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2016年5月24日 第4回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

○日時

平成28年5月24日(火)10:00〜12:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)12階 専用第12会議室


○出席者

川口 大司 (東京大学大学院経済学研究科教授)
神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
水町 勇一郎 (東京大学社会科学研究所教授)
皆川 宏之 (千葉大学法政経部教授)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・日本の賃金制度について
・中村委員、皆川委員によるプレゼンテーション

○議事

○柳川座長 それでは皆さんおそろいですので、ただいまから第 4 回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、川口委員におかれましては、所用により欠席となっております。それでは、議題に先立ちまして、ニッポン一億総活躍プランの案について報道がされております。これは私どもと別の会議体である一億総活躍国民会議において議論がなされたものですが、その状況について、まず事務局から御報告をお願いします。

○河村人材サービス推進室長 先週の 5 18 日の一億総活躍国民会議において、ニッポン一億総活躍プランの案が提示されて、国民会議においては了承されたとお伺いをしております。こちらのプランについては、一億総活躍国民会議という別の議員の方々の原案の取りまとめですので、本検討会の委員の皆様方には、特段の御相談をこれまでさせていただいておりませんが、まだ正式な閣議決定前でして、現在調整中ということで、今月の末頃を目途に閣議決定される見込みです。次回の検討会の際には、資料としてお出しさせていただいて、改めて内容のほうを御報告をさせていただけるかと思います。以上です。

○柳川座長 という状況の段階ですが、新聞報道がされていますので、中身はある程度御存じの方は多いかと思います。何かこの段階で御質問、御意見等がありましたら、出していただければと思います。よろしいですか。

○松浦委員 別の会議体での取りまとめということで、閣議決定前でもあり、中身についてのお話は差し控えさせていただきたいと思います。ただ、やはり同一労働同一賃金という名前の検討会があるなかで、別の会議体の案とはいえ同一労働同一賃金に関する報道がなされると、中身について私たちが知っているように世の中から誤解され、実際中身について聞かれたりして、ちょっと困惑しております。 1 つだけお願いしたいのは、お忙しいと思いますが、こちらの会議体の議事録をなるべくタイムリーに出していただけると、このような誤解を回避できるという意味で、大変有り難いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○柳川座長 その点は、よろしいですか。

○河村人材サービス推進室長 掲載まで 1 か月ほど時間がかかっておりますので、できる限り速やかに掲載できるようにしたいと思います。

○柳川座長 一億室のほうからは、特によろしいですか。政府内でも急ピッチでいろいろなことが進んでいるのだと思います。なかなかタイムリーに情報が出るのが難しい面もあったかと思います。かなり関係した話ですので、適宜そちらの情報を十分活用しつつ、やりたいと思います。恐らく閣議決定されると、政府の決定ということになります。大きな意味を持ってくることになると思いますので、その段階ではきちんと御説明いただくことにしたいと思います。そのほかはよろしいでしょうか。

 それでは、議題に入ります。まず、 1 つ目の議題の日本の賃金制度について、事務局から説明をお願いします。

○河村人材サービス推進室長 説明に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。厚生労働省の提出資料が 1 つ、中村委員の赤と黒の表紙のプレゼン資料が 1 つ、皆川委員の A4 の縦の資料が 1 つで、以上、 3 点になります。お手元におそろいでしょうか。

○増田大臣官房参事官 ( 賃金時間担当 )  それでは始めに、私から日本の賃金制度について御説明を申し上げます。賃金時間担当参事官の増田でございます。よろしくお願いいたします。時間が非常に限られておりますので、駆け足での御説明になります。

3 ページです。 1. 日本の賃金制度の概要の所を御覧ください。この資料については、事務局におきまして、文献とか、関係団体等からのヒアリング等を踏まえ、資料作成をしたものです。

4 ページ、賃金体系及び種類です。賃金は、月例賃金、賞与一時金、退職金からなると言われておりますが、このうち、月例賃金について、日本の賃金体系はどのようになっているかというものを系列で表したものです。大きくは、基本給、諸手当、割増賃金という形で分かれまして、基本給としては、年齢給・勤続給、職能給、職務給、役割給、業績給、成果給などという項目があります。これについては、企業によって単一の賃金項目が使われたり、複数の賃金項目を使われたりというような状況があるものです。

 また、賃金項目の呼称については、各企業によって様々ですので、同じ名前でも全然違う体系のこともありますし、また、同じものを違う言葉で表すというようなことも行われているようです。

5 ページ、賃金項目の構成状況、全体的なものですが、こちらは経団連の調査になります。左側が非管理職ですが、 497 社の集計対象企業のうち、職能給が 331 ということで一番多く採用されております。その次に、年齢・勤続給が 242 という状況です。これは複数回答です。管理職についても、右側で、職能給の採用が一番多く、その次には、役割給という形で非管理職、管理職でも異なるような項目採用となっております。

6 ページ、こちらは導入率の推移を見たものです。こちらも左が非管理職、右が管理職です。太い折れ線グラフが役割職務給と言われているくくりになっています。こちらは両方とも大きく上昇傾向にあると言えるかと思います。また、非管理職のほうで、右下がりになっているのが、年齢・勤続給ということで、こちらについては企業割合として低下傾向にあるのではないかということが言えると思います。

7 ページ、賃金項目を企業で見て複数の組合せがありますが、こちらは 1 つの企業の中の組合せということです。下のイメージ図にありますように、キャリア段階によって異なる賃金項目の設定が行われることがあります。若い頃は年齢給と職能給という形です。それから、徐々に業績給というものが入ってきて、キャリアの終わりのほうでは、役割給と業績給のみと、このような形で組み合わせが行われるということがあります。また、図にはありませんが、職種によっても例えば、営業職などでは、歩合給とか、出来高給といったような形で、異なる賃金項目が行われるということで、企業内でも多様なものが設定されていることを説明したものです。

 次に、主な賃金項目の紹介に入ります。まずは年齢給・勤続給ですが、労働者の年齢や、労働者の勤続年数を基準にして定められる賃金というものですが、下にグラフがありますけれども、賃金カーブについては、企業によっていろいろな設定の仕方があるかと思います。指摘されている主な特徴としては、年齢に応じた生活費に配慮ができるということと、勤続給については、長期勤続による能力や経験の向上を評価ができるということが言われております。ただし、基本給に占める割合が多くなりますと、能力や職務の内容と乖離が生じやすくなるというような指摘もあるところです。

 次に、下の職能給です。こちらは労働者の職務を遂行する能力を基準にして定められる賃金ということで、長期雇用が前提とされております。職能資格制度によりまして、社員を格付けし、格付けに応じて賃金を支給するものです。特徴としては、柔軟な配置転換によるキャリア形成が可能。また、保有能力を高めようとする動機付けにより、社員の能力開発を促進する仕組み。平均年齢の上昇等により人件費がかさむ傾向が生じるということが言われています。このようなデメリットを緩和する様々な工夫も行われており、昇給を人事評価によって行うとか、同一等級内ではきちんと上限が設定される、また、賃金が高い人ほど昇給額を抑えるような制度設計などもされています。

 次ページは、職務給についてです。職務給については、労働者の担当する「職務 ( 仕事 ) 」を基準にして定められる賃金とされています。企業内のあらゆる職務について、職務分析と職務評価を行うことにより、職務とその範囲、必要とされる能力を規定した「職務記述書」を作成する。職務の価値に応じて賃金が定められるというものです。特徴としては、職務内容と求められる能力が明確なため、外部労働市場から人材を採用しやすい。賃金が低下するような職務への配置転換は難しくなり、組織の硬直化を招きやすい。また、定められた職務内容を超えた柔軟な分担、自発的な補完が期待しにくいといったような特徴が言われております。こちらについても、デメリットを緩和する様々な工夫として、職務基準と人基準の複合ということで、「範囲職務給」というようなことで、職務プラス業績等、また、能力等を勘案した設定もされておりますので、こういう工夫が行われております。

 次ページ、役割給です。役割給については、労働者の担う職務に対する期待や役割を基準にして定められる賃金です。職務に要求される役割責任、職責、権限のレベルの高さを大きさによって役割ランクを設定し、従業員を格付けします。その役割ランクによって、役割給が決定されます。日本版の職務、仕事基準の人事処遇制度とも言われます。特徴としては、仕事に応じた処遇を確保しつつ、職務主義に内在する硬直性を排除できるということと、それによって、非管理職にも適用ができるということ、あとは、職務給に比せば、決定根拠が曖昧という指摘もあります。

 次ページ、業績給・成果給です。こちらは目標の達成度ということで、目標を定めて、その達成度に対する評価です。一定期間内に上げた成果を基準にして定められる賃金です。業績給では、通常、金額が毎年リセットされる洗い替え方式というものが採用されています。特徴としては、社員の貢献度に応じた直接的、かつタイムリーな処遇を実現できるということと、業績を上げましても、現数額が決まっているとどうしても相対性評価によって評価されるということですので、業績を上げても減額となって不満が生じる場合もあるということが言われています。

13 ページ、下の表ですが、規模計で見ると、まず賃金表がある企業は約 7 割です。説明したような賃金制度を持っている所は、大体賃金表があると考えられますが、約 3 割の企業は、賃金表はないということです。企業規模が小さくなるほど賃金表がある企業の割合は低下しています。小さい規模では賃金表まで整備されていないということかと思います。

14 ページ、各種手当等の状況です。第 1 回の資料にお出ししているものです。上がパートタイム、下が有期契約の労働者です。パートですと、通勤手当については、差が小さいわけですが、右側で各種手当になると、非常に差があるという状況です。有期契約については、左から 3 番目の通勤手当は、 8 割ぐらいで支給されていますが、その他の手当については、やはり差があるという状況かと思います。以上が概要になります。

 次に、賃金制度の事例です。 16 ページから御説明いたします。こちらについては、関係団体等を通じて協力が得られた企業について、事務局でヒアリングをして取りまとめた内容です。全部で 8 社の事例を紹介しています。いずれもヒアリング企業からの御要望を踏まえて、金額などはイメージで表示しております。 1 社目は製造業 A 社です。 18 ページを御覧ください。従業員規模 1 万人以上。こちらは正社員のみの構成です。事務、技術職が 3 分の 1 、現場従事者が 3 分の 2 を占めています。

