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2016年6月14日 第5回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

○日時

平成28年6月14日(火)13:00〜16:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)12階 専用第12会議室


○出席者

川口 大司 (東京大学大学院経済学研究科教授)
神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
水町 勇一郎 (東京大学社会科学研究所教授)
皆川 宏之 (千葉大学法政経学部教授)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・労働者団体に対するヒアリング(UAゼンセン)
・委員によるプレゼンテーション
(川口委員、神吉委員、松浦委員)

○議事

○柳川座長 定刻となりましたので、ただいまから第 5 回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては大変お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。まず、議題に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。

○河村人材サービス推進室長 お手元の資料ですが、資料 1 UA ゼンセンさんのヒアリング資料、資料 2 が川口委員のプレゼンテーション資料、資料 3 が神吉委員のプレゼンテーション資料、資料 4 が松浦委員のプレゼンテーション資料、最後に縦置きで参考資料の「ニッポン一億総活躍プラン」、以上、お手元におそろいでしょうか。

○柳川座長 それでは議題に入ります、今日はちょっと長丁場で申し訳ありませんが。本日は、まず労働者団体からのヒアリングということで、非正規雇用労働者を多数組織していらっしゃいます UA ゼンセンから、常任中央執行委員の松井様、同じく、政策・労働条件局部長の瀬戸様をお招きしております。本日は大変お忙しいところ御参加いただきまして、ありがとうございます。非正規雇用労働者の組織化や処遇改善に向けた取組、同一労働同一賃金に対する考え方についてお聞かせいただければと考えております。それでは早速、御説明をお願いいたします。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員  UA ゼンセンの松井でございます。本日はお時間を頂きまして、ありがとうございます。時間も限られておりますので、早速御報告をさせていただければと思います。

 資料 1 1 枚めくっていただきまして、 UA ゼンセンの組織概要です。大きく、製造産業部門、流通部門、総合サービス部門と、産業ごとに部門を設けて運営しております。本日の雇用形態間の同一労働同一賃金ということですと、特に流通部門、総合サービス部門のサービス関係が該当するということです。現状、組織の人数は、組合員数が 157 2,921 人というのが去年の 9 9 日現在の数字となっております。うち、短時間組合員と申しておりますが、大多数はパートタイマーの方になりますが 84 7,000 人ということで、全体の 53.9 %を占めており、また、パートタイマーさんのうちのほとんどは女性ということにもなりますので、組合員の女性比率は 6 割ぐらいになっています。また、右側に規模別の組合員数も記載しておりますが、 100 人未満が半数以上を占めています。中小の組合も多いというのが特色になっているということです。 UA ゼンセンは、中段にありますが、旧の繊維産業を出発点としますゼンセン同盟と化学系の組合が統合しまして、また後、百貨店の組合と統合して今の姿になっているということです。

 続いて、 3 ページ目ですが、 UA ゼンセンの基本的な考え方、特に賃金に関わる部分です。私どもの「運動の基本」という文書には、 2 段落目にありますが、賃金については 2 つの原則である「生活を十分に保障する賃金」「同一価値労働同一賃金」を基本とし、働きがいの持てる賃金水準の確率を目指すということを基本的な考え方に挙げているということ。それから、先に中期ビジョンというものを確認したのですが、そこでは 2 点ほど記載しております。雇用形態、労働時間の違いなどによる不合理な格差を是正し、同一価値労働同一賃金をめざした均等・均衡処遇の実現に向けてというようなこととか、個人のライフプランやライフサイクルに応じてフルタイム、パートタイムを選択できるようなことを目指していこうということを確認しているということです。

 続きまして、足もとの取組で、数字的なところを少し御紹介したほうがいいかと思いまして持ってまいりました。

 まず、直近の 2016 年の賃上げの状況です。今回、雇用形態間の同一労働同一賃金というテーマでもありますので、私どもの組織のうち流通部門の、先ほど言った、パートタイマーが非常に多い部門になりますのでその流通部門、百貨店や総合スーパー、食品スーパー、家電量販店とかホームセンター、ドラッグストア、あらゆる小売店が加盟しておりますが、そちらの数字を取り上げております。要求の基本的な考え方は賃金体系維持分と申していますが、いわゆる定昇相当に加えて 2 %基準の賃金引上げを要求するということです。これは正社員であろうがパートタイマーであろうが、あと、私どもは契約社員という括りも設けておりますが、要求の考え方は同じということにしております。

 そして実際の結果です。正社員のほうの要求は中段に率で書いていますが、 3.24 %の要求をして、妥結は 1.99 %になっているということです。組合数で言うと、 370 組合が妥結しているということになります。中段に契約社員がございますが、 99 組合で 1.74 %の妥結ということです。そして、パートタイマーにつきましては 2.18 %の妥結率になっており、人数も、 50 万を超えている数字です。今回は流通部門の数字ということで紹介しておりますが、 UA ゼンセン全体のほかの部門も含めた数字で見ても、パートタイマーの引上げ率が正社員の賃上げ率を上回ったというのは今年初めてですし、人数についても正社員よりパートタイマーのほうが妥結している人数が多いというのも今年初めてのことになっています。 UA ゼンセン自体、ずっと組織拡大を進めております。特に近年、流通サービスの組合を多く組織しておりますので、その結果が表れているということかと思います。

5 ページ目、一時金の状況です。こちらは、正社員が年間 4.8 か月基準という要求基準に対し、パートタイマーにつきましては年間 2 か月基準、正社員と職務の内容が同じ場合は 3 か月基準という別立ての基準を設けて取り組んでいるということです。妥結結果にしましても、正社員のほうはおおよそ 4 か月台、右端の解決内容で見ますと平均で 3.99 か月になっておりますが、契約社員は 2.21 か月、パートタイマーは 0.85 か月になっております。また、組合数も、契約社員、パートタイマーですと数が少なくなっておりまして、一時金という制度自体がない所もまだまだ多いということになります。まだまだ多いということもあるのですが、一方で、一時金制度をなくしてきている企業も近年見られますので、そういうことがあいまった結果になっているということです。

 ちなみに、一時金制度をなくしてくる傾向がちょっと見られるというのは、近年の地域の時給が高まっているせいで企業としては、その採用上、一時金という制度よりは採用時給を上げたほうがいいというようなこともあります。そういうことが起こっているということです。

 続いて 6 ページにいきまして、退職金の要求の考え方と実態です。退職金につきましては、正社員は 60 歳定年で 2,000 万円という要求基準を掲げております。パートタイマーについては、具体的な金額は示さず、制度構築に努めましょうということです。実態のほうも、こちらは調査の実態ですが、正社員ですと、勤続 5 年時点しか取っていませんが、 75 万円とか 53 万円という数字です。契約社員、パートタイマーにつきましては 12 万円とか 8 万円程度ということで、また、制度化している数も少ないという実態になっているということです。

 続きまして、 7 ページの労災付加給付の要求の考え方と実態です。こちらは政府の労災補償に上乗せ補償ということで、労働組合は労災事故が起こった際の上乗せの給付を制度化することを要求しております。こちらの要求の考え方は、今、有扶養者で遺族に対する見舞金として、要するに労災で死亡した場合ということですが、 3,400 万円を基準とするということですが、こちらは、雇用形態による差を認めない、一律 3,400 万円で取り組むという考え方でやっております。実態を見ましても、正社員のほうが若干高めの分布になっております。例えば 3,200 万円とか 3,300 万円というような数字で見ても、契約社員、パートタイマーでそういう水準を獲得している組合もあるということで、ほかの労働条件に比べると、我々としての考え方もそういう考え方ですし、実際の取組結果も社員との差が少ないということになっているということです。

8 ページはその他の短時間組合員等の処遇改善の取組です。無期契約への転換とか正社員の転換制度、人事処遇制度とか福利厚生等、細かいところで正社員との均等・均衡に努めるようにいろいろな方針を出しているというところです。

 以上がざっとした実態です。私どもも従来よりも、同一労働同一賃金と申しますか、均等・均衡処遇というようなことで論議をしております。これまでも論議はずっとしてきているのですが、 2012 年に UA ゼンセンが結成されて、特に百貨店の組合と一緒になったということもありまして、再度、この均等・均衡処遇の問題について強く取り組んでいかなくてはいけないということで論議をしているところです。そこのところを 1 つ御紹介できればと思います。

 まず均等・均衡処遇の課題として我々が考えているのは、やはり労働市場の違いということです。ある意味、正社員の労働市場とパートタイマーの労働市場が別に存在しているということです。企業の中で均等・均衡処遇ということで制度化したり努めたりするわけですが、やはり、ここの図で言いますと、社員のほうは基本的には長期育成が必要な業務ということで採用しておりますが、瞬間、瞬間で見たり地方の店舗に行ったりすると、かなり重なる業務をしている場合もあるということです。やはり、入口の労働市場が違うということがあって採用時給、採用賃金が違う。その中で企業が均等・均衡処遇に努めようとはするのですが、やはり当初の差が大きいということがありまして、なかなか 1 企業の均等・均衡処遇では限界があるのではないかと思っております。やはり、パートタイムの労働市場の底上げをきちんと図っていくということと、正社員についても、よりワーク・ライフ・バランスを重視したような働き方ができるようにして、そちらのほうに可能な、今、パートタイムで働いているけれども実際はそういう形で働ける方がいるのであれば、そのようなことに努めていく必要があると思っている次第です。

 続いて、均等・均衡処遇の課題の2です。こちらは先ほど紹介もいたしましたが、私どもの基本的な考え方として、同一価値労働同一賃金とは、生計をきちんと保障する賃金ということを考えております。労働内容以外、同一労働同一賃金と言うと、やはり労働の内容のほうに焦点がいきますが、働き方の違いがまず 1 つ、この均等・均衡をどのように図っていくのかというのが課題になっている。働き方の違いでは、労働時間帯とか労働時間の柔軟性、転勤の有無というようなことがありますが、こういったものをどのように反映させていくか。それから労働時間の長さということも、単純に時間比例でいける部分と、そうではない部分もありますので、その辺をどう整理していくのかということ。

 そして、労働に関わらない、世帯構成による生計費の違いとか地域による違い、それ以外の要素等があります、そういったものをどのように反映させていくかというのを今、論議しているということです。先ほど紹介した中では、労災付加給付制度等は、どのような労働、どのような働き方をしていても同じ金額にすべきだという考え方で今のところは取り組んでいるということです。ですから労働内容以外、働き方、更には、要するに、その企業で採用された以上、やはり基本的な部分として保障される処遇もあるのではないかということです。

 そして 3 つ目です。 11 ページのスライドですが、もう 1 つ非常に難しい課題があります。月例賃金以外の一時金、退職金、いろいろな報酬制度がありますので、その全体を考えて均等・均衡を図っていく必要があるということ、ここが非常に難しいところです。単純なイメージ例として、短時間の総合職、短時間正社員、定型職、フルタイムの有期社員とか短時間定型職、現在のパートタイマーというような形で図式化してイメージを作ってはいるのですが、労働内容、働き方、月例賃金のところまではいいのですが、例えば、今、一時金について論議をしておりますが、正社員については従来より 5 か月基準、最低 4 か月は保障していこうという形で取り組んでまいりましたが、パートタイマーについては、先ほど言ったように、現状は 2 か月基準という要求をしている。そこで、では、パートタイマーさんにも最低 4 か月、 5 か月の基準の一時金を求めていくのか、はたまたどうするのかということですが。ここについては、一時金だけで論議をしていても、なかなか均等・均衡は図れないので、少なくとも賃金と一時金をセットで考えて、ある意味、年収ベースで均衡を図る中で、社員はやはり会社の業績に与える変動が大きい仕事ということであれば、その変動の割合を少し増やすとか、労働内容、職責等に応じた配分を考えていくという整理の仕方があるのではないかと検討しているところです。

 また退職金は、さらにパートタイムの方、契約社員等については従来から有期契約というようなこともあって退職金制度はなかなか普及しておりませんが、退職金制度のほうは逆に、税制のこと等を考えると、企業の労使にとっても少ない人件費で手取収入を増やすということにもなりますし、今、政府が推し進めている私的年金の充実というような方向にも沿いますので、基本的には、働き方にかかわらず同一の制度で導入していったらいいのではないかと考えているところです。そして労災付加給付については、先ほど言ったように、同一の水準で取り組んでいる。あと、福利厚生等も整理をしなければいけない。そして、こういった処遇全体をトータルとして働き方や労働内容に応じて均等・均衡が図れるような仕組みを作っていく必要があるのではないかと思っているところです。

 やはり、何といっても企業経営上の経済合理性ということもありますので、一つ一つの労働条件を個別に取り出して、一時金で均等・均衡を図り、退職金で均等・均衡を図るというようなことをしていると、結果として、時間当たりの賃金で考えると、例えばパートタイマーが高くなってしまうようなケースも考えられますので、そこは、やはり全体として均等・均衡を図るような形で整理していくべきではないかということで、我々も今、検討しているところです。以上、私どもからの御説明とさせていただきます。

○柳川座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして委員の皆様方から御質問等がありましたら、お伺いできればと思います。いかがでしょうか、どなたからでも。

○川口委員 丁寧な御説明をありがとうございました。まず、内容についての質問です。 4 ページ目の賃上げの要求の結果ですが、 1 段目の所が金額ということになっていて、これの単位を教えてほしいのです。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 単位は全て円なのですが、正社員、契約社員のほうは月例賃金が幾ら引き上がったかということで、パートタイマーのほうは時間給が幾ら引き上がったかということで、ある意味、分母が違うというように理解していただければと思います。

○川口委員 分かりました。引上げ額ということで、レベルではないわけですね。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 はい。

