ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会> 第6回 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会(2016年4月5日)




2016年5月10日 第6回 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会

○日時

平成28年5月10日(火)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 3階 共用第6会議室


○議題

(1)特定健康診査の健診項目について(腹囲・その他)
(2)これまでの検討の整理

○議事

○高山健康課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第6回「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の先生方には、御多忙の折、お集まりいただき、御礼を申し上げます。

 まず、本日の出欠状況について、御報告いたします。

 本日は、全構成員が出席でございます。

 配付資料につきましては、座席図のほか、議事次第の裏に配付資料の一覧により確認をお願いいたします。

 なお、本日は、議事次第にございます配付資料以外に、永井構成員より追加の資料の御提出がございましたので、資料の一番後ろにとじさせていただいております。

 また、構成員の先生方にはパイプファイルで、参考資料として前回までの検討会資料と標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】等を配付させていただいております。

 もしお手元に配られていないもの、あるいは落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。

 では、撮影はここまでとさせていただきます。

 それでは、以後の進行は永井座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○永井座長 それでは、よろしくお願いいたします。

 本日は、前回に引き続きまして「特定健康診査の健診項目について(腹囲・その他)」及び「これまでの議論の整理」でございます。

 まず、事務局から前回の議事録の整理をまとめていただいておりますので、資料1及び2について御説明いただき、その後、各構成員に発表をお願いし、論点に沿って議論を進めたいと思います。

 では、最初に事務局からお願いいたします。

○高山健康課長補佐 それでは、資料1の御説明に当たりまして、まず参考資料1をごらんください。毎回御提示させていただいておりますけれども、2月2日の第2回の検討会でもお示ししたものです。前回、第5回の検討会では「3 個別の特定健康診査の健診項目等の見直し」のところで、腹囲・その他について御議論をいただきました。今回、第6回では、引き続きこちらの個別の特定・健康診査の健診項目の見直し、腹囲・その他の御検討を中心にお願いいたします。また、これまでの御議論を踏まえまして、詳細な健診の項目の対象者等についても御検討いただければと思います。

 では、資料1をごらんください。「第5回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会の概要」をお示ししております。前回の検討会では、以下のような御検討をいただきました。

 まず、尿腎機能についてですけれども、四角の中の◎ですが、特定健康診査の詳細な健診項目として血清クレアチニン検査を実施すること。血清クレアチニン検査は、血圧または代謝系検査が保健指導判定値以上であって、医師が必要と認める者に実施すること。糖尿病性腎症などの重症化予防などが課題となっている保険者が尿たんぱく検査をあわせて実施することは可能とするということ。

 おめくりをいただきまして2ページですが、腹囲についても御検討いただきました。その中で、虚血性心疾患・脳血管疾患は、腹囲にかかわらず血圧、血糖、脂質などの危険因子と関連していること。肥満者では内臓脂肪の蓄積が危険因子を増加させる主たる原因であって、腹囲は内臓脂肪の減少を図る特定保健指導の対象者を効率的に抽出する簡易な手法であること。非肥満で危険因子を保有する者に対しては、危険因子を増大させている原因を特定し、介入可能な方法を検討する必要があること。

 また、その他の欄ですけれども、メタボリックシンドロームの診断基準は、諸外国との基準の相違の意義などについて、学術的に再検討を行う必要があるということを中心に御検討をいただきました。詳細な御議論の内容はその下に書いてございます。

 4ページ以降にはこれまでの検討会の概要をお示ししておりますので、御参考としてください。

 続きまして、資料2の御説明をさせていただきます。

 資料2をごらんください。第5回の検討会での御議論を踏まえまして、本日御検討をいただきたい論点について、まとめました。

 1、第5回「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」での議論の概要等について」。

 第5回検討会において、門脇構成員より、研究班での研究結果について報告がございました。それらを踏まえた検討の概要は、ただいま御説明いたしましたように資料1のとおりでございます。

 また、以下のとおり、さらなる情報が必要との意見を踏まえまして、門脇構成員より追加の分析を行っていただきました。こちらは今回の資料3として、この後、門脇構成員から御発表いただくことにしております。その際、資料の中の詳細な内容をこの下にページ数とともにお示ししておりますので、御参考としていただければと考えております。

 また、第5回検討会の議論を踏まえまして、津下構成員より、インピーダンス法を用いた腹囲と内臓脂肪面積に関して検討するためのデータを取りまとめていただきました。こちらは資料4として添付してございます。

 1つ飛ばしまして、第6回検討会で検討すべき事項ですけれども、上記1の追加のデータを踏まえまして、第5回検討会でお示しさせていただきました下記の論点について検討を進めていただければと考えております。

 1つ目が、特定保健指導の対象となっていない非肥満のリスク保因者に対する対応の必要性について、どのように考えるか。

 2つ目が、保健指導対象者の選定・階層化基準において、腹囲を第一基準とすべきか。

 3つ目が、腹囲の基準値は、男性85センチ以上、女性90センチ以上とすべきかでございます。

 事務局からは以上です。

○永井座長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、門脇構成員から資料3について、資料2の論点と関連して御発表をお願いいたします。

○門脇構成員 それでは、発表させていただきます。

 まず、表紙をめくっていただきまして、2ページ目でございます。

 これはバックグラウンドをもう一度復習のために書いたものでありまして、現在、我が国のメタボリックシンドロームの診断基準は内臓脂肪蓄積を診断の必須項目として内臓脂肪面積100平方センチメートル以上をマーカーとして、おへそのレベルで測定した腹囲の基準値が男性85センチ、女性90センチと定められています。

 2番目に、平成20年度からメタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導が実施されています。

 3番目に、オールジャパンのデータをもとに、心血管疾患発症を効果的に予防するという観点から、ウエスト周囲長に関するエビデンスの構築を目指して、私が主任研究者を務めました厚生労働科学研究、平成1921年度のものを先行研究、平成2226年度のものを本研究と呼びますけれども、このデータに基づいて、前回に引き続きまして本日のプレゼンテーションを行います。

 3ページ目をごらんください。

 これは前回、提出した資料に1カ所誤りがありました。それについて、改めて改訂をしたものでございます。男性と女性に分けまして、保健指導レベルを情報提供レベル、動機づけ支援レベル、積極的支援レベルと分けた上で、情報提供レベルの中でリスク数がゼロのもの、かつウエストも基準値を満たさず、BMIも基準値を満たさないものを厳密な対照群として左に青く示してあります。そのハザード比を男性も女性も1にしていますけれども、復習になりますが、動機づけ支援レベル、積極的支援レベルになるに従って、男性では1.973.17、女性では2.322.83と全循環器疾患の年齢調整ハザード比が有意に上昇していました。

 次に、情報提供レベルの中で赤く示していますのは、ウエスト85センチ未満で、かつBMI25未満という痩せの方で、しかしながら、リスクを有する者、いわゆる痩せメタボについてハザード比を示したものであります。前回の資料では、女性の左から3番目のカラム、「2.54」の数字が「3.54」という記載をされていまして、これは資料作成の最終的な段階での記載ミスでありまして、ハザード比の信頼区間1.843.49、これは以前から正しいデータですけれども、ここで改訂をさせていただいています。

 本日の新しいデータが資料の4ページからでありまして、これはウエスト周囲長とリスクファクター数の関連であります。

 まず、4ページ目を見ますと、ウエスト周囲長とメタボリックシンドロームのリスクファクターの数により、ウエスト周囲長が基準値未満のものをLとして、リスクファクター数に応じてL0L3まであります。また、ウエスト周囲長が基準値以上のものをMとして、これもM003まであります。そうしますと、男性、女性、それぞれ13,000名余り、16,000名余りの中で、まず男性ではピンクから赤い暖色系の色で示したM群は50%弱です。ところが、女性の場合にはM群は6人に1人ぐらいと、女性では男性に比べて、M群の者は少ない。その中で、リスクファクター数の0~3までの分布を見ますと、男性、女性でその分布自身には余り差がないということがわかります。M2M3を合わせたものはメタボリックシンドローム該当者、M1はメタボリックシンドローム予備軍であります。

 5ページ目をごらんください。これは前回、御議論がありました、同じリスクファクターといっても具体的には血圧なのか、脂質なのか、血糖なのかということについてのデータであります。男性と女性に分けて、L1はいわゆる痩せでリスクファクター1つ、M1はメタボでリスクファクター1つ、L2M2はリスクファクター2つずつに相当いたします。そうして見ますと、リスクファクター1の場合には、男性であろうと女性であろうと、Lであろうと、Mであろうと、血圧高値の割合が非常に多いということがわかりました。次いで脂質異常、血糖高値の順でありました。

 次に、2つ合併をしたL2M2でありますけれども、これにつきましても、男性も女性も組み合わせとしては血圧プラス脂質異常が一番多く、次いで血圧プラス血糖という組み合わせが多いということがわかりました。

 次に、6ページ目であります。これは前回もお示ししたウエスト周囲長のレベルごとに見ましたリスクファクターの数の平均値であります。男性と女性に分けて示してありまして、リスクファクター数が1を超えるカテゴリーでは、男性は85センチ前後、女性では9095センチでありまして、現行基準にほぼ合致をするということを述べました。