 下は、製造現場従事者の賃金体系です。基本給は職能給、年齢給からなります。職能給は 3 つに分かれておりまして、資格区分別の定額である固定部分。それから、定期査定に基づいた昇給額を累積加算していく昇給累積部分。それから、定期査定に基づく資格区分ごとに毎年支給額が決定される変動部分、この 3 つからなっております。昇給累積部分については、入社 3 年目の社員のイメージを出しています。 1 年目は基礎額というものがありまして、 2 年目以降は定期査定の額を積み上げていくということで、 3 年目は A B と基礎額を足したものが支払われる仕組みです。下に年齢部分があります。

20 ページ、職能資格区分です。求められる能力を一般 1 級から 6 級まで定めています。例えば、一番下の一般 1 級では、実務知識、技能に基づいて標準作業、定常作業遂行しうる能力となっております。 1 級を見ていただくと、高度な企画、総括的業務を遂行しうる能力という形で求められる能力が定められております。

21 ページ、職能給の固定部分ですが、このように級によって定額が異なる制度です。

22 ページ、昇給累積部分です。こちらは毎年、成果、能力、意欲等を総合評価しまして、それに応じて昇給額が決定し、累積額を支給するというものです。

 昇給額テーブルは、下の表にありますが、標準から、上は A から下は J までという形で分かれており、この金額を乗せていくということです。

23 ページ、変動部分です。こちらも毎年の評価ランクに応じて額が決まるということです。ここに定められている決まった額が支給されるということです。

24 ページ、こちらは年齢給です。 18 歳の 0 円から年齢に応じて額が上がりまして、こちらでは 40 代半ばでピークを向かえ、その後、下がるという体系です。

25 ページ、手当、賞与の関係です。手当としては、役職手当、交代手当、職務手当があります。賞与は給与と同じように、評価によって決定されるという体系です。

B 社の事例です。同じく製造業で、電気機械器具の製造、販売です。規模は、 1,000 5,000 人です。こちらは正社員が約 85 %で、パート・契約社員等は 15 %の構成です。

28 ページ、 B 社の正社員採用区分です。総合職、一般事務職、技能職という形で分かれており、それぞれに職能等級が定められています。

29 ページ、非管理職の賃金です。基本給は、職能給の固定部分と昇給累積部分、更に家族手当があるという構成です。昇給累積は先ほどの A 社とイメージ的には同じですので、説明は割愛させていただきます。

31 ページ、正社員管理職の賃金制度です。こちらは非管理職とは別の賃金テーブルという形で、課長級、部長級の細分化と、号俸という形で定められています。

32 ページ、パートと契約社員の賃金です。パートには賃金表はないということです。最賃と地域相場を参考に決定されているということです。仕事内容としては、軽易な作業ということです。契約社員についても賃金表はなく、在籍者のバランスとか、過去の賃金などを比較して、個別に決定されているということです。こちらは製造現場で、正社員と同じ仕事をしているケースが多いということで、月例賃金には、正社員と大きな格差がないということです。

 下が、その他です。賞与については、パートが半期で数万円、契約社員はなし。退職金はどちらともなし。通勤手当については、雇用形態に関わらず支給されている状況です。

C 社、製造業です。 C 社については約 9 割が正社員、 1 割が非正規労働者という会社です。 36 ページ、こちらは役割給です。役割の違いによって 3 つの職務区分が設けられています。職務区分ごとに役割の大きさや重要度に応じて、役割等級というものが設定されています。

37 ページ、基本給の仕組みです。役割給の固定部分、昇給累積部分、変動部分の 3 つからなります。職務区分に応じて組合せが異なります。企画総合職では、累積部分というのはありませんし、生産職では変動部分がないということになります。

 次の 4-1 4-2 については、役割等級基準になりますが、こちらは説明を割愛いたします。

40 ページ、 41 ページも、 A 社と似たような形ですので、説明は割愛いたします。

43 ページ、手当等です。正社員の手当としては、裁量労働手当、営業職手当、サービス職手当、役職手当というものがあります。賞与については、平均支給額を決定して、個人業績、事業部業績により配分という形です。

44 ページ、非正規の賃金制度です。こちらも賃金テーブルはなく、個別に賃金設定されるということで、昇給についても個別対応ということです。賞与、退職金の支給はないということです。

D 社、金融業です。次ページで、会社概要です。こちらは非正規の方が多いということで、短時間労働者が約 3 分の 1 を占めている会社です。

47 ページ、正社員と非正規の業務内容との違いを整理しているものです。資格取得とか、業務内容、所定外の対象、それから、転勤等についてこのような違いがあることを伺っております。

48 ページ、正社員の賃金制度です。職責階層ごとの職階級、仕事内容の役割給という、大体、約 5 割ずつという形で構成されています。

 その下が、短時間労働者の賃金制度です。こちらは担当業務に応じて設定されまして、人事考課で標準以上であれば昇給するということで、昇給制度も含まれているものです。

 同じく、非正規の方が多い小売業、 E 社です。 52 ページを見ていただくと、正社員が約 15 %で、 15 %の正社員のうち、さらに 5 %が地域限定の正社員です。 85 %がパート、アルバイトです。

53 ページ、従業員の区分ごとに図のように職能資格が設けられています。パートについても、 P1 から P5 までありますし、 P5 から地域限定正社員の T3 、それから正社員の S3 に登用制度があるという内容です。

54 ページ、職能資格の内容になりますが、後で御覧いただければと思います。

56 ページ、パートの資格要件です。パートについても、求められる要件、能力というものを、このような形でしっかり定められているものです。

57 ページ、正社員の賃金制度です。非管理職の基本給については、下から年齢給、資格給で構成され、これに役割手当、職務手当が付くというものです。管理職は、役割給と能力給の 2 本立てで、大体、 1 1 というイメージです。

61 ページ、地域限定正社員の基本給です。こちらの会社では、正社員の 9 割の水準で設定するということで、全て 9 割で出しているということで説明を受けております。

62 ページ、これに対して、パートの賃金ですが、上の枠の中にあるように、店舗ごとの基本時間給があります。これに時間帯・日祝日手当、職種加算、資格加算を足した額になります。資格が上がると賃金が上がる仕組みですが、勤続年数等による昇給はない。このような仕組みです。

63 ページ、賞与等です。パートには賞与や退職金はないけれども、買物券とか、寸志を支給することがあります。通勤手当については、実費相当を支給している。施設についての利用の差はないということです。

○河村人材サービス推進室長 続いて、 F 社以降の 3 社が派遣会社です。私から説明させていただきます。

65 ページ、 F 社です。事業内容としては、製造業を中心とした派遣請負をやっている会社です。従業員数は 2,000 名程度です。無期の中に「正社員」と呼んでいる方と、地域・職務が限定される「限定正社員」がいらして、有期の方に関しては、「契約社員」がおられます。この 3 つの雇用管理区分全てが派遣先にも行きますし、業務請負部門にも配置転換によって従事するということです。ですから、正社員の方もいわゆる「内勤」というわけではなくて、派遣先にも請負部門にも行くという会社です。

66 ページ、基本的に正社員の中は同じ賃金テーブルを取っていて、基本給、賞与と諸手当と退職金があります。

66 ページの (2) ですが、限定正社員の方の賃金に関しては、基本給は同等ですが、賞与に関しては、大体正社員の 3 5 割程度です。

66 ページの (3) です。契約社員から正社員への登用制度を相当真剣にやっておられて、こちらに書いてあるような要件でやられています。登用の実績としても例年応募した方の 5 割程度は、登用しています。

67 ページ、正社員の賃金テーブルです。先ほど増田参事官から御説明があったケースに比較的に似ていますので、割愛いたします。

68 ページ、評価制度です。こちらの共通的な評価シートに基づいて評価をして、昇進、昇給、昇格等を決定されています。

69 ページ、契約社員、こちらの契約社員は先ほど申し上げたとおり、派遣先にも行く方の賃金制度ですが、それに関して、一番上の※にあるとおり、考え方として、勤続 1 年たった有期の方に関しては、正社員にどんどん引き上げていくという方針を取られているので、契約社員の身分のままでの昇給を積極的に実施するという考え方は取っておられません。

(1) の賃金の決定方法の四角囲みの中ですが、賃金テーブルは設定されていないと、ただ、所定内の給与に関しては、正社員の一番下のランクの方と契約社員の方を比べると、大体同等、むしろ時給換算すると、地域によっては契約のほうがちょっと高いぐらいということです。

 派遣されている場合に関しては、派遣料金によって個別に時給を決定していくわけですが、※の 2 つ目の所ですが、同一の派遣労働者の方を長く派遣してほしいという派遣先の要望もあるわけですが、その場合には最初の契約締結時に、 1 年ごとに例えば、 2 3 %ずつ、経験の蓄積に応じた派遣料金の値上げの合意をあらかじめ実施しておいて、契約更新ごとに派遣料金を上げていって、それを賃金に還元するという考え方を取っているということです。

70 ページ、契約社員の賃金制度として、賃金の前提となる評価について、正社員のような評価の制度は基本的にやっていないということです。

(3) の賞与と退職金の所です。契約社員の方には支給はされない。ただ、通勤手当を含めた諸手当に関しては、おおむね同水準で支給しているということです。

 続いて、 G 社と H 社が、ホワイトカラー系の一般事務等に対する派遣を中心にやられている会社で、一部、小さな規模で請負をやられている 2 社の事例です。いずれも従業員規模は 1 万人以上で、比較的に大きな会社です。

73 ページ、正社員のほうは完全な職務給を取っていて、あとは、賞与と通勤手当から構成されています。

 基本給に関しては、 74 ページのように 1 12 の段階に分けてそれぞれミッションとして、どういうことを求めているかという、職務とか能力レベルを定義したものを作っていて、会社内の全てのポストがこれらのミッショングレードのどこかに当てはめられていると。大体基本給の比率でいくと、一番下の階層を 1 とすると、一番上の所で 2.1 倍ぐらいのイメージで支給されています。

75 ページ、有期の派遣の方の賃金制度です。次の H 社も同じですけれども、基本的に従事する業務レベルで賃金を決めて、業務内容プラス地域の賃金相場とか、過去の契約実績から導き出した額の相場観、それから、派遣先の同種の業務に従事する労働者の賃金水準を総合的に勘案して、派遣先に提案してまずは派遣料金を決めて、そこからある程度逆算して、賃金決定をするという仕組みを取られています。派遣料金自体が、契約更新のときに、派遣先と派遣スタッフの本人からヒアリングによる評価が良ければ、派遣料金の引き上げ交渉がされ、その結果を、派遣スタッフの賃金に還元していくと。実際に、 1 年以上同じ派遣会社におられたスタッフのうち、 1 割から 1 割強ぐらいの方について昇給の実施をされています。

