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2016年6月29日 第3回水道事業の維持・向上に関する専門委員会 議事録

医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課

○日時

平成28年6月29日(水) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室(中央合同庁舎第5号館19階)


○出席者

委員(50音順)

浅見委員 石井委員 浦上委員 岡部委員 小幡委員
滝沢委員長 永井委員 平井委員 藤野委員 望月委員
山口委員 渡部委員 渡辺委員

オブザーバー

日本水道協会 吉田理事長

厚生労働省

北島部長 橋本審議官 長田課長 宮崎課長 松田室長
小柳補佐 久保補佐 倉吉補佐

○議題

(1)広域連携の推進について
(2)官民連携の推進について
(3)その他

○議事

 

○久保補佐 定刻までまだ 1 分ほどありますが、皆様お集まりですので、これより第 3 回水道事業の維持・向上に関する専門委員会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず、朝からお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 まず、前回まで御欠席でした委員の方を御紹介させていただきます。主婦連合会副会長の藤野委員です。

○藤野委員 主婦連合会の藤野です。どうぞよろしくお願いいたします。

○久保補佐 また、本日は所用により、尾崎委員と湯谷委員から御欠席の御連絡を頂いております。委員 15 名中 13 名の御出席ということで、過半数に達しておりますので、定足数を満たしていることを御報告申し上げます。

 また、本日は 6 23 日付けで、日本水道協会の理事長に新たに就任されました吉田様に、オブザーバーとしてお越しいただいております。

 続いて、事務局にも人事異動がありましたので紹介いたします。厚生労働省生活衛生・食品安全部長の北島です。大臣官房審議官の橋本です。生活衛生・食品安全部企画情報課長の長田です。代表して、部長から一言御挨拶を申し上げます。

○北島部長  6 21 日付けで、厚生労働省の福田部長の後任でまいりました北島です。前職は、環境省の環境保健部で、水俣病などの公害問題を部長として担当しておりました。生活衛生関係を担当させていただくのは初めてですが、水道行政に携わり、当たり前に飲めていた水にこのようにいろいろな課題があるということを勉強させていただいております。委員の皆さんには、忌憚のない御意見を頂戴したいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○久保補佐 それでは、本日の配布資料の確認を行います。議事次第。水道事業の維持・向上に関する専門委員会の委員名簿。資料 1-1 、広域連携の推進に係る主な論点及び意見。資料 1-2 、広域連携の推進について。資料 2-1 、官民連携の推進に係る主な論点及び意見。資料 2-2 、官民連携の推進について。資料 3 は、浦上委員からの提出資料で、用水供給事業及び末端給水事業の垂直統合の経済性。資料 4 は、湯谷委員からの提出資料で、第 3 回水道事業の維持・向上に関する専門委員会における検討事項についての意見等となっております。その他、参考資料が 3 種類あります。参考資料 1 は、厚生科学審議会生活環境水道部会の運営細則。参考資料 2 は、本専門委員会の設置について。参考資料 3 は、前回の議事録です。

 また、本日、委員の皆様にだけお配りしている資料として、望月委員からの提出資料で、コンフィデンシャルと入った形の、仏英における水道事業の官民連携。もう 1 つ、同じく望月委員からの提出資料の 2 として、水道事業 官民連携における課題となっております。さらに、水道事業の基盤強化方策に盛り込むべき事項の概要版と、その本体の報告書です。 2-1 として、指定給水装置工事事業者制度に係る課題解決の方向性と対策案のイメージ図。さらに、指定給水装置の関係の取りまとめの資料を、委員の方のみに配布しております。これらのものは前回も配布しているものですが、置いてお帰りいただいて、次回もまた使う形にさせていただければと思います。不足等ありましたら事務局までお申し付けください。

 ここで傍聴の皆様にお願いです。カメラの撮影はここまでとさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、以降の議事進行を、滝沢委員長にお願いいたします。

○滝沢委員長 皆様、おはようございます。委員長の滝沢です。よろしくお願いいたします。本日は、広域連携の推進、また官民連携の推進が議題となっております。それぞれ、事務局から資料に基づき説明を頂き、その後、皆様に御議論いただくという形で進めます。また、先ほどの資料説明にもありましたが、本日は委員の方々から資料を御提出いただいております。浦上委員からは、広域連携についての議論の資料を頂いております。また、望月委員からは、官民連携に関する資料を御提出いただいておりますので、その議論の冒頭でそれぞれ御説明を頂きたいと思います。また、本日御欠席の湯谷委員からも資料を御提出いただいておりますので、初めに御説明を頂きます。

 それでは、議事 (1) 、広域連携の推進について、事務局から資料に基づき説明をお願いいたします。

○倉吉補佐 資料 1-1 1-2 4 について説明いたします。まず、資料 1-1 、広域連携の推進に係る主な論点及び意見として、第 1 回、第 2 回の当委員会で様々な貴重な御意見を頂きましたので、今後の議論を整理していただくための参考材料として、事務局としてまとめたものです。本日は、時間の都合もありますので、 1 1 つの意見の御紹介は差し控えさせていただき、先に進みます。

 次に、資料 1-2 、広域連携の推進についてを御覧ください。全体を大きくオレンジ色のページと青色のページに分けてあります。オレンジ色のページは本日御議論いただきたい論点等をまとめたもの、それから青色のページはその参考資料となっております。 2 ページから 6 ページまでがオレンジ色になっております。 2 ページが市町村経営原則、水道事業における都道府県の位置付けについての論点の提示です。 3 6 ページが、広域連携の推進に当たっての都道府県の機能強化などの論点と、これまでの皆さんの意見等を踏まえての事務局のたたき台を提示させていただいたようなものとなっております。

2 ページを御覧ください。専門委員会に先立って行われた検討会の報告書においては、広域的に水道事業を実施することには利点があり、現に都道府県水道を経営する事業や水道事業を都道府県単位で統合する取組もあることを踏まえ、水道事業について市町村に加え、都道府県も主要な経営主体として位置付けることを検討すべきとされました。また、現状の水道法ですが、水道事業は原則として市町村が経営するものとされ、市町村以外の者は、市町村の同意を得た場合に限り経営することができるとされており、現行でも都道府県は水道事業を経営することができることとなっております。

 主な論点として、水道行政の中での都道府県の位置付け、市町村経営原則の扱いを挙げております。もう少し論点を絞り、 2 つの黒ポツを挙げております。 1 つ目は、市町村経営原則を維持しつつ、都道府県が経営主体となる場合として、どのような場合が考えられるか。例として、給水区域が複数市町村にまたがる場合、県営の用供と末端水道事業が垂直統合する場合を含むとしております。また、市町村が何らかの事情で経営することが難しくなった場合等が該当するかと思いますが、給水区域の市町村の規模、その他を勘案して、都道府県が経営することが適当と認められる場合を挙げております。

2 つ目は、現行の規定では、水道事業は市町村が単独で経営するものであるという形に見えてしまうといったことがあり、一部事務組合の設置による水道事業の経営や、ほかの水道事業者との連携による共同の事務の実施が可能であるという旨を、水道法上で明確にしてはどうかというものです。

 また、※の論点は、 3 ページ以降の論点の内容と深く関わるものですが、こういったことに加え、都道府県は県下の水道事業者等の事業基盤が強化されるよう、事業者間の連携を支援する等、都道府県下の水道事業の持続性を図る施策を講じなければならないこととしてはどうかとしております。

 続いて、 3 ページを御覧ください。水道事業基盤強化方策検討会の報告書の抜粋ですが、広域連携の推進に係る国の役割として、都道府県による広域連携の推進の取組状況のフォローアップ、方向性の提示、情報提供や財政支援を検討すべきとされました。都道府県の役割としては、広域にわたる事務や市町村に対する連絡調整に関する事務を担う立場から、地域の連携の推進役を担うことが重要とされます。具体的には、協議会の設置、交付金の交付事務等の財政支援、水道事業基盤強化計画の策定の権限を付与すべきとされています。また、前回も御議論いただきましたが、水道用水供給事業と受水水道事業の垂直統合についても、積極的に推進すべきとされています。

 続いて、 4 ページです。現行、水道法上、都道府県に付与されている権限として、給水人口 5 万人以下の水道事業の認可等があります。あとは、広域的な観点での権限として、広域的水道整備計画の策定権限が付与されています。また、本年 4 月から、都道府県がイニシアチブを取って広域化等を推進するため、給水人口 5 万人を超える水道事業についても、県内で水利調整を完結する等の条件を満たした場合について、厚生労働大臣の指定を受けた都道府県に対して、認可及びそれに付随する権限が移譲されることとなっております。現在、大阪府が指定されており、都道府県が広域化等の推進を実施しやすくなる環境が整いつつあると言えるかと思います。主な論点ですが、広域連携推進のための都道府県の機能をどう考えるか。水道用水供給事業と受水水道事業の垂直統合の推進の方策、国からの支援の 3 点についてまとめ、次の 5 6 ページに事務局として、広域連携の推進等による水道事業の基盤強化のための枠組みの考え方 ( ) を、たたき台として提示しております。内容ですが、国は水道事業の基盤強化を図るための基本的な方針を定め、公表するものとしてはどうか。中身としては、施設の更新、耐震化の促進、広域連携 ( 統合、人材派遣、水質の共同管理等 ) がありますが、そういったことの推進に関する基本的な事項や、水道事業者・水道用水供給事業者等の統合に関する基本的な事項、よるべき基準を記載してはどうか。また、国は国の保有する情報を、都道府県や市町村に対して積極的に提供等をしてはどうかとしております。

 次に、都道府県は、水道事業等の広域的な連携を図るための協議の場を設置、設けることができるとしてはどうか。そして、都道府県は、国の定める基本的な方針に基づき、市町村からの要請がなくとも水道事業の基盤強化を図るための計画を策定できることとしてはどうか。 9 ページに参考資料を載せておりますが、現行、水道法第 5 条の 2 にあります広域的水道整備計画は、市町村の要請を受けて都道府県が策定できるものとなっております。内容は、水道の整備、拡張を意図するものである一方で、事業基盤強化の計画は、水道施設を更新、耐震化して強靭なものにしていくとか、事業者同士の事務の共同実施なども含む広域連携を推進していくことを意図した計画であると考えております。内容としては、水道施設の計画的な更新、耐震化の促進に関する事項、広域連携による水道事業の大規模化、人材確保の推進等に関する事項に加え、統合を検討する事業者の組合せを示すこととしてはどうかと考えております。

 また、都道府県の計画を受けて統合を検討するとされた事業者は、協議により統合の計画を作成するものとしてはどうか。これは、統合ということになりますと、事業者にとっても大変影響の大きいものですので、当事者である事業体において、改めて進め方を考えていただくことが重要であるという視点で設けているものです。最後に、水道事業の基盤強化計画や統合の計画は、公表が適当ではないかとしております。