○川口委員 あと、 9 ページ目で非正規の人の市場の底上げが必要だというお話の中で、この「就業調整の要因となる税、社会保障、人事制度の一体的改革」と書いてあって、恐らくこれは配偶者控除とか第 3 号被保険者制度ということを念頭に置かれていると思うのですが、 10 ページ目にいくと、考慮すべき要因の中に世帯構成による生計費の違いというのが入っていまして、これは家族給的なものを考えていらっしゃるとも思うのですが。そうすると、この 9 ページ目で主張されていることと 10 ページ目で主張されていることが一見するとちょっと矛盾するように見えるのですが、その辺りの整理の仕方はどのようになっているのか教えていただけますでしょうか。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 正にそこは非常に悩ましい問題で、我々も今、論議しているところです。一見矛盾しているように見えるのですが、まず家族手当の問題について、特に配偶者に対する手当の問題です。配偶者手当の支給の要件が、例えば税制上の 103 万円のところで支払う、支払わないというように決めていると、それが就業調整の要因になってしまうということが指摘されている。「税、社会保障、人事制度の一体的改革」と言うときに念頭に置いているのは、例えば政府が、昔の子ども手当、今、児童何とか手当というのがありますが、そういうものを引き上げることとセットで企業のほうでそういう手当を少し減らし基本賃金に統合していくとか、そういう社会的な合意ができればこの問題は非常に前に進みやすいのかなということで、そういうイメージなので矛盾はしていないところなのです。

 ただ、現実はやはり、賃金水準が低い中で世帯を維持していくためにその部分の手当をすぐなくしてしまうということであると、私どもの基本的な考え方で先ほども申しましたが、同一価値労働同一賃金と生計を保障する賃金という意味では、やはりちょっと難しいのではないかと。ですから、その企業の労使の中、組合員の構成、組合員の意見、そういうものをまとめた上で、結果としてその企業では家族手当、それは例えば配偶者にも支給するのか、配偶者には支給しない家族手当なのか、その辺は個々に論議をして決めております。

○川口委員 どうもありがとうございます。恐らく配偶者手当のところで、配偶者が働いているか、働いていないか、あるいはどれぐらい働いているかに依存して手当を付けるというような形にすると、同一労働同一賃金というか、非正社員の市場の底上げと矛盾してしまうかもしれないですが、子ども手当みたいな形でその世帯構成に応じて手当を支払うという形であれば必ずしも矛盾しないのかなと、聞きながら感じておりました。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 併せて、これもまだ論議段階ですが、仮に子供に対する、配偶者には出さないで子供にだけそういう家族手当的なものを出すという場合には、やはりパートタイマーさんでも該当する、その方の賃金でその世帯を賄っていて支給基準に該当するのであれば、やはり支給をしていくという方向で考えていかなくてはいけないのではないかという論議はしているところです。

○川口委員 どうもありがとうございます。もう 1 点だけ質問させていただいてよろしいでしょうか。

11 ページ目の退職金の所で、非正社員の方も同じような退職金制度でカバーすることを目標にされるのは大変結構だと思うのですが、聞き漏らしてしまったかもしれないのですが、これを導入する大きな目的は、やはりポータビリティがあるような年金制度を導入することを目指すというようなことでよろしいのでしょうか。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 そうですね、大きな目的は、やはり均等・均衡ということです。パートタイマーさんのアンケートなどでは、当然、一時金と退職金の問題などがやはり、まず上がってくる部分があります。ただ、退職金の場合は、制度上、退職所得控除が使えますので、ある意味、必ず退職金でもらったほうが手取り収入は増える。政府もある意味それを推奨している、老後のということであれば、企業労使が知恵を絞って、この場では言いづらいですが、税金で払うよりは労使できちんと分けられるような仕組みのほうがそもそもいいわけですから、そういう形でもう 1 回考え直していただく。

 ただ、障害になっているのは、先ほども言ったように、パートタイマーさんの、地域のその市場の中では採用時給が高いということがないと、なかなかその競争力がない。そのときに、採用時給を削って退職金制度を入れるのですかと言うと、なかなか、会社のほうは乗り難い部分があります。そういう意味で今、論議をしているのは、退職金でもらってもいいし前払いでもらってもいいと。それは、社員でもそういう仕組みは入れている会社もありますので、採用のときは、例えば 1 000 円出しますと、時給 1,000 円ですよと、ただ、実際、入社したら 1,000 円のうち例えば 50 円部分は積み立てて退職したときにもらえます、というような知恵の出し方がないものかなというのを検討しているところです。

○川口委員 どうもありがとうございます。質問がクリアでなくて申し訳なかったのですが、正社員の退職金の一般的なパターンは、勤続 20 年を超えたりすると、グーッと上がっていくような形になっていると思うのです。そういう制度を前提にすると勤続年数が短い正社員の方は、どうしても不利になってしまう部分があると思うのです。もしも通算するような仕組み、会社を移っても勤続年数が蓄積していくような仕組みを作れば、転職回数が多い正社員の方は同一の枠組みの中で取り扱われるような形になっていくということがあると思うのです。これを考えるときにその辺の配慮は何かあるのでしょうか。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 そちらのほうは正にそういう問題があるのですが、社員とパートタイマーというよりは、社員の中でも勤続が短くて辞めていく方と、長期勤続の差ということで前々からあった課題です。それはそれで残っているのですが、近年、確定拠出年金とか、確定給付企業のほうでもキャッシュバランスプランのような形で、社員もかなりフラットなカーブになってきている所がありまして、そこのところは余り論議はしていないです。ポータビリティに関しては、今度の国会で通った、ほとんどどの年金制度に移っても持っていけるような形になるということですので、そこは今回の法改正によってかなり前へ進むのではないかと思っております。

○川口委員 どうもありがとうございました。

○柳川座長 そのほかはいかがでしょうか。

○中村委員 丁寧な御説明、ありがとうございました。 2 点お伺いしたいのですが、まず 1 点目が 4 ページ目の資料です。先ほど今年は正社員の方よりパートタイマーの方の妥結の比率が上回ったというお話があったのですが、要求段階では正社員の方のほうが高かったので、まず、その要求段階の差はどこで出たのかということと、要求段階ではパートタイマーの方のほうが低かったにもかかわらず最終的に妥結のところで上回ったのはどういう要因によって上回ったのかについて、まず 1 つお聞かせいただけますか。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 こちらは、正社員は 370 組合でパートタイマーは 222 組合が妥結しているということですので、全く同一の、 A という企業にある正社員とパートタイマーということではないので、まず、その差は 1 つあるかなと思っています。実際に同じ企業に属している正社員とパートタイマーで比較しますと、正社員を上回る率で要求しているのが 44 %ぐらい、同じ率で要求しているのが 2.5 %ぐらい、下回る率が 53 %ぐらいということですので、組合によって制度が、それぞれの会社によって制度は違うというものはありますし、考え方も違うというところもあって若干ばらけてはいますが、理由と言われると、それぞれの事情ということしかないかなとは思います。

1 つの理由は、例えば、ここではきちんと出していませんが、パートタイマーさんでも昇給制度をきちんと整備されていて、社員も、いわゆる定昇制度があると、社員の定昇は 2 %ぐらいありますと、パートタイマーさんの昇給は、率で言うと 1 %ぐらいしかありません。要求の考え方としては、定昇に幾らプラスして要求するということで、いわゆるベースアップのところは同じ、一律 1 %で要求しましょうとすると、合計では、社員は 3 %、パートタイマーさんは 2 %みたいなことにもなるという、そういう例もあります。あとは、やはり人手不足の対応はあるので、意図的にパートタイマーさんを高く要求しようというようなことも当然あるということです。

 妥結のほうが高くなった結果というのは、ある意味、社員のほうは、賃上げについては、いろいろ論議はあるかと思うのです。我々としては、やはり社会的な相場、いわゆる、日本全体で春闘ということで取り組んでいますので、社員のほうはその影響を非常に受けるということがありますので、去年に比べて全体の賃上げ率が低い状況になってきて、その影響も受けて下がっている。パートタイマーさんのほうも、同様に影響は受けるのですが、やはり人手不足の対応等が強く意識されて上がってきている部分があるのではないかと思っております。

○中村委員 ありがとうございます。併せてもう 1 点伺いたいのですが。

 均等・均衡を進めていくべきという話があった中で、平成 26 年のパートタイム労働法の改正を受けて、賃金という面に限って均等・均衡は、どの程度進んできているのかという点について教えていただきたいのですが。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 平成 26 年の改正というのは、雇用管理のこととか、原則的な均等待遇の考え方が示されたようなところだったかと思うのですが、あの改正でそんなに大きくトレンドが変わったかという意識は余りないですかね。その前のパートタイム労働法の人材活用の仕組みと、職務によってパターンを決めて、ここは社員と均等を図りなさいとか、あのときの改正の影響のほうが大きかったと思います。今回の改正の影響というよりはやはり、近年のパートタイマーさんの処遇の改善については、やはり人手不足の影響、それから最低賃金の引上げですね。同じようなことですが、そこがやはり大きいとは思っています。ちょっと個人的な感想になってしまうかもしれませんが、平成 26 年の改正は余りないですね。

○中村委員 分かりました。今の話を伺って、法規制の有効性という観点もありますし、一方で、パートタイムの方の賃金においては人手不足がとても重要なテーマだということがとてもよく理解できました。ありがとうございます。

○柳川座長 どうぞ。

○水町委員 例えば 8 ページの処遇改善の取組というところで、基本的には正社員と同様の基準で支給するように取り組むということが様々な給付について統一して進められていることとか、さらには 10 ページで、実際に均等・均衡を図っていく上で、こういう要素についてはこう考えると、いわゆる要因分解と言われるようなことを、それぞれ検討しながら全体として均等・均衡を図られているというところが大変参考になりましたし、勉強になりました。

 その中で 1 点だけ、 10 ページで、労働時間の柔軟性とか転勤の有無等については広義の労働価値の中で手当と位置付けて、そこで給付をするという考え方が広く示されていますが、例えば転勤についても、実際、転勤になったときの負担と、将来、転勤する可能性がありますよという将来に向けたキャリア展開の可能性ということと 2 つの側面があると思います。将来に向けた転勤可能性のところは、ここで言うと狭義の労働価値の中で「同一キャリア同一賃金」とも書かれていますので、この「労働内容の違い」とか「労働の性質に応じて」というものの中に将来の転勤可能性も含まれて位置付けられているのか。もしそこがそうだとすると、報酬決定方式の 1 番目の※の所は「基本賃金、一時金、退職金の比率は労働の性質に応じて決定」されると。短期的なその時点での狭い意味での職務内容だけではなくて、将来に対するキャリア展開の広がりも考慮して比率で決定すると書かれていますが、例えばこの将来に向けた転勤可能性について比率で考えるというときに、どういう議論なり、どういう具体例があるのかを教えていただければと思います。

UA ゼンセン松井常任中央執行委員 正直申しまして、今、御指摘にあった部分を余り厳密には論議ができておりません。現実のほうは逆に、転勤について手当で整理しましょうということにはなっていない。どちらかというと、基本賃金を、転勤の有無も 1 つの要素として決めているほうが多い。ただ、基本賃金で転勤の有無みたいなものを、そこに含まれているのですという形で決めると、実際の現場では転勤する人もいればしない人もいるし、転勤するコースなのだけれども、もう長いことしていないみたいな人もいて、そういう不満もある。ので、転勤する、しないで、例えば地方の店舗とかに行くと転勤する可能性も余りなかったりする現実あって、やっている労働は同じだということになると、そこでやはり、基本的な労働に対して払う部分と転勤に対する負担なりというのは、やはり手当にしたほうがいいのではないかということがあって、そこを将来の可能性ということでその基本部分に織り込むという考え方もあるとは思うのですが、そこは余り整理できていないということです。基本的には、転勤をすることによって仕事の幅が広がったりその能力が上がったりするのであれば、それを捉えて評価をして賃金に反映させるという整理をしていったらいいのではないかとは思っております。

 ここは非常に悩ましいところで、これも全く論議段階ですが、転勤の問題については、どちらかというと一時金で転勤に対する負担なり何なりを反映するほうが結果として、先ほど言ったように、転勤するコースなのだけれどもずっと転勤しない人もいれば、やたら転勤する人もいるみたいな企業の現実を考えると、公平感が取れるのではないのかなとは思っております。全くまだ私論の段階で、企業の現実は、先ほど言ったように、基本賃金に反映させているほうが多いということです。

○水町委員 ありがとうございます。

○柳川座長 そのほかはよろしいですか。

 それでは、ありがとうございました。 UA ゼンセンの松井様、瀬戸様には、ここで御退席いただきます。本日は御多忙のところ御参加、御説明いただきまして、どうもありがとうございました。

                                (UA ゼンセン退席 )

○柳川座長 それでは、引き続き議事を進めたいと思います。議題に先立ちまして、「ニッポン一億総活躍プラン」が先般閣議決定されたところですので、その内容について事務局から御報告をお願いいたします。

○梶一億総活躍推進室参事官補佐 内閣官房一億総活躍室の参事官補佐をしております梶と申します。この一億プラン、働き方改革、保育や介護などいろいろなことを決めているのですが、本日は同一労働同一賃金に関する記載内容について簡単に御説明差し上げたいと思います。参考資料として配られている大部ですが、合計 3 ページ分だけ説明をさせていただきたいと思います。 6 2 日に閣議決定しまして、全部で 85 ページございます。最初の 25 ページ分が前文と呼んでいますが、大きな考え方や要約したものを書いていて、後ろのほうに工程表を記載し、全体として閣議決定をしているものです。

 同一労働同一賃金については 7 ページ目をお開きください。「 2. 一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題である働き方改革の方向」、この一億プランの中では働き方改革、 3 つ柱立てをしているのですが、そのうちの 1 つとして同一労働同一賃金の実現などを非正規雇用の待遇改善を 7 ページ目の下のほうに位置付けております。最初のほうは背景、こちらでも冒頭に厚生労働省から説明があったとおりですが、「今や労働者の 4 割を占める非正規雇用労働者の待遇改善は待ったなしの重要課題である」。 7 ページ目の最後の行ですが、「再チャレンジ可能な社会を作るためにも正規か、非正規かといった雇用の形態に関わらない均等・均衡待遇を確保する。そして同一労働同一賃金の実現に踏み込む」としています。

 次のページ、パラグラフが大きな考え方を書いていて、「同一労働同一賃金の実現に向けて我が国の雇用慣行には十分に配慮しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める」。「労働契約法・パートタイム労働法・労働者契約法の的確な運用を図るため、どのような待遇差が合理的であるか、又は不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する」としています。その上で次のパラグラフですが、「プロセスとしてはガイドラインの策定等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにする。その是正が円滑に行われるよう、欧州の制度も参考にしつつ、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備、非正規雇用労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、労働契約法・パートタイム労働法及び労働者派遣法の一括改正等を検討し、関連法案を国会に提出する」としています。「これらにより正規労働者と非正規労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す」としています。