 このエラーバーは標準誤差を示しています。Nが非常に多いデータですので、標準誤差はこのように比較的少ないという形になることが改めて確認されました。

 次に、7ページ目からです。これはウエスト周囲長とリスク数ごとにカテゴリー化した場合の全循環器疾患のハザード比であります。最初に何枚か男性を、次に女性について示してあります。男性については、4064歳と6574歳で、65歳以上の場合には、積極的支援というものがなくなりますので、年齢区分毎に分けて示しています。

 まず、7ページ目ですが、これは年齢調整なしの4064歳でありますが、縦軸にリスク数が0、1、2、3、4となっています。先ほどの血糖、血圧、脂質に加えて、このような動機づけ支援レベル、積極的支援レベルというのは保健指導を決めるに際しましては、リスクに喫煙を数えています。ただし、喫煙だけが存在する場合には喫煙はリスクと数えず、他のリスクと合わさった場合にはリスク1つと数えるという決まりになっています。

 したがいまして、このリスク1は血圧か脂質か血糖ということになります。2の場合には、血圧、脂質、血糖、喫煙のうちから2つ、そのうちから3つあるとリスク3、全部あるとリスク4になるということです。

 そして、ウエスト周囲長もBMIも基準値以下でリスクがゼロという、これをコントロール群としてハザード比1として、全循環器疾患のハザード比を示しています。そうして見ますと、例えばBMI25未満、ウエスト周囲長85センチメートルという痩せの群でリスクの数が1、2、3、4となるに従いまして1.612.27、以下4.52まできれいにリスクが階段状に上がっているということがわかるかと思います。これは痩せメタボに相当するのですけれども、次にウエスト周囲長の85センチ以上でその中にBMI25未満、BMI25以上のものがありますが、そこで見ましてもほぼリスクの数がふえるに従って、階段状に全循環器疾患のハザード比が上昇しているということがおわかりかと思います。

 次に、8ページ目ですが、これは6574歳のデータです。まず、リスクがゼロで肥満がない群、ここはハザード比が3.99になっています。これは4064歳でリスクがなくて痩せの群のハザード比を1とすると、6574歳になるというだけでハザード比が3.99に上昇しているという意味であります。

 次に、リスクが1つになりますと、Nが少なくて表示していないところもあるのですけれども、リスク1つだけでもさらに全循環器疾患のハザード比が上がるようにも読み取ることができます。

 さらに、例えばウエスト周囲長の85センチ以上でBMI25未満のところを見ますと、6.945.789.095.486.40、先ほどの65歳未満と違って、リスク数0でも高齢だけである程度全循環器疾患のハザード比が高くて、リスク数が増加してもハザード比は階段状にどんどん上がっていくという形には必ずしもなっていないようにも見てとることができます。

 9ページ目、10ページ目、年齢調整をかけましても基本的な傾向は変わりません。

11ページ目にまとめを書いてあります。男性の場合に4064歳のカテゴリーでは、リスクファクター数が多いほど心血管疾患発症リスクが高い、階段状になっているということが示唆されました。もう一方、6574歳のカテゴリーでは、心血管疾患発症のリスクが年齢そのものの影響を受けることと、1つでもリスクファクターが存在すると心血管発症リスクが高い傾向にあるというようなことが4064と少し違うところではないかと読むことが出来ました。

 次に、12ページ目、女性も同じように4064の痩せでリスクゼロをハザード比1といたします。そうしますと、リスク数が1になると、ハザード比は急に3.22に上がります。メタボのほうでも0.872.26に上がって、その後、余り階段状には必ずしも上がらないと見てとれます。概して女性はリスク1つあるだけでかなりぽんと跳ね上がって、リスク数が増加してもハザード比が必ずしも階段状に上昇しないように見てとれます。

13ページは6574歳でありまして、これにつきましては、先ほどの男性の6574歳と同じような傾向にあると考えています。

 年齢調整ありの部分は割愛いたしまして、16ページ、女性についてまとめたものですが、女性の場合に4064歳カテゴリーでは、リスクファクターが1つでも存在すると心血管発症リスクが高い傾向にあることと、リスクファクター数が多いほど心血管疾患発症リスクがおおむね高い傾向にあるということが示唆されました。ここで先ほどの復習になりますけれども、リスクファクター1つというのは、喫煙だけというのはリスクに数えませんので、これは数から言いまして血圧の要素が一番強いのではないかと考えています。6574歳のカテゴリーでは、男性と同様に、心血管疾患発症リスクが年齢そのものの影響を受けることと、1つでもリスクファクターが存在すると心血管疾患発症リスクが高い傾向にあるということが示唆されたというように読みました。

 次に、17ページからですが、これは女性のウエスト周囲長について前回も少し議論がありましたので、女性のウエスト周囲長の基準値を変更した場合の保健指導レベル別に見た全循環器疾患の年齢調整ハザード比を1721ページまで示しています。

17ページの一番上は男性で、その下に女性があります。ここまでの部分につきましては、実はきょう最初に御提示した女性の左から3番目、「3.54」から「2.54」に訂正させていただいた先ほどの表が上2段に相当します。さらに加えましたのが、一番下に女性のウエストを90センチではなくて85センチまで下げた場合のそれぞれの全循環器疾患の年齢調整ハザード比を示しています。そういたしますと、この女性の90センチで見た場合の情報提供レベルの人数の一部が、85センチになりますと非メタボからメタボの右のほうに移りまして動機づけ支援や積極的支援レベルの数がふえることになります。問題は、そのように移動した後のリスクがどうかということを見ますと、女性の90センチでとった場合には、いわゆる痩せメタボのところのリスクは2.122.54で、メタボのところは動機づけ2.32、積極的2.83でありますけれども、85でとっても基準値以下でリスクファクターがあるものは2.072.25、基準値以上で動機づけ支援レベルや積極的支援レベルは2.202.96です。人数は増減するのですけれども、全循環器疾患の発症のハザード比は余り変わらないということがわかります。

 次の18ページ、基準値を80センチにしてもやはりほとんど変わらないということがわかります。一体、これをどう読み解くのかということで新たにつくったシェーマが19です。すなわち、緑で示すメタボリックシンドロームに該当しない心血管疾患高リスク群と考えて、オレンジ色で示す内臓脂肪蓄積によって起こるメタボリックシンドロームに病態に分けてみます。この2群は当然、介入方法が違ってくるのですけれども、内臓脂肪蓄積のエビデンスのある値で切ると、上は内臓脂肪を減らす介入、下はそれ以外の介入ということになります。ですので、このように仮に考えるわけです。それは85センチに基準値を動かすと何が起こるかといいますと、緑が一部メタボリックシンドローム側に移動して、80センチになるとさらに移動してくるということになるわけであります。

 しかしながら、緑もオレンジもリスクファクターを同じように伴っているので血管イベントのリスクは同じようになるわけですから、このような移動はあっても、基準値以上の群と基準値以下の群で全循環器疾患のリスクそのものについては動かない。しかしながら、緑をだんだんオレンジのところに含めていきますと、結局は内臓脂肪があるものと内臓脂肪がないものを一緒に拾うだけで、その中でさらに分けて介入しなくてはいけないということになりますので、一番下に書きましたように、女性において保健指導の階層化におけるウエスト周囲長の基準値を低く設定することは、内臓脂肪を減らすという簡明で合理的な介入手段をとることが難しくなる。むしろ、一番右に書きましたように、90センチの上下で分けてオレンジに対しては内臓脂肪に対して、緑に対してはそれ以外の介入をするというのが一番簡明ではないかということを述べているわけであります。

20ページをごらんください。女性は全体として全循環器疾患の絶対的リスクが低いとされていますが、男性の痩せでリスクがないという厳密な対照群を1とするとどれぐらい低いのかということで縦に見ていただきますと、女性で痩せていてリスクファクターのない者の全循環器疾患のハザード比は大体0.5から0.48ぐらいで約半分ぐらいだということがわかります。それでは、男性の厳密な対照群に比べて、女性の痩せメタボあるいは動機づけ支援レベル、積極的支援レベルのメタボがどれぐらいのリスクがあるかといいますと、ウエスト周囲長が90センチでとった場合には、上から2段目の左から1.09とか1.33、メタボのほうにいきますと1.22とか1.35、大体基準値をどこにとろうとそれぐらいの値です。すなわち、女性の痩せメタボやメタボに介入しているというのは、男性の厳密な対照群、リスクの少ない群に比べて、全循環器疾患のリスクが最大3040%、もしかしたら10%か20%増しぐらいのリスクに対して介入していることになります。この絶対的なリスクは介入の費用対効果ということを考える際には参考になります。 21ページは、絶対的な心血管疾患発症リスクを男女間で比較するために、女性の解析においても、対照群として男性の厳密な対照群を用いた解析を行った。その結果、男性と比較すると、女性ではいずれのカテゴリーにおいても絶対的な心血管発症リスクが低いことが示されたということであります。