6 ページです。先ほど、都道府県が設置できることとしてはどうかとして提示させていただいた協議会のイメージを書かせていただいています。水道事業者間の様々な格差が要因となって、事業者自らが広域連携の検討の契機を捉えられない現状があることから、広域連携の足掛かりを推進役として、都道府県の積極的な関与が期待されており、都道府県が主催する協議の場の重要性については、都道府県側の方々からも御指摘を頂いているところです。これらを踏まえ、都道府県が主体となり、水道事業者・用水供給事業者を構成員として、広域的な連携による事業運営の効率化を協議するための場を設けることができることとしてはどうかとしております。

 協議会の構成のイメージですが、都道府県が地域の実情に応じて自由に決めていただくことがよいかと思っております。左下の構成員の例の 1 にあるように、都道府県から水道行政担当課のほか、市町村担当課や広域連携の担当課に入っていただき、市町村等として県内の全事業者、さらに学識経験者を含めた協議会と、かなり大きな協議会ですが、こういった形としていただいてもよいですし、あるいは右下の構成員の例の 2 にありますように、もっとコンパクトに都道府県と水道事業者・用水供給事業者の協議会をブロックごとに分けて設置いただくことも考えられるかと思います。

7 ページ以降の資料については、今回は議論の参考ということにさせていただいておりますので、説明は省略いたします。

 次に、資料 4 を御覧ください。こちらは、本日御欠席の北海道環境生活部環境局長の湯谷委員から頂いている御意見です。かいつまんで御紹介いたします。市町村経営原則、水道事業における都道府県の位置付けについては、水道事業は市町村が行うことを原則とした上で、都道府県は広域連携の推進役として、その機能の在り方を検討していくべきということです。また、広域連携の推進のための都道府県の機能強化等については、広域連携の推進役として、都道府県が協議会の設置などに関与していくことは必要である。ただ、その実効性の確保のためには、国の技術的、財政的な関与が不可欠な上で、具体的に基盤強化の計画について、統合を含む計画を都道府県が単独で一方的に策定するということであれば、それは困難である。また、認可等の権限のない所は、事業体の十分な情報を持っていないのではないか。また、取組を促進させるためには、国の支援として広域連携の中核となる事業体への役割の動機付けが重要である。広域連携という趣旨と思うのですが、対象事業体の範囲などの一定の考え方について、国が基本的な方針に示すこと。水道用水供給事業と受水水道事業の統合については、協議会の枠組みにおいて地域の実情を踏まえた適切な広域連携の形を検討するべきといった御意見を頂いております。

 併せて、広域連携の議題からは離れますが、議事 (2) に関連する御意見として、官民連携の推進について、中核となる事業体が周辺の小規模事業体を巻き込んでいくような仕組みづくりが必要ではないか。コンセッション方式における水道料金の議会の関与の方法を整理すべきとの御意見を頂いております。その他として、本専門委員会における検討の取りまとめに当たり、都道府県や事業者の意見を幅広く聞く必要があるとの御意見を頂いております。こちらも、本日の議論の際に参考としていただければと思います。事務局からの説明は以上です。

○滝沢委員長 湯谷さんからの御意見も御説明いただきました。本日は資料 1-2 2 ページ目の市町村経営原則、水道事業における都道府県の位置付けにおける論点について、まず御議論を頂きたいと思います。浦上委員より資料を提出いただいておりますので、先に御説明いただけますか。

○浦上委員 近畿大学の浦上です。今回、用水供給事業及び末端給水事業の垂直統合について、資料の提出を依頼されましたので、このように取りまとめてまいりました。 1 ページ目が、論点を要約したものです。 2 ページ目以降が、その根拠資料、データとなっております。 1 ページ目の 1 、諸外国の状況を御覧ください。丸数字1です。諸外国の水道事業の状況は、 2 ページ目の表 1 に、特にヨーロッパの水道事業について簡単な情報が整理されております。これは、その下にある論文の一部を私が日本語に訳したものです。一番下に、日本の水道事業について、私が付け加えております。大まかな規模感を確認いただければと思います。日本では、末端給水事業のみですが、 2012 年現在で 1,281 で、平均の 1 事業者当たりの給水人口が 9 4,000 という状況です。諸外国と比べてみても、特に日本が特別に何か違うということではなく、それぞれ国によって様々な状況です。ということは、日本は、今、垂直統合や広域化が非常に 1 つの論点として注目されておりますが、同じように海外でもそのような問題意識を持って、研究者が日々研究をしている状況です。

1 ページの丸数字2です。水道事業の範囲は、日本と諸外国と考え方が違うのかということです。実は 2 ページ目の図 1 を見ていただきますと、これも同じく Saal 先生の論文の図を私が日本語に訳したものです。赤い波線でくくってある部分です。一番左の用水供給事業、末端給水事業は、それぞれ別にやっている水道があれば、当然その垂直統合について分析することが、 1 つの関心になります。また、右側の水道事業と下水道事業も、同じ垂直統合ですが、ここは水道と下水道という垂直統合の分析が世界で行われております。また、横にありますマルチユーティリティというところで、諸外国では水道だけではなく、電気やガス事業を同時にやっている事業所もありますが、そういった事業者間の範囲の経済性といいますが、そういった関心を持って分析をしているものがあります。要するに、システムとして水道を捉えますと、別に海外と日本でシステムの捉え方に大きな違いはなく、その関心も我々が持ってる関心と全く同じ関心を持って、海外では分析されているということです。

1 ページ目の丸数字3を御覧ください。 1980 年代以降、規制緩和、民営化の潮流があります。それを受けて、経済学分野では、多数の統計学・計量経済学的手法を用いた実証分析が行われております。実は、私も経営学部に所属しておりますが、経済学をベースとしたこういった実証分析を、これまでずっとやっておりました。実は、 1980 年代、 90 年代と、データがそろわず、なかなかこういった実証分析ができなかったのですが、 2000 年以降データが整備され、また統計学・計量経済学的手法が飛躍的に発展してきております。また、御存じのとおり、コンピューターの性能が非常によくなっておりますので、こういった実証分析がたくさん行われてきております。それが、 3 ページ目の図 2 にありますように、過去から 2010 年までしかデータとして出ておりませんが、論文というものは書いて出版されるまで、 2 年ほどのタイムラグがありますので、 2010 年までのデータしかありません。私の知る限り、これ以降も非常にたくさんの実証研究が出てきております。その中で、規模の経済性や範囲の経済性という経済学理論をベースとした分析が行われているのですが、今回は用水供給事業と末端給水事業の分析を行った研究成果について、海外の先行研究を紹介いたします。 1 ページ目の丸数字5で御確認ください。実は、規模の経済性や上下水道間の垂直統合の経済性を分析したところ、結果に非常にばら付きがあり、経済性がある、なしが、研究者によって様々です。ところが、用水供給事業と末端給水事業について言えば、私の知る限り、過去の研究成果の全てが、この間には明らかに垂直統合の経済性が存在するという研究成果を出しております。 3 ページ目の表 3 が、垂直統合の用水供給事業と末端給水事業に当たる事業間の垂直統合の経済性を実証研究した先行研究についてです。アメリカ、フランス、イギリス、ポルトガル、ペルー、それと私がやっている日本。これら全ての研究成果が、この垂直統合の経済性があるという判断に至っております。そうしますと、世界の経済学者は、恐らく日本でいう用水供給と末端給水の事業間の垂直統合の経済性については、あるという認識を持っていることは、明確に言えるところです。

 私がやった日本の垂直統合の経済性の分析について紹介いたします。統計学・計量経済学的手法が発展してきたというところですが、まだまだ分析手法は、実はいろいろあって、なかなか 100 %確実にこの垂直統合の経済性があるということを断言できるかというと、条件付きとはなってしまいますが、少なくともそのときに採用できた分析手法を使って分析した結果から説明いたします。私も、いろいろな手法を試みてきましたが、今まで試みた中で、結論として日本のデータを用いた分析を行っても、確かに垂直統合の経済性があるという結果を導くことができました。また、当然今後も新しい手法が出てきておりますので、今、正に取り組んでいるところですが、更に研究成果を積み重ねていきたいと考えております。 1 ページ目の一番下にも書いておりますが、これまでの諸外国の研究成果、そして私自身が行った分析から、経済学的な立場から判断いたしますと、用水供給事業と末端給水事業の統合には、経済的メリットがあると考えております。

 日本の用水供給事業と末端給水事業に関して見てみますと、もし仮に将来、用水供給事業と末端給水事業が統合することが可能になれば、現在、用水供給事業は都道府県営が平成 26 年度現在で 22 、企業団営が 48 ということで、恐らく用水供給事業を中心とした垂直統合が行われれば、都道府県営、若しくは企業団営として垂直統合をされた水道事業者が、将来存在し得るだろうと考えております。そうしますと、先ほど説明がありましたように、水道法の中には市町村営主義ということで、市町村が認めれば都道府県営もあり得るということですが、やはり都道府県営として垂直統合型の水道事業が将来存在し得る可能性を残すということを考えるならば、やはり都道府県営というものを法に位置付けることは必要ではないかと考えております。ただし、地域の実情に応じてそれぞれ経営主体の在り方はあるかと思いますので、企業団営でいくのかという選択肢もあり得るかと思います。いずれにしても、将来の可能性を、今、ここで廃除すべきではないと思いますので、都道府県営、あるいは企業団営というものをしっかりと位置付けていく必要があると、私は考えております。以上です。

○滝沢委員長 ただいまの浦上先生の御説明も踏まえて、資料 1-2 に戻り 2 ページ目、用水供給の検討は 4 ページ目の下にも論点がありますので、この辺についての御意見を頂ければと思います。

○小幡委員 今の浦上先生のお話を興味深く聞かせていただきました。ありがとうございました。

 表 1 にヨーロッパの水道事業の状況というものがあって、後でフランスについては民間委託の話で出てくると思いますが、フランスは自治体の数が大変多いので、その関係で事業所数が 1 9,300 、平均給水が 3,300 と非常に小さくなっています。かなりばらつきがあるというのは、フランスだけでなくドイツも結構小さいという中で、スコットランド、北アイルランドは国がやっていますね。日本は、事業所数は 1,281 9 4,000 です。フランスはこれから広域化という話があると思いますが、何せ元が大変小さいので、広域化してもせいぜい 3,000 ぐらいにするかという程度の広域化で、フランスの場合は自治体が小さい中でコンセッションをしているというのは、後の官民連携の話で出てくると思いますが、そういう中で、日本の今の状況をどのようにしていくかということだと思います。

 今、おっしゃったように、経済的には効率性が増すということだと思うので、基本的に、これから水道の維持、管理、運営のところで基盤を整備していこうという中で、広域化をし、体力を強くしていくというのは大事だと思うのです。そのために何ができるかということだと思います。

