日本大震災のときもそうだったのですが、NICUで働く人間のマンパワーそのものが少ないということと、それから、非常に緊急度の高い子供たちがいっぱいそこにいるということで、1日も早く、いろいろな形での支援に、我々もバックアップしなければいけない。そういう形で今回も、開業医ですからもう実際にNICUへ働きに行くことはできませんが、何らかの金銭的なバックアップを1日も早くしてあげることが大事だろうということで、緊急で募金を集めまして、いろいろなスタッフの方たちに現地へ行っていただいて、そしてその交通費や滞在費も含めた、そういうものについてのバックアップもすぐできるような体制を、実は東日本のときからとっておりました。

 その関係で、今回もそういう形で動いたのですが、そうしますと先ほどちょっと触れられました、DMATと周産期医療部門での対応の違いということに関して、やはりその辺のことが我々、バックアップをする側としても、何らかの形でDMATを通してそういうものも登録しておく必要があるのか、それとも、本当に緊急性の高いものに関しては、今までと同じように、我々独自のネットワークや周産期医療のスタッフとのネットワークに合わせて、まず動いていっていいのか。そして、それをどういう形で報告させていただいたら一番今後に役立つのか。その辺も含めて、私どものような格好で動いている者にとっては、今回、どうしたらいいのか、わからないことが幾つかありました。

 もう一つ、少し長期的に見たNICUや周産期医療のスタッフを育てる、あるいはそのモチベーションを保つという意味でも、果たしてそれに対するきちんとしたバックアップ、設備だけでなく金銭的なものも含めたバックアップ体制がとれるのかどうか。そういうことに対して、私ども開業医や開業助産師に何ができるのか、それも今回お聞きできればと思って質問をさせていただきました。

○五十嵐座長 どうぞ。

○伊藤オブザーバー DMATと個々の開業医の先生のネットワークのサポートの仕方という点について、私の個人的な考えをお伝えいたしますと、DMATはやはり超急性期から急性期にかけて、一定の研修を受けたチームとして派遣されて、その費用に関してはきちんと行政からサポートが得られる形になっておりますので、そこに対して先生方のネットワークから金銭的なサポートというものは直接は要らないのかなとは考えております。

 先ほどのお話にあった、実際に行くメンバーの、それぞれに対する金銭的なサポートや支援に関しては、そのまま続けていただく形でいいのかなと思うのですが、DMATとそれぞれのサポートの仕方というのはそういう関係でいいのではないかと個人的には考えます。

○五十嵐座長 どうぞ。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 先ほど山脇参考人からございました、病院に対する耐震化の調査や、支援について、国としてしっかりやるべきではないかということでございますが、調査は毎年させていただいておりまして、ことしの4月に公表させていただいたものもございます。平成27年の調査ですが、その結果では病院の耐震化率は今、日本全国で69.4%、約7割という状況でございます。そのうち震災時の医療の拠点となるような災害拠点病院や救命救急センターといったところの耐震化率については84.8%ということでございます。

 また、補助金を設けて、耐震化の推進を積極的にやる方針ですし、また、一定の目標を掲げて、そこに向けて耐震化を進めておりますので、引き続きそういう方針で頑張っていきたいと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○鶴田構成員 DMATJMATDPATなどについて、今回でなくて結構ですが、災害救助法の中での位置づけや法的位置づけを横に並べてその違いを説明していただければと思います。DMATは通知文か何かで来ているのですか。法制度化されているのですか。

 我々もDHEATという被災し、1週間経った後の保健所支援とかそういう制度をつくろうと思っています。しかし、公衆衛生医師の派遣は災害救助法で見られないところがありますので、DMATJMATDPATの対比表があると、この周産期の派遣体制等も議論しやすいのかなと思います。

DMAT等を含め、救急医療の分野は官民一体でやるのですが、我々は官だけの、地方公務員としての派遣を考えているので、いろいろ教えていただけるとありがたいと思います。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 災害救助法の適用の話かと思いますが、今は所管が内閣府のほうに移っております。おっしゃるとおり、一部分は通知か事務連絡だったか失念しましたが、DMATについては適用するような趣旨の文書が出ていたかと思います。それ以外のチームについては、今、記憶がしっかりしておりませんので、チーム名でしっかり整理ができるものなのかどうかも含めて、少しこちらで確認をさせていただきたいと思います。

○五十嵐座長 よろしくお願いします。

 どうぞ。

○阿真構成員 川瀬先生、御報告ありがとうございました。

 日ごろからNICUの先生方や看護師さんたちは、睡眠時間もかなり短くて頑張ってくださっているということは、あちこちで聞いておりますけれども、その中で地震が起きて、より大変な状況の中で、小さな赤ちゃんを守って、日々、奮闘してくださっていたことを聞きまして、本当にありがたいと思っております。