 その下の※ですが、賞与、通勤手当は、派遣社員に対する適用、支給はないという仕組みになっています。

 基本的に、次の H 社も同じような仕組みになっています。実際にこちらの会社の実積ですと、 81 ページの一番下ですが、勤務開始後 2 年ぐらいで 3 割ぐらいの方が昇給すると。ただ、昇給の幅としては、時給額に換算して 1 %台から 3 %台ぐらいという結果でした。これらの会社とは限らず、業界から一般的によくお伺いするのは、派遣先の労働者の賃金水準を考慮するという規程が、派遣法第 30 条の 3 で入っているわけですが、一般論としては、やはり派遣先において業務を切り分けてきていますので、派遣労働者と同種の業務に従事している派遣先労働者がいないケースが非常に多いということ、いる場合でも、隣に座っている特定の労働者の賃金という形では、なかなか情報が得られないというのが率直な御意見としてよくお伺いしているところです。

 もう 1 点、ヨーロッパのように派遣先の賃金水準が必ずしも協約でそろっていませんので、本当に派遣先との均衡を真剣にやろうとすると、同じような業務レベルであったとしても、派遣先ごとに賃金水準がかなり変わってしまう状況になりかねない。一方で、本人の経験の蓄積とか、そういったものとのバランスをどう取るべきなのかというのが大変悩ましいという御意見をよくお伺いしています。私からは以上です。

○柳川座長 それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、委員の皆様方から御質問、御意見、御自由にお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

○中村委員 ありがとうございました。この中で、賃金表の整備率が 9 割、 7 割というところがあったと思うのですが、今回私たちがものを考えていくときに、賃金表があるという前提で、ある程度そこの不合理な差をなくすということを考えていくのか、賃金表というのは基本的にない、若しくは、なくても適用できるような制度を作っていくのかというようなところについて御意見などがあれば、是非、皆さんから伺いたいと思いました。

○柳川座長 いかがですか。

○水町委員 ヨーロッパの議論からすれば、客観的に最終的には裁判所で評価をするというもので、賃金表を作るかどうかは、会社の中での具体的な取組なので、仮に会社が賃金表を作っていないとしても、賃金表を作らない中で客観的に合理的な違いなのかということを精査して判断するということに、議論としてはなるのだと思います。

○中村委員 恐らく私自身が委員会に入ってからずっと腑に落ちていないのが、そこのポイントで、裁判は個別の事例なので、私の賃金が誰かに対して不当に低い、という話だと思うのですが、企業の中でいうと、あなたに不当なのか、非正規社員の待遇改善というときは、非正規グループ全体が不当に低いということなので、そこの、集団の話なのか、個人の話なのかというところの接続を、どう考えていくのかというのはあるのかなと思います。

○水町委員 ヨーロッパの話で言うと、制度設計なりは集団的にやりますし、例えば差を付ける制度設計にした場合に、こういう理由で差が付いていますよ、というのは集団的にやるかもしれませんが、最終的に法的に争うときには、労働者個人で争った場合に、その労働者個人と、比較されるほかの人との関係というのは、個別に合理性があるかどうかは裁判所が判断する。その中で、制度設計自体が集団的にどうなっていて、合理的なものかどうかは、しんしゃくしますが、法的な議論で言うと、最終的には個別の審査をするということになると思います。

○松浦委員 充実した資料を、ありがとうございます。今、水町委員もおっしゃったような個別の労働者の差について裁判で争うということであれば、まだイメージができるのですが、グループ間の水準の比較を議論するときに、グループ間の共通言語がないということがネックになってくると思うのです。グループ間の比較まで踏み込んでいくのであれば、それこそまずは賃金表が必要で、そのための評価もしてくださいというところからスタートしなければなりません。そういう意味では、個人対個人というところで、同一労働同一賃金をある程度議論せざるを得ないかもしれないと、この資料を拝見して思ったところです。

 ただ、個人対個人で比較する場合も、手当の比較というのは比較的分かりやすいのですが、基本給で例えば職能給の累積部分のようなものが入ってくると、そこだけ時間軸で決定される賃金になってしまうので、分解して比較というのがまだイメージができないところではあります。

○柳川座長 なかなか難しい。本質的な、大事な、どこかで解決しなければいけない問題かと思いますが。

○水町委員 基本的に、賃金表や共通言語というのは、会社の中で取り組んで、なるべく透明性が高い、集団的にも個別的にも説明できるような制度設計をしておけば、最終的に法的な責任は問われることはないということで、集団的な制度を整えて、共通言語を作って、正規と非正規の間にリーズナブルな制度設計をしましょう、ということは望まれることですが、最終的にそういうことをしている企業と、していない企業も、裁判になったときには、客観的な言語で、こういう給付の目的、性質と、給付の性質ごとに合理性を判断して、均等になっているか、均衡になっているか判断しますということを説明してきたのは、最終的には、客観的に、こういう給付についてはこういう性質に基づいて合理性があるかどうかを個別に判断していきますよ、最終的には個別の客観的な判断に帰着しますよというところで、最後はそこから法的にフィードバックしていきますが、かといって、それでは制度設計は全部個別にしなければいけないかとか、どうしなければいけないかというのは、企業の人事労務管理の中で集団的に説明可能な制度設計をしてください、というところは他方で残ってきて、その中で、ガイドラインは、客観的に賃金表があったり、共通言語がなかったりする企業においても、きちんと適用可能なようなガイドラインを、説明可能なものとして作るという作業をしていくということになるのだと思います。

○柳川座長 ガイドラインを作るかどうかも、本当はまだ決まっていないはずなのですが、一応ガイドラインは作るということを前提に議論をすることになるのだと思うのですが、そのときに、今出てきたポイントは幾つかあって、 1 つは、どこで使ってもらうためのガイドラインにするかということですよね。それは、事後的な裁判のときの判断材料のためのガイドラインなのか、それとも、事前の賃金の決定の仕組みのところで使ってもらうためのガイドラインなのかということで、先ほどおっしゃったような個別のところなのか、それとも全体のグループの判断の基準になるのかというのは、違ってくると。これは、今の段階で私がどちらかと決める話でもないと思うのですが、お考えいただいたほうがいいポイントの 1 つだろうと思います。

 もう 1 つ、 2 番目のポイントが、先ほどの賃金表の話に典型的に表れてくる話ですが、どこまで企業側の変化なり対応なり努力なりというものを期待するのか、あるいは要請するのか、あるいは、もうそういうものは全然なしで、現状の今ある前提の中でできることを書くという話にするのか、もう少し、こういうことをやってくださいというイメージがあるのか、それとも、もっとこういうことができたらいいですね、ということを前提にしたガイドラインにするのか、これでも大分イメージが変わってくるのだろうと思うのです。

 ただ、我々が要請されているところは、ある種、同一労働同一賃金が何かというのは難しい話ですが、非正規と正規の待遇格差を、何らかの形で、比較的短い期間のうちに変えていくことを前提にするのだとすると、余りにも絵空事的な理想系のものが動いたときにはこうなる、というタイプのガイドラインというのは、余り意味がないのだろうなとは思います。ただ、今日から、明日からという話でもないのだとすると、何らかの企業側の対応ということを要求する話にはなってもいいのかもしれない。これも多分、皆さんの中のイメージが大分違うと思いますので、後々少し考えていかなければいけないポイントですよね。

3 番目は、ずっと出てきていて、今日は御欠席ですが、川口委員などはかなり気にされている話で、あるいは中村委員、松浦委員も御指摘されている話で、時間軸の話をどうするのかというのは、やはりどうしても残ってくる話です。特に正規の場合は、長いタイムスパンの中で出てきている賃金体系の中で、一時点で切ってどこまで判断できるのかというのは、大きな話で残ってくるわけで、これも、私が、こうです、と今、この段階で決める話でもないと思うのですが、後々どうするかというのは、考えておかなければいけないポイントだろうと思います。そのほかにも幾つかポイントが出てきたと思うのですが、今の段階で申し上げるとすると、今の 3 点ぐらいのところは、どうするかというのは考えながら、少し詰めていかなければいけないポイントだろうと思います。そのほかに何か。

○神吉委員 ヨーロッパの議論で、最終的には裁判所が紛争の時点で、きちんと説明のつく合理的な格差なのかを判断するという点は日本でも同じだろうとは思います。ただ、イギリスを除くヨーロッパは、何度も出てきましたが、協約で横断的な賃金体系ができているので、賃金の大部分に関しては説明がつくことが前提で、プラスアルファの部分に関して、個別の企業で合理的な説明ができるかを見ることになります。一方、日本の場合は、それぞれの企業で全く違う賃金体系をとっているので、ヨーロッパの集団的に事前に合理性が説明出来る部分がなく、本当に個別の考慮になってしまうという、大きな違いがあるのではないでしょうか。合理性を説明しなければいけない部分が非常に大きいと思うのです。そういった理解を前提に、今日頂いたいろいろな事例から、合理性を判断する要素を具体的に見ていくとき、例えば年齢給は、合理性の説明が付けられるものでしょうか。例えば年齢が正社員の賃金決定要素には入っているのだけれども、非正規に関してはそうではない場合。そもそも非正規には賃金テーブルがなく、年齢給のようなものを適用しないで、最低賃金や地域の相場で決めていくといった場合を想定します。年齢給というのは潜在的には生活ニーズに対応していて、提供している労働そのものとは直接関係ないわけで、それで差を付けることは不合理だという切り分けにもなりそうです。そのような生活給的側面をどう評価するか、今日挙がってきたような賃金制度には、合理的な部分と不合理な部分が既に含まれていて是正していくべきなのか、それとも、説明がつくかは別問題として考えていくのかについて、皆さんの御意見を聞いてみたいと思っています。

○柳川座長 難しい。重要な御指摘が幾つかあったと思うのですが、最後の点、御意見をということですので、委員の皆さん、何か御意見があれば、どうぞ。

○水町委員 フランスとドイツを含め、ヨーロッパ大陸も、そんなに単純に、産業別労働協約で全部決まっているので共通の土壌があるというわけではなくて、例えば年齢と勤続で言うと、年齢については年齢差別禁止法があるので、ヨーロッパは年齢は合理的理由にならないという話になっていますが、勤続については、セニョリティに基づくそもそもの違いというのは合理的な理由になる。それでは年齢と勤続はどう違うのかというところについては、それなりの議論がきちんとあって、その議論がなされています。