22ページから3ページだけなのですけれども、行っている解析は、積極的支援レベル、動機づけ支援レベル、あるいは情報提供レベルの中で、それぞれ受診勧奨群というものがあるわけですけれども、リスクは専ら受診勧奨群から出ているのではないかという議論があったので、そのあたりを改めて解析をしてみました。

 実際に22ページで何を言っているかといいますと、受診勧奨レベルというものがまず決まっています。それは血糖、血圧、脂質で決まっているのですけれども、受診勧奨レベルの中で2つに分けていて、1は確実に医療機関を要する場合ということで、特定保健指導ではなくてすぐに受診をさせる、医療の管理下に置くという値が定められています。

 2は、受診勧奨レベルではあるけれども、まずは生活習慣の改善、保健指導をしなさいということがあるものについては定められています。すなわち、受診勧奨レベル以上だからといって、実際には全部受診勧奨されているわけではなくて、その中で医療機関に次に紹介されるべきものと、まず保健指導をすべきものに分かれています。

 例えば生活習慣の改善を優先される場合には、※印で書いてありますけれども、血圧です。これは一番頻度としては高いわけです。I度高血圧がある場合であれば、服薬治療よりも3カ月間は生活習慣の改善を優先して行うことが一般的であって、健診機関の医師の判断もありますけれども、保健指導を優先して行い、効果が認められなかった場合に必要に応じて受診勧奨を行うことが望ましいというようにプログラムに書かれているわけであります。ここは改めて申し述べています。

 そういったことも含めて23ページを見てください。そういたしますと、ここでは情報提供レベルでリスクがある者の中でも非受診勧奨、受診勧奨レベルまである場合にこのように分けていますし、動機づけ支援レベルや積極的支援レベルは、これまでは一緒くたにしていましたけれども、受診勧奨レベルのリスクなのか、それとも非受診勧奨レベルなのかに分けています。そういたしますと、黄色で示す受診勧奨のリスクの者は確かに男女それぞれの厳密な対照群に比べてリスクが相当高いということがわかります。それでは、非受診勧奨レベルの者はどうかと見ますと、女性の痩せメタボで見ますと1.45、動機づけ支援で見ますと1.83、非受診で見ますと1.73、女性はやはり非受診勧奨でも高いのですけれども、男性の場合には若干事情が違いまして、それは情報提供では非受診勧奨は0.96、動機づけで1.16、積極的支援で1.54ということで、女性の場合にはいずれも受診勧奨レベルというのは非常に大事な、受診させる、あるいはきちんと保健指導をまずするなどのきちんとした対応をすべき群だと。非受診勧奨についても厳密な対照群に比べればやはりリスクは概して高い傾向にあって、介入が必要であるというように考えられました。

 ということで、この部分をまとめますと24ページになりますが、動機づけ支援レベル、積極的支援群について、リスクファクターが1つでも受診勧奨レベルに至るグループでは、非受診勧奨レベルにとどまるグループと比較して心血管疾患発症リスクが高いということが示されたということになります。受診勧奨レベルに至るグループでは、保健指導も先ほどの血圧などを初めとして必要なのですけれども、その中でも緊急性、重症度を勘案して必要と判断した場合には、確実な医療機関の受診促進ということも改めて必要なのではないかと考えられます。

25ページ以降は、これも前回御指摘いただきました、そもそも全循環器疾患についてイベントは相当数ある集団なので、どのリスクファクターがどれぐらいの重みを持っているのかということを検討したらどうかということで、これは磯先生に以前にも解析していただいたのをきょうはデータとしてお持ちしたものであります。

25ページから、まず男性です。これもなかなかおもしろい興味深いデータで、このハザード比を考える場合に、それだとリスクファクターとしての重みの比較が困難ですので、因子あるいはリスクファクターの有無ないしは標準偏差分増加した場合の全循環器疾患のハザード比という形にしています。

 ブルーでつけたのが全て有意な項目であります。HDL-コレステロールは低値な場合に心血管疾患発症が多いということです。もちろん年齢、ウエスト周囲長自身も1.21ではありますけれども、リスクになっている。中性脂肪、収縮期血圧、現在喫煙、血糖高値もリスクになっています。興味深いのは、血圧の薬を服用している人は有意ではありませんけれども、ハザード比が低い。高脂血症の薬を服用している人は有意にハザード比が低いということがわかっています。

 次に女性をごらんください。女性でもほぼ同じ傾向であります。それぞれがリスクになっているということです。もう一つ、血圧の薬を飲んでいたり、高脂血症の薬を飲んでいると、やはりハザード比が下がっているということ。これは非常に重要なデータではないかというようにも思いました。

27ページ、心血管疾患発症に寄与する因子、リスクファクターについて検討すると、男女共通するものとして、年齢、収縮期血圧、現在喫煙に加えて、ウエスト周囲長、HDL-コレステロール低値、血糖高値(服薬含む)が有意なリスクになります。一方高脂血症薬服薬は有意にリスクを減らします。

 次に、それでは、喫煙の影響についてどうかということも前回議論になったというように思います。喫煙の影響については、今回、磯先生のグループに改めて詳細に検討をしていただきました。喫煙についてということで、まず28ページです。特定健診における標準的な質問票では、喫煙に対する質問項目が「現在、たばこを習慣的に吸っている」に対して、はい、いいえで回答する形式になっていて、具体的には最近1カ月のたばこを吸っている者を指すということで、現在喫煙者ということになっています。

 我が国の喫煙習慣者の年次推移ですが、この右のほうで青の破線で示した色の群が男性の平均ですけれども、男性の平均の喫煙率は平成11年ごろに50%で、それから徐々に下がっている。現在は男性32%、女性8.5%ということになります。

29ページ、本研究の解析対象者全体について、男性の喫煙者は45%、女性の喫煙者は6%でありまして、本研究の解析対象者は大体10年ぐらい前にフォローアップされた例が多いので、もちろんこれは住民コホートですので大体平均値ということになります。心血管発症者の場合には若干喫煙者が多い、パーセンテージが高いということになります。

 次に、30ページからの表が、今回この解析を行っていまして以前には気がつかなかったことでありますけれども、非常に重要な事柄がわかったように思いますので報告させていただきます。これは先ほど最初のほうにお見せした、男性で4064歳の群で縦にリスク数を示してあって、横にウエスト周囲長、BMIで4群に分けた同じ表であります。しかしながら、何が違うかといいますと、例えばリスク数ゼロの人数の1,796人の後に括弧して976人と示しています。これが現在喫煙者の数を示しているわけであります。

 例えばウエスト周囲長85センチ未満、BMI25未満、リスクゼロで1,796名中976名、54%、ウエスト周囲長が85センチでBMI25以上の場合は43%ということで、リスクがゼロの方において痩せている人の中でたばこを吸っている人が多いということがわかりました。

 先ほど申しましたようにリスク1というのはたばこを1つではリスクと数えませんので、このカラムでは全部ゼロになります。大変興味深いのは、リスク数2とか3のところをごらんください。まず痩せメタボのところで見ますと、一番左の青いカラムでリスク数2のところでは1,730人中1,139人、66%が喫煙者であります。ところが、メタボのほうで見ますと、1,065人中346人ですから、32%しかたばこを吸っていないということで、2倍近く痩せメタボの中で喫煙者が多い。それから、リスク数3で見ますと、だんだん喫煙者の割合が高くなって、これでは79%です。メタボのほうでもだんだん多くなるのですけれども、これではまだ56%です。もちろん4になると全員吸っているのですけれども、結局、特にリスク数2のところでは結構これは数も多いので全体的な人数も多いのですが、喫煙者の割合が痩せメタボでメタボに対してかなり多いということがわかります。

 すなわち、痩せメタボで一体何がリスクなのかということで、これまでも血圧が言われていて、血圧も間違いなく強いリスクになっているわけですけれども、喫煙ということがかなり効いているのではないかということをサジェストするデータではないかなと考えています。これは高齢の男性でも、それから、女性は全体的な喫煙者が少ないのですけれども、一貫して同様な傾向が認められます。

34ページは特に新たな内容を含んでいませんので、ここではまとめはつくっていませんけれども、最初は単にこの数字だけを示しているつもりなのですけれども、これを読み解いていくとそんなことが見えてきたということで、痩せメタボの中でメタボに比して喫煙者の割合は非常に多い。心血管リスクに恐らく貢献しているだろう。もう一つは、喫煙すると喫煙しない場合に比べて痩せるということもわかっていますので、そういったようなことも反映している可能性があります。

 最後に、腹囲基準を必須にするかしないかという議論のときに、そもそも欧米の場合には多くの人が肥満なので、まず、その項目をみんな満たしてしまっているので、日本のようにその段階で内臓脂肪とそれ以外を分けるということは余り意味がないのではないかという議論がありましたけれども、それを裏づける肥満の疫学ということについて、簡単にまとめて御紹介して終わりたいと思います。