 現在でも、都道府県が水道事業をやっている所は結構あります。事務局から、今の水道法の市町村経営原則の条文をどうするかというお話がありました。 2 ページの「現状」のところです。あとは技術的な法律の話になると思うのですが、この法律は都道府県ができるということになっていて、広域化も近隣の市町村が一緒になって水道事業を一部事務組合でやることはできます。現在、この法律でできることを、あえて法改正するかということは、後で法制局との交渉になってきて、必要性がないことであれば、国会も混んでいるので難しい状況はあるかもしれないと思うので、そこまで法律を本当に変えなければいけないかというのは、また技術的な話としてあると思います。

 今後、より水道の維持管理の体力を強めるために、広域化あるいは、今でもやっているように都道府県が行っていくということは、現状の法律でも読めます。その中で、法律の条文をどうするかというのは、個人的には技術的な問題かなと思っています。

 なぜ市町村原則があるかということですが、かなり長い歴史があるので、市町村が一番基礎的自治体であって、その基礎的自治体が住民に必須の水について責任を持つということで出来上がっている。その中で、市町村がまちづくりの中で水道というのを位置づけてきたという歴史があることは否めないので、そういう現状がある中で、ひっくり返すというのは難しいですし、むしろ、市町村原則の現状を踏まえつつ、市町村がやるということになっているけれども、各市町村で本当に自分だけで今後もできるのかということを、しっかりと考えてほしい。そういうスタンスはとても大事だと思うので、今回の専門委員会で検討している作業は有意義ではないかと思っています。

 やはり市町村と都道府県の関係というのは結構難しくて、対等な自治体ということになっているので、都道府県が垂直的に市町村に対して強制的に物を言うというのは、今の地方自治法上できません。ただ、そういう中で、協議の場を設けるということについて、都道府県が音頭を取ってやるということはとても大事だと思うので、そういう形で今後、どのように水道を運営していくかという将来像をきちんと市町村に考えてもらう場を、都道府県が率先して作ることは、是非やっていただきたいと思います。

5 ページの太字になっている所の○の 2 つ目が、「協議の場を設ける」となっていまして、これは大変大事です。その次の○ですが、「市町村からの要請がなくとも」とありまして、もう 1 つのほうが市町村の要請が要ると書いてあるので、わざわざこのように書いているかと思うのですが、こういう協議の場を設けるというのは、通常は要請がなくても県がやるということは普通できることです。実際上、 A という市町村と B という市町村が連携してほしいということを、この計画の中で具体的に書くとすれば、先ほどの北海道の方からのペーパーにもありましたが、それは市町村自身にその気が全くなかったらできない話なので、「市町村からの要請がなくとも」とわざわざ書く必要はないという感じがします。市町村にとってみると強制化されるのではないかとか、そのような懐疑心があり得ると思うので、あえてこう書く必要ないと思います。協議の場を作るから、こういうことで市町村が参加して、いろいろと論議をして考えていきましょうという中で、最終的にはその市町村が納得しないとできないと思いますので、あえてここに書く必要なないという意見です。

○滝沢委員長  5 ページについても御意見を頂きましたが、主に 4 ページぐらいまでの論点について先に御意見を頂き、 5 ページ以降は細かい個別の件になりますので、また、できれば時間を取ってということで議論を進めていこうと思います。全体的な論点として、 2 ページ、 4 ページの辺りについて、御意見を頂きたいと思います。浅見委員から御意見がありますか。

○浅見委員 浦上委員からの貴重な情報提供、ありがとうございました。意見の前に少し質問をさせていただきます。こちらで垂直統合がかなり効率的ということで、皆さんのイメージとしては、用水供給でつながっている所はかなり実現性が高いのではないかと思っているのは、そうだと思うのですが、この垂直統合でメリットが大きいというのは、どの辺が効率化されてメリットが出るという前提で計算をしていただいたのでしょうか。

○浦上委員 私の研究では受水率に着目し、受水率ごとに垂直統合の経済性、指標を計算したところ、受水率の低い所が垂直統合の経済性の指標が高いです。つまり、垂直統合のレベルが高いので経済性も高いという結果が出ていると思います。ですから、受水をしているかどうかというところに私は着目しました。

 例えばフランスで行った研究では、漏水率と配水量に関して分析されたものがあったのですが、その漏水に対して、それをコントロールする際に垂直統合されて、つまり水源を持って配水量をコントロールしつつ漏水をコントロールする場合のほうが、非常に経済性が高いという分析結果も出ています。ですから、水源を持って配水もやっている事業者のほうが、よりトータルとしての水道のシステムをコントロールしやすいというところでの研究成果であったと思います。

 ですので、ばらばらにやるよりは同時にやっていったほうが、水道全体をシステムとして効率よく事業運営を行えるというところが、垂直統合の経済性の大きなメリットではないかと考えております。

○浅見委員 そうしますと、かなり水質管理といった点でもメリットが大きいということかと思いますし、技術的にも大きな事業体で見ていくことができるという点も、かなりメリットがあるのではないかと思います。

 また、料金的には、全部いきなり一緒にするということとは、また別なのかなと理解しましたので、そういう点でも非常にメリットが大きいのかなと考えました。

○石井委員 補足です。今の経済性の分析の件です。浦上先生も私も同じ分野で分析していまして、学会でも費用関数を導き出して、 DEA などいろいろな分析手法を用いて行ってきました。ただ、この 2 3 年は水道事業の研究論文の発表が少ないものですから、今までのケースの中では費用関数の中で垂直統合した場合のコストの低減というのは、今日の浦上先生のデータの中でも明らかにされていますが、これは導き出されております。

 ただ、規模の経済性だけではなくて、今日の話にもありましたが、範囲の経済性、もう 1 つはネットワークの経済性です。

 ネットワークの経済性というのはなかなか難しいのですが、これを最近の我々の研究としては進めているところです。経済学でいう外部経済効果の分析なども出てくるので一概には言えないのですが、モデルケースとして具体的な事例としてどこかでやらせてもらうと、非常に有り難いと思います。

1 つ提案です。これは難しい手法ではなくて、最終的には範囲の経済性もなかなか難しいのですが、そちらはデータを用いて分析して、ネットワークの経済性のほうはかなり定性的な話も入るので、総合的な分析がそこでできるのではないかと思っております。もし可能性があればそういう分析も今後やっていただければ、もちろん我々も協力しますので、そういう方向があるということを補足させていただきます。

○滝沢委員長 規模の経済性あるいはネットワークの経済性という経済的な観点と、浅見委員からは水質管理等の水源から蛇口までという一貫の管理ができるメリットがあるという御指摘がありました。

 一方、小幡委員からは、現行の市町村原則というのはそれなりの経緯があるもので、そこも考慮した広域化を考えていただいてはいかがかといった御意見がありました。

 主な論点として、もう一度御覧いただきたいのですが、事務局のまとめとしては、都道府県を水道行政の中にどう位置付けるべきか。その中で、これまで培ってきた市町村経営原則というのがあるわけですが、この中に、これから都道府県に新しい時代に合った役割を果たしていただくために、案としては給水区域が複数の市町村にまたがるときや、規模等その他を勘案して、都道府県の経営が適当な場合等が考えられるのではないか。 2 番目に、一部事務組合の設置による水道事業の経営その他です。これが実施できるということをもう少し明らかにしてはどうか。このような論点が挙げられています。これについてはいかがでしょうか。

○渡部委員 先ほどから出ているように、市町村経営という主体部分については、やはり水道法で定めている長い歴史の中で、例えば防災の視点や災害の視点を含めて、技術的要素が非常に高いということから、経営主体を市町村に定めていくという基本部分はあるのではないかと思っています。

 都道府県の役割として、我々が、今、現実に非常に困っているというのは、パートナーシップとして、先ほどから出ているように、きちんと協議の場を設けるとか、こういう部分の積極的関与です。それから調整役です。こういうことを法改正もさることながら、制度上そういうものを強化、付加していただくことが非常に大事ではないかと私は思っており、それをどういう形で都道府県に付加条件として、例えば財政支援もあると思っています。また、ある程度、都道府県だけではなく、核となる都市、拠点都市というものが一緒になってやらないと、なかなか地域の実情をきちんと把握してやる上では難しいのではないかという点も、 1 つあるのではないかと思っております。

 それからもう 1 つは、役割としては垂直統合の問題と水平統合の問題も出ておりましたが、垂直統合の問題については、我々の地域においても用水供給する側と受水する側、 100 %受水する側、自己水源があって、松江市は 4 割が自己水源があって、 6 割は受水している。いろいろな事情があるわけです。一概に垂直統合だけが、広域連携の特効薬というような考え方ではなくて、水平統合も同時並行でやっていくということを、 1 つの手法として考えていくべき問題ではないかと思っております。その辺も、法改正までいくのか、それとも制度設計上でそれをある程度クリアして、都道府県と市町村の役割を明確化していくという方法が、 1 つはベターではないかと思っております。

 ただ、都道府県にもっと本当に旗振り役として出ていただきたいという気持ちもあり、そういうことになれば地域のまちづくりも含めて、 1 つのインフラ全体の整備の中で大きな地方創生にもつながっていくのではないかと思っております。是非そういう視点をこの中に入れ込んでいただきたいと思っています。

 その 1 つの方策として、現在厚生労働省から出していただいているわけですので、そういう整理の仕方をしてもらうと、非常に有り難いと思っております。

○滝沢委員長 受水比率等も違うので、水平と垂直、地域の実情に応じたような広域化、連携の仕方を考えてはどうか。その中で県は調整や協議に対して、旗振り役を更に努めてほしいといった御意見だと思います。

○平井委員 私は県という立場で意見を言わせていただきます。

 まず全体の考え方ですが、渡部委員からもお話がありましたように、地域の実情が地勢的にも異なっているところが多いので、確かに経済的に分析されると、規模の経済性あるいは地形が平坦な所であれば広域化をしてもメリットは得られるのではないかと思うのですが、私も今まで申し上げてきたとおり、地域ごとに地形も含めて実情がいろいろと異なっているという中では、決して最終的に答えが 1 つではないと考えています。ですから、それぞれの地域の実情に合った多様性を認めていただけるような、そういう大きな枠組みにしていただきたいというのが私どもの考えです。

 そのような中で、都道府県としての役割は何かと申しますと、先ほど来、小幡委員も渡部委員もおっしゃっていましたが、それぞれの市町村ごとにいろいろ思いはあっても、なかなか個別にお任せして広域化を進めていくのは難しいと思っておりますので、そういったときに都道府県として協議の場を設けて、先導的に仕切っていくという役割を私ども都道府県は果たすべきかと思っておりますし、神奈川県でも実際にそのような取組を始めさせていただいております。ですから、協議の場ということに関しては、私どもは賛成であり、場を作るということに関して裏付けがあれば、それはよろしいのかなと思います。

 ただ、市町村と都道府県というのは自治体としては全く同等であり、これも以前に申し上げたことがあろうかと思いますが、頭越しに県が市町村に対して「一緒になりなさい」ということは強制できるものではありませんし、むしろ市町村から「自分たちで一緒になりたいので、県にも協力を」と言ってもらえるのが理想の形でありまして、県から逆流させてというのは難しいと感じております。そこは制度設計されるに当たっても、都道府県から強権発動がされるといった仕組みが仮に出来上がってしまいますと、うまくいくものもいかなくなってしまう恐れがあると感じています。