 勤続については、勤続だから直ちに勤続に対応した基本給などの部分が合理的かというと、勤続の違いとしてリーズナブルに設定されている基本給は合理的と言えるけれども、勤続と説明がつかないような基本給設計になっているでしょう、というところについては、これは合理的ではないという判断がなされているので、そういう意味では、日本でも同じような議論が、勤続についてはできるかもしれない。そういう意味で、ガイドラインを作る上では、ヨーロッパと日本というのは前提として完全に違うというのではなくて、ヨーロッパの議論が日本に及ぼされるような潜在的な可能性はたくさんあるということを見ながら、きちんとした合理性の判断の精査をしていくことが大切かと思っています。

○神吉委員 勤続ではなくて年齢そのものだったら、どうですか。

○水町委員 年齢差別禁止法ができたので、年齢差別禁止法で許されていないものについては、そもそも違法で、それによって合理性を担保する。

○神吉委員 年齢差別禁止法がない日本の場合です。

○水町委員 日本の場合は、年齢差別禁止法を入れるかどうかの議論をしなければいけないので、それがない場合に日本でどうするかは、例えば労契法 20 条の中で、年齢が合理的理由になるのかということを議論するということになるのだと思います。

○神吉委員 今回、例えばガイドラインを作っていくとして、いま生活給的な考え方を入れている企業はたくさんあると思います。しかし生活給を突き詰めていくと、同一労働同一賃金の原則と、かなり対立する要素があるはずです。そういった要素を合理的だと見るのか、それとも、そうではなくやはり労働のほうにフォーカスしていくのだともっていくのか、それは、ヨーロッパの議論とはまた別個に、日本的な視点としてどういう立場をとるべきかを考えています。

○水町委員 私の理解は、労契法 20 条の射程の問題で、例えば年齢差別禁止も労契法 20 条の合理性の中に入れ込むのか、例えば均等法でやっているような直接差別や間接差別の議論も 20 条の合理性の判断の中に入れ込むのかという問題で、恐らく議論を整理するためには、年齢差別禁止の話はまた別、直接差別、間接差別の話はまた別。ただ、それはそれで、年齢差別禁止法を日本で作るかどうかとか、均等法をどう改正するかというのは、別のところで議論すべきだと思いますが、差し当たり 20 条については、それとは別に合理性を判断すると。ヨーロッパでは、年齢は合理的理由に挙げられていないけれども、日本でどうしても年齢を理由にした給付の違いを正規・非正規格差の中で合理的なものとして入れたいというのであれば、ガイドラインにその部分は残しておくということは考えられるかもしれません。そういう議論の設定の仕方なのだと思います。

○神吉委員 ということは、今の日本の法律を前提とした場合に、そういった要素は労契法 20 条で考慮できると。それは、職務の内容や変更の範囲ではないので、 3 番目の「その他の事情」のところで考慮すると、そういう問題になるということですか。

○水町委員 現行法では、そうなると思います。

○神吉委員 では、労契法 20 条の「その他の事情」をある程度明らかにしていくというスタンスで、年齢に関しては、そこでの価値判断の話になるということですね。法律では何も触れられていませんが。

○水町委員 私は、それでいいと思います。

○柳川座長 初回からそうですが、同一労働同一賃金の実現ということを全てここで考えるとすると、いろいろな問題が出てきていて、今の年齢の話もそうですし、そういうことを全て一から、日本としてどういうことを合理的と考えるかというのは、考えるべきポイントはたくさんあるのだと思うのです。それを、我々に課されているミッションは、どちらかというと正規、非正規のところの格差をという話なので、そこにフォーカスをするということで、フォーカスをする対象と、問題が広がっている問題のエリアとが大分差があるというところに、そもそもの我々の悩みがあるわけなのです。なので、なかなか難しいのですが、フォーカスすべきところだけ考えていていいかというと、なかなかそうはいかない問題があって、それが今出てきたような、年齢の話をどうするかということは、正規の部分についてもそういうものをどうするかということは、ある程度考えなければいけないことは考えなければいけないので、議論は是非していただいて、それでは、その部分をどのようなところまで、法改正をどうするかというところは取りあえず置いておくにしても、現状我々はどういうところをもう少し考えなければいけないかということは出していただいて、できるだけ議論すればいいのだろうと思います。ただ、そのことと、それではガイドラインに何を載せるかとか、ガイドラインでどこまで変えられるかということは、またちょっと別問題で、そこのところはなかなか難しいというところだろうと思います。

 そこには 2 つポイントがあって、 1 つは、法律改正のようなことが必要になるときにどこまで考えるかという話と、それから、先ほど話しましたが、企業側がどういう対応をしなければいけないか、どういう対応を今後してくれるかということをどこまで期待するかというところと、両方の側面があるので、その辺りも、なかなかガイドラインだけで物事が決まらない話なので、難しいところなのですが、ある程度議論は広げつつ、ただ、最終的には、フォーカスできることは、そこにフォーカスをしてやっていくということにならざるを得ないのだろうと思います。

 このように出てくると、日本的な雇用の仕方とか、日本的な賃金の決め方というのはどうあるべきか、というような話がどんどん出てくるので、重要な話だとは思うのですが、それを追い始めると、深い森の中に入っていくような感じはするのだろうと思います。余り議論を狭く狭くしてしまうと、本質的なところが見えなくなってしまう恐れがありますので、そこは余り今の段階で限定する必要はないかなと思っています。よろしいですか。

○松浦委員 今の御議論の中で 1 つだけ、質問なのですが、先ほど、勤続年数によって賃金が変わるということについてはある程度合理性が認められているというお話の中で、例えば日本のように勤続が上がることによって賃金が下がるケースは、どのように考えられるのでしょうか。そういうことは、フランスではないのでしょうか。基本的に上がるという前提で、上がることについて合理性が認められているということですか。

○水町委員 上がるか、考慮しないということが基本ですね。

○松浦委員 そうですよね。

○水町委員 勤続が増して減らすということは、余り聞いたことがない。

○松浦委員 分かりました。

○柳川座長 まだいろいろな御議論があると思いますので、みんなつながってくる話なので、また出していただければと思うのですが、時間が予定より過ぎていますので。今日は、前回に引き続きまして、委員の皆様からのプレゼンテーションということで、中村委員から「非正規社員の待遇改善という観点から同一労働同一賃金の実現を捉え直す」、皆川委員から「ドイツにおける雇用状況、平等に関わる賃金構成について」というプレゼンテーションを行っていただくこととしておりますので、まず中村委員から御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○中村委員 お手元の資料に基いてお話いたします。今回は非正社員の待遇改善という観点から同一労働同一賃金の実現を捉え直すということで整理してまいりました。めくっていただいて、本報告のスタンスなのですが、先ほど座長からもありましたように現実的に私たちが結論なり方向性を出さなければいけないという範囲と、その本質的な結論に至るために一旦は広げて検討した上最後に焦点を合わせにいくということをやったほうがいいと思うので、今回は風呂敷を広げる方向に資料をまとめております。

 取り分け、今回に関しては、同一労働同一賃金の実現という言葉と、非正社員の待遇改善という 2 つの言葉がいろいろな場面で話が出てきておりますので、改めて必ずしもそれは同じではないという前提に立ったときに今回どこをやるのだという話が整理できればいいと思います。

 まず、ここにもあるように同一労働同一賃金の実現と言われたときに、そこで想定されるのは賃金についての何らかの方向性が指し示されることだということと、一方で右側にある非正社員の待遇改善という話になると、待遇というのは、例えば、パートタイム法の規定で言うと、全ての賃金の決定のみならず教育訓練の実施や安全衛生という非常に広範な概念を含んでおります。

 今回、この両方を普通にそのラップしているところでテーマを取るのであれば、今回は非正社員の賃金の改善というところに焦点が当たるわけですが、それでいいかというのは、そもそも確認が必要だと思っております。併せて、そのようになったときに非正社員の待遇改善の中で 2 つ気になっている点があります。 1 つは、全ての賃金の決定とぐるっと待遇の中でまとめられている、正に賃金の決定というところをどのように今回、分解していって、どういう要因なのか、どういう手続なのか、どういう水準なのかというところを、私たちはもう少し丁寧に議論する必要があるということ、併せて、例えば、前回、水町先生の資料に教育訓練みたいなものも分類で入っていたと思うのですが、そういうものも賃金を決定する非常に強い要因として考慮するのかしないのかというところも気になっています。焦点をどこに当てるのかということが、追い追いはっきりしていくといいと思います。

3 ページです。非正社員を取り巻く環境です。ここにいらっしゃる皆さんには言うまでもありませんが、個人側のいろいろなニーズの変化と企業側のニーズの変化という中で非正規率が上昇して、不本意非正規と言われる人たちが今たくさん生まれています。その中で幾つかの課題があると認識しています。不安定雇用、キャリア形成、待遇です。実は不安定雇用に関して言うと、労契法と派遣法の改正で無期転換が既に取り組まれており、キャリア形成に関して言うと、均衡法でパートタイム労働法と労契法については一部教育訓練に不合理な差がないようにということが既に入っている。派遣法に関して言うと前回の改正で、有償での教育訓練の義務化も入っているということで、上の 2 つについては、ある一定の対応が取られたという前提のときに、最後、待遇の改善というところで今回何をするのかということがより必要だと考えております。

4 ページからは、私どもが労働市場の研究をしている中で、非正社員の待遇が低いという要因をどのように整理しているのかということを 3 つ持ってきております。 1 つ目は 4 ページにあるように日本の賃金決定の特徴です。この左下の図は同志社大学の石田先生たちがまとめられているものです。日本の賃金決定は 2 の特徴があり、 1 つは縦のラインの雇用労働条件の決定機構が、いわゆるナショナルセンターではなくて企業別組合で分権化されて決定されるという縦のラインがあります。

 これは、ずっとここでも議論に出ておりますが、もう 1 つは横のラインが指摘されていて、個人の処遇の決定が集団ではなく個別で決まる。これが意味しているところは人事考課によって、その人それぞれの処遇を決めているという意味において個別性が高い、それがいわゆる大陸欧州や英米の市場とは違う日本の特徴であるという観点です。

 こういう整理になると、 1 つは組合の在り方、労働協約の在り方ということがずっと出ているポイントと、もう 1 つ個人の処遇の決定を企業の中で考課評価を通じてしているということを今回どこまで視野に入れて検討するのかということがあります。

5 ページです。今のものは企業の中の話だったのですが、今度は個人の話です。これは私たちが国際調査を実施したときのものですが、仕事をする上で重要なものを聞くと海外では賃金が第 1 位に上がってまいります。きれいなぐらい賃金です。日本では賃金は 4 位で、人間関係や仕事内容が上位に来ている実態があります。これは、いろいろな理由や価値観があってこうなっているのですが、長期雇用が根付いてきた中で、より日々の仕事の重要性が高いということが基本的に日本人の就労観のベースにあるということです。