35ページ、肥満の疫学ということで、わが国ではBMI25以上を肥満としています。最近の我が国のデータのBMIの平均は男性23.5、女性では22.5BMI25以上の肥満の割合は成人では男性28.7%、女性では21.3%で、一体肥満の傾向がどうなっているのかということで、36ページ、20歳以上の肥満者の割合は、男性はずっと1970年代からふえ続けてきたのですけれども、この10年間で見ると横ばいになっています。女性の場合にはずっと横ばいでありまして、この横ばいの意味も以前は若い女性がどんどん痩せで、中年以降は肥満でということだったのですけれども、最近では若い女性の痩せ傾向に少しストップがかかってきて、今度は女性の肥満傾向もむしろストップがかかってきて、平均するとこのように横ばいだという意味でございます。

37ページ、欧米との比較では、WHOの報告によれば、全世界の成人の39%はBMI25以上であるということで、我が国に比べてその割合は、男性では28.7%に比し38%ですから1.5倍ぐらい、女性では21.3%に比し40%で約2倍ということになります。BMI30以上で見ると男性では11%、女性は15%、我が国では男性4%、女性3.8%ですから、30以上で男性は3倍、女性は4倍ぐらいということになります。

 欧米と比較して我が国は男女とも肥満の割合が少ないことを考慮すれば、内臓脂肪蓄積やBMI25以上を必須項目として一般成人集団からの内臓脂肪蓄積や肥満を所有する者を抽出する基準、あるいは保健指導の階層化のアルゴリズムには合理性があるのではないかということで、最後の38ページからは世界地図が載っていまして、男性、女性でBMI25以上の者の割合です。38ページを見ると日本では27.8%ですけれども、65%以上の国がオーストラリア、北米等でありますし、40枚目のスライドはBMI30以上で日本は4%ですけれども、これがヨーロッパでは15%以上、オーストラリア、北米では20%以上あるということで、最後の42ページを見ますと、OECD加盟国で我が国はBMI30以上の者から見ると最も男女とも肥満が低率の国であるということを示しています。

 長くなりましたけれども、発表は以上でございます。

○永井座長 ありがとうございます。

 では、津下構成員からお願いいたします。

○津下構成員 それでは、資料4をごらんください。

 第5回のときにインピーダンス法のお話がありましたので、インピーダンス法ではかりました内臓脂肪面積をCT法、腹囲、BMIとの関連性について御報告します。なお、本データは日本人間ドック学会、またNTT西日本高松診療所、現在、オリーブ高松メディカルクリニックの福井先生のデータをおかりしていることを申し添えます。

 2ページをごらんください。特定健康診査における必須項目の腹囲でございますが、その診断根拠となるのが腹部CT100平方センチメートル以上ということです。特定健診・保健指導の手引きでは、内臓脂肪面積を測定している場合にはその値を用いることができるということになっております。今回のインピーダンス法についてどのように扱うことが適切なのかということをご検討していただきたく、現時点でのデータを出させていただきたいというように思っております。

 前回の永井先生の研究班、岡村先生から御発表がありましたけれども、腹囲と内臓脂肪面積の相関は良好だけれども、腹囲と内臓脂肪面積の間で若干乖離があって、腹囲が基準値未満でも内臓脂肪面積が100㎠を超えているところでは若干リスクが高いというようなことがありました。また、生活習慣介入により内臓脂肪面積で測定した効果があるのではないかと前回報告がありました。

 3ページの図でございますが、これは横軸がCTでとりました内臓脂肪面積、そして縦軸がインピーダンス法でとりました内臓脂肪面積で、男性603名、女性196名のデータですが、相関係数0.8610.825ということで良好な相関係数が得られているのではないかというように思います。

 4ページをお開きください。これは腹囲とインピーダンス、腹囲とCT、またBMIとインピーダンス、BMICTの関係でそれぞれ相関係数を見ているものでございますが、腹囲との関係でいいますと、デュアルインピーダンスのほうは相関係数0.851CTのほうが0.820ということで、若干ですけれども、インピーダンスのほうがいい。BMIとの関係では、デュアルインピーダンスが0.827、そしてCTのほうが0.764ということで、少なくとも内臓脂肪面積(VFA)の測定値としてはかなりいい数字が出てきているということがわかります。

 5ページは、日本肥満学会がObesity Diseaseを提唱したときの論文、2002年のCirculation Journalの論文をもとに、インピーダンス法でも同様に検討した結果ですが、元論文ではCTの内臓脂肪面積を右軸にとり、そのときの肥満関連のリスクファクターの数を縦軸にグラフを描いておりますが、今回、それと非常に近似した数字になっておりまして、100㎠のときにおおむねリスク1個というような状況になっていることが確認できました。

 6ページ、7ページにつきましては、これはVACATION-JというCTでの内臓脂肪面積によって出された研究について、同じようにインピーダンス法で計算し直してみたものです。これは対象者数が男性5,098人、女性が2,057人のデータですが、VFA100㎠に相当するのが男女ともおおむね1個に相当するという結果です。

 次に、8ページでございますが、これは人間ドックで経年的にインピーダンス法で内臓脂肪面積を測定している人において、内臓脂肪面積とリスクファクターの数の関連を見たものです。リスクファクターがゼロというのは前回のドック受診時と同じリスクの数だった。1個、2個ふえるごとにインピーダンスのVFA値、内臓脂肪面積は有意に高くなるということです。逆に、リスクが減ったグループでは、例えば2個減っているというグループではVFA平均値が20㎠ぐらい減少しているということで、リスクの数の変化とVFRの数の変化というのは関連性があるということがわかります。

 9ページ以降は、私どもがまだ研究途中のものを出して本当に申しわけございませんけれども、若年者でBMI25以上の方への介入研究においてインピーダンス法で内臓脂肪を測定しておりますので、その値についてお示しするものでございます。

BMI25以上、平均値が27.7ぐらいの男性でございますが、平均年齢が31歳なのですけれども、対象者をVFAによる4グループにわけた4分位法で検討しますと内臓脂肪面積が100㎠以下の方が相当数含まれていました。BMI25以上なのだけれども、内臓脂肪面積から見ると意外とそんなにたまっていないという方がいるということです。特に若い方では、筋肉量が多いけれども内臓脂肪がそれほど多くない人がBMI25以上の中に入ってきているのでは、と考えます。4群間の比較で、メタボリックシンドローム予備群の割合を見ますと、当然内臓脂肪面積が多いほうが割合が高いことがわかります。最も少ない4分位の一番下の群では72.6㎠未満だったのですが、メタボリスクの保有割合が低いことがわかります。

 次に10ページは介入のデータでございます。これは全体ではウエスト腹囲が95.2から91.2センチに下がっていて、VFA91.1から81.810平方センチメートルぐらい下がっているわけですけれども、最も下がりが悪かった第4分位を見ますと、その閾値、赤い線が引いてありますが、VFA4.7です。むしろ若干ふえたというグループなのですけれども、ウエスト腹囲で測定している間についてはマイナスになっております。腹囲による測定の割合、介入前後で測定したときに若干ひいき目になっていないか、と危惧するところです。このあたりが正直心配なところでございまして、11ページをごらんいただきますと、腹囲、VFAが減少したグループは全ての数字がいいほうに動いているわけですけれども、VFAが増加したグループでも実は腹囲は0.8減っているというような数字になっておりまして、このVFA増加群ですと血圧とかトリグリとか中性脂肪とかHDLは若干悪いほうに動いている状況でした。腹囲というのは非常に簡便でいい方法ではありますが、介入効果を評価するなど、より正確に判断する場合には、もう少し精度の高い方法が必要ではないかと思います。

以上です。

○永井座長 ありがとうございます。

 いろいろな視点があって、議論も多くの考え方があるかと思います。私のほうから1つ、追加資料でお手元の資料の最後のページに1枚紙でお配りしてあります。追加資料と右上に書いてあるのをごらんください。

 要するに腹囲の位置づけというのは、感度と特異度を考えなければなりません。いかにリスクのある肥満者を検出するかというのが感度です。この集団をピックアップしたときにリスクのない人をどれだけ除外できているかというのが特異度の問題です。この追加資料には、門脇先生が前回配られた資料からROCカーブを引用しています。ROCカーブというのは見慣れないとわかりにくいのですが、これは第二次大戦中にレーダーで敵機かどうかというのを判断する指標として開発されたものです。このカーブが左上に出っ張れば出っ張るほど感度も特異度もよいという指標です。腹囲については、これは正直なところ、それほど出っ張っていません。

 これをよく見ると、男性の場合86センチで感度が66%、特異度が60%です。これが何を意味するかということなのですが、86センチを基準としたときにリスクのある肥満者は66%検出できます。つまり、34%は見落とすことになります。それから、特異度が60%ですから、それ以外の人たち、すなわちリスクのない方のうち40%が腹囲86センチのなかに入ってきます。これは偽陽性です。