 これについて詳細に書いているのは 37 ページです。該当する工程表になっており、今私が申し上げた内容、正に非正規雇用が増えていて、自ら選択して非正規雇用を選んでいる方がいることなどが、左上に「国民生活における課題」として記載をしております。その上で右側に、今申し上げたとおり、大きな考え方として、「具体的な施策」の1でガイドラインを策定する、2でガイドラインの策定を通じ、是正すべきものを明らかにした上で、欧州の制度も参考にしつつ、労働契約法・パートタイム労働法及び労働者派遣法の一括改正等を検討しと、先ほど申し上げたものと同じ文言が入っております。

 その上で、下のほうにタイムチャートを書いており、ガイドラインの策定、運用、そして制度の検討、法案の提出を 2018 年度までには完了させる。 2019 年度以降はガイドラインの運用、新制度の施行をするとさせていただいております。右側に「指標」とあるのですが、全般通してそうですが、フルタイムに対するパートタイム賃金割合を現状では 56.6 %、これを、欧州諸国といってもいろいろな数字が左上に書いてあるとおり産業構造の状況にもよって様々ありますが、 1 つの指標として欧州諸国に遜色のない水準を目指すとし、この 37 ページの工程表も含め、閣議決定をさせていただいたことになっております。以上です。

○柳川座長 今の御説明につきまして、何か御質問や御意見等おありでしたらお願いいたします。

○松浦委員 御説明いただきましてありがとうございます。先ほど御説明いただいた、非正社員の待遇向上の、欧州諸国に遜色ない水準を目指すというところについてですが、遜色ない水準がどういうものなのかがよく分からないというのもありますし、最低賃金、正社員への転換だ等とは別に、同一労働同一賃金のすぐ後にこの言葉が出て来ていて、同一労働同一賃金だけの取組をもって遜色ない水準を目指すようにも読めるのですけれど、それだととても荷が重いという気がいたします。この「遜色ない水準」ということについてどのように捉えればいいのかということをもう少し詳しく御説明いただいてもよろしいですか。

○梶一億総活躍推進室参事官補佐 まず、大目的なのですが、そもそも同一労働同一賃金は何のためにやるのかということについては、ここのロードマップ、前文にも書いてあるとおり、非正規雇用労働者の待遇を改善するのだということ。そのために不合理な賃金差を解消するのだというのが、最も明確な目的・目標であります。それが確定をしているもので、その上で欧州に遜色がないというのは、政府内でも与党内でも議論はありましたが、これは厳密に何パーセントかという数字ではないわけですね。日本として、少なくとも今の 56.6 %という数字は、恐らく欧州のそれこそイギリス 70 %超、ドイツ 79 %、フランス 89 %、イタリア 70 %、デンマーク 70 %、スウェーデン 83 %。ほかにもヨーロッパいろいろありますが、ほかの所では数字で明確に書いている指標ものもある中で、考え方として欧州諸国に遜色のない水準ということを、指標として計測をしていこうと考えているということです。それ以上のところは、これから具体的に見ていこうということだと考えています。

 その上で、プラン全体でもそうなのですが、最終的には希望出生率 1.8 というのがどのような政策、いろいろな政策によって影響を受けるのは事実なのです。そういう希望出生率 1.8 とか、 GDP600 兆円とか、幾つかの様々な政策目的のレベルもある中で、実際にフルタイムに対するパートタイム賃金割合というのは、同一労働同一賃金の制度あるいはガイドラインだけが全てを影響するわけでは実際にはないので、正におっしゃるとおり最低賃金も影響するであろうと思いますし、様々な政策が実際には影響するわけです。なので、必ずしも完全にこの因果関係として同一労働同一賃金の制度だけをもってこれが実現されるというよりは、 37 ページに書いてあるように、同一労働同一賃金の実現など非正規雇用労働者の待遇改善全体として、この指標というのを目指していこうというふうに考えていると、そう御理解いただければと思います。御回答になっていますでしょうか。

○松浦委員 ありがとうございました。同一労働同一賃金だけではなく、全体としてということで理解しました。同一労働同一賃金についてはおっしゃっていただいたように、飽くまでも一番の大目的、非正社員の処遇向上、不合理な格差の是正にある程度意識を集中させていただいて、遜色ない水準は目指すものとして意識だけしておけばいいというぐらいに捉えさせていただいてよろしいですか。

○梶一億総活躍推進室参事官補佐 あくまで目的は申し上げたとおりです。

○松浦委員 大目的のほうが私どものミッション、この検討会のミッションだというような理解でよろしいですね。

○梶一億総活躍推進室参事官補佐 はい。

○松浦委員 ありがとうございます。

○柳川座長 そのほか何かおありでしょうか。よろしいですか。

 それでは引き続き議事を進めたいと思います。本日は、前回に引き続き、委員の皆様からプレゼンテーションをお願いしております。まず、川口委員のほうから御説明をお願いできればと思います。

○川口委員  20 分くらいでプレゼンをするようにということでしたので、させていただきたいと思います。「同一労働同一賃金の経済学的検討」ということで、いろいろな分野から検討しているので、大きなタイトルになってしまいました。今少し議論があったところですが、何を指標にして正社員と非正社員の間の処遇の均衡というのを図るのかということで、やはり賃金差、時間当たりの賃金差というものがしばしば登場してきて、資料として配られている賃金差の指標は必ずしも適切なものとは言えません。それは当然正社員と非正社員の間で教育水準に差があったりとか、あるいは労働市場の経験年数ですとか、勤続年数が違うということがあるからです。ですので、そういった労働者が持っている属性の違いというものを制御した上で、賃金格差というものを議論するというのが一般的なアプローチでして、生の数字を比べて賃金格差を議論するというのはそれほど一般的ではないということです。

 それに関しては既に幾つもの研究があります。 1 つの研究として、柳田さんと三好さんの慶應義塾のパネルデーターを使った研究というものを取り上げさせていただきます。これを見ますと、結論は間違っているというわけではなくて、非正規と正規の間の賃金格差というのは教育水準や労働市場の経験年数、勤続年数の違いというのは制御しても、やはり 3 割弱ぐらいあるということでありますので、測定される個人属性では説明がつかない格差があるということは確認されているということです。それで全て分かったのかというと、この中でも既に議論になっていますが、事業所内での格差の縮小を目指すことをやったときに、このトータルの格差がどれぐらい縮小するかというのは、今格差が発生しているのが事業所内における正社員と非正社員の間の格差なのか、あるいは特定の企業に非正社員が集中していて、その企業の賃金が一般的に低いことによって発生している、その市場全体での格差なのかというのは、分析してみないと分からないです。

 やれないことを言っても仕様がないのですが、こちらの厚生労働省のほうでは、事業所内労働者のサンプルサイズが十分に取られた賃金構造基本統計調査を毎年長い期間に渡って行っておられて、非常にその精度が高いことが知られています。折角そういうサーベイがあるので、そういうデータを使って、教育水準も記録されていますし、短時間労働者に関しては残念ながら記録されてないのですが、様々な就業形態の一般労働者、普通の時間働いている方々に関しては、無期の正社員・有期の正社員・無期の非正社員・有期の非正社員と 4 つのカテゴリーが記録されておりますので、実態どの程度の賃金差というものがあるのか。これがある種この政策を語るときのキー・パフォーマンス・インディケーターのようになっているわけですから、この部分をしっかりと把握することから始めることが重要なのではないかと思います。

 非常に大きなサンプルでして、 100 万人を超える労働者の賃金等が記録されているデータですので、こういったものを使って、しっかりとしたインディケーターを作って、現状をしっかり把握するところから議論を始めることが必要なのではないかと思います。この分析自体は非常に簡単な統計分析でできますので、短時間で分析することができます。個票さえ貸していただければ、私のほうでちゃっちゃと計算することもできます。

 次なのですが、その賃金差の把握をまずすることが大事ではないかということが問題提起です。では、その賃金差が発生していることが確認されるのでしょうけれども、その発生が確認された後で、それをどういうふうに理論的に捉えたらいいのかということなのですが、幾つかの整理の仕方があると思います。大きく分けると、 3 つの整理の仕方があるのではないかと考えております。このような理論的な整理が、この研究会あるいは検討会において有益であると思われるのは、欧州の事例を参考にするということが 1 つのミッションになっていて、判例の検討とこれから行っていくということなのだと思います。ある程度抽象化、一本化して、日本に持ってくる必要があることに関しては、ある程度合意ができていると思うのです。その一般化、抽象化するに当たって、どういう角度から一般化抽象化していけばいいのかに関して、ある程度ヒントを与えてくれるのではないかと考えています。

 それで賃金格差の発生原因として 3 つ大きく分けて挙げられると思うのです。 1 つは人的資本の差による賃金差ということです。正社員と非正社員で、その技能の水準が違うというようなことが、まず賃金格差を発生させる原因となります。教育年数の差ですとか、あるいはその職業経験年数の違いといったものに関しては、ある程度その賃金構成基本統計調査等のマイクロデーターを使えば、制御していくことができるということになります。

2 番目の補償賃金格差という考え方ですが、これは労働を取り巻く環境というのが賃金だけではなく、転勤の有無ですとか、残業への対応ですとか、責任の重さ、こう言ってしまうと何でも説明できてしまうのではないかというような欠点も、当然あるわけで、注意しなければいけないのですが、現実問題としてはそういう労働を取り巻く環境の差というものがあります。仮に労働環境が悪い職場と良い職場が同じ賃金を支払っているとすると何が起こるかを考えると、当然皆さん、環境が良いところで働きたいですから、環境が良い職場というのは過剰な供給が起こる。その一方で、環境が悪い職場というのは人手が不足するような形になりますので、結果としてどういう調整が起こるかというと、環境が悪い所は賃金が上がる。環境が良いところは賃金が下がるといったような形で、賃金差が発生していくことになります。ですので、こういった補償賃金格差というような側面も考えていく必要がある。

3 番目ですが次のスライドでより詳しく説明させていただきたいと思います。労働市場には大きく分けると 2 つの労働市場があると考えられ、正社員に関して言うと、いわゆる企業の中の、あたかもその企業の中に労働市場があるかのように、企業の中の人事制度というのが設計されていて、その中に多くのインセンティブシステムが組み込まれるような形になっていると、経済学者は整理をしてきました。特に、雇用の期間が長いような正社員に関しては、その正社員のやる気ですとか、技能蓄積を促すインセンティブシステムが企業の中には多く埋め込められていると考えているのですが、そうすると結果として、短期的な賃金と生産性の乖離をもたらすことになります。

 もしも、その正社員の賃金が生産性よりも低いということであれば、必ずしも問題ではないというようなことになるかとも思うのです。いろいろな理論がありまして、経験年数が浅い労働者に関して生産性と賃金の関係がどういう関係になっているかというのは、どちらの関係も理論的にはあり得ます。ですので、労働者のやる気を引き出すために賃金が後払いになっているような世界では、若い人は生産性以下の賃金しか払われていないという状況になります。その一方で、その企業特殊的な人的資源に対して、企業と労働者が共同投資をしているというような世界では、若い労働者に関して言うと、本当はトレーニングの期間なので生産性が低いのだけれども、それに上乗せして賃金が支払われているというような形で、企業もある程度投資のコストを負担しているといったようなことも起こり得ます。

 そういったようなことも考えると、若い労働者の正社員の賃金が生産性よりも高いからと言って、それが合理性がないかというと、必ずしもそういうわけでもない。いろいろなパターンがあり得るということであります。

 それがどのように賃金格差を考えるべきなのかということになるわけです。ただ、今問題になっているのは、そのような正社員の賃金決定に関してある程度合理性を認めるにしても、現状観察される正社員と非正社員の間の賃金格差は、余りにも大きいだろう。他国と比べても、その適切性は問わないとすると、他国と比べても大きい。なので、それについてメスを入れていく必要があるだろうということで、本検討会が開かれているわけです。

 そうすると、 2 つの問題点が潜在的にはあり得るということになると思います。 1 番目は、正社員に関しては、特に大企業で勤める正社員に関してなのですが、労働市場が非流動的で、ミクロ的な社内の人事管理制度によって決定されている。これが内部労働市場による賃金決定の部分なのです。 2 番目のところは非正社員に関しては労働市場が流動的で、マクロ的な労働市場で賃金が決定されている。これは、先ほどの UA ゼンセンの方のプレゼンテーションと正に重なる部分なのですが、このマクロ的な労働市場の賃金決定の部分に問題はないのか。これまで出て来ている議論というのは、会社の中で合理性があるかないかということを企業に説明してもらうということがフォーカスになってきたと思うのですが、どちらかと言うと、この 1 の部分の合理性を問うというような議論であったかのような印象を持っているのですけれども、ここで、これも UA ゼンセンの方の問題意識と近いなと思って伺っていたのですが、 2 番目のほうの労働市場の部分ですね。ここの部分の改革も、実を言うと必要なのではないかというような考えを持っております。

1 つコメント的に申し上げたいのは、この企業の人事制度に合理性があるということと、その合理性を言葉にして、第三者にも分かるように明確に説明するというのには相当大きなギャップがあります。やってる本人が合理性を言葉で説明できるのだったら、経済学者の仕事というのはかなりなくなってしまうというところがあります。現実に観察される非合理に見えるような慣行を、合理性の枠組みの中で説明するというのがかなりの部分を占めてきましたので、かなりの負担を企業の方に課すということは、我々としては認識しなくてはいけないのではないかと思っております。

 その外部労働市場の歪みのほうについて話を移したいのですが、 5 枚目のスライドです。その非正社員の低賃金を説明する労働市場のマクロ構造というものがあるのではないかと思います。何で非正社員を雇うときにどうやって賃金を決めるかというと、その賃金でないと雇えないからその賃金にすると。もしも、例えば 1000 円で人を雇えるのに、 1500 円を払うことは、企業はしないわけです。では、何で 1000 円で人が雇えてしまうのかというところを問わなければいけないわけですが、そこには恐らく配偶者控除ですとか、第三号被保険者など、その税とか社会保障の制度、あと定年制度などもあります。あとはこういった配偶者控除ですとか、第三号被保険者の制度というのは政治的に決まってきたもので、これを支える社会規範みたいなものもあるのだと思うのですが、要するに短時間労働者を人員的に増やしてしまうような制度というものがあります。