 経営主体に関しては、水道事業は既に市町村の経営原則ということでやってこられたという歴史と事実がありますので、市町村の自治性から考えても、これを直ちにやめてくださいという話はあり得ないわけです。基本は今後も市町村原則になると思います。そのような中で、機が熟して、議論が熟して、地域ごとに地域に合った形で統合という形もあるでしょうし、もう少し緩い形もあろうかと思いますが、そういった広域化をしていくということはあり得ると思います。その中の形として、私ども神奈川県で、既に歴史的に県営の水道をやっておりますが、そういったものも結果として出来上がってもいいのかなと思います。ただ、私ども神奈川県の場合は、そういう下地がありますので余り抵抗感がない部分もありますが、実際に都道府県営の水道をやってない、特に末端給水事業をやっておられない都道府県のほうが圧倒的に多いというところで、これを新たに始めてくださいというような、それこそ地域の実情ではなく一方的な解を導き出すというのはよろしくないのかなと思っています。ですので、経営主体についても現状を踏まえながら、多様性を認めていただけるような制度にしていただければなと感じております。

 それから、都道府県の機能強化のほうで、協議会のお話は申し上げました。これは私どもとしても、こういったことは進めていきたいと思っておりますが、ほかにこの資料では何点かお話があり、「財政支援」ということが記載されています。

 もちろん、私どもは具体の話を市町村とできる立場ではありませんが、例えばこの協議会で協議をし、市町村で機が熟し、広域化で統合しようではないかという機運が醸成されたといったときに、それぞれの事業者も経営をしていますので、単独でやっていた水道事業者が横につながるというときには、イニシャルコストが相当にかかると考えております。

 せっかく機運が醸成してきても、そこも持出しで全部やってくださいというのは、なかなかつらいのではないかと思っていますので、補助金の在り方としては、広域化が本当に進む場合に、協議が整った場合に、事前の調査や人のやり繰りも含めてということになろうかと思いますが、是非、国でもそういった場合には補助の制度をしっかり作っていただけないかなと考えております。

 一方で、私ども都道府県も独自に財政支援を行える枠組みをということで、ここに記載されておりますが、私ども都道府県も厳しい財政状況であるというのが偽らざるところでして、その中で都道府県も独自で補助しなさいという義務化のような規定になってしまうと、その辺は苦しいのかなと思います。この辺は、是非御事情をお汲みおきいただきたいと思っております。

 それから、「基盤強化計画の策定」という所です。これも、一方的に県のほうが先に作るというのは、なかなか難しいと思います。手順として機運の醸成、地域の実情に合った形での広域化のいく方向が見えてきて、その中でそれをしっかりと形にしようという手順でいくべきものなのかなと思います。ですから、先に計画を作ってしまってから、そのとおりにそれぞれの市町村なり水道事業者が、そこに向かって進んでくださいという位置付けの計画というのは、実現が難しいのではないかと考えております。

4 番目の事業統合の話については先ほど申し上げたとおりで、地域の実情があります。事業統合という形がその地域の実情に合っていれば、もちろん進めていけばいいとは思いますが、これだけが 1 つの解ではない、地域の実情に即した形で多様な在り様を認めていただければと考えております。

○滝沢委員長 地域の多様性、その地域の歴史等に配慮しつつ、これからの県の役割を考えていただければというような御発言だったと思います。その地域の中で議論を進めて、機が熟す、あるいは地域の中で合意ができれば、県が経営主体となるという可能性も排除しないというような御意見だったと思います。支援策や広域化も一方的にはできないというような御発言もございました。

 それでは、 4 ページまでと申し上げたのですが、今の平井さんの御発言の中にも 5 6 ページに関わるような御発言もありましたので、少し範囲を広げて、 5 ページには国あるいは都道府県の役割について、少し具体的な記述があります。この辺の記述についても併せて御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

○岡部委員 水団連の岡部です。私などは、小さな事業体もたまに訪問させていただくのですが、給水人口が 5 万とか 10 万ぐらいの事業体で、真面目に考えておられる事業体ほど、先行きが難しいという話を聞いています。また、 5 万人以下は非常に赤字が多く経営的には難しいという話があります。それを考えると将来、 5 万、 10 万以下、小さな事業体、数でいうと大多数の事業体が経営的に難しくなってくるということで、この広域化という話が出ているのではないかと思います。

 もちろん市町村経営でやってきた大切さは分かりますが、やはり将来は一定規模、給水人口なのか都道府県規模なのかは分かりませんが、ある程度の規模を明確に示していくことは必要ではないかと考えています。

 また、都道府県については、実際に県営でよくやられている企業団方式などがありますが、話を聞いていますと、プロパーの育成とか、経営面だけでなく、人材や技術の確保という面でも、企業団方式などは比較的やりやすいという話も聞いていますので、そういった形態も考える必要があるのではないかと思います。

 それから、先ほどから市町村経営、都道府県の役割ということの議論がありますが、私は民間企業の立場ということもありますので、電気とかガスなどの事業は、市町村とか都道府県という単位ではなく、あくまでも事業としてどういった形が効率的にできるかということで考えます。今、議論されている水道の将来が経営的に難しくなるという議論をするのであれば、行政単位というよりは事業としての規模、どのぐらいの規模が適正かとか、そういった観点で議論する必要があるのではないかと思います。

 広域化については、個別の事業体同士の話というのは、今までもそうですが、非常に難しい問題が多々ありますので、やはり都道府県の旗振り役は非常に重要な役割だと思いますし、お願いしたいと考えています。

 あと、実際の現場で広域化を進めるときに、後の官民連携にも関わりますが、先ほど平井委員からも出ていましたが、補助金などなしでは、なかなか進められないという現状もあります。長期的な安定した補助金、広域化するに当たっての包括的な官民連携なども考えられておられる所はありますので、単年度でない形での補助金の安定的な確保というような辺りも併せて考えていかなければ、広域化は、事業体側も受ける事業者側としても、スムーズにいかないと考えています。

○滝沢委員長 ほかに御意見はいかがでしょうか。

○藤野委員 主婦連合会の藤野です。御意見を伺っていて、実際に水道を使うのは市民ですが、市民からの視点が全体にないような気がして、とても気になっております。もちろんコスト、事業規模のことはとても大事なのですが、水道というのは命の水でして、これだけはどのようなことがあっても守ってもらわなければならないものであり、規模が小さくてもちゃんと飲める水が供給されないと、というところはあると思うのです。

 ただ、「そうは言っても」というところはあると思いますが、私は、もう少し市民がちゃんと自分の町のことを考える、先ほど松江の渡部さんもおっしゃっていましたが、まちづくりと一緒に考えていくというような視点がないとまずいと思っています。私たちが、黙っていても水が飲めるということが本当は違っていて、水道料金を払っていて、それが適正なのか、自分たちの所はどのような水をどうやって浄水してもらって、自分の所に届いているのかということがちゃんと分かって、初めて水道というものの全体が見えると思うのです。

 私は、広域連携も多様な地域の実情に合わせてということが必要だと思いますし、もちろんコストの面も考えなければいけないと思いますが、それに加えて、市民がしっかりと水道を知る方策も考えに入れていただきながら進めていただきたいと思っております。ガスや電気は、自分たちでこれから選んでいかなければならない時代になったのですが、知らないうちに水道は止まってしまったとか、老朽化した水道管を更新するにはコストがかかりすぎるので給水車が来るようになった、ということが起きるのではないかという懸念があります。よろしくお願いします。

○滝沢委員長 市民に分かりやすいという重要な視点でした。ほかにいかがでしょうか。

○永井委員 幾つかあるのですが、北海道の湯谷委員から提出されている部分で、感想としては、水道事業を実施していない都道府県、北海道ですが、ここにいきなり経営主体として預けるといってもできないというのが現実だということについては、私も十分に理解しています。

 その一方、現実的に、この間にこのような場を通じて、幾つかの県でモデルとなるようないろいろな手法、地域需要に応じたいろいろな水の供給体制をやっている所もあり、あれはあれで私も知らなかった部分はたくさんあって、そのような意味では広域連携も当然だと思いますし、これからは用水供給事業と末端供給をしている所、いわゆる垂直統合、そういう所はすぐにでも不可能ではない。問題は議論の仕方だということが分かっています。

 もう 1 つは、湯谷委員が出された部分の下のほうの丸数字1は、広域連携の推進役として旗を振るべきだと思いますし、積極的な関与は大事だと思います。この中で、国の技術的関与は不可欠だと。表現としては、「国の技術的」と書いていますが、この文章以外に、具体的にはこのようなことをいうということがあれば、この中でお知らせしていただきたいと思います。

 それから、 5 ページの真ん中ぐらいにありますが、先ほど小幡委員からもありましたように、表現として「都道府県は市町村からの要請がなくとも」とあるものですから、これは上から目線のように取られて、そのような意味では、先ほどの北海道の人から見ると、困難だという事情を抱えている所とすれば、表現的にどうかなと。しかし、一方では国としても、水道ビジョンあるいは新水道ビジョン、この間で議論をして、地方にいろいろな情報発信をしていますが、動かないということがありますから、その意味では少し表現を強くしようかという意味合いも入っているのだなと思います。ですから、そのような意味では、この下にいろいろ書いていますが、関係市町村の了解を得られるような仕組みが必要だということですから、それはそれでいいのですが、表現としては、都道府県は市町村の了解を前提に国の定めるうんぬんかんぬんと入れれば、スッと地方も受け入れられるのかなという気がします。

 それから、○の一番下の水道事業の基盤強化を図るための計画や統合の広域計画ですが、これは公表は公表でいいのですが、併せて具体的な計画に当たっては、水道事業者が広域連携に向けた施設の整備、人材派遣も必要だと思うのです。その際は、何といってもこういったときには財政支援が受けられるような仕組みを考えていただきたいということです。

○滝沢委員長 ありがとうございます。石井委員、どうぞ。

○石井委員 関連ですが、委員の皆さんの御意見はそのとおりだと思います。今、永井委員からも北海道のケースが出ましたが、これも都道府県によって、縦も横もみんなマトリックスで見れば条件は違う。それはそのとおりだと思います。