この指標を実用化するときに、すなわち腹囲が基準以上の人をリスクのある肥満と言ったときに、本当にリスクのある人が何%いて、リスクのない人が何%いるかというのは、そのリスクをもつ方々の頻度にかかわります。日本の場合、約25%と言われています。そうすると、25%の数字を考慮して、この86センチ以上を男性のリスクのある肥満としたときに、リスク集積のある方が1,000人中165人。リスクのない人が300人。つまり、465人は腹囲基準以上になりますけれども、本当にリスクのある人は165人で35%。これがpositive predictive valueという数字です。つまり65%は偽陽性です。

 腹囲基準を満たさない場合、これが1,000人中の残りの535人になるわけですが、この中でリスクのある人が85人含まれます。本当にリスクのない人は450人。つまり、肥満でないといったときに確かにリスクがないという確率が84%です。高いのですけれども、75%は当たるのです。もともとのベースが75%ですから、9%改善したに過ぎません。さほど強くない指標です。腹囲を特定保健指導の判断基準に利用したときには、偽陽性が結構入ってくるし、偽陽性も結構多い。これをどうするかという問題なのです。

 今後、肥満に対して指導しないといけないというのは事実だと思います。ところが、先ほど門脇先生が言われたように、喫煙していたりすると肥満にならない可能性がある。そこが今の基準では見落とされています。そこで、現行は腹囲を最初に置いてリスクのある人を集めて特定保健指導をするのですが、まずリスクのある人を集めて、そして腹囲の基準値以上の人を特定保健指導とし、基準値未満の人を非肥満保健指導とするという2段構えで実施するのが良いのではないでしょうか。別に肥満が大事ではないということではありません。肥満に応じた指導は必要ですし、それは特定保健指導の基本的な考え方であるわけですが、腹囲基準の位置づけをどう整理するかということをあわせて御議論いただきたいと思います。

 私からは以上でございます。

 資料2の論点ごとに御議論いただきたいと思います。まず1つ目の論点であります特定保健指導の対象となっていない非肥満のリスク保因者に対する対応の必要性をどう考えるかということで、前回の検討会でも内臓脂肪の蓄積以外の原因に起因する危険因子が集積する者については、その原因を特定し、可能な介入法を検討する必要があるという御意見をいただきました。これについて、最初に御意見いただければと思います。特に喫煙という問題がここに入ってくるのだと思います。多分こういう人たちはたばこをやめれば太るだろうというのは先ほどの門脇先生の御意見なのです。病態としては、内臓肥満というのはベースにあるのだろうと思います。腹囲を喫煙で抑え込んでいるという状態ではないか。ただ、腹囲だけでそれを判断すると、実は判断を間違えるということです。その辺が真相のような気がいたしますが、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○津下構成員 1つは、加齢があると先ほどの門脇先生の資料で4倍ぐらい、もうそれだけでリスクが高い。そこまでリスクの高い状況に到達するのに、普通より急流なものが内臓脂肪であり、そして別のルートで喫煙があるということだと思いました。それに対する介入の可能性も高い。

門脇先生の資料で申しわけないのですが、いただいた資料の29ページに、例えばリスク1というのは、たばこを吸っている人は入っていないです。リスクゼロの中の976分の17はたばこだけの人というのがそこに入っているということで、リスク2個の中の括弧の中に入っている1,139人の50人というのはたばこを吸っていて、あと残り1個のリスクがある人で、その上の段はたばこを吸っていないリスクは1個だけということです。発症の割合を計算してみると、やはり追加リスク1個の場合に、追加リスクというのは血糖、血圧、脂質でたばこを吸っているのと吸っていないのでどれだけ違うかというと、一番左側の列で2.53%と4.39%。どこのリスクレベルを計算してもその一番左側のところで喫煙者が約1.5倍から2倍程度というように計算ができます。

先ほどの図で、一番左側の非メタボで喫煙者、そして、割合的にはかなりの数になるということで、非メタボの方で喫煙をしている方についてはそこを重点的に指導する方向性というものは妥当な話なのかなというように思いました。

 以上です。

○永井座長 場合によっては、リスク数1についても喫煙の有無ということを考慮しないといけないかもしれない。

○津下構成員 そうですね。このリスクゼロの中で、1,796人から976人を引いた数が820人で、このうち発症が14人で、喫煙者と非喫煙者が実は1.7で、リスクゼロの人はたばこだけ吸っていても割り算した感じでは余り上がっていないのです。ところが、1個ある人がたばこがあるとぐっとリスクが高くなるということのようです。ですから、ゼロの人は吸っていいと言っているわけではないのですが、ここで簡単な割り算で見ただけで言うと、リスクが1個、2個になると2.365.9ということで2倍以上ということになりますので、やはり血圧、血糖値等の血管が傷つきやすい要因の上にたばこが重なることで相乗効果があるのかなと思いました。リスクがゼロの人の指導というのはまた別にポピュレーションアプローチ的なものとかいろいろあると思うのですけれども、健診でリスクが1個見つかったときに禁煙のチャンスだという指導がもう少し強化されてもいいのかなというように思います。

○永井座長 ほかにいかがでしょうか。

 藤内先生、どうぞ。

○藤内構成員 今、喫煙していてもリスクがゼロの場合にそれほどハザード比が上がらないのかもしれないというのは、このデータからはわかりません。ぜひ、血圧や血糖、脂質に加え、喫煙も含めたリスクが本当にない厳密な対照群を設定して、ハザード比を分析していただくと、本当に喫煙のリスクがどれほど大きいのかということをきちんと見られるのかなと思いますので、ぜひそれをお願いできればと思います。

○門脇構成員 わかりました。

○永井座長 ほかにいかがですか。

 そういたしますと、次に腹囲基準の位置づけです。腹囲をどういうように位置づけるかということで、私の提案としては、まず4つのリスクを平行して測定し、喫煙も位置づけを明確にする。その上でリスクをもち腹囲の大きい方に特定保健指導を受けて頂く。特定保健指導の概念というのは今の時点ではそう簡単には変えられないと思いますので、ある意味では特定保健指導の振り分け基準として腹囲を利用する。しかし、非肥満保健指導をもっと強化するという立場では、先にリスクファクターの有無をしっかり把握することが重要、このような整理になるのではないかと思うのですが、これについて御意見はありますか。

 ストレスや喫煙など、いろいろな要素が入るために、現場では一概に腹囲だけで振り分けるのは難しいと思います。学会でもぜひこの辺のところをどう整理するか議論いただきたい。喫煙という要因を加えたときには、新しい診断基準ができるかもしれません。また臨床的にも、若い方で、おなかの皮下脂肪は薄くて太鼓腹という方はいらっしゃいます。そういう方はハイリスクであるというのは我々も経験しますので、メタボリックシンドロームの概念の捉えかたと、どこまで敷衍するかという問題です。生活習慣病一般に敷衍してよいのかは、これから学会で御議論いただければと思います。以前はデータがなかったので、やむを得なかったと思いますし、データがない間は何とも言えないということで今日に及んでいるわけですが、大分データも集まってきましたので、ぜひ関連学会で議論を整理していただければと思います。

○門脇構成員 今の永井座長からの御要望、承知をいたしました。それから、現在も腹囲と血圧と脂質と耐糖能については一緒にはかっていて、その整理の仕方について見ると、まず心血管イベントのリスクのある人を全体としてとってきて、病態によって内臓脂肪を主にするものとそれ以外のものに分けそれぞれに対する介入を行うという整理の仕方も一法と思います。

 欧米で腹囲を必須項目にしていないというものとは全く違いまして、永井先生がリスク集積に対して腹囲で分けているわけですけれども、欧米の場合には腹囲を血圧、脂質、耐糖能異常の横に持ってきて、このうちどういう組み合わせでもリスクがあればメタボと診断して、それに対して、それは内臓脂肪があるものとないものを分けることなく一括して診断しているだけで、その場合には介入方法が明確にはならなくなってしまうのですけれども、この永井先生の方式ですと、ハイリスク者を漏れなく拾い上げてきて同時に介入方法が明確になるという点で非常によい方法だと思います。

○永井座長 恐らく保健師さんにとっては、肥満者に対しては今までと余り変わりません。非肥満者に対してどうするかというのは少し工夫が必要です。

○津下構成員 そこが非常に重要なことで、まずいろいろなリスクを個別に厳密に血糖が高い人とか、血圧が高い人とか、分類し過ぎてしまってからではなく、まずリスクがある人で個数が多い人とかそういうプールがあって、その中で減量を中心とした保健指導を優先するグループと、もう一つは喫煙という新たなグループがあって。

○門脇構成員 途中でごめんなさい。減塩も。

○津下構成員 そうしますと、その後に例えば血圧が高いグループについては減塩だし、脂質異常症だったらとか、肥満や喫煙の影響が除かれた本当に個別性の高いところに何を集中的にするかということで考えると非常にすっきり考えられるように思いますし、各学会のガイドラインにも合致するのではと思います。