 そうすると高い能力を持ちながらも、この 103 万の範囲の中で働きたいとか、 130 万の範囲の中で働きたいというようなことが増えてくると、その方々たちは供給圧力として働いてくるわけです。結果として賃金を抑圧するような力として働いてしまうのではないか。実際に PIACC という、いわゆる成人力調査と呼ばれるような国際調査がありまして、 2013 年に公表されているのですが、日本の労働者を見ると、この数的思考力においても読解力においても世界でトップのスコアをおさめているのです。非常に高い能力を持っている。けれども女性のマージンを見ると、どれだけ使っているのですかというところを見ると、すごく使ってないのです。明らかに持っている能力をフルに使っていないような側面というのが散見されるわけですが、それは非正社員を作り出してしまうような労働市場の制度にかなり大きな問題があって、ここの部分の環境整理というのを政府には是非進めていただきたい。

 では、こういう法律の役割というのが全くないのかと言うと、そんなことはなくて。これはマクロ的な環境を整えて、正社員と非正社員の労働市場をなるべく統合するような形の改革をしたときに、恐らく同一労働同一賃金の原則を企業に求めるということは、その移行のスピードを速めるような効果があるのではないか。 1 つの例なのですが、ちょっと違うコンテクストですが、日本の高齢者の労働市場を考えると、年金支給開始年齢をなるべく後ろ倒しにするような改革を行ってきたのですが、そのようなファンダメンタルな介入をすると同時に、高齢者の雇用確保を企業に求めるといったような政策介入も同時に行ってきました。高齢者の雇用安定法と、その年金の支給開始年齢の後ろ倒しというものがうまく相互的に作用して、結果として高齢者の就業確率が上がっている。東京大学の近藤さんとサイモンフレーザー大学の重岡さんの論文というのがあります。ですので、ここでマクロ的な環境が整備されて、正社員と非正社員の間の賃金収束が起こるような環境が整備されたときに、法律的な介入というものはその流れを後押しするような、そういう大きな役割を果たすのではないかとも期待できます。

 最後なのですが、欧州諸国から学ぶことがかなり大きなテーマになっているわけなのですが、同時にその欧州の制度を学ぶことも重要なのですが、その制度に対して欧州の人々はどういうふうに評価をしているかということも学んでいく必要があるのではないかと思います。経済学者の見方なのですが、必ずしも欧州の経済学者は欧州の労働市場制度に対して 100 %諸手を挙げて賛成しているという状態ではないと思います。やはり硬直的な労働市場の制度がその高い失業率などをもたらしているというような指摘はあります。

 非常に硬直的な労働市場の制度を持っていた国々が柔軟性を持たせるために無期労働者と有期労働者の市場というものを、基本的には有期労働者の存在を規制緩和によって認めていくというような改革が行われて、この柔軟性を高めるような改革というのが行われてきたのだけれども、そのこと自体が実を言うと二重的な労働市場をもたらしてしまったのだということを指摘しています。二重になってしまったので、それをもう 1 回、それは改革したことが悪かったと言っているわけでは必ずしもないと思うのですが、柔軟性を持たせることは必要なので、ただ、二重性というのが問題なので、 1 つの労働市場に収束させていくようなことが必要だろう。ここの部分の問題意識というのは、我々ともすごく重なっていると思います。

Bentolila Boeri Cahuc 、スペインとイタリアとフランスの経済学者がこういうような主張をしています。大陸欧州諸国の制度を参考にするときに、我々は彼らがその制度についてどういうふうに評価しているのかということも考えながら導入していくことが必要なのではないかと思います。過度な介入で労働市場を硬直化するようなことをすることは避けるべきである。もちろん正社員と非正社員の間の賃金格差の縮小というのを目指すことは重要だと思うのですが、どういった方法で目指していくのかについては慎重な考慮が必要だと思っております。私からは以上です。ありがとうございます。

○柳川座長 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について皆様から御質問、御意見をお伺いできればと思います。どなたからでも結構です。

○中村委員 データで実態を把握することに関しては、私も是非、川口先生のお力や事務方の皆さんのほうでしていただけたらと、とみに思います。私の手元のほうで毎月、勤労統計調査が過去の労契法やパートタイム法の改正後に、賃金のところでどういう影響があったかをザッと見たのです。先生がおっしゃるように、幾つかの要因をきちんとコントロールして見る必要がありますが、単純に時期だけで分かりやすい差というのは、少なくとも月次の統計では出ていないので、今後は非正社員の賃金を上げていくという取組のときに、そもそも現状では何によってその差が生まれているかというのを定量的に把握するのは、非常に有益かつ重要だと思いました。

○水町委員 大変勉強になりました。 1 つなるほどなと思った点と、もう 1 つはヨーロッパの判例の動きについてということで、この 2 点を若干説明させていただきたいと思います。

1 つ目が、正社員と非正社員の賃金の決め方という 4 5 ページにかけてです。正社員の賃金の決め方の合理的な説明が一方でありつつ、労働市場で賃金がどう決まっているかについて、法的な介入是正も必要だということは、私自身もなるほどと思っています。同一労働同一賃金とか、合理的理由のない不利益取扱いで合理性を説明させるだけでなく、併せてその背景や環境要因としてある税制とか社会保障とか、日本の伝統的な労使慣行の中に組み込まれている、必ずしも合理的とは言えないようなステレオタイプな取組などをどういうように取り払っていくかということも、同時にやらなければいけない。もしかしたらこの三法改正だけでなく、同時に政策的な課題として、こういうことも併せてやっていかなければいけないということを、我々も検討しなければいけないのではないかというのが重要だと思った点です。

 もう 1 つは、最後の 6 ページです。ヨーロッパでは硬直的な法律による規制によって、かつ、それが無期契約労働者と有期契約労働者について二重の法規制になっていたので、それが労働市場の動きの中で二極化を持たらし、その反省として 2000 年以降、いろいろな議論があるというのはおっしゃるとおりだと思います。ここで法規制の柔軟性や硬直性と言うときに、ヨーロッパの議論で区別して議論すべきなのは、いわば国会が定める法律の詳細な規定によって、労働市場の動きに過度の制約を持たらすような明文の規定を定めておくと、それによっていろいろな制約が起こって、コスト削減できるほうに動いてしまうという二極化が、 1980 年代、 1990 年代で大きく進んでしまったという反省が一方であります。

 他方、それに対して法は全く何の介入もしなくていいかというところまでは行かずに、 1 つの大きな流れとしては、裁判所で個別具体的な事情に応じて、実態に応じた形で、しかし裁判所の個別具体的な事案の中で、社会的正義や法制に反するようなときには、例えば経済学的な観点からの合理性というのも、考慮要素としてその中に入ってくるのです。そういうことも踏まえた上で、これはこの事案では許されないけれども、ほかの企業で合理的にやっていれば適法だというような判断で、法律の条文や法原則自体は比較的抽象的なものにとどめておいて、個別具体的な事案において対応しようということが、 1 つの方向として出てきています。そのときに日本法の解雇権濫用法理の柔軟な規制などが参考にされたりもしています。

 その中で今回、例えばヨーロッパの客観的に合理的な理由のない不利益取扱いの禁止というのは、法律ではそれだけしか書いてなくて、個別具体的な事案に応じて合理的な理由というのを、それぞれの企業の労使で考えてくださいと。この事案では合理的になっているので、判決では適法とされるけれども、この事案では同じようなものであったとしても、説明が不十分であったり中身が違ったりしていることで不合理とされることがあると。法律の中でも、特に同一労働同一賃金というのは、判例法理として今はかなり発展していって、 2000 年以降、ここ 10 年ぐらいの間に合理性の判断基準の中に、かなりのものが合理的に正当化事由として入れられています。キャリアの展開とか勤続年数とか、いろいろなものを入れていく中で、実際に個別に柔軟な運用がなされている。ですから同一労働同一賃金とか、客観的理由のない不利益取扱い禁止の判例法理の展開が、労働市場の硬直性や法規制の硬直性と言うよりも、むしろ柔軟な対応のために個別具体的な判断を促してきたり、尊重したりしていくという、逆に労使関係の柔軟化や公正化に向けた動きであるという見方もあり得るかと思います。

○川口委員 非常に勉強になりました。ありがとうございます。柔軟に対応していくというときに、いろいろな要因を考慮して、状況状況に応じた判断を裁判所がすることを許すということだと思います。そのときにいわゆる雇用形態に依存した形での判断を許すと言うよりも、なるべく 2 つの労働者を同一の形で取り扱うという柔軟性ですね。ですから柔軟性は持つけれども、なるべく正社員も非正社員も同じ枠組みの中で判断していくということを進めている、という理解でよろしいですよね。

○柳川座長 そのほかにいかがでしょうか。私も議論したいことはいっぱいあるのですが、余り多くの時間を使ってはあれですね。幾つかお聞きします。 1 点目は、先ほど「私にデータをもらえれば、ちゃちゃっとやれます」とおっしゃったので、非常に心強い言質を取れましたから、その辺りは是非やっていただきたいということです。

 それから、ヨーロッパの実情をよく把握した上で参考にするという御指摘も、やはりそのとおりだと思います。先ほど待遇の差のパーセントが出ていましたが、一方ではこちら側で失業率の話もあったりするわけです。そういうものを見てトータルにいろいろ考えていかなければいけない。もちろん今お話があったように、ヨーロッパでいろいろな取組があったとすると、我々がそれと同じ失敗をするのはもったいないので、取組は大いに参考にして、使える情報を使うということだと思います。ヨーロッパでやっていることを鵜呑みにするということではなく、やはりきちんと議論しながら取り組むという御指摘も、そのとおりかなと思うのです。

 そこでお伺いしたいと思ったのは、 1 つはすごく経済学的な発想です。 3 ページにありますように、発生の原因として例えば技能差があれば、ある程度そこで合理的に説明できるのではないかということですが、よく言われる話は、能力が違うから賃金差があるというところは、そこだけを見ると合理的だけれども、そもそも能力の違いがどこから出てきたかというと、機会が与えられないなどということになると、その原因として能力の差を前提にすれば合理的であっても、それが出てきた原因が何かの指導の失敗によるものだとすると、そこはやはり是正する話なのでしょう。それは広い意味では 5 ページのマクロ的な構造要因に絡むのでしょう。その何をもって合理的と言うかの判断は、恐らく通常経済学で考えているよりはちょっと広い概念で見ないと。今、我々が検討すべきだと与えられている課題は、もうちょっと広いのではないかということです。

 それと少し似たような課題かもしれませんが、現状では 1. 2. で市場の二重構造があって、決定の論理の二重構造があるのです。どちらかと言うと、ここでおっしゃるように 1. できちんと説明させて、 2. で問題があれば構造を改善させるということですが、 5 ページの話が重要なので、こちらをきちんと進めなければいけないのです。しかし、こちらがなかなか進まない中で 1. の説明、 1. をどんどん高めていくところが、どの程度全体のプラスになるのか。そこで場合によっては逆に、変な非効率性が拡大するようなことがないのか。

 具体的には余り見えてない話ですが、この話で論理的に考えていって、割と非正規社員を正規社員の賃金決定の仕方に合わせていくと、逆に流動性が失われてしまう。本来だと全体的に、もう少し流動性を高めなければいけないのではないかと言われている中で、むしろ全体的な流動性を抑えてしまうような構造になると、中長期的には課題が大きいのではないかと思っています。お答えを要求するような話でもないのですが、その辺りをどういうように整理されていらっしゃるか、教えていただけると有り難いと思います。

○川口委員 まず、最初にコメントの中で御指摘いただいたことですが、単一の指標だけで見ていくのは結構危険だという話と、最後に御指摘いただいた副作用の話は、すごく関係していると思うのです。単一の指標で賃金格差だけを縮小することになってしまうと、それをやるのは簡単で、一夜にしてできると思うのです。例えば、最低賃金を 2,000 円にしますと。そうすると、 2,000 円以下の人たちは雇用されなくなるのです。今、正社員の平均賃金は、ボーナス込みで 2,500 円とか、それぐらいの数字ではないかと思うのです。違ったかもしれないのですが、かりに 2,500 円だとすると最低賃金を 2,000 円にしたら、恐らくパートの方や非正社員の賃金は、 2,000 円に張り付くと思うのです。それだけで 2 割の差ということでゴールをクリアできると。ただ、裏では失業率の上昇などが起こってしまうわけです。ですからいろいろなインディケーターを見ながら、総合的に労働市場の状況を把握することが重要だと思っています。

 今申し上げた話は、副作用の話もカバーしております。最低賃金というのは、一番強硬な格差是正のための手段だと思います。実際にはデフレ環境の中で、最低賃金はそれほど上がらなかったのですが、デフレ環境の中で、実質的な最低賃金は上がってきたことがあります。 2007 年以降、名目でも最低賃金が上がり始めています。実質最低賃金の上昇が賃金格差の縮小、特に女性の賃金格差の縮小に役に立ったということは、既に研究で明らかになっています。その意味で格差を是正する役割はあるのです。

 ところが、技能が低い労働者の雇用が失われるということも、同時に研究で明らかになってきているのです。これに関しては論争もありますが、私個人としては、やはり失われる方向に行っているという研究結果を信じておりますし、自分自身もそういう研究をしてきました。ですから、やはり副作用というものを考えていく。最低賃金というのは極端な介入の形態ですが、多かれ少なかれ人為的に賃金を正社員のほうに収束させてしまうと、雇用が失われるという副作用も想定されるということだと思います。

 今のが 1 番目と 3 番目のポイントに対してのお答えですが、 2 番目のそもそも技能の差というものが、何によって生み出されているかというところまで、遡って議論しなければいけないのではないかというのは、全くそのとおりです。例えば、ちょっとコンテクストは違いますが、男性と女性の賃金差を説明するときに、教育年数の差を制御すべきかどうかという議論があるわけです。それには教育を受けてもリターンがないから、女性の教育年数が短いという社会的な背景もあるかもしれない。そういうときは教育年数の違いを制御しない、生の賃金差というものを議論することが必要だという議論になっていくわけで、何が何でも制御したほうがいいという話では全くない。そこは一つ一つ、なぜこの変数を制御する必要があるかということを、細かく検討しながら議論を進めていく必要があるというのは、全くそのとおりだと思います。