 翻って賃金が低いということが、実態の労働条件を決める場合でどのように出やすいのかというと、賃金について直接交渉しないとか、お金についてとやかく言うのは少し何というか、美徳に反すみたいなところがあり、言われる側も言う側もなかなか賃金について表立って語らないのが日本の大きな特徴と見ています。ですので、今回、賃金を上げにいくという話をするときに、個人がそもそも賃金について話をすることが日本ではしにくいという前提にどのように手を打っていくのかということが、論点としてあります。

6 ページです。外部労働市場です。これも私どもの国際調査の中で言うと、日本は転職を通じて賃金が上がる確率が低い状態にあります。フルタイムで見てもパートタイムで見ても国際的に最も低く、パートタイムに関していうと仕事を変えると賃金が上がった人よりも賃金が悪くなったということが多く発生している状態です。

 このような形で幾つか日本の賃金決定の特徴をまとめました。個人には賃金を交渉する風土等、なかなかそういうことがしにくいという個人の事情。一方で、外部労働市場そのものは仕事を変えていく中での賃金を上げていくということがなかなか現状難しい。だとすると、残るは企業の中の仕組みの中で賃金を上げられるのかということが一番主力になるのですが、取り分け欧州との比較でいった場合は企業別組合が前提になっているということと、評価考課を通じた処遇を決定しているというメカニズムというところに日本の特徴があります。

 そのような形を通じて、日本の非正社員の賃金の向上を実現する仕組みは、当然、アプローチは幾つかあると捉えていて、それを整理したものが 7 ページの図です。縦軸が内部労働市場か外部労働市場の中で決めるのか、個人のキャリア形成を通じて、そのキャリア形成に賃金を対応させる形で賃金を上げていくのか、それとは全く違う制度を通じて上げていくのかという整理をした場合に、ここにあるような 4 つの象限が出てきます。

 産別労働協約みたいな話は、右下にあるのですが、先ほど来から言いましたように日本型雇用慣行で実現されてきた中で賃金が決まる仕組みを最もどこから手を付けるとほかを動かせるかというと、おそらく左上なのではないかと認識しています。本人の何らかの仕事、能力、経験、貢献等を企業の中で評価して賃金に反映させるという仕組み、その中には先ほど出ていたように雇用管理区分や賃金表、人事考課があるのですが、いずれにしても企業の中で賃金を上げる打ち手ができると自動的にある程度外部労働市場でも条件のいい求人が出て、そこに新しい仕事を見つける形で賃金を上げていくということもできるかなと整理しております。

 こういう形で取り分け左上ということがより重要で優先的である同一労働の実現ということをテーマにしたときも、幾つか 4 象限の中でやっていくものはあると思うのですが、まずは第一歩というときに左上からいったときに、では何を考えていかなければいけないのか、若しくは非常に連動性が高い、互換性が高い領域でどういう関心、視野が必要なのかということを整理したものが 8 ページに 4 つあります。

 論点1は先ほど来から出ている企業の中の正社員、非正社員の不合理な賃金差の是正と置いております。その上で、この検討会が始まってからその部分をどのようにしていくのかという議論はずっと繰り返されており、引き続きここが今後も焦点なのだと思います。整合的な形で議論が必要なのは 3 つあると思っています。 1 つは労使関係の中での整理の仕方です。それは企業の中で賃金が決まる、労働条件を引き上げていくという中で、当然、労使関係が与えている影響は非常に大きいので、そこは今回の検討の範囲に入れるのか外すのかということを含めた議論です。

 もう 1 つは、論点3と書いているのですが、外部労働市場との整合性です。これは非正社員が日本でこれだけ増えてきた背景の中に雇用調整が難しい労働市場の特性があるので、雇用の柔軟性と非正社員の待遇の改善をどのように整理していくのか、それをうまく実現できるのかということが重要な論点だと認識しています。

 併せてもう 1 つ重要なのは、今回、賃金という使用者と労働者の中の労働条件を是正しにいくという話なので、当然、使用者サイドに一定の取組が決まると思いますが、相対する個人側に対してどのような働き掛けをするのかという論点です。ずっと出ているように労使の相対する関係なのに労働者側は賃金についてものが言えない。もっと言うと法律で現時点でも均衡待遇は一部決まっておりますが、ほぼ会話の中に出てきていない実態がある中で、その個人に対して私たちはどのような示唆や取組を出していくのかという論点が大きくあると考えております。

 続いて、それぞれの論点について、お話をいたします。まず 9 ページに論点1ということで、雇用管理区分間における不合理な差の是正と私自身は問題を捉えておりました。それは、ずっと正社員と非正社員の待遇改善と置いた場合は、取り分け同一企業の中の正社員と非正社員の差の是正をすることが必要と捉えていたのですが、このとき考えないといけないことは、下の箇条書きにしている所にあります。

1 つは、そもそも賃金として何を含むのかということです。先ほど言っていたように教育訓練みたいなものも賃金なのでしょうかというのも問い掛けですし、一方で、今まで出てきていないのですが賃金決定という意味においては、評価や考課は検討に入れるのでしょうか入れないのでしょうかということも問い掛けです。賃金を決定する要因という所の中に既にパートタイム労働法や労契法の改正の中で職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が決められていて、あえてここからさらに今回、検討しなければいけないこと、丁寧に議論が必要なのはどこでしょうかという問い掛けです。ここは先ほど神吉先生からもあったように恐らく、その他の事情という所のブラックボックスをもう少し丁寧に解明していくということが 1 つのポイントなのだと思います。もしそれ以外にも何かあるのであれば、是非、伺いたいです。

 あとは同一とみなす水準を決めるのかどうかということと、恐らく企業の中に一個人として、労働者として働いている状況を考えると、そもそも複数の雇用管理区分間で賃金が違うということを、ある一定、誰かがそうではないという、合理的な賃金制度になっていることのチェック機能を担保するのかしないのか。裁判に行ったときに初めて、そこは確認するのですということであれば、今回ここはしないということだと思いますし、もう少し、社会において実効性が高いという状態ですと、一定の労使関係の中、若しくは第三者の機関を通じて今取っている賃金制度は妥当なものだというチェックが必要だと思うのですが、こういうことについてどのように考えるのかということがあります。

10 ページは論点2です。企業内の集団的な労使関係との整合性という観点です。企業別組合の中に非正社員を包摂しにくいということは、もう兼ねてから指摘が出ているポイントなので、一足飛びに解決は難しいと思います。一方で、賃金は労使の間で決まる労働条件のど真ん中のもので、かつ、賃金を上げていく企業内の仕組みは組合が持っていてという状況のときに、労使関係をどのように整理していくのでしょうかということは、外側としては当然見ておく必要があると認識しております。

 一番のポイントはパートタイム労働法や派遣法の改正で、労働条件に関して使用者に一定の説明義務を課すということは、規定されていく中で程度はあると思います。それらでは集団的な使用者と労働者の関係ではなくて、使用者側が雇い入れる個人一人に対して個別的に労働条件の妥当性について説明している状態です。言わば、これは個別的労使関係と言えると思うのですが、それも個別的な労使関係というもので日本の賃金差の是正に取り組んでいくのか、従来からある集団的労使関係なのか、欧州の産別労働協約なのか、段階は幾つもあって、今回はどこに焦点を当てるのでしょうかということが気になっております。

 仮に相対する労働者一人一人に対しての説明責任という形の個別的労使関係を押し進めるのであれば、受ける側の個人側が、逆説的には、そういう権利を有しているということは個々人が理解していないと駄目だという話になります。先ほど言っていたように個人側が全く賃金に対して話ができない、法律について認識していない中で個別的労使関係を入れていくことでの賃金差の是正は、ある程度限界があるという認識のほうが正しいのではないかと私自身は考えております。

 続いて論点3の 11 ページです。外部労働市場との整合性という観点です。外部労働市場との整合性というのは、非正社員の雇用の安定化等も併せて法改正が入っておりますので、そういう動きと連動する形で議論が整理されていることが望ましいと思います。その中で取り分け気になるのは無期社員、限定正社員と言われている人たちの処遇が、正規、非正規の中間の働き方として出てくる。

 一方で、片や賃金は比較的勤続期間に連動しない形でずっと固定される懸念があるというときに、この人たちに対しても妥当な制度になっているのかということは必要かと思います。併せて、雇用管理区分、非正社員のことを考えたときに入職時による賃金差というのは、一定の妥当性を認めるべきではないかとも思っております。

 もう 1 つ、外部労働市場の整合性という観点でいくと、派遣事業に関しても論点があり得ると認識しております。非正規率が 4 割の中で派遣労働者が 2 %と言われておりますので、非正社員全体の中でいうと非常に少ないのですが、一方で、次のページにあるように派遣労働は、派遣先と派遣元と派遣労働者の 3 連契約の中で成立している就労形態です。要は労働者に対して派遣元と派遣先がいることによって 3 者構成が非常に複雑になっている。このときに均衡、均等、若しくは同一賃金というものをどこの義務として制度として組み込んでいくのかということは、丁寧な議論がいると認識しております。

 例えば、現状の賃金の支払いは、派遣労働者に直接賃金を支払っているのは派遣元なのですが、派遣元の賃金の原資はどこから出ているのかというと、派遣先の派遣料金です。一方、 12 ページの下に JILPT の調査のデータを出しているのですが、派遣先が賃金を上げるかというと、派遣社員についていうと 36 %が上がらない、上げないと言っており、総額原資が上がらない中で上げていく、若しくは逆に賃金の支払いを上げていこうとするならば、派遣元のみならず、多分、派遣先と連動する形での何らかの整理が必要かと見ています。

 という形で派遣制度に関して言うと、非常に複雑なので、議論の順番としてはあくまで直接雇用の非正社員に対して、どういう対応をするのかという原理原則論を整備していった上で、最後におそらく 3 者間構成を前提に取ったときにどういう議論や考慮をするのかという順番で整理していくのがいいと見ております。ここも残る課題としてあるかと感じております。