○永井座長 どうぞ。

○寺本構成員 確かに私もこれでいいと思うのです。保健指導という立場から考えるとこれはすごくいいと思うのですけれども、ただ、重要なことは、この特定健診・特定保健指導という全体の概念として、最近、この言葉は私は余り好きではないのですけれども、メタボ健診という言葉が使われていて、みんなにかなり浸透した段階でこういうようにして非肥満者のことをぐっとこういうように出してくるとまたそこで混乱が生じるので、従来やはり各学会でも血圧であるとか血糖であるとか脂質異常であるとか、それに対しての指導というものはそれぞれいっているわけなので、そういったことを総合的に治療するということも重要であるという観点から、その中でもう一つ肥満という問題があって、肥満と関連するようなものが今回、かなり注目されている問題なのだということを強調しておかないと、全体の流れが違う方向に行ってしまうので、そこだけ気をつけてもらわないと混乱があると思います。

○永井座長 おっしゃるとおりだと思います。この特定健診というのはメタボリックシンドロームの概念に基づいた健診というように10年前に位置づけられたのです。だからそれはまだ変わっていないと思います。ただ、それ以外に非肥満者のハイリスクの人たちにも配慮しますというメッセージではないかと思います。

 どうぞ。

○武見構成員 この整理にとても賛成です。よく特定保健指導を受けられている方の場合には、自分の状態というものが保健指導に該当したのかしないのかということですごくそこで初めて危機感というか自分のことがわかってきます。そういう意味では、門脇先生の言葉で言えば痩せメタボというのですか。その方々というのはそこから外れてしまうがゆえに自分のリスクの状態を余り認識はできないということが問題でした。したがって、もしこういう仕組みに変われば、そこのところが的確に対象者にとっても認識できるようになって、そこに適切な支援が入るという意味でとてもよいと思います。

○永井座長 どうぞ。

○杉田構成員 私も永井先生から提示いただいた案に対して賛成したいと考えます。というのは、スタートしてもう10年近くが経過しつつありますけれども、最初の1期のときというのはメタボリック健診という言葉が先行してしまったように、メタボリックとか特定保健指導がとてもクローズアップされ過ぎてしまって、非肥満の方たちへの保健指導というものが後追いするような、要はそれまでやっていたのが滞るような現状もあったかと思います。第2次のときに、それではそもそも何のために健診を受けているのだということになって、非肥満の方への対応の充実もということで、そのことを加味した改訂版というものが出されたと思うのです。

 なので、スタートのときよりかは非肥満の方への対応が充実してきているとは思うのですけれども、やはり現場のマンパワーとか実際のところで、まだ特定保健指導のほうが優位に実施されているという現実はあるとは思うのです。しかし、提示いただいたような感じで対応をしっかりやっていくというメッセージが今回、第3次に向けて出ることによって、今以上に非肥満の方への対応というものが充実していくのではないかと思います。

○永井座長 ただ、肥満、特に若い方々の肥満に気をつけるのは非常に重要で、そこのメッセージが薄まらないようにしないといけない。これは先生のおっしゃるとおりで、実際この10年で肥満者は横ばいになったのです。肥満していてもよいのだということでは必ずしもないという伝え方が重要です。

○門脇構成員 私も寺本先生の観点も非常に重要で、今、永井先生おっしゃったように、世界的には肥満がどんどん増加をしているのがアメリカを中心として世界各国の状況で、それに対して横ばいにこの10年間なってきたというのは、特定健診・特定保健指導がよい方向に作用していることが大きいと私自身も思っていまして、したがいまして、そこの傾向が横ばいになって、さらに改善するような方向にいかなくてはいけないので、従来との継続性に留意する必要はあろうかと思います。

○永井座長 これは門脇先生の御専門のII型糖尿病にも関係します。日本人では痩せたII型糖尿病が多いわけです。でも、それは若いときの運動不足と食べ過ぎがあってインスリン分泌が落ちて太れなくなっているという面があるようです。その辺が今回の問題にもかかわるので、太っていなければよいと誤解されないことが重要です。既に糖尿病を発症した場合には体重に気をつけないといけないわけですから、そのあたり、日本人に合った指導の仕方が重要と思います。その辺をぜひ学会できめ細かい診断基準を御検討いただければと思います。

 藤内構成員、どうぞ。

○藤内構成員 先ほど杉田構成員がおっしゃられたように、第2期の特定健診・保健指導で非肥満の指導もということで標準的なプログラムに明記をされたわけですけれども、1回のときに少し触れさせていただいたように、どうしても特定保健指導の実績が市町村あるいは保険者にとっては、ノルマ的な評価指標になっています。永井先生がお示しになったように、まずリスクのあるものを抽出して、腹囲によって指導方法をこうやって選択した場合に、特定保健指導を選択された方は当然特定保健指導として実績になる訳ですが、非肥者に対する保健指導も、名称がどうなるのかはわかりませんが、指導の実績としてカウントされるような工夫も今後の議論として必要だと思います。もちろん今、議論になったように、メタボの概念はとても重要なので、特定保健指導が軽視されてはいけないのですが、この非肥満者に対する保健指導がどうしても後回しになってしまっているという現状を今後の議論の中でどう改善していくかということも大事かなと思います。

○永井座長 それはむしろ高齢者医療確保法の中で位置づけられている特定健診をどう考えるか、厚労省にこれから検討いただければと思うのですが、いかがでしょうか。

○正林健康課長 各保険者を評価するときに、特定保健指導の実施回数だけでもって評価するというのは余りよろしくないというか、本当はその先の結果をみんな目標としたいわけですから、今の御発言はしっかり保険局にちゃんと伝えておこうと思います。

○永井座長 ほかにどうぞ。

○岡村構成員 今の話にも絡んでくるのですけれども、最後の非肥満保健指導に行ったところと、もともとの法律の趣旨がありますね。内臓脂肪の蓄積に起因してというものが法律に入っていますから、そこと比べてどこまで踏み込めるか。そこで強度のかけ方が恐らく違ってくるので、そのためにインピーダンス法のデータを示したりとか、あと喫煙というものが1つのマーカーになるかと思うのですが、必ずしも非肥満のところに入っているのが内臓脂肪の蓄積と関係ないものだけではないということで、ある程度ターゲットを絞った形で指導へ持っていく。法律の枠内は当然変わらないから動かせないところがあるのですが、かなりの部分がそこで対応できるものがあるし、関連があるということの位置づけは明確にしておいたほうがいいのかなと思います。

○永井座長 どうぞ。

○津下構成員 2点あります。

 1つは、門脇先生がお示しいただいた35ページ、国民健康・栄養調査で20052006年にメタボの診断基準が出てきて2010年にスタートしたわけですけれども、2005年までで切ると本当に男性のメタボがどんどん肥満がふえ続けていて、そこが抑制されたことを成果として国民全体または保険者も非常に努力をした上でこういう次の段階に移るのに成長できたということをメッセージとして出していただきたいと思います。こちらがだめならこちらというようなニュアンスではなく、一歩先を進んだ保健事業の時代に入るというポジティブなメッセージをぜひお願いしたいというのが1点。

先ほど男性と女性のデータをお示しいただきましたが、男性であることは女性プラスリスク1個と大体一緒だなと。ちょうど1.0が男性であるというのはそれだけでリスク1を持っているのと同じなのだということで、女性もリスクを1個持ったら男性なみに危険なのだということも十分認識すべきデータと思いました。

 ところで、特定保健指導の成果として、今まで健康教室をやっても来なかった男性に、あなたはメタボだから保健指導の対象ですと言って呼びかけて、多くの男性にこの特定保健指導に参加していただくチャンスをつくった。手挙げで募集すると、これまで男性が保健センターに行ったり、保健指導を受けるということが少なかったのではないかなというように思います。逆に非肥満の方はすでに体重管理をしているなど、健康意識が高くローリスク者が含まれる可能性もあります。ローリスク者に対して過分な投入をするというのももったいない部分もありますので、検討が必要なところだと思います。

○永井座長 どうぞ。

○武見構成員 今、津下先生が男女の違いのことをおっしゃったので、恐らく男性に関していうと、非常に乱暴な言い方をすると、今までのメタボというか内臓脂肪の蓄積ということに対する対策がずっと継続していく。そこをさらに強化していく、それに喫煙に入ってくるというのは恐らく男性に対して今、必要な対策だと思います。

 一方で、女性を見ると、門脇先生の12ページ、全てのデータはそうなのですが、実は情報提供レベルに入っている方のところが女性の場合ははるかに人数が多くて、恐らくどの腹囲の基準をとってもそうだと思うのです。ということは、女性の場合は、この制度の中で特定健診と保健指導ということで進んできているけれども、実はそこは必ずしも内臓脂肪の蓄積ではないというとまた違ってしまうのですけれども、一見、肥満とかそういう問題ではないところのリスクの集積ということは非常に重要だということを、次の期には女性に対して少し違う形でメッセージを伝えていくということが必要と思います。その辺、男女で3期のところでは伝えていくものの強調点が違うというあたりをわかりやすく示していくことが重要です。女性はこの年代からさらに30年、40年、みんな生きていって最後のところに至っていくわけなので、そういうことを思うと、この時期にどういう形で自分の生活習慣を見直すチャンスがあるのかということが非常に重要だと思います。