 例えば、今、南海トラフは、この 30 年以内に 70 %の発生率が指摘されています。例えば南九州から四国、近畿南部等々、特に高知県は太平洋に全て面しておりますが、高知県庁は全く水道事業はやっていないのです。工業水道だけを一部、鏡川でやっているのですが、上水道の担当者はおりません。今、工水もどんどん縮小されて、電気のほうの発電部門と一緒にやっていて、工水担当は 6 人しかいなくて、その内の 4 人は技術者です。 40 年を超えた管路が 8 割近いという状況の中で、この管路をどうするのか、更新すべきかどうかという大変深刻な状況にあります。南海トラフが予想されますので積極的に工業団地の誘致もできない状況にあります。そういうところの中で、やはりケース・バイ・ケースということは、委員の皆さんがおっしゃっていましたので、そういうところも含めて考えるということは、非常に難しい連立方程式になるのではないかと思うのです。この解を解くというのは。できる所はできるような支援措置をしっかりやってあげる。できない所はできない。これはどうしても国がやはり音頭を取ってやらざるを得ないと思います。人材がいないのです、はっきり言って、そういう所に導入する場合には、やはりいろいろなパッケージでやってあげなければならないと思います。だから、 3 つぐらいのオプションを出して、その中で、都道府県の中でどれを選びますかというところを、どうしても国がリーダーシップを取ってやらざるを得ないのです。都道府県でできる所はいいのですが、できない所は、やはりどうしても国の関与が必要になってくると思っております。そういうことで、第 1 点目は、やはり地域の実情に応じて支援措置をしっかり取っていくことだと思います。

2 つ目は、 1 つ懸念材料があります。地方自治法のところでも、広域連携の推進ということで、協議会、一部事務組合、事務の委託、あるいは事務の代替執行とか、いろいろな制度が設けられております。その中で自治法と水道法の調整というか、この辺の協議をどう進めていくのかというところなのです。

 例えば、下水道に関しても昨年 5 月に水防法 3 法の一括改正が行われました。

改正下水道事業団法では、まず第1は、事業団が従前から行っている建設・維持管理業務の範囲が拡充されました。第 2 は、災害時の支援業務が位置づけられました。そして、第 3 は権限代行業務が創設されました。 特に下水道管理の共同化・広域化を促すために「事業団協議会制度」が創設されたのです。経営の厳しい事業体では、協議会を設けて進めるという法改正がなされたのです。

従って、広域的な連携を図るためには、ある程度思い切った法律に基づく施策というものが必要なのです。法制度上の整合を保ちながら最適解を見出していかなければならないと思います。以上です。

○滝沢委員長 ありがとうございます。冒頭におっしゃられた、国が 3 つぐらいの基本的な方針をというのは、 5 ページ目で言うと、「国は、水道事業の基盤強化を図るための基本的な方針を定め」の中の 1 つの案というように理解してよろしいでしょうか。

○石井委員 はい。

○滝沢委員長 ありがとうございます。また、法的な整合性ということで、今後とも議論を協議していただけると思いますが、重要な御指摘でございます。ありがとうございます。ほかに御指摘はありますか。

○小幡委員 先ほどから各委員の皆様がおっしゃるように、 1 つこの方法だけに行けというのは非常に無理があるので、多様にやっている中で、よりこちらのほうが効率的であるとか、あるいは技術的に安心とか、そういうことを見える形で示していくということが、とても大事だと思います。やはり先ほど、委員からもありましたように、水道事業というのは、住民、国民のためなのです。水道というのはそもそも、水道料金も条例主義でして、住民に非常に近くなっていて、住民のコントロールは利くことになっているのですが、ともすれば、当然のように安心な水が得られると思いがちなので、そのために何か動かなければいけない。今後の維持更新のために、何かもう少し汗をかいてやらなければいけないという危機意識は、なかなか住民のほうに伝わらないのです。ですから、そこは広報の問題かもしれませんが、各市町村の住民に、自分の所の水道は今後どうなるのかということについて考える機会をどんどん発信していって、このままでは 10 年後は大丈夫かとか、そういう形で、危機感を少し住民の方に共有してもらう。そうすれば、市町村も都道府県も、結局、動かざるを得ないということになると思います。それをしないと、協議の場も危機意識を持たないと、なかなか参加してくれませんし、市町村もそれぞれの自分の所なりの課題もあり、つい、水道は後回しということになりやすいので、そうではないという何かインパクトのある広報をして、集中的に関心を呼ぶということが必要ではないかと思います。

○滝沢委員長 ありがとうございます。

○日本水道協会 吉田理事長 日本水道協会の吉田です。資料 5 ページに関連して、少しお話させていただきます。日本水道協会としては、これまでもお話させていただいていると思いますが、水道事業の基盤強化、これなくしては、将来に水道をつないでいけない、その 1 つのツールとして、「広域化」を進めなければならないということで、かねてから、国とも協力し、いろいろな取組をしています。

 例えば、先進事例、今、石井先生からもお話がありましたけれども、市民と一緒に将来の水道をどうしていけばいいのだというような取組をしている事業体の取組を広く発信するとか、私ども協会のホームページ上でも、先進的な事例を広く公開しています。ただ、これももっと工夫しなければいけないということはあると思いますが、今までもやってきています。

 私どもの協会は、水道事業体を会員としています。水道事業体としてのいろいろな要望を取りまとめて、広域化のためにこういうことが必要ですというお話をこれまでも国に要望させていただいています。平成 26 年補正予算から、新たに国がつくられた交付金制度の中で、基盤強化のための事業を交付対象としていただいていますが、もっと交付対象を広げていただけないかとか、広域化に当たって必要となる、先ほど来お話に出ていましたが、どうしても施設整備が必要になるということで、これについては、広域化という新しいステージに移るための新たなものですので、これに対しても、新たな補助制度をお願いできないかと。また、ソフト面でも、料金システムをソフト的につなげなければいけないなど、いろいろとやらなければならないことがある。そういったものについても、財政支援をお願いできないかというようなことを要望しているのです。

 なぜこのような話をするかというと、広域化を一生懸命考えている所も多い。ただ、それをクリアできない 1 つの大きな要因として、財政支援がないと基盤強化のツールとして有効な広域化というステージに、なかなか一歩を踏み出せないということです。是非、 5 ページの議論のところで、「国が基本的な考え方を示す」、これは大事なことで絶対必要だと思います。それから、国、都道府県、事業体の役割を決めて、関係者の合意の下で計画を作る。これも大切なのですが、この計画は、実行できる計画でなければいけないわけです。余り時間がない中で広域化という新たなステージに乗せていくためには、先ほどお話しした要望のような「財政的な支援」でプッシュするということも、是非、我々全体で考えていかなければいけないと思います。以上です。

○滝沢委員長 実効性を担保ができるような計画をということで、その中で、いろいろな支援が必要だというお話を頂きました。ほかはいかがでしょうか。

○浅見委員 ありがとうございます。このところ、幾つか小規模な水道の見学等をさせていただいております。担当者の方が 1 2 名、数名という形で、本当に日々の業務に追われて、このままいくと、日本全国で安全な水を飲むことができなくなるのではないかという懸念を持っているところです。

 今回、小規模な所も含めて、広域化を推進するというのは非常に重要だと思います。特に統合だけではなく、技術的な連携、助言等も含めて、必ず目が行き届くようにしていただきたいという点でいくと、都道府県に協議の場を設けることが「できる」だけではなくて、していただきたいと思います。できる規定だけだと、今まででも進んでいないというところがありまして、特に、今までできないところ、やっていないところに関して、是非進むようにしていただきたいというのが第 1 番目です。

 市町村からの要請がなくても、了解を前提にとか、市町村と協力をしてとか、それは書き方によりますが、とにかく市町村と一緒になって、是非、知事、市町村長、首長と一緒になって、この問題が非常に重要だということを認識する場を設けていただいて、積極的に進めていただきたいというのがお願いです。

 例えば、奈良県は知事が非常に積極的に進めて、首長さん方と一緒になって検討しているという部分もありますので、そういった問題意識を持っていただいて進めるということを是非やっていただきたいと思います。恐らく国のよるべき基準というところで、経営状態とか、技術的なこととか、ここはやはり手を入れなければいけないというところが、あぶり出されるような指標を設けて、そこは何か改善の策を考えるという形になっていくことが必要ではないかと思います。以上です。

○滝沢委員長 山口委員。どうぞ。

○山口委員 今までの委員の先生方の御意見にもつながるところです。 6 ページの協議の場を設けるということで、協議会を挙げられています。イメージとして例が挙がっていますが、やはり今までの状況がなかなか打破できないというところで、協議の場があるとしても、恐らく現実的な問題というのが先に立って、直接の関係者だけですと、なかなか話が進みづらいのかという印象があります。

 例えば、事務局からの資料にもありますが、広域化に取り組んでいない事業体が考える阻害要因ということで、料金の格差があるという回答の割合が多くなっています。消費者から見ると、料金の格差があるということであれば、もう少し効率化ができないかと考えますけれども、現実に事業を展開していくときには、それが統合することの阻害要因になるということもあります。やはり直接の関係者だけに限定されてしまうと、現状維持的になりやすいのかということです。ですから、例えば、協議会の構成員の例の 1 として、都道府県、市町村等、それから学識経験者となっていますが、学識経験者だけではなくて、もっと幅広く利用者も含めて、関係者を集めて都道府県レベルで主導して協議会を行うということであれば、もっと幅広い関係者を入れたイメージのほうが話を進めやすいかと考えました。以上です。

○滝沢委員長 ありがとうございます。これは、協議会の例ということですが、御意見を参考に修正をご検討ください。そろそろ次の議題に進みたいところですが、この広域化と、県と国の役割等々に関する論点について、何か最後にどうしても御発言があればお聞きしたいと思います。順番にお願いいたします。

○渡部委員 質問です。今回の 5 ページを含めた水道事業の基盤強化計画というのを、 1 つは、広域化も含めて新たに出されたということなので、従来の今の広域的水道整備計画というのは、もともと市町村の要請があれば、都道府県が広域計画を作るというのがあります。この辺は、あくまでも基盤整備計画に今回包含して一本化するという考えかどうかということを、事務局にお聞きしたいのが 1 点です。

 それから、 5 万人規模というのがあって、人口の問題等はありますが、先ほどから出ている小規模部分については、水道部分とか、具体的に言うと、簡易水道などもあるわけですが、この辺の、いわゆる広域化の問題をどういうように進めていくかということも、事務局的に考え方があれば、それは見捨ててしまうのか、大きい所をまず広域化をやっていく考え方なのか、少しその辺の考え方を聞きたいと思います。

○滝沢委員長 ご質問の 2 点について、回答いただけますか。

○倉吉補佐 まず 1 点目、広域的水道整備計画と、今回提示させていただいた水道事業の基盤強化を図る計画についての関係性ということかと思います。広域的水道整備計画は、高度経済成長を背景に水道をこれから拡張・整備していくかというものであったのに対して、今回の水道事業の基盤強化を図るための計画というのは、普及率が 100% に近づきつつある現状で、まず、既存の施設の計画的な更新、耐震化をしていって、設備を強靱なものにしていくということ。さらに、人口減少社会を背景に、個々の事業体では持続的安定的な経営が難しいというところもある中で、経営的な基盤を強化するための広域化を進めるという二本柱かと思います。やはり向いている方向が違う計画ですので、我々としては、広域的水道整備計画とは別に、水道事業基盤強化計画というものを位置付けていけたらと思っております。

 簡易水道の統合についても、これまでも財政的な支援等々について進めているところです。今回、広域連携、広域化を進めていくに当たっても、規模の大小に関わらず全体的に進めていきたいと考えております。