 最後に 13 ページに個人への働き掛けを書いております。直接の法律の規制という話とは少し違うかもしれませんが、今回の賃金を上げるという取組は、あくまで非正社員の待遇を改善していくのだという話ですと、やはり当事者である個人の方たちにきちんとそういう取組が進んでいて、そういう権利を主張できるのだということをある一定周知していかないと、あくまで使用者サイド、それも法令を遵守する使用者サイドの所でしかものが進まないです。最初から説明しているように、日本は取り分け賃金についてなかなか表立っていうことが、それはどうなのという文化もあるということも背景にあり、立法、若しくはガイドラインという取組を外に出していくタイミングで個人側に周知、啓発も併行して御検討いただきたいと思っております。

 私からは以上です。○柳川座長 ありがとうございます。それでは、今の御報告について御質問、御意見はございますか。

○水町委員 いろいろ勉強になることが多かったです。 3 点だけ共感したことを簡単にお話させていただきます。 1 つは個人について賃金の情報が必ずしも日本では十分にいっていないということのために、会社側がもし制度を違うものにして給付を違うものにしているのだったら、どういう理由で違うものにしているのかという説明をして情報提供をきちんとするということを今回、ガイドラインの中にどのように入れ込むのか、法改正の中にどのように入れ込むかということが重要だと思いますので、そのとおりだと思いました。

 もう 1 つは、大切なこととして教育訓練、キャリア形成をきちんと有期とか短い雇用の人や派遣にも及ぼしていくという法制とリンクしながら具体的な処遇としては、それを昇給にどのように反映させていくのか。入り口の時点では同じような人でも勤続によって差が開いていくということがあるので、キャリアとか就労の実態に応じた昇給を今回、リーズナブルなものとして、どのように及ぼしていくのかということが今回の議論の中でとても重要なものだと思いますし、そのとおりだと思いました。

3 点目は、派遣の考え方です。フランスはおっしゃったような発想で、例えば、有期で 1 年間、直接雇用されている労働者について無期契約社員とどのように平等な取扱いをするのかリーズナブルな制度設計にするのかを考えた上で、派遣先に 1 年間派遣されている人は、派遣先で 1 年直接雇用されている人と同じような権利を給付しましょうという形で制度設計がなされているので、今回、中村さんがおっしゃったことのような発想で日本でも検討していくことが適切かどうか考えることは非常に大切だと思いました。私からは以上です。

○柳川座長 ありがとうございます。そのほかに何かございますか。何か今のは特にレスポンスはよろしいですか。御意見、御感想なら大丈夫です。

○松浦委員  3 点あります。 1 点目と 2 点目は同じ話なのですが、非正社員に対して労働条件をきちんと説明するということ、今でもパート労働法には説明義務が課されていると思いますが、そこをどのように担保していくのかということは非常に重要な論点だと思います。

恐らく入社時ワンポイントの労働条件については説明されていると思うのですが、昇給については、例えばほとんど上がらないということをわざわざ説明しないかもしれません。また、正社員転換という道があるということは説明するでしょうけれど、例えば実際に転換している人が 3 年間に 1 人しかいないというようなことは、おそらくわざわざ説明していないと思います。入社時の雇用管理区分が将来も含めてどのようなものなのかということを、もう少し正確に伝える必要があると共感いたしました。

 一方で 2 点目として、微妙だと思ったのは、ほかの雇用管理区分との差の説明です。あなたのお給料はこれだけですが、別の雇用管理区分があって、この雇用管理区分の人はこんなにもらっており、この差の意味は・・・と説明されることが、実際、モチベーションにどう影響するか、やはり現場では悩ましい問題になるでしょう。他の雇用管理区分との差を、どのタイミングで誰に説明するのか、もう少し慎重に考える必要があるかもしれません。職場でも、どれぐらい均衡が図られているかという議論は必要だと思うのですが、どのように議論するのかというところについては少し悩ましいという感想を持ちました。

3 点目は、中村委員の雇用管理区分内の差については合理的な差ということで許容すべきだというご指摘で、非常によく分かるのですが、景気がとても良い時期に入社した人は時給が高く、 3 年ぐらい前に入社した人は時給が低いというケースをどう捉えるか。非正社員の同じ雇用管理区分のなかで、後から入って来て同じ仕事をしていて、なおかつスキルも低い人の方の時給が高いというケースをどのように整理していくのかということも、これから悩まなくてはいけないという感想を持ちました。

○柳川座長 そのほかいかがでしょうか。

○中村委員 ありがとうございました。松浦さんからいただいた、恐らく 2 点目の議論は先ほどの前段で出ていた議論も含めて、この後きちんと整理をしていくのだと思いました。改めて雇用管理区分なのか、雇用管理区分という話ではなくて個別の労働者一人一人に対して決まっている賃金の要素と積み上げに妥当性があるのかという議論に直接もっていくのかという、なぜ私が雇用管理区分の話を入れていたかというと、こういう観点について賃金について考慮しなさいというガイドラインや方針が出たときに、企業側がどのようにそれを組み込むのかというと、実際の日々の運用に組み込もうとしようとすると賃金表なりで決めているロジックを見直さないとできませんと、なのである程度、賃金表に反映させることを前提に議論をしていたほうがいいのではないかと思い、ずっと雇用管理区分という話で整理しておりました。

 一方で要因分解と水準だけ方針を出せば企業がそれを実装できるのかというと、裁判のときには個別に話ができるかもしれませんが、日々の運用に乗らないので、日々の運用に乗せるためのところのステップをどこまで想定していくかということは、すごく重要なポイントになっていて、そこの検討がこれから必要という話は前回、今回と話が続いていると認識しました。

○柳川座長 そのほかいかがでしょうか。

○皆川委員 大変、興味深い御説明ありがとうございました。大変、勉強になりまして、非常にクリアな整理の仕方で頭が整理できて大変助かりました。ありがとうございました。中村委員の御指摘のところで、私もほかの委員の皆様と多分、ポイントは同じようなことを考えました。やはり、問題となってくるのは雇用管理区分ごとの違いがあったときに、それに対するガイドラインからの踏み込みをどこまでやるかということは確かに今日の御指摘のところで非常に重要な論点だと思いました。

 中村委員の資料の中でも、日本の場合は企業内の集団的労使関係に踏み込んだ議論をどこまですべきかという御指摘があり、非常に重要な指摘だと伺いました。結局、今回のどこまで議論するのかという話に関わると思うのですが、……労使関係そのものに対して何か干渉するというのは現実には難しいのかもしれませんが、今後、春闘を始めとする日本での労使交渉の中で、こういう論点があるので、ここについては諸外国の状況を見るとこのように賃金が組み合わされていて、ここは統一的な基準でなされているという示唆なり方向付けのようなものであれば、ガイドラインという形でも一定の示唆というか方向付けは可能ではないかと思いました。その辺りのところで、中村委員の御指摘の論点1と2の所の接合も考えていくことが非常にこれから鍵になると拝見しました。どうもありがとうございました。

○水町委員 雇用管理区分が違うときに差を見るときに、やはり対象となっている雇用管理区分の中の分析をしなければいけないということで、自民党 PT の報告書によると、それを要因分析、要因分解と言っているのです。要因分解をして、こうなっているから違いに合理性がありますということを企業として説明するということは、これから必要になってくると思います。

 ガイドラインの中では、どういう形で要因分解して説明をするのかというヒントになることをガイドラインの中に盛り込むことが必要かという点で、私もそうだなと思いました。

○皆川委員 要因分解をしたときに、先ほども議論がありましたが、例えば、年齢給の要素が雇用管理区分に入っていて、非正規雇用の場合にはそこが入っておらず昇給もしないという形になっていたときに、その年齢給のような要因を企業が仮にそこで取っていたとしたら、それを正社員では取って非正社員では取らないときに、結局そのすり合わせを考えてほしいということ、そういう形での方向付けができればいいのではないかと思いました。

 私も年齢給の仕組み自体が非合理だと考えておりませんが、なぜそれを、一方ではあるときには取りつつ、一方では非正社員の雇用管理区分には取らないのかということは、確かに合理性がどこまであるのかということを検討するときに問われるべきだと思いますので、例えば、ガイドラインの形で一義的に決めてしまうということは難しいのかもしれませんが、そこは現実的な現場の労使関係の所にある程度、落とし込んでいただいて、その場で検討いただくという形での解決方法が道筋としては妥当なのかと思いました。

○柳川座長 何かおありでしたら、よろしいですか。要因分解が大事で要因分解がきれいにできれば、かなり我々の議論は相当進みます。そこの部分は現実の全ての賃金体系の中で、賃金を全部きれいに要因分解できないところになかなか難しい問題があるので、そこをどのようにガイドラインの所へ書き込めるのかということなのだろうと思います。

 私も少しだけ感想を言わせていただきます。 2 点同じような問題ですが、 1 つは報告のスタンスの所で書かれていたベン図というのですか、同一労働同一賃金の実現というものと非正規の待遇改善等、本当はこれは全部の話があるのだけれども我々ができるのは重なっている部分という、ある意味で我々が本当はチャレンジしなければいけない問題とフォーカスできるところに大分差があるということは、どこかできちんと整理した上でやるべきこと。本来考えるべきことはできるだけ明らかにしておくということが大事だということを改めて感じました。

2 点目は、教育訓練の実施、先ほど水町先生もおっしゃっていましたが、結局、教育訓練をやって、それでキャリアアップさせて昇給させてという、本当はこういう仕組みとセットでないとなかなか非正規の方の待遇改善はできなくて、生産性拡大向上みたいなこととセットでやらないと、なかなか賃金だけを一方的に上げるというのは現実的には難しいという面があります。その意味では、そういうものとセットでガイドライン的なものが本当は出てくるべきなのだと改めて思いました。それを我々のミッションの中でどこまでどのように書き込めるのかということが後々の工夫になってくるのですが、やはり、ずっと今日のお話を伺っていても、そこの部分が欠けているがために昇給と言っても賃金が 100 円ぐらいしか上がらないとか、そういう中での現状なのだろうと改めて感じました。よろしいですか。

 それでは、お待たせいたしました。皆川委員から御説明をお願いいたします。

○皆川委員 私からは本日お配りいただいている資料で、ドイツにおける雇用状況と平等に関わる賃金法制に関して概略を御説明させていただきます。これからのガイドラインやその先に立法にどう落とし込むかという議論がなされ、検討されていくに当たり、ヨーロッパの議論、特に判例がどのように判断基準を示しているかといった点について、具体的なドイツなどの判例資料を基に検討されることがあるかと思われますが、そうした検討がこれから行われるに当たり、ドイツの雇用状況、特に雇用形態別の状況、ドイツでの賃金実務、それを前提とした判例の在り方について、概況について御理解いただくことが今後の有益な議論につながるかと思いましたので、私からはそのような内容でお話をさせていただきます。私は、 2012 年から 2014 年まで、ドイツ連邦共和国のケルン大学の労働法研究所で在外研究に従事しており、約 2 年ほどドイツで生活する機会を得てきたところです。これからお話する内容は、経済統計に関わるところと法律に関わるところの話になるわけですが、最初に概略的な話をさせていただくと、私がドイツで生活する中での生活実感とか経験と、これからお話することの全般的な内容というのは、懸け離れたものではないと個人的には理解しています。ですから、文献から拾ってくる情報はあくまでも文献上の話ではありますが、比較的最近までドイツにいたということもありますので、その辺りの実感も含めて、できるだけ分かりやすくお話できればと考えています。よろしくお願いいたします。