○柳川座長 その他、いかがですか。

○皆川委員 御説明ありがとうございました。大変勉強になりました。 1 点お伺いしたいと思います。先生に御準備いただいたスライドの 5 ページで、 PIACC の調査のお話を頂きました。日本の女性労働者は、十分に技能を活用していないというお話でした。確かにそのようなイメージを私も持っているのですが、ここで言う技能というのは、本来は潜在的に女性労働者が発揮できるはずの技能が、職場で生かせていないという理解でよろしいのでしょうか。そういうように捉えますと、そうした女性労働者が技能を生かせていない要因を考えていく必要があると思うのです。それは外部労働市場で賃金が決まることも 1 つの原因かと、今日の御指摘を聞いて思ったのですが、その前提となるのは、恐らく女性労働者は有期で雇用されていて、ある企業で勤続している年数が短いということも、ここでは考慮されるのではないかと思いました。

 そうなると M 字カーブの問題などにも関連するのかもしれませんが、女性労働者が正社員の場合の内部労働市場にうまく統合されていないというか、その中で適切な評価を受けられていないのではないか、という原因も考えられるのではないかと思ったのです。そうなると、やはり有期の方の勤続、労働契約法などの改正によって促されていることは促されているのですが、女性労働者の企業への定着というのも同時に図って、その中で発揮された技能に見合った賃金をという流れも、 1 つ考慮としては必要ではないかと考えたのです。そういった理解が正しいかどうかも含めて、御教示いただければと思います。いかがでしょうか。

○川口委員 まず PIACC についてです。これは読解力や数的な思考力を、実際に問題を解いてもらって測定するということをやっています。同時に普段の仕事で E メールをどれぐらい書いていますかとか、マニュアルをどれぐらい読んでいますかという質問をして、読読解力をどれぐらい使っているかも、同時に客観的に測定しています。ですから、技能の水準と使っている利用の密度のようなものを、それぞれ独立に測定しているわけです。男性と女性で技能の水準はほとんど変わらないのですが、使っている密度が男性と女性でかなり違う。特に子供がいる女性に関して言うと、日本では差が大きいことが分かってきています。それは必ずしもイギリスだと発見されないようなことなので、日本に特殊なケースである可能性があります。

 その理由ですが、今、皆川先生が御指摘になられたように、恐らく勤続年数の違い、あるいは勤続年数の違いを前提としたキャリアのトラックの違いというか。女性で高い技能を持っている人が、その技能を十分に使えるようなトラックに配属されていないので、十分に使い切れないということがあると思うのです。それが典型的に出ているのが正社員と非正社員の間の格差だと思うのです。いろいろな取組が必要だと思いますが、その部分を解消していくような取組を、同時に行っていく必要があるのかなと思います。

○柳川座長 ほかに御質問はよろしいですか。それでは次の御報告ですが、 5 分ぐらい休憩して、 38 分からスタートということでお願いします。

                                    ( 休憩 )

○柳川座長 それでは、再開したいと思います。神吉委員お待たせいたしました。御説明をお願いします。

○神吉委員 私からはイギリスの法制度からの示唆という観点で報告します。昨年、労働者派遣法改正と職務待遇確保法が成立して、その際の附帯決議で均衡・均等待遇の在り方について調査研究を行うこととされました。これに関連して昨年度労働政策研修機構に研究会がおかれ、諸外国の非正規労働者を巡る法制度の実態を調査してきました。今日の報告は、私がそのメンバーとして現地調査して得た知見を含んでおります。

 初めに 2 ページで、同一労働同一賃金原則と不利益取扱禁止原則の法的規範としての位置付けの違いを整理してみました。これに関しては、左の図のように、もともと男女平等という文脈で用いられてきた同一労働同一賃金原則が、フランスでは相対化して広がり、非正規労働者の処遇格差問題についても不利益取扱禁止原則として定式化されるという御説明、いわゆる同種の規範としてみる御説明が水町先生からなされてきました。

 ただ、私は少し立場が違っていて、同一労働同一賃金原則と不利益取扱禁止原則は質の異なる規範だという見方をしています。ただ、今日は同じか違うかの議論をしたいわけではなく、この区別を意識したほうが説明がしやすいというところから、こう整理させていただきます。

3 ページの表は 2011 年の「雇用形態による均等処遇についての研究会報告書」の議論を踏まえて、その質的違いを整理したものです。まず、男女という性別によって異別取扱いをしてはならないという原則は、いわゆる人権保障であり、イギリスの言い方で言うと「平等」を達成するための「正義」と位置付けられています。そもそも性別といった生来の属性であって、職務とは無関係の事情によって待遇に差があってはならない。そういう差別禁止という法的アプローチがとられます。

 これは同じ仕事をしているにもかかわらず、性別で差別されてはならないという話なので、同一賃金という帰結を導くためには、前提条件として職務の同一性が必要となってくるわけです。

 これに対して非正規労働者の不利益取扱禁止原則は、ヨーロッパ全体の政策として、先ほど川口先生から御説明があったように、柔軟化という文脈で非正規労働を促進しつつ、一方で濫用を防止するという労働市場政策の一環として位置付けられていて、政策的アプローチがとられます。

 職務形態というのは、職務に密接に関連しているので、パートであれば勤務時間の短さや、有期であれば雇用期間の短さが異別取扱いと密接に関連します。そのため、同じ仕事をしているから同じ待遇にするという理屈ではなくて、仕事に違いがあることが前提だという点に本質的な違いがあります。

 また、合理性、つまり、正当化要素の幅についても大きな違いがあり得ます。男女平等という文脈では、異別取扱いの合理性が認められる幅はほとんどありません。特に手続的な側面について言えば、女性労働者の多くの納得を得られたからと言って、男女差別的な待遇が正当化されることはあり得ません。ただ、非正規労働者の待遇については、たとえ不利益であったとしても、当事者がその制度の中で合理的と判断しているのであれば、正当化される余地が出てきます。

 そういった意味で同一労働同一賃金原則は、私的自治・労使自治を凌駕がする差別禁止アプローチであるのに対して、不利益取扱禁止原則は私的自治・労使自治という原則とともにあるもので、丁寧に納得を得るプロセスが重要になってきます。

 こういった観点から 4 ページです。日本の労働契約法 20 条の立法過程でも、こういった違いが意識されてきています。これは均等待遇についてのパート法旧 8 条が同一労働を前提とする差別禁止アプローチに近いアプローチを採ったことで、 3 つの要件がネガティブ・チェックリスト化しまい、法の実効性が限定的になってしまったという反省に基づいています。

 この反省をもとに、職務内容や変更の範囲などを要件ではなく考慮要素とするということと、日本独自の均衡概念を組み込むことで、東京大学の荒木教授によれば、日本独自のアプローチと位置付けられる法制となりました。したがって、諸外国の事例、特に差別禁止アプローチ的な部分を参考に日本でガイドライン化しようという場合には、幾つか留意すべきことがあるだろうと考えています。

 まずは先ほど述べたように、合理性判断の幅が違う点です。また、不利益取扱禁止原則は、本来は政策的アプローチとしての柔軟性をもつもので、差別禁止アプローチの枠をはめると、かえって柔軟性が損われてしまう可能性がある点です。

 救済については、諸外国では均等待遇の事例はありますが、均衡待遇の実例はないということが、今までの検討会でも明らかになってきました。ただし、理論的には比例的救済がありうる、幅をもつアプローチなので、ヨーロッパの事例は参考にしつつも、それにとらわれることなく、日本の独自性を検討していく必要があるのではないでしょうか。このような問題意識から、今日はイギリスの法制度を検討していきたいと思います。

 まずは前提として、イギリスの賃金決定の在り方と非正規労働の性質をみます。 5 ページに基本的な給与の体系として、イギリスでの賃金決定の方法を表にしました。これを見ますと、特に民間企業では、賃金を個別決定する企業が 6 割を超えています。 6 ページでは、民間企業では賃金決定が非常に分権化していることが分かります。右端の黒い部分、賃金が団体交渉で決まる、すなわち労使の集団的な賃金決定がなされている企業というのは、民間企業には 3 %しかありません。公務部門でも 24 %にすぎず、主な昇給決定要素も、個人の成果、能力、市場相場、スキルになっています。

 こういった分権化・個別化という点で、ヨーロッパと言ってもイギリスの場合は、ドイツやフランスなどの大陸ヨーロッパよりも日本に近いと言えます。

 これらを前提として 7 ページです。労働市場の状況で、パートタイム労働者を非正規の代表として使い、男女問題との関連を見ていきます。 (1) パート労働者の男女内訳は、女性が圧倒的に多いという構造になっており、これも日本と似ています。さらに、男女労働者の中でのフルとパート割合を見ると、男性労働者はほとんどがフルタイムであるのに対して、女性労働者は約半数がパートタイムで働いている状況です。

 このような状況の中で、イギリスの非正規労働者が非正規格差問題を争う方法が、実際には 2 つあります。まず 1 つめは、男女同一労働同一賃金という類型で訴訟を起こす方法で、これは 2010 年の平等法を根拠とします。性差別禁止訴訟もあるのですが、ここではおいておきます。もう 1 つは、雇用形態に基づく不利益取扱禁止訴訟で、これらは 2000 年パート就業者不利益取扱禁止規則、 2002 年有期労働者不利益取扱禁止規則、 2010 年派遣就業者不利益取扱禁止規則があります。

 女性のパートタイム労働者が自己の待遇が不利益だと感じたときに、この 2 つの訴訟のどちらもあり得るのですが、この内訳が結構違うというのが 8 ページの円グラフです。もちろん同一賃金訴訟は直接の男女差別を含むので、必ずしもパートと完全に重なっているわけではありませんが、現地調査で聞いてみると、女性のパートタイム労働者の労働問題は、ほとんど男女同一労働同一賃金のほうで訴訟化するようです。

 これを数字で見ていきますと、 2014 年の雇用審判所の申立数の円グラフで、同一賃金訴訟が 15.7 %を占めているのに対して、パートタイム規則に基づいて不利益取扱禁止を是正するように求める訴訟は 0.5 %しかありません。ただし、パート規則ができた 2000 年の立法当時は 1 530 件の申立てがあり、当時の申立数の約 13 万件のうちの 8 %を越える水準でした。これが翌 2001 年には 429 件まで減っており、それ以来ずっと少ない水準で、最近でも年間 300 件程度にとどまっています。

 有期・派遣規則に基づく申立ては統計自体がなく、現地の調査では相当少ないと聞きました。

 この差は何なのか。訴訟が 1 万件を越え、導入当初はかなり期待されていたはずのパートタイム労働者不利益取扱禁止規則がどうして使われなくなってしまったのか。問題が解決したのであればいいのですが、そうでもなさそうです。これは権利実現のための制度設計の違いが大きく影響しているだろうということで、 9 ページで非正規労働者の不利益取扱禁止規則の枠組みを図示しました。

 大きく 3 つの方策が設けられています。まず 1 つ目は非正規労働者が不利益取扱いをされない権利を付与するもので、正当化要素の話はこの場面の議論になります。また、説明義務に関する規定もあります。

 それから、専門家の関与として、例えば助言斡旋仲裁機関という独立の機関が積極的に介入してインフォーマルな解決をするという方法が割と機能しています。ピンクの部分が実体的な権利に関わるもので、オレンジは手続的な制度保証という意味で色を変えてあります。それらの内容については、時間も限られているので、概要を御説明します。

10 ページでパートと有期の労働者の権利ですが、ここでは比較対象者と比較した場合に、契約条件と契約条件以外の双方とも不利益に取り扱われない権利という実体的権利が規定されています。

 ここで注目していただきたいのは、あえて比較可能なフルタイマー、あるいは無期の労働者と比較する構造を取っているところです。本来であれば労働の同一性を要件としなくてもよい、雇用形態に基づく不利益取扱禁止に対して、イギリスでは、あえて労働の同一性を要件とする差別禁止的なアプローチ、抑制的なアプローチを採っているのです。

 結論先取り的ですが、こういった構成を取っているがゆえに、非正規規則を使える労働者が絞られてくる。日本で言うと、パート法の旧 8 条と同じような状況が起きてきています。更に、使用者にとっては、比較要件を満たすが労働条件がそれほど高くないダミーの比較対象者をおいて、労働者の権利行使を制限するような場面が見られています。

 権利の適用場面は、 11 ページに詳細を書ました。この検討会ではガイドラインの策定を検討していますが、イギリスでも政府がガイドラインを出しています。そこで一定の場合に正当化が認められる例として挙げられているのは、成果主義賃金体系を採っていれば、パートとフルタイムとの時給格差があっても許されるといった事例です。なお、有期労働者の場合は、異別取扱いについて、それを是正するのに過大なコストが掛かる場合には、それを正当化要素とできるという、経営寄りの要素も挙げられています。

 具体的な正当化要素を認めた裁判例としては、救急車の運転手の待機時間に差がある事例で、

地域の需要に応えることが正当化事由となるとした判決が 1 件あるのみです。正当化要素を否定した事例は、パートタイム裁判官の職域年金からの排除に関して、国家資源分配の公平性や良質な人材確保、年金の持続可能性を正当化事由とならないとした事例があるのみです。正当化を肯定した例と否定した例、判決としてはこれくらいしかありません。それはなぜかというと、先ほど述べましたとおり、職務の同一性を非常に厳格に要求するので、正当化要素の判断までにはほとんど至らないからです。こういった意味で、イギリスの裁判例から正当化事由についての一般的な原則を導き出すのは、難しいでしょう。

 次に 12 ページ、派遣就業者です。これは以前、事務方からも御説明がありましたので簡単にお話します。派遣所初日からの集団的福利厚生施設の利用を中心とした権利と、勤続 12 週を超えた場合に、派遣先の比較対象労働者と基本的労働条件を同じくするという権利の二段構えになっていることだけを御説明しておきます。