○滝沢委員長 永井委員、どうぞ。

○永井委員 私も 5 ページですが、都道府県と市町村との間で、これから様々な形で協議会を設置して、基盤強化の考え方を意見を出して策定すると。

 問題は、私もちょっとこの間の経験からすると、策定したものは、この後、実際に動くまで何年もかかると思います。その間に人事異動があったりとか、首長が代わったことによって、策定が後退するとか、変わるということがないように縛りとか何か前提に、このことを進めていかなければ、人が代わったら、また考え方が変わったということもおかしな問題なので、この辺も意見として申し上げておきたいと思います。

○滝沢委員長 はい。平井委員、どうぞ。

○平井委員 私も 5 ページについてです。先ほども申し上げましたが、真ん中辺に、市町村からの要請がなくても水道事業の基盤強化を図るための計画を策定できるという記載がありますが、私ども県としては、かつて市町村合併の流れが幾つかあった中で、結果として、合併の話はあったけれども、なかなか難しくて立ち消えになったという経過も実際に体験をしております。一部の事業ということではありますが、やはり市町村にとって、よその自治体と、ある部分を統合していくのは非常に大きな話でありまして、そこを中心に、存立の基盤である市町村そのものがなくなってしまうのではないかという、そういう懸念を抱かれる所も実際あったりします。ですから、そういった懸念を抱かせるような話になってしまって、これを県のほうから先に出すというのは、ちょっといかがかなと思っています。確かに経済合理性とか効率性ということで、数字の上で見れば、市町村の壁なんか取っ払ってしまって、先ほど岡部委員からも御発言があったかと思いますが、事業の効率性でもって計画を作って見せてみるというのも、効率的にはそのほうがいいのだろうと思います。しかし実際に今、水道事業を経営している市町村の立場からすると、非常に機微に触れる問題ですので、私ども県としても非常に慎重にいきたいと思います。

 それから、その関連です。一番下の○の所で、統合の計画の公表というのも、例えばですが、県のほうで計画を先に作ってしまって、それを統合しろというように公表して、公表したのだからやれというように市町村に受け取られると、全く逆効果になってしまいます。ですから、事をうまく進めるためには、都道府県が協議の場を設置するというその機能は非常に重要です。私ども、実際に重視して進めていこうと思っております。そういうところからうまく入っていけるような仕組みにしていただきたいということです。重ねて意見を言わせていただきます。以上です。

○久保補佐 今の御指摘については、あくまで計画の公表というのは、中より少し下に関係市町村の了解を得るような仕組みが必要というように書いていますが、あくまで県と関係市町村の間で合意が取れて、それで、計画として本当に成立した暁には公表してください、という趣旨のもので、案段階のものを案段階の時点で公表するという意味ではないので、御心配には及ばないかと思います。

○平井委員 分かりました。

○滝沢委員長 それでは、大体意見を頂いたということでよろしいでしょうか。多くの留意事項のご指摘を頂きましたので、このたたき台、考え方 ( ) に対して、少し事務局で頂いた意見をまとめていただきまして、また次回、議論させていただければと思います。

 私がお聞きした範囲では、非常に強い反対意見というのはなかったと思います。個別の件に関しては、今の平井委員の御意見も含め多くの留意事項がありましたので、もう一度整理していただければと思います。

 それでは、 2 番目の議事です。官民連携の推進について、資料 2-1 、資料 2-2 に基づいて御説明をお願いします。

○松田室長 それでは、資料 2-1 を御覧ください。これまでの検討で挙げられました主な論点と、その踏まえた意見を整理しております。論点は 2 点です。阻害要因と、導入を推進する支援策です。

 阻害要因としては、業務の規模、あるいはリスクに対する不安感というものが挙げられております。それについて、いろいろ意見を述べていただいております。

 資料 2-2 を御覧いただくと、こちらで論点等を整理して御議論いただければと思います。現在の官民連携の推進の取組状況と、それを踏まえた今後の方向性ということで整理しております。

2 ページは、検討会報告を抜粋したものになっています。人材活用あるいは事業効率化といった点から推進の必要性を指摘しております。論点は、先ほど御説明したとおりです。

3 ページを御覧ください。水道事業は、多様な官民連携の手法が選択肢として既にいろいろありまして、それぞれ適用できる業務に違いがあります。水道事業の業務を、一部やっているように、例えばコア業務とか、提携業務というように分類すると、おおむね図にあるような関係性が見られるのではないかと思います。

4 ページ、これは業務委託の現状を、厚生労働省で調査したものです。細かいところは省略させていただきますが、一定の規模の施設、有人の施設については、およそ 80 %以上は何らかの委託を実施しているということです。その中で、水道法に基づく第三者委託、あるいは包括的委託というのは 3 割ぐらいあります。これ以外に、 DBO とか、 PFI 事業というものが 12 施設、 1 %弱にはなりますが、あります。

13 年の第三者委託の水道法改正以降ですが、包括委託とか、第三者委託という例が出始めて、推進策も実施しつつ現在に至っているという状況です。

5 6 ページは、その事例を幾つか示しておりますので、適宜御参照いただければと考えております。説明は省略させていただきます。

7 ページ、厚生労働省のこれまでの推進の取組です。 1 つは、官民連携の手引の作成や、官民が連携した協議会で、関係者、地域への浸透を図るといったことを取り組んでいます。

 平成 27 年度から、計画策定支援の交付金と調査事業、こういったもので推進の支援策を設けていることと、 3 番にありますように、施設整備の補助金や交付金については、 BOT 、あるいはコンセッションでも支援が可能となるような見直しも行ってきております。官民連携は、広域化にも非常に密接に関係するようなテーマだということで進めています。

 今、 1 つ大きな論点として挙がっているのが、コンセッション方式の導入ということです。 9 10 ページを御覧いただくと、政府全体の方針の中で、これは、今年 6 月の閣議決定の「日本再興戦略 2016 」ですが、 PPP の中でも、公共施設等運営権方式、コンセッションの推進を特に重視しておりまして、水道は成熟対応分野として重点分野に位置付けられております。

 その主な施策として、 (2) は、主なものを抜き出したものです。 1 つは、まだ先行事例がありませんので、そういったものを形成するときの新たな負担感をなくす仕組みを検討すべきとか、コンセッションで民間に認可が移ることになるということで、そのリスクに対する制度的対応を検討すべきとか、事業期間が契約期間で限定されることによって生じる経理的といった面の課題への対応を検討する。そういった施策を載せております。広域化を併せて推進するということも指摘されています。

10 ページの一番下に、コンセッション事業自体は、具体化を進めるということで、 6 件の目標がありまして、今年度が集中取組期間の最終年度になっております。

11 ページ、水道事業体のコンセッションに対する考え方ということで、アンケート調査を行ったものです。分からないという回答が 8 割と、大部分を占めるのが現状です。幾つか意見がありますが、先行事例がなく判断しにくいとか、民間に任せるリスクに対して不安感があるとか、やはり検討に先立つ費用、人員の問題、広域化が先であるとか、規模が小さくて受け手がないとか、職員の技術力の低下に懸念がある。そういった点がありまして、先ほど御紹介したような厚生労働省の各種施策において、幾つかの課題については対応できるように進めてきているところです。

 次のスライドからは、最近、先行事例として例えば、大阪市等で検討事例が出てきていますが、その検討の中で出てきている主な課題についての説明です。

12 ページ、コンセッションであっても、先ほど御説明しましたが、水道事業経営を行う上で認可制度というのがベースになります。水道事業は、その性質上、地域独占性が強いということで、国による事業認可が制度化されております。同一給水区域に複数の事業認可を重複して与えることはできないということです。そういうことで、コンセッション導入ということであれば、公共サイドは事業廃止、運営権者である民間サイドは、事業創設認可の申請が必要となる。こういったところで、認可主体が変わる際のリスクが生じないかという指摘があります。

 この点に関して、 1 つは、既に水道法上で必要な関与の制度というものが幾つかあります。下の四角にあるように、民間事業者の認可において、市町村の同意が必要だということと、更に認可に際しては、条件を付すことができるということですので、必要に応じて契約事項、同意事項とするものを認可の条件とすれば、変更認可の際の対象にもなるという仕組みがあります。

13 ページ、そのリスクについて幾つか具体例を挙げて、その対応策を整理したものです。突発的な運営権者の不履行とか、あるいは災害等の緊急事態といったものが考えられると思います。市町村による買収とか、先ほどあったような廃止許可や創設認可の手続、あるいは災害時の協定と、そういったことで、現行法の体系においてできる対応策ということです。

 基本的にはこれらをベースにして、具体的には契約で、リスク内容、あるいは分担というものを明確にしていくことで対処できると考えておりますが、リスクへの対応に更に万全を期すこと、そして、コンセッションを更に推進していくという上では、下の四角にありますように、市町村が運営権者の健全な経営を定期的にモニタリングするとか、いざという事態には、市町村が水道事業を実施するといったことにしてはどうかというように考えております。

14 ページ、これは、もう 1 つ別の観点の課題として挙がっているものです。水道配管等の更新を行うということは、これは継続的にやる必要がありますので、事業期間中の更新投資というのは、コンセッションの事業期間が限定されるため、その期間中、年数の経過に応じて償却費が増加するということになります。右の図のような形に、単純に積み上げればなるということで、これは経理上負担が水道料金に反映されることになって、料金が不安定化するとか、不健全な経営になる恐れが高まるのではないかということです。先ほどの成長戦略では、これを平準化して、経営の安定化につながるような準備金等の制度の導入を検討することとされております。

 具体的には、その下の参考にあるような、これまで空港とか、鉄道で準備金制度が構築された例がありますが、後半に積み上がった償却費分の負担を、事業期間の前半で準備金等の形で積み立てて、後半で取り崩すということで費用の平準化を図るという仕組みが考えられるかと思います。

 最後、 15 ページです。もう 1 つ、民間が経営する際の水道料金の考え方も整理すべきという指摘もあります。ここでは、また水道料金の議論がいろいろ出てくると思いますが、簡単に整理しています。水道法に規定されているように、基本的にはコンセッション方式によって民間事業者が経営する場合でも、事業継続に必要な経費は総括原価として確保されると、そういう必要があると考えております。駆け足でありましたが、資料については以上です。

 先ほど省略しましたが、「日本再興戦略 2016 」で、海外の先行事例のコンセッション等の事例について収集、分析を今年中に行って、なかなか情報のない地方公共団体に結果を提供すべきと、そういう施策も挙げられております。この関係で、今月の 12 日から、およそ 1 週間で、内閣府の福田大臣補佐官をはじめとして、内閣官房、厚生労働省、日本政策投資銀行、日本経済研究所、 PFI 機構といった関係の担当者と合同で、フランス、イギリスの水道事業の官民連携の仕組み、あるいは実状について現地調査に行ってまいりました。

 私からは、ここまでとさせていただきますが、今回の調査には、当専門委員会の望月委員にも同行いただいております。望月委員から、概況について御紹介いただければと思います。