 最初にドイツにおける労働市場や雇用形態別の賃金などについての概況についてお示しいたします。時間の関係もあるので、ザッと数字を見ていただければ幸いです。基本的には、最近のドイツの公表されている統計から取ってきたものを中心としております。もちろん、私は経済分野が専門ではありませんので、この数字等に対する深い分析はできないわけですが、一般的にドイツの様々な議論がされるときの前提となる基本的な数字ではありますので、御参考にしていただければと思います。

 近年の経済成長については、実質の経済成長率というのは、このような感じです。「堅実な経済成長が続いている」という表現が成されることが一般的かと思われます。そのような中で、 1 のポツの 2 つ目に移り、 2015 年の労働市場については、連邦雇用エージェンシーの統計報告でも、失業者数も低下しており、労働市場は positive に展開しているという 2015 年の概況が出ていました。黒ポツの 3 つ目にいき、一方、失業者数が減っていると同時に賃金水準はどうかというと、実質の賃金指数で取ってきますと、実質の賃金水準もこのように推移しております。 2014 年、 2015 年は比較的高い実質の指数が出ております。実質でこのぐらいですから、賃金の額面、あるいは名目の賃金指数で見たときの上昇額というのは、より高い数字が出ているということです。見た目にも実質にも、ドイツの一般的な労働者の賃金は上がっているという基調はここ何年来変わっていないということです。

 私は先ほど申し上げたように経済の専門家ではないので、うかつなことは言えないのですが、こうした数字から、 1 点、素人なりに導ける議論は、後でお話するようなドイツの賃金に関する一定の平等を指向する規制というのがドイツの労働市場の現状を見るときに、少なくともこの何年かのトレンドを見るとマイナスに働いているという兆候は少なくとも見て取れませんし、ドイツの中でもそういう議論はなされていないだろうということです。ですから、同一労働同一賃金なり、そのような雇用形態別などを考慮した不利益取扱いの禁止などの法制の整備が進んできたわけですが、その中でもこのような経済的な指標では現実に悪くない数字を出しているということから、少なくとも、規制がそんなに大きく足を引っ張っている状況であるとか、それが社会的に問題視されているというような議論は、少なくとも今のドイツはないということは指摘できるのではないか。まず、 1 点最初にその点を、専門家ではないので一般的な印象というところですが、お話をさせていただければと思います。

 次に、具体的にドイツの雇用形態別の労働概況や労働条件がどうなっているかについても、ザッと御説明できればと思います。

 まず 1 ページの一番下の所は、ドイツでいう「標準労働関係」と申しまして、日本でいう正規雇用と厳密に対応するわけではないのですが、一般的にフルタイム、直接雇用、無期雇用というところを基準とする標準労働関係の概況です。

 ただ、今「フルタイム」と申し上げてしまいましたが、連邦統計庁の数字なのですが、この統計ではこの標準労働関係に週 20 時間以上のパートタイム労働者というのが、ここに含まれております。もちろん、パートタイム労働法でいうパートタイムというのは、通常の労働者よりも時間が短いというところですので概念は違うのですが、少なくともドイツの公的な統計実務では、標準的なフルタイムの半分以上の労働時間があれば、標準的な労働関係だと捉えられるという考え方が取られているところは、日本の統計の取り方などと比べると顕著な差異だと思いますので、その点は御留意いただければと思います。

 そのような数字を考慮に入れつつ、全体的なトレンドを見ると、ドイツは 2008 年にかけて一旦は標準労働関係は減少するのですが、近年まで標準労働関係は増えています。 2014 年の数字で見ますと、 2,451 万人で、個人自営業者や経営者も含めた全就業者数の 67.5 %になっています。

1 つ大事な数字を落としてしまったのでここで補足させていただきます。標準労働関係にある労働者のうち、男性が 1,435 万人で、女性が 1,016 万人になっています。

 次に移りまして、 2 ページです。標準労働関係に対しての非典型労働者の数字です。時間の関係もありますので、ここもザッと概略を御覧いただければと思います。多いのは、パートタイム労働者です。ここは週 20 時間未満のパートタイム労働者が非典型雇用という形に含まれています。ここでも非常に顕著なのは女性が多いということです。 1 ページ目の 20 時間以上のパートタイム労働者の所でも、女性が多くなっており、ドイツの数字から読み取れる特色はその辺りだと思います。僅少労働者などのミニジョブについては後のほうで簡単に御説明いたします。

 次に、黒ポツの 2 つ目です。これが雇用形態ごとの賃金額で、 1 時間当たりで、ユーロで、平均値ではなく中央値を取っているということです。ここでも「パートタイム労働者」と区分されているのは週 20 時間未満の労働者です。具体的な数字は時間の関係もありますので、後でお気付きの点などは御指摘いただければと思いますが、ここでも 1 点補足しておくことがありまして、表の下に低賃金境界について簡単に書いています。ドイツでしばしば言われる低賃金かどうかの境目は、 OECD の基準に基づき、時間当たり賃金額の中央値の 3 分の 2(66 ) の所を低賃金境界としての引くという基準が用いられています。この数字を落としてしまったのですが、 2010 年の数字でいうと、低賃金境界は 10.36 ユーロと算出されています。その 10.36 ユーロを一応の目安として、その上のテーブルを御確認いただければということになります。

 標準労働に関しては、基本的に全部それを上回っているのですが、非典型雇用については下回る区分もしばしば見られるところです。ただし、パートタイム労働者や有期契約労働者だからといって必ずしも低い賃金でないということも読み取れますので、この辺りは御参照いただければと思います。

 また、この表の数字をお読みいただくときのもう 1 つの留意点ですが、その左側の使用者の区分の所で、「民間公務」と書いていますが、その公務はいわゆる公法上の関係にある官僚ではなく、公務サービスを提供する公法人などに労働契約に基づいて雇用される労働者のこと、その労働条件であって、官吏の水準ではありません。こういう公勤務サービスに雇用される労働条件について規制する産業別の労働協約というのもありますので、そうした産別の協約などに基づく賃金水準だということを御理解いただければと思います。数字の細かいところは時間の関係もありますので、次に進まさせていただきます。

 続いて、賃金決定に話を進めていきます。ドイツにおける一般的な賃金決定がどのように行われるかというのも、これも法律上の効力ごとに若干区別しました。原則は個別労働契約における合意というのが基本です。しかし、労働協約で定められた協約賃金というのを組合員や使用者団体のメンバー同士でなくても、労働契約で個別に引用するということで、その労働協約の賃金水準で合意するというやり方が、しばしばドイツで取られます。

 ドイツの労働組合の組織率というのは年々低下していて、今は 20 %を切ってしまったのですが、協約の拘束率ということになると、労働協約を引用しているという実務を含めると、全体で 5 6 割ぐらいの数字になると言われています。これは旧東ドイツの地域などでは低かったりと地域差はあるのですが、協約の賃金水準が基本的に適用される労働関係というのは、全体の半分以上だというイメージは間違いないところかと思われます。

 そうして、引用されることも多い労働協約における賃金決定はどのように行われるかというと、基本的に産業別、地域別に賃金グループを設定し、賃金グループごとの具体的な賃金額が設定されるのが通例です。協約の適用が両当当事者間に直接的にある場合には、協約自動 (Tarifautomatik) の原則により、客観的なグループ格付けが行われるというのがドイツの特色になります。そのグループ格付けなどについては後ろに少し資料も付けていますので、時間があれば御案内いたします。

3 ページです。一方、ドイツでは 2 元的な集団的労使関係ということがしばしば特徴として指摘されまして、事業所協定による賃金設定もあることはあるのですが、一般的には協約優位の原則というのが法定されていますので、事業所ごとの具体的な賃金額の決定というのは効力を基本的に持たないと解されています。ただ、事業所協定などで、どのように格付けというか、賃金評価をするに当たり、どうした評価やグループ格付けをするかということについての枠組みなどは合意されることがありますので、もちろん事業所レベルでそうした賃金に関する決め方が、全くなされていないということではありません。

 また、協約外職員や管理職員というのはそもそも協約賃金よりも上の賃金で合意するということが前提ですので、協約の適用外ということになります。ですから、そうした職員については基本的に個別合意で賃金が決められていくということに、特に管理職員などの場合にはなります。

 また、次にしばしば問題となるドイツの賃金の種類です。ここもザッと概略について御覧いただければ幸いです。時間の関係もありますので、後で御質問などがあれば出していただければと思います。

 次に、 3 ページの下の所の「他の労働者との比較での賃金請求権の法的根拠」にいきます。ここで 1 点御留意いただきたいのは、今後例えばドイツの判例などを題材に検討するときに留意すべき点ですが、ドイツの場合には、何らかの他の労働者との比較で、自分が差額等を請求する場合の法的根拠、主張の際に根拠とするものが複数あり、訴訟を通じては複数の主張で通りそうなものをとにかく主張する。根拠ごとに要件が違いますが、通ったところで請求が認められれば良しという形で訴訟がなされていきますので、幾つかの法的根拠が重なって主張されることがあります。その場合に、どういう根拠があるのかということを、ザッと概略をお示ししておくことが有益かと思いますので、 3 4 ページにかけては、その辺りについて御説明できればと思います。

 まず、 3 ページの一番上に、ドイツで同一労働同一賃金原則自体は賃金請求権の根拠にはならないというのが前提で、まずは具体的な実定法などの規定を取り掛かりにするということが必要になります。実定法上の根拠としては、まず 3 4 ページにかけて、一般平等取扱法が一般法として制定されており、これは 3 ページの下に挙げているような理由に基づく差別的取扱いを禁止し、当然賃金に対する差別的取扱いも禁止されます。そのようなことがあった場合には、差別されなかった場合の労働条件が法的にも認められるという構成になっております。