13 ページ、説明義務です。日本の場合は、立証責任としてどちらが説明しなければいけないかという話が中心で、それ以前の紛争化する前の説明義務をどうするかは十分に議論されていないかと思います。

 イギリスの場合は、紛争に至る前の段階に説明義務が課されます。パート・有期労働者が自分の待遇が不利益だと考えた場合には、使用者に対して、その理由を記した書面の交付を求める権利があります。この書面は 21 日以内に受け取ることができ、受け取った場合に、もしそれが自分にとって正当な理由なく不利益だと思った場合には、雇用審判所に訴訟を申し立て、その審問手続において証拠採用されることになります。使用者側が合理的理由なく情報を提供しない場合、あるいはその内容が非常に言い逃れ的だったり、曖昧だったりする場合には、それを審判所は推認しなければなりません。派遣就業者も、同じような内容で、 28 日以内に待遇の理由を記した書面の交付を求めることができます。

 ちなみに救済は、雇用審判所が、これが違法であるという旨の宣言の判決、補償金の支払命令、不利益な取扱いが続いている場合にはその排除あるいは緩和の勧告などが出されます。ただし、ほとんど使われていません。次に、非正規の不利益待遇と比較する形で、イギリスの男女同一労働同一賃金原則を見ていきたいと思います。

 これに関しては、やはり差別禁止アプローチなので、実体的な権利の中身を見ていくよりは、制度的な担保、特に手続的な部分を注目して見ていただければと思います。まず、個別的な対応として、先ほど挙げた権利の付与と説明義務、専門家の関与がありますが、男女の差別禁止アプローチに関しては、それに加えて構造的な対応がなされているのが特徴です。

 具体的には、平等賃金監査と、平等賃金監査命令、格差公表義務があります。色を付けているうちのオレンジの部分は義務又は命令といった法的な規定があるものです。緑の4の平等賃金監査は、使用者側の自主性に任せる制度です。こういった制度的担保を支えるアクターとして、下に掲げた平等人権委員会とか、先ほども出てきた助言斡旋仲裁機関とか、雇用審判所、労働組合などが関わっていくという構造です。

15 ページの権利付与ですが、これは男女同一賃金原則の基本的な内容なので、同一労働の場合に、同一労働条件が認められるという説明にとどめておきます。

 正当化要素は、一応あるのですが、これは「男女差別だが、正当化できる」というものではなくて、性差別は許されないことを大前提に「性差別にみえるかもしれないが、別の実質的な理由がある」という意味で、非正規の場合の正当化事由とは違うことに注意が必要です。性質が違うので、この中身には特に立ち入りません。救済として、自動的に平等条項が契約に挿入されて、男性と同条件に修正されるという点を述べておきます。

17 ページ、説明義務として、労働者には、審判所へ申立てをする前に書面で質問する権利が認められています。これは比較対象者に関する説明が中心で、労働者にとっては、比較相手の労働条件が分からないとそもそも比較できないので、あの人の労働条件はどうなのか、その人の労働条件よりも自分は低賃金なのかなどをこれで確認します。使用者が答えた場合は、その書面は証拠採用されます。また、情報不提供や、ごまかし、曖昧な回答をした場合には審判所の手続における推認に反映されます。

 ただ、課題としては、個人間の比較にとどまるため、その人が適切な比較対象者ではない場合は先に進めないといった問題があります。また、使用者側がそれに対して報復的な人事をするとか、個人情報が漏れてしまう可能性があるということも指摘されています。

3 つ目として、専門家の関与です。まず助言斡旋仲裁機関が雇用審判所への申立ての前の必要なあっせんをします。その他、任意であっせんを頼むこともでき、かなりインフォーマルな形で事案に即した解決が図られます。実際に多くの紛争はほとんど審判所に行かず、審判所に手続外で解決をしています。

 さらに、同一労働同一賃金に関しては、雇用審判所に登録している専門家の制度があります。審判所が同一価値労働に関する申立てを受けると、そこから登録された専門家に同一価値労働かどうかについて調査を依頼することができます。専門家は 8 週間以内にその調査をして、結果報告書を審判所に提出し、審判所がその評価を基に事実認定をします。

4 つ目の平等賃金監査は 19 ページです。まず、平等賃金に関する行為準則というものがあります。これはそれまでの個別の紛争に対する個別的対応の限界に鑑みて、構造的な解決を促す仕組みとして作られました。実務的なガイドラインという位置付けで、法的拘束力はなく、あくまでも自主的な取組みを促すものです。

 この画像はその目次です。 2 部構成になっていて、第 1 部は同一賃金法の解釈に関する実体的な解説です。第 2 部は好事例で、この中に平等賃金監査という手続が入っています。訴訟になったとき、雇用審判所や裁判所は関連する手続において、この行為準則を考慮し、手続にのっとってきちんと評価をしてきたかといったようなことを見ていきます。裏を返せば、使用者にとっては平等賃金監査をきちんとやっていることが、紛争化したときの保険になるのです。この具体的な内容が 20 ページの 5 つのステップです。

 まずステップ 1 は、範囲の特定です。企業内で監査する範囲と必要なデータを決めます。そしてステップ 2 、その範囲で同一労働に従事している男女労働者を特定します。ステップ 3 として、同一労働における重大な賃金格差があるかどうかを確認します。この場合の重大な賃金格差は 5 %が目安とされ、それ以上の賃金格差があれば、重大な格差と評価されることになります。そしてステップ 4 、もし格差があった場合には、その格差が本質的・実質的な原因に基づくものなのか、様々な視点で検証すべきとされます。最後のステップ5はアクションプラン策定で、もし性に由来する賃金格差がある場合には、賃金平等のため、格差是正のために行動計画を作って展開する。もしない場合には、再評価してモニタリングをすること、これを定期的にやりましょうと行為準則で推奨されています。

21 ページ、平等賃金監査は一体何のためなのか。目的は、透明性の確保です。平等賃金監査を行うときに、行為準則の中で、リスクが高い賃金実務の例が挙げられています。私訳ですが、例えば透明性がなくて、格付けや賃金が不必要に秘匿されているとか、客観的基準に基づいて構築されていない裁量性の高い賃金システムであるとか、 1 つの組織に複数の格付け又は賃金システムが存在するとか、恐らく日本ではそれほど珍しくない賃金システムがハイリスクだと評価されています。

 平等賃金監査は、あくまでもガイドラインとしての行為準則で自主的にやりましょうというものなので、課題もあります。使用者が自主的にやってくれればいいのですが、そうでない場合には、やはり限界があるので、労使がともに関与するような仕組みの構築が必要だと指摘されています。また、実際やってみると、非常にコストが掛かるので、これをどうやって負担していくのかも問題です。

 そして、やはり自主的取組だけでは効果が限られるということで、平等賃金監査命令に進む場合があります。男女平等賃金審判で雇用審判所から違法と判断された使用者に対して、強制的に平等賃金監査をしなければいけないとするのが平等賃金監査命令です。ただ、 10 人未満の労働者を抱える使用者、創業 1 年以内、過去 3 年以内に適法な監査をしている使用者は命令の対象から除かれます。逆に言うと、任意実施のインセンティブともなるのです。賃金監査命令が出されてしまうと、使用者は期間内に監査結果を審判所に提出し、かつ使用者のサイトで 3 年間公表すること等が強制されてしまいます。これに従わない場合は上限 5,000 ポンドの罰金制度があります。

23 ページ、更に法的な強制の仕組みとして、格差公表義務があります。「あります」というか、これから「できます」。もともと透明性が非常に大事だということで、平等法の 78 条は男女賃金格差情報の公開義務に関して政府の規則制定権を設けていました。労働者 250 人以上規模の企業に対して、男女の賃金格差がある場合に、その公表を義務づける規則を作ることができるという条文です。しかし、政府としては企業に自主的に取り組んでほしかったので、自主的な取組キャンペーンを 2013 年までやっていました。このキャンペーンには 200 社ぐらい参加して、結構盛り上がったようですが、実際に 2015 3 月までに格差を公表したのは 5 社にとどまりました。そこで、そろそろ公表義務を設けなければいけないということで、現在パブリックコメントの分析中で、恐らく 10 月ぐらいに義務化が実施される予定です。しかし今、イギリスも政治的にいろいろあって、流動的ではあります。

 内容としては、平均値とか、賃金の中央値といった基本的な情報を公開しましょうということになりそうです。履行確保措置としては罰金が検討されていたのですが、どうやらなくなりそうです。まだ流動的ではありますが、透明性確保という方向に進んでいるのがイギリスの特徴です。

 最後におまけとして、 24 ページで「正規労働者からの視点」を入れました。イギリスには柔軟労働申請権があり、勤続 26 週以上の全労働者は柔軟な労働形態を申請する権利があります。これはもともと育児や介護に取得事由が限定されていたのが、 2014 7 月以降、いかなる理由に基づいても申請が可能とされました。現在、企業の 9 割に導入されています。政府のガイドラインでも、パートタイムやジョプシェアリングに適した範囲を、熟練や管理職まで広げていこうと提言しています。イギリスの場合は管理職であってもパートである場合が多く、実際にはこれがフル・パート格差の縮小にも寄与しているのです。

 今日は欧州との数字の違いについて議論がありましたが、ボトムアップだけではなく、正規労働者の無限定な働き方の見直しも、格差の是正には欠かせない視点です。

 簡単にまとめますと、 25 ページで、非正規労働者の不利益取扱禁止原則においては、やはり労使自治の中で納得を得るための多様な手段をとる必要があると考えます。特にイギリスや日本のように、分権化して個別化した賃金決定がなされる社会にあっては、個別紛争による救済を前提とする実体的権利付与だけでは限界があって、構造的問題を解決していく視点が重要だと思います。

 イギリスの示唆としては、当事者の自主的な改善を促す仕組みとともに、手続面からの制度的担保が有用だといえそうです。労使が関わり、専門家が関わり、行政がバックアップしていくという仕組みが、今のところ機能しつつあるからです。ただ、同一労働同一賃金原則というのは、差別禁止アプローチなので、これにとらわれず、もっと広い政策的アプローチとしての柔軟な枠組みを、日本独自の文脈で考えていく必要があると考えています。長くなりましたが、私からは以上です。

○柳川座長 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について御意見、御質問をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

○中村委員 有益な御説明をありがとうございました。先生に伺いたいのは、 14 ページの構造的対応がイギリスでは取られているという御説明があって非常に重要ということでした。日本の現状に照らし合わせた場合、日本はこういう観点で見たときにどの機能、若しくはどの機関がこれに類似する役割を果たしているということはあるのでしょうか。

○神吉委員 多分、それが一番難しいところで、日本にそのような専門家がいるのかという話が出てきます。ただ、日本の場合は、まず、透明性の確保という視点から、格差に関する何の情報もないということがあるので、どの機関に何をさせるかよりも、まず当事者が情報を共有していく仕組み、そういうものの構築からスタートしていくことが現実的かと考えております。

 イギリスの場合も、それぞれに専門家がいるとはいえ、数がそれほど多いわけではありません。制度を新しく作るのはなかなか難しいかもしれないのですが、まず、できるところから始められればと思います。

○水町委員 ありがとうございます。大分イギリスでの法的な考え方について頭の整理ができました。 4 ページの所で、労働契約法 20 条の位置付けについては、おおむね賛成です。 4 ページの下の1、2、3と合理性の判断の幅が手続的側面も評価しながら広いとか、救済の所は比例的救済の可能性は日本独自だというところはそうだと思います。

 2に政策的アプローチと書いてありますが、名前の使い方がどうかということで、要は要件による厳格な判断ではなくて、要素による総合判断的なものであるという意味では柔軟なアプローチだということは、そのとおりだと思います。政策的というと行政的なものだと思われがちですが、正に 20 条は司法的な裁判所による救済の根拠で、行政そのものの行政指導を行う根拠規定だと考えられていないので、労基法 20 条との関係では今のようなことを注意すれば基本的に同じ考え方です。

13 ページです。それと併せて、これは、これまで日本で議論されてきたような裁判所における主張立証責任というだけではなくて、労働契約を締結していたり契約の中身がどのようになっているのかという観点で、きちんと説明するということが大切だということ、先ほど 14 ページの所で専門家の関与というものがありましたが、これは特に個別労働紛争解決システム全体の課題で、裁判所一般に任せられるのか、労働審判制度が出来たけれども、やはり労働審判制度については全体としての数字、何件までできるのかということで 3,000 件、 4,000 件ぐらいまではできるが、例えば、海外のように 10 万件、 20 万件という処理はなかなか難しいのではないかとか、個別労働紛争の解決として日本で何をやるのかというと、例えば、行政が都道府県労働局の中であっせん等でどのように取り扱えるのか。

 あとは中央労働委員会と都道府県労働委員会があるので、それを紛争解決のためにどのようにいかすのかということは、労働紛争全体の中で制度設計の見直しがどこまでされるのか、そういうところも含めて、例えば、新しい法律制度で裁判所の救済というだけではなくて、より政策的に予防、あっせん、解決を進めていこうというときに行政による解決も含めてどのようにするのかということは重要な課題で、それも神吉さんのおっしゃるとおりだと思いました。

 あと、 23 ページの格差公表義務や透明性という所も、正に今後重要な課題になってきてイギリスで平等法で取り組んでいる問題は、おそらく日本では女性活躍推進法の中で取り組まれているものとパラレルなもので、日本の女性活躍推進法でかなり踏み込んだ取組がなされて、情報公表とか透明性を高めるという中で労働市場を通じて待遇改善を図っていこうという動きがあります。

 それを日本で正規、非正規労働者の格差問題にどのように用いたり応用できるのかということが、ここで共通する課題なので、神吉さんのおっしゃったとおり、裁判によって最終的に強制力を持ってどのように救済されるのかということは 1 つ重要なところで、これが抜けてしまって行政だけで努力義務規定や自主的な取組というと、最終的な強制力を持った芯がなくなってしまいます。

 それと同時に裁判だけでは必ずしも前向きに実態まで変えていくということは難しい場合に、どのように政策的にアプローチするのかということは、女性活躍推進法等のやり方も含めて課題として見ていくべきだということは私も共感するところです。以上です。