○永井座長 どうぞ。

○津下構成員 今、武見先生がおっしゃったことはまさしくそう思っています。1つは、今回はコホート研究なので、前向きに追跡して10年とか15年ということなのですけれども、女性は90歳まで半数、95歳まで生きる人が4分の1という人生95年時代に入ってきまして、50になってもあと40年間健康を維持しなければいけないということを考えると、長期的にはどんな戦略が必要なのか。80歳のときに介護が必要なくてということを考えると、また別の研究というか、いろいろな分析が必要なのかなというように思います。コホート研究も期間を延ばして分析していただくことも重要かと思います。

○永井座長 福田構成員、どうぞ。

○福田構成員 私も永井先生の資料の一番下の整理というのは賛成なのですけれども、ここにあると非肥満保健指導のところを内容的にどうするのかとかそれが必要になって、禁煙とか強調するのかもしれませんが、なっていくのかなと思います。

 あと今、御意見を聞いていて思ったのですけれども、確かに整理としてはこうだと思うのですが、場合によっては現場のことを考えると見せ方を考えてもいいのではないかなと思うのです。というのは、現行の仕組みで考えても、腹囲をスタートにしていても、きょう門脇先生に御提示いただいたとおり、これは腹囲の該当者についてこうなっていますけれども、腹囲についての非該当者で横にもう一個流せば、その行き着く先は非肥満保健指導になっていれば並行で書くことも可能であって、つまり、言いたいのは、現行のプログラムはせっかく定着しつつあるので、これからまた特定健診と保健指導を進めていかなければいけないということなので、それはこれからもやっていくのです、肥満についてはやっていくのです。それ以外にもこういうリスクがある方がいて介入が必要なのです。つまり、新たなものをつけ加えるのですという見せ方も可能かなという気はするので、整理はもうこのとおりなのですが、それは現場でどちらの混乱が少ないかは議論する余地があるのかなという気がします。

○永井座長 ありがとうございます。この辺はまた工夫し、御相談したいと思います。位置づけとしてはこういうことだろうということかと思います。

 どうぞ。

○寺本構成員 1つの考え方として、メッセージとしては、10年間、こういう特定健診・保健指導というものをやってきて、これだけの成果が上がってきて、それなりの効果もあるのだということがわかってきて、肥満の問題というのはかなり皆さんの中に入ってきた。しかしながら、それだけで全てが解決しているわけではないので、今回、調べていくと、いわゆる腹部肥満でない方々もリスクが高いということを、今までもこれはわかっているわけだけれども、改めてそのことが強調されたので、そこの指導もこれから重要なのだという形で考えていくというような方向でメッセージを流せば、今までの特定保健指導も決して問題ではないし、これからそれにより固めた形でやるのだというような流し方もあるのかなと思うので、その辺も御検討いただければと思います。

○永井座長 藤内構成員、どうぞ。

○藤内構成員 今の寺本構成員の意見とつながるのですけれども、本当にこの10年間の取り組みで、先ほど門脇構成員がお示しになったように男性の肥満は横ばいになって、今までずっと一貫して伸びてきたのがやっといい感じになってきた。それはこの取り組みの特定健診・保健指導の効果だと思うのですが、では、糖尿病を含め、生活習慣病全体の日本人の有病率はどうなのか。いろいろなデータがあって、はっきりこの10年、あるいはその前の例えば30年、40年のトレンドと最近の10年がどう生活習慣病の有病率が変わってきているのか。これはどなたか構成員の方、もしくは事務局のほうでそういうデータをお示ししていただくと、特定健診・保健指導というシステム全体の評価として、我が国の生活習慣病がどうなっているかが見えてくると思います。

○永井座長 どうぞ。

○門脇構成員 その点について、私自身の仕事ではないのですけれども、今、東京大学の特任教授の井上先生のお仕事で、年齢のことなども調整に入れた糖尿病の有病率の推移について過去20年間のデータに基づき今後20年間の変化の予測をパブリッシュされています。そのデータによると、男性については60歳以降は今後とも有病率は増加しますが60歳未満では減少する、女性については60歳以上でも既に横ばいで60歳未満では減少するというデータになっています。その要因として、これはディスカッションですけれども、肥満がこれまで男性で増加してきたのが横ばいになってきて、男性についても糖尿病の増加にストップがかかりつつある。女性は全体として横ばいなのですけれども、糖尿病の好発年齢ではむしろ肥満は最近減少してきています。そのことによって近未来では女性は減るのではないかというものが論文の趣旨でありまして、既に肥満と非常に関係の深い糖尿病についてもそういう影響を及ぼしていて、これは世界的にも糖尿病がこのような形で横ばいになりつつあるという国はほかに余りないのではないかと考えられます。平成24年度の厚生労働省の国民健康・栄養調査でも予備軍が初めて減ったわけですけれども、今度、平成29年、糖尿病の有病者数と予備軍者数が出ますが、それを見ないとまだ確定的ではないのですけれども、井上先生のデータなどから私はそのように見ています。

○永井座長 よろしいでしょうか。きょうのところはまず非肥満者への適切な保健指導方法ということ、これが今後非常に重要で、さらにこの検討会で別途検討する必要があると思います。肥満者の腹囲の位置づけをどう見せるかは別として、まずハイリスク者を抽出して、指導介入のときにそれで対応していく、腹囲で対応していくということですね。さらに学術の問題がありますが、10年前と今とでデータが随分違います。データが増えていますので、ぜひこれは関係学会のほうで、御議論いただければと思います。

 それから腹囲基準について何センチをもって肥満と言うのかということですが、ここはいかがでしょうか。なかなかこれも悩ましい問題ですが、男性85、女性90ということについて御議論いただければと思います。

 どうぞ。

○津下構成員 今、非肥満の方の保健指導を充実させるという前提があるのであれば、現行で先ほど門脇先生から8580に下げることに対して、ハザード比がすごくよくなるとかそういうこともないということであれば、そこで保健指導を行う中に吸収し、現状を変えるほどのデータはまだあるとは言えないのではないかなというのが印象なのですけれども、どうでしょうか。

○永井座長 いかがでしょうか。

 岡村構成員、どうぞ。

○岡村構成員 これはもう発症のハザードから見たら、結局ウエストの基準はどこで切ってももう一緒ということになるので、保健指導をどこから入れるかという観点でやるしかない。そうすると、今、津下先生が言われたことと全く一緒なのですけれども、大きく変更は必要なくて、今のシステムのところはやる。ただ、非肥満のところになったときに非肥満と言っても、例えばウエストがカットオフに近いところは当然減量も指導するとか、若いときから体重が増えた人については指導するとかということが当然入ってくるので、基準値については現行のものでそのままいいという考え方が混乱はないのかなと。だから、どこで切っても一緒という逆の言い方はまた語弊があるのですけれども、保健指導という観点から選ぶということであれば、そういう考え方でもよろしいのかなと思います。

○永井座長 門脇先生、どうぞ。

○門脇構成員 前回の議論でも出ましたけれども、腹囲そのものが何かリスクにつながっているわけではなくて、内臓脂肪があるとリスクを合併しやすいということになるので、そういう点では内臓脂肪や肥満の基準をどうするのかというのはリスクの合併ということから考えると、もともと男性85センチ、女性90センチで、90センチというのはリスクファクター1に相当する100平方センチメートルの内臓脂肪面積に対応する値なので、病態学的にはそこで決めるのが一番合理的と考えられます。心血管イベントでは、まず先ほどから議論がありますように腹囲の良いカットオフポイントはない、喫煙の問題などもあって、適切なカットオフポイントは、心血管イベントのハザード比から考えるのではなくて、病態から考えると8590でいいのではないかなと思います。

○永井座長 よろしいでしょうか。特に非肥満者への指導を強めるということがあると、今のままでもよろしいのではないかということですね。そのように整理したいと思います。

 もう一つ議題がございまして、これまでの議論の整理について、事務局から御説明をお願いいたします。

○高山健康課長補佐 お手元の資料2をまずごらんください。「論点について」というものですけれども、今、御議論いただきました腹囲に関するところを先ほど御説明させていただきました。

 1、第5回「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」での議論の概要等についての4つ目の○です。これまでの議論の整理として、特定健康診査における健診項目の位置づけについて、資料5にまとめております。これから資料5の御説明をさせていただきます。資料5をお開きください。

 実は2~4ページまでは前回の検討会でお示しをさせていただいたものになります。ですので、一部重複する内容もございますけれども、改めて御説明をさせていただきます。

 3ページ目から御説明したいのですが、特定健康診査における健診項目の考え方に関するこれまでの議論を整理しております。改めてもう一度御説明をさせていただきますが、1つ目は、健診は、主に将来の疾患のリスクを確認する検査群であり、検診は主に現在の疾患自体を確認する検査群である。健診において行われる検査項目の一部は、測定値等により疾患リスクの確認と疾患自体の確認の両方の性質を持つことがある。