 次に 4 ページで、雇用形態に焦点を当てた不利益取扱い禁止を定める規制で、これは既に御案内のところかと思いますので、パートタイム労働、有期労働契約法が制定されているということになります。内容については、矢印の所に書いてある通りです。また、労働者派遣法についてはここにも書かせていただいたように、派遣期間中派遣先の比較可能な労働者との平等取扱いを原則とすることになっているのですが、労働協約の適用により、その適用を外すことが法定されて可能ですので、実際には協約の引用などにより派遣労働者は派遣先労働者と違う労働条件になっていることが一般的です。

 また、職業訓練関係については、以下で御説明するように、職業訓練法という特別法があり、ここでは職業訓練者について職業訓練実施者が適切な報酬を払えということで、「適切な報酬」という文言で、根拠、足掛かりとなるような規定があります。そういった状況になっています。

 以上が法律に条文化されたものの御紹介でしたが、ドイツではこれにプラスして、定着した判例法理が幾つかあります。大きくは 3 つありまして、 1 つは平等取扱い原則という原則です。これは判例法理ですので、強行規定や労働協約などの根拠には干渉しませんし、私的自治に基づく個別合意の効力にも劣ると位置付けられているのですが、グループ間の比較で、あるグループにある手当が払われているのに、あるグループには払われていないというケースがあったときには、客観的に合理的な理由で正当化されない限りは不利益を受けるグループにも、有利な扱いを受けるグループと同じように賃金などを払えという形で、直接に賃金請求権を根拠付けるという点では、特色のある法理となっております。

 もう 1 つです。 4 ページの下の所で、良俗違反の賃金という判例法理もあります。これは民法の良俗規定などを根拠に、労働給付と報酬との間に著しい不均衡な関係が認められる場合には賃金合意を良俗違反無効とし、無効となった部分を民法上の任意規定である「通常の賃金は合意されたものとみなす」という規定に基づき、通常の賃金の請求権を認めるという法理になっています。これは判例により、通常の報酬の 3 分の 2 を下回る合意は良俗違反となると解されています。

5 ページに移ります。 3 番目に、「賃金グループ格付け」を御紹介します。これは先ほど御紹介した労働協約で設定された賃金グループには、それぞれのグループにどうした労働者を格付けるかという一般的な基準が書かれており、その一般的な基準に自分の能力や職務が適合することを労働者が立証できれば、そのことを通じて自働的にそのグループに労働者が格付けされたと判断され、そのグループに基づく賃金額を労働者が請求できるという法理も、ドイツでは定着していますので、これも実際の分析や検討のときには考慮されるべき点だと考えられます。日本とは違った考え方が取られていますので、注意する必要があります。

 最後の所で、今日ザッと御案内したところの概略、気が付いたところを御紹介できればと思います。ドイツの雇用状況は先ほどお話したように、全体の経済状況が好転していく中で標準労働が増える状況にはあるということです。非典型雇用については、雇用形態により特徴に違いがあります。パートタイム労働は女性が中心ですし、一方でパートタイム労働であることが必ずしも低賃金を意味するわけではありません。有期契約労働の利用形態は様々で、高資格の労働者については無期雇用に転換する前に試用的に用いられる傾向は強いという調査なども見たことがあります。一方で低資格の労働については、無期転換する割合が低いとされていて、雇用量の調整弁として用いられる傾向があるという指摘もあるようです。

 次に、ミニジョブというのは、月に 450 ユーロまでの賃金収入につき、労働者が負担する税や社会保険料の免除をするという制度です。これはドイツでも家計補助的な短期的就労である場合が多いと統計なども出ているようですが、一方で長期失業者が生活保護の受給と合わせて受けているというケースもあるということです。これは一般的に低賃金です。派遣労働は短期就労であることも多く、また雇用の継続が不安定というのは、ドイツでは割と顕著に出ています。以上が雇用状況の概略です。

 次に、平等に関わる賃金法制に関しても簡単に御案内をします。これは先ほど御案内したところですが、ドイツの判例では複数の法的根拠に基づいて請求がなされることが多いので、例えば、ある請求について、どのような主張が通って、例えばある請求が認められたかということには注意して判例の分析をしていく必要があると言えると思います。

 次に 6 ページにかけての所です。パート労働などの場合の異別取扱いを正当化する客観的理由に関してです。一般論としては、労働給付の内容、資格などの違いが客観的な理由となるのですが、矢印の 2 つ目の所で、多くの場合に基本給については賃金グループの格付けのところで客観的な区別が済んでいるというのが、ドイツの実態だと思います。協約の適用や引用がない場合でも、社会的な賃金相場というのは確実にありますので、グループ格付けの基準に従った賃金の決め方がなされることが多いということは言えると思います。

 そのため、一般的に例えばパートタイム労働の規制を根拠に、基本給などについて差額等の請求がなされ、それが認められるか認められないかというケースは比較的少なくなっています。

 多いのは何かというと、結局は手当部分です。これは給付の趣旨・目的から異別取扱いの客観的な理由の有無が最終的に判断されていきますので、特に平等取扱い原則の場合には同一労働であるとか、比較可能な労働者との比較であるかどうかというのは、狭い意味での要件になっていませんので、この辺りには注意が必要だと考えられます。基本給については、グループ格付けなどのところで争われるケースがしばしば見られます。以上、駆け足で恐縮でしたが、私からの簡単な御紹介でした。

○柳川座長 どうもありがとうございます。それでは、御質問、御意見を御自由にお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○水町委員 少し補足させていただきたいのですが、基本給との関係で日本との比較でいうと、日本の基本給というのはいろいろなものが入っていますが、 3 ページの「賃金の種類」で、基本給の下に「手当・加給」というのがあります。例えばこの中で業績手当、職務負担手当という手当として位置付けられているものが、日本では基本給として包摂されているという位置付けも可能だと思います。そういう意味で、日本でいう基本給が争われていないかというと、そこは賃金制度の違いというのが 1 つです。

 それと、フランスでも同じなのですが、ドイツで争われているものの対象は、産業レベルで労働協約で設定されているものと、プラスアルファで企業の中で追加して加給されたり、手当等がなされていることがありますから、裁判では産業レベルで設定されている、産業レベルの労働協約で定められているものも客観的合理性があるか、あるいは企業の中で上乗せされている部分について、例えば有期とか短時間労働者を排除したり違う取扱いをしていることが合理的なものとなるかというのが実際に裁判で争われていて、産業レベルで共通の基準として設定されているから合理的だとは直ちにはならずに、裁判ではその両方が射程に入っているという意味で争われています。そういう意味では、客観的合理性の審査というのは、どのレベルで定められた賃金なのかというのにかかわらず、客観的な観点からチェックされているということを言っておきたいと思います。

○皆川委員 御指摘のとおりだと思います。例えばグループ格付けの所でも少し御説明して、時間がなくて端折ってしまったのですが、グループ格付けが異別取扱いの最終的な根拠となるとは判例法理にもなっていません。最終的には司法判断で、それが合理的かどうかというところが問われるわけです。

 しかし、具体的に裁判に上がってくるケースというのが、グループ格付けに基づいて設定されるところの賃金部分については少ないということはありますので、大体そこのところで一定の合理性に従った区分というのがなされて、まずは社会的に定着しているということは言えるのだろうとは考えています。

○中村委員 お二方の先生にお聞きしたいのですが、そのような産業別の決定した賃金が妥当でないかという裁判が出るときは、労働者側は誰を相手に訴えているのですか。

○水町委員 当該企業です。

○皆川委員 企業ですね。

○中村委員 企業を訴えた結果として、その企業が結んでいる労働協約が適切ではないとなり、その裁判結果を受けた場合の次は何が是正されるのですか。要は、産別の協約賃金そのものが見直しになって、それが適用される企業も対応してという順番でいくのですか。

○皆川委員 基本的に産別の賃金そのものの適法性というのが問われることはなくて、具体的に賃金を設定されるときに、特に労働協約に関わるところは、あなたはこの労働協約の、この賃金グループに格付けされていますというところで、その格付けに問題があるということで争われる形になりますので、基本的にその労働者と会社との間の労働関係で、その労働者がどのような請求権を会社に対して具体的に持つかということになります。基本的に、協約自治の原則がドイツでは憲法でも保障されていますので、裁判所が協約そのものについて内容に介入するというのは非常に限定的です。もちろん、先ほど水町先生が御説明されたように、例えばかつてだったら男女差別で合理的な理由のないような賃金決定がなされていた場合に、それは協約が違反しているという判断が出ることはありますが、基本的には個々の使用者に対して請求権が認められるかどうかが争われることになります。

○水町委員 これは判決の射程の問題で、争われているのはこの企業とこの労働者の間で、判決に基づいて、その労働者はその企業から賃金の支払い等を受けることになりますが、同じような訴訟をほかの労働者がその企業とか、同一産業協定の下におけるほかの企業に起こしたら同じようなことになるので、その判決が確定したら、それに沿って企業協定なり産業別の協定を見直すことになります。これは日本の就業規則についても同じようなことです。

○柳川座長 そのほかにいかがでしょうか。

 ドイツの話をされたのですが、ここから日本の話に関して、何か示唆的なポイントをお考えのところがあれば、手短に教えていただけますか。

○皆川委員 単純に日本にそっくりそのまま日本に持ってくるというのは、賃金実務等が大きく違いますので、そういうわけにはいかないと思うのですが、先ほど水町先生からの御指摘もありましたように、ドイツの仕組みをよくよく見ていくと、賃金の具体的な決め方の中でその賃金をどのように評価して、何を理由に決めているかというところは、いわゆる基本給であれ手当であれ、またボーナスのような形の特別支給であれ、一定程度の要因分解はできると思うのです。

 その上で、ドイツでは例えばこういう給付がこういう目的で支給されているときに、片方のグループに支給されていない。それに理由があるかというところでの判断が積み重ねられていますので、要因分解した上で、それがドイツの判例実務の中で客観的で合理的だと言われているのか、あるいは言われていないのかというところについて積み重ねていくと、日本でも同じような議論に結び付けていくことができるのではないかと全般的に考えています。

○柳川座長 ありがとうございました。司会の不手際で少し時間を超過してしまいましたが、ここまでにさせていただければと思います。事務局から、次回以降の進め方について御説明をお願いいたします。

○河村人材サービス推進室長 次回は川口委員、神吉委員、松浦委員から、それぞれプレゼンテーションをお願いいたします。また、現在調整中ですが、次回以降に労使の関係団体からヒアリングをさせていただくことを予定しております。以上です。

○柳川座長 それでは、これをもちまして本日の検討会を終了いたします。お忙しい中、御出席ありがとうございました。


(了)

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