○滝沢委員長 それでは、望月委員に説明をお願いいたします。

○望月委員 日本経済研究所の望月です。今、御紹介がありましたように、 2 週間ほど前にフランスとイギリスの水道事業について、現地調査に行ってまいりました。委員の皆様のお手元には、「仏英における水道事業の官民連携」ということで資料を配布しています。まだ行って 2 週間ほどでレポートを取りまとめ中ということもあり、本当にトピックス的な所だけ御紹介させて頂ければと思います。

 フランスに関しては、 2 ページに書いてあるように、約 3 万を超える地方自治体、非常に小さい自治体が水道事業をやっているということで、場合によってはこういった自治体が幾つか複数で事業組合という形を作ってはいるのですが、非常に多くの自治体が水道事業供給をやっています。このうち約 6 割が民間委託をしています。ただ、民間委託の内容が、アフェルマージュと呼ばれている料金収受も含めた形式で、日本でやっている単純な委託よりは、もう少し幅の広い形の委託までを含めてやっているのが現状です。

 これを具体的に申し上げますと、料金収受は民間事業者が行うのですが、資産の所有は公共がし続けるということで、日本で考えているコンセッションに近いのではないかと思っています。フランスでは、アフェルマージュ以外にも純粋なコンセッションとか、もう少し公共側の責任が残っている形のレジーアンテレッセというような様々な手法があり、アフェルマージュの中でも非常に様々なバリエーションによる委託が行われている状況です。この委託は、年数としては現状 20 年を上限としており、これは過去に 100 年近くの非常に超長期の委託をやっていた反動で、余り長いと競争性も働かない、料金も上がっていくという中で、今、足元では 20 年を上限としている形です。

 民間委託は、フランスでも非常に広まっており、民間の自由度を確保することで生産性の向上を図るとともに、自治体側は非常にいろいろ細かな指標を設定してコントロールをする。加えて、事業者側に頑張ってもらうために、いろいろなインセンティブなメカニズムを設ける工夫がされています。

 フランスに関しては、少しトピックス的な話として、パリ市が再公営化したという話が出てはいるのですが、先ほど申し上げましたように、フランスは 3 万以上の事業体があり、毎年 500 800 件ぐらいの事業の更新とか契約手続がある中で、ごく一部がそういう形になっており、再公営化といっても、直営に戻すというよりは、公社化をしているという形で、実態としては公社が更に民間会社に委託を出すことも行われている状況です。

 最後のポツですが、 2020 年をめどに、今、フランスでも 3 万以上ある事業主体を、 3,000 程度にまで削減をするという広域化の計画があり、フランスでは、まず民営化を広げていきながら、次のステップとして広域化を進めていくことが行われていることが分かってきています。

 裏面に行っていただきまして、イギリスです。 1989 年に完全な民営化で水道事業をやっています。今、 10 の上下水道会社、 7 つの上水道会社が地域独占で事業の実施をしている状況です。イギリスの民営化は 25 年ぐらいたつのですが、当初の目的としては、設備の更新投資、水質の改善、こういったものを進めていくために、財政状況が厳しい中で民間投資を入れ込みながら、急速に設備投資を進めていきたいという思いが、民営化という手法を選ばせたというところです。

 現状としては、その目的は、ほぼ達成されつつあるという評価を国内ではしているようです。これは完全民営化ですので、この水道会社には、当然、株主がいるのですが、非常に多くの海外資本が参加しています。イギリスだけではなくて、ヨーロッパ、日本の企業もこういったイギリスの水道会社への出資をしています。国内において海外の会社が株主である点への反発みたいな話はあるのですかねと聞いたら、そんなのは全然ありませんというお話でした。

 これは完全民営化ですので、当然、料金も民間が自由に定めているのですが、一方で OFWAT という非常に強い規制当局があり、ここは料金規制、あるいは料金の設定に関する監視も行っているし、経営に関しても 5 年ごとの計画を出させています。料金についても 5 年ごとの見直しルールが厳格化されており、その際には水道会社から非常に多くのデータを出させて、それを各社比較して、ベンチマークを設定して、その水準に満たない会社には、お前たち、水道料金はもっと改善できるんじゃないかとか、水質を改善できるんじゃないかということで、かなり強いプレッシャーを与えながら規制を掛けていると。そういう意味では、非常に効率的というか効果的なルールが出来上がっていると思われました。こういうことをする OFWAT 自体が、様々な分野の専門家から構成されていると。当然、水道といった技術的な専門家もいるし、経営面をチェックする専門家、エコノミスト、また、会計士や弁護士、そういった人の集合体ということでした。

 イギリスに関しては、当初は更新投資の部分での民営化が中心だったのですが、最近は利用者目線、顧客重視が強く求められてきており、冒頭、申し上げましたように地域独占ということもあり、競争がなかなか働かない。その中で来年の 4 月からは、まずは法人向けの水道の小売業の自由化、あと、水源選択の自由化が予定されているということで、電気、ガスが自由化されるように、水道についても徐々に自由化を検討しているのが、イギリスで得られた情報です。

 これらフランスとイギリスとで見ていきますと、一定の民間事業者への自由度を与えながら、一方で公共側で適切なコントロールをして、さらにインセンティブを与えるということで、一方で縛りながら、一方であめを与えると、いずれも非常に効果的なコントロールをしているところがあります。そういった中で競争原理を持ち込むことで効率化を図っています。フランス、イギリス、いずれもこういった手法を長年続けていて、適宜見直しを掛けることもしています。あと、それに併せて、 4 ページの下から 2 つ目のチェックの所にも書いてあるように、特に OFWAT で非常に感銘を受けましたが、様々なデータを開示しています。それを定期的に開示させて、当然、 OFWAT 側でもこの情報を把握しているし、利用者側へもきちんと広報的に出すと。要するに、次の 5 年間の料金がどうしてこの値段になるのかを、分かりやすく提示することもさせているということで、そういった意味で、先ほど広域化のところでもお話がありましたが、利用者側への情報提供も、非常に重要な部分だと理解しています。以上ですが、海外の事例も御紹介という形で御説明しました。

○滝沢委員長 どうもありがとうございます。資料 2-2 2 ページにあるオレンジ色のスライドですが、検討事項、 13 14 ページにある同じくオレンジ色のスライド、リスクの対応策について、御意見があれば、残りの時間お伺いします。 1 ページは、官民連携を阻害している要素についてと、国は手引等も作っているが、そのほかに必要な支援策等はあるかという、この 2 点です。いかがですか。

○石井委員 望月委員からイギリスとフランスの詳細な事例を教えていただきまして、ありがとうございました。大変参考になりました。今の報告をお聞きして思ったのですが、今回、厚労省で水道事業の基盤強化を待ったなしで具体的に進めなければならないという非常に危機感を持って、本専門委員会を立ち上げてもらったわけです。そういうところで、フランスやイギリスは、官民連携を進めて、長い間基盤強化をいろいろヒット・アンド・エラーで進めてきたと思っています。民間企業のインセンティブを高めるためのアフェルマージュで、かなり日本版のコンセッションに近い形だとおっしゃいましたが、私もそのとおりだと思います。

 結局、広域連携は、できる所は進めなければなりません。先ほど規模の経済性の話をしましたが、範囲の経済性ですね。浅見委員からも水質の共同検査とか、一部進んでいますが、シェアードサービスとか、共同委託、いろいろな形で自治体の枠を超えたような施策も、日本でも始まっています。ですから、そこをもう少し広げられるコンセッション方式、そういったコンセッションは PFI 法の改正に基づくものでもあると思います。

2 つ目ですが、そのときに問題となるのは何か。前々回も前回も申し上げたのですが、私は常々、所有と経営の分離はどうしても必要だと考えています。ご存じのとおり、企業経営はもちろんそうですが、自治体経営も全く同じでして、リスクをいかにヘッジするかは、これはフランスの例もイギリスの例も同じだと思うのです。

 結局、どこが問題かと言えば、今日の資料の中で、先ほど松田室長から御説明いただいた 12 ページで、「同一の給水区域に複数の事業認可を重複して当てることはできない」というのは、そのとおりだと思います。その際に、地方公共団体は事業の廃止の許可の申請を行って、運営権者は事業の創設認可の申請を行う。そうすると、立場は逆になります。認可は 1 つなので、責任の所在は法制上もそうですが、民間が主体になれば、責任はおのずと民間に付いてくるのです。リスクは民間のほうに重くなることは、事業認可上明らかになります。

 そうなると、具体的に日本版のコンセッションを進めるときには、二の足を踏んでしまうことになります。特に、地下埋設のものに対しては、都市ガスでも公営の民営化でもありましたが、北見市ガスのケースは深刻でした。これは、 2006 年に北海道ガスが北見市から都市ガス事業の譲渡を受けて、まもなく管路の老朽化に伴う破損によってガス漏れが大規模に発生して死亡事故が起こったのです。

公益事業のケースにおいても、民間のみならず、地方公共団体側もちろんそうですが、両方ともにリスクはおいたくないのです。だから、所有と経営を分離させ、できればインフラの所有と経営を、上下で分離できる検討をしないと進まないと思います。水道事業の場合、これは下水道のコンセッションもそうですが、今、下水道も様々な検討が進められていますが、なかなか進みません。是非、皆さんで知恵を出して、どうやったら日本版のコンセッションが具体的に進められるか。水道も重点項目の一つですので、今年度中には一定の方向性を出さなくてはいけないのです。事業体も出さなければならないというタスクは課せられているので、是非、そういったところを御検討いただければ有り難いと思っています。以上です。

○滝沢委員長 ありがとうございます。

○浦上委員 望月委員から先進事例の御紹介を頂きましたが、私からもそこに補足して説明したいのです。特に、イングランドとウェールズの件については、 1989 年の民営化ということですが、実は 1973 年に広域的統合が行われています。すみません、 1973 年が正確な年数かどうかは、今、根拠の資料を手元に持っていないのですが。要するに、 1973 年以前のイングランドとウェールズは、全く日本と同じ状況で、たくさんの地域の水道があったのです。国がそれを強制的に、 10 の上下水道会社と水道会社という枠組みに作って、水道会社を民営化したのが 1989 年と。

 私の知る限りは、先ほどの私の資料を見ていただくと、例えば、オランダ、ベルギー、イタリア、ポルトガルの数が少なくなっていると思いますが、実はこれも強制的に広域統合をやっています。それで民営化とか、それ以降の対応をしていますので、ある程度強制的に広域的な統合をする必要があるのではないかというのは、認識を持っています。ある程度規模が大きくないと、また、果たしてコンセッションが本当にできるのかという疑問があります。

 日本でコンセッションを導入する際には、リスクの考え方のところで、最終的に最後のリスクを考えるときに、市町村が受けるのかということですが、当然、今、考えられるシナリオとしては、多分、大阪市とか、大きい水道を持っている自治体が、単独でコンセッションをということになるかもしれませんが、海外の事例を参考にすると、ある程度広域化した中で、それをコンセッションとして出していくことも、考え方としてはあるのかと思います。