 その中で、学校や保育園などは耐震が弱いと何年までにやるようにというようなことを非常に厳しく言われております。ここは何年まで、ここは何年までと、かなり厳しくなっているので、そこに比べて、今の御報告では全国平均が69.4%、災害拠点病院や救命救急センターが84.8%ということで大分低いという印象を受けました。学校と違って病院はいろいろな機能があったりするので金額的な面で一筋縄ではいかないのか、どうなのか、ちょっとわかりかねるところではあるのですけれども、命を守る場所で命が損なわれてしまうような危険性を伴って、こちらの熊本市民病院の南館も1979年の建築で耐震指標が0.33というのを見ると、これだけで結構、NICUがここにあったということだけでも、なかなか怖いというか、そのように思いますので、まず、何に一番最初にお金をかけてするのかということを、もう一度考えていただきたい。こういうところはやはり最初にお金をかけるべきところではないかと思いました。

 以上です。

○五十嵐座長 NICUがあるのは北館ですね。

○川瀬参考人 はい、NICUは北館です。

○阿真構成員 失礼しました。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 どうぞ。

○今村構成員 先ほども申し上げましたけれども、診療所についても耐震化についての予算措置をお願いしたいというのが今の発言を受けての感想です。

 それから、先ほど海野先生から、急性期からその後の亜急性期、あるいは慢性期にかけての支援体制ということで、この周産期の分野についてもJMATの中でどうだろうかという発言があって、日本医師会としては非常にありがたいなと思いました。ずっとこのJMAT活動を見てきて、担当は違うのですが、どうしてもこの周産期分野が外されているというか、機能していないなと感じておりましたので、これについては先ほども申し上げたように、一回、学会との緊密な連携というものが恐らく必要になってまいりますので、日医としても担当役員に伝えまして、そういった分野での機能の強化を図っていければと思いながら聞かせていただきました。ありがとうございます。

○五十嵐座長 小児の分野では既に使わせていただいているのですが、新生児の分野でもこれが使えるようになるといいのではないかと思います。ありがとうございました。

 ほかは、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○山本構成員 今回、熊本地震で浮き彫りになりましたが、現場には妊産婦さんと赤ちゃん、お母さんが病院に入院している人以上にたくさんいるわけで、災害が発生したときに直ちに動ける人的資源として、開業助産師の動きが今回、明らかに浮き彫りになったわけですので、人的資源としての位置づけを、これらの災害時の対応の中に組み入れることを真剣に考えていただきたい。今までは開業助産師、特に分娩を取り扱わない開業助産師の動きが余り明らかにされていなかったわけですが、今回を契機に助産師たちの動きが非常に目覚ましかったものですから、ぜひともここで組み入れを御検討ください。

○五十嵐座長 御指摘をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、まだ意見があるかもしれませんが、時間も参りましたので、最後に話題を変えまして、医政局総務課から、助産所の要件について御説明をいただきたいと思います。資料4をお願いいたします。

○佐藤医療政策企画官 医療政策企画官でございます。

 医療法の構造設備規制などは医政局総務課のほうで所管しておりまして、私から説明させていただきます。

 論点整理についての議論の際に、山本構成員から産褥入院、産後入院の推進と整備や産後うつ病対策のお話もございましたが、それに関連するようなお話を一点、この場で御報告させていただきたいと思います。

 助産所につきましては、以前、本検討会でも資料が出ていましたが、助産師さんの大半が今は分娩を取り扱っておらず、産前・産後ケアなどを行っているものと承知しております。最近ですと、入院日数が短縮する中で、出産直後の女性に対して産後ケアというものが拡大している。その中でも宿泊つきでの産後ケアのサービス提供に対する、自治体等でのサポートの動きが活発化しているものと承知しています。

 そこでこの医療法施行規則を見ていただきたいのですが、実はこの規則の17条では、入所施設、つまり泊まれるような施設を有する助産所は当然、分娩を扱うという前提で分娩室を設置するように求めているというのが現状になっておりまして、先ほどの、産後ケアで宿泊サービスを提供するような場合に、分娩はしないのに分娩室要件を形式的に満たすように求めるというのは不合理なのではないかという要望が自治体を中心に、ここ1年未満の間でも幾つもこちらにいただいているところでございます。

 つきましては、関係団体ともいろいろ御相談をしまして、ここの17条の5項に赤枠で書いていますように、「ただし、分娩を取り扱わないものについては、この限りではない」と。このとおりの文言になるかはわかりませんが、そのような改正をしたいと考えております。