 2つ目で、特定健康診査の健診項目は虚血性心疾患や脳血管疾患等の危険因子もしくは生活習慣病の重症化の進展を早期に発見する項目であって、かつ、介入可能なものであること。具体的には、特定健康診査の基本的な項目は虚血性心疾患や脳血管疾患等の危険因子を早期に発見する項目であって、事後措置は主として特定保健指導であること。また、詳細な健診の項目は生活習慣病の重症化の進展を早期に発見する項目であって、事後措置は主として受診勧奨であること。

 そして3つ目は、健康診査と医療が担うべき役割は区別されるべきであることということを確認させていただいております。

 以上を踏まえまして、4ページ以降ですけれども、尿腎機能検査の位置づけについて(案)、肝機能検査の位置づけについて(案)、12誘導心電図の位置づけについて(案)、眼底検査の位置づけについて(案)をまとめさせていただきました。

 まず4ページですが、こちらは前回も御説明をさせていただきました。まず、尿腎機能検査は40歳から74歳の対象者に多く見られる高血圧による腎硬化症、糖尿病による糖尿病性腎症などを対象疾患として、血圧または代謝系検査が保健指導判定値以上の者で医師が必要と認める者に対して実施する。特定健康診査では、詳細な健診項目として血清クレアチニンを実施する。糖尿病性腎症などの重症化予防などが課題となっている保険者が尿たんぱく検査をあわせて実施することも可能であると前回の議論でもされております。

 続きまして、5ページ目になります。今の資料は、詳細な健診項目としてこれから行おうとしている4つの対象者等を明確にするという目的のために作成しておりますが、肝機能検査の位置づけについてですけれども、肝機能検査はNAFLDもしくはNASHやアルコール性肝障害などを対象疾患として、血圧、脂質、代謝系検査が保健指導判定値以上の者や問診等で不適切な飲酒が疑われる者で医師が必要と認める者に対して実施してはどうかと考えております。

 また、特定健康診査では詳細な健診項目として、こちらもこれまでに御議論いただきましたけれども、ALTGPT)、γ-GTPを実施するということにいたしまして、虚血性心疾患や脳血管疾患等の発症予測能の低いASTGOT)は、特定健康診査の健診項目は廃止することも可能とするとしてはどうかと考えております。

 おめくりいただきまして、6ページです。12誘導心電図の位置づけ(案)ですが、12誘導心電図では左室肥大や心房細動などを対象疾患として血圧が受診勧奨判定値以上のものや、問診等で不整脈が疑われるもので医師が必要と認めるものに対して実施してはどうか。12誘導心電図を実施すべき対象者は、早期に検査を受けることが望ましいので、次年度に詳細な健診として現行では実施しているのですが、そうではなくて速やかな受診勧奨を行うということといたします。その上で、速やかに特定健診の現場で検査の実施が可能な場合などには引き続き詳細な健診として実施することを妨げないとしてはどうか。

 7ページの眼底検査の位置づけ(案)ですが、眼底検査は高血圧性網膜症や糖尿病性網膜症などを対象疾患とし、血圧または代謝系検査が受診勧奨判定値以上のもので医師が必要と認めるものに対して実施してはどうか。眼底検査、以下は12誘導心電図と同様ですが、眼底検査を実施すべき対象者は早期に検査を受診することが望ましいので、次年度ではなくて速やかな受診勧奨を行うこととする。速やかに検査の実施が可能な場合には、引き続き詳細な健診として実施することは妨げないとしてはどうかという内容を図にあらわしたものでございます。こちらを御使用いただきまして御検討いただければと思います。

 事務局からは以上です。

○永井座長 ありがとうございます。

 ただいまの御説明に御質問、御意見をお願いいたします。

 津下構成員、どうぞ。

○津下構成員 よろしくお願いいたします。わかりやすい図と思いますが2点。

 肝機能障害ですけれども、1つはNAFLDNASHを障害として発見するというのもありますが、異所性の肝臓への脂肪蓄積は、割と早期に起こってきます。特に血糖、血圧の異常が出る前に若年の男性で肝機能障害がある。これは減量により可逆的なのですけれども、肝機能障害といった場合にNASHNAFLDまで進行したレベルと軽い肝機能障害があり、さらに後者は保健指導などで効果が確認できる項目なので、この位置づけでいいかどうかということについて御検討いただければありがたいと思っています。

 2点目なのですけれども、眼底検査ですが、これは細かい話なのですが、糖尿病性網膜症の今、検診で入れるコードがScott分類になってます。臨床ではもうScott分類は使われていないだろうと思うのですが、この際、臨床と詳細な健診で登録するのであれば、その方法についても見直してもいいのではないかと思います。

 以上です。

○永井座長 いかがでしょうか。

 磯構成員、どうぞ。

○磯構成員 5ページなのですが、これはシェーマのレイアウトの問題だと思うのですが、アルコール性肝障害のオレンジのところが肥満からそのまま横につながっているので、非肥満の場合もあると思うのですが、肥満のほうからずっと来ているように見えるのですが、何か工夫ができないですか。肥満でなくてもアルコール性肝障害は出てきますので。

○永井座長 上まで上げる必要がある。ほかにいかがでしょうか。

 岡村先生、どうぞ。

○岡村構成員 あと眼底と心電図の部分になりますけれども、対象者をその場でピックアップできたら詳細な健診でやることは問題ないという感じにはなっていますが、あとこれは先々の話になりますけれども、具体的にどういう人に対して行うのか。その場でピックアップできるというものはどういうものかということをまた具体的に詰めていったほうがいいかなと思います。レギュレーションがないと、それぞれいろいろなとり方をしてくるかなと思うので。その場で判定できる、例えば心電図のこの場合は問題なさそうなのですが、眼底だと高血圧についてはその場で選び出せるけれども、例えば糖尿病のほうについてはその場ではわからない場合が多いかもしれないので、両方のルートは考えておかなければいけないのかなとか思います。いずれにせよ基本的には臓器障害の発見みたいな位置づけになりますから、基本的な項目とは違うだろうというのがここの全体の位置づけということでいいのではないかと考えます。

○永井座長 よろしいでしょうか。

 これまでの議論を整理します。まず尿腎機能検査ですが、これはいろいろ議論いただきましたけれども、特に40歳から74歳の対象者に見られる高血圧による腎硬化症、糖尿病による糖尿病性腎症、この辺が対象疾患である。血圧、代謝系検査が保健指導判定値以上のもので医師が必要と認める場合には尿腎機能検査を行うということ。詳細な健診項目として、血清クレアチニンを行うのがよろしいだろうということです。糖尿病性腎症等の重症化予防が課題になっている保険者が尿たんぱくを合わせて実施することは当然可能であるということにしたいと思います。

 また、毎年、尿、腎機能検査を行うかどうかという議論はございますけれども、実施間隔については医師が必要と認める者を尿腎機能検査の対象者として、適切な間隔についてはさらに科学的知見を蓄積する必要があるということかと思います。肝機能検査については、NAFLDNASH、さらにアルコール性肝障害等を対象疾患とする。血圧、脂質、代謝系検査が保健指導判定値以上の方で、問診等で不適切な因子が疑われる方について、医師が必要と認める者に対して実施するということにしたいと思います。

 特定健診では、詳細な健診項目として、ALT、いわゆるGPT、あるいはγ-GTPを実施することにしたいと思います。虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症予測能の低いGOTは、特定健診の健診項目から廃止することも可能である。廃止しなくてももちろんよいと思いますが、廃止することも可能とするというように整理したいと思います。

12誘導心電図ですけれども、左室肥大、心房細動等を対象疾患とすること。血圧が受診勧奨判定値以上の方、問診等で不整脈が疑われる方で医師が必要と認める者に対して実施することにします。12誘導心電図を実施すべき対象者というものは、早期に検査を受けることが望ましいということから、次年度に詳細な健診として実施するのではなく、速やかな受診勧奨を行うこととしたいと思います。速やかに検査の実施が可能な場合には引き続き詳細な健診として実施することは妨げないという整理になると思います。

 眼底検査ですが、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症等を対象疾患とし、血圧、代謝系検査が受診勧奨判定値以上のもので医師が必要と認める者に対して実施いたします。眼底検査を実施すべき対象者は早期に検査を受けることが望ましいため、翌年度、次年度に詳細な健診として実施するのではなく、速やかな受診勧奨を行うことといたしますが、速やかに検査の実施が可能な場合には、引き続き詳細な健診として実施することは妨げないということです。

 全体としまして、当該年の検査値に基づいて詳細な健診項目の対象者を選定すべきではありますけれども、現状では検査結果が迅速に判明しない等の状況もあるため、当該年もしくは前年の検査結果に基づいて対象者を選定することも可能とする。このような整理になるかと思いますが、いかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。また詳細については、さらに今後も御議論いただきたいと思いますが、きょうの議論を少し事務局でまとめていただいて、次回、引き続き議論をしたいと思います。

 今後のスケジュール等について、事務局から御説明をお願いいたします。

○高山健康課長補佐 今後の日程について御案内を申し上げます。

 次回、第7回の検討会は、来週、5月17日火曜日でございます。

 以上です。

○永井座長 よろしいでしょうか。また次回に続けて御議論いただきたいと思います。

 本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

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