 ただ、そのときにリスクのところを考えると、では、それが駄目になったら市町村が受けるのかというと、要するに広域化した上でコンセッションに出して、でも、最後は市町村になると、果たして市町村ができるのかは、私もまだ考えがまとまっていないので、そこは、また別途これから検討しなければならないかと思います。

 要するに、規模を大きくしないと、なかなか前に進まないところがあります。海外の先行事例を見ると、やはり強制的にやってきたという事実もあるので、そこは日本も。日本は日本の実情に合ったやり方を考えていくということですが、海外ではそういったやり方も行われていることを、我々は理解しておく必要があるのではないかと考えています。以上です。

○滝沢委員長 広域の連携は必要であるという御意見だったと思います。

○渡辺委員 全管連の渡辺です。厚労省から説明がありましたことについては、異議はありませんが、違った立場で少し官民連携について申し上げたいと思います。現在、私たちの協同組合が利用しているのですが、官公需適格組合という制度があります。この制度は、御存じのとおり官公庁発注物件を協同組合で請け負って対応する制度です。この資格は、しっかりした技術力あるいは責任体制ができていて、民主的かつ公平な運営ができる協同組合を中小企業庁が証明している協同組合です。官民連携の 1 つとして、このような制度を活用するのも 1 つではないでしょうか、そう思って提案します。なぜなら、公共工事品確法にも、地域の社会資本を維持するために、地元状況に精通した者を活用すべきとされていることからも、検討するに値するのではないかと思って発言しました。以上です。

○滝沢委員長 ありがとうございます。

○望月委員 先ほどの浦上委員のお話にも併せてですが、確かにおっしゃるように、イギリスの場合は、まず国が音頭を取って、広域化を非常に強制的にやっていた上で、広域化だけしても限界があると。もともと非常に小さい自治体がやっていたのを、形だけ広域化しても限界があるということで、広域化をして民営化をしたという順番だと私は思うのです。フランスの場合は、非常に地方自治が強いという国柄もあって、そこは後回しにして、最初に民営化を進めた上で、その効果が見えてきたというところで、では次は、ここまで効果が出るということで、広域化を進めているということです。順番が違うのですが、結局、進めようとしていることは一緒かということです。

 翻って、では日本でどちらがいいのかと考えると、恐らく両方同時というのがイメージとして何となくあるのかと思っています。ただ、そうなると、難しいことを 2 つ一緒にやらなくてはいけないということです。いろいろ課題があるという上で、そういったものを力強く進めていく中では、ある程度広域化ができるとか、民間委託ができるという、できる規定だけではなくて、強い方向性を示すことが重要になってくるのかと思います。

 そのために、先ほど広域化の中にも出てきていますが、広域化を進めるために何が必要かと、皆さんから非常にいろいろ御意見が出てきました。突き詰めていけば、どういうインセンティブを与えるか。要するに、広域化をすることで、どういう良いことがあるのか。 1 つは、お話にも出てきた財政支援です。進めようとしている自治体にとっては、財政支援があることも、インセンティブとしてあるかと思います。もう 1 つは、進めたことによるメリットとか、そういうのが具体的に見えてくる。それを広く皆さんが知ることはできる。そのようなことが、広域化に関しても、官民連携についても、両方必要かと思ってきています。

 イギリスやフランスが、 20 年、 30 年掛けてやってきたことを、日本では、今、ここから正にスタートしなくてはいけないというときに、どういうやり方があるのか、あるいは、国のリーダーシップ、都道府県のリーダーシップ、市町村がどうやっていくのかというところも、包括的にというか全体的に進めていかなくてはいけない。想像すると、やらなくてはいけないことが非常にたくさんある中で、今、正に資料 2-2 で挙げていただいている課題を、 1 つずつ、つぶしていくことが足元では必要かと。感想めいたことになってしまいますが、そういう大きな方向性と細かい課題の解決の積み重ねをどう進めていくかも、非常に大きな部分かと思っています。以上です。

○滝沢委員長 ありがとうございます。広域化と官民連携を並行して進める必要があるという御提言でした。論点の整理された中で、 2 ページの広域化は必要かという点に関しては、多くの方が必要であるという御意見だったと思います。

 リスク対策に関しては、突発的な不履行について、幾つか書いたモニタリングと市町村が水道事業を行うこととしてはどうかという御意見に対しては、特に御意見はなかったのですが、浦上委員からは、急に変わること自体が可能かという点について、御質問というか、やや心配であるという御意見があったかと思います。

 準備金制度の活用については、特に御意見はありませんでしたが、やや広く解釈すれば、今、望月委員から頂いたいろいろな論点について、しっかりと整理して可能な形にしてほしいという中にも、こういった課題も含まれているのかと理解しました。

 予定の時間が来てはいますが、最後に御発言があれば、どうぞ。

○岡部委員 今日の御説明の中で、どちらかというと官民連携はコンセッションという形で、それのモデルを作っていこう、そのための阻害要因は何かとかいう話になっています。もう 1 つの面、基盤強化という意味では、現場ではどちらかというと、通常の民間委託とか、今、徐々に増えている包括委託とか、若しくはその委託範囲を広げるとか、そちらのほうが基盤強化には現実的だと思います。特に中小事業体で経営状況が悪く、技術力不足、人がいない所ほど、民間の力で支援したいのですが、そこをコンセッションで受けられるかといったら、民間で受けるのは非常に難しい状況です。どちらかというと DBO や包括的委託を広げる仕組みを強化していただくのが重要なことではないかと考えています。

 ただ、実際、現在行われている民間委託、包括委託は、どちらかというと非常にコスト重視になっており、先ほどマニュアルなどの話もありましたが、日本水道協会の積算要領などがあるものの、そういうのも余り使われなかったりとか、入札制度も最低制限価格の問題とか、委託期間についても、 5 年程度とか、せめて現場的には 10 年とか、若しくは 5 年の更なる更新をしてほしいとか、そういった運転管理や包括委託でも多々いろいろな問題があるように聞いています。

 ですから、これから基盤強化ということであれば、民と公、水道事業体とのタイアップは必要ですので、先ほども少し出ていましたが、民間から見ても非常に魅力のある委託を考えていっていただければと思っています。先ほどリスクの話もありましたが、民間にコスト重視で委託されて、リスクはかぶれという話になると、正直、民間もなかなか受けづらいところもあります。そういったことから、 DBO とかコンセッションといったものがなかなか広がっていかないのかという気もしていますので、そういったところも基盤強化の 1 つの中で進めていただければと思います。

 あと、官民連携が、コンセッションが理想なのか、包括委託をたくさんいるのが理想なのか分かりませんが、どこかモデル的な事業体で、将来の水道事業が持続するためには、官と民の関係とかで、こういった委託の仕方、こういったフォーメーションでやるのが日本の将来の姿というモデルを作っていただいて、ほかの事業体もそれを目指していく形が、私は基盤強化につながるのではないかと思います。よろしくお願いします。

○藤野委員 私もモデルがないと、不安が大きいです。今、イギリスやフランスの例は出ましたが、私たち利用者としては「良いことばかりでない」ということは容易に考えられますし、アンケートを見ても、不安が大きいので、法律を変えて官民連携を進めるというよりは、特区でも又はモデル的に手を挙げている所にやっていただくとか、また、詳しい研究をされるとか、もう少し検討してからにしていただきたいと思っています。今、官民連携を進めましょうというのは、時期尚早ではないかと思います。

○永井委員 官民連携方式は、ここにモデルケースとしていろいろ書いてあるのですが、 100 年を超える近代制度の歴史と水道事業の責務、国民との関わり、こうしたものを総合的に考えると、どの方策がいいのかを少し時間を掛けてやらなければ、判断できないのではないかと自分は思うのです。特に、コンセッション方式にしろ何にしろ、時の政権中枢から、こうです、こういう方法をやりなさいと話を持ってきて、国としてもやり方としてこういう方策もありますと、今、出されていると思うのです。

 ところが、住民からすれば、この間のいろいろな長い歴史の中で、議会の関わりはどうなるのだ、料金の扱いはどうですかと、こう書いていますが、このようなことを含めると、そして災害、その他の部分で、本当に機能ができるのですかと。良いところばかりが少しだけ強調されている気がするので、私としては、良い面もあれば、その裏の面もあると思うので、これは様々な形で出してもらわなかったら、どの選択をするに当たっても判断できないのではなかろうかと。

 特に、私が聞いているところが、 3 つの事業体が、これは手挙げ方式で、その中の議会の中でも様々な議論があると聞いていますので、どうも官民連携の議論は、この場ではいいのですが、はっきり言って、この場の中でどれほどお互いに情報を持って、そして、こうあるべきだという結論はなかなか出せないと思いますので、その意味では、次の機会があるのかどうか分かりませんが、新たな方式をするとなれば、少なくともいろいろな場面を考慮してやらなくては駄目だと。

 特に、リスクの関係については、先ほどおっしゃられましたが、何かがあったときに事業体に戻す、このようなことで議論などはできるわけはないです。そもそも 3 年や 5 年ならまだいいです、そこのスタッフから言うと。 20 年や 30 年になったら、そのノウハウを持った人がみんないなくなる。その下で事業体に返されたとしても、このようなものができるわけがない。そのようなこともいろいろ考えると、もっと時間を掛けて、国民の立場に立った議論をしておかなかったら、これはできない課題ではないかということだけ申し上げておきます。

○滝沢委員長 いかがですか。それでは、いろいろな御意見を頂きました。前半部分で議論いただきました広域連携と都道府県の役割、特に協議会等を通じて広域連携の協議を進めるという点については、様々な御意見を頂きましたが、事務局の御提案に大筋御賛同いただけたのではないかと思います。一方で細かい点については、市町村原則、これまでの経緯や地域ごとの多様性、そういったものにも十分配慮するようにという御意見も頂きましたので、ここはまた事務局で少し御検討いただいて、次の議論へ進めさせていただければと思います。

 後半部分に関しては、ここもいろいろな御意見を頂いたところですが、住民の目線に立って将来に不安のない仕組みにしてほしいということだったろうと思います。そういった視点も踏まえて事務局でまとめていただければと思います。

 これにて本日の議事は終了となりますが、今後の予定も含めて事務局から御説明をいただければと思います。

○久保補佐 長時間にわたりまして、本当に活発に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。次回の専門委員会の日程ですが、 7 20 日午前中の開催を予定しています。次回は、広域連携の推進の続きと指定給水装置工事事業者制度について取り上げていきたいと考えていますので、よろしくお願いします。

 あと、事務連絡になりますが、本日の議事録について、毎度のことではありますが、案を取りまとめていった後、委員の皆様に御確認いただき、然る後にホームページで公開という手続とさせていただきます。第 3 回水道事業の維持・向上に関する専門委員会は、これで閉会とします。本日は、お忙しいところありがとうございました。


(了)

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