 ほかのところ、入所室の要件などには変更はございませんので、入所があるような助産所については引き続き保健所等のチェックも入ります。

 ちなみに、産科であっても有床の診療所についてはもともと分娩室要件が存在しておりません。

 次のページを見ていただきたいのですが、具体的にそれを改正すると、どのようなことが期待できるかということです。左側の1のほうで申しますと、分娩を扱っていた助産所が分娩をやめて産後ケア等をやる場合に、既存の分娩室、これは9平米となっていて比較的大きいのですが、これをほかの用途に有効活用できるようになるとか、あるいは右側の2のほうですが、既存の建物を使って新たに産後ケアを行う施設を自治体等が開設するといった場合に、改装・改築が必要になる、あるいはその建物はもう活用できないということで断念するとか、ほかを探すとか、そういったことがなくなる。そのような効果があるのではないかと期待しております。

 こちらからは以上です。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 ただいまの御説明に、何か御質問、御意見はありますか。

○岡井構成員 今のお話に対する質問ではないのですが、このように産後のケアというのを重要視していかなくてはいけない時代になっていると思うのですけれども、実はその前に、産後になる前、妊娠中からもっとケアしなくてはいけない部分で、我々が今まで実行していなかった大事なことがある、そのことに最近、産婦人科の医療関係者がみんな気がついてきた。それが妊産婦さんのメンタルヘルスケアの問題です。今までの話の整理の中で全く出ていないのですが、最近わかったこととしては産褥で自殺をされる方の数というのは、私たちが一生懸命ケアして緊急搬送して母体死亡をなくそうとしてやっている、出血多量や病気などの身体的な問題で亡くなる人よりも多いのではないかということがわかってきているのです。そうすると周産期医療の体制ももちろん関係しますが、内容として、そういうメンタル的なところのケアにもっと力を入れなくてはいけないだろうと。それをぜひ、この検討会の課題の一つに挙げてもらって、検討してもらえればと思います。

 それと関連してもう一つ、厚労省の別のところで一生懸命やっておられる児童虐待の問題ですが、あの虐待の中でも早い時期の子供に関しては、周産期の管理で対応できる部分が相当あります。その中にもメンタルな問題も含まれてくるし、それ以外の問題もありますが、そういうことも何かこの検討会でやっていかないと、ほかにやっていくところがないのではないかと思います。今までNICUの数がこれくらい足らないとか医者が足らないとか、ずっと同じことを話してきたのですが、今、新たに起こってきている問題として、そういうところをもう少し力を入れていかないと、毎回毎回、同じことの繰り返しばかりやっているのではないかということを、きょうのまとめを聞いていて思ったので、ぜひ、そういう方向でもこの検討会を進めていただきたいと思います。

○五十嵐座長 いかがですか。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 ただいま御提案いただきましたので、検討させていただきます。

○五十嵐座長 そうですね、非常に重要な課題だと思いますので、次回以降また討議する機会もあるかもしれません。ぜひ、つくるようにしたいと思います。御指摘ありがとうございました。

 よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○峯構成員 ただいまの岡井先生のお話の続きになるかもしれませんが、私どものような小児科の開業医も、実は周産期の先生たちのバックアップをどのような形でできるか、常に考えていなければいけない時代です。その中で一つは障害を持って退院された子供たちの在宅ケアを含めたバックアップ体制と、もう一つは先ほどお話が出ていましたように、周産期の特にNICUにかかわる先生たちの数が極めて少なく、しかもそこにかかわるほかのスタッフの方たちもかなり制限されているということになりますと、例えば何とか退院はできたけれども、その子供たちに対する予防注射はどうするのかとか、それから一般的な育児支援はどうしたらいいのかとか、あとは一定の条件で生まれた子供たちは、毎月のように、RSウイルスを予防するための注射がずっと必要になってまいります。場合によっては1年ないし2年にわたって必要になります。そういう方たちに対して各医療機関の先生方が、そこに人的なパワーと時間をとられてしまいますと、本来の三次医療としての、NICUとしてのかかわりにはどうしても制限が出てきてしまいます。そういうことに対して我々一般の小児科の開業医を含めた、特に新生児医療を経験した者たちは、どのような形で協力できるのか、そういうことも実は周産期医療全体を考えると、先ほどのメンタルケアの件も含めて非常に重要なことになると思いますので、今後の御検討をお願いしたいと思います。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 ほか、よろしいですね。

 それでは、きょう、たくさん御意見をいただきましたので、それを踏まえまして次回以降、検討会の資料に反映してください。

 最後になりますが、事務局から何かございますか。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 第6回以降の開催でございますが、今回、いろいろ御意見をいただきましたので、その辺も踏まえて、どのような議題にするかということを今後考えていきたいと思います。また、平成30年度から始まります第7次の医療計画に関する指針の見直しも、この検討会で御検討いただきたいと思っておりますので、今日いただいたいろいろな御提案と指針との関係で、次回、どこまでできるかというところはございますが、そうした内容をテーマに、次回、御検討いただければと思っております。

 日程に関しましては決まり次第、また御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 それでは、きょうはこれで終了とさせていただきます。

 御協力いただきまして、ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 周産期医療体制のあり方に関する検討会> 第5回 周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事禄)(2016年6月30日)

ページの先頭へ戻る