○神吉委員  4 ページの「政策的アプローチだからこそ」という部分は、確かに契約法 20 条の位置づけと同じスライドに入れてしまったのは誤解を招く書き方で、すみません。この 20 条の位置付けは「日本独自のアプローチ」というところまでで、諸外国の事例検討の留意事項はそこからは若干外れております。

 正に今、水町先生がおっしゃったような行政的なアプローチというものもここに含意していて、もちろん、個別紛争になったときに最終的な法的な落ち着きどころをきちんと決めておくことが最後の砦として重要だけれども、それだけにとどまらずより多様なアプローチが取れるのではないかという意味でここに入れました。後半部分はタイトルとは直接関連していません。

 平等賃金監査や手続に関して、今日、同一労働同一賃金原則という差別禁止アプローチの話をしてきたのは、異物を探り出すアプローチとしてもこれだけのことが必要だという話だと受け取っていただければ。性差別禁止より更に広いアプローチを取って雇用形態差別的なところまで広げていくと、これ以上の行政、その他、労使の当事者も含めた関わりが必要となってくると思います。

 男女はそもそも職務評価とは無関係な事情ですが、そういう差別を探り出すためでさえあれほどの手続が必要なのです。雇用形態に基づく不利益取扱い禁止や不合理な格差是正は、職務評価とより密接に関わってくるものなので、その格差是正は、今日挙げた構造的な対応よりも、ずっと大変な取組が必要なはずだという私は考えています。以上です。

○松浦委員 有益な御説明をありがとうございました。介入の中で手続的なものを重視するという点は今後のヒントになるのではないかと思います。平等賃金監査命令についてお伺いいたします。雇用審判所に至るまでのプロセスを教えていただきたいということと、平等賃金監査が行われるときの情報開示が法律で明示されているのかということの、 2 点を教えていただけますか。

○神吉委員 労働者が審判に至るまでの一般的な話でもよろしいですか。労働者が職場で違法なのではないか、この場合は同一労働同一賃金原則に反するのではないかと考えたときには、一般的には先ほどあったように説明を求めていて、それで審判を申し立てるかどうかを決めます。

 どうもこれは不合理だと思ったり情報が得られなかったりすると雇用審判所に申し立てることになりますが、イギリスの場合は助言斡旋仲裁機関が、申立ての前に必ずあっせんで介入しなければいけないことになっていて、そこである程度、当事者間にあっせん官が入ったインフォーマルな形での解決が試みられます。

 ざっくり言うと、そこで 8 割ぐらいは解決し、それでも解決に至らない場合に審判に進みます。審判に進んで、さらにそこで違法と判断された場合にしか平等賃金監査命令は出ないので数は少ないです。むしろ、過去 3 年以内に適法監査をしていると、この命令が出されるおそれがないので、これが使用者側にとっての任意実施のインセンティブとなっています。

 実際にはイギリスのコンサル会社などが、「今はすごく訴訟リスクが高くなって、負けると監査命令に従わなくてはいけなくなる」と言って、「うちのこのパッケージを利用して任意の監査をするとそういうリスクがなくなります」という営業をしている所もあります。そういう意味では、これは強制の契機ではあるのですが、他方で、自主的な解決を促す仕組みともしても機能しています。

○松浦委員 平等賃金審判で違法とされても、 3 年以内に適法な監査をしていたら、あとは自主的な解決に委ねられるが、そうではない場合は、平等賃金監査命令が出されていろいろな指導されるというイメージですか。

○神吉委員 そうですね。違法と判断された場合には個別の救済が別にあり、平等賃金監査命令はプラスで付いてくるというイメージです。違法な差別と判断された場合は、労働者には権利付与の結果としての救済として、自動的に平等条項が挿入されて同条件に修正されるという効果が生じ、それにプラスして、もしきちんと平等賃金監査をやっていない企業であれば、法的な開示事項を明らかにしなさいというのがこの命令です。

○松浦委員 ありがとうございます。

○柳川座長 よろしいでしょうか。それでは、最後になりますが松浦委員から御説明をお願いいたします。

○松浦委員 ガイドラインを作成するかどうか、この検討会でまだ決まったわけではないということは重々承知しているのですが、もしも作成する場合には、ということでこのような資料を作ってみました。あくまでも私の意見ですので、これにとらわれることなく忌憚のない御意見を頂ければと思います。

 スライドの 1 ページ目にあるのは、前回の検討会で中村委員が提出された資料の中で整理していただいた図です。私も、同一労働同一賃金の実現と非正社員の待遇改善の重なる部分が、やはりこの検討会の目的だろうと考え、そのスタンスに立ってこの報告をいたします。

 検討会でのこれまでのやり取りの中でも、日本の裁判においては、損害賠償が認められたとしても、その後の対応は企業に委ねられるというお話でした。ということは、不合理が一時的に解消されたとしても、その後、処遇向上につながらない仕組みを入れられてしまうと、結局は処遇向上につながらないということになります。そこで、ガイドラインを作成する場合には、次の 2 つの目的の達成を重視すべきではないかと考えております。

1 つ目は、何が不合理なのかを明確にすることによって望まぬ紛争を予防すること。もう 1 つは、非正社員の処遇向上につながる方向に、これは正に政策的介入になると思うのですが、企業の対応を誘導することです。なお、処遇といってもいろいろありますが、ここでは、主要な処遇の 1 つである賃金に焦点を当てて、不合理かどうか、あるいは非正社員の処遇向上につながるかどうかという観点から考えてみます。

3 ページ目は、興味深い調査結果なので後で見ていただければと思いますが、しゅふ JOB 総合研究所が主婦の方々を中心とする調査対象に、賃金が不公平だと思うか、同一労働同一賃金を望むか、どういう差だったら納得するかといった点をたずねた結果です。次に、正社員の意識との比較として、就業形態の多様化調査の結果を付けております。これも後で御覧いただければと思います。

 次のスライドは 6 ページです。先ほど申し上げた不合理な格差かどうか、非正社員の処遇向上につながるかどうかを考えるために、イメージ図を書いてみました。左は賃金が高い、右は賃金が低い、縦の軸は勤続年数です。斜線が入っている部分は、賃金水準の大体の幅だと考えていただければと思います。

 企業は、正社員・社員区分1と非正社員の格差を、違う制度だから、考え方が違うから、比較しようがないのだと説明します。正社員は社員格付け制度に基づいて昇給した結果こういう水準になっており、勤続年数が長くなるほど社員区分内は賃金水準の幅が広がる一方、非正社員は、もともと長期勤続を前提にしていないため、昇給も限定的だし社員区分内の賃金水準の幅も狭いというわけです。

 ただ、これが実態として、本当にそうかというのは、また別の話です。例えば、実態としては、想定されている賃金水準の幅の中に収まっていない人たちが出てくるわけです。「実態」を表す良い言葉が出てこないのですが、川口先生がおっしゃった生産性に近いかもしれません。

 つまり、実態と賃金水準に乖離がある人たちが、勤続年数が増えるにつれてどうしても出てくる、増えてくるということが、正社員・非正社員の両方にみられます。そのときに、その実態と制度・水準の乖離をどう説明するのか。企業は正社員と非正社員の水準の差は制度が違うと説明するわけですが、実態と制度・水準の乖離は、制度通りになっていないではないかという話になります。

 そこで、いくつかの格差・乖離について、どれが不合理なのか、考えてみたいと思います。論点1は正社員の中で賃金水準と実態が乖離しているケースです。論点2は非正社員の中で実態と賃金水準が乖離しているケースです。非正社員の場合、もともと賃金が低いですから、実態のほうが賃金水準よりも高くなる傾向にあります。逆に正社員は、実態のほうが賃金水準よりも低くなるケースが非正社員に比べると多いわけです。

 論点3は、実態のほうが低い正社員と、実態のほうが高い非正社員の間の格差です。実際、職場の中で一番不満が出るのはこの部分です。もう 1 つ、最後は論点4です。これは正社員・社員区分1の制度と非正社員の制度との相違ですので、それぞれの社員区分の標準的な人たち同士の格差、つまり均衡の問題です。

 この 4 つの論点について、それぞれ不合理かどうか、非正社員の処遇向上につながるのかどうかについて考えてみました。まず、論点1は、賃金水準が実態よりも高くなっているケースです。これは企業にも言い分があります。たとえば、育成段階だから、あるいは特別な事情があるから、一時的に乖離しているけれど将来的には実態を賃金水準に合致させます、という説明です。現在の実態はそれほどでもないかもしれないが、過去にすごく頑張っていた時期があり、通して見ればつじつまが合っているという説明もあります。非正社員の側からは、現在の職場の実態しか見えないですから、そういうことを言われても納得しにくいと思いますが。さらにいうと、乖離した場合の賃金水準の保障も含めて正社員の労働条件なのだという説明もあります。そういう保障を獲得するために労使交渉を頑張ってきて、その結果として高い賃金水準の保障があると。特に賃金水準が実態よりも低くなっている非正社員からすると、納得感がない説明だと思われますが、これも一つの事実ではあります。

 次に、論点2のところ、非正社員のケースで、賃金水準が実態より低くなっているケースに対しては、企業はこう言います。職務を限定しているからそのようなことになっているはずがないと。でも実際になっているケースがあるのです。あるいは、育成やキャリア形成のためにあえて正社員の職務の一部を付与しているという説明もあります。これも最初はそうだったかもしれませんが、その後実質的に 1 人で担当を継続しているケースもあります。つまり、育成だと言いながら新しい仕事を担当させ、一人前になっても時給がなかなか上がらないという構造は問題だということです。

 論点1、2いずれも、企業は実態を賃金水準に合わせようとします。論点1では、企業は高い賃金水準のほうに実態を合わせようとします。なぜなら、賃金水準を大幅に下げるのが難しいから、また、そもそも正社員に対して行ってきた教育投資を回収しないともったいないからです。

論点1の乖離について、賃金水準を実態に合わせるように誘導することは実際難しいですし、私はこの乖離を不合理だとまでは言えないのではないかと思っております。正社員の賃金水準を実態に合わせるように誘導することが、財源の面で非正社員の処遇向上につながる可能性はありますが、現実はそんなに単純ではなく、正社員の賃金を切り下げて終わる、必ずしも非正社員の処遇向上につながらない可能性もあります。つまり、論点1の乖離については、不合理とまでは言えないし、必ずしも非正社員の処遇向上にはつながらないという面で慎重な検討が必要なのではないかと思っております。

 論点2の乖離についても、企業は実態を、低い賃金水準のほうに合わせようとするでしょう。この理由は、主に財源の問題です。しかしながら、非正社員が、正社員が担うような職務を担当できるようになって、なおかつ、実際に担当し続けているにもかかわらず昇給しないというのは、職務給、職能給いずれの考え方に照らしてもおかしい、不合理だと考えられます。論点2の乖離を昇給に誘導できれば、もちろん非正社員の処遇向上に直結します。

 スライドの 8 ページは論点3と4です。論点3は、賃金水準が高過ぎる正社員と賃金水準が低過ぎる非正社員の比較で、ここが職場では最も不合理に見えるわけですが、結局これは、論点1と2が複合的に影響した結果であり、例えば、賃金水準が低過ぎる非正社員の賃金を、賃金水準が高過ぎる正社員の水準に合わせるべきかというと、必ずしもそういう話にはなりません。どちらもイレギュラー事象なのです。そう考えると、これは、非正社員の処遇向上という面でも、全体への波及効果は限られるのではないかと考えております。

 最後の論点4は、制度の均衡の問題です。これは制度設計上の話なので、均等なのに制度が違っているということは基本的にはなくて、均衡が図られているかどうかが問題になってくると考えられます。論点4の格差は、職務内容や人材活用の仕組み、その他の事情によって不合理かどうかということが判断されるわけですが、結果として均衡が図られていないという判断になれば不合理ということになるでしょう。不合理かどうかの判断は難しいわけですが、この問題の対象となる非正社員は多いので、ここが調整されれば、多くの非正社員の処遇向上につながる可能性があります。ただ、ここの判断には相当幅をもたせる必要があり、なかなか杓子定規には決められないと思っております。

 スライドの 9 ページです。論点1〜4まで説明しましたが、不合理かどうか、非正社員の処遇向上につながるかどうか、という観点からの整理を踏まえると、ガイドラインでは論点2と4に焦点を当てるべきではないかと考えております。もう 1 つ重要な点として、ガイドラインで、こういうケースが不合理ですと示すだけでは、企業が不合理となっている部分をやめるだけで終わってしまう懸念があります。つまり、非正社員の実態を、低い賃金水準に合わせにいって終わってしまうということになりかねないということです。そういう対応をされると、確かに不合理は解消されるわけですが、むしろ非正社員の処遇低下につながり、育成やキャリア形成にも支障が出て、正社員転換にも悪影響を及ぼします。そういう事態を避けるためには、不合理であるという例を示すだけではなくて、不合理ではないという説明に説得力を持たせるためにこういう取組が必要ですよ、こういう取組を入れればあなたの企業は不合理ではないという説明に寄与することができますよ、という取組例を、ガイドラインで示すことが非常に重要ではないかと思っております。

 スライドの 10 ページです。それでは、不合理でないという説明の説得力に寄与する取組として、どういう取組が考えられるのかということです。これは第 1 回の検討会で出して頂いたグラフですが、正規、非正規間の「公正・均衡処遇」について、「対応を必要とする格差はない」と考えている企業は 31.2 %となっています。ただ、この結果については、どこまで実態を把握した上の回答かという疑問が残ります。また、「わからない」と答えている企業が 23.2 %みられますが、対応の有無が分からない企業で、「公正・均衡処遇」が図られているのか極めて疑問ですし、これらの企業では実態も把握できていないのではないかと思われます。

非正社員に関する実態と賃金水準の乖離、正社員と非正社員間の均衡の状況について、実態を把握するための取組は、これらの格差を不合理ではないと説明する上で不可欠な取組になるはずです。手法としては、匿名アンケートや職場懇談会、職務評価等いろいろな手法が考えられます。もちろん、それをやった上で賃金と実態が乖離している場合には是正する、均衡が図られていない場合には調整するという取組も必要になってきます。

例えば、スライドの 11 ページ、論点2の賃金水準が実態より低いケースの場合、よくある店舗のケースで考えてみると、店長は非常に忙しい中で、ベテランの非正社員にいろいろ頼まなくてはならず、実際いろいろ頼んでやってもらっている。しかしながらオーナーからは非正社員の時給は上げられない、なので非正社員の仕事として決まっている以上のことは頼むなというような指令が下される。これは大企業でも、企業の方針としては正社員と非正社員で明確に職務を分けるということが決まっているものの、現場の管理職は忙しいので、雇用形態にかかわらず仕事ができる人に仕事を振ってしまうことがあるわけです。

 こういうケースでは現場で隠れて職務付与がなされることになるので、結局、昇給の意思決定ができるところに実態が伝わらないという構造になってしまう。実態が正しく伝わり、昇給の意思決定プロセスにつながっていくことが重要であり、そういう意味では管理職を経由せずに非正社員から直接、雇用の実態を把握する仕組みも必要になってくるのではないかと思っております。

 最後にスライドの 12 ページ、論点4の正社員・社員区分1と非正社員の均衡の問題についてです。労働契約法の雇用期間 5 年通算後に無期転換された方々を、非正社員と呼ぶのか正社員と呼ぶのかよく分からないのですが、ここでは、そういう方々も非正社員の処遇向上のターゲットに含めて考えております。無期転換後は、少なくとも正社員と同様に 65 歳までの雇用が保障されるわけです。 定年になったとしても、その後希望者全員 65 歳までは雇用しなくてはいけないわけです。そういう意味で、無期転換後も、正社員と違う考え方で賃金を設定し続ける合理性があるのかということが私の素朴な疑問です。少なくとも無期転換後の社員については、既存の正社員と比較しやすい、均衡を考慮しやすい、同じ考え方の社内格付け制度を整備していく必要があるのではないかと思っております。

 均衡の状況把握のためには、職務評価を行うことも 1 つの方法です。逆にそういうことを何もやっていないと、均衡を図れているかどうかが十分に把握できないはずです。「不合理でない」という説明の説得力に寄与する取組として、職務評価のような取組を普及させていくということも考えられるのではないかと思っております。すみません。少し時間をオーバーしてしまいました。ありがとうございます。

○柳川座長 ありがとうございました。それでは御意見、御質問を出していただければと思いますが、いかがでしょうか。

○川口委員 非常に共感するところが多い発表でありがとうございました。論点2のところの賃金が実態を下回っているという部分で、これが企業が解決すべき問題なのかということもあると思うのです。ですから、生産性が高い労働者がいて、でも、その人を安く雇うことができるという実態もあるわけで、それは今日の UA ゼンセンの方の説明にもありましたし、私も発表で触れさせていただいたのですが、市場が歪んでいるというような部分もあるのではないかと思います。そこの部分に関しては、企業の取組でできる部分というのはかなり限定されているのではないかという印象を持ちました。これはコメントです。

 もう 1 つは、論点1のところなのですが、これもおっしゃるとおりだと思うのです。合理性はあるのだが、ワンショットで見てみると、非正社員の方にとっては格差は納得し難いものがある。こういう状態に対してどういうように対処するべきなのかというのは、非常に難しいと思うのです。だから、合理性があるから納得感は得られないのだが、それはやむを得ないものだというように処理すべきなのか、やはり納得感が得られるように対応すべきなのか、その辺はどんなお考えをお持ちでしょうか。

○松浦委員 ありがとうございます。まず最初のコメントについては、おっしゃるとおり、なぜ昇給しないのかは、なぜ低い賃金で雇えるのかと同じような理由による面もあります。低い賃金で満足してしまうケースがあることも確かです。ただ、一方で、昇給してほしいと思っている人が声を上げられないでいるというケースも確かにあって、そういうケースについては、企業の中で多少は改善の余地があるのではないかと思っております。

 もう 1 つおっしゃった論点1をどう捉えるかということなのですが、結局論点1の問題は、日本的雇用システムを肯定するか否定するかという、そういう議論になると思うのです。日本的雇用システムをある程度肯定するのであれば、論点1は仕様がないのではないかと思っています。ただ、同一労働同一賃金のアプローチの中では、論点2や論点4の格差に多少改善の余地があるので、そちらから不合理というか、納得できない部分を改善していくということしかないのかなというのが、今のところの考え方です。

○水町委員 基本的に労働契約法とかパートタイム労働法とか、労働者派遣法の改正を考えているときには、恐らく論点1、論点2ではなくて、論点3、論点4になるのだと思います。そして、論点2の中で、実際に賃金制度の枠よりも、より高い生産性が示されている人については、実際上の問題としては正社員には昇給があるのに、非正社員には昇給がないのはどうかというので、制度として昇給制度の適用があるかないかという4の問題に最終的には帰着していくんだと思います。論点4は制度的に違いがある場合の問題ですが、制度的な違いが明らかでない個別の比較の問題が論点3という形で出てくる。あと論点1、論点2は間接的に正規労働者と非正規労働者の均等とか均衡を考えていく中で、調整をしなければいけない問題が付随的に出てくる問題なのかなというふうに思いました。

 昇給は非常に大切なので、昇給をその生産性に合わせて非正規労働者の方々にも及ぼすかというのは重要な課題で、ここが論点2の中に位置付けられているとすれば、それは大切な問題なので、枠の中に入れながら、議論をしなければいけないというのが 1 つです。

8 ページのところで、基本的に均等が問題になることではなくて、均衡が図られているかどうかの問題となると。これは基本給の話で、前提が違いますよという、制度がそもそも違いますようという場合には、主として問題になるのは均衡かもしれませんが、基本給以外の例えば諸手当とか、集団的な制度の適用を考えれば、通勤手当とか安全管理、食堂とかの利用については、正に均等が問題になることもあるので、基本給に関しては均衡が問題になることか多いという意味では、そうかなと思いました。

 いずれにしても論点2にしても3にしても4にしても実態把握がとても大切なので、実態把握をどうしながら、それで均衡、特にバランス均衡、幅寄せをしていくときに、どういう物指しとか評価で幅寄せをしているか、これは強制的にこの制度を採りなさいということを法律上強制するということはできないと思いますが、最後の所に書いてある職務評価制度みたいなことを実際に率先して採っていっていただければ、この均衡がより速く実現しますよということを、政策的にどう促すかという問題として、非常に有効な手段かなというふうに私も思いました。私からは以上です。

○松浦委員 ありがとうございます。昇給の問題は、おっしゃるとおり、賃金表があれば、ある程度解決できる面があります。賃金表さえあれば、例えば市場賃金で採用時の賃金が上がっても、基本的に全体が底上げされるでしょう。社内格付き制度ができて賃金表ができるということが、多分、一つのゴールになると思います。ただ、賃金表を持っていない企業、店長の裁量等で何となく昇給するケースがまだまだあるので、まずは昇給につなげることが先決で、次に賃金表を作ることを目指す、さらにその次に賃金表の昇給額が適正かといった話になってくるのではないかと思っています。

2 つ目の御指摘もおっしゃるとおりで、この資料は、どちらかというと賃金の中でも一番比較しにくい基本給を意識して作成したものです。手当の中では、均等についても議論の余地があるのではないかというのは、御指摘のとおりだと思います。

 また、均衡の幅を決めるということについては企業の裁量性を担保するとしても、どの程度均衡なのかという実態を分かっている必要はあるはずなので、そのための取組の一つの例として、職務評価があると思っております。

○柳川座長 そのほか、いかがでしょうか。質問というより若干感想めいたことですが、 1 つは今の賃金表があればということとか、職務評価を促すという話だとか、この辺りというのは、恐らくこういう企業側にこういう取組をしてもらえば随分状況が変わるのでしてくださいという話を、どこまでガイドラインに織り込むなりして、要求していけるのかというのが、なかなか我々としては少し悩むところですね。そういう意味では全体の労働市場を変えていかなければいけない中で、どこまでを企業側に要求できるような話なのかというのは、私もよく分からないですが、この検討会の中で、何が動かせて、何をしようとしなければいけないのか、何を変えられるような話に出せるのかというのは若干分からないところがあります。ただ、現段階では恐らく余りそういう制約を考えずに、本来どういうものがあるべきで、何をやっていかなければこの話は変わっていかないのかということを出していただければいいのだと思うので、そういう意味では今の賃金表の話だとか、職務評価の話というのは、とても大事な話ではないかと思います。

 冒頭に川口先生のほうからもお話があったように、そもそも市場が歪んでいるので、だから、明らかにやっているよりも、はるかに低い賃金しか得られていないにもかかわらず、そこで働き続けたり、そこで雇われるしかないという状況はおかしいだろうと。これをどう考えるかです。これって、そもそも経済学者的にいえば、やはりマーケットメーキングがうまくいっていないので、それって、個々の企業に要求するだけでは駄目で、もう少し構造的な変化をしなければいけないという側面がある。

 ただ、よくよく考えてみると、例えば労働法制は結局そういうことを改善しようと思って法律を作ってきたわけです。かなり明らかに非道劣悪な労働環境で働かされている人たちを救うために法制度を作ってきたので、そうすると、法制度で何かそういうことがある程度できる部分はあるのだろうと。問題はここの我々が示したようなガイドラインで、そういうことがどこまで具体的に効果を得られるかというところになってくるのだろうと思います。そこがちょっと難しいところで、なかなか個々の企業の取組だけでは難しいような課題ではありますが、ガイドライン的なところでそこはうまく有効な役割を果たせるかどうか。先ほど川口先生がちょっと懸念したのは、有効に評価できればいいのだけれども、下手をすると逆にマイナスの作用をしてしまうこともあるので、そこは難しいかなと思います。

 あと 1 点だけ質問的なことですが、今、昇給の話とかがすごく 1 つの待遇改善だとか、同一労働賃金の方向に向かう話なのです。それはある意味で非正規の人たちを正規社員のほうに近付けるという話で、どちらかというと今の私の個人的な全体の流れとして見れば、どんどん現状の正規社員のほうに寄せていくと、なかなかそういう働き方ができない人たちも出てきているのだろうと。そうすると、もう少し多様な働き方というような議論まで出ていくと、必ずしもその現状の非正規の働き方に乗せるというよりも、もう少し多様な働き方を促して、待遇改善というほうが理想を言えばいい気がするのです。どうしたらいいか分からないのですが、その辺りはどういうふうに現状を考えておけばいいかという何かお考えが、すみません、無茶振りで、すみません。

○松浦委員 ありがとうございます。ガイドラインでどこまで強く言うかという点についてはご懸念のとおりで、規制を強く打ち出すと、逆に望ましくない方向に向かう懸念もあるので、企業を望ましい方向に誘導するための着地点は、慎重に探っていく必要があると思っております。

 もう 1 つの多様な働き方について、スライドの 3 ページで少し御紹介したしゅふ JOB 総合研究所の調査で、仕事内容、責任、時間帯、資格による賃金差に対してある程度納得感があるのですが、転勤できる、できないによる賃金差に対しては納得感が大きく低下します。これは柳川委員がおっしゃったように、自分が転勤できる、できないを選択できるわけではなく、そもそも選択できないことで差が付けられるということに対して納得できない面があるのかもしれません。

 ただ、限定正社員のようなコースを作っても、結局そのコースの中で固定化されてしまう面もあるので、理想的には、コースで区分するよりも、水町委員がおっしゃっているような転勤の部分だけ水準に差を付けて、基本的には社内格付け制度の考え方は統一しておいたほうが移行はしやすいと思います。統一的な考え方の社内格付け制度の中で、柔軟に多様な働き方を選べるというのが、一番の理想型かもしれません。

○柳川座長 ありがとうございます。ちょっと私は話しすぎてしまいましたが、そのほかいかがでしょうか。

○水町委員 今のところに関連して、今日御説明のあった 1 億総活躍プランの中で合理的であるか、又は不合理であるか等を事例等で示すガイドラインを策定すると書いてあって、「事例等」と書いてあって、事例も含まれるだろうし、「等」の中にどういうことを含むかというので、いろいろな方々からお話をお聞きすると、これでなければいけないという硬直的なものは、企業の労使の自主的な判断を損なうものになってしまうし、負の副作用をもたらすことも多いので、硬直的なものはやめてくれということがあります。不明確なものはやめてくれと。明確なものをきちんと、企業としてこういうことを考慮すればいいのだよね、労使としてこういうことを話し合えばいいのだよねという明確なものを示してもらわないと、実は現場では余りよく分かっていないという声がたくさんありますので、そういうところが事例等を示すときのヒントになると思います。

 こういうことなので、合理的か不合理かという判断をするときに考慮することになりますよ、そういう意味でこういう給付の制度設計が考えられますよということと、併せて例えばそういうことを実現していくためのインフラとして、今おっしゃったような非正規、正規にかかわらず、統一的な賃金表とか、職務評価制度とか、この違いはこういうふうになるというマトリックスみたいなものを統一的に作っていくということを強制はできないけれども、こういうような形で人事労務制度、賃金制度等の改善を進めていくことが望ましいというようなことも併せて書くことは、今回の改革の趣旨に損なうことでは全くないと思いますので、そういうことを工夫していくことが必要かなと。そうしないと、なかなか政府が目標として上げてあるような欧州に遜色のないレベルに到達するために、最低賃金も含めてですが、達成するというのはそう簡単にはいかないかなと思います。

○松浦委員 水準はともかくとして、考え方を統一していくというのは重要だと思います。入職から数年、無期転換する前については、非正社員は労働市場基準、正社員は内部労働市場基準でやむを得ないと思いますが、少なくとも無期転換後については社内格付け制度を作り、その考え方を正社員と統一していくということが、理想的なのではないかと考えています。

○柳川座長 あとはよろしいですか。まだ御議論はいろいろおありかと思いますが、この検討はここでおしまいではありませんので、またお気付きの点があれば出していただければと思います。それでは事務局から次回以降の進め方について御説明をお願いいたします。

○河村人材サービス推進室長 次回は 6 月下旬に、本日に引き続いて労働者側から連合さんにお越しいただくということと、中小企業団体 2 団体にお越しいただいて、ヒアリングをお願いしたいと思っております。

○柳川座長 それではこれをもちまして、本日の検討会を終了いたします。お忙しいところを長時間にわたり、どうもありがとうございました。


(了)

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